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1970-07-13 第63回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年七月十三日(月曜日)    午後一時十分開会     —————————————    委員異動  六月十九日     辞任         補欠選任      春日 正一君     岩間 正男君  六月二十三日     辞任         補欠選任      岩間 正男君     春日 正一君  七月十三日     辞任         補欠選任      長谷川 仁君     高橋文五郎君      増原 恵吉君     小山邦太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         塚田十一郎君     理 事                 川村 清一君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君     委 員                 河口 陽一君                 小山邦太郎君                 高橋文五郎君                 増田  盛君                 山本 利壽君                 矢山 有作君                 春日 正一君    国務大臣        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        小倉  満君    説明員        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        防衛施設庁施設        部長       長坂  強君        沖繩北方対策        庁長官      山野 幸吉君        外務政務次官   竹内 黎一君        外務省アメリカ        局北米第一課長  千葉 一夫君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵大臣官房審        議官       前田多良夫君        水産庁長官    大和田啓気君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する  調査  (当面の沖繩及び北方問題に関する件)     —————————————
  2. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日長谷川仁君、増原恵吉君が委員辞任され、その補欠として高橋文五郎君、小山邦太郎君が選任されました。     —————————————
  3. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 次に、沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 矢山有作

    矢山有作君 きょう、外務大臣見えぬということですが、沖繩返還交渉の総括的な窓口は外務省になっているはずなので、外務大臣がこれぬということでは非常に心外なんですが、しかし、次官という制度があるのですから、外務次官のほうであれはわからぬこれはわからぬということでなしに、外務大臣そのものということでおそらく御答弁がいただけるだろうと期待をして質問に入らしていただきますが、きょう私が質問を申し上げたいと思っておるのは、防衛の問題、それから請求権の補償の問題、それから資産の引き継ぎの問題、通貨切りかえ、外資の取り扱い、それから沖繩毒ガス撤去、それから最近頻発しておる沖繩における米軍人の犯罪の問題等々にわたりますが、多いので、できるだけ簡単に御質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、時間の都合がありますので、防衛庁のほうにお伺いいたしますが、沖繩返還時における自衛隊配備等の問題でアメリカ側防衛庁の間で折衝しておられるというふうに伝え聞いております。そこで、防衛庁のほうとしてはどういう具体案を出してアメリカ側折衝しておるのか、さらにアメリカ側沖繩防衛に対する構想というものははっきり示されておるのかどうか、まずこの点をお伺いいたします。
  5. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 沖繩返還後の自衛隊配備及びアメリカ側計画等につきまして、五月十九日の日米安保協議委員会におきまして、わがほうより、沖繩返還後に備えて日本自衛隊配備等について折衝を開始したい、準備交渉に入りたい、そういう申し入れをしまして、先方が応諾いたしまして、自来、わがほうは防衛局長先方アメリカ大使の補佐として参りましたカーチス海軍中将が当たりまして、二回ほど会合いたしました。大体、この二回の会合というのは瀬踏みという程度でございまして、明確な数字を出してどうこうということではなく、一般的な、何と申しますか、ゼネラル・ディスカッションと申しますか、そういう程度の話で終わっておるのであります。カーチスさんの奥さんのお母さんがなくなられて急にアメリカに帰ったりして、それで、回数がもっと多くあってしかるべきでありますが、まだ二回に終わっております。
  6. 矢山有作

    矢山有作君 これは新聞報道をもとにしてとやかく申し上げるのもどうかと思いますが、四十五年の七月六日の朝日の報道によると、防衛庁宍戸防衛局長アメリカ大使館の沖繩交渉団軍事首席代表カーチス海軍中将との間で防衛問題について話し合いができて、その際、どの程度配備考えているかということで出ておるのですが、こういうことは全然話し合いなさらなかったわけですか。話し合いをなされておって新聞に出ておるのにここでは具体的には申し上げられないということなんですか、どうなんですか。
  7. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 私が二回ほどカーチス中将と会っておりますが、先ほど大臣答弁のように、いまのところ瀬踏み話し合いをしているという段階でございます。お互いに基本的な考え方を説明し、それに対して質疑応答をする、それからその中でいろいろ情報を交換するという段階でございます。お示しの新聞報道を私も見ましたけれども、「最終計画を提示した」というふうに出ておりますけれども、そういう段階でございますので、まだ最終計画を提示するというふうな段階ではございません。お互いに基本的な立場を説明し、いろんな情報交換をしている、こういう段階でございます。
  8. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、この新聞に出ておるのは最終的な計画ではないにしても、一応防衛庁では持たれておる計画なんですか。それとも、そんなものは一切ないのだが新聞がかってに書いたとでもおっしゃるのですか。その辺はどうなんですか。
  9. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 防衛庁としましては、御承知めように、現在四次防の作業をしております。また来年度の予算折衝等準備もしております。その一環として沖繩のいろんな構想を事務的にいろいろな試案を検討しているということもあります。で、先ほど申し上げましたような、お互い情報交換の場で質疑応答の間に、われわれの腹案を、たとえば、大体こういうスケジュールで四次防ができるのだ、来年度予算はこういうふうな段取りでいくのだと、その場合に沖繩というものはどういう地位を占めるのだ、どういう場所を占めるのだと、したがって日本としてはどういうふうな施設が要るのだというふうな腹案みたいのものをいろいろ話し合って情報を交換する、こういうことをやっている状況でございます。
  10. 矢山有作

    矢山有作君 私、あまり長い御答弁は必要ないのです。  ここに書いてあるように、「陸上自衛隊地域防衛治安維持災害派遣などのため戦闘部隊二個中隊と施設部隊を合わせて千二百人云々」と言って、海上自衛隊航空自衛隊についてもそれぞれ言ってありますね。これは一応示しているのですか、示していないのですか。こういうことも一切示さないで、先ほどお話があったような基本的な問題だけを出しておるというのですか。その辺どうなんですか。それをはっきりおっしゃってください、あまり回りくどい説明要りませんから。
  11. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) いろいろな腹案についての情報を交換しているということでございます。
  12. 矢山有作

    矢山有作君 これは、そうすると腹案として出されたわけですね。
  13. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) この新聞に出ているような数字というわけではございません。いろいろな腹案を持っておりますので、それについてお互い都合を検討し合う、こういう状況でございます。
  14. 矢山有作

    矢山有作君 防衛庁はなかなか口がかたくて、新聞に出されたことでも、そういう腹案一つの案としてあるのだということすらなかなかおっしゃれないらしい。私は、やはりこの間からも申し上げましたように、やはり日本防衛計画を審議する場合は、これは軍事上の問題ですからどうしても表に出せないものもあるだろうと思うのです、多少。しかし、こういうようなことは、率直に、こういう考え方でやっておるのだということは出しても私はいいのじゃないか、むしろ、そのことのほうが必要なんじゃないかと思うのですがね。あまり口のかたいことをおっしゃらずに、出せる範囲のことは、出せる範囲というのはあまり縮めないで言っていただいたほうがいいのですがね。まあおっしゃれないということになればしかたがありませんが。  そこで、四次防で沖繩防衛がどういう位置を占めるかということ、あるいは、その際に沖繩においては自衛隊としてどういう基地が要るかというような基本的な問題について話し合っておるということですから、それについでの具体的な内容というものは持っておいでになると思うのです。それで、これはおっしゃれませんか、それとも言えますか。これもないしょで言えませんか。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) わがほうの基本方針として大体先方に伝えてありますことは、沖繩における陸上警備力、それから若干の施設能力、それから地方連絡部。それから海におきましては沿岸哨戒力、それから若干の対潜哨戒力。それから空におきましては防空能力——これはレーダー管制塔も含みますが、そういうようなものが必要であろう、そうわれわれは認識していると、そういう基本的な考え方先方に言ってあります。しかし、どの兵力を幾らと、数字的に正確にメンションしているという段階ではなくて、向こう考えをまず聞いて、向こうがどういうふうに評価しているか、何を考えているかということを見ながらこちらの数字も固めていく、そういう流動的な過程で結論がつくられていくというものだろうと思っております。
  16. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、のれんに腕押しみたいな問答で、何が何やらよくわかりませんが、そうすると、いままでの話の中で、極東戦略の中で沖繩をどういう位置づけをしようとしているかということについては、基本的な意見というものが出されておりますか、どうですか。もし出されておるならば、その概略のことでもこの際おっしゃっていただきたいのです。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛局長の報告によりますと、ともかく沖繩というものはアメリカが非常に重要視している、そして、沖繩機能をできるだけ保全しておきたい、そういう感覚に立っているやに聞いております。
  18. 矢山有作

    矢山有作君 この前の内閣委員会の場でしてか、たしか防衛庁長官は、日本自主防衛力整備というけれども、その自主防衛力整備をする場合にはアメリカ極東戦略関係があるのだというふうにおっしゃっておりましたが、私は今年の秋に予定されておる四次防を立案されていくについても、また、その中で沖繩防衛をどう位置づけるかということについても、やはりアメリカのほうで沖繩基地を具体的にどうしようとしておるのか、沖繩中心としてアメリカ軍配備計画というものを極東戦略の上からどうしようとしておるのかということが明確にならぬというと、やはり四次防の策定の上にも非常に支障が出てくるのではないか、こういうふうに常識的に考えておるわけですけれども、その点、いかがでしょう。
  19. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 四次防をつくります際に、いまお話しのような、アメリカ沖繩をどう評価するかということも一つ考え方の基礎になりますし、同時に、わがほうが沖繩をどう評価するかということも四次防策定の中の一つの大きな要素になろうかと思います。先ほど大臣のお答えのように、アメリカとしては沖繩を今後とも重要な基地として維持していきたいという基本的な考えを持っております。わがほうは、四次防策定の際につくることでございますけれども、沖繩施政権が返ってくれば、防衛上の立場から申し上げれば、わが本土ですから、当然わがほうが第一次的に責任を負うべきである。その立場に立って、いままでの本土と全体を見渡して、沖繩における防衛構想がどうあるべきかということを考えていくべきであろう、かように考えております。
  20. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、何ですね、長官お話によると、沖繩についてはアメリカは非常にこの基地を重要視しておるし、基地機能の保全をはかるという意向がはっきり出ておるようです。現実の沖繩基地の実態を見ましても、基地機能強化されておるようにわれわれも聞いておりますが、そういう中で施政権が帰ってくるのであるから、当然第一次的な沖繩防衛というものは日本のほうでやるべきだということを強く主張するということになりますと、そこにアメリカ側日本側との防衛構想の上で私は多少の矛盾を生じてくるだろうと思うのです。その場合に、一体、アメリカ立場アメリカ極東戦略上における沖繩位置づけ立場というものに、私どもこれまでの経験からすると、押しまくられてしまうのではないかという危惧の念を持っているわけですが、この点では防衛庁としては確たる考え方を持って、先ほどおっしゃったいわゆる施政権返還された後の沖繩防衛というものに対して、日本の自走的な立場から対処するという決意を持って臨まれると、そういうふうに理解しておってよろしゅうございますか。
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん、施政権返還されるということは、日本側に一ぺん管理権が返ってくるわけでありまして、それを向こうにあらためて貸す、そういう論理的段階にありますから、御趣旨のとおりやるつもりでおります。
  22. 矢山有作

    矢山有作君 そこでちょっとお伺いしたいのですが、アメリカ上院軍事委員会リーサー米陸軍長官証言しておりますが、その証言によると、沖繩太平洋地域全域米軍に対する補給とその管理を扱う「中央管理施設」を設け、タイ、南ベトナム韓国などにある管理施設をこれに吸収させていく、こういう構想が出されておりますね。それから海兵隊司令官のチャップマンという人の証言によりますと、最近ベトナムから沖繩に引き揚げている海兵隊について、これらの部隊によって海兵隊緊急派遣部隊が編成をされ、その数と太平洋全域に対する応戦能力は著しく増大している、こういうふうに言っておりますが、これらの証言と、共同声明の中で、韓国台湾地域の安全がわが国の安全にとって重要であると、こういう表現がある。それや、また、返還時にベトナム戦争の終わっていないときは、そのときの情勢に照らして沖繩返還について十分協議すると、こういうことがうたわれておるわけですが、この両者を結びつけると、返還後においても沖繩は従前と変わらないどころでなしに、むしろ機能的には非常に強化をされ、アジア太平洋全体に対するアメリカの重要な戦略拠点としての役割りを果たすと、こういう方向に向かっていかざるを得ないと思うのですが、どうでしょう。私はそういうふうに理解しておるのです。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) リーサー陸軍長官等証言によりますと、兵たん補給関係沖繩に統一して合理化したい、そういうようなことではないかと思います。しかし、それ以外の、何と申しますか、兵力というような問題につきましては、これは非常に流動的でありまして、いまのところ、どういうふうに動いていくか、確信のある答弁はできないのではないかと思います。たとえば、C5Aが飛来して来ているということは、いわゆる遠隔駐留というような、いつでも部隊が移動できるということであの飛行機はできているそうでございますから、必ずしも常時大部隊駐留するという前提に立っていないのじゃないかということも考えられます。しかし、それも証拠あっての発言ではございません。いろいろな点を考慮いたしますと、私は、全般的に言えば、アメリカの議会の空気等を見ると、やはり総予算の中における軍事予算というものは少しずつ削減されている傾向にあります。そういう面から見て、必ずしも施設あるいは兵員というものが増強される方向に行くと即断することは早いのではないか、そういうように私は思います。
  24. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、管理部門については、なるほどおっしゃるように、沖繩にそれを集中しようということで、そのことは直ちに大部隊駐留には結びつかぬというふうにおっしゃいます。私は、大部隊駐留するから沖繩としての機能強化されるとかされぬとかという問題ではないと思うのです。もう一つの面の、いわゆる海兵隊による緊急派遣部隊太平洋全域を想定をしながら沖繩に設置されるということは、太平洋のこの広い地域のどこで紛争が起こっても、沖繩を足場にして緊急にこれに対処できると、こういう立場をもって設立が考えられておるんではないかと思うのですが、その点はどうなんでしょう。そうなるというと、単に兵たん補給ということでなしに、いわゆる沖繩中心にしての強力ないわゆる攻撃力がそこにたくわえられる。しかも、その対象は太平洋全域ということになって、これはたいへんな問題だろうと思うのですが、その辺の御理解は。
  25. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 攻撃力という表現が適当かどうかはわかりませんが、海兵隊駐留というようなものは、イマージェンシーの場合における対処能力という点では理解することができると思います。しかし、それはいままででもおったものでありまして、これから特に返還後にかけてそれが増強されるかどうかというようなことは、まだ即断できないと私は思います。
  26. 矢山有作

    矢山有作君 それから、先ほど、沖繩基地についても、アメリカ国防予算削減をしておるから、したがって、基地縮小合理化が進むんじゃないか、そういった理解をしておられる意味の御発言があったと思うのですが、私は、それは見方が一面的に過ぎやせぬかと思うのです。最近の伝えられておる、沖繩で言うならば、嘉手納軍事基地その他の重要な軍事基地に対する施設拡充強化というのは、非常にまあ進んでおるということがいわれております。だから私は、なるほど、全体的な国防予算削減するという方針が出ておる。ベトナムにはベトムナ化が進んでおる。韓国では韓国駐留軍削減をやろうとしておる。しかしながら、そうやる中で、現在のすぐれた機動力最高度に活用して、沖繩拠点として、削減をしてもかまわない、韓国側削減をやってもいつでも韓国事態に対処できる、そういうようなことを考えながら進められておるんであるから、したがって、基地縮小合理化というのは、必ずしも基地機能というものが減退をするということにはつながらない。むしろ、縮小合理化の中で基地機能はすさまじく強化されておるというふうに私は見るべきじゃないかと思うんです。これはおそらく防衛庁のほうでも、沖繩に対してアメリカがどういうふうな基地施設整備をやっておるかということは情報をつかんでおられるでしょうし、さらに沖繩だけでなしに、日本本土基地についても、三沢とか横田その他の基地に対してどのような強力な機能強化をはかっておるかということも、これも情報をつかんでおられると思うのです。だから、そういうような立場からお考えになれば、私はいまのような長官の御答弁にはならぬのではないか、こういうふうに思うわけです。先ほど例に引かれたC5Aの問題にいたしましても、これは御存じのように非常に大きな輸送機ですが、これにしても、今度試験飛行という形で、アメリカ本土チャールストン基地からフィリピンのクラーク基地に飛び、それから南ベトナムカムラン基地に行き、それからたしか沖繩嘉手納ですかに行き、横田に来ておる。そしてアメリカに帰った。これは私は、C5Aがアメリカから飛び立って、ずっとアジアを回ってきたんだというふうに単純に見ることはできないと思うのです。なるほど基地整理縮小ということはあるけれども、その半面に、こういうような超大型輸送機アメリカ本上からアジア全体をつないで、いつでも緊急事態に対応できるような整備が行なわれている。そのときに沖繩嘉手納なり本土横田というのが非常に重要な役割りを果たす。つまり、米本土アジア全域とを、沖繩嘉手納横田が直結をされて、向こうがきわめて機能的な作戦体制が立てられるんじゃいなか、こういうふうに思うのです。そう考えれば、私は、沖繩基地の将来というのは、従来よりももっともっと機能強化されるという形になる。その機能強化されるということは、どういうふうな方向に行くかというと、これはもう共同声明の中でも言われておることだし、あるいは共同声明を出された後、ナショナルプレスクラブ首相記者会見の中でも言われておることです。これらを考えたら、これは要するに、沖繩基地返還後においてもアメリカの自由自在に使える基地なんだと、こういうことになるのじゃありませんか。さらに、それどころではなしに、日本本土基地すら、韓国台湾の安全と日本の安全に直接結びつけられる、こういうようなことから推すならば、これまたアメリカが自由に使えるような軍事基地になってしまう、こういうふうに論理的になるんじゃないでしょうか、その辺の御認識はどうでしょうか。
  27. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 沖繩基地は、返還後は安保条約の網がかかってきまして、安保条約の制約を受けるわけでございますから、いま以上にアメリカにとっては自由に使うことはできなくなる。安保条約に関する限りはそういうふうにわれわれは解釈して差しつかえないと思います。事前協議という問題も中には含まれておるわけでございますが、内地の基地につきましては、私は全般的に見て、アメリカは、外国に常時軍人駐留さしておくということが民族感情やその他から見てもあまり適当でない、したがって、できるだけ機動力を使って、いざというときに人間を増派できるような体系に持っていきたいという、そういう基本的な考え方があるんではないかと思うんです。そういう常時兵員を多数駐留さしておくというやり方から、いまのようなやり方に変わるという可能性はあると思います。しかし、そのことが、機能強化されたとかなんとかいうこととは直接結びつくものではない。つまり、何といいますか、運用体系の変更ということは考えられるだろうと思います。
  28. 矢山有作

    矢山有作君 ことばの上では何とでも言えるんですが、私はそういうふうには思わんのですね。それは駐留地国民感情考えたりあるいは金の面からいえば、常時駐留でなくして、すぐれた機動力を活用して、いざという緊急事態のときには即応できる体制さえあればこれはいいわけですから、その際アメリカにとって必要なのは何かといったら常時駐留でなしに、基地が自由に使えるという保証さえあればいいんです。基地が自由に使えるという保証さえあれば、常時たくさんの部隊駐留させておかんだって、先ほど言った、すぐれた機動力でもっていつでも緊急事態に応じられる。したがって、基地使用がどうなるかということが一番重要なんです。私は、先ほど来論議されておるような状態から考えたら、これはアメリカは、基地自由使用ができるものという前提に立ってこういうことをやっておる。また、アメリカ基地自由使用ができるというふうに本土沖繩含めてですが——そういうふうに理解をするようなことが、共同声明で言われたり、あるいは首相ナショナルプレスクラブの演説で表明されておるんじゃないですか。だから、常時駐留ということと、いわゆる緊急時に即応できる体制基地が自由に使われるということと、私はそういう点を考え合わせる必要があるんじゃないかと思うんです。常時駐留だからどうこうといろ問題ではないですよ。
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 矢山委員の御見解は御見解として拝聴しておきますが、私はやはり運用体系の変更という方向に行っておるんではないかと思うのであります。
  30. 矢山有作

    矢山有作君 その運用体系がそういうふうな方向に行くということがこれはおそろしいんですよ。本土なり沖繩基地を自由に使えるというそういう前提に立って、運用体系がいま論議されておるように変わっていきよる。ですから、これがおそろしいんです。このことを私は特に強調しておきたいと思うのです。そしてまた、アメリカがそういうふうに基地自由使用ができるんだという前提に立って、沖繩中心としての戦略体制を立てておるということを裏づけるような発言もあるでしょう。御承知のように、ジョンソン国務次官が日米共同声明の「背景説明」ということでしゃべっておるんですが、その中にこういうことを言っていますね。重要なことは、核の問題に触れていますが、これは一応おいておきます。「重要なことは、朝鮮の防衛日本自身の安全に直接関係がある旨、日本側が認めたことである。これは日本及び沖繩にあるアメリカ基地及び施設使用を意味する。これはこういった問題に対する日本の公式態度の多少とも大きな変化を示していることに注目したい。日本が他の地域防衛に関心を持ち、かかわりを持つということ、これが今度の重要なできごとである。理論上は、アメリカの行動は沖繩に関しては制限されるかもしれない。」——理論上ですよ——「しかし、在日基地に関してはアメリカの理論上の行為は拡大される。」、こういうこと言っているわけですね、えらいややこしい言い回しなんですけれども、もっと端的に言っているのは、グリーンという国務次官補が下院の歳出委員会での証言でこう言っております。「韓国台湾海峡、東南アジアで新たな紛争が勃発した場合、日本沖繩基地使用について日本政府はいかなる異議も差しはさまないものと確信しておる。」、こう言っているわけです。ですから、アメリカ理解というものは、こちらが理解しておるのと全く違った理解をしておりますね。簡単に言ってしまえば、要するに、沖繩、本上の基地自由使用できる、こういう立場から理解をしておるわけです。おそらく今度の返還交渉等に臨んでもそういう立場沖繩基地を保有しようという態度で私は臨んでくるだろうと思うのです。特に、先ほどこの交渉過程におけるアメリカの基本的な方針として、現在の沖繩軍事基地機能を保全しておきたいというのがアメリカの態度だと、こういう説明がありました。現地における沖繩アメリカ軍基地機能というのは何かといったら、沖繩基地がいかなるものの制約も受けないでアメリカの意のままに使えるというところにその最大の意味があるのです。そうすると、その基地機能を保全するということになれば、返還後においても沖繩基地というのはいままでどおりアメリカの意のままに使える、いわゆる自由使用基地になると、こういうことになるのじゃないですか、論理的に。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 共同声明のその部分に関する政府側の考えは、前国会においてしばしば総理大臣外務大臣答弁したとおりでございまして、必ずしも矢山委員のおっしゃるとおりではないと思います。  それから、沖繩基地機能でございますけれども、返還後は日米安全保障条約がかぶってまいりまして内地の基地並みの扱いを受けることでございますから、この点はいままで御答弁申し上げましたとおり、向こうとしては非常な制約を受けるようになるようになると思うのであります。
  32. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、この議論は何べん繰り返してもおそらくすれ違いになるんだろうと思います。しかし私どもは、アメリカの政府高官筋の発言、そしてまた、沖繩基地に対するアメリカのいわゆる基地強化の施策が急激に進んでおるというような事態、さらに最近韓国から削減されたアメリカ軍沖繩に来たり、その他いろいろな状況考えて、やはり基地機能は現在どおり保全をされるよりもむしろ強化される、したがって、自由使用前提として沖繩基地機能強化をされる、こういうふうな理解しかできないと思います。しかし、これだけやっていますと、いつまでたっても意見の食い違いのままに進みますから次に問題を移しますが、この間土屋政務次官防衛当局者一行四人と韓国に行ったということですけれども、これは一体、これに同行した防衛庁の方々はどういう階級のどういう方でしょうか。
  33. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 内局から官房総務課長の安田君というのがついてまいりました。それからユニフォームのほうでは陸幕の第二部の副部長坂本一佐というのがついてまいりました。おもな随行はこの二人だったと思います。あとは政務次官の秘書官だったと思います。
  34. 矢山有作

