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1970-02-26 第63回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年二月二十六日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    賀屋 興宣君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       小坂善太郎君    笹山茂太郎君       田中 龍夫君    登坂重次郎君       西村 直己君    野田 卯一君       福田  一君    藤田 義光君       古内 広雄君    松野 頼三君       森田重次郎君    吉田  実君       赤松  勇君    川崎 寛治君       北山 愛郎君    久保 三郎君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       細谷 治嘉君    相沢 武彦君       新井 彬之君    坂井 弘一君       二見 伸明君    松尾 正吉君       河村  勝君    谷口善太郎君       不破 哲三君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 小林 武治君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 内田 常雄君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         郵 政 大 臣 井出一太郎君         労 働 大 臣 野原 正勝君         建 設 大 臣 根本龍太郎君         自 治 大 臣 秋田 大助君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)(行         政管理庁長官) 荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)(科学技         術庁長官)   西田 信一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         警察庁長官官房         長       富田 朝彦君         警察庁警備局長 川島 広守君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      内海  倫君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁総合         計画局長    八塚 陽介君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省銀行局長 青山  俊君         国税庁長官   吉國 二郎君         厚生大臣官房会         計課長     横田 陽吉君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省環境衛生         局長      金光 克己君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 加藤 威二君         厚生省社会局長 伊部 英男君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省年金局長 廣瀬 治郎君         社会保険庁医療         保険部長    高木  玄君         社会保険庁年金         保険部長    穴山 徳夫君         農林大臣官房長 亀長 友義君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省畜産局長 太田 康二君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         通商産業省繊維         雑貨局長    三宅 幸夫君         中小企業庁長官 吉光  久君         運輸省航空局長 手塚 良成君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君         自治省税務局長 降矢 敬義君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大沢  実君     ————————————— 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   吉田  実君     松浦周太郎君   相沢 武彦君     新井 彬之君   矢野 絢也君     二見 伸明君   麻生 良方君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   新井 彬之君     相沢 武彦君   二見 伸明君     小川新一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十五年度一般会計予算  昭和四十五年度特別会計予算  昭和四十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度一般会計予算昭和四十五年度特別会計予算昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 まず冒頭に、昨晩原水協関係から、横田基地グループBという毒ガス兵器らしきものが貯蔵されておるという発表をしたわけであります。  そこで、この点について、政府当局として実態を調べられたかどうか、まずお伺いいたします。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカ当局に対しまして確かめましたところ、その物件はスモーク・マーカー・ボムと呼ばれるもので、水中に投下して、そして有色の発煙を生ずる、それによって船舶遭難を知るための救助用発煙弾である、この間「かりふおるにあ丸」が遭難したときにも使用した、そういうものであって、いわゆる伝えられるようなGB兵器というようなものではない、こういうことであります。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 日本本土の中に米軍BC兵器は絶対に置いていないという確信がありますか。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点については楢崎委員もよく御承知のとおり、昨年楢崎委員からお出しになりました質問主意書に対するお答えでも明らかのように、政府といたしましてはさような事実がないということを確信いたしております。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ジュネーブ軍縮委員会で、いまこのBC兵器禁止の問題が中心の課題になっております。そこで、まず一九二五年のジュネーブ議定書これを政府は今後どのように取り扱われるつもりでありますか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ジュネーブ軍縮委員会等における今後の本件の取り扱いについての各国の動向などもなお十分見きわめたいと思っておりますけれども、一九二五年の議定書につきましては、私は趣旨において賛成すべきものである、かように考えますので、そういう立場から今後善処してまいりたいと考えております。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 批准をなさるおつもりですか。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 批准方向考えてしかるべきではないかと存じておりますが、ただいま申しましたように、BC兵器の問題については、軍縮委員会におきましても各国とも非常に熱心でございますし、再開されたばかりの状況でございますから、もしそれよりもさらに現在の事態に即するようなベターな案が取り上げられるというようなことにでもなれば、それをも見すまして、態度を終局的にきめたほうがいいのではないかというふうに思っております。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 今国会に間に合いますか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはなるべくすみやかに態度を決定いたしたいと思っておりますから、場合によりますれば今国会の御審議をいただけるような措置をとることも考えております。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで、昨年国連総会の第一委員会政治委員会でありますが、ここでスウェーデン中心にして、スウェーデン決議といわれておるぐらいにスウェーデンは熱心にやったわけですが、「いっさいの化学的戦争手段およびいっさいの生物学的戦争手段国際的武力紛争において用いることは、ジュネーブ議定書に盛られたような国際法の一般的に認められた原則に反することを宣言する」という決議案が出されたわけであります。賛成五十八、反対三、棄権三十五。これに日本はどういう態度で臨まれたわけですか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろの決議案勧奨案等が出ておりますが、ただいまお述べになりましたものに対しては、日本はたしか棄権しておるものかと思います。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 なぜ棄権されたのですか。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはたとえばBC兵器定義あるいはそれの範囲等につきまして——これはいまお尋ねのその決議のことと私考えておりますけれども、たとえば、いま申しましたように、その範囲その他についても疑義のあるような点もございまするので、趣旨はともかくといたしまして、賛成ということに踏み切るのには疑義もございますから、手続の問題として、あるいはたとえば一つ軍縮委員会中心条約案その他については締約国自身解釈を合意しなければならない。これに対して他の組織からリコメンデーションを出すというようなことについても手続上の疑義もあるというようなことで、たとえばイギリス、カナダ等とも相談をいたしまして、その問題であるとすれば、私の記憶からいたしますと、三十五カ国が棄権をいたしておるようなわけでございます。  なお、申すまでもないところでありますが、軍縮委員会におきましてはBC兵器等についてはただ単に戦時中の使用ということの禁止だけではなくて、この製造貯蔵等に及んで禁止をすべきであるというのが日本政府態度でございますことは御承知のとおりと思います。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ただいま後段に言われましたBC兵器禁止に関する政府考え方と、先ほど私が申し上げました国連政治委員会スウェーデン案とはどんなに違うのですか。片一方には棄権をして、そして今度はBC兵器禁止条約を出そうというのですが、どう違うのですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは非常に大きな問題のようにお取り上げのようでございますけれども、日本政府態度というものは非常に大きな、かつ高い立場に立っての主張をいたしておるのでございまして、いまの棄権ということがいかにも大きなことのようにお取り上げのようでございますけれども、先ほど申しましたように、これは手続の問題なんです。(「何が小さいんだ」と呼ぶ者あり)いいえ、それは国連の第一委員会等における権限の問題として、BC兵器定義等についてどうするかということはまず締約国の間の合意がなければいけないではないかというようなところから、関係国の間との協議で三十五の国々が、BC兵器禁止というようなことについては賛成しておるんだけれども、手続上の問題として、そういう点について疑義がありますから棄権をしたのであって、何も反対をしているわけでも何でもない。さらに大きな目的に向かって前進するための一つプロセスであるにすぎないわけであります。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 問題の核心は、アメリカ日本催涙ガス、それから枯葉剤、こういうものを含めるかどうかがポイントになっておるのです。それで、日本政府としては、規在行なわれているジュネーブ軍縮委員会に提案しようというBC兵器禁止条約については、この催涙ガスあるいは枯葉剤等は含めるのですか、含めないのですか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ジュネーブ議定書では、御承知のように禁止対象としては、「窒息性毒性」……(楢崎委員「今度主張しようとする」と呼ぶ)いいえ、ですからそこに関連がありますから——「窒息性毒性」その他これらに類するガスでありまして、殺傷を目的としない催涙ガスまでこれに含まれているという解釈は確立されていないわけです。そのくらいでございますから、そのほかのこれに類するものとして何が取り上げられるか、これが国際的な解釈が統一されていない。催涙ガスは入ってないということは通説でありますけれども、それらの点につきましても、確定的な解釈ができるだけ確立されるということが前提となって、批准をお願いする場合におきましては、政府として自信のある態度で御審議をお願いしなければなりませんから、そこで先ほど申し上げましたように大事な問題ですから、いま十分のプロセスを踏んで、そうして先ほど申し上げましたように、場合によりましては今国会の御審議に間に合うように御提案をしたい、かように存じておるわけであります。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま聞かないことをおっしゃいましたが、ジュネーブ議定書の中には、「窒息性毒性又はその他のガス及びすべての類似の液体、材料又は考案」、「すべての類似の」です。だから入るのです。ただ、これはジュネーブ議定書のほうは戦争に関する限りですね。使用禁止の問題、貯蔵の問題は入ってない。そこで代表で行かれる中に元千葉大学の川喜田教授が入っておられますね。この川喜田教授催涙ガスBC兵器に含めるべきであるという強硬な意見の方です。その方が代表で行かれる。しかもいま、催涙ガス等を排除するという考えを持っておるのは、大体もうアメリカ日本ぐらいではないですか。大部分が全部を含めて禁止するという方向へ向かっておるのではないですか。そういう各国が集まってやられる会議に、しかも日本から行かれる代表に、催涙ガスBC兵器に含めるべきであるという強硬な主張代表が行かれるのです。どういうふうにお考えになりますか。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは大きく申しますと、問題が二つあるわけでございますね。戦時中に戦争の用に供するために禁止しなければならないBC兵器定義というものはいかにするか、この定義についてただいまるる申し上げましたように、国際的な条約参加国の中にも範囲がまだ明定されてはおらないのです。したがって、これに対して明定したものをつくるべきであるというのがわれわれの考え方でございます。同時にもう一つ大きな問題は、スウェーデン決議案ということについてお触れになりましたけれども、このスウェーデン考え方も、たとえば催涙ガスというような一例をあげてみますならば、国内の治安といいますか、暴動を鎮圧するというような目的に使う催涙ガスというようなものはこれに入らないのだということは、スウェーデン主張にもそれが取り上げられておるわけですから、戦争のためのBC兵器定義範囲の問題とそれからそうした種類の問題と大きく分けて二つある。そうして前者についての日本政府の従来からの主張は、なるべく範囲を広くし、かつ使用だけではなくて、製造、あるいは貯蔵においてもこれを禁止するのが理想であるという主張をいたしておるわけでございます。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 現在自衛隊BC兵器関係の、催涙剤も含めてどういう種類のものをお持ちですか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛隊が持っているのは催涙性ガスで、これは治安の場合に使うという程度のものであります。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 具体的に聞いておるんです。催涙剤等に使うものではどういうものをお持ちですか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 CNCSというものであると記憶しております。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がおととし質問しましたときには、CNだけしか持っていないということですね。CSはいつからお持ちになるようになりましたか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 CS研究用として化学実験等使用しておるので、貯蔵とかなんとかいうものではおりません。しかし研究用として化学実験に使っていることはありますから、そういうふうに申したのです。しかしCSといいましても、いわゆる純粋のCSという程度のものではなくして、これに類似している、あれは一種の農薬みたいな性格のものでありまして、いろいろ來雑物の入ったものをそういう実験用にいろいろ研究して使っている、こういうわけであります。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 御注意しておきますが、化学兵器——農薬とかいうものは目的で変わるんですよ。だから農薬みたいなものと簡単におっしゃらないでくださいね。  そこで、CNCSの、最近の、三次防に入ってから、昭和四十二年から今日までの取得の数量、金額を明らかにしてください。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 金額はわかりませんが、たしか六トンと七トン、計十三トンであったと思います。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 金額は合計して十三億二千百万円、間違いないですか。
  32. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 一億三千二百万、単位が一つ違っておると思います。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私の読み違いでした。訂正します。一億三千二百……。まあいいですわ。  そこで、いまCS実験用に置いているという話です。それじゃこれ以外に置いているのはありませんか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それ以外にはありません。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、昨年八月四日に政府に対して、予算委員会を開く開くと言いながら開かれませんでしたから、質問の機会がなかったので、公開の質問書を出したわけです。「在日米軍及び自衛隊における化学細菌作戦に関する質問主意書」を出したわけです。政府からは同月二十二日に回答が参りました。その中でも、私はいま言った質問をしておるのです。ところが、いま実験用にも研究用にもとにかくこれ以外はないというお答えでありますが、あるじゃありませんか。昨年沖繩米軍基地で問題になった例のGBサリン、これを持っておるでしょう。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 楢崎委員質問書も私拝読いたしまして、政府答弁書にも書いてありますが、Gガスは持っておりません。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 実験用にも研究用にも持っていないんですか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いわゆる正式のGガスというものはないのです。しかしいろいろ防護用研究のために、その素材として試験管等でそれに近いものを合成して、それをいろいろな研究用に使っているということはあります。しかし、いわゆる使用とか保管というようなものではございません。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私の質問主意書は、実験用研究用でもあるんじゃないかという質問をしたんですよ。皆さんお聞きになったでしょう。実験用研究用にもCNCS以外はないとおっしゃる。ところがいまの答弁はあるのですか、どっちなんですか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはもう試験管でいろいろ合成して、それに近いようなものまでつくって、実験用研究用使用しているということはあります。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それじゃGBサリンはありますね。お持ちですね。
  42. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはもう解釈のしかたで、ことばの用い方でありまして、ただいま申し上げたとおりです。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 持っておるかどうかは、実験用として持っておるということ、そういう理由で持つということはあり得るんです。あなたは似たようなものとおっしゃいましたが、ちゃんと研究しておるじゃないですか。GBガスと書いてある、サリンと書いてあるじゃありませんか。どうなんです。研究成果発表されておるでしょう。
  44. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは政府答弁書に書いてあるとおりでございまして、いま申し上げた試験管の内部でそれに近いようなもの、たとえばパラチオンというような、そういうものに近いものを合成して研究に使った、そういうことであります。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 長官、これは御存じないんでしょう。もちろん有機燐剤を使って、そのうちパラチオンあるいはチップ、そうしてGBあるいはびらん剤のマスタード、全部使っておるじゃありませんか。その経過が一つ一つ出ておるんです。発表してあるんですよ。どうしてそういうわかりにくいことをおっしゃるのです。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 答弁書に書いたとおりでございます。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この答弁書は、では実態と違いますよ。違います。この答弁書実験用にも持っていないと書いてあるんですね。あなたの答弁政府答弁書とも違いますよ。
  48. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私の言ったとおりでありまして、つくったものは試験管等で合成したもので、それに近い性格のものもあります。しかしそれは精製、固定、つまり定性分析等の確認は行なっていないのでありまして、G剤として特定することはできません。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それではいいですか、あなたの部下の数名の人がちゃんと名前も書いてある。似たようなもの、似たようなものとおっしゃいますが、ちゃんとデータにはGBサリンと書いてあるじゃないですか。どうしてそれを似たようなものと言い直すのですか。ぐあいが悪いのですか、GBサリンといったら。沖繩で事故を起こした有名な毒ガスだからいけないんですか。はっきりしてください。これは私は内閣総理大臣佐藤榮作という署名で答弁をいただいておりますから、総理の御答弁をいただきたい。——総理からいただきたい、総理からいただいたのだから……。
  50. 中野四郎

    中野委員長 指名したのですから説明だけちょっと……。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府委員をして説明させます。
  52. 浜田彪

    浜田政府委員 発表いたしました論文の中におきますGBというのはGBそのものではございませんで、試験管の中でつくりまして、農薬よりも水溶性の高い有機燐化合物GBと想定した発表でございます。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなでたらめを言っちゃいけませんよ。GBと想定したなんて書いてないですよ、この中には。GBそのものサリンそのものと書いてあるじゃありませんか。どうしてそういうことを言うのですか。何のために言うのですか。あっさり言ったらいいじゃないですか。こういう研究成果発表ということは正確でなくちゃいけません。正確でなくちゃ。(発言する者あり)よけいなことは言わぬでください。こういうやつは科学的なものだから。
  54. 浜田彪

    浜田政府委員 実は作成いたしました段階で、精製道程、そういうことでサリンと確認することができるような純粋のものを取り出すことはできませんで、ただ市販の農薬化合物に比べて水溶性の高い有機燐化合物ということで、残念ながらサリンというふうに言うためには、それほど純粋なものができませんでした。こういうことでございます。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、そういうふうにあなたの言ったように書いてないですよ、これに。これは研究成果発表なんですよ。いいですか。じゃ言いますがね。(「プライベートなものだ」と呼ぶ者あり)プライベートじゃないですよ。自衛隊としてやっておるのですよ。せっかく静かにやろうと思っているのに、何言っているか。  いいですか。これは「防衛衛生」一九六七年十号にちゃんと成果発表されておるのですよ。もしこれがでたらめなら、この人たちは税金を使って何をやっておるのですか。もしこれが間違っておれば正式に間違いであるというあれを出しなさい。出しなさい。こんなでたらめなことがあるんですか。「防衛衛生」という専門雑誌ですよ。そんな、せせら笑うような問題じゃないんだ、これは。
  56. 浜田彪

    浜田政府委員 「防衛衛生」に発表いたしました御指摘のGB発表されておるものは、実は水に溶けました農薬あるいはそれに類するもの、それに対する浄水装置の試験でございまして、その医学的な公衆衛生的な実験をいたします段階では、純粋なサリンでなくても、ただそれに似たようなものであればいいというふうな表現で一応お願いをいたしまして、試験管の中でつくっていただき、それを実験に供しまして、供する段階では大体の性質が、まあ私たちの行ないます実験の段階では、GBと同程度考えてもいいだろうという考え方でやったものでありまして、それがずばりサリンを使ったものではございません。  以上でございます。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 もしそういう内容だったら、この研究というのはまことにでたらめであり、この研究成果発表というのは全くでたらめですよ。これはひとつ明確にしていただきたいと思います。委員長、明確にしていただきたい。
  58. 中野四郎

    中野委員長 明確にしろと言ったって、答弁しているんだから、答弁を求めたらいいんだ。こっちは明確にしようがない。
  59. 浜田彪

    浜田政府委員 いままで説明いたしましたように、実は私たちの持っております実験装置では十分な精度を得ることができませんので、残念ながらサリンそのものをつくり出すことは現在の段階ではできないのでありまして、ただ合成の段階で数グラム程度、要するに農薬よりは水溶性の高いサリンに似たようなものということでGBに近いものを作成して実験をいたしたものであります。ただ医学的にはそのようなろ水装置というものを調べる段階では、その程度の加合物であっても十分医学的成果を得るという判断で発表がなされたように聞いておるのであります。
  60. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はいまの答弁じゃ納得できませんよ。研究成果がきちんと出ておるんですね。GBサリンと、こう出ておるのですから……。実はこれは近いものでありますなんていうようなことを書いてないのですよ。それならそれらしくこれを直さなくちゃいけない。これは理事会なら理事会で私はもう少し明確にしてもらいたいと思う。それで次に進みますけれども、一応いまの点はちょっと質問を保留しておきます。  そこで私は、二十日から開かれました予算委員会、昨日までの質疑の内容で出た問題について、一応二、三明確にしておきたい問題がありますので、それから入りたいと思います。いわゆる沖繩返還後の核の再持ち込みの問題であります。そこで、共同声明の中にいろいろ書いてあるわけですが、この共同声明は佐藤内閣あるいはニクソン内閣がかわっても、その後の日米両政府を拘束しますか。
  61. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、そのときの最高政治責任者の約束でございますから、これは長く両国政府を縛るものだ、かように思います。
  62. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると八項の中にあります「日本政府の政策」というこの日本政府は、佐藤内閣はもちろん、ポスト佐藤内閣の意も含めての日本政府ですね。
  63. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さようでございます。
  64. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで佐藤内閣が続く限りは非核三原則を堅持する——私の顔が非核三原則の顔だとおっしゃいましたですね。そうすると、この八項の「日本政府」というのは佐藤内閣がもしかわりました場合の内閣の意味でもあるわけですね、これは。そうすると、もし佐藤内閣以後の内閣が非核三原則を変えた場合、変えた場合にも、あの共同声明の中には非核三原則ということは書いてないんだから、今度は変えた政策が八項目にいう「日本政府の政策」になってくるわけですね。
  65. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、もしもこれが変わるという場合においては、あらためてその変わったことを声明すべきだ、かように思っております。
  66. 楢崎弥之助

    楢崎委員 非常に事態が明確になりました。もし日本政府が非核三原則を変えた場合には、日米共同声明のこの部分はもう一度共同声明をやり直さなくちゃいけない、非常に明確になったと思います。そうすると、二十四日のわが党の川崎委員質問に対して非常に重大なことを言われたと思うんです。ちょっと重大なところですから読んでみます。速記録によって……。私も一国の代表者、総理である、またニクソン大統領もアメリカ代表しておられる方である、そういう方からとかくの議論が出るならばこれは別である、それはもうはっきり申し上げたように、責任を持ってさような持ち込みを許さない——この次です——そのことで完全に意見が一致している。このことをはっきり御了承いただきたい。それより以上には申し上げることはない。非常に明確な私は答弁であろうと思うのです。そこで、この公の共同声明のほかに、この完全に意見が一致しておるという点、何かこの共同声明とはほかにニクソン大統領と口約束なんかされたのですか。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ほかにございません。共同声明そのものでございます。
  68. 楢崎弥之助

    楢崎委員 おそらくそうおっしゃるだろうと思っておったのです。結局あの共同声明の説明をあなたなさったわけですね、さっきのような表現で。そういうことですね。——そういうことですね。  そうしますと、結局はいまのところはまことにあやふやなんですね。佐藤内閣の続く限りこの非核三原則ということは共同声明で拘束するけれども、佐藤内閣以後はわからないわけですね、この非核三原則については。これがはっきりしたわけですね。よろしゅうございますか、そういうふうに解釈して。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 万一社会党内閣ができれば、そういうものは御否定になるだろうと、かように思います。はっきり申し上げておきます。
  70. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、そうじゃないのですよ。自民党の内閣でも、佐藤さんが今度四選されるかどうかわかりませんけれども、おたくの政党でかわった際に一それじゃ聞き直しましょうか。もし自民党政府が続く限りは、非核三原則は続くのですか。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう問題を、先ほどお答えいたしましたように、ただいまの状態では私は両国民も縛っておると、かように思います。したがいまして、それが変われば、変わったところではっきりささなければ、変わったことがわからないと、かように思っております。ちょうどアメリカのジョンソン前大統領のもとで、沖繩返還について両三年のうちに相談しようと、こう言ったのです、これがやはりニクソン大統領を縛っておる。したがって私どもはニクソン大統領のもとでも相談ができたと、かように思っております。そういうように、両国間の最高責任者がきめたことでございますから、それと変わるようなことがあれば、これはもう明らかに、その点を明らかにしなければならない。さっきは例をとって、非常にわかりいい場合を申したので、あるいは社会党の方がおこられたかもわかりませんけれども、私は社会党の内閣が私どもの内閣の考え方を必ずしもそのまま守られると思わないから、そういう例を申したのです。私は、おそらくわが党の内閣が続く限りにおいて、私どもの考え方がそう変わるとは思いませんし、もしも変わるならば、必ずそのときには、あらためて声明すべきだと、かように思っております。
  72. 楢崎弥之助

    楢崎委員 非常に問題が明確になったと思います。それで、この昨年十一月に結ばれました共同コミュニケは、日本政府が非核三原則を変えるまではこれは両国を拘束する。非核三原則をもし変える場合には、この共同声明は効力を失うわけですね。——まあ、こうされましたから、大体そうだと思います。  次に、これはちょっと総理に注意を喚起しておきたいのですが、これも公明党の正木委員なりわが党の川崎委員質問の中に、韓国が武力攻撃を受けたときに、それを排除する行動を米軍がとる、日本からもし在日米軍が直接発進したときには、相手国から見れば敵性国家になるから攻撃されるのではないか、そういう質問の内容だったと思うのです。それに対して総理は、いやそれは報復権はないんだ。それは私は国際法の原理に反すると思うのです。どうしてかというと、国際法の原則というのは、戦争に参加している交戦国以外の第三国は当然中立国となり、その領域では交戦国は戦闘行為を行なってはならないことになっている。しかし、たとえ中立国の領域であっても、交戦国のいずれか一方の軍事基地となり、戦争のために使用される場合には、その範囲内において交戦区域になり、戦闘が行なわれても国際法上これはやむを得ない、これが国際法の原理。交戦区域になる。違法とか正当とかは問題にならない、その際は。交戦区域になる。だから報復権がないというのは間違いであると思います。どうですか。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 総理の御答弁があると思いますけれども、私もそのときのお答えをいたしておりますから念のために申し上げますが、まず一番最初の前提が、予想し得ないような組織的な計画的な侵略行動が起こったということが観念的に前提されている、このことは非常に大事なことだと思うのです。それに対して自衛権というものは、まあ簡単に申しますけれども、自衛権というものは国際的に確立された原理でございますから、自衛権によってその組織的な計画的な侵略行動に対して自衛をした、その自衛に対してまた襲いかかるということがあれば、これはもう第二の侵略行動であります。こういうふうに私は理解しなければならないのであって、いまおあげになったような原則とはこれは全然違う、かように考えます。
  74. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは国際法解釈の少数意見なんです。都合のいいときだけ少数意見を用いちゃいけませんですね。  それで念のために、これは前の椎名外務大臣のとき、昭和四十一年六月一日の外務委員会、ここで与党の鯨岡さんが質問なさって、ベトナム問題を例にとって、「アメリカの相手国である北ベトナム等から見れば、日本は直接の敵ではないけれども、敵性国のような形になっている。それによって起こる危険というものはやっぱり日本にある。」というくだんの質問に対して、椎名外務大臣は距離の問題にしてしまったのですね。「ベトナム戦争がもう少し近いところで行なわれておるということになると、はっきりするわけであります。」「私は、危険がないとは言えないと思います。」「そして攻撃を受ける、あるいはその他の脅威を受けるというようなことはあり得ると思う。」「しかし、いま非常に距離の遠ざかっておるベトナムの戦争に関しては、きわめてそれは現実的ではない、」距離の問題にされておりますね。だから、共同声明では、非常に距離の近い韓国の問題ですから、これは政府答弁からいっても、非常に危険があるということは事実ですね。そういう報復を受ける危険があるということは。それはどうですか。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣からお答えしたとおり、いわゆる正当性があるかどうか、そういう問題だと思っております。   〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 私どもが否定しているのは、それは侵略が現実に行なわれておる、そうしてそれに対する対策が、わが国の基地から米軍が飛び立ったと、こういうことだと思いますので、その侵略が拡大されるという、そういう事実はあるかもわかりません。私は少数意見だろうが多数意見だろうが、とにかく日本が攻撃されることが当然だ、これはもう当然の権利であるというように言われることに抵抗を感ずるのです。
  76. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうも質問の簡潔明瞭さに比べて、答弁が非常にあいまいで長時間を要しておりますですね。  次に、中曽根長官にお伺いをします。  私は中曽根さんが長官になられて非常に注目した一つのあなたの構想、つまり在日米軍基地を漸次自衛隊の管理に移す、これはその賛成、不賛成は別として、私は非常に新しい構想だと思いました。ところが、これをやるためには、地位協定の二条四項(b)を変更するか、二条四項(b)をむちゃくちゃに拡大解釈するか、どちらかしなければできません。それに対して長官は、場合によっては変える必要があろうと思うから検討しておるという答弁をなさった。それに対して、すぐ、それを打ち消すかのごとく、外務大臣が求められもしない答弁を行なって、いや、変えないでやれるところからやっていくんだ、こういう答弁があった。それがさきおとといのことですね。ところが、おとといは、中曽根長官は、その前の晩にどういうことがあったか知りませんが、川崎委員質問に対して、それも、川崎委員沖繩のことを質問しておるのに、この問題について答弁を、足らなかったところがあるからと言ってつけ加えられた。そうして愛知外務大臣と同じような答弁になりましたね。二条四項(b)を、あるいは地位協定を変えないでやるということは、何も新しい構想じゃないんです。本来、政府がやるべきことなんです。もしサボっておるとしたら、政府の責任なんです。だから、サボっておりましたから積極的にやりますというなら、それだけの意味しかない。ところが、あなたの新構想というものは、われわれから見ると、二条四項(b)を変えてでも、常時使用している米軍基地自衛隊管理に移したい、私はこういう意味に受け取った。特にこの首都東京、ここに米軍基地があるのはたいへんふさわしくない、少なくともこれは自衛隊管理に移さなければいかぬというのがあなたの持論なんです。そうすると、地位協定を変えるということが、やはりポイントであろうと思う、あなたの新構想は。ひとつあなた大胆に、あなたの新構想をもう一度簡単明瞭に、地位協定を変えてでもやるならやると、どうですか。
  77. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中曽根構想に御支持をいただきまして、まことにありがとうございます。いまの問題につきましては、私は、現行の地位協定で運用していけるものはそれでいく。いまいろいろ検討してみますと、いけるものがだいぶあるようであります。しかし、ある時間の経過において、どうしてもそれでいけないという部分があれば、将来もちろん検討して、改定したいと思っております。しかし、それは実際向こうと話し合ってみて、どのケースがどういうふうになるかということをいろいろ調べてみた上で、その上で変えないということではありません。
  78. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外務大臣、いまの中曽根長官のお考えでいいですか。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは、私の答弁をしさいにお読みいただければよくおわかりと思います。私も地位協定を前向きに検討するということには賛成でございますということを言っているんです。同時に、しかし、いまの地位協定下においても、できることはどんどんやっていきましょう。中曽根長官と私の答弁とをあわせてお読みいただければ、政府の見解というものは非常によくおわかりになるはずでございます。
  80. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、あなたは、改定のほうはあまり力が入らずに、いまのままで、変えなくてやったらいいじゃないかというほうに力が入っておるんですね。それは、はっきりしておるんです。まあ、しかし、長官がまたもとに戻られて、改定してでもやる、自分の構想をやりたい、こういうことだ——ふんと、こう言われましたから、そうだと思います。それでよろしゅうございましょう。  そこで、板付基地を例にとりましょうか。あそこはもう米軍の実戦機はいない。いわゆる、いま使用していない基地。これなんか、あなたの構想でいくと、一番管理に移しやすいですね。どうなんですか。
  81. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先方の考えもあり、いろいろまた極東情勢その他との関係も先方は考えて、構想を練っているだろうと思うのです。そういう先方の考えも、これは尊重しなければなりませんし、われわれ側の要望もまた先方に対して強く伝えなければならぬと思います。ですから、要するに、相互が信頼関係にあって初めて安全保障体制というのができるのでありまして、お互いが弾力的に話し合いをして、両方の要望を達するような妥協点を見詰めていきたい、こう考えておるわけです。
  82. 楢崎弥之助

