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1970-03-30 第63回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月三十日(月曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君   稻村左四郎君       植木庚子郎君   小此木彦三郎君       大坪 保雄君    大野 市郎君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       賀屋 興宣君    上林榮吉君       小坂善太郎君    笹山茂太郎君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       中村 弘海君    西村 直己君       野田 卯一君    浜田 幸一君       福田  一君    藤田 義光君       古内 広雄君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森  喜朗君       北山 愛郎君    久保 三郎君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       平林  剛君    細谷 治嘉君       三木 喜夫君    相沢 武彦君       坂井 弘一君    松尾 正吉君       山田 太郎君    麻生 良方君       田畑 金光君    土橋 一吉君       不破 哲三君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (科学技術庁長         官)      西田 信一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         経済企画庁総合         計画局長    八塚 陽介君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵大臣官房審         議官      高木 文雄君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省理財局長 岩尾  一君         大蔵省国際金融         局長      奥村 輝之君         文部省管理局長 岩間英太郎君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省環境衛生         局長      金光 克己君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 加藤 威二君         厚生省社会局長 伊部 英男君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省年金局長 廣瀬 治郎君         社会保険庁医療         保険部長    高木  玄君         農林大臣官房長 亀長 友義君         農林省畜産局長 太田 康二君         食糧庁長官   森本  修君         水産庁長官   大和田啓気君         通商産業省通商         局長      原田  明君         通商産業省貿易         振興局長    後藤 正記君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         通商産業省繊維         雑貨局長    三宅 幸夫君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         運輸省航空局長 手塚 良成君         海上保安庁長官 河君 一郎君         建設省計画局長 川島  博君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         建設省住宅局長 大津留 温君         自治省財政局長 長野 士郎君         消防庁長官   松島 五郎君  委員外出席者         外務省アメリカ         局外務参事官  高良 民夫君         予算委員会調査         室長      大沢  実君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   赤松  勇君     三宅 正一君   久保 三郎君     米田 東吾君   麻生 良方君     西村 榮一君 同日  辞任         補欠選任   西村 榮一君     麻生 良方君 同月二十五日  辞任         補欠選任   麻生 良方君     西村 榮一君 同日  辞任         補欠選任   西村 榮一君     麻生 良方君 同月二十六日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     西中  清君同月二十七日  辞任         補欠選任   麻生 良方君     鈴木  一君   不破 哲三君     林  百郎君 同日  辞任         補欠選任   鈴木  一君     麻生 良方君   林  百郎君     不破 哲三君 同月二十八日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     三木 喜夫君   三宅 正一君     平林  剛君   米田 東吾君     久保 三郎君   西中  清君     坂井 弘一君   矢野 絢也君     山田 太郎君   河村  勝君     田畑 金光君 同月三十日  辞任         補欠選任   相川 勝六君    稻村左四郎君   江崎 真澄君     森  喜朗君   小川 半次君     上林榮吉君   川崎 秀二君     浜田 幸一君   灘尾 弘吉君     中村 弘海君   森田重次郎君    小此木彦三郎君   谷口善太郎君     土橋 一吉君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     相川 勝六君  小此木彦三郎君     森田重次郎君   上林榮吉君     小川 半次君   中村 弘海君     灘尾 弘吉君   浜田 幸一君     川崎 秀二君   森  喜朗君     江崎 真澄君   久保 三郎君     楯 兼次郎君   平林  剛君     三宅 正一君   三木 喜夫君     川崎 寛治君   坂井 弘一君     西中  清君   山田 太郎君     矢野 絢也君   田畑 金光君     河村  勝君   土橋 一吉君     谷口善太郎君     ————————————— 三月二十六日  昭和四十五年度一般会計暫定予算  昭和四十五年度特別会計暫定予算  昭和四十五年度政府関係機関暫定予算 は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  国政調査承認要求に関する件  昭和四十五年度一般会計暫定予算  昭和四十五年度特別会計暫定予算  昭和四十五年度政府関係機関暫定予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度一般会計暫定予算昭和四十五年度特別会計暫定予算昭和四十五年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————  昭和四十五年度一般会計暫定予算  昭和四十五年度特別会計暫定予算  昭和四十五年度政府関係機関暫定予算   〔本号その二に掲載〕     —————————————
  3. 中野四郎

    中野委員長 まず、三案について政府より趣旨説明を求めます。福田大蔵大臣
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 昭和四十五年度暫定予算の概要について御説明申し上げます。  昭和四十五年度予算は、昭和四十五年度開始前に成立を見ることが困難であると思われますので、四月一日から四月十八日までの期間について、暫定予算を編成することにいたしたものであります。  まず、一般会計暫定予算について申し上げます。今回の一般会計暫定予算歳出総額は六千百十六億円、歳入総額は千五一百五十億円でありまして、四千五百六十六億円の歳出超過と相なります。  なお、国庫の資金繰りにつきましては、五千億円を限度として、必要に応じ、大蔵省証券を発行することといたしております。  今回の暫定予算におきましては、暫定予算が本予算成立までの応急的な措置であることにかんがみ、人件費事務費等経常的経費のほか、既定の施策にかかる経費は、法令に基づき国の義務となっている経費等必要最小限のものについて所要の額を計上することといたしました。なお、新規の施策にかかる経費は、原則として計上しないことといたしておりますが、教育及び社会政策上の配慮等から、暫定予算期間といえども放置することが適当でないもの、すなわち、生活扶助基準引き上げ失業対策事業賃金日額引き上げ及び大学生の増募等につきましては、特にこれを計上することといたしております。  また、公共事業関係費につきましては、災害復旧緊急性にかんがみ、所要の額を計上するほか、直轄事業について、人件費工事雑費維持修繕費等経常的経費を計上いたしております。  歳入につきましては、租税及印紙収入千二百八十四億円、税外収入三十六億円及び前年度剰余金受入二百三十億円と、暫定予算期間中に見込まれる額を計上することといたしております。  以上、一般会計暫定予算につき申し上げましたが、このほか、特別会計政府関係機関につきましては、一般会計に準じて暫定予算を編成いたしております。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同いただきたいと存じます。
  5. 中野四郎

  6. 中野四郎

    中野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  7. 大原亨

    大原委員 質問に入ります前に、先般来非常に国民関心を集めておりますが、ソビエト爆撃訓練の問題であります。このことについての説明は省略をいたしますが、これは日本国民の一つの合意であります。爆撃訓練を、公海自由の原則があっても、やはり公海において事業を営み生活を営んでいる、こういう関係国民の利害を無視してこのようなことを一方的にやることはいけない、そういうことでありますが、この問題に対しまして、政府は二十七日、駐日ソビエト大使に対しまして、訓練中止口上書を渡したといわれておりますが、ソビエトとの交渉の経過について、外務大臣からお答えいただきたい。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ソ連日本近海における演習の問題につきましては、ただいまもお話がございましたように、さっそくソ連の駐日大使を招致いたしまして、私からいろいろの角度から本件中止方要請をいたしました。口上書におきましては、特に今回の演習というものが、公海ではあるとはいうものの、日本中央部に近接した場所、しかも土佐沖日本海というようなところにほぼ同時に展開される、しかもきわめて近い時間に行なわれるということがウラジオの電波から発信されたものを海上保安庁水路部で傍受したわけでございますが、そういうようなことで行なわれるということは、日ソ友好親善関係から見ましてもまことに好ましくないことである、これは即時中止をしてもらいたいということが中心でございます。なお、この二水域以外にカムチャツカ方面においても二つの水域において演習が行なわれる由が伝えられておりますから、それらをも含めて、万々一の場合もございましょうから、損害賠償権利を留保するということもつけ加えておいたわけでございますけれども、特に日本海土佐沖水域における演習については、これを即時に中止してもらいたいということが中心でございます。  なお、この口上書以外に、私からるるいろいろの観点からわがほうの考え方を口頭をもって説明をいたしました。それに対しまして、トロヤノフスキー駐日大使は、自分は全くこのことを知らなかったということでございまして、さっそく、口上書はもちろんでございますが、日本政府からの申し入れについては直ちに本国政府に伝達をいたします、そしてその後連絡を密にいたしますということでございましたが、ただいまの時間までに、ソ連政府からまだ回答は来ておりません。ただいまの時間までには、まだ回答が来ておりません。  以上、御報告申し上げます。
  9. 大原亨

    大原委員 非常にいままでこういう公海上の訓練でショックを与えたのは、南太平洋のビキニ中心として水爆実験をかつてアメリカがやったことがあります。この漁業に与える被害、実際に起きたわけでありますが、公海上のそういう爆撃演習訓練等による被害に対しまして、外務大臣損害賠償要求権利を留保するというふうに述べたと言っておられますが、それは国際法上どういう根拠に基づく主張であるか、これを簡潔にひとつお答えをいただきたい。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 公海条約におきましても、御承知のように公海の自由ということが確保されることが目標になっておりますものの、沿岸国及び非沿岸国を通じて航行の自由あるいは漁業の自由ということについては合理的な考慮が払われなければならないということが公海条約の上にも明記されておるくらいでございますし、国際法損害賠償権利を有するということは当然のことと政府は考えておるわけでございます。
  11. 大原亨

    大原委員 国際法上、慣例を含んでその根拠をはっきりしてもらいたいと、こう言ったわけです。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 条約局長から条約の御説明をいたしたいと存じます。
  13. 井川克一

    井川政府委員 ただいま外務大臣から申し上げましたとおり、公海法第二条におきまして、公海の自由、公海使用の自由という規定があるわけでございます。その中に「航行の自由」「漁業の自由」「海底電線及び。パイプラインを敷設する自由」「公海上を飛行する自由」と、それの上に、それに(大原委員損害賠償の請求の根拠をひとつ」と呼ぶ)はい。それにつきまして、「これらの自由及び国際法一般原則により承認されたその他の自由は、すべての国により、公海の自由が他国に与える利益に合理的な考慮を払って、行使されなければならない。」と規定されておるわけでございます。したがいまして、この公海の自由、公海使用の自由というのは、無制限のものではない、他国利益を侵すというふうな心配がある場合には、その他国に与える利益に合理的な考慮を払って行使されなければならないという規定でございます。したがいまして、この合理的な考慮を払わずして行なわれる使用は、国際法上適法な使用ということができない、適法な使用でない使用によりまして他国利益を侵す場合には、そこに責任が生ずる、そういうことになるわけでございます。
  14. 大原亨

    大原委員 農林大臣農林省見解かと思いますが、この爆撃演習が予定どおり行なわれると約五億円の損害が発生するだろう、こういうことを一部では報道いたしております。これは農林省見解かもしれません。外務省政府委員でもよろしいのだが、ビキニ環礁中心にあの水爆実験をやったときに、マグロを廃棄したり、日本漁業に非常に大きな被害を及ぼしたことがあるわけです。あのときにはやはり私どももそのことを主張し、日本政府も主張したかと思うんですが、そのときの処理はどうなっておりますか。
  15. 井川克一

    井川政府委員 お答え申し上げます。  「マーシャル群島における原子核実験から生じた損害に対する補償に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の交換公文」が昭和三十年一月四日にできておりまして、アメリカ合衆国政府は「二百万ドルの金額を、法律上の責任の問題と関係なく、慰謝料として、ここに提供する」ということになっております。しかし、その前のほうに、「アメリカ合衆国政府は、その傷害に対する同政府関心及び遺憾の意の附加的表現として、金銭による補償を行う用意があることを明らかに」して、そして二百万ドルわが国政府に払ったわけでございます。
  16. 大原亨

    大原委員 外務大臣、これからの、まあ口上書については返事が来ておらぬらしいのですが、今後この問題の対ソ関係処理については、どういう態度で臨むか。これはまあ川島さんが行かれるそうですが、特使で。これは佐藤総理特使かどうか知りませんが、総裁特使総理特使か、これはわからぬが、そういうこととは別に、そういうことで話をしたということでなしに、日本政府としてはどういう措置をとるのか、この点につきましてお答えいただきたい。
  17. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本件につきまして、政府といたしましては、先ほど申しましたように、日本中央部の両面の水域でもってこの種の実験が行なわれるということは、まことにその意図を理解するに苦しむようなことでございまするので、これを中止してもらいたいという要請をいたしておるわけでございます。私といたしましては、まだ口上書返事は来ておりませんけれども、同時に、私の大使に対する申し入れにさらに引き続きまして、たとえばもしこれが行なわれるとすれば、農林省あるいは運輸省その他が、仮定のことではございますが、予想されるような被害はこうこうになる見込みであるというような資料等も、随時、その後におきましても、大使館を通じ、あるいはモスクワの駐ソ大使館を通じまして、こちらから情報等を提供いたしまして、あるいはまた、国会の御論議等状況等も追報いたしまして、即時中止をきめてくれるようにということを、いま全力をあげて努力いたしておる次第でございます。
  18. 大原亨

    大原委員 公海上のそういう演習については、国際慣例もあるいは一定のルールがあるだろうと思うわけです。これは無制限に許されておるものではないと思います。そういう点では、日ソ両国のお互いの親善のために主張すべき点は主張して、そうして、この問題に対しまして国民が十分納得できるような政府のすみやかな措置要求いたしたいと思います。総理大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日ソ間の関係は、御承知のように、鳩山さんが出かけられて共同宣言をした。平和条約こそまだ締結されておりませんけれども、しかし、その後の両国間の関係は、漁業交渉あるいは航空協定、その他シベリア開発等々におきましてたいへん親善の度は増しております。また、今回万国博が開かれるについては、いち早く参加している。ソ連からも最高議長が出てこられる、こういうやさきであります。また一方、もうかねてから日ソ間で開いている商業見本市、その見本市がことしはモスクワで開かれることになっておりますので、その特使として、本来なら通産大臣が出かけるのでございますが、ちょうど、あいにく国会開会中でございますから、通産大臣が出かけるわけにいかない。そういう関係もあり、政府特使として川島総裁をいま送ろうとしている、そういうやさきでございます。たいへん最近は日ソ間の関係は改善された、かように考えております。  そういう改善され、親交の度を深めなければならない両国間、そういう際にかような問題が起こりましたことは、たいへん私は残念に思っておるわけであります。ただいま大原君の言われるように、両国親善友好、これを進めるためにも、この種の行為はひとつ差し控えてもらいたい、かように私は思っておりますので、すでに外務大臣から口上書を出しておりますが、その上にも、ただいま川島特使が出かける、それまでに話がつかなければさらに川島君にも働いてもらいたい。また、その後の処理等についても十分両国の間で理解ができるように、そういう方向でありたい、かように思っておりますので、十分御趣旨のような方向で努力する予定でございます。
  20. 大原亨

    大原委員 本暫定予算審議は、言うなれば、実質的には四十五年度予算審議の一部であるわけですが、この予算審議を通じまして、政治姿勢の問題としていろいろ議論になりました問題の中で、高級官僚天下りの問題があるわけです。あるいは地位を利用いたしましての選挙運動というようなこともあるわけであります。いろいろあるわけであります。  それで、この問題に関係いたしまして、これは定年制の問題とか年金保障の問題とか、そういう公務員の制度上の問題が私はあると思います。しかし、私は、小さな報道ですが、注目をいたしましたのは、防衛庁長官、あなたは最近非常に活発な発言をしておられるようだが、防衛庁幹部天下りの問題について今国会中に法的なやはり規制をして、ルールを確立したほうがよろしい、こういう御意見を発表になっておるようですが、どういうことでございますか。
  21. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいま、案の策定を急いでおりまして、大体の方向としまして、自衛隊法ワク内において、つまり防衛庁ワク内において第三者審査機関を設けて、その第三者審査を通った者を許可する。いままでそういう案件に該当する者は、実はあまりなかったのでございます。なぜなれば、取締役とか、そういうラインにのぼった者はほとんどいないのであります。しかし、そういう顧問とか嘱託の場合でも、いろいろ内容を伺って、事前審査や何かをしておりました。しかし、いろいろ御意見もございますので、でき得べくんば、立法措置によりまして、そういう第三者審査機関をつくろうと思って、鋭意作案をしております。
  22. 大原亨

    大原委員 アイゼンハワーがみずから軍人大統領でありながら、やめるときに、アメリカ民主主義のガンは産軍複合体だ、こういうことを言ったことを私どもは記憶をいたしておるわけであります。第三次防、第四次防と、防衛力予算が、軍事予算が増大をし、防衛産業が大きく拡大をいたしまして、そして防衛庁高級幹部とそういうメーカーが癒着をするということになりますと、日本政治というものは、国民の意思を離れまして、独走するという可能性があるわけであります。この点につきましては、国防会議の議長である佐藤総理、これはせっかく防衛庁長官がそういう考えでやっておられるわけですが、こういうことは、一般高級公務員のそういう問題と一緒に、あるいは——五十二、三歳でやめるというのはおかしいわけです。五十二、三歳でやめなければならぬということはおかしいんじゃないですか。やはり一定の能力が発揮できるまでは働き、その後は社会保障について十分の措置がされるということが基本的な問題でもあるわけです。この産軍複合体防衛庁の問題を含めて、総理大臣のこの問題に対するお考えをお聞きしたい。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も、御承知のように、代議士になります前は、いわゆる官僚の出身でございます。最近も官僚の出身、そういう者は各方面で活動しておる、こういうことで、どうも官僚以外に人はないのか、こう言われるのですが、私の見るところでは、官僚かあるいは組合の幹部でなければどうも働き場所がないように見られている。しかし、これは、とにかく選挙で一度国民の信頼を問うておりますから、そういう意味でもうあまりそういうことにはとやかく言わないほうがいいだろうと思います。  ところが、いわゆる高級官僚天下りという問題、これはいろいろ各方面から非難を受けております。どうも公社、公団等に出かけるのが多いとか——公社、公団、これはもう性質上、役所の延長みたいな仕事がございますから、そういうところで働くことは比較的に考えられやすいだろう、かように思います。したがって、私は、公社、公団等に出かけるのは、いわゆる天下りという、そういう部類で批判するよりも、やはりその性格上そういうことがあるのではないだろうかと思う。ただ、関係は、いわゆる役所と特別な、あるいは国家と特別な関係のある会社、事業所、そういうところへ出ていく、これがいわゆる天下りとしていろいろな批判を受けやすいのではないだろうか。もしもその間に不正あるいは汚濁等があれば、それこそたいへんだ、かように思います。したがって、一般公務員については、人事院がそういう点について、支障があるかないか、十分考えて審査をしておるわけであります。大体一定の期限をおけばそういう関係は消えるだろうというのがいまの考え方であります。しかし、期限が経過しただけで事柄が済むわけでもないだろうと思います。したがって、こういうことは一そう、人事院の審査が厳重に行なわれるというのがしかるべき方法だろうと思いますから、私どもも、人事院の審査規程、その条件は十分守っていくつもりでありますし、またそういうことを各省にも厳達しております。  しかして、いま言われますように、五十二、三歳でやめるという、そういう点は、これは考えてもしかるべきだろう。私は、いまの人たちは長生きをしておりますから、もっと、働ける間はやはり国家、社会に奉仕するのが当然のことだ、国家、社会のために働く、そういう考え方であるべきだろうと思います。私は、定年制をつくる、つくらないは別といたしまして、そういう意味で、役所のみが働き場所である、こう考えないで、国家、社会に有用な材はどんどん働きをする、こういうことが制度として、また社会制度そのものとして望ましいことではないだろうか、かように思います。これはひとつ高級公務員というわけではございません、一般職員においても同様なことだ。いわゆる国家、社会に奉仕する力のある限りやはりそうしてほしい、かように私は思っております。  これは一般について言えると思いますが、ところが、さらにその上、いわゆる自衛官の場合には、これは特殊な関係があります。いま言われますように、軍事産業、そういうものが、日本にはこれというものは現在はございません。しかしながら、軍事産業がますます働く、大きくなる、そうして考え方が軍国主義的になる、これはたいへんなことだと思いますし、われわれが平和国家を建設するというそのたてまえからも、これはたいへんなことだと思います。したがって、こういう点については一そう目を光らさなければならない、かように思っております。幸いに中曽根官は、ただいまの高級自衛官の退職後のその道等についても特別にわれわれ検討してみたい、こういうことを言っておられますが、何よりも心配なのは、いわゆる産軍複合、そういうものが日本にできるかできないか。私は、現在の状態ではさようなものはできておるとは思いませんが、いわゆる産軍複合体ができるということになると、これはたいへんな問題だろう、かように思います。したがって、高級自衛官の就職の問題もさることながら、産軍複合体、そういうものの制度をつくらないこと、またそういう意味でこれにチェックを与えること、これは当然のことではないだろうか。私は、そういう意味で、一そうその点は注意をしてまいるつもりであります。しかし、現状においてそういう心配があるかと言われると、私は、そういう心配なしと、はっきり申し上げるような次第でございます。
  24. 大原亨

    大原委員 やはり寿命が延びて、七十歳、八十歳と——あなたももうだいぶんお年を召したわけですが、みなけっこう働けるわけでありますから、それが五十四、五ぐらいでやめなければならぬということは、これはまたおかしいと思うわけです。だから、そういうことについては、制度全体の問題、社会保障の問題がある、インフレの問題もありますよ。あとで議論する。そういうことですから、そういう点もさることながら、もう一つの問題は、来年は参議院選挙があったり都知事選挙があるわけですが、ちらほら候補者の名前がしておるわけですね。つまり、官僚の諸君がどんどん出ていくというのはいいですよ。自分の意思で選択して出ていくのはいいです。問題は、その地位を利用して予算を盛ったり、あるいは業界との関係をつけたり、選挙運動をしたり、そういうことについては、私はいろいろなうわさを聞くけれども、けじめをきちっとすることが必要ではないか。これは総理大臣として、このことを国民の前に明らかにしてもらいたい。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま各省大臣が厳として控えております。したがって、一局長、一部局長等でかってに予算は盛れるような状態ではございません。したがって、ただいま御指摘になりましたような事態が万一ある、さようなことがあってはならない、かように思いますので、一そういまの大臣中心の行政を進めていく、この考え方でございますから、どうか御心配のないように、またさような点があれば、もちろん改めるにやぶさかではございませんから、そういう点を御指摘願いまして、そして私は、ほんとに国民のための政治をし、また国民の代表にふさわしい人が選ばれるように、そういうような選挙制度でありたい、かように心から念願しております。
  26. 大原亨

    大原委員 この席では言いませんが、これからありましたら率直に申し上げます。  それから、政治姿勢の第三の問題ですが、佐藤内閣はいままで五カ年間、これは未曽有の長さでありますね。吉田さん以上ですね。五カ年間佐藤内閣が続いたわけですが、初心忘るべからずということばがあるが、あなたが昭和三十九年に組閣をされたときに、私どもはいつも指摘をするわけですが、これは人間尊重のたてまえに立って、物価の安定と社会開発を中心政治を進めるのだ、こういう公約でありましたね。それから、あなたの内閣、閣議において御決定になりました中期経済計画では、物価は、最終年度の昭和四十四年まででありますか、二・八%程度にとどめる。それから経済社会発展計画を、この中期計画を御破算にいたしまして、つくってまいりましたが、そのときには三%程度にとどめる、これを目標として、これは昭和四十六年でありますか、そういうことで五カ年間の政治がなされておるわけであります。その中には、国民生活白書とか、二十年後のビジョンとかというふうな、いろんなことが出てまいりました。たくさん文書が出ております。そして、経済優先から生活優先へ、あるいは今度の新経済社会発展計画では、人間性豊かな経済社会発展計画を目ざして、こうでておりますが、問題は私は物価であると思うわけであります。物価に対して、あなたは、組閣をされまして以来五カ年間、何らと言っては失礼でありますが、見るべきものがなかったのではないか。これは私は、政治責任といたしましては、重要であると思うわけです。このことについて、私はこれは政治姿勢の問題であると思う。物価は雨やあらしではないわけです。地震や雷でもないわけです。経済政策の総合帰結であり、政治の結果なんでありますね。この点について、どういう反省と決意を持っておられるか、簡潔にひとつ述べてもらいたい。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 初心忘るべからず、そのとおりでございます。私が社会開発を唱えた時分は、やや早かった。したがって、どうも社会開発は何を言っているかわからないという御批判が非常に多かったと思います。最近は公害が中心になり、同時に人間尊重の政治が云々されておりますが、私の社会開発を唱えたことは正しかったと思っております。しかし、五年もたってその方向に行ってないじゃないかというおしかり、このことはたいへんむずかしい問題であるということだけ一言申しまして、私、初心忘れてはいないのだ、その方向で進むということを申し上げておきます。  さらにまた、物価の問題について、物価においてこれも非常にまた、むずかしい問題でございます。むずかしい問題だからといって、政府責任を免れる考えではございません。私は、物価こそ政府がリーダーシップを出して、同時に国民の協力を得なければ、この問題は解決するものではない、かように思っております。物価、賃金、米価、その他公共料金等々、いろいろ取り組むべき問題は多いと思っております。しかし、なかなかこれは各界各層の協力がなければできないことだ、かように思っております。しかし、大体の傾向で申せば、まあ昭和三十年代後半の物価の高さから見まして、昭和四十年のいままでの間は約一%は下がっておる、かように思っております。しかし、ここきわめて最近の状態、まあことしなぞ、昨年の暮れからことしにかけまして、私はたいへん心配な状況になっているのではないかと思って、政府が努力しておる最中でございます。これはたいへん簡単な答弁をいたしますが、これこそ、物価というものは、政府政府でございますけれども国民の積極的協力を得ない限り、これは十分実効をあげ得ないものだということをこの機会に申し上げまして、そして各界の一そうの御協力をお願いしておきます。同時に、主導的な立場にある政府自身がやはり積極的な姿勢をとること、御指摘になりましたように、そういう方向でなければならない、かように考えております。
  28. 大原亨

    大原委員 あなたはいつも大体そういう御答弁をされますが、昭和三十年の後半ですね、これは池田内閣のときでありますが、高度成長の所得倍増計画のときです。それからあなたの内閣の前半、四十年代の前半ですね、これは佐藤内閣になって消費者物価が一%程度下がった、こういうことを言う。しかし、最近のべらぼうな話はあとにいたしまして、卸売り物価は四十年代の前半において上がっておるわけであります。私は、まさにこれはインフレだと思うわけです。インフレということをできるだけ避けて、そしてインフレに対する対策を回避するということは、私は政治姿勢としてはおかしいと思うわけであります。インフレであるならばインフレであることを率直に認めて、そしてインフレの対策を立てる、こういうことが私は物価政策の一つの基本姿勢ではないか、こう思うわけであります。これは経済企画庁長官、ひとつお答えください、あなたはやや積極的な意見らしいから。
  29. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ただいまのお話でございますが、私たちは今日までの状況をいわゆるインフレとこう申しているのではございません。ただ最近の物価の上昇は相当激しくなってきておりますから、これをこのままに放置するということは非常にゆるがせにできない問題である。こういう意味において、われわれとしても、このままインフレに突入することのないように努力をしなければならない、こういう意味で申し上げています。
  30. 大原亨

    大原委員 インフレの定義についても議論があったところでありますが、これは消費者物価が恒常的に上昇する、卸売りも上昇する、あるいは換物思想の問題あるいは貯蓄性向の問題、貯蓄が下がっていくという問題、後者二者の問題についていろいろと注釈をつけて、インフレではないがインフレのおそれありと、こういう議論でありますね。長官、そうですね。  そこで、換物的な傾向がないかといえば、そうではないと思うのですよ。一番インフレを避けなければならぬ金融界にいたしましても、たとえば銀行が直接間接にたくさん不動産投機をやっているのです。法人が土地購入についてどんどん投機をやっているわけです。これは換物的な傾向ですよ。だからインフレについては、インフレを前提として大企業の経営、特に設備投資等を含めて大企業の経営、銀行の経営をやっているわけですよ。もう一つは、貯蓄性向が国民所得の二〇%云云ということがあるが、下がっていないと言うが、これは日本における社会保障が非常に貧困である、教育に金がかかる、先行き不安だ。だから定期預金の利子以上にことしは六・四%上がるそうだが——本年度はいよいよあしたで最後になりますが、大体物価は総理府の統計によっても六・四%上がるといっている。定期金利を少々上げても届かぬでしょう。こういう傾向の中で貯蓄が減っていないからといって、インフレでないというふうなそういう強弁をすることは、私は許せぬと思うわけであります。インフレの条件を全部備えているじゃないですか。インフレはインフレだということを認めて、そして佐藤内閣は責任を持ってこれに対処することが必要ではないですか。いかがですか、長官
  31. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 換物傾向があるじゃないかというお話であります。確かに土地などに一部換物傾向のあることはわれわれも承知しております。しかし、まだそれは一部の現象でございまして、支配的な問題ではないと思っています。貯蓄率につきましては、いま御指摘のように、逐次むしろ漸増傾向、強含みで上がっておる状況でございます。これが社会保障の貧弱なためであるというのでございますが、これらにつきましても、日本としてはいま社会保障をますます強化をいたしております。そういうことで全体としてやはりまだインフレになったというふうには言えない。  まあ私はときどき思うのでありますが、大原先生御存じのように、日本においては大体名目で一八%くらいの成長率をここのところ示してきております。そうして実質において大体二二%くらいの成長を実現しております。ですから、一八%くらいの名目的な需要によって二二%くらいの実質的な需要というものを獲得し、実現しておる。これは相当高い成長のもとにおいてなかなかいいところへいっていると私は考えております。これは国際的な比較の問題であります。諸外国のように、名目の成長率に対してデフレーターが半分にもなる、こういうようなことはまだ日本ではないのであります。そういう意味において、国際的に見ましても、成長と物価との関係から見て、いわゆるインフレ的なものになっているとは私は言えないと思うのであります。  ただ、最近の消費者物価の上昇とそれから卸売り物価の上昇であります。まあ卸売り物価の上昇につきましては、私たちはこれには相当海外の要因その他の特殊な要因がある、継続性というものはまだ確認されておらない。これに対して私たちも総需要の抑制によってできるだけ対処してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  32. 大原亨

    大原委員 国民から金を預かっている銀行自体が不動産屋をやっている。不動産部を設けてどんどん土地を買っているのだ。それが投機となってつり上がっているわけだ。土地のつり上げをやっているわけです。それで経営をやろうというふうなのは、零細な預金を預けた者の立場——都市銀行に全体の預金の七割くらいが集まるような仕組みだろうが、そういう立場から見ると、これは背任行為ですよ、実際は。ですから、そういう悪質な傾向が出ているということは、国民の立場から見ると、これはまさにインフレじゃないか、こう思うわけですね。この問題はしばらくおくといたします。  そこで、いままで中期経済計画、その前の所得倍増計画、経済社会発展計画、経済企画庁はつくっては一年でパーにしたわけですね。今度は新経済社会発展計画をつくり直す、初めは修正すると言ったが、つくり直す、こう言っているわけであります。これは新経済社会発展計画は大体ワクはできたと思っております。そういう見解でありますが、いつ閣議決定をいたしますか。これが一つと、いままで新計画をつくるにあたって、政府が閣議決定をしたやつが一年前後で全部つぶれる、こういうふうなことはこれは全く経済企画庁の存在自体にかかわる問題じゃないかと私は思うわけです。経済企画庁は、率直にいって、どこにこの原因があるといういうふうにお考えか。この二つの点についてお答え願います。
  33. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ただいま経済審議会において答申を練っておりますところの新しい計画は、大体四月の上旬、九日ごろになると思うのですが、たぶん答申を得られるくらいの手はずになると思います。それを受けまして中旬の後半か下旬のころに閣議決定をいたしたい、こういう予定にいたしております。  それから、企画庁が立てましたいろいろな計画がどうも実績とずれておるという御指摘であります。これは従来からもたびたび私たちが受けている御指摘であります。もちろん、市場経済、自由主義経済をたてまえにしておりますから乖離があるわけでございますが、中にもこの日本のいわゆる経済の特殊性といいますか、いわゆる潜在成長力の強さといいますか、こうしたことが非常に大きな基本的な影響になっておると思います。その間にありまして、やはり私たちが実績と計画を検討いたしまして、何といっても乖離の大きい点が二つございます。  一つは、国際情勢の見方でございます。これについては、国際情勢の見方というものはなかなか困難でございます。その上に、御存じのように、日本の経済の体質といたしまして、国際収支の天井が低い。ちょっと成長をいたしますと国際収支が赤字に逆転をする、こういうような実績を持っていただけに、大事を踏んだ見通しを立てがちであった。これは確かに一つ言えると思います。こうした点につきましては、最近のように、御存じのように、国際収支のゆとりが出るに従って、私たちは国際収支についても十分ゆとりのある見通しを立てやすくなってきているようになっております。  それからまたもう一つは、民間の設備投資の見通しでございます。これが従来どっちかというと低目になってきておりました。昭和三十年ころから始まりました世界的な技術革新の波、この技術革新の波に乗りまして、日本がむしろほかの先進国のように過去の財産、過去の経緯というものをしょっておらなかっただけに、戦後の新しい立場からどんどん技術革新を取り入れ、そうして、その上に立って民間設備投資というものが予想外に激しい上昇を示した。こういう点についての見通しの誤りというものがあったように思われます。  そういうことで、いろいろと原因はまだまだあると思うのでありますけれども、われわれもそういう点についてできるだけ今後の参考にしながら、逐次この改定をしてまいりたい。そういうことで、このたびの新しい計画におきましては、できるだけそうした点も頭に置きながら計画を立ててまいる、こういう考え方に立っております。
  34. 大原亨

    大原委員 長官、この新しい新経済社会発展計画の策定の中で、いま御指摘になったように、経済の成長率、特に民間設備投資の問題が一つあるわけです。それから物価はどういう手はずで、どういう目標に安定させるかという問題があるでしょう。国民生活国民経済からいいますと、物価の問題が非常に大きな問題だと私は思うわけです。その新計画の中で、物価についてはいままでの反省の上に立ってどういう政策をやろうとしているのか、そういう点について簡潔にお答えいただきたい。
  35. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 高い経済成長と物価上昇というものの間には、ある程度の関連がある、こういうふうに考えられております。私たちもこの物価上昇が今後激しくなるということになってはたいへんでありますから、やはり今後のそうしたことも頭に入れて、経済成長というものを少しスローダウンさせよう、こういうことを基本的に考えております。そういうことで最近の一三%台の高い成長でありましたけれども、一〇%台のものにやってまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。それらを肉づけいたしまして、ここでもたびたび論議がありましたけれども、従来も各種の提言をいただきましたが、いわゆる総合的な価格政策あるいは個別的な対策、これらを実行してまいりたいて特に総需要の対策については、目下それを極力実施中でございます。その成果をわれわれは見守りたいと思います。そうしてそのワクの上に立って個別政策というものの実効が期し得るわけであります。  この個別政策につきましては、よく申し上げておりますところのいわゆる低生産部門の近代化であるとか、競争条件の十分化であるとか、いわゆるオーソドックスな価格政策を中心にしまして、それに公共料金の抑制対策、各種の対策をこれからさらに一そう実施をするべく極力やってまいりたい、こういうつもりでおるわけであります。
  36. 大原亨

