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1970-04-23 第63回国会 参議院 運輸委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十三日(木曜日)    午前九時二十三分開会     —————————————    委員の異動  四月八日     辞任         補欠選任      渡辺一太郎君     大松 博文君      加瀬  完君     鈴木  強君  四月十日     辞任         補欠選任      大松 博文君     渡辺一太郎君  四月十三日     辞任         補欠選任      鈴木  強君     加瀬  完君  四月十八日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     鈴木  強君  四月二十三日     辞任         補欠選任      瀬谷 英行君     加瀬  完君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         温水 三郎君     理 事                 岡本  悟君                 金丸 冨夫君                 谷口 慶吉君                 藤田  進君     委 員                 河野 謙三君                 佐田 一郎君                 重政 庸徳君                 平島 敏夫君                 渡辺一太郎君                 岡  三郎君                 加瀬  完君                 鈴木  強君                 森中 守義君                 田代富士男君                 三木 忠雄君                 山田  勇君    国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君    政府委員        内閣法制局第四        部長       角田礼次郎君        運輸政務次官   山村新治郎君        運輸省航空局長  手塚 良成君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        建設省計画局総        務課長      河野 正三君    参考人        新東京国際空港        公団総裁     今井 栄文君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○運輸事情等に関する調査  (日航機乗っ取り事件に関する件) ○新東京国際空港公団法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 温水三郎

    委員長温水三郎君) ただいまから運輸委員会開会いたします。  この際、委員長から発言いたしますが、去る七日の参考人出席要求の件につき、諸般の事情により、「よど」号乗員を招致できなかったことに対し、ここに委員長として遺憾の意を表します。
  3. 藤田進

    藤田進君 全会一致できまったものが、出席が可能であるのにかかわらず、特定の方面から差しとめられたことを非常に遺憾に、その意味で、思います。今後、将来、そういうことのないように強く要望いたします。  後ほどおはかりになるでしょうが、本日、石田機長ほか招致して事情を聴取することになっておりますので、その結果等を見て、今後対処いたしたいと、かように考えております。     —————————————
  4. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 運輸事情等に関する調査議題といたします。  この際、おはかりいたします。  本日、日航機乗っ取り事件に関し、今後の対策樹立のため、本委員会調査団東京国際空港に派遣することとし、現地において関係者意見聴取その他、これら関係調査を行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、調査団構成等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。    午前九時二十六分休憩      ——————————    午後二時十分開会
  7. 温水三郎

    委員長温水三郎君) ただいまから運輸委員会開会いたします。  新東京国際空港公団法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 加瀬完

    加瀬完君 運輸省に伺いますが、成田付近が新東京国際空港敷地として選定されました時点状態について第一に伺いたいのでございますが、結局、新東京国際空港が必要になった理由として具体的にあげられましたものは、羽田の狭隘それから超音速機就航が予定される。さらに、ブルー14等で横田、厚木、立川、入間川、こういった米軍飛行場上空というものはブルー14によって制限をされておりますから、千葉なり茨城なり、この周辺空港を求めざるを得ない。すなわち空域成田付近以外にあいておらない、こういうことで浦安なり木更津なりあるいは霞ケ浦なり千葉沖なり、九十九壁とか富里とか転々と検討をされました結果が、一応富里に落ちついたわけでありますが、それがやがて移って成田になったと、こういうように了解してよろしゅうございますか。
  9. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 大体先生のおっしゃるとおりでございますが、必要性につきましては、前段仰せられた羽田における需要増に対応して羽田だけでは不十分だということ、それから新しいSST対象空港が必要だということ、そういう観点からさがしました結果、ブルー14というものがあってといいますか、四空港関東平野西部方面一帯にあるということで、さがしていった結果がただいまのよう成田地域であると、こういうことになったわけで、加瀬先生のおっしゃる御趣旨のとおりであります。
  10. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると問題が幾つかあるわけですが、SST就航というものが予想されて、新東京国際空港必要性が新しく浮かび出したということであれば、現在のSSTに対する考え方というものは世界航空界でだいぶ変わってきておる。SSTというものの騒音被害というものを考えますときに、SST就航させることは人命優先ということからいうならば、非常に問題があるんじゃないか。学者によってはSST就航不可能ということになるんではないか、こういうことが強く打ち出されてきておるわけですね。そうなってまいりますと、一体SSTのために必要な新国際空港というものは、しかもああいう内陸に、SST被害が非常に問題になるときに、三、四年前の時点と同じにSSTのために成田空港を必要とする考え方には検討を要するということになってきておるのではないか。この間、朝日新聞もこの点を指摘しておるのでございますが、成田空港指摘しておるのではなくて、SST就航というものが問題になってきておる点を指摘しておるわけでございますが、この点を運輸省としてはどうお考えになりますか。
  11. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) SST自体につきましては、御承知ように二種類のSSTがある。英仏共同開発しておりますコンコードというのとアメリカボーイング社開発しておりますボーイング2707−300型というのとがあるわけでございまして、前者のほうは、この性能から見まして大体現状の三千メーター滑走路で使用可能。また、この飛行機出現も大体四十八年前後ということで、一応現段階におきましてその過程では順調に進んでおるというふうに聞いております。日本航空におきましても、この飛行機をすでに発注済みであるという状態でございます。  問題は、四千メーターの長さを必要というふうに考えました前提SSTは、アメリカボーイング社開発をしておるマッハの二・七というスピードSSTでございまして、このSST実用化されます段階では、滑走路としましては現在の三千メーターでは不足であるということで四千メーターを必要と考え、その四千メーターをつくるにつきまして、現状羽田ではこれがカバーできないということ、量的に足りない面とこういった質的な面とあわせて、成田空港を必要として計画、実施されてきておるわけです。このボーイングの後者のアメリカ関係のものにつきましては、実は当初計画をされ予定をされ、エアラインに注文が求められました段階よりは相当に時間的におくれてまいりました。いろいろな理由があるようでございますが、たとえばスピードを出しますについては、材質そのものからが従来使われていないチタンの合金を使うというような画期的なことから始まり、可変翼を当初使うというようなことを想定されましたのが、それでは重量関係から不適切だ、重過ぎるというようなことで、これがまた固定翼に変わり、その間またいろいろ開発費問題等も起こりまして……。
  12. 加瀬完

    加瀬完君 私の質問に答えてください、そういう質問はいたしておりません。
  13. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 結局、そういう意味でおくれましたけれども、これは計画自体としては現在進んでおる段階でございますので、この飛行機ができますことによってやはり四千メーター滑走路が必要ではないかと考えるわけです。
  14. 加瀬完

    加瀬完君 私は四千メーター滑走路が必要であるかないかということを伺っておるのじゃない。結局四千メーター滑走路を必要とするということは、いま御指摘ようSST等音速機出現というものは予想されましたので、四千メートルの滑走路ということで、この超音速機受け入れようではないかということが、成田空港を必要とした一つの大きな理由ですね。ところが、超音速機ということになれば、ソニックブームというものを予想の外にして就航をさせるわけにいかない。ソニックブームのおそれがあるということになれば、これは非常に内陸の飛行ということになると危険だというので、スウェーデンとかノルウェー、オランダ、スイス、こういう国はSST国内通過というものは認めないというような取りきめが行なわれつつありますね。こういう世界世論が、SST実用化というものにはソニックブームだけではございませんが、非常に公害ということで、人間といいますか、人命優先というものを考えるならば、こういう大きな被害が予想されるものを陸地上空通過させることは不適切であるということで、就航をさせないどころじゃない、上空通過も禁止するという世論が起こっているときに、四、五年前のように、日本の国だけはSST就航させましょう、そのために成田空港が必要でございますということには、これは簡単に割り切ってはいけないではないかという時点になっておるんじゃないか。こういう世界世論が、超音速機公害というものが予想されて、超音速機就航というものを無条件に認めるということは非常に被害が大きいという世論が出て、SST実用化できないではないかということにまで世論が発展をしていますときに、日本だけが無条件SSTの乗り入れを認め、あるいはSST就航というものだけを目当てに四千メートルの滑走路をつくるということは、世界航空常識からいっても考え直すべき時期にきているんじゃないかという、日本航空界あるいは航空行政担当者はそういう心配がないとおっしゃるのかどうか。そういう点ですよ、私の質問をしておりますところは。
  15. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) SSTにつきましての公害の問題でございますが、これは二つやはり公害問題がある。一つ騒音であり、一つソニックブームである。  騒音の問題につきましては、これは前々も御説明申しておるかと思いますが、アメリカの問題のSSTにつきましては、連邦政府のいわゆる仕様書ボーイング社に対してこういう性能を持つべきものだ、開発をしなさいという仕様書の中に、現行のDC8よりは大きくないことということになっておりますので、現在実験機が出ておるわけではございませんが、一応そういった前提のものができ上がると考えておりますので、これに対応できる騒音対策というのは考え得るのではなかろうか。さしてSST特有騒音問題ということにはならないのではないか、かように考えるわけです。  いま先生、問題にしておられますのは、次のもう一つソニックブームの問題であろうと思うわけです。このソニックブームにつきましては、実は先生も御承知のとおり、アメリカその他におきましていろいろな実験をなされておることは事実でございます。しかし、その実験の結果、飛びようによって非常に被害がある場合もありますけれども、また、その被害をなくするような運航の方法ということが考えられ得るということで、したがって、陸地続きのところを飛ぶということについては、その飛び方にいろいろな考慮を払う必要がある。たまたま日本アメリカというような海が大体大半のところにおきましては、そういった問題はまずないんではないか。少なくとも日本国内におきましては、いわゆるソニックブームの発生しますよう地点、これはいわゆる高度を相当とりまして、非常に高いところで初めて巡航のSSTの超音速を出すことになりますので、そういった地点陸地を離れて海上になってからであるということで、日本サイドにおいては問題はないと考えておるわけですが、相手方のアメリカ等におきましては、アメリカ横断というような場合に、陸上等に何らかの問題があるんではないかというようなことはいろいろ議論になっておるかと思います。したがって、この飛行機はまず現状段階ではできると思いますが、それを運航させる面においてのそういった考慮ということはいろいろ払われながら、これは進むと思われますので、やはりこれに対応する飛行場というものは建設を促進すべきではないか、かように考えております。
  16. 加瀬完

    加瀬完君 この内陸空港に超音速機離発着させるということは、非常に危険があるということは、一般の世論ですね。したがいまして、アメリカなんかでも、超音速機離発着飛行場というものは、これは海面の埋め立て等によってつくられた飛行場というものを利用すべきではないか、内陸飛行場では危険が多い、こういわれておるわけですね。で、ソニックブームが起きるような現象は相当程度高度をとったところであるから、すなわち日本アメリカとの間の就航であれば、太平洋上だということになりますが、かりに成田空港というものからSSTが離陸をするとすると、ソニックブームを起こすようなところは、これは太平洋のまん中ではないですね。それは沿岸漁業なり近海漁業なりの漁業区域ですね。そうすると、そこにはたくさんの漁船がおるわけですよ、あるいは漁業区域ですよ。そうすると、ソニックブームによって船なり魚類なりに大きな被害が起こらないという保証がどこにもないわけです。それから、ソニックブームが起こる心配のあるような大型の超音速機が、騒音についても、騒音が防止できるとか、騒音対策が立つとか、そういうようななまやさしいものではないと思う。現状プロペラ機にあまり違わないような小型のジェット機でも騒音被害というものは大きく出ているわけですから、こういう点、日本運輸行政というものは、非常に被害の、航空被害といいますか、航空公害というものに対しての研究というものは、私は不足だろうと思う。特に超音速機などに対する被害予測というものはもっと十二分にはかられなければならないと思うわけですが、非常にこの点は、私はおくれていると思わざるを得ません。  そこで、富里空航の場合は、これは国際国内兼用空港であって、四千メートル滑走路が二本、二千五百メートルの滑走路が二本、三千五百メートルの横風用滑走路が一本、面積は、当時の説明によりますと、坪でいえば大体七百万坪、そうして、羽田空航機能というものは、もうほとんど富里へ将来移す、こういう構想であったわけですね、富里案は。
  17. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 当初の計画は、ただいま先生の言われましたとおりでございまして、国際線は全部こちらに移す、羽田をオーバーフローしてくる離発着回数が十七万五千回をオーバーしてくれば、そのものは新空航国内線でも吸収をする、そういうのが当初の計画で、滑走路は総計五本を予定したわけでございます。
  18. 加瀬完

    加瀬完君 ところが、富里移転戸数が多い、住民に反対が強い、土地取得困難等理由閣議内定がくつがえされまして、成田構想というものが打ち出されたわけですね。その成田構想というものは富里構想に比べて大体、規模で二分の一、富里空港よりもはるかに縮小された形で出てきた。こういうことですね。
  19. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 結論的には、面積としましては千六十ヘクタールで、当初のまず約半分、滑走路の本数も三本ということになりました。これはやはり地元の皆さんとの協力態勢、あるいは端的に申し上げて農地買い上げ面積をできるだけ最小限にするという高度の配慮に基づきまして、こういった飛行場ということになりました。これは決して十分なものとは考えてはおりませんけれども、当初の計画に比べれば、縮小されたもので、十分ではないと思いますけれども、まあ前々から申し上げておりますとおりで、これで、二十六万三千回という離発着回数がカバーできることによって、関東地域における飛行機離発着回数の面においては非常に大きな、有益な飛行場だと、こういう考え方でおります。
  20. 加瀬完

    加瀬完君 成田案富里案閣議内定がくつがえされまして、急遽成田案というものが生まれてきた関係もありまして、成田案空港としてはたして適格条件を備えているかどうかという十分な調査というものは行なわれていませんね。この点どうですか。事前調査が行なわれていますか。
  21. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) この土質、あるいはボーリング、あるいは排水、あるいは農地畑地かんがい、あるいは河川の改修、そういった面でこれまでいろいろ先生からも御指摘がございましたような点で、十分な事前調査ということはあるいはなかったという結論になるかとも思いますけれども、当面飛行場を建設します上においては、まずこの程度でカバーできるという程度調査はされておる、かように考えております。
  22. 加瀬完

    加瀬完君 調査ができているかどうかという前にね、調査は行なわれておらないでしょう。富里をやめて成田にするというので、成田適格条件かいなかという検討十分事前になされておったと、こういう手続は踏まれておらない。しかも、曲がりなりにも富里航空審議会というものにかけて、その答申を待って富里案というものが出てきたわけでございますが、これは全然航空審議会にも何にもかけないで政府がいきなり成田という位置決定をしたと、こういう経緯でしょう。航空審議会の議を経てばいませんね。
  23. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 航空審議会諮問をして答申を得ますときに、答申を得ました内容としては、富里付近ということになっておりました。付近とはどうかという具体的なあるいは法律的な問題があるかと思いますけれども、富里中心にした周辺というようなことで答申は行なわれたかと判断しています。まあ富里に比べまして新空港、今度の成田敷地というのが国有地あるいは公有地というものが全体の三七%活用できる。土質その他の面につきましては、御承知の問題であります関東ローム層等は、これは関東平野一面に問題があることであって、富里から成田に移るということによって特段の相違ということにはならない。先ほども申し上げました河川その他の具体的なこまかい内容問題等につきましてはいろいろ問題も変わってきたかと思いますけれども、基本的な敷地の問題としては変わりなかろう、かようなことで答申の線にも沿っておる、かように考えます。
  24. 加瀬完

    加瀬完君 富里付近という場合は富里八街山武町の一部ということであったわけですね。成田三里塚なり、山武郡柴山町なりという区域対象にはされておりませんでしたね。したがって、気象条件にしても地質条件にしても、あなたの御説明は大体同じであろうと想定されるというだけでありましてね、確実に調査をして、富里と同じよう成田が若干の条件も変わっていないという調査はされておらないでしょう。しておらないでしょう。航空審議会成田地域まで含めてこの地価が適当だと、そういう答申はしておりませんよ。
  25. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 答申は、先ほど申し上げましたようなことで、そのものずばりというよう言い方はこれはなかなか答申自体としましても困難な言い方になるわけでございまして、空港敷地を選択します条件を一応満足しておるというよう意味富里付近——管制の面あるいは都心からの距離の面、気象の問題、そういったこと等を中心にいたしまして、この辺は大体富里付近という内容に当たる。たとえば霞ケ浦埋め立ての問題も当時出たわけでございますし、あるいは浦安あるいは九十九里浜そのほかいろいろ出ましたが、そういったところの候補地の違いというものに比べまして、富里ないし成田というのはまず一体と考えてしかるべきではなかろうか。特に、繰り返すようでありますが、国有地公有地というものが三七%もあって、農民からの土地買い上げ面積が少ないという点において、地元協力がより得られるということを重視をいたしまして現在の成田にきめられたわけでございます。
  26. 加瀬完

