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辻政府委員 この
法案作成の過程におきまして、法制審議会の諮問に対する答申が出ましたのが四月十五日と
承知いたしておりますが、その段階までは
航空機のほかに船舶をも対象にいたしておった次第でございます。その過程におきまして、国会方面の御意向を十分に承るということもいたしたわけでございますが、その際、各政党とも船舶を早急の間に入れるについてはやや疑問があるという御意見が、公式でなくても批判的な御意見があったことは事実でございます。運輸省当局におきましては、ただいま御
指摘のように、船舶もぜひ入れてほしいという要望があったことも事実でございます。
そこで、私
どもは法務省の立場におきまして、かような客観的な御意見というものを
前提にいたしまして、いろいろ検討をいたしたわけでございます。もとより一般社会から隔絶された
一つの特異な社会という点におきましては、
航行中の
航空機、
航行中の船舶、同じ性格を持っておるわけでございまして、私
どもは、理屈としては船舶がここに入ってしかるべしというふうに
考えておったわけでございます。現在もそのように
考えるわけでございますけれ
ども、何ぶん船舶というものは大小いろいろあるということが、何といいましても
一つの
法律化する場合の難点でございます。形状それから性能につきまして、たいへんな差が船舶についてはあるということでございます。もっとも船舶という場合に、現行の
刑法におきましても裸で日本船舶ということばもあるわけでございますし、
法律化することは
刑法と同じような観点から、裸で船舶ということを入れても、もちろん理屈の面では差しつかえないと思うわけでございますけれ
ども、実際問題といたしまして、その辺の釣り船のようなものであるとか、あるいはボートのようなものも船舶に入るわけでございますし、大海を定期
航行する大型汽船もございます。漁船もございます。いろいろな
関係で、どうもこの際は、早急の間に船舶についてこの
法案の対象とするものを、理論的に、かつまた実際上限定していくという作業が、やはり間に合わないということが実際上の理由でございまして、この際、船舶の問題は後刻検討するということで、船舶を削除すべしという
政府の決定がございましたので、この段階におきましては
航空機だけに限られた次第でございます。