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1970-05-12 第63回国会 参議院 運輸委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月十二日(火曜日)    午前十時四十六分開会     —————————————    委員の異動  五月十二日     辞任         補欠選任      井川 伊平君     木村 睦男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         温水 三郎君     理 事                 岡本  悟君                 金丸 冨夫君                 谷口 慶吉君                 藤田  進君     委 員                 木村 睦男君                 河野 謙三君                 佐田 一郎君                 重政 庸徳君                 平島 敏夫君                 前田佳都男君                 渡辺一太郎君                 岡  三郎君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 森中 守義君                 田代富士男君                 三木 忠雄君                 中村 正雄君                 山田  勇君    衆議院議員        発  議  者  大橋 武夫君        発  議  者  細田 吉藏君    国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君    政府委員        公安調査庁長官  川口光太郎君        運輸省鉄道監督        局長       町田  直君        運輸省航空局長  手塚 良成君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        警察庁警備局参        事官       三井  脩君        首都圏整備委員        会事務局計画第        一部調整官    石川  允君        防衛庁防衛局運        用課長      半田  博君        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君    参考人        日本鉄道建設公        団総裁      篠原 武司君        日本鉄道建設公        団理事      増川 遼三君        日本鉄道建設公        団理事      石川  豊君        日本航空株式会        社専務取締役   斎藤  進君        全日本空輸株式        会社常務取締役  江島 三郎君        日本航空機操縦        士協会会員    富田多喜雄君        航空評論家    関川栄一郎君        交通評論家    角本 良平君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○航空法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○全国新幹線鉄道整備法案衆議院提出)     —————————————
  2. 温水三郎

    委員長温水三郎君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  航空法の一部を改正する法律案の審査のため、本日、日本航空株式会社専務取締役斎藤進君、全日本空輸株式会社常務取締役江島三郎君、日本航空機操縦士協会会員富田多喜雄君及び航空評論家関川栄一郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 航空法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から提案理由を聴取いたします。橋本運輸大臣
  5. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ただいま議題となりました航空法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  さきに発生しました日本航空機乗っ取り事件にかんがみまして、政府といたしましては、今後このような事件が再発しないよう種々の防止対策を講じてまいっておりますが、今回その対策の一環といたしまして、航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約締結することといたしております。  この条約締結に際しまして、機長に対して新たに、航空機内における航空機の安全を害する等の行為を抑止するために必要な措置をとる権限を付与する等所要国内法上の措置を講ずる必要がありますので、ここに、この法律案を提案いたしました次第であります。  次に、この法律案内容について、その要点を御説明申し上げます。  第一に、機長は、航空機内において航空機の安全を害する等の行為をし、またはしようとしている者に対し、必要な限度で、拘束、降機その他の措置をとることができることといたしております。  第二に、機長以外の航空機内にある者も、機長の要請または承認に基づき、機長拘束、降機その他の措置をとることに対し必要な援助を行なうことができることといたしております。  第三に、機長は、拘束している者または降機させようとする者があるときは、できる限り着陸前に、理由を示してその旨をもよりの航空交通管制機関に連絡しなければならないことといたしております。その他所要規定整備することといたしております。  以上が、この法律案を提案する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  6. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  7. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 速記を起こして。  それではこれより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 森中守義

    森中守義君 参考人皆さんにはたいへん御多用中に呼び出して申しわけありません。  運輸大臣にお尋ねしますが、東京条約が制定をされ、採択をされ、現在に至る経過、同時に、日本政府が現在まで批准手続をとらなかったのはどういうことなのか、まずその辺からひとつお尋ねしていきたいと思います。
  9. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 国際条約が、これはまあ日本提案者の一人であったわけでありまして、要するに調印されて今日まで延び延びになったことは、一つには、国内航空法が、この条約に、整備されておらなかったということが一つであります。それにいたしましても、その間の期間がありましたので、当然国内法整備を急ぐべきであったわけであります。はなはだその点については、提案国である日本国としては各国に対して相すまぬと思っておりまするが、一つには、国内的なその他の諸条件の整備に追われて、これらの航空法整備まで手が及ばなかった。この条約は昨年の十二月に発効を見たものでありまして、今回の日航機事件契機としてハイジャッキング防止にもかなり役立つものである、かように考えて、一刻も早くやはりこの条約国になる必要がある。このハイジャッキングの問題が起こる起こらないにかかわらず、かようなことが予見されてあの条約ができたのでありますから、一日も早く署名して、そして批准を行なうべきであったことは、御指摘を待つまでもなく、その点においてまことに恐縮をしておる次第であります。
  10. 森中守義

    森中守義君 そこで、ことばじりをとるようで恐縮ですがね、今回の「よど号事件というショッキングな事件が発生をしなければ、いま大臣のお答えからいきますと、要するに批准の時期、こういうものはいつになったかわからぬということにも私はなろうかと思うわけです。そこで、いまこの条約に関する世界注目がかなり集まっておりますね。おそらく逐次締約国がそれぞれ批准をしていくんじゃないかと思うんですが、現在何カ国ぐらい批准を終了しておりますか。
  11. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 批准そのものが終わっておりますのは二十二カ国、それから日本のごとく署名をしてまだ批准をしていないという国が二十一カ国ございます。
  12. 森中守義

    森中守義君 そうすると、当該国というものは全部で何カ国になるのですか。
  13. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) これは国連下部機構ICAOというのがございますが、ICAO加盟をいたしております百十九カ国、この国にこの条約はいつでも加盟できるというふうに、いわゆる門戸は開放されておるわけです。その中で、ただいま申し上げた数字のものが現に批准をし、署名をしておる、かような状態でございます。
  14. 森中守義

    森中守義君 確かにそのとおりのようですが、そうだとしますと、一口に言って共産圏といわれている国も国連に入っておる、こういう関係の国でこの条約批准した国がありますか。
  15. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 批准をいたしております二十二カ国の中では、先生のおっしゃいますような国はないと思います。  ちなみに二十二カ国の名前をあげますと、ブラジル、カナダ、中華民国、デンマーク、エクアドル、ドイツ、ガボン、イスラエル、イタリア、マダガスカル、メキシコ、オランダ、ニジェール、ノルウェー、フィリピン、ポルトガル、サウジアラビア、スペイン、スウェーデン、米国、英国、上ヴォルタ、こういった国々でございまして、署名だけしておるという国でおもな国は、たとえばフランス、韓国というのは日本と同様な立場にあります。
  16. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、これは西欧圏というのか、かなり限定されたグループという感じが非常に濃厚なんですね。しかるに、今回のたとえば「よど」号のように、全く日本国交が未回復であるとか、あるいは西欧圏とは概念的に対立の立場にある国には、こういうものが締約国ないしは批准国として実現しないということになる、なかなか東京条約と一口に言いながら非常に実際の効果があがっていかない、こういうような気もするのです。これもあとの質問に譲りますが、その辺のことに対して、条約締約国として一体日本政府はどういうふうにお考えですか。
  17. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) いま森中さんのおっしゃるように、ただ、この東京条約というものが——いろいろの最近におけるハイジャックの問題、ハイジャックの中には政治的なものもあるわけですね。そういう面において、特殊な政治形態を持っている国ではかえって政治亡命を許す結果になりはしないかという心配も一部にはありました。これは条約上の問題ではありませんけれども、技術的な一つ考え方の問題として、さようなことも一つはおもんぱかって、そこでこの東京条約なるものが、いわゆる国連加盟国であっても一部にはこれに参加しないというのがあるのであろうと思います。しかしこの問題は、条約精神がだんだん関係各国によって理解されるなれば、そのような意味でのいわゆる誤解といいますか心配等は、お互いに了解を得る機会がだんだんとあるのじゃないか。したがって、現在は二十二カ国が批准を完了し、二十一カ国が未批准状態であります。それ以外に国際連合加盟の国で参加しない国もありますけれども、今後の情勢は、私はもっと明るい状態お互いがこういう問題についてはもっと事務的に条約的に扱おう、こういう傾向がだんだんと深まっていくのじゃないか。  ただ、もう一つの、第二の問題のいわゆる未承認国との関係は、この条約ではもちろん解決ができないわけであります。当然何らかの方法考えなければならぬ。その何らかの方法ということになれば、条約以外の方法でありますからして、そういう国との間に関係各国が親善といいますか、一つ赤十字精神といいますか、人道的なものの立場に返って、問題の第一歩を人命尊重という点だけでも解決できる道を考える。いろいろその他の政治的な問題ありましょうけれども、それらの問題はまず一応切り離して、人命尊重、人間の命をひとつ助ける、こういう立場での問題は、これから共通の問題としてお互いが理解を深めるなれば、そういうことの解決の道が私は発見できるのじゃないか。今回のハイジャック事件に私自身が遭遇をいたしまして、そういうような何らかのいわゆる解決策というものは持つべきである、持たなければならぬ、かように感じておる次第であります。
  18. 森中守義

    森中守義君 この東京条約というのが今度の「よど号事件でにわかに注目を浴びてきたのはこれはもう事実なんですが、しかしそれにしてからが、関係者の中にあるいはその論評される皆さんの中に、東京条約それ自体は、条約の一部条項としてハイジャックが一応明示されているのであって、東京条約それ自体ハイジャックそれ自体を中心にしたものではない、したがって、これから先の問題としてハイジャック等もいま少し厳重に規制できるようなそういう補完条約でもつくろうか、こういう実は動きがあるやに聞いておりますが、日本政府ではどういうお考えですか。それもICAOはどう思うのですか、現在の動向はどういうことになっておりましょうか。
  19. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 仰せのごとく、一昨年以来非常にハイジャックの実例が多くなってまいりまして、こういうものを踏まえまして、世界各国間でハイジャッキングに対応したハイジャッキングそのものについての何らかの国際条約締結しようという動きが高まっておるわけでございます。で、その動き一つといたしまして、先ほど申し上げましたICAO国際民間航空機構の中に法律委員会がございますが、そこで現在そういったハイジャッキングそのもの法律、ドラフトを起草をいたしまして、大体内容は終わったようでございまして、ことしの秋これを外交会議という全体会議にかけようという動きのところまでただいま進んでおります。この条約の検討、審議にあたりましては、日本もこれに参加をいたしておる次第でございます。
  20. 森中守義

    森中守義君 各参考人皆さんに、現在の東京条約、いま航空局長からお答えになりました補完条約という、仮称的なものでございましょうが、こういうことに対してどういうようなお考えをお持ちですか、それぞれひとつ御意見を。
  21. 斎藤進

    参考人斎藤進君) 東京条約については、実は私どもも早く締結していただきたいということを前々お願いしておりまして、この機会にこの条約批准されるということは非常にわれわれにとって望ましいことで、非常に期待しているわけでございます。と同時に、やはり国内法整備ということもあわせてお願いいたしたいということであります。
  22. 江島三郎

    参考人江島三郎君) いま日本航空斎藤参考人のおっしゃることに全然もう異議ありません。ただし、われわれのほうでこの東京条約批准ということに審議会社内でやりましたのがまだ日が浅いものでございまして、それから勉強したような次第でございまして、いまの斎藤参考人意見に全く同感でございます。
  23. 富田多喜雄

    参考人富田多喜雄君) 私ども乗員立場からいたしまして、航空機内における犯罪、こういうものをいかにして防止するかというようなことが東京条約というようなことに盛られておるということで非常な関心を持って見ておるわけなんでありますが、そういうものが一日も早く締結され、あるいは国内においても、そういう問題について諸先生方の力によって何らかの方法を見出していただければ非常に幸いだと思います。
  24. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 東京条約並びに先ほど手塚局長から御説明のありましたICAO目下審議中の新しいハイジャック防止法案というものも、それはそれなりに威力、効力があるかと私は思います。しかしながら、これ、一つには、わが国の意向だけではどうにもならない、つまり世界各国審議の結果を待たなければならないという点も一つはございます。  それから、もう一つの問題といたしましては、この間の「よど号事件と同じように今後起こると予想されます、わが国で起こると予想されますハイジャック事件の行き先でございますが、これは先ほど森中さんからおっしゃいましたように、わが国国交のない国、未承認国への飛行が非常に多いという可能性が非常に強いわけでございます。したがいまして、東京条約並びにICAO目下審議中のハイジャック防止法案という最終的なきめ手を持たない法案審議よりも、わが国がそのようなこれから乗っ取りに関係するであろうと予想されるような未承認国外交のない国と直接交渉を開きまして、そういう国との間に乗っ取られた飛行機の乗客、乗員並びに機体、これをスムーズに返還してもらうという条約を早急に結ぶべきではないかと私は思います。
  25. 森中守義

    森中守義君 そこで、少し法案内容に入ってみますが、条約の九条一項ですね、これが非常に私は条約としてのある種の生命線的なものだと思うのです。しかるに、改正案の中ではいわば機長権限というものが相当整備され明文化されておりますけれども犯人引き渡し権といいますか、こういうものが九条一項の関連において法案の中に出ていない。当然私は、短い期間の中で「よど号事件契機にして機長権限を強めねばならぬということで、にわかにこういう法案が出されたいきさつもありますけれども、やはり法改正の際にはこの九条一項あたりが注目されるべきじゃなかったか。しかし、この条項については留保されている、その辺の事情がどういう背景をお考えになって意図的に抜かされたのか、あるいはそういう要はないということなのか。つまり、機長犯人引き渡し権というそういう権限の付与ということも非常に重大な問題のように思うのですけれども、それが出されていないということはどういうことなんでしょうか。
  26. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 今度の改正につきましては、これはすでに御承知のとおり、東京条約批准裏づけの問題といたしまして機長権限の強化をはかる、こういうことでスタートを一応いたしておるわけです。今度の改正中身としまして、機長権限の実質的な中身といたしましては第七十三条の三にございますとおりで、いわゆる航空安全阻害行為あるいは機内財産危害防止行為あるいは秩序維持のための行為、こういうことに対しまして機長として必要な場合は必要な限度拘束しあるいは抑止し降機、こういうふうなことをきめておるわけです。ことばの上といたしましては、第十三条あるいは第九条あるいは第五条等にさらに引き渡しということばが出ております。これはいろいろ関係当局とも御相談を申し上げましたが、その結果といたしましては、降機という場合に事実上の行為として引き渡しということが可能であるから明文でわざわざ書かなくてもいいんではないかと、こういうような解釈を端的な結論として出されております。つまり、飛行機から降機させるという場合に受け取り国の官憲の立ち会いを求めまして、その者が被疑者であるということを明示すれば引き渡しということは事実上できる、こういうことから、この条約の第九条にいうところの引き渡しを行なったということになるのではないかと、こういうふうに解釈をしております。この解釈によりまして、機長が事実上の認定のもとに単なる降機をするあるいは降機の際にそういった手続をして引き渡しをするということでよろしいのではないかということでございます。  ただ、一方、その条約十三条には、今度はこの締結国のほうの、機長がそういった引き渡しをする場合に、それをわが国としては引き取らなければならぬ、引き渡しを受けなければならぬという条約上の義務ができるわけでございます。この条約上の義務に対しましては、やはりそれなりの手当てをしないといけないわけでございますので、この点についてやはり法律が必要であるということで、ただいま警察のほうからお出しになっておりますところの、航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約第十三条の規定実施に関する法律案というのが別途出されて、この条約裏づけとしての国際的義務を果たす、こういうふうなたてまえになっております。機長のほうにつきましては、前段申し上げたようなことで事実上カバーされるので、ここへ明文化しなくてもよろしい、かような考え方でございます。
  27. 森中守義

    森中守義君 一通りそういう見解も成り立とうかと思うんですが、確かに国家公安委員会から十三条の実施に関する法律案が出されています。これで確かに併用できましょうけれども、しかし、機長権限ということが独立の権能として付与している、またそのことが条約をより効率的に運用でき、事件の処理に明確さを持つということになれば、いま私はにわかに、その九条一項ですね、機長権限として引き渡し権ということを、単独の条項ということを期待するんですけれども、これはいずれ再整備という時期にやはりこの辺も一つのネックとして検討されていいのではないかと思うんです。しかし、いま局長の答弁ですと、十三条の実施法律によってすべてがまかない得るということであれば別なんですが、はたして、機長権限というものは非常に明確になりますか、十三条の実施法律によって。少し力が弱くなりゃしないかということも考えるんですが、その辺どうなんですか。
  28. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 実施法律のほうは私のほうの所管ではないわけでございますが、これは引き渡しを受けるという立場のことをきめてございますので、機長自体権限として、いま御説明申し上げたような、明文上は降機という中で含まれるという意味においての権限内容、実体は備わっておるという見方と、この十二条の実施法律趣旨はやや違うかと思うんです。つまり、機長側自体におきまして、やはりこういう内容のことを明文で書くか書かないかということをだいぶ議論になったようでございます。一つは、やはり航空法というたてまえの法律体系というものと、そういうことを明文化したほうがいいのか悪いのかというきわめて法律論的な議論があったようでございますが、結論といたしまして、先ほど申し上げましたように、繰り返すようでございますけれども、降機という中に事実上そういう引き渡しという内容が含まれるということで、機長としてどちらを採択するか、実際にこれを引き渡したいというときに、先ほどのような手続を踏めば引き渡しが可能であるから、降機の一態様ということに考えればこれで済ませるんではないか、かような趣旨で、今回、機長権限という中で引き渡しということばを使わなかったわけでございます。  ただ、この機長権限等につきましては、いわゆる船の船長の最後退船義務というような問題との関連もございまして、これは前々から、船のほうの関連等において航空法機会があったらそういうものは直すということになっております。今回の場合においては、とにかく、条約義務あるいは条約の裏になる国内法整備をするというたてまえからスタートいたしておりますので、将来における一つの問題ではあろうかと思いますけれども、当面、これで必要な内容はカバーされる、かように考えておる次第でございます。
  29. 森中守義

    森中守義君 大体この種の特異的な事件なんですけれども、おおむねこの十カ年くらいの間に世界全体でどのくらいのハイジャックがあってるんでしょうか。資料として出していただければけっこうですが、なければ大体総計何件という、そういうお示しでもけっこうでございますよ。
  30. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 始まってから全部という数字につきまして、非常に失礼でございますが、いま手元にある資料でいきますと、一九六一年に十件、六二年で二件、六三年で二件、六四年で二件、六五年三件、六六年四件、六七年六件、六八年三十四件、六九年七十二件、ことし七〇年三月末現在で十一件ということになっておりますので、全体で百二十件内外ではなかろうかと考えます。
  31. 森中守義

    森中守義君 いまの、私の資料よりはちょっと少ないんですがね、百四十六件ぐらいあるんじゃないですか。  そこで、件数はともかくとして、大体事案の傾向としてどういうケースをたどっているか。つまり、私は事件たびごとに知能指数といいましょうか、あるいは手口というのか、こういうのがだんだんだんだん変形をする、あるいは次元が高くなっていく、こういう傾向をとっているように思うのです。したがって、事案それ自体の推移、あるいは百四十六件もの過去十年間ぐらいの事件というものをどういうように把握されているのか、その辺の当局の考えをまず最初に聞いておきたい。
  32. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 従来のこういうハイジャッキングを分類的に分けてみますと、全体の七六%に該当するものがいわゆる亡命、キューバあるいはその他の中南米、こういったところへの亡命型というのが全体の七六%ございます。それから行き先がアラブ地域であるというような、いわゆる敵対行為という関係のものが八%ございます。それから精神異常といいますか、そういった異常者というのが一%。そのほか、いろんな内容ばらばらであまりよくわからないというのがその他一五%、こういうような大まかな分類分けになると考えます。  で、いまあげましたようなパーセンテージで亡命あるいは敵対行為、こういった式のものが非常に多くなっておる。で、乗っ取られておりますのは米国機あるいは中南米機と、こういうものが非常に多うございまして、行き先としてはキューバに着陸をしておる、こういうのが圧倒的に多いようでございます。
  33. 森中守義

    森中守義君 警察庁に聞きますが、これはやや専門の立場ではないかわかりませんが、しかし、いま航空局長からお述べになったような諸外国の事案というものをかなり警察庁でも敏感に受け取っておられるべき筋合いのものだと思う。したがって、先ほど航空局長にお尋ねしましたように、事案の変形というのか、あるいは推移というものをどういうように理解をされるのか。私は、だんだん知能的になっている、今回の「よど号事件というのは、次はもっと形を変えてくるんじゃないか。これはまあ条約全体とか国内法にも非常に密接な関係がありますから、警察側としてはどういうように見ていられるのか、その辺の御意見をちょっと聞いておきたいと思う。
  34. 三井脩

    説明員(三井脩君) 同じ犯人が何回も行なうということになってくると急速に知恵がついてくると思いますが、それぞれ対象が異なっておるという場合には、必ずしもそう急速に変わった手口に発展するかという点については疑問があろうというようにも考える次第でございます。ただ、最近のハイジャック事例を見ましても、たいへん幼稚な手口で失敗をしておるというのも最近あるようでありますし、また一方、キューバ等に行くものにつきましても慣例化するというか、無賃乗車のようなかっこうでちょっと立ち寄って、寄り道をするというような程度のものもあるようでありまして、わが国で起こりました事案、また将来起こるであろうと考えられる事案というものとは、たいへん様子が違うのではないかという点もあるように考える次第でございます。
  35. 森中守義

    森中守義君 関川さんと富田さんにちょっとお尋ねしますが、いま御両者に承ったのですが、皆さん立場から、現在まで発生をしたハイジャックの犯行の傾向、それと将来どういう形に転化していくのか、そういう予測というのか、あるいはその推理といってはたいへん恐縮ですが、判断をお持ちになっておりましょうか、富田さんと関川さん、それぞれひとつ、ちょっと御所見を……。
  36. 富田多喜雄

