○池田
政府委員 いま御指摘がございましたように、農民年金
問題研究会あいるは国民年金審議会その他いろいろな機関におきまして、ずいぶん長い間議論が行なわれたわけでございます。そういう議論の詳細につきまして、ここで御
説明申し上げるのは、なかなかむずかしいわけでございますが、かいつまんで申し上げますと、私
どもの理解では、農民年金
問題研究会、これは
農林省が農業の専門家その他の方にいろいろお願いしまして御意見を伺ったわけでございますが、それの大体の
問題点、論点あるいは結論といったようなものを申し上げますと、一つは、農
業者の公的な老後保障というものの実態が一体どうなっているのかということが出発点でございまして、それは国民年金制度によって大体カバーされているわけでございますけれ
ども、どうもやはり一般勤労者に比べると、
内容としてやや十分でない点があるのではないだろうか、こういう点についての議論が行なれまして、大体の
空気といたしましてはそういうふうな認識であったようでございます。
それから農
業者の場合は、
御存じのように
日本の家族制度、家というようなものが特に農村の場合はかなり強く残っておりまして、その中で、家の中での老後保障といいますか生活の保障というような機能があるわけでございますけれ
ども、そういうことのために経営移譲がどうもおくれているという面が最近においてはうかがわれるのではないだろうか。そしてそういうことによりまして、農地の流動化による規模の拡大とかあるいは老齢経営主による非能率な経営がかなり残る、こういう事態があまり改善をされないでいる。これは結局家による生活の保障といいますか老後保障といいますか、そういうものにかなりの面がたよっているという点に原因があるのではないだろうか、こういうようなことで、農村社会学
関係の先生方なんかの御意見も大体そういうことであったようでございます。
それからそういう場合に、公的な老後保障を充実していくという必要性につきましては、大体皆さんの御意見は一致しているわけでございますけれ
ども、どういうようなかっこうでやっていくのがいいのかということになりますと、これはまあいろいろ
問題があるわけでございますが、その場合の
考え方としていろいろヨーロッパ等の事例がございます。離農年金でありますとかあるいは経営移譲年金あるいは一般の老後保障年金、こういうような、いろいろなタイプを分けると三つあるわけでございますけれ
ども、その結論といたしましては、当面経営移譲年金というものに重点を置いて——もちろんその経営移譲年金というのは、第三者に対して土地を譲り渡しまして離農をする場合を含む、こういうことでございますが、そういう経営移譲年金というものを
中心にして考えていくのが、いまの
日本の農村社会の現実に一番合うのではないか。といいますのは、いまの農業経済の実態というのは、
日本の場合は、いわゆる分化が非常におくれているということがございまして、どういう経営がどういう形になっていくのか、まだ見通しが十分つかない。ヨーロッパ等の場合でございますと、こういう経営は大体将来離農していくとか、こういう経営は将来も残るとかいうようなことが、わりあいに仕分けがついているわけでございますけれ
ども、
日本の場合はそれが非常につけにくい。こういう実態なんで、いろいろな事態に対応できるような年金の仕組みがいいのではないか、こういう御意見が非常に強くあったわけでございます。
大体そういったようなことであるわけでございますが、他の国民年金等との
関係をどうしていくとかあるいはそういう
問題につきましては、むしろこれはあとの国民年金審議会のほうが主たる議論の場でございますので、そういう点についてはあまり詰めたわけではございませんが、やはり国民年金から分離独立をするという形はあまり適切でないのではないか、こういうような御意見のようでございます。
それからなおこの年金だけではなしに、他の農業施策との関連も十分考えて、場合によれば並行的に必要な
措置を講じていくということが必要ではないか、大体こういったような御意見が
中心でございまして、なお国民年金のほうで年金のサイドからのいろいろな
検討をしていただく、こういうことで、一応研究会としては任務が終わった、こういうことであったわけでございます。
国民年金審議会あるいは社会保障制度審議会等のことは
厚生省のほうから……。