    加瀬完君 それはあなたのほうで、運輸省でそういう判断をし、推量をしたにすぎないですよ。くどいようですけれども、富里付近航空審議会提出をした内容は、富里八街山武町ということを富里付近とはっきり規定しているわけだ。そこには成田三里塚周辺というものが含まれておらなかった。これはそうでしょう。ただ、至近距離にあって土質等も同じようであるし、国有地もあるからこっちに移したほうが早く飛行場ができるであろうという推定を、判断政府でしたにすぎない。航空審議会の、成田富里よりもはるかに適地であるという答申は行なわれておりませんよ。おりますか。
  27. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) この両者の敷地の適不適ということで成田のほうが、ただいま申し上げましたよう飛行場設定のための要件上よりベターであるという意味成田がどうこうというよう意味合い答申はなされておらないことは当然でありますが、まあ答申というものを求めます趣旨も、これは御承知のとおりで、大臣の諮問に基づいて一つ意見という意味で出す。もちろんこれを尊重しなければならぬということにはなりますが、これの一部一句にもはずれてはならないということではないと理解をいたすわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、この辺一帯というのが特に管制的な見地から見ますとまあ同様な立場に立つ。こまかい気象条件等につきましては、おっしゃいますように、この敷地の中で具体的な気象を測定するというようなことはやっておりませんし、まあ当時の地元情勢といたしましてはそういうこともできる情勢でもないということから、周辺のおもだったところがら総合判定をするというよう気象調査ということをやったような次第でございまして、そういうよう結論からいたしまして、大きな立場審議会答申から離れておるということにはならないかと思いますし、結果論と言えば言えるかもしれませんが、やはり何といいましても用地の取得ということについての難易の度合いを比較いたしますと、これはかりに政府でない場合であっても、先ほど申し上げますようなパーセンテージから現在の成田のほうが土地取得が容易であるという結論になったかと思うわけでございまして、そういった意味合いで今度の成田がきめられたと考えております。
  28. 加瀬完

    加瀬完君 くどいことを繰り返すようですけれども、航空審議会答申はないですよ。これはお認めになるでしょう。しかし付近の、富里答申があったので大体類似点があるし、しかも土地取得にこちらのほうが有利だと政府判断でここにきめたということにすぎないでしょう。そこで、あなたの説明もありましたように、結局空域——空があいているところはこの辺だ、だから富里にしても三里塚にしても、空の関係では似たようなところだから、富里がだめならこちらのほうがいいであろう、それから国有地が多くておそらく取得しやすいのではないかと、こういうことで政府の、これは航空審議会答申を待たない独断によっておきめになったということでしょうよ。しかし、富里案のときは住民対策だの騒音対策だの、あるいは代替地だの、農家の移転だのということが非常に議論された。少なくも政府が新しい航空基地というものを取得ようと思うなら、そこで一体成田においても住民対策をどうするか、公害対策をどうするか、こういうものが検討をされて、その後に位置が決定されたというならばうなずける面もある。全然そういうことは検討されずに富里から成田へ移したにすぎない。住民対策というものありましたか、住民対策のための事前調査というものが成田案においてありましたか。
  29. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 先ほどの航空審議会答申との関係でございますが、答申は、先ほど来も申し上げておりますように、富里付近と、こういうことになっておりまして、その内容が、先生のおっしゃいましたような三つの村といいますか、そういう限定的な答申には実はなっておらないわけでございます。繰り返すようでございますけれども、付近一帯というのが相当広範なのでありますけれども、成田現状の場所を含んでも差しつかえなかろうと、かように考えるわけでございます。  後段の地元対策の問題につきましては、富里付近のこの答申の前後におきましては、おっしゃいましたように具体的な対策というようなものがそれほど十分練れているとは率直に申し上げて言えないと思います。しかし、成田を決定いたしますにつきましては、この位置決定と同時に、すでに御承知のとおり、地元対策というのも閣議決定をされておりまして、これは私どもと地元千葉県、あるいは県はさらに関係公共団体というのと皆さん協議の結果、そういうものがきめられて、政府においてそれが決定をして今日関連公共事業として進めつつある、こういう経過だと考えております。
  30. 加瀬完

    加瀬完君 くどいようですけれども、航空審議会の出した案はちゃんと青写真で富里村、八街町、山武町というところに空港の予想図というものをきちんとつくってあるんじゃありませんか。その中には成田は入っていませんよ、芝山町は入っていませんよ。富里付近といったらそのあたりどこでもいいという、答申からは、解釈は、いままでの御説明からは出てこないはずですよ。その問題はそれで私も打ち切ります。  そこで、いま局長は住民対策をやっていると言うけれども、どういう住民対策をおやりになっているんですか。これも住民対策ですか。芝山町の町議会で、先年度になりますね、三月の町議会で、空港対策調査委託費というものを町会議員一人当たりに一万三千円ずつ支払いましたよ。これは公団が出したんですか、県で出したんですか、町独自で出したんですか。これは総裁でもどちらでもよい、お答えください。
  31. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) いま初めてお伺いするんで、公団は出しておりません。
  32. 加瀬完

    加瀬完君 空港対策委託費というのはこれは何ですか。結局反対派を賛成派にかえてくれる説得の費用ということにもこれは受け取れる。こういうようなことは予算を組んでたくさんやっている。しかし、ここで困っている農民の生活権というものをこちらで保障をいたします、ここの被害区域はこちらに移転させて被害を防ぎますということは、具体的には、閣議の申し合わせ事項としては、そういうことをやるということになっている。しかし、この間も地方行政で周辺整備の法案が通りましたけれども、賛成者にはプレミアムを幾らでも積み上げますけれども、ほんとうの意味で生活に困っているものの生活権の回復なり、あるいは農業経営権の移転なりというものに対しては具体的に何もやってないじゃないですか。  そこでさらに質問を進めますが、もう一つ大きなずさんは、富里空港案のように、成田空港によっては国際線、国内線というものを羽田にかわって処理するというもう機能はなくなったわけですね、機能は修正をされたわけですね。
  33. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 羽田にかわってという意味でございますが、量的な問題として当初の計画より変わったかと思いますけれども、質的な問題としましては当初の問題と変わってないというふうに考えます。
  34. 加瀬完

    加瀬完君 質的にも変わったのじゃありませんか。たとえば国内線にはここは使わない、国際線に使うというわけで。そうすると国際線、国内線あわせての乗降客の予想はくずれてきますね。
  35. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 羽田は御承知横風用滑走路を二千五百メートルにいたしまして、いまCランウエーで離着陸をカバーいたしますが、その回数がおおむね十七万五千回程度ということで、これの中から国際線は当然羽田成田に全部持っていく。しかし、国内線の現在の状況からいたしますと、この十七万五千回が羽田の限界に到達するのはそう遠くはない。これに到達した次には、成田のほうが国際線とあわせてもなお容量があります場合には、まずここに国内線のオーバーフローした分を移し、ランウエーの長さは一応二千五百メートルを想定したのも、一応そういうことから二千五百メートルを想定したのであります。しかし、将来さらにその先の問題として、それでもなお不足になってくるという場合においては、また第三といいますか、次の空港としての問題が生じてきます。その際に、さらに国際線、国内線のいろいろの配合の問題が起こってくるかと考えておりますが、当面成田におきましては、当初考えたと同じよう国際線を主にはいたしますが、国内線も羽田からあふれてくればここで当面カバーしていく、こういうふうに考えております。
  36. 加瀬完

    加瀬完君 それは遠い将来そういうことになり得るかもしれませんが、四十六年なら四十六年という時点を想定し、あるいは四十八年なら四十八年という時点を一応基準に考えますときに、国内国際線両用にあの飛行場が使えるという状態ではないでしょう。四千メートル滑走路一本というのがいまの工事目標でしょう。四千メートル滑走路一本ということは、これは国際線で、国内線は将来二千五百メートルというものをつくって、あるいはそのほか二千メートルなり三千メートルなりというものをどこかにふやすというならば別ですが、拡張はしないと、こうおっしゃっている。まず四千メートル滑走路をつくるので。横風用はどうかというと、横風用は二期工事だ。そうすると四千メートル滑走路一本で、離着陸のやつは初めよりもうんと量的にも制限されるでしょう。したがって、質的にもこの空港内容は変わってくるでしょう。第一、交通対策にしても、先ほど御説明がございました用排水の対策にしても、安全地域の確保にしても、それから送油施設といいますか、油を送る施設にしても全然まだ手がついていないものも多いでしょう。こういう状態で、いままでの富里構想ような四千メートル滑走路二本で大型機をさばくということにはなり得ないでしょう、成田空港は。ところが、公団法によれば、少なくとも長期にわたって国際空港として使用できるものでなければならないとある。長期とはどのくらいだと言ったら最低十年だと言う。こんなよう空港でこれからの航空機の需要というものを十年間ささえられるという条件成田においてはないでしょう。それでも質が違ってきていませんかと申し上げるのです。  第一の問題は、富里空港案より二分の一に縮小されているということは、これは質が違ってくることにならないか。そうして第一期工事と第二期工事とに分けて、第一期工事は四千メートル一本ということになれば、明らかにこれは質の変化というものは出てくるんじゃないか。不完全空港ということにしかいまの状態では考えられないのじゃないか、成田は。初めの構想とはまるきり違う。少なくもあなたが、航空審議会富里案を出して、それを受けて、ただ位置だけを富里案成田に移したんだということにしては、まるきり富里空港案と成田空港案では違う。したがって、航空審議会の今後最低十年間、この富里周辺で新東京国際空港をつくって日本の航空事業の需給関係にバランスを保たせようといたしましたその目的は、公団法の目的は成田では完全にできなくなっている、そういう現状ではございませんか。
  37. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 成田離発着をカバーしようとしております容量は二十六万三千回という計算をしているわけでございまして、こういった離発着回数の限度に到達するのにどのくらいかかるか、これを端的に私どもは今後供用開始後十年くらいはこの限度内でおさまるという見通しに立ってきているわけです。そういう意味で公団法の趣旨にも合致している、こういうふうに申し上げているわけです。  ただ、これにつきましては、非常に最近の需要の伸びというようなものもございまして、こういった満ぱいの時期について早まるのではないかというような想定も考えられないではございません。しかし、また一方では、飛行機そのものが相当大型化あるいは高速化がさらに早くなるというよう意味におきまして、回数はむしろ少なくて輸送量は大きくなる、こういうふうな要素も一方にはあるわけでございますので、そういったものを総合的に勘案いたしまして、現在におきましてはなお従来どおりの考え方をまだ持っているわけでございます。
  38. 加瀬完

    加瀬完君 二十六万回の年間離発着回数というのは、四千メートルが二本、二千五百メートルが二本、三千五百メートルの横風用滑走路というものがある場合に、富里案の場合に二十六万回というものを計算したのでしょう。ここは現状においては、見通しは四千メートル滑走路一本でしょう。できても、あと二千五百メートルの滑走路、それは横風用、それでは二十六万回の離発着というものが可能だという話は成り立たないわけですよ。第一、ロンドンのヒースローは三百二十万坪ありますね。今度の成田は三百二十万坪。ヒースローは十九万回が限度でしょう。十九万回が離発着限度のところに二十六万回というものを離発着させたら、離発着させ得るかもしれませんが、危険度というものが当然出てきますよ。安全第一の航空行政で、危険度が予想されるよう離発着同数というものを初めから計算してかかるというのは全く危険なことではありませんか。ロンドンでは三百三十万坪あっても十九万回しか離発着できなくて、これは不完全空港で困るといっているのに、それを理想的空港だということは、それより狭い三百二十万坪の飛行場をつくって、滑走路も少なくして、そうして数の多い二十六万回を離発着させる、これを理想案だと一体考えられますか。
  39. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 二十六万三千回は、私どもは現在の四千メートル一本、二千五百メートル一本、しかもその両滑走路の間隔が二キロ半、こういうことで双方が独立に使えるという前提のもとに、二本で二十六万三千回と考えておりまして、これは当初から変わっておりません。面積が倍で、滑走路の本数がさらに四千が一本、二千五百が一本ふえたという場合には、これよりは倍とはいきませんが倍近い回数がいくというふうな想定をしておりました。これは計画上全く変わっておらないわけでございます。  それからロンドンのヒースロー空港との比較の問題でございますが、ロンドンのヒースローにおきましては、おっしゃいますように、ここは滑走路の本数が五本あります。一番長いので三千六百六十六メートルというのがございますが、五本ございましても、これが同時に全部離発着可能、使用可能という状態ではございません。御承知ように、この滑走路の設置の姿はダイヤモンド型になっておりまして、その並行の二本ずつを同時に使うというような使い方で使っておるわけです。ここで現在、四十年四月現在で二十二万一千回という回数を処理いたしておるわけでございます。まだこれには今後ターミナルビルの拡張なりあるいはその他の計画変更を伴いながら能率の向上をはかろうといたしておりますので、なお機能は上がるかと思いますが、この新空港におきましても、滑走路はいま申し上げました羽田と違って、同じ二本でもそれぞれが独立に使えるという幅を持たせてありますので、そういう意味で、この能率は羽田の同じ二本と比べましては非常に格段によろしい、こういう現実になっております。
  40. 加瀬完

    加瀬完君 この前も伺いましたから同じことを繰り返したくありませんけれども、二千五百メートルの滑走路というものは、四千メートル滑走路と同様に国際線に使えるということは不可能でしょう。これは国際空港として使うんだと、こう御説明になった。四千メートルは確かに国際大型機を受け入れることが可能だけれども、二千五百メートルは四千メートル滑走路と同様の効率で大型機を迎え入れることにはいかないんじゃないかという点については、あなたは、外国線も受け入れることは可能だけれども、それは四千メートルと同じような大型機を同様に入れるというところまでは肯定はなさらなかった。二十二万回というヒースローのことをおっしゃっておりますがね、安全度というものを検討すれば十九万回が限界だということは当局がおっしゃった。それならばどうして、同じ規模であるならば、やはり安全度というものを見るならば二十万回前後というものをやっぱり成田においても想定をしなければならないのじゃないか。それを二十六万回と言ったって、二千五百メートルの滑走路じゃ大型機を入れるわけにはいかぬですから、国内線には使わないということであれば、そんなに需要があるかどうかは別ですよ、需要がそれほどあるかどうかは別として、成田空港というものに二十六万回なんという計算をするということはそもそも無理だ。羽田と結局かみ合わせたような形で利用されるということに現状においてはならざるを得ないと思う。その点はどうですか。
  41. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 四千メートル滑走路を必要としますのは、先ほど来御説明しておりますアメリカSSTというのが四千メートルの滑走路が必要であるわけで、現在のジャンボあるいはDC8、727という国際線の一番主力になっております飛行機におきましては、羽田離発着しております現状をごらんになりましても大体三千メートルグラスでいけるという状態であるわけでございます。したがって、四千メートル一本でどうにもならないという問題が起こるのは、アメリカSSTの頻度が非常に多くなってくるという事態のときに問題になるかと思います。しかし、当面われわれの考えております期間におきましては大体三千メーター前後を重点にした国際線の飛行機離発着する、こういうふうに考えるわけでございますので、二千五百メーターではなるほど三千メーターのものに比べまして非能率、安全性の問題があるという御懸念がありますけれども、現在羽田でも実は千五百メーター滑走路を二千五百メーターに延ばしてこれを国際線用にも使おう。このときにはロードファクターを若干落とすというような場合もあるわけでございますが、そういうような操作はもちろん若干必要でございますが、いずれにしても、現在の主力をなしておりますところの国際線の飛行機にはそういった意味で二千五百メーターも実用可能である、こういうことから、SSTそのものについての回数について四千一本では云々ということがあるかと思いますが、相対的に考えました場合に、いまのような操作を並行して行ないますことによって二十六万回は可能である、かように考えております。
  42. 加瀬完

    加瀬完君 可能であっても危険率の予想されるようなことは飛行機離発着においては可能とは言われないわけです。四千メーターはわかりましたよ。違うでしょう。初めは二千五百メーター国内線に使うという予想で二千五百メーターということが計画されたでしょう。今度は、成田国際線だけに使わなければならないというなら、これは二千五百メーターではなくて最小限三千メーターなり三千五百メーターなりの滑走路の長さにならなければ安全度というものは、あるいは利用度というものは、どうしたって危険が高まるし、利用度が低まることになります。また、いろいろ無理すれば使えるという、無理すれば使えるよう空港を新しくつくる必要はない。理想的な空港というものを打ち出して富里なり成田の新東京国際空港が進められておるのでしょう。ところが、初めの計画が狂っちゃった。ここで富里から成田に移った空港は四千メーターが二千五百メーター滑走路しかなくなっちゃった。ところが、国内線には使わないで国際線に使おうということになった。じゃ二千五百メーターは不適当じゃないか、こういうことになると、二千五百メーターも使えると言う。「も使える」のじゃない。外航線に最も使用度の高い滑走路というものが二千五百メーターでよろしいかどうかという問題になってくるわけだ。しかも、いまは二十六万回も離発着回数がないからいいでしょうけれども、十年間——四千メーター、二千五百メーター一本で十年の使用にたえ得るという予想が立つのですか。富里のときには、とても四千二本、二千五百二本でも十年間がぎりぎりだという御説明だった。四千一本が二千五百になっちゃって、十年間は十分使用にたえ得ると、前の御説明が間違いでございますか、それともあらためて将来性がある何かの条件が生まれたのですか。
  43. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 前の七百万坪と想定されたときに、十年間ということをはっきり申し上げた記憶は実はございません。法案をつくり、ここに審議をお願いしました当初には、すでに現在の三百二十万坪、千六十ヘクタールの空港として御提出申し上げていろいろ御審議願って、その段階におきまして、ただいま来申し上げておるようなことをずっと続けて御説明申し上げておるつもりでございます。この当初の計画のものに比べれば、なるほど半分になったという意味におきまして非常に縮小された感がございますけれども、やはりここで四千のSSTの受け入れ可能な長さの滑走路がある、さらにもう一本並行、独立使用可能の二千五百の滑走路があるということは、各国のいろいろな滑走路等の長さ等から見ましても、非常に有効な飛行場であるというふうに考えておりまして、言われます御趣旨も十分わかりますけれども、私どもとしてはこれで非常に効果的な空港ができ上がるものと、かように考えております。
  44. 加瀬完

