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1970-04-15 第63回国会 衆議院 内閣委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十五日(水曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君       阿部 文男君    伊藤宗一郎君       加藤 陽三君    笠岡  喬君       菊池 義郎君    鯨岡 兵輔君       辻  寛一君    中山 利生君       葉梨 信行君    堀田 政孝君       山口 敏夫君    高田 富之君       横路 孝弘君    鬼木 勝利君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  出席政府委員         国防会議事務局         長       海原  治君         内閣総理大臣官         房広報室長   松本 芳晴君         防衛政務次官  土屋 義彦君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      内海  倫君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         防衛施設庁労務         部長      長坂  強君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ————————————— 四月十四日  元満州拓植公社員恩給等通算に関する請願  (角屋堅次郎紹介)(第三二〇五号)  同(角屋堅次郎紹介)(第三二五七号)  同(伊能繁次郎紹介)(第三三二四号)  元満鉄職員恩給等通算に関する請願外一件  (毛利松平紹介)(第三二五八号)  同(廣瀬正雄紹介)(第三三二五号)  靖国神社の国家管理反対に関する請願田邊誠  君紹介)(第三三八三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二三号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  3. 天野公義

  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 提案趣旨の御説明を申し上げます前に一言ごあいさつを申し上げます。  私、先般の内閣の編成で防衛庁長官を拝命いたしました中曽根でございます。まだ浅学未熟でございまして、防衛問題につきましては多々勉強を要するものでございますので、何とぞ委員各位の御指導をお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  5. 土屋義彦

    土屋政府委員 私は、去る一月二十日に防衛政務次官を拝命いたしました土屋義彦でございます。まことに至らぬ者でございますが、一生懸命つとめさせていただきますので、先輩諸先生のあたたかい御指導、御支援のほどを心からお願い申し上げます。(拍手
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について、提案理由内容について、御説明いたします。  この法律案は、防衛庁設置法のほか、自衛隊法並び防衛庁職員給与法の一部改正内容としております。  法律案の概要を申し上げますと、防衛庁設置法の一部改正は、自衛官増員及び審議会等統合、改組のためのものであり、自衛隊法の一部改正は、准尉制度新設し、予備自衛官増員するためのものであり、防衛庁職員給与法の一部改正は、准尉俸給月額を定めるためのものであります。  さらに、法律案具体的内容について、御説明いたします。  防衛庁設置法の一部改正は、第一は、自衛官の定数を海上自衛隊五百十人、航空自衛隊四百七十四人、計九百八十四人増員するための改正であります。海上自衛官増員は、艦船の増加に伴い必要となる人員並びに航空関係部隊後方支援部隊等充実のため必要となる人員であり、また、航空自衛官増員は、ナイキ部隊の新編並びに航空保安管制等部隊充実のため必要となる人員であります。  第二は、現在、防衛施設庁附属機関として置かれている中央調達不動産審議会と、被害者給付金審査会とを統合して防衛施設中央審議会とし、その組織所掌事務等整備するとともに、防衛施設局附属機関として置かれている地方調達不動産審議会防衛施設地方審議会に改めるための改正であります。これは、政府の行なう行政改革の一環として審議会等統合を行なうとともに、防衛施設運用による障害に関する事項についても広く学識経験者の意見を徴し、民意を反映させることをねらいとしているものであります。  次に、自衛隊法の一部改正について、御説明いたします。  その一は、自衛官階級として、一曹と三尉の間に、准尉階級を設けるための改正であります。この准尉制度新設は、自衛隊部隊等の効率的な運用と、人事の適正な管理とをはかる必要から行なうものであり、あわせて曹の階級自衛官処遇改善を目的とするものであります。  その二は、自衛隊予備勢力確保のため、陸上自衛隊予備自衛官三千人、海上自衛隊予備自衛官三百人、計三千三百人を増員して、予備自衛官の員数を三万六千三百人とするための改正であります。なお、海上自衛隊予備自衛官は、今回新しく設けられる制度であります。  最後に、防衛庁職員給与法の一部改正について御説明いたします。  これは、准尉制度新設に伴い、准尉俸給月額を定めるための改正であります。  以上、法律案提案理由及び内容を御説明申し上げましたが、何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに、御賛成くださるようお願いいたします。
