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矢山有作君 引き継いだ後に
沖繩住民の役に立たせる、立たせぬというのは、これは別個の問題です、これは、引き継ぐのに有償引き継ぎが妥当かどうかということの問題なのですから。そうすれば、その筋というものがはっきりされなければならないのであって、
沖繩側が言っておるのはそのことを言っておるのだと思うのです。
沖繩住民に引き継いだ後に役に立つとか立たぬというよりも、有償で、金を出すべきものでないものに金を出す必要はないのではないかというのが私は
沖繩の主張だと思うのです。それは私は正しい主張であると思うのです。
先ほど
請求権の問題でも言いましたが、やはり
日本政府は対外
折衝、特に
アメリカとの
折衝をやる場合には、いつも基本のところが腰がぐらついておられるようです。基本の原則を踏まえて、その上で問題の解決をはからぬと、基本がぐらついておると、いつの対米
折衝の場合にもこちらが受け身に立たされて追い込まれてしまう。私はそういう外交
折衝はやるべきではないと思うのです。基本をはっきりして、むしろ、受け身に立たないで、こちらが能動的な
立場に立たなければ、外交交渉というものは
日本にとってどれだけ不利になるかわからぬじゃないですか。そのことを私は特に御注意申し上げておきます。
そこで、私は、有用だ有用だということが盛んに先ほど来言われましたから、有用性が残っておるのだとか、役に立つ
施設が残っておるのだからということを盛んに言われておるから、私はこの問題で反論をしたいのです。特に、その
沖繩側から、その引き継ぎ資産は
沖繩の多年の努力によって増殖されたものだ、そういうことを言っておりますから、それを裏づけるのに、これは「法律時報」の四月号に、芳沢さんという人が書いておるのですが、それを、ほかの資料を持ち合わせがありませんから、ひとつ引用しながら、どれだけこの
沖繩にある引き継ぎ対象になっている資産が
沖繩住民の努力によってこれが維持され今日の状態にあるかということの
一つの証左だろうと思うので、それを申し上げてみたいと思うのです。こういうことを言っておりますね。「
アメリカ占領軍による直接の収奪はおよそ下の表のとおりである」というので」、
一つは、琉球電力公社の純益金、これが一九六七年度単年度で見て三百七十万ドル以上にのぼっております。それから琉球水道公社の純益金が同じ単年度で八十九万ドル以上。端数は捨てます。それから琉球開発金融公社の純益金が同じ年度で二百万ドル以上。それから琉球銀行からの配当金が七万三千ドル以上。
アメリカ余剰農産物の取り扱いによる純益金が同じ年度で二十三万五千ドル以上。前の琉球銀行からの配当金は一九六八年度の分です。それから油脂の輸入
管理に基づく収益金が六九年単年度で一千七十万ドル。それから国県有地の県民への賃貸による収益金
——先ほど言ったやつですが、六八年度で八十五万二千ドル。国県有地を
アメリカが無償で
使用していることによって得ている利益、これは推計をしたものですが、六八年度で三百三十万ドル。外人所得税基づく
——外人に対するやつは
アメリカ人がおもですが
——特典措置による利益、これが四百六十七万ドル。それから外人自動車税に基づく特典措置、これも
アメリカ人がおもですが、六八年度で百三万ドル以上にのぼっている。これを単年度で総計しても二千七百五十四万三千ドルをこえているわけです。しかも、これが当初からのものを寄せたらこれはばく大なる金額になるということはもう推察がおつきだろうと思うのです。さらにこういうことを言っております。「米占領軍は土地、水、電力、油脂、金融などを支配することによってばく大な利益をおさめている。喪中の三公社は、いずれも
米軍が「公益事業」の名のもとに、布令によって「琉球列島米国民政府の一機関」として設立されたものであり、その資金はガリオア資金などによってまかなわれたといわれる。このうち、とくに土地と水についての収奪額は、実際には表中の
数字よりももっと多くなるはずである。たとえば、土地に関する講和前補償問題
