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1970-04-28 第63回国会 衆議院 内閣委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十八日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷  一夫    理事 大出  俊君 理事 伊藤惣助丸君    理事 和田 耕作君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君       加藤 陽三君    菊池 義郎君       鯨岡 兵輔君    辻  寛一君       中山 利生君    葉梨 信行君       堀田 政孝君    山口 敏夫君       佐藤 観樹君    高田 富之君       鬼木 勝利君    東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         建 設 大 臣 根本龍太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 佐藤 正二君         外務大臣官房会         計課長     柳谷 謙介君         外務大臣官房領         事移住部長   遠藤 又男君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         運輸大臣官房長 鈴木 珊吉君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         建設大臣官房長 志村 清一君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省河川局長 坂野 重信君         建設省住宅局長 大津留 温君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      北田 栄作君         文化庁国際文化         課長      沢田  徹君         運輸省港湾局港         政課長     兼松 暁昭君         労働省職業安定         局参事官    中島 寧綱君         会計検査院事務         総局第一局長  中込 良吉君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ————————————— 四月二十七日  兵庫県温泉町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(有田喜一紹介)(第三八八二号)  兵庫県養父町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外一件(有田喜一紹介)(第三八八三号)  兵庫県朝来郡の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(有田喜一紹介)(第三八八四号)  兵庫県出石町、但東町の寒冷地手当引上げ等に  関する請願外二件(有田喜一紹介)(第三八  八五号)  平田市の寒冷地手当引上げ等に関する請願(櫻  内義雄君外一名紹介)(第三八八六号)  島根県旭町の寒冷地手当引上げ等に関する請願  (櫻内義雄君外一名紹介)(第三八八七号)  島根県金城町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(櫻内義雄君外一名紹介)(第三八八八号)  島根県赤来町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(細田吉藏君外一名紹介)(第三八八九号)  島根県西ノ島町の寒冷地手当引上げ等に関する  請願細田吉藏君外一名紹介)(第三八九〇  号)  島根島根町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(細田吉藏君外一名紹介)(第三八九一号)  恩給共済年金の調整に関する請願木部佳昭  君紹介)(第三八九二号)  同(塩谷一夫紹介)(第三八九三号)  同(小宮山重四郎紹介)(第四〇一八号)  同(辻寛一紹介)(第四〇一九号)  同外一件(向山一人紹介)(第四〇二〇号)  元満州拓植公社員恩給等通算に関する請願(  佐々木義武紹介)(第三八九四号)  靖国神社国家管理反対に関する請願青柳盛  雄君紹介)(第三八九五号)  同(浦井洋紹介)(第三八九六号)  同(小林政子紹介)(第三八九七号)  同(田代文久紹介)(第三八九八号)  同(谷口善太郎紹介)(第三八九九号)  同(津川武一紹介)(第三九〇〇号)  同(寺前巖紹介)(第三九〇一号)  同(土橋一吉紹介)(第三九〇二号)  同(林百郎君紹介)(第三九〇三号)  同(東中光雄紹介)(第三九〇四号)  同(不破哲三紹介)(第三九〇五号)  同(松本善明紹介)(第三九〇六号)  同(山原健二郎紹介)(第三九〇七号)  同(米原昶紹介)(第三九〇八号)  同(青柳盛雄紹介)(第三九九八号)  同(浦井洋紹介)(第三九九九号)  同(小林政子紹介)(第四〇〇〇号)  同(田代文久紹介)(第四〇〇一号)  同(谷口善太郎紹介)(第四〇〇二号)  同(津川武一紹介)(第四〇〇三号)  同(寺前巖紹介)(第四〇〇四号)  同(土橋一吉紹介)(第四〇〇五号)  同(林百郎君紹介)(第四〇〇六号)  同(東中光雄紹介)(第四〇〇七号)  同(不破哲三紹介)(第四〇〇八号)  同(松本善明紹介)(第四〇〇九号)  同(山原健二郎紹介)(第四〇一〇号)  同(米原昶紹介)(第四〇一一号)  靖国神社法制定反対に関する請願外二十四件(  川端文夫紹介)(第三九〇九号)  同外二十四件(竹本孫一紹介)(第三九一〇  号)  同外二十四件(塚本三郎紹介)(第三九一一  号)  同外二十四件(和田耕作紹介)(第三九一二  号)  同外二十四件(和田春生紹介)(第三九一三  号)  同外二十三件(内海清紹介)(第四〇一二  号)  同外十九件(岡沢完治紹介)(第四〇一三  号)  同外二十三件(川端文夫紹介)(第四〇一四  号)  同外二十四件(河村勝紹介)(第四〇一五  号)  同外二十三件(竹本孫一紹介)(第四〇一六  号)  同外五十九件(和田耕作紹介)(第四〇一七  号)  靖国神社国家護持早期実現に関する請願外十  一件(村上勇紹介)(第三九一四号)  同(小沢辰男紹介)(第三九九四号)  同(關谷勝利紹介)(第三九九五号)  同外一件(森下元晴君紹介)(第三九九六号)  同(八木徹雄紹介)(第三九九七号)  長野県富士見町の寒冷地手当引上げ等に関する  請願原茂紹介)(第四〇二一号)  長野県小海町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(松平忠久紹介)(第四〇二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務  員の給与に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一三号)  運輸省設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一五号)  建設省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二五号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤惣助丸君。
  3. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 昨日に引き続きまして、外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案等に関連しまして、私は本日は報償費の問題について、外務大臣及び関係局長さんに質問したいと思います。  まず報償費についてでございますが、大蔵省に伺いたいのですが、この報償費という費用を使っている官庁はどことどこか、まず伺いたいと思います。そしてわかりますれば四十四年度、四十五年度予算額でございますね、それについて伺いたいと思います。
  4. 北田栄作

    北田説明員 お答え申し上げます。報償費の名前の予算の計上してございますのは相当ございまして、たとえば皇室費、裁判所、内閣総理府、それから法務省、外務省大蔵省、厚生省、運輸省労働省等、かなりの官庁にわたっております。
  5. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 大ざっぱでけっこうですが、どの程度予算を使っているか、その点についても伺いたいと思います。
  6. 北田栄作

    北田説明員 たとえば外務省では、御承知のとおりと思いますが、四十四年度予算額では二十二億一千三百万でございます。四十五年度予算額が二十三億一千三百万でございます。  それからそのほかはあまり大きな金額のものはございませんが、たとえば総理府では、四十四年度予算額が約一億三千百万でございまして、四十五年度予算が一億九百万でございます。  それから内閣予算が四十四年度で四億九千八百万、四十五年度予算で四億九千八百万、同額でございます。  大きなところはそういったところでございまして、あとはたいした金額のものはございません。
  7. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 ただいまの報償費の各省の使用状況といいますか、非常にこまかいと思いますので、資料として要求したいと思いますが、出してもらえますね。
  8. 北田栄作

    北田説明員 予算額につきましてはお出しできるかと思いますが、相談いたしました上で、できればお出しいたしたいと思います。  それから、先ほどちょっと間違えたのでございますが、総理府関係予算額四十四年度一億三千百万、四十五年度一億九百万と申しましたが、これは総理府の中の一部分の警察庁の予算でございますので、ちょっと訂正させていただきます。
  9. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 資料を要求いたしましたが、要するにたくさんの官庁でもだいぶ使っているようでありますが、特に外務省は二十二億からことしは二十三億一千万以上の大きなお金を使っているわけです。そこで伺いたいのですが、この報償費というのはどういう性格の金か、それを伺いたい。そしてこの報償費会計法的といいますか法的根拠はどこにあるか、その点伺いたいと思います。
  10. 北田栄作

    北田説明員 報償費と申しますのは、国が国の事務または事業を円滑かつ効果的に遂行いたしますために、その当面の任務のほか、状況に応じましてそのつどの判断で最も適当と認められる方法によりまして機動的に対処するための経費でございます。
  11. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それは性格ですね。それでは会計法第何条に基づいてこういったことが組まれているわけですか。
  12. 北田栄作

    北田説明員 これは国の行政活動をまかないますための必要な経費として予算に計上しておるものでございまして、特にどの条項によって支出をするというような法律項目によっているものではないであろうと存じます。
  13. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 会計検査院に伺いますけれども、私も予算書決算書を見まして非常にわからないわけです。大ざっぱに二十二億一千何百万という形で、その内容についてもきわめて簡単に出ているだけでございます。いろいろ聞いていきますと、情報収集費であるとか機密費であるとかということで、非常に言えない面があるんだということでございますが、国民立場から言いますと、二十二億も二十三億もお金を使っているわけでございますから、当然その実態が明らかでなければならないし、また国民立場から言うならば、一円たりともその使途に不明な点があってはいけないと思うのです。その点について会計検査院は、いままでこのことについて事前検査あるいは事後検査をやったのかやらないのか、その点もあわせて承っておきたいと思います。
  14. 中込良吉

    中込会計検査院説明員 報償費につきましての検査につきましては、これは書面検査実地検査、これをやっております。書面検査と申しますのは、報償費支出がありますと、外務省のほうから報償費支出内容についての書類が出てくる、これを院の内部で検査するということでございます。しかし報償費につきましては、科目の性質上、情報収集費とかあるいは外交工作費とか、そういうようななかなか書面検査ではわかりにくい面が多いかと思います。そういう面につきましては、これは実地検査に参りまして、大体一年に一回外務本省検査をやっておりますが、その際に外務本省支出官のところにあるいろいろな証拠書類、こういうものについていろいろ検討し、あるいはその際に関係者からいろいろ説明をしていただく、そして内容を確認していく、こういう状況でございます。
  15. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 会計課長に伺いたいのですけれども報償費の細目について伺いたいと思うのです。
  16. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 私からお答えいたします。  外務省報償費は、御案内のとおり、予算書では外国との外交交渉を有利に展開するために使用するということになっておりまして、考え方によりますれば、ある程度情報収集費と申しますか、そういったものが大本になるべき費用だと思っております。いろいろに使っておるのでございますが、在外公館における外交活動情報収集、これが大本になりまして、ほかにはいろいろの調査費、それから国際会議なんかに参加いたしますとき、それからまた各種使節団特派大使等が派遣されるときに、それに外交工作をお頼みしまして、これに外交工作費を差し上げる。それからあるいは招待外交、これも外交活動の一部でございますが、招待外交についてこれを使う。それからあるいは災害、突発的な災害外国でございまして、たとえばトルコで地震があったとか、そういうふうなときにこれに見舞い金を差し出す、これも一種外交工作費と考えております。大体そういうふうな形で使っております。
  17. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 その使途については私も概括伺っておりますが、大ざっぱに分けまして国内でどれくらい使っているか、国外でどれくらいの予算を使っているのか、あるいは一在外公館にどれくらいいっているのかというくらいは、たとえ情報収集費といっても言えるかと思うのです。そういった点について金額をあげて説明願いたいと思います。
  18. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 本省在外との区分は予算書にはっきり出ておるわけでございまして、たとえば今回御審議を願いました予算につきましては、本省分が七億二千三百万、それから在外分が十五億九千万という形になっております。これの特に在外でございますが、在外の分け方と申しますか、各公館に対する配分のしかたと申しますのは、これは基本的にはある程度まで大きな公館には大きなものを配賦する形になるわけでございますが、年度中にいろいろ問題がありまして、機動的に配賦いたしますものでございますから、結果を見ないと最後にどれだけ配賦したかということははっきりしたものは出てまいりません。
  19. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そこが聞きたいところなんです。といいますのは、たとえば昨年は二十二億一千何百万、ちょうどことしは一億円ふえた。何についてふやしたのか、その点についても全く不明でありますが、その点いかがですか。
  20. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 これはこういう経費性質上ほかの予算のようにずっと積み上げて一億になったというような種類のものではございません。考え方といたしましては、今回は万博の問題がございまして、万博につきましては特殊な費用予算化いたしたわけですが、万博について、いわゆるナショナルデーに来る人以外にずいぶんたくさん人がやってくる、そういうふうなときにいろいろ外交工作を行なうことがあり得るだろうと思います。そういうことも一つございました。  それからもう一つは、全世界的に物価騰貴になっておりますものですから、いろいろどうしても費用が上がっていくわけでございます。そういうことでこの費用も毎年少しずつ上げていただいている、こういう実情でございます。
  21. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この報償費使い方についてでありますが、聞くところによりますと、この報償費使い方というのは会計検査院といえどもあまりわからない。確かに情報収集等には使っているけれども、使った簡単な領収証はあるとしても、ほとんどが官房長、次官の胸三寸できめられている、こういううわさもあるわけでありますが、その実態はどうなっているのか、まず会計検査院に伺いたいのです。
  22. 中込良吉

    中込会計検査院説明員 この実態につきましては、一応私どもといたしましては、証拠書類、それから関係者からの説明の聴取、そういうことによりまして、一応支出段階においてはとらえておる、正しく使われておるという心証を得て検査をいたしておる、こういうことでございます。
  23. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 四十四年度は現在やっておる最中でございますね。四十三年度分について会計検査院報償費について検査したものと思うわけですけれども、その状況、そして会計検査院でいつも出しております計算証明規則第十一条に基づく報償費等簡易証明状況、こういったことについても簡単に聞きたいわけです。きょうは資料としてはないわけですか。——それはあとでいただくことにしまして、外務省分についてだけ伺いたいと思うのです。その四十三年度の分においてもはっきりと領収証をもらったもの、あるいはまた、先ほど発言ありましたように、外務省側において持っていなさいという簡易証明分といいますか、これはどのくらいの金額になるのか、その点について伺いたい。
  24. 中込良吉

    中込会計検査院説明員 四十三年度報償費につきましては、昨年の四十四年六月九日から四十四年六月十二日までにわたりまして、課長以下六名、これは外務省に出張いたしまして実地検査をいたしております。報償費の額につきましては、四十三年度外務本省分が六億二千三百十万、それから在外公館が十三億九千九万九千九百九十七円、そのうちいわゆる簡易証明と申しておりますが、実地検査の際に一応証拠書類を確認する、こういうものは外務本省分について三億五千三百六十六万七千五百十二円、それから在外公館、これについて十億四千七百八十三万四千六百六十五円、こういうことになっております。
  25. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するにいろいろな事情はありましょうけれども、われわれから言うならば、外務省の中ではっきり公表できない分というのが在外公館、いわゆる国外費においては十億あった、それから国内においては半分の三億あった、こういうことでございますね。
  26. 中込良吉

    中込会計検査院説明員 これは私どものほうの取り扱いといたしまして、報償費性質上、そういうものにつきましては証拠書類領収証とかそういうものを支出官の手元に保管させておく、こういうのが先ほど申しました三億五千三百万あるいは十億、こういうことになっております。
  27. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それはあとでお伺いすることにいたしまして、先ほど官房長からも伺ったのですが、使う項目でございますが、災害だとか接待費だとか、そういうような項目で出すことがいいのか悪いのか。報償費性格については、非常にあいまいな、定義みたいなものを聞いたわけです。機密費みたいなものじゃないかというふうに感じているわけですけれども接待費であるとか、災害に対する見舞い金であるとか、あるいはまた公賓接待公賓接待というものについては、ほかに明確に項目があるわけですから、そういうものについては何も報償費を使っていく必要はないように思うのですが、その点どうなんでしょう。
  28. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 これは一応私からお答えするというよりも、むしろ予算制度全体の問題だろうと思うのでございますけれども災害というようなものにつきましては、年度前におきましては予見できないわけでございます。したがって、ある意味では、予備費というようなものになり得るものかもしれませんけれども災害見舞いというもの自体が国交——たとえばトルコ災害が起こる、そこで各国が見舞い金を出しておる、日本も出すことがいわゆる日本トルコとの間の国交に非常に役に立つわけでございます。したがって、そういうふうな観点から見ますれば、一種の機動的な経費として報償費の中に入れていくということも理由のないことではないと私は思うのでございます。また招待のほうのお話でございますが、これも、たとえば新興途上国の方々が日本をごらんになったほうが、そことの国交に対して非常に都合がいい場合があるわけでございます。そういうときに、向こうの費用では来られない、あるいはこちらが滞在費を持ったほうがそのためにいいというような場合がたびたびあるわけでございます。したがって、予算制度全体の問題として、そういうものはほかの予算に入れたほうがいいというお説はあるわけでありますが、いまのところは報償費に入れて使わせていただきたいということでございます。
  29. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに私たちが率直に疑問に思いますのは、外務省としては、今度の設置法の中にもありますように、資料部調査部にするとか、いろいろなことがございますが、項目的には別々にあるわけです。それをごっちゃまぜにしている。言うならば報償費というものは、非常にどんぶり勘定みたいな、その場限りの金で、何かあるたびに使っている。私は、むしろ報償費というものはそういうのではなくて、情報収集なら情報収集というものにしぼるとか、あるいはほんの限られた機密費に使うならともかくとして、ずいぶんとその幅を広げた使い方については問題があるのじゃないかと思うわけですね。その点について会計検査院はどのように考えておられますか。
  30. 中込良吉

    中込会計検査院説明員 それはやはり予算編成の問題と予算審議というような問題になると思うので、私のほうとしてとやかく申し上げますことは差し控えたいというように思うわけでございます。
  31. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 大臣に伺いたいのですが、この報償費について非常にとやかくうわさもあります。あいまいであるとか、あるいはまた決算のときには、何だかんだとこの問題について質問してもわからないということが多いことは事実なんですね。新聞等にも外務省のこういう報償費については非常に問題がある、そして使途の明細についてはっきりできない、いわばつかみ金みたいなものだ、しかも国外においても、在外公館で一般の交通費等や、あるいはまたその他の不明朗なところにもこの金が使われているんじゃないか、こういうようなことがいわれているわけでありますけれども、こういったことについて外務大臣はどのように思われるのか、簡単に所見を伺いたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まあ制度の問題については、いろいろの御意見もございましょうが、私は率直に申しますが、日本外交をもっと活発に展開していくためには、私は報償費は非常に少ないと思います。毎年予算の折衝のときに私は痛感いたしますが、このぐらいの報償費ではとても十分な外交活動はできない。したがって、制度の問題は別でございましょうが、ひとつ日本外務省予算全体をごらんいただいても、四百億というような程度予算は、諸外国外務省予算に比べ、あるいは予算全体の中に占める外務省予算比率等を比べてみましても、とても私は足りないということを率直に訴えたいと思います。昨日の委員会においても、設置法に関連して、もっと活発に外交活動をやれ、それには必要な点はもっと協力してやるべきだという野党からの御意見もあって、私は感謝申し上げたくらいでございまして、そういうことでございますから、いまおことばにありましたけれども、これが何か変なところへ使われているというようなことは、私はそういうことについては断じてそれを承服するわけにまいりません。
  33. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私も、情報収集費についてそのほとんどが使われているというのならば、そのためにきわめて少ないというならば、それでもいいと思うわけです。しかし、それがたとえば公賓接待とか、あるいはほかの交通費であるとかいうところに使われておって、四十五年度報償費等についてはますます情報収集費が少なくなるんじゃないか、こういうふうにもいわれているわけですけれども、その点の使い方についても、情報収集という一つのものについてのみ使うならば、またそれだけの理由があるならばいいわけでありますけれども、その他に使うことについては、私は問題があるんじゃないか、こう思っておるわけです。そしてまた、この報償費のことを国際的に見ましても、大体外務省予算の一%が普通の常識だ。しかしわが国は四十四年度は五・六%も使っている。今年度については五・一%になっているけれども比率からいったならば国際的に非常に多いじゃないか、こういう声さえあるわけでございます。ですから、私が申し上げたいことは、前回やりましたあのハイジャックの問題にいたしましても、情報収集については他国の情報網にたよったり、わが国独自の情報網がなかった。あるいはまた防衛庁長官の答弁にもありましたように、その情報収集は非常に弱い。たとえば外務省との関連においても非常に古い情報が多い、いい情報があってもそれがおそくなる、こういうことも長官が答弁しているわけですよ。そういった点について、情報収集について使うのはあたりまえだけれども、純粋な、もうちょっと使用の範囲を狭めた、そして情報収集にしぼった使い方をすべきじゃないか、こう思うのですが、その点大臣いかがですか。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういう点で、制度的に改善の余地がありますならば、積極的に改善を考えてもよろしいと思いますけれども、これは外務省だけでやれるものでもございません。予算全体の仕組みの問題にもなりますから、そういう点はひとつ十分各省とも御協力いただいて研究をすることにしたいと思います。
  35. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 じゃ、要するに国外においての情報収集でございますが、その情報収集のしかたに人を使って収集することはありますか。
  36. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 ございます。
  37. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 防衛庁ならば、アタッシェといいまして、防衛駐在官が、今年度一国ふえまして十三カ国かにアタッシェが行なっております。外務省は現在全部で百十幾つですか、兼ねておる館もあると思いますが、そういった百十何館の中に全部——大使が兼ねるとか、あるいは人を使って行っておるということになるわけですか。
  38. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 いまのは防衛官の問題でございますか。
  39. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 外務省からです。
  40. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 そういう情報収集官と申しますか、これは外務省のいわゆるプロパーのと申しますか、外務省から出ていった連中がやっておることが大部分でございまして、もちろん防衛庁の方がいらっしゃっておるところは、防衛上のことと申しますか、軍事のほうの問題もやっておりますし、それから経済官庁から行っておるところは経済関係のこともございますが、その点情報と申しますのもピンからキリまでございまして、新聞のものもございますし、普通の雑誌なんかに出ておるものもございますし、あるいは先生がお考えになっておるような種類の情報もございますが、そういう意味ではすべてのものがそういう活動をやっておるということは申し上げられると思います。
  41. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 たとえば現在カンボジアとか、またラオスですか、ああいうところは、いろんな最近の情勢が非常に不穏でございますが、こういった点について外務大臣は、関係各国の方々を含めて何らかの手を打たなければいかぬ、また会議をやるべきじゃないかという発言をなさっておるようでございますが、こういった場合、どういうような形で情報を収集しておるのか。それからまたどういうような判断のもとにこのようなことを大臣は考えておられるのか。その点を伺っておきたいと思います。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 カンボジアの状態については、政府としても非常に重大な関心を払わざるを得ない状況にあります。流動的ではありますが、相当急速に情勢が変化する可能性もあるように見受けられますから、力による紛争はこれ以上拡大しないようにすることがまず第一であり、幸いにアジアの各国あるいは太平洋沿岸諸国をも含めて同じような見解を持つ国が相当の数ありますから、一度相談をし合って、そしてできるなら一つ考え方をまとめて次の工作に移りたいという考え方は持って、そういう方向で努力をしておるわけでありますが、その基礎になります情報収集というようなことについては、関係外交機関をあげて活動をいたしておるわけであります。特にこの点について特別な組織、こういうものをつくっておるわけではございません。
  43. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 まあそういう情報の正確な収集、また分析が正確でなければならぬ。中途はんぱな情報収集は、いたずらに相手国に刺激を与えたり、または中途はんぱな収集によって判断を誤るならばたいへんなことになると思うのです。したがって、こういったことについて、さらに今後は力を入れてやるべきであると私は思うわけでありますけれども、それにしても、その報償費というものの性格からいいましても、もう少し情報を集めるように努力すべきではないか、こう私は思います。  そこでさらに伺いたいのですが、国外においては、いろんな収集のために今年度また十五億ほど予算が組まれて使われます。国内においては七億使われるわけでありますが、これも大体どういう範囲に使われるのか、その点簡単に伺いたいと思います。
  44. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 これはどれがどれだけのものを使っているかということは、実はちょっと御遠慮させていただきたいと思いますけれども国内でも情報収集の問題があるのでございます。あっちこっちの人が参りますし、それからこの中での運動の問題もございますし、いろいろと外交工作的な情報の収集というのはあるわけでございます。それからあちこちの高官の方が来られますから、そういう意味での外交工作費というのはあり得るわけでございます。それから一種招待外交と申しますと、先生にしかられるかもしれませんけれども招待外交費用というのは国内で使うわけでございます。大きなところと申しますと、そんなところだろうと思います。
  45. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに、先ほどから言いますように、予算書の中に幾らでも公賓招待とか接待なんか出ているわけです。それをわざわざ報償費から回す必要はないのじゃないかと私は思うのです。確かに万博があって海外から人を呼ぶにしても、そんなことは前からわかっておることでありまして、そういう理由がつけば、大蔵省だって幾らでも認めざるを得ないと思います。私は要するにそんなことにばかり金を使われた場合には、本来の機密費であるものの使い方、あるいは情報収集に対して力が入らぬということを指摘しているわけです。そしてこの外交工作はいろんなことがあるといいますが、それでは具体的に伺いますけれども、たとえばこれは国会に対する工作、政党に対する工作、政党人に対する工作なんというのがあるのですか。
  46. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 いまのお話の中で、ちょっと御説明しておかなくちゃいけないところは、万博に関していろいろ呼んでおる費用は別に予算についております。いわゆるナショナルデーに来られる向こうの賓客と申しますか代表者、こういうのの費用はついております。したがって、その分はこの報償費から出ておるわけではございません。  それから二番目の御質問でございますが、いわゆる政党の工作、それから日本人相手の工作というものはこの費用から出しません。これは全然出しておりません。
  47. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そういったことがもし事実あるとすれば、おかしいわけですね。
  48. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 当然この費用性質から見ておかしいと思います。
  49. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それでは外交工作費の中で、たとえば内閣の調査室に、いろいろ使った先の会社とか依頼人とかいうものが出ております。調査室関係のおもな委託団体等の一覧というのがあります。こういったような形で、外務省においても情報収集のために依頼しているのじゃないかと思うのですが、その依頼先の団体、依頼人の名前を伺いたいと思います。
  50. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 いままで御説明しておりますのは外務省報償費でございますが、内閣のほうの関係はまた別の使い方があると思います。もう一つは、いまのお話の分は委託調査のような形のものはお話しできると思いますが、それ以外の、いわゆる特殊調査とわれわれいっておりますが、その点につきましては御遠慮させていただきたいと思うのでございます。
  51. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は、もちろんそうおっしゃるだろうとは思うのです。なぜ私はそのことをあえて申し上げるかといいますと、内閣調査室ですらも、こういった団体名の一覧も、これは公じゃありませんけれども、少なくともわれわれには公表しているわけですね。ですから外務省であっても、国会のわれわれにはある程度公表すべきではないかと思うのです。外務大臣、その点はいかがでしょう。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま官房長からお答えしておりますように、委託調査を依頼していることは事実ありますし、そういう問題について御説明することはやぶさかでないと思います。
  53. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 官房長大臣からいま答弁がありましたように、その点、何も内容を言えというわけじゃないのですね。ただ、こういうことをどこに依頼しているということがありましたら、お知らせ願いたいと思います。
  54. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  関係各省ともございますような経済関係、その他調査関係の委託調査費的なものが外務省予算にも毎年承認されておりますが、これらにつきましては正規の形によって会計検査院にも報告しておりますし、御要望によって、各省と同じように資料を提供することができると思います。
  55. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いま持っていないわけですね。そこで私は、これ以上いろいろ申し上げますと、確かに誤解を招いたりあるいはまた国会や議員の品位を著しく傷つけるおそれがありますので、言うことは避けますが、ただ外務省筋において非常にいろいろな面でお金が使われておる。しかもそれは外務省の正規の領収書あるいはまた会計検査院の正規の検査を受けていないというものがあるわけでございます。  そこで私は、今後の問題としてここで提起をしておきたいわけでありますけれども、この報償費の扱い方については、次官や官房長にまかせるのではなくて、機密費であってもあるいはまた外交工作費で公表できないものであるにしても、その使い方について、特に外務大臣がこまかく目を通していただきたい。銀座のあるバーにおいては常時使われておるとか、赤坂とかあるいはまた某料亭についてはその筋からいろいろなものが出ているとかいうようなことを私は耳にしているわけであります。今後の報償費使い方を明確にする、それから会計検査院報償費性格についてはもっと明確な指摘をすべきではないかと思うのですが、その点について外務大臣から伺っておきたいと思います。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の率直な感じを申しますと、私が就任いたしましたときにも、いまお話があったように報償費使い方について何か疑惑を持たれている方々があるということを私は耳にしておりましたから、就任と同時にそういうような点についても特に注意を持って省内のやり方を検討いたしましたが、いま申しましたように、私の率直な感じとしては、そういうようなうわさというものは全然根拠のないものであるということを確認すると同時に、現在においても私としても十分注意をいたしまして、かりにも国民的な疑いを受けるようなことのないようにいたしておるつもりでございますが、なお重ねてそういうふうな御発言でもございますから、今後十分に注意をいたしたいと思います。
  57. 中込良吉