    楢崎委員 もう一点だけその点についてお伺いしておきます。  自衛隊の管理とあなたはおっしゃっていますが、二条四項のどこから管理ということが出てくるのですか。自衛隊が管理するということは法的にどういうことなんですか。一度返還をしていただいて、自衛隊がそれを使う、そして二条四項(b)と、こういうふうな順序ですか。
  83. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は政治的な構想を述べているので、それを法制的にどういうふうに解釈するかということは、専門家に意見を聞いてみたいと思いますが、おそらく私の感じでは、一たん日本側に返還してもらって、そしてあらためて向こうに貸すとか、そういう形になるのではないかと想像しております。
  84. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、その解釈は正しいと思います。それで、そういう点から見ると、二条四項を変えないで管理に移すということは、なかなかむずかしいことです。まあ賛成、不賛成は別として、現実の問題で出てきたとき、われわれは——私も軍事基地反対特別委員長ですから、具体的に対処いたします。  次に、韓国に武力攻撃が発生した場合、いままでの質疑では、その場合は米軍がどう対応するかということが中心になっておったと思うのです。それで、私は、自衛隊はどう対応するのか、米軍の対応と自衛隊の対応、この点が当予算委員会であまり明らかになっておりませんので、そういう点からのアプローチをしてみたいと思います。  そこで、まず、前提として、自衛権というものの概念を明確にしておきたいと思いますが、これは私のほうから、これでいいかということを聞きますから……。   〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕  これは、一九五九年二月十日、衆議院内閣委員会、わが党の石橋委員質問です。「第一に急迫不正の侵害、すなわち現実的な侵害があること。第二にそれを排除するために他に手段がないということ。第三にそれを防御するために最小限必要な方法をとるということ。」を自衛権行使の厳格な条件と考えている。それでいいかという質問に対して、岸総理は、そのとおりである。大体これでよろしゅうございますか。——いや、おにいさんが答弁されたのだから、総理から……。
  85. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 法律関係の問題でございますので、私いま総理とお打ち合わせの上お答え申し上げますが、こまかい問題はこれから出てまいるかもしれませんが、大体において誤りなし、そのとおりでけっこうだと思っております。
  86. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、この自衛権の発動の場合の要件というものは、第一、必要性、つまりやむを得ないという必要性。第二、違法性、加えられた侵害が不正であるということ。第三、均衡性、侵害された度合いと自衛行動がつり合いのとれたものでなくてはいけないという均衡性。この三要件である。そしてこの三要件は必須の要件である、こう考えてよろしゅうございますか。
  87. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 最初にお述べになった要件をさらにことばをかえておっしゃっているものだとすれば、それでけっこうだと思います。
  88. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そのとおりであろうと思うのです。’法制局長官の、一九六七年三月二十八日、衆議院予算委員会答弁も全くこのとおりなんですね。それで、これは自衛権発動の場合の必須条件である。  そこで、自衛隊法の七十六条の下令というのは、いわゆる出動というのは、自衛権の発動なんですね。
  89. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 自衛隊の行動が自衛権の発動であるかということばが、よく私にはぴたりとまいりませんが、自衛権を発動する際の行動の一つとして、そういうことが出てまいるということになろうと思います。
  90. 楢崎弥之助

    楢崎委員 憲法は自衛権を否定していないという解釈ですね。そこで、自衛隊法ではこれが七十六条に該当する、これ以外にないですから、そういうことだと思いますね。そこで、安保条約の第五条の「武力攻撃」、これは憲章五十一条の「武力攻撃」という概念と同じである。これも確定されたものであろうと思います。そうですね。
  91. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 憲章の五十一条の「武力攻撃」と、それからいま御指摘の「武力攻撃」が本質的に違うものだとは考えないというような御答弁をしたことがありますし、現にそう思っております。
  92. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで、この憲章五十一条の「武力攻撃」という問題をちょっと明確にしておきたいと思います。これはいわゆる先制的な自衛権行使を認めていない、これが日本政府態度である。つまり、現実に侵害を受けなくては自衛権は発動されない、これもよろしゅうございますね。
  93. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 自衛権の発動の要件として、武力攻撃というものが発生した——発生の時点がこまかい問題としてはございましょうが、一般的にいえば、発生したとき、それに応じて自衛権が発動するというのが一般的な考え方でございます。ただし、個々の戦闘における防衛攻撃、これはむろんおわかりでございましょうが、話は別でございます。
  94. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これははっきりしておるのですね、いままでの政府態度は。つまり、自衛隊法にいうような「おそれのある場合」、これは少なくとも安保条約の第五条あるいは憲章五十一条には含まれない。これが日本政府の確定解釈だと思うのですね。これはずっと過去の答弁で全部例をあげてもよろしゅうございますよ。間違いないですね。つまり、先制的な自衛権は認めない、自衛権の行使は認めない。私の言う先制的というのは、現実に侵害が起こらないでも、急迫不正の侵害が明白にあらわれたときには、現実に侵害を受けないでも自衛権を行使し得る。これが私の言う先制的な自衛権の意味です。そういう意味では安保の五条も憲章五十一条も、先制的自衛権は含まれない。これでいいですね。簡単にひとつ……。
  95. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 国際法解釈の面がありますので、場合によったら外務当局から御説明のほうがいいと思いますが、私のいままでに関係しているところから見まして、やはりこの先制的なものに対する反撃といいますか、これは自衛権の通常の観念には入らない。やはり侵害があって、それに対して防衛をするというのが自衛権の本質であるということは、いままでも申し上げていると思います。
  96. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外務大臣、それでいいですか。いいか悪いかだけでいいです。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 極東の日本以外の地域に対する武力攻撃がすでに存在するような場合、そしてその事態がわが国に対する直接の脅威に発展するようなおそれがあるような場合、そういう事態に対処する必要のために在日施設、区域を基地とする戦闘作戦行動のための発進について、在日米軍から事前協議があることがあり得る……(楢崎委員「そんなことは聞いていない」と呼ぶ)いえ、関連がありますから。そういう場合は、これは安保条約の系統に属することであります。  それから、自衛隊の出動については、これは私の守備範囲ではございませんけれども、従来からの政府解釈としては、わが国に対する直接の武力攻撃に備えるものである、そういう意味におきまして、法制局長官の答弁と同感でございます。
  98. 楢崎弥之助

    楢崎委員 一番最後のことだけおっしゃればいいのです。そうしますと、憲章五十一条は、日本語では「武力攻撃が発生した場合」となっておりますね。ところが日本語を英語に訳せば、これは現在完了形になるような意味に聞こえますね。つまり発生したとき、「た」という。ところが原語はそうじゃないですね、正文は。つまり「イフ・アン・アームド・アタック・オカーズ」ただそれだけになっております。「ハズ・オカード」になっていないですね。だから、ここから私はいろいろな解釈の相違が出てくると思うのですが、しかし日本政府は、現実に発生したときと、現在完了の意味に解釈されておるようですから、それでいいと思います。  そこで、私は一つだけ例を示して考えを聞いておきますが、一番わかりやすい例は、太平洋戦争勃発のとき、いわゆる真珠湾攻撃のとき、三つに分けて言います。その三つの時点で、どの時点で自衛権は発動し得るか。日本艦隊がアリューシャンに向けて行って、そうしていわゆる「ニイタカヤマノボレ」の電報、つまりハワイ島に向かえというあの「ニイタカヤマノボレ」の電報が傍受されたとき、それが一つ。それからいよいよ南下して、一定の地点から空母より艦載機が発進してオアフ島に向かった、これが第二の時点。いよいよアメリカの領域内に攻撃が入った場合、この三つの場合のどの時点で自衛権は発動し得ますか。日本政府解釈からいくと、いよいよオアフ島の領域に入らないと自衛権は発動されないという解釈になるわけですか、それでいいですか。
  99. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 たいへんこまかい問題でございますが、その場合の自衛権の発動というのは、アメリカ側の自衛権の発動をおっしゃるわけですね。
  100. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうです。
  101. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これはアメリカ考えは、どういうふうに解するか私にはわかりませんが、とにかくいままで申し上げたところからおわかりのように、何らの武力攻撃がないにもかかわらず、これに対して武力的な圧力を加えるというのは、われわれのとらざるところでございます。ただし、武力攻撃があるということが、すなわち身が破滅してからでは実はおそいので、武力攻撃の着手、それが第一に考える基本であろうと思います。したがって、いま御指示の例からいえば、それは、見方は確かにむずかしいです。見方はむずかしいですが、それが、たとえばわが国の側でいえば、わが国に向かって武力を行使する、すでに着手があるかないか、これを説明しろといっても、むろんこれはできませんけれども、その具体的な事情に徴して、武力攻撃の着手があったときには、武力攻撃があったものと考えて少しも差しつかえないと思います。
  102. 楢崎弥之助

    楢崎委員 たいへんなこれは解釈の飛躍ですね。そこで、わざわざ私はこういう例をあげておるのです、大事だから。そうすると、いまの法制局長官の御答弁からいくと、その武力攻撃の軍事行動に出たことが明白な場合は、現実に侵害が行なわれないでも、自衛権を発動する、そういうふうに聞こえましたが、どうなんですか。
  103. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 武力攻撃に着手したときです。
  104. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたのほうは私の質問がわからないのですよ。着手とは何ですか。領域に入ったときですか。だから、それをわかりやすく聞いているんですよ。
  105. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これはそういう事態を離れて抽象の仮定の議論をすることでございますが、したがって、お話が自然抽象にならざるを得ませんけれども、武力攻撃があったとき、それは武力攻撃の着手があったとき、武力攻撃がないわけじゃなくて、武力攻撃が現にある、武力攻撃に着手した、そのときが武力攻撃と認めて自衛の措置を講じてよろしい、こういうわけでございます。
  106. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、私は例をあげて聞いているんですよ。じゃ武力攻撃の着手ということは、武力攻撃の目的をもって軍事行動に移ったときというふうに解釈すれば、「ニイタカヤマノボレ」というあの電報のときがそうなるんですね。どうですか。私はわかりやすく聞いているんですよ。これはなぜこういうことを聞くのかというと、あとの問題に関係するからですよ。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも法律論でいろいろやられてもなかなかわからないと思いますが、私どもが一体どういうような処置をとるか、こういう話から申し上げてみたいと思います。少し時間がかかるかもわかりませんが、できるだけ簡潔に申します。  申し上げるまでもなく、自衛隊が先制攻撃するというようなことはございません。しかしながら、わが国が具体的に侵略される、侵害される、こういう確かな情報があったときに、それの侵害を受けないような準備をすることはあたりまえだと思います。私は、そういう準備がしばしば先制攻撃と間違えられる、そういう心配があるんだ。しかし、当方でいわゆる自衛権は、現実に侵害があったとき、それに対するんだ、かように思います。  だから、その準備したその状態(楢崎委員「それはいいんだ」と呼ぶ)それは、ただいまいいとおっしゃるから、御理解いただけると思いますが、それはやはり自衛権の範囲戦争が起こらないようにするためにもこのことは必要だろう、かように思います。
  108. 楢崎弥之助

    楢崎委員 総理はわりかし明快に言われているんですよ。私はその辺の区別は明確にして聞いておるつもりです。  そうすると、どうもあいまいなのは、法制局長官のお答えからいくと、武力攻撃をされることが明白かつ急迫、つまり武力攻撃をする意思を持って軍事行動に移ったときが着手というふうに聞こえるんですね。私はなぜこういう例をあげたかというと、こういう例をあげて国連で論議がされておるんですよ。だから私は、いま非常に高い次元の質問をしておるのです。国連の次元、いいですか、第六回の国連総会第六委員会、これは法律委員会、これは一九五二年一月七日から一月二十一日までの討論であります。そのうちの一九五二年一月十日、二百八十二回の会合のときに、まさにこの問題が真珠湾攻撃を例にあげて議論がなされておるんですよ。だから、非常にわかりやすいから私は言っているんです。ところが、私は具体的に出しておるのに明確でない。もう一ぺんすみませんが言ってくれませんか。あの三つの時点のどこで武力攻撃の着手と見るか。
  109. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げますが、ただいま言われたほどこの問題はきわめて重要な問題であるわけですね。それでいきなりの御質問でいきなりお答えするのにしかるべき問題であるかどうか、これはよくよく考えてみなければいかぬと思います。  したがって、せっかくの御引例でございますけれども、いま急にここで答えろということでございますので、それは武力攻撃に着手をしたとき、たとえばピストルにたまを込め、そして自分がやられたときでなければ正当防衛はできないというのはおかしい話でございます。やはり身を守るために、といって向こうがやるかやらぬかわからぬうちにやるわけにはむろんいきませんが、やはり実行にかかったとき、それを基本にしなければいかぬことは理の当然だろうと思いますが、しかし、いまの三点のどれかというには、やはりいろいろな見方もあろうと思います。私がここで独断的にお答え申し上げるのは適当でないと考えております。
  110. 楢崎弥之助

    楢崎委員 法制局長官が答えられるのに適当でないとおっしゃいますから、ここで私は即座に御答弁を求めません。これは非常に重大です。国連総会でも議論になった点ですから、総理、これは三つの場合のどの時点が攻撃に着手されたときと解するか、これはひとつ統一の見解を出してもらいたい。  どうして私がこういうことを言うかというと、安保条約の第六条、この事前協議を要する三つの問題のうち、直接発進の事前協議は、第五条の場合はやらないでいいんですね。いいですか、やらないでいい。だから、在日米軍の直接発進行為が第五条の発進だとアメリカが認定すれば事前協議の必要はないんですよ、日本の領域に対して現実に侵害が起こらなくてもね。だから、事前協議の抜け穴としてはここは非常にポイントなんです。この先制的自衛権を認めるかどうかということは、非常にポイントなんです。だから、その点について日米の解釈が違ったら、これはたいへんなんですよ、この自衛権の発動の条件について。ところが、憲章五十一条の武力攻撃に対する日米の見解は明らかに違うニュアンスを持っておる。アメリカのほうは先制的自衛権を認める方向考え方を持っているのです。たとえばレバノンがそうでしょう。ベトナムがそうでしょう。そうなんですよ。だから、この点は私は明確にしてもらいたい。統一見解を出してもらいたい。  それじゃ、次に移ります。  この自衛権に先制的な自衛権がもしないという従来の政府解釈であるとするならば、この自衛隊法の七十六条は、これも自衛権の発動ですから、このうちの「おそれのある場合」というのを入れられておるが、この「おそれのある場合」でも防衛出動するというこの自衛権の発動と、先制的な自衛権の行使は認めないという解釈との関係は一体どうなるのですか、中曽根長官
  111. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 七十六条はその「おそれのある場合」というのでありまして、その先制的自衛権との関係は法制局長官に聞いてもらいたいと思います。
  112. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 確かに御指摘のように、七十六条には「防衛出動」として「おそれのある場合」が入っております。しかし、防衛出動する場合に、常に武力攻撃するとはむろんきまっておりませんので、防衛出動と武力攻撃とは同じレベルの問題ではございません。したがって、防衛出動をしました後に武力攻撃の必要があるかどうかは、もとより別途に考慮すべき問題だと思います。
  113. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、いまの御見解でいけば、つまり自衛隊法七十六条が下令されても、出動と戦闘行動は別であるという解釈だと、戦闘行動に移る場合は七十六条ですよ、七十六条で出動した。戦闘行動に移る場合は、やはり相手側から現実に侵害を受けたときですね。つまりセコンドブロウということですか、戦闘行動の条件……。
  114. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほど申し上げた御答弁で尽きているんじゃないかと思いますけれども、防衛出動をする。武力攻撃に対処するために出るわけですが、武力攻撃があったということで、これに対抗して措置をとる。その武力攻撃の時期はいつかというのが先ほどの問題でございますが、ともかくも武力攻撃があれば、それに対応して自衛の措置をとるということになるわけでございます。これは御答弁になっているかどうかはっきりいたしませんが、いまの御質問をもう一ぺん聞かしていただきます。
  115. 楢崎弥之助

    楢崎委員 七十六条を発動されたとき、そのときに防衛出動する。「おそれのある場合」に防衛出動したときには、必ずしも戦闘行動に入るとは限りませんね。だから七十六条発動の場合に、「おそれのある場合」として出動したときから、いよいよ戦闘行動に移るときにはその条件がなくてはいけない。戦闘行動に移る条件がなくちゃならない。それは、つまり直接の攻撃を受けたときかと聞いているのです、七十六条、出動に二つの場合があるのですから。これは大事な点でしょう。
  116. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 何かこまかい問題を持ってのお尋ねかもしれませんが、ともかくも自衛隊というのは、わが国を侵略に対して防衛するというわけでございますので、侵略すなわち武力攻撃があったときに、これに対抗して防衛する。先ほどの答弁と同じでございますが、そういうふうに申し上げるほかはないと思います。
  117. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの点もどうもあいまいですから、先ほどの場合と一緒に、後ほどひとつ御解釈を示していただきたい。  そうすると、総理が共同声明に関してプレス・クラブで話された演説の中、外務大臣が背景説明をされた演説の中に、武力攻撃が韓国に行なわれたときは、というのがあります。これは双方とも憲章五十一条の武力攻撃に該当する考え方としてこのことばを出されておるのですね。
  118. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのとおりと考えてよろしいと思います。
  119. 楢崎弥之助

    楢崎委員 中曽根長官にお伺いします。  自衛隊法七十七条及び七十六条下令の場合の具体的な条件、状況を御説明願いたい。
  120. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これはやはり条文に書いてありますとおりに、日本の、直接ないし間接侵略等の防衛のために必要であると認めた場合に、国防会議の了承を経て、また国会の承認を経、行なうというのが普通の状態で、国会が開かれてない場合はあとで承認を要する、そういうことでございます。
  121. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、具体的に、代表的な例をあげて、こういう場合には七十七条が発動される、こういう場合には七十六条が発動されるんだというお答えが実はいただきたいのですが、それはできませんか。
  122. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 条文にありますとおりに、七十七条のほうは待機命令でありまして、七十六条のほうは出動のほうである。したがって、多少緊迫性が違うのではないかと私思います。しかし、具体的にいつ、どういう条件で発動されるかということは、それはそのときの客観情勢をよく認識した上で、この法文に忠実に実行しなければならぬと思います。
  123. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、韓国に武力攻撃が起こった場合を想定して、私、ちょっと私なりに表をつくってみたんです。これを見ながら私、質問しますから、ちょっとごらんになっておっていただきます。  それで、これは答えられない場合もあると思いますが、大体区分けしてみたのです。韓国に対する武力攻撃の代表的なものを三つあげてみたのです。一番目は、組織的、計画的な侵略があった際。これは愛知外務大臣のおことばをかりてそこへ出したのです。二番目には、たとえば離島が占領されたような場合。三番目はプエブロ号事件程度の場合。三つ分けてみたのです。そこでその横にいくわけですが、こういう場合、国連の認定は組織的、計画的な侵略の場合は、あり得るし、あり得ない。〇×をつけているわけですね。  それで、これで質問をしてみますが、米韓条約が発動する場合はどういう場合かというと、一番目の組織的、計画的な侵略のときだ。で、そういうふうに〇×を書いておるんですよ。いいですか。それで、米韓条約が発動するような侵略のときには、在日米軍の直接発進は大体イエスですね、総理
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国連認定の場合はイエスというのが通常だろう、かように想定されておりますが、ただいままで私どもが答弁したところで御判断を願います。  米韓条約、これは私どもの関係するところではございません。これは別にしておきましょう。
  125. 楢崎弥之助

    楢崎委員 米韓条約が発動するような侵略が行なわれたときには、在日米軍が直接出たいというときにはイエスになりますかという意味です、これは。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ここに書いてありますように、そういう場合には〇もある、イエスもあるし、ノーもあるというのがいままでの説明でございます。
  127. 楢崎弥之助

    楢崎委員 しかし、国連が認定する、米韓条約が発動する、これは共同声明の条文からいけばイエスという場合が多いんですね。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは具体的な基準というものはございませんから、ただいまのように言われてもちょっと困りますが、しかし、これは〇でけっこうでしょう。しかし、おそらくそういうのが、具体的によく考えませんと国民に非常な不安を与えますから、また誤解を与えますので、私どももこの点では、ここに〇がついておりますけれども、こういうようなことを先ほど来からの、また今回の国会を通じていろいろ説明しているから、まあわかっておるだろうと思います。イエスもある、ノーもある、かように申しておるのが、こういう場合にイエスのほうが多いだろう、かように思います。
  129. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私も、だからそれは前に断わっておるんですね。これを出す際に断わっておるんです。明確にはいえないけれども、こういう場合が多いのではないかという聞き方をしておるんですね。  そこで、直接発進をイエスと言われる場合は、核兵器以外のほかの、たとえば配置の重要な変更、それから核以外の中長距離ミサイル、そういうものもイエスになりますね、当然、直接発進をイエスと言われる状態のときは。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核兵器は日本にはない……(楢崎委員「核兵器以外です」と呼ぶ)だから、核兵器以外の事前協議があって、そうしてその場合の問題でございますね。
  131. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ですから、直接発進をイエスと言う場合は、ほかの事前協議条項も当然核以外はイエスということになりますねと聞いておるのです。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核兵器はございませんから、いまある装備の状況のもとにおいて、イエス、ノー、これが私どもがいつも保留しておる問題ですが、多くの場合に、国連も認定している、また米韓条約も発動して米軍が戦端を開いておる、こういう場合にはそうなるだろう、かように申し上げております。
  133. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで、今度は在日米軍が直接発進をイエスと言うような状態のときに、自衛隊はどういう対応をするかという問題ですが、このときに、七十七条と七十六条の発動のぐあいを想定して、長官のお考えを聞きたい。
  134. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛隊の行動と、それから安保条約に基づく米軍の行動とは、別個の法体系にあり、状況も違っておるのでありまして、直接連動することはございません。
  135. 楢崎弥之助

    楢崎委員 連動はしないけれども、防衛庁自身の考えからいくと、どういう対応をするか、あなたが考えなければいかぬでしょう。総理の共同声明の説明によると、韓国で武力攻撃が起こったら、お隣の火事を黙って見ておるわけにいかぬ。そういうことからいけば、当然日本自衛隊はどういう対応をするか、長官としては考えなくちゃいかぬじゃないですか。それがあの共同声明の趣旨でしょう。韓国の安全と日本の安全の一体化というのはそういうことです。
  136. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは当然考えますけれども、どうするかということは、そのときの判断にかかっているので、いまから軽々と言える問題ではありません。
  137. 楢崎弥之助

    楢崎委員 長官、もう少し中曽根長官らしくやれませんか。そういう答弁だったら、あなたでなくてもだれでもできますよ。だれでもできます。いまのような、そのときになって考えますというような答弁だったら、だれでもできます。防衛庁長官としてはもう少し、私はいろいろ想定されておろうと思うのですが、しようがないです。そういう長官であればしようがない。しかし、これは防衛庁は当然想定しなくちゃいけません。しておるじゃありませんか。三矢作戦というものがあって、これは否定されてない。そしてあの中に自衛隊法の七十六条が発動されて、しかもなお安保条約五条が発動されない場合はどうするかということまで想定されておるでしょうが。私は時間がないから、これはもうこれから先言いませんけれども、だから私は、総理、こういう場合で私どもやはりいろいろ考えてみるのです。国民が不安ですから、あの共同声明を見て不安だから、だからいろいろわれわれも想定しているのです。こういう場合はどうなるであろうか。だからひとつ、これは別の機会があったら私はまたさらに進めたいと思いますけれども、御考慮をいただいておきたいと思います。  それで、防衛庁のほうは、対応のしかたは全然研究してない、わからないということですからこれはやむを得ません。  そこで次に、日米の共同作戦に入ってみたいと思いますが、日米の共同作戦といえば、三自衛隊のうちで、航空自衛隊が一番密接にやっておると思うのです。そこでその点についてまずお伺いをいたしておきますが、時間がだんだん切迫しましたから私のほうから言いますから、そうならそう、違うなら違うと言ってください。  自衛隊日本の防空作戦には、警戒体制、防空体制、二つある。警戒体制はデフェコンという。このデフェコンはまた二つからなっておる。一つは対空警戒体制、これはレーダーにより領空侵犯機を探知し識別する体制、二番目は警戒待機体制、これはスクランブル体制ですね。そしてこの警戒体制、つまりデフェコンは一段階から五段階まで分かれておる。それで一番通常の場合が五ですね。それから防空体制のほうは有事における防空のための体制である。この区分内容は警戒体制と同じ、一から五まである。それでいいですね。
  138. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 おおむねそのとおりです。
  139. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで、この各段階における戦闘機の待機の機数その他の内容がきまっておると思うのです、デフェコンの一のときはどう、二のときはどう、三のときはどう。どうなっておりますか。
  140. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのとおりです。
  141. 楢崎弥之助

    楢崎委員 内容を言ってください。
  142. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは緊要度に応じて警戒する飛行機の数が違っており、段階的に上昇していくということで、具体的に何機何機ということは申し上げられません。
  143. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは、国の防衛は国民の広場で明らかにするんだと言われる。国民の広場の代表的なものはこの国権の最高機関たる国会でありますから、なるたけ言われませんというようなことはおっしゃらないようにしてください。そうせぬと、国民の広場で明らかにならないのです。一番大事な点が明らかにならない。どうでもいいことは明らかになっている。国民が一番心配している点が明らかにならない。それが従来の例です。だが、言えないということですから、これはしようがないです。  それでは、各段階は、こういう場合には五をとるんだというその条件も言えませんか。
  144. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点も申し上げかねます。
  145. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、このデフェコンの段階をきめるのは一体だれですか、責任者は。
  146. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは防衛庁長官が各幕、特に航空幕僚監部の助言、補佐を得てやるわけです。
  147. 楢崎弥之助

    楢崎委員 緊急の場合は実戦部隊の総隊司令がきめる、事後に報告する、そういう命令が出されておりますね。
  148. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は詳細まだよく知りません。目下勉強中であります。
  149. 楢崎弥之助

    楢崎委員 防衛庁で知っておられる方はありますか。
  150. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 いまのお尋ねの、権限はもちろん長官でございますが、場合によっては総隊司令官に委任されることがあります。総隊司令官は長官の承認を得て発令する場合があります。さらに緊急な場合には、現地の指揮官に委任して、さらに承認を求める、そういう手順になるわけでございます。
  151. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それで自衛隊法八十四条、つまり「領空侵犯に対する措置」このときの体制がいわゆるデフェコンですね。これはそうですね。
  152. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それはむしろアラームという段階で、いわゆるスクランブルの体制ではないかと思います。
  153. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いえ、警戒体制の中に二つあるとさっき私言ったのを、そのとおりだとおっしゃったから、両方だと思うのですよ。これはお間違いだと思うのです。  そこで防空体制、これは警戒体制よりもきびしい体制である。それはいいですね。有事における防空体制というのですから。
  154. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは事態によっていろいろ変わり得ると思います。しかし、緊急発進をしなければならぬという段階は、緊迫度の高い段階であると思います。
  155. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それで私ども、かつての戦争時代の経験があるのですが、いわゆるあのサイレンが鳴る防空警報ですね。この防空警報、これは三段階に分かれておる。防空警報が赤、略称アップルジャック、警戒警報黄、これは略称レモンジュース、警報解除、これは白、スノーマン、そういうことになっております。
  156. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 お調べのとおりであります。
  157. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それで、これは昔のようにいまは国民は何も知らないのですから。総理が言われるように、平和平和で知らないのですが、警戒警報のときには、どういう手段で国民に知らせるのですか。
  158. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま国民は平和な生活を楽しんでおるのでありまして、そう刺激的なことをやる段階ではないのであります。そういう意味からも、防衛庁は、そういう体制を回避いたしまして、抑制しております。当分それでけっこうだと思っております。
  159. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はそういうことを聞いているんではないですよ。警戒警報を、いま防衛庁できめられておるんですから、あなたのところがきめておるんですから、国民にどうやって知らせる手だてになっておりますかと聞いておるんです。それはまだ考えていないなら、考えていないでいいんですよ。ありませんなら、ありませんでいいんですよ。
  160. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは万一の際に、米軍と共同作戦をする場合もあり得るわけです。そういう場合に備えて、いろいろな段階をお互いが協定し、あるいは考えをまとめておかぬといかぬから、いまのようにアップルジャックだとかスノーマンだとかという符号で、そういう段階は一応話し合っております。しかし、それを国民の段階にまで持ち出してどうこうするという状況ではございません。
  161. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ということは、もしそういう場合があったときに、国民に知らせる方法はまだ考えていない、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。かつてのようにサイレンが鳴ったり、ラジオで「御前崎東方から……」というようなことはないわけですね。
  162. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 なるたけそういう日が近づかないように願っております。
  163. 楢崎弥之助