    矢山有作君 これは最近在韓米軍削減をめぐって、韓国のほうは、日韓米の共同防衛体制をつくったらどうかとかいろんなことを朴大統領が言っているようですが、私は、そういった問題についても話し合いをするということで行かれたのかどうかということにちょっと疑問を持っているのですが、どうなんですか。
  35. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 万博で韓国の方々がおいでになって、そのお返しという意味もありまして、向こうから上尾政務次官に招待状が参りまして、それじゃまあお返しの意味もあるから行ったらいいでしょうというので私はやりました。ついていったのは、坂本君というのは防衛駐在官関係の仕事をしている人間で、そういう意味で、あすこに塚本という駐在官がございまして、その仕事を見る必要もありますし、総務課長はそういうプロトコール的な要素もあって行ったわけで、そういろ大それたことをしに行ったのではございません。また、そういう意思もございません。
  36. 矢山有作

    矢山有作君 これはそういうことでしょう。それはそうですが、日米韓の共同防衛体制云々というのはあまり大それたことじゃないのでしょうね。これはいま政府がやってきたことを見ると、米韓相互防衛条約がある、それに日米安保条約がある、それに日韓の間の国交は回復している、こういう状態で、しかも、沖繩アメリカアジア戦略の中でのきわめて重要な役目を果たしている。そして沖繩韓国日本の間は、空軍等については、一番よく長官も御承知のように、もう在日米軍にとっては国境も何もない。自由自在に飛び回っているわけですね。そういう実態からいえば、事実問題としては日米韓の共同防衛体制はでき上がっているということなんですね。だから、これは大それたことじゃなしに、事実上としてもう存在している。ただ、それをさらに駐韓米軍削減に伴って具体的にそういう事情のもとで、今後どうやっていくかということだけが残ってくるのだろうと私は思う。ですから、駐韓米軍削減、そして特に工兵隊等が沖繩で再編される、こういう状況の中で、そして先ほど来論議した問題を考えたら、これはもう日米韓の共同防衛体制はもっともっと進んでいくのじゃないか、こういう危惧の念を持っているわけです。そういうことはありませんか。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は先国会来政府が答弁しているとおりでございまして、特に変化はないと思います。
  38. 矢山有作

    矢山有作君 防衛問題についてはまたあらためて論議をさせていただきますが、きょうのところはこれで私のほうの質問は終わらしていただきます。
  39. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 第一点は、伝えられるところによりますと、長官は今秋米国におもむかれまして、自主防衛の問題についてアメリカ側の見解をただしながら新しい一つ考え方といいますかを立てたいという意味のことがございますが、この点の真偽のほどをお聞かせいただきたい。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がアメリカに行くということは、まだきまった話でもなければ、向こうとそういう計画が具体的に進行しているわけでもございません。むしろ私は、万博を機にレアード国防長官日本に来てもらって日本で話をしたい、そういう気持ちを持っておりまして、そういうようなアプローチをしたことがございます。しかし、いずれにせよ、日本のシビリアン、政治家と、それからアメリカのやはり国民を代表する政治家が防衛問題について話し合うということは非常に大事であって、制服同士が国民の知らないところで話し合うというようなことはむしろ危険である。政治家が大綱をきめて、その大綱に基づいて制服同士が施行細則をやる。そういうのがシビリアン・シュープリーマシー——文民優位であり、望ましいことであると考えているわけであります。そういう意味で、日米安保協議委員会というのは一つの機構ではありますけれども、安保協議委員会のメンバーを見ると、向こうの国務長官とか国防長官はいないわけです。だから、むしろ向こうの国防長官とこちらの防衛庁長官というような政治家レベルの話というものは私は必要であると、国民の見ている前で双方の言い分なり考えなりを話し合うということは必要である、そういうふうに必要性の認識は持っております。しかし、新聞に出ているように、今秋行くということはきまったというわけではございません。
  41. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もちろん、今秋という限定されたものではないにいたしましても、いまの御答弁を伺っておりますと、可能な限りにおいてレアード国防長官日本に招くか、あるいは長官みずから訪米されて、今後の新しい日本防衛体制というものについての協議をしたいという腹づもりがあるように判断されるわけでありますが、おそらくその時期というものは決して遠い将来のことではなくして、いまのお話のニュアンスの上からうかがいましても、その時期は非常に近い将来において行なわれるのではないか。その際に、おそらく長官としても今日までの日本の国防体制、しかも、沖繩返還という新しい事態に即応した今後のあり方というものについてのあるいは秘められたその構想というものがおありになり、その点について、まずそういう接触の機会があった場合に何を重要な課題として討議をなさるおつもりなのか。あるいは、いまそこに結論めいたようなものがないにいたしましても、できることならばこういう点で話し合ってみたいものだというお考えがおありになるであろうと、こう思いますので、その点についてお聞かせをいただきたい。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ話し合うというふうにきまったわけじゃありませんから、いますぐ内容、構想を言えといっても、とりあえずまだこの議会で申し上げるような段階まで成熟したも  のを言うことができない状態でございます。
  43. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今後の大きな問題点の一つになるであろう自主防衛という問題、この点については  いかがでございますか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一つ一つお聞きいただきましても、会談自体がまだそういう不確定なきまったものではありませんもんですから、お許し願いたいと思います。
  45. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでは、新しい事態の変化を見たその時点においてまたお尋ねをすることにいたしまして、つい先ごろ防衛施設庁が、沖繩において現在使用されている米軍基地調査をおやりになったそうでありますが、これまた結果の発表を見ますと、いままで琉球政府が発表したその資料に基づいていると思われる節が非常に濃厚でありますけれども、具体的にその調査をされた成果というものはどういうものであったのか、また、その成果に対して、今後防衛庁としてどのような観点に立って施設返還というものを要求されていくおつもりなのか、この点、いかがでございますか。
  46. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 防衛施設庁のほうで係官を派遣しまして沖繩における基地状況調査してまいりました。これは言うまでもないことでございますけれども、七二年の返還時あるいはそれ以降におきまして防衛施設庁の仕事が非常に複雑かつ多量になると思います。それの非常に予備的な調査ということで、とりあえず係官を派遣いたしました。米軍当局及び沖繩琉球政府当局から非常にいろいろな便宜をはかっていただいて調査をしてきたようでございます。で、とりあえずのまず予備的な調査でございますのでまだ不備なところもございますし、将来お尋ねのように、その調査そのものが施設の利用の方法にどういうように響くか、あるいは地位協定その他の適用上どういうふうになるかということはまだこれからの問題でありまして、いまやりましたのは、第一回のきわめて基礎的な資料収集という程度のものと聞いております。
  47. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、これは施設庁の問題ではあるかもしれませんけれども防衛庁全体の問題でありますので、当然、今後の返還をめぐりまして、詳細な調査というものが二回、三回と行なわれるであろうと思います。第一回の調査だけでは、まあいまの御答弁のように、十分とは言えない、これは理解できます。今後何回くらい御調査をされて成案をまとめられるおつもりでございましょうか。
  48. 宍戸基男

    説明員宍戸基男君) 何回というように回数を別に計画しているわけではございませんが、私どものまあ防衛局といいますか、制服のほうでも防衛構想を立てるためにいろいろな調査が必要でございましょう。何回か必要な人を出張さして調査をしてこなければいかぬと思います。また、施設そのものにつきましても、施設庁から第一回をやりましたけれども、これからたびたび必要な人をしょっちゅう派遣する。場合によりましては相当長期の出張を命じまして、やや、いついて、いろいろな資料を収集してくる。返還時が近づけば近づくほど、相当長期にかつ相当な人数が、基礎的な調査からさらに進んで具体的な調査に当たらなければならぬと、こう思っております。
  49. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 かつて私どもが国内における——まあ本土内でございますが、基地の総点検をやりました際に、百四十七カ所ほど米軍基地のあることがはっきりいたしました。その中で使われているもの、使われていないもの、これも明確にしたわけでございますけれども、それについて施設庁のほうに実態を申し上げ、すみやかに特にその使用していない施設については返還を要求すべきではないか。ところが、施設庁のほうではこれに対応できる準備がなかったとみえまして、たいへんろうばいされたということを聞いておりますけれども、今日、沖繩がたいへんな焦点になっているそういう立場から考えまして、現在百四十八の基地がある。もうすでに使われていない基地もあるやに聞いておりまして、確かに返還前ではございますけれども、こうした施設についても返還というものがあり得るのではないか。あるいは、防衛庁独自の立場に立って今日まで一貫して貫かれてきた自主防衛体制というものを固める意味からも、現在の時点においても日米交渉と並行的にこの問題を考えているのかどうなのか、この点いかがでございましょうか。
  50. 長坂強

    説明員(長坂強君) ちょっとおくれて参りまして、必ずしも御質問の趣旨に合致しておるかどうかということを危惧いたしておりますが、御質問の御要旨は、この沖繩基地の実態から見て、不要と申しますか、あるいは活用の度合いが薄いような基地については、対米交渉等によって今後返還を求めるような用意があるかどうかという趣旨の御質問だと存じますが、私どもの防衛施設庁といたしましては、かねてから庁内に沖繩返還に備えまして施設庁長官を長とするところの対策本部も設けてございます。そこでいま、先般からそのような面に関します実際の研究も内部ではいたしております。ただ、これがいわゆる交渉のルートというものがございますだけでございまして、そのような交渉のルートに乗る時期におきましては、私どもの考え方もそういうことを通しましてだんだんと運んでまいりたい、このように考えております。目下検討の段階というふうに言えようかと思います。  以上でございます。
  51. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これも先般おそらくは那覇市独自の立場で要求をされたんであろうと推察するのでございますが、那覇市内における、いわゆる使用されていない米軍基地返還を要求しておる。おそらくは時期的に今後の経済復興とからみ合わせて、現在返してもらうことが非常に効果がある、大きいという判断に基づくものであろう、このように思うわけであります。ところが、民政府のほうからは、移動に関する軍事予算が取れないという理由でもってその要求が拒否されたという事実があるようでございます。しかも、それは文書によっての回答であります。長官はこうした事態の推移をお考えになられたときに、もしも返還後において、米国側に移動すべき軍事予算というものがないために、われわれが望んでいる基地返還というものが思うようにいかないというような危惧の念も抱かざるを得ないと思うのでございますが、その点について長官の、今後いろんなケースというものが出てまいるだろう、そういう問題についてもおそらくいろいろ検討を加えられて、あらゆることを想定されながら基地返還ということをお考えになられるだろうと思うのでございますが、現実的にそういう問題が起こっている現在、長官としてはどのような判断に立たれ、対応されていかれるおつもりですか。
  52. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 施政権返還後におきましては、わが国家の主権が厳然として通用する状態になるのでございますから、先方で要らぬものはさっさと返してもらいます。それから、民生というものを非常に重要視して、住民の希望をできるだけ実現するようにわれわれは政府として努力すべきであると思っております。ただ、先方のいろいろな軍事機能の保全とか、あるいは極東の平和及び安全維持に寄与するという安保条約上の約束もございますから、一挙に短兵急にやることはあるいは少し考えたほうがいい場合もあるかもしれません。ある場合には段階的にやる必要もあるでしょうし、若干時間をかすという必要もあるでしょう。しかし、基本方針は、いま申し上げましたように、できるだけすみやかに住民の意向を尊重しつつわがほうの主張を貫いてまいりたい、このように考えます。
  53. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただいま申し上げた問題は、現在進行形の形の段階でありますので、いまここで結論をどうこうというふうに申し上げるわけではありませんけれども、ただ最近の客観情勢というものがいろいろときびしく変化しているという問題があります。先ほども御答弁の中にございましたC5Aの飛来という問題——勘ぐって考えてみた場合、返還後においては日米安全保障条約の適用を受ける。そういたしますと、当然兵力の大幅な移動あるいは装備の重大な変更ということについては事前協議の対象になりますので、たいへん米国側としてはやっかいな、そういう要素をかかえてしまわなければならない。ならば、返還前にできるだけ沖繩米軍基地強化をはかっておいたほうが、将来のために既成事実というものをつくっておくことによって非常に有利ではないだろうか、このように判断されないわけではないわけであります。先ほども質疑の中にございました、米国内においてのそれぞれの責任ある立場に立つ人たちの証言等を聞きましても、それを裏づけるような最近の一連の行動が行なわれている。かてて加えて、おそらく大統領選挙にも影響があるであろうと思うのでありますけれども、おそらくそれがことしの秋あたりになるかどうかは別問題といたしまして、近く南ベトナムから米地上軍十数万が撤退するであろう、こういうふうにいわれているわけであります。はたしてその撤退した後においてのアジア太平洋における防衛体制というものを米国側は一体どう考えておるのだろうか。必然的に考えられることは、やはりキー・ストーンとしての重要な役割りを果たすその一環から沖繩というものが再認識された上に立って基地強化というものが考えられはしないか。要するに、そういう既成事実の上に成り立った今後の米軍強化、たいへんその点については心配する一人でございますけれども、最近の一連のそうした動向から、今後の基地返還というものをめぐりまして、さらに私はその点についての一歩突っ込んだ長官の意のある御返事をお伺いしたい、こう思うのであります。
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 米軍の撤退というものは、アジア情勢にやはり心理的にもあるいは物理的にも影響を及ぼすものであるだろうと思います。日本にとってみますると、いま韓国で在韓米軍撤退の問題がいろいろ新聞に出ておりますけれども、これも直接間接、やはり日本の安全保障の問題と関連がないとは言えません。私らの希望からすれば、やはりこの前の一九五〇年朝鮮事変勃発前後の情勢等を考えてみると、できるだけ韓国には米軍部隊が存在したほうが安定性がある。アメリカの国内事情はいろいろございましょうが、われわれの側からすれば、そういうような感じがいたします。したがって、韓国の内部でいろいろ議論が起こるということは十分わかりますし、また同情さるべき問題であると私らは解しております。しかし、日本は、日本固有の外交体系あるいは防衛体系を持ち、憲法のもとにわが国益を守る国策を遂行している国でございますから、日本日本独自の道でこういうアジア情勢全般を評価しつつ、日本の道を探求していかなければならない、そのように考えております。
  55. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) だいぶん時間が超過していますが……。
  56. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただいまの御答弁で、おそらく長官としてはそのごくアウトラインの一端をお話しなされたんだろうと私は思います。ただ、伺っておりまして気になりますことは、やはり昨年の日米共同声明がひっかかってくるわけであります。確かにおっしゃるとおりです。あるいは今日のアジア情勢の推移から考えますと、韓国から米軍の撤退ということは、あるいはショッキングなことかもしれません。しかし、それにとってかわって、あの共同声明に盛られている線に沿うた日本韓国に対する援助あるいは台湾等に対する援助、これが表面化してくるおそれはないだろうか。その自主防衛、なるほど日本の国益を守る、それは非常に多岐にわたる意味合いというものが含まれているだろうと私は思うのであります。はたして今日の体制でもってそういう成果というものが十分あげることができるであろうかどうか、私はたいへん疑問に思わざるを得ないわけであります。したがいまして、その辺のもう一つのかね合いというものを日米共同声明にのっとって見た場合に、今後のアジア情勢というものがまたまたいろいろな面で変転していくことが想像されるわけであります。ベトナムからの撤退あるいは韓国からの撤退というふうに伝えられております。そうした場合に、さらにこの沖繩の位置というものが非常に重要視されてくることは言うまでもないだろう。そうした場合に、事実上自衛隊の肩がわり——いままで米軍が背負ってきたそれだけの効果を発揮するくらいの肩がわりというものが当然要求されてくるんではないかというふうに判断されるわけでございますけれども、そういうおそれは全然ないのか、あるいはどの程度自衛隊米軍の肩がわりを、特に沖繩中心として将来行なわれるというその可能性の有無についてお聞かせいただきたい。
  57. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本以外の外国の軍事安定あるいは強化のために日本自衛隊米軍に肩がわりするということはございません。
  58. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあ、肩がわりするかどうかということは今後のまた新しい事態の推移というものに待たねばならないと思うのですけれども、最後にお尋ねをしておきたいと思いますことは、しばしば長官が当委員会におきましてもお述べになっておられた、今後の日本防衛体制についてあくまでも自主防衛というものを貫いていくのだ。これは当然政府自民党の方針であることは言うまでもないわけであります。この自主防衛の問題については先般の国会でもしばしば論議の焦点になったことは当然であります。もちろん、われわれの考えとしては、今日においては核兵器を持たなければナンセンスではないか、こう思うわけでありますけれども、しかし、核戦争というものはおそらくないだろうという想定のもとに通常兵器による自主防衛、こういうことをしばしば伺ってまいりました。はたしてその通常兵器というものはどの範囲のことを言うのか、そうしてまた、沖繩返還とからんでこのアジア情勢というものに対処するために、日本の国益というものを守るために、どういう段階のどういう体制ならば自主防衛と言えるのかどうなのか、この点をあらためてきょうお尋ねをしておきたい、こう思うわけです。
  59. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) しばしば国会で申し上げましたように、現在の憲法のもとに憲法を守って、いずれ七二年後は沖繩も包含されますが、日本防衛の目的等のための専守防衛、それで通常兵力による限定戦を行なう能力を涵養していると、そういうことで、限定戦という意味は、つまり攻撃的な性格を持たない、それから本土中心にして行なう、本土防衛を主にして行なう、それから、核戦争はやらない。そういう意味における限定戦を行なう。通常兵器とは何ぞやと聞かれますと、いままで申し上げましたように、核兵器を除く。日本の場合はさらに攻撃的兵器、たとえばB52であるとかICBMであるとか、あるいは空母であるとか、攻撃的空母、そういうものは持たない。そういう意味において通常兵器ということばを用いているのであります。
  60. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に、くどいようでありますけれども、ならば、化学兵器、なかんずく毒ガスもこれに含まれると解釈してよろしゅうございますか。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) BC兵器と申しましたか、日本が国際条約で禁止を主張している、もちろん、ああいうものは持たない方針でございます。現在も持っておりません。
  62. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 防衛庁長官、それでは御退席いただいてけっこうです。
  63. 矢山有作

    矢山有作君 どうもきょう外務大臣が出てきておらぬので、総務長官にまた特に負担がかかっていくと思うのだけれども、総務長官ではっきりしないところは、またぜひ外務大臣に出てきてもらって聞かしていただきます。  まず最初に、沖繩返還交渉にあたっての請求権処理の問題でお聞きしたいのですが、請求権処理の対象になるものについての調査というのは済んでおりますか、どうですか。
  64. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) 請求権の問題につきましては、法律的にもまた実体的にも不明確な点が多いのでありまして、まずこれらの点を十分に調べる必要がある、こう思いまして、目下調査をいたしております。
  65. 矢山有作

    矢山有作君 全くたよりないね。アメリカ当局は、一九四五年から一九七二年の沖繩施政権日本への返還時までの間に沖繩で生じた米軍による損害の賠償請求権日本が、私有地、公有地の損害を問わず、すべて放棄することを望んでいる、こういうふうに伝えられておるのですが、政府の請求権処理に対する基本的な態度はどうなんですか。アメリカ局の参事官かだれかおらぬのですか。
  66. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) 私どもの態度は、ただいま申し上げましたように、何しろ不明確な点が相当に多いと思いますので、法律的あるいは実体的にまず実態を把握するのが先決だと心得ております。
  67. 矢山有作

    矢山有作君 それは竹内さん、答弁にならぬのですよ。請求権で処理できていないものがあるということははっきりしておるのです。外務省、これを知らぬと言ったら、あなた、沖繩返還交渉の衝に当たっている外務省が一体その責任をどうするのですか。請求権処理の片づいていない、処理のできていないものがあるのですよ。知らないのですか、これも。
  68. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ちょっと委員長、私から。  外務省の態度は、大臣もたびたびおっしゃっておると思うのですが、請求権については放棄しているものであるという解釈が一貫いたしておりますので、しかし、竹内君がいま答弁しておりますように、かりに政府が対米折衝において放棄しておるものを前提であるということにいたしましても、これを私たちがほっといていいかどうかという問題があります。これは非常に数多くの、その特殊な形態のものも含めて、たくさんの事実関係というものを調査いたさなければなりませんし、また、すでに済んだといわれている講和前の人身補償その他の問題も、これは日本側として外交上放棄するとすれば祖国政府としてはこれをどうするか。これは琉球政府のほうにも、単にそういう被害者の団体の陳情書みたいなことばかりでなくて、琉球政府のほうで調査されて、権威あるものとしてそういう資料を私どものほうに出すようにしてくれませんかということでお願いもしておりますが、それらの人々、具体的な物件、そういう問題について今後どうするかという問題は、国内、いわゆる日本自体の問題として、今後、外交的には別といたしまして私どもが何かしないで済むものかどうか・するとすればどういうところまでしなければならないものかどうか、これらは今後具体的に調査して結論を出していかなければならぬと考えます。
  69. 矢山有作

    矢山有作君 外務省の担当官来ておらぬのか、だれが来ておるんだ。
  70. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  71. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 速記をつけて。
  72. 井川克一

    説明員(井川克一君) 交渉の衝に当たっておりますのはアメリカ局長でございます。いずれにいたしましても、ただいま山中長官あるいは外務政務次官がお答えになったとおりでございまして、第一に戦前のものと戦後のものと分けまして、山中長官が戦前のものをお述べになったわけでございます。戦後のものにつきましては、最初の……
  73. 矢山有作

    矢山有作君 戦前のものに賠償責任も何もできぬじゃないか。戦争前に何を賠償するのか。
  74. 井川克一

    説明員(井川克一君) 戦前でございません、講和前でございます。  放棄の要求がアメリカから来ているかというお話でございますけれども、これは竹内政務次官がお答えになったとおりでございまして、放棄の要求は参っておりません。それから実態につきましては、これまた竹内政務次官がおっしゃったとおりに、目下調査中でございます。
  75. 矢山有作

    矢山有作君 だから、私は責任者である外務省に聞くのですが、つまり、請求権はもうすでにないという立場に立っているのかどうかという問題です。つまり、平和条約十九条の(a)項によって請求権は放棄されたから一切請求権は存在しませんという基本的な立場に立って交渉を進めるのかどうか、その基本の態度だけです。
  76. 井川克一

