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1970-11-13 第63回国会 衆議院 法務委員会 第32号
公式Web版
会議録情報
0
昭和四十五年十一月十三日(金曜日) 午前十時三十二分
開議
出席委員
委員長
高橋
英吉
君
理事
小澤 太郎君
理事
田中伊
三次君
理事
福永
健司君
理事
畑 和君
理事
林
孝矩
君 石井 桂君 河本 敏夫君 島村 一郎君 千葉 三郎君 永田 亮一君 松本 十郎君 村上 勇君 沖本 泰幸君 岡沢 完治君 青柳 盛雄君
委員外
の
出席者
法務大臣官房長
安原 美穂君
法務省刑事局長
辻 辰三郎君
法務省入国管理
局長
吉田
健三君
公安調査庁調査
第二部長 大泉 重道君
最高裁判所事務
総長
吉田
豊君
最高裁判所事務
総局総務局長
長井
澄君
最高裁判所事務
総局人事局長
矢崎
憲正君
法務委員会調査
室長 福山 忠義君 ————————————— 本日の
会議
に付した案件
裁判所
の
司法行政
に関する件
法務行政
に関する件 ————◇—————
福永健司
1
○
福永
(健)
委員長代理
これより
会議
を開きます。 指名により、私が
委員長
の職務を行ないます。
裁判所
の
司法行政
に関する件及び
法務行政
に関する件について
調査
を進めます。 質疑の
申し出
がありますので、これを許します。
高橋英吉
君。
高橋英吉
2
○
高橋
(英)
委員
委員長席
から質問しても、いいという話ですけれ
ども
、少し脱線するかもしれませんので、この席から質問さしていただきます。
最高裁判所
の
関係者
にお尋ねいたしたいと思いまするが、第一は、先日、
裁判官訴追委員会
で
決定
になりましたいろいろなことに対して、それが不当の
政治的介入
とかなんとかいうふうな
批判
があるようでございますが、これに対してどういうふうなお
考え
を持たれておるかということについてお尋ねしたいと思います。 大体、
弾劾裁判所
の
制度
は、
憲法
六十四条に
規定
してあって、厳として全
国民
が守らなければならないことは言うまでもないことでございまするが、その
憲法
は、
弾劾裁判所
の
構成
に対して、
両院
の
議員
で
構成
するというふうな
規定
をしております。
両院
というのは
国会
ということは言うまでもないことですが、
国会
とはどういうところであるかということもこれはもう説明の必要はありますまい。
憲法
で、
国会
が
国権
の
最高機関
であるということ、それから
弾劾裁判所
の
委員
は、
両院
の
議員
で
構成
するというふうな
規定
でございますが、
両院議員
というのはどういうものであるかということ、これも説明する必要はございますまいけれ
ども
、
憲法
を読み返してみますると、全
国民
を
代表
する選挙された
議員
で組織する、ということが四十三条にあるわけでございます。さらに
憲法
の
前文
では、
国民
は正当に選挙された
代表者
を通じて
行動
し、ということで直接
行動
を禁止する、否定するということでもないでしょうけれ
ども
、とにかく重要な
国民
の
意思表示
については、正当に選挙された
代表者
、すなわち
国会議員
を通じて
行動
しなければならないというふうなことを
前文
に厳として書いてあります。 さらにまた、
弾劾裁判所
の
構成分子
ということになりまするが、
訴追委員会
というものは、これはもう
弾劾裁判所
とは一体不可分のものでございまするから、これは
弾劾裁判所
に準ずるものと言うこともできますでしょうし、
弾劾裁判所
の
関係
の
法規
の中に
規定
されておるわけですから、やはりこの
弾劾裁判所
に対する
憲法
の
規定
は、
訴追委員会
にも準用されることとわれわれは確信いたしております。 それから、
三権分立
の問題について、
立法
府が何か
司法権
を侵害したような、
司法権
に
介入
したというふうなことの
批判
もあるようでございまするが、これは非常に
三権分立
をはき違えておるのではないかというふうに
考え
られるのであります。すなわち
三権分立
とは、
行政
、
立法
、
司法
が何も無
統一
にばらばらに発動するということを
意味
するのではなくて、
共同
の
至上目的
、すなわち古い
ことば
でいいますれば、
国利民福
のためにそれぞれその任務を
独立
して遂行するのでございまするから、その
共同至上目的
を達成するために、
お互い
に
統一
をとりながらやらなければならない。それがためには、それぞれ越権、
独走
、
暴走
の行為が出ないように
お互い
に
抑制
し合うこと、
チェック
し合うことが必要であるということは
三権分立
の大
原則
でございまするが、これは私が説明するまでもないことと思います。 したがって、
弾劾裁判所関係
の
憲法
の趣旨は、全
国民
の
代表者
である
国権
の
最高機関
である
国会
の
判断
、もしくはその
構成機関
である
両院
の
議員
の
判断
、すなわち
ことば
をかえて言いますれば、
国会議員
の高度の
政治的判断
、高度の
国会議員
的な
判断
というものを
憲法
は要求しておるのであって、この
国会議員
の
判断
なるものは、自然、
政治家
でございまするから、そこに
政治
的な
判断
が生ずる、
政治的判断
を要求しておるものと私
ども
は信じております。すなわち
司法
の
独走
、
暴走
を
抑制
するために、全
国民
の
代表者
である
国会
でこしらえられております
弾劾裁判所
において、この
暴走
を抑止するために、高度な
政治的判断
、高度の純粋な
国会議員
的な
判断
、それを
憲法
は要求して、そしてその
チェック
、
抑制
の効果をもたらそうとしておると思うのでございますが、これに対してどういうふうにお
考え
でございまするか。 私の論理からいいますと、やはり
憲法
のその
精神
からいいますると、各界、各層の一部の者が
訴追委員会
の
決定
を
政治的介入
と称したり、いろいろな
批判
をいたしておりますが、これは
憲法
の
規定
をことさらに曲解したり、
三権分立
の大
原則
を知らないか、知っても
憲法無視
の
議論
、すなわち反体制的なその主張をどこまでも貫こうといたしまして、そうして
憲法無視
の
議論
を展開しておるのではないかと思いまするが、これはどうお
考え
ですか。 さらに、
国会
が
国民
から遊離しておるとか、
国民
の声を
代表
していないとか言う者がありますが、
国会議員
はそれぞれ選挙を通じて、その他常に
国民
と接触して、常に
国民
の声を聞きつつ
国政
に献身しておるのに反しまして、一部の反体制的な
思想
の持ち主の
偏向意見
、すなわち現体制の崩壊を期待する、そういうふうな反体制的なものが実現することを期待しておる一部の者の
批判
、また民衆と、
国民
と何らの接触を持たない象牙の塔や密室のデスクの上で特につくられた独善的な作為的な
意見
、こういうものを
世論
といっているようにも思いますが、これに対してどういうふうにお
考え
ですか、まずその点をお伺いしたい。——いろいろと問題を含んでおりますから、御研究の上にまた他日御回答願いましても差しつかえありません。
福永健司
3
○
福永
(健)
委員長代理
それはそれとして、いまはいまとしてたぶんお答えがあると思います。
吉田豊
4
○
吉田最高裁判所長官代理者
このたびの
訴追委員会
の
決定
につきましては、
訴追委員会
という
独立
の
機関
が独自の
判断
に基づいてなされたものでありますし、
裁判所
といたしましては、これについてとかく申し上げる
筋合い
ではない、こういうふうに
考え
ております。
高橋英吉
5
○
高橋
(英)
委員
それから、問題はちょっと違いますが、
裁判
の手続の
関係
で、
裁判官
の問題なんかで
除斥
とか
忌避
とかいう
規定
がありますが、これはたとえ
裁判官
が
ほんとう
に良心に従っていろいろな
言動
をいたしますにいたしましても、判決いたしますにいたしましても、特別の
関係
があればその公正を疑われるというので、
除斥
、当然法律上その
裁判
には関与できないというふうな
制度
、そういうふうな
規定
もありますように、とにかく
裁判
の公正というものを疑わし
むるようなそういうふうな条件
があった場合には、その
裁判官
がいかに
清廉潔白
の人であって公正な判決をしたところで、
国民
を納得さすことはできないというふうな
精神
でこういう
規定
ができておるのであると思います。こればかりではない、それに類似するいろいろの社会的な
条件
があると思いますが、そういうふうな
意味
で、やはり
除斥
にまではいかない、
忌避
にまではいかなくても、おのずからそこに
裁判官
の
モラル
というものがあって、誤解を受けないように、公正を疑われないようにつとめなければならないというふうなことが
原則
と思いますが、これはどうでしょうか。
長井澄
6
○
長井最高裁判所長官代理者
まことにお説のとおりでございまして、
司法
は、
国民
の信頼を得ますためにはもとより
実質
が重要でありますけれ
ども
、その
実質
に相伴いますところの
政治
的な
中立性
、あるいは、これは最近の
表現
でありますけれ
ども
、従来から申されております
裁判
の公平、公正というようなものにつきましては、その外観もきわめて重要なものであろうかと存じます。
制度
的な保障といたしましては、ただいま御指摘のように、
除斥
、
忌避
というような
制度
がございます。そのほかに回避というような
制度
も設けまして、きびしい
モラル
を
裁判官
に期待しているわけでございまして、その点におきまして、
裁判官
の倫理と申しますか、
モラル
というものも、
裁判官
に期待された重要な問題であろうと私
ども
は
考え
ておる次第でございます。
高橋英吉
7
○
高橋
(英)
委員
それから、こういう問題もありますが、どうお
考え
ですか。 たとえば、今度
訴追委員会
で
青法協
の会員であるかどうかということを問い合わせたというふうなことですが、それに対して何か
思想
的な、
一つ
の踏み絵的な
行動
であるとか
決定
であるとかいうふうな
批判
もあるようでありますが、もしその
青法協
というものがやましいものでなかったならば、その資格を問い合わされても、めったにそれに対して問題が起こるはずはない。これは、
青法協
ということを名のること自身が何かやましいということでもあるように、みずから語るに落ちるというふうな
関係
にあるのではないかと思いますが、どうでしょうか。
矢崎憲正
8
○
矢崎最高裁判所長官代理者
先ほど
の
訴追委員会
の
照会
につきましては、
事務総長
から申し上げましたように、
憲法
、
国会法等
によって
規定
され、それに基づく国家の
機関
である
訴追委員会
で、独自の権限に基づいてなされた
措置
でございまして、
裁判所
としてそれに対してとやかく申すべき
筋合い
ではない、こういうふうに
考え
ているわけでございます。
高橋英吉
9
○
高橋
(英)
委員
いろいろ飛び飛びで質問することになりますが、
先ほど
の
訴追委員会
の
憲法
上の地位に戻ってもう一点申し上げて御答弁をわずらわしたいと思うのです。
先ほど
申し上げましたように、
国会議員
は全
国民
の
代表
であると
憲法
は
規定
しておりますが、その全
国民
の
代表
である
国会議員
が、全
国民
の心を心とし、その
意思
を
代表
していろいろな
国政
に関する
行動
をとるというふうなことになっておりますが、それでも私は、
善政
のないところ多数なしというので、多数を獲得するような党派は必ず
善政
をしいておるから、
善政
をしくからという期待のもとに多数が選出されておるのでありますから、全
国民
の大多数の
代表者
の声であるからその
意見
も非常にいいと思うのですけれ
ども
、しかし、
訴追委員会
なり
弾劾裁判所
の
規定
では、その上になお慎重を期して、三分の二の賛成がなければならないというふうにまで非常に厳重な慎重な
規定
をいたしております。それほどの
独立機関
に対してとやかく
批判
するのは、たとえば検察庁がいろいろな
事件
を
捜査
するのに、その
捜査
の
方法
が間違っているとか一々具体的に
批判
したり、
裁判所
の
裁判
の内容について一々
批判
するというようなことは、
捜査
の妨害にもなるし、
裁判
の公正を疑わし
むるところの原因
にもなるというふうなことで、これは
マスコミ
も遠慮しておるようでございますが、
ひとり国会議員
は、
マスコミ
に弱いとかなんとかいうふうなことで、いろいろ
憲法否定
、
憲法無視
のような
思想
のもとに
批判
を受けているようで、はなはだ心外にたえないのですが、この
訴追委員会
の
規定
、
弾劾裁判所
の
規定
は慎重の上にも慎重を期した
法規
であると思うのですが、それはどうお
考え
ですか。
矢崎憲正
10
○
矢崎最高裁判所長官代理者
仰せのとおり、
国会法
、その上にある
憲法等
により制定された
制度
でございまして、慎重に御審議の上制定された現行の
制度
である、こういうふうに私は
考え
ております。
高橋英吉
11
○
高橋
(英)
委員
それから、
福島判事
が辞表を提出したときに、
訴追委員会
の
決定
があった後に
札幌裁判所
のほうでああいうふうな
決定
がありましたのに対して、
政治勢力
に迎合したというふうな、そういうふうなことを言っているようですが、これは
弾劾裁判所
とか
訴追委員会
というふうなものの
憲法
