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宮脇参考人 宮脇でございます。
きょう私が
会長をしております中央酪農
会議の定時総会がございまして、時間がおくれましたことをおわび申し上げておきます。
なお、このような席へ出るのは初めてでございます。同時にまたいろいろ用務に取りまぎれておりまして、はたして
意見として御参考になり得るかどうかもはなはだ疑問でございます。したがって非常に大まかなことを申し上げるかと思いますが、御寛容をいただきたい、かように思います。
まず第一は、
農業協同組合法の一部を
改正する
法律案をこの
国会に
政府からお出しになっておるようでございますが、私
ども農業協同組合の日常運営の立場に立つ者といたしまして考えておりますことは、御承知のように
日本の社会経済情勢が急速に変化をいたしておりますし、とりわけ経済発展は著しい
ものがございます。
農業協同組合はそのような情勢の中で、昭和二十三年に法が施行になりまして以来、それぞれの、言うならばかつての旧村の区域でもって設立されかつ発足をしてまいっておる。県によりましては、旧村の一
町村に
二つ以上の
農業協同組合があるところもございました。まだ現にあるところもあると思うのであります。そういう
農協の
地域、よって立つ区域がきわめて狭隘なところであり、同時に、農家である
組合員が家数にしまして三百戸前後というところが大体おおむねの規模でございます。
そういう中で発足当時から今日まで参ったのでありますが、かねがね御
案内のように、情勢は急速に変化をいたしておりまして、それに対応するためには、どうしてもやはり
農協の規模を
拡大してまいらなければならぬ。これを要求する要素というのは、私は大きく言って
二つあると思うのであります。
その
一つは、最近の
農業は御承知のように、資本装備を充実しなければなかなかやってまいれません。三反百姓、五反百姓でも、やはり耕うん機を買い、あるいは脱穀機を買いというふうな形でやってまいっておりますし、さらに最近はそれらのような状態ではいけないからというので、協業等の形で出ていく、あるいは最近の畜産、青果等はこれまた御
案内のような状況でありまして、だんだん規模が
拡大をされてまいります。
農地としての
経営規模の
拡大はなかなか容易じゃございませんけれ
ども、資本の充実により投資の量の
拡大によっては、畜産等でありますと、とりわけ養鶏採卵あるいはブロイラー等でありますと、相当な羽数を飼育することが可能でございます。そういう状況でありますと、右左に金が要る。それらの金をまかなうに足るということが
一つのやはり目安でございます。
第二の問題は、資本とともに技術が要請をされてまいります。最近の
組合員農家としましては、相当技術的進歩も著しい
ものがございます。同時にまた世界的な、国際的な視野の中にも、
日本的な視野の中にも、新技術という
ものがどんどんと進んでおりますので、それらに立ちおくれないようにどう
農協は各個々の
組合員に対する技術指導、営農指導をやっていくか、これも非常に重要でございます。ところが一二百戸
程度の
組合員をもってする規模の単協におきましては、
組合員からの要望に対しまして技術者の頭数をそろえておくというふうなことは
経営上なかなか困難であった。だから稲作の技術者も、畜産の技術者あるいは青果の技術者も何もかにも兼ねたような
ものが一人おったりおらなかったり、こういう形ではやはり
日本農業の前進を
ほんとうにやらなければならない単協の場としては、これは困るということでございますので、まずそれらの技術陣容もなるたけひとつ整備していくというため、これらの点が非常に
組合員の要求として組合に上がってくるのでございまして、そういった
ものを
組織上どうこなしていくかということになりますと、やはりこれは
農協の合併、単協の合併によって進もうということでもって、先生方の御努力で
農協合併助成法がすでに時間切れになりましたけれ
ども生まれまして、それ以来相当単協の合併が促進されてまいったのでございます。合併が促進されてまいりますと、大きいところでは一万に近い農家戸数を数える。小さくともやはり、二
農協程度の合併のところもございますけれ
ども、おおむね四つ、五つという合併になりますと千、あるいは最近の動向では二千から六千の
範囲というのが多くなろうとしておる
ものでございます。こうなりますと、何といたしましても物理的に、総会等で六千の人間を寄せるの三千を寄せるのということになりますと、合併
