○
大出俊君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました
防衛庁設置法、
自衛隊法、
防衛庁職員給与法の一部を
改正する
法律案に対しまして、
わが国防衛の
基本に触れて、以下若干の質問を行ないます。
佐藤総理、あなたの今年一月一日における年頭の所感によりますと、「七〇年問題は昨年暮れの総選挙で済んでしまった」と言っておられますが、この
ことばを文字どおり受け取るわけにはまいりません。
一九七〇年代において、
日本政府に対して
アメリカが抱いている
期待はいろいろあろうとは存じますが、とりわけ
日本の
軍事力、つまり
自衛隊の
アジアにおいて果たす
役割りについてであろうといわなければなりませんし、それはかかって今後の問題となっているからであります。
その証拠に、昨年四月三十日
ワシントン発APには、「
米国務省当局者は、三十日、
財界との
会談の席上、
日本が安全のために、
アジア諸国に
戦闘部隊を派遣することが政治的に可能になるには、
あと十年から十五年かかるであろう。第二次大戦を経験した
日本の
近隣諸国が、
日本の
軍隊を受け入れる気になるまでにも同じ年月が必要であろう。
日本、
韓国、その他
東北アジア諸国間では、ある種の安全のための取りきめをしようという
要素が少しずつ育っている、と語った」と報じており、この
会議では、
国務省の
ロジャース国務長官、
リチャードソン次官、
ジョンソン次官が演説を行なったともつけ加えられております。十年という歳月は、そう遠い先のことではないのであります。
この
アメリカの
期待は、今日、
佐藤・
ジョンソン会談を経て、
佐藤総理の言う国を守る気概、つまり
自主防衛の発想を生み、さらに
自前防衛の構想を背景としながら、
佐藤・
ニクソン共同声明となったわけでありますが、「
韓国の安全は
日本の安全にとって緊要である。」「
台湾地域における平和と安全の維持もまた
日本の安全にとって重要な
要素である。」と述べて、
日米の
集団的自衛の
一致範囲を、
韓国、
台湾まで広げてしまったわけであります。しかし、ふしぎなことに、求められているはずの
自衛隊の
役割り、分担が、この
声明には全くあらわされていないことであります。
そこで
総理に質問いたします。
グアム・
ドクトリン、さらには
ニクソン外交教書にいう一連の政策は、
一体軍事的に
日本に何を
期待しているとお
考えになりますか。
アメリカは、
条約上の公約は守る、
同盟国に核の傘を提供する、
戦争の場合はそれぞれ自国の
軍隊が第一義的に
責任を負う自助の
原則をとれという
グアム・
ドクトリン、そして「極東の安全は
日本の
責任、
米大統領沖繩以後で語る」という昨年末の
新聞報道等は、単なる
自主防衛だけのものではなく、
経済援助はもちろんのこと、将来の展望に立って、
武器援助、さらには
武力援助を含むものと解すべきだと思いますが、
共同声明における隠された
部分の一つとして明確に
お答えをいただきたい。
昨年六月二十九日の毎日
新聞によりますと、「
随時協議、
フル活用、
日米軍事機関の
新設も」という見出しで、「
愛知外相訪米の最大の焦点である
沖繩基地機能をそこなわないための
事前協議の弾力的な
運用につき、
政府は
イエスと言う場合に備えて、
随時協議の
フル活用と、
在日米軍と
自衛隊の
軍事統合機関の
新設を検討している。これは
日米間の
軍事情報交換をより緊密化する必要に基づくもの」と報ぜられておりますが、
軍事統合機関の
新設を
考えておられるのかどうか。昨年六月二十六日の
内閣委員会におきましては、必要あらばつくるという
趣旨の
答弁を
総理はされておられますけれども、この点をつけ加えて、この際、明確にしていただきたいと存じます。
さらに、
事前協議において
イエスと言う場合についての今
国会における
答弁を要約すると、朝鮮半島で
侵略があった場合、国連の認定がなくても、時期を失せず
日本の
態度決定をしなければならないことがあり得る、
米韓条約が発動されるような場合には、
在日米軍の
戦闘作戦行動の
事前協議で
イエスという場合が多いであろうということになりますが、この場合、
在日米軍が発進をするわけでございますから、当然
日本本土が