    大原委員 経済企画庁長官、今度の計画の策定にあたって、中期経済計画と経済社会発展計画では経済成長率は八%ということにいたしたわけですね。実質八%でありますが、今度の新経済計画ではいろいろな議論の末一〇・六%ということになっておるわけでありますが、どういう成長率が適正であり、経済成長率の中で問題の民間設備投資については、どの程度コントロールするかということが、私は、一つの大きな政策の柱である、物価政策の柱である、経済政策の柱であると思うわけです。いままでの反省に基づいて一〇・六にした。そうしていろいろなケースを設けて関連する数字を調整しておるわけですが、その根拠と見通しについてひとつお答えいただきたい。
  37. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま申し上げましたように、まだまだ日本の経済成長力、いわゆる潜在的な成長力というものは強いものがございます。それからまた、今後私どもといたしましても、一刻も早く一人あたまの国民所得を上昇させなければならない、国民生活の福祉を実現しなければならない。そういう意味において成長政策そのものを捨てるというわけにはまいりません。これはやはり、われわれにとっての重要な一つの路線でございます。ただ、その行き過ぎから来るところの各種のひずみというものに遭遇いたしまして私たちがいま反省しなければならない点がある、こういう意味でございます。  そういう意味におきまして、国際的にはまだまだ高いと思われますところの一〇%をこえるところの成長率というものを想定いたしたわけであります。先ほど御指摘のように、過去の経緯にかんがみまして、どうも低く見過ぎておる、こういう経緯がございました。そういう際でございますからして、そうしたことも頭に置きまして、一〇%ぐらいのところにやってまいりたい。しかし、いま御指摘のございました物価の点も考え、各種のひずみという点も考えまして、現実の、現在われわれが実現しているような高い成長率はこれは不適出である、こういうところから大体一〇・六という感じが出てきたわけでございます。そうして、このもとにおきまして、できるだけ同時に物価の上昇を押えてまいりたい。経済の見通しの中には、単なる予測値もございますし、われわれの政策的な一つの目標もございます。物価はそういう意味におきましては予測値であると同時に、私たちの目標でございます。成長と物価をいかにして両立させるかということが七〇年代の課題といわれておりますが、そういう意味において確かに相当の困難性の伴うことは私どもも万々承知しております。しかし、この際、先ほど申し上げましたような従来の提言をも含めまして、価格政策をできるだけ努力してまいりたい。そうして平均において四・四%くらいの物価上昇にとどめるように何としてでも努力をいたしたい。最終の五十年度におきまして三%台を実現したい、こういうことになっておるわけであります。
  38. 大原亨

    大原委員 民間設備投資が、総需要政策に関連をしてお話しになっておるわけでありますけれども、問題の中心の一つでありますが、中期経済計画では、民間設備投資は一二・四の見通し、想定であったが、これが正しく誘導できなくて一六・二になっておる、これは四十三年まででありますが。それから経済社会発展計画では一〇・六の想定が二五・八になっておる。今度の新経済計画の基礎資料によりますと一三・三でありますが、これは民間設備投資は実際はこれをまだまだ上回るであろう、こう言われるわけです。民間設備投資を規制する、コントロールすると言うけれども、どういうことについてやるかということは、いままで議論がたくさんあったわけですが、具体的には経済企画庁はそういう規制をする能力がないのではないか。閣議決定だから佐藤総理責任である、佐藤内閣の責任である。金融については日銀が自主性を持っているのは当然である。たとえば、日銀政策委員会に経済企画庁から委員を出しているはずですね。出していますか、だれを出していますか。わかっていますね。その人は大体経済企画庁の局長ではなしに、慣例上通産省が経済企画庁をトンネルで出ているんじゃないですか。長官、よく聞いていなさい。経済企画庁の総合企画についての誘導目標についての意見を代表するのではなしに、たとえば一つの例ですが、日銀政策委員会、大きな金融のワクを、方針をきめますが、そういうことも実際は通産省から素通りでいっているんじゃないですか。
  39. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 一つは、民間設備投資が非常に高い、こういうことで、われわれとしてもこれを今後コントロールしてまいらなければならない。その際に、経済企画庁に手段がないじゃないかという話でありますが、御存じのように、政府部内におきましては、大蔵省、通産省あるいはまた日銀とも十分に連絡をとってやってまいりますれば、これは十分可能なことであろうと思います。また、経済企画庁は、御存じのように比較的新しい役所でございます。そういうことで、他省の役人がずいぶん実際上入っております。たまたま現在の政策委員が通産省の出身でございます。これらにつきましては、いろいろと議論もあると思いますけれども、たとえ通産省の出身者でありましても、企画庁に参りますれば企画庁の立場においてものを判断する、これについては全然間違いはないわけでございます。企画庁の運漕がまことに弱体のように見受けられておりまして残念でありますけれども、よその省の方が入ったからどう、こういうことは一切ないつもりでございます。
  40. 大原亨

    大原委員 総理大臣、いまの答弁はおかしいわけですよ。つまり、日銀政策委員に通産省からワクを取るか、経済企画庁からワクを取るかということで、通産省の発言力がいまのように強かったから、通産省から推薦をして、そうして日銀政策委員になって、経済企画庁のワクにすわる。こういうことは、私は形式を言うわけじゃないけれども、一事が万事だと思うわけですよ。経済企画庁は、佐藤総理総理大臣になられたときに、社会開発、物価の安定をやるためには経済企画庁長官や厚生大臣は非常に大切である、こういうことを言われたわけだ。議事録にちゃんとあるけれども、ところが実際はそうではないわけで、佐藤さんは、向こうの佐藤長官は都知事に出るとかなんとかいうことがあるからりっぱな人だと思うけれども、そういううわさがあるから、鳩山さんもここにあるから、これはりっぱな人だと思うけれども、しかし、だんだんと変わっている。あなたの政治の姿勢が変わっているのですよ。経済企画庁長官は、たとえば公共料金についてちゃんとやります、こういうことを言ったって、経済企画庁長官の発言力がありますか。また、競争条件については、もちろん公取との間において質疑応答いたしますが、これについて一つのデータをそろえて客観的に影響を与えることができますか。そういう制度上の保障がありますか。あるいは農業や中小企業の低生産部門に——大きなところの設備投資は、ここに資料があるが、これは近代化は進んでいるけれども、中小企業や農業は置き去りでしょう。そこに物価問題があるでしょう。そういう全体のコントロールをやるのが経済企画庁長官であるし、経済計画であるはずであるけれども、それを閣議で決定しながら、決定したならばすぐ一年ぐらいでパーになるということは、私は佐藤総理政治の指導性の問題だと思うわけです。  あなたに聞きますが、制度上欠陥があるのではないか。経済企画庁は、これは制度上、あなたがどんなりっぱなことを言っても、希望的な観測を述べても——これはあなたに力がないとは言わない。力のあるりっぱな人である。都知事になろうかというような人ですから、りっぱな人である、候補者ですよ。しかし実際には、経済企画庁長官というものは、閣議においてもこれはバックアップしてくれる者はないんじゃないですか。ちょっと言うてみるだけであって、国民が気休めするだけじゃないですか。制度上の欠陥がある、そういうことについてあなたは反省したことはないですか。
  41. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 やはり役所というものは、ある意味においては使いようであろうと思います。私も、実を言いますと、着任いたしまして、この物価問題という重要な問題を預かるわけでありますから、いろいろと検討もしてみました。そこで結局、ただいま経済企画庁がやっておる物価に対する各省との関連のしかたというのは、いわゆる物価対策閣僚会議、こうしたものを中心にし、また下のほうでは担当官会議というようなものを通じて各省とパイプを通じておるのであります。  それで、物価問題がここまでますます重要になってきております。これは今後の私の考え方を申し上げるのでありますけれども、この閣僚会議を通じまして企画庁の立場というものをさらに一そう強く打ち出してまいりたい、こういうふうに考えております。もちろん各省には各省の立場があり、また生産者の立場という重要な立場を持っております。しかし、今日は生産者の立場だけを考えてやれる時期ではございません。そういう意味におきまして、われわれの与えられた場をフルに活用いたしまして、そして各省との意見調整を行ないながら何とか物価問題を処理してまいりたい、実はそういう心組みを持っております。できるだけ近いうちに、そうした方向でもって御趣旨に沿うようにやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  42. 大原亨

    大原委員 もう一つ、たとえば公共料金については経済企画庁長官が承認しなければ上げることはできない。あとで申し上げますが、物価の上昇の原因は野菜とか医療の問題——医療は公共料金ですね。だから今度そういうことにするとか、あるいは寡占、独占、複占というような管理価格の問題、そういう問題等については、経済企画庁長官は公取に問題点を指摘をするとか、そういうきちっとした制度上の保障をしていないから、手足の少ない経企庁は、電子計算機を使って官庁エコノミストを駆使してやっているが、作業をやるだけである。一生懸命にやっている者はおもしろいらしい。これは勉強になるし、数字をもてあそぶ——と言ったらおこるだろうけれども、おもしろいらしいが、しかし、この結果というものが、政治に対しましてこうあるべきだということが何ら反映しない。これは私は、すべて総理大臣のイニシアチブの問題だと思うわけですよ。そういう制度上の欠陥を含めて、総理大臣はこのことについて簡潔に見解を表明してもらいたい。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡潔にという、特に強く要望されていますから、簡潔に申し上げます。  いま、経済企画庁そのものが権限がないじゃないか。なるほど予算一つ編成する力があるわけじゃございません。しかし、公共料金については、経済企画庁がイエスを言わない限りこれを上げることはできないという、そういう慣習にいまなりつつあります。だんだんそうなりつつある。だから、現に鉄道料金などは経済企画庁が押えているという形でございます。また、医療の問題になりますと、これは医療審議会が主になっていろいろやっておりますけれども、これに対しても経済企画庁は全然発言ができないというものではございません。そこで、いま言いましたが、物価対策閣僚協議会、さらにその下の幹事会等を通じまして、事務的に十分折衝しておるわけであります。物価の問題は、ただいまのように、ひとり経済企画庁だけで片づかない問題がございます。金融一つにいたしましても、やはり金融と国家的な予算と、これが一体となってはじめて総需要を抑制することもできるわけであります。総需要も内外にわたることを考えると、国内だけの問題ではないのだ。外国的な要素が非常に高くなってくると、やはり国内にもはね返ってきている。そういう場合に、これはインフレではないか、かように思いますが、しかし、私はただいまのように通貨に対する価値の変動がない状態、むしろ通貨は、日本の円はたいへん強い状況だ、こういうもとにあるときに、直ちにこれをインフレだとか、かような表現をすることは不適当ではないだろうかと思うのです。しかし私は、いまの物価の上昇率が適当だというのではございません。どうか誤解のないように願いますが、物価の上昇率が適当だと申すわけではございません。しかし、物価の上昇は内外の総需要から来るのだ。ことに卸売り物価にはそういう傾向が非常にある。そのこともやはり考えていただきたいし、大原君にはよくおわかりだろうと思います。そうして、先ほど来、換物ということが議論されました。しかしながら、いまほど円が強い時期もないのじゃないか、かように思います。見方によって、他の方面から見るならば、円が強い。円が強いその状況においていわゆるインフレだ、こういうことで現在の物価上昇を簡単に片づけるわけにはいかぬ、かように思っております。私は、その点では十分対策は立てなきゃならない、いまのような上昇は許さるべきでないと思いますから、そこで昨年来金融の引き締めをしている。これは金融の引き締めが、設備投資の面ですでにある程度きき目があらわれようとしておる。しかし、過去においてしばしば金融引き締めを行なった際に出てくるような、中小企業にしわ寄せするようなことは、いまのところではございません。これはたいへん注意をして、この金融引き締めがどういう結果になるかということで、目を光らさなきゃならない。設備投資を適当なところで押える。かような状態でございます。これは経済企画庁がそういうことができるわけではない。しかし、経済関係閣僚協議会、そこで決議をいたしまして、そして金融引き締めに踏み切った。そして大蔵省も適当にこれと協力している。その結果でございますから、役所の権限そのものが強いとか弱いとかいうことではなしに、やはり全体として総合的対策を立てなきゃならない。その事態でございますから、そういう意味では、いまの制度でけっこうではないだろうか、かように思っております。
  44. 大原亨

    大原委員 制度上の裏づけや保証がない限りは、人が一年ごとに変わるのですからだめですよ、総理大臣佐藤総理大臣は非常に、人事の佐藤とかあなたはいわれている。人事の佐藤。しかし、政策の佐藤だという人はいないわけじゃない。国民が求めているのは政策の佐藤だと思うのですよ。その政策はやはりちゃんと制度上裏づけしなくちゃ、経済企画庁長官は一年ごとに変わっちゃうのです。また、来年は都知事選挙に出るかもしれない。そんなことでどうするんですか。国民はそんなことは大迷惑ですよ。だから制度上のことについて、あなたは検討する必要はないと言われたけれども、経済企画庁が総合官庁として、生活官庁として、物価大臣としてきちっと発言できるような保証をすることは必要だ。いかがですか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大臣がたびたび短期間でかわるということは好ましくないこと、これは御指摘のとおりであります。私もつとめてそうありたいと、かように念願しておりますから、この点では同じ考え方でございます。ただいま東京都知事に出るとか出ないとか言われるけれども、さようなことはたいへん先ばしった話で、ただいまさようなことを私ども考えたこともございません。こういう席でさような話が冗談にも出ますと、だんだんほんとうになると、これはたいへんなことだ、かように思いますから、なるべく差し控えておいていただきたい。
  46. 大原亨

    大原委員 総理府の統計局が二十七日に発表いたしました消費者物価指数に関する数字、これは最悪の上昇になったわけだ。これはもう新経済社会発展計画をつくる初年度、閣議決定をする初年度から、そこからくずれようとしておるのだ。いままでの議論からはっきりいたした。先月は前年比八・五%上がっているのですよ。このままで行けば本年度はあしたで一年間六・四%の物価上昇をするだろうといっている。経済企画庁、これは一体どういうことなんですか。経済企画庁、物価大臣は何をしているのですか。これからどうしようというのですか。
  47. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 最近の物価上昇、これはもうまことに私も心痛いたしております。本年、四十四年度も間もなく締め切られるわけでありますが、当初五%と見込みましたものが途中で五・七になり、このままで行きますと六・三くらいになろうと思っておりますが、この見通しが変わりましたのが、何といいましてもまことに残念なんですけれども、季節商品が主たる原因でございます。季節商品と申しますと野菜とくだものと魚介類でございますが、これらを除きましたところでは五・三ぐらいになりそうであります。これはやはり少し上がってまいりました。しかし、これは強含みという程度のところでございます。こうした基本的なものについて、私たちはこの四十五年度から何とか努力いたしまして、まず、この基本的な物価というものをできるだけ上昇を押えてまいるように努力してまいりたい。それからまた季節商品につきましては、今回の経験でつくづく感ずるのでありますが、実際問題として自然的な条件というものの影響力がなかなか大きい。そして、これに対処するしかたというものは、これはよほど検討しなければなりません。私たちも実はそれについていま物価安定政策会議においても相当立ち入った検討をしてもらっております。近々その答申が出ると思うのでありますが、できるだけの手を打ちまして、季節商品に対する価格の上昇を防ぐように、そのコントロールを何とかやってまいりたい、こういうことで対策をこれから十分に実現してまいるつもりでおります。
  48. 大原亨

    大原委員 長官、民間のある銀行の予測によりますと、実際に国民の庶民階層の消費者物価の上昇の影響力というものは一一・一%だろうと、こういっている。八・五%どころではない、五・三%どころではない、こういうことをいっている。そういう調査もあるわけです。それで、季節的な商品についての価格が上がった、こういう特殊事情を言われた。いつもそういうことを言うけれども、物価には通貨の信用その他の問題を含めて根本的な問題があるわけです。政府の政策はこうなるだろうということを予測してこうなっているわけですから、心理的な問題があるわけです。しかも季節的な商品の場合は、野菜なんか卸の値段ですから心理的なものは、小売りに至りますと、普通二割のマージンが三割、四割にもなるわけです。万博その他の影響等もあります。ですから、そういうことを見通して、当面の非常な緊急事態に対して何をするかということを、もう少し的確な御答弁をいただきたいと思いますね。四月一日には閣僚会議を開いてやるというのですが、何をやるのですか。佐藤(一)国務大臣 民間の銀行で一一%というお話がありましたが、これは結局一月における食料品価格の上昇、主として季節商品の上昇を一月でもって見ますと、そうなるのであります。結局消費者がたびたび買うものというと食料品でございます。そういう意味で非常に実感として高く感じられるだろう。したがって、そうしたものの上昇率を中心にしてもっと考えるべきである。こういう感じであろうと思います。そういう感じは、私もぬぐえないと思います。  それから、閣僚会議におきましては、今度の四十四年度の出てまいりました実績というものを中心にして、今後の価格政策のあり方について基本的に検討しなければならぬ、そのためにわれわれとしても今後の方向といいますか、具体的な方向についていろいろと議論をしてみたい、こういうふうに考えています。そうして、それをできるだけ、一月ぐらいのうちに何とかまとめまして、価格政策全体の今後の方向というものを、われわれとしての所信も明らかにしてみたい、こういう準備をしたい、こう思っています。
  49. 大原亨

    大原委員 全くたよりのない御答弁ですね。全くたよりにならぬ。あんな答弁というものはない。第一、四月一日というのは四月ばかというて日が悪いですよ。あんな日に物価対策をやったって、国民の疑惑は増すばかりだ。エイプリルフールだ。そんなでたらめなことはない。少しふざけているんじゃないかな。総理いかがですか。あなたは何をするのですか。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお話をいたしましたが、その開く日がエイプリルフールだ、こういうことだけれども、そういうようなふまじめな考え方ではございません。緊急を要する問題だ、かように考えております、こういう問題はやはり国内だけの問題ではない。先ほどもちょっと触れたように、総需要の問題、これは内外合わせての総需要、こういうことを申しましたが、ものによりましては、緊急輸入の方法もしかるべきではないだろうかと思います。私ども本来が自由経済というたてまえでございますから、できるだけ公正なる自由競争取引を進める、こういうつもりでございます。したがって、もしも公正なる競争をはばんでおるようなものがございますれば、それぞれ公正取引委員会等においても厳正に処置してもらいたいと思います。しかし、やはり基本的にはそういう取り締まりということよりも、需給の関係で生ずる物価でございますから、足らないものを豊富な状況にすることだ、輸入またやむを得ない、かように実は考えておる次第でございます。
  51. 大原亨

    大原委員 実効ある物価政策は、われわれも提言をしながら、意見を言いながらやってきて論議をしてきたわけですが、たとえば具体的ないまの総理の答弁としては、公正な競争が助長されるような、そういう政策を進めていきたい、こういうことでありますが、これは確かに管理価格の問題は、独占価格、複占価格あるいは寡占価格といわれておるが、再販の問題等を含めて管理価格の問題は一つの物価の非常に大きな中心的な問題です。これは、公取の委員長見えていますか。前の公取委員長はいまの専売の総裁だけれども、新日鉄の出現まではかなり奮戦をいたしまして、それから内外から袋だたきにあいましたね。袋だたきにあって、どんどん人事の更迭がなされているというふうに世上では言っているし、みんなも認めておる。競争条件を整備したりあるいは総理大臣が言われたような公正な競争をやろうといたしますると、公取の権限が、アメリカはかなり強いけれどもアメリカほどまでとはなくても、私は非常に責任が大きいと思うわけですね。経済企画庁もさることながら、公取。管理価格の問題について最近問題が出てまいりましたけれども、現在合成洗剤その他を含めて管理価格の問題に公取が取り組んでおる段階についてお答えをいただきたい。
  52. 谷村裕

    ○谷村政府委員 日本の経済で公正かつ自由な競争の条件が確保されて、それによって消費者もあるいは関係者も十分に理解できるような形でもって価格が形成されるというのが一番望ましいわけでありますけれども、なかなかさようなふうに一がいにまいらない面もあるかと思います。そこで私どもはいま価格の動きから見て一つの硬直状態が起こっているように見受けられるものについて調べたわけでございますが、それは、それが直ちに一つの人為的な操作によって行なわれているという見当からかどうかということではなくて、一体それの原因なり状態なり前提になっておる環境は何であるか、そしてそれを一体どう評価するか、そういう問題であろうというふうに考えてやっておる次第でございます。
  53. 大原亨

    大原委員 どういう段階なんだ。
  54. 谷村裕

    ○谷村政府委員 ただいまのところ三品目についていろいろ議論をいたしておる状況でございます。
  55. 大原亨

    大原委員 内容は。
  56. 谷村裕

    ○谷村政府委員 三品目の名前でございますか。
  57. 大原亨

    大原委員 名前と中身。
  58. 谷村裕

    ○谷村政府委員 いままで私どもが調べました三品目は、一つはアルミニウム地金でございます。第二は写真用のフィルムでございます。第三番目は合成洗剤でございます。それについていろいろといま検討をしている段階でございます。
  59. 大原亨

    大原委員 検討した結果の問題点と、検討、調査の結果が報告される、問題がまとめられる、そういう見通しについてお答えいただきたい。
  60. 谷村裕

    ○谷村政府委員 これはただいま三品目だけをやったわけでございますが、それぞれ商品の性質も、また流通の経路あるいは生産の条件、市場の状況、いろいろ違っているわけでございます。さらに私どもはそれ以外についてもいろいろと検討を進めてまいりたいと思っております。個々の具体的な品目について甲である乙であるというふうな結論をそれぞれのときに出すということではなくて、一般的に管理価格全体についての問題点というものをまとめてみたい、かように考えております。したがって、いつどの時期にというふうにいまの段階ではまだ申し上げるわけにはまいりませんのでごいます。
  61. 大原亨

    大原委員 まとまっていない。
  62. 谷村裕

    ○谷村政府委員 まとまっておりません。
  63. 大原亨

    大原委員 具体的に、私は公取としては、是正命令を出す前の段階としては調査活動があるだろうと思うわけですよ。調査の結果については、すみやかに調査をしてその結論をやっぱり早く発表すべきです。そして、そのことを通じて自由な公正な競争を促進するということを新経済社会発展計画でも柱としていっているのですから、佐藤長官も言われているし、佐藤総理もお答えになっているわけですから、私は何か最近の公取はおびおびしているというような気がする。この点についてはせっかく佐藤さんが公正な競争条件を整備すると言われたけれども、これはもう少し大胆にやるべきではないか。佐藤総理いかがですか。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお話は谷村委員長も伺っておりますから、もっと勇敢に大胆に、勇断をもってこれに当たるべきだと、かように思います。
  65. 大原亨

    大原委員 公取の委員長、いまの三つの品目につきまして、疑惑があるという前提ではないが、調査をしているということですね。その実態についての調査の経過、これを私は資料として私のところへ出してもらいたい、そのことを要求いたしますが、いかがですか。
  66. 谷村裕

    ○谷村政府委員 資料としては差し上げるように  いたします。  それからなお、公正取引委員会としていまの三品目について疑惑を持ってというおことばでございましたが、ちょっと申し上げておきますけれども、独占禁止法の違反という実態に何か関連するやのごときもし御了解であるとすれば、さような観点から調査いたしたわけではございませんので、一般的にそういう市場における価格形成の条件なり前提なりにどういう点に問題があるか、さような意味で見ているわけでございます。管理価格の問題と一口に申しますけれども日本の場合には非常に経済成長が激しい段階にございます。そしてその激しい経済成長、したがって需要も伸びる、またそれに対して生産もふやしていかなければならない、そういう段階にあって、必ずしも値段がしょっちゅう動いてばかりいるのがいい経済であるかどうか、それは問題でございますけれども、少なくともその間に何らかの意味において価格が人為的に操作されるような実態が条件としてあるかどうかというようなことをいろいろと見たようなわけでございます。
  67. 大原亨

    大原委員 私は言ったのですが、疑惑があるから調査しているんではないとあなたが言っている、そのことは認めているのですよ。しかし価格が硬直しているのは事実ですよ。複占、寡占を通じて価格が硬直しているのは事実ですから、その実態を調査しているわけでしょう。ですから、それはすみやかに調査して早く発表すべきなんです。総理が言っておられるとおりですよ。そのとおりなんです。ですから、そのことを私は言っているわけです。資料を出すと言われるのですから、これはお出しいただきたい。
  68. 谷村裕

    ○谷村政府委員 少なくともただいま御指摘になりました三品目につきましては、資料はもう公表いたしております。どういう状況であり、どうであるかということは公表いたしておりますから、直ちにその公表いたしました資料は差し上げるようにいたします。  ただ問題は、それをどう評価し、どう考えたらいいかという、そういう問題になってまいりますとなかなかこれはいろいろな観点からまいなければならないということで、独占禁止懇話会などでもすでに三回にわたって議論いたしております。またさらに来月もまた外国における問題等との関連を含めまして議論いたすつもりでおります。そう簡単に全体の評価と申しますか、それがなかなかまだできないということを私は先ほど申し上げたのでございます。三品目についての資料はすでに出ております。   〔「疑いがないというのはどういう根拠で」と呼ぶ者あり〕
  69. 大原亨

    大原委員 いまの発言があったように、独占禁止法に関係ないことを公取はやっているのですか。どういう法的な根拠でやっているのですか、逆に質問します。  もう一つついでに、縦のカルテルといわれている再販制度ですね、再販売価格維持契約制度、これはメーカーがいろいろな条件、リベート等をつけて末端価格を規制しているわけです。これがどんどん広がっているわけです。特に薬、化粧品、そういうものはどんどん広がっている。そのことが末端価格を硬直させて、そして自由競争を促進するという、そういう独占禁止法から私は問題があると思うわけです。これについては、どのような見解でもってこの問題に対処しているか、この二つの点をひとつ……。
  70. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私どもは独占禁止法の運用に当たっておるものでございますが、独占禁止法の運用にあたって前提となるべき経済の情勢、条件、そういうものを調査することは、たとえばその以外に日本の各産業界における資本集中の状況あるいはまた生産集中の状況、そういったようなことも調査いたしておるのでありまして、具体的にある一つの事件についての調査活動ということのほかに、全般的な公正な競争条件というものがどういう前提になっておるだろうかということを調査するということは、公取として当然やるべきことである、かように考えております。  それから第二のいわゆる再販問題等につきましては、これはいろいろと過去の経違もございましたが、私どもはただいまの状況におきましては、どんどんふえているというようなお話もございますけれども、法律の定めるところに従って品目を指定いたしておりますが、その指定しておる品目がはたしてよろしいかどうか、現実の流通の状況等ははたしてそれを必要とするという状況にあるかどうかという観点から再検討する段階にございます。特にこれは国会のほうにも御報告申し上げておりますが、一部商品につきまして、表面の価格ということ、これは消費者に関係いたしますけれども、消費者に関係しない段階において、いわゆるリベートとか、現品添付とか、さようなものがどの程度にどう付せられておるかということを品目全般にわたりまして一斉に調査しておる、かような段階でございます。
  71. 大原亨

    大原委員 公取が再販問題について手を入れて調査をしておる——しておるというのは、これは数年来の答弁なんです。あなたの答弁は同じことを言っておるのですよ。だから、価格政策で、経済企画庁長官もお話しになったが、総理もお話しになったが、やはりこれは自由民主党も、体制の問題ですが、これは自由競争ということが唯一の生命ですよ。自由競争ができなくなって独占、寡占や複占が横行するようになれば、高度成長した力が政治と癒着をすることになるわけだから。あなたがおびおびしたような答弁をするのが、それは性格上だからやむを得ぬけれどもね。もう少しはっきり言ったらどうですか、こうやるべきだと。そのことを通じてやはり一つの影響を与えたらどうですか。十年一日のごとく、問題だから検討いたします、検討いたします……。これはいつになってもできやせぬじゃないですか。その点については私はもう少しき然たる態度でやってもらいたいですね。
  72. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私はただいまおしかりを受けましたが、決しておじおじして仕事をしておるということではございません。私は私として与えられた職務について全力をあげて知るつもりでございます。しかしながら、問題を解明いたします際に、そう簡単にいかない問題もあるわけでございます。特に日本のただいまの物価上身の問題というものは、私どもは私どもの立場から公正にして自由な競争ができるような前提をもって考えておりますけれども、それが必ずしもそのようにいかない場合も、問題としてはあるわけでございます。しかし、それが直ちに、じゃ独占禁止法違反の状況であるかというと、さようなことでもないという非常にむずかしい条件がいろいろ出てきているというふうに私は見ております。特にこれからの経済において非常にむずかしい問題が出てくると思います。さような意味におきまして、私は一生懸命やるつもりでおりますが、どうぞその点は御了承いただきたいと思います。
  73. 大原亨

    大原委員 非常に頼もしい。私的独占禁止法の二十七条には「この法律の目的を達成するため、公正取引委員会」云々といって、自分の仕事が書いてあるのですよ。法律に根拠はないことはないですよ。私はあなたがほうぼうに遠慮しておるというのはどういうことを言うのかというと、こういう競争条件、価格が硬直しておるものは、ある一面では安定ということをいうだろうが、しかし、物価を安定させるということを第一の条件としてこの問題を取り上げるのだということを、いま議論しておるわけです。経済企画庁もそういう方針で物価政策をやると言っておる。佐藤総理もそういう発言ですよ。ですから、あちらこちらを考えないで物価を安定させるのにはどういうふうにやったらいいか、どういう見解を示してどういうメスを入れたらいいか、こういうことをずばりとやりなさい、こういうことを言っておるわけですよ。そういうことを言っておるのです、いま二つの点で。わかりましたか。  この再販の問題に関係いたしまして最近問題になっておりますが、厚生大臣、これは問題が多いわけですが、一つだけにしぼってやりますが、東大の高橋講師が大衆保健薬について、私もいつもここで議論しておりますが、大衆保健薬について問題を提起しておられるわけです。このビタミンBとか、肝臓薬が日本のように乱用されておるところはないのですよ。毎日飲もう何々とか、俳優がこうやってテレビなんかでやっておるところはないですよ。広告も規制しておるのですよ。薬というものは医者と薬剤師が知っておればいいのですよ。患者が広告を見て、そして要求するというのは間違いなんですよ。そのことが医療費の赤字になったり、医療保険の抜本改正で非常に大きなネックになっておるのですよ。大切なのは、薬とは何かということをもう一回再点検しなければいかぬ。荒木国家公安委員長のところでやっておられる。ちょいちょい新聞に出るが、インチキ薬が横行している。やれアカマムシとかなんとかいって、いろいろなものが一ぱい出ている。これは薬の概念が乱れに乱れておるわけですよ。そこに売薬的な医療があって、一方では技術の評価が低いという問題があるわけです。世界各国の倍で、四割も総医療費で薬剤費が占めているという国はないわけです。国民の立場に立ってみれば、これは大迷惑な話なんですよ。これは異物なんですから、たくさん飲んだら飲むほどきくという薬はないはずなんですよ。これは毒なんですから。たくさん飲んできくというのは、毒にも薬にもならぬ薬のことを言うのであって、これはインチキだということになるわけなんです。そういう概念ですよ。ですから、私は、新薬を許可する場合に、この前アンプルのかぜ薬その他の問題を議論したときにしばしばやったけれども、これはきびしくしなければいかぬ。客観的に見て、ほんとうにきくのかどうかということをやらなければいかぬと思うわけですね。再販の問題と一緒ですけれども、広告の規制の問題もありますよ。  そこで、高橋先生が提起をされている——公開質問状で提起をされて、新聞に出、国会議員の手元にも来ているが、二重盲検法という検査の方法を採用しなければいけないのではないか。いまはメーカーが文書で出す資料だけで——臨床その他が入っておりますが、にせの薬とほんとうのこれから効果を示そうという薬を、医者と患者から遮断いたしまして、そして二重盲検法という方式でやるのが、今日の段階では科学的であり、客観的であるということをいわれているわけです。そういう方式でやって、大衆保健薬等を総点検する、いままでの薬を総点検すべきではないかという提案ですよ。たくさんの提案があるが、私はそれはぜひとも真剣に議論すべき問題であると思うわけですが、厚生大臣は、その公開質問状に対して、どういう見解をここで表明されるか。
  74. 内田常雄

    ○内田国務大臣 薬の承認をやります場合につきましては、その有効性、安全性ということは最も肝心なことでございますので、御承知のとおり、厚生省といたしましては、ことにそれが新薬の場合には、その物理的、化学的実験の成果とか、あるいはまた毒性の実験の成果あるいは薬事法上の実験、さらにまたずいぶん厳重な臨床実験をも経たデータを添えさせて、しかもそれを薬事審議会にかけて承認をいたしてきておるところでございます。  高橋東大講師からの先般私に対する手紙の中で、二重盲検法のことに触れておりますけれども、このことにつきましても、厚生省といたしましては、いまも申しますように、薬の製造、承認の場合には、客観的な資料というものが基礎となるべきだという見地で、その一つの方法といたしまして、近年臨床試験の分野で二重盲検法による手法が投入されておることも承知をいたしまして、ある種の薬、たとえば精神神経用剤などにつきましては、この二重盲検法による臨床試験の成績を取り入れることにいたしております。ただし、それだけが唯一の方法ではない。そのほかに客観的の資料の求め方につきましては、学界にもいろいろ意見があるということで、他の方法につきましても検討をいたしております。  高橋講師の御提案は、これは大原委員も御承知のように、いい面もなきにしもあらずでありますが、質問の内容というものの方式が、私どもが直ちにそれに回答できるような形でもないということと、問題が、ただいま申しますように、学界に関する問題も含まれておりますので、これらの学界の方面とも打ち合わせの上、適当なる方法で回答するなり、あるいは厚生省としての態度を明らかにするなりという方法をとろうと考えるものでございます。
  75. 大原亨

