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1970-05-07 第63回国会 衆議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月七日(木曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       伊藤宗一郎君    加藤 陽三君       笠岡  喬君    辻  寛一君       中山 利生君    堀田 政孝君       佐藤 観樹君    横路 孝弘君       鬼木 勝利君    渡部 一郎君       東中 光雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小林 武治君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         法務政務次官  大竹 太郎君         法務大臣官房長 安原 美穂君         法務大臣官房会         計課長     伊藤 榮樹君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君  委員外出席者         総理府恩給局次         長       中嶋 忠次君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ————————————— 五月六日  恩給共済年金の調整に関する請願足立篤郎  君紹介)(第六四六〇号)  同外一件(秋田大助紹介)(第六四六一号)  同(浦野幸男紹介)(第六四六二号)  同(大村襄治紹介)(第六四六三号)  同(亀山孝一紹介)(第六四六四号)  同(佐々木義武紹介)(第六四六五号)  同(益谷秀次紹介)(第六四六六号)  同(辻寛一紹介)(第六四六七号)  同(西岡武夫紹介)(第六四六八号)  同(野原正勝紹介)(第六四六九号)  同(八田貞義君外一名紹介)(第六四七〇号)  同外一件(原健三郎紹介)(第六四七一号)  同外三件(三木武夫紹介)(第六四七二号)  同(有田喜一紹介)(第六七一〇号)  同外三件(遠藤三郎紹介)(第六七一一号)  同(木村武千代紹介)(第六七一二号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第六七一三号)  同(渡海元三郎紹介)(第六七一四号)  同(徳安實藏紹介)(第六七一五号)  同(中垣國男紹介)(第六七一六号)  同(橋本龍太郎紹介)(第六七一七号)  同(原健三郎紹介)(第六七一八号)  同(古井喜實紹介)(第六七一九号)  同(別川悠紀夫君紹介)(第六七二〇号)  同(赤澤正道紹介)(第六八五八号)  同(秋田大助紹介)(第六八五九号)  同(上村千一郎紹介)(第六八六〇号)  同(加藤六月紹介)(第六八六一号)  同外二件(河本敏夫紹介)(第六八六二号)  同(渡海元三郎紹介)(第六八六三号)  同(中川俊思君紹介)(第六八六四号)  同外三件(広沢直樹紹介)(第六八六五号)  国防省設置に関する請願三木武夫紹介)(  第六四七三号)  同(木村武千代紹介)(第六七二三号)  靖国神社国家護持早期実現に関する請願(篠  田弘作紹介)(第六四七四号)  同(中川一郎紹介)(第六七二五号)  同(小島徹三紹介)(第六八六八号)  同(河本敏夫紹介)(第六八六九号)  同(田中正巳紹介)(第六八七〇号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第六八七一  号)  靖国神社法制定反対に関する請願外三百十件(  池田禎治紹介)(第六四七五号)  同外二百七十五件(河村勝紹介)(第六四七  六号)  同外二百八十三件(和田耕作紹介)(第六四  七七号)  同外百四十六件(池田禎治紹介)(第六七二  六号)  同外二百七十八件(河村勝紹介)(第六七二  七号)  同外二百十六件(塚本三郎紹介)(第六七二  八号)  同外二百五十六件(和田耕作紹介)(第六七  二九号)  同外五十件(麻生良方紹介)(第六八七二  号)  同外三百五十六件(池田禎治紹介)(第六八  七三号)  同外百九十六件(春日一幸紹介)(第六八七  四号)  同外二百一件(河村勝紹介)(第六八七五  号)  同外五十一件(曽祢益紹介)(第六八七六  号)  同外二百十八件(塚本三郎紹介)(第六八七  七号)  同外三十七件(西尾末廣君紹介)(第六八七八  号)  同外四百四十二件(和田耕作紹介)(第六八  七九号)  靖国神社国家管理反対に関する請願青柳盛  雄君紹介)(第六四七八号)  同(浦井洋紹介)(第六四七九号)  同(小林政子紹介)(第六四八〇号)  同(田代文久紹介)(第六四八一号)  同(谷口善太郎紹介)(第六四八二号)  同(津川武一紹介)(第六四八三号)  同(寺前巖紹介)(第六四八四号)  同(土橋一吉紹介)(第六四八五号)  同(林百郎君紹介)(第六四八六号)  同(東中光雄紹介)(第六四八七号)  同(不破哲三紹介)(第六四八八号)  同(米原昶紹介)(第六四八九号)  同(松本善明紹介)(第六四九〇号)  同(山原健二郎紹介)(第六四九一号)  元満州拓植公社員恩給等通算に関する請願(  天野光晴紹介)(第六七二一号)  中小企業省設置に関する請願外六十件(井岡大  治君紹介)(第六七二二号)  同外五十七件(井岡大治紹介)(第六八六六  号)  人事行政厳正化に関する請願木村武千代君  紹介)(第六七二四号)  元満鉄職員恩給等通算に関する請願外二件(  河本敏夫紹介)(第六八六七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  五八号)  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三七号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊能繁次郎君。
  3. 伊能繁次郎

    伊能委員 日本恩給問題については、戦後いろいろな経緯を経て、今日まで政府としても特段の御努力を願って、今日の事態に立ち至ったわけですが、その内容をつらつら検討いたしますと、あるいは不均衡是正あるいは処遇の改善その他について非常にばらばらな形になって今日に至っております。人員の面では、昭和四十三年が二百九十三万九千六百二十七人ということで最高に達しております。しかしその後は若干ずつ減少を来たしておる。これは当然と思われるわけですが、戦後約二十年余り、今日まで一途、恩給受給者人員において増勢を来たしたということは、旧軍人恩給その他について政府特段配慮をした結果、非常な人員増加を来たした、こういうことであったろうと思いますが、四十四年、四十五年については、それぞれ五万人程度の減少を見ておるわけです。一方、金額の面では逐年増加をいたしておりまして、国家的にもたいへん大きな負担になっておるわけでございますが、私どもこれだけの大きな金額恩給受給者給与をしておるという点で、長い間政調恩給問題その他に格段の御配慮をわずらわした山中長官がせっかく総理府総務長官として就任をなさって、ことに本年度恩給関係予算についてはたいへんな御苦労を願って、一一%というところまで努力をしていただいたことについては、われわれ関係者としても心から感謝をいたす次第でございますが、あらゆる面から見て日本恩給法というものが非常に複雑であるという点は、政府当局も御認識だろうと思いますので、その面を今後何らかの形ですっきりしたものに十二分の御検討を願って、恩給受給者安心を与え、また恩給本来のたてまえを貫いていただきたい、かように考えるのでございますが、今後の方針について長官の御意見を伺いたい。
  4. 山中貞則

    山中国務大臣 御説のように恩給法そのものは、第一条に、受給権者権利としてこれを受けるものであることが明記された法律でありますが、明治に始まりました恩給法が、ことに戦後、敗戦によります旧軍人、準軍人、軍属その配偶者等を含む、中断そして復活、しかもそれの是正等々の複雑な段階を経てまいりましたために、当然の結果ではあるかもしれませんが、およそ今日の日本法律の中で一番読んでわかりにくい法律というものが恩給法ではなかろうかという疑問を私も持つわけであります。法律というものはだれのためにあるのかということを私たちはいつも考えなければなりませんが、それはやはりその法律によって関係の生じてくる国民方々が読まれるのであって、そして読まれたことが簡単にしてしかも正確に把握できる法律であることが理想であると考えます。その意味では恩給法というものは、経過やむを得なかったとはいえ、受給権者方々にとっては、自分で、かりに権利を持つ人が自分権利関係のある場所だけ読もうといたしましても、たいへんな努力を費やさなければ自分権利の実態の把握そのものが困難であるというような現状にあることを認めざるを得ないことをたいへん私も遺憾に思います。  幸い恩給審議会におきまして答申を受けましたものの最終実行年次を、四十六年度予算と一応目標を置いておりますので、四十六年度予算実施いたします際におきまして、それを契機として、事務的にたいへんな作業になると思いますけれども日本恩給法というものをすっきりとした新しい形のものに改めまして、附則に加うるに附則をもってし、本来の恩給法そのものページ数からいってもごくわずかなもので、どこかに追いやられている感じもするような法律ていさいを改めてみたい。このことは、審議会答申最終実現年次を四十六年度といたしておりまするこの機会が非常に好機会であろうと考えますので、私の在任中に、恩給局の当事者の非常な苦労はわかりますけれども、その苦労をあえてしていただいて、国民のためにこの法律をすっきりとしたきれいな形のものに改めてみたいと考えておるところでございます。
  5. 伊能繁次郎

    伊能委員 たいへんに恩給受給者に対する心あたたまるような御回答をいただいて、まことに感謝にたえない次第でございます。当面御配慮をいただいた本年度恩給年額は、一般恩給年額増額については、すでに五十六億六千四百万円、また遺族、傷病者及び老齢者等恩給改善等につきましては、五項目にわたって恩給審議会答申を得た内容是正がなされ、さらにその他の個別問題についても六項目にわたって配慮をしていただいて、総計八十六億九千三百万円、これを来年度通算にいたしますと約四倍というような額を計上をしていただいたわけでございますが、その中で総理府が昨年八月の概算要求政府に出されて以来、私どもが期待しておった一一%の増額という問題について、明年一月分以降必ず完全実施をしていただきまして、予算面では来年度の問題である。来年度支給になるから一月以降は本年度予算には計上をしてないというようなやや受給者に不安を与える面もありますので、この点については、必ず明年一月以降の増額については、一一%を与えるというような方向に私ども予算決定の際に理解をしておりますので、この点長官からあらためてひとつ明確な御回答をいただければありがたいと思います。
  6. 山中貞則

    山中国務大臣 受給者の側からすれば当然ごもっともなる不安であると思います。ことに恩給を定めます予算折衝最終段階において、一応の明確なる政府姿勢は示したつもりではありますが、しかしながら提案をいたしました法律の中には、確かに言われますように一月実施に伴う分についての明記がなされておりません。この点は、第一に私どもが今回重点を置きましたことは、先ほど申しました法律というものが、この恩給法というものが、非常に難解にして、しかも是正是正を加えていったために、一読することが非常に困難な法律である。これでは、恩給をもらう人たち権利としてもらうのであって、国は正当なる積算根拠理論の上に立つものは支払う義務があるのだということにおいても、その権利義務関係すら不明確になるおそれが今日までの経過であったと思いますので、私はまず、この権利義務関係を明確にするということを第一の目標といたしまして、理論的に昨年来作業されてまいりました物価並びに公務員給与の正当なる積算の基礎に立つ分と、さらに積み残しといわれております残りの四・五%の分の解決に全力をあげたわけでございます。この点におきましては、少なくとも筋が通った解決がなされたということを確信いたしております。したがって一月実施による予算は、四月以降の来年度予算ということに大蔵大臣確約をいたしたわけでございます。それならば法律に書いてもいいではないか、来年度予算を拘束するといっても、それは前例もあるではないかという御反間もあるいはあろうかと思いますが、私たち恩給受給者権利立場を明確にここにし、そうして国はそれを義務として受けたということを成果として初めてレールを敷いた。しかもこれは、私はあえてスライド制とは申しませんが、積算根拠を明確に理論確立したということによって、今後受給権者方々の未来に対する不安というものは根本的に今回の措置によってなくなったものであると考えます。そのような筋を通した反面において、大蔵省には厳然として財政法の定めがございます。その財政法では、やはり次年度予算に関するものは、その前の年においてあらかじめ法律によってこれを定めることを極力排除するたてまえになっておるわけでございます。これを国会の意思によってもちろん変えることもある意味においては可能でありますが、しかしながら、まず政府姿勢といたしまして、恩給受給権者権利、国はこれに対する義務ルール確立をしたという大収穫を前提といたしまして、これは私の判断になりますが、われわれもまた大蔵省の、一方政府立場権利を行使する側の財政法上の立場というものも尊重する必要があろう。あとは予算措置の問題である。したがって、ここでルール確立前提といたしまして、そのルールは、約束もルールでありますから、来年の予算は、四月から一月分からの実施を含む予算が組まれるものであるという確約の上に立って、法律の上には、私自身の意思でもって、そのような一月以降実施の分は四十六年四月においてこれを支払うという内容法律を書き加えることをやめたわけでございます。したがってその背後には、ばく然とした期待とかというものではありませんので、政治家同士の間において、しかも総理の意を受けた官房長官も立ち会っての決定でございますので、その点を御信頼賜わりますならば、来年度予算以降においては、先ほど申しましたこのことを前提とした恩給法の一本化のきれいな法律ができ上るということと、さらに権利義務関係の明確に定められた内容によって予算が正常化されていく、恩給受給者老齢あるいは身体障害の身を顧みずに不安動揺し、予算編成たびごとに心配されるような事態をわれわれは極力排除する責任があるというたてまえから考えまするならば、あと残された四十六年度予算実行内容において早急に裏づけがなされれば、私はやはり財政法も尊重すべき法律であることには変わりはないと考えますので、この意味において委員会各位の御了承を賜わることを私は熱望いたしてやまない次第でございます。
  7. 伊能繁次郎

    伊能委員 たいへん明快な御答弁をいただいて、われわれ関係委員も快く了承する次第でございます。どうかいま御回答趣旨でもって来年度一一%が確実に実施せられるよう、今後とも御配慮をいただきたいと思います。  そこで当初長官からお答えのあった問題について、さらに御見解を伺いたいと思うのでありますが、現在の恩給法、ことに恩給審議会答申をされた恩給法第二条ノ二の問題について、いろいろな論議がなされております。国によっては、あるいは物価基準とし、あるいは公務員給与基準として、その後の恩給是正をしておるところもあるようでありますが、わが国においては、物価及び公務員給与並びに生活水準上昇率等を適正に調整して、できれば——一般スライド制ということばが使われておりますが、将来の問題としては、恩給法制定趣旨からいって、恩給受給者は旧公務員である、そういう趣旨から、今日のように物価が上がり、したがって、それに対応して公務員給与が毎年毎年相当多額に上がる、それは物価上昇率を越えて公務員給与が上がっておるのが現状でございますので、法律改正については、でき得れば国家公務員給与基準として適正な引き上げというものがなされれば、明治以来制定された恩給法趣旨にも合致するのじゃないか。この問題は、政府として将来恩給法根本改正を企図せられる上においてもきわめて重要な問題だと思うのでございますが、将来恩給法改正について、常識的にいわれておるスライド制——これは必ずしも文字どおりそういう形に行くとは私どもも考えておりませんが、今日の恩給受給者の窮迫した立場、ことに比較的受給額の少ない人たち立場を考慮いたしましたときに——高額受給者は、御承知のように他の制約あるいは高額所得者制限であるとか、あるいは若くてなお働ける人は、若年停止であるとか、若年制限等もありますが、老齢者等については、恩給自分たちが一応この程度いただけるならばという満足の域に達するには、今後ある程度現職との均衡を保つという必要があろうかと思うので、将来の恩給法改正については、公務員給与基準として将来の引き上げを考えるというようなことにしていただければ、たいへんに恩給受給者安心をすると思うのでありますが、これは将来の根本問題でもあろうかと思いますので、一応長官の御見解を伺っておきたいと思います。
  8. 山中貞則

    山中国務大臣 受給者はかつての公務員であった、したがって現在の公務員のベースアップとスライドしていくべきである、これも一つ理論かとも考えます。かといって、そのままの理論でいきまするには——現在は公務員じゃないために恩給を受けておられるわけでありますから、その間において、実際の受給を受ける権利内容において差のあることはいたしかたのないことであろうと思いますが、スライド制は、物値の問題をとりましても、今回の改正措置によりまして、おおむねそのような感触——あえて私は先ほどスライド制とは申しませんでしたが、理論的にはほぼルール確立したと申し上げておるのは、そこらの微妙なところを踏まえてのものの言い方でございます。私どもは、戦後日本の国の経済がインフレ傾向的な、物価も、したがって公務員給与も、基準とすべきものはすべて上がり続けておりますから、いまこういう議論でいいと思いますが、しかし恩給というものは、先ほど申しましたように、明治以来のものを踏まえての恩給法であります。かりに、きれいな一本の恩給法制度が、相当時間を要するといたしましても、できあがった場合におきましては、私たちデフレということも念頭に置いて考えていかなければなりません。そうすると、場合によっては物価というものがマイナス要素のこともありましょうし、給与も据え置きということもありましょう。そのようなことを考えますと、受給権者既得権利というものについても、現在の現象がデフレであるという想定もいたしてみなければなりません。その現在が、かりにデフレであったといたします場合には、物価下落分恩給既得権からマイナスにスライドさせていくのかという問題も、恩給法という長期的な性格のものから考えれば、やはり一応の反論としての議論をしてみなければなりません。また他の公的年金その他の制度の問題も、これはすべてからむ問題でありますので、すでに恩給法において——ただいまは御疑念もある程度残るというお話でありましたが、今回の措置で非常に明確な恩給法というもののあり方が示されたために、他の公的年金も、恩給法のようにある意味のスライド的なものに直せという意見も起こっているやに聞いております。したがって政府全体といたしましては、他の公的年金制度との問題もこれあり、この表現は別といたしまして、その採用については、非常に慎重な配慮の要るところであろうと考えますが、実際そのようなお気持ちのあらわれます根源は、やはり恩給というものを支給される権利を持った人々が、現状の中では、公務員給与の毎年の定期的な引き上げ、あるいは物価の大体常識的な値上がり等の率から考えて、このような状態では、やはり取り残される分野が少しずつ広がっていくのではないかという御懸念からであると考えますので、この点は、私どもは十分な配慮をしながら、そのような意味における取り残しのないように今後もつとめていくつもりでございます。
  9. 伊能繁次郎

    伊能委員 それでは最後に一点だけお尋ねをしておきたいと思います。  恩給審議会その他政府当局配慮によりまして、不均衡是正の問題も数々取り上げられて、その恩給審議会答申のうち、少なくとも二十数項目については、毎年着々と実施していただいておりますが、その中には、旧軍人恩給等仮定俸給等について非常に不均衡があるということで、恩給審議会等で取り上げられなかった問題等についても関係恩給受給者から強い希望も出ております。また満拓方面方々たち希望もあるわけでございますが、一応来年度昭和四十六年度経過すれば、大体今日まで恩給審議会において取り上げられた問題は消化をせられる、かように考えますので、その後、ただいま長官からお話のありましたように、恩給法根本改正という問題を取り上げられる際には、全体的に見て、できるだけ不均衡のないようなすっきりした形——もちろん、これは、恩給受給者たちは、おそらく一を得て二を得れば三、四、五、十というように欲望には限りがないかもしれませんが、少なくとも不均衡のない適正なものを考えていただけるならば、大多数の希望が一応最小限度でかなえられる、かようにも思いますので、残された問題等につきましても、恩給法改正の際には十二分の検討をしていただきたいということをお願いして、この点に関する御回答がいただければありがたいと思います。
  10. 山中貞則

    山中国務大臣 審議会是正すべきであるという答申をいただきました残り項目は十ございますので、これは四十六年度予算編成において全部解決をする決意でございます。その後、恩給とは一体いかなるものであるべきか、すなわち、その給する金額は正当にして客観的に妥当なものであるかどうか、これが第一であります。いま一つは、たとえ支給せられていても、不公平感あるいは差別感を持たれる分野が多い場合においては、その効果は半減以上のデメリットを生ずるものと考えます。でありますので、これらの問題につきましては、いま言いました二本の柱というものを念頭に置きながら、恒久的な恩給法はいかにあるべきか、そして後世悔いなき制度としてこれは確信が持てるかどうか、不満は必ずしも——全部解消することは理想でありますが、現実には不可能でありましょう。しかし少なくとも政治家といたしまして、みずから省みて、この制度ならば、金額についても、あるいはその制度についても、あるいは支給される受給者人々不公平感と申しますか、不満というものについてもこたえ得る精一ぱいのものであるという問題につきましては、審議会答申残り項目を片づけた後において、十分に各位と御相談の上、悔いのない制度に改めてまいりたいと考える次第でございます。
  11. 伊能繁次郎

