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芳賀委員 もうそろそろ結論にしますが、これは大事な点ですからね。いいですか。作目ごとに所得率が高いとか低いとかという問題はあるでしょう。
農業を通じての所得は何かといえば、やはり主体をなすものは自家労働ですね。家族労働報酬の占める割合が高いか低いかということになると思うわけですよ。米の場合には、たとえば一日三千円とか、あるいは酪農の場合には千八百円とか二千円とか、あるいはまた果樹の場合には三千何百円とか、いろいろこれはありますけれ
ども、それはやはり投入した家族労働に対する報酬というものが、ほとんどこれが
農業の所得ということになるわけなんですよ。それが他産業並みの評価をすれば、ことしの場合は一日おそらく二千七百円ぐらいになるでしょう。一年間に、去年から二八%民間の賃金が上がっておるわけですからね、そういうことになると思うのですよ。ところが、臨時の日雇い労賃ということになれば、残念ながら千二百円ないし千三百円ということになるわけですから、他産業並みと日雇い労賃と、ちょうど二分の一ということになるわけですね。ですから、所得率の少ない、収益性の低い自給飼料の栽培をするとか
生産をするということはやらなくなるのですよね。そういう点と
政策というものをマッチさして、それでは自家労賃問題はどうするかということを、こういう問題こそ
農林大臣としての方向づけが必要であると思うわけなんですよ。それを私はあなたに期待して繰り返して話をしておるわけです。
最後になりますが、それに関連して、
統計調査部から、要求した
資料が出てきておりますが、これによってもこれは明らかなんですよ。
その同一地域において、米作農家と酪農の専業農家を比較して、同一の、たとえば年間を通じて二百万あるいは二百五十万の所得をあげるためには、水田の場合には年間どれだけの粗収益が必要であるか、酪農の場合にはどれだけの粗収益が必要であるかということをあわせて出してもらいたいという話を私はしたのですよ。大体これは、
農林省の統計によりましても、水田の場合には所得率が大体六〇%ということになっておるわけです。ですから、一戸当たり三百五十万円米の販売収入があった場合には、六〇%の、二百十万円の所得ということにこれは当然なるのですよ。ところが、残念ながら、酪農の場合の所得率は大体四〇%ということが定説になっておるわけです。だから、逆算して、二百万円酪農で所得をあげるということになれば、なま乳の一年間の販売代金が五百万円なければならぬということになるわけです。五百万に四〇%掛けてようやく二百万円。水田のほうは三百五十万円に六〇%の所得率を掛けて二百十万円になる、こういうことになるわけなんですよ。だからなかなか、水田の転換をやれとか縮小をやれといっても、これはできないわけです。転換をやれといっても、不利益な部分に転換するなんというばかなことはないわけです。だから、転換
政策をやるということであれば、水田
農業をやっても、酪
農業をやっても、その所得の
水準においては変わりがないというような条件をつくることにまず努力をしなければ、受け入れ
体制は出ないと思うのですよ。この問題が
一つあるわけですから、所得率を高めるということをすれば、いろいろ
生産政策、構造
政策はあるとしても、一番きき目のあるのはやはり
価格政策を通じて、毎年毎年きめる
保証乳価の
価格をどうする、あるいは
豚肉の安定基準
価格をどうするというところにやはり重点を置く必要がどうしてもあるわけです。これらを回避して、ほんとうの
農業政策を進めることはできないと思うのですよ。
それから、あわせて申し上げたい点は、いままでの
価格計算に用いられた要素の中で、たとえばこの固定資本等に対する償却の割合が非常に少ないという点であります。もう
一つは、酪農家というものは、
農業の中で一番負債が多いわけです。これは
統計調査部の
資料にも出ておるわけです。稲作の一年間二百万円の所得をあげる農家、酪農の二百五十万円をあげる農家の、
年度末の借り入れ金というものを比較した場合に、水田農家の場合の
年度末の負債は百三十三万二千円である、ところが酪農家の場合には二百六十七万五千円であるという、こういう
数字がこれは
統計調査部のほうから出ておるわけです。これを推してしても、
政府の奨励によって多頭化を進める場合には、規模の拡大をすればするほど資本装備も必要であるし、それに伴う固定負債というものが累増をしておるということが実証されておるわけです。ですから、これを
価格政策の中で取り扱うということになれば、現実のこの固定資本に対する償却、あるいは累増しておるところの酪農家のあるいは畜産家の膨大な負債に対する償還、あるいはそれに伴う金利の支出等については、当然これは農
畜産物の
価格形成の中で見てやらなければ、借金を減らすということはできないわけです。ですから、どうしても、ことしは、
価格算定上この償却の問題あるいは金利の問題、それに伴う正確な耐用年数の問題であるとか、あるいは資本装置の内容等についても、いままでは機械等にしても非常に品目が少なかったわけです。しかし労働力が足らぬことによって、いままで直接労働で行なった飼育管理やあるいは飼料作物の
生産作業というのは、ほとんどこれは機械化に移行しているわけです。それでは機械化のほうがコストが下がるかということになれば、そうじゃないでしょう。これは松浦課長もわかっておるでしょう。コスト高になるけれ
ども、労働力が足らない、経営を拡大しなければ経営ができないということで、やむを得ず機械化に、これは大きな費用をかけて移行しておるわけですから、それらを現実に取り上げて、何のために時間当たりのなま乳の
生産量がふえておるか、あるいはまた一頭当たりのなま乳の
生産量がふえておるかということは、これはとりもなおさず労働の
生産性が高まっておるということなんです。その
生産性の上昇の大きな部分というものは、これは機械化、近代化の作用ということになるが、これに対しては多くの
経費が投入されておる。これを解消するためには、やはり国が保障しておる乳価の問題にしても、あるいは
畜産物の
価格問題にしても、米麦価の
問題等についでも、十分これを厳密に計算して、総合的に配慮して
価格保障
政策というものを持続的に進めるということでなければならないというふうに考えるわけです。
私は、こういう大局的な見地から重要な問題を過去の経緯にかんがみて幾つか重点的に
指摘したわけでありますから、この
委員会だけのやりとりということでなくて、今
年度の
価格決定の場合にはぜひ私の
指摘したこれらの問題を、十分
検討を加え、採用して、そうして
生産者の立場から見てもあるいはわれわれ
国会の立場から見ても、ことしの
保証乳価あるいは畜肉の
価格決定等については妥当の線であるというような、そういう評価が行なわれるように、ぜひ
農林大臣はじめ担当の
局長、課長の諸君も、これは努力してもらいたいと思うのです。これについて率直なお答えを願いたいわけです。