○不破
委員 総理はいま若干進歩した発言をされましたけれども、ともかくこの小売り業者の全国決議はそのまま受け取りたい、つまり、これは重大な問題であると言っているわけです。総理は先ほど、あまり大した問題じゃないというようなことをずっと言論妨害問題に関して言われましたけれども、このことに関しては重大な問題だとお認めになったらしいと思います。
それで、そういうことが二度と繰り返されてはならないと総理は言われました。そういうことが二度と繰り返されないためには、こういう妨害行為がやはり間違った問題であること、二度と繰り返してはならないような重大な問題であることを、妨害行為をやった当事者がはっきりと確認をすることがきわめて重要だと思います。重大な誤りでもない、間違ったことをしたことでもないというような態度をとっておいて、それであと繰り返すのはしないと言っても、これはほんとうに国民が信頼を持つような約束にはなりません。その点で私は、先ほど総理が、
田中幹事長がやった言論買収行為は、まあおせっかいをやいたんだといって頭をかけばそれで済むような程度のものだというふうに
考えられておられるような
答弁がありましたけれども、二度とこういう誤りを繰り返さないということを自民党の総裁として
考えられておられるのだとしたら、あるいは総理が国会で、言論・出版の自由が不当に抑圧されないように
政府としても責任を負うということを言われた
立場から
考えるならば、その言論買収の問題を含めて、
関係当事者がはっきりした妨害の事実を認め、これに対する態度をとることが重要だということを強調したいと思います。
さらに、その重大性を私は重ねて指摘する意味で、もう一つの角度からこの問題を見たいと思います。といいますのは、先日の麻生議員の質問の中では、これはもっぱら取り次ぎ業界の問題として出されました。だれが原因になってこういう重大な制限行為が取り次ぎから小売りにまで行なわれるのかという基本の問題については、まだそこまで
議論が煮詰まりませんでした。しかし、私がここで指摘したいのは、こういう取り次ぎ店における妨害、あるいは小売り店における妨害、こういうものがわが国会を構成している重要な政党によってやられているということ、この点について非常に重大な疑惑がいま提起をされているという問題であります。たとえば藤原弘達氏の「創価学会を斬る」、これはいまでは総理の手元まで届けられる、町でもかなり市販されるというところまでまいりました。しかし、昨年の十一月
段階では、私が聞いたところによりますと、取り次ぎ店でも一切扱わない、広告も扱わない、小売り店へ持ちこんだら断られる。こういう状態の中でほとんど町に出ないような状態にあった。そうして出版社も、このままでは出版そのものが成り立たない、こういう苦境に追い入まれていた、こういう
状況に置かれていたといわれています。
そこに、
田中幹事長による提案に続く第二の買収工作が出版社並びに藤原弘達氏に対して行なわれてきた。これはIN通信社というところの社長の鶴蒔靖夫氏という人物がおります。この人が公明党からの依頼として、もういいだろう、本も出たし、ここら辺でもう一切打ちどめにして、残りは全部公明党が買い取りたいがどうかという申し入れを藤原氏にしてきた。そしてこの鶴蒔氏の提案は正式の公明党からの依頼である。しかも、それに
関係をしているのは、公明党の
中央幹部会員である竜年光氏、それからまた創価学会の渉外総
局長である山崎氏。こういう人々と何回も会って、その意向に基づいて提案をしているのだ、そういうことを申し入れてきたということを私は直接明らかにしました。
つまり、一方で取り次ぎ店を妨害して、実際には売れないような状態がつくり出されている。そういう中で、もう販売活動の先をとめておいて、そしてそこにあらためて買収の手が伸びてくる。こういう事態が「創価学会を斬る」という書物の場合にはあったということを私は聞いております。
田中幹事長の問題にしても、そういう一連の行為の中の一つの重要な役割りを客観的にはになわされている。こういう点で私は特に重大だと思うのでありますけれども、こういうことが取り次ぎ店の妨害との関連で行なわれている。
それからさらに、内藤国夫氏の「公明党の素顔」の場合、これは問題はもっと深刻であります。私はこの点についても内藤国夫氏及びエール出版社の渡辺社長と直接面談しまして、具体的に事実を明らかにしました。国会で問題を提起する以上、自分の責任で事実を明らかにすることは議員としての当然の責務であると思います。そして明らかにしたところが、この場合にも同じようなことが行なわれております。やはり取り次ぎから断わられる。しかも、断わられる中で、公明党の代表者と出版社の代表、それから著者との間に何回か会合が持たれている。そうして行ってみて驚いたことには、この書物のゲラ刷りですね、つまり本になる前の
段階で、印刷所と著者、出版社の間でゲラというものを用意します。校正用のゲラを用意します。これは全部で、出版社に聞いても内藤氏に聞いても、四通しか用意をしなかった。一通は著者の訂正用、一通は出版社の控えですね、それから一通は編集用、そうして最後の一通を、こういうものを出すんだがどうかということで、取り次ぎ店に回覧をする、注文をとるために。最初の三通は、いわば出版社と著者の側にあるわけですから、これが漏れるわけはない。ところが、取り次ぎ店に回覧をしたら
——これは著者と出版社の許可を得ないで外へ出すことは、いかなる点からいってもあり得ないはずなんですけれども、公明党の代表者と会ってみたところが、その代表者がこのゲラ刷りの複写を持っていて、そこにたくさんの書き込みをして、この本をこういうように書き直してもらいたいという
要求を出してきた。つまり、一方で出版、頒布は取り次ぎ
段階で押えられる、しかも、それに呼応して書きかえの
要求が出される。その中をゲラがつないでいるために、こういう書きかえの
要求と取り次ぎ店のこの取り次ぎ妨害とが、つまり関連があるということが、はしなくもゲラの存在で明らかになったわけであります。
しかも、この点については公明党の矢野書記長自身が「週刊朝日」の対談の中で、あのゲラは取り次ぎ店から取り寄せたものだということを認めております。そして公明党、創価学会に
関係する書物が出れば、ゲラが取り次ぎ店から公明党に届くのが慣例になっておる。正確にその文章を読みますと、あのゲラを入手したのは正規のルートです。「商売の慣例でゲラの
段階で取次店へ入れる。そこから来とるわけです。来ると見るわけですね。」つまり、そういうことが慣例として行なわれているということを、公明党の書記長自身が認められました。私はこれは非常に重大な問題だと思います。ここから出てくるのは、取り次ぎ店の妨害と批判の対象になっている公明党との
関係が非常にむき出しの形であらわれてきているといわざるを得ない。
それから二番目には、出版物が出されようとするときに、著者や出版社の了解なしに、事前にゲラを手に入れてそれの
内容を検閲する、そしてそれの書きかえの
要求をする。これはいわば私的な検閲であります。事前の検閲であります。こういうことが公明党、創価学会の場合には、矢野書記長の
ことばをかりれば、慣例として行なわれている。あたりまえだとして平然とされている。こういう事態があるとすれば、私は、取り次ぎの妨害の問題も、言論の買収の問題も、それからこの印刷物の事前の検閲の問題も、非常に深い言論妨害、出版妨害のそれぞれの氷山の一角であって、決して軽視することのできないものだというふうに
考えざるを得ませんでした。
そこで総理にお伺いしたいのは、こういうような出版社、著者の許可を得ないでゲラを手に入れて、事前に検閲をするというようなことが、一体民主主義という状態の中で許されるものであるかどうか。特に憲法は「検閲は、これをしてはならない。」ということを明記しております。これは検閲をしてはならないという憲法の精神に、少なくともその精神に反する行為ではないだろうか。そのことについて総理の所信を伺いたいと思います。