    加瀬完君 それはいまそう説明せざるを得ないでしょうけれども、こんなものは不完全空港にきまっていますよ。羽田とかみ合わせて使わなければ使えないよう空港だとすれば、国際空港として完全だとは言われないでしょう。  大臣、あまり手持ちぶさたのようですから伺いますが、成田は拡張しないと局長はおっしゃったが、拡張はいたしませんね。
  45. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) 将来の空港政策といいますか、いわゆる国際航空は、御承知ようにシャンボ型——従来の巨大飛行機のその上に、人数においても倍数以上のものを運ぶことになると思います。したがって、成田国際空港が当初規模よりも縮小されましても、その収容能力はそれ以上のものができると思います。かつまた、将来ももちろん、飛行機人口はふえてまいりましょうが、私のいまの考え方は、羽田飛行場のほうが拡大する場合、適当ではないだろうか。これもまだ調査をしておるわけではございませんけれども、したがって、成田空港を拡大する意思は絶対に持っておりません。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 だから結局、羽田とかみ合わせて成田を使うということになるわけですよ。そういうことになると、新東京国際空港公団法をつくって、航空法を改正して大がかりにやったわりにしては、どうもしりつぼみのような形になるのじゃないかと思うのです。成田空港の竣工時期が、四十八年完全にできるというお見通しですか。これは局長でも公団でもよろしいです。
  47. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) 私どもは政府の指示どおりに、昭和四十八年度にはさらに滑走路、誘導路等を二期工事としてやっていく方針でおります。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 方針はよくわかっております。できるかできないかの問題です、問題は。そうすると、第二期区域が簡単に取得できるかどうかという問題になるわけですね。その第二期工事区域が簡単に取得確実というお見通しですか。
  49. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) 先生指摘ように、第二期工事区域についてはいろいろの問題がございます。特に、実際に農耕をしておられる反対派の方々がまだ数十名おられるような状況でございますが、私どもは根強く説得することによって十分御了解がいただけるという確信を持っております。
  50. 岡三郎

    ○岡三郎君 ちょっと関連して。  大臣に聞きますが、この問題については、当初の予定を変更して成田へ持っていったところにかなり問題が私はあると思う。しかし、それにはそれなりの理由があったとしても、しかし、霞ケ浦なりあるいは西北の台地、ああいうふうな点については百里の基地の問題等でかなり紆余曲折して成田になった。だから、成田の農民がこの問題について、ずばり言ってここが一番いいところなんだということで始まったことでなく、つばつけたやつがだめになって次にこうきた。いろいろの政治的な経緯をいま加瀬さんがずっとやられたと思うのですが、端的に言って、きょう羽田に行ってきたのですが、羽田空港自体、いまB滑走路をやっておりますね。あの向こうのほうに、横へもう一本、いまの大きな滑走路の向こうへ海のほうへ——これはたいへん海が深いので金がかかると言っておりましたが、あそこへ一本引くという可能性は十分あると思う。というのは、B滑走路ができて、かなり前に出ていっていますから。そうすると、成田空港自体についても、いままでの経緯からいって、何というか、納得させるといっても、ここで全部成田空港やめてしまえといってもやまるわけはないと思う。両方ある程度、水を入れてじっくりかまえて、そしてどんどん金がかかっても、九十九里浜をやるよりも羽田空港をやったならば、私どもおこられるかもわかりませんけれども、あそこへもう一本引くということの可能性は十分検討してみなければならぬ——可能性じゃなくて、これは金の問題だと思うんですが、それとあわせて新幹線網の話があるにしても、現状においてまた厚木の飛行場を万博に使う、厚木の飛行場自体をどうするかという問題については、地元としては軍用基地としてよりも国際空港としてのほうが非常にいいと思うのです。総合的に見ていわゆる成田羽田あるいは厚木を総体的に検討するということによって何とか一歩前進するという形をとり得ないのかどうか。非常にこれから地上だけではなくて空の過密が広がる。そうするというと、やはり空港のほうもある程度の分散、これはもう距離的にいえば問題にならぬと思うのですが、そういう面について多角的に検討して、さらに第二期工事については十分住民の納得を得るという形で進行するというふうないろんな考え方が出てきて私はいいんではないか。そういう面で厚木についても、最近における米軍の動向から見て必ずしも私は不可能ではないんじゃないか、そういうふうに考えるわけですが、ただ、米軍の基地からすぐに自衛隊基地といってもなかなか抵抗もあるし、そういう面について国家的に見て空のふくそうするこの現状を見て、ああいうふうなところに一カ所空港ができれば、かなりコントロールできるんではないかというふうな気がするんですよ。基地がなくなれば一番いいわけですけれども、総合的に大臣これはどうですか。
  51. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) いろいろ御意見がありますが、いわゆる成田空港を決定するにつきましては、私当時聞いておりました。若狭君が次官の時代でありましたが、私官房長官をしておりまして、報告は一部始終受けておったわけであります。そのとき候補地になったのが富里付近、それから木更津付近、それから霞ケ浦、この三ケ所が一応候補地として同時に技術的な研究を進めると、こういうことになったわけであります。その結果、いわゆる霞ケ浦地元のほうでは賛成、反対がありました。稲敷郡のほうは賛成でして、霞ケ浦の北側のほうは反対だった。私のところにも、やはり皆さんと同じように、国会議員でありますから、地元から陳情がよくまいったのであります。そのときに私は、これは技術的な問題であるからして、国際飛行場をつくるということはもちろん国家目的としてつくらざるを得ない、あとは技術的問題であるから、霞ケ浦が工事費その他を総合して可能であり、かつまたいいということであるならば、私は反対があっても霞ケ浦に決定することを反対はしないという意思を表明した。技術の結果が悪ければ、たとえ賛成があってもこれはぼくが推進するわけにはいかない、技術的な問題、立地条件である、こういうことを私は国会議員として陳情を受けたときに、両派の諸君には不満足であったろうけれども、かような答弁をしておったわけであります。御承知ように、これは私より加瀬さんのほうが詳しいのでありますが、木更津が不適地だというのは、御承知ように百里原の自衛隊の飛行場の航跡の関係といいますか、百里原のその関係上これは不適当である。専門的な技術的な見解ですね。霞ケ浦はとてもあのヘドロを処理するには、それだけでもって何千億という金がかかってまことに不適当である、かつまたできても地盤が十分かどうかわからぬという点で費用の面から困難であり、もう一つ百里原のいろいろな影響を受ける、こういう技術的な見解からこの二カ所ともだめになって、富里付近ということになったのです。それで当時の次官から、やはり検討の結果この二カ所はだめだ、そうして富里付近ということになったのですが、当時いろいろ賛成反対の意見がありましたが、私は当時若狭次官に、将来国際空港は一カ所や二カ所では間に合わぬだろう、だから、必ずしも航空局できめたあの程度の、七百二十万坪ですか、そういう考え方をもう一度考え直してもいいんじゃないかということで、これはほんの第三者としての考えにすぎないわけですが、いろいろまた航空局のほうで検討した結果、富里付近は技術的には大体類似している、空の条件は全く同じということで成田空港に決定を見たわけです。  いま岡さんの御質問の、いわゆる厚飛木行場を将来返還してもらってこれも使えるではないか、あるいはまた羽田飛行場を使って将来拡張してという意見も一部にあるようであります。私も将来羽田の沖を埋め立てるということも可能であろうと思いますが、ただ、現在の問題としては、何としても十年、十五年先を待っておれない状態でありますから、したがって、成田空港の今回の計画だけは達成しなければ間に合わない。いま御承知ように、現在一千万の——国内航空だけで一千万人のいわゆる飛行人口を持っております。将来十年後には一億二千万人になるだろう、こういう計算をしておる状態ですから、これは国際関係も入れましてそういう膨大な数字になるわけでありますからして、したがって、これは成田空港の現在計画が完成しましても、なお十年なり二十年先には考えなければならぬ、あるいは国際空港国内空港との分離を考える必要もありましょうが、またいろいろの事情からして、国内飛行場も一カ所の厚木だけ使えばいいじゃないかというわけにもまいらぬ。したがって、羽田もあるいは成田国内空港に一部を使用せざるを得ないだろうと思います。こういう意味からいって、もちろん厚木の飛行場は今回の万博中臨時に民間飛行機の乗り入れを認めてもらうようにお願いをしておりますが、近くオーケーになる見込みでありますが、将来これは返ってくることになるだろうと思います。その場合に、自衛隊に返るかこちらに返るかわかりませんけれども、できれば、われわれ運輸省としては民間飛行場として使わしてもらいたい。それにしても坪数はそう大きなものでもありませんし、かつまた、航跡から考えてもそうたくさんの飛行機を入れることも困難でありましょう。そういう意味で、やはりこの飛行場は、国際飛行場にしましても国内飛行場にいたしましても約三千万という、いわゆる東京を中心とする人口、こういうものを考えますと、国際飛行機の発展等から考えて、複数以上の飛行場は絶対的に必要である、こういう要件から考えましても、やはり成田飛行場の完成は期待してやまない。ただ、これを進めるにあたっては、しゃにむにやろうとは考えておりません。できるだけいわゆる住民の反対派の諸君に理解をしてもらってやる。いろいろな問題がこれから起きましょうけれども、それらについては十分地元の利害関係等を考慮に入れて、そうして理解した上で工事をできるだけ早く進めていく、こういうよう考え方でやってまいりたいと思っております。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 最初に申し上げましたように、羽田が狭隘ということでありますが、羽田羽田自体で若干拡張の余地というものが新しく考えられてきた。ブルー14というもののためにどうしても茨城なり千葉側というものに新国際空港というものが制限をされておったわけだけれども、ブルー14というのは若干ゆるんでくるし、横田なり厚木なり米軍の占用飛行場というものもやがて返還されることもあり得るという予想もついてきた。さらに超音速機というものについては、これは新しく内陸地帯に超音速機離発着場をつくっていいかという問題も出てきたということになれば、富里はだめだから成田でなければならぬという時点土地条件とは違ってきているわけですよ。さらに、飛行場をつくるときには確実に取得できなければだめなんですけれども、いま申し上げました二期工事については、確実に取得できるかどうかということには非常に問題が出てきたわけです。いま大臣のおっしゃるように、なるべく説得して強権発動みたいな方法は避けていくということであれば、これは強制収用みたいなことをやること自体にも問題があるわけです。現状は強権発動がされておるわけですけれども。  そこで、法制局に伺いますが、土地収用法の収用要件について御説明してくださいませんか。どういう場合に土地収用をするのか。
  53. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 土地収用法の土地収用をする場合の要件はどういう要件であるかということでございますが、第一条のこの法律の目的に合致し、さらに第二条で、この法律の定める手続に従って収用をするという大原則が掲げられているわけであります。具体的ないろいろな手続はそれぞれの条文できめられているわけでございますが、まず法の要件としましては、事業認定を受けるということが一番最初の、また一番重要な要件であるわけであります。事業認定につきましては、第二十条にその要件が定められてございます。たとえば「事業が第三条各号の一に掲げるものに関するものであること。二 起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること。三 事業計画土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること。四 土地を収用し、又は使用する公益上の必要があるものであること。」これが一番重要な基本的な要件だろうと思います。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 私の伺っていますのは事業認定の申請の要件なんです。あるいは事業認定の申請のいままでの事前の慣習と言ってもいいです。たとえば反対が多数あるにかかわらず、収用法をかける手続を一体いままで踏んでいたかどうか。たとえば一つの道路に六〇%も七〇%も反対があった場合、その六〇%に対して収用法というのをかけておったかどうか。法律上はかけられますよ、しかし、慣習としてはどう扱っていたか。
  55. 河野正三

    説明員河野正三君) お尋ねの御趣旨が、大体いままでの慣習といいますか、通常行なわれていた形ということでございますので、建設省のほうからお答えさせていただきたいと思います。  理論的には、われわれ行政指導といたしましては、なるべく、事業が思い立たれた段階計画的に確定をいたしました場合には直ちに事業認定をとっていたわけであります。土地収用法は非常に民主的な法律でございまして、起業者に行政権限を与えるとともに、起業地内の土地所有者関係人に対しましても逆収用権と申しますか、収用委員会で補償額を決定してもらいたいというような御意思のある土地所有者関係人の方々もおられますので、収用裁決の申請をしてくれという請求権が土地所有者にもあるわけでございます。そういう意味でガラス張りの中で——従来行なわれておりますような起業者が高圧的な態度で土地収用に臨むあるいは土地取得に臨むというようなことのないように、できればガラス張りの中でお互いに話し合いをし、きめていくということが望ましいのじゃないかということから、実は理論的にはそういうことが正しいと考えまして、累次にわたりまして通達等も出し、指導を重ねてきたところでございます。しかしながら、残念ながら起業者の方々も土地所有者関係人の方々も、多年にわたりまして、これは土地取得の伝家の宝刀だという気持ちが抜けないものでございます。そこで、といいますか、慣行上はおおむね任意取得に努力を払いまして、どうしてもなかなかむずかしい段階で事業認定申請に及ぶという、われわれから見ますとはなはだ遺憾でございますが、そういう実態のほうが普通でございます。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 事実関係を航空局長に伺いますが、航空法上の確実に取得とは、確実に取得することを妨害する反対の中身、実質的な反対かどうかの質だと御説明なさいましたが、それはそのとおりに承ってよろしゅうございますか。
  57. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) そのとおりでございます。
  58. 加瀬完

    加瀬完君 じゃ、公団総裁に伺いますが、二期工事分の賛成は何人、反対は何人ですか。
  59. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) 二期工事の分につきましては、全体で五百町歩程度面積でございますが、地主の方々は、私の記憶では大体三百名くらいではないかと思います。その中で反対の方が五十名ないし七十名というふうな程度で、面積としては反対の方の面積が全体で七十町歩と、このように考えております。
  60. 加瀬完

    加瀬完君 それ違っておりませんか。
  61. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) いま記憶で申し上げましたので、若干数字の食い違いはあると思います。
  62. 加瀬完

    加瀬完君 いや、若干でなく、大きく違っております。
  63. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) 二期工事の区域でございますが、三百名というふうに申しましたが、全体で、人員としては五百名くらいでございます。それから面積は、私は公有地を含めて申し上げましたが、民有地だけで申し上げますと、三石八十八ヘクタールということになっております。で、この中で私どもがすでに買収をいたしたものが七七・三%ございます。現在未買収のところが百六十九名、面積といたしまして、先ほど私、約七十町歩と申し上げましたが、正確に申し上げますと、民有地で八十八ヘクタールということでございまして、ただ百六十九名という人員が全部反対派であるかどうかという点については、私どもはさようには考えておりません。私が先ほど申し上げましたように、五十名から七十名くらいの方々がいわゆる反対同盟に所属しておられる方々ではないか、かように考えております。
  64. 加瀬完

    加瀬完君 これは共有地入っておりませんね。いわゆる一坪運動と称されておるものの地権者は入っておりませんね。
  65. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) おっしゃるとおりでございます。
  66. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、それは何名。
  67. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) 二期区域におきまして一坪連動は、数としては三十三カ所でございます。人数といたしましては、千二名という方々がごくわずかな土地を共有して、持っておられるわけであります。
  68. 加瀬完

    加瀬完君 ごくわずかでも何でも千人の反対者があるわけですね。この反対者というのは、反対の中身が実質的反対ということに、これは受け取っておるでしょうね。
  69. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) 一坪連動の共有地でございますが、この千二名というふうな共有地の所有者の方々は、必ずしも成田付近の方々ばかりではございません。北海道の方もおられるでしょうし、あるいは山梨県の方もおられるでしょう、あるいは九州の方もおられるのではないかと推定しておるんでございますけれども。
  70. 加瀬完

    加瀬完君 それは北海道だろうが、九州だろうが、地権者である限り、反対、賛成の内容には居住地は関係ありませんよね。政治的配慮としては重要な問題かもしれませんけれども、地権者として反対か賛成かの内容には、何も居住地は関係がないわけでしょう。
  71. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) 私が申し上げたかったのは、これらの方々は、むしろ空港をつくらせたくないという趣旨で、あるいは言い方は悪いかもわかりませんけれども、イデオロギー的に反対する、たとえばベトナム戦争に関係があるとか、安保闘争との関連を受けるというふうな趣旨で反対をしておられる方々が共有地の所有者、いま申し上げました千二名という方々ではないかというふうに感じておるわけですが、ほんとうに土地を愛するがゆえに、自分の先祖伝来の土地を愛するがゆえに反対するという方々とは若干違うんじゃないか、かように考えております。
  72. 加瀬完