における厳たる
規定
を否定し、無視したところの
言動
ではないかと思いますが、これはどうでしょう。どうお
考え
ですか。
矢崎憲正
12
○
矢崎最高裁判所長官代理者
決して
札幌高裁
の
処分
が
政治勢力
に迎合するとか、あるいは
訴追委員会
の
決定
に押されてなされた
措置
であるというようなことは、全国の
裁判官
だれも
考え
ていない。そういうことを言われるということは、
札幌高等裁判所
の
裁判官
に対する非常な侮辱とまで言ってはおかしいかもしれませんけれ
ども
、非常に不本意なことであるというように
考え
ておるわけでございまして、したがいまして、そういう発言につきまして今度
札幌地裁
で適切な
措置
がとられたというように、私
ども
理解しておるわけでございます。
高橋英吉
13
○
高橋
(英)
委員
ややもすると、
政治勢力
の
介入
とか、
政治勢力
に迎合したとかいうような
ことば
がありますように、
政治
が何か悪いものだというふうな
表現
をするようでございまするが、これは私
どももってのほか
と思うのでありまして、
国民
の正当な
代表者
でない者がいろいろな
言動
に出ることは、これは
国民
の
試験
を経なければわれわれは信用することができないという
立場
におるのですが、
国会議員
は
国民
の
試験
に合格して
国民
の
意思
を
代表
して、
国利民福
といいますか、
国民
の福祉のために懸命に働いておるのですから、その
政治
的な
意見
が悪いはずはありません。それぞれ
枝葉末節
の点については、またイデオロギーの違っている点については、
政治
のやり方、
方法
などについて
意見
の
相違
はありましょうけれ
ども
、
政治
というものは悪いものであるという前提のもとにいろいろ
言動
せられるというふうなことは、非常にわれわれ心外であると思うし、また
憲法否定
の、
憲法無視
の
言動
であると思うのです。
裁判官
のうちにそういうふうな
言動
、
思想
を持っておる者があるとするならば、これは現在の
憲法下
の
裁判官
としてふさわしからない者であると
考え
ますが、その点どうでしょう。
矢崎憲正
14
○
矢崎最高裁判所長官代理者
これは具体的な問題に即して
考え
るべき事柄で、抽象的に申し上げることはできないものと存ずるわけでございます。それについて結局のところ、
憲法
、
国会法
によって
訴追委員会
ないし
弾劾裁判所
の
制度
が設けられているというように、われわれ理解しておるわけでございます。
高橋英吉
15
○
高橋
(英)
委員
最後にもう一点。
明治
の初年に
児島惟謙先生
というわれわれの郷里の大先輩で
護法
の神ということになっておりますが、この人は
最高裁判所
、その当時の大審院の院長で、例の
大津事件
に対していろいろ直接審理する
裁判官等
に、
指示
といいまするか、
指示勧告
、あらゆる手を通じて、あらゆる手段、
方法
をもって
児島惟謙先生
の
意見
に同調さしたというふうなことが歴史に炳乎として残っておって、それがいわゆる護憲の神というふうなことになり、
護法
の
神さま
ということになっておるのですが、これはどうでしょう。今度の
平賀裁判官
の
福島裁判官
に対してああいうふうな
態度
に出られたということとどう違うのでしょうか。一方は
神さま
と仰がれて、一方は
憲法
の敵である、
裁判官
の敵のように
批判
されるのですが、その点についてどうお
考え
ですか。同じく、
裁判官
の
独立
みたいなもの、
司法
の
独立
といいますか、そういうものを侵したような形に形式上はなるわけですが、そういう点についてどうお
考え
ですか。
矢崎憲正
16
○
矢崎最高裁判所長官代理者
これは
明治時代
のいろいろな
国際情勢
のもとにおける
日本
の
立場
、それからまた現在における
日本
のいろいろな
情勢
というものについては相当の
相違
もあるしいろいろな差異も認められるのではないかと思うわけでございます。したがいまして、
児島惟謙先生
のされたことと
平賀所長
のされたことが全く同じであるというようにはちょっと理解しがたいのではなかろうか、こういうように
考え
ます。
高橋英吉
17
○
高橋
(英)
委員
時間がないようですから、これで一応終わります。 〔
福永
(健)
委員長代理退席
、
委員長着席
〕
高橋英吉
18
○
高橋委員長
畑和
君。
畑和
19
○
畑委員
私も
高橋英吉委員長
と同じような問題について質問をいたしたいのですが、しかし、その
立場
はまさに正反対であります。 実は、例の
訴追委員会
の
処分
の問題、
決定
の問題、あの問題について
訴追委員長
をこの席に招致をして、来てもらって、そうしていろいろお聞きしたいという
考え
を持っておりました。しかも早期に
委員会
を招集して
訴追委員長
に出てもらいたい、こういう
申し出
を私、
委員長
のほうにしておいたのでありますが、
訴追委員長
をこの
法務委員会
に呼ぶこと
自体
がいろいろ疑義があるというようなこともございまして今日に至りました。
先ほど
理事会
でも、いろいろ
議論
はしたのでありますが、実はまだ確定的な
結論
に至っておりません。したがって、きょうは
訴追委員長
がおいでになっておらないのでありまして、おもに
訴追委員会
のこの間の
決定
について
議論
をしたいのでありまして、
最高裁
では隔靴掻痒の感があるのでありますが、しかし、関連した事項もございますので
最高裁
にお尋ねをしてまいりたいと思います。 この間の
国会
の
訴追委員会
の
結論
というものは、私は全
国民
が非常に
注目
をしておったと思います。
司法権
の
独立
の
危機
ということが最近非常に叫ばれておりまして、まさに
一つ
の
司法権
の
独立
の
危機
ではないかということを私もひしひしと身に感じた一人でございます。最近、いろいろな
一連
の
事件
がこの一年間ございました。一番最初は、例の
自民党
内における
裁判制度
の
調査会
の問題がございました。これは世の中の非常に大きな
批判
を受けましたので、
自民党
さんのほうでも撤回をされたようであります。しかしながら、そうした
空気
は
自民党
の中にもずっとうつぼつとして流れておったところであろうと思うのでありますが、その後、この
福島裁判官
による例の
長沼訴訟
の問題についての仮
処分
の
停止決定
が出されたということが非常に反響を呼びまして、またその
決定
に先立って、
平賀所長
が書簡を
福島裁判官
に出しておったということが公にされた。これはまた非常に
世論
の
注目
を引いたわけであります。そしてその問題のあと、
飯守裁判官
の
平賀所長支持
の声明がある、それからそのうちに
青法協
の問題が出てくる、それからまた
法務省
の
福島裁判長忌避
の問題が出てくる、さらにはそれに対する
訴追
の問題が出てくる、その間に
裁判所
のほうでは
事務総長
の例の
青法協
加入問題に対する
談話
、さらに
最高裁長官
の
談話
、こういうものがずっと全部関連をしておるわけであります。
訴追
問題については、
先ほど
もお話し申し上げましたように、ああした
結論
が
平賀
さんと
福島
さんについて出たわけであります。そしてまたさらに、
青法協加盟
の
裁判官
に対する
訴追委員会
の
照会状
の問題が出た。こうした
一連
の
司法
に関する
事件
がこの一年間、次々と起こっておるわけであります。そのためにわれわれは
司法権
の
独立
の
危機
というものについて非常に心配をいたしておるのであります。 特に、この間の
訴追委員会
の
決定
というものが、いままでの
裁判所
の
処分
というものと正反対の
結論
が出ておったと思うのであります。したがって、非常に
政治
的な、あまりにも
政治
的な
結論
ではないか、こういう
批判
がごうごうとして起こっております。これは私だけの
考え
ではないと思います。全
国民
ひとしくそうしたことをやはり憂えているのではないか。
先ほど
高橋英吉委員長
は、これは
国権
の
最高機関
だから、しかも
三権分立
の
一つ
の
チェック
の
機関
としての、
チェック
・
アンド
・
バランス
の
一つ
の
方法
である、しかも
国権
の
最高機関
だからそれの
結論
というものが
政治
的であってもよろしいんだといったような
意味
の言い分だったと思うのでありますが、しかし、私はこれは
政治
的であってはならぬと思うのです。
国会
から選出をされておる
訴追委員
によって
構成
されておる
訴追委員会
でありまするから、自然と
各党派
から選ばれるということはやむを得ぬことであります。しかし、それが
判断
するにあたっては、やはり
政治的立場
というものをできるだけ
抑制
をして、
弾劾裁判所
の中の
訴追委員会
としてのあり方というものを
考え
て私は
結論
を下すべきであったと思うのでありまするが、その結果というものはまさに逆だった。
裁判所
は
平賀所長
に対して、まずあのとき
地裁
の
裁判官
が
厳重注意
という、
裁判官会議
で
決定
をいたしました。それで
最高裁
がさらにそれを確認した形でやはり
注意
をした。そして
平賀所長
を転任をさせたということですね。それでその当時には
福島裁判官
に対しては何らの
処置
もされなかった。またそういう
空気
もどこにもなかった。不問に付したといってもいいと思うのです。問題にならなかった。ところが、今度の
決定
は全然逆でありまして、結局この間
福島裁判官
の言ったことにもありますが、一一九をした人が逆に
訴追猶予
になった。それで火をつけたというか、火事のもとのほうが不
訴追
というような
決定
になった。これは
ほんとう
にあべこべだ、こういうふうに感ずるのは私一人ではなかろうと思うのです。 こういう
決定
が出されたのでありますが、こういう
決定
に対しては
最高裁
はどうお
考え
になっておられるか。
新聞等
によると、そのことについては何とも言っておりません。その後、
札幌高裁
が
福島裁判官
に対して
注意処分
にしたということについて当然な
処置
である、こういうふうなことを言うております。大体
札幌高裁
の
処置自体
が、私は
訴追委員会
の
結論
に基づいて
処分
をした、こう思うほかない。そうじゃないのです、別なんだ、こう言われるかもしれません。しかしながら、ともかくいままでは
福島裁判官
のことについては、そういった
処分
問題についてはどこの
裁判所
も
最高裁
も何ら触れておらない。それで一年もたったいまごろになって
訴追委員会
がああいう
結論
を出した。それに対して何にも言わぬ。大体このとき私は
最高裁
は何らか発言すべきだったと思う。
司法権
の
独立
という
立場
から
自分
の
立場
をはっきりすべきだったと思う。それでいて
札幌高裁
が
処分
をするやそれが正しい、こういうようなことを言って、結局は
訴追委員会
の
決定
が正しいのだ。同時にまた、それとは別の
考え
で、
処分
は
処分
でやったんだ。おれのほうは何も
訴追委員会
に拘束され、それに屈服したわけではない、こうおっしゃるだろうけれ
ども
、屈服したかに見えるその
札幌高裁
の
処分
を正当な
処置
である、こういうことをいまごろになってなぜ言うのですか。私は
訴追委員会
の
決定
が出たとき、
裁判所
としてはき然たる
態度
で
自分たち
の
考え
方を述べるべきだったと思う。それを黙っていて、
札幌高裁
が
処分
したら当然の
処置
だ、こういうことを言っておる。私はまさに
司法権
の
独立
の
危機
だと思う。
行政権
に屈服し、
立法権
に屈服しているじゃないですか。それで一体
司法
の
独立
が守れますか。三権の分立というのはもう
憲法
に
規定
されている。これは
国民
ひとしくこれを支持しておる。ただ
チェック
・
アンド
・
バランス
で若干の
お互い
の
牽制作用
は認めております。しかし、今度の
決定
はあまりにも私は
政治
的だと思う。数の
政治
だ。
弾劾裁判所
、
訴追委員会
のほうでそういう
政治
的なことが許されていいのかどうか、私はきわめて疑問です。これは私だけの疑問ではないと思う。 そこで、
先ほど
も私がお話し申し上げました中に入っておりますけれ
ども
、
裁判所
はどうしていまごろになってこういった
態度
を
福島裁判官
についてとっておられるのか。前々から
調査
をしておったんだが、
調査
が手間どっているうちに
訴追委員会
で問題が出たから、したがってそれに影響を及ぼしたりなにかしたのではいかぬというのでいままで待っておったんだ。ところが、
結論
が出たから、したがって
高裁
が
処分
したのはこれは全然その
結論
に左右されたんじゃない、それと全然別なんだ、こういう新聞記事だった。そんな
談話
を発表しておるようですが、私はとてもそれでは理解できぬ。その辺のことについて、
裁判所
の見解を聞きたい。
事務総長
、ひとつお答えください。
矢崎憲正
20
○
矢崎最高裁判所長官代理者
これは、
結論
的に申し上げますれば、
札幌高裁
が、
政治勢力
ないしは
訴追委員会
の
決定
に対して、その圧迫を受けて
高裁
としての
裁判官会議
による
注意処分
をしたということは、これは全くないことでございまして、完全にそれとは別個の
立場
でやったものであるということを、まず
結論
として申し上げたいわけでございますが、それには少し事実を申し上げなければなりませんので、
畑委員
の持ち時間に若干食い入らしていただきたいと思いますが、どうしても事実的な経過を御説明いたしませんと、はっきりいたさないと思うわけでございます。 そこで、まず昨年の八月二十七日に、