    楢崎委員 答弁になっておらぬでしょう、委員長、お聞きになっておって。漫才じゃないんですよ。もう少しはっきり聞いてください。ないならない。おかしいですか。——いいです。ないということでいいでしょう。まだ国民に知らせる方法はない。総理
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど防衛庁長官が答えたとおり、ただいまの状況では、そういう点まで心配をして国民に知らす、協力を求める、そういうような状況ではございません。だから、ただいまいろいろお尋ねになりまして、これらのことが非常に現実味がある、そういう問題ならば、われわれ政府もいいかげんなことはいたしません。しかしながら、ただいまは、私ども平和のうちにこの国の安寧を確保しておりますから、そういう意味で、ただいまそういうことはしておらないということを申し上げておきます。
  165. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、産軍複合体制、協同体制についてお尋ねしたいと思いましたが、時間の関係一つだけお尋ねしておきます。  いわゆる次期CXの問題であります。このCXのエンジンはいつ、どこにきまりましたか、プライムメーカーは。
  166. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 局長をして答弁をさせます。
  167. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 昨年の十二月二日に三菱重工というふうにきめました。これも現在まだ開発中でございまして、今後そのCXが成功しまして、それを量産する場合には、三菱重工を考えるということで準備をするという体制をとっております。
  168. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ロッキードの104J、それから次期戦闘機のF4Eファントム、このエンジンのJ79は石川島ですね。
  169. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 国産の技術導入のライセンシーは石川島でございます。
  170. 楢崎弥之助

    楢崎委員 CXに装備予定のエンジン、CX用のエンジン、これはJT8D−9、それでいいですか。
  171. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 お説のとおりでございます。それはアメリカのプラット・アンド・ホイットニーという会社のものでございます。
  172. 楢崎弥之助

    楢崎委員 現在このCX用エンジンは石川島がいろいろとオーバーホールしたり、あるいは研究等をやっておる。間違いありませんか。
  173. 蒲谷友芳

    蒲谷政府委員 現在JT8Dのエンジンはボーイング727、737とか、あるいはDC9に使っておりまして、それを使っております国内ユーザーのエンジンの支援は、石川島が行なっておると思います。
  174. 楢崎弥之助

    楢崎委員 CX用のエンジンはそんなにして石川島播磨がやっておるのに、なぜ三菱にきめられたのです。
  175. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一つは競争原理を導入する、第二番目は、同社はオーバーホールでわが国で五〇%の実績を持ち、特に輸送機用エンジンはすべて同社で行なっておる。たとえばC46、YS11等であります。それからXC1は、戦闘機と異なり、第一線機ではない。また、同エンジンは広く民間に使用されているコマーシャルエンジンで、技術的に困難性はない。一社独占体制を排して、各社の協調体制を確立するための第一歩として、このような措置をとったと聞いております。
  176. 楢崎弥之助

    楢崎委員 中曽根長官が就任前の問題ですから、あまりお詳しくないと思うのですが、三菱のこのCX用エンジンを扱う工場はあるのですか。
  177. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 三菱重工業の名古屋大幸工場がこれを扱うことになると思います。
  178. 楢崎弥之助

    楢崎委員 このCX用エンジンを扱うほどの工場ですか。三菱はこのためにわざわざ某所を工場の敷地予定として、いまから農業委員会に申請をしてつくろうという段階。施設が建っておるわけじゃないです。人間もそろっていない。まさにまぼろしの工場なんです、これは。こういうことでエンジンがきまれば、楢崎弥之助だって、いまからある場所を買います、施設も建てます、人間も雇います、だからどうぞください、これと一緒ですよ。どうですか。
  179. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 現在三菱重工業がエンジンのオーバーホールをいたしておりますのは、大幸工場でございますが、いまお話がございましたように、新たな工場用地を設定して、そこにエンジン工場を集めるという計画があるということは、私どもも承知をいたしております。
  180. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうなんですよ。いまからやるというのですよ。これは国の予算に関係する問題です。まさにまぼろしの工場に対してこれを委託しようという。われわれ予算委員としても非常に責任がありますから、委員長において、この三菱重工のエンジン関係、石川島播磨のエンジン関係、双方を調査する責任があろうと思います。調査団の派遣を決定していただきたい、当委員会として。
  181. 中野四郎

    中野委員長 やはりこれは理事会にかけまして、御協議を申し上げた結果にいたしたいと思いますから、御了承願います。
  182. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はこの三菱にきめられた経緯について非常に疑問を感ずる。その資料を私は持っております。そこで、ぜひそういう機会をつくってもらいたい。私は三菱にきめられる経緯についてもいろいろ資料を持っております。いわゆる生産・軍の複合体の心配がある。これはぜひ調査団を派遣してもらいたい。  そこで、次の問題に移りたいと思いますが、長官は、長官に就任になって、いろいろ国民の耳からするならば、さわやかなことを言っておられるわけです。自衛隊員も人間である、人権は尊重されるべきである、私どももそう思います。私どもは政策について批判を持っておるのであって、自衛隊員の人権、これは尊重されなくてはいけない。これは、いろいろこの点についても私は用意をしておりましたが、一つだけあげてみたいと思います。  これも私は防衛衛生の研究成果を勉強しておって発見したのですけれども、インフルエンザのワクチン、アジュバントワクチン、厚生大臣、これはどういうワクチンですか。
  183. 内田常雄

    ○内田国務大臣 インフルエンザのワクチンにつきましては、昭和二十八年以来開発をいたしておりましたけれども、最近その新しいワクチンとして非常に有効でかつ副作用のないものとして、いまおっしゃるアジュバントワクチン、こういうものが研究の課題になりまして、私どものほうでもチームを編成いたしまして、その研究を続けておるものでございます。
  184. 楢崎弥之助

    楢崎委員 副作用はないですか。
  185. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私にはこまかいことはわかりませんが、従来のインフルエンザワクチンに比べて予防効果も大きいし、副作用も少ないということで、この新しいワクチンの検討を進めておるものであります。
  186. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは鉱油性のアジュバントの場合は、時間がないから私は簡単に言いますが、注射をしたら効力は大きいけれども、そこにかたまりができて、このかたまりについてはガンの原因になるかもしれないということが国際的にいわれている。その証明がまだついていない。いいですか、それで。
  187. 内田常雄

    ○内田国務大臣 発ガン性のあることについては私は聞いておりませんが、要するならば、ここに政府委員がおりますから、御答弁をさせたいと思います。
  188. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 発ガン性は非常に少ないと聞いております。それでかえって効果が従来のワクチンよりも多いというように聞いております。
  189. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは聞いておるだけで、報告はそうなっていないのです。発ガン性の疑いが非常に濃いとなっております。それでこれは相当年月がたってみないと、十年なり二十年たってみないとわからないと書いてある。  薬品を人体実験するときには、どういう条件が要りますか、厚生大臣。
  190. 内田常雄

    ○内田国務大臣 政府委員から答弁をさせたいと思います。
  191. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 人体実験ということは、これは原則としてやらないということになっております。まず、薬品をつくりますときには、厳密な動物実験をやりまして、その結果動物に異状がないということになりましたときに、大学病院とかあるいは国立病院の先生方にお願いして、臨床上使っていただくというような経過を経まして、薬の製薬の許可という段階になるわけでございます。
  192. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この鉱油性のアジュバントワクチンを使うときには、発ガン性の疑いがあるから、やる場合には本人の了承を得てすることになっておりますね。いいですか、その点は、厚生大臣。
  193. 内田常雄

    ○内田国務大臣 もちろん私はそのとおりだと思います。
  194. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで中曽根長官にお伺いしたいのです。  この本人の承諾がなくてはできない発ガン性の疑いのある鉱油性のアジュバントワクチン、これを自衛隊は隊員を使って人体実験している。その事実を御存じですか。
  195. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私はよく存じませんが、局長をして答弁させます。
  196. 浜田彪

    浜田政府委員 私からお答えしたいと思います。  ただいま厚生省の薬務局長からもお話がありましたが、新薬を開発する段階におきましては、最初動物実験段階で薬効とか安全性の検討を行ないまして、続いて第二段階で、人体に適用ができるかどうかということを医師の厳重な管理のもとに行ないます。これが済みましたあと、多数の患者について初期の臨床実験という段階で成績を得たあとで、第三段階として、医薬品の許可手続をとる前に、集団に実施をするというのが大体の筋道でございます。  自衛隊におきまして、お尋ねのインフルエンザワクチンの研究をいたしました場合に使いましたのは、御指摘のアジュバントワクチンとそれから生ワクチンの二種類でございまして、この二種類のワクチンにつきましては、国立予防衛生研究所の福見博士を班長とした組織がございまして、それぞれ四十年に九班の編成がなされたわけであります。それでその中で、私たちは園口班としてこれに参加をいたしましたが、この安全性につきましては、十分確認されたものを使っておりまして、その実施にあたりましては、それぞれ隊員のほうにも了解をとってある、こういうふうに聞いておる次第でございます。
  197. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は福見博士に会ってきているのですよ。ところが、このアジュバントワクチンについては、非常に効果はあるけれども、やはり副作用の点で問題がある。だから、これはいつ製剤許可になるか見通しはわからない、こういう状態なんです。しかもこれは、本人の承諾を得てしか使えない、発ガン性等の疑いがあるから。  総理、いまから聞いておってください、自衛隊は人体実験している。それも武山の少年工科学校の生徒です。子供ですよ。十五歳から十六歳、三百人前後の——何回もやっている。もちろん本人の承諾を得てないと思います、少年だから。このような少年を使って、この種の薬剤の実験をすることは、私はこれは人権問題だと思う。その少年を自衛隊に入れておる御両親が聞かれたら、どう思いますか。将来発ガンするかもしれない、こういう薬を使われている。どう思いますか。総理のお考えをお伺いしたい。
  198. 浜田彪

    浜田政府委員 自衛隊使用する以前に、人体についてはそれぞれワクチンの担当の人が安全性を確認したものについて、私たちはその接種について協力を申し上げたものでありまして、ワクチンそのものを自衛隊がつくったわけではないのであります。それで、その問題につきましては、十分研究班で検討して、安全であるということで、御協力申し上げたのであります。
  199. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私の質問と違いますよ。冗談じゃありませんよ。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘になりましたような事実自身、私、十分知らないから、係に説明さしたのでございますが、ただいま御注意のありましたような点、なおよく調査いたしまして、そうしてもちろん人間尊重の立場から十分考えなければならない、かように思っておりますので、姿勢は正してまいるつもりでございます。
  201. 楢崎弥之助

    楢崎委員 当委員会が終わるまでの間に、この事実を明確に調査して、責任ある措置を明らかにしてもらいたい。私、これはたいへんな問題だと思うのですよ、ものの判断がつくおとなならまだわかりますけれども、少年兵を使ってこの種の実験をやるということは。これは長官も十分御存じじゃないと思いますから、これはひとつ総理長官とで責任をもって御答弁をいただきたい。当委員会が終わるまでの間に、私はこの措置の答弁についてまた再質問を留保しておきます、まだいろんな点がありますから。よろしゅうございますか、委員長
  202. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 よくしさいに調査いたしまして、御報告いたしたいと思います。
  203. 楢崎弥之助

    楢崎委員 質問を留保しておきます。委員長、よろしゅうございますね。  そこで、時間がいよいよ迫っておるわけですが、三次防の予算についてお伺いしておきます。三次防の二兆三千四百億プラスマイナス二百五十億、いよいよ来年で終わりです。このプラスマイナス二百五十億は、上限の二百五十億がそのまま加算される見通しですか。
  204. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体予定の線でいま進行しておるようであります。それは、もっとも来年度どの程度の予算が取れるかということにもかかわっておりますが、現在のところ、人件費を除いてございますけれども、そのことも考えましても、大体そばまで行っておる線で進行しております。
  205. 楢崎弥之助

    楢崎委員 実績から見て、三次防のことしの予算も含めて人件費の値上がり分は、この三次防の予算に含まれていませんから、それはわかっております。だから、その人件費の値上がりは、この四年間幾らになっておりますか。
  206. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまもらった資料によりますと、千二百九十七億という数字になっております。
  207. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、来年度、一番最終年度の値上がり分も予想すれば、三次防の人件費の値上がりは、どのくらい見込まれますか。
  208. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 経理局長をして答弁させます。
  209. 田代一正

    ○田代政府委員 来年度分につきましては、なかなか明確にはわかりませんが、ことしの値上がり分が、予想といたしまして、七百二十二億ございますので、それを若干上回るだろうとは思います。そういたしますと、ほぼ二千億を若干こえる程度になるのじゃなかろうか、こういうように考えております。
  210. 楢崎弥之助

    楢崎委員 大蔵大臣にお伺いします。三次防予算の上限二兆三千四百億プラス二百五十億、人件費をのけて。この上限は守れますか、あと一年ありますが。
  211. 福田一

    福田国務大臣 第三次防計画につきましては、その根幹を大体実現をいたしたい、かように思っております。
  212. 楢崎弥之助

    楢崎委員 金額を聞いているのです。根幹を聞いておらぬ。根幹は何か知りません。金額を聞いておるのです、予算を。
  213. 福田一

    福田国務大臣 二百五十億円の上限というお話でございますが、大体その上限ですね。充足をいたしたい。でき得ればそうしたい、さように考えます。
  214. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ワク一ぱい最終年度でとったとして、その達成率はどのくらいになる見込みですか、中曽根長官
  215. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 多分九七%程度じゃないかと思っておりますが、詳細は経理局長答弁させます。
  216. 田代一正

    ○田代政府委員 お答えいたします。  ワク一ぱいというお話でございましたけれども、昭和四十五年度までの三次防ベースによる累積額、これが三十五年度までの計画額に対比いたしまして、等比で伸ばした一種の理論値に加えますと、大体九七%くらいに現在なっておるわけでございます。そういうことでございまして、あと四十六年度に相当な金額が残るわけでございます。これは来年の財政を見なければ何とも申し上げかねますが、防衛庁としましては、極力充足に努力いたしたい、こういうように考えておるわけでございます。
  217. 楢崎弥之助

    楢崎委員 充足されない分は、四次防に持ち越されるわけですか。
  218. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは四次防の計画において考えらるべき分野でございますが、ものによっておそらくそうなるのではないかと思います。
  219. 楢崎弥之助

    楢崎委員 四次防の予算のことについてお伺いをしたいと思います。  大蔵大臣にお伺いしますが、大体昭和四十七年から五年間、四次防に入るわけでありますが、一体大蔵大臣の見通しでは、四十七年から五十一年までのGNPの成長率は平均どのくらいに見られておりますか、現在の趨勢から考えて。
  220. 福田一

    福田国務大臣 いまその趨勢をどういうふうに見たらよかろうかということを、新経済社会発展計画として検討、策定中であります。おそらく一〇%から一一%の間、その辺じゃないかと思いますが、ただいままだきめておりませんでございます。
  221. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、一〇%と見た場合には、GNPの総額は大体幾らになりますか。
  222. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ちょっと御質問趣旨がはっきりわからなかったのですが、御存じの三次防は四十六年で終わります。それから私どもがいま考えております経済社会発展計画、これは五十年が最終になっております。それからまた計算の過程におきましても、そういうマクロ的な計算をやっております社会発展計画でございますから、いまのそうしたこまかい点の突き合わせは、もちろん行なわれておりません。そういう意味において、いまおっしゃいましたGNPは途中の過程でございますので、いますぐ手元に数字はございません。
  223. 中野四郎

    中野委員長 楢崎君に申し上げます。お約束の時間が経過しておりますので、その点をお含みの上、結論をお急ぎ願います。
  224. 楢崎弥之助

    楢崎委員 大体四十七年から五十一年、この五年間、途中で経済変動が起こらないと仮定して——仮定がずいぶん入りますけれども、成長率一〇%と見た際に、四次防——つまり国民総生産の五年分の総額は、私の計算が間違っておればなんですけれども、これは調査専門員室に出してもらったのですが、約六百四十二兆、こうなります。そうするとGNPで一%と防衛費を見た際は、四次防の予算というものは六兆四千億になりますね。〇・八%の場合は、いまが大体平均〇・八幾らかになっておりますが、そうするとこれが約五兆二千億、九%とすれば五兆五千億、大体そういう見当なんですか、長官のお見通しは。
  225. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 上限、下限は当たらずといえども遠からずで、その辺の見当を頭に置きながら策定していくべきものだと思います。
  226. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それで、自主防衛力の防衛費の限界を数字であらわした場合に、私は数字であらわすことはできないという立場ですけれども、数字であらわした場合、中曽根長官はせんだっての御答弁の中で、社会保障費と文教費と防衛費との関係を言われて、一般会計に占める割合が社会保障費に対して防衛費が約半分ですね、大体こういうペースを維持したいというお考えですが、一般会計に占める社会保障費の大体半分だというめどなんですか。
  227. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原則としてそういうパリティを維持していくようにしたら適当であると考えています。
  228. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで最後の質問に入らしていただきます。  最後の一問で——一問の中にいろいろあるものですから。実はこれは私は提言をしてみたいと思っておったのです。いわゆる自主防衛力の限界についていろいろいわれましたけれども、だから、もう私は提言だけいたしたいと思います。  そこで、私は自主防衛力の限界を五つばかり考えてみたのです。いままでの政府のほうの御答弁では、大体いままでの答弁、過去の答弁をまとめてみると、国力、国情に応ずる、これが一つですね。それから外国に、他国に脅威を与えるものであってはいけない、あるいは憲法のワク内で非核三原則を前提とする、こういうことを抽象的にいわれてきたわけです。それで私はもう少し具体的に提言をしてみたい。われわれは非武装中立の立場をとっておりますけれども、いま政府は自民党政府ですから、自民党政府でも国民に不安を与えないというために、一体防衛費は、防衛力はどこまで伸びるんだろうかという不安があるのです。この限界を示すということは、この予算委員会の大きな一つの任務であろうと思うのです。そこで、政府でもこのくらいはおやりになったらどうですか。これが不安をなくする一つ方向だという意味で提言をしてみたいのです。  まず自衛隊の行動の規制が一つ、限界はあくまでも憲法を基礎に置くべきである。そこでその際に、自衛権発動の行動の規制ということは、自衛権発動の条件を厳格にするということ、つまりセカンドブローに徹するということ、行動の規制としてはこれが一つ。二番目に、今度は行動の範囲、自衛行動の範囲は領海。それから三番目に人員のほうの制限ですが、徴兵制度をとらないということ、それから予備自衛官以外の一般人の召集はしない、これが人員の規制であります。四番目に、兵器の質的な規制、これはやはり他国に脅威を与えないという憲法の理念、その兵器を言いますから、中曽根さん、あとでずっと一緒に答弁してください、もうこれ一ぺんしか言いませんから。渡洋爆撃機、重爆撃機、雷撃機、長距離偵察機、給油機、それからGMのほうに移って、核兵器、中距離ミサイル及びその発射装置、海のほう、空母、原潜、艦対艦ミサイル、艦対地ミサイル、こういうものは他国に脅威を与える兵器だから持たない。それからシビリアンコントロールを厳格にする。私はこういう提言をしてみたいのですが、お考えをお伺いして終わります。
  229. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 お考えは拝聴いたしました。よく検討してみます。
  230. 楢崎弥之助

    楢崎委員 御答弁——私はもう時間をあんなに急いでおられますから、私の提言について、後ほど、いろいろ私質問を保留しておりますから、その際に一緒に具体的にお答えをいただきたい。  これで終わります。
  231. 中野四郎

    中野委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  午後の会議は、一時二十分より再開することといたします。  この際、暫時休憩をいたします。    午後零時十八分休憩      ————◇—————    午後一時二十六分開議
  232. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続けます。大原亨君。
  233. 大原亨

    ○大原委員 私は、これから、大体三点について質問をいたしたいのであります。  その第一点は、経済社会発展計画、この新しい長期計画を策定いたしておりますが、その策定における問題点。それから第二の問題は、その中において、先般の国民生活白書でも問題を初めて提起いたしましたが、国民の生活の中身と環境、生活行動水準と生活環境水準というふうにいっていますが、そういう観点から見た長期計画や高度成長政策、特にその中身である社会保障の欠陥の問題。それから第三点は、最近アメリカやヨーロッパでも非常に大きな消費者問題となりました食品や薬品の公害、つまり食品添加物、チクロなどのようなそういう問題から、残留農薬の問題、あるいは医薬品の問題、食品、薬品の公害問題、こういう問題を中心といたしまして、総括質問を社会党代表として続けてまいります。  その前に、ひとつ佐藤総理に、あるいは自民党総裁に一言申し上げてお答えいただきたいのですが、昨年の八月三日の衆議院の予算委員会、閉会中の審査の件をやりまする予算委員会において、ここの大臣席の公開の理事会で決定いたしたことがあるのでありますが、それは、九月末を少なくともめどとし、おくれても十月初めをめどとして予算委員会を開会をして——延長国会で開くことになっておった予算委員会、これが開けなかったので、閉会中に、異例ではあるが、総理大臣以下の出席を求めて、予算委員会を開く、こういうことをいまの副議長の荒舩予算委員長のもとで決定をし、委員会に報告をされたのであります。  国会政府や党よりも権威を持ってやるわけですが、その予算委員会におけるいわく因縁のある経過、取りきめが、政府・与党の圧力によって開けなかった、こういう事情を私どもは知っておるわけでありますが、これは私がこれから質問をいたします国会の権威の上からいっても、議会制民主主義の上からいいましても、許しがたいことであると思うわけであります。私は、このことは、当時理事の一員といたしまして、委員長席におつきの中野さんも理事でありましたからよく承知をいたしておるわけですが、これは私は、いろいろな臨時国会の要求その他もありましたが、このことはきわめて遺憾であると思っておるわけです。総理、総裁の議会の権威に対する考え方をひとつ最初に伺わさしていただきたいと思います。
  234. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が申し上げるまでもなく、国会は最高の国政機関でございます。そういう意味で、十分国会がきめたことはそれぞれが守っていかなければならない、かように思います。ただいま御指摘になりました理事会等で決議され、委員長も了承した事柄が、どういう理由にしろ、とにかくそのまま行ない得なかったことは、大原君が御指摘のようにきわめて遺憾でございます。私もこの機会に、ただいま私の感じ、またそれを率直に表明いたしまして、遺憾の意をここに表明する次第でございます。
  235. 大原亨

    ○大原委員 それで、この三点にわたる質問といたしまして、これは逆に各論のほうからいくわけですが、三番目に申し上げました食品、薬品の公害から入っていきたいと思います。  これは総理大臣もたしか御承知だったと思うのですが、昨年十一月私はアメリカに行っておりましたが、共同声明の二つの顔とかいろんな問題がありました。チクロやその他アメリカの食品薬品庁を中心とする、あるいは国会中心とする食品公害の問題を一つは調査しておったのであります。  私はアメリカに行きまして、アメリカ人がベトナムやその他では、ソンミ村とか、いろんなところででたらめをしておるけれども、しかし、事、国内の人命にかかわる問題については、非常にきびしい態度をとっておる。これはニクソン大統領だけでなしに、ジョンソン、ケネディ大統領時代から、ともかく競争して、強い決意で食品、薬品の公害から人命を守るという政策を立てておることについては学ぶべき点がたくさんあったと思うのであります。  そういう点から考えてみますと、たとえば私が申し上げる公害の中で、食品添加物とかあるいは農薬とか、医薬品の生産高というのは、日本は世界で二かあるいは第一のものもあるわけであります。高度成長であるわけであります。医薬品などに至りましたら、日本の所得のベストテンはそういう人々がかなり持っておるわけですが、しかし、薬を使うことになりますると、国民の立場で見ると、この三つの問題は全く二流、三流の国であります。国民不在であります。たとえば、薬品にいたしましても、世界第二の生産量に高度生長いたしましたが、外国にはたった三%しか輸出をしていないのであります。これは国際的に医薬品の中身が評価されていないわけであります。国民から見てみますと、医薬品の業界ではどんどんもうかっておるが、保険財政や国民の立場から公害が続出しておるわけであります。ですから、そういう点では、私は食品やあるいは医薬品やその他の公害から国民を守るということは、きわめて重要な政治の面であるというふうに思うし、それについては、アメリカでは先般昨年の十月にも大統領教書を出しておりますが、それまではいかないといたしましても、私は総理大臣の大きなイニシアチブというか、指導性が必要であると思うのですが、そういう問題に対しまして質問の通告をしておりますが、どういう基本的な姿勢をもって臨まれるのかという点をまず聞いてみたい。
  236. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 食品添加物、農薬、あるいは薬等々、いろいろ片一方で利便を提供するが、同時に人体、生命にたいへんな危害を与えるという、いわゆる公害を生じておる、こういう事態がございます。これにつきましては、ただいま大原君御指摘のとおり、ひとりアメリカだけではございません。私どもも厳正にこれに対処していかなければならないと思っております。ただいまも、ちょうど食後、大阪の各種婦人団体から、チクロの取り扱い方についていろいろ陳情を承っていたばかりでございます。陳情を承り、ただいま大原君から同じような意味合いで問題を提供をされております。私はひとりチクロといわず、こういう点についてわれわれはさらにさらに厳正にいたさなければならないものだ、かように思っております。  またけさほど楢崎君からもお話がありましたが、薬品等の使用におきましても、人体実験などはもろもろの点でよほど慎まなければならないと私は思っておりますので、それらの点においてなお不十分な点があれば、そういうようなことでおしかりも受け、また皆さんのお知恵も拝借して前進する、公衆衛生の万全を期する、また健康保持、そういう点で十分注意してまいりたい、さように考えておる次第でございます。
  237. 大原亨

    ○大原委員 まず第一に、食品添加物につきまして、チクロのお話がありましたが、チクロの問題を取り上げまして、いままでの経過の中における問題点と、これを通じて将来どうするかという、そういう問題につきまして、私の意見を交えながら、ひとつ質問を続けていきたいと思います。  まず第一にお聞きをしたいことは、厚生大臣はかわっておりますが、昨年十一月の五日に食品衛生規則の一部を改正いたしまして、十月二十九日の食品衛生調査会の答申を受けまして、厚生大臣は食品衛生法に基づいてチクロの製造使用禁止いたしたのでありますが、その禁止をいたしましたことは非常に思い切った措置でございますが、いたしました根拠と理由、法律上の根拠と理由についてお答えをいただきたい。
  238. 内田常雄

    ○内田国務大臣 御承知のように合成食品添加物は、厚生大臣の承認がない限り、これは使えないことになっておるわけでありまして、チクロは先年からその承認品目の中に入っておったわけでありますけれども、昨年十月現在において、米国において動物実験の結果発ガン性があるという、そういう事態が生じまして、わがほうにもその連絡があったわけでございます。これについては、もちろんわが国におきましても関係の機関を集めまして研究もいたしましたけれども、しかし、これは人の健康にも大いに関係があることでございますので、確信のあるところはございませんでしたけれども、とにかく禁止するにしかずということで、食品衛生法の施行規則を急遽改正して、チクロを承認添加物から削除をした、こういうのが当時の事情でございます。
  239. 大原亨

    ○大原委員 私は食品添加物その他の問題を議論するにあたって、こういう立場であります。第一は消費者の立場であります。それから第二は関係食品業界の主張もある程度聞かなければいけない、こういうことであります。しかし、あくまでもこれは消費者の立場中心としてやるべきである、この原則を明確にしておくことが必要である。  そこで厚生大臣の御答弁は、アメリカ禁止措置において、承認取り消しの措置において——ことばは慎重に私やっておりますから、その措置において動物実験を基礎にしたものであるということを確かめて、人体における影響の確信はなかった、なかったけれども、疑わしきは使用せずという観点において禁止をした、こういうことでございますね。もう一回……。
  240. 内田常雄

    ○内田国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  241. 大原亨

    ○大原委員 そこでお聞きをしたいのでありますが、本年の一月の九日の閣議におきまして、チクロを使用いたしました食品、その回収の一部延期につきまして閣議決定をされて、そして食品衛生法に基づく省令をまた変えた、こういうことがございますが、その法律的な手続とそれから理由についてお答えをいただきたい。
  242. 内田常雄

    ○内田国務大臣 チクロの製造禁止は、お話しのように十一月に省令を改正をいたしまして削除をいたしましたけれども、そのチクロを添加した食品は残っておるわけでありますので、その食品の回収期間というようなことが残るわけであります。それにつきましては、当時の事情では、一応対象を二つに分けて、清涼飲料水等につきましては一月までの回収期限を認め、その他の食品につきましては二月限りということで、二段階の回収期限を設けまして、これは手続といたしましては、行政指導、行政措置でそのようにやったと私は判断をいたしております。
  243. 大原亨

    ○大原委員 手続は。理由は……。
  244. 内田常雄

    ○内田国務大臣 それはいまも申しましたとおり、チクロそのものを添加することは、添加物から削除いたしましたけれども、チクロを添加した清涼飲料なり、かん詰めその他の食品は現に市場に存在するわけでございますので、ただちに、それを十一月現在において一挙に回収するということはできないので、そこで回収の余裕期間を、アローアンスの期間を設けた、こういうふうに私は理解をいたすものでございます。
  245. 大原亨

    ○大原委員 あなたは、大臣をかわっておられるので、チクロの理解が非常に不十分な点があるのですが、私が承認いたしましたら政府委員がどんどん出て答弁してもらいたい、これはあの当時のことですから。当時回収を延期いたしました理由について、政府委員答弁してください。
  246. 金光克己

    ○金光政府委員 一月十四日にチクロに関係します一部食品につきまして猶予期間を延長いたしました理由といたしましては、十一月五日告示のチクロの使用禁止に伴いまして、その後社会的にいろいろと混乱も起きるという情勢がございました。そういうことで、それに対しましては、いろいろと融資等の方法でこの問題は解決しようということでまいっておったわけでございますが、その後におきましてもいろいろと相当の混乱が起きるという予想があったわけでございます。それを一つ考え方には当然取り入れたわけでございますが、それとあわせまして、アメリカにおきまして十二月の十日に一部の食品につきましてチクロの猶予期間を延長したのでございます。この考え方は、アメリカが十月にチクロの禁止に踏み切りました理由といたしましては、先ほど大臣から御説明がございましたように、動物実験におきまして発ガン性があるという結果が出たわけでございます。その結果に基づきまして、アメリカの添加物の規則におきましては、その当時は発ガン性のあるものにつきましてはその量のいかんを問わず禁止するという考え方に立っておったわけでございますが、十二月に変更した一つの理由といたしましては、やはり発ガン性という問題につきましても、量的な問題を考えてもいいのではないか、こういう考え方に立ったと承知いたしておるわけでございます。  そういう学問的な根拠も参考にいたしまして、日本における専門家の意見等も十分聴取いたしまして、そういうことで国民の健康に害のない範囲において一部の食品につきまして——一部の食品と申しますか、食品につきまして猶予期間をどう考えたらいいかということを再検討したわけでございます。その結果におきまして、やはり量的な問題というものは考えてもいいじゃないか、かようなことで、そういうような考え方に立ちまして一部食品につきまして、含有量の多いものは延期をしない、少ないものにつきまして、また、それから人工甘味料入りという表示の上に、さらにサイクラミン酸塩が含まれておるという表示を明確にすることによりまして、それに該当する食品を延期した、かような経過でございます。
  247. 大原亨