    中込会計検査院説明員 検査院といたしましても、報償費につきましては、従来からも、正しく使われるということについては相当突っ込んだ検査をいたしておるわけでございます。御趣旨もございますので、今後ますます十分検査してまいりたいと思います。
  58. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 外務大臣の答弁が今後十分注意をするというお話でございますので、いろいろ資料はございますが、以上で報償費の質問は終わりたいと思います。
  59. 天野公義

  60. 和田耕作

    和田(耕)委員 最初に部分的な問題で御質問したいのですけれども、三月十九日の毎日新聞に載った記事ですが、バンコクの日本人学校に問題が起こったということなんですけれども、この経過の概要をひとつ簡単に報告願いたいと思います。
  61. 遠藤又男

    ○遠藤(又)政府委員 バンコクに日本人学校がございまして、現在十人の先生と、それから生徒が四百二十八人おりまして運営されております。それで、在外日本人学校全体を通じていえることでございますけれども、邦人の長期滞在者の子弟の教育の必要が非常に増大してきておりまして、タイの学校につきましても、その子弟たちに日本国内におけると同様な教育を行なうということで設けられておるわけでございます。タイの日本人学校は、あそこのタイの国の学校の制度法律が非常にうるさいものでございますので、わが大使館の付属のものとして形を整えてやっておるわけでございます。これに、田中さんという校長がおったのでございますが、最近、特に去年の後半になりまして、内部のほうから、つまり先生、それから父兄に非常に評判が悪いということになりまして、これに対して何とか措置をする必要があるという声があがっておりました。その間いろいろいきさつがありまして、大使館からもいろいろ反省を促すというようなことでやってまいりましたけれども、特にことしになりましてから、本人も低血圧の病気ということもございまして、この二月に——任期はこの三月まででございましたけれども、二年の任期が三月に終わるところを一カ月早めて帰したという状況でございます。
  62. 和田耕作

    和田(耕)委員 私も数年前にこの学校をたずねたことがありますけれども、私の見た限りでは在外の居留民の学校では大きいほうだという感じがして、いろいろと内容について説明を受けたのですけれども、こういう問題は今後とも各地で起こってくる問題だと思うのです。最近日本人で海外に行くという人がたくさんある。それが家族を連れていく。したがって教育もしなければならない児童の数もふえてくるという問題なんですけれども、この数年間で在外の学校を経営しなければならないような状態にあるところはどれくらいありますか。
  63. 遠藤又男

    ○遠藤(又)政府委員 現在のところ二十一校ございます。それから各地から日本人学校をつくってほしいという要望がきておりまして、四十五年度予算といたしましては、三校設ける予定になっております。つまり全部で二十四校でございます。これは大体において発展途上国が主でございまして、先進国におきましては、いわゆる補習教育をする形で、現地の学校で勉強した以外に補習をするというかっこうで、別に小規模な補習教育を行なう施設ができております。それで今後とも各地からいろいろな要望がきておりますし、それから日本国内におきましても、経団連のほうからも、海外で日本の会社の方々が活躍するためには、どうしても後顧の憂いをなくするために学校をもっと設けてほしいという要望もございまして、その点は必要度の高いところから漸次拡充していきたいと思っております。
  64. 和田耕作

    和田(耕)委員 日本の教育との関連において、基本的にどのような方針で、そして先生はどのような方法で採用して、その管理はどうしようとしておるのか、外務省と文部省とのこの問題の取り扱いについての基本的な考え方をお聞かせ願いたい。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外国における日本人学校の問題については、私も非常に大切な問題であると思いまして、関心を深くいたしておるわけでございます。ただいま御質疑になりましたバンコクの小学校も、私も一年余り前ですが現状も視察をいたしまして、また関係者とも懇談もいたしまして、非常に参考になったわけでございますが、その後校長問題が出てまいりましたことを私も非常に残念に思っておるわけでございます。今後十分考えていきたいと思いますが、基本的にはいろいろの問題がございますが、まず第一は、教員の資格あるいはその待遇の問題、従来は、たとえば大学の卒業生をそのまま連れていって先生にするというような、その人たちは素質はかりにいいとしても、全く日本国内の教育に従事したことのない人たちが多かったので、これは文部省とも相談をいたしまして、そういう採用の方法はやめることにいたしました。そして各都道府県の教育長からの推薦によって相当の経験を積んだ人を原則的に採用して海外に送る。そして帰りましてからも、在外勤務をしたために、俗なことばで恐縮ですが、損をすることのないような身分上の保障をすることにいろいろ文部省からも協力を受けております。  それから、いまも説明がございましたように、開発途上国の場合においても、小学校というかっこうになっておりますものは、これは義務教育の課程と全く同様の資格を持っております。それから発展国で、たとえばアメリカとかドイツだとかいうようなところでは、これはむしろ日本語の補習教育ということをやりまして、日本に帰りました場合、子供さんたちが日本語において、どうしてもおくれをとりがちですけれども、少なくとも追いつけるような日本語の教育を補習するということをたてまえにしてやるということがいわば基本的な考え方でございます。  要するに先生の素質の向上と定着、そしてまた待遇というのは単なる月給だけの問題でなくて、身分上の保障ということが一番大事なことじゃないか。  それから同時につけ加えて申しますと、近来、特に発展途上国においては、壮年層の非常に活発な人たちが活躍する数がどんどんふえておりますが、それだけに家族を持って定着しないと、いろいろの思わざる事件が起こったりあるいは日本人の権威を傷つけたりすることもありますので、迂遠なようでございますけれども、できるだけ家族連れで商社の方々も勤務ができるように、したがって子女の教育にも憂いのないようにしたい、こういうことを基本的な考え方として持っておるわけでございます。
  66. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは今後特別の法律でもつくって、基本的に本腰でかからなければならないという感じがするわけです。というのは、いま世界を相手に日本の貿易は伸びておる、いろいろな意味で日本人が相当多量に今後外国に出ていく。しかもいままでのように一年や二年おって帰ってくるというんでなくて、だんだん世界の中の日本という状態が定着していけば、各現地現地で日本人が相当長期にわたって腰を据えて仕事をするという状態が今後出てくると思うのです。また、そうしなければならぬと思うのです。これは在外公館の問題でもそうだし、あるいは一般の商社の問題でもそうだと思うのです。とするなれば、いままでのように——バンコクの例は最大の学校ですけれども、これは四百二十八人もおる学校といえば、日本国内でもいなかに行けば相当な小学校なんです。こういうような学校が次から次へと出てくるというような問題を考えても、片手間で便宜的にその場その場当たりの状態で教員を採用し、ばらばらの状態の教員を使って、ばらばらの教育をするというようなことでは、とてもじゃないが、最近の開けゆく日本の要請にこたえられないと思うのですが、こういう対策はどういうふうにお考えになりますか。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはりただいま申しましたような基本的な考え方で時宜に応じて対処していくほかに実際問題としてはないと思います。これは申すまでもないことでございますけれども、いまもお話がございましたが、たとえば特別の立法をしてやるという考え方も確かに一つ考え方ですけれども、ただこれは外国である関係日本法律が及ばない。身分的には学校の先生その他にくふうすれば及ぶこともあろうかと思いますが、先ほども問題になりましたタイの小学校なども、その中のある人は国立大学の付属小学校の教員であるという資格で出張の形にしているような取り扱いをいたしております。これなどもやはり法律的な関係がタイとの間になかなかむずかしいので、実際上の目的を達するための便宜的な措置をとっているようなわけでございますが、ただいま御意見のありましたような点を私どもも建設的に、十分前向きに考えてまいりたいと思います。
  68. 和田耕作

    和田(耕)委員 バンコクの場合は大使館の中にこの小学校があるというわけですけれども、他の二十一校の場合どういう状況になっておりますか。
  69. 遠藤又男

    ○遠藤(又)政府委員 場所によってさまざまでございます。大使館の中にあるというのはむしろ例は少なくて、別に独立の家屋もしくは大きなビルディングの何階を占めるというようなことでございまして、一がいに言えないわけでございます。その場所場所に応じた便利な施設ということでございます。
  70. 和田耕作

    和田(耕)委員 大臣、たとえば日本に韓国人の学校があります。たとえばタイのように現地に三千人も五千人もおるところはそうないと思いますけれども、数千人の日本人がずっとおるというところでは、日本人の義務教育と同じような教育をしていくことにいろいろ支障があるのですか。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは率直に申しますとそれぞれの国の政策や態度にかかるわけでございまして、国によりましては外国人学校法というようなものでもつくってもらって、日本法律的にも全く同等の資格で教育を行なうことのできる場合もあろうかと思いますが、現状におきましてはなかなかそういうやり方は困難のように見受けるわけでございます。
  72. 和田耕作

    和田(耕)委員 大使館の構内でやる分には——そういうことはできないものですか。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは法制的にはあるいは可能かとも思いますが、バンコクの小学校をつくりましたときのいきさつはいろいろ紆余曲折があったようでございますが、どうやら大使館附属小学校ということで、タイ国政府としては黙認とでも申しますか、そういう取り扱いを受けているようでございます。したがいまして、いままでのところこれは例外中の例外であったわけですが、こういったことがはたして他国においてやり得るかどうか。できればこれも一つの適切なやり方じゃないかと思います。
  74. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは非常にむずかしい問題だと思いますけれども、たとえばタイのように大使館の構内で、その国の政府と折衝をして、非公認でもいろいろ事実上の打ち合わせができるならそういう方法をとるべきものだと思うのです。つまりそうしないと、先ほど申し上げたように、在外公館にしてもあるいは一般の商社の人にしても日本人が定着することができないわけですね。そういうようなことも考えて、外国におけるそれぞれの取り扱いがあると思いますけれども、これは実際上の義務教育なんですから、大使館の中でそういう義務教育と同じような教育を与えられる機会をつくる方法が何とかしてできないものか、こういう感じを持っておるのですが、その点どうでしょう。
  75. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は先ほど来申し上げておりますように、相手国の態度、見解いかんによると思います。それから一般的に申しますと、大使館の構内でありましても、教育のために施設をつくるということになりますと、法律論としてそこはおそらく大使館構内としての治外法権的な特権は認められないのではないかと思いますので、そういう点なおとくと研究さしていただきたいと思います。
  76. 和田耕作

    和田(耕)委員 参考にお聞きしたいのですが、在日アメリカ人の子弟の教育、この問題は、どういうふうに扱っておりますか。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと突然のことで、私もしかとしたお答えはできにくいかと思いますが、私の記憶では、東京にありますアメリカンスクールその他は日本の法制上は各種学校として認めているかっこうになっていたと思います。これは文部省でないとしかとしたことは申し上げられませんけれども、私の記憶ではそうなっていたと思います。
  78. 和田耕作

    和田(耕)委員 文部省の沢田国際文化課長いらっしゃいますか。いまそういう問題、たとえば日本におけるアメリカの学校、これはどういうふうな資格、日本との関係でどういうことになっておりますか。
  79. 沢田徹

    ○沢田説明員 ただいま愛知外務大臣からお答えがございましたように、法制上の取り扱いといたしましては、各種学校という取り扱いでは、アメリカンスクールのほか、たとえば日仏学院の中にある数人のフランスの学校その他も同じような扱いでございます。
  80. 和田耕作

    和田(耕)委員 つまり日本がそういうふうな扱いでもって、外国のたくさんの人の教育をそういうふうにしておるという問題を、同じように日本人として、たとえばアメリカにおいてもあるいはフランス、イギリスにおいても、あるいは開発途上国においても、そういう扱いができないはずはないわけですね、努力によれば。そういう問題について、そういう教育ができるように外務省として努力をしてみようというお考えはないのですか。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともでございます。そういう方向にあらためて努力をいたしたいと思います。
  82. 和田耕作

    和田(耕)委員 特にバンコクの例は、これは一つのちょっとしたスキャンダルのような事件ですけれども、やはりその背景には、教員が無原則に、その場その場の場当たりの先生が雇われておったり、その給与がまちまちであったりというような問題があるわけですね。こういうようなことも考えて、今後はやはり伸びていく、世界に広がっていく日本なんですから、そして義務教育という大事な教育の場なんですから、政府もひとつ努力をして、できるだけ日本と同じような教育ができるような、そういう配慮をしてもらいたいと思います。いま大臣からそういう方向でできるだけひとつ努力をしてみようというわけですから、この点文部省の責任者の方からもひとつ気持ちを聞かしていただきたいと思います。
  83. 沢田徹

    ○沢田説明員 ただいま外務大臣からもお話しがございましたように、文部省でもこの問題はたいへん大事な問題と存じておりまして、文化庁長官からも事務当局に、早急にこの問題について研究するようにという御指示がございましたので、目下事務当局で関係者と相談中でございます。
  84. 和田耕作

    和田(耕)委員 次に最近の日中覚え書き貿易についての問題を二、三お伺いしたいと思いますけれども大臣、この前総理大臣もおっしゃっておりましたけれども、政府の方針としては一つの中国だ、台湾は中国の国内問題であるというような御見解であったと思いますけれども、その意味を簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 端的に申しますと、国民政府としてもあるいは北京政府としても、一つの中国ということを双方ともに非常な強い意思表示をかねがねしているわけでございますから、私どもとしては、ひとつその問題は平和的な話し合いで中国の国内問題として処理をしてもらいたいということを願望いたしておるわけでございまして、それ以上この問題については政府としてはコメントしない立場を従来からとっておるわけでございます。同時に、この問題解決のために武力抗争があるということにでもなり、かつその武力抗争が相当大規模な戦闘行動というようなことにでもなりますと、近隣のわが国としても対岸の火災視では済まない場合もあり得る。そのことだけは率直に申しましてどうしてもやめてもらいたい。そういう点で、今回の覚え書き貿易に関連する共同声明は、やはり依然として北京側もいかなる手段によっても台湾は解放するのだということがあらわれておりますことは、残念に思っておる次第でございます。
  86. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは、たとえば日本国内でも、台湾は中国の内政問題だという——社会党さんを例に上げては悪いのですけれども、社会党さんはそういうような主張をなさっております。自民党さんも一つの中国ということを言っておりますけれども、その中身は全く逆である。私はそういう印象を受けるのです。社会党さん、ごめんなさい。社会党さんの言う一つの中国というのは、大陸中国にポイントを置いた中国である。自民党さんの言う一つの中国というのは、台湾にポイントを置いた一つの中国であると考えてよろしゅうございますか、主張のしかたの内容から見て。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま申しましたように、一つの中国というものについて、政府としてこれはこうであるということは、先ほど申しました以上には意見を申すことは差し控えたほうがよろしいと考えております。ただ、いまの和田さんの御質疑の中のお気持ちは、こういう点があろうかと思います。その点を申し上げますと、政府としては、サンフランシスコ講和条約等に関連いたしまして、国民政府が中国を代表する政府であるというたてまえで中国と平和条約を結んだわけでございます。その経過、沿革等をおさしになっておるかと思いますけれども、当時の選択、そのやり方は私は違っていなかったと思いますけれども、世界情勢は常に流動しておるということを別に考えなければならない。また中国大陸に中国の人民がおり、広大な国であり、そして日本とは隣国である。この事実を私どもとしては、やはり事実を事実として認めないわけにはいかない、こういう立場でありますことは、従来からしばしば申し上げておるとおりでございます。
  88. 和田耕作

    和田(耕)委員 私、この問題を特にお聞きしたいと思いましたのは、今度の松村使節団——藤山さんという有力な人も参加しておられる、古井さんも行っておられるというこの使節団の代表的な共通の見解といっていいと思うのですけれども、台湾という問題をあいまいな状態にして、つまりいまの政府の見解のように、一つの中国と考えておりますというようなことではもう処理し得なくなってきたのだということを共通の見解のように承っておる。きのうも藤山さんの話をいろいろ聞いたのですけれども、私は台湾の問題については割り切っております、その割り切るということは、やはり大陸中国を焦点にして、そしてこの問題を処理しなければならないというふうな意味だと思うのですけれども、こういうふうな問題に直面をしておるとお考えになりますか。あるいはまだまだそういうふうな問題について腹をきめないでも、中共との貿易だけでなくて大陸中国との折衝ができるというふうにお考えになっておりますか、その点についてお伺いしたい。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、政府としてこの二つのいずれを選択するかという立場はとるべきでない。そういう意味で、藤山さんのように政府としては割り切るところにはいけない、現状においてはこれが政府の立場でございます。
  90. 和田耕作

    和田(耕)委員 それでは、どのくらいの年限かわかりませんけれども、しばらくは、やはりこの日華条約を基本にした台湾政策というものにポイントを置いて、そしてそれを前提として大陸の中国との交渉を開いていく、その方針に変わりはないわけですね。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 北京政府に対しましては、政府としてはしばしば申し上げておりますように、抑留邦人の問題もあることでもございますし、いつどこででも政府機関同士の接触はやりたいということで、いろいろ努力を真剣に重ねてまいっておりますが、まだ何らの糸口が開けないというのが現状でございます。  それから、お尋ねからはずれるかもしれませんけれども、たとえば現在、カナダあるいはイタリア、ベルギーというようなところもこの中国との関係ではずいぶん苦心しておるわけでございますけれども、やはりその問題について北京側との合意ができないので、長いことかかってこの話し合いというものがまだ継続をしておる。そういう状況から見ましても、国際政局の上でも、この問題というものは非常にまだ熟していないというような感じが私にはするわけでございます。したがいまして、緊張を緩和したい、それから体制の異なるところとも親善関係をつくりたいという基本方針からいって、かつ隣国のことでもございますから、何か日本としてよい方法はないか、しかし、この一つの中国問題についていずれかを選択するというような立場は、日本の政府側としては表明するわけにはいかない、こういうわけでございまして、それ以上は、ちょっといまの段階では、まだ政府の見解を申し上げることはできないと存じます。
  92. 和田耕作

    和田(耕)委員 この前、この内閣委員会の席上で、佐藤総理は、今度の覚え書き貿易における周総理の発言、いわゆる沖繩の問題はペテンだとかいうことに対して、総理大臣は、内政干渉もはなはだしいということばをお使いになった。これは私もそういう感じがいたします。しかし、また逆に、佐藤さんがニクソンさんとの共同声明をなすった、この共同声明の中には、台湾水域と韓国の問題についての重大な関心を示され、それに対して、アメリカ軍のもし事があった場合の発進等については、イエスもノーもあり得るというような含みの発言をされた。これに対して周総理は、内政干渉であるという発言をされたことがあるが、これをどういうふうにお思いになりますか。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は、先ほど触れましたように、一つの中国というものは、中国自身でひとつ解決をしてもらいたい。同時に、これが武力抗争で解決というようなことは、われわれとしてほんとうに望んでいない。しかし、万々一にもそういうことが大規模に行なわれるようであれば、日本の国の安全ということに直接関連してくる場合があり得る。こういう危険が想定されないように、いわば抑止理論ということになりましょうか、それに備えるという気持ちをあらわしておるのが共同声明であって、これは日本の国の安全という立場からの見解の表明であるわけでございます。そして同時に、共同声明ではございませんし、アメリカとの合意をもちろんいたしたものではありませんけれども、共同声明の直後に、佐藤総理自身がプレスクラブで行なった演説において、一方においてそういった台湾海峡で事が起こるなどということは、自分としては予見しない、したくないことである、こういう趣旨を述べております。また、さらにつけ加えて申し上げますならば、一九六七年の佐藤・ニクソン会談の共同コミニュケと昨年秋の共同コミニュケを比べてごらんいただきますと、緊張緩和という線が非常に強く出ていると私は思うのでございます。また、たとえば六七年の共同声明には、北京の脅威というような文字も使われておりますが、そういうことは今度は決してございません。そういう点から、この日米共同声明の日本の真意というものがそういう点にあるんだというこの考え方、この背景というものを私は内外の方々がよりよく認識していただければまことにしあわせである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  94. 和田耕作

    和田(耕)委員 いや、その点よくわかります。わかりますけれども、政府が一つの中国であるということを公言をしておるということを前提にして考えてみますと、周総理は、やはり自分たちが一つの中国だと考えておるこの台湾に対して、重大な紛争が起こった場合に、日本は何らかの形でこれに対して関心を持ち、そしてこれを日本に悪いようなことにならないような行動に出るというあの声明は趣旨のものですね、こういう声明をした場合に、周総理にとってみれば、これは内政干渉である、何を言うんだというふうな意味の発言をしたわけですけれども、これも考えられることですね。こういう発言というものも、単に事実無根というふうには言い切れない問題があるんじゃないでしょうか。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私とすれば、いま御説明いたしましたような真意というものが周さんに理解されれば、内政干渉というふうには受け取らないはずであると、こういうふうに考えているわけでございます。
  96. 和田耕作

    和田(耕)委員 その問題になりますと、これは意地の悪い質問ではございません、大事な問題だと思いますが、今度は、佐藤総理が内政干渉もはなはだしいとやり返した、これも周総理に言わしますと、向こうのほうの意図をよく理解してくださればという議論にもなるわけですね。そういうようなむずかしい状態にいまきているという感じがするわけなんです。つまり、私は、先ほど申し上げたとおり、佐藤総理が顔をまっかにして、内政干渉もはなはだしい、こう言った気持ちはわかるし、そういうふうな議論も十分成り立つと思います。しかし同時に、いまも申し上げたように、周総理が日米の共同声明を見て、これはたいへんだ——あれは韓国の問題だけならばあんなことを言わなかったと思うのですけれども、台湾水域——一つの中国と政府は認めておる、自分もそう確信しておる台湾水域の問題については、日米共同声明でああいう発言をしたということに対して、周総理が内政干渉だと言うこともわかるわけですね。問題は、このように両方から内政干渉だと言うことは、これは理屈のあることだし、ということになれば、結局この手詰まり状態というものを打開していかなければならないということになってくるわけだと思うのですね。こういう点で、両方の国がそういう問題を率直に話し合ってみる時期にきているんじゃないか、こういうことを私は申し上げたいんです、私の申し上げているのは。これは日本国民あるいは向こうの中国の国民にそれぞれいいようなことを言うということは楽なことですけれども、そういう問題ではいまの状態は解決できない。世界をまたにしての日本なんですから、秘密も何もないと思うのです。もっと率直な態度で話し合ってみるということが必要じゃないのか、そういう感じがするのですけれども大臣どうお考えでしょうか。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私もお考えの御趣旨とされておりますところは理解ができるような気がいたします。そこで今日のような状態でございますと、なるほどなかなか困難だなという感じは同時に率直にするわけですけれども、やはり政府としては、かねがね言っておりますように、政府ベースの接触が、大使級会談をいつどこでもということをこちらはプロポーズしているわけでございますから、そういう対話の場ができまして、そして全く自由な立場で、全く対等な立場で、閉鎖的社会の中におけるつくられた対話という形ではない、ほんとうに自由な形の中で、しかも政府間の機関同士で率直な意見を交換の場ができれば、こういう点は相当前進できるのじゃないかと考えております。  ただ、こうした共同声明を見てみたりあるいはその直前に行なわれた北鮮との共同声明を読んだりいたしました私の率直な読後感といたしましては、向こうには向こうの事情もあるようで、なかなか困難だなという感じはいたしますが、しかし、私はやはり日本もだいぶりっぱな国になってきたと思いますので、一喜一憂とか、一言一句に動じないで、冷静にかつ真剣に事に処することがこの際最も大事なことではないだろうか、こういうふうに感じておるわけでございます。
  98. 和田耕作

    和田(耕)委員 いまの政府間の大使レベルの交渉というのは非常にいいことだと思うのですが、大臣、この問題は正式に——正式といったって方法はむずかしいと思うのですが、中共にその意思を半公式といいますか正式といいますか、こういうことをやってみようじゃないかという申し出をしたことがありますか、あるいはしようという気持ちがありますか。
  99. 愛知揆一

    愛知国務大臣 しようという気持ちを持って、ある種の工作はいたしておると申し上げても言い過ぎではないと思いますが、そのとりました方法その他についてはいましばらく御説明を遠慮さしていただきたいと思います。私の心証としては、北京政府には通じておる、このように考えております。
  100. 和田耕作

    和田(耕)委員 今度の声明合戦ですけれども、中共もあんな激しいことばで言っておるにもかかわらず、覚え書き貿易というものを成立さした。そして日本のほうも、政府もあるいは自民党も、きょう強い声明をするようですけれども、しながらも、貿易はやめだ、そんな国とは貿易しないということは全然言っていないような声明になるようです。つまり両方ともおつき合いをしたいという気持ちがあるわけですね。それも相当強く持っておるというふうに見てもいいわけですけれども、何かの形でいま大臣がおっしゃったような意思表示というのですか、向こうとの接触をとって早く大使レベルの話し合い、つまり政府間の話し合いの道を開いてもらいたい。これはいろいろ他に副作用があります、台湾というものがありますけれども、そういうようなことについてぜひともひとつお願いをしておきたいと思います。  質問を終わります。
  101. 天野公義

  102. 東中光雄

    東中委員 大臣にお伺いしたいのですが、軍縮委員会に加入された目的及び軍縮に取り組む政府の基本的方針をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  103. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一口に申しますと、軍縮委員会は、国連総会というものを別にいたしますと、多数国間で軍縮問題を継続的に討議する唯一の場になっており、十八カ国軍縮委員会ということでだいぶ活発に活動を続けておったわけでございます。  政府としても、世界平和の維持、そして特に核軍縮というようなことを主題にするこの会議の進行についてはかねがね大きな関心を持っておりまして、参加を希望しておりましたところが、幸いにして昨年の七月参加することができました。自来、政府としても力を入れまして、日本立場なり主張というものがより強く反映できるように努力を続けておるわけでございます。  日本としてどういうことをやらんとしているかということについては、軍縮委員会の政府の代表の発言等によって御承知いただいておると思いますけれども、まず一歩一歩、できるところから軍縮の措置を積み重ねていって、そして終局的には完全軍縮というところまでいけるように堅実な歩みを続けていきたい。一言で申しますとそういう考え方で軍縮委員会に参加して、また基本的にはそういう考え方で努力を続けたい、かように考えておるわけでございます。
  104. 東中光雄

    東中委員 アメリカはいま、たとえばシーマンズ米空軍長官の証言にもありますように、この六月にはMIRV、多弾頭ミサイルを展開しようとしておりますし、また弾道弾迎撃ミサイルの配備も進行しておるようであります。このようなアメリカの大量報復戦略ともいうべきものに復帰するのじゃないか、こう言われておりますが、まさに軍拡方針といってもいいと思うのですが、こういうアメリカの方針に対して、軍縮という点から政府はどのような態度をとっておられるのか、お考えをお聞きしたいと思います。
  105. 愛知揆一

    愛知国務大臣 アメリカの態度についての御質問でございますけれども、政府の見方といたしましては、一つは現在ソ連との間のいわゆるSALT交渉が継続されておるということに注目と期待を持っているわけです。それから同時に最近の各種のニクソン教書などを見ますと、私は、アメリカは軍備拡張の方向ではない、逆に縮小の方向に向いている、こういうふうに見ておるわけでございます。たとえば、このごろよくいわれておりますけれども、米国はいままで同時に二つの大戦と一つの火消し戦争をやれるだけの兵力を持っているようにつとめてきたけれども、これからは一つの大戦と一つの火消し戦争のみを実施し得るように縮めるのだということをいっていることなども、端的にこの情勢をあらわしているのではないか。概略、このように観測いたしております。
  106. 東中光雄

