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1970-04-24 第63回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十四日(金曜日)    午後一時八分開会     —————————————    委員異動  四月十七日     辞任         補欠選任      萩原幽香子君     松下 正寿君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 源田  実君                 山本茂一郎君                 川村 清一君                 渋谷 邦彦君     委 員                 河口 陽一君                 大松 博文君                 中村喜四郎君                 増田  盛君                 山本 利壽君                 小林  武君                 達田 龍彦君                 矢山 有作君                 春日 正一君    国務大臣        外 務 大 臣  愛知 揆一君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        総理府特別地域        連絡局参事官   加藤 泰守君        外務大臣官房長  佐藤 正二君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵省主計局次        長        船後 正道君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代  表に関する臨時措置法案内閣提出、衆議院送  付) ○沖繩北方対策庁設置法案内閣提出、衆議院  送付)     —————————————
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月十七日萩原幽香子君が委員を辞任され、その補欠として松下正寿君が選任されました。     —————————————
  3. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいま報告いたしました委員異動に伴い、理事が一名欠員となっておりますので、これより理事補欠選任を行ないます。  理事選任につきましては、先例によりまして委員長にその指名を御一任顧いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事松下正寿君を指名いたします。     —————————————
  5. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 次に、  沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法案  を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を顧います。
  6. 小林武

    小林武君 この前突然中断したものですから、ちょっと続きがよくわからなかったのですが、こういうことから始まったように思うのです。この共同声明の第十項に、「沖繩復帰に伴う諸問題の複雑性を認め、」ということに対して、これは大統領佐藤総理との両者がこの複雑性を認めた。その問題の複雑性というのは何かと、こういう質問をいたしまして、それに対して外務大臣から、その複雑性のことを言ったのは日本側が問題の複雑性ということを言ったのだというふうに、こう聞いたところで、ぱっと時間の都合上、中断したということになるわけですが、ですから、聞き違いもあるかもしれませんが、復帰に関する諸問題の複雑性というのは、私の考えでは、日米それぞれに問題の複雑性、また両者関係において出る複雑性ですから、これは一方的なものではないのではないか、あるならば、これを具体的に示してもらいたい。と申しますのは、これは協議委員会においても準備委員会においても、それぞれの段階で問題があるからこそ慎重を期するわけでございますから、そういう意味質問をしたわけです。この点からひとつ始めていただきたいと思います。
  7. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま念のために前回の最後のところの応答をお聞きになりましたんですが、私の申し上げたのはそういう趣旨で、そのとおりでございます。同時に、しかし、これは日本側だけに複雑ないろいろの手順や問題があるだけではございませんで、もちろん日米間でも越えていかなければならないいろいろのむずかしい問題があることは当然であり、それゆえにこそこの共同声明の上にもこういう文言が取り上げられたわけであります。しかし、私の考えといたしましては、日本側におきましてなかなか複雑な問題があることは当然予想しなければならない、こういう気持ちで、その文言にも、何といいますか、積極的にそういう字句を入れることについては同意をいたしたわけでございます。
  8. 小林武

    小林武君 そこで、どういう問題が当面一番やはり問題になるのか。もう少しはっきり言っておいたほうがいいと思いますが、私が考えますのに、やはり問題の複雑性というものを私が考えれば、それは従来の日米関係はもちろんですけれども、この日米関係のことを声明書がやはり一番はっきり具体的に出しているように思うのです。そういうこの声明書と、それから沖繩に関する六項から十項までのところは問題の所在というものをやはり明らかにしているように思いますから、そういうことから言って、具体的にいま返還という時点を迎えてどういうことが一番当面問題になるのか、そういうことを聞きたいわけです。
  9. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 二十年以上にわたって施政権の形態が全然違っておりましたから、政治社会文化その他各般にわたりまして制度の変更をする、これがむずかしい複雑な問題であるということは言うまでもないところであると思いますし、それから七二年に返還が実現されるまでは、よくこれは他の問題でもすでに論議されておりますが、施政権がそれまでの間法律的にはアメリカ側にある。しかし、その間においてできるだけ準備を進めていって、できるものは、まあ何と申したらよろしいんでしょうか、ことばは練れませんが、施政権はあるんだけれども、実質的に変え得ることはどんどんやっていくという面におきましても、これは日米間の話し合いの複雑性ということがあり得るということは当然予想いたしておるわけでございます。それから、具体的にどういう項目についてということは、前回の当委員会で詳しく御報告を申し上げましたように、三月の三十一日に日本側としては閣議決定をいたしまして、準備作業の基本的な方針、要領、それから担当する省庁、部局等割り振り等をきめたわけでございますが、それを受けまして、今月二十一日に協議委員会を開催いたしまして、米側からランパート弁務官にも参加してもらいまして、たとえば那覇における準備委員会運営やり方等についてもあわせて国会の御審議等を通じての御意見なども反映していく。たとえば琉球政府の主席の実質上の準備委員会における地位、あるいは実質的な権限——と申してはことばが適当かどうかわかりませんけれども、同じようなかっこうでこの準備委員会の中に沖繩県民意向が十分に反映するような運営をするという確約も取った。というようなことを、先般の二十一日の協議委員会では協議いたしまして、これは取り上ぐべき事項あるいは基本方針等決定して、これは世間にも公表をいたしたような次第でございます。
  10. 小林武

    小林武君 まあ、そういう問題もさることながら、私がちょっと先ほども申し上げたように、沖繩返還日本アメリカ合意したということについては、相当やはり沖繩、むしろ沖繩主席がどうであるとか、文化社会政治、そういう問題もさることながら、重大な問題がある。このことの保障というものがなければならぬのだ、こう思うのですが、それは後ほどまたお尋ねすることにして、この日本の場合はこれは返還協定というようなものは国会にかかるわけですけれども、アメリカの場合、これはわれわれが初め聞いた場合には、これは別に上院にかかるというような必要もなかった。しかし、その後、何か外務省側考え方としては、上院にかけなければならぬというようなこと、そういう情勢も出てきたというように聞いているわけでありますけれども、これについての確定的なことはいま何かあるのですか。
  11. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  12. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記つけて。
  13. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) アメリカ側返還協定について国会的にどういう手続をとるかということについては、まだ確定した情報は聞いておりません。これは先般も申し上げたと思いますけれども、この共同声明の中に、「立法府の支持を得て」と書いてありますところは、日本側とすれば、これは「国会承認を得て」と書いて当然いいところなんでありますけれども、先方は、事実上了解を取りつけるというような、いわゆる行政協定的なこともアメリカ政府としては頭にあるでございましょう。そこで「支持」というような形になっている。その状態が今日も続いておりまして、国会の正式のたとえば上院承認を得るか得ないかというような点については、まだ未決定のようでございます。
  14. 小林武

    小林武君 未決定でございますけれども、そういうこともあり得るということになりますか、アメリカのほうは。
  15. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはまあ先方やり方でございますから、責任を持って申し上げるところではありませんけれども、あり得るということは言えるかと思います。
  16. 小林武

    小林武君 そういう、何といいますか、アメリカ側議会筋動きというようなものはどこに理由があるか、どういう目的で、一体どういう動きが出てきているか、この点をお伺いしたい。
  17. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは実は小笠原返還というようなときには行政協定的な扱いでいっておりますから、私は、おそらくアメリカ行政当局としては当然それでいけるものと考えているのではないかと思うわけでありますけれども、しかし、同時に考え得ることは、沖繩といえば百万人の県民が住んでおられるし、また、長年の間施政権が行使されたところであるので、いろいろ重要な問題も、アメリカ側から見ても関心を払わざるを得ない点もあり得るだろうと、そういうことからくれば、上院審議をして議決をするということのほうが妥当な手続ではないかという意見があり得るのではないかと想像されます。
  18. 小林武

    小林武君 ちょっとその外務大臣の御答弁は、何といいますか、非常にアメリカ側態度をゆるくお考えになっているのではないかと思うのですけれども、これはやはり小笠原奄美等は質的に違うという考え方が出てくることは私も理解ができるわけですね。小笠原奄美という場合と違う。それは沖繩一つの重みがあるわけですから。そういう場合に、アメリカ側立場から言ったらどうなんですか。既得権益といいますか、それは軍事的にも政治的にも、あるいはその他の経済的な問題についても既得権益というものがある。このことは声明書の中にも書かれてあるわけですけれども、それについても、政治的、軍事的な一つ既得権益というようなことで、アメリカ側議会側はかなり神経をとがらしているというような事実があるのかないのかですね。そこらはどうなんですか。
  19. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは観測の問題になりますから、それこそくどいようですが、私は責任を持って申し上げるわけではございませんけれども、先ほど、あり得るとすればどういう根拠かというお尋ねでございましたからお答えしたわけでございますけれども、私は全体の見方として、この共同声明については、できるまでにはアメリカの内部でもいろいろの議論があったことと想像しますし、私もそれを感じ取っておりますけれども、これがまとまりました以降のアメリカ国会内と申しましょうか、政界内と申しましょうか、それらの動向を私なりに判断すれば、この行き方に対して支持を十分に受けている、こういうふうに観察いたしております。
  20. 小林武

    小林武君 私は、何といいますか、ちょっといまの御答弁を聞いておって、私の質問に対しての受け取り方がちょっと違うのじゃないかと思うのですけれども、私が申し上げているのは、この両者の間で「問題が複雑だ」と、こう言っている。その複雑な問題というものを、それぞれの時限で円滑に解決していくということが、少なくともこの準備段階でも重要なことだと思うのです。そういうことになった場合に、アメリカのことですから存じませんというようなことを言われると、それはちょっと困るのであって、外交上のことは実際上最も重い責任を負われているわけでありますから、それはもちろん相手方情勢を読むということから言えば、要らざることを聞いたり言ったりしたということにはならない。国会の中で、相手方の出方がどうか、それに対して日本側主張はどうかというこの二つの問題があるからこそ、沖繩返還というものに関して両者十分胸を開いて話し合わなければならぬということになるわけでございますから、そういう意味で、やはりアメリカ側情勢というものを、どんな態度でくるかということについては、かなり的確なものをお持ちいただいて、そうして、秘密にわたらない、特にまた、外交上の機密にわたるようなことをここで言われないというなら別ですけれども、返還という事実に即する問題については、われわれが十分審議に参加できるだけの情勢を明らかにしてもらいたい。こういう意向で言っているわけです。そういう意味で申し上げているのですけれども、時間があまりありませんから、この両者の間に問題があるということをたくさんここで並べたてれば、これはなかなか複雑になってきますから……。  もう一つお伺いしたいのは、アメリカ佐藤総理との間に、ニクソンとの間の共同声明の中では、両者が、アジアの平和のためにも、両国国益のためにも全く同じ考え方に立っているというようなことを言っているわけでありますけれども、たとえば、これはどうなんですか。今度の、何かアメリカ国会議員日本軍国主義化というようなことについて国会報告をしたとかなんとかということがあるわけでありますが、こういうことは一体どういうように解釈してよろしいですか。
  21. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) アメリカ国会議員人たち日本の状況を見て、それなりに見取ったところを報告するということは、私は、平生からよくあることであり、これはお互いに、どこの国同士でもそういうことはよく行なわれていることでございますから、それなりの見聞を報告するということは、別に奇異なことではございますまいと考えております。
  22. 小林武

    小林武君 アメリカ側としては、日本に対して、アジアの平和に対して日本も負うべき責任は負うてもらいたいという希望を出して、佐藤総理もそれに対して了承しているわけですね。この段については、日本に対してある程度の期待がある。それに対して今度は、「軍国主義に向かう日本」というようなことを、二人の議員アジア視察報告というものを報告をして、沖繩完全撤退に備えよということと、「軍国主義に向かう日本」ということになると、これは共同声明の中にある精神から言えば、日本のいまのこの軍備に対する考え方というようなものが、いわゆる軍国主義的なところに向かっているという判断を下して憂慮しているようにも聞こえるのですがね、これはどうなんでしょうか。
  23. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まあ、この方々日本を見聞してそれなり意見というものを報告されたのでありましょうから、それに対してとやかく論評すべきものでもないと思いますが、やはり率直に言えば、短期間に、あるいはどういう方々意見を聞かれたか、その対象、調査の方法にもよりましょうし、まあこういう意見の人もあるかなあという程度に私は承知をしております。
  24. 小林武

    小林武君 まあその程度の御理解であるということだけは、それではお聞きしておきまして、一つお伺いしたいのは、その複雑なという問題について、私の側の見解に立ってお尋ねするのですけれども、これはナショナル・プレスクラブにおける佐藤総理演説です。その中にこういうことが書かれてあります。「百万人の日本人が住む沖繩は、極東における平和維持戦略的拠点として今日まで米国施政権下におかれてきました。日米間の返還交渉における最大の問題点は、まさしく沖繩平和維持の面で果している役割りそのものにあったのであります。沖繩における米軍基地重要性について日米間の基本的な認識は一致しております。沖繩基地平和維持機能は、今後とも有効に保たれなければなりません。」、まあ、そのあとはちょっと省略いたしまして、「私とニクソン大統領は、日米両国民間の友好と信頼を維持増進し、戦後二十余年間に亘って、相互の利益のみならず共通の理念によって徐々に築かれていった。パートナーシップの関係をこの際一段と強化することこそ相互国益に沿う所以であり、同時に、アジアの平和と発展に寄与するという認識の下に、沖繩返還について合意した」と、こう述べているわけです。これは共同声明第七項の沖繩返還の態様その他七、八、九、十、それぞれ関係のある内容になると思うのでありますが、私がお伺いしたのは、沖繩返還についての合意というものは、先ほど述べた条件が満たされたときに合意になる。だから、もしこの条件をのまなかった場合には沖繩返還というものは合意できなかったということになるわけですね、これは。
  25. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 沖繩返還合意されたわけでございます。そして、当方から言えば、それは核抜きであり、本土並みであり、七二年中という時期、この三条件日本側条件であって、これに対して合意を得たわけでございます。それ以外の条件というものはございません。
  26. 小林武

    小林武君 いや、それ以外の条件ないとおっしゃるけれども、あなたのおっしゃるのは、まず沖繩における米国基地重要性、これについての基本的な認識の一致、これが今後とも平和維持機能として有効に保たれなければならない。沖繩が平和の維持の面で果たしている役割りはこれは認められる、こういうことでしょう。そういうことを言って、「この際一段と強化することこそ相互国益に沿うものである」、こういう条件の中に、さらにあなたの中に、その場合には核の問題はこうだというようなことが条件として入っているわけでしょうけれども、この大きな基本的な一つ条件があって、その条件の上に、結局、あなたの日本側主張と言われるような、核抜きなんだとかいうようなそういうあれが出てくるわけでしょう。私はそう思うのです。核抜きがあってそのほかがないのじゃない、こう見ておるのですが、これはプレスクラブにおけるところの総理演説というものは、これはどっから出た資料だか知らぬけれども、これは配られた資料ですね、われわれに。そういうことじゃないですか。
  27. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日米間の合意をいたしましたのは、十一月二十一日のニクソン大統領との間の共同声明で、これは両国首脳同士として合意をしたものでございますから、この共同声明以外には何も両国間の合意というものはない。この中で、沖繩返還という具体的な問題については第六項ないし第八項が規定されてあるとおりでございます。
  28. 小林武

    小林武君 ちょっとかみ合わないようですけれどもね。私はこの間の、大臣とちょっと意見が食い違ったかもしれませんけれども、私が主張したのは、この共同声明というものはいろいろな内容を持っておる。しかし、共同声明はいろいろな内容を持っているけれども、沖繩返還という観点に立ってものを見た場合に、六項から十項までの沖繩返還に関する問題を、今度は一項から五項までのそういう条件のもとに沖繩返還されるということですが、沖繩だけに重点を置いて考えれば、それは一つ前提条件である、そういう中でこそ合意されるのだということを私お尋ねしたら、いや、沖繩に関しては六項から十項までだというような御答弁であった。しかし、これは切り離して考えるべき問題ではない。声明全体の中に沖繩というものは位置づけられておる。同時に、沖繩そのものについては声明全体がこれにかかわり合っているということを認めなかったならば、これは共同声明というものをほんとうに読んだということにならないと思うのですよ。だから、そういうことから言えば、合意ということは、それらの条件を満たしたということから合意になって沖繩返還ということが実現するようになったと、こう考えることは別にあまり片寄った意見でもないし何でもないと思うのです。文章をすなおに読めばこういうことになる。これは間違いないじゃないですか。
  29. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 両国首脳が会談をして国際情勢について双方の意見を吐露し合うということは、これは当然のことだと思います。それから、日本といたしますれば、日本の国の独立、安全ということについての考え方というものが当然そこに浮かび出ることも自然の成り行きでございます。また、世界の平和に対する考え方ということが出てくるのも、私はまた出てこなければおかしいと考えるわけでございます。そういう情勢判断というものが両者の間で話し合われて合意がされた。そして同時に、沖繩返還という問題については、一番おもなのは六、七、八の三項だと思いますけれども、六項から十項までの間におきまして沖繩返還合意をされた、こう読んでいただくのがきわめて自然の読み方である、かように考えております。条件というようなことではないと、私はかように考えます。
  30. 小林武

    小林武君 条件ということを非常にかたくとられたけれども、いまの説明を聞けば、ことばに「条件」ということばはつかわなくても、そういう前提の上に立って沖繩返還というものは合意になったということは、これはあなたの答弁の中にも言えると思うのです。しかし、それをやりとりしてもしようがありません。  そこで、どうなんでしょう。領土の返還ということは、これは北方領土の問題もそうですから、これは一言だけ聞いておきたいのですけれども、北方領土返還ということを考えた場合に、アメリカとの間で返還についての一つ条件をつくった、私に言わせれば。両者の間においてある程度国益が一致する、あるいはその点についての不安がないと言う。私は、アメリカといえども、アメリカ上院でもって問題になっているように、アメリカがとにかくいままで果たしてきた役割り、これからまた臨むところの防衛上の問題、あるいは世界の平和に対するアメリカの言い分もあるでしょうけれども、その他の立場から、沖繩におけるところの権益というようなものがどういうことになるのだと、既得権益が侵害されるということが問題じゃないかということを、これを心配しなくてもいいという、そういうことになったから沖繩返還というのは合意になったとすれば、これは保証がなかったら返還はしないということになりますよ。平たく言えば、あぶないならやめるということ。そうすると、北方領土の場合にも、北方領土をわれわれが返還せよということの前提には、返すことがソ連にとっては不安でない、日本との間の関係はうまくいくし不安でないという条件がなかったら返さないということ、返せないのではないかということが、アメリカの実際の問題、今度の沖繩返還の問題についても見られるように、考えられはしませんかと、こう言うのです。
  31. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御質問趣旨が十分私理解できないかもしれませんけれども、先ほど来のところにもう一ぺん戻って申し上げますと、私は、いま既得権益云々というお話がございましたが、私のこれは見方ですから率直に申し上げるのですけれども、沖繩返還について本土並みに承諾をした、あるいは核抜きについてその条件合意を見たというようなことは、どんな点から見たって、もしいままで返還アメリカ基地アメリカ本土並みに自由に使用できたアメリカ立場から言えば、これは非常な制約を受けたことになります。その制約を受けて、そして軍事的な立場から見ればその力が減殺することを容認した上に立っての返還である、私はこういうふうに考えます。そして、それだけにアメリカとしては高度の政治的の判断と決断によってこの共同声明合意をされたものである、こういうふうに私は考えるわけでございます。  それから、北方領土の問題につきましては、これは沖繩のステイタスと私は非常に違っていると思います。それを申し上げますとまた長くなりますから省きますけれども、とにかく北方領土、そして国後、択捉両島の返還ということについては、日本側としては十二分の根拠があるものである。これの返還というか、あるいは常識的に言えば、不法占拠であるものを返してくれと言っていることとつながりはないと私は思います。御意見があれば、もっと伺わしていただきたいと思います。
  32. 小林武

