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1970-08-27 第63回国会 参議院 外務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年八月二十七日(木曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員の異動  七月七日     辞任         補欠選任      岩間 正男君     野坂 参三君  八月二十六日     辞任         補欠選任      野坂 参三君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 仁君     理 事                 石原慎太郎君                 木内 四郎君                 増原 恵吉君     委 員                 梶原 茂嘉君                 杉原 荒太君                 三木與吉郎君                 山本 利壽君                 加藤シヅエ君                 羽生 三七君                 森 元治郎君                 黒柳  明君                 岩間 正男君    国務大臣        外 務 大 臣  愛知 揆一君    事務局側        常任委員会専門        員        小倉  満君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)     —————————————
  2. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査議題といたします。  これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 森元治郎

    森元治郎君 一番初めに大臣から、去る二十三日にアメリカで公表された上院の小委員会での沖繩返還の問題に関する聴聞会の件について、われわれは手元に新聞社の送ってきた内容の一部しか持っておらないので、的確などうも質問ができないのが残念ですが、いろいろな点で非常な不安があることは、大臣も責められる立場ですし、十分当局とともに検討して頭にきれいに整理されていると思うのですね。ところで、この際、大臣から総括的に証言をひとつ求めておきます。この点はアメリカ側は少しく理解が不十分である、あるいは間違っているのじゃないかという点、あるいは足りないと思われる点、著しい点があれば、それらの点を具体的に御説明を願います。
  4. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ジョンソン証言というものについて総括的な見解をお求めいただいたわけでありますけれども、ことしの一月二十四日から三日間ぐらいにこの問題についての質疑応答サイミントン小委員会で行なわれた、それは秘密会議であった、そしてその議事録を整理をしたものが今回発表された、これは御承知のとおりでございます。  このサイミントン小委員会というのが——お尋ね範囲外になって恐縮でありますが——アメリカ対外政策等についてずいぶん広範囲な議題について秘密聴聞会を開いたようであります。沖繩等に関する部分はその一部分——一小部分と言ったほうがあるいはいいかもしれませんが、それにしても、伝えられるところでは、三七〇ページぐらいの質疑応答議事録あるいは添付書類があるわけでありますけれども、その全文のオリジナルなものはまだ外務省としても入手いたしておりません。一両日中には全文全部入手ができる見込みであると思います。したがって、全部について、ただいまもお話がございましたが、詳細にわたって検討をして、それに対してコメントせよというお話でございましたが、そういうわけで、いま概要を入手している段階におきまして、あるいはコメント漏れがあるかもしれませんが、そのことを前提として申し上げておきたいと思います。  そこで、その内容についての見解でございますけれども、まず第一に、これももう申すまでもないことでありますが、昨年の十一月の日米会談におきましては、共同声明以外には何ら両国で合意している書類等はございません。したがって、あの共同声明というもの以外には何もございませんですからこの共同声明につきましては、もしこれに対する解釈とか、あるいはそれに対する、こういうことであるというような注釈というものがつけ得るとすれば、これは両巨頭以外には私はできないことである、この話し合いの性格上さよう理解すべきものだと思います。同時に、政府といたしましては、この共同声明が発出されるその直後に「外務大臣説明」というものを公表いたしました。これは、この共同声明をつくるに至り、また、その共同声明をされた佐藤総理大臣の意向を十分に体して、私からワシントンにおいて内外に対して明らかにいたしたものでございまして、これに対しては、いかなる意味合いにおきましても、アメリカ側から質疑、抗議その他のコメントは全然もらっておりません。そういう意味合いにおきましても、私はこれが有権的な解釈である、かように申し上げておることは、しばしば言明したとおりでございます。ジョンソン証言といいますか、この質疑応答にあらわれておるいろいろの項目、あるいは添付して配られたといわれております書類概要等は、先ほど申しましたように、私どもも検討いたしてみましたが、その内容等について政府側の持っている見解と私は基本的な考え方に違いは全然ございませんし、また、ただいま申されましたように、こういう点が違っている、あるいはこういう点は食い違いがあるというところがあれば指摘せよというお話でございましたけれども、基本的にそういう点はございません。まあこれは、われわれも議会人として長年やっておりますから、それぞれの国会での質疑応答というようなところでいろいろの細部にわたり、ことにこまかく議論が行なわれましたときの言い回しその他において——表現などについてですね、これはどういうことであろうかというような点はないではないと思いますけれども、それ以外に私として特にコメントすることはございません。したがいまして、ひとつ御質疑をいただいて、こういう点はどうか、こういう点はどうかというふうにしていただければ、私としてはできるだけ詳細にお答えをし、また御説明もすると、かように存じます。
  5. 森元治郎

    森元治郎君 この議事録を読んで感ずることは、やはり立場立場によって、同じ問題でも、重点の置き方、内容その他にいろいろなデリケートなニュアンスがあるのだということを感じます。そこで、なぜアメリカ沖繩日本返還したか、この議事録全体から受ける感じといえば、要するに、沖繩がいままで果たしていたアメリカ極東平和安全維持のための機能日本のどこかで減らさないように持ってくれるか、こういうことが彼らのある程度満足する点で折り合ったので、沖繩返還に乗り出したんだというふうに受け取れるんですが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  6. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは日本側といたしましては、もう共同声明の上で明確でありますように、日本側国民的願望というものは七二年返還核抜き本土並み、これがもうコンセンサスであり、その上に立ってこれを貫徹して沖繩返還を成就したい、この国民的な願望はこの共同声明の上において私は達成されたと、かように考えております。そういう点から申しまして、その「歩み寄った」ということはどういうことを仰せになっておりますかわかりませんが、日本の主張は十二分に通ったと、かように存じております。  それから、もう一つですね、これはお尋ね範囲外になるかもしれません、恐縮でございますが、この証言は、先ほど申しましたように、一月に行なわれたもので、アメリカ側の事務的な手続その他によって公表がおくれたんだろうと思いますけれども、たとえば返還の時期等についても、読みようによれば、何か疑問があるように思われる節もあろうかもしれませんけれども、共同声明基礎を置いて七二年返還ということで、その後着々と返還協定の作業が進んでおりますことは随時御報告申し上げているとおりでございます。それから、国会の非常な御熱意のおかげさまで国政参加というようなこともはっきりでき上がって、もう近く沖繩県選出日本国会議員が生まれようとしている。こういうことは着実なまた現実に明白な事実としてその後大きく前進しているということも御承知のとおりでございますことを特に念を入れて申し上げておきます。
  7. 森元治郎

    森元治郎君 それじゃ具体的に聞いたほうがいいでしょう。  今度のアメリカ側証言のこの記録のポイントは、譲りたくなかった沖繩を譲るについては、日本が、アメリカ極東における安全平和の維持、これの義務を積極的に応援する、すなわち、従来自分の領土としてかってに使っていた沖繩から出られたのが今度は制約を受けるわけですから、その制約を受けて減った分を、日本本土にあるアメリカ基地が活動をしまして、さしずめ韓国台湾防衛にこの基地を喜んで利用させる、こう踏み切ったこのことが、アメリカをして、それならばと沖繩返還へ向かわせた一番大きな点だと思います。共同声明でいえば第四項に関連するものと思う。すなわち、今度の共同声明を見ると、沖繩返還に関連して、日本防衛の中心は日本ではなくて隣の韓国及び台湾だ、この防衛が主体なんだ、こういうことを日本が認めたことになる。ジョンソン説明のしかたで一貫しているのは、いままで日本というのは、在日米軍基地というものは日本本土を守るだけでよその国に関係ないのだという態度をとっていたが、今度は、近隣のこの二つ国々安全保障とこれに対するアメリカ義務を支援するということをここに初めて認識をした、これは大きな変化である、新しい段階である、こういうことを強調をしております。いままではわれわれも政府から過去十年以上同じように、日本本土を擁護するためにアメリカ軍基地を貸しているのだ、ほかの国に関係しないのだというのが、いやそうじゃない、アメリカがやっている義務を円滑に積極的に推進するために韓台両国防衛にも日本が積極的に協力するのだと、こういうふうに乗り出した点をアメリカは高く評価して沖繩返還に踏み切ったんだ、こういうふうに見られますが、いかがですか。
  8. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 沖繩返還は、沖繩に何らの変更なしに、本土と同様に一切の法律や条約が適用されるということが大きな一つの眼目でございます。したがって、安保条約沖繩に何らの変更なしに適用される。そこで、いまのお尋ねといいますか、間接のお尋ねになるかと思いますけれども、そこで私は基本に返りまして安保条約に言及することをひとつお許しいただきたいと思いますが、安保条約はまず前文で、「両国極東における国際の平和及び安全の維持共通関心を有することを考慮し、」ということがございます。また、第六条におきましては、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」というのが第六条の第一項でありますことはいまさら申し上げるまでもございません。この安保条約というものが何らの変更なしに沖繩に適用される、本土並み沖繩返還をされる、こういうわけでございます。したがいまして、安保条約のそもそもの目的とすること、そしてそれは共同声明の上にも言及されておりますけれども、第三項において総理大臣は、たとえばアメリカ軍隊のプレゼンスということに関連して、「現在の情勢の下においては、米軍極東における存在がこの地域の安定の大きなささえとなっているという認識を述べ」ておるわけです。こういう考え方は、日本を含む極東の安全ということについてのそもそもの安保条約目的性格について触れているわけであります。そして日本政府見解といたしましては、沖繩返還という話が出たから安保条約性格目的変更されたんじゃなくて、そのそもそもの安保条約目的性格というものがそのまま沖繩に適用されるのである、これが本土並みである、こういう見解をとっていることは、何も昨年十一月に始まったことではありません、安保条約全体について言えば。したがって、アメリカ国務次官がこういう点について、彼としての評価といいますか、観測といいますか、批評といいますか、それについていまお触れになりましたようことばを用いていることは事実でありましょうけれども、日本政府としては、安保条約そのもの、あるいは共同声明そのもの、これの立っている立場というものは、安保条約が十年前に改定されて以来とっている立場と何ら異なることはない。これは随時説明したとおり。かように考えています。
  9. 森元治郎