    伊能委員 では終わります。
  12. 天野公義

  13. 大出俊

    大出委員 いま長官の御答弁を聞いておりまして、恩給とはいかなるものであるべきかということばがございましたが、恩給とはいかなるものだとお考えでございますか。
  14. 山中貞則

    山中国務大臣 あなたのおられない間に一応お答えをしたのですが、恩給法第一条には、これは権利として受給するものであるということが書いてありまして、その権利というものを取得した人々が、権利として国に対してこれをもらう資格を持つものである。それの裏においては、正当なる理論、正当なる計算のもとにおいて出てまいりまする金額については、これは支払う義務を持つものが政府であるというふうに理解をいたしております。
  15. 大出俊

    大出委員 確かに恩給法第一条に「公務員及其ノ遺族ハ本法ノ定ムル所ニ依リ恩給ヲ受クルノ権利ヲ有ス」、こうなっておりますから、これはいま長官の引用された権利として取得すべきもの、だから国は当然その義務を果たすべきもの、こういうふうに言われておるのですが、私はいまおりませんでしたから、長官の御答弁を聞いておりませんで恐縮でございますけれども、それだけでは実は済まないわけでございまして、しからばなぜ一体公務員あるいはその遺族は恩給を受くるの権利を有するのかという、つまりこの恩給というものの性格ですね、なぜ恩給権利なのか、ここに幾つかの大きな問題がある。そこに各国の公的年金制度なり、恩給制度なり——恩給制度ということばを使っているところはほとんどありませんで、退職年金が大体中心になっておりますが、幾つかの思想の相違がある。そこに調整規定二条ノ二にいうところの物価であれ、あるいは公務員給与であれ、国民生活水準であれ、その他の諸事情なりというものの受け取り方が違う。ここにアメリカ式の方式もあれば、あるいはフランス型の、つまり公務員年金制度もある。あるいはドイツのように、ワイマール憲法以来の官吏機構というものは複雑でございますから、それに応じた——退職手当もそうでございますけれども、身分上の扱いが違うということもあって、非常に大きな違いがある、こういうことでございますし、英国なんかも違ったものであると私は思っております。だから、その一番根底にある思想的なもの、つまりなぜ権利であるのか、ここのところがもう一つはっきりいたしませんと、いま伊能さんがせっかく提起をされている現職公務員給与というものを中心にすべきであるという立論の根拠がはっきりしない。そういう意味で、実は恩給というものはいかにあるべきかという、その一番ポイントを承っておきたい、こういう趣旨で私は聞いておるわけでございます。
  16. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、わが国の恩給法にはその点の明確な規定がございません。したがって、いろいろの解釈も生ずるかと思いますが、場合によっては今後考えます。先ほど伊能委員——恩給法というのは、私は実は目が充血しちゃったのですが、あの小さい文字を全部読んだのですが、まことにたいへんな法律なんです。附則附則でだんだん張り紙をしているうちに、本体は小さい短いものになって、附則で一ぱい張り紙したものが厚みになって外をおおっておるという感じがいたしまして、これは抜本改正をしようと私は考えておるわけですが、そのときに「権利ヲ有ス」というその権利の機能を定めるかどうかも議論してみたいと思いますが、これはまだ各国とも定義というものは、御指摘のように国際共通の確定したものがありません。日本の場合では、いろいろの意見はありますけれども、まあ公務員というものは、本来国家、公共あるいは国民のために職を奉じて働いた人々でありますから、そのことにおいてすでにその職務そのものが国家から身分を保障され、そしてその退職後も何らかの措置——退職したために収入を失うわけでありますから、その功労に相応する退職後の保障という意味が当然発生してくるというようなことが、大体においてその権利の中身であるというふうに、定着はしておりませんが、そういう考え方のもとに、大体無理なく国民感情としては受け入れられておるものと私は承知をいたしておるわけでございます。
  17. 大出俊

    大出委員 これはフランス法でいきますと、退職した公務員、つまり文武官の恩給の改革に関する法律というのがありましてね、これは公務員給与が中心になるのですよ。現職公務員給与、これが改定される場合に、法律的な義務で退職者の恩給を改定しなければならぬ。これは日本流にいえば恩給ですけれども、はたして恩給と訳していいのかどうかということはわかりませんが、恩給というのは日本独特のものだと考えますから、そういう意味恩給と訳したほうがわかりやすいからそう訳しておるということですが、ところがアメリカなどのように、退職公務員の、日本流にいえば恩給に関する法律、向こう流にいえば退職公務員年金法といっているのですが、年金法によると、物価三%が実は改定の基準になっておりまして、しかもその基礎になる統計資料も指定されておるのですね。だから、これは明確に、アメリカ型でいけば物価が中心であり、フランス型でいけば現職公務員給与が中心である、こういう違いがあると思うのですね。だから、そのいずれをとるかという問題が当初からあったわけですね。だから、私に言わせれば、二条ノ二というものを改正ということで出してきたときに、二条ノ二で言っておるところ、ずいぶんこれは包括的な言い方ですけれども、「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民生活水準」、これが一番冒頭にあげられておるわけですね。「国民生活水準国家公務員給与物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動ガ生ジタル場合」、この三つになっておるのですね。順番からいえば、国民生活水準国家公務員給与物価その他の諸事情、こうなっておるのですね。私は当時、無責任だ、納得しがたいと申し上げたのは、しばしば政府がみずから恩給法改正案を提案をしてまいられまして、特に二条ノ二という重大な問題を提起しておかれて、この解釈権というものを明確にされなかった。どうこれを解釈するかということを皆さんは明らかにしなかった。そうしておいて、解釈は、恩給審議会にどう解釈していただけるか御検討いただきますといって、本来提案者が解釈権を持つべきものを審議会に解釈をまかしてしまった。だから、審議会から出てきた答申というものは、二条ノ二はこう解釈するのだということになってしまう。こんなふざけた、不見識な話はない。ここに基本的な間違いがある、私に言わせると。だから本来の提案をしてきた順序は、「国民生活水準国家公務員給与物価其ノ他ノ諸事情」、物価は「其ノ他」に入っておるのです。だから二条ノ二の規定からいけば、国家公務員給与は先に立たなければいかぬ、そうして物価その他の諸事情に著しく変動があった場合には、それを総合勘案するのだということになっておるわけです。ところが、さてこの恩給審議会答申のほうは、ずっと物価五%が中心になっておる。そうすると、提案者である政府審議会答申というものは一致しておるかどうかというと、一致していない。  そこでもう一つだけつけ加えておきますが、当時の政府立場というのは、公務員給与一つの中心があった。しかし物価がどんどん上がるという側面から突き上げがたくさんくる。だからこの調整規定の解釈はこうなんだと言ってしまうと、とたんに政府の責任になってしまう、だから解釈その他を含めて審議会に一任してしまった、こういう逃げ方をしたのですね。しかもこの事務当局には、大蔵省の官僚諸君を一ぱい入れて、そちらのほうからの計算が主になってでき上がるというぐあいになっておるわけです。これでは私は本末転倒だと思っているのですよ。だから、そこのところをこの際、ここまでくれば明らかにする必要がある。伊能さんのおっしゃっていることもその辺に中心があったと思う、おりませんでしたからわかりませんが。そこのところを私は恩給の思想とともにはっきりしていただきたい、こう思っているわけです。
  18. 山中貞則

    山中国務大臣 恩給審議会に第二条の解釈を求めたということは、その当時私が審議会に頼んだわけではありませんのでよくわかりませんが、おっしゃるとおり少し責任者の立場としてはおかしな諮問をしたものだと私も思います。思いますが、ただその答申に出てまいりました物価五%は、おそらく戦前考えられなかった制度である人事院勧告のあり方という、現在は非常に大きな柱を持つ給与改定の基準であります民間給与との五%、そういうようなものが念頭にあって、それが優先してことばとしては出たのではないかと考えます。しかし、やはり恩給を受ける人たち権利者であるならば、国はそれに支払う義務を持つ義務者であるという立場からいいますならば、恩給審議会答申の解釈も尊重し、かつまた義務者としての支払い者側の政府というものも、その立場は明確にする必要のあることは言うまでもありません。ただ国民生活と申しましても、何を基準にしての国民生活か。かりによく批判を受けるGNPと国民所得の問題で、世界の第二十位である、それならば日本恩給額も二十位であっていいのか、そういう単純なものでもありますまいし、なかなか民間の所得水準の実態というものの基準のとり方は、恩給というきっちりした計算の基礎にとるべき要素としては、多分にくまなければならない情勢はわかるにしても、それはいかなる状態になったときに何%の立場においてこれをとるかというように、具体的なものとしてとることはたいへんむずかしい問題があろうと思います。また公務員給与というものが物価より前に置いてあることはもちろんでありますが、かりに公務員給与に応じてそのまま毎年スライドしていくということになりますと、ことしの予算で御審議願っておりまする内容は、ほぼその考え方の理論的な、そしてまた予算構成上明確化されたものであるとは思いますが、スライド制ということばにはちょっと用いがたき点が残っております。それは国としては、他の公的年金制度等についても、バランスの問題なり、あるいは恩給だけをそうしていいかどうかの内部の議論がまだ燃焼し尽くしておりませんし、問題は、恩給法がことし非常に前進をしたということによって、政府部内においてむしろいま提起されつつあるという現状にあるわけでございます。  私はこの恩給ということばも定着して使っておりますから、疑問はないように思いますが、恩と給すという文字が恩給になるわけですけれども、一体この恩は、公務員国民に対して働いたことの恩を国民が納める税金によって給するから恩給であるのか、そこらのところも思想的な点は大体そういうところにあろうと思いますが、ことばそのものも今日ではみんなあまり疑問を感じないで使っておるわけであります。ですから、日本独自のことばだとおっしゃったとおりのことに現実にはなるかと思いますが、まさにそういう意味もあろうと考えますので、今後やはり、受給権者人々が、毎年の予算編成期に老骨をひっさげ、あるいはからだの不自由な身で上京されてまで陳情されるようなことについて、いわゆる基本的な問題については疑問のないようにするのが政治の責任であると考えて、今回の予算を組むにあたってもきちんとした理論構成をしたつもりでございます。
  19. 大出俊

    大出委員 長官、どうもそこに少し違いがありまして、それをはっきりしないというと——実は古い議論をむし返してもしかたがない、だから古い資料を持ってこなかったのですけれども、ロバート・J・マイヤースが戦後日本に来まして、マイヤース勧告というものを出した。この人は一週間しか日本にいなかったのですけれども、非常にりっぱな勧告を出したときに、公務員法ができておりましたから、公務員法の規定に基づいて人事院は研究の成果を発表する責任があった。だから給与局に次長制をつくって、大蔵省出身の慶徳さんなどを次長にして置いたわけですよ。坂中恩給課長等がその当時一生懸命研究された時代があった。私は当時官公労の事務局長でありましたから、退職公務員恩給連盟と一緒になってずいぶん苦労した時代がある。このときに恩給とは一体どういうものかという大きな議論があった。そこで一番の問題は、明治憲法下における恩給制度でありますから、公務員立場は天皇の官吏だった。公務員ということばは使っておりません。だからつまり恩賜、天皇に長年仕えた官吏に天皇が下さるのだという意味恩給ですね。地方に退隠料だ云々だといろいろありましたが、そういう時代の、つまり明治憲法下のものの解釈だった。ところが戦後の公務員法というのはそうじゃなくて、国民の公僕であるというものの考え方に新憲法下の公務員制度はなっている。ということになると、恩給ではないということになった。ここに実は思想的な戦後の一番の出発がある。だからマイヤース勧告というものは、年間の当初予算に掛け金は要らないのである、国民の公僕たる公務員がやめるのだ、そのやめた人に対しての思想が一つ背景にありますからですが、当初予算に対象人員何名、金は幾ら幾らというのをすぽんと組んでしまえというのがマイヤース勧告の趣旨ですよ。だから掛け金はしない、こういう筋書きだったわけですね。これはなぜかというと、欧州型、アメリカ型はそのときから違いがあるのですが、欧州の例からいけば、一般の退職年金と称するものには、一般論として年をとった方々の休息の権利というものを認めるべきである。長年社会に尽くしてきた、給料をもらうけれども、給料は、自分が働いた価値を全部ふところに入れて給料なりというのではない。その何分の一かを給料として、あとは世の中に置いてきたというのが、長年世の中で働いた人の今日の姿である。その置いてきたものが今日の文明であり文化であり、それが次の世代に受け継がれていくのだ。そうだとすると、価値を置いていってしまった先輩諸君、つまり年寄り、老人はその意味における休息の権利がある。だから新しい世代というのは、その先輩、年寄りの諸君に十分休息をしてもらう、それだけのことをする義務がある。そういう意味で退職年金というものは考えらるべきものなんだという思想があったのですね。だからそこが中心になると、よく恩給論議で出てくるように、退職をしたということは経済的に減耗するのだ、だからその減耗分を補てんしてあげなければならぬ、そこにつまりいわゆる恩給の思想がある、退職年金の思想がある、こういうことは日本のこういう論議でもよく出てくるのですよ。つまり十分休養してもらうという意味において経済的減耗の補てんをするのだとすれば、現職でないから昇給はしないのだけれども、やめたときの俸給というものを基礎にしてその社会的価値が失われないようにしていく責任だけは少なくともある。そしてその恩給額、つまり退職年金というものの額は、今日日本の場合には非常に不十分。だからこれは何とか引き上げていって、十分休息できるようにしてあげなければならぬという点がもう一つある、こうなってきているわけですね。その場合にいずれをとるか。つまり退職公務員給与はその限りでは正しいのだけれども、激しく物価が上昇していたという現実に立って考えた場合に、物価というものを一つ基準にすべきではないかという考え方がその時点で出てきたのであって、だから本来歴史的な流れからいけば、アメリカでいうところの退職公務員年金法という法律にしても、あるいはフランスでいうところの文武官の恩給の改革に関する法律が規定するところも、その限りでは、根本的にはやはり経済的な減耗を補っていく、そうして休息の権利を認めていくという筋書きなんだけれども基準のとり方が、国情が違うから違うと見なければならない。アメリカは物価変動が少ない。ケネディの時代だって二%程度の物価上昇が続いていたわけです。だから保険思想があれだけ発達するわけでありますが、これは貨幣価値の変動がないからです。ところが、日本は特殊事情があって物価が上がるのだから、物価というものも一つ勘案しなければならないというのが、二条ノ二が出てきた趣旨。「物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動ガ生ジタル場合」という理由をつけた理由はそこにある。そうなると、国家公務員給与は、国民生活水準と、ある意味では景気の変動はありますけれども、バランスをとっていくものだということになる、というところで、当時の審議の過程からすればこういう表現が出てきているわけでございます。だから、そういう立場からするならば、当然伊能さんがさっき言ったように、歴史的に振り返ってみて、やっぱり国家公務員給与というものが前提になって考えられるべき筋合いである、これだけは私は間違いないんじゃないかというふうに思っているわけなんです。  少し話がくどくなりましたが、前の話が長官から出てまいりましたからつけ加えたわけなんですけれども、その辺のところで先々に向かっての方針というものを、あるいは日本公務員の退職年金というものに対しての考え方というものをはっきりさせておいていただきたい、こう思うのですが……。
  20. 山中貞則

    山中国務大臣 私も趣旨はそのとおりであると考えますし、公務員給与物価、そういうものについては、今回は、年次は基礎のとり方が少し過去になりますけれども、完全にそれを実施することにし、調整分の四・五%のうち二・二五%についてのみ一月実施でずらしたということでございまして、その意味理論的な構成はすでに現実に成り立っておると私は考えております。ただ、そのことが、ことしの公務員給与というものを直ちにことしの恩給に反映させるということについては技術的にたいへんむずかしい問題がありましょうから、若干のその意味恩給受給権者不満というものは今後も残るかと思いますが、なるべく近い時点においてそれが追っかけていけるような増額というものは、当然今後、ルールができましたので、これに従って実行されていくものと考えます。
  21. 大出俊

    大出委員 長官とこの恩給理論論争をこれ以上やる気はありません、いままで論議してきたところでございますから。二条ノ二が提案されたときもあるいは恩給審議会が審議している過程の時期にも、あるいは新居さんがこの答申をお出しになったときにも、新居さんにここにおいでいただいて私は長い質問をしておりますから、それなりにわかっておるつもりであります。  そこで、実は問題は二つあるのですね。  一つ制度的にどうあるべきかということ、つまりいま長官が言い、私が申し上げた趣旨のおおむねのところを、今回の改正案というものは、時期的なズレという問題はあろうけれども、満たしてきている、こういうお話。それは実質的にはそうなっているのかどうかという問題なんです。なぜならば、制度的にスライド方式をとっていないからなんです。調整規定はあります。ありますが、これはスライドではない。このことはもうすでに明確にされている。そうすると、スライドシステムをおとりになるというならば、二条ノ二の解釈規定を含めて新たに明確に提案をしていただかないとスライドにはならない。これはあくまで調整規定である。やってもいい、やらなくてもいいということなんです。したがって、やってもいい、やらなくてもいいでは困るので、恩給審議会答申趣旨に沿って、物価五%を中心にするかどうかは別として、制度化すべきかどうかという点にまず第一点の問題がある。  そこで承りたいのですが、かつての恩給審議会答申を見ますと、前のほうは省きますけれども、「その運用については、五パーセント以上消費者物価が上昇した場合にはそれに応じて恩給年額を改定すべきものとし、将来におけるその実効性を確保する観点から、これを制度化するなど所要の措置を講ずることが適当である。」こうなっている。私は、この席上に新居会長に御出席いただいて、ここでいま私が読み上げたこの「実効性」というものと、そのあとの「制度化するなど所要の措置を講ずることが適当である。」という「適当」ということばは一体どういうことなんだと聞いてみた。「適当である。」というほうだけ申しますと、政府がわれわれに、御指摘のとおり、解釈権を含めて答申を出せ、こうおはかりになった。だから、われわれは、たくさん問題があるからずいぶん忙しい思いをした。それは議員立法だけで恩給は約三十幾つあるのですから、これはたいへんなものです。だから夜を日に継いでやってきたんだ。そしてこの答申を出したんだから、よもや政府がここでいっていることをおやりにならぬなどとは夢にも考えていない。その立場からすると、ここでいっている「所要の措置を講ずることが適当である。」という意味は、制度化することが政府の当然の義務だ、こう申し上げているのです。こういうふうにこの席上で答えておられる。そうすると、当時の総務長官、塚原さんでしたか、それを受けてお立ちになったのですから、これは制度化しなければいかぬのですよ。スライドという形のものを制度化をしなければいけない。二条ノ二で調整規定と称するインチキなものが出たときに、世の中の皆さんが喜んで、受給者が喜んで、スライド制ができたと、新聞も一斉にスライド制ができたと書いた。質問をしてみたら、スライドじゃない。調整規定なんだ。だから、諸事情があってできなければできないということになるのであって、決してスライドじゃない。そしてそのままで諮問をしたわけですからね。だからもうここまでくると年齢別三本立て給与、三本立て仮定俸給表というものも、当時年齢別所得じゃないから、年齢別にやるなら別な角度からやるべきであって、制度的に三本立ての俸給表をつくることは間違いだということをさんざん言った。そうしたら、間違いじゃないとか四の五の言っておりましたが、私が申し上げたとおり、この審議会答申は、年齢別の三本立ての仮定俸給表は間違いであるから、まずそれを直しなさい、一本化しなさい、一本化した上で制度化しなさい、こういう実は答申になった。以来私はだいぶがまんして黙っておったのは、実は一本化の過程にあったからです。昨年をもって一本化は終わった。してみると、本年は当然恩給法それ自体に触れて制度化という提案をすべきだ。これが皆さんの義務なんです。解釈権まで含めて諮問をした皆さんの義務です。それをなぜおやりにならぬか、それがまず私の言いたい第一点です。長官の言っているのは、法律改正はしなかったけれども、実質的にはスライドの方式に沿ったものになっているという答弁に聞こえる。しかしそれでは事は済まない。長官がこれから十年あるいは二十年お続けになって、毎年必ず、総理府か掃除府か知りませんが、雑用長官を長年おやりになる気はよも山中さんにはないと思うのですけれども、だからいつだれがかわってもいいように、明確にこれはやはり法律的に制度化しておかなければならない。それはことしやるべき筋合いだ。なぜならば、仮定俸給表の三本立て、年齢別を一本化する、それが先だったからやってきたが、昨年一本化は終わった。してみると本年は当然制度化すべきなんですが、それをおやりにならなかったのは一体なぜかという点がまず聞きたい。
  22. 山中貞則