    小林武君 これはまあこの程度にやめておくことにして、ひとつもう一ぺん私も繰り返しておきたいのですが、たいへんいま沖繩返還によってアメリカは、ことばをかえて言えば、極東におけるアメリカの軍事的な力というものに大きなマイナスを生じたと、こういうふうにおっしゃる意味だと思うのです。私はそうは思わないのです。そういう、相手方に脅威を与えるようであれば、アメリカ合意しなかったと思う。だから、そのことについて佐藤さんは、沖繩におけるところの極東の戦略的拠点としての重要性沖繩における米軍基地重要性についての日米間の基本的認識は一致している、しかも、沖繩基地平和維持機能は今後とも有効に保たれなければならないということになって、その点では私はちゃんと保証していると思うのです。これによって、日本態度いかんによってはアメリカは重大な危機を招くかもしれないというような条件の中で沖繩返還というものはあり得ないと思うのです。だから私は、共同声明そのものは国会の中では十分議論されませんでしたけれども、少なくともその点が反対と賛成との争点であったと私は思うのです。だから、このことは文章に書かれていることですからね。とにかくほんとうのその一部面だけをとらえて言うことは私はおかしいと思うのです。  それから私は、沖繩の問題、領土の問題と北方領土の問題、その領土問題の質的に違うとかなんとかというようなことについてはここで議論しません、いずれ私は総理府総務長官にもお聞きしたいと思っておりますから。外務大臣にも一つ聞きたいことがあるのですけれども、それをやっていますと時間がありませんから、これはやめましてね、やめますけれども、要は、北方領土がどんなであっても、沖繩北方領土が違っておっても、返すほうの側から言ったら、アメリカにおけるところの沖繩返還と同じように、この返還によって自分たちが明らかに既得権盛を侵されるとか、あるいは軍事的に非常な打撃を受けるというような条件の中ではなかなか返さないというのが、国際的な関係の中においてはいままで当然のごとく行なわれてきたのではないか。私どもはそういうことを認めるというわけではありませんけれども、そういう条件を取り払うということなしにやるということはなかなか不可能じゃないかということを外務大臣がお感じになっておりましたかということをお尋ねしたわけです。ただし、これについては大体意見が分かれたようでございますから、その点についてはもう質問を打ち切ります。  次は、これは大臣でなくて政府委員の方にお尋ねいたしたいのですけれども、私は衆議院における速記録を、あんまりだんねんではございませんけれども、ずっと読ましていただきました。政府委員東郷さんはじめ一、二の方のあれを読ませていただきましたけれども、あの中でどうしても理解できないのは、協議委員会準備委員会というものですね、その間に具体的に一体どういう——抽象的には言っておりますよ、原則をきめてその原則に照らして現地において措置すること、こういうのだが、こういう議論では私はなかなかわからないと思うのです。それについての説明は相当具体的に言ってもらいたいという質問をやっているのですけれども、それについてのお答えはなかったように思う。また別なところで言ったらば別ですけれども、私は見られない。それでひとつお尋ねをしたいわけです。すでに準備委員会というのは、この法律が通らなくたって、発足しているわけでしょう。何回目、あれをやっているか知りませんけれども、何回かもうやろうとしている、やっている。そういう中で法律の通るのがあとになった。その中で質問をされて、どうも具体性がないというのは、われわれとしては、審議に携わった者としてなかなか納得がいかんということになるわけであります。この間の質問で、大体返還協定ということは外交ルートでやる、その中の問題点は何かというようなことは、小笠原とか奄美と同じようなものなのか、それに加わるものが一体あれば何なのか、想定されるものは何かということになりますけれども、それは両者でやることですから、両方から出てくるのだろうから、ここでははっきり言えなくても、協定というものの骨組みは一体どうなっているのか、さらに、その協定の骨組みあるいは声明文の中に盛られている基本的な考え方というものを協議委員会では一体具体的にどういう協議をして、準備委員会にはどういうふうに流されて、準備委員会はどういう具体的な問題をやるのか、このことを私ははっきり説明していただきたいわけです。何か、衆議院の段階では、駐留軍労務者の雇用の問題等についての質問をやっても、政務次官の答弁だったとたしか思っていますけれども、準備委員会の中で具体的に何を討論するかということについてはいまのところきまっておりませんという御答弁であったと思うのです。それについて東郷局長から、雇用問題については外交ルートでやりますというような、そういう補足の答弁がありましたことをちょっと記憶しているわけです。一体、あのやりとりの中に具体性がないということです。もっと国民にわかるように説明ができないものかどうか、この点をお尋ねいたします。
  33. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 準備委員会は、先般最初の顔合わせをいたしまして、それ以後まだ正式には会合しておりませんが、先ほど大臣が申されましたように、協議委員会においていわゆる原則と指針をきめたことでもあり、諸般の準備もだんだん進んでおりますので、近く会合を重ねることと存じます。そこで、いまの協議委員会準備委員会との関係でございますけれども、これをどうも、とかく抽象的になって恐縮でございますけれども、協議委員会復帰準備の全般的責任を持つ。したがって、そこで原則なり指針なりというものをきめる。準備委員会におきましては、その全体の、両政府復帰準備に関する方針に従って現地で取り上げていく、措置していく問題を扱うというのが抽象的な御説明でございますが、それじゃ具体的にどういうことをやるかということになりますと、これは復帰準備に関する問題全部ということになります。一つには、沖繩県の県づくり、あるいはまた、地位協定を適用するための準備、そういういろんなことがあるわけでございますが、いずれもこれらのことは返還実現までは沖繩アメリカ施政権のもとにあるという状況で、摩擦なく、混乱なく進めていかなければならないことでもありまして、そこで現地で、たとえば沖繩県の準備といいましても、これはごく形式的、極端に申せば、何をするにも一応施政権を持っておりますアメリカのほうとの話し合いの上でやるということになるわけでございます。いまの問題で申せば、準備委員会はその場になろうかと思います。ただ、またこれを具体的に、それじゃ細大漏らさず全部かと申しますれば、これはやはりどういう県づくり、どの分野において県づくりのためにどういうことをするという大まかな話し合いをしまして、それをあと実施のほうは、今度は、現在御審議を願っております沖繩・北方対策庁の沖繩事務所がまた琉球政府といろいろやっていく、こういうこともあるわけでございます。というようなわけで、復帰準備も現在は日米双方でそれぞれの、何と申しますか、問題を全部洗い出して、それぞれの準備体制をつくっていく、準備をしていく、こういう段階でございまして、日米間でこれを取り上げて進めていくというのは、だんだんこれからの問題でございます。したがいまして、どうもいま申し上げていることもとかく抽象的、具体性を欠いて恐縮でございますが、そういうことで御理解願いたいと思っておるわけでございます。
  34. 小林武

    小林武君 外交というのはそういうものかどうか知りませんけれども、いまのやつは、山登りなら、いきなり遭難します。準備を十分にしなければならない。何も準備していない。食糧も防寒具も用具も何も一切のものを準備するということになると、具体性がなければならぬですね。私は、あなたのいまの答弁というのは、衆議院でやられている、速記録に載っているやっと全く同じなんです。私はこれはちょっと不親切のように思うんですよ、国会ですからね、これは。一体沖繩返還ということは、とにかく国民全般の重要な問題だ。沖繩琉球政府の主席が顧問になって準備委員会の中では発言することも許されたと、こう言っている。そういう場合に、一体、準備をよくやりましょうというようなことも屋良主席が言っておるんじゃ話になりませんよ。準備はよくやります、準備をやらなければだめですと言ったって、これは話になりません。こういう問題があるからこの点でどうですかということが出てこなければいけないと思うのです。私は、アメリカのほう、アメリカの側では、協議委員会で大方針をきめる場合には、先ほどもちょっと問題になりましたが、アメリカ既得権益というものが侵害されないか、あるいはアメリカの世論というようなものを一体刺激するようなことになりはぜぬかということをいろいろ考えてやるだろうと思います。そのための具体的な条件が出てくる。そこで方針が出てくるというわけでしょう。私が聞きたいのは、大方針だとか原則だとかということじゃない。大方針や原則の中身の問題なんです。それが準備委員会に行ったらもっと具体的になるわけじゃありませんか。沖繩県民との生活のかかわり合い等もできるわけですから、ただ私は、その面でちょっとあなたの場合、御答弁聞いているというと、何だか非常にごちゃごちゃしているんですね。沖繩県の県づくりとか、いま何とか言いましたけれども、そういうようなことを県づくりをやるということであるならば、これは分担する中には総理府の所管のものもあるでしょう。私はむしろ、総理府の中に一つの中心があって、各省庁がそれに協力して、具体的な問題というのはそこでやるだろうと思います。しかし、外交関係のほうが全然関係ないとは私は言わない、相手が、アメリカがおるんですから。この法律のそもそものあれから言えば、外交機関だと言っているわけでしょう。だから、それは同じような問題を取り扱うにしても、外交的な関係で言えば対アメリカとの関係でやるわけですから、対アメリカ関係ではこういう具体的な問題があるということがおのずから出てくるはずだと思うんです。だから、そのことについて、いまだかつて衆参両院で具体的なことをどうしても言われないという理由があったら、ひとつ理由を言ってください。こんな押し問答を何べんやってもしようがない。そういう具体的なことは言われないんですか。秘密なんですか。それとも、そんなものはないということなのか。具体的と言われたって、とにかく具体的なことは言えないということなのか。ないということですか。どういうことですか。
  35. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私からお答えいたしますが、この前、当委員会でも御説明いたしましたように、先月の三十一日に閣議決定をいたしまして、そうして基本の方針として取り上ぐべき問題の整理をして、そうして担当も、先ほど申し上げましたように、はっきり区分をいたしたわけでございます。で、大体この沖繩の県づくりということについては、これはもう本土並みにやりまして、沖繩県民方々に、いろいろの意味において本土との格差を是正して一体化を促進しなければなりませんのですから、各省庁の担当官会議も設置をして、これは総理府で主管をしていただかなければならない問題だと思います。行政、財政、産業経済、教育文化社会労働、司法法務、それから地位協定関係、この七つの部会を置くことになっており、さらに必要に応じては分科会を設けることになっておりますが、したがって、これは私から答弁するのはいささか不適当かと思いますが、私の受けております印象では、これらの各部門におけるところの具体的な内容の検討というものは、相当に進んでおるように私は承知いたしております。そうして、一切の法令が返還の時期には一斉に本土と同様に適用されるわけでございますから、それについての準備沖繩・北方対策庁の沖繩事務所が中心になって、そうして東京できめるべきことはきめ、あるいは事務所として補完すべき具体的の措置については円滑に進むように、これは私は東京に関する限りは相当に進んでおると承知いたしております。沖繩事務所はこれから開設されるわけでございますけれども、しかし、やはり母体になるべき組織は現にあるわけでございますから、これらの人たちが非常に熱心に仕事を展開しておるように私は承知いたしております。  それから、外務省としては、ただいま小林さんの御指摘のとおりでございまして、施政権者が現在のところまだあるわけですから、沖繩でもって復帰準備施策を進めます場合に、その実施についてどうしても米国側との協議をしなければならないことがございますから、そういう点について米側との協議を進めるということの事務を主管することに相なります。で、これをもう少し常識的に申しますと、あるいは適切な言い回しでないかも知れませんが、沖繩県がつくられるわけですから、これからの主役は、どうしても内政的な面が多くなる、したがって主役は総理府にお願いをしなければならない、そうして、施政権者であるアメリカとの折衝ということについてわれわれが担当すると、こういうことに私は理解いたしておるわけでございます。そして、その米側との協議については、こういう点については東京でやりましょう、そして、それを準備委員会に流しましょう、あるいは、準備委員会からの勧告とか意見具申を求めましょうということで路線は敷かれたわけでございます。したがって、こういうことでございますから、まあ、沖繩返還を一日も早くと望んでおられる先生方からごらんになれば、非常にまどろっこいというお感じがなさることは私も重々わかりますけれども、前の委員会でも申し上げましたように、私どもとしては七二年のできるだけすみやかな機会に実現をいたしたいと思っておりますから、ねじりはち巻きで準備に当たっておるわけでございます。内容的に申しますれば、もう本土並みということを大原則にして具体的に進めていく。そのこまかい内容については総理府を中心にして御説明をお聞き取り願いたいと思います。
  36. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  37. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をつけて。
  38. 小林武

    小林武君 ぼくはいまの話を聞いてもわからぬですよ。具体的に進めているということは、ぼくは法務委員会に出ているんだけれども、法務委員会では、本土に返った場合の弁護士の資格をどうするかという、こういう法律案が出てくるわけです。これは内政的な問題なんです。そういう問題はどんどんわれわれの目の前に法律として出てくるわけです。そういうことを一々言えというんじゃない。外交段階でもやるということは、これはわかっている。対アメリカのその折衝をやるというのが外交段階の問題だと思う。返還協定をつくるということも大仕事だろう。しかし、協議委員会とか準備委員会で、外交段階でやる仕事というものはおのずから大きなものがなきゃならぬはずだと思うんですよ。具体的にこれとこれは外交——大使級のとにかく人を送るんでしょう。日本を代表する大使級の人を準備委員会に送るとしたら、その中で大使級の人が何をやるかというのを言わぬというのは、これはおかしいですよ。ほかの委員会に回っている沖繩関係のものなら、もう具体的なものが来ているんですよ。だから、その点が言えないというのは、何か言えない外交上のそういうしきたりだとかそういう何かがあるのか歯がゆいだろうが、一生懸命やっているんだけれども、何とか本土並みですとかというようなことを言われても、これは審議のあれにはならないと思うんですがね。そこらがどうも、私、外務委員会にも行ったことがないものですからよくわからぬのですけれども、ちょっとわれわれの常識にはどうもぴったりしないんですね。
  39. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) あとからまた特連局長にも補足していただこうと思いますが、準備委員会で何をやるかということについて、外交上その他の理由で何か言えない理由があるということではないのでございます。先ほど大臣も申されましたように、復帰準備の問題はほとんど全省にまたがる問題でございます。で、それぞれの分野において、復帰準備のために具体的にどういうことをするかということを、いま非常に能率的にやっておるわけでございます。そこで、現地でそれを実施していく場合に、まあ、これまた抽象的ではなはだ恐縮でございますけれども、そういう復帰準備の仕事が摩擦なく円滑に行なわれるような、何と申しますか、場をつくると申しますか、そういう、具体的には施政権者である向こうと了解の上に進めるわけでございますから、そういうことができるようにするのが準備委員会一つの使命でございます。しからば、それじゃ具体的にどういうことをやるかというのは、いまお話しになりましたように、法曹資格の問題は諮問委員会で長く話し合いの結果、具体的にそういう結果が出てきたことによって、それが今度の立法ということにもなるわけでございますが、そういうふうにものが動きますものですから、現在どういうものがそれじゃあがってくるかといえば、これは全省の所管事項にもわたるわけで、これを、恐縮でございますが、総称して復帰準備に関する全般ということを申しておるわけなんでございまして、具体的に特別の理由でそれを言えないのだということではないわけでございまして、いまの具体的な問題については特連局長から御説明願いたいと思います。
  40. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 大体の大筋はいま東郷局長からお話しになったとおりでございますが、私どものほうで、いま愛知外務大臣からお話しになりましたような各部会を設けまして、一九七二年に沖繩が返ってきて沖繩県をつくり、そして国家事務を国で引き取り、沖繩県を創設する、そういう体制に持っていくにはどういう問題があるかということを、各部会でもう網羅的に現在検討中でございます。そして、そういうものの中で一体対米折衝を要する問題はどういう問題があるのかということを、まあいろいろ検討しておるわけでございます。例示的に申し上げますと、法務省においては、軍法会議とかあるいは民政府がやった裁判の効力はどうなるかというような問題がたとえば例示としてございます。それからまた大蔵省の関係では、この米国資産の処理をどうするか、それから、あるいは通貨の切りかえはどうするか、あるいは国有財産の継承はどういうぐあいに持っていくか。あるいは文部省の関係で例示しますと、アメリカ人学校はどういうぐあいに処理さるべきものか、あるいはアメリカがつくった琉米文化会館とか英語センターとか、そういうものはどうなるのか。それから厚生省の関係でいいますと、水道公社はどうなるのか。これはもちろん米国投資でできた、ガリオア資金等でできたものでございます。あるいは通産省で言えば、電力公社はどうなるか。そういう具体的なこのあらゆる問題、行政の各省のあらゆる問題点をいま拾い出していまして、そうして、それに七二年に復帰するにはどういう順位でまず解決しなければいかぬか、どれが緊急であるか、そして、そういうものの中でどういう問題が対米折衝を要するかというふるい分けを現在鋭意やっておるわけでございます。したがいまして、その中で、たとえばこれは対米折衝を要すると部会で認定しまして、私ども、そういうものは外務省と相談してこれは対米折衝を要する問題ということになりましたら、たとえばその水道公社の問題でございますと、これの買い取りの問題はどうなるかという問題になりますね。これはおそらく協議委員会というよりか、もっと外務省、大蔵省、総理府等のその外交ルートの問題になるかもしれません。しかし、少なくともその水道公社を沖繩県ができたときにどういう形態で将来存続さすかという問題は、当然これは協議委員会で大まかな道をきめていただかなきゃいかぬと思うのです。相談し合ってきめなければいかぬと思います。そのときに日本政府日本政府意見をもちろん言う。しかし、そういうことを協議委員会で一応どういう方向へ持っていくのがいいかということをかりにガイド・ラインをきめたとしましても、現地におきましては、いろいろ本島の水道の形態から申しまして、水道公社の管轄下に入っておるものもあれば水道公社の管轄下にない町村もあります。それから、水道公社の水源が基地の中にある部分もありますれば基地の外にあるものもある。そこで、今度はそういう具体的な問題になりますと、準備委員会で現地に即して、こういうぐあいに持っていったほうがよろしいということを軍なり民政府なりの意見を代表した米側の代表と日本代表とで話し合い、そして大体のラインをきめてもらう。そうして、それを、ルートがきまれば、これは対策庁沖繩事務局のルートで琉球政府と話し合ってその方向へ持っていく。水道公社にたとえてみますと、大体そういうことになるんじゃないかと思う。こういう、たとえば電力公社にしましても、開発金融公社にしましても、あるいはその他米国投資資産の問題にしましても、あるいは広く地位協定の適用に関する諸問題にしましても、そういう日米協なら日米協で大体の方向をきめて、そしてそれを準備委員会で現地の実態に即して、しかも沖繩住民の意見を十分反映して現地に即応するものに持っていく、こういう大体順序になるんじゃないかと私どもは考えておるわけでございます。
  41. 小林武

    小林武君 これはこういうふうに理解していいですかな。各部会というのがある。これは各省庁別でしょうね。
  42. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 必ずしもそうでもないです。
  43. 小林武

    小林武君 大体ね、それぞれのあれがあって、部会がある。その部会の中でいろいろな沖繩復帰に関する内政的な問題もいろいろある。しかし、それらの問題の中で、どうしても外交的な機関を通して折衝をしなければならないものを拾い出す。その拾い出したものは準備委員会という外交機関の中に持ち込まれていく、そうして相手方沖繩の、またアメリカ側の現地のあれと折衝する、こういうことに理解してよろしいですかな、どうです。
  44. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) そのとおりでございます。
  45. 小林武

    小林武君 そうすると、外務省というのは、外交関係の部会というのはないわけですか、それは。外務省からはその部会の中に参加している人はいないわけですか。
  46. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) まあ、外務省は総理府と同じように、行政部会、財政部会、産業経済、教育文化社会労働、司法法務、地位協定、この七部会に全部外務省は参加してもらっています。そして、ちょっと補足いたしますが、対米折衝を要するものにつきましては、この部会から出た時点で協議委員会準備委員会となりますが、それ以外の内政的な沖繩県つくりの問題も、沖繩が返ってまいりますまでは施政権がやはりアメリカにございますから、ごく大まかなガイドラインを協議委員会で了承を受ける、あるいは準備委員会報告すると、そういうことはございます。
  47. 小林武

    小林武君 そこなんだね、各部会に外務省からまた入っているわけですよ。そうすると、どういう問題があって、部会ごとに、そうして少なくともこれはこれだけのとにかく法律を出しそして人間を置くわけですから、大体どういうような仕事では外交機関として折衝しなければならぬということは具体的に出てくるはずですよ。出ないとしたら、これはおかしいはずですよ、おかしいじゃないですか。だから、いままでぼくが衆参両院を通してこういう問題について速記録を見た限りにおいては、こういう問題が出てこないというのは不思議でならない。措置する問題についてはやはり措置するということは、一体何のためだかわからない。原則をきめるのは協議委員会だ、こういうことをやって、この機関の重要性を認めて早く上げてくれなんと言うのは、ぼくは非常に乱暴な話だと思うんですよ。だから、その点についてはどうか、ひとつわかるようにやってもらいたいということを希望しておきます。  それからもう一つお尋ねしますが、返還協定というのは準備しているんだと思うんですけれども、その返還協定というのは、おそらく奄美やそれから小笠原とは違った部面があるんじゃないかと思うんですけれども、そういう問題でこの協議委員会並びに準備委員会を通して現地で処理しなければならないというような問題はありませんか。
  48. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 返還協定のほうは、協定で規定すべき内容というのは、おそらく奄美なり小笠原協定の前例から見まして、大体それに含まれておることになると思います。で、いまの復帰準備段階において、返還までに、いまの沖繩県づくりもそうでございますが、返還までに日米間で処理されなければならない問題というのはむろん全部洗い出すわけでございます。その結果、奄美あるいは小笠原の場合になかった問題でどうしても返還協定できめなければならぬという問題がもしここに出てくるとすれば、それを返還協定の中にうたう、こういうことになりますが、現在は、返還協定に関しましての、いま申し上げたような、返還のときに両政府間で取りきめなければならぬことを、日米それぞれが洗い出すといいますか整理している段階でございまして、それを両方陣容を整えて協定の策定にかかるという段階には、これもやっていることをまだ申し上げられないという意味ではなく、現在まだそういう段階に入っておらないわけでございます。
  49. 小林武

    小林武君 それじゃ、最後に一つだけお尋ねしますが、奄美小笠原返還協定についての中身を見ますと、多少違いがあるようですがね。これを一々どこが違っているかということを言わなくてもいいですけれども、大体外交専門家は、それについて、沖繩の場合には特にやはりこういうことが問題ではないかということはままあるのじゃないかと思います。言えないなら言わぬでもいいですけれども、いまお話しあったことは別に言えないことでもないと思いますが、そういうことを聞きたかったわけですが、何かやはりここで考えられることはないか。
  50. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) ただいまそういう準備段階でございますから、最終的、決定的なことは申し上げられませんけれども、私の感じでは、返還協定に盛られるべき事項というのは、すでにあります協定に出てくるようなことに大体納まるのじゃないかと思っております。具体的に奄美小笠原と比べましても、一方、奄美のほうには係属中の裁判のたとえば規定がございます。小笠原のほうにはそれはございません。これも、小笠原の場合には住民もほとんどなかったし、実際、そういう問題を取り上げて規定する必要もなかったということで、小笠原のほうにはそういう規定がないわけでございますが、両者を足してみまして、なお問題のある、条文のうしろにある問題の量は非常に違うことはあり得ると思いますが、しかし、返還協定にあらわれてくる事項としてはそう新しいものはないのじゃないかというのがいまの感じでございます。
  51. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明かにしてお述べを願います。
  53. 春日正一

