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参考人(島秀雄君)
ロケットを上に打ち上げますということにつきましては、もともと誘導いたしますというのは、
ロケットが思った方向からそれましたら、それをかじをとってもとへ戻していくということでございますので、だから、かじをとらなければどんなふうに飛んでいくかということを根本においては知っておらなければいけないわけでございますから、その意味におきまして、そういう裸の状態のものをよく知っておくということは、何にも増して大事なことだと思うのでございます。それが単にまっすぐ飛んでいくんじゃなくて、いまの重力ターンのような種類のことは、誘導装置のついております
ロケットでも、誘導せずにおきますと、そういうことをいたすわけでございます。それから誘導によりまして思った方向に修正していくようなことなのでございますから、その裸の状態というのを
一つの
研究題目として、それをむきになって一生懸命やってくださる方があるというのは非常にありがたいことなのでございまして、その意味において、もう一ぺん基本的なことを教えていただくものだと考えております。
で、もちろん、私どもが
計画いたしておりますような
実用衛星を上げますにつきましては、どこにどういうふうな——どこにと申しますか、どういう高さに、また、どういう回り方をするというようなことは、非常にこう、むずかしく規定されておりますので、大体どういうふうに飛んでいくという程度ではとても済まないわけでございますから、どうしても精密な誘導をしなくちゃなりませんのでございますから、その点におきましては裸の状態のものだけでは済みませんのでございます。
そして、その場合に、固体
ロケットがいいか液体
ロケットがいいかということがございますが、これは、根本的に申しますと、固体
ロケットというのは、大体、火をつけますと、そのままぱっと一ぺんに燃えてしまうわけでございます。それで、それがどういう燃え方をしてほしいかというのは、そういうふうにつくって、そういう燃え方をさせる。ぱっぱっと燃えてほしいかどうかということは、初めつくるときに、そういうふうにつくっておいて火をつけるわけでございます。途中でもって、何と申しますか、「初めちょろちょろ中ぱっぱ」というように、ガス栓をねじって、ぼうぼう燃やしたり細くしたりするような手段はできませんのでございます。そういう点から申しますと、根本的には、そういう流体の燃料を使いまして、バルブか何かで、かげんするというのがいいわけでございますし、強きをかげんいたしますとか、つけたり、とめたりするということだってできるわけでございます。
それから、かじをとります場合は、固体
ロケットでございますと、大体、燃えております本体は、ぼっと炎をふく方向がきまっておるわけでございます。それを、こう、どっちかに曲げませんと、かじにはなりませんわけでありますが、それを曲げるというのは簡単なことじゃなくて、いろいろな別の液体、気体等を使いまして、横にふかしてみたりなにかして、補助手段を講じませんと回らないのです。それが、液体の
ロケットでございますと、ふっとふく口だけが、何と申しますか、ゴム管の先に火口をつけたようなものでありまして、ゴム管はふにゃふにゃいたしておりますから、火口を振りますと、炎の向きが変わるというような、そういうしかけができますものでございますから、かじをとるのが、根本的には、そっちのほうがやさしい。でごさいますから、そういう、しかけだけのことを考えますと、液体
ロケットのほうが便利だと思います。
ただ、液体
ロケットでございますと、大体、いまのところ、冷たく液化した液体の酸素を使ったりいたしますので、魔法びんに詰めて飛んでいくようなものでございますので、その魔法びんに詰めて長い間置いておくというわけにいかないので、やはり、いつ打ち上げしようかと思いますと、予定をつけまして慎重に魔法びんに詰めるようなことをいたすわけでございます。それが、固体
ロケットのほうでございますと、そんなに、こう、すぐにいたむわけじゃないのでございますから、つくりましたものをそのまま置いておきまして何とかやることができます。だから、そういう便利さみたいなもの、あるいは、魔法びんに詰めるときに、管でやりそこなったら、ついだものが外に出てしまうとか、魔法びんが割れたらどうしようかというような、おっかない点では、現在では液体のほうが慎重を要するということがございます。
そういうことで、いろいろ
ロケットでも、一段でやるのじゃなくて、何段かを組み合わせてやるものでございますから、いまの
Qロケットというのは、下のほうの、初めのほうの一段は固体でやりまして、途中に、よく制御できます液体を入れまして、それから最後には、また固体のものをつけて、それでやるようなことをしております。そのときに要求しております正確さとにらみ合わせまして、取り扱いが便利だとかなんとかということもあわせまして、適当に選択して、液体と固体の
ロケットを組み合わせてやっていくのだと思います。でも、根本から申しますと、制御のやさしさは、液体のほうにあるのだと私は思っております。