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1970-08-18 第63回国会 衆議院 内閣委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年八月十八日(火曜日)     午前十一時十三分開議  出席委員    委員長代理理事 伊能繁次郎君    理事 熊谷 義雄君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 大出  俊君 理事 伊藤惣助丸君    理事 和田 耕作君       加藤 陽三君    菊池 義郎君       木原  実君    高田 富之君       横路 孝弘君    受田 新吉君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  委員外出席者         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      内海  倫君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局管         理課長     栗林 隆一君         防衛施設庁長官 山上 信重君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省経済協力         局外務参事官  村上  謙君         外務省国際連合         局外務参事官  石川 良孝君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の防衛に関する件      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長海外旅行のため御出席されませんので、委員長の指名によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  国の防衛に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤陽三君。
  3. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 これから若干防衛の問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、大臣がまだ御出席になりませんので、大臣にお伺いしたいことはあとに回しまして、まず事務当局の方に二、三質問をいたしたいと思います。  先月、防衛産業育成及び開発に関する基本方針防衛庁がおきめになりました。拝見して、非常にけっこうだと思うのであります。ぜひこの趣旨で今後の防衛生産及び開発をやっていただきたいと思うのでありますが、その中で若干疑問な点がございますので、お伺いしたいと思うのであります。  それは、防衛産業整備方針の中に、適正な競争原理を導入するという趣旨がきめられております。けっこうでございますが、「防衛生産はその特殊性から、技術と資本について相当の蓄積を必要とするので、競争を適正に維持しうる限度において各分野における民間企業の数は少数に限定する」これはわかるのですが、その次に「競争基盤の乏しい分野については、競争原理を導入しうる基盤育成を図るものとする。」こういうことが書いてありますが、これは具体的にどういうことでございましょうか、お答えいただきたいと思います。
  4. 栗林隆一

    栗林説明員 お答えいたします。  この「競争基盤の乏しい分野については、競争原理を導入しうる基盤育成を図る」という点でございますが、現在装備品生産につきましては、先生承知のとおり二つの事業法、いわゆる過剰投資というものを防止するという観点事業法がきめられております。これに基づきまして、防衛産業防衛を担当します企業というものがきめられております。しかしながら、私ども考えといたしましては、たとえそういうものであっても防衛産業の中に適正な競争原理というものを導入していく、これによりまして、お互いに切磋琢磨をして、レベルのアップあるいはコストダウンということをはかっていきたいという考えでございます。ただ、現実の問題といたしましては、現在のところ、たとえば航空機にいたしましても、あるいはミサイル、あるいは電子機器、そういった面につきまして競争をさせ得るような状態にない分野相当部分ございます。こういうところにつきましては、そういった競争し得るような基盤というものを今後つくってまいりたいということでございます。たとえて申し上げますと、F4の生産につきましては、プライムは三菱重工でありますが、このうちの四割を川崎重工に担当させるというようなことを行なっております。そういうことによりまして、たとえば三菱重工に対抗し得る企業というものをだんだん育ててまいりまして、そしてそこでお互いに切磋琢磨させるという方向に持ってまいりたいという考えで、このような表現をとったわけでございます。
  5. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 その点のお答えはわかったわけでございますが、たとえば大砲について申しますと、三インチ砲とか五インチ砲とかつくっている会社は一つしかないわけですね。これに競争させようということになりますと、これはたいへんな設備投資が要ると思うのですね。そういうところまでやろうというふうに、やはり独占になってはいけないというお考えですか。そこをはっきり聞きたいのです。
  6. 栗林隆一

    栗林説明員 先生質問の砲の問題でございますが、私どもこの方針をつくりました趣旨は、ある意味におきましては非常に長いロングレンジの考え方、これに基づいてつくったわけでございます。いま直ちにそういったものが実現できるかどうかというのは、いろいろ問題があろうかと思います。しかしながら、私どもは長い目で見て、やはり防衛産業という中には適正な競争原理というものを導入してまいりたいという考え方でございまして、いま先生の御質問の砲につきましては、先生指摘のとおり、現在一社がつくっております。これにいま直ちに対抗し得るものを持ってくるということは、非常に困難な問題だと思います。しかしながら、長い将来の考え方、長い考え方といたしまして、そういう常に適正な競争原理を導入していくという考え方で、今後防衛生産というものにわれわれとして対処していきたいという考え方でございます。
  7. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 長期的な視野でお考えになったということですが、そうでしょう。しかし、実際おやりになる場合には、私はいろいろ困難があると思うのです。しかし、それは承知の上でおやりになっているのだから、何も申し上げることはございません。それでけっこうだと思います。  その次に研究開発の問題ですけれども設計試作等の各分野においても、研究開発の各段階競争方式をとる、これもけっこうだと思うのです。しかし、それがきまったあと量産に移す場合にはまた競争をする、こういうことになりますね。そうすると、私はわからないのですが、試作段階開発段階で非常な競争をしてとるけれども、それと量産するときにはまた別に競争させるのだということでは、試作開発競争に本気になるでしょうか。その点はどうお考えになっていますか。
  8. 栗林隆一

    栗林説明員 私ども、この研究開発振興方針というものをつくりました考え方、よって立つところの考え方と申しますのは、やはり防衛産業整備方針と同様に、研究開発におきましてもそういった適正な競争原理というものを導入いたしまして、そういうことによってレベルアップというものをはかってまいりたいという考え方でございます。したがいまして、それぞれ試作あるいはその前の基本設計、そういった各段階におきまして競争をしてもらう、それによっていいものをまず開発をしていく。で、開発をされました場合には、この方針の5にも書いてございますように、あくまでも研究開発というものと量産とを分離していくという考え方をとっております。そういった開発されました成果に基づきまして、いよいよ量産に入るという場合には、やはりそこで適正な競争をしてもらうという考え方でございます。  先生指摘のとおり、量産段階でまた競争させるというようなことでは開発意欲が阻害されるのではないかという御質問でございますが、私どもとしましては、やはりそういった状態をつくっていくということによりまして、各企業にほんとうに自覚をしてもらう、そこでお互い競争をして、いいものをつくっていく、またできる限り安く調達をしていくという考え方でございまして、私どもとしましては、こういう関係をつくるということによって一そう装備レベルアップあるいはコストダウンというものがはかられるという考え方でございまして、そういった企業意欲を阻害するかどうかというようなことにつきましては、まさに企業自覚にまつという考え方でございます。
  9. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 まあ問題はあると思いますが、この問題はその程度にしておきます。  次に、きのう人事院のほうから今度の給与改定勧告説明を伺ったのでありますが、それを聞いておりまして、若干起こりました疑問につきましてお尋ねしたいと思います。  現在、自衛隊では医官はどの程度充足をされておりますか。お医者さんですね。
  10. 浜田彪

    浜田説明員 現在、自衛隊医官定員は八百二十一名で、六月末現在で二百八十五名医官がおります。充足率にしますと三四・七%でございます。
  11. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまお聞きしましても半分に足らない充足なんですね。これはもう充足なんというものじゃないと私は思うのですね。結局医官待遇の問題にも一つ問題があるのじゃないかと思う。きのう説明を伺っておりますと、一般職職員のベースアップの率よりか医療職職員のべースアップの率が高いように私承りました。現在でも医官自衛官としての俸給表をお使いになっておる。そうしますと、自衛官俸給表一般職俸給表基準にしてきめられるわけでしょう。医官がうまくはまるでしょうか。自衛官俸給表にそういう疑問が起こったのですが、どうでしょう。
  12. 内海倫

    内海説明員 お答えを申し上げますが、自衛官俸給表医官にも適用いたしておりますが、自衛官俸給表は、先刻御存じのように、一般職のうちの比較的水準の高い公安職俸給表に準拠いたしております。そういう意味では一般職よりは幾分高いということがまずいえると思います。それから医官に対しまして、自衛官俸給表を適用いたします際は、一般自衛官が適当と認められる号俸俸給よりもかなり高いところに特別措置として格づけをいたします。そのいたす方法は、結局一般職である医官と比べて劣ることのないところに格づけをする、こういう形をとっております。それから初任給についての調整手当一般医官と同様に給することにいたしております。そういう意味では、いま仰せのように、一般職である医官自衛隊医官とは同じ条件俸給を受ける、こういうことになりまして、いわば自衛官たる医官一般職たる医官よりもよりいいという条件俸給の上では出ておりません。  そういう意味で、今回も人事院勧告がございました医官待遇というものは、他の一般職に比べますとかなりよくなるようでございますので、それに対応して自衛官たる医官もよくなると考えておりますが、それはやはり一般職医官と同様のレベルにおいてよくなるということでございまして、御質問にありますように自衛官医官一般職医官よりもよりよくなっておるという点は現在のところございません。
  13. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 実際上一般職医療職俸給表に合わせるようにしたいというお話なんですね。ぜひそうしなければいけないと私も思うんです。人事院総裁も、民間のお医者さんの給与に比べてこの医療職給与が非常に低いのでもっと上げたいくらいだということをきのう話しておられました。そこで、そういう趣旨で私きのう調べてみたんですが、今度の医療職俸給表の(一)の二等級、これが、人事院で聞きますと、大体百ベッドから二百ベッドくらいの病院医長クラスだそうです。この最高が、今度の改定によりますと十六万三千五百円なのです。自衛官のほうで基準にしております行政職俸給表の、たとえば将補に格づけするといたしますと、いま自衛隊病院の部長さんというか、そうしましても、二等級最高の月額が十四万二千四百円です。二万円以上違うわけですね。基準が違うのですからどうしても無理じゃないか、やはり医官には医官で特別な手当を支給するようなことを考えなければ、とても自衛隊医官充足はできないんじゃないかという気がするのですが、どうお考えになりますか。
  14. 内海倫

    内海説明員 医官待遇改善ということにつきましては——まあその前に全体的に自衛官全体の待遇改善という問題が考えられなければならないと思いますが、とりわけその中でも自衛官医官待遇改善というものは当然考えなければならない問題であります。で、先ほど説明いたしましたように、少なくとも大学の卒業の年次あるいは医者としての経験年数というふうな観点からは、一般職医療職と差のないような給与を支給できるようにできるだけ調整をするようにいたしたいと考えておりますが、それにしましても階級的な格づけあるいは職種ごとの格づけ等がございますので、いろいろな点で差が出てくる点もあろうと思います。したがって、今後私どもとしましては、さらに部隊医官等については特別な手当を給するというふうなことも考えたいと思っており、なお先ほどの点で、自衛隊給与体系におきまして、医官についてはワク外特号俸を設けまして、先ほど私申しましたように、できるだけ一般職たる医官と差のないような給与が支給できるようにという措置をとっておるところでございます。
  15. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 特号ワクを設けて処理するというお考えのようですが、私はむしろ医官手当のようなものを新設をされることのほうがより効果的ではないかと思います。しかし、これは意見でありますから、これ以上申し上げません。  その次に、最近私聞いたのですが、二等陸海空士公務死亡した場合、国からもらう金は百万円に足りないと言っておりましたが、一体そうなんですか。どれくらいもらえるのでしょう。
  16. 内海倫

    内海説明員 まず結論から言いますと、大体お説のようなところでございます。いま正確な数字を手元に持っておりませんが、大体二士の平均的なものとしまして、いわゆる公務災害補償法による遺族補償というものが一時金として給付される場合、九十万円から百万円というものが遺族に対する給付として支給される。あと葬祭料、これが五万円足らず。さらに国からの給付という面では、退職金、いわゆる死亡に伴う退職金、こういうふうなものが給付される。そういうものを総計いたしましても、大体二士の場合の公務死亡は、二百万円前後ということに相なるかと思います。それで、これも御承知のことと思いますが、特に功労が認められて該当する要件があれば賞じゅつ金を給付いたしますので、これが加えられてもそれほど大きな額になることはないと考えております。
  17. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 かれこれ合わせて二百万円ぐらいになるというお話でございますが、二百万円になっても私は決して多いとは思わないのですね、いまのお金の価値から申しますと。しかも公務で殉職した場合に、そのくらいの金しか遺族に渡さないということは、いまの社会常識からいって低過ぎるのではないか。こういったことでいまの自衛隊の士気を高めろといっても無理じゃないかという気がいたしますが、これはひとつ長官がお見えになられましてから、長官にとくとお伺いしたいと思います。  もう一つ、この春に中曽根長官が、これは自民党の安全調査会お話しになって、各新聞にも出ておりましたから申し上げてもいいと思うのですが、いまの自衛官の給料が二万一千円ぐらいだ、警察官が二万五千円ぐらい、せめて自分は警察の機動隊ぐらいには自衛隊給与を引き上げたい、こういうふうなことを発言しておられましたが、その構想で来年度予算では給与要求をされる予定でございますか。
  18. 内海倫

    内海説明員 先ほどもちょっと私申しましたけれども自衛官給与に関しまして、自衛官の持っておる任務あるいは毎日の訓練に服しておる実態、さらに居住を隊舎生活として拘束されておるというふうな観点から、自衛官にふさわしい給与体系というものを考えなければならないと思いますが、これはいま急にどうといっても困難でございますので、目下のところ私どもはそれについての検討を続けております。したがいまして、来年度予算等におきましては、現行の給与体系のもとで処理する以外に方法がございません。もしできることならば、私どもは、食事で差し引かれておるようなものを有料給付というふうなことで解決できればというふうなことも考えますけれども、これも急速に実現を期するというふうな点は困難だと思います。まず自衛官給与体系としましては、来年度予算につきましては、根本的には変えるということは困難ではないか、その他の手当等でできるだけの改善をしていきたいというふうに考えております。
  19. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 これはもう一ぺん長官にお伺いしてみたいと思います。  自衛官給与体系のことでいまお話がありましたけれども、いまでも食費は国から出すものと自衛隊員俸給計算の中から差し引くものと両方ですか。両方給与をきめておるのですか。自衛隊員食費は、国が全部出しておるのか、あるいは自衛隊隊員給与を計算する際に基礎俸給から引いておるのですか。
  20. 内海倫

    内海説明員 これもご存じと思いますが、自衛官俸給というものの構成を定めます場合に、営舎費食費というものを差し引いた上で自衛官給与というものはきまっておるわけであります。
  21. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そうしますと、非常にみみっちいことを言うようですが、たとえば自衛隊隊員残飯はどうなるのですか。残飯の中には国の費用と隊員給与から差し引かれるものと、両方とも財源的にあるわけですね。それはいまどういうふうに処置されておりますか。
  22. 内海倫

    内海説明員 確かにそういう問題を内包しておりますから、合理的な面からいえば、あるいは食費としてそれに実際にかかった経費を計算して、一たん渡した給与の中から差し引くということは、私は合理的だと思いますけれども、ただいろいろそういうふうになってまいりました経緯を調べてみますと、そういう差し引きの計算作業を行なうのに非常に時間がかかる、あるいは間違いを起こす可能性も多いので、あらかじめ一定額において計算されたものを給与から差し引いた形で俸給表を定めるというふうにしておるようでございます。しかし、いま仰せになりましたような問題を含んで、自衛官給与の定め方というもの自体再検討しなければならない、こういうふうに思います。  はなはだ申しわけございませんが、残飯処理等に伴う措置いかようになっておるかということについて、私具体的に存じませんので、また必要がございましたら調べました上でお答えをいたします。
  23. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまの残飯の問題は、どうなっていますか、ひとつ調べてください。  次に、防衛施設庁長官にお伺いしたいのですが、最近公害の問題が非常にやかましくなりまして、私もっともなことだと思うのですが、防衛施設庁では前から基地防音対策をやっていらっしゃるわけですが、現在、あなた方の対象としてやらなければいけないと思っておる施設に対して何%ぐらいできておるかということをひとつお示しをいただきたい。
  24. 山上信重

    山上説明員 基地周辺対策といたしましては、騒音対策、これが最も重要なことであると存じまして、騒音関係施策につきましては、従来からも一段と力を入れてまいったのでありますが、いままでの騒音関係につきまして、いろいろな面、たとえば学校対策、それから病院その他というふうにおおむね大ざっぱに分かれると思いますが、ごく大ざっぱに申しますると、騒音関係につきましては、従来やらなければいかぬというふうな要請のありましたものから判断いたしまして、今日までに総合的に見ますとほぼ五〇%に近いものが対策を終了しておる、これはことしを含めましてそういうことになると思います。ただこれは内訳がございまして、いままで最も力を入れてまいりましたのは学校防音関係でございますが、学校防音関係につきましては、いわゆる一級防音区域と申しますか、最も激しい地区でございますが、そういう点につきましては、今年度の予算でほぼ目標を達成する、八割以上ぐらいになると思いますが、しかし、二級防音地区、多少音が少ないが頻度が相当あるというようなところにつきましては、まだ十分な施策がとれておらないのでございます。これらにつきましては、今後、相当力を入れてやってまいらなければならぬではないかというふうに考えております。なおそのほか、教育施設等につきましては、これまた従来の施策につきまして必ずしも十分でございません。今後の施策にまたなければならぬものが相当あると思います。実は、昨四十四年度におきまして、これからほぼ五年ぐらいを目標にひとついろいろな基地対策をやろうではないかというような考えのもとに全体の計画を進めておるというのが実情でございます。
  25. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 一級地区で八割だというのですね。二級の地区はもっとパーセンテージが少ないわけですが、これはぜひ計画をつくられて、何年以内に完了するというぐらいの努力をして、来年度予算もぜひ要求していただきたいと思い一まず。  大体、事務的にお尋ねするのはそれぐらいだったんですが、少しほかのことを聞いておきたいと思います。  来年度で第三次防衛力整備計画が終わるわけでありますが、いまのところ、第三次防衛力整備計画明年度で一〇〇%達成できますか。
  26. 宍戸基男

    宍戸説明員 主要項目につきましては、来年度の概算要求で、四十六年度に残りましたものを全部拾いまして、結果として一〇〇%達成し得るような要求のしかたをいたしたいというふうに考えております。金額的なことは、御必要でしたら経理局長からお答えいたします。
  27. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 たしか私の記憶によりますと、二次防が、最終年度におきましてバッジシステムがおくれましたですね。ああいうふうな、金の面でなしに技術的におくれるというふうなものはないわけですか。たとえば、建艦計画でも、三次防の残り建艦を来年度予算で全部できるんですか。
  28. 宍戸基男

    宍戸説明員 要求としましては、いま申し上げましたような態度で要求したいと思っておりますが、結果につきましては、これはできるだけ努力するつもりでおりますが、御指摘の、たとえば建艦計画で申し上げますと、二次防に比較いたしますと、どちらかといいますと順調だったというふうなことが言えるかと思います。四十五年度までの四年間で見ますと、護衛艦につきましてDE一隻が、われわれの考えておった年度割りからずれておるというだけでございます。逆に、三次防では計画しませんでしたLSTが、小笠原が返還されたという特殊事情もございまして計画外に一隻ふえたというようなこともありまして、総体的には、建艦計画もわりあい順調であると申し上げてよろしいかと思います。もちろん、まだ一年残っておりますので、残った分は一〇〇%に達するような要求のしかたをいたしたい。  そのほか、たとえば陸上自衛隊では、大きなのが定員でございますが、これは御承知のように、十七万九千でございますので、計画の十八万にあと一千不足しております。その他、航空機等につきまして、こまかい点を申し上げますと若干計画がずれているのもございますが、大勢で申し上げますと、そう大きなずれはないと申し上げてよろしいかと思います。二次防におきますバッジのような大きな問題は残っていない、こういうふうに御承知おき願いたいと思います。
  29. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 たとえば、三次防できめられた建艦が約四万八千トンですね。その四万八千トンのうち、いま四十五年度までで何トンできておって、四十六年度であと残り何トンを要求することになっておるか、ちょっとその数字を教えてください。
  30. 宍戸基男

    宍戸説明員 艦艇の建造計画としましては、約四万八千トンを計画いたしておりましたが、四十二年度から四十五年度までの実績で三万六千七百トンばかりでございます。したがいまして、一万二千トン足らずのものが残っておるということになりますので、四十六年度にはその残った分を要求したい、こういうふうに考えております。
  31. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そうしますと、ホークの部隊ですね、これは、四隊つくるやつがいま何隊できておるのですか。来年度何隊つくればいいのですか。
  32. 宍戸基男

    宍戸説明員 ホークの部隊につきましては、四十五年度までで三隊でございます。計画としては、四十六年度までで四隊でございますので、今後の計画としましては、その四隊が達成できるようにいたしたい、かように思っております。
  33. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ナイキはいま何隊になっていますか。それと、潜水隊群が来年度にできるのですか。能力的にできますか。
  34. 宍戸基男

    宍戸説明員 ナイキのほうも、ホークと同様でございまして、三次防計画としては四隊、四十五年度までで三隊、あと一隊残っておりますのを、四十六年度計画としては達成するように計画いたしたい、かように思っております。  それから、潜水隊群は、計画としまして二隊、四十五年度までで一隊できております。あと一隊残っておりますが、これも四十六年度までに達成できるように計画いたしたい。建造ぺースから見ますと、これは達成可能であるというふうに見込んでおります。
  35. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ありがとうございました。これで終わります。
  36. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 残余の加藤君の質問は、中曽根長官が見えてからという希望ですが……。
  37. 佐藤文生

    ○佐藤(文)委員 加藤委員の関連でちょっと二点だけ質問しますが、旅費のあと払い制の問題が先般問題になりましたが、これは来年度の予算でどのように処理されていますか、それが一点と、それから、さっき残飯の問題が出ましたが、それとはちょっと関連するようなしないような問題ですけれども、営外居住者の一日演習の場合の昼食分、あるいは、何というのですか、正門の勤務に当たった場合の営外居住者の昼食、実態は、営内居住者の昼食を、たまたま弁当を忘れてきたというようなことで分けて食べているというような実態に私はぶつかったことがありますので、その問題について、来年度の予算でどういうぐあいに処置しているか、この二点。
  38. 田代一正

    ○田代説明員 第一点、私の所管ですからお答えいたします。  たしかことしの春、先生から御指摘がございましたが、実態としますと、帰郷旅費という制度がありまして、これはたとえば北海道に行っていると、九州からの隊員を二年に一ぺんぐらいお帰しするということがありますので、その場合、従来は、予算の費目では運搬費でやっておりますが、運搬費になりますというと旅費ではございませんから、当然金をあと払いをする、あるいは途中の日当も出さないというかっこうであったわけでございます。確かに先生指摘のように、いろいろ考えてみましたが、来年度予算におきましては、まず制度を、運搬費の支弁にしないで旅費支弁にするということをやりたいということで、概算要求を現在用意しております。第一点だけお答えいたします。
  39. 佐藤文生

    ○佐藤(文)委員 帰郷の場合じゃない、こういうケースです。ある駐とん地から一日の出張命令を受けて他の駐とん地に行きますね、そうして一日で帰ってきますね、そういう場合に、旅費のあと払い制ということで、駅に行って、自衛隊員です、だから旅費はあと払いということで、現金を出さないでこれはあと払いすることが、きわめて恥ずかしいし、みっともないと言うんですね。その問題をあわせて来年度予算では、運搬費ではなくて旅費支給ということになりますか。
  40. 田代一正

    ○田代説明員 いまの場合はおそらく、日額旅費というかっこうだと思うのですけれども、普通、旅費の場合は、遠距離に出ますから、前払いというような、一部概算払いかと思っておりますが、普通われわれは、たとえば私が北海道に一週間出張するといたします。この場合は、旅費が出るのは一種の概算払いですね、初めに出るのは。あとあと払いというかっこうで完結するわけです。出張日程が変わるかもしれませんから、それが普通のやり方。非常に近距離の場合は、あと払いになるという日額旅費、ですからこういう形があるんじゃないかと思います。これは何も防衛庁限りの問題じゃない。一般公務員もこの扱いをしているのじゃないかと思います。ですから、その点につきましては、一般公務員全体の問題になりますので、私どもといたしましては、これは特にひどいからどうこうという問題じゃない。私がさっき申しましたように、帰郷旅費につきましては、確かにわがほう独自の問題であるし、従来の扱い方でもどうも徹底さを欠いている点もございますので、それを直したいという気持ちを持っております。
  41. 佐藤文生

    ○佐藤(文)委員 意味がよく——私の考えていることと違うようなんですけれどもあと払いという概算旅費をあとから本人に払う、そうじゃないんで、たとえば二曹なら二曹が一日の出張命令を受けて福岡の基地から鹿児島のほうに行って一日で帰ってくる、こういうような場合に、福岡の駅に行って、その駅の窓口で自衛隊員という証明書を書いて、そしてそのまま汽車に乗っていって、全然本人はその旅費をもらわないというわけですよ。そういうことが現実に第一線で行なわれているのですよ。それを問題にしたわけですよ。ですから、一日の出張でも出張旅費をやって、あと払いならあと払いで本人にあげて、それからやるならいいんですが、それじゃなくて、自衛隊に限って駅の窓口でもって自衛隊員の証明書を出して、そして旅費は自衛隊のほうから払う、本人はそのまま乗っていく制度というものはもう改正すべきじゃなかろうかということです。そういうことがやられているでしょう。やっているのですよ。その問題です、それを前回問題にしたのが来年度の予算ではどうなっているかということなんです。それが自衛隊員にとって、非常に何といいますか、メンツを汚されてどうにも恥ずかしくてしようがないというんですね。
  42. 田代一正

    ○田代説明員 ただいまおっしゃったことは、私は具体的に実はわからないので聞いてみたんですが、おそらくたてまえとしては普通訓練、演習とかいう場合に輸送するという場合に、大体運搬費の支弁という形で原則として扱っております。現にその延長線上でそういう場合をとらえたんではないかと思います。そういたしますと、これはやはり各共通の事例のようでございますから、そういった自衛隊という性格の集団においては、そういう形で行なうという話でございました。そういたしますると、これは著しくどうかということにはなかなかならないのじゃないか。私はいろいろ点検してみたんですけれども、さっきの帰郷旅費がどうもよくないという感じがあるわけであります。
  43. 佐藤文生

    ○佐藤(文)委員 演習の延長なら、私は現地で問題にならないと思うのですね。ところが、私は現地で、演習の延長じゃない、出張でそういうことがあり得るということを聞いたから、これはおかしいなと思うので、そういうケースがあるかないか再調査されてあれば、私はそれを訂正していただきたい、こう思っております。
  44. 田代一正

    ○田代説明員 いま御質問でございますので、よくもう一回調べてみまして、それがはたして合理性を欠くかどうかという判断を検討したいと思います。
  45. 内海倫

    内海説明員 昼食の問題も、前にも私お話し申し上げたことがあると思うのですけれども、宿泊を要する演習の場合には、それに要する昼食の費用は官費で出すことになっておりますが、宿泊を要しない演習の場合には、営外手当をもらっている者につきましては自弁ということになっております。したがって予算経理上は当然自弁として処理されるべきものでございます。したがって、来年度におきましてもそれについての予算措置というものはおそらくいたすことは考えておりません。ただ、いま御指摘がございましたように適宜やっておるじゃないかという点につきましては、もしそういう実態があれば、やはりそれは、現状におきましてはそれに要する相当額を徴収すべきものだ、こういうふうに考えます。
  46. 佐藤文生

    ○佐藤(文)委員 どうもありがとうございました。
  47. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 大出俊君。
  48. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんから、長官おいでになりませんけれども、きわめて例外でございますが申し上げます。  小幡さんがアメリカに行かれましたね。基地問題等全般について、もちろん基地だけではないわけでございますが、話して帰ってきておられますから、そこらから承りたいのでありますけれども山上さんとおそらく打ち合わせば済んでいるだろうと思いますけれどもお話しいただければお話しをしていただいて、長官がまたアメリカにおいでになることでありますから、長官にもその点は承りたいと思います。それから具体的な中身に入りたい、こう思っておったのですが、話が少し逆になりましてあれでありますが、とにかく基地問題について事務レベルの折衝が行なわれたわけでありますが、その結果、新聞で見る限りは幾つかの基地を共同使用しようというふうなことですね。その程度しか新聞には載っていないのでありますが、基地問題に関して日米間の事務レベルの話し合いで概略どのようなことになったのかという点を、新聞では判断しかねる点もありますので、おわかりであればお知らせいただきたいと思います。
  49. 山上信重

    山上説明員 今回小幡事務次官がアメリカに行かれて、日米協議委員会の事務レベルの協議の会議に出ました際に、基地問題についてどういう話があったかということでございますが、これは要するに、新聞紙上にも出ておりますとおり、在日米軍基地についての自衛隊との共同使用、この問題について主として話し合われたことと伺っております。自衛隊基地の使用の問題につきましては、防衛庁におかれましていろいろ方針をいま検討されておりますので、私がお答えするのが適当かどうかはちょっと問題があると思いますが、私の承知いたしておるのでは、そういった共同使用のやり方について、在日米軍基地のうち米軍があまり使っておらないとか今後使わない見込みがあるとかいったようなことも考え、かつまた、米軍基地をできるだけ自衛隊管理に移したほうがいいではないかという考えのもとに、共同使用についての考え方説明した。その際そういったような共同使用をするものについては経費の負担をどういうふうにするんだというようなことも話し合われ、どういう割合で負担するかというようなことが主として話し合われた。共同使用そのものについてはそれぞれの話があったが、ただ具体的にどこそこをどうするというような話し合いはなかったように私ども聞いておるのでございます。これらにつきましては、防衛庁におきましてもいろいろ方針考えておりますが、それらとにらみ合わせ、具体的な折衝におきましては、今後それぞれケース・バイ・ケースあるいは総括的な話し合いになるのではないかというふうに考えております。
  50. 大出俊

    ○大出委員 これは施設長官に承ろうということに無理があるのかもしれません。たまたま長官、本家のほうの中曽根長官がおいでにならぬわけでありますから、どなたかにお答えをいただかねば話が前に進まないわけでありまして、非常に時間のないところに質問なされる方々がたくさんおられますから、私も実はきょうはあるだけの時間でと思ってここに立っておりますので、所管違いがあろうかと思いますけれども、もしそうであればどなたかわかる方から御説明いただきたいのです。  共同使用二十カ所、こういうふうに新聞にはっきりと書かれますと、さてどこだろうというようなことになるのが世の中の常でございますが、そこでまた座間あるいは立川等の検討をしようということになりますと、旧来問題があるところですから問題がまた起こる。そこでかつて予算委員会の分科会で、私この席だったと思いますけれども中曽根長官に、その当時山上さんもお見えになったのですが、地位協定との関係で幾つか問題を提起したことがあるのです。自衛隊基地管理という問題につきましては、法律的には地位協定の三条が一つありますね。座間の場合、あとでどう直すか知りませんけれども、当初は三条適用という形で話が進んでいたはずであります。たしか六月ごろそういう申し入れをしたと思います。このときにも防衛庁のほうと施設庁のほうと両方に私連絡をとりまして、確かに二条四項(a)なり(b)なりという形のものを考えるなら施設庁のほうだろう、しかし、三条だということになれば防衛庁そのもののほうだろう、江藤参事官かどこかその辺でおやりになるだろうと考えまして、いろいろ質問したことがある。ところが、両方からんでいるのですね。三条といえば米軍の管理権で差しつかえない範囲で一時貸す、こういうことです。ところが二条四項の(a)でいけば、一時的にということで、米軍が持っている基地自衛隊が借りるというかっこうです。片方は一定の期間ということで、二4(b)ならば、逆に返還をされた基地を米軍が使うということですから、おのおのそれなりに、これは法律的には厳密に考えなければいかぬと思います。だから、ここでいっている共同使用二十カ所というのが、つまり二4(a)でもなければ二4(b)でもないということになると、つまり自衛隊基地管理というものから離れた考え方ということになると、一時的にあるいは一定の期間というところにひっかけて、とりあえずそうやっておくんだという、つまり座間がテストケースだ、そういう考え方もあると思う。これは非常に遺憾なことだ、ごまかしだと思うのです。  なぜならば、予算委員会であれだけ問題になり、楢崎質問などがあって、長官は、地位協定の変更をいたします、改定をする、こういうことで二4(a)なり二4(b)で自衛隊基地管理を提起された。ところが愛知外務大臣が飛び込んできて、アメリカとの沖繩返還交渉の経過から見て、条約あるいは協定を変更なしに適用するんだということになっておるから、七二年の沖繩返還で、地位協定をいじることは国策上まずいということで中曽根構想は引っ込んだ。そうでしょう。それを、何か知らぬが、いつの間にかアメリカへ行って話をしているうちに、とりあえず共同使用というかっこうでやろうという、これは私は基本的に問題があると思っているのですよ。だから、そこらのところを詳しく話をいただかぬと、どういう意図でそういうことをお考えになっておるのかということを明確にしていただかぬと話が前に進まないので、まずそこを聞きたい。  そして、対象になるのは二十カ所と言っておられる。羽田に帰ってきた小幡次官が記者会見をして、対象は二十カ所と言っているのだから、そこをはっきりしてもらいたい。そうなるかならぬかはこれから折衝するんだからわかりませんが、対象になったところははっきりしていただかぬと困る。方々からいろいろ問い合わせが殺到しているんですから、私も困っておるのです。
  51. 山上信重

    山上説明員 この米軍基地自衛隊管理あるいは共同使用という問題は、私は、これは地位協定のワク内の使用、現在におきましては当然そういう前提で話し合いをされているので、また今後もそういう話をするということになると思います。したがいまして、われわれといたしまして今後処理していく場合に、具体的にどういう条項でやるかということになれば、二条四項(a)もしくは(b)というものが前提になって共同使用という形があらわれてくる。ただ、そういった共同使用をする以前に米軍の管理権に基づく三条使用ということが、自衛隊と現地米軍との間で話し合われるということも、これは従来の実績等から見てあり得ないことではないし、またあり得ることだと思っておりますが、私ども考えております共同使用というものは、二条四項(a)もしくは(b)、こういうものを前提にした、そういった使用であるというふうに私は考えておるのでございます。  なお、もう一つの御質問のほうの二十カ所云々ということにつきましては、おおむねそういうことを考えておるというふうな御趣旨であろうと思います。われわれのほうに対しまして、具体的に、ではこれというふうにまだ指示がない現状でございますので、大体そういうふうなところを防衛庁のほうでいろいろいま研究されておるという段階ではないかと思っておる次第であります。
  52. 大出俊

