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1970-11-13 第63回国会 衆議院 法務委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十一月十三日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 小澤 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 福永 健司君 理事 畑   和君    理事 林  孝矩君       石井  桂君    河本 敏夫君       島村 一郎君    千葉 三郎君       永田 亮一君    松本 十郎君       村上  勇君    沖本 泰幸君       岡沢 完治君    青柳 盛雄君  委員外出席者         法務大臣官房長 安原 美穂君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君         公安調査庁調査         第二部長    大泉 重道君         最高裁判所事務         総長      吉田  豊君         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢崎 憲正君         法務委員会調査         室長      福山 忠義君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 福永健司

    福永(健)委員長代理 これより会議を開きます。  指名により、私が委員長の職務を行ないます。  裁判所司法行政に関する件及び法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。高橋英吉君。
  3. 高橋英吉

    高橋(英)委員 委員長席から質問しても、いいという話ですけれども、少し脱線するかもしれませんので、この席から質問さしていただきます。  最高裁判所関係者にお尋ねいたしたいと思いまするが、第一は、先日、裁判官訴追委員会決定になりましたいろいろなことに対して、それが不当の政治的介入とかなんとかいうふうな批判があるようでございますが、これに対してどういうふうなお考えを持たれておるかということについてお尋ねしたいと思います。  大体、弾劾裁判所制度は、憲法六十四条に規定してあって、厳として全国民が守らなければならないことは言うまでもないことでございまするが、その憲法は、弾劾裁判所構成に対して、両院議員構成するというふうな規定をしております。両院というのは国会ということは言うまでもないことですが、国会とはどういうところであるかということもこれはもう説明の必要はありますまい。憲法で、国会国権最高機関であるということ、それから弾劾裁判所委員は、両院議員構成するというふうな規定でございますが、両院議員というのはどういうものであるかということ、これも説明する必要はございますまいけれども憲法を読み返してみますると、全国民代表する選挙された議員で組織する、ということが四十三条にあるわけでございます。さらに憲法前文では、国民は正当に選挙された代表者を通じて行動し、ということで直接行動を禁止する、否定するということでもないでしょうけれども、とにかく重要な国民意思表示については、正当に選挙された代表者、すなわち国会議員を通じて行動しなければならないというふうなことを前文に厳として書いてあります。  さらにまた、弾劾裁判所構成分子ということになりまするが、訴追委員会というものは、これはもう弾劾裁判所とは一体不可分のものでございまするから、これは弾劾裁判所に準ずるものと言うこともできますでしょうし、弾劾裁判所関係法規の中に規定されておるわけですから、やはりこの弾劾裁判所に対する憲法規定は、訴追委員会にも準用されることとわれわれは確信いたしております。  それから、三権分立の問題について、立法府が何か司法権を侵害したような、司法権介入したというふうなことの批判もあるようでございまするが、これは非常に三権分立をはき違えておるのではないかというふうに考えられるのであります。すなわち三権分立とは、行政立法司法が何も無統一にばらばらに発動するということを意味するのではなくて、共同至上目的、すなわち古いことばでいいますれば、国利民福のためにそれぞれその任務を独立して遂行するのでございまするから、その共同至上目的を達成するために、お互い統一をとりながらやらなければならない。それがためには、それぞれ越権、独走暴走の行為が出ないようにお互い抑制し合うこと、チェックし合うことが必要であるということは三権分立の大原則でございまするが、これは私が説明するまでもないことと思います。  したがって、弾劾裁判所関係憲法の趣旨は、全国民代表者である国権最高機関である国会判断、もしくはその構成機関である両院議員判断、すなわちことばをかえて言いますれば、国会議員の高度の政治的判断、高度の国会議員的な判断というものを憲法は要求しておるのであって、この国会議員判断なるものは、自然、政治家でございまするから、そこに政治的な判断が生ずる、政治的判断を要求しておるものと私どもは信じております。すなわち司法独走暴走抑制するために、全国民代表者である国会でこしらえられております弾劾裁判所において、この暴走を抑止するために、高度な政治的判断、高度の純粋な国会議員的な判断、それを憲法は要求して、そしてそのチェック抑制の効果をもたらそうとしておると思うのでございますが、これに対してどういうふうにお考えでございまするか。  私の論理からいいますと、やはり憲法のその精神からいいますると、各界、各層の一部の者が訴追委員会決定政治的介入と称したり、いろいろな批判をいたしておりますが、これは憲法規定をことさらに曲解したり、三権分立の大原則を知らないか、知っても憲法無視議論、すなわち反体制的なその主張をどこまでも貫こうといたしまして、そうして憲法無視議論を展開しておるのではないかと思いまするが、これはどうお考えですか。  さらに、国会国民から遊離しておるとか、国民の声を代表していないとか言う者がありますが、国会議員はそれぞれ選挙を通じて、その他常に国民と接触して、常に国民の声を聞きつつ国政に献身しておるのに反しまして、一部の反体制的な思想の持ち主の偏向意見、すなわち現体制の崩壊を期待する、そういうふうな反体制的なものが実現することを期待しておる一部の者の批判、また民衆と、国民と何らの接触を持たない象牙の塔や密室のデスクの上で特につくられた独善的な作為的な意見、こういうものを世論といっているようにも思いますが、これに対してどういうふうにお考えですか、まずその点をお伺いしたい。——いろいろと問題を含んでおりますから、御研究の上にまた他日御回答願いましても差しつかえありません。
  4. 福永健司

    福永(健)委員長代理 それはそれとして、いまはいまとしてたぶんお答えがあると思います。
  5. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 このたびの訴追委員会決定につきましては、訴追委員会という独立機関が独自の判断に基づいてなされたものでありますし、裁判所といたしましては、これについてとかく申し上げる筋合いではない、こういうふうに考えております。
  6. 高橋英吉

    高橋(英)委員 それから、問題はちょっと違いますが、裁判の手続の関係で、裁判官の問題なんかで除斥とか忌避とかいう規定がありますが、これはたとえ裁判官ほんとうに良心に従っていろいろな言動をいたしますにいたしましても、判決いたしますにいたしましても、特別の関係があればその公正を疑われるというので、除斥、当然法律上その裁判には関与できないというふうな制度、そういうふうな規定もありますように、とにかく裁判の公正というものを疑わしむるようなそういうふうな条件があった場合には、その裁判官がいかに清廉潔白の人であって公正な判決をしたところで、国民を納得さすことはできないというふうな精神でこういう規定ができておるのであると思います。こればかりではない、それに類似するいろいろの社会的な条件があると思いますが、そういうふうな意味で、やはり除斥にまではいかない、忌避にまではいかなくても、おのずからそこに裁判官モラルというものがあって、誤解を受けないように、公正を疑われないようにつとめなければならないというふうなことが原則と思いますが、これはどうでしょうか。
  7. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 まことにお説のとおりでございまして、司法は、国民の信頼を得ますためにはもとより実質が重要でありますけれども、その実質に相伴いますところの政治的な中立性、あるいは、これは最近の表現でありますけれども、従来から申されております裁判の公平、公正というようなものにつきましては、その外観もきわめて重要なものであろうかと存じます。  制度的な保障といたしましては、ただいま御指摘のように、除斥忌避というような制度がございます。そのほかに回避というような制度も設けまして、きびしいモラル裁判官に期待しているわけでございまして、その点におきまして、裁判官の倫理と申しますか、モラルというものも、裁判官に期待された重要な問題であろうと私ども考えておる次第でございます。
  8. 高橋英吉

    高橋(英)委員 それから、こういう問題もありますが、どうお考えですか。  たとえば、今度訴追委員会青法協の会員であるかどうかということを問い合わせたというふうなことですが、それに対して何か思想的な、一つの踏み絵的な行動であるとか決定であるとかいうふうな批判もあるようでありますが、もしその青法協というものがやましいものでなかったならば、その資格を問い合わされても、めったにそれに対して問題が起こるはずはない。これは、青法協ということを名のること自身が何かやましいということでもあるように、みずから語るに落ちるというふうな関係にあるのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  9. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 先ほど訴追委員会照会につきましては、事務総長から申し上げましたように、憲法国会法等によって規定され、それに基づく国家の機関である訴追委員会で、独自の権限に基づいてなされた措置でございまして、裁判所としてそれに対してとやかく申すべき筋合いではない、こういうふうに考えているわけでございます。
  10. 高橋英吉

    高橋(英)委員 いろいろ飛び飛びで質問することになりますが、先ほど訴追委員会憲法上の地位に戻ってもう一点申し上げて御答弁をわずらわしたいと思うのです。  先ほど申し上げましたように、国会議員は全国民代表であると憲法規定しておりますが、その全国民代表である国会議員が、全国民の心を心とし、その意思代表していろいろな国政に関する行動をとるというふうなことになっておりますが、それでも私は、善政のないところ多数なしというので、多数を獲得するような党派は必ず善政をしいておるから、善政をしくからという期待のもとに多数が選出されておるのでありますから、全国民の大多数の代表者の声であるからその意見も非常にいいと思うのですけれども、しかし、訴追委員会なり弾劾裁判所規定では、その上になお慎重を期して、三分の二の賛成がなければならないというふうにまで非常に厳重な慎重な規定をいたしております。それほどの独立機関に対してとやかく批判するのは、たとえば検察庁がいろいろな事件捜査するのに、その捜査方法が間違っているとか一々具体的に批判したり、裁判所裁判の内容について一々批判するというようなことは、捜査の妨害にもなるし、裁判の公正を疑わしむるところの原因にもなるというふうなことで、これはマスコミも遠慮しておるようでございますが、ひとり国会議員は、マスコミに弱いとかなんとかいうふうなことで、いろいろ憲法否定憲法無視のような思想のもとに批判を受けているようで、はなはだ心外にたえないのですが、この訴追委員会規定弾劾裁判所規定は慎重の上にも慎重を期した法規であると思うのですが、それはどうお考えですか。
  11. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、国会法、その上にある憲法等により制定された制度でございまして、慎重に御審議の上制定された現行の制度である、こういうふうに私は考えております。
  12. 高橋英吉

    高橋(英)委員 それから、福島判事が辞表を提出したときに、訴追委員会決定があった後に札幌裁判所のほうでああいうふうな決定がありましたのに対して、政治勢力に迎合したというふうな、そういうふうなことを言っているようですが、これは弾劾裁判所とか訴追委員会というふうなものの憲法における厳たる規定を否定し、無視したところの言動ではないかと思いますが、これはどうでしょう。どうお考えですか。
  13. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 決して札幌高裁処分政治勢力に迎合するとか、あるいは訴追委員会決定に押されてなされた措置であるというようなことは、全国の裁判官だれも考えていない。そういうことを言われるということは、札幌高等裁判所裁判官に対する非常な侮辱とまで言ってはおかしいかもしれませんけれども、非常に不本意なことであるというように考えておるわけでございまして、したがいまして、そういう発言につきまして今度札幌地裁で適切な措置がとられたというように、私ども理解しておるわけでございます。
  14. 高橋英吉

