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1970-03-24 第63回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月二十四日(火曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員   委員長 草野一郎平君    理事 安倍晋太郎君 理事 小沢 辰男君    理事 仮谷 忠男君 理事 丹羽 兵助君    理事三ツ林弥太郎君 理事 芳賀  貢君    理事 山田 太郎君 理事 小平  忠君       赤城 宗徳君    鹿野 彦吉君       亀岡 高夫君    熊谷 義雄君       小山 長規君    坂村 吉正君       澁谷 直藏君    白浜 仁吉君       瀬戸山三男君    高見 三郎君       中尾 栄一君    中垣 國男君       別川悠紀夫君    松野 幸泰君       森下 元晴君    山崎平八郎君       渡辺  肇君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    千葉 七郎君       中澤 茂一君    長谷部七郎君       松沢 俊昭君    瀬野栄次郎君       鶴岡  洋君    合沢  栄君       小宮 武喜君    津川 武一君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         食糧庁次長   馬場 二葉君  委員外出席者         参  考  人         (全国農業会議         所専務理事)  池田  斉君         参  考  人         (全国町村会副         会長)     野口  一君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会会         長)      宮脇 朝男君         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十日  辞任         補欠選任   田澤 吉郎君     西村 直己君 同日  辞任         補欠選任   西村 直己君     田澤 吉郎君 同月二十四日  辞任         補欠選任   亀岡 高夫君     山崎平八郎君   田澤 吉郎君     別川悠紀夫君 同日  辞任         補欠選任   別川悠紀夫君     田澤 吉郎君   山崎平八郎君     亀岡 高夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第二  九号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第三〇号)      ————◇—————
  2. 草野一郎平

    ○草野委員長 これより会議を開きます。  農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、両案について参考人から意見を聴取することといたします。  ただいま御出席参考人は、全国農業会議所専務理事池田斉君、全国町村会会長野口一君、以上の方々であります。なお、全国農業協同組合中央会会長宮脇朝男君は、所用のため後刻出席する予定であります。  両参考人には、御多用中にかかわらず本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  ただいま本委員会におきましては、農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案について審査をいたしておりますが、両案につきまして、参考人方々の忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではございますが、参考人各位からの御意見開陳は、御一人おおむね二十分程度お願いすることとし、その後に、委員からの質疑があればこれにお答えいただくことにいたしたいと思います。御意見開陳は、池田参考人野口参考人の順序でお願いいたします。  それでは、池田参考人お願いいたします。
  3. 池田斉

    池田参考人 ただいま当委員会審議をされております農地法並びに農協法の一部改正案につきまして、参考人として意見を申し述べる機会を与えてくださいましたことを、厚く御礼を申し上げたいと思います。  言うまでもなく、この二つ法案は、すでに二回の国会、今度は三回目と承知いたしておりますが、特に前国会におきましては、衆議院におきましては非常に長い時間をかけまして審議が行なわれ、衆議院を通過いたしまして参議院に回ったわけでございますが、私ども、この二つ法案が何とか前国会成立を期待をいたしておりましたけれども、あのような事情で廃案になったことはきわめて遺憾に考えておるわけでございます。  私は、前国会におきましても、特に農地法審議関連をいたしまして、当委員会に招かれまして、参考人として、特に農地法関係のいろいろな問題点等につきまして意見を述べる機会を持ったわけでございますが、今回再び参考人としてここに立つわけでございまして、農地法関係中心とした法案の内容にからむいろいろな問題につきましては、あまり詳しく述べることを今回は差し控えまして、全体といたしましてこの二つ法案が現在どういうような農業上の背景におきまして大事であるかというような点を中心として、若干私の見解を申し述べたいと思います。  今日、米の生産調整その他いろいろな大きなあらしが農業界を取り巻いておるわけでございますが、しかし、日本農業というものをきわめて長期的なロングランの姿の中でものごとを誤りなく展望をしていくということが、やはり農政基本的な姿勢であり、態度でなければならないと思うわけでございます。特に他産業との関係あるいは国際的な環境、そういうことを考えてまいりますと、今日の地価の高い、こういう状態の土地問題の中で、さらにそれとの関連におきまして、農業者は何となく農地生産手段というような姿よりも、資産的な保有、こういうような考え方が非常に強くなってきておる。これは率直に申し上げまして、わが国国民経済全体の高度成長という問題とのからみでございますので、このことが農業者の責任でもないし、地価問題はむしろ農業から見ますと、被害者的な立場であるというような感じがいたします。少なくとも農地農業者が取り扱う場合にはあくまでもこれは最も基本的な生産手段として、これをどういうふうに経営に活用させていくかということが基本であり、先ほども申し上げましたような高度成長あるいは国際経済というような環境の中でこれを最も合理的に活用する、そのためにはやはり土地問題につきましては、農地法というような国が基本的にこれをコントロールする、そういう制度がもし廃止されますならば、わが国農業は結局は壊滅をする、そういう意味におきまして土地問題の規制ということは、私は食管法と並べてそれ以上に大事な問題であるというふうに考えております。  しかしわが国農業のいろいろな背景というものが、ただいま申し上げましたような形で変わってきております。そうなりますと、今日まで農家の所得というものを、農業経営を通しての所得というものを、米に集中されて、おりますように、価格政策基本的には依存をして今日までやってきた、こういう問題が一つ限界に到達しておるということは率直に認めざるを得ないと思うわけでございます。したがいまして、これからほんとう日本農業を長期的に展望する場合には、何と申しましても、価格政策の安定ももとより基本的に必要でございますけれども、より以上に大事なことは生産構造政策と申しますか、いわゆる農業経営を強靱なものにしていく、体質を改善する、こういうことが農業所得につながる一番基本的な長期的なプログラムでなければならないというふうに理解をいたしておるわけでございます。しかもそれは高地価あるいは資産的な保有、こういうような農民の現在与えられておる環境の中で、この問題をどういうふうに打開していくかということであるかと思います。いわゆる高能率、高生産、高所得農業をどういうふうにわが国農業の中においてつくり上げていくかということが、一番中心課題でございます。そのためにはやはり一つは、自立経営あるいは企業的な経営というものをいかにわが国農業の中につくり上げていくかということが一つの問題であり、またこのような国土の中におきまして農業が小さな形で密集している、こういうものをまとめまして、いわゆる集団的な生産組織と申しますか、農協営農団地と申しますか、そういうような形での組織確立と、この二つをやはり軸としてこれからは日本農業展望をつくり上げていく、こういうことが基本的に大事な問題であるというふうに考えております。  そのためには、何と申しましても一番大事な問題は、優良農地を集団的に確保をする。何でもかんでもという意味ではございません。とにかく優良集団農地だけはあくまでも確保をしていく、こういう前提に立って土地問題に対処しなければならないのではないか。特に長期的にものを考えますと、現在米の生産調整で十一万八千ヘクタールを減らすという問題が政府の施策でございますけれども、長期的に考えますと、現在のようなわずか五百万ヘクタール程度農用地で、わが国長期展望に対する土地問題は、これは不足をするということは認識してかからなければならない問題であり、長期的にはやはり外延的な土地拡大を含めまして、米は余っておるかもしれませんけれども、ほかのものは全部足りないというのが現状でございます。国民食糧を安定的に供給をしていく、しかも国際的な環境の中で強靱な農業をつくり上げながら長期的な展望をつないでいくということになりますと、私は、ロングランには農地はもっともっと拡大されるべきである、しかもそれは優良な集団農地として確保されるべきである、こういうふうな見解に立っておるわけでございます。そういう意味におきましては、わが国の狭いこの国土を合理的に全体として土地利用計画をどう立てるかということが基本であると思いますけれども、この問題は全総計画その他でいろいろな構想政府からも出ておりますけれども、長期的にはああいう一つ構想一環として農用地確保ということが考えられなければならないというふうに考えております。  しかし当面の優良農地確保の問題は、御案内のように一つ都市計画法がすでに制定をされまして、都市地域の線引き問題がいま日程にのぼっております。いま一つは、前回国会におきまして農業地域振興法制定をされております。この二つを当面は軸として、農地利用計画というものを、集団的優良農地確保する、こういう視点に立ってこの二つの立法を軸として今日取り組んでおるのが現状でございます。したがって先ほど申しましたような自立経営育成なりあるいは集団的な生産組織確立なり、こういう問題は、この農振法なりあるいは都市計画法、そういうものに基づきまして優良農地確保し、その中におきますところの農用地流動化、これが基本的に大事な問題になるかと思うわけでございます。  農地法あるいは農協法の今回提出されております改正問題は、この問題に着目して立法され、この委員会審議をされておるというふうに私は理解をいたしております。  特に農地法改正におきましては、現状追認というようないろいろな声もございますけれども、とにかく農地法の第一条の精神にいわゆる農地合理的保有をはかるという一つの問題を入れまして、現状との関連におきましてわれわれが長期的にものを考える場合の農用地移動に対する権利の調整等緩和を含めまして、いわゆる自立経営育成なり集団的農業組織確立、こういう問題に指向するための、いままでの農地法の隘路を緩和し打開をする、こういう方向改正案が出ておると思います。また積極的な意味におきましては、いわゆる農地保有合理化事業というものを掲げまして、これを実施するために、いわゆる合理化法人を考え、これを農地農地としての移動をする場合の一つの公的な機関として指定をするという考え方がございます。しかも、かつて農地管理事業団法が出まして国会におきまして廃案になりましたけれども、これは国が一元的に全体を初めからスタートを切ることにつきましては、かなり地方実態にそぐわないではないか、こういう国会の御意見等を含めまして、とにかく地域地域実態に即応してこの問題に手をつけていく。しかしこれはあくまでも、合理化法人として公的なものがこの問題に対応するという思想は変えておらないと思います。このことは非常に前向きの農地法に対する追加規定であるというふうに、私は理解をいたしております。  いま一つは、わが国農業は将来畜産の問題に対しましてこれからまだまだ飛躍しなければならない、こういう問題に対応いたしまして、いわゆる草地の利用権の設定という前向きの規定もあるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、農地法の今度の改正の体系ができておる。いろいろ御意見等はあると思いますけれども、大局的な流れにおきまして最も今日必要であり、前向きの改正であるというふうに私は理解をいたしておるわけでございます。  農協法につきましては、あと宮脇会長もおいでになりましていろいろお話があると思います。  一つは、やはり集団的な生産組織育成というような問題に対応いたしまして、組合員委託によりまして農業経営をみずから営むことができる、こういう一つの前向きの問題点がございます。  また今回業務の範囲二つの問題が追加規定をされたことは、御承知のとおりでございます。一つは、農地供給事業を行なうことができる。すなわち買い取りあるいは売り渡しというものを、農地農地として行なうことが、農協もできる。いま一つは、農住都市その他いろいろ農協構想がございますけれども、これらの関係におきまして、転用農地売り渡しあるいは区画変更ということが原則として組合員委託に基づいて行なわれる。この二つ規定が前国会とは違いまして追加になっておるわけでございます。これらの問題は若干あとで申し上げますけれども、非常に重要な問題点農地法との関連で持っているというふうに理解をいたしておるわけでございます。  そこで少し問題の方向を変えまして、米の生産調整が今日日程にのぼっておりますけれども、これと農地政策関連におきまして若干意見を述べておきたいと思います。  私は、土地問題を考える場合に米の問題が非常に緊急で大事である、この点につきましては認識は同じでございますけれども、このことと土地問題の長期問題を混同して、何か全体として農業後退をする、こういうような印象を今日与えていることは、きわめて遺憾に存ずるわけでございます。先ほども申しましたように、長期的にはわが国農用地は足りない、もっと造成をしなければならない、こういう基本的な線に立って、短期的に米の過剰問題をどう片づけるかというようなことで、百五十万トンの問題が出ておる。そのうち百万トンはいいわけでございますが、あとの五十万トン、いわゆる十一万八千ヘクタールの水田をつぶす、こういう問題との関連におきまして、なんとなく農業はもうこの辺で後退をするという印象を与えておることは、私はきわめて遺憾に感ずるわけでございます。  この問題をめぐりまして農業外の資本がむちゃくちゃに農業側に無計画進出をしてくるということが一つの大きな流れになりますと、その勢いというものは、先ほど申し上げましたような、優良農地にまでどんどんはびこってくるというような勢いになってはたいへんである、こういうことを非常に心配をいたしておるわけでございます。そういうような面におきまして、この問題に対応する具体的な措置といたしまして、特に私の所属している農業会議所におきましては、先般会長会議におきまして二つ三つの重要な問題点政府に指摘をいたしておるわけでございます。  いかに生産調整で十一万ヘクタールの農地転用しなければならないという事態におきましても、無原則的な転用であっては絶対に相ならない。いわゆる計画的な土地利用区分、こういう問題を含めまして、優良農地はあくまでも確保するのだ、特に集団的な優良農地確保するのだ、こういう視点に立って、この問題の転用基準緩和はそういう姿であるべきである、この点に関しましては、皆さま案内のとおり、すでに転用基準緩和につきまして先般次官通達が出されておるわけでございますが、これにつきましてはわれわれの意のあるところを政府にも十分伝えまして、暫定措置として、当面緊急の具体的な措置であるという形におきまして、適切な形での、緩和ということに歯どめを十分つけましてこの問題をやっておるという意味におきまして、私どもはこれを了承するわけでございますけれども、ただ政府がそういう考え方をとりましても、末端の、すみずみにおきましてこの問題をさらに打ち破って、大きな流れの中でいわゆるスプロール的な形におきまして優良農地にまで転用の問題が入り込んでいくというようなことのないように、政府におきましては厳に、この問題は今度の転用規制緩和限界というものをひとつ十分指導をしていただきまして、そういう方向にならないようにお願いをいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  それと関連があるわけでございますけれども、いわゆる投機的な形におきますところの農地取得という問題が、この十一万ヘクタールの問題と関連をいたしまして、先ほど申しましたように、非常に大きな勢い農村を荒らす、農地を荒らす、こういう問題に対しましても、ひとつ厳にいまのような姿におきましてこれを抑制していくということが必要であると思います。  第二の問題は、現在問題になっております産業地方分散工場地方進出の問題と農地保全政策との関連でございます。  もちろんこれからのわが国農業は、特に農村地域社会の発展ということを考えますと、これだけ過密の形におきまして人口が太平洋ベルト地帯中心として集中し、また工場がそういうところに立地をする、こういう姿をもっと工場地方分散という形におきまして、中小都市が、いわゆる農工調和という形におきまして地域社会が発展するということにつきましては、いま非常に大事な政策課題である、そういう意味におきましては工場地方分散措置は私は賛成でございます。  しかしながら、その場合に大事なことは、やはり先ほど申しましたように、農業振興地域法都市計画法、この二つの問題をからめまして優良農地は十分に確保できる、こういう姿の中におきましてこの問題の調和ということを土地利用視点から非常に注意してかからなければならない。  このために、一つの問題は、都市計画法は現在八百町村におきまして指定されるということになっております。大部分の市町村というものがまだこの問題の適用が行なわれません。そういたしますと、農振法だけで農業地域を守る、しかしこの問題につきましても計画的な指定がありますので、全体の地域に及ぼすのには五年ほどかかる、こういう問題がございます。  工場地方分散は歓迎をすべき問題でございますけれども、その立地のあり方につきましては、やはり中小都市を含めまして、全体としての土地利用計画というものを何らかの方法で緊急に立てるということを、ひとつ政府においても十分考えるべき問題ではないか。  第三番目の問題が、私どもが一番基本的な問題として、先ほど農協法におきまして二つの条項が追加をされたという問題との関連で実はいろいろ論議を呼んだ問題でございます。  農地流動化規模拡大、これは先ほど申しましたように、農地法を軸といたしまして基本的にこの問題がこれから前進しなければならない問題でございますけれども、このことは一元的な公的機関が統一的に行なうということが私どももの考え方でございます。したがいまして、農協法改正をされまして、農協が新しくできるという場合に一元的に統一的にコントロールするという問題と、この問題をどういうふうに調整をするかということが基本的に解決されなければならない、こういう視点に立っておるわけでございます。  今回、当委員会におきましても、すでに政府からこの辺の問題の説明がいろいろあったというふうに考えますけれども、私ども農協とわれわれの系統と農林省と三者でこの問題はいろいろ協議をいたしました。少なくとも農地流動化問題は、私どもの言う一元的なコントロール、これが可能な範囲におきまして策定をする。一方におきましてこの問題と、農協農地取得をするという問題の調整を具体的に行政の措置におきまして行なっていく、こういう問題が結論でございます。  具体的に申し上げますと、農地法農地保有合理化事業一環として、とりあえず県段階にいわゆる合理化法人ができることになっております。これはすでに予算措置さえつけられておるわけでございます。初めの考え方は、まず県段階スタートをして、それから逐次いろいろな問題を考えたらいいじゃないか、こういう考え方が前国会までの農地法考え方であったと思います。今回農協法改正されまして、農協規模拡大なりあるいは集団的組織確立のために農地供給事業を行なうことができる、こういうことになったわけでございますけれども、これはあくまでも合理化法人一環としてこれを位置づけるという点で私ども理解をいたしておるわけでございます。その場合、県段階だけではなくて市町村段階におきましてもこれができるということになるわけでございます。その場合には、町村農協二つの問題が町村段階にはございます。この問題は一つ町村におきましては両者が十分調整をしていく、これを知事が合理化法人としてどちらを指定するかということは、町村調整に基づいて行なう、あくまでも農協が何でもかんでもやれるということではなくて、いわゆる合理化法人一環として指定を受けるという性格においてこの問題が行なえるということに相なっておるというふうに私ども理解をいたしております。  そういう意味におきまして、農協ほんとう営農団地その他の問題等を踏まえまして、その地域農業経営規模拡大なりあるいは集団組織育成なり、そういう問題に具体的に立ち向かうというような、農協におきまして合理化法人一環としてこの問題を認めるということにつきましては、私どもも当初いろいろ議論はありましたけれども、今日はこれを了承をいたしておるわけでございます。  また、いま一つは、転用農地の取り扱いの問題でございますけれども、これにつきましては前段に触れましたように、いわゆる転用基準緩和——緩和暫定措置でございますから、やがてこの問題は従来の方式に私は当然戻るべきであると思いますけれども、そういう転用の制限のワクの中におきましてこの問題が取り扱われる、そしていわゆる農住都市構想等の問題が進展をするということにつきましては、現在の農村実態あるいは都市農村関係、そういう面から見まして当然農協がこれを扱ってしかるべき性質のものであるというふうにいたしまして、私どももこれに対しては理解を示しておるというのが現在の実情でございます。  以上いろいろ申し上げましたが、時間も参りましたので、この程度でやめますが、前回国会におきまして審議をされました問題に、今回は特に農協法改正で二点が追加になる、こういう問題をめぐりまして、農地法の、特に農地保有合理化事業との関連におきまして両団体において若干意見の食い違いがございましたけれども、この問題につきましては、完全に政府と三者の関係におきまして意見調整が行なわれており、したがいまして、私は結論的に農地法農協法が今国会こそ何とかひとつ成立をいたしまして、いわゆる生産構造政策の具体的な法制的なレールが確立をするということにつきまして、長い間の念願がこの国会におきまして確立いたしますように、ぜひ皆さま方の御審議十分お願いをいたしまして、われわれの希望に沿うような方向でこの結末をぜひお願いをいたしたいということを最後に申し上げまして、私の意見開陳を終わりたいと思います。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
  4. 草野一郎平

    ○草野委員長 ありがとうございました。  次に、野口参考人お願いいたします。
  5. 野口一

    野口参考人 野口でございます。本日は、農地法並びに農協法の一部改正に関する法律案について意見を述べるようにということでございますが、まず意見を申し上げるに先だちまして、近年激動の渦中にございますわが国農業の今後の諸方策等につきまして連日御審議を賜っております諸先生に、その御熱意に対し、町村長の立場から深く感謝の意を表する次第でございます。  まず、農地法農協法改正につきましては、結論から申し上げますと、両法案とも久しく御審議を重ねておられるものでございますが、私ども町村長といたしましては、今日の農業実態から見ましてぜひとも必要な措置であると考えまして賛意を表しており、国会の御審議にあたりましては、今日まで早期に成立を見ますよう諸先生にお願いを申し上げておりまして、今国会におきましてはすみやかに結論をいただき、実施に移していただきますよう、重ねてお願いを申し上げる次第でございます。  そのおもな理由といたしましては、まず最近における経済の高度成長に伴いまして国民の生活水準は年々向上の一途をたどりつつございますけれども農業の面におきましては、従来のような零細な経営規模のままにおきましては、土地生産性あるいは労働生産性に限界がございまして、農業所得のみではとうてい家計費を充足いたしかねる状況にございます。これがために、最近とみに出かせぎでございますとか、そういう形が全国的に広まりつつございます。農業と他産業と二またをかけるような不安定な中途はんぱな状態にありましては、農業の近代化も進みがたいのでございまして、さらに一方、他薦業への雇用の条件も改善されたとは申されないのであります。さらに、健康の問題あるいは子弟の教育の問題、いろいろ悪影響を生じつつございます。したがって、どうしても農家の就業状態を改善し、他産業への就業を安定化するという処置も必要でございますけれども、特に農業に定着をして農業でいこうとするものの規模の拡大を促進することが目下重要な課題であろうと考えます。  都市化現象の進行、過疎過密の拡大等によりまして、土地利用の動きが激しくなってきております。都市近郊地域におきましては、特に農業で立とうとするもの、健全な農業を維持しようとするもの考え方がかなえられないような情勢になっておりまして、そうした堅実な考え方で進もうとする農家を守るための諸施策が必要であろう、こう考えます。  さらにまた、過疎地域におきましては適正な工場配置を進めることによって農家所得の充足、そして地域産業の発展をはかることが必要であろうと考える次第であります。これらにつきましては、新都市計画法あるいは農業振興地域整備法というもの制定されまして、地方工場立地の促進が考えられつつありますけれども、こうした動きに対しまして、農地と農家が対応しやすくするための農業側農地法あるいは農協法の改善が当然必要となると考えるものでございます。  最近におきまして、貿易の自由化の拡大、米の生産調整などのこの事態は、農家にとっては今後の農業経営をどのように考えたらよいか、そういう新しい不安を与えつつあるわけであります。私ども町村長といたしましては、わが町の、わが村の農業をどのように今後進めていったらよろしいのか、こういう問題、あるいは町や村の中にあります農業関係諸団体の適正な発展そして運営、これをどのように進めたらよろしいのか、こういう問題、これらは特に農業を主要な生産基盤といたしております町や村だけに、農業の振興と地域社会の発展をどのように結びつけたらよいか、このようなむずかしい問題と当面いたしておるわけであります。私どもが村の農業をどのように進めていくか、こういうことを考えました場合に、まず農業の基盤でございます農地の問題がきわめて重要になってまいります。今後農業で行こうとする者、農業に定着しようとする意欲の高い農家、これが現行法におきましてはその規模の拡大がきわめて円滑を欠いておる実情にございます。他に転業した者の農地も円満に意欲の高い、規模拡大をこいねがう農家に流れてこない実情、法を無視したやみ小作等の芽ばえ、このようなことを改善、合理化いたしまして、ほんとう農業で今後やっていこうとする農家のために円滑に農地流れてくるような処置が必要でございます。  このような点から今後の農業を考えます場合に、現場の実態をとらえていただきまして、農家の動き、これらに合ったような農地法農協法を実現さしていただきたいと思うわけであります。こうしたルールの整備をやらない限り、今後の私どもの村づくり、町づくりの計画あるいはその将来の展望が立たないわけでございます。  以上のような考え方に立ちまして、今日議題となっておます農地法並びに農協法改正法案につきましては賛成の意を表する次第でありまして、一日も早い成立を御期待申し上げ、諸先生の御審議お願い申し上げる次第でございます。  簡単でございますが、一言所見を申し上げます。(拍手)
  6. 草野一郎平