    ○大原委員 簡潔に明確に答弁してください。あとで答弁について私が一括点数をつけるから。  いまの答弁の中で非常に重要なことがあるわけです。製造使用については、これは禁止をいたしておって、これは一月末に実施をすることになっておったわけですね。それから回収については、一部のかん詰め、びん詰め、たる詰め、つぼ詰め、この四種類のものについては二月末になっておったのを九月に延期をいたしました。延期をいたしました理由として長々と説明がありましたが、あなたの説明を要約いたしてみますと、これは業者の被害状況が一つ、それからもう一つは、アメリカにおいて延期の措置がなされたということが一つ——これはこの中にも問題はありますよ——であります。それから、それらを判断をして害があまりないものについて延期をした、こういうふうに回収延期をしたというのでありますが、そういたしますと、食品衛生法によって原則的に化学合成物質を禁止をしながら、例外措置として三百五十六品目について添加物として登載をいたしておる。そういう中から登載を削除して不承認とするわけですが、それでは私は聞きたいのだが、害がない、軽度なもの、害がないものも十月のあるいは十一月のそういう閣議決定や行政上の措置においては、これは禁止の措置をしたのですか。害がなかったものでも禁止をしておったのですか。あとで訂正した理由であまり害がないもの、こういうことを言っているけれども、害がないものも禁止をいたしておったのですか、いかがですか。
  248. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私はその時点において——厚生大臣をかわったわけでございますが、その後私が説明を受けたり、また私自身が検討し、判断をしたところによりますと、とにかく一応みな禁止をし、それからまた回収期限も一月と二月に一応きめた。その害の多寡は別といたしまして、きめておいて、さらにその判断をしつつあった状態のもとにおいて、アメリカにおいてはある種の品目についてはさらにその回収期限を延期したというような事情、さらにまたカナダにおいても相当な回収延期の期間が設けられておった事情、さらにはまた、御承知と思いますが、このチクロ問題は、ヨーロッパの各国をとりましても、おおむねその半数の国は日本アメリカ等の例にならいまして禁止をいたしましたけれども、他の半数の国はまだ自分で検討中であって、禁止の措置もしていないというような事情もございましたので、そこで一応全部ストップをかけて、一月、二月のものを、さらにその過程において、ある種のものについてはいま政府委員から話がありましたように、九月に延ばした、こういうふうに私は聞いて、そのとおり了解をいたしております。
  249. 大原亨

    ○大原委員 では厚生大臣、あなたは十月、十一月の禁止の措置は、疑わしきは使用させず、こういう観点で禁止のきびしい措置をした、それから回収についても一月、二月というふうに決定した、こういうことを言われたわけですね。しかしながら、一たんそういう決定をしておきながら、一部のものについて延期した。かん詰め、びん詰め、たる詰め、つぼ詰め、アメリカにならってやったというが、アメリカは、ニクソンの選挙地盤のカリフォルニアはくだものの産地ですから、くだもののかん詰めを禁止しておる、くだもの、野菜の。やっているのです。日本は水産物、魚も入っているわけだ。それで疑惑があるのです。それで疑惑が発生しているのです。総選挙をはさんでやっているから、だから業界の諸君は疑惑を持っているし、消費者もそういう一貫しない措置について疑惑を持っているのです。これはあとから私が具体的な事実を言うが、疑惑を持っているのです。そういうでたらめな一貫しない方針について、疑惑を持っているのです。その疑惑に対して、あなたは行政当局として、回収の措置についてはっきり国民の前にどういう理由で回収延期をした、こういうことについて説明ができますか。
  250. 内田常雄

    ○内田国務大臣 この点は非常に国民に疑惑を残しておることを、私自身がよく認めておるものであります。が、当時、十一月の状況のもとにおいては、世論等も非常に起こりまして、とにかく禁止すべきだ、こういうような状態、そういう環境のもとにおいて一応とにかくオールストップをかけました後に、一月になりましてからある程度いろいろな事情において、たとえばこれは政府委員からも説明がありましたけれども、一時に多量に摂取しないもの、また子供や年寄りが一時に多量に摂取しないもの、また許容限度その他から判断をいたしたりして、延ばしても差しつかえないものというものを、判断の結果、延ばした。しかし、そこには私は、十分国民に誤解のないように説明すべきものがあったと思うのですけれども、それが非常に誤解を残しておることは残念でありますけれども、九月まで延ばしたものにつきましては、これは疑わしきということで一応は早期回収を決定をいたしましたけれども、厚生省の判断においては、そこまでやらなくても、九月程度までも、再延長といいますか、延長してもしようがないという判断に立って延ばしたのだ、こういうことでございました。その辺が、私は、非常に誤解を残しておりますことを正直に認めるものではございます。
  251. 大原亨

    ○大原委員 ぼくが言っているのは、選挙前にはこれは非常にはっきりやった。選挙前だから、私は悪いというのではない。いいですよ、はっきりやるのはいいです。その根拠の法律の問題についてはあとに残しておきますが、あとの回収延期をいたしました、これを説明しなさいと言いましたが、あなたの説明は遺憾であったということであります。結論を言えば遺憾であったということです。説明の中身になっておらぬわけです。つまり、禁止をした理由と回収延期をした理由が違うじゃないですか。いかがですか。
  252. 内田常雄

    ○内田国務大臣 たびたび申しますように、チクロの入っている食品はいろいろの種類があるものでありますから、一応全部網をかけて、そうして使用禁止、また回収もわりあい早い早期回収ということをきめました。が、選挙が済んだあとだと私は聞いておりますが、一月九日ごろに至りまして、その間の資料の判断によりまして、一部のものを九月まで延ばした、こういうふうに私は解釈をいたすものでありまして、最初全部に網をかけたということは、それはそれでよかった。またさらに、一月に至っていろいろな資料判断の結果延ばしたほうがいいという、そういう行政措置をとったことも、これもいろいろ御批判はあろうけれども、私はそれも(大原委員「理由を言ってみなさい」と呼ぶ)いま申しますように、一応怪しきものは全部網をかけた——それはかん詰めもあれば清涼飲料もあるけれども、みな網をかけたが、そのうちで、老人、子供その他、また連続して摂取して許容量以上になると判断されないものを延ばした、こういうことと私は判断いたしております。
  253. 大原亨

    ○大原委員 食品衛生法の登載の取り消しは、農薬とか医薬品の製造使用、販売の許可とは、行政処分の性質が違うのですよ。基本的に違うのですよ。つまり食品衛生法の第六条は、食品の中に三百五十六——われわれは一日七十種類以上の食品添化物を、いわゆる石油製品を言うなればとっているわけだが、その三百五十六のこの登載というものは、省令によって、法律に基づく省令の登載という行為は、異物であるから食品添加物は原則として禁止をするという第六条の精神に基づいて、その中から厳選をして三百五十六種類を登載して省令できめるわけですよ。ですからこのことは農薬とか医薬品に対する許可とか取り消しとは違って、これは天下ごめん、だいじょうぶですよ、言うなればこういっているのである。これを使ってもだいじょうぶですよという公認を与えたことになるのです。そのことの立法論についてはあとで言います。私は、議論いたします。社会党の態度を言いますが、そういうことをやっておきながら、そこに、法律の適用において疑わしきは使用せずというふうな、そういう原則を適用する余地はこの法律においてはないのですよ。法律のたてまえ、原則と例外のたてまえからいってないのですよ。政治論から言いましても、そうなのですよ。だから業者が申請をしまして、許可してくださいといって個別に書類をもって、医薬品のようにインチキな書類をやって許可をとっているのとは違うのですよ。政府が使ってもよろしいですよと、こう言っているのだ。だからそれをばあっと全部最初に禁止をしておいて、あとから一部についてゆるめるということになれば、あなたの答弁だって、法律の解釈から根本から間違っておるだけではなしに、適用において非常に不信を与えるではないか、私はこういう議論をしているのですよ。
  254. 内田常雄

    ○内田国務大臣 食品衛生法における合成添加物の取り扱いについてのたてまえを私もあとから研究をいたしましたけれども、これも原則禁止であります。厚生大臣が許したものに限って添加物を認める、こういうことで幾つかを省令で並べておるわけでありますから、したがって、これはもう厚生大臣が厳選をしたものが許されているはずでございます。しかし、これはかなり以前からチクロは許容品目として掲げられておったのが、御承知のような事情でアメリカから十月に情報が来た。そこで、そのとき直ちに厚生省としては判断を下し得なかった。いろいろ日本独自の検討も加えつつあったようでありますけれども、しかし、とにかく疑わしきはということで一応全部網をかけて、全部とにかく使用禁止をしておきまして、あとで一カ月の間にいろいろ検討した結果と、こういうことでございます。
  255. 大原亨

    ○大原委員 いまの答弁落第。  つまり食品衛生法の第六条は原則的な禁止の上に立った例外的な措置なのです。一般的に公認した措置なのです。ですから、これを禁止する場合にはよほどの慎重な手続が要るのです。禁止する場合には、疑わしきは使用せずというふうなことではなしに、科学的に絶対的にこれはいけないから禁止するのだという結果が出ないと、科学的なそういう証拠があがらないと、禁止してはいけない法律のたてまえなのです。ですから、あなたの答弁を一貫して聞いておりますと、アメリカでは動物実験でやったのですが、日本は動物実験ではやらぬのです。しかし、動物実験でやることは私はいいと言うのです。その制度を変えなさい、根本的に制度を変えぬところに問題があると言うのだ。アメリカでは動物実験によって、食品衛生法において、疑わしきは許さないという方針が法文の中にあるのです。日本にはないわけだ。ないわけですから、客観的な絶対的な根拠がないのに禁止をすれば、関係者は法律のたてまえから言うて、予測しがたい影響を受けるだけでなしに、ぴしゃっと禁止をしておくならばいいけれども、一部を政治的にゆるめるというふうなことは、これはどういう立場に立ってみても許すことができないことではないか、こういうことを言っているのです。法律論と政治論を一緒に言っているのです。あなたの答弁をもう一回やってください。
  256. 内田常雄

    ○内田国務大臣 大原先生のお話、私にはよくわかるのであります。したがって、当時のことをいま申すものではございませんけれども、日本禁止するかしないかをきめる際に、チクロが用いられているいろいろな商品について、いろいろ判断をしまして、このものについては絶対禁止、このものについては相対禁止というような区分けをすることもやろうと思えば当時できたかもしれないと思うのでありますが、当時の世論はとにかくチクロは発ガン物資であるということがマスコミ等を通じまして非常に広く伝わりましたので、全部一応網をかけた、こういうことでございます。
  257. 大原亨

    ○大原委員 それでは、昨年の十月、十一月にチクロの製造使用禁止と回収の、一定の、二月の期日をきめましての命令を出しました。これは非常にきびしいはっきりした命令ですが、そのときには私の調査によりますと、食品衛生法の第二十五条によって食品衛生調査会に諮問を付しまして——私は、食品衛生調査会にはたくさん議論を持っているのですが、異例のスピードでこの措置をいたしました。早い、そのことだけは悪いことではありません。直ちに措置をいたしました。十月二十九日で措置をいたしまして、その答申をいたしまして、すぐやりました。回収を延期するときには、食品衛生法第六条に基づく省令を一部改正したものをまた一部改正をするわけですが、つまり朝令暮改というやつだ。年末に改正をして正月に改めるから朝令暮改とは言わぬだろうが、まあ反対だろうけれども、朝令暮改というやつだ。そういう措置をとるときに、害がないと認めたということであるならば、私は少なくとも食品衛生調査会には答申を求めておるのではないか、専門家に諮問しているのじゃないかと思って調べてみたが、年明けの場合にはそういう措置をしていないということがわかりましたが、間違いありませんか。
  258. 内田常雄

    ○内田国務大臣 残念ながらその当時の事情は私はわかりませんので、政府委員をして答弁せしめたいと思います。
  259. 大原亨

    ○大原委員 私はうそを言っていないから……。そのとおりであります。  そこで、私はこれに関連をいたしまして、一月九日の閣議決定を総理大臣が主宰してやられましたね。チクロの回収延期についてもやられましたね。一月九日にやったでしょう。覚えておられるでしょう。その前に、一月九日に経済閣僚協議会というものがありまして、いま建設大臣として栄職にあられる当時の根本政調会長は、これは新聞のニュースですが、この経済閣僚協議会に臨んで回収を延期すべしということを申し入れをしたというのですが、どういう理由なんですか。根本さん、国務大臣として答えてください。あなたの政治責任です。
  260. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答え申し上げます。  私は延期すべしとは申し出ておりません。それはこういう事情がありました。チクロの問題についてはアメリカのほうで禁止したことが動機になって禁止されたようであるが、その後アメリカがカナダと同時に禁止を延期したということであるが、それはどういう理由であるか。もしそういうふうな害がないとあるならば、チクロを使用して、そのために回収を指示されておる業界が金融上のいろいろの便宜をはかってくれということで、党に申し出がありましたので、そのあっせんをしたけれども、金融のあっせんは非常に停滞しておる。破産の危険がずいぶんたくさんあるということなので、そういう点をも含めてこの問題は検討してほしい、こういう旨を私は言っているのです。党のほうから再延長すべしというような申し入ればいたしておりません。これが事実でございます。
  261. 大原亨

    ○大原委員 いや、それは新聞でも、あなたのお話でもことばとしてはそうですが、再延長でなしに一回ですから、延期すべし、こういうことを申し入れたということが、ちゃんと新聞に出ておりますよ。これはあなたが言った。それに基づいて長谷川農林大臣が発言をし、斎藤厚生大臣がそれを受けて経済閣僚協議会は意思統一をして閣議の報告として決定したと新聞には出ております。事実はそうでしょう。間違いないと思う。
  262. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 お答えいたします。  党でそういうふうな延期すべしという申し入れば私はしておりません。したがって、ただいま私が申し上げたことが事実でございまして、われわれのほうといたしましては、いろいろの陳情があり、かつ金融措置のあっせんを党もしたことも事実です。というのは、特に零細なかん詰め業者がこれを持ち越してまいりまして破産の危険にあるから、これはあっせんいたしました。しかし、そのときにあたって、現実にアメリカ禁止したことに基づいて日本もこれはたいへんだということで禁止したようにわれわれは聞いておりまするので、アメリカがこれを延期したということになれば、それに相当の理由があるであろう。そういうところのことをも勘案して、そうして、これは厚生省が独自に検討すべきことですから、そういう問題をも含めてこうした問題を検討してほしいという申し入れをしたのでございます。
  263. 大原亨

    ○大原委員 その申し入れば、長谷川農林大臣はここにおられぬけれども、倉石さんに聞いても、ちょっと倉石さんは、大臣がかわっておるから、佐藤総理に聞くべきことかもしらぬが、つまりアメリカ禁止をして、アメリカが延期をした。日本の法律の構造と違いますよ、私が言ったように。疑わしきは使用せずという原則があるのです。動物実験の結果が出ましたら、これは人体について結果が出なくてもガンが発生するとか、奇型児が発生するというふうな、そういうおそれがある場合は、疑いのある場合にはアメリカは登載を削除することになっている。しかし、日本はそうなっていないのですよ。アメリカがかぜをひけば日本は肺炎になるというようなことがあるとおりに、アメリカがやることは何でもいいということならば別ですよ。しかし、私は逆にアメリカがやったことでいいことはやはりやったほうがいいということなんだ。私はそういう主張ですよ、調査してみてね。そこであなたは、厚生大臣に対して手を打てということを言ったのは、回収を延期しろというふうに言ったのではない、そういうことをはっきり言ったのではない。被害者が出ておるのではないかという点を指摘したのだ、こういうことですね。善処せいということですね。私はこの今回の措置に関しましては、政府の一貫しない、根拠のないそういう措置と、それから食品衛生法第六条に基づく、そういう法律的な性格から見て、やはり私は相当の業者に対する補償をしながら、そうして行政措置——禁止措置としてはきびしくやるということを前提として、そういう二つが整わないと国民の立場から見ると首尾一貫しない、こういうふうに私は思うのです。日本の法律のたてまえは違いますよ。違いますが、これは登載からはずせないことはないのですから、はずしまして、製造使用や回収につきまして禁止、規制をするということは当然です。しかしながら、いままでの厚生大臣、政府委員との質疑応答で明らかなように、これは医薬品とか、農薬のようにメーカーが一つ一つを申請して許可をとってやっていることとは違うわけですから、新しい材料が出たといいましても出方が違っているわけですから、私は政府としては何らかの救済措置をとる、一方では禁止措置をきびしくやっていく、もう一つは進んで社会党の私どもが言っているように、立法措置について考える、そういうことを一緒にやらないと、このことは国民の立場から見ると納得できない、こう思うのです。法律的にも政治的にも納得できぬと私は思っておる。厚生大臣いかがですか。
  264. 内田常雄

    ○内田国務大臣 おっしゃるとおり、一部の業者から裁判所に対しまして、民事上の損害補償の請求が出ておりますが、これは裁判に係属しておりますので、私どもはその裁判の結果を見守っておりますけれども、しかし、厚生大臣の立場といたしましては、私の記憶では、このチクロが食品衛生法上許容されましたのは昭和三十一年ごろでございます。その当時の世界じゅうの判断、学術上その他の判断で言えば、これは使わしていいものという判断のもとに、政府でもこれを許容しておったわけでありまして、その間においては手落ちはない。しかし、今度はまた新しい科学の進歩等によりまして、これを使わせないほうがいいというような新しい状況が生まれたものでございますので、業者の方々には、これは急に削除したわけでありますから、お気の毒ではありますけれども、政府自体としては、私は進んで補償をするというような立場をなかなかとれない、裁判の結果を見守っておる、こういう状況にあるわけでございます。
  265. 大原亨

    ○大原委員 それは行政訴訟はもちろんあるのですが、そのことはそのことといたしまして、私は法律の精神とそれから政治的な立場から考えてみて、政府の措置というものは非常に一貫性がないではないか、いろいろと疑惑が発生しているではないか。あるいは食品衛生調査会にも諮問をしたり、諮問をしなかったり、便宜的なことをしているじゃないか、そういうことについて、私はこれはつけ加えて言ったわけですけれども、そういう法律の構造のたてまえから言うと、第六条は全面的に禁止をしているわけです。例外的に許可しているわけですから、そういう厳正な措置をとって、しかも一部の業者について回収延期をする。しかもそれが日魯漁業とか日本水産とか、たくさ政治献金をするようなものに片寄っておるというふうな、そういう出版物が業界ではいっぱいあるわけだ。不安と一緒に出版物があるわけだ。そういうことがいわれておる。流布されておるわけです。言うなれば非常に不信を招いているわけだ。行政不信です。消費者からも不信を招いている。ですから、最初厳正な措置をとってぴしっとやったのだったら、それを守りながら、そして、その被害に対しましては融資や補償——少なくとも補償の問題についてもやるということになりますると、その食品衛生法の中身が厳正に守られるだけでなしに、もう一回三百五十六品目について再点検するという根拠が出てくるわけだ。だから、アメリカでは特別教書まで出しておるが、その姿勢を正すことが問題となっている食品衛生法、食品添加物、そういう問題について政治の権威というものがその信頼性を高める道ではないか、私はこう言っておるわけですよ。法律論としても、疑わしきは使用せずというものを、農薬や医薬品とは違ってストレートには適用できないような仕組みになっておるのだから、当然にこういう措置をして、不公正な問題を含めて議論があった場合には、実際に回収延期によって持っている在庫品が売れないという場合においては、国民の衛生を考えながら、これに対しては政府としてしかるべき措置をする、そういうことが妥当なことであると思うわけです。一部から厚生大臣に不服審査の申し立てがなされておる。これに対して回答しておりますか。どういう回答をするつもりですか。
  266. 内田常雄

    ○内田国務大臣 大原先生の御所論はよく私は傾聴をいたすものでございますけれども、厚生省といたしましては、この件に関しまして進んで補償をする立場に立つことは、いままたお話もございました現存の三百五十六品目等につきましても、国民の立場においてさらに再検討を私から命令をいたしておるわけでございますけれども、行政上の立場から補償をするということに直ちに私は踏み切っておらないわけであります。しかし、私は、御所論は傾聴をいたしたいと思います。  また、不服審査につきましては、厚生省としての立場から近くその回答を出す所存でございます。(大原委員「どういう回答か」と呼ぶ)申し出の、ことばが適当じゃありませんけれども、趣旨はわかるけれども、厚生省の行政措置を再び変更するということはいたしません、こういうことになるだろうと思います。
  267. 大原亨

    ○大原委員 それは自分が出しておいたんだから、自分がやったことを間違っておりましたと言えない、こういうのでしょう。ずっと間違いを重ねておいて、そして国民から見れば、一貫性のない措置をとっておいて、そして、申し立ての趣旨はわかりますが、御趣旨に沿うことはできません、そういうでたらめな行政がありますか。しかも選挙の前には盛んに禁止を宣伝しておいて、食品行政についてもアメリカ並みにやるのだ、こういうふうな印象を与えておきながら、済んだら、事前にそういうふうなことは延期するだろうといううわさが流れておったが、案の定、流した。根本さんも表面に出ておられた。そういうことになって回収延期が一部においてなされた。アメリカのとおりやったのかと思えば、水産物についてはつけ加えておる。一方ではチクロ対策費という金を業界から集めておる。不服審査の金は五万円ですよ。億単位の金が流れたということが公然と言われたじゃないですか。割りつけはこれだけであったというふうなことが言われておるじゃありませんか。私の団体は三百万円、これだ、こう言われたじゃありませんか。そういうことをやっておいて、そうして不服審査については誠意をもって、改むるにはばからずというふうな態度をとらないでおいて、法律の根本を間違えておいて——禁止の措置はいいといたしましても、事後の措置について適正な措置をしない、責任のがれを続ける、そういうことは私はいけないと思うわけです。総理大臣、いかがですか。これはあなたの答弁はなっておらぬのだから、ここらでストップして、法律論からいっても統一見解を求めるところなんだが、しかし、これはほかのこともあるから総理大臣いかがですか。
  268. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 チクロの問題は私も先ほども申したように陳情を受けたばかりです。しかし、私ただいまこれを回収を延期いたしましても、国民の間にチクロについての考え方はだんだん固まっておると思います。したがいまして、いわゆるこれがどのくらい国民の間で消費されるか、それには疑問があると思います。私はおそらくそういうものについて言われるようなあぶないものだ、こういうような感じを持つと、幾ら延期しても使われないものじゃないだろうか、かように私は思って、そういうように考えますから、回収は早く、その間に無事に回収できるようにそのほうを強力に推進すべきではないだろうか、かように思っております。  いろいろこの問題をめぐってうわさが立てられておりますが、そういうことについては、私自身全然さようなことは知りませんし、それらの点については、せっかく御提案がございましたから、よく調べるつもりでございます。万一大原君の発言が事実と違うようなことがあれば、これはもちろん訂正してもらわなければならぬ、かように思います。それらの点についても、私はよく調べてみたいと思います。
  269. 大原亨

    ○大原委員 私の発言が事実と違うというのはどういうことですか。それから私の発言のことをもう少し言いましょうか、ニュースだけでなしに。つまり問題は二つあるわけです。  厚生大臣、あなたは補償については、あやまったことは認めますが、補償はいたしません、こう言いましたけれども、これはあやまっておって改めないというふうなことは、国民の立場から見れば納得できない。厳正に禁止の処分をしたならば、禁止の処分を貫くと一緒に、公平を貫くと一緒に、被害者があった場合には適正な——全部というわけにはいかぬが、適正な禁止措置をとるべきだ。  佐藤総理大臣、あなたは敏速に回収できるだろうということを言われましたね。そうじゃないですよ。どういうことか知らぬが、チクロの値段は上がっておるわけですよ。回収延期になりましたら、チクロの値段が上がっておる。製造使用禁止をされておるのに上がるというのはどういうことですか。それで延期になったところは在庫品を売りまくれという指令を出したことが新聞に出ておるでしょう。そういうことで、今回のことで国民の関心が高まってきている。そうしてこれを使わなくなるだろうというふうなことがありますが、しかしそれは事実に反するのですよ。あなたの御発言は下情にうといのです。そこでこれは逐次表面に浮かんでくる問題もございます。届け出その他で浮かんでくる問題もございますが、そこで、私は結論的にどういう点を言うかというと、食品添加物については三百五十六品目の登載品目を洗い直す。それからその法律の改正の過程の中において、たとえば非常にテンポが早いのですから、五年ごとに洗い直せるような、私どもはそういう提案をしておるわけです。五年ごとに洗い直すようなそういう法律をつくるべきではないか。ずっと昭和三十一年にやっておいて、次から次へと添加物が出てくる場合に、それを野放しにすることはおかしいじゃないか。それから、この五年ごとに改める措置以外の措置によって行政上の指導、許容量その他の問題、措置によってこの弊害が除去できないものを登録を停止した場合においては、不承認にした場合においては、これは相当の損害の責めに任ずる、そういうことがものごとを、三百五十六品目その他を業者の言いなりにならないで厳正にやるという根本を正すことになるわけですから、そういう点について、これからの食品衛生法の食品添加物の総点検にあたって、政府はそのことを銘記をしながら法律の改正をしてもらいたい。厚生大臣は、山中さんが言われるように、十月にはかわられるかもしれないから、総理大臣ひとつ答弁してください。斎藤さんがいたら斎藤さんを追及したいけれども、いないんだから……
  270. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われますように、早急に食品添加物について再点検することをお約束をいたします。ことに色素の問題色づけが非常に多いですから、私はこういうようなものからもどんな影響があるか、十分検討しなければならない、かように思っておりますので、ただいま御指摘になりました点は十分事務当局に徹底するように申しつけたいと思っております。
  271. 大原亨

    ○大原委員 これに関連いたしまして、ちょっと大蔵大臣にお尋ねします。大蔵大臣、あなたに食品添加物のことでお伺いいたします。何を言うかわかりますか。  今年度の予算によりますと、酒造組合に対しまして十二億円ほど目にもとまらぬ早わざで最終段階で予算が復活いたしました。しかし日本の酒には、アメリカでは禁止をいたしておりますが、外国でも禁止をいたしておりますが、疑わしきは許さずという観点であるなら、サリチル酸は禁止すべきだと思うんですね。サリチル酸は水虫の薬です。有害であることはわかっているのです、動物実験の結果。十二億円とどういう関係があるかは別にいたしまして、十二億円を出して酒造組合の活動について何かの援助をされるのだと思うんですが、私はサリチル酸などは、こういうのは酒から除外してもらいたいですね、国民の一人といたしまして。私はあまり日本酒をたしなまないから、サリチル酸を飲む人に対して、日本酒を飲む人に対して同情はしないけれども、しかし日本の地場産業ですから、それを健全なものにして、外国にも売るし、国民にも売るということがいいのではないかと思うんですが、いかがですか。
  272. 福田一

    福田国務大臣 私も専門的な知識はございませんが、サリチル酸は食品衛生法の限度内においてこれがつかわれておる、こういうことで明治十一年から九十年もの間使われて無害だそうでございます。ただ、最近サリチル酸という問題がうるさいものですから、事実問題といたしましては、これは清酒業者も使わない傾向にある、こういうふうに聞いております。
  273. 大原亨

    ○大原委員 チクロの問題については、アメリカがやって、十日してぱっぱっとやったんだ。やり過ぎたといってから、またもとに戻したりしたわけです。戻したのはいいけれども、一部をもとに戻したわけだ。サリチル酸はアメリカでは禁止しているんですよ。アメリカに輸出用の酒については禁止しているんですから、アルコール分とかその他の防腐剤を考えて、私は、サリチル酸は水虫の薬だから禁止せいと言うのではないけれども、日本酒の中に入れないほうがいいと思うんだ。疑わしきは許さずで、発ガン剤とかそういうことについて言われているんです、化学合成品ですから。そういうことははっきりしたらいかがですか。やっぱり十二億は出したんでしょう。
  274. 福田一

    福田国務大臣 十二億とおっしゃいますが、これは七億です。七億円の問題と違うのでしょうか。——これは自主流通米制度を採用いたしました結果、清酒業者の増石権というものが価値が失われることになりまして、清酒業者は担保……(大原委員「それは簡単でいいです」と呼ぶ)そうですか。サリチル酸とは全然関係がありませんです。
  275. 大原亨

    ○大原委員 私が言っているのは、あなたは親の心子知らずで、サリチル酸をやめなさいと、こう言っているんです。
  276. 福田一

    福田国務大臣 なるべくそういう指導に当たらせたいと思いますが、現実の問題として、酒造業者は自発的にこれを使わなくなる傾向で動いております。
  277. 大原亨

    ○大原委員 自主規制でいくと、こういうことですか。  次に、このことだけで時間はとれないのですが、医薬品の場合です。御承知のようにアンプル事件とかその他たくさんあったわけですが、サリドマイド催眠薬を飲みまして、アザラシっ子が生まれている。その親は外部からは先天性だといわれて——手の短いアザラシっ子です。そういう子を持った親は離縁をして、その子を育てたりずいぶんひどい目にあっているわけです。サリドマイド催眠薬と奇形児、アザラシっ子との関係の中には、いまだに厚生大臣は因果関係はないというお考えを持っておるのかどうか。いかがですか。  それからもう一つついでに、サリドマイド催眠薬は、これはチクロのような禁止の措置をとったのか、あるいは自主規制の措置をとったのか、この二つ。
  278. 内田常雄