    東中委員 考え方ということではそういうふうにいっておりますけれども、私、先ほど申し上げましたように、現実のたとえば核兵器というような問題からいえば軍拡になっていると思うのですが、そういう動き自体についてどうお考えになっておるか、重ねてお聞きしておきたいと思います。
  107. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、自国でどうやるかということ以外に、他国に対してもSALTの交渉などを非常に真剣に始め、かついま継続しておるということは、米ソ両国ともに、いま特に核の戦備についてのお尋ねでございますが、こういう努力が真剣に始まっているというようなことは、やはりそれだけの必要性の認識のもとに立っているのだと思います。ひとり自国の政策の展開だけではなくて、他国との間にもこうした動きが具体的に出てきているということから見て、私の情勢分析は間違っていないのじゃないだろうか、こういうふうに考えます。
  108. 東中光雄

    東中委員 軍縮委員会での朝海前代表は、均衡のとれた軍縮ということを昨年の七月三日の演説で二点にわたって言っておられるようですが、この均衡のとれた軍縮というのは一体どういうことを言っておられるのか。政府の考えとしてどういう意味なのかということを明らかにしていただきたい。
  109. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、軍縮会議では一歩ずつ堅実に前進をしていく、そしてコンセンサスを盛り上げるということが絶対に必要でございますから、いまいきなり頭から完全軍縮を呼びかけてみても、これは演説だけに終わる。そこで可能性のある、そして実効のあがるというところからいえば、各国それぞれバランスのとれた程度以上には軍備を持たない、そしてこれを拡大しないというところから押えてかかろうという、そういう趣旨でこの均衡のある軍備ということばが使われたわけでございまして、ねらいとするところはただいま申し上げたとおりでございます。
  110. 東中光雄

    東中委員 朝海前代表が、われわれの理想また目標ということで言われているのは、核兵器の全廃に導くことなんだ、こういうふうに言われておるわけですが、通常兵器についての全廃までは、目標ないし理想としてはいっていない。核兵器ということの全廃が理想であり目標なんだ、こうなっているんですけれども、これはどういうことでそうなるのか。完全軍縮を理想、目標とはしないのかどうか、その点はいかがでございましょう。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはやはり、軍縮会議の従来の進行の状況、環境から見ましても、核軍縮ということが一番の焦点であり、また日本立場からいえば、特に核の、原子力の被害を受けたただ一つの国であり、また核に対して特殊の国民感情をコンセンサスとして持っている国、しかもいわゆるクッド・ハブ・カントリーの上位と申しますかに位している国、こういう立場からいって、核軍縮ということを特に焦点にして主張することがこの段階において最も望ましいことである、そういう観点に立ってその演説をいたしたわけでございますから、さらにそのもっと将来の問題にすれば、通常兵器ということも完全になくすということは理想でもありましょうが、これは先ほども申しましたように、堅実に、しかも一番当面の理想として欲しておるところを主張の中に掲げた、こういう経緯になっておるわけでございます。
  112. 東中光雄

    東中委員 朝海代表の発言では、当面の目標という意味ではなくて、われわれの理想また目標、こういうふうに言っているわけであって、いま大臣の言われているのとはちょっと趣旨が違うように思うのですが、これとの関係でいま日本の軍事力は世界第七位だ、こういわれておりますし、たとえば軍事評論家の久住忠男氏は、数年後の日本は非核保有国中世界最高の軍事力を持つことになるだろう、こういうふうに言われておるわけです。また、愛知外務大臣御自身も、今日の自衛隊を、最強時の帝国軍隊にまさる通常火力を装備しているということを「フォーリン・アフェアーズ」の昨年の十月号で発表された論文の中で書かれておるわけですが、結局通常兵器について自衛隊が世界有数の軍事力を持つようになってきている。これが軍縮の対象にならないというのはなぜなのか、むしろこれは軍縮という面からいえば全く逆行しているように思うのですが、その点はいかがでありましよう。
  113. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはやはり大きな理想と現実の問題として取り上げていただきたいと思いますけれども日本の憲法において許されておる自衛権、この自衛の守りとして、自力で相当程度の武装を持つということが私どもとしては絶対に必要なことである、かように考えます。  同時に、よく申しますことですけれども、徴兵はやらない、海外派兵はやらない、非核三原則を持つというようなことで、非常に大きな制約をわれわれ自身がつくっておるわけでございます。その範囲内においてなし得ることはなすべきであるという、さような見解を私自身も確かに持っていることは御承知のとおりでございまして、いまそれまでもやめる、非武装にするということは、現状の事態において考えておりませんことは、従来のいろいろの機会に明らかにした見解によって御承知おきいただいておるはずだと思います。
  114. 東中光雄

    東中委員 外務大臣御自身が最強時の帝国軍隊にまさる、こう言われているわけですが、最強時の帝国軍隊といえば、世界の軍事大国として最も有数なグループに入っておった、それを上回っておるということであるわけですし、今度の第四次防では六兆円をこえる軍事費の投入、あるいは制海、制空権の確保あるいは公空、公海における武力排除、艦対艦ミサイルの装備、こういったように、自衛隊の質量両面にわたる飛躍的な増強がはかられようとしておるわけで、その軍縮に取り組まれる政府の態度、自衛隊の現状、さらにこれから増強されようとしておる方向という点と合わせて見ると、軍縮委への参加が非常に国民に対しては欺瞞的な役割りを果たすようになるのではないか。ほんとうに軍縮を考えておられるなら、こういう方向はまさに逆行していることになるのじゃないか、こう思うわけなんですが、いま現在の状況だけではなくて、自衛隊の進んでいく方向から見てそういうふうに考えられるわけですが、その点どうでございましょうか。
  115. 愛知揆一

    愛知国務大臣 おことばを返すようですけれども、軍縮委はディスアーマメントの会議であって、軍備撤廃ということで目標をしぼっている会議ではないということにも御留意いただきたいと思いますが、たとえば先ほど朝海代表の演説にお触れになりましたけれども、私、答えが逆になるかもしれませんけれども、制限するほうから申しますと、核兵器については先ほど申し上げたような考え方ですが、朝海代表の演説にも具体的に、たえば地下の核実験の全面禁止、これはかねがね日本政府の強調していた点です。それから兵器用になるような核分裂物質の生産それ自体を停止するということ、それからさらに核以外の問題では化学、生物兵器の禁止、この点は現に一九二五年の条約の批准をいま御審議をお願いしているわけですが、そういうことにもあらわれております。それからさらに海底の軍事利用の禁止を主張しているわけです。こういうわけでございまして、こういう点を縮小といいますかやらないほうでどんどん進めていく、そして通常兵器の自衛力ということを日本政府としてはやっているわけでございますから、それと思想的にも完全に一致している軍縮への日本の態度として内外の理解を求め得る立場である、こういうふうな考えを持っているわけでございます。
  116. 東中光雄

    東中委員 時間がございませんので、この点についての質問は終わりますが、核兵器の問題にしましても、使用あるいは製造、実験、貯蔵、こういった全面的な禁止の方向を目ざしてやるべきであって、たとえば地下核実験を合法化したというような状態の中でいままたその問題が出てきているわけですけれども、全面軍縮という方向を堅持するという点で言うならば、私たちは、日本の軍備増強あるいはアメリカのいまの核兵器を中心にした軍拡方針といったものに対して、はっきりとした態度をとられるべきじゃないかということを申し上げたいわけであります。  時間がありませんので最後に一言聞いておきたいのは、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律案がすでに当委員会提出されておるわけですが、防衛庁から外務省に出向をして、外務公務員としての身分を与えられている人が、国連軍あるいは国連警察軍あるいは国連監視団等に派遣される場合にも、この法律の適用が外務一般公務員の処遇ということでされることになるのかならないのか、この点をお聞きしたいと思います。
  117. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国連監視団というような国際機関は、従来の例から見ましてもいろいろの性格のものがありまして、一がいに国連監視団と一言で論ずるわけにいかないわけでございます。  その次に、たとえば現在でも防衛庁の職員が全部で十数名外務公務員の身分になって出向しておりまして、在外勤務しておる者がございます。そういう関係からいたしまして、外務省に他省から出向している人は全部では百七、八十名になっているような現状でございますから、将来そういうふうな国際機関に、防衛庁の職員が外務省に出向し、外務省の者として参加するということは、私は機構上はでき得ることだと思います。しかしどういう国際監視団の場合にどうするかということは、その国際監視団の性格によりますし、これを派遣するやいなやということはその時宜に応じて判断すべきものと考えます。なお自衛隊それ自身として、一つの組織、団体としてさようなところへ派遣するというようなことは考えておりません。
  118. 東中光雄

    東中委員 そうすると、防衛庁から出向してきている外務公務員が国際機関等に派遣される場合は、いま提案されている法律の適用を受けることにはなる。しかしいま現実にはそういう派遣をするというような問題は起こっていない。将来そういうことについては、そういう事態が起こったときに派遣するかどうかの必要性を国連機関等の内容に応じて検討する、こういうことになるわけでございますか。——終わります。
  119. 天野公義

    天野委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  120. 天野公義

    天野委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  外務省設置法及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  121. 天野公義

    天野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  123. 天野公義

    天野委員長 運輸省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  124. 大出俊

    ○大出委員 今回のこの設置法にございます運輸政策審議会というのは何ですか。
  125. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 お答え申し上げます。  運輸政策審議会と申しますのは、従来までは、わが省におきましては、各局単位のそれぞれの交通機関の審議会がございましたが、それを横割りをしまして、総合的に交通体系を見ようというような、そういった審議——実はそういったものの場がなかったわけでございますので、今後そういった面につきましての行政需要ということから、そういった交通全般を見ていく審議会というのが必要であると思いますし、あわせまして、運輸省の政策、企画、立案機能の強化ということの両輪で考えておるわけでございます。
  126. 大出俊

    ○大出委員 これは中身からいきますと、「運輸省の所管行政に関する基本的な政策及び計画の策定について調査審議すること。」こうなっております。そうすると、旧来基本的な運輸行政全般の計画策定についての機関がなければならなかったわけでございますが、それが、いま官房長は、各部門別に分かれていた、こういうのでありますが、旧来あった何と何と何を一緒にしたのですか。
  127. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 旧来ありましたものをまとめたわけではございませんで、新しくこれをつくったということでございます。
  128. 大出俊

    ○大出委員 そうではないのではないですか。たとえば港湾なら港湾審議会の中に三部会がございましたね。それが三月末で一つ運送部会が切れましたね。それは運輸省の言い分によると、運輸政策審議会に吸収をするのだという言い方をしていますね、別の場面で。そうすると、旧来あったものを一緒にしたのではないですか。
  129. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 いま先生の質問を勘違いをいたしましたが、そういった面では、旧来のたとえば港湾審議会とかあるいは航空審議会とかあるいは海運造船合理化審議会とかございましたが、それらの中で、特に基本的な政策問題をやっているものを、こっちへもっていくという、そういう意味では、旧来あったものをこちらに統合したということは、そのとおりでございます。
  130. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、いささかふに落ちないのですけれども、港湾審議会というのは、なくなるのじゃないでしょう。
  131. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 港湾審議会はもちろんございます。
  132. 大出俊

    ○大出委員 そうすると港湾審議会の三部会のうちの管理部会、計画部会、これは今日あるわけでしょう。
  133. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 運送部会は自然消滅いたしますが、残りの部会は残るわけでございます。
  134. 大出俊

    ○大出委員 だということになると、これは、ほかのほうの管理部会なり計画部会なりは消滅しないからあって、三月末という期限がついておったこの運送部会は、期限が切れるから、消滅するから吸収するというのは、基本政策という名においてはおかしなことになる。管理部会なりあるいは計画部会なりというものがこの内閣委員会に提案されたときには、基本計画であるという言い方をされている。時間がないから、前のものは読み上げませんが……。そうすると、これは基本計画だということで、いま言われたこの運輸政策審議会が基本計画の策定なんだ、だから、こっちにというのならば、何で一体港湾審議会の中の一つだけ、運送部会だけ特別持っていくことにしたのですか。本来ならば、この運送部会というものも期間延長して——港湾審議会の中の三部会、これを力説されたわけです、三つないと困るのだと言って。一番あとに出てきたのには違いないが、それは現にやっておって出してきた法律なんですよ。かつて、おかしいじゃないかと言ったら、基本的に必要なんだからやっていたのだが、しかし、そういう形でやっているのは不自然で、うまくないから提案するのだというのであとから追認の形なんです。それをいまごろになって、期限が切れたからというので、何かさっぱり筋が通らぬ形で運輸政策審議会に吸収しますと言ったって——吸収するなら三つ一緒に吸収すればいい。提案の理由は、そうなんですからね。そこらはどうですか。
  135. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 期限が切れまして、ことしの三月末に運送部会が設置法ではなくなります。そこへ、たまたま片や政策審議会ができるということで、特に港湾運送事業というものは、海陸の接点であるということでございまして、海陸を通じてのいわゆる物的流通の一環ではないか、そういう見地から、むしろ政策審議会で取り上げて、それに見合うような部会をつくりまして、そこで審議したほうがより適切ではないかということでもありますので、この際そちらに持っていくという趣旨でございます。ですから、政策審議会で取り上げないということもございませんし、政策審議会で審議する対象になるのではないかということで、政策審議会で取り上げるという趣旨でございます。
  136. 大出俊

    ○大出委員 本来、港湾審議会の中の三部会というのは、管理部会なんかで答申が何度も出ておりますが、これは港湾の運営をどうするかということです。これは計画部会でもそうです。そういう観点からも計画立案をしていた。運送部会もそうです。そうなると、その意味では一つの運営体なんですね。どういうふうに運営していくかという、それが旧来からの筋です。それを急に一つだけぽんと期限が切れるから——必要なものならば延ばせばよいというのです、やっていたものをあとから追認したんだから。そうでしょう。それをこの際一つだけこっちに持ってくる。つまり形にあらわれぬことにする。これを見たって、ここに説明されておる限りは、運輸政策審議会の中でどういうふうな形で吸収するかということは何も触れていない。だんだんなくなるほうについて四の五の言われた場合、こっちに入っているんだというにすぎない。どういうふうに中身は入るんだということはないんだから、そこに何となくどうもいささか計画的な意図がある、こう実は言わなければならぬ筋道があるわけですね。それがどうも私気に食わぬわけです。それならば何で三部会を一つずつ内閣委員会にかけてきめていったんだということになる。その中で、都合の悪いと言ってはおかしいけれども、これがここにありますと、いろいろな委員が入ってきますから、いろいろこれからもめることにもなる。そう簡単にいま言っておる三・二七答申なんかもきまるとは思えない。それはこの運送部会を中心にしてきまることになる。それをこのたび運輸政策審議会の中に吸収という名のもとになくしてしまうとしか思えない。私はそういうこそくなことをすべきじゃないと思う。やはりいままでせっかくやってきたのですから、しかもこの港湾運送部会の中ではたくさんのクレームがついて、秋山さんあたりが一生懸命方々の委員の方に委員としての意見を出してくれといって話をした。ところがその委員の諸君は、意見を出さない人もあった。拒否した人もあった。なぜならば、いま問題になっている三・二七答申なるものの中身、性格が、一つ間違うと港湾運送そのものの秩序に大混乱を与えるというだけではなくて、つぶれていくのが幾つも出てくる、たいへんなことになるということから、その危機感を感ずるから、そう急いでやるものじゃないといって意見を出さなかった方々がたくさんある。学者なんかもそうです。そういうことであるにもかかわらず、ぽかんと答申を出した。とたんに期限切れでございますからというタイミングを待って答申を出した。三月末が期限切れなんだから、二十七日に出した。反対が一ぱいあった。出しておいて、あとで運送部会という討論の場、運営体というふうに考えられるものを運輸政策審議会に吸収してやる。そんなことは提案には何も触れていない。世間一般の大事な場所で吸収したんだと言っておいて、先ほど冒頭に質問をしたら、旧来あったものを基本政策という意味で一緒にしたんだと言う。そういうやり方をするからものごとというのは一々もめてくるわけでありまして、これは私に言わせれば、そんなにまで運輸省というものは船主港湾協議会のほうにべったりくっつかなければいけないのかという気がするのです。それじゃ港湾行政というものはうまくいかないですよ。ここらは大臣、いかがですか、筋が通らぬじゃないですか。
  137. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 お話の点、確かにもっともな点があります。提案理由といいますか、運輸政策審議会が、「運輸大臣の諮問に応じて、総合的輸送体系の樹立のための基本的な政策及び計画の策定その他運輸省の所管行政に関する基本的な政策及び計画の策定」——まあ政策が中心になっておるわけでございます。運送部会のほうは、現実の問題を取り扱うということで性格が違いますので、吸収合併といいましても、実際上はなかなかむずかしい点があろうと思いますが、ただ、いわゆる基本的な政策を立てる、あるいは計画をつくるにいたしましても、現実の素材というものは無視できないわけですね。それがなければ空理空論に終わるだけでありますから、その辺においては、政策及び計画をつくる審議会ではありますけれども、同時にやはり現状をどうするかという問題もあわせて考えなければ、政策も計画もできないのじゃないか。そういう意味において、ことにこの運送という面からいえば、ここで言っておる運輸政策審議会は、いわゆる海陸空の運送政策といいますか、そういうものが主体になる。たとえば新幹線とかその他の個々の問題になればそれぞれの法律がありますけれども、政策というものになりますと、ばらばらな状態で今日まではやってきた。しかし最近の産業構造あるいは社会構造等から見ると、海陸空の総合的な体系がなければ、いわゆる運送といいますか、そういう面の計画は実際問題としてできない。したがって、新幹線網をつくる場合に、われわれが付表をこの際はとってほしいという希望を申しましたのは、これからの社会発展計画というものは、今日考えておることが十年先までそのとおりいくかどうか、拠点の開発等が。かなり変わってくる部分がある。たとえば鹿島開発港のごときは、十年前はだれも考えていなかった。ああいう世界の三大港というような大きな規模のコンビナート港ができるということになると、従来の設置法の付表だけではこれは処理できない。そういう意味もありまして、今回新幹線網については、その本文の第三条の中で、いわゆる中核都市といいますか、新しい中核都市もできますし、従来の都市もありますが、そういうところをつないで、そして全国的な開発に資するのだ、こういう点を明らかにしております。そういう意味において、いま運輸政策審議会の中に運送の点を取り入れるということは、一つにはそういうような考え方をこの際は強く押していく必要があろう。運送というものを切り離しておくわけにはいかない。空海陸ともに、これらは連絡があることでありますから、そこでこの中に入れて、そして全体的な観点から運送あるいは貨物の流通、人間の融通等を考えていくということで、この中に取り入れたという説明事務当局が申し上げたのだろうと思います。しかしそれで十分でないとおっしゃられれば、今後検討の上考えなければなりませんが、私は、総合体系という意味からいえば、やはり一カ所においてお互いが勘案しつつ、ものを考えていくということのほうがいいのではなかろうか、かように考えております。
  138. 大出俊

    ○大出委員 これは、まあいろんな政策に詳しい橋本さんのことですから、それなりのお考えなんだろうと思いますけれども、しかし港湾という問題をとらえてものを考える場合に、そう簡単なものじゃないと思うのですね。これはいままでの経緯がありますからね。その意味では、いま大臣がお話しになったのは、私は答弁になっていないと思っています。このことは、私はとやかくは申しませんが、しかしいままでの経緯があって、これだけ長い問お互い苦労してやってきて、三月末という日限が限られておるので、この運送部会ができた経緯はさっき申し上げたとおりですが、私どもに言わせれば拙速な形で、各種の反対というものに耳をかさずに、秋山さんの名における答申を出したとたんに、こっちに吸収いたします、こういうせりふというのは、あとに大きな問題が残りますよ。やはりこういう近代化資金の問題だって、宮崎さんが港湾局長をやっていた前回の国会でも何も御存じないじゃないか。私の質問でも、片っぱしからわからない。わからないままにやはり別なサイドからのいろいろな話があり、そっちにそれざるを得ない運輸省の姿勢、だからああいうことになる。これはだれが考えたって、聞いていていただければわかる。一々それでは困るじゃないかということを私は言いたいのです。世の中は変わっていくのですから、確かに船主港湾協議会などが言っておるように、海上は——いま大臣は空まで触れて言われたけれども、港湾に関する限りはそうではない。やはり海上輸送というものは、資本の側から出てきたのです。輸送コストというものを下げたいということで、コンテナ輸送というものがここまで発展をしてくる。結局陸上運送とあわせて考えたまん中に港湾運送というものがあるわけです。その三つというものをコンピューターシステムでデータを入れてつなぐ、戸前から戸前まで、こういうかっこうにするということが経済性という面で必要なんだ、あるいは国際競争力を高める面から必要だというたてまえで、ある意味では労働力は要らないのだ、そういうたてまえで船主港湾協議会等が案をつくって出してきているわけです。それが問題の中心でもめているわけです。だから、そうすると、これはやはり運営体である部会なら部会というものを常置して、そこで今後それをどういうふうに、つまり政府が受けて立つという姿勢とあわせてどういうふうにしていくかということを話し合っていきませんと、そこにやはり関係各代表を入れていきませんと、全体的にうまくまとまっていかないということになる。それこそ労使合体のストライキが起こってしまうということになる。それじゃ困るので、それを私は心配してものを言っているわけでございまして、実態があるから言っておる。  ここで、いま時間がないところで、この問題点だけでも実はもっと申し上げなければならぬ、承らなければならぬことがありますけれども官房長の御答弁もどうもあさってのほうで答えられておるからかみ合いませんから、具体的な点について少し承りたいのです。  そこで、港湾審議会が開かれて、運送部会でいろいろのことをやってきたわけでありますけれども、二月二十七日の審議会で、これからの港湾運送事業の性格と方針は那辺にあるのかという点の質問が出ている。これに対して運輸省の方々はお答えになっている。私は、時間がかかりますから、そこのところを直接触れないでずばり承りたいのですが、運輸省としては港湾運送部会で議題になっておりました問題点について、つまり具体的に言えば、これからの港湾運送事業の性格、そして方針、それを一体どういうふうにお考えなのか、この点に触れて運輸省考え方を港湾局長さんあたりからお答えいただくのが一番いいと思いますが、まずお答えをいただきたいのでございます。
  139. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 三月二十七日の答申というのは専用埠頭のあり方についての答申でございましたが、その中にもございますように、専用埠頭だけの論議ではなくて、いま先生の御質問は、一般的にどうするかということだろうと推察いたします。確かに、従来に比べまして、港湾の貨物は急激に伸びてまいっておりまして、その中で専用埠頭のシェアが相対的に大きくなったということも事実でございますが、一般貨物もふえてございます。したがいまして、一般貨物の扱い方をどうするかということと、それから先ほどお話に出ましたコンテナを含めました専用埠頭をどうするかということを、両方にらみながら今後の港湾運送事業のあり方というものを考えなければいかぬというふうに私は存じております。したがいまして、率直に申し上げまして、従来ですと、港湾の貨物は伸びてまいったわけでございますが、従来、同じ方式でやっていたそのままの方式で進めばよろしいという感覚はあったと思いますが、ここ数年間、特に一、二年間、コンテナに象徴されますように、急激に輸送形態が変わってまいっておりますので、私自身も曲がりかどにきておるという認識を持っております。したがいまして、港湾業者あるいは労働者も含めまして、全体がどういうふうにそれに対処していかなければならぬかということは今後重大な研究課題だと思いますし、労働者サイドあるいは港湾運送業者サイドからの御意見を承りまして、皆さんがお互いに知恵を出し合って進んでいくという方向でまいりたいと存じております。
  140. 大出俊

    ○大出委員 港湾審議会の審議のときの議題は、専用埠頭における港湾運送事業者のあり方と料金についてという議題なんです。これは専用埠頭を取り上げれば、港湾局長が比田さんから佐藤さんになり宮崎さんになるという時代、また局長さんにおなりになったのですけれども、この四局長さんにわたるその間、私はそのつど何年にもわたって意見を申し上げ、質問をいたしまして、皆さんの御意見も承ってきたわけですから、これは一つの歴史的経過がある。知らないわけじゃない。この間に、比田さんからおたくになるまでの間にずいぶん変わったわけですから、変わりつつあるポイント、それをずっと歩いてきているわけです。だから、私は、そういう意味では経過は承知しているつもりなんですよ。  そこでいま私が申し上げた議題でやってこられた。このやりとりの中で、港湾局からお見えになっている皆さん方に質問をした人がいるわけですよ。それがさっき私が申し上げた、これからの港湾運送事業の性格と方針というのは一体那辺にあると運輸省はお考えなのかと、ずばり中心を聞いているわけですね。そこで、いまおっしゃる答申にもございますが、専用埠頭を取り上げれば当然一般に及ぶのですよ。だれが考えたってあたりまえのことです。これに対して運輸省の皆さんの答えというのは、世界的な経済政策の変動がある、これも事実です。そして海運政策、特にコンテナの急速な発展、いまお話がございましたが、この変化に対応して海運その他重要産業が、資本の自由化の中で大幅な合理化計画という形で進んできている。これを一つ前置きとしまして、したがって物的流通の変化というものが急速に近代的な体制づくりをやってきている。そこで、これは経済的な要請でもあるし、国民経済という全体の強い要請でもあるのだという条件からすると、どうしてもここで必要なことは、港湾運送事業の再集約が非常に強く要請されております、これもまた確かに事実でしょう。したがって、目下集約化、近代化の努力中だけれども、好むと好まざるとにかかわらず一貫直営体制をとらざるを得ない、こう言っておられる。万やむを得ぬ事情によるものだけ一貫責任体制を認めて他は一切認めない方針である、この方針に対処できない業に対しては強い行政措置をとる、同時にうしろ向きの方策をとらざるを得ない、こういうふうに述べておられる。  これは、そこで質問をした方、おられた方々、私の知り合いで何人もいるものですから、その方々に直接会って、私はそのときのいろいろないきさつを聞き、述べられたことを全部書いてあるものを見せてもらって、そのとおり私はここへ走り書きをしてきたわけです。名前を申し上げてもいいのですけれども。私は運輸省のこのものの考え方——答申がどうとか、どこで出したのがどうとか、私は言っているのではない。つまり、この専用埠頭における港湾運送事業のあり方と料金についてという議題で論議されてきた。そこで運輸省に対して、これからの港湾運送事業の性格と方針はどの辺にあるのかということを聞いている。これに対して運輸省が答えたその答え、これは運輸省のサイドでものを考えれば無理からぬことをおっしゃったというふうに私は思っているのです。だから、そこのところをもう少しはっきり詳しく皆さんのほうからお話しをいただきたいと思っていま聞いたのですけれども、いまの局長の答弁からいたしますと、非常に変わってきた。つまり、業者も働くほうの側もみんながそこを考えていかなければならぬというところまでおっしゃっているのだが、そこから先はない。そこまではここでいっているのと一緒なんです。そこから先、私は読み上げたわけですけれども、ここがない。したがって、その点をもう一ぺん局長から御答弁いただきたい。
  141. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 ただいま、事務当局からいろいろな場でいろいろな発言があったろうと思いますけれども、先がないとおっしゃいましたが、私ども自身が、現状の分析はどうだろう、それから将来どういうふうに転換するであろうかということを、いま勉強中でございます。これはわれわれ事務サイドでやっているわけでございまして、将来またいろいろな関係の方々の御意見も承らなければいけないと思いますけれども、例の三・三答申以来、一貫直営体制ということばがうたわれておりますけれども、一貫直営体制あるいは今回の答申では一貫責任体制をとれというふうな答申がございまして、その方向につきましては、私はやはりそういう方向に向かわざるを得ないというふうに考えておりますけれども、では、それをどういうふうにもっていくかということのもっていき方の問題があろうかと思います。  御承知かと思いますが、先般集約をいたしまして、ある程度までの効果はあったと思いますけれども、その効果が出る前にもう時代が変わっております。したがいましてふたたびああいうことを繰り返すという意思はございません。ただ業界自体なり港運業界全体を考えますと、やはり時代が変わったような場合に弾力的に転換できる体制を考えなければいかぬだろうというふうに考えてございます。そのために、答弁にならないかもしれませんけれども、今後どういう方向に向かってどういうふうにしなければいかぬかということを、いま一生懸命勉強している最中でございます。具体的にじゃどうするかということを言えという御指摘でございましても、ちょっといまの段段階では私自身が不勉強でございまして、まだそこまで結論を持ってございません。
  142. 大出俊