    ○春日正一君 私は日本共産党を代表して、沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法案に対し、反対の態度を表明するものであります。  この法案は、「準備委員会への日本国政府代表を長とする代表事務所の設置」等を定めようとするものでありますが、その任務として、「沖繩復帰準備に関し必要な事項」について「在沖繩アメリカ合衆国政府機関との協議に当たること」を定めています。その「協議」は、愛知・マイヤー交換公文にも明らかなように、昨年の日米首脳会談と日米共同声明が敷いた路線の上に進められようとしております。  本来、わが国が沖繩問題についてアメリカ合衆国との間でとるべき態度は、すでにわが党が繰り返し明らかにしてきたように、サンフランシスコ平和条約第三条を破棄し、施政権返還とともに、核基地をはじめ沖繩県下の一切の米軍基地の撤去と米軍撤退のための沖繩返還協定の締結、それによって沖繩県の即時無条件全面返還を実現すること以外にありません。なぜならば、戦後二十五年にわたるアメリカ沖繩占領は、カイロ宣言やポツダム宣言をはじめ国連憲章の規定にさえももとる不法行為だからであります。  したがって、アメリカ沖繩返還に関して何らかの条件主張するような資格も権利も持ってはいないのであります。それにもかかわらず、佐藤内閣は、昨年の日米首脳会談において、「米国が、沖繩において両国共通の安全保障上必要な軍事上の施設及び区域を日米安保条約に基づいて保持する」ことを許し、また、「沖繩施政権返還は、日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負っている国際義務の効果的遂行の妨げと」ならないことを約束したのであります。  こうした方向での返還交渉は、沖繩県民をはじめとする多数の日本国民が望む、核兵器や基地の脅威のない沖繩の全面返還とは逆に、返還問題をてこにして、日本全土をアジア諸国に対する侵略基地にしようとするものであることは、すでに本国会の論議等を通じて明らかであります。しかも、沖繩施政権返還準備にあたって、その意思を十分に尊重されなければならない沖繩県民の代表は、日米協議委員会に参加できないだけでなく、現地の協議機関である準備委員会にさえも正規の構成員として参加することを認められず、その意思の反映は保障されておりません。  したがって、この準備委員会への日本国政府代表事務所の設置等を定めようとする本法案に日本共産党は反対であることを明らかにして、私の討論を終わります。
  54. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法案  を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  56. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  58. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記を始めて。     —————————————
  59. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 次に、  沖繩北方対策庁設置法案を議題といたします。  本法案につきましては、政府側の説明はすでに聴取いたしてありますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  60. 小林武

    小林武君 総務長官にお尋ねをしたいのですが、この四月の二十日に沖繩渡航制限緩和というのが米国の弁務官発表があって、四月の二十一日にはこれに対してかなり具体化された、大幅に渡航の簡素化が発効したと、こういうあれがありますが、これについては、いままでどういう交渉といいますか、総理府その他の政府関係のところで接触があったのでございますか。
  61. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 衆議院の予算委員会が始まりまして、共産党の林百郎委員から、私、その問題で質問を受けまして、それでもう復帰もきまったことですし、国会の御意思で国政参加法案も通していただけるという前提があるようでございますので、まず国会議員であるものは、政党、党派のいかんを問わず渡航は自由にするぐらいの決意でおりますと——してもらうぐらいの努力をする決意でおりますという答弁をそのときはしてしまったわけなんです。そのあと、どうもこれはやっかいな答弁をしたわいと思って、ずいぶん壁もございまして、いろいろと折衝もありました。その結果、ただいま読み上げられませんでしたけれども、一応発表があったというとおりの内容のものに落ちついたわけでございますが、まず国会議員については全員、二年間——と申しますと、復帰までの間のフリーパスである。並びにその秘書、随行者。秘書についても同じくする。ただし、これは国会に登録されておる秘書についてでございます。それから、国会の職員、専門員、調査員等も含めまして、これも同様に扱う。さらに、こまかな問題ですけれども、奄美大島の方々が距離的に隣接しておる群島であることももちろんでございますが、奄美大島の返還は昭和二十八年の返還でございまして、それまでは一緒に占領されておりました。その時代の中心は沖繩の那覇市にありましたので、全く昔は県が違っておったのですけれども、その八年間は同じ権力の範囲内にとじ込められたわけでありますので、人事交流が当然のことのようになされておりまして、特殊な環境にあったわけですけれども、それが、二十八年以後は逆にそれがまた沖繩と切り離されたという現象がございまして、その意味では、ひそかに渡航する者、ひそかに渡航すれば、当然「密」という字には「輸」が伴って、密輸的なことも行なわれた時代もありまして、できればそういうあまり感心しないものはすみやかに制限を排除したいと思われる局地的な問題がございました。それも今回はよろしいということになりましたし、なお、国家公務員、さらに会社等が向こうにありますための必要として、社務として往復しなければならない者等々の項目について、これが一回出されますと、それが復帰までオーケーであるということになったわけでございまして、やれやれということで、済んだとは思っておりませんが、これで第一段階が開けたというふうに解釈しております。
  62. 小林武

    小林武君 まあ、とにかく沖繩に自由に行かれないというのはおかしいと思うけれども、それでも、いままで制限があったのをかなり大幅にゆるめられたということは、これはたいへんいいことだと思います。そこで、いまお話の中に、政府の公務員、地方公務員もいいんでしょうな。
  63. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) はい。
  64. 小林武

    小林武君 それから、国会議員とかあるいは会社関係の者もいいわけですか。いま、何か会社関係の者もかまわない、こういうことですね。
  65. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 会社のほうは、はっきりと向こうにやはり会社の根拠がなければいけませんので、そういう意味で、社務ということがはっきりしなけりゃいけませんが、公務員の場合は、復帰準備ということのための公務員の渡航でございますので、これは国家公務員、地方公務員も復帰準備であれば、当然渡航の対象になるわけでございます。
  66. 小林武

    小林武君 いよいよ復帰準備がだんだん進んできて、そうしていまも法律案が一つ上がったわけでありますが、この法律案が通って、ますます現地でもって外交機関としての接触を深めるでありましょうし、あるいは大臣が、出されている法律も近々上がる予定のようですから、そうすると、総理府においても具体的にもうとにかくいままで動いておったやつがさらに今度はフルに活動するというような状況になるわけでありますが、そういう段階に来まして、渡航について簡素化され大幅に延びたということは非常にいいことなんですけれども、私は、沖繩復帰して本土化するというそういう仕事の面で沖繩側が要求するという、こういう人だってあると思うのです。沖繩の側からひとつ渡航してもらいたい、こういう者についての——者と言っては悪いですけれども、こういう来てもらいたいという方々に対する、何といいますか、渡航についての便宜というのは今度の緩和の中にはないわけですか。
  67. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  68. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をつけて。
  69. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 現在、沖繩からこちらへはフリーでございますが、ただ、人民党の瀬長亀次郎さんあたりがちょっとストップをかけられたりなどいたしまして、完全自由ではないような印象にございましたけれども、   〔委員長退席、理事山本茂一郎君着席〕 大体、今回の本土側の措置によって、完全フリーになるものと思っております。
  70. 小林武

    小林武君 沖繩だけじゃなくて、沖繩のほうからこの人間にひとつ来てもらいたいとか、そういう要請のあった者は、これは少なくとも沖繩県民の要請があるという場合には、これはやはり考慮する必要があるんじゃないですか。これは会社が現地にあれば、会社が許すというような場合も、これはいまの大臣の御答弁ですというと、許されるわけでしょう。そういうことであるならば、沖繩側からこの人に来てもらいたいという要請があって、いまのような、たとえばこれについての決定権のようなものは、何といっても、施政権が返らないうちはアメリカ側にあるとしても、一九七二年までにはとにかく一切のものは完了するというような時点に来ているんですから、そういう沖繩の必要という場合には私は許さるべきだと、こう思うのですが、この点について私はひとつお尋ねをしたいのですけれども、那覇市において公会堂をつくった。総工費百八十万ドル、そのうち日本政府二十五万ドル、琉球政府二十五万ドル、那覇市負担は百三十万ドル。この百三十万ドルの負担というのはかなり市としては重かった。それで十六万ドルは一般市民の寄付で負担するようになったけれども、集まったのは十六万ドルですから、百三十万ドルのうちの一割ちょっとですね。そういうことで、沖繩であとの金を生み出すような何らかの催しをやって、市民の負担ばかりではなかなかやり切れぬというのが、これは市長として当然だと思いますけれども、こういう事実は長官御存じでしょうか。
  71. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) どうも寡聞にして知りません。
  72. 小林武

    小林武君 いやいや、その金、百三十万ドル集めるのにきゅうきゅうしているという話を聞いておりませんか。
  73. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 聞いておりません。
  74. 小林武

    小林武君 ああそうですか。いや、これ市長がそういうふうに文書を出しているんですね、那覇市長が。これは前任者がやったにしろ、やはり市長は責任ありますよ。公会堂を建てるんでしょう。だから、これは百三十万ドルの市の負担分というのはなかなか、十六万ドルほどしか集まらない。こういうことのために催しを考えて、渡航の申請をしているわけです、日本の俳優の。佐々木愛さんという女優さんを十日間渡航申請を出したところが、これが二月の二十四日に申請して、三月十七日に不許可になってきた。そして理由はと、ちょっと総理府にいろいろ伺ってみた。そうしたら、理由はわからぬと言うんですね。とにかく一方的に「やめ」と来たら、総理府が許可するわけでもないですからね。   〔理事山本茂一郎君退席、委員長着席〕 しかし、これはどうもいささか、この段階に来て、また大臣はじめ皆さんが努力をして、とにかく大幅簡素化になっている、渡航の幅もゆるんだんですが、こういう時期に来てから、いまのような目的で、この市長もぜひ来てもらいたいと言っている。それを受けてこっちから行くのについては、やっぱり協力しましょうという気持ちでやっているわけですから、若いこの女優さん——写真見たら、顔も見たことあるような女優さんだけれども、この女優さんを入れないというのはどういうことですか。そんな危険人物かどうかということですね。この点どういうことなのかね。それは大臣でなくともいいです。
  75. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 確かにいま御指摘ございましたような、佐々木さんという女優さんが沖繩へ渡航したいと、二月二十六日に受理しておりまして、三月の十一日かに不許可になった事実は聞いております。しかし、いまお話にもございましたように、これは私のほうとしましては、一般的に渡航の許可を促進する立場に——渡航申請をする人にかわりまして、私のほうは一般的に渡航の促進をはかっておる立場でございまして、原則としては個々の個人個人につきまして、この人をどうぞよろしくとか、この人をどうとかは言わないわけでございます。で、不許可になってまいりましたが、その不許可の場合は、大体理由がほとんどついておりませんので、それから、向こうへ聞きましても、いま御指摘がありましたように、理由を明らかにしてもらえません。したがいまして、私どもはどういう関係でこれが不許可になったかはわからないわけでございます。
  76. 小林武

    小林武君 これはどうでしょうかね。そういう不許可になった場合には、もうこれは泣く子と地頭には勝たれぬというわけで、それっきりのものなんですか。私は、たとえこれが返還の期限が迫って、いまやその準備段階に入ったというような時期でなくても、一体理由もなしに、理由を明らかにしないで不許可にするというようなこと、そういうことは実際ぼくはこれこそ異民族支配というようなものをひしひしと感ずる事態だと思うのですよ。先ほど来、大臣の御答弁によるというと、国会議員でもどうもそういう扱いだと。われわれなんかも出さぬほうがいいと思って、いままで出したことはありませんが、しかし、まあ、そういう扱いを受けるということはやっぱり問題があると思うんです。特にこの場合には、いわば身元引き受けみたいなものですよ、市長の立場からいくと。目的はどこにあるといえば、市がかかえているところの公会堂の建設資金にかかわるものでしょう。そういうことに対して、いまの段階でも、これは大臣一言も言えぬものですか。これは出先の機関を通して、それからまあ大臣の場合なら、やっぱり中央の折衝もあるわけでしょうがね。これは理由が十分に明らかにされるならば、まだその理由を確かめてみるということもありますけれども、問答無用式というやつはどうも納得いかぬという気持ちなんですが、どうですか。
  77. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いまのケースは、私も局長答弁で初めて知ったわけで、私も渡航不許可になった人を毎日毎日一覧表を持ってこいと言っているわけでもありませんで、いまの女優さんがどういう女優さんなのか私よく存じません。が、事前に、こういう目的で行くのである、たとえば那覇市長より私に、今回こういう目的でと——おそらく建設資金をその人のショウかなんかによって得られるためなんでしょう——そういうようなことでお話でもあったと仮定をいたしますと、私のほうより事前に、こういうことであるからということでお願いをするということはあり得ると思いますが、一ぺん却下措置と申しますか、だめだと言われて書類上来たものをもとに戻すのは、その原因を明らかにしませんので、私のほうは出すのはオーケーと言っているんですからね。向こうのほうで公安局がこれをチェックするということでありまして、大体もう弁務官、民政官等との間にはたいへんソフトな空気になっておりますけれども、そこらのところがちょっと日にちも古いようでございますが、公安局あたりのところで何かあったのかなと思いますが、一ぺん出ちまいますと、それをもとに戻すのはたいへん困難であるように考えます。しかし、これからはだんだん、先ほど第一段階をとびらを開いたということを申しましたけれども、これからまあまあ相互に自由な行き来ができることが実質上の本土化への第一歩であることは間違いありませんので、あまり好ましくないことが次々と発生しないように、私は不断によくそこらのところで連絡をいたしてみたいと考えます。また、現地に行く機会でもなるべく早く持ちたいと思いますが、行きましたならば、現地のそういう担当者をランパート高等弁務官等との話し合い等の中に入れてもらいまして、なるべくなごやかに話し合って、トラブルの少なきことに努力したいと考えます。
  78. 小林武

    小林武君 この中に「渡航の目的」というところに「那覇公会堂建設募金後援のため」と書いてありますね。そういう目的のために十日間入るということなんですが、それで、これは局長にお尋ねしたいんですが、すにで先ほど来からの話だというと、各部会ができて、こちらのほうではいろいろな面で検討なさっているんだが、渡航の問題について検討したかどうかわかりませんが、渡航だって問題あると思うんですよ。渡航のことの問題でも、やはりこれは施政権返還のときにはどうなるかという問題あると思うんですね。そういう折衝は、現地の準備委員会が、きょう通ったわけだから、発足するわけですね。その事前の中でも話し合いが行なわれているわけなんですけれども、この問題を両者の折衝の中に取り上げるということは不可能ですか。これはどうですか。
  79. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 渡航の簡素化の問題につきましては、各省連絡会議の部会と申しますより、総理府と米国政府の公安局長との間で定期的な会談をやっておりまして、その中から今日までの簡素化を実現してまいったわけでございます。適当な時期に、そういう近い機会にございますれば、まあ具体的にこの人をどうなんだ、どうなんだということはなかなか言いにくいと思いますけれども、向こうが、いま大臣がお話しございましたように、具体的に態度をきめてしまったあとでございますから。しかし、そういう問題のあることを含みまして、将来の渡航の簡素化等につきましても十分話し合ってまいりたいと思います。
  80. 小林武

    小林武君 大臣にもひとつ聞いていただきたいのですが、私は、やはりこういう公会堂を建ててしまって金が集まらんということになりますと、これはやはり責任者というものは容易じゃないと思うのです。それについて本土の側の者が少しでもお手伝いができるということになれば、それは行ってひとつやってやろうというのは当然なことだと思うのです。そういう場合には、いままででしたらば、とにかくこれは一度これを拒絶したら問答無用になるかしらんけれども、これからはしかし話ができるのではないかと、私は政治的折衝でそれが可能ではないかと思うのですよ。また、その努力をするということが沖繩復帰問題の一歩一歩のとにかく前進だと私は思うのです。復帰問題を完全にするというためにもそういう努力は払わなきゃならぬ。その努力を払うためにこそ、いろいろな、準備委員会もつくったし、外交段階での話し合いの場も、総理府は沖繩・北方庁をつくって、さらにもっと具体的な問題を内政的にとにかく完全に遂行しようという考えなんだ。私は、これをいまここで急に質問を展開していっても、なかなか言えないところばかりらしいから、こういう問題については、やはり扱いを、一回やられたらだめですということだけは、ここで言ってもらいたくないのです。最後までそういう努力をする。  それから、先ほど大臣のお話の中にあったけれども、大臣総理府のほうには、そういうかくかくしかじかの理由で渡航申請しているというようなことの力添えをやっぱりぼくは出すべきだと思う。それがなかったということは、ちょっと一つの手落ちでもあるかと思う。ただし、いままででは、もう大臣、相手にしてくれない。今度の大臣はちょっと違うからやってくれるからあれだけれども、前にはどうだったか知らんけれども、そういうやはりゆとりというものは持ってもらいたいと思うのです。  きょうはこの程度でとにかく質疑は終わるつもりなんです。また今度、来週になりますか、引き続いて質問をいたしますけれども、ひとつ大臣も、きょうは初めて耳にされた御様子でもありますし、それからまた、那覇市の公会堂問題についても、まだ耳に入っていらっしゃらないようだから、ひとつその点もちょっと御検討をいただいて、この次またこの問題についてお尋ねしたときには、しかるべく意見を述べていただきたいと思うわけです。
  81. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、前に沖繩の軍労支援の大会がございましたですね、そのときなどは、社会党の——名前をあげませんが——諸君から頼まれまして、どうもあぶないようだから頼むと言われまして、私が保証人ということで、頼んだ人がみんな行っていただきまして、何のトラブルもなく帰ってきていただきました。ですから、那覇市がなぜ佐々木愛さんという方だけに固執しておられるのか、そこらのところは私もわかりませんが、事前に、目的は、そういう公共的なものをつくるための、公共目的のための、しかも、公共団体からの正式要請であるとするならば、その方をいま掘り起こせと言われるとちょっと私も色よい返事のできかねる点がありますけれども、十分事前に、たとえば那覇市長より公文書をもって、琉球政府を経由して、総務長官において格段の配慮をせいというようなことでありますれば、これに国のほうで補助もいたしておる建物の建設にかかる自己資金調達の問題でありますから、私は努力するのにはやぶさかではございません。
  82. 小林武