    ○大出委員 長官がおいでになりましたから、先ほど加藤さんの質問の決着をおつけいただくほうがいいのじゃないかと思いますので……。
  53. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 加藤陽三君。
  54. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 長官に二、三お尋ねしたいと思います。  新聞で見ますと、来月アメリカにおいでになるようでございますが、今度アメリカにおいでになる目的をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  55. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 行きたいと思いまして先方と日程その他について調整している最中でございまして、行くとまだ正式にきまったわけではありません。もし行く場合には、アメリカの最近のニクソン声明その他一連の政策に伴う先方の考え方とか、われわれのほうは、われわれがいま行なわんとしているいろいろな防衛に関する政策とかあるいは基地の問題の処理等について、いろいろ隔意なき懇談をしてこよう、そういうふうに考えております。
  56. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 まだおきまりになってないということですが、前から、日米安全保障協議委員会は、日本側は外務大臣防衛庁長官なんですね。アメリカのほうは在日アメリカ大使と太平洋軍司令官なんです。何か日本の国民感情としては、日本が外務大臣防衛庁長官なら、向こうも国務長官と国防長官がメンバーになってよさそうなものだという気が私はするのですが、その点もお考えいただきたいし、国防長官にお会いになりまして、いまおっしゃったようなことを話し合われること自体が私は非常に意味があると思うわけであります。これはおきまりになってないならそれだけにいたしておきます。  次にお伺いしたいのは、この春、いわゆる中曽根構想なるものを御発表になりました。私この席でも申し上げましたが、非常に敬服をしておるものでありますけれども、そのときに、四十五年度の予算は概成をしておるので、長官のお考えを実現することはなかなかむずかしかった。今度は予算要求段階でございますから、ぜひ来年度予算において、あのときお述べになりました中曽根構想を強力に実現をしていただきたいと私は思うのであります。  一つは、自衛隊の中における人間性尊重と申しますか、これを非常に強調なさいましたね。私はけっこうだと思う。この間も西ドイツのほうでいろいろ聞いてまいりますと、西ドイツのシュトラウスさんも国防大臣も、新しい武器や車両の調達をやめても人間性尊重の予算をつくるのだ、そのことが西ドイツ国防軍の士気を高める、モラルを高めるのだ、全体としての力を大きくするということを言いまして、一九七〇年の予算の編成がえをいまなされつつあるのだそうであります。私は中曽根長官のほうが早くそういうことを言われたのだろうと思いますが、ぜひ実現していただきたい。  それに関連しまして先ほど事務当局にお伺いしたのですが、二等陸士が公務で殉職しまして、何ぼ国から金をもらえるか、長官知っておられますか。
  57. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 正確にはよく知りませんが、全部合わして百万円前後、百二、三十万円が限度だろうと思います。
  58. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 私の聞いたのでは大体九十万円から百万円、いろいろなものがありますから、全部合わせるといまでは二百万円ぐらいになるという御答弁をさっきいただいたわけであります。これは長官自衛隊隊員としましては、公務に殉職した者に対する国の給与としては少ないと思われませんか。これは国家公務員全体の問題でもありましょうけれども、特に自衛隊、警察、消防というふうな職務にあります者には、その点は特例を設けられていいのではないかと私は思うのであります。  もう一つこの点に関連してお伺いしておきたいのは、この春いわゆる中曽根構想を述べられました際に、現在の自衛隊員の給料は、初任給ですか、大体二万一千円だ。警察官は二万五千円だ。せめて自衛隊は警察の機動隊並みにはしたいということをおっしゃったように私は記憶をしておるわけでございます。非常にけっこうだと思う。最近の募集難等から見ましても、それは愛国心に訴えることもけっこうでございましょう。しかしそれだけではなかなか募集難を解決するというわけにはいかないと思う。来年度予算におきましてぜひ自衛官給与改善するという意思をお持ちになっておると思うのでありますが、ひとつお答え願いたいと思います。
  59. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まことに同感でございます。さきのほうの公務殉職の場合におきましては、私は賞じゅつ金を五百万円程度に引き上げたい、そういう考えに立ちましていろいろ作業し、大蔵省にも要求する考え方でおります。  それから一般給与につきましても、今回の人事院勧告で少し考えていただいております。たしか約一九%チップぐらいになっております。それでも自衛官の場合は二十四時間拘束で隊内におるわけでございますから、警察官よりもさらに加重された負担があるわけです。また法律上も警察官以上のいろいろな義務の遂行を命ぜられておりまして、そういう面からいたしましても、警察官に比べてみてまさることこそあれ、劣るものであってはならない、こういうふうに考えまして、その点もいろいろな面で努力してまいりたいと思っております。
  60. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ただいまの長官の御答弁をいただきまして私満足するものでありますが、ぜひ実現をしていただきたいと思います。長官おいでになります前に佐藤さんからもお話がございまして、旅費のあと払いの問題とかいろいろこまかい問題があります。これは金額としてはたいしたことではないかわかりませんけれども自衛隊全体のモラルを上げるという意味におきましては私非常に大事な問題じゃないかと思います。こまかい問題でございますから一々長官にお伺いいたしませんが、事務当局によくお聞きになりまして、人間性を尊重する自衛隊予算を来年度はぜひつくっていただきたいと思います。  もう一つだけお伺いしたいと思いますが、最近の新聞で見たのでありますが、一年制任期の隊員を採用することをお考えになっておるということが出ておりましたが、これはどういう内容でございましょうか。
  61. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは現在アイデアの段階でありまして、まだ正式に防衛庁としてきまったわけではございません。しかし検討はさせております。その理由は、普通科連隊の場合は大体三カ月ぐらいで一応の教育は終了する。したがって一年制というものもそういう技術面や訓練面から考えれば考えられる。それからわりあい、一年ぐらいならば自衛隊に行ってもいい、それで教育訓練を受けて自分も修養しよう、そういう人たちもかなりあるように見受けられております。そういう部面からいたしまして、普通科連隊に限ってそういうものも追加することを検討したらどうか、そう  いうふうに考えておるわけであります。
  62. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 その点わかりましたが、ちょっといま関連をして思い出しましたが、現在自衛隊に婦人自衛官を採用しておられますね。看護婦でない婦人自衛官、これがいまどれぐらいおられまして、どういう任務についており、防衛庁として婦人自衛官の勤務態度というものをどういうふうに見ていらっしゃいますか。それをちょっとお伺いいたします。これは事務当局から……。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 婦人自衛官の数は正確にあとで御報告させますが、たしか五百人か六百人ぐらいであったと思います。これらは通信であるとか、会計であるとか、庶務であるとか、そういうようにわりあい肉体労働の伴わない仕事に従事させているわけです。使ってやってみました結果は、かなりいいようであります。そういう面から次の防衛計画におきましては、かなりこれを拡充一しよう、そういう考えでおります。
  64. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 実は先般イスラエルに行ってまいりまして、イスラエルの状況を見てきたのでありますが、あそこは世界でただ一つ婦人にも兵役義務を課しているわけでして、私の見たところ、おそらく全隊員の二割くらいが婦人兵ではなかったかと思います。後方の勤務はほとんど婦人がやっております。幹部は別でありますが、実際の仕事は婦人がやっております。聞いてみましたところ、一向差しつかえないということを言っておりました。一年制任期の隊員の問題とあわせて自衛隊の欠員の状況等も考えられまして、そういう面について御検討をお願いしたらいいのではないかと思うのでございます。  ありがとうございました。以上をもちまして質問を終わります。
  65. 佐藤文生

    ○佐藤(文)委員 関連して。  長官質問します。アメリカに行かれる希望で交渉中、こういう御返答でございましたが、ぜひこれは実行していただきたいと思います。  私は先般ペンタゴンに行きましたら、日本担当課長が三十歳の女性であります。その三十歳の女性が、アメリカの代表の窓口として極東アジアの防衛問題に突っ込んでいるわけです。私は、向こうの長官と話をすると同時に、第一線のその担当課長あたりとも長官会っていただいて、そして日本の安全保障に対する長官考え方を広く向こうで主張し、また発表していただきたいと思います。ということは、先般アジア各国を視察したアメリカの国会議員が、日本には軍国主義が復活してきた、マレーシアでは暴動が起こりそうである、フィリピンでは革命が起こるであろう、こういう三つの点をレポートとして報告しているわけです。その中の特に日本の軍国主義復活について、私はその論旨をひっくり返してもらいたいと思います。とんでもない考え方だ。ほんの一部を見て軍国主義復活ということを発表し、またそのレポートの中に入れているということは、あまりにも偏見であるということを、長官考え方で、私はこの機会に明確にその軍国主義復活という論旨を反論していただきたいと思います。私は日本ほど集団防衛、自主防衛、それから教育の水準の向上、極東アジアにおけるバランスの外交、軍縮委員会、それから農林、中小企業とか、こういったバランスのとれた安全保障体制にしようという国はないと思っているのですから、その点を主張するためにもぜひ断行していただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本に軍国主義が復活しつつあるというような考え方がもしあるとすれば、これは非常に大きな誤解でありまして、日本の現状をごらんになれば、軍国主義の軍の字も私はないと思うのであります。そういう日本の実情を見きわめないで、無責任な考え方が表に出るということは非常に遺憾千万であります。私ら公務員といたしまして、そういう誤解がもしあれば、これを解消させることは非常に大事な仕事でありますので、努力してまいりたいと思います。
  67. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 大出俊君。
  68. 大出俊

    ○大出委員 基地問題に入りまして、長官、これ途中になりましたので何かちょっと話の腰が折れたような感じですが、基地問題のほうをあとにおくらせていただきまして、何点か先に長官に承りたいのですが、きょうは七人の質問者の方々がおいでになりますので、なるべく簡単にと思っております。  最初に、国防の基本方針をお変えになるという、長官の例の自主防衛五原則があるわけですが、これは一体とうなっていますか。——もう一ぺん言いましょうか。だいぶにぎやかでありまして、率直に申し上げると、私も本会議で、変えてもらいたくないというつもりで実は質問したのですけれども、どうも世の中じゅう佐藤さんが言ったのと逆でして、資本の原理というのは非常におそろしいと思っておりますから、したがって、もしいま口に出されたようなことになってはたいへんだという気持ちが強い、またそういう衝動が日本の国内にあるのではないかと思うものですから、したがって、この機会に、あまり周辺諸国を刺激することはどうもよくないのではないかという気持が、立場は違いますけれどもございますので、したがって、三十二年につくったものではございますが、特段にどうもこれでは困るということはないのではないかと思いましたから、そこで長官の言われる自主防衛五原則というようなものに触れて総理の御見解なり、特に大蔵大臣の御見解もいただこうということで質問しましたが、どうも最近の様子を新聞その他、あるいは記者諸君のことのはにのぼることを聞いておりますと、なかなかこれが長官考えのように進んでいないように見受けられるわけであります。変わるなら変わるで、その変え方について、立場は違いますが、できるだけひとつ私ども考えて心配がないようなものを、こういう気持ちがありまして、変わるのか変わらないのかというところを実は本会議で聞いてみたわけでありますが、間違いなく変わるというふうに感ぜられる答弁であったわけです。したがって、そこらのところの事情を御説明いただきたいと思うのであります。
  69. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国防の基本方針は昭和三十二年にできたものでございまして、その後非常な情勢変化もあり、現状から見まして、現在のままでいいかどうかは検討を要するところがあるように思います。したがいまして、現在の国民のコンセンサスがどういうところにあるかということも踏まえつつ、情勢変化もよく考慮して検討すべきものであると私は思います。この間国防議員懇談会を開きまして、この問題も提起いたしまして検討する、もし必要があるならば改定する、そういうことになって、いまその作業が事務レベルで進行中でございます。私個人といたしましては、この際次の防衛計画をつくる基礎としても必要なところの検討と、それから改正と申しますか、修正と申しますか、そういう必要なる改革を行なうことを希望しております。
  70. 大出俊

    ○大出委員 十六日の新聞なんですけれども、「国防の基本方針」「改定、大幅に後退か」という見出しで「安保ワキ役に異論」「中曽根構想タナ上げも」なんということで、長官があれだけおっしゃったのが簡単にたな上げになったのでは長官の権威にもかかわる。もちろん長官はそれほどこだわって言っておられなかった。国防の基本方針改定にあたっての参考というような意味でおっしゃっておりますから、したがって、やはりこれだけ論議を呼び、これは国内的にも国際的にもおそらく論議を呼んだのだろうと思いますが、それがそう簡単にたな上げになるというのだったら、これはちょっと長官何か言われても、悪い意味でなくて、少し考えて聞かなければならぬということになるわけでございまして、そこで私は、総理にずいぶんしかと確かめたいと思って、ここに当時の議事録がありますけれども、本会議の総理の答弁なんでございますけれども、「中曽根長官が真剣にその職責に取り組んでいる姿を見て、たいへん心強く感じている」というのが総理の第一番目の点でありまして、「中曽根君は参議院の予算委員会で、わが国の防衛についての五原則を述べておりますが、いずれも妥当なものであり、平和に徹するわが国の防衛の心がまえを明確に打ち出しております。私は中曽根長官を全面的に信頼していることを重ねて申し述べてお答えといたします。」こういう総理の答弁でございまして、あわせて財政当局である福田さんに承りましたら、福田さんは、私はあるいは同選挙区だからかと思いましたが、えらい、総理どころではない、全く中曽根君の構想というものは公正妥当なものであって、そうでなければならぬと思う、財政当局であってもああいう答弁、考え方になるだろうという話で、全面的に御賛成だというお話でありました。ということになると、長官の言われている、少なくとも骨子になる原則というものは改定にあたって表に出てくるものであろう、こういうふうに考えまして、それならば非核三原則の問題にしても、憲法というものを前面に押し出して、改定国防の基本方針の中に明確にすることもそれなりに必要だというふうに私も考え方を変えていかなければならぬという気になったわけであります。そこらが簡単にたな上げだということになりますと、これは一体どういうことなんだという疑問を感ずるわけであります。したがって、どうしても平和憲法を守ろうというものの考え方、非核三原則を守ろうというものの考え方、国力、国情についてはいろいろ議論があるだろうと思いますが、そういう点がなぜそう簡単にたな上げなどといわれる新聞論調になるのかという、そこらのものの考え方を実は御説明いただきたい。
  71. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その新聞の記事に私は責任を持ちません。新聞はときどき観測記事が出るものでありますから、必ずしも事実を正確に伝えておるとは限らぬと思います。やはり国民のコンセンサスがどの辺にあるか、それから将来日本をめぐる情勢や世界の情勢がどういうように動いていくか、そういう情勢をよくにらみながらこれは慎重にやるべきものである、軽々にやるべきものではないと私も心得ております。  それで、新しい防衛計画は、この秋に防衛庁としては原案をつくりたいと思っておりますから、それまでにやってみたいという希望を持っております。しかしほんとうにやろうというときには案外低姿勢になるのではないですか。
  72. 大出俊

    ○大出委員 木村副長官が、談話という形でございますか、記者会見をおやりになって、いまお話しになりました議員懇談会、安保調査会その他でいろいろおやりになったあとで、田中幹事長の御意見もあったり、官房長官お話もあったり、総理自身のお気持ちもあったのでしょうか、いろいろあったあとで木村副長官がものをおっしゃった。この言い方は、中曽根長官の言う五原則をある意味では裏からとらえていろいろな意見がある、小坂さんの意見もありましたし、いろいろあるようでございますけれども、いまお話の、長い目で見てそっちのほうにという意味にとれる談話のように私は思いまして、そこらに一つのヒントがあるような気がしたのであります。長官のいま言っているところも一つ似たようなことがひょっと出てきたわけでありますけれども、ただここではっきり承っておきたいことがある。というのは、まず一つは非核三原則の問題なんでありますけれども、これは何も新聞だけ取り上げて私申し上げているのではなくて、新聞記者の方にも承ってみましたし、総合誌に書いてあることも読んでみましたが、どうも非核三原則というものは佐藤内閣の政策なんだ、政策と言い切りますと、つくらず、持たず、持ち込まずの持ち込まずが政策になっておりますから、あと二つは憲法の問題だということになっておりまして、いささか大ざっぱな言い方になりますけれども、しかし佐藤内閣が堅持している方針なんだ、だからそのあとの内閣まで縛るというようなことをすべきではないという反論が出てきたりしている。私はこの核防条約その他に関する調印の舞台裏等をいろいろ聞いておりますので、したがって、どうもそこにひっかかってそう簡単に見過ごせないところが実はあるわけでございます。したがって、まず一つは、この非核三原則問題について長官はどう考え、これを基本方針に入れるべきでないという方々の考え方というものは一体那辺にあるのか、まずそこらから承りたいと思います。
  73. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 中曽根個人といたしましては、国際情勢に重要な変化がない限り、自民党政府というものは非核三原則を維持していくことが賢明である、こう考えます。
  74. 大出俊

    ○大出委員 なかなかものを言わなくなりました。長官もう少し話しませんか。珍しくボキャブラリーの多い能弁な長官がどうも低姿勢になり過ぎたのでは、私のほうが話の継ぎ穂がなくなる。私が一人でしゃべることになりますが、あなたおっしゃらぬからそれでもいいのですが、おくみとりをいただければいいのですが、実は新聞の社説なんかを見ましても、幾ら日本の側で——長官も、実は長官におなりになる前はどうもいま言っておられるようなことではなかったような記憶が残っているのです。ところが長官におなりになってから、この点はたいへん慎重におなりになって、核問題については持つべきでない、そのことがかえって妙なことになる、やっかいなものになるということを常々言っておられる、そこまではいいのであります。しかし、この非核三原則というものを持っているからと言っているけれども、どこの国も、特にアメリカはさっぱり信用しない。だから、さっき佐藤さんからお話がありましたように、レスター・ウルフ、ハーバート・バーク両議員が中心になった調査団がおいでになって、調査報告を四月に出しておりますけれども、この中にもたいへんはっきりした指摘がある。核拡散防止条約に日本は調印したけれども、少なくとも相当な政府・与党の中心になる方々が態度保留をしている。したがって国会の批准を求めるなどという気はさらさらないのではないか。この調査報告には断定的に、ないと書いてある。ということになってまいりますと、単に佐藤内閣以後の内閣を縛る、ものになるからということではなくて、一つ間違うと、調印はしたが批准はしないでおいて、破棄する場面もあって、核開発へというようなことも反面出てくるのではないか。依然としてこれは私の頭の中にも残る疑問なのでありますが、そこらの点がからんでいるという気がするのでありますが、長官、もう少しポイントに触れて御答弁いただけませんか。
  75. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本の防衛にとって一番大事なことは国民的合意、そして自衛隊が国民に支持される自衛隊になるということであります。だから防衛の基本は国民の心にあるのでありまして、国民の心を離れて防衛は存立し得ないのであります。そういう国民的合意を非常に大事にするという防衛構想から見ますと、核開発を軍事的に利用するというようなことで、それを持ち込んで、国民の間に非常に混乱が起こる、それくらい防衛力を減殺することはいまの情勢ではないと私は思っているわけでございます。だからそういうばかなことを政治がわざわざ引き出すようなことは適当でない、そう考えます。それから日本列島の構造を見ましても、人口が稠密で一カ所に集中しているというタイプであって、したがって第二撃能力というものは実質上意味がないことになっているわけです。国民生活を破壊されて、第二撃能力というものがあっても意味がない。ところがフランスとか大陸の国は縦深性があるから生き残る部分もかなりある。そういう国と日本とは、そういう意味で人口も違いますし、生活条件も違います。そういうことからいたしましても、核武装ということは、よほどのことが、国にとっても存立というような重大問題が起きないような情勢においてはコンセンサスを維持するということを一番大事にしていくというのが賢明な政治である、私はそう考えておるわけです。
  76. 大出俊

    ○大出委員 先ほど軍国主義の話も出ましたが、あとから少し触れたいと思いますが、政治というものには別な半面がありまして、政治のビヘービアというものは二つくらいあるわけでありますから、どう国内世論を動かしていくかという、いい意味でも悪い意味でも、そういう面もある。だから二つおっしゃられた前段のほうのお話からすると、国防というものの基本は国民的合意である、受け入れられていくという基礎が一つ必要である。いま核を持ち込んだ場合にはたいへんな混乱が起こる。そういうばかなことを政治がすべきではない。この論理からいきますと、日本人というものはどこかの国との関係で険悪になってきますと、かっとする習性がある。そういう民族意識がある。そうすると、やがて一つ間違うと、国民的合意の方向というものがだんだん操作をされていって、受け入れようじゃないか、日本も持とうじゃないか、ということになるとすれば、それが大体大勢になっていけば、核というものは持ち込むということになるのです、論理の飛躍かもしらぬけれども。そういう筋書きにいまの前段のお話からするとなりかねない気がするのです。いまはもちろんどなたも言う気はないだろう。中には石原慎太郎さんみたいに言う人もおりますけれども。そこでこの際外務省に聞いておきたいのですが、核防条約というものは批准をいつ求めるおつもりですか。
  77. 石川良孝

    ○石川説明員 ただいまのところは、いつ核拡散防止条約の批准を求めるか、まだきめておりません。
  78. 大出俊

    ○大出委員 私が持っておりますこの書類、書物あるいはここにある書類によりますと、だいぶ調印劇の舞台裏があるのですね。愛知外務大臣なり牛場次官なりが非常にあわてて、党内の核防条約調印の反対論者を折伏に回ったというわけです。そうしたら、このような不平等条約を子々孫々まで押しつけるのは問題だということで、だいぶ反対された議員の方もおられる。これは相当な方々がいろいろ言っているわけですね、政府は単に世論に引きずられているだけだといって。やがて核武装をしなければならぬ場合だってあり得る、だから将来核武装へのフリーハンドを残しておくべきであるというふうな御意見が出てきたりした。ところがこの中で、倉石さん、中曽根さん御両氏は、橋本登美三郎さんも含めて、大臣の座についただけに、以前ほどやぼなことは言わず、君子豹変とやじられて苦笑していたなどと書いてあるんですね。長官、君子豹変じゃ困るんです。長官におなりになったからしかたがないといえばしかたがないが、ここにはこう書いてある。真偽のほどはわかりません。私もこれは責任持ちませんが、しかしここまで書かれると私も気になる、質問を申し上げている当の相手である長官でございますから。そこで、先ほど佐藤さんがおっしゃっておりましたが、これは雑談で出てきた話に、差しつかえないことだから使わしていただきますが、先ほどアメリカにおいでになったときに、婦人の方で日本を担当されている方に会った。向こうの方が開口一番、日本は核防条約に調印したが批准をする気は毛頭ありませんねということを向こうから言われて、当時こういう事情が国内にあったということを知っているという立場から驚いたという冗談話まで実は出てくるわけですよ。ですから、いまお答えのとおり、いつなにするかというようなことは全然いまないとおっしゃる。そうすると、そうでなければフリーハンドにならないからでしょう。そうなると、この非核三原則というものを五原則に、あるいは国防の基本方針の変更をする、しかし国防の基本方針の中に入れるということは、これはたいへんなことになる、そう考えざるを得ないのですけれども長官先ほど新聞は信用できぬとおっしゃって、時間はかかって来年になるかもしらぬけれども、そっちの方向にいくだろうというふうに聞こえるお話をされましたが、非核三原則が入ることはない、こう言い切ってよろしゅうございますか。
  79. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず核防条約の問題ですが、佐藤さんが訪米なさる前に、朝日新聞に朝海君と私で論文を書かされまして、その中にも明確に言うておったことをぜひお考えにとめていただきたいのです。  それはまず核防条約については西ドイツの態度を見よう。西ドイツの国際環境というのは日本とよく似ておる。したがって、西ドイツの態度をよく注目しながらわれわれはまず考えよう。第二番目は、核防条約については沖繩と取引されてはいけない。そういうことを私は言って、そして特に原子力平和利用の査察の問題について、ユーラトムその他ほかの国と平等でなければならぬ。これが非常にバイタルポイントである。そういうことを留保して、いずれこれは党から内閣にあずけられる問題であろう、なぜならば調印については外交権の問題ですから。しかしこういう問題については慎重に考えて政府は対処してしかるべきである。そういうことを書いたわけです。  ドイツは急に内閣がかわりまして調印に踏み切りましたし、沖繩との取引もやっておりませんし、それからその後三月になりまして批准国が非常にふえてきました。そうなると、平和利用について査察の交渉を、調印して発言権を持ってやったほうが国益を守るのに有利ではないか。調印と批准と分ければ二段階の間があり得るから、そういう意味ではこの際調印に踏み切って、そうして査察条項を平等にするということに努力したほうが現実的利益が多いじゃないか、そういう考えに立って私は調印に賛成したわけです。そういう私の口跡をよく読んでいただきますと、実に注意深くやっているということがおわかりいただけるのじゃないか、そう思うわけであります。  それから非核三原則の問題は、これはいま国防の基本原則、基本方針を検討中でございまして、いま事務レベルでいろいろな要点を検討しながらやっている状態でございますから、事務レベルが仕上がってからよく考えてみたいと思っておるわけであります。
  80. 大出俊

    ○大出委員 そこまではっきりお話をいただければ、その辺をはっきりしていただこうと思って申し上げたのですからいいのですが、ただ私の一つの心配は、ここにこういう記事が一つある。人が書いたのですから、それなりに気にしなければしないで済むかもしれませんけれども長官もおそらく御存じだと思いますが、大学の先生、東大の川田さんですが、川田さんがある文章の中でこの核の問題に触れまして、原子力産業について、原子力の平和利用というのは進めるべきだというんですね。これは財界その他を含めて一般的な機運になっている、しかしこれを進めるということは、一方においては非常に危険な物質を蓄積していくということになるともいえる、その管理体制をどうするかということは非常に大きな問題だ、という前提を置きまして、それがはっきりしないうちに十年間に二千億円の大型プロジェクトが発足したということ、これは国民の側から見ると非常に危険に感じる。現に、自衛隊の成長に肩入れしようとしている一群の人々は、自衛隊が核を持つこと、防衛産業が核を開発することの可能性が強まったことを喜び、というところから、そうすべきことを公然と主張するようになってきている、といういい方をされておりますが、私も何人かの方からそれを聞いている。そこへもってきまして、これは古証文を持ち出すようで少し気がひけはいたしますけれども、中曽根さんが長官をおやりになる前に、有田さんの時代に妙なものが出てきまして、私は総理とも、有田さんともだいぶいろいろやりとりをいたしまして、ここに四十四年六月の一日付の、防衛庁ということで、これは防衛局でおつくりになったのでありますが、いわゆる自前防衛の長期構想などと当時いわれたものであります。これは「憲法や国民感情を考慮しないとすれば」という前書きがついておりますけれども、この中で、順次、つまり、安保条約がなくなった、こういうことになるとすれば、こうこうこういうふうに考えるという立案で、ここに「核戦力」という項がありまして、「整備を要する防衛機能」の中に「核戦力」「米ソ二大国が世界戦略を遂行するために整備した核戦力は別としても、少なくとも万一の場合の報復力たり得る核戦力(核弾頭及び長距離の運搬手段を含む)を自力で開発し、保有する」ということで、これはフランスの核開発に要する費用その他を全部あげまして、弾頭開発その他に、日本円にして一兆八千二百億くらいかかっている。運搬手段に八千億くらいかかっているわけでありますが、そこらを詳細に述べておられる。これは、こういうものを出されちゃまことに迷惑だと言って、当時原文を出してくれと言って、だいぶ時間をかけてお出しをいただいた文章ですが、私は、ある意味では、これは当時石橋君なんかと話しておったんですが、防衛庁が先々を見通して、承知でこれを表に出したのではないかという実は勘ぐりさえしたわけでありまして、それだけにこの非核三原則というものをいま長官は非常に慎重に検討中ということで慎重に言われるけれども、ここまで表に出たものが消えていくということになりますと、いまのフリーハンドの問題とあわせまして、これは何もアメリカが誤解だとかロッカイだとかいう筋合いじゃない。そういうアメリカのハーバート・パークあるいはレスター・ウルフ等の調査団報告に書いてあると同じ危惧を、日本におって皆さんと一緒にこうやっておる私自身が抱かざるを得ない、こう思うわけでありまして、したがって私は、少し執拗でございますけれども、でき上がった結果を見てみ  たいということなんですけれども、そうではなしに、どうしてもこれは入れるという姿勢をなぜ  とらないか。
  81. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 アメリカの議員のリポートに何を書いているか知りませんが、そういうことをもしほんとうに書いているならば、日本の現状を知らない無責任な報告であると言わざるを得ない、まことに遺憾なことであります。核の問題というのは、核拡散防止条約との関係もありまして、とにかく非常に重大な問題であり、非常に慎重に扱うべき問題である。それで自民党の中にも、自民党は自由民主的な政党ですからいろいろな議論があることは当然であって、そういう議論を尽くさないことは、国民に対する代表者としての責任を果たさないことであるとすら、私らは考えます。だから、いろいろな議論を尽くして、そうして尽くしたあげくのみんなの一致する線をみんなでつくり上げて、そして良識に沿った、国民が納得する線をつくるということが、政治としては賢明な手段である、そういうように私考えております。
  82. 大出俊

    ○大出委員 時間を急ぎますからこの辺にいたしますけれども、六月二十三日の例の政府声明がございますが、自主防衛というのは本来気概の問題ではないのか、自力防衛ではないのではないか、今日的現状は、というようなことを田中さんが言ったというようなことが書いてありますけれども、官房長官が、自主防衛こそ国の安全維持の基本的な条件だが、単独で国力、国情にふさわしい防衛力を整備し、安保体制によってわが国を含む極東の平和と安全を確保するという線でまとめたい意向である、などということをここに書いてある。私は、先ほど申し上げましたこの新聞の社説なんかを見ましても、くどいようですけれども、この際、内外にある、中曽根さんがいまおっしゃるような、著しい誤解である、日本の実情を知らぬものであると言うんなら、なおのこと、この際周辺諸国のいろいろな、私の見る限り、アジアの声とまで言っていいような——これはインドネシアのマリクさんから始まって香港の中立の星島日報あたりの社説を見てもそうでありますから、これは中国は申すに及ばず、アメリカあたりまでそうだということになりますと、やはりそこら辺の誤解は、平和憲法を持つ日本の立場から解いておく必要だけは少なくともある。だから、長官がアメリカへ行って言ったから解けるか。いま長官は防研の桃井所員を派遣されて、二週間ばかりおやりになっているようだけれども、あの方はハーバード御出身だから、ハーバードグループでいいのかもしれませんが、そういうことだけで私は解けるものじゃないと思う。だから、ここに出てくる問題について、これはアメリカと無関係で動いていないと私は思っているわけですが、そういう点等を含めて、これはむしろこの際明確にしておくほうがいい、こういうふうに実は強く思うのですけれども、この点は、くどいようでございますが、もう一ぺんお答えいただけませんか。
  83. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御意見はよく承っておきます。先ほど申し上げたとおりでございます。
  84. 大出俊

    ○大出委員 長官、最近なかなかものを言わなくなりましたね。  ところで、次の問題でございますが、自主防衛ということ、これはどうもはっきりしたようでしないのでありますけれども、エコノミストなんかにも最近またいろいろ御説明になっておりますが、これまたはっきりしない。グアムドクトリンなどというものもある。あの中で、自国の軍隊が第一義的に責任を負う、自助の原則を守れ、なんてことをいっておりますから、そういう関係で、この際、旧来の、どうも依存し過ぎていた云々ということを含めてはっきりするんだというんならば、それなりにこれはまた受け取りようがある。本来の自力防衛ではないんだということだとすれば、それなりにまた受け取りようがある。しかし、そうであるようなそうでないようなかっこうになっていると、これはどうもはっきりしない。したがって、これまたたいへんくどいようでありますけれども、この際もう一ぺん長官から、自主防衛というものは一体何かということを、いま申し上げたような点に触れてひとつお答えをいただきたい。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 本来、主権国家、独立国というものは、その存立について自分が責任を負うべきものであって、そういう存立について、自分で責任を負えない国は、保護国になったり属国になったりするわけであります。日本も主権国家であり、独立国でありますから、日本の存立については日本国民が第一義的に責任を負うべきです。それを自主防衛ということで言っているわけです。ただ、今日自主防衛というものは、必ずしも単独防衛ではない。これは米ソともに、あの超大国ですら、あるいはNATOによりあるいはワルシャワ条約によって、連合して国を守っているという体制でもあるわけです。ではアメリカやソ連が自主防衛でないかといえば、そういえないこともないのです。問題はその結びつきが大切なんです。だから、日本が一面において自分で自分の国を守りつつ、かつ集団保障体制の中に入っていくことも自主防衛で、ただその結びつきが、日本の独立性や主体的意思がないという場合には、これは自主性はないということになるでしょう。しかし、自分の意思において選択をとり得るという立場で、日本の主体的意思が明確にされるという形でものが動いていけば、これは自主防衛である、そう私は考えて、日本の防衛と安全保障条約との体系をそういうふうに調和さしていこう、こう考えておるわけでございます。
  86. 大出俊

    ○大出委員 繰り返しを極力避けましょう。  長官、きょうは何時までおいでになれますか。
  87. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 よろしゅうございます。
  88. 大出俊