    ○草野委員長 ありがとうございました。  以上で両参考人の御意見開陳は一応終わりました。     —————————————
  7. 草野一郎平

    ○草野委員長 宮脇参考人がまだ見えておりませんから、この際、お二人に対する質疑の申し出がありますので、順次これを許します。千葉七郎君。
  8. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 野口さんにお伺いをいたします。  野口さんの御意見では、現行の農地法規定では農地の、経営規模の拡大は不可能だというような御意見でございましたが、あなたの町の農地の所有の形態はどのようになっておるのでございましょうか。大体三町歩程度の農家は全農家戸数の何%くらいになっておるか、あるいは一町から二町程度の中農の占める割合はどの程度になっておりますか、一町以下の小農の規模のパーセントはどの程度か、お知らせを願いたいと思います。それから、あなたの町村はどこでございますか。あわせてお知らせを願いたいと思います。
  9. 野口一

    野口参考人 私の村は茨城県でございます。霞ケ浦の北岸に位しております茨城県で最も規模の小さい村でございまして、人口わずかに五千でございます。  平均耕作面積は一町一反でございます。比率は村全体といたしましては水田六〇%、畑四〇%という比率でございます。で、三町以上の農家は一、二戸でございます。最近村内に工場進出いたしまして、そのほうへの就業者が逐次増加しつつございます。その場合に、工場に就業いたした者の農地農業専業で行こうとする農家に流れていかないという事実でございます。と申しますのは、小作地にこれを提供いたしますと、現行法では、率直に申し上げまして永久に戻ってこないという点がございます。したがって粗放的にこれを保有している、こういう形でございまして、これが法律の改正等によりまして、さしあたりは農地を必要としないけれども、しかるべき時期にはまた安心して耕作できるということであれば、さしあたり拡大をはかろうとする者に円滑に流れていくこういう事実を申し上げた次第であります。
  10. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 三町歩以上の、政府で言っておる自立経営農家はあなたの村では一、二戸程度しかないということであれば、現行農地法経営規模の拡大はできないということにはならないのじゃないかという感じがするのですが、その点はいかがですか、御見解をお聞かせ願います。
  11. 野口一

    野口参考人 先ほど申しましたように、現行法では、いまは必要としないけれども、十年後には子弟の育成等によって農業経営に進める、こういう農家があるわけでありますけれども、これを一たん手放しますと戻ってこないというのが現行法でございます。したがって一定期間これを他にゆだねる、そういうことによって、差しあたり拡大をはかろうとする者の規模が拡大できる、こういう考え方でございます。
  12. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 宮脇さんおいでになったそうですから、あとでまたお伺いします。     —————————————
  13. 草野一郎平

    ○草野委員長 ただいま宮脇参考人が御出席になられましたので、両案についての御意見を承りたいと存じます。  宮脇参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、目下農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を審議いたしておりますが、両案について参考人の御意見を承り、その審査に資したいと存じております。  ただいまより両案につきまして忌憚のない御意見を承りたいと存じますが、御意見はおおむね二十分程度お願いすることとし、そのあと委員からの質疑があればこれにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  それでは、宮脇参考人の御意見をお述べ願います。
  14. 宮脇朝男

    宮脇参考人 宮脇でございます。  きょう私が会長をしております中央酪農会議の定時総会がございまして、時間がおくれましたことをおわび申し上げておきます。  なお、このような席へ出るのは初めてでございます。同時にまたいろいろ用務に取りまぎれておりまして、はたして意見として御参考になり得るかどうかもはなはだ疑問でございます。したがって非常に大まかなことを申し上げるかと思いますが、御寛容をいただきたい、かように思います。  まず第一は、農業協同組合法の一部を改正する法律案をこの国会政府からお出しになっておるようでございますが、私ども農業協同組合の日常運営の立場に立つ者といたしまして考えておりますことは、御承知のように日本の社会経済情勢が急速に変化をいたしておりますし、とりわけ経済発展は著しいものがございます。農業協同組合はそのような情勢の中で、昭和二十三年に法が施行になりまして以来、それぞれの、言うならばかつての旧村の区域でもって設立されかつ発足をしてまいっておる。県によりましては、旧村の一町村二つ以上の農業協同組合があるところもございました。まだ現にあるところもあると思うのであります。そういう農協地域、よって立つ区域がきわめて狭隘なところであり、同時に、農家である組合員が家数にしまして三百戸前後というところが大体おおむねの規模でございます。  そういう中で発足当時から今日まで参ったのでありますが、かねがね御案内のように、情勢は急速に変化をいたしておりまして、それに対応するためには、どうしてもやはり農協の規模を拡大してまいらなければならぬ。これを要求する要素というのは、私は大きく言って二つあると思うのであります。  その一つは、最近の農業は御承知のように、資本装備を充実しなければなかなかやってまいれません。三反百姓、五反百姓でも、やはり耕うん機を買い、あるいは脱穀機を買いというふうな形でやってまいっておりますし、さらに最近はそれらのような状態ではいけないからというので、協業等の形で出ていく、あるいは最近の畜産、青果等はこれまた御案内のような状況でありまして、だんだん規模が拡大をされてまいります。農地としての経営規模の拡大はなかなか容易じゃございませんけれども、資本の充実により投資の量の拡大によっては、畜産等でありますと、とりわけ養鶏採卵あるいはブロイラー等でありますと、相当な羽数を飼育することが可能でございます。そういう状況でありますと、右左に金が要る。それらの金をまかなうに足るということが一つのやはり目安でございます。  第二の問題は、資本とともに技術が要請をされてまいります。最近の組合員農家としましては、相当技術的進歩も著しいものがございます。同時にまた世界的な、国際的な視野の中にも、日本的な視野の中にも、新技術というものがどんどんと進んでおりますので、それらに立ちおくれないようにどう農協は各個々の組合員に対する技術指導、営農指導をやっていくか、これも非常に重要でございます。ところが一二百戸程度組合員をもってする規模の単協におきましては、組合員からの要望に対しまして技術者の頭数をそろえておくというふうなことは経営上なかなか困難であった。だから稲作の技術者も、畜産の技術者あるいは青果の技術者も何もかにも兼ねたようなものが一人おったりおらなかったり、こういう形ではやはり日本農業の前進をほんとうにやらなければならない単協の場としては、これは困るということでございますので、まずそれらの技術陣容もなるたけひとつ整備していくというため、これらの点が非常に組合員の要求として組合に上がってくるのでございまして、そういったもの組織上どうこなしていくかということになりますと、やはりこれは農協の合併、単協の合併によって進もうということでもって、先生方の御努力で農協合併助成法がすでに時間切れになりましたけれども生まれまして、それ以来相当単協の合併が促進されてまいったのでございます。合併が促進されてまいりますと、大きいところでは一万に近い農家戸数を数える。小さくともやはり、二農協程度の合併のところもございますけれども、おおむね四つ、五つという合併になりますと千、あるいは最近の動向では二千から六千の範囲というのが多くなろうとしておるものでございます。こうなりますと、何といたしましても物理的に、総会等で六千の人間を寄せるの三千を寄せるのということになりますと、合併農協の地区で講堂あるいは公会堂、公民館等ございましても、おおむねやはり五、六百人というのが会議らしいことができる限界でありまして、それ以上のところは物理的にもなかなか収容でき得る施設もまれである。また会議でございますから、喧騒の中に進んでいくというわけにはまいりませんので、なるたけ会議らしい会議が持てるという条件も必要でございます。こういう点から当然に、組合員の意思がうまく民主的につながっていくということを前提にいたしまして、総代制等が必要となってまいっておるのでございます。この点は何としても、経済的にも大きくなっていく、規模も拡大されていくという中でこの一つの現実の問題が今後も進んでいく。それからもう一つの問題は、組合員のために組合員がつくる民主的農協でなければならない、踏みはずしてはならない、この民主制をどう維持していくかという二つのかね合いの問題だと思うのであります。最近は、もちろん全国平均ではございませんけれども、だんだんと兼業と申しますか、農閑期における他へ出かせぎと申しますか、あるいは自宅通勤ではございますけれども、おつとめになる方々が多くなってきた。そういう状況で、私も、単協の総会にわが県ではできる限り出ておりますが、もう正会員であるおやじさんはめったに出ていらっしゃらない、おばあさんであるとか、あるいはおじいさんであるとかいう方々が、隠居役に顔を出すという形が相当顕著に見られております。こういう状況でございますので、私ども組織内部の指導の方向といたしましては、なるたけ部落等を中心に懇切に、総会等で議案になる問題あるいはその他の問題を、夜行って部落座談会を十分徹底して、それでもって、そこへ出てくる総代の方々に部落の意見を集約してきてもらって、それが民主的に反映でき得るような形で総代会議を持つようにという配慮をいたしておるのでございます。この点が欠除いたしますと、農業協同組合自体は組合員ものでございますから、農民の理解と協力によって存立するのでありますが、その民主的という基盤が、単に総会の会場ということになりますと、いろいろ制約がございまして総代制をとっていただく以外に手はないと思いますけれども、その総代が出てくるまでの下地は、これはがっちりと民主的に十分納得のいく手だてを講じて、その土台の上に立ってお越しいただくという形で運用してまいるのが適当であろうと考えておるのであります。  なお第二は、これも社会経済情勢の急速な変化によって生じてまいったことでございますが、いわゆる農業協同組合が農地農地として委託を受けて経営をしていくという場合が一つと、それからもう一つの問題は、農地農地以外の用に供する場合に、この取得保有、売却ができるというふうなことをぜひお願いいたしたいということを、先般来私からも政府御当局にお願いを申してまいったのであります。この点はとかくの御心配をいただく向きもございます。ございますが、私は今日のような情勢のもとにおきましては、少なくとも米の生産調整等をいたさなければならぬというような情勢の中で、単なる形で一般のデベロッパー等の跳梁にゆだねてしまって、農地の壊廃——他の用途に供されていくということになりますと、農業生産基盤は根底から破壊される。今後の方向はいやおうなく、これは機械化であり、近代化である。その機械もだんだん大型化してくるというものでございます。だからたとえて言うならば、道路のまん中を電信柱にとられたような形になりますと、機械化耕作はできません。だからなるたけその地域内における農業地域では、生産性の高い農地農地としてぜひ存置し、これを守っていく。どうしても工場進出であるとか、あるいは他の施設への転用であるとかいう場合は、今後における機械化営農、近代化営農を阻害しないような水の条件と地力の問題、作業条件等を含めて計画的に進めるべきではあるまいか、こういう考え方を基調にいたしておるのでございます。  したがって、なぜ農協農地農地として使う場合における問題に手を出すのかといいますと、これは何としても、過疎地帯等は今後管理事業団等が予想されておるようでありますが、地域農業委員会あるいはその都道府県の農業会議等とも密接な連絡協調のもとに、また都道府県とも密接な連絡協調のもとに、住むに値しないとして過疎といわれる地帯になっておるところを再開発をいたしまして、畜産なり青果なり、これらに適する基礎条件を整備して、新しい熱意と遠大な希望を燃やす農業担当者である若い人たちに、将来のあるべき日本農業の姿として、そろばんも合い、またやるに足る農家というものをつくっていく、そういう場所として過疎地帯を再開発する。これには農協も当然に発言権を持ち、農業委員会市町村等とともに村をこわさないように、理想的な村に仕立てていくためには、私どもがそういう一端の仕事を持つことは当然である、こう理解をしております。それから内陸と申しますか、そういうところではない、中間の普通の地帯におきましては前段申し上げたようなことでありまして、農業の近代化、機械化に対応するためには、いわゆる虫食い現象的なことを起こさせないためにも、私どものところで当然発言でき、また事業ができ得るような仕組みにしていただくことが当然ではあるまいか、こう考えております。また都市の近接地帯におきましては、最もスプロール現象の激しいところでございまして、この地帯におきましては、あくまで私ども農地を手放してしまうのではなくて、——農地を手放した農家は金を持っておっても長続きしません。みな四、五年を出ずしてその金をなくしたり、いろいろ家庭的なトラブルを起こしたりというようなことが起きておりますので、なるたけ生産性の低い、あるいは住居には快適な場所というふうなところは、それを農住都市構想でもって、土地はお互いが出し合って農協が管理し、それを整理いたしまして、基礎条件を住宅地らしい適当なものにいたしまして、その上で現在の公団あるいは公営の住宅等、あるいはマンションとかなんとかといわれる一般業者が進出しておる、いま言うならばぜいたくなといわれる住宅との中間的なもの、そういった、いわゆる中所得者階層といいますか、そういう人たちをおおむねは受け入れられるといいますか、そういう方方にお使いいただけるような住宅を提供申し上げまして、それでもって都市農村との、いわゆる共存共栄をはかってまいりたい、計画的に進めたいということを考えておるわけでございます。そういう意味農地農地として、あるいは農地農地以外の用としていたす場合においても、農協がその取得、あるいは保有、売却、管理、営農等もでき得るような仕組みにしていただけることは、まさに時宜に適したことではあるまいかと考えておるのでございます。  大筋、農協法につきましては、以上のような点でございます。  農地法の問題につきましては、これも私は、農地法制定され、農地改革がなされました当時の時点における社会経済情勢というものと、今日の情勢との変化、これをどう調和統一さすかという点が一番法律の苦しいといいますか、くふうを要する点ではあるまいかと思うのであります。したがって、一番私が心配いたしておりますのは、小作料を青天井にしてしまうこと、この点は、よほど私は行政的にそれぞれの指導を必要とするのではないだろうか、こう思うのであります。  それから第二点は、不在地主というものを、これをどしどし許していくというふうな点につきましては、これもおのずから限界のあるものとしてお考えになる必要があるであろう。もちろん、農民が農業経営をする場合のワクは、これは今後の経営拡大が国際的にも日本農業の将来にとって必要でございますから、おはずしになって、たとえ五町、八町、十町といえども経営でき得る体制をつくっていただくということが、もう当然であると思うのであります。ただ、小作料が青天井になって、しかも在村しなくても農地保有できるというふうなことになりますと、これは日本の旧封建的な農地制度への逆戻りにつながる危険なしとしないという点におきまして、いささか心配なしとしないというふうに私は感じておるのであります。本来であれば、農地はあくまで勤労農民がそれを所有するという原則の上に立ってものごとをお考えいただければしあわせではあるまいか、かように考えておるのであります。ただ、今日の私ども農業協同組合が、兼業地帯等におきましては、その所有権を侵すことなく土地生産性を落とさないように、みずからの組合である農協委託をして、農協がこれをかわってある一定時期を経営するという便法は当然必要ではあるまいか、かように存じておるのでございます。  非常に粗雑でございましたが、いただいておる時間も過ぎておりますので、以上でもって私の申し上げることを終わりたいと思います。(拍手)
  15. 草野一郎平

    ○草野委員長 ありがとうございました。  以上で宮脇参考人からの御意見開陳は一応終わりました。     —————————————
  16. 草野一郎平

    ○草野委員長 引き続いて質疑を続行いたします。千葉七郎君。
  17. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 続いてお伺いいたしますが、野口さん、あなたの村では現行農地法のもとにおいて、経営規模の拡大のためには協業組織の可能性というものは考えられないのですか。
  18. 野口一

    野口参考人 協業組織の問題でございますが、畜産とか、園芸とかという限られたものにつきましては協業の可能性は十分あると考えておりますが、その他の面につきましては、まだそうした機運は認められない、こう考えております。
  19. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 そうしますと、水田耕作等については、出かせぎ農民等は、その土地を小作地に出すというようなことは、一度出せば返ってこないというようなことで、荒らしづくりをするという傾向が強い、そういうお話でありましたが、そういう小農、零細農家等に対してこの協業組織の推進というような施策はいまだ何ら企画をしてみたことはないというわけですか。
  20. 野口一

    野口参考人 そうした農家の希望としましては、農協等に預けて安心して他産業で働けるような措置がほしい、こういう希望でございます。
  21. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 わかりました。  それから池田さんにお伺いいたしますが、この政府の今度の水稲の作付の制限百五十万トン減反政策が打ち出されて、そのうちの百万トンは耕作の転換あるいは休耕ということで調整をする、あとの五十万トン分の調整は、御承知のとおり、十一万八千ヘクタールの政府土地の買い上げの計画によって調整をする、こういうことになっておるわけですが、その内容等はすでにそれぞれ発表になっておりまして、御承知のとおりであります。  そこで、お話によりますれば、優良農地はぜひ確保しなければならぬ、これを強調されておるわけでありますが、この政府農地の買い上げの計画を見ますと、     〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕 工場敷地二万ヘクタール、それから一般の住宅敷地として五万九千ヘクタール、道路交通関係の敷地として一万五千ヘクタール、その他の施設として二万四千ヘクタール、このような計画になっておるわけであります。おそらく私はこの計画は——これは委員会において政府のこの内容等は伺うつもりでありますけれども、私の推測ではそれぞれ各県において、あるいは町村において下から積み上げてきた面積がこのように集計をされて発表されたのだと思うのであります。でありますけれども、この工場の敷地なり、あるいは住宅の敷地、道路交通の敷地として当てはめた土地というのは、おそらく交通の便利なところが選定をされているのではないかというような感じがするわけであります。したがって、あなたの強調されておる優良農地転用されるおそれがあると思うのですが、その点について何か政府とあなたのほうとの間に話し合いが行なわれたかどうかということを、ひとつお聞かせ願いたいと存じます。
  22. 池田斉

    池田参考人 いまお話しのような十一万八千ヘクタールの水田の壊廃による生産調整、この問題、私どもも非常に土地利用計画という、そういう視点から、優良農地と申しますけれども、特に、先ほど宮脇会長からもお話ございましたように、まとまった集団的な優良農地、そういうところはこれからのやはり日本農業の基盤として、そこに最も近代的な農業確立をする、こういう視点に立ちますので、それはぜひ守らなければならぬ。今回の次官通達転用基準緩和がありますけれども、これについても、そういう思想は少なくとも貫いて、その地域地域の問題に対応するのである、こういう形で、私ども政府との相談ということではなくて、そういう注文をつけております。したがいまして、あの次官通達転用基準の暫定的な緩和というものは、そういう姿の中で当然行なわれる。特に、先ほど申しましたように、都市計画区域は大体、市街化区域と調整区域に一応分けられるわけで、まだその問題はもめておりますが、市街化区域に入る水田というものは、これは当然そうでなくても転用されるわけでございますから、そういうものが軸となって、調整区域としていやしくも指定したところは、これは守っていかなければならぬ。もう一つ、この都市計画法指定にならない、そういう地域中小都市関係でございます。特に、工場地方分散というような関係を含めますと、われわれは、都市周辺に工場がさらに乱立するんではなくて、そういう地域にふさわしい工場進出というものを、やはりその地域社会全体の発展なり、いまの農業の状態から、在宅通勤ということを含めまして、不安定兼業農家が安定をする、こういう施策が大事であり、その場合の工場なりその他に対する土地提供という問題が、やはりそこで土地利用計画というものが、十分——農振法だけでうまくやれるかどうか。これも先ほど申しましたように、五年もかかるということでございますので、それはひとつ緊急に、その工場進出との関係においてはその地域土地利用区分というものを十分考えて、農業側からいうと、優良な集団農地はあくまでも守る、こういうような転用基準緩和全体の運営の中で、そういう思想が貫かれなければならない、こういうことを強く注文をつけておるわけで、そういう方向でおそらく行政的には指向していくのではないかというふうに理解をいたしております。
  23. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 宮脇さん、一点だけお伺いをいたします。  農協の合併によって、農協の適正規模が大体二千から六千ぐらい、私もそうだろうと思います。そこで、こういう規模の大きくなった農協の総会を開催することがなかなか困難である。そこで、総代会制がぜひ必要だ、こういうことなんですが、私も、この総代制の実施ということになりますと、どうしても組合員の意思が農協経営に反映しにくいという難点が出てくるんではないかということを心配としておったわけであります。お話によりますと、総代会の事前に、総代による部落の座談会、これは実行組合等を単位にして行なわれるだろうと思うんですが、そういうことになれば、確かにお話しのとおり、組合経営に対する組合員の事前の意思の集約等によって、組合の経営にそれを反映していくということも可能なわけなんですが、それは事前に、組合の総代会に提案をする議案等を総代のほうに流して、そして実行組合の総会のようなものを開いて、そこでいろいろ協議をするということであれば、ある程度、総代制による欠点を補うということができるわけですが、それを法的に何か義務づける必要があるんではないかという点も考えられるわけなんですが、その点に対する御意見はいかがですか。
  24. 宮脇朝男

    宮脇参考人 ごもっともな御意見だと思いますが、農協の運営は組合員の納得がなければ、信用、購買、販売、共済利用という仕事どれもがつながらないんです。だから、総会の前だけではなくて、少なくとも年に二回なり三回なり、多くは四回なりというものは、組合の現況を説明していく、また、みなの組合員からの御意見を十分承っていくということを、各単協ともおおむねやっているというのが現状でございます。だから、私どもは、そういう問題は、私ども内部の問題として、法律的な規定までされてもうここまででなければいかぬぞというようなことまで御規定いただかないで、私ども組織の中で当然進め得ることでもあり、また、なければならぬ、こう考えております。私どもは、昨年の国際協同組合のところで一番大きく取り上げられたのが、世界的に協同組合の民主的運営というのが取り上げられまして、私ども日本の国内におきましても、協同組合の民主的運営をどうやっていくんだということがいま組織全体で一つの大きなテーマになりまして、具体的にそれらの問題をいろいろくふうをして、いままでのところでは、足らざる点はどう改善していくか。私は、米の生産調整でこれだけ生産、販売量が減っていき、しかも、金利の引き上げ等で単協は非常に苦しい段階に入ります。苦しければ苦しいほど、組合員との対話を強化して、組合員との密接なはだの触れ合いの中から立ち上がっていく以外、農協自体の存在意義というものはないだろう、こういう意味で、民主的運営とか経営とかいうのは、もう組合員とのはだの触れ合いだ。それを日常にひとつやっていくようにしてくれぬかということを声を高らかにしてまいっておりますので、私は、法律的な規定とかなんとかというようなことを御心配いただくまでもなく、私どもでみずから当然にそういう方向でやらなければ組合としての任務が果たし得ない、かようにもう信念的に思っておるのでございます。  以上、申し上げておきます。
  25. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 これで終わります。
  26. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 松沢俊昭君。
  27. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 宮脇さんにちょっとお伺いしますけれども農地法の問題につきましては、いま千葉さんのほうからもいろいろお話がありましたが、ただ、農地法の一部改正の問題につきまして、小作料の青天井、それから、今度不在地主を許すこと、これはやはり問題があるんじゃないかというような御指摘がございましたのですが、これは農協のほうといたしましては、こういう法律案成立というものについて、ずばり、こういう面はやはり出すべきじゃないというところの見解を持っておられるのかどうか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  28. 宮脇朝男