    山中国務大臣 これは審議会答申というものを私たちが破る気はさらさらありませんで、審議会にお願いいたしまして結論を得た以上、それは完全実施をしたいということで、二年目に差しかかっておるわけでありまして、答申を得ました具体的な事項については、残り四十六年度において十項目を完全に実施をいたします。ただ、その調整規定のスライド化という表現の問題でありますが、これは他の公的年金政府は一ぱいかかえておりますので、同じような規定のもとに恩給法だけ一体スライドというものを具体的にどうするのか。恩給法のことしの予算のセットの内容を見て、これは現実にスライド制である、したがって他の公的年金もその制度に移行すべきであるという議論がいまむしろ政府部内において提起されておるわけでありまして、私としてはそれの議論の中で他の公的年金、いわゆる政府全体の姿勢としてスライド制というものを具体的に取り入れる時期が、あるいは議論が一致してできるならばそういたさなければならない。しかしまた、そのスライド制というものは一体何なのか。先ほど申しましたとおり、ことし公務員給与が上がったら直ちにその上がりの率を恩給の現在の既得額についてかけていけばそれでいいものであるのか、いわゆるその意味の単純なるスライドなのか、あるいは政策的にいろいろなものを加味していったようなスライド制であるのか、あるいはその中間的なスライド制であるのか、今度はスライドという問題についてもいろいろとまた議論の生じてくることは間違いのないことだと思うのです。しかし考え方としては、恩給受給権者に対しまして、つまらない枝葉の議論でもって、肝心のところが忘れられたような議論に没頭することなく、本来の受給権者のいわゆる権利内容は何ものであるかということに立脚をして、それに対して国が当然支給すべきものは、義務者として支給する義務を負っているのだということに対して忠実な態度をとっていくべきであろうと考えます。でありますので、審議会答申の目的は、そのような方向に移行することが望ましいということは私どもそのとおりすなおに受け取っております。それに移行するについては、ずいぶんこれからの政府部内の議論なり私たち自体の努力議論なりというものが先行しなければ、この場所で来年度からスライド制を採用いたしますという答弁をするには、私いささか軽率であろうと考えるのであります。
  23. 大出俊

    大出委員 たいへん用心深い御答弁なんですが、そうなると、そこでひとつ承りたいのですが、この恩給審議会答申に、さっき私読み上げましたが、「将来におけるその実効性を確保する観点から、」と書いてあるのですが、この「実効性」というのは、どういうふうに受けとっておられますか、皆さんは。
  24. 山中貞則

    山中国務大臣 ずいぶん財政当局とは議論のありました昨年までの過程を振りかえってみまして、ことしも議論はありましたけれども予算が完全にセットされました形においては、先ほど申しました二・二五%分の一月実施という点を、財源上の措置として万やむを得ず残したという点以外には、理論構成上きちんとしたものにセットができたと思っておりますので、今後この方式を破るのには、今度は総理府の側から破るわけはありませんから、そうすると、財政当局も政府全体の予算姿勢として、これは認めないのだ、その理由はこういうことなのだ、それを理論的に立証するだけのものがなければ、この予算の組み立てられました形式を打ち破ることは逆に困難であろうと私は考えております。でありますから、ポストは人によってきまるかもしれませんが、逆にこのようなものは、だれがポストにあろうとも、今後はきちんとルールとして守られていくことであろう、私はそう信じております。
  25. 大出俊

    大出委員 この「実効性」というのは、受け取り方によって違ってくる。実は当時私が確かめた限りでは、これは当時のことですから、長官に繰り返してお伺いいたしませんが、私のほうから申し上げますが、「将来におけるその実効性を確保する観点から」、これはそのあとの文章で、「その実質的価値を維持すること」こういう表現なんですね。これは事務的におやりになっておる方々はおわかりと思いますが、退職のときの価値というものを将来に向かって維持をする、こういう意味なんですね。そうすると、退職のときの価値の維持のしかた、これが制度上とられるべきポイントになる。長官のおっしゃっているいまの立論が、はたして退職のときの価値を維持してきているかという点が立証されなければならぬことになる。維持されていない。だから、これは長官の言っていることとその点では私の意見は食い違いますが、理論的にということは——これはあとから具体的に数字を申し上げますが、計算の基礎が明確にならぬとわかりませんから申し上げますけれども、それから先は事務当局にお答えいただけばけっこうです。  まず問題になるのは、四十年十月改定時の恩給のベースでございますが、これは四十年の公務員の平均給与の仮定俸給表、これは三十六年十月の公務員給与ベースによっているわけですね。そこで、昨年の例からいきますと、なぜ昨年の例をあげるかというと、昨年初めて恩給局らしい積算をされて、初めて大蔵省恩給局らしい予算要求をされたからなんです。そこで、昨年の給与上昇率、これは全俸給を全人員で割りますと、四十年十月改定の恩給と比較いたしますと一五五・七という数字が当時出ていた。これは定昇を含まずそのまま引き伸ばしたという形ですよ、簡単に言ってしまえば。そこで三十六年の十月というのは、三十五年十一月から三十六年十月まで、こういう計算ですね。そして四十三年の三月までというのは、これは四十二年の四月から四十三年の三月まで、こういう計算の基礎になっている。そこでもう一つ消費者物価指数ですが、同じく四十年を一〇〇とすると、総理府統計で人口五万人以上の都市、こういうことになっていますが、当時の事情からいきますと、消費者物価指数の上昇は一四四・八という数字が当時出た。そこで総理府恩給局が要求されたのは一四四・八、つまり四四・八%物価が上がったという解釈になるからというので、44.8+{(55.7−44.8)×6/10}=51.34この五五・七というのは給与の五五・七%の上昇を見た。さて、この十分の六の根拠は何だ、これがまず問題だ。そうすると計算の基礎は五一・三四という数字になる。こういう計算を昨年おとりになった。ところが大蔵省の査定は四四・八に切った。物価のみ。だからその差額をおそらく長官は答えたのだと思うが、積み残したものだ。ところが積み残し分が基礎にあるわけですが、この十分の六というような数字の基礎は何か、私は昨年の計算の基礎をいま明らかにしたのですから、これは一体何を根拠にして十分の六を掛けたのか承りたい。
  26. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 お答え申し上げます。六〇%といいますか、六掛けをしたというのは、恩給審議会答申にあります、物価によって恩給額を調整しても、なおかつ給与との間にはなはだしい懸隔がある場合には、その相当部分を政策的に配慮を加えてやることが望ましいという期待があります。政府といたしまして、といいますか、むしろ総理府といたしまして、この加える分は、ことばで申し上げますならば、公務員給与上昇率の中の公務員全般の生活向上分として考えられる分、これであって、在職公務員であるがゆえに責任とか、あるいは勤務の困難さ等によってふえた分、これは退職した人たちについては適当でないと考えられまして、それを一定の方式によって計算しましたところ、大体六〇%くらいが適当だと考えられまして、そのとおりにいたした次第でございます。
  27. 大出俊

    大出委員 だから公務員給与というものをほんとうに基礎にするということになりますと、本来ならば一五五・七というものになった場合に五五・七を見ていっていいと思うのですよ。確かに昇給しない云々という面はあります。そこでここへ出てくる問題の十分の六ということになりますと、その意味ではいまおっしゃるように現職ですから、その意味の責任の度合いとか、つまり所得そのものによらざるもの、これを四割と見て、所得そのものを六割と見た。これは最初からそうなんですが、この恩給審議会答申の思想が物価五%を中心にしている。そこに著しい懸隔ということをひとつ前提にして、公務員給与の取り入れ方を示唆した。だからこうなった。この出発が違えば違った結果が出てくると見なければならぬと思いますから、そういう意味でさっき申し上げたように、立論の基礎は、公務員給与を中心にするのか物価を中心にするのか、そこのところが明確にならないと、出てくる結果が違う。だから私に言わせれば、そういう意味でも公務員給与というものが中心にならなければならぬ筋合いだ、調整規定二条ノ二というものを提案したときには、そうなっているではないか、物価が著しく上昇しておった、あるいはその他の事情、こちらのほうを勘案しなければならぬ場合がある、しかし、それは公務員給与が中心になったであろう、これが二条ノ二の規定だと解釈している。法規上読めば、だれが考えたって「国家公務員生活水準国家公務員給与」そうして最後が「物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動が生ジタル場合」こう書いてありますから、ここらのところを解釈権をこっちにやってしまったから、こういう結果になった。だから、その意味ではこのあたりで伊能さんの先ほどの提案ではないけれども、この方向を明らかにしてもらう必要がそこにある、こう考えている。  それからもう一つは、大蔵省は、この際は公務員給与を十分の六見ようとしたのだ、そこで切ってしまった。だから物価の上昇四四・八だけになってしまった。そして六十五歳未満二〇・七、七十歳未満一二七、七十歳以上七・三、これは平均一三・五のはずですよ。昨年はこうなった。そこで公務員給与に追いつかなかった。そうすると、結局去年の改定というのは、実は公務員給与以下の改定であったということになる。ますます公務員給与との開きは開くということになる。そこでようやくここで追っかけて、皆さんはやっと積み残し分を拾おうとされた。それが今回長官の言っているようやくという意味になる。しかし、私はそれでも前進だから、いまここでそれはけしからぬとたたく気持ちは毛頭ありません。私は昨年もこの点は詰めた話をしたのですけれども、矢倉さんがおからだが悪くてことはお見えになっておりませんけれども、ずいぶんそこのところはいろいろと議論をしたところです。そこでやっとことし皆さん方が何とか昨年の積み残しというものを拾っていこう、こういうふうにお考えになった。だから、言うならば並べられた要素としては、ことしこの法案が通るということは実質的には一つのラインに乗ったということにはなる。これは私は評価したいと思う。これを今度くずされては困るから、だからせっかく乗ったこの時点でなぜ制度化にお踏み切りをいただけなかったか。長官、来年おやりになっておるかどうか知りませんが、この線に乗せた立場上やはりこれを定着させる。これは後退しては困る。くずれたら困る。だから、このあたりでこのシステムをひとつ制度化する。その場合に、伊能さんが言われた公務員給与というものが主導的な立場になるのか、あくまでも答申物価というものが中心になるのか。  ここで私はあえて申し上げたいのですが、答申はあくまでも答申なんですね。尊重するという意味においてはもちろん責任はあるけれども答申はあくまで答申。私は、この中身を見て全部が全部正しいとは思っていない。現に、昨年の国会で満目ケースを私はここで三日連続して質問を続けながら、とうとうこれを押し切ってずいぶん皆さんにたたかれた。佐藤総理が閣議でけしからぬと言うたとか言わぬとか、それこそ満身創痍みたいにぶったたかれた。新聞記者の方も毎日一生懸命書く。ようもこう執拗に書くものだと思った。これはなぜそれをやったかというと、恩給審議会答申必ずしも正しいと思わないからですよ。だからそういう意味では、恩給審議会答申の言わんとする一つの筋は認めても、それをどういうふうに行なっていくかということは、政府の皆さんが解釈権まであずけちゃったが、あらためてもとに戻っていただいて、提案者である政府立場というものを明確にしながら、恩給審議会答申をうのみにするのでなく、これとの勘案の中で前に進めていただく。そこを踏まえて、少なくとも来年はぜひ制度化をしていただきたい。これは私はひもをつけたいのですが、長官いかがですか。
  28. 山中貞則

    山中国務大臣 来年度予算の要求そのものは、八月一ぱいに大体経常費的なものは締め切って出すわけでありまして、今後恩給予算については一次内示、復活折衝、二次内示、最終折衝という形のもの以外のものであるべきだと考える。すなわち、理論的にきちんとなったものは、その理論議論のない限りにおいて——昨年初めて恩給局らしい要求をしたといわれますが、それが実際の詰まった予算そのものは、らしいものがらしくなくなってしまったために、ことしはよけいなエネルギーを私はついやさざるを得なかったのですけれども、少なくとも恩給局らしい要求の最終的な形を整え、それに対してさらに政府全体として、大蔵省もこれに対しては財源上若干の議論をしたけれども、結果としてはきちんとなってよかったということを、大蔵大臣も主計局長以下も私に直接、予算が詰まったあとそういう意見がありました。私は国家のために、そしてまた多数の受給権者のために当然の姿がようやくここに、相互信頼というものの上に立ってあらわれつつあると考えます。でありますから、来年度予算においては、私は、大蔵省は必ず一次の内示において、答申残り項目も含めて、全額内示で来るものと確信いたしております。また、恩給というものはそのように扱うべきものでありまして、それでなくて、これをやったり取ったりの材料にすることは、極言すれば、恩給受給権者あるいは亡くなった英霊といわれた戦死者の方を冒涜するものであると私は考えておりますので、そういうふうになるものと考えております。  また、それならば来年はスライド制をちゃんと制度化せよということでありますが、実質そのようになってまいりましたので、それをこわすほうに回る場合は、理論的にこわさなければならないという理由づけが要る。したがって、正しいことが実現したのですから、当然のことを実現したことを当然でないようにするならば、そこに当然でないことの理論づけをしなければならないと思いますが、私はこれは不可能であると思います。でありますので、来年以降は、足らない点はまだたくさん残っておるといたしましても、少なくともあるべき最低のルールというものは実行されていくべきものであると確信いたしておる次第でございます。
  29. 大出俊

    大出委員 からんで恐縮でございますけれども理論的にもあるいは実際的にも当然なものである限りは、法律を直しても一向おかしくないでしょう。
  30. 山中貞則

    山中国務大臣 それは申し上げておりますように、スライドというものをどのような形にするのかも議論のあるところでしょうし、方式もいろいろありましょうし、他の公的年金はわしゃ知らぬ、恩給だけは先にきめてしまうのだと言ったって、公的年金も、これは年金を受ける権利あるいはそれを確保する自分の拠出その他のものを持っておられるわけですから、これはどちらにウエートを重くするということではありませんので、それらのところは制度のあるべき姿を議論のないところにする努力は今後続けていかなければならない。しかし、恩給だけを四十六年から完全にする、他はわしゃ知らぬといってきめてしまうことはどうか、政府の責任として、全体の論議の中でそれをまとめた形で、なるべく国民の期待する、しかも正常な形のものに持っていく努力をする必要があろうと申し上げているわけであります。
  31. 大出俊

    大出委員 そうしますと、一歩下がってものを申し上げておきますが、他の公的年金との比較検討があるから、そういう意味で、理論的に正しい、現実的にも正しいのだが、しかし法改正まではいまのところ持ち込めない。ひっくり返して言えば、理論的にも、現実的にも正しいのだから将来変わることはない。がしかし、形式的にていさいを整えるまでには公的年金との調整のための期間が必要である、こういうことですか。
  32. 山中貞則

    山中国務大臣 おおむねそのとおりでございます。
  33. 大出俊

    大出委員 おおむねが気になりますが、公的年金をここで全部拾ってものを申し上げてもいいのですけれども、皆さんあまり公的年金にお詳しくないから、この前のときに取り上げて始めたところが、皆さん一々御存じないということですからしようがないのですが、これだって一つの審議の制度ばあるのですから、そこからもいろいろなものが出ているのですが、本家本元の恩給が一番古いのだから、戦後軍人恩給が復活したけれども、そこらあたりが指導性を発揮してもらわなければならぬ。恩給法という法のワク内でいえば年寄り一代制ですよ。この方々が一人残らずこの世においでにならなくなったら、なくなってしまう。あとは共済年金だ。しかし歴史的にはこちらが古い。なくなってしまう一代制だから、こちらのほうが充実してよくなったって一つも差しつかえない。長官にはっきりものを申し上げれば、先ほど一つの歯どめという意味でお聞きしたのだけれども、私の考え方からすれば、こちらがよくなっても一向差しつかえない。なぜならば、その対象になる方はその方々だけで、御本人が、御遺族を含めてこの世の中にいなくなるまで、あとは対象がなくなる、新しくできる分野はないのですから。そうだとすれば、私は三十幾つの議員立法があってもいいと思う。他の公的年金とバランスをとる必要はない。なぜならば、これは一代限りでなくなるのだから。その意味で戦後処理ですよ。戦争というものをいまさらやらないとすれば、満州拓植公社からみんな引き揚げた、抑留された、そういう者は将来はないのですから、だから、そういうものはすべて片づけなさい、その面では一般の公的年金と違った面があってもしかたがない、こう言いたい。そういうふうに考えます。  そこで、本年の分について少し数字的に伺っておきたいのですが、つまりことしの方式というものは、私の知る限り五一・三四%なる昨年の数字、十分の六をかけて五一・三四ですね。この五一・三四から四四・八をお引きになった。これは六・五になりますね。この六・五というのは、その後ベースが上がっておりますから、現行ベースに引き直したら四・五という数字になった、こういうことですね。間違いないですね、念のために聞いておくのですが。四・九プラス、カッコ七・五、つまりベース勧告の七・五から四・九を引いてカッコを閉じて、かける十分の六、つまり所得と見る六割というのをおたくが考えた昨年の方式ですね。これから六・五が出てくる。その六・五プラス四・五、昨年の六・五を今次ベースに引き直した四・五を足して合計十一。さて、この四・五のほうを二つに割って二・二五という数字をお出しになって、半分くっつけた、年内十二月までですか知りませんけれども。これを承りたいと思うのですが、いささかちょっと区切った、どうも薄ぎたないことをして腹が立ったのですけれども、区切った理由はどこにあるのですか。
  34. 山中貞則

    山中国務大臣 ほかの数字については事務当局にお答えさせますが、四・五を二・二五に区切ったのは、私一人の責任でございます。これは、恩給局長も同席いたしておりません。官房長官並びに大蔵大臣、担当主計局次長、主計官対私一人の折衝において、最終的に公開財源六百五十億の中で予備費の一千百億に手をつけることなしに処理しようといたしました場合、私も大蔵省側の立場に立って計算をし、大蔵省も私の立場に立って計算をともに共同作業してみまして、どうしても金額が足りませんでした。しかも時期的に、私どもの党内のことでございますが、三役折衝を終わりましてすでに閣議を開くのを二時間おくらしての最終折衝でございますので、そのときにおいてはもう稔出する財源は——私も相当大蔵省のふところのポケットのたばこのくずまで調べるくらいのつもりでおったのでありますが、そこまで調べてみましても、やはり財源上どうしても全額これを組み入れることができませんでした。  そこで、理論的には完全に肯定するという合意の上に立って、財源上私のほうが二・二五%を一月からというので三カ月譲ろうということでやっておるわけでございまして、そのときにも十月実施が恒例でございますから十月という意見もいろいろありましたけれども、その差異は財源上だけの議論であって、理論上は異論がないのだから、したがって、自分の責任で金額の不足する二・二五%分だけ譲るということで私が譲りました。したがって、この実行については、私の責任で四十六年度予算の四月の支払いということを前提にした予算を必ず組むつもりでございます。
  35. 大出俊

    大出委員 よくわかりましたが、この制度、つまり恩給審議会答申が出ましてから、昨年の計算方式が出てきてからなおのこと、その制度を自主的に進めることなどを待ち望んでいた受給者の皆さんに対しましては、筋道としては了解がいたしかねますけれども、しかし長官が、財源折衝の過程で政治をおやりになっているという立場の御判断で決着をつけたとおっしゃるのですから、私も政治をやっている者の一員といたしまして了解いたします。そのかわり、ぜひ来年一月からのことは、伊能さんもおっしゃったと思いますけれども、ちゃんと二分一を切ったものはもとに戻してやってまいりますということについて、これだけ一つはっきりしておいていただきたい。重ねて伊能さんと重複することだと思いますけれどもひとり……。
  36. 山中貞則