    高橋(英)委員 ややもすると、政治勢力介入とか、政治勢力に迎合したとかいうようなことばがありますように、政治が何か悪いものだというふうな表現をするようでございまするが、これは私どももってのほかと思うのでありまして、国民の正当な代表者でない者がいろいろな言動に出ることは、これは国民試験を経なければわれわれは信用することができないという立場におるのですが、国会議員国民試験に合格して国民意思代表して、国利民福といいますか、国民の福祉のために懸命に働いておるのですから、その政治的な意見が悪いはずはありません。それぞれ枝葉末節の点については、またイデオロギーの違っている点については、政治のやり方、方法などについて意見相違はありましょうけれども政治というものは悪いものであるという前提のもとにいろいろ言動せられるというふうなことは、非常にわれわれ心外であると思うし、また憲法否定の、憲法無視言動であると思うのです。裁判官のうちにそういうふうな言動思想を持っておる者があるとするならば、これは現在の憲法下裁判官としてふさわしからない者であると考えますが、その点どうでしょう。
  15. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これは具体的な問題に即して考えるべき事柄で、抽象的に申し上げることはできないものと存ずるわけでございます。それについて結局のところ、憲法国会法によって訴追委員会ないし弾劾裁判所制度が設けられているというように、われわれ理解しておるわけでございます。
  16. 高橋英吉

    高橋(英)委員 最後にもう一点。明治の初年に児島惟謙先生というわれわれの郷里の大先輩で護法の神ということになっておりますが、この人は最高裁判所、その当時の大審院の院長で、例の大津事件に対していろいろ直接審理する裁判官等に、指示といいまするか、指示勧告、あらゆる手を通じて、あらゆる手段、方法をもって児島惟謙先生意見に同調さしたというふうなことが歴史に炳乎として残っておって、それがいわゆる護憲の神というふうなことになり、護法神さまということになっておるのですが、これはどうでしょう。今度の平賀裁判官福島裁判官に対してああいうふうな態度に出られたということとどう違うのでしょうか。一方は神さまと仰がれて、一方は憲法の敵である、裁判官の敵のように批判されるのですが、その点についてどうお考えですか。同じく、裁判官独立みたいなもの、司法独立といいますか、そういうものを侵したような形に形式上はなるわけですが、そういう点についてどうお考えですか。
  17. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これは明治時代のいろいろな国際情勢のもとにおける日本立場、それからまた現在における日本のいろいろな情勢というものについては相当の相違もあるしいろいろな差異も認められるのではないかと思うわけでございます。したがいまして、児島惟謙先生のされたことと平賀所長のされたことが全く同じであるというようにはちょっと理解しがたいのではなかろうか、こういうように考えます。
  18. 高橋英吉

    高橋(英)委員 時間がないようですから、これで一応終わります。   〔福永(健)委員長代理退席委員長着席
  19. 高橋英吉

  20. 畑和

    畑委員 私も高橋英吉委員長と同じような問題について質問をいたしたいのですが、しかし、その立場はまさに正反対であります。  実は、例の訴追委員会処分の問題、決定の問題、あの問題について訴追委員長をこの席に招致をして、来てもらって、そうしていろいろお聞きしたいという考えを持っておりました。しかも早期に委員会を招集して訴追委員長に出てもらいたい、こういう申し出を私、委員長のほうにしておいたのでありますが、訴追委員長をこの法務委員会に呼ぶこと自体がいろいろ疑義があるというようなこともございまして今日に至りました。先ほど理事会でも、いろいろ議論はしたのでありますが、実はまだ確定的な結論に至っておりません。したがって、きょうは訴追委員長がおいでになっておらないのでありまして、おもに訴追委員会のこの間の決定について議論をしたいのでありまして、最高裁では隔靴掻痒の感があるのでありますが、しかし、関連した事項もございますので最高裁にお尋ねをしてまいりたいと思います。  この間の国会訴追委員会結論というものは、私は全国民が非常に注目をしておったと思います。司法権独立危機ということが最近非常に叫ばれておりまして、まさに一つ司法権独立危機ではないかということを私もひしひしと身に感じた一人でございます。最近、いろいろな一連事件がこの一年間ございました。一番最初は、例の自民党内における裁判制度調査会の問題がございました。これは世の中の非常に大きな批判を受けましたので、自民党さんのほうでも撤回をされたようであります。しかしながら、そうした空気自民党の中にもずっとうつぼつとして流れておったところであろうと思うのでありますが、その後、この福島裁判官による例の長沼訴訟の問題についての仮処分停止決定が出されたということが非常に反響を呼びまして、またその決定に先立って、平賀所長が書簡を福島裁判官に出しておったということが公にされた。これはまた非常に世論注目を引いたわけであります。そしてその問題のあと、飯守裁判官平賀所長支持の声明がある、それからそのうちに青法協の問題が出てくる、それからまた法務省福島裁判長忌避の問題が出てくる、さらにはそれに対する訴追の問題が出てくる、その間に裁判所のほうでは事務総長の例の青法協加入問題に対する談話、さらに最高裁長官談話、こういうものがずっと全部関連をしておるわけであります。訴追問題については、先ほどもお話し申し上げましたように、ああした結論平賀さんと福島さんについて出たわけであります。そしてまたさらに、青法協加盟裁判官に対する訴追委員会照会状の問題が出た。こうした一連司法に関する事件がこの一年間、次々と起こっておるわけであります。そのためにわれわれは司法権独立危機というものについて非常に心配をいたしておるのであります。  特に、この間の訴追委員会決定というものが、いままでの裁判所処分というものと正反対の結論が出ておったと思うのであります。したがって、非常に政治的な、あまりにも政治的な結論ではないか、こういう批判がごうごうとして起こっております。これは私だけの考えではないと思います。全国民ひとしくそうしたことをやはり憂えているのではないか。先ほど高橋英吉委員長は、これは国権最高機関だから、しかも三権分立一つチェック機関としての、チェックアンドバランス一つ方法である、しかも国権最高機関だからそれの結論というものが政治的であってもよろしいんだといったような意味の言い分だったと思うのでありますが、しかし、私はこれは政治的であってはならぬと思うのです。国会から選出をされておる訴追委員によって構成されておる訴追委員会でありまするから、自然と各党派から選ばれるということはやむを得ぬことであります。しかし、それが判断するにあたっては、やはり政治的立場というものをできるだけ抑制をして、弾劾裁判所の中の訴追委員会としてのあり方というものを考えて私は結論を下すべきであったと思うのでありまするが、その結果というものはまさに逆だった。裁判所平賀所長に対して、まずあのとき地裁裁判官厳重注意という、裁判官会議決定をいたしました。それで最高裁がさらにそれを確認した形でやはり注意をした。そして平賀所長を転任をさせたということですね。それでその当時には福島裁判官に対しては何らの処置もされなかった。またそういう空気もどこにもなかった。不問に付したといってもいいと思うのです。問題にならなかった。ところが、今度の決定は全然逆でありまして、結局この間福島裁判官の言ったことにもありますが、一一九をした人が逆に訴追猶予になった。それで火をつけたというか、火事のもとのほうが不訴追というような決定になった。これはほんとうにあべこべだ、こういうふうに感ずるのは私一人ではなかろうと思うのです。  こういう決定が出されたのでありますが、こういう決定に対しては最高裁はどうお考えになっておられるか。新聞等によると、そのことについては何とも言っておりません。その後、札幌高裁福島裁判官に対して注意処分にしたということについて当然な処置である、こういうふうなことを言うております。大体札幌高裁処置自体が、私は訴追委員会結論に基づいて処分をした、こう思うほかない。そうじゃないのです、別なんだ、こう言われるかもしれません。しかしながら、ともかくいままでは福島裁判官のことについては、そういった処分問題についてはどこの裁判所最高裁も何ら触れておらない。それで一年もたったいまごろになって訴追委員会がああいう結論を出した。それに対して何にも言わぬ。大体このとき私は最高裁は何らか発言すべきだったと思う。司法権独立という立場から自分立場をはっきりすべきだったと思う。それでいて札幌高裁処分をするやそれが正しい、こういうようなことを言って、結局は訴追委員会決定が正しいのだ。同時にまた、それとは別の考えで、処分処分でやったんだ。おれのほうは何も訴追委員会に拘束され、それに屈服したわけではない、こうおっしゃるだろうけれども、屈服したかに見えるその札幌高裁処分を正当な処置である、こういうことをいまごろになってなぜ言うのですか。私は訴追委員会決定が出たとき、裁判所としてはき然たる態度自分たち考え方を述べるべきだったと思う。それを黙っていて、札幌高裁処分したら当然の処置だ、こういうことを言っておる。私はまさに司法権独立危機だと思う。行政権に屈服し、立法権に屈服しているじゃないですか。それで一体司法独立が守れますか。三権の分立というのはもう憲法規定されている。これは国民ひとしくこれを支持しておる。ただチェックアンドバランスで若干のお互い牽制作用は認めております。しかし、今度の決定はあまりにも私は政治的だと思う。数の政治だ。弾劾裁判所訴追委員会のほうでそういう政治的なことが許されていいのかどうか、私はきわめて疑問です。これは私だけの疑問ではないと思う。  そこで、先ほども私がお話し申し上げました中に入っておりますけれども裁判所はどうしていまごろになってこういった態度福島裁判官についてとっておられるのか。前々から調査をしておったんだが、調査が手間どっているうちに訴追委員会で問題が出たから、したがってそれに影響を及ぼしたりなにかしたのではいかぬというのでいままで待っておったんだ。ところが、結論が出たから、したがって高裁処分したのはこれは全然その結論に左右されたんじゃない、それと全然別なんだ、こういう新聞記事だった。そんな談話を発表しておるようですが、私はとてもそれでは理解できぬ。その辺のことについて、裁判所の見解を聞きたい。事務総長、ひとつお答えください。
  21. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これは、結論的に申し上げますれば、札幌高裁が、政治勢力ないしは訴追委員会決定に対して、その圧迫を受けて高裁としての裁判官会議による注意処分をしたということは、これは全くないことでございまして、完全にそれとは別個の立場でやったものであるということを、まず結論として申し上げたいわけでございますが、それには少し事実を申し上げなければなりませんので、畑委員の持ち時間に若干食い入らしていただきたいと思いますが、どうしても事実的な経過を御説明いたしませんと、はっきりいたさないと思うわけでございます。  そこで、まず昨年の八月二十七日に、札幌地裁本庁の裁判官九名が集まりまして、この問題について、いわゆる平賀書簡問題について裁判官会議を開催しようという結論を出したわけでございます。そして、九月六日に平賀所長裁判官会議を招集して、十三日に裁判官会議が開かれ、先ほどのとおり平賀所長裁判官会議によって注意処分を受けた、こういうことになるわけでございます。ところが、すでにその当時は平賀書簡は報道機関の手に渡っておりまして、十三日の裁判官会議は深更に及んだそうでございますが、十四日には、すでにその書簡の交付の事実、それから書簡がテレビで映し出されて、十五日の朝刊で書簡全部が発表になった。そして、二十日に石田長官から平賀所長に対しまして、最高裁判所裁判官会議決定に基づいて注意がなされた。そして、十月二十三日に福島判事に対して訴追の請求があった。そして、ことしの四月に至りまして、福島裁判官に対しまして農林大臣から忌避の申し立てがあったわけでございます。そして、五月七日に、札幌地裁では忌避申し立ての却下決定をいたしました。五月十四日に、農林大臣が札幌高裁に抗告の申し立てをした。そして、この七月十日、高裁が抗告棄却の決定をいたしたわけでございます。そして、それから約三カ月を経て、訴追委員会において訴追猶予決定があり、そしてそれから約十日した二十八日に、福島判事に対して札幌高裁裁判官会議の議決に基づいて注意がなされたわけでございます。  こういうような一連の事実関係の経過を前提にしていただきまして、訴追委員会決定の中に掲げてある事柄をそのとおり若干、できるだけ短時間で読み上げさしていただきたいと思いますが、その中にこういう一節がございます。「福島裁判官が八月二十二・三日頃から同月末頃までの間に、東京の裁判官等を含む数名の裁判官に、平賀所長より平賀書簡を受けたこと並びに札幌地裁裁判官には、これを公表することに反対する意見が多いが、公表の可否についての意見を求める旨の書信を送り、さらに九月はじめ頃、右裁判官らに平賀書簡のコピーとその後の経過を書いた書信を送って、これに対する同裁判官等意見を求めたところ、公表すべきである旨の圧倒的多数の回答に接し、また公表については積極的に協力する旨の手紙も数通あったので、これを放置すれば書簡を公表される危険があったにかかわらず、あえてこれを差し止めなかったため、東京方面に送った平賀書簡のコピー一通を同月十三日の裁判官会議開催前に新聞記者に入手せられる結果に至らしめた」こういう認定の内容があるわけでございます。  平賀所長につきましては、事柄はきわめて簡単明瞭でございますけれども福島裁判官につきましては、この決定の中でうたわれておりますように、書簡がすでに裁判官会議の前に送られて、そして事柄は東京まで舞台が広まってきておるわけでございます。それが、東京の裁判官からどういう経路でどういうようなたてまえで新聞記者のほうにこの書簡が渡ったのか、この経過等につきましては、つまびらかにいたしませんけれども、ともかく非常に複雑な内容があったということはお察しできると思うのでございます。  一方、先ほど申し上げましたように、訴追請求はある、忌避の申し立てはあるというような状況のもとにおきまして、そういう状況のもとで札幌高裁が何らかの措置をとるということは、きわめてこれは考えなければならないことではなかろうか。そういうような客観情勢のもとにおきまして、札幌高裁としては、訴追委員会決定があった後にというように考えていたことは間違いないと思うわけでございます。  で、結局のところ、札幌高裁としては、決して訴追委員会決定の圧迫のもとにあるいは政治的勢力の圧迫のもとにそういう決定をしたのだ、いわゆる裁判官会議の決議をしたのではないということは断言できると思うわけでございます。
  22. 高橋英吉