    ○大出委員 次の問題ですが、装備方針というふうなものを最近、長官提起をされておりますが、これはねらいが幾つかあるのだと思うのでありますが、公に聞いたことはございませんので、またあれは、私は、国防会議の今日の性格上、当然国防会議等で論議をしておきめいただく筋合いではないかという気もするのですけれども、そこらについて触れてひとつお答えをいただきたい。
  89. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛産業というものは日本の防衛力の一環の中に存在するものでありまして、また軽視してはならぬ力であります。なぜなれば、そういう防衛の機器の整備について重要な役割りを持っておるものでございますから、単にマンパワーだけがあって防衛が成り立つものではございません。もちろん防衛の中には、国民の心とか経済力とかあるいは交通、通信能力とかあるいは産業能力とかいろんな面がございます。そういう意味で、総合的防衛力の中の重要な役目の一つ防衛産業は持っていると私は思うのです。しかし、この防衛産業をどういうふうに誘導していくかという行政方針が欠如しているように思いました。それで次の新しい計画を進める上について、その基礎となる考え方を明らかにして、防衛産業の整備を整然として、しかも効率的にむだのないように、また世間の誤解が発生しないようなしかたでやっていくという考えをきめまして、私着任早々以来部内に命じて、その方針を作成さしたわけであります。そしてそれができましたものですから、これをこの間国防会議議員懇談会にもわれわれのほうの資料として提出をいたしました。もちろん、それができるまでには通産省と内部的に話し合いをしておるわけであります。そういう基本に立ってつくりましたのは、一つは、よくいわれておりますように、産軍コンプレックスというような複合体制ができることを回避しなければならない、そういう考慮を一つの基本にし、かつまた国民の税金をむだにしてはならぬということと、それから日本の自主開発能力を高めていく、そういういろんな考え基準に立ちまして、この間の方針がきまったのでありますけれども、特に私重要視しておりますのは、競争原理を導入するということであります。もちろんこれはライセンスの関係とかあるいは自分が最も特色としている技術、能力を持っている会社の活用という面も、これは当然考えなければならぬところでもありますけれども一般論といたしましては、特殊のものを除いてはやはり競争原理を導入して、競争させるということは大事であると思うわけであります。  それからもう一つは、いままではややもすると開発につきまして会社の費用で開発させる、その結果、新しいアイデアが出てきたのも何も全部会社の費用でやっているものですから、結局、そちらのほうに発注がいくという形になって、それが一部は生産品の中へぶっかけて費用に入ってくるということにもなるのではないかと予想されます。そういう意味開発の費用というものは国が持つべきであって、幾つかのアイデアを会社に出させてあるいは技術者に出させて、それを国が買い取ってみる、その中でいいと思うものを国が適当と認める企業にやらせる、そういうようにして、開発経費というものについていままでのような惰性を取り除いていこうというような要素を入れたのも一つの特色であります。  そのほか行政上必要と思われる諸般の措置をやりました。たとえば防衛計画が進んでいく際に、その中間に当たる部分が谷間になって発注がぐっと減ると、工数や人間の解雇とか、そういう問題で非常に不能率、ロスが出るわけです。そういうものをいかにして発生させないように努力するかということも、国民経済的に大事なことでもあります。そういうようないろいろな考慮も入れて新しい方針ができているわけであります。
  90. 大出俊

    ○大出委員 これは三つになっているわけですね。「装備生産及び開発に関する基本方針」、「防衛産業整備方針」、「研究開発振興方針」ですかね。  そこで、時間をかけたくありませんから、二、三点確かめておきたいのでありますが、長官が産軍コンプレックスなどという形の観念的な進め方をしないという基礎に立っているという点、私もそうしていただかなければ困ると思うのであります。全く同感でありますが、ただ現状をいろいろ調べてあるいはまた質問をしたりしておりますと、そういろいろなことができないように固まってきている、こういう感じがするのです。一つのグループ、たとえば三菱なら三菱というものが四十三年で三六%をこえる、おおむね四〇%近い受注契約を持っている。確かにミサイル部門その他で、ホークのときを契機にいたしまして、私も多少、どうも一つのグループに全部持っていくのはおかしいじゃないかというような言い方をしたこともあるのでありますが、ここらは東芝なんかも入ってきておりますから、そういう意味競争ということも成り立つようになっているかもしれません。しれませんが、全体的にながめてみると圧倒的に三菱グループが押えてきている。戦車なんというものは、金額的にはたいしたものではないのですけれども、これはしにせですから、現状ほかにやりようがない。しかもこれは随意契約が七割をこすのじゃないですか。四十四年度の随契というものはどれくらいあるのでありますか、あとで承りたいのでありますが、そうなると事の性格上、これは兵器産業ですから、自己増殖を起こしかねない。そうなると、ただ単にそれだけでいま言われる産軍コンプレックスなどというものを排除できるとお考えになるかどうかという点が残るわけでありまして、この今日的な兵器産業の事情を——これはもう人までそうなっているわけですね。経団連の防衛生産委員会の委員長さんは岡野保次郎さんですが、岡野さんは元三菱重工の社長さん、日本兵器工業会の会長の大久保謙さんは三菱電機の会長さん、非常に大きな日本航空工業会の理事長さんは牧田与一郎さん、これも三菱重工の社長さん、ほとんどのトップレベルはここで押えている、現にこういうかっこうにもなっている。そうすると、こちらのほうとの関係というものは、これは防衛費がふえる五一%くらいが人件費でございましょうから、これは相当なことにこれからなっていくということになりますと、どうしてもこちらのほうに相当なウエートがかかってしまう。これはもう厳然たる事実だと思う。そこらに触れてみないと、どうもいまおっしゃるようなことになるのかならぬのか、非常に気になるところでありますが、そこらはどうお考えになりますか。
  91. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いま大出委員おっしゃいましたように、やはり一種のしにせと申しますか、技術能力があってほかの社が非常に及ばなかった、それからスタートダッシュが早かったというような要素もあるようです。しかし、先ほど申し上げましたような文書を出しまして、ある程度競争原理を導入しつつ日本の防衛産業体系を整然と整備をしていきたい、そういう方針に立ってわれわれは実行してまいるつもりなのであります。
  92. 大出俊

    ○大出委員 そのことについては別に異論があるわけではございませんから、そういう考えでそちらのほうに持っていこうということについては賛成なんですが、そこでこの際ひとつ承っておきたいのは天下り問題でございまして、これは長官がおられぬところでは実は私この委員会で質問いたしまして、つまり人事院所管のものが多いものですから、その席上で山中総務長官から、どうも防衛庁局長さんと少しぶつかり合うようなことまでありまして、中曽根長官に私が話して天下り問題の規制は何とかやりたいのだというようなことをおっしゃったのですが、きのう何か、文書その他をもらっておりませんからわかりませんけれども、その辺の発表をされたようであります。実はこれもアメリカなんかの例からいきまして、結果的にどうもほかに行くところというのはなかなかないですから、相当な数の方々が、しかも防衛庁の高官、制服の方々から始まりまして、相当これからまたふえてしまうんじゃないか、毎年毎年見ておりましてそう思うわけであります。そこらのところで出されました天下り規制という問題の本旨はどの辺に置いておられるのかという点を、この際、公の席でございますのでお答えおきいただきたいと思います。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は、この前の国会でも法的整備をしたいとたしかお答えしたと記憶しております。やはり終局的には法律で整備するほうが適当であると私考えております。ただその間におきましても、なるたけ誤解をなくしかつ規律を厳正にしていく、そういう必要もありますので、今回は人事院局長さん、それから総理府の人事局の局長さん、そういう部外の人事担当者二人を入れまして、当方の人事局長等と審査をする、そういう形にしまして、部内の者だけでなくて、そういう内閣全体レベルの人事責任者を入れて諮問に応じてもらう、そういうことで監視的な機能を強化したわけであります。これでやってみまして、そして私としましては、やはり法律でいずれ御審議願うことが適当である、そういうふうに考えております。
  94. 大出俊

    ○大出委員 私は、これはやはりこうやってみても、自衛隊法六十二条の二項というのがありますね。この筋からいきますと、このワクは変わらないわけですから、いまおっしゃるように何人かの方を入れてみても、はたしてそれでやれるかということになると、これは、やめた方々の行く先ということになりますと、ほかになければやはり民間会社、関係の会社に行かれることになる。それを一がいに全部いけないとは言い切れないと私も思っております。ただしかし、やはり相当厳重な規制をしておきませんというと、アメリカ式のことになっちゃってはたいへんなことになるという気がするので申し上げたわけです。だから、これでもなおかついいかげん、と言っちゃおかしいですけれども、どうも私ども考えていた、世間一般の見方というものが変わってくるほどのものにはならないんじゃないかというふうに考えますので、できればやはり防衛庁がやるということではなくて、だれを入れるにしても、そういうことではなくて、法律改正等をやった上ではっきりと人事院がやるなり、明確なものにしていかぬと困るんじゃないかというふうに思うのであります。これはやってみてというお話でございますが、当分はこのままでおやりになる、こういうお考えでございますか。
  95. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そうであります。しかし国会に対する法律の提出という問題は、いろいろ議会の模様とか、ほかの提出する案件とか、そういう国会の雲行き等も見ながら最終的には決定すべきものでありますから、私としましては、できるだけ通常国会ぐらいには出していきたい、そういう腹づもりではおるわけであります。
  96. 大出俊

    ○大出委員 あと急ぎましょう。  最近、長官が財界の皆さんにお客さんとしてお招きを受けたんだと思うのでありますが、先ほど申し上げました防衛生産委員会の岡野さんだと思いますけれども、ここで幾つか問題を、書面だと思いますが、提起をお受けになって、新聞で見る限り、幾つかここでお答えになっておりますけれども、これまた読んでみてなかなかはっきりしない面もある。国家安全保障会議をつくる云々というようなこと、あるいは審議会を設ける云々というようなこと、この辺についてそう簡単に賛成だと言われても困る面もあるわけでございまして、そこらのお考え方を、長くかからぬでけっこうでございますからひとつ伺いたいと思います。
  97. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国家安全保障会議という構想については私も賛成なのであります。ただ現在の国防会議設置法あるいは防衛庁設置法、自衛隊法等の中で国防会議というものがきめられておるわけでありまして、その法律が現存する限りはその方向でいかなきゃなりません。したがって国家安全保障会議というのは、一つの構想として将来われわれが取り組むべき大事なアイテムであると考えております。  それから防衛審議会というものは、その発想はわかりますけれども、いままで審議会というものは、大体官僚の作文のシェルターになっていて、固有の考えが出てこないうらみがかなりあります。それから非常に時間がかかったりいたしまして、非能率な要素もあまりにも多過ぎます。だから審議会を整理しろという声が非常に多いわけです。だから、つくってみても、そういうようなものになる危険性やそういう可能性があるなら、つくってみても意味がない、やるならほんとうに意味のあるものにしなければいかぬ、そういう考えでおるわけであります。
  98. 大出俊

    ○大出委員 これは、新聞の書き方なんか見ましても、これは私も正しいと思うのですが、「財界、防衛施策に触手」という表題なんですね。これは読売新聞です。それから、これは朝日新聞ですけれども、「産軍複合への恐れも」、もう一つ「今日の断面」ですか、ここにありますが、「図に乗る兵器産業」、図に乗っちゃ困るのですが、この文章を見ましてもそういうきらいなしとしない。あまり図に乗るなと言いたい気持ちなんです。ですからこれは、接触の手段に考えられたり、図に乗ってこんなことを考えられては迷惑なんですが、こんなことをやったのは初めてだろうという気がするんですけれども長官が三つの方針をお出しになったから、そこらの真偽のほどははかりかねたわけでございましょうが、この辺でという気になったのかもしれませんが、あるいはまた自主防衛がだいぶにぎやかになっておりますから、このときということで出してきたのかもわかりませんけれども、どうもそういう点が私どもからしますと危険な発想の形がある、こう思うわけでありまして、実はこれも私が申し上げている時間がないのでありますが、そこらのところは私ももう少し詳しく調べたいと思っておるのでありますが、向こうさんの真意は一体どこにあったのかという点を、長官の感じ方をまずお聞かせいただきたいと思います。
  99. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 防衛産業委員会の方々も国民の一人でございまして、日本の防衛、安全保障の問題については、国民としても心配しておられるんだろうと思うんです。それで、そういう関係にある方々が、防衛庁長官に対してそういう意見具申をするということは、憲法上も認められていることであり、いい意見具申ならどしどし採用すべきものであると私は思います。それで図に乗ったかどうかは知りませんが、私はそんなことはないと思うんです。国家安全保障会議というようなことと防衛産業というものは、直接そう結びつくものじゃありません。むしろ国家安全保障会議という構想になれば、あの中にたしか厚生大臣も入れとかなんとかいうことになると、これはむしろ防衛産業にとってはいたい人が入ってくるという形にもなりかねません。そういう面から見まして、必ずしもそういう自分の利害から出てきたことばであるとは私は思いません。やはりすなおにものは受け取って、いいものは採用する、こういう考えでおります。
  100. 大出俊

    ○大出委員 国家安全保障会議ども、実はアメリカの例を見ましても、第二次大戦の中でいろいろ問題が出てきて、そこでああいうふうに形が変わっていったという経過があるんですね。あるいはまた一つの慣習法を重んじているイギリスのような形もありますし、各国おのおの違うんですけれども、だからこれはこれであらためてまた論議の場所をつくっていかなければいかぬ問題だと思います。それは確かに一つのサイドからものを見ることはかってでありますけれども、こういう時期だけに、あまり感心した気持ちに私どもはならぬわけでありまして、こういう席でそこまでは言っておかなければならぬと思って言ったわけであります。  そこで一年自衛官というのを、長官ものを言われたようであります。長官、ものを言ったのはだいぶ多いですから、一応は聞いておきませんと、あとでまたものを言うときに困るわけであります。その前に上田参議院議員と参議院でなかなか学のある論争をやっておられるわけでありますが、あそこでも出てくる幼年学校みたいなものをつくろうという感じがする。少年工科学校でなく少年自衛官、こういうふうなもの、一体的に全部ながめてみますと、一つの大きな何かしらができ上がっでしまうような感じがする最近の長官の言いっぶりなんですが、この一年自衛官という発想の根拠は一体どこにあるのですか。
  101. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 普通科連隊のような場合には三カ月くらいで訓練が済んで、それで部隊へ配属するとけつこうやれるという情勢のようです。それから空とかあるいは海とかいう非常に技術性が重んぜられる場面ですと、もっと時間がかかる。したがって、普通科連隊については一年志願といいますか、そういうようなものもひとつ考えてみたらどうか。そうすると、一年くらいならば国の防衛のために行ってきてもいい、そういう人がかなりいるという見通しも多少はあるようです。それからまあ自分の修養にもなる。私の知っている森下代議士なんかは、この間自分の子供の大学が紛争で講義しないというので、おまえ一年間行ってこいというので、たしか一年か二年、いま行って、入っていますね、朝霞の連隊か何かへ大学生が。そういうのも私の身のまわりにありまして、全国の父兄が近ごろの教育の情勢をたいへん心配していて、一年くらいなら、そういう教育をしてくれるところがあれば、まあ自衛隊でも入ってひとつ訓練を受けさせたらどうかという、そういう声もなきにしもあらずなんです。私は自衛隊というものは、ある程度教育性を持っている、そういうことを着任のときから言っておりますけれども、そういう御要望にもこたえ、かつまた国の守りにもつきたいという青年がいれば、その願いを満たしてやるということも大事である。だからそういう構想を追加して考えてみたらどうか、そういうふうにしていま検討しているところなのであります。
  102. 大出俊

    ○大出委員 そうなると、これは少年自衛官なり一年志願ですか、それは言い方はいろいろありましょうが、これは四次防の中でおやりになるという考え方ですか。
  103. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 目下検討中ということでありまして、庁としてやろうとかということをきめたわけではありません。
  104. 大出俊

    ○大出委員 あまり評判がよくなければやめる、あまり抵抗がなければやろうと出てくるかもしれないわけですか。
  105. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 独断専行は慎んでおりますから、よく世論を聞き、皆さんの御意見も聞いて考えていきたいと思っております。
  106. 大出俊

    ○大出委員 なかなかどうもたいへん低姿勢の連続で珍しいことがあると思います。中曽根さんもそこまで変わったかな、年輪のしからしむるところがあると思います。きのうもここで年輪のしからしむるところという議論がありましたが、そうかもしれません。  そこで、四次防そのものでございますが、そこに入る前にもう一点だけお聞きしておきたいことがあるのですが、情報本部という計画がございますね、陸海空を一本にという。「電子情報も本格収集へ」、これは四次防を目標にした、こういうのですが、これはどういうお考えでございますか。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 やはり自主防衛というものには情報の自主性ということが非常に大事であるわけです。これは前にも申し上げました。それから日本のように専守防衛ということで防衛を第一義の本務とする自衛隊の場合には、情報というものは非常に重要なわけであります。大体戦術とか戦闘自体を考えると、攻撃するほうが、いかなる時点、いかなる時期と選択性を持っているわけですから、非常に優位であるわけです。防衛となると受け身でありますから非常に劣勢であるわけです。専守防衛の場合には、それをカバーできるものはやはり情報ということであるわけです。そういう面から見ますと、いままでの自衛隊の内部の機能において情報が非常に弱いように私は思いました。陸海空おのおのがその機能を持ってばらばらである程度やっておりますから、重複もありますので、そういう部面を統合しつつ、やはりある意味においては少し強い情報中枢機能というものをつくって、そしてそれで三自衛隊の中の重複を避け、それから総合した力でもって分析、判定能力をもっと強める、そういう形にしつつ、日本の防衛にふさわしい機能を少しずつ強化していく。そういう考えに立って、目下どういう体系でやっていくか検討中でございます。   〔伊能委員長代理退席、塩谷委員長代理着席〕
  108. 大出俊

    ○大出委員 これは中身を聞きたいのですが、「電子情報も本格収集へ」、こうなりますと、私もこのほうを私の専門で持っておるものですから気になる点でありますが、アメリカにDIA、国防省情報局があります。これはさっきの国家安全保障会議との関係もあるのでありますが、三軍情報を持ってきまして、CIAにもこの情報は入っていくのです。だからCIAの長官は国家安全保障会議の議員になっておるわけであります。つまりこのアメリカとは別な、日本の国内に三十幾つかの米軍のELINT基地なんかもあるわけでありますが、例の「よど」号事件ではありませんけれども、何かそこに別なものを、独自の機能を持つものをつくろうというふうにここに書いてある。そうなると、これはたいへん大きなことになる。そう簡単なことじゃない、そう考えざるを得ない。だから、ここまでお話しになったのなら、本格的な電子情報の収集、エレクトロニクス・インテリジェンスなるものの機能を一つつくろうというならば、やはりそれだけのものはなければならぬと私は思う。そこのところはどうなっているのですか。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 やはり日本を防衛するに必要な範囲内において、それで過剰でない、そういう範囲内においてのことは、われわれはやはりやらなければいかぬだろうと私は思います。ただ外国に対して誤解を与えたりあるいは猜疑心を起こさせるようなことは、これはなるだけ慎むということは礼儀上必要であると思いますけれども、やはり国の防衛ということは国家として存立する基本的な大事な部面でありますから、その部分をカバーするということで、憲法その他で許容されることはやはり果たしていかなければならぬ。ただ問題は、そういうものをどう運用するかということにも大事なポイントがあるように思います。
  110. 大出俊

    ○大出委員 いま新全国総合開発計画があって、五月におきめになったところで経済社会発展計画もある。いずれもこれは情報化社会、情報化社会と冒頭にうたっている。五十五兆円の金を使うことになっている中に、たとえば通信関係の電電公社なんかは五兆三千二百億も使うんですね。改定七カ年計画を見ても八兆五千億も使うというんです。これは総合通信網の形成などということをいっている。一面そういう動きもあるわけでありますが、そこに防衛庁が電子情報というものを本格収集する機関をつくる、機能をつくるということになると、これはいまいみじくも長官の口から出た憲法との関係さえ考えなければならぬようなことになりかねない。独自の機能をどうしても持とうというならば、国家存立の基礎だからということになるならば、当然そうならなければならぬ筋合いでありまして、そうでなければ、これは地位協定六条との関係等もありますけれども、例の松前・バーンズ協定ではありませんが、COCならCOCを使ってADCCとの関係などで、韓国とのボイス通信というような機能になっておりますから、その形のものが残ることになる。そうでなければ、そこらのところを振り回されぬように、たとえば自主的ということでお考えになるのだとすると、繰り返しますけれども、そう簡単なことじゃない。一年自衛官だ云々だといって聞き流しておけるものじゃないと思いますので、構想が全くなくてここまでお話しになったわけじゃないと思いますが、全くこれはそこまでの構想はないわけでございますか。   〔塩谷委員長代理退席、伊能委員長代理着席〕
  111. 宍戸基男

    宍戸説明員 四次防全体についてまだ検討中、構想中でありますけれども、いまお尋ねの情報系統の強化ということは、その構想の中の一つの大事な柱として検討中でありまして、通信情報、電子情報等のことにつきましても、現在よりは強化するという方向で検討をいたしておる状況でございます。
  112. 大出俊

    ○大出委員 いずれにせよ時間がないので中身に詳しく入りません。入りませんが、実は情報関係は、これは宍戸さんご存じのとおりに、前長官のときに、私はCIA問題等がありましたから、小平の学校から始めまして二、三時間その問題にしぼって質問したこともありますので、これは多くを申し上げることは差し控えますけれども、しかし、これはものの見方によりますとたいへんなことになると私は思う。そうなると、単に防衛庁だけの問題ではない。ここまで考えなければならぬ問題でございまして、いまお話しになった程度であるとすれば、まだそこから先、いまここで詳しくお話しいただけないとすれば、機会を改めなければなりません。  そこで、いま四次防と申し上げましたが、四次防に対する長期統合戦略見積もりだ何だといろいろあるわけでありますが、四次防策定の方針というのは、有田さんの時期に、八月ごろを目途にということで三幕おのおの調整をしていってまとめるのだというので、御答弁をいただいたこともありまして、一つ方針が出ている。その後詳しいものはない。そこらのところを、もうここまできたら、四次防についてはっきりしていただいていいんじゃないかと思うのです。  参考までに申し上げておきますと、私も最近ちょいちょい、雑誌といいますか専門誌といいますか、「軍事研究」というのがありまして、私のしゃべったりなんかしたものがよく載っかるものですから、見るようになったのですけれども、これあたりを見ると、長期戦略構想、防衛庁は「今後十年の防衛構想の骨子を固めた。それによると」ということでだいぶ詳しく載っている。こういうところに全部出てきておって、私どものところにはさっぱり入ってこないというのはどういうわけですか。ここまできたのですから、やはりその辺ははっきり言うべきところで言っておいていただかぬと困る。それが予算折衝もあれば、長官のこれからの御努力もあれば、いろいろ変わるでしょう。変わるでしょうが、四次防というものを大まかに見て、実はこういうような長期防衛構想というものがあって、それに基づいて陸の重点はどこであり、海の重点はどこであり、空の重点はどこであるか、全部ひっくるめてその重点はどこか、何かというところまで言っていただいていい時期だと思いますが、承りたいのですがね。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まだ公表する段階に至っておりません。部内で私が大体基準点をいろいろ相談をして、それに基づいて作業させておるという中間的段階でございまして、こういう体系でこういうふうにいたしますと御報告申し上げる段階に至ってないのを残念に思います。
  114. 大出俊

    ○大出委員 中身はいいですけれども、この「長期防衛構想をうちだして、今後十年の防衛構想の骨子を固めた。それによると」というところで、「長期防衛構想=国土防衛に徹するが、侵略は公海・公空上で排除する体制をつくる。」これは公海防衛、こういうふうに長官は、個人構想かもしれませんがお述べになっている。これは間違いじゃないですね。それから「陸上自衛隊定員はほぼ現行の十八万人体制とするが、予備自衛官制を活用する。」これもいままで言っておられますから間違いないですね。そうすると、二番目の「侵略者の上陸を喰止め、水際または領海内で阻止するため地対地ミサイルの開発、配備、対空ミサイルの強化を図る。」これもいままで似たようなことを言っておられますね。三番目、「国土内防衛や間接侵略に対処するため部隊輸送力の機動化を図る。」これもバートル107だとかいろいろつくってきているわけですから、これもそういうことですね。四番目「沖繩・小笠原などの防衛のため(海空と共同の)上陸防衛体制を整える。」ここらあたりはどうもまだはっきりしないのですけれども、これも返ってくるとすれば、何とかしなければならぬことは事実です。ここらあたりは皆さんの考え方だというふうに理解していいのでしょう。どうですか。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その記事がどの程度の信憑性を持っているかは私読んでいないのでわかりませんが、大体いままで国会で答弁したのをまとめたような感じがいたします。こちらのほうでまとめてきめたというについてはちょっとお粗末な表現のように思います。
  116. 大出俊

    ○大出委員 まだたくさんあるのですけれども、たくさん読むわけにいかないので、最初のほうが大体間違いなければ中身も大体間違いなかろう、こう言おうと思ったのだけれども、これはあなたが言っておられることと言ってないことが入っておるわけで、言ってないことのほうを聞きたいのですけれども、どうしてもいまの段階で言えないとおっしゃるならば、一々聞いて引っぱり出すのは時間がかかりますから、いいかげんでやめておこうと思います。そうすると、いつごろになるとおたくのほうの方針はきまるわけですか。言える段階になりますか。あまりほかのところでぽろぽろ出ておって、防衛庁はああやっておる、こうやっておると一ぱい書いてあるのに、所管の委員会で正面から承っておるのにものを言わない。それなら論議にも何もなりやせぬじゃないですか。論議の価値がない。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 部内の作業がまとまりまして、もうこれでいいという段階になりましたら御報告申し上げます。
  118. 大出俊

    ○大出委員 それはいつごろでございますか。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 やっぱり秋もある程度深まる必要があるのではないかと思います。
  120. 大出俊

    ○大出委員 長官の参議院の答弁によりますと、まず新国防基本方針、新防衛計画ですか、これをその上でつくる、こうなっておりますから、さっき質問をしておりました基本がまずきまらない、これは非常に大きな関係を持つわけです。だから秋も深まらなければということでしょうが、秋が深まって、さて来年なんということになりかねませんけれども、その時期までいかなければというなら、一々ここで引き出すのは時間がかかりますから、あえてそのむだはやめます。  そこで、沖繩防衛についで承っておきたいと思います。これは宍戸防衛局長、米側ともう三回ぐらい打ち合わせをされた、また提案も何かおやりになっているようでありますが、私ども防衛庁に行って何かひっくり返すと、また楢崎君みたいなことになっておどかされますから、記者の皆さんのおっしゃることを信頼する以外にないわけであります。特に機密漏洩について非常に気をつかっておられる長官がおいでになりますので、その宸襟を騒がせることはやめたい、こう思っております。だから、公に質問したときにはやはり答えてくれぬと、万やむを得ず周辺を洗わなければならないということになる。それは困るから、やっぱりお答えいただきたいのであります。  そういう意味で、これは三回ほど話し合っておられる中身はここにある。こういうわけなんでありますが、宍戸さん、この沖繩の問題の日米折衝というものはどういうふうに進んでいるのですか。
  121. 宍戸基男

    宍戸説明員 向こうの軍事顧問のカーチスという中将と都合三回ほど話し合っております。最初は、両方の沖繩に関する防衛問題といいますか防衛構想といいますか、そういうことのいわば瀬踏みといいますか、大体どんなふうな腹がまえであるかということを主として話し合いました。だんだん二回、三回と話はこまかくなりまして、最近では主として施設の問題等について話し合いを進めております。
  122. 大出俊

    ○大出委員 私のこちら側のやつには、宍戸さんがいろいろお話し合いをした中で、アメリカの側が沖繩防衛について最初に積極的にものを言っている、かくかくしかじかなんということが書いてあるのですが、そのやりとりの中身、つまり沖繩防衛という形のものについてのアメリカの要請なりあるいは皆さんのほうからお出しになったものなり、その大筋はお話し願えませんか。
  123. 宍戸基男

    宍戸説明員 わがほうで、先ほどからお話の出ております四次防、次期防の構想がございます。沖繩の防衛構想はそれで仕上げることになろうかと思います。しかし、まだそれは確定しておりませんが、とりあえず、沖繩が四十七年には返ってまいりますので、大体の筋を頭に置きながら、返ってきたときにどうすべきであるかというようなことを考えたわけです。また話し合っているわけです。国会でもいろいろお尋ねがありまして長官からも御答弁になっておりますが、わがほうの大筋の考え方は、沖繩が返ってきますと、観念的にはとにかく日本の本土と同じことになるわけですから、第一義的にわれわれが防衛責任を負うのが当然という前提で、しかしわが国全体の防衛のバランスのことも考えなければいけませんので、沖繩に直ちに大部隊を持っていく必要はもちろんないと思います。たとえば陸上自衛隊にいたしますと、直接の防衛の責任に任ずるわけですけれども、たとえば災害派遣にある程度役に立つとか、あるいは陸上警備にある程度役に立つ部隊をとりあえず持っていくべきである。あるいは、離島が多いわけですから、ヘリコプターその他の飛行部隊を持っていく必要があるのではないかというようなことを考えておりますし、それからまた海で申しますと、南西諸島一般の哨戒に当たる部隊が必要であろう。さらに空のほうで申しますと、サイトが四カ所ありますけれども、そういったものは本土と同じように逐次わがほうが引き継ぐべきであろうし、またその能力もあるという前提、また要撃機で申し上げますと、領空侵犯等もあり得るわけですから、それに対処し得る部隊を展開すべきであろう。その他後方につきまして所要の必要なものは逐次展開する必要があろうかというふうな大筋の考え方でだんだん話を進めていく、こういう状況でございます。
  124. 大出俊

    ○大出委員 簡単にいいますが、戦闘部隊二個中隊、約四百人、施設部隊あわせて千二百人、これは陸上ですね。それから海上自衛隊は、沿岸防衛や対潜哨戒を担当するP2V六機、掃海艇が二隻。航空自衛隊は領空侵犯に対処するためにF104Jのジェット戦闘機、これを一個飛行隊十八機、プラス予備機がありますから普通でいうと二十三機ですか、これはどういう編成にするのかわかりませんが、二十機から二十五機くらいの間になるだろうと思うのですが、大体そういうふうなものに加えて一地方隊くらいの、これは港湾警備が中心になるのかもしれませんが、護衛艦が二隻で掃海艇三隻、こういうふうなところを皆さんのほうが最終的に日米折衝の中でお出しになった。また向こう側から嘉手納を防衛するための航空自衛隊のミサイル部隊の配置、こういうふうなことを米側は非常に重視をしていて優先的にこれを取り上げられているなんというようなことが幾つか表に出てきているわけですが、そこらの書き方、言い方は間違いないところでございますか、大体そんなところですか。
  125. 宍戸基男

    宍戸説明員 先ほども申し上げましたように、全体のワクとしましては次期防構想で樹立したいと思っておりますが、とりあえず返ってきた当初、半年程度の間に展開すべきものについて所要の施設の準備をいたさなければなりません。そういうことで話し合っておりますが、いまおあげになりました数字は、その後段に申し上げました当初展開すると考えております部隊、これも最終的にきまっているわけではございませんが、大体私どもの腹づもりを持っております数字とそう大きな隔たりはない、若干の相違はあるようでございますけれども、いまおあげになりましたのは大体私が腹で持っている数字とそう大きな違いはないと申し上げてよろしいかと思います。  それから防空につきましては、本土もそうでございますけれども、向こうも日本側が本土のようにだんだん引き受けてくれるだろうということを期待しているようで、私どもも本来そうすべきものであろうというように考えております。
  126. 大出俊

    ○大出委員 そこに論議の余地がいろいろありますけれども、時間も、あとの方の意見もありますので、きょうはあまり突っ込んだ話はどうせできないと思って質問しておりますので確かめるだけにしておきますが、そこで基地の問題でございますけれども、小幡次官がアメリカに行かれていろいろやってこられて、羽田にお帰りになっての記者発表その他の点から推測をいたしますと、二十なら二十というおおむねのワクで共同使用のような形が表に出てきているのでありますが、ここらは長官、前の自衛隊基地使用という問題、基地管理という問題とあわせましてどんなふうなぐあいになっているわけでございますか。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 前に御報告申し上げましたが、五月十九日の日米安保協議委員会におきまして、私からアメリカ側に対して米軍基地調整処理の問題について申し入れをいたしまして、それに応じまして事務レベルの作業を進めることになりました。その一環として、小幡事務次官以下がアメリカに参りまして、先方と話し合いまして、それでいろいろ基地について点検をし、話し合いをしたわけであります。その結果、ケース・バイ・ケースで基地を仕分けをしていきながら、いかにして共同使用にするとか、あるいは日本側に返還するとか、あるいは自衛隊が使うとか、あるいはアメリカ側がいままでのように排他的に使うとか、そういうようないろいろな仕組みについて各基地ごとにひとつ点検していこう、そういうことになりました。  その場合の費用の分担についてまた話が出ましたけれども、費用分担をどういうふうにするかという点もまたケース・バイ・ケースで話していこう、そういう形で別れたわけです。当方としては、自衛隊が責任を持って管理してアメリカに使用させるという場合には、一般経費は自衛隊が持ってもいいじゃないか、アメリカ側が責任を持って管理して自衛隊が使うという場合には一般経費はアメリカ側が持ってもいいじゃないか、そういうような感覚のことを言うたのですけれども、先方は、何と申しましょうか、割り勘で実費でいこうじゃないかというような思想をとっておるようです。私は、いまのような考えでやりますと、いま向こうが使用している基地が非常に多いわけですから、向こうの負担が多いということでアメリカがいやがるのじゃないかと思います。しかしそれはまた返還を促進する結果になるんじゃないかという気もしまして、この構想を私は採用しているわけであります。
  128. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、とりあえず地位協定その他からいきますと、何をどう適用して共同使用をおやりになろうとするのですか。
  129. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは現在の地位協定の範囲内におきまして弾力的にこれを適用していく、そういう考えであります。
  130. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、地位協定の変更ということなしに、二条四項(a)なら(a)を使う、その範囲で一時的なら一時的ということで、あくまでもそれは一時的であるという理解でいいのですか。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは基地ごとによりまして、さまざまなタイプがあり得ると思うのであります。混合形態もありますし、あるいは二4(a)になったり二4(b)になったり、あるいは返還されるものも出てくると思います。
  132. 大出俊