    宮脇参考人 法律の問題は、政府と立法府のところで現在の実情と民意をおくみ取りいただいて、どのようにお出しになり、どのようにおきめになるかということであると思うのであります。したがって、私は、前段申し上げたように、農地法でとりわけひとつ考えておいていただかなければならぬことは、本来、農地は農民が持つべきものである、この土台でものをお考えいただきたいということ、それから、小作料の青天井ということは、これは適正小作料というのをどの線でとらえるかという点におきましては、いろいろとらえ方があると思います。あると思いますが、少なくとも農地さえ持っておれば、収益性が高くて、耕作しなくとも何よりもそれが得なんだというふうな形にならないようなことが必要であろう。まず耕作する農民が農地を持つということ。それから、そういう前提で考えますと、不在地主が持ち得る限界というものは現在それぞれの都道府県においてきめられておるようでございますが、これをさらに幾らでも持てるんだというふうな形は、本来の、農地は農民が持つという趣旨に反するという前提で私は申し上げておるのでありまして、したがって、法の内容等につきましては立法府の先生方で国民の意見のあるところをおくみ取りいただいておきめいただくのが筋であろう、かように存じております。
  29. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それから、池田さんにお伺いいたします。  優良農地というもの確保していかなければならない、こういうお話であったと思います。いまも千葉先生のほうからも御質問ございましたけれども農地転用基準緩和の通達というのが二月の十九日でしたか出ておりますのですが、あれによりますと、優良農地そのものがだんだんむしばまれていく、そういう傾向というのが非常に強く出てくるんじゃないか、こういうぐあいに実は考えられるわけなのであります。たとえば国道沿いの両側百メートルというもの優良農地、しかもこれはいままでの転用許可基準からいたしますと、一種農地というのが相当たくさんあると思うんです。そういう場所が許可さえ受ければ全部転用ができる、しかもその中に、重要産業施設という条件になっておりますが、そういうものが設置される場合におきましてもこれは許可できるということになると、そこにやはり公害という問題等が出てまいりまして、だんだんと一種農地が二種農地ないしは三種農地、そういうところに変わっていく傾向というのが出てくるんじゃないか。こういう優良農地確保という面からすると、この基準というものと、それからいま出されておりまするところの農地法の一部改正案、そういうものとのからみ合いからいたしまして、いまの法律案というのが出ていくと、都市化現象が起きておりまするところの地帯におきましては、優良農地確保そのものがさらに一そうむずかしくなるというふうに考えるのでありますが、これは全国農業会議所のほうではどうお考えになっているか、御質問申し上げたいと思うのです。
  30. 池田斉

    池田参考人 この二月十九日の次官通達をそのまま見ますと、いま御指摘のようないろんな心配が皆無であるということは私も言えないような感じがいたします。ただ、この問題は昭和四十七年の三月三十一日、言うなれば二カ年に限定をして十一万八千ヘクタールを転用基準緩和で水田の壊廃をする。その場合に、いま御指摘のような優良農地がずっとあるところに道路があって、その百メートル以内はいろいろなものをつくることができる、これは明らかに確かに一種農地の中にということでございます。しかしそういう問題につきましても、公害の問題であるとかいろいろそういうことをやはりよく前提に置いてケース・バイ・ケースで、その問題が農業上の集団的な優良農地のごく一部を提供するんだけれども、全体としてはそれに対する十分な歯どめが——その限りにおいては許容するけれども、全体としては行なわれる、こういう問題を具体的なケース・バイ・ケースでその辺はひとつやっていただくということがきわめて大切であって、少なくともこの転用基準緩和が、私も先般申し上げましたように、何となく全体としてこれが将来につながって押し流していく、こういうムードになることはこれは厳に戒めなければならないし、やはり全体として長期展望では農地が不足しておるんだ、そういう視点から、あくまでも暫定措置としての限度をわきまえてやっていただくという意味におきまして、この転用基準緩和については了承しておるというのが農業会議所の態度でございます。
  31. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いま言われましたように、農地そのものの面積というのが非常に狭隘であるわけなんです。だからできる限りその農地農地として確保していかなければならないというのが、日本農業発展の基礎的な条件であろうと思うのです。ところが、いま政府のほうでは開田の規制どもやっておりますので、なかなか農地拡大していくという方向をたどっておらないというのが現状であります。そういう中で規模の拡大ということになりますと、狭い農地の中で農地流動化をはかって、そして一定の場所に一定の人が農地をかり集める、こういうふうにして規模の拡大をする以外にないということになると思うのです。そうなりますと、いま日本の農家の戸数というのが五百四十万戸ということになっておりますのですが、平均いたしますと一町歩前後という状態であろうと思うのです。そういうところにそういう流動化法案というものができ上がるということになると、これはあとの、農地がかき集められたそれ以外の農民の行くえというものがどうなるかという心配が実はあるわけなんでありますが、こういう点農業会議所のほうではどうお考えになっているか。つまり、いま統計上からいたしましても、さっきも野口さんのほうからもお話がございましたけれども、非常に村の所有規模というものが小さいわけなんであります。小さいわけだけれども、それが流動化してない、流動化してないというのは一体どこに原因しているのか、農地法があるから流動化しないというふうに考えたほうがいいのか、それとも他に安定雇用の場所あるいはまた社会保障、そういうもの確立していない、していないからこそ、その規模が狭小であっても、しかしその農地は持って、そして出かせぎをしなければならない、これはやはり現状なんじゃないか、私はこう考えるわけなんです。そうなりますと、いまの規模拡大というようなことをかりに考えたとしても、その外回りの条件の整備というものがなければ、規模拡大を考えようとしても考えられないという問題が起きてくるんじゃないかというふうに私は考えますが、この辺、農業会議所池田さん、それから町村会の野口さん等はどうお考えになっているか、お二人にお伺いしたいと思うのです。
  32. 池田斉

    池田参考人 御指摘のように、いろいろな農業を取り巻く条件、そういうものとの関連を含めてものごとが前進しなければ、農地法改正したから規模拡大がスムーズにいくというふうには私も理解はいたしておりません。しかし、御案内のように、現在農業に就業するいわゆる新規就農者というのは四、五万人ぐらい。なお、非常に中高年齢で、老人が農業を担当しているのが多い。若い者はできるだけ外へ出るとか、あるいは在宅通勤。しかも、そういうものを越えまして、日雇い的なものあるいは出かせぎというようなものが現在二百万人もおる。こういう農業の就業の構造を、今後日本の経済の発展の中でどういうふうに他産業との関係調整をしていくか。これは、一つは、確かに社会保障の問題がございます。それからもう一つは、やはり農政の問題として、そういう点をどういうふうに政策として打開していくか、これは農政だけの問題ではなくて、通産、労働含めての問題だと思います。  学者の説によりますと、昭和五十年代になると、いわゆるリタイアというもの、むすこは農業から完全に離れておる、年寄りが守っている、そういうリタイアをするという現象がかなり急速に出てくる。こういう展望等を踏まえまして、やはり社会保障の充実の問題、それから就業構造をどういうふうに他産業との関連において近代化をしていくか、あるいは工場地方分散等の政策を含めて、在宅通勤という姿におきまして農業を事実上やめて——若干の自留地等は別でありますが、ほんとう農業に精進していくという、現在の四、五万人の若い青年が将来に夢を持つという、そういうような形でのいわゆる全体の構造政策になると思いますけれども、そういう面で、国際的あるいは他産業の場面から見ても、強靱な農業というものが有力なわが国農業生産力のにない手になる。こういう問題が、やはり長期的には政策として考えられるべきであり、現在、短期的にはそういう問題を志向すると同時に、いわゆる密集した地帯等におきましては、集団生産組織といいますか、営農団地といいますか、そういう形の中に全体を包括して、そうして中核農家がそれの具体的な担当者になって、高能率、高生産農業を営む、こういうような形でつなぎながら日本農業展望を求める。そういう意味におきましては、現在の農地法をそのままにしておくという問題については、現実的にはいろいろな隘路がありますから、それを打開する道を開くという意味において、今度の農地法が出ておると思いますので、そういう意味におきましては、やはり農地法改正基本的に必要である、こういう認識に立っておるわけでございます。
  33. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 この際、委員各位に申し上げますが、宮脇参考人には所用のため、十二時三十分ごろ退席いたしたいとの申し出がありますので、宮脇参考人に対する質疑を先にお願いいたしたいと存じます。  松沢君の質疑に対する野口参考人の答弁は後ほど行ないます。
  34. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 宮脇参考人に対する質問は私はありませんから……。
  35. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 ないですか。——では、瀬野栄次郎君。
  36. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 宮脇参考人にお尋ねいたします。時間がなくて急いでおられるようですので、一点だけお伺いいたしておきます。  農協合併の問題が先ほど出ましたが、農業の近代化、構造改善等がこんなに進んでまいりまして、先ほどからお話がございましたように、資本装備と技術陣営を整える必要があるという二点が指摘をされました。現在の農協は、三百ないし五百の農家を持った農協もたくさんございます。御承知のように、三十六年に合併助成法が出まして合併をやってまいりましたが、それからもうすでに九年間たっております。再合併のことが地方ではよくいわれておりますし、また農協としても、中央会としても、農協合併については、昨年十一月、農協審議会あるいは理事会で決定をされて、自主合併の方向へ進んでおられますが、この点について、実は私、午後の質問になっておりますので、また詳しくただすことにしておりますが、この一点だけ会長にお伺いをしておきたい。その考え方等についてお伺いしたいわけであります。よろしくお願いします。
  37. 宮脇朝男

    宮脇参考人 農協の合併助成法が時間切れになりまして、今日では助成法も何もございません。しかし、私どもは、その後の情勢も農協にとりましてきわめてきびしいものがございますので、こういう情勢に対応するためには、農協の合併を自主的に促進しよう、こういう考え方でおるのであります。その基礎をなすものはあくまで農民の農協でございますから——農協の路線には二つ基本がございまして、その一つは、奉仕の原則といいまして、これは組合員の組合でございますから、組合員に対してはよりよきサービス、奉仕を提供していくということ、もう一つは、せっかく組合員によってつくられた組合がつぶれてはいけない、だからこれを安定さしていかなければならぬということ、この奉仕と安定という二大原則の上に立ってまいりますので、それらをさらに今後機能発揮ができるようにしようということになりますと、自主的であっても、いままでおくれております部分、また再合併をやったほうがいいというところ、こういうものにつきましては自主合併を強力に推進していく。同時に、自主合併ができたものについては、官僚化への道を防ぐために民主的運営を強調いたしまして、そのための努力で裏づけをさしていきたい、こういう方向で精力的に、一生懸命にやっていきたいと思っております。  ただ、それに関連いたしまして、合併助成法がなくなりましたために税法上の特例がなくなってしまったので、これは貧乏な赤字の組合と黒字の組合とが合併して何とかかんとかもてるのでありまして、黒字のところからは税金を取り、赤字のところには助成がないということになりますと、赤字の埋めぐさ材料も何もなくなって、力はまるっきり断たれてしまう。結果的には農協、農民のものが外へ持ち出されるのですから力のマイナスになる。これはぜひ、何とかひとつ先生方の手によってよりよき方法をお願い申し上げたいということをいま懇請申し上げておるという状況でございます。よろしくお願い申し上げたいと思います。
  38. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の関係で、会長お出かけのようですから、私一点だけにしまして、一応これで終わります。ありがとうございました。
  39. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 芳賀貢君。
  40. 芳賀貢

    ○芳賀委員 参考人各位には、まことに貴重な意見を聞かしていただいてありがとうございます。  昨年の当委員会において、農地法農協法改正案については、きょう御出席池田参考人、並びに農協関係では当時の安井常務もあと出席して意見を述べられております。したがって本日は特に、農協法改正の中においては昨年と異なった改正が盛り込んであるわけですし、もう一つは、米の生産調整に伴う農地の基準緩和の問題とか、あるいは流動化問題等については一年間に大きく客観的な事情が変わっていますから、それに対応して一体農協としてはどうするのか、あるいはまた農業会議所としてはどう考えておるかという点を尋ねたいと思うわけであります。  宮脇さんお急ぎのようですからまずお尋ねしますが、今回の農協法の新たな改正の中で、転用農地に対して農協組合員委託を受けて当該農地の買い受け、あるいはまた宅地等の造成事業、あるいはまたそれを売り渡しできるということに改正はなっておるわけです。そこで問題は、経営農地としての農地を、組合員委託を受けて買収するということは載っていないわけです。これは農地法改正案の中の農地保有合理化法人に対して省令で農協については指定できるということになるわけですが、先ほども御意見のありましたとおり、農協の本来的な立場に立った場合、一体農協農用地を買い取りできるという場合、転用農地の買い取りとか、造成、売り渡しを重点に考えるべきであるか、あるいはまた農業の集団化、共同化の方向を目ざして組合員経営に供しておった農地をその委託によって買い取りができ、それによって農協が直営的に農業生産事業を行なう、あるいはまた、農地拡大希望の組合員に対して、その農地を適正な方法で売り渡しするということがむしろ重点でなければならぬわけでありますが、今度の改正の点は、これは米の生産調整との取引という形で、いわゆる農協農住都市構想というもの農協法改正の中に盛り込むというような経過もあったわけですが、この点が今回の農協法改正を通じていかにも農協土地の売買、あっせんや、不動産屋的な事業をやるのではないかというような、そこに危惧と不安が起きておるわけです。この点やはり農協として十分解明しておかなければならぬことであると思うので、まずこの点について、宮脇さんから率直な意見を聞いておきたいと思います。
  41. 宮脇朝男

    宮脇参考人 いま芳賀先生のお尋ねでございますが、私は農協か不動産屋のようなことに——いわゆる不動産屋的なことをやるべしとは考えておりません。それはどういうことかというと、先ほども申し上げましたように、いままでのスプロール現象であるとか農業生産基盤の破壊であるとかにつながる、農地が他の用途に供されたりということは、農協が全然そういうところに介在できないというところに問題があったと思うのです。また同時に、大もうけしたというたら不動産屋だといわれるほどに、土地が単なるもうけの対象としていままで扱われてきておるということも、いなみがたい事実として存在いたしております。私は、安く買われて、高く売られて、もうけられてというような、そういう形で、しかも他面においてはどしどしとスプロール現象が激化して生産基盤は破壊される、そういうことのないように、私はやはり、売らなければならぬ理由があれば、金は幾ら要るのだ、いまどうしてもあの土地を売らなければいかぬのか、できる程度であれば農協から融資しようではないか。そして持っておきなさいよ。もしどうしても売らなければならぬとするのなら、これこれのものを交換分合して、おまえのところの農地は田の中のいいところだから、それは近所の人に譲ってやって、山べらの生産性の低い、優良農地でないところと交換して向こうを売ったらいいじゃないかとか、私はそういうことの世話役が農業委員会とともに、農協も場合によれば、そういうところへ金も貸してあげる、土地はしばらく待っておけとか、この土地を売らずに、この土地と交換分合して、この土地を売ろうじゃないかという形でやり得る、これはいままでは農協はそういう法律的な力が与えられておりませんから、たとえていえばいま申し上げたようなことでございまして、農住都市構想の問題にしても、農協がやらなければ何らスプロール現象が進行しないということならともかくも、ほうっておけばますます進むということでございますので、いい意味で私どもがやらしていただくという体制になることによって、不動産業者の方々も姿勢を正してもらえるであろうし、おまえさん方がそう言っても農協はこうしてくれると言っておるがという形になるので、むしろ正常化でき、正しくなるのじゃないだろうか、かように考えておるのであります。  もちろん、農地農地として委託して経営していくという点は、これは何らかの事情で売りたくはない、しかしながら、自分のうちでやるのにはとてもじゃないが手間がない。これは請負耕作ではございませんが、農協がしばらくひとつやってくれぬかというものも南のほうでは相当数多く出てまいるのじゃなかろうか。したがって、今度の農協法の一部改正法律案の中における、前段御指摘のございましたような点は、まさに時宜に適した改正方向ではあるまいか、またそうしていただくことがよりよかろうというふうに受けとめております。
  42. 芳賀貢

    ○芳賀委員 きょうはあなたと議論する気はないですが、私どもとしてはいまのような御答弁でなくて、農協本来の事業としては、正組合員が直接農業経営するのに諸般の事情から困難を来たしておる、そういう場合には農協に対して経営委託ができる——これは昨年の改正案にできておったわけですが、その経営委託ができると同時に、農協に対して、その組合員保有農地委託によって買い取ってもらいたい。さらに、これを経営拡大を希望しておる組合員に対して適正に売り渡しできるようにつとめてもらいたい。あるいはまた、農協が個人の組合員ではなかなか行なうことのできない直営的な新しい経営というものを行なうために、農地取得が必要である、こういう場合にはやはり生産協同体としてあるいは農協区域の中における農事組合法人等を中心とした、それらの生産協同体の母体としての役割りというものが、当然今後の農協には負荷されておるわけです。ですからそれを中心にして、今度の農協法改正の中で、農協生産協同体という立場の上に立って、当然これば個人ではない法人の人格を持っておる農業を営める人格を持って、農地取得というものが正々堂々と行なえるようにしてもらいたい、すべきである、そういう主張に基づいて法改正が進んだということであれば、これはわれわれとしても全面的にこれを支持することができるわけです。しかし、これを第二義的に置いて、転用農地の買い取りができる、その転用農地というものを高度に活用して、事業を通じて利益をおさめる、あるいはその利益を組合員に配分するというようなことだけを重点に置いた農地の取り扱いというものに対しては、これは後日農協経営上問題が残ると思うわけです。この点をこの際指摘をしておきたいと思うわけです。私ども残念な点は、本来的に農地取得できる、あるいは組合員に売買ができる、あるいは取得した農地をもって農協がみずから農業経営ができる、こういうことは農地法の本来の目的から見ても、私は、いままで農地移動制限とか所有制限の中で農協はだめなんだという厳格な規定というものに対しては、法解釈上問題があるというふうに実は考えておるわけです。ただ農地保有合理化法人の中で、今度は農林省は、市町村の場合には市町村が主体となった法人かあるいは農協が直接行なえるということで、いずれかを選定して市町村段階においては一個の合理化法人を求めるという方針が先日述べられておるわけです。だからその中にあるからいいじゃないかということにはこれはならぬわけでして、ここにやはり今度の農協法改正を通じて農協はいかにも不動産屋的な事業が行なえるという道が開けたという安易感だけでは、今後農協の、特に大都市周辺の農協等においてあるいは期待を持っておるかもしれませんが、これは農協本来の使命の上に立った場合においては問題が残るというふうに考えておるわけです。  それから次に問題になります改正点は、たとえば農協組合員農地を提供して全面的な経営委託ができるということが改正案に出ておるわけです。全面的に農協に対して経営委託をやるということは、経営そのもの農協にゆだねるということになるわけです。ですから、その組合員は直接その委託した農地に対しては労力も投入しない、経営にもタッチしない、そういう関係になるわけです。その場合においても、農協法改正の中においてはそれは従来同様組合員として認める、あるいはそれが不在になっても、区域を離れた場合にも組合員とみなすということになっておるわけです。一体農協組合員というものは、みずから経営をしない、みずから農業に従事しないという状態になって、自己の保有しておる農地農業というものを全面経営委託した場合に、農協としてはその組合員であった者に対してどういうような判断をしてこれに対処するかという問題、これは直接農協経営しておる場合には当然出てくる問題です。これが、あなたとして芳しくない、好ましくないと言われたいわゆる不在土地所有者ということにもつながるわけですね。農協に全面委託をして不在村になった場合には、所有の制限というものがなくて、所有した全農地というものを不在村地主の形で保有できるということにこれはなっておるわけです。あなたが一番好ましくないと言われた点が、農協関係の中では無制限に農地を所有して他に移動できる、こういう特殊の道が開かれておるわけでありますからして、こういう点についても農協としては、今度の改正はここに問題があるということをやはり指摘すべきだと思うわけです。  その次の問題は、たとえば都道府県連合会あるいは全国の連合会の場合には、その会員に対して選挙権あるいは議決権に複数を認めるということですね。一個のものもあるし、あるいは二個、三個の議決権、選挙権を与えることもできるということになっておるわけです。これはやはり農協の平等の原則に照らした場合において、単に構成員が多いとかいうことだけの理由で、大事な権利というものに対して不平等を設けるということはやはり農協として問題だと思いますが、いままでのところ、農協側からはこれに対して何らの疑義というものは出されていないわけです。  もう一つの問題は、農協の大型化に伴って、そういう農協が総代制に移行することは当然の帰結であると思いますが、その場合においてもすべて総代会に重要な権限を与える。たとえば役員の選挙にいたしましても、定款の変更にいたしましても、これらはいままでは総代会においてはできなかったことが今度はできる。単に合併、解散のときだけ、総代会で議決して全組合員の投票に付するということが残されておりますが、今度の改正案は全面的に総代会に大事な権限をゆだねるということになるわけです。これが土地改良法やあるいは農業災害補償法に基づいて、一定条件のもとにその地域の農民は強制的に当然加入しなければならぬというような厳格な規定のもとに組織された農協ではなくて、加入脱退の原則の上に立って経営されておる農協の中において、直接組合員農協の運営の間において権利関係についても遮断されるような道が講ぜられると、全部こうやりなさいということはありませんが、こうすることができるという場合に対しても、農協としてこれらの政府改正については、この点が農協の本来の主張や原則に照らした場合においては問題がある、疑点があるというような指摘がなされるべきが当然でありますけれども、いままでそれが全然行なわれておらないわけであります。まあ政府との癒着状態といいますか、何でもかんでも政府のやることは賛成でございます、その中にはわれわれの希望が入っておりますというような、そういう判断の上に立って農協経営が今後行なわれるということになれば、これはたいへんな事態になると、われわれはその点を憂慮しておるわけです。ですから、こういう点について、歴史的に農協の信頼される指導者としてあなたは今日まで歩んでこられたわけですから、全中の会長の地位にあるから宮脇個人としての信念を吐露できないというものではないと思うのですよ。しかも、一たん法律が改正されるということになれば、これは悪法であっても改めることはなかなかできませんので、こういう点についても国会の場を通じて、あなたの信念というか所信を参考までに明確にしておいてもらいたいと思うわけです。
  43. 宮脇朝男