    大原委員 これは良心的な企業家の技術開発を保護するという面もあるわけです。いま日本は、あなたはよく承知ないから、あなたがいま言われた中で、一々私があげ足をとると幾らでもあるけれども、そういうことはしないですが、日本薬局方その他を基礎にして薬事審議会にかけるものは重要な薬であるのですが、新薬については、ちょっと構造式を変えたら、すぐ厚生省だけで許可するようになっているわけです。そういたしまして、テレビの広告に入れましたり新聞の広告に入れましたら、それがどんどん売れていくわけですね。ですから、日本の薬というのは、国際的には生産量は世界第二ですよ。ドイツやイギリスその他をこえているわけだ。大きいことはよいことだということがあるけれども、世界第二だ。しかし、日本の薬の評価というものは非常に低くて、輸出は三%程度しかないわけです。それは薬務行政のあり方の基本にかかわる問題です。科学的に権威のある薬を開発して、それを保護するということが必要なわけですよ。そうしなかったら、医師の世界においても薬剤メーカーの世界においても、悪貨が良貨を駆逐するのです。それがいまの乱脈の状態。こういう場合には必ずしも大きいことはいいことじゃないわけです。ですから、そういうことについて、私は二重盲検法という一つの例をあげたが、最近少しきびしくなっておるが、新薬の許可等については、いままでの問題を含めてきちっと客観的に立証するような措置をとるべきである。いかがですか。
  76. 内田常雄

    ○内田国務大臣 大衆薬につきましていろいろな課題が投げかけられておる、またその過大広告等につきましても、問題があることは私も気がついておりますし、また薬には、大衆薬のほか、御承知のような医療用の専門的医薬品もありますので、私は、この薬の承認につきましては、この二つの種類の薬について当然態度が異なるべきであろうと考えております。私はしろうとでございますが、さような見地から考えるところもございますし、また大原先生のただいまの御所論、私はよく理解もできますので、それらの見地に立ちまして、さらに十全を期してまいりたいと存じます。
  77. 大原亨

    大原委員 経済社会発展計画の議論を物価の問題を中心にいたしておるわけですが、総需要政策を非常に重視をされておるわけです。その中身を見てみますと、昭和四十五年から五十年までの総需要の一つの柱は、政府の財貨サービス購入その他の問題もあるが、民間設備投資もあるが、個人消費支出の問題があるわけです。これは非常に重要な問題で、時間が十分ありませんが、個人消費支出については、この中身の国民生活の水準に深い関係があるし、量と質の問題に関係があるわけですが、これはどういう計画で昭和五十年までの計画を進めていくのか、こういう点について簡単にお答えいただきたい。
  78. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御指摘の個人消費でございますが、新しい経済社会の発展計画、四十五年から五十年度までに大体九・三%の伸びを予定しております。これは三十八年から四十三年までの実績八・九、それに対して九・三、こういう伸びを想定しております。
  79. 大原亨

    大原委員 私がいまの数字を検討いたしてみますと、そういう観点ももちろんあるわけですが、しかし、GNPの中の個人消費支出の構成比を見てみますと、現在の五一%よりも構成比は四九%に下がっておるんですね。これはどういうことなんですか。つまり個人消費支出については、いままでは、もうこれは実際日本国民生活の中身も、ストックも非常に貧困であるから、賃金水準も低いから、所得も低いから、社会保障も低い、こういう議論をした上に、これについてはあまり手をかけなかったのですが、今度は構成比から見ると、百分比から見てみますと、率が下がってきておりますね。これは国民生活水準を切り詰めるという考えなんですか。
  80. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは今日までの日本の経済計画において大体そうした方向がとられてきておりますし、実際問題としましては、その間に一度消費支出の構成比が伸びたときもございます。このたびの新計画では、御指摘のように四九・八%ということになっております。これはやはり一〇・六%という比較的高い成長路線を、わが国がこの新計画の期間においてもとる、こういうことを意味しておると思います。それでこの構成比は下がっておりますけれども、しかしながら、そのことが同時に高い成長を実現する。そうして、その高い成長というものが、結局国民の所得をほかの国よりも数段早いテンポでもって増大をする、結局めぐりめぐりまして国民の所得の増大をもたらす、こういう結果になっておるわけであります。これはやはり一〇%をこえる成長の路線をとっておるということから来るわけであります。
  81. 大原亨

    大原委員 いまの点は問題として私は指摘しておきます。つまり総需要政策の中で国民生活に関する面は引き締めていく、こういう政策、縮小的な再生産を考えておるのではないかという点を指摘をしておきます。これは問題指摘だ。  労働大臣、こんなに物価が上がる。春闘でも一万円以上どんどん上がっておるわけです。日本の労働分配率ですが、国際的に比較をいたしまして、付加価値の労働分配率について労働省は高いと思っておられるか、あるいはどういうふうな位置づけで考えておられるか。あなたはあまり手持ちぶさたでありますから、ひとつ御質問いたします。
  82. 野原正勝

    ○野原国務大臣 労働分配率という問題は、まことにむずかしい問題でございまして、まだ私は十分に研究しておりません。したがって、今後の問題として、いかにあるべきかという問題については、これから十分に研究し、勉強もしてみたいと考えております。
  83. 大原亨

    大原委員 取りつく島がないですね。社会保障の分配の問題ですが、社会保障の長期計画については、斎藤厚生大臣や園田厚生大臣がいままで再三にわたって国会で答弁いたしましたし、佐藤総理も、たしか昭和四十年か四十一年の国会であったと思うのですが、パンか大砲かという議論のときに、社会開発の問題に関係をして、社会保障のそういう長期的な展望を持って引き上げるべきだ、こういう議論をされておるわけです。いまだに社会保障についての長期計画ができていないのはなぜですか。他の社会開発の分野は全部できておる、あるいは他の政策分野は全部できておる。しかし、問題の社会保障だけはできていない。いろいろな理由があるだろう。いままで理由をみんなが言いました。しかし、それは主客転倒、逆ではないか、こういう議論をいたしまして、社会保障の長期計画をつくるという議論になったのですが、あなたはどういう考えを持っておられるか、あるいは社会保障の長期計画はいまつくっておられるか、いつ出されるか。
  84. 内田常雄

    ○内田国務大臣 社会保障の長期計画というものは、その中身がいろいろございますために、総合した長期計画というものはなかなかできにくうございます。  ところで、私がいま一番関心を持って努力をいたしておりますのは、たとえば今回の経済社会発展計画の中における国民総生産あるいは国民所得の中において、どれだけ社会保障給付費あるいは振替所得の率をふやしていくかということに全力を実はあげてまいりまして、その中には医療保障もございますしあるいは生活保障もございますし、あるいはまた第三の社会福祉のいろいろな施設等がございますので、まず経済成長というものはそれだけではだめだ。裏打ちがあって、社会的幸福というものが伴って、さらにその社会的幸福のほうが経済成長を上回るようにならなければ、真の経済発展ではないのだということを実は力説いたして、努力をいたしておる最中でございます。それとの見合いにおいて、私はまず社会福祉等を中心といたしながら、環境衛生等のことについてはむろんでございますが、長期計画というものをぜひ立ててまいりたい、努力をいたすものでございます。
  85. 大原亨

    大原委員 ちょっといままでの議論の蒸し返しになるわけですが、長官政府委員でもよろしい、新経済社会発展計画で、社会保障の水準を示す一つの指標としては、振替所得の問題があるわけですね。国民所得に対する振替所得の比率の問題があるわけです。これについてはどのようなワク組みをしているか、そして最終年度の昭和五十年には、国民所得の中で金額にしてどのくらいの振替所得を考えておるのか。
  86. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのように、昭和四十三年にGNPに対する振替所得が五・四ぐらいになっています。四十四年に五・二ぐらいになっています。そこいらをにらみまして、それに対して二ポイントぐらい上げてまいりたい、すなわち七%ぐらいのところまで上げてまいりたい、いまそういう心組みで答申案を用意しております。それから五十年度の金額は、七兆六千億円ばかり考えております。
  87. 大原亨

    大原委員 いまの長官の御答弁は、私が修正しておきます。私が修正しちゃ悪いけれども——あなた修正してくださいよ。あれは五・三%にしましても、二%をプラスして大体七・三%ぐらいを目標にしてやらないと、前の経済社会発展計画との関係でおかしいのです、後退になりますから。それはあとでひとつ訂正してください。  内田厚生大臣、いま七兆六千億円の振替所得が昭和五十年に想定される、こういうわけですね。その中身をどうするかというのが長期計画なんですね。これから六カ年間にわたって四十五年からずうっとどういう計画で社会保障の中身を充実さして、そうして七兆六千億円の振替所得に持っていくか。これは世界に比べましたら、低いんですよ。国際水準より低いのですけれども、経済社会発展計画からいうと、そういう社会保障の政策の裏づけがないとだめだ。そういうことは、佐藤長官、今度の新経済社会発展計画の報告書、その最終答申案の中にも、あるいはそれの裏づけになる資料の中にも、そういう政策、社会保障の長期計画のないことは遺憾である、早急につくるべきである、こういうことが出ているでしょう。いかがですか。
  88. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 大原さんのおっしゃいました五・三というのは、現行計画の出発点にあたって五・三を七%ぐらいにしよう、こういうお話だと思います。それで今回は、いま私の申し上げました五・二というのは、四十四年度の実績です。四十四年度の実績五・二、四十三年度の実績五・四、そこいらをにらみまして、やはり七%ぐらいに持っていこう、こういうつもりでおるという御説明を申し上げたわけでございます。  それから、社会保障の問題につきましては、厚生大臣が適当かと思いますけれども、新しい経済社会発展計画におきましては、やはり何といいましても、わが日本の社会保障において最も立ちおくれておるといわれておりますところのいわゆる年金部門、こうしたものの拡大をこの際はからなければならない、それからまたいわゆる短期社会福祉といいますか、いわゆる医療関係のものについては、相当国際水準には近いものではありますけれども、これらについても、もちろんいろいろと制度その他についても問題があるわけですから、そうしたものを検討してまいらなければならない、それからいわゆる社会の谷間におるところの恵まれざる人々に対する社会福祉、これは特に今後力を入れていかなければならない、こういうような大きな方向を発展計画において打ち出しておるわけであります。具体的な政策につきましては、厚生大臣から御説明があると思います。
  89. 大原亨

    大原委員 大きなワクがきまっただけじゃだめです。七兆六千億円というワクがきまっただけじゃだめです。これをどういうふうに裏打ちをするかという長期計画がないから、社会保障費が一兆円をこえたといっても、実質にはそういうふうに国民は感じない。水準も上がっていかない。おくれているのをレベルを上げるためには、目標をつくってあげなければいけない、こういうことです。そういう政策がない。行き当たりばったりだから、厚生省はだめじゃないかということを私は言っている。  その裏打ちになる政策の中に、たとえば児童手当は、昭和五十年までの計画ですが、この新計画にはどういうふうに裏打ちをされておりますか。
  90. 内田常雄

    ○内田国務大臣 経済企画庁長官からお話がございましたが、今度の新計画におきましても、経済の成長がもちろんありますが、それをさらに上回る社会保障あるいは振替所得の増額をはかっていかないと、それに対する割合がふえません。ところで、現在昭和四十四年ぐらいをとりますと、社会保障に対する振替所得の総額は三兆円まで至っておりませんのを七兆六千億円にするということは、倍数にいたしますと約二・九六倍ぐらいになるはずでございます、三倍近くになります。ところが、医療保障のほうは、伸びますけれども、これは所得の伸びとパラレルぐらいに伸ばせばいいわけでございますので、したがって、それ以上伸びる分を、私は、児童手当を含めた所得保障、あるいはその他の社会福祉の充実に充てようということで見当をつけまして、その中におきまして、長期計画がつくれるものはつくってまいりますし、また年金等、これは成熟とともに自然に上がってまいりますものにつきましては、むしろ物価なり生活水準に追随してそのつどその増額をはかっていくというようなことをやるのがいいのではないかと考えております。
  91. 大原亨

    大原委員 常識で考えてみましても、毎年の予算編成でばたばたやっていて、いまの振替所得の水準を七兆六千億円に持っていけないですよ、長期計画、総合計画がない限りは。そんなことでは大蔵省に対して説得できないですよ。  佐藤総理、いま答弁で明らかなように、社会保障の長期計画の中には、医療保険の抜本改正の問題があるわけです。それから老人問題が人口の老齢化や核家族化で非常に進んでおりますが、それらを含めて年金の問題があるわけです。児童手当の問題があるわけです。これは議論になっておる。五十年までには解決すべき問題です。これは佐藤総理が先頭に立って社会開発を言われているのですから、社会保障の長期計画を立てる、それを頭に置きながら立てていくということは、私は、政治の問題といたしまして、あるいは新経済社会発展計画を有名無実にしない、水準は低いけれども、大切だと思うわけです。いかがです。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君からも御鞭撻をいただきましたから、できるだけさような方向で努力してみたい、かように思います。
  93. 大原亨

    大原委員 厚生大臣、最近スモン病とか、それからカネミ・オイルの中毒事件などというふうに、致命的な影響を与える問題で、きわめて原因不明の問題があるわけであります。そういう問題について、公害の問題で、水質あるいは空気による公害というワクがありますが、しかし、近代工業の中に出てきた公害病については、私は、あるルールをきめて公害のワクを拡大しなければならないのじゃないか。公害のワクを拡大して考えないと、そのまま放置することは人道上できないのじゃないか。スモン病とカネミのライスオイル中毒事件の問題を指摘いたしまして、私はそういう考えを持つわけですが、いかがでしょう。
  94. 内田常雄

    ○内田国務大臣 食品中毒の場合には、いまのカネミ・オイルの例をとりましても、これは責任の所在といいますか、加害者が明らかでございます。昨年制定をいたしました公害による健康被害の救済に関する法律は、その責任の所在の明らかでない間のつなぎの処置でございますが、いまお話がございましたカネミにつきましては、カネミ倉庫株式会社が一部の医療費あるいは通院交通費、あるいは多少の開業費といいますか、生活費的なものも見ておる。私どものほうからもカネミに厳重に申し入れまして見させておりますが、しかし、これにつきましては、まことにお気の毒な状況にありますので、法律の制定を待たずして、地方公共団体もいろいろめんどうを見ておりますので、厚生省といたしましても、生活費の貸し出し制度等を何とか活用をして、めんどうを見させるようにいたしたいと私は思いまして、いまその立案を命じております。  スモン病につきましては、御承知のとおり、これも原因不明の病気でございまして、診断、治療の方法が確立いたしておりませんので、引き続き国からの予算をもちましてこれを究明する一方、臨床実験等に関連する患者の薬代等につきましては、その間におきましてでき得る限りのめんどうを見得るところは見てまいりたい、かような気持ちでおるものでございます。
  95. 大原亨

    大原委員 カネミの中毒事件もそうですし、スモン病もそうですが、たとえばカネミの場合でしたら、色がどす黒くなる、あるいはここにできもののような状況ができる、あるいは肝臓がおかされる、死ぬ。そういうことで、たとえば若い娘さんなんかも、そのカネミのライスオイルを食べたばかりに、婚約が破談になるとか、そういう事件がたくさんあるわけですね。人道上放置できない事件がたくさんあるわけですね。しかも一たんカネミの会社については営業の停止をして反省を求めておるのですが、実際には医療費の一部しか補償しないで、生活費の補償等については見ていない。損害がはっきりしておる。訴訟を起こすということになれば、これは少し変わるだろうけれども、起こしたほうにいままでは挙証責任があるということ等で、全く踏んだりけったりの状況ですね。私は、そういうカネミ・ライスオイルの会社などは、社会的に存在が問われてしかるべきだと思う。営業停止についての措置があるわけですから、その補償措置その他をしっかりやらぬ限りは営業させない、再開をもう一回ストップして対策を練りなさい、こういう措置ぐらいはとることができるのではないか、こういうことが一つ。  それから生活費の問題については、貸し出し制度を新たに考えるというお答えでありますが、この生活費の問題は、返さなければならぬし、あるいは、その問題については会社側が担保してくれるならいいですが、やはりそういうことの治療研究については、病気の原因がスモン病と同じようにわからないのですから、治療費の中に生活費を盛って、そしてあの病気の原因究明をするぐらいの気持ちでやらなければいけないのではないか、こう私は思いますが、いかがですか。
  96. 内田常雄

    ○内田国務大臣 カネミのぬか油の製造工程につきまして、すっかり変えさせてございます。前には塩化ジフェニールとかいう危険な物質を熱の交換材料に使っておったようでございますが、それはすっかりやめさせまして、新しい施設、構造のもとに仕事をさせているという状況でございます。また、いままで許可制度の対象になっておらなかったのを、許可制度の対象にもいたす等いたしまして、今後間違いなきを期しておるものでございます。  それから、患者に対する生活救済の問題につきましては、私もまことにお気の毒だと思いますので、さきも申しましたように、世帯更生資金、これは貸し付け金ということでありますが、これがはたして有効に利用できるような道はないかということで、何とかひとつその道で結論をつけたいと思います。カネミ油症につきましても、政府が研究費を引き続き盛りまして、その療法等につきまして検討をいたすことはもちろんでありますが、その医療費の中に生活保障分を入れるということは、これはむずかしい課題でございますので、検討はさせていただきますけれども、研究は研究、また生活保障のことにつきましては、いま言うような方法で、でき得る限りの心配はいたす、こういうことにいたしておる次第でございます。
  97. 大原亨

    大原委員 最後に、法務大臣、このカネミのライスオイルの加害者ははっきりしておる。カネミ・ライスオイルの会社当局でありますが、これは刑事事件で北九州市が告発をして、検察庁が取り上げておるわけです。しかし問題は、会社側に対する民事訴訟が損害賠償の請求であります。そのときに一番困る問題は、サリドマイドでもそうですが、そういう裁判でも困るのですが、つまり挙証責任についてです。これはカネミの場合ははっきり関連がある。そういう場合には、当然に民事訴訟の場合においては、いわゆる被告のほう、メーカー側のほうが立証責任を持つ、こういうように、法律改正をしないでも、現行法で解釈できる、そういう観点を明らかにするならば、私は、これは一つの前進であると思うわけです。経営者も社会的な責任を感ずるだろうと思うわけです。そういう点について、法律解釈上の見解はどうですか。これを最後にひとつ。
  98. 小林武治

    ○小林国務大臣 カネミの米油の問題は、加害者に過失がありとして三月二十四日に起訴した、こういうことは御承知のとおりでございまして、この問題は、これから刑事事件として争われるのでありますが、われわれとしては過失ありとして起訴した、こういうことでございます。  その他の一般の問題につきましては、お話のようなことがございますが、これは一般に、もう御承知のように、民事賠償におきましては、原則として、訴訟の原告に挙証責任あり、こういうことになっておりますが、いまのような公害等の問題については、非常にいろいろな問題がありますから、お話のようなことも十分これから検討しなければならぬ、かように考えております。(大原委員「検討だけですか」と呼ぶ)ただいまのところは検討をしていきたい、こういうふうに思っております。
  99. 大原亨

    大原委員 いまのように社会的な常識になっておる、関連が科学的にぴしゃっと立証はできないけれども、そういうことは常識的に立証されている。そういう場合には、挙証責任は被告側にあるのだ、そういう解釈をぴしっととるべきではないか。——最高裁は見えておりますか。(「無過失であるということについての挙証責任だ」と呼ぶ者あり)そうそう、無過失であるということについての挙証責任。——呼んでないのですか。この点は問題として最近も法務委員会等で議論されておりますが、この問題は非常に重要な公害の問題であるということを指摘をいたしておきたいと思うのであります。これは検討するという話です。  以上、まだたくさんあるわけですが、質問を終わるわけでありますが、いままで物価の問題を中心佐藤総理に対しまして、関係閣僚に対しまして、新経済社会発展計画の質問をいたしてまいりました。しかし、私は遺憾ながら的確なお答えをいただけなかったと思うのであります。それらの議論をいたしました問題を含めて、私は今後、新経済社会発展計画は人間性豊かな経済社会ということをうたっておるわけですが、いつもうたい文句だけに終わっているのがいままでの実情でありましたが・このことを身をもって佐藤総理がイニシアチブをとって、議論された問題を実践されるように強く要望を付しまして、私の質問を終わりたいと思います。  以上であります。
  100. 中野四郎

    中野委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  午後の会議は一時より再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。    午後零時十四分休憩      ————◇—————    午後一時六分開議
  101. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、ソ連日本周辺における爆撃演習について外務大臣より発言を求められておりまするので、これを許します。愛知外務大臣
  102. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御報告申し上げます。  ただいま受信いたしました水路通報によりますと、問題にいたしておりまする水域における演習について、土佐沖水域においては演習を全面中止する、それから能登沖につきましては、四月四日から二十七日まで実施するといっておったのを、四月四日から八日まで、期間を大幅に短縮するということ、それからカムチャツカ沖の区域は沖へ移す、それから期間も、前の計画が四月一日から二十七日までの予定であったものを、四月九日から十八日までに短縮する、それから第四に、千島東方水域も、場所は同じであるが、四月九日から二十七日までの予定をしておったのを、四月十九日から二十五日までに期間を短縮する、これがただいま受信いたしました水路通報の状況でございます。  なお、公式の外交ルートを通しての正式の連絡はまだ受けておりません。     —————————————
  103. 中野四郎

    中野委員長 質疑を続行いたします。山田太郎君。
  104. 山田太郎

    山田(太)委員 公明党を代表いたしまして、暫定予算並びに関連事項について質疑をいたします。  その前に、ただいま外務大臣から発表がありましたソ連の爆撃の問題について、土佐沖の中止、あるいはカムチャツカ、能登半島沖の期間の短縮、あるいは千島沖の時期の変更等、われわれ国民にとって寝耳に水のような非常にショックを受けたこの問題が、そのような情報が入ったということは、非常にうれしい問題だと思います。まだ公式の回答はないそうではございますが、しかし、このような事件は今後起きないという保証はないわけでございます。したがって、この爆撃問題についてももう一歩考えてみる必要もあるのじゃないか、そういう情報が入ったからもうこれでいいと済ますべき問題だけではないような気もいたします。  そこで、まずお尋ね申し上げたいことは、このことが現在日本ソ連の友好ムードをそこなうことがないように、今後とも措置していかなければならないことは当然ではございますが、このことに関連いたしまして数点お伺いしたいことは、まず、外務大臣からのお話も参議院の予算委員会等を通じて承ってはおりますが、将来のこともありますので、重ねてまた一点追加してお伺いしたいと思います。  それはどういうことかと申しますと、一九六二年の公海条約公海の自由の原則と同時に、公海の利用は沿岸国権利に対して合理的な考慮が必要とされておりますが、もしもソ連からの正式の回答がないような場合——当然来るものと思います。しかし、将来のことをおもんぱかってあえてお伺いしているわけですが、もしこのたびのようなときに、回答の有無にかかわらず同じような危険区域において爆撃訓練をした、そういうふうなときがあったならば、どのような措置をする御予定であったか。  また、あわせてお伺いしたいことは、公海条約の締約国は、このような場合どのような措置をするのか、ただ傍観するだけであるのか、その点についてお伺いしてみたいと思います。
  105. 愛知揆一

    愛知国務大臣 午前中の当委員会でも申し上げたわけでございますが、ただいまお示しのあった公海条約におきましては、公海の自由ということを原則的に関係締約国は認め合っているわけでございます。しかし同時に、沿岸国であると非沿岸国であるとを問わず、船舶の航行、航空の問題あるいは漁業の問題等については合理的な考慮を払わなければならないということもまた規定されているわけでございまして、今回ソ連措置に対して政府申し入れをいたしました根拠の一つもそこにあるわけでございます。先ほど申しましたように、まだソ連の公式の回答見解が示されておりませんけれども、今後におきまして、こういうふうな日本の中枢部の両水域において予告期間もきわめて短くこういうことが行なわれるということは、今後も私は日ソ国交上もはなはだおもしろくない、これはこの条約の合理的な考慮ということを根拠にしつつ、なおそれ以上の政治的な観点から大局的に判断をすべき問題であると思いますから、今後かかることの起こらないように、十分の話し合いを、これを機会にしていたしたいと思っております。今回の措置については、公式の先方の見解が出ましてから、またさらに要求すべきものは要求したいと思っておりますけれども、同時に今後長い期間においてかようなことが軽々に行なわれることのないように十分の意思の疎通をはかり、またかようなことが起こらないようにするように持っていきたいと考えております。  それからもう一つの点は、かりに不幸にしてこういうことが起こったような場合にどういう措置があるのかというお尋ねでありますが、これは、たとえば万々一の場合ですけれども損害賠償要求というようなことは、ただいま触れました点をも含めて国際法上当然の権利であると私は考えるわけでございます。したがいまして、そういう点につきましても現に持っている見解というものが今後とも明らかに主張され得るように十分の話し合いといいますか、了解をつけておく必要があるのではないかと思います。
  106. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで重ねてお伺いいたしますが、土佐沖は中止、他の場所においては期間の短縮等、あるいは距離を奥のほうへ少し遠ざけるとか、そういうものはあったとしても、やはり被害を受ける可能性、こういうものはあるのではないかと存じます。また同時に、このたびのような全国民に与えた感情——やはり近海で行なわれるのかという感情は当然残るものと思います。それがなくても、このような正式回答があったら、政府はこれに満足して了承する御意向であるかどうか、その点についてもう一度ただしておきたいと思います。
  107. 愛知揆一

    愛知国務大臣 正式の外交ルートを通してのソ連政府見解というものがまだ明らかになっておりませんが、いま受信いたしましたそういうものを中心にしてのあるいは回答ではないかと予測もされるわけでございます。十分ソ連側の見解を検討いたしまして、自余の措置をとりたいと考えております。
  108. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの御答弁の中には出てこなかったのですが、全面的に中止させるということばが語弊があるならば中止してもらう、そのような措置を講じていく御決意がないかどうか、総理大臣にもひとつ御答弁を願いたいと思います。
  109. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま伝えられたところでは、わがほうとして最も重大な関心を持ったところの二つの水域のうちの一つが中止になったという点は、私も喜ぶべきことだと思いますけれども、もう一つの水域については、いま伝えられているところでは、期間の短縮ということであり、またカムチャツカ方面水域については水域を沖に移転するあるいは期間を短縮するということがあげられておりますが、どういう趣旨で、どういう考え方で、また当方の見解をどういうふうに向こうが理解をしてこういう措置になったのか、その点は十分に私も聞いてみないうちは見解も申し上げられないと思いますが、要するに当方から出しました口上書並びにそれに付加した私の日本政府としての立場というものが了解できるならば、今後こうしたような日本中央部の近海においてかような演習というものが行なわれないようにソ連としても理解するはずである、私はかように考え、かつそういう線で今後も対処していきたい、かように存じております。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの外務大臣のお答えで政府の考え方はおわかりだと思いますが、私の最も心配しておりますことは、漁業水域漁業者が損害をこうむったとか、あるいは船舶の航行がどうこうしたという具体的な被害もさることですが、こういう問題が起こると、日ソ両国間の友好親善関係、そのせっかく築きつつあるもの、それがこわれることになる、不信を買う、さらに誤解を招く、かようになったらたいへんだ、かように思いますので、それらの点をよくソ連当局にも話をして、そうしてこの種の行為が行なわれないことが一番何よりもけっこうなことですから、そういう方向で話をしたいと思います。損害が起こったら救済措置をとるのは、これは当然のことですが、その前にやはり基礎的な問題として、両国親善友好関係、それに誤解や不安を生じないようにすること、その努力を両国で払うこと、このことを強く要望したいと思っています。
  111. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの御答弁でもう一言私もつけ加えたいことは、国民感情といたしまして、全面的に中止してもらいたい、これが一番だと思います。その点を強く御要望申し上げて、本題の暫定予算の質問に移りたいと思います。  そこで、時間の制約を受けますので、私の御質問申し上げたいことは、基地の問題あるいは沖繩の問題、農業問題等々も含めて非常に多岐にわたっております。したがって、御通告申し上げた順序を時間の関係で変更するかもしれません。その点をまず御了承願いたいと思います。  まず基地の問題についてお伺いいたしますが、現在日本にある米軍基地は百二十四カ所だと承知しておりますが、昭和四十三年の十二月二十三日に五十数カ所の整理及び縮小の計画が発表されました。   〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 また、それ以外にも返還されているようでございますが、今後の見通しについて、また現状とあわせて簡単に説明していただきたいと思います。
  112. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本土の基地について概略申しますと、一昨年暮れの日米協議会におきまして、百二十余りの基地の中で約五十カ所、これらについてはあるいは返還とかあるいは共同使用とかあるいは一部使用の解除とかいうことで、その整理縮小が日米間に合意せられたわけでございます。そして、私の承知しておりますところでは、その約五十のうちの半分余りはすでに措置が終了しつつもるわけでございまして、その他の点につきましても具体的な手続が進んでおるわけでありますが、これは国内的に防衛施設庁を中心にして仕事が進行中でありますことは御承知のとおりでございます。  これらの縮小整理と相関連して、このすでに合意されたものの措置がつくに従って、さらに残りました点についても、日米双方で、不要不急あるいは事態の推移に伴ってかような態様にしたらどうかというような話し合いは、今後とも引き続き続けていきたい。これは安保協議会を中心にしてこういう議題を話し合うということになっておるのでございますから、この機構を活用いたしまして進めてまいりたいと、かように考えている次第でございます。
  113. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、この基地の問題について問題点は、返還されたこの米軍の基地がほとんど自衛隊の共同使用になっておるということです。調べたところによりますと、民間で使用された範囲というのは五%ないように承っております。この共同使用、こういう問題は日本政府の判断で行なわれたのかどうかということ。問題は、何を聞かんとするかといいますと、やはり国民の一番熱望しているところは、この返還されたところを公共施設等々にしてもらいたいというところが一番の地元住民の熱望するところでございます。私も現地の方々とも話し合ったこともあるのですが、地元の住民はただ単に米軍の基地に反対だというだけではないわけです。自衛隊の基地には賛成なんだというわけじゃないのです。軍事基地そのものに反対する意向が強いということもあるということを御承知しておいていただきたい。その点を根本にして、基地返還に際して、米軍側は自衛隊の継続使用を条件としているのかどうか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  114. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 基地の返還の態様を調べてみますと、講和発効以降四十四年十二月までに返還されました施設は二千六百九十八でございます。十一億三千七百万平方メートル、そのうち民間使用は六〇%、六億五千八百万平方メートル、自衛隊使用は四〇%、四億七千三百万平方メートルでございまして、過去の例はほとんど六割は民間に返しております。ただ、昨年一年分について見ますと、二十六カ所の施設、約六千三十五万八千平方メートルが返還されておりますが、去年返されたものの大部分は地位協定二条四項(b)によりまして米軍に一時使用を許しておる施設であるのです。それを除きますと七六%が民間に返還され、自衛隊に使用されたものは二四%になります。しかし二−四−(b)によっていままで共用していた部分を入れますと九五%が自衛隊に返還された、こういう数字になります。  そして、われわれといたしましては、防衛の目的に使われておったものは必要最小限、自衛隊に必要である場合にはやはり使わしていただいて、そしてそれ以外の不要なものは民間でお使い願いたい。必要最小限はやはり自衛隊でその機能を持続させておくというほうが国民経済的にもよいのではないか。ほかに場所をさがすと申しましてもなかなかないというのが現状でございますから、最小限のものは自衛隊に使わしていただくようにお願いいたしたいと思っております。
  115. 山田太郎

    山田(太)委員 二−四−(b)によって共同使用しておったところを含めると私の申し上げたパーセントが合っているようでございます。やはり国民感情からいたしますと、この点に非常に不満な感情を持っていらっしゃる人が多くございます。そこで、先ほど防衛庁長官がおっしゃった必要最小限度、この必要最小限度ということはどの程度をさして必要最小限度というのか、これはひとつ明確にしておいていただきたいと思います。ただ単なることばだけでは、これは納得できない面もあるのではないかと思う次第です。
  116. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在進行しております防衛計画並びに再来年から開始いたします新防衛計画等々をにらみ合わせまして、基地をケース・バイ・ケースで点検いたしまして、必要以外のものは民間で御使用願うというふうにしていきたいと思うのです。これはケース・バイ・ケースで当たってみませんと、どこをどうするかということは、まだ申し上げる段階に至っておりません。
  117. 山田太郎

    山田(太)委員 申し上げる段階に至っていませんというところでするっとお逃げになったようですが、しかし、これは国民にとっては重要関心事ですね。やはりケース・バイ・ケースとは言いながらも、目標というものを置いていただかないと、国民としては自衛隊はとこまで——中にはいまの米軍の軍事基地は全部自衛隊が引き継いでしまって、結局は国民のプラスにあまりならないのではないか——国土防衛自体がプラスでないという意味じゃありません。それは勘違いしないでもらいたいと思いますが、そういう公共施設等々あるいは社会施設等に生かされないということは、これは非常に不満な感情を持っております。したがって、いまは発表する段階ではない、こう仰せですが、やはり基本的態度なりあるいはその方針なり、計画がなければならないと思います。言うならば、防衛庁長官の個人的見解を述べてもらいたいと思います。
  118. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まだ先方がどの基地基地をどういうふうにするというお話もない現状でありまして、われわれのほうとしてはわれわれのほうで、個々にいろいろ点検はしております。したがって、これは先方との協議にかかる要素も非常に多いのでありまして、われわれだけで独断できることはあり得ないことでもあります。またやはり防衛というのは、国の機能の中でも基本的な大事な機能でもありますので、それをないがしろにし過ぎるということも、われわれとしては無責任のそしりを免れません。やはり必要最小限のものは国家のために確保しておくということは国民の皆さんにも奉仕するゆえんでもあると思います。そういう点は返還を御要望なさる地元の皆さまともよくお話しいたしまして、できるだけ調整してまいりたいと思うのでございます。
  119. 山田太郎

    山田(太)委員 私のお伺いしたポイントを少しはずされたように思います。ポイントは、当然返還交渉は相手方もあることでございます。しかし、自衛隊としての、私のお伺いしたいのは、面積等のこういう目標というものがなくては、国民の真の要望にこたえることもできないし、国民の不満を納得させることもできない。したがって、そういう面においての目標というものはどうか、個人的見解をお伺いしたわけです、その点には御答弁がなかったわけです。  したがって、それもあわせて次にお伺いしたいことは、いまの地位協定二条四項の(b)に該当するという、ところが防衛庁長官は、この地位協定を自衛隊管理のもとに共同使用——これは二−四−(a)にも(b)にも厳密な意味においては該当しない。そこで、もし都合によれば改正しなければならないかとも思う、そういうふうなお答えをなさったことがあるやにぼくは覚えておりますが、その点について御見解をお伺いしたいと思います。
  120. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 二条四項の各号をいろいろ弾力的に適用いたしまして、それで援用できる部分はそれで援用していく。現在われわれが想定している情勢では、かなり大幅にわたって弾力的適用ができるという見通しでございまして、速急に改正を要するという段階ではないように思っております。しかし、将来米軍にお貸しするということが常時継続して固定的に行なわれる場合には、やはり改正も必要になりましょう。しかし、それはいますぐどうという段階ではないようにわれわれは考えております。
  121. 山田太郎