    ○大出委員 無理なことを聞いているわけじゃないですよ。言うておられるからそのことを念を押しているわけです。  そこでいまお話の中に、一貫直営体制なりあるいは一貫責任体制をとらざるを得ない、この点はお認めになった。ただ問題は、そこに持っていく持っていき方が非常にむずかしい。その中に出てくるのは再集約という問題、いま局長の答弁にひっかかるのだけれども、再集約のほうはとらないとおっしゃっている。そうはいかない。あなたが一貫責任体制をお認めになった以上は、いやでもおうでも再集約の方向をとらざるを得ないのですよ。そんなことはどなたがお考えになったって、ずぶのしろうとでない限りはあたりまえのことです。だからいまあなたが一貫責任体制を認めざるを得ないとおっしゃっていて、再集約の方向をとらないなどということを言うと、局長もずいぶんしろうとじゃないかということになってしまうから、それはおやめになったほうがいい。一貫責任体制というところまでお認めになるなら、それじゃ一貫責任体制をどうしてとれるか。いまのままでとれるかといえばとれやしない。だから一貫責任体制をとるなら、それはお認めになったんだから再集約の方向をとらざるを得ないのですよ。その再集約の方向について、どうこの再集約の方向を考えるかということはたいへんに問題なことですよ。だがしかし、いまの業界の業態で、いまの集約の過程でそのままでしからば一貫責任体制がとれるかといったら、それは絶対にとれない。そこに問題の中心があるわけですね。ですからあなたいま一つ間違っておるのだけれども、一貫責任体制をお認めならば、再集約の方向をとらざるを得ないと言わなければならない。ただその再集約の方向については、それこそぶつつぶれてしまう議論もあればひっくり返ってしまう議論もあることだから、そうだとすると、横浜——横浜という港は小さな港じゃないのだから、鈴江さんとか宇徳さんとかはいいでしょう。そうでないところはみんなひっかかるんです。だから、そうだとすればやはりたいへんな問題になる。そういうふうにお考えおきをいただかぬと、一貫責任体制をお認めになったということ自体がおかしくなってしまいますから、そこのところをもう少しはっきりしておいていただかぬと、議論がかみ合わないのでは意味がありませんから……。
  143. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 ちょっと私のことばが舌足らずでございましておしかりを受けましたが、お説のとおりでございまして、再集約をいたしませんと申し上げましたのは、従来のような方法ではやりませんという意味でございます。
  144. 大出俊

    ○大出委員 それはわかります。これは旧来のように再集約をやって、その期限をおいてやりましたが、あれもずいぶんいいかげんで、また皆さんのほうの技術的な面もいいかげんで、方々にいくとちゃんとなければいけないというようなことになっておったりしているのに、それだって何もないものを認めちゃったり、ずいぶんいろいろなことになっていましたからね。これはそのつど申し上げましたからもうここでは言いませんけれども、そこで私はその先があるのですよ。旧来のような再集約はというふうにおっしゃるんだから、じゃ一体旧来でない新しい再集約というのはどういう方向なんだという点が一つ当然出てくる。一貫責任体制をお認になる限りはほっぽっておけないのですから。  それともう一つは、ここで強い行政措置をとれ、こう言っておられるのですけれども、ほんとうに一貫の直営体制のみならず責任体制までということになると、これは確かに相当強い行政措置をとらざるを得ぬ、とらなければできない、いみじくもこう言っておられるのですが、この中身について、ぼくはこの方に言ったのだけれども、それならば新しい強い行政措置をとる、こう言ったのなら、そのときにその中身は何だと聞けばいいじゃないか、そんなものを聞き流しているからこういうことになる、それからもう一つ同時に、うしろ向きの方策をとらざるを得ないと言った、それは中身は何でしょうか、聞いていた諸君が一体うしろ向きの方策とは何だということをそのときに聞けばいいじゃないか、こう私は言うたんですけれども、しかし私には思い当たる点がたくさんある。あるけれども、やはりここまで来ると答申も出ているのですから、それを運輸省としてどういうふうに受けるかということについては話は別、別だが、運輸省自体が考えるこれから先のコンテナ輸送というものも、いろいろな面でも六割ぐらいはふやすでしょうから、そうなってくると、その中心になる考え方ですから、やはりこの辺については言うておいていただきませんといろいろと混乱をふやすだけでございますから、そういう意味でいま局長がちょっと口にされた筋道からすると、新しい集約——旧来のような集約の方法はとらぬとおっしゃっているのだから、それは一体どういうものなのかということについて触れていただかぬと意味がないことになりますから……。いかがですか。
  145. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 先ほどもちょっとお答え申し上げましたように、はっきりとどうこうであるということは、私自身も目下勉強中でございまして、模索しておるというのが偽らざる現状でございます。ただ方向といたしましては、これは先生御承知のように、港運業界といいましてもいろいろな業種がございます。もう一つは、たとえばこの近所で申しましても、横浜と東京と千葉では港そのものも非常に違っておりますし、したがいまして、私がいま自分で考えておりますことは、各港の歴史もございますし、それから港運業界の内容もいろいろ違っておりますし、構成も違っております。それを無理に統一すればかえって混乱を起こす、なるべくならその港の特殊性に応じたような、集約というよりも、むしろ皆さんが共同して一緒にお仕事をなさるとか、あるいは手分けするとかというような方向で、港の実情に即したような方向で、各港ごとに対応策がないものだろうかというようなことを考えておる次第でございます。
  146. 大出俊

    ○大出委員 港の性格が違う、状態が違う、だから港ごとに、こういうことなんですが、それは大なり小なりありましょう。ありましょうが、方針というものが明確にあって、その上でこの港々の実情に合わせてどうするかということになっていくのが筋道で、その方針がないところに港々といったって、再集約の方法もなければ何もできないわけでございますから、それでは私は事が済まぬと思う。そういう程度しかものを考えてないのだとするならば、これは何のためにこんなに長い間事務局はやっておったんだということになる。そんなばかなことはないでしょう。だから、そこはやはりこういうところでおっしゃらぬで、実際の部会の中で——これは二月二十七日の審議会なんだけれども、私が、運輸省からだれが来ていたんだと聞いたら、上原参事官と兼松港政課長さんが御出席だと言う。そういうことはどうでもいいのだけれども、私はそのことを言っているのじゃない、中身の問題を言っているのです。  そこで問題は、やはりここまでくるといろいろな場面で質問をしたりやりとりがあるわけですから、運輸省として考えていることがあれば、私はその場面でそのことが出てくることが悪いと言っているんじゃない、出なければ論議ができないんだから。そこでほんとうのことを言って論議をしてみて、その上で隘路がいろいろあれば、その隘路については引き下げということにするのか、あるいはそれでも説得して進もうということにするのか、それこそ港別に事情が違うのだから、どこで話し合いをつけるか、ここのところを考える、こういうふうにしなければいけないわけですよ、筋道は。そこで問題は、いまあなたがおっしゃっていることが何となくあいまいで、表向きこういう席ではあいまいでいながら、陰のほうではそういう話になっている。もしもやむを得ないことなんだとしてみたって、そんなことを言うならば、なんで一体こんなに急いで答申を出さしたのだ、おたくのほうでずばっとここでものを言えないのに、なんで一体こんな答申を出したのだ、こういうことになる。もっと答申を出すまでに煮詰めるものは煮詰めて、話のつかぬものはつかぬ、つくものはつく。だからこういう場所に来ても、こういうふうにやっていきますというふうに言い切れる、そういうふうに煮詰めて答申を出さなかったのか。混乱している焦点というのは、中身が何も煮詰まらぬで、言いっぱなしになっているところにすぱっとこの答申が出てくるからたいへんな騒ぎになっちゃう。なんでこういう方法を皆さんは一々とらなければいけないのかということなんです。だから念のためにもう一つ聞いておきますが、強い行政措置をとる、あるいはうしろ向きの方策をとらざるを得ない、こう言うのですが、これは思い当たる点はたくさんある。なぜかと言いますと、時間がありませんからついでに言ってしまいますけれども、皆さん方の見ておられる筋合いのものだろうと思いますけれども、ここには明確にうしろ向きの政策が出ている。これは運輸省の皆さんとは関係がない。ないけれども、近代化基本計画委員会の昭和四十五年二月二十三日の第二次案、この第二次案からいきますと、「I審議の対象港」はどことどこかといいますと、「当面変化の激しい東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の五大港とする。」これが審議対象港。次は「II一種事業者の在り方」「1、在来公共埠頭等における作業体制」「イ、原則として一貫直営体制とする。」先ほどお話があったやつです。「ロ、一貫直営体制に準じこれと同様の効率があげられる一貫責任体制を確立する。」これはさっきあなたもお認めになっている。「ハ、上記の体制づくりのため、現行法にとらわれず、」これは穏やかでないですよ、「現行法にとらわれず」なんて言っているのは。「業界あげて近代化に対応する措置を講ずる。」業界ですから当然そういうのでしょうけれども。「現行法にとらわれず」、こういうところになってきますと、これはここでいうところの強い行政措置どころじゃない。質問者側からすればうしろ向きととられるところまでやらなければならぬことになる。港湾運送事業法なんというものはあってなきがごとくになってしまう。だから、当然「現行法にとらわれず」と言いたくなるでしょう。われわれに言わせればうしろ向きの政策ですよ。  それから「2、経営規模」「イ、資本金一億円以上(港運部門換算)、年間挙収額八億円以上(港運部門)とする。」だから、これは一億円以上の資本金があって、年間挙収額が八億円以上ないと経営規模としては不適当であるということになる。「ロ、ただちにイの方法によりがたい事業者は当面、事業協同組合を結成すると共に組合存続期間中に集約を行ないイの体制に移行する。」つまりイで言っている資本金一億円以上、年間挙収額八億円以上という体制に移っていく、こういうことであります。それから「ロ、1組合加入業者全体の資本金総計一億円以上、年間挙収額は総計八億円以上とする。」「2組合の事業は貨物の共同引受、共同集金、施設の共同使用、労働者の共同雇用、専業者への共同委託等幅広い事業を行なうものとする。」ここで労働者の共同雇用という問題が出てきた。これはたいへんなことになる。  次に「3、一貫直営体制に準ずる作業体制」この中で「(1)一種事業者と二、四種専業者との結びつき」この一種事業者の中には「事業協同組合を含む」こういうわけですね。そのうちの「イ、元請業者一社に対し、専業者の数を二社以内とする。」これなんかたいへんな問題ですよ。いま八社くらい持っているところがたくさんあるのですからね。それから「この場合、元請業者は夫々の専業者と資本、役員派遣等について具体的あり方を検討する。」「ロ、専業者一社に対し、元請業者の数を二社以内とする。この場合、夫々の元請業者は専業者と資本、役員派遣等について具体的あり方を検討する。」こうなってくると——これは何もおたくというわけじゃないんですよ。ないんだけれども、先ほどのように一貫責任体制までお認めになるということになりますと、直営体制あるいは責任体制、これを考えていくと、この一億円以上あるいは挙収額八億というのは、いずれにしても、少なくとも協同組合か何かのかっこうをつくって、さっき申し上げたように横浜では宇徳さんとか鈴江さんぐらいしか残らぬということになると、二千万円だ三千万円だというところは大挙集まって協同組合でもつくらなければやっていけやしません。そうなると穏やかならぬ騒動が起こる。先ほど私が言ったように名前をあげて恐縮だったけれども、そういうやりとりがいろいろな場所で行なわれてきて、たくさんの反対があるにもかかわらずぼかっと答申が出てくるという段階まで来ますと、陰にはこういうものが全部流れてみんな知っている。そうなると、これは答申の読み方だってこれらの問題と関連をして読まざるを得ないのですよ。あたりまえです。みんなそれで生活しているのです。そこで働いているのですから。そうすれば相当な混乱が起き、騒ぎが起きるのは無理からぬことだと私は思うのです。  おまけに、ここにもう一つ船主港湾協議会の側から、「コンテナターミナルの運営と料金」ということで、マリンタイム四十四年八月七日号、カッコがついていますが、こういう案を出していますね。この案の中身を具体化すると、さっき申し上げた近代化基本委員会で出している具体案になるのです。これはもっと抽象的に言っている。しかしねらいは基本的には似たようなものです。そこへもってきて運輸省の皆さんが口にされることがあって出てきた答申でしょう。それはだれが考えたってこう受け取らざるを得ない。そうなると、これはこのままで捨ておけない筋合いのものですから、これは局長、ここまでくれば、旧来のようなこそくなことをやらぬとおっしゃるのだから、新しい集約をせざるを得ない。そうすると新しい集約というのは一体何をねらうのかということになれば、少なくともこれに似た形、直営体制なり責任体制なり、それに合わせていく以外に、いまの船主側の空気からいけばないのですよ。だからそこらのところは不勉強だ、不勉強だ、そんなことをおっしゃったって、それならいままで何をやっていたんだということになる。港湾局長と名がついているのですからね。こんなばかな話はない。ここまでこう来ている、だがここのところが決着しないということなら、それなりにわかるけれども、不勉強でわかりませんという筋合いの御答弁をいただいて、そうでございますかと言うわけにはいかぬ。そこのところをもう少し言ってください。
  147. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 ただいま港運協会の部会の案が先生から御披露がございましたが、これは港運協会の研究課題だろうということで、私も実は内容につきまして、こまかい数字等はございましたが、十分検討もしてございません。ただ方向といたしまして一貫直営体制あるいは一貫責任体制という方向は当然進んでいかなければならない。再集約といいますか、新しい体制と申しますか、それにどういうふうに進んでいくかという進み方につきましては、方向としては先生御指摘のとおりに何らか動いていかなければならぬ。ただその動き方でございますが、私先ほど各港の事情が違うと申し上げましたのは、横浜の実態と東京の実態とは非常に異なっておるというふうな理解でございますので、これも一挙にやれば非常な摩擦を起こします。そうなりますと、段階的にどういうふうに持っていくかということ等につきまして、おしかりを受けるかもしれませんが、まだ各港ごとにこういう方法でこういうふうにやったらどうでしょうかという相談ができる段階まで私のほうの勉強は進んでおらないという意味でございます。
  148. 大出俊

    ○大出委員 基本方針となるべきものはお考えになっているが、各港々の事情その他がある。どういうふうに持っていけばいいかという点について非常にむずかしい。そこらの点について、いまなお検討不足である、こういうことですね。そこまでお認めになっておるのですからそれはそれでいいのです。いまのところはやむを得ません。  ついでにもう少しつけ加えて申し上げたいのでありですが、この案でいきますと、このあと(2)というのがありまして、「一種事業者と三種専業者(貸はしけ業者を含む)の関係」として、「1はしけ基盤の一種事業者が中心となって、三種専業者とはしけ、引船の運営に関して一体化を図る。」これも大きな問題があります。それから「2三種専業者は、はしけ基盤の一種事業者と大型グループ化による経営の効率化、安定化をはかるため事業協同組合を結成し、」これは前と同じ方式です。「すべての一種事業者(事業協同組合を含む)との間に長期契約を締結して引船を含み完全共同配船方式をとる。」そして今度は「組合については次の条件による。1東京、横浜、大阪、神戸は夫々五組合程度とし、名古屋は三組合程度とする。」これが一つです。「2はしけの建造は直ちに一切中止する。」と御丁寧に書いてあるのです。次は「3共同引受、共同配船、共同集金、共同雇用、老朽艀の廃船処置、余剰船腹の組合加入者からの買上げ処理、及び余剰労働者の転職斡せん等幅広い事業を行なう。」これを見るというと労働者の転職あっせんまでしているのですね。  次に、「4、専業者の経営規模」ということで「大型化した一種事業者と一貫責任体制を確立するため、専業者の経営規模を次の通りとする。」二種業者が払い込み資本金で三千万円以上、年間挙収額二億円程度。四種専業者の場合は資本金二一千万円以上で一億円程度の年間挙収額。二、四兼一業者が五千万円以上で三億円程度の挙収額。三種一専業者というのが協同組合をつくるわけですね。これを見るとこうなっているのです。  ここで非常にむずかしい問題ですけれども「5、いかだ限定一種といかだ専業者との関係」というふうなものは、「具体策を他業種の近代化をにらみあわせ検討する。」これはなかなか問題が問題でございますからそういう書き方になっております。  そうして、これは問題なのですけれども、IIIに「専用埠頭における作業体制」というのがあるのですね。その「1、コンテナ専用埠頭」のところには「IIの1の在来公共埠頭等の作業体制に基づく一貫責任体制を原則とし、且つ、二種・四種事業の一元化体制による運営を図る。」、「2、その他の専用埠頭(荷主の私設埠頭等)」には「一貫直営体制による二種・四種事業の一元化体制を確立する。」とある。  そして最後は、これは問題なんですが、大きなIV「補償、救済問題」「1、完全廃業者に対する救済制度の確立」とありますね。この案でいけば、これはあらかじめ完全廃業する人を見越している。だからここに補償、救済問題が出てくる。「完全廃業者に対する救済制度の確立」「中央に組織化された公的機関を設置し、完全廃業者に対する営業権及び施設等(免許上の)の買上げ、労働者(職員、労務者)の転業斡せんを行なうため、業者、利用者、行政が一体となった救済措置が講ぜられるよう強力に推進する。」行政まで入っている。これは、労働者側からすればたいへんなうしろ向きの政策ですよ。しかもこれを本気で行なわせようとすれば、行政措置をとらざるを得ない。これはさっきお話の中にあった中身を書いて申し上げているのですけれども。  それからIVの2「余剰設備対策」「中央に組織化された公的機関を設置し、はしけ運送の抜本的な解決を図るため、はしけ余剰船腹の買上げ、老朽艀の廃船処理、余剰労働力の転換等については各地区毎の事業協同組合との関連に於て、業界の自主的な相互助成を初め、利用者及び行政による強力な助成対策を講ずる。」こうなっているのです。これはいかに何の案であれ、ここまでのことをうたうとなるとおだやかならぬことですよ。労働者はどう考えているか。家族を含めて生活の基盤になっている。何種業者にしたって、朝鮮戦争だというような時代から、あれだけネコの手も借りたいというのでたいへんな苦労をしてやってきた諸君がたくさんいるのですね。そんなものはどうでもいいんだということにこれはなる。しかも、ここまでならまだこれなりにものの言いようが別にあるんだけれども、これがさらにその奥にある、さっき申し上げた「コンテナターミナルの運営と料金」船主港湾協議会、この中身からすると——これはかつての埠頭事業法というものをおたくの佐藤港湾局長のときにいろいろ考えた時代がある。私はこれを突っ込んだら、いや、そういうものはつくっていない、つくっていないと言いながら、いまの港湾運送事業法なり港湾法のワクの中でやっていけるからということになった。やっていけるからやめたんだという。いまになったら明らかに出てきた。この中に書いてある。埠頭事業法の法案までさかのぼる必要があると考える、こうあるんですね、ここでは。そうして法案の骨子は第一に岸壁と上屋と一体として買い上げることによって本船の連発をはかり、埠頭運営の効率化をはかることであり、第二に、船主、つまり船会社ですね。船主と密接なる関係のある作業主体のもとにおけるターミナル経営の一元化により——これは船主、船会社と密接な関係がないところはだめだということだ。これは明確に船主サイドですね。結局そっちにべったりしていなければだめだぞ、船主と密接な作業主体のもとにおけるターミナル経営の一元化により港湾における経費の合理的節減をはかる。そのために日本商品の国際競争力を強化することにあります。これは埠頭事業法というものはそうだというのですよ。こうなると、これはまさに経済性の点から、労働者がどうであろうと中小業者がどうであろうとみな仮借なく切りはらっていけということですよ、明確に。ここから出発しまして港湾運送事業法というものは変えなければいかぬというわけです。実情に合わない、こういうわけです。そしてここで何をいっているかというと、もうここまでくると、免許基準は本来過去の実績によって定められる性質のものではなく経済的な要請に応じ得るかいなかによって決定されるものであります。こうなると船主、荷主の側から見て、あるいは大きな企業の側から見て経済性という面で多少なりとも節減ができればいいんだから、それに相反するものはみな切りはらっていけということになるんですね。これは明確にこういうことです。しかもこれは一番最後のほうは何を言っているかというと、コンテナターミナル事業は単純労働への依存度は低く——それはそうでしょう、性格が変わりますね。その生産性は機械設備への投資の規模と内容に左右されます。すなわち船舶運航者の求めるコンテナターミナル運営と荷役料金の合理化は、労働力の強化によって得られるものではなく、陸上運送、港湾運送及び海上運送を一体とし、電算機によって完全にコントロールするシステムの技術的革新と大規模経営のメリットによって達成され得るものであります、こうですね。そうなると、さっき冒頭に官房長と質疑し、やりとりしたけれども大臣は、そうまでおっしゃるけれども、そうじゃない。そうじゃなくて、ポイントが全然違う。海上輸送というものと陸上輸送というもののまん中に港湾輸送がある。つまりこの三つのジョイントをどういうふうにするかというところ、ねらいは経済性という問題、それだけなんですね。そういうことになってくると、そこに介在をする労働者という問題も港湾業者という問題も、そんなものは眼中にないのがこれは明確になっているんですね。そうすると、こういうものの考え方で先ほど二番目に例を上げた案があって、そして審議会の中身として——これは上原さん、兼松さんにとやかく言うのではないんですけれども、つまり運輸省自体の局長が、さっきこういう席だから手前まで答弁されたそのものの考え方が出てくると、幾ら皆さんがどっちを向いてものを言おうと、方向はすでに明確になっておるということになっている、そう受け取るのはあたりまえです。だから、ここまで来たなら来たように、皆さんもそのことを何か適当なことにしないように、やはり言うべきものは言って、ほんとうに腹を全部言って——相当たいへんな反対がありますよ。現に春闘なんかどうでもいいと言うんだ、賃金なんか。わずかの賃金のことより港がつぶれるという。横浜の港湾全体にいろいろな性格の組合があるのだけれども、今度ばかりは全部一緒だ。業の諸君だって一緒にいかざるを得ない面がたくさんある。いまそういう態勢なんだ。私は、残念なことに、ここまでのことをおやりになるのならもっと慎重に時間をかけて進めるべきものは進め、下へ話すべきものは話してきて、そして答申が出てくる筋書きを——そうすれば答申の中身が変わるかもしれぬけれども、そういう筋書きをとるべきはずであったと思う。それをいきなり三月末ということにしておいて、二十七日にすぽっと出させる。だからこういう大きな混乱になる。そこらのところをあなた方は一体どう考えておられるのか。真意のほどはほぼわかったけれども、そこから先のところを、ここまで申し上げたのだから——何もいま申し上げたのはあなた方全体の考えだと言っていない。言っていないが、この方々の力というものは大きいのですから、どういうふうにしたってあなた方はそっちにいかざるを得ない。だからその中であなた方は一体どういうふうに——中小の業があり、労があるのですから、そこのところとの関係をお考えになるのかというのを率直に聞かしていただきたいのですよ。そうでなければ私は問題は始まらぬと思っていますから。
  149. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 三月二十七日の答申につきましては、先ほど先生御指摘がございましたように、いろいろな方面からの意見が前に出ておりまして、それは私はそういう意見が出尽くしてこういう形になったというふうに理解したわけでございますけれども、先生のおっしゃいますように、一連のつながりがあるように受け取られるということもございまして、その点私どもの進め方が至らぬ点はおわび申し上げます。  今後の問題でございますが、先ほど官房長からも申し上げましたように、やはり港湾運送事業というものは、先生御指摘のように、荷主がありますし、船会社がございますし、それから港運業者がございますし、労働者がございます。従来いろいろとそういう関係の方々が一堂に会していろいろな立場で議論なすっていろいろな方向を決定していただいたというふうに存じておりますが、やはり運輸政策審議会に入りましても、従来と同じような方向で、港湾運送事業につきましては——ただ上に運輸政策といいますか、ほかの政策がかぶります、当然かぶらなければいけないと思いますけれども、御指摘の問題につきましては、そういう関係各方面の御意見を十分討論していただけるという場をつくっていただくように私は考えてございます。
  150. 大出俊

    ○大出委員 その討論の場というのは具体的にはどういう場をお考えになっておられますか。
  151. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 運輸政策審議会の中に物的流通部会というものがあるそうでございますが、その中に常設の委員会をつくっていただきまして進めていただきたいというふうに思っております。
  152. 大出俊

    ○大出委員 その物的流通部会というのは常設するのですか。そうして中の委員はどういうふうになるのですか。
  153. 鈴木珊吉

    ○鈴木(珊)政府委員 いまのは案でございまして、まだ審議会ができませんので、できました場合には物的流通問題を扱う部会あるいは旅客、たとえば都市交通を扱う部会を置きましてやっていきたいと思います。いまの港湾運送の問題も、海陸を通じて一貫しようということが入っておりますので、この部会等でやりたい。その場合に、発足しておりませんのでまだちっともきめておりませんけれども、そういった部会に、必要であれば専門委員を任命していただきまして専門の御意見も聞きたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  154. 大出俊

    ○大出委員 これは皆さんがかんかんになっておこるのは無理もないのです、こういう動きになってくると。これはなぜかというと、外貿コンテナ埠頭の専用貸し、これ一つとらえてみても、つくるのはどこがつくるかというと国でしょう。国と地方自治体がつくる。前に私はここで地方自治体の各界における負担経費まで全部あげてこまかく申し上げたことがある。私はこの点は皆さんと何べんも論争してきたところで、皆さんその点に対してはお認めになっておる。それは、言うならば自治体のそこに住んでおられる住民の皆さんの税金ですよ。たいへんな金をかけておる。だから外貿コンテナ埠頭の専用貸しは、つくるのは国民と地方自治体、つまり地方自治体の住民の金でこしらえて民間に専用貸ししてやる。しかもこの案の中心はコンテナターミナルの運営と料金——料金が入っておる。その意味では特殊料金です。そういうことになれば、これは黙っていられた筋合いではないでしょう。  そこで問題は、いまいろいろの人の意見をとおっしゃるけれども、横浜市長の代行で港湾局長が出ておる。港湾局長は口があかぬと言う。この件に対しては意見を求められても言いようがない。横浜港以外にたくさんの港湾運送業者が働いておるから、はみ出していくものはどうなってしまうのだ。廃業まで予測しておるようなことを片方の案はつくっておる、補償だ、そういうふうなものに意見の出しようがないと言う、いきなりぶっつけられても。ここに関東学院の先生の北見さんの意見が出ている。港湾審議会の有力な学者ですよ。こんな半ぺらのやつを書いてみて、そこから先は行きようがないと言う。だからここでいきなり言っておるのは、「外国における事例を参照するのは必要であろう。しかしあくまでもわが国における経済と港湾の性格を踏まえて、欧米諸国との質的差異を考慮して、なるべく問題をあとに残さないような方向を打ち出されることが望ましい。」こういう言い方をして非常に気を使ってものを言っておる。しかもこの中では「経済成長にかかわる一般的な諸政策が近年に至って人間回復という面から反省を要請されておるのは周知のところである。港湾運送の場合においても、単に港湾機能を利用する立場からの合理化政策に重点を置くことに終わり、それが決して結果的によいとは限らない。」と言っておるのです。「船主、荷主サイドからの経済性の追求だけでやっていこうということでいいはずはない。」と北見さんは言っておる。それは確かに、あとでも言っておるが、国民生活の問題にからんで物価という問題もある。それは私もあると思うけれども、こういう出し方を——船主あるいは荷主のほうから言えばそうかもしれぬけれども、それだけでいいはずはないとおっしゃっておるが、確かにそのとおりである。ところが港湾がハチの巣をつついたようなことになってしまって、長い反目とこれからの紛争が続いていくということは目に見えておる。最近は港湾の皆さんというのは一つの水平運動なんだ。住宅にしたって労働環境にしたってそうです。総力をあげようということですから、いろいろな恩讐を乗り越えて結束をしてきておる。しかも今回の場合には、検数にしても検量にしても鑑定の分野にしても、こんなものは将来に向かって要らないのだと言わんばかりの中身なんですね。だから検数、検量、鑑定なんかでも、横浜だって、全検だって日検だって一緒になったりいろいろしておりますが、そういう動きの中からすると、検数、検量、鑑定の分野だってたいへんなことになる。こういうことで進められれば要らなくなってしまう。だから、そうなると、当然そこには全部一緒になってやろうじゃないかという空気が出てくるのはあたりまえだ。だから港々で全部そういう関連を持ってしまうということになって穏やかならぬことになる。かつてそういう場面もありましたが、あの時代よりも非常に深刻な状態にありますだけに……。だから私は、そういうものを一体どう行政という面でさばくのかということについては、船主、荷主の言い分だけを取り上げて前へ出してくるということであれば、これはとてもじゃないがさばき切れないと私は思う。そこで実はこの問題を取り上げて申し上げているわけですよ。時間があれば一つずつ詰めていきたいのですけれども、ここでひとつ五、六点について簡単に承っておきたいのですが、まず一つは、外貿コンテナ埠頭の専用貸しをいま申し上げましたが、この半官半民の会社、東京鉄鋼埠頭のようなものですね、ああいうものを見ても、これは東京都が五一%出しているのですよ。鉄鋼貿易商社、運送業者等があとは持っているわけですがね。これだってずいぶん人を食った話ですよ。経済性という意味からいって、もうかるからいいということになるかもしれぬけれども。こういうふうな問題とからんで、専用埠頭の概念というのは一体どういうふうにおとらえになっておるのか、まずここを聞きたい。
  155. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 専用埠頭といいますと、狭い意味で申しますと、特定の企業が、私人が自分の貨物を扱うために持っておる埠頭、これが一番狭い意味の埠頭でございます。ただ、そういう私企業が持っております埠頭、たとえば工場の岸壁など、製鉄所の岸壁とかいうものがそうでございますが、それ以外に私ども専門埠頭ということばを使っております。これは所有者は港湾管理者の場合もございますけれども、特定の一定の貨物を専門に扱う埠頭、そういうものがあるわけでございます。今回の審議の対象になりましたのは、その辺まで含めてという議論が入ったわけでございますが、普通専門埠頭と申しておりますのは前者の場合が多うございますが、広く言えば後者も入ろうかというふうに存じます。
  156. 大出俊

