○
内閣総理大臣(
佐藤榮作君)
角屋君に
お答えをいたします。
まず最初に、
新聞の読み方から
お尋ねでございますが、私は、
新聞を見るときは、まず第一面から順を追って見ます。この点をはっきり申し上げておきます。しかしながら、私は、ただいまの
政治問題についての第一面にも注意いたしますが、
三面記事といわれる、いわゆる
国民の
日常生活をいかに各
新聞が受けとめておるか、こういう点についても十分注意しておるつもりであります。私は、
政治の
責任者といたしまして、
国民生活全般について注意深く見ているつもりであります。
時代のテンポが早く、
政治の
対応策が必ずしも十分でない面が多々あることは十分承知しております。このおくれをどうすればカバーできるのか、日夜心を痛めておるような次第であります。一九七〇年代は
内政の年であるという私の
発想の生まれたゆえんでもあります。私は、
経済発展に伴って生ずる
国民生活上の諸問題の解決こそ、七〇年代の
政治の最大の
課題であると考えており、全力をあげてこれに取り組む決意を、重ねてこの機会に表明しておきます。
次に、
人間性豊かな
社会の
建設は、七〇年代の
政治の
課題として、先般の
施政方針演説におきまして明らかにしたとおりであり、四十五
年度予算におきましては、その第一
年度として、積極的にその肉づけをはかったものであり、特に大幅な減税の実施、
社会保障の顕著な
充実、
社会資本の
整備の促進、
物価安定のための配慮等に十分その意図をおくみ取りいただけるところと考えます。それぞれの詳細な
内容につきましては、いずれ
予算委員会等におきまして、具体的に、御納得がいただけるようにいたしたいものだと存じております。
次に、
物価問題について
お答えをいたします。
国民生活の重要
課題として、まず
物価問題について
お尋ねがありました。
政府としても、
物価安定を第一義として
予算編成を行ない、また、今後の
経済運営を行なうものであることは、その具体的
内容とともに、昨年来の御
質問に答えて、しばしば明らかにしたとおりであります。重ねて詳しくは申しません。
四十五
年度の
消費者物価の
上昇を四・八%にとどめることは決して容易に実現できるものとは思いませんが、
財政金融政策の総力をあげてその実現につとめてまいる決意であることを、重ねて申し上げておきたいと存じます。
なお、
角屋君は、
物価安定のために主要物資の
価格調査と監視体制の強化をはかれとの御意見でありましたが、独占
価格や買い占め
価格等の不当な
価格形成が行なわれる場合には、これを
規制する必要があることはもちろんであり、このため、公正取引
委員会や関係省庁の機能の強化については、今後とも、御注意がありましたので、十分配慮してまいる考えであります。
御提案の
主要物資価格調査法の制定につきましては、種々利害得失が考えられますので、なお、いましばらく十分勉強さしていただきたいと考えます。
次に、
社会保障について、今後の五年間にどこまで高めていくかとの
お尋ねでありましたが、現在、
経済審議会におきまして、新しい
経済社会発展計画を検討中であり、いずれその策定の暁におきましては、
計画目標年次である
昭和五十年の姿について、明らかにできるものと考えております。
この場合、
角屋君は、
社会の恵まれない
人々の
社会保障について、全面的かつ早急に
対策を行なえとの御意見でありますが、私も、できる限りそのような気持ちで
施策を進めてまいりたいと考えております。
次に、
児童手当についての私の
考え方は、昨日、公明党の竹入君の御
質問に対して詳しく
お答えしたとおりで御了解いただきたいと思います。四十五
年度に実現に至らなかった
基本は、その際にも申し上げましたように、関係
審議会で十分な成果を得るに至らなかったことのほか、関係者の御理解を得るまでには機が熟さなかったことにあり、今後、関係各位の十分な御理解、御協力のもとに、りっぱな成果を得て、この新しい制度の可及的すみやかなる発足実現に移せるよう、最善の努力を払ってまいる決意であることを、重ねて申し上げるにとどめたいと存じます。
次に、
公害問題でありますが、
公害はその性格上、因果関係の立証上困難な問題が多く、
政府におきましては、従来、重大な
公害問題が発生した場合には、関係各省が協力して
原因究明のため必要な
調査、研究を推進するとともに、所要の
対策を講じ、他方、
責任の明確化にもつとめてきたところであります。しかしながら、
公害被害者に対する民事上の補償問題の解決には相当の時間を必要とするなど、司法制度による救済のみによっては必ずしも十分に対処し得ない実情であり、このため
政府では、
