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1970-10-13 第63回国会 衆議院 法務委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十月十三日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君    理事 畑   和君 理事 林  孝矩君       石井  桂君    永田 亮一君       羽田野忠文君    松本 十郎君       村上  勇君    赤松  勇君       中谷 鉄也君    安井 吉典君       沖本 泰幸君    岡沢 完治君       青柳 盛雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小林 武治君  委員外出席者         警察庁警務局人         事課長     勝田 俊男君         法務大臣官房長 安原 美穂君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省刑事局参         事官      佐藤 道夫君         法務省矯正局長 羽山 忠弘君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君         運輸大臣官房観         光部業務課長  山下 文利君         運輸省航空局飛         行場部長    丸居 幹一君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢崎 憲正君         法務委員会調査         室長      福山 忠義君     ————————————— 委員の異動 十月十三日  辞任         補欠選任   黒田 寿男君     中谷 鉄也君 同日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     黒田 寿男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 高橋英吉

    高橋委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。
  3. 畑和

    畑委員 私は、きょうは三つの点についてただしたいのです。  一つ法廷警備員の問題、一つ朝鮮人の国籍の書きかえの問題、一つ判検事定年制延長の問題、この三つについてただしたいのですが、大臣がまだ出ておりませんので、大臣答弁を求めない最初法廷警備員の問題について質問をいたしたい。あとで共産党の青柳君のほうから関連して質問があると思いますので、そのときは私は中断をいたしまして青柳君に譲りたい、こういうことであります。  新聞の報ずるところによりますると、最高裁では、最高裁自体命令した、あるいは自体でやったわけではないのでしょうけれども、福岡地裁、それから名古屋地裁、この二カ所でそういったことがもうすでに行なわれておるのであります。この間の予算法廷警備員として百名の予算が認められた、それで採用するにあたってなかなか適材が得られないというようなこともあったようでありますが、福岡裁判所では、警察関係と協議をして八名の警察官現職を、一たんやめさせた形にしたけれども、出向の形で採用決定をした、こういうことが報ぜられております。また名古屋地裁においても二名、同様警察官現職を一たんやめさせた形にして、しかも出向の形で採用しておる。この問題でありますが、これが九月十一日の新聞に、各紙に出ております。それに対してまた、反対だということで若い弁護士の会が最高裁に対して石田最高裁長官あて公開質問状という形で質問状を出しておる、こういうようなことがこれまた十月三日の新聞報道されておるのであります。  私、最初のこの九月十一日の新聞報道を見ましたときに、最高裁法廷警備員を充足するのになかなか骨を折っておる、こういう実情はわかるのでありますけれども、たまたま出向の形で警察官法廷警備員になるということは、これはやはり非常に司法行政ということを混同し、あるいはまた裁判所の独立ということについて非常な不信の念を国民が抱くのではないかというふうに考えておったわけでありますが、はたせるかなやはりそういった反対の世論が相当あるわけであります。私もこの点について最高裁考え方あるいは警察庁のほうの考え方、それからさらにまたどういういきさつでこういうことになったのか、それから採用された者の待遇その他の問題、こういうことについてお尋ねいたしたいと思うのであります。そもそもこれはどういうことからこういうふうになったのか、その点をまず最高裁のほうに伺いたいと思います。
  4. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 ただいま出向ということについていろいろお話がございましたけれども、これは行政庁と違いまして裁判所では出向というものがございませんで、したがいまして、まず出向ではないということをあらかじめ申し上げておきたいと存じます。  そこで、それじゃどういうわけで警察のほうから警察官裁判所職員として採用することになったのかということについて申し上げますと、先年度までは定員が百名あったわけでございます。ところが、本年度さらに百名の増員が認められた。そこで、これを何とか充足したいというわけでいろいろ努力したわけでございます。そして現在、従来の百名のほかに大体六十名くらいが採用されておりまして、あとがまだ未採用というようなかっこうになっているわけでございます。  そもそもの始まりはそういうわけで、予算が認められて新たに採用したいという場合に、まず問題になりますのは法廷警備員でございますが、若くてしっかりした者、そして優秀な若者でなければ、荒れる法廷の、いわゆる被告人、それから傍聴人が相呼応して、法廷裁判長指揮命令に従がわない——これは日本のほんとうに特有な奇妙な現象で、世界各国いかなる国の法廷にもこういう現象はないわけでございますけれども、こういうのに対処するには、そういう人がどうしても必要だということで、いろいろ地方裁判所のほうからも、なかなか採用がむずかしいがどうしたものだろうかというような連絡がある。そういう連絡の際に、警察官から少し来てもらいたいというような希望があるわけでございまして、なるほど、それは一番けっこうじゃないか、そういうことで話が進んでまいりました。しかし、来てもらうといっても全員来てもらうこともできないし、それから警察のほうでも非常に人手不足で悩んでおられる、こういうような現状でございますから、おいそれと警察に頼んでも応じてくれるような情勢ではございません。したがいまして、地裁最高裁といろいろ相談いたしまして、そして地裁のほうでは警察のほうへ頼む、最高裁のほうでは、ひとつ警察庁の内意も聞いてもらえぬかということもありまして、警察庁はどうだろうか、地裁はこういうような採用難状況であるので、何とか協力してもらえぬかというようなことから発展して、そして若干名——若干名と申しますと福岡が八名、名古屋が三名でございます。結局十一名の採用が実現したという状況でございまして、これはいわゆる出向ではございませんで、新規採用ということに相なるわけでございます。
  5. 畑和

    畑委員 これは最高裁のほうで指図をされたのですか。最高裁警察庁の本庁と話をしてそれでやられたのか、あるいは現地の割り当てを受けた裁判所が自分の考えに基づいて現地警察本部のほうに申し入れて話が進んだのか、その辺はどうなんですか。
  6. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これは先ほど御説明申し上げましたように、地裁のほうで本部のほうと相談いたしまして、そして地裁のほうが本部のほうへ頼むわけでございます。しかし、本部のほうでは警察官自体が数が足りないところですから、それはなかなか難色を示される。それで、地裁のほうから最高裁のほうへどうだろうかというわけで、なかなか困っているんだけれども、最高裁でも少し応援してくれぬか、こういう話がありますと、最高裁のほうも、それではひとつ警察庁にお願いしようかということで、警察庁のほうへお願いするというようなかっこうで、俗な表現を使いますと、両方お手々つないでお願いするというようなことで、別に指令を出してどうこうというわけではございません。大体人事採用というのは、そういうような両方お互い連絡をとり合いつつ事を運んでいくのが実際のやり方でございます。そういうやり方でやっている、こういうわけでございます。
  7. 畑和

    畑委員 いま最高裁人事局長は、最高裁では出向というものはないのだ、ほかの役所と違って、これは出向ではないのだ、こういうことで、したがって、身分は完全に切れたのだということを言いたいのだろうと思う。しかしながら、どうも新聞の報はるところによると、一たん身分は失うけれども、ほぼ二年間ということで、その間に警察関係のほうでは、部長その他の昇任試験を受けることができる。身分を失った者が昇任試験を受けられるはずがない、出向でなければ。私はそう思う。完全に身分を失えばもう縁がないわけだ、ところがその間に昇任試験が受けられる、これはどういうわけだ。巡査なら巡査という身分がなくなっておって、なぜ昇任試験が受けられるのだろう。そこにおいて警察側とすれば私は出向だと思う。それを裁判所のほうは、攻撃されたからそれを逃げるために、関係はないのだ、おれのほうは出向というのはないのだ、こういうことのようだが、そうはいかぬと思う。  そこで、警察庁にお伺いしたいのだが、どうなんですか。これは出向なんですか、出向でないのですか。完全に身分関係なくなることとはどうも違うらしい。それとまた、年金ですか、何か十五年と二十年とかいう区別があるらしい。そういう関係なんかもいろいろ考慮して云々という報道もされておりますが、そういったこともまた復職も認めて特別に任用ということだろうけれども、そういうことはできないことはないと思う。ただ昇任試験など途中で受けるということは、身分が完全になくなればできようはずがない。そういう意味においては確かに私は出向だと思う。警察の側からいえばその点どうでしょうか。
  8. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 ちょっと私、先ほど言い落としたことがございますので、先に若干つけ加えさせていただきたいと思います。  先ほど申し上げましたようにして、警察官にこちらのほうに来てもらう場合に、もちろん正規の面接を行ないまして、そして採用するときには裁判所職員としての宣誓をさせまして、そして完全に新規採用するわけでございますけれども、何しろ警察のほうでも非常に人員難難色を示しておられる。それについては、もし御本人たちが二年なら二年で警察に帰りたい、向こうへ行きたいという場合には、ひとつ何とか裁判所に来たために不利益をこうむらないようにさせていただけないかというようなことをお願いしたわけでございます。そういうことについて、警察庁県警本部のほうでは、そういうような便法をお考えになってくだすったと思うのでございますけれども、要するに今度新規採用いたしました者は、司法科試験を受けたいという希望を持っている者、それから書記官研修所に入りたいという希望を持っていたり、あるいは夜間大学に入りたい、警察にいればなかなか大学に入ることもできないので、裁判所に来て大学に通いたいというような御希望を持っておられる方が多うございます。この措置は何も今度始まったことではないんで、実は三十一年、いまから十五年くらい前ですけれども、そのときも警察のほうから約三十名くらいの方に来ていただきまして、そしてやはり二年間くらいして本人希望したら警察に帰ってもらうというようなことで採用いたしまして、その方たちがあるいは司法科試験に通られたり、それからまた裁判所職員で定着なすったり、そういうことがもうすでに十数年前からあったわけでございます。したがいまして、最近は非常に採用難ということのために警察のほうでそういう便法をお考えになっていただいて協力していただいた。昔の十数年前はそこまで考え措置していただかなくても警察から警備員として来る人がいたということで、時代の違いと申しますか、そういうことが前提になっておると思われますので、先ほどこういう点を御説明を落としましたので、少し付加さしていただきたいと思います。
  9. 勝田俊男

    勝田説明員 お答え申し上げます。  出向ということが必ずしも法的には明確な概念がないと思うわけでございますが、われわれのほうで通常出向辞令を出しますのは、中央官庁間における人事交流の際に、総理府に出向というような形で辞令を出しているわけでございます。この場合は官庁命令によって他の省庁につとめるという形になるわけでございまして、また、当然警察庁復帰するということを前提としております。そういう場合に出向辞令を出すというのがわれわれの慣例でございます。  今回の場合につきましては、あくまでも本人希望によるということでございます。そうして、裁判所につとめてもし復帰希望するならば、その際には再採用を考慮しようということでありまして、当然に復帰前提としていないわけでございます。そういった面からいいまして、従来われわれの慣例として使っている出向という概念には当たらないんではなかろうかというふうに考えております。  なお、身分のない者について昇任試験を受けさせることはおかしいではないかという御質問でございます。この点につきましては、今回裁判所側からの依頼もございまして、県警察においてもできるだけ御希望に沿うようにいたしたいというようなことで、希望者が出やすいようにするにはどう考えたらよかろうかということも考えたようでございます。そういった面で裁判所へ行きっきりであればなかなか希望者も少ないんではなかろうか、ただ、期間を限ってつとめるということであるならば、夜間学校に入れることもあり、また家庭の事情等もあって、しばらくは県庁所在地につとめたいというような事情の人もあるであろう、そういうようなことで、裁判所側お話もございまして、おおむね二年くらいの期間復帰希望するならば、その際に採用のことを考えてもよろしかろうというような方針をとったようでございます。そうしたことから再採用方法考えるとするならば、希望が出やすいという点から見ましても、できるだけ本人に不利な扱いにならないようにして、希望が出やすいようにしようというような考慮も払ったようでございます。  そこで、昇任試験を受ける期限の来ている者につきましては、その間に昇任試験を受ける機会を与えてもよろしいということにしたようでございます。しかしながら、身分がないわけでございますから、昇任試験を受けたといたしましても、直ちにそれが昇任試験合格という法的な効果を発生するわけではございません。そういった面で、厳格な意味でいいますと、昇任試験を受験したという意味にはならないかもしれませんが、今後再採用する場合には、その実力の実証としてそれも考慮して再採用の際に考えようということになろうかというふうに考えております。
  10. 畑和

    畑委員 警察庁答弁も、要するに正式の出向というのには当たらぬという結論的な答弁だと思う。しかし、昇任試験身分がないのに受けるということは、どうしても矛盾である。それだけはどう強弁しようと私は矛盾だと思います。理論的に間違いだと思う。それで、身分復活して再採用になったときにその身分を与えるのだから問題はないのだ、ただ試験だけ受けさしておくのだということのようだけれども、どうもそれは説得力がない。これはやはり両方考え便法である。これはいろいろ苦心の策だと思います。人間が足りないこと、私もよくわかっています。そうして、警察のほうでもそういうことでもなければ警察のほうから警備員になる人はなかなかないだろう。で、警察官の中には向学心に燃えている人もおるし、毎日毎日のいろいろ出動その他ではなかなか落ちつかない、ひとつじっくり勉強して、司法試験も場合によっては受けよう、あるいはそうでなくとも、その間に勉強ができるから、昇任試験も受けて、また帰ってきたら部長なりに昇任できるというような、やはりいいところがなければなかなか行かないと思う。その結果両者考え一つ便法だとは思うのです。そのことは私もよく理解はできるのですけれども、どうも少し便宜主義に過ぎると思うのですね。同時にまた、警察機動隊などを導入することは、これはよろしくない、なるべく避けるべきである。したがって、そのかわり裁判所自体法廷警備の必要ありとすれば、それをやるための法廷警備員が必要だということで、予算を要求し、それが通ったわけであります。したがって、それを充足するのになかなか骨が折れるということで、たまたま警察官を思いついたのだろうと思うのです。  ただ問題は、結局やはりそうでなくても裁判所権力一つだ。それから警察はもちろん権力の権化ともいわれるものである。しかし、裁判所はまたそういった警察権力とは全然別の裁判所という厳然たる、これはどこにも左右されないものでなければならないわけであります。そういう点で、そうでなくてもそう思われるところへ、どうも現職警官が、あなた方の話を聞けば出向ということではないというけれども、実際には昇任試験等を受けさせるということにおいて非常なつながりを持っておることは間違いない。そういうことで、やはり裁判所警察権力癒着をしているというような感じを私は一般の人が持つに違いないと思う。警備員不足ということはわかるのだけれども、それを急ぐのあまり、どうも今度の警察官採用ということは——完全に身分がなくなってそれでやるなら別だと思うのです。ところが、どうもつながりがあるということになると、そうでなくても警察裁判所というのがどうもおかしな関係だというふうに思われやすいのでありますから、この辺は私は相当十分に警戒してやらなければいかぬと思う。まあ望ましいことではないと私は思うのだ。そういう点で、その辺はどう考えていますか、両者とも……。
  11. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 ただいまの畑委員の御意見の中で、あまり機動隊なんかを導入して法廷秩序を維持するのは全く困ったもので、正規法廷警備員によってやるのが当然だという御意見がございました。これは全くそのとおりなんでございますが、一昨年に警察官の応援を求めました延べ人員が大体二万二千人をこえているわけでございます。それから昨年はおそらく三万人をこえているんじゃないかと思うのであります。そういうようなことをしなければ、とにかく日本法廷における秩序が保たれないという、われわれからすれば非常に悲しい現状でございまして、何とか先輩の弁護士の皆さまの御指導によってそういうような荒れる法廷ということがないようにしていただきたいのでございますけれども、しかし、これが現実の問題としてある以上は、どうしても法廷警備員を置かざるを得ないわけです。そうなりますと、これはその現実に対処するためにはしかたのない方法ではなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。
  12. 畑和

    畑委員 警察庁はどうですか。
  13. 勝田俊男

    勝田説明員 ただいま最高裁のほうから御答弁がございましたが、われわれといたしましても、法廷にたびたび機動隊が出動するというような事態は好ましいことではない、最高裁のほうにおいて自力で秩序を維持する態勢を整備されることが望ましいことであるというふうに考えております。そういった面で、本年最高裁が増員されて非常に御不自由をされておるという観点から、警察官の中にもし希望者があるならば現在のような形で出ることも一案ではなかろうかというふうに考えております。
  14. 畑和