    加瀬完君 そういうことを私は伺ってるわけじゃない。反対者が多ければ確実に取得ということにはならないが、法律上確実に取得かいなかの内容はと聞いたら、実質的に反対かどうかの質が問題だと、そうすれば、少なくも千二名というものは、確実に取得させまいという意思がはっきりしているわけですから、中身としては、これは強固なる反対の中身と判断しなけりゃならないだろう。それから百六十九名、八十八ヘクタールのこれも、現状においては実質的反対とみなされなければならない。三年にわたって承諾しないんだから実質的反対とみなされなければならない。こういうことになりますとね、確実に取得する条件というものは満たされていないと、これは解釈しなければならないことになりませんか。これは法制局に伺います。千五百二名のうち千百七十一人の反対があるということに、員数の上ではなるわけです。一坪連動を除いても五百名のうち百六十九名は、明らかにこれは空港に反対という意思表示で、二期工事分の区域の農家は反対をはっきりさしてます。そうすると、航空局長は、確実に取得条件として、確実に取得することを妨害する反対の中身が確実にあるかどうかの問題だと、こういう反対の中身というのは、実質的に反対かどうかの質だと言うのです。空港反対というはっきりした考えで、五百名のうち百六十九名が、売りもしなければ貸しもしませんとがんばっている限りは、現状においては確実に取得する条件は満たされていないと、これは判断せざるを得ないではないか、法的に。どうですか。
  73. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) お答えいたします。御指摘の、確実に取得することができるかどうかという問題は、航空法の五十五条の三で三十九条の一項五号を準用している、そこで、確実に取得する見込みがあること、こういうふうに書いてある規定を中心にしての御質問だと思います。この点につきましては、もう四十年の当委員会あるいは四十一年の参議院の予算委員会さらに先日の当委員会におきまして、私のほうの長官なりあるいは私自身がいろいろ答弁いたしておりますが、いろいろやりとりで、ことば足らずの点もございますので、きょう従来の御答弁申し上げましたことを要約して申し上げたいと思います。  で、飛行場の「敷地について所有権その他の使用の権原…を確実に取得することができると認められること。」が、新東京国際空港設置の工事実施計画を運輸大臣が認可する際に審査すべき事項になることは航空法の定めるところでございますが、ここに「確実に取得することができると認められる」というのは、取得ようとすれば取得が確実に実現することになるという見込みが成立することをいうものでありますが、取得の実現性については、当然、法的手段の有無及び法的手段による目的達成の能否が考慮に入れられると思います。もしも、権原の取得が契約による場合には、その契約の締結に反対する者がある限り、「確実に取得することができると認められる」ことにはならないでありましょうし、権限の取得が収用による場合でも、たとえば、その土地がすでに他の「公共の利益となる事業の用に供するため」使用されており、飛行場の設置がその事業より公益性が強いとは認められない場合、これは土地収用法四条に書いてございますが、「そのようなことはなくても、その土地飛行場の用に供することが「土地の利用上適正且つ合理的である」と認められない場合、これは土地収用法二条に書いてあるところでございますが、そのように、土地収用法の運用の余地がなければ、同様に「確実に取得することができると認められる」ことにはならないでありましょう。結局、権原の取得を収用によってしようとする場合でも、住民が絶対反対している事実があって、その反対の理由がどういう理由かは外部からは察知し得ないわけでございますが、「その土地を当該事業の用に供することが土地の利用上適正且つ合理的である」という、土地収用法上の二条、これと矛盾するところであれば、そのことが真実である限り、土地収用にあたって事業の認定が、先ほど申し上げたように受けられないことになるわけでございます。こういうわけでございますから、反対が多いというそのこと自体ではございませんけれども、反対の理由とする事情そのものによって土地収用が困難と見られ、したがって、用地の権原の取得が確実と見られなくなることがないとは言い切れない。こういうよう意味のことを要約して申し上げたいと思います。
  74. 加瀬完

    加瀬完君 私はその解釈に反対であります。おかしいです。憲法で私有財産権というのは認められており、その憲法で認められておる私有財産権が、いわゆる行政的な要求があれば全部ゼロになるという考え方は、憲法の解釈上成り立たない。  一つ一つ聞きます。航空法の「確実に取得」とは、通常の契約において確実に取得という意味でなければおかしいです。たとえば、都市計画法でも、土地改良法でも三分の一の反対があればこれを認めませんわね。しかし、場合によっては収用法をかけるなら、三分の一以下に全部反対は切りくずせますよ。その三分の一というものよりは確実に取得というほうがはるかに強い、これはお認めになる。確実に取得というのはいつを起点にするかということになれば、空港である場合は、それを認可するかどうかという時点において、契約上確実に取得ができるという見通しが立つ場合、確実に取得ということになり得るのじゃないか。そうでなくて、いまあなたがおっしゃるように、収用法の目的から収用をかければ何でも取れるということも含めて確実に取得ということであれば、どこにそれじゃ私有財産権というものは保護されることになるのか。航空法全体読んでごらんなさい。著しく住民の利益を害してはならないということが書いてある。そうであるなら、「確実に取得」ということも、全体の航空法を読み合わせるときには、飛行場をつくるにしても、飛行場を認可するにしても、とにかく住民の生活権は前提として守りますよという立場に立って航空法が書かれていると解釈しなければおかしいじゃないですか。そうでなければ、「確実に取得」というのは契約において確実に取得できるかどうかというふうに解釈するのが常識じゃないですか。
  75. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) おことばを返すようでございますけれども、先ほど申し上げましたように、「確実に取得することができる」という場合には、それは契約による手段もむろんございます。しかし、他の手段つまり土地収用法による手段というのも一つのりっぱな——りっぱというのはちょっと言い過ぎですが、一つの合法的な法的な手段として、日本の法体系の中で認められているわけでございます。そして特に土地収用法では、先ほど申し上げましたように、いろいろな要件というのがございます。したがって、土地収用をかければ何でも取れるというわけでは決してないわけでございます。その上、土地収用法では一応土地を収用し、またはその使用することができる事業として航空法による飛行場というものも掲げておるわけでございますから、それらを勘案いたしますと、確実に取得できる手段として契約と、もう一つ土地収用法による収用という二つの法的手段をやはり日本の国法というものは認めておる。そうすれば、そういう法的手段をどのように行使でき、そしてそれがそれによって確実に取得できるかどうかという判断の裁量とする、これは法律的に別におかしいことのないように私どもとしては考えております。
  76. 加瀬完

    加瀬完君 航空法を全部読んできて答弁してもらいたい。公団法ができる前虚空法は改正をされておりますけれども、いまは、行政的には前の航空法の趣旨は尊重して、そのとおり行なうということを政府は答弁している。それによれば、まず地域に、ここを空港にしてよいかどうかという公示をして、住民の意思をはっきりさせて、そこで確実に取得できるという見込みが立ったときに空港設定の手続をするという一段前の手続が踏まれておったということは、空港という社会施設なりあるいは国家施設なりならば、収用法をかけて取れる見込みがあるなら、確実にこれは取得ということで無条件につくっていいんだということならば、そんなこまかい手続というものも航空法に規定されているはずはない。やはり地域住民の権利というものをまず守ろうということがまず第一段階にあったわけだ、航空法制定のときから。そうであるなら、「確実に取得」というのは、通常契約上確実に買い取りができる、買い受けができる、こういう条件が満たされているかどうかということが私は問題だと思う。あなたのようなことになりましたなら、「確実に取得」というのは、取得できるはずだという予想さえつけばいつでもやってもいいということになる。「確実に取得」というのは、少なくも認可をする時点において確実に取得ということがはっきり見込まれなければならない、無期限にわたっていつかしら取れるだろうということで「確実に取得」という考え方は成り立たないのですよ。この取得できるはずだという予想だけで期限は幾ら先にいってもいい、こういう解釈が成り立ちますか。
  77. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) まず第一に、国際空港公団法の制定に伴って、若干航空法についてまあ特例が設けられた、先生はその点についてはむしろ住民の利益がやや侵害されたという意味において改正されたというような御指摘だと思いますが、これは空港公団法を制定する際に、立法政策として、空港公団法で設置する新東京国際空港公団の特殊性というものに着目して、若干航空法の特例を設けたということだと思います。これは第一点の御質問に対するお答え。  それから第二点として、土地収用法をかければ何でも取れるというふうに考えるというのは、実は私どもはそうは考えていないのでございます。先ほど、建設省の説明員からも御説明申し上げましたように、少なくとも一方においては、公共的な事業のために土地取得させるという必要がある。しかし、片一方のほうにおいては、そのことによって土地を取られる人がいる。その二つの利害を調整するために、土地収用法というのは、まあガラス張りといいますか、私どものほうからいえば、民主的な手続によっていろいろこまかい要件を定め、そして土地を取られる人の手続への参加を認めつつ、そしてできるだけ円満に進めていくと、こういう考え方土地収用法の考え方だと思います。この考え方に立って、私は先ほど申し上げたわけでございますから、土地収用法は確かに権限によって土地を奪うものというふうにお考えになりますと、私の説明は成り立ちませんけれども、現在の土地収用法は、少なくとも私どもはそういうふうに考えていないということを申し上げさせていただきたいと思います。  それから第三点は、認可の時点において、将来いつになるかわからないようなものは確実な見込みがないだろうということを言われたわけでございますが、これはやはりそのとおりだと思います。将来いつの時点になるかわからないのでなく、やはり相当の期間内に取得ができるという、まあ相当の期間というのは一律にどうということは言い得ないと思いますが、これはやはり運輸大臣が認可をするわけでございますから、相当な合理的な期間というものは当然あるので、将来いつかわからないというようなのは、これはもしそういうことがあるとすれば、これは認可の要件には合致しないということが言えると思います。
  78. 加瀬完

    加瀬完君 収用委員会というものが、あなたのおっしゃるような機能を現在発揮してはいないでしょう。収用委員会に持ち込まれたものは、大体起業者の要求のとおり収用されるという経過をとっているでしょう。そこで、裁判所のように判別して、これは起業者に不利、起業者が敗訴する、これは地主に有利だ、住民が勝った、こういう判定を下してはいないでしょう。大体持ってこられたものは、その申請者の要求に応じて土地収用の手続を進めていくというふうなことが行なわれているでしょう。   〔委員長退席、理事金丸冨夫君着席〕 そういうことであれば、「確実に取得」というものは、どういう問題でも全部確実に取得ということになってしまうのですよ、あなたのような解釈をすれば。私のような解釈に立って、契約上確実に取得できないものは認可できないということになれば、反対者の多い地域空港をつくるということは認可条件に合わないということで、反対者の権利というのが守られるということになる。しかし、あなたのような解釈で、収用法をかけて収用委員会で可決になる、そういうものまでも確実に取得と、こういう認定をするなら、意思を決定すれば、全部空港は確実に取得されるものとして空港敷地は認可の対象になるということになってしまいますよ。それでは、「確実に取得」ということばを特別入れて認可条件にした、住民の権利を守る立法の趣旨というのはどこにもないでしょう。そうなりませんか。あなたがあらためて解釈をはっきりさせると言っても、いままでそういう解釈は一回もしていませんよ、法制局は。これは建設省に伺ってもいいですよ。反対が非常に多いようなところは、反対が六〇%だ、七〇%だというようなところは収用法をかけませんよ、いままでは慣例として。大体反対をくずして、ぎりぎりのところで、どうにもならないというところまで、一軒ぽっつり道のまん中に家を置いて、立ちのきにも何にも応じないという場合に限って、ごく少数に限って土地収用法の対象にしておったでしょう。土地取得の場合に建設省のいままでのやり方は。今度はそうではないでしょう。人数からすれば反対のほうが多いでしょう。一坪の地主だって地権者は地権者です。少なくも、旧来の地主だけを見ても百六十九名の反対者がいる。確実に取得されるという条件はないでしょう。そういうものまでも収用かければ取れるから、確実に取得の見込みがあるのだ、こういう解釈ではどこで住民の権利というものが守られるのですか。憲法で認められている財産権というのはどこで認められることになりますか。しかも、それじゃ確実に取得できるかどうかの見通しはどこで立てるのだというと、認可の時点で立てるのでしょう。それは未来永劫でもいつでもいい、取ればいいのかというと、それは期限がある。位置が決定されて、公団が交渉を始めて満三年過ぎていますよ。三年過ぎて、いま収用法をかけていますがね。もう一年くらいは全然取れないところもあるでしょう。三年も四年もたって取れないようなところを、確実に取得できるという見通しで三年前認可している。それでは、確実に取得できる見通しがなければ認可できないというこの法律は、何もその保護の役目をしなくなってしまうでしょう。そういう解釈が成り立ちますか。
  79. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 確実に取得する見込みがあるかどうかという問題と、それから、土地収用法との関係については、もう従来から繰り返して申し上げておりますので、ここではあらためて申し上げることはないと思います。  ただいま第二問としての、三年たってもまだ取得できないというようなのは、そういうのは認可が誤りであったのじゃないかという御質問でございますが、これは実体的な問題で、すでに運輸大臣が認可されたわけでございます。そういう実体的な問題について、私がここでもし判断をするならば、これこそ実体的に、いろいろその当時の事情から全部事実問題として調べた上でなければお答えできませんし、私の法律上の判断としては、これはちょっとお答えすることをお許し願いたいと思います。
  80. 加瀬完

    加瀬完君 いや、法律的に判断してもらいたいのですよ。三年も四年もたっても確実に手に入らないものを「確実に取得」と認定できるのか。そういう条件政府は認定したわけだ。認定したけれどもまだ手に入らない。これが一年たつか二年たつか見通しはないわけです。それでも確実に取得という要件に当てはまったと認められるかどうか。具体的なことを何も一々検討する必要はないのです。形式的に、法律のことですから判断すればいいのです。三年たっても四年たっても取得の見込みのないものを、それを確実に取得できると認可することに問題がなかったか。
  81. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 三年、四年という一つの具体的な例で御質問になっておられますけれども、それは当時いろいろの事業計画と申しますか、そういうものを見て、運輸大臣が総合的に判断して、三年と予想したのか、四年と予想したのか、あるいは一年と予想したのか、私は知りませんけれども、確実に取得できる見込みがあるという判断をしたのだろうと思います。抽象的に引き抜いて三年はどうか、四年はどうかと言われても、ちょっと法律的にはそういうものは確実に取得できる見込みがある場合に該当する場合もあるし、ない場合もあるだろうとしか法律家として申し上げにくいと思います。
  82. 加瀬完

    加瀬完君 そういう解釈がおかしいと言うんだよ。認可する時点において確実に取得できるかどうかという見通しが立たないのはだめだと、こういうことをあなたは認めた、そうでしょう。そうすると、見通しというものは、十年たっても、二十年たってもそのうちには確実に取得できるだろうというのんべんだらりんとした不特定の将来のことを言っているんじゃない。それならば、その見込みというのはどれだけの期間において取得できる場合、こういうことに限定されるのかという新しい問題が出てくる。で、具体的にここでは三年たっても、四年たっても取得できないんだよ。三年たっても、四年たっても取得できないものを取得できるとして認定したことに無理がないか、こういう問題です。どう考えたってこれは無理でしょう。これを無理でないと言ったら、これは未来永劫いつか取得できればいいという、あってもなくても同じ規定になってしまうでしょう、そういう点ですよ。
  83. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 何度も同じことを申し上げるようでまことに申しわけございませんが、それは確かに十年とか、二十年というような、だいぶ先の数字をあげられますと、私もそれはそこまで確実な見込みがあるとはちょっと言い切れませんけれども、三年とか、四年とか、あるいは二年なのか、一年なのかという、そういうことになりますと、これは総合的な具体的な事情に即して判断が必要でございましょうし、いま当面、すでに運輸大臣が認可をされたわけでございますから、それは運輸大臣の認可権者としての総合的な、具体的判断に立ってなされたものだろうと思います。それを私どもがいま法律の適用上違法であるという断定は、これは私の能力の上からいっていたしかねるということでございます。
  84. 加瀬完

    加瀬完君 行政的には運輸大臣においてやっていたけれども、法律的にそれが適法であるかどうかは、これは法制局が判断するのが当然じゃありませんか、そうでしょう。それで、三年ぐらい前になりますね、認可をしたわけですね。認可をした場合は、確実に取得できると思ったから認可をしたということになるのでしょう、繰り返すようですが。ところが、航空局長の説明によりますれば、確実に取得できない状態が、いわゆる実質的反対の質が存在する場合には、確実に取得したとは認めないと、こういう解釈をしているわけです。そうすると、三年たっても、四年たっても、四十六年から飛行機を飛ばすというのに、今日になっても確実に取得できていないんですよ。そういう相関関係をはかりにかければ、確実に取得できたというか、「確実に取得」という要件が満たされているとは判断できないということになりませんか。これは行政的な判断ではないんですよ。法律的な判断ですよ。来年飛行機を飛ばすというのに、来年になっても確実に取得できないという、こういう状態の場合に、空港の認可というものがはたして妥当であったのかどうか、違法性というものが当然疑われてくる内容ではないかということになるんですよ、これはなりませんか。
  85. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) また同じことを申し上げてたいへん申しわけありませんけれども、こういう認可基準に関する規定というものは、ここにも書いてありますように、「確実に取得することができると認められること。」という認可権者の認定に欠けているわけでございます。したがって、非常に極端な例として言われれば、これは私どもも、それはこういうことがお答えしやすいのですが、そういう微妙な問題になりますと、これは一般の法解釈をむしろ越える問題だと思います。ですから、それ以上具体的な問題についてはお答えすることをお許し願いたいと思います。
  86. 岡三郎