    小林武君 私の質問はきょうはこれで終わります。
  83. 川村清一

    ○川村清一君 先ほどは外務省関係準備委員会の法案が一つ上がりまして、日米準備委員会というものは正式に発足することになるわけです。きょうは総理府所管の沖繩・北方対策庁の法案を審議するわけでありますが、これが審議を終えて成立いたしますと今度は沖繩・北方対策庁という行政機関になるわけであります。  そこで、きょうは私、政策論議は一応来週のほうに延ばしまして、この法案は、要するに「沖繩・北方対策庁の所掌事務の範囲及び権限を定める」ことを目的とした法案であり、こういう行政機関ができてまいりまして、すでに存在する日米協議委員会、それから日米準備委員会、そして沖繩・北方対策庁、言うならば、いよいよ沖繩復帰のための具体的な準備を進めていくということになるわけでございます。そこで、私の心配しておりますことは、沖繩復帰準備のためのいろんな機関がたくさんできたことによって、沖繩復帰準備が進められ、そして、願うところのほんとうに沖繩県民のための豊かな沖繩がそこに建設されると、こういうことにはならないのであって、要するに、機関が多いこと、いわゆるいろいろと心配し準備するそういう行政機関がたくさんできることを一がいに悪いとは言いませんが、できて、これがほんとうに有機的な緊密な連絡がとれて、そして一体的な姿の中でそういう方向に行政事務を進めていかなければ、かえって船頭多くして船山にのぼるといったようなことにならないとも限らない、こういうことを心配しておるわけであります。そこで、この準備委員会法案審議の際に、私は外務大臣並びに政府委員に対しまして、日米協議委員会日米準備委員会との関係等についていろいろ御説明をいただきました。しかし、なかなかぴんと来ないわけであります。そこに沖繩・北方対策庁という行政機関ができる。この三者の関係がどうなるのかということ、これは先ほど小林委員質問されまして、外務省のほうの答弁では私自身もよくわかりませんでしたが、山野特連局長の説明を聞いて大体まあわかりましたが、なお完全に了解したという段階には参っておらないわけであります。そこで、私はこの三者の関係というものをもう一度よく承りたいわけであります。願えれば、先ほど申し上げましたように、これらの機関がほんとうに一体となって県民のための豊かな沖繩県をつくるという方向に向かってひとつ強力に働きかけていただきたいと、こういう願いでお尋ねしておるわけであります。  そこで、もっと具体的に申し上げますと、日米協議委員会の構成メンバーは、外務大臣と総務長官と、それから現在のところは、アメリカ・マイヤー大使でございます。で、この機関はいわゆる最高の基本的な問題をいろいろ協議し、そうして復帰のためのいろんな基本的な問題を出して、そして方向をきめる機関でございますが、それを受けまして、今度は日米準備委員会という機関がもっと具体的に問題を議論して、そうして具体的な方向を出していくと、こういうふうに承っておりますが、この準備委員会の構成は日本政府代表——大使級の人が当たるのでございまして、現在のところは高瀬大使が当たることになっておるわけでございます。それから、アメリカ側はランバード高等弁務官が当たる。そして琉球政府の屋良主席が顧問となる。そこで、私の最も心配したのは、その「顧問」というのは、常識的に言うと、われわれ俗っぽい議論でございますが、人間の器官にたとえるならばへそみたいな存在である。そんな、へそみたいな存在の顧問ではしようがないじゃないかということをせんだって議論いたしましたら、愛知外務大臣は、へそどころかこれは心臓である、いわゆる屋良主席の発言というものは百万の県民の意思を代表して発言されるのであって、これは最も重要な発言である、この委員会の構成の中におきましては、まあ施政権がまだアメリカにあるという関係等もあり、顧問という名称になっておるけれども、これは何も決してへそではない、まさに心臓である。こういうような御答弁をいただきまして、私どもも若干わかったわけでございますけれども、この準備委員会総理関係の機関の方が入っておらない。もっと上の最高の機関にはもちろん総務長官が入っておりますが、この準備委員会の中には総理府を代表している方が入っておらないという点を私は一ぺん指摘したいわけでありますが、これで不都合がないかどうかということが一つであります。  その次に、さて今度は、準備委員会で具体的に流い出された問題、これを実際に今度は処理していくといいますか、そういう権限を持った機関がこの対策庁だと思うわけであります。そこで、対策庁の今度は、何といいますか、責任者は長官と、こういうことになりまして、ひとつ重要な機関になってまいるわけでございます。しかし、対策庁は東京にあって長官は東京にいる。現地の仕事がまあ大事な仕事だと私は思うわけでありますが、その現地には沖繩事務局というものができる。現在は日本政府沖繩事務所でございますが、今度は沖繩事務局ということで、まあ昇格と言っては語弊がありますが、行政機構そのものも大きくなってくる。それから一方、外務省関係で、いわゆる日本政府代表の大使のもとには日本国政府代表事務所というものがあるわけでございますが、そうしますと、現地で、この外務省所管のいわゆる日本政府代表事務所とそれから総理府所管の沖繩事務所との連絡、提携、こういったようなものが大事な行政事務になってくるんじゃないかと思うわけでございますが、これらは一体どういうふうに仕事を進められておるのか。冒頭私が申し上げましたような一まつの危惧がございますので、そういうことではないんだと、この私の心配をひとつ払拭していただくように十分理詰めのできるような説明をまずいただきたい、こう御質問申し上げる次第でございます。
  84. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはもう明快でございまして、現地の準備委員会は、現地において外交折衝を要するものは全部準備委員会でやります。沖繩事務局の対策庁のほうの出先は、これは現地業務を中心といたしまして、琉球政府との間に緊密なる連絡、提携、あるいはときによっては指導、相談、そういうことを行なうわけでございますが、その間の困難は何もございません。したがって、対策庁の出先において相談をしているときに、外交折衝を要する問題であると思った場合には、現地においては準備委員会に上げます。それでなお、外交折衝において、より高度の折衝が必要である場合には、私も参加した日米協議会の中に持ち込まれて、そこで最終決定がなされます。ということでございますので、なるほど機構から見ますと、同じ沖繩復帰対策を急ぐのに両頭立てであるというふうにあるいはお考えかもしれませんが、これは割り切っておりまして、内政問題はこれは私どものほう、外交折衝を要するものはこれは外務省の出先ということで、混乱のないように考えておりますし、そういうふうに運営したいと考えます。
  85. 川村清一

    ○川村清一君 山中総務長官の御説明はまことに明快でございまして、そのとおりであればちっとも心配はないわけでございます。ところが、日本の行政機構またはその衝に当たっておる役人、どうもセクト主義がございまして、なわ張り主義が非常に強うございまして、ちっとも問題はないのだと、それは明快だと、あなた頭がよくて、まことに明快に頭の中は整理されておりますが、実際問題はなかなかそういかない。これがいわゆる日本の行政の一番のガンになっているのじゃないかと思います。それで、もっと機構を改正せいとか、いろんなことが出てきておると思うわけでございます。  そこで、そういうことであれば、私率直にお尋ねしますが、先般、愛知外務大臣にお尋ねしたわけでございます。この日米諮問委員会というものがかわって今度は日米準備委員会になり、諮問委員会日本大使が今度は準備委員会の大使になる。準備委員会を構成するところの現地の日本国政府代表事務所がいろいろ仕事をやっていく。これは外務省所管であることは申すまでもないわけでございます。ところが、このほうは至って職員の数も少ないわけでございます。準備委員会アメリカ当局と現地においていろいろ折衝していく。話し合いという協議だけならば、これは人がそんなに要らないと思うのでありますが、その委員会に行って話をするまでには、資料集めであるとか、いろいろな事務があると思うわけです。それじゃ、その事務を担当するだけの職員がこのほうにいるのかということを尋ねますと、そんなにいないと。それじゃだれがそういうことをやるのかと、こういうことをお尋ねしましたら、外務大臣の御答弁は、今度はこの対策庁の沖繩事務局というものができる、そこで、事務局の職員をして兼任させるのだと、こういうような御答弁をいただいたわけでございます。そうしますと、総務長官のもとにある沖繩事務局の職員が、今度は外務大臣の所管の日本国政府代表事務所の職員と兼ねるということになるわけでございますが、この辺については、最高責任者である総務長官と外務大臣との間にはすでに話し合いがついているのかどうか、この点お尋ねいたします。
  86. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私と愛知外務大臣の間には何の食い違いもございません。さらに、当委員会でございましたか、現在の総理府の出先が今回事務局——局に昇格をして、その局長が依然として公使の身分を持つのかどうかという意見が——たしかここだったと思いますが——あって、私は、そんなものは要らぬと思いますと言ったのですが、やはりどうも外務省のほうも私のほうも、現在施政権下にあるために、やはり対策庁ができましても、出先の長は公使の身分というものを合わせ持ったほうが何かといいような話を聞きましたので、私もその場で、そのほうが何だかうまくいくようでございますのでいまのままでいきますと答弁したのですが、相互にそういうふうに協力し合った形をとることがかえって混乱するということも言えるかと思いますが、まあ、画然とこれを区別いたしておきましても、そこらのところは、逆にまた私も出しゃばり過ぎて、外務省のここにいる東郷君あたりから、何だあの野蛮人がというようなふうに見られているというような新聞記事等も少し出ましたし、あるいは、出先の日本側の大使と私のほうの出先の責任者とが仲が悪いとかいうようなことをよく言われたり書かれたりするのですけれども、要するに、だれのために何をしているのだということであれば、これはもう、沖繩県民のために一刻もすみやかなる復帰準備の体制の確立である。そして、その復帰そのものが、復帰色をなくしたすみやかな復帰につながる、なだらかなる推移のための沖繩県民のための作業であることに思いをいたすならば、そのようなつまらぬささたることは言われることのないような体制を、私は、私のほうの責任者として愛知さんとともに努力をしてまいるつもりでありますから、その職員の身分がある程度兼任とか、あるいは私のほうが公使の称号と申しますか、そういうものをもらうとかということは、まあまあたいしたことじゃないじゃないかと思っているのですけれども、弊害の起こらぬように気をつけます。
  87. 川村清一

    ○川村清一君 弊害の起こらぬように十分気をつけていただかなければならないのですが、それで、なぜ私がそういうことを心配するかといいますと、私も実はこの委員会にずっと長くおりますので、昨年とことし二度、委員会から派遣されて沖繩調査に出ておるわけなんです。そして政府の機関とも、行っていると非常にお会いし、お話を聞いております。そこで、総理府所管の日本政府沖繩事務所の職員と一方諮問委員会の職員があるわけですが、両方、こう行きますと、どちらかというと、われわれを案内してくれるのはこの日本政府の職員が案内してくれますが、どうも両方の機関の職員をこう見ますというと、外務のほうの職員のほうがやはり少しいばっていますね。そうして総理府のほうはどうも、何といいますか、遠慮しがちです。私は全く同格だと思っているのです。そして、ただいま長官の言われましたように、一体だれのために何をするのだ、だれのために何をせいという日本政府の命令を受けて来ておるとするならば、当然同格であり、上下の区別がないと思うわけでありますが、実際現地に行って見ますというと、そういう感じを強く受けるわけであります。そこで非常に心配して申し上げるわけです。  で、兼任させる。まあ兼任させるということはどういうことかというと、その職員の身分は確かに総理府の職員になろうと思うのですが、その職員に対して外務省のほうからまた何か辞令が出るのですから、外務省のほうの仕事もする。ところが、外務省の役人のほうがえらくて、いつも何か命令されているようであれば、なかなか、人間でございますから、また役人というものはそういう非常に気風が強いわけでございますので、長官の言うように、あっさりしたそういう気持ちでなかなかやらぬではないかと、こういうようなことから、いろいろな機関ができることがかえってその機関に所属しておる職員の融和というものを欠きますから、同じ目的に向かって一致協力して進んでいくというそういう姿が、もしもそういうようなことで弱まってまいりまするならば、そのことによって迷惑をこうむるのは百万の沖繩の県民でございますので、こういう点で申し上げておるのですが、その、外務省のほうが上で総理府のほうが下だというようなことにならないようにやってもらわなければなりませんが、長官、いかがですか。
  88. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それはあなたの見方で、見る人によれば、山中のやつがいばって愛知さんはたいへん低姿勢であるというふうに見る人もおるかもしれませんし、仕事が、現地では総理府のほうは、何と申しますか、作業員、土方的な、一生懸命こつこつと琉球政府と一緒になって仕事を同報共苦でやっております。外務省筋のほうは、どっちかというと、シャンペングラスにタキシードというそういう外交官が多いかもしれませんし、そこらが、どうも外務省のほうがすっかりいばって沖繩事務所の総理府のほうがどろくさいというふうな感じがするかもしれませんが、そういう感じがするということは、何らかあるのかもしれませんので、私、現地に参りましたら、両方を含めて懇切丁寧、かつ、きびしく訓示をたれて帰りたいと思います。
  89. 川村清一

    ○川村清一君 これは山野さんの御答弁でけっこうですが、第十条の三項の「外務大臣局長を指揮監督する。」というのは、これはどういうふうに受けとめたらいいのですか。
  90. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) この沖繩事務所——現在の日本政府沖繩事務所も沖繩現地の米側と交渉する権限があるわけでございます。で、その権限が、沖繩事務局ができましてもそのまま引き継いでいくということになるわけでございまして、したがいまして、現在でも、日本政府沖繩事務所長が米側と協議する場合は、これは外務大臣の指揮監督を受けておるわけでございます。したがいまして、外交一元化と申しますか、沖繩事務局にその権限が引き継がれた場合に、米側と協議する場合は外務大臣の指揮監督を受ける、かように相なるわけでございます。
  91. 川村清一

    ○川村清一君 局長というのは現地の局長ですね。
  92. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) さようです。
  93. 川村清一

    ○川村清一君 「外務大臣局長を指揮監督する。」ということは、現地においては、要するに、外務省のいわゆる大使が局長を指揮監督する、こういうことになりますか。
  94. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) さようではございませんで、外務大臣が従来から行使していた沖繩事務所長としての、あるいは将来沖繩の事務局長として外務大臣の命によって米側と折衝するという、そういうルートにおける外務大臣の指揮監督でございます。準備委員会の高瀬大使は、これは全く別の資格の、沖繩返還準備のための現地における外交折衝を要する事項についての大使でございます。
  95. 川村清一

    ○川村清一君 そうしますと、愛知外務大臣は、山中総務長官に何の相談もなく、いわゆるこれは外交権の発動でございますから、山中総務長官の部下の沖繩局長に対して、これをやれあれをやれというような指揮監督をし、そうして、その結果は山中総務長官には報告する必要はなくして、その旨を内閣総理大臣に通知すると、こういうことでございますか。
  96. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私を何かおこらせて食い違い発言でも引き出そうというつもりかもしれませんが、そういうことじゃございませんで、総理府の出先で、総理府プロパーの仕事で、了解も得ておかなければならないことがございますから、そういう意味外務大臣の指揮というものもあるのでございますけれども、身分その他については、総理府の職員として厳然として私の指揮下にあるわけでして、愛知外務大臣が、あいつはだめだからやめさせたぞといって私に通知をするというものではございません。
  97. 川村清一

    ○川村清一君 それでは第四項、これも山野さんに御説明いただきますが、四項の「主任の大臣は、局長を指揮監督することができる。この場合において、当該指揮監督をするときは、主任の大臣は、内閣総理大臣に協議しなければならない。」、三項は「内閣総理大臣に通知しなければならない。」、四項は「内閣総理大臣に協議しなければならない。」、こういう違いがありますが、これは第四項はどういうことですか。
  98. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 各省大臣沖繩事務局長を指揮監督する場合はいろいろな場合にあるわけでございまして、たとえば援護事務等につきまして厚生大臣沖繩事務所長ないし将来の沖繩事務局長を指揮監督する場合があるわけでございます。しかし、現実は施政権アメリカにございますから、したがいまして、ストレートに大臣が指揮監督するということになっておりますけれども、本来内政上の事項につきましては、施政権が別でございますから、総理府を通して指揮監督するというのが現実の姿でございます。したがいまして、法文上は各大臣が援護業務その他所管の仕事について沖繩事務局長を指揮監督いたします。その場合には当然その所管大臣と協議をして、内政上のことでございますから、しかも施政権アメリカにございますから、したがいまして、そういう場合には特に協議をするということになっておるわけでございます。ただ、外交の問題は、これはもう外交プロパーの問題でございますから、したがいまして、これは直接指揮監督する、そうして事後に報告するということに相なっておるわけでございます。
  99. 川村清一

    ○川村清一君 そうしますと、内政上の問題につきましてはこの法文にはこう書かれておるけれども、総理府長官が知らないうちに各大臣がかってに局長を指揮監督するなんということはないのだ、こういうふうに理解していいですか。
  100. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) さようでございます。
  101. 川村清一

    ○川村清一君 もう一点、大事なことですからここをはっきりお答えいただきたいのですが、これは、山中長官は、口を開くと、言われます。先ほども言われました。一体だれのために何をすると、結論的に言うならば、豊かな沖繩県づくりであり、そうしてほんとうに沖繩の県民をしあわせにするための仕事をするのだ、こういうことでございます。これに対しましては全く異議がございませんし、そういうつもりで私も質問を申し上げておるわけでありますが、そうなりますと、その行政の仕事というものは、まず何といいましても、県民が何を望んでおるかという、県民の意思というものをまず聞かなければならないだろうと思うのです。その県民の意思に基づき県民の意思を反映してそうして行政を進めていくことによって、ほんとうに県民のための沖繩県がつくられると私は考えております。ところが、その県民の意思を聞く機関が明確にこの法文上にないわけでありますが、どうも、とかく役人さんというのは、自分の考えで、自分のペースで事を運んでいくというのが非常に強いわけでございますが、一番大事なこの県民の声を聞くこの準備委員会のほうには、屋良主席は、顧問ではございますが入っております。そこで、顧問とはけしからんというのでやりましたら、これはいまの法令上、顧問ではしょうがないけれども、しかしこの顧問は単なる顧問ではない、へそではなくて心臓だ、こういうお答えがはっきりあったわけです。ここのところは一応それで了解いたしましたが、今度は、対策庁のほうが具体的に仕事を進めていった場合において、県民の声、意思というものをどういうふうにどのところでこれをくみ取って反映するようになっておるか、この法文の上にはどうも明確にされておらないのでして、私はここの点をはっきりお答えいただきたいと思います。
  102. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私のほうは、あえて顧問をだれにするとかなんとかということをするまでもなく、琉球政府との間において、琉球政府に対する財政援助を中心とする復帰準備というものが日常の業務でございますから、常時連絡をしておりますし、それでも議会という形の接触はなかなかとりにくうございましたので、琉球政府において今度は議会にも復帰対策の委員会をおつくり願うようでございます。そういうような形ができますと、これらの方々も、単に行政府方々1いわゆる琉球政府の執行部の方々のみならず、相談の場合には一緒に、おそらくそういう資格を持って参加されるだろうと思いますので、これは私どもは毎日がお互いの相談事でございますから、どこかでか別にお座敷を設けて、沖繩人たちの意思と無関係に何かをやっていくというものではございません。その意味で、屋良主席が現地の準備委員会の顧問であるというような形を必要とするものとは少し内容を異にしまして、屋良主席そのもの、琉球政府そのものというものと私たちとは常時やることが私たちの任務なんだということで御理解願いたいと思います。
  103. 川村清一

    ○川村清一君 もちろん、現地の対策庁の機関は、琉球政府といろいろの連絡をとり話し合いをされる。これはやると思うんです。また、当然やらなければならない。しかし、聞くというよりも、聞くという形において押しつける、こういうことが強く出てくるんでないかをおそれるわけです。日本政府において、もう一つのものをつくって、そうして一応聞くという形はとるでしょう。しかしながら、それは実態はそうではなくて、すでにきめたものを、方向を押しつけていくというようなことになりますれば、ほんとうにこの県民の意思を聞いたことになりませんので、あるときには県民の意思を無視しても強引に押しつけていくと、こういうことも大いにあるような心配がありますので、私はお尋ねしております。  それから、長官を前に置いてあなたをほめるのも、これは悪いのですが、山中長官は、まあ、あなたは台湾にも住み、鹿児島出身ということで非常によく知っていらっしゃるし、そして役人離れして野人でございまして、答弁も明快にされまして、聞いているほうが気分がいいわけでございますけれども、非常に熱意を持っていることはこれは評価しておるのです。まあ、やることにおいて、全部がいいかどうかは別として、熱意あるということだけ一応認めます。しかし、これは七二年に沖繩復帰してまいりますが、それまであなたが総務長官をされておるとは私は考えておらないわけであります。ときによれば、この秋あたりに内閣改造でもあった場合に、あなたがまたおやめになるようなことがあれば非常に私は残念だと思うのです、ここに関する限りにおいては。そこで、この次にだれが大臣になられても、あなたの考えていらっしゃるような、その意思でもってこの準備の作業がどんどん進められていく。そうして、ほんとうに県民の方々が喜ぶような、そういう沖繩をつくっていただかなければなりません。かわった大臣によって、あなたの意思が受け継がれないで、後退するようなことになったら、非常に困るわけでございますので、私は、この法文には確かに第九条の第一項にちょっと書いてありますけれども、この程度では弱いんではないか。もっともっと、ほんとうに沖繩のためを思い沖繩県民をひたすら思ってこの準備作業を進めていく。こういうことにならなければ、そういう対策庁でなければならないと思うがゆえに、この法案だけを読んでの設立される対策庁に対しましては一まつの不安を持つものですから、あえてお聞きしておるわけであります。御見解を承りたいと思います。
  104. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 常識上、私の党の総裁選挙が十月に繰り上げられると仮定いたしましても、十月までは逆に私が懈怠なき限りはつとめるわけでございますので、その間に四十六年度予算の編成に関する各省の大蔵省に対する考え方、予算の要求がございます。そのときが、一つの具体的な予算に関する、新しい復帰に関する沖繩の第一歩がそこに明示されることになろうと考えます。さらに在任中におきまして、私が、将来どなたがお引き継ぎになるにしても必ずその方向でいかれることに対して支障のないように、そうしてそれが沖繩の大多数の人々がそれを歓迎する方向を明らかにして、それに対する関係各省の協力、了解を事前に取りつけておきまして、あとの人のやりやすいようにしておかなければならない義務がある、こう私は考えておるのであります。
  105. 川村清一