    参考人富田多喜雄君) 私どもは、犯罪の形態というのはあまり深くわかりませんけれども、いままで起きている形を見てきました場合に、今度の「よど」号のような集団的にあったというようなケースは、非常に少ないんじゃないかと思います。事情によっていろいろ変わるかとは思いますけれども、急に変わった形態というようなことはあまり望まれぬのではないかというふうに考えております。
  37. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 日本国内で起こり得るハイジャックについては、二つに分けて考えられると思います。  一つは国際情勢、いわゆる先ほどおっしゃいました亡命でございますが、国際情勢が変わらない限り、この亡命のハイジャックというものの内容は、今後ともさして変わらないんじゃないか。集団乗っ取りも起こりましょうし、個人の乗っ取りも起こりましょうし、その内容についてはあまり変わらないんじゃないかと思います。ただ、もう一つ、私考えますのは、精神異常者並びに性格異常者、こういった者が乗っ取るケース、これが今後起こる可能性があるんじゃないかということを思うんです。  それからもう一つ、これはハイジャックそのものではございませんけれどもハイジャックよりもっとおそろしい問題がございます。これは空中爆発という、つまり、何者かが爆発物を航空機にしかける、あるいは荷物にまぎらわして持ち込むといったようなケースで、航空機そのものを爆破してしまうといったようなケースが非常に多くなるんじゃないかと思います。
  38. 森中守義

    森中守義君 きのうの新聞あたり、かなりヨーロッパのできごとが出ておって、ちょっと異常な感じを受けたんですが、確かにそういうことも言えると思うんです。  そこで、先ほど航空局長から言われたキューバ——ハバナ定期便といいますか、そういうふうに気軽く呼ばれておるようですが、このキューバでのハイジャックというのがもともと起こった当時、アメリカではどういう措置をとったのか。たとえばインターセプトをやったとかあるいはエスコートをやったとか、あるいは現在のようにただアプローチだけやって、さあ行ってこい、じゃ行ってくるよという調子で、そもそも最初からこういう状態になったのか、あるいは一番最初はそうじゃなくて、かなり国家権力が介入したという、そういう傾向をたどって現在に至っているのか、その辺ひとつ、実際いろいろ研究されておいでのようですから、関川さんにちょっとお聞きしておきたい。
  39. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) これは最初に起こりました当時は、アメリカ当局、ことに治安当局並びに軍当局が非常に神経質になりまして、戦闘機の護衛をつけるとかレーダーで監視をするとか、その他あらゆる手を打って、非常に神経質な追跡並びにエスコートをやったようでございます。しかし、アメリカの関係者に聞いてみますと、御承知のような、昨年二月にアメリカとキューバとの間で乗っ取り機の返還条約というものが結ばれております。それ以後、ケース・バイ・ケースで一がいには申せないようでございますけれども、そういった監視体制並びに迎撃というような、いわゆる治安当局並びに軍によります間接的コントロールと申しますか、やっぱりそういったものがだんだん影をひそめまして、ごく事務的な扱いになってきたというふうに私は承知しております。
  40. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、日本航空の場合には、昨年の十二月の二日ですか、こういうことを予測されて機長に対する指示を出しておられますね。そのやさきにこの事件が起きた。しかし、打つべき手あるいは機長に対するハイジャックに遭遇した場合の対応策ということは一通りとっておられたわけですね。しかし、そのことを予測し、予想し立てた、つまりオペレーション・マニュアルというのですか、こういうものが実際、今回の「よど号事件で何ほどの効果があがったのか、あるいは実際と計画あるいは予測したものとは全く違ったものになったというお考えをお持ちなのか、その辺、日本航空としてはどうお考えになりますか。
  41. 斎藤進

    参考人斎藤進君) 御指摘のとおりに、私どものほうで、昨年の十二月一日にハイジャッキングのマニュアルをつくりまして、それで交付いたした、これが非常に、機長から聞きましても参考になったと。それで、これは頭に入れて、それで犯人の連中と応対したためによかったと言っております。それで、たまたま私のほうでもこの問題を重視いたしまして、最近アメリカに派遣いたしまして、四人、こちらから四人とアメリカから二人社員が参加いたしまして、それであらゆるところ、これはハイジャッキングをやられた航空会社を歴訪いたしまして、いろいろな参考意見を聞いたり、それから防止の機械を持ってきたりというようなことでやっておりましたけれども、その中で、このマニュアルを見せたところが、大体各航空会社ともこれでいいのではないかと、わがほうもこのマニュアルのような状態でやっているから、これでいいのではないかという御意見のようでした。ですから、まあ私のほうとしては、このマニュアルは若干は改正いたしますけれども、これでやっていきたいという考えを持っております。
  42. 森中守義

    森中守義君 全日空の場合も、やはりそれなりに対応策をおとりになっていたと思うのですが、一体どういう措置をおとりになっているわけですか。
  43. 江島三郎

    参考人江島三郎君) 私のほうの全日空といたしまして、このハイジャックについて、実はちょうど、「よど」号の事件の一カ月ぐらい前に、やはりわれわれのオペレーションのミーティングでこのことが問題になりまして、いかにすべきかというふうなことが論議された。これはまだ、「よど」号から一カ月ぐらい前かと思います、日時ははっきりいたしませんけれども。それで、一応私のほうのオペレーション・マニュアルには、実は残念ながら、このハイジャックについての処置とかなんとかといったようなことについては全然白紙でございました、その当時。それでわれわれとしても、やはりこのハイジャックというような問題は真剣に考えなければいけないということで、日本航空さんのオペレーション・マニュアルを拝借いたしまして、われわれはわれわれなりにこれをつくろうかというふうな段階のときに、実は「よど」号が起こりまして、さっそくわれわれのほうでも、操縦士に対する処置、それから地上職員に対する緊急態勢の要領というふうなものについて、暫定処置と申しますか、これを全操縦士に流すとともに、オペレーション・マニュアルに入れるべく現在航空局に申請中でございます。  以上でございます。
  44. 森中守義

    森中守義君 運輸大臣、今回の「よど」号がいろいろな教訓を残したことは事実ですね。むろん当局に限らず、あるいは日本航空、治安当局に限らず、とにかく、いまあとでこれはいろいろ問題を提起しますが、少なくともとった措置として完ぺきだったとはどうしても言いがたい、初めてのケースであったわけですからね。そこで、端的な言い方をしますと、こういう条約、あるいは航空法改正等によってすべてが律せられるということになるのか、これはもうなるはずがないですね。しかし、やはりよりベターに、よりベストに進んでいかざるを得ないのですが、ここで私が問いたいのは、水ぎわ作戦といわれる事前の抑止策、あるいはもう事件が発生したならば実害をどの程度に食いとめるかという実害軽減のやり方、この二つがいまいろんな識者の中に議論としてある。むろん、いずれも併用すべきだということにはなりましょうけれども、いま運輸大臣としてはどちらに重点を置くべきであるのか、つまり、しいて二者択一ということをとらなければならぬとすれば、どちらをおとりになりますか。
  45. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) その前に、この間の問題と従来国際的に行なわれておりまするハイジャッキングとの事情が違う、そういう場合皆さんどうお考えになるかを、やはりこれも研究をお互いにしたいと思うのです。たとえば、この間の問題は、羽田を出まして、富士山ろくというのはわが領土内ですね、領土内でハイジャッキング、そのとき赤軍派の行動が始まったわけですね。日本の領土内です。機長はそれに対してどういう判断か知らぬが、油が不足であると。犯人どもの言うように北朝鮮に行く油が不足であるから、板付におりる。そこで油を補給したいということで板付におりたわけですね。そうしますと、このハイジャッキングが行なわれたというのは、わが領土内だということですね。私の知らぬ例外があるかもしれませんが、いわゆる国際的なハイジャッキングというのは、空港を出発して、領土を離れた点においてハイジャッキングが行なわれている、たとえばキューバの場合にしても、その他の場合にしても、そういう場合と、いまのように領土内でハイジャッキングが行なわれ、領土内た着陸をしたという場合に、一切がっさいを機長にまかしてしまっていいかどうか。国内刑法がありますけれども、実際はなかなか機長にまかす以外に方法はないと思います。実際問題としてはないと思いますけれども、問題は領土内で犯罪が行なわれている。普通の国際ハイジャッキングというやつは、その飛行場を飛び立って、領空を離れた公海上空で初めて行なわれている。こういうような例が大部分、ほとんど全部がそうであろう。日本のこの間の例の場合には領土内で犯罪が行なわれて、領土内に着陸をした、こういう場合に、なおかつ機長に一切がっさいをまかせてしまって、いわゆる国内刑法の立場からはたしていいかどうかという問題があります。そういう問題から考えますというと、原則はまあ森中さんがおっしゃったように、航空会社機長の判断にまかせるという原則は私はそれでいいと思うのですが、ただ、国内刑法上の観点から言うなれば、それが国内の、領土内において行なわれておるという事実、そういう事実に対して一切がっさい、警察権はこれに対して全く無関心でいいかどうかということになれば、やはりいろいろ問題を残すのじゃないかと思います。したがって、ケース・バイ・ケースで必要な手段をとって無理をしないという必要があると思います。必要があると思いますけれども、やはりケース・バイ・ケースで、この間のような事件と、いわゆる公海上空で行なわれたようなハイジャッキングの場合と事情が違う。しかし、原則としては、先ほど来からお話のありましたような、まあ各国ともに一つの慣例はつくりつつあります。その方針が原則としてはいいわけでありますけれども、いま言ったような事情をどう勘案するかという問題が、国内刑法との問題の上からいえば、あるいは警察権、捜査権、こういう問題からいえば多少の問題点が残る、かように考えておるわけであります。
  46. 森中守義

    森中守義君 そういうことになりますと、かなり問題はまた形が変わってくると思うのですね。少なくとも昨年の、さっき申し上げた十二月一日ですね、日本航空のマニュアル、これは運輸省の了解とっているのですか、どうなんですか。
  47. 斎藤進

    参考人斎藤進君) マニュアルは了解をとっております。
  48. 森中守義

    森中守義君 そうなると、この中で、特に一の五で、前々から申し上げておりますように、「機上不法行為に遭遇した時は、乗員は小細工を弄することなく、出来るだけ不法者の希望にさからわない様にしなければならない。」これは運輸省一応了解を与えている。しかし、いまのように、これが国内法上の問題であって、すべてに、つまり航空会社の指導型というのか、先導型といいますか、大臣がお使いになった用語ですが、そういうことがいいのか。あるいはまた、政府型といいますかね、そういう形の処理がいいのかということになると、実際問題として、日本航空のこの指令というものは非常に私は大きな変化を伴わざるを得ない、実際の問題の処理を考えた場合ですよ。刑法その他は別にしても、問題はその法律ですべて片づくわけじゃありませんからね。その辺私は、いま大臣の御発言は非常に注目に値する、こう思うのです。私は在来の考えからすれば、一切この種の問題には政府は手を出すべからず、政治的にこの種問題の解決に介入してはならぬ、こういうことが百四十六件に及んでいる実例が示している一つの証拠だと思う。ついては関川さん、こういう要するに先導型、指導型といわれる解決方法ですね、いま運輸大臣が非常に貴重な御所見を述べられた。しかし、少なくとも過去の実績によるハイジャックの処理のしかたとしては、必ずしも合致していない。あえて言うならば日本政府型と私は言いたい。こういう処理の方法をどういうふうにごらんになりますか。同時に、航空関係者の各参考人の御意見もちょっとお聞きしておきたいのです。
  49. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) 御承知のように、航空法の第七十五条には、船と同じように航空機機長にも最後退機の義務というものを負わせております。これは考えようによりましては、人間としては一番過酷な条件を押しつけているわけですね。それだけ過酷な条件を押しつける裏づけとしましては、やはり機長に最大限の権能を持たせなければならないと思うわけです。ですから、たとえば、先ほどから政府並びに治安当局のハイジャックに対する介入の度合い、こういうことが盛んに論議されておりますけれども、これは介入——つまり治安当局としてこれに関心を持たざるを得ない、また、持つべきであるとは思いますが、その関心の持ち方が、統率とか指示を与えるとかといったような関心の持ち方ではなくて、あくまで、航空機機長から要請があった場合に、これに援助を与えるという介入のしかたでなければならないと思います。以上です。
  50. 斎藤進

    参考人斎藤進君) ハイジャッキング——先般もちょっとお話があったように、非常に種々雑多なハイジャッキングの起き方が機内で行なわれていると思うのです。ことに密室の中で起きておりまして、その状態を知っている者は機長だけが状態を知っているということで、外部と内部との関係、これあたりが非常にわれわれ問題になるのではないかと思うのです。ことに、今度の板付の場合にも、われわれ機内の状況を知ろうとしても、なかなかやはり知れなかったということで、これは機長に全責任を負わせるということに重点を置かれるのか、そうでなくてアドバイス、いわゆる機外から、たとえば、飛行機の燃料の消費量がどのくらいであるから、だから、平壌まで行けないと、だから、板付で給油すべきだというようなことは、お互いにやはり機長と地上と連絡をとりながらやらないと、なかなかむずかしいこともあると思うのです。これは一例ですけれども、そういうことがありまして、これはケース・バイ・ケースで非常にむずかしい問題と思いますので、これらの問題、会社が全責任を負ってということは、機長に負わせるということは会社が負うということになるのですけれども、その辺の問題がわれわれまだ研究の段階ではないかというような気がいたします。
  51. 江島三郎

    参考人江島三郎君) 実はこの「よど」号の事件の直後に、われわれキャリア四社ですね、ATASCOというふうなミーティングを持っていまして、この中にはオペレーション、それから整備と、この二つに分かれていましたけれども、新たにこのハイジャックの問題について、皆さんのいわゆるお知恵を拝借ということで、実はいままでに二回会合を持ちました。それで、大体われわれが考えたことは、先ほどの斎藤さんのおことばどおりに言うならば、密室で起こったことで、外から機長に対して何だかんだのいわゆるアドバイスをすると、これはやはりまずいのじゃないかと、いわゆる機長に最大の権限を与えてしかるべきじゃないかと、ただし、機長のほうから何らかの、いわゆる地上に対してのアドバイスの要請と申しますか、たとえば燃料の消費量とか、それから機体関係の良否というふうなことで、機長のほうからこれに対して要請があったならば、外部のほうから機長にアドバイスをするというならば、いわゆるキャリアとしたらお客の安全第一を考えようじゃないかという考えに大体話し合いがついたかと思いますが、ただし、それを文面にするというふうなところまでは、まだ現在のところいっておりません。以上でございます。
  52. 富田多喜雄

    参考人富田多喜雄君) 私ども機長としまして、機長の与えられた権限内における動作といいますか、そういう場合には、原則的には機長の判断、そういう情勢の判断のもとに、機長がこれらに対して当たるということは、原則的にはそのとおりだと思います。また、そうでなければならないと思います。しかし、お客さんを預かって、お客さんの人命というようなものを考えます場合に、でき得べくんば、外部の援助を得られるならば、そのほうがいいわけでありまして、その援助の与え方にまた問題はあると思いますけれども、ただいま江島常務からお話がありましたように、機長が何らかの要請をしたというような場合については大いに援助をしていただきたい、原則的には機長の判断というものにゆだねられざるを得ないと思います。
  53. 森中守義

    森中守義君 警察庁にちょっと聞きますが、いまお聞きのように、要するに大臣のほうでは必ずしも航空会社の主導権、そういうものはあまり望んでおいでにならぬようです。その余の業界あるいは関係皆さん方は、そういうもんじゃだめだと、すべて機長権限を持たせる、外部からのいろいろな入れ知恵あるいは干渉はよろしくない、こういう意見が一致しておる。そこで、今回の「よど」号の警察としての措置考えてみた場合、かなり積極的に介入されているのですね。これは私が一々例をあげるまでもなく、主として四項目を中央指令として福岡県警に出されたようですが、今回の事件が発生をして解決に至るこういう経過を見て、しかもいまお話しになったような御意見等中心にされてどういうようにお考えになりますか。自後あってはならないけれども、発生をした場合に、治安当局という立場からこの種事件に介入する限界はどこまでか、あるいはすべきか、すべきでないか、このことをちょっと御意見を問うておきたいと思う。
  54. 三井脩

    説明員(三井脩君) 警察といたしましては治安と民間に奉仕するということが第一でございまして、この点について鋭意努力いたしておるわけでございますが、ただいま御質問の、万一発生した場合の措置という点につきましては、今回の「よど号事件のときにもありましたが、基本方針としては一つございます。あるいは二つと言っていいかと思いますけれども、それは乗客及び乗務員の人命の安全救出という点が第一であるということでございます。  なお、二つと申しますのは、福岡のケースでは、その場合にとりあえず発進を阻止をして、航空機の離陸を阻止をいたしまして時間をかせぎ、この間に、ただいま申しました第一原則を実現するための条件なりチャンスなりを発見しようということにつとめたわけでございます。  したがいまして、これが将来万一発生した場合の事案というものに対処するためにどういうような考え方なり方針なりを持って臨むべきかという点につきましては、今回の事件を参考としながら、皆さん方の御意見をお聞きして研究をしておるという段階でございますが、警察といたしましては、ハイジャック事件が発生をし、しかもそれが空中にある場合は別といたしまして、警察の手の届く地上に着陸をしておる、こういうような事態につきまして何ら手を加えないことがベストであるというふうには考えておりません。万全の、できるだけの努力をする、その努力の方針は人命の安全救出ということを第一とし、そのための手段が具体的に警察において何が一番適当であるかというものを平素から研究し、起こった場合に当該具体的条件のもとでそれを実現していくということが方針であろうかというように考えておる次第でございます。
  55. 森中守義

    森中守義君 まあこのようにかり意見がそれぞれ異なった状態で「よど」号が処理された。まあ最近いろいろな週刊誌ですとか権威あるものによってまあいろいろ論評されたり、あるいは事実が整理されておるようですがね。で、その経過をまあ全部これはお尋ねするわけにいきませんけれども、「よど」号という具体的な事実をとらえて、福岡の現場あるいは中央段階における警察はいま三井さん言われるような見解、あるいは運輸省は大臣が言われるような見解、あるいは日本航空日本航空の見解、あるいは防衛庁は防衛庁であったでしょう、あるいはあとで問題提起する第五空軍は第五空軍で何かの意見を持っていたかわからない。そういうように非常に、にわかに発生した事件だけに、事前に協議も何もできなかったことは、これはよくわかります。かなりものの考え方の基調が異なったところで、さあせつな的に発生した事件をどう処理するかということになると非常に困難だとは思うのですよ。それで、日本航空としては、「よど号事件発生と同時に——少なくともキューバ等々百件に余る先例がある、その処理された事実も十分御承知だったと思うのですね。したがって、そのことを踏まえて十二月一日の指令を出されたわけですからね。で、そういう所信をあくまでも貫こうとしたのか、あるいは警察は、いま運輸大臣の言われるように、いやそれはこの航空会社の先導型ではどうもだめだというようなことで、意見がどこかで押えられたのか。まあそういうことをさかのぼって聞くのもどうかと思いますが、こういう法案審議の際ですし、将来に資したいと思いますから、まあいま聞けばいろいろ意見が違っておりますので、「よど号事件の決着に至るまでの関係者意見の調整がどこで行なわれたか、どういう点に最大の相違点があったのか、まあその点を、漏らし得る範囲でけっこうですから、おのおの責任者の立場からちょっと聞かしておいてもらいたいと思います。
  56. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) まあ森中さんのほうから見て全部意見が違うという話ですが、そう私は違っておると思いません。私が申し上げましたのは、いわゆる板付飛行場にあの「よど」号が着いた時点においては、やはりこれは運輸省なり警察庁なりあるいは飛行場側とが話し合い、機長と話し合ってこれを処理すべきである。ただ、無理をする必要はない。要するに人命救助、乗客及び乗務員の人命救助が目的ですから、したがって、無理をしちゃいかぬけれども、少なくとも日本の領土の地上においてこれが行なわれた場合には、それに対する関係機関の話し合いでこれを進めていくべきである、かように申し上げたので、そう皆さん意見が食い違っているとは思いません。というのは、一つは密室において行なわれておる犯罪ですから、機長の判断といいましても、なかなか、私はあの場合になぜ機長が板付におりたかという問題もやはり考えなければなりませんし、したがって、機長の判断が表に出される場合と、実はこういう考えであるが表には出さないという、犯人が隣におるわけでありますから、いろいろな事情があると思います。もちろん、この内部の事情は外部では十分了知し得ないのでありますから、したがって、押しつける必要はありませんけれども、その関係機関と機長との間でやはりできるだけの十分なる話し合いを続けて、そうして最終的な結論は、もちろん、これは人命の救助というのは前提ですから、それに阻害のあるような行動はやるべきでありませんが、そういう意味でのいわゆる機長の判断はもちろんわれわれは尊重しておる。そういう意味ではそう考えがみんな違っておるとは考えません。  当時の問題ですが、当時は御承知のように運輸省からも人が参り、警察当局も参り、現地の当局並びに航空会社の長野君が運航部長として現地におりまして、そうして関係機関が話し合いの上で話を進めていった。ただ、いまおっしゃるようにああいうとっさな事件でありますし、日本としては未経験の事件でありますから、機長はどう考えておるか、どう判断しておるかということについてのこちらの取り方についてもいろいろのことがあったと思います。しかしながら、少なくとも関係機関、航空会社を入れて、いずれもが乗客並びに乗務員の生命を安全にしたいというのが前提であったという方針においては全く一致しておったわけでありますから、犯人を捕えるためにはどんな犠牲をしのいでもかまわないという考え方は、関係者はだれも持っておらなかったということは御了解願いたいと思います。
  57. 森中守義