    ○大出委員 この二月二十七日の港湾審議会の港運部会は、専用埠頭における作業体制のあり方、免許のあり方、料金のあり方、港運業の対応策、労働対策、余剰設備対策というのが検討事項ですね。ここでいろいろやっておられる、私さっき取り上げましたが。ここで経済性だけでなくやはり港運業の近代化あるいは健全化という方向ですね、経済性の面だけからでなくこちらの側からのものの考え方が必要なんじゃないかということで、たたき台を練り直すんだということになったはずですね。それからわずか十日しかないですね、これが出たのは二月二十七日ですから。普通ならば練り直すのに十日ぐらいかかるのですよ。それをぽかっとあなた方のが出てきてしまった。これは事務局を担当されているのはおたくだと私は思うんだけれども、おたくにあるんだから。そうすると一体何を考えて出してきたのですか、この答申というのは。たたき台を練り直すことになっている。にもかかわらずこれはぽんと出てきたのですがね。この中身というのはさっぱり練り直されていませんよ。どういう理由だったのですか。私にはさっぱりわからぬのだけれども。船主、荷主の言うことを黙って聞いたとういことですか。
  157. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 この答申は、一番最後に書いてございますけれども、専用埠頭でいろいろなものが出てきたということがございまして、効率的使用ということで出てございますが、最終的に、いま先生御指摘ございましたようにいろいろな問題点といいますか、中身に問題点がたくさんあげてございます。これをさらに今後検討しなければいかぬ、方向を与えてございますが、先ほどからいろいろと御指摘がございましたようなたくさんの問題点が書いてあるわけでございまして、このままで進むというふうには考えていないのでございます。
  158. 大出俊

    ○大出委員 これはもう話にならぬやりとりになってしまったのですけれども、これは企業の浮沈にかかわる問題であることには間違いないですね。したがってそうなれば慎重に時間をかけてやらなければならぬということになると思うのです。これが承りたい次の第一点。  それから審議会は、これは別な角度で常設をするというのですけれども、そこのところをあらためて——やはりいずれにせよ話し合いの場を持たなければまとまりません。そういう意味での審議会の常設、そしてその委員の選び方、労使という問題もあります。聴聞会なんかも前には港湾関係の組合の委員長などを入れているのも幾つもありましたが、そこらのところも、やはり労の問題が一ぱい出てくるわけですから、そこらをどうするかという問題。  それからついていけない企業に対して、そのための補償機関をつくるようなことまで書いてあるのですけれども、うしろ向きの政策ということばも出てきているのですけれども、これは生きていけるのかいけないのかという問題ですよ、このワクからはみ出すのは。それは死んじゃうのかという点。ここのところをはっきりしていただきたい。その場合の労働対策というのは一体どうなるのか。何か転業だとか何とかのあっせんみたいなことが書いてありますけれどもね、そう考えておられるから書いたんだろうと思うのだけれども、そこのところは一体どうなのかという点。  三点目。それから港運協会その他に入ってない業者がたくさんあるわけですが、これは一体どのくらいあって、ここらのところはどういうふうに考えておられるのか。ここらあたりのところを、時間がありませんから列挙しましたから、ずらっとお答えいただきます。
  159. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 まとめて三点御指摘があったわけでございますが、これにつきましては、やはり具体的な問題になりますと先生御指摘のようにそう簡単にはまいらないと思います。やはりじっくり時間をかけて、特に従来も労働者の代表の方も入っていただきましていろいろの御意見を承っておりますが、同じような形で審議を願いたいというふうに考えております。  それから……。
  160. 大出俊

    ○大出委員 もう一ぺん言いましょう。慎重にやるのはいいのだけれども、生きていけるのかいけないのか、うしろ向きと言うんだけれども、これは何だと聞いているのです。
  161. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 基本的には、うしろ向き前向きという話がされておりますけれども、私自身考えておりますのは、先生生きる死ぬという御発言がございましたけれども、現在の港運業界の方々は、現実には港湾の貨物がふえてまいりますので、生きる死ぬというよりも、新しい形にどういうふうに順応していくかということを一義的に考えたいというふうに考えてございます。
  162. 大出俊

    ○大出委員 それから港運協会等に入ってない業者があるでしょう。それがどのくらいあって、どうするつもりかということです。
  163. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 アウトサイダーにつきまして、私が関知している限りでは、ほとんどないというふうに理解してございます。
  164. 大出俊

    ○大出委員 そんなことはないですよ。そこのところをお隣りの方々にもう一ぺん聞いてくださいよ。ほとんどないなんと言ったって、これこれあるとちゃんと言っているじゃないですか。
  165. 兼松暁昭

    ○兼松説明員 アウトサイダーにつきましては、われわれが持っております数字といたしましてはごく少数でございます。
  166. 大出俊

    ○大出委員 ないとおっしゃるから……。  そういうところはどうするのですか。
  167. 兼松暁昭

    ○兼松説明員 それは海運局を通じていろいろ指導をしております。
  168. 大出俊

    ○大出委員 そこで、そういうところは非常に困るのですね、ものを言う場所がないのですから。ですからものを言う場所をやはりつくっておかぬと、これは一方的にやらずぶったくりになつちゃっては気の毒千万で、そこだって働いている人はいるんだから。それはないんだなんてことを言われたって困るので、私も東京港のどまん中にフェリーボートに乗っかって浮いていたことは年じゅうなんだから、知り過ぎるくらい知っているんですから、ちゃんとそういうことをやってくれなければだめです。  それから、協同組合をつくるとおっしゃる答申が方一方あるんですけれども、新しい集約方式ということになるとその種のことにならざるを得ぬわけだ。構想としてはそこまでいくかいかないかはこれからの問題だけれども、雇用問題が紛糾をした場合には一体どうなるのですか。どこが責任を負うのか。
  169. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 単純に協同組合をつくって、従業員のことを無視して組合をつくるというふうには私理解しておりませんので、各企業が持っております労働組合と十分話し合いがついて、そういう形が成り立つだろうというふうに理解しております。
  170. 大出俊

    ○大出委員 労働省側にちょっと承りたいのですが、いま私ここでやりとりしましたように、問題がたくさん出てくるんですね。それは四十二年三月三日の港湾審議会の集約の答申、このときには雇用主に責任があるということを答えている。そこで、いま申し上げた幾つかの問題は雇用問題すべてにかかわりますが、一体この答申が出る間に、事務当局である運輸省と労働省の間で、つまり労働者の側、労の側に対するものの考え方というものを、話し合ってやらなくて、かってにやったのだということになると穏やかならぬことになる、これだけ大きな影響のあるものを。やれ国の機関であるみたいなことを言って、就職のあっせんをするような公的機関をつくるといっているんですから、そこらのことは何も運輸省の責任範囲ではない。だからむしろ労働省と話をしてやったのかやらないのか。話をしておらぬということになると、あらためて問題にしなければならぬと思っているので、その関係はどうなっていますか。
  171. 中島寧綱

    ○中島説明員 今回の三月二十七日の港湾審議会の答申に関しましては、御承知のように労働問題についても十分配慮すべきである、こういうことをいろいろ話し合って入れてもらっております。ただ、いま端的に御指摘のありました計画委員会が考えておる、そういう内容については一切私どもは関知しておりませんでした。これが事実でございます。ただ、おそらく推測しますところでは、業界だけがいろいろこういう対策を進めるにあたって検討した部内の問題ではなかろうかと思います。
  172. 大出俊

    ○大出委員 これは結論めいたことになりますが、もしも業界の部内の問題だけだったとするならば、二月二十七日に出席している責任ある人から私はすべて聞いて書いてあるのですが、運輸省の方がおいでになっていてそういう答え方をするとなると、これはたいへんな問題だといわざるを得ないわけでございまして、そんな業界だけのやったことを、答申も出ない先から、つべこべ運輸省がまさに業界代表みたいなことを言うなんということは、ほんとうに捨てておける筋合いのものじゃないですよ。そんな出過ぎたことを言うから問題が紛糾するだけのことです。とんでもない話です。大臣、このあたりはひとつあなたのほうから答えてください。ちっとやそっとの数の労働者じゃないんだから。
  173. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 だんだんのお話を聞いておりまして、たいへん重要な問題でございますが、大出さんのほうの重点は、中小企業及びアウトサイダー並びにこれらに関連する労働者の問題、いわゆる近代化にどう対処すべきかということだと思うのです。私は答申案それ自身をそのまま実行するわけではありませんけれども一つの方向でありますからもちろん尊重することでありますが、その諮問し答申されましたものを行政的に実際に移す場合、先ほど来お話があった点は十分にくみ取って考えていかなければならないと思います。ただ根本論といいますか、いろいろ近代化社会が進むに従って流通形態が変わってくることは、大出さんも十分御承知のとおりであります。したがって、いわゆる近代化されていく流通体系の中において中小企業あるいは労働組合、労働者というものがどういうぐあいに人間尊重の立場から救われていかなければならぬか、こういう意味においては、われわれ行政は国民全体の立場に立つ公僕でありますから、最善の措置を講じてそのようなことのないように、特に労働力というものはいかなる場合でも死ぬことはないわけであります。いかに職業が変わり、あるいは時代が変わっても、人間の労働力というものが再評価されあるいは再生産といいますか、価値を与えられるものでありますから、いい価値を与えられるように行政をやっていかなければならぬと思いますので、その方針で進みたいと考えております。
  174. 大出俊

    ○大出委員 これは答申の中身そのものであるとかあるいはいまの労働省のものの考え方だとか、どこまでタッチしたかという——あなたのほうがものを言ったとすれば、それから先は労働大臣の責任ですからあらためて労働大臣に聞かなければいけませんけれども……。  それから現にいま起こっておるのは、ここに決議文等がありますが、十六項目の要求を出しまして、労働者がどこかへ行ってしまうようなことが書いてあるし、業務も中小は飛んでしまうようなことが書いてあったり、検数、検量、鑑定なんかもなくなってしまうようなことが書いてある、いままでの経緯は。そこらを全部含めて十六項目要求が出ている、こうなってくると、港湾に関する組合というものは全部一緒です。そこまできておるわけですから、この問題はやはり相当な時間と、意見をお互い吸収し合う場と、これは労、業に分けて、アウトサイダーのことも含めて、そういう場所で論議をしていかなければならぬ性格だと思うんですね。大臣がいまいみじくも言われた移り変わりのテンポの早さということについては、労働者といえども、業といえども、われわれといえども知らぬわけじゃない。少し港湾に首を突っ込んでおる人ならみんなわかっておることです。地方自治体の港湾管理者にしたってそうです。ただ、いまのような行き方というのは、現在の法律にどうきまっているきまっていないにかかわらずとまでいっておるのですから、そうなってくると、まさに港湾運送事業法なんというものは中身は何もなくなってしまうわけです。そこらのことも考えなければならぬ問題だから、ぜひ性急に——もう出してしまった答申だから引っ込めるというわけにはいかぬでしょうが、思い切ったことをおやりになったほうがいいという判断を、兼松さんあたりなかなか強気だから持っておるのかもしれぬ。だけれども、それだけで問題は片づきやしない。船主べったり、荷主べったりじゃないかという反対側の大きな批判をこうむって、港湾は荒れに荒れるということでは困る。特に申し上げておかなければならぬのは、港湾運送事業法の第一条に港湾秩序の維持ということが書いてある。秩序の維持どころじゃない。これはえらいことになってしまう。だからそういうことがあっては困るので、労働省も含めて、なぜ一体今日までそういう意味で手を尽くさなかったか、ここのところは私はたいへんな政府の責任だという気がするのです。それだけに、今後の問題というのはよほど慎重にお進めをいただかぬと困る、こう思うのです。  それから最後に一つだけつけ加えておきますが、こういう時期に、免許のあり方なんですけれども、妙な差別待遇的なことをおやりになられては困るわけですね。したがって、港湾秩序を維持するという問題を含めて、新規免許、これはその前提条件ですけれども、特に限定免許、こういうふうなものは認めない、こういう方針をおとり願わぬとたいへんなことになるのじゃないかと思っておる。たとえば鉄鋼だとかサイロなんか、これは皆さんのほうはどんどん許可しておりますね。これは集約にとっては非常な妨げになる。免許申請があった場合実態調査を皆さんがおやりになって、差別免許の形は一切しないということをやはり前提にしておいていただかぬと、先ほど落としましたから最後につけ加えておくのですが、そこらのところも十分皆さんのほうでお考えいただきませんと——具体的ないろいろな例をあげても、これはもう時間がありませんからしょうがありませんけれども、そういうふうな配慮を皆さんのほうで十分していただいて、いずれにせよ、どっちになるにしても思い切って突っ込んだ、できる限り不満をなくすという形、意思の疎通をはかるという形の中で結論を求めていく、こういうふうにしていただきたいと思うのです。大臣にひとつ最後にその点について承っておきたいと思います。
  175. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 御意見のごとく、慎重に、かつまた、人間性回復の目的のもとにやってまいりたいと思います。
  176. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんでしたので、実は、この答申あるいはそれをめぐる経過に触れて、もう少しその運輸省の責任を追及しようと思ったのですけれども、時間がございませんので、何もかもわかっている橋本大臣のことですから、大臣の腹の中に私はおまかせをしておきますので、できるだけ、会いたいというのには会ってやっていただいて、意見を聞いていただきたい。そして、政治的な、先ほどお話しになりました人間性回復を含めての御判断をいただけるようにつけ加えておきまして、終わらしていただきます。
  177. 天野公義

    天野委員長 本案に対する質疑は、これにて終了いたしました。     —————————————
  178. 天野公義

    天野委員長 ただいま委員長の手元に、塩谷一夫君外二名より、本案に対する修正案が提出されておりますので、提出者より趣旨の説明を聴取いたします。塩谷一夫君。     —————————————     —————————————
  179. 塩谷一夫

    塩谷委員 ただいま議題となりました運輸省設置法等の一部を改正する法律案に対する自由民主党、公明党、民社党、三党共同提案にかかる修正案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文は、お手元に配付してありまするので、朗読は省略し、その要旨を申し上げますると、原案のうち、海運企業整備計画審議会の廃止及び大臣官房の所掌事務の一部移管に関する改正規定については、昭和四十五年四月一日から施行することとしてありますが、すでにその日が経過しておりますので、これを公布の日から施行するように改めることとするものであります。  以上のとおり、修正案の実質的な内容はきわめて簡単なものでありますが、修正案そのものがたいへんめんどうな形になっているのは、全く法制的、技術的な理由からであります。  よろしく御賛成くださいますようお願いいたします。
  180. 天野公義

    天野委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  181. 天野公義

    天野委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  運輸省設置法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、塩谷一夫君外二名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  182. 天野公義

    天野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  183. 天野公義

    天野委員長 起立多数。よって、修正部分を除いては原案のとおり可決いたしました。  これにて本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  185. 天野公義

    天野委員長 橋本運輸大臣
  186. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 ただいま、法案につきまして慎重御審議願いまして、可決をいただき、ありがとうございました。  なお、質疑の内容等については、十分今後心してこれが実施に移したいと思っております。
  187. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 運輸大臣に最後にお願いを申し上げます。  関連になるかどうかわかりませんが、大分の飛行場が新しく建設されておりまして、昭和四十六年の秋以降、新しいところでりっぱな二種飛行場が完成いたします。地元の要請によりまして、別府飛行場という名前にしていただければ幸いであると思います。お願いを申し上げます。
  188. 天野公義

    天野委員長 午後四時三十分より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時五分休憩      ————◇—————    午後五時十五分開議
  189. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  建設省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  190. 大出俊

    ○大出委員 新全国総合開発計画というのがございますね。これは将来二十年間にわたって五百兆くらいの設備投資をしよう、こういうようなことです。これは過去百年間の五倍くらいの金になるわけでありますが、実はこれに見合う建設省の体質改善といいますか、これらの点がいろいろ建設省の書類の中にありますけれども大臣、一体この新全国総合開発計画に対する建設省の基本的なものの考え方といいますか、設置法にいう問題とも関連をいたしますので、まずこれをひとつ承りたいのです。
  191. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御承知のように、新全総の構想は、日本の経済は非常に高度成長をいたしておりまするが、その反面において実は非常にアンバランスになってきております。一方においては都市に対する非常な過密現象、一方においては過疎現象が出ている。しかも、今度は都市に過密になった結果、都市集中のメリットがなくなって、かえって公害と人間疎外の傾向が出ている。一方においては、もう少し社会投資をすればりっぱな生産あるいは文化の中心たるべきものが疎外されておる。こういうものを、もう一回均斉のある国土の開発、人間の幸福感を考え直すべきだ。そのためには思い切った、いまの社会資本の充実を均斉をとりながらやるべきだ。しかしなかなかたいへんな経費がかかるし、時間もかかるので、これをいわゆる相当長期の計画として新全総なるものを考えたということでございまして、その構想からいたしますれば、社会資本の充実ということは、国家全体、国民全体の同意を得てやらなければならぬが、その目的のためには建設省が担当すべき分野が非常に大きい。一つは道路計画であり、あるいは治山治水利水計画であり、あるいは住宅政策であり、さらには砂防等あるいは都市再開発というようなものがございまするので、そうした面を、いま全部の計画はできていませんけれども、一応の概定の目標をひとつ立てて、それぞれ五年計画あるいは三年計画等を策定いたしまして、いまその一歩を踏み出しつつあるという現状でございます。
  192. 大出俊

    ○大出委員 新全総なるものは主としてどこが中心になっていま研究をし、進めておられるのですか。
  193. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 これは、御承知のようにまとめ方は経済企画庁が中心でございまして、これに対しまして、ほとんど全省が資料を出し、意見を出し、まとめておるという状況でございます。
  194. 大出俊

    ○大出委員 大臣のいまの御答弁によりますと、建設省の立場から、人間疎外あるいは文化疎外というようなことについて、そうした社会資本の充実、拡充というようなことの中である意味での解決をはかっていこう、こういう言い方なんですけれども、ところが現実に——きょうは理事会で、ここのところ私のほうの委員会も夜の十時だというような時間に近いもんですから、きょうは少し時間をおのおの考えてということになっておりますから、あまり長い理屈を申し上げないことにいたしますけれども、そういう大臣考え方と少し違う建設省内の動きが目につくのですね。たとえば道路をつくろうと思うが、経済を刺激する仕事をやっているんだというふうに考えるべきであるなんというようなことで、言うならば現業官庁から行政官庁に切りかえて、さらに言うなら経済官庁なんだ、そういうものの考え方が中心に一つある感じがするものが幾つかございます。そうなってくると、どうも大臣が言った、つまり看板になるべき方向と少しうらはらなものがあるのじゃないかという気がするのであります。言い過ぎなら別な角度から申しますけれども、そこらのところはいかがですか。
  195. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 他のことばで言えば、従来ややもすれば行政官庁一つのセクショナリズムというものが現実にあったことは事実だと思います。したがいまして、国家目標というか全体の総合的な運営よりも、一つの長期計画を立てると、その長期計画だけにとらわれまして、それが他に関連することをややもすれば忘れがちである。もっと極言するならば、道路五カ年計画をつくれば、その設定した道路を、国道なら国道をずっとつくればいいんだ、県道は県道をつくればいいんだというような傾向がかなりあったと私も反省しております。そのために今回は、それは一応の計画はそれであるけれども、社会というものはどんどんどんどん変化していきます。国民の意識も変わってくる。それならば、その中で弾力的に運用すべきである。たとえば、現在ある地点に団地が出てきた。ところが、そこには国道も府県道もいままで計画はない。そうすると、これは地元自治体であと始末をしなければいかぬ、あるいは企業体がやらなければいかぬというようなことでは、私は知恵のないことだと思う。だから、そういう場合には、たとえそれが市町村道であろうとも、予算を地方道として一本で取っておりますから、個所づけは政治的にこれを考慮してやるべきである、河川等においてもそれはいえる、というようなことで、本年はそういうふうに個所づけも運営もやるべきだということを指示いたしまして、いわゆる行政が政治にある意味においては優先するようなやり方をやめて、行政はどこまでも政治目的を達成するための手段として与えられた官庁の権限であるという形でもっていかなければならない、こういうふうに指導して、微力ながらその方向で進みつつあるつもりでございます。
  196. 大出俊

    ○大出委員 政策論争をここでやりますと、先ほどの理事懇談会の申し合わせからはずれていきますので、なるべく簡単にまとめて申し上げようと思っているのでありますが、実はこの設置法をながめてみまして、地方建設局をある意味では強化しよう、大きな意味でいいますとそういう流れがこの中にあるわけであります。幾つかの地建に企画部を置くことにしたからといってどうということはないのです、その限りならば。ただ、これは過去の経過、歴史がありまして、河野さんが建設大臣をおやりになった時代の河野構想なるものがございます。私が国会へ出てきた三十八年ごろから三年ばかり、一生懸命これをつぶしてやろうと思って、設置法を毎年廃案にしてきた。私はかれこれ八時間も質問したことがあるのですよ。そういうような歴史も実はある。いまさらここでその当時の地建強化のものの考え方を持ち出す気はないけれども、実はあのときのものの考え方というのは、補助金その他にしてもみんな地建でやってしまう、堤防をつくるにしても何をつくるにしても、そこに業者とのつながりがあって、有力な人を一人置いてうまいぐあいに握っていくというかっこうになってしまうという感じがする。そこで、二回か三回かつぶれたからおあきらめになって、別なものが一つ出てきたということなんですけれども、それほどの中身ではありませんけれども、どうもそのときの構想というのは、やはり現業官庁から行政官庁に切りかえていくのだというものの考え方が大筋としては背景にあった。だから、その当時の考え方がまた出てきたのだとすると、少し気になるところがあるわけであります。  それともう一つ大きな視野で見て、いま大臣がお答えになりましたが、私は、どうも建設省がやっている仕事が経済を刺激するのだという観点での仕事だということになると、先ほどおっしゃっていた人間疎外その他を解決しようということとは違った方向になる。五百兆もかけて新全総をやっていこうということになると、これは非常に大きな問題ですから、一番基本になるものにぶち当たるわけでありまして、そこらが実は聞きたかったので質問をしてみたわけであります。根本さんの時代ではない、昔の河野さんの時代ですから、だいぶ時間がたちましたが、そのころの考え方といまの考え方と、どこかに接点でもあって出てきている設置法だとすると、にわかに賛成しがたいという気になるのですけれども、そこらのところはいま大臣にこういうことを言うのが、少し時間がたっていますから言い方がよくないかもしらぬけれども、私の経験上心配になるので、ひとつ念のために聞いておきたい。
  197. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 私は、実は十二年前、河野さんの何年前ですか、四、五年前に建設大臣をやりまして、そのときに実は現在の道路特別会計を設けたのです。少し余談になって恐縮ですが、基本的な問題を大出さんから言われましたので申し上げますが、あの時代も大蔵省、財界の方面では、道路に五年間に一兆円もかけるということは経済を刺激してインフレになるんだという議論がありました。しかし私は、日本が非常にアンバランスになっておりまして、地方はどんどん衰退してくる、都市に集中していく、一方日本の経済の非常に大きな隘路になっているのは道路交通だと思う、国内輸送賃がべらぽうに高い、これを直すにはどうしてもやはり道路整備をやらなければならぬということで発足してやったのですが、そのとき実は河野さんが経済企画庁長官だった。ところが、あとからは道路政策はうんと推進したが、そのときにはぼくに対して盛んに牽制されたものです。根本さん、道路だけをそんなによくすると、公共事業費のあれになると刺激しはせぬかという意見でございましたが、現実にやってみますと、道路政策をやることが、これは国民全体の欲求であり、これ自身が日本経済発展の一つの基礎をなすということで、それからチェンジマインドして河野さんも一生懸命道路をやられたということでございます。  今度それを実施してみますと、いま道路政策、公共事業をやる場合に一番隘路が実は用地の取得でございます。この用地の取得を自治体ではなかなかやりたがらないのです。そうすると、どうしても建設省自身が矢面に立って地方自治体に協力してもらわなければならないということでつくったのです。そのときには、事業量があまりないところにそういうものをつくってはならないということで、今日までセーブされておったという事実です。これは道路のみならず河川についても全部適用されます。それから最近におきましては、都市再開発等においても用地関係が非常に大事業になってくる。それから先ほど御指摘になりましたが、道路や河川の計画と地方開発と非常に密接な関係がある。ところが、ややもすれば建設省の役人はおもに技術屋が多くて、それから今度はほんとうの法律屋ばかりです。全体、地方開発とそうした工事との関連を社会的に経済的に判断する人が、はなはだあれだが非常に少なかったことも事実です。そういうものを地方自治体と関連しながら現地において計画をまとめるものとしての企画部、これはぜひとも必要だということでございまして、これが今度設置するところは、四国にしろその他にしろ、いわばある意味においていま少し立ちおくれているところでございまして、これを今度相当重点を入れてやらなければならぬので、それを消化するためにこうした設置法をお願いしておるという状況でございます。  それからもう一つ、社会資本を充実すると景気を刺激するというのは、これは、私は基本的に大蔵省並びに産業資本の諸君と意見を異にしておるのです。一方において、民間投資がもうどんどん伸びていって、そのために社会資本が立ちおくれてアンバランスになっている。それを抑制するならば、むしろ民間成長率を押えて公共事業を優先すべきだというのが私の年来の主張でございます。私は先般、去年まで党におりましたが、党におるときもそれを主張しておるわけでありまするが、どうもこれが必ずしも私たちの気持ちにそぐわないのですけれども、微力ながら今日までやってきておるのでありまして、今後の日本の一番大事な問題は、私はこの社会資本とそれから民間資本をどうバランスをとっていくかというところに、いわゆる総理がいうところの社会開発の根本問題であり、内政の問題だと思っておる次第でございます。
  198. 大出俊