札幌地裁
本庁の
裁判官
九名が集まりまして、この問題について、いわゆる
平賀
書簡問題について
裁判官会議
を開催しようという
結論
を出したわけでございます。そして、九月六日に
平賀所長
が
裁判官会議
を招集して、十三日に
裁判官会議
が開かれ、
先ほど
のとおり
平賀所長
が
裁判官会議
によって
注意処分
を受けた、こういうことになるわけでございます。ところが、すでにその当時は
平賀
書簡は報道
機関
の手に渡っておりまして、十三日の
裁判官会議
は深更に及んだそうでございますが、十四日には、すでにその書簡の交付の事実、それから書簡がテレビで映し出されて、十五日の朝刊で書簡全部が発表になった。そして、二十日に石田長官から
平賀所長
に対しまして、
最高裁判所
の
裁判官会議
の
決定
に基づいて
注意
がなされた。そして、十月二十三日に
福島判事
に対して
訴追
の請求があった。そして、ことしの四月に至りまして、
福島裁判官
に対しまして農林大臣から
忌避
の申し立てがあったわけでございます。そして、五月七日に、
札幌地裁
では
忌避
申し立ての却下
決定
をいたしました。五月十四日に、農林大臣が
札幌高裁
に抗告の申し立てをした。そして、この七月十日、
高裁
が抗告棄却の
決定
をいたしたわけでございます。そして、それから約三カ月を経て、
訴追委員会
において
訴追猶予
の
決定
があり、そしてそれから約十日した二十八日に、
福島判事
に対して
札幌高裁
の
裁判官会議
の議決に基づいて
注意
がなされたわけでございます。 こういうような
一連
の事実
関係
の経過を前提にしていただきまして、
訴追委員会
の
決定
の中に掲げてある事柄をそのとおり若干、できるだけ短時間で読み上げさしていただきたいと思いますが、その中にこういう一節がございます。「
福島裁判官
が八月二十二・三日頃から同月末頃までの間に、東京の
裁判官等
を含む数名の
裁判官
に、
平賀所長
より
平賀
書簡を受けたこと並びに
札幌地裁
の
裁判官
には、これを公表することに反対する
意見
が多いが、公表の可否についての
意見
を求める旨の書信を送り、さらに九月はじめ頃、右
裁判官
らに
平賀
書簡のコピーとその後の経過を書いた書信を送って、これに対する同
裁判官等
の
意見
を求めたところ、公表すべきである旨の圧倒的多数の回答に接し、また公表については積極的に協力する旨の手紙も数通あったので、これを放置すれば書簡を公表される危険があったにかかわらず、あえてこれを差し止めなかったため、東京方面に送った
平賀
書簡のコピー一通を同月十三日の
裁判官会議
開催前に新聞記者に入手せられる結果に至らしめた」こういう認定の内容があるわけでございます。
平賀所長
につきましては、事柄はきわめて簡単明瞭でございますけれ
ども
、
福島裁判官
につきましては、この
決定
の中でうたわれておりますように、書簡がすでに
裁判官会議
の前に送られて、そして事柄は東京まで舞台が広まってきておるわけでございます。それが、東京の
裁判官
からどういう経路でどういうようなたてまえで新聞記者のほうにこの書簡が渡ったのか、この経過等につきましては、つまびらかにいたしませんけれ
ども
、ともかく非常に複雑な内容があったということはお察しできると思うのでございます。 一方、
先ほど
申し上げましたように、
訴追
請求はある、
忌避
の申し立てはあるというような状況のもとにおきまして、そういう状況のもとで
札幌高裁
が何らかの
措置
をとるということは、きわめてこれは
考え
なければならないことではなかろうか。そういうような客観
情勢
のもとにおきまして、
札幌高裁
としては、
訴追委員会
の
決定
があった後にというように
考え
ていたことは間違いないと思うわけでございます。 で、結局のところ、
札幌高裁
としては、決して
訴追委員会
の
決定
の圧迫のもとにあるいは
政治
的勢力の圧迫のもとにそういう
決定
をしたのだ、いわゆる
裁判官会議
の決議をしたのではないということは断言できると思うわけでございます。
高橋英吉
21
○
高橋委員長
ちょっと関連して。何か
福島判事
は学生時代に公務執行妨害で逮捕されたことがあるそうだが、そういう事実はどうかな。
矢崎憲正
22
○
矢崎最高裁判所長官代理者
そういう事実はあるというようになっております。しかし、
裁判官
としては正当にもとより作業されているわけでございます。
畑和
23
○
畑委員
逮捕されたことがあるかとかなんとか言うことは不謹慎だよ。そういうのは
裁判官
のあれとは
関係
ないですよ。さぞかし
思想
的なあれを強調しようというのだろうが、そういう意図はけしからぬ。 いま、いろいろいきさつを聞きました。それは
平賀
問題と違って、若干いきさつがなかなか込み入っている点は私も認めないわけではない。しかし、そうだとすれば、その
結論
が出たときに、
調査
ができたときに
処分
するんだとしたら
処分
すべきじゃないですか。それをしないでおいて、しかも時たまたま
訴追委員会
の
結論
が出た、そのあとを追ってすぐさま
処分
をするというのは、どうも何と申しましても外部の
政治勢力
の
結論
というか、
政治
に支配されたというふうな印象を
国民
が持つのはあたりまえですよ。それではなぜその当時、審理中でもいいじゃないですか。しかも、部内の問題でもあるしね。
平賀
さんの問題は
裁判
の根本に関する問題でありますので、それで公表したかしないかという
福島
さんのほうの問題は、部内の下級
裁判所
何とか規則というのですか、それに触れるらしいのだが、しかも、
自分
で積極的に公表したわけではないし、そして東京の
自分
の同僚の
裁判官
に
意見
を聞くために写しを送ったということが、
福島裁判官
の意図ではなく、そのほうから出たといういきさつもあるようですし、その軽重の問題は別といたしまして、それは部内なら部内で、そういうことはけしからぬというならけしからぬで早く
処分
するなら
処分
をすべきだったと思う。いまになって、
訴追委員会
の
結論
が出たらすぐさまそのあとを追っかけて
処分
するというのは、外から見てどうしても
司法権
がほかの外部の勢力に、
訴追委員会
の
決定
に追随をした、屈従をしたというような印象は、これはあなたがどう言ったって免れないですよ。タイミングが非常に悪かったですね。私はそう思います。これはだれもそう思っているのですよ。
司法権
は外部のあれに相当最近弱い。こうした問題、あるいはその前の
福島裁判官
に対する国の
忌避
の問題、ああいった
行政
、
立法
、両方からの圧迫を受けていることは間違いないのです。したがって、
司法権
の
独立
を守るためにあなた方が中心となって、先頭になって、やはりき然たる
態度
でやるべきだと思う。それをちょうど——言いわけは言いわけとして一応聞いておきますけれ
ども
、時期的に非常にそういった印象を免れないと私は思うのです。そういう点が非常に私はおかしいと思うのです。 それから、外部からの圧迫というか、そういうものがあると同時に、また内部のあなた方の姿勢というものが私は非常に問題だと思うのです。みずから
司法権
の権威というものを卑下するというか、そういったようないろいろな傾向が出ておりますね。大体
最高裁判所
長官のこの間の例の
談話
、あれも非常に
批判
の的にさらされております。あれも
一つ
のそういった傾向だと思います。要するに、
裁判所
の自立
精神
が最近欠けているんじゃないか。それだから外部勢力はここぞとばかりあなた方
裁判所
のほうにいろいろな
意味
の圧力を加えてくるのではありませんか。私はそう思います。外部と内部と両方にそうした危険があるのだ。
司法権
の
独立
がそこなわれる危険は外部だけじゃないのです。あなた方は外部に対して弱いから、弱くてみずからそれを暴露するようなことをいろいろ次々とやっているから、私はそう思います。どうでしょう、その点は。
矢崎憲正
24
○
矢崎最高裁判所長官代理者
外部からいろいろ
司法権
の
独立
を侵されたというようなことを言っておられるわけでございますけれ
ども
、われわれは
裁判所
の内部において
司法権
の
独立
を侵害されたというようにはいささかも
考え
ていない。もしもそのようなことをわれわれが
考え
るとすれば——これはもういままでの歴史的な
司法
部の伝統というもの、それを守るためにわれわれがどれだけしかるべきときにしかるべき
措置
をとってきたかということも十分御承知のことと思うわけでございますが、そうであるならば、
司法
の
独立
を害されたと
考え
るならば、われわれが絶対に黙っていない、このことだけはここではっきり申し上げておきたいと思います。
畑和
25
○
畑委員
言うことだけはりっぱですよ、あなた方の言うことは。しかし、バックボーンが欠けているとぼくは思うのだ。いままでの
一連
のことをよく
考え
てごらんなさい。はっきりとしたき然たる
態度
をとらなければ、これはどんどんひしひしと
政治
の圧力はあなた方に及んできますよ。あなた方自身がきちっとしなければだめなんです。大体
最高裁
のあなた方官僚がもっとしっかりして
司法権
を守るというき然たる
態度
がなければ、どんどん
司法権
は侵されていきますよ。それを
国民
は心配し、私も心配している。どう思いますか。
矢崎憲正
26
○
矢崎最高裁判所長官代理者
先ほど
申し上げたとおり、もしもわれわれにおいて
裁判
の
独立
に侵害があるというように
考え
た場合には、もちろんあらゆる
態度
、あらゆる
方法
によってこれをはねのけるということは当然のことでございます。
畑和
27
○
畑委員
この前、
自民党
で
裁判制度
の
調査会
というものを設置するということになったときに、あなた方は
最高裁長官
の
談話
だったか、あれは
事務総長
の
談話
でしたかを発表して、き然たる
態度
で干渉をはねのける、こういう
態度
を示してきた。これはりっぱだと思う。私はその気概が必要だと思う。いまその気概がなくなっているのじゃないか、それを私たちは心配いたしておるのです。 それから、もう
一つ
ちょっと質問しておきたいのですが、
福島裁判官
が辞表を撤回した、そして
談話
も取り消したというような事態が起きました。これは私も、
福島裁判官
は何もやめるという辞意表明をする必要はなかった、しかもそれをあとで撤回をして、
談話
まで取り消すというようになったのは、どうもいささか軽率のそしりを免れないというような感じはしております。しておりますけれ
ども
、それに対して、その
福島裁判官
の
裁判所
を誹謗するかのごとき
言動
、まあ
自分たち
の悪口を言われたというような感じでか
地裁
が
注意処分
にした、この気持ちはわからぬでもない。しかし、
地裁
は、かつて
平賀所長
をみずから
裁判官会議
で
注意処分
にしたくらいで、そのときには
福島裁判官
については何も
地裁
は言ってない。そこで、こういう段階になってきて、
訴追委員会
の
結論
が出て、
札幌高裁
の
注意処分
が出て、それで
福島
がやめると言って、また戻った。こういう段階で
注意処分
と、こういうことに
地裁
がまた
決定
をした。一体その気持ちはわからぬでもないのでありますけれ
ども
、事の軽重というか、その点の区別がどうもはっきりしない。末節のこと、このことだけで
処分
して、この間の
地裁
の
決定
につきましては肝心なもともとの
平賀
問題ということについての深刻な
注意
が私は足りないと思っている。その点どうあなた方は
最高裁
として
考え
ますか。
矢崎憲正
28
○
矢崎最高裁判所長官代理者
平賀
判事につきましては、
先ほど
畑委員
から御指摘のとおり、
札幌地裁
でも
注意処分
があり、
最高裁
の
裁判官会議
でも
注意処分
の
決定
があり、また転任ということに相なったわけでございます。
福島判事
につきましては、
札幌地裁
の
裁判官会議
において、退官の意を表明した際に
福島判事
がなした
談話
は、
司法権
の
独立
について不当な疑いを抱かせ、それにより
裁判所
及び
裁判官
の名誉を著しく傷つけ、
裁判
に対する
国民
の信頼をそこなうものであるという点を、はなはだ遺憾であるというようにして
注意
したわけでございまして、その間何ら事柄の軽重——ピントはずれではないかというような御
意見
でございますけれ
ども
、われわれとしてはそういうことはないというように
考え
ているわけでございます。
畑和
29
○
畑委員
そう答弁されるけれ
ども
、まさに私はあの
地裁
の
注意処分
というのは
裁判所
の威信という
ことば
かりを前面に押し出して、それで肝心な
国民
の疑問には少しも答えてない、こういうことで
国民
はちょっとおかしく思っていると思うのですが、これはそれだけでいいです。 もう
一つ
、ちょっと最後に聞いておきたいのは、いろいろ
注意処分
、
注意処分
と、
裁判所
は地方
裁判所
あるいは
高裁
、
最高裁
とこうして
注意処分
その他を出していますね。これはどうも不
統一
な感じがするのです。
高裁
、
最高裁
おのおの下に対して監督権を持っている、
地裁
自身も
自分
で
裁判官会議
を開いてやることができる、その規則はわかっている。規則はわかっているのだけれ
ども
、今度の
一連
の
事件
を見ても非常にそれが、こっちでやったかと思うとまた今度はこっちでやるというようにまちまちだ。もっともそのときそのときの
情勢
に応じてやられたのかもしれぬけれ
ども
、その辺が非常にまちまちのような感じがする。すべて
最高裁