公害被害のうち、当面緊急に救済を必要とする著しい健康被害については、昨年末に成立を見た健康被害救済特別措置法に基づき行政上の措置として、本年二月から、大気汚染や水質汚濁によるいわゆる
公害病認定患者の医療費などの円滑な救済をはかることとし、費用につきましては、
企業に
社会的な
責任を分担させるたてまえから、産業界にその二分の一を拠出させることといたしました。
また、
公害紛争については、行政上の制度を設けてその迅速かつ適正な解決をはかることを目的とした
公害紛争処理法案を近く
国会に提出し、御
審議を願う予定であり、本法の運用を通じ、
企業責任の問題も次第に明らかにされ、また補償問題等の早期解決にも資するものと、かように考えております。
次に、
公害罪についてでありますが、現在、法制
審議会におきまして、刑法の全面改正の
審議を進めており、
公害罪の新設もその中で懸案となっていると聞いております。議論の過程では、刑法で
公害を取り締まるのは困難との意見も強いようでありますが、いずれ
政府としてはその答申を得た上で慎重に検討したいと考えます。
次に、
裁定制度については、いま
国会にあらためて提案を考えている
公害紛争処理法案におきましては、
裁定制度の採用を考えておらず、
公害紛争の簡易、迅速な解決をはかるため、和解の仲介、調停、仲裁の制度を設けることとしております。将来、
公害紛争の推移、紛争
処理の経験等を勘案し、
裁定制度の採用を含めて、制度全般を再検討する機会もあろうかと、かように考えます。
次に、交通災害についてでありますが、その激増は、
内政面で私が最も心を痛めている問題の一つであります。今後も、
交通事故の絶滅を期すかたい決意をもってこの問題に取り組んでまいります。
お尋ねのありました交通
安全対策基本法につきましては、
政府は今
国会に提出する予定で準備を進めておりますが、国、都道府県、市町村の各
段階において、
交通事故防止のための具体的な目標や
施策の大綱が示されることになり、交通
安全対策を総合的かつ
計画的に推進する上で画期的なものになるものと
期待されます。
なお、
社会党にも独自のお考えがあるように承っておりますが、これはむしろ
委員会で御
審議を願い、とくと私どもも御意見を伺いたい、かように考えております。
交通
安全対策につきましては、来
年度予算の編成にあたっても、交通
施設の拡充、交通安全思想の普及、被害者救済
対策の強化等、諸般の
施策の飛躍的な
充実をはかったところであります。今後とも一そう留意してまいります。なお、
自動車損害賠償
責任保険の最高保険金額につきましては、昨年末、従来の三百万円を五百万円に引き上げたところであり、今後は賠償
水準の推移、この保険の性格等を考慮しつつ慎重に検討していく考えであります。
次に、宅地問題について
お尋ねがありました。宅地、土地問題について
お答えをいたします。
まず、一
世帯一
住宅はいつ実現するのかとの
お尋ねでありましたが、残念ながら達成の時期を具体的に申し上げることは困難であります。しかしながら、私もできるだけ早い機会に
わが国のすべての
人々が快適な住居で
生活できるようになることを願っていることは、
角屋君と全く同様であり、今後とも
住宅対策の積極的な推進をはかって、
国民各位の御要望にこたえたいと思います。
次に、
公営住宅の
家賃につきましては、
住宅の中高層化による土地の高度利用、
住宅生産の工業化により
建設費の
上昇を押えるなどの措置により、
家賃をできるだけ安くするよう、今後ともつとめてまいりたいと思います。
また、土地問題につきましては、
地価対策閣僚協議会を設け、諸般の
施策を総合的に推進しておりますが、公的
規制の強化については、私有権と
社会公共の利益とをどのように
調和させるかといった困難な問題もありますので、各方面の意見をも十分伺って、慎重に検討してまいりたいと考えております。
次に、
角屋君からは、農政の専門家として、当面する農業問題について、きわめて適切な御
質問をいただきました。もとより米の
生産調整は、農政の当面する緊急な
課題であるし、また、離農の促進は、就業構造の改善をはかる上において重要な
施策であると考えるものでありますが、総合農政の推進については、これらの
施策のみにとらわれることなく、農業を近代的産業として
確立し、農業従事者の所得と福祉の向上をはかるため、四十五
年度予算においては、構造、生産、
価格、流通等の各般の面にわたって、
施策の一そうの
充実をはかっており、魅力ある近代的農業の
建設につとめてまいります。
次に、
生産調整が成功しなかった場合には食管法を改正する意図があるかどうかとの
お尋ねがありました。この問題はすべての
農民諸君が深い
