○堀
委員 時間がありませんから、あと二点だけ問題を処理しておきたいと思います。
実は、健保国会がありまして、健康保険法の抜本改正というのは、少なくとも来年の八月までに行なわなければならぬと思いますね。いま暫定法
——ああ、そうか、あれは暫定でなくなっちゃったわけだ。
この間、
新聞を見ると、何か来年の八月までには抜本改正をやるというような発言がありましたね。これは厚生大臣がなすったのですか。
そこで、きょうは、これはまだ党の皆さんと十分協議ができておりませんので、私の個人的な私案でありますけれ
ども、これこそ私は診療報酬の抜本的改正だという診療報酬に対する新しい提案をしたいと思うのです。
その新しい提案をするにあたって、ちょっと客観的な条件を少し申し上げておきたいのでありますけれ
ども、いまの医療の問題の中にはたくさんの矛盾があります。特に健康保険に矛盾がありますのは、いまは出来高払いということになっておりますから、患者が長く来てくれますと医師のほうは収入がふえるわけです。患者が早くなおってしまうと医師のほうの収入はそれでおしまいになる、こういうことになっているわけですね。その限りでは、要するに、へたな
——へたなと言うと悪いけれ
ども、能力のない医師のほうが収入がふえて、能力のある医師は、早くなおしちゃうから、収入がどっちかというと少なくなるという、まことにこれはさか立ちしているのですね。同時に、患者と医師の側から見ましても、早くなおることは患者にとって非常にしあわせですけれ
ども、医師は、あんまり早くなおっちゃうと、
経済的にはマイナスになる、こういう問題がありますね。ここでも実は食い違っているわけです。
もう一つは、技術料が確立をされておりませんから、そこで、注射だとかあるいは薬を使うことによって、その中に含まれておる技術料を得ていきたいという方向で、実は薬代、薬価が非常にふくらんできておる。これはそのままお医者さんのネットのインカムになればいいのですけれ
ども、そうでなくて、実はいま、お医者さん
たちは、製薬会社の第一線のセールスマンをやっていることになっておるという、非常に矛盾があるわけですね。これを
解決しなければ、私は、
日本の健康保険診療報酬の抜本改正にならない、こう思っておるのです。
そこで、
昭和二十七、八年ごろ、私は、医師会におりましたときから、いろいろと資料を集めて、私の持論なんでありますけれ
ども、新しい問題をここで提起をしたいのですが、実はいま全国の患者が、内科の外来で
——診療所、病院に通っていく人の場合です。入院は別建てです。外来についてだけでありますけれ
ども、この外来について、内科の人が全国では、
政府管掌健康保険の資料によりますと、
昭和四十二年四月の調査では、健康保険の
——これは内科ではありませんね、全体でありますが、一カ月に本人が二百五十五点、二千五百五十円実は平均して支払ったことになっているわけです。
そこで、私は、患者が一人来たら
——各科別にこれは点が違いますけれ
ども、内科をかりに三百点とすれば、一人患者が来たら三百点分を全国平均でお払いをします、十人来たら三千点、百人来たら三万点お払いをしますということで、医師と健康保険の間に取りきめができれば、患者がその月の間に内科のほうで百人来れば三万点、三十万円はお金を受け取れるわけです。そうすると、その三十万円の中で最も適切な治療をすればいい。そうすると、最も能率よく患者を治療して、早くなおすと、経費が最小になるわけです。へたにやれば、経費はどんどんふえるわけですね。そこで医師のほうは、患者をいかにして早くなおして経費を最小にするか。そのことが自分の収入を最大にすることですから、できるだけ勉強をして、いろいろな診断方法を使って、早くなおすために
努力する。むだな薬剤を使わないで、できるだけ合理的な薬剤を使って早くなおそうというほうにインセンティブが働くということになってくるわけですね。
そこで、この問題の中で問題が
解決をされるのは、いま私