に報告をされておるのだと思うが、その辺はどうなんでしょうか。
矢崎憲正
30
○
矢崎最高裁判所長官代理者
最高裁判所
、また高等
裁判所
、地方
裁判所
、家庭
裁判所
と、いずれもこの八十条によりまして、そういうことをなし得る
司法行政
上の監督権を持っているわけでございまして、まあばらばらにやるということのほうがむしろ
裁判所
の特殊性をあらわしていると申しますか、上から下のほうに対して命令するとかそういうことでなくて、てんでんばらばらだということが
一つ
の
裁判所
のいいところではないかというようにお
考え
いただければと思うわけでございます。
畑和
31
○
畑委員
いずれにいたしましても、私が心配しておるのは、
先ほど
何度も申しておりまするように、最近の
一連
の
事件
はずいぶん
国民
も心配していると思う。
日本
の
司法
に非常に大きな期待を抱いておるだけに、不当な干渉に支配されておるのではないか、こういうような
国民
の心配が私はあると思うのです。いままでの御答弁は私必ずしも満足いたしません。あなた方の身を守るような、そういった官僚的な答弁がどうも多いような感じがいたすのであります。私は全部の
裁判官
も相当心配していると思いますよ。
先ほど
高橋
さんに対する答弁にも、何か一人としてそういった
裁判官
はいません。屈辱というほどのことでもないけれ
ども
、これは
一つ
の侮辱的なあれだというようなことを言っておられましたけれ
ども
、やっぱり
裁判官
全部、そういうように
考え
ておる人は相当おるんじゃないですか。この
一連
の問題についてあなた方とは少し違うんじゃなかろうかと思うのです。この点は別に答弁を求める必要はございません。 ともかく、この
司法権
の
独立
というものについて、あなた方自身が、
最高裁
自身が、
裁判所
全体としてあくまでもそれを守っていく、不当な干渉に対してはどんどんはねのけていく、こういう自立
精神
が絶対必要だというふうに私は感じております。 以上で私の質問は終わります。
高橋英吉
32
○
高橋委員長
ちょっと
最高裁
に、いろいろ
マスコミ
はじめ、いまの
畑委員
なんかの
意見
から、何か政府や
自民党
に反対しさえすれば
司法
の
独立
が守られたようなことを言われたり、そういうふうな感じを受けるのだが、畑先生の
意見
はともかくとして、
畑委員
以上の偏向的な
意見
や反体制的な
意見
が非常に横行するのですが、そういうことに影響されることはありますまいな。
矢崎憲正
33
○
矢崎最高裁判所長官代理者
それはもう全くそういうことはございません。それはみんな完全に
独立
を守って、そしてそのためにならば、とにかくあらゆる妨害も排除してやるだけの勇気と自信を全国の
裁判官
は持っているわけでございまして、そういう御懸念は全くないと存ずるわけでございます。
高橋英吉
34
○
高橋委員長
それから、
畑委員
をはじめ、みな
国民
、
国民
と言うけれ
ども
、
先ほど
も私申し上げたように、
国民
の
代表者
は
国会
なんだから、
国会議員
が
国民
の
代表
であり、
国民
の
意思
を
代表
しているわけだから、
国会議員
以外の
意見
はそうたいして重きを置く必要がないと思う。(発言する者あり)これは私が言っただけにしておきましょう。答弁を要求しません。 畑君。
畑和
35
○
畑委員
それでは時間はあまりかけません。短く質問したいのです。 この間来ずっと起きております朝鮮人の国籍の問題ですが、きょうの新聞報道によると、田川市に対して福岡県知事が職務執行命令を出されたというような記事がございますが、これは事実ですか。
吉田健三
36
○
吉田
説明員 田川市に対して福岡県が説得につとめてきておりまして、その交渉が本日田川市長によって拒否されたということを、
先ほど
確認いたしましたが、職務執行命令の文書が出たかどうかにつきましては、いまの時点においてははっきりしておりません。おそらく今日もしくは明日くらいに発出されることになるだろうと思っております。
畑和
37
○
畑委員
そうなりますと、おそらく期限をきめて出されても、いまさら田川市長もそのとおり期限内にはやらぬと思うのです。そうなると結局は
裁判所
の職務命令、
裁判所
の
判断
にまかせるということに、おそらくなるものと思う。ところで、田川市以外にもたくさん同じようなケースがございますね。中には保守系の首長もまじえて同じような
態度
をとっておられるところがありますけれ
ども
、こうしたほかの市に対して一体どうするように
法務省
のほうは指導しておるのか。直接
法務省
自身で訴訟を起こしたり職務命令を出したりするわけにはまいらぬのでありまして、結局その県当局のほうを通じてそれを指導して、県当局がそれに対してやるわけですけれ
ども
、ほかの市に対しても同じようにやられると思うのだが、田川市だけをもってずっとやっていくつもりなのか。それとも、ほかの市にも続いて同じように職務命令を出させるように、県当局を指導していくのか、その辺をひとつ聞きたい。
吉田健三
38
○
吉田
説明員 田川市同様に、もしほかの市町村においても説得に応じない場合には、最悪の場合には
行政
訴訟にいくこともやむを得ないという
意味
で、田川市と同様の方針で臨む所存でおります。
畑和
39
○
畑委員
これはおそらく田川市が一番早いし、一番なかなか強硬だということで、ここを突破口にしてやっていこう、こういう
考え
だろうと思うのですが、田川市だけを目のかたきにしておる点がちょっとのみ込めない感じがするのだけれ
ども
、おそらくはほかの市に対してもやらざるを得ない。田川市だけやって、あとはほっておくということではないのでしょうね、どうですか。
吉田健三
40
○
吉田
説明員 おっしゃるとおりに、ほかの市に対しても、もし説得に応じない場合には田川市同様の
措置
をとる手はずになっております。ただいま御指摘のありましたように、田川市は現に一番先に行なわれたために、まっ先にこれに対してただいま
処置
がとられておるわけでございます。それに引き続きまして、他の市町村に対しても、私のほうで確認いたしましたものに対しましては、同様の
措置
をとりつつあります。
畑和
41
○
畑委員
そうすると、田川市だけでなく、最近次々と北海道あるいは東京都下各市、京都、山形とか、いろいろあちこちに書きかえを実施しているところがたくさんふえているようでありますが、それに対して各おのおののところでやられることになっておる、こういうことになりますね。同時に、保守系の首長も何人かおられます。こういうところも同じようにやられるのか、その点はどうですか。
吉田健三
42
○
吉田
説明員 首長が革新系であるか保守系であるかということとは
関係
なしに、同様の方針で臨むつもりであります。
畑和
43
○
畑委員
この問題は
法務省
がえらい強気でやっておるということで、その中間にはさまった県当局はなかなか苦労しておる。いろいろ選挙などを控えておるところもありますし、非常に苦労しておる。
法務省
はまあ
自分
が直接ではない、指令だけ出しておるのだからいいかもしれないけれ
ども
、間にはさまった県や市はなかなか容易ではないと思うのですね。その点でこの前、法務大臣は革新市長会のメンバーと
国会
で会われて、すげない返事をされておったが、その後一度も、革新市長会の主要なメンバー、幹部あたりと話し合うことはいままでしていない。そういう点、するつもりはないのですか。大臣がいないからあれだけれ
ども
、入管
局長
……。
吉田健三
44
○
吉田
説明員 大臣に御趣旨はお伝えして御
意見
を承ってみることにいたしますが、ちょっと私の
決定
する事項ではございませんので……。
畑和
45
○
畑委員
もう一点お聞きします。 話に聞きますと、福岡県の水巻町ですか、ここなんかは、登緑原票は書きかえずに、各人が携行しておる登録証明書ですか、あれだけを朝鮮籍に書きかえたというような話を私ちょっと聞いたのですが、そういうことはあなたのほうの耳に入っておりませんか。
吉田健三
46
○
吉田
説明員 そのようでございます。
畑和
47
○
畑委員
それはどういうことになりましょうね。結局、原票には書き込まない、変更はしない、したがって朝鮮籍にしたという原票の写しもおたくのほうにはいっていない。ただ、本人が携行している登録証明書には朝鮮籍と書いてある。これは一体どっちが
ほんとう
なのか。原票が
ほんとう
だというのだろうけれ
ども
、そうなると、片っ方のほうもやはり証明する公の文書ですからね。それが事実と違うということにもなる。これは妥協的な
考え
でやったのかもしれませんけれ
ども
、本人さえ満足すればいいやというところで、登録証だけ朝鮮籍にして、原票は相変わらず。本人はおそらく原票は変わっておると思っているだろう。それでは結局本人の期待を裏切ることになるのですが、この辺はあなた方はどうお
考え
になるのか。ただ聞いておるだけで済まされるのか、ひとつ承りたい。場合によったら文書不実記載になるかもわからぬし……。その辺はいかがでしょう。
吉田健三
48
○
吉田
説明員 訂正されていない原票が正しいわけでございまして、本人が所持しているものは、訂正された部分につきましては事務上の誤りがおかされておる、こういうことになるかと思います。 私たちといたしましては、原票と異なった、誤った外人登録証が所持されておるということは好ましくないので、これを訂正するように指導しておりますが、何ぶんにも、外人登録の規則によりますと、本人がそれを持って出頭してきて書きかえるということになりますので、本人が出頭に応じないということでございますと、その間違って記載されたものを本人は持ったままおられる、こういう事態が若干続く。ただ、明年第十回の大量登録の切りかえが一斉に行なわれますので、その際にこの問題がさらに解決されることになろうかと思う次第でございます。
畑和
49
○
畑委員
これは、あなたのほうであまりやかましく言うものだから、その間にはさまった首長がそういった便宜的なやり方をやらしたとも
判断
される。しかし、この点はやはりおかしなものだと思うのです。原票が正しいので、携帯しているほうは間違っているといえばそれまでなんですけれ
ども
、しかし、そうは本人たちも
考え
ないだろうし、出てこなければそれを訂正する
方法
はない、こういうことなんです。この点ほかにもあるというような話もちらほら聞いておるのですが、その点もひとつあなたのほうで調べていただいて、あとで報告をしていただきたい。 以上で私の質問を終わります。
高橋英吉
50
○
高橋委員長
林
孝矩
君。
林孝矩
51
○林(孝)
委員
私は、
先ほど
来問題になっております
裁判官
の
訴追
の問題に関連して、
司法行政
の
立場
からいろいろ質問したいと思います。 まず、本日の
委員会
の当初に
高橋委員長
が、はっきりレールを敷くという
意味
から質問されましたが、しかし、
先ほど
から発言がございますように、
国民
の
意見
なんというのはあまり重要視する必要はないとかいうようないろいろな発言があるわけです。そういう発言
自体
も非常に問題ですし、また、そうした背景に力強い動きがあるとするならば、
司法権
の
独立
というものが外部から侵されると同時に、もう一面は、
司法
の内部からも最近そうした
司法権
の
独立
が侵されているのではないか、そうした心配をやはり
国民
も持っておりますし、また私自身も持っているわけです。 ここではっきりしておきたいことは、
司法権
の
独立
に対して
裁判所
はどのような見解を持っているのか、その定義は何なのか、何のための
独立
なのか、その点をまず最初にお伺いしたいと思います。
矢崎憲正
52
○
矢崎最高裁判所長官代理者
これはもう
先ほど
来繰り返して申し上げているとおりでございまして、具体的にどういうことをおっしゃるのか理解いたしかねるわけでございますが、
憲法
にございますように、「すべて
裁判官
は、その良心に従ひ獨立してその職權を行ひ、この
憲法
及び法律にのみ拘束される。」七十六条の三項、これに尽きている、こういうように
考え
ております。
林孝矩
53
○林(孝)
委員
憲法
十九条に「
思想
及び良心の自由は、これを侵してはならない。」そういう
規定
があります。また二十一条には結社、
表現
の自由に関する
規定
もあるわけです。いま答弁せられました七十六条の中に「すべて
裁判官
は、その良心に従ひ獨立してその職權を行ひ、この
憲法
及び法律にのみ拘束される。」ここにいわれておる「良心」の解釈、十九条との
関係
において
裁判所
はどのように解釈されておるか、その点をお伺いしたいと思います。
長井澄
54
○
長井最高裁判所長官代理者
これはきわめて重要な問題でございますが、十九条に
規定
のございます「良心の自由」と申しますのは、
国民
固有の権利でありますところの基本的人権の
一つ
として
考え
られておることは、私からあらためて申し上げるまでもないことと存じます。
憲法
七十六条の
規定
にございます
裁判官
に要求されますところの良心が十九条の良心とひとしいものであるかどうかということは、
憲法
に関する学説の上でも非常に争いのあるところでございますけれ
ども
、
裁判
の実際に当たっておりますところの
裁判官
といたしましては、この良心は十九条の良心と厳密に同じであるかどうかという学問上の論争はさておきまして、この
憲法
並びに
憲法
によって制定されました法律の解釈適用にあたりまして、その厳密なる解釈適用、
国民
から負荷されましたところの
独立
いたしました
司法権
の運用、それによりましてその国の法律文化の向上に十分おこたえできるだけの
