○矢口
最高裁判所長官代理者 訴訟手続の技術的な問題でございますので、まず私からお答えを申し上げたいと思います。
御指摘の三十条の二項は、簡易裁判所に属しております
事件が地方裁判所に提起された場合に、地方裁判所は申し立てまたは職権で、簡裁に移送することなく、
自分でそのまま審理ができるという規定でございます。三十一条ノ二というのは、簡易裁判所の
事件が簡易裁判所に提起された場合、非常に困難であるというふうに思われて、申し立てがあった場合または裁判官が地裁で審理したほうがいいと
考えた場合、これを地方裁判所に移送するという規定でございます。
まず、管轄と申しますのが画一的にきめられておるといいますことは、これは訴訟当事者の双方にとってそれぞれの利益があるわけでございますので、一方が申し立てた場合には、当然にそのとおりに移送するというふうにいたしますことは、これは管轄が他方の利益のために設けられておるという一面がございますので、十分に検討しなければいけない問題であるとは存ぜられます。しかし、原告が地裁に
訴えを提起いたしました場合には、これを直ちに簡裁に移すことなく、一応地方裁判所に応訴されるかどうかという手続を進めまして、被告のほうでこれに応訴してまいりますれば、もちろん問題はないわけでございますので、できるだけ地方裁判所がここでやっていいではないかというふうな方向に持っていくということについては、被告において異論のない限りもちろん問題はないところだ、かように
考えております。
それから三十一条ノ二で、簡裁に提起されました場合に、被告が出てまいりまして、これはむずかしい
事件だから地方裁判所に持っていってほしい、移送してほしいということを申し立てました場合にも、私
どもといたしましては、できるだけそれに沿うような取り扱いがなされることが望ましいというふうに存じております。
ただ、これはあくまで
事件の具体的な判断の問題でございますので、私
どものほうでこうこうしろということを言うわけにはまいりませんが、御指摘の精神はもちろん異論がございませんので、会同その他を通じまして、できるだけ当事者の意向に沿うような判断をせられることが望ましいのではないだろうかというふうな話し合いをいたすことについては、もちろん異論のないところでございます。