ども医師は、健康保険の請求書を書くことに全国の医師はたいへん悩んでおるわけです。これが請求書を書かなくて済むようになるわけです。患者が何人来たかということだけが証明できれば、それだけで自動的に支払いを受けられる。こうなりますから、概算払いなんですけれ
ども、きわめてその点は問題が簡単になって、請求書を書かなくて済むということです。
その次に、いま、請求書を書けば、減点をするとか、この治療にこの薬はおかしいとか、支払い基金というところでいろいろ文句を言いますが、これもなくなります。これはもう受け取っているわけですから、そのワクの内における医療行為については完全に医師に自主性がありますから、一番いい方法で判断してやればよろしい。
いま、薬価基準が下がるというと、お医者さんは、その中に入っておる技術料が減るものだから、たいへん問題が起きます。今度は、薬が安くなることは、ワクの中で薬代が少なくなることですから、薬価基準の改定なんというのは必要なくなって、薬価が下がれば下がるほどお医者さんは歓迎をする。いま薬価が下がることはお医者さんにとってはマイナスですけれ
ども、薬価が下がること、これは合理的なんです、
生産性が上がるわけですから、それはよろしい、こういうことできわめて医療の自主性が確立をされ、請求の煩瑣な点がなくなり、そして実は
経済的にも安定をする。ただそれだけではないわけです。御承知のように
総理も、これから当分の間は相当の物価
上昇はある
程度やむを得ない、こういうような御
答弁をなさったように聞いておるわけです。これはいま、二%にしろ三%にしろと言ってもなかなかならないでしょう。五%内外の物価
上昇というのはかなり続く。そうなれば、お医者さんのほうにすれば、二年に一ぺんぐらい診療報酬の引き上げがあっても、なかなかこれは
解決できない、人件費はどんどん上がりますから。
そこでいまの私の提案は、その三百点の中の、物と人件費に分けて、人件費部分については公務員賃金に自動的に毎年スライドさせてあげましょう、物はほうっておくわけですけれ
ども。
〔
委員長退席、藤枝
委員長代理着席〕
こういう形になれば、お医者さんのほうはこれまでのような診療拒否だとかいろいろなことをしなくても、これは診療報酬が公務員ベースに自動的にリンクをしておれば、物価
上昇に十分耐えられて診療行為が行なわれる。こういうことで、一つの点数定額払い方式というのを、私と岡山県の医師会長をしておられた加賀先生が
昭和二十七、八年ごろに考えたのですが、なかなか実は具体的に実施の
段階にきていないのです。しかしやはり医療というものが
経済的な合理性の上に成り立っていないと、いまのような無理ないろいろな
政策をしなければならぬ。そのことが厚生省とお医者さん
たちの間にしばしば問題を起こすことになるので、やはりここは
経済合理性が一本中に立って、医師の利益と患者の利益が同じ側でマッチをするような新しい制度というものを検討する、このことが抜本改正の重要な問題になるのではないか、私はこう考えておるわけです。ただし、いまの問題には例外がありまして、一件あたり非常に重い病人が来たときに、平均で扱うと治療上問題が起きるといけないので、たとえば平均点の二倍とか三倍とか以上のものはこれまでどおり出来高で出してよろしい。これは重症患者はしかたがありませんから。それ以外の
一般的な患者は平均的処理をしようというのが実は私の提案なんです。
きょうは、これは提案ですから、皆さんにここでよろしいとか、よろしくないとかいう
答弁を受け取るつもりはありません。しかし、この問題についてはひとつ厚生省として真剣に取り組んでもらいたいと思う。私はこの問題を鳩山主計
局長にこの前話をいたしました。彼の感触だけを
——彼には事前に話をしてやり方を承知しておりますから、鳩山主計
局長から私がこの前申し上げたことについての財政当局側としての感触だけをちょっとお答えをいただいて、あと厚生大臣のお答えをちょっといただくようにしたいと思います。