    宮脇参考人 芳賀先生のおっしゃった第一の、農業協同組合が生産協同体であると同時に、他面、生活事業という生活協同体としての組合員に対する奉仕をしなければならぬということも当然のことでございます。したがって、先生のおっしゃった考え方の大筋を決して否定するものじゃございません。ただ不動産屋のようなまねをするのかというような意味の御発言がございましたから、それに対して力点を置いて、当然のことはもう当然に御理解いただけておるという理解でもって申し上げたのにすぎません。  それから最初にも申し上げましたように、私自身が急のお呼び出しでございましたので、先生方に十分参考になるようなことを申し上げかねるほど不勉強でございまして、十分読んでまいっておりませんということを冒頭に申し上げてまいった。これは読んでおらぬものを読んでおるような顔をしたところで、とてもじゃないが、いきませんので、十分読んでおりませんということを申し上げてまいったのであります。  代議員あるいは総代制の問題等につきましては、一夜明けたら法律改正で総代制になっておったというものではないと思うのでありまして、問題は、総代制をとるということについてまず総会の了承が前提になるだろう、したがって、そういう道があったからといって全部一律一体、右しなさい、左しなさいということではなくて、選択ができ得るという理解で私ども受けとめております。  以上で、不十分かと思いますが、先ほど委員長お願いいたしまして、一時からどうしても私が出なければならぬ表彰式で被表彰者が待ち受けておりまして、まことにわがままで恐縮でございますけれども、放免願えればと思っております。(拍手)
  44. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 宮脇参考人に対する質疑は終わります。どうもありがとうございました。
  45. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、池田参考人にお尋ねしますが、昨年もいろいろ貴重な意見を述べられましたので、重ねてお尋ねするわけではありませんが、今度の農地法改正の中におけるわれわれが注目しておる点は、農地保有合理化法人の今後の内容づけの問題、あるいはまた運営の問題等については、政府の説明、答弁程度ではなかなか納得ができない点があるわけです。しかし、農業会議所としては最初から全面的に賛成されておるわけですからして、法律の中にこれがうたわれれば万事順調にいくというふうに考えておると思います。この点について農業会議所としての理解程度、あるいは今日のように優良な農地さえも事務次官通達の形で大事な転用基準が大幅に緩和できる、そういうことになれば、これは農地法の上を行くようなことになりかねぬわけですからして、この合理化法人の行なう事業の内容が、どの程度のことが地域の農民の期待にこたえてできるかとか、それを運用する場合の資金措置の問題であるとか、あるいは買収、売り渡し等の業務をやる場合においてはどの程度の実行力をもってやれるというように考えておるか、それに関連して他にまた御意見があればお聞かせ願いたいと思うわけであります。  それから、野口参考人についても、万一農地法改正が実現できるような暁には、当然これは都道府県の段階における合理化法人が、順序としては先に発足するような話でありますし、また市町村においても、市町村が主体になった法人をつくるか、あるいはまた省令の規定によって、その町村においては農協のほうが適当であるという場合には農協が行なうということにもなると思いますが、この際、市町村が主体になって土地保有合理化法人をつくるという場合、都市周辺の地域は別にして、農地法が最も期待するところの純農業地帯における合理化法人の任務とか運営というものに対して、一体その責任を期待されておる市町村としてはどういう判断で、あるいはまたどういうような受け入れ体制が持てるかというような点についても、この際御意見があれば聞かしておいてもらいたいと思います。
  46. 池田斉

    池田参考人 農地保有合理化法人ということを農地法規定をして、それの一連の体系の中で、農地としての流動化、こういう問題に対応するという点は、先ほども申しましたように、私は今度の農地法改正の中の一つの積極的な目玉であるという理解をいたしております。ただ農業会議所系統は、——農業委員会農地法の処理を今日行なっておる、しかし、将来の農業委員会のあり方というようなことを考えますと、よくいわれますように、転用委員会であるというようなことが都市周辺でいわれておりますが、少なくとも農業委員会が本来的な一つの任務というものは、やはり将来の農業展望して、転用との関係では、優良農地を守ると同時に、その優良農地の中におきまして自立経営なり集団組織育成していく、こういう方向土地問題を処理していくということがこれからの方向ではないかというような考え方で、御案内のように、昨年農振法が成立いたしまして、この十八条に農業委員会農地保有の合理化の方向農地流動化のあっせんをする、こういう規定がすでに法制上できております。それからまた、農業委員会があっせんをする場合には、二十三条で、所得税その他の税金の軽減措置も行なわれる、こういうことになっております。その段階におきましては、農地理事業団という従来の構想がございましたが、これは全国一本にスタートをするということで、相当地域実態から無理がある。したがって、今度は農地法の中で、地域実態に応じてこの問題をまず取り上げていく、それほどに農地流動化はむずかしい問題だと思いますが、しかし、将来の農業を考える場合に、その方向で努力を全体に積み重ねるということが絶対に必要である、こういう認識に立ちまして、県段階中心としてまずやっていくというのが当初の、昨年までの考え方であったと思います。その場合には、県なりあるいは市町村なりあるいは農協なり、そういうもの県段階の法人の構成員になって、そうしてその県内の地域をよくにらんで、そういう地域から、いま申し上げましたような問題を具体的に始めていく、政策的には御承知のように第二次構造改善事業がスタートを切っております。従来の第一次の構造改善事業と違いまして、第二次構造改善事業はその指定された地域優良農地、その中におきましてできるだけ集団組織なり規模拡大をやる。農地流動化が今度は一つの第二次構造改善事業の柱になっているわけでございます。農振法もやがてそういう問題との関連で出てくるわけでございますが、それらのことを考えますと、農業委員会がとにかく前向きに新しい方向を目ざして農地流動化のあっせんを行ない、これの売り買いを含めまして保有合理化法人がその実務を担当する、その場合、御指摘のように、現在の農地取得資金では三分五厘以下のものがないわけでございますが、かつて農地理事業団では三分、三十五年でしたか、外国では二分、四十年とか、五十年とかいうようなものがすでにある国があるようでございます。その辺の問題は、今後ほんとうにこの合理化法人が、農業委員会のあっせんという形を基礎としながら、少しでも規模拡大方向なり集団組織に近づけていくという、こういう問題の場合の融資の関係等につきましては、もっと画期的な制度が確立することが望ましいし、その運動はひとつ今後もやってまいりたいし、また国会におきましてもぜひそういう方面への御協力をお願いを申し上げたいと思います。  ただ、今度の場合に、農協法改正が行なわれて、町村段階も一緒にスタートを切る、こういう場合の問題としては、私どもはやはり、この農地というものは、なるほどそれぞれ私権を伴っている一つの財産ではございますけれども農業の立場から見ますと、先ほど申し上げましたように、これをほんとうに効率的に生産手段として活用していく、こういう方向農業を発展させるという問題になりますと、この問題を流動化するというようないわゆる農地行政のあり方というものは、一元的に統一的にコントロールできる、こういう姿にやらないと、あっちこっちがばらばらの考え方でこの問題を処理するということは、長期的な展望から見たら私は厳に戒めていかなければならぬ問題だ、こういう認識に立っているわけであります。しかし農協の本来的な一つの面として、芳賀先生のおっしゃるような方向土地問題に、これからその地域の問題として対応していくというような場合には、やはり合理化法人一環としてこれを位置づけをして、そういう公法人的な性格で、いやしくも農地農地としてでございますから、そこに利益があるわけは毛頭ないので、むしろ国がささえて、実際は二重価格なりそういう問題こそ将来は考えなければなりませんが、そういう問題が今日むずかしいという場合には、きわめて長期低利の融資、こういうことでこの問題を処理していくという考え方が、現段階では妥当だと思いますけれども、そういう限りにおきまして、いやしくも農協がこれに対応していくという場合には、この事業は農協の事業ではありますけれども、あくまでも国にかわった形でこの問題を処理しているんだ、こういう姿を貫かないと——農協は本来的にはいろいろ公法人的な性格もありますけれども基本的には加入脱退の自由というようなことも含めて、私法人的な性格も相当あるわけでございます。そういう意味では、合理化法人一環としてこの問題と対応する、こういうことで今回政府は位置づける、また当委員会におきましてもそういうような説明があったようでございまして、その限りにおいて私どもは賛成をいたしており、ひとつ農協も一役買っていただく、こういうことを考えておるわけであります。ただ、町村も本来的な面としては、そういう問題を担当するに最もふさわしい一つ機関であるというふうにもちろん考えております。ただ、一つの村で二つが一緒にやるということは、これは町村実態から見て避けなければならない問題でありますので、いずれがそれをやるかということは、その村の問題として調整をし、あくまでも、いずれがやるにいたしましても、合理化法人一環として位置づけをしてこの問題を処理し、農業委員会は農振法の条項に従いまして、規模拡大方向に対する流動化のあっせん、それを受けて、ひとつ全体として手を組んでこの問題を前進させるということが最も現実的であり、妥当な方向ではないかというような理解をいたしておるわけでございます。
  47. 野口一

    野口参考人 村づくりということでございますが、町村づくりの計画を樹立する場合に最も重要なのは、土地利用計画であろうと思います。そこで具体的に申し上げますと、町村の中で、この地帯は将来工業地帯にふさわしいであろう、ここは住宅地帯がよろしかろう、ここはあくまで農業地帯として確保すべき地帯である、こういう区分けをいたしまして、将来の町村づくりの計画を立てるわけでありますが、その場合にこの計画に、もちろん農民も農業団体も各種機関も加わりまして、十分なる討議を重ねまして、一つ計画をまとめるわけでございます。  そこで、町村の中では、その中で将来農業に定着をして、ぜひとも規模の拡大をはかって、十分農業を進めたい、こういう者と、それから農業はどうも好まない、どうしても他産業に進みたい、こういう者と分かれるわけであります。そこで、いずれの方向を求めるにいたしましても、農地の流動が円滑にまいりませんと、それぞれの希望がかなえられないわけであります。規模拡大をはかろうといたします農家につきましては、円滑にこれが実現できる。それから農業を離れる者につきましても、安心してこれをお願いできる、農協等が農地の取り扱いが円滑にできるような措置が必要でございます。そこで村づくりにおきましては、村はこの分野、農協はこれを担当、農家はそれぞれこのような方向で進むべきであろう、こういう守備範囲をそれぞれきめまして、お互いに努力をする、こういうことで村の振興がはかられ、農民の期待がかなえられるものであろう、こう思うわけであります。そういう点で、もし法人等の今後の組織の問題につきましては、先ほども御意見がございましたけれども、その地域実態に合ったものがこれを担当する。町村の中において十分調整をとり、先ほど申し上げましたいわゆる守備範囲を定める段階におきまして、農協が担当するのがふさわしい地域あるいはそうした点に達した場所につきましては、農協が担当し、そうでない場合は市町村が担当をする、こういう形で進むのがよろしいのではないか、またそうすべきであろう、こう考えます。いずれにしましても、それらを実施いたしますためには、現在いわゆる隘路になっております農地法あるいは農協法改正、こういうことが必要になるわけであります。
  48. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 それでは、松沢委員に対する野口参考人の答弁が残っておりますので……。
  49. 野口一

    野口参考人 先ほどの御質問と兼ねて、ただいまお答え申したつもりでございます。
  50. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それでは、最後に……。  私がさっき申し上げましたのは、農地移動していないというには、やはりそれなりの外的な条件というのが十分でないから移動していない、こういうことを申し上げておるわけなんでありまして、したがって、その農地の法律改正というものを先行させるということよりも先に、要するにそういう安定雇用の拡大だとか、社会保障の拡充強化、こういうものが先行しなければ、皆さんが言っておられるような近代的な農業というのはでき上がらないのじゃないか。それにもかかわらず、農地法改正というものを急いでもらわなければ困る、そういう主張について私は非常に疑問に思いますので、その点はっきりとお答えを願って、終わりたいと思うのです。
  51. 野口一

    野口参考人 諸般の外的条件が整備されてからこうする、こういうことは、それはまことに理想的なことではなかろうかとは思いますけれども、現にもうすでに他産業にどんどん転出をしている者がございますし、また深刻に農地拡大を期待している農家もあるわけであります。したがって、もうすでに、事態は汽車が出発してしまっておるというような段階でございますので、もちろんそうした雇用条件その他の整備をあわせて整えていただきますことは希望するところでありますけれども、さしあたり農地法改正農協法改正等によって、現場の急場の事態をひとつ整理していただかなければならない、こういう考え方でございます。
  52. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 瀬野栄次郎君。
  53. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 池田参考人にお尋ねいたします。時間もたっておりますので、簡単にお伺いいたします。  先ほど土地問題のことでいろいろお話をいただきましたが、現在国の新全総の計画を見ますと、四十年を起点として二十年後の六十年を目標に計画を立ててありますが、それによると、農用地は四十年の六百万ヘクタールが六十年は六百五十万から七百万ヘクタール、森林面積は四十年二千五百十七万ヘクタールが六十年は二千四百万から二千四百五十万ヘクタール、こういうふうにだんだん農用地が山に広がるような傾向になっておりまして、さらに市街地の面積は、四十年が四十六万ヘクタールで、六十年は九十四万ヘクタール、こうなっております。としますと、今回の農地転用でことしは十一万八千ヘクタール、三年で三十五万、こういうことになりますと、四十年と六十年の市街地の面積の開きが約四十万ございますが、三カ年間で転用をしてしまうことになって、一応三年でこと足りるということになるわけでございます。  そこで、倉石農林大臣もいろいろと農地転用の内訳を先般の衆議院予算委員会で申されておりますが、はたして今回の十一万八千ヘクタールの転用がどのように進んでいくか、どういうように見ておられますか、参考までに簡単にお伺いしたいというのが一点でございます。  もう一点お伺いしておきますが、先ほど触れられました土地問題で、この法案が通りますれば、いよいよ農家は土地を売るという段階になってまいりますと、現在私の調査でも各地で、三万五千円の休耕奨励金を土地代に上積みしてくれという声がよく聞かれるのでございます。会議所もこのことについてはいろいろ承知しておられるかと思いますが、そうなってまいりますと、土地価格の問題で二次的な影響がだんだん起きてくるのじゃないか、こういうふうに憂慮しておりますが、その点について、簡単でけっこうでございますから、御意見を承っておきたいと思います。
  54. 池田斉

    池田参考人 御指摘のように、新全総計画等の長期展望、そういうことに対応して、日本国土農業的利用、特に畜産的な利用等を中心にしますと、もっともっと拡大されていかなければならない。ただ現時点で米だけを見ると生産過剰であり、長期的な展望から見ても、水田は生産力の増大等との関連で、ある程度減反をしても間に合う、こういう問題がいろいろ大きくクローズアップされておりますので、この問題を短期的にどうするか、こういうことで、水田をつぶすということについては、とりあえず十一万八千ヘクタール、この問題もいろいろ計画が、先ほどもお話がございましたようにありますが、私は率直に申しまして、そう簡単に十一万八千ヘクタールが一年間ででき上がるというふうにはどうも理解をしておりません。あれに対しては、具体的な裏打ちになるような資金面だとか、いろいろな問題について、あまりたいしたことが行なわれておりませんし、また国会のいろいろ議論を通しましても、政府は必ずしも明確な線を出していない。福田大蔵大臣が、とにかく三十五万ヘクタールの水田を三年間でつぶすというようなことでないと、このメリットというものは具体化しないと言ったというようなことも新聞等を通じて読んでおるわけですが、その辺の問題は、私ども考え方では、生産調整というものが一年で成功するという基本的な考え方は持っておりません。やはり三年なら三年計画でこの問題をやっていって、その中におきまして農工両全なりいろいろな政策がございますから、ある程度そういう方向に、あるいは住宅問題等土地利用計画との関係を前提として水田を壊廃するということも、短期的にはもちろん必要でありますが、やはりもっと土地改良なりそういう問題をひっくるめて、田畑輪換が可能であるとか、いろいろな地域分担の農業政策というものがその間確立をして、その地域地域農業生産のあり方というもの農業者にはっきり裏づけをされ、しかも米価に依存した問題を、もっと全体の重要な将来の戦略作目に対する価格政策等が総合化される、こういうような形を含めながら、やはり長期的には土地の外延的拡大ということをひっくるめて、とにかく国際的に許容される保護の限界、これもいろいろ時代に即応して違うと思いますが、そういう姿の中で長期的に日本農業というものを本格的に確立をして、基本的な問題としては安定をした食糧の供給ができる、米以外はみな足りないという問題を頭に置いてやらないと、何か水田の現段階の問題が全体として農業後退につながるような印象を受けやすいということにつきましてはきわめて遺憾であり、そういう方向での国会での御審議は、ひとつ政府を通して十分活発にお願いをいたしたいということをお願い申し上げたいと思います。
  55. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまお尋ねをしたもう一点の、三万五千円の奨励金を上積みしてくれという問題について、一言お願いしたいと思うのですが。
  56. 池田斉

    池田参考人 三万五千円を土地の売買の上に上積みをする——今度の三万五千円がいろいろな形で、たとえば小作料の問題に影響するとか、あるいは請負耕作もいままで二万円ぐらいでやっておったのが三万五千円でないといかぬとか、いろいろな余波が起こっておることは事実だし、またそのことが都市の周辺においては地価をさらに上げている。ただ、全体として見ますと、米の主産地的な相当遠い地域においては、逆にそういう問題をさらに乗り越えて、水田の売買価格が、米の将来性についての一応のめどが消極的であるということに関連して、逆にある程度下がってくる、こういう現象も一方にはございますので、全体としてこの問題か悪い面とそうでない面——私は、生産手段として使う以上は農用地の価格は安定しなければならぬし、またある程度下がらなければならぬ、そういう政策が経済政策全体でとられる——いまの短期的な、三万五千円が地価の値上がりに影響しておるという問題は、部分的にはございますが、全体としてはそうは言い切れないのではないかというふうに理解しております。
  57. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 以上で参考人に対する質疑を終わりました。  参考人各位には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、ありがとうございました。委員会を代表して委員長より厚く御礼申し上げます。  午後二時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後二時五十三分開議
  58. 草野一郎平

    ○草野委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松沢俊昭君。
  59. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 この前も質問をしておりますので、その次の質問に移りたいと思います。  まず一つは、農地法改正という問題については、農地というものはだんだん面積が縮小されて、日本農業というのが小さくなってしまう、そういう一面を持っておるんじゃないかということと、もう一つは、農地法改正によって、いままでの自作農主義というのがくずれてしまって、そして多くの農民が離農しなければならぬという結果になってしまうんじゃないか。こういうようなことからして、実は心配をしておるわけなんであります。  そこで、まずお伺いしたいのですけれども、一体これからの日本農業というものは輸入国、輸出国、いずれかという質問に対しましては、政務次官のほうでも、これは輸入国、輸出国ということでなしに、自給率を高めていく、こういう農業にしていかなければならない、こういうお答えがあったわけなんでありますが、現在米の生産調整が現実に行なわれておりますけれども、この米の減産をやらなければならないのは、余剰米というものが相当膨大になってきている、そこで、このまま生産を続けていくということになると、さらに一そう古米、古々米というものが倉庫に一ぱいになるじゃないか、だから生産調整をやらなければならない、こういうのが政府の言い分であるわけなんであります。  そこで、昨年の米の生産量というのを私新聞で見たのでありまするけれども、史上第二位の成績であって、その生産量は千四百万三千トン、こういうぐあいに発表されているわけなんであります。そこで、私不思議に考えるのですけれども、新潟でございまするけれども、去年のいまごろはまだ農協の倉庫は満ぱいになっておったわけなんであります。ところが最近、倉庫がだんだんがらあきになり始めてきているという現象が出てきております。各農協とも今度は倉庫には万全の対策を立てようという立場で、実は去年も農協では相当倉庫をつくったわけです。その倉庫ががらあきになってしまっては、せっかくつくったところの倉庫が無効投資になってしまうという面が実は出てきております。そこで、一体、昨年千四百万三千トンという生産量というものがあったというには、予約の数量というものが去年はどのくらいあったのか、そうして買い上げ数量というのがどのくらいであったのか、そしてまた、自主流通米というのがどの程度出たということになっているのか、その他、保有米等がどのくらい残っているのか、そういう内容をひとつお聞かせ願いたいと思います。  それ等とあわせまして、前年の状態がどうであったのか。前年の農協の倉庫の在庫量というものと、今日の倉庫の在庫量というものがどういう様子で変化をしているのか、前年対比でひとつお答え願いたいと思うのです。
  60. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 こまかい数字的なことは、食糧庁の事務当局からお答えをさせます。ただ、ただいま農協倉庫がからっぽになったというお話がございましたが、それは非常に限られた地域であって、日本国全部が農協の倉庫がからっぽになるようでしたらば、米の過剰問題というのは起きなくて、われわれとしてもたいへんけっこうなんだと思いますが、おそらく農協の倉庫がからになるという地方は、比較的需要者から好まれる米をたくさんつくっておる地方ではなかろうかという気がいたします。それらの需給関係の数字は、倉糧庁の次長からお答えをさせます。
  61. 馬場二葉

    ○馬場(二)政府委員 お答え申し上げます。途中でまいりましたので、あるいはお答えが必ずしも的を射ないかもわかりませんが、あらかじめお断わり申し上げておきます。  四十四年産米の予約は、最終的に九百七十二万九千トンでございます。実際の米の現物の買い入れ見込みは、八百九十万トンを予定しております。これは前年に比べますと、四十三年産米は予約が九百三十三万二千トンで買い入れ実績が一千六万九千トン、こういうことに相なっておるわけでございます。自主流通米は四十四年産米から発足いたしましたが、これは計画としては御承知のように全部で百七十万トンでございました。そのうち主食のウルチが百万トン、酒米が五十万トン、モチ米が二十万トンであったわけでございます。現在の実績見通しは、初年度のことではございますのでそれより相当下回りまして、ただいま食糧庁で見込んでおりますのは、ウルチ米が計画百万トンにして三十万トンでございます。酒米が四十七万トン、モチ米が十三万トン、合計九十万トンを見込んでおるわけでございます。  それから倉庫事情でありますが、これは在庫の増大あるいは四十四年産米の買い入れの進捗状況によりまして、全国的に非常に窮屈な状態になっております。しかし、通常の収容力では窮屈でございますが、これを最大収容力ということで、はり高を高くするとかあるいは通路を狭くするとかいうことで、全国的には一応買い入れ数量がさして支障なくおさまっておるわけでございます。ただし、いま御指摘のように地域によりましては、最近食糧庁の米の需給操作上、若干いい米から配給に回す、良質米から配給に回すという操作をいたしておりますので、いま政務次官が申されましたように、地域地域を見ますと、比較的倉庫に余裕のあるところも出ております。また、そうかといいますと、非常に長く在庫しているところもあることも事実でございます。これは米の需給操作上、結果的にそういうふうになっているということでございます。
  62. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 倉庫のほうのお話を聞きますと、いまお話を聞きましたとおりだということになるかもしれませんけれども、たとえばうまい米から順々に出すというお話でありますけれども、私の地方では五等米から先に出ていっているんですね。ですから、五等米が一番うまいのでしょうか、どうでしょうか。
  63. 馬場二葉