    森元治郎君 どうもいま大臣の頭の中に沖繩についてどうかというふうな観点から御答弁があるようですが、私の言うのは、ジョンソン答弁から見ると、日本政府及び国民は、日米安保条約というのは日本の安全を守ることであってよその国のことまでにはタッチしないんだというふうに思っておった、ところが、今度の共同声明佐藤さんの演説を見ると、韓台両国、すなわち、アメリカ条約上の安全保障義務を負っている国に対してやる行動、これにも非常な関心を持ち、協力をする形を打ち出したのは新しいことだと言っていることが向こうでもむしろ驚きのように思うんですね。私は、それは従来の日本のわれわれが伺っている説明によれば正しいと思う。というのは、この安保条約そのもののでき方を振り返ってみれば、第一回の安保条約は、日本占領下で何も言えないときに、おまえの国は自衛権を自由に行使する実力はないんだから、力ができるまでアメリカ軍隊がおまえの国のイン・アンド・アバウト・ジャパンに——内外に駐とんしておいてやろう、保護してやろうというのが第一回の条約。第二回の条約は、依然この第二回の、すなわち現在延長されたこの条約も、同じくおまえを守ってやろうという、日本日本だけのこと、アメリカは外、日本は内をやれ、その外にはさわらない、こういうのが大きな趣旨。そして第二回の特徴は、防衛してやると言うけれども、不安心なので、さらにこれをアメリカからはっきりした気持ちを取りつけて、少しく日本が息を吹き返したような形で条約が結ばれたんで、条約の条項によれば、日米両軍が日本の主権、日本のアドミニストレーションのもとにある領域に敵が来たとき、アメリカをたたけば日本がこれを支援し、日本がたたかれればアメリカが支援する。要するに、日本本土防衛ということに限局をされて、よその国には何も日本かかわり合いを持たない。よそはアメリカである。ただ、アメリカには基地を使いなさいと。大事なときには、大きな変更がある場合には事前協議というものがありますということでおとなしく進んできたのに、今度の共同声明を見ると、韓国台湾安全保障まで日本関心を持つばかりでなく、彼らの、韓国の安全はすなわち日本の安全にとってもエッセンシャルである——緊要である。別な表現ならばインディスペンサブル——欠くべからざるものであると、こうなら、これは共同体ですね。そこまで、深入りするような強い総理のニクソンへの発言——第四項に入っておりますが、これは現行条約ではできないんじゃないか。逸脱である。変質なんというものじゃない。現条約ではできないのだ。国土を守り、本土を守るだけ。それでアメリカに対しては遠くのほうの極東、ばくたる極東の安全と平和に必要な施設区域などは提供しましょう、こういう分担でやってきたと思うのが、手をつないで、極東平和に直接日本かかわり合いを持つのだ、こういうことを非常に強く強調したのが今度の共同声明であることが、相手側アメリカの受け取り方ではっきりしたということは大きな問題だと思うのです。現行条約で、かような、佐藤さんのような、「韓国日本の安全にとって欠くべからざるものである」と言うことは行き過ぎである。そんな、もし韓国から、それほどわれわれの安全を御心配くださるならば日韓防衛条約を結ぼうじゃないかと言われたときに、この趣旨を確実にするためには紙の上で、すなわち文書で国家間の誓約があったほうがより確実になるんじゃないか、韓国から見れば。ここまで発展してくると思うのです。私は今度の共同声明で一番大事なことは、条約変質ではなくして、これは全く新たな形式の取りきめ、条約協定でもない限り、かよう発言、かよう内容は大きな危険を包蔵したところの外交上の誤りである。佐藤さんが第四項で述べておりますし、また、国会においての答弁をずっと一貫して見ても、もし韓国で事が起きたならば、アメリカ軍に対して事前協議の問題になりまするが、積極的にしかもすみやかに対処できるように措置するつもりだと、もういやおうなしに飛び出していってやるんだというような、飛び出させるんだというよう答弁をしております。非常に強過ぎるのじゃないか。これは現行条約を越えている。現行条約ではここまではカバーができない。これは共同声明ですから、条約協定ではありませんけれども、それに準ずる政策の確認でありますから、非常なやはり大きな問題だと思うのです。  重ねて集約して伺えば、現行安保条約のもとに韓国台湾との安全保障日本はさらに密接な関係を持っている。おまえの心配はおれの心配、おれの心配はおまえの心配ということは、これらの国々との軍事同盟を事実上結んだような具体的な内容は伴わないけれども条約前文に相当するような大きなことに匹敵することだと思うのです。かようなことは行き過ぎである。アメリカに言わせれば、ジョンソンさんのこれを読んでみると、アメリカでは——もともとこれも不届きな話で日本に置いているアメリカ駐留軍というものは、日本防衛のためが主目的ではなくして、近隣諸国台湾韓国防衛をやるんだとかなんとかということを兵隊さんが新聞速記録の中でしゃべっております。日本防衛が主ではなくて、韓国とあれをやるのが日本基地を使う目的なんだ。こういう相手と話をしたんでは、これはどこへ持っていってしまうかわからないと思うのです。それを明確にしないと、日本はとんだ重大な危局におちいらされるという感じがいたします。御解明を願います。
  10. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まずその問題を分けまして、アメリカ国務次官がこう言っているがそれに対する意見はどうなのかというお問いなのか、あるいは森さん御自身の御質疑なのか、この点を二つに分けて私お答えいたしたいと思いますが、前段においては、先ほど申し上げたとおり、日米両国の合意というものは共同声明以外には何もございません。それから、総理大臣共同声明発出の直後において演説をしたこと等についてアメリカ国務次官としてのコメントというものはそこにあげられているものだと思いますけれども、そのことは日韓条約あるいは日韓防衛条約前提にしているとかなんとかということにまで及んでいるとは私は考えません。  それから後段の、森さん御自身の御質疑とか御疑念に対しましては、先ほど私はお答えしたつもりですけれども、そもそも安保条約をもう一度ごらんいただけば、「日本国の安全に寄与する」ということと、「並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」に、アメリカ軍駐留といいますか、それに便宜を供与したというのが第六条の考え方でありますし、これをさらに解明をすれば、日本としては日本を含む極東の安全ということ、さらにそれを具体的に言えば、総理大臣のプレス・クラブでの演説に言及されているように、日本の安全それ自体が韓国あるいは台湾の安全ということと密接な関係がある。問題の起こり方によっては、火を降りかぶるような状態になれば、それに対しては、まあことばは練れませんけれども、前向きに対処しなければならないという、日本総理大臣としての見識を申したわけであって、そのことは、そもそもの十年前の安保条約、これと何ら変わるところはございません。ことにこのアメリカ韓国とか国民政府に対するコミットメントというものがあるということはもちろん承知いたしておりますけれども、その義務があるからといって、それをそっくりそのまま日本に適用されるということは、これは日本としては認め得ざるところである。そういうこともありますから、そもそも安保条約第六条に関連する交換公文事前協議という制度があるということをいまさら申し上げるまでもないことであります。したがって、森さんが後段の問題について御自身の御疑問としてお持ちになる御質疑に対しては、いまお答えしたとおり、何らそういう御疑問もなければ、また安保条約逸脱して政府条約以上のものを守る意図を表明した、そんなことは、まことにあり得ざることでもあるし、もしそういう御疑問をお持ちだとすれば、これは氷解していただきたい。
  11. 森元治郎

