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1970-03-18 第63回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月十八日(水曜日)    午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 草野一郎平君    理事 安倍晋太郎君 理事 小沢 辰男君    理事 仮谷 忠男君 理事 丹羽 兵助君   理事 三ツ林弥太郎君 理事 芳賀  貢君    理事 山田 太郎君 理事 小平  忠君       鹿野 彦吉君    亀岡 高夫君       熊谷 義雄君    小山 長規君       齋藤 邦吉君    澁谷 直藏君       瀬戸山三男君    高見 三郎君       中尾 栄一君    福永 一臣君       松野 幸泰君    森下 元晴君       渡辺  肇君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    千葉 七郎君       長谷部七郎君    松沢 俊昭君       瀬野栄次郎君    鶴岡  洋君       合沢  栄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林政務次官  渡辺美智雄君         農林大臣官房長 亀長 友義君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         食糧庁長官   森本  修君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長   松任谷健太郎君     ————————————— 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   合沢  栄君     春日 一幸君 同日  辞任         補欠選任   春日 一幸君     合沢  栄君 同月十八日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     田澤 吉郎君     ————————————— 三月十七日  中国産食肉輸入禁止解除に関する請願横路孝  弘君紹介)(第一二五八号)  同外一件(小林進紹介)(第一四六一号)  かんきつ農業の保護に関する請願山原健二郎  君紹介)(第一三〇三号)  同外四件(田中恒利紹介)(第一三三〇号)  同外五件(藤田高敏紹介)(第一三三一号)  愛媛県における米の作付制限反対等に関する請  願(田中恒利紹介)(第一三二九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第二  九号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第三〇号)      ————◇—————
  2. 草野一郎平

    草野委員長 これより会議を開きます。  農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  この際、両案の補足説明を聴取いたします。中野農地局長
  3. 中野和仁

    中野政府委員 農地法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容概略を御説明申し上げます。  まず第一に、農地法目的に関する第一条の改正について御説明申し上げます。  現行農地法は、農地改革の成果を維持し、いわゆる旧地主制に逆行することを防止するという使命をもって制定されたものでありますが、制定後今日までの十数年間にその使命を十分に果たしてきたものと評価されるのであります。しかしながら、最近における農業技術進歩社会経済事情変化等から見ますと、さらに新しい時代の農業要請にこたえ、農地がより生産性の高い経営によって効率的に利用されるようにすることが必要となっておりますので、農地法目的に「土地農業上の効率的な利用を図るためその利用関係を調整すること」を追加することといたしております。  第二に、農業生産法人要件緩和に関する第二条の改正について御説明申し上げます。  現行農業生産法人要件のうち、その法人構成員以外の者からの借入地面積がその経営面積の二分の一未満であること、その法人の常時従事者たる構成員議決権の過半数を保有していること、その法人必要労働力のうち雇用労働力割合一定率以下であること及び出資配当率一定割合をこえないことという要件を廃止いたしまして、これらの要件にかえて、その法人理事等業務執行に当たる者の過半がその法人への農地等提供者であり、かつ、その法人農業経営に必要な農作業に常時従事する構成員でなければならないことといたしております。この改正は、集団的生産組織の育成と土地効率的利用に資するためのものであります。  第三に、農地等権利移動制限に関する第三条の規定改正について御説明申し上げます。  その一は、農地等権利取得する場合の上限及び下限面積制限改正であります。これは、近年における農業技術進歩兼業化進行等情勢変化に対応して、農地がより生産性の高い経営によって利用されるよう配慮したものであります。  まず、現行法では農地等権利取得の結果農地についていえば、北海道では十二ヘクタール、都府県では平均三ヘクタールをこえることとなる場合には、権利取得者またはその世帯員が主として自家労働力により効率的に農業を行なうことができると認められるときでなければ許可できないこととしているのを改め、農地等取得しようとする者またはその世帯員がその取得後において農業の用に供すべき農地等のすべてについてみずから農業を行ない、かつ、その農業に必要な作業に常時従事すると認められる場合には、面積及び雇用労働力についての制限をせずに許可できることといたしております。  次に、いわゆる下限面積制限については、現行制度では農地等取得前における農地または採草放牧地面積のいずれかが三十アール以上なければならないことになっておりますのを、その取得後五十アール以上の規模になれば、取得前の面積いかんにかかわらず、農地等取得許可できることといたしております。なお、地域の実情に応じて、都道府県区域を分けてこの面積の特例を定めることができる旨の現行規定は、存続させることにしております。  その二は、国から売渡しを受けた農地等については、現行制度では永久に貸し付けることが禁止されておりますが、売り渡し相当の年数がたちますと事情も変わりますので、これを改め、売り渡し後十年を経たものについては、その効率的利用がはかられるよう貸し付けができることといたしております。  その三は、農地等取得者に対してその土地を効率的に利用すべき旨の要請を強めることとし、通作距離等から見て農地等取得後においてそれを効率的に利用して農業を行なうことができると認められない場合には、許可しないことといたしております。  その四は、農業協同組合法の一部改正法案において農業協同組合委託を受けて農業経営を行なうことができることとしていることに対応して、その場合に農業協同組合農地等権利取得をすることができることといたしたのであります。なお、農業経営委託に伴う農地等権利取得は、農業協同組合委託を受ける場合に限り認めることとし、それ以外の場合にはこれを認めない旨の規定を設けることといたしております。  その五は、農業経営規模拡大農地集団化等をはかるため農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人農地等権利取得する場合には許可できることといたすとともに、その法人農地保有合理化促進事業のために農地等を転貸する場合にも許可できることといたしております。  なお、以上のほか、農地等権利移動制限に関しましては、現行制度では小作地等はその土地小作農等以外の者に譲渡できないことになっているのを改め、小作農等の同意がある場合にはその土地農地等の買い受け資格を有する第三者に譲渡されることを認め、差し押えまたは仮差し押えを受けた自作地等については、その後それが貸し付けられて小作地等となっても強制執行等によりその小作農等以外の者へ所有権が移転されることを認めることといたしております。  また、農地等権利移動についての許可権限につきましては、実情に即して整理することとし、農地等権利取得しようとする個人がその住所のある市町村内の農地等について権利取得しようとする場合には農業委員会許可権者とし、その他の場合、すなわち他市町村内の農地等権利取得する場合とか、権利取得する者が法人である場合等においては、都道府県知事許可権者といたしております。  第四に、小作地等所有制限の例外を定めております第七条の規定改正について御説明申し上げます。  その一は、一定要件のもとに、住所のある市町村区域の外にある小作地所有を認めることといたしておることであります。すなわち、現行制度では住所のある市町村区域の外にある小作地につきましては、その所有を認めていないのでありますが、農地所有者及びその世帯員耕作事業に供すべき農地のすべてについて耕作事業をやめ、他の市町村住所を移した場合に、それらの者が農業をやめたときに住所を有していた市町村内にある小作地農業をやめる前それらの者等一定期間所有していた農地については、北海道では四ヘクタール、都府県では平均一ヘクタールまでは不在村者として小作地所有できることといたしております。また、その農業をやめたときのその小作地所有者からその小作地を承継した一般承継人についてもその小作地所有を認めることといたしております。これはいわゆる旧地主制の復活を意味するものではなく、他産業に従事しようとする農家が他市町村住所を移しやすくし、農地が効率的に利用されるよう配慮したものであります。  その二は、従来農業生産法人耕作の用に供している小作地につきましては、農業生産法人の常時従事者である構成員所有する農地であってその者の住所のある市町村内にあるものをその法人貸し付ける場合に限り小作地所有制限をしないこととしておりますのを、農業生産法人構成員であれば、その法人貸し付けている農地については、その所在地がその構成員住所のある市町村区域内にあるものであっても、またその区域外にあるものであっても、小作地所有制限をせずその所有を認めることとして、農地の効率的な利用に資することといたしております。  その三は、農業協同組合農業経営委託を受けて耕作事業に供している小作地及び農業協同組合共同利用施設の用に供している小作地については、それぞれその所有者に対し、その小作地所有制限をせずその所有を認めることといたしております。  その四は、農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人貸し付けられている小作地につきましては、その所有者に対し小作地所有制限をせずにその所有を認めることといたしまして、この法人農地を借りやすくし、農地保有合理化に資することといたしております。  その五は、都市計画法による市街化区域内の小作地につきましては、あらかじめ転用のため届け出をして取得したものを所有制限をしないこととなっておりますが、市街化区域性格にかんがみまして届け出の有無にかかわらず所有制限をしないことといたしております。  その六は、近年農業経営における採草放牧地のになう役割り変化してきたことにかんがみて、小作採草放牧地につきましては、その所有制限を廃止することといたしております。  第五に、農地等賃貸借解約等制限定めております第二十条の規定改正について御説明申し上げます。  現行制度では、農地等賃貸借解除解約または更新の拒絶をしようとするときは、民事調停法による農事調停によって合意解約が行なわれる場合及び信託事業にかかる信託財産につき解約申し入れ等が行なわれる場合のほかは、当事者都道府県知事許可を受けなければならないこととされておりますが、この規制を緩和いたしまして、農地等所有者農地等を貸しやすくするため、次の場合には許可を要しないことといたしております。  その一は、農地等賃貸借につきその農地等を引き渡すこととなる期限前六カ月以内に成立した合意で、その旨が書面において明らかであるものに基づいて賃貸借解約をしようとする場合であります。  その二は、十年以上の期間定めのある賃貸借につきその期間満了の一年前から六カ月前までの間にその更新をしない旨の通知をする場合であります。  その三は、水田裏作目的とする賃貸借につきその更新をしない旨の通知をする場合であります。  第六に、小作料規制定めております第二十一条から第二十四条までの規定改正について御説明申し上げます。  農業者経済的社会的地位が向上し、また雇用機会が増大した現在では、当事者の自由な契約にゆだねても戦前のような高額の小作料が発生する余地は一般的にはないものと判断されること、最近において農業生産農業経営が多様化してきたこと等の理由により、これらの規定改正して、従来のような画一的な農地一筆ごと小作料最高額統制制度を廃止することとし、これに関連して小作料規制に関する所要の規定を整備することといたしたのであります。  その一は、農業委員会農地一筆ごと小作料最高額定める旨を規定した第二十一条を廃止するとともに、この統制額に違反する契約についてはその統制額小作料の額と定めたものとみなすこととされている第二十二条を廃止し、これらの規定にかえて、小作料定額金納契約すべき旨及びこれに違反する定めはその効力を生じない旨の規定を設けることといたしております。  その二は、小作料増額または減額請求権規定を設けることとしたことであります。これは、小作料の額が農産物の価格生産費の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動により不相当となったとき、または近傍類似農地小作料の額に比較して不相当となったときは、当事者小作料の額の増減を請求することができることとし、増額について協議がととのわないときは、増額請求を受けた耕作者はみずから相当と認める額の小作料を支払うことをもって足りることとし、減額について協議がととのわないときは、減額請求を受けた土地所有者はみずから相当と認める額の小作料の支払いを請求することができることといたしております。そして、増額または減額を正当とする裁判が確定した場合には、すでに支払った小作料の額との過不足額に年一割の割合による利息を付して精算すればよいことといたしております。  その三は、農業委員会による小作料標準額設定及び小作料減額の勧告の制度を設けることとしたことであります。まず、農業委員会は、その区域内の農地につきたとえば田畑別、上中下別等必要な区分をいたしまして、その区分ごと農地につき経営規模経営能力等において通常の農業経営が行なわれたとした場合における生産量生産物価格生産費等を参酌し、耕作者経営の安定をはかることを旨として小作料標準額定めることができることといたしております。そして、その小作料標準額に比較して著しく高額であると認められる小作料定め契約があるときは、農業委員会当事者に対してその小作料減額を勧告することができることといたしております。  その四は、以上のような小作料規制についての改正を行なうにあたり、現存の小作地小作料につきましては、その小作農経営に急激な変化を与えることを避けるため、この法律の施行の日から十年をこえない範囲内において政令で定める日まではなお小作料最高額統制に関する制度を継続することとし、その最高額の基準については、農林大臣が毎年検討を加えて必要があるときはその変更を行なうここといたしまして、附則第八項及び第九項にこの旨の経過規定を設けることといたしております。  第七に、国からの農地または採草放牧地売り渡しについて定めております第三十六条の規定改正について御説明申し上げます。  これは、現行制度では市町村農業協同組合等団体に売り渡すことのできる土地共同利用することが適当な採草放牧地に限定されておりますのを改め、草地としての土地利用効率化が進んでまいっておりますことを考慮いたしまして、共同利用することが適当な農地についても団体に対し売り渡すことができることといたしております。  第八に、和解仲介制度について第二章に一節を設けることとしておりますので、この制度につき御説明申し上げます。  これは、農地等利用関係の紛争が民事調停または裁判によらなくても簡便に解決できるように、当事者の双方または一方から申し立てがあったときは、農業委員会和解仲介を行なうことといたしたものであります。この和解仲介は、農業委員会委員のうちから農業委員会の会長が事件ごとに指名する三人の仲介委員により行なうこととし、都道府県知事許可を要することとされる事項について和解仲介を行なう場合には、仲介委員都道府県小作主事意見を聞かなければならないものとしております。  なお、農業委員会和解仲介を行なうことが困難または不適当であると認めるときは、都道府県知事による和解仲介ができることといたしております。  第九に、開拓財産である道路水路等の譲与に関する第七十四条の二の規定について御説明申し上げます。  開拓財産である道路水路ため池等につきましては、現在有償で売り渡すこととなっておりますのを改めまして、これらの財産性格にかんがみ、その用途を廃止したときはこれを無償で国に返還することを条件として、市町村土地改良区等に無償で譲与することができることといたしております。  第十に、草地利用権設定制度について第三章に一節を設けることといたしておりますので、この制度の概要について御説明申し上げます。  これは、畜産物に対する需要の増加に対応して飼料の生産基盤拡大強化をはかるための制度であります。  まず、市町村または農業協同組合は、その住民または組合員共同利用に供するため、牧草の栽培またはこれに付随して家畜の放牧を行なうことを目的とする土地についての賃借権取得する必要があるときは、都道府県知事承認を受けて、その土地所有者等に対し、草地利用権設定に関する協議を求めることができることといたしております。この場合に都道府県知事承認できるのは、その土地が自作農の創設に供されるとするならば国による未墾地買収の対象となり得る土地である等、一定要件に適合するものである場合に限ることとしております。  次に、この承認を受けた市町村または農業協同組合は、土地所有者等草地利用権設定に関する協議をすることとなりますが、これがととのわない場合等には、都道府県知事裁定を申請することができることといたしております。この場合には、都道府県知事は、土地所有者等意見書提出する機会を与え、その土地利用の状況、利用計画等を考慮しても、なお草地利用権設定を望む市町村または農業協同組合共同利用に供することのほうが国土資源利用に関する総合的見地から必要かつ適当であると認めるときは、草地利用権設定すべき旨の裁定をするものといたしております。  なお、草地利用権設定の初めから通算して二十年をこえない範囲内で更新することができることといたしております。  また、草地利用権存続期間が三年以上にわたるときは、その土地所有者等は、都道府県知事に対し、草地利用権を有する者がその土地等を買い取るべき旨の裁定を申請することができることといたしており、草地利用権を有する者が正当な事由がなく引き続き二年以上草地利用権設定されている土地をその目的に供しなかった場合には、草地利用権解除することができることといたしているほか、草地利用権譲渡等禁止規定等を設けることといたしております。  最後に、第八十三条の二におきまして、農地等の無許可転用者または転用許可条件に違反している者等に対し、農林大臣または都道府県知事は工事の停止命令等違反を是正するための必要な措置をとるべきことを命ずることができることといたしております。  以上をもちまして、農地法の一部を改正する法律案についての補足説明を終わります。
  4. 草野一郎平

  5. 池田俊也

    池田政府委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容概略を御説明申し上げます。  第一に、農協による農業経営受託事業につきましては、この事業性格にかんがみ、事業主体出資制農業協同組合とするとともに、他の事業とあわせ行なわなければならないこととしております。なお、この事業実施につきましては、受託農地の集団的な利用や、高性能機械施設の使用などにより、効率的な経営が実現されるように指導してまいりたいと考えております。  第二に、農事組合法人制度につきましては、農業経営を行なう農事組合法人につき、最近における諸情勢変化に即応し、農民協同組織という基本的性格を保持しつつ、他の生産組合制度との均衡をも考慮して、組合員資格及び員外従事者に関する制限を緩和することとしております。すなわち、定款定めた場合には、加入の後に農民でなくなった者等については、その農事組合法人との関係においては組合員たる資格を有するものとし得ることとするとともに、これによって組合員たる資格を有するものとされる者の数は、定款変更等特別議決の場合の議決要件などを勘案して、総組合員の三分の一をこえてはならないこととしております。また、員外従事者の数につきまして、常時従事者の五分の一以内という現行制限を二分の一以内に緩和することとしております。  第三に、組合による土地取得等に関する規定につき、組合による農業目的に供するための土地供給事業につきましては、農地売り渡し貸し付けまたは交換の事業が行ない得るよう道を開くものであり、農業経営規模拡大農地集団化等に資しようとするものでありますが、これにつきましては農地法規制のもとに同法改正案により新たに道が開かれることとなっている農地保有合理化促進事業として実施することとしております。  次に、組合による転用相当農地等売り渡し及び区画形質変更事業につきましては、農業経営受託事業と同様に、事業主体出資制組合とするとともに他の事業とあわせ行なわなければならないこととしております。この事業は、組合員経営合理化等に伴い農地を処分するような場合にこれを計画的に行なわせるとともに組合員の生活の安定にも資することを趣旨とするものであり、本事業実施にあたっては組合性格にかんがみ、組合員からの受託によることを原則とするとともに、農地法による農地転用規制のもとに土地農業的利用にも十分配慮して行なわれるよう指導してまいりたいと考えております。  第四に、総代会につきましては、大規模農協管理運営円滑化に資するため、従来行なうことのできなかった役員の選挙または選任及び定款変更の決議をなし得ることとしております。また、解散及び合併につきましては、総代会において議決をし、さらにこれにつき組合員の直接投票において総組合員の半数以上が投票し、その投票数の三分の二以上の多数による賛成を得ることによっても、これを行ない得ることとしております。このような措置に伴い、組合員の意思を総代会に対しりよく反映させる必要があると考えられますので、総代の定数につき、現行の百人という最低限度を引き上げ、原則として総組合員の五分の一以上でなければならないこととしております。  第五に、農業協同組合連合会会員議決権及び選挙権につきましては、会員農業協同組合である場合にはその正組合員数会員連合会である場合にはその直接または間接の構成員たる農業協同組合の正組合員数等に基づき、定款定めるところにより付加して与え得ることとしております。なお、付加して与える議決権及び選挙権の数につきましては、一会員一票制の原則に対する例外である趣旨にかんがみ、政令で一定制限を課することを予定しております。また、中央会につきましても、都道府県中央会にあっては会員議決権及び選挙権の数、全国中央会にあっては代議員の選挙における会員選挙権の数等につき、同趣旨の措置を講ずることとしております。  以上のほか、信用事業につきまして、組合員世帯員、地方公共団体等の非営利法人または銀行その他の金融機関に対する資金の貸し付けに関する取り扱いを中小企業金融機関における取り扱いとの均衡を考慮して改正するとともに、制度金融の動向にかんがみ、その適正な取り扱いがはかられるように、信用事業を行なう農業協同組合連合会が間接構成員のために指定金融機関の業務代理をすることができるようにすることとしております。そのほか、組合経営の健全化に資するため、損益計算書を総会の議決事項として加えるなどの改正をすることとしております。  以上をもちまして、この法律案提案理由補足説明といたします。
  6. 草野一郎平