    ○馬場(二)政府委員 先ほど申しましたのは、こういう過剰米の状況下では、やはり主食として消費の増進をはかる、需要拡大をはかるということが私どもの努力すべき点でございますので、つい数カ月前からできるだけ新米から、また同時に、同じ新米でも銘柄のいいおいしいものから出荷をするという方針にいたしておるわけでございます。したがいまして、ただいま政府の運送は一−四、一等ないし四等は内地米という配給品目でございまして、現在の五等が徳用上米という配給区分をいたしております。一−四等は内地米ということで、その中では一−三等を優先して現在消費地に運んでいるわけでありますが、ただいまの五等、これは徳用上米で、全部小袋詰めを義務づけまして、徳用上米ということで、値段も、普通の米が、東京で内地米が千五百二十円であればこれは千二百五十円ということで配給しておりまして、非常に需要が多いわけです。したがって、徳用上米の原料米であります五等については、これは各産地から需要に応じまして非常に優先的にいま出荷をしているということでございますので、配給品目の違いから、あるいは価格の違いからそうなっておるわけでございます。したがって、一−四等の中では一−三等を主として、内地米という配給品目で優先的に輸送をいたしている状況でございます。
  64. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そこで問題は倉庫の問題でありますけれども農協では倉庫の倉敷料というのがやはり農協財政の大きな部分を占めているということは間違いないわけなんであります。ところが、うまいところの米から順次出しているのだ、そういうようなことから、農協のほうでも——倉庫の収容量が非常に問題があるからということで御指導されながら、そして倉庫の建設というもの農協のほうでは取りかかったと思うのです。ところが、新しい倉庫はできたけれども倉庫の中に米はさっぱり入らぬということになれば、金は使ったが今度はそれを償還する金もないという状態になるわけなのであって、これはやはり全体的に公平に倉庫の操作をおやりにならぬと、ある農協においては倉庫によってむしろ赤字を出すという結果になるのじゃないか。そういう点はやはり配給行政という面から善処していただかなければならないところなんじゃないか、こう考えるわけなんでありますが、この点はどうお考えになるのでしょうか。
  65. 馬場二葉

    ○馬場(二)政府委員 実は良質米から優先出荷するということになりますと、いい米をつくっている地方農協の倉庫が比較的早くあくという結果になる。農協の米に関する業務では集荷手数料と保管料が主たる収入源でございますから、悪い米をつくっている農協に比べて早く倉庫がすいて保管料が減るということは、私どもも大問題ではないかと実は思っているわけです。したがって、この解決策としては、できれば県の経済連あたりで保管料のプールでもすればこの問題は解決するかと思いますが、それも目先すぐ可能と思いませんので、やはり良質米から需給操作上優先出荷するという方針でありますけれども、やはりそういう農協の保管料収入確保ということもかね合いを見ながらいま運用しているわけでございます。
  66. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 昨年は自主流通米百七十万トンの予定をなされたわけなんでありますけれども、そのうちウルチは百万トンということになっておったと思います。そのウルチが三十万トンしかいま予定されておらぬということになりますと、七十万トンというのは結局計画倒れであったということに結果的にはなってしまうと思うのです。そこで、ことしも自主流通米というものは百七十万トンということを想定しておられるようでありますけれども、はたして百七十万トンというものが、昨年の実績と比較をいたしまして可能であるというところの自信をお持ちであるのかどうか、この点を実は聞きたいと思うのです。と申し上げますることは、私の近くの農協におきましてはこれは一俵につきまして三十円政府米よりも値段の下がったところの自主流通米になってしまったわけなんであります。ところが、東京に来てみますと、東京では政府米が十キロ千五百二十円というのに、自主流通米というのは二千円を上回っている。農家から買うときにおいては安い値段で買っても、消費者のところへまいりますと一俵について三千円余りも高い米になってしまっている、こういうのが自主流通米の実態であるわけなんです。こういう実態を踏まえて、そしてまた昨年の実績からいたしまして、七十万トンというもの計画倒れになってしまっている。こういう実績を踏まえて、はたして百七十万トンの自主流通米というものがことしは十二分に自信があるというふうにお考えなのかどうか、この点はむしろ政務次官のほうからお伺いをしたほうがいいんじゃないかと思うのです。
  67. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 去年百七十万トンの計画をしたのが、モチ米については三十万トン、合計して百万トン足らずであったということは事実であります。ところが最近に至りまして、自主流通米の米がない、だから政府売り渡しをした米を自主流通米に回してくれないかというような要望もあることは事実であります。そういたしますと、なぜ一体そういうようなことになったのだろうかと考えてみまするのに、何ぶん昨年は自主流通制度初めてのことでございますものですから、それぞれの集荷団体、農協等においても、これを持っておってはたして高く売れるものだろうかどうかというような疑問等も手伝いまして、大事をとったと申しましょうか、政府売り渡してしまえば、これはきまった値段と同じでありますが、高くは売れませんけれども安全だというようなところで、自主流通米で申し込まれたものも、政府のほうに早々と売り渡しになってしまった。ところが最近に至って自主流通が比較的評判がいい、そのためにすでに自主流通米のワクがない、そういうお米がないというようなことであります。だから事業者団体からは、どこの村のどこの倉庫にはどういうようなうまい米が入っているから、それは政府米だけれども自主流通米のほうへ回してくれないか、そうすればもっと売れるのだけれどもというような要望になって現在出てきておるものと思います。したがって、去年の経験を生かして、皆さんがもっと自信を持つというようなことになれば、もう少し政府に売り渡すことを手控えてもらう。そうすれば政府としては、去年は金利、倉敷きの補助等も自主流通米についても差し上げたわけでありますから、あわてて政府に売らなくても、また、どうしても自主流通で売れないというような場合には政府に売り渡すという手もあるのでありますから、それらの点をあまり神経質にならないで、ことしの経験に照らして自主流通が伸びるようにやっていただきたい、こういうような行政指導をするつもりであります。したがいまして、ことしは何とか百十七万トンの目標というものは達成できるのではないか、こういうように考えておる次第でございます。
  68. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 政務次官に聞きますけれども、統計からいたしますと、たしか国民の一カ月当たりの配給を受ける量というのが六・四キロというふうに私聞きましたのですけれども、これはなお、そちらのほうに資料があると思うのです。ところが、昨年の三月三十一日までは十キロ配給であったわけですね。それが四月一日から十五キロの配給に、五キロふえたという状態が出ているわけなんです。そういう状態の中で、米穀業者というのは政府から売り渡しを受けることができるわけですね。ところが一般の消費者がかりに六・四キロしかとらないということになると、その差というものは一体どうなるのであるか、私たちはこういう一つの疑問を持つわけなんであります。  そこでその差というのは、やはり良質米というのをピンはねをして、そして一般の配給というのは、極端にいうならばまずい米を配給する。そしてまずい米だといわれると、ピンはねした良質の米というのをやみ米用とかあるいは自主流通米だとかいうようなことにして、それを売り出していく、こういうケースというのはあるのではないかというふうに実は考えるわけです。ある人から聞きますと、新潟の米なんというものが、新潟ゴールドライスなんというレッテルを張られた袋の中に詰められて売られているという。これは東京に現実にあるということを聞いているわけなんです。それははたして新潟の自主流通米なのであるかどうかということになると、私はそうではなしに、うまい米にはそういうレッテルをつけた袋の中に入れまして、そして高々と売っているという傾向というものがあるのではないか。そういうようなことからして、たとえば新潟の場合におきましては、先ほど倉庫の事情を申し上げましたけれども、倉庫はからっぽになってしまうという問題が起きてくるのじゃないか。そういうところの取り締まり、監視、そういうことを政府のほうでやっていかないと、流通機構というのはくずれてくるのじゃないか、かように私は考えるわけなんでありますが、この点は政府のほうで監視、監督、消費者行政という立場に立ってどの程度具体的に手を出しておられるのか、その点を質問したいと思うのです。これは倉庫事業とからみましての御質問ということになるわけですが、これは次長のほうから……。
  69. 馬場二葉

    ○馬場(二)政府委員 御指摘のように私どもも、政府売り渡しました管理米がかりに横流れということは非常に大問題でございますので、この点については実は昨年そういう問題が、これは先生の非常に身近の県から起きたので、これは警察当局の強い取り締まりでもちろん根絶いたしました。  その後、ただいま御指摘がありましたように、おおむねただいま六キロ程度でございますから、一人当たりの消費動向なりあるいは各卸の従来の実績を基準にいたしまして政府の売却量はきめているわけでございます。したがって個人個人見ますと、最大限度の十五キロの受配があるかもしれませんが、平均では大体六キロ程度を目安に割り当てをしているわけです。特に生産県のほうにおきまして余裕のある売却を卸にいたしますと、ただいま御指摘のような好ましくない事態が発生する可能性もございますので、特に生産県の売却のワクにつきましては、都道府県及び食糧事務所で十分審査をいたしまして、そういう余分のワクが渡らないような売却方針を現在とっておるわけでございます。  それから一般的な配給改善の指導でございますが、これはまず仕組みを昨年四月から改めたわけです。できるだけ卸登録業者ないしは小売り登録業者の競争原理を業者に導入したいということで、昨年四月からは、消費者と小売りの結びつきを廃止いたしますと同時に、小売りと卸の登録がえも年に一回は自由にできるように、あるいは人口急増地帯の小売り店舗の新規参入ができるような方途を講じたわけでございまして、できるだけ競争原理を導入いたしたいということをまずやりまして、同時に、指導監督も従来からいろいろやっておりましたが、昨年四月からは巡回指導監査、これは食糧事務所及び都道府県の担当官が随時精米所ないしは小売り配給店舗を回りまして、はたして適正な配給がなされているかどうかをチェックをするということを始めております。それと同時に、最近われわれとして非常に効果をおさめ、期待をしておりますのは、配給米の検討会というのを実はやっておるわけです。これは都道府県なり食糧事務所が随意に抜き取りました米ないしは各家庭で受配しました米を持ち寄りまして、そこで品質、価格あるいはその他の点で不適正なことがないかどうかをチェックする、こういうことで、いやしくも管理米の横流しあるいは転用、転売がないように、末端乱れがないような注意を十分払いながら、現在配給行政をやっている次第でございます。
  70. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 政府のほうでそういうふうにしていろいろ監視をやっておられるということ、御答弁では出てくるわけなんでありまするけれども、実際の消費者の情勢の中には、それほど、その問題が非常に監督、指導が強化されているというふうには、実は見受けられないわけなんでありまして、この点はもっとやはり強化をしてもらわなければならない。そのためには、やはり検査官というものも、これは当然もっとふやしてもらって、最盛期においては検査官が不足で困るというような、そういう事態がないようにしてもらうと同時に、そのくらいに検査官というものが、今度は消費面においても相当活躍をするという、そういう体制を実はつくっていただきたいということ、これは要望でございます。  そこで、問題になりまするのは、いまの現状からいたしますると、ゴールドライスなんというものが横行しているわけなんでありますから、この横行しているところの現状の上に立って、百七十万トンの自主流通米というものが、はたして成功するかどうかということになると、私ははなはだ疑問であるわけなんであります。要するに、昨年の実績もウルチにつきまして三十万トン、そうすると、ことしもウルチ百万トンということをいっても、やはりそこに抜け穴があるということになれば、この自主流通米というものは、私は、成功することは非常にむずかしいんじゃないか、こういうぐあいに思いますんですが、その自主流通米というものが成功をかりにするとするならば、そういうゴールドライスというようなものがなくなるように、やはり指導していかなければならぬじゃないかと思いますんですが、この点は監督、指導というものを十分にやるというんですが、そういうレッテルの張られるところの袋というものを取り締まられるのかどうか、その点お伺いしたいと思うんです。
  71. 馬場二葉

    ○馬場(二)政府委員 先ほど申しましたように、末端配給の乱れを正すということは、非常に私どもいま重点を置いて指導いたしておるわけでございますが、何ぶんにも、小売りだけでも五万六千軒の小売り店舗がございますので、徹底した指導というものも容易でない点もございます。しかし、いやしくも大口な、しかも非常に悪質な不正ということがございますれば、これは取り締まり当局とも連絡をとりながら、随時取り締まりもいたしておるわけでございます。ただ、いまいろいろな化粧袋に入った米が出回っております。あるいは、正規の配給米でも、パールライスとかあるいはシルバーライスとか、いろいろなのが出ておりまして、その点、正規の配給米であるのか、あるいは、先ほど先生がおっしゃったような米であるのか、非常に識別のむずかしい点がございます。要は、その配給米の横流しをする根源を断つということが一番大事な点と思いますので、ただいま米販売業者に売る毎月のワクの適正化ということに最大限努力し、同時に、その後の流れも監視体制を強化してやっている次第でございます。
  72. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そこで、御質問申し上げますけれども、この農地法改正で、最近というか、昭和三十六年の農地法制定以来、いろいろなことばができてきているわけなんです。たとえば、農業協同組合の規約からいたしますと、農民ということばになっているわけなんです。あるいはまた、最近、政府のほうで、この農地法だとかあるいはまた農政に対するところの一つの御答弁なんかからいたしますと、自立経営農家、こういうことばも出てきております。それから、今度、そのほかに、農業従事者ということばも出てきているわけなんです。その他、自作農ということばはもともとありますが、そういういろいろなことばが出てきておりますけれども、この農地法というのは一体、いずれのものをこれから育成強化していかれるのか、そうしていままで出てきているところのことばというものはそれぞれどういう意味があるのか、その点をひとつお伺いを申し上げたいと思うのです。
  73. 中野和仁