    森元治郎君 ジョンソンは微々たる一国務次官だと、彼の言うことはアメリカ政府の役人の一部のコメントに過ぎぬのだと言うけれども、ここでしゃべった場所は議会であり、権威ある秘密聴聞会証言で、聞いている人は、チンピラ次官説明だと聞いているとは思わない。政府の責任ある答弁政府の責任ある共同声明議会説明だと受けとっておると思うんです。ですから、これを軽々に扱うということは、扱っての御答弁は、私は受け入れられないと思います。事前協議なんという制度事前協議というものがあるのですが、こういうように積極的な協力化ということになれば、ややこしい事前協議という制度についても、アメリカ側にとってはあまりむずかしい障害にならないような方向で運用されるんだと期待しているんでしょう。ジョンソン答弁の中にも、事前協議というものはイエスというほうが大体の傾向である、こういうふうな理解のしかたをしておるようです。これほど強く、韓国の安全は日本自身の安全について緊要である——エッセンシャルである——欠くべからざるというようなことを言えば、これは事前協議がありますからと言ってすべてを押し切ってしまうということは、日本側としてはあり得ないと思うんです。  そこで、私はもう一ぺん同じことを聞きますが、いままでの条約のたてまえというもの、政府が、反対されながらも一生懸命われわれに説明してきたところは、これは日本領域内の攻撃があった場合、この共通の危険に両国が対処するのだ。極東の平和、安全——極東がどこだなんていうような強いものではなく——ばく然として極東の安全はあなたまかせ。国内は、日本がだんだん力をつけていって自分で守るようにしてくれ。こういうようなやわらかいパッシブなよう感じ政府説明をし、国民一般もそうだろうと思ってきたのが、今度はたいへん強くなったような、この条約基礎に強くなって、極東、ことに近隣諸国安全保障とのかかわりを持とうと、その心意気をアメリカが喜んで、それならば在日基地も十分に使わしてもらえる。沖繩を返すことによって機能の一部がかりに拘束されても、かわるものは、日本本土自分の国の基地が使えるのだということになって、向こうは満足して、この共同声明の第四項ができ上がって、沖繩返還へ向いていったのだと思うのです。私は、いままでの条約のたてまえ、われわれ、政府が言ってきたことから見て、今度のこれは大きな積極性、「攻め」の条約に移っていくよう感じを持つので、この点は危険ではないか、逸脱をしているのじゃないかということを聞いているのです。  それから、もう一つお答え願いたいのは、韓国にしてみれば、それでなくても、応援をしてくれ、金を貸してくれ、北に向かってわれわれ防いでいるのに、日本は遊んでいるじゃないか、こういうことを言っている。そのときに、この佐藤さんのことばをかりてみれば、それほどわが国の安全と不可分の気持ちを持っておられるならば、日韓防衛条約を結ぼうと言ってきたときに、断わることはできないのじゃないかと思う。これはどうですか。  この二点を聞きます。
  12. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ちょっとおことばを返すようになって恐縮なんですが、私は国務次官だからどうこうと言っているわけではございません。同時に、私はお願いしたいのはこの日本国として国権の最高であるこの場におきまして、尊敬する森委員の御質疑に対して、私も責任者として全く国家を憂えながら御答弁を申し上げているのですから、その点はひとつ御理解を念のためにお願いをいたしたいと思います。  それから、御質疑は二点とおっしゃったけれども、いろいろ非常に多岐にわたっておりますから、お答えも長くなるかもしれませんが、まず、日韓防衛同盟条約なんていうことは全然考えておりません。考えられるはずがないではないかと思うのです。  それからその次に、やはりそもそも、安保条約に返りますけれども、安保条約というもの、それから同時に、日本立場というものが、安保条約は国連憲章五十一条ということを基本にして、万一他国からの脅威がある場合に備えるものであって、防御一点ばりの考え方である。そうして、日本国は海外派兵などということは全く考えもしないものである。そういう体制において、攻撃一点ばりと転化したというようなおことばもありましたけれども、そういうふうにおとらえになるのは、論理の展開のプロセスとしておことばをおつかいになったのならば格別でございますけれども、私どもは全くそんなことは考えてもおりませんことはいまさら申し上げるまでもございません。同時に、しばしば申し上げましたように、日本自身の安全ということを確保するためには、日本を含む極東、特に周辺の事態に対して関心を持たなければならぬというのは、私は当然であると思います。政府としての見解はそうでございます。そういう点から申しまして、仮定の仮定のことではあるけれども、もし朝鮮半島に緊張が激化してこちらに影響ありと判断されるような場合が起こる場合には、日本政府としては日本国益を守るための措置をとらなければならないという、日本総理大臣としての見識をプレス・クラブにおいて表明したものである。これは、私は当然であると思うし、これは前々からの安保条約の精神や条約の文言の範囲を何も逸脱したものでも何でもない。これはむしろ私どもからもお願いいたしますけれども、全国民的に御理解を進めていただきたいと思います。日本だけが——この日本列島だけの安全を守るためには、その周辺が安全でなければならない。しかも、これは攻撃というような要素を全然考えないで、防衛ということ一点ばりで考えていくべきものである。また同時に、安保条約というものがあり、その上に立って総理大臣としての表明されたような見識がはっきりしていることによって、起こっては困るような脅威がかからない、いわゆる抑止力が十分に働く、自然国際的な緊張というものも緩和する方向にいくのであると、こういう立場に立っているのが政府立場でございます。
  13. 森元治郎

    森元治郎君 時間も来たから、もう一つ伺って終わりますが、大臣から何度聞いても、「受け」の条約——パッシブな条約から、今度は急に沖繩を取り返すための代償——と言っていいか知らぬが、代償として、もっと日本アメリカのやり方に協力する。いままで黙っていた、韓国にもあるいは台湾にも重要な関係があると言ってみたり、こういう積極性が買われて、それならば沖繩もと、こういうふうになったんだと思うんです。「攻め」の条約に転換することは、いまの条約と全くたてまえが反するから、これは現条約ではできない。いまの条約でいくならば、もっと受け身の——あの条文に書いてある抽象論じゃない条約内容、第一、第二、第三条というあの条項のままで動くことが、いまの条約じゃ正しいんだと思うんです。  そこで、最後の一点は、これはこの証言をする中で非常な不安があるのは、おもしろいと思うのは、日米両国は信頼と理解の上に立っているはずですが、アメリカ軍駐留さしておくのは、日本の核兵器開発を押えるためにもなるんだということ、それから、だれか議員の質問では、日本はお金はたくさん持った、経済大国になった、ミサイルの能力もある、いろいろしているが、一体何をやろうとしておるんだろうかといったような不安、不信感、そんなものがちらちらと出ておる。信頼の裏にも不信感というものが出ておりますが、これに対してはやはりこの席をもって大臣から明快に政府の方針を明らかにしてほしい。それを伺って終わります。
  14. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いまのお尋ねは、主として経済協力とかあるいは経済援助ということを中心にしてのお尋ねだと思いますけれども、その点は政府としても十分配慮をいたしまして、いかなる意味でも、誤解、不信を起こさないようにつとめておるつもりでございます。たとえば借款というような具体的な問題にいたしましても、受けるほうから言えば、年限が非常に長くて数十年で金利がただに近いような非常に安いものを欲するのは、これは、私は受けるほうから言えば当然の要望だと思いますけれども、しかし、政府といたしましては、その要望もさることながら、そういうことが他の、まあ野望といいますか、他の何かの思惑なくしてはどこの国でもできるものではない、やはり経済的な援助協力というものが合理的なベースの上に立って、できるだけプロジェクト・バイ・プロジェクトと申しますか、計画性があり、合理性があり、経済性がある、そうして平和的な目的に限定して、民生が向上するようにということに集中した考え方を展開していかなければならない、こういうふうに考えますために、むしろ逆に、場合によっては、当座のところでは、受ける国から評判の悪いこともある場合もあり得ると思いますが、ここが大事なところだと思うのであります。要するに、まあ、俗なことばをつかって恐縮ですが、「情けは人のためならず」ということもある。ほんとうにその国の平和的な民生の安定のために、しかも、堅実に合理性のある計画に対してできるだけの援助をするという態勢で私は進みたい、また、現在の政府の方針並びに具体的な計画はそういう線の上に組み立てられているつもりでございます。
  15. 羽生三七

    ○羽生三七君 場合によっては一国の運命や安危にかかわるような重大な安全保障上の問題に対して、日米両国間で全く異なる解釈が行なわれていることは非常に重大だと思います。そこで、単に疑点を晴らすだけではなしに——それはもちろん必要ですが——同時に、日本の安全のためにも、解釈がどうであるかということでなしに、絶対に危険な取りきめや合意はやらないと、その保障が必要だと思うのです。そこで私は、このジョンソン証言も重要ではあるけれども、やはり日米共同声明それ自体が非常に問題であるということを考えるわけです。  そこで第一に伺いたいことは、この日米共同声明第四項の、沖繩返還時点にベトナム戦争が続いておる場合、その場合に、再協議にもかかることですが、先般のジョンソン説明で、日米共同声明の第四項に関連して、もし沖繩返還時に沖繩から何かなすべきことがあればそれを続ける、われわれの能力を妨げないための合意または取りきめがつくられると、こう説明しておるのです。そこで、「アメリカ側の能力を妨げないための合意または取りきめ、」こう言っておるわけですが、返還協定以外の特別な取りきめあるいは合意は絶対にないと了解してよいかどうか、まず、これを第一に伺います。
  16. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは沖繩返還についての大きな一つの問題でございますことはしばしば申し上げたとおりで、安保条約変更なしに、または安保条約関連取りきめが変更なしに沖繩に適用されるということにおいて、その問題に対して十分な回答が両国の合意の上になされておる。これが実情でございますから、これ以外の特別の取りきめというものは考えておりません。
  17. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、これは非常に事務的なことになるのですが、七二年にベトナム戦争が続いている場合は再協議となる。ところが、返還協定は明年中にできるでしょう。そうすると七一年ですね。だから、特別の取りきめ、あるいは合意をしないとすれば、七一年の時点で、かりにもし七二年にベトナム戦争が続いている場合でも適用できる協定が来年できなければいかぬわけですね。そういうことでしょう。これは、だから、もし七二年にベトナム戦争が続いている場合には、国会にかけるという返還協定の原案が変わるのか、あるいは別途の取りきめか合意がなされるのか。これは、だから、もう来年で七二年にベトナム戦争が続いておってもかまわないという協定ができるのか。これはもう事務的なことですが、非常に重要な問題だと思いますから、承ります。
  18. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 七二年返還のときまで、万一、ベトナムの状況がどういう状況で続いているかわかりません。その態様もわかりませんけれども、これが続いているということはあり得ることだと思います。そのときに相談をしよう、協議をしようということは、御指摘のとおり第四項に書かれておりますけれども、ここのいわゆる「協議」は、事前協議に言われる「協議」ではないということは、そのことはジョンソン証言の中でも言われているようですけれども、そのことは、安保条約の体系の中における事前協議に言われる「協議」でもなければ、別途の取りきめをするということでもない。返還についての協定の基本は、第六項、第七項、第八項がワクが設定されておりますから、そのワクの中で行なわれる種類のものである。それはどういう種類の相談になるかということは、事態の変遷によってわかりませんけれども、しかし、返還になったその後において、その直後からは、一切の安保条約・関連取りきめが適用されるということについては、何らの疑いがないものと思います。
  19. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは御説明のあるまでもなく、アメリカ側が、ここで言う「協議」とは安保条約に言う「協議」ではないと断わって言っているわけですね。ですから、くどいようですが、七二年にベトナム戦争が続いている場合に、アメリカはこれは非常に関心を持つと思いますね、その場合日本がどういう態度を示すか。それが来年の時点で、その原案を変更する必要もないというものが来年の時点にできるのですか。別途の取りきめが求められるのではないですか。
  20. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私はそういうことは予想いたしておりません。返還協定はあくまで、私ども三原則と内部でも言っておりますが、第六項、第七項、第八項——つまり七二年・本土並み核抜き——その三原則のもとにおいて返還協定作成の作業が着々と進行しております。
  21. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、七二年返還時点でベトナム戦争が続いている場合の合意または協議ということは、その協定案文とは何も関係ないし、他に別途の合意や取りきめもしない、すべてそれからあとは本土と同じよう安保条約による事前協議にかかることになる、こう理解してよろしいですか。
  22. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点は、沖繩返還が具体的にいかなる影響を及ぼし得るか、影響がある場合にいかなる幾多の選択があり得るかは、現在の時点では判定するわけにはいかないので、将来の万一の場合の協議にゆだねたのでありまして、繰り返すようでありますが、ここに言う「協議」とは安保条約に基づく事前協議ではございません。これが私どもの前々からの共同声明締結のときからの有権的解釈であります。そして、いわゆる事前協議に関する許諾の予約というようなことは、いかなる意味でも全く行なわないという当然のことを、私としては、その当時発表いたしました私の説明にも明らかにしておきましたが、そのことは何ら現在も変わっておりません。
  23. 羽生三七