  7. 天野公義

    天野委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  8. 天野公義

    天野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤陽三君。
  9. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 私、中曽根長官が御就任以来防衛問題を国民の広場に移すということでいろいろ活躍いただいておりますことを非常に敬意を払うものでございます。きょうはそういう立場から種々の問題について御質問してみたいと思うのでございます。  いまの日本防衛政策は、申し上げるまでもございませんが、内外の注視の的になっておると思うのであります。国内におきましては専守防衛という政府方針は了としても、その専守防衛考え方、やり方にはいろいろ幅がございます。一体日本防衛費はどこまで膨張するのだろうかというふうな意味関心が非常に強い。また外国におきましては、先般の中共と北朝鮮との共同声明のように、日本軍国主義の膨張という面から関心を持っておるところも多いのでございまして、私は、中曽根長官が就任されて、この防衛政策に真剣に取り組んでいただいておることに感謝をするものでございます。  そこで、まずお伺いしたいのでございますが、中曽根長官防衛原則ということをおっしゃっております。私も趣旨においてはきわめて同感するところが多いのでございますが、これと、昨年十月に有田長官が第四次防衛力整備計画の策定について指示を出しておられますが、ほかの委員会でもこの秋までに四次防の原案を作成するのだということをおっしゃっておりますが、この昨年十月の有田指示と、中曽根長官防衛原則に基づく御方針とどういうふうな関連に考えたらいいのでありましょうか、これをまずお伺いいたします。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 有田長官が出しました御指示内容も私よく拝見しております。しかし、私はまた私の考え方がございまして、長官となるべきものの考え方をできるだけ党の皆さま方に御理解いただき、また御叱正をいただいて、党の考え方としてそれをまとめたものを、政党政治でございますから、長官たる私が、私の責任政策をあるいは修正しあるいは発展をさせていく、そういう関係にあると思うのであります。有田長官指示を出されましたときと今日に至る間におきましては、ニクソン・ドクトリンそのほかの展開におきまして若干変わった要素もございますし、また私自体防衛問題について長い間考えてまいりましたことをできるだけ関係方面の御了解と御支持を得て、もしそれが妥当であるならば実現してみたいと思うこともあるわけでございます。たとえば米軍基地の処理のごとき問題はそういう問題でもございます。そういう意味合いにおきまして、有田長官が御指示になった原則を基幹として、それをある程度私のニュアンスを出させながら発展させていく、そういう考えに立って四次防を基本的に組み立てていきたい、こう考えておるわけでございます。
  11. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 大体のお考えは了承いたしました。それでその四次防をつくる手続でございますが、やはりいままでのように防衛庁原案をつくって、これを国防会議にかけてきめるという手順でお進めになるおつもりでございますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体いままでの手続に準じて実行してまいりたいと思います。
  13. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 この点については後刻また御質問したいと思います。  そこで四次防作成の背景でございますが、まず防衛力というものは、私が申し上げるまでもなく相対的なものでございます。最近ソ連爆撃演習が行なわれるやに新聞に報ぜられ、日本政府の抗議で中止になりましたことは同慶の至りに存ずる次第でございますが、それ以外にもソ連等日本周辺における演習実行計画がございましたら、お示しをいただきたいと思うのであります。いままでやりました演習はどんなのがあったろうかということがわかりましたらお知らせいただきたいと思う。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨日の夕刊でございましたかけさの朝刊でございましたか、外国通信の伝えるところによりますと、大西洋並び太平洋においてソ連演習を行なう、そういう記事がございました。最近の情勢をいろいろ見ておりますと、あるいは太平洋方面においてもソ連がある種の演習を行なうのではないかと思われる徴候もございます。モスクワ方面からの報道にそういう記事がございましたが、その記事を肯定せしむるのではないかと思うような情勢も若干あります。これが一番最近顕著なことでございますが、それ以外のニュースにつきましては責任者をして答弁さしていただきます。
  15. 島田豊