    ○中野政府委員 たいへん基礎的な御質問でございますが、御承知のように、戦後、自作農主義を確立いたしましてからは、いわば自作農と申しましてもあるいは農業者と申しましても、中心は、自分で土地を持って自分で耕やすというのが中心でございました。ただ、その後の情勢の変化、今後の日本農業の近代化のためということから、昭和三十六年に基本法ができました際に、自立経営というようなことばが出てまいったわけでございますが、これはあの法律に定義がございますように、能率的な家族農業経営ということになっております。したがいまして、農地法改正案、今度の場合も、申し上げておりますように、今後の農業を背負っていく農家というのは、やはりそういう農業で、能率的な経営をやりながら他産業に匹敵する所得をあげていくという農家が中心であろうというふうに思われるわけであります。
  74. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そうすると、自立経営農家の育成というものがこの農地法改正の趣旨ということになりますか。いま私聞きましたのですけれども、私たちは一般的に農民と言っているわけですが、その農民を守るというためにこの農地法改正というのが行なわれるのか、自立経営農家というのを育成するために行なわれるのか、あるいは、農業従事者の経済的な地位というのを高めるために行なわれるのか、あるいはまた、この法律の中には農業者ということばもあるわけなんです。これはそれぞれ意味が違うんだと思いますので、要するに、これはこういう意味なんだ、これはこういう意味なんだというふうにして解説をしてもらって、そのうちのどれを育成するというふうにこの農地法というのは考えておられるのか、この点をやはり明確に御答弁願わぬと、その改正の目的というのがさっぱり、ぼやっとしてわからぬということになってしまう。だから、その点はっきりしてもらいたいと思うのです。
  75. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 これはなかなかむずかしい御質問であります。今度の農地法改正は、別に、自立経営農家だけを育成する、こういうものではありません。自立経営農家を中心として、兼業農家もありましょうし、あるいは農場経営の農家もありましょうし、農業従事者もありましょうし、そういうような要するに、農業に従事する人、そういう人の土地を守ってあげるというのがこのねらいであります。  そこで、農民と農業従事者と自立経営農家はどう違うんだという御質問ですが、これは私、寡聞にして、法律的に明らかにどういうような違いがあるということがきまっておるということは知らないのでありますが、まあわれわれの常識的に考えますのには、農民ということばよりも、あるいは農業従事者ということばを使ったほうが近代的であるということは間違いないと思います。お百姓さんということばがありましたが、いまやお百姓ということばはあまり使っておりません。百姓家ということばを使うと、何か農家の方を通常のレベルよりも少し下げて言っておるような印象を与えるような時代になったということも事実であります。したがって、百姓ということばは使わないで、農業従事者とか、あるいは農家の皆さんとか、そういうふうなことばが使われるようになったものと思います。  ただ、ここで自立経営というふうなことばが出たということは、ただ単に農業に従事をするというだけではない、つまり、昔の百姓ということばは、言うならば、土地と水を使って作物をせっせとつくり出す、こういうふうなニュアンスが強いわけでありますが、少なくとも今後農業が単なる肉体労働の労働者というものではなくして、一つの企業体として発展をしていかなければならない。したがって政府としては農家経営というものを、小さなものかもしれませんが一つの企業的な考え方育成をしていこうというような、近代的な政策がいろいろとられるようになったことは事実であります。したがって、いまや改良普及員等もただ単に技術の指導をするというだけではなくして、経営の指導もあわせてしなければならないというように変わってきておるのは、すでに松沢さん御承知のとおりだろうと思うのでございます。ですから、自立経営農家というものは、ただ単に農作業に従事をするというのではなくして、いろいろな労働力と資本と立地条件と世の中の経済の動きと、こういうものを結びつけて最小の経費で最大の利潤をあげることのできるような農家、こういうようないわゆる経済合理性に基づいた一つの企業単位としての農家、それが言うならば自立経営農家である、こういうふうに御解釈を願って差しつかえないと思うのであります。農業従事者ということばは、言うならば農業に従事をするという意味で、それは農業というものに雇用をされるという場合もその中には入りましょうし、また自立経営農家の一員として農業に従事をするというような場合も農業従事者ということばに当たると思います。農民という考え方、その意味農業従事者という意味は、昔のことばといまのことばというくらいの違いではなかろうか、私はかように思います。
  76. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そうすると、私も大体政務次官と同じような考え方があるわけですが、いままで農民というもの土地と水と自己の労働力を投下して経営をやってきた、これがいわゆる農民であったと思うのです。要するに、そういう農民ということよりも自立経営農家、いわゆる小さいながらも企業として成り立つところの農業経営体というものをつくる、そういうためにこの法律改正案というものが出されている、こういうふうに政務次官の御答弁を要約して差しつかえないでしょうかね。
  77. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 先ほど申し上げたとおり、自立経営農家を中心として、もろもろの農業関係に働かれる、そして農業に従事をされる方の農地を守るという意味で、しかも効率的な土地の利用を促すという意味で、今回の農地法改正案が出された、こういうふうに思っていただけばけっこうでございます。
  78. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そこで、それならば、自立経営農家というものは一体どの程度の規模、所得の規模にいたしましてどの程度、それから水田の場合においてはどの程度、酪農の場合においてはどの程度、各業種別にそういう農家というものは大体どの規模なのであるか、具体的にお示しを願いたいと思うのです。
  79. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 同じ農業と申しましても、これは作目によって非常に違いがあると思うのであります。水田経営の場合や、あるいは花卉栽培とかイチゴ栽培をするというような場合や、あるいは鶏を飼うというような場合等においても、おのずから自立経営農家の面積の規模というものは違ってくるのがあたりまえだと私は思います。通常いわれるわけでありますが、一口に自立経営農家の規模というものは何ぼなんだといえば、他産業の労働者と均衡した所得を得ることのできる程度の規模である、こういうことだと思います。具体的に例をあげていくと、水田ならば、内地ではおおよそ四、五ヘクタール、これとても四ヘクタールでなくては絶対にいかぬとか、五ヘクタール以上は悪いとか、そういう意味でなくして、おおよそ内地ならば四、五ヘクタールであろう。内地といってもやはり反当収量が四俵か五俵しかとれないところもありましょうし、あるいは十俵か十一俵とれるというところもありましょうから、そこには当然地域によって、同じ水田の農家であっても自立経営農家が、ある者は三町歩である場合もあり、ある者は六町歩である場合もあって差しつかえないと思います。要は他産業の労働者と同じような、均衡のとれた所得を得られる程度の規模であるかどうかということに尽きると思うのであります。酪農等におきましても、内地などでは二十頭ということが一口にいわれておりますが、これについてもやはり多少二十頭を割る場合もあるだろうし、二十頭より少しよけいな場合もあるだろう、あって私は何ら差しつかえない。じゃ鶏は幾らだ、イチゴなら幾らだ、何が幾らだということは、全部申し上げるといっても基準もないことでございますし、また私が申し上げるよりも、どの業種目においてはどの程度ものが現時点で他産業と同等程度所得が得られるかということになってまいりますから、専門家のほうから申し上げたほうがいいと思うので、もしそういうことをお聞きをされる場合には、専門家のほうから答弁をさせたいと思います。また、非常に詳しく各般の全種目について言えと言われても、この段階でそれを申し上げるだけの資料を持ってきておりませんから、松沢さんの御要望をいまこの席で満足させるような答えはなかなかできないかと思います。ことに今回はこの要綱というようなものもとることができなかった関係もあって、答弁上親切にしたいのでありますが、結果的に不親切になるようなこともありますが、その点はお許しをいただきたい、かように存じます。
  80. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 政務次官、聞きますけれども、水田の場合におきましてはまあ四、五町歩ぐらいだろう、こういうお話です。これはこの前もお話しておられたわけなのでありますが、そこで、所得倍増計画というものが出された当時、池田さんは二町五反歩の農家を百万戸育成して、自立経営農家をつくるんだ、こういう構想を出されたことがあるわけなんです。十年後にそういう農家をつくるというお話があったわけです。ところが十年過ぎた後においては四町から五町ということを言われるわけなので、四町から五町という規模ができ上がるころになると、十二町から二十町歩という話が出てくるのじゃないですか。そういうことになると、日本農業というものは、将来こういうふうにしてこういうような形の農業をつくっていくんだというところのビジョンがないように考えられるわけです。そういう点で二町五反、百万戸の農家の育成というのと、今回の四、五町歩程度というのは、どういう関連性があるのでしょうか。その点をお伺いしたいと思うのですよ。
  81. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 これは、池田さんのときには二町五反と言っているが、近ごろ何で四、五町歩と言うんだ、非常にはっきりしないじゃないか、しょっちゅう動いているじゃないか、こういうふうな御質問ともとれるわけでありますが、しょせん経済というものは生きものであります。池田さんのときには国民所得が平均十七万円程度でありますが、現在は五十万ぐらいに大体なっておると思います。当時池田さんは、この前も言ったように、所得倍増して、十年間に国民所得を倍にする、それを目標にがんばりましょうと言って、やったわけですが、これが十年たたないうちに三倍くらいになってしまった。これは、やはり経済は生きものであって、日本の国民所得が思ったよりも大きく伸びちゃったということは、これはけしからぬと言う人はあまりないのではなかろうか。日本生産が世界第二だといわれながら、国民一人当たりの所得は二十番目だとか、やれ二十一番目だとか、足らぬじゃないか、もっともっと引き上げろという御質問や御意見を承ることは私どもしょっちゅうなんであります。したがいまして、現段階に至って、今度いろいろな経済社会発展計画その他をつくっておるようでありますけれども、これはやはりしょっちゅう改定をしなければならない。日本だけで日本の経済はやれない。いまは世界と一緒になっておるので、世界の経済が直接農家の庭先にまで入ってくる時代であります。したがいまして、世界経済の動きに合わして考えていかなければいけない。日本の経済はそういうものであります。  そこで、日本の他産業がどんどん伸びて、しかもそこの従事者の所得がどんどんふえるということになれば、やはり農家の場合も、農家所得を他産業並み、こう言っておるのでありますから、他産業が上らなければ別ですが、他産業が思ったより上がれば、それに歩調を合わせて農家の経営規模というようなものが考えられるということは、私はむしろ当然ではなかろうかと思うのであります。ことにこれは自立経営農家ということにおいて議論をするわけでありますから、自立経営農家の意義というものは、やはり時代の趨勢に従って、その所得が他産業が高くなればそれに比例して高くなる、こういうことは私は何ら差しつかえないのではないか、こう考えるのであります。
  82. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そこで聞きますけれども、それでは、いま四町から五町というのは、現時点での他産業との比較において言われているのか、それとも将来四町から五町になるということになるのか、その点を明確にしてもらいたいのです。
  83. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 おおよそ四、五町歩、牛なら二十頭というのは、昭和五十年ごろを目途として考えられておる数字であります。
  84. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そういうことになりますと、やはり言ったときは二町五反であっても、もはや二町五反では他産業との比較ができないような低いものになってしまう。いままたあなたのほうで四、五町と言われましても、それはいまの見通しであって、将来またどう変わるかわからぬ、こういうことになりますから、結局言っておられることは何を言っておられるのか見当がつかぬということになってしまうわけなんです。そういう点で私は非常に疑問に思うわけなんでありますが、いま統計資料を見ますると、そういう時代の趨勢に応じて農業が変化をしていかなければならないという、そのことはわかりまするけれども、要するに時代の趨勢に応じて農地法改正しなければならないような状態に入っているのかどうかという問題、これは非常に私は疑問に思うわけなんであります。この統計からいたしますと、たとえば昭和三十年の場合におきましては、三反以上二町以内の農家というのが日本の農家戸数全体の七四・四%になっているわけなんです。ところが十年たったところの昭和四十年になりますと、それじゃそういう時代の変化に応じて農家の農地の流動というもの農地法のワクの中においても変化が起きてきて、そうして上限を撤廃しなければならないほど上層部の層に農地移動しておるかどうか、そして下層の農家というものは離農しているかどうか、減っているかどうか、こういうことを見ますと、やはり依然として、三反歩から二町歩以内のワクの中において農地移動はありますけれども、そのパーセントはやはり七四・四%、こういうことになっているわけなんですね。そうなりますと、言っておられる目標は非常にけっこうでございますけれども、現実はそのようにして農家の動向は落ちておらぬではないか、こういうぐあいに私は考えるわけなんです。そして、そのよってくるところの原因は、農業というワクの中でいろいろな原因があるのではなくして、外的な原因からして、つまり規模を拡大しようとしてもできない。三反歩ということになれば、これはほとんど百姓として向かないではないかというふうに農林省のほうで考えられたとしても、農家のほうでは、いやいや、この三反歩というのがおれにとっては命の綱なんだよという考え方があると思うんですよ。  ですから、農業ほんとうの近代化を考えるということになりますならば、農地法を動かすことによって農業の近代化を考えようとしてもそれは無理なんではないか。そうではなしに、外的なその問題を解決つけなければならぬのじゃないか。たとえば社会保障の問題にいたしましても、農業から離れて日雇いになったとしましても、安定した状態ではないわけなんであります。そうなりますと、もしそこがだめになった場合におきましては、やはりこの三反歩にすがりついて生き抜いていかなければならない。こういう問題があるでしょう。あるいはまた、安定雇用というもの拡大されておらない。ですから、法律がどうなろうと、何としても一町なら一町のたんぼというものは放すわけにはいかないというようなことからいたしまして、農業内部におけるところの農地の流動はございますけれども、全体から見ますと、三反以上二町未満の農家が十年たっても依然として同じような状態になっているんじゃないか。そうだとすると、農地法改正によって規模の拡大をはかるということは、ちょっと考え違いなんじゃないかというふうに私は考えるわけですが、その点はどうお考えになっておりますか。
  85. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 私どもも、農地法だけで農地流動化が全部済むとは思っておりません。したがいまして、われわれとしても、いま御指摘がございましたように、農業者年金制度というようなものもこしらえまして、六十歳になれば二万円の年金を差し上げるようにいたしましょう、あるいはまた、離農する場合にも三十五万円の一時金を差し上げましょうというようなこともやっております。幾ら離農したくても就職口がないじゃないかという御質問もございます。したがってわれわれとしては、今後は土地税制等の改正をして、東京のような大過密都市からいなかに工場をもっていくという場合は買いかえ制度は認めないのでありますが、ことしからは、そういうような工場については特例として、東京で一億円で工場を売っていなかで一億円で工場を建てたならば、そのもうけについては税金をかけませんというようなことなどもいたしまして、要するに、過密から過疎地帯へ工場がいくことを助成するというごともやっておるわけでございます。あるいは農村地方の道路をよくしなければ、交通がとだえては工場がいくはずがありませんから、農村地帯にもりっぱな道路をつくれといっておりますし、また新幹線鉄道のようなものも、東海道だけではなくして、これはたいへんなことでありますが、新潟のほうにまで新幹線網をつくろう、こういうようなことも計画をし、着々と進められておることは、松沢さん御承知のとおりであります。したがってわれわれは、農地法だけで農地流動化を完全に行なって大規模農家をつくるのだというようなことは申しておりません。ただ、一番基礎になるものは、これは農地法でありますから、幾らその他の点を改良を加えましても、肝心かなめの農地法がいままでと同じようなことであったのでは、これは規模の拡大がやりづらい。一つの例を申し上げますと、せっかく工場が来た。工場につとめてみた。つとめてみたけれども、自分で土地も持っている。その土地を隣の人に貸してもいい。貸してもいいんだが、貸してもまあ四千円から五千円の小作料ではとてもこれは引き合わない。それならかあちゃん農業をやっても、米は五俵か六俵しかへたな農業でありますからとれないけれども、そのほうがまだ得だからまあ自分でやろうか。私は、現在の日本の実情というものはむしろそこにあるのじゃないか。農村地帯等におきましては、小作料等の問題が、専業農家に土地が集まらないという障害になっているということも事実でございますし、また、自分たちがいま三反歩のたんぼを持っておる、相当遠いところに、だんなさんは学校の校長でつとめておる、あるいは工場へつとめておる、家族で引っ越していきたいんだけれども、引っ越していって隣の人に貸すと不在地主というようなことになってしまう。したがって、まあせっかく親譲りのものが二束三文に買い上げられたのではつまらぬから、また不在地主になるのは困る、そこで二重生活をやっておるというような方がたくさんあることも、これは事実でございます。したがって、これはやはり農地法改正をして、そういう場合には一町未満の土地であるならば隣の人に貸しても、農協委託経営をしても、よそへ引っ越して遠いところへ行っても、親子二代の間は不在地主扱いはいたしません。親子二代というのですから相当な期間であって、その間には世の中も相当変わるかもしれません。そのときにおいてまた皆さんと御相談をして、これはひとつ一番いい規模に拡大をするのにはどうするかというようなことを政府としては皆さんと相談の上でまた考えていきたい、かように考えるわけであって、経済の計画というものは五十年も百年も先のことまできちんと——特にこのように日本が激しい勢いで経済成長をしておる段階において、先々のことまできちんと、ともかく絶対動かせないという経済原則的な不磨の大典をつくり上げるということはなかなかできないのであります。したがって、しょっちゅう変わると言われますが、農地法等はそのときの時勢に合わせて、まあ五年から十年ぐらいの先を一応見て、ともかくそれを一つの目安にいろいろ考えていくということがやっぱり一番適当なことではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  86. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 規模の拡大ということで農地法から手を出していこうというお話なんでありますけれども、いま政務次官が言っておられるように、そう簡単には安定した雇用条件のある場所というのがないわけなんであります。でありますから、やはりその農地にしがみついていなければならないというのが農民の実情であります。いまお話がございましたように、今度は農村工場の分散をやってそして何とか収入の道というものも考えてやらなければならぬじゃないか、これは昔からいわれていることなんでありまして、私も市会議員から始まったわけなんでありますけれども工場誘致条例なんというものをつくりまして、そして工場の誘致運動というのが自治体で行なわれたことがあったわけなんであります。あるいはまた新産都市なんという計画が立てられまして、今度は地方工場を分散するのであるという、そういう宣伝が盛んに行なわれた時期もあるわけなんであります。しかし、新産都市という計画を立てまして優良農地を全部工場用地につぶしましたけれども、そこにはペンペン草がはえているという、要するにそういう状態がわが新潟県には現実にあるわけなんであります。要するに、企業というものは採算のとれないところには進出をしないわけなんであります。そういう点から考えますと、政府のほうでけっこうずくしのそういうお話をやられようといたしましても、いままでの経験からいたしまして、そのようなことは現実不可能であったという実績があるわけなんであります。そうだといたしますなら、やはりそれとは別に、農地法に手をかけるということよりも、それらの社会保障やあるいはまた安定雇用拡大というものをやっていかなければならないのじゃないか、かように私は考えます。そういう点は渡辺政務次官のほうは、あなたも農村出身だと思いますけれども、それはあなたあたりもよく知っておられるはずなんであります。こういう点はやはりこの際はっきりと、そういう何か夢物語のような答弁でなしに、やはり現実の農村をよく見られて御答弁を願いたいと思うのです。  それからもう一つの問題は、そういう状態の中に兼業化というものがどんどん進行しているわけなんであります。一種兼業は二種兼業になり、専業は一種に転落をしております。これは政府農業政策に大きな問題があるんじゃないか。昨年は一昨年と比較いたしますと、米価の問題にいたしましても、生産費が石当たり一一・五%も上がっているわけなんです。ところが昨年は米価の据え置きが行なわれているわけなんです。ことしの予算編成にあたりましても、政府のほうといたしましては、物価が上がっているにもかかわらず米価は据え置きだということを言っているわけです。こういうようなところに農村の貧困化が進むということになるんじゃないですか。それだけではない。いま生産調整問題等がございます。こんなくだらぬところの農業政策が一体どこにあるかということなんです。米をつくらんで寝て休んでいるところの連中に対して金をくれるなんというところの農業政策というものは、私はないと思うんです。ほんとうに米というものが余るとするならば、それならば別な、要するに他の農作物に転作をさせる、転作のためのいろいろな措置というもの農業政策として講じる必要が私はあると思うのです。あるいはまた、外国からの輸入農産物というのがたくさん入っているわけです。要するにそういうものを極力押えつける、そして農業というものを守っていく以外に方法がないのではないか、こういうぐあいに私は考えるわけなんでありますが、政府のほうはそれとはあべこべにますます農業を圧迫するという、そういう政策というものを出してきておられるところに、今日の農業問題を一そう複雑困難におとしいれているんじゃないか、私はこういうふうにして考えますのですが、政務次官はどうお考えになりますか。
  87. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 先ほど工場誘致等の問題でありますが、数のうちでありますから、新産都市をつくってもどっかその一角にはまだ工場が誘致されないというようなものも、あるいはあるだろうと思います。しかし全体から見ると、やはり新産都市をつくればつくっただけにそれだけの企業が発展をしておるということも、これもまた私はまぎれもない事実であろうと思うのであります。部分的な問題でなくしてやはり大きく見ていただきたい、かように思うわけであります。  その次は、農地法の問題につきまして、お話を聞いておりますと、農地法改正案を出すことによって何か特別に小さな農家の方を圧迫するような意味に私はとったわけでありますが、政府としては農地法改正して小さな農家を強制的に圧迫をするというような考えは、これは毛頭実は持っていないのであります。農地法農協法等については、午前中も農業会議所あるいは全国農協中央会会長さんなどの意見聴取をしたわけでありますが、もしほんとうにいまおっしゃるようにこれが農家を圧迫する法律であるならば、ここで全国の組織の代表が賛成演説をぶって帰るということはないんじゃないか、やはり私は全体としてはこれは賛成だ、こういうことが必要だと思うからそれらの組織の代表者の方が賛意を表して帰られたものである、かように私は思っておるわけであります。  なお、兼業農家の問題でありますが、兼業農家をつくるなというような御議論かどうか、そこらの点はよく私にはわからないのでありますけれども考え方の問題であります。たとえば水田五反歩しかない、そこで専業農家でずっと暮らせと申しましても、これは終戦直後のようなときで食うだけで一ぱいなんだ、食ってさえいられればいいのだというならば、それは五反歩の水田にしがみついていつまでもいるだろうと思いますけれども、しかしながら、五反歩の水田を経営をするよりも、やはり自分では二町歩、三町歩、四町歩というふうにふやすということも希望しない、だからこれは協業経営にまかせて自分はつとめに出たほうがよけい倍の収入があがるというような条件ができれば、何もそういうふうなことで兼業される方を、おまえは兼業はいけないといって押える必要もこれはないのではないか。やはりそれはどこまでも農民の自由にまかせたらいいのじゃないか。農村の方が農業だけで、小さな土地でそれをやっていったほうがいいという人にはそうしてもらえばいいのだし、いや、おれは表へ出たほうがいいという人にはまかせるような条件を整えてやることが必要なんだしするから、最終的な選択というものは、これは農家それぞれの自分の自由な意思におまかせをするということが最もいいのではないか、こう思うのであります。したがって、全部を専業農家のワクの中へ強制的に政府は入れるのだということではございません。これはそれぞれの自由な立場でおやりになってけっこうだ。また、その土地にしがみつくというお話がございましたが、それは先ほど私が申し上げたような理由によるのが全国の農村地帯の大部分であろうと思いますけれども、東京の近く、ビルの近くに土地があって農業をやっておるというようなものは、農業のためにその農業をやっておる、生活のために農業をやっておるということももちろんでございましょうけれども、それと同時に、やはり値上がりというようなものを期待をしてなかなか土地を手放さないということも私は大いにあろうかと思うのであります。  なお、外国の農産物の問題がお話に出ましたが、われわれは外国の農産物、外国から入る農産物というものは、できることならば入れないで、国内で全部生産をされるということが一番好ましいし、あるいはまた国内で生産した農産物が外国にまで輸出されるというような事態になるとするならば、これも理想的なことであろうと思うのであります。しかしながら、先ほど言ったように、日本の現在の農業立地条件というものからして、なかなか農産物を外国にどんどん輸出国になるというほどつくらせるということは適当ではなかろうと思うのであります。そして外国の農産物を買い入れるという問題についても、これはともかく全部国内でやらせればいいのだけれども、あまりにも外国と国内との差が開き過ぎる、土地の面積等の問題もこれあってできないというようなものなどについては、国内で幾ら奨励してみたところでつくる人はない。大豆のごときはその一番いい適例ではないかと思うのであります。値段をうんと上げたらいいじゃないか、四倍にも五倍にも上げたらつくる人はうんとあるじゃないかという御議論もありましょう。しかしながら、政府といたしましては、やはり大部分の消費者というものを考えますと、やはり一方的に価格政策だけで農業を進めるというような時世ではない、こう思っておるのであって、できるだけ外国からの輸入というものは避けるような方向をとっておりますけれども、しかしながら、国内で生産をさせるということが非常に極端に経済合理性を欠き、極端にこれが物価をつり上げるというようなものなどについては、これは外国から輸入をすることもやむを得ないものと思うのであります。しかしながら、御承知のとおりお米のようなものは外国の倍以上もしているわけでありますが、これは日本の農民のともかく所得の基盤になっておるものでございますから、高いものであっても、要するに消費者の方にもがまんをしてもらって、日本でもいろいろな長期間の港湾ストライキとかあるいは何か天災地変とかいうようなものを考えると、この主食に該当するようなお米のようなものを外国に依存をするということは、国の安全上からいっても好ましくないので、こういうものは非合理的であっても、やはり国内でつくらせるという体制で一貫してきたし、今後もそういう体制は持続するということを返す返すも申し上げておるような次第でございます。
  88. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私も兼業農家を専業農家にしていくように努力をしてもらいたい、こう思っておるわけですけれども、いまはだんだんあべこべに専業農家が兼業農家に転落している、こういう問題、そうしてこの農地法の問題は何も小さいところの農家というものを切り捨てるものではないのだ、こういうお話でありますけれども、これはやはり法律ができ上がって、そうしてこの前も長谷部委員のほうからもいろいろ質問がありましたのですけれども、五反歩に引き上げをやるわけでしょう。下限の引き上げを三反歩から五反歩にする。五反歩になると、これは自創資金の問題なんかはやはり私は対象にならぬと思うのですよ。要するに農地法の条件が引き上げられることによってならない。あるいはまた二種兼業農家になれば、これは農業の収入というのが主たるところのものに対して貸し付けが行なわれるということになってくると思うのですよ。ですから、第二種兼業農家に転落をするということになれば、資金の対象に私はならないと思うのですよ。そういうことになると、結局この農地法というもの改正されることによって、資金の面においては選別融資というものが行なわれるということになるわけです。だから、弱い者はめんどう見てもらうわけにはいかないというところの状態になるわけです。しかも専業から兼業に移るということは、価格の面等の政策というものがおもわしくないからそういう結果になってくるのじゃないか。いま政務次官のほうから言われましたように、日本の米というものは外国と比較して二倍だということになる。よく言われるのですけれども日本農業というのは国際農業と競合できるような強いものにしなければならない、こういうことですが、一体国際農業というもののどの部分をさして、それと競合するようにするのか、その点は明確になっておらないと思うのです。そういう点を明確にしていただきたいと思いますし、価格等の面におきましても、米だけは食管制度というものがありまして、二重価格制になっておるわけなんでありますが、その二重価格制になっておるところの第三条米価ですら、再生産確保するに足るところの価格にきめるということになっておるにもかかわらず、昨年は据え置かれ、ことしも据え置きをやる、こういうような状態になっている。それなら他に転作をやる、こういうことを言っておりますけれども、転作といったところでなかなか転作すべきものはないのですよ。いま都会におきましては大根が一本二百円にもなっておる。しかし、農家は二百円の大根を売っておるのであるか。昨年私の村では白菜をつくっておったわけなんですが、白菜のごときに至りましては、百貫目七百円であったわけなんです。豊作であっても二千貫しかとれませんよ。そうなれば、一反歩について一万四千円しか収入がないという状態なわけです。こういう価格政策というものが全然なおざりになっておって、そうして日本農業の近代化をはかるために、他産業と均衡をとらせるために規模を拡大しなければならない、そのためには農地法改正して、下限の引き上げ、上限の撤廃、小作料の青天井という方向に持っていかなければならないのだ、さらには農地保有合理化法人というものをつくって、そうして農地流動化というものをさらに促進させていかなければならないということは、あなたは強制的にやらないということを言っておっても、そういう政策的な面において締めつけを受ける農民ができてくるわけなんです。そういう中で首をちょん切られるという結果になってしまうのではないか。言ってみますならば、農村から大部分の農民を追い出すところのそういう意図がこの法律改正案の中にあるのじゃないか。そういう点は一体どうお考えになっておるか、お伺いしたいわけなんであります。
  89. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 農村から人を追い出す政策だというお話なんですが、私どもは決してそういうように考えていないわけであります。われわれは今回も総合農政というようなことを打ち出して、その中には、適正規模以下の農家の離農、これはまあ進めるけれども、離村はさせないというようなことで、やはり過密過疎にならないような方法というものも一緒に考えていこうというような政策をやっておるわけであります。  自作農維持資金の話が、これは何回もいままで出ておるわけでありますが、もともと病気、災害その他によって貸し付ける資金でありますから、零細な農家であっても、その方に全然貸さないというようなことはございません。詳しいことは農地局長からさらに説明させたいと思います。  兼業農家をどんどん転落させるんだというお話もございましたが、これも農村から人を追い出すんだというような議論と同じようなもの考え方ではないかと私は思います。兼業農家の方が必ずしも転落をしておるというふうには私は思っていないのであります。大体一町五反から二町くらいの人はなかなかつらい。五反歩くらいで、ともかく二種兼業くらいやっている人のほうが早くにカラーテレビが入ったというようなことがよくいわれるのであります。現金収入があるし、食うには困らない、こういうふうな方のほうがむしろ生計は楽だというようなことがいわれておるのであって、生計が苦しいならば——それは農業だけで、零細な規模で甘んじている人がいるでしょうけれども、やはり他に人数が余っておれば、その方が兼業をして家計の所得がふえていくということのほうが生計が楽になっておるのでありますから、ただ単に農業だけで生活を楽にするのか、土地条件がそれに伴なわなければ、農業をもっと省力化し機械化することによって手数を省いて、余った労働力で別な現金収入の道をはかるほうがいいのかということになりますと、やはりその規模の小さな場合においては、なお一そう労力を省いて、そして余った労働力で別の現金を得るということのほうが一家が楽になることでありますから、私は転落などということでは絶対にないのではないか。むしろ私は、そういうようなことはけっこうなことではないのかとさえ思っているわけであります。
  90. 中野和仁