    畑委員 いま、最高裁では十五年前にそういう例があると言われましたけれども、これは法廷警備員じゃないと思うんですね。法廷警備員はその当時なかったのだし、その場合には一たん警察のほうからそういう希望者を募って、それで警察をやめて裁判所に来る、こういうことなんで、これはもう問題がない。これはたいした例にはならぬと思う。おそらくそのときは昇任試験の問題はなかったろうし、完全に身分を失って、そして、ただその後にまた警察へ復職したいということであれば警察特別任用で復職さすということでは、私はその例にはならぬと思うんだけれども、その点はどうですか。
  15. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これは決して前例があるからこうだということで申し上げるわけではございませんが、しかし、実際としましては、やはり二年後に本人が帰りたいという希望を示した場合には警察のほうで引き取っていただく。要するに再採用していただくということを約束いたしまして採用いたしているわけでございます。しかしながら、やはり完全に裁判所職員として採用したわけでございます。ですから、その方たちで二年たって帰るということを希望された方は、比較的少なかったようでございます。司法科試験を受けたり、また裁判所事務官として裁判所事務の仕事をやったり、また法廷警備員でまだ残っている方もございますし、そういうような種々いろいろなところに分散しておられますけれども、やはり採用のしかたとしましては、二年したらば本人希望があれば警察に再採用していただくということを本人とも約束もいたしまして、警察ともそういうお話し合いをした上で採用したのが現実でございますけれども、しかし、これは前例があるからとかなんとかということで今度の措置がどうのこうのというような趣旨で申し上げるわけではございません。ただ、事実としてそういうこともあったということをお耳に入れておきたい、こういう趣旨でございます。
  16. 畑和

    畑委員 両者の最終的な答弁を聞いたのですが、それによると、好ましいことではないけれどもまあほかに方法がない、なかなか充足ができかねるということ、そういう裁判所事情考えると、警察のほうでもそれに協力する、それについてはやはりそういう希望者があった場合には福岡あるいは名古屋の例と同じようなことはあっても、それはやはりそういう方向でやるつもりだ、こういうような御答弁だったように思います。この点やはり一般人たち国民から誤解を受けやすいという点から、私はこれは非常に好ましくないことだ、やるべきじゃないというふうに考えておる。大体幾ら警備員が足りないからといって、それを警察に求める、しかもこういった形のつながりを残したままで警察官採用するということ自体、まず最高裁の頭を切りかえてもらわなければいかぬのじゃないか。そういった発想、そのこと自体が私は問題があると思う。やはり警察との癒着というふうに考えられやすい。その発想自体が私は問題だと思う。そういった誤解を受けないように、あらゆる努力を、ほかの努力をすべきだと私は思う。その点はそう思いますが、あなた方のお考えは変わりませんか。
  17. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 これは畑委員の御意見もごもっともでございますけれども、私どもの従来の考えは残念ながら御意見とは違う考えでございます。  法廷警備員と申しますのは、要するに裁判長指揮命令に従いまして、法廷の特殊な荒れる現象というものを静めるという任務を遂行する。そうして身分関係は所長の完全な監督下に属しているということになっておりまして、全くそういうような心配はないのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。     〔発言する者あり〕
  18. 高橋英吉

    高橋委員長 私語を禁じます。
  19. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 検察官から裁判官におなりになる方も相当ありますし、裁判官から検察官身分を持つ者も相当あるわけでございますけれども、そういう場合に裁判官検察官との身分の入れかえということについて、直ちにどうという声も聞かないわけでございまして、特に法廷警備員といいますのは、先ほど申し上げましたように、裁判長指揮を忠実にまじめに実行してくれるというところにほんとうの任務があるわけでございます。私どもの考えといたしましては、先ほど申し上げましたような考えに基づかざるを得ないということになるわけでございます。
  20. 畑和

    畑委員 荒れる法廷といってももうそろそろ峠を越しますよ。私はそう思いますよ。ああいうのははやりもので、東大事件ごろからえらい急角度に荒れたけれども、最近は多少変わってきているようだ。連中もだいぶ戦術を変えてきているように思う。私は一種のはやりものだと思いますから、これはだんだんそのうちになくなってしまいますよ。ことし一ぱいくらいのものだと私は思うのだけれども、あまりにあなた方は神経過敏にどうしても充足しなければということでやって、また変なところで国民から不信を買うということがあってはならぬと思う。  ともかく裁判所は、どこの官庁からも独立だ、いわんや警察権力との癒着を連想させるようなことは特に好ましくない、私はそう思うのです。しかし、議論してもしかたがないから、私はこれだけであと質問に食い込むからやめます。あと青柳君ひとつ……。
  21. 高橋英吉

    高橋委員長 関連質問を許します。青柳盛雄君。
  22. 青柳盛雄

    青柳委員 この問題は、現職警察官裁判所職員として実質的な活動をするというところに問題があるわけで、出向という形はとってありますけれども、事実は警察官としての職務の延長が法廷の警備あるいは裁判所の警備という形で行なわれるというところに、一般世間の人々が大きな疑惑を持つわけです。裁判所警察癒着しているんじゃないか、司法権の独立ということがうたわれている憲法のもとで、行政権力の最も最先端にいる警察権力がこれに介入してくる、そういうことに道を開くものであるという、これは私どもが一定のイデオロギーに基づいて云々するのではなくて、一般新聞などの報道の扱い方を見ましても、そのことはわかるわけでございます。またしたがって、民主的な政党あるいは民主的な団体、労働組合等でもこれを非常に重視いたしております。裁判所職員によって組織されている全司法労働組合などでも、その機関紙、その他等々で、この問題については非常な疑惑を持ち、裁判所当局側に対して抗議あるいは質問をいたしておりますし、また、若い在野法曹の人々もこの問題について最高裁判所長官に公開質問状を出しているというような事実、さらには、抗議の意思表示をしているという事実もございます。したがって、国会といたしましても、こういう問題を明確にする必要があると考えるわけでございます。  先ほど来、出向というのは俗なことばであって、法的には退職をしてそして裁判所職員としての採用である、二年後に裁判所を退職して、再びもとの職に戻るというのは再採用にすぎない、これは確かに法的にはそれ以外の方法をとることはできないわけでございますけれども、そこで、私はお尋ねをいたしたいのでありますが、こういうことについて、最高裁当局と警察庁当局との間では、どういう申し合わせが行なわれたか、これを一般的にまずお尋ねいたしたいと思います。
  23. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 恐縮でございますが、全司法で抗議を申し込んでいるというのは、どこにあるものでございましょうか。
  24. 青柳盛雄

    青柳委員 私のほうに逆に質問するのですが、質問をしていることは、全司法で発行している全司法新聞で読むことができます。あるいはその主張の中にも大きな疑問を提出しておりまして、それは労働組合に対するスパイ活動をも誘致しかねないということも言っているわけでございます。ですから、この問題は、決していま簡単に見過ごすことのできないことだという、そういうことから質問をいたしているのでありますから、私の質問に対してお答えを願いたいと思います。
  25. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 労働組合に対するスパイ活動なんということは、とにかく毛頭考えていない事柄でございまして、全くこれは、いま初めてそういうようなことを伺ったわけでございますけれども、もう絶対にそういうことはないということは断言申し上げることができると存ずるわけでございます。  それで、先ほど畑委員の御質問にお答え申し上げましたように、今度百名の増員がございまして、そしてその中で充員できない部分について、それぞれ地方の裁判所は、要するに荒れる法廷傍聴人被告人が相呼応して裁判長命令を聞かないというような事態をどういうようにして収拾するか、しょっちゅう警察から応援ばかり求めていることも、非常にこれは警察にとっても気の毒だし、何とか自分たちの手でおさめたいものだというようなところから問題が出てきたわけでございまして、要するに、その採用したい地方裁判所は、どうもなかなかいい人がないけれども、警察に少し応援を求めて、何とか協力してもらって、警察官で、若くてしっかりしている優秀な人を法廷警備員採用するということはどうだろうかという話がございまして、最高裁人事局のほうとしましても、それはけっこうじゃなかろうかというようなことからだんだんに話が進展してきたわけでございます。地方のほうでは、警察のほうへ頼んでも、いま人員難でなかなか手がさけないというお話がある、こちらも全くそうだろうとも思うのですけれども、しかし、何とかして法廷警備員を充実をしたいということでございまして、要するに先ほど畑委員にお答え申し上げましたように、地方から最高の事務当局のほうに連絡があり、そこで相談しながら、地方のほうは警察本部のほうへ、私どもは、その事情によって内々警察庁のほうへ、どうだろうか、そういうようにしていただけないかというようなお願いをするというようなことから話が進んできたわけでございます。  やはり協力を求める場合には、すべてそういうような方法で事が運ぶわけでございまして、青柳委員の御心配になっていらっしゃるような、いわゆるスパイ活動というようなことは絶対にございませんので、どうぞそういう点は御安心いただきたいと存ずるわけでございます。
  26. 青柳盛雄

    青柳委員 その採用するに至った経緯について、いまるる説明があったわけでありますが、私の質問したいのは、いま矢崎さんがおっしゃるように、最初現地裁判所のほうからお伺いを立てたように経過としては出てきているようでありますけれども、それが動機で具体的に個々のケースによって最高裁が指示を与えるということもありましょうけれども、そのことではなくて、最高裁当局が警察庁の最高の当局に対して、下部の地方裁判所等で警備員採用について希望がある、だからこれについてはひとつ協力してもらいたいというようなことを申し入れたに違いないというふうに考えられるのであります。その場合にどういうことが話し合われたのか。文書で契約が取りかわされたかどうか、そこまでは私どもつまびらかにいたしておりませんけれども、その点をお聞きしたいわけです。たとえば二年間で現職に戻るというか、もとの警察官の地位に返るというような問題がすでに予約されているようであります。また、裁判所警備員という職にありながら警察官昇任試験を受ける機会も保障されている。その試験に合格した場合、どういう法的効果を生ずるのか。そういうことについては先ほど警察庁のほうから答弁がありまして、そのこと自体はすぐ昇任できるというものではないようでありますけれども、いずれにしてもそういうことの取りきめがなければ、そういう便宜といいますか特例が行なわれるはずがないわけです。だから、その点をまず最高裁のほうにお尋ねをして、それから引き続いて警察庁のほうにもお尋ねをいたしたい、かように考えております。
  27. 高橋英吉

    高橋委員長 矢崎局長にちょっと申し上げますが、先ほど畑委員からの御質問にたいへん懇切丁寧に答えられておりますし、重複するおそれもあるから大体簡単に要点だけ答弁していただいて、あとたくさん問題がありますから簡単にやられても不親切だと思いません。先ほどからたいへん懇切丁寧に言われておりますから、どうぞひとり……。
  28. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 御承知のように、一月にもう予算がきまりまして、それから六月まで採用についてはずいぶん難航しているわけでございます。したがいまして、全国各地の地裁からいろいろと相談がございまして、そこで全国の配置された裁判所意見等も聞き、相談もいたしまして、警察庁のほうにはこういうわけだからひとつ何とか協力していただけないか、こういうお願いをしたわけでございまして、お互いに文書でそういうことの取りかわしをしたということはございません。
  29. 青柳盛雄

    青柳委員 では、警察庁のほうにお尋ねいたしますが、警察庁のほうでも、このことが世間で大きな問題になりましたので、国家公安委員会に対して報告をされたようでございます。それは十月九日付の読売新聞にも載っておりますが、それによれば、やはり出向ということばが——これは新聞報道でございますから、かってに書いたのだといえばそういうことかもしれませんけれども、二年間の出向ということで、しかも昇任試験ですか、そういうものを受けさせるというようなことから、さらには恩給支給年限の問題についてもいろいろ考慮するという報告があるようでありますから、その点を簡単にお答え願いたいと思います。
  30. 勝田俊男

    勝田説明員 お答え申し上げます。  先ほど最高裁のほうから御答弁がありましたような次第で、各地方裁判所から関係県警察に協力を要望したい、このことについては了解をしていただきたいという趣旨のことがございまして、われわれといたしましては最高裁の苦衷もよく理解できるところでございますので、その点については一応了承いたしましょう、ただし、これは県によって事情も違ってございますし、もちろん本人希望によることでございますので、要請されたような期待ができるかどうかは必ずしも保証はできませんが、一応御依頼の趣旨については了承いたしましたということで、たまたま全国の警務課長会議もございましたので、その席上におきまして、各裁判所から申し上げたような趣旨の御依頼があった場合には、よく事情を聞いた上で各県本部においてしかるべき措置をとられたいというふうに連絡をいたしたわけでございます。  したがいまして、問題はそれぞれ各府県の判断にまかしておるのでございまして、相互の逐一の状況については報告をとるというようなことはいたしておりません。たまたま今回この問題が大きな問題になりましたので、福岡県、愛知県からそれぞれの事情を聞いた次第でございます。
  31. 青柳盛雄

    青柳委員 私の質問に少しもまともにお答えになっていらっしゃいませんけれども、経緯をお聞きしている中の最も重点は、募集するにあたって応募する人にどういうような条件で応募させるか。要するに二年後には戻れるのだよ、それから戻れるまでの間に昇任試験も受けさせてやるのだよ、大体大まかなところそういうことの方針がきめられ、それが最高裁との間でも一定の合意に達しているのかどうか、この点を聞いているわけです。
  32. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 先ほど畑委員にたびたび申し上げましたように、そういうようなことでお話し合いをいたしまして、そしていま青柳委員からお話がありましたようなことで、何とかひとつ協力していただけないかというようなことで、各警察官につきましては裁判所からこういうような希望があるというようなことをお伝えいただいた、こういうようないきさつに相なっておるわけでございます。
  33. 青柳盛雄

    青柳委員 警察庁のほうでは、その点は募集するにあたって、こういう条件であるということはすべて周知徹底させたのかどうか、それをお答え願いたい。
  34. 勝田俊男

    勝田説明員 警察庁におきましては、各府県の判断で各裁判所側と十分に協議をしてやりなさい、そういったことで、福岡県、愛知県の報告によりますと、先ほど来お話がございましたように、できるだけ裁判所側に協力をする、希望者が出やすいという形でおおむね二年間、本人希望するならば採用方法考えてみましょう、それで復職を予定する者についてはその間昇任試験の機会については与えるようにいたしましょうということで、それぞれ希望者を募ったようでございます。
  35. 青柳盛雄

    青柳委員 警察庁のほうにお尋ねいたしますけれども、この昇任試験というのは、一定の欠員が出た場合に、昇任試験というのを受けさせて合格した者、合格といいますか、そのうち優秀な者を欠員補充するためにやるものであるのかどうかという一般的な質問です。これが資格試験であるのか、要するに欠員を補充するための昇任試験であるのかということ。それから現職でない者に対してこういうような試験を受けさせるというのは、成績がよければすぐ裁判所のほうの職をやめて、そして二年以内であっても復職させ昇任させる、そういうことであるのか。本件の場合についてどういうことが考えられておったのか、それをお尋ねしたい。
  36. 勝田俊男

    勝田説明員 昇任試験につきましては、資格試験ではございません。毎年一応の欠員の見通しを立てまして、昇任を前提といたして行なっておりますのが昇任試験でございます。今回の場合につきましては、先ほど来申し上げておりますように、法的にいえば身分はないわけでございますから、昇任試験を、たまたま実力の実証というような形で受けさせる機会を与えたといたしましても、直ちに効果を生ずるわけではございません。したがって、合格したからといってそれを直ちに復職させるというようなことは毛頭考えていないのでございます。
  37. 青柳盛雄

    青柳委員 警察官が二年たてばもとの職に戻れるという目安がある。しかもその間に補充をするための昇任試験というのをやる。これは何も資格試験ではないというからには、昇任をしてやるということは当然復職するということが前提になるわけでありますが、そうなれば実質的には出向ということと何ら変わらない。だから裁判所職員である地位と、また警察官であるという地位とが事実上重複しているような形、融通無碍の関係がそこにでき上がっているというふうに考えざるを得ないわけです。だから、これは非常に問題になるわけです。古い例をあげて、前歴がいろいろの方が裁判所職員になったり、裁判所職員がまた警察あるいは検察庁の職員になったというようなこととこの問題とを一緒にするわけにはいかないわけです。だから、こういうことを最高裁判所があえて指示し、あるいは黙認し、そしてこれをさらに続けるということは、非常に司法権の独立というものに対する国民の信頼を裏切るものではないか。世間でそう思うということが問題だ。自分たちがどう思っていようと世間で思っていることが問題だというようなことで、いままで青年法律家協会に加入している裁判官などについていろいろの談話が出たりしている際に、世間で非常な疑惑を持つようなことを今後続けていくつもりなのかどうか、その点を最後にお尋ねしたいと思います。これは最高裁に……。
  38. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 先ほども畑委員の御質問の際に申し上げたのでございますけれども、法廷警備員なんというものはほんとうはないのが理想でございます。世界各国法廷において、特に法廷警備員というようなものがあるのを実は私見たことないのでございまして、廷吏とそれから書記官、それだけで本来は十分なはずでございます。そういうことがあってはならないわけでございます。しかしながら、日本法廷の特殊現象として、世上報ぜられますように、非常に荒れる法廷が盛んである。そのためには、どうしてもこちらのほうとしてはそれに対処せざるを得ないわけでございます。要するに、法廷警備員というものは元来はなくていいものなのに、荒れる法廷がある限りはどうしても必要なんだ。そういうような現実に対しては、いままでの方針を堅持せざるを得ない、こう考えておるわけでございます。
  39. 青柳盛雄