    ○大出委員 ただ、そこで一つだけはっきりしておきたいのは、長官の最初の構想は、自衛隊基地管理だったのですね。ところが沖繩返還とからんで、それはまかりならぬという外務省のお考えもあった。二転三転をいたしまして、何か引っ込んだ感じになった。ところが今度は共同使用という発想が出てきた。いまおっしゃるように、確かに米軍基地であって日本の自衛隊が使おうとすれば二4(a)でしょうし、返還されたものを米軍が使おうとすれば二4(b)でしょう。その場合に三条もある。態様はありますが、その考え方が一時的に、あるいは一定の期間ではなくて、将来ともに沖繩返還をめぐり、地位協定の改定をしても——当初の発想であった自衛隊基地管理という形が考えられていて、当面地位協定の関係でぐあいが悪いから、それにかわる措置としていまお話しのようなことをやってなしくずすというお考えならばそう言っておいていただかぬと、われわれの取り組みが違ってきますので、そこはいかがですか。
  133. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう要素もあります。しかしそればかりではありません。
  134. 大出俊

    ○大出委員 正直にそういう要素があると、そういうわけでございますから、その要素についてはあとでひとつ具体的な点について申し上げたいと思うわけでありますが、ここでひとつ、基地の問題だけ先に片づけておきたいと思います。  座間のこっち側に司令部がありますが、向こう側はあいているのでありますけれども、これを立川とともにテストケースに、こういう考え方が実は表面に出てきていますが、ここは一体将来どういうふうにするお考えでございますか。
  135. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 座間は、とりあえず米軍との話し合いもいたしまして、暫定的に自衛隊施設部隊の三百人程度を入れたいというふうに考えております。これは一応ジョイントトレーニングのかっこうで入ります。しかしながら、自衛隊としましては、座間が非常に大きな施設でございますので、座間をどういうふうに長期的に使用するかということになりますと、近郊の自衛隊の部隊配置というものを総合的に判断しなければなりませんので、その辺の案がまだきまっていない。したがって、座間の場合は一応二条四項(a)とかいうような正式な形式を踏みませんで、暫定配地のかっこうで米軍とジョイントトレーニングをするというかっこうの三条使用をしようと考えております。
  136. 大出俊

    ○大出委員 ジョイントトレーニングというのは昔はずいぶんあったのですけれども、最近はほとんどない。だから三条の管理権を使ってということは、というかっこうをつけて三条でとりあえずあそこへ行こうというので、朝霞でしょう。施設部隊でしょう。これはだれに聞いたということは申し上げませんけれども、神奈川県から要請があって、警察学校なんというのをつくる、道路をつくるというので、あそこを少し手伝ってくれという話があったことも実は私は聞いておったわけでありますが、というふうなこともあるから、とりあえずそういう名目をつけてやっておこう、こういうことになるわけですな、それじゃ。
  137. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 確かに神奈川県には実力部隊としての陸上自衛隊はおりません。災害派遣等の問題もございますし、そのほかの問題もございますので、長期的には、先ほど申し上げましたように非常に大きな施設でございますので、自衛隊の恒久配置計画ということになりますとまだ時間を要しますので、暫定的に必要と考えられる施設部隊を配置するという考えでいま進めております。
  138. 大出俊

    ○大出委員 施設部隊となりますと、施設部隊の使用目的があるわけでありますからね。したがって何をやるということはさまっているわけですから、暫定的にとりあえず施設部隊だけ入れておこうということになると、施設部隊がやらなければならぬことがある。そうすると神奈川県が行って要請をしているものと結びついてくるわけでありますが、そう理解してよろしゅうございますか。たいしたことじゃありませんが。
  139. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 確かに神奈川県にはいろいろ自衛隊のほうで頼まれております土木工事の関係もございますし、また非常に土地も過密化しておりますので、災害派遣等の問題も相当想像されると思います。その意味におきまして朝霞の施設部隊を暫定的に配置するということになっております。
  140. 大出俊

    ○大出委員 江藤さんのお立場もありますからね、そこから先県会でも質問が出ている問題でありますから私は申し上げません。申し上げませんが、いまの御答弁で大体わかるような答弁をしていただきましたからいいと思うのでありますが、ただこれは長官に申し上げておきたいのですが、これは昔の相武台ですよね。これは地元のいろいろなことがここに書いてありますけれども自衛隊が座間に執着する理由は相武台という名に特別の感情があってなんというようなことも書いてありますけれども、それはともかくとして、つまりかつてここに旧陸軍の学校があったわけでありますから、だから相武台、ここは有名なところでありますけれども、それだけに地元からするとずいぶん長い間ここは軍に協力をさせられた、したという地区なんですね。それだけに座間の町長以下町議会満場一致で、せっかく返ってくるというのにまた自衛隊が入ってきて、自衛隊が、いまは暫定的だが四次防の中で確定的に、神奈川にあまり自衛隊がないんだからといって使うということになったのではたいへんだというので、方々に横断幕などぶら下げて、町あげて反対のかっこうになってい、るわけですね。私は前に、もちろんこれは中曽根さんじゃないわけでありますが、ずいぶん前に何べんか、この種の地元のたいへんな反対をしているところにあえて自衛隊を入れるのですかということを歴代防衛庁長官にただしてきたわけでありますが、かつて横浜にありました例等を例にあげて申し上げましたら、いやそれだけ地元が反対をするんであればあえて入れるということは考えないということになっているわけでありまして、地元がこれだけ町議会満場一致、超党派的にきめて反対だというているところに、あとこれは返還をされる、さて自衛隊がというかっこうになるのだとすれば、非常にこれは大きな問題になると私は思う。私はそこまでの無理はおやりにならぬほうがいいと実は思っておる。これはかつて長官予算の分科会でいろいろ御質問をいたしまして、長らく地元が待っていたところに返ってきた、東京周辺、この横浜もそうでありますが、神奈川県あたりのこういうところ、座間もどんどん過密地域になってきているわけでありますから、そういうまん中にこんなものがばんとあるというようなことは感心しない、こういう実はやりとりを長官としたことがあるのでありますけれども、私はやっぱりそういう意味で、時間をかけたくありませんけれども、地元の気持ちをくんでいただきたい、こう思うのでありますが、この点いかがでございますか。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 地元の方々からも御陳情を私承っておりまして、できるだけ地元と話し合いをいたしまして、地元の御了解を得つつ調整していきたい、そう考えております。
  142. 大出俊

    ○大出委員 得つつ調整するということになりますと、ことばじりをとるわけじゃありませんけれども、置くんだというので何とか説得しようというふうに聞こえるのでありますが、まあ事と次第によったらやむを得ぬと——やむを得ぬというのは、置かない、地元の言うことを聞くということもひとつ含めてこれはお話し合いをいただかぬと、何でもかんでも置くんだということになってしまうので、そこらのところはいかがでございますか。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 自衛隊に使していただこうと思っております。ただ、全部使うかどうか、これは自衛隊のこれからの移転計画等も考えましてよく検討してみようと、そういう意味であります。
  144. 大出俊

    ○大出委員 くどくは申し上げません。  ところで簡単に三、四点具体的な問題だけ承っておきたいのでありますが、横浜に山手住宅地区というのがございまして、米軍の住宅がずらっと並んでいるところがあります。これは民間の家屋を接収をしておるもの、あるいは建てたもの、混合しておりますが、この地域で、先般横浜の防衛施設局を通じて防衛庁のほうにお話しをいただくように申し上げておきましたが、戦後接収をして間もなく、これはここに全部年次がございますが省略をいたしますけれども、使う便、不便の関係で民有地を次々に道路にして拡幅をして、第一次、第二次、第三次、第四次というふうに拡幅をいたしまして米軍が使っていた、こういうようなことであります、現実は。ところが、さて返還をするということになって、最初は知らないから、地主さん、これを受け取っちゃったんですね。受け取ってみると、それは現に道路になっている。それを回復をして自分の土地に原形に復することにすれば車が通れなくなる、バスが通れなくなる。そういうむちゃなこともできぬということになる。ところが受け取っちゃったから使用料はもらえない、こういうかっこうになってしまっている個人所有の土地がある、現在返還されておりますが。かと思いますと、返そうといったら、地主が、それは困る、おれの土地、これは半分くらい道路にしちゃってどうしてくれるんだというので、原形に返してくれなければ受け取らぬというので受け取らないから、しかたがないから使用料を払って、受け取っている、こういう人もある。それから受け取る、受け取らぬでもめている、大騒ぎになっているところもある。これは終戦処理のまた処理みたいなことでございますけれども、この地域をざっととりあえず見たところだけでちょっと場所だけ申し上げておきますが、山手地区それから竹之丸地区、競馬場地区、この三つで四千五百七十八平米あるんですね。このほかにも稲荷山地区だとかいろいろございますが、大まかにいって、いまわかっているそういうところがあります。この処理は、一番困っているのはそこに住んでいる地主さん、住民なんですから捨ててもおけない。かといって横浜市が負担せよといわれてみても横浜市が接収したわけじゃない。接収の相手方は、当事者となりますと国でございまして、さていまさら道路を原形に復しようがない、実はこういうことなんです。これは県にもいろいろ地元からも言っておりますから、県も入っているし市も入っているというかっこうで話が行なわれてはいます。いますが、やっぱりどこかでここの問題の早急な解決の糸口をつけていただかぬと、三すくみじゃ、これは地主が困るばかりでございますから、幸い横浜の防衛施設局の関係の皆さんも御苦心をされておるようでございますから、何かの方法でひとつ糸口をつけていただいて、せっかく長らくお互い苦労したところですから、気持よくあと処理ができるような御配慮を担当省庁としてお考えあってしかるべきだろうと思うのでありますが、この点いかがでございますか。
  145. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 大出君にちょっと申し上げますが、長官に具体的な問題で御質問がなければ、ちょっと食事を長官にしていただいたほうが先々のためにいいと思いますが。
  146. 大出俊

    ○大出委員 最後に実は締めくくりに外務省の皆さんと長官に承りたいことがございまして……。
  147. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 ですから十五、六分ございます。
  148. 山上信重

    山上説明員 山手地区の返還に伴う問題につきまして、ただいま、現在御質問になるような問題については実は私具体的に今日まで伺ったことがなかったものですから十分な検討をいたしておらなかったのでございますが、御承知のように山手地区の移転の問題も明年の三月ごろにはおおむね片づく見通しが近づいております。したがいまして、これに伴って山手地区の返還ということが相当大規模に行なわれる可能性がございます。その際に、ただいま御質問にあったような住宅の一部が道路にされておるという実情の問題があるということを、私も、実は先ほど伺ったばかりの状態でございますが、こういう問題につきましては、本来であるならば、返還もしくはそれに対する返還後使用という問題があると思います。御承知のように、道路敷になったものは、米軍の都合でしたとはいえ、今日道路として非常にまた活用されておるということで、横浜市当局もその点について現状維持を望まれるような御気配もあるやに伺っております。したがいまして、これらは地元の市町村あるいは県なり所有者との間で、おっしゃるように、皆さんの納得できるようないい解決策をこれから検討して、ひとつ皆さんの御納得のいけるようなことを考えてまいりたいというふうに思います。ただいま、じゃ、こうしますということはちょっと申し上げかねるので、その辺は御了承願いたい。
  149. 大出俊

    ○大出委員 いまの件は、山上さん、そこを心配しまして、横浜の施設局で担当の方々がずいぶん御苦労されておる。それなりの私案を持っておられる。その私案で納得するかどうかということは、これはまたわかりません。わかりませんが、少なくともそれが呼び水になって、おっしゃられるとおり、返還がきまって返ってくるということになりますと、相当広大な地区でございますから、至るところで受け取る受け取らぬという問題でもめ出しちゃったんじゃ、せっかくそこまでいったことが意味なくなってしまう。かといって、受け取れば私道になってしまってやっかいな問題にもなる。地主さんも、受け取れば最終的に私道で、市に無料で移管をするということになってしまいますから、それは困るということで受け取らない、だから返せないというかっこうになってしまって、これはまた困る。そういう実情にありますので、横浜の施設局から施設庁のほうにその旨を御連絡おきいただきたい、この席で私質問をして、何とか糸口をつくりたいからというお話をしておいたのです。なかなか事務的な面もありますので、私の案という形になっておりますから、そこまで伝わっていないんだろうと思います。思いますが、問題の焦点はおわかりいただけたと思います。ぜひ、ひとつ早急にこれは御検討をいただいて、何かの方向を横浜施設局あてに御指示をいただきたい。そうしませんと、私案のままではこれまた動けないわけでありますから、その点をお願いをしておきたいと思います。  それから、時間がありませんからいずれも簡単に申し上げますが、もう一つ、横浜市の戸塚に、町名でいえば和泉という町でありますけれども、この周辺、あそこの深谷の総合アンテナ等大きなものが、米軍のあれでございますが、できました関係で、厚木周辺一円のテレビ画像が一切映らぬという状況のところがたくさんあるということで、地域の大きな問題になってしまっております。かつて、私もNHK等も呼びまして、別のところの問題で厚木基地周辺等の問題もずいぶんやったことがありますけれども、ここまでまいりますと、もうその必要もなかろうと思いますので、直接長官にお尋ねするのでありますが、これはまた聴視料の問題その他が起こっておりますし、そういう際のNHKと防衛庁との間のお話し合い等もあるわけでございますから、これもいつまでもほうっておかれては困る問題で、NHKのほうはしきりに、取りに行かざるを得ないから取りに行く、片方は映らぬから払わぬというかっこうになる。これはまた、至るところでそういうもめ方になってきておりまして、ここらのところを、ひとつもう少し出先のほうにもお話をいただいて、相当広範に広がりつつあるわけでありますから、あまり広がった騒ぎにならぬように手を打っていただきたい、こう思います。
  150. 山上信重

    山上説明員 深谷通信施設周辺のテレビの難視難聴の問題につきましては、私どもといたしましても、これからの問題として現在いろいろ研究いたしておりますテレビの共同アンテナ、こういったような施設によって解決できるのではないかというようなことで、今後の予算面において、そういう点を来年度の予算等考えてまいる、あるいはそういうことで、もしどうしてもうまく解決できないようであれば、ただいまおっしゃったような受信料の問題もNHKと相談してみたいと思います。まずは、そういった方向で、見えるようにすることを考えなければいかぬのじゃないかということで検討いたしておる段階でございます。
  151. 大出俊

    ○大出委員 これはNHKにも予算ワクがありましてね。たとえば共同アンテナをつくる場合に、丹沢山の高いところだとか、いろいろなケースがありまして、金を出すようなことにもなっていますが、何しろこれは、御本人たちがかってにそういう見えないところに住んだのではなくて、アンテナができたからそうなっちゃったわけですから、よって来たる原因というのはそっちにあるわけでございます。だから、それが住んでおられる方々の負担になるようなことになると、これは納得しないのは当然だと思う。しかもあとからできたわけですから、そういうところはやはりできるだけ早く手を打っていただきたい、こう思うわけでありますが、いまの御答弁でお考え方はわかりますから、多くは申し上げません。ぜひひとつ早急に処置をしていただきたいと思います。  それから、これは再三申し上げましたが、金沢区柴町小柴というところに燃料貯油施設がございますね。これは私、何べんも言いましたから、どうもあんまりものを言いたくないくらいなんですが、いまだに排気孔はそのままで、十八号タンクは返してしまった土地の下だというのでは—これはは高オクタンのタンクでございますから、地元の諸君にすればおさまりがつかぬ状態に実はあるのです。経過、歴史その他はもう何べんも申し上げましたが、鶴崎さんが施設部長をおやりになっておられる時代に、米軍との共同調査などをおやりになっていただいたのだけれども、その共同調査に地元の諸君は一切参加させない。質問があれば質問してくれということで、調査はしていただいた。これは今日、明らかに個人所有になっていて、土地は非常に深いのです、二十メーターからあるというのですから。米軍の燃料貯油施設、十八号タンク、これは不法占拠でございます、返してしまったあとにつくったのですから。そういう形になっている。油槽ということばを使って、旧軍のときから云々という話がありましたが、かつてダイヤモンドなる大佐が地元の人を中に入れた時期もありまして、何人か確認をして、ないところにつくったということになっているわけでありますから、この問題は、イーズメントの関係、その他のかかわり合いがありますけれども、いつまでもほっておくわけにはいかない。したがって、もうぼつぼつ地元の諸君は、中央に出てきて、防衛庁長官なり施設長官なりに会って詰めてみたいという気持ちなんですね。県なり市なりあるいは地元の防衛施設局なりに再三話はしておりますが、らちがあかぬ。したがって、いたし方ないので、てっぺんに行って、ひとつ地元を代表して話し合いをしたい、いまこういう空気になってきているわけであります。これは東洋一といわれるような燃料貯油施設なのかもしれませんけれども、それだけに相当心理的な危険を感ずる方々が多いわけであります。排気孔は、千五百メーターくらいバリケードを張って、人を入れないということになっているところにむき出しでいまだにあるわけでありますから、しかも地下には貯油タンクがあるわけでありますから、もう何か皆さんのほうで考え方があってしかるべき時期だろうと思うのでありますが、いかがでございますか。
  152. 山上信重

    山上説明員 小柴貯油施設の地下燃料タンクのあるところが、過去においてあやまって返還になりましたために現在問題を生じておることは、たびたびの御質問でよくわかっておるわけでありますが、われわれのほうといたしましては、従来この問題についていろいろ頭を悩ませまして、地元との間に何らか円満な話し合いによって解決できるように、いろいろ御示唆のありましたような一部の共同使用とか、そういったような点もいろいろ研究しておるわけでございます。いまだにはっきりした結論に達しないのはまことに遺憾でございまして、申しわけございませんが、この問題の一番根本にあるところの燃料タンク、これは現在ではぜひ必要だというような筋合いのものでもございまするので、直ちにこれをどうするというわけにはいきません。したがって、むしろ地元の方々にほかの方法によってひとつ御納得のいくようなことをさらにやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  153. 大出俊

    ○大出委員 そのほかの方法でというのは、表に出せないことになりますか。
  154. 山上信重

    山上説明員 この程度にこういうことをするということは申し上げかねますけれども、何らかの方法によって共同使用等の問題を検討して、御納得のいけるような線を発見したいというふうに考えておるわけでございます。
  155. 大出俊

    ○大出委員 たくさんの人がおることですから、都合の悪いことであるとすれば追及はいたしませんが、共同使用等によって何とか了解を得たいというところまでのお話でありますが、地元の気持ちは非常に強いわけでありまして、私もそこから先は承りませんが、ぜひひとつ直接地元の諸君の切なるこの要望、とにかく旧海軍時代から長いわけですからね、たまったもんじゃないという感情が地元にありますので、ぜひひとつこれは取り上げていただいて、地元の諸君もいろいろ言いたいという気持ちもあるでしょうから聞いてあげていただいて、これは非常に重要な基地でもありますだけに、問題が妙な発展のしかたをするとこれまた社会問題にもなりますから、そういう意味で、ぜひひとつ早急にそういう方法で詰めてみていただきたい、こう思うわけであります。  それから、富岡の倉庫地区というのがございまして、かつて建築交換のような形で弾薬陸揚げ所を入れかえたりして苦労した地域なんですが、私もまとめるのに一骨折らされた地域なんでありますけれども、この富岡の倉庫地区の返還の問題はいまどういうふうに動いておりますか。
  156. 山上信重

    山上説明員 富岡地区につきましては、現在、米側において利用度が非常に少なくなっておるということは事実でございますので、われわれといたしましては、これの今後の利用についても検討いたしておるのでございます。御承知のようなことでございますので、米軍基地自衛隊管理というような線もございます。したがって、そういうような問題、あるいは地元の利用の問題、これらを総合的にいま当方としても検討しておる段階でございますが、米側においても、この問題につきましては、いまだ具体的にどうすると——われわれ聞きましても、まだ検討中の段階である。双方そういったようなところで、どういうふうに今後持っていくか検討しておる段階ということでございます。
  157. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと気になる御発言がいまあったのですが、米軍との共同使用、共同基地管理というようなお話がいま出てまいりましたが、これは二十カ所のうちに入るのでございますか。
  158. 山上信重

    山上説明員 いま、そういったような問題は防衛庁のほうで検討いたしておりますので、われわれといたしましても、そういった自衛隊がぜひ必要だという利用度があるかどうかということ、地元のほうにそういう御利用の希望があるかどうかということ、これらを総合的に判断いたしませんと結論が出せませんものですから、ただいま少し広く申し上げたわけであります。米側においても、まだこの点については全然態度がはっきりいたしておりませんので、今後双方で詰め合ってまいる。いずれにいたしましても、あの地区が現状のままでは済まされない。したがって、今後前向きで検討してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  159. 大出俊

    ○大出委員 今後前向きで検討するということだというのでありますが、ことしの秋ごろに閉鎖ということになるのじゃないかというのが一般的の観測なんですよ。前に私は中曽根長官質問をしたことがありますが、これは、地元にも、米軍関係の諸君もいろいろいますからね。したがって、ことしの秋閉鎖、ここまでははっきりしておるように思うのです。そこの点、念のために、だれがそう言っておると言ってもいいのですか、できればそこらのところを、断定的でなくてもいいですから、あまり人の名前を出すとめんどうくさくなりますから、そこらをひとつお話しいただきたいのと、これは前にいきさつがありまして、私さっきここでちょっと触れましたが、自衛隊が入りたいと言ったことが一ぺんある。その後、姿勢も変わりまして、どうしても反対だということになってきまして、私当時、時の防衛庁長官といろいろやりとりをいたしまして、地元が反対である限りは、そこまで反対がある限りは、これはもうそれを無理してやるということはしない、こういう実は議事録が当時残っておりますが、やりとりがあった地域なんです。したがって、それをいまあらためて、広い意味かもしれませんけれども共同管理というような形のものが出てきますと、ちょっとまた混乱をすることになる。  したがって、二つの点でございますが、一つは、秋あたりまでに閉鎖という動き、この点について。あとのほうは、検討中ということならばそれでいいですけれども、いま私が申し上げたような経過があるということをお含みをいただいて、変わった答弁ができなければけっこうですけれども、もう一ぺん重ねて御答弁いただきたい。
  160. 山上信重

    山上説明員 富岡地区につきましては、米側において、そういったような全体を閉鎖するということについては、私どもとしてはただいま確信をもって申し上げる段階にございません。相当部分の遊休部分がございまするし、したがって、それらについての利用をこちらにまかせられるような方向に行くのではなかろうかという期待はいたしております。したがって、そういうような面で今後あと地の利用計画、どういうふうに持っていったらいいかということを検討してみたいと考えております。
  161. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、建物その他がありますから、あと地の利用をまかされるのではないかというと、これは共同使用なんで、これは重大な事件だということになるわけでありますが、二回重ねてそういう御答弁でございますから、これはここでそれ以上私のほうで申し上げても時間がかかります。時間がありませんからその辺にいたしますが、くどいようでありますが、かつて地元がどうしてもそういうことは困るということであれば無理してそこに自衛隊をというふうなことはいたしません、こういう意味の答弁がありまして、議事録に残っている、こういうことを一ついまの点はつけ加えておきます。もし、そうでない、おそらく米軍側が防衛庁が使うようにというので管理を預けられるというようなことになりますと、これはまたたいへんな事件が起こりますので、その辺のところだけ念のためこれはつけ加えておきたいと思うのであります。  それから、横浜貯油施設というのがございますが、それと鶴見の野積み場というのがございます。これも前から貨物駅の拡幅問題だとかいろいろなことがありまして、経過のあるところなんでありますけれども、これもすでに去年の十一月の時点で米軍から条件つきで返すという方針を日本政府に提出していた、こういう実は事実があるわけであります。この辺のところはその後どういうふうに変化しておりますか。簡単でけっこうでございます。
  162. 山上信重

    山上説明員 横浜貯油施設、鶴見野積み場、いずれにつきましても、米側から返還の意思があるという通告は受けておりません。
  163. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんから、防衛庁側で聞いてないとおっしゃるのなら、あらためてひとつ資料を添えて申し上げたいと思います。  それから、岸根の兵舎地区の返還がもう一つございますが、この点についてはその後どうなっておりますか。
  164. 山上信重

    山上説明員 岸根兵舎地区、現在まで病院のあったところですが、あれは今年一ぱいくらいで病院としての閉鎖が行なわれるということは承知いたしておるのでございますが、その後の利用については、米側に再考を求めておりますが、現在のところまだ不明確でございます。ただ、病院として利用がなくなり、今後閉鎖ということになれば、あるいはそういった向きの利用ということが米側においても考えられるかもしれない。したがって、米側においてはこれを検討中ということの返事をいただいております。したがって、まだ、どういうふうにするかという点については未確定でございます。
  165. 大出俊

    ○大出委員 これもずいぶん長くもめたところでございましてね。ああいう性格のところでございますから、それだけに、使わなくなるのであるということであれば、あの辺野球場その他なかなかないのでありますから、とにかくとりあえずの措置であっても、そういう子供に開放するとか、そういうことだけはやってもらいたいという地元の非常に強い要請がございまして、これまた多く申し上げませんけれども、そこらのところはあらかじめやはり防衛庁のほうから御検討いただいて、さんざっぱらがたがたしたところでございますだけに、ぜひそういうふうな方向での進め方を御検討いただきたいと思うのであります。
  166. 山上信重

    山上説明員 その点についても十分検討してみたいと思います。
  167. 大出俊

    ○大出委員 時間がたってしまいましたから、最後に締めくくりだけ申し上げておきたいのでありますが、これは前にもちょっと長官自身も触れておられましたが、GNPの上昇度合い等も急速にふえてきているわけでありますから、愛知さんなども去年の六月のASPACなどでも述べておられましたり、宮澤さんなんかも前に企画庁長官をおやりのときにもお話しになっておりましたが、GNPの急速な伸び等にあわせて考える場合に、経済援助というものは、七〇年代、かりに一%といたしますと、やがて四十億ドル、五十億ドルというふうにふえていくのではないか。中曽根長官のほうは、防衛費と申しますものは〇・八%くらいということを言ってきておられますけれども、かつまた国力、国情との関係でどういうふうになるかわかりませんが、五原則が庁内の構想どおり通るとすれば国力、国情というのはなくなりますけれども、これはGNP対比でいままではものを考えていたわけであります。これが財界その他の言うようなことで、やがて一%になるのだとすると、これもGNP対比でございますから、GNPの伸びいかんによってわかりませんけれども、ちょっと思いつきで計算をしてみましたところが、いままでの経過でいって、GNPが五年倍増のペースでふえていくということになりますと、七五年に大体四千億ドル、つまり百四十四兆円くらいになる。十年後八〇年というところで計算をいたしますと、多少ペースが落ちたとしてみても、六千億ドルから七千億ドルくらいになる。二百十六兆から二百五十二兆くらいになる。そこで輸出は、いまの趨勢でいけばGNPの一割、だから四千億ドルにいたしますと四百億ドルの輸出ということになる。さて対外援助一%ということになりますと、四千億ドルならば四十億ドルになる。一兆四千億。防衛費もこれまた〇・八が少し上がっていく傾向にあるように私が見ると見えるのですけれども、よしんば一%とすると、四十億ドル、一兆四千億円になる。こういう動き方になりそうなのでありまして、やがて五十億ドルの対外援助と五十億ドルの防衛費などということになりかねない世の中ではないかという気がするわけであります。  そこで対外援助のほうであります。これは外務省のほうに承りたいのでありますけれども、通常どういうふうにおきめになっておりますか。かつ四十四年度でどのくらい、もっとも民間の資金投資の場合なんか政府保証でございますから多少ケースは違いますけれども、対外援助、経済援助という意味で取り上げてどのくらいになりますか。
  168. 村上謙

    ○村上説明員 四十四年度とおっしゃいましたけれども、一九六九年、昨年度の対外援助の実績は約十二億ドル程度でございます。GNP対比は〇・七六%になっております。端数の数字はいま持っておりませんけれども、十二億若干となっております。それはいわゆる民間の援助と申すものも含めての総計でございます。
  169. 大出俊

    ○大出委員 そこで経済援助あるいは政府保証の民間投資等を含めましてこれがどんどんふえるという傾向にあるのと、−防衛費がやはりふえるという傾向にある。これは何かどうも裏表のような感じがしてならぬわけでございまして、経済援助と自主防衛というのは、これは長官に承りたいのですが、どうも二つながら沖繩返還交渉の手みやげのような感じがするのですが、そう受け取ったら間違いでありますか。
  170. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういうことはございません。
  171. 大出俊

    ○大出委員 長官の御答弁は聞き流しておきますが、愛知さんがしきりにASPAC等で言っておる五十億ドル、それから外務省は何か対外援助に対する一九七〇年代のアジア開発十年構想のようなものをおつくりになったように承っております。どなたか御記憶でありますか。
  172. 村上謙

    ○村上説明員 十年構想と申しましたような計画、われわれ検討しておりますけれども、そういうような計画はまだつくっておりません。
  173. 大出俊

    ○大出委員 防衛の問題とも関連がありますので承りたいのでありますが、いま御答弁をいただき、ました経済援助なるものが、どうもものの本によりますと、あまり受け取る側で快く受け取られていない。これは先般、何の機会でしたか忘れましたが、例のカナダのピアソン報告を例にとって申し上げたこともありましたが、どうもあまりといえばあまり、販路の拡大なりあるいは商業ベースが優先をしていくという感じになっているという指摘もずいぶん国際的にもあります。そこで償還期限あるいは据え置き期間あるいは利子、そこらあたりは大体どういうベースでいま進められておりますか。
  174. 村上謙

    ○村上説明員 これも昨年の統計によりますと、利子は平均いたしまして三・六%でございます。それから償還期間のほうは十九年でございます。据え置き期間はたしか六年だったと思います。
  175. 大出俊

    ○大出委員 借款の条件が非常にきびしい、無償援助が非常に少ない、こういうことになるわけなんでありますが、この動きの中でずいぶん日本がエコノミックアニマルなどといわれる原因を一つここでつくっている、こういう感じが非常に強いのでありますが、外務省側からながめてみて、この辺をどういうふうに全体としてお考えでございますか。
  176. 村上謙

    ○村上説明員 先生指摘のように、エコノミックアニマルあるいはそういうわがほうの援助が喜んで受けとられないのではないかという面が一部にあることは否定できませんけれども、総体的に見ましてわが国の援助というものはその国の経済の自立に貢献しておりますし、やはり私どもはこれは喜んで受け取られていると思っております。
  177. 大出俊

    ○大出委員 これはものの見方の相違がいろいろありましょうが、きょうは締めくくりですから中身はあまりこまかくは申し上げませんが、いろいろ私調べてみましたが、どうもずいぶん大きな反発が出てきているように感ぜられるわけでありまして、日本の総輸出の三分の一は東南アジアのようであります。ここらあたりでも、ここに抜粋していろいろ資料を集めてみましたが、ずいぶんいろいろなことが出てきておりまして、必ずしもいまの御答弁のようなぐあいになっていない、こういうふうに見なければならぬと思うのでありますが、そこで韓国あたりのいまの状況はどういうことでありますか。
  178. 村上謙

    ○村上説明員 わが国の対韓経済協力の実績は、大体年間におしなべまして延べ払いも入れますと約一億五千万ドルになっております。そのうち有償、無償といわれている政府ベースのものは約三分の一、五千万ドル出ております。
  179. 大出俊

    ○大出委員 六八年の数字がここにありますが、日本からの輸出が七・七億ドルですね。そして韓国からの日本の輸入というのは一・三億ドル、だからこれは六分の一ですね。完全な片貿易ですね。東南アジアの場合も、日本の輸出総額の三分の一出ていっていますけれども、これまた非常に輸入と称するものは少ないわけであります。だから今回の浦項の総合製鉄所問題、これは金融べースで、経済ベースで一ぺん日本は断わったはずですね。ところが、これは鉄関係のどこが動いたなんということがことのはにたくさんのぼりますけれども、これは国際金融機関から断わられたりいたしておりますが、佐藤総理、政治ベースで引き受けるというかっこうで日韓閣僚会議その他に入っていったわけですね。ですから、これは皆さんのほうの側に立つ事務ベースの方々にお話を聞いても、少しおかしいのじゃないかという見方さえある。だから、これはアメリカとの関係もありましょうが、こういうかっこうで今回の閣僚会議のまとまり方になるというようなことはそれなりの背景がある、こういう気がするわけでありまして、私の承りたいのは、日本の立場というのは、経済援助を通じて受け入れる側の反発というのがだんだん強くなってきている、こういうふうに受け取れるのです。これはアメリカ側の要請なんかもいろいろあるのでしょうが、聞いておきたいのですが、この日韓閣僚会議に対するアメリカ側の要請、これは具体的にはどういうことだったのですか。
  180. 村上謙

    ○村上説明員 お答え申し上げます。日韓閣僚会議は日韓間のいわゆる経済協力その他全般的な問題につきまして論議するので、アメリカ側の云々というようなことは、おことばでございますけれどもございませんでした。それから先ほど申されました浦項製鉄所の問題につきまして、浦項製鉄所計画が昨年韓国側から日本に持ち出された際に、たしか先生の御指摘のように、国内には若干、一貫製鉄メーカーをつくるのは早過ぎるのではないかというような意見もございましたけれども、日韓閣僚会議で一応政治的なそういう路線が出て、ただその場合に、ほんとうに韓国経済にとって一貫総合製鉄メーカーを持つことが経済的、技術的に効率があるかどうかということを一応事務当局で調べろということになりまして、昨年九月に調査団が参りまして調べました結果、韓国の鉄鋼需要が七二年には約二百万トンに達するだろうという計画、それに対応してやはり鉄鋼資材の輸入というものも当然起きてくる、その輸入代替の効果があるんじゃないかということが認定されましたもので、その結果、経済的、技術的な効率ありと見て、わがほうとしてもそれに具体的に協力することになった、こういう状況でございます。  それで、喜ばれないということでございますが、おことばに失礼でございますが、浦項製鉄所に関する限りは、非常に向こう側は喜んでおります。
  181. 大出俊

