○芳賀
委員 この際、
農地法の一部を
改正する
法律案並びに
農業協同組合法の一部を
改正する
法律案に対して、社会党といたしまして修正案を
提出いたします。
提案者を代表して趣旨の
説明を申し上げます。
農地法の一部を
改正する
法律案に対する修正案並びに
農業協同組合法の一部を
改正する
法律案に対する修正案につきましては、お手元にお配りいたしました。修正案文の朗読については、この際省略いたしまして、議事録に掲載を願いたいと思います。
修正案に対する趣旨の要点に対して、
説明を申し上げます。
まず、
農地法の一部を
改正する
法律案に対する修正案の趣旨でありますが、お手元に修正案要綱をお配りしてありますので、これを参考に御
理解を願いたいと思うわけであります。
まず第一に、
農地法第一条の
目的の
改正に対しては、われわれとしては、いやしくも
農業の憲法といわれる
農地法の第一条の
目的を
改正することに対しては絶対に反対であります。したがって、
政府の
改正点を削除して、現行による
目的というものが強力に運営されるべきであるというふうに
考えるわけであります。
第二の、
農地等の移動制限の、第二条、第三条にわたっての
改正でありますが、その中の、
農地の権利取得の場合の上限面積の制限廃止の問題については、これは先ほどの
質疑の中においても明らかにいたしたわけでありますが、この際、上限面積を全面的に廃止するということについては反対であります。現行の都府県平均三ヘクタール、北海道十二ヘクタールの上限が
農地の保有
拡大の支障になるというようなことが理由であるとするならば、これを実態的に
検討して、少なくとも現在の上限面積を別表に基づいてそれぞれ二倍に引き上げる。すなわち都府県においては平均六ヘクタール、北海道においては二十四ヘクタールを別表における上限面積として、しかも主として自家労働力によって、効率的な
農業を行なえる条件のある農家の場合においては、現行法同様にこの上限面積を越えることができるとする、こういう修正の趣旨であります。
次に、下限面積の点につきましては、
政府案においては、取得前三十アールを
改正いたしまして、今度は取得後五十アール以上とするという趣旨でありますが、これに対しては同意できないわけであります。われわれの修正案といたしましては、現行の取得前三十アールについてはこれを現行同様に存続させて、新たに
農地を取得して
農業に精進する見込みのある者に対しては取得後五十アール以上とするという、このように
改正案を修正する趣旨であります。
次に、いわゆる自作農創設の
目的で売り渡しを受けた
農地については永久に貸し付け禁止ということになっておりますので、これを緩和して売り渡し後十年を経た場合においては貸し付けできるという
政府改正案については、われわれとしてもこれを支持するものであります。
次に、
農業の経営
状態あるいは通作距離または自作農として精進する見込み等について、それに適合しないというような条件の場合においては保有を認めないという
政府の案に対しては、これに同調するものであります。
次に、
農地等の権利の取得を認める
農業生産法人の要件の中で、
政府改正案によりましては借り入れ地面積の制限、常時従事者の議決権要件、雇用労働力制限及び出資配当制限を廃止するという点につきましては、全面的にこれは賛成することができません。したがって、この制限規定の廃止のうち、特に借り入れ地面積の制限と出資配当制限については、これは現行どおり存続させることにして、他の制限規定の廃止については同意をするわけであります。したがって、借り入れ地面積制限及び出資配当制限を残す修正の趣旨であります。
次に、
農業協同組合が組合員から委託を受けて
農業経営を行なう場合には
農地等の権利取得の許可をすることができるという
政府の
改正案につきましては、これは同意するものであります。
農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人が、その事業の実施によって
農地等の権利を取得する場合及び転貸する場合の許可に関する
改正案についても、これは同意するものでありますけれ
ども、ただし、
政府の
改正案によりますと、この合理化法人がどのような事業
内容に基づいて、どのような事業
目的を実行するかというような
内容の事項あるいはまたこれに対する
農林大臣や都道府県知事の必要な規制措置等についての明確な法的根拠というものがうたわれておりませんので、なお必要な措置を強化するということをこれに加えるべきことを修正点として主張するわけであります。
次の、
農地等の権利移動の許可権者を従来の都道府県知事にかわって当該
地域内にある
農業委員会が中心になるというようないわゆる許可権者の権利の移行の問題等については、みだりに
改正すべきでないというふうに判断するわけであります。したがって、この
改正点については現行どおりにするという修正であります。
第三といたしましては、小作地の所有制限に関する法第六条、第七条の
改正の点でありますが、この中で特に不在地主を認めるという点については、