    ○内田国務大臣 サリドマイドとフォコメリー児との因果関係につきましては、最終的の結論に達していないようでございまして、これは要すれば政府委員からも答弁させたいと思いますけれども、現在訴訟でも争われておりますことは御承知のとおりでございます。また、これは禁止の措置をとった、こういうように私は理解をいたしております。   〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕
  279. 大原亨

    ○大原委員 いまのは間違いです。いまのは間違いで、大臣の答弁、是正しませんか。
  280. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私の説明が違っておりましたが、業者から製造廃止届けを出してきた、それを認めた、こういうことだそうでございます。
  281. 大原亨

    ○大原委員 行政指導で規制をしたということですね。禁止の措置をとったのではないということです。しかし西ドイツでもアメリカでもスウェーデンでもイギリスでもどこでもそういう議論は問題になっておるけれども、日本政府ぐらい冷酷な政府はないのです。いまアザラシっ子を持っている扶養義務者が訴訟を起こしているけれども、これは民事上の賠償責任だから、原告のほうが挙証責任があるから、たくさん金がかかるわけだ。それに対しまして厚生大臣は、政府は、いわゆる被告側、大日本製薬側について、因果関係がないということを立証するほうに回っているわけですよ。自主的に規制措置をさせながら、そういう立場を裁判上とるということは、幾ら製薬会社が金を持って威力があるとはいいながら、国民から見れば納得できぬことではないか。いまのチクロの議論を通じても納得できぬことではないか。これだけの議論をいたしますと、突然の質問ではないですから、総理大臣からひとつこれについては政府態度について再検討するという、そういうことについてはっきりした見解を求めたいのであります。
  282. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまもいろいろお話が出ておりますが、この薬、ただいま製造を自発的にやめた、こういうような状態だ、こういうことを厚生大臣から説明しておりますから、やめたものをわれわれが禁止することもこれは可能かと思いますし、実情に合うようにとにかく法律はつくるべきだ、かように思います。ただいまいろいろ新薬ができる、そういう場合に、これが人体にどういう影響を与えるか、これは十分検討をして、しかる上で許可するものは許可する、こういうような態度を明確にしないと、新薬できき目のほうだけが大きく広告されて、その弊害のほうを目をつぶるというようなことがあってはならない、かように思いますので、今後とも十分注意していきたい、かように思います。  先ほどの大蔵大臣に対する防腐剤の問題、これもひとり酒ばかりではございません。しょうゆについても、最近はカビがはえなくなった。カビのはえないことはたいへんけっこうだが、何か特別な薬を使っているのだろう。やはりカビがはえるのが普通の状態じゃないか。最近はよほど醸造技術も進んで、薬を使わなくてもカビもはえないようになるそうでございますが、とにかく特別なものを使ったということは事実であります。そういうようなものをあわせてやはり検討していかなければならぬことだ。  ただいま御指摘になりました諸点、いずれも適切なるお尋ねでございますから、私はひとり大原君だけが御心配でもないだろう、国民全体が心配だろう、かように思いますので、この機会に国民の皆さんにも、政府がこういう問題について真剣に取り組むのだ、この姿勢を十分理解していただきたい、かように思います。
  283. 大原亨

    ○大原委員 総理大臣の心持ちはわかるのですが、実際の結論はまた別です。サリドマイド催眠薬については、いまの質疑応答を通じましても、自主的な規制措置をとっている、自主的に業者に対して製造をやめなさいと、こう言っている。自主的な規制措置というのは法律上の根拠はないわけですよ。どこかの業者がよくきくということでつくりましても、これはつくることができるのです。違法ではないのです。ただ私は、そういうふうに疑わしきは許さずというたてまえに立つならば、製造使用禁止すべきである、こういうわけですよ。チクロについていろいろな問題があってやったのですが、これはサリドマイド催眠薬についても、サリドマイド催眠薬をやめましたらアザラシっ子はいなくなったのですよ、どこでも。日本の国でもそうですね。アザラシっ子——手のこうなっている子がいるのです。気の毒です。ですから、そのことをきちっと禁止をしたらいかがですか。そうすべきじゃないですか。
  284. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私のいまの答弁を誤解しておられるようですが、もうすでに業界はやめたのだから、そういうことを禁止してちっとも差しつかえないじゃないか、かように申しておるのです。御理解をいただきたいと思います。
  285. 大原亨

    ○大原委員 佐藤総理答弁は非常に明快でございました。このことに関しましては非常に明快な答弁でございました。私はアザラシっ子を持っておる父親や、それから裁判をやっているそういう人々は喜ぶだろうと思うのです。それから不安な催眠薬について危惧におびえている、非常にルーズなそういう薬務行政に対しておびえている人々に対しても、私は一歩前進であると思うのです。自主規制をやったものであるから、当然これは行政指導から禁止の措置をすべきである、そういうことで、私は非常にいい答弁だと思います。これで、いま数カ所でやっておりまする訴訟——民事上の賠償ですが、訴訟が私は一歩前進するだろうということを期待いたします。  それと同時に、西ドイツ、スウェーデン、イギリス等も、政府が中に立ちまして裁判の和解をいたしました。これは、メーカーは幾らでも金を持っているのですから、弁護士を持って十年でも二十年でも延ばせるわけだ。片一方の被害者のほうは、そういうアザラシっ子をかかえて、幾らでもこれは苦しんでいかなければならぬという運命にあることにピリオドを打たなければならぬ、もう一歩進んで。そういう面において、他の国の政府はそういう患者、被害者の立場に立ちながら、和解を進めておる裁判がある。西ドイツでも、これは単位が少し多かったわけですが、百億円の補償費だということが新聞にも出ておりました。日本は、いまはなくなった人その他があって少ないけれども、しかし、かなりあるわけです。二百数十名あるわけですが、この和解をやはり被害者の立場に立って政府は提案をすべきではないか。  もう一つは、園田元厚生大臣が、非常に調子のいい厚生大臣でありましたが、かたくなな、そういう政府態度を捨てて、アザラシっ子に対しまして、西ドイツがやっておるように義手ですね、手が短いから義手だ、りっぱな義手を国の助成でやるべきであるということを、事務局を押えて答弁したことがあるのです。私は、そういう数少ないけれども、一人の人間の命は地球よりも重たいということばがあるが、そういう人々に対しまして手厚い思いやりのある措置をやっていただきたい。——総理大臣、あなたは一番近いから、あなたの答弁は明確ですから、ひとつあなたの答弁を……。厚生大臣は遠いからもういい。
  286. 内田常雄

    ○内田国務大臣 大原さんにお答えをいたします。  いまフォコメリー児に対する義手の問題は、園田元厚生大臣が提案されましたとおりに、昨年度から関係者に国の予算で調達をいたしまして交付を始めております。また、明年度においても、昭和四十五年度においても、これの予算を計上いたしております。  それから、ヨーロッパの関係諸国におきまして和解の問題が取り上げられていることもよく承知をいたしておりまして、私は私なりにそういう国際的な環境、事実を十分念頭に置いて、そして進まなければならない問題のような、そういう研究を私は私なりにいたしております。
  287. 大原亨

    ○大原委員 裁判の問題については、被害者の立場、親、子供の立場に立って、これは一日も早く和解で終息できるような、国際的なそういう前例が出ておるんですから、政府は進んでやはりやろう、こういうことを総理大臣、一言御答弁いただけますか。
  288. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま厚生大臣から義手のほうは説明いたしました。やはりいいこともやっておるのですから、やはり答弁も専門家の答弁を聞いていただきたいと思います。  ただいまの和解の問題、これは私どもせっかくの御提案でございますから、さらに検討いたしてみます。
  289. 大原亨

    ○大原委員 これは首尾一貫した答弁をしていただきたいのですよ。せっかくの画竜点睛ですから。  総理大臣は、店主規制がある段階に来たならば、たとえ業者の立場考えても、はっきりわかっているのですから禁止する、禁止すべきものと思う、こういうような考えですね。そういう上に立つならば、因果関係がないなどというふうに、裁判にこだわって、アザラシっ子と睡眠薬の関係はないんだということをこだわって立証しようとした冷酷なそういう政府態度を変えて、被害者の立場に立ってこの事態の収拾をはかる。外国においてもそういう前例が出ておるのですから、そういうことを総理大臣がイニシアチブを発揮していただきたい。いままでの経過からいうて、この点について、非常に聡明な総理大臣から答弁をいただくことがよろしいのではないか。
  290. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大原君が説明された点も、あわせて頭の上に置いて十分考えてまいります。検討します。
  291. 大原亨

    ○大原委員 こいねがわくは、頭だけでなしに、腹の中にも入れてやってもらいたい。  いままで、食品添加物全部をあげることはできませんでしたが、食品添加物と医薬品の行政についての問題となる点を取り上げてやりましたが、第三は、これは簡潔にやりたいと思うのですが、残留農薬の問題です。あとで申し上げるのですが、われわれはそういう業界の助長と、国民の立場に立った監督指導、消費者行政というものを混同した日本の行政システムになっておることが非常な欠陥の一つだと思っておるわけです。たとえば厚生省が薬事法に基づいて医薬品の規制をするのにメーカーの指導育成もする、通産省の仕事もする、あるいは農林省が農薬の取り締まりをするのに農薬会社の指導助長もする、こういうところに私は、言うなればネコにかつおぶしを持たせたようなところがあると思うのであります。そういう点では、私はアメリカの食品、医薬品のFDA法は参考になると思うわけです。  そこで、農薬について私は質問するのですが、最近、これは一つの例ですが、有機水銀を防腐剤として使いましたジャガイモが東京都内にはんらんをしておる。青ぶくれいたしました有機水銀を使いましたジャガイモがはんらんをしておる。有機水銀は禁止をしておる農薬であります。DDTやBHC牛乳なんかの問題はあとで申し上げますが、そういうものが出回っておるということは、これは一体どういうことかということであります。
  292. 内田常雄

    ○内田国務大臣 農林大臣からもお答えがあるようでございますが、御承知のように、これは私どものほうの食品衛生法で有機水銀をバレイショに使うことを認めているというものでは全くございませんで、そもそもその種イモを食料用に販売するということが食品衛生法上違法な行為であるということで、有機水銀以前に、この問題につきましては直ちに、厚生省としては関係方面に連絡をいたしまして、出回りを押えたような措置をとってまいったものでございます。
  293. 大原亨

    ○大原委員 出回りを押えた措置をとったというのですが、しかし、消費者の立場に立ってみると、どこまでまだほかに出回っておるかもわからない。また、いつ出回るかもしれないという不安があるわけですよ。製造使用禁止をされた有機水銀が防腐剤として使われながら、バレイショが出回っておるということはいけないでしょう。農林省の立場からどういう措置をとっておるのですか。
  294. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 まことによくないことでありまして、これは御承知のように種イモでございますので、腐敗を防ぐために水銀剤を使っているわけでありますが、たまたま不心得な者がおりまして、北海道における出荷業者、二店でありますが、一つの店は約七千袋、それから倶知安指導信用農協が約五千袋、それから青果会社で百五十袋、おおむね一万二千袋以上と推定されるものが北海道から出荷された模様でございます。これに対しまして、農林省は急遽、東京都知事をはじめ全国の公共団体、それから地方農政局長に指令をいたしまして、その筋の手を経て全部押収するようにいたしておるわけでありますが、これが出回ってまいりましたのは、やはり心得のよくない種屋がやった仕事でありまして、はなはだ残念なことでございますので、警察当局の協力を得まして、全国的に手配をしてこれを押えておる最中であります。まだ出荷途中で、発送はしたけれども先方に届かないというようなものもありますので、こういうのは全部途中で押収する予定でございます。
  295. 大原亨

    ○大原委員 現在、農薬取締法がございまして、農林省はこれは取り締まることになっておるはずだと思うのです。それがなぜ取り締まることができないのかということが、私どもが審査をする、審議をする非常に大切なことです、国民の立場から考えてみまして。店頭に出回りますと、厚生省が食品衛生法によりまして、食品衛生監視員は非常に手薄ですが、これは厚生大臣の責任になるわけでしょう。しかし、どこを通ってどう行くかわからぬ、種屋がどこへ売っているかわからぬ、それを禁止することもできない。一般にいわれていることは、万博でジャガイモとタマネギが上がった。これは一つの万博の公害だ。そういうことで種イモまで、防腐剤をやりまして、そうしてあちらこちらに売りまくっている、こういうことでしょう。だから、これは全面的に安心だというふうなところまでいかないでしょう。だから、それの全体を、生産をされまして出荷をされて店頭に出るまでの過程をどういうふうにして押えるのかということを明確にしなければ、残留農薬が牛乳やその他野菜類、米に至るまで非常に大きな問題となっておるときに、私はこれは一つの具体的な問題じゃないかと思う。どこに欠陥があるというふうに、欠陥車の欠陥があるように、お考えになりますか、農政上の欠陥……。   〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕
  296. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 もともと、申すまでもないことでありますが、こういうものを使った種イモというものは種に使うものであって、食うために販売するのは大きな間違いでございます。(大原委員「食べちゃいけないの」と呼ぶ)これは食べないで種子に使うためにこういうふうにやっておるわけでありますから、それがまことに不道徳な業者がひそかにこれを販売した。ことしは、御承知かもしれませんが、北海道はジャガイモが不作でございます。そういうこともありましたので、そういうやみで出したものだろうと思うのです。  先ほど申し上げましたように、急遽途中で押えるものは押え、それから先方に到着しているものは到着先で押収いたしております。さっき申しましたように、全国の県庁及び農政局が当局と連絡をして押収に全力をあげております。ただ、いままでに行くえ不明になっておる若干がありますが、それはまだどういうふうな経路にあるか、そういうことも調べておる最中でございます。
  297. 大原亨

    ○大原委員 警察がやるのですか。
  298. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農政局と県庁と打ち合わせてやっておりますので、それぞれの関係を動員してやるわけであります。
  299. 大原亨

    ○大原委員 どうもやっぱり農薬のメーカーに御遠慮なすっておられるのか、あるいは農民の方々に御遠慮されているのか、私もわからない。しかし、このことは、方針をはっきりすれば、農民にいたしましても国民と同じような立場に立つことができるのです。そういうものであります。ですから、これは法律改正の問題、盲点の一つといたしまして、食品添加物やそういう食品、薬名の公害を一掃するという観点でこれは厳重に追跡をして、将来根絶するようなそういう措置をとってもらいたい。これは総理大臣に質問いたしましょう。どうです。
  300. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御提言、しごくもっともだと思います。私は、御提言の趣旨も十分尊重し、十分の効果があがるように努力したいと思います。
  301. 大原亨

    ○大原委員 このことでかなり時間をとりましたが、ひとつぜひ聞きたいのですが、DDTとかBHCは国際的にも規制をしているわけですが、日本でも規制をいたしております。しかし私は、BHCについてはこれは全面的に禁止したほうがいいのではないか。これは牛乳の中に——高知県の衛生研究所が出したことが一つの契機になって、その他でもあったわけですが、特にあの地域においては牧草とか、わらとか、そういうものから摂取するというふうにいわれている。もちろん飼料の中にもあるかもしれない。このことは、うやむやな形で使用許可するのではなしに、禁止の措置をしたほうがいいのではないか。DDTについても、アメリカ、カナダでそういうような方向で措置されているわけですから、この点について所見を明らかにしてもらいたい。
  302. 内田常雄

    ○内田国務大臣 BHC、DDTが食品中に残留する問題が近時非常に取り上げられてまいっておること、私ども深い関心を持ってやってまいっております。これは御承知のとおり、現在でももう国内向けには出回らないことにされておりますけれども、さらにそれを製造禁止にまで踏み切るかどうかという問題につきまして御提言でございますので、私は十分検討をさせていただきたいと思うものでございます。
  303. 大原亨

    ○大原委員 この際、食品添加物に関しまして、農林大臣に、政治的な質問ですが申し上げておきたいのです。  この今度の予算の中に——これはけたが間違ったら、大蔵大臣、直してください。天然ジュースの使用奨励費を三百万円か計上してございます、農林省の予算の中に。御承知でしょう。それで、飲料水の中には化学合成品が非常に多いわけですよ。甘味料から、防腐剤から、着色剤から香料、これは全部石油製品、化学合成品です。それに、今度はチクロが禁止されてブドウ糖が入っているから、これは砂糖水を飲んでいるのと同じです。コカコーラだって何だって、みんなそうじゃないですか。これが三十五億も売れているという、非常に大きな力を持っている。所得だってずっと高い。そうではなしに、天然ジュースはリンゴだってミカンだって余っているし、栄養の立場からいっても総合農政の立場からいっても、これは私は国民の立場に立って、JASマークその他の規制等を通じましてやっぱり転換しなければならないと思うのですよ。化学合成品は量をこえてやりましたら必ず不純物が入って副作用があるのですよ。味の素に至るまで、そういう議論がアメリカで起きておるわけです。赤ちゃんには規制しておるわけですね、日本の有数の産業でございましたが。ですから、化学合成品というふうなものに対しまして総点検すると一緒に、天然ジュースをやはり保護してこれを飲ませるような、そういう政策をとることが一つ、総合農政からいったって一つ。  もう一つは、去年はなま乳が余った余ったと、こういうわけです。しかし、三、四年前に牛乳の中に三割は脱脂粉乳を入れてもいいということになったわけでしょう。そういう措置がなされているわけですよ。私はイギリスやスウェーデンその他へ参りましたら、ソビエトへ行きましても、純粋の牛乳が飲めるということで私どもは非常にありがたいですよ、安心して。しかし、日本では一ぱい、ビタミンからホルモンに至るまで何でも入っている。こんなものを入れる必要はないわけですよ、添加物を。だからジュースと一緒に純粋ななま乳を、余っているのですから、畜産事業団は金も余っておるのでしょうが、買い入れておるわけでしょう。それまで、そういう規制をして、ほんとうに国民や農民の立場に立ったそういう食品の総点検をすべきではないか。  これは農政に関係深いから、政治的な問題でもありますし、賢明な倉石農林大臣に御答弁いただきます。
  304. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 最初のお説のジュースでございますが、全く同感でございまして、わが国のジュースというのは欧米のジュースに比べまして非常に劣っておるものが多いようであります。いわゆるソフトドリンクというのが多い。そこで、これは総合農政ということばをおっしゃいましたけれども、私ども総合農政の中でも、ミカン、リンゴ等はこれから販路を拡大していくためにはやはりかん詰めジュースに転向していくべきであるという、これは農協等も全く同じ意見で、そのほうに力を注ぐわけでございまして、そういうことのために、そういう嗜好を奨励してまいるために、対象地域を京浜、中京、京阪神等で、おとなと学童とそれぞれのおよその人員を計上いたしまして、そのいまの目的を、つまり消費拡大、果汁商品消費の促進をはかるための予算を計上いたしたわけであります。将来の日本におけるジュースは、いまお話しのように、純粋なくだものジュースをできるだけ多く、一〇〇%に近いものを製造してまいるようにいたしたいと、そういうことでございます。  牛乳のお話がございまして、これも私ども同感でございますが、御承知のように昨今は学童給食も、一部混乳いたした、脱脂粉乳等を使ったものもありますが、これも逐次純粋のなま乳に交換してまいる。来年度の予算でもこれの消費量をふやしておりますが、そういうところには主として多くなま乳を配給するようにいたしたい。お説は全く同感でございますので、純度を高めることに努力をしてまいるつもりでございます。
  305. 大原亨

    ○大原委員 これは質問がまだたくさんあるのですが、牛乳の問題にいたしましても、三割の脱脂粉乳を入れるのですが、その脱脂粉乳の中には、アメリカが余剰農産物でたくわえておりますが、それを輸入しました、つまり、ブタやその他えさになるちょっと腐りかけた——余剰農産物ですから貯蔵いたしますから、少し変質しかかった直前のものが日本にかなり入ってきておるわけです。それを戻しましてなま乳に入れる、こういうことです。それをかなりやっているということがいわれておるわけですね。そういたしますと、この脱脂粉乳は、もとへ戻す技術はこれは日本が世界一だそうです。アメリカだって日本へ来て勉強する、こういわれておるわけです。そういうこと等がございますから、なま乳を飲むことは非常に大切です。  それから農薬の問題は、たとえば米の問題にいたしましても、これはやはり、農薬を使って農民が一年間に一千名以上命を落としているのですよ。風下におったり、あやまって自分で飲んだりして。ですから、これはできるだけ危害のない最低限度のものを、農薬としてのつとめが果たせるようなものをやはり開発をすべきなんです、研究をやりまして。メーカーが売り込むだけで、メーカーのベースで農薬をどんどん使ってまいりましたら、農民に被害があるだけでなしに、国民も大きな被害があるのです。米のことを言えばタブーのようにいわれますけれども、その問題を含めて、私は農薬の問題については再検討すべきだと思う。  以上を通じまして、食品衛生法による食品添加物、あるいは薬事法による医薬品、あるいは農薬取締法による残留農薬の問題、これを国民や消費者の立場に立ったいろいろな議論をいたしてきたわけですが、これは私は、食品衛生法の問題については佐藤総理からも一部賛意を得たわけですけれども、これらの問題はやはりもう一回総点検をする。そのためには自主的な研究機関のために思い切った金を使って、そうして国民が安心できるような食品を供給するという、そういう政策を思い切って進めてもらいたいというふうに思うわけです。最後に佐藤総理の見解をお聞きいたします。
  306. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの最終的な総くるめの御提案、これは私どもももちろん十分検討しなければならないと思っております。ただいままで、それぞれの機関がそれぞれ研究機関、施設等持っておると思いますが、しかし、大原君が御指摘になったような意味に、必ずしもその機関が働いておらないと思いますので、今度は総合的にもう一度よく検討ができるような、これはひとつくふうしないと、いまの制度のままでは案外できないかもわからない、そういう点、しばらく研究さしていただきたい、これをお願いしておきます。  ただ、かように申しまして、私の責任をのがれたり、あるいは事態を遷延するというつもりではございません。誠意をもって、お話と取り組むつもりでございます。
  307. 大原亨

    ○大原委員 あと残っておる項目は、経済社会発展計画、これはさいの川原みたいにつくっては、つくっては——佐藤内閣ではたとえば中期経済計画をきめました、経済社会発展計画をきめました。今度御破算にして、新経済社会発展計画をきめるでしょう。大体一年か二年ぐらいでつぶれていくわけであります。そこにやはり社会開発とか人間尊重が実現できない、物価の問題が解決できない、社会保障が解決できない根拠があると思うのです。そういうところの質問を最後にいたしたいと思いますが、その前のもう一つ質問で、社会保障の欠陥の問題について申し上げ、御質問いたしたいと思います。  思わず時間をとりましたから、やはりこれも各論から言いますが、総括質問が始まりましてから児童手当に関する質疑応答、あるいは本会議における児童手当の質疑応答を私は聞いてまいりました。矢野質問や大橋質問でかなり込み入った一問一答がございましたが、あの答弁は、私は昭和四十二年以来の去年以前の議事録を全部調べてまいりますと、大体三十回ぐらいあなたは答弁しております、本会議でもどこでも。本会議を入れましたら、それ以上。決議は、衆参社会労働委員会その他各関係委員会決議されているわけです。これは一党一派の問題じゃないわけです。これはその質疑を聞いてみますと、昨年三月四日に私の質問に対しましても、斎藤厚生大臣は、児童手当審議会に御審議を願い、次の通常国会に提案できるよう最大の努力を払います。それで佐藤総理大臣は、斎藤厚生大臣が答弁いたしました趣旨に従って最善の努力をいたしますと、次の通常国会——他のところではみんな昭和四十五年から実施いたしますということになっておる、斎藤厚生大臣は。斎藤厚生大臣にここへ来てもらいたいものだ。ぜひお目にかかりたいものですがね。これはいままでの答弁が、ここにずっと私はとってみましたが、答弁を見ましたら、昭和四十五年というのを昭和四十六年にかえたら——去年は昭和四十五年から実施する、あとは全部児童手当審議会の答申を待って、来年から実施をいたします、最大の努力をいたしますと、そう総理大臣が答弁しておる。この去年の答弁と全然同じです、議事録を見てみましたら。これはだれかが書いたんでしょう、役人が、政府委員が書いたのでしょう。全然同じですよ、質疑応答を見てみましたら。これはふしぎなものですよ。最善というところが最大の努力と、「大」と「善」が違うくらいなものです。大と善は大きな違いじゃない。これを見て私は全くびっくりいたしましたよ。しかし、その中で言い得ることは、総理大臣の御答弁は、昭和四十二年三月二十二日かに私がここでやりましたときの質問に対する答弁が一番よかったですよ。総理大臣の答弁はずっと拾ってみますと、だんだんだんだん後退しております。隣におりました水田さんがねじを巻いたり、福田さんはちょっと成績がよろしいけれども、福田さんはこれは理解があるというふうに私は踏んでおりますが、これは次のこともありますし……。しかし佐藤総理答弁は、だんだんだんだん後退して、厚生大臣の陰に隠れているのだ。だから、内田さんと私が一問一答いたしましても意味がないということがはっきりわかった、議事録を調べてみて。そうでしょうが。そうなんですよ。園田さんも約束いたしまして、坊さんも約束いたしましたよ。鈴木善幸さんも言いましたよ。去年は児童手当審議会でしたが、おととしの昭和四十三年の答弁は、児童手当懇談会というものが厚生大臣の諮問機関にございましたが、この答申を待って昭和四十四年から実施いたします——これは児童手当懇談会と審議会が違っているだけ。  そこで総理大臣にひとつ質問を申し上げたいのですが、昭和四十二年が非常によかったというのはなぜかということを当時の議事録をひもといてみますと、昭和四十年からあなたの内閣が本格的に始まりまして、社会開発、人間尊重を非常に強調しておられたのです。それがだんだん時間がたつに従いまして、お題目のようになってまいりました。それはたとえば物価でも二・八%ということを盛んに言っておられたけれども、全然言われなくなったと同じような現象です。そこで国会というところは、最初に御答弁いただきましたように、党の事情もあるでしょう、審議会における財界の意見もあるでしょう、大蔵大臣、事務当局の意見もあるでしょう、政調会長の水田さんの意見もあるでしょうが、国会で御答弁になったことは、これは一大原とか一何々党のだれに対する答弁ではなしに、国会答弁を通じて国民に公約をしたものでありますね。最高の機関においてやったことなんです。これが四十二年以来全部、これは来年からやります、来年からやりますというふうなことだけを繰り返すのであるならば、国会において審議をする意味がないのではないか。私はそういうことを憂えるのです。ですから、問題は二つありますが、一つの問題は、なぜそういう公約が毎年毎年繰り返して実行できなかったかという過去の問題が一つ。私は約束ができなかった以上は、このなぜかという理由を明らかにしてもらわないと、理由が明確でない限り、私どもは前に進むわけにはいかぬわけであります。そうでしょう。その理由も明らかにしないで前に進むということは、審議が全く形骸化するということになるわけでありますね。この点は私は佐藤総理に腹をくくって答弁してもらいたい。
  308. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 経過はよく御存じだと思いますが、しかし、もう一度うしろ向きで議論しなければ前に進めないとおっしゃるから申し上げます。  ただいまお話しの中にありましたように、準備ができておらないということが主たる理由であります。その準備ができておらないということはどういうことか。制度上からは、最初はいわゆる児童手当懇談会であったが、懇談会でこういうような重大問題を決定する、そういう答申が得られるものだとは思いません。懇談会ではよくない、やはり審議会という正式なものが望ましい、こういうことで児童手当審議会に変わった。この一事が私は非常な進歩ではないかと一つ思っております。ただいままでその審議会の答申を得ておらないのです。なかなか困難な問題であります。と申しますのは、ただいまのわが国の場合に、いろいろ社会保障制度といたしましても、多数の手当、年金その他のものがございますから、そういう全体のワク内で児童手当というものがどういう地位を占めたらいいか、そういうことで、まだ基本的な問題すら結論が出ておらない。非常にわかりやすく申せば、第一子から出せ、そういう人があるかと思うと、いや、第二子からだ、そうじゃいかぬ、第三子からだ、第三番目から出せ、こういうような議論が出ている。この辺にも一つ基本的に問題のあること。さらにまた、その負担の場合に全額国庫で持てという場合もございましょうし、いやそうでもない、自治体あるいは企業体もやはりそれぞれが分担すべきだ……。こういうようになかなか複雑な問題でございます。このことは、いまお尋ねになります大原君もよくおわかりのことを、私をして重ねて言わせよう、こういうおつもりだろうと思いますが、私自身が前向きではないことではございません。ただいまのような経過を考えながら、たびたび本会議でも、またいままでの質問、今回の国会におきましても、これが実現できないことはまことに遺憾だということを声をつつしんで、また謙虚に申し上げておるのでございますから、その結論の出ておらないこと、これは御了承いただきたいと思います。  また、それではどうするつもりだ、こういうことになりますが、これはもう厚生大臣もしばしば申しますように、できるだけ早く審議会の答申を得て、そうして政府態度を決定したい、かように申しております。いろいろ党の事情等について御心配もくださいまして、この点では他党であられる大原君にお礼を申し上げますけれども、その辺は、政府と与党との問題についてはあまり御心配なさらなくて——私が総理であり、同時に総裁を兼ねておりますから、その辺の調整は十分はかりますから。しかし私は、ただいまのところ、いまのように審議会がまだ結論を出しておらないその段階、しかもただいま説明したように、基本の問題すらまだ意見が一致しておらない、そこらにこの問題がいかにむずかしいかよくおわかりをいただけるだろうと思います。もちろん金額はどのくらいがいいかというような点もまだきまっておらない。ここらに問題の所在があるわけでございます。これはもう専門的な大原君に私が説明するのは逆だと思いますが、政府の決意を申し述べるためにも私が答弁しなければならない、かように思って、私どもの決意の一端を披露した次第でございます。
  309. 大原亨

