○野原国務
大臣 昭和四十五年度一般会計及び特別会計の
予算中、
労働省
所管分について、その概要を御説明申し上げます。
労働省
所管の一般会計の歳出
予算額は一千百八十一億一千五百二十五万三千円で、これを前年度
予算額一千百四十三億二千八百六十二万三千円に比較いたしますと三十七億八千六百六十三万円の増加となっております。
労働者災害補償
保険特別会計予算は、歳入歳出
予算額ともに二千三百四十三億五千五十一万八千円で、これを前年度
予算額一千八百七十一億六千七百四十三万四千円に比較いたしますと四百七十一億八千三百八万四千円の増加となっております。
失業
保険特別会計予算は、歳入歳出
予算額ともに二千七百三十五億七千三百二十八万五千円で、これを前年度
予算額二千三百八億八千六百五十万一千円に比較いたしますと四百二十六億八千六百七十八万四千円の増加となっております。
最後に、石炭対策特別会計中、当省
所管分としては、炭鉱離職者の援護対策等に必要な経費として八十五億五千二百八十七万四千円を計上しておりますが、この額は前年度
予算額七十六億三千六百五十七万円に比較いたしますと九億一千六百三十万四千円の増加となっております。
次に、そのおもな
内容について、概略を御説明申し上げます。
その一は、
労働力不足下における積極的雇用政策の推進に必要な経費であります。
現在、大きな問題となっております
労働力不足は、引き続く経済の拡大と、新規学卒者の減少等により、今後ますます本格化する情勢にあります。
このような情勢に対処するためには、産業界自身の努力による
労働生産性の向上や
労働力のむだづかいの是正等と相まって、
国民の一人一人の能力が真に有効に発揮される体制をつくり上げることが、今後の雇用政策の基本的な
方向であると考えます。
このため、まず第一に雇用に関する情報サービスセンターの新設、職業紹介の即時
処理化の拡大等、雇用情報の積極的提供と職業紹介体制の刷新強化をはかり、職業安定行政機能の向上をはかることとしております。
次に、新規学校卒業者につきましては、職業適性検査の実施、年少就職者相談員の増員を行なうほか、勤労青少年センター、勤労青少年体育施設等を設置して、勤労青少年の職場に対する適応、職業生活の充実をはかることとし、また、中高年齢者の雇用を促進するため、職業紹介の強化、就職のための各種給付金の引き上げ、高齢者の雇用奨励についての特別措置の実施等を行なうこととしております。
失業対策事業につきましては、就労者の賃金を二二%引き上げることといたしましたが、特別失対事業につきましては、紹介対象者の高齢化等により本来の趣旨を実現することが困難となったことなどのため廃止することにいたしました。従来の就労者につきましては、公共事業及び一般失業対策事業等において就労を確保することといたしております。
炭鉱離職者の雇用対策につきましては、前年度に引き続き、緊急就労対策事業及び産炭地域開発就労事業を実施するほか、炭鉱離職者就職促進手当の引き上げ等を行ない、離職者援護事業の充実をはかることとしております。
最後に、総合農政推進のための
労働力対策につきましては、農業従事者の転職等の円滑化をはかるため、相談員の新設等による職業紹介体制の確立、農業者転職訓練の実施等総合的な体制の整備をはかることとしております。
これらに必要な経費として八百十七億二千七百四十三万四千円を計上しております。
その二は、新職業訓練
体系の整備と計画的拡充に必要な経費であります。
産業の発展、技術革新の進展に伴い、
労働者の職業能力を積極的に開発向上し、職業人として必要な知識及び技能の高度化、多様化をはかる必要があります。このため、昨年、職業訓練法の全面
改正をはかったところでありますが、新
制度の展開にあたっては、西欧並みの水準にまでわが国の職業訓練を引き上げていきたいと思います。
このため当面、訓練生倍増をはかることとし、まず事業内職業訓練について、運営費補助単価の引き上げ、機械設備補助
制度の創設等によってその飛躍的な強化をはかるとともに、公共職業訓練施設につきましても新設拡充、職業訓練実習経費の増額等をはかってまいります。
技能検定につきましては、二百職種実施を目標に、技能検定職種の拡大、技能検定協会の充実等をはかることとしております。
また、本年十一月わが国で開催される国際職業訓練競技大会について助成を行なうとともに、卓越した技能者の表彰、青年技能
労働者の国際交流を推進して、社会一般の技能尊重の機運を一段と盛り上げたいと考えております。
これらに必要な経費として百五十五億七千六百三十一万二千円を計上しております。
その三は、総合的
労働基準行政の新展開に必要な経費であります。
経済の発展、技術革新の進展等によって
労働条件、
労働環境等は著しく変化しつつあり、また、これに伴って新たな
労働災害、職業性疾病が発生する等各種の問題が生じております。
