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国務大臣(
愛知揆一君) 前段の
お尋ねは非常に広範にわたっておりますので、まずその点についていま一度お話しいたしたいと思いますが、要するに、
わが国としてそれなら何を
考えているのかということですが、これは、先ほ
ども触れましたように、第一は、
国際の平和と安全の維持を一番大きな目的にしているのがこの国連ではないだろうか。その国連の平和維持機能が果たされているだろうか、あるいは世界じゅうの人たちがどういう点にさらに期待を持っているだろうかという点を掘り下げて、過去の反省の上に立ち、さらに将来の動向を踏まえて
考える必要がある。そういう点から、安保理事会及び総会のあり方、そして従来現行の総会と安保理事会の
関係、両機関の
関係のあり方を再検討する必要があるということが
一つ大きな中心の課題であると思います。
それから、先ほ
ども申しましたように、経済社会開発という面は、国連としてもこれは時代の流れに沿うて非常に大きな問題であるべきはずである。で、その点について、国連の諸機関を総合的にそのあり方を再検討して、各種の機関の事業を調整したり、また、個々の機関のあり方についてそのあるべき姿というものについて建設的に
考え直すことが有意義であると、こういうふうに信ずるわけでございます。そういう面において、先ほど申しましたように、第二の柱はそういう点に主力を置いていくべきではないか。
それからさらに、そういった点をも
考えながら、国連憲章というものを見直してみれば、旧敵国条項といわれているものや信託統治理事会というような、国連二十五年の歴史に照らしてももう不必要になったものというようなものが相当ある。あるいは敵国条項などは、これは御
議論がいろいろあるところでございますが、私は、旧敵国条項というものが国連憲章の上に残っていることが現在
日本の国益にとって実害を与えているとは思いません。
日本がすでに国連に加盟している以上は、条理上も、敵国条項によって
日本が不利をこうむるとかあるいは不測の圧迫を受けるとかいうことからは解除されておりますから、実害というものはないと思いますけれ
ども、しかし、少なくとも、俗なことばで言って、愉快なことではない。国連憲章に手をつける場合、当然こういうものは整理してしかるべきではないのか、これが第三のいわば柱に当然取り上げてしかるべきではないかと思います。
いま第二にあげた社会開発等の問題について申しますならば、現在の経済社会理事会あるいは国連
貿易開発
会議、国連開発計画、国連工業開発機構その他いろいろの機構がある。これらの点について、先ほどから
指摘しましたように、総合的に再編成するということが私は必要じゃないか、こういうふうに
考えております。そういったような
考え方のもとに、これも先ほど抽象的には申しましたけれ
ども、具体的な構想というものは相当に研究を進めておるわけでございます。それらの点について、まだ未熟な点や練れない点がたくさんございますし、私
ども、あまりこまかい未熟なところまで申し上げることはひとりよがりになりまして、国連の中でどういうふうに進めていくかということも
考えていかなければ、ただ、これはひとりよがりの作文に堕するおそれがございますから、もう少し成り行きともあわせて検討してから具体的な問題を提起しても決しておそくはない。要するに、
考え方の基本が、いま申しましたそういうところにあるということを明確にしておきたいと、かように
考えておるわけでございます。
それからその次に、国連に、特に安保理事会に対するアプローチの問題で、私は、そのいまの
段階では、あるいは私見が入るかもしれませんけれ
ども、そういうアプローチをするなら、おまえらは義務を何を
考えているのだ、義務として国連に対する軍事協力ということを
考えているのであろう、こういうふうな想像や
議論がなされるのは、私としては、ちょっと私の発想と非常に食い違いがあると思います。現在でも国連の憲章においては、なるほど常任理事国は軍事参謀
委員会、これのメンバーになるということにはなっておりますけれ
ども、兵力の提供は義務づけられてはおりません。これは現状の姿ですけれ
ども、
日本が国連の中で大いに働かせてもらいたいと、
日本の
国際的責任を大いに完遂しよう、こういう
意味は、
日本が平和憲法を持っておって、ユニークな国づくりに現にこうして邁進しているではないか、この精神の上に立って、
日本らしい協力のやり方については私はまだまだやるべくしてやらないことが現在だって相当あるわけです。これは軍事的な問題を私は全然
考えておりません。
日本は徴兵をしない、あるいは海外派兵をしないということがまず大
前提になっておるわけですから、その
考え方の中で、たとえば、国連に対する分担金の問題は、いま五大常任理事国のすぐ次で、常任以外では第一になっているけれ
ども、これはもう当然のことで、今度改正されれば、おそらく常任理事国の中のあるものよりはもっと上位になるでしょう。しかし、そんなことじゃなくて、他のいろいろの機構あるいは国連の仕事に対して、たとえば財政的な寄与などは全くおさびしいものでございます。これで現在国連の協力とか国連機能の改善とか言うのにはまことにおさびしいものである。まずそういう点に、現に残されている
日本として当然やるべき
国際協力の面があるのではないか、そういうところを改善していくということは、
日本の最も堅実な着実な、また果たさなければならない義務である。こういうところから入っていきたいわけです。現に、今回御
審議を願っている予算の上でも、ほんのわずかではありますけれ
ども、従来より国連協力の実をあげているものもございますけれ
ども、こういう点をやっていくのであって、一足飛ぴに国連の中の機構を強化し、
日本が積極的に参加したいという意欲を表明する。
日本の中から、
政府は軍事協力を
考えているのじゃないか、こういうふうに
考えるのは、現状あるいは従来からの
考え方の中に入れてもらおうという
考え方であって、それならば、そういうことを私は
提案したりあるいはそういう運動をしないほうがましだと思います、率直に申しまして。私
どもの
考え方はそうではないというところに発想のもとがあるのであって、そういう面に対して建設的な御意見を国民的に大いに出していただきたいものだと
考えます。たとえば国連大学、これは正式には国連側では
国際大学と言っておるわけですけれ
ども、
国際大学を
日本につくりたいというようなことなどはたいへんけっこうな構想の
一つだと思います。こういうような面のことがもっと
国内的にも取り上げられてしかるべきじゃないか。要するに私がお答えしたいのは、そういう気持ちで国連に対する協力とかあるいは機能の強化ということを訴えつつあるというのが現在の
政府の立場である、こういうことをひとつ御認識いただきたいと思います。