    草野委員長 以上で補足説明は終わりました。      ————◇—————
  7. 草野一郎平

    草野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野幸泰君。
  8. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 時間の関係上、単刀直入に要点だけ農協法に対しての質問を行ないます。  農協による農業経営受託について、今回の改正農業就業構造の変化農業の機械化を背景としてこれに農協が対応すべき措置とされているが、政府においてこれを積極的に推進する方針なのかどうか、特に農業基本法にいう自立経営農家の育成及び協業の助長等の構造政策の推進上、ここにいう農業受託経営がいかなる位置づけをされているか問題であると思うが、お尋ねいたします。
  9. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 農協農業経営受託を今後どういうふうに推し進めていくのか、こういうふうな御質問だと思いますが、まず現在、農協が公に経営受託をすることができない、だからその道を開くということが一つであります。やり方といたしましては、なるべくその構造改善につながるということが体質でございますから、集団的な生産組織というようなものができるような形で進めていきたい。そして規模拡大をはかっていく、こういうようなことができるようにしていきたい、こういうことであります。何と申しましても、規模拡大をするためには農地法等の関係もいろいろございますので、あわせてそれらの緩和措置等もとっていくわけであります。
  10. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 第二点として、農林省の方針によれば、市町村段階において農地保有合理化法人事業を認める地域は、農振法に基づく農業振興地域内とし、これら地域の市町村または農協からの自発的な申し出により、農地保有合理化法人として指定することを考えているようであるが、指定にあたり市町村農協が競合する場合はいかなる調整をされる方針ですか、お伺いをいたします。
  11. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 農地保有合理化法人は大体公的なものでありますから、県等が公社をこしらえる、あるいは市町村それ自体が特別会計等をこしらえてそれを進める、こういうふうなことが原則であります。しかしながら町村でやりにくいというようなところに対しましては、農協に対しても合理化事業許可指定というものを与えていくということで、一つの市町村で二つの合理化法人がつくられるというようなことはさせないつもりであります。今後そういうことはこまかく指導していくつもりでございます。
  12. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 次に、農協が本事業を行なうにあたっては、組合員からの委託を受けて行なう場合と、農協みずから行なう場合の二とおりが規定されているわけであるが、この二つの方法を規定した理由事業実施にあたっての指導方針について政府の考えをお伺いいたします。
  13. 池田俊也

    池田政府委員 今回、農協土地取得ができるという規定農協法の中に盛り込みたいと考えているわけでございますが、特にいま御質問の点は、転用目的農協農地取得いたしますような場合の御質問であると理解をしたわけでございますが、これにつきましては私どもはやはり原則的には委託によるのが最も事業の趣旨に合うのではなかろうか、組合員農業経営合理化というような観点で処分をするわけでございますので、組合員にその結果はそのまま還元するというのが、一番よろしかろうと思っているわけでございます。ただ事業実施の場合におきましては、一部農協が直接土地取得することもあり得ると思いますので、そういう規定は置いてございますが、原則はそのように考えている次第でございます。
  14. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 次に、農地法の一部を改正する法律案について二点お伺いをいたします。  農地法改正による農地流動化の効果について政府はどのような見通しを持っておられるか、お伺いいたします。
  15. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 もちろん、農地法改正だけで農地の流動化が完全に進む、こういうふうには思っておりません。農地法改正というものとあわせてさらに雇用機会をつくってやるとか、あるいは農村等に工場をこしらえるとか、さらに離農者に対する年金制度をこしらえるとか、そういうようなものももちろんあわせて行なうわけであります。しかしながら、何といたしましてもその根本になるものは農地の流動化を進めることであって、この流動化を進める目的は、言うまでもございませんけれども、農業を専業にやる農家に農地が集まりやすくするということが一つのねらいであります。  それと同時に、また大都市の周辺等において当然市街化されるということが近い将来においてほとんど明らかである。こういうようなところの壊廃というようなものがスムーズにいくように、今回の改正案というものはつくられておるわけであります。今回の改正案が通り、しかも先ほど申し上げたような幾つかの条件が整えば、一方においては専業農家に土地がたくさん集まってくる、そして規模拡大にそれが寄与することができる、あるいは協業が進められるということになりますし、他方においては工場敷地あるいは住宅敷地等が確保されやすくなる、こういうように考えております。
  16. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 次に、農地法の将来についてお伺いいたします。  農地法改正案は、自作農主義の根幹を維持し、それを補完する意味から借地を組み入れての農業経営規模拡大をはかろうとしているが、これは過渡的な措置であって、農地法の将来については廃止を含めて何らかの改編を考慮しておられるか、お伺いいたします。
  17. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 結論から申し上げますと、農地法を廃止するということは考えておりません。今回の農地法改正は、先ほど申し上げましたとおり、農地の流動化を促進をするというのが大きなねらいであります。かりに農地法を廃止するというようなことになってまいりますと、それは農地が投機の対象にされ、そのために地価の上昇というようなこともあり得るし、農地が資産保有の対象にされる。そういうふうなことで農家でない、農業を営まない者が農地を持つというようなことになって、これはきわめてまずいことであります。したがって今回の改正案というものにつきましても、どこまでもこれは原則的に農業をやる者が農地を持つのだという意味においては自作農主義というものが貫かれておる、そう言っても差しつかえないだろう、こう思います。
  18. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 次に、最近の農業をめぐる諸情勢は、変転著しいものがありまして、米の過剰問題、農産物の輸入自由化問題等をはじめとして、種々困難な問題をかかえ、まさに有史以来ともいうべき重要な事態に直面しております。このような情勢の中で、政府は総合農政の強力な展開を通じ、局面の打開をはかろうとしておられますので、その具体的内容を掘り下げて、お尋ねをいたします。  私はまずもって当面する緊急課題である米の過剰問題の解決に一応のめどをつけることが肝要で、その後でなければ、わが国農業の発展のための施策の展開は、むずかしいのではないかと確信いたしております。  このような考え方のもとに、この際は米の生産調整問題についてお尋ねをいたしたいと思います。もちろんこの問題につきましては、すでに予算委員会あるいは先般の当委員会における大臣の所信表明に対する各党委員の質疑等を通じ、その輪郭がかなり明確にされておりますが、何ぶんにもこの問題は、わが国農業が初めて経験する非常にむずかしい問題であり、末端農家の方々はもとより、実際に対策の指導推進の任にある都道府県市町村関係者、あるいは農協の方々等としても、なお多くの疑問や不安感を抱いている向きもあるようにうかがわれますので、私はこれらの方々の疑問なり不安を取り除くことによって、一そうの理解と協力を得られるようにするため、質問を行なうものであります。  なお、私の質問事項の中には、いままでの質疑と重複する点もあろうかと思われますが、その点は何ぶん御了承いただきたいと思います。  大臣は、予算委員会での質問に対して、百万トン減産分に対する奨励金は今年度限りで来年度以降は考えていない。今年の休耕、転作で協力が得られれば来年は減反の必要はないという考え方も明らかにされたと聞きますが、減反の中心が転作でなくてほとんどが休耕になることが予想されますが、これは来年度以降いつでも米作に戻れるという、米の過剰要因として残ることになりますが、政府は今年だけ休耕、転作させれば米の過剰を防げるというお見込みなのか、休耕手当が一年限りであれば、休耕手当をもらった土地も来年はまた米をつくってもよいのかどうか、まずこの点を明らかにしていただきたい。  次に、三月の二日の朝日新聞によりますと、福島県では、昨年の転換組が奨励金の格差に不満を持って、水田に逆戻りの動きがあり、こうした動きは福島県だけではなく、西日本の各地でも表面化していると報じていますが、これについて報告を聞いておられるかどうか。農民にしてみれば、奨励金が単年度では作付転換も一年限りだというのも無理はないと思われます。転作でさえもこうなのだから、ましてや休耕では、来年は必ず米をつくることになると予想されますが、総理も警告しておられますように、生産調整ができなければ食管制度の根幹があやうくなると思われます。政府は今年の結果を見てと言っておられますが、生産調整は今年だけの休耕、転作で解決のできる問題ではなく、いまこそ抜本的な減産対策を立てる必要があると思いますが、政府はこの点についてどのようなお考えをお持ちであるか、お尋ねいたします。
  19. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 生産調整についてのお尋ねでありますが、最終的には抜本的な減産対策というものを立てなければいけないんじゃないか、こういうふうなお話だと思いますが、まことにそのとおりであると思います。米の生産調整の補助金、それが一年限りなのか、来年もやるのかということにつきましては、予算委員会で大臣がしばしば申しておりますように、本年度の実施状況を見てということであります。これはやはりことばそのとおりに御解釈をいただきたい、こう思うわけであります。もちろん休耕が目的でなくて、できる限り転作をしていただきたい、こういうようなことで指導をしておるんでありますが、何せ速急にこの問題が持ち上がってまいったために、いろいろな都合等もこれあり、あるいは農業団体等の強い要求等もあって、休耕と転作には差をつけないというような方針がとられたわけであります。結果的には、確かに転作よりも休耕の希望が多いというのが事実であります。しかしながら、そうすればことしやめれば来年また全部米に戻ってくるんじゃないか、こういうふうな御意見が当然出てくるかと思うのであります。しかしながら、全部戻ってくるというようにはわれわれは考えていないのであって、その間において、先ほど言ったようにいろいろな農地法の基準緩和等によって大都市周辺やあるいは工場の適地というようなもので、それが優良農地で、集団的な農地を阻害しないという場合には、それらの壊廃というものをゆるやかにしていくという措置を続けてとっていくわけでありますから、そういう面での農地の壊廃というものがだんだんに蓄積され、ふえていくということは確実であります。それと同時に、やはり総合農政のもとで畜産をはじめその他の新しい事業に見合う農業への転換というものの助成策を並行して進めておりますから、これも徐々にそういうものに転換をされていくだろう、こう見ておるわけであります。したがいまして、これは明年度やるとか全然やらないとか、あるいはことしどういうふうにやるということを現在の段階でなかなか断言できないという状態であります。御了解をいただきたいと思います。
  20. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 次にさきの予算説明の中で、農業生産性向上、農業構造の改善等、農業の近代化をはかるための手段として通年施行を含む圃場整備を強力に推進すると言われましたが、その圃場整備と米の生産調整の関係についてお伺いしたいと思います。  農政局や県は、従来は夏季施行すると米がつくれなくなるので冬季に行なってきた圃場整備を、今年からは、こういう制度ができたから生産調整費をもらって夏季施行にし、一年間休耕してりっぱな水田をつくり直し、来年からはまた米をつくってよろしいという指導をしておられますが、これでは政府は農家に休耕手当を払い、その上米を増産するための補助金を出していることになりはしないか、また農民の中には休耕手当をもらっても、夏場は他の仕事が忙しいので、冬場にやりたいという地区があって、これを希望したところ、夏季施行が多くなると、予算が少ないから冬季のワクはなくなってしまうので、冬季施行のところは補助金の責任が持てないという指導をしておられるが、この辺の関係について政府の指導方針を承りたい。
  21. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 冬季の土地改良をやるところに補助金が回らずに夏季施行のところが優先的に採用されたじゃないかというふうなお話でございますが、これは御承知のとおり予算には限りがあります。どうせ同じ予算を使うならば、ことしは米の減産というようなことで生産の調整をやろうというときでありますから、なるべく夏季施行をやってくださるならばそれだけ減産になるので、そのほうを優先的にとっていこうというためであると思います。  その次の問題でございますが、そういうふうな夏季施行等をやれば米の増産対策になるのでないか、おかしいじゃないかということでありますけれども、御承知のとおり、日本では千二百五十万トン程度のお米はどうしても必要であって、それが千四百万トンもとれるから過剰という問題が起きるわけであります。したがいまして一方においては、それが需給の見合うような方法をとりますが、他方においては、米作の地帯というようなところまで全部転作をするというわけではございません。もちろん米作地帯は米作でいくわけでありますから、そこではしかしながら、今後こういうふうな過剰状態で刺激的な生産者米価というものは望めないということになると、一方において労働賃金が上がる、それに農村の所得が伴わないというような問題が起きるものでありますので、それは農林省としては困る。だからやはり生産者米価の引き上げということはできないけれども、その反面生産性の向上をはかるというような意味で基盤整備、機械化事業というようなものを推進をさしていくということでありますから、大きな観点から見た場合において、決して間違った政策であるとは思いません。私は正しい行き方である、こう思うのであります。こまかい点につきましては、農地局長からお答えをいたさせます。
  22. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 次に、私が生産調整のための農民の集まりに出席してたびたび耳にしますのは、休耕には奨励金がもらえるから率先して協力する。その上面積が狭くなれば十分手入れが行き届いて減反分だけほかの水田で増産して取り戻す自信があるということばであります。事実過去十年間に全国の水田は一万四千ヘクタール減っている。それなのに米の収穫量は逆に百五十万トンふえている。これを比率にすると、水田の減りぐあいは〇・四%減、収穫量はなんと一二%増となります。この数字を見れば、減反政策が実効のないことはこれだけでも一目りょう然であります。政府はよほどしっかりした指導をしなければ、休耕、転作に金は出したが減産にならなかったという事態が起こりかねないと思います。この点についてどうお考えか、どのように指導される方針かお答えいただきたいと思います。
  23. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 この生産調整の問題につきましては、生産農家の方が非常な不満を持ちながら、しかも強制的にそれをやらせるのだ、そういうふうなことになりますと、いま言ったような反発も中には起きようかと思いますけれども、しかしながら、政府としては、この生産調整というものは食管の根幹を堅持をして米作農家の生活の安定をはかっていくためにやむを得ず緊急措置としてやるのですということの趣旨をよくPRをいたしておりますから、それにのっとってやっていただけるものだろうと私は思うのであります。したがいまして、部落等においても必ずしも七%なら七%ずつどこまでも一律平均というのではなくして、中にはおれは二〇%休みたいというような人があれば、そういう人は優先的にひとつ休んでもらってけっこうでありますというような、なるべく集団的に休むたとえば夏季施行のようなものもいたしておりますので、私は、この点については、前回から見ると減反にはなったが増産になったというような結果にはならないだろう、かように見通しております。
  24. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 次にお尋ねしたいのは、米の生産奨励金に対する課税対策についてであります。米の生産調整はまさに非常緊急とも言うべき要請であります。そして農家、地方公共団体農業団体等は問題の本質をよく理解して政府の方針に協力しようとしているのであります。したがいまして、われわれといたしましては、農家の理解、協力に報いるとともに、有史以来とも言うべき難問題の解決が円満に行なわれますように、この際奨励金については所得税、地方税を通ずる課税減免措置という特例を講じてしかるべきものと考えておりますが、政府としては、この点についてどのようなお考えを持ち、どのような方針で対処しよとしておられるかお尋ねをいたします。
  25. 渡辺美智雄

    渡辺政府委員 休耕、転作と二つあるわけですが、転作の奨励金につきましては、これは大蔵省と話がつきまして、一時所得としてこれを取り扱うということになっておるわけであります。つまり一時所得ですから、三十万円の控除をして残ったものの二分の一課税ということになるので、実際問題としては転作をする人には所得税がかかるというケースはごくまれではなかろうか、かように考えます。
  26. 松野幸泰

    ○松野(幸)委員 時間が参りましたので、これで質問を終わりたいと思いますが、最後に、今回の生産調整措置は、米の需給が正常な状態に回復するための非常緊急の措置でございましょうが、今後の農政の方向としてはなるべくこのような事態の招来は避けるべきことは言をまたないところであります。そのためには農産物の需給について明確な見通しを立て、必要に応じ現在の長期見通しを改定し、これに即応した地域ごとの生産分担を早急に示すべきであろうと思われます。この点について、昨年農振法の成立に際し当委員会は附帯決議をもってその実現方を政府に要請してまいりましたが、この点について政府としてどのような方針で対処しておられるかお尋ねして、私の質問を終わります。
  27. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのお話全くごもっともでございまして、政府もその方針に沿うてやってまいるつもりでございます。
  28. 草野一郎平