    高橋委員長 ちょっと関連して。何か福島判事は学生時代に公務執行妨害で逮捕されたことがあるそうだが、そういう事実はどうかな。
  23. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 そういう事実はあるというようになっております。しかし、裁判官としては正当にもとより作業されているわけでございます。
  24. 畑和

    畑委員 逮捕されたことがあるかとかなんとか言うことは不謹慎だよ。そういうのは裁判官のあれとは関係ないですよ。さぞかし思想的なあれを強調しようというのだろうが、そういう意図はけしからぬ。  いま、いろいろいきさつを聞きました。それは平賀問題と違って、若干いきさつがなかなか込み入っている点は私も認めないわけではない。しかし、そうだとすれば、その結論が出たときに、調査ができたときに処分するんだとしたら処分すべきじゃないですか。それをしないでおいて、しかも時たまたま訴追委員会結論が出た、そのあとを追ってすぐさま処分をするというのは、どうも何と申しましても外部の政治勢力結論というか、政治に支配されたというふうな印象を国民が持つのはあたりまえですよ。それではなぜその当時、審理中でもいいじゃないですか。しかも、部内の問題でもあるしね。平賀さんの問題は裁判の根本に関する問題でありますので、それで公表したかしないかという福島さんのほうの問題は、部内の下級裁判所何とか規則というのですか、それに触れるらしいのだが、しかも、自分で積極的に公表したわけではないし、そして東京の自分の同僚の裁判官意見を聞くために写しを送ったということが、福島裁判官の意図ではなく、そのほうから出たといういきさつもあるようですし、その軽重の問題は別といたしまして、それは部内なら部内で、そういうことはけしからぬというならけしからぬで早く処分するなら処分をすべきだったと思う。いまになって、訴追委員会結論が出たらすぐさまそのあとを追っかけて処分するというのは、外から見てどうしても司法権がほかの外部の勢力に、訴追委員会決定に追随をした、屈従をしたというような印象は、これはあなたがどう言ったって免れないですよ。タイミングが非常に悪かったですね。私はそう思います。これはだれもそう思っているのですよ。司法権は外部のあれに相当最近弱い。こうした問題、あるいはその前の福島裁判官に対する国の忌避の問題、ああいった行政立法、両方からの圧迫を受けていることは間違いないのです。したがって、司法権独立を守るためにあなた方が中心となって、先頭になって、やはりき然たる態度でやるべきだと思う。それをちょうど——言いわけは言いわけとして一応聞いておきますけれども、時期的に非常にそういった印象を免れないと私は思うのです。そういう点が非常に私はおかしいと思うのです。  それから、外部からの圧迫というか、そういうものがあると同時に、また内部のあなた方の姿勢というものが私は非常に問題だと思うのです。みずから司法権の権威というものを卑下するというか、そういったようないろいろな傾向が出ておりますね。大体最高裁判所長官のこの間の例の談話、あれも非常に批判の的にさらされております。あれも一つのそういった傾向だと思います。要するに、裁判所の自立精神が最近欠けているんじゃないか。それだから外部勢力はここぞとばかりあなた方裁判所のほうにいろいろな意味の圧力を加えてくるのではありませんか。私はそう思います。外部と内部と両方にそうした危険があるのだ。司法権独立がそこなわれる危険は外部だけじゃないのです。あなた方は外部に対して弱いから、弱くてみずからそれを暴露するようなことをいろいろ次々とやっているから、私はそう思います。どうでしょう、その点は。
  25. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 外部からいろいろ司法権独立を侵されたというようなことを言っておられるわけでございますけれども、われわれは裁判所の内部において司法権独立を侵害されたというようにはいささかも考えていない。もしもそのようなことをわれわれが考えるとすれば——これはもういままでの歴史的な司法部の伝統というもの、それを守るためにわれわれがどれだけしかるべきときにしかるべき措置をとってきたかということも十分御承知のことと思うわけでございますが、そうであるならば、司法独立を害されたと考えるならば、われわれが絶対に黙っていない、このことだけはここではっきり申し上げておきたいと思います。
  26. 畑和

    畑委員 言うことだけはりっぱですよ、あなた方の言うことは。しかし、バックボーンが欠けているとぼくは思うのだ。いままでの一連のことをよく考えてごらんなさい。はっきりとしたき然たる態度をとらなければ、これはどんどんひしひしと政治の圧力はあなた方に及んできますよ。あなた方自身がきちっとしなければだめなんです。大体最高裁のあなた方官僚がもっとしっかりして司法権を守るというき然たる態度がなければ、どんどん司法権は侵されていきますよ。それを国民は心配し、私も心配している。どう思いますか。
  27. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げたとおり、もしもわれわれにおいて裁判独立に侵害があるというように考えた場合には、もちろんあらゆる態度、あらゆる方法によってこれをはねのけるということは当然のことでございます。
  28. 畑和

    畑委員 この前、自民党裁判制度調査会というものを設置するということになったときに、あなた方は最高裁長官談話だったか、あれは事務総長談話でしたかを発表して、き然たる態度で干渉をはねのける、こういう態度を示してきた。これはりっぱだと思う。私はその気概が必要だと思う。いまその気概がなくなっているのじゃないか、それを私たちは心配いたしておるのです。  それから、もう一つちょっと質問しておきたいのですが、福島裁判官が辞表を撤回した、そして談話も取り消したというような事態が起きました。これは私も、福島裁判官は何もやめるという辞意表明をする必要はなかった、しかもそれをあとで撤回をして、談話まで取り消すというようになったのは、どうもいささか軽率のそしりを免れないというような感じはしております。しておりますけれども、それに対して、その福島裁判官裁判所を誹謗するかのごとき言動、まあ自分たちの悪口を言われたというような感じでか地裁注意処分にした、この気持ちはわからぬでもない。しかし、地裁は、かつて平賀所長をみずから裁判官会議注意処分にしたくらいで、そのときには福島裁判官については何も地裁は言ってない。そこで、こういう段階になってきて、訴追委員会結論が出て、札幌高裁注意処分が出て、それで福島がやめると言って、また戻った。こういう段階で注意処分と、こういうことに地裁がまた決定をした。一体その気持ちはわからぬでもないのでありますけれども、事の軽重というか、その点の区別がどうもはっきりしない。末節のこと、このことだけで処分して、この間の地裁決定につきましては肝心なもともとの平賀問題ということについての深刻な注意が私は足りないと思っている。その点どうあなた方は最高裁として考えますか。
  29. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 平賀判事につきましては、先ほど畑委員から御指摘のとおり、札幌地裁でも注意処分があり、最高裁裁判官会議でも注意処分決定があり、また転任ということに相なったわけでございます。福島判事につきましては、札幌地裁裁判官会議において、退官の意を表明した際に福島判事がなした談話は、司法権独立について不当な疑いを抱かせ、それにより裁判所及び裁判官の名誉を著しく傷つけ、裁判に対する国民の信頼をそこなうものであるという点を、はなはだ遺憾であるというようにして注意したわけでございまして、その間何ら事柄の軽重——ピントはずれではないかというような御意見でございますけれども、われわれとしてはそういうことはないというように考えているわけでございます。
  30. 畑和

    畑委員 そう答弁されるけれども、まさに私はあの地裁注意処分というのは裁判所の威信ということばかりを前面に押し出して、それで肝心な国民の疑問には少しも答えてない、こういうことで国民はちょっとおかしく思っていると思うのですが、これはそれだけでいいです。  もう一つ、ちょっと最後に聞いておきたいのは、いろいろ注意処分注意処分と、裁判所は地方裁判所あるいは高裁最高裁とこうして注意処分その他を出していますね。これはどうも不統一な感じがするのです。高裁最高裁おのおの下に対して監督権を持っている、地裁自身も自分裁判官会議を開いてやることができる、その規則はわかっている。規則はわかっているのだけれども、今度の一連事件を見ても非常にそれが、こっちでやったかと思うとまた今度はこっちでやるというようにまちまちだ。もっともそのときそのときの情勢に応じてやられたのかもしれぬけれども、その辺が非常にまちまちのような感じがする。すべて最高裁に報告をされておるのだと思うが、その辺はどうなんでしょうか。
  31. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 最高裁判所、また高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所と、いずれもこの八十条によりまして、そういうことをなし得る司法行政上の監督権を持っているわけでございまして、まあばらばらにやるということのほうがむしろ裁判所の特殊性をあらわしていると申しますか、上から下のほうに対して命令するとかそういうことでなくて、てんでんばらばらだということが一つ裁判所のいいところではないかというようにお考えいただければと思うわけでございます。
  32. 畑和