    島田(豊)政府委員 わが国周辺におきますソ連艦艇航空機の動向につきましては、しばしば新聞紙上等でも報ぜられておりますので、御存じのことかと存じますが、航空機につきましては、日本海におきまして北のほうから編隊で南下してまた北上するというケースも見られますし、昨年でございましたか、爆撃機が二機日本周辺を一周したという訓練状況もございました。艦艇につきましては、太平洋におきまして、沖繩南方海域その他の個所におきまして、しばしば潜水艦通常艦艇による海上演習訓練が実施されておるわけでございます。このような傾向は、数年前から比べまして特に頻度が増しておるという状況でもないようでございますけれども、御承知のとおりにソ連極東艦隊太平洋あるいはインド洋におきましてかなり進出をしておるというふうな状況も見られるわけで、今後のその動きにつきましては、十分われわれとしても注目をしていく必要があると思います。
  16. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 大体了承いたしました。今度の爆撃演習は危険の関係で公表せられたものでございますが、いままで行なわれました日本周辺におけるソ連演習等でも、これは防衛庁としては国民一般に知らしめてはいけないものでございますか、どうでございますか。
  17. 島田豊

    島田(豊)政府委員 ソ連艦艇動き等につきまして、あるいは航空機動き等につきまして、わがほうの航空自衛隊あるいは海上自衛隊におきまして視認をいたしましたものにつきましては、そのつど公表できるものは公表いたしておるわけでございまして、特にこれを秘匿すべき理由は必ずしもないというふうに考えております。
  18. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 その次にお伺いしたいのは太平洋米軍でございますが、ベトナム戦争が終わった後におきましてアメリカ太平洋においてどういうふうな配備をするであろうかということは、世界が注目しておるところでございます。おそらくはグアムドクトリンに従いまして、米軍は漸次太平洋方面から撤退をしていくのではなかろうかと一般に想像しているところでございますが、防衛庁当局はどういうふうにお考えでございますか。
  19. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外国のことでございますからよくわかりませんが、推察いたしますのに、やはり各国に対するコミットメントアメリカは守ると言っておりますから、アジア諸国に対するコミットメントを有効に実行するに必要な拠点は、アメリカ必要限度において確保しておくのではないかと思います。それからベトナムにつきましても、いまのパリ会談やそのほかの情勢を見ますと、これはさみだれのように長引く感じがいたします。それで撤兵にいたしましても、あの大部分兵力ベトナムから撤兵するにはかなりの長時間を要するのではないか、そのように考えられます。したがって現状変更があるといたしましても、かなりの時間をかけてゆるやかに変更が行なわれていくのではないか、そのように想像いたしております。
  20. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そういたしますと、戦略部隊のみならず戦術的な部隊も相当太平洋に残るというふうなことになるのではなかろうかと私も思うのでございますが、四次防を策定されます場合におきまして、防衛庁当局といたしましては、アメリカ戦略的攻撃部隊のほかにそういうふうな通常装備の軍隊の支援をも受け得ることを予想してお考えになりますかどうですか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  21. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本アメリカとは安保条約によりまして随時協議を行ないまして、常に密接な連携を保っておるわけであります。したがって客観情勢の変化に応じて、日本アメリカとの間には情報の交換はもとより、そういう両方の防衛協力につきましても非常に弾力的に措置されていくものであると私は考えます。日本としては、本土防衛に関する限りはできるだけ自力で行なうようにいたしたい。それから目下のところは、米軍から貸与され、有償、無償援助で援助された非常に陳腐化された艦艇やあるいは戦車等がまだ多数あって、きわめて非能率な状態にありますが、そういう米軍貸与の陳腐化したものを、できるだけ国産の精鋭なものに代替していくということも必要であると思っております。われわれのほうの自主防衛の目標は、本土防衛に関する限りはできるだけ自力でこれを完遂する、そういう方向に努力づけていくという方針でいきたいと思っております。
  22. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 私もその方針には大賛成なんでございますが、問わんとするところは、四次防の段階におきましても、通常装備米軍支援をある程度想定をして四次防をおつくりになるのかどうか、大体いまの御答弁ではそのように私聞いたのでございますが、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  23. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 四次防の内容につきましては、いま基準等を検討し始めようというときでございまして、兵力量やそういう関係についてはまだ御答弁申し上げる段階に至っていないのをまことに残念に思います。