農地法上から見れば重大な
改正点ということになるわけであります。われわれ社会党といたしましては、
政府の
改正案に対して全面的に賛成することはできません。しかし、現在の社会
情勢や
農業の
事情を十分勘案した場合において、現在まで耕作を業とした土地所有者の場合においても、諸般の
事情によって離農、離村しなければならぬというような
事情ができた場合の離村者に対しましては、
農業経営を今日まで行なってきた土地所有者と同様に、長年の間苦楽をともにして自作農としての経営に精進してまいりましたその者の配偶者に限ることにいたしまして、不在所有者に対しては十年間を限定して、十年の範囲において離村の時期まで
農業をみずから経営し、また従事した所有者とその配偶者についてはこれを認めるという修正であります。これはその離村した土地所有者に対して、
政府案のごとく、将来にわたって
農業経営の機会を与えないという
考えではなく、たとえば今後の社会
事情の変化等によって、再び農村に戻って
農業経営を行なうあるいはその後継者が
農業経営に当たるような場合に、これは復活の機会を与える、あるいはまた耕作を引き受けた小作人については無期限にわたって所有の機会を与えないというような
政府の
改正案ではなくて、十年間の経過期間を置いて、その期間内においてあるいはその期間後においては
農地の所有は、耕作者がみずから耕作したその
農地に対して所有すべきであるといういわゆる耕作者優先の原則の上に立って、所有の機会を与える、そういう配慮も講じまして、配偶者を入れての一代限り十年間という限定をしたという点を十分この際
理解してもらうと同時に、この点が
政府案と大いに異なっている点を私
どもは修正の中で強調するものであります。
次に、
農業生産法人の構成員並びに
農業協同組合の組合員が
事情によって
農業協同組合に全面的に
農業の経営を委託し、あるいは土地所有者が所属する
生産法人に対して
農地を提供し、しかる後に離農、離村する場合において、
政府案においてはその全面積を保有して不在村の土地所有を認めるというような
改正案でありますが、これにわれわれは同意することはできません。したがってわれわれの修正案といたしましては、このような場合においても十年間という期限を限定する、しかもみなし農民というような形で、組合員にあらざる者あるいは法人の構成員にあらざる者が農民としてのあるいは農協の組合員としての資格を獲得して不在村所有の機会を得るというようなことに対しては、これを排除するものであります。
これが社会党の不在土地所有者に対する制限規定に基づいての容認の修正案の
内容であります。
その次に、
農地以外の小作採草放牧地等につきましては、現下の
事情等を勘案いたしまして所有制限を廃止するという
政府の
改正案に対しては同様の
考えであります。
次に、第四といたしましては、
農地等の賃貸借の解約等の制限につきまして、これは第二十条の規定の
改正でありますが、この点については私
どもといたしましては
改正に反対であります。したがってこれは現行の条文に戻すという修正であります。
第五は、小作料の規制に関する第二十一条から第二十四条まで、さらに
改正案の附則第八項、附則第九項等の
改正の点でありますが、その中のまず第一の統制小作料
制度の廃止につきましては、これは反対であります。したがって、統制小作料
制度というものは現行法どおりとすることにいたしまして、ただし、現在の統制小作料の設定の方法というものが全国一律方式ということになっておりますので、ここにやはり統制小作料というものが現地の実態に適合しないというような批判も出てまいるわけでありますからして、この際統制小作料を継続するという前提の上に立って、統制小作料の算定あるいは設定につきましては都道府県ごとに
農林大臣が省令に基づいて統制小作料の最高額を定めまして、これに基づいて各都道府県における
農業委員会が選定して、知事の許可を得て小作料を決定するというそういう方法にこれを改善するということに対する修正であります。
第六の草地利用権の設定の新設の点については、これは昨年の当
委員会における論議の中におきましても社会党としては賛成であります。ただし
政府の
考えというものは、現在
農地法の中に制定されておる未墾地買収の規定を眠らせて、それにかわるかのごとき措置として草地利用権の設定を新設するというような消極的な
扱いに対しては、反対であります。したがって、必要な場合には随時未墾地買収の規定の発動を行なうという積極的な姿勢の上に立って、さらに草地利用権設定
制度の新設を行なうという点に対して、
政府案を認めるものであります。
第七の
農業委員会等による和解の仲介
制度の整備の点でありますが、これは許可権者を従来同様知事を主体にするということをわれわれは修正をしておるわけでありますからして、したがって
政府案に伴うところの
農業委員会の
制度の整備については必要がないということになりますので、これを削除して現行に戻すという修正の趣旨であります。