    畑委員 いずれにいたしましても、私が心配しておるのは、先ほど何度も申しておりまするように、最近の一連事件はずいぶん国民も心配していると思う。日本司法に非常に大きな期待を抱いておるだけに、不当な干渉に支配されておるのではないか、こういうような国民の心配が私はあると思うのです。いままでの御答弁は私必ずしも満足いたしません。あなた方の身を守るような、そういった官僚的な答弁がどうも多いような感じがいたすのであります。私は全部の裁判官も相当心配していると思いますよ。先ほど高橋さんに対する答弁にも、何か一人としてそういった裁判官はいません。屈辱というほどのことでもないけれども、これは一つの侮辱的なあれだというようなことを言っておられましたけれども、やっぱり裁判官全部、そういうように考えておる人は相当おるんじゃないですか。この一連の問題についてあなた方とは少し違うんじゃなかろうかと思うのです。この点は別に答弁を求める必要はございません。  ともかく、この司法権独立というものについて、あなた方自身が、最高裁自身が、裁判所全体としてあくまでもそれを守っていく、不当な干渉に対してはどんどんはねのけていく、こういう自立精神が絶対必要だというふうに私は感じております。  以上で私の質問は終わります。
  33. 高橋英吉

    高橋委員長 ちょっと最高裁に、いろいろマスコミはじめ、いまの畑委員なんかの意見から、何か政府や自民党に反対しさえすれば司法独立が守られたようなことを言われたり、そういうふうな感じを受けるのだが、畑先生の意見はともかくとして、畑委員以上の偏向的な意見や反体制的な意見が非常に横行するのですが、そういうことに影響されることはありますまいな。
  34. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 それはもう全くそういうことはございません。それはみんな完全に独立を守って、そしてそのためにならば、とにかくあらゆる妨害も排除してやるだけの勇気と自信を全国の裁判官は持っているわけでございまして、そういう御懸念は全くないと存ずるわけでございます。
  35. 高橋英吉

    高橋委員長 それから、畑委員をはじめ、みな国民国民と言うけれども先ほども私申し上げたように、国民代表者国会なんだから、国会議員国民代表であり、国民意思代表しているわけだから、国会議員以外の意見はそうたいして重きを置く必要がないと思う。(発言する者あり)これは私が言っただけにしておきましょう。答弁を要求しません。  畑君。
  36. 畑和

    畑委員 それでは時間はあまりかけません。短く質問したいのです。  この間来ずっと起きております朝鮮人の国籍の問題ですが、きょうの新聞報道によると、田川市に対して福岡県知事が職務執行命令を出されたというような記事がございますが、これは事実ですか。
  37. 吉田健三

    吉田説明員 田川市に対して福岡県が説得につとめてきておりまして、その交渉が本日田川市長によって拒否されたということを、先ほど確認いたしましたが、職務執行命令の文書が出たかどうかにつきましては、いまの時点においてははっきりしておりません。おそらく今日もしくは明日くらいに発出されることになるだろうと思っております。
  38. 畑和

    畑委員 そうなりますと、おそらく期限をきめて出されても、いまさら田川市長もそのとおり期限内にはやらぬと思うのです。そうなると結局は裁判所の職務命令、裁判所判断にまかせるということに、おそらくなるものと思う。ところで、田川市以外にもたくさん同じようなケースがございますね。中には保守系の首長もまじえて同じような態度をとっておられるところがありますけれども、こうしたほかの市に対して一体どうするように法務省のほうは指導しておるのか。直接法務省自身で訴訟を起こしたり職務命令を出したりするわけにはまいらぬのでありまして、結局その県当局のほうを通じてそれを指導して、県当局がそれに対してやるわけですけれども、ほかの市に対しても同じようにやられると思うのだが、田川市だけをもってずっとやっていくつもりなのか。それとも、ほかの市にも続いて同じように職務命令を出させるように、県当局を指導していくのか、その辺をひとつ聞きたい。
  39. 吉田健三

    吉田説明員 田川市同様に、もしほかの市町村においても説得に応じない場合には、最悪の場合には行政訴訟にいくこともやむを得ないという意味で、田川市と同様の方針で臨む所存でおります。
  40. 畑和

    畑委員 これはおそらく田川市が一番早いし、一番なかなか強硬だということで、ここを突破口にしてやっていこう、こういう考えだろうと思うのですが、田川市だけを目のかたきにしておる点がちょっとのみ込めない感じがするのだけれども、おそらくはほかの市に対してもやらざるを得ない。田川市だけやって、あとはほっておくということではないのでしょうね、どうですか。
  41. 吉田健三

    吉田説明員 おっしゃるとおりに、ほかの市に対しても、もし説得に応じない場合には田川市同様の措置をとる手はずになっております。ただいま御指摘のありましたように、田川市は現に一番先に行なわれたために、まっ先にこれに対してただいま処置がとられておるわけでございます。それに引き続きまして、他の市町村に対しても、私のほうで確認いたしましたものに対しましては、同様の措置をとりつつあります。
  42. 畑和

    畑委員 そうすると、田川市だけでなく、最近次々と北海道あるいは東京都下各市、京都、山形とか、いろいろあちこちに書きかえを実施しているところがたくさんふえているようでありますが、それに対して各おのおののところでやられることになっておる、こういうことになりますね。同時に、保守系の首長も何人かおられます。こういうところも同じようにやられるのか、その点はどうですか。
  43. 吉田健三

    吉田説明員 首長が革新系であるか保守系であるかということとは関係なしに、同様の方針で臨むつもりであります。
  44. 畑和

    畑委員 この問題は法務省がえらい強気でやっておるということで、その中間にはさまった県当局はなかなか苦労しておる。いろいろ選挙などを控えておるところもありますし、非常に苦労しておる。法務省はまあ自分が直接ではない、指令だけ出しておるのだからいいかもしれないけれども、間にはさまった県や市はなかなか容易ではないと思うのですね。その点でこの前、法務大臣は革新市長会のメンバーと国会で会われて、すげない返事をされておったが、その後一度も、革新市長会の主要なメンバー、幹部あたりと話し合うことはいままでしていない。そういう点、するつもりはないのですか。大臣がいないからあれだけれども、入管局長……。
  45. 吉田健三

    吉田説明員 大臣に御趣旨はお伝えして御意見を承ってみることにいたしますが、ちょっと私の決定する事項ではございませんので……。
  46. 畑和

    畑委員 もう一点お聞きします。  話に聞きますと、福岡県の水巻町ですか、ここなんかは、登緑原票は書きかえずに、各人が携行しておる登録証明書ですか、あれだけを朝鮮籍に書きかえたというような話を私ちょっと聞いたのですが、そういうことはあなたのほうの耳に入っておりませんか。
  47. 吉田健三

    吉田説明員 そのようでございます。
  48. 畑和

    畑委員 それはどういうことになりましょうね。結局、原票には書き込まない、変更はしない、したがって朝鮮籍にしたという原票の写しもおたくのほうにはいっていない。ただ、本人が携行している登録証明書には朝鮮籍と書いてある。これは一体どっちがほんとうなのか。原票がほんとうだというのだろうけれども、そうなると、片っ方のほうもやはり証明する公の文書ですからね。それが事実と違うということにもなる。これは妥協的な考えでやったのかもしれませんけれども、本人さえ満足すればいいやというところで、登録証だけ朝鮮籍にして、原票は相変わらず。本人はおそらく原票は変わっておると思っているだろう。それでは結局本人の期待を裏切ることになるのですが、この辺はあなた方はどうお考えになるのか。ただ聞いておるだけで済まされるのか、ひとつ承りたい。場合によったら文書不実記載になるかもわからぬし……。その辺はいかがでしょう。
  49. 吉田健三

    吉田説明員 訂正されていない原票が正しいわけでございまして、本人が所持しているものは、訂正された部分につきましては事務上の誤りがおかされておる、こういうことになるかと思います。  私たちといたしましては、原票と異なった、誤った外人登録証が所持されておるということは好ましくないので、これを訂正するように指導しておりますが、何ぶんにも、外人登録の規則によりますと、本人がそれを持って出頭してきて書きかえるということになりますので、本人が出頭に応じないということでございますと、その間違って記載されたものを本人は持ったままおられる、こういう事態が若干続く。ただ、明年第十回の大量登録の切りかえが一斉に行なわれますので、その際にこの問題がさらに解決されることになろうかと思う次第でございます。
  50. 畑和

    畑委員 これは、あなたのほうであまりやかましく言うものだから、その間にはさまった首長がそういった便宜的なやり方をやらしたとも判断される。しかし、この点はやはりおかしなものだと思うのです。原票が正しいので、携帯しているほうは間違っているといえばそれまでなんですけれども、しかし、そうは本人たちも考えないだろうし、出てこなければそれを訂正する方法はない、こういうことなんです。この点ほかにもあるというような話もちらほら聞いておるのですが、その点もひとつあなたのほうで調べていただいて、あとで報告をしていただきたい。  以上で私の質問を終わります。
  51. 高橋英吉

    高橋委員長 林孝矩君。
  52. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は、先ほど来問題になっております裁判官訴追の問題に関連して、司法行政立場からいろいろ質問したいと思います。  まず、本日の委員会の当初に高橋委員長が、はっきりレールを敷くという意味から質問されましたが、しかし、先ほどから発言がございますように、国民意見なんというのはあまり重要視する必要はないとかいうようないろいろな発言があるわけです。そういう発言自体も非常に問題ですし、また、そうした背景に力強い動きがあるとするならば、司法権独立というものが外部から侵されると同時に、もう一面は、司法の内部からも最近そうした司法権独立が侵されているのではないか、そうした心配をやはり国民も持っておりますし、また私自身も持っているわけです。  ここではっきりしておきたいことは、司法権独立に対して裁判所はどのような見解を持っているのか、その定義は何なのか、何のための独立なのか、その点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  53. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これはもう先ほど来繰り返して申し上げているとおりでございまして、具体的にどういうことをおっしゃるのか理解いたしかねるわけでございますが、憲法にございますように、「すべて裁判官は、その良心に従ひ獨立してその職權を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」七十六条の三項、これに尽きている、こういうように考えております。
  54. 林孝矩

    ○林(孝)委員 憲法十九条に「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」そういう規定があります。また二十一条には結社、表現の自由に関する規定もあるわけです。いま答弁せられました七十六条の中に「すべて裁判官は、その良心に従ひ獨立してその職權を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」ここにいわれておる「良心」の解釈、十九条との関係において裁判所はどのように解釈されておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  55. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 これはきわめて重要な問題でございますが、十九条に規定のございます「良心の自由」と申しますのは、国民固有の権利でありますところの基本的人権の一つとして考えられておることは、私からあらためて申し上げるまでもないことと存じます。憲法七十六条の規定にございます裁判官に要求されますところの良心が十九条の良心とひとしいものであるかどうかということは、憲法に関する学説の上でも非常に争いのあるところでございますけれども裁判の実際に当たっておりますところの裁判官といたしましては、この良心は十九条の良心と厳密に同じであるかどうかという学問上の論争はさておきまして、この憲法並びに憲法によって制定されました法律の解釈適用にあたりまして、その厳密なる解釈適用、国民から負荷されましたところの独立いたしました司法権の運用、それによりましてその国の法律文化の向上に十分おこたえできるだけの独立の、しかも文化的関心を持った解釈適用をなしていく上の最高の主観的な状態と申しますか、そのようなものである。したがいまして、単なる憲法と法律に従うということの修飾の用語ではない、その裁判官が最高の主観といたしまして主観的に持っております精神の状態でありまして、具体的に裁判所の前に出されました事件判断にあたりまして、文化的関心を持って客観的な法秩序の解釈をしていく上において、他の政治的な影響その他のものを受けず、その人の最高の良心に基づいて解釈適用を行なうという意味においての良心というふうに各裁判官は理解して裁判の実務に当たっていると私ども考えておる次第でございます。
  56. 林孝矩