    説明員(井川克一君) その点につきましては、山中総務長官がお答えになりましたとおりでございます。私、先ほど申し間違えまして、「戦前」と申し上げましたけれども、いわゆる講和条約前の、十九条で放棄されているものは放棄されている、これは春日先生からこの前御質問があったとおりでございます。その点につきましては、山中総務長官がお答えになりましたとおりでございます。
  77. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、これは非常におかしい問題が起こるんですよ。一九五六年の七月十二日に衆議院の外務・内閣・法務連合審査会で、当時の下田条約局長はこういう答弁をしておりますよ。沖繩住民の請求権は十九条(a)項で放棄されていない、将来沖繩返還のときに考慮さるべきである。こういう発言をしておりますが、これとの関連はどうなるのですか。
  78. 井川克一

    説明員(井川克一君) この点につきましては、先日、春日先生の御質問の際に……
  79. 矢山有作

    矢山有作君 春日先生はどうでもいい。
  80. 井川克一

    説明員(井川克一君) 詳しく御討論をいただいたところだと思います。要するに、日本国政府とアメリカ政府との間におきましては、これは放棄になっている。ただし、それの救済の問題として、施政権を持っているアメリカ政府の道義的な任責は別である。
  81. 矢山有作

    矢山有作君 ちょっといま、放棄されているということですが。
  82. 井川克一

    説明員(井川克一君) 放棄されております。日本政府とアメリカ政府との間の関係におきましては放棄されております。しかし、この救済の問題は、施政の任に当たるアメリカ政府の道義的責任の問題である。先日も、また春日先生と申し上げて恐縮でございますけれども、申し上げました次第でございます。
  83. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、日本政府の態度というのは、そのときそのときの国会国会で変わるのですか。そんなにあんた、朝令暮改で出たとこ勝負でやられたんではかないませんよ。先ほどのような一九五六年七月十二日の衆議院の外務・内閣・法務連合審査会では下田条約局長がちゃんと言っております。沖繩住民の請求権は十九条(a)項で放棄されていない、将来沖繩返還のときに考慮さるべきである。こう言っている。あんた、同じ条約局長の答弁が一九五六年当時と現在と全く逆になってくるのですか。
  84. 井川克一

    説明員(井川克一君) この点も先日詳しく申し上げたつもりでございますけれども、二つの面があるわけでございまして、第一の面が、日本国政府とアメリカ国政府の問題、それから第二の面が、現に施政を行なっているアメリカ政府の道義的責任の問題、この二つの問題が明白に区別されなければならないと思います。また下田条約局長は、この沖繩にいる日本国民の請求権も放棄しているということを、三十一年五月十八日の衆議院外務委員会でもたしか申しているはずでございます。
  85. 矢山有作

    矢山有作君 全く日本政府外務省というところはたよりないね。政府と政府間の問題と、道義上の問題と分けられましたが、一番重要なことは、たとえ道義上の問題であろうと、こういう問題の処理というのは、いわゆる法的な解釈に全く逆行するような処理は許されませんよ、一番もとになる、法的にこの請求権というものが存在するのか、しないのかというまず基礎が固まらずに折衝できますか。アメリカ側請求権処理について、請求権を補償しろと言う権限は日本にないと言う法的な立場があるのですか、アメリカ側に。その法的な一番基礎のところがはっきりしないでものごとを片づけようというからとんでもない方向に行ってしまうのです。一番基本のところはどこなんですか。十九条の(a)項によって請求権は放棄されたのか、されないのか。ここが一番肝心なんです。道義だ何だそういうことはこの解釈がきまってから出てくる問題ですよ。
  86. 井川克一

    説明員(井川克一君) 十九条(a)項によりまして日本国及び日本国民の請求権の放棄された分の中には沖繩の分も含まれております、というのが従来より一貫した外務省の見解でございます。
  87. 矢山有作

    矢山有作君 外務省、そんな態度で対米折衝に臨んでおられたんでは話にならぬね。それはあんたの解釈というのは、いわゆる十九条の(a)項によれば、日本国云々、あるいは日本国民云々ということばが使ってあるから、沖繩住民は日本国だ、そういう立場の解釈をしているんでしょう。だから、十九条(a)項によって放棄された。ところが、沖繩住民は一体どういう立場に立たされておったんですか、その講和条約締結の当時。沖繩住民はニミッツの布告——たしかあれはニミッツの布告だったと思ったが、あるいは何かによって完全に日本本土から切り離されていたんでしょう。全然日本本土から切り離されておって、アメリカ占領下にあった。その後の沖繩住民の請求権を十九条(a)項によって放棄したと、そんなべらぼうな話がありますか。
  88. 井川克一

    説明員(井川克一君) これは先ほど、私がいままでの外務省答弁と違っていると言われましたけれども、そういうことはございません。先ほど来申し上げましたとおりに、これは四月二十四日の当委員会でも私は申し上げましたけれども、下田条約局長もはっきりと放棄しておるということを申されております。また三十一年の七月九日の衆議院におきまして、林法制局長官も申されておるわけでございます。そして、ここに二つの問題があるわけでございまして、第一に、十九条の「日本国」、「日本国民」から沖繩が除かれるかどうかという問題、この問題は平和条約というものの趣旨からして、こういうものについて政府と政府、国と国との関係を律するという条約からして、当然これは沖繩も含むものであるというのが第一点でございます。ただし、そのことによってアメリカ政府の沖繩住民に対する責任がなくなるという意味では全くないということを私は第二点に申し上げました。仰せのとおり、平和条約第三条によりましてわが国の施政地域ではございません。アメリカ施政権を持っている地域でございます。したがいまして、アメリカ政府はその施政権者として、その住民の福祉、幸福、安寧というものを十分守っていかなければならない。その意味からいって、沖繩の住民に対してそういうふうなことをしてやらなければならない道義的義務があるのだと。しかし、これは日本政府とアメリカ政府との関係ではないと。また、そういうふうなことからいたしまして、日本アメリカ政府が交渉いたしまして、ある程度のお金も日本政府も出しましたし、アメリカ政府も出すことになったわけでございます。その第一の面と第二の面というものが違った面であるということを御了解願いたいと存じます。
  89. 矢山有作

    矢山有作君 外務省の見解は、先ほどちょっと気にかかることをおっしゃったのですけれども、変わっておらぬとおっしゃいましたね。外務省の見解は変わっておらぬということはないでしょう。私の指摘した一九五六年七月十二日の連合審査会での下田条約局長の答弁は、はっきり請求権は放棄されていないと言っているのですよ。もしこれは問題があるのなら、私は会議録そのものを持っておりませんから、そこにあるのでしたら、読んでいただければ一番わかるのですがね。そういうことは言っておりませんよ。だから、私が言うのは、外務省の最近の答弁は、請求権の処理はもう済んでおるという見解に立たれておるのであろうけれども、一九五六年当時はそういう見解ではなかったのではないかということを言っておるわけですよ。ときどきに変わったんじゃたまらぬではないか、こう言っているのですよ。
  90. 井川克一

    説明員(井川克一君) 私の持っております資料によりますと、三十一年五月十八日の外務委員会におきまして下田政府委員は「第十九条におきましては、確かに日本国政府及び日本国民の——この場合では沖繩におられる日本国民の請求権をも放棄しております。」、そうお答え申し上げております。
  91. 矢山有作

    矢山有作君 私の言ったやつはどうなんですか、五六年です。
  92. 井川克一

    説明員(井川克一君) 五六年の七月十二日でございますね。下田説明員が、「ただいま沖繩の代表からもお話がありましたように、請求権の原因発生者たる米軍はまだ向うにいる、それから請求権を有する沖繩住民は、現実に米軍施政権下にあるという特殊の関係がまだ続いているわけでございます。従いましてよその地でその場限りで、ジープにひき殺されたとかなんとかいう請求権とはまるで違っているわけであります。特殊状態が現に続いている、そうして沖繩住民の福祉は責任を持つ米軍がそこにいるわけでありますから、まず第一次的には、もし住民が困るならば、当然米軍の責任において何らか考慮しなければならないという関係が、まだ現に続いているわけであります。」、この点でございますか。
  93. 矢山有作

    矢山有作君 それは関係ない。
  94. 井川克一

    説明員(井川克一君) ただいま私が読み上げました下田説明員の御答弁は、私が申し上げております第二点という第二の面に関連して申し上げておるものと私は理解いたします。
  95. 矢山有作

    矢山有作君 これはあなたが十分資料を持っておらぬのにやってもしようがない。あらためて聞きますがね、とにかく十九条の(a)項をたてにとって、請求権は放棄されておるからすでにもう処理が済んでおるのだという解釈のしかたというのは私は非常に問題があると思うのですよ。その問題点をあげておきます。  第一点は、日本は一九四五年以降ニミッツ布告それから行政分離覚書、これによって沖繩住民に対する統治権を完全に停止されているのですよ。平和条約締結当時、沖繩住民の請求権については全くあずかり知らぬ立場に立っておったわけです。このような日本国に、沖繩住民の請求権放棄の権限がありますか。私は実体に即してものを考えなければいかんと思う。さらにもう一つ、平和条約締結当時、沖繩住民は日本から切り離されておった。米国の占領下にあって、平和条約締結について意思表示の道を全く奪われていたのです。日本国の請求権放棄が沖繩住民に及ぶと見るのは、私はそういう立場から誤りだと思う。平和条約で請求権処理に関する取りきめがなされるのは、戦争占領状態を終結させるにあたって、それまで続いた状態から生じた相互の請求権を清算しようとするものでありますね。しかるに、沖繩は平和条約締結後も依然としてアメリカ施政権下にあり、実質的に占領状態が続いておったのですから、平和条約締結の際、日米の間で沖繩住民の請求権について清算する必要も何もなかったわけでしょう。そういう立場から考えるならば、十九条の(a)項をたてにとって、いわゆる文理上からだけ解釈をして、請求権は放棄されておる、もう請求権の処理はついておるというのはちょっとおかしいんじゃないですか、解釈のしかたが。十九条の(a)項は、「日本国は、戦争から生じ、又は戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、」云々。だから、あなたのほうはこの「日本国民」の中に沖繩住民を含んでおるという、そういう解釈に立っておるのです。文理上はそのとおりなんです。ところが実体面を見たらそういうような文理上の解釈で請求権の処理がついたというふうな考え方で臨むことは正しいのか正しくないのかという、私はこれは法解釈上の非常に大きな問題だと思うのです。現にアメリカは、講和条約発効後、いわゆる地主による土地の復元補償問題が起こったときに、この復元請求権の処理が十九条の(a)項でついたということで突っぱねましたね。そうしたところが、これは沖繩ではたいへんな問題になったはずです。そこで一九六五年ですかね、一九六五年にいわゆる補償法をつくられた。これは正式の法律の名称は、こういう法律です。「一九四五年八月一五日より一九五二年四月二八日に至る期間における米国軍隊及びその要員の作為又は不作為により生じた人身の死亡及び傷害並びに私有財産の使用及び損害に対し琉球列島のある特定の住民に支払をなす権限を付与する法案」、こういう法案の名前です。このいわゆる補償法が制定されて、土地の復元請求権に対する補償あるいは人身事故に対する補償というものが講和前のものについてこれはすべて一応済んだ、こう言っているのです。こういう処理をアメリカ側がやっているということは、これは何といったって平和条約十九条の(a)項で請求権は放棄され処理が済んでない、そういう認識に立っておるからこれはやらなければならなくなったのではないのですか。私はそう思っておるのですがね。
  96. 井川克一

    説明員(井川克一君) 私は条約の解釈の問題として申し上げているわけでございまして、条約の解釈からいたしまして、日本国側もアメリカ国側も、十九条というものは、平和条約というものが、占領状態にあったこの状態をすべてこれできれいにいたしまして、そして日本国の本土は完全に独立し沖繩は第三条地域に移る、そういうときにすべての清算をするというわけでございました。この点につきましては、条約解釈論といたしまして政府としても従来から一貫いたしているわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げているとおりに、第二の面の問題がございます。アメリカ施政権者であるという問題がございます。したがいまして、施政権者といたしましてはそこに責任があるのだということは、これは当然のことではなかろうか。したがいまして、日本政府とアメリカ政府と交渉いたしまして、正確な数字は間違っているかもしれませんが、日本国政府といたしましては、たしか十億円、アメリカ側が二千万ドルでございましたか、その程度の金を出しましてもろもろのこの補償に当たった、こういうわけでございまして、それが私が言いまする第二の面で、施政権者としての道義的な責任の問題である。この二つの問題はやはり分けて考えなければならないところだと思います。
  97. 矢山有作

    矢山有作君 まず第一は、法律の解釈というものは、実体面を全く無視して文理上の解釈だけでやるものだとは私は思わない。全く実体から離れて文理解釈だけで法律解釈をやるのは、これは正しい法律解釈じゃないということが第一点です。  それからもう一つ。先ほど、施政権者としては責任があるとおっしゃった。施政権者としては何に基づいた責任があるのですか。施政権者として責任があるというのは、平和条約第十九条(a)項に対する解釈の上からやはり責任が出てきておるのじゃないですか。施政権者としては当然それは復元請求に対する補償や人身事故に対する請求に対する補償というのはやらなければならないというのはあたりまえじゃないですか。これはやはり法的根拠から出てきているのでしょう。
  98. 井川克一

    説明員(井川克一君) 第一に、事実関係を離れた法律解釈はあり得ないとおっしゃる、まことにそのとおりでございます。また、条約というものの特殊性からしまして、条約というものはやはり両国間の合意であるということが基本的な問題だと思います。この点につきまして、日本アメリカ間の合意につきましては、第十九条の解釈についてはいわゆる法律上の争いはないわけでございます。  第二点の、私が常に申しておりまするとおりに、それは道義的責任であるということを申しましたのは、法律上の責任というものは出てこないわけでございまして、わが日本の国内の補償につきましても、日本国政府というものは、十九条その他によりましての法的責任というものは条約からは持っておりません。これは、わが国の社会政策、立法政策によりまして判断して行なっている。ほかの平和条約におきましては、これを戦敗国の責任であると補償責任を書いた条約もございますけれども、サンフランシスコ条約には、日本国政府につきましても書いてないわけでございまして、私が申し上げましたのは、施政権者でございまするから、そこにおる人たちの幸福というようなものを、何か適当の、金でできることをしなければならないというのが施政権者としての道義的責任であろうということを申し上げましたわけで、また、これは春日先生が御引用になったわけでございますけれども、アメリカは一九六五年十月二十八日のいわゆる講和前支払い権限法に至った立法府勧告書の中にもその点が、「この問題は、根本的には法的責任がないとしても、条理上の要求に応じて行動すべきだという倫理的命令にかかっている」、というふうにアメリカ政府も言っているわけでございます。
  99. 矢山有作

    矢山有作君 いまのあなたのおっしゃった解釈は全くアメリカ側の解釈なんですよ、アメリカ側の。アメリカ立場に立ってアメリカの有利になるような解釈を日本外務省はもっぱら一生懸命やっているわけです。私は、法律の解釈というものは、解釈の筋道をはずれてはいかぬけれども、解釈の筋道をはずしさえしなければ、実体面に即し文理上に即し、両方の面から、全くアメリカさんの有利なようにばかり解釈しておったのじゃしようがないじゃないですか。こういう解釈をされたら、事実上占領状態に置かれて、平和条約が結ばれるときに一片の意思表示もできなかった沖繩住民、また、日本の側から見れば、沖繩住民の意思を反映させようがなかった、させようもなしに、そういう状態を踏まえてこういう平和条約が締結され、そして、しかもあなたのような解釈が成り立つとすれば、これは沖繩住民は踏んだりけったりですよ。日本国の主体性が一つもないじゃないの、こういった場合には。  それではもう一つ聞きますが、奄美返還協定では、講和前の返還請求権を放棄するという規定が存在しておりますね。これはどうなんですか。奄美返還協定によりますと、講和前の返還請求権を放棄するとちゃんと出ている。これは平和条約十九条(a)項では奄美住民の返還請求権は放棄されていなかったことを示しているのじゃないですか。
  100. 井川克一

    説明員(井川克一君) 奄美返還協定の前に弁明させていただきますけれども、私は現在何もアメリカ政府の肩を持つという必要も毛頭ございませんで、私といたしましては、従来よりのサンフランシスコ平和条約の日本政府の解釈に従ってやっておるわけでございます。  なお、奄美協定につきましても、これも先日申し上げましたように、奄美協定と小笠原協定と、確かに二つの協定のしかたがございます。小笠原協定におきましては、十九条に直接触れてございません。奄美協定におきましては、その点を全部重ねて——重ねてと申しますか、まとめて協定がしてあるわけでございまして、このことから、十九条で沖繩に関するものは放棄されなかったのだということにはならないと思います。第四条は、十九条のもの及びその後のもの全部含んでいるわけでございます。
  101. 矢山有作

    矢山有作君 そんなでたらめなことがどこにある。十九条の(a)項で放棄されていないからわざわざこの規定を入れたのでしょう、奄美返還協定では。それを、小笠原協定の中ではこれを全部含んでいる、そんなばかな話、どこにありますか。前のほうと比べてごらんなさい。小笠原返還協定は、奄美返還協定の十九条(a)項に触れる部分がついていないだけの話じゃないですか。奄美返還協定でわざわざ何でこれを入れたの。奄美返還協定でわざわざこれを入れたというのは、十九条(a)項で請求権が放棄されていないという証拠じゃないですか。そういう返還協定を結んだらアメリカにとっては不利だから、わざわざこれを抜いたんでしょう。そうとしか考えようがない。
  102. 井川克一

    説明員(井川克一君) ただいま申し上げましたとおり、奄美協定には確かにそのような規定がございますけれども、同じことを申し上げまして恐縮でございますが、奄美協定にあるから、十九条(a)項で放棄されなかったのだということにはならないと思います。これは、奄美協定においては念のための規定であって、したがいまして、その点をさらに意識的にはっきりさせるために小笠原協定においては十九条に触れなかった、こういうことでございます。
  103. 矢山有作

    矢山有作君 全く都合のいい解釈をするね。これはあなた、アメリカ外務省じゃないでしょう。そんなでたらめな法的な解釈ができますか。普通の法律を習っているのだろうね。法律習っておったら、そんなでたらめな解釈できませんよ。あなたとやり合ってもしようがない。総務長官、いまお聞き及びのとおりだ。私は、請求権の処理についていま外務省がとっているような考え方で臨まれるとするならば、これは日本側の不利というか、沖繩住民の立場というものは全く救済されませんよ。それは請求権は放棄されたという前提に立って日本政府がどう処理するか、その問題とは別ですよ。日本政府がそれを処理してやれば、それは沖繩住民の立場はそのことに関する限りは救われるかもしれませんよ。しかし、私はそういうものではないと思う。やはり請求権があるのかないのかということは、これは法律的な立場からきわめて厳重に考えるべき問題だと思うのです。この厳重な考え方の上に立って、いろいろな事情の上で請求権放棄というふうな方向で協定を結ばざるを得ないというなら、またそれは話がわかるのです。そうして、そのあと始末を日本政府がやろうというなら、それは筋道としては話はわかります。しかしながら、この十九条(a)項によって全然請求権は放棄されて、これが処理の対象にならぬという解釈というのは、私は、日本のあるいは沖繩住民の立場に立ってこの平和条約の十九条(a)項を正しく解釈する立場じゃないと思うのです。しかも、奄美の返還協定と小笠原の返還協定とを対比してみれば、明らかに十九条(a)項というものは、それによって全部の請求権が放棄されておるのではないと、そういう認識が奄美返還の当時にはあったということが察知できるわけです。ただ、そのうち、小笠原のときにそれが協定文書の中に入れられなかったということは、これはアメリカ側が、これを入れたら、やがて、その当時からすでに話題にのぼっておった沖繩返還協定締結の際にたいへんな支障がアメリカ側に支障がある、そういうことから私は故意に抜いたと思うのです。そうして日本政府は、たまたま十九条の(a)項によって請求権の処理はついておるということを奇貨としてそういうふうな私は返還協定になったのだろうと、こう思わざるを得ないのですよ。私はそういう認識でおりますから、これは外務省だけの問題でなしに、日本政府としても請求権処理の問題については取り組まれるでしょうから、私はもう一度これらの解釈というものを再検討してほしいのです。総務長官のほうから。
  104. 井川克一

    説明員(井川克一君) 一言その前に。  請求権の放棄という意味でございまするけれども、これは日本国とアメリカ国との間の関係が第十九条にあるわけでございまして、小笠原協定第五条でも、また奄美協定でも同様な趣旨が書いてございまするけれども、ただしこの期間中におけるアメリカ合衆国の法令またはこれら諸島の現地法令により認められた日本国民の請求権の放棄は含まないというふうに、向こうの法令上認められている請求権というもの、これはまた別な問題でございます。この点、念のために申し上げます。
  105. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、平和条約の各条項の解釈の問題は、外務省の主張、あるいは一貫してまいりました外務省の外交折衝の積み重ねがありますから、それを私の意見で変更してほしいとか、あるいは変更することを主張してほしいという要請を外務大臣にいたしておりません。したがって、外務大臣の解釈について私は異議を申し立てていないということであります。しかし、講和前補償の、米側においては、現地ですでに解決済みであってそういう問題は知らないと書って一応の回答を示しております中に、私どもから見れば、講和前の補償のし残しがある。これは人命も、あるいは死亡、疾病、後遺症その他も明らかに把握できた、あるいは物件その他も把握できた、件名、金額等の推計もおおむね明確であるという資料の一部がございますので、これはやはり米側の施政権者としての講和前において解決されるべき問題であったものが取り残されておるケースであるという考え方を持っております。しかしながら、これを最終的に返還協定の際に盛り込むか盛り込まないかはこれからの外務省との相談でございますが、もしそうでなかった場合は、日本政府自体が米側と何らかの相談を事前になした後において、日本政府自体が措置すべき事柄が残るのではないか、あるいは日本政府自体でむしろ措置しなければならない問題がそこに包含されているのではないかという心配を非常にいたしております。
  106. 矢山有作

    矢山有作君 請求権があるかないかという問題についての法律解釈については意見が対立しておりますから、これについてはこのままでおいておきます。  そこで、私は請求権処理のし残しの問題については、いまおっしゃったような人身事故に対するものは、講和発効前のものについては一応補償されておりますね。   〔委員長退席、理事川村清一君着席〕  ところが、それについても、請求をしなかったもの、請求が間に合わなかったもの等いろいろあるというので、これについての処理は、もし返還協定の中でアメリカにこの請求権の補償をさせないというなら、日本政府のほうで考えなければならぬということですから、私はぜひともこれはやはり返還協定の中で何らかの処理をすべきものだと思います。私は本来ならアメリカに持たせるべきだと思う。しかし、あなた方の条約解釈においてそれができないということならば、当然日本政府において処理すべき問題だと思います。これを再度確認することが一つと、それからもう一つ、人身事故の問題だけでなしに、土地の復元請求権の問題がある。土地を使って、それをコンクリートを張ったりいろいろやって、原状が——もとの形状、原形が大きく変わっておる。それの復元請求権がある。これについては、補償法で処理されたのは一九六一年の六月三十日までに解放された土地についてだけこれが処理されて、それからのちの分は、これは解放されたものについては全然処理がついていない。しかも、アメリカはまだ膨大な土地を占有しておるから、それが今後解放される段階になって、この復元請求権処理の問題が起こってくる。これに対してはどう対処されるか。外務省……どちらでもいいです。日本政府の統一見解であればよろしい。
  107. 井川克一