    ○大出委員 それは関する限りは喜ぶでしょう。経済ベースで日本に断わられて、国際金融機関に持ち込んでまた断わられて、それは喜ばれなければおかしい。だがしかし、全体的に見てピアソン報告にも指摘されているように、韓国の経済発展に役立たない資金融資というようなことがいろいろ行なわれている、こうなっているわけですね。いまさら読み上げるまでもありません。ちょうど二時間になりますからこの辺でやめます。  そこで、実はこれだけの経済援助が必ずしも喜ばれないままに流れていくアジア諸国というのは軍事政権が多いわけですね。そこで、これは長官に承りたいのでありますけれども、経済援助の中心点が、いずれもどうも分裂国家その他に焦点がいっているわけですね。韓国しかり、台湾しかり、あるいは南ベトナムしかりというぐあいに集中的にそこに向いている、つまり反共国家群というところに。朴正煕氏なども最近は、どうも反共色を云々し過ぎたというようなことを言っている新聞が出ておりますけれども、どうも日本の経済援助というのはそういうところに集中的に向いている、こういうかっこうになっている。そしてGNPがこのままでふえていくということになりますると、一つ間違いますと、気がついたら世界一の資本輸出と世界一の軍備を持っていた——世界一といってもアメリカ、ソビエトがありますけれども、長い将来をながめるとそういうことになりかねないような気さえする。いま軍事費は世界第六位、こういうわけであります。そうなると、ここから先はよほど、ことばの上で長官と上田君のやりとりなんか見ましても、辞書には軍国主義とはこう書いてある、確かにそれは辞書にはいろいろな書き方がしてありますが、だからいま日本は軍国主義でない、佐藤総理も、憲法も改正されない、あるいはまた徴兵制度も行なわれていない日本が何が軍国主義だ、こういう言い方をされましたが、そういう意味で反論をすることは簡単だと私は思う。簡単だと思うのですけれども、それでは済まない。やはり総体的にながめてみると、資本の原理が動いているという気がするわけでありまして、そういう意味で、経済援助というものから始まりまして、強くなった円の経済圏みたいなものさえできかねない最近の事情でございますから、そうなると、そこに、きわめて政治的に不安定な地域に対する資本輸出ですから、ひとつそれを何とか裏づけなければならぬということになる。そうすると、とかく軍事的な裏づけということになりかねない。これはナンセンスだと当面は言っておるけれども、マラッカ海峡防衛論というのがそこに出てくるわけでありまして、この十月には三国共同調査もやるわけですから、そうなるとやがて、どうも韓国の安全は日本の安全にとって緊要であると言っておったのが、マラッカ海峡の安全も日本の安全にとって緊要だと言い出しかねないような気がするわけでありまして、そういう意味で私はもう少し突っ込んだお話し合いをしたいと思っておりましたが、長官たくさん新聞に発表されることが多過ぎますので、そのほうを一つ一つ確めているうちに時間がなくなるわけでありますけれども、そういう心配を持っておるのは私だけでないと思うのでありますが、その辺のところをひとつ長官に御答弁をいただきたいわけであります。
  182. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本の対外経済協力はその国家の国民福祉に貢献する、そういう意味でやっておるのでありまして、軍事関係との関連というものはございません。またあってはならないことであります。日本がアジアにおいて引き受くべき役割りというものは、やはり社会の安定、社会の繁栄に貢献するということでありまして、この点は明確になっているだろうと思いますし、アメリカその他の国々も、日本のそういう貢献をかなり評価してきておる最近の実情であろうと思います。そういう線に限定いたしまして日本の方向をこれからも進めてまいる。防衛は日本の本土防衛国土防衛に限定する、そういう節度をきちんと守ってまいりたい、そのように考えております。
  183. 大出俊

    ○大出委員 海上自衛隊防衛範囲なんかも、日本の本土周辺千キロということになりますと、これは沖繩、サイパンくらいまでだと思いますが、これが四千キロに延びるということになりますと、ただ口ではマラッカ海峡防衛などというのは旧海軍だってできなかったじゃないかという理屈になるのでありますけれども、これはなかなかそういうわけにならない。今日の石油輸送の状況その他をながめてみて、なりかねない事情にもあると私は考えるわけでありまして、先般来長官が国会等で答えておりますのは、港湾の入口に時期的に船が集中をする、だからそういうところを守るくらいが精一ぱい、こう言うのでありますけれども、四次防の海上重点の計画内容等を明らかにされませんから、ここから先の議論ができないわけでありますけれども、そういうことを口で言うことは簡単ですが、実際動く資本の原理というものはそう簡単なものではない。ABCラインということで石油をとめられて起こった第二次世界大戦、それが契機だろうと思うのでありますが、そういう点の危険さえ私たちは感じられるわけでありますから、そういう点は、長官からいままでいろいろそういう方向にいかないような努力をするという御答弁をいただいておりますけれども、現実に動く動きというものは必ずしもそうではない。だから、そこらをやはり努力していただきたい気がするわけでありまして、これは一方的な言い方になりますが、最後にそれだけ申し上げておきたいと思います。
  184. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 木原実君。
  185. 木原実

    ○木原委員 私は、時間を節約したいと思いまして、結論から二、三お伺いをいたしたいと思います。いまも質問のありました四次防に関連をしながら、長官の所見を伺いたいわけであります。  まず、結論めいたことを言うようですけれども、四次防につきましてはまだ原案ができていない段階である。ただ、これまでも当委員会はじめいろいろな機会に四次防の方向みたいなものが明らかにされました。たとえばその中で、四次防に要する費用はおおむねGNPの平均〇・八%ぐらいになるだろう、こういうような見解も述べられております。あるいはまた、大体年次平均一兆円ぐらいの予算になるのではないかという見解も聞いておるわけであります。最終的にどういうことになるかわからない面があるわけでありますけれども、おおむねそういう方向が示されておるわけであります。そうしますと、四次防という形で三次防に引き続いて自衛力の増強が行なわれるわけなんです。いままでいわれておりましたように、これに要する費用が年間一兆円だ、こういう時期がすぐそばに参っておるわけであります。それだけを取り上げて考えましても、国内的には経済が成長しておる段階ですから、相対的にはたいした費用ではないという見解がかりに成り立つとしましても、たとえば自衛隊なるものの国際的な戦力としての比較、こういうものを勘案してみますと、すでに現状でも、アメリカやソ連や中国を含めた国々との比較の中で、世界で十三番目とか十四番目とかの費用を使う軍事力になっているわけです。そうしますと、引き続いて四次防の段階に入っていく、かりに第一年度の年間の予算が一兆円だということになりますと、少なくとも世界で十本の指の中に数えられる、はっきり言って軍隊が成立をするわけです。そういうことになりますと、これはあらためて日本の憲法に照らして合憲かどうかという憲法上の疑義をたださなければならない。こういう政治的な問題を必然的に帯びてくると思うのです。これらについては、これまでもきわめて慎重に憲法上の解釈が行なわれてまいりましたけれども、この際お伺いをいたしておきたいのは、いま防衛当局で計画されておる四次防が推進をされると、あらためて憲法上の問題は出ないのかどうか、その辺についての長官の御所見をまず伺っておきたいと思います。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 憲法上の問題は出ないと思います。憲法のワク内においてわれわれは日本の防衛力を整備していくというのがまず根本的な立場でございます。すなわち、攻撃的兵器とかあるいは戦略的長距離弾道弾、ああいうような攻撃性を持っておるものは日本は持たない。それから通常兵器のワク内において限定戦に対処する能力を持つ、そういう範囲内でありますから、憲法上の問題は出ないと思います。
  187. 木原実

    ○木原委員 私は、ここで長官と憲法上の解釈の問題をめぐってまだ議論をする段階ではないと思いますので、議論は避けたいと思います。しかし、少なくともいままでの憲法解釈についても、私はたいへんな問題が残っておると思う。日本の司法部は、いままでしばしば自衛隊の存在についての、たとえば違憲の訴訟等についても解釈を避けてきたという側面があると思います。言ってみれば、憲法の政治的な解釈によって自衛隊が存在をしておる。しかも、これが何といいましてもたいへんな軍事力として成長の一途をたどっておる。文字どおり軍備拡大である。しかもその裏側の問題として、しからば軍備を縮小していくという行政上ないしは政治上の概念というものは政府当局にない。言ってみれば、全く図に乗った野方図な軍備拡大が行なわれておる。大体軍事力なんというものは大きくなればなるほどいいというものじゃない。しかもおおむね世界の各国の中においては、軍備の縮小の傾向、軍事費を削減していこうという傾向が強まっておる。言ってみれば、日本だけが倍々ゲームのような形で軍備の拡大を何の疑いもなく政府当局は進めておる。なぜこれが必要なのかという問題についても、必ずしも国民に納得させるものがない。そういう形で、ただこのまま四次防から五次防へ、先ほど質問がありましたけれども、長期の戦略見積もりに基づいて四次防、五次防の計画を先取りするような形で軍備の増強を進めていくんだ、こういう姿がある。客観的に見れば、憲法でいう戦力——どう考えてみましても、これが軍隊ではない、ないしは戦力ではない、こういう解釈はもう限度にきておると私は思います。それをただ政治的な力関係の中で解釈をいわば国民の前に押しつけてきた、こういうことをあらためて痛感せざるを得ないわけであります。したがって憲法上は、長官いま言われましたように、攻撃的な兵器は持たない、本土の防衛に専念するんだといってみても、具体的な軍事の中で攻撃と防御の区分けというものが一体あるのですか。これ自体についても私どもは非常に疑念を持つわけです。  そこでもう一つ聞いておきたいのですが、かりにこのような自衛隊の存在が憲法上たいへん疑義がある、違憲であるという司法部の判決が出る、そういった場合には長官はどういうふうに対処されますか。
  188. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういうことはないと思います。もし万一最高裁判所の判決が出れば、これは法治国家でありますから、判決には従わなければならないと思います。
  189. 木原実

    ○木原委員 いまも申し上げましたように、従来も何回か自衛隊の存在について憲法上の争いが行なわれた。裁判所はこれについて、非常に慎重にというかあるいは政治的にと申しますか、判断を避けてきた。しかし現に一、二の下級裁判所において、自衛隊の存在についてあらためて合憲性が問われておる姿があるわけです。もしかりに、これらの下級裁判所において相次いで違憲の判決が出る、こういったような場合には防衛庁としてはどういう対処をされますか。あるいは政府としてはどういう対処をいたしますか。
  190. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 三権分立のたてまえから、裁判所の裁判に関して、いまあらかじめ予見をしてああだこうだということは差し控えたほうがいいと私は思います。
  191. 木原実

    ○木原委員 私が伺いたいのは、先ほどもそういうことはないという断定的な御答弁がございました。いまは予見を伴うから言うことを控えたいんだという御答弁でございますけれども、しかしながら、事実問題としてかりに違憲だという判決が出た場合これに従う、こういうことなんですが、従うということの意味は、かりにそういう判決が出たとすれば、自衛隊を解散してあるいは憲法の改正をして出直す、こういうことになるわけですか。
  192. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 違憲という判決は出ないと確信しております。
  193. 木原実

    ○木原委員 これは一つの希望的観測であって、おそらく予断だろうと思うのです。しかしながら、長官がそうおっしゃるなら、私のほうも、そういう判決が出る、そういう確信を持ちたい。そういうことになりますと、私が聞いておきたいのは、かりに違憲の判決が出た場合に、自衛隊はどうなるのか、あるいはまた政府としては、あらためて憲法の改正を国民に問うて、そして出直すというのか、その辺の心づもりはどうですか。
  194. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 法治国家でありますから、法の支配に従うということは当然でありますが、私は違憲の判決は出ないと確信しております。
  195. 木原実

    ○木原委員 これはもう押し問答になりますが、やはり判決に従う、これは当然のことでありますけれども、その場合には憲法の改正の提起をしなければなりませんし、あるいはまた現行の憲法が続くということになれば、自衛隊は解散をするということにならざるを得ない。この辺の、何といいますか、政治的な判断といいますか、手続といいますか、それについては何の腹づもりもございませんか。
  196. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういうことは考えたことがありませんから、腹づもりはもちろんありません。
  197. 木原実

    ○木原委員 最近のある雑誌によりますと、長官ば戦後の平均的なデマゴーグだという評論がございました。たいへんむずかしい評論で、私もどういう評価があったのか、読んでみましたけれどもよくわかりません。しかしながら、残念ながらいまの長官のそういう御答弁は一つの確信に基づいたものだと思うのです。これはやはりある意味でのデマゴーグの上に持っておられる確信ではないかと思うのですね。私は依然として自衛隊の存在については憲法上の疑義がある。だれが読みましても、憲法第九条に、戦力はこれを持たない、子供が読んでもこの文言は読み違えるということはないわけですね。しかも、自衛隊が従来の解釈を上回っての、いってみれば戦力の増強ないしは武力の増強を相次いで行なおうとしておる、こういう時点だと思うのですね。私はそういう意味で、四次防の展開について重大な関心を持っておるわけです。  長官にお尋ねをしたいわけですけれども、どうしてこれだけの、世界で十本の指の中に入るほどの武力を持つ軍隊が、軍事力を放棄をした、戦力を放棄をした、こう憲法の明文で書いておる国で存在が許されるのですか。これこそ私は一いままでは憲法も一つの政治的な解釈ですから、力関係によって解釈をされた憲法だ、私はこのように判断をいたしておりますけれども、しかしながら、これ以上四次防、五次防に向かって進んでいくという自衛隊のあり方は憲法に照らして、何といいますか、疑義が出てこないほうが私はおかしいと思う。長官はいままでの考え方で、これからやろうとしておることも合憲だ、こういうふうに断定的に判断をされておるわけでありますけれども、それならば、長官としては憲法については、憲法問題といいますか、憲法の存在を全くたな上げをして自衛隊の増強をはかる、こういうような立場のように考えられてなりません。ですから、再度伺いますけれども長官は憲法については自衛隊は違憲との判決が出るようなことはないという確信の上に立っておられるのですけれども、これから増強していこうという自衛隊のあり方についても、私どもの見通しでは限度がないと思うのですけれども、どこまで行っても、つまり量的にはどこまで行っても合憲である、こういうふうにお考えなのかどうか、その辺をひとつ聞かしてください。
  198. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いまデマゴーグ云々というおことばが出ましたが、私あの論文を読んでみまして、あの前田康博という人の考えによれば、戦後の最大のデマゴーグは吉田茂で、二番目は中曽根康弘である、そういうふうに私は読みました。吉田さんはデマゴーグではありません。私もデマゴーグではありません。これは念のために申し上げておきます。  それから憲法論につきましては、これは現実の問題の処理にあたっては、裁判所の判決というものがその最終的な見解を示すのであって、最高裁判所の判決というものを見て、われわれはわれわれの考え方が正しいか、あなた方の考えが正しいか、最終的には確定されるものであると思います。私らは、いままでいろいろ申し上げましたように、自衛隊は合憲である、そのように確信を持っております。
  199. 木原実

    ○木原委員 長官、それは自衛隊のためにもならないと思うのです。はっきりする時期というのは、私はやはり七〇年代にこなければならぬと思うのです。われわれも憲法上の争いをしてまいりました。しかしながら、もはや世界で、戦力の比較において、これは至るところにそういう比較が出ておるわけでありますけれども、来年度か再来年度の中には、少なくとも予算の規模においては十本の指の中に入るほどの軍事力を持つ。その軍事力が憲法上戦力でないという解釈。いままでは長官おっしゃったように、憲法解釈は主として兵器の質の問題、たとえば攻撃的な兵器ではない、あるいはまた自衛隊の姿勢として国土を守るということに専念をするのだ、こういうようないわば自衛隊の質の面で一つの限界を設けて合憲だ、こういってこられた。しかしながら、量の面においての解釈というものは残念ながらなかった。しかしながら、おそらく国の予算の一割近くを防衛庁が占める、自衛隊が占める、こういう段階になれば、あらためて量の面からやはり憲法上の疑義をたださなくちゃならぬ、こういう考えを持つことは間違っておるのでしょうか。やはりそういう面についてのきちんとしたものを持ってやりませんと、長官が推進をされようとしておる自衛隊育成強化という側面から見ても、これははなはだデマゴーグの上に成り立った軍隊、こういうことにならざるを得ないのではないでしょうか。自衛隊の諸君に、かりに不動の自信を与えるのだということになれば、どうしてもやはり憲法上の関門を、単なる政治的な解釈だけではなくて、きちんとしたものにしていかなくちゃならぬではないでしょうか。どうですか。
  200. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 きちんとしております。それは日本国憲法の解釈においては、自衛権は厳然として認められております。そうして自衛権を有効に保障するだけの限定的な防衛能力も認められておるはずであります。自衛隊はその範囲内にあることでありまして、きちんとしております。
  201. 木原実

    ○木原委員 自衛権の範囲内、こういうことなんで、私が申し上げたいのは、これ以上憲法論議をやりませんけれども、しかしそれにしても、それならば自衛権のワクの中だということで、ある意味では国家予算の一割をこえるような費用を使っていて、つまり量的な面でおそらくは限度のない形で進んでいきつつあると思うのですが、そういう量的な拡大についての憲法上の疑義というものは、これを持たなくてもいいんですか、われわれ国民としては。
  202. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、限定的な能力しか持っておらない。自衛権を有効に保障するために、いまのような限定的能力のもとにおける防衛力というものは、憲法違反でありません。
  203. 木原実

    ○木原委員 先ほども、それからまた四次防の中では、たとえば海の装備を強化したいのだ、こういう考え方があります。しからば海上自衛隊の任務、おのずから限度があると思うのですけれども、たとえば海上の商船の護衛、先ほどもマラッカ海峡云々の問題が出ましたけれども、それからまた、おおむね海上自衛隊の守備範囲というのは公海上どれくらい、こういうようなことも聞いておるわけでありますけれども、しかしながら、たとえば海上自衛隊の増強されていく行動範囲も、それだけ広がる分野もあろうと思うのですが、たとえば海上での自衛権の行使、そのことに名をかりて、たとえば遠く外国の近くまで出ていくということは、これはしばしばあり得るわけですね。だから私ども心配をするのは、海上の自衛艦なら自衛艦、護衛艦なら護衛艦が増強をされていく、海上の自衛力が増強をされていく、それに伴って行動半径もある程度広がる、そういう際に、海の上で行使をする自衛権、たとえば日本の商船がメコン河に入っていく、現在はそういうことはないわけでありますけれども、戦争が行なわれている地域に商売ですから商船が入っていく、その護衛の任に当たってメコン河まで日本の護衛艦が入っていくというようなことは想定をされませんか。
  204. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 想定いたしません。
  205. 木原実

    ○木原委員 たとえば陸上ですと、これはある程度はっきりしております。空の上でもある程度、国境線がはっきりはしてないわけですけれども限界があるわけですけれども、しかしながら、海上での自衛の行動というのには、これは限界というものがないんじゃないか。沿岸から三海里とか十二海里とか、他国の海域の中に入ることは許されないにしましても、公海上の行動というものはかなり広いわけです。そういう場合に、そういう戦力が拡大をされていった場合に、しばしば遠方まで出かけていって、つまり海外の派兵ではないけれども、海外への派遣に近いような行動みたいなものが起こる可能性というものはありませんか。再度お尋ねをいたします。
  206. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御質問が一体どういう事態を想定されておられるのか、その御質問をもう少し承らないとお答え申し上げにくいのであります。
  207. 木原実

    ○木原委員 たとえば商船の護衛に当たるということがあります。あるいはまた潜水艦に対しての哨戒という任務もあるでしょう。海上交通の整理というようなこともありましょう。それからまた海峡の警備というようなことも、いままで海上自衛隊には課せられた任務としてあったわけですね。しかし、護衛艦の数がふえ、あるいはまたそれを支援をする艦艇等がふえていった場合には、私は従来よりも海の上での自衛の行動というのは範囲が広がると思うのですね。範囲が広がった場合に、いままでの解釈ですと、日本の自衛隊は海上を含めて、言ってみれば本土の防衛といいますか、限定をされた防衛であったわけですけれども、行動範囲が広がるにつれて外国の近くまで、あるいは外国の中にまで自衛艦が任務を持って入っていく、そういうような可能性というものが起こり得るのではないのか、こういう心配をするわけなんですけれども、そういうことがないかどうかをお尋ねしておるわけです。
  208. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それはそのときの事態を具体的に判断してみないと、一般的、抽象的には言えない状態であろうと思います。
  209. 木原実

    ○木原委員 それでは、先ほどメコン河の話が出ましたけれども、メコン河でことしに入りましても日本の商船が撃たれるという事態がございました。こういうものがかりにもう少しエスカレートしていく。日本の商船がカンボジアならカンボジアに商売で行っているわけですけれども、これが非常に危険にさらされる、そういったような場合に、その商船を護衛をする、そういうことはないんですか。
  210. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう国際紛争のまっただ中に、商船を護衛するために自衛艦を派遣するというようなことはいたしません。
  211. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、商船の護衛というのは、国際紛争のない地域の中で、つまり私どもが心配しますのは、商船なら商船が一番危機にさらされるのは、たとえば台湾海峡がたいへん波風が立ってきたとか、あるいはインドシナ半島の周辺を航行する船、こういう地域を航行する商船ほど危険にさらされているわけです。だから、自衛隊の本来の任務からいっても、護衛をするというならば、そういう海域の護衛を抜きにしては、これはちょっと任務を遂行するというのはナンセンスではないか、こういう感じがするのですが、あぶないところは海上自衛隊は行かない、平穏なところを警備する、こういうことになるわけですか。
  212. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 自分の国が攻撃されようとしているというような問題、あるいは自分の国の船が日本の近海等においてそういう危険性にさらされているという場合と、第三者同士の国の紛争が行なわれているという場合とは、ケースがまるっきり違うのであります。
  213. 木原実

    ○木原委員 少し次の具体的な質問を申し上げたいと思いますけれども先ほど質問がありましたように、長官もアメリカへお渡りになる。次官が向こうに行ってこられました。基地の問題が含まれているだろうと思うのです。先ほどもちょっとお話がありましたけれども、在日米軍の基地についてはもう具体的に話を詰める、そういう段階にきているものが幾つかあるのではないかと私は思います。その前にお伺いをしておきたいのですが、最近の本土におけるアメリカ軍基地の姿、態様について何か施設庁のほうでの調査もあるやに聞いておりますけれども、たとえば横田であるとか、三沢であるとか、岩国であるとか、これらの基地はたいへん働きが活発になっておる、こういう話がある反面、具体的に名前をあげまして、たとえば立川であるとかあるいは木更津の基地であるとか、あるいはその他の幾つかの基地はほとんど使われていないところが出ておるとか、いろいろ態様がこの半年ばかりの間に変わってきておるようにも聞いておるわけであります。  そこでお伺いをいたしたいのですが、アメリカのほうとの基地問題についての折衝の中で、具体的に返還を求める——先ほど長官が言われましたように、共同使用でいろいろな形態があるとおっしゃいましたけれども、そういう形で自衛隊の管理の方向を打ち出していくものとか、いろいろケースがあると思うのですが、返還を求める基地はもう具体的に名前があがっているのですか、どうですか。
  214. 山上信重

    山上説明員 アメリカとの間の基地問題についての先般の会議におきましては、在日米軍基地についての共同使用を主体にした問題が話し合われたのでありまして、海外におけるところの米軍の縮小計画等とにらみ合わせて、在日米軍基地自衛隊管理への移行を促進するために共同使用の点についていろいろ話し合う、あるいは二条四項の(a)であるとか、(b)であるとかいったような、いろいろな地位協定上の使用方法、そういうことについて話し合いが行なわれ、そして特に、そういうような場合に経費の問題をどうするというようなことが話し合われましたが、しからば具体的に、ではどこを返してくれ、どこをどうしてくれという話はその際においては行なわれておらないのでございます。これら在日米軍基地の共同使用の計画は、防衛庁におきまして、いま、現在の実情等をにらみ合わせていろいろ検討中でございます。いずれこれは具体的に話し合いに入ることになろうかと思いますが、現在はまだそういった基本的な線で話し合っておるのでございます。  ただ具体的な問題として、一部に、たとえば立川基地のごとく共同使用についてすでに話し合いに入っておるものもございます。これらについて、先ほどの御質問では、前回返還の話をしているものはないかということでございますが、主体が共同使用の話でございますから、特段と返還ということを取り上げてということはございません。しかし、自衛隊の共同使用に伴いまして、共同使用あるいは自衛隊管理ということがございましても、米軍基地の使用状況にかんがみて、今後自衛隊も全然必要もないし、米軍も必要ないという地域につきましては、これは返還を求めるのが当然でございますから、考え方の中にはそういうことも十分に含まれて検討いたしておる段階でございます。
  215. 木原実

    ○木原委員 もう少し伺ってみますけれども、そうしますと、共同使用ということは、返還を含みにしながら共同使用という体制をつくっていく、そう言い切ると飛躍があるでしょうけれども、しかし方向としては、逐次返還を求めていくという含みも含めて共同使用、そういう申し入れをしておる、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  216. 山上信重

    山上説明員 今後の共同使用の進め方の具体的な措置については、そういう考え方も含めて進めてまいるということになろうかと思います。
  217. 木原実

    ○木原委員 これは具体的な地域をあげるのは、多少まだ煮詰まっていない段階で差しさわりがあろうかと思いますけれども、これは幾つか、共同使用そうして返還、こういうケースの俎上にのぼっておる基地があるというふうに解釈してもよろしいですね。これは具体的な基地の名前をあげれば問題はもっとはっきりすると思うのですけれども、どうですか。
  218. 山上信重

    山上説明員 共同使用ということを主体として考えておりますが、それに伴って返還あるいは部分返還というようなことももちろん考えられるわけであります。
  219. 木原実

    ○木原委員 これはもういろいろ基地関係の中で、先ほど大出委員も申しましたけれども、いろいろわれわれのところにもどうなるのだという問い合わせが、自治体あるいはその付近の住民代表その他からさまざまくるわけですね。そこではなかなか一般論ではいかないわけですけれども、ひとつそれと関連をして施設長官についでに伺っておきたいのですけれども、たとえば東京ですが、東京の過密地帯の中に自衛隊基地が多数存在をしておるわけですね。先ほど座間の話も出ましたけれども、以前はそれほどでもなかった、しかしこの数年の間に周辺が住宅その他でたいへん過密になってきた、こういう地域がある。そこで引き続いて演習その他が行なわれておるわけですが、そのためにそこの、たとえばある過密地帯の基地の中の人たちに聞いてみますというと、演習も非常にやりにくい、あるいは限定をされた演習しかできない、こういうような姿の基地もあるわけです。過密地帯の中の、これは自衛隊基地ですが、自衛隊基地の整備をしていく、そういうような考え方はございませんか。
  220. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 確かに御指摘のように自衛隊基地が、最近都市のスプロール化とか、あるいは過密化によりまして、いろいろと都市計画の問題とかあるいは市街地開発計画に支障のできておるところが多々ございます。したがいまして、自衛隊の場合におきましては、地元の公共団体、県とか関係団体と十分協議しまして、可能な限り地元の都市計画なりあるいは都市開発計画等に協力いたしております。しかしながら、遺憾ながら演習場とか弾薬庫とかいう問題になりますと、それに代替する、リロケートできるような場所がなかなか選定困難でございまして、実際にその計画なりその意思はございましても、実現困難であるという地区が、これまた多々ございまして、そのような状況でございます。
  221. 木原実

    ○木原委員 公害問題がこれだけやかましい中なんです。しかもたいへん大きな迷惑を受けておるという地域はかなりあるわけですね。具体的なことを一つだけ申し上げますけれども、たとえば習志野ではまだ落下傘でおりる訓練をやっておるわけですね。ところがことしの二月ごろも事故がありましたけれども、大体三百メートルぐらいのところから降下訓練をやる。これは訓練をやるほうもたいへんなんですけれども、付近の住民はたまりませんですよね。輸送機が屋根のすぐ上を飛んできて降下訓練をやっておる、こういう姿があるのです。あるいはまたそこに付設をして実弾の射撃場が存在をしておる、こういうような姿がありまして、周辺の住民諸君が不安を持っておる。ですから、そういうことを含めまして、過密地帯の中で演習場も非常に制約を受けるというようなことになれば、自衛隊としても持っておってもあまり使い道のないような形で、しかも住民の諸君に迷惑をかけておる。こういう姿になっておるようなところは、私は習志野だけしか申し上げませんけれども、ほかにもあると思うのですが、何かやはり編成がえをする時期にきておるのではないか、こういうふうに考えるのですが、どうですか。
  222. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 自衛隊の演習場は、もともとその周辺に配備されておりまする部隊の実情とかあるいはその編成の程度等によりまして、その地方地方におきまして実際に取得可能な場所を選定しておるわけでございます。したがいまして、この演習場、訓練場等が移転するということになりますと、その周辺の部隊の移転もあわせて考えなければならないことになるのでございます。確かに習志野の場合におきましては、降下訓練はきわめて危険でございますけれども、その周辺にございまする松戸の部隊とか下志津の部隊、あるいは習志野の部隊等におきましては、日常の訓練を常時行なっておりますので、これらの約五千に近い部隊の平素の訓練をする場所としてはやはり必要になるわけでございます。ただ降下訓練としましては必ずしも適当でないので、他の適地をさがしておりますけれども、これも実際の問題としましては、容易に代替地の取得ができないような状況になっております。しかしながら降下部隊の安全の問題もございますし、あるいは習志野の訓練場周辺の住民の安全の問題もございますので、降下訓練場の代替地の問題につきましては、今後とも真剣に検討いたしてまいりたいというふうに考えます。
  223. 木原実

    ○木原委員 これは防衛庁長官に見解を伺っておきたいのですが、いま申し上げましたように、ともかく以前はたいへん訓練や何かに適した地域であったわけですが、それが急速に過密地帯の中に入ってきている。いまお聞きのような具体的な例もこの近郊には多々あると思うのですね。いま参事官の御説明ですと、代替地を取得することがなかなか困難だ。これはある程度事情がわかるわけですが、そうかといってこれだけ過密化が進んでいる中で依然として従来の形のままで自衛隊なら自衛隊基地を持っておる、ないしはアメリカ軍の基地においてもそうですけれども、これはやはり限界があると思うのです。使用するほうにも限界があるし、それからそこを使われる周辺の住民にとっては、ある意味では日常たいへん大きな公害のような被害を受けているわけですから、部隊の駐とんはともかくとして、それに付設をするような訓練場その他を含むそういう側面は、何か別途に総合演習場のようなものをおつくりになるならおつくりになるというかっこうである程度整備をしていく、統合をしていく、こういうような方向で検討する時期にもうきておるのではないかと思うのですが、見解はどうでしょうか。
  224. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一般的に見まして御説は合理的であるように思います。われわれもそういう観点から点検もしてみたいと思います。
  225. 木原実

    ○木原委員 これはぜひ検討してもらいたいと思うのです。長官はよく国民的な合意ということをおっしゃいますけれども、そういう住民諸君に対する配慮というものがなければ協力というのにも限界があるだろう、こういう側面からも私も心配する一員です。ですから、これはそういうお考え方で検討をするという方向でお願いをしたいところだと思います。  それからその次に、先ほどもちょっとお話に出ましたけれども、沖繩の問題、沖繩の基地の問題にも触れるわけですけれども考えられておる四次防の中で沖繩の防衛という問題、これは先ほども少し話がありましたけれども、沖繩の防衛の場合には自衛隊が本土並みのようなかっこうで行くわけですけれども、ここでも、たとえば沖繩におけるアメリカ軍の基地との共同使用ないしはそれに基づく共同防衛に進んでいく、そういうような形で自衛隊を派遣をする、配備をする、こういうようなことでございますか。その辺のことを少し伺っておきたいと思います。
  226. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本の自衛隊は日本の国土の防衛を目的にしてあるものであります。したがって、沖繩本島及び沖繩列島が日本の領土になって正式に復帰した場合、それを守るという意味で派遣するのであります。なお日米安全保障条約が適用されるということになりますと、共同防衛という形にもなります。
  227. 木原実

    ○木原委員 私はこの六月に沖繩に参りまして、少し現地の姿、基地の態様等も見てまいりました。そういう形で自衛隊が配備をされる。現地の人たちが一様に求めておることは、沖繩の基地の縮小ということです。ところがなかなか縮小どころか、具体的に住民が見聞できる範囲の中においては、縮小の傾向はなくて、むしろ拡大の傾向が出ておる、こういう側面があるわけです。そこへもってきて、さらに今度は沖繩が本土に復帰をすれば自衛隊がここに配備をされる。そうすると自衛隊基地も含めて、沖繩の基地は一体縮小の見通しというものはないのか、ある意味では不安といいますか、そういう気持ちが沖繩の人たちに非常に強いというのを私どもは見聞をしてまいったわけであります。本土から参りました私どもから見ましても、確かにあの狭い島の中に占めておる基地の大きさというものは、たいへん大きな圧迫になっておる、こういうことを率直に言って感ずるわけであります。そこでこれからの沖繩におけるアメリカ軍の基地の縮小についての見通しなり、あるいはまた交渉なり、あるいはまたそれに対しての防衛当局としての何らかのアプローチ、こういうことはございますのかあるいはありませんのか、御答弁いただきたいと思います。
  228. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 七二年に施政権が返還されまして、日本が施政の責めに任ずるという方向にいきますと、沖繩の民生と基地あるいは自衛隊、この関係を合理的に調整するということが日本側の主導権をもってわりあい直接的に動けるような情勢になると思います。ですから返還後におきましてはこういうことが考えられるだろうと思いますし、アメリカ側といたしましても、現地の民情あるいは県民の世論というものを非常に重要視しておると思いますから、そういう調整についても進むだろうと私は思います。がしかし、返還以前の今日においては、アメリカが施政権を握っておるのでありまして、われわれのほうはわれわれのほうの要請としてある程度伝えることはできますけれども、現実的に友好裏にどの程度行なえるか、これはそれほど確信を持って申し上げることはできないだろうと私は思います。しかしともあれ、あの狭い地域に軍事基地とそれから県民生活というものが混在してあるという状態は必ずしも望ましい状態ではないのでありまして、いずれ合理的に調整を進めていくということは必要であると私は思います。
  229. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、具体的に四次防の作業が進むわけですが、四次防の中では、いま長官がおっしゃったように、施政権の返還後いろいろな形で調整を進めていく、これはアメリカの基地の縮小という方向で調整を進めていくというふうに私は解釈するわけですが、そうしますと、四次防の中でアメリカ軍の基地が縮小をされる、あるいはそれに伴ってある程度の幅を持った自衛隊の配置といいますか、そういうことがあり得る、つまり先ほどの大出委員に対する答弁の中では、当初半年ぐらいの見積もりの中ではこの程度のものをまず送り込みたいんだ、こういうことがありましたけれども、やや長期的な見通しの中で、沖繩の防衛については自衛隊は当初のワクよりもさらにふえていく、つまりアメリカの基地が縮小するに反比例をして自衛隊を増強をして配置をされる、こういうふうな形になるのかどうか、その辺の見通しを承っておきたいと思います。
  230. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは客観情勢とかあるいはアメリカ側の政策がどういうふうに動くかというような条件及び日本側の事情等も総合的に勘案されて考えなければならぬ問題でございまして、まだ返還もされない今日においてそういうことを考えることは非常にむずかしいと思います。
  231. 木原実