攻撃を受ける場合があり得ると
考えなければなりません。理の当然でございます。
総理はこの点、相手が
侵略をしてきたのだから
報復などはあり得ないとか、
報復攻撃という
ことばには抵抗を感ずるなどと今
国会で
答弁をしておられますが、
ことばのあやでごまかすことの許される問題ではありません。
国際法上も、
日本の
基地から発進する以上、この
基地を含む
日本の区域が
攻撃を受ける
可能性があることは認めざるを得ないはずであります。この点、明確にしていただきたいと存じます。
またこの場合、
日本の施政のもとにおける領域である限り、
安保条約第五条に基づく
日米共同戦闘になる。つまり
日本は
戦争に巻き込まれることになると
考えますが、あわせて明確な御
答弁をいただきたいのであります。
次に、
国防の
基本方針について、
中曽根長官に承りたい。
中曽根長官の言う
自主防衛の五
原則、つまり、
平和憲法を守り、
国土防衛に徹する、
外交と
一体となって
諸国との調和をはかる、
文民統制を貫く、
非核三
原則を全うする、
日米安保で補完する、でありますが、
新聞の報ずるところ、受け取り方がそれぞれ異なるように見えるわけでありますが、この五
原則は、
一体四次
防策定にあたっての単なる
長官の心がまえを述べたものにすぎないのか、あるいは
国防の
基本方針を変更して、たとえば
非核三
原則を全うする、外部からの
攻撃に対しては
自主防衛を基調として
安保体制を補完とするというように、新
国防の
基本方針中に明定されるおつもりでの
発言か、承りたいのであります。
さらに、
国防の
基本方針にいう
国力とは何であり、
国情とは何をさすのかを明らかにされたい。
中曽根長官は、
国力、
国情を削り、
必要度を第一とすると答えておられるようでありますが、単に
自衛のため必要な
限度においてということになるとすれば、かつての
松野長官の
答弁のように、向こう岸が高くなればこちらの岸も高くしなければならないという流儀のように、
政治的選択だけになり、
財界の強要と相まって、いわゆる
軍事大国への前進を早める結果になると
考えますが、この点明確にされたいわけでございます。
さらにまた、かくも重大な
発言をする以上は、当然
財政当局あるいは
国防会議あるいは
幹事会等との詳細な相談の上であろうとは存じますが、この点、
長官、さらにまた
大蔵大臣に承りたいのであります。また、
財政当局として、
国力、
国情がなくなるわけでございますから、年間二兆円の
防衛費、つまり西独、フランスの
国防軍並みの予算にしろなどという
財界の主張、また、そのために
経済のバランスをくずすようなことに将来なるとしても、何ら理論的な制約、歯どめがないわけでありますから、この点、
財政当局は
一体いかにお
考えかをあわせて
お答えをいただきたいのであります。
次に、第四次防について承ります。
特に、
国会における
長官の
答弁によりますと、
本土防衛上必要な
制空権、を持つ。その
範囲は、装備や
科学技術の発達などできまる。また、
本土周辺の
一定の距離における制海権も必要である、と
新聞は報じております。これはまことに穏やかならぬ
発言といわなければなりません。旧来、
航空作戦の
見地からする
日本の
防空態勢は、これは
制空権ではございません、
Aレーダーサイト捜索範囲、これは高々度で
敵機が侵入するときをさします、さらに
Bレーダーサイト、超低空で
敵機が侵入するときをさしております、この二つに分かれております。
Aレーダーサイトは、
韓国、樺太を含むソビエトの一部にまで及んでおります。この場合、マッハ一・五で中国より東京に至る時間は三十五分から四十分、二マッハの場合には三十分ないし三十五分程度であり、九州の場合を例にとりまして二十五分ないし三十分程度かかります。したがって、侵入機の捕捉は二十分以内となり、比較的本土に近い。しかしこれを広げた場合、当然北朝鮮、中国、ソビエト領を含む結果となるわけでありまして、これは理の当然であります。今月二十三日の人民日報が報ずるように、松村訪中の記事は片すみに追いやられまして、「軍拡進める
佐藤政権、
日本反動派、軍国主義復活と軍拡戦備促進に狂気」、気違いじみているというわけであります。こう書いておりますのも、これまた当然の結果と、ある意味ではいわなければならぬと存じます。