    説明員(井川克一君) とても日本政府の統一見解というふうなところまでまだ参りませんが、先ほど政務次官が申し上げましたとおりに、いわゆる講和後補償の問題につきましては、非常に事態が複雑でございますし、また先生御指摘のとおり、日限によって、日によって、その前のものはいい、あとのものは悪いというふうな区別があるわけでございまして、目下鋭意その問題を調査いたしております。この調査の結果に基づきまして日本政府として方針をきめていくことになるだろうと思います。はなはだ僭越でございますが……。
  108. 矢山有作

    矢山有作君 調査してみたが、アメリカも補償しない、日本政府もいやだと言うたならこれはたいへんですから、だから、この問題についてあなたは事務当局だから言えぬかもしれませんが、総理府総務長官としてこの問題の処理はどういうふうに考えておられますか。
  109. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 講和前の補償のし残しの問題も、講和後のつぶれ地の原状が変わってしまっておる補償の問題も、やはり外交折衝の場において、アメリカ施政権者としての立場から、何らかの措置をなし得る用意があるかということについては、日本政府側が施政権を持たなかったいわゆる潜在主権の持ち主であった国家として当然外交交渉の場において残して、交渉の場に上げてほしいと私は念願しておりますし、そういうことで解決がつきますならば、沖繩県民の人々とともに一番喜ばしい解決のしかたではないかと思います。しかし、それができない場合にはやはり祖国の責任において何らかの措置をすべきであろうと見ております。これは件数、形状あるいは種類その他によって千差万別でございますので、さらにこまかい調査をいまやっておるところでございます。
  110. 矢山有作

    矢山有作君 それから問題はまだあるのですね。講和後発生の請求権があるわけですね。これについては講和が発効後に米軍及び米軍人によって受けた沖繩住民の損害賠償、これは外国人損害賠償法というのがあるのです。これによって処理されることになっております。処理されたものもあると思う。ところが、法律の内容を詳しく申し上げませんが、この内容を読んでみると、これは何というんですか、きわめてアメリカの一方的な法律になっておるのですよ。手続の点から、それからさらに支払い条件の問題、これらの規定のしかたを見ると、全くアメリカ都合のいいようになっております。   〔理事、川村清一君退席、委員長着席〕  そしてこれに不服があっても全然裁判によってこれを救済するという道も閉ざされておる。そうなると、これは外国人損害賠償法によって処理されたといいながら、処理のし残しの問題もたくさんありますし、それから、これで処理された処理の実態は、損害賠償としてはきわめて不十分な処理しかやっておりません。したがって、これについても私は検討をしていただきたいと思うのですが、これは外務省、わかっていますか。
  111. 井川克一

    説明員(井川克一君) わかっておりまして、ただいま沖繩北方対策庁と協力いたしましてこの調査に当たっておるわけでございます。
  112. 矢山有作

    矢山有作君 では米軍が戦後からずっと占有しておったいわゆる公有地——国県の国有地、県有地、これが非常に膨大なものがあると思う。これもやはり私は土地についての復元補償の請求権というものがあると思う。なぜかというと、施政権の行使に必要なその範囲米軍がこれを占有しているというなら、これは占領行政の一環として一応わかります。ところが、その妥当な範囲を越えて、軍事目的のためにこの公有地を囲い込んで、アメリカがかって気ままに使ってきたわけです。そうすると、これに対する復元補償の問題も私はあると思います。ところが、これはおそらくあなたのほうは、請求権は十九条の(a)項で放棄しているから、ないのだから、国としては公有地についてはもう復元請求権はやらぬというようなことをおっしゃるのだろうと思いますが、こういうものがあります。さらに米軍は、国県有地——公有地を沖繩の住民に貸して金もうけしているじゃないですか。公有地を自分で占有して囲い込んでおいて、これをかってに沖繩住民に有償で貸して金もうけするという、こんなでたらめが許されますか。アメリカというやつはよほどみみっちいと思います。そういうことまでして金もうけしている。それなんか一体どう処理するつもりですか。
  113. 井川克一

    説明員(井川克一君) 国有財産につきましては、大蔵省が第一次調査団を派遣いたしまして、目下詳細に調査中でございます。その調査報告によりましてもろもろの施策を考えなければならないと思っております。目下まだ調査中で沖繩にいるそうでございます。——失礼いたしました。帰ってきたそうでございます。
  114. 矢山有作

    矢山有作君 きわめて連絡がいいですな、外務省は。  念のために言っておきますが、琉球政府が出した統計資料によると、国県有地の県民への賃貸しによる収益金としてアメリカがもうけております。これは何ぼあると思いますか。一九六八年度だけで八十九万二千ドルですよ。それから琉球政府成立以来調べたところによると、累計で九百万ドルになっている。こんなことをやっております、アメリカは。国有地や県有地を取り上げておいて、これを沖繩県民に貸して金もうけをするなんて、こんなでたらめが許されます。一体、外務省はこういう処理を返還協定が結ばれたらどうしますか。依然としてアメリカに独占さしておいて、アメリカに金もうけさせるつもりですか。どういう方針ですか、これは。
  115. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) ただいまのお話のような点につきましては、目下調査団が参りました資料をいろいろと検討しておりまして、まだ結論が出ておりませんので、十分詳細に事実関係を確かめた上で、いろいろと今後の問題を考えていきたい、そう思っております。
  116. 矢山有作

    矢山有作君 調査だけはやってみて、腹のうちでは補償させるべきだと思っているが、アメリカに遠慮気がねをして、特に返還交渉の過程でそういう問題を持ち出すと、また難くせをつけられて沖繩返還の日にちを延ばされたりするのじゃないかというようなけちな考えを出さないで、言うべきことは堂々と言ってください。こんなでたらめなことを、幾らアメリカだってやらしておいていいというわけにはいかない。この請求権問題については、私のほうは、沖繩が占領後置かれておった実態からして、平和条約十九条(a)項によって請求権の処理はついていない。これは断じてついていない。講和発効前の問題については、これはアメリカが賠償法で一応処理しております。しかし、それで残っておるもの、さらに講和発効後のもの、これらのことについては、土地の復元請求権にしたところで、人身事故の請求権にしたところで、日本が当然請求すべきです。こんなことを遠慮してへっぴり腰でやっておると、大国だ大国だと言っても、その大国の値打ちはさっぱりなくなってしまいますよ。そんなことのないようにしてもらいたい。言うべきことは言う。言った上で正しい法律解釈を出した上でどうするかということはそれから後の問題です。少なくとも正しい主張だけは私はやってほしいということを特に申し上げておきます。  それから、これは確認の意味で申し上げますが、私は総理府総務長官を信用しておりますから。請求権の処理が協定でできない場合、その請求権処理はアメリカがやらない場合日本政府でやるということをはっきりと確約できますかどうか。確約できないで検討ぐらいになるんですか、どうなんですか。
  117. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まだ愛知さんと深くそこまで詰めて打ち合わせをしておりませんので、やはり外交折衝の場でそれらの問題を検討して詰めてほしいと思っております。そうして、どうしてもだめな場合は、私たち祖国の責任においてこれらの犠牲になった人たちに対して何らかの措置をする必要があると考えております。
  118. 矢山有作

    矢山有作君 それでは問題を移して、資産の引き継ぎの問題でちょっとお伺いします。  六月の十日、十一日、十二日の三日間にわたって、沖繩の米国資産引き継ぎについて第一回日米会談が大蔵省で行なわれておりますね。その際、米国側から日本側に買い取り請求資産のリストが示されて、米側の基本的な考え方が述べられた、こういうふうに新聞報道しております。そこで、その内容というものを——これはアメリカ側の言ったことです——これを具体的に御説明いただきたい。
  119. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) 資産問題に関しますところの第一回日米交渉は、六月十日から六月十二日まで日米両国の代表が東京において行なったわけでございます。その際、米国が所有しておりますところの沖繩に所在するところの民生用の資産の処理の問題が議題となった次第でございます。米国の沖繩にありますところの資産は、大別いたしますと二つに分かれております。それは、第一には兵舎のような軍事施設、それから第二には一般の民生用の財産、そういうことでございますが、今回の第一回の交渉におきますところの議題は、すべてこの民生用の財産という問題を議題に取り上げたわけでございます。民生用財産で米国側に現に所有権のあるもの、これを復帰に関連いたしまして日本政府に引き継ぐという問題があるわけでございます。そこで、その場合に引き継いでほしいというようなリストといたしまして、ごく大ざっぱに申し上げますと、現在米国の政府所有の事業でございますが、これは琉球電力公社、それから琉球水道公社、それから琉球開発金融公社のいわゆる三公社でございます。それから、図書館とか庁舎——琉政の庁舎というような行政構造物ということでございます。それから軍事基地以外の道路、次に石油施設、それから航路とか通信用の援助施設、琉球銀行の株式の五一%の民政所有分の問題、こういうのが議題になったわけでございます。しかし、そのうち石油施設と、それから琉球銀行の株式のうち五一%の所有分につきましては、これは別途その処分方法については今後検討するということで、一応そのほかの問題につきまして日本政府がそれを承継しようということに合意を見たわけでございます。しかしながら、それを引き継ぐというにあたりましては、実際にその財産というものがどの程度の価値のあるものであるかということを公正に客観的にきめる必要がございますので、その後それぞれの専門家のチームをつくりまして、逐次沖繩におきますそれらの財産の調査に当たっている次第でございます。したがいまして、金額とかそういう問題につきましては、一切まだ出ておらないのでございます。  それから。第二回の交渉というのが七月の六日にやはりワシントンでごく短時間行なわれました。これはその後、第一回と第二回の間に、大蔵省におきますところの交渉責任者である柏木財務官が沖繩に参りまして、いろいろ現地の状況を見てまいりました。沖繩の住民の方々からのいろいろなお話も承って、そういうことについて、それをもとにして先方と、ワシントンの財務省関係者とそういう感触をいろいろと話し合った。しかしながら、資産の評価問題というような点についての作業は、まだ目下進行中という中途はんぱな段階でございますので、それ以上何らの進展はなかった、こういう次第でございます。
  120. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、いまの御説明を聞いておると、沖繩の米国財産の引き継ぎについては買い取る——つまり有償だという方針でおられるようですが、この有償で引き継ぐという根拠は何なんですか。私は有償で引き継ぐ根拠はないだろうと思うのですか。
  121. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) これはあくまでその「買い取る」ということばの表現の問題でございますけれども、私たちは、それを買うということではないので、あくまで、現実に沖繩に存在して現在沖繩の住民のためにいろいろと効用を発揮している、それからまた、復帰後も沖繩住民のために必要でありまた有益である、そういうような資産について、所有権を日本政府に米国政府から移転する、こういうふうに考えておるわけでございます。その際に、それを全部ただで、無償でということは、どうも日米両国間の公正かつ妥当な解決方法ではないのではないか、こういう立場から、そこの引き継ぎに関連いたしまして支払い問題が生ずる、こういうことは否定できない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  122. 矢山有作

    矢山有作君 私も答弁はそういうふうな答弁だろうと思ったのです。しかし、一、二の例をあげたのではこれは全体のことを論議することになりませんが、全体のことはあとからまた論議をするとして、「沖繩返還協定交渉の主要項目案と問題点」というのがこの五月二十六日の朝日に——毎日にも全部出ておったと思うのですが、こういうものをつくられたのだろうと私は思っておるのですが、その中でこういうことも言っているのですね。米国資産の引き継ぎということで、電力、水道、開発金融の三公社とそれから琉球銀行、これとに分けて、電力、水道、開発金融公社についてはこういうふうな資産があるということを前に書いておりますが、今後の交渉の焦点としてこういうことを言われているのですよ。「米側は電気、水が不足している状況から、公社を譲り渡したあとも、軍用の電気、水が最優先で配分される道をつけておくことを眼目としている」、こういうことで交渉に臨んでくるだろう、こう言われておるので、私はこの電力、水道公社について見た場合は、やはりアメリカ沖繩状況から見てそれはやるだろうと思うのです。だから、なるほど、それはやったとしてもおこぼれはちょうだいするのだということで、それは民生上役に立つ、だからただじゃいかんから金を出すのだ、こうおっしゃるのだろうが、私はそういう点からいってもおかしいのじゃないかという感じが一つしているです。だけど、これは部分的な問題です。まあ、全体的な問題では、私は、買い取りというか有償引き継ぎというか、そういうものが不当だと思う原因が一つあるのです。それをひとつ申し上げてみると、アメリカは御承知のように、四分の一世紀の間沖繩を占有し軍政をしいてきた。その沖繩アメリカは唯一の施政権者として住民の福祉と生活向上の責任を負ってきたわけです。このことは、沖繩統治の基本法である大統領行政命令の中にも明らかに出ておるわけです。ですから、ガリオア資金を含めて米国の沖繩に対する支出というのは、その軍事目的と占領行政の円滑化のために行なわれてきたのだ。これは間違いないでしょう。したがって、私は、元来これはアメリカ側は有償で云々というようなことを主張すべきではないと思うのです。これはアメリカ施政権者としての当然のことをやったまでである。それで、やったが、そのものがあとへ形が残るというだけの話なんですから、それを、金をよこせと言うのはちょっとおかしいと思うのですがね、どうですか。
  123. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) 資産問題は、現実にそこにありますところの資産、それは矢山委員のおっしゃるとおり、施政権者として当然なすべき設備をやったということはそのとおりであろうと思うのでございますが、現在、なおそこに存在いたしまして、きわめて有用かつ必要な資産であるという場合におきまして、その引き継ぎにあたってこれについてどういうふうな処理をするか、これはあくまで日米間において公正かつ妥当な解決というふうな方法で解決しなければいけないと、そういう観点からやはり私たちはこの問題を考えていきたいと、こう存ずる次第でございます。
  124. 矢山有作

    矢山有作君 ところが、あなたがそういう解釈をとられるとしても、一つはこういう問題もありゃしませんか。ガリオア資金の援助についての一九五二年当時のリッジウェイ米極東軍総司令官が琉球軍司令官にあてた指令というのがありますね。そのたてまえから見て、ガリオア援助の見返りとして積み立てられたガリオア資金からの投資を受けた琉球開発金融公社、それから水道公社、電力公社、石油施設——先ほど言われたやつですね、みな——琉銀株式の民政府の保有分、あるいは琉米文化会館、こういったものについて買い取り対象とは私はこの指令の立場から言うとならぬと思うのですがね。その点、どうなんですか。
  125. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) 確かにガリオア資金のうちの一部がそのようなところに使用されているというようなふうにいわれております。これはまだ私たちのほうの調査というものが十分進んでおりませんので、一体、そういう事実関係がどの程度まであるのかということは今後の問題でございますが、私たちは、あくまでその資産の客観的な評価の問題とそれからその資金源、それが何でつくられたかというそういう財源の問題は、やはり一応区別して考えるべきではないか。で、現段階におきましては、まず現在あるところのそれらの施設の資産価値、こういうものの評価に中心を置きまして鋭意作業を進めておる段階でございます。その後の段階といたしましてまあいろいろとそれから発展するということはあろうかと存じますが、現段階ではその段階でございます。
  126. 矢山有作

    矢山有作君 しかし、私は、幾ら資産価値があるといっても、これはやはり買い取り対象にすべきしゃない。それは私が言うだけでなしに、これはことしの三月十七日の衆議院の沖特委員会での愛知国務大臣答弁ですが、こういうことを言っておりますね。ガリオア資金については一九五二年の極東軍総司令部から当時の琉球軍司令官にあてた指令に、「ガリオア資金を米国に払い戻させるために琉球人に負担をかけることを期待してはならない」ということが明記されていることなどから、復帰後も米国は日本政府に請求してくることはないと思うし、万一請求があったとしてもわが国としてはこれに応ずべきではないと思う、こういうふうに言ったというのですがね。私はこれは非常に注目をすべき発言じゃないかと思っておるのです。私も、ガリオアの資金の性質からして、そういうふうに思うのですがね、これはどうですか。
  127. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) 私たちも、ガリオア援助費そのものにつきまして、これは償還するということを考えているわけではございません。そうではなくて、これはガリオア資金が入ってでき上がったものかもしれません。しかし、現在そこにある資産価値というようなものが非常に有用な価値を呈している。こういうような資産の引き継ぎをどういうふうにすれば最も公正かつ妥当な解決になるであろうか、こういう観点からものを考えていきたいと、こういうふうに存ずる次第でございます。
  128. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、一々そういう資産価値が残っているということだけをそのあなたの有償引き継ぎの論拠にしておられるようですが、それに対しては、あとから総まとめで、私はそういう立場に立てぬということを言いますが、もう一つは、沖繩返還交渉を進めるにあたって沖繩住民の意思を十分に尊重すということは、これは沖繩復帰準備委員会の発足のときに確認されたことですが、またこのことは四十五年の三月三十一日の閣議決定をされた「沖繩復帰対策の基本方針」、この中にも明確に書いてあります。ところで、この沖繩復帰の際の資産引き継ぎの問題について琉球政府がどういう態度をとっているかというのは、これはたしか日米両政府に要望書の形で出されているわけですから御存じだと思うのですが、かいつまんで言いますと、第一には、施政権者たる米国が住民の福祉及び社会経済の発展のために投資した支出金、資産等は、統治責任者としての当然の統治費である。それから第二段として、これら資産等の相当部分は、沖繩県民の多年の努力によって増殖されたものである。この二つの理由から、これらは当然沖繩県民の所有に属するもので、日本政府もその債務を負う必要はない。こういうふうにわざわざ要望書として強く申し入れがあったはずなのです。沖繩のほうの、沖繩側の意思を十分に尊重するという立場からいくなら、この主張は私が先ほど来言った主張と全く同じであるし、当然道理のある主張であるのだから、その道理を認めるというのが私は筋ではないかと思うのですけれども、これはどうなのですか。
  129. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) お説のように、琉球政府のほうからは「沖繩における米国支出金及び米国管理資産の処理について」という内容の要請書が出されております。私たちも、沖繩の住民の方々のお気持ちというものは十分考慮をしながら交渉を進めていく必要があるということにおいてはやぶさかではございませんが、本来、この資産問題の交渉は日米間の交渉ということでございまして、もちろん、先ほどの資産の承継の問題につきましても、これを引き継いだ後にこれを沖繩の住民の最も福祉にかなうようにこれを利用していく、引き継いだ後の処置の問題といたしまして十分これを考慮していかなければならない、こういうふうに考える次第でございます。
  130. 矢山有作

    矢山有作君 引き継いだ後に沖繩住民の役に立たせる、立たせぬというのは、これは別個の問題です、これは、引き継ぐのに有償引き継ぎが妥当かどうかということの問題なのですから。そうすれば、その筋というものがはっきりされなければならないのであって、沖繩側が言っておるのはそのことを言っておるのだと思うのです。沖繩住民に引き継いだ後に役に立つとか立たぬというよりも、有償で、金を出すべきものでないものに金を出す必要はないのではないかというのが私は沖繩の主張だと思うのです。それは私は正しい主張であると思うのです。  先ほど請求権の問題でも言いましたが、やはり日本政府は対外折衝、特にアメリカとの折衝をやる場合には、いつも基本のところが腰がぐらついておられるようです。基本の原則を踏まえて、その上で問題の解決をはからぬと、基本がぐらついておると、いつの対米折衝の場合にもこちらが受け身に立たされて追い込まれてしまう。私はそういう外交折衝はやるべきではないと思うのです。基本をはっきりして、むしろ、受け身に立たないで、こちらが能動的な立場に立たなければ、外交交渉というものは日本にとってどれだけ不利になるかわからぬじゃないですか。そのことを私は特に御注意申し上げておきます。  そこで、私は、有用だ有用だということが盛んに先ほど来言われましたから、有用性が残っておるのだとか、役に立つ施設が残っておるのだからということを盛んに言われておるから、私はこの問題で反論をしたいのです。特に、その沖繩側から、その引き継ぎ資産は沖繩の多年の努力によって増殖されたものだ、そういうことを言っておりますから、それを裏づけるのに、これは「法律時報」の四月号に、芳沢さんという人が書いておるのですが、それを、ほかの資料を持ち合わせがありませんから、ひとつ引用しながら、どれだけこの沖繩にある引き継ぎ対象になっている資産が沖繩住民の努力によってこれが維持され今日の状態にあるかということの一つの証左だろうと思うので、それを申し上げてみたいと思うのです。こういうことを言っておりますね。「アメリカ占領軍による直接の収奪はおよそ下の表のとおりである」というので」、一つは、琉球電力公社の純益金、これが一九六七年度単年度で見て三百七十万ドル以上にのぼっております。それから琉球水道公社の純益金が同じ単年度で八十九万ドル以上。端数は捨てます。それから琉球開発金融公社の純益金が同じ年度で二百万ドル以上。それから琉球銀行からの配当金が七万三千ドル以上。アメリカ余剰農産物の取り扱いによる純益金が同じ年度で二十三万五千ドル以上。前の琉球銀行からの配当金は一九六八年度の分です。それから油脂の輸入管理に基づく収益金が六九年単年度で一千七十万ドル。それから国県有地の県民への賃貸による収益金——先ほど言ったやつですが、六八年度で八十五万二千ドル。国県有地をアメリカが無償で使用していることによって得ている利益、これは推計をしたものですが、六八年度で三百三十万ドル。外人所得税基づく——外人に対するやつはアメリカ人がおもですが——特典措置による利益、これが四百六十七万ドル。それから外人自動車税に基づく特典措置、これもアメリカ人がおもですが、六八年度で百三万ドル以上にのぼっている。これを単年度で総計しても二千七百五十四万三千ドルをこえているわけです。しかも、これが当初からのものを寄せたらこれはばく大なる金額になるということはもう推察がおつきだろうと思うのです。さらにこういうことを言っております。「米占領軍は土地、水、電力、油脂、金融などを支配することによってばく大な利益をおさめている。喪中の三公社は、いずれも米軍が「公益事業」の名のもとに、布令によって「琉球列島米国民政府の一機関」として設立されたものであり、その資金はガリオア資金などによってまかなわれたといわれる。このうち、とくに土地と水についての収奪額は、実際には表中の数字よりももっと多くなるはずである。たとえば、土地に関する講和前補償問題一つをとってみても、国県有地についてはビタ一文も支払われていず、個人有地についても五三〇〇万ドルの請求に対して二一〇四万ドルしか支払われていない。また、講和発効後の借用地料についても、さきにみたとおり時価よりもはるかに安く、その差額は時価の半額として」計算しても「年々約六百万ドルにものぼり、一九五二年から」——これは講和発効の年ですが——「一九六八年までの一七年間の差額の合計は実に約一億ドルにも達する。もちろん、これは国県有地にもはまる。つぎに、米軍による不法行為等による損失補償は「請求額の平均二〇・四%にすぎない」したがって、これらの未払い額や差額を計算すると、米占領軍による収奪は植民地的差別税制による損失分を加えて年間約六〇〇〇万ドルをこえ、その総計(一九四五〜六八年)は約一二億ドルをこえるものとみられる。」、これだけの激しい収奪をやっているわけですよ。こういう激しい収奪をやる中で、いま有償引き継ぎの対象になっているところの資産というものが今日あるわけでしょう。それを、形が残って、将来沖繩県民の役に立つから金を払わなければいかぬのだという考え方というのが私は非常に間違いだと思います。これは当然統治権者としてやるべきことをやったにすぎない。そのことはリッジウェイの指令の中にも触れられていることなんです。特にリッジウェイの指令は、ガリオア資金について言っておるんですが、そうするなら、これは有償でやるなんというのは、私はとんでもない話だと思う。当然アメリカは黙って日本に引き渡すべきだ。私は、日本政府に、少なくともそういう態度をもって交渉に臨んでいただきたいと思う。しかしながら、すでに有償の方針を出されておるようでありますが、そういう方針をできるならば改める。さらに、その有償であるということの根拠というものはきわめて薄弱であります、ただ単に施設が残っておるから、それが将来沖繩県民の役に立つからというだけなんですから。そうすれば、私は評価のときにその点を考えて、十分日本側の主張というものを、その主張の基本をはっきりさして主張することによって、できるだけこの評価額というのを押える、こういうことが私はきわめて必要であろうと思うのです。さらに私は、これはけしからぬことだと思うので、アメリカ側が一体どういうことを考えてこの資産引き継ぎに臨んでおるかということの例として一つ私は申し上げたいんですが、これは三月三日に下院の歳出委員会の対外活動小委員——パスマン委員会と呼ばれておりますが——この席上で、ランパート高等弁務官とクレーマー米民政府財務監査官の証言がありました。これは五月十四日に公表された議事録によって見たんですか、これによると、ランパート高等弁務官はこういうふうに言っております。「ガリオア資金を原資とした米議会の監督下にある資産(三公社や石油施設、琉銀株式の米民政府保有分、琉米文化会館など)の帳簿上の評価額は総額一億三千四百万ドルである」、「これらの資産は日本に買い取りを求める」、こういうふうに述べて、そうしたらパンマン小委員長が、「張簿価格よりははるかに高い価格で日本に売る必要があるのではないか」、これに対してクレーマー財務監査官は、「そのとおり」と答えています。さらに続いてパスマン小委員長が、「そうするとアメリカ非常にすてきな利潤をあげることができるか」とただしたのに対し、ランパート高等弁務官は、「その可能性がある」、こう答えたという議事録が発表になった。まさにこれは沖繩で金もうけしようというアメリカの根性でしょう。私はけしからぬと思うんですよ。これは、沖繩返還交渉と言いながら沖繩の売り買いの相談をしておる。こういうけしからぬ根性を持ったアメリカを相手に資産の引き継ぎをやるんですから、私は、日本の主張は主張で、これは当然施政権者の責任としてやったんだから絶対に金は払えぬということを主張すべきだと思う。一体この証言を聞いてどう思われますか。全くこれは商売人の話ですよ。これは沖繩の売り買いであって、こんなことが許されますか。ちょっと所感を聞きたいですな。
  131. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) ただいまいろいろと資料をおあげいただいて、いろいろお話しくださいましたわけでございますが、まあ、私たちは、先ほど来申し上げていますような立場から今後の日米交渉を進めてまいりたい。ただ、その際、お話しのように、そうたくさんのお金を払うべきじゃないというような御趣旨、つまり、国益というものを十分考えながら交渉に臨むべきだという御趣旨につきましては、十分私たちも心得ているつもりでございます。現段階におきましては、まだそこまで進捗化しておりません。先ほど申しましたように、評価作業をいろいろと進めている段階でございます。そのような次第でございます。
  132. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 大蔵省は、極端に言うと、出すものはべろも出さぬという役所でありますので、財務省との資産引き継ぎの問題については、私は相当安心してまかしております。
  133. 矢山有作

