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川村清一君 非常にめんどうな問題であることは十分承知しているんです。そもそも
政府の見解が終始ずっと一貫しておらないから、私はこうめんどうになってきておると思うんですが、領土問題を取り上げても、私はいまこれから領土問題をもとに返して議論する気はございませんけれ
ども、どうですか、お考えになってください。
政府は国後、択捉、歯舞、色丹は、これはもう固有の領土である、
日本領土である、平和条約で放棄したところではないと、これはもう再三再四言っておるわけであります。私もそれは否定しないんです。しかしながら、このサンフランシスコ平和条約第二条(C)項
——一時は
国会において
政府の
委員がはっきりと放棄した、この千島列島の中には歯舞、色丹、国後、択捉は包含されておるということを
答弁されておる。これは
会議録にはっきり記載されておるわけなんです。こういう
一つの問題。
それから、戦前、これは御承知のように、国後、択捉、歯舞、色丹というものは
北海道の一部であって
北海道の
行政が行なわれておったわけであります。
〔
理事山本茂一郎君
退席、
委員長着席〕
そこで終戦後占領軍が進駐してまいりましたが、
北海道は、御案内のように
アメリカ軍が進駐してきておるわけですね。そこで当然
北海道の一部なのであるから、この島々にも
アメリカ軍が進駐してきて占領することが、これは当然なんであります。これは現地に行ってお聞きになったらわかりますが、たとえば色丹島から引き揚げた人々は、
アメリカが来るだろうと思っておったと言うんです。ところが、来たのは
アメリカでなくてソ連兵であったんだ。しかも、ソ連兵がこの島へ来るのには、すぐ来たんではないんですよ。樺太のようにばっとソ連軍が進駐してきたんではないんです。この島に来たのは、八月の十五日に戦争が終わって、八月の末ですよ。約二週間たってソ連の兵隊がこの島にやってきたんですよ。こういう点等をずっと考えてみると、やはりヤルタ協定で
アメリカとソ連というものが話し合っておったか、そういうわれわれにはなかなか了解できないような事実がここに存在するわけです。そして一九四六年のGHQの覚書、その覚書の中で、
日本地域から除外されるものとして国後、択捉、歯舞群島、色丹というものがはっきりと書かれておるわけです。そうして
行政権が分離されてきた。私は、この島々をサンフランシスコ平和条約でもこれは放棄してしまったとするならば、何もこういう
質問はしないんですよ。放棄は絶対しないと言うから、してないと言うから、してないとするならば、ここにおった人に対して漁業権を補償しないというのはまことに筋が通らないんではないかと、こういうことを申し上げておるわけです。
法律はすべての
国民に対して公平でなければならないんですよ。
北海道の本島並びにこちら側の島々の人々には全部漁業権を補償しておって、そうして
日本の領土だ、
日本の領土だと言っておる。いままで放棄したことがないと、こう断言しておる島に住んでおった人々の漁業権は、これはこの覚書が出てきてからこれはもう消滅してしまった、漁業権は消滅してしまった、死んでしまった、再度生き返らないんだから、これは補償できないんだという、こういうことは、
法律論はともかくとして、政治論的に言うならば、まことに筋の通らない話ではないか。それは了解の上に立っていたから、昭和三十六年に北方
協会を設立して、そうして特別
措置として十億円の国債を発行して、北方
協会の業務をやっているのだと、こういうこと。それじゃ、その十億円の中で旧漁業権に相当すると見込まれるのはどのくらいか、わずか七億五千万円と、こういうことであります。ところが、この島におった旧漁業者というのは、大体一万四千名いたわけですね。この一万四千名に対してですよ、かりに十億円全部がこれがそれに見合った
金額といたしましたところで、一人当たり七万円程度でございましょう。一人七万円程度のいわゆる補償金ということでは、これはとても納得できないわけであります。しかもです、補償