  29. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私は、ただいま議題になっております農地法改正案を中心にいたしまして、農林大臣にお尋ねをいたしたい、かように存ずる次第であります。  まず、農地法改正をめぐる背景について若干お尋ねをいたしたい、かように存じます。  現行農地制度は、食管制度と並んで戦後における日本農業の発展をささえた二本の柱であるといわなければならないと思います。しかるに、食管制度は、昨年から御承知のように自主流通米制度が導入され、物価が上昇する中でひとり米価だけが据え置かれておる、また百五十万トンの減産のため休耕、転作、水田の買い上げなどによっていわゆる作付制限が行なわれておるわけであります。さらには大臣が、参議院の本会議におきまして、現行の食管法のもとでも買い上げ制限ができるという答弁がなされましたように、米の買い上げ制限すらもほのめかされるに至りましては、食管の根幹でありますところの全量買い上げ、二重価格制、国の直接管理がくずれまして、もはや食制管度は事実上骨抜きにされつつあると言ってもいいのではないか、こういうぐあいに思います。さらに、政府は毎々の国会で三たび審議未了になりました農地法改正案をそのまま今国会に提出をされたのであります。この農地法改正案につきましては、いままでわが党の先輩議員によりましてその問題点が明らかにされるに至っておりますが、私考えますに、きょうは一つ一つの条文には時間の関係上入れないと思いますけれども、一、二拾ってみましても、たとえば農業生産法人要件を緩和するという第二条を見ましても、この条件緩和が行なわれますると、法人が多数の人から土地を集め労働者を雇って、富農的な資本主義的経営の道を開くことができるようになると思うのであります。また、農業外の資本が擬装法人をつくって土地の集団化を行なう可能性も私は出てくるのではないか、こういうぐあいに思います。また農地等権利の移動の統制緩和の第三条を見ましても、所有制限条件がはずされる。しかも、雇用労力の制限も廃止をしろ、こういうぐあいになりましては、権利取得者が農作業に恒常的に従事する場合であれば、やはり富農的な農業経営が可能になってくる、こういう道を開く可能性が出てくると私は思います。また、下限面積を五十アールにしたわけでありますが、これはいわゆる五反以下の零細農民農業から追い出すという性格を露骨に示しておるものといわなければなりません。  このように、今日提出をされておりまする改正案を見ますると、一口に言ってこの法律が通ると、富農的な資本主義的権威ができるようになるということでございます。しかも、農業外の資本が直接農村に進出をする道を開く、こういうことになりまして、いわゆる農地法の精神である自作農主義から富農主義に転換をされることになるわけでございます。私は、この農地法改正は、農地耕作する者が所有するという原則をうたった農地改革の成果を否定するものではないか、こういうぐあいに考えるのでありますが、これに対する大臣の所見を承りたいと思うのであります。
  30. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いろいろお話がございましたが、私どもの考えと少し食い違っているところがあるんではないかと思うのであります。私どもはいまの農業、これの体質を改善強化して、他産業に比べてひけをとらない農業として育成していかなければならない、こういう考え方の基礎に立っておるわけであります。したがって、そういう意味で、たとえば農業としては、自分はこれでは成り立たないと思う方が——昔の状態であるならばこれはたいへんお困りの場合もあるでしょう。しかし、今日はみずからが他産業に転換することのほうが全体の農家の所得を増す上において利益だという考えに立たれれば、御自分の自由な意思でそういうことをやれるようにして、そして各個人の所得をふやしていくということが必要ではないかと思うのであります。しがたって、農業というものとそれから農村に住んでおる人々全体の私経済のことを考えてみましても、私どもはやはり今度私どもが考えて御提案申し上げておりますような方向で経営規模を広げて、農家の所得が他産業に比べてひけをとらないような所得水準の持たれるような農業に育成していくべきではないか、こういうことを考えているわけでありますから、零細な農業者を特に締め出してしまうとかそういうようなことを意識的に——法律の立案の過程においてもどこにも、そういう考えは持っておらないのでありますから、いま申しましたような規模農業を中核にして、日本の農業を維持してまいりたい、こういうのがねらいであります。
  31. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 大臣は農地の流動化を促進してそうして経営規模拡大をはかる、いわゆる大規模農家を育成するためにはどうしても今日の農地法改正が必要である、こういうことを強調されておるわけでありますが、しかし、今日農地の流動化を阻害しておる要因は、私は農地法だけではないということ、このことを特に申し上げておきたい。私が指摘したいことは、特に土地価格がべらぼうに高い、さらに取得の資金が今日の農家経済のもとではないということであります。さらに高い土地を買って農業をやってみても採算が合わない。こういうところにも大きな問題があると思うのであります。また何よりも大きな問題は、今日の農業者の経済が長い間の自民党政府の農政によって非常に行き詰まっておるということであります。特に昨年は物価上昇の中で生産者米価は据え置かれておる。さらに今日減反が行なわれておる。また無計画な外国食糧の輸入がどんどん行なわれまして、稲作をはじめ麦作、畜産、果樹、蔬菜といったいわゆる成長農産物と称するものが軒並み総なめになっておる。こういう角度からいたしまして、今日の農家の経済は大きく行き詰まっておる。しかも農村地帯は農業所得だけでは暮らせない。何とかして農外所得にたよらなければならない。しかし御承知のように、農村地帯では工場もなければまた公共事業等もないわけであります。したがって、勢い長期の季節的な出かせぎ労働という形で、農外収入を求めざるを得ないのが現状だろうと思うのであります。今日出かせぎ農民の数は百二十万ともいわれ百五十万ともいわれておる。年々増加する一方であります。しかし、この方々は一方に挙家離村を考えようとしないのであります。挙家離村は考えておらない。毎年出かせぎの繰り返しでございます。なぜ思い切った転職ができないか、私はここに問題があるのではないかと思うのであります。いま大臣が言われたように、今日の工業の発展に対応して農業にあっても能率の高い農業経営をつくり出して、農業でも他産業に劣らない生活を営める農民農業を日本の国土に繁栄させ、安い豊富な農産物を可能な限り供給して国内の各産業部門が均衡のとれた発展を期待するのは私も同感であります。しかしなぜこれができないか。そうして現実にすべての農民が兼業農になろうとしておる。農業者が思い切った転職ができないのは、いわゆる工業労働者として出てまいりましても、賃金がきわめて安い、身分が不安定である、社会保障が何一つない、住宅もない、老後の保障もないということでこういった不安定な中ではどうしても挙家離村ということを決意するには至らないのであります。したがって今日の農民が喜んで工業労働者として納得ずくで転職できるようにするためにはどうしなければならないかということは、この農地法改正以上に私は真剣に考えてもらわなければならない問題であろう、かように思うのであります。たとえて申し上げるならば、いまどこの中小企業へ参りましても、きわめて劣悪な労働条件であります。大企業へ行っても出かせぎ農民は臨時工でございます。しかも身分はいま言ったように不安定である。基本賃金は安く、それを埋め合わせるために長時間の残業をやってからだをすり減らしておるのが現状でございます。宿舎の設備も悪い。いわんや住宅、老後の保障、こういったものは何一つない。この問題を大臣は解決をしない限り、挙家離村というものは期待されない。したがって、農地の流動化も進まない、大規模経営も実現が不可能である、こういうぐあいに私は考えるのでありますが、この際大臣の所見を承っておきたい。
  32. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 総合農政の推進について私どもが申し上げていることと大体同じような方向を御指摘になったと思うのでありますが、私ども考えてみますのに、いまは農業の問題を考えたときに、農業が他産業に匹敵して劣らないようなりっぱな体質を備えた自立農業を育成いたしてまいりたい、これが一つ。しかしいまの日本の産業構造の中で見ますと、そう申しましてもやはりかなり長期間兼業農家というものが存在いたすわけであります。現在大体八〇%程度が兼業農家、そのうちのまた四分六くらいな割合で第二種兼業農家のほうが多いでありましょう。ところが私どもはまず農業の面から考えますときに、農業というものが他産業に比較して劣らない所得を得て、農業として立ち行くために、自立経営の農家を育成したい、こういうことの考え方のために農地法改正等を考えておるわけでありますが、いまお話のありましたように、兼業の中でも出かせぎの人もありますし、また近くの産業に働かれる人も出てくるでありましょう。そこで政府がいっておりますのは、この数多い部分を占める兼業者の労働力を、地方に産業を分散させることによって効率的に成果をあげることがより必要ではないかという考え方、こういう考え方は、わが国ばかりではございませんで、よその国でもそういうことを考えている国もございます。私どもはしたがって、どういうふうにいたしましてもいまのように世界第一位に成長していかねばならない経済機構の中で、新しい作業場、しかも公害を伴わないようなものはなるべく地方の労働力がある地域に分散していくほうが効率的ではないかという考え方を持っております。実はきのうあたりも、農林省も参加しておりますが、商工会議所であるとか、それから経団連同友会の代表者たちが集まりまして、彼らのことばでいえば農工一体の方向をとるために政府の施策にどのような協力をすべきであるかというふうな、これはこれからも継続してやることでありますが、そういうことのために、いま私どもは昭和四十五年度予算の中にもそういうことに必要な予算を農林省以外にも組んでおります。たとえば労働省では、ある地域、地方にどういう産業が向いておるか、たとえば長野県を例にとりますと、長野県は非常に空気の乾燥したところでありますので、スイスのように精密機械工業には一番適地だといわれておりますので、昔盛んでありました製糸工場のあとにはどんどん精密機械工業が進出して、また地元資本でも行なわれております。これが家庭の主婦などの手工業にも効果がありますので、かなり山の中にも入ってきておりますが、そういうようなことについて、産業を地方に分散する計画を産業界で持ってくれますならば、今度はその計画に基づいて、たとえば石炭労務者に対してやりましたように、一定の訓練期間は政府が補助をして、そして訓練手当を出して、やがてそこの地域に来るであろうところの産業に間に合うような職業訓練をしようといったような総合計画を立てて、地方に産業が分散してまいって、その地方にある労働力をそこに吸収するという計画がよいではないか、私どもはそういうことを考えておりますので、いま申しましたわが国の農村にある大部分の兼業農家の労働力は、なるべくそういう在村のままで活用できるようにしたいものだ、そのためには在宅して通勤ができるようにまず道路をよくしなければならない。今度は違う目的もありますけれども、大型農道などを建設いたしてまいりました。これからやるべきことは、それの枝葉になる農道であります。政府の予算をごらんくださればわかりますように、昭和四十五年度予算にも、そういう地方道、農道、農免道路等に対する予算はかなり計上いたしてあるわけでありまして、そのようにいたしまして、いまのような進展変化してまいります社会情勢に応じて、われわれが農業を取り上げ、また農村を取り上げて考えてみましたときに、いま申しましたような方向でひとつ労働力をできるだけ地元で吸収するようにして、そして全体としては農家の所得をふやしていくことがいいではないか、こういうことを考えているわけであります。
  33. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次に、私は農地転用問題について大臣に承りたい。  御承知のとおり、政府は百五十万トンの米の減産を実施するために、百万トン分については、お話のありましたように休耕、転作でいく、残りの五十万トンについては水田の転用をはかりまして買い上げる、こういう方針をとっておるようであります。しかも農地転用許可基準の緩和につきましては、農林省のほうでは暫定措置として二年間で、四十七年の三月一ぱい、ところが国会では大蔵大臣の、いや三年間に三十五万四千ヘクタールの水田を買い上げるのだ、こういった発言などもありまして、政府部内でも意見の不統一のようにわれわれは見受けておるわけであります。いずれにいたしましても、この農地転用許可基準の大幅な緩和は農地法のたてまえを大きくくずすものである、こういうぐあいにいわざるを得ないと思うのであります。確かに法のたてまえからいたしまして、転用許可基準の扱いについては、農林省としてこれはできる仕事の一つでありまするけれども、このような大幅な緩和はやはり農地法の精神に触れてくる、こういうぐあいに私は考えます。したがって、考え方によっては法の精神を無視する、あるいは議会を軽視した措置といわれてもいいじゃないか、こういうぐあいに私は思います。     〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕  しかもこのような大事な農用地の許可基準の緩和を一年や二年の米対策のためにやって、農地法の精神を踏みにじるということは、これは私は許されないことである、こういうぐあいに思います。  特に申し上げたいことは、この十一万八千町歩ないしは予想される三十五万四千ヘクタールの水田を転用するわけでありますが、こうなりますと、これは農家の経営規模拡大には回らないのであります。いわゆる農業以外の目的にこれが使われて、大規模農業の育成には何の役にも立たない、こういうことになろうと思うのであります。したがって、この農地転用によって暗躍するのは土地ブローカーだけではないか。こういうぐあいに私は考えます。これについてまず大臣の見解を承っておきたい、かように思うのであります。
  34. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもは、農地転用基準を今度緩和いたしましたけれども、これは農地法に少しも違反しておるものではないと思っております。また、転用基準の次官通達をごらんくだすったと思いますけれども、やはりあくまでも農業のために必要なる一種農地について十分にこれを確保することについては、少しもその方針は変わっておらないのであります。  そこで、今度の転用緩和ということは規模拡大に障害になるのではないかというお話でございますけれども、私どもはいま農転を緩和いたしまして、先ほどここで申し上げましたような、地方に産業を分散すること等によって、農地を必要とする地域、私どもが規模拡大してりっぱな農業として育成していこうとする土地には工場等は来ないわけでありますから、そういうことについては、もちろん私どもも農業の立場からしっかりした指導をやってまいるつもりでありますので、そういうことはないように、さらに私どもも、いまお話しのございましたことでもありますし、十分注意をいたして指導してまいるつもりであります。
  35. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いま大臣の答弁を聞いていますと、私の質問の趣意とは全く違った答弁をされておるのです。もう少し質問の趣旨をつかんでいただいて、意のあるところをお示し願いたい、こう思うのです。  私の申し上げていることは、農用地の転換基準の緩和は農地法には違反してない、そのとおりですよ。それは法のたてまえから行政府がやれる仕事でありますから……。しかし今日、このような大幅な農用地の許可基準を緩和するということは、農地保護のたてまえをうたっておる農地法の精神に私は触れるのではないか、ここを申し上げておるのであります。  たとえば第一種農地、いわゆる優良な農地が非常に大幅に縮小されようとしておるわけです。さらに民間の資本でこれを買い上げる、こういうことですから、土地ブローカーがかなり暗躍をする可能性も強く含まれておる。それからやはり、わずか一年や二年の米の緊急対策ということでこのような大幅な基準緩和ということは、どうもわれわれは納得できないわけです。ですからこの点についての見解を承りたいと思いますと同時に、いま政府は農地の流動化を進めて経営規模拡大をはかるということで一生懸命になっておる。そういう中で、この転用基準を緩和して農業以外の目的にこれを使っていくという道を開けば、政府のやっておることとは反対の結果になるのではないか、こういうことを私申し上げておるのです。この十一万八千町歩なりあるいは予想される三十五万町歩なりというものが農業目的に使われていったときに初めて私は経営規模拡大ができていくのじゃないか、こういうぐあいに考えるものであります。そういう意味からいって、この転用基準についての見解を承っておきたい、こういう趣旨でございますから、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。
  36. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農地転用を緩和いたしましても、先ほど申しましたように、農業地域としてわれわれが大事なところは集団的に広域の場所であり、しかも土地改良等をいたしまして五年を経ないような地域については、いまお話しのように、他に転用するといいましても、そういうところは排除いたしますから、私どもが農業を維持してまいるために必要な措置は、このたびの農転の緩和によっても依然として守っていくつもりでございますので、そういう点には私どもは不安を持っておりません。
  37. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 それじゃもう一つお尋ねしますが、今度の十一万八千ヘクタールの水田買い上げは、いわゆる昨年の六月から施行されておりまする新都市計画法の市街化調整区域、これは原則として農用地の転換は認めないわけでありますが、この市街化調整区域、さらには農業振興地域、こういうところにも及んでいくものではないか、こういうぐあいに思うわけでありますが、この点について承りたい。
  38. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 市街化区域の中に入っております農地は農転を必要としないことは御存じのとおりでありますが、市街化調整区域の中においていわゆる二種、三種、そういう地域の中で、いまお話しのありましたような希望のあります地域につきましては情勢に応じては許可をする、こういうことになると思います。
  39. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 農業振興地域はどうなりますか。
  40. 中野和仁

    中野政府委員 農業振興地域の整備に関する法律によりますと、その中で農用地区分をいたします。農用地区分をいたしましたところは、その区分目的に従って農用地に使うということになっておりますので、原則的には農地転用許可はいたさないということになるわけでございます。
  41. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そうしますと、今度の農地転用の考え方としては、第一には市街化区域、第二としてはいわゆる市街化調整区域の中でも許可ができる、転用ができる。農業振興整備地域については許可ができない、農地転用は許さない、こういうぐあいに解釈してよろしゅうございますか。
  42. 中野和仁

    中野政府委員 先ほど大臣から御答弁ありましたように、市街化区域につきましては、今回線が引かれましたあとは届け出制でよろしいということになるわけでございます。調整地域につきましては、去年の十月に、調整地域の性格と申しますと、これは市街化を抑制する地域というのが原則になっておりますので、これについては特別の農地転用許可基準を出しております。それにつきましては、その方針は原則として変えないつもりであります。ただ水田の転用基準の緩和に伴いまして、あの調整地域の中を甲種農地、乙種農地と分けてございますけれども、甲種農地につきましては、国道、県道の沿道においてガソリンスタンド等のサービス事業については認める、それ以外は現行どおりということにいたしております。そして調整地域の中でも甲種農地でない、優良な集団的な農地でないところでございますが、それにつきましては大臣から御答弁ありましたように、今度の水田転用基準の緩和が大体適用になる、こういうことになるわけでございます。
  43. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次に大臣にお尋ねしますが、今度の予算委員会等でも問題になっておるようでありますけれども、米の生産調整に関連いたしまして、五十万トン分の十一万八千ヘクタールは、四十五年度一年間で買い上げをする、こういう方針がきまり、四十四年度予算では一億円の土地需要緊急調査費が予算化され、現在各省におきましてそれぞれ土地の需要を調査をしておる、こういう段階のように承っておるわけであります。いまの時期は三月も半ばを過ぎた時期でございまして、農民諸君としてはそろそろ苗しろ作業の計画に入る時期でございます。営農計画も目下真剣に考えられておる時期になっておるわけであります。したがってこの転用の計画なるものが、苗しろ期や営農期を前にして早期に決定され発表にならないと、ことし一年間の稲作経営なり営農に大きな支障を来たすことになるし、おくれました場合にはたいへんな混乱を呼び起こすことになるのではないか、こういうぐあいに考えられるわけであります。したがって昨日でしたか、新聞によりますると、政府は転用の目標なるものをきめたやにうかがうことができますが、あの新聞発表は政府の最終決定なのかどうか、その辺の経過をひとつ大臣から御説明をいただきたい、こう思うわけであります。
  44. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 新聞の記事というのは私はまだ見ておりませんが、政府のほうでは何も出したことはありません。お話しの水田転用につきましては、いまお話しのありましたように一億円の調査費を各省に分配いたしまして、それの具体的な需要量等が近く明らかになると思いますけれども、それはこういうふうに発表して、それからどうするということではないと思うのでありまして、各省ではそれぞれの関係に調査をいたしまして、そしてその後話の進んでいるものもあるいはあるでしょうし、これからするものもあるでしょうが、転用面積の目標をなるべく早く作成する、こういうことになっておりますので、近日中には各省のそういう一応の取りまとめは行なうことができると思います。そういうことであります。
  45. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いろいろ新聞に出たことは、これは政府の関知しないことである、こういうぐあいに逃げられておられるようでありますが、しかし数字がこのように——申し上げますと、転用目標として宅地が六万ヘクタール、工場用地が二万一千ヘクタール、道路交通用地が一万三千ヘクタール、建物施設として二万四千ヘクタール、これを合計いたしますとちょうど十一万八千ヘクタールになるわけであります。こういうぐあいに明らかに具体的な数字まで出ておるわけでありますから、まさか憶測でこういう新聞記事にする、こういうことは考えられません。したがって、すでにこれは政府として意見が統一されたものではないか、こういうぐあいに私は判断しておったのでありまするけれども、その辺いかがなものですか、伺いたいと思います。
  46. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林省も政府のうちですから、政府としてだれか発表するとすれば私にも連絡があるはずでありますけれども、一向そういう話は聞いておりませんし、もともと米の生産調整ということから出てきた話でありますので、農林大臣が知らない間にほかの政府機関が外部に何か出すということは、あり得べからざることであると思います。私は全然そういうことに関知しておりません。
  47. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 少なくとも、水田の転用許可をするのは、これはもう御承知のとおり、主管大臣は農林大臣だと私は思うのです。その主管大臣が知らない間にこういう数字が天下に発表されるということは、私はまことにふしぎなことだと思います。どこが発表したか、ひとつその点を次回の委員会まで明らかにしていただきたい。
  48. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それ、発表したと書いてありますか、新聞に。政府が発表したと書いてありますか、私新聞を見ていないのでありますけれども。政府の当局者が発表するとすれば、私の了解がなくて発表するはずはないと思うのです。これは発表ではなくて、何か記事じゃないですか。その辺、実は私はまだその記事も読んでおりませんので。率直なところ、私の知らない数字というのは出るはずはない。農林省だけじゃなくて政府全体の——農林省だけで可能なことじゃございませんから、公共団体の先行取得などというのは、それぞれの役所がそれぞれございましょう。したがって、私の所管ではありませんけれども、農林省も深い関係を持っておりますので、政府がそういうものを発表するときに、私が知らないで発表されるというはずはありませんので、発表ではなくて記事じゃないんでしょうか、そういうふうに思いますけれども。
  49. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 これは昨日の日本経済新聞でございまして、政府の発表したもの、こういうぐあいに私どもは受けとめております。しかも、これについては解説まで載っておる。したがって、農林大臣が知らない間にどこかの省庁で発表したものだろうと私は判断するわけでありますが、そういうことが行なわれておるとするならば、私はまさに閣内の不統一だと思うのです。農林大臣全く無視されておると思うのです。ですから、真相をひとつ休憩後まで明らかにしていただきたい。これによって国民に対してかなり大きなショックを与えておる問題だけに、この問題はひとつ明確にしていただきたい、こう思うわけであります。
  50. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 長谷部君に申し上げますが、質問ですか、要望ですか、答弁のあれがありません。
  51. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 質問です。
  52. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それはちっとも差しつかえないことでありまして、私調べてみますが、まさか私の知らないものが政府の発表として出るはずはないと思いますが、真相を調べてみます。
  53. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いまの問題は、後刻あらためて結論をいただきたい、こう思うわけでありますが、時間の関係もございますので、先に進ましていただきたいと思います。  ただいまも申し上げましたように、十一万八千ヘクタールを単年度で他目的転用するということでありますが、これはかなりの資金の伴う問題でございます。今日、地方自治体関係だけを拾ってみましても、年間、四十五年度の場合は、約千三百億円の土地取得の財源しかないのです。民間でこれを買い上げるわけでありますから、かなりの財源が必要と思われるわけであります。この財源の調達について、政府はどういうぐあいに考えておられるか、まずこの点を承りたいのです。
  54. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 どういうように用地を買い上げたり何かするかということがきまりませんので、その金のことまで私どもいま何も聞いておりません。
  55. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 しかし、十一万八千町歩に見合う水田は民間需要で消化していく、こういうことを政府の方針として国民の前に明らかにしておるわけでありますから、当然この十一万八千町歩の買い上げの実施要綱なるものが準備されておるものと私は考えておるわけであります。その十一万八千町歩の水田転用の具体的な実施要綱を御提出をいただきたい、こう思うわけであります。
  56. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういうことについて、いまどこの役所の関係でどれだけの用途をどういうふうにしようかということを鋭意検討しておる最中でありますので、そのことがまず先じゃないかと思うのです。したがって、その要綱とかなんとか、そういうものはまだ全然私ども聞いておりません。
  57. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 転用の十一万八千町歩の実施要綱もなければ、資金の調達のめども全然考えておられない。だとすれば、これは全くもういいかげんな発表としか受けとめることができないわけであります。おそらくこのようなことを予算編成の最終段階で国民の前に明らかにしたわけでありますから、何らかの見通しと、それから具体的に対処するお考えがないままにこういう発表ができるはずもないと私は思うのであります。そういう意味でもしないとすれば、これはあまりにも軽率ではないか、こういうぐあいに考えられますけれども、この点について御見解を承りたいのです。
  58. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 百五十万トンの生産調整はいたしたい、百万トンはいわゆる生産調整でやりたい、五十万トン分に見合う地域につきましては、これは農地の他用途への転用によっていたしたい、こういう方針をきめたことはしばしば申し上げておるとおりであります。そこで、百万トン分につきましては、もう御存じのように各自治体、農業団体等鋭意いま努力していてくれる最中であります。十一万八千ヘクタールの五十万トン分については、補正予算でも一億円の調査費を各関係省に分配をいたしまして、それによってどのような計画を立てるべきかという調査をいまやっておる最中である、こういうことであります。
  59. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そうしますと、この水田の買い上げは農地法改正で行なうのですか、その辺はどうなりますか。
  60. 中野和仁