    山中国務大臣 これは官房長官立ち合いのもとに大蔵大臣と私との間で折衝した事柄の一番大きな点でございますので、財源論争その他は来年も——毎年続くと思いますが、この事柄についてのみは間違いなく実行をいたしてまいります。
  37. 大出俊

    大出委員 わかりました。  時間が一時間四十分しかないわけでございまして、十二時四十分までが長官の時間だということでございますから、実は今回の改正のその大筋はいまのところ何ですけれども、あと実は幾つか問題が今回の改正そのものにもあるのですけれども、実は私が申し上げていると時間がなくなってしまいますから……。特に今回はたくさんの陳情なり、請願なりというものが出ておりますから、できればそのほうを、いつも時間がなくて詳細に申し上げて御意見を承る、あるいはその後の処理にあたるという点でいささか拙速な気味がありましたから、そちらのほうを実は重点に申し上げたいのでありますけれども、もう一点だけ承っておきたいのは公務扶助料の倍率の改善でございます。つまり、四三・二ないし二一・六から四六・一ないし二三・〇に引き上げるとともに、文官の扶助料についても、これに準じて引き上げるという形のものをおとりになっているのですけれども、この根拠と申しますか、いささか中途はんぱな書き方をしていらっしゃるのですけれども、計算の根拠、計算の基礎、これをちょっと明らかにしていただきたい。
  38. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 この答申にはっきりしていないというおしかりでございますが、確かに具体的な数字はなくて、ただ答申では、遺族、傷病者老齢者については恩給制度のワク内でできるくふうをして優遇措置を講じようという趣旨答申でございますので、それを勘案して、しかも遺族、傷病者老齢者につきましては早急に優遇する必要があると考えまして、その方途を検討した結果、公務扶助料、つまり遺族の優遇措置につきましてはいわゆる倍率の改善というのが恩給法のワク内において最も適当な方法であると考えまして、このことに踏み切ったわけであります。  数字的なことについて簡単に申し上げますと、戦前におきまして公務扶助料、特に軍人の公務扶助料というのは、戦闘公務によって死亡した場合と普通公務によって死亡した場合とによって倍率が変わっておりました。軍人恩給再出発の際にあたりまして、この差異はなくするのが適当であるということに、やはりこれも恩給法の特例審議会答申を得て、その答申趣旨に沿って決定実施したわけでございます。そうしますと、この前の戦前の倍率に準拠した場合も全く無視することはできません。準拠した場合にどの程度にしたかといいますと、いわゆる大東亜戦争の末期におきまして戦闘公務によって死亡した人と、それから普通公務によって死亡した人との割合を案分して倍率を上げることが、全般を総合して適当だと思ってかようにいたした次第でございます。
  39. 大出俊

    大出委員 公務扶助料を戦前が戦闘公務四十八、普通公務三八・四、この四八プラス三八・四、この二分の一、四三・二ですね。こういう計算ですね。そうすると、それから将官の場合、戦闘公務が二四、普通公務が一九・二、足して二で割ると二一・六、こういうことにしたというだけなんですね、中身は。ほかに理由はないですね。
  40. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 いま先生のおっしゃったのは現行の倍率でございまして、これは三十何年かの改正におきましていわゆる戦闘公務と普通公務との場合を五対五の割合にした。今度はその倍率を先ほどお答え申しましたとおり該当者の内容に案分いたしまして戦闘公務のほうを八、普通公務のほうを二という割合に案分して率を上げたわけでございます。
  41. 大出俊

    大出委員 だからそうなると私の聞いているのはつまり四八プラス三八・四を二で割って、ここに書いてあります旧軍人の公務扶助の倍率が四三・二、これは兵ですね。それから二一・六、こうなっておったわけですね。これを四六・一兵、二三・〇将官、ちょっと倍率が違うでしょう。なぜ違うようにしたかということを聞いているんですよ。
  42. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 ただいま申し上げましたように、この倍率というのは、軍人について申し上げますならば、軍人の平均公務扶助料の対象者の実態を考慮しまして、その実態に沿うようなことを考えますと、先ほど言いましたとおり戦闘公務、すなわち倍率の高いほうの該当者数が多いので、前のように五対五にするより、戦闘の倍率の多いほうの八割に、実態に即して上げるのが適当であると考えたからでございます。
  43. 大出俊

    大出委員 つまり今度の改正は、もう一ぺん言い直しますが、戦闘公務を八割と見たわけでしょう。つまり私のさっき申し上げた計算から戦闘公務を片方八割と見て、それから普通公務を二割と見た、こういうのでしょう。そうすると、戦闘公務、普通公務の差異をなくす、これを今度は八と二に分けたというのですね。これは戦前の戦闘公務並みに上げてくれというのが皆さんの要求だったのでしょう。そうすると、差異をなくすべきであるという思想はどこへいったのだ。恩給審議会答申というものは、そんなにはっきりどうしろといっているわけではないのに、前のほうの考え方を、戦前の戦闘公務並みに上げてくれという要求があったからということだけで、何で一体こういう差のつけ方をされたかということを聞きたい。
  44. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 倍率のことにつきましてはいろいろ御議論のあるところですが、ただいま申し上げましたように、戦闘公務と普通公務によって区別すべきでないというのは別のところでも申しておりますけれども、これは審議会答申の線でございます。したがいまして、その区別すべきでないということを一方に踏まえまして、別途倍率を是正するという点は、審議会がばく然と指摘してある答申の線に沿うものだと考えられまして、その調和点が八割、二割という結論になった、かように御了承願いたいと存じます。
  45. 大出俊

    大出委員 これは了解いたしがたいところなんです。私は結論を言えば、普通公務をもう少し上げろというのです。というのは、四八プラス三八・四を二で割った四三・二、戦闘公務と普通公務の四四・八、三八・八と違うのだけれども、それを足して二で割ったわけでしょう、旧来は。つまり差異を認めなかったわけでしょう。そうすると、戦闘公務を戦前並みに上げてくれという要求がある。あるけれどもその必要はないという態度でいままではきたのでしょう。答申の中身というものは非常にばくとしている。それを片一方は差異を設けることが、ばく然としているけれどもその趣旨に沿うものだといってこのたびは差を設けようというあなた方の考え方なわけですね。説明してください。
  46. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 今回の改正の結果におきましても、公務扶助料であるならば、実際の内容が当時の普通公務であろうと、戦闘公務であろうと、全く同じ今度改正案にあげた四六・何割の率になるのでございまして、この審議会答申にある戦闘公務によって倍率を異にすべきでないという線は貫いてございます。ただその両者に共通する倍率を上げる手段として、実態の内容を調査した結果、これだけ上げることが適当だとした次第でございます。
  47. 大出俊

    大出委員 そうすると、戦前の戦闘公務の倍率四八、それから戦前の普通公務の倍率三八・四を引いた、その十分の八、それが四六・一でしょう。
  48. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 算式で申し上げますと、戦闘公務が四八割で普通公務が三八・四割でございましたので、四八割の八〇%と三八・四割の二〇%を加えたもの、これが四六・一%であります。
  49. 大出俊

    大出委員 あとで計算してみますけれども、これは三八・四の二〇%、そうすると三八・四かける百分の二十ですか、それと四八マイナス三八・四の十分の八……。
  50. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 四八から三八・四をマイナスせずに、四八割の八〇%プラス三八・四割の二〇%、すなわち一〇〇%になって、その計算が四六・一割でございます。
  51. 大出俊

    大出委員 そうすると差異はないということになりますね。現行のままで倍率だけ理由をつけて引き上げた、簡単にいえばそういうことですな。  それじゃ時間がありませんから、これはあとで理事会で一ぺん御相談をいただきたいという希望を持っておりますが、一つずつ簡単にものを申し上げておきたいのです。  先ほど伊能さんがお話しになっております、つまり公務員給与というものを中心にすべきであるという陳情等が出ておりますが、これは附帯決議か何かを実はつけるべきではないかと私どもとしては思っているのであります。日本退職公務員連盟恩給年金部特別委員徳島県退職公務員連盟副会長西雄市太郎さん、これの中身というのは、公務員給与が中心でなければならないという意味請願になっておるようでありますけれども請願というのは、一番最後になるとあまり論争しないで片をつけることになる風習がありますが、先ほど伊能さんなり私どもが申し上げた理由で公務員給与というものを中心にしてやってくれと出ておりますが、これはひとつ理事会で相談をさせていただきたいと実は思っているわけでございます。  それからここに一つ群馬県吾妻郡草津町乙六五〇、栗生楽泉園大谷雄市郎さん外八名の方から、内地勤務の労齢ハンセン氏病元軍人に傷病恩給を支給してくださいという請願が出ておりますが、これはいま皆さんのほうはどう受け取っておられますか。
  52. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 ハンセン氏病患者の方たちがいろいろ苦しんでおられまして、恩給法におきましては、戦時事変等において発病されたハンセン氏病の方たちについて傷病恩給が給されておるという実態からいたしまして、そういう御希望のあることは伺っております。ハンセン氏病が中心だと思いますけれども、実は別途恩給審議会答申において、実現したほうがよかろう、公務に起因した傷病ではないけれども、大東亜戦争中の在職中の職務に関連した傷病について傷病恩給に準ずる措置を考えるのが適当であるという答申をいただいておりますので、その答申趣旨に沿ってただいま検討中でございます。
  53. 大出俊

    大出委員 そうすると、これは今回の改正には入っていないけれども、将来は改正意思があるということですか。まだそこまで言い切れないということですか。
  54. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 ただいま私のほうの大臣からお答えいたしましたとおり、とにかく来年度、四十六年度予算につきましては、答申のものを全部実現したいという強い意欲を持っておりますので、それが実現すればある程度救済される、かように考えております。
  55. 大出俊

    大出委員 審議会答申が出たときでしたか、ちょっと記憶がさだかではありませんが、ハンセン氏病に関することで、前回でございましたか、ここで一つ手直しをしたことがあったと思うのでありますが、これがいま私が申し上げた大谷さんをはじめ八人ばかりの方がおいでになりますけれども、当時私ども与野党を含めてだと思いますけれども、ハンセン氏病についてのいろいろな中身等についても申し上げにくい点もありましたが、いろいろ相談をしたこともございまして、非常にお気の毒な方々が多いわけですから、また非常に特殊な例でございますから、これはなるべくすみやかにしようというお話でございますが、やはり解決をはかっていきたい。いまの御答弁からすれば方向としてはわかりますので、お願いしたいと思っております。  それから、これはもと満州拓植公社の社員であった方が、公務員等に対する恩給の特例制定に関する請願書というのを出しておられるのですが、私、これを調べてわかりましたが、在外国策機関及び在外国策会社と称するもので、旧来私どもがいろいろ申し上げて手直しをしたのが幾つかありましたが、現在そのままになっておるように思えるのが、一つが旧北支新民会、二つ目が旧北支那開発株式会社、それから三つ目が旧満州農産公社、四つ目が旧満州拓植公社、いまのこれです。五つ目が旧満州農産物検査所、六つ目が旧満州国法人開拓保健団、それから七つ目が旧満州林産公社、八つ目が旧満州特別建設団、九つ目が旧日本居留民団、十番目が旧満州畜産公社、十一番目が旧満州厚生会、とりあえずこれだけあるのですが、このほかに石油、炭鉱、綿花関係というのがあるというお話を聞いておるのですが、もしこれ以外にあったら、この際おわかりのところだけ教えておいていただきたい。
  56. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 ただいま出しました資料のほかに、先生のおっしゃったもの以外に相当数があるということだけは承知しております。ただいま具体的にどういう機関どういう機関という資料をここに持ち合わせておりません。
  57. 大出俊

    大出委員 これは実はちょっと人員をはじくのに困るので、わかったのが私の手元にあるのが十一あるのです。このほかもし相当数あるとすればあるように考えなければなりませんが、そこらのところは恩給局に資料があるんじゃないですか。全然ございませんか。お調べになっていない……。
  58. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 この種の関係の団体と申しますか、方々の集団から陳情を受けておるものは全部恩給局で調べてございますが、機関はありましても、かりにそれが通算することといたしましても、おそらく該当者というものが実際にいないから陳情してないという機関もあるかと思います。数は、条件にもよりますがそうたいしたことではないと考えております。
  59. 大出俊

    大出委員 ここにもう一つございまして、華北交通、華北電信電話、北支満中公司というのですか、わかりませんが、華中鉄道とかあるいは蒙疆電気通信設備とか、いま幾つか申し上げましたが、こういうふうなものはすでに入っているわけですね。これはいいですか。
  60. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 ただいまあとのほうで御指摘になりました各法人の在職期間は、現下のところは若干の制限はありますけれども通算措置を認めております。その認められておるもののすべては、内地において国策に沿って同一の業務に従事したとするならば、これは国家公務員として恩給の対象になったであろうというふうな種類の法人を取り上げておる次第でございます。満州拓植公社、前に先生が御指摘になりました諸機関というのは、なるほど日満あるいは日支の国策会社ではございますが、こういう種類の国策会社にもし内地で勤務しております——たとえば南洋拓植とか朝鮮拓植というふうなものがございましたが、そういう国策会社にやはり国策に沿って勤務しておりましても、これは全く恩給の対象から離れた存在でございまして、内地における同種の機関、同種の業務に従事しておった人たちにつきまして、恩給と全く離れた関係にあるただいま前に先生があげられましたような機関につきまして通算措置を講ずるということにつきましては、恩給審議会としては不適当であるという答申をいただいておりますので、ただいま直ちにそういうふうに通算の範囲を広げるという結論には到達し得ないのが現状でございます。
  61. 大出俊

    大出委員 これは私は、先ほどの恩給審議会答申すべてがすべて正しいとはまだ思えないのですが、満州電電なりあるいは鉄道なり、あるいはそれに関連する出先機関なりを含めて前に八法人認めたわけですね。この数字からすると、これは当時のいきさつから見て、恩給審議会が出している理由だけでそう軽々にその対象外であるということを言うにしては、この点は少し無理があると思っているのです。時間のないところであまりここで論議はできませんが、私はやはり恩給審議会答申答申として、皆さんのほうでどこにどういう関係があり、どういう差異がある。たとえば旧満州拓植公社というのは、日満両国政府、これは当時の国策政府かもしれませんけれども、この国策政府との間の政府間協定、政府間条約があるのです。そうすると、これはほかのほうと多少違うところがある、満州という当時の実情から見て。だからそういう意味での満州国企画部処長の堤さんの判こをついて条約ができているわけです。おまけにこれは御名御璽ということで、内閣総理大臣近衞文麿さん以下の当時の枢密院顧問の、これは当時は諮詢というのですかね、これを経ているわけです。ですから、そこらあたり、恩給審議会はそう言っていますけれども、それだけでは私は済まないという気がするのです。したがって、これはいまここで論争しても、皆さんは恩給審議会答申をたてにおとりにならざるを得ないでしょうから、だからそういう意味では私は事が前に進まないと思いますので、これは一ぺん満州拓植公社設立の経緯と、その職員の方の略歴等を個々に当たってみて、当たってみると、なるほどこれはここに行かざるを得なかったのだなと思う方々がだいぶいます。したがって本来ならば、これはああいう結果にならなければそれ相当の恩給をもらっている方、こう見なければならぬというふうに思う方々もありますから、そういう点でひとつ、これはあなた方と意見が一致しなさそうですし、早急にはできないというお話ですから、これはまた理事会その他で相談をさせていただきまして、あらためて問題提起をさせていただくというふうにしたいと思います。できれば石油、炭鉱、綿花等の関係の似たような国策機関、あるいは国策会社等についての資料等をお調べおきいただきたいと思うのであります。その点だけお願いいたしておきます。
  62. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 満州拓植公社の職員期間の問題を取り上げる際には、あとで御指摘のようなその他のいわゆる国策的な特殊の法令に基づいて設けられた機関について、すべてのものについてとくと検討いたしたいと考えております。
  63. 大出俊

    大出委員 それから満州電電の関係が、なお残っている点で陳情がたくさん出ていると思うのですが、その第一は日本国官吏から満州電電社員になった場合——日満ケースですね。満州電電入社前に普通恩給年限に達していた人、これが満州電電在職期間を通算して恩給改正がなされていない。これは前からある問題ですが、昭和八年の九月一日に、つまり創立当時いたといないとにかかわらず、まあ官営のままであれば通算されたはずだ。ところがそこで切られているわけですね。これは時間を省いて申し上げますが、議論が前からあって、その後ももらっていたじゃないかという議論がある。まあしかしその問題は、それ以後通算されないで、今日まで先輩であるにもかかわらず後輩よりもはるかに低い恩給のままで苦労してきたじゃないか、だからその間の金を払えといわれれば払ってもいいが、それよりも、それをもらわなかった期間の痛手のほうが大きい。だから差し引きすればおつりがくるじゃないかという議論が逆にあるわけですね。ここの問題をどういうふうにその後お考えかという点。  それからもう一つ、終戦後ソ連または中共に抑留された期間及び留用された期間も在職年に通算してもらいたいという要請が出てきているのですね。これは内地の人たちあるいはそのほかの似たようなケースの方々通算をされているという実情その他からいって、まことに不合理ではないか。特に満州電電の場合などは通信機関に携わっておりましたから、これは満鉄も一緒でありますが、向こうでそういう仕事を強制的にさせられた方がたくさんいる。それがそのまま通算されないということではどうも泣くに泣けぬじゃないかという、これはごもっともなお話だと私は思う。そういうふうな問題についてその後——これは満州電電だけじゃありません。満鉄の場合もございましょうが、ここらのところをその後どういうふうにお考えか。かつて私は、これはだいぶ長い論議をしたことがありますので、これ以上あまり詳しく申し上げませんが、そこらのところを承りたいのです。
  64. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 ただいま御指摘の外国政府職員期間、外国特殊法人職員期間の通算されている中で、まだ御指摘のように、たとえば普通恩給年限に達しておった者については通算をしないとかいう制限がありますし、それからまた、こういう機関の職員として自己の意思によらなくて抑留された人たちにつきまして、恩給公務員であれば抑留されておるのが在職期間の中に入っておるのでありますけれども、在職期間に入っておらないという問題がございますが、この点につきましては、先生御指摘のとおりの審議会答申がございますので、四十六年度において実施したい項目の中に入っておりますので御了承願いたいと思います。
  65. 大出俊

    大出委員 それから、先ほどお話に出ました、たとえば満鉄、電電などの方々共済年金の在職年の通算、これは引き揚げ後公務員に就職するまでの経過年数制限がございますね。これは先ほどお話がありました。これを撤廃してもらえないかという前々からの要求があるわけでございますけれども、ここのところはその後何か検討をされましたか。そう矢つぎばやに次々言われても困るというようなことを言われるかもしれぬけれども……。
  66. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 また先生のおしかりを受けるかもしれませんけれども、共済法は総理府で所管しておりませんので、ちょっとお答えいたしかねるところでありますので御了承願いたいと思います。
  67. 大出俊

