○橋本国務大臣 おっしゃるように平均二十カ月かかっているようであります。まことに遺憾千万であって、これは私は
就任早々にやかましく言っていますが、最近私は、六カ月以内に片づけろ、だめなものはだめ、いいものはいい、それでいいのです。いま申されたように、だめか何かわからぬのに二年も延ばされたら――できないものは、当分の間許可する見込みはないと早く言ってやれば、その人はまた別な方法を
考える。ですから私は、今後は六カ月以内に、許可不許可どちらでもいい、そういう方針でやれと言っている。最近御承知のように、物価安定政策
会議というのがありますが、これは経済企画庁ですか、中山伊知郎さんが会長ですが、そこでも言っておるのです。
内容は、簡単に言いますと、増車の制限を緩和しろということが一つ。もう一つは、一定の
基準に合致したものはそのまま認めろ、こういうような提言をしております。ただこれには少し
意見があるのです。これは御承知のように国会で
法律が制定されております。いわゆる自動車運送事業の免許をする場合に、免許の
基準の
法律があります。それによりますと、「運輸大臣は、一般自動車運送事業の免許をしようとするときは、左の
基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。一 当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであること。二 当該事業の開始によつて当該路線又は事業区域に係る供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないものであること。三 当該事業の遂行上適切な
計画を有するものであること。」こういうぐあいに四、五まであるのです。なかなかやかましい条件がついておる。なぜこんな条件がついたかというと、これは何年の
法律か知りませんけれ
ども、改正したのは四十四年、最近の
法律改正であります。ということは、ある
意味においては事業者保護の
立場に立っておるのですね。したがって、こういう
法律がありますために、相当申請者が多いと、それは需要供給の均衡があるかどうかということを
法律によって調べざるを得ない。もしこれをかってに認可すると、物価安定政策
会議でいうように一定の
基準があったら許可したらいいじゃないか、たとえば資本金、人口、こういうようなものがあったら許可したらいいじゃないか、こういうことでやるなれば、いま言ったようにあるいは三カ月でもできると思うのですが、それはある
意味においては
法律違反になる。それが事業として適切であるかどうか。需要供給を調べたか。もし損害があった場合に、訴えられたらこれはけんかにならない。民事訴訟を起こされるかもしれない。こういう一つの
規定、
法律的な処置が一方においてあるということが、運輸省でもなかなか時間を要せざるを得ないということなんですが、しかしそれにかかわらず一般の人は、なぜ許可せぬのだろうかというわけですね。それで私は極端に言うと、本人が申請してやれるというんだから許可してもかまわぬじゃないか。これは極端な議論ですよ。そういうことを
考えざるを得ないのですが、そこまでもいかない。こういう
法律があって、ちゃんと事業ができるようなものでなければ許可してはいけませんよと書いてある。これは国会を通過した
法律であります。お客さんがないのにむやみに許可してはいけませんよということをちゃんと書いてある。そういう点からいってなかなかめんどうですけれ
ども、私が自動車
局長はじめ下の人に言うのは、とにかく
イエス、ノーを早くきめろ。そうしてできないものは当分の間許可できない、許可できるものは直ちに許可しろ、しかもこれは六カ月以内で処理しろ、こういう
命令を最近出しておるわけであります。したがっておっしゃるような問題は、いま直ちに解消するとは言いませんけれ
ども、ことしの秋もしくは来年には、この私の強い
意見が全体の陸運行政に響いてきて、その点はある
程度改善されるだろうと思う。ただ
法律にこう書いてあることをひとつ御了承願いたいのです。こういう
法律が一方においてあるんですよ。そこに
問題点もある。しかしながら、物価安定政策
会議でも増車の制限をできるだけ緩和しろというが、この人たちは、現在東京のタクシー事業者が約一割五分、三千台のあき車があって運転手がないということを知っているのかどうか。その上やったところで運転手がないのですよ。車の許可は持っておる。東京だけで三千数百台から四千台ある。ところが適当な運転手が得られないから、車は四千台の認可を持っておりながら充足できない。その上制限を緩和してどうなるか。個人タクシーをふやせ、そうすると個人タクシーというものは結局客扱いの経験がなければいかぬでしょう。まさか砂利トラの運転手をそっちへ回すわけにはいかない。やはり相当客の扱いをした経験者を個人タクシーに回さざるを得ない。その結果どこから来るかといえば、タクシー運転手の経験者をこっちに回さざるを得ない。しかしタクシー運転手も、ある
程度の経験がある人が老後のために個人タクシーをやることはけっこうですから、できるだけそういうことをしろ、こういうことで、現在六千件ぐらいいわゆる申請が残っておりますが、ことし一ぱいでできるだけ大部分は整理しろ。できないものはできない、できるものはできる。六千ですからそう簡単にできませんが、本年一ぱいという限度をきめて、そうして許可すべきものは許可する、いろいろな面から
考えて許可できないものはできない、こういう
措置を私は命じておるわけでありますが、できるだけおっしゃるような方向で事をきめていきたい。しかしこういう事情もあるということも御了承願いたいのであります。