    矢山有作君 それが今度は出すと言う。
  134. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) しかし、連絡は緊密にとっております。県民の感情的な立場からする、たとえば行政府の、かりにわずかの金額であってもそれを買い取る形式というものがどういうものになるか、あるいは入口の銅板ではめ込みされております文章というものは、具体的にどのように受け取っているか、また、それについては両者の間の受け渡しますときの契約書等の存在の有無、それらも私のほう等でくわしく調べながら大蔵省に連絡をいたしております。ただし、全く払わないというわけにいきませんのは、単なるガリオア資金その他ばかりでなくして、直接に三公社等におきましてはアメリカの資本そのものが入っておりますから、これはやはり返さなければならないものとして計算をしなければならないでしょうし、それは買い取り価格というものではなくて、やはり債権債務の引き継ぎというものになると思います。あるいは一応議題からはあとの問題として離してありますけれども、琉球銀行の米民政府の五一%の持ち分につきましても、これが外国銀行等がそのまま引き継いで過半数の株主になるようなことに絶対にならないように、これはでき得べくんば、沖繩現地の財界の人々が、自分たちの地場銀行として、自分たちの株として、分散取得をされて、そして地方銀行としての地位を固められるような道を講ずるようにしていくべきである等々のいろいろなこまかい注文等もつけておりますし、また一方、たとえば三公社とも全部琉球政府が引き継いでやっていけるかどうかということもしさいに検討いたしております。たとえば電力事業等、そのまま発電から送電、配電まで琉球政府が全部引き取って県営でかりにやるといたしますと、現在の状態のままでは、今後の電力の確保に要する費用というものを全然考えないで、あるいはすぐ近くの、日に二便も往復のあります久米島という島でさえも、沖繩本島と比べると二・五倍の電気料金を払うことを余儀なくされておる。いわゆる本島対離島の電力料金格差というものを全くそのままに据え置いたといたしまして、県営でそのまま受けたんじゃできない。発電、送電をやるならば、小売り価格を二〇%も上げなければならない。それでなければ採算がとれないというようなこと等も、データをつくりまして琉球政府のほうにも差し上げて、よく検討いたしましょうということも言っておりますし、まあ、水道あたりは相当な今後需要が見込まれますから、これも今後の開発投資の金が要るといたしましても、まあまあ水道あたりは、県営でおやりになるについても。一番やりやすいものではないだろうか。開発金融公社等については、これは全額、そのものを琉球沖繩復興開発金融公庫の原資として、それを全部沖繩県民の方々の福利のためにのみ使われるということであるならば、資産の買い取り評価等についても、引き継ぎに対する債権債務の整理等の小さな金額まであまり注文をつけるということは琉球政府自体も考え方を整理して下さい、ただ感情的だけではいけませんからということで、私のほうが中に入りまして、あとに尾を引かないようにその調整に努力をしているつもりであります。大蔵省も、委員会の席でありますから、アメリカ側の財務省との折衝もありますし、最近アメリカもたいへんがめつくなっておりますから、表現に慎重を期しておると思いますが、私どもが考えて意外だと思うようなものまで買い取ったり、あるいは異常な評価をして引き継いだりするようなことはないようなふうに相談を進めてまいりたいと考えております。
  135. 矢山有作

    矢山有作君 この問題はこれで最後にしますが、私は出すほうに賛成じゃないんで、私は、大蔵省のほうはもともと出さんでもいいと言ってるんですから、先ほど総務長官がいろいろおっしゃったやつにしても、私は先ほど、アメリカがどれだけ水道公社や電力公社その他でもうけておるかと言いましたが、もうけでやっておるんですから、そんだけもうけておって、出す必要はないのです。私は出さぬほう、大蔵省はもともとはがめついのだが、こういう交渉になると、すぐ弱腰になって出しそうだから、こんなくだらない、出さぬでもいい金まで気前よく出すゆとりがあるんなら、もっともっと国民の生活程度沖繩県民の生活程度を高めるほうに将来出してほしい。こんな出さんでもいい金は出す必要はないです。これはまた将来論議をすることにして残します。  それで、時間が切迫しましたので、もう一、二点簡単に聞いておきます。例の沖繩の毒ガスの撤去問題がかいもく解決の見当がつかぬのですが、一体これはどうなっているのですか。   〔委員長退席、理事川村清一君着席〕
  136. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) 沖繩からの毒ガスの撤去につきましては、御承知のように、米国政府は太平洋上のジョンストン島をその候補地と考え、同島に調査団を派遣いたしました。その調査団がすでにワシントンに帰り、目下報告書の作成中と聞いております。なお、米国政府としてもこの問題については誠意をもって解決するということは、先般来日いたしましたロジャーズ国務長官も愛知大臣にまた確約しておるところでございます。
  137. 矢山有作

    矢山有作君 ところが、グラベルという上院議員が上院の本会議で今度提案をしましたね。この提案の正式の名前は何というのだったか、「沖繩の毒ガスを米国内に運び入れることを禁止し米国外で破棄または無毒化することを求める法案」というのですか、正式の名前じゃないでしょうがね。こういう法案を出しておるのですが、それがこの間上院で通りましたね。可決された。そのときにグラベルが、米国というのはどういうのが米国なのかということで言っているのですが、米五十州だけじゃなしに、ジョンストン島も含む外領、属領すべてに運び込むのを禁止するのであって、現在置いてある沖繩で処分すべきである。こう言っておるようですね。まあ「米国」という中にはジョンストン島は入らぬというのが日本側の解釈で、何とかジョンストン島へか撤去してさ一つえるであろう、こういう期待感を持っておるのでしょうが、このグラベル議員の言うとおりの形でこの法案が成立したということになると、いま撤去先として期待されておるジョンストン島もこれはあぶなくなるんじゃないか。これが一つ。  それから、こういう法案がかかっている間には——上院で通っただけですからね——これが成立するまでには相当まだ時間がかかると思いますが、その成立まで、つまり、このグラベル議員の提案が決着がつくまではアメリカ政府としてはこれは動かせぬというような問題も起こってくるのじゃないですか。そうすると、これは先へ先へと延びちゃうと思うね。また、グラベル議員の言い方もけしからぬと思うのですよね。アメリカに持ってこなきゃいいんだ、沖繩に従来どおり置いておけ、そこで無毒化するなり廃棄すると。無毒化する廃棄するといったって、これはちっとやそっとでできるものじゃない。たいへんな設備も要るだろうし、また、そのときにどんな危険が伴うかということも、これは考えなければならぬ。自分のところの国民に危険がなければ、沖繩のほうの住民には危険があってもかまわぬという根性が底に流れておる反対提案だと思うのですよ。これらを見ると、きわめて不都合だと思うし、また、いま言ったように、撤去はいつのことやらわからぬ。そういうようなことになると思うのですが、日本政府は一体これどうするのですか、こんなぐずぐずした交渉をやっていて。
  138. 千葉一夫

    説明員(千葉一夫君) ただいま御質問になります、アメリカ合衆国といったものの範囲はジョンストン島を含むかいなかという点につきましては、これはもちろん米国内の解釈の問題でありまして、いろいろ説があるようでございますが、われわれ聞いておるところによりますと、入らないという解釈が非常に強い。もちろん、入るという解釈もあるそうでございます。  次に、本件につきましては、たびたび外務大臣その他外務省各レベルの者から米側に対しましてこの早期、安全なる撤去ということは常に繰り返して申しております。これに対しましては米側も、常に行政府としては誠意を持って本件を早急にやりたいとの基本方針は変わっておらない、先日もロジャーズ国務長官から愛知外務大臣にそう申しております。さように聞いております。そういうわけでありまして、われわれといたしましては、米側の努力をただいま期待して待っておる次第であります。
  139. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私の知っております範囲では、ただいま千葉君の申し上げましたことに尽きるわけですけれども、その内側の感触として、なるほどグラベル議員のしゃべった演説にはたしかそういうふうに速記録は書いてあります。しかし、大体どこの国でも——日本の国会を除く——みんなばらばらかってなことを言っておりまして、そういうことを言っている議員は彼が一人であって、中には、ハワイの属領であったことは認めるが、これが本決議に言うアメリカの諸州の中に含まれるアメリカ領であるとは考えられないという意見を具体的に述べた議員もおりますし、大多数の議員は、むしろアメリカの領内にジョンストン島は含まれると明確に言ったのは一人である。そして、沖繩で破棄もしくは解毒してしまえと言ったのも一人である。同じ人である。その他の人たちはさようなことを言っていないということを踏まえて、米国の国務、国防両省からの外務省を通じての正式な連絡は、役人段階では言いにくいのでありましょうが、このような決議案というのは半日や一晩で急にできたものではなくて、これはもうこういう決議は出るであろうことをずうっと知っていて、なおかつ、ジョンストン島の調査団を派遣したのである。したがって、アメリカの政府側としては、御指摘のように、今後下院の決議をどうするかの問題もあろうし、上下両院の協議もあろうし、ニクソン大統領のそれに対する姿勢のとり方も残るわけだけれども、自分たちとしてジョンストン島に移送するについて、この決議案は何ら拘束されるものではないという解釈を持っているし、したがって、早急に沖繩から運び出してジョンストン島に移送するということのほうに努力する旨の内々の連絡があったことを申し添えておきます。
  140. 矢山有作

    矢山有作君 向こうにあまり期待をして、じっと静観をしたりしておらないで、やはり私はけしからぬと思うのですよ。アメリカに置いて悪いものを沖繩に置いていいという理屈は成り立たぬのですから、自分がつくって自分が持ってきたものですから、いやだったら自分のところへ持って帰ればいいのです。それを、アメリカの人間が死んだら困る、事故があったら困るが、沖繩の人間に事故があってもいいという考え方、そういう考えが底にあるだろうと思う。しかも、いま山中長官がおっしゃったのを聞いておっても、やはり先方の出方次第なんです。だから、その先方の出方次第ということじゃなしに、私は強硬な交渉をやってほしいと思う。こういう問題は少なくとも人命に関する問題ですから、その点、特に強く私はこの問題の早期決着をつけることを要望いたしておきます。特に、この間陸軍参謀総長か何かが沖繩へ来てしゃべっているのを見ると、まだ積み出しまでに三カ月かかるという。積み出しときまって積み出しまでに三カ月もかかる。そんなことじゃ一体それからどのくらいかかるか見当がつかぬ。ことしの春にはもう済んでいることになっていたのですから、その点、もっと強腰で交渉していただきたい。  それから、これ最後に、御承知のように、毒ガス兵器は事前協議の対象になっていません。これは私はたいへんなことだと思うのです。核兵器は大量殺伐兵器で、核兵器の持へ込みはこれはたいへんだということで事前協議の対象にしたでしょう。事前協議がしり抜けになっているか、いないかは別として、事前協議の対象にした。ところが、核兵器にまさるとも劣らぬ大量殺戮兵器、しかも残忍きわまるこの化学細菌兵器、これが私は事前協議の対象から漏れているというのは、これは形式的な議論をしても非常に問題だと思う。これから先、この化学細菌兵器の持ち込みをかって気ままにアメリカがやれるということになったらたいへんでしょう。どうですか、これは核と同じように事前協議の対象に持ち込むような交渉を今後外務省でやる意図はありませんか。
  141. 井川克一

    説明員(井川克一君) 御指摘のとおり、事前協議条項でございます「装備における重要な変更」というものは、核兵器を考えて交換公文に入れてあるのでございまして、BC兵器は考えておられませんのでございます。したがいまして、BC兵器は現在のところ事前協議の対象にならないわけでございます。どうするかということにつきましては、私などが申し上げるのはあまりにも僭越でございますから差し控えさしていただきますけれども、現在アメリカ側の意向によりましても、内地のBC兵器というものは、いわゆる致死的なBC兵器というものは存在しないそうでございまして、また、先ほどから御議論になりますように、沖繩に現存しておりますガス兵器も撤去されるわけでございますので、そのいわゆる事前協議という実態的な必要性はないのじゃなかろうかと思っておりますけれども、これは大きな政策的問題であるわけでございます。
  142. 矢山有作

    矢山有作君 これは核の問題についても、それからBC兵器についてもおんなじですがね、アメリカが持って来てないと言うから、ああ持って来てないんですか、そうなんですかというのが日本立場でしょう。持って来ているか持って来ていないかをみずから権限に基づいて徹底的に調査するということにはなってないわけですね。私はこの前も三沢に核兵器が貯蔵されておる確たる証拠があるということで追及したんですが、そのあとうやむやになっているんです。その事前協議の対象になっておる核兵器がすら、これは持ち込まれているか持ち込まれていないかっかめない状態なんです。そこへもってきて、何ら事前協議の対象にもなっていないBC兵器が国内にあるかないかなんてこと、これまた核よりももっとわからない。たったこの間でも、広島の何という貯蔵庫か忘れましたが、そこヘアメリカが化学兵器を持ち込んだというので、広島ではこの前反対運動が起こった。そういう例もあるんですよ。だから、実際持ち込まれるか持ち込まれないかわからないわけですよ。沖繩にだって、原水協の調査によると五万トンぐらいの毒ガスがあるというんです。ところが、いま致死性のガスだというので撤去対象になってわっさわっさ言っているのは、これは一万トン少々でしょう。そうすると、一万トン少々のものを撤去した後に、はたしてどこに毒ガスが残っているのか残っていないか、これも日本側では調べられない。実質的には事前協議の対象になっておる核ですらそうだ。ましていわんや、事前協議の対象にもなってないということは、持ち込もうが持ち込むまいがアメリカの自由気ままということになる。そうなると、形式的な歯どめだけでもいいから、核に劣らぬような凶悪な残虐無残な大量殺戮兵器ですから、これは私は政策の問題としてでも将来やはり事前協議の対象として考えるべきだと思うんです。どうですか、政務次官。あんた、政治家だから政治家の立場からきわめて将来を展望した政策的な発言をしてくれませんか。
  143. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) この件につきましては、さきの国会において愛知大臣答弁しておるとおりでございますが、実際には特に本土には米軍が持ち込むということはおよそ考えられないので、現在のところは事前協議の対象には追加項目にしないことになっております。
  144. 矢山有作

    矢山有作君 あんた、考えられないといったって、私がいま言ったじゃないですか。広島の貯蔵庫の、名前は忘れたが、広島の某貯蔵庫にガス兵器が持ち込まれたといって反対運動が起こったことがある。持ち込まれるか持ち込まれないかは事前協議の対象にすらならぬということになるとあぶないんですよ、これは。だから、少なくとも日本国の立場に立ったら、これはあんた、考えられませんかね。政策的な問題ですよ、これは。どうするかという問題。頭からアメリカの言うことを信ずる、持ち込むことがない、持ち込んでおるということも言わぬ、だから安全なんだから将来野放しでいいんだということにはならぬでしょうが。あんた、日本人ですよ、お互いに、アメリカ人じゃないんだから。その立場からどうなんですか。
  145. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) 再度のお尋ねでございますけれども、私どもの考えは、いま申し述べたとおりでございます。
  146. 矢山有作

    矢山有作君 なかなか口がかたいですね。それじゃ最後に一つだけ。  これはもうこまかい論議は抜きにします。最近、アメリカ軍人の沖繩における犯罪、しかも、凶悪な殺人、放火、強盗、強姦というような、こういう事件が非常にひんぱんに起こっております。これ何とかせぬことにはこれどうもならぬのじゃないですか。いまのように警察権が全然アメリカ軍軍人なり軍属、家族には及ばないというような状態、裁判権も一向に及ばないという状態、復帰を目の前にしてこういう状態で、ベトナム帰りのアメリカ兵がやりたいほうだいのことをやっている状態じゃないですか。幾ら抗議決議を立法院でやってもナシのつぶてだ。ナシのつぶてどころじゃない。民政府の連中は、アメリカ軍人沖繩に来ておるのは日本アジアを守るために来ておるのだから、一人くらい悪いことをしても、あまりアメリカ軍が悪い悪い言うなというような意味のことすら言っているでしょう。こんなべらぼうな話ないでしょう。これ一体どう処理するのですか。じっと見ていたのではしようがないでしょう、日本の政府は。
  147. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私に外交権がありませんが、私としてはランパート高等弁務官なりマイヤー大使なり会いました機会には、必ずそれらのことについて、日米双方のために好ましからざることがあり、残された沖繩の二年間がお互いの友好に亀裂を生じせしめる二年間になる気配がある、そのようなことがあってはならないというようなことも話しておりますが、正式には、愛知外務大臣に再三お願いをいたしまして、具体的な折衝をお願いしております。また事務的には一応のトップレベルの了承も得た後において、具体的に沖繩の県民の方々が琉球警察の警察権の行使という形において、県民感情の中で、不幸にして犯罪が起こってしまったあとにおいて処理されるべき正当なる精一ぱいの範囲というものにこたえるような両者協議をしてほしいということで、現在のところ、具体的な、どういう点をどういうふうにということまで申し上げられませんが、協議を進行せしめておる最中でございます。
  148. 矢山有作

    矢山有作君 これで最後ですが、六月十日に、これは外務省ですよ、外務大臣が衆議院の外務委員会で、このとおりのことばじゃないでしょうが、大体こういう意味のことを言っておるでしょう。行政権に属する警察権の運用については、くふうをこらして、沖繩側の自由な裁量の余地の生まれるように検討したい、こういうような意味のことを言っておられるようです。要するに、警察権の行使が米軍人等に対してもできるように考えていこうということなんでしょうが、これを言われた以上は、何らかの具体的な交渉なり折衝なりをやっておられるでしょうけれども、それは現状はどうなっておりますか。
  149. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) お話しの件につきましては、沖繩の事務当局より米国民政府に対しまして、捜査、逮捕に関する米琉捜査当局の協力の強化、あるいは裁判の公開制の確保等について米側の協力を求める申し入れをしてございます。
  150. 矢山有作

    矢山有作君 申し入ればいいのです、日本政府は申し入ればしょっちゅうやるのですから。申し入れはしたが、その反応があるのですか、ないのですか。ナシのつぶてですか。
  151. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) ただいまのところは、まだ米側の回答に接しておりません。
  152. 矢山有作