    ○川村清一君 昨年十一月の佐藤ニクソン会談、これに基づく日米共同声明、この時点において七二年復帰決定したわけであります。したがって、昭和四十五年、四十六年、この二年間において準備の作業が進められていかなければならない。したがって、その予算措置も、ただいま長官は四十六年とおっしゃいましたが、四十六年は一番仕上げのための予算でございますから大事でございますから、まず四十五年度予算から当然二カ年計画ということで考えていかなければならないと思うわけでございます。予算面等を分析し、また検討し、また議論することはあとに譲りますが、さしずめいまの問題を長官にお尋ねしたいのですが、新聞で承知しただけでございますから深い知識はございませんが、琉球政府は七一年度予算を編成するという作業を進められているようでございますが、非常に財源難で、七一年度予算の編成が困難になっております。そこで知念副主席が本土政府に対して、とてもこの財政ではできないので、ぜひ借り入れ金その他援助いただきたいということで、こちらのほうに参っているというようなことを新聞で承知したわけでございますが、おそらく長官のところにもお見えになったと思うわけでありますが、琉球政府が七一年度の予算編成に非常に困っている。これは原因はどこにあるかということは、申し上げるまでもなく、アメリカの援助費が大幅に削減したことに基因しているわけでありますが、差し迫ってのいまの問題に対して、本土政府はどう対処し援助しようとしているのか、この点ひとつ御説明願いたい。
  106. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 四十五年度予算の編成は、これまでの予算編成のルールとして、昨年の八月三十一日をもって締め切ってございまして、でありますので、私は就任いたしましてすぐ予算編成に取りかからざるを得ない時間的な環境下に置かれましたけれども、それでも現地の事情を十分承りまして、普通ならばあり得ない時期において追加要求をいたしまして、復帰記念事業の五島嶼における縦貫道路、あるいは水資源の調査費、あるいは戦跡記念公園等を復帰記念事業として新しく予算をつけたわけでございますが、これは、何しろそのような環境にございましたので、本格的な骨組みになっていないことは事実であります。しかし、おそらく一九七〇年度のアメリカ側の会計年度中において、二百万ドルの年度執行半ばにおける予算の削減という事実がございましたし、予算教書その他の七一会計年度に対する姿勢から見ても、相当にアメリカ側施政権者としての支出は減るだろうという見通しがございましたので、国税を納めていないところにつかみ金、交付税的なものはいかがであろうかという大蔵省の反論等もございましたが、県政援助費の二十億並びに調整費の十億というものを一応は確保をして、何とか十一月に、七二年復帰のめどのついた沖繩に対する予算としての応分のていさいを整えることに一応成功したわけでございますが、その後会計年度の三カ月のズレによりまして、予算編成のころに私が知っていたならばまだ道があったであろうと思われますけれども、現在の段階で一千万ドル本土政府に追加援助をしてほしいという要請でございました。その歳入がはたして見積もりが妥当であるのか、あるいは歳出がほんとうに一千万ドル足らないのか等は相関しますけれども、こまかく少し詰めてみたのですけれども^たとえばこちら側の私どものほうの考え方は、当然経済見通しに対する成長率は対応すべきものとしてそれぞれの租税収入の見積もりに合うわけですけれども、琉球政府の現在の場合では、少なくとも経済成長の見通しというものに対する成長率に対応しては、予算の分は三百万ドルくらい見積もりが過大であるようでございます、税収において。まあしかし、それくらいのものでは、これは関係はありますけれども、一千万ドル対三百万ドルでございますから、とても無理なことでございまするし、こまかく、琉球政府の職員の本土に対比した給与のレベル、そういうようなもの等もありましょうし、また、定員の規模等の問題もございましょうし、いろいろと問題があろうと思います。思いますが、一番今回の一千万ドルの原因になりましたのは、アメリカ側琉球政府に対する援助の総額が五百万ドルくらい減っておりますが、その中の質が実は大いに変わった。ということは、総額においては五百万ドルそこそこの減にとどまったわけでございますけれども、その中にいままで六百万ドルの教職員の給与、すなわち義務負担分の、当然現地側の琉球政府が、アメリカ側が援助しようとしまいと、見なければならない義務経費がいままでは入っていて、今回は落された。なお、これと似たようなものですけれども、琉球政府としては義務経費である高等学校その他を含めた援助が二百八十万ドルくらいある。総計九百万ドル近いものが、琉球政府としてはまともに、総額においては対比すれば五百万ドルですけれども、琉球政府自体の行政執行の面において絶対に必要な予算としては九百万ドル近いものが穴があいた。それやこれや、減税もやらなければならない、ベースアップもやらなければならない、県単等もやらなければならないというような事情を踏まえて、琉球政府の現地における部分的な油税もしくは物品税等を中心とする増税が差し引き三百五十万ドル、あるいは民間の市中銀行からの借り入れ金が三百五十万ドルというようないろいろな苦労も一応はしておられるようでございますが、どう差し引きしてみても一千万ドルがやりくりがつかないという御相談でございます。知念副主席とは私二回会いましてこまかに詰めてみたのですが、ある意味において知念副主席も、私はわりと数字のほうにこまかく突っ込んで聞くほうなものですから、専門のそういう企画局の、こちらで言う主計局的なものも連れてきておられませんし、ややそこらのところはこまかく断定的な詰めばできませんでしたけれども、いろいろと研究した結果は、やはり一千万ドルではなくとも、相当の金額が、琉球政府の欲する予算規模を確保しようとすれば、なるほど足らないということは私も同感いたしました。しかしながら、皆さんも御承知のように、本年度予算の成立は先週のことでございまするし、これをいま予算の会計年度が三カ月ずれていたからといって、さしあたり予備費からこれをというようなことも、予備費の内訳が公務員給与の人事院勧告完全実施ということに第一の控除要因を置きますと、災害復旧費すらあるいは足らなくなるかもしれないというような予備費でございますので、とてもこの中から、金額は別といたしまして、先取りをするということはちょっと考えられない環境にございます。そこらのところをよく懇篤にお話しいたしまして、現地に帰ってもう一ぺん相談してみたい、主席からも、もう少しこちらのほうで研究したいからまあ総務長官にあまり無理を言うなという電話も受けましたということもございまして、一ぺん昨日お引き取りをいただきまして、そうして現地側で議会の方々ともいろいろ御相談をなさいまして、暫定予算というお話がございましたが、復帰が固まったのに暫定予算ではいけません、暫定予算というのは、たとえば三カ月の暫定予算をかりに組むとしても、四カ月目にはこうなりますということを前提にしたものでないと暫定とは言えませんので、全く見通しが立たないから組むのを「暫定」とは言わないわけでありますから、そこのところをよく説明いたしまして、琉球政府の側でもう一ぺん、どのような手段がとれるか、場合によっては全額不足分を民間銀行から借り入れることが可能かどうか、それらについて、将来利子の補給等を本土政府のほうで、年度半ばにおいてでも、あるいは来年度予算においてでも見てもらえるかどうかというようなこともお尋ねがございましたし、これは来年度予算のことはちょっとことし約束できませんが、私どもも十分に、復帰の第一年度において琉球政府が財源上にっちもさっちもいかない、予算が執行できないというような編成状態にあることを人ごとと思っているわけではございませんが、財政法の仕組み上、いまのところ直ちに、琉球政府が一千万ドルほしい、足りないとおっしゃってきた、そのものの数字をもうちょっと確認いたしませんと、私自身も自信が持てませんし、現地においても少し相談をしてみたいとおっしゃっていますので、その結果を待ちましてもう一回御相談に来られるかもしれませんし、十分また御相談してみたいと考えております。
  107. 川村清一

    ○川村清一君 ただいまの長官の御答弁を承りまして、琉球政府の財政の困難性というものがなお深刻なものであるということが理解されたわけでございまして、そういうようなことで七一会計年度の予算が編成できない、暫定予算を組むのだといったようなことが現実の姿としてあらわれるならば、私どもは、政府がいま沖繩復帰のためにもろもろの施策をやっておるというようなことを幾ら言われましても、それは絵に書いたモチになる、現実の姿を聞こうじゃないかといったようなことはどうも信用できないことになりますので、財政上のいろいろな問題もありましょう。しかしながら、借り入れ金に対する日本政府が債務を保証するとか、あるいは借りたものに対する利子補給を約束するとかいろいろなことで、ぜひこの難局を切り抜かせていただくように御努力を願いたいと私は思います。そうでなければ、あなた方が幾らりっぱなことを言っても私ども信用いたしませんのでぜひひとつ重ねてその点で御努力をお願いをいたします。  それから、この法案でございますけれども、これは復帰のための準備を目的とした、そういう行政機関をつくる法案でございますが、その復帰は七二年というふうにきまっておりますけれども、しかし、この法案が時限立法でない、時限立法的な形をとっておりませんが、そうしますと、七二年に沖繩復帰した時点においてこの対策庁というこの機関はどうなるのか。存置されるのか、どういうことになるのか。
  108. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは復帰が確定をいたしまするころに、七二年中の早い機会でございますから、七二年中に、そういうものを復帰までに相談をいたしまして、北海道開発庁のように、担当大臣を置いた沖繩開発庁長官というものがおって、沖繩開発が国の責任大臣の手によって進められるような形になるのがこれが一番あるいは理想かもしれませんが、現在の沖繩・北方対策庁というものが、復帰後は少し形が変わるかもしれませんが、そういう名称のもとに引き続き総務長官のもとで行なわれるものか、これらの点は、これは政府全体の問題でございますので、十分民意に沿えるような形で、また各省庁の協力も事前に得なければなりませんので、要するに、沖繩人たちに、時限立法ではない反面、復帰してしまったら、もうこれは消えてしまうんじゃないかというような御心配もあるかもしれませんので、そこらのところはなるべく早目に将来の方向を定めていきたいと考えます。
  109. 川村清一

    ○川村清一君 そのことが非常に大事だと思います。私ども現地へ参りまして各界の方々にお会いして御意見をお聞きいたしました。復帰がきまったこの時点において一番心配しておりますことは、復帰後どうなるんだ、返ったあとどうなるんだ、このことを一番御心配になっておられます。そこで、復帰した後においてはこういう姿になるんだと、もちろん、その前に基本政策なるものは打ち立てられたようでございますが、これを実現していくにいたしましても、七二年までに完全にそれができるわけではない。いろいろな公共事業を考えてみましても、七二年までに全部できるというふうにはとうてい考えられません。そうすると、復帰後それがどういう形において進められていくのか。一体、北海道開発庁のようなそういう姿になるのか、それとも、ただいまのような、総務長官のもとにおいてこれがなされるのか、あるいはまた、本土の府県と同じようなかっこうでなされるのか、いろいろ問題が多かろうと思いますが、とにもかくにも、復帰後どうなるのだという青写真を具体的なものをつくって、いい悪いは別といたしまして、北海道ならば第一期開発計画、二期開発計画、三期開発計画というのがつくられます。そのものには私どもは賛成しているわけじゃございませんけれども、それはつくられて、そうして総額どのくらいの金がかかる、それはどうする、閣議で大体総額幾らというものが閣議決定がなされてそうして実行に移されておる。これが実態でございますから、やはり、どういう姿になるのか早くきめて、そうして県民の前にこれを示していただくような措置が、県民の不安を除去する意味において非常に大事なことではないか、かように考えますので、ぜひ御努力を願いたい、こう思います。  そこで最後に、これは山野局長にお尋ねをいたしますが、北方領土問題対策協会との関係でお尋ねするわけでありますが、この法案の第四条の五号、六号に規定しておる事項は、これは対策庁自体が行なう事務あるいは事業なのか。これは昨年設立されました特殊法人の北方領土問題対策協会との関係においてひとつ御説明いただきます。
  110. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 御承知のように、沖繩・北方対策庁ができますと、それの中に北方課というのを総務部に置きまして、そして北方領土問題その他北方地域に関する諸問題についての企画立案等を実施していくわけでございます。もちろん、御指摘のように、北方領土問題対策協会では啓蒙宣伝あるいは援護措置等を直接行なうことになっていますが、しかし、この対策庁のほうでも、全体としての北方領土問題その他についての大綱あるいは一般的企画、立案、あるいはそういう啓蒙その他資料収集等の推進をはかっていき、そしてその実施機関的な面を対策協会のほうにお願いしていく、現業機関的な方面は。そうして両両相まって北方領土問題についての世論の啓発とか、あるいは引き揚げ島民の援護措置を行ないたい、かように考えておるわけでございます。
  111. 川村清一

    ○川村清一君 そこで重ねてお尋ねしますが、五号、六号に、ここに書かれておることは対策協会が自主的にやっている仕事ですね。というのは、この法案の中に、たとえば五号では、「調査研究し、関係資料を収集分析し、及び国民世論の啓発を図る」、これはやはり一つの事業ですね、実施ですね。これは協会が主体的にこれをやっているわけです。そこで、私がお尋ねしておるのは、協会もやっておるが対策庁もやるのか。これだけでは対策庁もやっておるように、この法文からは、そういうふうに理解されるわけですね。それから六号のほうも、「北方地域に生活の根拠を有していた者に対する必要な援護措置の実施の推進を図る」のですから、これはやはり対策協会もやっておりますね。対策庁の仕事として六号にこういうことが書かれておりますね。対策庁もこういうことを実際になされるのか、こういうことをお聞きしておる。
  112. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 五号に関しましては、やはりこの企画立案を中心としましてこの関係資料の収集、調査研究等を対策協会と合わせて本庁のほうでもやっていきたいというぐあいに考えておるわけでございます。  六号のほうの援護業務につきましては、たとえば援護業務の予算の折衝その他予算事務ですね、これは対策庁で行なうわけでございます。したがいまして、対策庁で対策協会に対する補助金の要求あるいは折衝等を行ないまして予算確保するわけですが、これは例示でございますが、そういう面からも援護業務について援護措置の実施の推進をはかるということになるわけでございます。それから、「援護措置の実施に関し、関係行政機関の事務の総合調整」、これは対策庁しかできないわけでございます。したがいまして、五号の場合におきましては対策協会と対策庁と若干ダブった面はございますが、十分その実施の分野につきましては相互に相談しまして調整しまして、主として本庁では企画立案を中心にしてやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  113. 川村清一

