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坂田国務大臣 川村先生のおっしゃいますことは、これはもちろんそのとおりなんでございまして、単に
地元の要請があるからそうだときめたのだということではないわけでございまして、日本全体といたしまして
医学教育を進めなければならない。しかしながら、日本全体としましてもやはりお
医者さんが足りない。これはもう少し充足していかなければならぬということはあるわけでございまして、その中で、秋田の
医学部創設について
地元の要請も非常に強いし、また同時に東北全体を
考えましても、秋田につくることは好ましいことではないかというように
考えたわけでございます。しかし私は、従来の
大学、特に
国立大学について
考えるのでございますけれども、何か
国立大学はその地域とは無
関係に存在しているのだというような風潮があったと思うのでございます。そうじゃなくて、これから先の
大学の使命というものは、
教育、
研究をやりまして、その
研究の成果というものがやはり社会に還元していく、あるいは地域社会に還元していくという機能が認められなければならないのじゃないかというふうに
考えるわけでございまして、同時にやはり
国立大学自体にいたしましても、
地元のある
程度の要請にこたえていく。たとえば
医学部でございますと、そういうような要請にこたえていくということがあってしかるべきだ。たとえばわれわれ熊本の場合を
考えましても、水俣病というものが起きた。そうすると、熊本
大学がこの
原因究明に努力して、大体この
原因を突きとめた。このことは、同時に日本
全国の水銀によるいろいろの病気の発生に対しまして、新潟県におきましても同様の処置をとれるようになった。あるいは三池で炭鉱の爆発が起きた。そうすると、熊本
大学の
医学陣が行ってこの調査、
研究をやった。これに対しまして、また北海道で同様なことがあった場合は、その熊本
大学の
研究の成果というものが北海道にも応用される、こういうことでございまして、これから先の
大学というものは、やはりその地域社会のある
程度の要請にこたえていくという機能を積極的に持つべきであるというふうに、私は
考えるわけでございます。その
意味から申しまして、
川村先生のおっしゃいました前段の
医学教育そのものと同時に、やはり地域社会の要請にこたえるという面を
考えていくという方向を
国立大学といえども
考えていかなければならないというふうに思います。
それからもう
一つ、いま
中教審で検討いたしております課題の
一つでございますが、それはどうも日本の
大学に対する政策といいますか、それに対して、長期的な
教育計画というものがなかったのじゃないだろうか。
大学が、
学問の自由、
大学の自治ということからして、何か
文部省がそういう長期的な
教育計画がないままに、たとえば私立を
設置する場合におきましても、日本列島全体を
考えて
設置をある
程度考えていくというようなことも何らなく、
設置基準の条件が満たされれば、それを機械的に許可せざるを得なくなってきた。それがまたあまりにも多くの
大学を都市周辺に集中させてしまった。そうしてそれが
一つの
大学紛争の
原因にもなっておるというふうにもいわれておるということで、これから先私
たちは、どうしても長期的な
教育計画、
高等教育機関というものをどういうふうに
考えていくかということは、国として持つべきである。そしてまた、それを具体化していく場合においては、
大学の自主性をもちろん尊重いたしますけれども、
大学当局と
文部省というものが一体となって相談をしながらこの計画を遂行し、あるいは具体化していくということでなければならないんじゃないかというふうに私は思うのであります。