    山田(太)委員 この地位協定の改正の問題については非常に大切な問題でございますので、総理大臣の御見解もあわせてお伺いしておきたいと思います。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日米安全保障条約に対するそれぞれの政党の態度は、御承知のように、違っております。おたくの政党は安保の漸進的解消ですか、そういう言い方をしておられるし、民社党は有事駐留論を言っておる。私どもはいまの状態ではやはり安保、その精神を守っていくという、貫いていくという、この日米安保を堅持するという、そういう形をとっております。  そこで、ただいまの基地のあり方等につきましても、もちろん不要なものは貸すべきではございませんけれども、安保条約から当然私どもに義務づけられている施設を提供する、そういう義務、これは忠実に実施していかなければならない。そこで、日米間でよく話し合って、そうして必要なる施設、こういうものは地位協定でそれぞれきめていく、こういうことであろうと思います。おたくの場合は、おそらく基地は漸進的に解消していく、段階的に解消していく、こういうことだろうと思います。そこらに相違がございますけれども、私は、安保そのものがどういうように守られていくか、そこらにおのずからの限度があるんじゃないのだろうか、かように思っておりますので、たいへんむずかしい問題で、外国の兵隊が首府のそばにたくさんいるという、そういうような状態は好ましい状態ではないだろうと思います。しかし、日本の国の安全、同時に日本の国が安全であるためにやはり極東の地域が平和であることが望ましいのですし、日本駐留の米軍はそういう役目を果たしておる。いわゆる戦争抑止力を持っておる、かように考えておりますので、そういう意味の基地あるいは施設、そういうものは提供せざるを得ないのじゃないか、またそういうことで、私は、日米間で、自分の国を守るが同時にまたアメリカにも極東の安全に寄与していただきたい、かように考えております。
  123. 山田太郎

    山田(太)委員 改正という問題についてはお話はいただけなかったようでございますけれども、この点はいいでしょう。  そこで、防衛庁長官にもう一点まずお伺いしたいことは、自衛隊が管理する、そうして米軍と共同使用する、これは将来は、いまも総理のお話がありましたが、他の国の軍隊がわが国におるということは好ましいことではない、ただ国土防衛上やむを得ないという面もあるというふうなお話もありましたが、この好ましくないという点は、これは当然のことで全国民の気持ちだと思います。  そこで、この共同管理が、将来地位協定——もちろん根本は安保の解消の問題にもなりますが、将来は全部安保解消の方向に向かっていく、そのための自衛隊の管理になって共同使用になっていくのか、あるいはそれがただ単にナショナリズムの安直な考えから、日本がそれだけの経費を負担する、あるいは負担を加重する、それだけに終わってしまうのじゃないか、こういう面の心配があるわけです。これはどちらになっているわけですか。どちらの方向を目ざしておるのですか、その点についてお伺いしておきます。
  124. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 民族非武装、人類武装というのは人類の悲願であるかもしれません。しかし、現在の国際情勢から見れば、国々が自分で自分の国を守らなければならないという情勢にあることは現実でありまして、民族非武装、人類武装というような悲願に達するにはまだまだ時日をかさなければならぬのが現状であり、まことに遺憾であります。しかし、現在の状態から見れば、やはり日本は自分で自分の国を守って、足らざるところは盟邦と提携し合う、そういう形でいくのが妥当であると思います。したがって、基地の取り扱いにいたしましても、安保条約によりまして極東の平和条項というのがございまして、そのために必要な基地もございましょう。あるいは日本防衛の観点から立ってみて、米軍がもう日本に返還していいというものもございましょう。あるいは日本アメリカが共用して、しばらく使っているというのが賢明であるという場所もございましょう。そういういろいろな態様に応じてアメリカ側と協議して、基地基地によってケース・バイ・ケースできめていきたいと思うのです。しかし、私は本会議でも答弁いたしましたように、日本アメリカとが友好親善関係を持続していくということは、アジアの平和と世界の繁栄のために非常に重大な条件なのであって、太平洋をあらしの海にしないという、そういう基本的なわれわれの目標からいたしましても、日米間の安全保障体系というものは半永久的に必要であると私は考えておる。しかし、安全保障条約となりますと、それは内容は時代によって変わっていくでしょうし、解釈も弾力的になっていいと思う。これは昭和二十七年以来今日までの安全保障条約の変化を考えればわかることでございます。しかし、日本アメリカが安全保障体系を維持していくということは、世界の平和のためにもアジアの平和のためにも、また日本アメリカの安全保障のためにも非常に重要である、そういう認識に立って、そうして基地の問題は調整していくという考え方でございます。
  125. 山田太郎

    山田(太)委員 どうも的確な御答弁ができないようでございますので、具体的な問題をひとつお伺いしていきたいと思います。時間の都合がありますので、答弁をもう少し率直、簡明にお願いしたいと思います。  そこで、問題は別でありますが、運輸省だったと思いますが、立川飛行場を民間飛行場として使用したいと防衛施設庁に申し入れられたように伺っております。防衛庁長官かあるいは防衛施設庁の方からその具体的内容とお考えを示していただきたいと思います。
  126. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 立川飛行場につきましては、運輸省としては、滑走路の東側区域を民航区域として防衛庁と共同使用したい、ヘリコプターや小型機の基地としても使用したい、こういう御要望がございます。それで、それは米軍当局ともよく話してみなければ結論は出ませんが、運輸省のそういうお申し出に対しましては協力したい、そのように考えております。
  127. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、基地の問題について種々お伺いいたしましたが、やはりこの際、公明党の基地問題についての考えも、基地問題についての質問を終わるにあたって表明しておきたいと思います。  やはりわが党は、この国際緊張緩和の上からも米軍基地がないほうがいい。先ほど総理がおっしゃったとおりです。また、友好、文化、経済交流等の外交政策のもとに国連中心の完全中立国家の建設と真の戦争なき平和な独立国家を目ざしていることを、基地問題についての質問を終えるにあたって最後に表明さしていただきまして、次の質問に移っていきたいと思います。  そこで、次にお伺いしたいことは、沖繩の返還の問題でございます。時間が刻々とたってまいりますので、できれば率直、しかもわかりやすく簡明にお願いしたいと思います。実は、御承知と思いますが、二十六日の朝日新聞によりますと、沖繩復帰大綱というのが政府原案として発表されております。この問題は沖繩の住民にとって、沖繩県の県民にとって非常に関心の深い問題でございます。ことに総理府総務長官は、非常に活発な御活躍と、そうしてエネルギッシュな対策等々で県民からも非常に期待を受けておられるように聞いております。これは非常にうれしいことでございます。ただ、考えてみますのに、もう当然御承知のことですが、復帰不安とか復帰ショックとかいうことばを使っておりますが、本土政府は、ただ現状の格差のみを問題にして、それに至る段階というものを具体的に指示してくれない、今度の復帰大綱の原案の新聞発表についての現地の感覚も、やはり教育問題あるいは社会福祉問題等について以外は具体的な方策がもっとほしい。これは当然な要望だと思います。そこで、この復帰ショック並びに復帰不安をなくするためにも、段階的に具体的措置をやる必要があるのは当然でございます。  そこで、総理並びに総理府総務長官にお伺いしたいのですが、この復帰大綱のみによってはまだまだ復帰ショック、復帰不安は解消されない、もう少し具体的なものを盛っていく必要があるのは当然です。そこで、それについての構想あるいは態度なり、それを示してもらいたいと思いますが、この点はどうでございましょうか。
  128. 山中貞則

    ○山中国務大臣 一部新聞に基本復帰大綱というようなものが掲載されたことは事実であります。しかしながら、あれは私が主管大臣といたしまして、基本的大綱を、大体柱を立てまして、関係各省、ほとんど全部に及びますけれども、それらの諸君を集めました幹事会に、俗にいうたたき台的に出したものそのものでありまして、その後各省の意見、建設的もしくは妨害的あるいは積極、慎重、いろいろの表現がありますが、いろいろの意見を取捨選択をいたしまして、相当変わったものに内容がなってまいりますが、概観いたしますと、やはり復帰に伴って今後日本政府がどのような基本的な方針をもって臨もうとするかということを掲揚するにとどめるわけでございまして、これから、おっしゃったように、具体的な問題について、しからば復帰基本方針ともいうべきその大綱の中でこの考え方はどういうふうに具体的に発展していくのかという個々の問題につきましては、逐次これから明らかにしてまいるところでございまして、復帰の基本方針というようなものは、全く大綱的なものを羅列したにすぎない。この点は性格上そのようになると思いますが、それが沖繩県民の復帰の喜びと、それを上回る不安、動揺、混迷というものに鎮静役を果たすにはまだまだ足りないものと私も思っております。したがって、すみやかに青写真を示すための努力を目下懸命に検討中であるということだけ一応お答え申し上げます。
  129. 山田太郎

    山田(太)委員 一部新聞に報道されたその復帰大綱原案なるものも変更される、そういう要素を多分に含んでいるということも了承しつつ、より一そう早い時期においていまの具体的な指針なりそういうものをどんどん出していっていただきたいと思います。そして沖繩県民の期待にどうかこたえていっていただきたいことを要望しておきます。  そこで、ひとつ具体的な例をあげながら、との沖繩復帰についての国民にとって不安な問題点、そういうものも取り上げながら話を進めてまいりたいと思います。  そこで、まず総体論のことでございますが、一般の国際法によりますと、占領が終了する場合には原状回復が行なわれることになっている。この点は沖繩はわが本土と違いまして、当然占領あるいは施政権移行と、こう変わってきておるわけですが、こういう場合、アメリカが行なった施設に対して占領前の原状回復、先ほど申し上げた国際法の原状回復ということを日米交渉の原点にしていくべきじゃないか、こう思うわけですが、これについての御見解をお願いします。
  130. 山中貞則

    ○山中国務大臣 原状回復と申しますと、戦争前もしくは戦争中に、日本の戦争遂行の要請によって軍が取得しておりました旧飛行場みたいなようなものもありまして、宮古島あたりには、現在は全くそういう飛行の用に供せられていないで、一生面積ははっきりしておりますけれども、それは住民の希望によって農耕の用に供せられておるというようなもの等もありますし、あながちもとに復するということだけでどうかと思いますが、気持ちといたしましては、あの狭隘なる島の中で膨大な半強制的な収用等の行なわれたことが前提になった軍用地でありますから、今後の米軍の要請並びに日本が自主的に見ました、これは総理、外務、防衛等の責任者の方々が判断されるような必要な範囲、こういうものをよく外交ルートを通じて折衝をいたしまして、沖繩の住民の人々が復帰したときに、自分たちのかつて持っておりましたあるいはまた現在は貸しておって形態を異にしてる、そういうような問題等に対する御要望をなるべくくみとることを、気持ちの上では原点としてその作業を進めてまいる所存でございます。
  131. 山田太郎

    山田(太)委員 私のこれから申し上げたいのは、また先ほどこれを原点としていったらどうかという問題も、いまの繊維問題等々を見ましても、どちらかといいますと、ガットの精神を忘れたような申し出じゃないかということさえ感じられるわけです。したがって、ドル防衛の見地からも原状回復——この原状回復ということは、原状回復にしなければ残留物資は対価を支払うべきではないというこの国際法の骨子に基づいて、そういうものを原点としていかないと、わが国に対して非常に不利な事態が次々と出てきはしないかということをおもんばかるわけです。その点をまず、もし私のことばが舌足らずで誤解があったやもしれませんので、もう一度御回答していただきたいと思います。
  132. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ちょっと具体的にわからない点も私ありますが、アメリカ側のほうで当然こういうものは買い取ってほしいという意向も表明されるでしょう。日本政府としては、この種のものは買い取り対象とすべきでないというような基本的な意見の調整から始まりまして、それを日本政府アメリカ側と合意の後に、一応国有財産なり、日本政府の資産買い取りなり、あるいは譲渡なり、そういう形で所有しました後において、今度は県民の既得権者との間において、それをどうするかについての大局的な考え方をきめる必要が第二段階として生ずるであろう、ということを先ほど申し上げたつもりでございます。
  133. 山田太郎

    山田(太)委員 では、米側の、このようなものは買い取ってほしい、そういうふうなものに対してのまだ具体的な一こういうことに類する、あるいはこういう場所に類するものは買い取ってほしい、そういう米側の申し出があるということは予想されますかどうか。もう一点お伺いしておきたいと思います。
  134. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩の返還にあたりましては、沖繩にある米軍、米国政府所有の財産をどうするかという非常に広範な問題が起こると思うのです。しかし、まだその交渉は始まっておらない。まあこの春ごろから、あるいは夏ごろになりますか、から、ぽつぽつ交渉を始めようか、こういうことであります。いま日本側で態度をどうするかということにつきましては、まだどういう財産が一体あるのか、これが全然明らかにされておらないわけでありまして、したがいまして、いままだその調査をしてみるというのが第一段階、その調査が終わりましてから、それを日米間でどう処理するかというのが第二段階、こういう順序を踏むことかと思います。
  135. 山田太郎

    山田(太)委員 そのような御答弁になりはしないかとは予想はしておりましたが、しかし、沖繩県民にとっても、日本国民にとっても、非常に重大な関心事でございますから、これは早く調査なりあるいは交渉なりを進めていただいて、そして繊維問題に見られるようなそういう——筋は違いますよ、ものは違いますよ、また事柄は違いますけれども、それと同じような国民に与える心理というものをよく踏んまえた上で早く当たっていただきたいと思います。  そこで、質問を通告しておきましたが、ガリオア資金の問題です。これは少し具体的な問題になります。そしてこの具体的な問題を踏んまえて、やはりこうあるべきじゃないかということも考えてもらいたい一つのよすがにもしていきたいと思うわけです。  そこで、日本本土のガリオア資金の問題は、これは四億九千万ドルでしたか、返還するような話になってしまっておりますが、沖繩は、先ほど申し上げたとおり、事情が違うわけです。したがって、少し具体的な問題を申し上げますが、このガリオア資金で設立された沖繩にある琉球電力公社、あるいは琉球水道公社、あるいは琉球開発金融公社等の施設については、対価を支払う必要は全くないのじゃないかと考えるわけですが、率直に御答弁願える筋のものじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  136. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまお話しの三公社の資本金ですね、これはおのおの千万ドル以上になるのかと思います。しかし、それがガリオア資金が幾らであるのか、またその他アメリカ政府あたりが出した資金でもあるのか、その辺がまだはっきりしないのです。そういう事実をまずはっきりさせなければならぬ。それからアメリカのこれをどういうふうに処するかという要求を聞きたいと思っています。わがほうとしては、国益に合致するようにというたてまえで交渉に当たりたい、かような考えでございます。
  137. 山田太郎

    山田(太)委員 その明細ははっきりしないということは当然予想もできますが、だからこのガリオア資金によって設立されたものは、金額を言うてるわけじゃありませんし、その内容の明細を言うてるわけじゃありません。これは当然対価を支払うべき筋合いのものではない、こうたしか外務大臣のせんだっての答弁にもありましたように思いますが、この点大蔵大臣と違うという意味じゃありませんが、その点について大蔵大臣の明快な御答弁がなかったように思います。ガリオア資金によって設立されたものは対価を支払うべきじゃない。この点やはり大切な問題の一つでございますので、お答え願いたいと思います。
  138. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま大蔵大臣から御答弁いたしましたとおりで、これはこれからの問題。ただ私の外務委員会かあるいは沖繩特別委員会でお話し申し上げましたのは、このガリオア資金について、年月日はちょっといま私失念いたしましたけれども、指令というものが当時ございまして、なるべく沖繩の人の責任に付するべきことのないように処理をしたいという趣旨の米軍内部の指令があったことは事実でございます。そのことを私そのときの答弁で触れたことはございます。
  139. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの外務大臣の御答弁だと、沖繩県民に負担をかけない、こういうおことばに聞こえました。そうすると、これは沖繩が返還されるときには、このガリオア資金によって設立されたものも——内容はともかくも、内訳は、ガリオア資金が何%、他の資金が何%、そういうふうな意味で申し上げるわけでありますが、このかりオア資金によって設立されたものは、これに対しては対価を日本側は支払うこともあるということをおっしゃりたいことになるのですか、どうですか。
  140. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私が申しましたのは、その当時の米国内部の、何と申しますか、書簡の中に、ガリオア資金というようなものはなるべく沖繩県民の負担にしないように処理をせらるべきようにしたいという趣旨のことが出ている、こういうことを申し上げたのであります。しかし、いま大蔵大臣からもお話ししておりますように、一体いまおあげになりましたような各公社あるいはその他の機構に、どれだけどういう形でこれが投下されているかということも、実態を見てみなければわかりませんし、それから、返還に際しまして、米側としてこういう問題についての考え方というものがどういうふうに展開されるであろうかというところも、まだこちらも十分な話し合いをしておりませんから、その点については先ほど来大蔵大臣が言うておられるとおりでございます。私どもの間に意見の食い違いというものが生ずるまでのところもなく、現在、これは今後の研究問題であり、今後の折衝問題である、かように考えております。   〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 山田太郎

    山田(太)委員 私の申し上げるのは、まずこの具体的な問題についてはこう、こう、こうと、こういうふうな御答弁はできないかもしれませんが、法的な根拠からいいまして、日本の場合と沖繩の場合と違うということ。沖繩は占領、そして米の施政権下、日本は間接占領であったという点、したがって、その当時もうすでに沖繩は日本のやはり施政権下からこれは分離しております。したがって、そのときのガリオア資金というものは、これは占領者にとって、あるいは米施政権者にとって、国際法規からいいましても、あるいは戦争法規の上からいいましても、これは当然、占領者のあるいは政権者の、いまでいえば沖繩県民、そのときでいえば沖繩島民の生活を確保するという立場からいっても、施政権者あるいは占領者の当然支払うべきものである。したがって、これが返還されるときには、あるいは施政権者が帰るときには、あるいは占領軍が帰るときには、これは当然対価を要求すべきではないという、こういう国際法趣旨になっておるわけです。  したがって、ただ単に、これから話し合う問題でございますと、こういうふうにおっしゃられる問題ではないわけですね、これは。法規の上からいっても、そういう国際法だ。したがって、われわれ国民としても、また当然日本政府としましても、そこの原点というものをしっかり踏んまえた上で交渉に当たっていただかないと——何も私は政府を追及するなんという気持ちはみじんもないわけです。当然そういうお気持ちにはとっていらっしゃらないと思いますけれども日本の国益のために、繊維問題等々見ても非常に心配な状況になるのじゃないかということをおもんばかる上において、こういう法的な立場というものを原点において進めていってもらいたい、これはひとつお願いもし御要望もしておるわけですが、ひとつ大蔵大臣の御見解をお願いします。
  142. 福田赳夫

    福田国務大臣 山田さんからたいへん貴重な御激励をいただきまして、ありがとうございます。ただ、外務大臣からも申し上げておるとおり、まだ実態が、議論の対象が一体どういうものなのだ、それがまだきまっておりません。したがって、お答えは抽象的にならざるを得ないわけでありますが、御意見はよくわかりました。国益に合するような交渉をやってみたい、かように考えます。
  143. 山田太郎

    山田(太)委員 いま現在、そのような明確な法的な態度にしても表明するのは、外交の上において時宜を得ないかもしれません。したがって、この点は強力な要望にとどめておきたいと思います。聞くところによれば、この三公社から高等弁務官の政治的なポケットマネーも出ている、そういうふうな話も聞いております。これからの調査のことでしょうが、その点は十分国民も納得のできますように、ひとつ強力にやっていただきたいと思います。  そこで、これも御答弁ができない問題かもしれませんが、現地の住民が非常に心配している問題です。できるならばこの際明らかに、できるだけの範囲でけっこうですが、現地住民のために御答弁願いたいと思います。それはどういうことかといいますと、それじゃまず一つ具体的なことを聞きましょう。  現在、沖繩にある米国のドルというものは幾らぐらいあるかという点、やはり正確なものはつかめないとしても、これは当然大蔵省としてある程度の把握がないとおかしいと思うのですが、どうでしょう。
  144. 福田赳夫

    福田国務大臣 これもなかなかお答えがむずかしいのでございますが、つまり、あそこで為替管理をやってない。また発券銀行が沖繩にあって、そして沖繩だけに通用するドルを発行しているという状態でもない。そういう状態で、ほんとうに推測するほかない。初めの去年のいまごろの段階では三、四千万ドルかというような推測を実はしておったのです。ところがだんだん、だんだん時日が経過し、なお沖繩の経済も活発化してくるという今日の時点になりますと、大体、銀行とか、そういうところの推測を集計いたしますと、返還時には七千万ドルから一億ドル、これがドルの流通量であろう、こういうことになっております。
  145. 山田太郎

    山田(太)委員 いま大蔵大臣の御答弁になった七千万ドルないし一億ドルのこのドルを、これは当然沖繩県民は日本国籍を取得するわけですから、これは沖繩県民の所有権になるものです、当然日本の、わが国の大蔵省の外国為替特別会計に編入されるべきものだ、こう解釈しておるわけですが、もし外交上御答弁できないとおっしゃるならば別として、もしできるならば御答弁願いたいと思います。
  146. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだアメリカ側と話し合っておりません。しかし、もう常識ですよ、常識的には、日本銀行が日本銀行券を渡す、そして引きかえにドルを入手する、こういうことになろうかと思います。
  147. 山田太郎

    山田(太)委員 あわせてもう一点、その点について県民の心配していらっしゃる問題ですが、これは当然公定レートによって引きかえられるべきものだ、そう解釈しておりますが、それはどうでしょうか。
  148. 福田赳夫

    福田国務大臣 これも常識的な問題でありますが、そのとおり心得ております。
  149. 山田太郎

    山田(太)委員 なぜこういうことをお伺いしたかといいますと、現地においてはやはり現在の日本の国力の上からいって、円が非常に強くなっています。御承知でしょうけれども、通称三百五十五円で取引されているということも聞いております。したがって、現地住民の心の中では非常に大きな問題になってきておるわけです。やはり不安な原点にもなっておったわけですから、その点をお伺いしたわけです。まずその点御了承していただきたいと思います。  そこで、時間があとわずかしかありませんので、御通告申し上げておりますが、順序を変更さしていただいて、社会病の問題について、これは総理にぜひ御答弁も願いたいし、お願いもしたい問題なんですが、これは予算関係もありますので、大蔵大臣にもあわせて御答弁願いたいと思います。  まず、その前に厚生大臣にお伺いいたしますが、これは通告してありますので、当然御調査できておると思いますが、スモンをはじめべーチェットとか筋ジストロフィーとか、この原因不明のいわゆる社会病といわれるものです。やはり治療費が非常に多額にかかるために生活不安あるいは貧困のもとになっております。また、ことにスモンを取り上げてみますと、非常に長期な療養を要します。五年、六年たってもどうにもならない、まだ寝たきりの人も非常に多うございます。しかも原因不明のために非常に治療費が高くかかる。月に二十万円あるいは三十万円、国民健康保険は三割、健康保険、社会保険の家族だったら五割、二十万円、三十万円の三割なり五割を払うわけですから、非常な重大問題となっております。しかも無責任な伝染病説などが出まして、現在では全く社会から疎外されて、言うならば村八分的なそういう取り扱いを受けておられます。  実は、私の友人にもこのスモン病で長い間悩んで、そのまま動けない友人がおります。相当の財産家だったのでございますが、いまでは生活保護を受ける一歩手前まで落ちております。相当の財産家でさえそうでございます。したがって、一般国民にとっては、原因不明の社会病ともいえるこの病気にかかったならば、社会の疎外を受け、ついには貧困家庭に落ち込んで、非常に悲惨な状況になっております。親戚や縁者も近寄って来ない。医者でさえも来ることを断わるような医者も出てきております。  これについては、厚生大臣はまだ大臣になられて日が浅いから、現地は見ていらっしゃらないとは思いますけれども、どのように把握されておりますか。ことにスモンは約十年前から発生した、世界じゅうどこにもない日本だけの病気でございます。しかも、そのような悲惨な奇病でございます。あえて当委員会に持ち出した根本の原因は、そこにあるわけです。日本で解決しなければ、どうにもならないものです。この点について厚生大臣の把握されている状況、あるいはこれからいかに対処されんとするか、対処されてきた状況と同時に、これからいかに対処されんとするかという点をひとつお示し願いたいと思います。
  150. 内田常雄

    ○内田国務大臣 厚生大臣に就任をいたしまして間がありませんので、詳細のことは身をもって調べてございませんけれども、スモン病としましては、厚生省でも非常に関心を持ちまして、国立予防衛生研究所の甲野博士を中心にその方面の専門家にお集まりをいただきまして、スモン調査研究協議会というものを編成をいたしまして、これの原因あるいは診断法、治療法等の究明に取りかかっております。いろいろの説がございますけれども、まだ確定をいたした診断法、治療法が発見されていないことは、まことに残念なことでございます。ごく最近三月に、このスモン調査研究協議会で調査をいたしましたところ、不確実の方を含めますと四千二百八十名の患者がいらっしゃるということでございます。これに対しましては、ここ何年間か毎年国の予算をもちまして、これの診断、治療、病原体の研究等に予算をさいておりますけれども、四十五年度におきましても、引き続き相当額の予算をもってこれに対処いたす所存でございます。  また、べーチェットとか、カシンベックとか、あるいはまた進行性筋ジストロフィーのようなむずかしい病気につきましても、これらの治療法が必ずしも確立いたしておりませんので、これらに対しましても同様の措置を講じまして、一日も早くこうした悲惨な病気をなくなす努力を続けてまいりたいと思います。  なお、この生活保障等につきましては、直ちにこれを研究費と一緒にしてカバーをするというわけにはまいりませんけれども、臨床研究などと薬代などにおいては重複する面もございますので、そういう点も考えながら、今後におきまして慎重にこれらに対する措置は考えてまいりたいと思います。
  151. 山田太郎

    山田(太)委員 厚生大臣の御答弁は、自分からおっしゃっていますように、当局が教えられたそのままをおっしゃっていらっしゃるような気が非常にいたします。また金額等も、ことしは研究調査費に五千万円、これは非常にうれしいことですが、昨年は三千五百万円です。しかし、これは調査研究費でございまして、患者の方々は毎年千四百人から千五百人ずつふえていっています。これは厚生省の統計でございます。四十二年と四十三年の調査です。これは数年前から比べれば、急激なふえを示しています。なお、これが来年になったら二千人になっていくか、あるいは三千人になっていくか、非常に予測を許さない不安な現状になっております。やはり専門家の教授の方々が言われるのにも、現在一万五千人から二万人になっているのではなかろうか。先ほど申し上げましたように、社会から疎外されるものですから、医者に行かない人がたくさんおります。またこの表を見ますと——厚生大臣、見てください。この表によりますと、現在五千五十七名、これは四十二年、四十三年だけで四千二百八十名になっております。ところが、私の県の岡山県におきましては、これが半数です。もちろん四十二年、四十三年の二年間の統計ですから当然かもしれませんが、これは半数です。だから現実を踏まえてみると、これの倍は事実当然おいでのわけです。また、社会から疎外されることをおもんぱかって——あるいは婚約が解消されたり、あるいは職業を失ったり、あるいは生活すべき食料品を売ってもらえないような状況になる、そういうことを心配して申し出ない人も、医者にかからない人さえもおるわけです。そういう点を考慮すると、一万五千人から約二万人くらい、この日本特有のスモンの奇病がいまふえてきている。しかも四十二年、四十三年だから、三年前です。これでさえも年に千四百人もふえていっているわけです。したがって、こういうような趨勢でいきますと、どこまでふえていくかわからないという現実です。  したがって、いまの調査研究費というのは、ただ原因究明だけに焦点がしぼられて、真の社会学的なそういう考慮は払われていない。原因究明だけにいま焦点がしほられている。その患者なり家族なりの社会学的な考慮は全然払われていないのです。ほんの一部の研究のための、治療薬、医療費のほんの一部を一%か二%程度補充するだけです。そういう点から非常にいま新聞等でも問題にされ出したわけですけれども、十年も前からはやっております。この際、社会学的な見地からも大幅な考慮を払ってもらわなければ、どうにも人間として生きていく希望を失いつつある人もいます。したがって、わずかの間に九人自殺をしておられます。これをそのままほうっておいたのでは、ほんとうに人間尊重をまず第一番にしていく佐藤内閣の政府としても、これは非常に残念な憂慮すべき事態に立ち至っていく心配があります。  まず総理大臣、ひとつこちらを見てください。これは御存じないと思いますので、見ていただきたいと思います。この裏に実情が示してあります。(資料を示す)そういうところから質問を続けさしていただきますが、いまの研究体制あるいは調査体制だけではどうにもならないものがあるわけです。したがって、この原因不明の社会病ともいえるスモン、もちろんべーチェットあるいはカシンベックあるいは筋ジストロフィーも含めてでございますが、数からいいますと、特別、スモンのふえようはものすごいふえようをしております。数からいっても非常なものです。したがって、スモン等社会病に対する特別対策措置というものをぜひとってもらいたい。特別措置をとってもらいたい。これに対しての見解総理大臣、それから大蔵大臣からもひとつお答えを願いたいと思います。  ことにもう一つ申し上げたいことは、総理大臣、ひとつこちらへちょっと顔を向けていただきたいのですが、この社会病対策あるいはスモン等社会病対策特別措置、これを早急に検討してもらいたいということ。  それからもう一つは、これはアメリカの例でございますが、ルーズベルト大統領が、御自身が小児麻痺であったわけですけれども、このルーズベルトの小児麻痺に対する財団、マーチ・オブ・ダイム、すなわち小児麻痺財団、この一つの基金制度をルーズベルト大統領がつくられて、そうしてついにソークワクチンの発見並びに製作までこのマーチ・オブ・ダイムがやったわけです。約十億円かけてやっています。これはやはりルーズベルト大統領の発起によって全世界の小児麻痺患者に対して、あるいは小児麻痺の将来に対して大きなポイントを打った措置でございました。したがって、いま申し上げた特別措置、その措置をする道程に至るまでにも、早く、できれば佐藤総理が音頭をとってスモン等社会病の基金制度、こういうものを検討してもらいたい、このように思うわけでございますが、ひとつお考えを承りたいと思います。
  152. 内田常雄

    ○内田国務大臣 大蔵大臣からも総理大臣からもお答えがあると思いますが、所管大臣である私から見まして、言うまでもなく今日、結核とかあるいはハンセン氏病——らいあるいは精神病等につきましては、これが世界に及ぼす深刻な影響等を考えて措置を講じておりますが、そこまでいっておらないというのが現況でありますので、できるだけこれの診断、治療等の方法を究明いたしまして、これとあわせて措置を研究してまいりたいというのが現在までの厚生省の態度でございます。
  153. 福田赳夫

    福田国務大臣 厚生大臣からお答えがありましたが、厚生大臣においてもいま熱心にこの原因その他検討中だということでございます。おそらく検討が済みますれば、今度はその対策ということになろうと思いますが、その対策段階になりますれば、大蔵省といたしましても、できるだけの御協力を申し上げたい、かように存じます。
  154. 山田太郎

    山田(太)委員 その原因がわかったら対策を、こういうふうなお答えなんですよ。したがって、大蔵大臣もそのとおりお答えせざるを得なかったのは、これはわかります。しかし、それではどうにもならないということです。いつ原因がわかるかわからないのです。十年前からあって、しかも三九年には特別の調査班ができてやったけれども、わからないのですから。その原因がわかって、すなわち生物学的な原因究明だけではこの方々の人生、人権はもちろんですが、人間らしい生活というものはとてもじゃないけれどもできないような状態です。この点について——もちろんそれはほかにも悲惨な病気はあります。ガンにしてももちろんそうです。しかし、ガンには相当対策費が出ております。これにはやっとここまで、ほんとうに大蔵省の協力でここまできましたけれども、もっと社会病的あるいは社会学的見地から、そういう方々を人間らしいものに、生活できるようにやっていただきたい。それにはやはり特別措置を考えていただくとか、あるいは基金制度を総理大臣が発起人になってでもやっていくようにしていただきたい。そういうものをお願いしておるわけです。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかくスモン病、これはたいへん気の毒な状態だと思います。ただ状態が気の毒だとか原因が不明だというだけでは救えないと思っております。ただいま具体的に積極的に救済に乗り出せ、特別措置をとれ、こういうお話でございますから、そういう意味で、いまの研究は研究、対策は対策、これは別に分けまして、具体的に厚生省で積極的に検討さすことにしたいと思います。御了承願います。
  156. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの総理大臣の御答弁をいただいて、多くのスモン関係の家族の方々も含めて、いま現在非常に注視なさっているでしょう。どうかいまの御答弁をそのまま強力に実行に移していただきたいと思います。  そこで、時間が参りましたが、もう少し時間をいただきまして、無医村、無医地区の問題について、ひとつ質問を申し上げたいと思います。  いま現状の無医地区はどのように把握されていますか。ひとつ厚生大臣、御答弁をお願いしたいと思います。
  157. 内田常雄

    ○内田国務大臣 無医地区対策でありますが、その前に、いまのスモン対策につきましては、総理大臣からもせっかく御答弁もありましたので、厚生省といたしましても、研究、対策と並行しながら何かの対応策をとるように、ひとつ至急に研究をいたしたいと思います。  無医村対策につきましては、御承知のように、最近道路も非常によくなった状況等にかんがみまして、従来の僻地診療所一本やりという点を改めまして、それはそれでやりながら、患者輸送車でありますとか、あるいは回診車等に対しまして、施設の補助ばかりでなしに、運行費の補助も出すというようなことをやっております。さらにまた、親元病院の制度を四十五年度から始めまして、これは一挙に充足はできませんけれども、そこに助成をいたしまして、必要な場合には親元病院から医師、看護婦等の医療従事者を僻地に応援に出動させるような対策をとることにいたしております。
  158. 山田太郎

