運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-04-15 第63回国会 衆議院 農林水産委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十五日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 草野一郎平君    理事 安倍晋太郎君 理事 小沢 辰男君    理事 仮谷 忠男君 理事 丹羽 兵助君    理事三ツ林弥太郎君 理事 芳賀  貢君    理事 山田 太郎君       赤城 宗徳君    鹿野 彦吉君       亀岡 高夫君    熊谷 義雄君       齋藤 邦吉君    田澤 吉郎君       田中 正巳君    高見 三郎君       中尾 栄一君    中垣 國男君       別川悠紀夫君    松野 幸泰君       森下 元晴君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    千葉 七郎君       中澤 茂一君    瀬野栄次郎君       鶴岡  洋君    津川 武一君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         農林大臣官房長 亀長 友義君         農林省農政局長 池田 俊也君         食糧庁長官   森本  修君  委員外出席者         外務省経済局国         際機関第一課長 小林 智彦君         外務省経済協力         局外務参事官  村上  謙君         大蔵省主計局主         計官      相原 三郎君         厚生省年金局年         金課長     山口新一郎君         農林省農林経済         局国際部長   吉岡  裕君         通商産業省通商         局次長     楠岡  豪君         通商産業省貿易         振興局経済協力         部経済協力政策         課長      江口 裕通君         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度における農林漁業団体職員共済  組合法規定による年金の額の改定に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第七九号)  外国政府等に対する米穀の売渡しに関する暫定  措置法案内閣提出第八一号)      ————◇—————
  2. 草野一郎平

    草野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十四年度における農林漁業団体職員共済組合法規定による年金の額の改定に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 昨日に引き続いて質問を行ないたいと思いますが、昨日はあらかじめ政府委員出席を求めておったのでございますが、大蔵省委員が御出席できなくて延会になったわけです。ひとつ委員長にお願いしておきますが、政府提案法律でございますので、今後こういうことのないように、ひとつ厳重に御指示をいただきたいと思います。
  4. 草野一郎平

    草野委員長 はい、わかりました。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 それでは大蔵省にお伺いいたしますが、毎年の予算要求段階で、農林省大蔵省に対しまして、農林年金給付に要する費用のうち、現在の一六%を二〇%に改めるべきだという当委員会附帯決議等を受けまして、本年度も二〇%の給付額補助要請をいたしたわけでございますが、これが査定の段階で一六%に打ち切られてしまったわけです。なぜ一六%にしたのか、その理由お尋ねいたしたいと思います。
  6. 相原三郎

    相原説明員 お答えいたします。  社会保険国庫負担がどうあるべきかということは、すでに御承知のようにたいへん議論の存するところでございまして、それぞれの立場によりまして種々意見のあるところでございます。また、それぞれ立場を離れましても、非常にむずかしい問題であると存じております。ただ、概括的に申しますと、本来必要な最低限の給付水準をどう確保するかということが中心になるかと思いますが、その際にやはり各制度間の均衡、それと国の財政というものを総合的に勘案して慎重に決定されるものであろうと考えております。  そこで農林共済国庫負担の問題でございますが、やはり他の共済、たとえば公務員共済等とのバランスが一番大事な点でございまして、これは公務員共済が一五%ということになっております。それとのバランスをまず考慮しなければいけないということでございます。それならば、なぜ公務員共済が一五%であるかということになると思いますが、これは厚年の二〇%とのバランスでございまして、厚年給付水準公務員共済給付水準とを考えますと、公務員共済のほうがある程度高い。給付水準とのかね合いにおきまして、国庫補助の率が二〇%と一五%で大体バランスがとれるというぐあいに考えておるわけであります。その意味におきまして、農林共済国庫補助率を一六%というぐあいに前年度同様に査定したわけでございます。
  7. 田中恒利

    田中(恒)委員 他制度との均衡ということですね、結論は。そこで、ほんとうに公的共済制度あるいは厚生年金等農林年金とが、実体として均衡がとれているかどうかということを明らかにしていただきたいと思うわけですが、国家公務員農林年金ですね、それから船員保険農林年金厚生年金農林年金、こういうふうに比較検討のできる資料に基づいて、若干詳しく御説明をいただきたいと思うのです。単に共済組合間の均衡ということだけではなくて、わが国の公的年金制度全般にわたる均衡上どういうふうになっているのか、国庫補助率格差があるとすれば、国庫補助率格差はなぜ起きておるか、この点をもう少し計数的にひとつお示しいただきたいと思うのです。
  8. 相原三郎

    相原説明員 各制度均衡という場合に、どういう制度があるのかということでございますが、一番広くいわれておりますのが国民年金でございますが、これは雇用者年金でございませんものですから、除外するということが至当かと思います。そうしますと、あとは一番広く使われておりますのが厚年でございます。厚年と同じ系列に属しますのが船員保険でございますが、船員保険は非常に特殊な業態でございます。したがってたとえば厚年の中でも、坑内夫は特殊な料率が使われておりますが、その坑内夫と同様な扱いにすべきものと存じますから、一応例にとるとすると、厚生年金通常部分が至当かと思います。それからほかの共済の例では、各種の共済でございますが、やはり国家公務員共済組合というのが通常代表にされておりますし、これと比べるのが至当か。したがって厚生年金給付水準とそれから国家公務員共済組合給付水準と、この二つで比べて農林年金を判断するということであろうかと思います。  国庫負担率を申しますと、ちょっと話は前後いたしますが、厚年が二割、あと私学農林が一六%、それから共済のグループはほかは一五%、それから先ほどちょっと触れました船員保険は二五%でございますが、これは厚年でも坑内夫は二五%でございますから、ちょっと特殊な業態として一応除外いたします。それから国民年金が三分の一ということになっております。  そこで問題は、厚年の二〇%と国家公務員共済の一五%とがどういうふうにバランスしているかということに尽きるかと思います。そこでこの二つを比べますと、大体厚年給付水準国家公務員共済組合給付水準の六割から七割ということになっております。したがって二割という国庫補助率を、この給付水準の六割ないし七割という数字にかけますと、まあ一二%か一四%程度国庫負担の率になろうか。そうしますと、国家公務員共済組合の一五%という国庫負担率とほぼ見合うというぐあいに考えております。
  9. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林年金は、御承知のように厚生年金から流れてきたわけですので、厚生年金改正に伴って、従来同様であった一五%の補助率が片一方二〇%になるし、農林年金は一%上がって一六%になるという経過があったわけですけれども国家公務員に対する公務員共済が、ただいまのと、ころ農林年金と同じような観点でとらえられておるわけです。国家公務員共済補助が一五%ということですが、国家公務員共済に対する実体補助というのは一五%となるのかどうか。整理資源等に対する補助は全くないのか。あるとすれば、整理資源に対する補助が一体どれだけあって、それが全体の給付費用の中でどの程度の比率になっておるのか、ひとつお示しいただきたいと思うのです。
  10. 相原三郎

    相原説明員 国家公務員共済に対する国庫補助率は一五%ちょうどでございます。ただ、恩給期間でございますね、共済に移行する前の恩給法の適用されていた時代、これに対する整理資源につきましては、当時の恩給が、国が事業主としての立場から持っていたということから、その部分整理資源を国が負担しております。しかしこれはあくまでも事業主としての負担でございますから、社会保険に対する国庫負担というものとは全く別のものでございます。
  11. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうも大蔵省はあまり具体的な数字準備もせられてきていないようで、まあ一般論しかお答えしていただくことができないわけですが、やはり実質的に国家公務員共済——恩給を含めてですよ——農林年金と同じような補助実態になっているのか。私、あなたのところがらこまかく恩給に対する整理資源に対する補助を含ませて出していただきましたら、だいぶ違うと思うのですよ、均衡と言われますけれども。そこのところがほしいわけですけれども数字を出していただけないと十分に煮詰められないわけですが、私はおそらく国家公務員関係につきましては農林年金に比べて相当やはり比重が違う結果になっておる、こういうふうに理解しておるわけです。おそらくここで質問いたしましてもわからないと思いますけれども国庫補助といいますけれども、一体昭和四十五年度における各公的年金のいわゆる一人当たり国庫補助幾らになっておるのか。厚生年金船員保険あるいは農林年金国家公務員私学共済ですね、こういったものの一人当たり補助率幾らになっておるのかということを、あとでけっこうですから、ひとつ委員会資料として出していただきまして、そこで実際に均衡がとれておるのかどうか、はっきりお示しをいただきたい、こういうふうに思うわけです。私はどうも、あとでまだ若干お尋ねをしていきますけれども、やっぱり国家公務員共済に関しては、そういう形でいろいろなものを掘り下げていくと、だいぶ内容は違っているんじゃないか、こういうふうに感じておりますので、きょうは準備されていないようですが、数字でいま申し上げましたような内容のものを示していただきたいと思います。  それから国庫補助に関連いたしまして農林省お尋ねをしておきますが、農林年金法の六十二条の第二項の財源調整についてまずお伺いします。財源調整というのは一体何を意味する財源なのか。たとえば昨年の法改正の際に、予算決定段階で、大蔵、農林大臣の申し合わせによりまして、この改正によって掛け金は上げないということを明言したわけですが、これに伴って生ずる不足財源、こういうものは当然この中に入るでありましょうし、あるいは職員給与のベースがアップした、これに伴う不足財源もおそらくこの財源調整の中に入るでしょうし、あるいは今回のように、国以外に責任を持つようなところがない場合の財源を取り扱っていく、あるいは他制度との均衡掛け金がたいへん高いので、この辺の事情を是正するためにこういうものが使われていく、こういう形でこの財源調整というものの取り扱いがたいへん幅が広いと思うのですね。そこで、財源調整費というものに対して、せっかく法律で明文化しておるわけですから、この際あいまいな定義に放置しておくわけにいかないと思うのです。この財源調整というものは一体どういう性格のものなのか。ここであらためて農林省のほうから、この法律条文が付加せられていきました導入経緯等含めまして、ひとつはっきりとその意義を明確にしていただきたいと思うのです。
  12. 池田俊也

    池田政府委員 本来こういう年金制度のたてまえといたしましては、やはり掛け金でカバーをする。で、必要に応じまして財源率の一部について国が給付費補助をする、こういうことでまかなわれるのが本来のたてまえだと思うわけでございます。ただ、年金、特に農林年金の場合におきましては、いまお話がございましたが、掛け金ですべてをカバーするというのが実際問題として非常にむずかしい。整理資源ということもいろいろございましょうし、それからまた組合員掛け金負担能力というようなこともいろいろあるわけでございまして、そういうようなことから将来給付費の増加が生じました場合に、年金財政としてなかなか掛け金だけでカバーできない、こういう面がございますので、そういうところも考え財源調整費補助が従来行なわれてきていると私どもは理解をしておるのでございます。
  13. 田中恒利

    田中(恒)委員 年金財政の将来の健全化を維持をしていくための準備金的な性格だ、こういうふうにいまの局長の御答弁を理解してよろしいですか。
  14. 池田俊也

    池田政府委員 そのとおりであると思います。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 そういうことでありますと、やはり何かばくとした形で一億とか一億五千万とかいう予算の配分がなされるのではなくて、やはり給与の何%とかあるいは給付額の何%とか、こういう対象基準に対する割合というものが明確にされていないと、確定財源にはなかなかならない、こういうふうに私、思うわけですよ。特に年金制度のように相当長期的な見通しに立ってこまかい計数をはじいて将来の見通しを立てておる財政運営をやらなければいけないところですから、先般の社会保障制度審議会のこの農林年金に対する答申の中にも、農林年金の健全な財政の問題については重ねて検討する必要がある、こういう答申もなされておるわけですが、年金制度における財政健全化というのは、その年金制度の持つ規模というかスケールというか、こういうものに基づいて給付水準に見合った確定財源が確保されないと、なかなかやれないと思うのです。そういうことになりますと、いまのようなあり方では、私はやはり不確定財源だと思うのですよ。こういう不確定財源で健全な準備金だというようなことは間違っておると思うのですよ。ですから、こういう点については従来から関係団体のほうからも一定の定率での決定をしてほしいという要請が出てきておるわけですが、この点につきまして大蔵省、どういうお考えですか。
  16. 相原三郎

    相原説明員 いま農林省からお答えいたしましたように、これは将来の給付の増額に備えたものであると同時に、現在掛け金率が相当高くなっておる、したがってこれを急に上げることもできまいということでとられている、きわめて特殊な措置でございます。その意味で、これを制度上の問題と申しますよりは、農林年金の現在の特殊な事情を反映した措置でございますから、これを恒久的に制度として国庫補助率に上乗せするということは、他の共済とのバランス上からいってあまり感心しないというぐあいに考えております。
  17. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林省はどういうお考えですか。
  18. 池田俊也

    池田政府委員 私ども農林年金財政の監督の立場にある者といたしますならば、やはり財政健全化を維持したいというのが基本的な考え方でございます。一方、組合員掛け金を上げるということは、現在の事態では、私どもはやはり避けなければならない、こういうことでございますので、そういうようなことをどう調和するのかということが当面の問題でございます。  私どもは、率直に申し上げますならば、財源調整は多きにこしたことはない、できればある一定の率に相当するようなものがほしいというのも率直なところでございますけれども、ただいま大蔵省のほうから御答弁がありましたように、他の年金制度とのバランスがある。特にこれを率化ということになりますと、実質的には先ほど議論がありました給付に対する国の補助率の問題とつながるわけでございますので、なかなか現状においては御承認が得られない、こういう事態でございます。ただ私どもは、やはり先ほど一番最初に申し上げましたような基本的な要請がございますので、年金財政実態をよくにらみまして、足らざるところを十分に考慮いたしまして、相当額財源調整費を確保したい、こういう考えでございます。
  19. 田中恒利

    田中(恒)委員 とにかく条文には、一六%のほかに財源調整のために必要があれば補助する、こういうふうになっておるわけですね。これはいま大蔵省からも言われたように、やはり農林年金の持つ特殊性、そういう点だと思います。思いますが、この特殊性ということは、公務員共済だってやはり整理資源を国が事業主だということで全部持つ、これだってやはり特殊性ですよ、そういうふうに言われますと。だから、公務員は国が事業主だから整理資源は全部国が持つんだということをたてまえとしておる、そうした公務員特殊性と、農林年金がこの財源調整として出しておる特殊性というのは何ら変わりないと思うのです。第一、特に第一次産業がこういう状態になっておる中で、私は財政的にやはりこの財源調整につきましては明確な基準性格をはっきりさせて、予算上も、長期的な年金財政に狂いのないような方途を講ずることが必要だと思うのです。私学共済に対する私学振興会補助あるいは県からの補助、こういったようなものとこの財源調整費とは、私全然変わらないと思うわけですけれども、その点大蔵省、どういうふうにお考えですか。
  20. 相原三郎

    相原説明員 まず国家公務員共済のほうから申し上げますと、先ほどお話ししましたように、国が恩給時代事業主負担として出しているということでございますから、その議論をこのまま農林共済に引き直しますと、事業主負担すればいいじゃないかという議論になるかと思います。この辺はいろいろ問題があるかと思いますから、非常にむずかしい点かと思いますが、理屈としてはそういうふうになるであろうと存じます。  それから私学共済との関係ですが、これはやはり整理資源に関しましては、農林共済と全く同じでございまして、そのほかに私学振興会が別途に手当てをしておるということになると思います。
  21. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林年金財政健全化するためにやはり国がこういう制度で参画をしていくというたてまえがとられておるわけですから、そのたてまえに基づいて行政府としては、やはりいまのように予算のときに大体まあ五千万ふやしていくとか、一億ふやしていくとかいうようなつかみ金的な形で将来積み上げていったのでは、私はなかなか農林年金当局財政的運用がやりにくいし、めどが立たないと思うのです。やはりこの給付額に対して何%とか、率の問題についてはいろいろ検討せられたらよろしいと思いますが、六%という要求が出ておりますけれども、そういう点こそ大蔵省農林省のほうで十分煮詰められて、そういう基準に基づいて毎年この法律に基づく予算措置がなされていく、こういうねらいがやはり私はこの条文の策定の過程ではあったと思うのです。ところがそれがそうでなくて、何かそのときそのときの予算折衝の大詰めの段階での割り振りによってつかみ金になっておる。これは見ておりましてもまことにはっきりしないんですよ。こういう点を、ことしはもうきまっておるわけですけれども、来年の予算からは、ぜひ行政府立場でやはり明確にこういう点の取り扱いをしていただきたい、こういうふうに希望を申し上げておきたいと思います。  次に、昨日も質問があったわけですが、昨年の改正の際の附帯決議の第二点には、改正法案につきまして、旧法平均標準給与頭打ちについて、これをなくしたらどうか、こういう決議がなされておるのですが、ことしも依然としてそれを改善したとは見られないわけですが、この旧法平均標準給与頭打ちをなくすということについて、どういう検討がされたのか、お聞きしたいと思うのです。この問題については、昨年の改正法内容検討する過程にさかのぼっていろいろな議論がこの委員会でもあったように、議事録等で見ておるわけですが、もともとやはりこれは旧法期間の中に新法を適用させるというのが本来のたてまえだと思うのですよ。ところがいまの社会保障立場実態、こういうものはなかなか複雑で、なかなか一ぺんにそういうわけにもいかないので、実質的に旧法新法完全通算というものができるような措置がなされた、特に当委員会中心にそういう議論でそういう煮詰めがなされてきたということをお聞きをしておるわけですけれども、実際に最終的な形でまとまってきたものは年金額の計算の基礎給与を一・二倍する、そして十一万円をこえないものとするという頭打ちがあるわけですね。これは私は、完全通算をやっていくというたてまえの考え方、趣旨とは若干違うというふうに理解しておるわけです。ですから委員会でそういう附帯決議がなされてきた、こういうふうに思っておるわけですが、それが今度もやはりそのままに放置されて出てきておるわけですが、昨日も局長のはうから御答弁ありましたけれども、重ねて、どういう検討をした結果これはむずかしいということになったのか、こまかく御説明をいただきたいと思うのです。
  22. 池田俊也

    池田政府委員 頭打ちの問題は、ただいまお話がございましたように、昨年ずいぶんいろいろ議論が出まして、附帯決議にもそのことがうたわれておるわけでございますが、昨年、いまお話しのように完全通算措置、実質的な完全通算措置を、これは非常に長い間の懸案であったわけでございますが達成できたというわけでございますが、そのやり方が、いろいろ他制度とのバランス等関係がございまして、まあいまお話しのように一・二倍する、こういうことで実はやったわけでございます。その場合に、ちょっと理屈っぽい話になって恐縮でございますけれども御存じのように農林漁業団体給与制度というものはばらばらでございます。そのために標準給与制度というものを設定をいたしまして、それに当てはめてやっている、こういうことになるわけで、農林年金に関する限りは、標準給与のいまの表というものがいわば給与表である、こういうことになるわけでございます。そういたしますと、その給与表の最高以上の給与というものは、理屈からいってもあり得ない、こういうことになるわけでございます。はなはだ形式論理的で、なかなか御納得をいただけない点があるかと思いますが、一応理屈としてはそういうことになるので、かりに十一万円に一・二倍したもの云々ということになると、これは給与表の外にはみ出る、こういうことになるので、それは制度としてつじつまが合わないということになる、こういうことがあったわけでございます。そういうことでございまして、今回もいろいろ検討いたしてみたわけでございますけれども、そういうようなことが一つ基本にあったわけでございます。それからまた、他の年金制度で、たとえば国共済等におきましても、現在十五万円で頭打ち、こういうことになっておるわけでございます。そういうような関連もございまして、旧法期間につきましては十一万円、それから新法期間につきましては十五万円の頭打ちが現在行なわれている。そういうことにならざるを得なかった。こういう実態でございます。これは御存じのとおりだと思いますが、実際にこれにひっかかりまして、たとえば完全通算措置の恩典が受けられないという方は全体から見ますとほんのわずかのパーセンテージでございます。それだからいいということを言うつもりはございませんけれども実態はそういうことでございます。
  23. 田中恒利

