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亀田得治君 その「渡航先の状態によって制限しなきゃならぬことがあり得る」、こういうふうにそのことばだけ聞いておりますと、きわめて多数行けるように感ずるわけですね。だけれども、実際の行政は、渡航先の状態、未
承認国というものに対して原則はストップになっているでしょう。そうしてそれを解除する。長い間そういうふうにやっているものだから、いつの間にかみんながそういうふうに勘違いしているわけですよ。それは逆なんですね、法律のたてまえは、何といったって。だから、そういう状態が今度は裁判所にまた反映してくるわけですね。それで、ときどき
旅券法関係では負けるわけですね、国の側が。それはあまりにも法律のたてまえと旅券行政が背馳している証拠なんです。裁判所が国の側を負かすと、どうも最近の裁判所はけしからぬとか、そんなことを西郷法務
大臣がこの前、えらいおっしゃって、だいぶ問題にもなりましたが、そういうことじゃなしに、そういう判断が出ればこれは多少自分のほうにも問題があるんじゃなかろうかと、やっぱり反省をすべきだろうと思うんです。そうしませんと、これはともかく自分がそんな外国旅行する、未
承認国へ行くんだ、
政府はいろんなことを言うが、向こうとちゃんと打ち合わせできているし、そんな
政府が心配になる保護の
関係だってもう心配ないんだと、第一、本人が、わしゃもうその点は心配ないから行くというものを、いや、それでもおまえはあぶないと、そんなこと言う必要がありますかね、これ。そういうような理屈をくっつけたりしてやらされぬわけでしょう。それで訴訟になるわけですよ。それで、具体的にずっと法廷でやってみると、申請した人は、これは普通の人、
経済人。そんな、法律に書いてあるような大それた、国の公安じゃ利益じゃ、そんなことに少しも
関係ない。考えようによっては、国の利益にもなると思われるというようなことで国が敗れるわけですね。で、この十三条の一項五号については、これは憲法違反ではないという点は最高裁でも明確になっております。この点はわれわれだってその前提で話ししているんです。しかし、この条文そのものが違憲ではないということになっても、だからといって、それを運用する場合に、
理由のないはなはだしい制限をする場合には、その点でそれは違法なやはり措置になるんだと、違法。憲法二十二条にやはり違反してくるかっこうになるわけですね。裁判所はその点を言っているわけなんです、その点。だから、そういうことについてもっと謙虚にならなきゃいかぬと思うんですよ。まあ、ずいぶん行政訴訟があります。ちょいちょい負けるのがこの旅券、入管
関係ですよ。これは行政に無理があるということなんです、無理が。これはまあ
日本の全体の政治体制がそこへ反映していることは、これは私もよくわかります。わかりますけれども、個人には
関係のないことでしょう。行政訴訟でも、たとえばなにですね、土地収用の
関係なんかは、これは大体国なり企業者側が勝っておりますね。これは、国民のほうが、ああでもないこうでもないと言って居すわるというような事案が多いものですから、自然にそういう結果になるわけですよ。
それから農地法なども、これはずいぶん行政訴訟が多かったものですが、初めの間はずいぶん国が負けたですね。それはやはり法律の専門家でない農業
委員などが、そのときの農地改革という
一つの政治的な線に乗って、どんどん買い取っていくということが、やはり司法裁判所に来ると判断を受けるわけですね。したがって、それが出れば、農業
委員会
——現在は農業
委員会です、農業
委員会でもちゃんとやはり処理のしかたを変えていっているわけですね。そこが私は大事なところだと思うのです。そういうふうにならなければ、
一体三権分立という基本というものがくずれます。
政府自体がくずすことに私はなると思う。そういうことはね、いろいろな意味でまた妙なはね返りが来ます。自分の都合のいい判決だけ
政府は賞揚して、負けたやつはけしからぬと。やっておるやつが悪いのだ。裁判もほかの問題が起きておりますけれども、そういう問題をまた法務
委員会でやります。やりますが、私は、この旅券並びに入管は、いわゆる再入国の問題ですが、この件についてはやはり考えてみる必要がある。そうして、本人にどうしても行ってもらいたくないと言うんなら、
旅券法としてはこれはやらさぬわけにはいかぬのだ。しかし、
日本の政治的な立場がこういう状態だから、まあこの程度で遠慮してくれんかとか、これはまた別個の立場でおっしゃるなら、これはまた
一つの筋なんですよ。ちょうど、
旅券法ではいいけれども、外貨の
関係で実際上はいけないのだ。これはやむを得ぬと思うでしょう、国民だって。そういうすっきりしたことをせなけりゃいかぬですわ。それを無理やりにこの
旅券法第十三条一項五号、これは同じ条文が今度の新しい
旅券法にも入ってくるから私は言うんですよ。やはり国ですからね、ちょうど三百代言式に無理やりに解釈を押し込んでいくというふうなことはやめたほうがいいと思うのですね。こういう点について、これは法務
大臣にも
関係あることですからね。法務
大臣の場合は例の再入国問題ですね。
日本におる外国人、特に朝鮮人並びに中国人です。この方も外国旅行という点については憲法二十二条で保障されておるわけですね。入国とはいうけれども、これは一時的な外国旅行なんだ、実質的には。そういうふうに理解されている問題なんですね。法務
大臣に来てもらいましたのはそういう点なんです。だから、私がいま指摘した点ですね、もうすこしくふうのしかたがないものか。私の理論でいきますと、これはどうっといかなければならぬということになるわけでしょう、どうしても。そんな申請している人はとてもこんなところに当てはまらぬですから、五号なんかに。それじゃ困ると言うんなら、困らぬ手だてを考えればいいんです。どういうふうに考えたらいいのか、具体案は私もちょっとこれは浮びませんけれども、それはまた別個な問題ですよ。そういうふうにどうしてならぬの。そうすれば、行政と立法府とそして裁判所と、この三つがぐっと近寄ってくるのですよ。最近はこう三つがぱっと分かれておる。これは
旅券法だけだからまだいいけれど、各法律については、そんなこと起きてごらんなさい。そんなあなた、順法精神なんて、そんなこと幾ら言ってもふっ飛んでしまいますよ。この二つの点、ひとつ両
大臣から、私の指摘している点、間違いかどうかおっしゃってください。