    山田(太)委員 現在の厚生省の統計によりますと、無医地区が二千九百二十カ所になっております。そして、それに対しての質問に、今度の本予算審議等を通じて総理大臣からも御答弁がありましたし、もちろん厚生大臣からも御答弁がありました。そしてヘリコプターも考えようというふうな、そういう意味のお答えもあったことも承知しておりますが、実はこの無医地区の対策の基礎になっておりますのが昭和四十一年、これが基礎になっております。それから後は全然調査が、真の調査が行き届いておりません。私の調べた範囲によりますと、県によりますと、島根県などは無医地区がその当時から比べて、四十一年から四十四年までに約倍近くになっております。九〇%以上ふえております。それから長野県あるいは高知県等、約五割あるいは六割と無医地区がふえているところです。しかも国民健康保険料は払いながら、医者にかかることができない、こういう人々が非常にふえているわけです。この点に対して、非常にむずかしい問題ではありますが、青森県などは台湾から医者を六人も呼んでいる。御存じと思います。そのように非常に苦労しております。また、市町村財政はこのために非常に圧迫を受けておる。これも先日、テレビで放送されましたので御承知と思いますが、北里財団の大学ですね、医者がほしければ一億円、こういうふうなことで非常に一また事実町村から、わが町わが村に帰ってもらいたいというために、それに応じていく町村も出てきているように聞いております。退職金制度やいろいろな点で非常な負担で、この無医地区のためにも心をわずらわしております。そこで、これは全国の、ことに山間地において非常な心配の種になっております。保険料を払いながら医者にかかれない、これも非常に矛盾しております。  その点についてひとつもう一度、総理大臣からのヘリコプター等の御答弁もありました。しかし、この点についてはぜひ総理大臣からも御答弁をいただきたいと思いまして通告をしておりますので、ひとつ御見解あるいは方策をお答え願いたいと思います。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 厚生省は厚生省でいろいろ考えておると思います。しかし、いまおあげになりました、たとえば島根県、無医村地区がだんだんふえた。おそらく県そのものとして、医者の数は最近はふえておるだろうと思います。医者はどうしても都市に集中する。いなかで、いわゆる健康保険ではやっていけない、そういうことがございます。したがいまして、私どもは片一方で、国立診療所で巡回診療だとかあるいは患者輸送用の寝台車等を特別につくらす、そのためには何といっても道路をよくしなければなりません。そういうことで、その土地にいなくとも十分診療が受けられるような処置をとらなければならぬと思います。  また、もう一つ困ったものは、山よりも島嶼、地方の島になりますと、これは急患の救済もできない。盲腸などになればどうしようもない、そういうような状態がある。これはもう笑いごとではありませんが、医者を一人島に送ろうとすれば、月給を五十万出してもなかなか見つからないといわれている。総理大臣俸給を払って医者が初めて出かける、そういうような状態でございます。そこらにいまの診療報酬制度にも基本的に何かと問題があるのではないだろうかと私は心配をいたしますが、そういうこととは別に、とにかく地方の無医村あるいは無医島等についても特別な考慮を払うべきではないか。  また、そういう意味で、先ほどお話の出ておりますヘリコプターなども使えるのじゃないだろうか。まあ私のところは山間僻地でもありますが、同時に、瀬戸内海の島々に無医島がたくさんございますから、そういう点について十分考えていきたい、かように思っております。東京都自身でもたいへん心配をして、これは苦労をして島嶼の医者をどうして確保するか等を考えておるようでございます。たいへん適切なお尋ねがございましたが、しかし、私、これに対してどんぴしゃりのお答えができないことを残念に思いますけれども、これはどうも医者が行ってくれないことにはどうしようもございません。ただ、いまも申し上げるように、都会には医者が集まっておりますから、その患者をやはり都会に持ってくるような、そういうような方法を講ぜざるを得ないのじゃないか。まあ次善の策をいまとりつつある、かように御了承をいただきたいと思います。
  160. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの総理の御答弁の早い具体化を熱望しながら、同時に厚生大臣にお願いしたいことは、この無医地区対策の基準というものが非常に現在は変わってきております。これを早急にひとつ調査していただいて、新しい現状に合った調査をもとにして対策を立てていただかないと、いつまでたっても古い資料ではいけないと思いますので、その点をひとつ御考慮願いたいと思います。  そこで、私の割り当てられた時間まで、次に農林大臣に数点だけお伺いしたいと思います。委員会でお尋ねすれば済む問題もありますので、そういう点はひとつ省略していきます。  そこで、やはりいま一番現在問題となっております百五十万トンの減産の問題について、まあ百万トンはどうにかいきそうだ、非常に明るい見通しだ。ところが、五十万トンについての十一万八千ヘクタールの減反、この問題について農林大臣としては幾たびとなく質問は受けていらっしゃいます。当然、ではそれでいいじゃないかということにもなりかねる問題があるわけです。それは何かといいますと、この転用を達成されるための目標と数量、先日御答弁がありました。では、それをどのような基準なり積算なりをもってそこへ持っていくのか。これがないと、ただ期待目標になってしまって、この対策というものは単なる期待目標、五十万トンについては期待目標になっちまう。この期待目標では真の政府のとるべき計画とは言いがたい。したがって、その点をひとつ示してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  161. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話しのように、五十万トン分の十一万八千ヘクタールというのは、口でこそ十一万八千ですけれども、なかなかかなりな数字であります。しかし、毎々申し上げておりますように、いま建設省がやっております都市計画線引きが各県でそれぞれ進行中でありますので、その線引きの市街化区域の中に入っております水田が十八万ヘクタールあるわけで、先般も私ども中心にいたしまして、かねがね地方に工場の分散をしていきたいと考えておられる経済界の人々との会合もいたしまして、それらの人々の一番いままで訴えてこられたのは農地転用のきびしさでありました。そこで先般、御承知のように、通達を出しまして、これを緩和してなるべく期待に沿えるように、大事な農地は確保しながらも、そういうことに促進方努力するようにということでいろいろなお話を進めておるわけであります。  したがって、これは私どものほうだけではなかなか不可能でありますが、政府全体で——いま私が申しましたのは一例であります。それからまた、工場適地の調査の中にも、工場立地として適当なものであると指摘されておるのが三万ヘクタールございます。そういうものをなるべく早く処理いたすことによってこの目的が達成されるようにということで、それぞれ手分けて専心いたしておる、それが現状であります。
  162. 山田太郎

    山田(太)委員 委員長、時間はこれですか。
  163. 中野四郎

    中野委員長 五十三分まで。
  164. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、いま農林大臣がお答えになったことは、よく承知もしております。私のお伺いしたのは、いまの出るまでに至る積算というものがしっかりしていなければ、ただ期待目標だけになってしまって、五十万トンというものは一年間でやる、しかも十一万八千ヘクタールを一年間でやらなければならぬ、これができないことになってしまうということです。そうすると、予算の問題にも当然響いてくることですし、あえてその問題を追及しようという意味は持っておりません。持っておりませんが、この十一万八千ヘクタールの達成がむずかしいのじゃないかということを申し上げたわけです。だから、その積算というものを——その数字だけを言っていただくのだったら、私も先刻承知しておりますが、その積算というものはどこを基準にしたか。ただ単なる期待目標ということばは過ぎますけれども、それになってしまいはしないかということをおもんばかるために、あえてお伺いしておるわけです。それがわからないならわからない、こうなっておるのならこうなっておる、こう示していただかないことには、私の質問の御答弁にはなりかねると思うんですが、いかがでしょう。
  165. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それぞれ事情が違いますので、いろいろやり方があると思いますけれども、先ほど申し上げましたような工場立地、それからして農業団体等も率先して自分たちの農業経営のために、いろいろなことをいままで希望してきておりますので、そういうものをできるだけ促進させるということによって——大体いままで一年に約六万ヘクタールの農地がつぶされておることは御存じのとおりであります。そのうち水田が二万八千ヘクタール、これが今回のような特殊な手だてを用いないでもそういうふうになっておるのであるから、農転をゆるめ、促進方をやれば、その目的は達成されるんではないかということで、各方面にそういう働きかけをいたしまして促進をいたしておる、こういう次第であります。
  166. 山田太郎

    山田(太)委員 私のお伺いした点は、もちろんおわかりとは思いますが、その点の御答弁はなかなかできかねるという現状のようでございます。  そこで、これは幾らお伺いしてもまた同じことを繰り返すだけでございますから、その点を心配しながら、もう一つお伺いしたいことは、もしこの五十万トンの減産がうまいこといかなかった、こうなると百五十万トンの減産というのが達成しないわけでございます。いい言い方じゃありませんが。しかし、この五十万トンが達成されないという予想は多くの人がなさっております。したがって、農林大臣としては、それが達成できないということなんか言えるはずがありませんが、しかし、これがもし達成できなかったならば、へたするとどのようになるのだろうか、こういうことを農家が心配なさっておるわけです。もちろん食管制度の根幹は維持する、これは絶えずおっしゃっていますが、来年は銘柄格差なり、あるいは二重価格なり、あるいは買い上げ制限等々が出てくるのではなかろうか、いわゆる踏んだりけったりの農家の生活ということになりはしないかということを、ことばは少し過ぎるようでございますけれども、心配しておるわけです。その点もし達成しなかった場合、これは狂うわけでありますから、そのときには来年は銘柄格差なり、二重価格なり、あるいは買い上げ制限なりあるのではなかろうか、こういうことを農家の方がいまから心配するのは、これは当然のことです。心配するなというのは、これは無理なことです。したがって、心配している農家のためにも、ひとつその点をできるならば答えてあげていただきたいと思います。
  167. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私のほうでは必ずいけるものだという確信を持って一生懸命で推進いたしておるわけであります。  そこで、いまのお尋ねは、もしうまくいかなかったときにはどうするかということでございますが、そのときには私どもといたしましては、なぜこれがうまくいかなかったのであろうかという原因を掘り下げて検討いたしまして、それに対処する措置を研究しなければならないと、こう思っておりますが、総理大臣からもしばしば申し上げておりますように、本年、食管制度の根幹を動かすというふうなことはいたしません。買い入れ制限も考えておりません、これは申し上げております。初めて出てまいりましたおことばで二段米価、これはただいま農林大臣としては考えておりません。各地の状況を見ますと、たいぶ御理解をいただいて積極的に進んでおりますので、いま考えておりますのはそういうことであります。
  168. 山田太郎

    山田(太)委員 来年のことはまだ言うべき段階ではないというふうなお考えもあるかとも思います。しかし、いまの御答弁では、もしうまくいかなかったら来年はあるのかもしれないぞということを心配するのは当然です。したがって、これはまた蒸し返しになりますから、これ以上はお伺いしませんが、やはりまた時を改めてこの点は委員会でお伺いしていきたいと思います。  そこでもう一つ、次の問題点は、御存じでしょうが、休耕補償とそれから転作補償と金額は一緒になった、決して悪いという意味で申し上げるのではないのです。したがって、ことしは百万トンの分は成功するであろう。しかし、いま現在、農家の実情というものは、これはもちろん御存じでしょうが、やはり作柄の悪いたんぼが休耕になっている、あるいは転作になっている、そして作柄のいいところは残ってきております。したがって、減産はある程度はできても、百万トンはできないのではないか。たとえて申し上げますと、いままで五十俵とれておったたんぼを持っていた人が、それで作柄の悪いところを一割減産をした、ところがあとの残りでやはり五十俵つくる、こういうことがいわれております。また事実、それはある程度可能じゃないかということも考えられることです。  それからもう一つは、休耕を一年間している間に構造を改善しまして、そして来年はまた稲作をやる、というとこれは百万トン減産ということはことしだけに終わってしまって、来年また同じことを繰り返さなければならない。なぜかというと、真の農政が立てられていないというところが大きな原因じゃないか。やはり農家が安心して農林大臣の指示のとおりに次々と進んでいくというのをちゅうちょしている者があります。だから来年はまたつくるのだ、一年間休耕している間に、たんぼを直しちゃって、そうして来年またつくるのだ、そういうようなことで、来年また同じようなことを繰り返していくのです。こういうふうな実情は、現地で見て、これは事実なんです。しかも休耕が約七割あるいは八割、転作は二割あるいは三割です。七割から八割は、そういう目途のもとに休耕し、改良しているわけです。この点は、また来年同じことをむし返すということになるのです。その点についての方策ということも、農家の安心のいく、また納得のいく、そういう方策を示していただかなければ、これはいつまでたったって、解決しない問題になってきますので、その点について、これは大きな問題でもありますので、まず農林大臣から、この点について、お考えを持っていらっしゃらないとなると、たいへんな問題ですが、ひとつお答え願いたいと思います。
  169. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私、実は昨日新潟へ参りました。所管の農政局長を呼びまして、北陸地方の状況を聞いたわけでありますが、新潟だけは、初めたいへんむずかしかったのでありますが、いまは、状況報告によりますと、他府県とほとんど変わらないようです。他の四県は大体目的が達成されている。  ただそこで、ただいま御指摘のありましたように、今回は全国一律、同率でやっていただいておりますけれども、北陸及び東北のような、ああいう地域で、単作地帯であるところと、転換が何でもできるという地域とは、非常に事情が違うことは、御存じのとおりであります。したがって、そういうことにつきまして、その地域、地域の転換先の作物について、まずもって研究してもらいたいというので、先般補正予算で二十億円の予算を取りまして、地方それぞれ転換のために小規模の土地改良をやったり、それから種、苗等の手入れをいたしたりするための予算を、率先して出しておるわけであります。したがって、現在促進いたしておりますことは、地方の農政局と地方の県及び農業団体とが、ただいまお話のありましたように、その地域、地域のどういうものが一番適当であるか、しかも国全体の——くだもの、あるいは酪農、畜産その他のもので、全体として国はこれだけの規模のものを望むのだというそれを、その地方地方に割り当ててみて、あなたの地域は、こういうことに転換することがいいであろうというふうなことで、大まかな方針をこちらが持ってまいりまして、地方、地方でその転換作物について協議をいたしておるということでありますが、正直に申し上げまして、農業というのは、そう半年や一年できまりのつくものではございませんから、腰を落ちつけて、やはり地方の実情に応じて、地方の皆さんともちろん相談の上で、適当な作物にできるだけ転換するように指導を進めてまいりたい、こういうことで、いま努力しておる最中であります。
  170. 山田太郎

    山田(太)委員 時間が参りましたようなので、最後に農林大臣への御要望と、それから総理大臣の御見解を——総理大臣へは、農業問題ではなしに、ほかの問題でございますが……。  いまの地域、地域によっての計画、これが約六カ月から一年かかる、これではまた来年同じことを繰り返すという心配があるということと、それからもう一つは、それについては、やはり農林省として農業経営の指導、そういうものを骨子として——いま鳥取県でコンピューターを利用いたしまして、農業の経営指導までやっていくような、そういう体制を整えているところがあります。鳥取県です。農業でございます。これは一つのすばらしいアイデアでもあり、またこういう全国的な規模において、そういう農業を指導していくセンターがやはり必要じゃないか、そう思います。その点一つ要望しておきます。  それから、最後にもう一つ御要望申し上げたいと思います。先ほどのソ連の爆撃問題、これはソ連に限らず、将来こういう危険性をなくしていくために、今度国連憲章改正特別部会というものを要望して、日本から国連憲章改正というものを提案するということも聞いております。したがって、当該国の国土に近接した公海では演習等はやることを禁止する、こういうふうな意味においても、国連あるいは国際会議に、こういうものを提案される御意向があるかどうか。これは検討というおことばが出るかもしれませんが、それが一つと、今度は、またこういうことのためにも、日本にアジア本部を設置したほうがいいのじゃないか。国連のアジア本部を設置したほうがいいのじゃないかということをお願いしたいと思います。(「時間だ、時間だ」と呼ぶ者あり)これで質問を終わりますから——。
  171. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だいぶやかましいようですが、山田君にお答をいたします。国連に私、出かけるかどうか、まだきめておりません。ところで国連には、私が行かなければ外務大臣が出かけることは、これはもうはっきりしておりますので、ただいま言われたような意見を十分参考にして、その発言については十分考えてみたいと思っております。この点は、もうすでにソ連自身が、ブルガリア、アルメニアですか、あのところと三国で一緒になって共同宣言を出している、そういう経過もございますから、日本に対して特別な意図がない限り、話はうまく片づくだろうと、私は、そのことを期待しております。先ほど申しましたように、両国の間の問題ではございますけれども、どこまでも友好親善、それを基調にして処理したい、かように私、考えております。  また、ただいま国連本部、これはアメリカにあるが、出張所と申しますか、あるいはアジア国連本部とでもいうか、とにかく名前は別にとらわれないが、そういうものを誘致しろという、これまた御要望として承ることにしておきます。
  172. 山田太郎

    山田(太)委員 これで終わります。
  173. 中野四郎

    中野委員長 これにて山田君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、まず最初に、四十五年度の予算審議の際、総括で質問いたしたわけですが、時間がなくて一番最後に、自主防衛力の限界について、佐藤内閣でもこの程度はなさらないと、国民の不安がなかなか取り去られないのではなかろうかということで幾つかの点をあげました。それで時間が来たわけですが、総理は、そのあとで、私のところへお見えになって、これは考えさせてもらうというようなことをおっしゃっておったわけです。それで追加質問の要項を整理して出しておったわけですが、まず、その問題について、多くの時間をさけませんから、主要な点について、お伺いしていきたいと思うのです。  まず追加質問要旨の中の一番最後に、私は、自主防衛力の一番最後に、国防の基本方針、これは昭和三十二年五月国防会議の決定でございますが、もう十三年もたって、要するに現在の情勢に合わなくなっている、これを改定すべきではないか、その改定の要旨については、私なりの考えを一応盛り込んでおったわけですが、この際、国防の基本方針の改定の問題について、中曽根長官のお考えを簡単にお伺いしておきたいと思います。
  175. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 新しい防衛計画を策定するに対して、国防の基本方針は再検討いたしたいと思っております。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、すでに長官のお考えは新聞でもある程度出ておりますが、その中で特に注意を喚起するようなお考えが示されておるわけです。まず私の提議の中にも入れておりましたが、非核三原則というこの原則を国防の基本方針の中に明文化されますか。
  177. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点を入れるか入れないかは検討の一つの対象にはなっておると思います。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官のお考えはどうですか。
  179. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのことも目下検討中であり一まず。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官は、新聞には非常にすらすらとお考えを発表されておるようですが、公式の場になるとなかなか慎重になられるわけですけれども、これは一つの課題になっておる。総理大臣は、これは国防の基本方針の中にやはり明文化したほうがいいとお考えでしょうか。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、核兵器については持たず、つくらず、持ち込みもしない、この三原則を守る、こういうことを固く国民に約束しております。ただ、私だけの約束、これでいつまでもしばる、こういうことはどうかと思いますので、私はそういう点はよく考えておくべきではないか、よく研究すべきじゃないか、かように思っております。私に関する限りは疑問のないように非核三原則は守る、これを堅持すると、はっきり申し上げておきます。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、いずれ国防の基本方針が改定される際の国防会議にかかるわけですから、議長として総理は、いま私が申し上げた非核三原則を明文化するかどうかはよく慎重に検討したい、そういうことでございますね。  次に、中曽根長官は、国力、国情に応じて防衛力を整備するという今日までの方針に対して、これを省き、必要性に応じて自衛力を整備する、こういうお考えのようでありますが、この必要性に応じて整備するというこの整備ということは、増強だけを意味しておるのか、それとも縮小も含まれる、こういうふうにお考えでしょうか。
  183. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま申されましたようなことばに対応する考え方は、外交と一体、諸国策と調和を保つ、そういうようなニュアンスが私は適当であるだろうと思っておるのです。「必要」ということばを「国力、国情」にかえて用いようという考えは、私個人としてはないのです。必要というものも一つの条件である、しかし、それがオールマイティーではない。やはり諸国策と調和を保つということが非常に大事ではないか、そういうふうに考えているわけでございます。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、国内あるいは国際情勢緊張の度合い、あるいは緩和の度合い、そういうことによって縮小するということもあり得るということでしょうか。
  185. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一つの基本方針としては、それは客観情勢に応じて振幅はあり得ると思うのです。しかし、現在の日本の当面している情勢を見ますというと、調和を保ちながら漸増するという方針が適当ではないかと思っております。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、漸増とおっしゃいますが、増すということだけがやはりここ十年間と申しますか、長期の戦略見積もりをつくられる際も、ここ十年間ぐらいはいまの程度にストップする、あるいは場合によっては漸次下げる、縮小するという問題は、全然含まれないのでございましょうか。この十年間ぐらいの、いわゆる長期戦略見積もりをつくられるわけですが、その期間内においては……。
  187. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 十年間という長期的にわたることはどうかと思いますけれども、五年ぐらいはやはり漸増という方針が必要ではないかと私は思います。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いずれにしましても、四次防の決定を前にして非常に自衛力の際限のない精強ということが心配をされている。限界は一体どこにあるのか。憲法九条があるにもかかわらず、一体憲法第九条の歯どめというものはどこにあるのであろうか、こういうことがやはり私は国民の一つの危惧している点ではなかろうかと思うのです。  そこでいろいろ問題が多うございますけれども総理にお伺いをいたしておきますが、一体憲法第九条が許容していないと明確に考えられるもの、つまりそういう意味では歯どめになっているもの、これは徴兵制度、自衛隊の海外派兵以外に具体的に何があるでしょうか。総理にお伺いをしたい。
  189. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり核兵器、特に攻撃的、戦略的核兵器、それから攻撃的兵器の中でたとえばB52のようなもの、あるいはICBM、あるいは中距離弾道弾、このように他国の領域に対して直接脅威を与えるものは禁止されていると思います。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その脅威を与えているということばでございますけれども、いままでの政府答弁によれば、私は中曽根長官のそのお考えはそれなりに評価します、しかし、いままでの政府のお考えでは、核兵器といえども、これは必ずしも違憲ではないのだというのが統一見解でございましたですね。ただ政策として持たないということ。そうするとこれはわからないじゃないかという危惧があるのです。いま私は中曽根長官の徴兵制度、海外派兵並びに核兵器あるいはB52等の長距離爆撃機あるいは長距離のミサイル、こういったものはやはり憲法が許容していない。これは長官の場合は明白でございますけれども総理大臣もそれでよろしゅうございますか。いま長官のお考えは聞きましたから、総理大臣に聞きたい。
  191. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま私が申し上げましたのは、戦略的核兵器と申しましたので、憲法上の解釈としては、戦術的な核兵器を防御的に使うということは憲法違反ではないという解釈がございます。しかし、それも三原則のもとに援用しないということを政府は申しておるのでございます。憲法の解釈論から誤解があるといけませんので、念のために申し上げる次第です。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかく攻撃的な兵器、これは持っちゃいかぬ、これははっきりしておる。事、防衛に関する限り、自主防衛、その権利はあるし、またその範囲に武器が使われるということなら、これは差しつかえないのだ、かように思っております。しかし、ただいまのように防御的な兵器にしろ核は使わない、こういうことを先ほど来申しておる、かように理解していただきたいのであります。
  193. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、問題を変えてみたいと思うのですが、せんだってクライスラーのタウンゼント会長が訪日され、去る十七日には三菱の牧田さんと会談をされ、総理もお会いになったと思うのですが、問題の三菱、クライスラーの合弁会社の件でありますけれども、タウンゼント会長は総理と会った際にどのようなお話をしたでありましょうか。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私のところへは、三菱の牧田さんが、タウンゼント会長を連れて見えた。したがって、これは表敬ということではございますが、最近両社の間がたいへん緊密、提携ムードである、そういう関係がございますから、そういう意味でその二人が見えたんだ、かように私は理解しております。
  195. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 通産大臣にも会っていろいろと要請があったと思うのですけれども、どういう要請であったか。また、それに対する大臣の御見解を承りたいと思います。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように、三菱重工が自動車部門を分離いたしまして、そうして新会社をつくって、そこで三菱とクライスラーが一緒に仕事をしたい考えを持っておるわけでございます。政府はそれに対しまして、一定の期日以後個別審査をするということをいっておる、わけでございます。タウンゼント氏は、いろいろ両社の考えもありますので、なるべく早く新会社の活動をいたしたいという希望を私に表明をされまして、私は、ともかくまだ新会社もできていないのでありますから、ひとつ正式に申請があれば、できるだけ早く私どもとしてはその内容について審査もし、また意見も申し上げるにやぶさかでない、こういうことを申したのであります。
  197. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 合弁の会社でありますが、資本金、それからその資本の比率、役員の比率等についてお伺いしたい。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは厳密な意味で、正式な話ではまだないわけでございますけれども、私ども了解しておりますところでは、四百六十億円の資本金を予定をし、資本構成は三菱六五%、クライスラー三五%である。役員は二十人を予定し、三菱が十三人、クライスラーが七人である。こういう大まかな、大まかといいますか、大ワクの中で具体化を考えているようであります。
  199. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 社長に予定される人あるいは営業の内容について予想されておることは、どういうことでしょうか。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 営業の内容について予定されておるところは、クライスラーが、三菱でつくった車の輸出に協力をするということ、また新しくできました会社は、クライスラーの車のノックダウンを行なうことも考える、そういうふうなことを希望しておるようであります。  なお、社長は、これは三菱側から出すということに了解をされているというふうに聞いております。
  201. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、タウンゼント会長は、記者会見で総理並びに通産大臣に会った印象では、非常に認可の時期が早くなるという確信を持って帰国されたそうでありますが、来年十月までは自由化しないという昨年秋の通産省の決定は、そのまま堅持されますか。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私としては、ただいままでのところ、それを変える必要はないだろうと思っております。ただ、この来年の十月ということの解釈でございますけれども、こういう両社が新会社を設立するということの内容が具体化してまいりましたら、何も十月になるまでは一切そのお話は聞きません、十月になりましてから初めて承りましょうというような態度を私ども行政としてとる必要はない、またそれは親切な行政でもないと思いますので、お話が具体化し次第、話を聞くことは、かりにいまからでもいたします、いつでもいたします、こういうことを申し伝えてやりました。
  203. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、許可申請が出されれば検討に入るけれども、その許可の時期は来年十月以前は考えていない、そういうふうに了解しておっていいですか。
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのところ、そう考えております。しかし、話をいろいろ検討してみまして、私どもが考えておるような線のものであれば、何と申しますか、なるべく親切に話を聞いてあげるということは、私は必要なことだと思っています。
  205. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうもニュアンスがちょっとおかしいのですが、親切に話を聞いてやるという意味が、ことによったら十月以前でも許可するというような含みを持ったようなふうに聞こえるのですが、そういうお話だからタウンゼント会長は、これは許可が早くなるという心証を得て帰ったのじゃなかろうかと思いますが、総理はどうでしょうか。
  206. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 具体的な話を聞いてみまして、私どもそれが国益に合うというふうに判断いたしましたら、なるべくこれは親切に扱うことがよろしい、国益に合わぬと判断すれば、それはまた別の判断が出るわけでございます。
  207. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 親切に扱うとは、どういう扱いでしょうか。
  208. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 できるだけ話を詰めて建設的に聞いてやり、また私ども申すべき意見があれば建設的に申してやるということであります。
  209. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうもその、私ははっきりいつも聞くのですけれども、お答えのほうが、答えにくいのかどうか知りませんが、わからなくなるのですがね。そうすると、十月以前もあり得るということですね、場合によっては。来年の十月以前にも。
  210. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 あの来年の十月ということをきめましたのは、実は御承知のようにだいぶ前のことになるわけでございますが、その後わが国の国内の自動車メーカーの体制もかなり整備をされてまいりました。ただいまの状況と十月をきめた当時の状況とは、だいぶ私は違ってきているという判断は持っておるのでございます。そこで、今回の話が国益に合うということであれば、これはなるべく建設的にお互い話し合いをしたほうがよかろう、こういうことも申しました。そこで、その結果いかんで、これはほんとうに国益に合うということであれば、もうきめられた日には実際店でもあけられるようにしてやるのが親切なことだろうと思いますが、これはしかし内容いかんでございます。でありますから、ただいまのところ十月一日ということを変更したわけではございません。かように申し上げておるわけでございます。
  211. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 せんだっての防衛庁の次期輸送機のエンジン問題についても、通産省は一応きめられたことをくるくる変えられる。この自動車の自由化問題についても、どうも方針がぐらついてきておるのではなかろうかという気がするのです。それで、以下通産省にも関係する問題で、少ししっかりしてもらわなくてはならないという気がいたしますので、質問を続けたいと思います。  「ニューズウイーク」の三月九日号を見ますと、フィリピンの上院が、丸紅飯田の肥料プラント受注の問題についていろいろ問題があるので、特別調査をするようになったという記事が出ております。この問題について、外務省の御報告をいただきたい。
  212. 須之部量三

    ○須之部政府委員 お答えいたします。  そういう報道が流れたことはございますけれども、私ども政府のほうにはまだ何ら正式にもございませんし、この取引自体がまだ何ら決定されたものではないというふうに聞いております。
  213. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この「ニューズウイーク」の報道するところによりますと、こういうことなんですね。これは九日付ですから、この九日付の掲載の中に「先週」とありますから、おそらく三月初めころだろうと思いますけれども、「先週、フィリピン上院議員は次のことを発見した。日本の最大の貿易商社の一つである丸紅飯田は」——私もちょっと英語は弱いから違っておるかもしれませんけれども、「入札を却下させるために、肥料プラントの建設に四千万ドルの価格をつけた。あとになってこの丸紅飯田は、より小さいプラントを建設するのに六千三百六十万ドルの入札を行なった。フィリピン・ナショナルバンクは即座に取引を許可した。そのお返しとして、この申し込みの価格なるものはリベートを可能にするための多量の余地を持っておる。そこでフィリピン上院は特別の調査を命じた、」こうなっておるのですね。  いまの局長の御答弁ではどうも納得がいかないのですが、それ以上の調査というものは行なわれていませんか、日本政府として。私は、こういうことは国辱問題だと思うのですよ。こういう記事が出たならば、やはりみずから積極的に調査をされてしかるべきではないでしょうか。外務大臣のお考えをお伺いしたい。
  214. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまアジア局長から御答弁いたしましたように、政府として的確な情報をまだ入手しておりませんけれども、そういうことは、いまお話しのとおり、政府としても十分戒心を要することでございますから、なお引き続きいろいろの方法をもって調べてみたいと思います。
  215. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体、この種の問題に関する商社の監督というのは、どこがやっておるのですか。
  216. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは取引の性格、性質にもよりますけれども、その性質によりましては、商社間の商取引として自由取引の部分も相当多いと思いますから、そういう場合には、政府は直接介入、関与、監督ということもなかなかむずかしい場合もあろうかと思います。それから、何しろ対外的な問題につきましては、私は事実さようなことのないことを信じたいのでございますけれども、やはりそういう情報については常に関心を持って、かりにも外国側から何らかの疑いを持たれるようなことは十分注意していなければならない、かように考えておるわけでございます。
  217. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 本件について、お聞きのとおりでございますから、委員長におかれては、外務省からこの内容の調査報告書を出さしていただくように御指導いただきたいと思います。  次に、アルゼンチンから、アルゼンチンの国鉄近代化の問題について、近く調査団が来るようでありますが、その調査団のメンバー、それから何日に来るのか、何の目的で来るのか、御説明をいただきたい。
  218. 愛知揆一

    愛知国務大臣 アルゼンチンの国鉄の増強計画について、日本側へいろいろ経済協力の希望がありますことは私も承知しておりますが、ただいままでのところは、関係の商社で日本側の一つのグループをつくって、そこでいろいろアルゼンチン側の計画等を検討しておるように聞いております。そうして、その日本側のグループ、日本団と申しますか、そこでのいろいろの検討の経過等をアルゼンチンのほうが、国鉄側としてさらに話を詰めたいという希望で調査団が来るということも私も承知しておりますが、いつ、どういうような顔ぶれで来るというところまでは具体的にまだ承知しておりません。  なお、このアルゼンチンの国鉄の増強計画については、日本側としても相当の関心を持っているごとは事実でございます。
  219. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 通産大臣は御存じでしょうか。どういう顔ぶれが来るか。時事通信によりますと、この調査団は一あとでいろいろ問題を出しますけれども、アルゼンチンの政令をもってこの調査団を派遣するようなことになっておる。それが何日に来てどういうメンバーであるかということは、通産省もまだ把握しておられませんか。
  220. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 聞いておりません。
  221. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 事務当局は知っておるのじゃないですか。
  222. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私が受けております報告を、それじゃもうちょっと詳しく申し上げます。  この問題は、御承知のように約八年前からアルゼンチンとしては積極的に取り上げてきた問題であるようでございます。ただいま申しましたように、丸紅飯田、それから東芝、日立、三菱電機及び全車両製造会社が、先ほど私、日本のグループと申しましたが、かりに日本連合というようなことで通称されておるようですが、それを結成して、アルゼンチンの国鉄との間に具体的な商談の交渉を進めておる。それから日本側からも国鉄から三名の専門家が、ことしになりましてから、一月から三月にわたって現地で調査を行ないました。それから一方アルゼンチンのほうでは、三月の六日と、私、報告を受けておりますけれども、オンガニア大統領は国際入札によらないで場合によれば日本連合と直接契約するということも可能であるという考え方を持っておるようでございますが、その場合におきましても、十分に日本側と接触、調査、検討することが必要であるというのがアルゼンチン側の態度でもございますようで、したがって、直接に日本側の商社とも接触をしたいが、同時に日本関係当局にも相談をしたいということでミッションを派遣したいんだということは、報告によって聞いておりますけれども、だれが団長になってどういう組織で来るかということについては、私はまだ承知しておりません。
  223. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時事通信の二十四日現地特派員発によりますと、四月二日に来るのですね、あと三日後に。そしてこの調査団長はクレインという公共事業省の次官、これにカバジェイロという国鉄の副総裁、アロンソという中央銀行副総裁、レサアダスという公共事業省運輸庁次官の四人ということが報道をされております。それで、もう問題は非常に具体化しておるわけですね。そこで私は、以下、日本の海外経済技術協力、この問題がほんとうに相手の国があげて歓迎をし、国民が喜ぶような形の協力をすることが私は大事であろうと思うのですね。いやしくも日本の一企業の利害を中心にしたりあるいはそこに忌まわしい問題が介在するということは許されないことであろうと思うのです。私はそういう立場から、この問題をもう少し質問を続けてみたいと思うわけです。  そこで、いままでの商談の内容は、私が把握したところによれば一億八千万ドル、約六百四十億ぐらいですか、相当大口の商談であろうと私は思います。そのうち約一億二千万ドルがブエノスアイレス近郊の電化問題、——ロカ線電化と普通いわれておる、これが一億二千万ドル、そして残りの六千万ドルが車両関係の国産化を含めた内容である、そういうふうに聞いておるわけです。  そこで、先ほども外務大臣の御答弁では、大統領も入札なしに日本に協力を求めたいというような考えを示しておるようにおっしゃいましたが、条件がついておるのですね。それは一部国産化、つまりアルゼンチンの国内産業も一部それに加わる、そういう条件が満たされないと、これはなかなか日本一国にその商談をまかせるというわけにはまいらぬという決定をしておるのですね。これも時事通信の報ずるところであります。そういう点については、まだ内容を把握しておられないでしょうか。もう二、三日後に来るのですけれども、どうでしょうか。通産大臣でも外務大臣でもよろしゅうございます。どちらでもけっこうですが……。
  224. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私のほうで理解しておりますことを申し上げると、次のとおりです。  アルゼンチン政府としての通商あるいは経済協力に対する基本的の姿勢というのは、アルゼンチンの国産品をなるべく多く買ってくれる国から今後の経済再建計画等への協力を求めたい、たとえばプラント輸出のようなものは……。そういう考え方を現アルゼンチン政府は基本方針にしているように、外務省としては観察いたしております。で、そういう点から従来ヨーロッパあるいはアメリカに目を向け過ぎておったのを、対日依存というところまではまだいかぬかもしれませんが、対日関係を拡大したいというふうになってまいっておるようであります。そのことは、御承知のように、アルゼンチンからは小麦をはじめコウリャンとか煮沸肉とかいうものの輸入が現在かなりふえておりますから、こういう点と、それから国鉄計画というような日本の技術が非常に高く評価されている、こういうところを結びつけて、日本との協力を望んでまいった。これが基本的の姿勢であろう、私はさように考えております。  それから、ただいま具体的の計画にお触れになりましたが、大体アルゼンチン政府としてはそういう考え方のようですが、この計画には二つありまして、ブエノスアイレス近郊線の電車の増強をしたいということが一つ。それからロカ線というブエノスアイレスと南部六州を結ぶ百三十五キロの線を全面的に電化したい。それで、これを全部合計すると一億八千万ドルになることは事実のようでございます。  従来、日本側としては主として先ほど申しました日本連合という商社の連合体がその折衝に当たっておりましたが、その日本の連合体としても、これではあまり金額が多過ぎる、それから延べ払いの期間を非常に長く希望しておりますので、さしあたり取り上げるとしても、近郊線用の電車六千万ドルの計画をまず優先的に取り上げることにしたらどうかということで日本の商社側は考えているようでございます。そして向こうの希望としては、それにしましても船積み後十四年で、頭金一〇%で、金利が六分七厘五毛というようなことが、その商談の中に出てきているへいわば具体的な条件のようでございますが、こういう点につきましては、先ほど申し上げましたように、いままでは商社間の話し合い、取引であった、これが具体的に日本政府として協力に応ずるやいなやということにつきましては、政府側としても今後慎重に検討しなければならない、こういう状態でございます。
  225. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体、東南アジアと延べ払い協力をするときには普通どの程度の条件になっておりましょうか、大蔵大臣にお伺いします。
  226. 福田赳夫