    ○中野政府委員 自作農維持資金についてちょっと御説明申し上げたいと思いますが、今度農地法改正をいたしまして、下限面積を五反に引き上げました結果、五反以下の農家には自作農維持資金は貸さないということはいたさないつもりでございます。これは前回に申し上げたとおりでございます。ただ、第二種兼業農家ということになりますと、従来から自作農維持資金の運用といたしまして、農業外の主たる収入がある農家には貸しておりません。その点は今後も同じように扱いたいと考えております。
  91. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私が言いたいのは、そういう価格政策だから、そういうものからして転落をする。転落をするのはけっこうなことだというお話なんでありますが、けっこうなことではないのであって、第二種兼業農家になれば、それば自創資金の貸し付け対象にならぬわけです。いま言われたとおりでしょう。いまでもならない。いまでもならないのであるから、ならぬところの農家を要するにどんどんつくっていけば、だんだんと選別融資が強化されて、ますます農家は窮乏化せざるを得ないところの状態に入っていくじゃないか。それは農民を守るという状態にはならぬのじゃないかということなんです。いままでの自創資金というのは第二種兼業農家に貸さないのです。貸さない農家をますますふやしていくということになれば、ますます借りられないところの農家がふえていくではないか、そういうことでは多くの農民が離村せざるを得ないんじゃないか、追い出すんじゃないか、農村から追っぱらうのじゃないか、こういうことを私は言っておるわけなんであって、そのことが非常にけっこうなことであるなんという御答弁は全くナンセンスだと思うのです。
  92. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 それは、かりに三反歩とか二反歩とかいう人が、いままで農業をやっていて第一種兼業農家だったけれども、今度は第二種兼業になったというような場合、兼業の内容にももちろんよりますけれども、他におつとめに出るということになれば、自作農資金で病気や何かの場合にお金を貸したものを、今度は別な金で、いろいろ労働関係の制度資金があると思うのです。そういうようなところでお金を貸して、肩がわりになるわけでありますから、私は特別に困った状態になるというようには感じていないわけであります。ことに三反歩とか五反歩とかいうようなところで、とにかく兼業をしないで農業だけでやれ、こういっても、お米がいままでは反当十俵しかとれなかったのに、それは改良によって十一俵や十一俵半をとることばできるでしょうけれども、国民所得が倍になった、三倍になったからといって、お米が十俵しかとれないところが二十俵とれるようになった、三十俵とれるようになったというようなことはあり得ないことなんですから、やはり土地条件というような問題を考えますと、専業農家としてそういう方がお残りになるのはけっこうでございます。けっこうでございますけれども、ただ、いままでと同じような方法で大幅に所得を伸ばすことは事実問題としてできないのではないか。だからといって農産物の値段を二倍、三倍に、国民所得が上がっただけ農産物の価格も上げていくのだということになれば、これはやはり物価対策上、一般の勤労者からえらいおしかりを受けることになるわけでございますから、私はそういう政策はとるわけにはまいらない。したがって、兼業農家が発生をいたしましても、必ずしもそれは転落だとばかり言うことはできない。やはり現在の営農だけでやるよりも、兼業農家になったほうがよけい収入が上がるということになれば、そのことはけっこうなことではないでしょうか、こう申し上げたわけであります。
  93. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私はやはり農林省としては、農業の振興というものを常に中心にしてものを考えていただきたいと思うのです。そういう点からいたしまして、他産業に——いま価格の問題あるいは資金の問題で、やはりだんだん専業が兼業の方向に向いていることは統計によって明らかであるわけです。これを一種兼業を専業化をさせる、あるいはまた二種兼業を一種兼業のところへ引き上げさせる、これがやはり農業政策でなければならないと思うのです。  そこで、私は米の問題ばかり言っているわけではないのです。米が非常に豊作であり余るという、そのことは非常にけっこうなのでありますが、しかし自給自足というところの面からすると、若干余るというところの問題が起きているとするならば、それはそれなりに別な面の農産物の生産高を高めるという政策をとっていかなければならぬじゃないか。そこで、いままでずっといわれておりますところの複合経営という問題があるわけです。そういう複合経営に力を注ぎながら、そして、自立経営農家ということばが適切であるとするならば、そういう方向に一種も二種も持っていって、そうして全体的には日本の食糧自給体制というもの確立していかなければならぬじゃないか。去年の白書からいたしますならば、これは八二、三%程度しか自給率がないということをいっているわけなんでありまして、これをもっと引き上げるという努力をするとするならば、もっと別な政策が出てしかるべきなんじゃないか。それを単にこういうようにして農地法改正をやって農地流動化をはかる、あるいはまた農地流動化の先に立ちまして水田の転用の基準の緩和をやる、あるいはまた新都市計画法によって非常にたくさんの農地というものが市街地として取り上げられていく、そういうような形で農地というものはだんだん縮小の方向に行っているわけなんです。これを要するに、政府拡大方向には持っていっていないじゃないか。たとえば開田の規制なんというようなことで、むしろ土地改良の土地拡大するところの面を——干拓の問題等にいたしましてもそのとおりでしょう。私、新潟でありまするが、福島潟の干拓なんというものは、自由民主党の代議士の皆さんが声を大にして叫んでおったのでありまするが、それはもはや計画からはずれている、こういう問題があるわけであります。あるいはまた八郎潟の干拓の問題にいたしましても同じことがいえるじゃないか。片一方では水田の転用許可の緩和をやって、片一方においてはそういう都市計画法を適用させ、農地をどんどん狭めていっている。広めるところの政策というのは全然出てきていないわけなんであります。そうして面積が狭まったところに、この中に残っている人たちに対してあまねく、価格政策も金融政策も、恩典を与えるところの政策をとらないで、ごく少数の農家にだけその恩典を与えてやるというようなことを強制している。あなたは農村から農民を追っ払うなんということはしないのだと言っても、そういう状態の中に置かれるなら、当然逃げ出す以外にないという結果になるのじゃないか。それは、日本農業の振興発展という立場からするならばあべこべの政策なんじゃないか、こういうことを私は主張しているわけなんです。そういう点ではあなたとだいぶ大きな食い違いが起きているのじゃないか、こういうぐあいに思うのですが、いかがですか。
  94. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 開田は抑制をしておる、それはそのとおりであります。こういうような過剰の状態でありますから、さらにここに累積をさせるということは当面適当ではありません。したがって開田は、政府の助成や何かでやっている問題は抑制をしておることは間違いありません。しかしながら、農用地は全然つくらないのだということではございませんで、たとえば草地造成等についても、今回は七十七億円の予算を計上して畜産の基盤を拡充しようというような措置もとり、相当多くの草地造成というものも今後どんどんやっていこうという姿勢を政府はとっておるわけであります。しかし、いままで水田をやるつもりで工事が始まったんだけれども、それについて米過剰ということだからこれは取りやめる、取りやめるけれども原野のままでいいかというと、そうではなくて、それは畑に転換をさせよう、こういうようなことで、やはり途中で工事を捨てるというようなことなくして、畑に転換できるような地域はどんどんそれを開畑をしておるというのも事実であります。あるいは果樹等の樹園の造成ということも予算措置を講じてやっておるわけでありまして、あなたのおっしゃるように、土地をどんどん狭めて、狭めっぱなしにしていいのだということではございません。やはり必要な成長作物の用地というものはさらに広げるべく、ただいまの例のとおり実はやっておるわけであります。したがいまして、ただいま御発言になりましたようなことはございません。
  95. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 じゃ、具体的にあれしますけれども、たとえば水田の転用基準緩和の通達というのが出ておるわけなんでありますが、それによりますと、いままでの二種は今度はつぶしても差しつかえないという内容になっておると思うのです。それから一種地も優良農地というもの確保していくのだ、こういうことを実はいっておられるわけなんでありますが、その優良農地というのは、たとえば県道だとか国道だとか、そういう沿線の両側百メートルなんというところはもう何につぶしても差しつかえないという通達が出ておるじゃないですか。この通達は優良農地をそのまま確保していくというあなた方の答弁とはだいぶ食い違っておると思うのですよ。そういう点はどうお考えになりますか。
  96. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 これは少しも食い違っておると思いません。御承知のとおりわれわれといたしましては、今回の米過剰に対する対策としてはやはり転換をしていただくというのが基本姿勢であります。しかし現実の問題としてなかなか急激な転換ができないというので、臨時的に休耕というものもあわせて認めようというのが政府の態度でありますから、やはり他の成長作目への転換をはかっていくのだということは事実であります。しかしながら、時間的にその転換だけではなかなか米過剰は防げないというような非常な緊急事態になっておるものですから、市街地の近郊とかいま言ったようなところであっても、道路ふち等百メートル以内でそういう施設が非常に必要である、いまでは買いかえを認めないというようなところも、水田に限っては当分の間これを認めるということで、水田についてあくまでも転換をさせたいのだけれども、転換ではこの米過剰が防げないという緊急事態のために緊急措置をとっておる。しかし開畑等はやはり先ほど言ったように進めておるわけでありますから、日本の必要な作物をつくるための努力というものは並行してやっておるのであって、私は少しも食い違っておるとは思いません。
  97. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 これは私が建設省で調べたのですけれども、国道の延長は二万七千百四十四キロなんですよ。それから都道府県道の延長というのが十二万二千五百九十一キロです。この両側百メートルずつ、これを転用しても差しつかえないという基準が、昭和四十五年の二月十九日に出されたところの事務次官通達であるわけなんです。そうなりますと、国道沿線では五万四千八百四十一ヘクタールという面積になるわけであります。それから地方の都道府県道の沿線は二十四万七千六百五十八・五ヘクタールという面積になるわけです。合わせるとこれで約三十万ヘクタール余りの面積に該当してくるわけなんであります。それから今度、都市計画の面積を見ますると、市街化区域に直接入るところの農地が——ことしの新しい、いわゆる百万都市以上の場合でありますが、これはやがては全国に波及するところの法律であるわけなんです。当面はこれはそういう要するに限られたところの市町村、こういうふうになっているわけなんでありますが、これで十九万ヘクタールということになるわけです。合わせますと、これで約五十万ヘクタールということになるわけです。そうするとこれはいま当面の問題であるわけなんです。これからこれへと類は類を呼んで広がっていくわけですよ。たとえば三種地というのは一体どういうところなんだというと、農業というのがなかなかやりにくいというところが三種地になっているはずですね。二種地というのは、農業をやっていけるんだ、しかし三種地のつぶれるところがない、やむを得ないという場合には許可しても差しつかえないということなんです。一種地というのは全然つぶしてはならない、こういうことにいままでなっておったわけなんです。ところがそれが今度こういうふうにして新しい都市計画法制定や、この水田の基準の緩和というものをお認めになると、一種地であったはずなのに、それができることによって二種地に転落するという問題が起きてくるじゃないか、二種地であっても三種地に転落するという問題が起きてくるじゃないか。そうなれば、あなたは、いや果樹園の造成をやるとか、いろいろなことを言っておられますけれども、その面積は一体幾らなんだ、その面積とこの面積を比較した場合、一体どっちがよけいなんだということなんです。問題なく私がいま言ったところの数字のほうがはるかに私はよけいだと思うのです。そういう場合において、農地は守っていくんだというところの何の保証もないじゃないか、この点は一体どうお考えになるかということなんです。
  98. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 ただいま松沢さんからお話しになりました国道、県道沿いに百メートルずつ全部つぶしたらばというようなことは、おそらく水田だけがどの程度国道沿いにあって、山がどれだけあって、市街地がどれだけあってというような計算はできてないのではなかろうか、水田だけの、何方キロのうち水田に隣接したものが幾ら幾らという計算は、私は建設省でもできてないんじゃないかと思います。したがって、その二万何千キロという国道の両端を全部つぶしたならばと申し上げても、それには市街地もあるでしょうし、山もあるでしょうし、畑もあるでしょうし、たんぼもありましょう。したがって、はたしてそれだけの数字が出るかどうか、私は疑問に実は思うのであります。県道についても同様だと思います。またわれわれが国道、県道沿い百メートルについて水田の場合は一種農地であっても、いままでも全然認めないわけではありませんが、原則として壊廃を認めなかったところを、今度は壊廃を認めるようにしたということは、一つには確かに米抑制というような考え方もございます。しかし他面からは、やはり自動車がこれだけ多くなればガソリンスタンドもともかくそういうふうな農村地帯で要らないということもないのでありますし、ドライブインが要らないということでもございませんし、また米の集積や何かする倉庫が要らないというわけでもありません。したがって、そういうような道路沿いにそういう必要なものをつくりたいという申請があったときにはそれを認めますというのであって、国道沿い、県道沿いが全部これが一ぺんにつぶされるんだというようには私どもは実は思っておらないわけであります。
  99. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私も一ぺんにつぶれるというふうには考えておりません。しかしながら、あなたがいわゆる果樹園だとか、そういうものをつくって拡大しているんだというお話をやられるから、拡大しているということなら、縮小するところのものと比較してどうであるか、こういう質問をしているわけなんでありまして、たとえばそういう沿道筋におきましてドライブインだとかあるいはガソリンスタンド、自動車の修理工場、こういうようなものができ上がれば、そこから公害が生まれてくるわけなんであります。要するにこの公害対策というものもきちんとやはり出ていなければならぬにもかかわらず、そういう公害対策というのは、ただつぶすことは次官通達に出ておりますけれども、あがっておらぬわけです。あるいはまた重要産業の施設または倉庫、こういうことになっているわけですが、これはひとつ事務当局のほうに御質問したいと思いますけれども、この二月十九日付の次官通達の中で、重要産業というのはどういう産業をさして重要産業というのか、この点お伺いしたいと思うのです。  政務次官に対しましては、これはやはり公害対策というものはほとんど立っていないんだ。立っていないということになれば、それは山もあり、市街地もあるでしょうとあなた言われますけれども、水田もたいへんたくさんあるわけなんだ。水田だけでなしに、農地が私は大部分だと思うのです。市街地だとか山とかいうのを除いたら、その大半が私は農地だと思うのです。それから都市計画の十九万ヘクタールというのは明らかにこれは農地と、こうなるわけだ。そうなると、あなたが幾ら力説されましても、ことしの予算でこれだけ膨大な果樹園づくりなんということはできる道理はないわけなんですよ。そうなると、だんだんと農地というものは縮小されてくるということが言えるじゃないか、こう私は言うわけなんでありまして、そういう縮小されてくるもの農林省のほうで黙って見て、むしろあべこべにその推進の役割りを果たしていくというのは日本農業を守るところの農林省の立場としてはいささかおかしいじゃないか、こういうぐあいに私は言っているわけだ。
  100. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 われわれは、公害問題その他そういうふうな問題が起きそうなものが建てられるということがわかっておってそれらの許可はいたしません。これはやはり許可制でありますから、どういうものをつくるのか、それによって公害が起きるのか起きないのかということは農業委員会等でも当然これは検討をして許可をするとかしないとかいう問題で、無条件にどんなものでも百メートル以内は許可する、こういう筋合いのものではございません。  なお、草地造成等について参考までに申し上げますと、四十五年度に草地造成を考えているのは三万一千ヘクタールであります。なお、今後の長期見通しの土地造成、こういうものは、水田は入れませんけれども、いま私が言ったような点等については農地局長から詳しく数字的にお答えをさせたいと思います。
  101. 中野和仁

    ○中野政府委員 第一種農地で今度国道、県道沿いにつきまして、重要産業については許可する場合があるということにしたわけでございますが、その重要産業範囲につきましては、企業合理化促進法というのがございまして、それの施行令の第五条で「重要産業に属する事業」というので規定がございます。たとえて申し上げますと紡績業なりあるいは化学肥料製造業、石油化学工業とか、その他三十七ばかりあがっております。それともう一つは、国有財産特別措置法施行令第十四条に規定がございます。その中で製糸業それからパルプ製造業、そういう業種が五つと、いま申し上げた企業合理化促進法施行令の事業ということに大体なっております。  それから、いま政務次官がお答えになりましたのに補足して申し上げますと、田畑は、これはたしか私この前の委員会でも申し上げたと思いますが、われわれのほうのおととしつくりました長期需給見通しによりますと、田畑合計いたしまして四十一年六百万ヘクタールに対しまして五十二年は五百七十五万ヘクタールということで、若干減少を見込んでおりますが、それにかわりまして、草地面積につきましては四十一年十六万ヘクタールが五十二年には六十一万ヘクタールになる、その結果、農用地面積全体といたしましては六百十六万ヘクタールが六百三十六万ヘクタールになるというふうにわれわれ将来の見通しを持っておるわけでございます。
  102. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私はこの前にも質問しましたのですけれども、この農地法というもの農地を守るというのがおもなるところの目的であったわけなんであります。その農地法関連いたしまして、「水田転用についての農地転用許可に関する暫定基準の制定」というこの通達というものは、どう考えてみましても優良農地にだんだんスプロール現象を起こさせるような結果になるところの通達だと思うのです。たとえばいま言われましたところの重要産業というのは、いわゆる二十何種目かに分かれているということを言っておられるわけなんでありまするが、石油なんてものはその排液を一体どうするかというところの問題が起きてくるわけなんです。だからそういうものが順々にでき上がってくるということになると、優良農地がみんな不良農地になってしまうじゃないか、こういう危険性というものがあるわけなんです。そうすると、農地転用の暫定基準の制定というところの通達は農地法の精神に反するところの通達だ。いわゆる農地法違反の通達を農林省が出しているんじゃないか。こういう通達を出すということであるなら、法の改正が行なわれた後において出さなければならぬと思う。国会においてきまったところの法律を、農林省という行政府がそれを空洞化するということは、私は許されないと思う。どう考えてみましても、これがそのまま行なわれるということになりまするならば、たとえばわれわれ公害があるということについてはいろいろの条件をつけるんだ、こう政務次官は言っておるんだけれども、この基準の中では条件どころの話か、ちゃんとはみ出るわけなんです。ガソリンスタンドだとかドライブインだとか自動車修理工場とかはいい、こういうふうになっている。いいという基準で通達を出しておきながら、これは悪いんだというところの条件がつけられるという道理はないじゃないか。そうなれば、この通達というものは明らかに法の精神からはずれた、法を空洞化するところの、立法府を無視したところの通達ということになるんじゃないか。その点は一体どう考えているんだか、明らかにしてもらいたいと思う。
  103. 中野和仁

    ○中野政府委員 現在の農地法におきましても、農地法の目的は、先生先ほどから御指摘のようなことでございますけれども、あわせて他の産業との調整もやらなければなりません。そのために農地法の四条、五条というのがございまして、それの運用は行政府にまかされておりますけれども関係各省と相談をしまして、農地転用許可基準というのをつくって農業との調整農業と他産業との調整、その間にあって優良農地確保するということで進めてきておるわけでございます。今回御承知のように転用基準緩和いたしましたのは、先ほど政務次官がその必要性をるる御説明申し上げたとおりでございまして、基本的に優良農地もどこもむちゃくちゃにつぶすというような転用基準緩和でありますならば、まさに御指摘のとおりだと思いますけれども先ほどから政務次官の御説明のように、優良農地は守りながら他産業との調整、しかも最近の土地造成に応ずるという基本も忘れてはおりませんので、われわれこれによりまして、今度の転用基準緩和農地法に違反しておるというふうには考えていないわけでございます。
  104. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 中野局長、あなた農村へ行ってやはりよく見られたほうがいいと思う。要するにそこに石油工場ができたり、そこにドライブインができると、優良農地はみんな荒らされちゃうんですよ。それが、全国に網が張られているところの道路網の両側の百メートルも優良農地が全部つぶされちゃうということになれば、そこから優良農地というものが全部不良農地に転化していくということだけははっきりしているわけなんです。転化していけば、そこは今度二種になり三種になるんですよ。そうすれば、それが一つの糸口になって、順々に優良農地というものはつぶれてしまうじゃないか、そういう結果になりますよ。そうなれば、農地法農地を守るというところの法の目的からはずれた結果になってしまうということになって、これは農地法違反の次官通達ということになるんじゃないか、こう思うわけなんです。これはあなたと私と議論をやっておってもあれだと思いますので、なお法制局の長官あたりに来てもらいまして、この問題は明らかにする以外にないと思うのです。  それからもう一つ、法律の問題なんであります。実は生産調整の問題でありまするけれども、これは強制はしないんだという一貫した宣伝ですか、それが行なわれているわけなんです。しかし末端町村に参りますと、これが強制されている。強制されているということになると、やはり職業選択の自由というものが憲法に保障されているわけだ。いまのような百五十万トンの減産をやらんければならぬから、おまえら米つくるなという、そういう強制的なものがあるとすれば、私はこの政策割り当てというものは憲法違反なんじゃないか、こういうぐあいに考えるわけなんでありまするが、この点はどうお考えになっているか、お伺いしたいと思うのです。
  105. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 簡単に答弁をいたしますが、これはどこまでも強制はいたしておりません。われわれはどこまでも食管制度を守るために、自主調整というような形で国が補助金を出してお願いをしておるような次第であります。
  106. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 ここに各市町村の各農家に出した生産調整に対しまするところの通知書というのがあるわけです。これは「米生産調整目標面積配分通知書」であります。「あなたの昭和四十五年産米に係る米生産調整目標面積を下記のとおり配分いたします」「四月三十日まで農家組合長に提出して下さい。」こういうことで生産調整目標面積何アール、こういうものが末端の町村流れているわけなんです。これは憲法の考え方からいって職業選択の自由ということを抑制することになるんじゃないですか。そうなれば憲法違反だということになるんじゃないですか、これはどうなんですか。
  107. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 これは自主調整ということでありますから、先ほど言ったように、どこまでも強制はしてないのであります。調整目標というものをやはり示さないと、幾ら調整をしていいかわからないから調整目標を示しておる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  108. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 調整目標といっても、権力を持っている者が、要するにこういう配分通知書というのを出せば強制になるんじゃないですか。もし強制にならないということであるとしても、これは刑法上からいくとやはり問題があると思うんですよ。刑法の二百三十四条に「威力ヲ用ヒ人ノ業務ヲ、妨害シタル者」これは処罰をするというふうにちゃんと出ているわけなんです。こういう通達を出すということになれば、要するに権力を持っている者が人の業務を妨害しているんですから、当然刑法に触れると思うんですよ。そういうことを政府が末端の市町村長に指導しているということは、これは間違いなんじゃないか、こう思いますが、その点はどうですか。
  109. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 私は刑法のことはよく存じませんが、物理的に何か業務の執行を妨害するというようなことではないかと思うのですけれども町村長の生産目標の調整ということは、先ほど言ったように目標を示すということであって、町村によっては希望をとっておるような町村もございます。法的に強制力があるものではございません。ただ、生産者団体としても政府としても、食管制度を守っていくためには、この上に過剰生産をどんどん積み重ねていくということは非常に困難な問題を生じるから、そういうことのないようにやっていこうということで、農業団体などとも話し合って、協力するというようなお約束も得てやっておる次第でございます。
  110. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いや、米が余っているのだからひとつなるべく調整しようという考え方考え方でいいのですけれども、しかし、目標額を示して、県段階あたりでは大体この程度の目標である、あるいはまた市町村段階ではこの程度の目標である、したがって協力してくださいというところの呼びかけをその町村の農家の皆さんにチラシか何かで出されるということであるならば、これは威力業務妨害の罪にはならないと私は思うのです。しかし、そうでなしに、ちゃんと個々の農家にまで市町村長が、おまえのところの面積はこれだけなんだというふうにしてやってくるということになれば、威力によって農家というところの業務を妨害するということになりますから、威力業務妨害の罪にひっかかると私は思うのですよ。そういう点で、ひとつ政府のほうで御答弁いただきたいことは、こういうような方法でやれというところの指示をやっておられるのかどうかということなんです。やっておられるということになれば、政府そのものがやはりその罪に問われることになると思うのですよ。それはどうですか。
  111. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 これはいろんな人から政府としても聞いておることであって、専門家の意見も聞いておりますが、決して威力妨害罪には該当いたしません。
  112. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 該当いたしませんと言われますけれども渡辺政務次官も法律家でもないと思いますので、これも次の委員会におきましてひとつ法制局の長官からでも、来てもらってなお見解を聞いてみたい、かように考えるわけなんであります。  いずれにいたしましても、私いろいろ質問をいたしましたけれども農地法というもの改正そのもの農地の縮小、そして他の資本が、条文を見ますると、入ってくる可能性というものが十分にあるところの条文改正になっておるわけなんでありまして、結局は農業を縮小するということが一つあります。もう一つは、農業の中におきましても、農地流動化を促進させて、そして零細な農民というもの農村から追い払うというところの一貫した考え方が貫かれているというふうに私は理解をしておるわけなんでありまするが、なおこの条文上のこまかな問題とかあるいはまた政府の所信というものにつきまして、いずれ大臣もお見えになると思いますので、大臣がおいでになったら、さらに質問をさせていただきたいと思います。  大体この程度で終わらせていただきたいと思います。
  113. 草野一郎平