    青柳委員 全く、私の言うことを何か法廷警備員制度そのものにごまかして言っている。その補充というか、その制度を運用するにあたって、現職警察官、絶えず交流のできる警察官を補充するというような、こういうやり方が問題になっておる。われわれはもちろん警備員制度そのものについてもいろいろ意見があります。ありますけれども、その制度を国会でも予算を認めているというような状況のもとで、それを全面的にいまどうこうということをこの場で言っているわけじゃない。その補充というか、充足にあたって現職警察官を募集する、また場合によっては自衛隊を募集するというようなことをやっていいのかということを言っているわけです。答えがなければけっこうです。  これで終わります。
  40. 高橋英吉

    高橋委員長 入管局長おりましたね。畑和君。
  41. 畑和

    畑委員 続いて在日朝鮮人の外国人登録法上の国籍欄の記入の訂正問題、この問題について質問をいたします。前回、先月の八日の日に、たまたま田川市で韓国籍から「朝鮮」に訂正の書きかえをやった。そのあとを受けて、われわれの同僚委員の安井委員からいろいろ法務当局に質問をいたしたのでありますが、その後また事態が発展をいたしておりますので、それに関連をしてひとつ若干の質問をいたしたい。  今度の問題は全くどうも法務省当局というか、日本の政府が国籍問題というものについてほんとうの理解をしていない、あるいは故意にそれを避けて政府独自の一方的な見解を押しつけてやっておるというところに大きな混迷があると私は思うのであります。同じ分裂国家といえども、中国の場合あるいはベトナムの場合、あるいはドイツの場合、こういった場合につきましては何ら問題はないのであります。ところが、朝鮮の問題についてはこうして非常な紛争の種になっておる。そもそもその種をまいたのは、私はむしろ政府であり法務当局ではないか、かように思う、ますます私はこの紛糾は拡大をしていくと思う。その証拠には、この前、田川の市当局で書きかえをした、八日にうちの委員の安井さんが質問をしたけれども、そのあと続々と書きかえをやる市町村がふえておるではありませんか。しかもその中には——初めのうちは革新首長の市町村だけだった、こういうふうに言われておったんだが、その中には保守系の首長の町なども入っておる。こういう事態がいまできておるわけです。しかもいよいよ法務当局のほうでは、期限を限って書きかえをまたもとに戻すようにというように指導せよ、命令をせよということを福岡県当局、県知事に対して指示をいたしておるわけです。これはこのまままいりますならば、田川市当局がこのまま書きかえをしない、再書きかえをしないという事態になりますれば、当然地方自治法の百四十六条に基づいて訴訟をやらざるを得ないということになると思うのでありまして、これは非常に私は問題だと思うのです。しかも種をまいておるのは政府であり、また法務当局であると私は考える。国籍に対するほんとうの理解があって善意でやっていただけるならば、私はこういう問題はなかったと思うのです。  そこで、私は順序を追って、まず国籍決定の国際原則について私の考え方を申し述べて、法務当局のほうの御意見を聞きたい。学説もそうでありますし、一般の国際法上もそうなっておると思うのでありますが、国籍というものは、国家の側から、それから国民の側から、この両方の側から決定されるわけだと思うのです。国家の側についていいますと、自国民の範囲、すなわち自国民の国籍を有する者の範囲をきめるのはその国家の固有の権限とされておる。だれを一体自国の国民ときめるかということは、その国の排他的な権限であって、他国がこれを干渉することは許されないというふうになっておる。これは国際慣習法上の確立した大原則だと私は思うのであります。一九三〇年に締結をされた国籍の抵触に関する条約、それが三七年に発効した。これの第一条と第二条を見てもわかるのであります。もっとも日本ではまだこれを批准はしていません。批准はしていませんけれども、この大原則はほぼ認めておると思うのです。日本の最高裁判所も大体その法理を認めたような態度をとっておると思うのであります。  それからまた、国民の側からいいますと、国籍を持つということはあらゆる人間の基本的権利だというふうに考えられる。その証拠には、人権に関する世界宣言の第十五条、これには「何人も、国籍を有する権利を有する。」「何人も、ほしいままに、その国籍を奪われ、又はその国籍を変更する権利を否認されることはない。」こういうことをうたっておるわけであります。  したがって、国家の側からと国民自体の側からの意思、それが合致するところで初めてだれだれはどこの国籍を有するんだということはきまるわけでありまして、第三者であるとした場合、日本政府はそれに干渉することは許されないのだ、私はこういう国際的な慣例というか大原則がこうした条約あるいは世界人権宣言にまたちゃんと書いてあるというふうに思うのでございます。したがって、そういう点について法務当局は一体どう認識をされておるのだろうか、それを根本的に問いただしたいというふうに私は思っております。  この原則についてノーなのかイエスなのか、その辺をまず根本問題ですから承っておきたい。
  42. 吉田健三

    ○吉田説明員 国籍の定められる原則に関するただいまの先生の御説は、原則的に私も同意見であり、政府も同じに考えております。国家の決定することによって国籍の付与される範囲がきまる、またそれを要求する人の個人の意思、この両者の合致する場面において国籍が決定になるわけでございます。ただ、各国、国籍のきめ方は違っておりまして、大体人間の出生ということは、生まれてくるということが個人の意思であるのかどうか。ある土地に生まれた人は、たとえばアメリカ大陸に生まれた人、子供は日本人の子供であってもその時点においては出生地主義によってアメリカの国籍を取得することもございますし、また血統主義をとっておる国は、親が日本人であれば子供はどこで生まれても日本人である、こういったいろんな複雑な各国の法律によって、国籍が国籍法によって決定されておる。もちろん生まれた段階においては個人の意思というものはありませんので、親が届け出をする、戸籍に記載された段階において国籍、戸籍が決定していく、こういうことに相なるわけでございます。世界人権宣言の国籍の選択あるいは固有の国籍を有するという点に関しましては、先生と全く同意見でございます。
  43. 畑和

    畑委員 そういう国際的な大原則、結局国家の意思とその国民の意思とが合致をする。たとえば韓国のほうでは、この人間はおれのほうの国籍だと言っておる。また朝鮮民主主義人民共和国は、同じ人間をこれはおれのほうの国籍に属する、おれのほうの国民だ、こう言う。ところが、それじゃその国民が、私は北を選ぶ、私は南を選ぶ、こういうことになったら、結局その最後を決定するのは、その意思の合致によるのだから、北朝鮮を選ぶとすれば朝鮮民主主義人民共和国の国民である、こういうふうになるのだと私は思うのですね。それがいま私の言った大原則だと思うのだが、それは承認される。承認されるとすれば、なぜこんなごたごたするようなことになるのでしょうか。日本の政府というのは非常な意図的に韓国だけを承認している。朝鮮民主主義人民共和国は日本は承認してないのだ。したがって、「韓国」は国籍である、「朝鮮」というのは符牒にすぎない。ただ北朝鮮半島で生まれた人間である、あるいはそれに関係ある北朝鮮出身の在日朝鮮人だ、こういうことで区別する。私はその区別がもとだと思うのです。いわゆる差別がもとだと思う。結局政府は未承認国だからということがどうも基本に横たわっておる、障害になっておると思うのだけれども、承認国であろうが未承認国であろうが、国籍の問題については私は区別はないと思うのです。大体多数の判例、学説等もこれを認めておる。また日本最高裁も昭和三十四年十二月二十二日の判決で示しております。「本来承認は外交的、政治的意味をもつにすぎない国際法上の問題であり、未承認のゆえをもって、その支配地域に現実に行なわれている法を否定することはできない」これは国際私法の問題に関連しての裁判だと思いますけれども、これは国籍についても同じようなことが言えると私は思う。  したがって、最高裁では承認国であろうが未承認国であろうが、そういう法が支配をしておるということは否定することはできないということの見解に立っておる。とすれば、このことが裁判のほうに持っていかれても、日本司法はいま反動化しておる、そういう傾向をたどっておる、こういわれてはおるけれども、少なくともいまの裁判所はあなた方の希望するような裁判はおそらく下さないだろうというふうな確信を私は持っている。また、その確信を市町村長たちが持っておるがゆえに、あえてあなた方がいろんな手をかえ品をかえて威圧を加えても、それに屈服しない、自分が正しいのだ、しかも地方自治法に基づく責任と権限をもってやっておるのだということで、おそらく自信をもって、外人登録法の第十条の二の規定によって、事実と違うというときには訂正をしなければならぬというふうに義務づけられておるのでありますから、その自治法上の義務に基づいて各市町村長があえてあなた方の意向に反して書きかえをやったと思うのであります。この点についてどうお考えですか。
  44. 吉田健三

    ○吉田説明員 まず第一に、ただいまの原則から具体的な朝鮮半島出身者の問題に飛ばれました段階におきまして、理論と現実状況とが多少私たちと見解を異にする点に入ってきたわけでございますが、日本政府はいまだかつて一度も朝鮮半島出身者に、あなたは北鮮人である、あなたは韓国人であるということを強制したことも決定したこともございません。また、そういうことをする権限を日本政府に与えられておりません。まさしく先生の御指摘のとおり、その所属する外国の法律で、その人の意思で、合致した時点において決定されておる、こういうことになっておるかと思います。ただ問題は、分裂国家であるがゆえに、北のほうでは南を含めて朝鮮半島出身者が全部北の人間である、南のほうでは北を含めて南の人間は全部韓国人である、こういう法律になっておるという事実があるわけでございます。  そこで、承認、未承認の問題の前に、私たちがいま問題にしております登録の関係でいきますと、登録に、ある外国人がソ連人と書こうがアメリカ人と書こうが、それはパスポートを示して、私はソ連人であるといえばソ連人だと思って登録するわけでございまして、そういって登録された外国人の在留管理の一つの技術として外人登録という制度が実施されておるわけであります。登録の国籍欄にソ連、アメリカあるいはどこかの国名を書いたところで、その人に対してその国籍を付与するものでもありませんし、その国籍を強要するものでもございません。  それから次に、未承認国と承認国の問題がございましたが、そもそも外人登録制度が発足いたしましたときは日本はまだ独立前でございまして、法律的にはサンフランシスコ平和条約が発効するまで日本におられた半島出身の人はすべて日本人であったわけでございます。ただ外人登録制度上、外国人として登録することになった。そこで「朝鮮」朝鮮半島出身者ということばで統一して最初に書いたわけでございますが、その後、その中から「韓国」と書きたいという希望者が非常に出てきたので、「韓国」と書いてもよろしいということで、二つの書き方が出たわけでございます。現在問題になっておりますのは、そもそも「朝鮮」と書いてあったのを、本人の意思で「韓国」と書きかえられた。その「韓国」と書きかえられておる人をもう一度朝鮮に返したいということで、現在書きかえの問題が起こっておる、こういうことでございます。したがいまして、その段階におきましては、承認、未承認の問題は私は介入しておらないと思う次第でございます。
  45. 畑和

    畑委員 全く牽強付会の答弁ですね。驚いたものだ。それだからこそこういう混乱をするんだ。結局、大原則はそのまま認めます、われわれは国籍を、あなたは韓国人です、あるいは朝鮮民主主義人民共和国の人間です、こういうようなことをする権能もないし、やっていない。ただ外国人登録法上の手続でやっているだけであって、別にそれをあなたのほうできめているわけではないという、こういう御答弁のようだが、しかし、そうだとすれば永住権の問題はどうですか。永住権の申請の問題で、韓国人でなければ永住権を認めないでしょう。そういうことによって政治が非常にからんできているんじゃないですか。だから問題じゃないでしょうか、どうですか。
  46. 吉田健三

    ○吉田説明員 永住権の問題につきましては、外人登録法上「朝鮮」と書いている人たちが、現在非常に多数の方が申請しておられます。
  47. 畑和

    畑委員 ただ永住権の問題でも、韓国の国籍を持った者にその永住権を簡単に認める、こういうことじゃないですか。だからしたがって、永住権を簡単に認めてもらうためにはやはり韓国籍に置いたほうがいいというので韓国籍にしたいような人も相当いるのじゃないですか。それは、いわゆる「朝鮮」という名前の表示でやっている方々も永住権を申請をしている人がいるでしょう。もちろんいるに違いない。だけれども、特にそういったことに関連があるのじゃないですか。
  48. 吉田健三

    ○吉田説明員 外人登録制度のほうは、本人の申請によって「朝鮮」もしくは「韓国」と記載されているわけでございます。永住権のほうは、別途の日本が承認した韓国政府と日本との間に条約ができまして、その条約に基づいて、ある資格を持っておる方に永住の権利を付与しておる、こういうことになっております。
  49. 畑和

    畑委員 それは、私は朝鮮民主主義人民共和国の国民だという人たち、在日朝鮮人、そういう人たちが永住権を申請するときはどういうことで許可しているのですか、どうなんですか。
  50. 吉田健三

    ○吉田説明員 韓国政府と日本との間に結ばれましたいわゆる条約による協定永住と申しておりますが、この協定永住は韓国籍になるという意思を持っておる人の間にのみ成り立つわけでございます。それから北を含めまして日本に戦前からおられる人あるいはその後の方、そういった人全体が、現在のところは法律第百二十六号で、将来特定の法律でその地位が確定するまで当分の間、資格を決定せずに日本に在留することができるとなっておるわけでございまして、決定を今後に残された問題であり、また、有資格者で問題のない方に永住権が許可されることは当然予想される次第でございます。
  51. 畑和

    畑委員 将来きめられる問題だ。やはり韓国籍になって、それから永住権の申請をすれば非常に簡単にできる、問題なくできる、そういった区別があることは間違いないと思う。  時間がありませんから先に行きますけれども、日本政府では御承知のように「朝鮮」というのは符号であるということである。それからその後、今度は韓国籍を希望する者は「韓国」ということで、あるいは「大韓民国」ということでそれも認めておる、両建てでおる。最初は統一して「朝鮮」だ。それからその次は両建てである。しかし、いずれにしても両方とも符号である、こういう態度でやってきた。ところが、一夜明ければもう「韓国」は国籍である、「朝鮮」は符号であるということになって、一たん「朝鮮」から「韓国」になったものについては、よほどのことがなければ「朝鮮」のほうに変えることはできない。こういうのが政府見解できまった。昭和四十年の十月にきまりましたね。日韓条約の審議のころにきまりました。いわゆる統一見解というものが出た。その出るまでは佐藤総理も国会の衆議院の席で、全然区別はありませんということをはっきり申した。ところで、どうもぐあいが悪くなっちゃったものだから急遽、その直後、統一見解なるものを発表した。それに基づいて今度は委員会での答弁がなされた。こういういきさつになっておる。  しかも、この統一見解なるものは、いま読み返してみてもまことにどうも牽強付会であります。「しかも、長年にわたり維持され、かつ実質的に国籍と同じ作用を果して来た経緯などにかんがみると、現時点からみれば、その記載は大韓民国の国籍を示すものと考えざるを得ない。」こういうのが第三項にある。それで第四項として「最近、『韓国』に書換えたものの一部から『朝鮮』に再度書換えを希望するものが出てきたが、右に申した通り、外国人登録上の『韓国』という記載が大韓民国の国籍を示すものと考えられる以上、もともと国籍の変更が単に本人希望のみによって自由に行われるものでないという国籍の本質にかんがみ、本人希望だけで再書換えをすることはできない。」第二項から第三項の点はどうですか。この独断的なそういった歴史的な事実の積み重ねであって、それは一つの国籍とみなすべきである、その国籍とみなす以上は書きかえは「韓国」からできない、そういうような一方的な見解、一夜明ければこういうふうになっちゃった。それまでは「韓国」も「朝鮮」も同じ符号だと言われたのが、一晩にしてもう「韓国」は国籍だ、したがって一たん「朝鮮」から「韓国」になったものはみだりに朝鮮への書きかえは許さぬ、こういうふうになってしまったこと自体が、非常に政府としては北と南と差別をしているというふうに考えざるを得ないのです。大体ここから出発している。今日の紛争はここにあると私はまさにそう思うのですが、いかがですか。法務大臣、どうお考えですか。
  52. 小林武治

    ○小林国務大臣 いまの政府のきめ方については、いろいろの批判がありましょう。しかし、政府はそういうふうにきめた、こういうことでございまして、いまの問題もそこに源が出ている、そういうことはお話のとおりだろうと思います。     〔発言する者あり〕
  53. 畑和

