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説明員(小林朴君) いまの御
質問に順序を追ってお答えしてまいりたいと思いますが、第一番目に、旅券の
チェックをする、犯罪の容疑があるものについて
——ということでございますけれ
ども、これは、私
どものほうでも犯罪の容疑が明らかであるものにつきましては、旅券の発給というものについて
チェックをしてもらうように外務省のほうに
連絡をするというような仕組みをとっておりますので、こういう点は問題ないと思うのですが、ただ、
本件のような場合、容疑が何なのか全然わからないというような
段階におきまして海外に容疑者が逃亡する。そういたしますと結局、逃亡をいたしましてから犯罪が何であろうかという捜査の
段階になるわけでございます。そういう場合に、犯罪の容疑事実が固まりましてから、あるいは外交ルートを通じ、あるいはICPOを通じて犯人の行き先を探し、それからその身柄の引き渡しというような問題が問題になってまいります。そこで、この場合にどういうような方法があるかと申しますと、先ほど先生のほうからお話がございましたように、条約に基づいて犯人の引き渡しが行なわれる場合というのがございます。これは現在のところ、日本はアメリカとの間において実施をいたしておるわけでございます。その他は国内に逃亡犯罪人引渡法というのがございまして、この第三条に基づきまして相互主義を日本はとっておるわけでございまして、日本のほうでも相手国から犯罪人が逃亡するというような場合に、こちらでも逮捕をしてそれを送るというような条件をつけまして、向こう側から今度は日本の国で犯罪を犯した者の引き渡しを求める、そういう場合に、原則的にはお互いに身柄を引き取りに行くことになるわけでございますが、そういうような相互主義の保証によりましてお互いに犯罪人の引き渡しをするというようなことが条約に基づかない国の間においては行なわれるわけでございます。ICPOの
関係によりますというと、これはそういうような公の交渉、外交ルートを通じましての交渉をする以前におきましてICPOで実は各会員国の間で、逃亡犯人の引き渡しに関しまして
警察権を行使し得る権限といいますか、そういうものに関連をいたしましてインターナショナルサーキュラーという回章が出ておるわけでございます。その回章に日本の場合は
昭和三十三年に同意をいたしておりまして、その同意国におきましては今度はお互いに、
本人が自分の国内におるだろうかと、その所在を探す、それからそれがどういうような活動をしておるか、あるいはその同意を得まして実況検分でございますが、検分をいたしたり、尋問をすることもできるというようなことになってございます。まあそういう形で所在を探すわけでございますけれ
ども、それも結局は、先ほど申しましたような外交ルートを通じて犯人の引き渡しに関する話し合いがつかない限りは、ただ国内でそういうふうにお互いに
警察権を行使し得るというだけでございまして、あくまでもそういう公式ルートによりますまでの間に捜査をするというようなことになっております。それからもう
一つの方法は、旅券法に基づくわけでございますけれ
ども、旅券を失効の手続をとっていただきまして、そして失効によりまして帰国を要請するというような方法があるわけでございます。これは旅券法の十八条、十九条等に基づいて行なわれる方法でございますけれ
ども、現実にそういうような形で行なわれたものがございます。で従来
——私
どものほうで現に詐欺等を犯しましてスイスに逃げた犯人がございます。この場合は先ほど申しましたような条約国ではございませんけれ
ども、お互いに相互の保証をすることによりまして、将来スイスから犯人が日本に逃亡するというような場合には、それと同じような形で引き渡すということを原則にしまして引き渡しをした例もございます。その他たくさん例がございますけれ
ども、そういう問題がございます。
それから第三点でございますけれ
ども、この十九億円の犯罪捜査については手ぬるいではないかというお話でございますけれ
ども、三億円
事件のように
事件がすぐに固まる。固まると申しますか、だれが見ても窃盗なんだ、あるいは強盗なんだというような、そういう
事件、あるいはだれが見ても傷害
事件だというように、すぐに
事件がはっきりするものと、
本件のようにまあ企業の中で行なわれる犯罪というものにつきましては、どこが犯罪になるのか、まあ先ほどからも議論になっておりますように、
通常正しい
やり方であればこういうような
やり方であったと、しかしそれと違った形においてこういう意外なことによって犯行が行なわれたというようなことを固めてまいりますのに、非常に時間がかかるわけでございます。こういう捜査は、非常にじみちな情報等に基づく捜査によりまして、時間がかかるわけでございます。時間をかけてそういう実被害がどういうふうになったか、それから先ほどからもお話がございますように、そういうお金を何に使ったんだろうかというようなことを相手の企業も分析をいたしてまいらなければならないわけでございます。そういうものが固まってまいりましてから容疑者の犯罪事実というものが初めて明らかになるというようなことでございますので、若干三億円
事件のような形で直ちにその犯人を追うというような形にまだならないわけでございます。現在はそういう
段階でございますので、御了承をお願いしたいと思うわけでございます。
それから、
本人の足取りあるいは家族の問題はどうかということでございますけれ
ども、先ほ
ども申しておりますように、
本人につきましては海外に現在いる
状況でございますし、それを外交ルートを通じて明らかにするというような形、あるいはICPOを通じて依頼をするというような形になりますと、犯罪事実を固めておかなければなりませんので、いま直ちにここで申し上げられるような
状態ではございません。それから家族の問題につきましても、当然
事件に関連して必要な
範囲で
調べることになるわけでございますけれ
ども、あまり私事にわたる
段階については、この席で申し上げますことを差し控えたいと思います。