独立
の、しかも文化的関心を持った解釈適用をなしていく上の最高の主観的な状態と申しますか、そのようなものである。したがいまして、単なる
憲法
と法律に従うということの修飾の用語ではない、その
裁判官
が最高の主観といたしまして主観的に持っております
精神
の状態でありまして、具体的に
裁判所
の前に出されました
事件
の
判断
にあたりまして、文化的関心を持って客観的な法秩序の解釈をしていく上において、他の
政治
的な影響その他のものを受けず、その人の最高の良心に基づいて解釈適用を行なうという
意味
においての良心というふうに各
裁判官
は理解して
裁判
の実務に当たっていると私
ども
は
考え
ておる次第でございます。
林孝矩
55
○林(孝)
委員
非常に理解しにくい話でありますけれ
ども
、もう一点確かめておきたいことは、
憲法
八十条の一項に、下級
裁判所
の
裁判官
の任期について
規定
がございます。その再任の問題でありますけれ
ども
、自由に再任を拒否することができるかどうかという点、再任しなかった過去の実例があればその理由とあわせてお伺いしたいと思います。
矢崎憲正
56
○
矢崎最高裁判所長官代理者
この再任の問題は、
裁判所
の問題というよりは内閣の問題でございます。したがいまして、その解釈について私
ども
のほうから申し上げることは避けさせていただきたいと思います。実例といたしましては、再任されなかったという例はないわけではございません。
林孝矩
57
○林(孝)
委員
それではその問題はおきまして、次に
裁判所
法五十二条に、積極的に
政治
運動をすることを禁止するという内容の条文があるわけですけれ
ども
、
青法協
に入ることは、
裁判所
としてはこの
裁判所
法から
考え
てどういうふうに
考え
られておるのか。また、
裁判所
は
青法協
に対してどのような見解を持たれているのか、その点についてお伺いします。
矢崎憲正
58
○
矢崎最高裁判所長官代理者
青法協
との関連の御質問でございますが、この前の
事務総長
の
談話
は要するに、
裁判官
は
政治
的
中立性
というものが強く要請されているのだ、だから「
裁判官
が
政治
的色彩を帯びた団体に加入していると、その
裁判官
の
裁判
がいかに公正なものであっても、その団体の
構成
員であるがゆえに、その団体の活動方針にそった
裁判
がなされたとうけとられるおそれがある。かくては、
裁判
が特定の
政治
的色彩に動かされていないかとの疑惑を招くことになる。
裁判
は、その内容
自体
において公正でなければならぬばかりでなく、
国民
一般から公正であると信頼される姿勢が必要である。
裁判官
は、各自、深く自戒し、いずれの団体にもせよ、
政治
的色彩を帯びる団体に加入することは、慎しむべきである。」こういう
最高裁判所
の公式見解が発表されておるわけでございまして、その点で御理解いただきたいと思うわけでございます。
林孝矩
59
○林(孝)
委員
いまの話によりますと、
青法協
に加入することはよくないという
裁判所
の
考え
と理解されるおそれがありますけれ
ども
、それでもいいわけでしょうか。
矢崎憲正
60
○
矢崎最高裁判所長官代理者
政治
的色彩を帯びた団体に加入していることは好ましくないということは、この
事務総長
の
談話
ではっきりいたしておると思います。
林孝矩
61
○林(孝)
委員
私は非常に問題があると思うのですけれ
ども
、そうした
裁判所
の有形無形の心理的な圧力というものがはたして個々の
裁判官
に
裁判官
の
独立
を侵すような結果を導き出さないかどうか。たとえば事務総局の判事補の方その他の
裁判官
がそうした影響を受けて脱会しているという事実があるわけですけれ
ども
、こうした
裁判所
の傾向というもの、これが
思想
及び良心の
憲法
に
規定
されております自由、そういう基本的な権利を侵すことにならないかどうか、その辺が現在の社会の中で非常に疑問視されている大きな問題であるわけです。この点について
裁判所
はどういうふうに
考え
られておるのか、明快にお答え願いたいと思います。
矢崎憲正
62
○
矢崎最高裁判所長官代理者
ある
政治
的色彩を帯びた団体に
裁判官
が加入いたしておりますと、その
裁判
が何らかその団体による影響を受けているのではないかという疑惑を
国民
に持たれる、そういうことのほうが、
裁判
の
独立
につきまして最も大きな憂慮すべき問題である、こういうように
考え
るわけでございまして、したがいまして、そういう
考え
のもとにおきましては、
政治
的色彩を持った団体に、いやしくも
裁判官
はその心がまえとして加入すべきではないというように御理解いただきたいと思います。
林孝矩
63
○林(孝)
委員
そうしますと、最初に質問いたしました、そうした
政治
的色彩があるかどうかという
判断
も当然問題になってくると思いますけれ
ども
、今回の問題になっておりますところの
裁判官
の
思想
調査
の問題、この問題と
関係
してくるわけでありますけれ
ども
、個々の
裁判官
の内心に関することを
調査
したという
訴追委員会
の事実があるわけです。こうしたことは、まあいってみれば
裁判官
の良心にまで立ち入っている、
裁判官
の
独立
を心理的に脅かすような結果になっているということはもう否定できない事実なんですが、こうした
調査
に対して、
先ほど
の答弁の中には、
司法権
の
独立
が侵される場合は黙っていない、そういう答弁がございました。非常に勇気ある話だと思うのですけれ
ども
、現実問題としてこういうことが行なわれた。しかし、それはあくまでも
独立
の
機関
で行なわれていることだからというので、黙して語らず、そういう
態度
と、
司法権
の
独立
が侵された場合は黙っていないという二つの
立場
、これがあると思うのです。過去においては、浦和充子
事件
のような
裁判所
が抗議するという姿勢、気持ちがありました。
先ほど
児島惟謙先生
の例を引かれて
高橋委員長
が話をされましたけれ
ども
、一面からいけば、
児島惟謙先生
の場合も、正義を権力より守れ、そういう叫びであったと私は記憶しているわけです。そうした
裁判所
の姿勢というものが今回、また最近の傾向として次第になくなりつつあるのではないか、そういう心配なんです。したがいまして、
訴追委員会
が行なった個々の
裁判官
に対する内心に関する
調査
、こうしたものが、現実の問題として、
裁判官
の職務執行に非常に不安を与えるような結果を呼び起こした、またそうした
調査
自体
がそうなるということも想像されるわけですから、
裁判所
としても、これは
司法権
の
独立
という観点から
考え
ると非常に問題である、そうした問題意識を持たれるのが当然と私は思うわけなんですけれ
ども
、そうした姿勢、気持ちというものが
裁判所
にははたしてあるのだろうか。
司法
の
独立
を侵された場合黙っていないと言うけれ
ども
、本気でそう思っているものなのか。
行動
にあらわれないそうした言論というものを心配する
国民
の疑惑を晴らすためにも、
裁判所
としてはっきりと答弁していただきたい。
矢崎憲正
64
○
矢崎最高裁判所長官代理者
先ほど
から申し上げておりますとおり、
裁判
の
独立
が侵されているというように
考え
ました場合は、これはもう断固としていかなる
態度
もとるわけでございまして、要するに
裁判
の
独立
が侵されているか侵されていないかということについての見解の
相違
ではなかろうか、こう
考え
るわけでございます。
林孝矩
65
○林(孝)
委員
そうしますと、
調査
することによって、
裁判官
の職務の執行に関して
裁判官
が非常に不安になるというような結果が私は
考え
られるわけですけれ
ども
、それでも
裁判官
の
独立
を侵していない、そういう
判断
を
裁判所
の方はとっていらっしゃると
考え
てもいいわけですね。
矢崎憲正
66
○
矢崎最高裁判所長官代理者
先ほど
申し上げましたように、
訴追委員会
は
憲法
及び
国会法
に基づいて制定されております
独立
の国家
機関
でございます。そこでその
調査
が具体的に問題になって、それが
裁判
の
独立
を侵すじゃないかということを盛んに御主張になっておられるわけでございますが、十一日の新聞の中村
訴追委員会
委員長
の談などを見ますと、中村
委員長
は、「具体的な氏名をあげて
訴追
請求をしてきている以上、
青法協
に全然かかわりあいのない人を審査の対象にしてしまわないため、わざわざ
委員会
に相談して実施している以上、二百十三人のうち
青法協
会員でない人数ぐらいは
委員会
で言わなければならないだろう。」というように言っておられるわけでして、こういうような
調査
そのものが
憲法
及び
国会法
に基づいた
訴追委員会
の権限の行使として逸脱しているというように
考え
ることはできないわけでございまして、したがいまして、
先ほど
仰せのように、
裁判
の
独立
を侵しているというように
考え
れば、それはそのときそのときに応じて断固たる
態度
はもちろんとるわけでございます。
林孝矩
67
○林(孝)
委員
考え
れば断固たる
措置
をとるけれ
ども
、全然
考え
ないという——
裁判所
の
考え
方ははっきりわかりました。 次に、もう一面から
考え
ると、
平賀
書簡のときに
平賀所長
は
注意処分
を受けた。そのことに対して
訴追委員会
では今度、結果的にいうと不
訴追
になっておるわけです。
最高裁
の
処分
と
訴追委員会
での
処分
とは違うわけですね。それはあくまでも
独立
の
機関
だから
関係
ないというわけでありますけれ
ども
、今度は逆説的にいうと、
訴追委員会
からすると
裁判所
の
処分
というのは間違っておったということになるわけです。
先ほど
からの同僚
委員
の質問に対する答弁の中で、
訴追委員会
の
決定
は妥当であったという発言があったわけですけれ
ども
、逆説的にいうと、こうした矛盾が出てくるわけです。この点をどういうふうに
考え
られるのか。 もう一点は、これは
先ほど
も同僚
委員
から質問が出ましたけれ
ども
、
司法権
の
独立
というならば、
福島判事
を不問にするという
決定
を下された、その
決定
をどうして
裁判所
が一貫して貫かなかったのか、その点をお伺いします。
矢崎憲正
68
○
矢崎最高裁判所長官代理者
訴追委員会
の
決定
が妥当であったということを私が述べたというように仰せられておりますが、私は内容については一切
批判
がましいことを申しているわけではないのでございまして、
憲法
及び
国会法
によって認められた国家の正当な
訴追委員会
がなされた
判断
についてとやかく申し上げるべきではない、こういうように申し上げているわけでございます。 また、不
訴追
とか
訴追猶予
とかいう主文について非常に重視なすっておられまして、
決定
の中身について、どういうような事実が認定されているかということについてあまり御研究がないようでございますけれ
ども
、おそらく
裁判所
のほうといたしましては、独自に
調査
した事実、また
訴追委員会
の
調査
された結果のここにあらわれている事実という事実そのものを重視しているのでございまして、いわゆる主文が不
訴追
か
訴追猶予
かということによって
裁判所
の
処分
をどうこうしたというようなことは私はない。要するに、そこにあらわれている事実そのものについて高等
裁判所
なら高等
裁判所
がどういうように
判断
するかということに問題のポイントがある、こういうように私
ども
は見ているわけでございます。
林孝矩
69
○林(孝)
委員
中身の問題と事実の問題がいま出ましたので、その面について非常に疑問に思うことがございます。たとえば……
高橋英吉
70
○
高橋委員長
林君、時間が来ているから簡単に。
林孝矩
71
○林(孝)
委員
もう最後です。たとえば
平賀所長
が同じ所内の
裁判官
に老婆心からということで書簡を出した。これに対して
訴追委員会
が不
訴追
という
決定
をしているわけですけれ
ども
、たとえばその内容は
裁判
権に影響を及ぼさない、そういう理由をはっきり
訴追委員会
のほうではいっているわけです、不
訴追
の理由として。であるならば、たとえば
最高裁
の長官が一先輩としての老婆心から
地裁
、
高裁
の
裁判官
に対して書簡でもって同じ
意味
の助言をした、それも
最高裁
の便せんと封筒を使ってやったという場合、はたして
裁判
権に何の影響も与えないものなのかどうか。私はやはり有形無形の心理的な影響を与えることは明らかである、そのように思うわけです。そういうふうに
司法権
の内部において
司法権
が侵されていく傾向にあるという
意味
からの心配があるわけですけれ
ども
、外部からだけではなしに内部からこうした
司法権
の
独立
に対する侵害がある、こういう最近の傾向に対して
裁判所
としてどのような
情勢
判断
をされておるのか。 さらにこういう例もございます。十月末のことでありますけれ
ども
、
国会
で内閣法制
局長
官が、平時においては徴兵制は
憲法
違反である、そういう発言をしているわけです。ということは、緊急事態においては徴兵制というものは
憲法
違反にはならないという
考え
方であろうと私は思うわけなんですけれ
ども
、こうした発言があった場合に、これ自身は非常に疑問に思うことが多々あるわけです。ところが、現実的にいえば、緊急事態で徴兵してみても、緊急事態に対処する
意味
では役立たないわけです。これはもう常識です。ということは、将来、平時においても徴兵制合憲という