    畑委員 いまうしろから、間違っていたら改めたらいいじゃないかという不規則発言もありましたが、まさにそのとおりだと思う。そのことをいま大臣が認める以上、もうさっくり、たとえばいつからいつまでの間、ひとつ「韓国」から「朝鮮」なら「朝鮮」どんどん自由にやらせて、期限をきめて、それから以上はもうやめた、こういうことでもいいじゃないですか。とにかく一夜にしてこういうふうになる。いままでの政府の態度の豹変というか移り変わり、それから最後にこうしたどたんばになってがらっと変わって、もうあとは認めない、こういうことをさかのぼって認めないのですからね。私は無理だと思うのです。その点、時間がございませんから先に進みます。  次にお尋ねいたしたいのは、今度紛争になっておる国の機関委任事務、市町村長の扱う仕事の性格の問題、この点については法務省ではあくまでこれは国、法務省でやるべき問題だ、国の仕事だ、こう言われる。ところが、市町村長のほうではそうではない。なるほど国の仕事であることには間違いないが、しかし、書きかえをやること自体は地方自治法上認められた権利であり、また義務である、そういう見解をとっておる。この見解の相違が、今日のこういった紛争になっておると思うのでありますが、幾ら機関委任事務といえども、何でもかんでもいろんなことを伺いを立てなきゃならぬとかなんとかいうことで、市町村長の権限を侵すというような、私はいままでの政府の態度ではなかったかと思うのです。それが地方自治法の百五十条、これにいろいろ指揮監督、一般的なあれがあります。それはそのとおりあると思うのですが、具体的の問題についてはおのおの地方自治法のきめに従って、やはりこれは地方自治団体の長が自治体の権限と責任においてやることができるのだというふうに私は思うのです。  それは、現行の地方自治制度が地方自治を尊重し、国と地方公共団体との協調をたてまえとして、できるだけ権力的な関与を避け、主として助言勧告等の非権力的な関与を原則としておることから、この指揮監督権も単なる上級機関あるいは下級機関、こういった関係における一般指揮監督権と同一視することはできないのだというふうに考える。本来申請に応じて書きかえをすることは、条文上市町村長の責任と権限に属する、先ほど言うたとおり私はそう思う。法律上の一種の義務だというふうに考えられるのであります。逆にそれを禁じた政府通達のほうが違法である。経伺させる、伺いを立てさせるということについては、当該市町村長に与えた登録権限というものを不当に制限するものである、地方自治の原則に反する違法なものだといわざるを得ない。この点はたまたまいままで一つ例がございました。百四十六条を適用してやった裁判の例がありましたが、砂川事件の例であります。この場合、地方裁判所が単なる形式審査をした、形式裁判をした、それは違法だ、やはり裁判所は実質審査をやらなければいかぬ、そういうことで差し戻しになった事件がございましたが、その裁判の差し戻し判決の中にも、私が言うたようなことが書いてあるわけです。  そういう点から、訂正の問題は本来国の仕事ではあるけれども、地方自治法上あるいは外国人登録法上市町村長に認められた権限であり責任である、かように思う。その点はいかがお考えでありましょうか。
  54. 小林武治

    ○小林国務大臣 いまの、国の事務の機関委任については、それぞれのやり方があろうと思うので、いまの問題については私は自治権侵害などとは毛頭思っておりません。委任をするにつきましては、やはり国の意思が実現する、こういうことであるから、ものによって条件もつけ、ものによって注文もつける。それから、ものによっては地方に裁量権を認める、こういうことはあり得る。その事柄によっていろいろな場合があり得る。この場合は外国人登録あるいは国籍、こういう大事な問題であるから、これは全国統一的に扱ってもらわなければ困る。したがって、いわゆる地方自治体に大きな裁量権を認めるなどということは初めから考えておらぬのであります。したがって、この委任事務を遂行するについては、こういう条件、こういう基準でやってもらいたい、これは当然国としてもお願いのできることでありまして、さような意味からいきまして、私は今回の問題が自治権などには関係あるとは思っておりません。事柄によって、登録というものが全国的に統一的にやらなければならぬことは当然なことでありまして、市町村長あるいはそれぞれの自治体においてそれぞれのお考えがありまするから、そういうふうなわがままというか、自分だけの考えでよそと変わってもいいなどということはあり得ない。したがって、われわれが統一的な条件を示すということは、この問題については当然であります。  砂川事件のことは私よく知りませんが、要するにこれは行政の大きな解釈の問題である。いよいよこれはどうにもならぬ、不服があるというようなことになれば、これは行政訴訟で解決をするということはやむを得ないことでありますが、本件については私どもはそういう裁量の大きな余裕を地方団体に与えておらぬ、こういうことを申し上げておる。したがって、自治権の侵害などとは考えておりません。
  55. 畑和

    畑委員 それは国として全国統一的に同一歩調でやらせようということだと思うのです。そういうふうにはなかなかいかぬのでありまして、これはやはりそういうことであってはならぬから、やはり地方自治法等にもちゃんといろいろきめがある。もし意見が食い違った場合には、百四十六条によって裁判所の判断を仰いで、最後には裁判所がきめてくれ、こういうことになる。まず百四十六条がきめられていると私は思うのです。法務大臣のほうじゃ画一的に同じようにやりたいということ、それはわかりますけれども、しかし、それがもし間違っておったら——もともとが間違っておるということなんですよ。これをやっている市町村長は、国が間違っているんだ、したがって裁判所の裁判を最後に仰ぎたい、仰いでも勝てる自信があるということだからこそやっておる。その辺ひとつ根本的に考え直してもらわないと私はいかぬと思う。いたずらに紛争の種になるんじゃないかというふうに思います。それは国のほうでまとめて国の思うようにやりたい。いろいろな政治的な配慮がある。韓国だけは承認しておるが、北は承認していないという関係があって、やはり統一的、画一的にやりたいという意向だと思うのですが、この問題についてはそうはいかない。ほかの問題は大体そういく。しかし、この問題については私はそういかぬと思う。なぜなら、政府自体が間違った通達を出しておるし、間違った統一見解を出しておるからだ。私はおそらく裁判所は公正な判断を下すと思います。地方自治団体の長でいまやっておる人たちはどういう見解に基づいてやっているかといいますと、結局私が一番最初に申し上げました国籍の本質の成り方という点から出発しているのだ。したがって、たとえば韓国に旅行したいということで「韓国」の国籍記入をしてもらったけれども、その後——そのときにもそういう主義はないのだ、ただ行きたいということでやった。私はやはり朝鮮民主主義人民共和国を祖国として選びますということである以上は、書きかえを認めるべきだ。したがって、それは事実と反しておるのだ、記載自体が事実と違っておるのだ、国籍法の本質、本人の意思、こういうものから遠ざかっているのだ、事実と違うんだ、したがってこれは九条じゃなくて十条の二、訂正——変更じゃなくて訂正だ、市町村長はこういう見解でいるようであります。私はそれがやはり正しいと思う。法務省のほうが間違っておる、こういうふうに思うのです。  ここに、たまたま酒田市の場合の訂正の理由が私の手元に入りましたが、これは非常に明快だと思う。どうして訂正したか、一つは「申立人が在日朝鮮人であることを確認した。」二つは「申立人が朝鮮民主主義人民共和国国籍法第一条に該当するものであることを確認した。」三は「申立人が「韓国」籍を希望せず「朝鮮」籍に改める強い意志を持っていることを確認した。」こういう三点を訂正の理由としてあげております。私は、これはきわめて明快だと思う。そういう意味で事実と違う。国際慣例に照らした場合に、事実と違うんだということで訂正を認めた、こういっておるのですが、この点はいかがでしょうか。どういう見解をお持ちですか。
  56. 吉田健三

    ○吉田説明員 ただいまの書きかえ訂正の問題でございますが、市町村長がその判断において訂正できるものは、その時点において間違っていた記載が載っているのを訂正するということでありまして、変更するというのは、その前の九条のほうの問題なんです。十条の問題は訂正の問題でございます。  現在、この問題が二つ一緒に起きているわけですが、先生のいま御指摘の問題は、市町村長が一方的に訂正してしまったという問題でございます。ところが、これは先ほど大臣から御説明がありましたように、法務省で従来集中管理をやっておりまして、必要書類を全部本省に持っておる。したがって、本人が、自分が「韓国」と書いてもらったのは間違いであったのだということのその誤りを明瞭にしなければ、またもとへいろいろ自由自在に変えられては非常に困る、こういうことでございまして、当初は「朝鮮」と書いてあったものが、一般的には本人希望によって、そして多くの場合には、本人の申請によって「韓国」の旅券を取ったり、あるいは「韓国」の国民登録証を窓口へ提示することによって、その国籍であると確認された場合に朝鮮籍から韓国籍に変わってきておったわけでございます。その韓国籍になっておる人たちが、現在自分があのとき申請したのは間違いであったから、もう一度朝鮮籍に変えるんだ、こういう問題になっているわけでございますが、その朝鮮籍に変えるのだということの原因が過誤によるもの、間違いによるもの、つまり一郎と書いたものを窓口の吏員が棒を一本加えて十郎と書いた、こういう場合はその窓口係の過誤でございますから訂正ができるわけでございますが、立証すべきいろいろな書類が必要な場合には、そういう書類が全部そろっておる本省のほうに——国籍というのは簡単に自分の意思だけで、都合で、旅行したくなれば韓国旅券を取るために韓国籍になる、その目的が達成したら、あれは誤りであって、自分はもう一度朝鮮籍に変えるのだ、そのうちまた、どこかへ行きたくなったら自分はどこどこである、こういうことに変更することは、これは非常に間違いなのでありまして、そういう国籍の……。     〔「問題をすりかえるな」と呼ぶ者あり〕
  57. 高橋英吉

    高橋委員長 お静かに願います。
  58. 吉田健三

    ○吉田説明員 簡単にやらないように、慎重にやるために現在登録制度というものが行なわれているわけでございます。
  59. 畑和

    畑委員 入管局長の話は極端な例で、私も例をあげましたが、だけれども、酒田市の場合はそれをも含めて、いろいろ抵抗があります、そういう場合には。ありますけれども、そういう場合も含めて、本来国籍のあるべき姿ということから割り出すと、本人があくまで北を希望するとすれば、何も北にしてもいいのじゃないか、こういうようにすべきじゃないか、こういうことが先ほどの裁判所の態度です。それを国際原則に照らして事実と合わない、本人の意思と違う、事実と合わないじゃないか、結局それだから市町村長の権限によって、九条じゃいけない、十条の二によって訂正したのだ、こういう措置なんです。これは最後には裁判所の判断にまかせる以外にないと思うのであります。  そこで、この間おたくのほうでも、安井さんの質問あと、通達を出したりして、それで中には間違いのこともある、第三者がかってにやった場合もある、あるいは役場の吏員が間違ったこともある、そういう場合には訂正を認めるが、それ以外は認めないというようなことで、一歩後退したような、理解を示したような態度ではあるけれども、しかし、実態はそうではない。依然としてやはり守るべきものは守ってさらにこれを強くして、いろいろ要件を当てはめたような、こういうことをしろ、こういうことをしろといったような通達を出しているようでありますが、われわれはこれには同調するわけにいかないのであります。  ついては、最後にお伺いしたいのは、その後の進行の模様ですね、これは十月五日現在までの書きかえの出方ですね、全国のそれは私のほうに資料があるのですが、その後五日以後今日までさらにどんなところがふえておるか、ひとつ聞きたい。
  60. 吉田健三

    ○吉田説明員 先ほども申しましたように、現在書きかえもしくは訂正の問題に三種類ございまして、一つは、従来から定められた手続によって、市町村から、韓国籍からもう一度「朝鮮」に書きかえてほしいという、資料を添えての申請が約四千五百二十三件、一都一道二府三十四県にございます。その全部をまだ審査しておりませんが、その中に現在までのところ審査の結果訂正を認めたものは、十市における五十三件すでに認めております。なお、第二のカテゴリーとして、市長または町長限りの判断で訂正された件数は、いま私の手元にあります情報では、十八市一町における三百七十件。そのほかにもう一つの種類といたしまして、外国人登録証明書のみを書きかえまして原票は書きかえてない、訂正されていないという件数が三つの町で四十五件ほどあるというのが現在の状況と承知しております。
  61. 畑和

    畑委員 御承知のように、田川市を最初として、市町村段階で市町村長の権限で書きかえたところが次々と出ておる。その中には必ずしも革新首長ではないところもございます。例をあげますと、福岡県の築城町ですか、それから苅田町、それから山口県の下関、それから福岡県の水巻町、それから大阪府の島本町、それから栃木県の西那須野町、こういったところは革新首長ではないだろうと思う。こういうところでも書きかえをしておるはずであります。しかし、こういうことはやはり政府のいままでの考え方が間違っておるということで、首長の権限で訂正をした例だと私は思う。でありますけれども、この前、大臣は、どういうわけだかどうも革新首長のところがそういうことを始めて云々という話がありましたけれども、必ずしも革新首長だけではないのですね。しかもいままであちらこちらの市町村でたくさんの決議をしておりますね。それをずっと拾ってみましても、必ずしも革新首長が圧倒的ではない、逆だと思う。そういう傾向にありましてみんなそうしてやりたい、ぜひ区別をなくして、人権問題だからということでいろいろ自治体でも決議をしあるいは意見書等も出しておる。そこでこの間トップとして田川市に対して期限をきめて再訂正をするようにという職務命令福岡県知事あてに、そういうことをやらせろということを百四十六条に基づいてやられておるようだ。そうすると田川の場合ですれば福岡県の知事がそれをやるかどうか。一週間以内なら一週間以内に日をきめて田川市にやらせる。ところが、田川市がやらぬと言った場合に今度は訴訟になる。福岡の知事が田川市長を相手にして百四十六条に基づく訴訟をやることになる。こうした場合に福岡の知事は保守系の知事である。それでその中には田川市だけではなくて、先ほど言ったような幾つかの町も、保守系の首長がやっている町当局もあえてこれをやっている。そうした場合に田川市だけを相手じゃなくて、全部を相手にしなければ筋が通らぬということにもなるわけですが、この辺が、はたして福岡県知事があえてこれをやるかどうかという問題もあろうと思う。同時にまた、これは革新の知事の場合、東京の美濃部さんあるいは京都の蜷川さん、こういう人たちの傘下の市町村でそういう事態が起きたときにおそらくなると思う。そうしたときにこれは知事があえてその市町村長に対して訴訟を起こすかどうか私は問題だと思う。起こさないと思う。起こさないときには今度は国の法務大臣が美濃部さんなり蜷川さんなりを相手に訴訟をやる、百四十六条によるとそういうことになるわけでありますが、一体どういう見通しでいまやられておるのか、その辺の見通しはどうお考えになっておるか承りたい。
  62. 小林武治

    ○小林国務大臣 いまのような法務省の通達によって知事は適当な適法な措置をとられる、こういうふうに考えておりますし、とらないなどということをいまから予想することもありませんし、もしそういう事態があればそれに応じてまた考えたい。要するに、私どもは法律の定めるところによってこの事態を処理する、こういうつもりでおります。
  63. 高橋英吉