  24. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そういう段階であろうと私も思うのであります。そうしますと、予算委員会中曽根長官小坂委員に、海空のいまの自衛隊の力が弱いということを御答弁になっていらっしゃいます。これは何を基準にして弱いというふうにお述べになったのでございますか。
  25. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 本土防衛を自分でできるだけ果たしていくという基準から見ましても、まだ海空は弱い。海の現状は、ある程度における基幹的な防衛力整備され、練習単位として機能しているという程度で、有効なる防衛力として全面的に整備されているという段階にはまだ至っていない。空につきましても、防空体制がまだ完全ではございません。そういう意味におきましてこれから整備を要するものと思われます。
  26. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そういうふうなお考えはわかるのでありますが、ただ弱いとおっしゃいますと、長官の頭の中には一定基準があるのじゃないかと思うんですね。たとえば海上自衛隊の任務で申し上げますと、対潜防衛とかあるいは外航防衛とかいろいろございますね。対潜水艦防衛の面でまだどういう能力が足りないんだ、あるいは外航防衛の面でどういう力が足りないんだというふうな一定のお考えがあるので弱いとかなんとかいう御表現になるのじゃないかと思うのでございますが、抽象的にただ弱いというお感じなんでしょうか。そこのところをひとつ……。
  27. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、日本のいまの防衛力具体的内容について責任者から説明を受けましたが、その全般的説明を聞いた上の判断では、まだまだ不十分である、そういう印象を持ちまして、そういう意味で弱いと言ったので、弱いということばよりもむしろ不十分であるということばのほうが適当であるように思います。海につきましては、沿岸防衛あるいは対潜警戒あるいは、船団防衛、そういうような面にいろいろ目を注いでみましても、非常にまだ弱い——弱いというか不十分である、こういうように思います。何も外洋はるかまで船団護衛するという考えは持っておりませんが、近海におきまする船団護衛等考えてみましても、まだまだ不十分である。そのように考え状態であります。
  28. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そこで、かりに海上自衛隊について問題を進めていってみますると、内航防衛、それは船が年間どれだけ動いておる、有事の場合には必要最小限度どれだけ船を安全運航しなければならないということは、頭におありだと思うんですね。外航防衛につきましても、日本の一部でマラッカ海峡防衛論なんということを言っておる方もありますけれども、とてもそんなことはできるものじゃない。それにしても、外航防衛にしてもどの程度のことは一応やろう、一応海上自衛隊で分担しよう、それにはこれだけの能力が足りないというふうなことになるのだろうと私は思うのであります。長官はそういうふうに抽象的に御答弁なさいますが、実は私はこの辺に日本国民が非常に不安——不安と申しては語弊がありましょうけれども、一体どうなるんだろうかというふうな心配があると思うのであります。数字的に基準をきめるということは非常にむずかしいことだということは私もよくわかります。よくわかりますが、日本自主防衛力はおおむねどういう標準でやっていくんだということぐらいは、これはいますぐにとは申しませんけれども、四次防をおつくりになる際には国民納得のいくような線をお示し願いたいと私は思うのでございます。  それはそれとして、次に長官情報機能強化ということをおっしゃっております。私もこれはたいへん賛成なんでございます。いつまでもアメリカ情報にたよっているというふうなことがあってはどうもならないし、アメリカといえども外国でございますので、非常に大事な機密事項はなかなかよその国に教えようとするものではございません。長官のおっしゃっておる情報機能強化ということは、もちろん明年度予算以降において実現をなさるであろうと思うのでございますが、もしここで具体的な構想をお示しいただきますれば非常に幸いであると思いますが、いかがでしょうか。
  29. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 安保条約事前協議ということばがございますが、事前協議に際してこちらが判断を下す場合に、こちらの自主的情報がないと相手の情報に引きずられるという危険性があるわけであります。したがいまして、事前協議が非常に重要であればあるだけ情報自主的収集ということが非常に大事であるように思いまして、そういう点も含めて情報機能充実ということを私は言いました。情報機能充実ということを言いますと、一部では、そういうものは公言すべきものではない、そういう点は、ことばは悪いですけれども、できるだけ事実上整備していくものだというようなことを私聞きましたが、そういう考えには私は賛成しませんで、やはり必要なことは必要であると皆さんに申し上げて、皆さんの御了解納得を得た上で堂々とやる、そういう方針が長い目で見ていい方針である、そう考え充実ということを申し上げているわけであります。  たとえば在外武官がおりますけれども、在外武官機能というものはまだはなはだ不十分でございます。