    中野政府委員 農地転用許可基準を緩和いたしまして、転用円滑化するように今度措置をしたわけでございます。農地法改正して買い上げるという趣旨ではございません。
  61. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そうすると今度の農協法の改正で、農協によって転用農地の他用途への売り渡し等の仕事ができるようにきめておるんじゃないですか。
  62. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 このことは、私ども百五十万トンの生産調整について農業団体に協力を申し入れましたときに、現状の段階でこれは全面的にわれわれも協力いたしましょう、農業団体の代表者がおいでになって申し入れがございましたときに、つけ加えて、これは前からそういう希望を農業団体は申し入れておられたわけでありますが、この際、特に農業団体農地取得し、そしてこれを農業のために活用することのできるようにしてもらいたい、ことに先ほど来お話のありましたように、大事な農地がスプロール化するようなことを防ぐ意味においても、農協土地取得することができることはいいことだ、こういう御要望もあり、私どもといたしましても、これは時宜に適した処置であると考えましたので、農協法の改正案の中に新しくそれを入れて御審議を願っておるわけでありますが、これはいますぐに農協農地の買い出動に出られるかどうかというと、法律改正はされておらないのでありますから、法律的にはただいますぐは無理だと思います。しかしこれはこの十一万八千ヘクタールに関係なく、私どもは将来の農協活動を考えまして、このようにすることが妥当であると考えましたので、法改正を御審議願っておるわけであります。
  63. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 何回も言うようでありますが、この十一万八千ヘクタールの転用については、先般の予算委員会等におきましても、総理は予算審議の期間中に方針をきめて明らかにする、こういうことを御答弁になっておるわけであります。したがってわれわれの感じでは、きょうあたり予算委員会の質疑も終結する段階にきておりますので、そろそろ政府の方針がきまってもいいのではないか、こういうぐあいに期待をしておりますが、この予算審議中にはきまるものと見てよろしゅうございますか。その辺の見通しを承りたいと思います。
  64. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 佐藤総理大臣はまじめな方でありますので、ああいうことをおっしゃたのでありますから、こういうことについてできるだけ早く調査を完了して、政府の意思表示ができるようにという督促を政府部内でしておられることは私も承っておりますので、佐藤総理のお約束が実現するものと期待いたしております。
  65. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私はなるべく早い機会にこの十一万八千ヘクタールの転用の計画と、それを裏づけるいわゆる金融措置ですね、資金措置、これを私どもの委員会農林大臣から御提示をいただけるように、これを強く要望しておきたいと思います。なるべく早い機会にお願いをいたしたい、こう思います。  次にお尋ねしたいことは、今度の農地法改正は、従来の農地法改正と異なりまして、農協法の改正、それから間もなく提出されるであろうと思われる農業者年金基金法案、この三つの法案をセットにして出してきておるところに、今度の農地制度をめぐる特徴が私はあろうと思うのであります。これを拝見いたしますと、農地法に基づいて農地保有合理化法人が県の段階、市町村の段階にそれぞれ設置をされる。またその法人農地の買い取り、売り渡し等ができるわけであります。さらに農協法の改正に伴いまして、今度新しく農業協同組合農地の売買ができる、こういう道が開かれようとしておる。さらにいま一つの農業者年金基金におきましても、年金給付の仕事と並行して農地の売買ができる、こういうぐあいに道が開かれようとしておるのであります。こうなりますと、今後農地保有合理化法人農協、基金と、寄ってたかって農地が食いつぶされる、こういうことになるわけでございます。したがいまして、この農地法改正の意図というものは、私は一段と露骨になった、強められた、こういうぐあいに考えておるものでございます。  そこで私お尋ねしたいことは、農地保有合理化法人は、農業経営規模拡大農地集団化等をはかるために、農地の買い入れあるいは売り渡しあるいは転貸ができるようになっておるようであります。しかもこの法人の業務費として、四十五年度の予算には三千二百万円の予算が措置されておる。この法人事業内容あるいは事業の対象地域、もっと申し上げるならば、どの程度の農地が流動化できるのか、農地流動化のためにいかなる効果を果たそうとしているのか、これらの諸点についてまず承りたいと思うのであります。  いま一つは、この事業量が年間計画として明らかになってくると思うのでありますが、それに対する金融措置、これもあわせてひとつお示しをいただきたい、こう思うわけであります。
  66. 中野和仁

    中野政府委員 農地保有合理化法人そのものを農地法規定しているのではございませんことは、先生御承知のとおりでございますが、今回農地法改正いたしまして、農地保有合理化促進事業をやるような法人につきまして、土地の買い入れ、そしてそれの売り渡しあるいは借り入れ、それの貸し付けということができることといたしましたのは、ただいまもお話がございましたように、われわれといたしましては農業経営規模拡大あるいは農地集団化等農地保有合理化を促進するためには、やはりそういう公的な機関が農家の間に入りまして、規模拡大の方向に向かって流動化を進めたいという趣旨でございます。そこで、われわれ考えておりますのは、市町村がやり、あるいは農協がやる。あるいはまた、いま御指摘のありました、予算でわれわれがお願いしております県の農業開発公社等の民法上の公益法人、こういうものについて、あるいは近く提案になります農業者年金基金、いろいろ土地の売買ということになってまいりますけれども、それぞれどういうふうに交通整理するかはあとで申し上げることにいたしますが、いずれも構造政策の一環としての役割りをになっているかと考えております。  そこで、まずわれわれとして考えておりますのは、いま申し上げました県の農業開発公社を一県一つつくりまして、その県内の農地保有合理化を統一的に進めることが最も望ましいというふうに考えております。しかしながら、すでに発足しております第二次構造改善事業という事業の中でも、御承知のように、その村内での経営整備事業で、やはり、農地を売る者からほしい者に渡す事業をやるわけでございますが、それにつきましては、そういう村のこまかいことにつきましては、町村がやったほうがいい、また、農協がやったほうがいいという問題になってまいります。町村の段階になりますと、市町村農協がおのおのかってにやるということになりますと、非常に問題となるわけでございます。  そこで、現在考えておりますのは、農業振興地域の整備に関する法律農業振興地域がきまってまいります。そうしますと、この法人はその振興地域内で事業をやるということにいたしますけれども、その場合に振興地域の中で農業振興計画というのをつくりまして、その中で、農地保有合理化促進事業市町村がやるか農協がやるかをきめることがよろしいんではないかというふうに考えております。ただ、振興地域は全国一律に一度にできません。その間、過渡的には振興地域がないところがございます。その場合には、市町村なり農協なり、どちらがそういう事業をやったらいいかということは都道府県知事に調整をさせたいというふうに考えております。  それからなお、つけ加えさせていただきますと、農業者年金の、土地の売り買いのほうは、離農者の土地を買って、それを規模拡大のほうに持っていくというふうになっておりますので、これは交通整理がついておるというように思いますし、今後の運用にあたりましては、その辺十分気をつけまして、混乱のないようにいたしたいと考えております。
  67. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そうしますと、事業の対象地域というのが大体、大まかにわかったような感じがいたしますが、大規模農地の造成事業あるいは開発事業、こういうものは県の公社がやる、それから市町村で進めている構造改善地区につきましては市町村または農協がやる、こういう大まかな整理が行なわれておるようでありますけれども、離農者の農地を買い上げる、こういう場合も、基金でも買い上げる、農協でも買い上げる、市町村でも買い上げる、こういうようなことで競合する場合が出てくるのではないか、こういうぐあいに私は考えるわけでありますが、農協やあるいは市町村の場合は、離農者の土地については買うことができないのかどうか、そういう規定があるのかどうか、この点ひとつ承っておきたいと思うのです。
  68. 中野和仁

    中野政府委員 農業者年金基金法によりまして、基金が土地の売り買いを離農者とやりますけれども、それではほかの市町村農協は買えないかというと、そうではございません。したがって、形式的な制度といたしましては、離農者が農協に買ってもらうか、あるいは町村に買ってもらうか、あるいは年金基金に買ってもらうか、それはその判断によるわけでございます。
  69. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 それから、先ほど申し上げました合理化法人事業実施に伴う金融措置についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  70. 中野和仁

    中野政府委員 原則的に、合理化法人は、離農者その他の経営を縮小する農家から土地を買いまして、それを規模拡大をする農家に売り渡すわけでございますから、買い入れ資金、そして、売って代金を回収するまでのつなぎ資金が要るわけでございます。これにつきましては、系統金融その他の資金を活用してもらうというのを原則にしております。ただ、それでは、そのつなぎ資金の間に相当事務費等を要します。そこで、先ほど御指摘がありましたように、来年度の予算で三千二百万円——県の公社約三十公社を予定しておりますが、それに対する事務費として補助をいたしたいということを考えておるわけでございます。
  71. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 それから、この合理化法人は、年間どれくらいの事業を全国的に考えられるのか、その点も明らかにしていただきたいと思います。
  72. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま申し上げましたいわゆる民法法人の県公社につきましては、買い入れを約一千ヘクタール、借り入れを五百ヘクタール程度、初めてのことでございますのでまだ少ないわけでございますが、その程度を予定しております。
  73. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 市町村は。
  74. 中野和仁

    中野政府委員 第二次構造改善事業は、現在計画を作成中でございますので、その計画の中で経営整備事業をやる町村がどれだけあるかというのは、現在のところまだわかっておりません。
  75. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次にお尋ねいたしたいのは、農地政策の長期の見通しについて承りたい、こういうぐあいに思います。  御案内のとおり、新全総では、昭和六十年まで、かなり農用地の拡張を考えておるようでございます。     〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 私がいつも考えておりますことは、政府の農地政策についてはどうも一貫したものがない、こういうぐあいに指摘せざるを得ないと思うのです。と申しますのは、戦後、つい四十三年度までは、食糧増産ということで補助金まで出して開田を奨励してきたのでございます。それが今日の米過剰を生んだ一つの大きな原因になっておることは御承知のとおりであります。ところが、多少米が過剰ぎみだ、余ったということで、今度は手のひらを返したように、百五十万トンの減産だ、十一万八千ヘクタールの農地転用だ、こういった形で全くそのしわ寄せを耕作農民に押しつけておるのであります。農民にしてみれば、この政府の無計画な農地政策によって大きな犠牲を受けておるといわざるを得ないと思うのであります。もし政府に農地政策の長期見通しがいまから五年前、六年前に立てられておったとするならば、今日のような米過剰という事態は避けることができたのではなかったか、こういうぐあいに私は思うのであります。いわば政治の失敗を耕作農民に一方的に押しつけるやり方については、私どもはどうしても納得できないところでございます。しかも今日においても、一方においては十一万八千ヘクタールの転用を計画する、反面においては新しい農地の造成をやるなどという、同じ農林省の中でもちぐはぐな政策が平然と行なわれておるということについては、これは農民感情からいっても許されることではないじゃないか、私はこういうぐあいに考えるのでありますが、この点に対しまして大臣の見解を承りたい。
  76. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 昭和三十六年が農基法制定でありますが、三十七年に農作物の長期見通しを出しております。あの中でも、だんだんと食糧の需給は緩和される傾向であると書いておりました。しかし三十八年をピークといたしまして、とにかく、一時たいへん気候不順等がありましたけれども、だんだんと技術が改良され、土地改良等が成功してまいりまして、増産の傾向になってまいったのは御存じのとおりであります。ところがそれと並行して昭和三十九年ごろから、一人当たりの米の消費量が逐次減退してきております。こういう傾向が今日になりましたのでありますが、私どもはいまの状況を見ますと、日本の農業を維持し、そして食糧の安定的供給をやってもらうためには、やはり食管制度の根幹は維持できるようにつとめることが必要である。そういう角度から考えてみますと、この際思い切って生産調整をしなければならない、こういうことであります。しかし、いろいろ議論をなさる方はありますけれども、現実に農業団体、県知事、市町村長、市町村会議長などが集まっておりますそれぞれの会では、いずれも今回の政府のとっておる態度はやむを得ざるものであり、これに全面的協力をするんだという方針を打ち出しておることは御承知のとおりであります。したがって、私どもはそういうことをやりますにつけても、米をつくっております農家に思い切ってこの施策に協力してもらい、さらに将来の明るい展望を持っていただくために、思い切って生産調整奨励金を三万五千円出すようなことにいたしました経過も御存じのとおりであります。したがって、いまお話のございました新全総で、昭和四十年の農用地面積六百万ヘクタールでありましたが、目標年次の昭和六十年には六百五十万から七百万ヘクタールとなって、基準年次に対比して五十ないし百万ヘクタールの増加となっておりますけれども、これは御存じのように草地面積がふえているわけでございます。草地以外の農用地の面積は若干減少することに新全総でも書いておるわけでありまして、長期見通しによりましても、四十一年の六百万ヘクタールから五十二年には五百七十五万ヘクタールに減少すると見込んでおります一方、草地面積は四十一年の十六万ヘクタールから五十二年には六十一万ヘクタールに増加すると見込んでおるわけでありまして、私どもは、やはり選択的拡大の方向をとって、わが国の農業をそういう方向に進めてまいりたいと思っているわけであります。
  77. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 ただいま大臣は食管制度を守るためには米の生産調整はやらなければならぬのだ、こういうお話でございます。ある面ではわれわれも米の過剰であるという事実については否定するものではありません。したがって、あくまでもこの生産調整は農民の自主的な判断によってきめられるものであろう、こういうぐあいに考えております。ただしかし、私はここで申し上げたいことは、今日米が余ったその政治責任を明らかにする必要があろうと思うのでございます。これは農民が悪いから米が余ったんじゃない、農民の責任ではないと私は思うのです。ただいま指摘もいたしましたように、無計画な農地造成対策、これはもっと早い機会農地の長期見通しを立てて対処しておったならば、今日のような米過剰を招かなくとも済んだのではないかという考えも出ます。いま一つは、もっと早い機会に米以外の安定作物を、農林省の責任で、政府の責任で農民に保障しておったならば、農民諸君は自主的に米から他の作物への転換を行なっておったろうと思うのであります。しかし何ら農産物の価格保障対策というものがなかった。さらにいま一つは、無計画な外国食糧の輸入というものが今日の米過剰をつくり出したのではないか、こういうぐあいに私は考えるのであります。  こうやって考えてみますと、今日の米過剰を招いた最大の原因は自民党政府にあるといわざるを得ないのです。その責任をば少しも反省しないで、ことごとく一方的に、農民にのみ、食管を守るから協力をせい、食管を守るために生産調整に協力をしなさいという押しつけのやり方は、農民諸君としては納得できないのではないか。もっと今日の米過剰は政府の前向きの施策によってこれを解決するのでなければならないのではないか、こういうぐあいに私は考える。生産調整はあくまでもこれは自主調整でありますから、法的根拠もなければ、押しつけることはできないと思うのです。ですからこの辺の大臣の見解を承りたい。  しかも今日通年施行を奨励しておる。通年施行をやるために、国の補助金では足りないで、県が上積みをしておる、市町村も上積みをしておる、それでも足りなくて、農民諸君から一俵六十円というぐあいに賦課金を取って、そうして今日の通年施行をやっておるという事実もあるのであります。こういった農民の負担の増大、こういったものについて一体政府はどういうぐあいに考えておるのか。これらの二点につきましても、この際大臣からはっきりしたお考えを承りたい、こう思うのであります。
  78. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまのお話を聞いておりますと、何か政府が強制的にやらしておるようにも聞こえるお話でありますが、政府は何にも強制しておりません。御存じのとおりであります。世界の各国の中には、政府がすべて権力でいろいろやっている国もありますけれども、わが国はそういう国じゃありませんし、ことに自主調整につきましては、これはこういう事情であるからして何とかしようではないかという話を、農業団体あるいは知事会等に集まっていただいて協議会をつくりまして、そこで議案が出ました。期せずして一致したのは、生産調整をやろうではないかということなんであります。でありますからして、そういう点においては全く下から盛り上がった空気を私どもは受けて、それをひとつ実行しやすいようにということでかじとりをいたしておるにすぎないのでありまして、通年施行などでも私どものところへたいへんいろいろな御希望を申し入れていただいておる地域があります。かたがたそういうこともまた御要望なさる地方では、生産調整にも役立つことであるし、これはひとつやろうではないか、こういうようなことで地方の御希望に応じてそれに応じてやっていることでありまして、いまの農林政策というのは全く地方の盛り上がりの上にお世話をいたしておる、こういうふうに考えておるわけであります。
  79. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私は全く逆の考え方ですよ。大臣の話は全く詭弁ですよ。これはわれわれの見方からいうと、政府の生産調整協議会、県の生産調整協議会、市町村の生産調整協議会、ことごとく自主調整に賛成の者ばかり集めまして今日までそのムードをつくってきた、これが私は真実だと思うのです。実際これを受ける農民は、政府の力によって賛成のムードがつくり出されておるがゆえに、実際の耕作農民は反対だけれども、まあここで自分一人ばかり反対したってしようがないということで、やむにやまれずこれを受け入れている、これが私は真実の姿だと思うのです。しかも大臣は、強制じゃない、こう言っていますね。あくまでも自主調整だ、こう言っています。しかし現実あなたは参議院の本会議で、現行の食管法のもとでも米の買い上げ制限ができるんだぞ。この発言の意味するものは何ですか。この発言の意味するものは、もしあなた方が生産調整に協力しなかったならば、今度は買い上げ制限をしますよという一つの脅迫でありませんか。私は脅迫だと思うのです。この事実からいたしましても、今日の生産調整は、口では自主調整といいながら、事実上はおどかしをかけて強制をしておるということを私はいわざるを得ないと思うのであります。これに対して大臣の見解を承りたい。
  80. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 参議院でたくさんの御注文がありまして、それで当日はたいへん込んでいるので、閣僚の答弁は簡明直截にやれという指示を受けておりましたので、簡明直截にただ法律解釈論を述べただけでありまして、そのことについていろいろ私の意見を聞かれますれば、それなりにお答えいたしたのでありますが、その後衆議院の予算委員会でも、あらゆる機会でただいま私どもは買い入れ制限などということは考えておりませんし、そういうことについて何も検討しておりませんということを何べんでも言っておるのであります。それでこの間も農業団体の会長と私が同じ新聞で談話を交換いたしました。あれなどにも明白に私の所信を述べておって、日本じゅうの農家へばらまかれておりますので、脅迫どころの話ではない、みんなに徹底していると私は思っているのであります。
  81. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 ただいまの答弁については私まことに不満であります。しかし時間が来たそうです。三時半から質問を継続させていただくことにいたしまして、一応これで保留したいと思います。
  82. 草野一郎平

    草野委員長 午後三時に再開することとし、これにて休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後三時十五分開議
  83. 草野一郎平

    草野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。長谷部七郎君。
  84. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 午前中の質疑を続行したいと思いますが、まだ農林大臣が見えておらぬようでありますので、農地局長を中心に若干お尋ねをいたしたいと思います。  午前中の質疑でもいろいろだだしたところでございますが、まだ要領を得ませんので、あらためてお尋ねをいたしたい、かように存じます。  それは、四十五年の二月十九日に農林事務次官名をもちまして、いわゆる水田の転用許可基準に関する通達が出されておるわけでありまして、この内容を見ておりますと、いろいろ政府の方針を受けて農林省事務当局が相当苦心をしたあとは見えるわけでありますが、とにかく今日の十一万八千ヘクタールに及ぶ水田を買い上げるという方針は、予算編成の最終段階におきまして、いかにして農業団体の反当たり四万円という補償金を確保するかという窮余の一策として水田を買い上げる、こういう方針が生まれた、こういうことでございまして、これに事務当局がつじつまを合わせていくということでたいへん苦労されておられることと存ずるわけであります。  そこで私お尋ねしたいことは、この転用基準の緩和によりまして、いわゆる第一種農地といわれる優良農地相当狭められるのではないか。このことは今後の農地の流動化をはじめ、経営規模拡大に大きな支障になってくるのではないか。しかも農地法がうたっておりますように、農地を保護するというこの法のたてまえというものがくずれてまいりまして、事実上農地制度そのものが骨抜きになっていくのではないかという心配があるわけでありますが、この点に関しまして、農地行政をあずかる農地局長といたしましてどういうぐあいにお考えになっておるか、御見解を承りたいと思うわけであります。
  85. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまお話がございましたように、水田の転用につきましての許可基準を暫定的に緩和したわけでありますが、この件につきましては、午前中の委員会でも大臣から御答弁がございましたように、現在の第一種農地であります中で、集団的に存在するいわば優良な農地、それから土地改良事業実施中の農地、あるいは実施が済みましても完了後五年以内の水田、もちろんこれは五年たちましたあとも、最初に申し上げました集団優良農地であれば、それは引き続き第一種農地にするということでございます。従来と変えましたのは、従来は農業生産力の高い農地であれば、いかに狭くもそれは一種農地である、あるいは土地改良事業あるいは開拓事業等、公共投資をやりましたところは、いかに市街地周辺でありましても、これは一種農地であるというような、非常にきびしいといいましょうか、そういう取り扱いをしておったわけでございますが、最近の土地需要の動向あるいは米の需給の緩和という問題から、今回、守るところは守る、それを非常にはっきりさせて、それ以外のところの転用を緩和するということにいたしたわけでございますので、われわれといたしましては、農地法のたてまえをこれでくずしているというふうには考えていないわけでございます。
  86. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 第一種農地の取り扱いについての考え方はわかりましたが、農用地の水田の転用にあたりまして、公共用地として取得される部分というものは非常に少ないんではないかと思うのです。現在の道路にいたしましても、鉄道にいたしましても、あるいは学校その他公共施設にいたしましても、地方自治体における土地取得資金の財源から見ましてそう大きなものは期待できない。そうなりますると、勢い民間需要によってこれを消化していかなければならぬ、こういうことになるわけであります。この場合、懸念されますことは、いわゆる不動産業者、土地ブローカーが暗躍をいたしまして、農地を先行取得いたしていく、こういった事態が予想されるわけでありますが、こういうぐあいに不動産業者が出てまいりまして農地を蚕食する、こういったものを防止できる対策を持っているのかどうか、この点をまず伺いたい、こう思います。
  87. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま転用基準の緩和に関連しまして、不動産業者が暗躍するんではないかというお話でございますが、その点に関しましては、改正いたしました許可基準の緩和によりましても、もちろんそういう不動産業者の暗躍を認めるという方向で緩和したのではございません。本来、農地転用は、農地の実需者に対しまして転用を認めるということでございますから、不動産業者が宅地造成をいたしまして建物を建てるといった場合は、もちろん許可になる場合があるわけでございます。単にブローカーがやるということにつきましては、一切そういう転用許可は認めないということでございますので、この機会に不動産業者が暗躍するということはないと考えております。  それからなお、先ほど不動産業者の先行取得というお話がございましたけれども、今度転用基準を緩和いたしましても、先行的な取得を認めようと考えておりますのは、地方公共団体なり住宅公団なりの公的な機関が、土地取得しまして宅地に造成する。しかし、その上に建てます建物はもう少しあとでもいいという意味での先行的な取得でございまして、単に民間団体の先行取得を認めるということは今回もいたしておりません。
  88. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私が懸念いたしますことは、住宅宅地または工場用地の分譲を目的とする水田転用について、事業主体範囲というものが拡大されておるんではないかと思われることです。したがって、この場合の事業主体は、では何と何をさしておられるのか、この際明らかにしていただきたい。  なお、地方公共団体あるいは日本住宅公団、あるいは各県にありまするところの住宅供給公社、地方公共団体が出資いたしておりまする公益法人、こういったものは、いままでの経緯をわれわれの経験から申しますると、ほとんど、土地取得する場合は不動産業者の手を通じて買い求めておるのが大半の実情じゃないかと思うのであります。したがいまして、私が懸念しておるのはここなんです。地方公共団体なり住宅供給公社が所有者から直接買う場合には問題がないにいたしましても、大部分の実情を見ますと、いわゆる土地業者の手を通じて求めておる。こういう実情からいたしまして、なお一そうブローカーが暗躍する可能性が強くなってくるのではないか、こう心配をするわけであります。この点について承りたい。
  89. 中野和仁