    高橋委員長 畑君、ちょうど一時間半が来たが、もう一つあとの日に回しますか。
  64. 畑和

    畑委員 もう締めくくりますから……。  いま大臣から答弁がございましたけれども、そのときになってからいろいろ判断する、こういうことで、見通しについてはいろいろな変化もあるでしょうし、なかなかむずかしい事情もあるようです。そういう点で新聞マスコミ等が報道されておるが、法務省もなかなか苦境に立っておるというふうに書いてある。私もそうだと思う。市町村長とまっこうから対決をして訴訟をやる。訴訟をやって勝てばいいけれども負けたらメンツはまるつぶれだ。私は国のほうが負けると思う。それはある意味で楽しみなんだ。だけれども、そういうみっともないことをしないほうが私はいいと思う。それで国籍法の原則に照らして北と南と区別しない。中国と同じように、中国の場合にもかつて台湾政府の蒋介石のほうから「中華民国」というふうに国籍をしてくれという申し出があったそうだが、そのときは華僑総会等の抵抗があって、これは政府もあきらめた。そこで「中国」という統一的な国籍表示を使って何ら問題ない。なぜ朝鮮だけがこういうふうに問題になるのか。六十万もいるからでしょうか。ともかく政府が韓国だけを承認して、何でもかんでも韓国と協調してやるというようなことから出発しているからこういう混迷が来たんだと思う。もっぱらあげて責任は政府にあると私は思う。だから、訴訟になって政府が負けたら私ははっきりわかるだろうと思うのです。最後に判定するのは裁判所ですが、そういうことにならぬように、政府は政府で勝つ自信があるかもしれないけれども、どうも新聞報道等によるとその辺の自信がぐらついているというようなことも書いてある。さもあらんと私は思う。したがって、ひとつ賢明に処置をされるように望みたい。あまりに騒ぎを大きくしないように、それにはやはり政府の見解を変える必要があるのではないかというふうに思うのです。その辺ひとつ慎重にやっていただきたいと思います。答弁を求めてもしかたがないでしょうから、時間が来たようでありますから、以上でこの問題については終わります。  それから、法務大臣一つ聞きたいのですが、この間新聞を見ましたら、新聞検察官あるいは裁判所も同じでしょうが、定年制の延長の問題、これを大臣が閣議決定までこぎつけた。大臣は就任のときにもそういった抱負を持っていられたようでありますが、さらに今度は閣議決定ということになって、今度の通常国会でこの改正案を出されるというような意図のようでありますけれども、私はそのときに、人間不足なんだから、なるほど大臣はいろいろ考えたと思ったけれども、しかし、一方ひるがえって考えてみると、これはそうはいかぬ。いま検察官のほうは人手不足は確かに人手不足だ。裁判官についても同じだ。しかし、検事の場合はなおひどい。やめる検事が多い。一年に七十人もやめていく。そして新しい補充はというと、今度の司法修習生の採用はわずかに三十八名、こういう半分にしかならない。中堅の検事はどんどんやめていく。その理由は何かというと、やはりあまり希望が持てないというようなことで、人事が停滞しているということも一つの大きな原因になっていると思うのですが、そういう点で非常に検事の数、検察官の数が足りないということは私もよくわかっている。それが法務大臣としては悩みで、それを打開するためにということだと思うのでありますけれども、どうもその後の新聞報道等によりましても、やはり私の心配しておったことが出ております。ますますそうなれば動脈硬化を招くのではないか。若手に道を与えることこそ先決であるというので、検事さんも一般にこれは反対だというふうに動くようた話も聞いている。私も一、二現場の検事に当たってみましたら、やはりみんな反対。これはやはりいまでも人事が停滞しておるのに、なおこれ以上停滞したらもう希望がなくなる。ロートルの検事がいつまでもがんばっていたらますます動脈硬化になる、こういうことだろうと思う。ほかの行政官庁は定年はないけれども、本省あたりはみな五十五で定年になる。事実上定年で勇退を求めておる。したがって、もうすでに戦後の任官した人が局長になっておるというようなことがある。検察官のほうは、それは仕事の関係もありますけれども、そうじゃない。  それで、延長するとさらにこれが停滞する、こういう声が非常に大きいのでありますが、検事不足は別の面でやはり考えていく必要がある。検察自身の姿勢を変え、そして若い検察官がやりがいのあるような、上から変なふうに押えをしないような、そういったやはり気風をつくる必要がある。そうすれば検事もふえるのじゃないか、こういう感じもするのですが、これもいろいろむずかしいでしょう。しかし、そういう点について、今度の法務大臣の案、これらについてその後のいろんな動き等を考慮していかがにお考えになっておるか、その点をお伺いしたい。
  65. 小林武治

    ○小林国務大臣 定年延長の問題は、もう日本全体の問題ではないか。ことに民間等におきましても、いまの人口構造が非常な大きな変化を来たしておる。高年齢層の非常な増加、こういうことからいたしましても、要するにその高年者の経験とエネルギーを活用するということは、日本全体の問題としてひとつ大事なことじゃないか、私はこういうことに考えておりまして、単に判事、検事が不足だからどうこうという、こういうことだけの目的ではないのであります。御承知のように、いま定年などというものを法律に定めておるものはもう判検事しかない。したがって、この方々の定年延長、こういうことは日本全体に非常な大きな影響を及ぼすのではないか、私はこういうように思うのでありまして、いま単なる不足対策だけではなくて、日本全体の年齢構造の変化に対応する一つの手段にすぎない、私はこういうふうに思っておるわけであります。  お話しのように、これはもう賛否両論あります。裁判所のほうでも賛成ばかりではない。検察の中にも反対があることは事実であります。しかし、これは何をやるについても全部が賛成だなんということはなかなかあり得ない。これもある程度反対があるが、ひとつよくお話し合いの上で——私は無理をしよう、こういうわけではございません。また、いまのお話のように閣議でその問題を申し上げたのでありますが、閣議決定をしておるわけではございません。裁判所も検察のほうもともに、一般意見も聞いてそういうことをひとつ検討をしたい。私自身はなるべくそういう方向に持っていきたい、かように思っておりますが、御承知のように通常国会までまだわれわれもかわるかもしれませんから、これは次の人の判断にまたざるを得ない。私はそういう希望を持っておるということであります。閣議決定はしてない、こういうこともこの際申し上げておきます。私は、全体のためにそういう傾向を助長すべきではないか、こういうことに考えております。
  66. 畑和

    畑委員 大体わかりました。近く内閣改造もあることだし、法務大臣居残られるかどうかもまだきまったわけではありませんから、いろいろそういう点もありますし、またいろいろ部内の反響等もお聞きになった。確かに寿命が延びたり人手不足だったりして、民間も含めて一般的に定年制延長という問題が叫ばれつつあることは法務大臣のおっしゃるとおり。ただしかし、部内の停滞、要するに頭が古い人をいつまであれしておると、ますます停滞するというような点で、やはり下のほうが意欲を失う可能性も十分あるということもすでにお気づきのようで、若干後退しておるように見受けられるのですが、ともかくひとつ慎重にその辺はやっていただきたい。  時間がございませんので、希望だけを申し上げまして、以上で質問を終わりたいと思います。
  67. 高橋英吉

  68. 中谷鉄也

    中谷委員 きょうは私は、大阪拘置所の非常に遺憾なできごとについてお尋ねをいたしたいと思います。  そこで、大臣にお尋ねをしたいと思うのですけれども、繰り返し当委員会において刑務所、拘置所の問題が質問されております。私自身がさらにそういうふうな問題について質問をしなければならないと思うのはなぜか。非常に素朴に考えてみますと、要するに刑務所あるいは拘置所というのは、われわれ国民の手の届かない、目撃することのできないところにある。そういうところで人権侵害、人権じゅうりんが行なわれていることは重大だと私は思うのでございます。考え方によれば、この問題はそれほど目くじらを立てる問題ではないという考え方もあるかもしれないけれども、私は重大だと思う。  そこで、お尋ねをいたしますが、去る五月六日、当委員会において大臣は次のように答弁されました。いわゆる金嬉老の不当差し入れ問題をめぐっての、ほとんどすべての委員からの質問に答えての御答弁でありますが、要するに総点検というものを私は指示する、これは大臣の御答弁です。そして委員質問に答えられて、少年院その他を全部含む意味で言われたのだと思いますが、「お話しの、全国の収容施設については、われわれもこの際は必ずしも自信を持たない。」自信が持てないではなしに、自信を持たない、そういうかっこうで総点検をおやりになる、こういうふうに決意を述べられたわけであります。本日またこのような問題について、総点検以前のできごとではございますがお尋ねしなければならないのでありますが、今日、大臣としては刑務官のあり方その他について自信を持てるのか、あるいはいまなお自信を持たないという態度でこの問題に対処しておられるのか、これらの点についてまず大臣の御見解を承りたい。
  69. 小林武治

    ○小林国務大臣 これはお話しのような答弁をいたしまして、さような処置をとっておるのでありますが、いまここで全部私が自信を持てる、こういうふうなお答えはまだできない、こういうふうに思います。
  70. 中谷鉄也

    中谷委員 そのことは非常に遺憾なことではありますけれども、同時に、きわめて事態は深刻である、改善の余地がいまなおわれわれの前途に横たわっているということであろうと思います。  そこで、局長にお尋ねをいたしたいと思います。簡潔にお答えをいただきたいと思いますが、総点検の結果、どんな点が緊急改善をさるべきでありましょうか。特に刑務官の不祥事件を防止するという観点において、どの点を防止策としてお考えになりましたか。それについてどんな措置をおとりになりましたか。またとれない措置は一体どの点なのか。なお、総点検を通じて行政処分を受けた刑務官は全国で一体何人いるのか。いかがでしょう。
  71. 小林武治

    ○小林国務大臣 ちょっと私がお答えいたします。  これは綱紀の問題、要するに刑務官の心の持ち方の問題、これが一番大事なことでありまして、いろいろな問題は、いわゆる綱紀の弛緩と申しますか心のゆるみと申しますか、そういうところから出ておりますので、やはり何としても刑務官の自粛と申しますか反省、こういうものに重点を置くべきであると私は考えます。あとのことはまた局長がお答えいたします。
  72. 中谷鉄也

    中谷委員 では、局長の御答弁はひとつ委員長にお願いして留保していただいて、本日お尋ねする問題に入っていきたいと思います。  質問をするに至る経過は、殺人未遂、凶器準備集合によって懲役六年の刑を受けて、昭和四十二年十二月から服役をしている服役者某、それが余罪、恐喝によって裁判を受けている。そうしてこのことは私は異例のことであると思いますけれども、千五百万円という預金通帳と印鑑を持って収容されている。こういう服役者、同時に、現に裁判を受けている被告人という二つの身分を持った人に関する問題であります。その点については、本日委員会において以下看守諸君等の名前は申し上げませんが、すでに質問の通告をいたしておりますから、ひとつ詳細に御答弁をいただきたい。  そこで、まず最初にお尋ねをいたしますけれども、千五百万という金を持って、それが特別領置されて収容されているという事実、その事実と、いま一つすでに服役しておって裁判を受けているというそういう人の場合は、未決囚とは取り扱いが違うということになるのかどうかという事実、この二点についてまず違うなら違うと簡単に御答弁していただきたいと思います。
  73. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 お尋ねの収容者の千五百万円の預金通帳を一時特別領置の手続で預かったことはございます。それは本人が入所時に持ってまいったのではございませんで、入りましたあとでその家族が拘置所の会計課へ持ってまいりまして、これを本人の特別領置物としてくれということで提出いたしまして、そして預かりまして、その後また約一カ月後に取りにまいりまして、これを返したという事実がございます。したがって、現在は持っておりません。  それから第二点の、別件で起訴されまして、被告の身分を持ちながら同時に受刑者であるというものにつきましては、原則として受刑者の規定が適用になりまして、そのような処遇をいたしております。
  74. 中谷鉄也

    中谷委員 その服役者、同じく被告人某の弁護人から、この点について受刑者の人権を守るという立場と、いま一つは刑務所のあり方の観点から、どうしてもこの真相を明らかにしてもらいたいというところの上申書と題する書面が届けられました。  そこで、まず最初にお尋ねいたしたいのですけれども、その上申書と題する書面については、それは大阪地検の検察官に事実を全部本人の口から申し述べたということが述べられているわけであります。いわゆる四条畷の拘禁所の幹部に対して、収賄の要求のあった看守の問題について、そのような事実を今後起こさないようにということの上申をするための面会の申し込みを本人がした。そうすると、そういうふうなことを言うならば仮釈は一日もやらない、弁護人や家族などにそういうことを言うことはないといって追い返されたということが、上申書の中に強く記載されている。  ところが、まず第一点主張いたしたいのは、大阪拘置所職員の職責に関して処理をされたということについて、かねて法務省からいただいたところの職員の処分の要旨をお書きになった書類の中には、その人のことは見当たらない。それで私はお尋ねをしたいのですけれども、これはかなり位の上の方、そういう方の問題については調査されたのか、されないのか。この点が私のお尋ねいたしたい第一点であります。上申書の中に力点を置いて書いてある問題について、法務省の処分結果については欠落をしている。処分がなかったとも書いていない、調査したとも書いていない。いかがでしょうか。
  75. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 お尋ねの点は、四条拘禁所長の面接の問題かと思うのでございますが、これにつきましては調査をいたしました。四条拘禁所の所長は本人に面接したことはございません。かわりまして保安課長が面接いたしております。面接いたしますと、必ず面接の内容を記録に残すことになっておるのでございますが、それによりますと、本人が当時ある反則で懲罰になっておるのでございますが、今回の懲罰事犯は六カ月も前のことであり、悪いとは思わなかったのだ。反則取り調べの方法が実にきたない。事実を話せば懲罰にしないと言いながら懲罰にしたではないか。今度のことについては弁護人の河原弁護士連絡して最後まで戦う、こういうようなことを言ったというふうに記録になっておりまして、また保安課長の報告もそのようになっておりまして、ただいまお話しのような家族や弁護人に伝えたら仮釈は一日もやらないというふうに言ったことは書いておらぬ、こういうふうになっております。
  76. 中谷鉄也

    中谷委員 家族や弁護人に言ったら仮釈はもらえないと言われた、そういうふうな非常におそろしいことを言われたということが記録にあらわれてこないことは常識じゃないでしょうか。だから、それが記録にあらわれておらないからといって、そのことが言われた事実がないのだというふうな考え方は、私は承知ができないわけなんです。では、その点はひとつ留保させていただきます。  次に、収賄の申し込みがあったというふうに上申書はいっております。そうすると、職責の処理についてという法務省の要旨をお書きになった、要するにこういうことで処分があったんだというそういうメモには、結局三百万くらいの借用方を申し込まれたと被告人の某が誤解するような言辞を看守のBが申し向けた、こういうふうに記載されているわけです。私たちが知りたいのは次の点であります。一体誤解されるようなことばというのは何だろうか。調査に当たられた法務省のほうではこれをどういうふうに理解しておられるのか。私の手元にある上申書の中には、明確に、美容院のためのお金が要るからそれを貸してもらいたい、そうでなかったら保証人になってもらいたい、こういうことを申し込まれた。これは私は明らかに贈賄の要求だと思う。しかしそういうことは、お調べの結果誤解をされるような言辞ということになっている。それは具体的にどういうことでしょう。
  77. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 お尋ねの点は松本という収容者が山口という看守長と……。
  78. 中谷鉄也

    中谷委員 ちょっと、私のほうはA、Bと言っています。名前を出されますか。
  79. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 この山口というのは出しても差しつかえないと思いますが、看守長が電報の返信料を三十円……。
  80. 中谷鉄也

    中谷委員 時間がないので簡単に言ってください。誤解されるような言辞というのは何かという質問をしているのですから。
  81. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 私のほうの調査では、検察庁のほうの調査でございますが、誤解を生ずるような申し込みめいたようなことを言ったということになっております。
  82. 中谷鉄也

    中谷委員 そんなことで一体いいのでしょうか。このあなたのほうからのメモにはこうなっているのですよ。妻に美容院を経営させたい、ついてはどのくらいの費用が要るかということを問うたということをわざわざお書きになっているのですよ、あなたのほうの処分内容には。それは、妻が美容院を経営したいんだ、どのくらいの費用が要るのかということを、受刑者の家族のところに行って聞くのがいいのかどうか、また受刑者に聞くことがいいのかどうか、これは問題は別ですね。しかし、そのことは引用した文章として出ているのですよ、あなたのほうのメモには。しかし肝心なのは、金を貸してくれとか保証人になってくれとかいうふうなことを受刑者に対して看守が申し込んだかどうかの点なんです。その点をあなたのほうの調査は、誤解されるような言辞ということでとにかく切れている。そんなことで一体いいのでしょうか。これは質問の通告は十月の六日に参議院のほうで参議院の亀田委員が通告をした。問題は、誤解される言辞とは何かということをわれわれは知りたい。これは一体どういうことを言ったというのですか。
  83. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 この点につきましては、検察庁に捜査を依頼したわけでございます。
  84. 中谷鉄也

    中谷委員 検察庁に捜査を依頼したから行政処分というのをしているわけでしょう。行政処分が適正かどうかということはまさにその一点にかかわるわけなんです。検察庁に捜査を依頼したから行政処分についてはその点についてのお調べをしなかったということになるのだとすれば、私はまさに刑務官の汚職防止、綱紀粛正なんというのは、百年河清を待つということばがありますけれども、そんな感じがいたします。われわれが知りたいのはその点ですよ。きょうの論争点になるのはまさにその点だと思うのですよ。だからこそそのメモには、法務省からいただいたメモには、誤解されるような言辞とあるから、その内容を聞きたいというのが質問者としては当然のことでしょう。その点についてはなはだ不十分です。そうして検察庁からの申し出があっただけで詳しく調べてないということになるのかどうか、いかがでしょう。
  85. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 簡単にお答えを申し上げなければならぬと思うのでございますが、要するにこれは受刑者が職員に犯罪があるということを訴えておる事件でございます。そこでわれわれといたしましては、われわれが調べるよりはまず前に検察庁に調べをさせて、そして検察庁の処分後にわれわれが調べるというのが順序であろうと思って、そのように措置いたしたのでございまして、決してわれわれは調べていないというわけではございません。
  86. 中谷鉄也