    森中守義君 さっきの大臣の答弁、ちょっと私気にもなるんですが、たいして違っていないとおっしゃるから、そのことが速記録にも出ましたし、前にまたさかのぼって、こう違うぞということまでは言いませんけれども、確かに今回の処理のしかたからいっても、やっぱり違っていますよ。少なくとも、日本航空は指令に忠実であろうとしたろうし、だんだんだんだん変形してきていることは事実なんですね。しかし、これはお互いに貴重な経験をしたわけですから、これから前向きにいかなくちゃなりませんので、あえてそのことに遡及をして議論を深めたいとは思いません。  そこで、さっき私が申し上げた、要するに事前抑制の方式あるいは実害軽減の方式、いずれも併用されなければならぬという事態の処理はよく私もわかるのですが、一体これから先のやり方として実害軽減の方向にいくのか、あるいは事前抑制の方向にいくのか、どの道を選択されようとするのか。これで、たとえば羽田におけるチェックのしかたであるとか、ずいぶん変わってくると思うんですが、どちらをおとりになろうとするのか、それをひとつ大臣と治安当局それから日本航空、御三者からちょっとそれぞれ御意見を聞いておきたいと思います。
  58. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 第一の方針としては、やはり事前に、このようなことのないように、警察当局においても十分なる注意を払ってもらう。同時に、航空会社でも事前のいわゆる十分な防止をはかってもらいたい。ということは、人間がいわゆる事件を起こすだけじゃなく、万が一に時限爆弾のごときものを乗っけられるということがありますというと、今度のような政治的な亡命をその主目的としたような犯罪であれば、まあ一応現地に連れていけばそれで済むという問題もありますけれども、いわゆる飛行機爆破事件等の問題がありますからして、したがって、この種の問題はいわゆる政治亡命じゃありませんので、一つには刑事犯罪一つにはまあまあ一種の気違い的な犯罪、こういうものもあります。そういう面からいいますというと、事前に十分なる措置を講ずるということがまず第一である。しかし、それでもなおかつ起きた場合は、これは実害をできるだけ少なくすると、こういうことになりますが、その場合には、一種のハイジャックでありますから、ハイジャッキングの場合についてはその実害をできるだけ少なくする。二者選択いずれかをとるというわけにもまいりません。第一には、しかしいま申したように、人間がハイジャックする場合もあるし、そうじゃなくて、一方的に意識的な事故として時限爆弾等の問題もありますから、したがって、事前にやはり十分に警察でもやってもらわなければならぬし、航空会社自身にもこれはやってもらわなければならぬ。単なる経済追求のために、ただお客を乗っければいいんだと、こういう考え方でやられたのでは人間の生命を安全保障できないですから、たとえば、いま直前でも飛行機に乗せるというようなやり方がはたしていいかどうか、これらもある程度のやはり時間をおいて十分なる事前検査のできる体制を私はやってもらいたいと、具体的にはもちろん航空会社等経済上の問題もありますからして、むちゃなことを言ったってしかたがありませんけれども、しかし、いまのようにただ飛行機はバス同様なんだと、来た人間は乗っけなければならぬのだと、こういうものの考え方だけでは相済まされぬと思います。やはりバスであればこれは地上を走っている問題であります。飛行機は空を飛んでいるのでありますからして、なるほど使う用途はバスと同じ用途でありますけれども、人命の問題からいうと、まさにこれは相当の開きがある。それにおいては、単に航空会社の経済的な立場だけを尊重するわけにわれわれいかない。やはり人命の安全ということについては——あるいは利用者もある程度の不便を感ずるかもしらぬ。しかしながら、人命の安全ということがこれからの私は政治の課題でもあり、航空行政の課題でもある、かように考えますので、さような方針でまいりたいと、かように考えております。
  59. 三井脩

    説明員(三井脩君) 私たちといたしましては、先ほどもちょっと触れたところでございますが、再びこの種事案が起こらないように、未然防止のための万全を期するということでございます。そのためには、ハイジャックを起こすようなこういう危険性のある対象について、十分その企図を事前に察知をいたしまして対処したい。それからもう一つは、空港の現場におきまして、情報がない場合におきましてもそういうものを発見していく、こういう二つになろうかと思います。  それからなお、今回の事件にかんがみまして、万一そういうような事態が起こったときに、もっとスムーズに対処する方法はないかという研究をし、たとえば、もう少し警察官も航空機に関する機械についての知識とか、あるいは航空の管制のやり方とかいったような点について、運輸省、航空会社関係のところともよく連絡を深めて知識を得ていきたい、こういうふうにするつもりでおるわけでございます。
  60. 斎藤進

    参考人斎藤進君) 私のほうもハイジャッカーが起きない前の措置をいたしたいと考えております。  それで非常に私参考になりましたのは、アメリカの政府がこれに非常な方針を与えておりまして、それで、このハイジャックを行なう連中はどういう連中であるかというようなことが分類されているわけなんです。たとえば男が主体である。女はまあ大体やらないんだ、男のグループの中に女の含まれていることはあるけれども、大体が主体は男であるというようなこと。それから上限——四十五以上の人はしない。それからそのほかに、切符は片道切符きり持っていない。これはハイジャックやるのに往復切符を持つはずありません。それから、切符を購入する場合にエージェントで購入する。航空会社で購入しない。エージェントで購入する。これあたりなんかも非常に参考になると思います。それから、チェックインまぎわにやってくるんですから、まあチェックインするときに、もう飛行機にあわてて乗っていくというのが怪しいということです。それからもう一つは、人間というのは、ハイジャックやる場所、たとえば北鮮なら北鮮に行くときには、この場合にあったかどうか私も聞いておりませんけれども、この行き先の北鮮の事情を聞きたがる、そういうようなことがあるようです。こういうことを、まあその話題を注意する。それからもう一つは、荷物をチェックインしない。ということは、預けないということですね。こういうあたりをやはりあげまして、それで、これを発売する前に、こういうものを十分に、乗せるときにこの状態をよく注意して乗せろという指示を与えているわけです。これなんか非常に参考になりますので、われわれのほうとしては、これを参考にしていきたい。  それで、こういう問題と、もう一つ、先ほどちょっと触れました、いわゆる凶器を持ってるかどうかということを探知する、非常に巧妙なあれができておりますので、これをやってそこを通すというようなことで、スクリーンを三つくらいにいたしまして、そこを通した人を乗せるということにしたらどうかという考えです。これはイースタン航空が、やはり気違いが乗って非常に迷惑をこうむって副操縦士が死んでしまったということがありますのですけれども、これにかんがみまして、この方法でいま現在やって、これ、総数十二万八千人を対象にしてやって、それで行動が怪しいと判明されたのが六百人、それから尋問されたのが三百二十九名、それから身体検査をさせられて搭乗を拒否されたのが九十一人、検挙されたのが六名というような状態で、非常に効果があがっているわけなんです。ですからわれわれのほうも、これで大体九五%以上は阻止ができるんではないかという意見がありますので、こういう問題を取り上げてやっていきたいと思います。
  61. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 先ほどの、あるいは答弁の中で不明確な点というのが——私、赤軍派の学生は政治亡命者であるようなもし言い方をしたとすれば 赤軍派の学生、今回の平壌に行った者は、政府政治亡命とは考えておりませんと、これははっきり重ねて申し上げておきます。
  62. 森中守義

    森中守義君 そこで、そのハイジャックの先進国といわれるアメリカの場合ですね、いわゆるキューバ定期便、こういうものが頻発をしているアメリカにおいて、いま提起している事前抑制の対策あるいは実害軽減の対策、この現状を、よく日本航空のほうでもおわかりだと思う。いま、どちらに力を入れておりましょうか。
  63. 斎藤進

    参考人斎藤進君) これは事前抑制のほうに力を入れております。ですから、ハイジャッキングが起こらないように、われわれのほうは力を入れていくわけです。よろしゅうございますか。
  64. 森中守義

    森中守義君 その内容がどういうものか、ちょっとわかりませんがね。要するに、その事前抑制ということが極度に強められていけば、確かに自由制限という、こういう一種の社会問題を起こしますよね。それで、一説によれば、一体こういうハイジャッキングというような事件が、極度に自由制限までもしなければならぬような犯罪と見るべきであるかどうか、むしろ事件が発色をしても、油さえあれば行ってよろしいぞと、こういう簡単な言い方でキューバに飛んでいっている例がある。こういうことで、しきりに週刊誌あたりは言っておる。そういうニュアンスから受け取れるものは、事前にチェックするよりも、むしろ実害を軽減したほうがいい。つまり日本航空の、犯人の意思に従い、小細工を弄してさからうなという、こういうことを、いわば一種の教典とすべきではないかというふうに思うのですね。  で、むろんそう簡単に見のがせるような犯行だとは思いません。非常に重大な罪悪だと思うんですけれども、ただ、事件をどう処理するかという角度からとらえていくならば、極度に自由制限を加えるような事前チェックをすることがいいのか、あるいは機上で発生したものは実害を極力最小限にとどめるような、しかも、いまイースタン航空の例を出されましたが、これは副操縦士と何かピストルの撃ち合いをやって、しかも、副操縦士が柔道五段か六段であったというんですね。しかも、それは精神異常者である、特異なケースだと私は思うんですよ。そういうことから考えてまいりますと、アメリカでの事前抑制の態様というもの、その中身をどういうようにお知りになっておるのか、いま確かに事前抑制にアメリカも力を入れているんだと、こういう斎藤さんのお答えではございますが、もうちょっと抑制の状態というものをおわかりの範囲でけっこうですから、お漏らしいただきたい。
  65. 斎藤進

    参考人斎藤進君) ハイジャッキングが起きましてから、実は私のほうでも手荷物の検査その他相当厳重にやっております。それで、むしろお客さんのほうから進んで——ことに、昨日の新聞に出ましたように、爆弾事件その他がございましたし、お客さま自体が非常にこの問題に対する関心が深まってきたということで、進んで、まあ進んでというか、そういうことがないようにしていただきたい。ですからわれわれが、これは怪しいと思う人でなければやりませんし、それでもって、まことにおそれいりますけれどもと申し上げれば、もうすなおにこれに応じて、いま現在のところきております。ですからわれわれとしては、この種の問題が、さっき先生も御指摘のあったように、いろんな面で進んでくるのではないかという気がしますので、できるだけやはりお客さんのきげんをそこなわないようにして、それでこの問題をやっていきたい。それで限度は、航空会社がやる限度と、警察がおやりになることの線がありますんで、それでそれが済んでからは、もう警察にお渡しするということで、まあ怪しいというか、怪しい人に対しては、そういうふうなことをやって、われわれ直接にそういうものにタッチしない、できるだけ怪しい人については、警察官の立ち会いのもとにやって、われわれはお客さんに対しては、会社として迷惑をかけないように心がけるということを方針にしております。
  66. 森中守義

    森中守義君 三井さんどうなんです。羽田でやっておられるのは、恒久的に定着させるおつもりですか。つまり、いま日本航空が言われるように、事件の直後ですから、まだ「よど」号に対する非常ななまなましい記憶、あの凄惨さをみな頭に描き過ぎておりますから、かなりのことをしても乗客は進んで協力は得られる。が、そういうことが一体いつまで続けられていくのか、何年も何年もこういう状態が、まあ去る者は日々にうとしというたとえではございませんけれども事件からずっと時間が遠ざかっていけば、何のためにやるのかという意見等もそろそろ出てこないとも限らない。で、そこにどういう状態で定着させていくのか、事前チェックの問題を。それと、片や、まあ警察の一つはやり方だと思うんですね。非常にものものしい、ある程度威圧的にやれば、それによる反発というものも必ず生まれてくると思うんですよ。その辺が実際の事前抑制のむずかしさだと思う。したがって、まあ将来定着してこれをおやりになるつもりなのか、あるいはやり方等も常時、日本航空なりあるいは運輸省あたりも協議をされてしかるべきだと思うんですが、まあ現在、私も何回か見ましたけれども、あの程度の規模のもので、将来も定着させていくおつもりなのかどうなのか。それと、さっき一度申し上げたように、自由制限ということが一体どの程度まで許されるかという非常にむずかしい問題が出てくると思うんですが、その辺の御見解はどうでございますか。
  67. 三井脩

    説明員(三井脩君) 大体この種の事案は、犯罪一般がそうでありますが、忘れたころまた起こるという心配が災害と同じようにあるわけでございます。したがいまして、私たちといたしましては、現在やっておるような警戒ということは将来とも継続してやっていきたい。ただし、やり方はそのときの事情等に応じていろいろくふうを加えていきたい。ただいま端的な外形にあらわれている事柄を申しますと、たとえば羽田空港におきましては、九十名の警察官が今日配置についてやっております。その中には私服の者もおりますし、制服の者もおります。制服の中には空港署員もおりますし、応援をしておる機動隊員もおる、こういうことでございます。したがいまして、できるだけものものしい形を避け、しかしながら実質的に警戒の実をあげていきたい、このためには二つ方法がございます。一つは、ただいま日航側からもお話がございましたように、機械的な方法で、警察官が目につくような形をとらなくてもわかっていく、実をあげられるという方法でございます。この点につきましては、航空会社並びに運輸省当局の体制なりやり方、ただいま研究くふうをしておられるわけでございますが、その辺がだんだんと実際に機械も設備されるとか、あるいはチェックの荷物の預かり方等もだんだん軌道に乗ってくるとかいうことになりますと、警察官の姿はもっと減らしていく、それからまた、この場合に制服でやっておりますのを今度は私服に切りかえていくというのが二番目の方法であろかと思います。何よりも大事なのは、空港の現場においてやる警戒と、もう一つは、事前にそういう企図を発見する、企図をしそうな人間についてこれを事前に把握していく、この辺がもっと進んでまいりますと、警戒という点についてはもっと継続してやりますけれども、やり方は、皆さん方に御迷惑をかけないような、迷惑のかかり方が少ないような方法がだんだんと定着していくように考えておりますし、そういう方向で努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  68. 森中守義

    森中守義君 わかりました。  富田さんちょっとお尋ねしますがね、民間国際機長会がありますが、たしか一九六九年三月、アムスで総会が開かれた。この総会の席上で、ハイジャック問題が頻発をする今日の国際航空界の状況からして、何かの答えを与えねばならぬというわけで、大体三項目にわたる結論を出して実行に移った。その一つは、ハイジャックを出した国に抗議をする。ハイジャックを出した当事国には飛行を禁止する。それから同時に、その国に対して国際的懲罰の措置を呼びかける。これはもうおそらく以下をさしていると私は想像しているのですがね。それから、二十四時間のストライキをもって、こういう再発をさせないような処置をするということを加盟各国機長会あてに提唱したということが出ておるのですが、したがって、日本からも機長会の代表がおそらく参加されたのじゃないかと、こう思っておるのですが、この措置はお聞きになっておりますか。それと、いま私が申し上げた三項目の決定がそのとおりであるかどうか、これはものの本によったわけですからよくわかりませんが、そのとおりであるかどうかと、それと同時に、日本機長会としては、そういう決定に賛同されたかどうか、そのことをおわかりの範囲でけっこうですからお答え願っておきたいと思います。
  69. 斎藤進

    参考人斎藤進君) この問題について、私からちょっと御回答を申し上げたいと思います。  一九六八年にアムステルダムで採択された、航空機不法奪取防止を世論に訴えるためのストライキを含め必要な手段を講ずることという決議に基づいて、加盟航空会社に対して、九月一日に次のような提案があったわけです。と申し上げますのは、「IFALPAは、旅客の釈放及びHIJACKERを罰することを求めて、国連と接触している。しかしもし不成功に終った場合は、アムステルダム決議A−二〇」というのは、いまさされたことと思います。「により、十五日前の予告を以て、世界的規模で二十四時間ストライキ、又はそれ以上のストライキを提案する」という提案がなされたわけなんですけれども、これについて確かに、日本のALPA OF JAPANというのがありまして、そこに提案がきました。これは、うちのほうのあれは機長会がこれをやっておりまして、管理職がここに含まれております。このIFALPAの中にそういうことがありまして、うちのほうからは九月十七日に、ストライキに参加できない旨回答しております。と申しますのは、各国の航空会社を見ますと、各国ばらばらで、参加しないという航空会社もありますし、また、他の航空会社が参加をするならば参加してもいいという航空会社もありましたし、そういうことで足並みがそろわなかったので、この採択はしておりますけれども、ストライキにまで発展はしておりません。そういうことで、この問題については何といいますか、採択はしたけれども、あとはまあ立ち消えのような形に現在のところはなっております。
  70. 森中守義

    森中守義君 それといま一つ、金浦に「よど」が着いた時点に、たしか富田さんのお名前だったのか、小谷野さんのお名前だったのかよくわかりませんが、機長会として運輸大臣に何か要望書が出されましたね。あの要望書はどういうように処理されましたか。
  71. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 要望書の内容は御承知かとも思いますが、機長権限について、機長に可能な限り必要な情報を与えるように努力をして、機長の判断、意思に協力をしてもらいたいということが一つ。それから、早急に完全な飛行前点検を行なうと同時に、安全運航に必要なすべての処置をとってもらいたい。要するに、事前の荷物のチェックその他を十分にやってもらいたい。それから第三点は、安全運航の見地から乗員の疲労度を勘案し、出発に際しては、乗員交代を行なうべきである。この三項は、当時の金浦の状態であったと思う。こういうことで、一項、二項については先ほど来、いろいろ御質疑、御検討がございますようなチェック、飛行前の点検という問題として、私どもも部内には委員会もつくって、関係省庁ともいろいろお打ち合わせをし、会社とも連絡をして、逐次新しいものを、やるべきことを事前にやっておるという現状でございます。  第一項の機長に対する問題は、今回御審議法案をはじめといたしまして、機長皆さんとの意見の交流もやっておりますが、基本的に、先ほどこれも御議論のあったような趣旨で、できるだけ機長の判断、特に飛行中においては機長の判断にまかせる、これが地上にある場合等において、できるだけこれをアドバイスし、また、人命救助を第一とした措置をとっていくというような方針、こういったようなことがただいまきめられ、実行に移されておりますので、この機長の当時の要望といいますか、これは内容的に実現に移されておるというふうに考えております。
  72. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) それに関連して、いま森中さんのお話、金浦飛行場における処置をどうしたかということにつきまして、それに私が当たっておりましたから、お答え申し上げます。  第一の点につきましては、情報を与えろということにつきましては、可能な限りあそこで終始知り得た関係の情報あるいは気象関係とかその他を詳しく機長に伝えました。  それから点検等、これも十分に機長の言うとおり、これを犯人に了解を求めまして、そこで機体の点検からその他を三時間余にわたって十分にいたした。  三番目の乗員の疲労度、これは私たちも非常に心配したんです。また、日航当局からやはりその方面の、機長経験の常務が来ておりまして、ぜひ取りかえてほしいということで、出発する前の日でありますが、強く要請がありまして、私のほうから犯人に対して、ぜひこれは安全に諸君を北朝鮮に送るためにも操縦士をかえたほうがよろしいと、疲れておるであろうからぜひとも取りかえるようにというようなことを言ったけれども犯人はどうしても承知しない、断固として承知しないのであります。そこで、機長とも管制塔を通じまして話をして、どうなんだと、まあ今夜ゆっくり休ましてもらえばあるいは明朝自分が操縦することが可能であろうというような話でありますので、それじゃ、まああしたは十時以後に乗客を全部おろすという話ができたのだから、今夜は君たち操縦士はゆっくり休むように、犯人にもその旨を伝えよう、そういうことでその晩はゆっくり静養をとらせることができたわけであります。翌朝になってからもう一度話して、だいじょうぶか、どうしても行かれないなら、これはよく犯人にも話をしてくれ、操縦のできない者を持っていったところでしかたがないのだから。そういうことでいろいろ話をさせましたが、石田機長も、まあ何とかやれそうだ、気象等についても十分な知識を得たから。犯人も承知しないので乗員の交代はけっこうです。私たちがやりましょう。こういう点については、この三カ条の申し出については最善を尽くしました結果、無事に帰りましてから、機長会から私あてに、非常に慎重な処置をとってもらって無事機長以下帰ることができましたのは、感謝にたえませんという謝礼電報までちょうだいしております。
  73. 森中守義

    森中守義君 日本航空と全日空の場合、何といっても機長が事実上の運航の責任を持っているわけですが、それで機長会というのをお持ちなんですね。社内において機長会という固まった意見というものが事実上の運航にどの程度反映されているのか。つまり機長会という地位、あるいは立場というものが社内でどの程度重視されているかということを——聞き方は非常に抽象的ですけれども、具体的にこうこうこういう立場に置いているとか、あるいは運航の責任はこうこうこうなっているというようなことをお聞かせいただけたら幸いだと思いますが、どういうような状況になっていますか。
  74. 斎藤進

    参考人斎藤進君) 機長会——実は私のほうには機長会と機長懇談会と二つございまして、機長会のほうは、これは組合員で構成しております。懇談会のほうは管理職と組合員とで構成して懇談会をやっております。それで、運航に関してというよりも、これは一つの集まりでして、それでわれわれ労使会議あたりに出る、いわゆる会社のいろんな方針、その他これあたりを機長会で——これは機長会といいましても飛んでいる連中が非常に多いものですから、まあ月に一回ずつやることになっておりますけれども、ときには二月に一度きりやれないというようなことがありまして、そのときにはわれわれ出席いたしまして、それで、いま申し上げたような会社の方針その他話をして、まあ機長意見を聞いたり、われわれのほうからも機長に対する意見を言ったりして、それで会をやっているわけなんですけれども、まあせいぜい集まっても二十三人ぐらい。あとはもうくたびれて静養している連中、それからほかを飛んでいる連中ということで、意思の徹底はなかなかむずかしいんです。これが乗員の姿でございまして、しかし、やはり会社の実情をよく知ってもらうという意味、このハイジャッキングの問題についても、われわれもさっそくやはり機長会とコンタクトしまして、いろんな話し合いをした事実がございます。というわけで、われわれと機長会というのは密接な連絡をとりながらやっている。懇談会のほうは、これは懇談という名のとおり、自由発言をしながら、社長あたりの、その月の経営方針とかなんとかを話し合って、それで開催しているようなことで、機長会のほうがむしろ具体的にはいろいろな話をしております。そういうような関係にあります。
  75. 江島三郎

    参考人江島三郎君) 全日空の場合には機長会という特別のものはありません。ただし、私のほうは現在ボーイング727それから737、それからYS、フレンドシップというようなところで、これは大体機種別に分けまして、いま第一から第七首席操縦士というようなところで大体まとめておりますけれども、これはもちろん管理職でございますけれども、これらのいわゆるグループが大体一月に一回、二月に一回程度集まりまして、内容は大体懇親会程度のことなんですけれども、やはりお互いがパイロット同士でございますから、どうしてもやはりオペレーションを主体にした話が出まして、ふぐあいの点とか改良すべき点、こういうようなのが論議されまして、これがその首席を通じてわれわれのほうに上がってくる。もちろんその上がってきたことに対しては、われわれのほうで改善すべきところは全部改善する、こういうふうなかっこうをとっておりまして、機長会という特別なものは全日空ではありません。
  76. 森中守義