    ○大出委員 私はさっきちょっと触れましたが、道路をつくるというのは景気を刺激する仕事だということは、どうもそれなりに聞くと、私の考えとはたいへんな隔たりがあるという気がいたします。私も根本さんをきのうやきょう存じ上げておるわけではないので、労働組合を私はやっておりましたから、ずいぶんいにしえの若い時代の根本さんを知っておるわけですから、実は政策の面に非常に明るい大臣でもございますから、そういう意味で、基本になるべきものをちょっと承ってみたいと思っておったわけです。まあ私、先々のことがありまして心配な点もあって、この設置法そのものについては、中身が現時点でそれほどたいへんなことではないというふうに思っておりますけれども、そういう意味で賛成はいたしかねるが、しかしこれは通さなければいかぬだろうという気持ちになっておるわけです。  そこで、いま道路の話が出ましたが、道路整備五カ年計画、これは新しいですね、新道路整備五カ年計画、これが規模を十兆三千五百億ということでいろいろ御検討され、財源捻出にはいろいろ問題があるがまあ発足をするという形の今回の予算編成をめぐっていろいろ問題が出てまいりましたが、また当時学者の諸君ともいろいろ話し合った時期があったのでありますけれども、何か財源というものをはっきりさせないで道路整備計画が先に発足をするというかっこうになっておるというように見える。どうもそれはたいへん無責任なやり方ではないかという気がしておったのでありますが、財源というのは一体どういうふうになっているわけでございますか。
  199. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のように、本来こうした実施官庁の中期計画というものは、当然財源措置をはっきりしてやるということが正しいと思うのです、本来新全総ができた場合、それと関連してこういう道路計画もできておるのでありまするから。これを私が党におって預かっておりましたが、実はこういうことを委員会で申し上げていいかどうかわからぬけれども、お互いに国政を憂える上でざっくばらんに申し上げますが、最初は、どうも新全総のあれの中には、都市を再開発して機能を高めるというところに重点が入れられ過ぎておる。そうしていわゆる都市学者あるいは建築学者等の未来学者の諸君からは、もう二十一世紀に向かって進んでおるときに都市集中は歴史の必然性である、したがって太平洋メガロポリスとかあるいはベルト地帯とか、こういう構想にとらわれて、もう他の地方はどんどん過疎化していくのはあたりまえなんだ、それに逆行することは近代経済学からすればおろかなことであるかのような意向がどうもプランメーカーに多過ぎた。これはおかしい、これは非常に政治の大きな問題だということで、党において私は四回、五回にわたって修正を要求した。考えがおかしい。むしろ日本においては、四面海に囲まれておって、社会投資さえすれば至るところでりっぱな工業地帯あるいは文化地帯として生活できる。その一つの例は北海道だ。一番条件が悪いけれども、釧路にしろ苫小牧にしろ、札幌にも近代工業がどんどん定着していっておるではないか。なぜしからばそれができるかというと、社会投資を相当思い切ってやったからだ。しからば日本においてそれが可能である。しかも一方東京において、地下鉄一キロつくるのに五十億ないし五十五億かかる。道路一つつくると八〇%なり八五%が補償費に使われている。そうすればいまやそうした都会に国民の税金を集中して再開発をやって、ますますモータリゼーションと人口が増して公害を起こすということはおかしいじゃないか。それこそ政策転換すべきであるということを、私は声を大にして党内の諸君にも言って、だんだんそうした形において新全総が、全体的な計画が出てきたわけです。ところで、去年の選挙、それから今度すぐに予算編成、組閣が重なっていったものだから、それを待っておったらだいぶ道路計画というものはおくれてしまう。ところが一方におきましては、この道路計画が先行しなければとても容易でないと思いまして、そのために私は、道路計画は、だれ人も認定できるのできめてしまって、その裏づけを閣議できめるべきだという発想をいたしたのでございます。幸いにして、これは総理並びに大蔵大臣もそうだということで、異例でございましたが、まず道路五カ年計画を決定して、その裏づけは昭和四十六年度までに裏づけするという異例の措置をとった次第でございます。(大出委員「異例も何もめちゃくちゃだ」と呼ぶ)手法としてはあれですけれども、しかしこれは御承知のように、特定財源を設けなければ、大体いまのところは一般道路で三千億程度の財源不足とわれわれは推定しております。それからさらに有料道路では一兆近くがいままでは足りない。そこで御承知のように、今度は実は建設委員会で、地方道路公社法なりあるいはもう一つ特別措置法をかえて、地方で有料道路を合算してやるとか、あるいは道路公団の道路を地方に委譲さしてやるというふうないろいろな方法をとる。財源としてはまだ確定していませんけれども、御承知のように、自動車新税とかトラック税とか、さらにまた地方財源を与えてやらなければならぬと思いまして、われわれのほうでは軽油引取税とかそういうものを与えて、地方もその他もやる措置を講じていくべきだということでお願いしておるということで、まっ正面から論争させますと、まことにはなはだ手法としては逆でございます。逆であるけれども、政治というものは、やはりそれだけの目標をでんときめて、これにやらせるのだということでやっても国民が納得していただけるのではないかというようなことで、こういう手法をとったのでございます。
  200. 大出俊

    ○大出委員 これはトラック税あるいは自動車税、田中角榮さんの田中構悪なんてだいぶ一ぱい出てきておるわけですが、とかくどうも国鉄運賃の値上げとなりますと、受益者負担の原則だなんということで、これは資本金が八十億足らずの国鉄ですから、そこで借金が二兆もあるのですから、あのとき調べてみると、年間の国鉄の政府に対する支払い利子なんというものは九百七十一億ぐらいあったですね。ところが一五%旅客運賃値上げで幾ら収入があったかと思ったら九百十億ですよ。そうすると、これは支払い利息に足りない一五%値上げというような勘定になる。しかし政府は出さないで済むということになる。同じ筆法で、なおあまり資本の原理が働き過ぎますと、とかくいろいろな混乱を起こすことになる、私は実はこう思って心配しておったわけですけれども、財源もきまらずに異例も異例、私に言わせるとこれは場違いだ。そういう形で発足したにはしただけの理由があるはずです。だから、経済を刺激するのだなんということが一面強く出てくる、そういうことになると、しゃにむにこれはきめてしまえということになったのだとすると——先ほど来大臣がお話しになりまして、そのことは私もよくわかりますが、純粋な意味でのどうも着想、発想ではないことになってしまう。そうして片方では、自動車といったって、物品税を取っておるわけですけれども、自動車税関係では物品税を現に取っておいて、そのほかに揮発油税があって、軽油引取税があって、地方道路税があって、石油ガス税など、ずいぶんたくさんの費目にわたって税金を取っておるわけです。そこへもってきて、やれトラック税の創設だとか、自動車新税だということが田中構想だということになってくると、これは確かに大きな問題にならざるを得ぬ。そういう無理をなぜなさるのか。特定財源その他いろいろ考えなければならぬ面があるのに、財源を明らかにしないで、とにかく計画だけは発足させてしまうという、そういう無理までなぜしたのか、ここが私にはわからぬものですから、新全総そのものがわからなくなるので、最初ああいうことを申し上げたわけなんです。これは政策マンである大臣のことですから、それなりの答弁が出てくると私は思いますから、時間のないところで、これ以上申し上げませんけれども……。  さて、そこでこういう構想が進んでいくのだとすると——さっき大臣がいろいろおっしゃった。大臣も、都市のまん中の御出身じゃございませんから、根本さんは、そう言うだろうぐらいの話が出てきたりしますけれども……。そこで、とは言ってみても、やはり都市集中の形は、相当なことをお考えにならぬ限りは——年間の予算の半分くらい使ってでもというなら別ですよ。そうでない限りは、やはり都市集中の形をとる、私に言わせればよくありませんけれども。いまの全体的な資本の原理からいけば、どうしても都市集中になるわけでございます。だから、例の青森の原子力船の定係港をつくるときだって、横浜は、私が強引にけ飛ばしたから向こうにいってしまったのですが、せっかく産業を誘致しようと思っても来ない。来るようにすれば来るのですが、来ないようにするから来ないのです。これは金という問題もからみますが、そういう点等からすると、都市集中は避けられない。そうすると、どうしてもいまここで考えなければならぬのは、もう一つ都市河川の問題ですね。私は、いろいろ言ってきているけれども、財源投入はしていただきつつあるけれども、もう少し思い切って金を使う気にならなければ、都市河川問題というのは片づかぬのじゃないか。自治体が苦心惨たんして、なけなしの金をはたいておって、見るに見かねない面がある。ですから、そういう意味で、都市河川問題というのは、もう少し予算的にも行政的にも力を入れるべきじゃないか。大ざっぱに申し上げないと時間がないから申し上げておるのですが、そう思うのですけれども、その点はどうですか。
  201. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 そのとおりでございまして、従来河川行政というのは、一級河川とか直轄河川、そうでなければ地方の大河川にばかり集中しておる。これは予算のみならず、戦後の日本は、何としても食糧増産であり、農業優先でございましたから、そうすれば、そうしたものをやらないと、水利関係もよくならないし、水害が出てくるということで、これに集中しておりました。しかるところ、日本の経済がこういうふうに高度成長をして、都市集中になった。いままで人の住んでいないところに、都市の河川の周囲に、ずっともう下水も上水もないところにこれが散在していっておる。あるいはまた、工場もそういうところにいってしまう。そのために、従来は相当の降雨があっても、自然のままに流れていて、溢水してもそのままでいけたが、これが非常に大きな、変わった損害が出てくる。ところが、従来のように、政府並びに自治体、特に自治体でも県あたりは、やはり依然として従来の考え方が続いているものだから、この都市の小河川に対する関心が案外少ない。ところが、この四、五年、これがあまりにも強くなったために、それで河川工事でできないのを、今度はやむを得ないから広域下水とかいろいろな手法で実は要求してきたのです。それで私は、今回中小都市河川を思い切ってやるということで、初めてこの補助制度をつくったわけです。それから下水についても、従来に比較にならないほど私は予算を要求しまして、幸いに、これは大蔵大臣も折れてやってくれているということで——従来の河川なり道路なりの考え方が、社会情勢の変化を考えてはおったけれども、それより少しテンポがおそかったような気がするのです。だから、これから変えなければいかぬということで、そうしたことも、実は建設省の道路計画あるいはいまの河川行政にも生かそうという意図が、実は本年から動き出しているということでございますが、御承知のように、どこでもそうですが、必要なことだと思っても、最初やるときにはなかなか抵抗が強うございまして、本年はこの程度でございますが、漸次これを充実していこう、こういうことでございます。  それから、先ほどの都市の集中は、いろいろな手法をとっても必然に出てくる、それはそのとおりです。そこで、これも解決しなければならぬが、そこで経済的にペイするところで資本並びに産業の集中するところは、それの再開発には、できるだけ産業並びに民間資金を用いるべきである。そうして地方のそうしたことのできないところに、税金によるあれをやるべきである。そういうことで地方道路公社等をつくって、都市内の高速自動車道路、これは原則として有料でやるべきである。それから経過地点の都市のバイパス、完全に国道ができたあとのバイパス、これは有料ですべきだ。そして、その得た収入を、その地方でどんどん使えるということにしないと、地方自治体が自分でなけなしの金を使って、よその県から来る車で全部荒されるということに対する抵抗がありますから、そうした方法をもやって、国の助成でいったところのものは、その都道府県が、本来社会開発のための道路なり河川に今後使うべきだ、こういう構想でいま発足したわけでございます。
  202. 大出俊

    ○大出委員 私は、もう六、七年になりますけれども、実は毎年毎年都市河川問題なり、道路問題なりを取り上げてきているわけですけれども、それは、この前の質問、つまり運輸省設置法なんかでも、私は申し上げておったのですけれども、公共性の強い公共埠頭、最近コンテナ専用の埠頭なんかもできておりますけれども、それとても国と地方自治体が財源を負担しておりますが、それを特定の船主、荷主の方向に向かって専用貸しをする、それで特別料金制度をつくっていくということになると、これは一般の住民の立場からするとどうなのだということになる。同じ意味で、やはり国が金を使う河川なり道路なりというものは、いまお話しのような方向に強く進めなければいかぬと思っているから、私は申し上げてきたわけです。それで、これから先申し上げる時間がないものですから、大臣が考えておられることはわかりましたから、これはこの程度にして……。  そこで、非常に小さなことですけれども、河川、道路一つずつここで承っておきたいことがあるのでありますが、昨年、坪川さんが建設大臣のときに、私は環状七号線なり東京、横浜を中心にする幾つかの高速道路について、問題点を指摘しながら申し上げたのですけれども、たとえば鋼製の橋、これをつくった場合に、載荷重量なんかの関係で、環七なんかにしても非常にあぶないところがたくさんできてしまっている。これだけ重量の多いトラックが通るとは思っていなかった、ところが、そうなったという答弁でしたけれども、こういうふうな高速道路なり、バイパスなりという問題についても、相当これは考えなければならぬことが多くあるんじゃないかと思っているのです。たとえば夜間の走行自動車の安全のためということで、中央分離帯というのがまん中にできている。ところが、これは交差点に行きますと分離帯がそこで切れている。そうすると、こっちから来た車が曲がって流れていくというときに、そこに何の標識もないですね。だから、そこでぶつかってたいへんな交通事故が起こるというふうな問題がある。これはまあ夜光塗料だとかいろいろやりようはあると思いますけれども、そういうきめのこまかな配慮をしていきませんと、たとえば横浜からここへやってくるのに、神奈川区から高速道路に乗る。羽田から国会前まで来るというわけですが、ときによっては乗ったが最後、高速どころではない、全くもって遅速もいいところで、そうかといって飛びおりるわけにいきませんから、逃げ場がありませんから、気があせったってどうにもならぬということが年じゅうですよ。だから、万やむを得ず急ぐときは電車で行こう、ゆっくり行くときは高速道路で行こう、そうして料金は、これは払い戻すわけじゃないのですからね。坪川さんに聞いたときには、審議会で一生懸命審議しているんだ、審議しているんだけれども、払い戻のしようがない、しようがないことはないんで、幾らでもある。庶民からすればふざけるんじゃない、国はする気がないんだろうと思いますよ。それかといって、自分でおりてしまうわけにはいかない。大阪城に向かうカマキリみたいなもので、相手がでか過ぎてどうもならぬということになってしまう。そういうことを一々追っておってはどうにもならぬということになる。私がここで申し上げたいのは、もう少し、それこそ分離帯の切れているところに信号をつけるなり、あるいは夜光塗料で標示をするなり、あるいは切り方を考えるなりすればいいのですけれども、こういう計画だからこうつくったというので、あとさっぱりそのまんまですね。だから、やはりそういうきめのこまかいところを一つずつこれはお考えをいただきませんと、どうもうまくないんじゃないかという気がするのですね。そういうこまかいところをもう少し気をつけてくれということを、何べんか私は申し上げたのだけれども、そのときは皆さんのほうは十分配慮いたしますと、こうおっしゃるんだが、やらない。これじゃどうも困るという気がするので、そこらのところはぜひひとつお願いしたいのですが。
  203. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のとおりです。それで、新道路五カ年計画を策定するにあたりまして、私のほうから閣議報告し、また閣僚の皆さんからもいろいろ発言があって、いま御指摘になったことは、十分改良するつもりです。  まず第一に、従来の道路は、延長だけ一生懸命やっておる。みな延長だけ陳情するということで、それに引っぱられておりました。そこで、今度は道路の安全施設、これを本格的にやらなければいかぬ。これは建設省と自治省、それから国家公安委員会のほうと三者協力してやろうということになりまして、建設省といたしましては、いまいろいろ御指摘になりましたうち、一番基本的になる道路の構造令を変えなければいかぬということで——道路をつくるときにはこういう規格でこういうふうにやれという構造令、いままでのようにモータリゼーションのあまりないときの道路、しかもこれだけの交通戦争が起こらないときにつくった構造令がそのままあるというのがおかしいことです。だから、構造令を近く改定するつもりです。それで、それには原則として街路については必ず歩道と車道とを分けて安全施設をつくること、都市内においてはできるだけいまの安全標識、こういうものを必ずつけるということ、こういうことをいまやらせようとしております。これについては関係省庁がありまするので、そうした構想をまとめることは、いまの交通対策の政府の総まとめ役が総務長官だから、総務長官のところで、これは一方交通をするとか、どういう車道には車の入ることを禁止するとか、あるいは子供のために一定の期間車を入れずにやらせるとか、そういうことをやり、われわれのほうとしては、構造上のことを実施し、それから交通規制とかその他のこと、もう一つは、いまの救急対策、これも従来非常に一生懸命やっておるけれども、総合的なあれがないから、これは高速道路の場合における救急対策をどういうふうに改正すべきか、あるいは都内の救急対策をどうするか、そういうことまでを含めて、新道路五カ年計画とマッチさせてやるべきだということを提言して、いまそれを進めておる次第でございます。
  204. 大出俊

    ○大出委員 いまの分離帯の交差点における事故防止という点は、これは例は鳩ヶ谷から川口のほうに抜けるバイパスなんですね。これは内閣委員長もちょいちょいお通りになるところで、現に事故があったというお話も聞いていますし、ぜひこれはお調べいただいて、危険な区域はお直しをいただきたいと思います。  ところで、河川の問題で一つだけ承りたいのですけれども、これも私、予算が全くつかない時代から何回か質問をしてまいりまして、どうして君はそんなに都市河川のことばかり言うのだなんて同僚に聞かれたことがありましたが、ただ付近の住民の一番心配のあるところは取り除くべきであると思うからなんでありまして、これは何も私があげるここだけではありませんけれども、鶴見川水系全体の問題がまず一つ横浜にございます。この中に早渕川という川がありまして、少し降ればあふれてしまい、学校から帰った子供がうちに入れないというようなところが何百世帯かある。そういう地域だったのですよ。最近の歴代の建設大臣の皆さんに御配慮もいただいたりして、少しずつ変わってきておりますが、予算がつき始めてから何年かになるわけでありますけれども、せっかくここまでお進めいただいたわけでございますので、この鶴見川水系全体の本年の予算並びに実施計画、そうしてその中の早渕川という一つの都市河川の、全くもってうちだらけになってしまいましたが、なおかつ少しよけい降れば危険があるという地域でございますから、ずいぶんお進めいただきましたが、なお問題が残っております。  さらに問題は、また古い農家がございまして、いまなお稲作をやっているということでございまして、そこに時期的に水を揚げる古いせきがそのままになっております。だから、雨がよけい降った場合に、このせきを抜く場合に、巻き上げ式じゃなくて、裸で飛び込んで板っぺらで抜くのですから、水量が多くなれば抜けない。そうすると、たいへんにあふれてしまって、水害がひどくなるということですけれども、ここいらもずいぶん何年かになるのですけれども、何とも前に進まない。しかたがないから、横浜市農政局、その他川崎の皆さんの京浜工業事務所をわずらわしてくみ上げ式の、つまりたんぽへ水を引くのじゃないですから、水害を避ける意味のポンプをようやく二、三年前に設置をしていただいて、町内会管理のかっこうで、あぶなくなれば一生懸命飛んでいってボタンを押して動かして水害を避ける、こういうようなことなんですが、これも何年かになると、ポンプがなかなかよく動かぬということに最近なってきている。また付近の住民が住民集会を開くということになってきている。避難場所まできめてやっているわけでありますから、そういうことが何年間もほっぽっておかれるということは、私はよくないと思っておりますが、毎年のように申し上げるのは恐縮ですけれども、地域は心配いたしております。ことしはどんなふうなぐあいに進んでおられるのか、お伺いしておきたいと思うわけであります。
  205. 坂野重信

    ○坂野政府委員 御承知のとおりに、早渕川につきましては、一番大きな問題は、せきがございまして、このせきは、先生御承知のように、川のまん中にあって高さが高くなっている農業取水用のせきでございますので、地元の方々としてはなるべくこのせきはとってもらいたくないという要望がございましたが、しかし、先生御指摘のように、この付近がだんだん市街化してまいりますし、いまやかんがい用水の必要量もだんだん減ってまいりますので、当面としましてはそういったポンプを利用して揚水しようと考えると同時に、できるだけこのせきを撤去したいということで、実はいま鋭意地元と協議中でございまして、できるだけ四十五年度中にもその結論を出したいということで現地のほうでやっておりますから、その点につきましてはなんとかひとつ今年度中に結論を出しまして——そういたしますというと、せきを撤去してもそれに見合った必要な量はポンプでもって揚げようということにいたしました。その前後につきましては先生の御要望も御指摘もございましたので、私どもとしてはかなり予算をつけております。あと残っておるのは綱島せき上下流の問題でございますので、ひとつそれを重点的に本年度は問題を解決するようにやってまいりたいというぐあいに考えております。
  206. 大出俊

    ○大出委員 長い時間はもちろんかけませんけれども、工事の進捗状況というのがございまして、これは直轄区間が千六百メートルでございますか、全体計画として十五億ですか、それから暫定計画として六億三千万、昭和四十三年度まで実施額が一億七千四百八十万ですか、それから昭和四十四年度実施額が四千三十万ですか、四十四年度実施額のうちの最終が一億八十万ですか、それから昭和四十五年度予定が六千六百四十万というふうなことのようでございますが、大体こんなことだというふうに理解しておいてよろしゅうございますか。
  207. 坂野重信

    ○坂野政府委員 そのとおりでございます。
  208. 大出俊

    ○大出委員 それから知事に対する委任区域がございますが、こちら側のほうが五千四百メートルございまして、全体計画としてこれは……。
  209. 坂野重信

    ○坂野政府委員 三十五億でございます。
  210. 大出俊

    ○大出委員 全体計画として三十五億になりますかな。暫定計画として二十六億五千万ですか、昭和四十三年度まで実施額が五千八百万ですか、それから昭和四十四年度実施額が一億一千五百万、昭和四十五年度予定額が一億八千万という数字がございますが、大体こんな程度のことと予測と申しますか、理解のしかたでよろしゅうございますか。
  211. 坂野重信

    ○坂野政府委員 そのとおりでございます。
  212. 大出俊

    ○大出委員 時間がございませんので読み上げさしていただいて御確認を求めたわけでございますが、数年来いろいうものを申しておりますけれども、どこか一番皆さんが困っているところを前に進める努力をいたしませんと、全体的にやはり進んでいかないということにもなりますから、一カ所ができればほかのほうはそれに刺激されて、いまの世の中は住民の皆さんの政治でございますから、そういう意味での運動も活発になる。建設省の政策も、いろいろな制約がある中でやはりそういう雰囲気が出てくれば、大臣もおっしゃっておりましたが、都市集中の中における都市河川というような問題にもより一そう行政的な力が加わる、こういう進み方になるのだろうと思いまして取り上げてまいりましたが、ぜひひとつその点になお一そうの御尽力を賜わりたいと思うわけでございます。  時間の節約をしながら進めておりますので、あともう一つ承っておきたいのでありますが、最近の住宅公団のあり方につきまして、この間もこの席で、千葉の問題などを取り上げていろいろ同僚の木原委員その他から、あるいは関連で伊能先生等からも意見が出てきたようでございますが、一つは、非常に最近家賃が高いですね。公団住宅なるものは、私の手元にあるこの地元の新聞が書いております中身を見ましても、二DKで二万五千円です。だからここに入りたいという人の場合は——それでも入りたい人は確かにいる。だから御主人の収入だけでは資格がないから、奥さんがいろいろパートをやったり何かしているもの、子供さんのものまでみんなひっくるめたりしてこれだけ収入があるということにして無理して入ろうとする。それは高くても場所によってはそういうことになる。ここに「公団公社も遠ざかる」という見出しなんですが、公社公団のこの家賃では貧乏人には「高値の花か」というんですが、中身を読んでみると、「天井知らず県下の家賃」というので「二DKで二万五千円」こういうことなんです。ある新聞には、公団は過去の目減り分を、新しい公団住宅をつくって、そっちから少し家賃を引き上げて何とか埋め合わしているんだというようなことが載っかっておった、真偽のほどは別として。どうも今度でき上がった公団住宅の中で自治会ができる、年じゅう公団側といろいろな問題が起こる、そういうことが、地域でいろいろ仕事をしながら、国会でまた仕事をしている私どもの耳に年じゅう飛び込んでくる。最近あまり多いので少しものを言う気になったわけなんですけれども、この公団のあり方について、今度千葉県の皆さんがおっしゃったような問題と少し角度が違いますけれども、相通ずるところもあります。したがって、そのあり方についてまず、建設省の皆さんは非常に親切に最近は——最近はという言いぐさは悪いけれども、やっておられる、ところが公団の方は何か昔の建設省の皆さんにとってかわったような高姿勢でおられたのでは、公団官僚だなんてどうも感心しないと思うんですが、そういう意味でひとつ公団なるものの姿勢について大臣はどういうふうにお感じになっておられるかを承りたいと思うのです。
  213. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御指摘のように、最近の公団住宅は非常に高くなっている。これは私も非常に頭にきているんです。一部では、説明を聞きますと、なるべく交通関係を緩和するために都心の工場用地を買って、そこに建てておるから非常に高くつく、理屈はみんなあります。けれども一面において、土地は買ったけれども地方自治体が歓迎しない。というのは、公団住宅が出てくると学校をつくらなければいかぬ。小学校、中学校、下水、上水道、それにじんあい処理場というものをつくらなければならない。ところがそれをやったのでは地方自治体がとても財政がもたない。だからなるべく公団住宅で公共分を持て、あるいは少なくとも先行投資でやっていけ、こうなってくる。それをやらせられると公団住宅は高くなる、それをやらないと今度は地方自治体が住宅をつくらせることを承知しない、そうするとその間土地を買ったまま利子がついた金が残っていく、こういう現状なんですよ。そこで私は、これは建設省だけではいかないということで、いま大蔵省、自治大臣と話をいたしまして、地方自治体に固定資産税をもう少し評価し直させていく、これは現実にいま自分の宅地を持ち、そうして住んでいる人のを上げるということじゃなくて、土地を保有することで値上がりの部分をごっそりふところに入れようとする地方の農民の皆さんには、それは不労所得だから、ある程度までは負担してもらう、そうすれば今度地方は財源が出ますから、それで学校もできる、その他もやれる、一方は公団住宅も比較的に安くいけるというような手法をとらさなければいかぬ。これは税制上の問題が一つある。それからもう一つは、実はきょうも住宅公団の副総裁を呼びまして指示をしておきましたが、だんだん聞いてみますと、住宅公団が相当大幅な宅地造成をするつもりで土地を買いましても、先ほど御指摘になった水の供給が確保されない。そうすると、水を持ってこなければ住宅公団の造成を許さない、こう出てくる。そうすると、四、五年つくれない、こういう状況です。そこで私は先ほども河川局長を呼びまして、利根川水系の水の利用、暫定的にも水を供給する方法があるだろうから——それは御承知のように、先ほども出ました農業水利権との調整なんです。慣行水利権というものを非常に主張しますけれども、これは決して農民だけの独占の水ではないのですから、国民の水であるわけなんです。ただ農業が産業の主体であるときに、他のほうに影響がなかったからそのまま認められたけれども、今日すべての国民が水を欲して、それなくして人間生活が安定しないときに、慣行水利権の名において農民だけが、しかも古くから持っておる人だけがオールマイティーで、あとの者は犠牲になれということは、時代にそぐわないということで、実は先般閣議で慣行水利権の調査をして、水田農民にはちゃんと水は確保してやる、慣行水利権を許可水利権としてはっきりやって、その水は確保してやる、そのかわりあとの水は国民全体が利用、活用するということを考えないとだめだ。これは首都圏が全部そうです。千葉県は今後いろいろな発展をするけれども、水で全面的に行き詰まっちゃっている。それから茨城県はいまの鹿島港あれが出てきた。これも水をちゃんとしてやらないとだめです。それから埼玉県がそうなんです。あなたのほうの神奈川県も、比較的いいほうだけれども、水の問題でみんな参っちゃっている。その意味で水の問題を解決すれば、住宅適地が相当あるんです。ある意味では人間がやったことというものは、へたなことをやっておったのは、かえって財産として残るものと皮肉に見ておるのですが、この首都圏内において相当広範囲のところが民間のデベロッパーも手をつけておらない、地方自治体も手をつけてない、公団も手をつけてない土地が相当あります。それはどこかというと、水の手配ができないところ、それから道路のついてないところ、それから軌道のついてないところが相当あるのです。これをやらなければいかぬということで、今度関係閣僚と相談の上、これをやることが私は宅地問題、住宅問題、それから首都圏の産業の均斉のとれた開発の基本をなすから、これを全面的にやろうじゃないかという提案をして、原則的な了承は得ておるのでありまするが、そういうようなこともしてやらないと——住宅公団の運営のしかたに私もいろいろ改善しなければならぬものもあると思いますけれども、高家賃の中には、そうした複雑な原因もあると思っております。ただし現在の公団の管理の状況が、必ずしも私は満足すべき条件ではないということで、少し目を光らして相当警告も発しておる次第でございます。
  214. 大出俊