このような新たな事態に対処して、
労働条件の向上をはかり、
労働者の安全と健康を確保することは、豊かな勤労者生活を実現するための基本的な条件であると考えます。
まず、快適な職場づくりを行ない
労働者の健康筋守るためには、職業性疾病の予防、治療、リハビリテーション等を通ずる一貫した科学的研究体制を確立する必要があるので、あらたに産業医学の総合的研究機関の
調査を行なうことにいたしております。
また、
労働者の安全を守るためには、
労働災害の多い業種等に対する監督指導の強化、
労働災害の科学的分析究明、民間企業の自主的な災害防止活動の促進等により
労働災害防止対策の積極的な展開をはかってまいりたいと存じます。
さらに、中小企業等における法定
労働条件の確保の徹底、最低賃金制の普及推進等、近代化のおくれた
分野等に働く
労働者の
労働条件向上施策を推進するとともに、家内
労働者についてはその法的保護を進めるため、前
通常国会に引き続き今
国会に家内
労働法案を提出いたしております。
労働災害による災害補償の充実については、経済成長に相応した補償が行なえるよう労災
保険制度を改善することとし、所要の法案を今
国会に提出いたしております。これらに必要な経費として四十億二千四百五十三万三千円を計上いたしております。
その四は、身体障害者に対する総合的
労働対策の推進に必要な経費であります。
身体障害者に対する
労働対策といたしましては、その能力に適合した就職を促進することが基本的な
方向であると考えますが、このためには、
医療、リハビリテーション、職業訓練、職業紹介、就職後のアフターケア等を通ずる一貫した連携体制を確立する必要があります。このため、身体障害者に対する機能回復訓練、職業訓練の充実強化をはかるとともに、社会復帰指導員
制度を創設するほか、身体障害者の職業指導、職場適応指導等を専門に行なう身体障害者職業センターを新たに設置することといたしております。これらに必要な経費として十一億七千六十七万円を計上いたしております。
その五は、総合的婦人
労働対策の積極的展開に必要な経費であります。
経済の高度成長に伴ない、婦人の社会的、経済的役割りはますます高まってきておりますので、婦人の能力の開発、向上をはかり、その有効発揮を促進する必要があります。このため婦人の職業能力の有効発揮についての啓発活動の実施、パートタイム雇用
制度の整備、職業講習の実施等、中高年齢婦人の雇用の円滑化を推進するとともに、働く婦人の家、内職公共職業補導所の増設、勤労者家庭ホームヘルプ
制度の拡充などの施策を行ないます。これらに必要な経費として三億六千四百三十六万円を計上いたしております。
その六は、勤労青少年の職業人としての成長のための対策の推進に必要な経費であります。
次代をになう勤労青少年のすこやかな成長をはかることの重要性は言うまでもありませんが、最近、勤労青少年に関しては安易な離転職、職業生活への不適応等の憂慮すべき問題が生じております。このような事態に対処して、勤労青少年が職場の内外を通じ、その活力を健全に発揮できるよう積極的な援助を行なうための総合的施策を展開いたしたいと思います。このため、勤労青少年に対する職業指導、職業訓練を拡充するとともに、勤労青少年のグループ活動の積極的奨励、勤労青少年ホーム等の福祉施設の拡充、特別協助員
制度の新設による指導援助の強化等を行なうことといたしておりますが、これらの総合的施策の
体系を確立し、勤労青少年の福祉の充実をはかるため、勤労青少年福祉法案を今
国会に提出いたしたいと思います。これらに必要な経費として二十億七千四百七十七万一千円を計上いたしております。
その七は、新局面を迎える労政の積極的展開に必要な経費であります。
一九七〇年代においては、経済社会の諸情勢は大きく変貌することが予想され、労使
関係も新たな局面を迎えようとしております。このような情勢にかんがみ、長期的展望のもとに時代の動きに即応した望ましい労使
関係を形成し、労使の社会的
責任の自覚により労使間の諸問題を合理的に解決する機運の醸成をはかるため、産業
労働懇話会を開催する等の諸施策を講じてまいりたいと思います。
また、中小企業につきましては、労務管理の改善に必要な助成を強化するとともに、中小企業退職金共済
制度について、給付に対する国庫補助の増額、掛け金月額の引き上げ等の改善をはかるため、中小企業退職金共済法の一部
改正案を今
国会に提出いたしております。これらに必要な経費として十三億五千三百三十七万六千円を計上いたしております。
以上のほか、
労働外交の積極的推進、
労働保険の徴収一元化、その他一般行政
事務費等に必要な経費を計上してあります。
以上、
昭和四十五年度
労働省
所管一般会計及び特別会計の
予算について概略御説明申し上げました。
何とぞ本
予算の成立につきまして、格段の御
協力をお願い申し上げます。