    森中守義君 なぜそういうお尋ねをしたかといいますと、さっきちょっと斎藤さんの言われた、労使的な意味合いの私の問題の取り上げ方じゃないのです。少なくとも、「よど」号という一つのショッキングなできごとを基礎にして、ここまでいろいろ問題が発展をしてきた。また、将来の再発を予防しなければならぬ。そこで、機長の果たすべき役割り、あるいは持つべき任務、責任というのは非常に重過ぎる。そこで、いま少し私は機長会というものは——さっきアムステルダムで国際的な会合が開かれた、そこまで機長が、飛行機あるいは航空界における地位と責任というものが非常に重要になってきている。そういう意味で、少なくとも、今回の法改正にあたっても、あるいはその条約の草案をつくる際等々においても、いま少し日本のこれらパイロットの皆さん、そこに機長会ということで代表されておるとするならば、もっと慎重なこういう皆さんとの対話というか、あるいは意見の反映といったものが必要ではないか、こういうことを実は主張しているのですよ。しかし、残念ながら、全日空におかれても日本航空におかれても、そこまで機長会で問題が進んでいないようですが、これはお考えをもう少し整理していただく必要があるのじゃないかというふうに思うのですね。同時に、これから政府でいろいろこういう問題を扱われる際にも、機長会というものをもっと重視しなければいかぬ。だれにもわかりませんよ。しかも、今回の法改正等で機長権限を付与した。これはあくまでも法律上の問題ですからね。しかし、それがどこまで実行に移されていくのか。あるいは、法律じゃこういうふうにワクをはめたけれども、実際は定められた法律を逸脱するような限度までも裁量しなければならぬというようなことが、実際問題としてあると思うのですね。だから、私はそういう意味では、機長会は非常に重大な責務を実は持つべきであろうし、そういう評価の上に立って、機長会との接触を深めていくべきではないか。むろんこれから先、国際的な会合等があれば、これは進んで日本は私は出すべきだと思うのですね。しかも、そこで採択をされたいろいろな決定については、これまた進んで賛同する、事によりましょうけれどもね。こいうことを私は言いたかったわけです。そこで、国際線の会長お見えになっておりますが、こういう意見についてどうお考えになりますか。
  77. 富田多喜雄

    参考人富田多喜雄君) 私ども機長というもののいままでにおきます飛行というものに対する権限、これは事実、法にも与えられておりまして、ただ、それはあくまで指揮権といいますか、クルーの指揮、あるいは会社によってきめられておりますマニュアル等によりますれば、飛行の安全、それから判断というようなものに対して最終的な責任は機長にあるのだという、こういうことは確かにそのとおりでありまして、また、それを実施しておるわけであります。いま先生がおっしゃられる、国際的な面においていかに伸びていくかということは今後の私どもに課せられた大きな任務だと思います。その点におきまして、先ほど御指摘のありましたIFALPAというものにつきましても、私ども操縦士はこれに加盟いたしまして、大いにそれらの知識を吸収し、そして今後ともに進んでいくという道は先生の御指摘のとおりだと思います。
  78. 斎藤進

    参考人斎藤進君) いまちょっと足りないところがあったので補足いたしますけれども、実は御承知のとおり、飛行機が大型化してまいりまして、現在一番小さな飛行機で、私のほうで持っておりますのでは727、これが百二、三十人乗る飛行機、これがいま一番小さくて、国内線でDC8−61ですが、これですと二百三十四人乗るというような状態です。これが大型化してきて、それの機長となりますと、相当責任が市大になってまいりますし、あたかも船長が全責任を負うと同じように、やはり機長の責任というものを確立する。これは会社内での問題でございますけれども、確立する必要がありとわれわれ考えておりまして、現在この問題について真剣に取り組んでおります。ですから、今後早急に機長という立場を含めて、われわれのほうとしては今後、責任と権限はどうあるべきかということを明確にしたいと考えております。
  79. 森中守義

    森中守義君 ちょっとこれは飛躍し過ぎる気がしないでもありませんがね、特に航空局長にひとつお聞き願っておきたいのは、いまのように後発産業だといいながら、航空産業が異常なテンポで進んで、まいっておる。そこで、いま絶えずこの委員会で問題になりますのは、一体、乗員の養成をどうするのか、かなり深刻な問題としてこの委員会で受け取ってきておる。そうなりますと、片やこういう試験がある、乗員はだんだん不足してくる、養成も困難をする、こういうことになりますと、簡単な言い方をすると、まさにパイロットは金の卵だ、こういう言い方をしてもいいのじゃないかと思うのですね。ただ、社会通念的な意味合いからいけば、飛行機の乗務員だ、パイロットだといえば、職業という観点からとらえると、非常に高いものにランクづけされていることは事実なんです。これは私ども異論がない。ところが、そういうように通念的な位置づけはされていても、はたして、その社内においてあるいは政策的にあるいは国家的に名実ともにそうであるかどうかということについては、かなり私は手落ちがあるように思う。それで私は、この際のことですから、運輸省が中心になりまして、機長会の存在をどう認識するか、つまり団体としての位置づけ、そういうようなこともあわせて社会的な地位というものについて再検討の時期にきているのじゃないか。そうしないと、条約批准をした、法律改正をして機長権限を与えたといいながら、いたずらに責任だけ重くなる、社会的な地位というものが保障されていないのでは、全くこれは私は片手落ちだというような気がしてならないのですね。だから、いまにわかにそのことの答えをここで出していただこうとは思いませんが、少なくともこういう機会に、機長会あるいは懇談会という名称が二つあるというお話のようですが、とにかく飛行機の運航に対して、あるいは社会に対する責任と義務という角度から、この問題もう一回ひとつじっくりと関係者と協議をされてもいいのじゃないか、こういうように思うのですが、いかがですか。
  80. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) おっしゃいますように、操縦士の地位というものが非常に高まっておることを考えますと、特にジャンボを運航するパイロットというようことになりますと、ああいった多数の人間の人命を預かり、機内の秩序維持をはかりながら安全に運航をするということになりますと、これは非常に高い地位を要する。単に航空運航技術上の問題だけではございません。機内の、そういった全般の多数の人間の秩序を維持していくということは、単なる技量だけではないと思うのです。そういうことになってまいりますと、この機長の地位というのはますます非常にレベルの高いものを考えなければならない。  で、ちょっとお触れになりました養成の規模等につきましては、おっしゃるように、非常に足りないというようなことで、来年の予算等におきましても、航大もさらに従来の五割増しの増員を考えるし、各自社養成についても同様の措置をお考え願うということも入れまして、養成の規模も拡大すると考えますけれども、一方、規模だけではいけませんので、それぞれの質がやはり問題だと思うのです。いまのように、非常に社会的に重要な地位を占めるようになってきますと、質が問題になってくるわけで、そういう意味から、従来、航空大学校で高校卒から入れておりましたようなものを、むしろ大学の二年、あるいは大学のある課程を経た者を入れたほうがいいのではないかというような御議論どもあり、そういったものを含めまして、私どもではパイロットの養成という問題を通じて、いろいろただいま検討いたしておるということがございます。  それから、操縦士の皆さんとやはり直接いろいろ問題について話し合うというようなことは、いまのような養成の問題もございます以外にいろいろあるわけでございますので、実は私も操縦士協会の皆さん——ここに出席しておりますが、江島さんが会長でございますけれども江島さんを会長にします操縦士協会というのがございまして、この協会の皆さんとは私たち直接の懇談を持つ機会を得まして、いろいろ身近なお話を伺ったりいたしております。非常に行政上、航空従事者の立場における貴重な御意見がございます。今後ともそういう意味で、こういった協会には接触を密にして、これを直接、行政の面に反映させていきたい、かように考えるわけでございます。
  81. 森中守義

    森中守義君 これはこういう機会に特に強調したい一つの点ですから、関川さんにちょっとお尋ねしておきますけれども、いまのことを含めまして、何かエコノミストに小谷野等さんが対談をされているわけですね。あの中で非常に貴重なことをおっしゃっておる。どういうことかといいますと、おそらく運輸大臣に出された要望書の意味合いとしては、一切の政治関係あるいは一切の国際関係を抜きにして、とにかく物理的に最も安全な場所におりたい、それが機長の悲願であり、念願である、そのことがつまりオペレーションズ・マニュアルの精神なんだと、そうして運輸大臣に要望書を出したということを触れられているのですね。そこで、さっき問題になりました事前抑制かあるいは実害軽減かという問題にまた逆戻りするわけですが、それで、機長の地位あるいは立場というものと、それと事前抑制かあるいは実害軽減かという、これは機長立場に微妙に反映してくるわけですが、その辺のことについてちょっとまとまった御意見がありましたら聞かしておいていただきたい。
  82. 関川栄一郎

    参考人関川栄一郎君) お答え申し上げます。  これは二つに分けて考える必要があるかと思います。一つハイジャック、いわゆる乗っ取り事件でございますね。これについてまず考えてみたいと思います。ハイジャックにつきましては、たとえばこの間の「よど」号の場合、あれは事前の防止措置というのは全くなくて、事後処置のみとられたわけでありますが、これはしかし「よど」号の場合、必ずしも適切な処置がとられたとは私は思いませんけれども、しかしながら、ああやって無事にとにかくみんな帰ってきたわけです。ですから、ハイジャックの場合には、事後処置を優先に考え、もちろん事前処理も必要でございますけれども、それよりも事後処理優先で考えたほうが私はいいんじゃないかと思うのです。ただし、もう一つ航空機に対する犯罪——先ほど申し述べました空中爆破、これに対しましては、事後処置では手ぬるいのでございます。事件が起こってしまってからではしかたがないのでありまして、これについては事前の処置をむしろ現在よりももっと強化すべきではないかと私は思います。  この間、所用がございまして、たまたま西ドイツを見学してまいったんでございますが、西ドイツの主要空港十カ所に参ってみますと、例外なく巡査それから兵隊、それが小銃をぶら下げて、国防色の制服を着て、飛行機のそばをうろついております。一般の旅客にしてみますと、非常な不安感を持ちますし、不愉快でもございます。しかしながら、旅客に対する周知徹底、つまりPRというものは非常に進んでおりまして、御承知のように、最近ミュンヘンの空港でも爆破事件が現に起こりました。そういったショックの影響もあるかと思いますが、お客のほうも別に文句を言わないで、非常に厳重なチェックを受けておりました。それから、もう一つ方法といたしましては、従来、飛行機に荷物を積み込む場合には、出発時間をおくらせまいとして、かなり余裕をとって積み込むのでありますが、西ドイツの場合には、出発ぎりぎりまで飛行機から二十メーターか三十メーターおいたところに荷物を地上にずらっと並べておくわけです。というのは、時限爆弾を考慮しているという話なんですが、それほど非常に厳重なチェック制度をとっております。わが国の場合におきましても、今後予想されます空中爆破という犯罪に対しましては、私は自由の制限その他問題もございますけれども、ある程度のチェックはやむを得ない、そして現在の簡単なチェック制度をなお一そう検討しまして、むしろこれを強化する方向に持っていくべきではないかと思います。以上です。
  83. 森中守義

    森中守義君 そこで、ちょっともう少し条約関係に返ってみますが、先ほど申し上げたように、百四十数件ですか、事案の中で、ほとんどハイジャックの場合、不成功に終わった例はないのです。おおむね成功している。そこでおそらくわが国を、将来あってはならないけれども、一応規定をした場合、今度の「よど」と同じように、まずやはり成功するんじゃないかという、こういう見方をせざるを得ない。で、それは国内の板付なり千歳でおろされた場合、犯人が逮捕された場合、これは罪状に問われることは間違いないんで、あくまでも行きたいところに無理やり強行するであろう。そこで、問題は東京条約ないしはこれから予定される補完条約の中に、たとえそれが政治亡命的なものであったにせよ、とにかく国外に出た場合に、必ずどこの国においてもハイジャックについてはこれを規制をする、その国において罰則を加えるあるいはその犯人の有している国籍国に返すとか、そういったようなことが条約上実際問題として考えられましょうか。  この前、羽田に行ったときに、石田機長は、私だったかどなただったかよく記憶しませんが、今度の教訓から何を感じましたか、こういう問いに対して、それは逃亡した犯人はどこの国に行っても送り返されるかあるいはその国の刑罰によって処刑をされるか、いずれかの道が実は選ばれてもいいんじゃないか、これがハイジャック防止する一つ方法だという、こういう私見の表明が非常に私は印象的に残っておりますよ。ただし、現在の国際法からいくならば、およそ政治亡命という場合には引き渡しを行なわない、こういうことがありますから、なかなかその辺の条約の扱いもむずかしいと思うのですが、もう少し国際的に次元を高めて、ハイジャック防止策を考えていくならば、そういうことも条約の中に採用されてもいいように思う。これは日本一国でできることじゃございませんけれどもICAO加盟をしておるわが国としては、あるいは現在の東京条約締結国一つとして、将来、こういう措置を提案をするお考えはないのか、あるいはまとまるような見通しがあるのかどうか、非常に迂遠過ぎる質問のようですが、ちょっとその辺の見解を聞いておきたいと思う。
  84. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) ハイジャックに対します対策といたしまして、先ほど来お話がございますとおりで、これはやはり国際的な問題として各国が相協力して同じ立場でもって対処するというようなことが行なわれることが非常に重要な対策一つであることは間違いないと思います。そういう意味で、今回の東京条約あるいはハイジャックそのものを問題といたしますこれを補完する条約案というようなものがいま検討されておる。現在やられておりますハイジャックそのものの条約案というものは、これは非常にわれわれとしても歓迎すべきものだと考えておるわけでございます。日本におきましては、今回いち早く、この条約裏づけといいますか、この条約案を国内法に持ってきた場合と同じような内容が、今回やはりこの条約批准の一環として別途にまた出されておることは御承知のとおりでございまして、そういうふうなことを世界関係各国がすべて寄ってやられるということは、非常に望ましいのであります。私どもはぜひ関係御当局を通じまして、そういったような方向で関係各国が協力推進がはかられるようなふうに持っていきたいと、お願いをしたいと、こういうふうな立場考えております。
  85. 森中守義

    森中守義君 そうなりますと、なかなかこれはいままでの実例からいってもハイジャックの成功率は高いというような観測が生まれてくるわけですが、しかし、いまにわかに条約上それが期待のできるような現状ではない。じゃどうするか。これはあってはならないが、もし再発したというようなことを想定した場合に、何かこの際打つ手を打たないと、第二の「よど」号、第三の「よど」号ということがやはり予想されるんですね。このことは私ども非常に危険に思う。むろん、関川さんの言われるように、あるいはきのうのイベリア航空か何かの爆発等まことにりつ然とするような事件の予測がどんどん出てきておる状況ですが、そういうことを考えますと、やはり日本でかりに第二、第三の「よど号事件が発生する——大臣政治亡命じゃないと、こう言われるけれども、かなりそういう色彩を持っておる。これは否定できない。そうなれば、先ほど来言われているように、国交を持っている、たとえば韓国であるとかあるいは中華民国であるとかあるいはタイだとか、こういうつまり行くなら行ってもいい、好ましい国とならばよろしいのだということにはならないと思うのですね。政府側にとれば好ましくない国、すなわち、今回のピョンヤンであるとか、あるいは北京であるとかあるいはハノイであるとか、こういうところに行けというような事例があるんじゃないかというように一応想像した場合、非常に大きな問題になる。もう私は一切の国際的なもの、一切の政治的なものを介入させてはならぬというのを信条にしたいと思っておりますけれども、実際問題として今度、国際的なもの、政治的なものが介入してしまう。そうなってくると、与えられる答えは何か。条約で満足にいかぬ。そうなると、アメリカとキューバでとられているようなもの、少なくとも、ビジネス・オンリーといわれたり、あるいはビジネスライクといわれるような、そういうようなことがバックグラウンドに設定をされておらないと、なかなか第二、第三の「よど」号があった場合、問題の処理が簡単にできない。しかも、東京条約批准するもしないもない、国際機関それ自体加盟していない国も多いようですからね。そうなると、この際とり得べき方法は何なのか。まあこれから未承認国あるいは国交未回復の国と何らかの形で接触を深めながら、事、ハイジャック等に関する限り、一切のものを抜きにして、何かの政府間協定あるいは企業協定というようなものが生まれてこないと、私は第二、第三の「よど」号がかりに起きた場合、同じことを繰り返すのじゃないか、こういうように思うのですが、大臣どうですか。
  86. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 問題は、これは犯罪政治亡命とを別に考える必要があると思うのですがね。せんだっての「よど号事件は、まず前提として犯罪が行なわれたという事実ですね、飛行機を奪取する、あるいは国内には刑事犯的なことを起こしておる、こういうものと、それから、いわゆるそういうことなしに、よその国でもって政治亡命をしたいということは少し事情が違うと思うのです。ですから、ハイジャッキングといういわゆる刑事上の犯罪が行なわれた場合、これは運輸省の所管でありませんので、法務省の人が答えるのが当然だと思うのですが、しかしながら常識として、犯罪が行なわれた場合にはやはりこれは犯罪としてその当事者の国は考える。しかし、実際は考えてもなかなか実行できない場合があります。未承認国に行ってしまった場合は、その犯人を引き取るといったところでなかなか引き取れない場合もありましょうし、ありますから、承認国と未承認国の間では種々の問題がありますが、問題はさような法律上もしくは条約上の規定がない場合です。日本とアメリカの間は条約がありますからして問題がありませんけれども、それがない場合に、それが彼ら自身は政治的な亡命を目的としておっても、その手段がやはり犯罪を構成しているという場合は、やはり形式上は、その当事国家としては当然犯人引き渡しの要求権を保有しておる、これはまあ法律上の問題であります。そういうことを抜きにしまして、未承認国に行った場合どうするかというお話でありましょうが、そういう場合はやっぱり何らかの方法を通じて、あるいはある国と日本承認国である、その承認国が未承認国であるAという国に対して交渉するルートはあるわけです。あるいはせんだって行なったように、そのような方法としてソ連を通じて行なった、あるいはまた人道上の問題として世界赤十字を通じてこれを行なう、こういういろいろな方法によって乗客及び乗務員の生命安全をはかる。かような努力をすることによって——あるいは将来は、今日でもそうですが、航空会社自身がやる場合もあると思います。こういうことでもって少なくとも人命尊重犯罪のほうは別問題として、人命尊重の道は、これは全力を尽くしてやらなければならぬ。今回の場合はかような方針に従って、北鮮は未承認国でありましたが最善の措置をとり、また北鮮当局もこれを理解されて人道的措置をとってくれた。今後ともそういうことに対してそのような方法しかない、またその方法を尽くせばわれわれの目的は達成することが可能であろう、かように考えております。
  87. 森中守義