    ○岡三郎君 私はそこで、公共性の問題と私有権の問題との関連で、確かに公共性というものをある程度重視しなければ、人口の過密地帯とか、あるいはその他のいろいろな交通運輸——空の交通運輸も同じですが、ただ私はその場合ですよ、公共という名によって一つの私有権を公共性のその中に優先させるということになっている場合には、これは権力者の恣意のままにはこれは行なわれてはならぬ。したがって、その土地がどうしても適格で、これが国としてここへつくるのにもつともふさわしいということの条件があらゆる角度から立証されなければ、私はいけないと思うんですが、この点どうですか。
  87. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 私がお答えするのが適当かどうかちょっとわかりませんけれども、先生のおっしゃることについては全く同感でございます。
  88. 岡三郎

    ○岡三郎君 これは河野さんにちょっと聞きたい。
  89. 河野正三

    説明員河野正三君) 公共性の判断ということは、非常にむずかしいものでございますから、土地収用法では、収用法が発動し得ると申しますか、収用法の事業認定を受ける事業を法律で列挙しておりまして、かってにいろんな事業を政府の独断で公共性ありという認定をすることはできない形になっております。なおかつ、先ほど角田第四部長から御説明がありましたように、収用法で事業認定申請がありました場合に、第二十条というところで四つの要件が規定してございまして、それぞれにわたりまして慎重な判断を建設大臣としていたしまして、事業認定をいたしております。
  90. 岡三郎

    ○岡三郎君 これはそれじゃ、政府のほうに聞いてもこれはちょっと対立点があるわけですけれども、一般的にいって、その場合に公共性という内容ですね、その中に経済性というものが強く感じられるということになると、これは公共性とは言い切れないんじゃないか。つまり、ほかにも適当な場所があるけれども、そこは金がかかって無理だと。だから、こちらのほうが予算的にいって金がかからぬからということで、こちらのほうがいいんだと、こういうふうな判断をしたときに、それは純粋な意味における公共性と言えますか。つまり、経済性が多分にその中にはからまってくるということは、現在のいろんな工事をやる場合においては当然だと思うんですが、客観的に見て、そこがどうしてもこれは必要なんだというふうな接点が詰まってこなければ、住民が納得しないと思うのです。つまり、現在の法律自体がやっぱり私権を認めて公共性というものをそこへ織りなしてきている、こういうことからいって、たとえば、羽田の沖にもう一本滑走路が金をかければできる、価格的にいって、予算の面だけで、ちょっとそこは深いから金がかかる、そういうふうな面も一つ考えられるわけですよ。そうすると、いま加瀬さんが言ったように、たとえば第二期工事というものを公表せい、公表せいといって、政府は現在自分としての権利があるところにつくれるじゃないか、そういったときに、ここは金がかかるから、どうしてもここを公共性の名前によって民間の土地を取っちゃうのは、私はむちゃじゃないかと思っているのですよ。そこで、私は端的に言いたいのは、この成田空港をつくる前にいろいろとやって、そうして霞ケ浦はヘドロで何年もかかる、そこで百里の基地があってうまくない、木更津は九十九里浜があった、そうして今度は富里に行ってここへ帰ってきた、こういう千鳥足的な空港の選定方式というもの、これ自体私はその土地が公共的にどうしても必要だという範疇に入らないと思う。それを入るというならば、これは運輸大臣の権限の大幅な逸脱だ。何でもかんでもそこを政府が取るのだということに対しては、客観的な諸条件があまりにも具体的に相伴っていない。そこを認定という名前において取得できるということで、これを突き進めるということに私は大きな問題点があるのじゃないか。どうしてもここが必要なんだ、ほかのところへ持っていくといろいろな条件があるから、ここがとにかく土地を収用するにしても何をするにしても、いろいろな面で、経済性を全然無視するわけにいかぬけれども、総合的に見て一番必要なんだときめたならば、それはそこまでに慎重に配慮し、検討し重ねて、そうしてそこをやったならば、ぜひともこれはこういう理由だからひとつ頼む、国が法律を適用するということではなくして、納得をしてもらうためには確信と自信を持ってやるべきであるのに、こうもやりああもやってそうしてひとつつばをつけて、そうしてそこが無理なんだ、どうしてもまただめになった、にわかに成田へ同じよう条件だからということで、私は公共性というものが通らぬと思うのですね。この点は私は、私有権というものを侵すためには、公共性というものについては、どうしても国家的にこの土地がいいのだということで詰めていくということ、それでなければ、極端に言えば、どこでも政府がここがほしいんだと言えばそれが事業認定のもとになってしまう。そういうふうなことを極端に解釈すれば成り立つよう条件の中に成田空港があるのではないか。成田空港なんというのは、いまあすこの場所でなければならぬというのではなくて、二回も、三回も、そういう試行錯誤の中で生まれてきたことに対する住民の反対というものがある。その反対というものを、公共という名前によって取得できる見込みということで、長くやっているということ自体、これは運輸大臣の認定の、これはもうオーバーである。だから、もうちょっと客観的に見て、ある程度の経費がかかっても、国民の財産を守るという立場ならば、それは第二期工事の場合においては、もう一ぺん検討してみる、そういうふうに余裕をもって考えていく、そうしてあらゆる角度から検討をしてみて、どうしても成田の第二期の工事というものはかくかくの理由で必要なんだといえば、第一期工事が竣工する以降において、この問題については検討が十分なされてもいいんではないか。いま飛行機がうんと来るからというならば、私はやっぱり、たちまちいまできるならば、羽田飛行場等も金がかかってもやるべきだ。それを霞ケ浦ように何千億ヘドロでかかるというのも、大臣これはオーバーですよ。何千億ヘドロでかかるなんということはないと思う。羽田空港の深さはどのぐらいだと私は聞きませんけれども、その点について大臣どうです。この強制収用とか、私有権を侵害して公共のためにというのには、そこにはかなり鋭い、きびしい条件というものが憲法上私はあると思う。それをこのような経過をたどってきているから、こういう非常なむずかしさというものが出てきておると思うんですが、これはどうなんです。
  91. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) ヘドロを片づけるために何千億ということじゃないんです。千鳥足できめたというのですが、千鳥足でないんです。候補地富里、木更津、霞ケ浦と、こうありまして、そこでこれらのいずれが適地かと、こういう技術調査をやったと、こういう報告を当時受けておるわけです。
  92. 岡三郎

    ○岡三郎君 それは成田じゃないんです。
  93. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) だから、富里付近、木更津、霞ケ浦、この三カ所を一応候補地としてあげまして、これを技術その他の条件からいわゆる候補地をきめようと。   〔理事金丸冨夫君退席、委員長着席〕 そこで、木更津の場合は、百里原の飛行機の技術的なことは忘れましたけれども、羽田からの航跡に当たるとか、何かそういう二つの理由がある。それから霞ケ浦については、技術的にいわゆる埋め立て上非常に困難なことと、もう一つは百里原飛行場のいわゆる航跡に当たる、こういうことで不適当である。そこで、結局、富里付近がそれらの障害が少ない、土地条件もよろしい。その付近ということから多少ずれましたが、三里塚というよう土地中心にして、そこでしかも半分以下の小さなものにして、それで設定する、そういうことで千鳥足ではないんです、やはりいろいろ幾つかの候補地をあげて調べたんですから。そこで、羽田飛行場土地埋め立てれば滑走路はできるじゃないか、それは技術的にも金をかければできるようでありますが、これはやはり自動車でも同じですが、道路の上でも。ある飛行場をどんなに大きくしたって無数に飛行機を飛ばせないんです、おわかりのように。ですから、どうしてもやはりある程度以上飛行機の数がふえてくれば航跡を変えざるを得ない。だから、いま厚木飛行場から出るやっと、羽田飛行場から出るやっと飛行機のコースは変わっているわけです。そういう技術的な問題はあるようです。私は技術的なこまかいことはわかりませんが、その点の説明は航空局長から申しましょうが、そういうぐあいでありまして、したがって、成田空港を決定するに際しては、あらゆる条件から最もこれらの候補地の中ではよりベターである。土地を持っておる方々にはお気の毒であるけれども、国家目的としてひとつ了承を願いたいということからできるだけ、しかしながら民地は少なくしようということでいま三分の一近い三里塚のいわゆる牧場を中に入れまして、そうして決定を見たわけであって、当時政府としては最善を尽くした案である。ただ、問題は、地元のそうした犠牲になる方々に対してもこれは最善の措置を講じなければいかぬということで、従来にない特別の措置を講じつつある。これだけでも十分でないかもしれません。私は、いろんな意味におきまして、もっと地域住民に、賛成とか反対とかというのを抜きにしましてできるだけの措置をしてあげなければいかぬ、かように考えておるわけですが、この際はやはり最小限度土地を決定して工事に取りかかっておる、三百二十万坪というものはどうしても必要である、こういう観点に立って進めておるわけであります。第二期工事につきましては、もちろんできるだけ引き続き早く実現したいのでありますが、もちろん、そういうような反対もあることでありますから、できるだけこれは地域の方々とも十分に話し合った上で、そうしてなるべく国家目的に御協力を願う、こういうような態度でやっていきたい、かように考えておるわけであります。
  94. 岡三郎

    ○岡三郎君 これで私はやめますけれども、実はそこで大臣に言うのは、富里付近といっても成田空港は突然生まれてきたんですね、加瀬さんね。これは付近というのは、そのあいまい性ですよ。それでは東京も付近ですよ、大臣。それはあなた霞ケ浦も、西北のほうの台地なんかも付近だし、とにかく付近ということばでごまかされては私はならぬと思うのです。結局、端的に言うと、嫁さんをもらうのに、いろいろやったけれども、あそこがいいと思った、じゃあその付近にもいいのがいたなんていう、そんなばかなことはないですよ。そんなことを言っているからおこられるんですよ。やはり的確に判断して、最後にこれだと思うならば、そこできめたといって、礼儀を尽くして、いろいろと選定したけれども、どうしてもここがやはり国家目的としては必要なんだと、それならば反対している人もなるほどそうかと、いやだけれども中身を聞いてみれば婿さんもなかなかちゃんとしている、これならばいますぐさま合意に達しないけれども十分検討してみようということになるけれども、そこへ持っていったら、下から吹き上げられて反対だと、こっちのほうが三〇何%国有地があるからこっちのほうが可能性がある、取得できる見込みがある、それはちょっとかって過ぎるんじゃないか。取られるほうから言ったらかって過ぎるということになると思う。それを何でもかんでも上のほうから権力で、取得できる見込み、取得できる見込み、それでも聞かなかったら今度は収用法にかけて持っていってしまう。そういうふうなことで、私はこの問題についてのいろいろな経緯があるので、何でもかんでも、今井さんがここにいるから、第二期工事をやらなければいかぬ、第二期工事をやるかやらぬか、それはやる方向で政府がいるにしても、とにかくさまざまの問題があるから、第一期工事をやっている過程の中において政府のほうも検討してみると、この中でひとつちょっと水を入れて、余裕を持ってひとつ総合的に政府も考えてみる、住民のほうも考えてみてくれと、そうしてそのためには国のほうとしていままでいろいろ手だてを尽くしてきたけれども、どうしてもここがほしいんだと思うならば、それなりの体制というものをもう一ぺん立て直して、地域住民の説得というか、そういうものをやるという体制にならない限り、私はいままでの政府のいろいろな経緯から見て、そういうふうにやるべき段階にきているんではないか。加瀬さんも言うように、確実に取得できる見込みということを、運輸大臣が網をかぶせて、何でもかんでも政府がきめたんだからこれは持っていってしまうんだという前に、羽田飛行場の拡張も考えなさい、厚木の飛行場も考えなさい、そうしてそういうふうな総合的な中から成田に対しても十分ひとつ検討をして、政府がやると言ってきたが、やらぬとは言わぬけれども、ここでひとつ十分検討をしてみようというような余裕があってしかるべきだというのが加瀬さんの意見でもあろうかと思うのです。そういうふうなことで、この問題の展開を考えてみたらどうかと思うのですが、先ほどから言っているように、現行の憲法と諸法規の中からいって、やはり私は収用法をやるにはここはやむを得ないと、道路をこれだけ拡張しなければ全体に非常に交通も詰まる、ここ以外にはないというところで住民の説得に当たるわけですよ。ところが、二番せんじのところに最高だといってあとから追っついていくようなもので、これじゃ嫁さんのほうもいやいやというわけだと私は思うのですけれども、この点ぼくが言ってもしかたがないが、手塚さん、航空局長、羽田のほうをひとつ説明してください。幾らかかるんだ、そこをやるのに。
  95. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 羽田の沖の埋め立てということについては、実は当時比較検討をやりまして、あの沖は四千メートルの滑走路の長さのものをつくることはこれはむずかしい。といいますのは、あの両サイドに多摩川、海老取川という川がございます。その川との関連でやりづらいということが一つ。それから飛行場の能力の点といいますか、必要性からいきまして、先ほども申し上げましたように、まあ当初の計画よりは半分になったかと思いますが、二十六万三千回というような回数は、かりにあそこに一本つくったにいたしましてもこれはそれだけはとうていとれない。ブルー14という関係は、これは実は横田、厚木、入間川、立川という四つの飛行場との関連におきましてこの航空路だけを撤廃するということはできませんので、この四飛行場を全部一ぺんに一度になくした場合に初めて航空路がなくなってしまってもよいということになるわけです。これがあります間は、いまの羽田というものはどうしても制約を受けざるを得ないということで、いま極端に言いますと、その回数というものは投下資本に対して非常に効率の低いものになる。かような問題が当時議論をされまして、土地取得という問題につきましては、現在御議論がありますよう状態ではございますけれども、こちらの土地のほうがベターであるということで、羽田沖という問題は、当時否定的な結果になったわけでございます。  なお、この厚木の問題につきましては、先ほど大臣も申されましたが、私どもは将来やはり関東地域におきましては、成田ができた後におきましても、さらにその後の長期の問題を考えます場合には、第三あるいは第四というようなところまでの空港が必要ではなかろうかという考え方がございます。まあその一環といいますか、たまたま、また万博という時期にも遭遇いたしますので、羽田のああいった工事中の混雑を緩和する意味も含めまして、米軍に現在これを申し込んで使用方をとりあえず万博の期間を限って申し込んでみる。現在私、直接向こうの参謀長等にも会いまして、強硬な申し込みをしております結果、大体一応のめどは立つかというふうに考えております。ただ、将来はぜひ民間を主体にして使いたいという気でおりますけれども、これがわがほうに返還になる時期等につきましては、まあいまのところ皆目わからないという状態で、これは将来も努力は大いに重ねなければなりませんが、そういうようなことがございますので、厚木も、検討は当時としてもいたしましたけれども、相手のあることでなかなかむずかしい情勢が、その後若干いま申し上げましたような変化を来たしておりますけれども、なかなかそういう点がむずかしい。なおまた、この米軍との飛行場関係におきましては、さらに立川などにつきましても私たちのほうでは申し入れをいたしております。この立川についても、現在米軍の飛行機が横田に引き揚げましたので、自衛隊と共用でこれも使っていきたい、こういうよう考え方を持ちまして、現在やっております成田計画は、こういったいろいろな観点におきまして最善であるというふうに考えて、ここでなければ、やむを得ないということで踏み切って現在進捗を進めつつある次第であります。
  96. 加瀬完