    ○川村清一君 あとの質問はこのあとに残して終わりますが、どうもいまの局長の御答弁だけではよくわからないんですが、もしも五号と六号の仕事を対策庁もなされるとするならば、対策庁にこれを実施する予算がなければならないはずですね。それらの予算面等についてはこの次にお尋ねしますが、いままでは大体総理府に北方の仕事をするところがあって、これは北方課も何もないんで、単に特連局の中に監理渡航課というのがあって、この監理渡航課は何をするんだというと、要するに、沖繩のほうへ行く渡航の事務ですね、それから沖繩のいろんな監理、こういうことをなされる監理渡航課において北方のことをやっておった。今度、したがって——長官お聞きいただきたいんですが——これからはいいと思うんですが、いままでは北海道の北方地域に住んでおります人たちがいろんな問題をかかえて陳情にやってまいりますと、窓口がないわけです。全然窓口がない。総理府へ行っても、これはいま特連局一つあって、北方を専門にやっているところがないわけです。そこで監理渡航課へ行くんです。ところが、監理渡航課というのはわずかしか職員がおらない。ここで渡航事務なり何なり非常に忙しいわけです。そこに北方の問題で行くものですから、とてもじゃないが、忙しくてなかなか聞いてくれない。とてもやれないというので、身を入れてやってくれる機関がないんです。窓口がなかったんです。それが一番問題であった。そこで、私は数回ここでこの問題を委員会で取り上げて、前の総務長官などと議論したのですが、その結果、北方課というものができますからこれでその窓口はできましたが、ところが、この法案を見るとこういうことが書いてあって、このことは協会と同じことだから、対策庁も実際にこの仕事をするのですかどうかと、ただここで企画して、するのはそれは協会だというような御答弁でもあるし、この法案では実際に仕事もなされるように書かれておるし、その辺の関係を聞いておるわけでありまして、実際に仕事をなされるとするならば、世論啓発なら世論啓発のための事業をするとするならば、当然、その事業のための今度予算がなければならない。ところが、この間の大臣の所信表明のときに山野特連局長がいろいろ補足説明されましたあれを読んでみましても、それらの予算面が明確にされておりませんので、そこでお尋ねしたわけでありますが、これらの問題はこの次の機会にお尋ねしますので御答弁はけっこうでございます。
  114. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めに日米協議会の点について伺いたいと思いますが、先日久しぶりで日米協議会が持たれたやに伺っておりますが、具体的にどんなことが検討されましたものか、お聞かせをいただきたいと思います。
  115. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 外務大臣からすでに御答弁もあったかと思いますが、外務大臣のほうより、沖繩準備委員会を中心にいたしました復帰準備の進め方、私のほうより、閣議決定に基づく沖繩復帰の基本方針というものを説明をいたしまして、相互に了解し合い、今後の円滑な復帰事務の進行に対して同意し合ったということでございます。   〔委員長退席、理事山本茂一郎君着席〕 そのほかは、発表をいたさないという前提で、そのほかの時間が相当長時間にわたったわけでございますけれども、いろいろ議論を皆さまといたしておりますることの対米折衝了解を要する事項につき数多く相談をいたしまして、相当な成果をあげ得たものと考えておりますが、これは国同士の約束事でございますので、逐一具体的になりまして、さらにそれが表に出てよろしい時期においては、当然、国会等において聞かれれば、出してよろしい時期に答弁いたしたいと思います。
  116. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おっしゃるとおりだと思いますが、まあ進め方、また基本的な方針についてこちらからの意見を述べられると、おそらくそれは非常に大まかなことに違いない。ただ、いま復帰準備に関連いたしまして望まれていることは、一刻も早く具体的にレールの上に乗っけるということではないかと思いますし、交換公文の示しますように、まず原則的には、協議会で取り上げられないものについては進めないというふうになっているようでございますだけに、沖繩の県民にとってみれば、やはり協議会においてどういうことが一体具体的にきまったのか、そして、それが準備委員会なりあるいは対策庁のほうに委任されてその仕事が進められていくのか、この辺がこれからの大きな課題であろうと思っております。いままでも当委員会をはじめとして他の委員会においても沖繩復帰についてはるるあらゆる角度から論議も加えられておりますだけに、問題点はもう総理府のほうとしても十分把握されておられるはずであろうと思います。それだけに、今後どういうことを議題にのせて、復帰前においても、可能なものについては、国政参加のごとく、これを実現の方向に踏み出せるように折衝される御方針なのかどうなのか。また、そうしたことをほかにも具体的にいろいろとこれからの段階において話をする手はずとして考えておるか、この辺をお聞かせいただきたいと思います。
  117. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) もちろん、じんぜん日をむなしゅうして復帰のもたらされる日を待っているわけではないのでありまして、双方の間に、私どもの間のレベルの話もありますし、あるいは、相互の了解をもって事務当局同士の不断の接触と交渉というものによって煮話めつつあるものもございます。これは先般間接雇用の形態の問題で質問がございましたときに、高等弁務官は衆議院の調査団に対して、申し入れがあれば自分として——アメリカとしては検討するにやぶさかではないと、しかし、そのことはまだ申し入ればないことを意味するのではないかという話がありましたが、それは形式のことを言っているわけで、申し入れたらオーケーという了解をとるまでの下交渉が事前にあるということを私答弁いたしたのでございますが、そういうこと等が一例でございますが、不断のたゆまない前進を期待して努力し合っております。
  118. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど答弁を伺っておりますと、外交ルートを通じて政府間同士の話し合いによる結論を待たねばならない多くの事項がある、こういうふうに理解したつもりであります。その中には、当然、昨今のインドシナ情勢を軸にしたやはり緊迫した事態が続いておりますし、加えてこの軍事基地の問題は再三再四にわたってやはり論争の焦点でありました。こうしたところが、今後の沖繩返還をめぐって性格的にあるいは機能的にどういうふうに変貌を遂げていくのかというものを含めて、いまここで御発表になれないというお話の中には、われわれはそう理解するような事柄も含まれていると、こう理解してよろしゅうございましょうか。
  119. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 含まれておりません。
  120. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういたしますと、特にいままでの基本的な話し合い、あるいは先ほど申し上げましたように、総理府自体が一応の練られた構想というものを大幅に変更するようなことはないのか。それとも、若干修正を加えなければならないような問題が起こったがゆえに政府間同士の話し合いが必要になったのか。その辺はどうですか。
  121. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 全然、いままでの構想を変更したりなどするような必要性も感じておりませんし、閣議決定を先般いたしましたし、準備委員会国会承認を得て発足をするわけでございますので、そのときにおいて双方がとった措置というものを了解し合うということであったわけでございます。インドシナ半島の騒乱その他については、これは私が入って協議すべき事柄のらち外でございまして、もし行なわれるとすると、外務大臣アメリカ大使という会談があるいは行なわれるということになれば、そういうことでしょうし、私自身が参加した場合には、そういう事柄を除いた純粋の沖繩の内政問題が主であります。大体そういうことに御了解を願いたいと思います。
  122. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 くどいようでございますけれども、そうしますと、いままでほぼその話し合いというものが煮詰められてお互いその了解があった事柄につきましても念のために再確認をすると、あるいは合意を得ると、このように理解してよろしゅうございましょうか。
  123. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) たとえば退職金の一億九千六百万を支払うということにつきまして、もちろん事前の相談はいたしたわけですけれども、支払った結果もたらされた、日米双方ともに、現地においても本国においても、好ましき結果が得られたことについては、米側のほうより感謝のことばがありましたし、また、私のほうとしては、前日でございますが、高等弁務官固有の権限によって日本政府側の申し入れを受けて発表された渡航制限の緩和の第一弾というものに対して、その措置について感謝をいたしましたし、そういうようなふうに、逐次議論を詰めていって、協議会を持たずともそれが実現にどちらかが踏み切り得るというものは踏み切りますし、また、協議会がお互いに形式上そこで合意しなければ外に発表して行動としてあらわせない性格のものは、やはり合意するための協議会を緊急に持たなければならないと考えております。
  124. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあ、これから日米協議会を軸にした話し合いというものがひんぱんに持たれることでもありましょう。また、それに伴っていろいろな施策というものが具体化されていくであろうと思うのですが、いまこの段階で、先ほどちょっと聞き漏らしたのかもしれませんけれども、こちらから再びあるいは新たに、返還前に日米両国間が歩み寄ってぜひともこれを実現してもらいたいという、そういう提言はございませんでしたでしょうか。
  125. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) もちろんございますし、たとえば全軍労の問題一つをとりましても、まだアメリカ側が現地の春闘の中においてどのような回答を一九七一会計年度においてするか、措置を明示するか等についてはわからないわけです。それらの問題が残されておりますが、少なくとも本土並みの退職金は実現をいたしておりますから、アメリカ側もその点を配慮した回答をするであろうと思いますし、また、残された問題としては、解雇予告期間なりあるいは雇用形態等の改善について、これは常時、ストがあろうと春闘がなかろうと、私たちとしては本土政府のなすべき義務の一環としてとらえておりますから、その種のものは絶えず接触と交渉とが続けられておるということでございます。
  126. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま申し上げた話に関連と言えばちょっと方向が違うかもしれませんけれども、これはアメリカ局長にお尋ねをしたいわけであります。  先般の当委員会において愛知外務大臣にお尋ねした問題の一つに、アメリカ側においては昨今のインドシナ情勢のいろんな変化、加えて、アジア地域のいろんな補給基地といったものをどう一体将来考えていかなければならないかというようなことで、アメリカ国内においても議論がなされておるようでございます。で、議会等におきましても、リーザー陸軍長官あるいはレアード国防長官がそれぞれ証言に立っているということが伝えられておりますけれども、沖繩が将来、日本の国内世論というものもたいへんきびしいものがございましょうし、そういうことに気がねする点もあってか、あるいはその規模の縮小と、しかし、その反面に機能は強化していくと。もしそうしたことがいま米国内においてそれぞれの責任ある立場方々が明快に証言している点等考えてみますと、何か一まつの不安をぬぐい切れないと。先般は、あくまでも現段階においては国内問題であるからということで答弁をお避けになりました。しかし、やはり一番これは最大関心事の問題でございますだけに、政府としてもそうした事態をどう一体掌握をなさって、それでもし正式にそうしたような動きというものが復帰後においてあるようになれば、当然今後の方向というものもお考えになっていかなければならないというふうに思われるわけであります。したがいまして、最近の一連のレアード国防長官あるいはリーザー陸軍長官のそうした証言をどうお受け取りになっていらっしゃるのか、そして今後政府としてどう対応されていくおつもりなのか、お聞かせいただきたい。
  127. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 御指摘のように、国防長官あるいはリーザー陸軍長官が、二、三年先を見通した米軍のアジア方面における配備を含めての問題についていろいろ発言をし、ことにいまお話しの、ことしの二月でございましたか、来年度予算に関しての証言を特にさしていらっしゃると存じますが、われわれの見るところでは、これらの、特にリーザーのいまのあれは、太平洋地域における補給組織の問題は、もっぱら能率化といいますか、経済的に、英語で言うとエコノミーと言いますか、そういう観点からどう能率化していくかという案のように見受けられます。そのおもな点は、沖繩に関しましては、沖繩に、管理あるいは計画あるいは予算その他についての、要するに補給の運営上の司令部といいますか、そういうものを沖繩に集めていくということが主のようでありまして、それに関連しまして、現存の施設の範囲内でやっていくとか、あるいは前線における資材の備蓄はなるべく軽減する方向に持っていって、今後は米本土からの輸送手段の改善によって米本土からの輸送をなるべくやる、すべてこれ、もっぱらお金のかからない能率化という見地からやっておるようでございます。沖繩返還に関しましての日米間の話し合いは、共同声明にも書いてございますように、沖繩には日米安保条約の目的に従って必要なものの存続を認める、こういうことでございますから、アメリカのほうのそういう軍事的の国防省の計画もございますし、われわれとしましては、共同声明に書かれましたように、安保条約の目的に従って必要なものは存続を認める、こういうことで、返還の時期までのいろいろな機会もありますから、そういう基本的立場で話をするとすればすることになると思います。
  128. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 やはりこの種の情報分析というのは、外務省当局においてもむしろ神経質になるくらいと申し上げてもいいくらいにおやりになっていらっしゃるのではないかと、こう判断をするわけでございますが、いま伺っておりますと、ただ新聞報道による以外の何ものでもないような印象しか受け取れないわけですね。私がいま局長から伺いたいと思ったことは、将来のやはり受けとめ方、見通しというものをある程度どう一体判断をされているか、あるいはやはりそれは大臣でなければならないとおっしゃるかどうかわかりませんけれども、やはり中枢の場に立たれている局長でありますので、その辺もやはり国民に対して認識を与える意味におきましても非常に重要な問題じゃないかと思うのです。私がいまさら申すまでもなく、最近のカンボジアの紛争を見るにつけましても、ロン・ノル将軍の要請に従ってニクソン大統領は武器貸与を約束した、こういうことが伝えられているわけです。はたしてその内容というものはいかなるものであるかどうかわかりません。しかし、復帰後においても継続的に沖繩というものが、確かに表向きは規模が縮小された、しかし、機能的にはただ能率をあげるということだけにとどまらず、やはり沖繩全体が要塞化から武器庫に変化するおそれがないのかということがやはり心配になるわけであります。昨今の日中問題がやはり感情的に非常に思わしくない方向を歩んでいる際でもありますので、そうした場合に、いま局長は、正式にそういうような要請があった場合に断わるというふうに私は受け取れたわけでございますけれども、そのように私自身、いまの局長の御答弁のように、強い要請があった場合でも断わる、アメリカのインドシナ情勢に対するいろいろな施策を遂行するにあたってどうしても沖繩が必要なんだというようなことをあえて否定しながらも、現在の段階として政府はそれを断わり切れるだけの用意があるのかどうか、この辺はどうですか。
  129. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) アメリカの現在の極東アジアに対する政策、これは先生もよく御承知のように、最近ではいわゆるニクソン・ドクトリンと申しますか、要するに、既存の条約上の約束はこれをほごにしないが、しかし、各国それぞれ自助の精神をもって、自分でできることはみんなやって、両方で協力しながらいこうと、こういうことでありますが、いまのカンボジアの問題に関しましてのそういう精神からいきましても、これをアジア人同士を戦わせるというような批判をする向きもございますけれども、いまの考え方としては、カンボジアの事態も、やはりアジア人の間でアジア人の力でこれを解決をするようにしてもらいたい。   〔理事山本茂一郎君退席、委員長着席〕 アメリカ自身が出ていってどうという立場にない。アジア人の間である方向ができて、それに手を貸してくれと、かりにそういうことであれば別である。言ってみれば、そういう基本的な考え方で、非常に慎重に事態の推移を見守りつつ、どうしたら世界平和のために一番いいかということを考えているように見受けられる次第であります。先ほど申しました趣旨は、アメリカアジア政策が日本人の利益の上から見てどういうようにあれば日本に一番いいか、そういう見地から日米安保条約の目的に従って必要な施設の存続が認められる、こういう基本的考え方から判断していくべきものだと思いますので、したがって、いま御指摘のような、アメリカが仏印に対してどうだからということを要求してきたら日本が断われるか断われないか、そういう見方より、日本から見て、安保条約の目的に従って必要なものは残すようにしていく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  130. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 あまりすっきりした印象を受けないわけですけれども、アジア人同士戦わせるというそういうような話だとか、論理の上で若干こう横道へそれたような感じがぬぐい切れないわけでもないわけですけれども、日米安全保障条約がたてまえになって、それが解釈のしようによっては、あるいは、ときによっては幾らでも正当化できるという、こういう論議もいままでずいぶん繰り返されてきたように判断されるわけであります。私は、いまのお話を通じまして、たいへん失礼な言い方かもしれませんが、やはり言えない問題もそれはたくさんございましょう。しかし、現在アメリカ国内において論議されている沖繩を中心とした動きについては、日本国民がもっと関心が大きいわけでございますが、その辺が日米安全保障条約とどうからんで、たとえそれが正式な要請があった場合でも、こうこうこういう理由でもってきっぱり断わるだけの体制をつくっておこうと、またそう判断すべきである。それが暫定的なものでないにいたしましても、そういう見解というものがほんとはお示しいただきたかったわけであります。この問題についてはまた後ほどに譲ることにいたしまして、その辺はやはりもっと深い、もっと広げた現在のアジア情勢というものの分析の上に立ってお話をしていただきたいと、こうお願い申し上げたいわけであります。  それから、先ほどもちょっと触れたのでございますが、特に沖繩県民にとって、復帰後のいろんな施策が、どのように日本政府として手をつけてくれるか、これは何といっても最大の焦点であることは申すまでもないわけであります。しかし、復帰前においてもどうしてもやってもらいたいという問題が、これは長官御承知のとおり、これまた山積しておるわけであります。その中には可能性のある問題もございましょう。いますぐにということは、施政権も向こうの手にある、そうした条件を踏まえてみれば、これはとてもできないという両面があるんじゃないかと思うんですが、一番何といっても現地の人が強く要請していることは、先ほどもちょっと問題があったように、日本政府としてやらねばならない財政的な措置、それから、やはり経済振興というものとどう一体取り組んで、そして復帰前においても着々具体化の方向に歩んでいくかということではないかと思われるわけでございます。したがいまして、たいへんこまかい問題になるかもしれませんが、特に幾つかの問題点にしぼって長官のお考えを承りたいと思うわけでございますが、私も沖繩の指導階層の方とは何回か会っていろいろな要請を受けてまいりました。そうしたことの中に、いままで政府側として、もちろん政府側にもそういう要請、陳情というものがなされておりますから、それをこまかく一つ一つ取り上げることは避けまして、いま申し上げたような幾つかの問題にしぼってお尋ねしてみたいと思います。  特に、何といっても従来の既得したものについての権利でございますが、これが、いまやはり決定的な一つの方向というものを示してあげることが復帰前であっても復帰後であっても、非常に安心感を持つのじゃないかというように思うわけであります。特に経済的な施策におきまして、いままで取得されていた権利というもの、これは当然本土に復帰すれば本土の法律に照らしてそれが適用されるということになるわけですが、前回の長官の御答弁を思い起こしてみますと、混乱や摩擦を避けるためにしばらくの間は従来の琉球政府の法律によって、そのワク内でしばらく運用をしていきたいというようなことも伺っております。特に経済問題については一番この面の気持ちが深刻じゃないかと思いますが、この見通しとして、こういう暫定措置といいますか特別措置といいますか、何年くらいをお考えになっていらっしゃいますか。何年くらいは従来どおりのワクの中で経済振興のためにバックアップをして、それが経過した暁においては本土の法律に従って今後の経済運営というものをやってもらいたい、やはり、そこらあたりの年限といいますか見通しというのは非常に大事じゃないか、こう思いますので、その点をお差しつかえない範囲でけっこうですから、お考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  131. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 琉球商工会議所が琉球政府主席に対して既得権益の経過措置について要望いたしました期間は、五年間は現在のまま認めてほしい。その後は、まあ五年くらいでございましょうが、その後は、表現としては、順次、なだらかに、ショックを緩和しつつ本土並みにしてほしいという要望のようであります。これはどこまで具体的な問題について個々に分析された結果か知りませんが、大体最大公約数的な意見だろうと思います。私も大体そういう程度かなとは思っておりますが、事柄によりましては、あるいはもっと延ばしていかなければならない問題もあるかと思いますし、これは直接権益とも言えませんが、長い慣性で、自動車の右側通行、左側通行についても、これは幸か不幸か離島でございますから、本土に返ってきましても、相当当分の間、逐次自動車等が更新をしていく過程で右側、左側に切りかえていけばいいので、別段、あせって本土並みに道交法がどうだのということを四角四面に要求すべきことの範疇外であると思っておりますが、そういうこまかいものまで含めまして、二十五年間において生じた違いでございますから、本来ならば二十五年間くらいかかってもとに戻してあげてちょうどよろしいのであろうかと思いますけれども、逆に、いつまでも特別扱いということは、沖繩県の人自体も、あるいは内地のそれ以外の人たちも、沖繩県以外の人たちも、何だか沖繩というのはいつまでも特別な地域というふうに見るようになってしまっては困りますし、そこらのところはやはりほどほどにいたしませんと、特別に守っていかなければならない性質のもの、いつまでもほっておいてそのままいくと、逆に、琉球沖繩県というものが本土と違った形がいつまでも残されていくマイナスが起こる面がありましょうから、そこらはこれからこまかく詰めてまいりたいと思います。
  132. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういたしますと、大体最大公約数を原則として日本政府としても認めてまいりたいと、そういう方針で臨みたいと、こういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  133. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は所管大臣といたしまして、そうしなければほかに手段はないと、そうしてあげなければいけないんだという決意を持っております。個々の私の構想に対しましては、大蔵なり通産なりあるいはその他の役所においていろいろと批判のあることは知っておりますけれども、しかし、沖繩のために一番いい道というものはやはり一番いい道に加勢してもらうほかないと私は思いますので、そこらのところは、私の独善におちいらざるよう、そして政府全体が、そういうことは山中の構想のほうに各省が協力すべきであるという了解を得るように努力をしていくつもりでございますが、原則的には、ただいまのお尋ねのとおりの決意でおります。
  134. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、先ほどの川村議員がお触れになられましたが、沖繩本島でも那覇を中心とした地域はまだしも、御存じのとおり、特に離島間における市町村の財政というものは非常に窮迫しております。そうした点から、公営事業をやりたくてもやれない、また、われわれが行って見ましても、これはぜひ推進しなければならないなというような問題があまりにも多過ぎる。しかし、だからといって、もう何もかも一切、お金がかかることでありますから、それを一挙にということはとうていむずかしいにいたしましても、従来の援助方式というような考え方から、それを変えまして、本土において行なわれておりますように、交付税方式がございますね、こうしたものが行なわれないものかどうか。もちろん、税金を納めているわけでもございませんので、技術的には非常に無理な点もあろうかと思いますけれども、これは現地のそれぞれの部署に携わる方々の強い熱望を強く記憶しております。この点なんかいかがでございましょうか。
  135. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 先ほど私は原則論をちょっと触れただけでございまして、もちろん、そういうことを考えていかなければならない残りわずかの期間でございますから、内地の制度になるたけ慣らすようにしていかなければならぬと思っておりますから、私は、まあことしの予算編成の最中にも自治省と連絡をとってことしから何か持ち込めないか、たとえば減税援助の二十億にしても、そういうものを交付税形式で移せないかということも相談したわけですが、何しろ就任直後に予算編成なもんですから、私の意見を受ける自治省もすぐには対応しかねる、間に合わなかったわけでございますが、いま自治省、きのうも官房長、私のところに来てもらいまして、来年度はそういう形で一歩を進めていきたいからそちら側からはどういう可能性が考えられるかを、たとえば私の案として、もし国税を納めていると仮定したら幾ら納めているであろう、そうすると、交付税を計算をして、その納めていると仮定したものを控除して、残りを交付税形式でもって交付するということが県市町村ともにあり得る一つの方式だ、これは私の一つの私見であるけれども、そういうことも考えて、あり得る形式というものをいろいろ議論してみてくれないか、私を交えてフランクに自治省の財政の首脳部と話し合おうじゃないかということの会合をやったぐらいでございまして、まあ、沖繩のほうにも、逆に県民税等を徴収しておりませんし、そういうものはやはり取ってもらうようにしないとなかなか計算がしにくいのでございますが、反面、先ほど米援助の打ち切りの中身については触れましたが、逆に、打ち切るならば、私も、学校の先生方の月給をアメリカが負担しているのはやはりよろしくないと思うのです。それは打ち切られてやむを得ない性格のものと思います。打ち切らるべきものである、場合によっては断わってもいいものだと思いますが、ただ、その場合に、アメリカの、いま私のほうで調査を命じておりますが、輸入原油あるいは製品に関する、ガソリンその他に関する課徴金みたいなものは米側の収入になっておりますし、沖繩にいて税金を納めているものであっても、県民以外のものでありますと、所得税等はこれはアメリカ側が徴収している。あるいは自動車通行税という名の実際上自動車税というものは米側に徴収されている。あるいは現在アメリカ側の機構となっておりまする電力、水道、金融等の三公社等につきましての運営余剰益の活用というようなもの、これらは琉球政府がそこから借りておくという手なんかも一番近くにあるのですけれども、ここらのところが、やはり本来ならば琉球政府が独立を回復するに従って財源として当然布令税制から沖繩県の税制へと移行すべきものでありますから、ここらのところも、屋良主席も会談の中でそのようなことに触れておられますが、なかなか壁が厚いようですけれども、これはやはり本土政府、ことに私どものほうといたしましては、これらの点は、交付税的なものをこちらから差し上げることの反面において、琉球政府自体が本来あるべき自主財源の確保がはかられるように努力を対米折衝等でしていくべきであろう御加勢を申し上げなければならぬなあということを考えているところでございます。ただし、いまの点は米側との折衝を開始しておらないことをつけ加えておきます。
  136. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま申し上げている点につきましては、おそらくは長官御自身としても復帰前に最も具体化のできる問題の一つではないか、これは早急に進めていただきたいということを御要望申し上げておきたいわけです。  次に、この対策庁の設置法の内容、それから、何回かにわたる経済振興懇談会の議事録を拝見いたしましても、やることがあまりにも多過ぎることはもう論をまたないわけでありますが、それだけに、お金のかかるほうも非常に多額になっている。しかし、何といっても、これから経済振興の一番主力をなすものは電力の開発ではないか、水資源の開発ではないか。ここに帰着するように私自身も判断しているわけでありますが、しかし、そのためにはやはり膨大な予算もかかる、こういう観点から、いま申し上げたやり方とは方向を若干変えまして、資金運用部資金あたりのお金が融資できないかどうか、貸し付けることができないかどうかというふうに、あるいはしろうと考えかもしれませんけれども、見る場合がございます。この点、いかがでございましょうか。
  137. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 資金運用部資金につきましては、財投の一貫といたしまして、予算規模と同時に財投規模というものが固まりまして、これはもうきちんとして年度の設定を当初において行なうわけでございますから、資金運用部資金をもって、それをまともに琉球政府のほうの借り入れ財源に何とかやってみるという手は私の乏しい財政運用知識ではむずかしい、不可能であると考えます。
  138. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これから新たに起こる問題はいま申し上げたとおりでございまして、特に本島でも北部のほうには、現地調査の結果を待つまでもなく、相当有力な開発地帯がある、このようにいろいろな方面から報告がなされております。この問題については、これからいろいろな企業誘致の問題にからみまして、さっそくにでもこれは手がけていかなければならない問題。ところが、かりに製鉄会社が進出いたしまして、一千万トン月に生産をやる場合には、やはり相当規模の水資源の開発と同時に、電力会社の設置ということが望まれておる。こうしたものに対して総理府としても一応の、そういう部分的なものについての青写真はもうすでにでき上がっていらっしゃるだろうと思う。早急にいま申し上げた開発が望まれるという点については、あるいは財政的あるいはどのようなお考えを持っておられるのか、むしろ、その面については、企業のほうからの協力も得られるならば、あるいはもっと急ピッチで仕事は早く進むかもしれない。いろんなそういう考え方も出てくるんじゃないかと、こう思いますけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  139. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 電力につきましては、私も、先般沖繩に派遣いたしました——民間の方を派遣と言うと失礼でありますが、行っていただきました経済調査団の方々と時間をかけて相談をいたしましたけれども、全部政府のほうでそういう電力を供給しろと言うのはまあ財界としては無理がないんですが、要求がございましたが、私としては、現在琉球には石油精製等の申請もございまして、それは石油の燃料としての供給は明らかに可能でありますから、そういうものは無理を言わないで、自家発電でそういうものをコストの中に計算して出て行きなさい。しかし、水だけは、いま海水脱塩をすぐやってごらんなさいと言っても、たいへんな工業用水としてはコストの高いものになりましょう。したがって、その点は、政府のほうがやはり先行して努力しなければならぬことだと思うという話をしたんですが、現在、沖繩——琉球政府のほうも、それからこちらのほうの、企業進出を話をしている側も、ちょっと私としてはふに落ちない前提条件のもとで相談しているように思えてならないのは、中南部地区、ことに南部の内陸部、それから中部、南部にまたがる中城湾一帯だけが工業立地として議論されているようです。ところが、おっしゃるように、水は北部山岳地帯、かりに海水を締め切るとしても、塩屋湾、屋我地湾というようなことで、全部北部だけなんですね。中南部には水の開発可能性というのはゼロに近いわけですから、そこらを考えますと、まあ南部の内陸部ではあまり水も要らないで、雇用振興等に大きく貢献するであろう電子産業その他のものが進出してもらったほうがよろしい。むしろ、その他の工業用水を必要とする企業は、もっと目を北に転じて、水を引っぱってくるということでなくて、水の開発能力のあるところに工業立地を定める計画を青写真としてつくったらどうだということだと、私そこに問題あると思います。ただ塩屋湾、屋我地湾にはさまれました内海と申しましても、まあ少し入り組んだだけですけれども、半島のつけ根のところ一帯は、南の名護湾は海中公園、その他具体的に始まっておりますから、これは尊重するとしても、その北のほうにつきまして琉球政府立海中公園ということになっておるようであります。ここらのところが、やはりもう少し琉球政府と相談をいたしまして、一番水に近いところがそこの海面でございますので、そのあたりを若干埋め立て等について相談をし直していただくか、あるいは、反対側の東海岸の大浦湾を寄航港とする、南のほうに下った海岸一帯を埋め立てて、そして大体福地ダムで十二万トン、塩屋湾で、工事費は別といたしまして、これが可能であるとすれば供給能力は十二万五千トン、さらに福地ダムの北のほうの東斜面の安波川が大体相当な水供給余力を秘めておるようでございます。これらのところをことしの調査費あたりで重点的に、幾つもの河川を調べないで、可能性のある水資源の水系について重点的に調査をして、その供給可能性と工業用水としてのコスト、そういうようなものをよく調べまして、ことに水の乏しい島で、水のあるところは必ず農業をやっておられる方々がおるわけでありますから、それらの農業用水を確保することを前提とした残りの許容量ということになるわけであります。そういうものを前提として相当な工業用水が北部にある。したがって、今後進出を計画する企業等については、琉球政府との相談は私でなければならぬと思いますが、西海岸、東海岸を含めて水のあるところに近寄って、工業立地のほうをむしろ水のほうに引き寄せるという考え方が大切なのではなかろうかということを考えている次第でございますけれども、まあ、企業には企業の考え方もあろうと思いますが、常識的にすらっと考えると、水を求めて引っぱってくることよりも、水のあるところに工業立地ができれば一番ふさわしいのではないか。まあ概観してそういうことを考えております。
  140. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おそらくはいまお話しになられた構想に基づいて政府としても強力な施策がなされていくであろう、こう判断するわけです。いまお述べになられたお考えは、あくまでも政府独自の立場に立って、他の助力を求めることなく進めていく、このように認識をしてよろしゅうございましょうか。
  141. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 埋め立て等は、進出企業が、その企業の立地条件前提とそれから当然の必要性による面積というものとをやはり埋め立てるべきが第一義的に至当ではなかろうか。しかし、なかなか進出できないということでありまする場合には、国ないしは沖繩県というものの形における公有埋め立てというものも場合によっては必要でないかと思いますが、第一義的に企業自身が自分の必要な坪数は埋め立てるということでいってもらいたいと思います。
  142. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それから、これもお聞き及びになっていらっしゃると思いますけれども、いま早急に解決をしてもらいたいと待ち望んでいる問題がやはり幾つかございます。その中で、特に離島における人たちの願いとして、昨今のテレビ普及に伴いまして、ぜひとも同時刻に同じものを見せてもらいたい。特にニュースの場合なんかは、そういう非常に強い希望があります。まあ、一刻も早く伝送回線を布設してもらいたい。確かにこれはそのとおりだと思います。これが一つ。  それから、復帰に伴いまして、これから本土とのいわゆる、行き来というものがたいへん活発になるであろう。いまのところは主として航空機が中心のようでございます、早く仕事を済ませたいと思う方は。しかし、やはりこれからの大量の人人の往来ということを考えますときに、どうしても船にたよらなければならない。この問題につきましても、非常に安い値段で、しかも速く本土と往復ができるようにしてもらいたい。しかも、それは復帰前から早く実現の方向に向けてもらえないかということで、現地の方々の御希望としては、青函連絡船等に見られる、運輸省が中心になって、そういう連絡船のような方式というものを取り入れることができないか。この点が第二点。  それから第三点として、これも離島において強い御希望がございました含みつ糖の問題でありますが、現在何らの保護を受けておりませんが、日本に入っております人造赤玉、赤砂糖ですか、これがあまりにも低いコストのために含みつ糖は顧みられなくなっている。ところが、離島においてはこれで生計を立てでいる方が相当多数にのぼるという実情から言いますと、この点についても至急に保護の施策を、救いの手を差し伸べてやらなければならないのではないか、こうした具体的な問題がいまあるわけでございますが、この点についても、待ち望んでおります課題だけに、長官としての御見解を伺っておきたいと思うのであります。
  143. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 離島のテレビ並びに御質問にはありませんでしたが、沖繩から本土への上り回線、こういうものをやはり切望しておられると思います。私もよくわかりますが、実はテレビは民間のものが主でございますので、やはり採算ということをどうしても計算をされるようでございます。そこで、さしあたりカラーテレビを沖繩本島に届かせるという設備を当初の予想より大幅に濃密な、島伝いの回線にいたしまして、二十八億も——当初三億のつもりでおったくらいですから、二十八億もかけましてやりますと、大体その中で上り回線も白黒になるかと思いますが、引き合う引き合わないの問題で利用できるようになるようでございまして、それを済ませましたならば、離島のほうは、当然同時にみんなが同じ画面が見られるように、やがてはカラーもみんな一緒に見られるようにということに向かって、これはふだんの生活の上に、今日のテレビはある意味においては有害でありますけれども、どうしても一億の国民が全部同じ画面が見れるということは、義務教育をいかなる場所に住んでいてもいかなる条件でもひとしく受けなければならないのと同じように、茶の間における公共性というものもありますから、私はやはりうんと重点を置いていきたいと考えます。さらにお話しのように、飛行機があるから、われわれは飛行機で行きますので、一般の人たちの行き来というものを気にしないというわけじゃありませんが、その実態というものをとかく忘れがちの傾向もございます。しかし、厳然として、現在でも参られる方々というものは飛行機よりも船のほうが圧倒的に数量が多うございます。おそらく復帰後も往復は、八割は船を利用することに当然なるであろうと思いますが、国鉄の連絡船みたいなものを走らせることも一つの方法かとも思いますけれども、現在すでに民営の船が就航をいたしておりますので、国鉄の運営方針からして、民営路線と競合しもしくはそれを押しのけて新しい路線を設けることは、陸上、海上ともに避けておりますので、そこらの方針のために、いまある民営の既存路線を早くしかも大量に、しかも快適なそういう設備の船につくり変えてあげるための資金、そういうものを提供しながら、快速船による快適な本土への一般大衆の往復というものができるように、国鉄側といたしましては、沖繩復帰前に新幹線計画を策定いたしておりましたが、沖繩復帰してまいりましたときに、一番日本列島のいまの南の鹿児島港に沖繩の人の大部分が上陸するであろうということが計画に入っておりません。先般大阪で日琉の経済人のトップクラスの会合がございました。そのときに沖繩からの緊急提案といたしまして、新幹線構想の中に、沖繩復帰という現実を踏まえて、どうしても新幹線を鹿児島まで延ばしてほしいという要望があり、それを受けられまして、そのときも日本商工会議所のほうも賛成し、また日商自体の会合においても、沖繩のその要望を日本の商工会議所自体の要望として決議をされたようでありまして、このように認識をされつつございますので、一般大衆の大量輸送連絡機関というものに陸上、海上ともに配慮をしてまいる必要があると考えます。  含みつ糖の問題につきましては、これはたいへん頭の痛い問題でございまして、本土の糖価安定法、あるいは甘味資源特別措置法等によりましても、黒糖は事業団買い上げの対象にしておりませんが、沖繩においてはことに分みつ糖工場を建てようにも、生産規模その他において、島全体をあげても足りませんし、かといって、海上輸送で持っていって分みつ糖工場に原料を運ぼうにも不可能に近いところで、気候条件その他からいって含みつ糖ならば可能であるという島がたくさんあるわけでございます。琉球政府は毎年の援助費の中の糖業資金というものと別ワクでもって含みつ糖の若干のめんどうを見ておられるようでございますので、これらの点は、事業団が黒糖を買い上げるというのはたいへん保存その他でむずかしい問題がございますが、黒糖の需要量というのは二万五千トン前後の全国の需要量でございまして、これは沖繩を含んでですが、そういう中での採算がとられていかなければなりませんので、黒糖が需要をオーバーして生産をされるような振興策をはかりますと、今度は価格が暴落いたしまして、逆に、何のために増産したのかわからないということにもつながるおそれがございます。そこらのところを十分にらみ合わせながら、沖繩が返りましたあとの国内甘味資源対策のうち、甘庶糖に対する分みつ糖、含みつ糖の問題は、十分慎重な事前の調査、立案の上に立ってあらためて奄美大島その他を含めた計画を立ててみたいと思っております。きのうの新聞あたりに、もう二度ほど出たのですが、各省が物価対策で一生懸命やっているときに、私が通産大臣に砂糖を安くしろと言われて、人の役所の文句を言うなとかみついたようなことが書いてありましたけれども、これは詳しくは沖繩の離島あるいは本島を含めた島の農村にとって、その立地条件からいってサトウキビとパインで今後も生産をあげ、所得をふやしていく以外に道がない。そのときに物価対策も大切だけれども、その問題を念頭に置かないで議論してもらうことは困る。私のことですから、絶えず二言三言多いので、そのあと、人の役所のことを言うひまがあるならばおまえさんのところの自動車の資本の自由化とかなんとかを先にやったらよかろうというようなつけ加えがございましたが、要するに、私の発言の真意は、沖繩の問題を考えないでやってもらっては困るということを言ったぐあいのものでありまして、私の頭には年じゅうそのことがこびりついております。十分今後検討してまいります。
  144. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 きょういろいろな角度からお伺いしましてお答えをいただいたわけでございますが、一応きょうの答弁を整理させていただきまして、また次回に足りない点を質問させていただきたい、こう思っております。ただ、せっかくこうした制度ができましても、とかく、いままで制度というのは、その趣旨あるいはその立法の精神等から見ますと、たいへん理想的にできておるわけでございます。ところが、だんだん年月の経過とともに当初の趣旨からたいへんずれてしまいまして、枯渇したようなあるいは機能的に非常にまずい運用がなされたりするおそれがいままでもしばしば指摘されてきたことがございます。したがいまして、どうか、当初長官も申されておりましたように、せっかくできた制度がだれのためにあるかというそのお考え方にのっとって、この機能が十分に活用できるように、いやしくもセクショナリズムにおちいってきびしい批判を向けられるようなことがないように、特に私はきょうの質問の締めくくりとして御要望を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  145. 春日正一