    田中(恒)委員 標準給与の額がそれ以上ないということとからんで、いま一つは、国家公務員新法給与部分頭打ちがあるから、これが一つ理由になっておる、こういうふうに私も聞いておるわけですが、特に国家公務員新法部分については——農林年金にいたしましても十五万円という頭打ちがあることは御承知のとおりです。しかし、国家公務員旧法給与がどうなっているかということが私は問題だと思うので、均衡論でいくのでしたらやはり旧法旧法新法新法という形でやらなければ、期間的に、この期間農林年金の該当期間だからという形でやられるのにはちょっと問題があるような気がいたしますし、特に国家公務員につきましては旧法の恩典が今日依然として温存をされている、こういうように聞いておるわけですよ。恩給法部分でたとえば五十五歳までに支給ができるとか、あるいは共済組合に加入していない時期でもやはりその期間を通算することができるとかいうような優遇措置がどうも残されている、こういうふうにも聞いておるわけですよ。私はやはり、国家公務員共済内容を先ほども質問いたしましたけれども、こまかく恩給法との関係で、農林年金旧法時代均衡論で比較対象いたしますと問題が、不均衡になっておる側面がたくさんあると思うのですよ。大体国家公務員がこれを取り扱っておるわけですから、自分のところが一番有利に、いずれにいたしましてもそちらのほうに向くわけなので、そういうようないろいろな問題があるので、いまの農林年金給付実態、経理の実態からいたしますれば、当然頭打ちの問題はなくさせることが必要だ、私はこういうふうに思いますので、この問題につきましてはひとつぜひ農林省あるいは大蔵省、もっと旧法時代のいろいろな不均衡の問題を是正するような方向に努力をしていただきたい、こういうふうに思います。  それから最後に農林年金の福利厚生施設の現状、特に保養所施設等がだいぶあちこちにできておるわけですが、こういうものの経営状況、こういう点どういうふうになっておるのか、お調べになっておわかりになっておる点があったらお聞きをいたしたいと思うのです。
  24. 池田俊也

    池田政府委員 農林年金のいわゆる福祉事業といわれておりますのは、宿泊関係それから保険事業関係、それから組合員に対する貸し付けというようないろいろな面があるわけでございますが、その中でかなり大きなウエートを占めております宿泊関係について申し上げますと、各地にいろいろな宿泊施設を持っておるわけでございます。全国で現在十四カ所。それでその運営につきましては、一部は農林年金福祉団というもの、それからまた一部はそれぞれの県におきますいろいろな法人に委託をしている、こういうふうな状況でございます。  で、いろいろその内容によりまして運営の状況が違うわけでございますけれども、一括して申し上げますと若干の欠損を生じております。現在のところの欠損は、大体一億二千万くらいの欠損でございます。これはどういうことかと申しますと、端的にいえばやはり稼働率が特定のところにおいて非常に低いものがございまして、その関係で欠損を生じておるわけでございます。で、私どもはこういう組合員の福利のための事業でございますから、これでその収支自体が、これはもちろん健全な形で維持されるということが基本でございますけれども、同時にまた比較的安い価格で内容のいいものを利用してもらうというのが基本でございますから、そういう点を両方にらんでやらなければならない、こういうことで、現在一億二千万ほどの欠損ございますけれども、これは経営の内容の合理化をはかるというようなことによりまして、将来これが非常に拡大をしていくということでなしに、むしろ減少をしていくということを私どもは期待できるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それからなお先ほどの御説明の中で、私ちょっと間違えまして、頭打ちの額を旧法期間十一万円ということを申し上げたわけでございますが、これは四十四年十月以前という意味でございます。修正をいたします。
  25. 田中恒利

    田中(恒)委員 私も農林年金の厚生福利施設は、やはり組合員の福利厚生という立場でやられることですから、ことにこういう保養施設というのは相当期間がたたないと経営ベースに乗らないという問題もあるわけですから、いまのような状態でさほど問題も出てない、一億二千万ほどの赤字ということですが。ただ今後やはり注意をしていただかなければいけないのは、農協の関連会社等を含めていろいろ問題が出てきておりますし、一億二千万で済まないような事態が万一起こらぬとも限らない、そういうこともありますので、やはりこういう方面についても今後十分福祉事業団等と連絡をとりながら、このあり方につきまして農林省のほうでも気を配っておく必要があるんではなかろうか、こういうことだけ申し上げまして、一応昨日に引き続きましての私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  26. 草野一郎平

    草野委員長 山田太郎君。
  27. 山田太郎

    ○山田(太)委員 当法案について私のお尋ねしたい点多々ありましたが、同僚田中委員からの質疑によって明らかにされた点もありますし、できるだけ重複を避けたいとは思いますが、私なりに御説明あるいは御答弁によって納得できかねる点もありますので、そういう点は重複を承知でお伺いするところもあると存じます。その点まず御了承願っておいて、簡単にしかも明瞭に御答弁願って、できるだけ短時間に終わっていきたいと思います。  そこで、この昭和四十四年度における農林漁業団体職員共済組合法規定による年金の額の改定に関する法律の一部を改正する法律案の審議にあたって、先ほど申し上げましたように若干の質疑を行なうにあたりまして、全国三十七万余の農林漁業関係の団体職員、家族を含めますと百数十万人の方々が注視しているわけでございます。農林漁民の生活擁護と向上のために、職員の方々は公共的使命に献身しながらも低い給与と保障とに不安を訴える声も多いのであります。この法案が一歩前進であることは認めつつも、若干まずお伺いしていきたいと思います。  このたびの農林年金改正案は、標準給与実質八・七五%増額になる、昨日の御答弁でもありましたが、この算定のパーセントのよりどころはどこにあるのか、お伺いしておきたいと思います。
  28. 池田俊也

    池田政府委員 これは昨日も若干そういうことの話が出たわけでございますが、一般的な考え方といたしましては、やはり物価の上昇というものがございます。それから、まあそういうことと関係があるわけでございますけれども、一般的には給与水準が上がってきている。特に農林年金の場合には、常に国共済の場合等が一つの判断の材料になっておるものでございますから、国家公務員給与水準の上昇というようなことがございます。そういうような物価の上昇あるいは給与水準の上昇というものをいろいろ勘案いたしまして、八・七五%というアップ率がきまった、こういうことでございます。
  29. 山田太郎

    ○山田(太)委員 それでは、大体その準拠した国共済のパーセンテージは何に準拠したものかもあらためてお伺いしておきたいと思います。
  30. 相原三郎

    相原説明員 便宜私からお答えしますが、国共済改定につきましては、従来から恩給改定に準拠してやるということになっておりまして、本年度も同様にやっております。恩給改定が八・七五という改定率をしておりますから、それに準拠したということでございます。
  31. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いまの相原主計官の御答弁によりますと、やはり恩給法改正に関連しておる、この率も。事実、この恩給法改正は、昭和四十五年度十月分以降の恩給年額を八・七五%ふやすことにしているのは、これは事実であります。では、この八・七五%の内容ですね、少し詳しく教えてもらいたいと思います。よってきたった理由
  32. 相原三郎

    相原説明員 まず考え方から申しますと、昨年度に恩給改定をいたしました。その際に、若干の積み残しがあるという議論が残っておりました。今回の改定に際しましては、昨年度の改定後の物価の上昇、それから公務員給与の上昇等を勘案しまして、それにプラスいま最初に申し上げました積み残しの分を半分加えたという計算になっております。
  33. 山田太郎

    ○山田(太)委員 このたびも積み残しがあるやに聞いております。その点はどうですか。
  34. 相原三郎

    相原説明員 ただいま御説明いたしましたように、積み残し分を半分加えたということでございますから、あと半分が残っているわけでございます。
  35. 山田太郎

    ○山田(太)委員 その点はどのような処理をするつもりであるか、この際聞いておきたいと思います。
  36. 相原三郎

    相原説明員 この点は、四十六年度の予算の編成の際に処理したいと思っております。
  37. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、私の聞いた範囲によりますと、この八・七五%のうち六・五%は物価上昇と公務員給与改定による生活向上分である。あとの二・二五%は恩給公務員給与との格差を埋める経過措置の分だと、はっきり区別して算定されておる、こう聞いておりますが、その点については間違いないかどうかお伺いしておきます。
  38. 相原三郎

    相原説明員 いまお話しのございました六・五%の分は、前年度の恩給改定から今回までの間の物価上昇と公務員給与の上昇率を加味した分のアップ率でございます。二・二五と申しますのが前回の積み残しの分の半分ということでございます。
  39. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで本論に移りたいわけですが、この四十四年度の恩給法改正は、四十三年三月の恩給審議会の答申によって、恩給法のスライド条項を具体化する、その答申によってまず物価上昇に見合う分だけが引き上げられた。このたびの四十五年度改正でも、先ほど申し上げましたとおり、物価上昇分と公務員給与改定による生活向上分と、公務員給与との格差分、積み残しの二・二五を残しながらも、それが見られている。このように恩給はスライド制がとられておる、これは明らかなことでございます。そこで、公的年金にも同じような配慮がされるべきではないか。年金の実質的価値は、御承知のように消費者物価の大幅上昇によって大きな低下を来たしております。また世間一般に比べても、年金受給者の生活水準はそのたびに相対的に低下している現状であることは、これは世間通有の常識になっております。また同時に、この年金の受給者はストライキもできないし、これらの経済社会の変動に伴う調整費というものは、ただ恩給受給者のみが必要としているわけではない、これは当然の論理だと思うわけです。したがって公的年金にもスライド制をとるべきではないか、こう思うわけですが、昨日の政務次官の御答弁には、ただ財源云々のことのみに重点を置かれて、このような措置に対してどのような方向で、どのような時期を目標にして、どうすべきであるかというお考えは、非常に希薄であったように思います。そこでこの点について私ごとに強調したいことは、この公的年金のスライド制、これを一日も早く実現したい、これは国民の要望でもある、全受給者の要望でもある、また当局においてもその点は考えておられることは承知しておりますけれども、それの熱意という点が非常に不足しているように考えられる。この点について、農林年金ももちろんこの公的年金一つでありますがゆえに、あえてこの点を強調しお尋ねするわけですが、政務次官には最後に御答弁願うとして、大蔵省あるいは厚生省、農林省の各担当官がお見えになっていることですから、それぞれの方々から、その考えなりあるいは具体的施策なり、方向なり、これを示してもらいたいと思います。
  40. 池田俊也

    池田政府委員 恩給につきましての詳細は私存じないのでありますが、まあ私どもの理解では、恩給におきますいろいろな調整措置、それから農林年金におきます調整措置も、同じもののように私どもは理解をしておるのでございます。いずれにいたしましても、物価等の経済事情が変化をいたしましたときに、それに対しまして必要なべースアップ等の改定措置を講ずるというたてまえになっておるわけでございますが、厳格にスライド方式ということになりますと、たとえば物価といったようなものに応じて機械的に改定をする、こういうことになるわけでございますが、これにつきましては、具体的にどういう方式を採用するのがよろしいか、どういう方式を採用したならば、本来の目的に沿った措置が行なわれるかというようなことにつきまして、現在、これはいろいろな各省庁が関係しておりますので、政府部内のいろいろな関係者で調整連絡会議というものをつくりまして、そこで検討しておる。またさらに必要に応じまして小委員会等もつくりまして、そこで検討を進めておるのでございます。私ども恩給審議会で物価上昇が五%くらいあったら云々という話も伺ってはおりますが、政府のほうとしまして、こういう方式で、こういうことでやればできる、こういうようなところまで実はまだ結論が固まっておらないのでございます。方向といたしましては、私どもも望ましい方向だと考えておりますので、十分検討するようにいたしたいと思っております。
  41. 相原三郎

    相原説明員 最初に、恩給審議会の答申お話がございましたが、正確を期する意味で、どういうことが答申に盛られているかということの要旨を簡単に申し上げたいと思います。  そこでいわれておりますことは、五%をこえる消費者物価の上昇があった場合には、それに応じて恩給年額を改定するということがまず第一点。第二点は、消費者物価の上昇を上回る公務員給与の上昇や国民生活水準の上昇があった場合には、これをある程度恩給年額に反映せしめることが望ましい。これについては消費者物価の上昇に基づく調整の補正的要因として政府の合理的判断によるべきものである、政府が合理的に判断してこれを考慮しなさいということがいわれておるわけです。したがって、これは必ずしも通常いわれておるスライド制そのものが全部にかぶっているという表現ではないと思いますが、それに加えまして、今回の恩給改定措置は、先ほど来お話ししましたようなことでやっておりますが、これは私どもとしてはスライド制を採用したというぐあいには考えておりません。たまたま今回の改定にそういうやり方をやったということでございますから、スライド制の導入とは考えてないわけです。  それから、政府全般としまして今後の公的年金をどうするかということにつきましては、ただいま局長からお話ししましたように、連絡調整会議でやっております。この結論を待っておりますが、ただ私どもとしましても、社会保障という見地から、年金の実質的価値を保持するということについては非常な関心を持っております。ただ、その方式としてスライド制をとるのか、あるいはそのつど実質的な価値の保持ということについて努力するのかという方法の差はあろうと思いますが、気持ちとしてはやはり年金の実質的価値の保全ということについては強い関心を持っております。
  42. 山口新一郎

    ○山口説明員 厚生省といたしましても、先ほど農政局長からのお答えにありましたように、公的年金の調整連絡会議の結論を待つという状況でございますが、厚生年金国民年金につきましては、実はそれぞれ関係の審議会がございまして、その審議会でも、昨年の改正までは御承知のようにそれぞれ給付水準の低い状態にありましたので、まず共済グループに給付水準を追いつけということが第一次の問題でございまして、低い段階でスライド制ということを具体的に考えると、むしろ低いままで固定化されてしまうという問題意識がございまして、給付水準を一人前にしてからあとの問題だということでございます。幸いに昨年末の改正で相当な水準に達しましたので、関係の審議会でもいよいよスライド問題について既裁定の年金をどうやってもっていくかということについて具体的に検討を始めたいということで、その会合も近く持つという予定をしている状況でございます。
  43. 渡辺美智雄

    ○渡辺政府委員 ただいま農政局長からあるいは大蔵省、厚生省当局からそれぞれの立場答弁があったのでそれに尽きておると思います。一口で申し上げるならば、完全スライドの実施と申しましても、それにはいろいろな長短があります。したがって、私がきのう言ったスライド制を実現をするためにという意味は、いわゆる俗説的にスライド制と一口にいわれておって、その内容は物価、賃金が上がればそれに相応した合理的な公的年金のベースアップが行なわれるようにしたい、そういうことのぼうが受給者のためにもなるし、われわれ国会議員としても、何といいますか、毎年毎年ベースアップ問題で一騒ぎをするというようなこともなくなって、一つのルールがきまるならばそのほうが望ましいから、財政事情が許す限りできるだけ早い時期にそういうものを実現するように今後とも努力したい、かように申し上げた次第であって、その心境はいまも同じであります。
  44. 山田太郎

    ○山田(太)委員 実は佐藤経企庁長官、それから福田大蔵大臣だったと思うのですが、新聞の報道によると、年金のスライド制を採用するということは物価対策の敗北である、そういうような意味答弁があったと聞いておりますが、これはスライド制を否定したような内容の発言にもとれるわけです。この点について、この場所で質問申し上げるというのは場所柄でもないと思いますので、あえてその点を深く追及するというつもりはありません。しかし、佐藤総理も、先ほどの大蔵省相原主計官の御答弁にもありましたように、物価対策の会議で年間五%ぐらいの物価上昇はやむを得ないのではないかというふうな発言もあったのも事実でございます。したがって、年金受給者は物価の騰貴に従って、あるいはその他の生活の向上分も入れて、当然追い詰められていく生活を送るようになる。そこに物価が安定しているならばともかくも、西欧諸国のように年金受給者が非常に多くなって、しかもそのために物価対策には非常に真剣な取り組みようが、事実成功も見ておる国々もありますが、ところが、わが国においては、それが過去においてもまた将来においても、パーセントの差こそあれ、上昇はやむを得ないような状況になっておる。したがって、他の国と一律に論ずることはできないわけですから、やはり公的年金恩給も含めて、恩給については先ほど相原主計官がスライド制をとったとは思わぬ、そういう御答弁がありました。しかし、事実その審議会の答申にのっとった結果を四十四年度においても見ております。あるいは四十五年度においても、引き続きスライド制をとったと同じ結果になっておるわけであります。とったと思う思わないでなしに、結果がそうなっておる。また、そうであるべきだと思うのです。それに準拠する国共済の場合もあるいは国共済に準拠する農林年金も当然そのような方向をとるべきであると主張もし考えるわけです。したがって、先ほど政務次官の御答弁がありましたけれども、間違いだったらかんべんしていただきたいですが福田大蔵大臣やあるいは佐藤経企庁長官の、物価対策の敗北になるからスライド制はとりにくいというふうな意味の発言があったとしたならば、これは政務次官の御答弁のほうが妥当性があり、筋が通っているんじゃないかと私は考えるわけです。この点はこれほどにとどめておきますが、また時をあらためて場所をかえて、この点は十分やらなければいけない問題だと思います。  そこで次に移りますが、他に公的年金給付でスライド制をとっているものがあると思うのですが、スライド制をとっている公的年金、あるいは障害も入れて年金給付のようなものがあるかどうか、その点についてお伺いをしておきたいと思います。
  45. 山口新一郎

    ○山口説明員 私ども立場からのお答えで正確かどうかわかりませんけれども、私の知っている範囲では、これは公的年金の範囲に入るかどうかもまず問題があると思いますが、労災保険の一部年金化された給付につきまして、完全自動ではございませんが、半自動というような形で、賃金の動きに応じて、それがある程度の率になりますと改めるようにしろというような意味で、やや具体的な基準が示されているという例があるやに聞いております。
  46. 山田太郎

    ○山田(太)委員 事実、労働者災害補償保険の障害給付についてはスライド制が採用されております。いまの答弁では半スライド制、半ということばを入れてもいいでしょう。しかし、スライド制は採用されつつある。こういう傾向にあるということも、ひとつ当局側の認識に入れておいていただいて、このスライド制実現に向かって努力を傾けてもらいたいことを要望して、次の質問に移ります。  そこで、各年金に全部ではありませんが、五年ごとの財政再計算期に類するものがありますが、これはやはり一応のスライド制の意味もこの中に含まれておる、こう解釈していいと思うのですが、どうでしょうか。
  47. 池田俊也

    池田政府委員 大体五年ごとに再計算をやっておるわけでございますが、それとスライド制とは直接は関係がないというふうに私ども考えるわけでございます。ただ五年ごとというのは、やはりその間にいろいろの経済的な状況が変化をするというようなこともあるわけでございますから、そういう意味で、スライド制というものも物価上昇とかあるいは給与の上昇とか、そういうものに対応する措置であるというふうに理解をいたしまするならば、全く関係はないことはない、こういうことだと思います。
  48. 山田太郎

    ○山田(太)委員 大蔵省相原主計官からも御答弁願います。
  49. 相原三郎

    相原説明員 五年ごとの再計算とスライド制とは全く関係ございません。
  50. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いま相原主計官は、全く関係がないとこういう御答弁でしたが、やはり物価水準あるいは生活水準に関係して引き上げられるわけです。やはりスライド制という意味も、同じような意味も含めてあるわけです。その点については同じだと思うのですが、どうですか。
  51. 相原三郎