    中野政府委員 御質問の第一点の事業主体範囲でございますが、いま先生お話しになりました地方公共団体あるいは住宅公団、地方住宅供給公社、そういうものが行ないます場合の住宅用地なり工場用地の分譲を目的とする水田転用といいますのは、その上に建物を建てなくても、宅地造成だけで認めるということにしておるわけでございます。今回その範囲を拡張いたしました。  その一つは、消費生活協同組合等の非営利法人が住宅用地を造成する場合。いま等と申し上げましたのは、農協法の改正ができますれば、農協もこの中に入ってきて、農地転用許可を受けて宅地造成がやれるということになるわけでございます。  二番目は、県にあります開発公社等の公益法人が、工場立地調査法、これは通産省所管の法律でございますが、それによりまして工場適地団地を農林省と相談いたしまして、ここは工場適地だから工場を建ててよろしいというところがございます。全国で約五万ヘクタールほどそういう調査をしたところがございますが、そういう農林省と話のついたところの区域内で工場用地を造成する場合、これが二番目でございます。  三番目は、土地区画整理事業として住宅用地を造成する場合。この場合は、民間の方でありましても、どなたでも、土地区画整理法という法律に基づいて、建設大臣なり知事の認可を受けて事業をやるわけでございますから、これはよろしいということにしたわけでございます。  四番目は、市街化調整区域内におきまして、都市計画法で例外的に開発許可が受けられる場合がございますが、開発許可を例外的に受けて宅地造成事業を行なう場合。この場合は農地転用の、先ほど申し上げました宅地分譲を認めるということで、転用許可をするということにしたわけでございます。  それから二番目の、住宅公団等が不動産業者を使っておるということでございますが、これは、われわれ承知しております範囲内では、不動産業者に買収の事務を委託しておるわけでござ・います。したがいまして、権利取得は住宅公団なり何なりがしておるというふうにわれわれ承知しております。
  90. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 実情は、これは局長よく承知しておらぬかもしれませんけれども、私どもいままで地方議会におりまして強調してまいりましたことは、県の住宅供給公社なり、あるいは公共団体が出資をしてつくっておりまする公益法人の場合、農地所有者から直接農地を買い求めるようにということを強く要望いたしましたけれども、今日の各県の住宅供給公社の人的構成、能力等からいたしまして、直接一筆ごとにそれを調査する能力を持っておりません。したがいまして、大かた不動産業者の手を通じて購入をしておるというケースが非常に多いと思うのであります。したがって、そこにいろいろ、住宅供給公社といわゆる不動産業者とのくされ縁というものが出てまいりまして、不祥事件を生んでおる、こういった例がかなり私は出ておると思うのであります。したがいまして、できる限り私はいわゆる直接の所有者から地方機関が買い求める、こういうぐあいに指導をしていただきたい、いかなければならないのじゃないか、こういうぐあいに思っておりますが、この点、先ほどの答弁は必ずしも実情を踏まえての御答弁でないように承りまするので、いま一度御答弁をいただきたいと思います。
  91. 中野和仁

    中野政府委員 お話しのように、私も実態として不動産業者を使っておるということは承知しております。この点につきましては、いまお話しのように、直接住宅を建てる住宅供給公社等が直接買収することが望ましい、よろしいということで、私どももそう思いますけれども、この点につきましては建設省あるいは自治省、そういう役所ともよく御相談をいたしまして、そういう方向に向けるように、むしろそういうほうの役所から御注意を願わなければならない筋合いのものではないかというふうに考えております。そのためにお話のありましたことを機会がありますれば各省にも申し上げたいと思っております。
  92. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次にお尋ねしたいことは、先ほどもちょっと御答弁があったわけでありますが、新部市計画法のいわゆる市街化区域それから市街化調整区域市街化区域につきましては、農地転用の場合は届け出によってそれが進んでいく。市街化調整区域原則として転用を認めない、許可制である、こういうことになっておりますけれども、いまの十一万八千ヘクタールを買い取っていく場合には、必ずしも市街化区域にのみ需要があるとは限らぬと思うのであります。したがって、市街化調整区域もしくは今日の農業振興地域、これは農地転用は禁じられておるわけでありますけれども、そこへも希望が出てくるのではないかというぐあいに予想されるわけであります。したがって、こういう場合も法のたてまえからいっても私は転用許可はできないものと思うのでありますが、市街化調整区域は五年間はできない。それから農業振興地域につきましては、原則として農用地の転換はやらない、こういうことになっておりますので、法の精神からいってもそこまで範囲が延びていくことがなければ、これにこしたことはありませんけれども、その辺の行政指導の考え方はどういうぐあいにお考えになっておるのか承りたいと思うのであります。
  93. 中野和仁

    中野政府委員 都市計画法によりまして、市街化区域と調整区域とせっかく分けるわけでございますから、この十一万八千ヘクタールの多くがそちらのほうに向かうことは非常に望ましいことだと考えます。現に市街化区域の中の農地面積は、大体いまの推定では二十九万ヘクタール、そのうちで水田が十八万ヘクタールになるだろうといわれております。したがいまして、十一万八千ヘクタールはその内訳になるわけでございますが、いま御指摘のように、全部がここに集中するとはわれわれも考えません。そこで、市街化調整区域なり農業振興地域にも入り込む場合があり得るかと思います。その場合に、市街化調整区域でも農地転用許可基準が緩和になったからどこでもいいというわけではないわけでございます。午前中申し上げましたように、市街化調整区域につきましての転用許可基準は、甲種農地と乙種農地に分けておりまして、甲種農地はいわば集団的な優良農地でございます。これは原則として許可しない。それから乙種農地のほうは一般の基準に従って許可をするということにしております。今度緩和をいたしましても、甲種農地に該当するところは、国道、県道に隣接しておる両側百メートルの範囲内での沿道サービス事業に限っております。したがいまして、農地転用の面から市街化調整地域の優良な集団農地転用されるということはないと思います。なお、つけ加えますと、都市計画法での開発許可制度というものがこれにかぶっておりまして、いわば調整地域には都市側から見ました開発許可制度農業側から見ました農地転用許可基準を同時に調べなければ許可にならない。したがいまして、無秩序にこれによって開発が調整地域に及ぶというふうには考えておりません。それから農業振興地域につきましては、これは午前中に御答弁申し上げましたが、調整地域に振興地域がダブって指定される場合があります。それから都市計画法区域以外に当然振興地域ができるわけであります。その両方につきまして、これは午前中に申し上げましたけれども、農用地区分をいたしまして、農用地として指定になる地域につきましては、他目的への転用原則として認めないという方針にしておりますので、そういう面からも土地の計画的な利用を頭に置きながらの転用基準の緩和であるというふうに御了解願いたいと思います。
  94. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次にお尋ねをいたします。  今度の農地法改正案の中で生産法人の場合の条件が緩和をされる、こういうことになっておるようであります。御承知のとおり、今日では土地それから農業従事者それから利益の配当、それぞれ規制をしておるわけでありますが、これを大幅に緩和をする、こういうことになります。そうなりますと、必ずしも土地を実際耕作しなくとも、土地を出資をしておればよろしい、こういう形のものがふえてくるのではないか。したがって、先ほど私が申し上げたように、その間隙を縫って擬装法人が進出してくる道を開くことになるのではないか、こういうぐあいに私考えるのであります。この点につきまして、それでいいのかどうか農地局長の御見解を承りたい、こう思うわけであります。
  95. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、農業生産法人要件を今回緩和をいたしましたわけでございますが、その理由といたしますところは、最近の農業技術進歩等から見まして、一つの法人の中で、そこに集まりました構成員全員が必ずその農作業に従事しなければならないというふうな事態にはなってきておりません。むしろ中心になりますオペレーター等が中心になって基幹的な作業をやりまして、そうしてその他の構成員は補助的な労働を提供するか、あるいは場合によっては必要な労働は提供しないという実態があるわけであります。ただ、現行法におきましても、農業生産法人は、土地を出すかあるいは労働を出すか、その両方で法人をつくるということになっております。資本だけを出すということは認めておりません。したがいまして、われわれとしましては、この生産法人は、いわゆる株式会社とか資本の集まりのようなところではなくて、むしろ人的結合を中心にしたものであるというふうに考えておるわけでございます。その点につきまして若干今回要件を緩和いたしましたけれども、やはり法人の中核をなします農家というものを頭に描きまして、この農家は少なくともその法人土地を提供して、かつ、農作業にも常時従事する、そういう者がその執行機関の過半数を占めてなければならないという原則を貫いておりますので、これが先ほど申されましたような擬装法人というようなことで使われるということは万ないと思っております。  なお、こういう法人土地取得する場合には全部知事の許可になっておりますので、具体的に申請がありました場合に、知事がその辺は十分判断をしてやることになっておりますので、繰り返すようでございますけれども、擬装法人的なものがこれによりましてどんどん生まれるというふうには考えておりません。
  96. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そういう心配はないというお答えのようでございますけれども、現にこの農業生産法人を擬装いたしまして、漁業資本が農地を買い集めて、そうして資本主義的な農業経営をやっておる場所がございます。ですから万々そういう危険がないなどというのは少し言い過ぎではないか。現行法のもとでも、擬装してそうしてやっておるものがおる。いわんや、こういうぐあいに生産法人要件が緩和をされるということになると、その道が大きくなって、それに便乗してますます擬装法人が農村に進出をして、農業を食いものにする可能性が出てくるのじゃないか、こういうぐあいに思うのですけれども、実態をどのように把握されておられるのか、承りたい。
  97. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま漁業会社が擬装しておるというお話がございましたが、漁業会社が株式会社として生産をしておるということはあり得ないと思いますので、あるいはその周辺の農家と一緒に、ある漁業会社から職員を派遣して構成をしておるという場合があり得るかと思います。しかしあくまでわれわれといたしましては、生産法人というのは有限会社、あるいは農事組合法人、合資会社、合名会社に限っておりますし、そういう法人土地取得する場合には知事の許可で縛っていくということも先ほど申し上げたとおりでございますし、ましてこれが生産法人でなくなる場合には、最終的にはその生産法人の持っておりました土地は国が買収するという制度で、うしろだてもつくっておりますので、ただいまのような場合、直接私具体的には存じておりませんけれども、今後ともそういうことがないようには十分注意をしたいと考えております。
  98. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そういった擬装法人が農村に進出をして、そうして農民と協力してたくさんのたんぼを買い集める、こういったケースはあるわけであります。農地局長は、そういうことのないように注意いたします、こういうことを言っておられますけれども、それを制約できる条文がないでしょう、この改正案を見ますると。そういった擬装法人が農村に入ってくるすきを与えない、歯どめになる条文が何一つないのですよ。そこにわれわれが危険性を強調しておるのです。そういった答弁だけでは不十分だ。もしそういう危険を認められるとするならば、この条文の中に歯どめの項目を加えるべきではないか、こういうぐあいに思うのですが、これについてはいかがですか。
  99. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまちょっと私、説明を若干申し上げなかった面があるわけでございますが、漁業会社等がやります場合には、養豚とか養鶏ということであるいは転用許可を受けてやっている場合があるかと思うのです。あるいは未墾地を開発しましてそういう農場をつくっている場合がございます。これはいまの生産法人とは必ずしも合致しないものでありますけれども、農地法上は差しつかえないわけでございます。  ただ、歯どめがないかというお話でございますが、先ほどちょっとお触れいたしましたように、それが非常な擬装でございまして、現行法によりましても今度の改正法によりましても生産法人としての要件を欠きます場合には、先ほど申し上げましたように、農地法の十五条の二で、最終的には国がその土地を買収するということになっておりますので、これによりまして十分歯どめができるのではないかというふうに考えております。
  100. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次に、農地等権利移動の、第三条について承りたいと思うのであります。  いままで農地所有の上限があったわけでありますが、今度それがなくなった。こういうことになりますと、いわゆる力量のある者は幾らでも土地を集めることができるということになるのだと思うのでありますが、その点いかがでしょう。
  101. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、今回上限面積並びに雇用労力制限を廃止しております。そのかわりに、少なくとも本人が農業経営を行ない、かつ、農作業に従事すると認められる限りにおいては許可をするということにしております。そうなりますと、個人の能力で、自分と、奥さんあるいはむすこさんがおりましても、家族労働力が数名ということになりますと、おのずから自分の所有したりあるいは借りたりする限界はあるかと思いますけれども、少なくとも能力ある限りは経営規模拡大をやったほうが望ましいわけでございますので、今回のような改正案にしたわけでございます。経営をやらないのにどんどん土地取得するということは当然認めないわけでございますので、御指摘のような事態にはならないというふうに思っております。
  102. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そこで、権利取得者が農作業に常時従事する者であれば、雇用労働力には制限はないのであるからよろしい、こういう御答弁でありますけれども、常時農作業に従事しておるかいなか、これはどこで御判断されますか。
  103. 中野和仁

    中野政府委員 農地取得する場合に、所有権取得並びに賃借権取得になってくるわけでございますが、今回の改正によりますれば、その村内の土地を村内の人が取得する場合には農業委員会許可、それから村外からの取得については知事の許可ということになっております。そこで、許可申請がまいりましたときに、知事なり農業委員会がこの人は農地取得した上で経営がやられるかどうかということを判断するわけでございます。その場合に、当然その人の能力あるいは機械装備その他を見まして、それだけの面積が要るかどうかの判断をいたすわけでございます。
  104. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 農業委員会がこれを許可する、あるいは他行政区域の分については知事が許可をする、こういうことになっておりますけれども、今日の末端の農業委員会実情からいたしまして、その的確なる判断、公正なる判断はなかなかもって容易でないではないか、こういうぐあいに思います。いろいろ規定がありますように、土地を、たとえば小作地の取り上げにいたしましても、いわゆる小作地の賃貸契約解除にいたしましても、あるいは自作農維持資金等のあるいは取得資金等の申請等にいたしましても、きわめてずさんなやり方をやっておるのが今日の実態でございます。したがって、常時農業に従事しておるかおらないか、こういうようなことが現状の農業委員会の実態から申し上げますならば、私は的確な判断がなかなかできないのではないかという懸念を持っておるわけでありますが、その点はどうお考えになっておられますか。
  105. 中野和仁

    中野政府委員 農業委員会に対する御批判のように承ったわけでございますが、農業委員会制度が発足しましてからでももう相当たっておりますし、農業委員会自体の活動ぶり——一部の農業委員会にあるいは御批判を受けるようなものがあるかと思いますけれども、大部分の農業委員会農地行政の末端組織として、しかもこれは選挙制度を中心にしてできました委員会でございますので、複雑な農地行政をやらせるためにはやはり農業委員会が最もいいというふうにわれわれ判断いたしておるわけでございますので、今後ともいま申されましたようなことができるだけないように、指導あるいは教育というものもあわせまして進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  106. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 次に、下限を引き上げた問題でございますが、従来は三反歩以上を規定しておったわけでありますが、今度の改正案を見ますと、取得後五十アール以上あればよろしい、こういうぐあいに下限を引き上げる案になっているわけでございます。こうなりますと、一つには五反未満の農民というものは農政の対象にならなくなるのではないか。農政の対象から除外される。金融の面でもあるいは補助の面でもいろいろな面で農政上の恩恵を受けることができない、こういうことになろうかと思うわけであります。ところがこの五反未満のいわゆる零細な規模の農家というものは、われわれの地方におきましても三割以上を占めておる。これは考え方としては明らかに小農を切り捨てる思想から成り立っておるのじゃないか、こういうぐあいに思われます。しかもいま一つ考えられますことは、取得後五十アールでありますから、現在何にも持っておらなくとも、今回初めて五十アール以上買えば農家になるのであります。ですから、お金のあるものは、相手にもよりますけれども、多額の資本をつぎ込んで五十アール、七十アールというぐあいに土地取得すれば農家としてみなされるわけでありますから、いわゆる資本力の強いものが農業に進出していく道が開けてくるのではないか、こういうぐあいに考えるのでありますが、これに対する御見解を承りたい。
  107. 中野和仁

    中野政府委員 下限面積制限を引き上げましたことについての御質問、二点あったと思います。  その一つは、今度引き上げることによって五反未満の農家を農政の対象外にしたのではないかというお尋ねでございますが、われわれが今度取得前三十アールから取得後五十アールに引き上げましたのは、かつて三十アールときめました際は、三十アール程度までの農家は大部分は第二種兼業農家で、農業よりもむしろ他産業にウエートを置いている農家でございます。その後いろいろな経済状況等の変化によりまして、現在ではもはや五十アール未満の農家の八割以上はもう第二種兼業になっておりまして、農業は片手間になっております。また将来のことを考えましても、農業をこれからやっていこうという場合に、二反あるいは三反ではなかなか農業だけではやっていけないという問題がございますので、新たに農地取得する場合にはやはり取得後五反——いま三反持っておりますれば、あと二反は取得していただいて、その場合には許可をする。しかし一反の人がもう一反買い集めるということは、日本の限られた農地をなるべく効率的に使うためにはやはり遠慮していただいたほうがいいのではないかという気持ちでございます。現在五反以下の農家が経営しておりますその経営について、これを何ら農政の対象にしないということでは決してございません。  それから第二の、取得後に今度直したので新しい人が農業をやれるのではないか、これはそのとおりでございます。現在の法律では取得前に三十アール持っていなければならないということになっておりますが、この点は農地法の政令によりまして、取得後に三十アールになればその人は認めるということにいたしておりますので、実際の運用といたしましては、取得後三十アールから取得後五十アールに上げたということになるわけでございます。  なお法律のたてまえとしましても、やはり新しく農業をやりたいという場合に、五十アール以上であれば許可するわけでございまして、お訳しのように、土地取得したから農家とみなされるということではありませんで、新しく農業をやりたい場合には、やはりその人は多少の資金力も要りましょうし、それから農機具の装備あるいはその人の能力を見ました上で、その人が農業をやれそうであれば許可をするということでございます。
  108. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そうしますと、もっと具体的にお尋ねしますが、いままでは三反歩以上は農家としてみなされておりましたのでいろいろな金融面、たとえば農業近代化資金でもあるいは自創資金でもあるいは農地取得資金でも、こういうものが一応借り受けできる対象であったわけです。貸し付けの対象として取り扱われておったわけであります。ところが今度取得後五十アール以上ですから、五十アール未満のものは第二種兼業農家として、これはもう農業が従で他産業が主だ、こういうことから農家として認めない、こういうことになりますと、必然的にそういう金融の対象外に置かれることになるのじゃないかと思いますが、この点具体的にひとつお示しを願いたいと思います。
  109. 中野和仁