    ○林(孝)委員 非常に理解しにくい話でありますけれども、もう一点確かめておきたいことは、憲法八十条の一項に、下級裁判所裁判官の任期について規定がございます。その再任の問題でありますけれども、自由に再任を拒否することができるかどうかという点、再任しなかった過去の実例があればその理由とあわせてお伺いしたいと思います。
  57. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 この再任の問題は、裁判所の問題というよりは内閣の問題でございます。したがいまして、その解釈について私どものほうから申し上げることは避けさせていただきたいと思います。実例といたしましては、再任されなかったという例はないわけではございません。
  58. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それではその問題はおきまして、次に裁判所法五十二条に、積極的に政治運動をすることを禁止するという内容の条文があるわけですけれども青法協に入ることは、裁判所としてはこの裁判所法から考えてどういうふうに考えられておるのか。また、裁判所青法協に対してどのような見解を持たれているのか、その点についてお伺いします。
  59. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 青法協との関連の御質問でございますが、この前の事務総長談話は要するに、裁判官政治中立性というものが強く要請されているのだ、だから「裁判官政治的色彩を帯びた団体に加入していると、その裁判官裁判がいかに公正なものであっても、その団体の構成員であるがゆえに、その団体の活動方針にそった裁判がなされたとうけとられるおそれがある。かくては、裁判が特定の政治的色彩に動かされていないかとの疑惑を招くことになる。裁判は、その内容自体において公正でなければならぬばかりでなく、国民一般から公正であると信頼される姿勢が必要である。裁判官は、各自、深く自戒し、いずれの団体にもせよ、政治的色彩を帯びる団体に加入することは、慎しむべきである。」こういう最高裁判所の公式見解が発表されておるわけでございまして、その点で御理解いただきたいと思うわけでございます。
  60. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの話によりますと、青法協に加入することはよくないという裁判所考えと理解されるおそれがありますけれども、それでもいいわけでしょうか。
  61. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 政治的色彩を帯びた団体に加入していることは好ましくないということは、この事務総長談話ではっきりいたしておると思います。
  62. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は非常に問題があると思うのですけれども、そうした裁判所の有形無形の心理的な圧力というものがはたして個々の裁判官裁判官独立を侵すような結果を導き出さないかどうか。たとえば事務総局の判事補の方その他の裁判官がそうした影響を受けて脱会しているという事実があるわけですけれども、こうした裁判所の傾向というもの、これが思想及び良心の憲法規定されております自由、そういう基本的な権利を侵すことにならないかどうか、その辺が現在の社会の中で非常に疑問視されている大きな問題であるわけです。この点について裁判所はどういうふうに考えられておるのか、明快にお答え願いたいと思います。
  63. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 ある政治的色彩を帯びた団体に裁判官が加入いたしておりますと、その裁判が何らかその団体による影響を受けているのではないかという疑惑を国民に持たれる、そういうことのほうが、裁判独立につきまして最も大きな憂慮すべき問題である、こういうように考えるわけでございまして、したがいまして、そういう考えのもとにおきましては、政治的色彩を持った団体に、いやしくも裁判官はその心がまえとして加入すべきではないというように御理解いただきたいと思います。
  64. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、最初に質問いたしました、そうした政治的色彩があるかどうかという判断も当然問題になってくると思いますけれども、今回の問題になっておりますところの裁判官思想調査の問題、この問題と関係してくるわけでありますけれども、個々の裁判官の内心に関することを調査したという訴追委員会の事実があるわけです。こうしたことは、まあいってみれば裁判官の良心にまで立ち入っている、裁判官独立を心理的に脅かすような結果になっているということはもう否定できない事実なんですが、こうした調査に対して、先ほどの答弁の中には、司法権独立が侵される場合は黙っていない、そういう答弁がございました。非常に勇気ある話だと思うのですけれども、現実問題としてこういうことが行なわれた。しかし、それはあくまでも独立機関で行なわれていることだからというので、黙して語らず、そういう態度と、司法権独立が侵された場合は黙っていないという二つの立場、これがあると思うのです。過去においては、浦和充子事件のような裁判所が抗議するという姿勢、気持ちがありました。先ほど児島惟謙先生の例を引かれて高橋委員長が話をされましたけれども、一面からいけば、児島惟謙先生の場合も、正義を権力より守れ、そういう叫びであったと私は記憶しているわけです。そうした裁判所の姿勢というものが今回、また最近の傾向として次第になくなりつつあるのではないか、そういう心配なんです。したがいまして、訴追委員会が行なった個々の裁判官に対する内心に関する調査、こうしたものが、現実の問題として、裁判官の職務執行に非常に不安を与えるような結果を呼び起こした、またそうした調査自体がそうなるということも想像されるわけですから、裁判所としても、これは司法権独立という観点から考えると非常に問題である、そうした問題意識を持たれるのが当然と私は思うわけなんですけれども、そうした姿勢、気持ちというものが裁判所にははたしてあるのだろうか。司法独立を侵された場合黙っていないと言うけれども、本気でそう思っているものなのか。行動にあらわれないそうした言論というものを心配する国民の疑惑を晴らすためにも、裁判所としてはっきりと答弁していただきたい。
  65. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 先ほどから申し上げておりますとおり、裁判独立が侵されているというように考えました場合は、これはもう断固としていかなる態度もとるわけでございまして、要するに裁判独立が侵されているか侵されていないかということについての見解の相違ではなかろうか、こう考えるわけでございます。
  66. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、調査することによって、裁判官の職務の執行に関して裁判官が非常に不安になるというような結果が私は考えられるわけですけれども、それでも裁判官独立を侵していない、そういう判断裁判所の方はとっていらっしゃると考えてもいいわけですね。
  67. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、訴追委員会憲法及び国会法に基づいて制定されております独立の国家機関でございます。そこでその調査が具体的に問題になって、それが裁判独立を侵すじゃないかということを盛んに御主張になっておられるわけでございますが、十一日の新聞の中村訴追委員会委員長の談などを見ますと、中村委員長は、「具体的な氏名をあげて訴追請求をしてきている以上、青法協に全然かかわりあいのない人を審査の対象にしてしまわないため、わざわざ委員会に相談して実施している以上、二百十三人のうち青法協会員でない人数ぐらいは委員会で言わなければならないだろう。」というように言っておられるわけでして、こういうような調査そのものが憲法及び国会法に基づいた訴追委員会の権限の行使として逸脱しているというように考えることはできないわけでございまして、したがいまして、先ほど仰せのように、裁判独立を侵しているというように考えれば、それはそのときそのときに応じて断固たる態度はもちろんとるわけでございます。
  68. 林孝矩

    ○林(孝)委員 考えれば断固たる措置をとるけれども、全然考えないという——裁判所考え方ははっきりわかりました。  次に、もう一面から考えると、平賀書簡のときに平賀所長注意処分を受けた。そのことに対して訴追委員会では今度、結果的にいうと不訴追になっておるわけです。最高裁処分訴追委員会での処分とは違うわけですね。それはあくまでも独立機関だから関係ないというわけでありますけれども、今度は逆説的にいうと、訴追委員会からすると裁判所処分というのは間違っておったということになるわけです。先ほどからの同僚委員の質問に対する答弁の中で、訴追委員会決定は妥当であったという発言があったわけですけれども、逆説的にいうと、こうした矛盾が出てくるわけです。この点をどういうふうに考えられるのか。  もう一点は、これは先ほども同僚委員から質問が出ましたけれども司法権独立というならば、福島判事を不問にするという決定を下された、その決定をどうして裁判所が一貫して貫かなかったのか、その点をお伺いします。
  69. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 訴追委員会決定が妥当であったということを私が述べたというように仰せられておりますが、私は内容については一切批判がましいことを申しているわけではないのでございまして、憲法及び国会法によって認められた国家の正当な訴追委員会がなされた判断についてとやかく申し上げるべきではない、こういうように申し上げているわけでございます。  また、不訴追とか訴追猶予とかいう主文について非常に重視なすっておられまして、決定の中身について、どういうような事実が認定されているかということについてあまり御研究がないようでございますけれども、おそらく裁判所のほうといたしましては、独自に調査した事実、また訴追委員会調査された結果のここにあらわれている事実という事実そのものを重視しているのでございまして、いわゆる主文が不訴追訴追猶予かということによって裁判所処分をどうこうしたというようなことは私はない。要するに、そこにあらわれている事実そのものについて高等裁判所なら高等裁判所がどういうように判断するかということに問題のポイントがある、こういうように私どもは見ているわけでございます。
  70. 林孝矩

    ○林(孝)委員 中身の問題と事実の問題がいま出ましたので、その面について非常に疑問に思うことがございます。たとえば……
  71. 高橋英吉

    高橋委員長 林君、時間が来ているから簡単に。
  72. 林孝矩

    ○林(孝)委員 もう最後です。たとえば平賀所長が同じ所内の裁判官に老婆心からということで書簡を出した。これに対して訴追委員会が不訴追という決定をしているわけですけれども、たとえばその内容は裁判権に影響を及ぼさない、そういう理由をはっきり訴追委員会のほうではいっているわけです、不訴追の理由として。であるならば、たとえば最高裁の長官が一先輩としての老婆心から地裁高裁裁判官に対して書簡でもって同じ意味の助言をした、それも最高裁の便せんと封筒を使ってやったという場合、はたして裁判権に何の影響も与えないものなのかどうか。私はやはり有形無形の心理的な影響を与えることは明らかである、そのように思うわけです。そういうふうに司法権の内部において司法権が侵されていく傾向にあるという意味からの心配があるわけですけれども、外部からだけではなしに内部からこうした司法権独立に対する侵害がある、こういう最近の傾向に対して裁判所としてどのような情勢判断をされておるのか。  さらにこういう例もございます。十月末のことでありますけれども国会で内閣法制局長官が、平時においては徴兵制は憲法違反である、そういう発言をしているわけです。ということは、緊急事態においては徴兵制というものは憲法違反にはならないという考え方であろうと私は思うわけなんですけれども、こうした発言があった場合に、これ自身は非常に疑問に思うことが多々あるわけです。ところが、現実的にいえば、緊急事態で徴兵してみても、緊急事態に対処する意味では役立たないわけです。これはもう常識です。ということは、将来、平時においても徴兵制合憲という判断を内閣で行なうことがあるかもしれない、そういう危惧を感ずるわけです。そうしたときに、裁判所がこれに対して、それは違憲であるという判断を下すことができるかどうか。最近の裁判所の風潮から見ると非常に疑問に思うわけです。たとえば最高裁長官が違憲判決は非常に注意をするようにという訓示をしているという事実、また平賀書簡にあらわれるような傾向、また思想調査等に対してそれを妥当であるということで裁判所としては認めているという姿勢、こうした結果、一番被害者は国民にあるということです。国民が一番困るわけです。こういうことではたして裁判所チェックアンドバランスの機能を果たすことができるのかどうか、そういう心配をするわけなんです。  いま二点あげましたけれども、その点について裁判所はどのような見解を持たれているか、最後にお伺いをして私の質問を終わりたいと思います。
  73. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 平賀所長の場合は、これはまことにレア・ケースでありまして、そのようなことが裁判所の中でしょっちゅう行なわれるというふうにお考えいただくことはない、こう思うわけでございます。  また、裁判官が大きなことに際して、断固として勇気を持って処理することができるかどうかという点についての御質問、これはもちろん、もうすべての場合、すべての事件について先ほどのように良心に従って、憲法と法律に従って断固として裁判できるという伝統は十分につちかわれておりますし、また現在もその点については御心配はない、こういうふうに申し上げることができるかと存じます。
  74. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは終わります。
  75. 高橋英吉