    ○羽生三七君 簡単でいいのです。私のはもう要点だけ言っていただけばそれでいいのですから。  問題は、もう一度繰り返しますが、七二年にベトナム戦争が続いておっても、その場合にアメリカとしては日本沖繩についてどういう協力をするであろうかという期待を持っておると思いますね。それに対して、もう七一年の時点で取り結ぶ沖繩返還協定それ自身を、さらに七二年の時点でも動かす必要もないし、合意または特別の取りきめを求められることもない、こう了解してよろしゅうございますか。
  24. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 政府といたしましてはただいま申し上げたとおりでありまして、返還協定につきましてはこの共同声明のワクの中でつくり上げまして、もちろん先方の合意が要ることは前提ですけれども、合意を得てつくり上げまして、できるだけすみやかに国会の御審議を願うようにしたい、かように存じております。
  25. 羽生三七

    ○羽生三七君 だから、それは協定に合意が要ることはわかるけれども、それに協定のそのものに合意を得れば、ベトナム戦争が続いておっても他に特別の合意や取りきめはないか。こういうことを言っているのです。
  26. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 政府としてはそれは考えておりません。
  27. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでは、くどいようですから、次に移ります。  そこで、沖繩への返還後の核持ち込みが云々されております。それから、向こうでは注意深く——この件は事前協議にするということを意味していると思いますが——それを留保したということを言っておりますね。私は、この核に関する限りは、たとえ事前協議にかかる場合があっても、イエスもあればノーもあるということではないと思う。オール・ノーでなければならないと思う。事前協議にかかることでもないと思う。事前協議以前の問題である。これは絶対にもう核に関する限りは私はイエスもあればノーもあるということではなくて、オール・ノーでなければならない。しかも、事前協議にかけるべき性質のものでもない。それ以前の決定的な日本の政治的姿勢の問題にかかわることと思いますが、これはそう了解してよろしゅうございますか。
  28. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはやはり簡単にという御希望でございますけれども、共同声明にいさいをよく尽くしておるつもりでございます。ということは、これは沖繩返還にかかわらず、条約上核持ち込みを禁止ということになっていないことは御承知のとおりでございますね。ですから、日米間の条約上、交換公文上の問題としては事前協議の対象になる。かりに持ち込みたいという希望があれば、事前協議をしてくる義務アメリカは持っておって、それに対して許否を決するのはこちらの自主的判断である。これは構成はそういうことになっていることはいまさら申し上げるまでもございません。そこで、おっしゃるとおりでございます。日本としては、核については、本土において過去長い間そうであったように、核の持ち込みは許しませんよということが日本の国策として内外に対して明らかに表明されております。その日本国民の切なる願望の上に立った日本政府の核に対する政策についてアメリカ大統領は深い理解を示したということに相なっております。したがって、日米間におきまして安保条約下においても日本に核の持ち込みということはあり得ない。その意味において、羽生さんが「それ以前の問題だ」とおっしゃるが、その点は私も御同様に考えます。
  29. 羽生三七

    ○羽生三七君 核の問題はいまの御答弁は適切だと思いますが、その次に、同じくやはり七二年に沖繩返還時点にベトナム戦争が続いておった場合にいつも問題になるのは核とB52ですが、核はいま片づいたが、B52については一体どうなのか。これは問題があります。これは事前協議の対象でしょう。しかし、これについても、これは去る六月十一日のこの委員会で、外相も御記憶かと思いますけれども、私の質問に答えられて、その場合の事前協議では、私が、イエスもあればノーもあるのではない、それはオール・ノーでなければならぬのではないかと言うたら、そういう意味でお答えをしておりますと、これは明確におっしゃいました。これは速記録に出ております。これはそのまま確認してよろしゅうございますね。
  30. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私はそのとおりに考えております。
  31. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、これは核とB52については確認をいただきましたが、いまお答えをいただいたことはベトナムについてです。  そこで、先ほど森委員も触れられました韓国台湾等の問題が出てくるわけですね。特に韓国の問題、この場合の日本の態度はどうなるか。事前協議、イエスもあればノーもある。そこで、これは森君が先ほど質問されたことの中で「安保の変質」ということを言われましたが、要するに、従来日本日米安保条約というものは日本を守るために米軍基地を提供している。これはずっと一貫して、旧安保条約それから現行安保条約当時も、これは日本の安全を守るための安保条約ということでありました。そこで、極東条項というものがあって、不安というものが予想されるという野党側の指摘によって、そこで政府答弁というものは、それは特に岸内閣で安保改定のときに、それは事前協議とはオール・ノーを予想しておったと思うのです。当時「歯どめ」ということで、あの当時岸さんが、イエスもあればノーもあるということを言ったことはなかった。何ぴともこれは歯どめとして理解しておった。ところが、いよいよ今度の場合は、日本から改めていくということにはならないでしょうが、アメリカ軍の出撃に対してノーもあればイエスもある、こうなったのは、変化といえば大きな変化だと思います。もし、そういう日本からの直接出撃にイエスを与えることになれば、非常に重大な問題が起こるということは、今度のジョンソン証言の中に一つ重要なことがあるのです。それは、こういうことを言っている。先ほど森委員が言われたように、日本は初め日本安全保障上のことだけを言っておったけれども、これが韓国台湾及びその地域でアメリカが負っておる義務と切り離せないことを認めた、これは非常に大きな変化だと言っておって、そのあとに、このことはアメリカ側にとっては、沖繩日本に返しても、朝鮮や台湾に万一のことがある場合は、沖繩基地はもとより日本本土基地も支障なく使用できるという米政府の確信を表明したのだと受け取られている。したがって、この場合イエスもあればノーもあるというお答えだと思いますが、つまり、多くの場合イエスを与えるであろうという、つまり、ほとんどそこまで、入り口まで、手の届くところまでの話し合いを佐藤総理がニクソンさんとされたのではないかと思うことが一つ。  それからもう一つ重要なことは、これは特に私、重要だと思いますが、「アメリカ政府日本当局との間で、日本安全保障に対する最大の脅威が朝鮮半島に続いている緊張にあることで一致」した。そこで、「北朝鮮は直接」——ここが大事なところです——「北朝鮮は直接日本を脅かさないが、同半島を共産主義者が支配することは、日本安全保障上の利益をそこない、大国介入の恐れのある朝鮮紛争は明らかに日本自身の安全に響く。」、こうなって、日本からの直接出撃を容認するということを言っているわけです。これがなぜ私は重大だというならば、つまり、北鮮が日本の安全に直接何らの関係がない場合でも、つまり、共産主義の支配——私も共産主義に賛成しているわけじゃない、立場を根本的に異にしていますが、しかし、この前もベトナム問題について申し上げたように、そうだとすれば、イデオロギー、体制上の問題ですね、だから、武力の直接脅威がなくても、つまり、イデオロギー、体制上の違いがあるならば、その場合でも日本アメリカに何らかのイエスを与えるのじゃないか、これに期待をかけているわけです。私はこれは非常に重要なことだと思いますね。だから、こういうことになれば、ソ連や中国だって同じことが当てはまることになる。こんなことに道を開くことはたいへんであるし、のみならず、そういうことで一たん道を開くならば、安保条約締結以来初めて日本本土から米軍がストレートに直接飛び立っていくということに先例を開くわけです。いままでもないことはなかった。だけれども、必ずワン・クッションを置いたわけです。それは沖繩に一たん寄ってベトナムなりどこなりに飛んだのです。ワン・クッションを置いたのです。今度はストレートに日本から飛び立つということにイエスを与えることに初めて先例を開くことになる。非常に私は重要なことになると思うのです。特にこれに対してアメリカは非常な期待をかけておるようでありますけれども、そういう危険なイエスを与えるべきではない、こういうことであります。
  32. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず一番最初は、B52について……、
  33. 羽生三七