    相原説明員 スライド制という問題が意識される前から、再計算ということはあったはずですから、両者の間には関係はないと思います。
  52. 山田太郎

    ○山田(太)委員 これは時期の問題じゃないですよ。スライド制という問題が論議される前にこれがあったから関係ない、そういう論理は成り立たないと思う。内容的にそういう意味も含めておるわけですから全く時期とは関係ない。それは少し違うのではないかと思うのです。あえて深く追おうとは思いませんが、もう一ぺんひとつ御答弁いただきたい。
  53. 相原三郎

    相原説明員 私は関係ないと思います。
  54. 山田太郎

    ○山田(太)委員 これは水かけ論になってしまいそうですね。したがってこの点はそれまでにしておきますが、私はそのような考えは間違いだと思います。  そこでこの農林年金の場合第一条の二に、「この法律による年金たる給付の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定措置が講ぜられなければならない。」このようにあるわけです。ところが他の全部とは申し上げませんが、先ほど申し上げたように財政再計算期の一応の年限をきめられてある年金も多いわけです。その点について、この条項が悪いというのではありませんが、なぜ農林年金にはこの年限が一応きめられなかったのか。あるいはやはりその年限を入れるべきでないかとこう思うわけですが、その点についてのお考えを伺いたい。
  55. 池田俊也

    池田政府委員 いまお話しのように、農林年金の場合には特に再計算の規定を置いてないわけですけれども、実質的にはやはり同じようなことで再計算をやっているわけでございます。私は、そういう規定を置くことと、規定なしに現在実際にやっていることと、そう大きな開きはないのじゃないだろうか、特に規定を置かなければならないということもございませんし、規定を置いたほうが趣旨がはっきりするということは、あるいはあるかもしれませんけれども、実際上はそういう規定を置かなければ非常に支障があるということではなかろうと考えておるわけでございます。  なお、いまおあげになりました一条の二で、年金額改定措置につきまして、「すみやかに改定措置が講ぜられなければならない。」とこうございますが、これは直接いまの再計算の規定とは関係がないわけで、すみやかにということでございますから、そういう事情があれば、その期間の間でありましても、もちろん従来もやっておりますし、やるべきであるというふうに考えておるわけであります。
  56. 山田太郎

    ○山田(太)委員 局長答弁の中にも、一応こういう規定というものははっきり入れておいたほうがすっきりするということもありましたが、他の共済年金においてもその条項があるということは、やはりうやむやでなしに、必ずやらなければならない、やるべきである、このように筋を通してある。五年という年限には問題あります。いまのように物価騰貴の、あるいは生活水準向上の激しいときには、これは三年にすべきであるとか、あるいは二年にすべきであるとかいう、そういう論議は年限の問題についてはございますが、しかし農林年金についても、これは定款に入れることができるのかできないのかは知りませんけれども、そのような筋を通したすっきりした措置を当然やるべきではないかと、私なりの見解を持っております。そこでもう一度お伺いしますが、そういう場合これは定款に入れることができるのかできないのか、それについての答弁をあわせてお伺いしておきたい。
  57. 池田俊也

    池田政府委員 現在は定款にも特に定めはないようでございますけれども、もちろん書こうと思えば書けないことはなかろうと思います。
  58. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では政務次官にお伺いしますが、この点についての御見解をお伺いしておきたいと思います。
  59. 渡辺美智雄

    ○渡辺政府委員 先ほど農政局長がお答えをしたように、年金改定については、あなたの御指摘のように、一条の二というところで書いてあるわけです。それには別に年限は記載をしてありませんが、これは諸事情に応じすみやかにということでありますから、適切な措置を必要に応じて講じなければならぬ、こういうように解釈をいたしますので、事あらためて定款に、五年に一ぺん洗い直しというか、そういうことを書くことが必要かどうか、ちょっといまのところはその必要性はないのではないか、こう思っておりますが、よく検討をしてみたいと思います。
  60. 山田太郎

    ○山田(太)委員 時間の関係もあるので、もう一つ同じ点についてですが、国共済については「少なくとも」ということが入っております。少なくとも五年以内、したがって五年でなければならないということは規定されていない。しかし農林年金の場合は五年以上であって、何のさしさわりもないようになっている。政務次官は、いまの答弁では、うやむやにしておいたほうがいいのか、はっきりしておいたほうがいいのか、その点について、意地の悪い質問のように聞こえますが、そういう意味で言うのではないのです。これははっきりしたほうがいい、少なくとも五年以内、そのようにはっきりさせておいたほうがいいのではないか。すぐやれるかやれないかは別として、その点についての御見解をお伺いしておきたい。
  61. 池田俊也

    池田政府委員 先ほど政務次官からお答えがあったわけでございますが、いまお話しのような御意見も非常に有力な意見としてあり得ると私は思うわけでございます。これにつきましては十分検討させていただきたいと思います。
  62. 山田太郎

    ○山田(太)委員 こまかい点について、具体的な問題についてお伺いしたい点も数点あるわけでございますが、概して申し上げますと、他の年金農林年金と、掛け金の点においてもあるいは補助率の点においても、あるいは整理資源補助においても既裁定の補助率についても、先ほどからの審議の中でありましたように、農林年金の場合は不利な立場に置かれているように思う。その理由が、先ほどの御答弁の中では、事業主、雇用主が国である、あるいは諸団体である、その点に差があるように聞こえる答弁でありましたが、この公共的年金性格からして、そのような不均衡あるいは不公平な点があるのはおかしいのではないかとも思うわけですが、この点をどのようにして是正していくか、その点についての計画なりあるいは方針なりをお答え願いたいと思います。
  63. 池田俊也

    池田政府委員 年金制度のそれぞれの内容がぴったり一致しておらないことは御存じのとおりでございますが、その年金制度というのはもちろん、たとえば農林年金でございますならば農林団体の職員のいろいろな給与の問題、あるいは年金制度に対する国の援助体制の問題というようなことでいろいろなことが関係をいたしておりまして、私どもは、一がいにはなかなか比較がしにくいわけでございます。先ほど大蔵省のほうから、国共済あるいは厚生年金との違い等につきましてお話があったわけでございますが、非常に複雑にいろいろな点が関係をし、また違っておりますので、非常にむずかしいのでございます。  掛け金率の点からいいますと、御存じのように、農林年金の場合には他よりかなり高い。これは、年金制度が発足をいたしました当時、厚生年金の被保険者の期間農林年金組合員期間として引き継いだというような事情がございまして、整理資源率が非常に高かったというようなことが非常に大きな原因になっているわけでございますけれども、とにかく、そういうようなこと等が関係をいたしてかなり高いということで、私どもは、いずれにいたしましても、今後の方向として掛け金率を上げるということはでき得る限り避けたい。その前に、いろいろ国の補助等も考えますし、それからまた、年金財政の中でカバーできる点も考えまして、掛け金率を引き上げるということは何としても避けたい、こういう考え方をしておるわけでございます。ただ、私ども直接農林年金の指導、監督に当たっている者からいたしますと、これは年金財政が健全であるということがいいのは当然でございますから、他の制度とのにらみという問題もございますけれども、やはりそれ自体として極力国の補助を増していきたい、こういうことで、従来いろいろ大蔵省とも御相談をしておるわけでございます。ただ、そこは他の年金制度とのいろいろなバランスということでおのずから限界があるので、一〇〇%満足な結果を得ているわけではございませんけれども、まあ方向としては、そういうことでやっておりますし、今後も努力をいたしたい、こういう考えでございます。  なお、昨日でございましたか、田中委員の御質問にお答えをいたしまして、今後の一応の財政の見込みということを若干数字をあげて御説明申し上げましたが、当面、私どもは、年金財政が非常に危険な状態にあるとは考えておりませんけれども、先行きのことを十分考えておくという必要がございますので、農林年金当局でも研究会を設けまして、専門家の検討をわずらわしているという段階でございますので、そういうものを私どもは十分拝見をした上で今後の万全を期していきたい、こういう考えでございます。
  64. 山田太郎

    ○山田(太)委員 先ほどの局長の御答弁の、均衡を保つという点からお伺いをしているわけですから、田中委員からの質問にもありましたように、給付に要する費用国庫補助率厚生年金並みの二〇%にしてもらいたい、あるいは財源調整費補助国家公務員並みの、六%の差を縮めてほしいとか、あるいは既裁定年金額の最低保障額を本則の水準に引き上げてほしいとか、あるいは頭打ちの問題その他にもありますが、これらは全部この前の附帯決議にも盛られておった問題です。それが依然として改正されてない。これは農林省大蔵省に対する折衝の態度が弱いんじゃないかというふうな声も聞かれるわけです。事実、その二〇%の問題にしても、大蔵省に出した数字はほとんど通っていない、そのような状況に見られるわけです。四十五年度の国庫補助額の決定の状況を見てみましても、農林省からの要求は、給付費補助は二〇%相当額をちゃんと申し入れておる。また財源調整費補助についても六%相当額を申し入れておる。ところが、大蔵省からは大幅な削減をされておるわけです。ことに先ほどの質問にもありましたように、財源調整費補助についてはつまみになってしまっておる。これでは長期計画も立てることができない。これは当然なことです。  このような状況に対して、なぜこのようになったのか、なぜ農林省としてはもっと強硬な主張なりあるいは折衝なりというものをやらなかったのかということを、ほんとうに残念に思いながら聞きたいわけです。その点についてひとつ農林当局と大蔵当局との御答弁をお伺いして、そうして質問を終わりたいと思います。
  65. 池田俊也

    池田政府委員 農林省といたしましては大蔵省にいろいろ要求をいたしまして、弱いというお話がございましたが、これは大蔵省のほうに聞いていただいたほうがいいかと思いますが、私ども大臣折衝まで上げましてかなり強く要求をしたつもりでございます。ただ、こういう事情はちょっと御理解いただきたいと思うのでございますが、実は昨年度かなり大幅な改正をしたのでございます。これは私ども率直な感じから申しますと、百点満点ということを言うことはもちろんできないわけでございますが、まあ八十点か、大蔵省にもかなり御協力を願いまして、かねての長い間の懸案でございましたいろんな事項について実現を見たわけでございます。四十五年度はそのあとを受けた年でございますので、前年に続きまして大幅改正をするというのが非常にむずかしかったという事情が基本的にはあるわけでございます。その点はひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  まあ給付費に対する補助率のアップでございますとか、あるいは財源調整費に対する補助の大幅な要求でございますとか、これは実現を見なかったわけでございますけれども財源調整費の増加等につきましては、率で比較をしてもあまり意味はございませんけれども、前年に比べまして五割増ということで、予算の一般の伸びからいたしますと伸び率だけを見ればかなり伸びておる、こういう見方もおそらく財政当局としてはおありなんじゃないかと思いますけれども要求といたしましてはそういう事情でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  66. 相原三郎

    相原説明員 非常にお答えしにくい御質問でございますけれども、主計局の中では、農林省要求は毎年非常にうまいという定評がございます。したがって、差しさわりがあっていろいろ他の省との比較などは出しにくいわけでございますが、とにかく各省の中では農林省は非常に要求がおじょうずであるということは定評でございます。しかもことしはここにおられます強力な政務次官もおられましていろいろ叱咤をされまして、むしろ私らのほうとしては非常に取られてしまったという感じを率直に持っておりまして、決して農林省が弱いということはございません。
  67. 山田太郎

    ○山田(太)委員 以上で質問は終わります。
  68. 草野一郎平

    草野委員長 午後一時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時四十四分開議
  69. 草野一郎平

    草野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  70. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最初に農林省大蔵省お尋ねします。  その第一点は、昨年の六十一国会並びに六十二国会において、農林年金法の第三次改正が行なわれたわけであります。その際、当委員会としては強力な附帯決議を付しまして、当時の農林大臣、長谷川大臣は、委員会の議決を尊重して誠意をもって努力するということを明らかにしたわけであります。決議内容等についてはすでにおわかりと思いますが、第一の点は、これは農林年金法の第六十二条の一項に示されておるいわゆる給付費用に対する国庫負担が百分の十六であるという点でありますが、これを昨年当委員会においては附帯決議を通じまして、昭和四十五年度には国庫補助率を百分の二十に引き上げるべきである、こういう点を強調しておるわけであります。この点は、単に附帯決議にこの点が盛られておるというだけではなくて、昨年の法案審議の際に、私から農林大臣並びに池田農政局長質問をしまして、四十四年度の農林省予算要求の中においては、農林年金について、法律上は百分の十六であるけれども要求としては百分の二十の要求を行なっておる、しかし、予算取り扱いの問題としては、政府部内においても、法律の定めのある国の支出や負担については、やはり根拠をなす法律規定改正を伴わなければ、単に要求だけ出しても、当然これは大蔵当局においてもそれを認めるということはできないではないか、ほんとうに百分の十六を二十に予算を確保するということであれば、予算要求とあわせて、この事項の法律改正が必要ではないかということを論議したわけです。当時長谷川農林大臣はこの点が明快にできませんで、予算が先で法律あとであるというような、そういう答弁を実は繰り返したわけであります。これは卵と鶏の論争ではなくて、政府機関である農林省大蔵省に対して予算の概算要求をする以上、これは政府部内の問題ですからして、当然百分の十六を二十に引き上げなければ、農林年金のいわゆる年金財政というものを健全に保つことができないという、明確な理論的な根拠があって要求をすると思うのです。要求をする以上は、六十二条の第一項の改正を同時に政府自身が国会に提案して行なうということでなければ、この実現は何回要求だけしても実現しないわけですね。こういう問題がありまして、当委員会としては附帯決議の第一に、四十五年度を目途にして「給付に要する費用に対する国庫補助率を百分の二十に引き上げる等国の補助を増額すること。」ということをうたっておるわけであります。今回の改正においても、この大事な点の改正が、政府の改正案の中には片鱗も出てきておりませんので、この点について、昨年と同じような問題を論議するわけでありますが、この際、政府部内における、農林当局並びに大蔵当局の、この問題に対する予算編成を通じて取り扱った経過と内容について、明確にしておいてもらいたいと思います。
  71. 池田俊也

    池田政府委員 申し上げるまでもございませんが、補助率のアップにつきましては、法的な措置予算措置とあわせて講じられないと実現ができないわけでございます。それで私どもは、四十五年度の予算編成におきまして、これは時期といたしましてはことしの初めになったわけでございますけれども大蔵省のほうに、一六%を二〇%まで引き上げるという線でひとつぜひ認めてもらいたい、こういう要望をいたしたのでございます。しかし、これは大臣間の最終の折衝までまいったわけでございますけれども、他の年金制度との関係等があるので、認めることはできないという結論になりまして、附帯決議ではそういう線を政府に要望されておるわけでございますけれども、やむなく実現をできなかったわけでございます。
  72. 相原三郎

    相原説明員 経緯はただいま農政局長から御説明したとおりでございます。大蔵省といたしましては、やはり他の公的年金の諸制度とのバランス上、どうしても十六を上げるという要求には賛成いたしかねますということで、今回御提案しておりますような一六%を据え置くということになっております。
  73. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大蔵省としては、農林年金の国の給付に対する負担が百分の十六ということになっておるわけですから、積極的に必要性を認めるならば、予算確保と法律改正というものをことしやるということにはなるが、消極的に扱うということになれば、やはり法律の根拠の上に立てば法律は百分の十六ということになっておるので、法律改正をしないで百分の二十をつけることはなかなかできないと思うのですよ。ですから、この点は、農林省は今後も毎年毎年百分の二十の要求はすると思うのですよ。去年も政府として百分の二十に改定する法案を出しておらないが、この法律改正をしなければなかなか実現はできないじゃないか。ことしだめであれば昭和四十五年の予算要求についてはどうしますかというときに、農政局長も長谷川農林大臣も、この点は来年も百分の二十の実現を目ざして努力します、当然八月末に出す概算要求に対しても従来どおり百分の二十の要求をしますということを言っておるわけです。そうなれば、これがどうしても年金財政の確立上必要であるということであれば、政府自身が改正案を出すことができないという事情にあれば、当委員会においてわざわざ各党一致の附帯決議をつけておるわけだから、政府としては残念ながらできませんということであれば、これは国会において政府の改正案修正の形でも解決できるわけです。これはあす農林大臣出席した際にただすつもりでありますが、一体事務当局としてはどう考えておるのですか。なかなか政府部内ではまとまらぬからやりずらい、この際農林委員会でこの点に関する政府案の修正をやってもらえば問題が片づくからありがたい、そういうふうに思いますか、どうですか。
  74. 池田俊也

    池田政府委員 政府部内といたしまして思想統一をしてお答えを申し上げなければならないわけでございますけれども、従来の予算編成の経緯等からいいますと、政府の一致した見解として、それに賛成でございますと言うことはできないことはまず明らかでございます。
  75. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは来年はどうしますか。
  76. 池田俊也

    池田政府委員 まだこれもきめているわけではございませんが、従来の附帯決議の趣旨もございますし、私どもといたしましては、来年度の予算編成に際しまして二〇%のアップを提案したい心境でございます。
  77. 芳賀貢

    ○芳賀委員 昨年の附帯決議の第一の点は、単に六十二条一項の改正だけでなくて、あわせて二項の財源調整費に対する従来の毎年の国の補助の分等についても、まずこれを理論的な根拠を定めて定率化して、この分に対しては毎年、たとえば給付に要する費用に対してみれば何%ぐらいの率を財源調整費として負担するとか、あるいはまた掛け金を対象にした場合の掛け金率にすればどのくらいの相当額を国が負担するかという点についても、いまの第二項というのは非常に不明確になっておるわけです。不明確であるが、この六十二条第二項というのは国会において改正した点ですから、われわれとしては毎年予算の問題あるいはこの法案の審議にあたっては重大な関心を持っておる点であります。この点も農林省要求額と決定額を見ると相当大きな懸隔があるわけですから、この経過について、農林省は一体どういう根拠で計算をして要求し、また大蔵省としてはどういう基礎の上に立ってこれを査定して決定額になったかという、その点の事情をこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  78. 池田俊也

    池田政府委員 私ども四十五年度予算編成の際に大蔵省のほうに要求いたしました金額は、端数がちょっとございますけれども、三億四千九百万でございます。一応こういう数字を出した根拠といたしましては、財源率にいたしまして千分の五相当のもの、こういう金額で要求したわけでございます。
  79. 相原三郎

    相原説明員 要求額はただいまおっしゃったとおりでございまして、これに対して一億五千万という数字で決着したわけでございますが、これにつきましては、結局調整という趣旨が、将来の給付費の増額あるいは現状において掛け金率が非常に高いという状況等を勘案した措置でございまして、昨年度が一億でございますか、その前が四千万、六千万でありますか、そういう従来の補助額の実態等も考慮しまして一億五千万というぐあいに決定したわけでございます。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから計算の根拠ですね。農林省としても水増しして要求したわけじゃないと思うのです。年金等の財源確保ということになれば、これは政策的な予算確保と違いますから、厳密な理論的な計数の上に立って、これだけはどうしても必要である、これが確保されなければまた数字的に保険料等に対して負担がかさむというような心配も生じないとは限らぬわけですから、やはり安定させるためには国の一定率の補助を持続的に確保する必要があるということで要求し、また査定の側においてもそういうことを基本として当然これは取り扱ったと思うわけです。ですから、毎年農林省要求の根拠と大蔵省のこれに対する取り扱いの方針が必ずしも一致しておらないところもあるわけですから、ここを明確にしてもらいたい。
  81. 池田俊也