    福田国務大臣 金利は四分から七分、それから償還年限は三年から十五年であります。その相手国の経済情勢もありますが、主として日本商社の競争状態、そういう条件で他の国との競争に勝てるかどうか、そういうことを考慮してきめております。
  227. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この件に関し、アルゼンチンの国鉄総裁のデ・マルキ氏が昨年四月でございますか、訪日したと思うのです。このデ・マルキ総裁は大体だれが招待したのでしょうか。運輸大臣、御存じでしょう。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が答えるのもおかしいですが、当時国鉄総裁が招待した、国鉄のお客さんでございます。私も会っております。そして日本の新幹線を見て、たいへん驚いて、これだけの技術、これはもう世界一だ、自分のほうもいろいろ改善をこれから計画しているんだが、そういう意味で新幹線を見てたいへん勉強になった、こういって帰ったのでございます。
  229. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 具体的な話は全然ございませんでしたか。
  230. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとき、ロカ線の電化計画、これはございました。しかし、私はその条件なぞ話をすることはございません。彼が申しておりますのは、一つは超特急の新幹線を見たことと、それから都市の近郊において二分ヘッドであれだけの高密度のダイヤをやっておる、この二つに驚いた。これはもう専門的なものでございます。
  231. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この国鉄総裁は自衛隊の閲兵を受けたのですか、中曽根長官
  232. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は承知しておりません。自衛隊とは関係ないと思います。
  233. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 事務局のお方、どうですか。
  234. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 私、官房長でございますが、その事実をよく承知しておりません。
  235. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いつもに似合わずえらい自信がないじゃないですか。はっきり言ってください。
  236. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 その事実を承知いたしておりません。
  237. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 承知していないということは、あなたが知らないということですか、自衛隊はそういうことはやっておらぬということですか。
  238. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 一般に羽田におきまして栄誉礼、儀仗をやります場合は、政府側におきまして国賓あるいはそれに準ずるものとして招聘をいたします場合に、それぞれの各省からの要請によりまして儀仗、栄誉礼を行なうわけでございますが、ただいまのアルゼンチンの国鉄総裁の場合につきましては、私承知しておりません。
  239. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それを聞いておるのですよ。承知しておらぬというのは、あなたが知らないのですか、やっておらぬということですか。いつも私は簡単に聞いておるのですよ。
  240. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 私は聞いておりません。
  241. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ答弁にならぬじゃないですか。自分は知らぬというだけでしょう。責任ある答弁をしてくださいよ。
  242. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 さっそく調査いたしまして、御報告申し上げます。
  243. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 とにかく私がこんなことを聞いているのは意味があるのです。それをはっきりしていただきたいと思う。  そこで、大体このアルゼンチンの国鉄近代化問題は約十年ほどの懸案の問題だ。その間津田、田中、河崎、青木と、このように各大使が異動されております。この四人の大使の異動年月日をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  244. 愛知揆一

    愛知国務大臣 さっそく取り調べて御報告いたします。
  245. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかり次第報告してください。
  246. 高良民夫

    高良説明員 田中一男大使は三十八年十月から四十二年一月まででございます。
  247. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日にちを……。
  248. 高良民夫

    高良説明員 十月七日からでございます。それから河崎一郎大使は四十二年二月の二十四日からでございます。青木大使は四十四年八月の七日からでございます。
  249. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何日から何日までとなぜ言わないのですか。途中あいているでしょう。
  250. 高良民夫

    高良説明員 あとの大使が前の大使の解任状を持って行かれまして、あとの大使が向こうに新任されたときに前の大使が解任されるということになっておりますから、その間あくということは法理上ないということになっております。
  251. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その四人の間になかったですか。
  252. 高良民夫

    高良説明員 代理大使をやっている時間が若干ございましたけれども、その代理大使の間は、本人の大使がたとえば日本に先にお帰りになっている間は依然としてそのまま大使でおいでになるわけでございます。
  253. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、津田正夫元大使田中一男元大使、河崎一郎大使はいまどこにおられますか。
  254. 高良民夫

    高良説明員 田中大使はただいまトルコに駐在しておいでになります。それから、津田大使は御退任後、ただいまは国家公安委員をしておられると承知しております。河崎大使は、何か会社の顧問をしておいでになるというふうに私聞いておりますが、正確には存じません。
  255. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 えらい冷たいですね。三菱重工の嘱託でしょう。
  256. 高良民夫

    高良説明員 正確には存じません。
  257. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一九六〇年、十年前、丸紅飯田が受注しました鉄道車両問題について、この商取引について何かアルゼンチンで重要に取り上げられたことはなかったですか。外務大臣
  258. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは車両五百五十両ですか、契約ができた当時の事情は、私つまびらかでございません。
  259. 高良民夫

    高良説明員 お答えいたします。  御質問の御趣旨が、この前の六一、二年の丸紅の車両売り込みにつきまして、その後アルゼンチン側で問題になったことがあるのではないかというふうに了解いたしますが、その後現地の新聞に二度ほどいろいろなことが載ったようでございます。その趣旨は、まずどうして随契になったのであろうかということ、それから取引条件が著しくアルゼンチン側に悪いのではないか、それからこの件は当時の関係閣僚はどうも反対だったらしいが、大統領府の決定にされたのではないか、いずれもアルゼンチン内部のことを新聞記事にしたようでございます。
  260. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何かの新聞が書いておったようですが、ぐらいの情報しか得ていないのですか。今度の予算案を見ても、外務省は相当の情報収集費をとっておるでしょう。この程度のことだったら私どもだって、知っていますよ。  じゃ、もう少し具体的に言いましょう。一九六二年九月二十五日に、丸紅飯田からの鉄道材の購入に関する国家調査委員会の報告が発表されておる。これは新聞の発表じゃないのです。アルゼンチンの国家の国家調査委員会の発表。この内容を御存じですか。
  261. 高良民夫

    高良説明員 ただいまおっしゃいましたとおりに、その後アルゼンチン側で一応訴訟問題などが起こったように聞いております。これは新聞記事とは別でございますが、その後さらに査問委員会的なものが設置されまして、本件を調査したようでございます。ただ、その結果本件はそのまま有効として今日に至っておるわけでございます。
  262. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その中に、当時の日本大使の言動について触れられておりはしませんか。
  263. 高良民夫

    高良説明員 何ぶんにも多くの新聞でいろいろなことを書いてございますから、私は具体的に当時の津田大使の言動にどういう記事があったか、ただいま存じません。
  264. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほどから私は記事で言っていないのですよ。この国家調査委員会の報告書を問題にしておるのですよ。何を言っているのですか、あなたは。この調査報告書に大使のことに触れた部分がなかったかと聞いておるのです。新聞のことは聞いておらぬのですよ。
  265. 高良民夫

    高良説明員 どうも失礼しました。報告書の内容をさっそく調査いたします。もうだいぶ前のことでございますから、私はいま報告書の内容を正確に覚えておりません。
  266. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実は、このときの問題が今度の——運輸大臣、聞いておってくださいね、今度のそのロカ線の電化問題と一連のつながりがあるんです。あるんです。時間がないから残念ですけれども、しかしこれは大事なところですから、この内容を明らかにしてみたいと思います。  長うございますから、問題のところだけ指摘してみたいと思います。まず、アルゼンチン国家が、あるいは国鉄が必要としたのは百五十両だ。それがいつの間にか五百五十両にふえたというこの問題をまず取り上げております。それから無税であった。これを取り上げておる。そしてその中で、当時の大使が、丸紅が日本を代表する唯一の商社である、こういうことをアルゼンチン政府に言っておるんですね。そこで非常に問題が狂ってきた。津田大使であります。ところが、よく調べてみると、そうじゃないんだ、日本のほかの、丸紅以外の商社も入札したかったんだということが日本政府から明らかにされた。在日アルゼンチン大使館を通じて日本政府の考えが明らかにされた。これは私は正しいと思うのですね。ところが、この大使が、丸紅とどういうつながりがあったか知りませんが、そういう助言を向こうの関係者にやっておる。そしてこれが調査委員会で問題になっている。これは私は、外務省の出先として重大な関心を持ってもらわなくちゃいけない事件であろうと思うのです。もう当時のことは十年前ですからよく覚えておりませんというように片づけられる問題であろうか、これが。私は、このアルゼンチンの一九六二年九月二十五日発表の国家調査委員会の報告書の全文をひとつ資料として出してもらいたい。この関係が明白になるわけであります。つまり、そのときに非難をされて、そしてしかもその丸紅の脱税のために、アルゼンチン国家はどれだけの損害を実際に受けたかということが詳しくこの報告書の中に出ておる。甚大な被害を国家に与えておる。で、このようなことになぜなったかということは、前の大統領の責任でもあるということが書いてあります。つまり丸紅といえども、その国家の許可なしにはそういう無税にはならぬと思いますから。それでこれが指摘をされて大問題に現地ではなったはずです。こういうことをなぜ外務省はよく把握してないんでしょうか、これは問題ではないんでしょうか。外務大臣のお考えを聞きたい。
  267. 愛知揆一

    愛知国務大臣 アルゼンチンの国情についてとやかく申すべきではないと思いますけれども、ペロン大統領以来現大統領に至りますまで、大統領も三代かわっておりますし、やはり内政上もいろいろまた日本とは違ったようなところもございましょうし、それらの背景等からいって、いろいろまあ、申し上げるのには微妙なこともあったのではないかと思います、アルゼンチンの国情の中に。しかし、それはそれといたしまして、ただいま御提起になりましたような件については、だいぶ前のことでありますし、またアルゼンチン国内の問題でありますけれども、ひとつ、できるだけ当時の状況などを調べまして、客観的にごらんいただけるような資料がございましたらごらんをいただくようにいたしたいと思います。
  268. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この国家調査委員会の報告書は、全文、ひとつ正確な日本語に訳して当委員会に提出してもらいたい。  そこで、いま河崎大使は、先ほどのお話によりますと三菱重工の顧問をしておられるわけですが、この方は罷免をされたんですか、どういう姿でやめられたんですか。
  269. 愛知揆一

    愛知国務大臣 依願免官という形で退職をいたしました。
  270. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この大使は、例の「日本の素顔」でございますか、ホッテントット、この件が明るみに出て責任を感じておやめになったのか、あるいは一連のこの十年来のこのアルゼンチン国鉄近代化の問題に深入りし過ぎておやめになったのか、あるいは、ただやめたいからやめられたのか、その辺は外務省は把握しておられますか。
  271. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申し上げましたように、本人の退官の希望に応じて、願いによって退官を認めたわけでございまして、このいま問題にせられておる案件とは関係は全然ございません。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、あとからもいろんな資料が出てきますが、全然なかったのかどうかは一番最後にひとつ論評してみたいと思うわけです。  そこで、現地に経済専門週刊誌の「エコノミックサーべー」という有名な専門誌があるんです。これが三月十八日付でこのアルゼンチンの国鉄の電化問題を取り上げております。で、この内容を外務大臣は御存じですか。
  273. 愛知揆一

    愛知国務大臣 遺憾ながら——今年の、今月ですね、これはまだ、遺憾ながら、私は承知しておりませんでした。
  274. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この「エコノミックサーべー」の三月十八日付の本が出て、非常に現地で問題が起こっておるわけです。そこで三月十八日の日に現青木大使が、このサーべーの報道に関連をして、在アルゼンチンの日本商社を招いて善後策を協議されたということが、時事通信の現地特派員によって報道されている。青木大使から何か報告がありましたか。
  275. 愛知揆一

    愛知国務大臣 青木大使からはアルゼンチンの事情について随時報告が来ておりますが、この契約問題について特に私の目のとまるような電信は見ませんでしたが、何か、もう一ぺんそれじゃ調べてみます。
  276. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、この三月十八日付「エコノミックサーべー」が掲載している内容について、その内容の信憑性について後ほど外務大臣の御見解を承りたいと思います。そこで、このロカ線電化問題を中心とする商談について、現地の青木大使は何か意見の具申を本省にされておりますか。
  277. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申しましたように、私はいまお述べになりましたようなごく最近のことについて、特に詳細な電信はまだ見ておりません。あるいは来ておったのを私がうっかり見落としたかもしれません。しかし、一般的には、この国鉄の電化計画に対する協力問題というのは、相当前から私も耳にしておりましたし、現地の大使館といたしましても、適時その状況等については報告が来ておりますことは、私も承知いたしております。
  278. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 意見具申が来ておるはずであります。いま私が言っておるのは、先ほどの「エコノミックサーべー」に対する青木さんの報告じゃないんですよ。それとは別に、この国鉄電化問題についての意見具申が来ておるはずだと私は言っておるのです。   〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕
  279. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど私一般論で申しましたように、この問題についてはアルゼンチン側が特に日本の国鉄の現状などに高い評価をして、かつ輸出入関係等からいっても、自国産品の最近日本に対する輸出が相当ふえておるから協力を頼みたいという、その基本線については現地大使館としてもむしろ積極的な関心を持っております。ただ、今後の扱い方については慎重に扱ってほしいということを意見具申として一般論として来ていることは、これは私も承知いたしております。
  280. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その意見具申の中に現地の人物でコステリッツという人物の名前が入っておりはしませんか。
  281. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の記憶では、コステリッツですか、この人の名前を報告の中で見たことがございます。
  282. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、このコステリッツという人物はどういう人物でありますか。
  283. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も実はそう詳細にインフォーメーションを分析しておりませんから、あるいは間違っておるかもしれませんし、またアルゼンチン国の相当有力な人物のことですから、人物評などを申し上げるのはなお適当でないと思いますが、相当の企業を持ち、資産家であり、また社交界等においてもかなり有名な人物である、こういうような人柄であるということは、私は一般的の評価として承知いたしております。
  284. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体青木大使意見具申、見解というものは以下読み上げるような見解であるのかどうか。一、ロカ線電化は時期尚早、二番目、近代化計画の一環として直流電車商談は国産化を取り入れることが必要である。コステリッツのごとき国際ブローカーの起用は商談自身を毒するとして、以下なぜそうなのかということを相当詳しく言ってきておるはずである。そしてその中で、先ほど申し上げた一九六二年の国家調査委員会で問題にした当時の丸紅飯田の商談について、このコステリッツ氏がからんでおるということがあの意見具申の中にあるはずであります。しかし、この商談は、いま外務大臣がおっしゃったとおり、日本にとっては非常に重大なものであるから、あまり見苦しいことはないように、ひとつ日本は一体化して、各商社間の内ゲバ等がないように一本化して、そして強く当たることが望ましいというふうに結んであると思いますが、大体以上のような内容でございますか。
  285. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国際間の情報でございますから、詳細なコメントを私からすることを差し控えますけれども、要するに、先ほど申しましたように、日本としても非常に大事なことであり、アルゼンチン政府としても望んでいることであるけれども、取り扱いについては慎重に本国側、つまり東京においても慎重に扱ってほしいということがその趣旨において一貫しておるところでございます。  それから、先ほど来御説明しておりますように、やはり日本側としては、ともすると過当競争のおそれもあり、また、それらに関連して、これはアルゼンチンだけではございませんが、なかなかこの経済協力というものは微妙な扱いをしなければならない。ということは、それぞれの国の国情等もありまして、たとえば利権的な扱いをされたというようにとられるような事実がなくとも、とられるような疑いやおそれが出てくるような場合も間々ございますから、そういう点からも申しまして、やはり日本側の関係業者、これが一体になって、そしてみんなでよく相談をして合理的にやっていくことが望ましいと思います。  それから、冒頭に御説明いたしましたように、両方の計画を合わせると一億八千万ドルというような大額のものでもあり、かつ非常に長期間にわたるものでありますから、どこをまず取り上げるのに分断していったらいいかというようなことについては、いろいろな意見もあり得ると私は思うのであります。大使といたしましても、必ずしもダイレクトに自分の意見がこうこうだというのじゃなくて、こうこういう考え方もあり得る、こういうことも意見として出ておるということの客観的な報告が大使の報告としては主たる内容である、かように私は理解いたしておりますし、そのとおりになっておるはずでございます。
  286. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 公開の場でありますから、それ以上のことは言えないかもしれません。  先に進めます。建設大臣にお伺いします。万博のアルゼンチン館ですね。これの受注はどの会社が請け負ったんですか。
  287. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 建設省が実質上これを指導もやっていないようでありますが、いま調べさせてみます。建設関係でございますから、すぐにわかるはずでございますから……。
  288. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 万博担当大臣も御存じないですか。
  289. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうも恐縮でございますが、存じません。
  290. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃこれまたあとで御報告をいただきたい。  駐日アルゼンチン大使館に日系のアルゼンチンの方ですが、ホルヘ黒川という商務官がおられますか。
  291. 高良民夫

    高良説明員 昨年まではホルヘ黒川という商務官は一等書記官でおりました。今年の初めにアルゼンチンに帰ったと聞いております。なお、家族はこちらに残っておるようでございます。
  292. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは商務官をいまやめられておるんですか。ただ向こうに異動されたというだけですか。
  293. 高良民夫

    高良説明員 アルゼンチンに帰りまして、どういう状態でおるかは私存じません。
  294. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど申し上げたとおり、この商談は非常に長期にわたっております。四人の大使関係があります。その中で特に三十八年の十月七日から四十二年の二月九日まで約三年半在勤された田中一男大使。この田中一男大使がなかなかかたい人であった。そこでこの商談が正しいルートに乗るようにずいぶん苦労された模様であります。しかし、残念ながら日本の丸紅飯田あるいは関係の商社、それからアルゼンチンの先ほど名前が出ましたコステリッツ等々で、こういう融通のきかない田中大使は早く異動させたい、そういう運動が行なわれたという私は確証を持っておるのですが、そういう事実は把握されておりますか。
  295. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、現在そういうことは把握しておりません。
  296. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 田中武夫君より関連質疑の申し出があります。これを許します。田中武夫君。
  297. 田中武夫

    田中(武)委員 たまたま田中大使の話が出ましたので、ちょっとこれで関連をして申し上げておきたいと思うのです。  実は六六年、四十一年の秋、私はアルゼンチンへ参りました。そのときにアルゼンチンの大使田中大使でございました。御承知のように彼も兵庫県でございまして、同郷でございます。いろいろと話をしたりあるいは聞いたりしたわけなんですが、そのときに詳しいことは申しません。ただ、国鉄の電化問題等々でいろいろと問題がございまして、あるいは頭の痛い問題もありましてといったような意味のことをおっしゃっておったことを、いま田中大使という名前が出まして、私と同姓だからというわけじゃないですが、そういうことを思い出したので、楢崎委員の質問に関連をいたしまして——この田中さんは御承知のようにかたい、私と同じようにかたい人であります。さもありなんとこう思いましたので、関連をして一言だけ申し上げておきます。
  298. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実はこれを立証する数々の資料があるわけであります。そしてその中には、残念ながら、現在の与党の一部の方の名前やあるいは外務省の高官の名前が出てきております。私は公開の席でありますから、この取り扱いについてどうしたらいいのか、私自身も実は迷っておるところであります。先ほど来重要な資料について、数々の保留がありました。それらの資料が全部出そろって、またこの私がつかんでおります内容も重要でありますから、これをどう取り扱うか、このまま進めていいのかどうか、委員長のお考えを聞いてみたいと思います。
  299. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 楢崎君に申し上げますが、個人的な名前をおあげになりますのは、この席ではいかがかと存じますので、その辺のところを御勘案の上、御発言をいただきたいと思います。
  300. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかし、内容が、やはり私もこれを取り上げる以上は責任がありますし、うやむやなことでは済まされないと思いますが、たとえば非公開の理事会なら理事会で先を取り次いでいくならいくということでもけっこうですが、どうでしょうか。   〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕  事が重大でありますし、かつての第三次防のFX——グラマン、ロッキードをめぐる商社間の見苦しい争い、それにからんだ政界の一部の動き、これとほとんど同じ状況が確実にある。少なくとも国民の税金によって行使される海外経済技術協力なるものが、そういう暗い影を持った事件をはらむとすれば、これは私は国民に対してもたいへん申しわけないことであろうと思います。  それで先ほどの、一九六二年九月二十五日発表のアルゼンチンの国家調査委員会の報告書も重要な関連があります。その資料はまだお出しいただいておりませんから、その他、きょう直ちに御答弁がいただけなかった問題を含めて、この問題を委員長の手元においてどのように処理をしていただけるのか、それをお伺いして、一応ここで私は自分の質問を保留にしておきたいと思います。
  301. 中野四郎

    中野委員長 先ほど申し上げたように、資料が出ましたその機会にお聞きを願うようにいたしたいと思っておりますから、御了承願います。  根本建設大臣。
  302. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 先ほどお尋ねにありましたアルゼンチン館は藤田組が施工しておるようでございます。
  303. 中野四郎

    中野委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  304. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めて。
  305. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど申し上げたとおり四月二日には調査団が現実に参るのですね。そしてこの調査団の派遣をめぐって現地では各紙が反対、賛成に分かれて非常に騒いでおるのです。その資料もあります。だから外務省としてはその資料をいつまでに出せますか。四月二日に来るのです。その前に私は出してもらいたいと思うし、その資料が出た段階で、取り扱いは理事会におまかせしたいと思います。
  306. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申しておりますように、ずいぶん古いことでもございますし、その委員会の報告書というものは相当大部なものであるように承知しておりますから、これを的確に日本訳をいたしまして印刷をしてお配りするというのには、どうしても二日ぐらいはかかるかと思います。
  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは大体二日なら四月一日ぐらいだと思いますから、その資料が出た段階で取り扱いは理事会におまかせをいたしたいと思います。
  308. 中野四郎

    中野委員長 これで質疑は終わりましたか。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間を残しておかないとさせていただけないでしょう。
  310. 中野四郎

    中野委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  311. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めて。  中曽根防衛庁長官
  312. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 栄誉礼の件でございますが、羽田でもどこでもやっておりません。あの方は陸軍中将だそうでございまして、陸幕長に敬意を表しには来たそうです。それから防衛大学に行って防衛大学の学長に会ったことは会ったそうであります。しかし、栄誉礼はどこでもやっておりません。
  313. 中野四郎

    中野委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  314. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めて。  これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、田畑金光君。
  315. 田畑金光

    田畑委員 最初に私外務大臣にお尋ねをいたしますが、先般のカンボジアの政変によりまして御承知のように南ベトナムとの国境方面ではいま非常な混乱が起きておるわけです。このような状況では戦火がインドシナ全地域に広がるという危機すら感ずるわけでございますが、けさほどの新聞の報道等によれば、すでに解放戦線の軍が首都プノンペンの五十四キロ南に接近しておる、こういうような報道も伝えられておるわけであります。私は、今回のこのカンボジアにおける政権の交代について、政府としてはこれを通常の政権の交代と見ておられるのか、あるいはクーデターあるいは無血クーデターと見ておられるのか、この点をまず伺いたいと思います。
  316. 愛知揆一

    愛知国務大臣 カンボジアの問題につきましては、カンボジア政府外務大臣からわがほうのカンボジア駐在の大使に対しまして、今回シアヌーク殿下の元首としての地位を解任して、そして暫定的な元首のその間における代理を任命した、これはカンボジアの憲法によって合法的な手続によって行なうものである、それから、従来からカンボジア政府としてとってきました外交姿勢、政策はそのままである、こういう通報を受けたわけでございます。カンボジアと国交関係のある各国に対しては、同様の、カンボジア新政権としてはさような態度をとったわけでございます。同時にまた次の日に駐日カンボジア大使から日本国政府に対してもそれと全く同様の通報がございました。現在政府といたしましては、新政府が同国の憲法によった手続によってさような措置をとったということでございますから、これを一応そのまま聞きおきまして、これは革命というようなものではなかろう、したがって新政権の承認とか不承認とかいうことではなくて、その先方政府申し入れを承りおきますと、こういう態度をとっておるわけでございます。大体において各国の態度も現在のところさような状況のようでございます。
  317. 田畑金光

    田畑委員 一九六三年十一月のベトナムにおけるゴ・ジン・ジェム政権が追放されたときも日本政府としては、ドン・バン・ミン政府に対し承認を行なっておるわけであります。今回のカンボジアにおける政権の交代を見ましても、姿としては元首が外国に旅行中に起きた政権の交代であります。同国の憲法についてつまびらかにいたしませんが、憲法的な手続に基づいてやったかどうかということは疑わしいわけでございまするが、憲法に基づかない政権の交代ということなれば、当然これはクーデターに基づく政権の移動、こういうことになるわけでありまするが、政府といたしましては、向こうのほうからの申し入れをそのまま認める、そして正当な政府の交代だということで今後とも行かれる方針であるか、この点、明らかにしていただきたい。
  318. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一九六三年当時のベトナムの状況におきましては、先方の当時の新政府がそれまでの憲法上の手続によって合法的——合法的と言うと語弊がありますが、従来の憲法に基づく手続として政権の交代はしたものではないという趣旨のほうが多かったものでございますから、今回のカンボジアのいわば政権交代の扱いには、若干こちらとしても態度を変えておるわけでございます。カンボジアにつきましては、いろいろ情勢も流動的でございますし、先ほど申しましたように、先方の新政府申し入れを承っておく、その状況でございますから、現在は国交が従来どおり正常に続いているもの、かように理解していただいてけっこうかと思います。
  319. 田畑金光

    田畑委員 私が心配することは、シアヌーク元首は、今回のやり方に対して非合法として、御承知のように北京において亡命政権をつくっておるわけです。国内においては、これから相当混乱が予想される。いま外務大臣のお話がありましたように、不確定な、流動化する状況がこれから展開されるものであろうと見ておるわけであります。そういう状況下において私たちが心配することは、過般の新聞報道によりますると、アメリカ政府もいま外務大臣と同じようにロン・ノル政権は国内法の手続に基づいた正当な政府であるという考え方をとっておるわけでありまするが、これから心配されますことは、アメリカがベトナムに軍事的な介入をやってきた歴史的な経緯を見ましても、現地政府要請に基づいて——これが法的な根拠になっておるわけであります。こういうことを考えてみますると、今回アメリカが正当な政府として認める、そうしてまた日本外務大臣も同じような日本政府の態度をとっていかれる、今後事態の発展でアメリカがカンボジアに軍事介入する、こういうようなことになってまいりますると、米政府自体としてもこれはさらに混乱した状況に巻き込まれる危険性というものが多分に出てこようと考えておるわけであります。ジーグラー大統領報道官は、御承知のように二十八日、現在ベトナムで米軍と同盟軍が実施しておる防御的な反撃には、カンボジア、ラオス領内にいる共産軍に対する地上軍の越境も含まれておるということを初めて明らかにしておるわけであります。このことはわが国としても重要な関心事であると見るわけでありまするが、このように将来危険がいろいろの面から予想される事態に対処して、日本政府といたしましては、今後どういう方針で臨まれるのか、この点をひとつ明らかに承っておきたいと思うんです。
  320. 愛知揆一

    愛知国務大臣 このロン・ノル政府をめぐるカンボジアの情勢というものは、先ほど申しましたように、流動的でございますが、いま御指摘もございましたように、当面最大の問題というのは、北越、NLFの軍隊がカンボジアの領内におる、そしてこれが居すわる、あるいは積極的な攻勢を展開するということがどういう状態になるかということが最大の関心事であると思います。ロン・ノル政権が成立いたしまして、ただいままでのところ、明らかにしておるところは、この北越、NLFの軍隊については、平和的な話し合いによって居すわりをやめてもらう方向に持っていきたいということを明らかにしておるわけでございます。同時にまた国際監視委員会、ICCでございますね、この復活、またカンボジア内での機能の回復ということを関係国に要請いたしておるわけでございます。またさらに北越、あるいはNLFとカンボジア新政権との三者会談の再開ということもそれぞれの当事者に申し入れておるわけでございます。あるいはまたさらに進んで、この問題を国連に提訴することも検討中である、こういうふうな態度をとっておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、こうした平和的な解決の動き、あるいはその要請というものが、何らかの形で実を結んで、平和的な解決が最も望ましいところではないかと、これを見守り、かつ期待しておるわけでございます。  それからただいま御指摘がございました最近のアメリカのジーダラー報道官の談話と申しますか、質問に対する答えというものは、たとえば北越、NLFというようなところがカンボジア内で積極的な攻勢をかけてきて、非常な混乱が起こるようなときに、これに対する何らかの措置をするということも排除される考え方ではない、というような趣旨のことを触れたのではなかろうかと思いますが、要するにこのカンボジアにおける情勢は、流動的ではあるけれども、このロン・ノル政権の態度を見ましても、何とかして平和的な話し合い、あるいは三者の会談、あるいは終局的には国連への提訴、何らかの方法、手段によりまして、平和的な解決が望ましい、こういう態度で静観をしておるというのが現在の政府の立場でございます。
  321. 田畑金光

    田畑委員 今度のこのカンボジアの政変というものは、アメリカのCIAが背後に動いておるという見方も流れておるわけであります。また、西欧諸国の国際評論家の中でも、このような意見を述べておる者がおるわけでありまするが、政府としてはどのように見ておられますか。
  322. 愛知揆一

    愛知国務大臣 要するに政府としては、このベトナムをめぐる戦乱がいかなる意味でも拡大しない、エスカレートしないということを期待するわけでありますけれども、いま申しましたことにさらに一言加えてまいりますと、このロン・ノル政権としても、中立、独立、主権の維持と、それから先ほど申しました平和的な話し合いということを中心にしておりますし、それからアメリカのほうは、ロジャース国務長官が、最近におきましても、このロン・ノル政権の態度、姿勢というものを全面的に尊重しております。それからカンボジア新政府としても、いまのところいかなる軍事援助の要請も行なっていない、また今後も行なわないであろうという見方が一般的でございますので、ただいまのところ、先ほど申しましたように、そういった成り行きを注視し、かつそういうふうに成り行くことを希望し、期待しているという以外に、ただいまのところそれ以上日本政府として意見を申し上げることは、仮定を前提にして申すことになりますから、流動的な現状におきましては、以上のような態度であるということを申すのにとどめておきたいと思うわけでございます。
  323. 田畑金光

    田畑委員 私は、いま外務大臣がお答えになられた、平和的な方法で話し合いがつくというこれからの事態の発展であるといたしますならば、まことに幸いであるし、またそのように、日本政府としても最大の努力を払うべきであると考えるわけであります。ただ、問題は、いまの状況は、そのように話し合いで問題が解決されるであろうか、三者の間であるいはテーブルにつき得るのかどうか、あるいは国連に提訴してこの事態の紛争が処理できるかどうか、こういうことは非常にこれは流動的であるし、また疑問点が多々あるわけであります。ただ、言い得ることは、すでにカンボジアの領内に北ベトナムの軍、あるいは南ベトナムの解放戦線の軍が入ってきた、このことは現実であるわけであります。そこで、いわば中立的な国であるカンボジアに第三国の軍隊が入ってきた、しかもそれは南ベトナムにおいて、アメリカあるいは南ベトナムと交戦しておる交戦国である、こういうことを考えてみますならば、当然事態の発展いかんによっては、カンボジアとしては、カンボジアの主権に基づいて、北越の軍あるいは南ベトナム解放戦線の軍の排除をやるというのが中立条約のたてまえだと見るわけでありますけれども、事実上カンボジアの実力をもってしてはそれができない、結局アメリカに援助を求める、こういうようなことになってきますると、またカンボジアを舞台にしてどろ沼戦争が拡大されていく、こういうようなことになると見るわけでありまするが、私の申し上げたいのは、いわゆる追跡権の問題であります。追跡権——すれば、南ベトナムの国境にあるシアヌーク・ルートをアメリカが攻撃することによって、だんだんまた一面においては、カンボジアに対するアメリカ軍の介入ということが、そういう面からもまた出てくることも考えられるわけでありまするが、まあこういうことを考えてみまするならば、まことにこれは外務大臣のお答えのとおりに、日本政府としていま何をなすべきか、こういうことは、一言にして言い得ない点もあることも重々承知するわけでありまするが、日本政府といたしましては、この際アメリカに対してもものを申すべき面があるように私は考えるわけであります。外務大臣の所見、あるいは総理の所見を承っておきたいと思います。
  324. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、なかなか複雑で、かつ慎重な態度を要する点であろうと思います。先ほど来申し上げておりますように、幸いと申しますか、カンボジアのロン・ノル政権の態度は、先ほど申し上げたとおりでございますし、また、ただいまのところ、米側に対して介入を要請しているという事実もないし、また米側としても介入を要請してこないであろうというような趣旨のコメントを国務長官もしておるというような状態でございまして、一つの方法だけではなくて、ロン・ノル政権としても、平和的な話し合いならどういう話し合いにも応ずる、あるいは積極的に道を切り開こうとしておりますので、これがたとえば国際監視団の機能の開始というような形でも私はけっこうだと思うのでありますが、とにかくエスカレーションが起こらないようにということについて、静観しながら、日本としてなすべき役割りがあれば、その役割りを十分に果たしていきたい、かように考えております。  ただいまの御質疑は、アメリカ政府に直ちに申し入れるべきではないかという御意見でございましたが、現在のところ、米政府に、カンボジア問題について直ちに何らかの申し入れをするということは考えておりませんが、るる申し上げました方——と申しましてもソ連に対する話し合いの道などもあろうかと考えておりまするが、こういう点について政府の今後の心がまえなり、考え方なりをいま一度伺っておきたいと考えます。
  325. 愛知揆一

