○北側義一君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま
報告のありました大阪の天六におけるガス爆発事故について、総理並びに
関係大臣に若干の質問をいたします。
まず、この質問の初めにあたりまして、戦後最大といわれるこのガス爆発事故で、一瞬のうちにとうとい生命を失われた多くの方々の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、御
遺族の方々に衷心より哀悼の意を表するものであります。
さて、この事故の原因を追及し解明して、
政府が今後このような悲惨な事故を絶対に起こさない決意をもって万全の施策を講ずることこそ、痛ましい事故の犠牲となられた方々に報いる道であると思うのであります。
わが党は、事故発生と同時に、現地に調査団及び救援隊を派遣いたしましたが、私もその一員として現地に行ってまいりました。今回の事故の犠牲者にいたいけな子供たちが数多くおり、私は、その悲惨な姿を見て、胸の締めつけられる思いで一ぱいでありました。事故を聞いて病院に、また現場にかけつける親族の方々の姿を見るとき、私は、どのように慰め、激励したらよいかわからなかったのであります。
災害は忘れたころにやってくるといわれておりますが、最近の相次ぐ災害事故は、きのうのことを忘れないうちに次々と発生しておるのであります。しかも、昨年の三月、今回と同様の事故が東京都の板橋区で発生いたしました際、
政府は、今後再びこのような悲惨な事故が発生しないよう万全の
措置を講ずると陳弁し、
関係省庁からは通達等も出されていたのであります。しかし、このようなたび重なる事故を見ますときに、過去の多大な犠牲を払っての教訓が一体どのように生かされておるのか、疑問に思うのは、私だけではないと思うのであります。
先進国と任ずるわが国において、世界にも例を見ないこの種の事故が多発している事実は、一体何を物語っているのでありましょうか。
今回の事故が、産業優先の高度経済成長とともに当然行なわれていなければならない人間尊重の諸施策の欠如から発生したものであり、起こるべくして起こったとの声も多く聞かれるのであります。来日中の外人も、この惨状を見て、町のどまん中の建設工事でこんな大事故が起こるところを見ると、日本人は、経済成長を急ぐあまり、何か大きな無理をしているのではないか、この事故は日本経済のひずみを象徴しているといっております。
確かに、今日のような無秩序な都市の
発達は、私たちの生活に、あるいは公害問題として、あるいは交通災害として、多くのひずみを与えております。その中にあって、今回のガス爆発事故であるとか、石油コンビナートの火災であるとかの問題は、多くの都市でちょっとの不注意が大事故を招くという新しい災害問題を提起してきたのであります。都市再開発による新しい豊かな都市づくりは急務となっておりますが、それとともに、これらの災害に対する防災対策は人間尊重の基本をなすべきものであり、これが対策には絶対に努力を惜しんではならないのであります。
しかるに、防災対策の大元締めともなるべき中央防災
会議のあり方について、昨日の参議院予算
委員会においても、種々その防災対策の不備が担当大臣である山中総務長官より述べられ、その
内容は、防災
会議及び防災行政について、
昭和三十六年の設置当時から改善もされず、担当大臣である総務長官が、重大な行政に何ら権限のない事務局長のごときものであると発言されておることは、国民の生命と財産をあずかる担当大臣として、前向きにその欠陥の是正を願うことばとして尊重すべきであります。
これらについて、防災
会議の最高責任者としての佐藤総理に、今回発生したガス爆発事故の状況とともに、その明快な御答弁を承りたいと思うのであります。
次に、具体的な点についてお伺いいたします。
先ほどのお話によりますと、今回のガス爆発事故は、死者七十四名、重軽傷者三百二名、そのうち百三十七名が重傷者であるといわれております。一瞬の大爆発で働き手の父親をなくし、ひつぎの前で母と子がとほうにくれて泣きじゃくる悲惨な姿や、また一方では、半狂乱のように肉親の名を叫び続ける姿を、私は、八日の夜現地で見て、まことに苦しい思いと激しい怒りを感じたわけでありますが、こうした死者、重軽傷者、また家屋を失った御家族の方に対する補償
措置については、第一次的責任者たる事故責任者が負うのは当然でありますが、これに対する
政府の御見解をお伺いしたい。
しかし、今回の事故は、公共的な地下鉄工事現場の事故として、
政府としての公的責任に立った十分なる補償をすべきであると思いますが、この点についても総理の御見解を承りたい。
なお、この際、昨年三月の東京都板橋区のガス爆発事故のとき、
政府と各
関係者はどのようにこれに対処されたのか、あわせて
関係大臣よりお伺いしたいと思います。
さらに、数多くの重傷者の人々は、大部分の人が長期療養を要すると推察するわけでありますが、
政府並びに
関係者は、長期療養等の医療体制を完備して、最大限に医療効果が発揮されるよう万全の対策を講ずべきであり、また、こうしたことをチェックするためにも、係官を病院に派遣して対処していただきたいと思うのであります。
政府のお考えをお伺いいたします。
また、この大阪の事故のあった現場には、農村から出かせぎに出てこられた方々もあるやに聞いておりますが、昨年の東京新四ツ木橋の事故と同様、これらの事故の犠牲者となられた人々が経験不足のため、なお一そう今回の事故を大きくしたとも思われますが、労働大臣は、これらのいなかで待つ御家族の方々にどのように補償