昨年八月二十九日に、旧来、
韓国、ソビエトを含むことになっておりまして、
日米韓共同作戦になるのではないかという追及を受けておりました防空識別圏を公示して、外国に及ばない中身に改めておりますことと比較いたしまして、
一体何を
考えているのかを疑いたくなるわけであります。加えてAEW、早期警戒機、つまり空飛ぶレーダーを持ち、制海権をというのでありますが、この点まず
総理から、最近の
国防づいた
中曽根長官の御
発言について、
近隣諸国の批判をも含めまして、これがほんとうに平和
外交に徹するという
総理の方針に合致するものかどうか、いささか慎重を欠くきらいがないか、私は、この点を明確に伺いたいわけであります。(
拍手)
さらに
制空権、今日
制空権という
ことばはなく、航空優勢などと称しておりますが、さらに制海権、これについて
中曽根長官より、どういうことを言っておられるのか、納得のいくような御
答弁を賜わりたいのであります。
次に、この法案によると、
海上自衛隊五百十人、
航空自衛隊四百七十四人、計九百八十四人
増員となっておりますが、四次防を前提として以下具体的に
中曽根長官に質問をいたします。
三月一日現在、
陸上自衛隊定数十七万九千人、現在員十五万六千五百七十九人、充足率八七・五%、つまり欠員が二万二千四百二十一人あるのであります。
海上自衛隊定数三万七千八百十三人、現在員三万五千六百十五人、充足率九四・二%、欠員二千百九十八人。
航空自衛隊定数四万一千百八十三人、現在員三万九千四百六十三人、充足率九五・八%、したがって欠員千七百二十人になると存じますが、三月一日でございますが、この数字に間違いがないかどうか。ないとすれば、将来の充足見通しは、
一体これはどういうことになるのか。適齢人口十八歳から二十四歳までが大きく減少をし、
経済的な伸び、進学率の向上とあわせ
考えるときに、今日の
制度においてこれ以上望むことには全く無理があるわけであります。
昨年は、隊員募集、この関係で広報費を含めまして何と四億四千万円にのぼる金を使っているわけであります。また女性の人気歌手まで動員をして募集をしているわけでありますが、明らかに邪道といわなければなりません。定員増をやめていただきまして、現状凍結をおはかりを願い、国民にこれ以上不信を買わぬ方法を御考究願いたいと存じます。
お答えをいただきます。
さらに、陸上において戦車定数千百十両ございますが、現在数はわずかに六百七十一両しかございません。これも実は予算ではなくて、人の問題であります。航空のナイキをとってみましても、スキル、これは熟練度をさしますが、スキル七レベル百九十人ないし百九十五人の要員に対しまして、現在員百八十五人、五レベル五百人の要員に対しまして四百人、三レベルになってようやく千二百人の定員に対しまして千三百人であります。ナイキの国際射撃競技で一位を占めたなどといっておる段階ではございません。総体的に満足なものではないわけであります。四次防を声を大にして云々する前に、足元をまず見ていただかなければならぬということになろうと存じます。(
拍手)
さらに、
予備自衛官についてでありますが、今日陸のみ三万三千人の定数でございますが、現在員三万一千五百九十九人で、ここにも千四百一人の欠員を持っております。にもかかわらず、今回この法案は、陸上三千人の
増員の
提案であります。さらに今回初めて海上三百人をつくるというのでありますが、郷土防衛隊百万人をつくれ、とても人が集まらないと提唱されたのは、ほかならぬここにおいでになります
船田さんでございます。現行
制度でこれ以上ふやすことは、明らかに無理でございます。やめるべしと
考えますが、
お答えをいただきたいのであります。
さらに、准陸尉、准海尉、准空尉の
制度の
新設でございます。略称
准尉であります。かつて兵籍にあった私たちには、略称
准尉なるものはなつかしい名前ではあります。しかし、世間一般の人たちは、必ずしも自然体とはいえない直立不動型で勇ましくラッパをお吹きになっておられます中曽根さんの御姿勢とあわせまして、いよいよ旧軍復活近しと受け取りかねぬ今日的事情にあります。まして、先般防衛大学の大森寛校長の卒業式式辞に見られるように、新しい軍人像、軍人勅論の徳目の推奨など、国民のコンセンサスを求める方向では断じてないと存じます。