    ○羽生三七君 B52は片づいた。
  34. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) さらにそれ以外のところにも云々というお話に関連して、岸内閣時代はノー一点ばりだというお話がございましたが、これは記録の上で明らかでございますが、何べんかは当時の岸総理も、イエスもあればノーもあると申しております。この事前協議というものは協議なんでございますから、イエスもあればノーもあることは文言の解釈からいっても当然でございます。考え方としても私はそうであってしかるべきであると思います。それから、幸いにして過去においてはこういう事例がなかったわけで、今後におきましても、私はまず第一に、こういう体制にあれば、事前協議がかかってきてそうして出撃しなければならぬという事態が防ぎ得る、抑止できるという、それが一番望ましい姿であると、こう考えまして、そういう事態が起こらざることをまずイエス、ノーの前に私としては考えて諸般の政策を進めたいと、かように存じておるわけです。  それからなお、ジョンソン証言の中にもたしか出ておったかと思いますが、岸・アイクの交換公文もございまして、これは俗なことばで言えば、日本の欲せざることをする気持ちはないという趣旨が出ているわけでございます。それらをいろいろ勘案いたしまして、御心配の点はないと私は申し上げたいと思います。  それからその次に、武力の脅威がない場合でもイデオロギーが違えば云々というお話がございましたが、これはあるいはジョンソン証言質疑応答の中にそれらしきことが出ておったかと思いますけれども、これは日本政府といたしましては、さようなことは全然考えておりません。よく前国会でも御説明いたしましたように、たとえば南北朝鮮の場合にいたしましても、組織的、計画的な攻撃が起こって、そうして国連軍その他の関係がそこで起こりましょうけれども、それがさらに波及して日本国の安危に至大なる影響があると認定するような場合をかりに想定すれば、日本としては考えなければなるまいという見識を表明しておりますことは、共同声明でもそうでございますし、それ以前からのわれわれの考え方でありますが、半面、イデオロギーを異にするものが政治的あるいは社会的等において勢力を伸ばしたからといって、これが安保条約に基づく米軍日本基地を利用しての発進の対象とかなんとかということには私は条約上もならない。いわんや、これが問題となるようなことが万々一あれば、日本国としての態度はあまりにも明確ではないか。かように存じております。
  35. 羽生三七

    ○羽生三七君 時間があまりないので簡単にいたしますが、もう二つばかりあるのです。  アメリカ側では、事前協議の除外例として、プエブロ事件それからEC偵察機の撃墜事件などのように公海上での救助護衛——新聞によると救助護衛のほかに「反撃」もついてるところがありますが、それはとにかくとして——救助護衛などの必要があった場合に、米軍事前協議なしに報復のために日本基地から出動できる、こう言っておるようであります。これは除外例。そうすると、護衛といっても、護衛機が飛び立って向こうが逃げていけばよろしいですが、迎撃してくれば当然戦闘になりますね。そういうことが除外例になるのでしょうか、事前協議の。
  36. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず第一に、交換公文に基づく事前協議の対象についてはよく御承知のことでございますが、戦闘作戦行動につきましては、出撃の際に爆撃命令あるいは攻撃命令を持って出るという場合には、もちろん事前の協議の対象になりますけれども、偵察とかいうようなものあるいはそれに対する護衛というようなものは事前協議の対象にならないということは、昨年の四月に日本海で若干のトラブルが起こりましたときにも、国会でも、本会議委員会等でも政府見解を明らかにいたしたような次第でございます。
  37. 羽生三七

    ○羽生三七君 これはもう少しお尋ねしたいことがありますが、時間があと六分しかありませんから簡単にいたします。  その次は、これもこの前五月の九日でしたか、当委員会で、国会の末期、佐藤総理大臣も御出席いただいて——それも短い時間でしたが——質問した中の一つですが、たとえば事前協議をやる場合に、そのつどやっていくのか、包括的にやるのか。包括的にイエスを与えないと、こうおっしゃった。ところが、「包括的」というのはどの程度の期間をさすのか。たとえば飛行機が飛び立つたびに事前協議をやっているということは、これはなかなかできない。私も質問のための質問みたいなことは言わないということでこの前念を押しておきましたが、しかし、それはそうすると、事前協議をやる場合に、米軍の出撃という場合に一回、一回やっておるわけにはいかないのなら、それじゃ、一週間とか、十日とか、一カ月とかいうのか、あるいはそのケースごとにやるのか、これは若干御答弁がありましたが、また後日ということになっておるんです。これはどういうことになるのでしょうか、そういう場合は。
  38. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはいま御質疑にもありましたように、一艦一機の出動ということに一つずつ、一艦一機ごとに事前協議ということは、事の性質上、私は適当でないかと考えますが、さりとて、総理大臣が申しましたとおり、包括的な事前協議に対してイエスと言うことは、これまた厳重にさようなことがあってはならないことであると思います。結局、ケース・バイ・ケースということにならざるを得ないかと考えます。
  39. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは重要なことでありますが、いずれまた時間のあるときに伺います。  最後に、いま私が質問してきたような問題を、沖繩返還協定の作業がいま進められておりますね、その場合に、事務レベルで全部やるようになっているのか、国の安全保障上の根本問題、あるいはアメリカ極東戦略、日本の将来の進路とも関連するような最重要問題も織り込んで日米協議委員会でやっておられるのか。そこですべて片づくのか。その辺は事務的にはどうなっておるのか。このことをお尋ねして私の質問を終わります。
  40. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 返還協定の案それ自体は、この共同声明が発出されたときにも御説明いたしましたように、大体小さな前例がございます、小笠原の返還等の。それで、問題の中身は比べものにならないほど複雑であり大量でございますけれども、範疇的に言えば、協定に盛らるべき事項というものはおおよそ区分けがつきつつあると申してもよろしいと思います。同時に、しかし、いまお話しのような点につきましては、常に十分情勢をつまびらかにしておかなければなりませんですから、いろいろの機会に十分米側とも情勢の分析等についてこの上とも十分な努力を積み重ねてまいりたいと、かように存じております。返還協定それ自体の問題といたしましては、なかなかこまかい作業も多く、専門的な知識も必要でございますから、各担当官の間に煮詰めながら、東京におきましては私とマイヤー大使との間で定期的に協議をいたしまして、そこでさらに調整すべきものは調整し、督促すべきものは督促し、あるいは私としては関係各省に協力を頼んで、マイヤー大使としては本国に連絡し訓令を仰ぎ、アメリカとしてまとまった態度を早くこちらと突き合わせるようにという仕事の進め方をいたしております。
  41. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、これで終わるんですが、そうすると、先ほど森委員からもお話があり、私もいまお尋ねをして、これから公明党、共産党からもお尋ねがありますが、この沖繩返還安全保障に関する重要な問題すべては、協定作成ですね、つまり、外務大臣とマイヤー大使の間でもうみんな片づくわけですか、そういう重要な問題もすべて。
  42. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 一面におきましてこれはやはり返還協定にも非常に関係があります。内政的な問題がたくさんございますので、総理府が勧進元になりまして沖繩返還促進のための関係閣僚協議会も持っておりますし、とうていこれは外務省だけではこなし得ない問題が、いまお述べになりました非常に重要な問題以外にもたくさん問題がございますので、私は窓口として、どうしても米側との折衝でこなさなければならぬことを主として担当するということに現に相なっております。
  43. 羽生三七

    ○羽生三七君 最高の決断を要するような問題はないんですか、別に。
  44. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それは最終的には内閣としては閣議決定を必要といたしますし、その辺は十分配慮をしてやってまいりたいと思います。
  45. 黒柳明