    大出委員 ただ、これはこちらの側で問題提起をして手直しをいたしましたから、それが一つのポイントになって大蔵委員会なんかでもずいぶんいろいろありましたが、去年も実は大蔵省に来ていただいて、私はきわどい質問をしながらそちら側から少し攻めたんですけれども、こちら側で少し骨を折っていかなければならぬ責任と義務があるように思いましてね。ただ所管があなたの所管でないし、きょう大蔵省を呼んでおりませんから、こちらが附帯決議をつけるのはどうかという点もありますけれども、いまの御答弁が所管違いということでございますから、それ以上質問をしてもあなたのほうで御答弁いただけないと思いますから、そういう立場にないと思いますから、ここでものを申すだけにしておきますから、後ほど検討させていただきたいと思います。  それから更新組合員云々というこの前の問題、これもいまの問題と似たようなものでございますが、こちら側の所管でないという問題がやはり出てまいりますから、これもここでそれだけ申し上げておくにとどめまして、後ほどひとつ向こうのほうとも相談をしていただきたいと思います。  以上、ざっと申し上げましてあまり抜けてはいないだろうと思うのでございますが、これらの点、毎年毎年たび重なって出てくる陳情であり、請願であり、同僚議員の皆さんがおのおのいただいている筋合いだろうと思うのでありますが、これは毎年毎年、そのつどそのつど相当な経費をおかけになって足しげくこの国会においでになるということを、いつまでもわかっていてそのまま捨てておくわけにはいかないわけでありまして、どこかで区切り決着をつけて差し上げなければならぬ筋合いだと思いますから、そういう意味でひとつ、先ほど来御答弁をいただきましたが、ここで長官に申し上げておきたいのでありますが、同じ問題でほんとうに何年となく皆さん御苦労をされてお通いになる。それなりの理由がみんなあるのですから、そこのところを適当な形で——何年も延ばしていくということは私はあまり感心しないと思うわけでございまして、中身はわかっているわけでありますから、恩給局もおわかりだし、関係各機関ともにおわかりなわけでありますから、これはこういう筋道でこうする、これはこういう筋道でこうするという先の見通しなり何なりというものを早目にひとつ立てていただいて、こういう時期に参りますまでに関係のところと十分お話し合いをして、また私どもも政治的に解決しなければならぬものについては、答申の有無にかかわらず政治的に場所を選んで解決努力をするというふうにいたしていきませんと、たいへんなむだな努力をされる面も出てくるという心配もありますから、そこらの事務的なものを含む処理というものをもう少し手がけていただけないかという気がするのですが、いかがですか。
  68. 山中貞則

    山中国務大臣 来年度予算において審議会答申残り項目を完全に実施しましたならば、直ちに残された問題の総ざらえをいたしまして、率直に申し上げてだめなものはだめという結論を出す時期に来ていると思います。ほんとうの親切はときには真実を告げてあげなければならないのでありまして、勇気が要ることがあります。そうでないと、いまおっしゃったような現象はいつまでも続くと思いますので、やはり最大限の愛情、そしてその主張の根拠、よりどころを最大限に好意的に見つつ再検討をして、最終的にだめであるものはあきらめていただくということにする処理は急いでやりたいと考えます。
  69. 大出俊

    大出委員 実はけさほどの理事会で、このたくさん出てきておるいろいろな問題を一ぺん整理をするということを含めて決着をつける方向に、ひとつお互い努力をしていただけませんでしょうかということを提起したのですが、その理由はいみじくも長官がいまおっしゃったけれども、相次ぐ議員立法なり相次ぐ議会修正なり、あるいは恩給局自体の提案なり、これがずいぶん長期にわたっているのですね。そうすると、これは一つ手直しをすれば次の不合理が出てくる。さらにそこを埋めればすぐその次に相関連をする問題が出てくる。しかしそれはわかっているわけですね、やろうとすれば。ですから、そこらのところを、ここまで参りますと、いまのお話のように整理すべきものはして——われわれの側から見てどうにもならぬものもあるでしょう、また皆さんのほうでどうにもならぬとおっしゃっても、各党が御賛成ならば何とか国会でということになるものもあるでしょう。そこらのところの見通し、展望を明らかにする。そしてでき得べくんば終戦処理に類するものは、いささか答申との筋道の食い違いがあっても、何とかまとめるということになる限りはまとめてしまうというふうにしていただいて、前向きでものをお考えいただいて、それでもなおかつどうにもならぬというものがあるとすれば、それは御納得いただくというふうに、ここまでくれば、何としても進めたい、こういうふうに実は思っております。したがって、ぜひひとつそういうことで、いまの長官答弁をきっかけにしていただいて、事務当局の皆さんのほうでも御努力をいただきたい、こう思うわけであります。  時間の関係がございましたので、いささかかけ足めいてしまいましたが、最後に改正案に戻りまして一つだけ承って終わりにしたいと思うのですけれども、一番最後でありますけれども老齢者等の最低保障年額の引き上げ、この最低保障というものの考え方ですね。ここのところをひとつ御説明いただきたいと思います。
  70. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 恩給というのは、たてまえといたしましては退職当時の俸給とか在職年等によって計算される形になっておりまして、恩給法の純粋なる理論からいきましたら、いわゆる最低保障というふうなものに類した考えは出てこないと思いますが、何ぶんにも恩給は年金で給するといって、その趣旨とするところは先生も御質問の中で御指摘されておりましたように、やはり退職公務員あるいは遺族が退職時の条件に応じたそれ相応の生活ができる資を補足してやるというふうな趣旨の形であらわれてきておるものですから、純粋なる恩給理論でいけば、実際においてはなはだ小額なものにつきましては気の毒なので、他の公的年金制度における最低保障額等を考慮いたしまして、恩給の最低保障という観念に近いものを取り入れた次第でございます。
  71. 大出俊

    大出委員 そうすると、この九万六千円ですか、ここにある数字、普通恩給が九万六千円、扶助料が四万八千円となっているのを、長期在職者の最低保障額ですが、七十歳以上の者及び扶助料を受ける七十歳未満の妻子については、この九万六千円を十二万円に、それから四万八千円というのは九万六千円の半分というお考えのようですけれども、これは厚年その他に合わせたというわけですか。
  72. 中嶋忠次

    ○中嶋説明員 九万六千円、それからこの扶助料がその半分の四万八千円という現行の規定は、これは国民年金法のほうの最低保障の額に合わせたわけでございます。今回改正するのは、老齢者もしくは妻子でございまして、実在職年数が普通恩給年限以上ある者を十二万円に引き上げる。扶助料はその半額の六万円でありますが、この十二万円と考えましたのは厚生年金保険法の最低保障の金額を勘案いたしまして、さらにいわゆる政策的に考えまして最低保障としては月一万円は少なくとも差し上げる必要があるのじゃないかという観点のもとに十二万円という額を出したわけでございます。
  73. 大出俊

    大出委員 これも議論すればいろいろありますけれども、そういう考え方だという考え方はわかりましたからその点了解をいたします。  それじゃ最後に一つ要望を申し上げておきますが、先ほど来申し上げておりますように、基本となるべき恩給の仕組みというのをせっかくおつくりをいただいたわけでありますから、そういう意味で、長官の言われる他の公的年金とのバランスだとおっしゃるのであるとすれば、皆さんの側からもやはりバランス論にとらわれずにやるべきだと思っております、恩給の場合は。しかし、皆さんの政府機関の立場として、どうしても他の公的年金とのバランスが形の上で必要であるということにこだわられるのだとすれば、これは老齢の方なりあるいは御遺族の方なりがたくさんいるわけでありますから、その方々がほんとうに安心するというのは、やはり法的にこうなったから心配はないのだということになることが安心するということになる一番ポイントだと思うのですね。そういう意味で、むしろ政府部内で、たまたま山中さん総務長官をおやりになっておられるわけでありますから、ひとつ積極的に他の公的年金との——こちらのほうの言い分はいろいろありますけれども、バランスというものをお考えいただく、ひとつそういう進め方をしていただきまして、これはいつになるかわからぬということであっては困るので、できるだけひとつその点急いでいただいて、法律的にもていさいを整えて皆さんに安心をしていただく、こういうふうにお進めをいただきたいと思うのでありますが、この点最後にひとつお願いを申し上げておきたいと思うのであります。いかがでありますか。
  74. 山中貞則

    山中国務大臣 今回のことしの予算で、おおむね関係者方々も詳しく事情等を御聴取になった結果、やっとわれわれの多年の願望であった将来への見通しというものがついた、来年はどうなるかわからぬということがなくなったということで、ある意味においてはたいへん前進したというふうに受け取って、それをあなたの御意見としては、さらにこれを法律で明確にせよという御意向だと思いますので、その点は政府部内全体の検討事項として受けとめたいと考えます。
  75. 大出俊

    大出委員 ちょうど時間のようでございますから、質問を終わります。      ————◇—————
  76. 天野公義

    天野委員長 法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  77. 大出俊

    大出委員 大臣がおいでになりませんから、旧来ならば、私どもこの委員会のしきたりで質問は遠慮さしていただくことになっているのですが、会期末でございまして、委員長から、だいぶきのうあたりも、なるべくおやりくださいというたっての御要請がございますから、少し御質問を申し上げまして、幾ら何でも朝から質問しまして、めしも食わずに本会議というわけにもまいりませんから、その時間を残してやめさしていただいて、そのあと本会議後、二時半からでございますか、大臣御出席いただけるそうでございますから、設置法にのっとりましての東京拘置所を小菅に移す、小菅を黒羽に移すという土地の問題等をめぐりまして、何ともどうも不納得の中身がございますから、その問題とあわせてひとつ質問を継続をさしていただきたいと思うわけでございます。  少年法の改正問題で、予算の分科会等で大臣がしきりにお答えになっておりますが、法務省自体としては一体これはどういうふうに——五年半にわたる論争でございますけれども、法務省の構想が出、あと裁判所側からいろいろ意見が出されて、ずいぶんたくさんな資料がある。私も見切れぬくらいあるわけでございますが、これを一体これから先法務省当局としては——大臣が、何か意見がまとまっていないのにかかわらず法制審議会にかけて、来年は何とも結論を出したいのだなんということを簡単におっしゃる。まことに私は迷惑千万なりと思っているわけでございますが、もちろんそこらを含めて、ひとつどうお考えか承りたいと思います。
  78. 大竹太郎

    ○大竹政府委員 少年法の問題でございますが、きのうもどなたかの御質問で大臣がお答えになっておりますように、非常に長い間の懸案でございまして、御承知のように法務省としては、たしか二案でございますか、出しまして、関係方面のいろいろな意見を調整したわけでございますが、ある程度見通しもついたわけでございますし、御承知のように最近の少年犯罪の傾向からいたしましても、できるだけ早く何とか改正のめどをつけるということが時代の要求でもあろうかと考えまして、大臣がお答えになっておりますように、できるだけ早く審議会にかけて、一応法務省としての結論とでも申しますか、またある意味においてはひとつたたき台にもなるわけでございますから、そういうものを早急につくりたいということで仕事を進めておるわけでございまして、御了承をいただきたいと思います。
  79. 大出俊

    大出委員 いま大竹さんの言われる二つの点、二つともひっかかるんですがね。ある程度見通しがついたというのは何の見通しがついたのですか。
  80. 大竹太郎

    ○大竹政府委員 こまかい内容については私よりも刑事局長のほうが詳しいようでございますので、刑事局長のほうからお答えさせていただきます。
  81. 大出俊

    大出委員 そうじゃなくて、最高裁の家庭局長と先ほど私廊下で話したのです、しばらく。御本人の意見を聞いてみますと、きょうは関係法律が参議院の法務委員会にかかっておりまして、くぎづけで動けないのだけれども、実は何とか御出席もいたしたいんです、その中身は、法務省はああ言っておられるけれども、基本的な点について全く意見を異にする、たとえば、法務省構想でいうと、これは十八歳未満、十八歳以上二十三歳未満、これは別案で二十歳未満になっておりますが、これを青年とする法務省の案、これは最高裁の考え方は現行法どおり、全く反対だというんですね。それから先議権の問題、青年については検察官先議。さっき家庭局長さんに聞いてみるというと、これは全く反対だというんですね。これは最高裁と法務省と全く反対だという、少年法の適用年齢、先議権ともに。にもかかわらず、大竹さんいま見通しがついたと言うのだけれども、いま法治国家でございます、三権分立のたてまえでございますから、最高裁自体が全く反対だというているものを何が一体見通しがついたんですか。
  82. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 少年法改正の問題でございますが、御承和のとおり法務省といたしましては、昭和四十一年に法務省の改正構想を発表いたしまして各方面の御批判を受けておるわけでございますが、先ほど御指摘のように最高裁におきましては、この少年年齢のいわゆる引き下げの問題、また検察官先議の問題、こういうものにつきまして、反対の態度をこの構想に対して示されておるわけでございます。そこでその後各方面の御批判その他を参考にいたしまして、現在、この前に公表いたしました構想を基礎にいたしまして法務省の事務当局案を検討中でございます。その検討の過程におきまして、現在もまた最高裁事務総局と意見の交換をいたしておるというのが現状でございまして、最高裁のお考え方もわかるわけでございますが、私どもの考え方につきまして最高裁のほうにも十分説明を現在いたしておるという段階でございます。
  83. 大出俊

    大出委員 それはいつごろから最高裁とそういう話し合いを始めたんですか。
  84. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 これはごく最近でございます。四月の下旬でございます。
  85. 大出俊

    大出委員 私が最高裁の家庭局長さんに、四月初めの段階で、法務省はいつやろうかと思ったものですから——法務大臣が予算の分科会などで、関係四つの機関ばかりの間で話し合いを早急に進めさせているということを言っているのですが、議事録がありますが、話し合っているのかと聞いたら、幾ら最高裁の側が法務省に言ってもあなた方は応じない、申し入れまでしてもなかなか話してくれない、実はこういう話がある。まことにもってけしからぬ話になって、この席に家庭局長さんに御出席いただいて、何で一体話し合いをしないんだということを言おうと思った。あなたのほうは話し合いを始めたというが、始めたばかりでしょう。まだ始めたばかりで、いきなり見通しがついたとかなんとか、とんでもない。迷惑千万な答弁だ。
  86. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 私が四月下旬に最高裁と、新たな法務省の事務当局案につきまして相談いたしておると申したわけでございますが、その前から、いわゆる構想を発表いたしましてから、終始最高裁の事務当局と法務省の関係事務当局とは折衝し、意見を交換しております。本年に入りましてもずっと引き続き話はしておるわけでございまして、その結果、私どもの新しい案を示しまして御相談したのが四月の下旬ということになっておるわけでございます。
  87. 大出俊

    大出委員 新しい案というのは公にされておりますか。
  88. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 まだ事務当局のいわゆるたたき台といいますか、素案でございますので、公にいたしておりません。
  89. 大出俊

    大出委員 その素案というのは、少年法の適用年齢、旧来十八歳未満、十八歳以上二十三歳未満、これは別案では二十歳未満、さっきも申し上げましたが、これを少年とする。それから青年については検察官が先議、これが中心ですね、簡単に言ってしまえば。それから調査機関、これは検察官先議の前提として、裁判所から独立の総合的調査機関を設置する、簡単に言ってしまえばこういうことですね。まずこの三つの点についてたたき台になるものは大筋どういうふうになっているんですか。
  90. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 先ほど申し上げましたように、現在たたき台でございますので、まだ十分に関係当局にも意見を聞いていないわけでございますので、なお内容につきましては将来変わる、流動的なものでございます。その意味におきましてまだはっきりと申し上げかねる面もあるわけでございますけれども、先ほど御指摘の三点についてどういうふうになっておるのかということでございますが、私どもの現在の考え方でございますが、まず第一点の年齢の問題につきましては、新しく青年層というものを設けまして、十八歳未満を少年、十九、十八のこの二つの年齢を青年ということで考えたいということでございます。この趣旨は、少年年齢の引き下げというふうに簡単にいわれておるわけでございますが、私どもは、年齢層に応じた刑事政策の実現をいたしたいということでございまして、少年年齢の引き下げというものと少し考え方が違うところもございます。  それから、第二点のいわゆる検察官先議の問題でございますが、これにつきましても、少年関係関係機関の協力関係を一そう密接にして十分なものにならしめるという考え方から出ておるわけでございまして、現在御承知のように、少年は全件送致主義と申しますか、全部家庭裁判所に送ってまいりますけれども、その一定の軽微な事件につきましては、警察限りで送致をしないとか、あるいは検察官のほうも起訴猶予にするとか、それからさらに手続構造におきましても、国選付添人制度を設けるとか、手続そのものを対審構造化していくというようなことで、いろんな関係機関が少年というものの手続にお互いに協力していこうという理念から考えておるわけでございまして、その一つのあらわれとして、いわゆる検察官先議ということも出てくるわけでございますが、私どもは簡単に検察官先議というふうに考えておるわけではないわけでございます。  それから、第三番目の総合的な調査機関の問題でございますけれども、この点につきましては、今回の案で現在私どもが考えておりますのは、実際問題として総合的な調査機関というものを設けることはきわめて困難な面もあり、また必ずしもそこまでしなくてもいいんじゃないかという考え方もございまして、この点につきましては現在考えが流動的でございます。
  91. 大出俊

    大出委員 この保護処分あるいは司法警察員の審判関与という問題ですね。これまた時間もありませんから簡単に申し上げますが、法務省構想でいきますと、認める立場をおとりになって、少年、それからいま言う青年の二つにお分けになって、片一方は適宜に、片一方は立ち会いという形のものになっておりますね。それから立ち会い権は青年のみ認める、この旧来の法務省構想がございますね。抗告権なんかについても、それから保護処分なんかについても新たに十二種の保護処分を設けるという考え方がありますね。取り消し、変更なんかも認めるという立場、この中で幾つか最高裁と意見を異にしない面もあるのですね。だから異にしない面を両方が協力し合ってどういうふうにするかということならば、これはまた意味があると思うのです。これは私、だいぶ時間をかけて読んでいるのですけれども、四十三年十二月二十五日の版ですが、この「展望少年法 非行少年の発見から処遇まで」、これは沢登さんとか、谷さんだとか、兼頭さん、中原さん、関さん、五人の方の共著の形で、発見から始まって施設まで含めて書いておりますね。考えさせられる面があるのですよ。これは確かに裁判所側と皆さんの側との大きな意見の食い違いがある。私の考えは裁判所側に立ちますが、けれどもいわゆる理論的にこうだというだけでは済まない面も確かにある。だから、そういう意味では先行きどうなるかは別として、五つの面があるという点については検討の余地があると思うのですね。人だって足りないわけですから、保護処分の以後の状況などを見ると。そういう点ならわかるのですけれども、いま言われたこの前提になる三点の答弁からすると、これは何も簡単に青年について検察官先議を考えたのじゃないとおっしゃるが、私はみなの意見を何べんも読んでいますし、この中にも法務省見解に対するたくさんの批判も載っているし、簡単に私はものを言っているわけじゃない。ないが、ポイントはやはりここになる。そうすると、この点はやはり皆さんの考え方は旧来と変わらないといっていいと思う。そうすると、先ほども話したのですけれども、向こうの考え方は、事務段階で、課長さんの段階かどうか知りませんが、何がしかの話し合いは始めたようですが、その上に立って、なおかつ実は向こうの委員会の出席を何とかお断わりして、実はここに出てきて意見を申し述べたい気持ちでいますという例の局長さんの先ほどの話でした。そうすると、やはりそれは基本的に皆さん方の考え方と相いれない大きなものをかかえているという観点でそう言っているのですね。そうすると、いまあなたがおっしゃっている限りでは見通しがついたなどという筋合いどころじゃなくて、まだその入り口に入るか入らないかの段階です。これは、大竹政務次官、見通しはついたものであるからというのは取り消しておいてください。
  92. 大竹太郎

    ○大竹政府委員 先ほど見込みがついたと申し上げたことは、いまもうすでについたとお聞き取りになれば取り消します。私がさっき申し上げたのは、何とか年内に見込みがつく、だから年内に、ついた時点において審議会にかけたいというつもりで申し上げたのでございますので、御了承をいただきたいと思います。
  93. 大出俊