    中野政府委員 零細な農家に対します資金の問題でございますが、お話しのありました自作農維持資金は第二種兼業農家には貸さないということにしておりますけれども、その反別によりまして差別をつけるということは現在いたしておりません。これはこの資金の性質からいいまして、災害なりあるいは病気になったような場合の維持資金でございますので、農業にウエートを置いている農家には幾ら——幾らといいましても限度があるかと思いますが、小さくてもこれを貸さないということはございません。
  110. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そうしますと、たとえばいま自作農維持資金の話がありました。農地取得資金、農業近代化資金、こういうものはいままで私は三反歩以上あればこれは差別なく借り受けることができるものと理解をしておりました。しかし実際各県が貸し付けをする場合に零細な農家にはなるべく貸さないようにする、上層農家にのみ貸そうといういわゆる行政指導は行なわれましたけれども、法的にはそういった根拠がないのですから、零細であればあるほど資金がほしい、こういうことでわれわれは融資を願ってまいった経緯もございます。しかし今度五反歩以下になりますと、五反未満のものについてははっきりもう農家として認めない、こういうことになると今度は借り受けることができなくなるんじゃないかという懸念がしてならないわけですよ。差別をしないということを一応言っておりますけれども、これはやはり大きな問題でございますので、ひとつ委員会で明確な御答弁をきちんとお願いをいたしたい、こう思うのです。
  111. 中野和仁

    中野政府委員 先ほどもるる申し上げましたように、五反以下は農家とは認めないということを農地法で今回きめているわけではございません。それに関連いたしまして、私先ほど自作農維持資金のことを申し上げましたが、農地取得資金につきましては、従来からこの資金の効率性ということがございまして、取得後その村の、平均経営面積になるという場合に原則として貸し出すということにすでにいたしておるわけでございます。それから、なお繰り返すようでございますが、維持資金につきましては、農業に精進する見込みがあれば規模には制限をつけるというような制度にはいたしておりません。
  112. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 私五反ということにこだわるわけではありませんけれども、今度の農業者年金基金を見ましても五十アール以下はこれは別扱いになっておるんですね。今後農協法の改正でどうなるか私はわかりませんが、農協組合員としての資格それから農業委員会選挙権の問題もございましょう。ですからこの五反という線の引き方というものが今後の農政推進上一つの基準になってくるであろうことはもう間違いないと思うのであります。農家としては認めないということをいっておるんじゃないということを言っておりますけれども、この農地制度における線の引き方というものが、私は今後重大な問題になってくるし、あらゆる分野に関係してまいりまするので、五反という基準を求めた根拠をひとつ伺いたいんです。
  113. 中野和仁

    中野政府委員 その点について先ほど申し上げましたけれども、この農地法をつくりました昭和二十七年のころは第二種兼業農家の大部分は三反以下でございました。しかしその後の状況の変化からいたしまして、技術の進歩等もあり、それから外部経済の発展ということから、もはや現在の日本の農家構成の中で五反未満の農家は農業をやっておるよりもむしろ農業は片手間でございまして、農業外の仕事、通勤して工場に働くとかあるいは官公庁に勤めるとか、そういう形態に大部分なっておるわけでございます。したがいまして、今後の農政を考えた場合に、限られた農地をいわば片手間に取得をするというところに重点を置くよりも、やはり農業としてやっていく農家の方向になるべく土地が動くようにということになりますと、最低五反以上の経営のほうが望ましいという観点から今回取得後五反ということに引き上げたわけでございます。
  114. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 これはわれわれの地方にも山村がたくさんあるわけでございます。山村がたくさんありまして、そこの経営規模というものはきわめて小さいわけであります。したがって三反歩から五反歩に下限を引き上げるということになると、山村の大部分の農家というものは農業をやっていけなくなるのです。真綿で首を締められるように農村から追い出されるのではないか、こういうことできわめて心配をしておるわけであります。ですから、全国画一的にこの五反歩を法律にうたうということは私はいささか問題があるのではないか。あなたは第二種兼業だって農業はもはや従で他産業に働く兼業収入のほうが主であるからこういうぐあいにした、こう言っておりますけれども、これは日本全国平場地帯あるいは山村地帯あるいはその他の地域と分析をしてみました場合に、画一的に線を引くということは少しく問題があるのではないか、こういうぐあいに私は考えます。したがって、こういうものこそ私はその地域の実情というものを考えて政令やあるいは何かで線を引くなら引く、こういう形で措置すべきが適切ではないか、本法の中に五十アール以上などとうたうということは、私はいささか実態を無視した改正案ではないか、こういうぐあいに考えるのでありますが、この点について承りたい。
  115. 中野和仁

    中野政府委員 先ほどから原則論ばかり申し上げておりましてあるいは誤解を招いたかと思いますけれども、現在の法律によりましても原則を五十アールに引き上げますと同時に——これは現行法にもございますが、「(都道府県知事農林大臣承認を受け、その都道府県区域の一部についてこれらの面積範囲内で別段の面積定め、これを公示したときは、その面積)」によるということにいたしております。したがいまして、御指摘のような山村あるいは漁村ということでもともと零細な経営の地帯につきましては、知事が、五反の範囲内でございますから、そこは二反がいいなら二反ということは別にきめられる制度になっております。この点は改正をしておりませんので、そのとおりの運用をいたしたいというふうに思います。  それからなお耕種農業について五反でございますので、花卉栽培とかあるいは集約的な経営をやった場合には五反の面積が要らないで農業経営がやられる場合がございます。その場合には政令によりまして、集約経営をやる場合には五反以下でも取得ができるということもあわせてやりたい。それからまた現在もそういうふうにすでに運用をしているわけでございます。
  116. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 各県の知事の申請に基づいて措置をすることができるという道があるということを承りましたので、それはそれとして了解いたしますが、いずれにいたしましても、農林省からもらった資料を見ましても、今日全国農家戸数が五百二十四万戸、そのうち第二種兼業農家が二百五十四万戸、こういうぐあいにあるわけであります。約半数に近いものが第二種兼業農家であります。この半数に近いものが今後農地法下限引き上げで、あなた方は差別扱いはしないとは言っておりますけれども、事実上融資の面でも補助の面でも、いろいろな取り扱いにおいて手が抜かれることが出てくるのではないかと思うのであります。こういうものがやがて農地法の対象にもならない、農協組合員にもなれない、農業者年金にも入れない、農業委員会選挙権もなくなる、こういうようなことになってまいりますならば、言うところの真綿で首を締められるように農村から追い出されることになるのではないか、こういうぐあいに考えます。したがって私は、そういうことのないように、ひとつ十分この第二種兼業農家、全農家の半数近い農家の生活の安定のために考えるべきである、こういうぐあいに思うのであります。差別はしない、こう言っておりますけれども、ではどういう扱いを考えておられるのか、ひとつ具体的に教えていただきたい。
  117. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまの問題は、先ほどからずいぶんお答えしているわけでございますが、農地法の取り扱いといたしましては、取得後五反になれば許可をするということでございます。それ以下の農家が三反なら三反、四反なら四反の間の経営を続ける場合に、農地法上その人がだめだとかどうとかいうような差別はしておりませんので、いま先生お尋ねの、一体どう扱うかと言われましても——その人が取得をする場合に、五反をこえているということだけが農地法にかかっているわけでございます。繰り返して言うようでございますが、その後の経営は続けていけるものでございます。
  118. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 それでは、これは農地局長に聞くのも少しどうかと思うのでありますが、農地法上では五反歩に線を引いた、こういうことについてはわかりました。  そこで、これはほかの局にも関連がありますが、制度金融の場合あるいは各種の補助の場合、それから農協組合員は一体どうなるのか、農業委員会選挙権は一体どうなるのか、こういうことを総合的に今後——五反未満の第二種兼業農家、この扱いをどういうぐあいにしていくのかということを、もっと大きな立場から政務次官にお尋ねをいたしたい。
  119. 池田俊也

    池田政府委員 農業のいろいろな制度なり、あるいはいろいろな補助事業等におきまして、いろいろな基準があるわけでございますが、農地法につきましては、ただいまお話がございましたが、農協におきましては、これは法律上は各別の限定をしておらないのでございます。それぞれ組合定款にまかしているわけでございまして、従来の例でございますと、大体は一反以上、こういうことでございます。  それから農業委員会は、御存じのとおりでございますが、都府県におきましては、選挙資格といたしましては一反以上、こういうことになっておるわけでございます。  それから、これは今後御審議をいただくわけでございますが、農業者年金の場合におきましては、政令で定める、こういう予定になっております。私どもは、やはりこれは、それぞれの制度なり、あるいは事業なりに応じまして、目的がそれぞれ異なる点がございますので、それぞれの目的に応じて適当な規模がきめられるべきものでありまして、一律に何がいい、こういうことは、ちょっと言えないのではなかろうかと思います。
  120. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 それでは具体的にもう一点だけお尋ねします。  いままでも三反歩程度の第二種兼業農家に対しては、われわれもいろいろ強く要請はしてまいりましたが、自作農資金、これは、いろいろ取得資金や災害資金や転落防止資金等に分かれておりますけれども、こういう自創資金の手当は、なかなかいただくことができなかった、非常に苦労があったのであります。今度農地法で五反に線が引かれる、こういうことになりますると、五反未満の者は自創資金の貸し付けの対象にならないのではないか、こういうぐあいに考えますが、この点はどうでしょう。
  121. 中野和仁

    中野政府委員 その点につきましては、最初にお答えいたしましたように、自作農維持資金は、資金の性格が、病気になった場合、あるいは災害を受けた場合の資金でございますので、その後農家が農業にウエートを置いている限り、したがいまして第二種兼業農家でない限りは、五反でありましょうと、三反でありましょうと、資金は融通するということにいたしております。今後ともその方針は変えないつもりでございます。  ただ農地取得資金になりますと、これは将来の経営規模拡大に向かっての農地取得でございますので、これも先ほど申し上げましたように、取得後その村の平均規模原則としてなるような人に重点を置いて貸すという方向で従来から進めているわけでございます。
  122. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 そうしますと、この二百五十四万のいわゆる第二種兼業農家は、取得資金は借り受けすることができない、こういうことになりますね、いまのお話では。
  123. 中野和仁

    中野政府委員 取得資金というお尋ねでありますれば、これは農業をやっていこうとする専業的な農家に、規模拡大のために貸す金でございますので、農業にウエートを置かないで、むしろ工場につとめている、その他ほかにウエートを置いている農家の一反、二反の土地取得にまで長期低利の金を貸すのには、資金の限界がございまして無理であるということから、従来とも、取得後その村の平均経営面積になるような農家に貸すということにいたしておるわけでございます。
  124. 草野一郎平

    草野委員長 長谷部君に申し上げますが、大臣が見えましたので、大臣にお願いします。
  125. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 それでは大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど午前中の質問で、政府が十六日に十一万八千町歩の転用の具体的な内容について内定をした、こういう新聞の問題について私がお尋ねをしたわけでありますが、大臣は、これについては全然関知をしていない、こういう御答弁であったわけでありますが、私は、あらためて三月十七日付の日本経済新聞を確認してまいりました。ここには、はっきり政府が十六日に内定をした、こういうぐあいに報道しております。しかも十九日の衆議院予算委員会の総括質問の答弁で明らかにするのだ、こういう解説までついておるわけであります。内定でありまするから、当然閣僚の一人として農林大臣がこれに関知しておらないということはあり得ないと思うのであります。ひとつこの際大臣の御見解を承りたいと思います。
  126. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 休憩中に調べさせてみました。三月十七日付日本経済新聞の朝刊の水田転用に関する記事でございます。これは政府の発表によるものではありませんで、この記事にもありますように、政府は何々、何々することを内定した、こういう取材記事でございまして、その取材の経路その他、たとえばどこから取材したとかなんとかいうことは、調べさせてみましたけれども、これは不明であります。内定したとか、ここにはいろいろ書いてありますが、このことは、私ども、このようには承知いたしておりません。
  127. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 新聞はあくまでも推測の記事であって、大臣には相談がない、したがって関知せざることである、こういうことでございまするから、これは憶測記事であるということですね。この点についてはあと回しにいたしますが、私、次にお尋ねしたいのは、そもそも十一万八千ヘクタールの転用は生産調整を目的とした転用でございます。したがって三月三十一日、もうわれわれの地方では苗しろ計画ができておるわけであります。四月に入るとたんぼの耕作に入るわけであります。したがいまして、速急にこれの転用計画のめどをつけて実施に入らないと作付をしてしまうわけであります。作付けをしてしまえば生産調整の役割りを果たすことができないのであります。したがって、少なくともこの水田転用の計画は作付前に目標をきめて、具体的にこれが取得の手続をしないと何の意味もない、こういうことになるものではなかろうかと思うのであります。いまの段階ですら知らぬ存ぜぬと、こういうことではあまりにも生産調整のための転用計画はずさんではないか、生産調整のためですから、いまの段階で休耕、転作と同様、所有者である農民にもうそろそろ内示して具体的な相談をしないと作付に間にあわないのではないか、こういうぐあいに考えますが、この点大臣の御見解を承りたいのであります。
  128. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のように、なるべく早く手当てをしなくちゃいかぬと思いますが、それぞれたとえば公共用地の取得であるとか、民間の工場を誘致するのであるとかいうような話については、その間にもどんどん進められるのではないかと思っておりますが、なるべく早くやって実効をあげるようにほかの省でも努力をしてもらいたい、こう思っておるわけであります。
  129. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 実際米の減産、生産調整はいろいろ内閣全体で取り組んでいることはそのとおりでしょうけれども、実際の中心となる省は私は農林省だと思うのであります。しかも農林大臣が当面の責任者だと思うのです。そういう意味から申し上げるならば、五十万トンの生産調整減産をやるためのものでありまするから、もっと農林省としては各省に対して早急に具体案を取りまとめてその実施に入るようにしなければならないのではないか、こういうぐあいに思うのであります。その点いまの答弁を聞いておりますると、どうも主管大臣としてこの問題についてあまり誠意が見受けられないような感じがしてならないわけでありますが、この点いかがなものでありましょう。
  130. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私の立場で一番希望していることはお説のとおりでありますが、各省大臣がせっかく御自分の受け持つ範囲で努力をしていてくださるわけでありますから、それを御信頼申し上げて、なるべく実効が早くあがるように期待いたしておるわけであります。
  131. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 この際、農地局長にちょっとお尋ねしますが、この十一万八千町歩というものは、いままでの農地転用あるいは壊廃の実績からしてなかなかそう簡単に土地の需要があるものではないのじゃないか、こういうぐあいに予測されるのでありますが、この際、昭和四十三年度における単年度の水田の壊廃面積がありましたならばひとつお知らせをいただきたい。
  132. 中野和仁

    中野政府委員 水田の壊廃面積につきまして農林省の統計調査部で調査をいたしました四十三年の八月から四十四年の七月までにかけての一年間の水田転用面積は、合計いたしまして二万八千六百ヘクタールでございます。
  133. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 ただいま承りますと、水田の転用面積は二万八千六百ヘクタール、これに対して、もちろんことしの十一万八千ヘクタールの転用は民間資本とか、そういうものを動員して買い上げをやることになりまするので、去年との比較にはならないかもしれませんけれども、それにいたしましても、いままでの実績から見まするならば、この思いつきによる十一万八千ヘクタールの買い上げ計画というものは実現しそうにもないと私は思うのです。したがって、五十万トンの生産調整も大きくくずれてくるのではないか、こういうぐあいに予想されるわけでありますが、この際大臣は、だいじょうぶ五十万トンの生産調整の効果をあげ得るように水田の転用が進むとお考えになっておられるのかどうか、ひとつ承っておきたいのであります。
  134. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 十一万八千ヘクタールというのは数字としてはそう少ない数字ではないと思います。けれどもこういう大事なときでありますし、各省がこれについて全面的に協力をしておるわけでありますから、私は必ずいけるものだと各省の努力を期待いたしておるわけであります。
  135. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 大臣は、各省大臣がそれぞれせっかく努力をしておるのであるからそれに期待をしておる。その気持ちはよくわかります。わかりますけれども、実際問題として、日本全体の立場からこれだけのばく大な面積について社会的需要があるかどうか、私はきわめて疑問にたえないものがあるのであります。いわんやこの膨大な土地を単年度で買い上げるということになりますると、これまたばく大な資金を伴ってまいります。そういう資金的な見通しなども考えますると、この思いつきの自民党の五十万トンの減産政策というものは、もうやる前から失敗をするのではないかという懸念が出てまいるのであります。  そこで私がお尋ねをいたしたいのは、もしこういった大量の水田の転用が結果的にできなかった、努力をしたけれどもできなかった、農民の協力を得ることができなかった、そういうことで米の買い上げ制限へと発展していくのではないかという心配を持つものであります。ここのところは非常に肝心なところでありまするから、農林大臣からはっきりとしたお考えをこの際承っておきたいのであります。
  136. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、いまここで農地局長が申し上げました年間大体二万五、六千ヘクタールと水田の転用の御報告を申し上げましたが、もう少し大きい面積が畑の面積でございます。大体六万ヘクタールくらいになるのではないかと思うのでありますが、とにかく農地転用がきびしいので工場誘致などをしたくてもそれができなくて困るという苦情がたくさん全国から私どものところへ来ております。私どもは農業という立場でいままでこれを緩和することをいたしませんでしたが、農業目的を阻害せざることに意を用いつつ農転を緩和いたしました。それからまた、長谷部さんのおくにのほうではどうでありますか、いま都市計画法が施行されるにつきまして、私は、農業者の立場からいえば市街化区域に編入することをなるべく少なくしてくれという御要望があるだろうと思っておりましたら、今日は全国的に逆であります。なるべくおれの土地市街化区域に編入してもらいたい、全く私どももいろいろ考えさせられるような要望が全国の農村から出てきている。しかもまだ線引きが行なわれておりませんけれども、概括して市街化区域に編入されるであろうと予定されておる地域のうち水田が十八万ヘクタール、いま各地の情報をそれぞれ出先からとってみますと、かなり他用途への転用はいろいろな意味で進展しております。そこへもってきて政府も非常な決意で今回の減産に乗り出したわけでありますので、私は必ずこれはいけるものだと思っておるわけでありますが、いまできなかったらどうするという、えらい先のことをお尋ねになりましたが、百万トンについては先ほど来申し上げておるように、いま農村の人々が全力をあげてやっていらっしゃる、それから五十万トン分については政府が総力をあげてやろうといたしておる最中に、できなかったときはどうするというふうなことを農林大臣が申し上げることは御遠慮いたすべきではないか。しかしまあせっかくのお尋ねでありますので、もし片方はできなかった、片方はできた、両方できなかった、いろいろあるでありましょう。そういうときにはなぜこういうふうになったのであろうかという経過を十分慎重に掘り下げて研究いたしまして、そのときにはやはり農業団体だとか県知事さんだとか市町村長だとか、協力をしていただきましたような方々の御意見も十分伺いまして、腹をきめてこれから先に対処してまいりたい。元来われわれが生産調整をやっておりますのは、日本の農業をりっぱなものに仕上げたいというのが眼目で始めている仕事でありますので、そういう見地に立ってひとつじっくり考えてみたい、そのときにはひとつ長谷部さんなどの御意見ももちろん伺う、どなたの意見も伺って対処すべきではないか、私はこう思っておるわけであります。
  137. 長谷部七郎

    ○長谷部委員 いろいろまだお尋ねしたいこともございます。農地法の条文などについてももっともっと機会を改めてお尋ねをいたしたい、こう思っています。さらに同時提案になっています農協法の一部改正案につきましては、きょうはほとんど触れることができませんでした。したがいまして、機会を改めて御質問することにいたしまして、一応農林大臣に対する御質問は以上で終わらせていただきたいと、こう思います。
  138. 草野一郎平