准尉制度をやめて、世間の誤解を解き、別途人間性尊重なり処遇の
改善を
考えられてはどうか、
お答えをいただきたいのであります。
次に、外務大臣に国連協力について承りたい。
かつて、国連協力法案が
新聞をにぎわしたことがございます。
国会論争におきましては、派兵はできないが派遣はできるというニュアンスの
答弁まで出ております。
本年一月三日のサンケイ
新聞によりますと、一九七〇年代のわが国
外交の柱として国連中心
外交を掲げ、「わが国の国連軍派兵とそのための国内世論の啓発を提起しているが、まず
自衛隊法の
改正をしなければならず、たいへんな政治問題になるため、外務省内でも極秘案の段階だが、
政府首脳は国連で
発言権をより強力にするためには絶対必要不可欠な
措置だと認めており、
国会論議を通じてその方向を次第に明らかにしていくものと見られる」、こう本年一月三日のサンケイに書いてあります。
ウ・タント事務総長が参ります。その
新聞の報ずるごとく、この辺で
政府の国連強化のその
内容、国連軍の派兵の構想を表に出していただきたいと存じます。
これに関連して
総理に御質問をいたしますが、昨年の十月八日、ベトナムから
韓国を回りまして
日本にやってまいりまして、
佐藤総理にお会いになりました
アメリカの
統合参謀本部
議長ホイーラー氏は、
総理と一時間半にわたりまして秘密
会談を持っておりますが、この中でホイーラー氏は、ハワイの太平洋
統合軍司令部への
自衛隊の参加の要請を
総理にいたしております。
韓国にいる国連軍としての米軍の一個師団が来年撤収をすることについて、これはすでにレアード
国防長官が
アメリカにおいて明らかにいたしておりますが、
韓国は
日本がかわって安全保障に努力してくれるならば了承すると言っている、この旨を
総理に伝えて、
総理はこれを両方とも了承をしたというきわめて確実なる情報を入手いたしておりますが、ホイーラー
会談のこの
部分について明確な
お答えをいただきたいのであります。
最後に、外務大臣、防衛庁
長官に質問をいたします。
去る三日、リーサー米陸軍
長官が議会に
提出をいたしました
声明によりますと、在
日米陸軍の太平洋地域における補給中継
基地、これを沖繩に集中するというものであったわけでございますが、東郷
アメリカ局長は、沖繩の補給
基地化は不可能であると述べております。太平洋全域にわたる補給
基地という意味において、安保との関係上この
答弁になったものと思いますが、外務大臣よりあらためてこれについての
経過と御所見をいただきたいのであります。
これに関連をいたしまして、防衛庁
長官に承りたいのでございますが、前回、私、予算分科会におきまして質問を申し上げましたが、リーサー
声明を御存じかと申し上げましたら、情報程度に入手していると言われましたが、今回
在日米軍司令部、座間にございますが、これは近く神奈川県の渉外部長に対しまして、県下の陸軍
基地に働く三百五十人にのぼる
人員整理を通告する確たるニュースが入っております。このうち、旧来問題となっておりました岸根の陸軍病院は全面閉鎖、二百名をこえる解雇、これが見込まれております。さらに小柴の貯油施設なりミルクプラントなり等を含めて、陸軍
基地の大半が空海に移管をされるということもほぼ明確になっております。
責任のある御
答弁を承りたいわけであります。
また、この例に見られますように、施設庁の情報入手、防衛庁の情報入手がおくれている結果、全く突然、唐突に解雇が続き、昨年末三千人、本年一月以降四千四百人をこえるわけであります。しかも、事前調整期間三カ月が全く無視をされ、生活保障対策は確立されておらず、雇用転用も全く不十分なままであるわけでありまして、まさに人道問題といわなければならぬと存じます。
基本労務
契約の変更、特別給付金の特例
措置、雇用安定法の制定、他産業等への優先就職、
政府自治体への優先雇用あるいは全駐労離職者センターへの助成等々、当然
責任ある
措置をとってしかるべきものと
考えるわけでございますが、この点特に明確な
お答えをいただきたいのであります。
二月十八日の
ニクソン外交教書には、
日本という
ことばが何と六カ所も出てくるわけでございます。まさに真珠湾以来であろうと存じます。