○谷村
説明員 どういう
お話がただいままで出ておりましたか存じませんが、御質問の点につきましては、一昨日確かに記者会見のときに、私の頭の中を去来しておるいろいろな問題というような
程度の前提を置きまして、話したことでございます。
で、なぜそういうことを申し上げましたかといいますと、私
ども、実は国会が終わりましてから、いわば勉強の時期に入ったわけでございます。だいぶ国会中に宿題をたくさん出されております。その宿題の幾つかをいま基本的に、まあいわば勉強しているわけでございますが、実は私は、大体大きく三つの柱というものを立てまして、それで問題を整理したわけでございます。
その
一つには、たとえば日本の経済がここまでまいりました場合には、非常に国際的な問題が多くなってくるというような意味において、国際化対策というふうなことも
一つのテーマとしてあげております。
それから、言わずもがなでございますが、国民生活とか、あるいは
消費者保護とか、これは従来とも考えてまいりました線でありますが、そういうのを、いかにわれわれがいま持っております手段等をより有効に、あるいはより適切に使ってやることができるか、さらには、もしそれで不十分であるとするならば、どういう手段をつくったらいいのか、それははたして私
どもが与えられております仕事、すなわち競争維持政策あるいは独占
禁止政策、あるいは公正取引の政策、そういった面からだけでいいのか、それとも、それ以外に何があるのか、かような非常に
——何だ、おまえ、初歩的なことをやっているじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、そういうようなことを実は勉強し始めているわけでございます。たとえば表示問題などはそういう点からも、いろいろ国際的にも問題が出てまいっておりますし、
国内的にも一体これでいいのかというふうな問題の勉強のしかたをいたしております。
そうして、その
一つは、私はやはりこれだけ経済が技術的にも高度化し、また、いわば経済圏と申しますか、経済の交流の幅でも巨大化し、また、いろいろな意味で情報化が進んでまいりますそういうときには、やはり
一つの経済の流れとして企業の巨大化とか、経済の高度化とかいうことが問題になってくる。そうして、それはある面でいえば、大企業対策ということばも使われましょう。また、ある面でいえば、管理価格対策ということばでも言えましょう。いま独占体というふうにおっしゃいましたが、必ずしも独占という姿になっておらなくても、寡占の姿が出てくるということも避けられないかもしれないというようなときに、一体
——われわれは、できればそれは輸入もふやし、
国内の競争条件も整えて、よりよい市場における競争の姿が経済の発展を促し、また
消費者の保護、国民生活のためにもなるということは考えますけれ
ども、それだけではたしてわれわれは十分だろうか、かような勉強もいたしておるわけでございます。
そうして、具体的にいま私が記者会見で申しましたのは、実は去年の二月ころから独占
禁止懇話会という、私
どもの、いわばこれは私的なお集まりを願っているところでございますが、そういうところで、いろいろな私
どもの政策についての勉強をしていただいております。そういう懇話会の席で、いわゆる管理価格の問題というのを取り上げたわけでございます。そうして、去年は初めのうち、二月と四月に一般的な考え方をやり、そして去年の十二月からこの一月、二月、三月、四月、五月、六月と七回くらいにわたりまして、やや突っ込んだ議論を実はしておったわけでございます。それを、この七月の二十二日でございましたか、もう一ぺん懇話会を開きますときに、ある
程度みんながいままで議論したことを取りまとめてみよう、こういう段階になっております。そして記者会見のときに、
新聞記者諸君のほうも当然そういう段階にあることを存じておりますので、話がそこに及んだわけでございます。
そこで、私
どもがいろいろな話をしておるわけでございますが、競争条件をできるだけ維持していこうということは考えられますけれ
ども、それだけではなかなか手が尽くせないという問題は、私
ども日本の
国内だけでなくて、これは欧米諸国においてもすでに問題になっておることなのだ、それについてどういう考え方があるか。たとえば
アメリカあたりでは、もうすでに巨大企業に対しては、むしろ競争条件を整備させるために分割を考えてみたらどうか、こういう提案をなさった報告も実はございます。しかし、それでは角をためて牛を殺すことになるのじゃないかという議論もございます。それから、逆にヨーロッパあたりでは、むしろ企業が大きくなることそれ自体を悪いとは言わない。しかし、大きくなった企業が反公共的な行動をすること、これをやはり正すべきじゃないか。この正す
方法としてはどういう
方法があるか。これはやはりある
程度国民の利益を代表するという意味において、
政府がその行動をチェックし、監視し、場合によっては勧告し、場合によっては、さらにもっと中に入っていくということも必要ではないか、かような考え方もあるというようなことを紹介いたしました。
その
一つの例としまして、ついおととい、私はそれを手にしたのでございますが、イギリスが、このたび労働党内閣から保守党内閣にかわりましたが、労働党内閣時代のこの三月に、従来ありました独占