    ○春日正一君 沖繩復帰に際していろいろ問題があると思いますけれども、どうしても避けて通ることのできない問題で、しかも、すでに沖繩現地ではかなり問題になっておる問題としての、沖繩県民が占領中に受けた損害に対する請求権の問題があります。これについて少しお聞きをしたいと思うのですけれども、大体沖繩返還に際して起こってくるであろう請求権の対象となるようなものということになりますとどんな種類のものが考えられますか。
  146. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 沖繩返還に伴います請求権の問題と申しますと、まあこれはいろいろ見方がございまして、たとえば講和前補償の問題におきましても、一応日本政府が十億円出し、そしてアメリカが千七百七十五万ドル出して講和前の補償は全部解決したという解釈に立つならば、講和前補償問題については、ないわけでございます。それからまた、講和後におきまして、たとえば米軍の演習被害であるとかその他人身事故、米軍による事故その他のそういう問題については、これは外国人損害賠償補償法があって、そのつど支払われておるという、たてまえはそうなっておりますから、したがいまして、それが解決しているという立場に立つならば、講和後の補償問題というものはないというぐあいに考えられるわけでございます。さらにさかのぼって、いまの米軍基地の賃貸借の問題につきましても、少なくとも現在は賃貸借契約があって「賃借権の取得について」という布令がありまして、それぞれ契約をして賃貸借料を払っておるからこれは至当だという解釈に立てば、この問題に関する限り、債権債務の問題はないわけでございますけれども、見方によれば、それは占領中から引き続いて一方的にきめられた、低くきめられたというような見方をとる人がおるとするならば、そういう問題についても問題がある。まあ、ただ、戦前における、あるいは戦争中におけるいろいろつぶれ地補償——公共用地、私有地についてつぶれ地補償の問題が地元にあるように聞いております。この点につきましては、私どもまだ詳細を確かめておりませんし、確実なものをつかんでおりませんから、そういうような問題は、おそらく復帰後において十分精査の上検討していかなきゃいかぬじゃないかと思っております。非常にはっきりしませんけれども、その立場立場によっていろいろ解釈が違うのじゃないかと、私は考えております。
  147. 春日正一

    ○春日正一君 もう少し具体的にお聞きしますけれども、講和のときと現在と、この前は、一般的に軍用地の面積、そのうち私有地の面積がどれだけあるのかということをお聞きして局長から答弁あったんですけれども、いまの話では、講和前と講和後の問題とありますから、講和のときに軍用地がどのくらいあって、そのうち私有地の面積がどのくらいあるのか、現在、軍用地がどのくらいあって私有地の面積がどのくらいあるのか、その面積と、それから、これに対する補償額、あるいは県民の側からの請求額、それから、実際それに対してどれだけ補償されておるかという額ですね、そういうようなものがわかったら聞かしてほしいのですが。
  148. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 私この前、一九六八年六月現在における軍用地面積をお答え申し上げたわけでございますが、講和時における面積というものは、的確な数字は私ども把握しておりません。それから、たしか琉球政府のほうでもそういう数字は的確なものは持っておられないように私は承知しておるわけでございます。したがいまして、その間に、どのくらい移動があったのかという点については明らかでございません。それから、当時軍用地の土地問題、いわゆる賃借権、講和前補償の土地問題につきまして、いろいろ地元から、連盟のほうから米側その他へ要求されたいろいろな資料があるようでございますが、公式なものは私どもは持っておりません。あくまでこれは米側と軍用地の獲得期成同盟会との間で行なわれたものでございまして、日本政府としてはそういう資料を持っていないわけでございます。
  149. 春日正一

    ○春日正一君 それから、漁場についての被害ですね。これは軍港だの何だのたくさん取られて使われておるし、いろいろ漁業権の問題あるいは油が流れたとか被害もあるだろうし、海上が演習場になったための被害、こういうものについて調べたもの、そういうようなものがありますか。
  150. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 実はそういう漁業権の補償とかあるいは被害に対する漁業補償というものを包括的にまとめた資料はございません。千七百七十五万ドルの講和前補償の中に沿岸漁業権の補償金額が五十四万一千七百二十九ドル含まれておるということは、これは資料によって明らかでございます。  それから、例の嘉手納基地を中心とする石油の漏出のためにいろいろ被害が出た、そのときの補償額等の数字はございますけれども、その場合は、漁業権のあるいは漁業補償の問題にはなっておりません。
  151. 春日正一

    ○春日正一君 それから、米軍の犯罪あるいは飛行機とかその他の事故による被害、家屋焼失・損壊あるいは死亡、傷害、こういったようなものの件数と補償額、こういうものはわかりますか。
  152. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) これは実は非常に私どもも資料としては不完備で申しわけありませんけれども、この米軍による補償の請求のしかたが、琉球政府を通じて行なう場合と、それから、直接個人が軍のほうへ補償を要求して決解した場合とあるわけでございます。したがいまして、私どもとしてつかみ得るのは、全く個人的に行なう示談によって米側と話をつけて補償を受けた分、これも相当数あると思いますが、これは全くつかみようがございません。琉球政府を通じた資料琉球政府の法務局でまとめた資料はございます。
  153. 春日正一

    ○春日正一君 じゃ、その資料をあとで出してくれませんか。  それから、基地公害ですね。これにはどんな種類のものがあって、被害の実態がどうなっておるのか。あるいは住民の補償要求の額、実際に補償された額というようなものはわかっておりますか。
  154. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) 基地公害全体につきまして、基地公害の種類と申しますか、これは、先ほど申し上げました油の事件がございましたね、こういうようなのは、端的な基地公害の一つでございます。それから騒音の被害でございます。騒音の中でも主として病院とか小中学校、こういうものの防音装置その他のそういう対策に要する経費、こういうものでございますが、これにつきましては、総額は幾らということは出ておりません。そのつど補償をいたしました。基地の近辺でもって飛行機が落ちまして家屋が損壊してそうして死傷者が出た、そのときの補償が何ぼと、こういう個別的な補償額は出てまいります。それから、小学校、中学校を合わせまして三校につきまして米軍で防音装置をいたしました、そういう工事費はわかります。それから、昨年基地周辺の調査を行ないまして、今度日本政府が防音対策にとった予算の内容、そういうものはわかるわけでございますが、全体としての被害が何ぼで補償額が何ぼというのは出ておりません。
  155. 春日正一

    ○春日正一君 それでは、これもわかっている限りで、どんな被害があってどういう補償がされたかというふうな資料を出していただきたいと思うのですが。
  156. 山野幸吉

    政府委員(山野幸吉君) はい。
  157. 春日正一

    ○春日正一君 それから、大蔵省の主計局の方、来ておいでですか。——アメリカの占領による被害の補償のために日本政府が行なった支出があるかどうかですね。あれば、どういう場合にどれだけ行なったか聞かしてほしいのですが。
  158. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 三十一年度の一般会計の補正におきまして、米軍占領中の米軍接収による土地等の損失の補償に関する問題は早急に解決することが困難であるので、損失をこうむった土地等の所有者に対し特別措置といたしまして見舞い金を支給するという措置をとっております。その全額は十億円でございます。なお、このほかに同時に一億円、外地から沖繩へ引き揚げた困窮者等のための措置として、合わして十一億円をこのとぎの補正では沖繩関係特別措置費として計上いたしております。
  159. 春日正一

    ○春日正一君 いまの一億円というのはどういうことですか、ちょっと聞き漏らしたのですが。
  160. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 一億円は外地から沖繩へ引き揚げた困窮者等に対し適切な特別措置を講ずるという性質の金でございます。
  161. 春日正一

    ○春日正一君 これは補償とはちょっと性質が違いますね。
  162. 船後正道

    政府委員(船後正道君) そのとおりでございます。
  163. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、本来この補償の義務はだれにあるのかということですね。つまり、十億円日本政府が出したけれども、しかし、本来日本政府が出すべきものだったのかどうかという点お聞きしたいのですが。
  164. 船後正道

    政府委員(船後正道君) まあ、何ぶん古い話でございますので、当時の記録によってお答えするわけでございますが、この三十一年度の一般会計の予算補正第二号を提案いたしました際の主計局長の補足説明といたしましては、先ほど申し述べましたように、この土地の補償問題の早急な解決が困難であるので、さしあたり特別措置として見舞い金を十億円支給することとする、この見舞い金につきましては、いわば立てかえ金的な性格のものと考えておる、かように述べております。なおまた、その当時の国会質疑の過程におきましても、この問題につきましては、日本政府のほうが出すべき義務があって出しているものではなく、アメリカ側が支払うべきであるという立場に立って出しているものであるという旨の政府答弁をいたしております。
  165. 春日正一

    ○春日正一君 その点、非常にはっきりしたんですが、資料としてはこれに出ているんですがね。「沖繩白書」というもの——日弁連の調査団が発表したもので、「法律時報」の四十三年三月二十日発行と書いてありますが、これを要約してみますと、昭和三十二年八月二十三日付で大蔵省主計局長琉球政府行政主席からの照会に関し、総理府南方連絡事務局長に文書を送って、その中で、平和条約十九条(a)項は沖繩に適用されない、そして、それは文理上からいっても、条理の上からいっても、論理の上からいっても、立法の趣旨からいっても、これは適用されないことは明らかだということで、私、これ長いから読みませんけどね、解釈もつけて、そういう回答の文書を送っております。その点、そういうものがあるということを確認できますか。
  166. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 実は御指摘ございましたので、さがしてみたのでございますが、何ぶん古い話でございますので、現物はまだ入手できません。ただ、先生いま御指摘になりましたこの「法律時報」の三月号によりまして私ども内容を承知いたしました。当時の関係者に確かめてみたわけでございます。関係者の話を総合いたしますと、琉球政府の行政主席から当時の総理府南連事務局長あてに照会があった、南連事務局におきましては、本件に関して関係省庁に見解をただした、それに対する大蔵省主計局の見解を述べた文書であって、いわば政府部内の往復文書にすぎない性格のものである、かように承知いたしております。
  167. 春日正一

    ○春日正一君 大体、そういうものがあるということは確認できるわけですね、そういう回答をしたということは。
  168. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 内容につきましては、原文がございませんので、はっきりは私ここでお答えできないのでございますけれども、当時そういう照会があったので一応の見解は述べた。なお、先生御承知のとおり、この三十一、二年当時は、まだ平和条約の十九条(a)項をはじめとするいろいろな問題につきまして政府部内にもいろいろ議論があったという段階でございまして、そういう段階におきまして主計局の考え方を披瀝したという性質の書類である、かように聞いております。
  169. 春日正一

    ○春日正一君 じゃ、もう少しはっきりしたものでお聞きしたいのですが、昭和三十二年三月二十日の参議院の予算委員会で、第二十六国会ですね、当時の池田大蔵大臣アメリカの補償義務についてこういうふうに言っております。「十億の土地の接収によりまする見舞金でございまするが、これはいろいろ計算をいたしまして、相当の金額に上るやに聞いております。しかし、これはあくまで沖繩方々アメリカ政府との間の問題で、岸総理もお話になったように、われわれはアメリカにこれを補償する義務があると考えております。」とはっきり池田大蔵大臣はそういう答弁をしているんですね、アメリカに義務があるということを。  それからもう一つ。これは昭和三十一年の補正予算案説明。これの中でも大蔵省の主計局は、講和発効前における沖繩の米軍接収による土地等の損失の補償に関する問題の早急な解決が困難であるので、土地等の所有者等に対し特別措置として見舞い金を支給するためということで、当然アメリカが払うべきものが早く解決できないからこの金は出すのだという趣旨のことを予算の説明でも言っておりますし、それから三十二年度の「国の予算」というものを見ますと、これは全部読むと長いから私要約しますけれども、これは八四四ページです。大蔵省主計局担当官がこれは解説を書いておるわけですけれども、それによると、第一点は、「法律上日本政府には補償責任がない」ということを言い、第二点では、「沖繩住民は米国に対し請求権を失っていない。すなわち、平和条約第十九条(a)項は沖繩には適用がないとした場合には沖繩住民が米国に対する請求権を失っていないことは当然であるが、一歩譲って適用ありとした場合においてもこの日本国民の請求権の放棄は、連合国がその請求権を否認した場合に、その否認について国際法上の責任を問わないことを約束したにすぎず、したがってこの場合も沖繩住民は米国政府に対する請求権は失っていない。」、はっきりこう言っているんですね。だから、沖繩の県民とすれば請求権を失ってない。それから第三項は、「沖繩住民に対して支払をなすべきことは米国政府の法律上及び行政上の責任がある。」、はっきりこういうふうに言っているんですね。だから、これはもう古いことで、先ほど言われたように、その資料は確認できないと言われますけれども、ここに現実速記録なりお出しになった文章ありますから、こういうものがあるかどうか、これを確認しておいてほしいと思うのです。
  170. 船後正道