    池田政府委員 先ほど千分の五ということを申し上げましたが、これは間違いでございまして、千分の八でございます。  それで、私どもが当初要求いたしました考え方は、どの程度の額が財源調整費として必要かというのはいろいろな考え方があると思うわけでございますが、一つ考え方として、国共済と比較をいたしまして、農林年金の場合は掛け金率が非常に高い、千分の九十六でございます。国共済の場合が千分の八十八でございますので、その差額に見合うものを財源調整というかっこうで認めていただきたい、実はこういうお願いであったわけでございます。結果につきましては先ほど主計官からお話ございましたが、一億五千万ということで、一億五千万の確たる根拠というのは、私率直なところを申し上げて、ないと思うわけでございます。過去におきます財源調整費の推移等、その他のいろいろな事情考えまして、一応現状におきましてはやむを得ないということであったわけでございます。ただ、一つのめど、めどというか、一つのものの考え方でございますが、四十四年度に制度改正をいたしまして、相当額の支出増が出てまいるわけでございます。しかし、一方では掛け金率は引き上げない、こういう決定をいたしまして、その分が農林年金にとりまして一つ負担になる。それからさらに、四十五年度の改正、これは財源率から申しますと、非常に小さいわけでございますけれども、四十四年度の改正が四十四年度中は五カ月分程度負担であったわけでございますけれども、それが四十五年度になりますと、まるまるの負担になってくる。そういうものをいろいろ計算をいたしてみまして、過去に積み立ててあります財源調整費の額、これは二億円あるわけでございますから、それと四十五年度の一億五千万と合わせますと、三億五千万になる、そういうような制度改正によります負担増と、いまの三億五千万というようなものを見比べてみると、まず満足であるということはとうてい言えないのでございますけれども、国の財政事情もございますので、まあやむを得ないところではなかろうか、こういうふうに結論的には考えたわけでございます。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで大蔵省お尋ねしますが、昨年は六十二条第二項の財源調整費についてちょうど一億円ですね。一億円というのはどういう計算の基礎かということを尋ねた際に、当時は辻主計官でしたが、明確な根拠は示しがたいが、しかし給付費に比較した場合には給付の二%程度になる、こういう説明があったわけです。同じような判定でいけば、ことしの一億五千万というのは、給付に対する比率というものは若干上回っているようにも見えますが、そういう点が毎年ばく然とした根拠の上で、つかみ金的なものでいいのか、あるいは一定の率というものを定めて、一定率の上に立って計算をするということのほうがより合理的だと思うのですが、だから給付費に対してはことしはどれくらいの割合になっておるのか、いま農政局長の言った、たとえば掛け金率にすれば千分の八相当額要求したということを言っておるわけですから、それに比較した場合にはどれくらいの率になっておるか、そういう点、もう少し詳しく説明してもらいたい。
  83. 相原三郎

    相原説明員 いまお話がありました昨年の私の前任者と先生との質疑では、確かにこういうふうに言っております。「再三繰り返して申し上げておりますように、給付費の何%でございますとか、あるいは掛け金の幾つでございますとか、そういう積算にはなっておりません。  ただ、給付額に対する率で申しますと、」云々とありまして、「四十四年度の一億円は約二%弱の一・九六%程度に当たっております。」そういうふうに御答弁申し上げておるわけでございますが、全く同じ計算をいたします場合には、ことしは二・七%程度になっているかと存じます。それではパーセンテージにしたらどうなるかという御質問だったと思います。これは先ほどもちょっとお話ししましたように、あくまでも現行の掛け金率が高いとかそういう実態に即しました臨時的な措置でございます。したがって、これを何%というかっこうで率にしまして補助いたしますことは他の共済に対して非常に影響がございます。たとえばすでに現状でも他の国家公務員共済などを見ますと、一五%、一六%というぐあいに開いておりまして、その上にプラスアルファがあるという形で、それぞれの公的年金の各制度立場立場で、お互いに向こうがいいんじゃないかというような感じが非常に強いものでございますから、大蔵省としましては、公的年金制度全般を見渡しまして、いまおっしゃったように定率化するということに対しては賛成いたしかねておるわけでございます。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただ、その場合、百分の九十六という農林年金掛け金率は、公的年金を通じて最高ですからね。これ以上高めないという政府側の考えというのは、これは当然だと思う。しかし、毎年の年金内容の改善等に伴って、やはり保険財政的には財源がかさむということになるわけですから、当事者に対する負担を高めないということになれば、それは整理資源のほうの膨張ということに当然なるわけですからね。それに対して、結局法律の六十二条二項では、国がこれに対して最大の努力をする、財政負担をするということの目的で、この第二項があるわけですから、その基本方針というものは今後も堅持するということは間違いないわけですか。
  85. 池田俊也

    池田政府委員 これは私どものほうと大蔵省のほうと相談をいたしましてその結論でないと申し上げにくいわけでございますが、私どもだけの気持ちを申し上げますならば、やはり四十四年度の大幅な制度改正の結果、やはり農林年金負担がふえてくる、しかも一方からは、掛け金率は引き上げることは適当でない、こういうことがありますので、年金財政としてはかなりの負担を負っているのは事実でございます。で、そういうような補いというようなことも考えまして、私ども財源調整費については必要な額をぜひとも確保したい、こういう希望を実は持っているわけであります。ただ、これにつきましては、四十五年度、本年度におきまして、農林年金におきましても、いろいろ専門家の方にお集まりをいただいて、財政の中身を洗っている段階でございますので、来年度の予算編成にあたりましては、そういうことも勘案して必要額を確保するように努力したい、こういう気持ちでございます。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林省のいまの説はわかりますが、そこで、大蔵省のほうでは、第二項の定率化については賛成しがたいという意見ですが、それは財政支出を避けるためにそういうことを言うのか、むしろ給付に対する百分の六とか掛け金率の千分の八に見合った定率を第二項でうたうということは、それが固定化するとむしろ将来年金財政事情というものはいろいろな方向に変化しやすいので、その時期に弾力的に対応できがたいような不自由さもあるので、むしろ定率化しないで、しかし基本的にはいま農政局長が述べたような方針を大蔵省も確認して、弾力的に積極性を持って取り扱うために、定率化については賛成しがたい、そういう考えに立っているわけですか。
  87. 相原三郎

    相原説明員 けさほどもお答えしたわけでございますが、社会保険に対する国庫補助をどうするかということは、非常にむずかしい議論の多い問題でございまして、それぞれの立場によっても議論がございますし、あるいはまた第三者的な立場に立っても、非常に議論のあるところだと存じます。  概括的に申しますと、やはり本来の制度的な給付水準が、最低どのくらい確保されなければならないかという点から考えるべきであると思いますが、その際にやはり各制度間のバランスの問題、それと同時に財政負担の問題、この二つバランスをとって考えるということであろうと思います。したがって私たちとしましても、今後この問題を考えます場合には、各制度間のバランス、と同時に、その反映であります財政負担という二つバランスをとって考えていきたいというぐあいに考えております。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この機会ですからお尋ねしますが、四十五年の予算編成の大臣折衝の際に、福田大蔵大臣と倉石農林大臣の間において、この農林年金制度改正等を含めての予算措置ということになれば、百分の十六を百分の二十の改正ができない、あるいは調整財源に対しても定率化はできないというやりとりがあった結果、しかしそれを見送るとしても、そのことによって掛け金率の引き上げとか当事者に対する負担の増加ということは絶対にしないという、いわゆる覚え書き的なものが取りかわされておるというふうに承知しておるのですが、その点はいかがですか。
  89. 池田俊也

    池田政府委員 覚え書きというものはないと思います。ただ、いろんな昨年度の制度改正の経緯の中で、これは未来永却ということはちょっと言いかねるのでございますけれども、とにかく今回の制度改正によりまして掛け金の引き上げをするということはしないということは、これは政府部内としては完全に一致しておるわけでございまして、その点は間違いはございません。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは国の負担の百分の十六が二十に改定できない、あるいはまた調整財源を定率化あるいは実質的に必要額を国が負担するということが法制上明確になるまでの間は、決して負担の引き上げ等は行なわないというふうに理解していいわけですね。
  91. 池田俊也

    池田政府委員 ちょっとその前提の条件としていま先生がお述べになりましたことのような理解では必ずしもないと思うのでございますけれども、私どもはいま申し上げましたように、前回の制度改正によりまして、財源の率にいたしまして大体千分の五相当くらいの財源率の引き上げ、財源率がふえる、こういうことがあるわけでございますけれども、現在の掛け金負担状況にかんがみまして、これは引き上げない、こういうふうに実はいたしたわけでございまして、当然これは次の財政の再計算というものを行ないますときに再検討しなければならないのでございますけれども、私、農林省自体といたしましては、当面そういうものを上げるという気持らは全くございません。
  92. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点はあすまた担当大臣に明確にしてもらいたいと思います。  そこで厚生省にお尋ねしますが、午前中の各委員の質疑の場合にも、もとは厚年から分家したという経過があるわけでして、現在厚生年金のほうにおきましては、給付に対して百分の二十が国の負担ということになっており、分家のほうは百分の十六ということになっておるわけです。これは明らかな事実ですが、しかし内容的な実体論の上に立って厚年の百分の二十と農年の百分の十六があたかもバランスがとれておるような政府側の話ですが、この点がなかなかわれわれとしてすなおに了承しかねる点なわけです。実体的に同じだということであれば、その内容的な比較論を少し聞かしてもらわぬと、農林年金厚生年金から分離した以降における厚生年金内容の充実とか給付水準の高まりのぐあいと、いま置かれておる農林年金実体というものを比較してどうであるかということを、これは年金課長から聞かしてもらいたいと思います。
  93. 山口新一郎

    ○山口説明員 国庫負担の実情から見た面の比較はどうかというお尋ねでございますが、実は国庫負担の比較の場合には、実際にそれぞれの被保険者なり受給者が公平な利益を受けるというところが一番問題かと存じます。そうしますと、基礎になる給付の仕組みでありますとかそういうふうな問題が非常に大きく関連してくるわけでございます。確かにお尋ねのように農林年金が分離しましたあと厚生年金におきましては、昭和四十年とそれから昨年と二回にわたりまして相当大きな改正がございまして、分離の行なわれました三十三、四年当時と比べますと、全体の給付レベルといたしましては約三・六倍程度の上げ率になっていると思いますが、ただそれだけで厚生年金の実際の国庫負担状況が改善されたのではないかということは、ちょっと言えないと思います。と申しますのは、たとえば支給開始年齢でありますとかあるいは給付の金額の計算のしかた、そういうような問題でいろいろ違いがございます。一番簡単な例で申し上げますと、開始年齢は、農林年金のほうは五十五歳でございますが、厚生年金は原則が六十歳でございます。そういうようなことを考えますと、一方が一五%を五十五歳から国庫負担を受ける。片方では二〇%を六十歳から受けるというようなことがあるわけでございます。そういうようないろいろな問題を含めますと、単純な比較はなかなかむずかしい。現在の二〇がきめられましたときには、そういうもろもろの要素を勘案していろいろ数理計算を行なって、その上で大体現状の負担率でバランスがとれるということで行なわれたというふうに私ども承知しております。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう少し具体的に聞きたいのですが、そうすると最近の農林年金の平均標準給付実体厚生年金の平均標準給付というのは、比較してどういうことになるのですか。
  95. 山口新一郎

    ○山口説明員 厚生年金について申し上げますが、昨年の十二月現在で、加入者の標準報酬の平均は四万七千四百五十二円でございます。
  96. 池田俊也

    池田政府委員 標準給与の平均月額で申し上げますと、四十三年度の平均でございますけれども組合員の場合三万三千七百十九円でございます。
  97. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この比較だけで直ちに両年金の優劣を判断することはできないと思いますが、しかし平面的に判断すると、厚年のほうがだんだん内容がよくなって、比較論からいうと有利性を目ざして分離した農林年金のほうがなかなか伸び悩んでおるということの判断は間違いですか。
  98. 山口新一郎

    ○山口説明員 農林年金のほうは四十三年度の平均でお話がございまして、いま私の手元にございますのは四十三年末がございますが、その場合の厚生年金は三万八千三百六十円でございます。いま申し上げました数字は、現在の加入者の標準報酬の平均でございます。給付の場合には、農林年金のほうは最終三年をとっておられると思いますが、厚生年金のほうは加入期間全体の平均でございます。昨年の改正昭和三十二年前の非常に低いものは切り捨てることにいたしましたが、そういう点で基礎のとり方が違いがございますので、現在の加入者の標準報酬の平均の高低だけでただ比較はちょっとできないんじゃないかというふうに考えます。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは遠慮しないでもう少し説明してもらいたいと思うのですよ。何といったって厚生省は年金の本家ですからね。厚生省が直接扱っておる所管の年金だけじゃなくて、たとえば農林省とか大蔵省が扱っておる年金もあるのですから、そういうものを総体的に取り上げて、いまの社会、経済情勢の中でいわゆる民間の被用者年金というのはどういう進度を示しておるか、年金の将来性というものを達観した場合にはどうだというような、そういう点がわからぬと、現状論だけではなかなか的確な批判ができませんからね。
  100. 山口新一郎

    ○山口説明員 おっしゃるとおり、現在のわが国の年金制度は大別しまして八つに分かれておりまして、それぞれの歴史的な沿革等もございまして、非常に内容に差もございますし、受給者の立場からはそれだけ不公平があるんじゃないかというような問題もあろうかと思います。そういう意味で、なろうことならば制度を統一化すべきだというようなことが関係の審議会等からもいわれているわけでございます。その意味では、三十四年に国民年金ができましたときに皆年金体制がとれましたので、それからあと、たとえば通算制度を設けましたその際に、通算年金につきましては給付水準を統一するというようなことで、また最低保障制度をできるだけ共通な線までそろえるように努力をするというようなことで、やれる範囲内からできるだけの調整をはかってまいったわけでございます。  また、その点いろいろ問題が残っておることは確かでございますけれども、従来そういう方向で関係者相寄りまして努力はしてきたわけでございますが、その点は今後とも一そう努力をしてまいる必要があるというふうに私どもも痛感しております。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 とにかく農林年金の加盟者三十何万人というのは、これは第一次産業に所属する農業、漁業、林業の部面の団体職員ということになっておるので、いまの自民党政府の農業政策の動向とか、あるいは国民経済の中における第一次産業の位置づけというものから経済的に判断をした場合は、やはりこれらの産業の従事者が民間産業全体の中でだんだんおくれを示すということは判断できるわけです。ですから給与水準というのは、毎回当委員会で論議をした場合も、他の産業に比較しあるいは公務員等に比較した場合において、農林年金の加入者である労働者の賃金水準が非常に低い、劣悪である。これは直接政府の責任ではありませんが、やはり行政的に強力なてこ入れをして、少なくとも全体の賃金水準に、一番あとからでも大きな水をあけられないようにして進める必要があるじゃないかということは、これは毎年指摘している点なんですよ。ですから、そういう劣悪の条件の中で掛け金等については、これは最高率ということになっているわけですから、そういった劣悪な条件を年金制度の中で財源的にも国がある程度緩和をするということになれば、やはり国の給付に対する国庫負担率にしても、調整財源の国の補助等としても、やはりそういうところに政策的な努力というものを示す必要があると思うのですよ。表面から見た均衡論だけで厚年の百分の二十と農年の百分の十六はちょうど均衡がとれておるというようなことだけでは、これは律し切れないと思うわけですね。均衡論をやる場合にはそういう経済政策、社会政策の内面にまで掘り下げた理論というものをぜひ展開してもらわないと、いつまでたっても農林年金の不利益性というものは解決できないのではないかと思うわけです。これは別に議論するわけではないわけですけれども。これに対して、何か特別の見解が皆さんにあれば、この際述べておいてもらいたいと思います。
  102. 池田俊也

    池田政府委員 特別の見解というわけではございませんが、確かに制度——どもも実は年金につきましてはあまり専門家ではございませんが、いろいろ年金の問題を扱ってみて感じますのは、いつもバランス論が出てまいるわけでございます。そのバランス論の場合に、これは制度面のいろいろな仕組みの違いが相互に非常に密接にいろいろからみついている。これもひとつ、もちろん考えなければならないと思うわけでございますが、同時にいま先生がおっしゃいましたような実態面のいろいろな事情というものも当然考えるのが筋であろうと私どもも実は考えるわけでございます。そういう点を十分考えまして、私どももこの問題についてはいろいろ検討してまいりたいと考えております。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、昨年の附帯決議の第二点ですが、「旧法平均標準給与の最高限度額については、これを新法なみに改善すること。」この点についても、今回の改正というものは附帯決議から見るとまことに不十分なものであるというふうに考えるわけですが、これがもう少し前向きに改善されなかったのはどういうわけですか。
  104. 池田俊也

    池田政府委員 これも前に申し上げたことがございますが、一つは、やはり非常に理屈っぽいことを申し上げて恐縮でございますが、標準給与制度をとっているということで、その標準給与の最高額の、一定率をかけましてその上になるということは、実は、制度としてそういうことをやるのが非常に困難であるということが一つ制度の仕組みとしてはあるわけでございます。同時にもう一つの問題は、やはり他の年金とのいろいろなバランス、特に国共済の場合と比較をいたしまして、やはりそういう頭打ちの、たとえば新法のあれについて見ますと、十五万円というような頭打ちがございますので、その関係等も実はいろいろございまして、決議の点については私ども十分検討いたしたつもりでございますが、結果としては実現ができなかったと、こういうことでございます。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ここで旧法期間十一万円、新法十五万円というのは、昨年の改正後、今回はこれを見送るというわけですが、旧法期間の十一万の頭打ちというのは、これはどう考えても天井が低過ぎると思うのです。この間農地法の改正では天井を取っ払っちゃって無制限にしたというのは、これは同じ農林省が農地法では天井なしということにしておるのですから、直接関係あるというわけじゃないが、とにかく一番農業に関係のある農林年金の場合低い天井をそのままというのは、これは理論的にもじゃまになるじゃないかと思うのですが、たとえばこれを天井を一挙に取っ払えということが政府側として無理であるとすれば、これは適正に上限を上げるという程度のことはできると思うのですね。これもやはりいろいろな厚生省とか大蔵省とかあるいは他の年金との比較で、農林年金だけを手をつけるわけにいかぬということなんですか。
  106. 池田俊也

    池田政府委員 四十四年十月以前の上限十一万円でございますが、これも先ほど申し上げましたような事情改定ができなかったわけでございますが、私どもはやはりこれが将来ともこういうかっこうで絶対動かせないということでは必ずしもないんではなかろうか。と申しますのは、以前に旧法期間につきまして五万二千円、こういう頭打ちがあったわけでございます。これが改正をされたという経緯もございますので、そういう先ほど申し上げましたようないろいろな問題はあるわけでございますけれども、そういう御要望も非常に強いわけでございますから、努力をいたすつもりでございます。
  107. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは昨年用いた標準給与額を一定の倍率で先に別表で手直しをして政令にゆだねてあるのですね。一・二倍ですね、一二〇%を乗じたものが旧法期間の十一万頭打ちということで手直しになったわけですが、あの一・二倍という政令事項は、もう、一度しか使うわけにいかないんですか、法律上から見ると。あるいは一・二倍を一・五にするとか、それはできない仕組みになっていますか。
  108. 池田俊也