    矢山有作君 これは権威ある日本外務大臣が国会の場で言ったことですからね。言いっぱなしにしないで、やはり私はいまの沖繩米軍人の犯罪の状況を見たら、どうしてもこれは琉球警察にこれは捜査権なり逮捕権を与えなければだめですよ。防げやしませんよ、こんなでたらめなことをやっていたのでは。しかも、また裁判の問題についても、もうやがて復帰を控えているのだからそろそろ考えるべきですよ。これはやはり少なくとも警察権の行使については、これは申し入れで、ほっぽらかしにしないで申し入れを出して、一体どうするのだということで強い態度で交渉してほしいと思います。  あとまだ通貨切りかえの問題なり外資の取り扱いの問題があるのですけれども、私の時間がだいぶ過ぎましたから、これできょうのところは一応打ち切ります。しかし、きょうお聞きしてみて、どうも私の得心のいくような説明を受けたものは何一つないので、これはあらためて、どうせ返還交渉は今後続けていかれるわけですから、その時点時点でお伺いすることにして、私のきょうの質問は終わります。どうも待っていただいた方には済みませんでした。
  153. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最初にお断わり申し上げておきたいことは、冒頭に請求権の問題が質疑されました。なるほど、伺っておりますと、われわれとしても多大の疑問を抱かざるを得ない。平和条約十九条(a)項ですか、この適用がはたして妥当性を持つものであるかどうかということは今後の大きな課題であろうかと私は思います。現在の沖繩の県民の感情からすれば、これは当然適用外であるという感情が非常に帯まっていることを聞いております。当然でございましょう。戦後二十五年間軍事基地としてその役割りを果たしてきた経緯を考えてみた場合、日本本土と同一視するわけにはいかない客観条件があるわけです。先ほど条約局長の御答弁の中にもございましたように、条約上はやはりその拘束に従ってどうすることもできないけれども、道義上これは問題があるというお話でございました。いまそうした政治的な問題についてどのようにこれから配慮するかということは、ここでお伺いするわけにはいきません。次の機会に愛知外務大臣が出席の際、あらためてこの問題を詰めてまいりたい、そのように考える次第であります。あくまでも日本の国益、県民の利益というものを前提にしてこれからの交渉に当たっていただきたいということを最初に申し上げておきたいと思います。  去る六月五日に外務大臣はマイヤー大使と会談をされました。少なくともその第一回の会談におきましては、今後折衝の過程においてどれから進めていくかという、いわゆる優先順位等についても話し合ったとの趣であります。しかも、その中で、特に重要事項については合意を見ておるという表明がなされておるようでございますけれども、その内容についてまずお伺いしておきたいと思います。
  154. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) 六月五日に愛知大臣とマイヤー大使が会談をしております。そして沖繩施政権返還の問題につきまして、その予備的な協議を含む施政権返還準備が円滑に進んでいることをお互いに認め合い、返還協定に関連する複雑多岐な実質的な問題につきまして、外交経路によるさらに交渉を促進することに合意したわけでございます。さらにその目的のために大臣と大使が引き続き会談することも当然でございますが、事務レベル及び専門家レベルの作業の進捗を見つつ、一九七二年中の返還を達成するという目標に向かってとるべき処置を決定していくことになったのでございまして、   〔理事川村清一君退席、委員長着席〕  たとえば複雑多岐な実質的問題として、請求権の問題、資産の問題あるいはまた通貨の問題等々が問題として予想されることであります。
  155. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 請求権の問題、ほかに捜査権の問題等も——裁判権でございますか——あったようでございます。何かあとのほうがちょっと不鮮明で聞き取れなかったのですけれども、やはりこうした問題については、今後の折衝にあたって、この事項、この事項は積極的に前向きにやっていくということ、少なくとも国民の前に明快に知らせることが必要ではなかろうか。何も秘密外交をやっているわけじゃないわけでありますから、その点、私はいま少しく、一体どういう事項についてこれから進めようとされているのか、なるほど、複雑多岐ということはわれわれは十分了知しております。それを伺おうと思っているわけでは決してない。あるいは返還前、当面する問題としてたいへんいろんな要素がからみ合ってむずかしい、解決に至るまでにむずかしい問題があることも承知しておりますが、しかし、それが返還後においてもさらに問題の尾を引くのではなかろうかということを心配するあまり、やはりその返還前において確固たる折衝に臨んでいただくためにも、われわれとしては絶えず注視していなければなりませんし、したがって、いまそういう観点から、もっと具体的に、どれとどれとどれが一体合意に達したのか、それを明らかにしていただきたいと申し上げたわけであります。
  156. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) 御指摘のとおり、私どもこれを秘密のうちに行なおうという意思はさらさらございません。さらに、何か合意に達したという御指摘でございますが、この愛知・マイヤー会談において合意に達したというものはないのでございますが、いわゆる予想される問題としては、たとえば請求権、資産等々、先生方御想像の問題が取り上げられるであろうということでございます。
  157. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 問題を次に移しましょう。  先般、来日されたロジャーズ国務長官、おそらく大臣とも会談されたわけでありますが、その中身が明白になっていないきらいもあると思います。先ほども、毒ガスの撤去問題について申し入れをしたというのか、必ず撤去をいたしますという確約をしたのか、その時期はいつなのか、一番知りたいところが、先ほどの御答弁では、たいへん失礼な言い方でございますけれども、明快さを欠いていたように思いますので、会談の内容、まあ、差しつかえない範囲と申し上げたほうがいいかもしれませんが、それを踏まえて明らかにしていただきたい。
  158. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) 先般来日しましたロジャーズ国務長官と愛知大臣との間で毒ガスの問題が出ましたのは事実でございます。しかし、その際、先方からは、先ほど御質問ございました、いわゆるグラベル修正案という米国内の動きもあるが、毒ガスを沖繩から撤去するという方針のもとに米政府は諸般の準備を進めている、誠意を尽くしてこの問題の解決に当たるということを、ロジャーズ長官のほうから愛知大臣に確約したというのが実態でございます。
  159. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは確約されたのでしょう。いままでの世論の情勢からも確約せざるを得ないというのがアメリカ立場であります。しかし、いま知りたいことは、一体その時期はいつなのか。しかも、せっかく国務長官が来られて、その手がかり、足がかりさえもつかめないということは、外交折衝に当たる当局としてはたいへん遺憾ではないだろうか、こう思うわけでございます。そのほかの問題もございます。たとえばC5Aの問題がいま焦点になってまいりました。この装備の問題からすればあるいは事前協議の対象になるのではなかろうかという疑問すらも抱きます。ジャンボジェットよりも一回り大きい、兵員の輸送、あるいはその飛行機に格納できるであろう戦車あるいはその他の特殊兵器というものを考えてみた場合に、調査権がこちらにないからといって、それは事前協議の対象とするのはたいへんむずかしいというような論拠はもちろん成り立たないと思いますし、今後こうした問題についてのやはり明確な政府としての方針というものを確立しておく必要があるのではなかろうか。そういうことも含めて、今度のロジャーズ長官が来られたときに話し合いの中に入っていなかったのかどうか。
  160. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) ロジャース長官との会談におきまして、沖繩から毒ガスをいつ撤去するかという、そういう時期について、長官の直接のことばをここで引用するわけにまいりませんけれども、そう遠くないうちに行なわれるというわれわれに期待を与えるものでございました。  それから、お話しのギャラクシーですか、その飛行機の話は、会談には出ておりません。
  161. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 少なくとも政務次官は政府を代表されるお立場でありますので、口幅ったいようなことを申し上げて恐縮なんですけれども、もっと意のある——大臣にかわって御答弁なさるわけでございますので、何かこう、歯に衣を着せたみたいなおっしゃり方をなさらないで述べていただきたいものだと思います。  それでは問題を次に変えましょう。総務長官にお尋ねいたしますが、つい最近、琉球政府と申し上げたほうがよろしいと思いますが、本土における新全国総合開発計画、これに基づいた長期計画というものが検討されて、伝えるところによりますと、七月十日にその成案がまとまると、このように聞いております。それによりますと、昭和四十六年度の予算を編成するにあたって、少なくとも日本政府に対して三億ドルのワクを設定してもらいたいということを強く要望する方針である、こういうことがいわれております。こうした点について総理府としてどう受けとめられていらっしゃるのか。また、そういう要求がなされた場合に、十二分に対応できるそういう現在の体制ができ上がっているのかどうか、これをまず最初にお尋ねしたいと思います。
  162. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 外交問題がかんでいないので、しごく明解に歯切れよくお答えいたしたいと思います。  沖繩政府が現在検討中の計画につきましては、前回琉球政府自体で検討いたしました、発表されました十カ年計画等については相当内容について入り方もちょっと違いがあったわけでございますけれども、本土政府がじかにそれをいただくのはどうかと思われる節もありましたので、今回の計画はやはり地についた計画でありますように、こちらのほうからも経企庁その他から、もちろん沖繩北方対策庁も入れてでありますが、十分御相談に乗っていま作成しておるわけであります。中旬ごろ明らかにされるかもしれません。なお、三億ドルの点でございますが、この問題はまだ聞いておりません。いずれ私どものほうも、よく琉球政府側の御要望、あるいはそれに対しまして私たちが大蔵省側に琉球政府にかわって要求する予算要求の実質上の中身について、十分、ことに自治省等を含めた関係各省の了解を、ある程度の中身の上でも了解をとりながら話を進めていきたいと思いますので、なるべくぎくしゃくしないで、琉球政府は言っぱなし、こちらのほうは、何だか日本政府のほうが、大蔵省に要求する前に査定したかのごとき印象を四十五年度予算で与えましたので、そういうことのないように一生懸命調整を進めたいと考えておりますが、三億ドルという声はまだ具体的に聞いておりません。
  163. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 長官御自身が再度にわたって沖繩を訪問されて、しかも、詳細にいろいろな地域調査されたようでございます。おそらくどこへ行かれても金々ということで、はだ身でお感じになってこられたことだろうと思うのです。私が参りましたときにも、実際、そのとおりでございました。それが、さっそくのめるものもあれば、あるいは若干時間をおかなければならないものもあろうかと思います。しかし、確かに産業振興にいたしましてももう少し資金的にあるならば、政府自身がそれだけの援助をするならば、もっと早い機会に、今後の沖繩全体の経済振興のためにもたいへんな役割りを果たしていくのではなかろうか。あげて政府のこれからの援助の方向というものが待ち望まれると、こう判断されるわけでありますけれども、ただいま具体的に私、三億ドルと申しましたが、これはあくまでも報道範囲を出ませんので、もちろん、正確に私はそれをとらまえて申し上げた金額ではございません。しかし、おそらく今日までの実態から考えますと、やはりそのくらいの金額というものは当然要求してくるのではなかろうか。いろいろな施設強化拡充、いま申し上げた産業復興ということを考慮に入れましても、あるいは最小限度の要求ではなかろうかとすら思われるわけであります。いまここで長官から、大蔵省等の関係等もあって結論的にどのくらいのお金を、これから、あるいはその当面する時期として昭和四十六年度予算に繰り込むかどうか言うことは非常にむずかしいと思いますけれども、しかし、沖繩の県民の立場から考えてみた場合に、やはり待ち望んだ、あるいは待ち望んでいることではなかろうかと思いますので、概略でもけっこうでございますので、おっしゃれる範囲でよろしいと思いますが、どの程度なら現状として政府は援助できるか、この点、いかがでございましょうか。
  164. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) この金額をどの程度といって、はたして中身を分析してみた場合、それが喜ばしいことなのかどうかについては、仕組みがいろいろありまして、国の事務を琉球政府にやってもらっているものをどうするのか、あるいは交付税をかりに国税を納めていない地域に適用して渡す場合にはどういう計算をすればいいのか、あるいは、自主財源といっても、当然都道府県なら取っている住民税を取っていない沖繩県というものをどういうふうに位置づけるか、いろいろのこまかな計算はやはり理論づけなければならぬと思います。私は大蔵省との折衝のことはまだ念頭にございません。もっぱら、沖繩の人々が納律される、実質上はもうはっきり沖繩の人たちも、施政権者の責任を追及してみても、財政的な措置に関する限り、アメリカはもう刻一刻冷却してしまっていることはもう観念してしまっておられると思うのです。私たちも、もうはっきり言うならば、来年度の琉球政府の予算にはアメリカ側の一般財源になり得べき行政の援助はなかろう。むしろゼロである。軍事基地維持のため、もしくは民政府プロパーの予算というようなもの以外にはほとんど援助はしてくれないだろう。してくれない場合を前提にして、本国のほうで全部見るにはどういうふうな見方があるのかというようなこと等を考えていかなければならない。もうむしろあと一年ぽっきりくらい残ったアメリカのほうの援助費、そういうようなものなんかを当てにして、それがまた復帰直前になって、話が違った、歳入欠陥を生じたというようなことがあってはなりませんので、よほど確証の持たれるものでない限りは、もうアメリカ側の援助費その他についてはもうたいして期待しない。むしろ日本が、もうその次の年は本来の一県としての予算沖繩県に適用する前年として、ほとんどもうそれに準ずる形態をとる最も近い形はどのようにしたらよいだろうかということで、まずいま仕組みその他についてよく事前の相談をしております。一般の省でありますと、八月三十一日を概算要求の締め切りにいたしておりますが、沖繩予算だけは、それらの事前調整も十分する必要がありますので、これを一カ月ほど締め切り日を延ばす。予算の中に特別に大蔵省側の了解を取りつけまして、作業を慎重にいま進めておる段階でございます。
  165. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、総務長官が、今度の視察を通しましていろいろな、ということより、むしろ新しい構想をお持ちになったと伺っております。たとえば「青年の家」にしてもそうでございましょう。あるいはフリー・ゾーンの問題、その後どういうふうにお変わりになったか知りませんけれども、返還前におきましても十分に可能性を含む、解決されるこうした問題があるやにわれわれも考えるわけであります。いま、どうでございましょうか、そうした構想の中に、いま具体的に、返還前においても、いま申し上げたような具体的な事例を通しまして、でき縛るとお考えになっておられるものはどういうものがおありになるか。
  166. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 予算関係いたしたものは九月ごろ、すなわち来年度予算要求、沖繩援助費を沖繩復帰対策費というものに改めたりなどいたしまして、そこで明らかになると思いますが、たとえば「国立青年の家」等につきましては私は敷地さがしも念頭にあったわけでありますけれども、たまたまヘリコプターでおりましたところが渡嘉敷島の山の頂にあるミサイルのすでに撤去、閉鎖された基地でありまして、四十万坪の敷地に暖冷房、それから給水、発電全部そろいまして、しかも、人間が六百名くらいは収容できるようなりっぱな鉄筋の建物が三棟もそろっているというところの庭におりたわけです。そこで、さっそくまず弁務官ともそういう話をしたのでありますけれども、軍事基地返還第一号である、しかも、それは「国立青年の家」という非常にりっぱな内容のものに使われるということが前提であるならば、両者外交折衝で話し合おうじゃないかということで、これから愛知大臣の外交ルートを通じて私のほうはそれをお願いしたいということで、行き当たりばったりそういうことをきめていったわけじゃありませんけれども、どうせ「国立青年の家」をつくりたいと考えておりましたし、また石垣、宮古等の拠点島には国民宿舎というものが、内地で考えられないほど非常に大きなウエートを持って、公共の、しかもこれから先島に来てもらう人々の宿泊施設として一番高いウエートを持っておることがわかりましたので、それらのものを来年度予算考えたいと思っておりますが、ある意味ではちょっと奇抜な考えかもしれませんけれども、ホーバークラフト構想というものを出しました。それは当初私の頭には、沖繩県、できれば来年度予算で琉球政府にそれを全額建造貸与いたしまして、そして各離島を高速で文字どおり飛ぶようにして連絡する。現在ドーバー海峡に就航しておりますのは七百人乗りですけれども、そんなには要らないだろうから、百五十人くらいでどうだろうと思って行きました。しかし、各、西表あるいは与那国、渡嘉敷あるいはその他の小さい島を全部回っておりますうちに、これはやはりモデルケースとして、西表が沖繩水晶に次ぐ一番大きな離島でございますから、その意味では本島に次ぐ一番大きな離島を持つ竹富町、さらに居住人口、あるいは人間の住む島の数の一番多い竹富町、そして日本の最南端にある波照間島を含む行政区画の竹富町、そしてそれだけの広い幾つもの島を持ちながら、西表島にすら役場が持てないが石垣市に役場を借りている竹富町、これが離島苦の象徴的な町ではないかと考えまして、琉球警察の小さな漁船みたいな船の上で、波をかぶりながら町長さんと相談しましたら、しかしあとの負担がたいへんでしょうから、かりに全額でつくって差し上げてもどうでしょうと言いましたところ、現在では竹富町だけで十四の航路業者があって、十四はいの小さい船がかって気ままにと言っちゃあれですけれども、町当局の要望とか島民の要望とかけ離れたかっこうで航路に就航しておる。そのために全部が赤字で、琉球政府から二万ドルの補助金をもらった上にさらに足りないで、欠航その他の状態になるので、貧乏な町ながらも補助をしております。それを考えたら、もう私たちの島に、竹富町にホーバークラフト——町長さんの御希望によりますと、百七十人乗りくらいというのを考えたのですけれども、それでは大き過ぎる、七十人くらいのものにしてほしいということでありました。いま国際特許を持つメーカーと、はたしてそういう規格のものができるのかできないのか、できるとすれば四億円くらいで済むらしいのですけれども、そういうものを差し上げただけでも運航していけるという。しかも、既存の業者の説得その他については責任を持って町長がやりますと、たいへんな熱意を示されましたので、私としては具体的な構想としてぜひ——離島を現在十四はいの船がばらばらに回って、しかも、たとえば西表では東海岸と西海岸とでは航路が全く違いますために、循環道路もまだできておりませんし、これから着工でありますから、東と西の部落の人々は、同じ西表の地区の人であっても、同じ島の住民であるという連帯感も全く持っていない。西部で会合があれば、東部の人は石垣市までの航路で一ぺん石垣市に渡って、それからさらに西部行きの船に乗って二時間以上かかって会合にやってくるという状態なのでございますので、これらの島を時速百キロくらいで走るホーバークラフトで結びますと、西表を含む、波照間も含んだ竹富町の行政区画内が一日で全部回れるということになりますと、おそらく住民意識まで一変してしまう、革命的な町政の伸展に寄与するであろうということも考えまして、それらの構想も大体固めて帰ってきておるつもりであります。ただ、これは本土のほうで離島振興関係の町村あたりで要望が続けられておって、なおかつ国のほうではそれを踏み切れなかったことでありますので、沖繩でもやることについては、沖繩だけにそういうことをするのかという反論もあるいはあるかもしれませんし、また、沖繩でも本島の西から東、あるいは北のほうに点在する島の人々は、竹富町関係だけでそういうものをやってもらっては自分たちはどうなるのかという声もあるかもしれませんが、さしあたりは、まず一番典型的な、先ほど申しました離島の苦しみ、離島苦に泣くモデルケースとして竹富町をやったらどうだろうかということを考えて、現地でもそういう意向を述べてまいりました。これはぜひ実現さしたいと考えております。ただいま運輸省その他と連絡をとりながら、メーカーと予算の見積もりをいたしておるところでございます。その他、こまかい御指摘がありますれば、離島の問題、医介補、歯科医介補の問題、国民健康保険の問題、通信の問題、交通の問題、いろいろございましたので、御質問があり次第答えてまいりたいと存じます。
  167. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 きょうは非常に時間が限定されておりますので、はしょって断片的なお尋ねをいたしますけれども、あと一問ほどお伺いしたい。  現在琉球政府で施行されておる法律、そして将来返還後に法律改正を迫られるものが非常に多くあると、この辺の調整というものがたいへん混乱が起きる心配があるわけです。一体その調整をめぐってどうするんだろうか、これは当然沖繩県民の方々も憂慮されている。これも大きな問題であろうと思います。たとえば警察法にしても、地方自治法、消防法、清掃法全部関連してくるわけです。この辺の整理は、はたしてこれから返還までの時期に数百件以上にのぼるこの法律の調整は可能であろうか。きょうはたいへん大まかなことしか伺えませんので、その辺の基本的なまず考え方だけをお示しいただきたい、こう思うのでございます。
  168. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは法制局にもその意味で担当官を置いていただきまして、私どものほうが窓口になりまして、これは行政上の配慮というものを背景にした特例法その他が一ぱい出てくるわけでございますので、各主管庁間の調整を終えた後、私どものほうが窓口になって、法制局とよく相談をいたしまして、そして最終的には法務省等の審議会等にかける必要があるかないか。それらの御判断をいただきながら、なるべく早い日に、年内くらいには全体の見通し、結論が出せるようにしたいと思います。でないと、復帰のきまりました直後にずいぶん使われました「復帰ショック」ということばが、これがどうにか消えつつあります。しかし、最終的に本土政府が姿勢を示しませんと、復帰の混迷という中をまだ脱していないと思いますので、すみやかに復帰ショックから、混迷から脱して、そして自分たちの復帰後の姿はこのようになるということが明確に示されて、初めて自分たちはそれならばどう対応していくかという、新しい沖繩づくりに沖繩県の方々が全員立ち上がっていただくような日を早くつくらなければなりませんので、この作業もたいへん困難な仕事でありますが、おおよそもう半年かけましたので、これからその整理に入りまして、ことしじゅうくらいには片をつけたい。そして内外に明らかにして、沖繩県民の方々に、混迷から脱却して未来への第一歩を踏み出す気力をふるい起こすようにしていただきたいというふうに願っておる次第でございます。
  169. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 重ねていまの問題を確認しておきたいと思います。  長官の御説明によりますと、そうした法律の一応の整理というもの、いわゆる復帰ショックというものを最大限避ける一つの手だてとして、今年一ぱいに荒々見通しを立てて、その基本的な考え方に立って十二分に復帰前に間に合うようにすると、このように理解してよろしゅうございましょうか。
  170. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そのとおりでございます。
  171. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、沖繩の金融界の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、先般、先ほどもお話がありました柏木財務官が現地に参られまして、主たる方々と懇談をされたということであります。その際に沖繩の現状というものから一行一社という基本的な今後方針で臨みたいという、これはおそらくまだ確定の段階ではないだろうと思うのでございますが、この点はいかがでございましょう。
  172. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは大蔵省としては、強圧的に一県一行一社にせいと言えば、これは合併統合を国家権力でものを言う形になりますので避けておるのだと思いますが、裏返しに言いますと、沖繩の金融界の方々のためにぜひ一県一行一社にしてもらわないと沖繩の人々自体が困るということを私としては言っておるわけです。というのは、資本力に差もありますし、それぞれ業態によって違います。信託はたとえば三つあって、スイスの例の国際市場を撹乱いたしましたダミーと思われるものが琉球政府の営業停止、取り消し勧告も無視してまたもぐり営業をやったり、いろいろな形態がありますけれども、典型的なものは大体証券、銀行、生命保険、損害保険、こういうものは二社ですから、すでに損保のように統合を社長同士が確認してその作業を急いでおるところもありますし、生命保険のほうも何とか努力したいということでやっておるようでありますが、問題は、復帰までいままでの行きがかりや対人関係等々にとらわれて、たとえ力関係の差があっても、どちらが有利になるのか復帰したあとはわからない。ねしろ、いままでシェアが自分のほうが三分の二を占めていた、相手のほうはごく小さい金融機関だと思っていたところが、復帰したとたんに本土の大きな金融資本というものが小さい資本のほうと合併して、その支店になった場合には、一挙にその開きは天地の大きさになるわけでありますから、そこらのところをよくかみ合わせて、みんなで力を出し合って、一県一行というならば、本土の金融資金のなぐり込みその他に対して、沖繩に現在ない金融機関、あるいは為替金融機関、あるいは日銀の事業所もしくは出張所、そういうようなものも含めて、これは別として、競合するようなものの進出は極力われわれも行政上、政治上排除する。そのためにも弱者も知恵を出しなさい、みんなが知恵を出し合っていくためには、一県一行一社にしないと、守ってやろうにもできない、助けてやろうと思っても助けられない、結果は遺憾な結果になるおそれがあるということをじゅんじゅんとかみ砕いて了解願っておる次第でございまして、いまのところは、どちらが頭を先に下げるかというようなこと等もあるようでございますけれども、何とかかんとか話し合いは進んでおるようでありますから、復帰までには不測の事態が起こらないように、そして先ほどの琉球銀行の民政府五一%出資等の地元株としての確保、そういうことも含めながら、地元の銀行資本というものがきちんとやっていけるようにしてあげたいというつもりでおります。
  173. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後にまとめてお尋ねをして終りにしたいと思いますが、先般全銀連の事務局長が現地に参られて調査をされた結果の報告が発表されております。一つは、アメリカの有力銀行が、なかんずく沖繩における相互銀行の株式取得を目ざしているという不安な様相がある、これが一点。それから第二点は、都銀の進出というものについてむしろ困る、こういう考え方が非常に強い。それから第三点は復帰前に円の切り上げが行なわれますとドル建ての価値が非常に下落するということで、円の切り上げということにたいへん不安を持っている。こうした一連の関係性について特に大蔵省当局はどういう判断とそれから今後の措置をとられようとするのか。また、特にユーロダラーの金利が引き上げになりますと、これは言うまでもなく、預金金利が引き上げられて、またその資金獲得策がいろいろな面で出てくる。こういうことで、琉球銀行は力があったかどうかわかりませんけれども、これに追随するだけのことができた、ほかの銀行は残念ながらこれに追随することができなかったという最近の沖繩内における金融状況というものの姿が浮き彫りにされた感があるのでございます。いま申し上げたような問題点に立って一括して御答弁をお願いして私の質問を終わらしていただきます。
  174. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) ただいまお話しのような問題点につきましては、実は現在省内で鋭意その対処方針について検討中でございます。それでまだ結論は得ておりませんが、全体的にいいまして、沖繩の産業の復興、経済の原則というようなものにつきまして混乱が起こらないように、そういう配慮のもとに処理していきたい、こう存じておる次第であります。  それから円の切り上げの問題につきましては、これは福田大臣からも再々言明がありますように、これは全然考えておりません。そういうことをつけ加えさしていただきます。
  175. 春日正一