    加瀬完君 大臣に、いままで私の質問をした点を要約してもう一度申し上げますので、御所見を最後に承りたいのでございますが、いま航空局長のおっしゃるように、政府としては成田に新東京国際空港が必要だという観点で位置を決定し、工事を進めてということはわかりますよ。しかし、航空法には、成田なら成田空港を認可する場合には、その空港敷地が確実に取得できるという見込みが立たない場合は認可をしてはならないという規定があるわけでございます。確実に取得できるか、できないかという判断はどこでつけるかと、こういうふうに伺いますと、航空局長は、実質的に反対があれば、実質的に反対の質というものはそこに存在しているならば、これは確実に取得できるということには認められないであろう。そこで、そうすると現在一期工事、二期工事というふうに分けて、反対の多い二期工事だけを限ってみますと、一坪運動の千二名という反対を除いても、概算五百名の農家のうちの百六十九名が反対だ。この反対はあくまでも飛行場をつくることに反対だという反対なので、これは反対の質というものは相当強固なものと見なければならないのじゃないかと思う。こういう状態の中で確実に取得ができるという見込みが立たないではないか。これに対しましては、法制局は、将来にわたって収用法を適用してまで取得ができるならば、それは確実に取得できるものと認められるんだ。それでは、一応認可をする時点で確実に取得できるという見通しを立てるとすれば、何年くらいの間に確実に取得できるという見通しが立たなければならないかという期限はないのか、期限は無制限でいいのかと言ったら、それは期限はあるのだ。それでは、二期工事の区域は満三年たっても、あるいはもう一年たって満四年たっても、確実に公団の手に入るという条件にはないのだけれども、これでも確実に取得できるという見込みと判定できるのか。こういう問題をただいままでただしてまいったわけでございます。法律的にはいろいろ見解もございましょう。しかし、現実的に認可をしてしまってから三年も四年もたって、相変わらず工事に着手できないという反対の強固な地域であれば、これは認可はいたしましたけれども、その認可の取り扱いについて当然行政的にも考慮の余地が少なくも生じたのじゃないか。法律的に違法だと私どもは申し上げたいのでございますが、一歩退いても、少なくとも、その認可したことが確実に取得できるという条件も満たしていることにはならないのではないか。したがって、認可という行政措置に一考を要する現状では段階になっておるのではないかと、こう思うのでございますが、この点はどうでしょうか。これはまあ訴訟にもなっておりますから、いずれ裁判所ではっきりとした判定が下されると思います。まあそういうことを抜きにして、橋本さんのことでございますから、実力者としてお考えになって、あんまり手ぎわのいいやり方ではなかったとはお考えになりませんか。
  97. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) なかなかむずかしい問題で、加瀬さんのいろいろいままでの質問聞いておりますと、こちらの答弁聞いておりますと、法律論と実際論とかみ合っているわけですね、どっちか言えば。純粋法律論でいけば、土地収用法をかければ、これは解決がつくというものの考え方が法理論的には——あるいは実質的な反対数は問題だ、法律上から言いますると。ただ、実際問題としてあるいは政治論になりますと、実際にいろいろの反対者が多ければ、そこには一つの問題があろうと思いますけれども、そこで、取得ができるかできないかということの観点も、これもまだお互いに見解を異にする場合があります。たとえば、ヒマラヤのてっぺんを、何か用があって、これを取得ようというようなことでもあれば別問題でしょうが、技術的に取得できるかできないかという問題は。そうじゃなくて、別の問題で、そこに住んでおる方々の、土地所有者の将来を、この人たちは考えるわけですね、まあ土地所有者、農民ならば農民の方々は。でありますからして、農民の諸君が理解し得るということは、二つあると思うのです、条件は。この飛行場が国家目的としてみて、まあやむを得ないのだという理解が一つと、もう一つは、自分たちがそこを離れても、将来ともにやっていけるかどうか、こういう二つの問題があると思うのです。  それで、いま迂遠なことを言うようですが、私は、農民といいますか、土地所有者、大部分が農民でしょうが、そういう方々が何十年あるいは何百年という土地を所有し、それに愛着を持っておる。その農民の方々の土地に対する愛着の精神、これはよくわかります。かつまた、自分がいままでやっておって、そりゃあまり裕福じゃないかもしらぬけれども、しかしながら、これならば安定の道であるという気持ちも十分にわかります。しかし、最近の御承知ように、まあ加瀬さんも勉強なさっておるからおわかりのように、たとえばアメリカにいたしましても、いまから五十年前の農民人口は七〇%である、日本においても同様、現在まだいわゆる兼業農家を含めた人口数は四五%でしょう。しかし、アメリカにおける専業農家の数というものは一〇%前後であります。日本でも専業農家の数は一八%ぐらいにだんだんと減ってきて、あとは、残りは兼業農家である。こういう時代の変遷、社会の変遷という事実が一方においてはあるわけですね。ですから、問題はやっぱり、もちろんこの農民の方々が、土地に対する愛着、農業を愛する気持ち、これはもうわれわれも十分に理解しなければなりません。けれども、社会の進展に伴って社会構造が変わっていくということも、これは考えなければならないわけです。たとえば、革命が起きれば土地所有というものはいわゆる国有になることは、まあ共産主義社会の革命はそういうような従来のコースをとってきておる。したがって、この社会の変遷、自由主義社会においても社会構造の変遷はありますから、そういう場合に、そこで国家目的となる国際飛行場は必要かもしらぬ。しかし、自分たち個人個人の生活からいえば、どうも安心ができない、不安である、こういう第二の場合は、かなりやっぱり土地を手放す人から見れば非常に重大な問題である。いわゆる土地に愛着を持つということに対して放してくれという理解を求めるという努力をもちろんしなくちゃならない。と同時に、その場合において、いわゆる将来の生活の保障といいますか、そういうことをやっぱり国が、あるいは関係者が最大限の協力をしてやる、こういうことによって社会の変遷に伴うところの事情を十分にのみ込んでもらう、こういう努力をしなくちゃならぬと考えます。したがいまして、法律論的に言えば別問題ですけれども、実際問題としてわれわれが扱う場合には、そのような両面からこれを考えて解決をしていかなければならない。ただ権力を発動すればよろしいとばかりは、われわれはもちろん考えておらないのでございます。その点はまあ釈迦に説法みたいなものであって、加瀬さんにそんなことを言ったって、そんなことはわかり切っておると言われるかもしれませんが、ものの考え方としてはさようなことでなければならぬ、かように思っておる次第でございます。
  98. 加瀬完

    加瀬完君 大臣のおっしゃる、十分事情をのみ込んでもらうように説得を尽くさなければならないし、まして権力発動だけで土地を取り上げるというようなことは考えておらない、まあ、おっしゃるお気持ちはよくわかるわけです。私がいま問題にいたしておりますのは、当然常識的に解釈をすれば、確実に取得ができない場合は空港の認可ができないということになっておりますのに、認可して三年も四年もたっても確実に取得できないという状態が残っておるのを認可をしてしまったことには、若干これは行政的に無理があったとお考えをいただくわけにはまいりませんか、再考をしていただくわけにはまいりませんかと。御再考をいただくとすれば、特に反対の多い二期工事の分というものについては、法律的に、形式的に解釈すれば、認可すべからざる内容であったものを認可しているわけですから——それが言い過ぎであるならば、認可することに相当調査を要するよう条件であったにもかかわらず、無理に急いで認可をいたしましたけれども、取得のできないという状態におちいっているわけでありますから、これは大臣の行政指導として何らか別途の方法を講ずべきではないかというように思うわけでございますが、これについての御所見はいかがですかという点を伺いたいんであります。
  99. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、それができるかできないかという認定の考え方立場によって違うということなんですね。いま加瀬さんは、できないという条件で全然きめちゃっているんですね。そうじゃなくて、できるかできないかは、これは実際に当たって進めていかなければならないわけであって、いまからあるいは十年かかるかもしらぬし、あるいは三年で話がつくかもしれません。そういうことをちょっと前提条件か一できないという条件で認可したのはという前提条件が、私は法律論といわゆる実際論がこんがらがっていやしないか、こういう意味で、そういう仮定のもとではどうも答弁のしようもないし、また私、自分としてはいま方針を変えるつもりはない、こういうことです。
  100. 加瀬完

    加瀬完君 大臣、誤解をしていらっしゃらないでしょうけれども、もう少し説明申し上げますと、飛行場ができるかできないかということを私はいま問題にしているんじゃない。確実に土地取得ができるかできないかということをいま問題にしているわけです。それで認可をする場合は、確実に土地取得できるという見込みの立たないときには認可してならないという航空法上の条文があるわけです。しかしながら、確実に取得できるという見込みで御認可をしたわけでございますので、三年たっても四年たっても確実に取得できておらない、相変わらず。そうして、確実に取得できないということはどうだというと、ほんとうに質的に反対が強い場合は確実に取得ができないという御認定だと航空局長がおっしゃるから、それならば、一期工事のところもそうですがこれは国有地も多い。私有地の多い二期工事のほうに限ってみれば、五百人の農家のうち百六十九人が反対ということですから、これは確実に取得できるという条件が満たされているとは認められないではないか。三年たっても四年たってもそういう状態でありますのを早急に確実に取得できるという見込みで認可したことは、ここで若干手直しをしていただく必要が生じてきておるのではないか。その飛行場のできるできないの問題の一歩手前の、飛行場として認可する場合に完全に土地が手に入るか入らないか、この見込みについて、少し急いで手に入るという認定を下し過ぎたんじゃないか。現在手に入っておらないんです。そこで、若干の手直しということを、当然これは行政措置としては考える必要があるのではないか、こういうことなんです、質問の要点は。
  101. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) まあ二、三年たって確保できなければ、それは確実に取得できないと考えるかどうかという問題にしぼられてきたようですが、どうも、必ずしもこういう問題になりますと規模が大きいんですから、したがって、二、三年で解決するとかしないとかいう問題ではなく、やはり一定期間、われわれがこれを完成するためには十年なら十年の将来を考えるが、そういう期間内にこれができるかできないかという問題であっていいと思うんですが、したがって、いまの状態で私は取得する条件が未熟であるとは考えておりません。これは説得をして、いろいろ話し合いをしてみれば条件は満たされる、かように考えております。
  102. 加瀬完

    加瀬完君 それでは問題をしぼりますが、四十八年に完成しようとする予定の中で、四十五年になっても五百分の百六十九という反対があっても、一体確実に取得できる見込みと認定できるかどうかということが一点と、いやそれは橋本大臣の任期中に早急に説得をして確実な取得に取り運ぶんだということのようでございますが、その説得の方法はあくまでもさっきおっしゃったような、事情をのみ込んでもらうように、権力の発動はしないようにという基本線でこれはお話を進めるということで考えますと、めんどうくさいからここらで強制収用だということはおやりにならないと考えてあとのほうはよろしゅうございましょうか。
  103. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) 第二期工事の問題にしぼられておるようでありますが、これはしかし何といってもできるだけ説得によって解決するほうが結果的には早いんです、いろいろ。で、その強制収用、これが法律にありますように非常に広い意味での公共性を問題にしているんではなく、狭い意味の公共性を問題にしておる。それだけに、これは最大限いわゆる説得につとめて、それでもなおかつ解決のできない何人かのへそ曲がりがあります場合もあります、世の中には。皆さんも御経験があるんですから。そういう問題が起きれば別です。この強制収用法というものは最後の手段ですから、できるだけ説得をして、あるいはそれがために一年ぐらい予定がおくれようともこれはやっぱり努力を続けるというところに主眼を置き、しかしながら何としても三、四のそういう人がよくありますけれども、そういう意味で、たとえば、改良組合の定款にしましても、三分の二が賛成であればこれはいろいろのことは決定できる。改良組合においてそういうような規定がありますように、どうしても理を分けて説明をし、努力をしてもできぬ場合、まあ涙をのんでといいますか、さようなこともあり得るのでありますが、できるだけさような措置は避けていくべきである、かように考えております。
  104. 加瀬完

    加瀬完君 この問題の繰り返しになりますが、これは法制局に今度この次のときにもう一回私の質問指摘の点も法的に十分御回答をいただきたいと思うわけですがね。確実に取得ということがあなたのような解釈でよろしいのかどうか。これは法制局でももう少し審議をしていただきたいと思うのです。といいますのは、どう考えたってこれは契約の段階で確実な取得かどうかということをきめるべき問題だと思うのです。そのきめる時期は認可をする時期なのです。認可をしてしまって四年も五年もたってまだ手に入らないというよう状態の場合、確実に取得できたという条件が満たされたとは私は解釈できないと思いますが、この点いかがですか、ということです。これをひとつきびしく解釈をしていただきたいと思うのです。  これは運輸省に伺いますが、全体としてみますと、二期工事の分は確実に取得できる条件で現在あるとはお認めにはなりませんね。
  105. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 現在二期工事の分につきましては、先ほど総裁からもお話がありましたように、買収済みが全体の七六%にいっております。これは相当な進捗率かと考えますが、問題は先ほどの一坪運動のような、言うなれば非常にイデオロギー的な反対の方々が非常に多いということでございますので、そういった方々にも、大臣のおっしゃるように、できるだけ権力の発動は控えて説得にこれつとめるというようなことによって問題の解決をはかるということで、何とかこれを買収をしていきたい、またそういうことが可能であろうと考えておりますので、確実に取得はできるものと当初考えました方針は、そのとおりと考えております。
  106. 加瀬完

    加瀬完君 そういうお答えがあると、こっちも開き直らざるを得ないのです。七六%というのは面積でしょう。面積にしたって二四%を獲得できない。人数にすれば一坪運動に入っている者だけでも千二人いるのですよ。それから従来の地主が百六十九人。これだけの人数がれっきとした反対の意思を固めて残っているところを確実に取得できるという認定は客観的に見て私は下せないと思うのです。そういうお答えであるなら、それでは取れるものなら取ってごらんなさい、あくまでも反対をいたしますよと、開き直らざるを得ない。そういう対立を繰り返している限りは、力で取るなら——力で取れば取れるのだから取るぞというかまえは、今度はまた相手方も、じゃ力の続く限り取られないようにがんばろうということになれば、これは大臣のおっしゃるように、話し合いでやるよりもむしろ長引くという結果になるわけです。そうではなくて、私はだからこの二期工事をやめろの、空港はだめだのと言っているのではない。客観的に見て、お互いに法律に照らして、お互いのやってきたことを反省し合おうじゃないか。ある程度そうなってくると確実に取得の見込みがなければ認可できないというのを、いまになっても確実に取得のないものを、確実に取得できないのに、相変わらず強気一点ばりでやっておったのでは、この間も申しましたように、住民は、政府が法律を守らないのではないか、航空法の三十九条には、確実に取得できないところに空港を認可してならないというのに、確実に取得できないことがはっきりしているのに、強権発動でわれわれの土地を取ろうとするのは何だ、政府自身が不法行為を犯しているのじゃないかという不信も一つあって、反対が強まっているということも事実です。ですから、ほんとうに空港を皆さんの御計画ように進めたいと思うならば、いままでの行政的な行き過ぎということについては謙虚に反省をして、大臣のおっしゃるように、改むべきところは改めるという態度で話し合いをするということでなければ問題の解決はできませんよ。あなたはさっき、確実に取得ということをはっきり御認定になった。実質的反対の質だということなら、この地域に実質的反対の質が存在しないとは認められないでしょう。現在二四%でも土地取得できない状態にあって、千百七十一人という反対者があるということは、これは実質的反対の存在というものがあるということでしょう。この質が存在しているとすれば、要件は満たされていないと解釈せざるを得ないじゃないですか。そうでないならば、実質的反対の質というのは具体的に何だと、もう一回問題を繰り返さざるを得ないのですよ。この解釈は、住民の保護の法律ですから、住民の保護の立場で私は解釈しなければならないと思うのに、法制局の方も、政府の仕事をやりいいような解釈ばかりしておって、法律の精神というものを非常に私は誤って解釈しているのではないかと思うのです。これは議論になりますからやめますが、大体ここを適地として認可をする場合に、確実性の確認といいますか、取得確実だということについての確認方法がとられておりますか。
  107. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) このところにきめました後に公聴会をやりましたわけですが、公聴会の中に、いま数字を的確に覚えておりませんが、もちろん反対の意思表示をなさる方も相当おられましたと記憶しますが、やはり逆にまた、相当の数の方があるいは条件つき賛成というような方々がおられまして、そういった事態を総合的に判定したということ、それからまた地元立場を一応代表しておられると考えられます知事あるいはその他公共団体の皆さんが、ここの場所でひとつ協力して大いに説得に当たって建設を進めようという強い意思表示がはっきりあったというようなことなどを総合いたしまして、当時としてはここに結論を求めたわけでございます。
  108. 加瀬完

    加瀬完君 その知事、市長村長等がいろいろこれから政府の要望に沿うて説得して確実な取得条件を満たそう、こういう申し出もあって、それならば、地元がそれだけ協力してくれるならば確実に取得出来るだろうという、その当時認定されたことはけっこうですよ。それがいけないとは申しません。しかし、そのとおりいっていますかということなんです。知事や市町村長が皆さんにお約束したとおり、確実に取得という条件現状において満たされていますか、満たされていないでしょうということなんですよ。この点は満たされていないでしょう。知事や何かがうまいこと言っても、知事が話をすれば話をするほど反対派は固まってしまう。抜くべからざる不信感が知事なんかに対しても増して、動きがとれなくなっている状態でしょう。それでも取得できるという条件ですかということなんですよ。しかし、これは法律的な問題を非常に含みますから、この次に法制局に私あらためて——法政局長でもけっこうです。第四部長でもけっこうですよ。法政局として一体確実取得というものの見解はどうだと、先ほど申し述べられましたことについては、私は不満でございますので、もう一回、あのお答えをなさるなら、私のほうでももう少し反論をいたします。その御回答をいただきまして議論を進めたいと思いますので、きょうは私の質問は一応保留をいたします。
  109. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと関連して少しくお尋ねいたしますが、予定どおり来年の四月一日以降供用開始が行なわれたあと、成田離発着の需要予測の中に、米軍機もしくはチャーター機の計算がされているのですか。
  110. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) そういうものは予測数字の中に入っておりません。
  111. 森中守義

    ○森中守義君 そうしますと、その需要予測の中に入っていないが、現在の地位協定によればおり得る可能性がある。したがって、入っていないということは、地位協定に関連をするけれども、米側にはおりれませんよと、そういう約束がちゃんとあるのですか。
  112. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) 現在私どもも別にそういうことで米軍とお話し合いをしているわけではございませんが、先般大臣が衆議院の地方行政委員会におきまして非常に明快な御答弁をしておられるのですが、当時の大臣の答弁を引用いたしますと、地位協定そのものは、これは一つの条約であり協定である。しかし、日本国民が希望しないようなことをあえて日本と友好関係にあるアメリカ政府がするはずはない。そういう意味において大臣としては、米軍の軍用機はもちろんでございます、MACのチャーター機等についても成田にはおりていただかないようにするんだということを明確に申しております。
  113. 森中守義