    ○黒柳明君 私はこのことの問題は非常に重大だと思いますし、また問題点が深いと思いますが、時間が短いので、一応総括的に三点に分けてお尋ねしたいと思います。  第一は、このジョンソン証言に対する政府の総括的な外交姿勢。  その次には、ジョンソン証言、かつ証言の二、三についての大臣のお考えをこまかにお伺いしたいと思います。  最後に、沖繩返還——七二年・本土並み核抜き、特に本土並みということについて私はお伺いしたいと思います。  そこでまず第一点、政府ジョンソン証言に対する政治姿勢ですね。先ほど一両日中に全文が入ると、こうおっしゃいました。当然、現在新聞に報道されただけがすべてじゃない。膨大なものである。つまり、新聞報道によりますと、相当削除されている面もある、こういうことが述べられておりますが、全文入手されて当然いろんな面で検討されると、こう思いますが、もし大臣が、基本的考えには問題がない、違いがない、こうおっしゃいましても、もし何らかの政府として問題点が発見し得るならば、何らかの外交的な姿勢、アメリカに対する申し入れなりあるいはその真意をただすなり、そういうこともやり得る可能性はあるのか。それとも、もう、先ほど大臣がおっしゃった基本的考えには違いはないんだ、あるいは共同声明以外の何ものもないんだ、こういう姿勢が終始一貫大前提になって、そうして案文の検討、あるいはそこに問題点が出た場合でも、何らの、アメリカに対して真意、そういうものを問い合わせる気持ちすらも持ち合わせられないのか。その点、いかがでしょうか。
  46. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 実は冒頭に申し上げましたように、この議事というのは本年一月に行なわれているわけでございます。半面、わがほう、日本国会は全部オープンで、これほど公開されて議論をこまかくやっているところは私はないと思います。このことは発表も何もございませんで、もう内外にそのままキャリーされているわけで、政府といたしまして責任を持って説明をし、答弁申し上げておりますことに対しては、アメリカ側から何ら質疑もなし、いわんや抗議とか問い合わせというようなものはございません。私はこれが当然の姿だろうと思います。そしてアメリカ側の過去一月のことではあるにしても、非常に変なことや、あるいは了解違いのようなことがあれば、先ほども申しましたように、もう返還問題については協定作成ということが主題ではございますが、私としては、もう随時アメリカ側とコンタクトをいたしておりますから、いかようにでも、日本側としてやるべきことがあるとすれば、もちろんこれは率直に、かつ、誠意を持ってそれらの場におきましても十分討論する用意は持っております。しかし、本来が双方の国会同士の中における論議のことでございますから、一々どうこうというようなことも、場合によっては必要のないことであるかもしれません。その辺のところは十分心得てやってまいりたいと思っております。
  47. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、せめて政府国会の場で野党に反論するくらい、その何分の一かでもアメリカ政府にものを言う姿勢がほしいと、こういうふうな希望的意見を持っております。  そこで、先ほど、このジョンソン証言は言い回しあるいは表現の違いだと、こういうことをおっしゃった。往々にしてこういう話では国会答弁なんかではあり得ると、こうおっしゃったけれども、言い回し、表現の違いにしてはあまりにも断定しているところが一ぱいあるわけですね。要するに、戦術的核に対して新しい協定をつくる場合もある。これは核の再持ち込みに通ずるんじゃないかという疑惑がある。返還協定のしさいについては七二年はおくれるかもわからぬ。それが七二年返還を非常に不確実なものにしていると、こういう疑惑が起きている。あるいは日本本土在日米軍基地にしても、沖繩においては米軍の行動は縮小されても本土においては拡大されると、こういうようなことで、非常に断定的のものの言い回しをしているわけです。私どもは、あるいはきのう、きょう、おとといあたりのマスコミでの主張というものは、これは決して言い回しや表現の違い、こういうこととは受け取ってない。そこで重大視してこの緊急な委員会も開かれたと、こういうことだと思いますけれども、大臣は、この日米共同声明以外何ものの取りきめもない、こう再三政府もおっしゃった。いまもおっしゃったけれども、はたしてそれならば解釈認識の相違というものもないのか。いわゆる表現や言い回しの違い、そんなことは問題にすることはない、こういうお考えなのか。それとも、認識解釈にはそれは相違はある。根本的な考え方は違わないにしても、日米共同声明をめぐっての根本的な考え方は違わない。ただし、その解釈のしかた、認識のしかたには違いはある、こういうことをこのジョンソン証言からお感じになられるのか、いかがでしょうか。
  48. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まあ、一つ一つ申し上げたいところですけれども、時間の関係もございましょうから一例をとりますと、たとえば第六項に返還の時期について「両者は、立法府の必要な支持をえて前記の具体的取決めが締結されることを条件に千九百七十二年中に沖繩の復帰を達成するよう、この協議を促進すべきことに合意した。」と、こうあるわけですね。ですから、「前記の具体的取決めが締結されることを条件に」というところをうんとほじり出して、たとえばアメリカの側に立てば、「立法府の必要な支持」を得るのに手間をとるようなことがあれば七二年ということがずれ込むこともありましょうというところに焦点を置いて説明をすれば、一九七二年ということが怪しいんだぞと、こういうふうな取り上げ方をされる方もあろうかもしれません。しかしこの点は、先ほど申し上げましたように、その後の状況をごらんになりましても、たとえば、ちょっと考えるとなかなかむずかしいとお考えになった点もあろうかと思いますが、幸いに日本側国会の全党的な、挙党的な御支持によって国政参加だってもう現に具体的になっているわけではございませんか。それから、その後政府側といたしましても協定作成に鋭意努力いたしておりますし、一九七二年のすみやかな時期にこれが達成できるようにやろうということを日程の第一に掲げて両方の作業を進めているわけでございます。そういう点から申しまして、七二年ということに対してはもう全然私どもとしては心配を持ちません。  それから、第八項につきましても、「総理大臣は、核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府政策について詳細に説明した。これに対し、大統領は、深い理解を示し、日米安保条約事前協議制度に関する米国政府立場を害することなく、沖繩返還を、右の日本政府政策に背馳しないよう実施する旨を総理大臣に確約した。」、この文章にいたしましても、あるところに焦点を合わせて、そして意図的にこれを解釈をしていけば、またいろいろの論議が起こるかもしれませんが、御案内のように、この共同声明発出後すみやかに沖繩から核が撤去されましたことは御承知のとおりでございます。こうやってこの核抜きということは現に具体的に実現されておるのでございますから、先ほど申し上げましたように、私どもとしては、総理を先頭にいたしまして、誠実にこの合意されたこと、そして日米間の相互理解によって着々と仕事を進めておるのでございますし、かり、この証言は一月のことでもございますから、私は何らの心配も持っておりません。
  49. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほども、要するに、国政参加できる、あるいは返還作業が進行しつつある、こういうふうなことで、心配は要らないというよう一つの条件なんかみたいなことをおっしゃいましたけれども、国政参加が実現できるとかあるいは返還作業が進められているとかいうことは、七二年返還できるという断定、あるいは核を抜くという断定じゃあくまでもないわけですよ。そういうことが、非常にこのジョンソン証言で不確実性が増したからということでいま質疑をしているわけです。ですから、沖繩返還に対しての種々の努力目標、あくまでも七二年・本土並み核抜きという作業、この作業の、国政参加ということは、努力目標の一環なんです。いまの三条件がそれが確実にそうなるなんということはない。その点、大臣のお考え方が、若干、この前提の置き方というものがおかしいと思うのです。それはまあ私の意見ですが。  そうなりますと、大臣のおっしゃる、この私たちが重大視しているジョンソン証言というものは、くどいようですけれども、あくまでも言い回しや表現の違いであって、何ら問題にするところはない。こういうふうな最後のおことばですけれども、認識解釈の相違なんかない、こういうことをおっしゃる、こういうふうに断定する、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  50. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 繰り返して申し上げますように、日米両国政府が合意いたしておりますものは共同声明以外にないわけですから、この共同声明に対して日本側としては着々と仕事を進めていく。そして米国政府側もこの共同声明に対して着々実行について協力をして返還準備が進んでいる。この事実は私は明らかな事実だと思うのです。これは、ですから、一九七二年のサムタイムにこの原則どおりに実現が可能になることを期待して、それでそれに対して全精力を注ぐことが私どものやるべきつとめである、かように考えております。
  51. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務省は、この米側の解釈を希望的解釈であるとか一方的な解釈であると——一方的な願望ですか——こういうよう見解をお持ちなんですけれども、日本のこういう解釈も、これは日本なりの希望的な考え方——いま大臣がおっしゃったところです——あるいは一方的な考え方である。そうなりますと、要するに、日本アメリカとのほんとの合意というものはできていないんじゃないかという疑惑がここに出てくると思うのですけれども、はたして外務大臣は、このジョンソン声明というものは向こうの希望的な観測や一方的な解釈である、こういうことをお感じになりますか。
  52. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、ですから、先ほど申しましたように、国務次官証言というものに対して、公式のこちらの最高機関のこの場でもって一々細部にわたってコメントすることもいかがかと思うのです。これは、私は、共同声明というものができており、かつ、着実に一月以降においてもこの線にきちっと従って作業が展開されておるから、とにかく実りをつくることが大事なのであって、その間にあまりとやかく——それも大事なことでもありますけれども——とにかくこのお約束をし、かつ、アメリカ側からの合意を取りましたこの基本線で突っ走っていくということ以外に政府としても方法はないと私は思っております。しかも、それに私は十分の自信を持ってやれると思っております。
  53. 黒柳明

    ○黒柳明君 二、三、その証言についてちょっとお聞きしたいと思いますけれども、在日米軍基地日本自体よりも地域性の安全保障を重要視する、こういうこと、従来とは若干私は考え方は違うと思うのですけれども、日本の安全のための在日米軍基地、当然、先ほど大臣がおっしゃったよう安保条約前文には、極東地域に関心を持つ、こういうことが述べられております。しかし、この「関心を持つ」ということよりも、これはなお在日米軍基地のあり方というものが違った方向に向かっている。要するに、共同声明の、朝鮮の安全は日本の安全、台湾の安全は日本の安全、こういうことがさらにもう一歩強力に姿、形を変えて証言されているんじゃないか、この考えについて大臣どうでしょうか。
  54. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、ですから、くどいようでありますけれども、日本政府としての国際情勢に対する認識というものが特に共同声明の第四項で相当はっきり出ております。それは先ほど森さんにお答えいたしましたように、はっきり出ておりますけれども、これは過去十年間における安保体制といいますか、安保条約をめぐっての日本政府見解と私は変わるところはないと思います。
  55. 黒柳明

    ○黒柳明君 事前協議の項で、双方の意見の調節はむずかしかった、しかし、はっきり一致したのは、米軍機が日本基地から発進し他の地域を爆撃する場合についてである、こういうことで、要するに、在日米軍基地から直接戦闘行為、これは他地区に対する飛行機の爆撃のみである、事前協議ではっきり合意したのは。——こう言っておりますね。これについてはどうですか。
  56. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これについても、まず第一に申し上げたいのは、すでにはっきり両国政府の間で合意されている岸・アイク共同声明というものもあり、それから、第六条に基づく交換公文がございますから、日米間の合意としてはその限りにおいてきちっと合意されておるわけでございます。
  57. 黒柳明