関心を持たれるところと思いますので、私の所感を率直に申し上げておきたいと思います。
米の供給過剰によって、このまま放置すれば、
食管制度の存立の
基盤さえゆるがされるような
事態となっていることは、すでに
農民諸君にも十分御認識いただいたことと存じます。このような
事態を打開するために行なおうとする米の減産措置は、まさに非常緊急の措置であり、
政府としては異常な決意をもってこれに臨み、他方、地方公共団体あるいは生産者団体も、これに協力して所期の目標の達成を期しているところであります。いまやその第一歩を踏み出そうとしているときでもあり、現
段階においてその結果を種々そんたくすることはいかがかと考えますが、万一所期の減産が実現しないようなことになれば、
食管制度の根幹を維持することはますます困難になると思われますので、このような
事態を十分に認識して真剣に
生産調整に取り組まなければならない、そうして
食管制度の根幹を維持したい。いまはその決意だけを明らかにしておきたいと思います。(
拍手)
また、以上申し上げたところによって、農地の買い上げによる五十万トンの減産に
自信があるかとの
お尋ねに対する
お答えともいたしたいと存じます。五十万トンの減産のためには十一万八千ヘクタールの水田の転用が必要であり、これは決して容易なこととは考えておりませんが、
農地転用基準の緩和措置をはじめ、地方公共団体による公共用地の先行取得の促進、
民間による宅地、工場用地等の取得の円滑化のため、関係官庁の総力をあげて適切な
対策を進め、極力その実現をはかってまいる所存であります。
次に、
農業者年金制度は、
日本農業の
現状にかんがみ、
農業経営者の老後の
生活の安定に加え、優秀な農業担当者の確保、経営移譲の促進、経営規模の拡大など、農業構造の改善に資するという観点から、総合農政推進のための
施策の一環として考えたものであり、これは
角屋君からもほめられて私もたいへんありがたく、正しく評価していただいておるとお礼を申し上げます。
その対象者は、一定の要件を備えた農業者といたしております。したがいまして、林業者につきましてはその大部分が農業者でもあり、実質的に本制度の対象となり得るものと考えますが、漁業者については、漁業が農業と事情を異にする点もあるので、当面本制度の対象とすることは考えておりません。
次は、
日米繊維問題についての
お尋ねでありました。この問題については、すでに衆参両院においての決議もいただいておりますので、私どもは
国会の決議を尊重し、そしてその線に沿ってただいま
繊維問題と取り組んでおる次第であります。
私が申し上げるまでもなく、
日米間の関係におきましては、十分その友好関係を持続するように注意していかなければならないことは、冒頭の施政
演説でも申したとおりであります。しかし、この問題につきましても両国関係の利害が衝突しておる、こういうような
状態がありますので、
政府も、
民間の業界の
立場にも十分の理解を示しながら、ただいまいろいろ案を考えておる最中であります。言われるような自主
規制というもの、これは何と申しましても
民間の業界の理解
なしには、また承認
なしには進め得ることではありません。
政府だけがとやかくいたしましても、きまる問題ではありません。また、この問題がいかにも沖繩の返還問題と何か関係があり、
政府は密約でもしたのではないかということが流布されております。しかし、この
繊維問題は、私どもがワシントンに参りまして沖繩交渉いたします際、すでにジュネーブにおいて交渉が始まっていたのであります。したがいまして、沖繩問題とこの問題をからますようなこと
なしに、私どもは本来あるべき姿、そのもとにおいてこれと取り組むのが正しい姿だと思います。
社会党の方々におかれましても、ただいま申し上げますように、その経過等を考えられて、二つを混淆しないように、混線しないようにひとつお願いをいたします。
次に、
成田委員長に対する昨日の私の
答弁が不十分であり、重ねて
角屋君から
お尋ねがございました。私も重ねて多くを申し上げる必要はございませんが、
国会に
予算といえども
修正権のあることは申し上げるまでもないことで、私も十分承知しております。満場一致、そういう場合があるならば、これは
政府ももちろんそれに応ずべきものである、かように思いますので、その点だけ一言申しつけ、いままでの足らなかった点を補足しておきたいと思います。
また同時に、私どもは多数だとはいわれておりますけれども、とるべき少数党の正しい御意見は、これを採用するにやぶさかでないことも、あわせてこの機会に申し上げておきます。ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣福田赳夫君
登壇〕