    ○森中守義君 それは運輸大臣、地方行政のことですから、その会議録を見ていませんからわかりませんが、いま今井総裁の言われたこと間違いありませんか。
  114. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) 地位協定という条約上のいわゆる解釈からいえば、それは権利はあるといいますけれども、しかしながら政治ですから、やはりそういうものが、地位協定なり安保条約があるということは、日本の国益といいますか、日本の安全、国益、こういうものが必要のために安全保障条約というものがあるわけですね。その安全保障条約のバックグラウンドなるものは国民感情だと、国民が反米にみんな立ち上がったら安保条約幾らあったって間に合わない。ですから、日本の国民が希望しないそういうものについては、そういうような法律解釈からいえばできることがあっても、話し合いでできますからして、私は、ここでは純民間飛行場としてわれわれが設定したのであるから、米軍機なりチャーター機もこれはお断わりをすると、もしも申し入れがありましてもこのような方針でいきたい、こういうことを申し上げております。
  115. 森中守義

    ○森中守義君 それは確かにお説のとおりだと思うのです。しかし相手がそのことを、はいそうしましょうということになるのかどうか。これはやはり現実に直面しないと、その答え出ないと思う。したがって、いま大臣のお答えを聞いていますと、政府側の期待であり、願望であって、おそらくそういう場合になれば、アメリカといえども了承するであろう、おりないであろうという一つの推測にすぎないですね。私はこれはやはり公団法をここまで審議する経過から見ますと、それはやはり国会としては了承することができない。具体的に申し上げるとこういうことだと思うのです。そういう取りきめの場所、話し合いの場所というのは正式に外交ルートを通す方法もあろうし、あるいは安保条約及び地位協定に基づいた日米合同委員会というのがあるのですがね、この中でいま大臣の言われるようなこと、きわめて正確に約束づけされたものでないと、かりに成田空港が動き出した際に、周辺住民の気持ちというものはなかなか落ちつかぬのじゃないか。むろん反対運動の一つの支柱にはそのことがあるわけですから、そういうことを考えると、政府はこう考えている、したがって信用して、これは安心してくれではいささか私は決定的なものとして受けとめられないようなことじゃないかと思うのですね、どうなんですか。したがって、この際は合同委員会あたりに正式に議題として出す、いま大臣が言われるように国民感情を無視してアメリカもするものじゃないだろう、そういう観測をお持ちであるならば、合同委員会に出してもちっとも不都合なことじゃないと思う。だから、ひとつできるだけすみやかな機会に、外務省あるいは防衛施設庁あたりでも相談をされて取りきめておってほしいと思うのですね。
  116. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) どうも私あまり条約あるいは法律については詳しいほうじゃありませんから、ただ私のまあ政治感覚なり常識から考えれば、そういう問題までお互いが取りきめなければ仕事ができないようじゃもう安保条約は死んだも同然になるじゃないですか。沖繩も二、三年前にジョンソン統領との間に両三年の間に日本に返すことをきめる、こういうことを話し合ったことが、ちゃんと両三年のうちにきめて、七〇年には返すことになったのですね。それが政治じゃないでしょうかね。そういうことがあって、初めて政治が行なわれるので、何もそこに条文といいますか、規約だけで世の中動いているのならもう政治家は要らないということであります。そういう意味で私はそういうことの御心配はない、われわれもちゃんとした大国なんですから、日本自身がイエスもノーも言える、これは言えるのですからして、やりは政府を国民は信頼する、この気持ちがなかったらもう国家の政治はできないのですよ。ただ、そういうことは条約上言わなければいかぬのかどうか、私よくわかりません。わかりませんけれども、やはり自主独立というたてまえからいっても、それくらいの自信と勇気とを持っていなければ日本の国家は保っていけない、かように考えますので、私はその方針でまいりたい。その点においてはひとつ御安心といいますか、まあ安心しろと言っては安心しないかもしれませんけれども、ここにあって、必ず政府は自由民間飛行場としてここを使うのだという方針、御承知ようにそれ以外に、何も使わなければならぬ状態ではないわけであって、横田基地もあるし立川基地もあるし相当のものを持っているのですからして、無理やりにじゃここをどうしても使うということが行なわれるようであれば、これはもう日米安保条約というものが傷がつくことは向こうさんもよく承知している。そういう意味で私は森中さんに政府の方針を御信頼願いたい、かように存ずるわけであります。
  117. 森中守義

    ○森中守義君 それは私も言われてみれば政治家の一人ですから、政治論としてはわかりますよ。ただ、そういうことまでもきめておかなければ安心できないかということになると、いまここで私は一々具体的なものを、じゃ一体これはどうなのか、あれはどうなのかと、問題もただしたい。しかし、少なくとも安保あるいは地位協定の発足以来はたして無条件政府の言うことを信頼をしておってよかったかどうかということが、たとえば基地の問題等で幾つも出ている。官房長官時代に一番あなたが御存じですよ。信用できない。信用できる面もある。面もあるけれども、信用できない面もある。しかし、要するにそういうことは日本政府を信頼をしてほしい、アメリカも聞いてくれるだろう、そういう観測をお持ちならば、実際そういうことを取りきめる合同委員会という場所があるのだから、やってみたらどうだ。そこまでしなければ——安保条約あるいは地位協定というものはもはや無用のものではないかという、そういう見解はぼくはとらないのです。それはなるほど佐藤内閣にまかしておけ、そうして運輸大臣のわしにまかしておけと言いたいところだろうけれども、過去の幾つもの基地問題というのはそうはいっていない。それはあなたが一番よく御存じでしょう。ですから供用開始以降、そういうものが需要の予測の中に入っていないとするならば、おろさないということがたてまえで、しかし相手は応諾を与えていない。そのときになって、それは困ると言えばそれで事は片づくと、こう言われるのだけれども、やはりそういう話し合いをする場所があるならやっておいたらどうですか。それも私はきめのこまかな政治家の政治の部類の一つじゃないのかというように思うんですがね。やりたくなきゃいいですよ。しかしそれも、考えてみると、やってみることも政治家としての運輸大臣の一つの仕事じゃないか。むろんこれは附帯決議等がつけられるものかどうか、これからの相談になりますが、私どもとしてはそのことにはかなり重大な関心を持つのです。どうでしょう。
  118. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) いま森中さんの御意向を聞いておくということで、私は尊重するという意味ですが、心配はない。そういうことを心配しておったら政治もできませんし、われわれも政治家であるし、いままで、たとえば基地を縮小するというときに、縮小も今日まで何分の一に減ってきたわけです。そういう意味において、私はやはり自分自身を信頼しなければ相手も信頼できない。そういう意味からいって、この問題に関しては政府の方針、すなわち民間飛行場として使うという方針に変わりはないし、この考え方は将来ともに変更することはないと、こう確信を持っております。
  119. 森中守義

    ○森中守義君 これは羽田の場合でも数回にわたってそのことが議論になった。しかし、いまはずいぶん回数は少なくなったようですが、依然としてMACチャーターなんかがおりている。この事実を率直に認識してもらいたいと思うのですね。  それからこの前ちょっと私がお尋ねした中で、おおむね問題は処理できるであろうと言われていた例のカントリークラブ、これはどうですか。最終的に事業認定を、これもしなくてはならぬような状況にありますか。それとも、工事は進んでいる——この関係は一体とうなるのです。話し合いがつくのかどうかですね。もしつかないという場合には、個々の地権者の事業認定を出されているわけだから、これについても同じようなことをおやりになるのかどうか、これをちょっと聞いておきたいと思う。
  120. 今井栄文

    参考人(今井栄文君) カントリークラブの問題につきましては、最終的な実は段階に入っております。私自身から先方の社長に対して最終的な補償価格を提示いたしました。若干向こうで、どうしてもこういう点だけは見てほしいというようなことを非常に強く言っておられました。これは政府機関でございますので、公共用地の取得についての閣議の決定もございますし、それに基づく公団の補償基準もあるわけでございまして、私がとにかく最大限の努力を払い、この補償についてできるだけ親切に見るようにするから一切をまかせなさい。ですから、まかせるかまかせないかという段階にきて、その最終の御返事を待っておるわけです。で、これは直接聞いたわけではございませんが、この週の終わりか来週の初めごろには、その返事を持って私のところへ参られるという段階まで実はきておるわけでございます。したがいまして、私は話し合いによって解決ができるんじゃないかというふうな確信を持っております。
  121. 森中守義

    ○森中守義君 あと成田の問題は多少次回にお尋ねする予定ですが、いま一つ大臣に聞いておきたいのですがね。  今回の日本航空の乗っ取り機の問題で、何かことばの端々に政府側のほうでは、真相の究明であるとか、そういうものはもうやらぬほうがいい、人も返ったし、飛行機も返ったんだから、まずはめでたしめでたしということでいいんじゃないか、こういったようにニュアンスとしてしばしば受け取っておる。しかし、事件がずっと流動する経過の中で、何時何分にどうなった、こうなったという報告は二、三回承りました。しかし、いま事件の経過を振り返ってみて、要するに合点のいかないことがたくさんある。ことに重要なことは、むろん大臣に言わせると、ああいう場所の場合だから、航空法なんというのは問題にならぬ、こういうおしかりを受けるかわかりませんが、航空法を明らかに侵犯した事実がたくさんある。それと、非常にむずかしい二国間あるいは三国間の問題ですね。こういうことを考えていくと、なるほど触れないほうがいいという一つの政治的な配慮があるのじゃないかということは、私どもといえども理解できないことはない。しかし、あまりにも問題が重要であり、何とはなしに釈然としない点もありますので、実はきょう午前中、御承知ような経過で羽田に参りました。機長の話も聞いてきた。しかし、私はこの際は、政府みずからが真相の究明に当たられていいじゃないか。おそらく内々のうちにそういうものが取りまとめられているかもわからない。あるならばここに教えてもらいたい。しかし、真相の究明を政府みずからが怠っているとするならば、これは私は重大な問題だと思うのですが、一体どういう経過になっておるのですか。
  122. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) 森中さんの御質問は、Uターンした問題だろうと思うのですがね。
  123. 森中守義

    ○森中守義君 その以前から全部です。一連の経過をね。
  124. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) こまかい経過は航空局長が関係者から報告を受けておりますから、そちらのほうから答弁させますが、私が報告を受けたところでは、航空法等においても決して十分と、こういうことは言えない場合も、とっさの場合ですから、たとえば機長に対する指示の問題とかいろいろありましょうが、決して十分とは言えないかもしれないが、妥当なる措置を行なってきたというような報告は受けております。ただ、実はそういう問題いろいろ皆さんからお話がございましょうからして、これから私も拝聴いたしたいと思いますが、ただいわゆる米軍とか韓国軍とか、日本の自衛隊とか、こういうところに特別な連絡があって、そうして行なわれたのではないかというようなことにつきましては、もちろん韓国政府も知らない。また、われわれは韓国政府にもそういうような、ただ飛行機が行くことについては、あちらの方面通るであろうから、その際においてはという連絡はとったり、外交ルートを通じてお願いをしたようでありますが、いわゆる何か作戦的なものの考え方からさような措置はとっておらない。われわれもまともに、金浦飛行場に着いたのは、着いてから初めて知ったという状態ですから。ただ、いろいろな航空法上の問題について問題があるようでありますから、これらはひとつ航空局長から答えてもらうことにいたしますが、いわゆるわれわれがそこへ行けとかというような指示は、日本政府もしておらない。もちろん韓国政府も、これはおりてからびっくりしてわかったという状態ようです。私が着きましたときに山村政務次官から聞きましたのは、日本大使もまた韓国の政府の高官も、十数分おくれてから初めて到着したという報告を受けておりますから、またその他、私が会っての話でも、全く突然におりてきたようなことを韓国政府の方も言っておりますから、その点については私はあやまちはないと思います。  ただ問題は、これから皆さんにいろいろ御心配願いたいのは、ああいうハイジャッキングについては事前にわれわれは十分に、これはまあ警察の問題ですけれども、最善の措置をやらなければならない。また、航空警察といいますか、飛行場警察、これも実は荒木国家公安委員長とも話しておるのですが、とにかく羽田なら羽田の例をとりますというと、平均十五万人くらいの人間が動いている。十五万人分人間が動いているということは、四十万、五十万近くの人間の人口です。五十万の人口、その三割が動くわけですから、したがってこれは五十万の人口に匹敵する。しかも各階層にわたった、いろいろな目的を持つ、非常に複雑な人口動態なんですね。こういうものに対して、いまの飛行場警察ではたして十分かどうか、これは検討してもらいたい、強化する必要が諸君のほうであるならば、十分これは強化の方法を考えてほしいということを申し入れをしております。そうしてまた、そういうことをやりましても、あるいは万が一にハイジャッキングがないとは限らない。それはいま森中さんが言ったように、二つ、三つの国にも関係が出てくる、この中にも未承認国があれば非常に問題になるわけです。そういう意味で、これをどうしていくかということも、政治的な問題は別として、これは考えていかなければならないのじゃないか、かように私は考えているわけであります。いま直ちにこの問題を表に出すべきかどうかは別にいたしましても、これは考えなければならない。  もう一つは、ハイジャッキングが起きた場合に、一応の方針としては、どうしたらいいのか、せんだっての場合、山村政務次官からもお話がありましょうが、かなり性格異常の人間が乗っておると聞きました。金浦飛行場に着いた後、自分たちがだまされたと思って、そこで酸素のかんを抜いて充満さした。これはマッチ一本すれば爆発しちゃうというようなこともあったと聞いた。こうなるというと、いわゆるわれわれが人命救助といいますか、人命を助けるというために、政府が苦心惨たんをして、われわれも含む、私も行きましてから二日間というものは一睡もしないくらいにいろいろ山村政務次官を相談相手として、そうして最善の措置を講じたんですが、最後はああいうような手段で、これも一か八かなんです。それは成功するというのは百発百中ということで山村君のあれを認めたわけじゃない。あるいは失敗するかもしらぬ、けれどもこれよりほかに手がなかったわけです。これで成功すればということでタイミングを見はからって私はこれを命じたんですが、そういうふうなことで、これから解決できるとは考えられない。そうなりますというと、ハイジャッキングに対して、やはり基本的にどういうふうに考えるべきか。いわゆる国民の合意ですね、なかなか国民の中でも、一部はなぜあれをやっつけないんだというおしかりも私は受けている。ある方面からはあのぐらい出せばいいじゃないかという、全く両極端な意見が私のところに寄せられております。これはそれじゃ困るんであって、何かやっぱり、少なくともわれわれ政治家なりあるいは政府なり、これは与野党を問わず、こういう問題についての何か一つの方針といいましょうか、何かをまとめる必要がありはしないかということを強く感じております。こういう点について、またこの委員会を通じて皆さんの御意見を聞ければ、私としては将来対処する上において、たいへん参考になる。二度も三度も身がわりがきくわけじゃございませんので、非常にこれは真剣に、まじめに考えるべき問題だと、かように考えております。
  125. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) いまお尋ねの中で、航空法違反事態がいろいろあるのではないか、確かに冷静厳密にいいますと、たとえば八十六条、爆発物等の輸送禁止条項、これなどには明らかに爆発物を運んでおりますので違法でございますし、運送事業者の立場からは、これまたそういうものを運んではならないという八十六条の二にも当てはまります。あるいはまた航空交通の指示、九十六条、あるいは九十七条にいうフライトプランを提出し、その承認を求めて飛ぶという問題についても、そういうものは提出されておりません。あるいは到着をいたしましたら、到着の通知をやるという九十八条は守られておらない。しかし、これもいずれも通常の定期運送が行なわれている場合の条項でございますので、先生もとくと御承知のとおり、今回の場合のような、言うならば緊急避難といいますか、きわめて異常な事態でございますので、これにたいしては、言うならば違法性が阻却されるのではないかというよう考え方を持っております。  なお、いろいろ経過について云々というお話がございましたが、私のほうでは、もちろん、航空交通管制の通報機関を通じましての時々刻々の事態を直接入手している。これはしかし、板付を出まして、いわゆる韓国FIR、韓国情報区に入りましてからはそういったものはございませんが、それまでの間についてはございますわけでございます。また、機長なりあるいは航空会社自体からいろいろ聞いている事態もありますが、おおむね、たとえば機長等からのお話は、本日お話が羽田の現場で行なわれましたよう情勢、私どもとしても報告として受け取っておる次第でございます。
  126. 森中守義