    中谷委員 だからお調べになった結果、誤解されるような言辞というのは具体的にどんなことばだったのですかと聞いているわけなんです。その点のお答えをいただきたいということを言っているのです。メモには、妻が美容院を経営したいと言っているのだ。妻に美容院を経営させたいのだ、費用というのは一体目算どのくらいかかるものかということまでお書きいただいて、こうしてあなたのほうは私のほうへ渡していただいた。問題は誤解されるような言辞、それが完全に行政処分の対象になったことばだと思うのですよ。どれだけ美容院の費用が要るのだということを妻に教えてやらなければならぬが、あなた美容院の経験があるのだったら教えてくれというようなことは、必ずしも行政処分の対象にはならないのですよ。誤解されるような言辞の内容が問題でしょう。その点について行政処分の積み重ねをやったというなら、そのことについて、それはこんなことばだったということ——それが百分の五、一カ月ということに関係してきますよ。調査不十分だと私は思う。それが一点。  続けて同じような調査不十分だと私が思われるような点についてお尋ねします。同じく行政処分の減給一カ月、百分の五を受けている看守がおります。私はこれを看守Cというふうに呼びたい。このCが四十四年の十一月と十二月の二回にわたって、他の収容者にお金と食糧を差し入れるようにということを妻に連絡するように依頼をして、その依頼を引き受けたということなんです。そこで、ここまでお調べになりましたか。その依頼に基づいて妻は差し入れをしたのかどうか、何回その後差し入れが続いているのか、しかし、その差し入れは一体どうなったのか、受刑者某のところへ行っているのではないのか、そういう点についてお調べになっているかどうかお答えいただきたい。
  87. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 私どもの平素の看守の指導と申しますか、の中にきわめて重要なことと考えておるのでございますが、みだりに収容者と私語し、限界をこえて無用な会話をしてはいかぬ、処遇上必要なことはやむを得ないのであるけれども、それをこえて、たとえば私的なことにわたって話をするというようなことは、極力慎まなければならぬ。と申しますのは、これによっていろいろ経験のない職員などは、その収容者から私的な接近を非常にはかられやすいということがあるわけでございます。  それで婚約者に美容院をやらせるについて、幾らくらい金がかかるかというようなことを申したようでございますが、これはあたかも本人が先ほどお尋ねの千五百万円という貯金通帳を持っていた最中のことでございまして、誤解を招くことがまことに大きい、こういうことで規律違反ということになるわけでございます。  第二の差し入れの点でございますが、これは調査をいたしましたけれども、いままでのところそういう事実は認められておりません。
  88. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないのですよ。メモにはこうなっているのですよ。もとへ戻りますが、そういうふうに借用方を申し入れた際に、またそういう別のことを言っている、こういうメモになっているからお尋ねをしているのですよ。また現に私のほうが手元に持っている上申書にはそうなっているのです。  そこでお尋ねいたします。差し入れの問題、看守Cの問題に戻りますが、妻はその依頼に基づいて差し入れをしたという事実があるのかないのかという点です。その差し入れをされたものの行くえはどうなっているのかということばでお尋ねしたのですが、差し入れされた事実もないのですか。
  89. 高橋英吉

    高橋委員長 なるべく結論だけについて、理由とか事情とかいうものは、質問があったら述べることにして、時間がないのでイエスかノーだけ簡単にやってください。
  90. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 ただいまお尋ねの点は、まだ報告を受けておりません。
  91. 中谷鉄也

    中谷委員 報告を受けてないと言われますが、そこで問題は、一体局長さん、この矯正について局で一番責任をお持ちになっている方だけれども、じゃ一体動機は何ですか。他の収容者に差し入れをしてやってくれとわざわざ、私語してはいかぬのに看守Cに頼んでこの人がした動機は一体何だというふうに報告を受けていますか。
  92. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 その点につきましても、まだ報告を受けておりません。
  93. 中谷鉄也

    中谷委員 何にも報告を受けてないわけだから、結局そうすると、差し入れがあったかどうか、その差し入れがどのように処分されたか、それが千五百万という圧力が看守のCの審理にどのように微妙に影響したかというようなことについても全然わかっていないということですね。  そこで、私は大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、行政処分のことで根掘り葉掘り、すでに処分をされた看守の名前を特に伏せてA、B、Cというかっこうでお尋ねする。しかし、やはり処分をするということは、その人の処分をすると同時に、処分を通じて真相を明らかにして、二度とそのような不祥事件が起こらないようにするのが行政処分というもののあり方だと思う。いまの局長答弁というのは、そういう点からいいますとはなはだ私は——しかもこれは一月前から国会の問題になることが明らかになっていた問題にしては、私はこういうことがむしろ矯正あるいは刑務行政全体の無気力というものを物語っているのじゃないか、こういうように考えます。大臣の御所見いかがでしょうか。
  94. 小林武治

    ○小林国務大臣 私もいまのお話をお聞きしておると、やはり刑務当局は必ずしも十分に職責を尽くしておらないというふうな感じを持つのでございます。これらはやはり矯正管区長というのがおりまして、これが責任をもって刑務所その他を監督し、また指導する立場にある。最近におきましても私ども、管区長に集まってもらって、厳重に指示をいたしておりますが、いまのお話のようなことについては私もある程度同感の意を表せざるを得ない、こういうことでございます。
  95. 中谷鉄也

    中谷委員 私はもう一点、汚職防止という観点、不祥事件をなくするという観点からどうしてもお尋ねしたいと思いますが、要するに看守のBその他の看守は家族に対して金銭にからむことについて収賄の要求とも思われるような前提事実について電話で連絡をしておりますね。この電話というのはどこの電話を使ったのですか。
  96. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 その点は調査いたしておりませんけれども、おそらく拘置所の電話を使ったのではないかと想像いたしております。
  97. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、結局拘置所の電話を使ったということは、拘置所の内部において処分の対象になるようなことが拘置所という中の官用の電話で平気で行なわれている。逆に言うと、この種の事案は氷山の一角だ、たまたま収容者某が上申書を出して、優秀かつ私の先輩でもあります弁護人を通じてこの事件が問題になったということがなければ、この種事案はなおたくさん伏流水のように流れておるということにならざるを得ません。拘置所の中の電話というのは想像ですが、想像の根拠は何でしょうか。
  98. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 想像が間違っておりまして、市内の公衆電話を使ったそうでございます。
  99. 中谷鉄也

    中谷委員 公衆電話を使ったということは、逆に言うと、そのことがいけないことだということの認識があったということでございますね。そうですね。そうすると、電話を使ったのは看守Cとそれから看守Bに関して電話が使われていますが、二人ともそういうことになりますか。
  100. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 さようでございます。
  101. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、私のほうで要望いたします。  この上申書は私あてに出されたところの要望書、上申書であると同時に、私はやはりわれわれにとっては、国民にとっては手の届かない、目撃できない刑務所のあり方というものを矯正してもらいたいという上申書であろうかと思う。そういう点でこれはすでに行政処分が終わったということだけれども、やはりこの問題について大臣のほうからも御答弁があった。はなはだ調査不十分な点があると私思う。さらに詳細な調査をされてしかるべきだと私は思う。ことにこの上申書に記載されてあるような——これは私、昨日、係の方にお見せいたしましたが、同時にこれは全部このまま差し上げてもいいと思う。そういうことで、すでに処分は終わっているのだけれども、この後の汚職、不祥事件、あえて汚職問題というふうにつけます、そういうものがないためにもひとつ詳細に調査をされる。調査の結果、上申書のような事実があれば、これはあらためて話は別です。少なくとも調査をさるべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。
  102. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 調査いたします。
  103. 中谷鉄也

    中谷委員 一ぺん処分があったものについて調査をするということは、ある意味においてはデメリットがあると思いますが、大臣、私はやはりそういうふうなことが拘置所のあり方、刑務所のあり方というものを正すということになると思う。大臣の御所見はいかがでしょうか。
  104. 小林武治

    ○小林国務大臣 調査が不十分であったり、また非常に軽過きたり、また足りなかった、あるいはまた別なことがあるかもしれぬ、こういうことでございますから、調査することは差しつかえない。それから私は、そういう処分等は公表する、こういう方針をとって、こそこそすることはならぬ。全体にこういう過誤があってこういう処分をしたということは、他の刑務所にまでこれを通知するほうがよかろう、こういうことまで私は申しております。したがって、こそこそというようなことはいたしたくありません。
  105. 中谷鉄也

    中谷委員 局長大臣も再調査をされることをお約束いただいたわけです。調査の結果を期待をいたしますが、私は少なくとも上申書から得た心証では、検察庁のお調べがあったかどうかは別として、本件の看守の人の中には——それがどういう刑事処分を検察庁において受けるかはこれまた別として、収賄、贈賄についての要求等の犯罪を構成するようなできごとがあったのではないかと私は思う。私自身もこの問題についてはきょう言いっぱなしにしませんから、そういう観点からもひとつ調査をしていただきたいと思います。  なお、最後に局長さんにお尋ねをしますが、繰り返し繰り返しこの種の不祥問題というのが起こってくるとするならば、防止策は一体何でしょうか。どのようにして防止をするか。総点検の中でどういうふうな教訓を得られたか。これをひとつお答えをいただきたい。それが一点です。  それから刑事局長、たいへんお待たせいたしましたが、一点だけ質問いたします。  これは大阪地検で有名な、一日何万円とか、積もり積もって五十万円になったとかいう切手の問題にからんでの、まず看守長に対する告訴が行なわれて、その結果こういうふうに出てきた、こういう事案だと思いますが、これについて刑務所側のほうでは行政処分について再調査されると言っている。ここに上申書が出ている。同時に、これは弁護人の名前を出してもいいと思うが、河原弁護人は検察庁の処置に非常に不満である。検察庁としても、状況によっては再捜査ということはあり得るかどうか、これをひとつお聞きしておきたい。
  106. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 本件に関する限り、これは全く自覚の欠如と申しますか、収容者に金を貸してくれというような、かりにそれが誤解を受けるような言辞でありましても、まことにもってのほかのことでございまして、これはひとつ十分にそういう面の教育なり訓練なり自覚なりを促すということでやってまいりたいと思っております。
  107. 中谷鉄也

    中谷委員 ちょっと私のほうから要望しておきます。やはりこの機会に大胆率直に、そのこともさることながら、すでにわれわれが何べんも論議をした研修の問題等もさることながら、刑務所というのが刑務官にとって魅力ある職場でなければいかぬという問題と待遇の改善、二十四時間勤務の一日交代、週五十一時間勤務、そうしてとにかく警察官にもはるかに及ばない給与というような待遇はかなり問題がある。こういうような問題も含めて私は防止策というものが論議されなければならないと思う。刑務官の待遇問題も含めて、そういうことはやはり総点検の中から、ただもってのほかだという肩ひじいからしたかっこうの中からだけ、二度とこういうようなことはするなするなということだけでは防止はできないと思います。それは大事だと思いますけれども、総合的な防止対策というものが早急に立てられなければならない。それを国民は期待し、まじめな刑務官自身もそのことを期待していると私は思う。その点については私のほうからの要望として、これ以上答弁を求めませんが、強く申し上げておきたいと思います。
  108. 小林武治

    ○小林国務大臣 いままことにごもっともな意見で、次の国会の予算にもそういうふうな待遇あるいは勤務条件、これらを改善したいという予算を出しておりますから、ひとつ御後援を願います。そのことは当然われわれとしてしなければなりません。
  109. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいまの本件は、先ほど御指摘になりました大阪拘置所の一連の切手代の問題の案件とは全然別の件と承知をいたしております。今度受刑者から大阪地検に特別公務員暴行陵虐致傷横領の件で告訴がございまして、その告訴事件を捜査いたしました際に、検察官のほうで、この関係の看守に何か金員の要求をしたとか、そういうようなことを疑わしめるような供述がありましたので、大阪地検といたしましては、大阪地検の立場におきまして関係の看守その他関係人の調査をいたしました。その結果、大阪地検といたしましては、犯罪の嫌疑が看守等にあるということで本格的に捜査を続けていくという段階には至らなかったということなんでございます。そして、しかしながら刑務所の職員といたしまして不穏当なことがあるということで大阪拘置所に行政上の調査を依頼したという形になっておる次第でございます。
  110. 中谷鉄也

    中谷委員 では最後に。そうすると刑事局長、こういうことですね。内偵の状態というのは一応打ち切られたけれども、なおさらに刑務当局の調査の結果、当然検察庁としては捜査に着手することはあり得るというふうにお聞きしてよろしいわけですね。それが一点。その点だけひとつ御答弁をいただきたい。  あとこちらのほうから局長に要望しておきますが、いろいろなとにかく私語してはいかぬということを局長盛んに言われますが、私の聞いている話ではかなり暗号なども使われているようですよ。隠語、暗号、たとえば普通に聞いたら全然わからないことばが差し入れのある品物をさすというような、そんなことについて、やはり現場のそういうふうなとにかく好ましくないこと、私は受役者に限って申し上げるのじゃないのですけれども、そういうことも私の調査の結果出てきた。そういうようなこともひとつこの機会に調べていただきたい。そういうことも要望しておきます。刑事局長の御答弁だけいただいて、私は質問を終わることにいたします。
  111. 辻辰三郎

    ○辻説明員 ただいま申し上げましたように、大阪の検察庁といたしましては、一応の調査をいたしました結果、今日の段階では犯罪の嫌疑はないという一つの判断に達したわけでございまして、その結果を拘置所側に連絡をしたということに相なっております。しかしながら、拘置所側におきましてなお事実を調査してもらいました結果、犯罪の容疑があるということになれば、犯罪捜査の一般論といたしまして、当然犯罪の捜査をすることは申すまでもないと考えております。
  112. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  113. 高橋英吉

    高橋委員長 刑務所の職員の待遇改善については、自民党の法務部会でも御承知のように常に強調しておりますし、自民党の党議になっておりますし、それに基づいて今度予算要求をしてもらうということになっておりますから、ひとつ善処をお願いいたします。  沖本君。
  114. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いま中谷委員から大阪拘置所の問題が出ましたので、関連ということはございませんが、大臣お話しをして改善の要望もしておきたい、こう思いますので、先に拘置所の問題からお話をいたします。  去年の夏でしたか大阪拘置所をたずねましたときに、拘置所の中で飲料水を堂島川の水を取って浄化して使っている、こういうことが場内で行なわれておりました。それでどうして十分水のある大阪市の水を使わないのかということを聞きましたが、浄化槽もあるし、十分飲料水にたえるだけの浄化装置をもってやっておるからだいじょうぶだ、こういう話があったわけですけれども、もし停電したりした場合にはどうなるんだ、こういう問題もからんでおって、現地では改善するように要望はしてきたわけでございますけれども、最近のように公害が激しくなってきて、実際の堂島川の水というのは大阪では工業用水しか取っておりません。そういう関連性のあるところで、大ぜいの拘禁者あるいは受刑者を囲っておる拘置所が単独で飲料水、場内で使う水をよごれた川の水を吸い上げて浄化していくということは、これは現在考えられない問題だ、こういうふうに考えるわけでございますが、この点は現在どうなっておるか、改善の余地があるかどうか、この点についてお答え願いたいと思います。
  115. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 御指摘がございまして以来、予算的な措置努力いたしまして、予算的な手当てができまして、去る七月、上水道を各舎房に給水するための処置といたしまして工事に着工いたしました。約七十万円をかけて近日中に完成する予定でございます。
  116. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうしますと、川の水をもう全然取らないということにしたのですか。一部は取るけれども一部は水道を使うとこういうことなんですか。どちらですか。
  117. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 川の水も、御承知のように浄水装直をつけまして、府立衛生研究所の試験によりまして飲んで悪いということにはなっていないのでございますが、しかし、まあ最近の川の水の汚染状況等にかんがみまして、これが飲めなくなるような危険性がございますので、これはもっぱらたとえば下水とかあるいはのどを通さない水が要るわけでございますが、そういうほうに使う、そして飲料とか食事のめしをたく水とかそういうものは一切上水でやるという方針でまいりたいと思っおります。
  118. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そういうことよりも、現在大阪で取っている工業用水そのものは冷却水に使っている水であって、全然人の手に触れないような水を取るために同じような場所から水を取っておるということなんです。たとえばそれが水洗に使うなり散水に使うなりということで、もしそれが洗たくとかそういうところに使われたらというようことになっていくと、やはり危険性が出てくるということが考えられるわけですから、これはもう当然大ぜいの人の命と健康を預からなければならないのですから、その点はより以上に十分注意していただかなければならない。それと同時に、同じような問題が、全国の拘置所の中でそれに類した、水だけにはとどまらない問題がたくさんあると思うのです。大臣も総点検するとおっしゃっておられましたから、やはり健康を保持していくという内容からも衛生とか環境から、こういう点からも十分御検討していただきたい、こう考えるわけでございます。この点は要望申し上げます。  それから、今度は拘置所はおさめますが、せんだってジャンボも事故を起こしましたし、羽田の空港がピーク状態、こういう状態でもございますし、この間も羽田へ行ってまいりました。また大阪の国際飛行場にも行ってきたわけでございますが、とにかく万博のときには入国審査官は能力を越えた仕事をやってきて、よくも病気をしなかったというようなことで、ほんとうにたいへんなことをしたんだという印象を受けたわけですけれども、それ以来、大阪空港のほうも万博が終わって人が減るだろう、こう考えたところが、一時は減るけれども、各航空会社とも人員を強化してきておるというような内容がわかってきたわけです。羽田のほうも現在は限界点以上を越えてしまっておる、こういうふうな内容。ジャンボがどんどん入ってくる、こういう内容と成田ができてくる、こういう事態を考えますと、入管にしろ税関にしろ、現在の人員で足りるかというようなことになってまいります。こういう点について、これはもうずっと前から毎年のように要望はしてきておるわけですけれども、大臣のほうではこの問題に対してどういうふうにお考えでしょうか。
  119. 小林武治