    愛知国務大臣 カンボジアにつきましての情勢の分析、判断あるいは直ちにとるべき措置等について、直ちにとるべき措置としてはまだ考えていないということを申し上げたわけでございますが、基本的には先ほどのような考え方で進むのが適当であろうと思っております。  また同時に、ラオスも実は相当心配の状態だと思いますけれども、このラオスにつきましても、御案内のように、かねがね現政権はこれはひとり西欧側だけでなく、共産圏側からも支持を受けてできました中立的な政権である、それから同時に英ソ両国がラオス問題についての共同議長国である、そして国際監視団というものもできておる、こういう状況にかんがみまして、ラオスについても関係国とも十分密接な連携をとり、また日本側から見てこういう措置をとられることが望ましいというような要請等についても、相当繰り返し努力をしておるわけでございます。  要はこのインドシナ半島がさらに戦火の渦中におちいらないようにということについてあらゆる努力と要請を続けてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  326. 田畑金光

    田畑委員 私は次に沖繩問題について、若干お尋ねしたいと思うのでございまするが、端的にお尋ねいたします。  日米共同声明の合意に基づいて一九七二年中に沖繩が返還されることになったわけでございまするが、米国との返還作業はいまどのような状況になっておるのか、いつごろ返還協定を締結するというめどで話し合いが進められておるのか、この点をまず外務大臣に承りたい。
  327. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今月になりましてから、三日の日に私と駐日米大使との間に書簡交換を行ないまして、まず第一に日米協議委員会の性格を変更いたしまして、沖繩について従来日米の援助費だけを協議する場でございましたのを、沖繩の復帰準備を推進するという仕事をこの委員会で担当することに合意をいたしました。同時にこの協議委員会で今後策定いたします返還準備の原則や指針に従って、具体的な復帰準備の現地でとらるべき措置や実施計画について協議するために、那覇に準備委員会が設けられることになりました。この準備委員会関係では、日本政府代表の性格あるいは機能について、今国会で法律案の御審議を願い、すでに衆議院では御審議を終了いたしまして、いま参議院で御審議をいただいておりますけれども、実質的にはすでに那覇で作業を始めておるわけでございます。こうしてまず東京の協議委員会で、総務長官と私がこの委員会の正式のメンバーでございます。ここで返還準備に関するあらゆる問題を取り上げて、そしてこれを大綱的にさばいていきながら、米側との話し合いを進めてまいりたいと思っております。  それから、もう一つは返還協定の問題でございまして、これは日米間の外交折衝の問題でございますが、返還協定の作業を並行的に進めることにいたしまして、双方の事務当局間におきましても寄り寄りこの取り上げ方についての話し合いは始めつつあるところでございます。何分にも明後年に迫っております返還でございます。その間になさねばならぬことが相当にたくさんございますので、よほどスピードをかけて日本側としても準備を急がなければなりません。同町に米側との協議も進めていかなければならないので、これはよほど努力を新たにしてかからなければならない。関係者一同かたい決意で現在臨みつつあるわけでございます。  なお、当然のことではございますけれども、沖繩の県民百万の方々は、この本土と一体化の問題については非常な関心と、同時に懸念を持っておられますから、こういう点も十二分にくみ上げていきながら、この仕事に臨まなければなりませんわけで、現地に設けられました準備のための委員会等におきましても、現地百万の沖繩県民の方々の意向が十分に反映するように特段の配慮をいたしたいと考えておるわけであります。
  328. 田畑金光

    田畑委員 私、いまお尋ねした点は、沖繩の返還協定の交渉は、外交折衝としてだれとだれの事務段階でいま話し合いが進み、どのような状況になっておるのかということが一つ。さらに第二の点として返還協定はいつごろをめどに調印をしようとする方針なのか、その点を明確に伺いたい。
  329. 愛知揆一

    愛知国務大臣 率直に申しますと、返還協定の案文づくりというのは、規模は全く違いますけれども、小笠原等の場合の前例もございます。そういうことで、この協定の案文づくりのほうは、従来の経験も生かしながら日米間で進めてまいりたいと思っておりますけれども、一番大事なことは、むしろただいま申しました協議委員会や準備委員会で取り上げ、かつ合意を進めていかなければならない実体的な問題の処理でございます。これはただいま申しましたようになかなか骨の折れる仕事であると思います。いつまでにそれをやるか。早いほどけっこうなのでありますが、私どもといたしましては七二年中のなるべくすみやかなるときに返還が間違いなく実行できますところを終点としまして、それから逆算して、あらゆる措置、あるいは国会における御審議等の時間も十分見まして、考えていかなければなりませんから、結局早いほどよろしいということになり、しかし、そうかといって、実体がむずかしい問題でございますから、いまこの時点で何年何月までに協定の調印ができるようにとはっきり申し上げるのには、ちょっとまだ時期が尚早でございまして、要するに、早ければ早いほどよろしいということでスピードをかけておりますということを、ただいまの段階では申し上げるにとどめたいと思います。
  330. 田畑金光

    田畑委員 これは山中総務長官にお尋ねしたほうが適正妥当かと思いますが、復帰対策大綱というのはもうできておるのですか。
  331. 山中貞則

    ○山中国務大臣 復帰対策大綱という内容の問題でありますが、ことばとしては基本方針というようなものになるかと思いますが、おおむね各省庁間の詰めを終わりまして、最終的に手続をとるところまでまいりました。
  332. 田畑金光

    田畑委員 そこで私は、今後の沖繩返還問題の処理については、外務大臣のお話がありましたように、実体的な問題の処理と並行して、返還協定の交渉も同時並行的に進めていく、それはそういうことになろうと考えておりますが、そうしますと、施政権返還協定あるいは実体的な問題の処理についてのいろいろな関係立法措置等が当然出てくるわけでありますが、こういう問題は一括して国会の承認をとるというような手続になるのか、あるいはまた、たとえば教育や社会保障制度等については、事前に、本土との一体化という面から見て、七二年を待たずして本土と同じような法律、制度等を受けられるような形になるのかどうか、この点はどうでしょうか。
  333. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは総務長官からもお答え願ったほうがよろしいと思いますが、私の立場から申しますと、協定の調印ができますれば、これを御審議を願って批准という問題になりますが、私は、そのときに原則としては関係の事案が一括して御審議いただけることが一番望ましいのではないだろうか、かように考えております。しかし、まだ細部にわたりましては、いま申しましたように、中身の話し合いがこれから緒につこうとしておるときでございますから、あまりその辺のところをかたくおとりにならないでいただきたいと思います。
  334. 田畑金光

    田畑委員 私がお尋ねした一つの点は、返還協定あるいは返還に伴う国内の関係立法措置について、沖繩において適用されるいろいろな法律、制度等の関係立法措置については、同時に国会に承認手続をとるのかという問題と、もう一つは伝うるところによれば、教育や社会保障というような問題等については、返還前に本土との一体化をはかるという具体的な施策政府としては考えておるということも言われておりますが、この点についてはどうなのか、この点を御答弁願いたい。
  335. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは復帰までにいたしておかなければならないことと、復帰と同時にしなければならないこと、復帰をしてもなお暫定特例として、特殊環境のもとに、あらゆる法体系のもとで残さなければならないであろうと思われるもの等々がございます。たとえば、今国会にも、すでに検察官、弁護士等に関する復帰に伴う身分の問題につきましては、これから先の二年間に、円滑にそれぞれの人たちの資格が付与されるような法律が法務省から提出をされているわけでありまして、ただいま外務大臣が言われました外交文書と一括してなるべく提出をいたしますが、しかしながら、最終的には七二年に復帰の時点が定まりましたとき、本土予算の中で一括して予算として組み込まれるときに延ばさなければならない予算上の特殊形態等のものも含めて、これはいろいろの形態のものがあろうかと思いますが、原則はなるべく御審議の便に供するためにそろえて出すように努力をしたいと存じます。
  336. 田畑金光

    田畑委員 この返還協定については、私は三つの場合が考えられる、こう思うのです。七〇年秋の調印、来年の通常国会に批准、七二年初頭の返還。第二は七一年、来年の夏ごろに調印、秋の臨時国会で批准し、七二年の春ごろに返還。第三の考え方としては、七一年の六月ごろ調印、そうして同年秋の臨時国会に批准、七二年の夏ごろ返還。こういうようなことしかないと見ておるわけでありますが、私は返還協定というものは、先ほど外務大臣のお答えのように、奄美の返還、小笠原の返還の前例もあり、返還協定そのものはさほど問題ではないと考えるわけでありますが、実体面においていろいろむずかしい問題はあろうと考えます。しかし、佐藤総理が七二年の早期返還ということを今日まで国民に約束されてきた経過を見ますならば、早期返還ということになってきますと、こういうような問題についてはできるだけ早期に批准の手紙をとることか七二年早期返還を具体化する道であると見るわけでありまして、そういう面において、私は、この問題についてはできるだけ早い機会に諸般の準備を進めたい、こういうのが佐藤総理の気持ちであろうと考えるわけであります。  よく佐藤総理が国連に出席するかしないかというような問題が言われておりますが、また一説によれば、この沖繩返還の協定ができる時期あるいはまた批准される時期がおそらく佐藤さんがおやめになる、引退されるころじゃないかなという見方も出ておるわけで、佐藤総理としても、この問題には政治的な生命をかけて取り組んできた、これが国民に対する約束です。そうなれば、早期に協定その他を処理して、早期の返還を実現する、こういうことが佐藤総理の心境じゃないか、こう思うのでございますが、ひとつ佐藤総理の考え方を聞かしてもらいたいと思うのです。
  337. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣がお答えいたしましたように、できるだけ早目に諸準備を終えること、これが何よりも大事なことだ、かように私は考えております。
  338. 田畑金光

    田畑委員 政府としては時期のめどなどはないわけですか。
  339. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 時間のめどがないわけじゃございません。七二年中に復帰するのでございますから、その前に諸準備を終えなければならぬ、終えるのは当然です。それで先ほど外務大臣から詳細にお答えしたとおり、そのとおり私も考えておるとお答えする以外にはございません。  ただいま、それではいつを考えておるか、こう言われると、さっきも二通り分けて説明をされたと思いますが、政府間の協定ができても、やはり批准手続、それを経なければならない。それが通常国会の場合か、あるいは臨時国会を開くか等々の問題もございますが、できるだけ早目に諸準備を終えて、そうして七二年になれば復帰が実現するように私どもが準備をしておく、これは当然のことであります。先ほど来申したとおりで、いまその時期を申すことができないのかまことに残念でございますが……。
  340. 田畑金光

    田畑委員 復帰の問題で一番重要な問題は、沖繩の経済開発の問題だと見るわけです。今日沖繩の現地では、経済界はもとより、一般の住民の間に復帰の不安が生じておるといわれておりまするし、またそれは事実であるわけであります。  そこで、三月の十九日から二日間大阪で沖繩経済振興の懇談会が開かれたわけで、この懇談会においては、本土の企業の沖繩への誘致についての話し合いが行なわれたと私は聞いておりまするが、本土企業の沖繩進出はどの程度可能性があるのか。通産大臣、これはあなたに対する質問だ。沖繩では石油やアルミなど米国の大企業が進出し、あるいは進出を計画しておるわけであります。琉球政府はこれを歓迎する。ところが通産省はこれを押える、こういう方針ですね。こういうことになってきますと、いわば国益と県民の利益との衝突ということになってくるわけでありますが、とにかく沖繩が過疎地帯におちいらないように、沖繩の人方がまた昔のように本土に来なければ働く場所がないようなことにならぬように、そうするためにはやはり積極的に沖繩に対する、沖繩に適する企業の誘致をはかることが一番大事なことだ、こう考えるわけです。そこでこういう問題等について、通産省としてはどのような指導なり、今後の援助なりを考えておるのか。同時に私はこの際山中長官には——長官は非常に沖繩問題については熱心であり、真剣に取り組んでおられるわけであります。歴代の総務長官の中でも実にりっぱであると私は敬意を表しますが、長官としては、いわゆるフリーゾーンの構想などについて発表されておいででございまするが、これもやはり沖繩の現状、将来を考えての構想の発表であると考えておりまするが、この機会にひとつこの問題についても長官から御意見を承れれば幸いだ、こう思っております。
  341. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 沖繩の産業立地につきまして、土地、水、それからエネルギーといったようなものがさしずめ問題になるわけでございますが、一次産業につきましては酪農でありますとか、あるいは蔬菜の栽培等が考えられるわけであります。二次産業ですと、装置産業のほかに加工度の高い工業を考えてはどうか、三次産業は先般来いろいろお話しになっております海洋等々による観光というようなことが考えられるのではないだろうか。大体そういうことを考えておりまして、内地から沖繩に進出する企業がなるべく出やすいように現地との間でいろいろなことを考えております。必要があれば傾斜をつけるような措置を考えることもできるのではないかと思っております。  なお、現在この段階で沖繩に入ってまいります外資につきましては、沖繩の本土復帰が実現いたしますと、それらの外資は現在わが国内地に行なわれておりますと同様の規制を受けるということを承知の上で入ってきてもらいたい、こういうことを申しておるわけでございます。
  342. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大阪で二日間にわたりまして行なわれましたことしの日琉経済会議は、例年にないと申しますか、むしろことしがたいへん真剣な議論の展開をされた最初の年といっていいと思うのです。というのは、現実に総理のニクソン大統領との会談によりまして七二年中の復帰ということがセットされましたので、沖繩の立地条件に伴う産業の本土企業の進出なり、あるいは外資の導入なり等について、現実の問題としてそこにテーマが展開されたわけでありますから、無理もないことであるし、喜ぶべきことであると私は拝見をいたしました。  その結果、種々分科会に分かれて激論に近いやりとりもあったようでありますが、両者最終的に申し合わせられました第一項に、国益と県益は一体のものであるという了解に達していただきましたことは、沖繩のためにも本土のためにも私はたいへんよかったと考えております。  それを反映いたしまして、先般沖繩の立地から考えまして、考えられます企業の代表の多くの人を網羅いたしました大々的な実地調査団が行かれました。その結果、鉄その他のいわゆる周辺関連需要の雇用人口等へ貢献の大きいもの、あるいは装置産業等でも、立地条件で現在の電力、水等で可能であるもの等につきましては、大体アルミも含めまして六カ月以内にその態度を決定をいたしますということになったようでありまして、琉球のほうといたしましては、すみやかに本土政府が沖繩に対して本土側企業としてのあたたかい配慮ある行動をとるならば、かけ込み外資等の一部いわれているような、ちょっと無理であると承知でやるような行動は差しとめてもいいという合意ができたようでありまして、たいへんけっこうなことであると考えるわけであります。ことにアルミ等は、六カ月の中でもさらにアルミ業界の調査団を直接業界だけで派遣をいたしまして、その派遣をいたしました後三カ月以内に回答をいたしますという、たいへん積極的な姿勢をとっておるようでございます。  私の全般的な考え方は、沖繩の群島の中でも先島といわれる木島以外の島々につきましては、大体今日まで日本の糖価安定法に基づく沖繩産糖の糖価安定事業団買い入れ保護というものにささえられましたキビ作、並びに自由化をしないという前提において今後も可能である。ハイソ産業というものを中軸に置きまして、それに総合一貫性を持たした意味の畜産というものを、いま通産大臣は酪農と言われたようでありますが、酪農の島内需要には限度がありますので、やはり食肉——島内需要ももちろんでありますが、本土への供給基地たらしめるべく、主として肉牛を、豚も加えまして、中心に、食肉の地域としてめんどうを見ていけば、私は先島の農業というものはやっていける。さらに現在の漁業は過半数が、三分の二近くがくり船の独特の小さい船でありまして、文字どおり零細な沿岸漁業であります。したがって、これらの漁業につきましても、近代化、大型化の援助をいたすことによりまして、資金といたしましてはことしから具体的になりました三万トンの本土米の援助をいたしましたことによる現地の積み立て資金二十億、これを活用いたしまして、本土と琉球との間は無利子三年据え置きの二十年償還でありますけれども、現地ではやはり貸し付けの手数料その他がかかりますので、できるならば二分か三分ぐらいの低利の資金をほしいといま相談をしておりますけれども、そのような資金をもってこれらの企業なりあるいは農林漁業を救済する、立ち上がる力をつけるということによって、将来の展望は、亜熱帯地域に位する日本の最南端の島といたしまして、私は将来大いに有望であると考えております。  一方、本島におきましては、北部のほうはパイン並びにキビにおいて離島と同じようなめんどうを見ていくことは可能である、自立可能であると見ますが、問題は中部から南の軍事基地の密集したところにおける特殊な所得形態である。すなわち三次産業が、コザ市において八〇%すれすれにまで達しておる異常な状態でありますし、那覇市内においても七三%が三次産業の従事者である。これらは軍事基地に依存するところ多大なものでありますと同時に、税制等において本土側と全く天地の隔たりがある。物品税はもちろんかかりませんが、本土では奢侈品と考えて、輸入についても高率関税、並びに国内の販売に対する物品税についても高率の税金をかけております時計、宝石、貴金属等につきまして、現地では一律五%の低率関税をつくっておりまして、内国税がありませんから、そのようなことが一つの魅力となって、軍事基地依存とは別な形態の、三次産業によるいんしんがあるわけであります。これらのところを踏まえまして、本島の、ことに中部以南の地域の産業の振興につきましては、たいへんむずかしい設計書づくりが必要であろうと考えました。  ずっと今日まで、私、大臣になります前から沖繩の問題の未来についての青写真を、私は私なりに研究しておったのでありますけれども、就任いたしまして、自分の責任においてこれらの地域の人々がどのような形で、今後本土への人口流出がお話のように急激に生まれることなく、むしろ現地にとどまって、できれば人口も増加し、所得も停滞することなく維持、向上、発展されるということを理想として、何らかの形態を求めることは不可能ではないということを考えまして、いろいろとまだ国内においては議論のあるところでありますけれども、少なくともフリーゾーン形式のものを考えなければなりますまい、あるいは那覇港を中心にした自由港的なものも考えていかなければなりますまい、そのような思い切ったことをやらなければ、現在の本土の行財政のあり方をそのまま当てはめましたのでは、それらの沖繩の地域の人々の所得が、そのあたりの中南部に大きくウエートを持っておることから考えて、ことばだけの沖繩に対する愛情になってしまうのでありまして、この点はいずれ総理以下の関係閣僚の具体的な御指示をいただきながら、沖繩の人々のために最もよき道を選んでまいるつもりでございます。
  343. 田畑金光

    田畑委員 もう聞く点もないほどこまかにお話しいただきまして、まことにありがたいことと思います。このフリーゾーン構想ということは、私は山中長官のいまのお話を承っても非常に検討に値する政策の方向だと考えておりますが、この点についてひとつ大蔵大臣はどうお考えであるか。さらにまたこの間の、いまお話し申し上げた大阪における経済懇談会では、今後沖繩については沖繩開発事業団、こういう構想をとるべきであるということ、あるいは日本商工会議所でも政府に対してそのようなことを勧告しておりますが、この二つについて、ひとつ大蔵大臣のお考えを承っておきたい。
  344. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ私はフリーゾーンや事業団について研究はしておりませんが、沖繩の復帰といいますと、形式的な——と言っては語弊があるかもしれませんが、条約をつくるとかいろいろな問題がありますが、実体的な経済が一体どういうふうに沖繩県民に生活の安定を与えるか、これが非常な大問題だというふうに考えておるわけであります。そういうことを考えますときに、いろいろ構想がこれから出てくるだろうと思う。その構想に従いまして財政負担という問題も出てくるし、あるいは投融資の必要性というようなものも出てくるだろうと思います。これは、非常に弾力的、積極的な気持ちで、沖繩、本土の一体化という問題に取り組んでいく、こういう気持ちであることだけを申し上げさせていただきます。
  345. 田畑金光

    田畑委員 気持ちであるだけではこれは済まされないわけで、今後山中構想等については、これが実現に内閣全体として協力するよう希望しておきます。  そこで、山中長官の答弁の中にもございましたが、やはり特に中部以南の沖繩の開発というものは、基地の問題と切り離しては考えられないと思うわけであります。すなわち、沖繩の根本的な産業開発については、あの膨大な基地の整理縮小という問題が出てまいろうと思うわけであります。沖繩の総面積の九%を基地が占めておる。五十九の市町村の中で四十六市町村にまたがっておる。本土並み返還ということになってまいりますならば、当然基地についても本土並み、こういう方向になるものと考えておりますが、この基地整理についてはいまどのような日米両国間の取り組み姿勢になっておるのか、あるいは今後どういう方針で基地整理を進めていこうとなさるのであるのか、これをひとつ防衛庁長官から承っておきたいと思います。
  346. 山中貞則

    ○山中国務大臣 基地はどういう方向をとるかという前に、いまどのような実態にあるのかを、実は琉球政府自体もつまびらかにいたしておりません。航空測量一ついままで許されていないわけであります。やっとことしの予算で国土地理院の基本図並みの航空写真の測量等も許されたわけでありますが、これとても基地の部分については、これを空白にするとかあるいは検閲を受けるとか、塗りつぶすとかというような条件にいまなっていきつつあるように思いますが、問題は基地の実態を正確に把握するということが先であります。幸いアメリカの施政権者は軍隊でありますので、この軍隊の人々の感触が、防衛庁の調査であるならば非常な好意的な態度を実はどういうわけか示すわけであります、同じ軍人同士ということもあるのかもしれませんが。そこで、中曽根長官にもお願いをいたしまして、防衛施設庁から現在向こうに参り、基地の立ち入り調査その他について非常に好意ある協力を得まして、調査の第一歩を進めております。まず確実に実態を把握いたしましてから、それをどうするかについては御指示のような感触も持ちながら進めてまいりたいと存じます。
  347. 田畑金光

    田畑委員 沖繩返還交渉をきっかけにして、政府の自主防衛論というものがとみに表面に出てきたわけです。これ自体はニクソン大統領のいわゆるグアムドクトリンにかんがみても、沖繩地域については将来日本が自主防衛に当たるということは、共同声明の精神から見ても当然であると見るわけでありますが、今後沖繩の返還にあたっては、沖繩における自衛隊は米軍との関係においてどういう役割りを果たすようになるのか、その機能等について、あるいは俗なことばで言いますならば、肩がわり等についてはどういう順序でいくのか、これをひとつ中曽根長官から承りたい。
  348. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩在留米軍が、返還時点において、また将来においてどういう機能を沖繩に期待し、どういう兵力展開をやるであろうかという話し合いをよくいたしまして、そうしてその沖繩というものの地位をよく見据えた上で、われわれの考えもきめ、派遣すべき兵力もきめる必要があるだろうと思っております。そうして現地からも民間に返還してほしいという要望も、場所によってはかなりございます。無理からぬ御要望もかなりあるように思います。われわれは現地の皆さんのそういう声を十分尊重いたしまして、引き渡しのときにはできるだけ現地の御要望も達するようにしたいと思います。この間われわれのほうの陸幕長が沖繩の米軍司令官から招待されまして、沖繩の大部分の施設を視察してまいりました。いずれ海空と、相応じて現地視察をするとともに、施設庁からもいま要員を派遣いたしまして、実地調査に取りかかり始めたところでございます。それらの整備を待ちまして、進行させてまいりたいと思っております。
  349. 田畑金光

    田畑委員 中曽根長官が過般来国会で答弁なさっておられる自主防衛五原則は一これは総理にお尋ねいたしますが、政府も、政府の方針として今後あのような五原則の考え方でいくものであると理解してよろしゅうございますか。
  350. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は中曽根君の五原則というものに賛成し、また、それを支持しております。
  351. 田畑金光

    田畑委員 そういたしますと、あの五原則が今後の政府の国防の基本方針と考えてよろしいわけですね。
  352. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことばあるいは表現そのものに、あるいはもう少し変えることがあるかわかりませんが、大体国防の方針としてはあの方向でまいります。
  353. 田畑金光

    田畑委員 国防の基本方針ということになってまいりますならば、当然防衛庁設置法の六十二条によると、国防の基本方針については内閣総理大臣は国防会議にはからなければならない、こういうぐあいに規定されておりまするが、いつごろ国防会議を開かれて国防の基本方針としてお定めになる予定なのか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  354. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 必要に応じて開きますが、ただいま第三次防の実施中でございます。いずれは第四次防を計画しなければならぬだろう、かように思いますので、そういう際にただいまのような会議を開いて、そしてはっきりさす、こういうことが望ましいのではないかと思っております。
  355. 田畑金光

    田畑委員 中曽根長官にお尋ねいたしますが、第四次防についていつごろまでに成案を得て、いまお話しのように、あなたのとなえておられる五原則中心に第四次防について国防会議等の議を経るおつもりなのか、この点承っておきたいと思います。
  356. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ことしの秋までに防衛庁の原案を策定し、来年の夏ごろ国防会議を開き、正式に決定していきたいと思っております。
  357. 田畑金光

    田畑委員 もっと防衛問題についてお尋ねしたいわけでございまするが、時間の制約もありまするので、この程度でやめざるを得ないことは残念でございます。  そこで、私は総理にお尋ねしたいのでございますが、沖繩住民の国政参加に関する国政参加特別措置法案、これについてはいわゆる与党の田澤小委員長私案なるものが四党のおおよその了解のもとに三月じゅうには国会に提案されるものであろうと内外ともに期待をしていたわけでありまするが、だんだん聞いてみますると、与党の中で、この法案要綱について憲法上の疑義がある、こういうようなことでこれまた今日延びておるわけでありまするが、私は、沖繩県民の代表が一日も早く国政参加が実現することをだれよりも総理は願っておる、こう思うのです。そういう点から見ますならば、これは新聞の伝えるところでありますので、正鵠を得ておるかどうか知りませんが、与党のしかるべき機関の中で、憲法調査会でございましたか、あるいは政調会長も同意見やに新聞で見ましたが、憲法上疑義があり、こういうようなことで、せっかく現地においては、もちろん国民的にすみやかに国政参加の法律がこの国会審議成立することを期待しておるにかかわらず、与党の中でこのような動きがあることについてはまことに遺憾と思うのです。総理総裁としてどのようにお考えでございますか。
  358. 山中貞則

    ○山中国務大臣 総理総裁はあとで高邁なる識見を披露されると思いますが、ただいまの問題につきましては、これは議員立法をしていただくことになっておりまして、議院運営委員会中心に各党がおまとめをいただいたものを、私たちがすみやかに国会成立させていただくということを、いまお願いする立場にございます。  おっしゃいましたように、党内において憲法調査会を中心とする——正確に申しますとそのようなことも指摘し得ると思われる論拠のあります問題について、憲法上の議論があることは間違いございませんが、党の大勢といたしましては、総理から党との連絡役をゆだねられておりまする私の立場におきまして、大体憲法上の疑義のある点を明確にしておくということにおいて、各党一致の皆さん方の御意見に沿うた提案がなされる方向にあるということを拝承いたしております。これが私たちの党内の事情のみによってなるべく他党に御迷惑をおかけしないように進むことを政府としては祈っておるわけでございます。
  359. 田畑金光

    田畑委員 ひとつ総理大臣の御所見を承ります。
  360. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま総務長官からお答えいたしましたように、返還する前に、復帰する前に、やはり県民の意向が国政に反映するというか、それに映し出される、こういうことは心から望むところであります。しかし、いまお話を申し上げましたように、憲法上やはり問題がある。はっきり申しますと参議院選挙の場合に、全国区などはたいへん扱いにくい問題のようでございます。そういうようなこともありますので、その他の率柄、どういうふうに調整をとったら県民の意向を国会に全体として反映さすことができるか、そういうことをわれわれとしては考うべきではないか、かように思っております。
  361. 田畑金光

    田畑委員 総理のいまのお答えの中に、全国区の例をあげられて憲法上の疑義云々というお話がございましたが、この問題については、すでに私の聞く限りにおいては、全国区の問題等については一応たな上げにして、この法律についてはすみやかに成案を得てこの国会へ提案しよう、四党共同で成立をさせよう、こういうことになっておるわけです。今日総理のほうから、そのように話のついておる問題を、またこともあろうに全国区の問題を取り上げられて、これが憲法上の疑義云々というようなことで先に延ばされるということはまことに遺憾だと思うのです。この点もう一度ひとつ総理見解を承りたいと思うのです。
  362. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの私の発言、ひとつよく速記録を読んでいただきたいと思いますが、誤解されては困るのです。私も延ばすとか憲法上疑義ありと、かように断定をしておるわけではございません。というような問題があるから、その他にもあるかもわからないということで、よく精査しなければならぬ、かように申して、そうしてやはり県民の意向を国政全般に反映さすという、そういうことをすべきだ、かように私考えておりまので、その方向で努力する、かように申しておるのですから、誤解がないようにお願いしておきます。
  363. 田畑金光

    田畑委員 この法律をひとつ国会で考えてくれと出されたのは内閣であり、政府であり、佐藤総理から出ておるわけですね。そうしますと当然佐藤総理としては、すみやかなる機会に、むしろこの特別国会の冒頭あたりに、この法律は実現を見て、選挙もすぐ行なわれて、沖繩の援助予算審議するこの国会に、沖繩の現地代表が参加するくらいのスピードでもって進行するものかと思っていたにかかわらず、今日こう延びてきておるわけです。私が言うまでもなく当然この国会のすみやかなる機会にこの法律が成立を見て、法律の成立をした暁には、現地においてこれに応ずる立法措置をやり、おそらく夏から秋にかけては沖繩においてこの法律に基づく選挙が行なわれるものと考えておりますが、その点ひとつ総理のお考えを承りたいと思います。
  364. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 できるだけ早く準備を進めることだし、また国会そのものできめられることですから、これは政府が案を提案するわけじゃございませんので、私自身が、逃げるわけじゃありません。また自民党の総裁という立場において、この問題は真剣に取り組まなければならない。党内の意見をまとめるのも私の仕事でございますから、それらの点をもあわせて、私はできるだけ早くこの問題が片づくことを心から望んでおる、こういうことをつけ加えて、それより以上のことは申しません。
  365. 田畑金光

    田畑委員 私は外務大臣にひとつお尋ねしたいのでございまするが、すでに七二年の復帰が決定し、沖繩との交流はいよいよ激しくなってきておるわけです。またいま総理からお答えがありましたように、国政参加の法律が成立を見れば、当然本土の各政党と現地との交流も盛んにしなければならない。その場合、思想、信条によって渡航の制限をされるということは人権の問題だ、こう思うのです。七二年の復帰を待たないで、もうこの辺で渡航の自由化という問題については当然米側との折衝を通じ実現をはかるべきである、私はこのように考えておりますが、外務大臣としては、このような話し合いなど、先ほどの日米協議委員会、これは高度の政治的な問題を取り扱いができるように権限の強化が過般の共同声明でなされているわけです。この点について政府の方針を明確に承っておきたい。
  366. 山中貞則

    ○山中国務大臣 渡航業務は私のほうで所管いたしております。これまでも日米協議の場とその他の外交折衝を通じまして、わがほうでなし得る渡航手続の簡素化についてはずいぶん進めてまいりましたが、さらにこれをただいまお話しのような御趣旨に沿うように、全くの形式的なものにするだけの準備をいま進めております。ただ、これは施政権者としての高等弁務官のほうで、直接には公安当局が担当いたしておるようでありますが、公安上の見地から入域の許可証についてのチェックの権利を依然として保有いたしておるわけでございまして、この点私どもも、いずれ二年後には完全な自由な内地になるわけでありますから、本土になるわけでありますから、その意味でこれをゆるめてほしいということをたびたび連絡もとっておりますし、あるいは大量渡航等の場合については、先般そういうことがありましたけれども、私も直接中に入りまして、なるべく渡航が自由に、チェックがあまりきびしく行なわれないようにということも折衝いたしておりますが、これからは基本的に、ただいま申されましたような、何がゆえにチェックしておるのかという問題もありますので、そこらのところを外交ルートを通じましてお願いをいたしまして、アメリカ側の全体としての態度をソフトなものに移りかえていってほしいという念願のもとに折衝を続けてまいりたいと考えます。
  367. 田畑金光

    田畑委員 沖繩問題についてまだ多々あるのでございまするが、最後に一つだけお尋ねしておきます。沖繩軍労働者の解雇された人方について、本土基地労働者の退職金との差額については、二十八日の持ち回り閣議で特別給付金の形で支給する、これは非常にけっこうなことだったと喜んでおります。そこで、私は端的にお尋ねいたしますが、間接雇用に持っていく問題、これも私はいまの渡航制限の問題と同様に、もうこの辺で年内ぐらいには当然、もう夏ごろまでには実現できる話ではないのか。過般衆議院の沖繩特別委員会の調査団が現地へ参りましたときに、ランパート高等弁務官とこの問題で話し合ったときに、高等弁務官もこの問題については弾力的な態度である。しかし、残念ながら日本政府からまだこの問題についての正規の申し入ればないということを聞くわけでありますが、この点についてはどうなっておるのか。また政府の方針、それをひとつ承りたいわけです。
  368. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはランパート高等弁務官の言われました、伝えられましたことばも正しいわけでありまして、具体的に間接雇用制への提示をしておらないことは事実です。しかしながら、どのようなものを提示することによってオーケーが得られ、合意が達せられるかという問題をいま詰めておるわけでございまして、その意味では常時、連日のごとくこの問題は外交ルートを通じまして折衝いたしております。御承知のような施政権下でありますので、裁判管轄権の問題あるいは布令等の制限等の問題、ことに百十六号の問題等について、それをどういうふうにして雇用形態ができるものか、あるいはそのままでおいても少なくとも一種雇用者は米軍でない形にすることがたいへん望ましいことでありますから、そういうようなものはどのようなものができるのかという、機構あるいはその運営方法等につきまして、具体的な打ち合わせをいたしております。したがって、弁務官の言ったことの正しいことは、その意味において、具体的なものを提示していないということは事実でありますが、しかしそれは、形は、合意に達した後に、提示をいたしました瞬間、それに対して賛成を得るために努力しておるわけでありますから、提示したことは同時に妥結ということになるわけでありまして、その意味において外務大臣をルートといたしまして、いまこまかな作業をいたしておるわけでございますので、なるべく日米双方のために、このことは早期の実現が望ましいと考えて努力を傾けております。
  369. 田畑金光