判断
を内閣で行なうことがあるかもしれない、そういう危惧を感ずるわけです。そうしたときに、
裁判所
がこれに対して、それは違憲であるという
判断
を下すことができるかどうか。最近の
裁判所
の風潮から見ると非常に疑問に思うわけです。たとえば
最高裁長官
が違憲判決は非常に
注意
をするようにという訓示をしているという事実、また
平賀
書簡にあらわれるような傾向、また
思想
調査
等に対してそれを妥当であるということで
裁判所
としては認めているという姿勢、こうした結果、一番被害者は
国民
にあるということです。
国民
が一番困るわけです。こういうことではたして
裁判所
が
チェック
・
アンド
・
バランス
の機能を果たすことができるのかどうか、そういう心配をするわけなんです。 いま二点あげましたけれ
ども
、その点について
裁判所
はどのような見解を持たれているか、最後にお伺いをして私の質問を終わりたいと思います。
矢崎憲正
72
○
矢崎最高裁判所長官代理者
平賀所長
の場合は、これはまことにレア・ケースでありまして、そのようなことが
裁判所
の中でしょっちゅう行なわれるというふうにお
考え
いただくことはない、こう思うわけでございます。 また、
裁判官
が大きなことに際して、断固として勇気を持って処理することができるかどうかという点についての御質問、これはもちろん、もうすべての場合、すべての
事件
について
先ほど
のように良心に従って、
憲法
と法律に従って断固として
裁判
できるという伝統は十分につちかわれておりますし、また現在もその点については御心配はない、こういうふうに申し上げることができるかと存じます。
林孝矩
73
○林(孝)
委員
それでは終わります。
高橋英吉
74
○
高橋委員長
岡沢君。二十分だから十二時二十二分。
岡沢完治
75
○岡沢
委員
委員長
、きょう
理事会
できょうの時間制限をされた理由は、川島副総裁のお葬式だということですね。ところが、
自民党
の
議員
は一人もおりません。差しつかえがあるのは
委員長
だけです。
国会
における
委員
の発言というものは、私は最大限に尊重されるべきだと思います。もちろん川島副総裁に対する冥福の気持ちには変わりありませんけれ
ども
、やはりそれと
国政
審議とは違うと思うのです。われわれの質問に対して一分とか二分とかいう制限をつけられるということについては非常な疑問を感じます。しかし、
理事会
の約束ですから、できるだけ協力はいたします。
高橋英吉
76
○
高橋委員長
できるだけ尊重いたします。なるべく約束どおり、ひとつ申し合わせの時間を守ってください。
岡沢完治
77
○岡沢
委員
約束は守るように努力いたします。 私も
司法
の
独立
、
裁判
の権威に関連して二、三お尋ねをいたしたいと思いますが、最初に事実
関係
を明らかにする
意味
で二つ三つ質問いたします。 新聞の報ずるところによりますと、佐藤総理が国連総会に出席されるのに羽田を出発される際に、
最高裁長官
が見送りに行っておられたというふうに報じられておりますが、そういう事実がございましたか。
矢崎憲正
78
○
矢崎最高裁判所長官代理者
ございます。
岡沢完治
79
○岡沢
委員
やはりこれも新聞の報道でございますけれ
ども
、自衛隊の観閲式に京都の
地裁
の所長が参加されて閲兵に参列をされたという事実がございますか。
矢崎憲正
80
○
矢崎最高裁判所長官代理者
これはしかと報告は聞いておりませんが、やはり新聞の記事のとおりではなかろうかというように推測しておるわけでございます。
岡沢完治
81
○岡沢
委員
これも新聞の報ずるところで確認をしておきたいと思いますが、
札幌地裁
で例の十一月七日に
福島裁判官
に対する
注意処分
の
裁判官会議
の際に、
裁判官会議
の室に通ずる廊下に机とかでバリケードを築かれて、いわば報道管制的な
措置
をとられたために、北海道
司法
記者会から抗議が申し込まれたというふうに報じられております。そういう事実はございますか。
矢崎憲正
82
○
矢崎最高裁判所長官代理者
これも別に札幌から特に知らせばございませんけれ
ども
、新聞に書いてあることは、別にうそをお書きになることはない、あのとおりのことがあったのではなかろうかと推測しておるわけでございます。
岡沢完治
83
○岡沢
委員
私は、
最高裁長官
の佐藤総理の羽田空港の見送りそのものを法律的に云々するつもりはございません。しかし、本日も同僚
委員
からの御質問に答えられまして、
長井
総務
局長
も
司法
の
独立
については外観も必要だというお答えもございましたし、
先ほど
矢崎
人事
局長
がお述べになりました岸前
総長
の
談話
にも、いわゆる
国民
から見て
裁判
が公正に行なわれておるという信頼がなされるような姿勢が必要であるということをおっしゃいました。私もそのとおりだと思います。巷間にも、形は心をあらわすし、また心は形を求めるという
ことば
もございます。やはり私は
国民
から、
裁判所
が
独立
であり、公正であり、いずれの権威にも屈しないという姿勢を示してもらうことがきわめて大切ではないかと思うのです。
最高裁判所
の判事が内閣の任命によるものであり、また
最高裁判所
の長官といえ
ども
内閣の指名に基づいて天皇から任命されるというようなことを
考え
ました場合に、
三権分立
とはいいながら
行政
府と
司法
府間にはある程度の
関係
はもちろんあるわけでございます。これが公式の国家的な行事に
最高裁長官
がその
立場
から列席されることについては異存はもちろんございませんけれ
ども
、あたかも大臣病患者が総理を見送りに行ってごきげんをとろうというようなのと同じような印象を、私は
最高裁
の長官がわざわざ羽田まで行ってお見送りなさることには、感じてもしかたがないような要素が含まれておるのではないかという感じがするわけでございます。これにつきましては
事務総長
の見解を伺います。
吉田豊
84
○
吉田最高裁判所長官代理者
一国の総理大臣が国連の総会に初めて出席される、これは非常に国としても重大なことであろうと思います。そこで
最高裁判所
の長官といたされましては、儀礼的な
意味
で見送られたのでありまして、どなたが総理大臣であってもおそらくそうなさったんではないだろうかと私は思います。
裁判官
がいわゆる廉潔とか公正を保持するためにあまり窮屈に
考え
ては、私はいけないんじゃないかと思います。その点はいま御指摘のありましたように、
司法権
の
独立
ということは重々これは念頭に置かなければいけませんけれ
ども
、やはりそこは常識的に
行動
されて私はいいのではないか、かように
考え
ます。
岡沢完治
85
○岡沢
委員
私も
裁判官
にはきわめて円満な常識が必要だと思います。しかし、事は
最高裁判所
の長官です。
日本
の
司法
を
代表
される方が、
先ほど
申しましたように公式的な行事ならいざ知らず、あるいは官邸において総理にごあいさつされるなら私は納得します。しかし、お忙しいからだでわざわざ羽田まで見送りに行かれる。私は、
先ほど
申しましたような
自民党
内部の猟官運動にひとしい感覚を
国民
が持ってもしかたがないような、やはり軽率ととれるような感じがするわけです。
先ほど
来この席で論じられましたのですが、五月二日の石田長官の発言につきましても、私はあえて言いたくありませんけれ
ども
、尊敬する
裁判官
でありました山下朝一大阪
高裁
前長官が七月二日の毎日新聞の朝刊紙上で、あの石田発言は慎重さを欠く。非常に言いにくいことをはっきりとおっしゃっておられます。当時の
最高裁長官
のもとでの
高裁
長官があえて
日本
の大新聞でこの
最高裁長官
の発言を
批判
される。私は
批判
されるほうも勇気が要ったと思います。しかし、私はそれは
ほんとう
に
司法
を愛しての、山下
裁判官
の人格を知っておりますだけに、勇気ある発言でなかったかというふうに感ずるわけでございます。
最高裁長官
のこの一事に見られます——羽田の見送りというこれは形式的なささいなことではありますけれ
ども
、むしろ
事務総長
の
談話
あるいはきょうの
局長
の御答弁、外観も重要だ、えりを正すという面からは私はいささかはずれておるんではないか。
事務総長
がわざわざ弁護されるということにもかえって疑惑を持つのでございますけれ
ども
、率直な御
意見
を聞かしていただきたい。それこそ良心のある御答弁をいただきたいと思います。
矢崎憲正
86
○
矢崎最高裁判所長官代理者
先ほど
も
事務総長
から申し上げましたように、一国の総理大臣が国を
代表
して初めて国連の総会に出席するという場合に、その一国の総理大臣がどこの党の総理大臣であろうとも、これは当然
最高裁判所
の長官としてはお見送りなさっても少しも差しつかえない事柄だとわれわれは確信いたしておるわけでございます。要するに儀礼とかそういう事柄でなくて、ともかく一国の総理大臣なんですから、その一国の総理大臣が国を
代表
して行かれる場合には、それがどの党から出られた総理大臣であろうとも、これは
最高裁判所
の長官としてお見送りになるということは、当然なすってしかるべきことなのではないかというように私
ども
は
考え
ているわけでございます。
岡沢完治
87
○岡沢
委員
理屈は何とでもつきますので、これ以上の論争は
国民
の
判断
にまかしたいと思いますけれ
ども
、私は
先ほど
申しましたような
意味
で、
最高裁長官
が公式的に総理に敬意を表される、これは異存がございません。しかし、羽田まで出向いてわざわざ見送る。この姿は、いかにも
司法
が
行政
に屈服した姿を
国民
の前に露呈しているという
判断
を
国民
が持ちましてもしかたがないのではないか。私はそういう
意味
からも、
司法
の権威という
立場
からも、礼を尽くすなら別の
方法
があるべきだと感ずるという点だけを指摘しておきたいと思います。
地裁
所長の自衛隊観閲の問題につきましても、時間の
関係
でこれを多々論ずる余裕はございませんけれ
ども
、私は、
司法行政
の長官としての
立場
からという言いわけは立つと思います。しかし、これもやはり同じような
意味
で、
司法
の権威、
司法
の
独立
、
三権分立
の
立場
からすれば、軽率な行為ではないかという
批判
があってもしかたがないではないか、ぜひ善処をお願いいたしたいと思います。 もう一点、
先ほど
お尋ねいたしました北海道
司法
記者クラブの抗議の点でございますけれ
ども
、私は、
裁判所
こそ暴力を排し、実力支配を排しまして、法の支配、秩序維持の先端にある
立場
だと思います。この
裁判所
で、しかも
裁判
の合議という問題ならいざ知らず、
裁判官会議
を実力をもって報道管制をしかれたような形をとられたということにつきましても、いささか疑問を持つわけでありますけれ
ども
、
先ほど
私が質問いたしました事実が新聞の報道のとおりだったとした場合に、
最高裁
としての見解をお尋ねします。
矢崎憲正
88
○
矢崎最高裁判所長官代理者
事実
関係
をまだ十分承知いたしておりませんので、はっきりとこれについてお答え申し上げることができないのが残念でございますけれ
ども
、あの取材につきまして札幌の新聞記者の方々が非常に御熱心であったろうということはこれは間違いないだろうと思うのでございます。要するに、その場合に
裁判所
として何とかここからこっちへ入らないでほしいというような申し入れなり何なりあったのではなかろうか、そういう場合に、それについて何とかしてそういうようにしてほしいというような熱意のあまりそういう
措置
をとったのではなかろうかというように思うわけでございます。 事実
関係
が必ずしも明白でございませんので、きょうはこの程度のお答えでごかんべんいただきたいと思います。
岡沢完治
89
○岡沢
委員
福島裁判官
にまつわる
一連
の問題は、私は
国民
全体が注視していた重大な問題だろうと思うわけでございまして、報道
機関
の方々が熱意を持たれるのは当然であります。私は、この報道
機関
が
裁判所
に対して非常識な
措置
に出たのは遺憾であるという抗議をされたのはしごく当然のような感じがいたしました。今後のこともございますので、ぜひ真相御究明の上、
最高裁
としての御
態度
も次の機会にでも明らかにしていただけたらと思います。
先ほど
の同僚
議員
の質問に対しましても、
訴追委員会
の
決定
後になされました
札幌高裁
の
福島判事
に対する
注意処分
は適切な
処置
であったということを
矢崎
局長
ここでお答えになり、また当時の新聞報道によりますと、
事務総長
も適切であったという
ことば
を
談話
として発表されております。私は中身に触れませんけれ
ども
、
先ほど
来繰り返しております
司法
が
行政
府にあるいは
立法
府に屈服するという姿を外観上も避けるべきだという
立場
から
考え
ました場合に、この
札幌高裁
の
注意処分
が
国会
における
訴追委員会
の
決定
直後になされたというタイミングを
考え
ましても、必ずしも適切だと私は思わないわけでございますけれ
ども
、そのタイミングの
意味
も含めて、適切だという御
判断
を
局長
も
事務総長
も現在もお持ちか、お尋ねします。
矢崎憲正
90
○
矢崎最高裁判所長官代理者
タイミングの問題ということでございますが、これは
先ほど
もお答え申し上げましたように、八十条による
処分
は別に相談もなく、それぞれ各
裁判所
がてんでんばらばらとまで言っては言い過ぎかもしれませんけれ
ども
、それぞれの独自の
判断
に基づいてやっている事柄でございます。 その
注意
