○
佐藤(一)
国務大臣 御
指摘のように、最近の
物価情勢はなかなかむずかしさを加えてきておるわけでありまして、
消費者物価は特にずっと引き続き
上昇傾向が改まっておりません。
政府といたしましても、
関係各省それぞれに
施策の推進を行なっておるのでありますが、一方におきまして、
物価を
引き上げる要素というものはやはり次から次から出てまいる。こういうことで、われわれとしても、さらに一そうこれについて、今後も重点的に
物価対策に努力を重ねなければならないわけでございます。
そこで、
物価対策を立てます上から、現在の
物価高の
原因がどこにあるかという点について、何といいましてもはっきりしたものを突きとめてかからなければならないわけであります。それで、現在の
物価がこういうふうになってきましたのにはいろいろの
原因が積み重なっていると思いますが、何といいましても、よくいわれておりますディマンド・プルといいますか、
需要の強さ、
日本経済における
需要超過の
状況、これはまあ結局、高い、しかも
ピッチの早い
経済成長というものと非常に密接な
関係が出てくるわけでございます。そういう
意味におきまして、われわれとしてはこんなに早く、しかもこんなに高い
ピッチの
経済成長では、なかなか
物価の
上昇を押えていくのが困難である、やはりこういうような視点を重視いたしまして、
物価安定政策会議の答申の線にも沿ってでありますが、いわゆる総
需要の
抑制対策、こういうものを今日までやってきておるのでございます。よく、
需要の
抑制ということは必ずしも
消費者物価に直接効果がないではないかという
議論もありますけれども、いま申し上げましたように、要するに高い
急ピッチな
経済成長を少しでもスローダウンさせて、安定した線に持っていくということが、やはり何といいましても
インフレムードを転換させる上において基本的な問題である、そういうような
考え方に立っております。もちろん
需要の
抑制、
引き締めといいましても、
金融、
財政を通ずる問題でございますし、
目下のところは特に
設備投資需要の非常な
過熱ということが
経済の
過熱に連なっておる、こういう
認識もありまして、主として
引き締めを
金融引き締め中心でやってきております。しかし、これらにつきましては、
財政についてもさらに
十分検討を加える必要があるという意見も強うございまして、十分今後の
施策においてそれを頭に入れなければならない、こういうふうに
考えております。
また、この総
需要の
抑制というのはいわば
ワク組みといいますか、
物価政策の
ワク組みであろうと私は思うのであります。結局、やはりオーソドックスな
方法としては、いわゆる
構造の
改善、
生産性をできるだけ
引き上げてまいる、
日本経済全体の
効率化をはかる。そして、それは結局各
部門の
効率化をはかることによって達成できる、こういうことで、とかく好調が続きますと
経済の各
分野においてゆるみが出てきがちでございます。そういう点を反省し、かつまた、この十年間
日本の
経済はずいぶん大きく変わってまいっております。そうした
意味において、新しい
事態に対応できるような
生産の
あり方、
流通の
あり方、
消費の
あり方、こうしたものに徐々に
構造変化が行なわれておりますが、これが必ずしも今日の
急ピッチな
経済成長についていけない、こうした様相も見られます。
そういうことで、そうした
構造変化に対応する
処置あるいはまた
個々の
構造改革、各
分野における
構造改革を推進する。特に、最近におきましては低
生産部門における
構造改善、農業、
中小企業におけるところのいわゆる
生産効率の
上昇、あるいは別の面でとらえますと、比較的に
合理化がおくれているといわれる
流通の問題、それの
合理化、あるいはまた新しい
事態に対応した
流通機構の
あり方、こうした問題にまず取り組まなければならない。これは総合的な
対策であると同時に
個別対策になるわけであります。
そういうことでやるのでありますが、この
生産性の向上ということは、口で言うほど簡単に、しかも短時間になかなか達成できない。実際問題としてなかなか時間がかかる問題であります。しかし、この道筋が
物価の
対策としては一番本筋のことでありますから、これをしんぼう強くやってまいる以外にはないと思っております。
そしてまたさらに、今日のいわゆる
価格というものは
自由主義経済におけるところの
価格形成でございますからして、やはり
自由競争というものをできるだけ前提にして公正な
価格形成を行なう、こういうことで、そうした
自由条件を実現するということを頭に置きながら、やはり輸入の
自由化、こういう問題を促進してまいる、これも重要な
施策の柱であろうと思っております。
なお、今日は、
御存じのように非常に
需要が強いという面も
物価高の
原因でありますが、最近におきましては、
御存じのように
賃金の
上昇率が非常に
急ピッチで上がってきております。やはりこれらが最近における
物価を特に刺激しておることは
御存じのとおりでございます。ただ今日、
政府としても
十分研究はいたしておりますけれども、
所得政策について、いますぐこれを今日採用するという
考えはまだ持っておりませんが、しかし、今後の
情勢というものを十分見きわめながら、そうした問題にも対処をする必要があろうと思います。最近、
経済が少し
軟調ぎみになってきたというような
認識も徐々に強まっておりまして、今後
企業収益というものについても、いままでのような好調をなかなか持続し得ない。ひとえに
人件費の
増大等がその
原因になっておると思うのであります。そういうことで、
企業自身としましてもいたずらにこの
人件費を増高させ、そしてそれを
価格に転嫁させるという安易な
方法が許されない環境にもなりつつある際でもございますから、今後そうした推移というものを十分見きわめながらわれわれとしても対処したい、こういうふうに
考えております。
そのほか、
日本の
経済は
海外経済とのいわゆる
密接度がますます強まってきておる際でございます。
海外の好
景気というものは、
日本の
景気の動向、
経済の
成長にも非常に大きな
影響を与えておる
観点もございまして、そういうような点からいいますと、円の問題も一応議題にはのぼっておりますけれども、しかし、これらは最近における
海外の
情勢の
沈静化というふうな
情勢とも相まちまして、また別の
観点もございますので、これもなかなか軽々には、われわれとしてすぐ取り上げるという
段階にはまだ至っておりません。
いずれにしましてもそうした総合的な大きな
対策、それとともにまた個別の
対策ということも必要でありまして、
物価対策閣僚協議会におきまして、そうした
個別対策をいろいろと取り上げておるようなわけでございますし、また
質問に応じてお答えしたいと思いますが、大要、
目下そうした
状況にあります。