    森中守義君 答弁の不足じゃございませんが、しかし、私はそういうことを言っているのじゃないのですよ。つまり「よど」号があれだけなぜ時間がかかったか、これが問題なんですね。だから、このように平生からすんなりと、こういう事件が起きたならば、つまり機長代表の小谷野さんが言われておるように、政治的なもの、国際的なもの、一切のものを抜きにして、最も安全に、物理的に行けるところにおりれるようにしてほしい。おそらく諸外国の数多いハイジャックの例はそういうものを教えていると思うのですね。もうそれ以外に方法ないです、極端な言い方をしますとね。ところが、今回の場合には、初めてのケースであったとはいいながら、福岡で警察庁はどういう指示をしたか、あるいは日本航空、運輸省が何をやったか、防衛庁が何をしたかということになると、犯人が行こうという北のほうには何としてもやっちゃならぬ、飛行機のタイヤの空気を抜けとかあるいはオイルコックを締めてしまえというようなことで立たせない。金浦に着いたところが、韓国の閣議で北には飛ばせない、こういうものすごいいきさつがあったわけですよ。じゃ、その間に一体、外務省、何をやったか、もたもたもたもたやってちっとも話は進もうとしない。それも、進もうとしないのではなくて、進ましたくない、率直な言い方をすると。ここに私はそういう気持ちが相当強く作用していたと思うのですね。できるものもやろうとしないというところに問題がある。だから、百時間近い間もああいうように一億の人間がテレビにかじりついて、さあどうなるのだというかたずをのむ思いをしたと、こう言っているわけですよ。そこで、先例から考えてみても、日本航空の指令がいっておるように、さからわないで犯人の言うとおりせざるを得ぬじゃないかということが、私はこの種事件の現状におけるすべての集約された教訓だと、こういうように思っておるわけです。だから、国交の未回復、未承認国に対してすみやかに手を打つべきじゃないか。さっき申し上げるように、それは日本政府が好ましいと思う国ばかり行きませんよ。政治亡命という、そういう性格のものを含む場合には、おそらく日本政府が最も忌みきらっている、いやだと思う国へ行こうと言うかもわからない、今度はそのいい例なんですね。だから、国際的なものや政治的なものを抜きにして、政府間協定なりあるいは民間協定を結んだらどうか、それが今回の東京条約にもまさる、あるいはまた航空法改正にもまさる手段、方法一つではないかと、こう言っているわけですがね。非常に困難ではあるでしょう、政府間協定を結ぶということは、いまの佐藤内閣の姿勢からしますと。しかしそれでも人命——大臣がよく好んで使われる人道的な問題ということであれば、それを越えるべきじゃないですか。そういう意味で北朝鮮とも中国とも、未承認あるいは未回復の国ともすみやかに政府間協定を起こすなり、それが困難だとするならば民間協定をやったらどうなのか、こういうことを私は申し上げておるわけなのですがね。
  88. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 私は、反論を申し上げるわけじゃありませんけれども、赤軍の犯人たちが北朝鮮の平壌に行けということを、機長の命令のごとくに御理解なさるのはどうかと思うのです。機長がそのとき言ったように、自分は平壌に行ったことはないのだ、朝鮮の地図もない、どんな飛行場かわからぬ、こういう場合に、何でもかんでもいいからおまえは行けと、こう言っていわゆる凶器を持っておどかして、それじゃ平壌に行きましょうと言ったのですが、ほんとうにこれは機長が間違いなく平壌に行けるという判断のもとにそう言ったとは私は考えられません。いま御承知のように、皆さんもその後の情勢でごらんのように、やはり犯人に対しても、私は機長がそういう判断をし得る能力があっていいと思う。少なくとも、犯人も人間であり、機長ももちろん人間で、人命であります。まして百余名の乗客を持っておるんです。そういう人たち、安全なところに行くというその機長の判断も、私は考えなきゃならぬ。単に犯人がそう言ったからここへ行け、これだけでもって私はいいと考えません。そういう考え方があるところに、私は間違いがあるんじゃないのか。したがって、あの機内において、たとえば機長がそこは自分は知らないんだ、まだ、はたして十分なるこれだけの近代的な飛行機をおろせる飛行場であるかどうかはわからない、地図一枚板付飛行場でもらって——事実日本の飛行会社が持っていないんですよ。そういうような状態でありますから、したがって、機長の判断はわれわれ尊重しなけりゃならぬ。であるけれども、その犯人が言うとおりになることが人命の安全であるかどうか、これはやはりまじめに考えなくちゃいけないと思うんです。したがって、機長が自分としては困難な場合は、あるいは犯人に向かって、そこはどうしても行けない、上海飛行場ならば、行ったことはないけれども、こうこうこういう航空会社が飛んでいるから、これならば着く自信はあるんだ、こういう判断もあり得ると思うんです。ですから、犯人が言うとおりにどこまでも行けというのが、私は人命尊重じゃないと思うんです。でありますからして、その点については私は、機長の正確なる自由なる判断にまかせなきゃならぬ。脅迫された判断が決して機長の判断ではない。こう言いたいのであります。  こういう意味におきまして、しかしながら、それがりっぱな飛行場であり、そしてそこには安全に到着できる場合においては、未承認国といえどもこれはやむを得ないから、そこに機長は飛ぶでありましょう。そういう場合において今後どうするかという問題があります。それには、いまお話がありましたが、政府間協定は実際上の問題として今日ではできません。しかし、人道上の問題として、赤十字社なり、何らかの形を通じて何らかの協定がないであろうか。あるいはまた、航空会社同士で、航空会社が、たとえそれが政治的な関係があろうがなかろうが、航空会社というものが世界の航空の実情から見て、航空会社自身があるいはそういうような話し合いをつけることがないだろうか、こういうことは考えられます。しかしながら、いま言ったように、犯人が言うところに持っていけ、こういうことが私は人命の尊重だとは考えられません。この場合には、自由な機長の判断によって、犯人がそう言ってもそれはだめだ、実際上危険であると言って機長がそういう説得をする場合もあるだろうし、あるいは、外部からして、こういうところはどうしても自分のところには資料がない——事実板付においては、全く資料がなかった。わずか、小学校の、京城と平壌がくっついたような地図しかないのですから、乗っておる諸君も、操縦士も、あるいは機関士もまだ行ったことがない、こういう場合において、ただ犯人が言うとおりに言うところに動くことがいわゆる生命を安全にし得るかどうかということは問題があろうと思います。もちろん今回において、相当の期間、一億の人が総神経衰弱の状態になったということは、それはまことに相すまない次第でありますけれども、しかし、金浦飛行場に着きましてからこの解決の時間は二十三時間と五十分であります。私にとってみれば、決して長時間とは考えません。ただその間において、いわゆる報道等が十分に材料が提供されなかった。そのために、御承知のような、機内には神経衰弱、狂人が出たであろうとか、あるいは病人がさぞ出たであろう。こういうことのために必要以上の心配をかけたことは、われわれ現地におる者としては申しわけないと思いますけれども、私どもは現地にあって最善の措置を講じて、そうしてできるだけの機内の状況等も知りつつ、そこで最善の措置を講じたのであります。でありますからして、今後の問題につきましては、私はマスコミの諸君にも言っているんですが、できるだけ冷静に報道してもらいたい、そして、できるだけ事実に従って報道してほしい。もちろん虚偽の報道をしたとは思いません。あの飛行場周辺における空気というものを伝える、こういうことのために起きたことではありますけれども、非常にこの問題がああいうようなショッキングな問題の場合に、かなりお互いが冷静でないというと、かえって間違いの問題が起きる。もしそのような状況を犯人が知っておったならば、私はああいう結果にはならなかったのじゃなかろうか。この点においては、幸いにも機内が冷静を取り戻すことができて、そうして、各自が冷静な判断のもとにやられましたから、ああいうまあまあいろんな途中においてはジグザグのことがありましても、結果としてあそこまでいったということは、私はいわゆるこの関係者の御協力に心から感謝しておる次第であります。
  89. 森中守義

    森中守義君 何かこうお話にとげがあり過ぎて、誤解がありゃしませんか。私は何も機長の気持ちを尊重するなとか、今回の「よど号事件はそうであったとは言っちゃいませんよ。ある意味で私のほうが、あなたよりも機長のことを考えておったかもわからぬ。そんな無礼な話はありませんよ。ただ私はいままであなたや政府が言ったことを信用していないのだ。第一、「よど号事件の真相というものをただそうとしても、ただそうとさせないじゃないですか。これは、私一人に限ったことじゃない。大ぜいの人が、一体「よど」号はなぜ金浦におりたのか、どういうことで福岡を立ったかという疑問がおよそ何ぴとの頭からも消えちゃいませんよ。そういうように言われると困るのだ。だから、私は過去のことはもう触れないのだ。ただし、たとえば朝日ジャーナルにしても、権威あるそれぞれのもので一通りの答えは出してくれている。だから、衆議院で大出君が言ったように、あとは世論がこの問題については断定を下すであろう。私は、そういう気持ちですよ、現在は。そりゃ運輸大臣ね、どうしてどうなったのかと聞いても、ここで確認をするかしないかという問題だけなんだ。答えは出ていますよ。その答えは、政府の言う答えじゃない。ですから、いかにも私が機長のことを無理解、何でもいいから犯人の言うとおりに聞けというような言い方をされると、はなはだ私は迷惑する。迷惑ですよ。  そこで、何も犯人といえども無知文盲な犯人とは思えません。たとえそれが二十の年代の若い青年であったにしても、まあ航空に対する完全なる知識はなかったにしても、飛行場のない山中におりろとか、海のどまん中におりろと、こう言っちゃいないじゃないですか。よろしいですか。そこで石田機長が、米軍の管理下からちょっと出たくらいのところで、事件が発生をしても、平壌に行け、こう言われて、福岡におりた。これまでは、これはいいんです。そこまでここで私は洗いざらいに言いませんよ。けれども、おそらく石田機長が福岡を立ったいきさつもよくわからない。しかし、表向きに言っていることは、平壌に行けと言ったから行ったのだ、こう言っているわけでしょう。それならば、確かに形の上では教材用の地図一枚しかくれなかった、渡さなかったと、こう言っているのですが、私どもの常識からいくならば、それはあり得ないことだと思う。板付の飛行場は米軍の管理下にありますよ。日本の防空識別圏、韓国の識別圏、およそ板付の管制塔よりももっと詳しいものを持っているはずだ。それが、よしんば一歩譲ったとしても、防衛施設庁の支局が福岡にありますよ。ここにどういうものがあるか。山ほどいろんな材料を持っている。大体、航空法等々によって飛行機を発進させる場合に、どういうものを資料として飛行計画をつくるに必要なものを渡さねばならぬのかをきめてありますよ。しかし、離陸の許可をしていないから渡さなかったと、こういう理屈は成り立つでしょう。離陸の許可を得ぬで飛んだわけだから、だから、渡さなかった。しかしこれは、この場では通用しない。まさに非常の場合ですからね。だから機長は行きたいのだ。へたすると爆発すると、こう言っているから。だから、コックを締めようとするのを振り切って、けが人まで出して飛んでいったのですよ、あれは。それはリスクの限度というものがもうはるかに目の前にきていた。あぶなくてしようがないといったわけですからね。そういう際に、あの五時間という時間に、地図一枚しか、教材用の地図一枚しか渡せなかったということは、私はあり得ない。これは、まさに意図的であり、作為的と言う以外にないじゃないですか。あえて大臣がそう言われるならば、私はそこまで言いますが、ないということはないですよ。それで、行けるものを行かせなかった。その辺になぞがあるわけだから、何もここは査問をするとか、真相をきわめるとかの会合をいまやってるわけじゃありませんから、これ以上言いませんが、あなたの答弁からいいますと、やっぱりそこまでいかざるを得ない。これ以上言いませんよ、言いませんが、いかにも私の質問が無理解で、犯人が行けと言うたらどこでも行けというような言い方をされると、逆な立場だと、私はこう言わざるを得ない。むしろ、機長、副操縦士、機関士、スチュワーデス、乗り組み員を苦しめたのは一体だれであったかというようなことも、今日的な問題として、真相はなぞに包まれているとはいいながら、大体大方の人はわかっているんです。もうそれはあえて言わないだけですよ。だから私は、何でもかんでも犯人の言うとおりせにゃならぬぞと、こう言うんじゃない。犯人といえども、そういう山のまん中におりれとか、海中に突っ込めとは言わぬだろうと、こう言ってるわけですよ。だから、そういう意味でこそ、条約上も、にわかに国交未回復の国や未承認の国と話がつかないならば、政府間ベースなり民間ベースでやったらどうですか、まあこういうことを言ってるわけですがね。だから、いま大臣のお答えで、いや、それは政府間はだめだとおっしゃるならば、日本航空にでもやらしてみたらどうですか。この辺のサイドで何かしないと、やはり機長が、こういう問題が起きてあすこならば行けるといっても、他の力によって作用される場合にはなかなかむずかしい。そこで、ほんとうに機長が自由に飛べるように、こういう事件を実害を皆無にするためには、そういう点バックグラウンドを機長につくってやらなくちゃいかぬというのが私の論旨なんですが、もし誤解があったらこれはまあ解消するようにおしかりいただいてもけっこうなんです。
  90. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 森中さんの気持ちがわからぬわけじゃありませんから、私のことばが強かったら、その点を御了解願いたいと思います。  いま最後の、いわゆる政府間ベースで困難な場合に航空会社なりその他の方法で、ひとつそういう場合に備えて考えておいてはどうかと。ごもっともであります。で、私も先ほど、最後には、あるいは赤十字社を通じてなり、あるいは航空会社がそのようなことはできぬだろうかということで、せんだって松尾社長を呼びまして、あの事件のあとで。そこで、航空会社としても考えるべきであると、これは直接北朝鮮とできなければ、あるいはソ連の会社との間で——ソ連の会社あそこへ行ってるんですから、ソ連の航空会社との間、あそこは国営でしょうけれども、そういう関係で、ひとつ未承認、北朝鮮に限らない、ほかの未承認国においても、万が一有事の場合に、やはり直ちに連絡がとれるような措置考えておいてもらいたい。また、赤十字関係におきましても、もっと、いまのようにジュネーブを通じてというのじゃなく、何か直接に連絡をとる方法はないだろうかと、この点も関係省との間で非公式ながら話を進めております。さような意味において、今後もこの種の事件が、全くないとは、いかに事前防止をやろうとしても、ないとは言えないのでありますから、今後とも最善の措置を講じて皆さんの御期待に沿いたいと、かように考えております。
  91. 森中守義

    森中守義君 まあそれでしたら、ひとつこれは、まあ要請ということになりますが、極力民間ベースでそういうことを進めていただくようにお願いしたいと思う。  それから、防衛庁見えましたか。——まあ少し、過ぎたことをほじくるようで悪いですがね、二、三お尋ねしておきたいと思う。今度の「よど号事件について、防衛庁としてどういうところに事件解決に参加をされてきたのか。それもちょっと最初から最後まで、わかっておる範囲でけっこうですから、教えていただきたい。
  92. 半田博

    説明員(半田博君) 防衛庁といたしましては、事が警察的な問題でございますもので、事件解決ということよりも、むしろ救難措置ということで、この問題に関与をいたしたわけでございます。  まず第一に、航空自衛隊がとった措置でございますが、航空自衛隊は三月三十一日午前七時四十二分に、新潟県に所在いたします佐渡レーダーサイト及び福島県に所在いたします大滝根レーダーサイトが、日航機のエマージェンシーコールを受信いたしました。そのために、午前七時五十二分に石川県小松基地のF86F二機が緊急発進いたしましたのをはじめ、日航機が板付方面に進むに伴いまして、福岡県の築城基地及び宮崎県に所在いたします新田原基地からもそれぞれF86F及びF104ジェット戦闘機が逐次緊急発進を行ないました。これは、もし航空機が、被災機が遭難するというような場合に、場所を確認するとか、救難機を誘導するとか、こういうふうな目的で緊急発進を行なったものでございます。  それから第二に、日航機が板付飛行場に着陸をいたしましてから、福岡空港長からの要請に基づきまして、午前十時十二分に、滑走路上にT33一機及びT34二機を駐機せしめました。なお、その後、福岡空港長からの撤去要請に基づきまして、午前十一睦二十分にT34二機を、また、午後零時五十二分T33一機を滑走路から撤去いたしました。  それから第三番目に、午後一時五十九分に被災機が板付飛行場を離陸するに至りまして、築城基地から発進しましたF86F四機がこれのエスコートをいたしましたが、これは午後二時二十一分、北緯三十五度三十分、東経百三十度十分の地点、つまり、わが国の防空識別圏の内側でございますが、ここで反転をいたしまして、午後二時四十二分に全機築城基地に帰投したというのが、航空自衛隊のとった措置でございます。  次に、陸上自衛隊のとった措置について申し上げますと、陸上自衛隊は、三月三十一日の午前九時二十分に、救急車四両及び救急車を先導する警務官四名搭乗のジープ一両を、板付の飛行場内の航空自衛隊基地内に待機せしめました。  なお、犯人が爆発物を所持しているというような情報がございましたので、念のため、福岡駐とん地内に不発弾処理隊員四人を待機せしめたということでございまして、いずれも万が一の救難要請があった場合に出動するという態勢を整えたという次第でございます。
  93. 森中守義

    森中守義君 これは未確認情報、というよりも私が目撃したわけではないから、人から聞いたことですから、間違っておるかわかりませんが、板付の三号線寄りのほうに、米軍の格納庫がありますね。あの近くに「よど」が停止した。それの横っちょの鉄さくのところにおそらく陸上自衛隊でしょう、射撃手が約四、五十人ずっと包囲した、実弾を込めて。そういう事実を目撃をしたという人が何人かあるのですが、その事実に相違ありませんか。
  94. 半田博

    説明員(半田博君) さような事実はございません。
  95. 森中守義

    森中守義君 私もそうだと思うんだけれども、まあこれは機会があったら関係者によく聞いてみましょう。しかし、五人か六人通行禁止になったのだが、その横っちょに人家があって、それから見ていると、鉄さくで、包囲して、機内から見えないように、昔流にいう張ったような状態で、それで照準をきめていた。まあ、大体隊員の数で四十から五十だろうと、こういってるんですが、警察はどうですか、そういう配備をされたことはありませんか。
  96. 三井脩

    説明員(三井脩君) ございません。
  97. 森中守義

    森中守義君 そこで、これは防衛庁とそれから運輸大臣にお尋ねしたいんですが、朝日ジャーナルの四月十九日号ごらんになりましたか。防衛庁どうです。
  98. 半田博

    説明員(半田博君) まだ見ておりません。
  99. 森中守義

    森中守義君 大臣どうですか。
  100. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 読んでおりません。
  101. 森中守義

    森中守義君 これはごらんになっているのかどうかというむちゃな質問ですがね、これはひとつお読みになってください。おそらくすべての答えをこれで出しているかもわからない。お読みになっていなければ、ちなみにちょっと私から御紹介しましょう。「かくれた演出者米第五空軍」——これはごらんになっていないことないでしょう、おそらく。あまりにも重要な記事ですよ、これは。そこで、この中でいろんな角度から問題が詰められているんですが、要約をしますとね、日本の領空、周辺の領空、しかもそれは台湾からベトナムに至るおよそ広域にわたる制空権をアメリカの第五空軍が握っておるんだと。つまり、第五空軍の制空権下にある空の上でいかなる事件が発生をしても、第五空軍の差配、支配というものを抜きにして一切は論じられない、語れないと、こういうようなことが実はいわれておるんですね。端的な言い方をすれば、「よど号事件も一口に言ってその辺と無関係に処理されたとは言えない。むろん現認者がいるわけじゃない。しかし、いろんな情報を総合し、いろんな角度から詰めた答えがそういうことなんですよ。そこで私は、まあこのことに深く入っていくのはちょっと委員会が違うかわからぬから、また別の機会に内閣かどっかでやりますけれども、要するにハイジャック、その防止策としてとられる今回の東京条約批准、あるいは航空法改正、これら一連の対応策がとられても、制空権を握っている第五米空軍、このことを頭に置かないでハイジャック対策も何もできないじゃないか、こういうことを実は特に主張したいわけですがね。いやそれはあり得ない、日本は独立国家なんだと、佐藤政権はニクソン政権と対等にものを言ってる、だから、日本日本のサイドでいろいろものごとを処理するんだから、米空軍にやっかいにならないよと、そんなよけいなおせっかいはさせないよということが大臣言い切れるかどうか。あるいは防衛庁の場合ですね、これはレーダーがどこまで追跡していったのか、三十八度線と休戦ラインの中間でにわかにUターンをさせたというのは、言うなれば、単なるインターセプトでなくて強制着陸をさせたんじゃないかという見方も出てくる。それも防衛庁と米空軍の差配ではなかったかなど、いろいろ疑問を持っているわけですが、防衛庁はどうなんですか。ハイジャック防止策等が、国内法をいじってみたりあるいは東京条約批准するというようなことなどで一応の歯どめになるかどうか。事件が発生した場合に、少なくとも、米第五空軍と無関係状態で、日本の独自的な解決ができるかどうか、その辺をひとつ御両者からお答えいただいておきたいと思います。
  102. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) おっしゃる雑誌まだ私も詳しく読んでおりませんので、軽々の答弁もこの際は遠慮したいと思いますが、ただ、地上にあってすらも日本の警察権をもっても解決ができない問題ですから、それとこれとの問題は別のように感じます。あるいは、アメリカ上空において行なわれましたハイジャックも米軍、空軍がこれを処置できないんですから、どうも実際問題としては別個の問題に考えられますが、ただ、言うところのものは、この雑誌のどういうことを言っているかわかりませんので、いずれにせよ、それに関する答弁は、この際は遠慮したいと思います。
  103. 半田博

    説明員(半田博君) 私もその朝日ジャーナルをまだ読んでおりませんので、お答えがちょっとむずかしいのでございますが、防衛庁がとにかく第五空軍と今度連絡をいたしました点は、もし被災機が北鮮のほうに向かって飛ぶとすれば韓国の領空に接近するおそれがある、そういう場合に発砲やなんかされることがないように、事人命に関することでございまするので、そういう意味で長官が御指示なさいまして、航空総隊のほうから米第五空軍に被災機の安全確保について依頼をしたということは承っております。
  104. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連して。  一度、私一つだけ伺いたいことがあったものですから、いい機会ですから防衛庁に伺いたいのですけれども、それは防衛庁と米軍との連絡の方法なんです。緊急事態等の場合もあると思いますが、予算委員会に長野運航基準部長さんに来ていただきまして伺いましたときに、ちょうど板付を離陸して北鮮に向かうときですね。その場合に、長野さんは、自衛隊に連絡をとったところが、自衛隊のほうから、米空軍の板付の基地との関係が、ホットラインがない、つまり、電話のあき線がなかったということだろうと思いますけれども、そういう意味なのかあるいはそういう連絡がとれないという意味かわかりませんけれども、とにかくそういったことをおっしゃったそうですね。そこでやむなく長野さんは、直接板付の米第五空軍の司令官と電話したわけですね。ですから、確かに防衛庁が中に入っておらない、そのときの長野さんのお話ですとね。ただ、私は、そういう場合、米軍との連絡が一体どういうふうになっておるのか、自衛隊と米軍との連絡というのは通信回線はどういうふうな状態に置かれているのか、秘密にかかわる部分があればそれは別ですけれども、そうでなかったらひとつ明らかにしておいていただきたいと思うのですよ。どのくらいの回線があって——そんな非常事態のときに、緊急の通信が防衛庁から第五空軍に対してできないような状態なものでしょうか、貧弱なものなんでしょうか。少なくとも、どういう事態があっても緊急通信を確保するための回線というものを確保しておくのが私は筋だと思うのですけれども、そういう点でちょっと疑義に思っておったんですが、なかなか聞く機会がなかったものですから、わかっておりましたら教えていただきたいのです。
  105. 半田博

    説明員(半田博君) ただいまのお話でございますが、長野基準部長から直接お電話があったということはございませんで、管理部企画課の川田という方から御照会があったそうでございますが、その照会の内容は、空幕から韓国に通ずる直通電話があるか、ホットラインがあるか、こういう御質問だったそうでございまして、その空幕から……。
  106. 鈴木強

    ○鈴木強君 空幕からか。
  107. 半田博

    説明員(半田博君) はい。韓国に直接通ずるものはございませんと、こういう返事をいたしたというふうに私の調査の結果ではなっておりまして、わが自衛隊と韓国との間のホットラインはございません。わが自衛隊と韓国空軍との間のホットラインはございません。
  108. 鈴木強

    ○鈴木強君 課長さんの御説明と、私が直接予算委員会で長野部長に伺ったのとは違うのですね。要するに、長野部長は板付に連絡をしてほしいと、こういうことを——それは部長が直接防衛庁に言ったか、それはもっと部下の課長がやったか、そこまではわかりませんけれども、課長がやったんなら課長がやったんでしょう。それはそれとしても、部長の命を受けてやったわけですね。ですから日航としては、長野さんとしては自衛隊のほうを通じて米軍のほうにそういう連絡をしてほしかったのだと思うのですね、意思は。ところがそれができなかったのだが、韓国と直接やりたいという、やってくれということではないように思うのです、私は。ですから、やむを得ず板付の第五空軍の司令官とやったと、これは長野さんが直接やったと言っておりましたから、間違いないと思うのですよ。ですから、板付と自衛隊の東京の本庁かどうか知りませんが、そういう緊急事態における通信線というものはどういうふうに敷設されておるのかということを私は本庁に聞きたいのです。それは直接韓国に回線持っていないでしょうね、米軍は持っているかもしれません。これはそこで要するにあの当時、どういう信号を出すとかいうことまで言っているわけですね。そういうことも指示したわけですね、石田機長に対しては。百二十一・五メガサイクルですか、ちょっと正確な数字忘れましたけれども、そういうふうな指示が入っているからたいへん大事な連絡であったと思うわけですね。だから、あなたが言うように、韓国と直接ということではないと思うのですよ。それはまあ一応おいて、常時、要するに米軍とのおたくの連絡というものはどういう回線の状態になっておりますか。
  109. 半田博