    ○大原委員 いまの御答弁は非常に長かったわけですが、問題は私は二つ、三つあると思う。  その一つは、この児童手当に対する認識の問題なんですよ。総理大臣以下各閣僚の認識の問題なんです。児童手当というものは、経過的に見ましても、制度からいいましても、児童憲章がございますが、社会保障を前進させる、改善する前提となるものである。基礎になる問題なんです。それを日本は、このように他の制度はかなり形式が整いましても、最後まで延ばしておるという、そういう社会保障に対する認識の問題なんです。ことばでは社会保障ということを言うけれども、認識の問題が一つある。それからむずかしい事情については私どもも知っておったわけです。  第二の問題としては、しかし総理大臣はそういう議論の中から昭和四十二年以来、来年はやる、来年はやるということを御答弁になったわけでしょう。そのことを御承知にならないで御答弁になったとすれば、これはまた国会軽視もはなはだしいですよ。斎藤前厚生大臣は、私はこのことについては政治生命をかけてまでやりますと言っているのだ。厚生大臣、あなたに私も答弁してもらいたい。大橋君も、前の矢野書記長も質問し、本会議で成田委員長も言いましたが、あなたに答弁してもらいたいが、しかし、あなたが十月以降もおられるかどうかということについて、私はわからぬ、斎藤厚生大臣のことを思うて。そういう議論は私は全くいままでむだであったと思っている。前に鈴木善幸、いまの総務会長、そのほかずっと議論をいたしましたら、必要性は認めたわけですよね。それであるのに、厚生大臣が政治生命をかけてやる、あるいは総理大臣が協力してやらせるのだ、こういうことを言いながら、一部に反対があるということだけで——第一子、第二子、第三子からやるというだけの問題じゃないんですよ。私どもはそれについては弾力的な考え方を持っている、順序といたしましては。だから東京都だってやっているわけでしょう。  ですから、このことは佐藤総理大臣——私は内田さんに対して、まだこの間なられて、ほんとうに一生懸命勉強しておられるのだ。一生懸命にやっておられることについては私も感心するのだ。しかし、厚生大臣に御答弁いただいても——私は御答弁いただくような気持ちにならない、この議事録でいままでのことを見て見たら。斎藤厚生大臣は二十回以上にわたってこれは言っていますよ。それでもなお国会における答弁や公約が無視されるのかと、こういうことですね。私は認識の問題はあとに加えて、いままでできなかったことについて佐藤総理に聞きたいということを言いましたが、そのことについては私は遺憾ながら納得できない。私は、政府がもう一回この問題について意識統一をして、佐藤総理からこれは答弁をしてもらいたいと思っている。なぜできなかったか、その上に来年からは必ずやるのかどうか。こういう問題がうらはらの関係にあって、これが議論されて初めて去年よりは前進したということになるのではないか。  だからそういうことについては、いままでの御答弁では、先般の大橋君までの御答弁では、本会議からずっとの答弁では納得できない。むしろ議事録を調べてみると、佐藤総理態度が、理解は深められたかもしれないが、むしろ答弁自体でいうと後退をしておられるのではないか。これは昭和四十二年、四十三年の答弁を私が申し上げればかなりはっきりいたしますが、それは御記憶であると思うわけです。私は、このことについてはっきりした御答弁があるか、あるいはこのことについてはもう一回政府で意識統一をして、そしてこの予算審議に際して国会答弁をしていただくか、無理なことは言いませんけれども、とにかくはっきりしていただきたいと思う。これは社会保障の長期計画とかあるいは国民生活の安定とか、そういう基本的な政治の問題または政治姿勢の問題である、そういう考え方でございます。これは私は、だれが聞いたって無理じゃないと思うのだ、この私の議論は。そのどちらかについて、ひとつ配慮して答弁をしていただきたい。
  310. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど説明したことと同じことをまた言わざるを得ないのです。私は、この問題について前向きで取り組んでおることは、これはもうただいまの姿勢でおわかりがいただけると思います。児童手当懇談会を児童手当審議会に変更したこと自身が、もうすでにそれは非常な前進であったと思います。しかし、なかなかこの児童手当審議会そのものが結論を出しかねておるのがいまの現状ではないかと思っております。私は、この審議会に何もかも責任を負わすという、そういう意味で申しておるわけではありません。しかし、政府がこういう重大な事項を決定するにつきましては、それぞれの法律の定むる手続を踏んで、しかる上で結論を出すのは、これは当然のことであります。大原君が、御理解がいただけぬと、どうしてもわからないと、かようにおしかりではございますけれども、私の答弁はただいまのことで尽きておる。  私は、この児童手当審議会の答申を得たら、その上で私どもが所要の法律を整備し、また予算を組むと、こういう考え方でございます。重ねてはっきり申し上げておきます。
  311. 大原亨

    ○大原委員 総理大臣、そういうことになりますと、いままでの昭和四十二年以来の総理大臣がお答えになりましたことは、そういう検討を得ないで答弁したということになりますか。そういうことになりますか。じゃ、その国会国会でそれが過ごされればそれで終わりということになりますか。その点については、あなたは目をむいておこっておられるようだけれども、私が言っていることは間違いないですよ、議事録を全部見ればわかるのだから。(「見通しがなかったんだ」と呼ぶ者あり)見通しがないことを答弁されたということになるのですか、あなたはいままでの御答弁で。だから私が言っているのは、児童手当の根本認識に対する問題が一つあるけれども、なぜできなかったかということを私は国民が理解——私を含めて国民が理解できるような答弁をしてもらいたい。そのことは当然に来年は必ずやるということを、厚生大臣ではなしに、いままでの厚生大臣は何回も答弁したわけだから、厚生大臣ではなしに、総理大臣が答弁をしてもらいたい。それを国会の権威にかけて答弁をしていただくことが当然ではないですかね。私は無理なことを——あなたに目をむいておこられることはないと思うんだ私は。
  312. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 目をむいておこっておるわけじゃございませんが、私がとかく私の決意を表明するのがほんとに熱意がこもるとどうしても目が大きくなるので、これは別におこったわけではございません。  ただ、いまのお話はたいへん重大な点でございます。私は、手続も終了しないうちに私どもがこういうことをしたい、ああいうことをしたいと、こういうことを申すことはしばしばございます。政治家でございますから、それは当然のことであります。これは、そういうビジョンを述べたからといってそれで責められては、私は責められるほうが無理じゃないだろうかと思います。いま申し上げておりますのは、それぞれのビジョン、それを実現すべくそれぞれ手続を踏んで、ただいま児童手当審議会まで設置し、その審議会の答申を得るようになっておると、こういうことを申し上げたので、そこらによほど前進があるのじゃないか。これはもう全然関係なしにでたらめを言ったのかと、こう言って私をお責めになること、これは少し筋違いじゃないだろうか、かように思います。政治家でございますから、その手続の必要なもの、そういうものが整備されて、しかる上で政治が行なわれることは、これはもう当然であります。  いい話が、ただいま農民年金を出そうという、こういうことをいろいろ申しておりますけれども、まだ農民年金は法律が出ておりません。幾ら出そうといっても法律が整備されない限り、そんなものは出せるわけがございません。その法律もできてないのにけしからぬ、前向きでそんな話をするとは、こう言っておしかりを受けるとすれば、おしかりをされるほうが無理じゃございませんかと、かように私は申すのでございまして、ただいま私ども児童手当についてはいろいろ熱意をもって取り組んでおる最中だ、そこで懇談会ではよくない、やはりしゃんとした審議会に基づいて、そうしてその答申を得た上で政府は取り組んでいくと、こういうことを申し上げておるので、これは別に無責任な話じゃない、これこそ責任のある話でございますから、この辺は御了承いただいて、どうもいままで言ったのはでたらめだと、かようなことをおっしゃらないように、まあ大原君もそれは十分おわかりだとは思いますが、私、そういうお話がありますから、もう一度ただいまの経過をふえんして申し上げた次第でございます。
  313. 大原亨

    ○大原委員 このことで押し問答するのは時間の浪費です。私はわからぬことを言っているのじゃないですよ。昭和四十二年以来、佐藤総理は明確に言っているのですよ。その答弁をしておられるのです。そのときにはあまり目をむかないで、水田大蔵大臣は目をむいたことはあるけれども、やっているのですよ。それで、総理大臣はいまはネコなで声で、まあがまんしろ、がまんしろというようなことを言われるけれども、何ですかそんな。答弁しておいて、しかもできなかったら、まあ待て、まあ待てと言って、子供に言うようなことを言ったってだめですよ、そんなことは。  私が言っているのははっきりしているのですよ、いままでできなかったのはなぜですかと、理由をはっきりしてください。審議会において一つのサイドの財界が反対したならば、反対し続けるならば、来年もできないのかということがあるでしょう、いまの答弁からは。来年は必ずやりますか、やる決意ですと、こういうことの言い方についてはあるでしょう、あなたは。じゃ、その二つの点——なぜかといえば、厚生大臣がいつも隠れみのになっておったと私は思っている。議事録を見てみますと、佐藤総理の御答弁は非常に慎重になったといえばいいけれども、後退しておる、こう思う。その現状に立って答弁しているわけですから。これは国会の権威ですよ、政治姿勢の問題ですよ。だから、私はいいかげんの答弁では納得しませんよ、このことは。
  314. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いいかげんな答弁をいままでもしておらないつもりですし、また、これからもするつもりはございません。だからこそ、ただいまのようなお話をしておるわけであります。別に目をむいて大きくしているわけじゃございません。ただいまは、皆さんとほんとうに対話の形でこういう審議が進んでおる、このことを非常に私も歓迎しておるその一人でございますから、そういう状態はくずしたくはない。  そこで、この問題、児童手当審議会の問題について、ただいま審議をお願いしておるのは児童手当審議会だ、それがいずれ答申してまいります。その答申が出てくるまでにいろいろ問題があるでしょう。その問題はどういう点だというところまで実は説明をしたのです。それは、もちろん全部が賛成するということはなかなか困難でしょう。しかし、私は、一部の反対がありましても、結論は結論としてこれを尊重し、それを実施する、そういう考え方で、ただいまこの問題と取り組んでおる。その際に、どうも、一部の反対があったらやらないのかとか、いやどうかというようなことを言われると、私だって目をむかざるを得なくなるのです。その辺はどうかおこらさないで、ただいま私の気持ちを十分御理解いただきたい。重ねてお願いをしておきます。
  315. 大原亨

    ○大原委員 委員長、これは、いままでやっておったってだめですからね。これは、政府の統一見解を、私は総理大臣からあらためてお伺いしたい。私が言っていることはむちゃなことを言っていないんですよ。委員長まで頭を下げて、そうだと言っておられる。だから、私は無理なことを言っていないんですよ。いままでやってきて、仏の顔も三度ということがあるけれども、国会を軽視するんですか、こう私は言っておる。一審議会の問題じゃないですよ。あなたの決意の問題ですよ。ですから、私はいまの御答弁では納得できませんから、これは理事会において御相談いただいて、政府の統一見解を、予算の総括質問が終わるまでに出してもらいたい。よく協議をして出していただきたい。厚生大臣の言ったことを——私は厚生大臣に答弁してもらいたいのですよ。あなたが四選の十月以降も彼がずっと厚生大臣だということを保証されるなら答弁してもらってもいいけれども、そういう保証がない限りは、保証できぬことだからね。答弁したってだめですよ。いままでだってやってきたんだから。ですから、このことは答弁にそごがあるし、あるいは総理大臣の御答弁のニュアンス、いままでの違いもあるから、あらためてこの問題については政府で御協議いただいて答弁していただきたい。社会党やせたりといえども、こういうことについては引きませんよ。  それで、次の問題は、厚生大臣、これは事務的な数字的な問題。医療保険の抜本改正についての基本的な問題についてだけ、私は総理の腹を聞きたいのです、私は言いたいことが一ぱいあるから。  そこで、厚生大臣、政府管掌の健康保険は、昭和四十五年度で累積してどのくらいの赤字になるか。鉄道の赤字も大きいだろうし、食管の赤字も大きいかもしらぬが、これもやはり三大赤字の一つだ。この赤字をどういうふうにして支払っていくという政府の方針か。これは事務的なことですから、厚生大臣、答弁願いたい。
  316. 内田常雄

    ○内田国務大臣 残念ながら、政管健保の赤字は、このままの状態ですと、毎年相当の累積を加えざるを得ません。昭和四十三年度末の累積赤字は千百八十七億でございますが、これに四十四年度中には九十五億ぐらいの赤字を加えまして、四十四年度末の赤字は千二百八十億円ぐらいになります。四十五年度におきましても、何らかの根本対策を講ぜざる限り、三百七十八億くらいの赤字が累積することになりますので、四十五年度末においては千八百五十四億円という赤字になるわけでございまして、それに対しましては、医療保険の抜本改正等を通じまして、もちろんこれは財政対策等も含めまして処理せざるを得ない課題であると私は思っております。
  317. 大原亨

    ○大原委員 昭和四十五年度は千八百五十四億円の赤字になる。この赤字の出た原因は、政府がいままで抜本改正をやらずに、特例法を出しながら、しかも昨年はきんちゃく切りのように本法改正でやったということが一つある。これは政府じゃない、与党がやったのか。与党、総裁のほうです。総裁の口だ。そして、問題点がはっきりしておるのに、漫然とそれを避けて通ったというところにあるのです。私は、このことについて、総理に最後に一つ聞きたい。  問題は、政府管掌健康保険、組合管掌健康保険あるいは共済関係の保険、船員、日雇、国民健康保険、生活の医療扶助、そういうふうな保険制度や医療扶助等で払う総医療費というものの増大が、国民所得の増大よりも上回っておるのです。なぜかというと、これは薬の使用量が非常にふえているのです。医薬品のメーカーの話をしましたが、医薬品メーカーはそのベストテンである、金持ちの大将だ。財政は赤字ですよ。そこから政治献金も出ておるのですよ。そうでしょう。だから、そういう総医療費の中で薬剤費の占める割合が多いのはなぜかというと、医師や薬剤師やあるいは歯科医師などの技術が軽視をされていることが一つです。薬を売れば売るほどもうかるような、そういう診療報酬体系や医薬の制度に、物と技術がかみ合っている制度になっていることが一つなんです。それから高度成長の中で老人病その他、寿命が延びて、たくさん病人が出ておる。職場や地域等において新しい、健康を害するそういう体制が一つでしょう。  それにいたしましても、技術を尊重し、売薬医療を克服するような制度を基本としながら、医療の需要面、皆保険の面だけでなしに、供給面についてやはり手をつけていかなければいけないのですよ。厚生大臣は一年か二年ごとにかわるのですから、あなたの責任なんです。私が言うように、あなたの責任なんです。あなたが指導権をもって、責任をもってやらなければいかぬわけですよ、党内をまとめて。そういう原則の上に立って抜本改正を一つずつ断行するかどうかなんですよ。これはだれも言えない、いまのことについては。やるかやらないかであります。大体抜本改正をいつやるのか、どういう決意でやるのか、こういう点を総理は明快に答弁してもらいたい。
  318. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君の持論である、ことにいまの医療制度、薬が多過ぎるじゃないか、これにもう何度も聞かされたことでございます。また私自身も、現実にお医者さんにかかってみまして、どうもこれだけ薬を使わなくてもいいじゃないか、かようにも思うようなことでございます。もっと端的に申すと、非常にきき目のある薬がもうできてもよさそうだ。あれも必要、これも必要、まあ予防薬だとか、あるいは滋養剤だとか、いろいろなものがございますが、たいへん便利な世の中にはなったが、そういうもの全部を使わなければならないものかどうなのか、こういうところは、社会保障としても、医療制度といたしましても、そういうものが全部の対象にならなければならないのかどうか、こういうものを基本的に考えざるを得ないのじゃないかと思っております。これはいま、医療審議会あるいはその他の公的の機関でいろいろ審議いたしております。しかし、その構成等につきましても、ただいまなかなか困難な問題があります。それぞれの利害関係者がそれぞれ出てきている。なかなか一致しにくいようなものもあります。こういうところに問題の前進、解決の困難さがあるんじゃないかと思う。この辺は大原君もよく御承知のことだと思います。私ども、もっと近代的な医療制度、そういうものをぜひとも日本には実現したい、かように思ってただいま努力しております。  聞きたいのはそんなことじゃない、いついつやるんだ、こういうことだろうと思いますが、ただいま申し上げるように非常に困難さがございますので、私自身がただいまいついつやる、こういうことはなかなかここでお答えすることは困難でございます。しかし、その問題の所在、これを全然知らないわけではないし、また、これをあけて通るわけにも、これを見過ごして通すわけにもいかないというのがいまの現状ではないかと思います。  私は、各界の皆さん方のお知恵も拝借いたしまして、そうして近代的な医療制度をここに打ち立てるのが政府の責任でもあるだろう。また、関係委員におかれましても、やはり国会の場等も通じまして、十分ひとつ政府を御鞭撻願いたい、かようにお願いいたしておきます。
  319. 大原亨

    ○大原委員 厚生大臣、最後ですからひとつあなたに花を持たせるから答弁してください。いつを目安に抜本改正をやるのですか。
  320. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は、ほんとうに実は勉強して取り組んでおりますが、この問題には三つの面があると思います。  一つは、いわゆるいま七つも八つもあるような健康保険のいろいろな態様、グループというものを合理的に再編成する。御承知のように、いま私どもが試案として考えて社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会等に御勉強願っている案は、おおむね、老人保険を含めまして三つのグループというようなことで研究をいたしておりますが、それが一つと、もう一つは、いまも御指摘がありましたように、これは社会保険診療報酬の改正というか、合理化の問題、それからもう一つは、そのほかの医療制度全般にわたる問題、この三つの面において私は根本的な検討をいたしたいと思います。  改定の時期につきましては、抜本改正は一気にできませんので、できるものから御答申をいただいて、そして、私は、大体来年の八月ぐらいまでにはやり得るベースになるような答申を関係審議会からいただいて出発するつもりでおります。
  321. 大原亨

    ○大原委員 最後に委員長、私、委員長の見解を聞くのを落としておりましたが、児童手当について総括質問が終わるまでに納得できるような政府の御答弁をいただきたい。これは理事会においてしかるべく政府と連絡をとって処置してもらいたい、こういうことを委員長に最後に言っておきます。
  322. 中野四郎

    中野委員長 これは大原君、どうなんでしょう。内閣の責任者である総理大臣が意見の開陳をしておる。さらにまた内閣の統一した意見を発表しろと言われても、すでに総理大臣がその内閣を代表しての意見を統一して発表しておるのですから、これ以上これを求めるということは無理じゃないんでしょうか。
  323. 大原亨

    ○大原委員 わかった。そこでこれは一わかったというのは了承したということではありませんよ。了承したということではないが、またあらためてこれは論議をする機会があるだろう、これは必ず持つ、そういうことを前提での話です。これは全然私は納得しておりませんよ。そんなことは全然納得できませんよ。  そういうことであります。まあしかし、言うなれば、いまのお話を聞いておっても、どうもやはり佐藤四選はおぼつかないのではないか。だんだん、だんだんたよりなくなった。こういう私の感想だけを最後に申し上げておきまして、私の質問を終わります。
  324. 中野四郎

    中野委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  次に、松尾正吉君。
  325. 松尾正吉

    松尾(正)委員 私は、内政にしぼりまして、ただいまから御質問したいと思います。  佐藤総理大臣は、六〇年代は激動の年であったが、七〇年代は堅実な経済成長を続けながら、しかも物価は安定をさせる、大幅な減税はやる、人間尊重を基調として内政を充実する、まことにけっこうずくめなお話であります。私どもは、ぜひこのように実現されることを心から願っておるわけでありますけれども、しかし、今年度の新しい予算を見てみましたときに、国民は、この佐藤総理の看板どおりにいくであろうか、こういうことを心配している面が相当ございます。そこで、たくさんありますけれども、私は、ただいまから税制、中小企業、それから繊維問題、地方財政、こういう順を追いまして、逐次質問してまいりたいと思います。  まず私は、内政の課題の中で最も国民の関心の深い問題、すなわち税制についてお伺いしたいと思います。  私は、過日の大蔵委員会で、大蔵大臣に対しまして、四十五年度改正の問題点を述べまして、回答をいただきました。ところが、時間の規制等もありまして、全部満足することもありませんので、これに対しまして、若干掘り下げて質問をしてまいりたい、こういうふうに思います。  この大蔵委員会におきましての大蔵大臣の答弁でありますが、今回の改正において高度な所得減税をいたしたい、こういうことを強調されておりました。しかし私は、自然増収が一兆三千億をこえている、こういう状態から見まして、今年度の減税が大蔵大臣の言うようにはたして高度の所得減税であったかどうか、むしろこれは取り過ぎの調整にすぎないのではないか、こういうことも申し上げました。しかもこの百万円という課税最低限の目標は、これは二年前の目標でございます。その間に物価が一一・一%上昇しておる。こういうことを考えると、もっとこの課税最低限は引き上げられるのではないか、こういうことが明瞭になってくるわけです。そこで、課税最低限を引き上げる、当然もっと引き上げていいはずだ、こういうふうに私は考えますが、まず総理大臣にお伺いしたいと思います。
  326. 福田一

    福田国務大臣 私から先にお答え申し上げますが、景気の情勢から見ますと、昭和四十五年度は増税を実はしたい年なんです。つまり、購買力を抑制するというか、そういう考え方をとりたいわけなんで、そういう考え方から法人税では増税をいたした。しかし、国会での経緯もあり、またサラリーマンを中心とする減税の要請もある、こういうことから思い切って所得税の減税をする、そういうことにしたわけですが、それも、まあ二年前といえば二年前ですが、二年前、長期答申、こういう名前をつけての答申です。それを第二年目の昭和四十五年度において完全実施をする、こういうことですから、これは私どもとしては相当高く評価していただきたい、さようにさえ思っておる次第でございます。
  327. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大蔵大臣から詳細にただいま御説明いたしましたので、私から特に申し上げることはございませんが、私は税の基本の考え方について一、二申し上げたい。  申すまでもなく、税は公平でなければならない。これがまず第一の原則だろうと思います。そういう意味で、あらゆる点で公平であるようにという、これに非常な努力を払っておる。もう一つその次は、税に対しての国民の負担感、それをできるだけ軽くするようにする。負担能力の範囲内にとどまることはもちろんですが、しかし同時に、負担感が非常に重く、重圧が加わるようでは困る、かように実は思っております。しかし、ただいま申し上げるように、景気の面から見まして、むしろことし、四十五年などは増税をすべき年だ、こういうことが言われた。減税はとんでもないことだ、かようにも言われます。しかし、ただいまも説明がありましたように、公約事項、これだけは厳正に忠実にやっていこう、そして増税は法人税等でまかなっていこう、こういうことでございます。  で、どうも自然増収から見て減税が少ないじゃないか、こういう御批判もございますが、これはもう経済全般を見てのバランスのとれた減税、しかもよくやったと実はおほめをいただきたいような気もするのでございます。どうぞよろしく御理解いただきたい。
  328. 松尾正吉

    松尾(正)委員 ただいま総理並びに大蔵大臣からお答えいただいたのですが、特に総理大臣から税は公平でなければいけない、こういう話がありました。いま確かに数字の上では大幅な減税が行なわれております。けれども、ここで国民がほんとうに大幅な減税をやってよかったといって喜んでいるかといいますと、いま総理からお話のありました公平感、ここに私は問題があると思うのです。確かに大幅減税が行なわれて、それでは給料をもらってきて、この給料からああこれだけ引かれてよかったというものが各階層全部にあらわれておれば、これは確かに減税をやってもらった、こういう感じを抱くわけですけれども、しかし、特に低所得層に対しては手厚くやった、特に今度は中堅を考えた、こういうお話でありますが、その数字を、まあ時間の関係で、詳しくはむしろ大蔵大臣のほうが承知しておりますので申し上げません。しかし、国民の間には減税、減税といっているけれども、ちっとも安くなっていない、これが真実の声であります。  そういうわけで、今回の政府の税に対する考え方をむしろほめてもらいたいようだ、こういうふうに総理はおっしゃっておりますけれども、しかし、こういう税の負担感並びに公平という立場からいいまして、現在政府では減税したけれども、国民はまだ重圧を感じているという場合に、これで満足した、こういうふうにはやはり総理もお考えになれないと思います。したがって、今後もこういう国民の税負担、なるほどいまの政治はいいといわれるまで、この税に対しては減税を考えていくか。いま総理のお話を聞きまして、むしろ増税していきたいくらいであった、こういうことばを聞きますと、来年度あたりはそれでは増税かということが案じられますので、今後の税に対する考え方につきましてお願いしたいと思います。
  329. 福田一

    福田国務大臣 国の担当する仕事はこれからだんだん、だんだんと多くなっていくわけです。社会保障を充実せいという御議論も多いわけです。あるいは社会資本の充実、これの要請も強い。そういうことを考えますと、これは国民にも御負担を願わなければならぬわけでございますが、しかし、その負担のやり方に問題があるだろう、私はそういうふうに考えておるわけであります。  戦前は、直接税、間接税の比率が、直接税が三五%、間接税が六五%、そういう比率であったわけです。戦前の基準年次におきましてそうだった。ところが、戦後、直接税中心になりまして、しかもだんだん、だんだん直接税が強くなってまいりまして、昭和四十五年の見通しといたしましては全く逆で、今度は間接税のほうが三五で、直接税のほうが六五だ。国民の負担感という点から見ますと、どうも直接税が少し強過ぎるのじゃないか、そういうふうに考えておるのです。私は、これからも負担感を薄めるという意味におきまして、直接税の減税には努力したいと思う。しかし、国の財政需要ということを考えますと、その直接税の減税をしつばなしでやりますと、これは財政需要に応ずることができない事態が来るのじゃないか。そういう際には間接税を何か適当なものを考えなければならぬ、そういうふうに考えるのです。  今後は、とにかく長期答申を完全実施したこの時点におきましては、これからの課題としてそれら直接税、間接税というものをひっくるめまして、直接国民の負担感の軽減をはかるという方向に努力してみたい、かように考えております。
  330. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いまの大蔵大臣のお答えでありますが、間接税の問題が出ました。しかし、これはもう少し譲るとしまして、確かに数字の上では先ほど言っておりますように減税でありますが、この所得税の重税感あるいは実質的に重税だという、こういう考え方から見ますと、一人当たりの税負担は約十万円であります。これは乳飲み子からお年寄りまで含めて十万円、こういうことを考えましたときに、ただいま将来ともこの所得税の減税は考えていきたいということでありますが、さしあたりいま政府の言っております百万円の減税、この標準でありますけれども、これは五人家族を一応標準として百万円の減税をやっている。しかし、これは標準家族という考え方に私はいま相当疑問を持っております。といいますのは、標準世帯が現在はどうかといいますと、総理も大蔵大臣も御承知でしょうけれども、家庭状況、家族、建物の構造あるいは収入、物価、こういうものを考えまして、もう五人も六人もどんどん産めるという状態ではないわけです。平均は総理大臣御存じですか。一家庭の標準人数、それをひとつ教えていただきたいと思います。
  331. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 四人前後じゃないかと思っております。
  332. 松尾正吉

    松尾(正)委員 現在標準は四人。ところが、二十年前にきめましたこの基準で相変わらず百万円、こういう額を政府は強調されておりますけれども、結局これは実質的な標準世帯である四人家族を課税最低限と見たときには八十六万円です。  そこで伺いたいことは、五人世帯を標準としているこの世帯構成、これはもうすぐ四人以下になると思います。したがって、当然改めていかなければならない。そろそろ改めていかなければならない時期が来たんじゃないか、こういうことを考えるわけですが、この点どうでしょうか、大蔵大臣。
  333. 福田一

    福田国務大臣 松尾さんのお話のような次第でありますれば、そろそろどころじゃないのです。もうすでに改めておかなければならぬわけなんです。ところが、お話しのように、もう二十年前から夫婦子三人、こういう家庭をとらえまして、いろんな調査をした。それがずっと長い間の比較対照の便宜上、今日におきましても夫婦子三人というのをとることが便宜であるというので、かりにそういうことをいっておるのです。ですから、私どもは決して、夫婦子三人の家庭をとらえまして、標準家庭とはいっていないです。夫婦子三人の家庭につきましていいますればと、こういうふうに常に正確に申し上げておるわけでありますが、その四人世帯というのがもうだんだんと定着するというような今日、比較対照上の便益ばかりにとらわれておるということがいいのかどうか、なおひとつ考えてみたい、かように存じます。
  334. 松尾正吉

    松尾(正)委員 これは十分考えていただきたいし、実質的に百万円減税ということがもう相場になっております。したがって、この八十六万円、いま大蔵大臣のお説ですと、夫婦子三人でいうならば、その一人の場合というのをむしろ打ち出さなければならない、こういうふうに私は思うわけです。結局こういう単独世帯は出さない。それから、いままでの例を見ましても、税制の場合には必ず平年度をあげておりますけれども、いままで毎年毎年税が改正されておりますから、平年度に移ったことはここ当分ないわけです。したがって、来年度の場合にも、四十五年度の場合では幾ら、こういう発表がほんとうじゃないか。いずれにしても、そういうふうに、世帯の面を標準として国民が認識している。百万円減税をやった、こういつておりますが、この世帯の改正、並びに夫婦子二人ですと八十六万円と相当低くなったという感じを受けるわけですから、政府が標準世帯で百万円減税をやったということは、おそらく大幅な減税をやるにはという意図が含まれている、こういうことも考えられますが、もっと余地があるんではないかということは国民が考えると思います。  そこで、私どもはすでにこの所得税については課税最低限を、いままでの標準であげておりますが、夫婦子三人で百三十万円までは引き上げるべきだ、こういうことを資料を添えてもう提出してもおりますし、今後こういう方向に向かって努力されるお考えがあるかどうか。先ほど所得税減税についても考慮していくというお話がありましたけれども、この百三十万円という見通しについて、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  335. 福田一