    草野委員長 鶴岡洋君。
  139. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 私は初めての質問でございます。したがって、質問内容がきわめて基本的な素朴な質問になるかと思います。また今回の農地法農協法の改正については初めての審議ではなくて、前国会においてもいろいろな角度から論議されていると聞いております。したがって、またいままでの各委員からの質問と重複する点が多々あると思いますが、これらの点をお含みおきいただいて、農林大臣またその関係の方々のわかりやすい、明快な答弁を最初にお願いして、そうして私の質問に入りたいと思います。  まず第一点でございますが、今回の農地法改正の中で、農地賃貸借規制緩和のところでございます。「十年以上の定期賃貸借又は水田裏作目的とする賃貸借更新拒絶をする場合には、都道府県知事許可を要しないものとすることと。」こうありますが、こうなると地主が一方的に引き上げられる結果になるのではないか、そうして耕作者のほうの立場とすれば非常に不安定になるおそれがあるのじゃないか、このように思うわけですけれども、この点どうでしょう。
  140. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、農地等賃貸借解約制限につきまして今回緩和をしたわけでございますが、その考えました理由は、現在の農地法によります賃貸借規制と申しますのは、農地改革の際に残りましたいわゆる残存小作地がございます。それの耕作権は当時から当然強化をしなければなりませんので、そういうことで今日まで至っているわけでございますが、規模拡大のために、それでは農地を貸そうかというふうになってまいりますと、あまりに耕作権が強過ぎますと、地主のほうからすれば、一度貸しますと返してもらえないということになりますので、今回、ただいま御指摘のありましたようなあの改正案を考えたわけでございます。その際農地を借りましたあと、返す場合に、引き渡し前の六カ月以内に成立した合意による場合とか、あるいは十年以上貸す、十年したら返してくれという約束をしておる場合、それから水田の裏作だけ貸す場合、これにつきましても現在では知事の許可が要るわけでございますけれども、もはや合意の場合とかあるいは十年以上貸すということを初めから約束したという場合には、返せといえば小作人のほうが返すということでありませんと、先ほどから申し上げていますような、借地を通じての流動化というのはできませんので、今回は、地主と小作人、いわば借り手と貸し手のバランスを考えた上での措置だというふうに考えまして、御提案申し上げておるような改正案にしたわけでございます。
  141. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 もう一つですけれども、その条文の先のほうですが、農地賃貸借について、引き渡し前の六カ月以内に成立した合意により解約する場合、これも今度は都道府県知事許可を要しない、こういうことになっておりますが、この合意が、ほんとうに合意したということはどのように確認するのかどうか、この辺の見解はいかがでしょうか。
  142. 中野和仁

    中野政府委員 改正案にも出ておりますように、六カ月前に書面で合意をするということにいたしております。現在でも、知事に解約許可申請がございます大部分は連署してまいっております。その大部分は、地主がだましたというようなことはございません。大体小作人の地位も非常に高まっておりますので、両方の合意をもう一ぺんだれかがほんとうかうそか調べてみるというもう段階ではございませんので、今回知事の許可をはずしたわけでございます。
  143. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 私が心配するのは、私のところにこういう問い合わせが二、三ありますので、この機会と思いましてお尋ねするわけですが、たとえば地主からの借財等があって、小作人は、耕作を続けたい、こういう人もいると思うのです。しかししかたがない、借金をしているからと、無言の圧力といいますか、そうして合意の形をとらされる場合も出てこないとも限らない、このように思うわけです。こういう問い合わせがありますので、この機会に、愚問とは思いますけれども、いかがでございましょうか。
  144. 中野和仁

    中野政府委員 解約の場合にあるいはお尋ねのようなことがあるかと思いますが、やはりその場合に、小作人は同意をしなければいいわけでございます。その場合に、どうしても地主が返せという場合は、貸したほうが一方的に知事に許可申請をいたします。そうしますと、知事は、一方申請でございますから、十分審査をいたすわけでございます。  われわれとしましては、小作人がそういう借金があるというような問題でいろいろなことがあるかと思いますけれども、やはり同意をしないほうがよろしいというふうに考えます。
  145. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 次の質問ですが、ちょっとお尋ねしますが、農業委員会選挙によって選出されるが、現在の委員となっている人の部落での立場といいますか、どういう出身か、傾向といいますか何かそのように参考になるものがありましたら、ちょっと教えていただきたいと思います。
  146. 池田俊也

    池田政府委員 農業委員会の構成といたしましては、選挙によります委員と、そうじゃない農協、共済組合等から選ばれる委員とあるわけでありますが、お尋ねは選挙委員の問題だと思いますので、それにつきまして若干現状を御説明申し上げますと、どちらかと申し上げますと、やや専業的な農家のウエートが高いわけでございます。現在の構成で申し上げますと、大体七割くらいが専業農家、残りの三割が一種なり二種なりの兼業農家、こういう実態でございます。現在の農家の構成からいたしますと兼業農家が非常に多いわけでございますから。そういう点からいえば、農家らしい農家の人が大体農業委員に選ばれている、こういう状況になるわけでございます。  それから、ついでに、階層別にどうなっているかということを若干御参考までに申し上げますが、経営面積から見ますと、全農家に比較いたしますと、やや面積が大きい、こういうことでございます。
  147. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 そこで農地または採草放牧地利用関係の紛争についてですが、当事者の双方または一方から和解仲介の申し立てがあったときには、農業委員会がこの調停、仲裁に入るようになるわけです。農業委員会というのは、どちらかといえば方針として経営規模拡大政策推進の立場で紛争処理に当たると思うのです。日本の国は御存じのように非常に中小農家が多いわけです。この大部分の中小農家が不利になるような紛争の解決になるのではないか、このような可能性があるように思われますけれども、その点についてどうお考えになっておられるか。
  148. 中野和仁

    中野政府委員 先ほど農政局長からお話しがございましたように、農業委員会をいま代表している階層は、若干規模の大きいほうの農家に片寄っている面がございますけれども、やはり五十アールから二ヘクタール程度の経営をやっておる農家が六割ぐらいを占めておりますから、そう中小農民のために不利になるような仲介はしないと思いますけれども、われわれ運用といたしましては、この法律にございますように、三人の仲介委員を選ぶつもりでございますが、その三人は、事件の性質によりましては、おのおのを代弁できる人を中立委員にいたしますかあるいは全員を中立委員にいたしますか、そういう指導を十分いたして、いまお話しございましたように、どちらか一方が不利になるというようなことはいたさないつもりで指導をいたしたいと考えております。
  149. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 いずれにしても、部落代表的色彩が濃い農業委員会の権限が、この法改正でさらに拡大されるように思われるわけです。その農業委員会が、いま御答弁がちょっとありましたけれども、厳正中立で適切なる働きをするように、政府は具体的にどのような処置を講じていくか、これをもう一回お伺いしたいと思います。
  150. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま申し上げましたように、委員の人選等はそういうことでやりたいと考えておりますが、改正案が通過いたしました暁には、正式に農業委員会仲介制度というのを始めてございますので、その辺の心がまえその他十分通達をもって指導をいたしたいと考えております。
  151. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 農地法改正の大きな目的の一つに、午前中政務次官の答弁の中で、専業農家に土地を集中させるため、このような御答弁がありましたけれども、すなわち農地の流動化でございます。しかし、最近の相次ぐ農地価格の高騰を見ると、公平なる流動化はちょっとむずかしいのではないか、このような危惧もするわけでございます。この点について、どういう対策をとっていかれるか、その点をお伺いしたいと思います。
  152. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話のことでございますが、農業に専念いたそうとする農民などが経営規模拡大して、農地が効率的に利用されるようにいたしますために、農地の流動化を促進いたすことを主としたねらいとして、今回農地法改正案の御審議を願っているわけでありますが、今回の農地法改正案におきましても、御承知のように、耕作をしておらない、つまり不耕作目的農地取得を認めないという農地法原則はもとより変更しておりませんので、この改正によりまして、耕作を行なわない単なる金持ちに農地が集中するということにはならないと思っております。また、政務次官がお答えいたしましたような趣旨で私どもは経営規模を広げるということなんで、これもやはり耕作をしておる農民を主として考えていることでございますので、その辺は御了承願えると思います。
  153. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 その点はわかりました。  先ほどもお話しがございましたけれども、今回の農地法改正で、これから新たに農業をやっていこうとし、またそういう意思を持ってさらに農業目的に供するならばということになりますが、たとえ農地を全然保有してなくとも、五十アール以上であれば取得できるようになる、こういうことでございます。取得するときの、その際の農業経営をやる意思がありますということだけでこれはいいのかどうか、その辺の見解をお伺いしたいと思います。ばく然として基準はないように私思われますけれども、その点いかがでございましょうか。
  154. 中野和仁

    中野政府委員 いまのお尋ねの点につきまして、先ほど長谷部先生からもお話ございましたが、これは知事なり農業委員会許可になっております。その許可申請に、農地を買いたいんだということだけではもちろん許可になりません。その人の資金、それから機械装備の状況、それから労力事情、全部審査をいたしました上で、農業経営がやれるという見込みがつきました際に初めて許可をいたしますので、その許可の際に十分気をつけたいと考えております。
  155. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 さらに、いま農地ゼロのものが五十アール以上の取得可能になった場合、大規模の、いわゆる企業的な農業の誕生があるのではないか。また、これも先ほどお話ありましたけれども、農業者以外の資本の進出の弊害が招かれるのではないか、このように考えられますが、この点についてもう一回お伺いしたいと思います。
  156. 中野和仁

    中野政府委員 今回、取得後五十アールに下限面積を引き上げましたのは、いまのお話しのように、いきなりそれによって大企業経営ができるということではありませんで、むしろ農業にウェートを置いてない第二種兼業農家が一反、二反の土地取得してもらいたくない。したがいまして、農家らしくない農家の取得を遠慮していただくという程度の下限面積でございまして、この五反にしたからといって、われわれとしまして、急に企業的な農業ができるということまでねらっているわけではございません。
  157. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 農業の意思があるから、ないからとか、いま御説明でよくわかりましたが、そのような大規模な企業的農業というのは機械化また近代化、それを装備して始めると思うのです。そうすると、当然、全部が全部ということはないでしょうが、現在の小規模農業よりも生産性は高くなり、またコストも安くなり、これは私としてもたいへん喜ばしいことではないかと思います。しかし反面、そこには今度は収益の面で、この企業的農業と小規模農業との間に格差が生じてくるんではないか、このように思われるわけです。その点についてどういうふうに調整をしていくか、この点をお伺いしたいと思います。
  158. 中野和仁

    中野政府委員 規模の大きい農家と小さい農家と比べてみますと、やはり収益力に差があるというのはお話のとおりだと思います。いつまでも規模の小さいまま農業経営をやっていくということでは、今後の農業を営んでいく上におきまして非常な困難を伴うわけでございます。われわれとしましては、今後は中核的な専業農家を中心にし、そういう兼業的な農家はその周辺に集めまして、一つの法人をつくるなりあるいは集団的生産組織をつくるなり、場合によっては農協農業経営委託をやるなりというような面で、総合いたしまして規模拡大の方向に進めていきたい。単に個人の農家の自立経営を進めるだけではございませんで、いま申し上げましたように、そういう農家も含めた組織もあわせて強力に推進したいというふうに考えておるわけでございます。
  159. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 さらにそれに関連して、市場等における価格競争においても、大規模な企業的農家に牛耳られて、中小農家は、このままいけば壊滅的な打撃を受けるのではないか、このような心配もされるわけでございます。この点についてはいかがでしょうか。
  160. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま申し上げましたように、個々の零細な経営そのままばらばらに経営するということになりますれば、あるいは自由競争的な農作物についてはそういう場合があるかと思いますが、これにつきましては、すでに総合農政の推進でも申し上げておりますように、農協を中心にしました広域営農団地の構想もございますし、集団的な栽培それから流通というようなものも含めまして、そういう面からの推進をしていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  161. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 もう一つ同じような問題ですけれども、このように企業的農業の出現が中小農家の脱落に拍車をかけることになるのではないか、こういう心配、ましてや男子の労働力が少なくて、いわゆる生産性が落ちている農家、いまよくいわれる三ちゃん農家とか二ちゃん農家が多い今日の農村において混乱が起こらないか、この点についてはどうお考えでしょうか。
  162. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、いわゆる三ちゃん農業というのが広範にあるわけでございますが、そういう農業経営は、えてして荒らしづくりをするとか農業から手を抜くというような事態が多いわけでございます。そこで、先ほどから繰り返して申しておりますように、稲作その他につきましても、そういう小さな経営はできるだけ集団的生産組織の中に織り込んでいくという方向でやっていかなければならないのではないか。それからもう一面からいいますと、他産業に対する、いまの例でいいますと、経営主と申しましょうか、世帯主が他産業に従事して、そのほうでの所得が安定してまいりますれば、その三ちゃんといわれる連中は農業から足を洗って、いわば離農していったほうがいいのではないかという面もございます。そういう点につきましても、いろいろ今回総合農政の推進では対策をとっておりますので、三ちゃん農業規模の大きい農家ができるために圧迫を受けるというふうにはわれわれ考えていないわけでございます。
  163. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 先刻も長谷部委員のほうから話が出ましたけれども、下限面積五十アール以上という今回の法改正でございます。山村漁村等に見られる耕地面積の少ないところ、また経済的に取得困難なところは、先ほど農地局長のほうから御答弁があったと思いますけれども、農地法の第三条三項の五号にその特例があるわけです。この特例に該当する地域が今回の法改正によってまだそのまま存続するわけですけれども、法のとおりうまく運用されるかどうか、この点についてお願いしたいと思います。
  164. 中野和仁

    中野政府委員 現在でも、町村の数にしますと、漁村あるいは山村はかなり三反以下に下げておりますけれども、ましてこれが五反に上がるとなりますと、もう少し広い範囲の町村について五反以下で、たとえば三反とかあるいは四反とかいうことをきめる町村が出てくるというふうに考えておりますが、法律にありますように、その辺は知事の申請によりまして農林大臣承認をするということになっておりますので、今後の運用になるかと思いますが、十分その辺は地方の実態に応ずるように考えていきたいと考えております。
  165. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 そうすると三十アールが五十アールになったわけですから、それに従ってそれがエスカレートするような危険性はない、このように理解してよろしいでしょうか。
  166. 中野和仁

    中野政府委員 原則を三十アールから五十アールに上げたわけでございますから、その例外はいままでよりは若干ふえるというふうに考えております。きびしくやるというふうには考えておりません。
  167. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 私が前にお聞きした点ですが、五十アール以上の農地取得農業を始めたが、たとえば一年なり二年なりして、どうもこれは採算に合わない、またその他の理由もあろうかと思いますけれども、いずれにしても農業をやめるような事態になった場合、これは政府のほうではどのように指導し処理をしていくのか。考えれば意図的に買い上げ、後に他目的利用しよう、こういうおそれはないかということでございますが、こういう場合はどうされるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  168. 中野和仁

    中野政府委員 農業をやるつもりで許可を受けましたあと、いまのお話によりますと、数年しまして農業をやめた、こういうことになるわけでございますが、その場合、その農家が土地をどうするかという問題になろうかと思います。それを他の農家に売ります場合には、当然これは知事なり農業委員会なりの許可を受けまして他の農家に売ることになります。それから貸そうとする場合がございますけれども、貸す場合に、これも成規の賃貸借許可を受けなければなりませんが、そのまま在村するのであれば一ヘクタールまでは持てるわけでございます。不在地主になります場合は、最終的には政府が買収をするということになるわけでございます。
  169. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 先ほど荒らしづくりの話がちょっと出ましたけれども、近年その荒らしづくりをやっているような兼業農家が、いわゆる農業収入に見切りをつけて農業外収入に完全に依存するようになっているところが非常に多く見られるわけです。これも何回も論議されてきましたけれども、その結果農地を専業農家に貸し付けて今度は地主となり、専業農家のほうが小作人となるようなことになるわけです。そうすると昔とは今度反対の形態のものができてくるわけです。この傾向というのは、はっきりいいとか悪いとかということは一がいに言い切れるものではないと思いますが、この現象をよい傾向か、それとも悪い傾向か、どのようにお考えでおられるか、お聞きしたいと思います。
  170. 中野和仁

    中野政府委員 限られた農地はできるだけ効率的に使うという必要がございますから、農業を本気でやらない農家がいわば荒らしづくりをするということは望ましくないと思うわけでございます。そこで、そういう農家につきましても、現在の農地法でありますと、一度貸しますと、いずれまた年とったころに村へ帰ってきてやりたいという場合でも返してもらえないというような事態もございますし、不在地主になれば政府が買収するというようなことにもなりますので、今回その他の面を含めましていろいろそういう対策として考えているわけでございますが、その場合の考え方は、そういうような荒らしづくり的な農地ができるだけほんとうに農業をやるという農家の方向に集まっていく、その場合にはもちろん売っていただいてもよろしいわけでございますが、なかなか農家は土地を手放さないという傾向が非常に強いわけでございますから、そういう農地農業をやる農家に貸しやすくするというところにねらいがあるわけでございますので、われわれとしましては、今回の改正を契機にしましてそういう方向に持っていきたいということを考えているわけでございます。
  171. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 私はこれから総合農政の一環として工業の地方分散、こういうこともいわれておりますし、いま申した現象はどんどん進んでくると思うわけです。農家の中にはほんとうに離農を希望する者があるわけです。しかしその離農する者がその後の生活等を考えて、不安のために、先ほども社会党の長谷部委員のほうからありましたけれども、完全に離農しきれないものがあるわけです。また借金等があって離農できなくなっているというところもあるように聞いております。この点について離農一時金もそうですけれども、借金のたな上げ等の対策は考えておられるか、またほかに何か強力に推進する方策があるかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  172. 池田俊也