    ○木原委員 しかし四次防の原案の中には、当然沖繩に新しく配置をされるそういう陸海空を通じての自衛隊の配置計画というものがなければ、四次防の中でもやはり若干のそごを来たすのではないか、こういうふうに考えるのですが、それほどのウエートを占めたものではないのですか。
  232. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ともかく返還後の実際の情勢に応じてそれは調整していくべきものであって、今日まだそういう不確定的要素を基準にして計画というものはつくれない状態にあると思います。
  233. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、沖繩の米軍基地については、施政権の返還後あらためて縮小なり、あるいはそのときの客観情勢等に応じて調整ということばがありましたけれども、つまり縮小の方向でアメリカと協議をしていく、こういう段取りになるわけですね。そういうふうに解釈してよろしいですか。
  234. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは随時協議の対象にもなりましょうし、あるいは合同委員会で話をする内容にもなりましょう。それはそのときの情勢に応じて、そのときの県民感情とかあるいは実際生活の実情とかあるいは軍事的必要度とか、そういういろいろなファクターが条件に入って勘案さるべきものであろうと思います。もちろん合意の上に立ってそういうものは進められるべきものであると思います。
  235. 木原実

    ○木原委員 もう一つ伺っておきたいのですが、沖繩に自衛隊が配置をされる、私はこのことはいろいろな新しい要素を含んだ問題を持つのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。一つは、率直に言いまして、沖繩の人たちは自衛隊といえどもこれ以上もう軍隊はごめんだ、こういう気持ちが強いと思うのです。これはいろいろなことがあるわけですけれども、必ずしも自衛隊の配置というものは歓迎されていない姿がある。なぜならば、この二十五年間アメリカの基地の圧力というものを身近に受けながら生活をしてきた沖繩の人たちにとって私は当然だと思うのです。ただアメリカ軍が自衛隊にかわっただけでは困る、基本的にはやはり基地を縮小してほしい、基地を撤去してほしい、こういう要望がやはり強いのです。それだけに自衛隊が参りましたときの県民との融合ということについては非常に大きな要素になるのではないか、この問題が一つです。  これに関連してつけ加えて申し上げておきますけれども、従来も戦史研究その他の目的で自衛官の人たちが沖繩へ参っておるわけですけれども、私どもが聞いた範囲の中では、いままで沖繩に派遣をされました自衛官の姿があまりよくありません。アメリカの兵員諸君と花町をうろつく。私は自衛官に対して面罵をした。こういう人にも私は会いました。そんなような姿も含めまして、必ずしも自衛隊に対する感情はよくありません。ですから近い将来に沖繩に配置をされる自衛隊のあり方というものは、私は非常に大きなそういう問題を一つ含んでいると思います。  それからもう一つの問題は、沖繩にあれだけ大きな米軍基地があるところに配置をされる自衛隊の問題ですが、安保条約のもとでの基地の共同使用ないし共同作戦、そういう問題が出てくるわけなんですが、一つここでひっかかりますのは、前回の委員会で長官が、これからの防衛庁方針は、自衛隊方針は、間接侵略に対して対処をしていくのだ、こういうことが重点になるのだ、こういうふうにおっしゃいました。沖繩における間接侵略の可能性、沖繩における間接侵略を排除するという姿、こういうものを具体的に頭の中で描いた場合には、どうも沖繩に配置される自衛隊の主たる任務は、アメリカの基地を守るために任務につくのではないのか、沖繩の県民の安全を守るというよりも、どうやらメリカの基地を守るために自衛隊の任務がある、こういうような形になりはしないか、こういう心配をするわけなんですが、それらの点について見解はどうでしょう。
  236. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 沖繩列島並びにその県民の生活を守る、いわゆる本土防衛の一環として沖繩防衛はあります。これが第一義です。しかしそれと同時に、米軍との共同防衛ということも出てまいりますから、アメリカの基地も守ってやるということも第二義的には出てくるだろうと思います。
  237. 木原実

    ○木原委員 沖繩につきましてはまだいろいろの問題があると私は思うのです。私が参りましたときにも、これは一部の新聞や週刊誌等でもたいへん取り上げられておりましたけれども、たとえば終戦前夜における慶良間列島の集団自決、こういうような問題があらためて沖繩の人たちの問題意識にのぼっておる。本土よりももっときびしく沖繩ではまだ文字どおり戦争のつめあとが残ったままだ、沖繩に戦後はなかった、こういう姿があると思います。そういう意味では、まさに二十五年を経過しましたけれども、本土よりはもっときびしい姿というものが沖繩の中にはある。そういう中にやはり軍事的な目的をもって自衛隊が参る。先ほど申し上げましたそういう点が非常に大きな問題として残っておる。沖繩に派遣をされる自衛隊の任務というのは、いま長官は二つのことをあげましたけれども、それと関連をして、派遣をされる自衛隊の姿、ありようというものが非常に大きな問題を持つのではないのか、私はこういうふうに考えるわけです。そこで県民との融和という問題について、何かいまから考えておかれる問題はないのかどうか、この辺についての長官の御見解をひとつ承っておきたいと思います。
  238. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一面におきましては施設の返還や処理の問題がありまして、防衛施設庁の者が先行してまいると思いますが、そういう面でできるだけ沖繩の方々の便益をはかってあげる、誠意を尽くしていくということが大事であると思います。  それから自衛隊が進出します前後には、よく自衛隊というものを御理解願うように、こちらからもいろいろ自衛隊説明なり解説なり、そういう点では特に力を入れて御理解を願うようにわれわれも努力してまいらなければならぬと思いますし、人的な配置もそういう点を特に考慮して配置しなければならぬだろうと思います。  なお派遣します自衛隊員につきましては、軍紀を厳正にして、ほんとうに県民から信頼されるような優秀な自衛隊員であると認められるように、私たちは心がけてやるようにいたしたいと思います。
  239. 木原実

    ○木原委員 それはまあ本土においても当然そうなんですけれども、特に沖繩のように限定をされた面積の狭い島嶼で生活をしておる人たち、そういう中に自衛隊が入っていくわけです。そうしますと、自衛隊がかりにどういう任務を遂行するにしても、県民諸君との融和ということがやはり第一義的なものにならざるを得ない。それどころかもっと具体的には、どういう行動をするについても県民の人たち、その島嶼の人たちの協力を得なければ、もう自衛隊の行動は非常に制約されると思います。そうなりますと、先ほどはアメリカ軍との共同作戦、こういう問題も出ましたけれども、これは何よりも県民諸君との協力関係、こういうものが本土よりも増して必要になってくると私は思います。  そこでついでに伺っておくわけですが、将来自衛隊が沖繩に配置をされるわけですけれども、いま申し上げましたように島民の支持を得る、県民の人たちの協力を得る、具体的に県民の人たちと自衛隊が協力をしていくというシステムについては、何かお考えになっておく必要はないのですか、どうでしょうか。
  240. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は、あそこへ地連も出しますし、何しろ本土では自衛隊ができてからもう二十年以上にもなりますが、沖繩は初めてのことでありますから、沖繩の県民の諸君と自衛隊とよく融合するようにいろいろ機構的にも考えていきたい、そのように思います。
  241. 木原実

    ○木原委員 それではもうそろそろ終わりたいと思いますけれども、最後にもう一つ伺っておきたいのです。  もうすでに三次防の最終年度予算要求する段階に来ていると思いますが、来年度は概算どれくらいの要求でございますか。
  242. 田代一正

    ○田代説明員 来年度、四十六年度の概算要求につきましては、今月末までに大蔵省に提出いたすということで目下鋭意検討いたしている最中でございます。いずれにいたしましても三次防の最終年度になりますので、そういう点をよく考えながら極力三次防計画を達成するという方向で概算要求をいたしたいという気持ちでおるわけであります。
  243. 木原実

    ○木原委員 それはそうでしょうが、一部にはすでにおおむね八千億ぐらいの要求になるのではないかというようなことも伝えられておりますし、それからまた人件費の増強ということもございますし、私どもかなりふくれるのじゃないかと思っておるわけなんですが、概算どうですか、たとえば八千億をこえるとかこえないとか。
  244. 田代一正

    ○田代説明員 概算要求におきましては八千億をこえるというようなことはないと思います。七千億を若干切る程度じゃないかというぐあいに見当をつけております。
  245. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、三次防の中で二兆二千億プラス二百五十億ですか、プラスマイナスの増減の限界がついておりましたね。計画としましては、この中には食い込まなくてもよろしいですか。
  246. 田代一正

    ○田代説明員 精細な数字はいま詰めておりますので少し動くかと思いますが、三次防計画の二兆三千四百億という原計画がございますが、概算要求におきましては若干それを上回るというような感じの要求になる、こういうふうに考えます。
  247. 木原実

    ○木原委員 つまり予算上の問題で一つの問題は、たとえばコストが非常に高くなったとか、あるいは人件費が御案内のように年々かなり増強しておりますから、そういう面で最終年度にやはりかなり増強分が出てくる、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  248. 田代一正

    ○田代説明員 いま御指摘のように、たとえば装備類の騰貴ということも若干影響いたしておると思います。それからもう一つ、人件費の問題ですが、三次防計画の二兆三千四百億と申しますのは、昭和四十二年度を起点といたしましてそれ以降のベースアップは含んでないという計算です。したがって、予算の面ではふくれますけれども防衛計画といたしましては必ずしもふくれない、こういう問題があります。
  249. 木原実

    ○木原委員 それじゃいずれにしましても概算要求で七千億近い要求が出る、こういうことでございますね。  そこで、これは最後の質問になりますけれども、当初申し上げましたように、私は、三次防の最終年度予算がそれくらい、実際には六千億内外になるかと思いますけれども、しかしながら四十七年度以降は四次防ということになって、長期にわたってかなり大きな予算を想定せざるを得ないわけです。そこで、これは長官にお伺いをしておきたいわけですけれども、三次防から四次防への転機、これは単に継続をしていって兵器を積み上げていくというだけの性格のものではないと思うのです。長官からいろいろな機会にしばしば御発言がありました四次防というものの性格をわれわれとしてはどういうふうに解釈したらよろしいのですか。たとえば安保を従として自主防衛の立場を主としていく、そういう考え方が述べられましたが、四次防というのは、一体これから先の日本の防衛問題にとってどういう性格を持つものなのか、ただ、いままでは、日本の軍事力というのは非常に弱いんだ、このようなことで次々と年次計画が立てられ増強が行なわれてきたんですが、四次防の計画というのは、私どもいろいろなことを考え合わせまして、たいへん大きなエポックなものを含んでおる、画期的なものを含んでおるような感じを実は持っておるわけです。そこで長官としましては四次防を策定をし推進するにあたっては、四次防の基本的な性格というものは一体どうなんだ、こういうことをひとつあらためて長官の御見解を承っておきたいと思うのですが、いかがですか。
  250. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この六月二十三日で安保が自動継続になりまして、一年の予告で双方ともいつでもやめられるという態勢になったということは、以前とは非常に大きな変化であります。そういうことも踏まえまして、終局的には攻撃的兵器とかあるいは核抑止力に関する部分は安全保障条約に依存せざるを得ないけれども、それ以外の通常兵器による限定戦については、本土防衛は自力で達成する、そういう方向に持っていきたいと思っております。それには時間もかかります。急いで急にやると国民生活との摩擦がありますから、その辺のバランスはよく考えながらいきますが、終局的な目標はそういうところへ実は持っていきたい。そのスタートというのは、私の心組みでは、来年から始まり次の防衛計画へずっと引き継がれていく仕事である、そのように思います。  それから第二番目には、私は自分で防衛計画を点検してみまして、日本の国情、日本の地理的構造等に合った日本固有の防衛戦略体系というものをつくっていく。そしてそれとアメリカの政策とを調整させていく、それが第二に大事なことであると思っております。  それと同時に、やはり国民の自衛隊と申しますように、国民に親しまれる、そして尊敬されるような自衛隊というものに成長させて定着していく、心理的にも精神的にももっと定着させていく、そういうことを行ない、かつ同時に大事なことは、文民統制を確立していくということでありまして、われわれは防衛庁内部においてあるいは内閣においてもその点はぴしぴし着々と実績をつくっていくようにしたいと思いますが、国会におかれても、かねてからお願いしておるような防衛委員会というような形で行政府に対するコントロールを的確にやっていただくことが必要ではないかと思っておるわけであります。  それから基地の問題を処理するということも大事なポイントでありまして、これは先ほど以来申し上げたとおりであります。  なお、自衛官の人間尊重ということも、時代の趨勢もさることながら、やはり日本国憲法のもとにおける自衛官は、自衛官である前に市民であり国民である、基本的人権をほかの国民とひとしくしている大事な日本国民である、そういう考えに立って自衛官の人間尊重を思い切って進めるようにいたしたいと思うのです。そういう面から私は部隊へ入っていろいろ自衛官たちの声を聞いてみると、たとえば大学の入学試験であるとか大学院に入学するというようなことについて差別がいま事実上行なわれている、こういうことはきわめて遺憾なことでありまして、できるだけ早期にこういう事実上の差別がなくなるようにお願いいたしたいと思っております。
  251. 木原実

    ○木原委員 もう最後にいたしますけれども長官はいろんな重要なことをいま申されたわけですが、一つ自衛隊発足してともかく二十年、この間にいろいろな国民との摩擦、われわれとの摩擦もありました。しかしながら、これまでの自衛隊の拡大強化の道というのは、ある意味では空白を埋めるといいますか、憲法上の争いを残しながらも、ともかく自衛隊の独自性といいますか、そういう創建といいますか、そういう時期であったと思うのです。しかしながら、長官もおっしゃったように、安保条約が自動継続になった、これから日本の独自の戦略構想に基づいた自衛隊をつくっていくのだ、これはいろいろな意味で大きな問題だと思うのです。  そこで私は長官に申し上げておきたいと思うのですけれども、それならばやはり憲法上の解釈についても、従来のような、攻撃的兵器を持たないのだとか、ある意味では本土防衛に専念をするのだとか、これはもう当然のことなんですけれども、それだけの解釈では不十分ではないか、どうしても量の面での比重というものが圧倒的になってくる。しかも日本独自の戦略構想、けっこうだと思うのです。防衛という問題について一般的にこれを否定するものはいないわけです。しかし、それならばやはり憲法上の疑義なり何なりというものをきちんとしていく。憲法改正をせよということは申しませんけれども、国会のコントロール云々ということを言われましたけれども、国会として最大のコントロールは、軍備についてはこれをセーブをしていく、制約をしていく、こういう任務があると思うのです。そういう税金の使い方という観点からしましても、四次防で計画をされているような、年間一兆円の予算規模に達するような軍隊というものを持つか持たないかのせとぎわに来ておるわけですけれども、そういう際には、そういう面からの憲法運用上の問題と申しますか、当然私は問題が出てくると思います。ですから従来の憲法解釈をいわば上回ってといいますか、どうしても政府のほうから国民に納得のいく憲法解釈を示してもらわなければ困る、そういう時期にいま長官お話を聞いても差しかかっておるような感じがいたします。ですから私どもとしては、いわばいま申されたような構想を持つ四次防が始まる、こういう段階においてはあらためて憲法上の疑義をただす、そういう責任というものが私どもにはあると思うのです。したがいまして、冒頭長官は憲法上の疑義はない、合憲であると確信をしておる、こういう判断でございましたけれども一つの転機に立っておるだけに、もう一ぺんやはり自衛隊の、つまり法制上のといいますか、憲法上の体制を整える時期に来ておる、その手段がどういう方法であるかは別にいたしまして、やはりきちんとすべき点はしていくべきではないか、こういうふうにいま考えるわけであります。いずれ四次防の原案ができ、具体的な予算になってまいりました段階で、私どもも腹を据えて自衛隊のあり方ないしは予算上の措置等についても論争をしてまいりたい、こういうふうに考えております。私どもはそういう気持ちでおる、こういうことを申し上げておきたいと思います。長官のこれらの問題についての御見解を伺いまして、質問を終わりたいと思います。
  252. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御意見は拝聴いたしますが、自衛隊は合憲であり、憲法上の疑義はないと確信しております。
  253. 木原実

    ○木原委員 終わります。
  254. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 伊藤惣助丸君。
  255. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 まず防衛庁長官に伺いたいと思います。  先ほど来から中曽根長官は、来月の中ごろ七〇年代の日米間の安全保障問題についてレアード国防長官と話し合うために訪米すると言われております。現在、わが国の七〇年代の安全保障を見たときに、その安全保障の基本構想、また国防の基本方針、第四次防衛力整備計画、また防衛産業における兵器の購入、さらに基地問題、こういった問題が山積みされております。長官が今回訪米するにあたっては、当然これらの問題が聞かれることは間違いないと思いますし、また一部報道によりますと、ニクソン・ドクトリンに対する米国の七〇年代の新しい極東政策、また中国政策、インドシナ情勢、在韓米軍の撤退問題、さらに在日米軍基地の整理統合、七二年返還の沖繩防衛、こういったことも討議の内容になるんじゃないか、このようにいわれております。長官が訪米したときにこういった問題についてどのように対処するのか、一九七〇年代の初めにあたって、私はきわめて重大な見方をしているわけであります。そういった意味から、長官が訪米される目的、また訪米したときの討議内容、会う方々、こういった点について伺いたいと思います。
  256. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まだ正式にきまったわけでございませんが、もし行くということになりますれば、レアード国防長官等と、日米間の安全保障上の諸問題等について隔意なく懇談をしてこようと思っております。日米間において安全保障条約がございますけれども、こういう非常に大事な条約があって、両国の防衛に関して政治家が隔意なき懇談をしていないということは非常に大きな欠陥であると前から私思っております。事務レベル会議や何かはありますけれども、先方の大統領を補佐する長官との間で話が比較的に少ないということは、両国のためにもよくない。経済問題については、日米経済閣僚会議というものがあって、隔年大挙して行ったり来たりしておる。しかし安全保障問題についてそういうようなことがないということは、どういうわけでこういうふうになっておるのかわかりませんが、あるいは安全保障問題というような問題は、あまりクローズアップしないでおいたほうが賢明だという考えでやったのかもしれませんし、あるいは両方が忙しいからその程度レベルでやっておこうということであったかもしれません。しかし議会制民主主義国家においては、国民代表である政治家が全責任をしょうべきものでありまして、そういう面から見ましても、アメリカ側において長官である人たちが出てくるのが好ましいし、当然だと私は思っておるわけです。そういう意味で、両国の国防、防衛の責任者が話し合うということは、民主主義国家としての当然のことなのであって、当然のことをやろうというだけの話であろうと思います。先方に来てもらいたいと思いましたけれども、非常に忙しいようで来れないということになれば、私に向こうから来てくれという形になるだろうと思います。  それで話の内容といえば、いま申し上げましたように、そういう安全保障条約を持っておる両国としての基本的な問題、また先方がアジアやその他にどういう政策を展開してくるか、わがほうがどういう考え方防衛というものを取り扱おうとしているか、また国情はお互いにどうであるか、それから沖繩の防衛の問題についても七二年返還を機にわれわれは責任を受け持つわけでありますが、そういう諸般の問題等についても話をしてきたい、そう思うわけであります。
  257. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 米国は、長官が党内の非常な実力者であるということで、訪米することに大きな期待と、それから今回の訪米を通して種々話し合いをしたいというふうに大きく期待しているそうでございます。したがって、私もその訪米前にあたりまして、日本の国民が新しい時代を迎えて、将来日本の安全保障はどのようになるのかという、心配する点について、また日米安保体制の日米間の役割りについて、あるいは任務分担について明確に伺っておきたい、このように考えております。特に日米安保条約は、七〇年の六月二十三日以降自動延長にきまったわけです。そしてその安保条約というものは一字一句も変わってはいないわけでありますけれども、安保条約を運用する日米両国政府の姿勢ががらりと変わった。日米安保条約の質的変化に大きな作用をもたらしたその最大の転機となったものは、言うまでもなく去年の十一月の日米共同声明であります。この日米共同声明以後にジョンソン米国務次官補が語ったことばに、日本が極東に対する姿勢を変えたことが最大の収穫である、こういう発言がありましたが、この発言こそ、日米共同声明の特色をあらわす極東安保に変質をしたのではないかと、私はそういった点から感ずるものであります。特にその日米共同声明については、一、日本はアジアの平和と安全に積極的に貢献する。二番目に、韓国の安全は日本の安全にとり重要であり、台湾地域の安全の維持も日本の安全にとり重要な要素である。次にインドシナ地域安定のため、日本の果たし得る役割りを探求する。また四番目には、沖繩返還は、日本を含む極東諸国のために米国が負う国際義務の効果的な遂行を妨げるものではない。こういった点が確認されたわけであります。これは日本が日米韓台連携の中の一つの単位にすぎないということを明らかにしたものでありまして、いまや日本は米国を中心とする極東安保の一員に組み入れられたのではないか、またそのことを意味するというふうに私は思うのであります。したがって、日本はこうした連携の中で新たな義務を負担することになるのではないか、そしてその役割りの分担、内容というものについて、これは当然話し合いがなされてきたと思うわけであります。この点について、まず初めにアメリカ局長に、この日米共同声明における四点の具体的な日本の役割り、責務ということについて、さらに防衛庁長官からは、このような中における自衛隊の役割り、こういった点についてまず伺いたいと思います。
  258. 東郷文彦

    ○東郷説明員 日米関係と申しましても、安保条約のできたころと今日と比べれば、わが国の国力の伸長ということからしまして、著しく変わっておるわけでございます。したがいましてアジアの平和、世界の平和のための日本の役割りというものも、日本の国力の伸長に従って日本の果たすべき役割りがおのずから大きくなっていくのは、これは自然の勢いであると思います。さような背景が大きくあることをまず申し上げたいと思います。  いまおあげになりました四点につきましては、第一点のアジアの平和と繁栄のために今後とも積極的に貢献する。この共同声明の第二項は、一般的に日米間の協力関係、ことに緊張緩和という問題についての協力関係を大きく述べたものでございまして、ただいま申し上げましたような背景からすれば、わが国がわが国の行き方として、新たにアジアの平和と繁栄のために、国力がそういう大きな発展をしているという事態のもとで大きな役割りを果たしていくということを述べてあるわけでございます。これはいままさかそういう御懸念はないと思いますけれども、日本が果たすべき役割りということは、日本自身が憲法の精神その他に従ってきめるべきことでございまして、ここに第二項で申しておることは具体的にどうするということを特にいっているわけではございません。  次に韓国、台湾の問題でございますが、いまの第二項を受けまして第三項におきまして極東の情勢一般について述べ、さらにその中で特にアジア、極東の中にあっても問題のある地域についてお互いにどういう認識を持っているかということを述べたところでございまして、韓国の安全、これが日本の安全と非常に重大な密接な関係がある、あるいはまた台湾海峡の平和が一たび乱れるということになればこれまた日本にとってもたいへんな問題でございまして、さような認識を述べたところでございます。  なお次のベトナムにつきましても、日本はもとより軍事的にどうこうという立場ではございません。ベトナムの情勢が現在のようであるということはアジアの平和のために非常に遺憾なことである、日本としてはベトナム平和達成のためにあるいは仏印半島における事態の改善のためにどういう方法で貢献していくことができるか、こういうことを日本自身の立場において常に考えていく、こういうことでございます。  それから第四点目の第七項の点でございますが、これは沖繩返還に関する日米双方の考え方がここに出ておるわけでございまして、現在の極東の国際情勢のもとにおいて沖繩が軍事的に重要な役割りを果たしておる、これは疑いもなく日米双方とも認めておるところでございまして、ここに書いてある趣旨は、返還後の沖繩に安保条約をそのまま本土と同じく適用しても、現在沖繩が抑止力としてあるいは極東の平和と安全のために果たしておる役割りをそこなうことはないのだという日本側の認識を明らかにし、大統領もこれに同意見であるということで、沖繩返還という問題も原則的に解決した、こういう趣旨でございます。
  259. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官からも具体的にその新たな段階を迎えての役割りを伺いたいと思うわけですが、いまのアメリカ局長の話をさらに具体的に言うならば、経済的協力でアメリカの肩がわりをするとかあるいは技術的協力さらに情報の提供また軍事的協力、兵器の援助、日米韓台連合によるパトロール、こういったことが考えられるかどうか、その点について伺いたいと思います。
  260. 東郷文彦

    ○東郷説明員 ちょっとただいま防衛庁長官あての御質問と思いましたので、こまかい点はあるいは落としたかもしれませんので……。
  261. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに条約の取りきめがございますね。特に米国という国は、国際条約であるとか取りきめについて非常にこまかい取りきめを行なうというのがいまの米国政府の政治のあり方ですね。そういった点から考えまして、ただ単に日米共同声明においてことばの上だけで日本が責任を持つとか、あるいは日米間における役割りとか責務というものについては、決してあいまいではないというふうに私は考えるわけであります。そういった点で具体的に今後必要があればこういうことがあるのではないかということをいま申し上げたわけです。その一つには、もちろん経済的協力、これはいままでもやっておりますし今後もやるでありましょう。そのことについてはアメリカの肩がわりということもある面においては考えられるのではないか。さらに物資の援助ですね、こういったことも今後さらに行なわれるのではないか。また技術協力、さらに情報の提供、また軍事的協力、これは必ずしも自衛隊派遣という形ではないにしても、何らかの形の協力、さらに兵器の援助、または日米韓台の連合によるパトロール、こういったことも必要とあればそういう事態が発生した場合にはあり得るかどうか。そういったことについて日本が積極的にその役割りを果たすような任務分担を話し合ったかどうかという点ですね、その点をまず伺い、そして防衛庁長官にそういった場合における自衛隊の役割り、新しい段階における任務というものについて考えがあれば伺いたいと思います。
  262. 東郷文彦

    ○東郷説明員 アメリカのほうで、先ほど申し上げましたような背景からして、日本が世界平和、アジアの平和のためにいろいろ貢献するということを期待しておることは疑いもないところだと思います。しかしながら、日本が何をするかということはやはり日本の今日の地位、力あるいは日本の血意思によってきまることでありまして、私どもはこれがアメリカの肩がわりとか、あるいは肩がわりしてくれと言われたからやるというふうな考えはとっておりませんし、またとるべきでもないと思うわけでございます。昨年の日米会談あるいはその他の機会において、ただいまお話しになりましたような諸点について、具体的に何億ドルどうしてくれとか、いわんや軍事的にどうしてくれとか、このような話は一切ございません。ただ、いま申し上げましたように、アメリカのほうでいろいろ期待しておることはこれは疑う余地もないと思いますが、これをわがほうがどういう施策をしていくかということはわがほうの問題でございまして、沖繩返還になりますれば、沖繩の防衛ということ、これは私から申し上げることはよけいかと思いますが、当然わが国の問題になりますので、ついてはどういうふうに具体的にやっていくかという点は、また沖繩の防衛ということについて防衛庁と米軍のほうでもお話がございますし、さような問題について具体的な話はこれから取り行なわれていくと考えます。
  263. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 向こうは期待しておる、ですから、日本が今度主体的にそのことを積極的にアジアの平和のために貢献するというたてまえでいくならば、こういったこともあり得る、こういうことでございますね。
  264. 東郷文彦