    池田政府委員 あれは政令できめる数字でございますから、絶対直せないということは制度的にはなかろうと思うわけでございますけれども、ただ、あれができました経緯というのは、これはもう芳賀先生よく御存じのとおりでございますが、いわゆる新法旧法との完全通算という話が発端でございまして、完全通算措置をとるということになりますと、これは旧法期間について現在百分の四十という率を当てはめるということになりますので、これは他の制度とのいろいろな関係もありまして、どうも非常に問題がある、こういうことで、大蔵省のほうともいろいろ御相談をいたしました結果、一つの新しい方法として、国共済等との旧法のときの給与のとり方の違いがございますので、そういう違いに着目をして実質的に完全通算ができるという含みで一・二という率を実は出したという経緯がございますので、これは前回の国会のときにもいろいろ御審議をいただいたと思いますが、私どもはこの一・二というものを当面変えるつもりはない——一・二を上げるということがあると同時に下げるということも理屈としてはあり得るわけでございますけれども、しかしながら当面、そういう経緯にかんがみまして、一・二は固定をしたい、こういう気持ちを申し上げたことがございますが、その考え方は、いまでも同じでございます。
  109. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の言うのは、この政令事項というものは、これは法律の本法から見れば委任立法みたいなものですからね。最近の政府のやり方は、法律の精神をゆがめるところまで政令というものを委任立法で何でもやっているわけですから、それだけの力があれば、政令事項で完全な手直しくらいはそうむずかしいものじゃないというふうに考えるわけです。  それからもう一つ池田局長、去年この点で説明した際に、この新旧の完全通算、つまり百分の四十と旧法期間の百分の三十三・三のこの開きが、大体二〇%程度であるということをはっきり言われて、これを是正するために一・二倍の政令の倍率を使う。もう一つ公務員共済等と比較した場合、一方は最終給与でいっておるし、農民年金のほうは三カ年の平均ということになっておるので、その最終給与と三カ年平均を比較すると、ここにも二〇%の差があるということをあなたは言われたんですよ。そのとおりだと思うんです。その二〇%ずつ、二つのそういうおくれを持っておるわけですから、一つだけ片づけたんでは、それで全面解決にはいかぬじゃないか。そうでしょう。そういう点は、実は気がかりとして一つ残っておった点ですが、やはり旧法期間といえども十一万円でいいんだということにはならぬと思うわけですね。この点は改正案には出ておりませんが、今回是正できないとしても、これはやはり政府の責任で、すみやかに改定する必要があるんじゃないかと思いますが、それはどうですか。
  110. 池田俊也

    池田政府委員 いまお話がありましたようなことも含めまして一・二という政令の数字がきまりまして、それによりまして多年の御要望であった点が大体満たされるのではないだろうか。ただその場合に問題になりましたのは、頭打ち制があるために比較的高給の方がその恩典に浴しないのは理屈としておかしいではないか、こういう御議論があって、それは理屈としてはまさにそのとおりでございますけれども完全通算という率を、旧法期間にも新法の率をかけるという措置をとらなかったためにできた、いわば、多少犠牲者みたいな形になりますので、そういう意味では、該当者の方にはお気の毒であるという感じは持っておりますわけでございますけれども、先ほど申し上げましたようなことでできなかったわけでございまして、一・二というのはさっきのお話のような経緯の上の数字でございますから、これをさらに引き上げまして、それによってカバーするというのはいささか困難ではないかと思うのでございます。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、第三点の附帯決議の事項ですが、「既裁定年金の最低保障額については、新規裁定年金の最低保障額なみに改善することとし、特に、二十年未満の遺族年金については、今回の改正の恩典が及んでいないので、可急的速やかに改善すること。」この点も今回の改正は、やはり年金の補足並みにやるべきであるということをここでうたっておるわけでありますが、これがまた非常に複雑な改正ということに終わっておるわけです。これは他の年金ではこういうことをやってないわけですね。ですからこれは比較論でこうしなきゃならぬということにはならぬと思うのですよ。この点をどうしてこういう中途はんぱな改正しかできないのか、内容を明らかにしてもらいたい。
  112. 池田俊也

    池田政府委員 最低保障額の引き上げの問題で、前回も特に二十年未満の遺族年金が非常に額が低い。一万九千円とか二万一千円程度の額があるわけでございまして、非常に低過ぎるということがございまして、そういう既裁定のものについての最低保障額を新規並みに引き上げるという御決議があったわけでございますが、これにつきましても私ども実は、確かに実情から見ますといかにも低いという部面がございますので、引き上げたいという気持ちは持っておったわけでございますけれども、ただこれはやはり他とのいろいろな問題がございまして、それを上げるということになりますと恩給のほうとの関連があるわけでございます。これは私どもが申し上げるよりむしろ大蔵省のほうからお話があるのがよろしいと思いますけれども、かなりそういうような該当者が多いような話を伺っておるわけでございまして、どうも国の財源の点から非常にむずかしいということがあったわけでございます。それで七十歳以上に関連いたすようなものにつきまして今回一部引き上げをいたした、こういうことでございまして、私どもはやはり方向としては近い将来に改正をしたいという気持ちには変わりはないわけでございます。
  113. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、これは局長あれですよ。恩給との比較じゃなくて、比較ということであるならばむしろ厚生年金との比較を論じたほうがいいんじゃないかと思います。厚生省のほうはどうなっていますか。こういう七十歳の制限とかそれから二十年未満の制限というのは、今回の農林年金法のこの既裁定の最低保障額の改正とあわせてどういうふうになっていますか。
  114. 山口新一郎

    ○山口説明員 厚生年金におきましては、昭和二十九年の改正以来遺族年金、障害年金につきまして最低保障は、老齢年金の場合の二十年の定額部分だけを最低保障するという考え方をずっととっております。したがいまして現在は障害給付、遺族給付ともに年額で九万六千円の最低保障ということでございます。国民年金も一応これに準じておるということでございます。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると池田さん、これはまだ改正できるんじゃないですか。高齢者層が多いからだめなんだというようなことはおかしいんじゃないですか。
  116. 池田俊也

    池田政府委員 厚生年金関係は、いまお話しのように定額部分九万六千円ということでございますけれども、私どもはやはり方向としてはそういう線にぜひ持っていきたいと思っておりますけれども、私ども承知しておるのは、恩給等とのいろいろなバランス等がございまして非常に困難であるというふうに承知をしておるのでございます。
  117. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうして恩給とのバランス考えなければならぬのですか。旧恩給というのは、これは何も本人負担というのはない形で、国の恩恵としてやってきたわけでしょう、昔の恩給は。だから比較するとすれば、もともと同根であった厚生年金が現状においてどうなっておる、分離した農林年金がどうあらなければならぬというのは、むしろ公的年金の中ではやはり厚生年金との比較ですね、厚生年金のほうがそういう点はほんとうの、たとえば障害年金にしても遺族年金にしても、これはやはり年金制度の中においては大切な社会保障の柱だと思うんですよ。そういう点が、本家のほうの厚生年金において相当の改善がすでになされておるという場合においては、農林年金においてもこれらの最低保障等は当然それよりも有利に直せないとしても、同等にこれを改善するということはできると思うんですよね。農林年金の受給者なんというのは、恩給にあまり関係ないんですよね。皆さんの年寄りのほうは恩給関係があるが、民間のほうには旧軍人等の場合は別ですけれども、やはり民間産業の中における比較ということになれば、厚生年金が、先ほど年金課長言われたとおり、鋭意改善に努力して、ここ一両年の間に非常に見るべきものがあるわけですから、最近、毎年毎年の改正ですからね、これは全くわれわれとしては遺憾千万ということになる。
  118. 池田俊也

    池田政府委員 説明があまり適切でなかったかと思うのでございますが、結局国共済農林年金の場合は、もとは厚生年金から出たという経緯がございますけれども、一方においては厚生年金、また他方においては国共済とをにらみまして、いろいろ改定等をやっておるというケースがかなりあるわけであります。それで結局国共済のほうが恩給等も一方ではにらみながらきまっている、こういう事情がございますので、いまの二十年未満の遺族年金等の扱いは国共済等でも同じような扱いになっておるわけでございますから、農林年金だけを上げるというのは非常にむずかしい、こういう事情があるわけでございます。  それからもう一つは、この最低保障を引き上げるということになりますと、当然それはそれによりましてまた負担がかかるわけでございます。その負担がかかりましたものを、だれが一体負担をするのかということになりますと、現在の体制では組合員にも負担がかかるたてまえになるわけでございます。もちろん国も、二八%の範囲内では負担をするということにもなりますけれども、そういう組合員の方にも負担がかかるという筋合にもなるわけなんで、そういう負担の状況等も考えてやらなければならないという、こういういろいろな事情によりまして、その該当の方のことを考えますと、確かに私どももちょっとあまりにも低いではないかという印象を強く持っておるわけでございますけれども、なかなかむずかしい点があるわけでございます。
  119. 芳賀貢

    ○芳賀委員 七十歳の年齢制限、それから遺族年金の最低は、やはり一万九千というのは直っていないのでしょう。
  120. 池田俊也

    池田政府委員 二十年未満でございまして、三十四年から三十九年の旧法期間でございますが、その間にそういうのが発生したようなものについては一万九千円、それから三十九年から四十年の四月三十日までの間に発生しましたものについては二万一千三百六十円という金額になっておりまして、この点はもちろん変わっておらないわけでございます。
  121. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは一体いいと思っているのですか。これを直せば、掛け金負担とか改善された部分財政負担をだれがするかということになるから直さぬということなら、これはこの年金財政上の理由だけで、当然直すべきものを直さぬということになるわけでしょう、このことは政府の責任じゃないですか。百分の二十にしなければならぬものが、それが改定できない。調整財源についてもいまのようなつかみ金の程度ではいけないので、これを少なくとも掛け金率にすれば百分の八とか、給付率にすれば百分の六程度のものは確保するということになれば、これはできるわけでしょう。やらなければならぬことをやらないで、これをやれば当事者の負担がふえるからやらぬということは、これは理由にならぬですよ。毎年毎年これでまた続くということになるじゃないですか。そうなるでしょう。だから、これはできないのなら国会で改正するとか、いや、それは政府が来年までに準備してやるのならやりますとか、この点はもう少し明確にしてもらいたいと思うのですよ。年齢制限と二十歳未満の最低保障額の引き上げというような問題は、これは単に政府のさっきの答弁を聞いて、そうですかというわけにいかぬですからね。
  122. 池田俊也

    池田政府委員 私が先ほど申し上げたのは、負担関係もあるということを申し上げたので、負担関係だけではなしに、国共済恩給等との横並びの問題等もあるということを申し上げたわけでございますが、かりに負担の点がいまお話しのように二〇%なり何なりに上がりましても、それは一部でございますから、残りのものは組合員負担につながる可能性がもちろんあるわけでございます。ただ、実態を見ますと、そういう問題はあるにいたしましても、常識的に見てあまりに低いではないかという感じは私どもも、たびたび申し上げているように、持っておるわけでございます。そういうことでございますので、既裁定の年金の最低保障額については逐次上げてきているわけでございます。未来永劫にそういう安い、低いものが続くということは、私ども考えておるわけではもちろんございませんで、なるべく早い機会に上げたい、こういう気持ちには変わりないわけでございます。
  123. 芳賀貢

    ○芳賀委員 どうも、農林省年金に対する考えは、たとえば先般提案された農業者年金法においても、名前は年金というものを随時随所に用いておりますが、ほんとうに年金の持つ社会保障の本質というものをわきまえて年金制度を扱っておるかどうかは、その点が近ごろ非常に疑問に感じているのですよ。いままでわれわれは農林省を相当信用しておったのですがね。厚生年金から分離して、農林年金農林省が所管して運営すると、これは分離したことが将来にわたって——厚生年金が悪くなればいいとはだれも考えておりませんよ。しかしいつの時代においても、厚年と比較をした場合においては、ある程度の有利性は保つものであるというふうに期待を持ってきたわけですが、昨年の改正以来、ことしの改正においても、今度は何か恩給法との比較でどうかとか、これを直せば今度は掛け金負担にそれを転嫁するようなことになるのでできないとか、これは全く逃げ腰のかまえじゃないですか。この際、この点は猛省を促しておきたいと思います。  それから、附帯決議の第四点の「既裁定年金のベース・アップについては、今回の改正の骨子は、国家公務員に準じたものであるが、農林漁業団体職員共済組合法第一条の二の主旨に照し、すみやかに、スライド原則の具体化をはかること。」と——これは政府の皆さん、先ほど繰り返し、べースアップとスライドは別個のものであるということを述べられましたが、それはそのとおりであります。三十九年ですか四十一年ですか、各年金を通じてスライド原則の規定がこの法律に明定されておるのですが、これは具体的な根拠を持っていないのですね。どういう経済的な事情の変動あるいはまた国民の消費生活水準がどのように変化、変動した場合にこのスライド原則を発動できるという、内容的な規定がないわけですからね。これは各年金を通じてスライド原則の発動基準というものをすみやかに明確化して、せっかく各年金法の中に原則規定だけがうたわれておるのであるからして、どういう経済変動が生じた場合にこれに対応してスライドの発動をするかという根拠が、まだ数年たっても不明なわけです。これは単に農林年金だけに求めるということはちょっと無理があるかもしれませんが、せっかく各年金を通じこのスライド原則をうたっておきながら、発動の基準、根拠を策定しないというのはどういうわけなんですか。
  124. 池田俊也

    池田政府委員 私が的確にお答えできるかどうか疑問でございますけれども、なかなかスライドといいますか、こういう経済事情に応じまして改定をするというのはむずかしい問題がございますので、従来各省のそれぞれに関係しておりますところの者が集まりまして会議を開きまして、その会議においてこの問題についてはさらに具体的な検討をする、こういうことになっていろいろ検討が行なわれているわけでございますけれども、具体的な基準ということになりますと、なかなかいろいろ問題があって、まだ現在までは決定を見ていない、こういう事情でございます。
  125. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ちょうど大蔵省、厚生省も来ておられるので、この際、各省としてはいつごろまでをめどにしてこれをきめるか、その作業予定はどうなっておりますか。
  126. 相原三郎

    相原説明員 この公的年金の連絡調整会議は、総理府の所管でいまやっておるわけでございます。数回会議は開かれておるようでございますが、なかなか議論はむずかしいようでございますが、いま鋭意詰めておる最中と聞いております。したがって、ある時期には結論が出るかと思いますが、その程度でひとつごかんべんを……。
  127. 芳賀貢

    ○芳賀委員 われわれ社会党の場合は、昨年も農林年金改正に対して独自の対案を出して、当委員会で審議したことは御承知のとおりであります。私どもの方針としては、消費者物価水準あるいは経済変動が五%をこえた場合にはスライドの発動をすべきであるというふうに、内容的なものを法律に示しておるわけですから、そういうめどがはっきり法文上あれば、事務当局においても仕事がしやすいと思うのですよ。これは関係者ひとしく期待しておる点ですから、政府にまかされた点でありますから、今後速急にこの作業を進めて、せっかく各年金法にうたわれておる規定ですから、これが必要なときには適時発動できるようにしておくべきだと思うわけであります。  あと昨年の附帯決議では、対象団体について適用範囲をどうするかという問題、それから六番目には農林漁業団体職員給与が他に比較して非常に低位である、こういう点に対しても改善のために適切な指導をすべきであるという点をうたっておるわけですが、きょうは時間の都合もありますし、また重要な点については、明日担当大臣出席した際に、さらに責任ある態度を究明したいというふうに考えておるので、以上で私のきょうの質問は終わることにいたします。      ————◇—————
  128. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 引き続き、外国政府等に対する米穀の売渡しに関する暫定措置法案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。渡辺農林政務次官。     —————————————
  129. 渡辺美智雄

    ○渡辺政府委員 外国政府等に対する米穀の売渡しに関する暫定措置法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  近年、米の一人当たり消費量は、食生活の高度化により減少の一途をたどり、人口の増加や加工用需要の増加はあるものの、総体としての需要量は、三十八年度の一千三百四十一万トンをピークにその後の五年間で約百二十万トンの減少を見ております。  一方、米の生産量は、品種の改良、稲作技術の向上、土地改良の進展等により、昭和四十二年以降連続三年間千四百万トン台を記録するに至っております。  このような事情から米の需給は恒常的な供給過剰の状態となっており、これを反映して政府の古米持ち越し量は、昨年十月末には約五百五十万トンに達し、本年十月末にはこのまま推移すれば約八百万トンに達するものと見込まれます。これに伴い食糧管理の運営の面でも種々困難な問題に当面するに至っております。  このような事態に対処するため、政府といたしましては、基本的には緊急に需給の均衡を回復することが必要と考え、需要の拡大をはかるとともに、地方公共団体、生産者団体の協力を得て米の減産対策に取り組んでいるところでございます。  また、現に発生している過剰米については、あらゆる方策を講じ極力有効な処理をはかることが必要であり、これについても鋭意検討を重ね、その一部についてはすでに実施に移しているところであります。  海外への国内産米の輸出は、このような米の過剰対策の一環として、有効な方途であると考えられますが、わが国の円粒種の米に対する嗜好等の問題があるほか、輸入国が主として開発途上国であることから、これらの国の財政事情、経済事情等により必ずしも円滑には進まない面があるのであります。そこで政府がその保有する米穀を輸出を目的として売り渡す場合にその売り渡し代金の支払いにつき長期、低利の延べ払いの方法によることができることとし、米穀の円滑な輸出に資することとしようというのがこの法律案提出の趣旨であります。  以上がこの法律案を提案する理由でありますが、次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明を申し上げます。  この法律案の主たる内容といたしましては、政府がその保有する米穀を輸出を目的として売り渡す場合にその代金の支払い方法を長期の延べ払いによることができることとしていることでありますが、この場合の売り渡しの相手方により次のような支払い方法を認めることといたしております。  まず第一は、外国政府その他これに準ずるものとして農林大臣が指定する者に対し売り渡しをなす場合であります。この場合の売り渡しの対価の支払い方法は、担保の提供を免除し、政令で定める利率を下らない利率による利息を付した上、十年以内の据え置き期間を含めて三十年以内の年賦支払いの方法によるものとしております。  第二は、政府がその保有する米穀を外国政府等以外の者に対し売り渡し、その者がこれを外国政府等に売り渡す場合であります。この場合の外国政府等以外の者に対する売り渡しの対価の支払い方法は、確実な担保を提供させ、政令で定める利率を下らない利率による利息を付した上、三年以内の年賦支払いまたは半年賦支払いの方法によるものとしております。なお、この場合は、政府から米穀の売り渡しを受けた者が、これを外国政府等に対し、同一の条件で渡り渡すことが確実と認められる場合に限るものとしております。  なお、わが国の米穀の輸出の海外の米輸出国に対する影響に配慮し、この法律に定める条件による米穀の売り渡しは、開発途上にある諸国の米穀の通常の輸出を阻害することのないよう配慮して行なうものとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決いただきますようお願いをいたします。
  130. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 以上で趣旨説明は終わりました。  引き続き、補足説明を聴取いたします。森本食糧庁長官
  131. 森本修