    ○黒柳明君 まだ問題ありますけれども、時間がなくなりますので………。  そこで、いわゆる本土並み返還ということが言われているわけです。ジョンソン国務次官共同声明発表後、この共同声明に関して、沖繩に適用されるだけではなくて、日本米軍基地に関しても同様に適用されるのであって、この点で何がしかの変化がある。要するに、日本在日米軍基地についても何らかの変化があり得ると、こういうことをあの共同声明後おっしゃっているわけです。さらに、この証言においては、沖繩の行動は縮小されても日本本土においては拡大される、こういうようなことを言っているわけですね。要するに、在日米軍基地のあり方というものが変化される可能性がある、こういうことを示唆してきたし、また、今回の証言でもそう言っているわけです。それに関して三月の下旬から六月の中旬まで例の岩国の海兵隊とそれから沖繩にある海兵隊、これは緊急部隊として組織されて「第一緊急部隊」、こういうふうな名称をつけられたのですが、それでゴールデン・ドラゴン作戦、こう銘打って岩国の基地から直接韓国の上陸作戦演習が行なわれたが、いまだかつて岩国の基地から直接——演習とはいえ、訓練とはいえ——沖繩の部隊と在日米軍部隊が韓国の半島へ行って訓練、上陸作戦ということをやったことはないわけです。しかも、報道によりますと、これは規模としては最大のものだ、こういうこともいわれているのです。このことは明らかに、訓練とはいえ、実際に韓国において緊急事態が起こる、そのことを想定して行なっていることじゃないかと思いますけれども、このことが現実に、いまも言われておりましたように、何回も繰り返すように、ジョンソン証言、あるいは共同声明以後のジョンソン発言そのものが実際に行なわれることを想定して訓練を行なっているのじゃないだろうか。要するに、在日米軍基地のあり方、使われ方というものが変化することをたてまえとして直接戦闘作戦行動に使われる可能性を示唆しているのじゃないか。こういうふうな具体的な例がここに出ているのですけれども、これについて、大臣、どうお考えですか。
  58. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 安保条約目的としていること、それから安保条約に関連して共同声明が出ていること、また、これに関して日本総理大臣としての見識を発表していることは御承知のとおりであって、そういう目的のために、しかも、要するに、脅威が外から起こらないことを抑止するために、そういう目的のために、与えられた職分に応じて演習や訓練をするということは、私は在日米軍としても当然のことであろうかと思います。大事なことは、日本の欲せざるようなことが起こることをいわゆる歯どめをすることが大事なことであって、これに対しては先ほど申しましたように、そもそもが、岸・アイク共同声明から出ている思想というものは、私はアメリカのこの国務次官証言の中にも私は随所にくみ取られると思うのです。それで十分やっていけるかどうか、アメリカの側に立ってみての疑問とされ、あるいは不安とされることを、アメリカ国会の議員の方々が質疑をされ、あるいはそれに対して国務次官証言をされている、こういうふうに理解いたしますが、大事なことは、必要にして十分な目的安保条約によって確保される、そして、それが必要にして十分な限度以外に出ないということについて両国共同声明でかちっと大事なことを押えている、私はここに最大の眼目がある、かように存じております。
  59. 黒柳明

    ○黒柳明君 すると、アメリカ軍がどういう訓練をしようともかってである——たしかそうおっしゃるかもしれません。しかし、これは時期的に符合する点が多いのじゃないですか。要するに、いまだかつて岩国から、訓練とはいえ、朝鮮上陸、そんなことは行なわれたことないのです。しかも、それは沖繩米軍とタイアップし、韓国軍隊と一緒にタイアップして、そうして訓練が行なわれたその時期というのは、共同声明後、要するに、このジョンソン証言——先ほどから、一月だから問題ないとおっしゃっていますけれども——その時期的から見ても、ジョンソン証言そうして日本基地というものは変化する、こう言われた後において三月から六月までに大規模な訓練が行なわれているということは、一環の、共同声明以後の日本基地というものが変化する、要するにアメリカの自由に使われる、そういう可能性があるということ、ということは、沖繩返還後も沖繩米軍基地というものは現状の沖繩基地と同じように、施政権は日本に返ってきても、アメリカの意のままに使われる可能性を示唆している。要するに、ベトナムに行こうが、あるいは朝鮮の緊急の事態に直接作戦行動しようが自由である、こういうことを示唆するような岩国の米軍の直接訓練である。あの三矢作戦のときには図上の作戦です。自衛隊もそれに連動する。図上の作戦でもあれだけ問題になったわけでしょう。しかも、これは図上作戦じゃなくて実際の演習、訓練が実地に行なわれている。その訓練が実地に行なわれている時期たるや、すべて本土基地というものは拡大される、姿を変え、使用目的というものが非常に変わるということが裏づけられている時期にこういう演習が行なわれている。しかも、自衛隊のあのときは連動作戦が三矢計画ではあったのですから、今度の作戦ではこれは関連性があるかどうかわかりませんけれども、八月の、ついせんだっては自衛隊が下関に対して輸送訓練を行なった。このことは、ある一部に言わせますと、下関からフェリー・ボートを使って、韓国に緊急事態に輸送する訓練の前提であるという非常に疑惑を投げかけている。私はそこまで関連づけられるかどうか疑問だと思います。当然これは三矢作戦を想定すると、図上の作戦だけじゃない。しかも、自衛隊が連動した今回の場合には、訓練とはいいながら、完全に実際のそういう訓練が行なわれ、しかも、関連性は若干不確かですけれども、自衛隊の下関輸送訓練が行なわれた事実がある。こういうことになりますと、いまの在日米軍基地のあり方は、要するに、本土沖繩化、こう私たちが心配し、先国会においては質疑応答が繰り返されたそのことが、すでにいま目の前に展開されていると、そういう強い憂いを起こすわけです。要するに、沖繩が返ってきたときには、施政権は日本に委譲されても、先ほどの、沖繩に対しての能力をアメリカのほうは留保する、思うままにアメリカが使うという、こういうジョンソン証言も裏づけしていますように、非常に本土沖繩化、そういう危険性を示唆しているんじゃないか。こういう点をもう一回、大臣のお考え方を明らかにしてもらいたいと思います。
  60. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そういう御議論があるからこそ、沖繩返還に際しても安保条約・関連取りきめをそのまま何らの変更なしに沖繩に適用して、そして核抜きであり、それから米軍の活動等に対しても事前協議というものが適用されるようにするということなのであって、その本土並みになった沖繩ということからいえば、すべての関係本土沖繩一体なんですから、こういうことに何らの私どもは疑いも持たないし、それが当然だと思います。  同時に、お話を伺っていますと、何か日本の自衛隊が韓国軍と一緒になりアメリカ軍の家来になってどこかへ攻めのぼるかのよう感じも起こしかねないようなふうにとれますが、これは申すまでもないことでございます。そんなことをお考えになっているわけでは毛頭ないと思いますけれども、先ほど申しましたように、国連憲章五十一条に基づき、かつ、安保条約の規定しているところも、いわゆる攻守同盟とかなんとかいうものとは全然筋の違うものでもございます。政府といたしましては、日本国の安全というものを、過去においてそうであったように、末長くこれを守っていきたい、そのためには日本を含む極東が安全であってほしい、そのためには抑止力が十分に働いて、過去二十年そうであったように、日本には事前協議というようなことも、イエスもノーも、その前の段階で起こらないようにするということが最も望ましい、こういうことに考えを集中しているわけでございますから、どうもこれはジョンソン証言とか条文の解釈の問題とかを飛び越えた、もっと次元の高いお話になろうかと思いますけれども、政府としての基本方針がそういうことにあることは私もあらためて明らかにしておきたいと思います。
  61. 黒柳明

    ○黒柳明君 要するに私が言いたいことは、直接作戦行動というもの、事前協議というものは、先ほど爆撃だけに限ると、地上軍の行動なんというのは、いまでもそうじゃないですか。ベトナムから帰って、岩国から一たん沖繩に行って、それからベトナムに行ける。要するに、沖繩に行くのはワン・クッション置くだけで、カムフラージュなんですよ。ですから、直接日本基地から戦闘行動を起こすことは何ら事前協議の対象にならないのじゃないかという、こういうこと、あるいは、そのことはもう対象にならない、こういうことも暗にこのジョンソン証言は示唆している、こういうようなこと、さらに、そういう前提としていま訓練が行なわれている、こういうことを私は言いたかったわけです。  それから、奄美大島の返還協定のときには、南西諸島の防衛ということで奄美大島を自由に使わせると、こういうことが述べられておりますが、それを今度は沖繩に当てはめた場合に、当然沖繩——まあ協定になるかあるいは覚書になるか——そのときには極東の安全、こういうことが前提になってアメリカに対するある程度の沖繩の自由な使用というものを認めざるを得ないのじゃないか、奄美大島の返還協定から見ると。その点、いかがでしょう。
  62. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 沖繩につきましては、何べんも申し上げましたように、まあ幾ら申し上げたら御信用いただけるのかわかりませんけれども……
  63. 黒柳明

    ○黒柳明君 信用できないから。
  64. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そうなってしまえばお答えすることも無用になるわけです。
  65. 黒柳明

    ○黒柳明君 お答えすることが無用であったならば、開かなければいいじゃないですか。そんなことはおかしいですよ、ちょっと。
  66. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ですから、沖繩につきましてそういうことを十分配慮いたしまして、共同声明も苦心をして、日本側の意向を十分アメリカ側に反映して、かつ、先方の合意を取ったわけでございますから、この基本線で返還協定もりっぱにつくってまいりたい、こういうふうに考えております。
  67. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に一問。  要するに、疑問があるから、大きな疑問だからこういうことを何回も何回も繰り返しているのであって、そういう木で鼻をくくったよう答弁をされたのじゃ、これはすれ違いじゃ何も意味ありません。国会の存在が疑問視されます。  そこで最後に、アメリカのほうでも返還協定にするか覚書にするかということでまだきまっていない。政府のほうもどんどんこの作業を進めているわけですが、はたしてこれを協定あるいは覚書、いずれの形にするか、そういうお考えはいまお持ち合わせでしょうか。
  68. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日本側といたしましては、もう当初から返還協定については当然国会の承認を必要とする、もうこれは当然のことですから確定いたしております。アメリカの事情については、先方の政府だけでもきめ切らないことですし、私からコメントする立場におりませんが、そういうこともありまして、「立法府の支持を得て」ということが共同声明の上に出ているわけです。この意味は、日本側としては国会の承認ということでございます。
  69. 岩間正男

    岩間正男君 ジョンソン証言全文が出たら当委員会にも資料として出してもらいたい。
  70. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それはもう公表されることでございましょうし、資料として差し上げます。
  71. 岩間正男

    岩間正男君 先ほどから聞いておりますと、外務大臣共同声明以外に秘密取りきめは何もない、こういうことを述べているわけですが、七二年返還についてアメリカ側から「待った」がかかることは全くないと、こういうふうに言い切れるのですか。
  72. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そういうことは全然予想もしておりません。
  73. 岩間正男