金額は当然個々にこれが交付されるべきだと思う、個々人に対して。ところが、
協会にこれを交付して、
協会が今度はそういう生業資金だとか
生活資金に貸し付けているんですね。いわゆる補償金でなくて、貸し付け金ですね。こういう問題もあるでありましょう。ですから、いろいろな問題が存在しているわけですよ。このことから私が再三再四
質問しているんですが、どうしてもだめだ。私は当然補償すべきだという見地に立ってその
質問をするし、あなた方のほうは、これは
法律的に消えてしまったんだから、消えてしまったものに補償することはできないという、そういう態度を一歩もくずさない。しかしながら、考えてみるというと、ずいぶん前と現在では違ったものもあるわけです。先ほど
山中長官もおっしゃっておったが、たとえばこの国後、択捉、歯舞群島、色丹という、この島の面積は、
日本の地図の上にも明らかでない。それから、
北海道の総体面積の中にもこれは加わっておらない。したがって、普通地方
交付税のいわゆる積算の対象にもならなかった。ところが、この問題を昨年の
予算委員会で私はずいぶん追及していった。その結果、坪川建設大臣は、きちっとした地図をつくります。そしてこの島の面積ははっきり面積調べで出して、
北海道の面積の中にこれを入れますと。それでは、竹島と同じように、この面積分は
北海道の普通地方
交付税積算の対象にいたしますかということを野田自治大臣にいろいろ尋ねていって、とうとう野田自治大臣は、そうしますという
答弁を私にしたんです。その結果、ことしから幾ら入っておるかわかりませんが、その分が
北海道の
交付税の中にこれが加えられておる。そうしますと、こういうふうにずいぶん政治的な
配慮から変わってきておるわけですね。こういうことを考えてみると、この問題、
法律的にはいざ知らず、政治的にはやらなければならないのではないか。それは十億円でやったということになりますれば、またこちらも何だ、それじゃ十億円の中で一体旧漁業権補償に該当するようなものはどれだけあるのか、それじゃ、その額というものは何を
根拠にして出してきたのだ、旧漁業権、これは財産権、財産が幾らあったかはっきりしているかというふうにこれは重ねて尋ねていかなければならない。そうすると問題はますます複雑になってくる。そこで昨年五月十四日、この参議院の
沖繩及び北方問題
対策委員会におきまして、私の
質問に対して内閣法制局第二部長の田中康民君がこのように
答弁しておるのであります。「私が申し上げましたのは、領土権の問題とは全く関係なく、権利はすでに消滅したという一点であります。これは全くの
法律論であります。権利がすでに消滅した以上は生き返らない。そういう原則でもはや権利そのものに対する補償はないということであります。ですから、それ以外の、あすこの領土権を主張する現在におきまして旧漁業権者におきます地位に着目して特別の考慮を払うことは、これは
政府としてのまた義務であろうと考えます。」、こういうことを
答弁しておるのであります。こう言いますと、
水産庁長官は、先ほどのまた議論になってきて、だからやってやるのだ、こういうふうに必ずお答えになると思うのであります。私は、そういうふうに考えなければいかぬ。あれも
一つの政治的な
配慮かもしれませんけれ
ども、ああいうことではどうにもならぬ。そこで
対策庁長官にお尋ねしますが、この
予算面にある
北方地域の
総合実態調査あるいは
北方地域元
居住者総合実態調査、こういう面において、これは単に
北海道庁にまかせるのだというようなことでなく、来年はひとつ十分
予算を取って
本庁自体がもっと力を入れて
——まあ、私も旧漁業権を補償せい補償せいと言っていますけれ
ども、さて旧漁業権が幾らあるのか私もわからない。しかし、七億五千万ぐらいでは問題にならぬということだけははっきりしている。ですから、一体、財産、不動産なんかと一緒に残してきた財産権はどのくらい残っているかということをもっと的確に
調査をしていただきたいと思うわけです。これで私の
質問は終わりますが、時間がおそくなりましたから終わりますが、ひとつ
山野長官の御
答弁をいただきたい。