    大出委員 もう一つの点ですが、最近における少年犯罪の動向もこれあり、早急にと、こういうお話なんですがね。次官、これは一体、最近の少年犯罪の動向と、こうおっしゃったのですけれども、いまのお話からすれば、動向もこれあり、だから急がなければならぬということになるので、やたらふえているからというふうに一般的な印象を受ける。そういう答弁を簡単にされては困る。私は、いま一番心配なのは、逆に減っている、全部が減っているとは申しませんが。にもかかわらず、世間一般は十八なり十九なんというところをとらえて、その辺の犯罪がやたらふえているんだという受け取り方を、ともするとしがちな言い方を皆さんはされる。実はそうじゃない。問題提起をされた四十年、四十一年という時点がピークなんですね、言うならば。それから減ってきているわけですよ。ここに凶悪犯行別検挙人員人口比歴年比較表、年長少年十八歳、十九歳、こういう表があります。これを見ますと減ってきている。刑法犯罪種別、検挙人員種別、検挙人員人口比歴年比較表、先ほどの関係の人口比歴年比較表ですね。これの年長少年十八歳、十九歳、これを見ましてもずっと減ってきている。確かに、この問題提起が行なわれた時点がピークだったんですね。そういう点等をいろいろ考えますと、この間の道交法の問題なんかの附帯決議もありますけれども、私は、一つ間違うとこの少年法の改正一つの外堀を埋めてしまうようなことになりはせぬかと心配をする。だから、これまたいろいろ中身を聞いてみると、皆さんもそういう認識があって論議をしておられるようでございますから、そうではないんだということ。結論を求めておられるわけでありますが、それなんかも、実は世間一般の受け取り方は、道交法改正十八、十九、年齢引き下げという問題が出てまいりますと、どうも、何か知らぬけれども、その辺でどんどん犯罪、凶悪犯がふえているというふうな認識、受け取り方になる。だから、そこらはやはり、正しく世間一般に認識を求めるのには、慎重にものを言うてくれにゃ私は困ると思う。そういう意味で、政務次官というお立場にあるお方が、そう簡単に、ふえてくるんだ、これはたいへんなんだから早くやらなければいかぬというような軽率な御発言をされるということは私は心外だというふうに思う。そこらのところ、皆さんのほうで資料をお持ちなら言ってください。
  94. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいま御指摘のように、この両三年は少年犯罪というものが一応、大きくいいまして横ばいの状況でございます。しかしながら、これを三十一年を基準にして考えてみますと、昭和三十一年の少年の検挙件数を一〇〇といたしますと、昭和四十四年におきましてはなお一七一という指数が出てくるわけでございまして、この二、三年は横ばいでございますけれども、十数年前の三十一年に比べますとかような状況になっております。  私ども、現在は、少年犯罪が激増しておるからどうこうということで申し上げておるわけではございませんで、やはりこの少年手続というものに根本的に問題があるという点から、私どもはこの改正の問題を検討しておるわけでございます。
  95. 大出俊

    大出委員 これは、政務次官、さっき口にされたんですから、政務次官からもひとつ答えてください。
  96. 大竹太郎

    ○大竹政府委員 いまほど刑事局長が申し上げましたように、最近の傾向からいたしますと、必ずしもふえてはおりませんけれども、凶悪犯を、先ほど局長から申し上げましたような年代から比較をいたしますと、相当ふえているという数字にもなっておるわけでありますし、御承知のように、世間ではやはり最近青少年の凶悪犯罪というものに非常に注目をしておるという面等々考えまして、先ほど申し上げた次第でございまして、御了承を賜わりたいと思います。
  97. 大出俊

    大出委員 私は、冒頭に申し上げましたように、学者の方々見解その他も、概して裁判所側の見解に立つ御意見が多いように思う。問題提起をされたという意味では、私はそれなりの、大きな論争が起こったわけですから、効果はあったと思うのです。皆さんの側が、そういう意味で警鐘を鳴らしたかったということならば、これはまた別でありますけれども、最高裁側の言っていることからしても、基本的な問題でずいぶん大きな食い違いがある。そういう時点で軽々しく、法制審議会にかけるんだというようなことをおっしゃる、しかもたいへん急いだものの言い方で。なぜ一体その前に、最高裁なりあるいはそちらの側に立つたくさんの学者、専門家——これは労作ですよ、さっき私があげた書物なんというものは。国会図書館でずいぶん調べてみましたが、ここまで実態に即して、しかも経験者が集まって検討しているというのはあまりないですね。だから、そういう方々がずいぶん苦労されて、そういう論争があったからこういうものを書く気になったんでしょうが、そういうふうな効果は私も認めているのですけれどもね。つまり、そういうたくさんの方の意見なり最高裁なりの考え方というものがある以上は、日本の法制全体をながめてみて、大臣の立場としては——ここらから先は、実は大臣がおりませんとやりとりにならぬのですけれども、例もあげて、一つずつ大臣と意見を交換していきたいのでありますが、つまり、意見の一致を求めるというか……。そうすると、これだけの法務省構想をお出しになったが、反論もたくさん出ているので、それをずっと詰めていったら一体何が残るのか。まず、人だって決定的に足りない。保護観察制度をとっておられますけれども、そういうふうなところまで触れてみた場合に、一体何が必要で、何が残るのか。そうすると、この少年法というものは基本的に、おたくの提起している三点を私さっきあげましたが、こういう重大な論点についてまで手を加える必要があるのかないのか。私はないと思っておりますが、まず、専門的な分野でいろいろやっておられる方、専門的な研究をやっておられる方——理論的だけではものごとは解決しない、中身を見てみると。だからこれは、大臣が相当高い立場からそういうところを詰める努力をしてやっていかせる、やっていってもらう、そういうことがまず必要なんであって、それをいまの時点でいきなり、まだろくな話し合いもしていない段階で、これは予算委員会の分科会のときですが、早急に法制審議会にかけて結論を求めて、できれば来年改正したいなんというようなことを言い切るというのは、私はまことに不見識だと思いまして、そこでこの問題を取り上げる気になったわけです。そこのところは、大臣がおりませんから真意はわかりませんが、なぜそんなに急がなければならぬのか。急がなければならぬ理由があるのかどうか。そこが私はわからぬのですけれども、そこのところをひとつ、あとから大臣にあらためて聞きますが、刑事局長から答えてください。
  98. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 法務省が少年法の改正作業を始めましたのは、実は相当前でございます。昭和三十七、八年ごろであったと思いますが、それからずうっとこの改正の作業をいたしておるわけでございます。そして、一応四十一年の五月に法務省の改正構想というものを公表いたしまして、各方面の批判を仰いだということになっております。この改正構想を公表いたしましてからすでに満四年を経過したわけでございまして、結局この作業開始以来十年近い歳月、私ども事務当局の立場におきまして、裁判所の事務当局その他弁護士会あるいは一般の学識経験者、いろいろな方面からの批判を受けてこの改正作業を進めてまいったわけでございます。そこで、いつまでこういうことをやっておってもちっとも動かないじゃないかという一つの御批判がございます。そういう点で、まず、そういう長い期間を経ているので、この機会に何か一つ構想をまとめるべきであるという一つ意見があること、これは事実でございます。  それから、昭和四十一年に改正構想を発表いたしておりますが、昭和四十二年に至りまして、これは必ずしもわが国の少年法制とは直接関係がございませんけれども、現行の少年法の母法ともいうべきアメリカの少年裁判制度、これに関しましてアメリカの最高裁の判決とかアメリカの大統領の諮問委員会答申とかいう面で、わが国の現行手続でございますいわゆる国親思想に基づく一つのヒヤリング手続と申しますか、現行法はそうなっておりますが、この手続については憲法で保障する適正手続との関係で問題があるということをアメリカで盛んに論議をされてまいったわけでございます。これが昭和四十二年でございますが、こういう風潮がやや変わってまいりまして、私どものこの構想を発表いたしましてから後の問題でございます。現在、まだしかとしたあれは理解いたしておりませんが、わが国の学界方面におきましては、新たな問題として、適正手続と現行法の少年手続との関係一つ提起されてきているように思うのでございまして、学界の動向にも多少の変化が見えるのではないかと考えておるわけでございます。さような観点もございまして、私どもは、この際この問題を早急に解決すべきであるという考えに立って作業を進めておるわけでございます。
  99. 大出俊

    大出委員 そうなると、ますますもって大臣がいないとこれは話にならぬわけであります。したがって、この辺で大臣がいる時間まで送りたいと思うのでありますが、いま海の向こうのお話をお出しになったわけでありますが、これは西ドイツなんかの例からいきますと、逆に年齢引き上げ、つまり日本の旧少年法的な、二十六年の改正前のような形になっております年齢、これをそこから上に上げるわけであります。そういう傾向も論争の過程では出てきている。だから、そうなると、これはそこまで論議を広げなければならぬことになると思うのであります。それよりも何よりもまず現行少年法改正、つまり二十六年に直したこの法律の年齢その他を含む改正が必要なのかどうか、そういう差し迫った事情があるかどうかということです。ところが、実はいわゆる法律専門屋が専門的に論議をするのではない、政治という場面から見た私どもの感覚の中にはそれが一番大きいウエートを占めている。大臣も専門屋じゃない、ないがやはり政治をやっている方の頭というものが分科会でああいうふうに言わしたのだと私は思う。だからそこのところが、おのおの調べている立場から見てどこでどうかみ合うのかという点が問題点だと思っている。そこで、大臣は分科会でべらぼうに急いでものを言っている。早急に法制審議会にかけたい、早急に結論を求めて来年は改正に踏み切りたいという言い方ですね。だから、なぜそういう理由があるのかということを私は大臣に承りたいわけなんでございます。いまの御答弁では、そういう海の向こうの論争があるからといって、法制審議会に早急にかけて、来年はどうしても改正してしまいたいなどという差し迫った理由があるようには見受けられない。したがって、そこから先のところは、大臣が答弁しておりますから、大臣に私直接承りたいと思うのであります。
  100. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいまのアメリカの少年制度について、アメリカの国内の問題があるから、批判があるから、わが国においても手続を変えなければいかぬというようなことを申しておるわけではございません。日本の現行手続に本来問題がある。その一つの参考的なものとして申し上げた次第でございます。この点は特に補足させていただきたいと思います。
  101. 大出俊

    大出委員 あとで大臣のいるときに、刑事局長がこう言ったぞというようなことになるとうまくないですから、やはりそのくらい補足しておいたほうがいいと思います。  その辺で、あとはひとつ大臣とのあれに譲りたいと思います。せっかく大竹さん以下皆さんお見えになりましたから、前座という意味で少し承っておいたほうがいいと思いまして承ったわけであります。      ————◇—————
  102. 天野公義

    天野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本案の審査に関し、明八日参考人の出頭を求め、意見を聴取したいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  午後二時三十分より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十五分休憩      ————◇—————    午後二時四十五分開議
  105. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。大出俊君。
  106. 大出俊

    大出委員 大臣の提案理由の説明によりますと、「現在東京都豊島区にある東京拘置所は、首都圏整備計画の一環として、他地区へ移転させる必要があるため、これを東京都葛飾区の小菅刑務所の現在地へ移すこととし、これに伴い、小菅刑務所を廃止して、栃木県那須郡黒羽町に黒羽刑務所を設置しようとするものでありますが」、こうなっておりますけれども、つまり、東京拘置所を小菅に移す、小菅を今度栃木県那須郡黒羽に移す、こういうことですね。  そこで、まず承りたいのですが、時間がありませんから端的にお答えをいただきたいのでありますが、黒羽の土地は、広さはどのくらいあるのですか。
  107. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 坪で申しまして、約六万坪ございます。
  108. 大出俊

    大出委員 これは植竹春彦氏のお持ちになっている土地と承っておりますが、そういうことですか。
  109. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 前所有者は植竹英雄氏でございます。
  110. 大出俊

    大出委員 ところで、この東京拘置所のあと地というのは、坪でいってどのくらいでございますか。
  111. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 現在の東京拘置所のあと地のうちから、この黒羽の分に見合うものだけを交換するということになっておりまして、坪数にいたしますと、土地が二万四千六百九十八平方メートル余りでございます。
  112. 大出俊

    大出委員 この間私いろいろ承ったところが、法務省は、これは適正な価格ということになっておりますから、坪で申し上げて千九十円だ、こういうわけでありますね。  この黒羽のほうの土地は、もちろん形としては法務省が買ったわけじゃないわけでありますが、新都市開発センターが買ったことになっておりますが、これは坪当たり三千円、こういうことになっておりますが、そのとおりでございますか。
  113. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 黒羽の土地に限って申しますと、株式会社新都市開発センターが植竹英雄氏から購入した価格は、坪当たり約三千円になっております。これを新都市開発センターから、将来その地上に刑務所が建設されまして、それとひっくるめまして国のほうで買い取るわけでございますが、そのときの当該土地の評価額は、一坪にいたしまして約一千九十円でございます。
  114. 大出俊

    大出委員 そうすると、これは、いま私があげたのは間違いないわけでございまして、新都市開発センターが三千円で植竹英雄さん——春彦さんの御子弟だろうと思いますけれども、の土地を買った。そこで、将来建物が立つ。そして、土地と建物、交換方式をおとりになっているようでありますが、新都市開発センターから法務省が取得する、その場合の坪当たり単価は千九十円。そうすると、この間に坪当たり単価で二千円近い開きがある。そうすると、黒羽は六万坪とおっしゃるわけですから、六万坪、坪当たり二千円開きがあると、つまり、新都市開発センターが坪当たりおおむね二千円近く高く買っている。だから、一億二千万円まではなりませんけれども——二千円とすればそうですけれども、ほぼ一億二千万近い赤字に、土地と土地の関係で申し上げればなっている。  そうすると、新都市開発センターは株式会社新都市開発センターでございますから、公共団体でもなければ国の機関でもない、全くの株式会社でございます。そうなると、株式会社新都市開発センターなるものは民間会社でございますから、国との関係において民間の株式会社が一億二千万も赤字を背負うということはあり得るはずがない、あってはならないわけであります。民間会社が一億何千万も、土地をお世話するということでもし赤字になるのだとすれば、これは国がそういう負担を民間にさせるわけにはまいらない。理由はいずれにしても、こういう理屈になると思うのでございますが、そこのところはいかがでございますか。
  115. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 若干いきさつについて御説明しないといかぬと思います。もともと黒羽に小菅刑務所を移転させるという計画は初めからあったわけじゃございませんで、最初は東京都青梅の在にこれを移す計画であったわけでございます。それが地元の御反対等によりましてだめになりまして、急遽そのかわりに選定されたのが黒羽である、こういう事情にあるわけでございます。したがいまして、これは私どもが新都市開発センターから聞いたことなどに基づいて申し上げるわけでございますが、新都市開発センターとしては、すでに建築交換等を行ないます期限を相当使っております。なるべくすみやかにどうしても黒羽のこの土地と交換したいという気持ちがあったようであります。言いかえますと、俗な言い方で恐縮ですが、新都市開発センターとしては国との契約の内容を誠実に履行したい、また早く池袋の新都心としての開発をしたいという考えから、いわゆる特急料を払ってもその土地がほしいという立場にあったわけでございます。これに対して所有者であられた方は必ずしも特に急いで売る必要のない方でございましたようで、この特急料を払ってもほしい人と必ずしもそうでない人との間に話し合いがなされた結果、この値段になった。いわば新都市開発センターとしては時間をお金で買ったという関係になっておるようでございまして、それは採算ベースを十分お考えになってのことであろう、かように考えておるわけでございます。
  116. 大出俊

    大出委員 これは当初、当分の間という契約を新都市開発センターと法務省との間で結んでいますね。これは課長さんが結んでおられるわけでございますが、この新都市開発センターの一番最初の社長さんは、中村建城さんという、大蔵省の前の主計局長だった方ですね。ところで、さて契約を変えましたね。新しく契約を変更した。このときの相手方の社長さんというのは大池眞さん、前衆議院事務総長ですね。こういう経過にございますが、前の、つまり青梅ということを考えた時点と、黒羽というふうに考えた時点で、これはだいぶ差が出たわけですね。それをあなたはいま言っているのだろうと思うのです。当初計画でいきますと、五十三億六千百万円、これがつまりおおむね二万坪の東京拘置所の土地を新都市開発センターが譲り受ける価額。そして何カ所かの刑務所その他を含めて四十七億四百万円、これが実は新都市開発センターのほうが建てて交換をする際における価額の総額。その差額六億五千七百万円余りを現金で国に、つまり法務省に渡す、こういうことになっておるわけですね。前の計画でいきますと現金のほうは一億四千四百万円、こういうことになっておりましたから、それをいまあなたはおっしゃっているのだろうと思うのです。そういう経過はいずれにしても、現時点で現実に行なわれているのは坪当たり三千円、片や坪当たり千九十円、そこに一億何がしかの持ち出しが会社側にある、これは現実の問題です。  そこでいま最後に言われた、それでも採算がとれると思います、こう聞いたという話ですけれども、常識で考えて、本来ならば公共団体なり国なりがやらなければならぬ筋合いのものを、いかなる理由があるにせよ、民間の一株式会社にやらせるということ自体、しかも刑務所をつくろうというわけですから、私どもに言わせれば変則なんですね。にもかかわらず、皆さんの御答弁を前のいろいろな議事録で読みますと、非常に公共性の強い会社なんだ、事業計画を持っているんだ、だからと言っておられるわけでありますが、そこまで公共性が強いということになると、そうもうかっては困る。ところが、幾ら特急料を払うからといったって、一億二千万もの金が、これは採算がとれるのだということになると、それだけの利益はこの一点だけをとらえてもどこかから出てくることになる。そうすると、この利益は一体どういう計算、どういう計画で一億二千万の金のめどがつくのか、将来採算がとれるのか、ここのところをしかと承っておきませんと、もし民間の一株式会社が国との契約関係の結果としてたいへんな損失をこうむったということになるとすると、国の責任なり東京都の責任なり、なぜならばこれは首都圏整備計画の一環ですから、捨てておけない。そこらあたり、どういう形で採算がとれるということになるのですか。
  117. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 御質問が多岐にわたっておりますが、お尋ねの根幹につきましては、昭和四十一年度予算案におきまして国庫債務負担行為をお願いしておりました際にも御審議いただいておると思いますので省略いたしますが、この一億何千万円かの相対的な損を新都市開発センターがしたことは御指摘のとおりでございます。しかしながら、青梅に刑務所移転ができないということがきまりました時点で、まあ新都市開発センターの立場に立って申し上げるような形になりますが、その段階で考えてみますと、もし刑務所がうまくつくれないということになりますと、東京拘置所のあと地をめぐります契約全体が債務不履行という形になりまして、国の側から契約を解除されるわけでございます。契約を解除されることに相なりますると新都市開発センターとしてはたいへんな損害をこうむらざるを得ないという問題が一つあるわけでございます。  それからもう一つ、この東京拘置所のあと地の払い下げの問題に関しましては、契約書において用途指定等がございます。すなわち、新都市開発センターは都市計画事業の主体として建設大臣の特許を受けておる。また自動車ターミナルの設置に関する許可も受けておる。それらの用途に供することがこの契約上の用途指定になっておるわけであります。その用途指定も、四十八年四月一日までにそれらの施設をつくることが契約上義務づけられておりますので、新都市開発センターとしては、もしこの期限を徒過いたしますと、一切の契約が解除されて、それまでにおそらく投下するであろうと思われます五十億あるいは六十億という金はどこかへ消えてしまう、こういう問題があったために、そういう三千円という単価で買わなかったとした場合、買ったとした場合、その後の利害を十分考えられたのではないかと思います。
  118. 大出俊