    ○森本政府委員 外国政府等に対する米穀の売り渡しに関する暫定措置法案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べたところでありますが、その背景となる最近における米の輸出の状況等について若干補足して御説明いたします。  わが国といたしましては、恒常的な供給過剰という米の需給事情を背景として昨年来数ヵ国に対して国内産米の輸出を行なっているところでありまして、現在までに、韓国、パキスタンに対する現物貸し付け、インドネシアに対する国際穀物協定の食糧援助規約に関連する食糧援助、いわゆるKR食糧援助による輸出、沖繩に対する延べ払い輸出、ナイジェリアに対する難民救済のための輸出を行なっており、これら輸出の総数量は約八十万トンに及ぶのであります。  現在の米の需給事情等にかんがみますとき、米の過剰対策の一環として、このような米の輸出をさらに円滑に進めていく必要があるわけでありますが、そのためこの際、輸出についての一般的な方式を確立する必要があると考えられるのであります。この場合、輸入国が主として開発途上国であることから、これらの諸国の財政事情、経済事情により通常の売買条件では必ずしも輸出が円滑には進まないという事情があるため、代金の支払い条件を緩和したものとする必要があり、長期延べ払いによる売却方式を将用することとし、本法案を提出することとした次第であります。  次に、本法案の内容について、補足して御説明いたします。  本法案は、全三項よりなっておりますが、第一項は、提案理由説明において申し述べましたように、売り渡しの相手方を「外国政府その他これに準ずるものとして農林大臣が指定する者」と「その他の者」とに区分し、それぞれについての延べ払いの条件を規定しております。この場合の、外国政府に準ずるものとして農林大臣が指定する者としては、国により公社、公団等が輸入を取り扱っている場合等も想定されますので、このような場合にこれらの公社、公団等を指定することを考えているものであります。また、「その他の者」とは、輸出業者等を想定しているのであります。  延べ払いの条件につきましては、前者につきましては、相手が外国政府等であり、いわば政府間の貸借となるものでありますので、担保の提供を免除し、政令で定める利率を下らない利率による利息を付して、十年以内の据え置き期間を含めた三十年以内の延べ払いを認めることとしております。後者につきましては、これは、政府が輸出業者等に米穀を売り渡し、これらの者がさらに同一の支払い条件でこれを外国政府等に売り渡す場合を想定しているのでありますが、国債その他の確実な担保を提供させ、政令で定める利率を下らない利率による利息を付して、三年以内の延べ払いを認めることとしております。この両者の場合を通じて、延べ払い期間中の利息の利率の最低限につきましては、政令で定めることとしておりますが、他の比較すべき信用供与の事例等を勘案して定める考えであります。  第二項は、この法律を運用する上での配慮事項を定めているものでありますが、この法律に定める条件による米の輸出が他の米輸出国、特にタイ、ビルマ等の開発途上にある国の米の通常の輸出を阻害することとなっては好ましくないので、余剰処理の国際的な原則からも当然のことではありますが、そのようなことのないよう配慮することとしているのであります。  最後に、第三項におきましては、このような米の売り渡しの延べ払い条件につき、国の所有に属する物品の売払代金の納付に関する法律の例にならって、国の財産の管理を所管する大蔵大臣に協議いたすことを規定しております。  以上をもちまして、この法律案の提案理由の補足説明といたします。
  132. 草野一郎平

    草野委員長 以代で補足説明は終わりました。     —————————————
  133. 草野一郎平

    草野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  134. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、ただいま渡辺政務次官の提案理由説明、さらに森本食糧庁長官から補足説明のありました外国政府等に対する米穀の売り渡しに関する暫定措置法案について御質問を申し上げたいと思います。基本的な問題については、あす倉石農林大臣が御出席なされますので、その機会に若干御質問の機会を得たいと考えております。そこで、きょうは法律案内容に関連する問題について若干お伺いをいたしたいと思います。  まず最近のわが国の米の需給の関係、あるいは在庫の実態ということから、今回ただいま御提案になったような暫定措置法案をされてまいったわけでございますが、われわれ社会党も、この法案の手法を通じて当面の需給のバランスを回復するという考え方については、基本的に賛成でございます。しかし、この手法をとって今後対外輸出をするという場合に、当然検討していかなければならぬ幾つかの問題があるわけでございます。その場合に考えられることは、一つはわが国の後進国援助問題あるいはケネディラウンドとの関連の問題、特にこの法律を通じて米の輸出がなされるであろう東南アジアの各国の外貨ポジションその他米を中心にした輸出入の実態の問題等々、各般の問題を考えていく必要があろうかと思います。最初にお伺いしたいのはケネディラウンドの問題から若干入りたいと思います。  御承知の一九六七年の国際穀物協定というのが取りきめられたわけでありますが、私ども承知しておるところでは、この一九六七年の国際穀物協定が取りきめられる段階で、内容的には小麦貿易規約と、もう一つは食糧援助規約、この二つがその中に含まれておるわけでありますけれども、特に食糧援助規約の第二条、国際食糧援助については、当時日本といたしましては保留をして帰ってきたという経緯がございます。この第二条の国際食糧援助の面について日本が当時保留をしたいきさつについて、関係省から簡単に御説明を願いたいと思います。
  135. 小林智彦

    ○小林説明員 お答え申し上げます。  わが国が食糧援助規約の第二条を留保いたしましたいきさつは、当時わが国といたしましては、国際穀物協定——小麦を中心とした穀物の貿易に関する国際協定の中に、援助に関する取りきめが入るということについては、本来的には少し質の違った問題であるとまず考えておったわけでございます。それからもう一つは食糧援助自体はけっこうなんですが、そもそも後進国の食糧問題を解決するためには、食糧援助をもう少し広く考えて、開発途上国の食糧増産に資するような方法、そういうものを中心考えるべきではないかというような考えが基本的にございましたので、わが国としてはこの条約上の義務としての援助については、留保するということにしたわけでございます。しかし、ただいま申し上げましたように食糧援助自体について、その持つ重要性については日本としても同感でございましたので、わが国としては義務は留保しましたけれども、自発的な形で食糧援助に貢献するという別途の意図表明を行ないまして、それに伴う書簡を発出したという次第でございます。
  136. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま御説明がありましたように、食糧援助規約の第二条については日本は留保した。しかし同時に、アメリカの国務長官に対して、下田さんの名前をもっていわゆる食糧援助問題についての留保条項に言及をして日本の考え方を表明をした。同時に、ガットの事務局長に対しても、ジュネーブの当時の青木大使を通じて同趣旨の見解を表明した、そういういきさつに基づいて第二条そのものについては保留をいたしましたが、ケネディラウンドの食糧援助については、日本としても今日まで実施をしてきたわけであります。そこで、今日まで実施をしてきたケネディラウンド食糧援助の概況について、簡単に御説明を願います。
  137. 村上謙

    ○村上説明員 穀物援助規約に基づきまして現在までにわが国が実施してまいりましたKR援助について御報告申し上げます。  まず初年度外貨で申しますと、七百四十万ドル、これを一九六八年度の分として実施してまいりまして、一九六九年度、つまり前会計年度分として千四百三十万ドル実施してまいりました。実施してまいりました対象国は、主としてラオスそれからアフガニスタン、インドネシア、セイロンそれから中東の三国というふうな地域的な配分でございます。それから供与しました物資としましては米、米の中にはタイ米及び日本米がございます、及び農業物資、こういうふうになっております。
  138. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 結局、このケネディラウンドの食糧援助は、昭和四十三年には規定額の半分、四十四年、四十五年にかけては規定額というふうな形でいままで実施してきたと承知をいたしております。そして実施の各国の内容を見ますと、特にインドネシアあるいはラオスに対しては、タイ米を併用しておるわけでございます。たとえばインドネシアの第一次の昭和四十四年十月十七日の取りきめ署名に基づく実施においては、日本米が百万ドル、タイ米が三百万ドルというふうな形で、タイ米を併用しておられますし、同時に第二回目の一千万ドルのインドネシアに対する食糧援助においては、四百五十万ドルの日本米とフィフティフィフティの四百五十万ドルのタイ米というのを併用しておるわけでございます。同時にラオスにおいては、タイ米を使用しておるわけでありますが、特にタイ米をわが国の食糧援助に併用したという理由はどういうところにあるのか。本来日本の今日の米の過剰在庫の実態からいくならば、できるだけこういう機会に日本米を使うというのが農林省としてのお気持ちだろうと思うのですけれども、どういう諸般の判断に基づいてタイ米を併用されたのか、その点について御説明を願いたいと思います。
  139. 村上謙

    ○村上説明員 御案内のとおり穀物協定を受諾しました際に発出いたしましたアメリカの国務長官あての書簡には、供与する物質といたしまして「食用穀物、または需要国が必要としかつ要請する場合には、その他の農業物資の形で援助を給与する」こういうふうに書いてございます。そこでインドネシアにつきましては、まず援助国の希望を聞きましたところ、一九六八年分につきましてはやはり農業物資百万ドル、その他は米でいただきたい、こういう希望がございましたので米になったわけでございます。そこでインドネシア側としましては、やはり地域的にも近くにございます、かつ価格の点も有利なタイ米というような希望がございましてタイ米になったわけでございます。他方わが国におきましても、古米という問題がございますものですから、日本米の供与方を先方に申し出ましたところ、先生御指摘のように日本米百万ドル、タイ米三百万ドル、こういうふうになった経緯でございます。  それから昨年の一九六九年分につきましては、やはりそういうことでたまたまインドネシアの食糧事情が非常に逼迫いたしまして、やはり早急に米をもらいたいという要請がございました。そこで先方としましては、やはりインドネシアの人々の嗜好にも合いますタイ米かつ先ほど申しましたような取引条件も比較的有利なタイ米というような希望もございましたけれども、他方わが方としましても、たまたまそのころ現在まで引き続いております古米問題というような問題を控えておりましたものですから、インドネシアとの間に交渉いたしまして、半々というようなことになった経緯がございます。  先ほど申し上げました一九六八年分の供与額についてこの席で若干訂正させていただきますと、先ほど私七百四十万ドルと申しましたけれども、正確な数字は七百十五万ドルでございます。訂正させていただきます。
  140. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 われわれの気持ちからいけば、ケネディラウンドの食糧援助によって東南アジア等に食糧援助をする場合は、日本の今日の在庫の実態からいたしますと、諸般の政治的判断というものはもちろんあると思いますけれども、できるだけ日本米で食糧援助をするというのが日本の実情であろうかと率直にいって思う。私はこの点についてこれ以上議論するつもりはございませんが、それがやはり実際望ましい日本の側からの希望であろうというふうに思うのです。そこで、ケネディラウンドの食糧援助規約については、第十一条のところで、有効期間として「この規約は、三年間効力を有する。」、つまりわが国の過剰在庫の処理の手法としてケネディラウンドによって日本米も東南アジア等に現実に入っておる、入っておるのだが、このケネディラウンドによる食糧援助の有効期間というのは三年であるということに相なっておりまして、したがって来年の六月三十日でもって別段新たな取りきめがなければケネディラウンドの食糧援助が終わるということに立法上はなっておる。そこで、これは外務省になるのだろうと思いますが、今日までケネディラウンドの延長問題あるいは今後予定される国際会議等を通じてそういうものが意見として出てくると判断をされるのか。いわゆる三年間でピリオドを打たれるというふうに判断をしていいのかどうか。いわば第十一条の有効期間の「この規約は、三年間効力を有する。」という問題についての今日までの国際会議等におけるところの経緯、あるいはこの期間が失効までの段階における政治的判断というものをどう考えておられるかについてお伺いしておきたいと思います。
  141. 小林智彦

    ○小林説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおりこの食糧援助規約の期限は来年の六月三十日で切れる、有効期限三年間を終わりまして切れることになっております。現在までのところ公式の場でこの国際穀物協定またはその一部の食糧援助規約を延長すべきであるという議論がなされたことはございません。しかし、非公式ではありますけれども、ことしの四月の初めには小麦理事会のメンバーである主要国が集まりまして、もう来年の六月末に切れる国際穀物協定についてどう扱かったらいいかという基本的な考え方についての非公式な意見交換をしたわけですが、その際、具体的に延長すべきであるとか延長すべきでないという議論は出なかったわけですが、全体としてどうすべきかを今後検討すべきであるという意見は出たわけであります。  それから、一般的に援助の問題につきましては開発途上国から非常に歓迎されておる問題でございますので、今後、たとえばことしの六月に開かれるこの国際穀物協定に基づきます小麦理事会、または食糧援助規約に基づきます食糧援助委員会という場で、これを延ばすべきかどうか、延ばすとすればどういう形にすべきかという議論が行なわれ、かっこの協定延長会議というものがたとえば国連主催で行なわれるということになりますれば、さらに開発途上国からもこういう援助の形のものを延ばせという要請が出てくるかと考えております。
  142. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 おそらく、私どもの判断といたしましても、いま外務省から御答弁があったように、この第十一条の問題に関連をしてケネディラウンドの食糧援助については今明年にかけて特に開発途上国等の該当国から延長問題が出てくるだろう、南北問題というふうな国際的な非常に重要な基本問題とも関連をして、これは日本政府としても十分前向きにこれらの問題を受けとめなければならぬだろう、こういう判断をいたします。しかし、いずれにしても、最近の米のいわば在庫の打開の対策として活用しております一つの手法であるケネディラウンドの食糧援助の問題については、これが十一条の規定どおりにピリオドを打たれるということになると、この手法が消えるわけでありまして、この手法を通じてある程度はけておる日本米というものについては、その手法を用いることができないということもある意味では予測しておかなければならぬ。これはまあ今後の問題でありますが……。  それと関連をして、予算的に十分内容検討しておりませんが、私の承知しておるところでは、来年度予算も半分の分については予算措置をするという形に事実上はなるんじゃないかと思うのですが、その点についてはそういうことに受け取って間違いはないのでしょうか。
  143. 村上謙

    ○村上説明員 これは正確には大蔵当局より御答弁になったほうがいいかと存じますけれども、穀物援助規約の有効期間が明年、一九七一年六月までということになっておりますもので、現在までの予算に計上しました額から推計しますと、あと半年分、すなわち七百十五万ドル残っている関係になります。したがいまして、私どもといたしましては、やはり七百十五万ドルに相当する円貨の予算をお願いいたしたいと、こう考えております。
  144. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ケネディラウンドの問題については、きょうは質問としてはこの程度にいたしておきたいと思います。  そこで、昨年度御承知のように、沖繩につきましてはすでに国会で、沖繩における産業の振興開発等に資するための琉球政府に対する米穀の売渡、しについての特別措置に関する法律ということで、沖繩に対する米の問題の処理を現実にやっておるわけであります。そして通常の状態からいけば、一九七二年に沖繩が返還されるだろうという時間的な問題もあるわけでありますが、この沖繩に対する米の輸出問題に関連をして、新しく出された外国政府等に対する米穀の売渡しに関する暫定措置法案、これは法律内容にもありますように法律の第一項第一号のところにも「外国の政府」云々というふうな関連から見まして、沖繩の問題についてはこの新しく提案された本法で処理をするのでなしに、当然昨年通過を見ました、先ほど言った法律案で処理するという方針に理解をしていいと思うのですが、この沖繩問題は私の解釈どおりに理解をしてよろしいのでございましょうか。
  145. 森本修

    ○森本政府委員 沖繩に対しまして御指摘のように特別の立法がございますし、また立法の経緯からいいましても、琉球政府の強い要望でああいった法律ができたということにもなっておりますので、ただいまお述べになったような方向で処理をするということになろうかと思います。
  146. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで沖繩の問題をお聞きしました機会に、私は沖繩の本土復帰に伴う経済再建の問題、あるいはそれに関連をする、特に本委員会関係のある農政サイドの問題ということについても若干お伺いをいたしたいというふうに考えておりましたが、何せ政府といたしましても当面そういう問題も含めて鋭意各省間を含めた検討過程でありまして、必ずしもそれらの基本問題あるいは具体的な問題について十分お伺いをすることが今日の時点でどうかという判断をいたしまして、ただ一点だけちょっとお伺いいたしておきたいと思うのです。  きのうの全国紙でおおむね一斉に、沖繩経済開発の方向として財界のほうから日本経済調査協議会という名をもってレポートが出されておるわけですが、そのレポートの中で、沖繩に食管制の適用は不適当というふうな内容の趣旨が書かれておりまして、そして若干の新聞に報道された内容で見ますと、米作については戦後縮小してきたが、沖繩に食管制度を適用して米作面積が再びふえるような措置は適当でないので、当分の間輸入米相当の価格で本土の米の供給を続けるべきであるという趣旨の——これは民間のことでありますからこれを取り上げてどうというのではありませんけれども、たまたまそういうレポートがきのう報道された問題とも関連をいたしまして、特にいま本法においても米の問題中心に論議しておることでもありますし、いま農林省サイドとしてはこの沖繩における米作問題あるいは食管の適用問題については現時点ではどういうお考えでおられるかという点をひとつお伺いをしておきたいと思います。
  147. 渡辺美智雄

    ○渡辺政府委員 沖繩に食管制度を続けることは適当でないというようなことを民間の団体できめたという話でありますが、政府といたしましては沖繩と本土とはここ二十数年来制度が、食管のことばかりでなくて、もう非常に違うわけであります。賃金の水準も違いますし、またお酒のようなものに対する税制の体制というものもまるっきり違う。あちらでは食管制度は、日本のようなものはありません。したがって、これをどういうふうにしていくかということは、ただ食管だけの問題ではなくして、これはいろいろな制度と一緒にしてよく検討をしていかなければならない、かように思っております。したがって、いまの時点において沖繩には食管制度を波及させないとかどうとかいうことを申し上げられる時期ではない、かように思うのであります。
  148. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今回のこの外国政府等に対する米穀の売渡しに関する暫定措置法案というのは、いわば長期延べ払い方式による売り渡しという形になるわけですが、いままでこの二、三年来実施をしてきた日本米の対外輸出という問題については、先ほど触れましたケネディラウンドによる食糧援助、さらに食管法の第六条による輸出あるいは食管法の第七条第一項による貸し付け、こういう形で若干の事例が出ておるわけでありますが、今後本法が実施をされるような形になった場合に、東南アジア等に実施をしてきたいわば若干の事例であります貸し付け方式、それからここでやろうとしておる長期延べ払い方式というもののいずれが本流になろうと考えておるのか。おそらく、私どもの判断としては、せっかくこの新法をつくるという趣旨は、これを本流として、いわゆる食管法の第七条第一項による貸し付け方式というのは、いままで数個の例でやってきたことであるけれども、それはなるべくそういう手法をとらずに、この新法の方式でこれからいくのが本流であるというふうに判断をするわけですけれども、この問題についての、この法案を提案した立法の趣旨から見てそう考えていいのかどうか、その辺のところについて御答弁を願いたいと思います。
  149. 渡辺美智雄