    高橋委員長 岡沢君。二十分だから十二時二十二分。
  76. 岡沢完治

    ○岡沢委員 委員長、きょう理事会できょうの時間制限をされた理由は、川島副総裁のお葬式だということですね。ところが、自民党議員は一人もおりません。差しつかえがあるのは委員長だけです。国会における委員の発言というものは、私は最大限に尊重されるべきだと思います。もちろん川島副総裁に対する冥福の気持ちには変わりありませんけれども、やはりそれと国政審議とは違うと思うのです。われわれの質問に対して一分とか二分とかいう制限をつけられるということについては非常な疑問を感じます。しかし、理事会の約束ですから、できるだけ協力はいたします。
  77. 高橋英吉

    高橋委員長 できるだけ尊重いたします。なるべく約束どおり、ひとつ申し合わせの時間を守ってください。
  78. 岡沢完治

    ○岡沢委員 約束は守るように努力いたします。  私も司法独立裁判の権威に関連して二、三お尋ねをいたしたいと思いますが、最初に事実関係を明らかにする意味で二つ三つ質問いたします。  新聞の報ずるところによりますと、佐藤総理が国連総会に出席されるのに羽田を出発される際に、最高裁長官が見送りに行っておられたというふうに報じられておりますが、そういう事実がございましたか。
  79. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 ございます。
  80. 岡沢完治

    ○岡沢委員 やはりこれも新聞の報道でございますけれども、自衛隊の観閲式に京都の地裁の所長が参加されて閲兵に参列をされたという事実がございますか。
  81. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これはしかと報告は聞いておりませんが、やはり新聞の記事のとおりではなかろうかというように推測しておるわけでございます。
  82. 岡沢完治

    ○岡沢委員 これも新聞の報ずるところで確認をしておきたいと思いますが、札幌地裁で例の十一月七日に福島裁判官に対する注意処分裁判官会議の際に、裁判官会議の室に通ずる廊下に机とかでバリケードを築かれて、いわば報道管制的な措置をとられたために、北海道司法記者会から抗議が申し込まれたというふうに報じられております。そういう事実はございますか。
  83. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これも別に札幌から特に知らせばございませんけれども、新聞に書いてあることは、別にうそをお書きになることはない、あのとおりのことがあったのではなかろうかと推測しておるわけでございます。
  84. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は、最高裁長官の佐藤総理の羽田空港の見送りそのものを法律的に云々するつもりはございません。しかし、本日も同僚委員からの御質問に答えられまして、長井総務局長司法独立については外観も必要だというお答えもございましたし、先ほど矢崎人事局長がお述べになりました岸前総長談話にも、いわゆる国民から見て裁判が公正に行なわれておるという信頼がなされるような姿勢が必要であるということをおっしゃいました。私もそのとおりだと思います。巷間にも、形は心をあらわすし、また心は形を求めるということばもございます。やはり私は国民から、裁判所独立であり、公正であり、いずれの権威にも屈しないという姿勢を示してもらうことがきわめて大切ではないかと思うのです。最高裁判所の判事が内閣の任命によるものであり、また最高裁判所の長官といえども内閣の指名に基づいて天皇から任命されるというようなことを考えました場合に、三権分立とはいいながら行政府と司法府間にはある程度の関係はもちろんあるわけでございます。これが公式の国家的な行事に最高裁長官がその立場から列席されることについては異存はもちろんございませんけれども、あたかも大臣病患者が総理を見送りに行ってごきげんをとろうというようなのと同じような印象を、私は最高裁の長官がわざわざ羽田まで行ってお見送りなさることには、感じてもしかたがないような要素が含まれておるのではないかという感じがするわけでございます。これにつきましては事務総長の見解を伺います。
  85. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 一国の総理大臣が国連の総会に初めて出席される、これは非常に国としても重大なことであろうと思います。そこで最高裁判所の長官といたされましては、儀礼的な意味で見送られたのでありまして、どなたが総理大臣であってもおそらくそうなさったんではないだろうかと私は思います。裁判官がいわゆる廉潔とか公正を保持するためにあまり窮屈に考えては、私はいけないんじゃないかと思います。その点はいま御指摘のありましたように、司法権独立ということは重々これは念頭に置かなければいけませんけれども、やはりそこは常識的に行動されて私はいいのではないか、かように考えます。
  86. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私も裁判官にはきわめて円満な常識が必要だと思います。しかし、事は最高裁判所の長官です。日本司法代表される方が、先ほど申しましたように公式的な行事ならいざ知らず、あるいは官邸において総理にごあいさつされるなら私は納得します。しかし、お忙しいからだでわざわざ羽田まで見送りに行かれる。私は、先ほど申しましたような自民党内部の猟官運動にひとしい感覚を国民が持ってもしかたがないような、やはり軽率ととれるような感じがするわけです。先ほど来この席で論じられましたのですが、五月二日の石田長官の発言につきましても、私はあえて言いたくありませんけれども、尊敬する裁判官でありました山下朝一大阪高裁前長官が七月二日の毎日新聞の朝刊紙上で、あの石田発言は慎重さを欠く。非常に言いにくいことをはっきりとおっしゃっておられます。当時の最高裁長官のもとでの高裁長官があえて日本の大新聞でこの最高裁長官の発言を批判される。私は批判されるほうも勇気が要ったと思います。しかし、私はそれはほんとう司法を愛しての、山下裁判官の人格を知っておりますだけに、勇気ある発言でなかったかというふうに感ずるわけでございます。最高裁長官のこの一事に見られます——羽田の見送りというこれは形式的なささいなことではありますけれども、むしろ事務総長談話あるいはきょうの局長の御答弁、外観も重要だ、えりを正すという面からは私はいささかはずれておるんではないか。事務総長がわざわざ弁護されるということにもかえって疑惑を持つのでございますけれども、率直な御意見を聞かしていただきたい。それこそ良心のある御答弁をいただきたいと思います。
  87. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 先ほど事務総長から申し上げましたように、一国の総理大臣が国を代表して初めて国連の総会に出席するという場合に、その一国の総理大臣がどこの党の総理大臣であろうとも、これは当然最高裁判所の長官としてはお見送りなさっても少しも差しつかえない事柄だとわれわれは確信いたしておるわけでございます。要するに儀礼とかそういう事柄でなくて、ともかく一国の総理大臣なんですから、その一国の総理大臣が国を代表して行かれる場合には、それがどの党から出られた総理大臣であろうとも、これは最高裁判所の長官としてお見送りになるということは、当然なすってしかるべきことなのではないかというように私ども考えているわけでございます。
  88. 岡沢完治

    ○岡沢委員 理屈は何とでもつきますので、これ以上の論争は国民判断にまかしたいと思いますけれども、私は先ほど申しましたような意味で、最高裁長官が公式的に総理に敬意を表される、これは異存がございません。しかし、羽田まで出向いてわざわざ見送る。この姿は、いかにも司法行政に屈服した姿を国民の前に露呈しているという判断国民が持ちましてもしかたがないのではないか。私はそういう意味からも、司法の権威という立場からも、礼を尽くすなら別の方法があるべきだと感ずるという点だけを指摘しておきたいと思います。  地裁所長の自衛隊観閲の問題につきましても、時間の関係でこれを多々論ずる余裕はございませんけれども、私は、司法行政の長官としての立場からという言いわけは立つと思います。しかし、これもやはり同じような意味で、司法の権威、司法独立三権分立立場からすれば、軽率な行為ではないかという批判があってもしかたがないではないか、ぜひ善処をお願いいたしたいと思います。  もう一点、先ほどお尋ねいたしました北海道司法記者クラブの抗議の点でございますけれども、私は、裁判所こそ暴力を排し、実力支配を排しまして、法の支配、秩序維持の先端にある立場だと思います。この裁判所で、しかも裁判の合議という問題ならいざ知らず、裁判官会議を実力をもって報道管制をしかれたような形をとられたということにつきましても、いささか疑問を持つわけでありますけれども先ほど私が質問いたしました事実が新聞の報道のとおりだったとした場合に、最高裁としての見解をお尋ねします。
  89. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 事実関係をまだ十分承知いたしておりませんので、はっきりとこれについてお答え申し上げることができないのが残念でございますけれども、あの取材につきまして札幌の新聞記者の方々が非常に御熱心であったろうということはこれは間違いないだろうと思うのでございます。要するに、その場合に裁判所として何とかここからこっちへ入らないでほしいというような申し入れなり何なりあったのではなかろうか、そういう場合に、それについて何とかしてそういうようにしてほしいというような熱意のあまりそういう措置をとったのではなかろうかというように思うわけでございます。  事実関係が必ずしも明白でございませんので、きょうはこの程度のお答えでごかんべんいただきたいと思います。
  90. 岡沢完治

    ○岡沢委員 福島裁判官にまつわる一連の問題は、私は国民全体が注視していた重大な問題だろうと思うわけでございまして、報道機関の方々が熱意を持たれるのは当然であります。私は、この報道機関裁判所に対して非常識な措置に出たのは遺憾であるという抗議をされたのはしごく当然のような感じがいたしました。今後のこともございますので、ぜひ真相御究明の上、最高裁としての御態度も次の機会にでも明らかにしていただけたらと思います。  先ほどの同僚議員の質問に対しましても、訴追委員会決定後になされました札幌高裁福島判事に対する注意処分は適切な処置であったということを矢崎局長ここでお答えになり、また当時の新聞報道によりますと、事務総長も適切であったということば談話として発表されております。私は中身に触れませんけれども先ほど来繰り返しております司法行政府にあるいは立法府に屈服するという姿を外観上も避けるべきだという立場から考えました場合に、この札幌高裁注意処分国会における訴追委員会決定直後になされたというタイミングを考えましても、必ずしも適切だと私は思わないわけでございますけれども、そのタイミングの意味も含めて、適切だという御判断局長事務総長も現在もお持ちか、お尋ねします。
  91. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 タイミングの問題ということでございますが、これは先ほどもお答え申し上げましたように、八十条による処分は別に相談もなく、それぞれ各裁判所がてんでんばらばらとまで言っては言い過ぎかもしれませんけれども、それぞれの独自の判断に基づいてやっている事柄でございます。  その注意の内容といいますものはきわめて簡単でございますけれども、   札幌地方裁判所昭和四四年行ク第二号保安林解除処分執行停止申立事件についてのいわゆる平賀書簡問題に際し同書簡および平賀メモの公表に関して貴官の執った行為は、裁判官としての節度を逸脱した行為であり、遺憾である。   よって、裁判所法第八〇条により注意する。 こういう簡単な内容のものでございます。  で、この内容に盛られている注意決定は、私どもといたしましては、これは適切であると考えていることは変わりません。
  92. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私の聞いていることは、タイミングのことについて聞いているのです。中身のことについては聞いておりません。
  93. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 タイミングにつきましては、それは問題が立場立場でおありになると思いますが、私どもといたしましては、これは従来の事例に照らしましても、従来はそういう点で問題にはならなかったんでございますけれども、一週間くらいして裁判所として措置をとっている例があるわけでございまして、今度は問題になったわけでございますけれども、これは必ずしも責めるべき問題ではないというように考えておるわけでございます。
  94. 岡沢完治