    大出委員 これは重大な責任問題だと思うのですよ。あなた方法務省が民間の一株式会社とこういう契約を結ぶからこういうことになる。本来国が当然やるべきものを、いかなる理由があるにせよ一つ間違ったらえらい損なことになるという、そこまであなた方民間の株式会社に責任を負わせるような契約を結んだというところに本来問題がある。ここの点をまずどうお考えになりますか。
  119. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 おことばを返すようですけれども、民間会社とこういう契約を結ぶからこういうことになるというふうにいまおっしゃいましたが、どういうことにもまだなっておらぬわけでございまして、計画は着々と進んでおるわけでございます。  それから、民間会社と契約を結んだという点につきましては、先般予算分科会の席上、大臣からもこれは例外措置であるというふうに申し上げたわけでございますが、結局、この東京拘置所のあと地を約五十億というような金で買い受けまして、その地上に相当な資金を投下しましてこれを整備して、高速道路のインターチェンジあるいはバスターミナルをつくり、その上に高層ビルを建てて、その一部を公共的な用途に供する、こういう一連の相当な資金量を要します事業につきまして、私どもとしては、もともと地方公共団体等にお願いするのが最もよろしいわけですから、東京都などと鋭意折衝を重ねた経緯があるわけでございます。しかしながら資金繰りの関係でお引き受けが得らない。一方、首都圏整備の観点からこれの移転については閣議の御決定もあるということでございまして、先ほど申しましたように、都市計画法によります都市計画事業主体でございますこの公共性のある株式会社新都市開発センターと契約をした、こういういきさつになっておるわけでございます。
  120. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 関連して。この問題は三月十七日の予算委員会第一分科会でるるお尋ねしたことでございますが、そのときに要求しました資料が実はきのう午後になって私の手元に参りました。そこで、いただきました資料に基づいていろいろ検討したわけでございますが、検討の中で、ただいま会計課長がおっしゃったその決定について非常に問題があるのではないかという点がございますので、関連して質問いたします。  この新都市開発センターというのは、御存じのように、これは昭和四十一年の十月十四日に設立されたわけです。これを経過的に見ますと、その後、昭和四十一年十二月二十四日付で運輸省から自動車ターミナル事業としてバスターミナル事業の免許を受けたわけです。また、引き続き十二月二十七日に東京都知事を経由して建設省から「池袋副都心東池袋三丁目付近再開発に関する東京都市計画街路」、これは都市高速道路のことですが、その事業及び「東京都市計画自動車駐車場」、要するに駐車場ですね。この特許を、設立後一カ月、二カ月のうちに受けたわけでございます。  ここで問題になりますのは、一つは国有財産が払い下げられる条件というのはどういうことか。これは先ほども答弁がありましたように、一民間会社に払い下げることは一応原則的にはできない。公共企業体あるいはまた国が直接使用する。たとえば民間会社が使う場合には、そこによほどの条件がなければ使えない、こういう国有財産の一つの扱いがあるわけでありますが、この場合、このように免許を与えた、しかも株式会社新都市開発センターをつくらせて与えたというところがどうしても納得がいかないわけであります。たとえば、これが東京都なりあるいはまたほかの公共企業体がそういったことを引き受けることを条件として会社が設立されたというならばわかるわけでありますが、なぜ株式会社新都市開発センターというところでそういったことがなされたのか、その点の理由を、まず運輸省、そして建設省の方に伺いたいわけです。——じゃあそれはまた明日お伺いすることにしまして、ということになりますと、この辺が非常に問題になるわけであります。当時私は地元の区会議員でございました。そのことについては何回となく東京都、大蔵省に伺いまして——もちろんあの拘置所のあと地の移転については超党派で賛成でありましたが、その後のことについては一切私たちは知りませんでしたし、わからなかったわけであります。つい最近になって、地元でいろいろな話し合いの中から、私もこの問題が正常ではない、こういうことに気がつきまして資料を要求したわけであります。そうしますと、ますますこの辺が不明といいますか、納得がいかないので、その点はまたあらためて質問したいと思います。
  121. 大出俊

    大出委員 伊藤さんがいま言われたこともあわせてお答えをいただきたいのでありますが、どうも伊藤さんの言っていることからすると、おぜん立てがよくでき過ぎているという感じが、聞いていて私はするのです。この種のことというのは背景が相当ないと、こんなに、やっと会社ができた、とたんに一カ月かそこらでバスターミナルの事業の許可がおりた、また一カ月かそこらしたら都市計画決定が行なわれて、建物その他、高速道路を含めての公共使用の許可がおりたなんというようなことになかなかならぬものなんです。だからそういう疑問が出てくることも私たちはわかるわけですが、私がここでいま問題の焦点を申し上げているのは、民間になぜこういうことをさせたのだと言ったら、だからといってどうともなっていない、こういう言い方をあなたはするのだけれども、それはずいぶん民間にすれば苦労をしていると思うのです。それがどうともなっているかいないかはこれからあなたに聞かなければわからない。  まず、一億二千万ばかりのこの足りない金、あなたのおっしゃる特急料ですか、これはあなたのさっきの御答弁によれば、採算がとれるというふうに聞いているとあなたはおっしゃる。それでは一体どう採算がとれるのか承ろうと思ったら、あなたはお答えにならないでほかのことをおっしゃった。私の聞いているのは、一体どういうふうに採算がとれるようになっているのかということを聞いておる。新都市開発センターは、植竹さんの土地を買うについて一億二千万ばかりよけいに払ったのだけれども、しかしそれは採算がとれるようになっているのだとおっしゃるから、しからばどういうふうに採算がとれるようになっているのかということを聞いている。あなたは契約の相手方ですから、それがわからないはずはない。どういうふうに計画に組み込まれて、どういうふうに先々採算がとれるのですか。
  122. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 いまの伊藤委員の質問にもあわせて答えるようにということでございますので、まずそちらから答えますが、先ほど、国有財産は私人に払い下げるものではないというふうにおっしゃいましたのは何かのお間違いで、随意契約で払い下げる問題のことだと思います。その点につきましては、先ほど来申し上げましたように、相当の資金量を要するものでありますために、この会社以外に当面引き受け手がないということが直接の動機になっているわけでございます。  それから、一億二千万円、正確にはもう少し低い金になるわけですが、それをいわゆる特急料として新都市開発センターが払って採算がどうしてとれるのかというお尋ねでございますが、私はこの契約書に書かれましたことの履行を忠実に監視いたしておるものでございますが、当該会社がこの植竹氏所有の土地を坪三千円でお買いになったために経営が危うくなっておるとか、そういうことは全く承知しておらないわけでございます。一億二千万円をどのようにしてその会社が、短期的にか長期的にか、どのようにして採算をおとりになるのか、それは私どもの関知したことではないと思います。要するに、その会社を信用して始めておるわけでございますから、その信用がゆらいでいない以上、そのことをとやかく言う立場にはないというふうに考えております。
  123. 大出俊

    大出委員 私が聞いているのは、先ほど法務省、つまりあなたが相手方の会社から聞いているところによれば、特急料を払っても採算がとれる、こういうことでございましたとあなたがおっしゃるから、契約の相手方なんですから、知ったことはないという無責任なことはないでしょう。民間の株式会社なんですから相当な負担になる。たとえば長期にわたらなければ返済ができないということになるとすれば、それなりの——知ったことはないという言いぐさはない、国が契約を結んでいる相手方なんですから。そうでしょう。だから、しからば一体採算がとれるというふうに聞いているとおっしゃるから、どういうふうに採算がとれるようになっているかということを聞いているので、わからなければわからないと答えていただけばいい。
  124. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 採算がとれると考えておやりになったものというふうにお答えしたわけでございます。現に黒羽刑務所は、ごらんいただくとわかりますが、日々工事が進行いたしまして、相当なりっぱなものができつつございます。その他新都市開発センターが施工しました工事、旭川刑務所にいたしましてもその他の刑務所もすでに完工いたしております。国としては間もなくこれらの所要の建物が取得できるというふうに考えております。
  125. 大出俊

    大出委員 つまり、あなたが採算がとれると思われる、これは向こうが言ったんじゃないということでもいいですよ。あなたが採算がとれると思うということでもいい。いまそう言い直されましたから。しかし、あなたが採算がとれると思うと言うからには、契約する以上は、相手の会社の中身その他をお調べになり、事業計画も御存じの上で、しかもそれがどういうふうにこれから進んでいくという見通しをおつけの上で、その背景にある首都圏整備委員会の整備計画、これは副都心計画ですからね、そうでしょう、すべてあなたのほうで御検討いただいた結果でなければ、この会社と契約を結ぶわけに当然いかないはずですよ。だとすると、あなたのほうはその上に立って、この会社は採算がとれるものなりと思っている、こういうことなんです。さて、そこで問題は、これはよほどもうかるという見通しがなければ、一億二千万も幾ら特急料だってよけいに払うわけにいかない、会社ですから。そうなるとこの会社のほうも問題になってくる。  ここでひとつ区切りをつけておきたいのですが、採算がとれなければこれはたいへんな問題だ。ただ建物が立っているからとれるだろうとあなたは言っているのだろう。あなたは確信を持ってとれるというふうにおっしゃるなら、どういうふうにとれるかという中身を言っていただかなければならぬ。それをあなたは御存じないとおっしゃる。とすると、とれるだろうと思う根拠は何かというと、いまのお話では黒羽の刑務所工事もどんどん進んでいるからとれるだろう、こういうわけです。それではほんとうにとれるかどうかということにならぬわけでございますから、私は、ここでやはり大池さんなりこの会社の主要なる立場にある方々においでいただいて、この特急料は一体どこでどういうふうに埋め合わしていくかということをここで明確に承っておかないと、あとでこの会社がおかしくなったというようなことになったときに、この委員会は何を審議したということになるわけでございますから、そういう意味で、これは理事会で御相談をいただいた話し合いに基づきましてお呼びいただくことになったようでありますけれども、そういう意味で実はおいでをいただこうという提議をしたわけであります。  それから一つずつ承っていきたいのでありますけれども、黒羽の建物工事はどこの会社がおやりになることになっているのか。それからまた、何カ所かございますが、刑務所がほうぼうに建つわけでございますけれども、下野の刑務所が一つございますね。ここから始まりまして六カ所になるのですか、この刑務所を建てるにあたって大体どういう会社が建てるのか、お知らせをいただきたいのです。
  126. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 国庫債務負担行為の段階では、仮称下野刑務所と申しておりますのがただいま御審議いただいております黒羽刑務所のことでございます。東京拘置所のあと地を引き当てに新都市開発センターが建設中あるいは建設いたしました刑務所は御指摘のとおり六カ所でございます。  まず工事が完了して引き渡しを国が受けておりますものを申し上げますと、旭川刑務所、これは大成建設が施工いたしました。それから岡山刑務所、これも完工して引き渡しを受けておりますが、これは藤田組でございます。それから川越少年刑務所、これもでき上がって引き渡しを受けて、現に使用しておりますが、清水建設でございます。それから現在工事中のが東京拘置所、これが鹿島建設、それから黒羽刑務所が大成建設、それから浦和の拘置支所、これが大林組、かようになっております。
  127. 大出俊

    大出委員 これはおかしな感じがするのだけれども、この大成なり清水なり藤田組、大林組、鹿島建設、こういったところと契約を結んだのは、これは新都市開発センターなる株式会社でございますな。
  128. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 さようでございます。
  129. 大出俊

    大出委員 そうしますと、この間のことは皆さん直接関係がないはずでありますけれども、知っていれば承りたいのですが、この新都市開発センターと、これらの建設会社との間の契約は随契ですか。それとも入札その他によるものですか。
  130. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 これはでき上がりましたものを国のほうで引き取ります関係上、この契約発注の方法については私どもと協議をしてもらっております。その結果知っておることでございますが、いずれも指名競争入札を十数社の建設業者との間に行ないまして、結局、最近よくあるようでございますが、いずれも予定価額をオーバーしたということで、何回か入札が不調に終わって、最低価額で入札しましたものと随意に契約をしておるようでございます。
  131. 大出俊

    大出委員 この十数社というのはいまおわかりになりますか。指名競争入札の十数社とおっしゃるのだが……。
  132. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 ただいまここに資料を持っておりません。持っておりませんが、私どものほうの内部の訓令できめております基準でいわゆる超A級の会社を選定しておると思います。
  133. 大出俊

    大出委員 その超A級の会社へ多少色をつけるということがよくあるようでございますが、この新都市開発センターの株主というのはここにあるのですよ。まず株主の一番てっぺんのほうにありますのは、これは株式数にいたしまして三十万株ですか、大成建設なる会社がまず三十万株ですか、一億五千万円出資をしておりますね。それから大林組が二十万株でございますか、ちょうど一億出資していますね。株式会社鹿島建設、これまた同様に二十万株で一億円出資をしておるわけでございますね。それからいまここにございました清水建設、これもまた二十万株で、これもまた一億出資をしておりますね。これを見ていきますと妙な感じがするのですが、藤田組ここもまた歩調をそろえまして、いま名前が出てまいりましたが、ここも二十万株で、これまた一億を出資していますね。あと電気工事関係の会社が一ぱいありますけれども、これはおそらく建設工事にひっついていってしまうだろうと思うのでありますが、こういうところがまた一ランク落として株券を持っている。つまり出資している。あとながめてみますと、銀行関係がこれまた六万株であるとかいうようなぐあいの出資をしているわけでございます。そうすると、ほかならぬ大成建設、清水建設また大成建設、藤田組、大林組、鹿島建設、すべてこの会社の株主なんですね。そうすると間違いなく会社側なんですね。これはけっこうな株主でございます。そうするとどういう指名入札をおやりになったか知りません。知りませんけれども、株主である限りはここに名前のあらわれている大成、清水、また大成、藤田、大林、鹿島というのは、すべて会社側のほうに重要な役職員を送っている。やれ副社長であるとかいろいろな者を送っている。そういうことになりますと、自分のところが株主である会社にこれらの会社がおのおの競争入札に顔を出しているということ。しかもやっている会社全部が、落ちた会社を含めて株主であるという。これは幾らいろいろとおっしゃっても——これはあなたに言っているのじゃないですよ。新都市センターなるものが直接建設工事会社との間に契約を結んでいるのですから、その限りではあなたのほうに関係はないということになるかもしれぬ。しかし取得する財産なんだからということで協議をしておられるということになると、これは全く無関係ではないということになる。こういうふうになる。どうもそうなってくると、いままで私は七年しか国会の議席の経験はありませんけれども、何回かいろいろなものにぶつかりましたが、ちょっとこれはそうでございますかと言って納得いたしかねる実は問題がある。もしも本来大成建設なり清水建設なりあるいは藤田組なり大林さんなり鹿島建設さんなりに落ちるようになっているのだとすれば、この方々は計算が成り立つかもわからない。ということになると、先ほどの伊藤さんのお話もありましたが、どうもあまりと言えばおぜん立てがうまく行き過ぎているという感じがしませんか。
  134. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 株主の問題でございますが、要するにこの会社は財界のほとんどの大手の会社がたくさん資金を出し合いまして設立された会社でございまして、先ほど名前をあげられました会社のほかに、たとえば竹中工務店でございますとか、そういうところもやはり株主になっておるわけでございます。また副社長をどこかから送っておるようなお話もございますが、そういう事実はないように存じております。いずれにいたしましても、私どもといたしましては十分公正に入札が行なわれているように見ておったつもりでございます。その辺の問題は絶対ないというふうに私は思っております。
  135. 大出俊

    大出委員 石川六郎さんという方は鹿島建設の副社長さんですね。この方も発起人名簿に入っている発起人です。私の申し上げたのは、会社の副社長さんが役員に入っていると申し上げたのですよ。鹿島建設は副社長さんを入れているでしょう。その点はどうでもいいです。私の申し上げているのは、財界の大手がいろいろと金を出し合ったというわけなんですが、確かにこれは竹中さん落ちておる。こういうものから落ちている。落ちているけれども、課長、あなたどう思っているか知りませんけれども、一ぱい建てるのですよ。この東京拘置所がなくなったあとに百億からの金が動いて建つのです。何と三十六階のビルが建つ。最初これは二つという話だった。いま三十六階を六十階にしようという話でしょう。バスターミナルその他が地上三階ぐらいまででしょう。そこから上は野放しということになるとすれば、三十六階のうち三階抜けば三十三階、ホテルだやれ何だ一ぱいできますよ。ショッピングセンターというものは非常に大きなウエートを占めておるのですよ、事業計画を見ると。ショッピングセンターは公共性があるといえばあるかもしれないけれども、テナント募集をして入れるのでしょうから、たいへん大きなウエートを占める。児童会館や何だというのはそんなに大きなウエートはない。そうなってきますと、これらの建物は全部建てるのです。そうすると、いまここで竹中さんは一つだけ確かに抜けている。けれども、竹中さんはこっちの仕事を一ぺんやればもうおしまいだ。そうでしょう。そうなると、これは一億や二億の株式を投資したからといって——これは今回の刑務所の建物の価額の資料がありますけれども、またこれはあとで一ぱい建物を建てるわけですから、そちらのほうで抜ければいい、これはみな業者なんですから。東京のまん中に副都心をつくってやろうというので、おれのところでひとつ損をしてやってやろうという気のいい人があったらつぶれてしまうのだから、これはない。だからあなたのほうでお答えになっておる予算分科会の御答弁の中に、信用の高い人たちだけで、日本でいえばこの団体の構成は、つまり新都市開発センターなる団体の構成は、「日本でいえばきわめて信用の高い人たちだけでこれを運営、構成しておるということでありまするし、」こう言っておられます。口が悪くて恐縮だけれども、きわめて信用の高い方方ばかり集まって金もうけをやたらされたらかなわぬという気がする。信用が高いということは金があるのだということになるとすれば、金があるところは幾らでももうかるということになってしまう。この会社をつくるにしても、こんな会社はめったにできるはずがないですよ。うしろに首都圏整備委員会もあって、首都圏整備委員会がやはり計画を立ててやっているのですから、そういうバックアップがなければ、これはだれが考えたってできない。鶴見さんがこの整備委員会の事務局長をおやりになっていた。鶴見さんは前の建設省の官房長をやっておられた方です。そのあと事務局長をお引き受けになったのは山田さんでしょうけれども、山田さんは東京都の都市計画局長さんだったはずだ。そうなると、これはいずれにせよ何がしかの関係がみなある。そこへもってきて最初の社長さんが大蔵省の主計局長の中村建城さんであって、かわった社長さんをながめてみたら前の衆議院事務総長の大池眞さんである。ということになると、いわく、知名度のある信用度の高い人たちが集まってこしらえた会社である。だからといって、こういう株式会社に皆さん方が随意契約をされる。そうしてさて建物が建ってみると、下野の場合は大成であり、川越の場合は清水建設であり、旭川は大成であり、岡山が藤田組だ、浦和が大林だ、東京拘置所は鹿島だ。そのいずれの会社も全部有力な株主である。こういうことになると、これは穏やかなことじゃないと私は思うのですよ。第三者がながめてみて、あまりにもよくでき過ぎているということになるじゃありませんですか。しかも発起人の皆さんの中には、先に建設大臣をおやりになった方まで入っている。そうなると、やっぱりさっき伊藤さんがおっしゃったように、できたとたんに一カ月もしたら運輸省はバスターミナルの許可を与えた。もう一カ月たったら建設省は大臣特許をした。何ともどうも解せない面ばかりであります。ですから、そういう面で幾らあなたのほうでいろいろおっしゃられても、どうもここらの関係がうまくいかない。したがって先ほど申し上げましたように、どういう建設会社が集まってどういう指名入札のやり方でどうされたかということをあなたのほうはどこまで御存じかと思って承った。そうしたら建設省に登録している一級の会社でしょうと、こうおっしゃる。ここらあたり、あなたのほうは契約の相手方なんですから、私がいま申し上げた点でどうも不納得なんですが、どういうふうにお考えになりますか、いずれこれは大池さんなりおいでいただいて詳しく承りたいのですけれども
  136. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 入札の問題にいたしましても、一級の会社でやったんだろうというふうに私が申し上げたようにおっしゃいますが、そうじゃございませんで、ただいまその社名を一々記載した記録をここに持っておらないということだけを申し上げたわけでございます。  なお、いま大出委員がるるおっしゃいます点は、私ども伺っておりましてちっともおかしくないような気がしております。
  137. 大出俊