    ○渡辺政府委員 そういうふうに考えてよいと思います。しかしながら、貸し付け方式は一切やらぬというふうなことではありません。ただ、いまの貸し付け方式には、いろいろ日本の古米を処理する上において不便な点があるわけであります。たとえば現品で返してもらうというようなことなどについても、日本のお米と同じようなお米を返してもらうというようなたてまえでありますから、そうすると、日本のお米と同じような準内地米のできる地域というものはおのずから限られてくる、こういうような点等においても、今後古米、古々米を相当大幅に輸出しようという場合に、そういうものがじゃまになることがあります。あるいは現品で返してもらうということになると、日本の生産というものが現在のような状態でいって、将来二十年ももっと先のことはなかなかわかりにくいのでありますが、現物で日本にどんどん返してもらうということがはたしていいのかどうかという点についても問題がございます。また、金利等の問題もございます。したがってこの法律案をつくるということは、やはり貸し付け方式、こういうことでは不便な点が多いので法案を提出するわけですから、この法律案中心になって輸出が行なわれていくだろう、こういうふうにお考えをいただいてけっこうであると思います。
  150. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、いまも政務次官から御答弁がありましたが、これはやはり方針としてはもっと的確にしておく必要があるだろうと思います。いずれにしても、これがこれからの対外の米の輸出をする場合の手法としては本流になる。そしていわゆる食管法が昭和十七年にできた当時以降、米の輸出なんというようなことは、条文上にはもちろんありましたけれども、予測もしてなかったという事態の中で、第六条なり第七条なりの食管法を引用いたしまして若干の事例を実施してきましたけれども、先ほどの政務次官のお話にもありましたように、等質等量のものを将来返してくれ一そうすると、東南アジアに等質等量のものが期待できるかという問題もありましょうし、またそういう将来の時点における日本の米の需給状況というものにそれがプラスされてはね返ってくるという問題をどう受けとめたらいいのかということもありましょうから、やはりいわゆる瑞穂の国である日本の、米を主体にした農業の姿というのは、米の需給問題を議論した際にも、農林大臣から、米については一〇〇%の自給ということをたてまえとしていきたいという方針から見ても、この新法ができれば、当然わが国の食糧政策の基本から見て、この新法が本流として運営されると判断してそう大きな狂いはないだろうと思います。そこで若干基本的な問題で前段述べた問題も後ほど触れたいと思いますけれども法律内容について少しくお伺いしておきたいと思います。  この法律の第一項第一号の点について、これは「外国の政府その他これに準ずるものとして農林大臣が指定する者」というふうなことで「担保の提供を免除し、かつ、政令で定める利率を下らない利率による利息を附してする支払期間三十年以内(十年以内の据置期間を含む。)の年賦支払の方法で農林大臣が定める」という、こういう第一項の方式と、「前号に掲げる者以外の者」として、短期の、いわば延べ払い方式として、支払い期間が三年以内、そして確実な担保でもって、利率については「政令で定める利率」、ここで、この法律でお伺いをしたいのは、第一項の第一号の「政令で定める利率」という問題の考え方であります。おそらく、ここで考えておる「政令で定める利率」というのは、やはり長期延べ払いに準じて、米の輸出国がやっておる方式、特に御承知の、国際的に見て米の輸出国ということになればアメリカが筆頭であり、大体最近の数字からいえば百八十万トンベースの対外輸出がなされておる。これが最高である。そしてそれに次いで、たとえば先ほど触れましたタイあるいはお隣の中共、これが百万トンベースで続いておる。これが群を抜いておるという形になるわけですが、そこで対外的に非常に米を出しておりますアメリカの例からいきますと、据え置き期間十年、そして年賦償還の期間が三十年、そして据え置き期間中の利子が二分、それから償還中の期間の利子が三分というふうなものさしが、いわゆる「政令で定める利率」を考える場合のものさしになる。第一項第一号のものさしは、それがものさしになるというふうに判断をしておるわけですが、政府がここで考えておる「政令で定める利率」というものは、そう考えていいのかどうかという点についてお伺いしておきたいと思います。
  151. 渡辺美智雄

    ○渡辺政府委員 そのようにお考えになってけっこうでございます。
  152. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで同時に第一項の第二号の民間が取り扱う場合の「政令で定める利率」というこの利率は、これも同じアメリカの韓国に対する事例でいきますと、これは、アメリカはCCCがこういうものを取り扱っておることは御承知でありますが、その場合に韓国には三年、六分五厘という形の延べ払い方式を採用しておる。したがって、ここで考える「政令で定める利率」というのは、アメリカのCCCがやっておる六分五厘、これがやはり判断の基準になる、こう考えてよろしいのでございましょうか。
  153. 森本修

    ○森本政府委員 御指摘のように、アメリカのCCCの輸出の利率、これがこの利率を考える際の非常に大きな参考になると思います。また、わが国がやっておりますところの他の延べ払い制度、こういったものもよくにらんできめていきたいというふうに思っております。
  154. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで法律案関係では、第二項のところに「前項の規定による米穀の売渡しは、開発途上にある諸国の米穀の通常の輸出を阻害することのないよう配慮して行なうものとする。」というのが法律で明定されておるわけであります。「開発途上にある諸国の米穀の通常の輸出」という対象の国は、先ほどの食糧庁長官の補足説明でもありましたように、東南アジアを考える場合には現実にはタイとビルマ、これが「開発途上にある諸国の米穀の通常の輸出を阻害することのないよう配慮」する対象国であるというふうに考えておられるわけですか。あるいはこの法律によって米の長期延べ払いによる輸出をやる場合に、今後の問題としては単に東南アジアばかりでなしに、アフリカであるとかあるいは中南米であるとか、そういう諸国も含めて考えておられるのかどうかということも関連すると思うのですけれども、その辺の考え方についてお伺いしておきたいと思います。
  155. 森本修

    ○森本政府委員 開発途上国ということになりますと、定義として単に東南アジアの諸国ばかりではございませんけれども、現実問題として、開発途上国におきまして主として米の輸出に経済が依存をしておるというふうな国は東南アジアでございますから、われわれが配慮する主たる対象もさような国であるというふうにお考えをいただきたいと思います。
  156. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そこで、たとえば一九六八年における米穀の主要輸入国の輸入状況というふうなもので国際的な輸入国の実態を見てみますと——これはむしろ東南アジア中心に若干事務当局のほうからまず現況を御説明を願いたいと思います。
  157. 森本修

    ○森本政府委員 各国の輸入の状況でございますが、国がたくさんございますから、主として米の輸入について大きくやっております国は、一九六八年の状態でございますが、一番多いのが南ベトナム、これが約五十六万トン、それからインドが約四十五万トンそれからセイロンが三十七万トン、香港が三十万トン、シンガポールが二十五万トン、あとマレーシアあるいはヨーロッパのほうではイギリス、フランスといったような国が見えます。なお東南アジアでは韓国といったような国が大きな輸入の状態になっております。
  158. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまお話しの米を輸入しておる国々の状況の中で、一体どこから米をそれぞれの国が入れておるかということを内容的に見てみますと、先ほど言いましたように、世界の米の最大輸出国はアメリカである。タイと中共とがそれに次いでおる。これの各国の輸入先の状況を調べてみると、それが具体的に出ておる。そこでたとえば東南アジアの場合でもセイロンについていえば、タイが六万一千トン、それから中共が二十万トン、ビルマが六万一千トンというふうなことであり、香港の場合もタイが十二万三千トン、中共のほうが十万五千トン、これはシンガポールにも中共から入っておりますし、マレーシアにも中共から入っておるというふうなことがございまして、この法律による第二項の「開発途上にある諸国の米穀の通常の輸出を阻害することのないよう配慮して行なうものとする。」という趣旨で法律は書かれておるわけですけれども、先ほど中共のことを言いましたが、アメリカの場合を見てみても、これは韓国はもちろん、東南アジア方面、インドネシアも含めあるいは南べトナムも含めて、アメリカからも相当量の米が東南アジアに入っておる。特にそういう状況の中で法律上第二項を設けて、「開発途上にある諸国の米穀の通常の輸出を阻害することのないよう配慮して行なう」というふうに限定をされた意味はどこにあるのかという点について、御説明を願いたいと思います。
  159. 森本修

    ○森本政府委員 もちろん、こういった国際環境のもとにございますから、対外的な配慮を各国に対して行なっていくということは、日本としても当然なことでございますけれども、特に開発途上国におきましては御案内のように、かなり一次産品の生産に経済が依存をしておる、またその輸出も一次産品の輸出に依存をしておる、そのうちでも特に米の輸出に大きく依存をしておるというふうな国がかなり近隣諸国にあるわけであります。そういう国とは日本は、地域的にもあるいは経済的にもいろいろな関係で緊密な間柄にあるわけでありますから、特別にやはりそういう国に対してはわれわれとしても米を輸出する際には配慮を十分するということが必要であろうという趣旨を述べたわけであります。  なおこういった過剰在庫の状態で、日本がこういう有利な条件で法律をつくるということになりますと、さような国に対しましていたずらに不安を与えてもまずい、結局それがまた日本の米の輸出に対してはね返ってくるということもございますから、そういったことをひとつ十分考慮いたしまして、かような規定を設けたということでございます。
  160. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この際、これは外務省でも通産省からでも、きょう御出席政府委員でけっこうでありますが、まずFAOの余剰処理に関する国際的原則の問題について、FAOから御説明を願いたいと思います。
  161. 小林智彦

    ○小林説明員 御説明申し上げます。  FAOにつきましては、穀物の過剰が問題になり出しました一九五〇年代、特に一九五三年の十一月に、「余剰農産物処理の原則および指導方針に関する勧告」というのがFAOできまりまして、それが採択されました。その骨子を申し上げますと、余剰処理の問題の解決につきましては、供給制限よりは消費増大の努力によって解決するように努力する。それからその余剰処理にあたっては、国際市場価格への圧迫とならないように秩序ある方法で行なうようにする。それから余剰を無償供与その他の特別な条件によって処理する際には、正常な生産それから正常な国際貿易へのあり方に悪影響を及ぼさないようにするという趣旨の勧告でございました。これにつきましては、その翌年から翌々年にかけまして約五十カ国がこの勧告を尊重する用意があるという通告をしております。わが国もこの五十ヵ国の中に入っております。これは法律的な義務ではございませんで、各国が余剰農産物を国際的に処理する場合にはこういう点について配慮して行なうということでございます。この原則では必ずしも手続が明らかになっておりませんでしたので、昨年に至りまして、この勧告を実際に国際的に通報し協議していくという手続につきまして、新たな手続がきまりまして、それが採択されました。わが国もこの手続に従うことになっておりますが、その際に、まあ大体取引をする場合にこういう手続を踏むという十三種類の取引の形態についてきめられております。FAOに関しましては大体そういうことでございます。
  162. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまFAOの余剰処理に関する国際的諸原則の問題に触れられましたが、同様にガットでも、ガット舞台で同様の考え方での余剰処理の問題についても取りきめがなされておるわけですが、この際、この点についても、経過を御説明願いたいと思います。
  163. 小林智彦

    ○小林説明員 ガットにおいても、一九五五年に総会の決議で、余剰農産物の処理につきまして、通常の農産物貿易を阻害しないように配慮しながら、関係国と協議して処理を行なうという趣旨の、比較的簡単でございますが、FAOの手続よりもずっと簡単に書いてありますけれども決議が採択されております。この決議法律的な拘束力という点につきましてはそれほど強いものではございませんけれども、各国ともこれに従って行動をしております。そして、ガットにおきましても、FAOの先ほど申し上げました十三項目と同様の、余剰処理につきまして、通報協議手続というものを現在きめつつあるところでございます。
  164. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまのガットの余剰処理に関する手続の決議を見ましても、これは昭和三十年の三月四日の決議なんですが、同じように、これの中でも「締約国団は、世界貿易で余剰農産物を処理するに際しては、締約国は、同一農産物の主要供給国及びその他の関心締約国と協議すべきであり、」あとカッコ書きで若干のことが書いてありまして、「また、締約国は、右の協議に際しては、他の締約国の意見に好意的考慮を払うべきであることを認める。」というようなことで、余剰処理にあたっての関係国の協議というようなことが書かれておるわけでありますが、これ以上追加は要らないのですが、最近のエカフェの舞台における余剰処理の考え方の状況についても、簡単に経緯を御説明願いたいと思います。
  165. 小林智彦

    ○小林説明員 エカフェにおきましては、余剰処理という観点からではなしに、やはり米の輸出におもに依存しているようなエカフェ域内諸国をおもに考えたのでございますが、事務局のほうで一種の商品協定的な案を考えまして、それを各国に打診しまして、この二月二十六日から三月九日にかけまして、米の貿易に関するアジアの地域協力ということについての協議を行なっております。わが国もこの協議に参加しておりますけれども、しかし、わが国は事態を見守っておるという形で、積極的には討議には参画しておりませんけれども、現在のところは何らの結論も出ていないというのが現状でございます。
  166. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 さらにこの点の関連をちょっとお伺いしておきたいのですが、ことしの二月二十六日から三月九日までバンコクで米の貿易秩序を維持するため、輸出国、輸入国間の地域協力推進会議というのが開かれたと承知をしております。これには日本が不参加であったということを言われておるわけでありますけれども、特別に不参加の理由があったのか、あるいはこの会議の状況がどうであったのかという点について、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  167. 小林智彦

    ○小林説明員 先ほどお答え申しました会議が、いま先生御指摘のエカフェの会議でございまして、で、日本は現地大使館の館員が一人日本の代表として討議に参加いたしました。しかし積極的に議論に参画したということではなくて、関係各国の議論をフォローしておったというのが実情でございまして、したがって一種のサイレントデリゲーションでございまして、あまり目立たなかったかと思いますが、出席はしておったわけでございます。  それでその討議の概要と申しますか、各国の利害が対立して結局結論が出なかったわけでございますけれども、この事務局案の概要というものを簡単に申し上げますと、骨子は、まあ比較生産費説の原理の上に立脚しまして、米の生産に適した国がおもに米の生産を引き受けて、そうして主として米の消費国に対して輸出するような体制をつくっていくということが基本にありまして、米の売買について多数国間またはそれぞれその域内各国相互間において毎年取りきめを結びまして、前年度の買い付け売り渡し量の上下二五%をこえない量を、また前年度価格の上下一〇%をこえない価格で売買するということをお互いに保証し合う。それから輸出国は、前年度の買い付け量をこえる部分については割り安の価格で売るようにすること。それから、米に関する緩衝在庫というものを設けまして、それを運営して米の需給の調節をはかっていくこと。大体骨子としては、簡単に申し上げますとそういうものでございます。しかし、関係国の利害が一致しませんで、結論は全然出ていないというのが現状でございます。
  168. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いずれにいたしましても、国際的な食糧の需給状況、生産の状況等で、物によって違いますけれども、EECのバターを中心にした問題を見ましても、あるいは、最近のカナダの小麦を中心にした過剰在庫の問題を見ましても、長い間にわたるアメリカの余剰農産物の処理という問題にいたしましても、日本の最近の米の過剰在庫をどうするかという問題で輸出を考えるという手法の問題にいたしましても、国際的にいわばオーバープロダクション問題というものが農産物問題で現実に提起されてきている。そこで、いま言ったFAOにいたしましても、あるいはガットにいたしましても、アジアを中心にしたエカフェの問題にいたしましても、余剰農産物の処理にあたって、余剰処理に関するところのいわば国際的な原則というようなものについて話し合いながら、なるべくスムーズに問題を処理しようという態勢にあることは間違いございません。そこで、いままで日本としては、米の輸出というふうなことは、食管が実施されて以降、法律はありましても、実際にはほとんどそれを実行に移すという段階になかったけれども、最近の状況から、新しく新法による手法も含めて、米を外に出していかねばならぬと思うのです。この場合に、法律といたしましては、第二項のところで、「開発途上にある諸国の米穀の通常の輸出を阻害することのないよう配慮して行なうものとする。」というふうに書いてあるが、やはりガットなりエカフェなり、あるいはまたFAOなりの余剰処理の国際的原則というものを考えてみると、特に開発途上国の通常の輸出ということだけをうたったことに重要な意味があるのかどうかという点については、率直に言って疑問なしとしない。そういうことを言う前に、やはり国際的舞台における余剰処理の国際的原則というものがあり、また日本もこれについては立法的な効果とか厳密な問題は別として、道義的にはOKを与えておるという経緯もあるので、したがって私の聞きたいのは、本法の運営上、特に第二項で、「開発途上にある諸国の米穀の通常の輸出を阻害することのないよう配慮して行なうものとする」というのは、特記してあるけれども、先ほど来の説明もあり、また私が提起しておるように、当然米に関連した関係国というものとの間においても、協議すべきものについては協議をするという姿勢でこの問題を処理していくということであろうかと思うのですが、ただその場合に、相談をしていたのでは結局この法律によってなかなか思うようにはけないというようなことがあってはいけない、日本の立場からいえばそうだろうと思うのです。その辺の本法運営上の取り扱いをどういうふうに考えていったらいいのか。ことにこの問題については、単にタイとかビルマとか、あるいは米の最大輸出国であるアメリカというだけでなしに、政治経済体制は違っても、やはり経済ベースの問題としては、中共の問題については全くネグレクトしていいという問題でもなかろうと思う。いずれにしても、そういう問題で、いわゆる余剰処理に関する国際的な諸原則というものをどう踏まえて本法の運営をやろうと考えていったらいいのか、この辺をちょっとお伺いしておきたい。
  169. 森本修

    ○森本政府委員 御指摘のような世界的な環境の中でこの法律をどう運営していくか、一つはやはりこういった法律をつくりました趣旨が、現在の日本の需給事情からいきまして、米の将来における輸出を円滑にやっていきたいという国内的な要請なり希望がございます。しかしまた、国際的に御指摘のような環境でございます。したがいまして、私どもとしては、一つは国際的な取りきめといいますか、ルールといいますか、そういうものは守っていかなければならぬ。たとえばFAOにおきますところの余剰処理原則の手続といったものはちゃんと守って輸出をしなければならぬ。また、そういった単なる国際的な約束の手順を踏むという以外に、第二項に書きましたようなことで、特別に関係の深い国、また米の輸出に大きく依存をして関心を持っておる国に対しましては、事前の話し合いといいますか、日本の現在の状況をよくお話をして、そういった関係国にも理解を得ながら、米の輸出の円滑化をはかっていくということにつきまして、そこいらの緩急の度合いというものはまさにこの法律の運用上私どもとしてはきわめて神経を使わなければならぬということであります。しかし、何といいましてもかような需給状況にあり、また米の輸出を積極的に考えなければいかぬという日本の国内事情に配慮しながら、対外的な影響も考慮しつつやっていきたいというふうに思っておるわけであります。
  170. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この機会に米を中心にした国際的な需給状況というものを、農林省としては大体どういうふうに判断をしておられるかということについてお伺いしたいと思います。
  171. 森本修