    ○岡沢委員 先輩の矢崎局長を個人的に責める気持ちはいたしませんけれども、一般の役所の官僚と同じような立場で責任のがれの御答弁としか思えません。福島判事の書簡公表問題は一年前の事案でございます。一年後に、しかも訴追委員会決定直後になされたこの処分、これは国民から見れば、中身は別といたしまして、また実際の札幌高裁裁判官会議あるいは裁判官会議構成される個々の裁判官のお立場は別といたしまして、外観的に見た場合に、国民が、司法訴追委員会に屈服したという感じ方を持ってもしかたがないんじゃないかということを私は指摘したいわけであります。これがやはり先ほど来論じられてまいりました、司法独立には外観も必要だという姿勢を口では総長談話で下のほうには流しておられながら、高裁自身あるいは最高裁自身があえて反省をしておらないところではないかと私は強く指摘したいわけでございます。  この談話に関連いたしまして、四十五年十月三十日の、毎日新聞の報ずるところによるのでありますけれども福島判事が辞表を撤回されたことについて吉田事務総長談話がございます。「訴追委や政治的圧迫に屈して、司法独立を保持できないような裁判所にはとどまることができない——と公表して辞表を提出した裁判官が、その撤回を申出るについては、その理由を全く捕捉しがたい。これをバックアップする強い何らかの組織があるのではないか。」という趣旨の事務総長談話を新聞で見たのでありますが、そういう談話を発表された事実は事務総長ございますか。
  95. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 そういう趣旨の談話を発表いたしました。
  96. 岡沢完治

    ○岡沢委員 申し上げるまでもなしに、裁判官というのは予断や推測でものを言うべき立場ではないと思います。これは裁判そのものに関する談話ではございませんけれども日本司法の事務系統の最高の地位におられる事務総長談話をもって公表された中に、これをバックアップする強い何らかの組織があるのじゃないかという推測規定、私は根拠がなければ言えないことだと思いますが、この真意を総長にお尋ねいたしたいと思います。
  97. 吉田豊

    吉田最高裁判所長官代理者 この福島判事が辞表を提出されたときのその声明と申しますかことばの中に、司法権独立について根拠のない疑惑を抱かせ、また全国の裁判所、それから裁判官の名誉や威信を傷つけるような趣旨だといわざるを得ないものがあります。このような重大な声明を公にされて辞表を撤回された裁判官、ことに独立心、いわゆる自主性の強くあるべき裁判官たる方が、このような重大な声明をされて辞表を提出された後、わずか四十数時間後にその辞表を撤回される、そういうことはとても私どもには考えられない。そういうことは福島裁判官の自発的な意思によるのではなくて、おそらくこれをバックアップする何らかの組織があるのだろうと私は推測いたしたわけでございます。
  98. 岡沢完治

    ○岡沢委員 まあ事務総長、正直に推測ということばを使われましたが、最高裁事務総長でございますから、推測とか予断でものをおっしゃるということについてはいささか軽率過ぎるのではないか、私は遺憾な感じがいたします。(「見識を欠く」と呼ぶ者あり)いま松本議員のほうから見識を欠くということばがありましたが、同感でございます。司法界の先輩でございますのでこれ以上は言及することを避けますけれども、われわれの意見のあるところも御吟味いただきたいと思います。  この一年間、論ぜられてまいりましたいわゆる司法独立の問題、先ほど畑委員からも詳しく御説明がございました。特に立法司法行政という三権分立立場をとりながら、たとえばことしの四月には、政府の一機関であります農林大臣が、国を代表してと解釈すべきだと思いますが、福島裁判長の忌避問題を提起された。五月二日には、先ほど指摘いたしました石田最高裁長官の発言で大体同じ線のものが出された。そして今度は、立法機関である国会内に設けられておる訴追委員会におきまして、やはり同じような傾向の結論が出されました。これにつきましては、多数党による、はっきりいえば自民党による裁判官裁判ではないかという批判すらあるわけでございます。いわゆる立法司法行政、三権が同じ方向で危険な方向に行っているのではないかという疑惑を国民が持つというところに大きな問題点がひそんでおるような感じがいたします。私は必ずしも批判の側だけの立場をとる者ではもちろんございませんけれども先ほど来繰り返してまいりましたようないわゆる素朴な国民感情から見て、司法立法行政、この三者の癒着、これは特に野党の無力さからくる責任もございますけれども、昭和三十年以来十五年間自民党保守政治が続いておる、その政府といえども結局は自民党、これと司法権との癒着ということについての疑問、特に最高裁石田長官の発言等が国民から大きな心配の目で見られた理由ではないかと感ずるわけでございます。ほんとう意味司法独立、今朝来総長あるいは局長が御答弁になりました、何ものにも屈しない権威、独立、良心と憲法のみに従われる姿を、私はこの際、心の中だけではなしに、最高裁の姿勢として示してもらいたい。これを国民は要望しておるのじゃないかと感ずるということを指摘させていただきまして、この問題に関する質問を終わらせていただきます。  ほんとうは私は、いま日本弁護士連合会を中心に非常に大きな課題になっております小林法務大臣の発言に端を発しました、司法修習生の分離修習の問題と関連いたしまして、この問題が提起された一つの理由に、裁判官、検察官、判検事に対する志望者不足という課題があったわけでございます。この課題をどうして解いていくかという点につきまして、たとえば初任給のアップの問題あるいは司法修習生の採用人員の問題等に触れて質問をしたかったわけでございますけれども、時間の関係で問題点として、私は裁判官不足、検察官不足を補うために、非常に低いこれらの判検事、判事補あるいは初任検事の初任給を思い切って上げる措置がきわめて必要なのではないか。いま予算要求の時期でもありますだけに、指摘をさしていただきたい。  それから、司法研修所が新築落成を間近に控えておりますし、その建物の余裕を聞きますと、大体千名は収容できるというふうに理解しておるわけでございます。現在司法修習生の採用が年間五百名前後、この絶体数の不足ということも問題でありますし、また判検事不足とも結びつくと思いますが、さらには司法試験がいわゆる一発試験で、しかも一点の差によって百名、二百名の合格者、非合格者の差が生ずるということを考えました場合に、私は思い切って採用人員を千名前後にでもふやして、そのかわりに、二年間の修習期間中修習生としての職務を尽くさない者、能力の全くない者、努力を怠る者に対しては思い切った、たとえば二回試験の落第等も含めて措置をされて、国民の税金によってまかなわれる司法修習生の修習期間が国民から納得できるような充実したものにする一方で、いわゆる一発試験の危険性をカバーしまして、ある程度の能力のある者には広く門戸を開放する。私は日本の大学制度にも言えることだと思いますけれども、入るときの試験が非常にむずかしい。入ってしまえば、勉強しなくても、怠け者であっても、あるいは努力をしなくても卒業させるという制度、これは大学制度全体にも通じますが、司法修習生の制度にも当てはまり得るのではないか。そういう点につきましても次回の法務委員会でお尋ねすることを予告申し上げて、それに対する御答弁を御用意いただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  99. 高橋英吉

    高橋委員長 岡沢君、先ほどのおことばのうちに、自民党議員を侮辱したようなことばがあるようで、平素の良識的な岡沢君に似合わないと思うが、この点は将来もひとつ気をつけてください。  それから最高裁のほうに。先ほどいろいろ儀礼的な問題について質問があったようですが、あまり閉鎖的になってもいけないので、いろいろな批判があってもそういうことはおそれずに、所信に向かって邁進してもらいたいと思います。  それから、訴追委員会決定というものは憲法並びに国会法にちゃんと規定してあるものでありますから、これに対しては相当の権威を認めなければならない、重視しなければならないのですから、訴追委員会の中で何か結論が出れば、むろんそれを参考にして裁判所側でも態度決定してもらわなければならないということを私は希望しておきます。  青柳君。
  100. 青柳盛雄

    ○青柳委員 このたび訴追委員会の行なわれたいわゆる思想調査とも見るべき青法協の会員であるかどうかを、訴追請求を受けた裁判官に対して照会をしたというこの問題は、明らかに訴追委員会独立な国家機関として行なう権限を逸脱した行為であろう。それは明らかに憲法で守らなければならない裁判独立を侵すものであり、また同時に、個々の訴追を受けた裁判官の人権を侵害するものであるという点で、徹底的にこれを究明しなければならないというふうに考えて、訴追委員長の中村梅吉氏に出頭してもらうことをわれわれは求めたのでありますけれども、規則上疑義があるということでいまだにその達成を見ていないわけであります。  そこで、こういう問題を国の機関としても、またわれわれ国民としても黙視するわけにはいかないわけでありますから、当然その実態を明らかにしたいという観点から、まず最初にこの訴追請求をした個々の人物の実態を明らかにする必要があると思います。  新聞の報ずるところによりますと、それは九鬼兵衛という人間と辻山清という二人の人間だそうでございますが、これはいずれも関西に存在するいわゆる右翼団体で、九鬼というのは国粋同志会の代表者のような役割りを演じている男、それから辻山清というのは大日本菊水会の青年隊長だということが明らかになっていると思いますけれども、この点について公安調査庁第二部のほうではどのような調査をしておられるか、まずそれを最初にお尋ねしたいと思います。
  101. 大泉重道

    ○大泉説明員 国粋同志会並びに大日本菊水会につきましては、公安庁といたしましては調査ということはいたしておりません。
  102. 青柳盛雄

    ○青柳委員 それでは、全然内容はわからないでいるということのようでありますけれども、私が公安調査庁関東公安調査局の人から尋ねたところによりますと、ただいま申しましたように、いずれも右翼団体として資料を持っておられる。いまの答弁では、何か調査対象になっておらぬという趣旨のようにも聞こえますが、では続いてお尋ねしますけれども、青年法律家協会というものに対して、これを調査対象にしているかどうか、そのことをお尋ねいたします。
  103. 大泉重道

    ○大泉説明員 青年法律家協会につきましても、現在においては調査対象とはいたしておりません。
  104. 青柳盛雄

    ○青柳委員 このたびの訴追請求を審議する訴追委員会では、この訴追請求事件の請求人、あるいはその請求を受けた裁判官が所属しているという理由による請求ですが、その青年法律家協会について何らかの情報提供を求められたことがありますか。
  105. 大泉重道

    ○大泉説明員 訴追委員会のほうから青法協に関する資料の提供を求められた事実はありません。
  106. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この訴追は、先ほども申しましたとおり、青法協の会員であるということ自体裁判官弾刻法の二条の二号に該当する、そういう疑いがあるということで提出されたものであることが明らかでありますけれども、これは常識的に考えて、だれが拡張解釈いたしましても、いわゆる裁判官が著しく非行にわたる行為をしたというような弾刻法の二条のいずれの条項にもとうてい該当しないということは明白であるにもかかわらず、あえてこのようなことをやったのでありますから、これは弾劾法の四十三条の虚偽申告罪あるいは刑法百七十二条の謹告罪に該当するものというふうに考えるのでありますけれども、このような裁判独立を侵害すると同時に、訴追請求を受けた個々の裁判官の人権を著しく侵害する犯罪的な行為、これに対して法務省としてどのような措置をとろうとしておるのか、これについて、ここにお見えになっておりましたら、辻刑事局長に御答弁をいただきたいと思います。
  107. 辻辰三郎