    池田政府委員 今後離農者が逐次ふえてまいるように私ども考えているわけでございますが、これに対する対策といたしましては、いまおあげになりました離農給付金、これは四十五年度から農業者年金基金をつくりまして給付をする予定にいたしておりますが、それがもちろん給付されるわけでございます。それからそれ以外におきましても、たとえば労働省においてやっております転業対策ということで、いろいろな転業のための各種の訓練をいたすわけでございますが、同時に職業訓練等いたします場合には、そういう期間一定の手当を出す、こういうようなこともいたすわけでございます。  なお、いま借金がある農家の場合はどうか、こういうお話がございましたが、まあそういう事例も全くないことはないと存じますが、現状におきましては、農家の借金は一般的には比較的少ないのでございます。たとえば農協の面から見ますと、農協平均的な数字でございますが、一農家の借金というのは大体十五、六万の程度。したがいまして、それは災害等で若干例外的なこともあるかとは存じますが、特にそういう方々のために何か借金のたな上げ措置をこの際やるというようなことは、一般的には必要はないのではなかろうか。災害等の場合は若干別のケースがあるかと思いますが、一般的には必ずしもないように思います。
  173. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 いま職業訓練とか技術指導とかいう話がございましたけれども、これらの離農者というのは、いままで農家をやってきて離農するから離農者ですけれども、長い間農業経営をしてきたために、生活環境が、非常に悪く言えばルーズです。そういうことから考えて、企業への勤務ということが非常にいろいろな面で弊害が起きてくるのではないか。雨が降ったときには畑には出られませんし、また天気がよければ朝早くから夜おそくと、こういう生話環境の中でいままで農業をやってきたわけです。こういう点について、離農者に対する職業訓練とかまた技術指導とか具体的にどのような対策を立てておられるか。できればなるべく詳しく御説明いただきたい、このように思うわけです。
  174. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは大事なところでありまして、私どももそういうことが一番気を使い、心配いたすところでありますが、ただいま鶴岡さんもお話しのように、やはり兼業農家、それからまた離農してまいる傾向、これが逐次多くなるのは統計をごらんになってもおわかりのとおりであります。そこでそういう方々がいままでとかく冬季に出かせぎに行かれたりしておられたわけでありますが、私どもはやはり政府が申しておるように地方に産業を分散していくことが一つ大事なことではないか。そのために、四十五年度予算でもそういうことについての予算を労働省、通産省にも計上いたしておるわけでありますが、なかなかいま御指摘のようなことは口ではやすいことですけれども、現実にはよほどしっかりしないといけませんが、私どもいま政府及び財界の人たちと話しておりますのは、大体において産業別に地方に出てまいる計画というのはいろいろありますから、そういうものをある地域に分散するという計画がお立ちになるならば、まずその仕事はどういうような職種であるというようなことをわれわれのほうが情報をとりまして、それに合うような訓練を事前に行なうほうがいいのではないか、こういうことを一つ考えておるわけであります。これはもちろんあらゆる方面協力してやっていかなければなりませんが、そのようにいたして、非常に若い人は別でありますが、中高年齢層でもやり得る仕事はかなりございますので、そういうことについて職業訓練等いたします。その間はいま農政局長申し上げましたように、ちょうど石炭対策でもやりましたように、訓練中はそれだけの手当を出して、そして訓練をして、やがてそこへ来る計画になっておる産業に就職できるように、事前に計画性を持ってやってまいりたい、こういうようなことをいま考えて、政府部内でも相談いたしておる最中でございます。
  175. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 次に、土地転用と米の生産調整の問題ですが、生産調整は生産物の問題であり、どちらかといえばこれは短期的な問題でございます。一方、土地政策というのは、これは長期にわたる問題です。いわゆる基本的な問題になるわけであります。ところが、この次元の違う二つの問題、両者が同列に論じられているのが今回の政府の米の生産調整の措置ではないかと思うわけです。いま農地転用が米の生産調整を進めるための手段として用いられているわけでございますが、これは本来の常識的な考え方、すなわち農業問題というものを突き詰めていけば、最終的には土地の問題になってくるわけです。この土地政策をきちっと計画の上に立ってこそ成り立つ問題ではないかと思うのであります。米は、言うなればここ何年かの問題だと思うわけです。土地問題は現在を含めて将来の問題、これはたいへんな重要な問題だと思うわけです。こういうところから考え合わしてみると、同列に考えるということは本末転倒した対策ではないか、また、これこそ場当たりの政策ではないか、こういうように思わざるを得なくなってくるわけでございますけれども、この点の見解というものはどうでございましょうか。
  176. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまのお話のように、政府は、先ほど来ここでいろいろお話し合いがありましたように百五十万トンの生産調整をやりたい。百万トンはあのような形で、五十万トン分に見合うのは農地の他用途への転用であろう。同じように調整の目的ではありますけれども、ただいま御指摘のありましたように、手段についてはやや違っております。そういうことを考えてみますと、将来について私どもとしては、ことに農林省の立場としてはたいへん慎重に考えなければならない大きな問題であると存じております。しかし、今日までの米の生産の状況その他いろいろ勘案いたしてみますると、やはり先ほどお話のありましたように、新都市計画法ですでに都市市街化区域の中にも十八万ヘクタール余りの農地、水田があるというように、すでにそういう傾向は出てきておるわけでありますが、これもやはり私どもといたしましては、将来の農業全体を考えてみて、その辺のところは支障あるまいということであの法案に賛意を表しておるわけであります。そこで、今度の生産調整にからむ十一万八千ヘクタールの農地、水田を他用途に転用するという政策、これについてはお話のようにわれわれの立場としては重大な問題でありますが、私どもといたしましては、いまの米の生産力、その他一般の農業生産力を考えてみますと、この程度のことは一向に差しつかえない、こういう見地に立っておるわけであります。  鶴岡さんも御存じのように、わが国はとにかく高度の経済成長をいたしておりまして、やはりこの傾向でまいれば太平洋ベルト地帯のようなところにわが国の過半数の人口が集まってしまうであろう、かように言われておるのであります。そういうような傾向は、私は国全体としては好ましい傾向ではないと思いますし、そういう説が大ぜいの説であります。しかも、好むと好まざるとにかかわらず、最近は地方の方々でも地方に産業が分散されてこられる傾向を非常に歓迎していらっしゃいますので、しばしば申し上げておりますように、規模拡大して自立経営のできる農家を中心として、そうして先ほど来お話のありましたような兼業農家等も含めて集団的な営農をやっていこうではないか、こういう考え方でありますからして、やはり地方に産業が分散してまいる傾向というものは、われわれが大事な農地を保持しつつ、農業を守りつつもそういう傾向をある程度助成、助長していって差しつかえないではないか。こういう見地に立ちまして五十万ヘクタール分を農地転用のほうに振り向けた、こういうことであります。
  177. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 農地転用の問題について、もう一点だけお聞きしたいのですが、やはり五十万トン減産という大きな問題解決のためにこれは推進されると思われます。もし結果的に目標を達成されなかった場合、先ほどもお話がございましたが、いま各地方公共団体、各関係官庁が一生懸命やっているのだから、できなかったらということは考えたくないというお話でございましたが、達成のために努力していることはよくわかります。しかし、最近の実情は変わったにしても、先ほど来からいろいろ話を聞いておりますと、この転用問題は非常に困難な点があるのではないか、このように思われるわけです。万が一、結果において達成できず一それにはいろいろな理由が出てくると思うのです。そのときに検討される、こういうお話もお聞きしました。一つの理由として外部からその原因が、今回次官通達で基準緩和がされましたけれども、その基準緩和のせいであるということにされて、もっと転用基準を緩和すべきである、こういう圧力が加えられてくるということも  一つは考えられるわけです。そのときに政府はその転用許可基準の緩和をさらに進めていかれるかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  178. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 転用のほうは先ほど長谷部さんにもお答え申し上げましたように、私はいけるものだ、こう確信をいたしておるわけであります。いままた万一というお話がございました。万一そういうことがあっても転用緩和をさらにやるか、こういうお話でございますけれども、転用緩和ということは御存じのように暫定的にいたしておるのでありまして、私どもといたしましては、ただいま転用緩和等、その他の手段を講じていろいろやっておるわけであります。そのことの結果を見なければ何とも申し上げかねるのでありますけれども、これ以上農地転用をさらに緩和する意思は、現在は持っておりません。
  179. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 昨年選挙前でございましたが、自民党の田中幹事長が、農地法を撤廃したらどうだ、こういう新聞記事がちょっと出ておりました。また財界や学者の中にも、農地法改正ではなまぬるい、農地法をもうこの時点で撤廃したほうがよいという声もあるようですけれども、政府はこの点についてどう考えておられるか、一言お聞きしたいと思います。
  180. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 田中幹事長とは私ども予算編成をはじめあらゆる施策をいたしますのに十分打ち合わせをいたしておるわけでございますが、ただいまのお話の農地法の問題につきましては、世間に若干誤解があるようであります。現行農地法は、制定後の農業及び農業を取り巻く諸情勢変化に即応し得ない面が生じてきておるので、農地法の取り扱いについてはいろいろ議論がございますが、ただいまの段階におきましては、われわれは農地法改正し、農業経営規模拡大をはかるため農地の流動化を促進することが最も妥当な措置であると考えて農地法改正案の御審議を願っておる次第でありまして、これは田中幹事長の関係いたしておりました都市政策大綱などに若干農地法のことにいろいろ触れて報告を出しておりますけれども、これを全部読んでみますと、単に世間で伝えられておるような単純な廃止論ではないのでありまして、ただいまの政府及び自由民主党の農地に対する考え方につきましては、田中幹事長を含めてただいま御審議を願っておる農地法を政府が御審議を願っておりますこの精神と一致いたしておるわけでございます。
  181. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 それでは次は、米の生産調整についてでございますが、県別に転換目標、休耕目標が出されております。現在その実施段階に入っておりますが、あの目標は調整目標ではなくて行政目標であるといわれておりますが、それはそのとおりでございますか。
  182. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ちょっと聞き取れなかったのですが、行政目標とおっしゃいましたか。  私のほうは行政と申しましても、先ほどもお答えいたしまたように、生産調整ということをしなければ現在の日本の農業を健全に育成していくのに支障を生ずるという考え方から、生産団体である農業団体、その他一番関係の深い自治体の方々とも御相談を申し上げましたところが、自主的におきめいただきました方針で、したがってわれわれの申し上げておることに全く一致いたした見解でありますので、政府の方針に自主的に御協力を願っておる、こういうわけでありますから、これがみんなが気をそろえてやっていっていただく調整目標であります。
  183. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 調整目標ということですが、それならば調整目標は一貫して末端の農家の段階までそうなんであるかどうか、これを聞きたいと思います。
  184. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林省はなるほど出先機関も持っておりますが、お一人ずつの農業生産者に接触いたすということはなかなか困難でありますので、県知事を通じ市町村長さんのほうに御相談が出ておると思います。同時にまた、農業団体もその協力団体として参加していただいておるわけでありますから、私どもの承るところによりますと、各末端の農業者にその趣旨が徹底されて協力を願っておる、こういうふうに理解しております。
  185. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 そのように目標を立てて作業をすることはわかります。私は千葉県ですが、千葉県の匝瑳郡のある町では、県から来た目標を町から実行組合、そして各農家に目標を一応示すわけです。これは四、五日前にお聞きしたのですが、国の政策だからといってそれぞれの耕作面積に比例して目標割り当てをしているところがあるように聞いたのでございます。これらに対しては、その地方は山間部なのでしかたがないということで、非常に生産性の低いところからやっていこうじゃないか、そのような状態であることを聞きました。この点について指導の徹底はどうされるのか、これをお聞きしたいと思います。
  186. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 各地いろいろ事情が違うかもしれませんが、それぞれの事情に応じて御協力を願うようにやっていただくようにお願いしておるわけであります。
  187. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 米の生産調整がいま実施段階ではありますが、順調に進んでおるかどうか、それをお聞きしたいと思います。
  188. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま一生懸命でやっていっていただいておるところでありますが、私ども各地の情報を聞いておりますと、大体順調に参っておるようであります。
  189. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 その進行状況についてでありますが、新聞等を見ますと、いろいろの予想の数字等を含めて出ております。生産調整対策本部での一番新しいデータはどうなっているか、大体でけっこうですから教えていただきたいと思います。
  190. 亀長友義

    亀長政府委員 私どものほうで各県に照会をいたしております。その結果東北、北海道ではほとんど一〇〇%もしくはそれ以上であるという報告が来ております。西のほうにつきましては、現在一〇〇%を目標に努力中というところがかなりありまして、現実的にこれらの数字が最終的にどの程度に落ちつくかについての見通しは、現段階ではまだ最末端の町村長と農家との話し合いが完全に済んでおりませんので、各県におきましては努力目標をかえて報告しておるというような事情もございますので、もう少し時期を待ちまして、最終の数字は確定すると思います。動きの方向としては先ほど大臣からお話がございましたように、大体順調に進んでおるものと考えております。
  191. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 いま官房長の言われる東北地方などは、地域によっては目標をはるかにオーバーしておる、新聞等ではだいぶそのようなことが報ぜられておりますけれども、青森県の一部などでは、この間六倍という数字がちょっと出ておりましたけれども、そのように調整目標をはるかにオーバーしたところ、そういう地域に対しては、どのように考えていかれるか、どのように対処していかれるか、それをお聞きしたいと思います。
  192. 亀長友義

    亀長政府委員 生産奨励金は、目標を超過した場合にもそれに応じて奨励金を出すという方針でおります。国全体としてもし予算に不足するようなことがあれば、その分は適正な財政措置によって支給する措置を講ずるというふうに大蔵省と話し合いも済んでおります。したがいまして、六倍あれば六倍に相当する奨励金を出すという措置をとりたいと考えております。
  193. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 先日の農水委員会で官房長もそのように御答弁あったことは私は聞きました。いわゆる大蔵省と話し合いがついておる。どの程度話し合いがついておるのか。いま六倍なら六倍と言っておりますけれども、オーバーする分には間違いなく全部奨励金が支払われる、このように理解してよろしいでしょうか。
  194. 亀長友義

    亀長政府委員 オーバーする分について全部金が出るというふうに御理解いただいてけっこうだと思います。ただ地域的に六倍でございましても、全国的に六倍の予算を要するかどうかは問題でございますが、いずれにいたしましても、超過をした場合には、それに応ずる予算措置を講ずるということには間違いございません。
  195. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 やはりそれに関連してですが、一方農地転用の目標達成がたいへんではないかと私は思うわけですけれども、この際、五十万トン分の農地転用をある程度転換、休耕に切りかえ調整する考えはあるかどうか。いまお聞きすると、転換、休耕の場合には予備費等を組んでそれを支出する、こういうお話でしたのでお聞きしたいわけですけれども、転換、休耕に切りかえ調整はないかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  196. 亀長友義

    亀長政府委員 百万トンの目標は百万トンで、それを超過すれば百万トンの目標が超過をして達成したということでございます。五十万トンのほうは五十万トンのほうで目標達成に努力をしていくというふうに別個に考えております。
  197. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 予想の話で、そっちもこっちも非常に恐縮ですが、それでは逆にまた、地域によっては大幅におくれているところがあるわけです。私の千葉県なんかは非常におくれている部類に入るわけですが、香取郡のある町では、各実行組合まで一応の目標割り当てがきたわけです。それ以降は実行組合長にまかせる、こうなっておるわけです。その中の一つの部落でございますが、実行組合員が二十二世帯、四十四年度の耕作面積が二千百六十一アール、減反目標は百六十四アール、七千四百四十一キロ、こういう数字が出ております。ここでは実行組合長が二十二世帯に対して、きょうから数えて二週間ぐらい前ですけれども、転作、休耕の申し込みを受ける、こういうふうに各農家に申し入れたわけです。きのう現在でございますが、申し込みが、休耕が十アール、転作が二十アール、こういう状況です。この部落は実情を聞いてみれば、出かせぎの非常に少ないところだ、このようにも聞いております。また、このように少ない申し込みしかないというもう一つの理由としては、肥料を買ってしまった。なぜその肥料を買ってしまったか。これは農協のほうの関係になりますが、冬場に買うと五%安いので、少しでも安いほうがいいというような思惑もあって買ってしまった。だから転作、休耕はしたくない、こういう意向らしいのです。このように大幅におくれていて、とうてい目標に達成できない、こういうところもあるわけです。東北地方の先ほどの話と千葉県のいまのこの話と、両極端の地域の目標を、政府は、県単位であっても調整する意向があるかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  198. 亀長友義

    亀長政府委員 私ども昨年来数回会議をいたしまして、生産調整の趣旨につきましてはその徹底方をはかってきております。結果的にある地域では非常に進み、ある地域ではあまり進まないということになることもあり得ると思いますけれども、国全体といたしましては別に調整ということではなくて、やはり目標に達成しない県には、目標に達成するよう指導なり協力を要請するということであります。したがいまして奨励金が現在の予算以上にはみ出た場合には、その分だけ出すということになっておりますので、よくできなかったところの数量をよくできたところへ回すということは、実際上そういう調整は必要でないというふうに考えております。達成しない県には達成できるように一段の御尽力を要請するということで十分であると考えております。
  199. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 話は別になりますが、二期作の件ですが、この生産調整に関連して、現在でもまだ二期作が行なわれておるのが四国、高知県、それから九州、宮崎、鹿児島、態本等であります。四十三年度と四十四年度の統計から見ますと、耕作面積は少なくなっております。しかし収穫量は多くなっております。日本全体の収穫量からすれば、この二期作の収穫量は非常に微々たるものではありますけれども、この二期作の場合の転作休耕奨励金でございますが、一期、二期の収穫合計の一キロ八十一円を加算した金額を支払われると思いますが、この点は間違いないかどうか、お聞きしたいと思います。
  200. 亀長友義

    亀長政府委員 二期作につきましては、農業共済の保険をかけます場合に二期に分割してかけております。したがってそれぞれにつきまして基準反収量が定められておるものと考えておりますので、それぞれにつきましてキロ八十一円をかけたものを支払うということに相なります。
  201. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 それではこまかい愚問になるかもしれませんけれども、一期は米をつくったが二期は時期をおいて休耕した、こういう場合はどうなりますか。
  202. 亀長友義

    亀長政府委員 二期作の場合その他詳細な取り扱いにつきましては、私どもいま事務的に詳細を詰めておる段階でございますが、一応二期作の場合は一期休めば一期分の金だけを払うというふうな考えで目下作業をいたしております。最終確定は近くいたす考えでおります。
  203. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 そうすると収穫量にキロ八十一円をかけて支払う、このように理解してよろしいでしょうか。
  204. 亀長友義

    亀長政府委員 いま私どもで最終的な方針の決定を急いでおる方向は、いま御指摘のとおりでございます。
  205. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 話はちょっと変わってきますが、先日のテレビで、日本の一番の米どころと言われる新潟地方において、近年二度にわたる大水害のために、ある部落が二戸当たり三百万から五百万の借財をかかえていると報道されたのを私は見ましたが、一級河川等の部分はこの補修に対して国でも非常に力を入れている。しかし二級、三級河川のほうは同じ被害をこうむってもそうではない。このために転換すれば借金は返済の見込みが全く立たない。したがってこの転作、休耕に対しては絶対反対である、このような地域に対して政府はどのような対策を講じていかれるか、この点をお伺いしたいと思います。
  206. 亀長友義

    亀長政府委員 生産調整対策実施にあたりましては、私どもは各県に目標を示しておるのでございまして、各県では実情に応じて町村に割り振りをする。町村もさらに農業団体等と協議をして実情に合ったように個人別に割り振りをしてほしいということを要望しておるわけでございます。したがいまして、いま御指摘の災害農家のような場合には、十分その農家の実情を考慮して割り当てされることが望ましいと思っております。いろいろ一律に割り当てしているということを言われるのでありますが、それはよほどやむを得ない場合かあるいは趣旨をはき違えた場合にそういうことが行なわれているのだろうと思います。私どもとしてはそういう農家の個々の事情を十分考えて対処をしてほしいということを指導方針といたしておる次第であります。
  207. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 それでは最後に国有農地についてちょっとお伺いしたいと思います。この問題はたくさんございますので簡単に質問いたしますから、簡単に答えていただきたい、このように思います。  国有農地面積は、いまどのくらいあるか、またこの国有農地の実態はどのようになっているか、お聞かせ願いたいと思います。
  208. 中野和仁

    中野政府委員 昭和四十四年三月末現在におきまして、国有農地面積は三千九百九十ヘクタールでございます。  そしてその実態でございますが、その中で農耕目的貸し付けておりますのは、千九百九十三ヘクタール、それから転用のために貸し付けておりますのは四百三十六ヘクタール、残りの千五百六十一ヘクタールは現在農耕にも転用にも貸しておりませんで、政府が管理しているものでございます。
  209. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 次にお聞きしたいことは、農業上の利用に供されなくなった国有農地は現在どのくらいの面積が存在しているか、これをお聞きしたいと思います。
  210. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま申し上げましたように、転用貸し付け中のものと貸し付けをしておりませんものを合計いたしました千九百九十七ヘクタールでございます。
  211. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 昭和四十一年の秋に、農林事務次官が、都市周辺における国有農地農業上の利用に供されなくなったものについては旧地主に支払う旨の発表を行ない、いわゆる世間の大きな反撃にあったことは、大臣も御承知かと思います。これについては、佐藤総理みずからもこの問題の解決を指示されていると思いますが、いまだにその結論が出ていないように思われます。現在、とられている措置をお伺いしたいと思います。
  212. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、四十一年の秋に、都市周辺の農地のうちでもはや自作農創設に供しないものにつきましては、旧地主に返還をする、具体的にその転用目的、何に転用するかをはっきりしない場合でも、旧所有者に返還するという政令改正を考えたわけでございますが、いま御指摘のようないろいろな御批判があったために、その政令を改正することは中止をしたわけでございます。  その後、どういうことをやっているかというお話でございますが、したがいまして、現行法どおり運用するということになります。しかし、世論の批判もございましたので、われわれといたしましては、現行法に基づきまして、具体的に、転用事業者が明確になった場合初めて、旧所有者に返すわけでございますが、その返す場合の事業といたしましても、公用、公共用を優先的に取り扱うようにすでに指示をしております。  それからまた、これをどう扱うかという問題、総理からの検討しろというお話もございましたので、われわれ、学者を集めまして、おととしから去年にかけて研究会を開いて、目下、それを詰めておる段階でございます。
  213. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 この農地として供さなくなった国有農地は、毎年旧地主に売り渡されているということを聞いておりますが、ここ数年間の年別売り渡し価格面積、もしわかりましたら、教えていただきたいと思います。
  214. 中野和仁

    中野政府委員 最近の数年間の売り渡し状況を申し上げますと、二つございまして、一つは、旧所有者に売り払うもの、それから、旧所有者に売り払う必要のない農地も所管をしておりますので、それは事業者に売り払っております。その両方を合計いたしまして、昭和四十一年には百五十一・九ヘクタール、四十二年には百三十一・五ヘクタール、四十三年は百十六・九ヘクタール、最近の三年間は以上のような状況になっておりますが、その割合は、旧所有者売り渡しますものが、大体三分の二を占めております。
  215. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 四十二年の七月ごろだったと思いますけれども、佐藤総理は、これをチビッコ運動場ですかに利用する旨の考えを明らかにしておりますが、農林大臣はこの発表を貫くつもりでいるかどうかお聞きしたいと思います。
  216. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 国有農地等を旧所有者に売り払わないで直接公共目的に供出し得る道を開くことにつきましては、ただいま農地局長が申し上げましたように、学識経験者等意見をも聞きまして検討を重ねてまいったところであります。しかし旧所有者に売り払わないこととした場合は、旧所有者に対する補償の問題、過去に売り払いを受けた旧所有者との不均衡の問題等、困難な問題がございます。さらに、この問題に関連いたしまして、一昨年以来、旧所有者からの農林大臣を相手とする訴訟が最高裁判所に係属しておりますので、その推移を見た上でこの問題の処理に当たりたいと考えております。
  217. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 この問題の解決は、農地法とのこともあると思うが、この点どのような解決をはかっていかれるのか。  それから、チビッ子運動場等に使用する場合は、農地法改正しなければならないと思うが、この点、二点について最後にお伺いしたいと思います。
  218. 中野和仁

    中野政府委員 国有農地問題は、ただいま御議論がございましたように、これは特別な措置を要する問題でございます。今回の農地法改正につきましては、先ほどから御議論がありますように、構造政策の一環として出しております。大臣が先ほど申し上げられましたような結論が出ました際に、もし法律改正を要すれば、その際にやらなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  219. 鶴岡洋

    ○鶴岡委員 時間もまいりましたので、以上で質問を終わりたいと思います。国有農地の件については、まだまだお聞きしたいことがございますけれども、時間ですから、これで終わらせていただきたいと思います。
  220. 草野一郎平

    草野委員長 次回は、明十九日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十四分散会