措置をとられ、また今後の対策として、作業の安全確保についても、その対策をお伺いいたします。
次に、通産大臣にお伺いいたします。
昨年の板橋区の事故の際、通産当局は四月一日付で、ガス会社をはじめとする
関係者に事故防止についての通達を出しており、運輸省もまた、八月に陸運局に通達を出しておりますが、わずか一年たたない今日このような大惨事をもたらしたことは、
関係者が事故防止にどれだけ真剣に取り組んだのか、疑問を持たざるを得なくなってくるのであります。
なお、昨年十二月にガス導管防護対策
会議からの答申が出され、それを受けた通産省は
関係者に
報告書を配付しておりますが、
政府がとられた
措置といえばこれぐらいのもので、勧告の
実施については何ら具体的な話し合いがなされていないのが実情じゃなかろうかと思うのであります。私は、このような無責任な
政府の姿勢にこそ大いに問題があると思うのであります。しかも、地下鉄工事には、道路
関係の建設省やガス爆発物
関係の通産省など、
関係省庁が連係を密にしなければ安全確保は不可能であるにもかかわらず、現実には、
各省庁間の連係が悪く、事業者にまかせっぱなしというところに、大事故を発生する大きな原因がひそんでいるのであります。
政府は、このような工事現場における安全を確保するため、
関係省庁の連係を強化し、具体的な対策を講ずる必要があると思うが、総理並びに通産大臣の御所見をお伺いしたいと思うのであります。
なお、今後の対策として最も重視しなければならない点は、ガスの保安規制の確立ということであります。その状況によって変わりますが、空気中のガスの濃度が数%から数十%になったとき爆発する状態になるといわれており、一方、都会には無数に起爆剤となる火種が存在しているのであります。それゆえ、地下鉄工事の工法を含めて、
現行のガス工作物に対する保安基準及び保安対策が妥当なものであるかどうか、非常に疑問であります。皮肉なことには、事故発生の日、ガス事業法
改正案が国会を通過したのでありますが、この
法律自体、
内容的に今後さらに検討を加えなければならないと思うのでありますが、通産大臣は、保安規制についてどのように考えておられるか、あわせて御所見をお伺いいたします。
次に、新しい都市づくりに対していろいろと論じられてきた問題の中に、過去何回か共同溝のことが取り上げられてまいっております。そのことは、今後の都市づくりにとって大きな一つの課題であるとともに、防災にとって大きな歯どめになると思うのであります。申すまでもなく、現在の大都市は、ガス、電気、電話、水道管、これが網の目のように張りめぐらされております。そして、その道路の上を重量車が走り、その交通量も激増の一途をたどっております。したがって、ガス管はもとより、水道管の破裂も各所に見られるのは、御承知のとおりであります。東京都内を例にとりますと、国道、都道延長の七〇%が年に一度は掘り返されているのが実情であります。これらのことを見ますときに、私は、ガス爆発事故というものが、いつどこでも起こり得るという可能性を秘めているものといっても過言でないと思うのであります。
昨年三月板橋区ガス爆発のあと、ガス防護対策
会議は、ガス管を共同溝に収容せよと答申をいたしておりますが、これも一つの大きな解決策であると思うのであります。共同溝は、直接埋設に比べて破損の危険はほとんどなく、点検も容易であります。ところが、マンモス都市東京の共同溝は、四十三年度にはわずか十キロメートルしかなく、四十四年度末にも、新たにわずか二十キロメートルしか建設されておりません。今回事故があった大阪では、共同溝はゼロにもひとしいのであります。
政府は、安全確保と人命尊重の立場から、もっと積極的に共同溝の設置を推進すべきだと思いますが、建設大臣の御見解をお伺いしたい。
最後に、今回の事故がなぜあのような大きな事故となったのか。それについては、ガス漏れに対する甘い見方と、避難誘導に大きな欠陥があったと思われるのであります。
大阪消防局の調査によりますと、一一〇番でガス漏れの第一報が入ったのは午後五時二十七分、そして現場到着が三十二分であるといわれております。消防法第二十三条の二項には、ガス、火薬または危険物の漏洩等に対する
措置として、その区域内における火気の
使用を禁止し、当事者以外の、区域からの退去を命じ、出入りを禁止することが
規定されておりますが、ガス会社の応急修理車が下部より燃えているにもかかわらず、実際には、通行人は相変らず通っており、付近の公園で遊んでいた市営住宅の子供たちまでが、見物に集まってきたのであります。しかも、爆発までに約十八分間も余裕があったにもかかわらず、
関係者は、群衆を安全な場所へ誘導するなど何ら効果的な
措置が講ぜられていなかったのであります。もしガス漏れに気づいたときに、工事
関係者や現場付近にいた警察官が、事の重大性を察知し、全員で一般群衆の避難誘導や交通規制などに当たっていたならば、少なくともこのたびのような大惨事を食いとどめることができたのではないかといわれておるのであります。このような、群衆や通行者を退避させることを怠った
関係者の責任は重大でありますが、
政府及び
関係者は、この点についていかなる見解を持っておられるのか、また、今後どのように対処されるのか、
関係大臣から誠意ある御答弁とその実行を心からお願いし、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