    説明員(半田博君) 米軍と自衛隊との領空侵犯に関する措置につきましては、松前・バーンズ協定というのがございまして、これで各航空警戒管制司令所というようなところには米国の連絡員も参っております。そういうようなことで、平素連絡関係ができております。それと、板付と府中との間には直通線がございますので、これはいつでも連絡がつくということになっております。
  110. 鈴木強

    ○鈴木強君 それが話し中ということはあり得ないことですね、通信ができないということは。
  111. 半田博

    説明員(半田博君) それはないはずでございまして、ただ、この際、日航のほうからお尋ねがございましたのは、府中に対して言ってくれというのじゃなくて、韓国に通ずる直通電話があるかどうか、もし韓国の領空付近を被災機が通るとしたら韓国はどんな対応行動をするだろうかというような、こういう御質問だったそうでございます。それに対して、空幕のほうにはそういうような韓国と直通のホットラインはないということと、韓国空軍から、おそらく領空侵犯になりましょうから要撃を受けるおそれはございましょうと、いずれにしても、当方に韓国のAIP、と申しまして韓国の航空関係の出版物でございますが、そういうものがないのでよくわかりませんと、こういう答えをいたしておるだけでございます。
  112. 鈴木強

    ○鈴木強君 ここでは長野さんがおりませんから、私もあなたの言っておることがはっきり間違いないかどうか、判断に苦しむのです。私が聞いている範囲では、ちょっと違うのですね。それで、要するにあなたのほうから、防衛庁のほうから、ホットラインがないから直接あなたからやってくださいよと、こう言われたのですよ。だからして、長野さんは直接やったと言うのですがね。あの板付の司令官を直接呼び出してやったと言うのです。だから、韓国にそういう意思を伝えてくれということじゃこれはないでしょうね。だからして、そこである一つの指示を、日航として考え方を伝えたわけでしょう。それがまた米軍から韓国のほうに伝わったのかどうか、この辺私わかりませんけれども、そういうふうな問題のとらえ方がちょっと違うのです、長野さんの言っておるのと。これはここでは二人おらなければわからないので、またの機会にいたしますけれども、要するに、府中で防衛庁と米軍との通信連絡というものが万全になっているということがはっきりすれば、私の質問はそれに尽きるわけです。あとはどうなったか、ちょっと見解が違いますからね。あとにしましょう、そのことはいいんでしょう。
  113. 半田博

    説明員(半田博君) ただいまの点につきましては、長野運航部長が予算委員会で、おっしゃったようなニュアンスに聞こえましたので、私ども念のために確かめてございまして、私が申し上げたということで、それが事実であるということを長野運航部長もお認めになっていらっしゃいますので、その点だけ申し添えておきます。
  114. 鈴木強

    ○鈴木強君 回線状態が万全であるということは、どういう場合に対処しても連絡はとれるでしょう。その点はもう一回確認しておきたい。
  115. 半田博

    説明員(半田博君) 万全であると申しますか、まあ通常の場合ならだいじょうぶであるというふうに思っております。
  116. 森中守義

    森中守義君 あと一、二問で終わりますが、三井さん、福岡に派遣をされたという有吉さんという人、この人は、何か以前は防衛庁の研究所長か何かやっておられたと聞いておりますが、いまどういう地位にある人ですか。
  117. 三井脩

    説明員(三井脩君) 有吉さんは現在、福岡県警察本部長でございます。前職は防衛庁の防衛研究所長でございます。
  118. 森中守義

    森中守義君 この人は、事件発生のときには福岡にいたのですね。何か宮崎に出張といったのはだれですか、九州管区の本部長……。
  119. 三井脩

    説明員(三井脩君) ただいまの点は、こういうことだと思います。福岡の有吉本部長は当日うちにおりました。   〔委員長退席、理事岡本悟君着席〕  さっそく第一報を聞いて現地板付にかけつけたということでございます。週刊誌等で宮崎云々といっておりますのは、九州管区の局長のことでございます。九州管区の局長は、当時警察庁の次長が事務取り扱いで九州管区の局長を兼ねておりまして、巡視のために鹿児島に行っておりました。宮崎に向かう途中、事件の発生を聞いて、直ちに福岡に引き返した、こういうことでございます。
  120. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、警察側の責任者としては有吉福岡県警本部長が一切の指揮をとる、その間に、いろいろな連絡あるいは本庁からの指示を受けたと、こういうことですか。
  121. 三井脩

    説明員(三井脩君) 現地の警察本部長が最高の責任者でございます。警察庁といたしましては、これに対して警察庁の立場でアドバイスその他の連絡をしておったのであります。
  122. 森中守義

    森中守義君 わかりました。  最後に、条約の十一条の一項後段、「締約国は、当該航空機の管理をその適法な機長に回復させ又は保持させるため、あらゆる適当な措置をとる。」、こうなっておるのですが、ここでいう常態に直ちに回復させるためにあらゆる措置をとると、こういうのですが、これは具体的にどういうものをさすものでしょうか。
  123. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) これは条約解釈で、私が申し上げるのが必ずしも適当ではないかと思いますけれども、一応お答え申し上げますと、国内法の許します範囲内ででき得る限りの措置をとることというのを意味する、航空機が飛行中の場合は、旅客の生命の安全を考える以上、強硬な措置をとるということがむずかしいというのが実情でありますので、いわばプログラム的規定であるというようなことになるかと思います。この措置は、いわゆる乗っ取られた航空機締約国内に着陸した場合にとり得るものとして、その際の措置としては、機長の管理を回復するために航空機の旅客の安全を害さない範囲でとり得る措置をとる、こういうふうな解釈のようでございます。
  124. 森中守義

    森中守義君 お約束の時間がそろそろ参りますのでこれで終わりますが、要するに、今回の東京条約といい、あるいは航空法改正といい、いわば段階的に整備強化されていくものだと、そういう前提に立っております。したがって、今回の「よど号事件、こういうものが再発をしないように、しかもなお、航空産業が無限に発展をしていくように期待をするわけですが、できるだけ早急の機会にもっといろいろなことを当局において詰めてもらいたい。   〔理事岡本悟君退席、委員長着席〕  また、関係者におかれましても、特にさっき機長問題を私は一つの提案ということで出しましたが、これらのことも含め、御精進を願いたいと思います。まあこれで終わりますが、参考人皆さんには、ろくな質問もできないのにたいへんおひまをとらせて、ありがとうございました。
  125. 温水三郎

    委員長温水三郎君) この際、参考人各位に一言申し上げます。  本日は、御多忙中のところを御出席いただき、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞお引き取り願います。  他に御発言もなければ、本案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  126. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  航空法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  128. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  130. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 本法案御採決願いましてありがとうございました。  なお、この法案に関して森中さんはじめ皆さんから貴重なる御意見をいただきましたので、今後のことにつきましてはこれらの意見を十分尊重しながら善処してまいりたいと思います。
  131. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 午後二時十分に再開することとし、それまで休憩いたします。    午後一時四十二分休憩      —————・—————    午後二時四十一分開会
  132. 温水三郎

    委員長温水三郎君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  全国新幹線鉄道整備法案の審査のため、本日、日本鉄道建設公団総裁篠原武司君、同理事増川遼三君、同理事石川豊君及び交通評論家角本良平君を参考人として出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  134. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 全国新幹線鉄道整備法案議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  135. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 提案者に質問をしたいんですけれども、会期延長のない限り、あしたでおしまいになるわけです。そうすると、定例日としてはきょうは最後の日になるわけですが、最後の日の夕方近くになってようやく提案をされたことは、内容はきわめて膨大なもので、一体この新幹線鉄道の建設は何年かかってどこまでやれるかということなので、その財源についてはどのようにされる自信がおありになるのかといったようなことについて最初に質問をしたいと思うのでございます。  それとこの審議のやり方なんですけれども、これだけの、法案の中でもスケールの大きな法案を一日で審議しようというのは本来無理じゃないかと思うのですね、会期の点からいうと。この前も私言ったんですけれども、東京着の汽車だったら、もう品川過ぎたあたりですよ。品川過ぎたあたりで突如として食堂車へ誘われて、どうだ一ぱいやらないか、こう言われたようなものなんです。消化し切れないんです、とても内容的には。つまり提案者としてはそんなにむずかしい話じゃないんだから、ろくに審議しなくてもいいから通してくれと、こういうことなのか、やはり相当審議の必要はあるというふうにお認めになっておるのか、まずその辺からお伺いしたいのです。
  136. 細田吉藏

    衆議院議員(細田吉藏君) お答え申し上げます。  本法案が非常に重大な法案でございますことは御指摘のとおりでございますから、十分御審議をお願いしなければならぬと思っております。衆議院を通過いたしましてこちらへ回ったのは、たしか先月の二十八日だったかと存じておりますが、いろいろな御都合で、先日、提案理由説明がございましたが、本日から御審議にお入りになると、こういうようなことになったようでございまして、私どもといたしましては、非常に時間が、もう会期がきょう、あるというようなことになっておりますが、重点的に、そして慎重に御審議をいただきたい、かように考えておる次第でございます。
  137. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まあ、慎重にということになると、ほんとうならやはり一週間ぐらいかけなきゃならぬわけです。そうすると、あすの間に合わないということになる。新幹線の鉄道建設の案、これは参議院の調査室でもって調べたところによると、自民党の案は九千キロで十一兆三千億、運輸省で昨年まとめた考え方は三千キロとなっておる。国鉄で四十三年に考えたところは四千五百キロ、六兆四千九百億、鉄道建設公団では四十三年と四十四年に四千七百五十キロないしは五千二百六十五キロといったような構想を発表をしておるようであります。また、経済企画庁の新全総では七千二百キロと、それぞれ違うわけなんでありますけれども提案者としては、この九千キロというのは一体何年がかりで、財源はどこに求めて、どれくらいの費用でできるのか、この辺はあまり大ざっぱだと困るんで、裏づけのある数字をひとつお示しいただきたいと思うんです。
  138. 細田吉藏

    衆議院議員(細田吉藏君) ただいま法案の中にはございませんけれども、おおむね九千キロ、現在の価格で十一兆三千億というのを一つの目標にいたしております。これにつきましては、自由民主党と申しますよりは鉄道建設審議会、これは御案内のように衆参両院の国会議員がそれぞれの議席数に応じて数人ずつ参加をしておられるわけでございます。そういう特別な政府関係委員会であることは御承知のとおりでございますが、この鉄道建設審議会で御決議がございまして、その決議の中身になっておるものがさような数字になっておる、こういうことでございまして、先年来、国鉄で一応立てましたものあるいは新全国総合開発計画の中に三段に分けて書いてありますが、それからその後、建設公団で調査したり、いろいろいたしました数字、経過的にはそのような数字がございますけれども、ただいまのところでは九千キロ、十一兆三千億という新幹線鉄道網にいたしておるわけでございます。  これはもちろん財源の問題が関係がございますが、目標としては昭和六十年度までに完成をするという目標を一応立てております。しかし、これは財源の問題がめどがつかなければそう言いましても実際はできないわけでございますから、六十年度につくるという目標でこれから財源について考えていこう、こういう考え方にいたしておるのでございます。それで、財源の点でございますが、実は率直に申し上げまして、この法律で第十三条第一項、第二項に「財政上の措置等」というのがございます。で、これにつきまして、国が「建設のため必要な資金についての助成その他必要な措置を講ずるよう配慮しなければならない。」、こういう規定がございまして、第二項で地方公共団体の協力、そういうものが出ておるわけでございます。そこで一体この財源をどこに求めるかというと、これが実はこの新幹線をつくるについて決定的な重要な問題であることは御指摘のとおりでございます。で、何しろ非常に膨大な金でございますので調達はかなり困難なものだと思いますし、また、でき上がりましたあと国有鉄道で営業するということになっておりますから、国鉄に非常な負担がかかりましてもこれは困るわけでございます。そういった点から利息のつかない金、これを調達しなければならない、できるだけもうそういうふうにしなきゃいかぬ、こういうことでございます。そこで、一部、自動車新税といったような構想もございます。しかし、これについては反対もございます。いろいろ道路の投資あるいは飛行場、港湾等の投資、いわゆる交通投資というのが相当大きな額になるわけです。新幹線だけやっていればいいというものじゃございません。そこで、全体の投資を財源措置をしてまいらなきゃならぬわけでございまして、これらをどうしていくかということにつきましては、今後できるだけ早く政府でも考え方をまとめてもらいたいと思っておりますし、また、私どもの自由民主党、提案者のほうの側としましても、早急にはっきりした見通しを立てたい、かように思っておるわけでございまして、いまどうするという確定したものを持っておらないことは、たいへん残念でございますが、率直に申し上げてさような状態でございます。
  139. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 金の当てもないのに法案を提案するというのは、残念であるというよりも世間的に言うならばずうずうしいということになるんじゃないかと思うんです。十一兆とか、あるいは、物価の値上がりを見込めばこれは十五兆になるか二十兆になるかわからないんですから、ちょっといまの国鉄の財政ではとても話にならないような大金ですが、もしこの財源の調達について、政府のほうでやれということになれば大臣としては何らかのくめんをしなきゃならぬことになると思うんですが、運輸大臣としては、具体的にはどういうふうな当てがおありになりますか。
  140. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 自民党のほうでいろいろ試算されましたのが九千キロ、十一兆何がしという膨大な計画でありますが、この法案にわれわれ忠実に、これが通過を見ますればやらなければならないわけですけれども、先ほど来、提案者からお話がありましたように、財政上の問題もあるので、一応昭和六十年度をめどにはしておるが、財政上の問題からあるいは延びる場合もあり得るであろうというようなお話でございます。いずれにせよこの法案が、従来の在来線の、別のことばで言えば現在の国鉄の再建に影響のないように措置してほしいということでありますから、何らかこの財源を別途に考えなければならぬわけであります。さような意味で、しかも、全体的な計画を進めるということになれば、その財源措置も容易でありませんので慎重に検討しなければならぬと思いますが、しかし、この法案が通過しますれば、なるべく早い機会に、この新幹線に対してわれわれはどういうぐあいにしてこれを進めていくか、たとえば、全体計画を一ぺんに出すことではなくして、やはり部分的に出さざるを得ないと思います。そういうようなこと並びに財政措置等をあわせてこれを検討した上で、できれば来年からでも工事に入らなければならぬかと思っておりますが、一つには、御承知のように青函トンネルが調査が大体済みそうでありますので、それらも勘案してやっぱり新幹線というものを考える必要がある、こういう意味から考えますというと、第一期計画といいますか、そういうものはなるべく早急に立てたい。それにしても財源問題がありますので、まだ具体的にこういうものを財源にするという予定までは立っておりませんが、なるべく早い機会に、これらについて大蔵当局その他とも相談の上できめたい、かように考えております。
  141. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 法案が成立しても財政措置ができなければその間たなざらしになっておるということになると思うのですね。やはり財政的な規模——一体九千キロといいますけれども、九千キロの内容は、北海道は稚内から網走に至るまで新幹線を通すということなんですか。また、本州から四国へ橋をかけて四国へ渡って、また九州へ橋をかけて渡る、こういうすこぶる雄大な構想なんです。ここまで決定した構想を実現をするということになれば、これははたして採算が合うかどうかという問題も出てくるだろうと思うのです。赤字新幹線なんていう問題がこれは出てくるわけですね。ローカル赤字線が問題になっているおりなんでありますから、むやみと採算の合わない新幹線が計画をされるということはおとなのやることじゃなかろうと思うのです。  それで専門的な見地から、鉄道建設公団からお見えになっていただいておりますから参考人にお伺いしたいと思うのですけれども、鉄道建設公団では四千七百五十キロ——四兆五千億という内容の計画をしたこともあるし、五千二百六十五キロ——五兆四千億、こういう計画も——これは机の上での計画、計算であろうと思うのでありますけれども、やられております。はたして今回の新幹線鉄道建設案というものは九千キロという規模で妥当であるというふうにお考えになるのかどうか、試算をした場合に、その財政規模がどのくらいが一番効率的でしかも可能性を秘めているというふうにお考えになるのか、ざっくばらんなところを、専門的な立場からお考えを述べていただきたいと思います。
  142. 篠原武司

    参考人(篠原武司君) 公団案というものをつくりましたときには、何もそこまで深く考えておったわけではございませんが、一応、私が土木学会の会長をしておりましたときに、将来こういう新幹線網が必要じゃないかということで私案を出したわけでございますが、その後、国鉄で国鉄案というのが出されまして、公団案というものをつくるときには国鉄案も考えまして多少修正したということでございまして、新幹線の問題につきましては、採算上どうかということは国鉄総裁からお話しいただいたほうが適当じゃないかと思いますが、私の私見を申し上げますと、新幹線は非常に従事員が少ない、東海道新幹線は、磯崎総裁からのお話もこの前ありましたように、五千人とか七千人とか非常に少ない人数で手数百億というような収益をあげているというようなことでございまして、採算上は非常にいい。したがいまして、輸送量が非常に少なくても、たとえば、現在の東海道線で申し上げますと、人間の輸送量がたとえば十分の一くらいになってもそろばんに乗るのじゃないかというふうに考えられますので、新幹線が日本に延びましても十分に採算に乗るのじゃないかというふうにわれわれは考えておりますが、九千キロの案につきましてはこれは私どものお話し申し上げる筋じゃないと思いますけれども、しかし、段階的に、採算を考えながら逐次やっていくのじゃないかというふうに考えますし、私もそうするのがほんとうじゃないかと思いますので、採算に乗るように仕事を進めていかれるのじゃないかと私は考えております。
  143. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 九千キロの案に対しては批判を避けられたようでありますけれども、率直に言って、採算に乗る限界というものがあるのですね。これは国鉄総裁にお伺いしたいのですけれども、国鉄では四千五百キロといったような案を考えたことがあるわけです。それはどういう観点でもって一応、案をまとめたのか。もちろんそれは理想的にいえば、日本国じゅうの鉄道を全部新幹線にしてしまえば一番けっこうな話だけれども、これは二十一世紀の話としてはともかく、さしあたってはなかなか考えられないと思うのです。やはり採算ベースということを考えていった場合に四千五百キロの数字が出てきたものなのかどうか、その辺はどうですか。
  144. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいまの点は、昨年の当委員会におきまして促進法を御審議願いました際にも、当時話にのぼっておりました全国新幹線をどうするかという御質問でございます。推進会議におきましては、全国新幹線は、山陽新幹線以外は全然国鉄の再建計画と別だということがはっきりされております。その意味で私どもは、この問題はまず第一に、いま取り組んでいる再建問題とは別な問題だというふうな角度でまず考えております。  その次に、いまの御質問でございますが、私のほうは四千五百キロの案を出しましたのは、たしか都市問題が非常にやかましくなりました三年ほど前のときだったと思います。その当時、東海道新幹線が開業いたしまして、三年ほどたちまして黒字に転換いたしましたので、そういう実績を見ながら、やはり問題は、どの程度の資本投下をすべきかということが一つと、それから、一体それがどのくらいの資本利子でもって金が調達できるかということが第二、それから、やはり何といっても輸送量がどのくらいあるかということが問題点だというような角度から、いろいろ当時におきます全国の主要都市間の輸送量を調査いたしました。また、新幹線をつくるといった際に、どれくらい金がかかるかということについても相当机上の勉強をいたしました。いまここでお答えいたします前提といたしまして、先ほど大臣がおっしゃいました青函トンネルの問題、それから本州・四国の橋の問題、あるいは四国・九州の——橋かトンネルかわかりませんが、問題。そういう、いま工事費がどれくらいかかるかということのちょっと推定困難なものにつきましては、一応これは論外にさしていただきまして、これで非常に違ってまいりますのでこれは一応別に考えまして、大体私のほうといたしましては、四千キロくらいならばキロ当たり十億くらいのコストをかけてつくって、ある程度の輸送量があれば大体収支が償うだろう。と申しますことは、いま鉄道建設公団総裁が申しましたように、新幹線だけから見ますれば、いまつくっております岡山の山陽新幹線、大阪−岡山間、これは三年目に黒になります。あるいは、いま博多まで延ばしておりますが、これも昭和五十年の春ころできるとしまして、やはり三年目に大体黒になる。こういう推定ができます。それは非常に労働集約型の産業である。東海道新幹線の一人当たりの水揚げは約千六百万円、現在線が約二百万円、現在線の八倍の水揚げをいたしております。千六百万円の水揚げというと日本の一流産業に比べましても決して劣らないほどの能率の高い仕事をいたしております。もちろん、逆に労働装備率が高くて、現在線の五倍くらいの資本投下をしておりますが、八倍の収益があがれば十分ペイするというようないろいろな計算をいたしました結果、いま工事いたしております博多までの山陽新幹線を含めて四千キロないし四千五百キロくらいならば、新幹線としてはもちろんペイするけれども、それによって現在線が相当収益が下がってまいります。すなわち、旅客輸送の大部分の特急とか急行とかを新幹線に移してしまいますと、現在線の収入が下がってまいります。現在線の収入が下がるのをどの程度カバーするかということが問題点でございまして、ごくラフに計算いたしますと、四千五百キロくらいなら、資本利子を現在の半分——二分の一ないし三分の二、これは線によって多少違います。二分の一以上三分の二くらいまでの利子の補助があれば、逆に申しますれば全体の所要資金の半分ないし三分の二が無利子で借りられれば、新幹線の黒はもちろん、在来線と合わせましての収益が現在より減らない、こういう計算から実は四千五百キロが出た。この基礎は、大体、当時開業いたしまして黒になりました東海道の新幹線並びに経営状態が多少悪くなりましたが、東海道の在来線、これらをひっくるめていろいろ検討した結果の数字でございます。
  145. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 つい何日か前に、当委員会で港湾整備に関する法案審議をやって可決されたのでありますけれども、民間の事業者が港湾管理者から無利子の資金の貸し付けを受けて埠頭の建設または改良の工事を行なう事業を港湾整備事業の五カ年計画の中に入れる、こういう内容のものだったはずです。つまり、ここでは、これからのコンテナバース等を考えて、こういう公共事業としては無利子の貸し付けを行なう、こういう考え方だったわけでありますが、埠頭というのは海の駅のようなもので、鉄道でいうなら駅や操車場に該当するだろうと思いますね。そういう設備に対する投資は大体国でやることがたてまえになっておりましたけれども、民間会社を立てて行なう場合においても利息のつかない金を貸すというようなことを考えている。それなら、陸の埠頭である国鉄の設備に対して当然そういうことも考えていいはずではないかという気がするのでありますけれども、これからの考え方として、利子のために国鉄財政がたいへんな負担をこうむって重圧にあえいでいるということもわれわれは知らないわけじゃありません。運輸大臣としては、この利息のつかない金を調達をする、あるいは国鉄の新幹線のためにくめんするといったような考え方はあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  146. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) なかなかこれは大事業でありますから、ただ私は、こういう法案が議員立法で出されるということは、その趣旨として非常にけっこうであると思います。何といいましても、これは政策的な立法でありますからして、全国民に対して一つの将来のビジョンを国会みずからが与える、こういう意味で、われわれ政府側としてもこの法案の通過を期待しておるわけであります。問題はいま、絵にかいたもちじゃ困りますからして、そこで具体的な点を御心配になるわけでありますが、われわれももちろんこれは楽観をいたしておりません。いまお話がありましたような、国からのいわゆる財政援助というものを大幅に考えるべきではないかというお話でありますが、その点ももちろんこれは考えなくちゃなりませんが、長期的にいえば、やはり安い利子の金を大部分使う、それにはやっぱり利子補給の面とか、その他のことも考えなければならぬと思いますけれども、それにいたしましても、この計画を提案者側では昭和六十年をめどにと——めどでありますからして、それから一つも違っちゃいかぬという意味じゃないと思いますけれども、ただ全体として考えれば、いわゆるこの法案をつくりました過程において出てまいりました九千キロとか七千キロというような鉄道網というものは、終局的にはもちろん必要だろうと思います。しかし、これを実施計画にのせていくとなりますというと、一ぺんにこれをのせるということじゃなく、必要度に応じてこれを計画していきますからして、したがって、財源等についても堅実な財源を考えていく。いろいろ新税等の問題も論議されておるようでありますから、日本の経済の拡大あるいは成長度合いによって、いろいろの点でくふうして考えれば、これくらいの仕事は当然日本の新しい開発を目ざしていく以上は必要であろうと考えておりますので、最善の措置考えていきたい。具体的に、そうなれば無利子の金をどのくらい出せるかどうかとか、いま安い長期の金をどうというところまでは目下検討はいたしておりませんので、慎重かつ敏速に、この法案が通り次第、われわれとしては義務としてもやらざるを得ませんので、具体的な問題は進過後において積極的に考えていきたい、かように考えております。
  147. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 提案者は、やはり提案をする以上は、政府あるいは与党を説得をして、財源の調達については、少なくともことしじゅうに成案を得る自信があるんじゃないかといった気がいたしますけれども、一体この財源の問題等について、もしこの法案が可決をされれば、いつまでにその構想を明らかにするおつもりなのか。
  148. 細田吉藏