    春日正一君 最初に渡航の問題ですけれどもね、国会議員の渡航は共産党でもできるということで、私、行ってきました。しかし、半面で、一般の民主的な団体とか、そうでない人でも、渡航を思想、信条、政治的な立場というものによって制限するというような動きが、従来よりもきびしくなっているというふうに感じるのですけれども、これは一体どういうことですか。
  176. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) きびしくなっているというふうには私は実は思っていないのですが、むしろ私は、依然としてその渡航業務が、向こうのほうでは公安局の主導権によって行なわれているために、そのように思われる節のあるチェックがなお残っている。これはもうたいへん遺憾なことであるし、いまお話しになりましたように、各党全部が行けるようになっている現状ですから、なるべくそういうようなことは、友好関係立場から考えても、やはり沖繩における米軍側としての判断の高い人たちの考え方というものはそういう入域審査等に反映するようにこれはふだん努力をいたしておりまして、特別にきびしくなったとは思っておりませんが、そういうふうになったでしょうか。
  177. 春日正一

    春日正一君 事実をあげますと、たとえばこれは総理府でも御存じだと思うのですけれども、杉本先生といって、沖繩民謡のことで毎年夏休みに八重山からあっちまで行って掘り出してきては研究している先生がいるのです。ところが、この先生がことし渡航しようと思ったら許可がおりない。それで沖繩教職員組合、それからこちらのいろいろな民主的な団体その他も相当これを問題にして要求した。そうしたら今度総理府のほうから、一体あなた、どういう覚えがありますかというようなことを照会されてきて、その上で行けるようになった。いままでに何回も行っている人で、これは民謡研究の専門家で大家だとわかっているのにストップかけてきた。そうして総理府を通じて調べてみて、だいじょうぶということになったら行かしている。これはいままでより強くなった証拠です、いままでに行ったのがあれになったのだから。  それからもう一つの例を言いますと、四月の二十八日の沖繩集会ですね。あれに参加するというので、本土のほうから二百人以上の人が渡航申請しておりますけれども、これは許可になったのは数名ですね。私の聞いているのでは三名というふうに聞いている。そんなものです。そういう形で非常にこれ、きびしくなっている。一体これはどういうことなんだろうか。
  178. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 第一点の民謡の大家のお話は何らかの行き違いがあってのことだと思いますので、事務当局から説明させますが、四月二十八日のときには私はずいぶん中に入って努力したつもりですけれども、例の渡航制限緩和の両者の覚書と申しますか、了解の成立する前でございまして、遺憾な点があったことは私も認めます。
  179. 春日正一

    春日正一君 杉本先生の説明は、時間がないからいいです。わかっていますから。  こういう状態です。これはきわめて遺憾なことだと思うのです。だから、どうしてもこれは突破してもらわなければならぬし、その点、総理府のほうでは、長官はいつでも大いにやっておるということですが、外務省のほう、これは外務省関係でしょう、渡航を自由にしろというこの問題は。
  180. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩は私のほうです。
  181. 春日正一

    春日正一君 沖繩渡航の問題は長官のところですか。それじゃ、長官のところでもっと強硬にやって、こういうことは、もうあと幾らもない。しかも、一方ではさっきの長官お話のように、予算はどんどん削ってきて、出すものは出さぬでしょう。そうして肩がわりするものは、社会保障などどんどん肩がわりせいと言っておって、渡航の問題だけはいかぬ、いままでどおりということはないですよ。それならいままでどおり金を出せというのはあたりまえでしょう。だから、そういう意味で、どうしても撤廃させるということにしてもらいたいのですけれども、その辺の見込みはどうですか。
  182. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そういうことを目標に努力すべき義務があると思います。ですが、沖繩のほうで火災びん六百本分の原料とおぼしき薬品が学校から盗まれたりなどしまして、あるいはそれで実験をして爆発して、部屋におった学生を追っかけてつかまえたら、琉球大学その他の沖繩の連中でなくて、こちらから行って、いわゆる裁判を受けている連中が仮釈放中にやったのが大部分であって、そういう手に負えない諸君がおりまして、こちらからそういう人たちの応援が続々渡るということを心配してでもないでしょうけれども、公安局として一まつのまだ撤廃には不安を持っているようでございまして、その意味では努力もいたしますが、やっぱり阻害する要因も現実に向こう側で存在しているということは、私も現地に行って感じました。
  183. 春日正一

    春日正一君 その点はやっぱりアメリカの泳がせ政策ですよ。共産党は別に火災びんを振り回さぬ。共産党とか民主的団体は入れない。あの連中は幾らでも入れるのだから。そうして火炎びんを投げさしておいて、それを口実に共産党を入れないとか、まともな民主団体を入れないというのはアメリカの高等政策ですよ。そういうものはそういうもので、現実にそういう証拠があるなら、根拠に基づいて入れないということはいいですよ。しかし、そういう根拠がないものも何も入れないというのは、そのことを理由に認めないということは、長官の腰が弱過ぎると思う。そこはもっと厳重にやってほしいと思います。  もう一つの問題は、国政参加の法律が近いうちきまるでしょう。選挙法ですね、公職選挙法。十一月には選挙がやられるだろうというふうにいわれています。そうして、いま御承知のように、もう各党それぞれ候補者をきめて、後援会づくりから何から宣伝をやって、本土からたくさんの人がどんどん行っています。そうして十一月になれば選挙がある。この選挙のときに差別がされるということになったら、この選挙にきずがつくでしょう。たとえば、自民党さんは、代議士だけでなくてそうでない人も幾らでも行っている。ついこの間、組織局長かなんか行ったと新聞に出ておった。幾らでも出ている。ところが、共産党だとか民主的な勢力のほうは、国会議員は入れるけれども、ほかの人は入れぬというようなことで制限してくるというようなことになりますと、これは不公平な選挙がやられるわけですから、選ばれた人全部の資格にきずがつく。そういう者を迎え入れた本土の国会の権威そのものにきずがつく。だから、当然公職選挙法なら公職選挙法に基づいて、そういうために行く人だったらだれでも入れる。現実にそこに火災びんを投げるようなばかなまねをしたりしたら、そのことをとらえて責任を問うことは差しつかえないけれども、しかし、選挙の目的で行くということなら入れるということにしなければいけないし、だから、あの法律を通すときに衆議院で不逮捕特権とか、あるいはそういう問題と同時に、渡航の自由ということを実現するようにということで附帯決議を本会議でつけておるのですし、政府もそのつもりでやりますということになったわけです。だから、これは必ずやるようにしてほしい。これはもういまからですよ、告示になってからではおそいですから。選挙のために渡るというふうに書いた者は無条件で渡すと、少なくとも最低限ですよ。そして一般の渡航を制限する根拠は何もないし、だれでも全部往復できるようにしてほしいのだけれども、しかし、いまアメリカのほうでいろいろチェックしておるものがあってなかなか突破できないというならば、もちろんそれも努力するけれども、同時に、少なくとも公職選挙法に基づいて選挙の応援というようなことで行く人だったら、国会議員であろうとなかろうと、とにかく全部渡すということの約束は取りつけてほしいと思いますけれども、その点どうですか。
  184. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 長年の慣例を破って共産党大会も公開でおやりになったくらいだいぶソフトムードになりましたので、世間の見る目も違ってくると思います。だから、共産党の話をしておるわけではないのでありまして、選挙の応援にこれは公平に応援ができるように、これはただし、沖繩県内においては公平なんですね。むしろ本土よりも政治活動は自由である。あるいは琉球政府の部長はこれは特別職で、選挙活動は自由にやってよろしいと、でこぼこはありますけれども、向こうの中では自由である。ただ問題は、選挙で沖繩だけ、衆議院議員選挙、参議院議員選挙をぽかっと本土と切り離してやりますから、自分たちの選挙は、私たちはないのですから、いろいろな団体が沖繩にだけ行けないような感じで、何かたいへんそれがどぎつく表に出るということはやむを得ないと思いますけれども、しかし私は、努力するにしても、選挙の期間中何とかそういう御希望に一歩でも沿えるように努力をしてみたいと思っております。事前運動までも含めてということになりますとなかなかむずかしいと思いますけれども、選挙の期間中応援に本土から行く人々もなるべく差別のないようにしたいというふうには考えておりますけれども、その点について努力をしたいと思います。
  185. 春日正一

    春日正一君 この問題は、今後とも私のほうは成り行きを見て、これをどこまでも実現するように追及していくつもりでございます。長官もひとつそのつもりで努力していただきたいと思います。
  186. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) はい。
  187. 春日正一

    春日正一君 それからその次の問題、沖繩の人権問題ですね。これは時間もないようですからできるだけはしょってやりますけれども、五月二十日に発生したアメリカ軍人の沖繩の女子高校生刺傷事件、これに関連して琉球政府立法院では全会一致で具体的な内容を含んだ抗議の決議をして、現地のアメリカの当局にも突きつけるし、同時に、本上の政府それから国会、各政党にも協力方を陳情してきたんですけれども、それについて政府としてその後どのような措置をとられたか、その内容と結果を知らせていただきたいのです。
  188. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず、私どものほうから、外務省の前の段階として、このようなことが沖繩県民にとって最大の侮辱であり、また、沖繩基地を保有し続けたいと念願しておる米側の立場から見てもマイナスであるということについて、これ以上不測の事態の起こらないように軍紀をきびしくしてもらいたいということを申し入れもいたしましたし、そのことについては、できたことについて申しわけがないということと、さらに今後一そうきびしくするということ等についてははっきりと意見が一致しておるわけでありますけれども、あと沖繩県民が見られて、あるいはわれわれが内地からながめていて、沖繩で不幸にして起こった事件のあと始末ということについて、ただいまの不幸な女子高校生事件についても、その後まだ、公開裁判といわれながら、いまだにその見通しが立ってはっきり示されていない、あるいは、その捜査の過程において琉球警察側との間の若干の行き違いがあったといううよなこと等も派生しておりますから、やはり沖繩警察と向こう側との間の覚書と申しますか協定に基づいて、いま少しく、県民から見て、そこまで沖繩側の立場というものが貫かれるならばという前提に少なくとも近づけるような逮捕権、すなわちその逮捕権の周辺に至る捜査権等の問題等について、逮捕権の事実上のあり方、あるいは具体的な逮捕のし方、それからあと、それらの犯人の身柄の送り方についての捜査権その他について具体的な項目を申し入れてはおります。それについていま話し合いはなされておりますけれども、この点はもうオーケーであるという回答に現在までには接しておりませんが、なお外務省を通じてそのような話し合いを進めていってほしいと思います。私の感じました範囲では、これは弁務官はじめ首脳部は、全部自分たちも苦しんでおるようであります。私も、だから、どこの国にも気違いみたいな者はいるんだ、しかし、それは沖繩においてアメリカ軍人沖繩の県民に対して起こすということが問題なのである。六十五セントにしかならない交通事故の単なる擦過傷でも、こん棒、野球のバットを持って対峙するというような事態ははなはだ好ましくないことであるということで、十分いま話し合いをしておるところでございまして、琉球警察側の具体的な要望等も踏まえながら、よく県民の理解が得られる範囲内までは努力したい。そして一人一人の人間の心がまえの問題ですから、絶滅を期するということができるかどうかは問題でありますけれども、少なくとも、いまのような、施政権下において祖国の直接のささえの届かない状態のもとにおける事件の頻発をなるべくなくしてほしいという願いを持って交渉しております。
  189. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) ただいまの女子高校生刺傷事件につきましては、六月五日に、愛知外務大臣からマイヤー駐日米国大使に対しましても、事件の善処方並びに今後この種の事件の再発防止について申し入れをいたした次第でございます。なお、そのほかのことは山中長官の御答弁と同じことでございますので省略いたします。
  190. 春日正一

    春日正一君 もう一つお聞きしますが、見通しはどうですか。いま言ったような外務大臣も、警察権とか捜査権の拡充という範囲でその運用を何とかしたいというような意見の表明をしておられるし、これは山中長官もそう言っておられるけれども、その折衝の見通しですね、これはものになるかならぬか、いつごろなるかという見通しはどうですか。
  191. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは具体的な形は、琉球警察と米側との話し合い、治安当局の話し合いということで、個々の法律的なこまかい問題とか逮捕権行使の技術的な問題、そういうものを詰めさしております。したがって、ここで具体的な点をあげながら依然としてばく然たる答えに終わると思うのですが、どうも、しかし、米側のほうが少し姿勢が硬直している感じがしますのは、私の性格にもよりましょうが、切り出し方そのものがはっきりしているものですから、どうも裁判管轄権をすぐ返せというように私のほうが申し入れたように受け取った節がありまして、私はそうすべきだと思うのですけれども、施政権と裁判管轄権との問題を考えて、そのこと自体をいま解決しろと言っているのではない。要するにそのような不祥事が起こらないように、起こったら、さらに不祥な事態にならないように、捜査、逮捕、取り締まり当局の連絡を、県民にも明らかに改善されたような措置をとるべきであるということであったということを一生懸命説明をしまして、いまやっと門戸を開いて話し合いに応じておるという感触上の問題になりますが、なるべく早く解決するように努力をいたしてまいりたいと思います。
  192. 春日正一

    春日正一君 まあ、そういう努力に対して、七月九日の琉球新報を見ると、屋良主席に対してスナイダー駐日公使が、犯罪が起こらないように努力をするということを約束されたという報道も出てますし、それからウェストモーランド参謀総長ですか、あの人は、統計によれば米兵の犯罪の数は逐年減少しておる、この傾向が続くことを期待しているというようなことも言っておるのですけれども、しかし、実際にはふえているのですね。特に去年の暮れあたりからふえだし、また、ことしのあの事件が起こった前後から急速にふえているのです。私、新聞に出ている大きな問題だけ拾ってみても、あの女子高校生事件の以後二十四件ぐらい大きい犯罪が起こっております。だから、これはもっと周密に調べたら相当のものが起こっておると思います。で、ことしの数字でいえば、五月までで六十八件です。逮捕されたのが十件ですから検挙率は一七、八%だと思います。いままで最低ですわ。犯罪の数とすれば最高です。そういうような状態が出ております。で、私はこれはなぜかというような議論もしたいのですけれども、時間がありませんから結論へ持っていきますけれども、こういう状態のもとで一体沖繩県民を保護する責任はだれにあるのかという点ですね。ここをやっぱりはっきりさせておく必要があると思います。これは外交上のというか、そういう理屈らかいえばアメリカの民政府にあるということになるのでしょうか、どうですか、外務省
  193. 井川克一

    説明員(井川克一君) 施政権全部アメリカが持っておりますから、そういうことになると思います。
  194. 春日正一

    春日正一君 ところが、民政府というけれども、これは米軍政府ですからね。結局、その責任に当たるべきアメリカの当局あるいはアメリカの軍隊そのものが犯罪を起こしているわけですから、これは責任を果たしてないし、むしろ、そこに一番大きい責任がある。しかし、そのことを、それじゃこの責任をとらせるという談判をしようにも、とうてい琉球政府はアメリカの民政府のもとに従属したかいらい政府みたいなものですから、内容的にはともかくとして、制度上はそういうもんですから、だから、琉球政府が米民政府に幾ら交渉してもらちがあかない。この点では立法院の代表も、われわれには外交権がないのだから、本土の政府、本土の国会がバックしてくれなければどうにもしかたがないのだということで陳情に来ている。そういうふうに考えますと、やっぱりこの問題をアメリカ政府の責任としてはっきり解決させるという責任ですね、それはやはり日本政府にある。だから、日本の政府や国会がほんとうに本気に取り組んでやらなければ、この問題というものは進展もないだろうし、解決もないだろうと思うのですわ。だから、そういう意味から言えば、アメリカ民政府がやるべきものができないという状態が現地にあるとすれば、やはり最近の状態を見れば、まあベトナムから帰ってきた、そういう関係で犯罪がふえているということは新聞その他も主張で書いていますけれども、そういうものがあるのだ。これはアメリカ基地を取っ払ってアメリカ人がいなくならなければ根こそぎ解決にはならぬと、私どもはそうしなければと思っておるけれども、いまさしあたっての問題とすれば、やはりアメリカ軍人がそういう犯罪をやる、しかも、アメリカ政府は犯罪を少なくするように努力するとかなんとか言っても、ちっとも効果がないということになれば、結局、そういう犯罪者を捜査し逮捕し裁判にかける権利、自衛の権利をやはり沖繩の県民、琉球政府が持つということ以外にないのじゃないか。だから、そのことをこの陳情書でも要求しているし、これは琉球立法院の与野党くるめての決議ですから、だから、これは全県民の意思の一致だし、最近の自民党の沖繩対策の方針書ですか、あれを読んでみますと、やはりこの問題は裁判権、捜査権、こういうものをやはり琉球政府に与えるべきだというようなことが書いてある。そうすると、この問題では、少なくとも国会でのコンセンサスというものは得られるはずですよ。自民党もその立場を主張しているから。そうしたら、これを何としてもアメリカに押しつけてやらせる。それ以外にないと思うし、これは何も、大統領の行政命令ですか、最初の琉球政府の権限をきめた、あれをちょっと変えさえすればできることだから、だから、そういう捜査権、逮捕権、裁判権も当然渡すべきだし、そうしてそれを実現する。それができるまでというのでなくて、それがなかなかすぐに実現できなければ、さしあたってすぐにでも必要なことは、捜査し、逮捕して、そうして犯罪者を確定する。それくらいのことは沖繩の警察でできるように、一日も早くこれをしなければ、これは本土の政府としては責任を果たしていないということになるでしょう。これはぜひやってほしいし、その点では私はこれ以上どうするかといったって話は進みませんから、まあ山中長官と、外務省のほうは大臣代理で次官が出ておりますから、外務省として相当強硬にやらなければならぬ。向こうはやるべきことをやらずに、悪いことだけしているのだから、相当強硬にやらなければできないと思いますが、もう与野党、自民党まで一致してやれと言っておるし、沖繩でも一致してやれと言っておるから、この国民の一致した要求を背景にして、強硬に交渉して実現してほしい。それをやってやれば、沖繩の県民は本土に対する信頼をうんと強めると思うし、それは私どもの義務だと思う。だから、そういう意味で、総務長官のほうと外務次官のほうから、この問題の打開に対しての決意だけでもひとつ聞かしていただきたいと思います。
  195. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 裁判管轄権につきましては、私どもは、本土のほうも、独立後一年有半かかってやっと取り戻したようなむずかしい問題で、施政権との関係で見ますと、復帰前というのは、率直に言って、これはたいへんむずかしいような気がします。ですけれども、やはり現在でも公務以外の現行犯を逮捕することは、琉警でも沖繩で認められておりますし、問題は逮捕したあとの処理のしかた、あるいは逮捕に伴う裁判に必要な捜査した資料、捜査権、こういうもの等について、もう少し努力を、両者が合意を前進させなければならない。そのためには、あなたのお話しのように、とても琉警だけでは、施政権下に置かれているわけでございますから、やろうと思ってもなかなかできない。そのための道義的な祖国の責任というものは私は確かにあると思います。ただ問題は、琉球警察とアメリカさんとの話し合いでありますから、たとえば、じゃ現行犯だったら追っかけて、基地内に、警官の記章も何も見せないでピストルかまえて追っかけていってとかなんとかということを認めろと言った場合に、そこにおる兵隊たちが何もわかりませんから、逃げ込んできたアメリカの兵隊を琉球の警察官が二人、三人で追っかけてくるというときに、不測の事態が起こる可能性もあると思います。こういうときは、琉球警察も自分たちのいやなことはいやなんです。そこらの微妙な問題もありますから、よく話を取りつけておいて、ここまではやっていいとか、やれるようになったということにしてやらないと、案外ことばだけで不親切なことになって、琉警がやろうとしてもやれないというケースがあると思います。そこらのところは、気持ちは同じでありますから努力してやりますが、もう少し技術的な問題も前提として解決していかなければならぬと思います。結論としては、当然の方向に向かって全力をあげて努力することが当然の私の仕事だと思っております。
  196. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) ただいま山中長官からるるお話がございましたので、外務省としても現地の期待にこたえるべく最善の努力をしたいと思います。
  197. 春日正一