第八におきましては、開拓財産等の無償譲与が行なえるという
改正点あるいは違反
転用に対する
農林大臣または都道府県知事の必要措置命令ができるというような
改正点に対しては当然のことでありますので、これは
政府案に賛成であります。
最後の、附則の
改正の際に必要な小作地の小作料の措置等については、小作料等に関する
改正が実現した場合に必要な附則の措置でありますので、社会党としては、これは必要がありませんので、修正して削除するという点であります。
以上が、
農地法の一部を
改正する
法律案に対する修正案の趣旨であります。
次に、
農業協同組合法の一部を
改正する
法律案に対する修正案でありますが、そのおもなる点を
説明いたします。
第一の、
農業協同組合が組合員の委託を受けて
農業の経営を行なうことができるとする
農協法第十条二項に関する
改正規定に対しては、これは
政府案を認めるものであります。しかし
農協法の中で経営受託を行なう場合においては、たとえば共済規程、信託規程の例にならって
農業経営に関する受託規程を法律の事項として設けて、行政庁の承認を受けて適正な事業運営ができるようにすべしというのが修正案の
内容であります。
第二に、
農業協同組合が
農業の
目的に供するための土地の売り渡し、貸し付けまたは交換の事業ができるとする
改正規定に対しては、
政府案に同調するものでありますが、これについてもこれが適正に行なわれるよう規程の設定あるいは事業
内容等に対する必要事項は当然協同組合の総会の議決を要するというふうに
内容を整備しなければならぬという点が社会党の修正の趣旨であります。したがいまして、後段の、組合員の委託によって
転用相当
農地等の売り渡し及び区画形質の変更等の事業を行なうことができるという
改正点に対しては、
農業協同組合の
目的あるいは使命から
考えましても、農協の事業として法律に定めて恒久的に行なわれることについては全面的に反対でありますので、この点は
政府改正案の削除の修正でございます。
第三の信用事業にかかわる規定の整備については、現状を判断いたしまして運営に十分留意するということで
改正に対しては認めるものであります。
第四には、
農業協同組合の連合会の会員、これは都道府県あるいは全国
段階における連合会及び中央会についての規定でありますが、構成員である会員に対して議決権及び選挙権を不平等に与えるというような措置については、
農業協同組合の加入、脱退の自由の原則、一組合員一票の平等の原則に照らした場合においては、これは断じて行なうべき必要のない措置でありますので、この点に対しては全面的に削除して現行に復するという修正の趣旨であります。
五番目の農協の役員については、
理事、監事同様でありますが、「定款の定めるところにより、組合員が総会においてこれを選任することができる。」という第三十条九項の規定がありますが、これは
政府の
改正案にはありませんが、この際農協の役員選出については選任制をなくするということで、この点を
改正する趣旨の修正であります。
六番目の総代会
制度の権限強化の問題でありますが、この
内容を区分して、
一つには、今度の
改正案におきまして総代会において役員の選挙ができるという点、さらに定款変更ができるという点に対しては同意することができませんので、定款の変更についても
政府案によるところの総組合員投票によって三分の二以上の多数の賛成を得るという方法を行なうというふうに修正すると同時に、
政府の
改正案は総代会において役員の選任ができることになっておりますが、これは現行同様総代会においてはできない。すなわち総会において選挙を行なうか、総会外において総代の選挙と同様に
理事、監事の選挙を行なうという規定の修正であります。
その次に、現行法におきましては、総代会におきましても、総代は、他の総代の議決の権利を二名をこえない範囲で行使することができることになっておりますけれ
ども、この際総代会の総代の性格を明らかにするという趣旨に立ちまして、総代会においては代理権を認めないというふうに現行法の規定を
改正するというのがこの案の趣旨であります。
最後に、農事組合法人の
制度の
改正の規定あるいはまたその他の
改正規定については、たとえば
農業協同組合及び農事組合法人においてみなし組合員とかあるいはみなし農民というような形で
農地法との
関連において合法的に不在村の土地保有が行なわれるような、そういう正常でない意図を持った
改正がねらいであるということであれば、われわれは同調することはできないわけでありますが、あくまでも今後の
農業発展の過程において
農業の集団化あるいは共同化を進めるために今度の
改正が必要であるということを前提として、これを認めるわけであります。
以上で、社会党提案にかかる
農地法の一部を
改正する
法律案の修正案並びに
農業協同組合法の一部を
改正する
法律案に対する修正案の趣旨
説明を終わる次第であります。
何とぞ
委員の皆さん方の十分な御
理解の上に立って本修正案が全面的に可決されんことを期待申し上げまして、
説明を終わる次第であります。(拍手)