    衆議院議員(細田吉藏君) 財源につきましては、私どもといたしましては、昭和四十六年度予算編成、これを一つのめどにいたしたい。四十六年度予算は、政府原案ができ上がりますまでにはぜひとも大体のめどをつけてまいりたいと、かような希望を持っておりますし、また、そういう方向で努力をいたしたいと考えております。
  149. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 もう一度、鉄道建設公団にお伺いしたいと思うのですけれども、国鉄総裁のほうからは、先ほど、輸送量調査等を行なって、そして一つの試算をまとめた報告があったんでありますけれども、鉄道建設公団は国鉄とこういう問題について別々に計画をしたり、調査をする必要はないような気がするんでありますけれども、その点いままでは、国鉄とは全く別に調査をしたりあるいは計画を立てたりしてきたわけですか。少なくとも新幹線の問題については、これは現実の問題になるわけなんですけれども、そういう点はどうなんですか。
  150. 篠原武司

    参考人(篠原武司君) 公団としましては、こういうものを計画するあれはなかったんでございますが、学会長をたまたま私がやっておりました関係で、鉄道というものは将来高速化したものをやるべきじゃないかということで、一つの私案を発表したわけでございますが、その後公団としては案を発表しておりません。それから、国鉄がその後、国鉄案というものを発表いたしましたので、それを参考にしまして、国鉄に輸送量その他を聞きまして、それをもとに、国鉄案と同じようなものを公団試案というもので一ぺん発表したことがございます。しかし、これはあくまでも国鉄のいろいろな資料によりまして、私のほうの公団としまして考えてもいいんじゃないかということで発表したにすぎません。
  151. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今後、国鉄とこの問題についてはどういう形でもって協議をしていかれるつもりなんですか。
  152. 篠原武司

    参考人(篠原武司君) これは国鉄とよくお打ち合わせしながら、国鉄の考えを十分取り入れて、われわれも考えていきたいと思っております。
  153. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この新幹線の計画は、先ほど大臣から、将来のビジョンとして、たいへんにけっこうだというお話があったんですけれども、将来のビジョンとしてはけっこうなんですけれども、現実の問題をもう一度振り返ってみる必要があるだろうと思うのです。先ごろ建設大臣のほうから、首都圏あるいは近畿圏に宅地開発を行なってニュータウンを建設をする、そして国鉄なり私鉄をそこに入れて、そして地価抑制に役立たしめるという意味の発表がありました。しかし、建設大臣のほうでそういう構想を持っておったとしても、はたして、ニュータウンを建設をしても、そこと連絡をする鉄道網なり道路網というものがちゃんとそれに合っているのかどうかということが問題になるわけです。うちさえ建てればいいというものじゃなくて、やはり住宅を建てる以上は上下水道、ガス、電気あるいは道路、鉄道、あらゆる環境施設、そういうものが必要になってくるわけであります。こういう問題は、建設大臣の思いつきでちょっと言われたんじゃなくて、運輸大臣とも連絡をして発表をされたものなのか、閣議でもってそういう点はまだそこまで熟していないのか、首都圏整備委員会とかあるいは近畿圏整備本部というものがあるのですけれども、何年も前からこういう機関は存在はしているけれども、あまり具体的には働いていないような気がするわけですけれども、この建設大臣——建設大臣は建設委員会が開かれておりますので、出席を求めることはできませんけれども、建設省関係考え方をこの機会に述べていただければ幸いだと思うのです。
  154. 石川允

    説明員石川允君) ただいま先生の御質問でございますが、現在、大規模ニュータウン開発工事というものについては調査をいたしておる段階でございまして、具体的にどうするというふうにはまだきまっておりませんのでございます。したがいまして、現在はただ土地を調べておるという段階でございます。
  155. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 土地を調べてどうしようということなんですか。
  156. 石川允

    説明員石川允君) 現在、首都圏におきましては昭和六十年までに約六百五十万人の人口増が、この近郊整備地帯と申します、ちょうど東京の周辺部に大体六百五十万の人口増加があるのであります。この六百五十万の人口を受け入れるために宅地が約四万ヘクタールぐらい必要なわけでございます。この四万ヘクタールのうち約二万ヘクタールを大規模な宅地を造成することによって大体吸収していきたいというふうに一応考えております。この二万ヘクタールの大規模宅地開発におきまして、その約半数、約一万ヘクタールにつきましては、現在、先生御存じの港北ニュータウンあるいは多摩ニュータウンでございますとか、千葉の北千葉ニュータウンでございますとか、そういったところでもうすでに開発を始めておるわけでございますが、あと約一万ヘクタールでございますかの大規模開発を必要といたしますので、そういった候補地がどこにあるかということをいま現在検討しておる段階でございます。
  157. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 五月九日の新聞に載っておったわけですが、建設大臣の構想というのはそこまではまだ考えていないと、しかし、調査をする以上は何かやはり考えてのことだろうと思うのですけれども、ニュータウンの構想とそれから都心とニュータウンを結ぶ交通網の問題は、今後どういうふうにして考えていくつもりなのか、その点をちょっとお聞きしたいと思うのです。
  158. 石川允

    説明員石川允君) このニュータウンの問題を考える段階におきまして、私のほうといたしましては、問題点を六つあげております。これは先生御指摘のように、鉄道との関係、それから上地条件、それから上下水道とか関連道路とか用地取得の難易性、それから開発地帯をどうするかというような問題があると存じておりますので、そういった問題は、場所を選定する段階におきましても、当然考えなければならぬのでございますが、現在どういうところにどういう土地があいているかということをまず調査をしているわけでございます。その調査が終わりました段階で、先生の御指摘のように、当然いろいろな、いま申し上げました各種の問題について検討を進めていきたいと考えております。
  159. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは建設省関係はちょっと保留して、新幹線の考え方の前に、現状をどうするかという問題があるわけです。新幹線は新幹線として、いまのところは絵にかいたもちみたいなかっこうになっていますが、現実の在来線の改良とか整備とか、こういう問題はゆるがせにできないと思うのです。新幹線を建設するために在来線が犠牲になったということになると、これはいかにビジョンは美しくとも、現状は惨たんたるものになると思う。そこで、現状の改善ということが新幹線計画と並行してうまく行ない得るかどうかということも、非常に大きな問題だと思うのですけれども提案者としては、在来線の整備なりあるいは改善等について必要な措置は新幹線計画とは別個に推進をできる、こういう考え方で必要な調査も行なわれたのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  160. 細田吉藏

    衆議院議員(細田吉藏君) 新幹線をつくることによりまして、これまで計画されておるないしは必要があって今後計画をされるというような現在の鉄道をよくしていく、あるいは複線なり電化なりいろいろあるわけでございますが、そういう計画に障害を及ぼしてはいけないと考えておりますので、これは別個に考えていかなければならない、かように思います。ただ、新幹線ができることによって、改良はそれとの関連でもう一ぺん考え直すというような場合は起こり得ると思っています。ですから、原則的には影響を与えないということをたてまえとして進めなければならない、かように思っております。
  161. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国鉄総裁にお伺いしたいのですけれども、今日、山陽新幹線等建設を進めているわけですが、この山陽新幹線等のために在来線のほうが、あるいは国鉄の財政再建計画のほうがかなり重圧をこうむるといったようなことはないのかどうか。そういう点は抜かりなくやれる、やっておるというふうに自信を持って断言できるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  162. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 先ほど申し上げましたとおり、現在の私のほうの再建計画の中には、山陽新幹線計画につきましては、そのうちのいわゆる損益関係、あるいはその新幹線建設の原資と申しますか、所要資金も一応計算済みです。それを入れますと、十年間で三兆七千億ということを前国会で御説明申し上げたのでございますが、それにつきましては変わりございません。すなわち、山陽新幹線の岡山までが再来年開業いたしますので、相当金も入ります。また、岡山以遠もいよいよことしから本格的になります。しかしながら、それも全部含みました上で三兆七千億を配分してございますので、その他の地域につきまして当初計画以上に影響するということは、いまのところ考えておりません。しかし、たとえば自己調達資金が減ってくるというようなことになりますときには、非常に問題になりますかと存じますが、一応三兆七千億の中の配分の問題といたしまして、当初計画どおりやってまいりたいと、こういうふうに考えております。したがって、山陽新幹線以外の、それ以上のものにつきましては、全然もう別なさいふでもって、つくるほうもやっていただく。まだいつできるかよく存じませんが、できたあとの運営につきましては、先ほど申しましたとおり、現在の再建計画に支障のないように、財政的なあるいは利子補給的な裏づけをしていただきたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  163. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 在来線の問題を忘れられては困ると思うので、まず在来線の問題からこれまた総裁にお聞きしたいと思うのですけれども、万博が始まって団体客なりあるいは万博を見物する客がかなりふえたというふうに思うのですけれども、それによる増収というのはどの程度見込まれるのか、あるいは万博が始まってから今日までの実績はどの程度にあらわれておるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  164. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 先般御審議願いました四十五年度の予算におきまして、万博関係の収入を二百七十億、いわゆる普通増収以外に二百七十億増収するということで御説明申し上げました。現時点におきまして、実はゴールデンウイークがもう少しいい予定でございましたが、天気その他の関係で、このところ思いのほかに伸びておりません。これは入場者数も、万博当局の発表いたしておりますように、当初計画の大体九割前後、一割くらい減っておるようでありますが、大体それと同じように、私のほうの利用者も減っております。したがって、大体当初計画の八割五分から九割というのが現在の収入状況でございます。しかし、今後まだ六月、七月、八月とございますので、できるだけ全国から新幹線を利用していただいて万博に行っていただきたいというふうに思っておりますが、全体の入場者がもし減りますれば、多少の影響はあると思います。交通機関別の利用状況は、非常にマイカーその他が少なくて、新幹線のシェアが当初予想以上に多いということは、これは事実でございます。全体の数が少ないわけでございますので、いまのところ収入は、約一割くらい見込みよりは減っておるという状況でございます。
  165. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、いまのところは、これから先どういうことになるかわからぬが、二百七十億見込んだけれども、いままでのペースで進んでいけば二百五十億くらいの増収という程度に見込まれるということですか。
  166. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 大体その程度と思っておりますが、夏にどのくらいかせげますか、いまの調子でいきますれば、二十億、三十億くらい減るかと思いますけれども、何とかそれを取り返したいというふうに思っております。
  167. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国鉄の一般的な問題についても若干質問しておきたいと思うのですけれども、先般、鉄道弘済会の売店でもって、ジャガイモやタマネギといったようなものを市価より若干安く売ったところが、たいへんな好評だったということなんですけれども、これからの国鉄のあり方というものを考えた場合に、鉄道弘済会は直接国鉄の営業ではないかもしれないけれども、少し従来の方式というものを変える必要があるのじゃないか。それで、駅の売店で売っているものは常にきまったもので、チョコレートだとか新聞、雑誌、そういったようなものばかりであるということであっては進歩がないのですね。だから、ジャガイモだとかタマネギを売ったということは、どういう動機だったかわかりませんけれども、新しい試みだと思うのですが、何も食いものを売るのにパンを売ろうとジャガイモを売ろうとタマネギを売ろうとかまわないと思うのです。だからこれは、もし野菜が高いという場合に、国鉄でもって安く入荷ができるという自信がある場合には、こういう食料品を野菜に限らず何であっても安く売るということは、これだけでは物価対策にどれだけ寄与できるかわかりませんけれども方法としては考えていいことじゃないかと思うのですが、今後、販売品目を拡大をするといったような考え方はないのかどうか。それからまた安く、高くちゃ何にもならぬですけれども、安く売ることができるというのはどういう点で安く売ることができるのか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
  168. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 実はこの話が起きましたのは、先生御承知かと思いますが、戦争の始まりましたときに東京のやみ米が非常に値上がりしたことがございます。そのときに、私どもの先輩のある課長が、とにかく国鉄を利用すればいまどの駅に米が何トンあるか全部わかっている、農林省が出荷命令さえ出せば、あしたでも何千万トン入れてみせるということを一言言っただけでやみ米が下がったということを私ども若いときに聞いたことがございました。  過般の非常に野菜の高いときに、われわれ輸送関係の人間が手をこまねいていることはないじゃないかということが部内でぼつぼつと出まして、結局問題は、輸送の方法はあるけれども、都市へ着いてからいわゆる末端の小売り業者とのつながりがつかないということが非常に問題点です。したがいまして、たとえば、極端にいえばスーパーマーケットに直接くっつくことも考えられる、あるいはある地区の小売り業者の組合と手を結んだらどうか、実はいろいろな案をつくってみたのでございますが、いずれも時間的に間に合いませんので、たまたま弘済会が自分の売店でやってみたいということを申しましたので、理屈はあとからつけるとしましても、よしあしの問題はとにかく、やってみようじゃないか、何かの役に立つのじゃないかということで始めてみたわけですが、私ども一番の問題は、特に北海道とか宮崎とか高知、野菜の産地になりますと、大体、からで帰ってくる貨車、コンテナが相当ございます。それを利用することによりまして輸送の節約もできるということで、運賃その他普通にもらいましても、国鉄としてはからで空気を運ぶかわりにちゃんと実入りがくるというメリットがございます。  それから問題は、東京へ着きましてから市場に入れないわけでございます。したがって、市場その他中間マージンがない。しかしそれは、まあ私どもはよく知りませんが、いろいろなハレーションは別にあるようでございます。中間機構を通らないということによるハレーション、よく存じませんが、なかなかむずかしい問題もあるようでございます。しかし、やはり中間の流通機構がなるべく簡素化されると申しますか、ステップが少ないということが、結局、最終消費者に渡る値段が低くなってくるということじゃないかと思います。ただ、しろうと商売の悲しさに、今度の問題でもやはり相当二割ぐらいのいたみがございます。たとえば、ジャガイモにいたしましてもタマネギにいたしましても相当途中でいたみますが、そういうものの計算のしかたとか、あるいは包装に思わぬ金がかかるとかいろいろな点がございます。しかし、赤字は出していないはずでございます。いずれにいたしましても、私どもから見ておりますと、あれはホクレンの出荷でございますが、ああいうきちっとした出荷機構があって、そして東京の荷受け機関がちゃんとしていれば、まあ非常に私どもの専門外からこういうこと言っちゃならないと思うのですが、そういう末端の消費者に入る価格というものは、やはり途中の流通過程の問題が一番問題である、それを省略することができないかとか、それがまた中小企業の圧迫にならないかどうかということを考えて、何か私どもでもお役に立つことがあったら今後やってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  169. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 本業のほうで赤字を出していて、ジャガイモを売ってまた赤字を出したのじゃこれは何にもならぬ。だから、やる以上は赤字を出したのでは意味がないわけで、まあ物価対策という点から考えて、流通機構の問題、非常にむずかしいから、国鉄だけで何とかなるという問題じゃありませんけれども、しかし、輸送機関を持たないものにはこんなことできないわけです、さか立ちしても。したがって、国鉄以外の公社ではこういうことはやろうと思ってもできない。国鉄の輸送の問題なんですけれども、たとえば、コンテナ輸送なんというのがだんだん大きな割合を占めてくるということは内航、外航問わず共通のことじゃないか。そうなりますと、コンテナ輸送なんかに関連をして有効な何か消費物資の輸送を行なって、廉価に販売をするということは、国鉄の営業政策として取り入れることができるかどうか、そこまで踏み切ることがいいかどうか、なかなか問題ではありますけれども、今後やってみていいことじゃないかという気がするのですね。そういう意味では、販売品目を拡大をして、つまり、年がら年じゅうきまりきったものしか売らないということじゃなくて、一歩踏み出していく、そうして大衆が相手でありますから、その大衆を相手にして、まあ喜ばれるようなものを売るということも考えてみていいことじゃないか、こう思うのですがね。それは国鉄総裁としてはある程度考えても、現在の法のたてまえからいって、そこまで手を伸ばしていいかどうかという問題が出てくると思うのですが、それは運輸大臣にもちょっとお伺いしたいと思うが、国鉄にやらしてよろしいかどうかですね、大臣、いまの問題ちょっと。総裁は試みにやったということなんですが、こういうことを国鉄に——手広くまでいっていない、ジャガイモとタマネギ程度だから。かなり手を広げて国鉄にやらせるということが、大臣としては考えられるかどうかですね。
  170. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) なかなか、いまお話しのようにジャガイモで赤字を出したのでは困りますから、非常にむずかしい問題で、私はあまり積極的ではないのです。もしやるとすれば、もちろんこれは事業はやれることになっております、国鉄の事業として。やはり旅客に関係することでありますからやれることになっておりますが、先ほど来のいろいろのネックがあります。したがって、もっと国鉄自体が多角経営を原則としてやるということになって、駅も主要な駅が民衆駅になる、その中で野菜部門とかくだもの部門とかいうものを持つ。そのかわりベテランをそれに配置するというのでありませんと、どうもいまの状態で、今度のまあ物価対策に幾らかでも役に立ってやろうという意図でありますから、たいへんけっこうなことでありますが、多少の赤字が出てもやむを得ないと思いますけれども、しかし、これを継続的にやるということになりますと、赤字が出るという商売、めくらめっぽうでやられたのではこれは困りますからして、いまのような日本の配給制度といいますか、制度の上に乗っかって国鉄がやるということは、なかなかむずかしいのじゃないか。しかし、こうしたような特殊な状態が、野菜の非常な高値が相当期間続いており、それに対して幾らかでも水をかけて消す役割りができるという場合には、私はある意味においては多少、どうせたくさんな赤字が出るわけじゃありませんから、多少の赤字が出ても、国民経済の安定のために協力する、こういうたてまえは、あってもいいのだろうと思います。しかし、これを継続的にやるとなると、もう少し本格的に勉強しませんと、はたしてこれが国鉄の財政再建に幾らかでも役立つかどうかという問題は大きな問題があろうと思いますので、全体の仕組みをもう少し検討する必要があるのじゃなかろうか。先ほど申しましたように、たとえば、ちょっとした駅でも民衆駅的なものにどんどん変えていく考え方を、そこでその中には必要な商品を扱う、その中で物価対策に必要な部門を引き受ける。こういうことの大きなチェーンができますと、輸送手段を持っておりますからしてたいへん便利になると思いますけれども、現状のままではたして可能かどうかということについては少しく研究する必要があって、もし可能ならば、積極的に進めたいと、かように考えております。
  171. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 法律的に国鉄はいろいろ制約がある。いま例をあげたのはジャガイモの問題なんですけれども、私鉄と同様に、たとえば不動産業をやるとかあるいはまあ運賃収入以外に収入の道を求めるという方法を広く考えるというようないき方が、はたして考えられるのかどうか、考えてよろしいことなのかどうか、これは今後の問題として相当検討してみる価値があるのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  172. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) まあ国有鉄道法によると、相当限度があるわけなんですが、御承知のように、鉄道事業それ自体関連しませんというと、仕事ができない。ただ、弘済会が仕事をする場合になりますと、これはまあ旅客に利便を供与する問題が入っておりますから、鉄道弘済会が事業の規模の中でやる場合になると、かなり広くやれるわけであります。ただ、国鉄が直接に多角経営といいましても、直接に多角経営はできない。しかし、鉄道弘済会式のもので、それらが仕事をする場合、たとえば民衆駅のようなものができた場合には、国鉄自身は、それ自体商売はできませんけれども、何らかの機関があって、その機関が商売をする、部屋貸しということになりましょうけれども、あるいは敷地貸しといいますか、そういうことは、私は、これはまあ当然の家主の権利、地主の権利でありますから、そういう意味での収入ははかれると思いますけれども、いまの国有鉄道法によりますと、先ほどちょっと私も言いましたけれども、直接には多角経常はできない。また、今日ではなかなかその競争が激しいのでありますからして、はたして多角経営といいましても、不動産業をやらしてみたらどうかといってみましても、なかなか実際世の中には相当にベテランが多いのですから、鉄道マンがはたして商売をやってうまくいくかどうかという点もありますので、まあやるとなれば、将来慎重に検討した上でそうして考える必要があるでありましょうが、それにしても、やるとなれば、鉄道法の改正が必要であろう、こういうことになろうと思います。
  173. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 もちろん法の改正を前提として私も意見を言ったつもりです。これからの国鉄を考えた場合に——角本参考人お見えになりましたね。国鉄の財政再建計画というものがありますけれども、角本さんのお書きになったもの、「文藝春秋」とか、何か通勤新幹線のことをお書きになったのを読んだことがあるのですが、それからまた、七〇年代の鉄道に期待するということで「交通技術」という本にいろいろお書きになっているわけです。いまここで提案をされている全国新幹線の構想というものは、自民党のほうの提案は九千キロ、十一兆三千億、これはかなり山をかけたものであろう、こう思うのですが、いずれにしても、この法案が通れば、財政再建計画とかなんとかといっても根本的にこれは考え直しをしなければならぬ。必要とあれば、国鉄関係のいろいろな法律改正をしてでも、これからの輸送機関としての国鉄というものを全く新たに打ち出していく必要があるのじゃないか、こういう気がするのです。したがって、その場合の、独立採算制のワクの中で財政の再建はなかなかできないということを言っておられる。私もその点は同感なんです。どういう方法をもってやっていかれたらよろしいか、新幹線との関連において、新幹線の役もやっておられたし、監査委員会の委員もやっておられたし、あるいはまた、いま交通評論家という自由な立場におられるので、忌憚のない御意見を承りたいと思います。
  174. 角本良平

