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青柳委員 法務
大臣にお尋ねいたしますが、前回の法務
委員会で、私は
朝鮮人の国籍書きかえの問題について、従来法務省がおとりになっている方針を改めて、この問題を激化させないようなことを
考えられてはどうかと申し上げたのですが、その後の事態の推移を見ますと、依然として法務省当局では従来どおりの方針、いわゆる通達の路線を墨守されて、そして田川市あるいは塩尻市、その他の地方自治体の長に対して、今度は地方自治法百四十六条の規定によって、期限を定めて、そしてもとに戻せというような指示をしろということを県知事あてに通達をお出しになったようであります。これは、どう
考えても横車を押すということにならざるを得ないと私は
考えるのです。
と申しますのは、時間がありませんから詳しいことは申し上げませんけれども、従来朝鮮籍であったものを韓国籍にかえたというのは、一体外国人登録法の九条の規定によるのか、十条の規定によるのかということになりますと、おそらくそのいずれでもない。
一つの政治的な配慮によって、大韓民国を承認している、この国なるものと
日本とは国交を回復するんだ、またしたんだというようなたてまえから、あくまでも韓国籍なるものを多くしようという政治的な配慮というものがその基本にあるんじゃないか。そのために別に九条か十条かわからないけれども、とにかく韓国籍にはどんどんかえる。ところが一方、逆に韓国籍になっている人が朝鮮籍にかえてくれということになると、これに対しては抵抗をして、何か規則というよりも基準でございますね、いろいろな基準を設けて、これに該当しないものはだめなんだ、九条というものはもう全然問題にならない、十条以外にないんだ、こういって、その逆の場合には十条以外は
考えられない、しかも十条の場合でも、むずかしい規則に該当しなければだめだ、一々法務省にお伺いを立てろというようなチェックをする、これを貫こうというのでありますが、これをやって当該市町村長が、その知事を通じて来るところの法務省の指令といいますか、通達というものに応じなかった場合に、一体これを強制する法的根拠があるのかないのか、この点も研究せられたのかどうか、非常に疑問であります。ある
新聞の解説記事によりますと、
福岡県知事その他の知事でも、自分はトンネル機関だから、法務省から言ってきたことは、そのまま当該市町村長に伝えるけれども、みずから地方自治法百四十六条の十二項に基づいて、原告になって
裁判所に訴えるなどということはしたくないのだと言っておるようであります。また事実知事といたしますと、いまのように世論が非常に高まって、法務省のやっていることに対して
反対の見解を持っている
人たちが、在日
朝鮮人はもちろんのことですけれども、日
本人の中にも非常に多い、それで市町村の場合でも、議会が全面的にこの書きかえについては、国籍選択の自由、取得の自由は認めるべきであるという決議をし、市町村長の行為を支持しているというような
状況、こういうもとで県知事があえて火中の栗を拾うようなこういう
行政訴訟をその当該市町村長に対して出すということは、まずこれは政治家であればやらないことだと思うのです。そういう横車というものは通るはずがありません。先ほどからも話がありましたように、
裁判所でおそらく負けるであろう、しかし負けても勝っても、とにかくやれるところまでやるのだということは、これは役人ならどうか知りませんけれども、政治家としてはとうてい
考えられない
やり方だと思うのです。しかも内閣の改造とか、あるいは来年の四月には一斉に地方選挙が行なわれて、知事の改選というようなこともあるわけです。その前にこういう問題を激化させるというようなことについては、とうてい合理性がないというふうに
考えるわけです。
時間がありませんから、ついでに申し上げますと、大体朝鮮籍というものを韓国籍にかえたこと
自体が非常に便宜的な
やり方だ、だとすると、韓国籍を朝鮮籍にかえることも便宜的にやっていいことであって、その基本はどこにあるか、結局はその
本人の意思、自分はどこの国の国籍を選ぶかということが基本であり、そしてまた、その選ばれた国のほうの国籍法がどうなっているかということ、この二つがぴったり合えば、これは外国であるわが国がとやかく言うべき問題ではないと思うのです。わが国の外国人登録法の運用にあたっては、その二つがぴったりしておったら、スムーズにかえてやるべきであって、これは先ほど秋田でしたかの市長さんが、
三つの要件があればもういいのだということで書きかえをおやりになった、非常に堂々たる論理だと思うのです。第一は、その人が在日
朝鮮人で
朝鮮人であることに間違いがない。第二には、朝鮮の国籍法、すなわち朝鮮民主主義人民共和国の国籍法が、かつて朝鮮籍を持っておった人及びその子孫であって、いまだかつて朝鮮籍を放棄したことのない者は
朝鮮人と見るというふうに規定してあること。第三番目には、
本人がその朝鮮籍を
希望する。これだけですべてが解決すべき問題である。これをあえて内政干渉的なといいますか、とにかく国際法上からも、
日本の国の憲法からいっても認められているところの在日
朝鮮人の人権をじゅうりんするような
やり方をあえて行なうということの根拠は薄弱である。かように
考えるわけでございますので、この点、こういう激化する
やり方は直ちにやめていただきたい、かように
考えて
大臣の所見を承りたいと思うのであります。