    福田国務大臣 ことし、昭和四十五年度に税制調査会の長期答申を完全実施する、こういう段階におきまして、まだ四十六年度をどうするかというごとまで考える余裕はないんです。しかし、方向といたしましては、先ほど申し上げましたように、どうも直接税というものは当りが強いというふうに考えます。しかし、一方において、国費は要るんでありますから、したがって、所得税の大幅減税をするというためには、どうしても他に財源を求めなければならぬ、こういう事態になるだろうと思うのです。これからは直接税、間接税、そういうものを総合して、ひとつ税制というものを考え直してみたい、かように考えております。
  336. 松尾正吉

    松尾(正)委員 大蔵大臣はこの百三十万円の見通しについては触れられませんでしたけれども、今後両方あわせて前向きでというふうに了解してよろしゅうございますか。——これはぜひひとつ積極的に進めていただきたい、こういうふうに思います。  それからさらに、先ほど出ました間接税の問題について伺いたいと思いますが、大蔵大臣は今後の税制改正には間接税の増徴の方向に向いて進みたい、こういうことを先般の委員会でも伺いましたし、ただいまも伺いましたが、間接税というものはいまいろいろ問題点がございますので、総理大臣ははたしてこの間接税の方向についてどういうふうにお考えか、この点をお伺いしたいと思います。
  337. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもしろうとの総理大臣を特に名ざしでお呼びですが、私は、その国々によりまして税のあり方はそれぞれ違っておるだろう、かように思います。直接税を中心にするところと、さらに間接税を中心にして直接税が補完的役割りをしているところと、いろいろあると思います。まあ、それぞれの、また時期的にもそういうような直接税がいいかあるいは間接税がいいか、こういうことでその税をきめておる。あるいはまた、取りやすいのは一体どちらだというような見方もあります。したがって、いずれがどうとかいうことは私は申しません。先ほどの、日本の場合は直接税が中心で、間接税を一時始めましたが、たいへん国民になじまない税としてこれが排撃を受けた、こういう経験もございます。したがって、それぞれの国に根を張っておる税制があるのでありますから、それにたよるのがよろしいのじゃないか、かように思っております。  またもう一つ、税制自身で申すなら、これもしろうとの言うことですが、私は、どうも中央、地方を通じて一つで取るほうがまだいいのじゃないだろうか、こういまもなお実は考えております。昔の付加税的なもののほうがわりにわかりいいのじゃないか。ただいまのように税関係の公務員を多数に要するような制度よりも、一カ所でそういうものが裁定されて、そして付加税的に処置されるほうが望ましいのじゃないだろうか。しかし、ただいま地方団体もそれぞれ自治体でございますから、なかなか一様には申し上げかねますが、そういうように議論のあるものじゃないだろうか、かように思います。  付加税の問題、さらにいまの間接税の問題等等、議論すればなかなかこれは際限のないものじゃないか、かように思っております。
  338. 松尾正吉

    松尾(正)委員 丁寧な答弁をいただきましたが、付加税という方向もというお話がございました。  これは大蔵大臣にお伺いしたいのですが、間接税の増徴の方向をといって、まだ具体的にはきまっておらないでしょうけれども、いずれにしても間接税は場合によって非常に住民に負担になる、特に不公平の原因になる、こういう場合があります。したがって、一応現在大蔵大臣が考えております間接税としてはどういう方向、すなわち個別消費税を強化していくか、あるいは付加価値税の導入をはかっていくか、あるいはまた一般売り上げ税、いろいろありますけれども、どういう方向でこれをやっていったほうがいいかという構想がありましたら、聞かしていただきたいと思います。
  339. 福田一

    福田国務大臣 いま具体的な構想は、率直に申し上げまして、持っておりません。また、私が持つことは適当でない、こういうふうに考えております。つまり政府には税制調査会というものがありまして、この税制調査会に御検討をお願いをするというたてまえになっておりますので、そういう私が先ほど申し上げましたような考え方を、税制調査会にどういうふうにしたら実現できるんでしょうかというお願いをする、こういうことに相なろうかと、かように考えておるのでありますが、基本的な考え方としては、私が先ほど申し述べたとおりであります。
  340. 松尾正吉

    松尾(正)委員 私は、やはり税負担感というよりも、実質的な税負担の上からいえば、どうしても直接税のほうがほんとうだ、こういうふうに考えるわけです。まあしかし、将来の方向としていろいろ問題もあるわけですから、これは十分、いまお話のありましたように、税制調査会等の意見、こういうものをくんで進めていただきたいと思うのです。ただ、ここで所得税は、大幅に政府では減税したけれども、国民にやはり税負担が重い、こういう感じを与えている、これはやはり政府の責任じゃないか、こう思います。いずれにしても、納税人口が戦前のもう二十倍になっている、こういう二十倍にふえた大衆からの徴税というものは、どうしても大衆課税として考えなければいけない、こういうふうに考えるわけです。  そこでもう一点お伺いしたいわけですが、最近税の説明等に高福祉ということばが使われるようになりました。高福祉、高負担。この高福祉、高負担という問題。福祉を進めていくために、したがって増税をはかっていかなければならない、こういう問題でありますが、しかし、不公平が解消される、こういうことを前提としたときに、ほんとうの意味で現在高福祉をするためには増税していかなければならないという、こういう考え方、これはちょっと行き過ぎであるんじゃないか。ほんとうの意味のわが国の状態がどうかというと、それはひどいものだ、こういうことは御承知であると思います。したがって、この福祉国家を建設する、ほんとうの福祉国家が実現した、こういう段階になっての間接税、これは私は考える余地があると思います。しかし、いま私どもは、現在のわが国の状態では、まだ間接税という方向へ行くことよりも、むしろ直接税に進めていくべきである、こういう意見を申し上げておきたいと思います。  次に、税制調査会に関してお伺いしたいのですが、いま税制調査会の意見を尊重していきたい、  こういうお話がございましたが、四十五年度の税制改正で、所得税減税に関してはほぼ四十三年の長期答申どおりに実施されたわけです。しかし、今後の所得税の減税はどう進めていくべきか。またさきに大蔵大臣から答弁のありました間接税の問題ですが、この増徴の方向を具体的にもう検討する段階が来た、こういうお話でありますけれども、そうなればなるほど私は税制調査会というものの役割りが非常に重要になってくる、こう考えます。  そこで、税制調査会についてお伺いしたいのですけれども、まず端的に言いまして、今日の税制調査会のあり方は現在のままでよろしいかどうか。これでよかったんだという説、それから、これではよくない、まるで自民党、それから財界の圧力に負けてしまったんだ、こういう二つの意見が国民の間にございます。これについて総理から、調査会のあり方はというお考えを伺いたいと思います。
  341. 福田一

    福田国務大臣 税制調査会は、今日まことにりっぱな斯界の権威者をもって構成されておる、かように考えます。また、ずいぶん御勉強もくださいまするし、また御勉強の結果、われわれに長期答申、またさらに各年度の答申をしてくださいますが、まことに適切なる答申をしていただいておる、かように考えておりますが、お話しのように、非常に重大な調査会でございますから、また松尾さんの権威ある御意見等もお伺いいたしまして、これがその使命を達成されるという方向につきましては最善の努力をいたしたい、さように考えます。
  342. 松尾正吉

    松尾(正)委員 それでは重ねてここでお伺いしたいのですが、四十五年度の改正に至る経過について、答申が出ましたその答申の経過についてお伺いしたい。
  343. 福田一

    福田国務大臣 主税局長から答弁させます。
  344. 細見卓

    ○細見政府委員 お答え申し上げます。  税制調査会におきましては、具体的な税制を検討願うために、一部、二部、三部という形で、主として所得税の一般部会と、それから利子・配当を扱います企業部会と、それから地方税の問題を取り扱っていたただきます地方部会と、この三つの部会に分けまして、それぞれ慎重御検討を願いまして、そこでまとまりました案なり方向なりを一応総会で確認願い、さらに、主として中立委員でお願いしております起草小委員会というようなものを設けまして、そこで総会の意見あるいは各部会の意見等を総合しんしゃくして、答申案をまとめていただき、それを総会で御承認願って、今回の答申をいただいたわけでございます。
  345. 松尾正吉

    松尾(正)委員 そこまでの経過ですが、それ以降の経過が伺いたいのです。
  346. 細見卓

    ○細見政府委員 そのいただきました答申は、最後に特別措置法が残っておりますが、現在大部分提出を終わりました法案になったわけでございます。
  347. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いま日にちの回答はありませんでしたけれども、確かに答申は二十二日に出されております。ところが、私は、この税制調査会について個々の人身攻撃その他でなく、調査会全体の問題としていま伺っておるわけですが、この冒頭に申し上げましたように、今度の税制調査会で答申が二十二日だ。しかし、その二日前、二十日に自民党の税調でもって、この法人税の付加税の問題、さらに利子配当、一番国民の関心を持っている問題が決議されております。この決議が、実は自民党の税調のほうで、財界その他の圧力できめられた内容、こういうふうにいわれておりますけれども、それがそっくりこの調査会の答申の中に取り入れられておる。これで、税制調査会に対する疑問が、あるいは国民の間から不信が起きておる、こういうことも御承知と思います。このように党の税調の意向がそのまま反映されるような、しかも、それが国民の納得できないような内容、これでは税制調査会というものの主体性、客観性、こういうものが失われやせぬか、こう思うわけです。  極端な話でおそれ入りますが、間接税の増徴、さらに一般売り上げ税——先ほど間接税という話が出ましたので、かりに税制調査会において間接税をこういう方向でというようなものが答申されたならば、その調査会の答申というものが隠れみのになって、全く国民の願うところとは逆な方向に行く、こういうおそれがある、こう感ずるわけですが、そういう意味で、この調査会のあり方というものについては十分考えなければならない、こういうふうに思うわけです。したがって、個人個人云々でなく、税制調査会のあり方について、もう一度大蔵大臣から……。
  348. 福田一

    福田国務大臣 税制調査会は、私は非常な権威のある活動をされておるということを確信をいたしております。また、自由民主党の圧力によってこれが結論を左右されたというような事実、傾向、そういうものは私には認められませんが、この税調の構成メンバーは、松尾さんも御承知のとおり、各界の人が出ておるのです。   〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 そういうことで、とにかく国民の声を広くこの調査会の場に反映するというような仕組みになっておる。その皆さんが、長期答申はことしは完全実施せよ、こういう結論を出してくださった、また一方においては、法人税の引き上げをしたらどうだろうか、こういう結論を出してくださった、また配当・利子所得の問題につきましても、これは漸進的にやるべきである、貯蓄という問題につきましては、深甚な配慮をしなければならぬじゃないかという結論を出してくださった。私は、これらの答申というものは、総合的に見まして、まことに今日この時点においては適切な答申であった、こういうふうに考えておるわけであります。しかし、またいろいろ御意見等もありましょう。伺いまして、できる限りこの重大な調査会の任務が貫徹されるように、私どもも努力をしなければならぬ、かように考えております。
  349. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いまの大蔵大臣のお答えと国民の考えているところの相違点がここなのです。政府ではまことに適切だ、こう考えておることは、実は国民の側からすれば、これは財界の圧力にやられちゃった、税に対する不信感の原因にもつながる、こういう問題があるわけです。  そこで、もう一つ伺いたいことは、構成は大体私も承知しましたけれども、採決から比率の問題、この点に多少考えなければならない点があろう。そこで、構成、それから選任方法、採決の方法、これについてお答えをいただきたいと思います。
  350. 細見卓

    ○細見政府委員 お答え申し上げます。  税制調査会の委員になっていただいております方は、基本的には、税制に関する学識経験者で、その道の識者ということで御参加願っておるわけでありまして、確かにふだん従事なさっておる仕事なり職業等はいろいろございますが、そういう業界なりあるいは職業の代表者ということで委員になっていただいておるわけではございませんので、私どものほうで、事務当局で各方面の意見を聞きまして、これは適切な方だというような方々を総理にお願いして御任命を願っておるというわけでございます。  構成でございますが、いわゆる俗に中立委員といわれます学者でありますとか、あるいは評論家でありますとかいうような方々が、大体十四人ぐらいになっております。全体は御承知の三十名でありますが、そのうちの十四名で、その残りにつきましては、各方面の事情に詳しい方という意味で、いろいろな各界の事情に明るい方に御参加願っておる、その方が十六名になる、そういうわけでございます。
  351. 松尾正吉

    松尾(正)委員 もう一点伺いたいのは、論議が二分した場合の結論は、どういうふうに出されるのか。
  352. 細見卓

    ○細見政府委員 先ほども申し上げましたように、基本的には、学識経験者をもって構成いたしておるわけでありまして、多数決とかあるいは決をとるとかいうような運営でございませんので、たとえばいまお話がございました法人税の問題にいたしましても、この際引き上げるべきだという方、あるいはいま少し景気の状況等を見れば問題があるのではないかというような方、それぞれの方が論議を尽くされて、いわば全体の意見としてこの辺がみんなの一致した見方であるというような形で意見が出るわけでありまして、いわゆる多数決とかあるいは会長が採決するとか、そういうような事態は、私の承知いたしております限り、税制調査会ではかってございませんでした。
  353. 松尾正吉

    松尾(正)委員 非常に話し合った上で行なわれている、こういうふうに私も聞いておりますし、そういう説明でございました。しかし、この構成その他を見ましたときに、いま非常に納税比率の高いサラリーマンクラスの代表、こういう者がもう少し含まれて、こういう人たちの意見が十分取り入れられていいのではないか、こういう感じがするわけです。したがって、現在これは人員等法律で定められておりますが、この納税比率の高い、しかも低所得者の代表等を参加さして、そして最も公平な審議を今後進めていくべきである、こういう立場から、この構成についてはさらにそういう低所得者層の代表等を含めたほうがいい、七〇年代の税制を検討するにあたってはそうすべきであるかどうか、大臣にひとつお考えを伺いたいと思います。
  354. 福田一

    福田国務大臣 すでに今日におきましても、あるいは中小企業団体の利益を代表する方とか、あるいは労働組合の利益を代表する方とか、御参加願っております。おりますが、お話しのような社会環境の変化等もありますので、御指摘の点はなお前向きで検討してみたい、かように存じます。
  355. 松尾正吉

    松尾(正)委員 これはひとつぜひ真剣に取り組んでいただきたい問題だと思います。  そこでもう一点、これは私の提案でございます。  今後どんどん経済もふくらんでまいります。税制もいよいよむずかしくなってくる。こういう段階で、先ほど総理、大蔵大臣ともに言われました、税の公平を期していくために、外部からの意見を聴取する、こういう機関を設けてはどうか。三十九年の長期答申を作成するにあたっては基礎問題研究会、こういうものが設けられて、この意見が相当調査会に反映した、こういうことを聞いておりますけれども、今後の七〇年代のこの複雑な税制を検討するにあたっては、いまのこれよりももう一歩基礎的な研究問題調査会、研究会等を設けてはどうか、こういうふうに考えますが、お考えはいかがですか。
  356. 福田一

    福田国務大臣 まさにそういう必要ですね、その要請にこたえるためには、この調査会、いまの税制調査会が適切な場ではないか、そういうふうに考えます。  ただ、調査会は、政策的な配慮、政策を立案する、こういうことが主たる任務になっておるわけであります。松尾さんのお話は、もっと掘り下げた税の理論とか、そういうもののようなお話でございますが、そういう調査会の場におきまして、そういう部会を設けるとか、あるいは専門家をお願いするとか、そういうことで、この場を通じて実現できるんじゃあるまいか。それから、常時大蔵省主税局におきましては、外国の立法について研究をするとか、あるいは過去のいろいろな諸問題についてこれを追跡するとか、そういう努力はいたしておることをつけ加えさせていただきます。
  357. 松尾正吉

    松尾(正)委員 これは国民のための重大な税の問題でありますので、ぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。  次に、法人税に移りますが、政府は、ことしを内政の年だ、こういう名のもとにスタートしております。そして、具体策としてまず社会資本の充実、これを徹底してやっていくのだ、こういうお話でございますが、そのためには、法人税を引き上げて、社会資本を充実しなければならない、その金を回さなければならない、こういうことで、政府もいよいよ国民生活に本格的に取り組んだな、こういうふうに私ども大きく期待をかけたわけであります。ところが、税調の中でも、ちょっと触れましたように、当初の二%の引き上げ、これが最終的には一・七五%にとどまった、こういう事実を見ますと、やはり社会資本を充実していく、こういうふうにいってはおりますけれども、ほんとうに真剣に取り組んでいるのかということに疑問が持たれるわけです。やはり私は、毎年三〇%以上の伸びで財政措置をしなければ、民間投資というものとの差が開くだけですから、したがって、この一・七五%というのは非常に不十分な引き上げではなかったか、こういうふうに考えますが、この間の事情を大蔵大臣からお願いします。
  358. 福田一

    福田国務大臣 法人税の増税問題は、率直に申し上げまして、これは選挙後に構想されたものでございます。その前にも引き上げたらどうかというような議論をする人もありましたが、実際、政府考え方方向として打ち出されたのは、総選挙が済んだ後であります。  そればなぜかと申しますと、どうも最近の景気情勢、これを見ておりますと、過熱の傾向がある。これは何とか押えなければならぬ。四十五年度の予算も差し迫っておる。予算におきましては、公債の発行額を減らすというようなことをしなければならぬ。と同時に、それだけでは不十分だ、この際法人税の引き上げをし、政府の景気政策に対する姿勢を示すということが必要である、さように考えまして、法人税増税構想を進めることにいたしたわけであります。その過程において、この三五%の基本税率を三七と、二ポイント上げたらどうかというような声もありましたのでありますが、税制調査会は、いろいろ御検討の結果、これに伴う地方税の増徴、これと合わせて二%という程度が適当じゃあるまいかという結論に到達したようであります。それを受けて一・七五%、地方税と合わせまして二%という御答申をいただきまして、これを実行する、こういうことにいたしたわけでございまして、この間別に、財界がどうのこうのというようなおことばではありまするけれども、これに従ったという次第でもないのであります。
  359. 松尾正吉

    松尾(正)委員 もう一点伺いますが、この一・七五%、いわゆる六百億円程度の法人税の引き上げで、政府がいっておる警戒中立型、景気を抑制するんだといっておりますが、これがはたして見通じはどうでしょうか。
  360. 福田一

    福田国務大臣 景気調整は財政ばかりじゃないんです。金融と財政が車の両輪のような形で調整の主軸をなすわけでございますが、御承知のように、昨年の九月から金融調整政策を進めておる。今日ではかなりこの調整工作が進展をいたしまして、金詰まりを緩和せよというような声が各所で聞かれるような事態になってきておるんです。その際の法人税の増徴でありますので、そういうことを考えますると、かなりこれは景気調整上響きを持つであろう。また同時に、政府が景気調整に本格的に取り組んでおるという姿勢を示すという意味においても意義を持つであろう、かように見ておる次第でございます。
  361. 松尾正吉

    松尾(正)委員 さらに、これを私は所得税と法人税の比率で見てみたいのです。国の租税収入の中に占める法人税と所得税の比率、たとえば昭和三十七年度の国の税収額の中で法人税は三二・七%、これに対して所得税は二四・二%、ところが四十四年度には、法人税は三〇・二%に対して所得税が三〇・九%と逆転しております。結局、所得税の占める率のほうが高くなった。先ほどの所得税の問題にも関連するわけですけれども、この所得税の税率が累進構造になっております。これに対して法人税率は比例税率をとっている。その税率が四十年、四十一年ともに三%も引き下げられたわけですね。したがって、法人税額を国際比例で見ますと、その実効税率というのは非常に低い。アメリカが五六・一%、フランスが五〇%、西ドイツが四九・一%、それに対してわが国は四三・八%と、国際的に見ても低い。さらに景気の堅調がある。これらを考えますと、やはり法人税はまだまだ二、三%引き上げるのが当然じゃないか、こういうふうに考えるわけですが、大蔵大臣。
  362. 福田一

    福田国務大臣 いまわが国の法人税の負担割合は、諸外国に比べて低いんじゃないか、まだ引き上げの余地があるんじゃないかというお話でございますが、これはわが国の租税負担率自体がそもそも非常に低いのです。先進諸国におきましては、大体国民の租税負担率は三〇%から四〇%ぐらいの間になっております。わが国におきましては一八%という低位にあるわけでありまして、したがって、わが国の租税の収入で主軸をなす所得税、法人税、これもそれ自体を外国に比べますると、かなり低いものになる、こういうことになるのです。  しかし、一方法人税は、それじゃ負担力がどうかという問題になりますと、いま私どもは会社の自己資本の比率の非常に貧弱なることを憂えておるわけであります。しかも、この憂いがだんだんと深刻化してきておる。そういうことを考えますと、何とかして法人の自己資本の充実ということをつとめてやりたいというふうに考えておるわけでございますが、残念ながらそういうことがなかなかむずかしいし、逆に悪化するという状況下において、法人税の増徴をする、こういうのですから、これもかなり思い切ったというふうに考えておるのです。景気調整上やむを得ずやった、こういうふうに考えておるわけでございます。  法人税がまだ余地があるかどうかというような問題は、なお税制全体をこれから再検討しますので、その際慎重に検討してみたい、かように考えます。
  363. 松尾正吉

    松尾(正)委員 慎重にひとつ検討していただきたいと思うのです。  それから、この法人税を、せっかく引き上げをやったのですけれども、しかし二年間の臨時措置にした。なぜこういう経過をとったのかという点が一点。  それから、日本経済の成長というものは、生産力、輸出力、これは定着しておって相当持続するという面も見られます。また、この間大蔵大臣に伺いまして、アメリカの景気はどうか、こういうことに対して、よくわからないということでありましたが、アメリカでは今年後半において景気上昇の見通しを立てて、したがって、景気はそう落ち込むことは予想できない。落ち込まないという見通しが一応立つわけです。また、いまの経済力からいって、企業収益というものが上がってくる、こういうふうに見られるのですが、そのときの法人税措置、これはやはり本則税率で引き上げるのがほんとうじゃないか、こういうふうに考えます。  この経過措置をとったものと、本則税率は上げられないか、この二点、お願いします。
  364. 福田一

    福田国務大臣 法人税の税率引き上げをいたしました経過につきましては、先ほど申し上げましたとおり、自己資本率の非常に低いわが国の法人に対しまして、法人税を重課するのはいかがであろうかという基本的な考え方を持っておるわけでございますが、一面、景気調整上の配慮も必要であるということを考えながら今回の措置になった。そこで、これを本則の改正にしないで二年間の時限にした、こういうことはどうかというお話でございます。それがすなわち、ただいま申し上げましたようなこの法人税引き上げを行なうに至った経過から見まして、時限、しかも二年ぐらいの様子を見ながら、またその間には税制の総合的な検討もしてみなければならぬというようなこともにらみながらそういうふうにいたした、そういう理由でございます。
  365. 松尾正吉

    松尾(正)委員 項目がたくさんありますので、だいぶ残っちゃいそうですから、この点は打ち切って、ひとつ交際費課税、これについて伺いたいと思います。  交際費課税は四十四年度の改正で強化はされましたが、損金算入額の割合は、交際費支払いに比べてまだ低い、こういうふうに思います。四十三年度では二一・一%であったのが、四十四年度では九千億円をこえる交際費が見込まれておるわけです。このままでいきますと、課税対象にならない額が一千九百億。この九千億円というのは文教予算を軽くオーバーしている額でありますので、やはりこのような交際費課税という優遇措置がある限り、一般に国民はやはりこれは飲んでしまう、こういう気持ちが起きてくるのではないか。この税制上の不公平を解消するためにも、いま交際費課税は強化していかなければならない、こういうふうに思います。また限度超過分についても全額課税するくらいの強腰で臨むべきじゃないか、こう思いますが、これに対して……。
  366. 福田一

    福田国務大臣 交際費課税は当委員会また大蔵委員会でしょっちゅう問題になりますが、非常にむずかしい問題は、さあどこまでが交際費、いわゆる飲み食いで、会社の営業的な性格を持たないものであるかどうか、この判断が非常にむずかしいのです。そういうことではございまするけれども、当委員会等の御議論をくみまして、四十四年度におきましては課税を強化するという措置をとったわけでございますが、では、これから一体どうするか。四十四年度に交際費課税を強化したばかりなので、四十五年度にまた追っかけてということは困難かと思いますが、なお四十四年度改正の推移等を見まして検討してみたい、かような考えでございます。
  367. 松尾正吉

    松尾(正)委員 それでは税の関係は一応終わりまして、次に中小企業の関係に移りたいと思います。  中小企業がわが国の経済に占める比重のきわめて大きいということは、すでに中小企業の現状を見ましても理解できるわけですが、「中小企業のわが国経済に占める地位」という資料を見ますと、事業構成で見てみても、やはり全事業の九九・五%、全事業四百二十三万に対して中小企業は四百二十一万を占めております。さらに従業員構成を見ましても、全従業員の七九・七%、これに従業員の家族を含めますと、全人口の約半分が中小企業だ。さらに工業製品の輸出額構成を見ますと、輸出総額の四二・三%を占めておる。これだけの力を持っている中小企業が現在どういう状況にあるかといいますと、国の施策に擁護されて近代的な設備を整えた高生産性と高賃金を誇る大企業と比べて、その脆弱な体質あるいは非能率な設備、経営方法、低生産性を余儀なくされる、こういうことでその格差がだんだん大きくなってきております。福田大蔵大臣は去る十四日の財政演説の中で、均衡のとれた充実した社会を築いていく、そうして国際社会で積極的にその責任を分担する新しい日本の建設を進めるにあたっては、何よりも必要なものは経済成長を確保することである、こう申されております。その経済成長持続のかぎ、これが私は中小企業の健全な発展にあるのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、この中小企業に対しまして今年度の予算を見たときに、ほんとうに政府が本腰で取り組んでいるのだろうか、こういうことが感じられます。総理もこの中小企業に対しては、中小企業の流通部門の近代化をはじめ、積極的な生産性の向上対策を進めていく、こういうふうに言われておりますが、このことばを予算を通してみましたときに、何となく抽象的で、本腰ではないんじゃないか、こういう感じがするわけでありますけれども、総理大臣の中小企業に対するお考え、これを伺いたいと思うのです。
  368. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま産業別に経済界を見まして問題のあるのは、御指摘の中小企業また農業だ、かように私は思っております。その二つともいわゆる生産性が低い、こういうことだと思います。中小企業は、業種によりましてこれはまちまちでございますけれども、その規模が小さいというところに中小企業の特性があるのであります。したがって、ただいま言われるように、これを近代化する、いわゆる近代施設をする、あるいは協業化をはかる等によりましてこれを強化していく、かような点が問題だろうと思います。いま積面的に農業の問題と取り組んで、農業はいまの時代的な改革の脚光を浴びている。しかし、それよりも先に中小企業はすでに改善に手がかかっております。業種によってはややおくれておるものがなきにしもあらずだ。しかし、私どもこれを十分考えまして、そうして中小企業の生産性を上げるように努力していかなければならぬと思います。業種によってはやはり大企業とのつながりが非常に濃いものがありますし、また大企業と競争の立場に立つものもありますし、したがって、ただいま申すような中小企業の近代化と一口には申しますが、その業種によりまた業態によりまして、それぞれの方法で強化していかなければならぬ。まあたいへんむずかしい問題だ、かように思っております。これは専門的に、通産大臣のほうからもさらに努力する、その目標を示すことだと思いますが、総理といたしましても、ただいまの問題はこの二つ、生産性が低く、近代化がおくれておる、かように思っておりますので、追っかけるようにあらゆる面で努力するつもりでございます。
  369. 松尾正吉