    参考人(角本良平君) お答えを申し上げます。  私は国鉄とか私鉄とかいうワクを離れまして、鉄道という交通手段が日本列島のためにいかなる役割りをすべきかという立場でずっと考えてまいりました。そういたしますと、日本列島という特殊な高密度社会、これは世界に例が、文明国としてはございません。そうした中にありまして、交通技術をいかにして使い分けるかということが根本になると思います。  国鉄の再建ということは非常に大切でありますけれども、それ以上に、われわれが日本列島の交通を麻痺させてはいけないということのほうが、より以上に大切であると思います。したがいまして、いまの段階において鉄道にいかなる役割りを求めるかということになりますと、鉄道が他の交通手段よりもすぐれておるという場合、これは東海道新幹線で明らかに証明されておりまして、他の手段よりも非常にすぐれている場合には、いかなる交通手段でも独立採算が可能でございます。また、現在まで国鉄について立てられております財政再建計画がその前提としておる条件がすべて実現すれば、これは計算によりまして、当然再建は可能でございます。しかしながら、鉄道に求められる役割りとしては、単に他の手段よりも絶対にすぐれているという場合だけではなくて、たとえば、羽田空港が超満員で、東京にこれ以上航空機を入れられない、あるいは東名高速道路が非常に混雑して、これ以上自動車を東京に持ってくることができないとか、そういった性質の物理的な限界というものが、大都市をめぐりましてある方向には必ず起こるであろうということを考えまして、そうした場合には、土地利用効率の一番いい交通手段を使うよりしかたがない。その意味で、世界じゅうどこでも大都市の通勤者の輸送につきましては、自動車ではなくして鉄道に依存している。しかしながら、その鉄道の運賃はガソリンの代金を前提にしまして、自動車を捨てて地下鉄に移る程度の運賃に当然押えられる。したがいまして、ニューヨーク、パリ、ロンドン、いずれの大都市をとりましても、鉄道経営としては赤字でございます。赤字でありましても、より多くの人が通るのではなくして、鉄道を通じて通勤させるということを頭に置いての運賃政策がとられているということを考えてみますと、他の交通手段との関連におきまして、鉄道でなければいけない。しかしながら、その鉄道は採算がとれないけれども、やらなければいけない、そうした性質の鉄道が必ずあるであろう。で、もしもいま立てておられます再建のワクのさらに追加分として国鉄に新しい役割りをさせる、あるいはいま計画されておる以上に経済成長が伸びまして、   〔委員長退席、理事谷口慶吉君着席〕 需要が幹線筋で増大するということを考えて、新しい鉄道をつくっていくということになりますれば、ある部分は赤字でやがては採算がとれましょうし、ある部分は将来とも採算が困難であるというものが含まれてくると思います。したがいまして、私は、国鉄の再建計画というのは十年間の一つの方向を示したものとして、非常に大切なものであると同時に、今後の経済の変化に応じまして、また、交通の麻痺の状態に応じまして鉄道をどのように使い分けるかということも、同時に動態的に考え合わせていただきたい。その中では、必ずしも現在の再建ワクで押えないで、むしろ再建のワクを越えて鉄道の能力をふやしていくということのほうが日本列島の交通麻痺を救うために大切ではなかろうか。  全国新幹線の九千キロがいま直ちに実現すべきものであるかどうかということになりますと、いろいろ問題があると思います。在来の線で必ずしも充足できないというわけではございません。したがいまして、九千キロを直ちに実現するかどうかは、私は問題があると思いますけれども、しかし、将来、日本列島の中でわれわれが繁栄していくということを考えますれば、国全体の交通網をあらかじめ予想しておく、将来、それが必要になったときには、こういうふうなつなぎ方をしていくというふうな青写真をかいておくことはやはり大切ではなかろうか。これを将来、二十年後に、それにこだわってはいけないと思いますけれども、こういうふうなつなぎ方をすれば全国各地が有効につながれるという可能性だけはいまの時点から考えておきまして、その中で一番大切な部分から着手していく。それが四千キロであるか五千キロであるかは、これは当たってみなければわかりませんけれども、さしあたり、国鉄の従来の線が輸送力不足で困っている。で、国鉄につきましては、よく鉄道が斜陽であるというような意味で十ぱ一からげに議論されますけれども、その中では、非常にたくさんの輸送力を引き受けて輸送力不足の分と、輸送量が減って、もはや使命を果たした分の区分けをいたしまして、その幹線の輸送力不足、東海道がそのいい例でございましょうし、東北線の南のほう、高崎線、こうしたものはもうほとんど限界にきておる。こうしたものについては、早急に増強しなければいけない。増強する以上は、最新の、一番新しい技術を使うということもまた当然であろうと思います。  ですから、まあ最初に返りますけれども、国鉄再建のそのための努力ということは非常に大切でございますが、それ以上に、日本列島の麻痺という立場からお考え願えればたいへん幸いかと思います。
  175. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 通勤新幹線の考え方ですね、この前何かで私は読んだ記憶があるのです。通勤新幹線の考え方と、それからローカル赤字線の問題。ローカル赤字線を国鉄はかかえていって、なおかつ、独立採算制のもとに財政の再建が一体できるかどうかということはだれが考えても疑問だと思うのです。したがって、このローカル赤字線の問題をどうするかということが一つある。伝えられるところによると、地方自治体あるいは地元と共同出資をして国鉄が別会社を立てるという構想もあるということでありますが、何らかの方法を講ずる必要があるだろう。  で、その次に通勤新幹線ですけれども、たとえば、これから東北新幹線、あるいは上越新幹線というものをつくったとしても、東海道新幹線とは多少違ってくるだろうと思うのですね。線路容量というものも違ってくるのじゃないか。そういう場合に、通勤新幹線といったような考え方をここに当てはめてみたならば有効に生かされるのじゃないかという気がするわけでありますけれども、その辺のところの考え方をお示しいただきたいと思います。
  176. 角本良平

    参考人(角本良平君) いまの二つのお尋ねについてお答え申し上げます。  まず第一のローカル赤字線につきましては、私、最近非常にいい例が出たと思いますのは、大阪府の泉北のニュータウンにつきまして南海の枝線をつくるということで、南海電鉄としては、これは経営上不可能である、しかしながら、そこのニュータウンを生かすためには、住宅政策として通勤用の鉄道が絶対必要であるというときに、大阪府で半分近くを出資されたと思いますけれども関係の公共事業関連会社がやはり出資されまして、特殊な会社で鉄道を建設して、実体的な鉄道輸送業務は南海にまかせるという姿で泉北ニュータウンの枝線ができるという話を聞いております。こうした形でのローカルの通勤輸送の解決をするというのが今後の方向ではなかろうか。いままでの鉄道では、もはや自動車時代には対抗できない。しかしながら、自動車では通勤はできないという姿になっておりますから、国鉄がどのような形でなされるかは私はわかりませんけれも、いまの泉北のような姿が非常にいい参考になるのではなかろうかと思います。実は現在の二万キロの国鉄の営業キロのうちで、半分の一万キロで九割の旅客、貨物を運んでおります。あとの半分の一万キロでわずか一割しか運んでいない。こうした一割しか運んでいない一万キロは、もはや使命を終わりつつあるのではなかろうか。近い将来に、これをかかえておりました場合の財政補助金が非常に膨大なものになるおそれがあると思いますし、逐次これを撤去して、最終の姿としては、現在までの線は一万キロにとどめるということが妥当ではないか。これは交通体系から見てそれで十分であり、逆に九割を運んでおる一万キロについては徹底的に増強するという必要があると思っております。  それから第二番目の点の通勤新幹線でございますが、私がこのことを申し上げた一番大きな理由は、われわれが過去三十年間、東京や大阪の付近におきまして新しく鉄道路線をつくるということをほとんどしなかった。これはできなかったと言ったほうが正しいと思いますけれども、都内の地下鉄とそれから末端の枝線のようなものだけは、これは何とか一部できました。地下鉄はかなりできたわけでありますが、土地供給をふやすようにという意味の新しい線をほとんどつくらなかった。いまわれわれが利用しております。国鉄、私鉄のほとんどが大正末期から昭和十年ごろまでに仕上がっている線でございまして、その時期には土地問題は起こらなかった、通勤難もそれほど深刻ではなかったわけであります。人口は非常にふえましたけれども、交通の能力が対応できたのです。現在の時点でもう一度土地に対して鉄道を延ばしていかなければならない。土地が得られるように延ばしていくということになりますと、従来の宅地よりもさらに一歩、外に出るだけの技術があるのだから、もっと遠くまで、しかも短時間で運べるようになる。その段階において、もう一度、昭和の初めのように鉄道をつくって、住宅問題を解決するという方向で考えたらどうかということで、通勤新幹線とか通勤革命ということばで申し上げました。  そこでいま御指摘の、それでは全国新幹線のある部分をそのようにという御指摘でございますが、私も東海道新幹線と北のほうに延びる新幹線とは輸送量の比重が違うと思います。湘南電車がちょうど朝晩のラッシュの時間だけ急行列車を排除しまして通勤客を運んでおりますような姿で、北のほうの新幹線は、たとえば朝の七時から九時とか、あるいは夕方の五時から七時という時間帯にはもっぱら通勤用に使うということは、ある程度は考えてもいいのではなかろうか。また、それが経営上から見ましても、線路の有効利用につながるのではなかろうか。新幹線の速度を使いますれば、大体東京から百キロ離れた距離でありましても——ちょうど大阪から米原まで四十数分で行けると思いますけれども、そういうような形で通勤用に使えるだろうと思います。
  177. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それから、国鉄の財政の問題を考えた場合に、これからの国鉄のあり方はいろいろ従来のワクの中に閉じこもっておったのでは財政の再建もむずかしいし、それからなお輸送需要に十分にこたえられるかどうかわからぬ、そういう点ではかなり手を入れる必要があるのじゃないかと思うのでありますけれども、その「交通技術」にもだいぶこまかく述べておられますけれども、これからのあるべき国鉄の姿、あるいは国鉄とか私鉄とかを離れて、鉄道自体日本列島の中で占める役割りということを言われておったんですけれども、鉄道網のあり方というものはどういうふうに考えられるかお伺いしたいと思います。   〔理事谷口慶吉君退席、委員長着席〕
  178. 角本良平

    参考人(角本良平君) お答え申し上げます。  私は幾つかの条件を考えなければいけないと思いますが、まず第一は、物理的に輸送需要に対応できるというだけの輸送力を何らかの手段で持っていなければいけない。ただ、国民の側の需要の動向というものがまず第一に出てまいります。所得水準が上がりますと、各人の家といいますか、おそらく大部分の方の家庭に乗用車が持たれる。農民はもちろんトラックも持つという姿になりまして、まず自分のうちの道具を使えないかということに変わっていくと思います。それからその次は、自分のうちの道具を遠過ぎて使えないという場合には、もっと早くてサービスのよいものということがまず選ばれる。そういたしますと、たとえば長距離を行く、しかも近くに空港があるということになりますと、航空機の利用ということが当然考えられると思います。それから貨物輸送につきましては、私は先ほど申し上げたように、日本列島が非常に高密度社会でございますから、できるだけ海を利用するということで考えたほうがいいと思います。ですから、一県一港がいいかどうかは別としまして、いま各地で港をつくるという機運がたいへん高まっておりますが、これは土地の有効利用とか、陸上の混雑を避けるためにも、港をつくりまして海と積極的に利用する。そうした意味で、鉄道の貨車も、何もレールの上だけを走らせる性質のものじゃございませんで、船を使って大量に運んだほうがよければ、そうすべきだと思うのです。現実に乗用車をたくさん運ぶ船がたくさんできて、そのほうがトラックや貨車で持ってくるよりも安いわけですから、貨車を船で運んだほうが安い場合も必ずあり得ると思うのです。これは可能性でございますから、現実の条件に当たらなければ、もちろんいけない。そうしたふうにして旅客のサービスにおきましてはより早いもの、貨物につきましては、一般論として、より安い方法が一般に選ばれていく。この国民の選択の動向といいますか、選択の方向というものはわれわれは尊重しなければいけない、型にはめることは、これは絶対にできないと思います。その国民の動向を尊重した上で採算のとれるものについては、合理化を徹底いたしまして採算とれるように努力する。また、価格政策におきましても、価格をある程度採算とれる方向に直していくということは当然必要であり、そういった意味で、定期運賃を極端に割り引くということは私はおかしいと思います。むしろモスクワでも、ニューヨークでも、地下鉄は割引をしておりません。そういった姿も将来当然考えていいと思っております。ただ、そういたしましても、なおかつ充足できない需要が必ず残る、これは物理的不可能という意味で残るわけでございます。  で、東京都内の混雑というのはごらんのとおりでございまして、これを自動車交通で解決する方法というのは、世界じゅういろいろな人の意見を聞きましてもまず絶望的である。それはニューヨークにおきましても、ロンドンにおきましても絶望的でございます。で、そうした場合の、たとえば通勤用の鉄道というものは、いま大勢といたしまして、建設費は国と地方公共団体が負担する、そうして運営費だけを運賃から出すという方向に変わってきております。で、日本の場合でも、自動車が普及してまいりますれば、もうそのように変わらざるを得ない。そうしてまた、国鉄の中で——これは東京の特色でございますが、通勤輸送において国の鉄道がこれだけ大きな比重を占めているところは世界にございません。その次がロンドンでございますけれども、ロンドンよりもはるかに大きな役割りを占めておる。そうしたものを国鉄の中に含みまして経営を考えるということになりますと、ある部分におきましては、当然、建設費は国や地方団体が負担するということにならざるを得ないのじゃないか。で、あるいはまた、将来の航空機に対する需要がこのままで伸びてまいりますと、二十年間にたとえば二十倍になるというふうな予想がございます。これはいろいろな予想がございますから、どれが当たるかはわかりませんけれども、それに対してかりに東京付近で第三空港をつくりましても、十倍までしか能力はふやせないというふうな予想が一方にあって、そうした予想で比べてみた場合には、その満たせない部分の、残りの十倍分だけは、これはかりに航空機なれば独立採算がとれるといたしましても、独立採算がとれない鉄道にやらせざるを得ない。その赤字分は国が補助をする。そうして全国の交通を確保するといったこともやむを得ないのではなかろうか。  で、まあまとめて申し上げますと、鉄道のあり方といたしましては三段階あったと思います。まず最初は、歩くか鉄道に乗るかしか方法がなかった。自動車以前におきましては、山の中のローカル線で、いかに赤字が出ましてもそれは鉄道として公共交通機関を維持するよりしかたがなかった。しかしながら、そうしたものの使命は終わったと思います。それから、第二段階として、東海道のような明らかに採算がとれるという部分、これは将来とも採算がとれる。で、第三段階と申しますのは、自動車が普及して、しかも自動車が行き詰まるがゆえにそのかわりとして存続させなければならない鉄道、そうしたものについてはどうしても国なり地方団体の補助が必要である。もちろん、技術革新に基づきましての合理化は絶対に必要でございますけれども、なおかつそういうものが残る、それがいままでの世界の経験ではなかろうか。で、日本もそれを参考にして今後の交通政策を考えていただいたらどうだろうかと思うわけでございます。
  179. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連。  角本さんのたいへん私たちに勉強になる意見を伺いましたけれども、先般もあなたの財政再建十カ年計画に対する基本的な考え方を拝見しまして、たいへん興味を持っておるわけですけれども、それでいい機会ですからね、いま瀬谷委員からいろいろ今後の輸送状況についてもお話があったんですけれども、私はむしろあなたのその裏づけになる財政の面ですね——いまも新幹線の問題で論議をしておるわけですけれども、十一兆三千億ですね、膨大な予算をこれ必要とするわけですね。しかし、その予算がいまからきめるということですから、これは雲をつかむようなことですね。ちょっとぴんとこないのですけれども、だから、そういうことが一面にはあるわけでね、これからやらなければならぬことが。それで、いまきまっております国鉄財政再建十カ年計画というものは、十年間に二度運賃を上げて黒字経営に移行するというような、こういう内容であるわけですね。若干の利子補給もしておりますが、私どもは、これではとても、二回やってみても黒字になるということは不可能だろうと思うんですよ。予算委員会でもいろいろ総裁にも伺ってきましたけれども、最善の努力をされるそうですけれども、なかなか総裁のおっしゃるようにいかぬと、われわれはこう見ておるわけですね。そこをあなたが、勇気を持ってというか、当時、監査委員だというんですが、そういう立場にありながらも、国鉄の今後のあり方について大胆な提言をされたと思うんですね。ですから、いろいろ、国の援助を得なきゃとか、抽象的にあなたおっしゃっているわけで、よくわかりませんから、もう少しその点を、あなたの考え方をはっきりと述べていただけませんか。財政再建に対する、いまの、現状のものについては非常に無理だと、この基本だけでけっこうですがね、その理由をひとつ伺いたいんです。
  180. 角本良平

    参考人(角本良平君) お答え申し上げます。  財政再建につきましては、私は、特に重大な条件は二つあったと思います。それば、この発表したものにも、冒頭に書いたわけでございますが、交通体系の中の変化といいますか、専門家の中では、よくシェアという議論をいたしますが、鉄道が全国の交通量の中で何%を占めるか、そうしたものの変化が、われわれが予想していたよりも急速に進む場合には、鉄道が打撃を受ける。おそらく、鉄道がより多くを占めるよりも、自動車あるいは航空機がより多く伸びるということは大体間違いがない。うまくいきまして大体予想どおりではないかというのが、四十三年から四十五年ぐらいの姿を見ますと、そういう心配が出てくる。  それからもう一つは、給与ベースの問題、これも書いておいたことでございますが、給与ベースのほうが、予想よりも上がるといいますか、このことは、ひいては、日本経済が予想よりも、より大きく成長したという言い方になるかもしれません。そうした中で、二つの条件が狂えば、これは再建計画は非常にむずかしくなるかもしれないということであります。  で、私は、その点、二つは心配していた点でございまして、まあもちろん触れたわけでございますが、ただ、十年でございますから、後半のほうで、そういった可能性がないとは言えない——可能性がないといいますか、もう一度予想していた線に接近するという可能性が、これはないとはだれも言えないことでありますけれども、まあ常識的に見ますれば、いまの伸びがずっと続いていけば、おそらく再建の条件というのはよりむずかしくなる。ただ、私が申し上げたかったことは、国鉄あるいは鉄道という交通手段を、財政再建というワクだけで考える最近の考え方だけでは、日本列島の交通がうまくいかないのじゃないか。ですから、国鉄の再建を考えると同時に、それにプラスするものがもし必要ならば、そのプラス分については、別途の考え方をしていかなければいけないだろう。そうしたプラス分を考えて全体を考えますれば、十年の再建計画ということで独立採算ができるか、あるいはそれ以上に国の補助が必要になる。しかし、国の補助を入れても、われわれが必要とする交通手段が、それによって確保されるならば、それは一つの方向ではなかろうかという意味で申し上げたわけであります。  まあ、現在の時点では、私は経営はかなり苦しくなっているといいますか、条件はより悪くなる方向にあると思いますけれども、しかし、同時に、交通麻痺のほうも、われわれが予想していたよりも早くきつつある。ですから、交通麻痺のための対策を早く打っていただかなければ困るのではなかろうかという気がいたします。
  181. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  182. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 速記を起こして。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会      —————・—————