    ○森本政府委員 最近一、二年は各国におきまして、特に米産圏におきまして米の生産が増加をしてきております。特に東南アジアにおきましては、御案内のようにフィリピンにおける稲作研究所でできました多収穫品種が普及をしてくる、あるいは肥料なり農薬なり、そういった農業技術が進歩をするということで、生産が伸びてきておるわけであります。しかしまた、他面そういった品種につきましても、病虫害に弱いとか、そういう品質的な制約がございまして、必ずしもこれが安定的な状態で伸びるかどうかということについては、十分見通しが立たないということを専門家が言っておるようであります。そういう関係から、生産につきましてもやや過渡的な状態にあるということがいえるかと思います。また需要面におきましては、御案内のように開発途上国におきまして、人口が相当増加をするということは一般的な傾向でありますし、またいままで十分米を食べていない、主食を食べていないというふうなこともございますから、今後経済なりあるいは所得が向上してまいりますと需要増ということも当然予想される、そういう点も必ずしも的確な見通しが立てにくいという状況でございます。しかしながら、御承知のようにインドネシアとかその他の国におきまして、輸入が相当量増加しておるといったような状況もございますから、当面の間はそういった諸国におきましても相当量の輸入が必要な状態であるというふうにいえるかと思います。将来の長い見通しについては、国際機関の作業を見ましても、いろいろな前提によりまして過剰と出てくる場合もありますし、また不足と出てくる場合もあるということで、過渡的な状態で、決定的な見通しが立てにくいというふうに私どもは見ております。
  172. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 米を中心にして東南アジアにおける米の生産政策というもので、特に熱を入れて増産政策をとっておるという国が、ジェトロなりあるいは農林省の出先なりアジ研なり、そういうところで具体的に明確になっておればそういうことをひとつお聞かせ願いたい。たとえばマレーシアのような場合でも、私はマレーシアに行っておった関係者からちょっと聞いた程度でありますけれども、米の自給を目ざして、できれば一九七〇年といっておったけれども七一年には自給をやりたいとか、あるいはいま日本がある程度期待をしておりましたインドネシアも、インドネシアの政情から見てなかなか困難だと思いますけれども、一九七三年を目ざして、できれば米を自給するようにしたい。インドネシアの場合はなかなか急にはそうはいかぬと思うのですけれども、本法施行によって実施をしていく場合の、いわば期待をしておる東南アジアというものが米を中心にしてどういう生産政策をとっておるのか、あるいは経済的にも非常に立ちおくれの国々が相当あるわけですから、経済力の上昇に伴って需要もふえるあるいは人口もふえるということも相対的に考えなければなりませんから一がいにいえない。本法施行で期待していく場合に、さっきのケネディラウンドの行くえがどうなるかという問題が一つございますが、それを抜きにいたしましても、長期延べ払い方式による売却ということで本法案をやっていく場合に、実際にはこれから毎年どの程度の期待量を持っていくのか。政府としては、おそらく毎年百万トンというものを期待することはなかなか困難であろうけれども、できれば最低五、六十万トンのものははきたいという気持ちでおられるのではないかと思うのですが、そういうものを期待する場合には、特に東南アジア等についてはどういう生産政策をとっておるかということについても十分判断をしなければならぬだろうと思うのです。同時に、たとえばアフリカとかあるいは中南米その他を考える場合に、おそらくこれは少量になると思うのですけれども、そういう少量のものでも、小口でも、注文があれば出していきたい、こういう方針でやられるのかどうか、その辺のところをさらにお伺いしたいと思います。
  173. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 ただいまの先生の御質問の件でございますが、東南アジア地域には米の輸入国、輸出国といろいろなタイプがあるわけでございますが、輸出国につきましては、特にタイそれからビルマ、カンボジア、台湾といったようなところが、国によりましてその事情はいろいろと異なっておりますけれども、いずれも米の増産ということに非常な力を入れておりまして、いろんな関係の農業資材、農業機械の輸入といったようなものもふえております。またわが国に対しまして特に米の技術者の技術協力援助といったようなものの要請が非常にふえておるという実情でございます。また一方、輸入国といたしましては、フィリピン、韓国、インドネシア、マレーシアというふうなところが従来の伝統的な輸入国なのでございますが、たとえばこの中のフィリピンにつきましては、昭和四十三年には初めて米の輸出をしておるというふうな状態が出てまいりまして、輸入国につきましてもかなり米の増産の傾向というものが続いてきておるということでございます。FAOが行ないました一九七五年の予想につきましては、しかしながらやはり輸入国について百六十万トン程度の不足量はあるだろうという推定が、これは推定でございますが一つございます。一方輸出国については、若干過剰の傾向が出てくるかもしれないという見通しもございます。しかしながら、やはり依然として不足量を持つ輸入国がかなりあるだろうという見通しは、いずれの国際機関においても大体とられておるところでございます。特にインドネシアにつきましては、御承知のようにまだ生産がきわめて不安定でございまして、また一方、需要の増加、人口の増加ということもございまして、このインドネシア等を中心にいたしましては、将来なお米の輸入に相当程度たよらざるを得ない国があるというふうに私ども考えております。
  174. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 結局、わが国の最近の在庫の実態から見て、本法の成立後においては、この手法をもって相当程度の米を長期延べ払いで売り渡しをやっていきたい。しかし同時に、その場合には、特に期待国である東南アジアの相手国が米の生産政策を中心にしてどういう方針をとってきておるかということは、やはりパラレルに関係してくる。同時に、さらに聞きたい問題に関連してですけれども、これは後進国に対する経済援助政策というものに関連してですけれども、よくいわれる開発輸入問題、あるいは東南アジア等に対する農業サイドのわが国の技術援助その他という問題も含めて考えてまいりますと、開発輸入あるいは技術援助その他で、率直に日本的な立場からいえば、日本が日本の持っておる技術能力を通じて米の面で相手国の増産を非常に大きく刺激するということは、日本の農政が米をやはり柱にしておるという現状から見て、これはまた問題がある。現実に日本が東南アジアに対する技術援助その他そういうものをやる場合の農業サイドに対する日本の農政の立場から見た配慮を、具体的にはどう考えてやっておられるのか。たとえば飼料についても、われわれはもっと濃厚飼料にしてもあるいは粗飼料にしても、国内の供給体制整備を考えたらどうかという意見を持っておりますけれども、それにいたしましても、えさの輸入というものは非常な量にのぼっておるのですから、これをアメリカその他から東南アジアに切りかえていくという考え方については、われわれもこれはいいことだと思う。つまり、いわば先進国の農業余剰の形を日本がそのままもろに受けるのではなしに、いわゆる南北問題等も含めて、東南アジア等は日本の貿易の実態から見ても非常に関係の深い国であるからして、そういう日本の輸入しておる第一次産品について、先進国からそういう国々へ置きかえていくという意味における技術指導なりあるいは開発輸入の問題というのは、これはやはりわれわれも賛成でありますけれども、日本の大黒柱になるようなものについての技術援助等を積極的にやるということについては、いささかちゅうちょせざるを得ぬと思うのです。この機会に、そういう開発輸入あるいは技術援助等の問題も含めて、農政サイドからの東南アジア等に対するこれらの方針をどう考えて具体的にやっておられるか、これをひとつお伺いしておきたいと思います。
  175. 渡辺美智雄

    ○渡辺政府委員 もともとこの話は今度の延べ払いの法律から出たことでありますが、この延べ払いの法律は、御承知のとおり、われわれとしては今後末長くどんどんこれを活用して輸出をしていこうというような考えは持っていないわけであります。どこまでも過剰処理というようなところがら出てきたのであって、したがって、できるだけ過剰が起きないような政策をここ一、二年の間に一方ではとっていこうということであります。しかし、いま言ったように日本の大黒柱になるような米のようなものは、当然自給をするという方針に変わりはありません。ただインドネシア等の開発援助というものをやっておるわけでありますが、ことに民間ベースによるところの開発援助等については、農業関係ではトウモロコシ等の生産をたくさんしてもらって、しょせんこれは日本で国内の市場を完全自給するといってもできない、したがって大部分をアメリカから輸入をしておるというのが実情でありますから、こういうようなものは東南アジア等から、開発をしてそこから輸入をする、こういうようなことになっていくであろう、こう思うのであります。またインドネシアの新五カ年計画というものがことしから発足をして、米の増産というようなことを考えておるわけでありますが、これらに対する援助等につきましても、当面インドネシアは、輸出をするというようなことでなくして、国内の需給を間に合わせるというようなところに重点を置いておるわけであります。したがいまして、これに関連をして外資法がつくられまして、いろいろなそれの受け入れ体制の環境整備ということがインドネシア等においては進められておるわけでありますから、日本の肥料あるいは農機具、これに続くものは農薬というようなものも私は進出をしていく時期が非常に近いであろう、こういうふうに想像をされるわけであります。でありますから、将来ともインドネシアをはじめとしたそれらの東南アジアの諸国に日本が米を輸出していくというようなことは考えられないことであるし、また考えてもいないことであります。  お答えになったかならぬかわかりませんが、とりあえず一応それだけを申し上げておきたいと思います。
  176. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 開発途上国に対する経済協力の方式として、日本のサイドから考えます場合には、資本の協力という方式あるいは技術協力という方式、これは総括して経済援助といっていいのでありましょうが、それと貿易を通ずる経済協力、こういうことが手法として考えられると思うのですけれども、同時に、御承知の一九六四年の第一回の国連貿易開発会議で国民所得の一%目標という決議がなされまして、先進国は開発途上国に対して国民所得の一%を目標にして援助するという決議がなされ、引き続き第二回の国連貿易開発会議では、今度は国民総生産の一%勧告というものがなされておる。これは国民所得から見れば、国民総生産ということになりますと、DAC関係の諸国の関係で見れば、おおむね二五%アップということになるわけですけれども、こういう国連貿易開発会議決議等と関連をして、日本の後進国援助というものが従来どういう状況にあるのか、あるいは最近の日本の外貨ポジションの好転、あるいは貿易の総額の水準が国際的に非常に上位にきておるというふうなことから、後進諸国をはじめ諸外国からもいろいろな注文がきておる。特にこの経済援助の問題についてこれからどういう方針でいかれようとするのか、こういう問題について、外務省あるいは通産省の関係になると思いますけれども、的確に御答弁を願いたいと思います。
  177. 村上謙

    ○村上説明員 わが国の開発途上国に対する援助は、最近五年間の統計をとりましても逐次増加をしておりまして、一九六八年には十億ドルにも達し、国民総生産の〇・七四%に至っております。これは先生御承知のことだと存じます。ところで、御案内のとおり昨年十月、例のピアソン報告が出まして、今後一九七〇年代、七五年までに国民総生産の一%目標を達成するよう、またそのうち政府の手によって行なわれる政府ベース援助は、国民総生産の〇・七%を目標達成するようにしろ、以上は量の問題でありますけれども、また援助の条件についても借款条件二%以下、期限二十五年ないし四十年というようなことを目標にしろ、その他六十余りの勧告が出ております。それで、時あたかも国連開発第二の十年のときにあたりまして、この問題は国連部内でも取り上げられ、また先ほど先生の仰せの国連貿易開発会議でも取り上げられ、またOECDのほうでもやはり取り上げられまして、本年の五月、OECDの部内では閣僚会議が行なわれることになっておりまして、この目標をどういうふうにして達成するかを先進国間で相談する。また国連開発第二の十年を控えまして、やはり同じ五月に国連部内でこの国連開発第二の十年の準備委員会がございまして、ここで実質的な一%目標あるいは〇・七%目標をどういうふうにして取り扱うかということが論議され、その結果は国連におきまして本年の九月に予定されております総会に上げられる。またOECDにつきましては、本年九月に予定されております、本邦で開催される予定のDACの上級会議に持ち上げられる。こういうふうな、わが国としましては非常に従来とも援助につとめてまいりましたけれども、なお一そうの努力を必要とする段階に立っております。  わが国の援助姿勢としましては、昨年十一月の佐藤総理訪米の際の日米共同コミュニケにも、今後ともアジアに対する援助計画の拡大と改善をはかる意向があるというふうに申し述べられておりますし、またこのような援助拡大に関する意向は、たとえば東南アジア閣僚会議あるいはアジア開銀の総会などで、外務あるいは大蔵大臣などから援助姿勢が述べられておる次第であります。そこで、ではどのようにしてこれを施策に移していくかということにつきましては、ちょうど昨年五月に経済協力閣僚会議というのができまして、経済協力に関してわが国の施策を策定するという際には、この閣僚会議におきましていろいろ御討議になって、政策の策定が行なわれるということになっておりますし、また他方やはり昨年十一月に、従来ございました対外経済協力審議会、これが改組されまして、こういうふうなきびしい国際環境におきましてどのようにしてわが国の経済協力の量、質等の改善をはかっていくかという経済協力の進め方につきまして、識者の意見を問うということで発足いたしまして、すでに数回会合を持っているわけでございます。この対外経済協力審議会に対しましても、この三月の終わりに総理大臣から一九七〇年代におけるわが国の経済協力に関する基本的政策について問うというような諮問が出ておりまして、これに基づきまして近々では、五月でありましたか、総会が行なわれるようなことになっております。また他方技術協力につきましては技術協力部会という特別の部会を設置いたしまして、これも活発なる論議を進められておる次第であります。そこで先ほど申し上げましたようなOECDだとか、あるいは国連あたりの会合、会議が行なわれる際をめどに、やはりそちらの方面からもいろいろな御意見を承り、また政府部内でもそういうことを目標にして、どのようにして経済協力の量の拡大、質の改善につとめていくかを検討しておる、こういう次第であります。
  178. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 内容的に少しくお伺いしていきたいと思うのですが、いわゆる後進国に対する経済援助問題では、政府ベースで行なわれる場合あるいは民間ベースで行なわれる場合、二つの形があるわけですけれども、現状は政府ベースあるいは民間ベースの比率は大体どういうふうになっておるか。今後経済協力の新たな一九七〇年の十年を目標にした方向では、どういうウエートのかけ方で後進国の経済援助をやろうとするのか、これが一つ。それから御承知の援助条件の緩和問題という点については、これは幾たびかの国際会議の中でも問題が提起されておるし、日本は援助条件の緩和問題については、国際的に見てどういうレベルにあるのかという点について御説明を願いたい。
  179. 村上謙

    ○村上説明員 政府ベースの援助と民間ベースの援助の比率でございますが、政府ベースの援助と申しまして、まず、私どもが政府ベースの援助ということの中身にどういうものを取り上げておるかと申しますと、賠償その他の無償協力それからいわゆる円借というような名前で行なわれています政府ベースの借款、それから技術協力、これは無償で行なわれます。この三つをとらまえまして政府ベースの援助と申しておりますけれども、その比率は、昨年、六九年の統計はまだ詰めておりませんので、目下推計しか出ておりませんけれども、正確な六八年度で申し上げますと、総額約十億ドルのうち政府ベースの援助は三億五千七百万ドル、約三四%でございます。その残りの六億九千二百万ドル、これが民間ベースとなっております。民間ベースと申しましても、民間ベースの中身は御承知の輸出入銀行による延べ払いあるいは投資だとか、これも財政資金を使っての援助でございますけれども、やはり直接政府が交換公文その他で外国政府に約束したものと、民間のベースによるものと分けて、かような仕訳をしておりまして、比率は申し上げたとおりでございます。  次に、条件につきましてはわが国の条件は、ちょっとただいま詳しい数字まで持っておりませんけれども、政府開発援助の利率で申しまして、利子で約三・七五%だったかと記憶しております、それから期間で十八年余りになっております。これを国際的な水準の、たとえばDACの一九六五年勧告に比較いたしますと、この六五年勧告では利率三%、期間二十年ないし二十五年というようになっておりますので、それからいたしますと、まだ国際的なそういう水準に及んでいないという現状でございます。ところで先ほどお話しいたしましたような国際的な動きに対応いたしまして、私どもといたしましては少なくとも六五年勧告に、きわめて近いうちに達成するよう努力していこう、こういうように考えております。
  180. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 後進国に対する経済援助問題では、これは基本的に考えれば日米共同声明と関連をして東南アジアに対する経済援助の問題は、アメリカの援助の肩がわりを日本自身が推進しようとしていくのじゃないかとか、あるいは政府ベース、民間ベースを含めて援助の基本姿勢に問題があるのかどうかというふうなことを当然議論としてはしなければならぬわけですけれども、私はきょうはそういう舞台ではないと思いますので、それは別にいたしますが、いずれにしても日本自身が、最近の経済あるいは貿易の伸展とともにエコノミックアニマルというような国際的な批判を受けたり、いろいろな問題とも関連をして、後進国に対する経済援助そのものはヒューマニズム的な立場、あるいは南北問題に対して日本が応分の援助をしていくという姿勢ということから必要だと思うのですが、やはり日本の国内に持っておる社会的、経済的あるいは国民的課題というものも十分配慮しながらやっていかなければならぬところに現実の苦労があるのだろうと思うのです。それはまあ基本論として議論をすればいろいろあると思うのですけれども、それは議論としてはとどめておきたいと思います。  そこで私は、外国政府等に対する米穀の売渡しに関する暫定措置法案は、先ほど渡辺政務次官の答弁の中にもあり、またこの法律の発想そのものは、過剰在庫の米を処理するというために一つの手法として長期の延べ払いの売り渡し方式を選択をしようということだけでも、私の率直な気持ちからいくと、鉱工業においては、世界で造船は第一位だとか、やれ何は第二位だとかいうふうにずいぶん先端をいっておるのに、日本の農産物になると、とにかく外に出すというふうなことについては非常に消極的姿勢で考えている。これは単に米ばかりではありません。畜産、果樹その他の問題も含めて——若干のものは果樹等で出ておりますけれども、あるいは水産のサイドでかん詰めその他は出ておりますけれども、全体から見ると、いわば国内の食糧をできる限りまかなうというところに基本を置いておるわけですね。日本の国民のように能力的にも優秀であり、しかも勤勉である。農民諸君を考えてみても、気持ちの上では、農産物についても実績がないのに大量にというわけにもいかぬけれども、少しく積極姿勢で考えたらどうかという気持ちは私の腹の中にあるのですね。米の問題についても当面はそういうことで、当分の間ということでこの法律を発足させようとしているのだが、長期展望の中では、日本の内部にある零細農耕なりあるいは構造的ないろいろな諸問題から、積極的にまた合理的に処理をしながら適度の輸出についても考えていくというような姿勢が私は気持らの上ではとりたいし、方針としてもそういうことが考えられぬものかどうかというようなことは、これはむしろ倉石農林大臣にお伺いしたいところであって、渡辺政務大臣にお伺いする気持ちはないのですけれども、気持らはないというと失礼ですが、要するに、これは農産物に対する日本の農業の体質改善あるいは農業改革ということと関連して基本姿勢としてどう考えておるのかという点はむしろ大臣にお伺いしたいと思いますけれども、それはそれとして、さてこの八百万トン今年の十月に持ち越すという問題ですね。これはきょうはもう五時までには終わろうと思いますから多くの問題に触れません。過般も生産調整問題で若干議論もいたしましたし、多くは触れませんけれども、この八百万トンという在庫問題は百五十万トンの生産調整をいま政府としても一生懸命やっておられるわけですが、これに対する是非の問題は別として、これは専門家の意見もひとつ聞いてじっくりなるべく早い機会に処理する方針を出したいというのですが、これからのこの問題に対する段取りだけはお伺いしておきたいと思うのです。どういう段取りで、そしておそらくこれには何ぼ一生懸命にやりましても五年の射程範囲の中の日程は要しましょう。少なくともそれだけは要しましょうが、これに対する段取りの問題できょうは基本的にお伺いしておきたいと思います。
  181. 森本修

    ○森本政府委員 御指摘がございましたように八百万トンの古米の在庫、過剰米ということになりますと、約七百万トンくらいのことに見通しとしてはなると思うのですが、そういった全体の過剰米の処理のやり方、これは一つはどういう用途にどういうテンポでものを処理していくかということを十分詰めなければならぬことでございます。私ども用途についてはただいま御審議を願っておりますようなことで、海外に米を輸出するというようなことも一つの有力な手段であります。また国内において通常の食用として米の消費の拡大をはかるということもまた十分やらなければならぬことでありますが、そういった方途をとりましても、なお在庫の処理には十分ではない。従来米を使っていなかった分野に古い米の消費をしていただくというようなこともあわせて考えていかないと過剰米処理については十分ではない。そういった用途につきましてもいろいろな用途が想定をされておりますけれども、まだ必ずしも十分的確にどういう用途にどういう処理をする、またその処理の見込み数量はどうかということも完全には把握できないということでございます。したがいまして、しばしば申し上げておりますように、そういう用途について、あるいは売却の方法について専門的な立場から御検討願うというふうなことを一方早急にやりたいと思っております。  なお、過剰米の処理の問題についてはそういう物理的といいますか、用途による処分の見込みを立てる、めどを立てるということと並行いたしまて、そういったことで処理をいたしますと、財政的な負担をいかように処理するかという問題も当然つきまとってくるわけであります。そういうことについてもうらはらの問題として大体の見当をつけませんと、全体の処理の方針が立たないというふうなことでございますから、両々あわせまして早急にひとつ見当をつけるという考えでございます。ただ輸出でありますとか、先ほど申し上げました食用に対する販売の促進でありますとか、そういうことは間違いのない用途でございますから、全体の処理方針なり計画が立つという前に当座の問題としても促進をしていくということで、やれるものから処理をする。また全体のものについては早急にめどを立てて、ある程度計画的な処理に進んでいきたいというふうに思っておるわけであります。
  182. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本日はこの程度でとどめたいと思います。ありがとうございました。
  183. 草野一郎平

    草野委員長 次回は明十六日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十分散会