    田畑委員 努力を傾けておるということはよくわかりますが、長官は、いつごろをめどに、先ほどの渡航制限の問題あるいは間接雇用の問題等について妥結する努力をいま払っておられるのか、もう少しく時期等についての見通しがあればこの際、承っておきたいと思うのです。
  370. 山中貞則

    ○山中国務大臣 どうも私、外交権を持っておりませんで、私が与えられます場は日米協議会に構成員として正式な資格を持つ場所だけであります。でありますから、その日米協議の場をすみやかにつくれまするように、外務大臣にお願いをいたしまして努力しておりますが、そういう長い期間は要しないような状態になってまいりました。そういうことがございますので、年度末ぎりぎりの残り少ない予備費の中から、具体的に言いますと、この経費を支出したために、残りの予備費は、昭和四十四年度の予備費でありますが、約九百万になりました。そのように、残りぎりぎりのさいふの底をはたいて、政府がたいへんあわただしくそのような措置ができた裏には、そのようなことについて、いわゆる間接雇用の話し合いについて、顕著な進展が見られていることが裏づけになっておるわけでありますので、これをいつまでということは、相手方のあることでありますから、幾ら明瞭にものを言う私でもちょっとできかねますけれども、そうそう遠い話ではないというふうに受け取っていただきたいと考えます。
  371. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま総務長官からお話し申し上げたとおりでございます。実は参議院でも申し上げましたように、間接雇用の問題について、たとえばランバート弁務官が日本側から案が出ていないと言われたことが非常に大きな問題に取り上げられておるようでございますが、これは実はもう日米間の共同作業なんです。もう再来年は沖繩の施政権が返る。そうすれば、間接雇用になるのはこれは当然のことでございます。そしてもう復帰ということの大綱がきまっているわけですから、現在のこうした雇用関係の問題などは、日本側としてもわがこととして取り上げておりますし、アメリカとしても施政権の返還を前提として取り上げておりますから、いわば向こうのことばでいえばジョイントスタディー、そしてこれが共同に研究して結論が出れば、これは日本側の提案であり、アメリカ側が承諾した案である、こういうかっこうにしようということで、それぞれが努力をいたしておるわけで、ただいまもお聞き及びのとおり、この退職手当の問題も解決ができた、こういうところから政府の努力しておりますことが順を追うてそう遠からざる将来にでき上がるということに御期待を持っていただきたいと思います。
  372. 田畑金光

    田畑委員 私は、持ち時間がもうあとわずかでありますので、二、三、繊維の問題で佐藤総理にお尋ねをしておきたいのですが、佐藤総理は、昨年の五月九日衆議院において、米国の繊維品輸入制限に関する決議案が採択されたことは百も御承知であります。またこの国会になりましても、先般、政府の非常な弱腰を見るに見かねて、四党の国会対策委員長が共同して、政府に決議を尊重するように申し入れをしておるわけです。この院の決議について佐藤総理はどのようにお考えになっておられるか、この点ひとつお尋ねします。
  373. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 院の決議は、政府は当然尊重しなければなりません。もっとはっきり申せば、それに縛られている、かように申してもいいです。
  374. 田畑金光

    田畑委員 愛知外務大臣はやはりその決議のときの外務大臣通産大臣はかわっておいででございまするが、愛知外務大臣はその決議に対して所見を述べておられる。大平通産大臣はこの決議に対して、輸入制限の阻止のために努力することを約束されておりますが、これは両大臣とも変わりないのかどうか。
  375. 愛知揆一

    愛知国務大臣 変わりはございません。
  376. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど総理が答弁されましたとおり私も心得ております。
  377. 田畑金光

    田畑委員 お答えを聞いておりますと、何もそれは心配ないようなことに聞けるわけでございまするが、しかし、現実に繊維業界においては非常な不安と動揺を感じておるわけです。  私は総理にこれまたお尋ねいたしますが、この問題について日米友好あるいは互譲の精神で解決したいとお話しになっておられますが、互譲というのは互いに譲るということです。一体、繊維問題について日本は譲らなければならぬ問題があるのかどうか。あるいは綿製品協定から今日に至るまでの経過を振り返ってみたときに、互譲というような立場に立って日本が譲らねばならぬという面があるのかどうか。この点はどうでしょうか。
  378. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ものごとというものは、片一方だけが譲る、それは屈するということになりましょう。お互いに譲り合う、そういうところで初めて話がつくのじゃないか。それが、私の言う互譲の精神でものごとを妥結しよう、こういうことでございます。
  379. 田畑金光

    田畑委員 ものごとを妥協によって解決するということはわかりますが、私は時間がないから経過などは全部省いて結論だけを申し上げておるわけでありまするが、あの綿製品の自主規制の問題あるいは一九六二年の十月から今日に至っておる綿製品自主規制の長期協定の問題、こういうような問題などを振り返ってみまするならば、日本は常に一方的に譲歩して今日に来ておるわけです。その日本がなぜ譲歩しなければならぬのか、どこを譲歩しなければならぬのか。そうなってくれば当然話し合いの原理、原則日本としてはくずさねばならぬ、こういうことになろうと考えるわけです。総理は昨年の院の決議はあくまでも尊重されると言われておりますが、あの決議の内容をごらんくださればおわかりのとおりに、日本が譲らねばならぬ問題はないと思うのです。いわゆる総理の互譲というものの余地はないと思うのです。そのような総理の話を聞いておると、昨年の十一月の日米共同声明の前後のニクソン大統領との会談、あの二回目の会談においては経済問題が中心となり、この問題が話の一番大事な要点であったと聞いておりまするが、やはりその辺に国民は疑問を持たざるを得ぬわけでありまするが、この点ひとつ、総理がほんとうに決議の趣旨を貫くというのであるならば、私はき然たる態度で臨むべきであると考えるわけです。
  380. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お説のとおり、私も御鞭撻を受けるまでもなく、十分国益を代表して取り組んでおるつもりでございます。この問題は、私もまだ業者、業界と一度も会っておらないのも、ただいまのような点からでございます。私、まだ業界の方と会っておりません。皆さん方には会いました。また組合の代表にも会いました。また組合の代表からも強い要望を私に突きつけられましたが、私自身まだ会ってない。その私の言動等をごらんになれば御理解がいくのではないか、かように私は思っております。  しかし、私が申しますのは、両国間の問題でこの事柄が全部ではないのだ、そのことを考えると、日米両国の間で互譲の精神でお互いに譲り合ってこの種の懸案事項を解決することが、やはりエンドレスな国交関係を続けるゆえんではないか。いたずらに理屈だけを言って、一切譲れない、このままだ、こういってやられるところに、国内においてすらいま混乱を生じつつあるのではないですか。二次産業の面で混乱ができているでしょう。それらのことを考えると、大体において早くものごとを取りきめるべきが本筋じゃないだろうか。業界の方もものがわからないわけじゃないので、そういうことをもう百も御承知なんだ。そうすると、それらの点が、どこを譲ったとか譲らないとかいうことでなしに、大局的に話はつく話だろう、私はかように考えるのでございます。そういう意味で、皆さん方の御鞭撻をいただき、また国会の決議もありますから、その精神で自主的に問題がきまるべき筋だろう、かように思って、私はいま業界の方とも会わないでいるような状態でございます。
  381. 田畑金光

    田畑委員 私は総理に願いたいことは、この問題についてはいろいろ総理から承りましたが、そのお答えの端々から、どうも私はすっきり受け取るわけにはいかぬわけです。なるほどお話しのように、中小企業なりあるいは第二次製品の分野において動揺があるというお話でありますが、事実そうだと思います。それもやはり政府の姿勢がしっかりしてないからそうなるのだと私は考えるわけです。むしろこの際、政府がこの問題に対処して、わが国の繊維産業あるいはわが国の経済の将来の中に繊維産業の占める地位を考え、やはりこの問題について筋を通すところは筋を通すというき然たる態度があるならば、私は第二次製品なり中小企業の分野で今日動揺が起きるはずはない、こう思うわけです。私は、いろいろなこの問題を取り扱った委員会等における質疑応答を見まして、経済合理主義者である宮澤企画庁長官の答弁などを見ますると、アメリカ側に日本に対して自主規制を求めるような問題はない、アメリカの繊維産業はそういう実情にない、ただ考えられることは、アメリカの特定の地域あるいは特定の業種についてそのような問題があるかもしれない、こういう程度の御答弁。そのためにニクソンが自国の産業や自国の労働者の雇用の問題について、とにかく執拗に感ずるほど、き然として、あるいは日本に対しましていろいろ手を変え、品を変えて、この問題についての話し合いを求めてきておりますが、やはり私は、佐藤総理も——何と申しましても、沖繩の施政権返還その他数々の功績をあげられた佐藤総理も、やはりわが国の産業なり、そこに従事する労働者の立場、こういうものも十分考慮をされて、この種問題はあくまでも筋を通して処理する、き然たる態度をとっていただきたい。またそれが佐藤総理の声価をさらに高めるゆえんである、このように私は考えておりますが、もう一度佐藤総理の御所見を承って、私の質問を終わります。
  382. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御鞭撻を受けることはたいへんけっこうです。私どもがたいへん心配しておりまするのは、ただ当方で当方の言い分だけを立てている、そういうことで商談がどんどんできて受注ができる、そういう状況であればけっこうですよ。だから私、ものの推移を見まして、いま何がゆえに二次製品の部門で混乱をしているのか、発注、受注がおくれておる、そういうことじゃないんですか。私が言うのは、そういう点を考えれば、いたずらに強くなれ強くなれと言うばかりで、強くなったってそれじゃ話がつかないんじゃないかということを言っているのです。私もそんなに妥協にのみ終始するような男じゃございません。だから、それはまた、糸だからといって——さっき池田君から糸だから筋を通せ、こう言われたのでございますが、私はそのとおりだと思います。たいへん冗談を申して相済みませんが、そういうような筋のものだと、かように私考えております。とにかく問題は、ものごとが前進していかなければどうしようもないだろう、かように思っております。そういうことで、私は、いまのままで前進ができておればそれで何をかいわん。これが停滞したりあるいは停滞だけではない、また逆行しておる、こういうような状態は、ただ力で相手方を説伏しろとか説得しろとか、こういうわけにもいかないのじゃないか。そこらにお互いに話のつくことは話をつけたらどうかということを言っているわけだ。だから、私は、一方だけ、日本だけが譲れと言うのではない。それこそいわゆる互譲の精神でものごとを話し合うのは当然じゃないか。私とニクソン大統領との盾に——第二日目にいろいろ経済問題、繊維をはじめ、その他の事項について話し合ったことは事実でございます。しかし、私は、いままで特別な約束はその間になされておらないということを申しております。と申しまするのは、大統領にしても、また私自身にしても、この繊維がどういう点が問題になるのか、十分な知識を持っておりません。ただ、懸案事項をそのままにしておいてはまずいじゃないか、それはお互いにひとつ解決しようじゃないかという話はいたしましたが、それより以上に、何はどうする、製品は、そのうちから品種はどういうものを選んでどうこうすると、さようなことは、これはもう大統領と総理の話し合うような問題ではございません。だから、そこらのところは、私が密約はございませんと言うのは、そういう意味で御理解がいただけるだろうと思います。
  383. 田畑金光

    田畑委員 終わります。
  384. 中野四郎

    中野委員長 これにて田畑君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  385. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党を代表しまして、沖繩の施政権返還交渉をめぐる幾つかの問題について、総理及び関係閣僚に御質問したいと思います。  まず、外務大臣に伺いたいのですけれども、沖繩の基地の問題であります。昨年の十一月に、私どもの党から、日米共同声明をめぐって質問主意書を政府に提出をいたしました。その中で沖繩基地の問題について質問をいたしましたところ、十二月の二十九日に、沖繩基地の整理統合について、実質的に妥当かつ可能な範囲で現存基地の整理統合を行なう所存であるという趣旨回答をいただきました。この沖繩基地の整理統合の問題は、返還交渉のきわめて重要な内容の一つをなすというふうに考えますけれども、この整理統合の問題をめぐっての日米協議、これをどのようなルートでやられようとしているのか、このことについてまず伺いたいと思います。
  386. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどもいろいろ質疑応答がかわされたわけでございますが、御承知のように、返還の準備のための日米協議委員会もすでに発足したと申してもいいと思いますし、また那覇における準備委員会も、これも実質的に発足をいたしたわけでございます。こういう席をもちろん利用し、あるいはその他の——安保協議会のほうは、これはいままでは主として本土の基地の問題について話し合いが持たれたわけでございますが、いろいろの場を通じまして、返還をもはや間近に控えているところでもございますから、基地の能率的な運営というか、それは整理統合ということをもちろん内容といたしますが、そういう点につきましても前向きに検討し、また合意ができるようにできるだけの努力を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  387. 不破哲三

    不破委員 外相は先日の参議院の沖繩特別委員会で、返還後の基地のあり方についても、日本の主体的な自主的な態度から青写真を描きたいというふうに強調されましたけれども、この整理統合に臨む日本政府の基本的な立場ですね、どういう観点から沖繩基地の整理統合を求められるのか、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  388. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは防衛庁当局とも十分緊密に連絡をして考えていかなければならぬ問題ですが、沖繩特別委員会のときにも申し上げましたように、まずこの実態の調査ということが——従来は施政権の返還ということがまだきまっておりませんでした。その状態と昨年十一月以降とは状態が違いましたわけですから、まず日本側としても十分現地の実情を調査して、これはすでに防衛庁におかれてもそういう方向に仕事が進んでいるはずと承知しておりますけれども、そうしてだんだんと、日本がいわば主体的な立場で、基地の態様、あり方はこうこうすることが望ましいという一つの考え方が、現地の実情に即してでき上がってくるはずだと私は思います。これは実行の問題としては多少段階を経てということもあり得るかと思いますけれども、そういう方向で進めていきたい。  それから返還になりますれば、しばしば申しておりますように、安保条約の関連の取りきめが何らの変更なしに沖繩に適用されるわけですから、そうすると、これは本来安保協議会の議題となって、そして——詳しく申し上げる必要もないと思いますけれども、不急不要等のものについては双方が相談し合って整理をしようということが、もう正規のルートの上において本土並みにこれが取り上げられることになるわけでありますから、返還後におきましては取り上げ方を本土並みにして、そして漸次その方向に持っていくことが可能でもあり、またそういうふうにしていかなければならない、かように考えておるわけであります。
  389. 不破哲三

    不破委員 いまかなり抽象的なお答えがあって、調査をした上で現地の事情に即して考えたいということだったわけですけれども、私は、沖繩の基地の問題については、調査する以前にも考えなければいけない非常に重大な問題がある。つまり、本土の基地の整理統合の問題とは質的に違った性質の問題があるというふうに考えているわけです。それは、沖繩の基地が量、規模において、本土に比しはるかに、密度において大きいという問題だけではなしに、機能の点で、本土の基地と違う機能を持った米軍基地が明らかに存在をしている。これはいつか衆議院の沖繩特別委員会でも、私、例として申し上げたのですけれども、あらためて聞かしていただきますと、たとえば昨年の六月三日のアメリカ国会でレアード国防長官が沖繩の基地の機能について三つの機能を政府の公式見解としてあげられています。その内容について、非常に重要だと思うのですけれども、ここでは、沖繩の基地は東アジアあるいは西太平洋全域に備えるためのものだということが強調されています。東アジアあるいは西太平洋というのはほとんど同じことばで使われている。そして、その観点から三つの機能をレアード国防長官があげて、一つは東アジア、西太平洋全体について緊急事態が起きた場合に、すみやかな反応ができるように、すみやかに対処できるように、陸軍部隊、空軍部隊を臨戦体制で確保しておく基地、それから第二には、西太平洋の全域で活動をしている陸軍、空軍、海軍のアメリカの三軍全体、これに対して補給を行なう基地、それから第三には、やはりこの地域全体に対して大規模な通信連絡を行なう通信基地というように、沖繩基地の機能は西太平洋あるいは東アジア全域をおおうものとして規定をされているわけです。現にそれに対応する基地がある。これは明らかに安保条約のもとにある本土の基地とは違った機能だと思うわけですね。このアメリカの基地が、西太平洋あるいは東アジア全域を対象にして、作戦、補給、それから通信連絡、こういうことを果たそうとしている基地が、このまま施政権返還とともに日本に引き継がれるということになれば、これは安保条約ワクを越えるものだというふうに考えるのですけれども総理のその点での御見解はいかがでしょうか。
  390. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまお述べになりましたこのレアード長官の下院の歳出委員会の小委員会における証言はそのとおりでございます。私も承知いたしております。しかし、同時に私から申し上げたいのは、これが行なわれましたのは一九六九年の六月三日なんであります。これも御指摘のとおり。そして、この証言の中には、たとえば一九六七年の佐藤総理訪米の際の共同声明等に強調されているというくだりもあるくらいでございまして、これは昨年十一月の佐藤・ニクソン会談以前の状態でございます。したがいまして、昨年十一月の佐藤・ニクソン会談によって、沖繩の基地の態様についても本土並みということになりましたことによって、時間の経過とともにあの昨年の共同声明によりまして、こういう考え方には修正が加えられた、かように理解してしかるべきものと考えるわけであります。
  391. 不破哲三

    不破委員 私が質問したのはそういうことではなくて、このままもし引き継がれたとしたら、こういう機能を持ったまま沖繩の基地が引き継がれたとしたら、それは安保のワクを越えることになりはしないかということで、レアード国防長官がその後見解を変えたかどうかということについての質問ではなかったわけです。その点について、総理の御見解を伺いたいと思います。
  392. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうような事柄があるから、沖繩返還の問題でいろいろ誤解を受けるし、また、返還交渉はむずかしい、こういうことで、私も非常に慎重な上にも慎重に取り組んだつもりでございます。そうして取り組んだ結果は、これは本土並みで返ってくる、こういうことでございますから、レアード国防長官の話がそこらで変わってきている、かように理解すべきじゃないかと、私は思っております。在来どおりに沖繩の軍機能をそのまま維持するのなら日本には返してこない、しかし、それを日本に返して、そうして日本に施政権を返還する、こういう情勢でございますから、当然変わった、かように考えておるわけです。
  393. 不破哲三

    不破委員 先ほどの愛知外相の答弁といまの総理の答弁を伺いまして、本土並みに返還をする、安保のワク内に入るという場合には、西太平洋とか東アジア全域に対して、そういう作戦、補給、通信連絡、こういう機能を持つような基地は沖繩には存在し得ないというふうに理解をしてよいかと思います。  それで、もう一つ伺いたいのですけれども、外相は、昨年の共同声明の直後に発表されました外相説明、あの中で、復帰後は沖繩の基地は変わってくる、安保条約に基づく施設、区域として地位協定に従い、日米間の合意によって使用を許される基地になる。したがって、既存の米軍基地はそのまま既得権として存続するのではないということを述べておられます。それからまた、今国会の中でも、施政権返還後には安保条約、地位協定が全面的に適用されるというふうにいわれている。それで伺いたいのですけれども、そうしますと、施政権返還後に沖繩に存続が認められる基地は、日本政府が合意をした基地だけだ、日本政府が合意をしないで沖繩に基地が残るということはあり得ないというふうに考えてよいかどうか、そのことを伺いたいと思います。
  394. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は返還協定において形式といいますか、法制的にはきめられるわけでございます。そして安保条約関連取りきめ、すなわち地位協定その他も全部基地にかかわるわけでございます。しばしば申し上げておりますように、そこまでに至る準備期間のうちに、実質的などういう基地が残ることが日本のためにも必要かという観点から考え、かつ協議をいたしまして、そして、返還が効力を発生するときには、そこに残る基地というものは、日本が安保条約において提供した基地、こういうことになり、したがって、それに対して地位協定その他が全部本土並みにかぶる、こういうかっこうになる、こういうふうに考えております。
  395. 不破哲三

    不破委員 そうしますと、長い御説明でしたけれども、短くしますと、残る基地は全部日本政府の合意済みであるというふうに解釈をしていいわけですね。——そうならそのとおりで進みます。  それで、そういう状況だということをいま伺いましたけれども、ところが昨年の十一月の日米共同声明が結ばれて以後、アメリカ側から沖繩の基地の態様について、態様といいますか、実質的な内容について発表される構想を次々見ていますと、どうも先ほど総理が言い、外相が言われた西太平洋あるいは東アジア全域にわたるような機能を持たないというような話とは違う構想が、非常に具体的に提起をされているということをいろいろな点から伺っているわけです。それで、これはすべて単なる軍や政府の当局者の記者会見その他での発言とかいうものではなくて、公式の国会、上院あるいは下院での責任ある発言として、あるいは政府の発表した報告書としてそういうものが提起をされている。たとえばB52についてはかなりいままで議論もありましたけれども、沖繩を基地として戦闘作戦行動に直接活動している部隊の一つに、第三海兵師団というのがあります。この第三海兵師団を含む海兵隊の司令官のチャプマンという大将が、いままでに何回も発言をしておりますが、一番新しい発言を見ますと、三月十一日にアメリカの下院の軍事委員会でベトナムから撤退をしたアメリカの海兵隊、これは発表によりますと約二万人にのぼっていますけれども、これが沖繩と日本で新たに緊急派遣部隊を編成している。そして、それが必要があればいつでもベトナムに再び出動し得る体制をとっているという証言を国会において行なっております。そしてその際、もう少し詳しいものを見ますと、マリン・エクスペディショナリー・フォースと呼んでおりますけれども、この新しい緊急派遣部隊の編成作業は着実に行なわれつつある。そしてこの部隊は太平洋全域の不測の事態に即応し得る能力を備えている。明らかに太平洋全域に対する緊急発進部隊であるということをアメリカ国会で三月十一日に証言をしております。さらに、これを裏づけるように、それに先だってチャプマン大将が記者会見で行なった発言を見ますと、沖繩返還後もこの機能は半恒久的に変わらないものであるということを証言をしている。これが海兵隊の指揮官の国会での具体的な証言ですね。この点について、これは先ほどのお話とはずいぶん違う構想がアメリカの公式の当局者から発言されているのではないかというふうに考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  396. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一は、現在はまだ施政権がアメリカ側にある。したがって、現在沖繩における配備、装備等はアメリカが自由にできるわけですから、その状態下における現地指揮官等がそういうことを申しておりますことは、これはあり得ることだし、またそれで自然だと思います。  それから、後段でつけ加えられましたような点については、何べんも申し上げますように、これからの日米間の話し合いによってさらにそういう点は明確になる。沖繩における基地というものは、安保条約によって、安保条約の目的が達成できるように、日本側から施設、区域として適用されるものである。ここに限定されるわけでございますから、その点は当然変わってくる、かように私は理解すべきものであると考えます。
  397. 不破哲三

    不破委員 問題は、そういう司令官の公式の発言が日米共同声明の後においてやられ、具体的な作業が共同声明後返還を二年後に控えた事態の中で行なわれているという点に、一番大きな問題があると思います。  それからもう一つ、同じような構想が、これは別の面からレアード国防長官が言った第二の機能について発表されている。それはアメリカのリーサー陸軍長官が発表した構想で、これは単なる構想ではなしに、アメリカ政府の国防白書の一部分といいますか、具体版として、陸軍白書ともいうべきものとして発表されている内容です。私ここにその原文のそれに該当する部分を持ってまいりましたけれども、それによりますと、現在の時点から二年ほどの間に、太平洋地域におけるアメリカの陸軍の補給体制、これを全面的に大改革をやる。そして、現在韓国やタイや南ベトナムにある補給施設までも含めて全部沖繩に一元化をする。そうして、沖繩に、CCFと呼んでおりますけれども、中央管理センターを設けて、そこで西太平洋におけるアメリカの全陸軍に対して、それからまた南ベトナム軍その他に対しても補給をする。つまり、文字どおり沖繩をいままで以上に西太平洋全域に対する補給基地にするという構想をきわめて具体的に発表しております。しかもこれは単なる一般的な青写真ではなしに、一九七〇−七一年の陸軍のそれに対する計画という計画書までつけられて発表されている。これも国会に報告として提出された政府の公式報告であります。この日米共同声明で本土並みの返還を約束したはずのアメリカの当局が、補給の面でも、レアード長官が言った第一の緊急発進行動の機能の面でも、こういう点を相次いで提起をしてきている。これは単なる偶然のこととは言えないし、しかも補給作戦の転換の問題は、ちょうど返還交渉が進められる約二年間の時期ですね。この二年間の時期が補給作戦の大改革を実行しようとする時期に合致をしている。これはきわめて奇妙なことだと思わざるを得ないのですが、その点について、先ほど外相の御意見は伺いましたから、総理の御意見を伺いたいと思うのです。
  398. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その前に、リーサー陸軍長官のやはり報告といいますか、証書について言及されましたから、ちょっとその点に触れますが、これは一言にして言えば、先般衆議院の本会議でもお答えいたしましたように、アメリカの在外軍隊の補給の管理体制といいますか、能率化、合理化ということが中心になった考え方であって、その中には在日米軍の関係も出ておりますけれども、たとえばいままで陸軍が担当しておったことを海空軍に管理機能を移管するとか、あるいは沖繩に対してはマネージメントの管理機構を、命令系統の指令をそういうところに移すことが適当であるというようなことが、このリーサー長官の考え方のようであります。この考え方、構想については、政府に対してはまだ公式、非公式に何の連絡もございませんけれども、いま御指摘がありましたように、公にされている意見でございますから、一応私も検討いたしましたが、その趣旨とするところはいま申しましたようなところにあるようでございまして、これによって沖繩の基地というものが非常に大きな役割りを持って、さらにその役割りを増加するというようなことではなくて、むしろその反対の方向になっている、かように私は理解すべきものと思います。
  399. 不破哲三

    不破委員 いまの愛知外相の説明は、私の理解する限りでは、ここに表現されている実態を、非常に実態に即さないで解釈をしたものだというふうに考えざるを得ないのです。この点で私は政府要求をしたいのですけれども、日米共同声明以後アメリカ国会で発言をされて、そして公式に発表されている沖繩の基地機能についての国防当局、あるいは陸軍長官その他の見解、これについてはぜひ資料としてこの委員会に提出をしていただきたいということを、政府にリーサー構想を含めてお願いしたいと思います。  続いて質問いたします。私どもが理解する限りでは、明らかに、レアード長官が言った西太平洋全域に対する沖繩の作戦機能、それから補給機能を強化する方向での作業がアメリカ側によって進められているというふうにいろいろなものから考えざるを得ないわけです。これを日本側がチェックする場合、私は二つの手段がいままでの取りきめによるとあるのだと思います。一つは、以前から首相や外相が強調されているように、返還後の沖繩には事前協議が適用されるのだから、事前協議の運用によってこれを押えるという機能、これが一つあるだろう。もう一つは、先ほど外相自身が言われたように、返還後の沖繩に存続する基地は、これは日本政府の合意なしには残らない。日本政府が合意しない基地は一つも残せないはずですね。つまり、その基地を残すか残さないか。いま百二十とか百四十とかいわれておりますけれども、その一つ一つの基地について、その機能を含めて日本政府が調査をして、これを残すか残さないかということによって、このアメリカ側の計画を基地の存続そのものによってチェックする。この二つの手段が、いままで政府が発表された取りきめによればあるのだろうと思います。  そして、この沖繩の機能の特徴は、たとえば海兵隊の緊急発進体制の問題にしても、二万人の海兵隊がいつでも発進できるように沖繩に存続するためには、いま存在するのでも六つのキャンプをはじめ、大規模なそれに備えた基地が具体的な実態をもって存在をしている。あるいは西太平洋全域に対する補給基地についてもそれに対応する補給施設が具体的な実態をもって存続をしている。それに対して、その存続を認めるかどうかという交渉が今度の返還交渉の中で政府に迫られると思います。  そういう点で、私が初めに言った問題に返るわけですけれども、基地の整理統合の交渉をやられるにあたって、先ほど外相が言われたような、不急不要の基地を取り除くといったような、何といいますか、基地の本質的な機能にメスを入れない整理統合方針ではなしに、実際に先ほどから総理や外相が強調されたような、沖繩を西太平洋や東アジア全域に対する基地にはしないという、沖繩の機能の面にまで立ち入った整理統合方針を持って、基地の返還交渉というか、施政権返還交渉に対処される用意があるかどうか。用意があるとすれば、その点についての政府の方針をいつごろまとめられて、いつごろ発表されるか。日本側は全く無準備で、アメリカ側がどんどん、どんどん計画を進めていく、それでいつの間にか七二年が来るということではよもやないだろうと思いますけれども、その点について政府はどのような今後の方針を持っておられるのか、総理並びに外相に伺いたいと思います。
  400. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどもちょっと抽象的に申し上げたつもりなんですが、まず返還に至るまでの準備期間における作業、相談と、それから返還後における場合と、二つあると思います。  返還に至りますまでの間においても、いま強調されたような方向に向かってできるだけの努力をし、話し合いをしなければならないと思っております。それから返還後になりますれば、これは先ほど申しましたように、安保協議会を中心にいたしまして、現に過去十年来日本本土においてそうでありましたように、日本側の意見も十分取り入れて、現在もう基地が日本の本土においては非常に少なくなっておりますが、そういう段取りを経て実態的に沖繩の本土並みということを実現するような仕組みに私は持っていくべきである、かように考えております。
  401. 不破哲三

    不破委員 外相はいま返還前と返還後の交渉を三つあわせて言われましたけれども、私はこれは全然性質の違う問題だと思うのです。返還が一ぺん認められて、そこで存続している基地を整理統合するという問題は、地位協定でも明らかなように、アメリカの合意がなければこれは整理統合は不可能なわけですね。ところが返還前の交渉は、先ほど外相も言われたように、日本側の合意がなければ存続が不可能なわけですね。いわば返還前の交渉では日本側に拒否権がある、この基地を存続させるかどうか、詰めていえば。返還後では手放すかどうかの拒否権はアメリカにある。これは全く性質の違った交渉が返還前とあとで行なわれることになる。だから問題は、私は返還までの交渉の中で一体日本政府がそこまで立ち入って、これは西太平洋全域に対する戦闘作戦行動の基地とならざるを得ないという機能が明らかになったら、これは拒否する、あるいは西太平洋全域に対する補給基地としてつくられたものであるという機能が明らかになったら、これは拒否するという決意を持ってこの基地統合交渉に望まれるのかどうか、これが一番のポイントだと思います。そうではなしに、そこのところはまあまあということで残してしまって、あと返ってから話し合いをしましようということでは、まさに本土で行なわれていると同じ交渉——かつて十八年前に行政協定締結の際に、アメリカがつくった基地を全面的にほとんど承認せざる得なくなった、そうしてそのあとからアメリカの計画に対応した形で基地が縮小されていった、それと同じことを繰り返すのだとしたら、これはたいへんな問題である。その点、返還前の交渉と返還後の交渉では、交渉の質が違うと思いますが、その点いかがでしょうか。
  402. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まあそういうふうにお考えになるのも一つの考え方だと思いますけれども、同時に、しかし、現在は施政権はアメリカが持っている、そして基地どころではなくて、アメリカが自由に使用し得る施設を持っているわけですね。それを返還の協定ができるまでにこれを残さないようにたとえばするというのが常識的なお話だと思いますが、そういうことをいたしまするのに、別に返還前と返還後と質の違ったような問題ではないと私は思いますけれども、その辺のところは、あなたのおっしゃるのも一つの考え方かもしれません。別にそれは論争をすべきものでも、値する問題でもなかろうかと私は思いますけれども、なお御意見は十分承っておきたいと思います。
  403. 不破哲三

    不破委員 時間がありませんので、これで質問を終わりますけれども、外相は前とあとではあまりたいした違いがないというふうに言われたけれども、これはたいへんな問題なんです。日本に安保条約が最初に適用されたときに、どの基地を残すかというのは、これはいままでアメリカがかってにつくった基地を日本政府が提供する基地にかえる交渉なんですね。その交渉と、それから一ぺんアメリカに貸したものを整理統合を要求するというのは、地位協定でも明確に、アメリカの合意なしにはできないというふうにうたわれているわけです。これの区別もはっきりしないで交渉に臨まれたのでは、これはたいへんな問題である、この点については次の機会にさらに質問を続けたいと思いますが、きょうは時間がありませんので、ここで打ち切らしてもらいます。  ただ、先ほど要請をしましたアメリカ国会という公式の場所で、政府あるいは軍の当局が、当面の、あるいは返還後の沖繩の基地について発言をし、報告をし、あるいは発表した文書、これについてはぜひ政府のほうで早急に用意をされて、全体について私ども研究したいと思いますので、資料として提出していただくことを重ねて要請をしまして、質問を終わります。
  404. 中野四郎

    中野委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  以上をもって、昭和四十五年度暫定予算三案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  405. 中野四郎

    中野委員長 別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決をいたします。  昭和四十五年度一般会計暫定予算昭和四十五年度特別会計暫定予算昭和四十五年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  406. 中野四郎

    中野委員長 起立多数、よって、昭和四十五年度暫定予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  なお、おはかりいたします。委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  407. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  408. 中野四郎

    中野委員長 この際、国政調査承認要求に関する件について、おはかりをいたします。  すなわち、予算の実施状況に関する事項並びに予算制度及び予算審査の方法に関する事項につきまして、議長に対し、その承認を求めることとし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  409. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  410. 中野四郎

    中野委員長 この際、小委員会設置の件についておはかりをいたします。  すなわち、理事会で協議いたしました結果、予算制度及び予算委員会の運営改善に関する問題等の調査のため、小委員十名よりなる予算制度等調査小委員会を設置いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  411. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、その小委員及び小委員長の選任、また、選任後における小委員補欠選任並びに追加選任等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  412. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、小委員及び小委員長は、公報をもって御通知することといたします。      ————◇—————
  413. 中野四郎

    中野委員長 本日は、委員並びに閣僚各位におかれましては、長時間にわたり御苦労さまでございました。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十八分散会