    春日正一君 これで終わります。
  198. 川村清一

    ○川村清一君 私は、問題を北のほうに移しまして、北洋の安全操業の問題について若干お尋ねいたします。  山中総務長官は重要用務で御退席になられますので、山野対策庁長官にお尋ね申し上げますが、六十三回国会中の五月の十一日の本委員会におきまして、北方協会に対して交付国債十億円の償還について私が質問いたしまして、山中長官から、償還期限の四十六年十二月には必ず現金化するとの答弁をいただいたのであります。その後国会終了後の六月八日に第一回北方領土問題対策評議員会が開催されました。実は私も佐藤内閣総理大臣から評議員を委嘱されておりますので、その会に列席したのであります。その際、評議員の皆さんからそれぞれ意見の開陳があり、質問もありましたので、私が国会の報告をし、山中総務長官からそのような答弁をいただいている旨を話しましたところ、同席していた対策庁の某氏が、山中長官はそのようなことは明らかにしていないという意味の、ある意味では私が虚偽の報告をしたと受け取られないとも限らないニュアンスの発言をされたのであります。私ははなはだ遺憾にたえなかったが、その場は国会でもなく論争の場所でもなかったのでそのままに聞き捨てておきました。長官答弁は会議録に明確に記録されております。大臣発言を一事務官が否定するがごとき発言をするなんということは、はなはだ私は遺憾に思うわけであります。それとも、山中長官がこの委員会で発言された方針がその後変更されたのかどうか。されたとすればこれは重大でございますので、この点まず明らかにしていただきたい。こういう意味で質問したわけであります。
  199. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) 明年十二月に参ります十億円の国債償還の問題の経緯につきましていま御説明がございましたが、大体そういう経緯になっておると私は承知しております、大臣答弁に関連しまして。私どもは、明年十二月に償還期限が来たらこれは当然現金化、償還をしてもらうということに考えていまして、そういう方向で大蔵省とも折衝してまいりたい。ただ、これは川村委員も御承知のように、この償還された十億円は一括して運用するという取りきめが北海道の各関係団体でもございますようでございます。そういうことを前提にしまして、私どももこれを償還してもらう方向で大蔵省と折衝したいと考えています。
  200. 川村清一

    ○川村清一君 山中長官答弁方針が変更されておらないということは明確にお聞きしておきます。ただ、前段の、私も仲よしクラブの席で言ったのではなくて、対策庁の法律に基づいて開かれておる評議員会において、私も内閣総理大臣から委嘱された評議員として発言しましたことを否定されるようなことをされたので、私もこの国会の公開の席上でそのことをやはり明らかにしておかなければならないのでいまお尋ねしたので、部下をしっかりあなた統率しておいてもらいたい、この点だけ苦言を呈しておきます。あまりしつこくやっては、問題が問題だから遠慮しておきます。  さて外務省のほうにお尋ねしますが、外務大臣が出席されていないことはまことに遺憾である、まずこのことを申し上げておきます。  そこで、これは欧亜局長にお尋ねしておきますが、北洋安全操業の問題については、これも前国会で外務大臣にお尋ねをして答弁をいただいておるわけであります。しかるに、いまだにソ連政府に対して具体案を示しての外交交渉がなされておらないのは一体どうしたことか。積極的な姿勢が示されておらないことはまことに遺憾に思うわけであります。現状は一体どうなっておるか、今後どのような手順で交渉に入るのか、その見通しはどうなっておるか。まあ最近新聞に出ておるわけでありまして、この国会ではっきりひとつ御報告いただきたい。   〔委員長退席、増田盛君着席〕
  201. 有田圭輔

    説明員(有田圭輔君) お答え申し上げます。先生御承知のように、この問題、日ソ共同宣言で平和が回復して以来の問題でございまして、私自身二年前に欧亜局長の職につきまして以来、もうこの件について何とかソ連側にこの問題について交渉に入るようにせっかく督促してまいりましたような次第でございまして、また、大臣も昨年みずから訪ソしました際に最重点事項の一つとしてこの問題を取り上げたところで、本年四月に、ノビコフ副首相、イシコフ大臣が万博ソ連デー出席のために来日した際に、初めて先方より、先方としては一応具体的交渉に入る用意があるという意向は示されたわけでありますが、しかしながら、われわれの期待しておりますような具体的なソ連側の考え方は示されておりませんでした。しかしながら、ともかくも交渉に入ろうという意向を示したということは、これはかなりの進歩でございます。したがいまして、われわれもさっそくにソ連側に対してさらに交渉を進めるということでせっかく準備を進めまして、モスクワにおいて具体的に中川大使と先方の責任者との間に話し合いを進めるということですでに訓令済みでございます。ただ、ソ連側もいろいろの日程その他がございまして、具体的な話し合いにはまだ入っておりませんが、また、はたしてわがほうから申し入れたことに対しましてソ連側が具体的な交渉に乗ってくるかどうか、過去の経緯にかんがみましても、必ずしも楽観できませんが、しかし、近いうちに具体的に話がさらに進むことをわれわれとしては希望しておる次第でございます。
  202. 川村清一

    ○川村清一君 社会党成田委員長を団長とする訪ソ使節団がイシコフ漁業相と会見し、ソ連側の考え方とも思われる見解がある程度具体的に述べられたと新聞紙上には報道されておるではありませんか。ほんとうに政府が外交交渉をなされる積極的な意思があるならば、もっと精力的に取り組むべきではないかと思うのであります。ただいまの局長の御答弁を聞くというと、何か交渉が延びておるのがソ連側の都合のように言われておるわけでありますが、新聞報道によれば、成田委員長が、交渉の延びておるのはソ連側の都合ではないかといったようなことを尋ねたところが、そうではないのだ、具体的な案が示されるならばいつでも交渉に応ずる用意があるということ、向こうはそう言っておるということが新聞に出ておるわけであります。今日まであるときには赤城試案が出てみたり、また、昨年は愛知外務大臣が訪ソしまして提案されておる。そういうふうなことはまあ新聞に大きく出ている。現地の住民は非常にそのたんびに喜んでおるわけであります。しかしながら、それは線香花火式のようなもので、ぱっと声が出るがあとが続かない。ほんとうに政府がやる気があるならば、もっと執拗にやるべきではないか、もっと具体的に精力的にやるべきではないかと、私はまあそう考えるのでありますが、今日までおくれておる理由は、ほんとうにソ連側のほうの都合によっておくれたのかどうか、この点をここで明らかにしていただきたい。
  203. 有田圭輔

    説明員(有田圭輔君) お説のとおりでありまして、拿捕抑留の問題を将来起こらないようにして、この問題を双方に満足のいくような形で、しかも、日本側の国益に反しない形で問題を解決するということで私どもせっかく努力しております次第でございます。まことにその点延び延びになっておって遺憾ではないかという点は反省いたしまして、今後さらに一そう努力してこの問題の促進をはかりたいと思っております。成田委員長以下の社会党の使節団の方が行かれまして先方といろいろお話しなっておるようでございまして、私も新聞報道だけで承知しておりますわけでありますが、お帰りになりましたらいろいろ詳しいお話も伺えれば、またわれわれの交渉にも役立つかと思っております。
  204. 川村清一

    ○川村清一君 山野長官にお尋ねいたしますが、北方領土の返還問題、それから安全操業の問題、また旧島民の墓参の問題等は、これは対ソ外交交渉によってきめられることは言うまでもございません。したがって、外交権を持つ外務大臣がその衝に当たることは当然であります。しかし一方、安全操業や墓参の問題は内政上の問題でもあるわけであります。北方に居住する住民の生活上の問題であります。その意味においては総理府の所管でもあると私は思うのであります。そのような観点からお聞きしたいのですが、外務大臣が外交折衝する前に提示する具体的内容については、総理府のほうからも意見が述べられているそれが交渉の基調にならなければならないと私は思うのであります。しかし、今日までの状況を見ておるというと、ほとんどは外務省だけのベースで取り運ばれているような印象を受けるのでありますが、この点についてほんとうは山中長官に御意見をお聞きしたいのですが、長官がいらっしゃいませんので、山野対策庁長官からこの点のお考えをひとつお聞きしておきたい。
  205. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) この安全操業の問題でございますが、これは根本的には北方領土問題の解決にかかっておるわけでございますけれども、拿捕事件が頻発して関係漁民がいろんな犠牲をしいられるということは、これは内政的な面からも非常に関連の多いことは御指摘のとおりであります。したがいまして、私どもも北海道地元漁民の意向を常時聞いておるわけでございまして、必要に応じまして水産庁、外務省とも十分連絡をいたし、また必要な要請はしつつ、外務宵を通じて対ソ折衝をしていただいておるわけでございます。
  206. 川村清一

    ○川村清一君 安全操業の問題については、このあと水産庁長官にお伺いします。  そこで、墓参の問題はことしはどうなっているのか。御承知のように、本州のほうではただいまお盆ですが、北海道のほうは八月お盆でちょうど一カ月たつとお盆になりますが、旧島民の方は非常に墓参を希望しておるわけですね。しかし、御承知のように、昨年はこれが許されなかった。今年の墓参は一体どういうことになるのか。何か考えられて対ソ交渉をするように外務省話し合いをしておるのかどうか、この点をお聞きしたい。   〔委員長代理増田盛君退席、委員長着席〕
  207. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) この北方地域への墓参の問題でございますが、八月末に墓参を実施したいと、そして実施個所は歯舞、色丹、国後、択捉の四島で、この遺族代表、あるいは若干の関係政府職員等を含めまして、申し入れを外務省を通じましてソ連のほうにいたしております。しかし、それに対する回答は現在まだ受けていないわけでございます。
  208. 川村清一

    ○川村清一君 外務省のほうにお尋ねしますが、見通しはどうですか、いま山野長官がおっしゃったことに対して。
  209. 有田圭輔

    説明員(有田圭輔君) 御連絡に基づきまして、モスコーでソ連側に申し入れております。その後も逐次督促しております。見通しは、ただ、われわれとしては努力いたしますが、そしてまた積極的な回答が来ることを期待しております。最近も極東部の責任者にわがほうの大使館の責任者が面会したときも督促しております。先方はいろいろ申しますが、一つには、どうも日本側はこれを北方領土帰還促進と結びつけているのではないか、そういうことではソ連側としてもなかなか困難であるというようなことも申しております。それから一つには、たとえば札幌の総領事館に直接そういう関係者が陳情をするというようなこともございましたようですし、そういうようなことで、ソ連側は日本側がそういうことと結びつけて領土返還運動に使うのではないかというようなことを申しますので、われわれとしては、これは日本側の祖先伝来からの風習であって、この墓参というものにいかに関係者が熱意を持っているかということをせっかく説明をいたしまして、今年もこれが実現するようにということを強硬に申し入れております。
  210. 川村清一

    ○川村清一君 水産庁長官にお尋ねしますが、安全操業の問題は、言うまでもなく、漁業の問題であり、漁民の生活の問題であり、ひいては人道上の問題にまで発展しておるわけであります。これは、そういう点においては農林大臣主管であることは言うまでもございません。そこで前国会中、倉石農林大臣とイシコフ漁業大臣との会談があって、ソ連側から具体的に案を示すようにというような提言があった。このことについて私は予算委員会の分科会で農林大臣に対しましていろいろ質問いたしまして、その中で、具体案を作成するにあたっては、安全操業の問題は北洋海域で生活と生命をかけて働いている現地漁民の声を十分聞くべきであると主張いたしました。大臣考えをただしましたところ、大臣から、その点については当然のこととして十分現地の声を聞きたい、こういう御答弁をいただいたわけであります。そこで長官にお尋ねしますが、大臣答弁どおり現地漁民の声を聞かれたのかどうか、その点をお伺いします。
  211. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) 私ども外務省と相談をして安全操業につきましての具体案考えます場合に、当然現地の声を聞くことが大事でございますので、担当課長数名を北海道にやって現地の声を聞きましたし、また、現地の人たちが上京いたしまして私も直接相当長い間意見を伺いましたし、また、北海道庁あるいは北海道の道議会の人たちもしばしばこの問題で上京をいたしまして、私ども、いろいろな各層各界の意見を十分承った上で安全操業の具体的な案を固めておるというふうに申し上げてよかろうと思います。
  212. 川村清一

    ○川村清一君 時間がございませんので、はしょっていま聞くわけですが、ただいまの御答弁によるというと、現地の漁民あるいは各界各層の声を十分聞いた、こういうような御答弁でございます。いろいろな御意見であったと思うのでありますが、それらを集約いたしまして、現地が強く要望しておる問題はどのような問題であったか、その大事な問題だけでけっこうでございますから、数点についてひとつここでお述べいただきたいと思います。
  213. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) まあ、各界各層の人たちの話の中には多少のニュアンスの相違はございますけれども、おおむね大事な問題として言われておりますことを申し上げますと、一つは安全操業の対象水域の問題でございます。これは歯舞、色丹、国後、択捉周辺ということはまずどなたもおっしゃることで、そう食い違いはございません。そうして、できるならば距岸ゼロ海里までお願いをしたい。これは「できるならば」というところにいろいろな含みがあろうかと思います。  それから二番目は、対象の漁船でございまして、これも安全操業は、ただ漁業の面ばかりでなしに、いろいろな人道的な問題を含んでおるという立場から、できるならば現に四島周辺で操業している漁船全部にお願いをしたいというのがその声でございます。  それから三番目は対応措置でございますが、安全操業のいわば対応措置として、かつてソ連からソ連の漁船を日本の港に瀞港させるという要請があった事実がございますけれども、それについては反対であるということでございます。  それから、対応措置としてさらにいろいろな形で経済的な対価ということが問題になるわけでございますが、できるならば国が経済的負担をになってもらいたいということが意見でございます。  いろいろこまかいことはございますけれども、おもなことを御紹介いたしますと以上のとおりでございます。
  214. 川村清一

    ○川村清一君 ただいま水産庁長官が御説明になられました現地の各界各層の方々の大体集約された意見、その意見に基づいて外務省や総理府との間に意見の調整がなされたかどうか、この点をお聞きしたい。
  215. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) 私ども十分現地の声を聞いて案をつくったつもりでございます。ただ、現地の声としてもいろいろ含みがございますし、私どもとしてなかなか現地の声にそのまま直接におこたえできない面もあるわけでございますけれども、全体として申し上げますれば、できるだけ現地の声も聞いて案をつくったというふうに申し上げてよかろうと思います。
  216. 川村清一

    ○川村清一君 現地の声に直接おこたえできない部面もあるというような御発言でございましたが、いま問題を幾つか述べられましたが、たとえばその中でどのような問題は受けとめられないという問題でございますか。
  217. 大和田啓気

    説明員大和田啓気君) これは安全操業の具体的な話は、先ほど外務省からもお答えをいたしましたように、近々始まるわけでございますし、その内容に触れることにもなりますので、しばらくお答えはひとつ御猶予を願いたいと思います。
  218. 川村清一

    ○川村清一君 外務省のほうにお尋ねします。いま対策庁長官水産庁長官からいろいろお伺いしまして、これらの問題が当然含まれた内容の具体案なるものを外務大臣は中川大使に訓令されておると思うのです。その訓令されておる内容、お話しできませんか。新聞にはそう出てるんですね。しかし、この席ではそれは説明できませんか。できる範囲でひとつしてください。
  219. 有田圭輔

    説明員(有田圭輔君) 水産庁長官から申し上げましたとおり、近々本件について中川大使とイシコフ大臣と再び話し合いが行なわれることになるかと思います。このわがほうの訓令なり、わがほうの案というものについては、いましばらくお待ち願いたいと存じます。ただ、先ほど来御説明がありましたように、この問題は、やはり現地の皆さま方のお考えなり日本国民の考え方というものが基礎になって行なわれなければなりませんものですから、そういう点は十分勘案されてできておりますし、また、先般、昨年九月に愛知大臣が参りました際に先方に申し入れた、いわゆる愛知提案なるものの趣旨にのっとったものであるということを申し上げておきたいと思います。
  220. 川村清一

    ○川村清一君 国民の多くの皆さん方がそれぞれ御意見を持っておられる、それは全くそのとおりだと思うのです。そこで、かつては、政府の首脳者である赤城さんの赤城試案というのがあった。それで、昨年九月に訪ソされた愛知外務大臣の提案、これが愛知提案でございます。これが相当違うわけでございます、内容的に。そこで、いまの欧亜局長の御答弁によれば、いまソ連に対して提案するこの案というものは、一体赤城試案に近いものなのか、愛知提案を基調にしたものか、これは、やはり重大な問題なんです。いまのお話では、どうも愛知提案を基調にした案が骨子になっておると、こういうふうに受け取られる発言でございますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  221. 有田圭輔

    説明員(有田圭輔君) そのとおりでございます。基本的に対象水域の問題がこれは赤城試案の場合には歯舞、色丹に限られておりました。対象水域は現地の声を伺いましても、国後、択捉を含む広い水域ということがむしろ望ましいということになっております。また、この問題は、漁業問題であると同時に、私ども先般来国会でお答え申し上げておりますとおりに、人道問題という観点からもきわめて重要性を持っております。したがいまして、この日ソ間の間断ない摩擦の原因を除去するためには、現実に拿捕、抑留はどの水域に一番多く行なわれておるかという点に問題がございますが、そうしますと、やはり拿捕、抑留は国後、択捉の水域においてもかなり行なわれております。そこで、もしその一部の水域だけで問題を解決するということになりましても、依然として拿捕、抑留が続くというような事態になりますものですから、これはやはり問題の解決にならない。この際、この問題を解決するためには、対象水域というものは、ぜひとも国後、択捉というものを原則的には含まなければならないというのが、われわれの一貫した考え方でございます。
  222. 川村清一

    ○川村清一君 原則的にはわれわれも反対すべきことではなく、まことにそのとおりで、それが実現されればまことにけっこうなことでございます。そこで、この点、しつこいようですが、さらにお尋ねしておきますが、外交交渉でございまするので、こちらの言うことが原則的にいかに正しくても、向こうが受け入れないかもしれない。その場合、一体どうなるのか。それが受け入れられない場合においては、この問題の解決というのはまたずっとあとへ延ばすのか、あくまでも政府間の約束になるのか、協定になるのか。それとも、この行き詰まってどうにもならなくなったときには、貝殻島周辺におけるコンブ協定のように民間協定になるという、そういう考え方もあるのか。どうしてもいまおっしゃっておるようなことが受け入れられない場合にはこの交渉を打ち切ることになるのか。やっぱり現実的にものを考えていかなければならない場合もあるわけですが、まあ交渉前にこういうことを言うのも何とかと思うし、またあなたのほうも答えられないかもしれないけれども、そのくらいの腹がまえをもって折衝に当たられるのかどうか。弾力性があるのかないのか。もう絶対がんこなのか。それとも、水産庁長官からまた対応措置としていろいろなことを言われましたが、たとえば日本漁港への寄港の問題、あるいは入漁料の支払いの問題、最近新聞で初めて出てきたのですが、免許料なんというのも向こうが言っておるようでございますが、こういうような問題、あるいは漁獲物の一部を代償として引き渡すとかいう、こういうような問題、これらを含めて弾力的なかまえを持っているのか。不退転のかまえで、それでなければ絶対この問題はまた延びてもいいんだと、ちょうど領土問題のような、こういうような基本的なかまえで折衝されるのか。その折衝の基本的な姿勢をひとつお尋ねしておきたいのです。
  223. 有田圭輔

    説明員(有田圭輔君) 先ほど来申し上げましたように、この問題非常に長い経過をたどっておりますものですから、私どもも決して楽観してはならないと思いますけれども、ただ、ソ連側がこの時期に具体的に交渉する用意があると申しましたことにはやはり含みがあると思いますし、その以前の段階において、われわれとしては国民の基本的な立場を述べております。したがいましてそういう基本的なラインが一貫して貫き得るならば、これはやはり相互の話し合いですから、十分にソ連側の意向を聞きまして研究していきたいと存じます。現在まではソ連側は何らソ連側の意図というものを説明しておらないわけでございます。したがいまして、十分にいろんな点を聞きただしまして、相互信頼の上に立って対話の上で十分双方の満足のいく解決を何とかしてはかりたい、このような気持ちでおります。
  224. 川村清一

    ○川村清一君 私の時間が過ぎましたから、これ一問で終わりますが、私はまあ御承知のように北海道出身であり、しかも、漁業問題につきましてはいろいろと前々からやっておった関係もございまして、昭和四十年に参議院に出てきてから、終始一貫、やかましくこの問題に取り組んできました。以来、外務大臣といろいろ議論をしてまいったわけでございます。三木外務大臣にしても、愛知外務大臣にしても、また現在の愛知外務大臣にしても、見通しは明るい明るい、もうすぐだすぐだといったような、こういうニュアンスを与えるような発言をされて五年たって、いまようやくこの段階に来ているわけであります。あなた方が東京で見ているその状態と、現地の漁民の状態というのは違うわけですから、現地の漁業はもうたいへんなものであります。もう命にかかわる、生活にかかわる、文字どおり人道上の問題なんですから、とにかく一日も早く解決するために努力してもらいたい。そこで、一体いつごろから話し合いになるのか、見通しですね、もうじきと言いますけれども、もうじきがいつなのか。それはきょうあたりの新聞見ると十三日−きょうからでももう話し合いに入るといったようにある新聞には報道されているんですが、いつから一体その交渉に入られるか、その一点大臣にお聞きします。  それから、総理府のほうに一点お聞きしておきますが、これはぜひ山中長官にお尋ねしておきたいことなんですが、最近、たとえば新宿駅だとかあるいは池袋の駅だとか、北海道ならば千歳の空港とか、ああいうところへ行きますと、右翼の車があるんですね。それが国旗を立てて、そしてその右翼の車には必ず「北方領土返還」と書いてあります。そうして、この北方領土返還というのは、これはいまや北海道の道民だけでなく全国民のやっぱりこれはもうぜひ実現してほしいという念願なんですね。そこで、国民のほんとうに意思を、総意というものを統一してこれに当たらなければ、なかなかこれは領土の返還なんというのは容易なことではないと思うんです。ところが右翼の諸君が北方領土返還というものを反ソキャンペーンにして、それであなた方、去年予算面にもあるけれども、北方領土返還国民大会とかなんとかというものを開かれましたね。あそこには必ず右翼の者がぱあっと行って、何か右翼の運動みたいに見える。それじゃわれわれも——これはこんなことで一体北方領土が帰ってくるなんという、そういう時期が一体来るのかという非常な危惧の念を持つわけですね。この点はどうなんですか。もう少ししっかり指導しなければ国民的コンセンサスも何もないですよ。もう一部のものは反ソキャンペーンに使っているのだ、北方領土返還というものを。この点はそういうふうにお考えになられませんか。もう少ししっかり指導しなければ、とうていこの問題の解決はあり得ないと思うのですがね。それで山野対策庁長官のお考えをひとつ明らかにしていただいて私の質問を終わりたいと思います。
  225. 竹内黎一

    説明員(竹内黎一君) 一部新聞で十三日云々と報道されたようですが、ただいまのところ、中川大使がイシコフ漁業相と面談したという電報は参っておりません。しかし、私どもは、ここ一、二週間にはそういう機会があるものだと見ております。
  226. 山野幸吉

    説明員(山野幸吉君) ただいま御指摘になりましたような、一部の団体が募金運動と合わせまして北方領土返還と結びつけて何かキャンペーンあるいは募金をやっておるようでございます。一昨日、私は北海道へ行きましたけれども、北海道の根室周辺あるいは札幌周辺でもそういう不満が訴えられておりました。私どもは決してそういう一部の右翼団体に利用されたりあるいはまたそういう団体のためにこういう運動をやっておるわけでは毛頭ございませんので、ただ、軽犯罪法とかその他具体的な取り締まり法令にひっかからない限り、なかなか取り締まりもむずかしいというのが現状でございまして、ある意味では非常に迷惑を受けておる面があるわけでございます。今後十分私どももよく内容を調べてみまして、関係団体等と話し合いをしてみたいと考えております。
  227. 塚田十一郎

    委員長塚田十一郎君) 他に御発言もなければ、本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会