○西中清君 私は、
公明党を代表し、ただいま
議題となっております
防衛庁設置法等の一部を
改正する
法律案について、
反対の
討論をいたします。
佐藤総理は、去る二月の施政方針演説で、「日本は、軍事的手段によって世界政治上の役割りを果たす国ではない」「自由を守り、平和に徹する基本的態度のもと、国力国情に応じて自衛力を整備し、その足らざるところを日米安全保障
条約によって補完する」との政策を明らかにされております。この発言は、ここ数年間、日米安保
条約のもと、漸増的に自主
防衛を強化するという考え方が変化し、逆に、自主
防衛を軸として、日米安保を補完的役割りとすることを明らかにしたものであります。すなわち、主客転倒し、自主
防衛の比重が相対的に重くなったのであります。これが問題の第一点であります。
政府のいう自主
防衛とはいかなるものか、具体的に自主
防衛と安保体制はどう変わっていくのか、全く不明であります。すなわち、アメリカの核のもとに、一切を自力でやっていくのか、また、有事の際に米軍の来援を依頼する構想なのか、あるいは基本的に現状維持の体制で、対米依存度を減少させていく構想なのか。自主
防衛と日米安保で足りないところを補完するという考えは、具体的にどのようなケースをたどろうとしているのでありましょうか、全く不明であります。ただ、自主
防衛強化論が、少なくとも軍事力
増強政策を、あたかも既定の事実、必然的なものとして強行しようとしているのに間違いなく、この
政府の姿勢に、われわれ
国民は多大の不安と危険を感ずるものであります。(
拍手)
第二の問題は、自主
防衛力
増強論の台頭と
防衛費の飛躍的増大であります。
いままでの漸増方式が一変し、いまや、
昭和四十五年度
予算が大幅増を示したこと、さらに、四次防を見ても明らかなように、積極的な急増は、もはや専守
防衛のワクを大きく踏み越えているといわなければなりません。
防衛政策が、将来どのような規模でなされるか、限度はどの程度か。ただ、国力国情に応じての自衛力とのきまりきった抽象的答弁では、
国民に多大の危惧を抱かせることは当然ではありませんか。(
拍手)
さらに、戦力放棄、戦力不保持をうたった
平和憲法の精神を、
政府はどこまで尊重する気なのか、全く不明であります。いかに、口に平和主義を唱えようと、問題は、現実はどうかであります。急激な自衛力
増強は、国内は言うに及ばず、東南アジア各国にも非常な脅威を与えているのであります。
政府のこのあいまいな姿勢が、
国際社会にゆえなき警戒心と緊張を惹起している責任は、まことに大といわなければなりません。現に、先ごろの日中貿易政治会談の共同
声明をめぐって、中国が、日本に軍国主義が復活したと、痛烈に批判しているではありませんか。
政府は、すみやかに、自主
防衛増強の限度を明快に示すべきであります。
第三の問題は、自衛権の本質及び自衛権行使の地域的範囲の限界についてであります。
政府は、外部からの武力攻撃に対処する場合、公空、公海までも必要な限度内で自主
防衛できるとしておりますが、これが拡大解釈されると、海外派兵につながる危険があります。日本に対する直接侵略を、どこまで出て排除するのか。特に、昨年秋の
日米共同声明において、沖繩よりのベトナム発進について、極東の範囲が従来の
政府言明から大きく逸脱して、ベトナムを含めた広範囲なものとなり、アジアにおける日米共同作戦がもたらす危険をますます増大しております。自衛権の本質と自衛権の行使の地域的範囲の限度にも明らかな歯どめがなく、
国際的な不安を招くことは当然であり、
政府は、この点について明確にすべきものと考えるのであります。
ここで、第四の問題として、自主
防衛の強化政策がはたして必要なものかどうかという問題であります。
現在、日本を取り巻く
国際情勢は、必ずしも
防衛力
増強を必要としていないと考えられるのであります。むしろまぼろしの脅威におびえての自主
防衛ではないか。もし脅威があるとするならば、それは一体何であるか、どの程度のものか、
政府は明快にすべきであります。
防衛費は、今年度実に五千七百億円、さらに四次防では五兆円をこすといわれます。また、隊員の増員
計画も、いたずらにワクを拡大し、充足率が悪く、かつ、ずさんな募集と人選がしばしば問題となっております。こうした事実からも明らかなごとく、自衛力
増強が、
国民の支持も弱く、必然的意味を持たぬことは判然としているではありませんか。
第五に、装備国産化の問題であります。
この問題は、将来性と成長性を見込む財界の要請がきわめて強く、中にはGNP四%程度まで
防衛費を引き上げよと主張する者もある状況であります。二次防一兆三千億円、三次防二兆三千億円、四次防五兆円以上と、七〇年代どこまでふえるのか、全く歯どめはなく、際限なく加速度的に
増加されようとしているのであります。これ、まさに、産軍複合体への危険な道を歩んでいると危惧せざるを得ません。加えて、財界からの武器輸出の要求も高まり、世界の平和安全から、まことに危険な動きというべきであります。日本の軍国主義復活の疑惑を払うためにも、
政府は、これらの動きに限度を示し、かつ、武器輸出を全面的に禁ずべきであります。
最後に、七〇年代の安保についての最大の課題は、早期に安保
条約を解消することにあります。
その方途のさしあたってとるべきものは、在日米軍基地の撤去、縮小であります。
国際緊張の緩和、平和への方途として、まず米軍基地の撤去、縮小を急ぎ、安保
条約の実質的形骸化を進め、段階的に解消していくことが肝要であります。(
拍手)
同時に、わが国が、戦争のない平和な世界を目標とする限り、
国際緊張を生む一切の障害を除去し、さらに多元的な平和外交を推進していくことが基本的姿勢でなければなりません。
したがって、わが
公明党は、かねてより、日中の国交回復が一九七〇年代のわが国外交の最大の焦点であり、最重要の課題であることを指摘し、日中国交回復の必要を提唱してまいりました。今回の中国の人工衛星打ち上げの成功とともに憂慮されるのは、米ソ両核大国の核軍拡競争が、新しい発火点を迎えるのではないかということであります。したがって、中国を
国際社会の中に迎え入れ、中国を含めた核軍縮が真剣に討議されなければなりません。そのために、まずわが国が中国との国交を回復し、世界平和のために、他の核保有国とともに、この核軍縮への
国際世論を高める先頭に立つべきであります。
さらに、国連アジア極東地域本部の日本誘致の実現に努力を重ねていかねばなりません。
政府は、以上あげた諸点につき、自主
防衛強化の実態を明確にし、真に
国民に正しい判断をなす材料を誠意をもって提供する義務があります。そして、
国民の不安及び諸外国の危惧を、また疑惑を、一掃されんことを強く要望して、私の
反対討論を終わります。(
拍手)