    ○辻説明員 お答え申し上げます。  私ども、ただいま御指摘の事実については、事実関係を全然存じておりませんので、具体的な案件、問題としてお答えするわけにはまいらないわけでございますが、御承知のとおり、先ほど御指摘の裁判官弾劾法の四十三条は刑法の百七十二条の誣告罪の特別法に当たるという法律解釈をいたしております。そういたしますと、この裁判官弾劾法の四十三条の一項でございますが、「裁判官に弾劾による罷免の裁判を受けさせる目的で、虚偽の申告をした者は、」こういうふうになっておるわけでございますが、私どもこの虚偽というものが、具体的な事実関係を存じませんので、どういうことになるのか、その点がわからないわけでございますが、抽象論といたしましては、事実に反することを言ったというふうに私どもは解しておるわけでございます。
  108. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この問題について、法務省としては、裁判官訴追委員会のほうから何らかの情報の提供を受けるというようなこと、あるいはみずからこれを請求が適法なものであるかどうかということを調らべるいううな、そういう気持ちは全然ないわけですか。
  109. 辻辰三郎

    ○辻説明員 御指摘のとおり、犯罪ということが成立しないと、全然私どものほうは問題にならないと思うのでございますが、刑事訴訟法の百九十一条、「検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる。」ということでございまして、犯罪の捜査をするかしないかは、検察官の判断によるわけでございます。現在、ただいま御指摘の案件について検察庁が何か活動したというような報告には全然接しておりません。
  110. 青柳盛雄

    ○青柳委員 訴追委員会のほうからは何らの連絡や情報の提供はありませんか。
  111. 辻辰三郎

    ○辻説明員 私、全然ございません。どこにあるかという——法務省に関する限りは全然ございません。
  112. 青柳盛雄

    ○青柳委員 時間がありませんから、最高裁判所にお尋ねをいたしますが、ことしの五月二日のいわゆる最高裁の長官の談話の中に、非常に重要な一項目があるわけです。それは「個人の思想、信条を表現するだけでは裁判官をひ免したり、再任を拒否したりする事由には当たらない。モラルの問題として「好ましくない」ということである。レッド・パージとかブラック・パージなどが裁判所側から起きることはあり得ないが、」となって、それからあとです。「外側から、たとえば国会裁判官訴追委員会などでそうした動きが出ることはあり得る。」こういうことを述べております。これは明らかに、自分の内部では青法協の会員であるということを理由にレッド・パージなどはしないけれども訴追委員会のほうで問題にすること、そういう動きはあり得るという、あたかも今度の福島裁判官の問題にせよ、それから他の青法協会員であるということだけの事由によって罷面を求める、裁判官訴追請求が出されていく。こういうことを考えますると、最高裁自身が、自分のほうでは強制的に会員を首にすることもできないし、また強制的に脱会を求めることもできない、それをやり得るのが国会裁判官訴追委員会であろう、「国会の」ということば、これは訴追委員会あるいは裁判官弾劾裁判所というものの性格を、何か国会の付属物のように考えている面もあります。明らかに国会という政治勢力によって動いていくものと同一のものであるように予断を抱いていることも、この談話の中で明らかにされているわけでありますけれども、いずれにしても、自分のほうでやり得ないことをこの訴追委員会などでやるぞというような脅迫がましいことが述べられておる。はたせるかな今度それが現実のものになってきた。これが一体裁判独立を守るということと関係があるのかないのか、もうあることは明白だと思います。そのことは、もう再々いままでも言われておりますように、自由民主党の総務会が、例の裁判制度調査特別委員会を設けるという構想をきめたときに、最高裁は、裁判官会議を開いて、そして裁判独立を守る決意なるものを表明した。それにはいわゆる人事権に介入するようなおそれがある、こういうことをはっきり述べているわけですね。  だから、裁判官がゆえなく、理由なしに懲戒を受ける、懲罰を受ける、罷免をされるということが、裁判独立に大きな脅威を与えるということは、最高裁判所自身が、もうそういう前例によっても認めているわけです。にもかかわらず、先ほど来の発言を聞いておりますと、訴追委員会は何ら権限を逸脱しないとか、あるいは独立機関であるからとやかく言えないのだと言って、これに対する批判というようなもの、あるいはこれに対する意思表示というようなものが最高裁としてはでき得ない、あるいはすべきでないというような考え方がうかがわれるのでありますけれども、この点を明らかにしていただきたいと思うわけです。
  113. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げておりますことは、要するに憲法国会法、法律に基づいて制定された国家の独立機関である訴追委員会がなした措置について、裁判所としてこれに批判をすべきではないということを繰り返し申し上げているわけでございまして、かりに、著しく逸脱した措置か何かがございまして、そういう場合に司法独立がきわめてあぶなくなるというような事態でもございますれば、これはまた話は別でございましょうけれども、今度の場合に、そういうようなことは認められない、こういうように申し上げておるわけでございます。
  114. 高橋英吉

    高橋委員長 青柳君、何か国会の自己否定のような、憲法否定のような、訴追委員会が何か不当な存在のような言論があるように聞かれますが、お互い国会否定というふうにもとられますから御注意を願いたい。(「そんなことない」と呼び、その他発言する者あり)そういうふうにとられないように……。私がとるのだから、ほかの人もとるので、御注意願いたい。  それから時間も来たから簡単に……。
  115. 青柳盛雄

    ○青柳委員 著しく侵犯をするおそれがある場合にはまた考えなければならぬというような含みの答弁がいまありました。だから、どのようなことがあろうとも、独立機関のやることだから最高裁判所としては何らの意思表示もできない、何らの措置もとれないというほど単純に考えてはいないであろうということを推察するわけですけれども、本件の場合、もう常識で考えてもわかりますように、最高裁でもこれが非行に当たる、裁判官弾劾のあれに当たるというのであれば、みずから十五条の三項によって訴追請求をすべきものですが、それをしない。だからそのことは、青法協の会員であるということは何ら弾劾法には触れないのだということをもう前提にしている。にもかかわらず、そのことを問題にして、そして照会状を出す。これが一つのマッカーシー旋風のようなものを裁判官に巻き起こして、裁判官は非常な不安な状態におちいる。それは、その照会を受けた個々の裁判官あるいは訴追を受けた個々の裁判官ということだけにとどまらないで、一般的に、この訴追委員会というようなものが動き出せばもう裁判官は全く羊のごとくにこれに従わなければならぬ、自分たちの権利とか裁判独立を守る決意とかいうようなものはついえ去ってしまうというような恐怖感におとしいれられてしまう。こういう事態が起こり得るし、また現実に起こっているという徴候は明らかです。  たとえば、私の聞いたところでは、ある新聞社がこの問題について数十名の裁判官に電話で意見を求めたけれども、ほとんど回答がなかった。要するに、こういうことにつれて訴追委員会あたりのやっていることについてとやかく言うと、またそれが訴追の理由に自分自身もあげられるかもしれない。しかもそれは匿名でいいんだという、新聞社の情報源を守るというそういう配慮があっても、なおかつノーコメントであるというような、ほとんど裁判官がこういう重大問題について発言もようできないというような状況がつくり出される。これに対して黙っていていいというふうに最高裁判所の当局のほうでは考えるということになれば、それは明らかに、自分のほうでやれないことをいわゆるカッコづきの権威のある裁判官訴追委員会にお願いをする、何か連携が内部ではあるのではないかということを疑われても弁明の余地のないような状況が出ている。この点をどう考えますか。
  116. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 数十名の裁判官照会したけれども、何ら返事がなかったというお話でございますけれども、これはその数十名の裁判官が、裁判独立を侵害されたともし考えるならば、そんなことを黙っている裁判官は私はおらない、こういうように確信するわけでございます。訴追委員会につきまして、これは権限が著しく逸脱しているのではなかろうか、それによって裁判独立が侵されるおそれがあるのではなかろうかというような現実が、懸念がもし生じたとしますれば、これは過去にも前例もあるわけでございまして、最高裁の要望として訴追委員会のほうへ申し入れることはあるわけでございます。これは昭和二十九年の七月のことでございます。そういう事例はもちろんあるわけでございまして、決して今度の場合に裁判独立が侵されたという御懸念は私はない、こういうように考えているわけでございます。
  117. 青柳盛雄

    ○青柳委員 先ほど吉田事務総長畑委員に対するお答えのときには、独立機関のやっていることだからというようなお話で、最高裁としては何ら申し入れなり見解の発表なりもできないかのごとくであったけれども、いま二十九年の前例があるというお話もあって、そうだったら、今度の場合、どうしてやろうとしてないのか。これは裁判官が侵犯を受けたと思わないから新聞社の質問に対してもノーコメントであったというふうに自己流に、自分に都合のいいように解釈されますけれども、むしろそうではなくて、もう何か言うと、こういう状況であれば、必ずこれはまた気違いのようなやつが訴追請求をやる。それを受けて立つような形で訴追委員会調査を始める。こうなれば、これはもう賢明なる裁判官もあえて職を賭する覚悟でもない限りは言えなくなるという状況。そうなれば、裁判独立裁判官自身の力によって——それだけでは守ることはできないにしても、裁判官自身の主体的な力によって守ろうという意欲も侵されていくということにならざるを得ないと思うのです。  何かこれも伝えられるところによりますと、最近開かれた裁判所の長官会同あたりでも、この訴追問題だけではありませんけれども、要するに青法協問題と一口に言ったほうがいいと思うのでありますが、それが問題になって、最高裁の最高の当局が裁判官に盛んにしつこく、青法協に近づくなとか、それに入っている者は出るようにせよ、出たという証拠は内容証明でもつけてその証拠を出せというようなやり方に対して、非常な反響といいますか、裁判官の部内に恐慌状態に近いものを巻き起こす、そして同僚の裁判官も落ちついて裁判をすることもできないような状況が外部的にも出てくる。これは世論が、これに対する批判が強くなりますから、必然的なことだと思いますけれども、そういうような事態を考えれば、これ以上この問題をさらにエスカレートさせるというようなことが裁判を行なう雰囲気、また独立を守るための保障というものを侵害していくことになるというふうに考えるのが全く正しい常識だと思うのですが、それすらもなおかつやる意思がないということであれば、冒頭に申しましたように、最高裁判所の幹部諸君は訴追委員会意思相通じてこの問題をさらに、いわゆるレッドパージを強行しようという意図があるのではないかというふうに考えられるのですが、この点はいかがでしょう。
  118. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 お立場相違と申しますか、そういうお立場でいろいろ御懸念をなすっていらっしゃるわけでございますけれども、私どもは、これ以上幾ら申し上げても要するに水かけ論になるわけでございまして、そのようなことは絶対ないし、裁判独立というものは断固として守られるべきものであるし、また守ってきたし、またそのようないろいろな御懸念になることはないというように申し上げるほかはないと思います。
  119. 高橋英吉

    高橋委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後一時五分散会