    ○大出委員 まあいまのお話の水の問題は、建設省の官房長をやっておられた鶴海さんと首都圏整備の問題で筑波山麓の学園都市問題をやりまして、何年か続けて、私ずいぶんこまかい質問を続けたことがあるのでありますが、特にそのときに水ということをどう考えるのか、各省がまちまちにああだこうだと言っていてはしようがないじゃないか、政府全体としてあの学園都市の水というものを一体どう考えるのかということでずいぶん詰めたことがありましたが、お説のとおりだと私は思います。  ところで、この住宅公団それ自体の問題は、ここまで大きくなってまいりますと、それこそたいへんたくさんの人を、ある意味では公団の名において管理をすることになる。それだけに、まさにマンモス的な規模ですから、よほどそれこそ目を光らせていただきませんととんでもないものができ上がるという心配もありまして、実はもう少し時間があれば、いろいろこまかいところまで申し上げたいと思うのでありますけれども、時間がございませんから、一時間ちょっとで和田さんがおいでになるからと思って進めておりますので、たいへんなかけ足ばかりでやっておりますけれども、そこで具体的な問題を幾つか申し上げます。  名前をあげて、この方々には御無礼だと思うのですが、あげちゃったほうが簡単でいいと思うので、申し上げるのですけれども、住宅公団で横浜に左近山という団地がありますね。ここに二十軒ばかり店舗がございます。ところがこの店舗の出店の権利を獲得するというのが、どこでもたいへんむずかしいのですけれども、そういうむずかしい条件の中でお入りになった出店者の方々を調べてみますと——これは私が調べたわけではないのですよ。この公団の自治会の会長さん、その他に知り合いがいろいろあるものですから、いろいろ私に御説明いただく。どうも公団の自治会の中がこのままではおさまらぬと言う。それで聞いてみたところが、住宅公団の横浜営業所の業務課長をおやりになっていて、日吉の業務課長さんに移られたので、いまはおやめになっておるかどうかわかりませんけれども、植松忠義さん、この方が左近山団地でトキワ菓子店というお菓子屋さんをやっておるのですね。だからこれは住宅公団関係の方だったわけですね。ところが同じ住宅に、住宅公団の横浜営業所の保全課長さんをやっておられた野口敬三さんという方でありますが、この方が左近山団地で野口書店という本屋さんをやっておる。公団の課長さんです。ところがこれの御親戚が佐藤米店といいまして、その公団でお米屋さんをやっておる。これは左近山団地に第一支店、第二支店と二つお店を持っておるのですね。この方が御親戚なんですね。それでまた、この佐藤さんの娘婿になっておる方が二葉精肉店という左近山団地の肉屋さんですね。公団一族ですよ。ところが、同じ左近山団地の神戸さんという八百屋さんは、御子息さんが公団につとめておるのですね。それからまた、左近山団地の泉屋さんという酒屋さん、秋山佳照さん、この方は、弟さんが公団に勤務しておるのです。現在、磯子区の洋光台団地内の出店申し込み済みで、まあこれはまた聞きですから、ここから先のことは、こういう席ですからあまり申しませんけれども、間違いなく近日、許可になるということをほかの人が言ったりするものだから、言わなければいいものを。それで洋光台のことがあるものだから、左近山団地の店舗の取得状況のことをいろいろ聞きに行く。そうすると、いろいろ道をつけなければ、おまえさんたちはそういったってなかなか入れるものじゃない、おれにはちゃんとルートがあって入っているのだということを言うものだから、だんだんこういうことになっちゃう。だから洋光台のほうだって取ってみせるから見ていろとかなんとか言っている。だから、こういうことになってくると——二十店舗の中で、私の聞いただけでもこれだけのものが出てくる。私の秘書が行って調べておりますから間違いないと思っております。もし間違いだったとすれば、これはたいへん御迷惑をかけますから、いつでも取り消しますけれども、私も警察官じゃございませんから、そこから先のことはわかりませんが、関係自治会の会長さんその他いろいろな方が言っておるのですから間違いないと思いますが、こういうことになると、左近山団地のみならず、方々の団地がみんなこういうぐあいになっておるのじゃないかと思うのです。二十店舗しかないのですよ。これだけで何店舗かあるのです。そうなると、これはいかなる理屈をつけて、いかなる選考基準をもってやってきたものだとおっしゃられても、そんなに関係者ばかり入ってしまうことは、第三者が見て、これは考えられぬのですよ。それは皆さんがやったら、たまたまそうなったのかもしれぬけれども、第三者が見て、公正に判断をすべき基準をおつくりになってやられたんだとすれば、ここまで固まってしまうことはないだろうということになる。これは世間一般の常識でそう思う。だから、そこらのところは、やはりよほどお考えをいただかないと、住宅公団というのは一体何をやっているんじゃということに、これはどうしてもなる。そこを私は心配するからあえて取り上げたわけです。ここまで個人の名前を出したくはないけれども、この間、木原君が似たようなことを言っておりましたけれども、チェーンがあって、権利でもっていくんだということを言っていましたね。彼もさすがに名前をあげなかった。しかし、たまにはここまで言い切らなければ、私にはね返りがあっても言い切らなければ、ものごとは前に進まぬからあえて言うんですけれども、この辺のところは、大臣がいまおいでになるんですけれども、私は、おいでをいただいてこのことは申し上げませんでしたが、選考基準を承った。そうしたら、何だか昨年の秋ごろになって、抽選方式かなんかにお変えになったというお話なんで、ようやくそういうことになったのかなという気がするんだけれども、じゃそれまでは一体何をやっていたということになる。だから、昨年変えたということは、何がしかの変更要因があって変えているんだと私は思う。そうすると、これは容易ならぬことになるんじゃないかという気がするので、いまからでも、横浜じゅうにある団地の店舗を全部系統を洗って調べてみたら、これは意外なことになるんじゃないかという気さえするわけでありますけれども、私ども、時間との戦争でございますから、のんびりしてそんなことをしておられませんから、ここらのところは——この店を持っておられる方は、ここに、左近山団地居住者名簿というのがこうある。そうすると、これはみんな公団関係者の方なんですけれども、これは全部この公団の中に住居があって、ここにお住いになっているのですよ。これは一の三三の一〇三、野口敬三さんのところ、一〇五植松忠義さんのところ、一〇一何とかと、こうずっと印がついておりますがね。これは神戸さんという方も一〇四においでになる。二葉精肉店さんがどうのというぐあいに全部ある。そうなると、どうもここらあたり割り切れぬ気がするんですね。私は、公団の方々とも仲のいい方がたくさんいるから、別に八つ当たりしたくないんだけれども、それは連絡員で置いておこうということも聞いておりますから、それなりの事情があり、必要もあるんだろうと思いますけれども、どうもやはりそこらのところ、一般の方が見ると釈然とせぬ。ここをもう一ぺんどういうふうにお考えになるか承りたいのです。
  215. 大津留温

    ○大津留政府委員 左近山団地の二十店舗の出店者の中身、実は、きょう初めて具体的に承りましたので、私のほうは、事前にそこまで調べておりません。お話しのとおりだとすれば、はなはだそれは一般の国民の方々にはいろいろな疑惑を与える現象だと思います。いろいろな事情があるかもしれません、したがいまして、十分この点は調査いたしまして、その間に何らかの正当でないやり方がありましたら、これは直ちに是正いたしたいと思います。今後、やり方を一そう公正、厳正に行ないまして、そういった疑惑の生じないようにいたしたいと思います。
  216. 大出俊

    ○大出委員 この間私がほかの公団問題でおいでいただいて承ったときに、二十店舗ある中で、六店舗あるいはそれ以上も関係者の方々が、むすこさんが公団につとめているとか、あるいはやめられた方だとかというふうな方が入っているようなことは、よくないんじゃないかということを申しましたが、まあ私は、あんまりどうも平地に波乱を起こしてもという気もあったんですが、ただ、その後いろいろ聞いておりまして、やはりこれを言ったほうがいいなという気になったものですから、きょうここで明らかにしたということで、この間、できれば言わないでおこうと思ったのですけれども、したがって、皆さんに中身は言わなかったということですが、間違っていればたいへんどうもこの方々に御迷惑をかけるんで、そのことはここではっきり、間違っていれば私はおわびをいたしますが、念のためにもう一ぺん調べさしたのですけれども、やはり間違っていないという返答が返ってまいりましたから、そうすると、世の中が納得しないものをほっておくわけにはいかない、こういう気持ちになったから申し上げたのです。おそらく間違いないと私は思っておりますが、まあお調べいただけばわかることでありますから、名前をあげましたが、ひとつそれなりの——当時、そういうシステムになっておったからこういうことになっているんだろうと私は思うので、商売している人に何も、おまえ出ていけと言う筋合いのものでないんで、そのことだけ取り上げようとしているんじゃない。やはり気がついたときには、そこから先は改めていただいて、過去あったことについては、その地域の方々に御納得をいただく努力をすればいいと私は思っているわけですから、そういう意味で、前向きで申し上げているのですから、この方々にどういう責任を負わせよう、そんなことじゃないのでして、そのことは私お断わりを申し上げておきます。  それからもう一つここで承りたいのは、家賃のほかに払っている共益費というのがある。これが実は、横浜市内の公団にお住まいの方々がいずれも問題にしている、あっちもこっちも。これはどうも不明朗だという気が私もする。これをちょっと申し上げますというと、仏向町の団地なんかも、これは横浜市保土ヶ谷区ですが、いろいろな問題がある。聞いてみますとこういう中身なんですね。共益費というのは何だと言ったら、居住者が家賃以外に納めるもので、街灯だとか、階段灯だとか、芝刈りだとかいうふうな雑費に使うんだということで、一軒六百円、これは四十一年から払っているようであります。ずっと払っているわけでありますが、そこで、このときに、共益費の問題を取り上げて、いろいろ公団側とやりとりしたときに、車庫料というのが、二千二百円あるうち三百円をこの環境整備に還元をするなどという約束も当時あった。ところが、さっぱり還元しない。どうしたんだと言ったら、この車庫料の還元金というのは、共益費に入れて使ったんだという公団側の答弁があった。そこで、それならば四十一年以来の共益費の使用明細書というものを明らかにしてもらいたいと言ったら、これを拒否して、いまだに出さない。こういうことになっているとすると、これはまことに不明朗ではないかというので、自治会内部で非常に大きな問題が起こっている。軒数が多いんですから、そう簡単な金額じゃありません。しかも、何年にもわたっている。どうしても明らかにしない、こういうことになっておる。これはやはり疑惑の種をまきます。だから、いまの世の中、そう単純じゃないですから、やはり明らかにすべきものは明らかにして、公団側が居住者代表と話し合っていく。そうしてお互いに納得し得る線を出して進めていくということにしていただきませんと、不愉快な思いをしてみんな払っているんじゃ、これはとんでもないことになる。しかも、共益費というのは、どこの公団の場合でも、みんな払わされているんですから、それを方々聞いてみますというと、こういう公団住宅の中にお住まいになっている自治会長さんが、まとまった会合をいろいろ持っているのですよ。そういう席上で出てきて、おまえのところもか、おれのところもなんだということになっちゃうまくないですから、こういう点は、やはりガラス張りでやっていただかぬと、公団もどうも、いろいろ金が要るというんで、物価も上がっているんだということになるんだとすれば、それはそれなりに相談をすればいいわけでありますから、そういう点は、これはぜひお考えいただきたいと思うのでありますが、この共益費という問題、性格、中身、取り扱い、ここらについて御検討いただいたことがございますか。
  217. 大津留温

    ○大津留政府委員 共益費と申しますのは、先生もおっしゃいましたように、団地内の共用部分の電気代、水道代、ガス代、汚水処理場の運営費、こういう費用に充てるために、賃貸借契約に基づきまして家賃のほかに入居者からちょうだいしておる、そういうものでございます。この共益費は、その団地のいろいろの状況によりまして多いところも少ないところもございます。そういった費用に充てますので、実費といいますか経費がだんだんよけいかかるようになりますと、これは上げていただかないと経理ができない。また従来団地で自費で清掃をやっておったのが市で清掃をしてくれるというようなことになった場合には共益費を下げるということもございます。大体これから三年後に要る経費を予定いたしまして、それで共益費を計算しておるのですが、三年たちまして、その決算をしてみて余裕があったということなら下げますし、また不足の見込みならそこで上げるということで会計をお願いしている、こういうことでございます。  そこで、その決算状況は、書面にいたしまして入居者の方々にお配りしてごらんいただいている、そして御理解の上、その会計に御協力をいただいておる、こういうことをやっておるような次第でございます。
  218. 大出俊

    ○大出委員 これは名前を申し上げると、仏向町団地の会長というのは岩山さんという方で、この方は元NHKにおられて、この団地のこういう仕事を専門にやっておられるのです。この人はずいぶん一生懸命な方です。この方が幾ら言っても明らかにしないというんですね。四十一年ですから三年たっている。連合町会長さんですから、責任ある方ですよ。あなたはいま三年と、こうおっしゃるのだけれども、そうすると明らかにできないはずはないでしょう。当然明らかにすべきでしょう、改定してもいいとおっしゃるんだから、もしこうなっているというのならば……。そうすると改定してもいいという三年の期限が過ぎていてなおかつ明らかにしない、これはほんとうならば過ぎなくたって明らかにしなければいかぬはずです。皆さんから六百円ずつ徴収している金なんだから、家賃じゃないんだから。そこらのところどうも解せないんです。これは公開しないでもいいという何か指導でも皆さんされておるのですか。
  219. 大津留温

    ○大津留政府委員 共益費の収支の状況は毎年一回入居者にお知らせするようには指導いたしております。しかし、こまかい積算根拠まで公開するということは適当でないというふうにはいっておるわけでございます。
  220. 大出俊

    ○大出委員 積算根拠といったって、一軒で六百円ずつ払えということになって払っているのですから、それだけのものかける戸数だけの収入が総額でしょう。それをどう使ったかということを明らかにするわけですから、積算根拠といったっていとも明白で、皆さんの金を徴収しているのですから、当然一軒六百円ずつ払ったのをどう使ったかということを明らかにする責任が皆さん方にあるでしょう。それがいけないという法律規則でもあればそれを改正していただかなければいかぬ。それはあるのですかないのですか。
  221. 大津留温

    ○大津留政府委員 共益費の収支の状況は毎年入居者の方々にお知らせするということになっております。
  222. 大出俊

    ○大出委員 だとすれば、知らさないほうがこれは悪い。皆さん方の指導が徹底していないことになる。私は大臣、あなたにこんなこまかいことを申し上げる気はなかった、大きな筋の話をしたほうがある意味では大切なことだから、そっちのほうに時間を使いたいと思ったのだけれども、公団の姿勢ということになると抽象的にいったってこれはわからないわけです。そうでしょう。だから、私はこまかいけれども場所まであげて、名前まで明確にあげて具体的な件を申し上げている。その上でお考えをいただきたい、これは率直にいって。それは個々人の財産権の問題でもある、六百円払っているのですから。だから、そういうことになるとほっておくという手はないのです。大臣、ぜひひとつこれは明確に末端まで行き届くようなやり方をしていただきませんと、ここに書いてありますが、四十一年以来中身は不明であるということですから、毎年一回ということになってまいりますとたいへんな違いになりますので、それはあとから大臣にまとめて御答弁いただきたいのです。  もう一つ、これも実は皆さんにお見えをいただいて話をしておいたんでありますけれども、検討中ということでまだ確たる御返事がありませんが、妙なことがございまして、簡単に申し上げますと昭和二十八年の八月に、蓑宮長一という人と永島敏晴という人、これは横浜市南区清水ヶ丘二百五十二番地、二百五十三番地という場所でございますけれども、ここに建て売り住宅を買って入居してきた人が二軒あるのです。いまここはアパートも建っておりまして、十何人かの人が住んでいる、こういう場所でございます。そこで住宅公団が用地取得、そして公団住宅建設と、こう進んでまいりました。この二世帯の方並びにアパートの方々は二十八年の八月でございますが、公団が用地を取得して建設に乗り出してまいりましたのは昭和三十三年から三十四年でございます。あの方々はそれより五、六年先にそこに住んでいた、こういう状態でございました。これらの方々が住んでいるところに稲葉市助という不在地主の方が一軒あった。そしてこの二軒のうちから道路まで出る通路、つまり二軒のうちのすぐ横に私道に使っていた通路がありますが、これは私道だというので買い取ってくれというお話があって、その二軒が買い取った。それから道路に出るところにちょっと土手になっている三角の青地ののりがありまして、当時はみんながそこを通って道路に出ておりました。ところが住宅公団が青地を含めてそこから向こうの土地を全部買ってしまった。つまりいままで自分が通路にしてそこから道路に出ていた青地まで住宅公団が買ってしまったわけです。したがって、この二軒の家が青地を払い下げてくれといって住宅公団に再三再四文書をもってお願いをした。ところが、この二軒のうちのうしろにうちがずっと一ぱいあるのですが、そこもそれをずっと使っていた。しかし当面この二軒だからというので、公団の責任者の方といろいろお話をしたが、払い下げてくれない。ところが、この人たちが知らない間に、すでに不在地主の隣接の土地じゃない二軒の方が買って通路に使っているところの前の青地も含めて一括して住宅公団が不在地主の方に売った。片方が再三申し入れをしているものを、片方は広っぱですからその広っぱを持っているほうに売ってしまったのです。そこで争いが起こりまして、内容証明をつけて法的に争うところまでいった事件があって、今日まで実はこの争いが続いてきているのでありますが、その間に公団の言い分は、売ってしまったから関係ないのだから、不在地主と現に住んでいるほうの地主とで話し合いをしろ、こういう言い方で、さんざんやりとりをして、高いこと言われて、その通路になるべきところだけを買ったんです。しょうがないから売ってもらった。バリケードを張られて出られなくなっちゃったから。ところが、その間に公団のほうはどんどん建設が進んで、舗装道路ができた。つまり、自分たち二軒が前に通路用に私道を買ったわけですが、そこから先の青地、これは公団が払い下げてくれないから、こっちに売っちゃったからよけい金を払って買い戻した。そこから先に出るところが公団の道路になった。そうしたら、今度は公団のほうは契約書に判をつけという。何だと思ったら、通行料をよこせという。以来今日まで延々と通行料を払っている。受け取りも全部あります。これは軒数にすると相当あるんです。よけいある。よけいといっても十何軒です。ところが気に食わないのは、その契約書自体に問題があるんですね。公団側に私権をここまで制限する権利があるのか。この契約書の四条に「乙」すなわち蓑宮君という一般の居住者、自分で建て売り住宅を買って住んでいる人、蓑宮、永島その他何軒かあるのでございます。これが乙でございますが、「乙は私道通行にかかる乙所有の土地またはその家屋を第三者に譲渡しようとするときは、あらかじめ甲」つまり公団です。「甲の承認を得るものとする。」買って道路にしちゃったから、この道路を通してもらうという契約を結べというので、しようがないから結んだ。判こをついた。ところがこの条文の中に、明らかに本人たちの土地であり、家である、それを売るときには、通らしてやっているのだから、公団の許可がなければ譲渡してはならぬという第四条があるんですね。こういうことがはたしていまの法律でできるのかという問題がまずある。しかもその公団がつくった舗装道路というのは、下の道路から自動車が上がって上に通り抜けていく道路になっている。現に人も通っている。それからその二軒とアパートを含む人の数が多いのですけれども、その下のほうの人が上がってそこを抜けてくる。この公団道路を通っていく。いわば公団の所有とはいいながら、実は一般の道路になっている。車も通っている。そうすると、これをいまだに、つまり使用料、私道通行に関する協定書をつくって、私道の通行料は年額金四千二百五十円とする、これはどういう基準で四千二百五十円が出ているのかわかりません。そうして実は横浜市の南区の市民相談室というのがございまして、らちがあかぬということなものですから、市民相談室長が私の知り合いでございますから、おまえさんのほうから公団にものを言えと言った。ずいぶん何回かやったんだけれども、その市民相談室長もかんかんに怒っているんですね。まるっきりナシのつぶて、電話をかけたらああのこうのという応対があった。さっきここで聞いてみると、回答したとおっしゃるけれども、回答をよこさぬから向こうから電話をかけた。そうしたらそういうことになっているとかなんとかいったというのでありますが、そのお話をさっきここで聞いたのですが、回答を出したという。それが回答だと思うんですが、公的機関から言っているのに、いつになっても言ってこない。住民の人たちはいろいろ言っていく。しょうがないから電話をかけて、相談室が聞いたら、それはいろいろ事情があって取るんだということを言ったというのですが、それが回答だということになるのでしょうけれども、やり方が非常に不親切なんですね。これはまたおばあちゃんが住んでいる世帯なんです、お年寄りが二十八年以来。あとから公団が入ってきて資金にまかせてやって、ほんとうならあの私道というのは、公団ができなければとっくの昔に市に移管されている道路ですよ。本来ならいま使っている公団の道路だって横浜市に移管すべきものだと私は思う、たくさん人が通っている道路ですから。それをいまだにその公団がつくった舗装した道路の隣接しているところの方々からだけ使用料を取る。両側あるのですよ。いま向こう側も通っているのです。そういう通行料の取り方、しかも通行料を取る契約書に、私権にかかわる、譲渡する場合は甲の承認を得るものとする、こういうふざけたことをなぜしておくのかという気が私はしてならぬ。これは大臣、事情は内容証明か何かをお見せして、当時の争いからすべてをお見せをして関係の方にお話をしておきましたが、結論が出ないままになっております。こういう問題は、ここに全部写真もとってありますし、当時のいきさつからのものが全部ありますが、私ばかりにその筋道からして、どうしても払わなければならぬものであればものであるように——やっぱり隣接の地域に公団があとから出てきて、迷惑をかけて泣き寝入りをさしておくというようなことはよくない。正当な理由があるとしてもそれなりに、御本人たちがなるほどそれならばいたしかたがないという説得はすべきである、こう私は思っている。だからそういう意味で、こういうものをこんなに長い期間、三十四年以来今日まで、十年にもわたって片づかないままでほっぽっておくという、これは公団側の誠意の問題だと私は思う。片一方は一個人で何の権限も権力もない居住者ですから。だから私はそういうことをやっちゃいけないという気がするのです。したがって、私はやっぱりこういうものは早急に片づけていく努力をされてしかるべきではないのかという気がするのです。  幾つか私はいま例をあげましたが、時間がなくなって和田先生に迷惑をかけておりますから、まだ三つ四つこまかいものがありますけれども、避けて通ろうと思いますが、いまの点については、一つだけその後どういうことかということを、先ほどちょっとここで耳にはいたしましたが、資料は差し上げてお見せしてあるわけですから、一応お答えいただきたいと思います。
  223. 大津留温

    ○大津留政府委員 横浜市の南区で住宅公団が清水ヶ丘団地を建設いたしました場合に、取りつけ道路をつくりました。先生御承知のように、相当な通過交通量もございますから、本来ならこれは市に移管すべきものでございますが、市との間になかなか移管についての話がつかないというようなこともありまして今日まできております。そこで公団所有の私道ということになります。そこでこの私道に面して、この私道だけしか通行の方法がないという方々からは、その私道部分の維持費の一部を御負担願うということで、いまのお話のように、蓑宮さんは年に四千何がしの御負担を願っているようなわけでございます。そういうことで、もしこの所有が第三者に移りますと、またその方がその私道だけに面した使用をなさるわけでございますから、そういう意味であらかじめ公団の承認をということを申したと思います。  それから区の相談室から何回も公団に照会したけれども、一向回答がなかったというお話でございますが、私のほうで公団に聞きましたら、関東支所の管財課長の中野というのが、昨年の九月二十五日に、いまの相談室の宇田川さんという方からお電話で相談を受けて、そしていまの私道の使用料の問題については御説明をした、回答をしたということが記録に載っておるということでございます。そういうことでございますが、やはり居住者の方や付近の方々に対しましては、できるだけ親切に事情を話して御納得いただいて、そういう扱いをすることが必要なことは先生の御指摘のとおりでございますから、十分その辺の扱いに至らぬ点がありましたことをおわび申し上げ、なお十分自粛自戒につとめたいと思います。
  224. 大出俊

    ○大出委員 これは公団があとから来て、土地を買って道路をつくって、本来なら、そこは前の地主が持っているときは自由に通行していた。その意味では前地主の私道だった。それを公団が入ってきて、そこにあとから道路をつくったからというので、今度はそこを歩く。本来私道で人が使っていたところですから、そこを舗装しておいて、今度はその道路維持管理費を、しかも四千数百円も十年にもわたって取らなければならぬ理屈はないと私は思うのですよ。しかもその下へおりていく道があるのですから、だから下にいる人だってそこへ上がってくる。それにもかかわらず、その隣接しているそこだけの道路使用料を取っているという、こういう不自然なこと、いかにも官僚仕事だと私は思うのです。今日の住宅公団が、隣の、前から住んでいる人たちに、ある意味では迷惑をかけている。にもかかわらずそういうところからこういう金を取るということがはたしてあっていいのかどうか、世間一般の常識で。それはだれに聞いたって、そんなばかな話があるものかというのが、付近の皆さんのみんな言い分ですよ。みんなその付近の、隣接しているすぐ下の方々も全部上に上がってくる。ところが道路に隣接しているところだけ取っているのですね。そうなるとこれは、その人たちだって下へおりていけば行けるのだけれども、遠くなるからこっちへ行くだけのことで、その一軒隣のうちからやはり同じところを通っているのですから、そういうこそくなことをなぜおやりになるかという気がしてならぬのですよ。だから私はいま、それは正当だとおっしゃるなら、公団自体のあり方について根本的に論議しなければいかぬ問題だと思うのですよ。改正すべきところはしなければならぬ。つまり、その維持管理費を取るという法的根拠でもあるなら、この際明確にしておいていただきたいと思うのですが、大臣、この点いかがですか。
  225. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 初めてそういう事例を聞きまして、私も非常に心穏やかならざるものがございます。おそらく、ややもすれば法律一点ばりで育った人間というものは、法理上正当ならば何をやってもいいという感じがあるのじゃないかと思います。しかし、これは住宅公団の使命並びに現在の社会的な責任からすれば、どうも適当じゃないと思います。したがいまして、さっそく従来の経緯を調べた上、是正すべきりっぱなあれがあるならば、すみやかに是正するように指示いたしておきます。  なお、きょう時間がなくて御指摘にならなかった点がありましたら、書類ででもお示しいただきますれば、それに基づいて住宅局長をして公団関係に十分調査させて、総括的に善処するように指示いたしたいと思います。
  226. 大出俊