    大出委員 この株主であり資本投資をしている建設会社の皆さん方が、皆さんの各建物を建てている。初めからそういう話になっているのだとすればちっともおかしくない。初めからそういう話になっていないのだとすればまことにおかしなことになる。だから初めからそういうことになっていたのならちっともおかしくないのですよ。東京拘置所は鹿島建設で十二億六千七百三十一万四千円、契約金額は。それで十二億の仕事をもらえば、これはちっともおかしくないですよ。一億ぐらい別に株の投資をしたって。下野刑務所、これは大成建設さんですが、これは二十二億二百七万九千円、川越の少年刑務所、清水建設、六億四千百十八万四千円、浦和は大林組、二億五千六十三万九千円、岡山刑務所も二億五百八十四万七千円、旭川は大成さんで二億八千四百八十七万三千円、こういう金額ですよ。ですから、そういう意味で皆さん方が直接契約しておられない、入札をあなた方が直接させているわけではないから、その間の事情はどうなっているのかという事情はあらためた場所で承ります。  先ほど私が申し上げましたように、時間もありませんから簡単に申し上げたいのですけれども、いずれにせよ一億何がしという金が、土地単価の面でそれだけ特急料として払っておられるとすると、それはあなたのほうが心配ないとおっしゃるとおり心配ないかもしれません。なぜなら、ここに集まっている会社の株主をながめた場合に、いずれも相当金もうけに強い会社ばかりですよ。だから、こういう会社が集まっていれば迷惑をかけるはずはなかろう。私どもからすると、実はそれ自体に問題があると思っている。こういうまさにそうそうたる会社を集めて——銀行もそうです。集めて、副都心ということで、東京都がやらないで、首都圏整備委員会が計画を立てているけれども、そこで、この方々とまさに同じようなレベルにある方々はたくさんいるのですから、発起人十数名を集めて、そしてそれだけの金の投資をさせて、三十六階の建物を建てる、あるいはそれを二つ建てる、あるいは六十階にする、いろいろある。そういうことになると、これはどうも——場所といえばもってこいの、それこそほれぼれするような場所ですね。あそこの場所は東京拘置所がなくなるおかげでもうかる人が一ぱいいるじゃないか。そういうところに集まってこういうものをお建てになる妙味が山ほどあるという感じがするという中身ですよ。私は今回のやり方について、法務省が随意契約を結んでおやりになるにしては、どうもでき過ぎた感じがして、不納得という感じがするのです。二、三羅列的にあと伺いたいのですが、大池さんがお見えになる場面もございますので……。  さて、次に二万坪の東京拘置所あと地、これは結局坪当たり一体幾らくらいで売却するということになるわけでございますか、計算すれば出るはずでございますけれども、三十何万かになると思いますけれども、そこのところはどういうことになりますか。
  138. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 黒羽刑務所と交換することになっております契約によりますと、一応の評価といたしまして、一坪四十五万八千五百三十七円、平米に直して十三万八千七百七円というふうにいたしまして、それに民間精通者の鑑定の結果等を加えまして、結論におきまして一平方メートル当たり、道路につぶされる土地の分などの修正を加えた結果、十一万三千三百十円ということになっております。
  139. 大出俊

    大出委員 四十五万八千五百三十七円、これが坪当たりの単価だ、こういうお話ですね。そういうことですね。非常に近い時価という意味での、このすぐそばの最近の取引価格というのがありますが、坪当たり七十万円以下というのはないのです。そうすると、これは東京拘置所がなくなるから高くなったのだということになるとするならば、そこで一つ考え方があるのですけれども、この仕事をしよう、株の投資をしようとされた方々の初めからの考え方は、東京拘置所はなくそうという考え方ですからね。そこに建てようという考え方ですからね。なくなってしまったあとにおける地価というものはどうなるか初めからわかっている。この会社が引き受けてなくするのですから、そういう契約を法務省がお結びになるのですから。そうすると、法務省が契約を結ばれた、随契を行なったという段階で、その約束に基づいて東京拘置所はなくなる。そうすると、なくなれば、たださえ高い土一升金一升というところですから、どのくらいのことになるかということは、目に見えているわけです。そうなりますと、最近における時価といわれるもの、これがあの周辺で七十万以下ということはほとんどない。四十五万八千五百三十七円ということになるのだとすれば、土地の価格を、東京拘置所のなくなった将来を評価してみると、これは最低倍ですよ、四十五万なんだから。そうなると、これはよほどの特急料を払ったからといっても、財産評価をしてみたら、遠い将来に向かってということになれば、これはだれがどう考えたって特急料というものは安いものだということになりかねない。実は土地の問題だけを考えても、こういう結果になるのではないかということになりかねない、ここのところは。それにしてはずいぶん安過ぎると思うのでありますけれども、この評価は、日本不動産研究所という話がちょっとありますが、あらためて承っておきたいのですが、どういうような評価をおやりになっているのですか。
  140. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 この土地の評価の問題につきましては、実は最終的な所管が大蔵省でございます。具体的には関東財務局がやってくれたわけでございますので、私どもとしては、大蔵省関東財務局でおやりになった方法の御報告を申し上げるという形になるわけでございますが、一応大蔵省の内部でできております通達に基づいて、まず相続税課税標準価格から現実の価格を推定するというものが一つ、それから固定資産課税標準価格から実際の価格を推定するものが一つ、それから売買実例価格から見た評価額が一つ、この三つをとりまして、これを三で割って基準価格というものを出し、それから整地費、あるいは道路でつぶれます分の修正を施し、得ました結果と、ただいま申し上げました日本不動産研究所をはじめとしまして、信託銀行等何社かの民間精通者からの鑑定結果の平均値、これを加味して出されておるようでございます。
  141. 大出俊

    大出委員 いまお話が出たから念のために……。時間がありませんが、もう一つ、これは長沼裁判の例の裁判長忌避の問題のラジオ発表を聞いたものですから、きのうやったばかりですから、それもちょっと触れたいのでございますが、それで、ここにあります整地費、道路かえ地修正、整地費が千二百七十八円、道路かえ地修正一三%、こうございますね。そして上の相続税の標準価格、標準値、評価額ですね。それから固定資産税の標準価格から見た評価額、売買実例から見た評価額、確かにこの三つがございますね、そして基準価格。ここに出ているのを見ますと、単価というのがあります。評定価格単価、これは十一万三千三百十円、こういう数字が出ておりますが、これは一体何ですか、これは東京拘置所敷地評価内容……。
  142. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 ただいま仰せの十一万三千三百十円というのは、先ほど申しましたように、実際の契約価額であります。
  143. 大出俊

    大出委員 そうすると、さっき私が四十五万と言いましたのは、これはちょっと聞き間違ったのですかな。これとの関係はどうなんですか。
  144. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 先ほども申しましたように、この基準価格を一応出しまして、これに整地費修正とか道路かえ地修正等をやりまして、その得たものに民間精通者の鑑定結果を勘案して、最後に一平方メートル当たり十一万三千三百十円ということになっております。
  145. 大出俊

    大出委員 そうすると、こちらはしらばくれて聞いているのじゃないのですけれども、さっきおっしゃったのは、基準価格の四十五万八千五百三十七円とおっしゃったのですね。これからさて敷地費の修正千二百七十八円だとか道路かえ地修正の一三%だとかいうふうなのをずっとやっていきますと、十一万三千三百十円というのが売買契約における坪当たり単価である、こういうことですな。これは皆さんどう考えているか知りませんけれども、東京拘置所のあの場所、あすこが坪当たり単価十一万三千三百十円というのですな。これは一体どういうことですか。
  146. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 平方メートルで申し上げておりますので、これに三・三をかけていただきますと坪当たりが出るわけであります。
  147. 大出俊

    大出委員 ずいぶん薄い印刷なんですよ、これは。そうすると三・三かけますから三十三万九千九百三十円、〇・三が残りますから大体まあ三十四万円ぐらいですかな。それにしても、先ほど私が四十五万とこう言ったんだけれども、坪当たり三十四万ぐらいですよ。私は大正生まれだから坪でないとわからないのですが、坪当り単価三十四万となりますと、これは半額以下です。とかく国の機関相互の評価をやるときに、おのおの評価にかけておいて、結論を出さない間に相談しようじゃないかなんていって、なかなか苦労して官庁相互間ではいろいろなことをやりますから、私も全く知らないわけじゃないけれども、それにしてもこの株式会社を官庁その他とみなせばそのくらいの芸当はできるかもしれぬ。しれぬけれども、それにしてもこれではいささかもって、それこそあっと驚く何とやらになってしまいます。これはますますもってどうも不可解千万だという気がするのですがね。方々の自治体なんかでも、やれどこのデパートが来る。さてそこの土地の問題が問題になる。方々に先例がありますよ。こういう価格になっているということになると、これはさっきの伊藤さんじゃないけれども勘ぐりたくなるということになるのですよ。しかし残念ながら時間がありません。  そこで、あらためてこの場所を設けていただくようにさせていただきたいと思っていますけれども、残る問題は、この席でもう一点だけ聞いておしまいにいたしますが、この事業計画がございますね。新都市開発センターの事業計画の概要、この中身がまたふに落ちない点がたくさんある。ところで最終的にここに皆さんが手放しになる——むろん皆さんの財産ではありませんが、手放しになるこの東京拘置所あとにどういう規模のどのくらいの建物が建つようになるとお考えなんでございますか。やれ三十六階でございますとか、それを二つにするとか、やれ最高は六十階であるとか、一ぱい話が出ますけれども……。
  148. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 まず法律的にしっかりと把握しておりますのは、契約上用途指定をしておりますから、先ほど御指摘の都市計画事業決定あるいは自動車ターミナル事業の免許の内容をなしておりますことにまず使ってもらわなければいけない。それは使われるということを確信しております。  それから、その上に建ちますもろもろにつきましては、一応先ほどおっしゃいましたように三十六階建てのビルができて、その下のほうに高速道路のインターチェンジあるいはバスターミナルができる。それから児童会館、修学旅行会館あるいは貸し事務所あるいはスポーツセンター、さらにホテル、そういうものができるというふうに承知しております。
  149. 大出俊

    大出委員 三十六階あるのですからね。しかもこの事業計画の概要を見ますと、「なお本計画は完成時点における社会情勢、社会経済等の諸情勢に応じて修正されることがある。」こう一項ちゃんと入っておる。  これで最後ですが、用途指定は何についていますか。土地ですか。土地でしょうね、もちろん。
  150. 伊藤榮樹

    伊藤政府委員 用途指定は、要するに売り払い物件の大宗をなすものは御指摘のように土地ですが、これはいまのような用途に供さなければいかぬ。そういう用途に昭和四十八年四月一日までに供さなければならない。そしてその後少なくとも五年間はその用途に供さなければならない、こういう契約になっております。
  151. 大出俊

    大出委員 四十八年から五年といったら五十三年でしょう。そうでしょう。五十三年から先は用途指定は消える。いまの用途指定からいけば五年以上つけようがない。いかに大きな土地であり、いかに将来高くなろうと、いかに将来これが利潤をあげる意味で役に立つ地域であろうと、それ以上つけようがない。そうなりますと、これは五十三年から先は全く野放し。まして三十六階なんですよ。そうでしょう。それを二つ建てる。しまいには今度は六十階だ。これは副都心の全くの中心だ。そうなると、これはちょっとやそっとの特急料どころの騒ぎじゃない。どうもたいへんなことになると私は思うのですけれどもね。大臣、これは将来別に不正があるとかないとかでなくても、国の土地がこういう形で使われて用途指定は五年しかつけようがないのですから、そこから先、しかもこれはほとんど相当な資力のある——金のある人のところには金がころがり込むそうですけれども、そういうことにしていいのかどうか。これは法律その他を離れて、一般的な国民の一人として考えてみて、そういうことでいいのかどうかという点ですね。非常に私は疑問があるのですよ。これが法的には適法だということだけで済むのかどうか。私、大臣にその見解だけ承って、大池さんに御出席いただくことにしておりますから、あらためてその場面で申し上げたいと思うのでございますが、一言お答えいただきたい。
  152. 小林武治

    小林国務大臣 いまお述べになったようなことも、そういう批判はあることは私も承知しております。役所としましてはどうもやはりそのときの事情で、適法に行なわれる、こういうことだけを考えておって、先のほうの事情とかあるいは見通しとか、こういうものはわりあいに軽視するか無視するか、そのときの事情で、そのとき適法であればよい、こういうふうな考え方でやっておりまして、私はやはりこういうふうなことはあまり感心することではないと思うのでございます。結局さっきからお話しのように、非常にうまくできているような、こういうふうな感じを持ちまするが、役所としては、やはり不正とかこういうことがなければ、とにかくまあ適法に行なわれればよかろうということで、これからの問題としてはやはり相当のことは考えていかなければなるまいというふうに私は思います。
  153. 大出俊

    大出委員 まあ責任継承の原則があるのですから大臣に聞いたのですが、これは大臣が法務大臣におなりになってからやったことではないのでありまして、前任者の時代におやりになったことでしょうから、いまの御答弁で当面の問題としては——将来こういうことについて民間のだれが旗を振ったかという問題はありますけれども、どうもなかなかりっぱな東京都関係の方もおいでになるから、いろいろお考えになったんだとは思うけれども、こういうことがあまり大手を振って通られたのでは、国民の側や地元の商店街その他の側からすればたまったものではない。せめてこれを国が助成をしながらでも地元の方々にやらせるというならまた話がわかる。長年、サイレンが鳴れば逃亡者というので大騒ぎをした地元なんですからわかるのですけれども、そういう点何ともどうも了解いたしがたいのでありますけれども、あらためてひとつまた場所を選んで質問させていただこう、こう思っております。  ここで一つだけ、時間がありませんが伺っておきたいのは、きのうここで問題になりました横路君の質問によるところの裁判長の忌避をめぐる法務省の態度、これを聞こうというのできのうは聞いたのでございまして、決して大臣がお気にさわったような形の裁判それ自体についてというのじゃない、こういうわけでございます。それがたまたま横路君がきのう念を押しましたようにあっさり却下をされている。しかも青法協その他の中身についても、何か知らぬが、包括的に政治団体のように受け取ったが、しかし長沼事件についての支援団体ではないということを明らかにしている。以下あとのところは横路委員の指摘したとおりだと私は思う。この点について、たまたま横路委員もきょうここに出席しておりますから、大臣から今後どういうふうにこれをお考えになるかという点とあわせてまず御答弁をいただきたい。あと横路君にかわります。
  154. 小林武治

    小林国務大臣 きょう決定が出たようでありますが、まだ決定の理由、こういうものもわれわれ了知いたしておりません。したがって、正式な決定書が送達されて、これを検討の上で適当な処置をとりたいということで、まだ結論を出すような時期に至っておりません。
  155. 横路孝弘

    ○横路委員 関連して。きのうの議論の中でも、結局この忌避が通ると、裁判官のレッドパージが進行するんではないかというおそれがある。国民がそういう不安を抱いている。ですから、こういう却下の決定というのは、国民立場に立った場合、非常に妥当な決定だと思う。いま、全文を読んでいないから、まだ即時抗告の点については検討されていないということでありましたけれども、要するに皆さんの論理というのは、福島裁判官は青法協の会員だ、青法協の会員だから長沼事件の具体的な訴訟の支援活動をしているんだ、これが皆さんの主張の根幹にあったと思うのです。ところが、この具体的な事実認定の中で、法律的な問題については、つまり申し立ての理由が申し立ての理由としてほんとうに意味があるかどうかという点については全然触れないで、事実認定の問題でこれは却下をしているのですね。その第一は、組織としてともかく長沼事件を支援しているとは認められない、それから青法協に所属している会員というのも、何ら青法協には特に拘束されないんだ、福島裁判官も一会員ではあるけれども、指導的な立場には立っていないのだという、こういう事実認定になっている。そうしますと、やはりこの事実の認定については、私はこの最初の札幌地裁の認めた内容というのは尊重されるべきだと思う。もちろんこれから即時抗告なり特別抗告なりという法律的な手段はあるでしょうけれども、そういうことを考えますと、私はこの決定を尊重して、即時抗告をすべきではないと思いますけれども、その点についてどうお考えになりますか。
  156. 小林武治

    小林国務大臣 それはもうあなたの意見でありまして、あのことについてお話し申し上げたように、賛成もあれば不賛成もあるし、ただ国民が反対するとか、国民が不安を持つとかは、一部の国民にはありましょう、しかしそれは全体の国民ではない。要するに民主政治においては多数の意見というものが尊重さるべきものである、これは当然なことでありまして、この問題についてあなたは反対だが、また賛成の方もたくさんおられる、こういうことでありまして、いまの決定の理由等については、あなたの言うことだけで私は信頼するわけにはいきません。正式な決定の送達があったら、それによってわれわれは考える、こういうことであります。
  157. 横路孝弘

    ○横路委員 ただ、ともかくその法律的な問題についてじゃなくて、事実認定の段階で却下になっているのですね。この決定の要旨を見ますと、その点についてどういうぐあいにお考えになっておられますかということを私は聞いているのです。
  158. 小林武治

    小林国務大臣 いまのあなたのおっしゃるのは、われわれはまだそういう決定を見ておらないので、したがって……。(横路委員「報告は受けているのでしょう」と呼ぶ)まだ受けていません。それだからして、いま結論的にここで申し上げるわけにはまいらぬ。あなたは抗告すべきでないという、それはあなたの御意見として承っておきます。
  159. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、その検討内容は、即時抗告する、しない——しないということも含めて、これから検討される、こういうことでございますか。
  160. 小林武治

    小林国務大臣 これはもう当然のことであります。
  161. 横路孝弘

    ○横路委員 この忌避の申し立てされた時期というのは、証拠決定をされてからの申し立てという意味では非常に異例のことだろうと思うのです。即時抗告の期限というのは、きょうこれは決定が出ましたから、五月十四日——五月十五日には源田証人について証拠調べをすることになっておるのですよ。五月十四日が最終の期日、十五日が証拠調べの期日。そうすると、私はきのうも申し上げ、その点は事実認定の問題だとおっしゃったけれども、裁判所のほうでも私が言ったとおりの大体の事実認定になっておる。そうすると、これ以上私は、国が即時抗告をする——やはり問題は、自衛隊の実態について審理をするという証拠決定があった。それに対して法務省のほうは不安を持っておるのじゃないか、訴訟の遅延だけを目的にしておるのじゃないかというように、やはり国民の中にだってそういう誤解を持つ人が出てくると思う。十四日が最終の期日、十五日が証拠調べなんです。これは準備の問題にしても何にしてもありますから、やはりこれは早くやってもらわなければいけないと思うのです。それについては、どうですか。できるだけ早く結論を出してもらわなければ困ります。
  162. 小林武治

    小林国務大臣 できるだけ早く結論を出しましょう。
  163. 横路孝弘

    ○横路委員 時間が、四時から本会議ということでございますから、まだその全文を見ておられないとおっしゃるから、これ以上追及するのはやめますけれども、やはりこの決定内容にももちろん私どもとしても不満がある。これは本来忌避の理由にならぬようなことを申し立て理由にしておるのですから、その点についての法律的な判断がほんとうはしてほしかった。ところが地裁の決定は、これからの最高裁等のことも考えて、非常に慎重に事実のことだけを問題にして判断しておるのです。その点私もこれは不満があるのだけれども、しかし忌避の申し立てを一つの契機にして、あるいはこの前後のこの半年間の長沼の裁判が始まって以来の経過の中で、いまの裁判制度そのものが非常に大きな問題になっておる。しかもあえて国がこの裁判制度の根幹に触れる、あるいは裁判官の思想なり結社の自由——憲法で認めているこれらの重大な権利に触れるような内容について法律的に判断を求めようとして法廷に持ち込んだ。その点についての批判があることは、法務大臣も御存じだろうと思うのです。そういうような基本的な重大な問題をたくさん含んでおる問題ですから、私は何とかやはり即時抗告をされるのはやめられるほうが、これは法務省としても——あるいはこの問題は、法廷で変な形で最終決着がつくと、ほんとうにたいへんなことになると思うのです。ほんとうにたいへんなことになりますよ。そういう点も考えられて、私は、ぜひやめてもらうのが、いまの憲法で認められた、思想なり結社の自由というものをきちんと——ほんとうに裁判官の人権なら人権を尊重するという立場からいっても、当然やめるべきであると思うのです。最後にそのことを申し上げまして、私終わりにしたいと思います。
  164. 小林武治

    小林国務大臣 私も申し上げておきますが、これはもう慎重にやるのは当然であります。あなたも実はきのう余分なことを言って、第一審に期待せぬで、あなた方は高裁か最高裁を期待しておることだろう、余分なことまであなたもおっしゃられた。(横路委員「それは、だって実際そうでしょう」と呼ぶ)いずれにしても……。(横路委員「法律家の中で通る議論じゃないですよ」と呼ぶ)いずれにしましても、あなたの御意見は、ひとつ十分承っておきまして、参考にいたします。
  165. 横路孝弘

    ○横路委員 終わります。
  166. 天野公義

    天野委員長 次回は、明八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十八分散会