一つをとってみても、国県有地についてはビタ一文も支払われていず、個人有地についても五三〇〇万ドルの請求に対して二一〇四万ドルしか支払われていない。また、講和発効後の借用地料についても、さきにみたとおり時価よりもはるかに安く、その差額は時価の半額として」計算しても「年々約六百万ドルにものぼり、一九五二年から」
——これは講和発効の年ですが
——「一九六八年までの一七年間の差額の合計は実に約一億ドルにも達する。もちろん、これは国県有地にもはまる。つぎに、
米軍による不法行為等による損失補償は「請求額の平均二〇・四%にすぎない」したがって、これらの未払い額や差額を計算すると、米占領軍による収奪は植民地的差別税制による損失分を加えて年間約六〇〇〇万ドルをこえ、その総計(一九四五〜六八年)は約一二億ドルをこえるものとみられる。」、これだけの激しい収奪をやっているわけですよ。こういう激しい収奪をやる中で、いま有償引き継ぎの対象になっているところの資産というものが今日あるわけでしょう。それを、形が残って、将来
沖繩県民の役に立つから金を払わなければいかぬのだという
考え方というのが私は非常に間違いだと思います。これは当然統治権者としてやるべきことをやったにすぎない。そのことはリッジウェイの指令の中にも触れられていることなんです。特にリッジウェイの指令は、ガリオア資金について言っておるんですが、そうするなら、これは有償でやるなんというのは、私はとんでもない話だと思う。当然
アメリカは黙って
日本に引き渡すべきだ。私は、
日本政府に、少なくともそういう態度をもって交渉に臨んでいただきたいと思う。しかしながら、すでに有償の
方針を出されておるようでありますが、そういう
方針をできるならば改める。さらに、その有償であるということの根拠というものはきわめて薄弱であります、ただ単に
施設が残っておるから、それが将来
沖繩県民の役に立つからというだけなんですから。そうすれば、私は評価のときにその点を
考えて、十分
日本側の主張というものを、その主張の基本をはっきりさして主張することによって、できるだけこの評価額というのを押える、こういうことが私はきわめて必要であろうと思うのです。さらに私は、これはけしからぬことだと思うので、
アメリカ側が一体どういうことを
考えてこの資産引き継ぎに臨んでおるかということの例として
一つ私は申し上げたいんですが、これは三月三日に下院の歳出
委員会の対外活動小
委員会
——パスマン
委員会と呼ばれておりますが
——この席上で、ランパート高等弁務官とクレーマー米民政府財務監査官の
証言がありました。これは五月十四日に公表された議事録によって見たんですか、これによると、ランパート高等弁務官はこういうふうに言っております。「ガリオア資金を原資とした米議会の監督下にある資産(三公社や石油
施設、琉銀株式の米民政府保有分、琉米文化会館など)の帳簿上の評価額は総額一億三千四百万ドルである」、「これらの資産は
日本に買い取りを求める」、こういうふうに述べて、そうしたらパンマン小
委員長が、「張簿価格よりははるかに高い価格で
日本に売る必要があるのではないか」、これに対してクレーマー財務監査官は、「そのとおり」と答えています。さらに続いてパスマン小
委員長が、「そうすると
アメリカ非常にすてきな利潤をあげることができるか」とただしたのに対し、ランパート高等弁務官は、「その
可能性がある」、こう答えたという議事録が発表になった。まさにこれは
沖繩で金もうけしようという
アメリカの根性でしょう。私はけしからぬと思うんですよ。これは、
沖繩返還交渉と言いながら
沖繩の売り買いの相談をしておる。こういうけしからぬ根性を持った
アメリカを相手に資産の引き継ぎをやるんですから、私は、
日本の主張は主張で、これは当然
施政権者の責任としてやったんだから絶対に金は払えぬということを主張すべきだと思う。一体この
証言を聞いてどう思われますか。全くこれは商売人の話ですよ。これは
沖繩の売り買いであって、こんなことが許されますか。ちょっと所感を聞きたいですな。