    ○東郷説明員 そのとおりでございます。
  265. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 長官、いまの答弁を一つお願いいたします。
  266. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 アメリカ局長と同じであります。自衛隊の機能は、いままで自衛隊は沖繩以外の内地をずっと守ってやってまいりましたが、それが沖繩まで拡大されるということでありまして、質的変化はないのであります。
  267. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 総合的な安全保障政策における自衛隊の位置づけという点について保利官房長官が言ったことの中に、国の安全保障は国政の安定が第一である、次に外交が第二、軍事は最後である、比重をつければ五、三、二の割合だ、こういうふうに言っていることが報ぜられております。わが党も、総合的な安全保障政策の中で七十年代における政府のいう自主防衛構想という姿は、外交、内政など非軍事面の諸政策の中で防衛力すなわち軍事力の位置づけをどのようにしていくかということについて、私どもはそれなりの総合政策を考えております。政府においても五、三、二という割合で考えておられるならば、どのような防衛力、軍事力の位置づけを考えておられるか、この点を長官に伺いたいと思います。
  268. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは数量的に比較できるものではないと私は思うのです。官房長官の発言は、わかりやすいように比喩的に申されたのだろうと想像いたします。自衛隊はやはり国民の中における自衛隊であり、かつ、国策の中における一つの国策にすぎない、そういう考えに立って、前大戦以前の日本の軍部がおかしたようなあやまちを絶対おかさないように、国民の心からの支持を得られるような自衛隊として、非常にあたたかい理解の上に立つ自衛隊として、私たちは育成していきたいと思っております。そして、国政の中におきましても、これはきわめて謙譲な、しかも礼節のある、また、国民からは信頼される自衛隊にしていきたい。そういう意味におきましては、やはり経済力、文化力、国民生活の安定というものが中心であって、それを守るために自衛力というものが必要である、そういうふうな考えに立って国策とのバランスをとり、またシビリアンコントロールのもとに成長する自衛隊として節度を持っていきたいと思うわけであります。
  269. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほどから国防の基本方針についてるる質問がございましたので、私も簡単に伺っておきたいのです。  最初、中曽根長官が自主防衛ということで五原則を明らかにされたわけであります。しかし、その後国防の基本方針改定問題については事務レベル段階で現在検討中である、このように先ほど答弁がございました。この長官のおっしゃった自主防衛ということについてでございますが、自主防衛ということは辞書を引きますと、他人の保護または干渉を受けず、独立して行なうことと書いてあるわけであります。したがって、長官の言う自主防衛というのは決して真の自主防衛ではない。安保条約に依存している自主的な防衛である。要するに、主体的に考えていくという答弁がございましたが、しかし、そうであればやはり他力防衛、こういうふうに言うのが私は妥当ではないかというふうに考えます。この自主防衛ということについていろいろ伺いたいわけでございますが、究極的にはどのような戦略を想定しておられるかということでございます。この自主防衛という点についてアメリカの軍事専門家は、どういう方向に行くんだろうか、どういう戦略を想定しているんだろうかということで非常に危惧しているそうであります。この際、そういった点について明らかに伺っておきたいと思います。
  270. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いままで私が申し上げてきたようなことでありますので、そう危惧はないと思うのです。危惧といえば、一部の外国人に、日本が核武装するのじゃないか、ハーマン・カーンなんかが言っておるので、そういう危惧が一部にあるようでありますが、私は日本は核武装しないほうがいい。重大な変化でもあればそれは別です。しかし、現状が続く限り核武装しないほうが適当である、私はそう考えておるので、そう考えるアメリカ人の考えがおかしいとすら私は思います。しかし、これは日本の国情に対する理解が不徹底であるためなので、経済大国は必ず軍事大国になるといういままでのパターンが日本の場合にもそのまま行なわれると考えて、そういう形になったのじゃないか。西洋的論理をもってすればそういう方向に行きやすいのです。しかし、われわれは東洋人であり、日本人でありまして、独特の哲学を持ち、集団を維持し、そして世界政策を持って臨もうとしておるものでありますから、こういうわれわれの独自の心情と申しますか、そういうものをよく理解してもらいたい、そう考えるわけであります。
  271. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このことは、アメリカへ行った場合に大きな一つ質問の項目だろうと私は思います。これもアメリカの軍事専門家の話を聞いてまいりますと、日本の自主防衛というのはどういうことを想定しているのだろうかということの中で、現在フランスとかスウェーデンという例をあげていろいろ考えているようであります。フランスは核を持っております。スウェーデンは持たないという形で自主防衛を行なっているわけでありますが、そのどちらの戦略なんだろうかということを率直に述べているレポートを私は見たわけであります。そして、この自主防衛というのはアメリカの世界戦略とはどういう関係になるだろうか。先ほど長官は、常に安保体制の中で自主的にやる、しかもアメリカの戦略とは常に調整をしていくということでございますが、どこまでも日本が自主的に防衛考えるならば、必ずしもアメリカの世界戦略と一致するとはいえない面があるわけであります。その点をそのアメリカの専門家の言うのには、繊維問題どころではない、もしか世界戦略が違う方向に行ったときには非常に悲劇的な結果になるというようなことも言っているわけであります。そういった点について長官の所信を伺いたいと思いますし、また自主防衛の究極ですね、どの程度の規模、そしてどういう方向、さらに今後何年間のうちにその体制ができ上がるのかということでございます。そういった見通しについても伺いたいと思います。
  272. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は外人記者クラブでも言いましたが、フランス的発想はとらない、それからスウェーデンのような中立政策もとらない、そういう点においてまず違うと思います。しかし、安保条約というものは主体的選択において維持していく。それは太平洋の平和というものは世界の平和の非常に重要な部分だ、太平洋があらしになれば相当アジアは混乱する、それは日本の国益にもならぬし、世界の平和のためにもならぬ、そういう認識からであります。したがって、予見し得る限り、条件変化が重大なものがない限り、安保体制は半永久的に維持していくということが適当であろう、そう言っておるわけです。そういう自主的選択を維持しつつ日本の本土防衛、いずれ沖繩も含みますけれども、それは核抑止力とか攻撃的兵器を除いては自力で達成するところまでもっていきたい。それがどの程度かかるか、これは予算との相談の上でありますからまだ申し上げられませんが、何しろいま米軍から貸与されあるいはもらった兵器で代替を要するものだけでも五千七百億円もある状態です。それから弾薬その他の備蓄においても非常に薄い状態であります。そういう状態を国産兵器で代替しながら一人前にもっていくというためにはまだかなりの年月を要するのではないか、こういうように思います。
  273. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たしかこれは防衛庁長官の庁内放送であると思いますが、日本の防衛については、一つは今後大体十五年くらいの見通し、あるいはまた第六次防くらいが一つのめどである、そして現在アメリカに基地を提供し、そしてまた共同管理なり共同防衛を行なっているわけでありますが、われわれがここまで来たからもうあとは心配ありません、帰ってくださってもけっこうですというまでやるのがほんとうの防衛であるというようなことを庁内放送としてなされたことがあるように私は伺っております。そういったことについて、非常に重大な発言でございますし、長官のいう自主防衛というのは、そういうところを一つの規模として、または見通しとして考えておられるのかどうか、その点確認をしておきたいと思います。
  274. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 核抑止力と攻撃的兵力というものは安保体制を通じて米国に期待しなければならぬ、これは続いていくだろうと思うわけです。しかしそれ以外のものは自力で達成するという方向につとめてまいりたい、そういう方向にだんだん持っていけば、たとえば第七艦隊との提携というのは普通のときでもかなり重要性を持ってくると思います。がしかし、そのほかの陸上あるいは空軍というものについては、日本の力が次第に増加していくという場合になれば、必ずしもアメリカがいつも定着している必要はなくなるかもしれません。またそういうふうになるほうが好ましい事態が都市周辺なんかにはありますね。そういう意味において、日本の自主的な力を増しつつ、外国に依存する部分をできるだけ減らしていって、正常な事態に戻していく、ただし、基本的提携は厳然として存在をしていく、やはりコミットメントというのが非常に重要な時代に入ってくるので、必ずしも全部の兵力が駐留している必要というものはない時代に入りつつある、そう私前から考えておるところであります。ですから、私は防衛庁長官になる前でも、演説やなんかで、東京のまわりを見ると、米軍の基地が四つもあって東京の空を守っている、こんな国は世界の一等国には一つもない、フランスを見てもイギリスを見てもイタリアを見てもそうだ。できるだけ早期に首都のまわりの米軍基地というものは日本の航空自衛隊でやるようにして、日本人の青年で東京の空を守ろうじゃないか、そういうことを演説で言ってきている。これは演説的用語で言ってきているわけでありますけれども、しかし精神はそういう精神をできるだけ貫いてまいりたい、そう思っているわけです。だから基本線において日米間の提携というものが厳然として信頼関係に立ってあれば、そしてコミットメントが守られるということが保障されておれば、現実的に兵力がどういうふうに展開しておるかというのは、そのときの情勢において幾らでも弾力性を持たしてやらせるほうが賢明だ、そう思ってやっておるわけであります。
  275. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 確認する中で、自主防衛一つの規模、六次防くらいまでを想定しているとかいう点でございますが、その点についてはどういうお考えでしょうか。
  276. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これはペースの問題であり、かつまた客観的な脅威の実態にもよるわけであります。ですから、いまどれぐらいかかるかということは、そのつどトライアル・アンド・エラーで直していかないと言えないわけです。だからこういう国会の席上で、そういうどれぐらいかということを数字で言うことは適当でない、そう私は思います。
  277. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛問題にはいろいろ明確にできない問題も多々あるかと思いますが、大体現在原案の作成を急いでおります第四次防というのは、今後十年間を目途として新しい防衛構想をつくる、こういうふうに先ほど来からも話を聞いておるわけであります。しかし今度の国防の基本方針、特に長官のおっしゃる自主防衛五原則、これがどうなるかわかりませんけれども、こういったことを長官の訪米以前にはっきりときめて、そしてこういう方針でいくんだというものを持って訪米されなければ、訪米の意義がない。きわめて重大な国防方針の問題でございますので、そのように考えますが、その点はどのように長官考えですか。
  278. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国防の基本方針の検討はこの間の国防会議議員懇談会でも始まりましたけれども、これは非常に慎重にしてある程度時間をかけてやるほうが好ましいし、その間における国民の皆さま方の反応、世の識者たちがどういうふうな考えをお持ちか、そういう点をよく調べてあやまちなきを期したらいい、そう思うので、アメリカに行くについてそういうものを先につくるかつくらぬかということはちっぽけなことで、それよりも国民が何を考えているか、国民は何を欲しているか、そうして国民はどういう反応を持っているかということを基本に握りしめるということが大事であると私は思っております。
  279. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そのことについて、ちょうどいまから十年前の六〇年には、やはり国民が心配する問題について、当時の岸総理あるいはまた外務大臣等が、安保体制について、決して日本は戦争に巻き込まれないんだという歯どめをつくったということがあります。私は、この七〇年代の新しい選択の時代に入って長官が訪米されるについては、今後十年あるいはまた非常に長い期間にわたって基本的な話し合いをなされる、またしなければ訪米の意義がないというように考えているわけであります。したがってそういう大事な問題については、ちっぽけと言うのではなくて、その基本方針をはっきりきめて訪米すべきではないか、私はそのように思うわけであります。時間もありませんから次に行きますが、いずれにしても長官が訪米から帰ってきて、こういう話をしてきた、あるいはこういう点についてはこのように主張してきた、七〇年代の選択の問題でここがきわめて大事であり、また苦労があったのだというようなことを国民の前に堂々と言える、そういったものを最初からいろいろ想定して、国民が何を考え、何を望み、どういう選択を考えているかということについてはより多くの意見を聞いた上で、そういったいろいろな問題をきめた上で一つのワクを持って訪米することが一番いいのじゃないか、私はそのように思うわけであります。  防衛産業の問題について伺いたいと思います。  防衛産業基本方針についてでございますが、これは防衛庁のみならず大蔵省、通産省、こういったところにも関係がございます。そしてこの防衛産業基本方針を出した理由また性格について伺いたいわけです。  この基本方針の問題を見ていきますと、小幡事務次官名で防衛産業界あるいは関係機関に通達を出しているようでありますが、これをつくった趣旨また法的効力、こういった点についても伺いたいたいと思います。
  280. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 数年次にわたる防衛計画がありまして、それで防衛産業に関する基本方針がないということが変だと私は思うのです。そういう意味でこれから次の防衛計画を策定するに際して、防衛産業整備の方針をちゃんと国民及び業界にも明示して、整然として効率的に、また税金のむだのないように進めさせたいというのが考え方でありまして、そういう意味で三つの項目を中心にした方針をつくったわけであります。その趣旨につきましては先ほども御答弁申し上げたとおりでございますが、私の考えでは、いわゆる産軍コンプレックスというような批判を受けないようにするためにも、健全でしかも効率的に防衛産業がその機能を果たすということが望ましいので、そういう点も特に重視してああいう方針をつくった次第なのであります。
  281. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この基本方針を見ていきますと、外国との合併企業の排除とか特許権の国家帰属を書いてあります。また私企業のあり方についても関係するような大きな産業政策もあるわけであります。このような基本的な産業政策については、私は、一事務次官が通達すべき問題ではなくて政府全体できめるべきじゃなかったか、特に防衛庁サイドだけで打ち出すことは必ずしも適切ではない、このように思っているわけです。先ほどお話ございましたが、このような調整計画ですか、これは本来国防会議で審議し決定すべき問題となっているんじゃないかと思うのです。防衛庁設置法の第六十二条二項にも内閣総理大臣が必ず国防会議にはからなければならないという事項が明記されております。今回の防衛産業に対する基本方針は国防会議の付議事項に該当するものじゃないかというふうに考えますが、その点についても伺っておきたいと思います。
  282. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国防会議の付議事項の中の二番か三番かにそういう産業政策みたいなのがたしか書いてありましたが、私が聞いた話では、あの意味は軍需動員計画みたいな、そういう政策を頭に置いた産業政策のような意味だというふうに私はたしか教えられたか読んだような記憶がございます。それで、今般出しましたものは、そういうような軍需動員的な色彩というよりももっと幅の広い、われわれがこれから四次防を進めていく上について基本的な大体の軌道みたいなものを明示しておこう、そういう意味でつくったので、わりあいに国防色というものは少ない、いわゆる国防会議色というものは少ないという意識で実はやったものであります。まあ産業指導方針みたいなものだと思うのです。そういうものを国防会議に付議することが適当かどうか、その辺は少し検討を要することはあると思います。しかし、ある意味においては、国防会議においてこれを審議するということもあるいは必要かもしれません。そういう点については今後も検討してみたいと思います。
  283. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほどからもお話ございましたが、要するに一番問題になる点は、産軍複合体制が大きな問題になるというところでございます。単に防衛庁防衛産業界という形での基本方針の策定は、やはり産軍複合体制の結びつきが懸念されると私は思うわけです。  そこでこの中身の問題ですが、八点ばかり疑問がございます。しかし時間もありませんのでただ一つだけ申し上げたいことは、この中身にあります武器輸出の件でございます。わが党は前国会においても、いかなる国にも武器輸出はしない。現在近隣諸国から、軍国主義の台頭であるとか、あるいはまた軍事大国になるのではないかとか、日本の自衛力というのが、世界の軍事費削減の方向に逆行して二次防から三次防、三次防から四次防、倍々と大きくなっているではないか、そういった点についてきわめてきびしい批判があるわけであります。そういった意味からも、わが国の将来を考えまして、武器輸出はいかなる国にもしない、武器の輸出の三原則はあるけれども、あれは友好国には、また平和な国には武器を輸出するということがきめられている、そういう政令でございまして、私はどこまでも武器輸出はしないんだということを明確にうたっていくべきではなかったか、このように考えているわけです。特にこの中にもありますように、武器輸出については内外の情勢にかんがみ慎重に処理するものとする、こうございますが、この点についての長官考え方を明確に伺っておきたいと思います。
  284. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 三原則を維持していくというふうに解釈を願って差しつかえございません。
  285. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、先ほどお話があったと思いますが、経団連防衛生産委員会の意見書の件でございます。この財界の防衛庁に対する意見書でございますが、防衛庁において四次防の立案作業が進められている今日、八月十二日ですか、経団連防衛生産委員会が長官らを招いて四次防に関する要望書が出されたようであります。これはいままでも、財界が二次防でも三次防でも同様に計画を立案し、そして要望書を出してきております。特に二次防では大型兵器などの生産契約の際にこま切れにせずに長期一括方式を主張したわけでございます。また三次防では陸海空をつなぐ国防のシステム化を強調しておりますし、いずれにしてもそれ相当のものを防衛計画に反映させた、このようにもいわれております。そして財界の圧力はやはり防衛計画の中にも強大に影響を与えているというふうに私たちは考えざるを得ないわけであります。今回の防衛庁長官に出した意見の中にも、防衛問題審議会というものを新設してほしいということを前面に押し出してきているわけであります。この財界が審議会の新設をあえて要求することは、メンバーが学識経験者を含めたとしても、民間人が主体となることから見ても、答申を出せば防衛庁もこれを無視することはできないのではないかということも考えられるわけです。そうなれば産業界の意見は防衛政策にも自然に反映するようになる。そしてまた今回の要望書はこういった点をねらったものじゃないかというふうに思うわけであります。そして、もうそろそろこの辺で政策論議にも防衛産業界の意見も一枚加えてほしいというような姿ではないかというふうに私は考えるわけであります。こういったことがもしこのように発展し、またそのようになりますと、これはたいへんなことになるというように私は思います。そういった点から、長官は今回の財界の提案についてどのように考えていられるのか、また今後どういうふうに扱うのか、その点も明確に伺っておきたいと思います。
  286. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日本国民は憲法によって表現の自由があるわけでありますから、どの階層を問わず意見を表明するということは自由であります。産業界が日本の安全保障問題について関心を持って意見を表明するということも、これは自由でありまして、むしろ積極的にそういうふうに関心を持ってくれるということは、われわれとしては持たぬよりはけっこうだろう、そう思います。  ただ、問題はその中身とその影響力がどう出てくるかということなのでありまして、この間の三つの項目は、よく勉強して私は傾聴すべきものがあると思います。国家安全保障会議の問題であるとかあるいは防衛審議会であるとかあるいは技術開発に関する懇談会とか、そういうような問題は防衛政策を効率的に行ない、かつ税金のむだをなくそうという善意な立場から考えてみても考えられるべきものであります。しかしこれを政治の現実に適用するとなると、諸般の問題を考えなければならぬことでもありますので、その点は私は、私独特の考えを述べておいたものであります。しかしまたそういうことがあるからといって、防衛産業の産業人の圧力を政治が受けるというごとはいけない。そういう点は厳然として私たちは限界を守っていかなければならないことと思っております。
  287. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに私が一番申し上げたい点は、そのようなことのない歯どめを何らかの形で考えておく必要がある、また先ほど来から防衛産業の基本大綱が出ましたが、そういった中においても、将来に対する一つの歯どめというものを明確にすべきではないか、このように考えるわけです。  これは防衛庁の高級自衛官の天下りについてでございますが、報道によりますと、長官の諮問機関として、自衛隊離職者就職問題協議会、これを設けたというふうにいわれております。メンバーは防衛庁の人事教育局長人事院職員局長、総理府の人事局長、こういった方々で構成なされている。しかし、これをいろいろ見てまいりますと、これは部内審査というものを根本的に改めたのではなくて、第三者機関による審査機関ともいうべきものにはほど遠いんじゃないか。単なる諮問機関にすぎないような感じがしないわけでもないわけです。そして、高級自衛官が武器調達などで密接な関係にある会社の役員などに再就職するということ、また装備の受注、武器購入などをめぐっていろいろな問題が発生するおそれもあるんじゃないか。そして、そういった武器の調達の必要性から、国防、政治までが左右されるといいますか、極端にいいますとそこまでいくのではないか、いわゆるそのことが産軍複合体制への一つの危険な姿に発展するのではないか、こういうふうに私は思うわけです。したがって、こうした中途はんぱなやり方ではなくて、法的にまた規制機関を設けて、基本的にはシビリアンコントロールというものを強めていくことが必要ではないかと思うわけですが、その点について長官の見解を伺いたいと思います。
  288. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は、先ほどお答えしましたように、でき得べくんば立法形式でやりたいと思っておりましたが、間に合いませんでしたので、いまのような形をとったわけです。いずれは立法措置をとりたいと思っております。
  289. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に防衛白書について伺いたいと思います。  防衛庁は、長官の指定に基づいて防衛白書を十月ごろ閣議決定の上公表したい、こういうふうにいわれておりますが、この点いかがですか。
  290. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 十月から十一月にかけて公表したいと思います。
  291. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私がこの防衛白書についていろいろ考えまするに、特に七〇年代の国際情勢の分析、日本的防衛のあり方、また自衛隊の問題解明など、こういった点が軸になっているようでありますが、私は特に日本防衛の中で防衛力の限界、またアメリカの核抑止力に依存するというのはどの程度の攻撃、脅威に対して想定するのか、また現在の国際環境のもとで、わが国に対して核攻撃の危険はあり得ると想定していくのか、また現在の自衛力で対処するのにはどの程度の攻撃に対してどうするのかというような具体的な限界を描く必要があるのではないかと思います。その点について長官から見解を伺いたいと思います。
  292. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いままでの防衛白書の草案を読んでみましたら、いわゆる冷戦構造意識的なものが残っておりまして、それもある程度は必要ですけれども、それも含めて多少手直ししなければいけない、そう思っていま書き直さしているわけです。八月末くらいまでに第一次草案ができるはずで、それをまたよく検討して第二読会、第三読会という形で訂正していきたいと思っておるわけです。ただいまおっしゃいました御意見はよく参考にいたしまして、つくる上に検討を加えていきたいと思います。
  293. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、基地問題について伺いたいと思います。  先ほどからもお話ございましたが、日本本土における基地の態様というのは四つあるように思います。その一つは地位協定の第二条一項、全面的に米軍が使用するもの、さらに地位協定第二条四項の(a)また(b)、さらに地位協定三条の管理権によって自衛隊及び民間航空に使用を許可しておるもの、こういった点を含む管理権、こういった一つの態様があると思いますが、そのほかにございますか。
  294. 山上信重

    山上説明員 私から便宜お答え申し上げます。  大体おっしゃるとおりでございます。
  295. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ここで大事なことは、沖繩が返還されますが、その中で現在の地位協定を変えない、現在の安保体制のワク内で返還が行なわれるということでございますが、沖繩が返還になった場合に、この四つの態様で扱うということで了解してよろしいわけですか。
  296. 東郷文彦

    ○東郷説明員 沖繩返還後は地位協定をそのまま適用するということでございますから、そのとおりでございます。
  297. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在米国とはどのような交渉が行なわれているかという点でございますが、いかがですか。
  298. 東郷文彦

    ○東郷説明員 昨年の日米共同声明にもございますように、返還後の沖繩には安保条約の目的に従って必要な施設区域を提供するという趣旨が書いてございます。現在沖繩に多数の米軍のいわゆる基地がございます。いまの共同声明の趣旨に照らしまして、返還時までに提供すべきものをきめるということにしたいと考えて、話し合いを始めておるところでございます。
  299. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私も過去に沖繩に行ったことがございますが、ちょうど米軍機が飛んでおりまして、あの那覇空港が一ぱいだというのでずいぶん一ずいぶんといってもたいしたことありませんけれども、滞空して、空であくのを待って着陸したことを覚えております。沖繩が返還されますと、民間航空というものがどんどん行くようになる。そういった面から、まず返還にあたっては沖繩に民間のための空港が必要になると私は思います。現在の状況では全部アメリカ軍の基地のほんとうのすみっこを使わしてもらっているというのが現状だと思いますが、こういった点について、往来が激しくなればなるほど、民間飛行場に返還させるなり、または新たに空港をつくるなりという問題が出てくるわけでありますが、こういった点についてどのように外務省は考えているのか。またそうなりますと、地位協定の三条の管理権で民間空港に使用させるようになるのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  300. 東郷文彦

    ○東郷説明員 いまのお話は、具体的な那覇空港のことになるかと存じます。返還の時点までに那覇空港の合理的な使用方法について、これはまたわがほうの自衛隊の配備がどういうことになりますかという問題とも関係するかと思いますが、いずれにいたしましても、そのようないろいろな問題を十分検討して、返還のときまでに最も合理的な解決ができるように作業をしております。
  301. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに、沖繩返還に伴って米軍の裁量によって民間の使用が禁止されたり、また軍事優先のために民間航空の運営が阻害されることがあってはいけない、私はその点を考え質問したわけでございます。どうかその点については、こういった点を前向き、積極的に解決するように外務省に要望しておきたいと思います。  それで防衛庁長官に伺いたいのですが、先ほど来からもさかんに基地の共同使用についてお話がございました。しかし私が地位協定を勉強した範囲では、現行条約での共同使用は、どうも二条四項の(a)、(b)の規定では共同使用という線は出てこないわけでございますが、この際私が申し上げておきたいことは、アメリカとの話し合いの中で、この地位協定のワク内でやるとはいっても、地位協定にないことを実際やろうとすることについてであります。こういった点で、強引に長官のおっしゃることを向こうと話し合うということについては、やはりそういったことから出発して、今後いろいろな地位協定以外の面での話し合いまたは取りきめがなされることになるのじゃないかということで、私はこの点を危惧するわけでございます。その点について長官の見解を伺いたいと思います。
  302. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 安保条約を適用していくのでありますから、地位協定に準拠してやっていくつもりであります。
  303. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 地位協定の二条四項の(a)、(b)または第三条の管理権による使用というものも、その最高の決定権は米側にあることは明らかであります。こういうような条約あるいは条件での共同使用というのは、ほんとうの意味での共同使用ではないと私は思います。まず私が思うことは、いわゆる共同使用という理由で、基地の管理、保全という負担だけがわがほうに負わされるのではないかという点であります。要するに、俗にいう差配の役割りを日本がする。差配というのは、所有主にかわって借家、借地などを管理するということでありますが、その場合所有者というのは米国であって、借家、借地などを管理するのが日本、こういう立場になると思うのです。これはアメリカからすれば軍事費削減、ドル防衛等という見地から、非常に持ってこいの構想であると思うのです。そういう共同管理という形で、向こうの思うつぼになるような取りきめをなすべきものではない、こういうふうに考えるわけですが、その点についていかが思いますか。
  304. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 二四(b)の場合は、こっちが回復して向こうの一時使用というような形になるわけでございます。こっちが主体性を完全に回復するわけでございます一ですから、各基地によって、ケース・バイ・ケースでできるだけ日本側のそういう管理権を拡充していきたい、そういう方向で進めていくつもりであります。
  305. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに長官のおっしゃることは、地位協定に基づくものではなくて、長官としての政治的発言だと私は思います。これは前にアメリカ局長からも聞いたことでございますが、要するに共同管理−自衛隊か主として持つということについては、権利、義務というものがどちらも平等でなければ、真の意味の共同管理にはならないと思うのですね。その点についてアメリカ局長はどのように思われますか。
  306. 東郷文彦

    ○東郷説明員 いまの二4(a)、(b)あるいは三条の管理権云々は、決定権がアメリカにあるというお話でございましたけれども、なるほど三条の管理権の場合にはそういうことになるかと存じますが、二条一項による提供あるいは二条四項(b)あるいは(有)の取りきめと申しますのは、合同委員会で合意することになっておりますので、その意味におきまして、必ずしもアメリカが決定権を持っているということにはならぬかと存じます。いまの管理権の問題でございますが、先ほど先生のあげられました四つのうち、第一の二条一項の場合には、三条による管理権を向こうは持っておるわけでございます。二条四項(a)あるいは(b)につきましては、それぞれ使っておるほうが管理権を持つ。二条四項(b)の場合には、この協定のいかなる規定を適用するかということをそれぞれきめることになっておりますので、そのような意味で、使っておるものが管理権を持つという形になるかと思います。純粋の共同管理というのはどういうことか、協定上はおっしゃるとおりでありますけれども、なお費用の問題につきましては、もともと二条による提供に要する費用というものは、これは御承知のとおりわがほうが持つことになっております。その運営方法をどう負担するかということでは、二十四条との関係も出てまいりますけれども、ともかくいままでは二条四項(a)にしましても(b)にしましても、非常に例の少ない規模の小さい問題でありましたので、それがあまり問題にならなかったわけでございます。これからはそれがより広く使われることになりますれば、これを二十四条のワク内で合理的な分担をするという問題は出てくるかと思います。これは個々の施設、区域についての取りきめの際にきめていけばよいことと思っております。
  307. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 なぜこういうこまかいことを申し上げるかといいますと、沖繩返還に伴って、こういった問題が数多く出てくるからであります。特にこの二条四項(b)の場合「合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域」とあります。またこの「一定の期間」の解釈はどうなっているのか。日米間でどのような解釈上の了解があるのか。たとえば一カ月のうちに何回とか、年に何回、何日とかいう了解があるのかどうか。要するにこの解釈のいかんでは、この一定期間ということが長期になったりあるいは常時というようなふうになりかねないと思うからなんです。先ほどの話も含めて日米合同委員会における基地協定中にどういうことが明記されているのか。これは日米合同委員会の議事録を公表していただきたい。資料要求したいと思います。特に施設及び区域についての日米合同委員会における決定書をこの委員会に要求したいと思いますが、その点いかがですか。
  308. 東郷文彦

    ○東郷説明員 個々の施設、区域に関して話のできましたものは、合同委員会できめまして、わがほうでは閣議決定の手続を経て、一々官報に掲載しているわけでございます。その決定に至りますまでいろいろ話をする場合もございますけれども、この辺のところは、合同委員会の議事録そのものは発表しないというたてまえでございますし、また結果がそのとおり公表になることでございますので、そういうことで御了承願いたいと思っております。
  309. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この日米合同委員会の議事録を公表しろということは、前回の国会のときに総理に質問しました。要するに新しい七〇年代の選択をめぐって今後いろいろ考えるには、やはり当時行なわれた日米合同委員会の議事録を公表して、そしてよりベターな取りきめ、選択をすべきではないかということについて質問したところ、支障のないものについては今後公表する、こういう御答弁がございましたので、この点について重ねて局長に伺いたいわけですが、いかがでしょうか。
  310. 東郷文彦

    ○東郷説明員 合同委員会の初期におきまして、いろいろ地位協定の運営について、行政権の範囲内で準則のようなものをきめたことも多々ございます。それらにつきましては、その内容を知らす要旨を国会にもすでに御提出しておるわけでございます。最近の運営におきましては、すべて軌道に乗っておりますので、そのような性質の合意なり取りきめというものはきわめて数少なくなっております。これも、こういうものだということは、過去三回ぐらいに分けて国会にも御提出しております。いまお話しの個々の施設、区域の問題につきましては、それがそのとおり、いま申し上げましたように、国会にも官報にも出ることでございます。重ねて申し上げますが、そういうことで御了承願いたいと思います。
  311. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに時期が来れば、また資料要求した場合には出していただきたい、こう思います。  次に、二条四項(b)の場合、米軍側は使用権だけあって、他の基地の保全維持の責任、すなわちそういう意味での管理費等の負担は日本側に移転したと解釈するのかどうか。要するに、これに要する財政上の負担は日本政府が負うのかどうか。この点についてはいかがですか。
  312. 山上信重

    山上説明員 二条四項(b)で米軍がこの施設を用いるときに、その費用は全部日本が負担するということではございません。施設を維持する管理の第一次責任が日本側にありますから、したがって、日本側が施設管理という全般的な費用は持ちます。しかしながら、部隊が参ってそこでいろいろな電気、水道等を使えば、そういったようなものは当然入ってくる米軍側の負担になる、こういうことでございます。
  313. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、二条一項(a)の規定によってわがほうが提供する基地について、これに付属する設備、備品及び定着物は、この範囲においてわがほうの負担になるのか。この点を明らかにしてもらいたいと思います。それで、将来米軍側からどのような過大な要求がされてくるかもしれないので、これをチェックする意味からも、二条一項(a)の基地の運営に必要とされている設備、備品、定着物とはどういうものなのか、その範囲を明らかにしておく必要がありますので、伺いたいと思います。また「現存の設備」とありますが、このことは基地提供の際に存在しているものと解するのかどうか、その点も明確に伺いたいと思います。
  314. 山上信重

    山上説明員 二条一項の(a)の「施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物」、それはいまおっしゃいましたように、基地提供の際にそこにあるものをそのまま提供するということを含む、そういうことがあってもよろしいということでございまして、米軍が入りました後においていろいろな備品をつくる、設備をつくる、家を建てる、これは自分でやるのがいまたてまえになっておるということでございます。
  315. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たとえて言うなら、飛行場の滑走路の延長の場合、滑走路の延長のための新設は、わがほうの財政上の負担になるかどうかということですね。
  316. 山上信重

    山上説明員 ただいまの日米間のあり方といたしましては、飛行場の滑走路延長、最近はそういうことはございませんけれども、そういったような場合には、その用地は日本政府のほうで取得して提供いたします。しかしながら、かりにそういうような延長ということがありました場合に、飛行場の滑走路を延長する工事、そういったような費用、その他もろもろの費用は米軍自身が負担してつくる。これは二条一項で提供する場合でございますが、そういうことになっております。
  317. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 兵舎または軍人用の住宅はわがほうの財政負担になりますか。
  318. 山上信重

    山上説明員 兵舎でございましても、従来からの建物を提供しておるような場合、たとえば民有地、民有の施設を借りて提供しておる場合がございます。これらの場合は、二条一項によって、従来あったものということで、そういったような費用は日本政府の負担になっております。しかしながら、提供された区域に兵舎を米側が自分で建てる場合、これはドル資産と申しておりますが、かような場合には米軍自身がその費用の負担をいたしておる、こういうことになっております。
  319. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 グラントハイツの問題なんですが、このグラントハイツの返還の代替地として他の場所に住宅を新築する場合にわがほうの負担になるかどうか、また、その場合これは規定があるかどうか、この点について。
  320. 山上信重

    山上説明員 これは特段と規定というものはございません。ただ、返還を日本側が求めた場合、米側において移転を条件にして返還をするということに相なります場合が非常に多いわけでございます。そういうような場合には、移転するために現存する規模程度のもの、あるいは必要なものを別途に他の地域につくって提供する、それを条件に返還するというような場合には、さような施設の提供、すなわち、いろいろ土地を取得したり施設を建てたりということは日本側の負担においてやっておるわけでございまして、これは過去においてもたくさんさような例はございますが、そういう移転を条件とするところの返還という場合には日本側の負担となるわけでございます。   〔伊能委員長代理退席、塩谷委員長代理着席〕 ただ、その規模、そのあり方等は日米間の個々の協定、個々の話し合いによってきまるわけでございますから、特段とどれだけときまったルール、規則があるというわけではございません。
  321. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このことはいろいろ問題があるわけであります。要するに、規定にないことが実際行なわれてきたわけでありますね。  そこで、グラントハイツの返還の問題でございますが、要するに現在、今年度は五十億円の予算をもってあのグラントハイツの移転をしているところでございますが、私は、こういったグラントハイツの返還については、四年間と言わず、来年度の予算においてあらかた返還できるような予算措置を講ずべきではないか、こう思います。そして、グラントハイツというところには米軍が約一千世帯住んでおります。ちょうど五百坪に一世帯という広大な地域に住んでいるわけでございますが、この移転資金については当初三百五十億円という膨大な金額が見積もられているわけであります。要するに一世帯の移転料が三千五百万であるということになるわけであります。そういった面からいいまして、この新しく住宅を建てて移転させるということ、これは地位協定にないこと、そしてまた現にいままでやってきたというならば、日本側においてはきわめてたいへんな税金の使い方をしてきたと私は思うわけです。そこで、一つはグラントハイツの早期返還をしてほしいということ、そしてまたその移転費については、三百五十億というようなばく大な金をかけないで、すなわち一世帯当たり三千五百万円というような膨大な移転計画ではなくて、それを縮小して、そして来年、特に四十六年度中において返還可能なような状況でもありますので、その点について施設長官から伺いたいわけです。
  322. 山上信重

    山上説明員 最初に申し上げたいのは、グラントハイツの移転と申しておりますが、現在持っております計画は、グラントハイツとそれから現在グリーンパークと呼ばれている武蔵野にあります住宅、この両方を移転をせしめるということでこの予算を組んだわけでございます。この両方で約二千二百戸ほどの住宅になるわけでございますので、それらの移転に要する費用といたしまして四カ年間でおおむね三百五十億円という規模をもって考えております。ただ、われわれといたしましては、この提供につきましてなるべく経済にあげるということももちろん考えていろいろ今後の折衝をいたしたいと思いますが、やはり早急なる移転を実現するということもまた国民なり地元の方々の御要望でもありますので、それこれ勘案いたしまして、できるだけ経済にあげていくようにつとめたい。年限もなるべく短い期間であげたいとは思いますが、相当多額の経費でもありますし、いろいろな経費の面あるいは建設の能力の面、あるいは移転先の問題等もございますので、いまのところではおおむねその年次を目標にいたしておる、できればもっとすぐしたいとは思いまするが、そういうような考えでございます。
  323. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 金額の面でございますが、三百五十億円という膨大なお金をかけずとも返還可能ではないか、移転可能ではないかというふうに思います。さらに東京都におけるグラントハイツの移転の一切をあの地に求めるのではなくて、いま言いましたようにグリーンパークですか、そのほうも含めて、東京都だけに負担させるということは、やはりこれも問題ではないかと思いますので、早期に返還の促進と、それから予算の規模をもう少し縮小して実現していただきたい、このように思いますが、その点いかがでしょうか。
  324. 山上信重

    山上説明員 ただいま申し上げましたように、住宅のほかにいろいろな付帯の施設学校であるとか、あるいは教会であるとかいったような付帯の施設もございますので、非常に多くの節減をはかるということはむずかしいと思いまするが、できる限り経費の節減をはかり、かつまたできる限りすみやかに実現するように、御趣旨に沿って努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  325. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 早く終われという話もありますので急いで質問しますので、どうか簡明率直にお願いしたいと思います。  私は、なぜこういったこまかい問題をここに述べますかといいますと、今後の沖繩基地の返還のあり方について、この地位協定に基づく解釈によっては膨大な基地対策費が要るようになると思いますので、私は念を押しているわけであります。  次に伺いますが、基地内にあるゴルフ場はわがほうの財政負担によってつくられるものなのか、またこれらの維持経費もわがほうの負担になるのか、その点。それから現在の住宅も建てかえする場合はわがほうの負担になるのか、またわがほうの財政負担によって提供すべき住宅などの限度はあるのか、さらに米軍側の必要に応じて建築して提供する義務があるのか、この点について簡単に伺いたいと思います。
  326. 山上信重

    山上説明員 ゴルフ場等はいわゆる地位協定の十五条にいうところの諸機関というようなことでございまして、当方が直接にその運営費を持ったりあるいは提供する義務が直接発生しておるわけではございません。したがいまして、現在ありますところの米軍基地内のゴルフ場の大部分は米軍自身が、あるいは米軍人軍属のポケットマネーによって建設されておるのでございます。ただ御案内のとおり、多摩にありますところのゴルフ場は、昭島施設の返還のための代替施設として日本政府が特に建設したもので、これは昭島の施設を返還せしめるためにかわりの施設を提供して、そして昭島に米軍自身がこしらえたゴルフ場がありましたが、それを返還を求めたというのが経緯でございます。したがいまして、これは一般的に申しまして、建設費を日本側が負担しておるというようなことは普通の場合にはございません。また維持費は、米軍もしくは運営する会員等の自己負担ということに相なって、日本側の負担はございません。それからそれに伴うところの付帯の建物とかそういったようなものを建てておることもないような次第でございます。
  327. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 第三条第一項に「関係法令」ということがあります。それはどういう法令なのか、私はこれはちょっとわからないわけです。もし本条に適用される法令がないとするならば、どういう根拠で必要な措置をとるのかということですが、その点明確に伺っておきたいと思います。  それから、第二十四条の路線権です。この問題は、わが国の民法上に路線権というものがないわけです。その場合に、わが国の民法上こういう規定がないというならば、この路線権というものはわがほうにとっていかなる法に準拠して行なうのか。これは本来ならば条約局長に聞くところでありますが、アメリカ局長がかわって来られておりますので、伺っておきたいと思います。   〔塩谷委員長代理退席、伊能委員長代理着席〕
  328. 東郷文彦