    岩間正男君 ジョンソン証言内容はきわめて危険なものを含んでいると思う。先ほどから繰り返されていますように、戦術核兵器の有事持ち込みに対する取りきめの問題。それから防衛目的での日本からの米軍の出撃は、これは事前協議の対象から除外する。それから、沖繩を含む日本基地韓国防衛に使われる。日本日本以外の地域の安全保障に貢献することなど。まあ、あげてみるというと、きわめて重大な内容を含んでいる。日米共同声明日米安保条約の事実上の改悪になっていることは、われわれは当初から指摘してきましたけれども、これが沖繩返還の実は取引の代償になっているのじゃないか、こう言えると思うのです。このことを明らかにこの証言は立証している。ところで、七二年施政権返還が確定的だとすると、それをめぐるこれらの要望あるいは期待、これを日本側は認めるということになるのですか。どうなんですか。
  74. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まあ、これも木で鼻をくくったよう答弁だとまた言われるかもしれませんけれども、私は繰り返しお答えせざるを得ないのですが、返還の話は、もう少なくとも両政府首脳の間ではっきりきまったわけですね。そうして、その返還は第六項、第七項、第八項でやるということも共同声明できまったわけですね。ですから、その中には、安保条約について言えば、何らの変更なしに沖繩に適用するということが合意されているんですから、これに関連するよう性格の問題で特別の取りきめというものは予想いたしておりません。政府としてはそういうものを考えておりません。
  75. 岩間正男

    岩間正男君 まあ、繰り返して七二年の施政権返還は確定的だということを主張されているわけですね。しかし、そこに重大な問題が含まれている。大臣は、返還を妨げる条件はないということを言われますが、あなた方のように、サンフランシスコ条約第三条を正当化する立場から言えば、沖繩の施政権返還の権限というものはアメリカにあるということになるわけです。そのアメリカ沖繩返還時の協定に対していろいろな条件をつけてくる。しかも、アメリカが、取りきめに満足できるような結論が得られなかった場合には返還が七二年を越えて先になることもある、こういうふうに言っているわけですね。共同声明自体もまた七二年の復帰のために、「協議を促進すべきことに合意した」のであって、七二年返還自体に合意しているわけではない。こういうふうに考えられる。それにもかかわらず、七二年返還は間違いないとするなら、アメリカ側の要求をいれざるを得ないのじゃないですか。それでも七二年返還は確定的だということが言えるのですか。これはあらためてお聞きしたい。
  76. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず第一に、先ほども申しましたように、共同声明の第六項によりまして、「立法府の必要な支持をえて前記の具体的取決めが締結されることを条件に千九百七十二年中に沖繩の復帰を達成するよう、」こういうふうにきわめて明確に書かれております。したがって、法理的に言えば、立法府の支持を得られなかった場合あるいは具体的な協定ができなかった場合には、ずれ込むこともあるということは、法理的には言い得るでしょう。しかし、具体的な協定ということについてはアメリカにも希望がありましょう。同時に、日本にも非常な希望や要望があるわけですね。それだからこそ、いま日米間で外交チャンネルを通して折衝いたしておるわけです。そうして、双方ともこの七二年中の——繰り返して申し上げておりますよう——早い時期に実行ができるように双方折り合いをつけて、うまく協定ができるように、そして立法府の支持をそれぞれ得られるようにということで全力をあげているのですから、できないだろう、できないだろうとおっしゃるのは、沖繩返還ができなくてよろしいという態度に立つならば格別のこと、私は全国民願望が一日もすみやかに達成するようにいたしたい。同時に、私は、その当時の私の説明にもありますように、七二年中にこれだけ長年の問題を完全に片づけるということは、世にいわれる即時復帰と同じである、ほんとうにこれは両国政府ともねじりはち巻きでやらなければならないことである。それほど即時復帰という願望が、一面から言えば、達成されたということを申し上げているとおりでありますから、政府としては全力をあげて、日本側の希望が達成されて、今後の問題についても、そして協定ができるように、この上とも邁進いたしたいと思います。
  77. 岩間正男

    岩間正男君 まあ、非常に楽観的な、事もないように言われますけれども、これを公表したこの証言の主は、これは対日政策担当官でしょう。そうして、しかも国会での証言、この証言がしかも公表される。あなたは、七二年施政権返還をあくまでも強調されるのですが、政府がそれを強調すればするほど、アメリカの要求によってがんじがらめにならざるを得ないのが沖繩返還そのものの仕組みではないか。そういうところがその背景にあるのじゃないか。特にジョンソン証言返還交渉が九月から本格化しようとしてしいるこのいまの時期に発表されたそのこと自体が、非常に私は重大だと思う。アメリカの要求に対して四の五の言うならば七二年返還はこれはまかりならないというおどしがここに一体含まれていないのか。実はこういう問題に対して政府は、政府の意図に反したり、共同声明の取りきめに反するというなら、堂々とこういう問題に対して反論すべきじゃないかというふうに思うのですけれども、そういうことはないんですね。穏便にこういう問題については発言してもらいたいというそういう申し入れでは、ほんとうにこれは一国の外交として私はどうかと思うのです。そういう点、どう考えますか。
  78. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は先ほども率直に申しましたけれども、アメリカ国会における国務次官証言というものを非常に重視するということはわかります。しかし、わが国の最高の国権の機関である参議院の外務委員会において、尊敵すべき皆さんからの御質疑に、私は責任を持ってお答えしているということもまたお互いにひとつ十分考えようではありませんか。
  79. 岩間正男

    岩間正男君 まあ、そういう中で、とにかく疑惑は非常に深まったわけです。残念ながら、われわれが当初から指摘した問題が裏づけられたようなこうした疑惑の中で、国民はいま行なわれているこの沖繩返還協定、そのための対米交渉の内容について、これは注目していることは当然だと思う。ところが、いま行なわれている交渉の項目さえも明らかにしていない。そこに国民の不安がこれはあるわけです。それで八月十日ですが、わが党の春日議員が、沖繩・北方問題特別委員会で、あなたに、交渉項目と項目ごとの問題点の一覧の提出方を要求した。外相は、検討すると答弁されておりますが、これはその後どうなっておるか。  それから、おそらく返還交渉で問題になろうと思われる、また問題にしなければならない多くの問題について、去る二十一日にわが党の中央委員会では、佐藤総理あてに公開質問状を提出しました。もし政府が、国民、とりわけ沖繩県民の要求にこたえ、不安をなくそうとする意思があるならば、こうした問題に率直に答えられるべきだと思うのですが、その考えをお持ちになっているかどうか、伺いたいと思います。
  80. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、疑問が一ぱいあるとおっしゃいますが、ひとつ具体的に何でもお尋ねをいただきたいと思います。
  81. 岩間正男

    岩間正男君 時間がない……
  82. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は十分お答えをいたした。  それからなお、お尋ねの中にございましたが、先般来申し上げておりますように、返還協定を中心とする折衝につきましては、さらに煮詰めてまいりたいと思っておりますけれども、そのできぐあい、進みぐあい、資料の集まりぐあい、突き合わせぐあい等によりまして、適宜御説明することにやぶさかではございません。
  83. 岩間正男

    岩間正男君 私たちも沖繩に参りましていろいろ触れているわけですね。基地の問題、それから資産の買い取りの問題、それから裁判権の問題その他が無数にこれはあるわけです。そういう中で、全くこれは現在のやり方が、ほんとうにあなたたちの言っている方向が貫かれるとは思えないという節がたくさんあるわけです。  時間がないので、どんどん聞いてくれと言っているが、三分しかない。あなたがいつでも二時間なんて時間を制限してしまうのでこれはできないんで、ほんとうは一日開いてもらいたい。われわれ共産党に一時間、二時間の時間を与えればもっとやれる。十五分の時間の中で一国の運命に関する重大な問題を討議するということ、これ自体が問題です。アメリカではジョンソン証言が三日にわたってやられた。そういう点を考えるときに、運営が問題だ。これは委員長にも要望しておく。  そこで、最後にお聞きしたいんですが、現在政府の態度からは、わが国は、わが党が繰り返し指摘しているように、沖繩本土を問わず、「有事核持ち込み、自由出撃」をのまされ、安保条約は実質的に改悪されて、日本全土がアジア侵略の基地とされる。共同声明に基づく七二年施政権返還とは、そのための道具であって、沖繩県民が要求している真の祖国復帰ではないということを私は特に強調したい。  このような道をたどらざるを得ないその原因というのは、政府が、さらに自民党がサンフランシスコ条約第三条を破棄するという道を選ばないで、これを認めるという屈辱的な態度を基本姿勢としているからにほかならないと思うのです。われわれはサンフランシスコ条約第三条の破棄、安保条約の廃棄によって、真の沖繩の全面返還を、これを国民とともに要求したい、こういうふうに考えるわけです。で、この沖繩の現実というものは、いまこのようジョンソン証言の公表によって非常にゆれ動いており、これは不安にたえないものを持っているので、この点についてこれをはっきりあなたの態度をお聞きしたい。
  84. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず第一にサンフランシスコ条約でございますけれども、政府といたしましては、サンフランシスコ平和条約の締結によって戦後の日本の国運と国家の立場というものが開けたのであると、かよう認識の上に立っております。したがって、サンフランシスコ条約の各本条は、徹底して尊重すべきものであり、その上に立って戦後の経営に当たるのが適当である。特に沖繩問題の処理にあたりましては、第三条を基本にすることによって、いわゆる平和的な話し合いによって、日米間のこの関係の中にこそ国民願望が達成されるのである。かような確信の上に立っております。  それから、本日の質疑応答の中におきましても、沖繩県民の方々の不満というものが消えたと私はあえて申し上げたいと思いますが、今後におきましても、沖繩県民の方々はもちろん、日本国民の方々に、政府といたしましては何よりも最善の努力をこれから続けまして、七二年中に、公約したとおり、また、アメリカとの約束ができている日米共同声明のこの基本線の上に、りっぱに実現を成就することによって、国民的に喜んでいただくようにいたしたい、かように考えております。
  85. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十四分散会