農協の地区で講堂あるいは公会堂、公民館等ございましても、おおむねやはり五、六百人というのが
会議らしいことができる
限界でありまして、それ以上のところは物理的にもなかなか収容でき得る施設もまれである。また
会議でございますから、喧騒の中に進んでいくというわけにはまいりませんので、なるたけ
会議らしい
会議が持てるという条件も必要でございます。こういう点から当然に、
組合員の意思がうまく民主的につながっていくということを前提にいたしまして、総代制等が必要となってまいっておるのでございます。この点は何としても、経済的にも大きくなっていく、規模も
拡大されていくという中でこの
一つの現実の問題が今後も進んでいく。それからもう
一つの問題は、
組合員のために
組合員がつくる民主的
農協でなければならない、踏みはずしてはならない、この民主制をどう維持していくかという
二つのかね合いの問題だと思うのであります。最近は、もちろん全国平均ではございませんけれ
ども、だんだんと兼業と申しますか、農閑期における他へ出かせぎと申しますか、あるいは自宅通勤ではございますけれ
ども、おつとめになる
方々が多くなってきた。そういう状況で、私も、単協の総会にわが県ではできる限り出ておりますが、もう正会員であるおやじさんはめったに出ていらっしゃらない、おばあさんであるとか、あるいはおじいさんであるとかいう
方々が、隠居役に顔を出すという形が相当顕著に見られております。こういう状況でございますので、私
どもの
組織内部の指導の
方向といたしましては、なるたけ部落等を
中心に懇切に、総会等で議案になる問題あるいはその他の問題を、夜行って部落座談会を十分徹底して、それでもって、そこへ出てくる総代の
方々に部落の
意見を集約してきてもらって、それが民主的に反映でき得るような形で総代
会議を持つようにという配慮をいたしておるのでございます。この点が欠除いたしますと、
農業協同組合自体は
組合員の
ものでございますから、農民の
理解と協力によって存立するのでありますが、その民主的という基盤が、単に総会の会場ということになりますと、いろいろ制約がございまして総代制をとっていただく以外に手はないと思いますけれ
ども、その総代が出てくるまでの下地は、これはがっちりと民主的に十分納得のいく手だてを講じて、その土台の上に立ってお越しいただくという形で運用してまいるのが適当であろうと考えておるのであります。
なお第二は、これも社会経済情勢の急速な変化によって生じてまいったことでございますが、いわゆる
農業協同組合が
農地を
農地として
委託を受けて
経営をしていくという場合が
一つと、それからもう
一つの問題は、
農地を
農地以外の用に供する場合に、この
取得、
保有、売却ができるというふうなことをぜひ
お願いいたしたいということを、先般来私からも
政府御当局に
お願いを申してまいったのであります。この点はとかくの御心配をいただく向きもございます。ございますが、私は今日のような情勢のもとにおきましては、少なくとも米の
生産調整等をいたさなければならぬというような情勢の中で、単なる形で一般のデベロッパー等の跳梁にゆだねてしまって、
農地の壊廃——他の用途に供されていくということになりますと、
農業の
生産基盤は根底から破壊される。今後の
方向はいやおうなく、これは機械化であり、近代化である。その機械もだんだん大型化してくるという
ものでございます。だからたとえて言うならば、道路のまん中を電信柱にとられたような形になりますと、機械化耕作はできません。だからなるたけその
地域内における
農業地域では、
生産性の高い
農地は
農地としてぜひ存置し、これを守っていく。どうしても
工場の
進出であるとか、あるいは他の施設への
転用であるとかいう場合は、今後における機械化営農、近代化営農を阻害しないような水の条件と地力の問題、作業条件等を含めて
計画的に進めるべきではあるまいか、こういう
考え方を基調にいたしておるのでございます。
したがって、なぜ
農協が
農地を
農地として使う場合における問題に手を出すのかといいますと、これは何としても、過疎地帯等は今後管
理事業団等が予想されておるようでありますが、
地域の
農業委員会あるいはその都道府県の
農業会議等とも密接な連絡協調のもとに、また都道府県とも密接な連絡協調のもとに、住むに値しないとして過疎といわれる地帯になっておるところを再開発をいたしまして、畜産なり青果なり、これらに適する基礎条件を整備して、新しい熱意と遠大な希望を燃やす