委員会、モノポリーズコミッションという、私
どもと大体同じような仕事をしております
——もっとも事務局は、これは当然のことながら、向こうは一般の行政
機関でございますが、それのいわば問題を付託されていろいろ審査したりするようなモノポリーズコミッションというものと、それからもう
一つ別にございます、御
承知の価格及び所得国家
委員会とでも申しますか、ナショナル・ボード・フォア・プライシス・アンド・インカムズ、この二つの
委員会を一本にしてしまって、新しく産業及び労働力
委員会というのでございましょうか、コミッション・オブ・インダストリー・アンド・マンパワーという
委員会に一本に統合してしまう、こういう法律を実は提案したのでございます。それを提案したことは知っていましたが、詳細な法律案と提案理由
説明のようなものが手に入りまして、たまたまそれに、
新聞記者会見をやるすぐ直前にちょっと目を通したものですから、それに触れまして、提案理由の中に、たとえばいまのような意味で、イギリス経済においても、経済のある発展段階としてはどうしても大きな企業ができてくる。大きな企業ができてくることは、これはむしろその必要があってそうなったのかもしれない。われわれの問題とするのは
——これはイギリスの方が言っているわけですが、その企業がいかなる行動をとるかを見ることであるというようなことがあって、そして独占の問題と申しますか、そういう大企業の行動を監視するという問題は、ある意味では競争が不完全になってきておる、有効な競争条件が失われてきておることに対する
一つの国民的利益を守ってやるという意味からいえば、これはモノポリーズコミッションの問題である、独占
委員会の問題である。しかし、一方のほうから見れば、その大企業が、たとえばコストを価格にすぐ転嫁できやすいような不完全競争の
状況になっている場合には、そのコスト問題、
生産性問題あるいは賃金問題、物価問題、そういう立場からやはりこれを見なければならない。いままでは、あたかもそれは川の両岸であるように、全く離れたものであるというふうに思っていたかもしれないが、いまや問題は、
一つの問題の両側面であるのだということが書いてあるのですよ、というような話を始めまして、それからだんだん話しているうちに、あなたは、イギリス的な考え方と
アメリカ的な考え方とどっちがいいと思いますかと言うから、それは公取
委員長として、いまちょうど御勉強いただいているときに、どっちかと言うわけにいかぬけれ
ども、でき上がって、せっかく営々と努力して大きくなったものが、あまりでかくなったから半分にしてしまうぞというような考え方よりは、ビヘービア、行動を国民にかわって見ていくというほうが私の性分に合うような感じです、というようなことを実は申し上げました。
いまのような話は、もとより競争維持政策、特にたとえば合併の事前規制とかいうような形において、できるだけ有効な競争条件を維持していく、あるいは輸入の問題でもカルテルの問題でもそうでございますが、私
どもが現行の独禁法を使って、たとえば話し合いが行なわれた結果何をやっているというようなことを取り締まったりする、そういう現行独禁法のできるだけの運用でやることはもうだめだと言っている、そういう意味では全然ございません。むしろ、それをしっかりやっていこうと思っているわけでございますが、しかし、それだけではなかなか手が届かないものも出てくるのじゃないか。むしろ競争なさい、競争なさいといってフェアに競争をした結果、市場において非常に強い、りっぱな企業ができてくるということもある。りっぱにできた企業は、本来ならばもうすでに
一つの競争条件をかりになくしているとはいえ、企業としてりっぱに成長したわけですから、私
ども独禁政策の立場からいえば、おまえはでっかくなり過ぎていけないというわけにもいかないですけれ
ども、しかし、それじゃ競争条件がある
程度欠けてきているようなときに望むことは、まず第一番目には、いわば企業の社会的責任を自覚していただいて行動してもらう。企業といっても、ただ経営者だけではなくて、企業の中にある経営者もまたその従業員も、すべてそういうつもりで、おれのところはいいのだからといって、どんどんかってなふるまいを市場行動でしても困るし、たとえば、おれのところは賃金を幾ら上げたって、とにかく値段にかぶせればいいのだという考え方をみんなが持ってもらっては困る。それは企業に対する自己責任あるいは社会的責任を持っていただくということが、まず大事なことでございましょうけれ
ども、しかし、それだけでは担保として不十分じゃなかろうか、そんなような雑談を実はいたしたわけでございます。
まあ、いろいろなことが
——それだけで一体、たとえば公取というものはもっと強化するのがいいのか、あるいは、それは公取という
一つの問題ではなくて、もっと
政府の組織なりあり方なり全体の問題であるというふうに考えるべきか、そういうことは、これからみんなでよく慎重に考えていきましょう。ただ、管理価格といえば何か公取だ公取だというような問題ではなくて、問題は非常にむずかしいことでございますよ、そういうようなことを実は申したわけでございます。
たいへん長くなりまして失礼いたしました。