    ○草野委員長 瀬野栄次郎君。
  114. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案及びこれに関連して、各関係当局に質問申し上げたいと思います。  まず最初に伺いたいのは、農政の一大転換期になっておりまして、現在の農協のあり方、農協の進路ということについてお伺いしたいと思うのであります。申すまでもなく農業協同組合法の第八条によれば、「組合は、その行う事業によつてその組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行つてはならない。」としてあるのでありますが、現下の農業の実情は、生産農民のためよりは経済上の利益を追求することに傾斜して、農協は農民不在のものとなっておる。今回の農協法の一部改正等によって、組合による農業の目的に供するための土地供給事業について農地売り渡しまたは貸し付け、交換の事業等を行なうことになりますが、この傾向がますます大きくなると思うのであります。そこで、昭和二十二年に農協法制定されて以来きょうまで二十余年の長い間、農業の発展に大きな役割りを果たしてきたことは言うまでもありませんが、現在では当初とかなり性格を異にしてきておると言えるのであります。すなわち、農協のマンモス化、複雑化、営利至上主義へと主体性のない姿に変わりつつありまして、農業者から遊離したそのビッグビジネスは内外の注目するところになっております。そこで今日多くの農協の事情は、信用事業や販売、購買などに片寄り、本来の目的であるところの農業生産農業経営の近代化に体当たりしていく姿とは言えない。すなわち、農協の繁栄の裏では、農業生産性と農業所得の著しい立ちおくれが目立っておるのが現状であります。農協の生きるべき道は、まず経常指導事業に積極的な姿勢をとり、経済的事業は営農指導と結びつくことによって初めて効果を発揮し、販売活動に力点を置いて農民のための農協としてその意識に徹するところに農協の発展があると思うのであります。このように、農協が掲げる互助の理念というものが大きく後退したといっても過言ではない。しかも、農協の健全な運営は将来のわが国農業者農村の振興発展等を決定する重要なポイントであるだけに、今日ほど農協の抜本的な体質改善が急がれているときはないと思うのです。  そこで、私も初めて国会に出てまいりましたが、この機会に、今回の農協法改正を前に、転換期に立つ農協の進路ともいうべき農協のあり方について、基本的な問題について、あえて見解をお伺いしてみたい、かように思うわけです。
  115. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 お答えをいたします。  農協が非常にマンモス化をし、複雑化をしてきておるということは、これは社会の進展とともに事実であると思います。こういうようなことから、合併農協が官僚化をしておるのではないかというようなことと、不親切になっておるのではないかというようなこともよく耳にすることでございます。政府といたしましては、やはりこの時代に即応するように農協が合併をする、大きくなる、大きな資本装備が持てるようになる、また多くの金が貸し付けられるようになるということは大切なことでございますから、そういうような点について指導をしてまいってきたのであります。ただいまおっしゃいますように、農協がもっと、生産面あるいは個々の農家の経営面、こういうようなものの指導をもっともっとやるべきでないか、それが本来の目的でないかということでございますが、私はごもっともな御意見であると思うのであります。しかしながら、農協といえども、やはり自分自身が赤字経営で倒産をするようなことであったのでは、これは経営指導や生産指導というものはなかなか行ない得ないのであります。経営指導、生産指導それ自体は直接農協の利益には結びつかない。そのためにまた、なおざりになりがちであるというような点も事実でございます。したがいまして、やはり購買事業とかあるいはそのほかの金融事業とか、こういうようなことを通しまして、そうして農協が最小限度の利益を得られ、その利益によって経営指導や生産指導をどんどん——赤字面の生産指導というものを償っていくということもまた大切な点でございます。それらは両方やはりバランスをとらなければならないのであって、片一方にだけ偏するということのないように今後とも推し進めてまいりたいと存じます。またいろいろ具体的な指導の要領等につきましては、農政局長から補足説明をさせたいと思います。
  116. 池田俊也

    池田政府委員 ただいま政務次官からお答えがあったとおりでございまして、特につけ加えることもございませんが、農協といたしましても、実はこれは産業組合以来の伝統があるわけでございますが、従来の事業のあり方というのがやや定型化しているといいますか、マンネリズムにおちいっているという点が確かに私ども見てもあるような気がいたします。その点は農協の中でもそういう御意見はかなりあるようでございまして、従来の経済事業におきましても、事業運営のあり方について必ずしも従来どおりではなくて、もう少し合理化をすべきではないかという方向が最近強く出てきております。それからまたその他の事業におきましても、最近特に農協が主張しておりますのは、たとえば営農団地の造成という事業がございますが、これは要するに生産から消費までを連ねまして、これを組織的な形に持っていく、その中で農協生産なりあるいは流通段階なりの役割りをになう、こういうようなことも逐次手をつけ出しておるわけでございます。そういうようなことで、特に生産面につきましてはなお十分でない点がございますので、いま申し上げましたような点を含めまして努力をする方向にあると思いますし、私どももそういう線で指導してまいりたいと思っております。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま農協のあり方、進路といったようなことについての基本的な見解を一応承ったわけでありますが、今後に残された数多くの問題があるわけでございますけれども農協の体制整備という点から、私は次に農協の合併問題についてお尋ねをしてみたいと思います。  午前中も参考人出席がありまして、私からも意見をお伺いしたわけでございますが、農林省の調査によると、総合農協が三十六年三月末一万二千五十組合あったものが四十四年三月で六千四百七十組合、専門農協が一万六千八百四十六組合あったものが四十四年の三月で一万一千九百三十一組合、合計一万八千四百一組合となっておりますが、農協の合併実績というものは、三十六年から四十三年の八年間に合併助成法が適用されて合併が行なわれたわけですけれども、千六百八十九件で参加組合数が七千二百十七組合、合併助成法以外の合併が二百九十七件で千二百一組合となっております。そこで未合併の組合は現在幾らあって、合併指導をしたが諸般の事情で合併ができなかった組合がどのぐらいあったか、そういったことについてどのように掌握しておられるか、その点をお伺いしたいのでございます。
  118. 池田俊也

    池田政府委員 ただいま合併につきまして数字のお話があったわけでございますが、私どもこの法律ができまして合併計画を進めます場合に、当初一つの予定みたいなものを立てたわけでございます。その立てました予定の数字と、それから八年間合併助成法を運用いたしました結果とを比べてみますと、大体当初の予定を達成したわけでございます。当初の計画に対しまして確か一〇三%であったかと思いますが、予定されております数は若干オーバーをいたしたのでございます。計画の数字を申し上げますと、当初の計画では参加組合の数が七千三十八組合の予定でございましたが、実績は七千二百十七、一〇三%でございます。そういう点から申し上げますと、大体当初の目的を達成したというふうに考えるわけでございますが、中にはいろいろな事情で、これは地域的ないろいろな事情があると思いますが、必ずしも予定どおりの合併ができなかったところもあるようでございますが、大部分は達成した、さように考えておるわけでございます。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま一〇三%の合併で当初の目的は達成した、こういう説明がございましたが、御承知のように系統農協は昭和三十六年から合併をいたしまして約八年間、現在もうすでに九年を経ておりますが、合併助成法の適用のもとに組織基本である農協の合併を行なってまいりました。機能の強化、経営基盤の整備を進めてきたのでありますけれども、当初合併した組合はもうすでに九年間という経過をしておるわけでございまして、現今の激しい変化する経済、農業情勢のもとでは、農協がみずからの体質を強め、活動を活発にし、本来の機能と役割りを果たす体制整備が重要であるにもかかわらず、現在なお多数の小規模農協が存在しておる現状であります。先ほども説明がありましたように、三百から五百の小さな組合が事実あるわけでございまして、こういった組合員数からする経済的基礎、職員数からするところの執行体制等、いずれも弱小であって、各種事業も専門的かつ総合して運営する経済体制を有していないので、農林省は現下の農政の姿から見まして、これら農協の再合併、すなわちすでに合併した組合を再合併並びに前回合併できなかった組合等の合併等についていかなる見解をお持ちになっておられるか、お伺いしたいのであります。
  120. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 国全体といたしますと、農協の合併の進捗度合いというものは、先ほど農政局長から御説明したとおりでございますが、確かに部分的には私も知っております。一つの村でまだ三つ農協があるというようなところが私のところにもあります。したがって、そういうようなところはできるだけ合併をしてもらいたい、こういうふうな指導はいたしております。しかしながら、合併助成法があってもいままで合併できなかったというような農協は、いろいろやはりむずかしい事情がございまして、なかなかこれは困難なわけであります。相当程度時間をかけなければならないのではないかと思っております。しかしながら、行政指導としてはやはり適正規模以下であるというようなところについては、合併の問題は、これは陰に陽にしてもらうように指導してまいりたいと思いますが、国全体から見れば大体合併が思わしい方向で決着いたしておりますから、国としては、新しく法律をつくってさらに再合併を促進をするというようなことは目下のところ考えてはおりません。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいまの説明で方針は一応わかりましたが、現在の農政のあり方というのを見ましたときに、当時から見まして、時代はひとつ大きな転換期になってまいっておるわけです。そこで、午前中も参考人の供述によって、宮脇参考人から、全国中央会等の考え等が明らかになりましたが、農協の合併について、全中でも四十四年十一月四日に総合審議会で決定し、さらに四十四年十一月二十五日には理事会でも決定の上、現在系統農協においては、自主合併を基本として、農協組織の強い連帯意識のもとに農協の合併を推進しておられます。これら系統農協組織、事業の整備を行なうべく推進するために農林省はいま合併の意思はない、こういうふうにおっしゃっておられますけれども、この全中等でお困りになっている問題は、こういうような自主合併をする際に、合併を円滑にならしめるために、合併に伴う法人税、登録免許税等の税務上の特例措置というものを強く要望しておられますが、こういった点についてはいかなるお考えでございますか、お伺いしたいのであります。
  122. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 先ほどもお答えをいたしましたように、国としては合併をさせる意思はないというのでなくして、零細な農協がまだ一部に残っておりますから、それらについては合併を進めるためにいろいろと指導、助言をしてまいりたい、こう思うのであります。しかしながら、法人税の免税問題その他の問題等は新しく法律をつくるか、税法の特例を開くかする以外にはないのであります。農林省としてはいまのところその少数の合併をしない農協というものが、いろいろないきさつがあっていままで手をかえ品をかえてやってきても合併ができなかったというような経過にかんがみまして、ここで新しい法律をつくってもはたしてそれが相当な効果をあげるかどうかというような点等にも疑問もございますし、先ほど言ったように国全体としても合併の目的は一応達しておるので、いまのところ新法律をこしらえてさらに合併を進めるとか、あるいはごく少数の農協のために新しい法律を別にこしらえるというようなことは考えていない。もっぱら行政指導と農協自体の自主合併を要請する、こういう考えで進むつもりであります。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それでは合併問題でもう一点この機会にお伺いをいたしておきます。  農協が現在だんだん大型化してまいりました。今回の農協法改正によって土地を扱うということになりますと、ますます窓口も人材も要る段階になってまいります。そういったことで、最近の動きとしまして、大型農協の全国連に対する直接加入という問題がいろいろ取りざたされておりますが、三段階から二段階という問題でございますが、これに対して農林省見解をお伺いしたいのであります。
  124. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 最近における農産物あるいは農業資材等の流通市場の変化、また農協合併の進展によるところの農協の大規模化、こういうことで大型農協がたくさんできたわけであります。それらのものが直接全国の連合会に加盟をしたいという要望が強く持ち出されているというのは、ただいま御指摘のとおりでございます。しかしながら、この問題は基本的には農協内部の組織あるいは事業運営のあり方という問題であろうと思うのであります。農林省といたしましては、農協内部の問題ではございますが、しかしながら、農協の中でもそういうふうな考えを受け入れようというような機運になっているものですから、それについては直接加盟が大型農協についてできるようにいろいろな援助をしてあげたい、協力をしてあげたい、かように思っております。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大体の方向は承知いたしました。  農協法改正に伴いまして、次に経営監査のことについてお伺いしたいと思います。  今回の改正でいよいよ農協土地を取り扱うということになってまいりますが、現在農協に対して年一回の経営監査というものが行なわれることになっておりますけれども、これまであまり行なわれていないという実情で、現有問題等がいろいろ発生しているわけでございますが、農協経営監査ということについて、監査状況の現況をお知らせいただきたいと思います。
  126. 池田俊也

    池田政府委員 農協に対しまする監査は農林省、それから県等と分かれているわけでございますが、お尋ねの点は単協が主だと思いますので、単協の数字を若干御説明申し上げたいと思います。  現在監査の対象になるような組合が七千弱ぐらいございますが、それに対しまして監査、検査をいたしました実績は、年次によりまして若干違いますが、たとえば四十三年の実績をとってみますと、約二千八百組合ぐらいを県におきまして検査をいたしているわけでございます。したがいまして、大体四〇%強ぐらい検査をいたしているわけでございます。  なお、そのほかに中央会が、これは検査というものではございませんが、指導を兼ねまして監査をいたしております。これはまた別にやっているわけでございます。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいまの報告で約四〇%の監査、もちろんこれは行政庁の監査と中央会の監査と二通りあるわけですが、農協で最近起きております事故等の件数といいますか、最近起きている事故の原因等についてどのくらいどのように掌握しておられるか、過去二、三カ年の監査にあがってきた事故等の概略についてお伺いしたいと思います。
  128. 池田俊也

    池田政府委員 農協におきますいろいろな事故、不正事件というようなもののお尋ねでございますが、これはかなり大きな数字が出ておりますので、私どももかねがねその絶滅にいろいろ努力をいたしているわけでございますが、四十三年におきます数字を申し上げますと、件数にいたしまして七十三件ほどございます。金額にいたしますと約十五億でございます。それから、前年の四十二年は、件数が百一件でございまして、金額が四十億でございます。四十一年は、七十四件で、これは大体四十三年と同じでございますが、金額は約十六億でございます。
  129. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま報告いただきましたが、おそらく、監査を四〇%した結果こういったことでございますが、全体監査をしたならばかなり大きなものが出てくるのではないか、こう思っております。  そこで、農協のこういった事故、不正問題等がかなり多くあがっておりますが、これは会計監査のずさん、場当たり融資等経営のずさんがあげられておるわけでございますけれども農林省はこういった原因について具体的にどのように掌握しておられるか、お伺いしたいのであります。  最近の一、二の事例を申し上げましても、先般東京都北多摩郡の農協で起きた事件などは、高い利子をえさに東京都内の預金者を農協にあっせんをし、預金証書紛失を口実に証書を再発行させて、これを担保に農協から四千五百万円をだましとったという詐欺事件であります。農家の大事な金を、農協側はこれまで約五十通の預金証書を再発行しておった。それでも気づかなかった。預金原簿も調べずに預金証書だけで貸し付けをいたしております。経営のルーズさというのが問題になっているわけです。しかもこのことは四十三年から起きている問題で、土地ブームに乗りまして預金高も急上昇し、十年前は数億円だったのが、現在では一農協で二十億円にも達しているといわれておりますし、組合長も、貸し出しの際預金原簿と照合すれば被害にあわずに済んだと、手落ちのほどを認めておる事例であります。  ちなみにもう一件申しますと、越谷市の農協では、預金と利子の合計四千四百二十余万円が、知らぬ間におろされて蒸発したという事件であります。この事件も、四十二年六月から起きた問題で、農協側は計画的な詐欺にかかったと言っておりますし、これも農協の管理のルーズさから起きた問題で、支所長は責任をとって辞表を出し、組合長は手落ちを認めているわけであります。  また県農林部等では、農協不正防止応急対策要綱というものをまとめて監査指導をした結果、県内百八十六農協のうち、帳簿のつけ落としや出金、納金伝票に責任者の印鑑のないもの、日付のないものもざらにあった。銀行と違って農協はベテランの職員が少ないだけに、たいへん心配であります。  このほか、四十四年にも、入間郡の名栗農協の問題などもありますし、私のほうの九州でも承知しておるわけですけれども、こういった事故が、農家の大事なお金を扱っているだけに、あとあとたいへんな問題になるわけでございまして、農業協同組合法第九十四条にも「業務又は会計の状況の検査」が規定してありますけれども、現在、報告のみにとらわれて、検査、監督ということに対し積極的でないように思われますが、こういった点について御見解を承りたいのであります。
  130. 池田俊也

    池田政府委員 いま御指摘の組合の事件は、私どももおおむね承知しているわけでございますが、いま御指摘のような組合を含めまして、いままで起こりましたいろいろな事故の原因を総括してみますと、私ども理解では、大別いたしまして二つほどあるのではないだろうかという気がいたします。二つと申しますのは、一つは、やはりこの組合の運営に当たっております役員なりあるいは職員の自覚がどうも十分でない。組合員の大事なお金を預かる、また相当多額な金の貸し出し等をしておるわけでございますから、その手続等については完全を期さなければならないわけでございます。どうもそれが必ずしもそうでなくて、昔ながらのやり方でやっておるというような点が非常に多いわけでございます。  それからもう一つは、これは私どもも検査等をいたしましていつもそういう感じを深くするわけでございますが、どうも内部の牽制組織といいますか、そういうものが必ずしも確立していない場合がかなりあるわけでございます。これは特に小規模の組合に多いわけでありますが、貯金の事務なりあるいは貸し付けの事務なり、単に一人でやるのではなしに、数人の人が互いに牽制し合うような組織をとっておらなければならないのに、それが必ずしもできていない。一人の人がすべてをまかなうというようなことがあるわけでございます。そういったようなことが大きな原因であるように思うわけでございまして、そういうようなことにつきまして、私どももかねがねいろいろ、特に信用事業を中心にいたしまして、整備強化運動というようなことを指導しておりまして、貸し付け金のいろいろなチェックでございますとか、内部牽制組織確立というような点につきまして、ここ数年いろいろやっておるわけでございまして、必ずしも、非常に成績が上がったということを申し上げられないのはまことに遺憾でございますが、若干、その効果はあがりつつあるというふうには理解しておるわけでございます。
  131. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま御報告いただきましたが、原因に二つあると申されまして、職員、役員等の自覚の欠除、もう一つは内部組織確立という問題を上げられて、一人の人がすべてをやっているというような問題があるということを言われましたが、全く小規模農協等では、そういったことが実際に行なわれております。そこで合併の問題等にもいろいろ関連してくるわけです。そこで私がお伺いいたしたいことは、このような事故があとを断たない、しかも最近は高速道路の土地補償の金とかあるいは飛行場用地、あるいはいろんな宅地造成等によるお金を農協に預金して、相当膨大な金が預金されておる農協があります。こういったものを見ますときに、ますます金額の扱いも多くなってまいりますので、こういった監査並びに検査体制というもの確立しなければならぬのではないかと思います。そこで、全組合の検査体制をつくるべきではないか、そうすることによって事故を防ぐこともできるのではないか、こういうように思っておるわけですけれども、こういった検査体制について当局の考えをお聞きしておきたいのであります。
  132. 池田俊也

    池田政府委員 先ほどの御質問でお答え申し上げましたように、現在の単協の検査は四割強というものを一年間にやっておる。農協法規定から申しますと、常例として一年一回やるというたてまえになっておりますので、そういう点からいうと、なお非常に不十分なわけでございます。その原因は、端的に申し上げますと、やはり検査に当たります人員が十分でないというようなことが基本的な原因でございますので、私どもといたしましては、やはりまず第一にそういう検査の体制を整備して、でき得る限り人員の増加をはかる、こういうのがまず第一であると考えておるわけでございます。実は明年度におきましても若干、農林省関係は増員を実はいたしておるわけでございまして、それでもなお十分ではないと思いますが、さらに今後私どもは増員に努力をしたい、こういう考えでございます。県におきましても、もちろん増員がなされることが一番望ましいわけでございまして、私ども機会あるごとにそういうお願いはいたしておりますが、何ぶんこれは県の財政の問題でございますので、一挙にこの問題を解決するというのは、現状においては非常にむずかしいと思うわけでございます。そこで私どもといたしましては、これを補うために、やはり農協の中央会が監査関係の人をかかえておりまして監査をやっておりますので、それを極力充実していただく、こういうようなこともお願いをしておるわけでございます。それと同時に、やはり検査をいたしまして、その結果わかるというのでは、これははなはだ手おくれでございますので、むしろそういうことが起こらないように事前に指導を徹底する、農協としてもそういう体制を整備していただくというのが基本でございますので、先ほど申し上げました農協の信用事業の整備の特別事業というようなものをきめまして、たとえば貸し付け金につきましては総点検をする。ルールに従って行なわれているかどうか総点検をする、あるいは内部牽制組織についても現状をよくチェックをいたしまして、不十分なところを補う、こういうようなことをあわせて指導をいたしておるわけでございます。
  133. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいまの説明でわかりますように、実際には人が足りない。また農協の中央会の職員を応援させているとか、近く総点検をするような話等もございましたが、私も長く県に籍を置いておりましたけれども、実際の問題として農政部の検査課等も仕事に忙殺されて手が回らずに、一年間にわずかな監査しかできない。しかも中央会の職員等の応援を得て、いわばなれ合い監査みたいになっておりまして、事故があとを断たないという現況でございます。そういうようなところをよく把握していただいて、強力にこの検査体制を整えて事故が起こらないように、今後ますま法改正によって農協の立場も重きをなす段階になすってまいりますので、私は、当局に指導、監督の切なることをお願いする次第でございます。  いま委員長から連絡がありまして、きょうは五時半でということでございますので、まだたくさんございますので明日引き続き質問をお願いすることにいたしまして、本日は、これで打ち切らせていただきます。
  134. 草野一郎平

    ○草野委員長 次回は明二十五日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十三分散会