    ○森中守義君 さっきの大臣のお答えもかなり示唆に富んでもいるから、全面的に否定もしないし、あるいは全部それでよかろうという気にもなりませんが、ただ私どもが言いたいのは、少なくとも多面多岐にわたっているのですね、今回の扱いというものが、運輸省日本航空、警察庁あるいは防衛庁、外務省といったように。それでそれぞれのサイドからいろいろな手が打たれておる。そういうのが一元的に行なわれておったかどうかというのも実際聞かされていないですね。そういうのがいろいろ入りまじっているものだから、さっき言われるUターンの問題も明らかにどうも得心できない点がある。あるいは立たせる場合に、きょうもあすこで聞いたのですが、韓国の防空識別圏に突っ込ませた。地図も何も渡さなかった。この辺もやはり疑問が多過ぎる。それは大臣のことですから御承知のことでしょうけれども、よその国の防空識別圏に航空機が飛んでいけば識別に上がってきますよ。そこでおろされるというようなことで、実に不可解な事件が多過ぎる。それと、厳密に航空法違反になるかどうかわからぬけれども、オイルコックを締めようとする、あるいは警報装置のランプも切断した、こういうようなことも非常に危険きわまりないことだと思う。これも確かに平常運航と違うので、緊急の場合だからやむを得ない措置だった、すべて結果的によかったからまずは、こういうことになるのでしょうけれども、要するに非常にやった措置というものが多元的である。それだけに、私どもとしてはわけのわからぬようなことが多過ぎるという、こういうことを実は言いたい。だから、私が、政府みずからが真相の究明に当たるべきじゃないかというのは、なるほど運輸省関係においては大臣、次官も行かれたことだし、御苦労であったことはわれわれも感謝してはおりますよ。しかし、警察庁はどうであったか、防衛庁はどうであったか、外務省はどうであったか、日本航空はどうであったか、そういったものを総合的に一ぺん洗い直してみて将来に備えるべきじゃないか、こういうことなんですよ。それをただもう結果がよかったから、これでいいじゃないかというのでは、むろん、それは公開できるもの、公開できないものもありましょう。しかし、これだけ世界を、世間を騒がした問題ですから、何時何分どこにどうしたという、そういう経過の説明じゃなくて本質の説明、そういう報告をほしいのですがね。そういうものが出ていても言わないのか、あるいは手をつけておらないのか、その辺はいまのお答えで大体出ましたけれども、要するにやっていないということのようですね。これからおやりになる意思はありませんか。
  127. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) 過去の経験をひとつ経験として将来に備えるための関係各省の相談といいますか話し合いは、これはやったほうがいいと思いますから、ある意味においては事務当局ではその連携はやっているのですが、ただ、ああいう問題はわれわれが考えておっているようなぐあいにいかない場合がありますから、考えておったとおりにいってくれれば一番いいのですけれども、いかぬ場合もありますから、いろいろな場合を想定しながら、やはり将来にはもちろん備えなくちゃいかぬと思っております。ただ、外交上のルートになりますと、やはり外務大臣を通じて頼むとか、あるいは飛行機の保護といいますか、そういうものについて自衛隊を通じてやる場合も、これは一つには電波の問題があります。運輸省自身が持っておらないという問題がありますが、いろいろありますが、いずれにせよ、いまおっしゃったように、この経験をよき貴重なる経験材料として将来に備えるための検討は加えなくちゃいかぬし、目下事務当局でもその点は進めておると考えておりますが、最終的にはわれわれの段階でやはりきめなくちゃならぬ。たいへんけっこうな御注意でありますから、やっていきたいと思っております。
  128. 森中守義

    ○森中守義君 これは後日、法案の提出もあるようですから、またその際こまかに内容等、このことに関してでもお尋ねしたいと思いますし、まあきょうはこれで終わっておきます。  あと、山村政務次官に、北朝鮮に着陸をするまでの、金浦を立って、その後の経過を、もう一回ひとつここで詳しく御説明いただきたい。
  129. 山村新治郎

    政府委員(山村新治郎君) 金浦を立って、——機内のことはよろしいですか……。金浦を立ちまして、それで私のほうは、実は技術的なことは全然わかりません。というのは、機内におきましては機長、副操縦士、航空機関士とは話は禁じられておりました。そしてまあだんだん暗くなってきた。ところが、空港はあるけれども飛行機が二つ三つ着いていたのです。しかし、何だか小さな空港だ。そうしてその上を二、三回回ったと思います。そしてまあかなりの遠距離から——もちろん滑走路進入ということですから、かなり遠く離れなくちゃならないのですが、おりてきたようでございます。そのとき副操縦士が、私もちょっと感じたことのないような大きな声で、ベルトだけは締めておいてくれ、きっちり締めてもらいたいということでありまして、締めました。まあちょうどあの上にいろいろな電気の装置とか、それからスチュワーデスを呼ぶボタン等がありますが、すごいショックを受けた。その衝激というものは、締めていたベルトが伸び切ってしまうほどで、頭があそこにぶつかりました。隣におりました——これは犯人の一人ですが、これはそのとまった瞬間に何かちょっと変なにおいがした。くさかった。あとで聞くところによりますと、それは起爆剤の硫酸のにおいで、そしてその硫酸がこぼれてポッケトに穴があいたとか、そういうようなことを言っておりました。それで、一般のジェット機でおりた場合には逆噴射というのがありますけれども、私も百数十度飛行機には乗っておりますが、初めて受けたほどのすごい逆噴射をしまして、そのときは飛行機がばらばらになるのじゃないか、そんな錯覚を感じまして、それで着陸したわけでございます。着陸いたしまして、犯人側が機長と副操縦士に、とりあえず空港におりて連絡してこいということでございます。もし機長と副操縦士が行くなら私も一緒に行こうといったら、おまえは人質だから行ってもらっちゃ困るということで、その間の時間が、結局北鮮側の政府の人間が来て——これは社会安全省と言っておりました。そこの代表だという人間が出てきて、私たちがおろされるまでに大体二時間くらい、その機内で犯人たちも一緒におったわけです。それでおりるとき——これはきょう先生方「よど」号のあれで、タラップからおりられましたが、タラップがありませんでうしろからおろされました。実は犯人たちがそこからあけられたら困るというようなことですけれども、綱で厳重にしばってあったのを、その綱を切ってうしろから私たちおろされた。犯人たちはそのとき、大体持っていた武器そのほかを持っておりたわけでして、おりましたら、新聞社のライトがごうごうと照っておりまして、それで犯人と一緒に一列に並ばせられたのですが、一列に並ばせられまして、そのときに犯人たちは、飛行機をおりたすぐあとで、武器を置いてきてしまったということで、武器、爆発物そのほかを持ってこいということで、犯人たちが持っていくのを新聞社がよく写しながら、犯人たちにいろいろ説明しろということで、これは日本刀何本あったかわかりません。かなり長いのもありましたけれども、短い短刀ようのものもありました。それは一束にしておいて、爆薬のほうは十三本あったと思います、十三本を一まとめにしておいて、それで硫酸は半分ぐらいは何か試験管がこわれちゃったりなんかして流れちゃったというような状況で、五、六本しか硫酸のほうは出しませんでした。それとピストルは一丁ありましたが、これは皆さん御存じのように、精巧なおもちゃのピストルです。北鮮側の兵隊がこわごわこれをさわっておったら、おもちゃだおもちゃだ、ばかにしたような態度で、それをおもちゃだということで、笑いながら犯人たちが説明しておりました。それでみんな一緒にバスに乗せられましてホテルへ着いた。これが大体ホテルまでの経過でございます。
  130. 森中守義

    ○森中守義君 それで院外でのことのようですから、あまりことあげしていろいろお聞きするのもどうかと思いますが、帰られたあとで十チャンネルか十二チャンネルでこの話をされたと思いますが、そのときの、どのチャンネルであったか正確に覚えていないのですが、翌日数名のいろいろな人からそれぞれいろいろ連絡ありましたね。機長が、この状態だったならば、みんな死んだかわからないというようなことを言われた、その辺非常に誇大に言われたのですが、それはどういうことですか。
  131. 山村新治郎

    政府委員(山村新治郎君) 実はこまかく説明いたしますと、その晩一応の取り調べのようなものがあって、そうして十一時半だったと思いますが、晩ごはんを犯人たちと一緒に食べまして、食べたときに江崎副操縦士から、政務次官には申しわけなかったけれども、着陸のとき命はもらう予定だった、それはどういうふうなことだということを聞きましたら、実はあの空港へは百に一つの確率しかおりられる自信はなかった。しかもあと三人は搭乗員で、これは日航の職員だ、責任がある、政務次官もおそらく覚悟して来ているだろう、あと九人、これは道連れにしてしまってもかまわない、こういうことでおりたところが成功した。実はこれは、機長とそれから副操縦士から話があるものと思いましたので、私からこれは話しすることじゃございませんので、空港での記者会見では話ししなかったのです。そうしたら、機長、副操縦士、ほんとうに奥ゆかしい人間でございまして、自分たちが命がけでやったということになるので、それをしゃべらないということでございましたので、私があとで言いました。副操縦士から聞いたので、機長に聞きましたら、実は百人乗っておった場合は、これはおりれば全滅だった。それで聞いてみますと、日本へ帰る油があったそうでございます。そうしますと、日本へ帰る油があるということで、機長は、もし百人の乗客が乗っていたら私は日本に帰りました、あと北鮮のほうで出してくれるか、帰りに韓国のほうでどうなるか、そういうふうなことを考えずにおりれば、百名の乗客と一緒に終わりだということで、私は日本に帰りましたというような機長から返事がございました。副操縦士、機長から別々に聞いたのですから、この話は間違いないと思います。
  132. 森中守義

    ○森中守義君 そこで、これはちょっと申し上げておかねばならぬのですが、もともと福岡で五時間もとめた。その間に、警察のほうでも平壌にはやりたくない、どうせ立たせるなら、国内のどこかに方々たらい回しをするか、あるいは韓国というようなことがしきりに報道されたのです。また、オイルコックを締めよう、これも飛ばせないという一つの方法だったと思います。少なくとも、犯人が言うように、平壌に行かせないというような意思が相当強かったわけですね。そこに韓国と北朝鮮というきわめて微妙な関係にある二国間の問題が、常に私どもの頭の中にこびりついている。それだけむずかしかったと思うのですよ。そこで、そういったようなお話ということが、韓国は非常に手厚い措置をとってくれた、しかも乗客を救出してくれた。しかし、北朝鮮のほうは、これはおりてみたところが命をとられるようなひどさであったという、それを聞いているほうでは対して聞くのですよ。そういうことで言われたのじゃないと思います、そうじゃないでしょう。ただ、実際は実際としてお話しされたわけでしょうが、しかしながら、聞いている側にとりますと、何かこう意図的に、意識的に、韓国には感謝しなくちゃならぬ、北朝鮮におりたらひどいものだったと——別に私は北朝鮮とも何の関係もないのだけれども、また将来こういうことがあってもなりませんが、この際、すぐ飛行機も皆さんも帰ってこられたわけだから、それなりには私もある種の感謝の気持ちを持ってもいいように思う。それを二つ並べて、韓国にはもう最大限感謝すべきだ、場合によっては国会から韓国に使節団を出そうじゃないかという話もちらっと出たくらいだったですね。そこに北朝鮮のほうはひどいという、こういう話がパーッと表に一緒に出ますと、何とはなしに政治的な意図があり過ぎるという、そういう印象を私どもは受けた。そこで、これは金浦を立ったときの時間にもよると思う。いまのお話だと、確かにぐるぐるぐるぐる旋回をして、平壌飛行場をさがした。しかし、さがせなかったから、二回ほど旋回をして美林の飛行場におりたと、こう言われるのですね。それも、地上の交信も全然なかったと聞いておるのですよ。そこで、何かさりげなく聞いていると、北のほうでは非常に冷酷な扱いをしたんじゃないかという印象が濃い。しかし、実際はそうではない。出発の時間、平壌周辺に到着をした時間、これによるのですね。平壌空港におりちゃならぬ、あくまでも美林におりれという、そういう地上からの指示も何にもなかったらしいですね。しかも、交信がなかったということは、当初福岡を出発したあと、テレビあるいは新聞等の放送・報道では、受け入れる、そのまま来たならば人道問題として受け入れるという、こういうことをわれわれは聞いているわけですね。で、しかし、韓国で全部おろした。それで犯人たちだけを送りつけるという、こういう非礼なことがあるかという——まあこれは北朝鮮側に立てばそういう言い方もあるかわかりません。しかしながら、実際は平壌におりてよろしい、ただ地上から交信をして誘導するということは、そういう経過をたどっているから、受け入れを容認することになる。だから、北のほうからは何にも言わない。しかしながら、周辺上空には飛行機一台も飛ばさないで全部安全に着陸できるような体制をとっておった、まあこういう話も聞いているのですね。のみならず、きょう機長に聞いてみましたら、おりたところで封印をした、出発のときには機長みずからが封印を解いて入った。これは日本飛行機なんだから、中を検査するとか、いろいろするようなことは、北朝鮮としては、国交こそないけれどもすべきでないという配慮があったのじゃないかということを機長はきょうあとでちょっとしゃべっているのですよ。したがって、そのテレビの前で言われたことが、かなり比較されたものとして一般的に受け取られている。これは、私は何もそういう意図で政務次官が言われたとは思いませんけれども、その前の大臣の談話であるとか、あるいは外務大臣の談話等々、通じますと、何とかして韓国——そうして韓国では非常に手厚い措置がとられた、これだけが表に出て、あとでひどいバウンドがあったと、こういうようなことが比べられるものだから、やはり北朝鮮側にとってみると、どうも少しおかしいじゃないかという、こういうことも言えるわけですね。それも、まあ専門的なことは私もわかりませんけれども、機長から副操縦士、機関士と政務次官の四人しか乗っておられない。荷物はほとんどない。そういうほとんどからの飛行機がおりる場合、あるいは満席なり八〇%なり、あるいは荷物がそれに相応して積まれておりる場合、これはやっぱり飛行機の重量は、そういう離着陸のバランスと関係があると思う。はたしてそういうように人を相当乗っけて荷物を乗っけておりた場合には、一体どうであったかというようなことも、これはかなり吟味の必要があるのではないかと、こう思うのですね。これは、まあ多少意見が多いのですけれども、あのテレビ等で非常に大きな反響を呼んだので……。
  133. 山村新治郎

    政府委員(山村新治郎君) 実はこれは先生御存じのように、実は私も、一番最初に救出された乗客たちが、はっきり申しますと、犯人をほめておるようなのが、帰ってきてからの新聞を見てわかったわけです。二、三そういうような方がおられました。それで、犯人が実は私に申しましたのには、もう日本へ帰らないから何でも話してやろうということで話したのですが、まず第一番に、これは手をうしろ手に縛りあげたということは、われわれの心理作戦が勝ったのだと、そうして恐怖のどん底へおとしいれて、そうして次に手を出して前へ縛る、徐々にやっていくことによって、こわいということを頭の一番奥深くたたき込んでおいて、そうしてそれから協力さえすれば命の心配はないんだというところへ持っていく、そうしてその上に、結局おれ達は出れば、韓国を立っちゃって北へさえ行けば安全なんだと、そういうぐあいに思い込ませて、そうしてハイジャックそのものがいいとか悪いとかという議論は全然させない、そうして出させないのは韓国と日本政府なんだというぐあいに乗客の頭へたたき込んだ、これが成功したんだということを私に話したわけでございます。そうして帰ってきてみましたら、中には、なるほどカッコいいとか、親切な坊やたちだったとか、そういうような談話が出ていたわけです。私は、実はこれがなぜ一番激しい憤りを感じたかといいますと、私が乗りまして誤解が解けましてから、犯人たちがとても私に対しても手厚くもてなしてくれました。先生、紅茶がいいですか、それともコーヒーがいいですかというようなことで、弁当は何を食べますか、すしでも何でもあります、いろいろと入っていますということで、紅茶をもらって弁当をもらった。そうしたら犯人がすぐ私の隣へすわって、弁当を二つ持ってきて、先生、これは毒が入っておりませんから安心してください、毒が入っていないといっても、これは実は私たちが差し入れた弁当じゃないか、毒が入っていないのはこっちが一番よく知っている、いや、さっき乗客に全部食べさせて毒味してありますよ、私たちは三時間たたなくては一切ごはんというものは口にしなかった、そんなことを言っておるわけです。そこで私は、先生が言われる外交上の問題とかという問題ではなくて、犯人たちは、このようなぐあいにして結局乗客の皆さんというものをモルモットにしていたのだ、そうして、自分たちもおなかがすいていただろうに、乗客の私たちに先に食べさして、何ていい坊やたちだろうというぐあいに持ってくる、機内において、北へさえ行けば安全なんだということで、日本政府、韓国政府に怒りを転嫁させる、そういうような作戦が成功したというのを聞いたものですから、いや実はそういう意味ではないと、先ほど申しましたように、機長、副操縦士が、自分で言うのは手柄顔になるというので言わなかったのでしょう、そういうような問題もあったということを申しました。  もう一つ、実は先生、私が帰りましてからのあの空港での記者会見、そうしてまた運輸省へ帰ってきてからの記者会見というものを、先生、新聞見ていただいておわかりだろうと思いますが、これは実は韓国内でも、これは大臣も身をもってお感じのように、反日感情というものがすごいものになってしまったと、そうして帰ってきてみたら、また全部それこそ、北鮮はよく返してくれたと、韓国はけしからぬという、これはいろいろ新聞の見方はあるかもしれませんが、そういうようなこと新聞は飾られておったということもございました。それで私としては、一応外交問題とかなんとかという問題ではなくて、冷静に、いわゆるお客さんに、犯人たちはこれほど凶悪なんだということを教えたかったと、それが私の気持ちでございます。
  134. 森中守義

    ○森中守義君 だいぶ時間もたちましたから、またお尋ねしたいこともありますが後日に譲りたいと思います。
  135. 温水三郎

    委員長温水三郎君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十九分散会      ——————————