    ○小林国務大臣 先ほどの拘置所あるいはその他の水の問題は、私も非常に重視しておりますから、あらためてひとつ全国的にまた私も調べて適当な処置をしたい、かように考えます。  それから、いまのお話でありますが、羽田にしても伊丹にしても、よくあれだけの消化ができた、非常な過重な負担をされてとにかくしのがれた、こういうことについて非常に感謝をし、また職員をねぎらいたい、かように考えておりますが、これは万博が済んでからも員数等においてはむろん減少とかいうことはいたしません。いまの体制でまいりたいと思うと同時に、これはまたお尋ねになるかもしれませんが、来年度はまた相当な入管審査官等の増員をいたしたいということで、またお話もありますれば予算の内容もお答え申し上げますが、さような処置をいたしております。  羽田はもう御承知のように、ことしちょうど間に合ったと申しますか、入国管理と出国管理が別にできまして、このことが事務能率の増進に非常に役立ったということがございます。いずれにいたしましても、成田空港ができますれば、来年中にはあるいは移転が始まる、こういうことで、羽田そのものは全部出入管理は成田に移る、こういうことでその準備をして、予算等もその趣旨で提案をいたしております。それにつきまして、成田におきましては相当規模その他が増大するということで、これに見合う必要な増員を要求いたしておるのでございます。また施設等につきましても、いま十分注文をして、これらの能率のあげられるようなことを申し入れておる、こういう状態でございます。  お話しのように、とにかくこれらのところで手間をとるということは外人に非常な悪印象を与える、こういうことになりますので、できるだけ注意をしてまいりたい。私も実は最近また羽田の入管に参りましたが、このごろ少し評判がよくなってきておる、こういうふうなことを見届けてまいっておるのでございまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  120. 沖本泰幸

    ○沖本委員 成田ができて、人員が向こうへ全部移るという大臣お話ですけれども、同じ機能をやはり羽田も持って仕事をするということも聞いておるわけです。そうしますと、飛行機の振り分けとかなんかで両方に人員がさかれていく、より以上の人員が倍加されていく、こういうことも予想されるわけです。そこで一番心配しておりますのは、この人たちの成田へ行った場合の厚生施設がどうなっていくかというような問題、住宅の問題、一番現地で心配されておったのは、高等学校がないということで、ほとんどの羽田に勤務していらっしゃる方々が成田には行きたくない、こういうような意向を持っていらっしゃるわけです。これは法務当局には関係の薄いような問題でございますけれども、設備を整える運輸省のほうの側で、この問題はどういうふうにキャッチしていらっしゃるか、とりあえずこのことも伺っておきたいのです。
  121. 小林武治

    ○小林国務大臣 これは私も最近羽田へ行って希望をいろいろお聞きいたしたのでありますが、宿舎は大体何とかなる。あと、しかし、いろいろの都合で通勤する者もあるし、それから学校関係等については非常な御心配をなさっておる、こういうことでありますが、これは空港勤務者全体の問題としてぜひ解決をしなければならぬということで、私どもも運輸省当局にもその旨を申し入れておる、こういうことでございます。
  122. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それと同時に、最近ヨーロッパでもハイジャック問題が大きな問題になってきたわけです。それで法務省関係としてはシージャックをどうするかというようなことになったわけですけれども、いままで国内関係のハイジャック問題に気を使っておったわけですが、国際間の問題としてハイジャック問題を取り上げなければならない、こういうことになってきております。警備員を乗せるとかあるいは飛行機の中を武装するとかという話が町にちらかっていっておりますけれども、そういう問題について、現段階ではどの辺までチェックしていくようになったのか。  御関係の方、来ていらっしゃいますか。
  123. 高橋英吉

    高橋委員長 運輸省から、丸居行場部長、金井技術部長、山下業務課長、三人来ております。
  124. 金井洋

    ○金井説明員 ハイジャック対策としまして、航空機に警備員を搭乗させるという問題でございますけれども、警備員を乗せるということは、もちろん犯行に対する抑止力になるわけでございます。ただ、犯人と格闘するようなことも当然起こるわけで、その際に発砲して窓ガラスを割るだとかあるいは操縦系統を損壊、損傷する、こういうことになりますと、最悪の場合には航空機は墜落するというような一種の危険も伴うわけでございます。したがいまして、もし警備員を搭乗させるということになりましても、警備員に、航空機の構造だとかそういうものを十分訓練して乗せるということになると思います。このことにつきましては、外国の調査もしておりますし、それから警察庁その他関係機関等と相はかって強力に検討したいというふうに思っております。
  125. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これはあっちこっちに関連してきますので、運輸省側だけに聞くわけにはいきませんので、現在チェックはどの辺まで進んでいるかということを確認したいと思ってお伺いしたわけですけれども、そういう段階から、いろいろと、現在の空港自体が、成田ができるとしても、来年というめどでいっていますけれども、実際に使えるのはもっと向こうになるのだろう、こういうような考え方ができるわけですけれども、人のほうはそうはいかない、どんどんふえてきますから、大臣にも御質問していろいろその点をお伺いしたわけです。  同じ飛行場の安全性というところから考えていきますと、ちょうどあの飛行場のまん前に三愛石油のタンクを置いてあるわけです。この前も、交通安全で向こうへ行ったときに、お話はしておいたのですけれども、なぜあそこに置かなくてはならないのか、あそこの個所はもっとほかに使用目的もあるし、十分いろいろなものに使えるわけです。ところが、せんだっても高知でセスナを爆破されたような事故もあったりして、非常に最近飛行場の管理——あるいは銃砲とか火薬とか危険物というものが、常時このごろは使われやすいような社会情勢、そういうようなものを考えていくと、あのタンクの中に一つダイナマイトをほうり込まれたら、一発なんですね。なぜもっと、地下に埋めるなり、あるいは川向こうに石油精製工場があるのですから、頼んでそこの中にタンクをつくって、そこからパイプラインで引いてくるなりなんなりして、そういうような危険の除去をはかるのが空港の安全の第一だ、こう考えているわけですけれども、依然として、入ってきたら、いきなりでっかいタンクいっぱいにぶつかってしまう。何か三愛石油に義理があるのか、何かそういうふうな考えを持たざるを得ない、こう考えるわけです。以前にもこの点については御指摘しておいたわけですけれども、その後どういうことになっておるんですか、今後どうするか、その点についてお答え願いたいと思います。
  126. 丸居幹一

    丸居説明員 三愛の石油タンクにつきましては、先生御指摘のとおり、ただいまの状況でございますとまことにどまん中で確かに目につく次第でございますけれども、あれは実はつくりました当時はおそらくかなり離してつくったつもりだったと思うんです。実はいまの国内線が着いておりますちょっと東側のあたりに国際線の到着場がありまして、どちらかといいますと、あれは少し離れた地点につくったつもりでございましたが、だんだん国内線もふえてきますし、国際線もふえてまいりまして、もう西側には伸ばすスペースがありませんので、だんだん東のほうへ伸びてまいりまして、ちょうどあれがどまん中になってしまったという結果になったということだろうと思います。ただ、先生おっしゃるとおりに、あれについての安全性を十分講じておるのかという御質問に対しましては、実はあそこに高さ三メートルの金網のフェンスを設けますとともに、二十四時間保安要員一人が構内を警らいたしております。  それから、不法侵入の防止につとめておる次第でございますが、暴力活動が空港とかその周辺に行なわれることが予想される場合には、羽田支社長を長とする緊急対策本部を置いて、全職員が警戒体制に当たるというふうな体制だけは整えておる次第でございます。それからまた、空港警察署が中にございますので、それに特にタンクヤード周辺の厳重警戒を行なっていただくというふうな体制だけは一応とっております。  それから、万一火災発生というようなことにつきましては、空港消防署はもちろんでございますが、昼夜を問わず十二名の自衛消防隊が出動するほか、職員も応援できるという体制をとっております。  それからもう一つ、先生のおっしゃいました埋設の問題でございますけれども、タンクを埋設したらどうかということは当時考えたんでございますが、あの辺は地下水位が非常に高いために浮力がつくので非常に技術的に困難だということで、上のほうにつくったということになってございまして、ちょっと埋めるのがむずかしいということなんです。
  127. 沖本泰幸

    ○沖本委員 警備とかなんとかということを伺っているんじゃなくて、あんなところに置いておいて見る目も悪いんじゃないかということで、ぼうんやられたらおしまいだということなんです。国際空港としての機能を発揮するためには十分でないということです。あのタンクが一つ爆発したら連鎖的に全部爆発を起こします。そうすると管制塔まで炎が飛んでいくと思うのです。そうするとあの辺のビルは全部やられるという危険性は十分あるんですね。ですから、昼夜一人の警備員を置いていても、向こう側から見回ってこっちから行ったら一ぺんにやられるということですし、車の中からダイナマイトをほうり込んだってほうり込めるわけです、現実に行って見ているわけですから。そういう問題をなぜ国際線つくるときに考えておやりにならなかったのかということが言えるわけなんですけれども、これは十分今度考えて、早急にあれをどければあの前は十分使えるわけです。もっとほかにも使うものがあるはずなんですね。それをどうして三愛石油にあそこを占領さしてそうしなきゃならないかということになる。危険性をはらんだなりでやっていかなきゃならない、空港全体がそれを警戒しなきゃならない、そういうばかな話はない、こういうふうに私は考えるわけです。  これは法務のほうにあまり関係のないことなんですけれども、やっぱり全体に立って見れば関係もありますし、大臣にも十分聞いていただいて、閣議にはいろいろな話として出していただくことが大事だと思ってお話ししておるわけです。したがいまして、ジャンボが事故を起こしたということも、そういうものの危険性とみなつながってものごとは考えられていくということになりますから、危険性をはらんだものが接近してあるということは、これはもう十分警戒しなければならない問題だと考えられるわけです。ジャンボの問題も取り上げて言うのは、向こうが過密状態だ、入管、税関が非常な苦労をしているということも、あそこのダイヤが過密であるために、より以上そういう過重が来ているということになるわけです。したがって、なぜ滑走路二本を全部つぶして一本しか生きていないかということにもなりますけれども、時間の関係でその論争はまた運輸のほうに持っていくことにしますけれども、実際にジャンボが入ってきてA滑走路はもうふさがってしまっておる、機能は発揮しない、Cしか使えない、こういうふうなことなんですね。そういうところに危険性をはらんで、過密状態で運営していっているというところに大きな問題があると思うのです。だから民間のローカル飛行場もやはり同じように、高松で全日空の車輪をはずしているわけです、転回するとき。これもやはり整備状況が十分でないということに尽きるわけです。そういうことで、空港整備ということはやっていらっしゃるというお話になると思いますけれども、同時に、セスナが爆破されたというのは向こうの管理に当たる空港管理そのものが手薄であるということになってきておるわけです。  したがいまして、地方のローカル飛行場での管理状態をどういうふうにするかということが、やはり大きな国際線にも影響してきて過密状態を来たしてくるということは考えられるわけです。自衛隊が飛行場を持っているときには二十四時間体制で管理体制を持っているわけです。それが民間に来ると五時になったら終わり。そのため民間空港のほうは全部時間を短縮して飛ばなければならない。それが主要飛行場にしわ寄せが全部来る、こういうことは現実の問題なんです。ですから、最近は飛行場の管理そのものを地方自治体に譲ったらどうかという議論が出ているのですが、この点どうなんですか。
  128. 丸居幹一

    丸居説明員 御指摘のとおり、地方の飛行場の管理につきましては、その飛行場の機能を円滑に維持するに必要な範囲での空港の管理、保全といったような面の、そういう程度の管理をしておるわけでございますが、御指摘のような、いわゆる防犯の意味での警備は行なっておらぬわけでございまして、したがって、この間のセスナ爆破事件のようなものが起こってきたというのは御指摘のとおりでございます。防犯の意味での警備を行なおうとしますと、要員の増強とか、あるいは場合によっては空港保安官を新たに創設するとかいうふうな警備体制をしがなければならぬわけでございまして、この種の体制の確立がいま非常にむずかしい問題でございます。しかし、そういって、そういうものをほっておくということもできませんので、これを何とかいたしたいというふうにいま考えておりますが、たとえば警察官によるパトロールを依頼するとか、あるいは先生おっしゃるとおりに地方公共団体に委任をしていくとか、あるいは民間ガードマンを雇っていくとかいったような問題があるわけでございまして、ただいままだ結論は出ておりませんが、何かこれに対する対策を講じなければならぬというので、目下慎重に検討をいたしておる最中でございます。
  129. 沖本泰幸

    ○沖本委員 話を延長するようですけれども、もうすでにエアバスの時代になってきて、千人乗りがおりてくる、こういうようなことでどうするかというようなことを考えなければならない。少なくとも航空事情に関しては十年ぐらい以上の展望を持っていなければならぬということなのに、現実の問題が十分でない、こういうところに一番大きな問題点があるわけです。そういうことですから、入管のほうもいろいろ問題も起きてくる、こういうことになると思うのです。結局スムーズに人が出入りすれば、入管のほうもそれほど苦しんだり、人が一ぺんに集まったりということもないわけです。大臣もひとつこの点には、ただ入管のほうだけを人員増加ということではなくて、全体的に航空事情を改善していくというところへお考えを集中していただいて、あわせて入管のほうも改善していく、こういう方向に向かっていただかなければならないんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。審査官を入れても、聞くところによりますと、少なくとも二年ぐらい養成期間がかかるということですし、あちこちだいぶ不足しているように伺っております。そういう点から十分こういう点は改善していただきたいというふうに考えるわけです。一つの焦点からお話をしたわけでございますが、運輸省のほうも、これはずいぶん手おくれだと思うのですね。もっと先を見越したことで、金のかかることではあるわけですけれども、地方の発展にもつながることですから、地方のほうは地方自治体のほうにも十分相談をして、そういうふうな改善策を講じていけば、飛行場の管理というものはもっとうまく進んでいく。それだけ民間機の飛ぶ時間数がふえていく。そうなれば、主要飛行場の時間の取り方も変わってくるということでございますから、集中的な業務が少なくなってくる、こういうふうに考えられるわけです。  以上、ばらばらな御質問をしましたけれども、ひとつまとめていただいて、今後十分改善していただいて事故の起きないようにやっていただきたい。それでなければ、現在はパイロットの技術にたよる以外にないというような現状です。そうなってくると、したがって乗っている人の安全ということが非常に危険な状態にさらされてくるということになるわけでございますから、この点十分御配慮いただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  130. 高橋英吉