    松尾(正)委員 私が本腰で取り組んでいないのではないかというのは、予算面を通しまして確かに伸びてはおりますけれども、しかし総予算の比率でみると、やはり前年度と同じ〇・六%の伸びであります。いま総理が非常にむずかしい問題だ、近代化にしろ、その他いろいろむずかしい問題があると承知されておられるのに、予算面で措置ができない、こういうところに一つ私は問題があると思うのです。一体中小企業に対して、この予算ではたして総理の言う中小企業をどんどん増進して追っかけていこう、こういう考えにこたえ得ることができるかどうか、これは先に通産大臣にお答えいただきたいと思います。
  370. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと一言補足さしてもらいます。  ただいま財政的な予算面という話がございますが、これは申すまでもなく税制の面の問題もありますし、もう一つは金融の面の問題がございます。中小企業の場合に一番効果をあげているものはその金融ではないか、かように思いますので、三つの面について通産大臣から説明する、これをお聞き取りいただきたいと思います。
  371. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お尋ねのように、中小企業というのはわが国の経済社会の一部というよりは、実はかなり大きな部分でございますから、そこでただいま総理が言われましたように、中小企業に直接向けられた一般会計ばかりでなく、財投あるいは税制、あるいはもっと申しますと、社会保障施策なんというのは全部わが国の経済社会に占める部分が大きいだけに、みんなそれに関係してまいると思います。したがって、一般会計だけの数字をとって申されることは、必ずしも私は適当でないのではないかと思っております。  そこで、昭和四十五年度の場合、御審議願っております予算あるいは財投、税制等々、私はまず金の準備、財政金融の対策としては十分だというふうに考えております。むしろ私どもが直接感じますことは、従来中小、ことに小でございますが、小企業の中には、製造業でも流通業でも、自分の経営を計数的に十分に把握できないというような方が相当おられる。それは無理もないことであります、ほとんど一人で全部をやるということで。そこで政府機関等々が金を用意いたしましても、いかにも金がほしいんですが、金融機関のところへ自分の企業を説明できない、それだけの計数の整理ができていない、そういう場合が非常に多かったように私は思うのでございます。でありますから、やはり企業診断でありますとか、記帳についての講習でありますとか、だんだんこのごろは若い人がそういうことに関心を持ってくれるようになりましたから、そういう道が開けますと、政府の用意しております施策を十分に使ってもらえるような、そういうことになってくるんではないか。私は、後段に申し上げましたことが、やはり一つ大切なことではないかというふうに考えております。
  372. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いま通産大臣はむしろ予算面では十分じゃないか、こういうお話を伺ったんですけれども、これは問題だと思います。むしろ一つ例を引いてみますと、倒産の調べがあります。これは東京興信所の調査ですが、四十三年には一万七百七十六件の倒産、四十四年は若干減っておりますが、ことしは一月に入ってすでに五百八十五件の倒産がある。しかもいまのお話を聞いていると、金融を準備する、いろいろ政府でお金を準備しても相手が借りないのだというような感じを受けるお答えですけれども、こういう実態をはたして承知しているのであろうか、こういう疑問さえ私は抱かざるを得ない。この調査の今後の見通しを見ますと、こういうふうになっています。市中銀行における融資態度は非常にきびしくなってきた、選別融資の強化で金詰まりがはっきりしてきた。特にその上に、納税や決済資金が集中する三月末から四月にかけて、状況はきわめて悪化してき、中堅中小企業の倒産がピークに達する可能性が強い。さらにこれに加えて労働力不足に起因するいわゆる労務倒産がふえるであろう。すなわち資金面、労働力、両面のきびしさから倒産がふえていくであろう、こういうきびしい状態がすでにあらわれておるわけです。これに対して、先ほど、この予算で総理の言う企業の近代化あるいは社会資本の充実というものにこたえ得られるかどうか、こういう問いに対して、この予算で十分だというのはちょっと納得できませんので、もう一度お答えをいただきたいと思います。
  373. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 金は用意しているが借りに来ないのだと申し上げたのではなくて、借りたいのですけれども、計数的に自分の企業の把握ができないために、なかなか金融機関との話がつながらない。そこでその間の指導が必要だ、それをやっておりますということを申し上げたのでございます。  そこで、今年度の第一・四半期の場合でございますけれども、確かに全体の傾向としては設備投資の勢いはかなり強い、しかも金は引き締まりぎみでございますから、従来の経験から申しますと、中小企業にしわが寄りやすい段階でございます。そこで片方で中小関係三金融機関の第一・四半期の融資は、御承知のように相当大幅なものを用意をしておりますのと、他方で今回は設備投資について金融の裏づけをもう少ししっかり通産省としても確かめてみることが必要ではないか。結局自己資金とか銀行借り入れとかいっておりますものが、最後には、それができませんと下のほうへしわ寄せになるわけでございますから、今年度はそういうことがなるべく起こらないように、その面からも私、実は注意をするようにということを申しておるわけでございます。おっしゃいますように、三月がちょうど手形の決済期になりますし、納税の時期でもございます。十分それだけの用意はいたしておるつもりでございます。
  374. 松尾正吉

    松尾(正)委員 さらにこれに加えて金融面その他こまかくお伺いする予定だったのですけれども、時間がありませんので、この中小企業関係の締めくくりとして、その基本姿勢、先ほど大まかに伺いましたが、伺いたいと思います。  これについては、意見になると思いますけれども、現在この中小企業に対してとってきたあり方というのが、大企業、中小企業、この一本化に一つ問題がありはしないか。それからもう一つは、政府のいままでの高度成長、いわゆる大企業優先というこの姿勢に問題があるであろう、こういうふうに考えます。そこでこの姿勢はどうか改めていただきたいし、次の企業の区分でありますけれでも、中小企業を一括して取り上げるという行き方から、一つには中堅の安定した企業、さらに業種別に、むしろ能力があっても小規模のほうが能率があがる、こういうような業種による適切な企業、さらに最も問題の多い保護を要する企業、こういうふうに縦分けた行き方がとられてしかるべきであろう、こういうふうに考えます。この点についてひとつ最後に総理大臣からお答えいただきたいと思います。
  375. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、中小企業の中には親企業との関連で近代化をはかることが一番適当だというものが多うございますけれども、そればかりではございません。そうでない自分のものを持っておる独得の中小企業がございます。で、すべて親との系列で処理をするという考え方は私は適当ではない、おっしゃるようだと思います。  それから中堅企業という範疇を持てと言われることは、私はそのとおりだと思います。雑貨、繊維にはそういうものが多いのでございまして、いままでの中小という観念から中堅企業という観念をひとつ引き出して特別に対策をしようということは、私どももそうしたいと思っております。現実にその準備をいたしておるようなわけでございます。  それから積極的に今後業種として、後進国等々の関係から見て伸びられると思う企業については、これからも保護育成をはかるべきでありますし、場合によってなかなかそれはむずかしいと思うものについては、中小企業政策審議会が答申を出しましたように、積極的に新しい転換を支援していく、こういうことも必要であろうと思います。
  376. 松尾正吉

    松尾(正)委員 中小企業問題については以上で打ち切りにいたしますが、いま通産大臣からお話のありましたこの中小企業の最後の小規模は最も問題が多いし、その比率も非常に多い。これに対しては特に力を注いでお願いしたい。意見だけ申し上げて打ち切りたいと思います。  次に、問題になっております繊維規制の問題ですが、これは先日以来何人かの方がもうすでに質問されております。そこで私は別の方面から伺いたいのですが、この繊維規制問題が起きたために、非常に企業に問題が起きた。こういった点を伺うために一その前に一九六二年に綿製品の規制が行なわれたわけです。この取りきめ、いわゆるLTAの第一条、綿製品以外は絶体に規制はやらない、こういう約束が取りきめられておりますけれども、この取りきめの品目、これは何品目だったか、さらに現在は何品目になっているか、これをお知らせいただきたいと思います、通産大臣。
  377. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一九五五年にいわゆるワンダラーブラウスの事件が起こりましたときには、これは自主規制でございましたので、たしか四品目でございます。それから、その次に五七年の協定になりまして、全部の綿製品、総ワクのほかに特恵ワク十七品目でございます。六二年に長期協定になりまして、全綿製品六十四品目の総ワクになったわけでございます。それから、特別の規制ワクとして、同時に綿織物六品目、二次製品二十品目。当時百品目云々といわれましたのは、これはアメリカの分類で百十六であったのでありまして、これはわれわれの分類法に従いまして六十四ということになったわけでございます。
  378. 松尾正吉

    松尾(正)委員 最初の取りきめからずっと品種がふえてきた、こういうこまかいことは時間の関係で省かしていただきたいのですが、当時はやはりアメリカは不況であったので、ある程度やむを得ないと思うのです。しかし、その当時、結果はどうかといいますと、わが国の綿製品業者、これはもうほとんど壊滅状態になった。これは御承知と思うのです。二度とこういう愚は繰り返しては相ならぬ、これは国民全部の願っているところであります。  そこで、このたび問題になっております繊維規制についてお伺いしたいのは、輸出量です。対米繊維の輸出量、この推移が六八年以降どういうふうになっているかをお知らせいただきたいと思います。
  379. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府委員から申し上げます。
  380. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  アメリカの商務省の輸入統計によりますと、昨年の輸入総額は約三十六億平方ヤードでございまして、前年度に対します増加率は約九・七%でございます。これは六八年のそれが二八%というのに対しまして大幅に増加率が下回っております。  その中で現在問題になっております毛と化合繊につきましては、毛は六八年には約三割の増加になっておりましたが、昨年度は逆に九%の減ということになっております。化合繊は六八年は五六%の増加ということでございましたが、昨年は二三%ということで、増加率が非常に減少しております。同じような傾向は、日本の対米輸出についても同様でございまして、特にアメリカの輸入ないしは日本の対米輸出は、昨年の下期からアメリカの景気動向とも関連いたしまして伸び率が非常に減少してまいっております。  以上でございます。
  381. 松尾正吉

    松尾(正)委員 一月はわかりますか。
  382. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 一月はまだ詳細はわかっておりませんが、日本側の資料によりますと、対前年同月比で約四%落ちております。
  383. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いま経過を聞きますと、ずっと六八年以降この輸出量というものが大幅に減っております。特に今年一月伸びが下回っているということは、もうこのままどんどん減少していくということが見られるわけですが、今後こういうふうに減じていくという見通しの上に立てば、むしろ繊維規制でなく、逆に業者を守るために、こちらからアメリカに積極的な働きかけが必要じゃないか。ところが、こういう意見もあります。最近のニューヨークタイムズの社説によりますと、アメリカ側でもこの輸入規制についてはマイナスだという意見です。一応あげてみますと、きわめて明快に、輸入規制が米国経済にとってプラスでない、すなわち、アメリカは輸入割り当てを行なっても、日本の格安な製品が行かなくなれば、結局は米国消費者にとって繊維製品の価格が引き上げられるので、インフレ抑制計画に大打撃を与えるのでマイナスだ、こういうアメリカ側の意見等もありますし、またこれをとって強腰で、アメリカ側に自主規制どころでない、日本の業者を守る働きをやっていくのが当然ではないか、こういうふうに考えるわけですが、通産大臣、いかがですか。   〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
  384. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 アメリカもわが国と同じように言論の自由な国でございますから、ただいま御引用になりましたような意見というものがもっと私は各方面から出てこなければならない、また腹の中でそう思っている人は、経済界の指導者にも実はおるのだろうと思いますけれども、ただ、資本自由化あるいは貿易の自由化等について、わが国の全般的ないわば操行点はあまりよろしくございませんので、そういうことが背景にございますために、この繊維の問題についてあえて発言しようとしないというような傾向が私片方で見てとれると思うのでございます。  それからもう一つ、特に感じますことは、わが国では保護貿易から出発いたしましたので、ガットというようなものについて国民のかなり多くの人が詳しくはなくても知っておるわけでございますが、アメリカは自由貿易から出発いたしましたために、ガットというようなものについてあまりいままで知る必要がなかった。そこでたまたま自分の国で繊維業が多少不振になりますと、これは輸入のせいである、したがって、何でもかんでも輸入規制ができるのだというような非常に簡単な考えを持ちやすい。その辺が、両方の考え方がここへきて開いておる一つの原因ではなかろうかと私は考えておるわけでございます。
  385. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いま、言論の自由があって考え方の違うものがある、こういう意見でありますが、わが国の実情をどこまでも基本に考えていかなければならない、こういう基礎に立って、実はこれを外務大臣にお伺いしたいと思うのです。下田大使の件については、昨日新聞に報道されたような事実はない、こういうことでありますので、これは省略しますが、実は、これはアメリカ側の動きでありますけれども、マイヤー駐日大使は、去る二月二十日、関西化繊協会に来て、業者に力強い説得、訴えをやっておるわけです。ここにございまして、もうごらんになったとは思いますが、非常に時間をかけて——二、三拾ってみますと、内容はこういうことです。私のカロライナ訪問は、私にとって非常に有意義なものであった。実情は、私のそれまでの印象とはかなり違っていることを発見した。それは単に古くなった斜陽工場が廃業を余儀なくされているというだけのものではないことがわかった。困っているのは大手の会社を含む米国繊維業界全体なのである。さらに、核心問題は、外国からの輸入品が米国における繊維品の価格構造に与える影響である。生産コストが上昇の一途をたどってきたにもかかわらず、米国繊維品の卸売り格価は、この数年来ほとんど上がっていない。米国の会社は、外国製輸入品からの価格競争に対抗するか、それとも主要な得意先を失うかという、どちらにしても芳しくない二者択一云云、こういうことや、さらに非常に御丁寧に、米国の繊維問題は云々、日本の国会議員の方々も選挙区の労働者の利益を擁護しないわけにはいかない。議員ならだれでも、選挙区の工場が閉鎖され選挙民が生計の資を失うことを挟手傍観するわけにはいかない。こういう非常に長文なもので、向こうの苦しい状態を訴えておるわけです。大使自身が業者と話し合いをやっている。ところが、わが国の状態はどうかといいますと、非常にひどい状態に業者が置かれているのに、残念なことに、昨日報道されたような状態がある。まあ、こういう点について、下田大使に対してもっと実情を理解さした訓令なり、しっかりした指示が必要ではないか。誤解等を招くようなことがあってはならない、こういう処置をとらなければいけない、こういうふうに考えるのですが、外務大臣……。
  386. 愛知揆一

    愛知国務大臣 下田君の問題については昨日も御報告いたしましたから、私も多くを申しませんけれども、この繊維問題というのは非常に私は日本としても大きな問題だと思います。  それから、だたいまもお話が出ておりますが、一九五五年以来の経過にかんがみましても、十分戒心を要するところでございます。アメリカのほうも非常に大きな問題として取り上げておりますけれども、結局、私はガットの精神の中で、双方の公正な競争の立場と申しましょうか、そういう立場によって解決を見出していかなければならない。したがって、このごろはもうすっかり日本語になってしまいましたけれども、この問題についてはインジュリーを起こしているか、あるいは重大なインジュリーを起こすおそれがあるかということを基準にして、検討を公正にすることによって、そこから発せられるところの結論というものが納得ができるならば、その範囲内で日本側として自主規制というようなものをやる、こういう道が筋道の通ったいき方であると思います。したがいまして、そういう線にのっとって、従来からも外務省あるいは大使館といたしましても、できるだけの努力をいたしておるわけです。  そもそも今回の問題が始まりましたのは、昨年の五月にスタンズ商務長官が来日したときからこれが大きな問題として明らかになってまいりましたが、その後今日に至りますまで、できるだけ国益の立場に立ち、また国際貿易のガット精神というものを踏んまえて、日本立場というものを十分アメリカ側にもわかってもらうようにできるだけの努力をしておるつもりです。私は、数日前、当委員会でも、下田大使が一二〇%に活躍してくれているという趣旨を申しましたのも、訓令もいろいろ出しておりますけれども、さらにこれをふえんいたしますために、いまマイヤー大使のお話が出ましたけれども、下田大使は各方面にわたって精力的に、私がこちらで気がつかなかったような点についても日本立場というものを十分説明することにつとめておる、こういうことを私、一二〇%ということばの中に含めたわけでございます。大使としては日米関係の友好増進ということに大きな役割りを持っておりますから、立場上非常に苦しいところもございます。それから、アメリカのまた状況も的確にわれわれに報告してくるということも、これは彼の重大な任務でございますから、そういうところから、そしてまた日本関係の方々が非常な、われわれと同様に御心配でありますだけに、心配のあまりいろいろの情報や憶測の出ることも私は無理からぬことだと思いますけれども、ひとつ政府立場、われわれの姿勢というものについてはこの上とも十分の御理解を賜わりたいとお願い申し上げる次第でございます。
  387. 松尾正吉

    松尾(正)委員 下田大使の問題については、きのうの答弁を信頼しております。したがって、これ以上申しませんが、ただ、別な問題といいますのは、日本の繊維業界、合成繊維業界の問題でありますが、この現況について通産大臣からお聞きしたいと思います。
  388. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま私どもが心配しておりますのは、福井あるいは石川あたりで、四−六月の生産がどうも少し落ちておりますし、受注にもおくれがある。九月期の受注は、普通でございますとぼつぼつあるはずでございますが、それがこれもおくれておるということで、あるいはこのことが、その前途に対する不安から生まれておるのではないだろうか。そうとすれば非常にお気の毒なことだ。それにつけても早くこの問題は解決しなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  389. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いま通産大臣からお話しのように、非常に大きな影響があらわれている。公明党で昨日実は福井県に参りましてこの実情を調べてまいったわけでありますが、この自主規制問題が起きましてから、大手メーカーの発注が激減したわけです。そこで、製品が売れるかどうかわからない、こういうために、昨年の十一月ごろまで、一匹の織り賃というのですか、加工賃が千三百円ぐらいしておったものが、現在では八百円。それでも注文がない、こういう状態にまで来ている実態がわかったわけです。ところが、この織機業者に対しては、政府から四十二年度以降、構造改善事業として、福井県だけの例ですけれども、百九十二億円の予算を投入して、輸出向けの構造改善をやった。これがまだ続いております。四十二年度で二十二億、四十三年度三十億、四十四年度に四十二億、今年度分、四十五年度分が五十億、こうなっておりますが、ここで問題になりますのは、据え置き二年間を過ぎまして、四十五年度が返済期になっている分が二十二億円あるわけです。現地では、以上のような織り賃は半分近くになってしまっているし、発注はもう減ってしまったし、こういう状況でとうてい今年度分の二十二億の返済は見込めないであろう、こういうことが予測されておるのです。これに対して、構造改善事業費の返済期日を延ばして、これらの人を何とか守ってやる方法は講じられないかどうか、この点について通産大臣……。
  390. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま言われました、三年間の福井産地に対する構造改善の融資の総額は合っておりますのですが、今年度に償還になりますのは、四十二年度分になるわけでございますね、二年間据え置きでございますから。そうしますと、全国で九億というふうに私は承知をしておるのでございます。そうしますと、福井の分はその何分の一かということかと思います。もう少し実情を調べました上でと考えます。
  391. 松尾正吉

    松尾(正)委員 もう一点は、この機織りをやっておる零細企業は、織機を大体八機ないし十機を持ったものが非常に多い。ところが先ほどのような状態のために、どうしても輸出織り機から国内向けに構造改善を余儀なくされている、こういう問題も相当数にのぼっております。しかし前述のように、もうこの改善事業費等はおぼつかないというので、この零細企業者が具体的に国内向けに改造するための資金等に相当苦慮しておりますが、この点についてもあわせて考え方を伺いたいと思います。
  392. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 構造改善によらずして、いわゆる近代化資金でということでありましたら、そういうお世話をしなければならないと思いますが、ただ念のため申し上げなければなりませんのは、規制をすることがきまったわけでも何でもないわけでございますから、そこはそういう趣旨の御質問ではございませんでしたが、産地におかれても、そのことをいわゆる一種のでき上がった事実としてお考えにならずに、交渉は先日来申し上げましたように継続をしておるということを念のため申し上げておきます。
  393. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いま構造改善事業に指定したもの、こういうわけでありますが、もちろん含まれております。したがって、これは掌握しておりませんでしたら、早急に調査をされて、農民に対しては米の減反に対しては補償をやっておる、一方構造改善で指導しておきながら、こういう状態が起きたのに、手が打てない、こういうことになりますと、まことに不平等な扱い、こういうことでそしりを受けるわけでありますので、どうかこれは早急に手を打っていただきたい、こういうふうに要求いたします。  次に、地方財政の問題に触れたいと思うのですが、最近、政府で地方財政が好転をした、こういうふうにいわれております。しかし私は、この好転論に対しては十分考え直さなければならない面がある、こういうふうに考えておりますので、まずこの総理の好転論に対しましてのお考えを、地方財政がはたして好転しているのかどうか、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  394. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単に申し上げますが、私は好転しておると考えております。
  395. 松尾正吉

    松尾(正)委員 私は、総理考え方には認識を誤っている面が幾つかあると思います。その一つは、地方団体は御承知のように三千数百、これがそれぞれ独立をして、その集合体でありますが、府県を見ましても四十六府県中に二十団体の赤字がある。これを一国の財政のように一緒にして決算数字の上だけ見て、それで好転しているということは、これは誤っているといわざるを得ない、こういうふうに考えます。確かに行政水準等を見れば、これはもうひどいといわざるを得ない状態です。この行政水準に幾つか例をあげてみますと、国道は七三・八%整備されておる。中心を歩いて、それで東京あるいは大都市等が整備されているから、こういうふうに考えることは誤りであろう。そういう意味で総理は、行政水準を通しても好転されておられるかどうか。
  396. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん簡単な答えをしたのでいろいろ誤解があるようです。総体に見まして、私は、かつての事態からよほど変わってきた、かようには思います。しかし、現状をもってもう好転したので中央から援助の余地、そういうことはもう必要なしと、かように申しておるわけではございません。これは比較的な議論でございますから、そこらのあることを前もって御承知おき願いたい。また、ある都道府県によりましては、これは非常に裕福な状態でもあるようだ、こういう状態も見のがせないのじゃないか。また、その府県によりまして特殊な事情があるのでしょう、なかなか中央でもやれないようなことを地方でどんどんやる、こういうようなこともございますから、そういうところだけ見ると、どうも地方はなかなか金が余っているのじゃないだろうかとまで実は考えざるを得ないのです。こういうことも総体のうちの一部にやっぱり置いて見ていただきたい。しかし、いま御指摘になりますように、地方道、これはまことにまだお粗末じゃないか、また学校施設等においてもまだまだ不十分だ、あげていけば幾つもそういうものがあるだろうと思います。たいへん改善されつつあるが、富裕だというような意味で申しておるわけじゃございません。
  397. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いま総理も行政水準等についてはこれは十分とはいえないので、富裕とはいえない、しかし豊かになってきている、こういうお答えでありますが、私は豊かであるかどうかという考え方には、やはり慎重でなければいけないと感じます。道路でいいますと、先ほど言いましたように、国道は七三・八%整備されておるのに対して、府県道は二〇・七%です。町村道にいきますとわずかに六・四%、ちょっと雨が降れば、うちを出るときには長ぐつをはいて、それで町を歩くときにははきかえなければならない、こういうような状態にあるのだ。それから清掃施設に対しては、ごみ処理で整備されているものが四八%余り、屎尿処理について、衛生処理したものが六七・八%、保育所の収容率、これが公立でわずかに四四%、中学校で危険校舎に入っているものがまだ二割ある。その他公害、交通、すべて社会資本を必要とするものが山積されておる。一口に言えばこれに尽きると思います。ところがいま総理がおっしゃったように、地方団体が好転してきて、むしろ借りられるのではないかというようなおことばもありましたけれども、そういう考え方が今後の地方団体の発展に大きな阻害になる場合もある、こういうことが言えると思うのです。地方団体ではいろいろやりたいことを切り詰めまして、そうしてどうやら財政上多少のゆとりもできたので、ここでひとついままでおくれた分を手をつけてまいりたい、こういう考えを持っておるのに、これに対して国が好転してきた、こういうことで交付税その他の扱い、いわゆる自治大臣と大蔵大臣との間の交付税の貸借処理等は、むしろいまの地方団体に対する考え方から逆行しているのではないか、こう思います。  そこで、根本的にこの交付税というものは、本来どこのお金なのか。交付税は地方団体の権利のあるお金である、これは自主的な地方の自主財源である、こういうことを大蔵大臣等も言われたこともありますが、一体、どこのお金なのか、大蔵大臣にひとつ伺いたいと思います。
  398. 福田一

    福田国務大臣 交付税は国の金であります。ただ国の金でありますが、いわゆる三税の三二%は法律によって地方に交付するということになっておりますので、そういう意味におきましては地方の固定した財源である、そうも言えるわけでありますが、本来の性質は国の財源である、国のお金であると、かように考えております。
  399. 松尾正吉

    松尾(正)委員 国のお金には間違いないのです。その運営上の問題を聞いているのですが、大蔵大臣も地方交付税はこれは地方の自主財源であるということを述べられたことがありますが、これは御承知ですね。さらにこのことを地方制度調査会、それから地方財政審議会でも、地方交付税は地方でこれを保有するのが当然だ、こういうたてまえであるということをいっておりますし、そのたてまえから、原則に立って、地方財政法にも地方の固有財源である、これは積み立てをして、そうして長期的にこれを運用することを考えていかなければならない、こういうふうにきめられておる点を見ると、これは国で握って、そうして地方のワクをきめていくという行き方には誤りがあるのではないか。この点について大蔵大臣……。
  400. 福田一

    福田国務大臣 地方交付税は、三千余りある地方団体の財政を調整するという機能を持っておるわけであります。そういうことから、国で収納いたしましてこれを地方に交付する、こういうたてまえをとっておる、これは自然そういうふうになるわけであります。  いま松尾さんのお考えでは、それを直接交付税特別会計に収納したらどうだろう、こういうようなお考えかと思いますが、やはり国といたしますと、所得税は所得税、あるいは法人税は法人税、酒税は酒税、こういうことで一応とにかく国に受け入れまして、財政調整上これを地方に交付するというたてまえを貫くと同時に、国の財政の規模、そういうものを総合的にこれを見て、国政を運営するというたてまえをとらなければならぬ、かように考えております。
  401. 松尾正吉

    松尾(正)委員 先ほど言いましたように、現在地方は非常に行政水準が低い。確かに多少黒字の団体も出てきておるけれども、これからいよいよその発展をはかろうとするのに、国で交付税を締めているがために、地方でせっかく余裕ができても手がつかない。いつまでたっても地方の発展が望めないのだ、こういうことを考えましたときに、やはりこれはいま先にお答えがありましたけれども、国でそのワクをきめるのではなくて、おのおのの自治体で運用をきめていく。そのためには、いまお話のあった一般会計を通すのでなく、いわゆる国で握るのでなく、むしろこれを直接特別会計へ入れるべきだ、こういう考えを持ちますが、もう一回この点についてお答えをいただきたいと思います。
  402. 福田一

    福田国務大臣 先ほどは理論的に、これは国が収納し、これを地方に交付するというたてまえをとるべきだというふうに申し上げましたが、また非常に卑近なことを申し上げても、国の所得税は一体幾らあるのだ、法人税は幾らになるだろう、こういうようなことも、国の予算だけ見たのでは、全然見当もつかない。地方財政一つ一つ洗って、それで見なければ見当がつかない、これでも困るのではないでしょうかと思います。理論的にも実際的にも国がこれを受け入れて、その交付税の性格に従いまして調整的機能を発揮させる、こういうためにはやはり国から地方に交付をする、こういう手続によるべきものだ、かように考えます。
  403. 松尾正吉

    松尾(正)委員 交付税については相当問題点がありましてあれしたのですけれども、時間がなくなりますので、最後に一つ残っております超過負担の関係、これについて伺いたいと思います。  政府は、地方団体の補助事業について、対象を中心に限定しておる、こういう実情でありますけれども、実際には、物価が伸びるために、地方団体の負担が非常に増加している。また継ぎ足し関連事業等についても、全然国では財政援助しない。たとえば道路をつくります。これに対しては、国で必要とする道路の経費だけは見るけれども、幹道をつくって、枝道をつくるための継ぎ足し関連事業等については考えない。こういうために非常に地方財政が負担を余儀なくされている、こういう状態はどうしても解決していかなければならないものでありますけれども、政府が現在超過負担を調査したものがあるかどうか、これを自治大臣……。
  404. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 調査したものはございまして、昭和四十三年度には国の予算の中でたしか三百二十億円、それから四十四年度で三百十二億円ですか、解消の措置を講じております。
  405. 松尾正吉

    松尾(正)委員 いつ解消ですか。
  406. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 二、三年のうちに解消すべく、四十五年度においても相当の必要額を計上するつもりでございます。
  407. 松尾正吉

    松尾(正)委員 国のものは伺いましたが、地方の負担額、この統計したものをお知らせいただきたいと思います。——国で負担額を調査しておりますが、これと、地方自体で調査したもの、これはいまつかんでおりますか。
  408. 秋田大助

    ○秋田国務大臣 地方自体が調査したものについては、私遺憾ながらただいま承知いたしておりません。
  409. 松尾正吉

    松尾(正)委員 二、三年のうちに、この超過負担の解消がなされる、こう聞いておりますけれども、実情はとうてい超過負担が解消というような実情ではありません。この問題点は、いま言いましたように、国の事業対象だけを基準にしたこれと、それから地方における実質の超過負担は、それに関連する事業あるいは対象、それから単価、これらに相当大きな開きがありますので、どうかこの点については積極的に調査を進めて、そうして一刻も早く、一番大きな地方団体の問題点になっておりますこれの解消に取り組んでいただきたい、こういうふうに考えるわけです。  時間が参りましたので、最後に締めくくりとして総理大臣にお伺いしたいと思いますが、一九七〇年代の課題として、内政の充実、総理もおっしゃっておりますし、各界から叫ばれております。いままで質問してまいりました分も含めまして、国民の生活に密着した地方自治でありますので、問題点も多過ぎるし、また重大な内容を含んでおります。したがって、七〇年代の地方自治の展望と、どうあるべきか、こういう点について三点伺います。  その一つは、行政事務の徹底した再配分をやっていく考えはないか。それから二番目に、先ほど大蔵大臣から答弁がありましたが、地方の自主財源を大幅に確立していく考えはないか。さらに三割自治といわれている現在から、この三項目がそれぞれに関係しておりますので、この三点につきまして総理大臣の明快な決意を伺いたいと思います。
  410. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ話がございましたから誤解はないだろうと思いますが、中央も地方もこれが一体であること、これはもう申すまでもないことであります。地方が中央と対立する、そういうような形では国政、また国民の幸福、しあわせにはならないと思います。中央、地方を一体として、財政的な問題を考えていく、そういう立場考えた場合に、ただいまお尋ねがありました三つの問題、たとえば行政の配分、中央、地方ただいまのような状態でよろしいのか。私は、その地方というのには都道府県やさらにまた市町村、これを含めて申すのでございまして、そういう自治体間相互の問題もあります。中央との間に適当なる行政の配分をしなければならない、行政の配分をする以上、当然それに相応する財源の確保がなければならない、かように思います。また、それぞれの府県におきましても市町村におきましても、自主財源というものがほしい、望ましい、こういうことを申すでございましょうが、先ほど来大蔵大臣がお答えしたように、やはり地方、中央、これは一体だという、その観点でものごとを考えないと、何か対立があるように考えると誤解を招きやすいのではないだろうか、かように思います。またいわゆる三割自治というような問題もただいまのようなところに出てくるのじゃないだろうか、かように思いますので、私はこの七〇年代の課題として、中央、地方を通じて十分行政能率をあげて国民にサービスすること、これは中央だけの問題ではない、地方も同様だ、かように考えますが、そういう観点に立って適当なる行政配分、さらにその財源の確保等を考えるべきじゃないか、かように思っております。
  411. 松尾正吉

    松尾(正)委員 終わります。
  412. 中野四郎

    中野委員長 これにて松尾君の質疑は終了いたしました。  明日は、午前十時より委員会を開会し、細谷治嘉君、河村勝君、不破哲三君及び小川新一郎君の総括質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十六分散会