農業担当者である若い人たちに、将来のあるべき
日本農業の姿として、そろばんも合い、またやるに足る農家という
ものをつくっていく、そういう場所として過疎地帯を再開発する。これには
農協も当然に発言権を持ち、
農業委員会、
市町村等とともに村をこわさないように、理想的な村に仕立てていくためには、私
どもがそういう一端の仕事を持つことは当然である、こう
理解をしております。それから内陸と申しますか、そういうところではない、中間の普通の地帯におきましては前段申し上げたようなことでありまして、
農業の近代化、機械化に対応するためには、いわゆる虫食い現象的なことを起こさせないためにも、私
どものところで当然発言でき、また事業ができ得るような仕組みにしていただくことが当然ではあるまいか、こう考えております。また
都市の近接地帯におきましては、最もスプロール現象の激しいところでございまして、この地帯におきましては、あくまで私
どもは
農地を手放してしまうのではなくて、——
農地を手放した農家は金を持っておっても長続きしません。みな四、五年を出ずしてその金をなくしたり、いろいろ家庭的なトラブルを起こしたりというようなことが起きておりますので、なるたけ
生産性の低い、あるいは住居には快適な場所というふうなところは、それを
農住都市構想でもって、
土地はお互いが出し合って
農協が管理し、それを整理いたしまして、基礎条件を住宅地らしい適当な
ものにいたしまして、その上で現在の公団あるいは公営の住宅等、あるいはマンションとかなんとかといわれる一般業者が
進出しておる、いま言うならばぜいたくなといわれる住宅との中間的な
もの、そういった、いわゆる中
所得者階層といいますか、そういう人たちをおおむねは受け入れられるといいますか、そういう方方にお使いいただけるような住宅を提供申し上げまして、それでもって
都市と
農村との、いわゆる共存共栄をはかってまいりたい、
計画的に進めたいということを考えておるわけでございます。そういう
意味で
農地を
農地として、あるいは
農地を
農地以外の用としていたす場合においても、
農協がその
取得、あるいは
保有、売却、管理、営農等もでき得るような仕組みにしていただけることは、まさに時宜に適したことではあるまいかと考えておるのでございます。
大筋、
農協法につきましては、以上のような点でございます。
農地法の問題につきましては、これも私は、
農地法が
制定され、
農地改革がなされました当時の時点における社会経済情勢という
ものと、今日の情勢との変化、これをどう
調和統一さすかという点が一番法律の苦しいといいますか、くふうを要する点ではあるまいかと思うのであります。したがって、一番私が心配いたしておりますのは、小作料を青天井にしてしまうこと、この点は、よほど私は行政的にそれぞれの指導を必要とするのではないだろうか、こう思うのであります。
それから第二点は、不在地主という
ものを、これをどしどし許していくというふうな点につきましては、これもおのずから
限界のある
ものとしてお考えになる必要があるであろう。もちろん、農民が
農業経営をする場合のワクは、これは今後の
経営の
拡大が国際的にも
日本農業の将来にとって必要でございますから、おはずしになって、たとえ五町、八町、十町といえ
ども経営でき得る体制をつくっていただくということが、もう当然であると思うのであります。ただ、小作料が青天井になって、しかも在村しなくても
農地が
保有できるというふうなことになりますと、これは
日本の旧封建的な
農地制度への逆戻りにつながる危険なしとしないという点におきまして、いささか心配なしとしないというふうに私は感じておるのであります。本来であれば、
農地はあくまで勤労農民がそれを所有するという原則の上に立って
ものごとをお考えいただければしあわせではあるまいか、かように考えておるのであります。ただ、今日の私
どもの
農業協同組合が、兼業地帯等におきましては、その所有権を侵すことなく
土地の
生産性を落とさないように、みずからの組合である
農協に
委託をして、
農協がこれをかわってある一定時期を
経営するという便法は当然必要ではあるまいか、かように存じておるのでございます。
非常に粗雑でございましたが、いただいておる時間も過ぎておりますので、以上でもって私の申し上げることを終わりたいと思います。(拍手)