の内容といいますものはきわめて簡単でございますけれ
ども
、 札幌地方
裁判所
昭和四四年行ク第二号保安林解除
処分
執行停止申立
事件
についてのいわゆる
平賀
書簡問題に際し同書簡および
平賀
メモの公表に関して貴官の執った行為は、
裁判官
としての節度を逸脱した行為であり、遺憾である。 よって、
裁判所
法第八〇条により
注意
する。 こういう簡単な内容のものでございます。 で、この内容に盛られている
注意
の
決定
は、私
ども
といたしましては、これは適切であると
考え
ていることは変わりません。
岡沢完治
91
○岡沢
委員
私の聞いていることは、タイミングのことについて聞いているのです。中身のことについては聞いておりません。
矢崎憲正
92
○
矢崎最高裁判所長官代理者
タイミングにつきましては、それは問題が
立場
立場
でおありになると思いますが、私
ども
といたしましては、これは従来の事例に照らしましても、従来はそういう点で問題にはならなかったんでございますけれ
ども
、一週間くらいして
裁判所
として
措置
をとっている例があるわけでございまして、今度は問題になったわけでございますけれ
ども
、これは必ずしも責めるべき問題ではないというように
考え
ておるわけでございます。
岡沢完治
93
○岡沢
委員
先輩の
矢崎
局長
を個人的に責める気持ちはいたしませんけれ
ども
、一般の役所の官僚と同じような
立場
で責任のがれの御答弁としか思えません。
福島判事
の書簡公表問題は一年前の事案でございます。一年後に、しかも
訴追委員会
の
決定
直後になされたこの
処分
、これは
国民
から見れば、中身は別といたしまして、また実際の
札幌高裁
の
裁判官会議
あるいは
裁判官会議
を
構成
される個々の
裁判官
のお
立場
は別といたしまして、外観的に見た場合に、
国民
が、
司法
が
訴追委員会
に屈服したという感じ方を持ってもしかたがないんじゃないかということを私は指摘したいわけであります。これがやはり
先ほど
来論じられてまいりました、
司法
の
独立
には外観も必要だという姿勢を口では
総長
の
談話
で下のほうには流しておられながら、
高裁
自身あるいは
最高裁
自身があえて反省をしておらないところではないかと私は強く指摘したいわけでございます。 この
談話
に関連いたしまして、四十五年十月三十日の、毎日新聞の報ずるところによるのでありますけれ
ども
、
福島判事
が辞表を撤回されたことについて
吉田
事務総長
の
談話
がございます。「
訴追
委や
政治
的圧迫に屈して、
司法
の
独立
を保持できないような
裁判所
にはとどまることができない——と公表して辞表を提出した
裁判官
が、その撤回を申出るについては、その理由を全く捕捉しがたい。これをバックアップする強い何らかの組織があるのではないか。」という趣旨の
事務総長
の
談話
を新聞で見たのでありますが、そういう
談話
を発表された事実は
事務総長
ございますか。
吉田豊
94
○
吉田最高裁判所長官代理者
そういう趣旨の
談話
を発表いたしました。
岡沢完治
95
○岡沢
委員
申し上げるまでもなしに、
裁判官
というのは予断や推測でものを言うべき
立場
ではないと思います。これは
裁判
そのものに関する
談話
ではございませんけれ
ども
、
日本
の
司法
の事務系統の最高の地位におられる
事務総長
が
談話
をもって公表された中に、これをバックアップする強い何らかの組織があるのじゃないかという推測
規定
、私は根拠がなければ言えないことだと思いますが、この真意を
総長
にお尋ねいたしたいと思います。
吉田豊
96
○
吉田最高裁判所長官代理者
この
福島判事
が辞表を提出されたときのその声明と申しますか
ことば
の中に、
司法権
の
独立
について根拠のない疑惑を抱かせ、また全国の
裁判所
、それから
裁判官
の名誉や威信を傷つけるような趣旨だといわざるを得ないものがあります。このような重大な声明を公にされて辞表を撤回された
裁判官
、ことに
独立
心、いわゆる自主性の強くあるべき
裁判官
たる方が、このような重大な声明をされて辞表を提出された後、わずか四十数時間後にその辞表を撤回される、そういうことはとても私
ども
には
考え
られない。そういうことは
福島裁判官
の自発的な
意思
によるのではなくて、おそらくこれをバックアップする何らかの組織があるのだろうと私は推測いたしたわけでございます。
岡沢完治
97
○岡沢
委員
まあ
事務総長
、正直に推測という
ことば
を使われましたが、
最高裁
の
事務総長
でございますから、推測とか予断でものをおっしゃるということについてはいささか軽率過ぎるのではないか、私は遺憾な感じがいたします。(「見識を欠く」と呼ぶ者あり)いま松本
議員
のほうから見識を欠くという
ことば
がありましたが、同感でございます。
司法
界の先輩でございますのでこれ以上は言及することを避けますけれ
ども
、われわれの
意見
のあるところも御吟味いただきたいと思います。 この一年間、論ぜられてまいりましたいわゆる
司法
の
独立
の問題、
先ほど
来
畑委員
からも詳しく御説明がございました。特に
立法
、
司法
、
行政
という
三権分立
の
立場
をとりながら、たとえばことしの四月には、政府の一
機関
であります農林大臣が、国を
代表
してと解釈すべきだと思いますが、
福島
裁判
長の
忌避
問題を提起された。五月二日には、
先ほど
指摘いたしました石田
最高裁長官
の発言で大体同じ線のものが出された。そして今度は、
立法
機関
である
国会
内に設けられておる
訴追委員会
におきまして、やはり同じような傾向の
結論
が出されました。これにつきましては、多数党による、はっきりいえば
自民党
による
裁判官
裁判
ではないかという
批判
すらあるわけでございます。いわゆる
立法
、
司法
、
行政
、三権が同じ方向で危険な方向に行っているのではないかという疑惑を
国民
が持つというところに大きな問題点がひそんでおるような感じがいたします。私は必ずしも
批判
の側だけの
立場
をとる者ではもちろんございませんけれ
ども
、
先ほど
来繰り返してまいりましたようないわゆる素朴な
国民
感情から見て、
司法
、
立法
、
行政
、この三者の癒着、これは特に野党の無力さからくる責任もございますけれ
ども
、昭和三十年以来十五年間
自民党
保守
政治
が続いておる、その政府といえ
ども
結局は
自民党
、これと
司法権
との癒着ということについての疑問、特に
最高裁
石田長官の発言等が
国民
から大きな心配の目で見られた理由ではないかと感ずるわけでございます。
ほんとう
の
意味
で
司法
の
独立
、今朝来
総長
あるいは
局長
が御答弁になりました、何ものにも屈しない権威、
独立
、良心と
憲法
のみに従われる姿を、私はこの際、心の中だけではなしに、
最高裁
の姿勢として示してもらいたい。これを
国民
は要望しておるのじゃないかと感ずるということを指摘させていただきまして、この問題に関する質問を終わらせていただきます。
ほんとう
は私は、いま
日本
弁護士連合会を中心に非常に大きな課題になっております小林法務大臣の発言に端を発しました、
司法
修習生の分離修習の問題と関連いたしまして、この問題が提起された
一つ
の理由に、
裁判官
、検察官、判検事に対する志望者不足という課題があったわけでございます。この課題をどうして解いていくかという点につきまして、たとえば初任給のアップの問題あるいは
司法
修習生の採用人員の問題等に触れて質問をしたかったわけでございますけれ
ども
、時間の
関係
で問題点として、私は
裁判官
不足、検察官不足を補うために、非常に低いこれらの判検事、判事補あるいは初任検事の初任給を思い切って上げる
措置
がきわめて必要なのではないか。いま予算要求の時期でもありますだけに、指摘をさしていただきたい。 それから、
司法
研修所が新築落成を間近に控えておりますし、その建物の余裕を聞きますと、大体千名は収容できるというふうに理解しておるわけでございます。現在
司法
修習生の採用が年間五百名前後、この絶体数の不足ということも問題でありますし、また判検事不足とも結びつくと思いますが、さらには
司法
試験
がいわゆる一発
試験
で、しかも一点の差によって百名、二百名の合格者、非合格者の差が生ずるということを
考え
ました場合に、私は思い切って採用人員を千名前後にでもふやして、そのかわりに、二年間の修習期間中修習生としての職務を尽くさない者、能力の全くない者、努力を怠る者に対しては思い切った、たとえば二回
試験
の落第等も含めて
措置
をされて、
国民
の税金によってまかなわれる
司法
修習生の修習期間が
国民
から納得できるような充実したものにする一方で、いわゆる一発
試験
の危険性をカバーしまして、ある程度の能力のある者には広く門戸を開放する。私は
日本
の大学
制度
にも言えることだと思いますけれ
ども
、入るときの
試験
が非常にむずかしい。入ってしまえば、勉強しなくても、怠け者であっても、あるいは努力をしなくても卒業させるという
制度
、これは大学
制度
全体にも通じますが、
司法
修習生の
制度
にも当てはまり得るのではないか。そういう点につきましても次回の
法務委員会
でお尋ねすることを予告申し上げて、それに対する御答弁を御用意いただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
高橋英吉
98
○
高橋委員長
岡沢君、
先ほど
のお
ことば
のうちに、
自民党
議員
を侮辱したような
ことば
があるようで、平素の良識的な岡沢君に似合わないと思うが、この点は将来もひとつ気をつけてください。 それから
最高裁
のほうに。
先ほど
いろいろ儀礼的な問題について質問があったようですが、あまり閉鎖的になってもいけないので、いろいろな
批判
があってもそういうことはおそれずに、所信に向かって邁進してもらいたいと思います。 それから、
訴追委員会
の
決定
というものは
憲法
並びに
国会法
にちゃんと
規定
してあるものでありますから、これに対しては相当の権威を認めなければならない、重視しなければならないのですから、
訴追委員会
の中で何か
結論
が出れば、むろんそれを参考にして
裁判所
側でも
態度
を
決定
してもらわなければならないということを私は希望しておきます。 青柳君。
青柳盛雄
99
○青柳
委員
このたび
訴追委員会
の行なわれたいわゆる
思想
調査
とも見るべき
青法協
の会員であるかどうかを、
訴追
請求を受けた
裁判官
に対して
照会
をしたというこの問題は、明らかに
訴追委員会
が
独立
な国家
機関
として行なう権限を逸脱した行為であろう。それは明らかに
憲法
で守らなければならない
裁判
の
独立
を侵すものであり、また同時に、個々の
訴追
を受けた
裁判官
の人権を侵害するものであるという点で、徹底的にこれを究明しなければならないというふうに
考え
て、
訴追委員長
の中村梅吉氏に出頭してもらうことをわれわれは求めたのでありますけれ
ども
、規則上疑義があるということでいまだにその達成を見ていないわけであります。 そこで、こういう問題を国の
機関
としても、またわれわれ
国民
としても黙視するわけにはいかないわけでありますから、当然その実態を明らかにしたいという観点から、まず最初にこの
訴追
請求をした個々の人物の実態を明らかにする必要があると思います。 新聞の報ずるところによりますと、それは九鬼兵衛という人間と辻山清という二人の人間だそうでございますが、これはいずれも関西に存在するいわゆる右翼団体で、九鬼というのは国粋同志会の
代表者
のような役割りを演じている男、それから辻山清というのは大
日本
菊水会の青年隊長だということが明らかになっていると思いますけれ
ども
、この点について公安
調査
庁第二部のほうではどのような
調査
をしておられるか、まずそれを最初にお尋ねしたいと思います。
大泉重道
100
○大泉説明員 国粋同志会並びに大
日本
菊水会につきましては、公安庁といたしましては
調査
ということはいたしておりません。
青柳盛雄
101
○青柳
委員
それでは、全然内容はわからないでいるということのようでありますけれ
ども
、私が公安
調査
庁関東公安
調査
局の人から尋ねたところによりますと、ただいま申しましたように、いずれも右翼団体として資料を持っておられる。いまの答弁では、何か
調査
対象になっておらぬという趣旨のようにも聞こえますが、では続いてお尋ねしますけれ
ども
、青年法律家協会というものに対して、これを
調査
対象にしているかどうか、そのことをお尋ねいたします。
大泉重道
102
○大泉説明員 青年法律家協会につきましても、現在においては
調査
対象とはいたしておりません。
青柳盛雄
103
○青柳
委員
このたびの
訴追
請求を審議する
訴追委員会
では、この
訴追
請求
事件
の請求人、あるいはその請求を受けた
裁判官
が所属しているという理由による請求ですが、その青年法律家協会について何らかの情報提供を求められたことがありますか。
大泉重道
104
○大泉説明員
訴追委員会
のほうから
青法協
に関する資料の提供を求められた事実はありません。
青柳盛雄
105
○青柳
委員
この
訴追
は、
先ほど
も申しましたとおり、
青法協
の会員であるということ
自体
が
裁判官
弾刻法の二条の二号に該当する、そういう疑いがあるということで提出されたものであることが明らかでありますけれ
ども
、これは常識的に
考え
て、だれが拡張解釈いたしましても、いわゆる