    ○東郷説明員 第三条一項におきまして、施設、区域内における米軍の権利を定めておりますると同時に、その出入についていまお話しの問題があるようでございますが、施設、区域内といえども、それは日本の領土でございますので、観念的には日本の法が及ぶ。しかし、実際問題として、これは米側に管理権を認めておる、こういう関係でございます。この後段の近傍の土地及び空間、これは出入のための措置などをさしておりますけれども、それにつきましては日本政府の法令でございますから、具体的にどういう法令になりますか、ともかくここでいっておることは、日本の法令以上のことではなくて、日本政府の法律でできることを、出入の便をはかるためにやる、こういうことであります。
  329. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それは近傍ということですね。近傍は聞いていません。そういうふうにわからないわけですから、二十四条の路線権というものはどういうものなのか、わが国の民法上には路線権というものはない。この路線権がなければ、それはわがほうとしてはどんな法律に準拠するのか。また二十四条の中で、路線権の下にカッコして、(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む。)このようにありますが、これは実態的には何を意味しておるのか、これもさっぱりわからないわけです。この点についても具体的にはっきり説明していただきたいと思います。——わからなければあとで資料を……。
  330. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 伊藤君に申し上げますが、次回までにその点の調査をさせて答弁していただいたらと思います。
  331. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは次の質問者の方にも時間がございますので、きょうはこの程度でとめますが、最後に防衛庁長官に伺っておきたいのです。またこの次の来月の委員会において、四次防の問題、地位協定の問題、基地問題、さらに沖繩防衛の問題、兵器国産化の問題、あるいはまたアメリカの装備の購入等について質問したいと思っておりますが、いずれにしましても、この七〇年代の選択の時代において、わが国の安全保障というものはきわめて重大な時期に来ておることは国民周知のとおりでございます。党内の実力者である中曽根防衛庁長官に今後の日本の安全保障、日本の防衛分担あるいは日米間の任務の問題、こういった点が一にかかっておるわけでございますので、どうか訪米の節には、そういったもろもろの重大なことを明確にして、そして訪米の目的を終えていただきたい。このように希望を申し上げまして、質問を終わります。最後に防衛庁長官の所信を伺って、終わりたいと思います。
  332. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 伊藤委員仰せられておりまする御趣旨は、いままでの各論点についてよくわかりますので、御趣旨を生かすように努力してまいりたいと思います。
  333. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 和田耕作君。
  334. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 きょうは一番しんがりになりましたが、長官先ほどからお茶も飲まないで、水は飲んでおられますけれども、たいへんおくたびれだと思いますけれども、どうしてもお聞きしたい点が二点ほどありますので、御意見をお伺いさせていただきたいと思います。  今度の中曽根長官の訪米は内外からたいへん注目されておると思います。それにつきまして長官のお気持ちをまずお聞きしておきたいのですけれども長官はいろいろな機会に、安保体制というものは考えられる将来にわたって維持する必要があるけれども、一九七五年ごろには安保条約の改正というものは必要になるんじゃないかということをおっしゃっておられると思いますけれども、現在でもそのお気持ちに変わりありませんか。
  335. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 個人としては変わりありません。
  336. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 現在、長官が訪米されるということについて、アメリカ側でも日本側でもたいへん大きな注目をしておる重要な背景は、アメリカのアジア太平洋戦略と申しますか、そういう問題について大きな変化が予想されておるということがあるし、長官自身も、安保条約も一九七五年という時期を目ざして改正する必要があるんだとおっしゃっておる。この二つの問題から注目されておると思うのです。アメリカの国内のいろいろなジャーナリストが政府の見解を自主的に伝えて、いろいろな論説がありますけれども、つまり一九七五年ごろまでにアジアの主要な基地から陸上兵力と空軍を撤退するという基本的な変化という問題について、長官はどういうような御見解を持っておられますか。
  337. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そこまではまだ断定できないと思います。七五年という年を切って、空軍及び陸軍について撤退すると断定し切ることはできないと思います。しかし、アメリカがニクソン・ドクトリン以来、できるだけ自助の努力を各国に期待し、そしてアメリカが空軍及び海軍による支援を引き受けようという方向に動きつつあることは、これは明らかであるだろうと思います。それがどの方面に具体的にどういうふうに出てくるか、これは深甚の注意をもって見ていく必要があります。今回、韓国からアメリカの陸軍の一部撤退ということがいわれておりますが、それらもその一つの徴候であると思います。
  338. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 外務省のアメリカ局長にお伺いしたいのですが、今月の八月十八日、ごく最近の「世界週報」にリチャード・ハロランという人が、太平洋アジア条約機構という問題について長文の論文を発表しておるわけです。これはごらんになりましたか。
  339. 東郷文彦

    ○東郷説明員 申しわけございませんが、まだ読んでおりません。
  340. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは非常に重要な論文だと思うのです。この論文をここで簡単に要約しますと、つまり一九七二年から七五年の間にアジア太平洋地域における、たとえばベトナムとか韓国とか台湾とかタイとかフィリピンとか日本とか、沖繩の基地を一番最後にして、七二年から七五年の期間において順次陸軍あるいは空軍を撤退するだろう、撤退というよりは後退さすだろうというような報道を中心として、それに対してのアジア太平洋条約機構——前にNEATOというものがありましたけれども、あれを少し拡大して強化したようなものに転換していくだろうというような趣旨の長文の論文なんです。そういう問題について局長の、アメリカの態度について考えておられる問題についてのお考えをお聞きしたい。
  341. 東郷文彦

    ○東郷説明員 申しわけございませんが、その論文はまだ読んでおりません。本人はよく知っておりますけれども、全体として、あるいは少し先ばしった見方ではないかと思います。いま長官もおっしゃいましたように、米国が七五年くらいまでに全部整理して後退するという計画がまだ具体的になっておるということはないと存じます。おそらく論文の趣旨としては、アメリカだけが不当に大きな重荷を負わされているのではかなわぬという空気が非常に強い次第でございますので、何らかの方法で、ニクソン・ドクトリンもそうでございますけれども、アメリカの責任が相手の——アメリカの抑止力といいますか、それを認める側においてはひとつ自分でできることをやってもらいたい、こういう動きは今後も出てくると思います。と申しますのは、一方において、アメリカの自分の名誉もあり、自分の責任も十分自覚した上でそういう方向に行きたいというのがいまの動きであると思いますが、いまのアメリカが引いて、それにかわる何かをつくると申しましても、これまたそういうものができる素地、基盤というものがなければ成り立たないわけでございますし、いまからそういうことに向かって進んでおるという見方は、私どもの見るところでは多少先ばしり過ぎておるというふうに思います。
  342. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまのニクソン・ドクトリン、つまりグアム・ドクトリンというあのニクソンの考え方をずっとあとをつけていく、あるいはベトナムに対するアメリカの国内のいろいろな世論、ニクソンさんが打っている手等を考えますと、ベトナムにおける状態というものはかなり強引な形での撤退の宣言のようにわれわれには聞こえるのですけれども、しかし、現にこれを公表しておるというような問題、あるいは韓国におけるそれと同じ傾向の宣言等のことを考えて、こういう問題を外務省としてどういうふうに評価しておるのか。そうは言っても、状態がむずかしいからなかなかそんなことはできやしないんだというふうに評価しておるのか、あるいはそういう傾向もあり得ることだというふうに見ておるのか、その点どうですか。
  343. 東郷文彦

    ○東郷説明員 ただいまのベトナムの例にいたしましても、これはなるほど、撤退の方針を明らかにしておりますけれども、やはり相手、北側との話し合いにどう応じていくかという余地を十分に残しておると見ております。また、韓国に対しましても、削減することによって韓国の安全が脅かされる、さようなことは考えていない。現在のアメリカのやっておることをみますと、そのようなけじめをつけておるように思います。  ただ、先ほど申しましたように、いわゆるニクソン・ドクトリンにも象徴されますように、責任分担ということばがございますけれども、そういう考えでアメリカはアメリカとして応分の努力を、貢献をしていこう、こういう方針のように思いますが、それがわがほうから見ますれば、アメリカがどういう動きをすることが日本のためになるか、あるいはアメリカがたとえばあまりに予算という問題だけでいろいろ動かれて、それが日本をはじめアジアの友好諸国にとって行き過ぎて不利な状態になる、もしそういうことであるならば、やはりアメリカがそういう行き過ぎないような環境をこっちからつくっていく、こういう心がまえで私は局長としてやっていくつもりでございます。
  344. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 長官防衛の新しい方針として打ち出されております一番のかなめは、やはり自主防衛プラス安保条約という方向にできるだけ早く確実にもっていきたいということだと思うのですけれども、いまのニクソン・ドクトリンあるいはいろいろな論文でこのごろ示唆されている傾向を、これは好ましくない、何とかそういうことはもっと延ばしてもらいたいというふうにお考えになっておるのか、あるいはそれは必然的な傾向であって、それに対する適当な対処の方法を日本はとらなければならぬというふうにお考えになって、そういう態度を打ち出されておられるのか、その点どうでしょうか。
  345. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 長い目で見て必然的な動向であると私は思います。ただ、これを実際の政策として実現していくについては、関係方面の非常な反応あるいはバランスが失なわれないという配慮、あるいはコミットメントが必ず守られるという民主主義に対する信頼、あるいは一時的に経済問題が生起する場合に対する慎重な対策、そういうものが伴わないと反動が強過ぎるだろう。しかし、そういう点に配慮していけば、その地域、地域の自活力が出てきて、そうして健全な情勢にいく。そういう意味で長期的には、いまのような配慮を行なうならば支持すべき原則であると思います。
  346. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 今度アメリカに行きまして、向こうの当局者、レアード国防長官とかその他の人にお会いになって、そういうアメリカの責任者の口から、できるだけ早くこういうような体制をつくりたいんだという話があった場合に、長官は、それは予期しております、それについて日本の対処する態度を至急とりたいと思うというふうにお答えになるのか、あるいはそれはちょっと待ってください、アメリカのコミットメントのいろいろな問題もある、いろいろな現地の動揺もあるから、それはちょっと待ってくださいというふうにお答えになるのか、そうはっきりしなくても、どういう感じのお答え、応対をなさるつもりか、よろしかったらお聞きしたい。
  347. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まだ行くことも正式にきまっていませんし、かりに行くといたしましても、答案を先に出すばかはないと思いますので、慎みたいと思います。
  348. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 しかし、この問題について長官は、やはり腹をきめていかないと、話し合いにいま参っても、いろいろな人が期待しているあれから見て——その腹を言うと言わぬにかかわらず、腹はありますか。
  349. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 腹はできております。さっき申し上げましたとおりであります。
  350. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまの問題は、長官が熱意を持って主張しておられる自主防衛、日本の防衛は日本でやるのだということ、これは私ども必要だと思っていますけれども、ただ、自主防衛という問題は、私どもの主張しておるニュアンスと、長官があるいは佐藤総理が熱意を持ってあれしておるニュアンスとは違っておるとは申しませんけれども、どうもはっきりわからない点があるわけです。そのわからない点の一つの問題は、日本が防衛をするというときに、とにかく核兵器の問題は、これはアメリカの核のかさにまかす、まかすけれども、在来兵器の分野においては日本はほとんど完全に自分で防衛できるような体制を進めていくということになると、これは陸上は十八万でしばらくとまりだといっても、一番欠陥だと思われる海上自衛隊の問題、あるいは航空自衛隊の問題、この問題については相当画期的な拡充をしないと、在来兵器でもっての防衛はなかなかできかねるということもあって、大きな軍拡というものが必要になってくる。これは何も軍国主義とか云々ということばで私は言っているのじゃありません。そういうふうなことが相当程度必要であるというような感じがするものですから……。しかし、その感じは、私ども考えとはかなり違った考えでございますが、その問題について長官、デリケートな問題ですけれども、どういうふうにお考えになっておられるのか、ひとつ…÷。
  351. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 和田先生の所属する政党と私らの一番根本的な違いは、有事駐留ということを条約で明確に規定するかしないかという点だと私は思います。私らは、そういうことを条約で書かぬほうがいい、そういうふうに考えているわけで、そこが一番違うのではないかと思います。  それから、何か大それた軍備をするような印象をお持ちかもしれませんが、そういうことは考えておりません。やはり日本の現在の政治に幾つかの選択とそれから幅がありますけれども、客観情勢のにらみ、今後の展望等を考えていきますと、そうあわてて、急いで軍備を強化するというような必要性を私は認めていない。しかし、スローテンポで着実にある程度充実していく必要はある、そういう認識を持っておりますから、何か軍備充実に熱心で、それを急いでやるような印象がありましたら、それは誤解であります。
  352. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 もう一つお聞きしておきたいのは、いまのリチャード・ハロランの議論の展開は、アメリカの最もレベル的な考え方としてアメリカ人としては非常に常識的な主張をしていると思うんですね。そういうふうな意味で、アメリカの国務省あたりでもこういうような考え方を支持する、あるいはニクソンさんでも支持する考え方が非常に強いと思うのですが、この考え方によりますと、将来アメリカが、いまの第一線の陸軍あるいは空軍の基地からマリアナ方面へ後退する、あとでは各現地、現地のその国の自主防衛で肩がわりをしていく、この自主防衛をする国々が寄り集まって、アジア太平洋条約機構というようなものをつくっていく、こういう考え方ですね。その場合における日本の役割りというのは、当然責任のある大きな中心的な役割りをしなければならないのじゃないか、こうアメリカ人は見るわけですね。これはアメリカ人としては、かなり常識的な見方だと思うのですけれども、そういう見方がある一方において、日本は日本でまた違った見方がある。日本には憲法がある。憲法にはいろいろ欠陥があると思うけれども、しかし、日本のナショナルインタレストというものは、憲法を守っていくということを非常に必要としているという面があって、軍事的な面とかいろいろな面でアジア太平洋機構のメンバーに入るということはなかなか困難である、そういう問題がいろいろあるわけですね。しかし、この問題はやがて、長官がおそらく内心では予想されているように、ここ五、六年のうちにはこの問題に何かのはっきりした態度を示していかなければならない。  これは二つだと思うのですね。一つは、ソ連あるいは中共等を中心とした相当積極的な平和的な外交を推進していく、できるかできないかわからぬが、とにかくこれをやっていくという形を先行していくという態度か、あるいはそんなことを言っても、それはなかなか予想はできないし期待もできない、ある程度まで海外派兵を含めたアジア諸国の一つの突っかい棒にならざるを得ないような事態がくる、これは憲法との問題はいろいろ問題があるにしても、そういう状態がくるというふうにお考えになるのか、この二つだと思うのですが、長官、この問題はどういうふうにお考えになっておりますか。
  353. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ニクソン・ドクトリンがどんどん進行して、そのために空白ができるからといって、日本がアジア太平洋の国際軍事機構に参加したり、これをつくろうとは思いません。やはり日本の憲法を守って国土防衛に徹する、そういう考え方で日本はいくべきだと思っております。  それから、中国あるいはソ連との平和外交の面でございますけれども、これは日本の外交一般の性格として平和外交をいかなる国に対しても貫いていくという基本方針をやはり当てはめていくべきであろうと思います。しかし、その平和外交を貫いていくやり方にしましても、単に盲目的に日本だけが突進して片思いをやってもだめなことで、それは相手方の出方を見、相手の反応を見つつ進めるのがまた外交戦略であると思います。しかし、基本的な線というのはいま申し上げたようなことであります。
  354. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 最初に大出君からいろいろ御質問があったのですけれども長官が打ち出しておる新しい国防の基本方針についてなかなか政府部内、あるいは自民党内部かもわかりませんけれども、ストレートに入っていけない問題がいろいろあるといわれております。その内容はお聞きしておるわけではありません。つまり、長官の自主防衛プラス安保というこの考え方は、アメリカの日本あるいはアジアからの早期撤退という問題を呼び込んでくる、つまり、アメリカのコミットメントを薄めていくというような懸念からの慎重論ですか、あるいはそういう国防の基本方針は変えぬでもいいじゃないかという主張になるとお考えになりますか。
  355. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は、よくドイツ人が言っているような人質論というのはとらない。そういうような妙に思いめぐらし過ぎた考えを持つのは正常ではないと私は思うのです。やはり国のあり方というのは自然なあり方が一番とうとい姿である。自然なあり方についてみんなが努力していく、日本だけではなくて世界じゅうの国が努力していく、それが軍縮であり平和の基礎である、そう思うわけであります。
  356. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それでは自民党の中にあるいは政府の中に、長官の自主防衛プラス安保というこの線は、秋ごろまでには片づくだろうという先ほどの話だったんですけれども、その線がかなりはっきりと政府の政策として確認される段階に来ると確信しておるわけですか。
  357. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 総理大臣が、選挙が終わって最初の演説でも、自主防衛を主にして安保で補完する、そういうことを明言しております。私は、そういう基本精神に立って防衛政策を引き受けてやっておるものであります。日本の防衛に関しては、国防という面についてはそうです。しかし、安保条約についてはまた別の面があるわけです。極東の安全及び平和の維持ということ、そういう別の面から見ると、あの極東条項というものはまた重要な意味を現段階においては持っておるわけであります。だから、国防の基本方針に関する限りにおいては自主防衛が主であって、安保で補完するというのはあたりまえのことでありますけれども、極東の平和、安定という面から見た安保条約の機能というのはまた別の面から評価されるべきである、そういうように私は分離して考えております。
  358. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 話は変わりますけれども、最近西ドイツとソ連の間に武力の不行使条約ですか、そういうものが締結されたわけであります。この間、私、北海道の現地の防衛施設を拝見させてもらったのです。つまり、根室のすぐ沖の国後あるいは歯舞、色丹のところを巡視船で回ったのです。特に国後島というのは沖繩本島よりも大きな島だそうでびっくりしたのです。つまりこういう問題を、これは長官の責任じゃないですけれども、外務省のアメリカ局長にも御意見をお伺いしたいのですが、ソ連も西独のあのむずかしい問題を武力不行使条約という形で一応の段落をつけたということになっているわけです。国後、択捉、歯舞、色丹、あの島の問題は日本の防衛の問題から考えて、ぜひともあそこは返してもらわなければならない、あるいはもう一つ考え方は、あそこは返してもらわなければならないけれども、日本とソ連との友好条約とかあるいは北洋漁業の問題で、もっと大きな政策のためにはこういうものはある程度時間、まあいつになるかわからぬけれども、無期限にわたって、そう急いで要求しなくてもいいということになるのか。つまり北海道というところに日本の自衛隊相当大きな兵力がおるわけです。三分の一かそれ以上の兵力がおる。そういう点から、これはソ連に対する顧慮というものが当然あるわけだと思うのです。そういう面から見て、日本の防衛という面から見ての国後、択捉あるいは歯舞、色丹ということと、もっと大きな防衛の基本政策の前提になるソ連との友好関係という問題がある。これは現在の段階でどういう問題を中心に考えたほうがよろしいとお考えになるのか、これについて長官の御意見をお伺いしたい。
  359. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 固有の領土は日本に帰属すべきである、それが基本的な考えです。防衛問題というのはそう含まれていないと私は思います。
  360. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それでは、ソ連との全般的な友好関係を多少おくらすとかあるいは困難な状態を起こしても固有の領土の返還を求めるということが、つまり防衛の問題から見ても重要であるというようにお考えですか。
  361. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私は、防衛庁長官として防衛という見地から言っているんじゃなくして、日本国民として、かつ自民党に所属する国会議員としてそういう考えを申し述べておるのです。防衛庁長官として見ましても、防衛の問題よりも固有の領土はその国に帰属すべきである、そういう考えを主張したいのであります。
  362. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういう能度は私もいいと思うのですけれども、そういう能度であればもっと強く主張するしかたがあると思うのです。現地の人たちはそういう空気はないですね。現地の人たちはとにかく返してもらいたいと言いながらも、あるいは政府の態度にしてもそういうふうな態度は私は考えられない。これは小さな島の問題よりももっとソ連との友好関係を、あるいは北洋漁業の安定を重要に考える。ことによったらこういうものは無期限の将来にわたってもソ連との友好関係をという、これももっともな議論だと思うのです。そういうふうな印象を受けたのですけれども、その点は国務大臣としてどうでしょう。
  363. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国務大臣としてもさっき申し上げた考え方に立っております。
  364. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 今度北海道を視察したときに非常に強く感じた問題の二、三を御質問したいのですけれども、いま十八万足らず自衛隊の中で、昔の下士官という名前はないようですけれども、一曹、二曹、三曹以上の人たちの一般隊員との人数の比例はどうなっていますか。
  365. 内海倫

    内海説明員 正確な数字は後ほど申し上げたいと思いますが、いわゆる幹部及び曹の総数と士長以下の士の総数との比較は、陸について言いますと、陸の幹部の現員が一万九千七百十名、それから曹の現員が六万四千四百五十八名、合わせまして大体約八万四千くらい、これに対しまして士の総計が七万二千九百十七名、したがって、士の七万三千程度に対して曹と幹部の総計が大体八万三、四千、こういうふうな比率になっております。
  366. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私は、曹以上の幹部、それと士、つまり一般隊員、この数字を、つまり幹部のほうが士のほうよりも多いという問題を現地で聞きまして非常に驚いたわけですけれども、つまりこういう体制というものは日本の自衛隊の現在あるいは将来のあり方としていいものであるか、あるいはそれはどうしてこういう結果になったのか、あるいはそういうふうになるように指導しておられるのかという問題をひとつお聞きしたい。
  367. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私はいいものであると思います。それはなぜかと申しますと、最近の自衛隊は非常に技術的に深みが出てまいりまして、二年や三年だけではとても習得できないような、レーダーだとかいろいろなものがございます。そういう技術者として技術を持った人たちが曹になっているわけでありまして、それが技術力を保持しているわけです。士でやめていく人はある程度の技術は持っていても、市中にみんな出てしまう。そういう意味から、自衛隊の技術水準を高めていくために曹が多いということは決して悪いことではないのです。それで、予備自衛官というものもございますが、曹あるいは幹部さえしっかりしておけば、いざというときには予備自衛官を招集してやれば士の部分はある程度補充できる。一番大事なのは、やはりそういう技術水準、技術能力、資本装備率といいますか、そういうことを上げていくということだと思いますので、私はいい方向である、ここが昔の軍隊と非常に違うところである、そう思います。
  368. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それでは、こういう状態がいい、将来事あるときには予備自衛官その他の補充をもって、従来十分にある幹部を中核にして日本の自衛隊を運営していくんだという考え方から見て、これはいいんだ、これはよくわかります。それはあれですか、そういう考え方のもとにできたのか、あるいは新しい一般の士、隊員の人たちの募集が非常に困難だからこういう状態になったのか、これはどちらでしょう。
  369. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 定員がございますから、定員がそういうふうに振りかわっておる情勢から見て、私はある程度意識的にやっておるのではないかと思います。
  370. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私はたいへん視察した各隊の幹部の方たちにお世話になりました。非常に親切にいろいろ説明をしてくれたし、十分この調査の目的を達したのですけれども、私は内容のことはよくわからないのだけれども、全体の空気として非常に盛り上がる士気のようなものが感じられない。また演習を見ても、かなり兵隊、士の隊員をたくさん使った演習というのではなくて、何かしらそういうふうな、つまり戦闘に耐えるといいますか、そういうふうな空気が残念ながら感じ取れなかったのですけれどもね。この問題はどういうふうに理解されるのでしょうか。これは私の見方が間違っておるのか、あるいはそういうところもある理由があるのか、その点をひとつお聞きしたい。これは長官でなくてもけっこうです。
  371. 内海倫

    内海説明員 ごらんになって感ぜられた問題でございますから、私どもがそれを間違いであるとかあるいはそのとおりでございますとかなかなか申し上げにくいと思いますが、ただ全般的に、私どもが陸海空それぞれの部隊を見、あるいは演習その他の訓練の状態を見る限りにおきましては、例外を除きましては、みなその使命というものに十分意義を感じ、きわめて積極的に自衛隊の中における生活さらに訓練に従事している、そういうふうに見ていいと思います。私事にわたりますけれども、私どものところに手紙をよこします者、若い人たちの手紙の内容からもそういうふうなことは察せられます。さらに訓練もきびしくしてもらいたいというふうな声も私どものところにきております。そういう点では、いろいろな感ぜられ方はあろうと思いますけれども、私どもの見る限りにおきましては、きわめてしっかりした気持ちで使命感に燃えて勤務に従事しておる、こういうふうに申し上げてよかろうかと思います。
  372. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そのことに関連して、各自衛隊の現地現場の人たちが、いろいろお話しになりたいあるいは注文をしたいことはないのかという質問に対して、ほとんどどこでも給与の問題が出るのですね、あるいは施設の問題が出るのですね。これは一般隊員ではむろんございません、現地の最高幹部の人たちの口からですけれども、それはそれで非常に大事なことだと思いますけれども、しかし、自衛隊がどうあってほしいとか、どういう訓練をいまやっておるとか、あるいはどういうふうな気持ちでおるのだというような、そういうふうな士気に関することは一切出ないと私は記憶しておるのですがね、これはどういうことでしょうね。
  373. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は非常に大事な部分を含んでおると私は思うのです。私は自分で出かけてみまして、私が予想しておる以上にみな使命感を持って一生懸命やっておるように思いました。だがしかし、防衛というものを担当しておる人間に一番必要なものは国を守る者の誇りなのであります。必ずしも給与待遇だけではないのであって、一番のポイントは国を守る者の誇りであると私は思うのです。ですから、現に自衛隊法によれば警察官やそのほかのものでないようないろいろな義務が課せられておるわけであります。そういう一面において義務が課せられておる人間に対して国を守る者の誇りがいま与えられているかというと、遺憾ながら与えられてはいない。十分与えられてはいないと思うのです。その国を守る者への誇りをどうして与えるかということが大事なポイントで、どういうふうにしてこれを解決していったらいいか、私は日夜考えているところであります。しかし、その点についてはいろいろ御教示をいただけばありがたいと思います。
  374. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 自衛隊法でも防衛庁設置法でも、自衛隊の目的として日本の防衛の問題についてのこまかいあれがあるのですけれども、民主主義等いろいろな体制もあるでしょうが、結局−私は二、三の場合の演習を見たのですけれども、私どもが旧軍隊で、私は下士官で、幹部候補生だったが少尉になれなくて伍長どまりで帰ってきたのですが、その自分のことと考えまして、それは全く状態は違いますけれども、教育するほうの側が中途はんぱな教育しかできてないのじゃないかという感じがいたしました。現在当然戦闘力を持つ自衛隊、持たなければならぬ自衛隊ですから、演習をする場合に、仮想敵国ということばがありますけれども、こういうふうな仮想の敵というものをどういうふうに教えておるのか、あるいは全然教えてないのか。それはどういう……。
  375. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 仮想敵国というものは持ってもおりませんし、教えてもおりません。
  376. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 しからば、それにかわる教育の一つ基準がなければならない。その基準は何ですか。
  377. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは自衛隊法、防衛庁設置法に明記しておりますように、やはりわが国を直接または間接の侵略から守って平和と独立を維持する、これは非常に陳腐なもののようですけれども、また非常に深い大事なところでもあります。そういう民主主義的精神に立脚して国とか国民、国土というものを守る、そういう考えで教育しておるわけでございます。
  378. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 和田君に申し上げますが、長官に特に六時まで御無理を願ったので、そろそろ結論をお急ぎ願いたいと思います。
  379. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまの問題について、私はそれにかわるものは愛国心だと思うんですね、教育の中心になるのは。愛国心という問題について具体的にどういうふうな教え方をなさっておるのか、そのことをちょっとお聞きしたい。
  380. 内海倫

    内海説明員 いろいろな方法、いろいろな教え方をもって現在やっておるわけですけれども先生も十分お感じくだすっているように、そしてまた、いまも長官が申しましたように、昔の考え方であれば事柄は非常に簡明直截でございますが、民主主義のもとにおける日本、その日本の国を愛するということを教えるということになりますと、非常に大きな、いわば一つの哲理を持ち、また教える、方法論をもってしていかなければならないことでございます。長官以下私どもも、そのこと自体は、もう常日ごろから、どういうふうに教え、どういうふうに浸透させるのがいいかということを考えております。現に各陸海空の自衛隊ともにそれぞれ苦心いたしまして、正しい意味の国を愛する気持ちというものをどういうふうに教えるか、あるいはそういうふうなことについて書かれた卓越した書物を用いてこれを教える、あるいはそういうことについて卓越した見識と人格を持っておられる方の講演を聞く、あるいはそういうものについて各指揮官がそれぞれ勉強いたしまして、それを隊員に教え込んでいく、方法その他は必ずしも統一したものではございませんが、基本的な考え方を私どもで統制いたしまして、いま言ったような観点から教え込んでおる、こういうことでございます。
  381. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いろいろとわかります。わかりますが、現在の状態を、私ども内容をよく知らない者から見ると、先ほどの曹以上が多い、つまり何年も自衛隊の中にとどまっている人が多い。しかも、これは長官の言うように、こういう基幹をしっかり教育しておけば、将来の自衛隊が事あるときに役に立つんだということもよくわかる。わかるにもかかわらず、その基幹になる人の心がまえというんですか、つまりそういうものが非常に不徹底というのか、微温的というのか、そういうふうな感じがしてならないわけなんです。この点は全体の政治の問題にも関係があるのですけれども、その問題についてもっと——平和なしには生きられない日本だ、この平和を、民主主義をしっかり守っていかなければいかぬのだということに徹底して、しかも最小限度の自衛力は必要である、われわれはその戦士である、そういうふうなことが大きな顔で言えるような体制をつくることが長官の一番大きな任務じゃないかと思うのですね。しかし、それがなかなかむずかしいことはよくわかりますし、いろいろな議論があるということもよく承知しておりますけれども、それをやらないと、私、先ほど申し上げなかったけれども、月給取りがたくさんおるような状態長官の志と違ってできつつあるとすれば、これは重大問題ですね。しかし、そういうおそれなしともしないと思うのですね、現在の問題は。私どもは日本に最小限度の自衛力が必要である、日本の平和なしには生きられない、日本を守る戦士として自衛隊というものを認めようとしておるし、そういうような意味で、自衛隊の士気の鼓舞すらしたいと思うのですけれども、どうもそこらあたり、困難な中にも、自衛隊の幹部の皆さん方にその困難な任務に耐えてやっていこうというような気持ちがどうも感じられないのですね。それは長官は、そうでないのだ、りっぱにやっているのだというふうにお考えになっていますか。
  382. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私はある程度浸透し、確立しておると思います。それはたとえば防大生の卒業生等を見てみますと、初代校長の槙さんの書いた「防衛の務め」という非常にりっぱな本がありますが、いまもこれを愛読しておる。槇さんは小泉信三先生が吉田総理に推薦した方であって、非常にりっぱな方です。いま卒業生が集まって、槙先生の話をし、この間も胸像の除幕式を何か卒業生が金を出し合ってやっておる。これはやはり損さんの思想が防大生にしみついていると思うのです。そういう防大生の思想が、昔の下士官とか、あるいはいまの士長以下に教育でずっと流れつつある。私は今度防衛大学の学長に猪木正道先生をお願いしましたのも、実はそういう考えに基づいて、やはり指揮官になりました者に道徳的勇気と確信を与えなければならぬ、これが一番大事なことである、そういう考えに立って、猪木先生の御出馬をわずらわし、御苦労願ったわけです。またこの猪木先生考えが防大生を通じてずっと流れていきましょう。また猪木先生に各部隊に行ってお話を願いたいという考えを私持っておりまして、やはり民主主義的精神を浸透させるには、非常に時間をかけてじわじわ自然にしみ込ませて、自発的な道徳的な勇気を生み出すということが必要なんで、暗記させられて何々万歳とかいう考え方は長続きするものでもないのです。  そういう意味において、われわれ昔軍隊におった人間はもの足りない感じが多少しないでもない、それは私にも和田さんにもそういう点はあります。しかし、われわれ自体に間違っておる点があるのではないかということもまた反省してみる必要はあります。私は、槙先生や猪木先生考え方がしみていけばいいのだ、それには時間をかけよう、そういう考えに立脚しておるのであります。
  383. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 最後に、猪木正道さんのことについて、どういうお気持ちで猪木教授を防衛大学の学長になされたか聞こうと思っておったのですけれども、いま長官の口から先にお答えしていただいたのですけれども、猪木氏は私は長年の友人で、近く防衛大学に一ぺん行ってみようと思っておるのですけれども、つまりいま長官もおっしゃられたように、そういうふうな気持のにじみ出る人が幹部として身をもって教えていくということが大事なことなんですね。これは非常にむずかしいことだと思いますけれども、要ばやはり日本の自衛隊というものは——平和なしには生きられない日本、平和を愛する日本で、文字どおり平和なしには生きられませんし、日本の状態は、マラッカ海峡説というものも、これは武力で守りおおせる状態ではありません、守ろうと思っても守れないということでありますから、その問題を身をもって真に教育をしていく、信念的にこれを教育していくという、その教育のスタッフをもっと拡充する必要がある。それは知識を植える必要はない、民主主義の精神をしっかりと植える教育者、教育のスタッフを防衛庁の中に取り込む必要がある、こういうふうに思うのですけれども、その点長官のお気持ちをひとつお聞きしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  384. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は全く同感でございます。われわれも努力いたします。
  385. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 終わります。
  386. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時一分散会