    ○大出委員 念のために申し上げておきますが、公団が入ってきて土地買収をしたときに、さっき申し上げた青地の部分を買っちゃった。その青地は細長くて、もう一つ公団道路の舗装道路、こっちの道路のかどまで続いているわけですね、のりが。がけのちょっと傾斜がある、たいした幅じゃないですから、当時は幾らの値段でもない。だから公団側に、まとめて買っちゃった公団の中を通さしてくれないなら、この青地の部分だけ払い下げてくれ、青地に道路をつくるのじゃないでしょうといって何べんも申し入れているが、払い下げてくれなかった。それを払い下げてもらっていれば、こっちの道路までできるのです。この二軒を含む道路ができる、こっち側は買ってあるのですから。それを不在地主に払い下げる。これも実はふざけた話ですよ。不在地主は今度はバリケードを張っちゃいまして、それは困るから、せめて自分のほうの土地のその先だけ売ってくれ、そのあっせんをしてくれ、公団が払い下げるのだから、できれば通路に至るまで青地を売ってくれ、それは売っちゃったのだから双方の話し合いにせい——だから、私は疑えばこの不在地主も公団に関係あるのじゃないかという感じがするのです。それで払い下げた価格の何倍かの価格で最後にはその部分だけ売りましょう、やっと今度はそれを買った、公団の道路ができた、できたらこの方からさあ今度は通行料を取る。だから、この二十八年以来住んでいる方に会ってみると、こんなにまで、地域にさきから住んでいるじいさん、ばあさんを取っつかまえて公団というものはいじめるのかという言い方をする。もう泣ききれぬということで、腹が立って内容証明をつけたということなんです。だから、そういうことまで天下の住宅公団が——公団のほうがりっぱなのかもしれぬ、行政権もいろいろからんでいるかもしれぬけれども、一般の善良な居住者をそういう目にあわせるということは、いささか考えなければいかぬと思うのです。そんなのから取ってみたって、全体の公団の経営予算からいったらどれだけの利益があるのか。市が移管をこばむというけれども、そうじゃないのです。市は移管を受けるにあたっては基準をつくっておりまして、基準に合いさえすれば移管するということになっておるのですから、公団側に本来その気がないのです。そういうことですから、十年にもなる長い問題ですから、二十八年に住んで三十四年に公団が入ってきたのですから、もう四十五年ですからずいぶんになります。だから、やはりそういう地域の、こういう大きな公団という組織と、ほんとうに住んでいる人たちの個人の力ということですから、そういう点はこういう席で申し上げたのは、やはりそうなると事務的なことではなくて政治的な感覚でものを見るという見方が必要なんだろうと思ったから取り上げたわけですから、大臣いませっかく前向きの御答弁をいただいたのでたいへん恐縮でございますが、こういうこまかいことを申し上げないと公団全体のやっている姿勢というものが明らかになりませんから、あえて個人の名前まであげて申し上げたので、その点はお許しいただきますが、どうかひとつ御検討いただきまして、前向きでお進めいただきたい、このことを申し上げておきまして、質問を終わらしていただきます。
  227. 天野公義

  228. 和田耕作

    和田(耕)委員 私はきょう七時半までにはどうしてもおいとまをしなければならないということがございまして、これは理事さんですけれども、次に時間をちょっととっていただきたいと思います。大臣もあまり長く夜おそくなることを好まないと思いますので、早々に切り上げたいと思います。  端的にお聞きしますけれども、私の選挙区は東京の四区でございまして、例の外郭環状線の予定された地域であります。二、三年前にその地域をずっと、建設委員の人々と一緒に回ったことがあります。この問題、この間都知事に言ってみると、美濃部さんも反対だというような意向を表明されておるようでありますが、都議会のほうもそういう決議をしている。関係の各区あるいは町村のほうでも、それぞれそういうような決議をしている模様なんです。結局、大臣、この問題はどのように御処理なさる御方針なんでしょうか。
  229. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 和田さんも御承知のように、あの外郭環状線というのは、東北、関越それから中央道、それからいまの東名というふうに、ずっとこういうふうに、ある意味においては求心的に東京都に道路が入ってくるわけです。ところが、いまのままでいきますとたいへんな過密状況で、都市交通が完全に麻癒する。そこでいままでの七環のほかに、相当周辺に環状線をつくりまして、そこでこれを受けとめて、都心に行かずに、東海道から東北あるいは房総に行ける、そのためにあの環状線というものが、東京都の都市機能を全うさせるためにも、全国の交通の整備をするためにも絶対不可欠だということであれが出てきまして、そうしてこの基本計画については各方面の意見によって、あの路線を一応決定したわけでございます。ところで、現在実行しているところは、反対側のほうはだいぶ進んでいっているところでございますが、御承知のように、あそこだけが非常に都市化して、もうぴったりと住宅その他があそこに張りついたために、そこで非常な抵抗が出てきたということでございます。その意味で私は、美濃部知事があれに反対だなんということは、何を考えているか私はわからない。東京都自身をやるためにあれは必要だということでやったものを反対だなどということは、私はいやしくも知事として何とか解決しなければならぬということがほんとうだと思うけれども、それは人のあれだから別ですけれども……。  ところで、私は、いままでのは、ただあそこをやらなければならない、だからとにかく協力してくれというだけのことでいっているところにどうも問題がありそうなような気がする。私はあそこの代表の皆さんが、建設委員会その他に来て陳情いただいたこと、よく知っています。そこで私は、一応の自分の構想として、いま都市局長その他道路局長にも命じ、それから地元にも御研究していただきたいということは、ただ単にあそこの道路が必要だから立ちのけというだけではなかなか出てこないと思うのです。そこで私は、いわば新宿が一つの副都心ですが、副々都心をあそこの方面につくるべきだという感じがします。したがって、あるいは単に道路をあそこにつくるというだけでなく、都市再開発を大幅にあそこに考えるべき時期じゃないか。現在もう新宿あたりでも副都心とかいっていますれけども、都市機能としてほとんど低下しちゃってるじゃないか。だからむしろあそこを、相当広範囲な地域を、これはまだ時間があることですから、一つの大きなプロジェクトを考えまして、いろいろの流通機構なり、それからまた東京都内において非常にいま都市機能が落ちておるところのビジネスセンターのようなものをあそこにつくっていいじゃないかと思うのです。したがいまして、その買収費だけじゃなくて、都市再開発の資金も投じてあそこを考え直すという時期じゃなかろうか。そういうふうな構想でいけば、私は地元の人たちもある程度の前向きで、それならばという気が出てくるであろうし、私はそのことによって東京都の都市機能が新たによみがえってくるような気がして、その構想を考えるべきだということで、これはたいへんむずかしい問題です、しかもまた金のかかることでございまするが、やるならそこまでやらなければいかぬじゃないかということで、実は道路局長、都市局長に、それで研究してごらんなさい、それと東京都とお互いに研究の上、一つのプロジェクトを持って地元と折衝するくふうが必要であろうということをいま考えております。これはいますぐにあそこを立ちのいて、どっとやるということではありませんから、いまの東北というか、北、それから東部のほうからずっとやってきてあそこにいくわけですから、その間に私はそういう構想をやるべきだ、いままでのようにそういうことをせずに、ただあそこを何としても通らざるを得ない、何とかしてくれ、いや困るという押し問答だけでは、どうも知恵がないじゃないかというような気がしているのでございます。
  230. 和田耕作

    和田(耕)委員 まあ大臣のお考えは大体わかりました。予定の外郭環状線の路線が変更する気持ちはないということですね。  私はあの反対している人たち十人ぐらいの人の住まいをたずねたことがあるのですが、道路に予定されて立ちのく人は反対をそうしてない。残って道路に面する人が反対をしておる。その一番の反対する理由は、七環はどうなんだ、七環の状態は人の住める状態じゃないじゃないか、商売ができる状態じゃないじゃないかということで、いままでは道路に面する人は喜んでおったのに、あの反対をやっている人の大部分は、新しいりっぱな道路に面する人が反対の急先鋒になっているということですね。これは非常に考えなければならない問題だと思います。いま大臣から、あの辺を副々都心ということで、相当の大規模な再開発の投資ということも考えてみなければならぬということもあわせて承ったんですけれども、これはそういうふうな方針だと承ることにして、きょうはこの程度にとどめておきます。  もう一つは、この間私は杉並の友だちのところに行きましたら、その男は、十五年ほど前に土地つきの家を買うて、そのときの土地が大体六万円だった、いまは十万円をこしているというので、にこにこしているということですね。また、あるその人の友だちは、土地つきの家を買うために一生懸命貯金しているというようなこと、そういう例がたくさんあるわけです。こういうことを考えておりまして、はたして国の住宅政策として持ち家という政策が意味を持つのかということですね。むしろ公共住宅、貸し家という問題を考えないと、たいへんなことになりはしないか。つまり、地価の問題を考えましても、まだまだ一部の土地のブローカーとかそういうものが地価の高騰、上がることを期待しているという状態ならば何とでもなる。しかし一般の働く人が、なけなしの金で半生を苦労して小さな土地を買って家をつくった、この人が土地の値上がりを期待するということがもっともっと広くなりますと、地価の対策なんというものは、もうとてもじゃない、できないんじゃないか、そういうような感じがするわけですけれども、そういう点から御質問しておるわけですけれども、持ち家という政策は確かに魅力がある政策、みなそれを望んでおる。しかし持ち家政策を推進した結果、地価の上昇というものに油を注ぐだけでなくて、地価の値上がりに対して一般の勤労者が値上がりを期待しだす、そういうふうな欠陥が出てきやしないか。こういうような問題を考えまして、国がいまの住宅政策をつくる場合に、持ち家政策というかなり当面は人気のある、魅力のある、個人個人にとってみればそういう政策というものはいいと思われるけれども、将来のものを考えた場合に、持ち家政策というものははたしてどうだろうか、むしろ国が力を注ぐのにはもっと公共の公営住宅、しかも貸し家を原則とした公営住宅、こういうものをやらないと、土地問題なんというものはとてもじゃないが政治的に解決が困難になってしまう、こういうような感じがするわけなんです。その点についての大臣の御所見をお聞きしておきたい。
  231. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 現状のままでいけばそういう論理も成り立つと思います。ところが、現在の土地がこのように非常に——これは特に日本においてこういう現状になっているというところの特殊性を考えてみる必要があると思います。これは一つは、戦後食糧が足らないために、世界に類例のない農地改革をやって農地法をやりました。原則として農地は宅地に転換することを法律上禁止したわけです。これは都市周辺でも同じことをやったわけです。そうして一方において、農業を経済的に成立せしむるために、農地に対し、ないし山林に対しては、非常に安い土地税制をとっております。ところが一方、これが農地委員会の認可を経なければ宅地に転換できないもんだから、これがちびちびちびちびというようによりやらないんです。したがって、絶対的に土地が豊富なにもかかわらず、宅地になるものは非常に制限された希少価値になっちゃったんですね。それからもう一つ、御承知のように戦後土地がぐっと上がったのは、只見川の電源開発が一つの大きな原因です。あのときに、あそこに一部山林、宅地、農地を持っておったごくわずかの者が——当時は、和田先生も御存じのように、いわゆる革新政党というものが、そうした貧しい者を、しいたげられた者を助けるという一つのヒューマニズムの流れからして、これのいわゆる防衛をやったわけですね。ところが一方東電は、その少数の人の土地を買わなければ膨大な投資が死んでしまうから、そこで、高い値段でも買っちゃえ。ところが今度は、この土地というものは一つの写真相場になってみんな映るものだから、只見川のあんな奥地ですら、あれだけ山林、田畑が高く売れるんだったらということで、至るところの公共事業がみな高くなってきておる。それがまた都会に反映してくる。それに、今度は都市では、都市集中になってきて、銀行が支店をつくろうとして、預金を集めるために一番いいところというので、普通の経済の合理性を越えた値段で買う。銀行が買うならばというので、これがぐっと伸びちゃったんですね。そういう状況にあるにもかかわらず、土地を保有しておる者には非常に安い国定資産税だ。とにかく土地の需要がふえておるけれども、供給が少ない、しかも税制は安いとなれば、みんな、これは土地に投資する。だから、現在の土地の需要は仮需要がほとんど大部分であります。でありますから、土地政策は、今度は税制も加えてやらなければならぬし、それから先ほど来私申し上げましたように、土地の大幅な供給をやる、こういうような裏づけをしつつ持ち家政策をやるべきだということでございます。  ところで、御承知のように、現在のような状況になりますと、職についている人はいいけれども、定年になってやめた、あるいは、核家族化しているときに今度は老年になって働く力がなくなったという場合、貸し家に入っていたら、これはたいへんなことになる。そこで、私はこれにはいろいろの手法があると思いますが、もうかっておるいんしん産業では、賃金を上げるのもいいけれども、一面においては、持ち家政策をやりなさいということを言っておる。会社自体において、十年なら十年、十五年なら十五年会社につとめたならば、ちゃんと住宅を供給してやるんだという制度をとってくださいということを、実は数年前から、私は日経連、経団連それから同友会、これらの幹部の諸君におすすめをしているんです。それをやれば、そのために使った経費は損金として計算していいじゃないか。政府が税金として国民からいただいてやるよりも、そのほうが便利である。企業においても安定した勤労者を得ることであるし、勤労者も、退職金をもらうとかあるいはまた年々ベースアップすることも必要であるが、それ以上の安定性があるじゃないか。この研究を私は要請しておる。そういう一方において、そういうことをすれば、それだけ今度は貸し家なりその他に対する需要が減っていくわけですから、そこで、いま和田さんが御指摘になりました貸し家は、低所得者、いろいろの手法を講じてもどうしても持ち家を持てないような人に、重点的に政府の政策住宅を提供すべきである。しかし、一方においては、ちょっと努力し、くふうしさえすれば持ち家が持てるという人に対して、できるだけこれを救済する道、これに便宜を与える道も必要である。いわゆる総合作戦をとらなければ、現在のような住宅その他の需要が非常に多いときに、政府の政策資金、しかも安いということになると、これは税金をほとんどつぎ込まなければならぬ。ところが、税金は安くしなければいかぬということになると、私は、一つのことだけの完全性を求めていくよりも、やはりべターなものを幾つも重ねて解決することが必要であろうということで、こういう提案をいたしておるのでございます。したがいまして、これは和田さんの考えを否定するわけではないけれども、それだけでは解決できないから、総合的な政策をやっていくということと、それからもう一つは、何といっても都市の人口集中、これが最大の問題でございますが、一方においては、地方ではどんどん廃屋がふえております。部落ぐるみ、ほとんど廃屋になっていく。だから、そちらのほうに対する地域開発、これをやらないといかないというような形で、この点は、私は十分に各方面の意見を聞いて、総合してやらなければならないという考えを持っている次第でございます。
  232. 和田耕作

    和田(耕)委員 いや、大臣のおっしゃることはよくわかるのです。私がいま申し上げているのは、この二、三年の問題ではなくて、五年、十年というタイミングを考えた場合に、いま大臣おっしゃったように、地価を押えるために政府は相当思い切った税制をしようということを言明しておられる。この間、うちの岡沢君の質問に、総理大臣も大蔵大臣も、公示価格以上の取引に対しては、これは事実上召し上げるような税金をかけることを検討しなければならぬということまで言っておられる。つまり、こういう政策は現在必要なんです。もっと荒っぽい政策が必要かもわからない。ただ、これを政治的に考えた場合に、政府が地価を押えようという政策をやろうとしても、地価の値上がりを期待している人が政治的に非常に強力になるという状況のもとでは——地価を押えようという政策は反対だという人たちが、単に土地のブローカーとか大地主であればまだいいのですが、一般の勤労者で、一生懸命ためて、そして自分の土地を持ち、家を持ったという人が多くなればなるほど、この人たちは、地価の値上がりを抑制するための何らかの措置に反対をする気持ちになる。このことをおそれているわけなんです。  おそらく、今後地価の問題については、かなり荒っぽい政策が必要になってくるかもわからない。最近の経済審議会の答申でも、新しい駅の周辺は大規模に土地を買い上げなさいというような答申もあるように、国有なんということはできないにしても、それにだんだん近づいていくような国家の干渉が必要になると思うのです。しかし、現実に必要になっても、それに賛成をするはずの勤労者が、小さな持ち家を持っているがために土地の値上がりを期待するという気持ちが強いだけに、そういう正しい政策に反対する人たちがふえてくる。そのふえるという種をまくのは、現在は魅力のある政策であっても、持ち家政策である、こういうふうに私は考えるわけです。したがってそういう持ち家政策については、確かにいま大臣のおっしゃるように、各企業に対して、その経営者に、何とか援助して持ち家ができるようにやりなさいという政策は間違ってはおりません。おりませんけれども、そのことが五年、十年後の困難を倍加するような——土地問題を解決するための荒っぽい政策を政府も現に考えておられるが、その政策自体ができなくなるような政治状況というか、つまり、地価の値上がりを期待する人たちが、大きな地主だけではなくて、一般の勤労者でそういう人たちがふえてくると、ますます土地に対する正しい政策というものができなくなる、こういうことを私は考えるわけなんです。これは一か八かの問題ではありません。程度の問題だと考えていいと思います。大臣のおっしゃる持ち家政策に反対するというわけではない。ただ、いま申し上げたような一つ理由から見ても、持ち家政策から貸し家政策のほうにウエートを次第に移していく必要がありはしないか、こういう感じがするのですけれども、どうでしょうか。
  233. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 そういうことは、論理的には私は考えられると思います。しかし、現実の情勢は、私はあまり統計資料を見ていませんけれども、これだけの土地飢餓というような状況でありますけれども、だんだんやはり持ち家のほうが多・くなっておるようです。というのは、ある意味においては、財産をこれで持つという魅力のほかに、自分の家屋敷を持ちたい、単なる財産として換価処分するためのものというよりも、やはり自分のものを持っておりたいということのほうがどうも強いような気がします。ただ一般の平均レベルの人、勤労者とかいう人たちは、いま和田さんが御指摘になりましたように、貸し家でいいというような欲求が相当強いようでございます。その意味で、私は、現在のように高度成長と、それからある意味における情報産業が相当普遍的になっていく都市状況においては、必ずしもいままでのように遠いところから都心に移らなければならぬような産業構造にならないのじゃないかというような気がするのです。たとえば都心でも、いま丸ノ内あたりは、昼間人口は非常に多いけれども夜間人口はがらあきです。そして高層のものが建っているから、みんなビジネスセンターとしてなにしているけれども、あれの上に五階、六階、住宅をつくったって、これは決して悪いわけじゃありません。むしろ東京のようなところは、高いほうが炭酸ガスが下におりますから、状況はいいじゃないか、屋上には屋上庭園をつくるというようなことをすれば、職住近接になり、あそこは工場や生産じゃなくて情報の管理の場になっていいのじゃないかということになりますと、会社がビジネスセンターの上に住宅をつくって、そこに住まわせていくというような方法もできる。こういうところではおそらく持ち家じゃなくて、いまあなたの言われるように、もうそこに貸し家として入ってくる。会社を終わったら、今度は閑静なところに移っていくというような機能も出てくると思うのです。そういうふうに私は、もう少し流動的というか弾力的に考えるならば、一面においては非常に荒っぽい手法もやる、一方においては、今度は、相当の年齢に達して閑静なよりよき生活環境にいきたいという人、そうした人はやはり持ち家をほしがる傾向にあると思います。そういうものはずっと郊外でもいい。そういうふうな形にだんだん変わっていくのじゃないかというようなことで、住宅問題は現在の日本における最大の内政問題であり、またある意味における幸福感との結びつきでございますね。いままでは金さえあれば幸福であったけれども、必ずしもそうではなくなってくる。そういうことからすれば、私は、和田さんの言われるこの意味、よくわかりまするが、それだからといって貸し家だけを重点でいくということになると、今度それをどうして供給するかということになると、これまたたいへんということで、その点はやはり相当弾力的な構想でいかなければならぬというのでございます。ただ私がいままで持ち家政策を大いにやるべきだということは、みんなが自分の手には負えないから、政府が貸し家をやれ、しかし税金はとるな、高い家賃はとるなということでやれといったって、これはできないのですよ。そこで企業も地方自治体もできるだけ住宅をつくって、そうして国民に提供することにしてください、住宅産業もこれをやってください、それから、さっき答弁いたしませんでしたけれども、現在の日本の建築労務者の動きから見ると、今度は、金があっても土地があっても住宅が建たない時代になってくる。板金工、大工、左官の賃金の高さ、一日三千五百円、しかもそのなり手がないという状況になりますと、とても家が建たない。そこでいま相当馬力をかけて、通産省と建設省と合同で意欲的に工場生産化、住宅の工業化、規格化、これをやらなければいかぬ。すでに欧米ではこれを相当工場生産化して、あるものに聞くと、現在の日本の約二分の一以下になるという見通しを持っておるものもあるようです。そうして、相当の家でも三日間あれば組み立てできる、そういうような時代にまでいかなければならぬというときになると、もう持ち家というものはちょうどマイカーを持つというような気持ちのものがだんだん出てきそうな気もするのです。そういうことももう少し真剣に研究してみたいと思っております。
  234. 和田耕作

    和田(耕)委員 この問題はもっとお尋ねしたいのですけれども、結局いまの最後のことばでマイカーということがあったのですけれども、土地というのは、そういう自動車とかあるいは家とかいうものと違った性格のものであることが次第に明らかになってきている。私権の制限というものが、いろいろどういう目から見ても必要になってきているわけですけれども、土地というものを所有あるいは財産の対象にするような政策は、それ自体が行き詰まっていくということを念頭に置きながらいま御質問しておるわけですけれども、この間ある大新聞の投書欄を見ていると、土地問題、地価の問題には革命が必要かというような記事があった。戦争前の例の小作人の問題が起こったとき、あるいはその他の外国でも土地所有者が横暴をきわめて農業生産自体が行き詰まってくるというような状態の場合に、土地革命というものが必要になってくる。つまりいまのような政策が続いていきますと、効果のある地価政策は打てない。いまの状態だと、産業開発が進めば進むほど打てなくなる。となると、前の農地の小作地の問題を考えて土地革命的なものが起こってくるという感じがするわけなんです。しかしそんなことをしたんじゃ、とてもじゃない、まともな社会が生まれるわけではないわけで、民主的な社会が生まれるわけではないわけで、そういうふうな目からもいまの土地問題というものは考えてみる必要があるということを申し上げたいと思っておるわけなんです。そういう点で特に地価公示制度ができた。しかしこれによって公共用地を獲得する基準にするといっても、確かにそれによって基準になるという保障は一つもないし、また一般の売買という問題がそれを基準にして行なわれるという保障もない。そういう場合にはやはり政府の政治だけがこの問題を解決するとすれば、いまの固定資産税の問題でも、あるいは土地の保有税、あるいは開発利益の問題でも、それに対して思い切った税金をかけることが必要になってくる。こういう種類の政策はますます強化していかなければならない。ところが、一般の人たちは何言っているんだというような感じの人がだんだんふえてくる。これを心配するわけなんです。そういう点でひとつ今後の問題として御検討をいただきたい、こう思うのです。  もう一点申し上げたいことは、去年の新しい都市計画法ができたときに、あの土地問題の専門家の何人かをお呼びになったとき、都市計画地域と調整地域という二つの地域がある、これはとてもじゃない、地価において、片一方は昼間、片一方はまっ暗やみというような明暗になって、片一方は地価がどんどん上がる、片一方は地価があるいは下がるかもしれないということがあって始末に負えないじゃないかということを私は申し上げたことがある。そのとき建設省のその答弁をした人は忘れたんですけれども、いや、心ずしもそうではありません。計画地域と調整地域は、案外計画地域になったところでもいやだという人も出てくるし、案外そういうふうな地価の明暗という状態は出てこないというような感じもするということで、何人かの経済学者を動員しての御説明だったのですけれども、しかし実施してみると、いかにも明暗のような状態があちこちに出てきておるということがあるわけですね。この問題というのは、きょうは時間がありませんからお聞きしませんけれども、都市計画地域における土地の保有という問題、その利用という問題、いまの固定資産税の問題でも、計画地域においては完全に税金をかける、そしてバランスをとるというようなお考えはありますか。
  235. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 御承知のように、いまなぜ市街化区域に入れてほしいのかというのは、そこに宅地としてどんどん値上がりするだろうということを期待しておるからです。ところがこれらの人々は市街化計画区域には入れてほしい、しかしながら、税金は現状のままで固定資産税は安くしてほしいということなんです。それをやっておったら全然だめですから、市街化区域に入った場合に、ほとんど大部分が市街化したところは隣接農地は、一挙にではありませんが、だんだんと固定資産税をかけていきまして、そういうところは宅地化することを前提としてもらう。そういう環境のいいところは一種住宅地として他のいろいろの商業地帯とかで環境を悪くしない。それから都心の近くの高層住宅として利用すべきところは、そういうふうに区分けして機能的なあれをやっていく。そうして市街化調整区域は原則として市街化しないのだ、都市近郊農家として存在するということになっていくわけであります。そのかわりその地帯には農業政策も相当重点的にやりたい、ただしそういうところで二十ヘクタールとか三十ヘクタールというものがまとまって、そこの近くに一つの市街地をつくるという計画が、その農民の方々やあるいは地元の人々、あるいはまたデベロッパーでもいいのですが、ちゃんとそうした、計画的に一つの都市開発の手法に従って、計画されてしかるべきだというところには、それだけを認可してその点をやっていくわけで、スプロール化ということと、それから土地の騰貴によってぼろもうけするということを押えるということであります。ただ、これは初めての手法なものですから、みんな自分自身の思惑があって、思惑どおりにいかないために少し動揺しているようでございまするけれども、全国的に見るとだんだんとこれが理解されてきまして、そうしていまかなり線引きが進んでおるような状況でございます。  そこで、これはわれわれとしてもできるだけよく説得して、そうして理解のもとにやっていくというので、本来はこの六月で期限を押えるつもりでありましたが、若干これは延ばしてもよろしい。やはりこういう事業は、一応目標は立っているけれども、地元の地方自治体ともよく理解し合ってやるほうがいいということで、少し緩和している面はあるのでございます。しかし実質上は、この市街化区域に入ったところは、やはり政府も地方自治体を応援して、下水道の問題なり道路、区画整理あるいは公共施設等でずっとやっていく、そのかわりいまの税金の負担もしていただくということで、いま仰せられたように、そういうところではちゃんとバランスのとれるような税制その他総合政策をやっていこうということでございます。
  236. 和田耕作

    和田(耕)委員 それでは最後に一つ。いまの線引きというのはどの程度行なわれておるか、これは概略でよろしゅうございますけれども、その点と、この間総理大臣も大蔵大臣も答えた、つまり公示価格以上のあれに対しては思い切った税金をかけるというのはほんとうですか。
  237. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 その方針です。ただし、御承知のように、この公示制度をとったところは三大都市が中心でございまして、それから非常に荒い点を調べただけです。したがって、これが完全に実行されるために若干の時間はかかりますけれども、いま御指摘になりましたことは、政府ははっきりやるという方針です。ただそれをやる場合の手段が、もう少しきめこまかに検討されなければならぬと思います。  それから、線引きの状況については事務当局から説明いたさせます。
  238. 竹内藤男

    ○竹内(藤)政府委員 すでに一部都市計画が終わっておるのが二県、それから公聴会をすでに開催済みの府県が二十三県、そのうちで近く公告縦覧に入るのが八県でございます。それからすでに公聴会の開催の日取りをきめております県が三県、その他十八県はまだ未定でございますが、そのうちの半分くらいが五月下旬か六月上旬に公聴会を開催する、こういう状況でございまして、公聴会の手続が最初であります。大部分の府県が公聴会をはじめといたしまして手続に入っておる、こういう段階だと御了解いただきたいと思います。
  239. 和田耕作

    和田(耕)委員 予定はいつごろでしたか。
  240. 竹内藤男

    ○竹内(藤)政府委員 法律上の期限はございませんが、事務次官通達で四十四年度末、つまりことしの三月末までに線引きをしていただくということを都道府県に通達をいたしておりますが、ただいま大臣の御答弁のようなものにするつもりでございます。
  241. 和田耕作

    和田(耕)委員 だいぶん予定よりはおくれるわけですね。これは非常にむずかしい問題があるわけだと思いますけれども、いまの政策的な問題もあるので、今後他の機会にその問題について御質問いたしたいと思います。終わります。
  242. 天野公義

    天野委員長 次回は、来たる五月六日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十七分散会