    政府委員(船後正道君) ただいま先生の朗読されました三十二年の「国の予算」でございます。それは確かにそのとおりの文章が載っております。ただし、これは御承知のとおり、主計局の担当官が国の予算を解説するにつきましてある程度私的意見を交えながら解説したという性質のものでございます。
  171. 春日正一

    ○春日正一君 これはあなたが確認しなくても、国会の速記録ですし、それから予算の補足説明書、公文書ですから、これは確認されたものというふうに思います。  そこで、外務省のほうにお聞きしたいのです。前回四月十日の委員会でこの問題を愛知外相にお聞きしたところが、あなたおいでになったのですね。愛知外相は平和条約第十九条(a)項は沖繩にも適用という解釈をなさった、講和条約発効前のものは消滅していると解すべきであるというふうに言われたけれども、これ食い違っているわけですね。とにかく昭和三十二年当時、岸総理のころの池田蔵相の答弁を見ても、岸総理も言われているようにという形で請求権があるということを言っておるし、それからこの補正予算の説明にもそうなっておるということになりますと、やはりどっかで変わったわけですね。どこで変わったのか、あるいはいまの政府の中でそういう問題ではっきりした意思統一があるのかないのか。そこらの辺、聞かしてほしいのですがね。大臣おいでになると一番いいのですけれども、しかし、大臣でなくてもその経過とか事情はおわかりだろうと思うのです。
  172. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 政府の見解を変更したかという仰せでございまするけれども、私たちといたしましては、先ほど主計局次長からお話もありました。私もこの本で読みました、大蔵省文書、いわゆる内部的文書といわれております。ただ、いま先生が御指摘になりました国会における答弁というふうなものも、これは確かに答弁であるわけでございまするが、ただ、一方国会における答弁を見ますると、下田条約局長は三十一年五月にはっきりと、沖繩にある日本国民の請求権も平和条約十九条において放棄しておるということを申しております。あるいは、もう少しちょっとばく然としているというわけでございまするけれども、林法制局長官も三十一年の七月九日に衆議院におきまして、「問題は平和条約十九条で日本及び日本国民が放棄したという問題が沖繩に適用されるかどうかであろう。一応この文字に関する限り、沖繩が抜けるということは、ちょっと言えないと考えるが、だからといって、直ちにアメリカ政府責任がなくなるということにはならない。アメリカには住民の福祉を十分に向上させる責任があるから、沖繩の住民がその補償なり代価をとり得ないことによる困窮を救うべき責任があるのではないか。」こういうふうに申されております。したがいまして、その条約、いわゆる平和条約十九条の解釈そのものをはっきり言い出すか、あるいは私がただいま読み上げました林法制局長官の後半の部分、つまり、施政の任に当たる者が、十九条の問題は別にしても、この道義的責任からいってお金を払うべきものではなかろうかという趣旨の部分、そこの趣旨の部分が、両方、こっちが出たりこっちが出たりしておりますので、あるいは政府答弁が変更されたというふうにおとりになったかもしれないわけでございまするけれども、政府といたしましてこの平和条約十九条の解釈は全く変えておらないということは確かでございまして、ただ、やはりこれも、アメリカとの関係における沖繩返還、及び、何とかして道義的責任からしても沖繩住民の幸福のために適当なお金を出さしたいという交渉技術からいたしましても、その点をきわめてはっきりと申さずに、あるいは後段のほうに重点を置いた答弁があったと、こういうふうに私どもは理解いたしております。
  173. 春日正一

    ○春日正一君 その当時は後段に答弁の重点を置いた、この間の十日のときには前段のほうに答弁の重点を置いたということになるわけですか。外務大臣ははっきり、「ない」というふうに言われたのだけれども。
  174. 井川克一

    政府委員(井川克一君) いや、私が申し上げましたのは、その前段の部分はすでに昭和三十一年からも——もっと前から出ておるかもしれませんけれども、私の知っておる限り、その前から出ておるわけであります。したがいまして、サンフランシスコ条約の解釈は全く変わっていないわけでございます。ただ、先ほどちょっと最後に申し上げましたように、いろいろ交渉技術もありましたので、後段の点も触れた場合が多い。しかし、それが先ほど一応特連局長のお話にもありまする金額がアメリカ側も出してということによりまして、また沖繩が返るということに決定いたしましたので、愛知大臣は前段をはっきり申し上げたということになるだろうと思います。ただ、前段は愛知大臣になってから解釈を変えたものではこれは絶対ございません。
  175. 春日正一

    ○春日正一君 これは大事な問題ですから、もう少し突っ込んでお聞きしますけれども、いま聞いておりますと、大蔵省の見解と外務省の見解が違っておって、しかも、外務省の見解というのは非常にアメリカの見解と似ているのですね。それで、この間の愛知外相の答弁だけで言えば、アメリカ以上にアメリカに忠実だと、そういう見解になっているというふうに思われるのです。たとえば、アメリカが一九六五年十月二十八日に大統領の署名をしたいわゆる講和前支払い権限移行、これの立法府勧告書は、日本の外務省と同様に、十九条(a)項の沖繩適用ということをうたっているけれども、その不条理を認めざるを得なくなって、こういうふうに指摘しております。「条約第十九条によってこれらの請求権に対する我々の責任が免除されているという理由で、何のトガもない請求者たちが、他の被占領地域における慣行と異なり、七カ年もの占領期間中の補償を受けていない事実は、今ここで衡平な調整を求める情勢にきている。この問題は、根本的には、法的責任がないとしても、条理上の要求に応じて行動すべきだという倫理的命令にかかっている」と、こういうふうに言っている。アメリカも、確かに十九条(a)項は適用されるのだから、法的な責任はないけれども、しかし、まあ道義的、倫理的に考えれば当然補償しなければならぬということでこの法律を出してきたという説明をしているのですね。そうすると、それをいま、復帰する、そうして請求権はどうなるのだというこの時期に、日本の外務省が十九条(a)項は沖繩に適用されますと言って突っぱねてしまったのでは、これはどうにもならないのではないか。アメリカ考えているよりももっとアメリカ的な、アメリカの利益に踏み込んだような態度になってしまうのではないか。だから、ここのところを私は調べてみて、前のほうを言ったと言うけれども、この大蔵省が十億円出すときにも、本来日本政府が出す筋ではない、アメリカが出す筋なのだが、問題が片がつかないで沖繩の県民が苦しんでいるからとりあえず出しておく、立てかえ払いなのだ、こういうつもりで出しているわけです。そういう経緯があるわけですから、当然これらの問題についての請求権というものは日本主張すべき筋合いのものだろうというふうに思うのですけれども、この点、外務省としては現在の考え方はどうなのですか。
  176. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 御指摘になりましたアメリカがこのお金を払うときの米国議会における合同決議、まさしく私が先ほど申し上げた前段の問題と後段の問題を並べて書いているものだと思います。私自身、決して交渉したわけではございませんけれども、日本政府一体となりまして、この後段の趣旨によりましてアメリカと強く交渉いたしましてこれだけのお金を出すということになったわけでございまして、ただ、この後段の問題と前段の問題とは、先ほど来申し上げておりますように、やはり違う問題でございます。サンフランシスコ条約の規定の解釈いかんの問題でございます。しかし、その後施政の任に当たっておりまするアメリカ政府が、その住民に対してどのような責任を持つかというものは、全くこれは違うものでございまして、その立場から日本政府も、いままでこの時期まで、一九六五年まで交渉をいたしましてこれだけの金が出ることになったわけでございます。さらに日本政府から出しました十億円というものが、これは日本政府の法律上の義務でない、これは全くそのとおりでございまして、サンフランシスコ平和条約全般を通じまして、われわれが放棄いたしました請求権に関します日本政府の補償義務というものは全くきめておりません。したがいまして、これはもろもろの見地から日本政府がきめるべき問題でございまして、法律上の義務というふうにはなっていないわけでございます。
  177. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、その前に一つ、これはさっき山中長官にお聞きしたのですけれども、いろいろまだよく調べていないと言われたのですけれども、断片的に伝えられているだけでも、たとえばいま問題になっていますけれども、復元問題ですね。軍用土地連合会によると、復元補償の請求、約十六万坪で請求額四億百四十万円ですか、このぐらいのものが出ている。これは講和前に折衝されて六一年七月一日以降に解放された。だから、それ以前については、米軍の補償が、さっき言ったあれで、あったわけですから、それ以後に解放されたために補償されていないということでの請求額がこれほど出ておって、これは厚いコンクリートが敷かれておったり、採石場としてえぐり取られたり、全く土地の利用価値が失なわれているというような問題ですね。これに対して十九条(a)項ということをたてにして米側は補償を拒否しておるというような問題があるわけですね。それから、この軍用地の借地料にしても、坪当たり年間二十セント、これは「沖繩タイムス」の社説ですが、そうするとこれは七十二円でしょう。一年に住宅、企業用地のほうが一ドルから五十セント、だから、こういうものも一方的にきめられて向こうからあてがいぶちで払われているというようなこと、当然これに対して支払いの要求というようなのも出てくるだろうし、そういうものもあると思います。それから漁業補償の問題にしても、軍艦の航行、演習、爆破作業、こういうもので非常に大きな損害を漁民に与えている。だから、漁業の補償の要求額千六百九十九万ドルですか、これだけのものをいろいろ要求していますけれども、この明細を書いたものが新聞に出ていますけれども、しかしそれも、海は公のものだ、だれのものでもないというような理屈で一文の補償も払われていない。これが講和になったからそのままで済んでしまうというわけにはいかぬと思いますよ。そのほか、まあ米軍の犯罪による射殺事件だとか、あるいは先ほど言った水の中に油がまじってよごれたというような問題だとか、原子力潜水艦による海水汚染というような、そのための漁民の被害というようなものを調べてみればうんとたくさんあるし、これはやはり沖繩の県民にすれば何としても補償してもらわなければやっていけないし、補償してほしいという要求は非常に強く出ておる。だから、現にこういう数字が、計算したものが現地の新聞その他に出てくるわけですよ。だから、この点では、長官にお尋ねしたいのですけれども、やはり少なくともこういう問題について総理府として現地にどれだけのこういう種類の問題があり、請求権として出されている県民の要求というものはどれほどあるかというようなことをできるだけ早くお調べになって、それをどう扱うかということも考えていかなければならぬのじゃないかと思うのですけれども、その点、長官の考え方をお聞かせ願いたいのですが。
  178. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、戦争中の日本軍の徴発あるいは強制収用したような軍用地なども含めまして、あるいは旧国有地、県有地、並びに現在までの米軍の主たる軍用地、そういうものの面積、所在、あるいは権利関係、賃借関係その他ただいま問題になっております過去の米軍による被害の補償関係、これらのもの等をすみやかに確認するようにそれぞれ指示をいたしまして、私は私のところで、法律、条約の解釈——これは外務省に従わざるを得ませんが、それの実態はどうなろうとも、私の役所においてすみやかに承知しておくべき事柄であると考えまして作業を進めさしておる段階でございます。
  179. 春日正一

    ○春日正一君 ぜひそれはできるだけ広く正確に調べて、そして国民にもわかるようにしてほしいと思います。  そこで、また外務省のほうへちょっと質問を移しますけれども、いま言ったような非常な被害を受けておる。だから、戦後二十五年間アメリカの占領で沖繩県民が受けた被害は、簡単に補償で終わるというような性質のものじゃないと思いますよ。補償したからいいだろうという問題じゃないと思う。だから、そういう意味から言えば、米軍基地沖繩で占めておる比重とか役割り、人口、そういうようなものから見て、奄美小笠原返還の場合とはこれは質的に違うということはどなたもお認めになるだろうと思うのです。それで愛知外相は、この間の十日の委員会では、十九条(a)項が沖繩に適用されるというのは政府の一貫した解釈だというように言っていますけれども、この間私、これ持ってなかったものだから中途はんぱに終わったけれども、この条約——奄美返還協定ですね、これを見ますと、第四条で、「日本国は、戦争から生じ、又は戦争状態が存在したために執られた行動から生じたアメリカ合衆国及びその国民並びに南西諸島の現地当局及びその前身たる機関に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、且つ、アメリカ合衆国の軍隊又は当局の存在、職務遂行又は行動から生じたすべての請求権で、千九百五十三年十二月二十五日前に、奄美群島に影響を有するものを放棄する。」、こういうふうに言って、「戦争から生じ、」、「戦争状態が存在したために執られた」というところまでさかのぼって放棄するということを書いているんですわ。そうすると、いまあなたのほうでは、十九条(a)項は適用されるというのは初めから——講和条約以来わかったことだったんだと言われておるけれども、講和条約が発効したのは一九五二年の四月二十八日でしょう。この奄美返還協定が結ばれたのは一九五十三年の十二月二十五日ですわ。一年半後に結ばれた返還協定で、奄美の場合に、いわゆる講和前のものですね、戦争あるいは戦争後生じた講和前のものの放棄ということを特別うたっておるということを見れば、この条文の解釈からいって、一九五三年の十二月二十五日までは奄美群島の住民、鹿児島県民はアメリカに対する請求権を持っておったんだ、この時点で政府が放棄するという協定を結んだから請求権がなくなったんだという以外に解釈のしょうがないでしょう。この点どうですか。
  180. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 確かに先生仰せのとおりの規定でございます。ただ、私どもが存じておりまする限り、先生お話しになりましたように、五三年十二月二十五日に早急のうちにこれが返還されまして、いままでのものをまとめて書いて、非常にまた短い間でございましたもので、その十九条を一緒にして書いてしまったというふうに私どもは聞いておりますし、またそのように理解しておりまして、この第四条があるために奄美群島に対して第十九条が適用がなかったんだということには全くならないんじゃないかと思います。そして小笠原協定につきましては、第五条におきまして十九条と同文の趣旨にいたしませんで、十九条とは別の書き方をいたしておるわけでございまして、小笠原協定の第五条でございます。これは奄美協定第四条の書き方をいたしておりませんので、この第三条地域になってからのことが書いてあるわけでございます。
  181. 春日正一

    ○春日正一君 これ重大な問題ですよ。国際的な協定でしょう、国際協定というものはそんないいかげんなものじゃないでしょう。講和条約が終わって一年かそこらのうちにちょっと書いたんだから、だから、前のものまで入れたんだなんていう、国際協定というものはそんないいかげんなものではないでしょう。文字の上に書いたら、一字違ったって、それは昔の話で言えば、首のかかるほど大事なものでしょう。それを、そんな解釈しておっていいのですか。ここにちゃんとはっきりそういう根拠になるものがあるのに、それは便宜的にこう書いたんでありまして、というような解釈を、外務省の条約を担当する人がそんな解釈しておっていいのですか。
  182. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 確かに条約はまことに重要なものでございますので、今後ともほんとうに戒心いたしまして、一生懸命、誤解のないように条約をつくるようにいたしたいと思います。  ただ、奄美協定の第四条の規定が、先生のおっしゃいますような、何と申しまするか、創設的規定であるか、その間に関しますことは確認的規定であるかということでございますけれども、私どもといたしましては、つまり、占領期間中に関する限りは確認的意味であって、この条文があるから奄美群島に十九条がかからなかったということには決してならないのだ、そういうふうに解釈しておりますし、その解釈は私どもとして間違っているとは思っておりません。
  183. 春日正一

    ○春日正一君 これは大事な問題ですから私、くどく聞くのですけれども、これはあとあと大問題になりますよ。はっきりここに書いてあるし、それなら、この条文の中でサンフランシスコ条約十九条(a)項を引用して、これによって当然消滅しているのだ、講和前のものは。そうして、講和後のものは今日ただいま放棄するのだというんなら、これは正式な外交文章になります。そんなもの何にもないものだから、いきなり「戦争から生じ、又は戦争状態が存在したために執られた行動から生じた」云々という形で、そもそもの被害の根本から書きだして、それを今日ただいま放棄する、こう言ったのだから、そのときまではあるはずですよ。それは、そんないいかげんな解釈をしたら、それこそ日本権益の問題です。困ったことになる。だから、この論から言えば、当然沖繩返還協定ができて、その協定の中ではっきり「放棄する」というものがない限り、現在ただいま一切の請求権を持っている、これからいけば当然。沖繩というのは奄美と続きです。アメリカ基地奄美のほうにはなかったけれども、その一部が二十七度線からですか、こっち、早く返還された。そのときに初めて「放棄する」とうたった。それまではあったはずなんだから、そうしたら、「放棄する」とうたわない残ったところには、いまだにある。当然、日本立場からすれば、こう解釈すべきでしょう。そこのところどうなんですか。その当時からいって、いままでのいきさつとかなんとかいうことにこだわらずに、この条文に書いてあるこの文章からいって、普通の日本人の感覚どおりからいってどうなのだろうか。
  184. 井川克一

    政府委員(井川克一君) まず第一に、先ほど来申し上げておりまするとおり、この問題は平和条約第十九条の解釈でございます。この点につきましては、施政権者としての、先ほど来私が申し上げておりまするいわゆる後段の問題とは全く別に、第十九条の解釈としては、また、サンフランシスコ平和条約全体の解釈として、沖繩がここに言う「日本国領域」に含まれないはずはないわけです。そのことと、御指摘の奄美群島の協定第四条でございまするが、確かにそういうふうに私どもは確認したというふうに考えておりまするし、そういう意味からいたしますると、はっきりしてなかったかもしれません。したがいまして、私どもも、このたびの小笠原返還協定につきましてはその点を改めまして、小笠原に関しましては、戦争中のものは平和条約第十九条で解決されているというたてまえのもとに第五条というものを書いたわけでございます。したがいまして、返還協定と申しますものは二つございまして、奄美小笠原があるわけでございまして、新しい小笠原の協定におきましては、それをはっきり頭の中で区別して書いてあるわけでございます。いずれにいたしましても、問題はサンフランシスコ条約第十九条の解釈でございまして、その点、政府の解釈は変わっていないわけでございます。しかし、この点は、繰り返して申し上げますけれども、結局いままでまたアメリカからお金を出したというふうな、いわゆる施政権者としての道義的責任というものにつきましては、日本政府といたしましても努力をいたしまして、先ほど来申し上げております一定の金額を米国政府が出したわけでございます。
  185. 春日正一

    ○春日正一君 非常にくどいようですけれども、私、だめ押しをしておきますけれども、この協定にそれがあるというだけでなくて、先ほど来私がこれを確認してくれと言ったのも、この速記録の中で、当時の池田大蔵大臣答弁でも、アメリカは払うべきだということを昭和三十二年でしょう、講和条約のずっとあとに、言ってるんですよ。そうして国の予算というものは公の説明書です。この中で大蔵省の当時の係官もはっきり、しかも、これにはもっとこまかく、先ほど「私見も入れて」という答弁がありましたけれども、もっとこまかく、当然アメリカに支払う責任があるんだ、かりに十九条(a)項が適用されたって、あるんだということをここで論証している。そういう考え方日本政府の中にもずっとあったんですね。そうしてこういう論拠があるということになれば、やはり一番日本政府として考えなければならぬことは、とにかく沖繩県民がどれほどの被害を受けたのかわれわれ先ほど質問をしたけれども、今日に至ってまだ「目下調査を始めました」というところで、的確に沖繩県民がどれほどの被害を受けておるかということも調べもついていない。ついていないものをまるきり「放棄しました」ということを言っているが、放棄することはできないし、返還協定で放棄しない限りは、講和前、講和後にかかるこの実害がある限り請求権はあるんだと、こういう立場日本政府なり外務省なりがアメリカに対して臨んでいく。アメリカだって、先ほど私が読んだ文章みたいに、十九条適用されて責任はないんだけれども、道義的、倫理的に見れば黙っておれないではないかということで、特別の法律をつくって幾らかの金を払うという措置をとっているが、アメリカはそれをやらざるを得ないような状態にあるわけです。沖繩県民はひどい目にあっているのに、母国の政府が「請求権はありませんよ」というようにあっさりしたことを言われると、これは日本の国民として承知できるものではない。だから、私は根拠なしに言うのじゃなくて、この返還協定にすでにその実例がある。いままでの政府の解釈の中にも、そういう立場に立つ解釈がある。だから、その立場に立ってこの問題を処理していかなければならないだろうということを言っているわけです。これは私は決してこれだけで終わる問題じゃなくて、今後、協定の締結に向けて、沖繩現地でも国内でも相当大きな問題になる性質のものだと思います。だから私は、これで終わったというのじゃなくて、もっともっと証拠を持ってきて幾らでも問題を明らかにするために努力するつもりですが、一言、総務長官の感想でも聞かしておいていただきたいと思います。
  186. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 条約は感想を申すものではありませんので、奄美大島の際と小笠原の際と表現において相違するという点があるということは、これは外務省のほうの条約の、同じアメリカに対して同じ内容のものとして結ぶべき条約の中の違いでありますから、ここはやはり問題があると思います。しかし、その解釈その他については、外務大臣以下の外務省の見解というものに私としては異論を差しはさむ立場にはございませんが、少なくとも私としては、沖繩の住民の人々が過去に補償されたといっても、しかし補償を自分は受けなかった、このような被害を受けたという人もおられるようでありますし、これらの実態につきましては、どこに要求するということはあとの問題にいたしまして、私自身の役所の責任においてすみやかに調査したいと思います。
  187. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  次回は来たる四月二十七日午前十時から開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十六分散会