    高橋委員長 青柳盛雄君。
  131. 青柳盛雄

    青柳委員 法務大臣にお尋ねいたしますが、前回の法務委員会で、私は朝鮮人の国籍書きかえの問題について、従来法務省がおとりになっている方針を改めて、この問題を激化させないようなことを考えられてはどうかと申し上げたのですが、その後の事態の推移を見ますと、依然として法務省当局では従来どおりの方針、いわゆる通達の路線を墨守されて、そして田川市あるいは塩尻市、その他の地方自治体の長に対して、今度は地方自治法百四十六条の規定によって、期限を定めて、そしてもとに戻せというような指示をしろということを県知事あてに通達をお出しになったようであります。これは、どう考えても横車を押すということにならざるを得ないと私は考えるのです。  と申しますのは、時間がありませんから詳しいことは申し上げませんけれども、従来朝鮮籍であったものを韓国籍にかえたというのは、一体外国人登録法の九条の規定によるのか、十条の規定によるのかということになりますと、おそらくそのいずれでもない。一つの政治的な配慮によって、大韓民国を承認している、この国なるものと日本とは国交を回復するんだ、またしたんだというようなたてまえから、あくまでも韓国籍なるものを多くしようという政治的な配慮というものがその基本にあるんじゃないか。そのために別に九条か十条かわからないけれども、とにかく韓国籍にはどんどんかえる。ところが一方、逆に韓国籍になっている人が朝鮮籍にかえてくれということになると、これに対しては抵抗をして、何か規則というよりも基準でございますね、いろいろな基準を設けて、これに該当しないものはだめなんだ、九条というものはもう全然問題にならない、十条以外にないんだ、こういって、その逆の場合には十条以外は考えられない、しかも十条の場合でも、むずかしい規則に該当しなければだめだ、一々法務省にお伺いを立てろというようなチェックをする、これを貫こうというのでありますが、これをやって当該市町村長が、その知事を通じて来るところの法務省の指令といいますか、通達というものに応じなかった場合に、一体これを強制する法的根拠があるのかないのか、この点も研究せられたのかどうか、非常に疑問であります。ある新聞の解説記事によりますと、福岡県知事その他の知事でも、自分はトンネル機関だから、法務省から言ってきたことは、そのまま当該市町村長に伝えるけれども、みずから地方自治法百四十六条の十二項に基づいて、原告になって裁判所に訴えるなどということはしたくないのだと言っておるようであります。また事実知事といたしますと、いまのように世論が非常に高まって、法務省のやっていることに対して反対の見解を持っている人たちが、在日朝鮮人はもちろんのことですけれども、日本人の中にも非常に多い、それで市町村の場合でも、議会が全面的にこの書きかえについては、国籍選択の自由、取得の自由は認めるべきであるという決議をし、市町村長の行為を支持しているというような状況、こういうもとで県知事があえて火中の栗を拾うようなこういう行政訴訟をその当該市町村長に対して出すということは、まずこれは政治家であればやらないことだと思うのです。そういう横車というものは通るはずがありません。先ほどからも話がありましたように、裁判所でおそらく負けるであろう、しかし負けても勝っても、とにかくやれるところまでやるのだということは、これは役人ならどうか知りませんけれども、政治家としてはとうてい考えられないやり方だと思うのです。しかも内閣の改造とか、あるいは来年の四月には一斉に地方選挙が行なわれて、知事の改選というようなこともあるわけです。その前にこういう問題を激化させるというようなことについては、とうてい合理性がないというふうに考えるわけです。  時間がありませんから、ついでに申し上げますと、大体朝鮮籍というものを韓国籍にかえたこと自体が非常に便宜的なやり方だ、だとすると、韓国籍を朝鮮籍にかえることも便宜的にやっていいことであって、その基本はどこにあるか、結局はその本人の意思、自分はどこの国の国籍を選ぶかということが基本であり、そしてまた、その選ばれた国のほうの国籍法がどうなっているかということ、この二つがぴったり合えば、これは外国であるわが国がとやかく言うべき問題ではないと思うのです。わが国の外国人登録法の運用にあたっては、その二つがぴったりしておったら、スムーズにかえてやるべきであって、これは先ほど秋田でしたかの市長さんが、三つの要件があればもういいのだということで書きかえをおやりになった、非常に堂々たる論理だと思うのです。第一は、その人が在日朝鮮人朝鮮人であることに間違いがない。第二には、朝鮮の国籍法、すなわち朝鮮民主主義人民共和国の国籍法が、かつて朝鮮籍を持っておった人及びその子孫であって、いまだかつて朝鮮籍を放棄したことのない者は朝鮮人と見るというふうに規定してあること。第三番目には、本人がその朝鮮籍を希望する。これだけですべてが解決すべき問題である。これをあえて内政干渉的なといいますか、とにかく国際法上からも、日本の国の憲法からいっても認められているところの在日朝鮮人の人権をじゅうりんするようなやり方をあえて行なうということの根拠は薄弱である。かように考えるわけでございますので、この点、こういう激化するやり方は直ちにやめていただきたい、かように考え大臣の所見を承りたいと思うのであります。
  132. 小林武治

    ○小林国務大臣 この問題は、この席でもいろいろ申し上げたのでありますが、要するに戦争が済んで、日本人であったいまの朝鮮半島出身の者は全部「朝鮮」こういうことでやったが、その後御承知のように、韓国というものができて、日本が承認して、その際それぞれの方々の自発的の意思で韓国籍にお直しになった。これは当時においても「韓国」に直せなんということを政府が強要したわけでもないし、みなそれぞれの立場のお考えでおやりになった、こういうふうに私は承知をしております。だからして、その際「韓国」と直されたものは韓国籍である、こういう解釈をとらざるを得ない。韓国籍となった以上は、それぞれの国籍法に従って、韓国の同意がなければ離脱できない。非常に形式的といえばそうかもしれませんが、一応の筋を通した世論がそれであろう、こういうことであります。  したがいまして、本人がとにかくおれは韓国人だということでおやりになったものをまたがってにおれは「朝鮮」だ、こういうふうなことは国籍法のたてまえからそのまま認めるべきでない。したがって、いまでも、おれは「朝鮮」を「韓国」に直してくれと言ったことはない、だれかかってにやった、錯誤でやった、あるいは強迫でやった、あるいは詐欺的な行為でやった、こういうふうなことが証明できれば、それは当時の事情からしても直す、こういうことを言っておりますが、要するに本人が、自分は「韓国」だといって直したものは韓国籍であり、韓国の政権もこれは韓国人だ、こういうふうに認めている以上は、われわれがそれこそ韓国の同意なしにかってにまた「朝鮮」に直すなんということは、あなたのおっしゃるように、また国際問題に介入する、こういうことにもなりはせぬかと思うのでありまして、非常に無理だ無理だと言いますが、やはりそういうふうな解釈をとらざるを得ない、こういうふうに私どもは思っております。これはいけなければ、最終的には政府の処置というものがいいか悪いか裁判所が決定することだ。訴訟というものは皆さん専門家だからおやりになる、あなたも必ず勝つと思って訴訟をやるわけじゃないと思う。勝つかもしれませんし、負けるかもしれませんが、行政事件というのがりっぱにありますから、訴訟ということで最終的には裁判所の判断を求める以外にない、こういうことでありまして、いまの考え方を変えるつもりはないということを、またあらためて私は申し上げたいと思います。
  133. 青柳盛雄

    青柳委員 委員長、もう時間がありませんから一言だけ……。  どうも大臣と私どもとの間の見解の相違の基本が、本人の意思によっていわゆる大韓民国を自分の祖国として選んだ、いわゆる韓国籍なるものがもう厳然として存在するのだ、だから十条の訂正以外にないのだ、九条によって変更するならば、これは韓国の了解を得なければならない、こういうような見解のようでありますけれども、大体歴史的に見て、統一見解が出たのはいまから五年前のことだ。ところが、どんどん韓国籍に変えたのはそれよりも前からなんですね。一九五〇年ごろからもう書きかえておる。ですから、統一見解はあとからつくっておいて、これは国籍のつもりでやったんだ、だからもう動きがつかないんだということ自体がおかしいし、またもう一つの点では、国籍選択の自由は保障されているわけですから、かりに日本政府の考え方のように、それが韓国籍であったからといって、一々大韓民国の了解を得なければ変更はできない、訂正じゃありません、変更はできないんだという外国人登録法の解釈、運用というものも、これは人権を無視したやり方であって、本人の意思というものがやはり基本に、尊重されなければならない。  ことに、繰り返して申しますけれども、在日朝鮮人の法的な地位というものは、非常に複雑な、とうていいままでの法理では割り切れない内容を持っている。そのときに一方的な解釈だけを強行するということが、はたして政治的に見て正しいかどうか、裁判所で黒白を争うことは非常にけっこうですけれども、しかし、その前にわれわれ政治を考えた場合にはそういうことはやるべきではない、かように考えるわけです。それだけ申し上げておきます。
  134. 高橋英吉

    高橋委員長 岡沢完治君。
  135. 岡沢完治

    ○岡沢委員 人権擁護をたてまえとする法務委員会で、昼めしを抜きにしてがんばっていただくということについては、いささか問題があるような気もいたしますけれども、十分以内ということで……。  ただいままでの同僚議員の質問とは全く違います。FM東海の告訴事件で、法務大臣が郵政大臣当時、みずから告発人となられました、例の電波法四条違反の処分に関連して若干御質問いたしたいと思います。  四十三年七月九日、郵政省がみずから告発人となりまして、電波法四条違反で東京地検に東海大学を被告発人として告発された事件の処理が最近なされたように聞いておりますけれども、その処分がどうなったか、お尋ねいたします。
  136. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 ただいまお尋ねの事件につきましては、本年の七月二十日、東京地検におきまして起訴猶予ということで、不起訴処分に付しております。
  137. 岡沢完治

    ○岡沢委員 起訴猶予で不起訴処分というお話がございました。四十三年七月の告発事件が、約二年かかって処分がなされたという時間的な点につきましても問題があるような感じがいたしますし、それから、あの事件の内容等を見ますと、事実は明白でございますし、また明白でなければ郵政大臣がみずから告発人になられるというような異常なケースは起こらないと思います。もちろんこれは刑事訴訟法二百三十九条の官公吏の告発義務に基づいて、電波行政、郵政行政上必要だということで告発に踏み切られたと思うわけでございます。  重ねて法務省にお尋ねいたしますけれども、取り下げはなかったわけでございますね。もう一点あわせまして、起訴猶予になさった理由、個々のケースでございますので、立ち入ってお聞きすることは避けたいと思いますけれども、事が電波行政全体に関連することでもあり、また繰り返しておりますように、郵政省みずからが告発人になられたという異例な事件であるだけに、私はその不起訴理由につきましても、ある程度国民の納得のいくものであるということが要求されると思いますので、その意味でもこの委員会で、許される範囲で起訴猶予の理由を明らかにしていただきたいと思います。
  138. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 告訴の取り消しはございませんでした。  なお、不起訴の理由ということでございますけれども、具体的事件でございますので、詳細は差し控えさせていただきますが、いずれにしましても本件の告訴事実というものは、無免許で電波局を運用した、こういう内容でございますが、その後郵政省御当局の意見なども地検のほうでるる聴取した結果、当事者間に円満に話し合いが成立しておる、こういう事情もございましたので、それも勘案の上、不起訴処分に付しておる、かように承っております。
  139. 岡沢完治

    ○岡沢委員 あわせまして、東海大学のほうから郵政省を誣告で告訴している件があったと思いますが、そのほうの処分はどうなったか、お尋ねいたします。
  140. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 ただいま申し述べました事件に関連いたしまして、東海大学から郵政省に対して謹告ということで告訴、いわゆる逆告訴というものが出ておりますが、これにつきましては、その当時四十三年の十一月に告訴の取り下げがございまして、なお本件とも関連する、こういうことでございましたので、地検ではあわせまして、本年の七月に不起訴処分に付したということでございますが、不起訴の理由は犯罪の嫌疑がない、こういうことでございます。
  141. 岡沢完治

    ○岡沢委員 そういたしますと、郵政省側の告発の電波法違反の事件は、疑いは十分にあるけれども起訴猶予ということで、誣告のほうは嫌疑なしということだとお聞きいたしました。そこで、大臣にお尋ねしたいのでございますか、大臣が、いまは法務大臣でございますが、当時は郵政大臣として告発に踏み切られた。相当勇気を要したと思いますし、またそれだけの必要性と理由があって告発されたことだと思いますが、たまたま大臣が今度は法務大臣のときに——法務大臣は具体的な個々の事件を指揮監督なさるわけではもちろんございませんけれども、いま参事官答弁にありましたように、不起訴になった。しかも御答弁の中で、起訴猶予になった理由として、郵政省当局とも話し合いの上でというお話がございました。私は、電波行政というのは、単なる一行政上の問題ではなしに、電波は国民のものだ、特に情報化時代に占める電波の地位というのはきわめて公共性の強いものだと思います。しかも、告発は維持されたままだ。みずから告発人になられ、みずから今度は直接指揮監督下にはないといたしましても、法の元締めの立場におられる小林法務大臣のもとで同じケースが不起訴になった。告発という手続が何かもてあそばれたような感じ、あるいは政治のおもちゃにされたような感じがしないでもないわけでございます。そういう点につきまして、告発の必要性、理由について、当時の郵政大臣としてはどういう御心境、あるいは必要性を感ぜられて告発なされたのか。違反事実については確実な証拠あるいは犯罪の嫌疑をもとになされたと思いますが、その辺のいきさつ、大臣の御見解も含めてお尋ねしたいと思います。
  142. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は、いまの検察庁の中における処分の関係のことは、むろん御承知のように関係しておりませんが、しかし当時において、もちろん国民の電波を乱用するということは許すべきじゃない。当然、免許期間の過ぎた後までその電波を放送する、こういうことはりっぱな電波法の違反であって、こういうことが全国的に行なわれればたいへんなことになるということで、これは電波法違反がきわめて明瞭である、こういうことで告発したのであって、適当に処置されることを私は期待していたのです。  ただ、その後御承知のように、FM東海というのがなくなってしまって、そして別なFM東京、こういうものができ上がって——まあいろいろな話が行なわれたと思いまするが、結果的にはもうFM東海というのがなくなっておる。そしてこれを現実に処罰するだけのことが、いろいろの事情をしんしゃくした結果それに当たらない、したがって容疑は十分であるが、各般の事情をしんしゃくし、情状酌量した上でおそらく起訴を見合わした、こういうことでありまして、その点は、私はそういうふうに理解をいたしております。
  143. 岡沢完治

    ○岡沢委員 むずかしい御立場だとは思いますし、理屈は何とでもつくわけでございますけれども、大臣自身がおっしゃいましたように、告発当時は電波法違反が明白であった、しかもこういうのを放置したのでは、電波行政というものは成り立たないという御前提で異例の告発に踏み切られたと思いますが、その後、こういう状態がなくなったと申しましたが、これはFM東海が反省してなくしたわけではございません。御承知のとおり、FM東京というほうに移行したので、むしろFM東京にはFM東海あるいは東海大学関係者が多数責任ある地位についておられるという事実を見ました場合、六月十日の当委員会でも指摘をいたしましたけれども、犯罪をやって、いわば強盗をやってそのまま居直った。ただし、確かに法人という組織が変わっておるというのが現状ではないか。反省なんというのは、およそ縁遠い結果でございまして、ここで申し上げるまでもなしに、窃盗をして財物を返せば起訴猶予になるというものではもちろんございません、ケースにもよりますけれども。この場合、郵政大臣がみずから告発人になられるほど明白な電波法違反を不起訴で処分をすることになりましたら、今後の電波行政というのは非常にやりにくくなるといわざるを得ないような感じを持つわけでございます。  重ねて、これは佐藤参事官からでもけっこうでございますが、法務大臣自身が明白な違反であったから告発をしたのだ、電波行政のお立場から告発したとおっしゃるものを何で不起訴になさいましたか。その理由を、まあ個々のケースでございますし、具体的な事実でございますので、あまり立ち入って質問する気持ちはございませんが、このままでは、こちらから見ましても納得できないのじゃないか。郵政大臣のときにはみずから告発人、その告発は取り下げられていない。法務大臣のときにそれが不起訴になる。不起訴になるようなケースなら初めから告発しなくてもよかったのじゃないかという素朴な国民の疑念は、私は当然だという感じがいたします。佐藤参事官、許される範囲でもう少し不起訴の理由を明らかにしていただきたいと思います。
  144. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は、いま法務大臣の立場でものを言うわけではありませんが、第三者なり郵政当局としての立場からいえば、この処分は必ずしも妥当でないというふうに私は考えております。
  145. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 検察当局におきましては、もちろんあらゆる状況を御勘案の上、起訴の当、不当ということを考えて本件を処理いたしたというふうに考えております。本件につきましては、先ほど申し上げましたとおり、郵政御当局の御意見、その他諸種の事情を勘案した上で最終処分を行なったということでございますので、われわれのほうとしては、その処分が妥当であるかどうかということはちょっと申せません。
  146. 岡沢完治

    ○岡沢委員 先ほど佐藤参事官の御答弁で、処分については郵政省の意向も聞いて、おそらく郵政省は不起訴処分にして差しつかえないといいますが、厳罰を望まないという趣旨の御意見があって、それに従われて、告発人の意見も尊重されて、そういう処分になったと私は思います。しかし、当時の郵政大臣である小林法務大臣が、法務大臣としてではございませんけれども、明らかに今度の処分については疑問を呈されました。私はこの良心的な法務大臣の御発言にはむしろ敬意を表しながら、しかも法務大臣の意向とは——法務大臣という立場ではございませんが、少なくとも公平に表明されたお考えが具体的な事案の処理とは違うということがこの場で明らかにされたわけでございます。それだけに私としましても、国民としても、あるいは今後の郵政行政上に大きな疑念を残す処分であるということを指摘させていただきまして、約束の時間でございますので、質問を終わりたいと思います。
  147. 高橋英吉

    高橋委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後二時九分散会