裁判官
が著しく非行にわたる行為をしたというような弾刻法の二条のいずれの条項にもとうてい該当しないということは明白であるにもかかわらず、あえてこのようなことをやったのでありますから、これは弾劾法の四十三条の虚偽申告罪あるいは刑法百七十二条の謹告罪に該当するものというふうに
考え
るのでありますけれ
ども
、このような
裁判
の
独立
を侵害すると同時に、
訴追
請求を受けた個々の
裁判官
の人権を著しく侵害する犯罪的な行為、これに対して
法務省
としてどのような
措置
をとろうとしておるのか、これについて、ここにお見えになっておりましたら、辻刑事
局長
に御答弁をいただきたいと思います。
辻辰三郎
106
○辻説明員 お答え申し上げます。 私
ども
、ただいま御指摘の事実については、事実
関係
を全然存じておりませんので、具体的な案件、問題としてお答えするわけにはまいらないわけでございますが、御承知のとおり、
先ほど
御指摘の
裁判官
弾劾法の四十三条は刑法の百七十二条の誣告罪の特別法に当たるという法律解釈をいたしております。そういたしますと、この
裁判官
弾劾法の四十三条の一項でございますが、「
裁判官
に弾劾による罷免の
裁判
を受けさせる目的で、虚偽の申告をした者は、」こういうふうになっておるわけでございますが、私
ども
この虚偽というものが、具体的な事実
関係
を存じませんので、どういうことになるのか、その点がわからないわけでございますが、抽象論といたしましては、事実に反することを言ったというふうに私
ども
は解しておるわけでございます。
青柳盛雄
107
○青柳
委員
この問題について、
法務省
としては、
裁判官訴追委員会
のほうから何らかの情報の提供を受けるというようなこと、あるいはみずからこれを請求が適法なものであるかどうかということを調らべるいううな、そういう気持ちは全然ないわけですか。
辻辰三郎
108
○辻説明員 御指摘のとおり、犯罪ということが成立しないと、全然私
ども
のほうは問題にならないと思うのでございますが、刑事訴訟法の百九十一条、「検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を
捜査
することができる。」ということでございまして、犯罪の
捜査
をするかしないかは、検察官の
判断
によるわけでございます。現在、ただいま御指摘の案件について検察庁が何か活動したというような報告には全然接しておりません。
青柳盛雄
109
○青柳
委員
訴追委員会
のほうからは何らの連絡や情報の提供はありませんか。
辻辰三郎
110
○辻説明員 私、全然ございません。どこにあるかという——
法務省
に関する限りは全然ございません。
青柳盛雄
111
○青柳
委員
時間がありませんから、
最高裁判所
にお尋ねをいたしますが、ことしの五月二日のいわゆる
最高裁
の長官の
談話
の中に、非常に重要な一項目があるわけです。それは「個人の
思想
、信条を
表現
するだけでは
裁判官
をひ免したり、再任を拒否したりする事由には当たらない。
モラル
の問題として「好ましくない」ということである。レッド・パージとかブラック・パージなどが
裁判所
側から起きることはあり得ないが、」となって、それからあとです。「外側から、たとえば
国会
の
裁判官訴追委員会
などでそうした動きが出ることはあり得る。」こういうことを述べております。これは明らかに、
自分
の内部では
青法協
の会員であるということを理由にレッド・パージなどはしないけれ
ども
、
訴追委員会
のほうで問題にすること、そういう動きはあり得るという、あたかも今度の
福島裁判官
の問題にせよ、それから他の
青法協
会員であるということだけの事由によって罷面を求める、
裁判官
訴追
請求が出されていく。こういうことを
考え
ますると、
最高裁
自身が、
自分
のほうでは強制的に会員を首にすることもできないし、また強制的に脱会を求めることもできない、それをやり得るのが
国会
の
裁判官訴追委員会
であろう、「
国会
の」という
ことば
、これは
訴追委員会
あるいは
裁判官
弾劾裁判所
というものの性格を、何か
国会
の付属物のように
考え
ている面もあります。明らかに
国会
という
政治勢力
によって動いていくものと同一のものであるように予断を抱いていることも、この
談話
の中で明らかにされているわけでありますけれ
ども
、いずれにしても、
自分
のほうでやり得ないことをこの
訴追委員会
などでやるぞというような脅迫がましいことが述べられておる。はたせるかな今度それが現実のものになってきた。これが一体
裁判
の
独立
を守るということと
関係
があるのかないのか、もうあることは明白だと思います。そのことは、もう再々いままでも言われておりますように、自由民主党の総務会が、例の
裁判制度
調査
特別
委員会
を設けるという構想をきめたときに、
最高裁
は、
裁判官会議
を開いて、そして
裁判
の
独立
を守る決意なるものを表明した。それにはいわゆる人事権に
介入
するようなおそれがある、こういうことをはっきり述べているわけですね。 だから、
裁判官
がゆえなく、理由なしに懲戒を受ける、懲罰を受ける、罷免をされるということが、
裁判
の
独立
に大きな脅威を与えるということは、
最高裁判所
自身が、もうそういう前例によっても認めているわけです。にもかかわらず、
先ほど
来の発言を聞いておりますと、
訴追委員会
は何ら権限を逸脱しないとか、あるいは
独立
の
機関
であるからとやかく言えないのだと言って、これに対する
批判
というようなもの、あるいはこれに対する
意思表示
というようなものが
最高裁
としてはでき得ない、あるいはすべきでないというような
考え
方がうかがわれるのでありますけれ
ども
、この点を明らかにしていただきたいと思うわけです。
矢崎憲正
112
○
矢崎最高裁判所長官代理者
先ほど
来申し上げておりますことは、要するに
憲法
、
国会法
、法律に基づいて制定された国家の
独立
の
機関
である
訴追委員会
がなした
措置
について、
裁判所
としてこれに
批判
をすべきではないということを繰り返し申し上げているわけでございまして、かりに、著しく逸脱した
措置
か何かがございまして、そういう場合に
司法
の
独立
がきわめてあぶなくなるというような事態でもございますれば、これはまた話は別でございましょうけれ
ども
、今度の場合に、そういうようなことは認められない、こういうように申し上げておるわけでございます。
高橋英吉
113
○
高橋委員長
青柳君、何か
国会
の自己否定のような、
憲法否定
のような、
訴追委員会
が何か不当な存在のような言論があるように聞かれますが、
お互い
に
国会
否定というふうにもとられますから御
注意
を願いたい。(「そんなことない」と呼び、その他発言する者あり)そういうふうにとられないように……。私がとるのだから、ほかの人もとるので、御
注意
願いたい。 それから時間も来たから簡単に……。
青柳盛雄
114
○青柳
委員
著しく侵犯をするおそれがある場合にはまた
考え
なければならぬというような含みの答弁がいまありました。だから、どのようなことがあろうとも、
独立
の
機関
のやることだから
最高裁判所
としては何らの
意思表示
もできない、何らの
措置
もとれないというほど単純に
考え
てはいないであろうということを推察するわけですけれ
ども
、本件の場合、もう常識で
考え
てもわかりますように、
最高裁
でもこれが非行に当たる、
裁判官
弾劾のあれに当たるというのであれば、みずから十五条の三項によって
訴追
請求をすべきものですが、それをしない。だからそのことは、
青法協
の会員であるということは何ら弾劾法には触れないのだということをもう前提にしている。にもかかわらず、そのことを問題にして、そして
照会状
を出す。これが
一つ
のマッカーシー旋風のようなものを
裁判官
に巻き起こして、
裁判官
は非常な不安な状態におちいる。それは、その
照会
を受けた個々の
裁判官
あるいは
訴追
を受けた個々の
裁判官
ということだけにとどまらないで、一般的に、この
訴追委員会
というようなものが動き出せばもう
裁判官
は全く羊のごとくにこれに従わなければならぬ、
自分たち
の権利とか
裁判
の
独立
を守る決意とかいうようなものはついえ去ってしまうというような恐怖感におとしいれられてしまう。こういう事態が起こり得るし、また現実に起こっているという徴候は明らかです。 たとえば、私の聞いたところでは、ある新聞社がこの問題について数十名の
裁判官
に電話で
意見
を求めたけれ
ども
、ほとんど回答がなかった。要するに、こういうことにつれて
訴追委員会
あたりのやっていることについてとやかく言うと、またそれが
訴追
の理由に
自分
自身もあげられるかもしれない。しかもそれは匿名でいいんだという、新聞社の情報源を守るというそういう配慮があっても、なおかつノーコメントであるというような、ほとんど
裁判官
がこういう重大問題について発言もようできないというような状況がつくり出される。これに対して黙っていていいというふうに
最高裁判所
の当局のほうでは
考え
るということになれば、それは明らかに、
自分
のほうでやれないことをいわゆるカッコづきの権威のある
裁判官訴追委員会
にお願いをする、何か連携が内部ではあるのではないかということを疑われても弁明の余地のないような状況が出ている。この点をどう
考え
ますか。
矢崎憲正
115
○
矢崎最高裁判所長官代理者
数十名の
裁判官
に
照会
したけれ
ども
、何ら返事がなかったというお話でございますけれ
ども
、これはその数十名の
裁判官
が、
裁判
の
独立
を侵害されたともし
考え
るならば、そんなことを黙っている
裁判官
は私はおらない、こういうように確信するわけでございます。
訴追委員会
につきまして、これは権限が著しく逸脱しているのではなかろうか、それによって
裁判
の
独立
が侵されるおそれがあるのではなかろうかというような現実が、懸念がもし生じたとしますれば、これは過去にも前例もあるわけでございまして、
最高裁
の要望として
訴追委員会
のほうへ申し入れることはあるわけでございます。これは昭和二十九年の七月のことでございます。そういう事例はもちろんあるわけでございまして、決して今度の場合に
裁判
の
独立
が侵されたという御懸念は私はない、こういうように
考え
ているわけでございます。
青柳盛雄
116
○青柳
委員
先ほど
吉田
事務総長
の
畑委員
に対するお答えのときには、
独立
の
機関
のやっていることだからというようなお話で、
最高裁
としては何ら申し入れなり見解の発表なりもできないかのごとくであったけれ
ども
、いま二十九年の前例があるというお話もあって、そうだったら、今度の場合、どうしてやろうとしてないのか。これは
裁判官
が侵犯を受けたと思わないから新聞社の質問に対してもノーコメントであったというふうに自己流に、
自分
に都合のいいように解釈されますけれ
ども
、むしろそうではなくて、もう何か言うと、こういう状況であれば、必ずこれはまた気違いのようなやつが
訴追
請求をやる。それを受けて立つような形で
訴追委員会
が
調査
を始める。こうなれば、これはもう賢明なる
裁判官
もあえて職を賭する覚悟でもない限りは言えなくなるという状況。そうなれば、
裁判
の
独立
を
裁判官
自身の力によって——それだけでは守ることはできないにしても、
裁判官
自身の主体的な力によって守ろうという意欲も侵されていくということにならざるを得ないと思うのです。 何かこれも伝えられるところによりますと、最近開かれた
裁判所
の長官会同あたりでも、この
訴追
問題だけではありませんけれ
ども
、要するに
青法協
問題と一口に言ったほうがいいと思うのでありますが、それが問題になって、
最高裁
の最高の当局が
裁判官
に盛んにしつこく、
青法協
に近づくなとか、それに入っている者は出るようにせよ、出たという証拠は内容証明でもつけてその証拠を出せというようなやり方に対して、非常な反響といいますか、
裁判官
の部内に恐慌状態に近いものを巻き起こす、そして同僚の
裁判官
も落ちついて
裁判
をすることもできないような状況が外部的にも出てくる。これは
世論
が、これに対する
批判
が強くなりますから、必然的なことだと思いますけれ
ども
、そういうような事態を
考え
れば、これ以上この問題をさらにエスカレートさせるというようなことが
裁判
を行なう雰囲気、また
独立
を守るための保障というものを侵害していくことになるというふうに
考え
るのが全く正しい常識だと思うのですが、それすらもなおかつやる
意思
がないということであれば、冒頭に申しましたように、
最高裁判所
の幹部諸君は
訴追委員会
と
意思
相通じてこの問題をさらに、いわゆるレッドパージを強行しようという意図があるのではないかというふうに
考え
られるのですが、この点はいかがでしょう。
矢崎憲正
117
○
矢崎最高裁判所長官代理者
お
立場
の
相違
と申しますか、そういうお
立場
でいろいろ御懸念をなすっていらっしゃるわけでございますけれ
ども
、私
ども
は、これ以上幾ら申し上げても要するに水かけ論になるわけでございまして、そのようなことは絶対ないし、
裁判
の
独立
というものは断固として守られるべきものであるし、また守ってきたし、またそのようないろいろな御懸念になることはないというように申し上げるほかはないと思います。
高橋英吉
118
○
高橋委員長
本日は、これにて散会いたします。 午後一時五分散会