私は長官になりまして在外武官等から来た情報を見ましたけれども、外務大臣の机に上がってから二週間か三週間たって私の机に上がっているという現状を見まして非常に驚いたわけです。こんなばかなことをいままでなぜやっていたか。そこで外務大臣官房長官、私の三相の会議におきまして、それを全面的に直してもらうということをやりましたり、それから在外武官自体の働きが、経費や、あるいは補助者や、あるいは大使館の内部における地位等から見まして非常に不十分であります。せっかく在外武官を置いているならば、置いているにふさわしい機能を持たせなければ意味がない。そういう点におきましてまず在外武官機能をもっと活発にやらせるという点について最善を尽くすよういま実行しつつあります。  あるいは防衛庁内部を見ましても、情報に関する部局が幾つかございますけれども、その情報収集において普遍性があるかどうか、あるいは判断において、その分析の面において統一、統合ということがうまく行なわれているかどうか、情報の解析の面においてもまだ非常に弱いのじゃないか、そういう意味において部内的にも組織的に考え部分が多々あるようにも思われますし、それから情報に専任する人の身分等が非常に不安定であって、やはり連隊長とか大隊長とか、そういう正面に立つ人がどんどん出世をしていって、情報を担当する人間出世がおそくなるというのではいい人間が来なくなるということもあります。そういうふうに全面的に情報機能というものを重視しましたら、身分とか待遇とかあるいは組織とか、そういう面について改革しなければいかぬと私は思いまして、いまその方向に進めようと思っているわけであります。
  30. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 よくわかりました。いま長官のおっしゃったとおり、情報機能強化でも、公表できないものもあるでしょうけれども、公表できるものも相当あると私は思うのです。いまの長官のお考えをぜひ推進をしていただきたいと私は思うのでありますが、この際防衛駐在官がどことどこにどれくらいおられますか、ちょっとお教えいただきたいと思います。
  31. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 現在十二カ国に駐在をしておりまして、人数でいいますと十七名になります。アメリカ及びソ連には複数行っております。それ以外は一人ずつでございます。イギリス、フランス、西ドイツ、トルコ、インド、タイ、南ベトナム、インドネシア、中華民国及び韓国、ことしの予算でビルマをお願いいたしております。
  32. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 わかりました。私はまだまだ足りないように思うのでございますが、さらに防衛庁のほうで御努力を願いたいと思います。これは別の機会に外務大臣にもお尋ねしてみたいと思っておるのですが、情報の点で私非常に心配しておるのでございます。私は日本アメリカに従属しておるとは思いませんけれども、情報の面で従属をするような結果になったら、日本のために非常に不幸であると思うのでございます。その点だけ申し上げておきます。  次に防衛力整備計画の進め方でございますが、先ほど中曽根長官は、大体いままでどおりにやっていきたいということをおっしゃいました。しかし、これはひとつ長官考え願えないでしょうか。と申しますのは、いままで私が質問いたしましたことにもそれが入っておるわけでありますし、有田長官の御指示の中にも、この防衛体制を逐次整備していくための長期的な展望に基づく防衛力整備の目標を見きわめつつ、五年間を目途とする原案を作成する、こういうようなことを言っていらっしゃる。防衛力整備計画をどういうふうに立てるかということは、これは単に防衛庁だけの仕事であってはならないと私は思うのであります。国際情勢をどう認識するか、財政の規模の問題ももとよりでございますが、日本の産業政策をどう持っていくか、あるいは日本の労働政策とのかね合いをどうするか、非常に広い見地から防衛力整備計画は立てられなければならないものだと私は思うのであります。米ソの関係、あるいはソ中の関係、米中の関係、あるいは北朝鮮との関係、韓国との関係をどう見るかというふうなことも防衛力整備計画の必要欠くべからざる、検討しなければならない問題でございます。  これらのことを考えますと、防衛力整備計画の基本と申しますか、大綱と申しますか、これはひとつ国防会議において御決定をいただいて、その大綱、方針に基づいて、それぞれ防衛庁なりあるいは大蔵省なり関係の各省が具体的な内容をつくっていくというふうにすることのほうがベターではないかと私は思うのでございますが、いかがでしょうか。
  33. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国防会議というものは私は活用してまいりたいと思っておるのです。それで正式に国防会議を開く前に懇談会をできるだけ開きまして、関係各省の責任者の意見も聞いて、そこで順次調整しながら進行させていきたいと思っております。  次の、防衛計画にいたしましても、経済社会発展計画との関係かなり重要でございまして、その経済社会発展計画の中において、社会保障関係の経費がどの程度に見積もられるか、あるいは教育、科学研究の経費がどの程度見積もられるか、そういうほかの国策の大きさ等もよく考量しながら、防衛経費の適当な額というものもきめていきたいと思っておるわけであります。そういう部面につきましては、やはり関係当局の意見も聞き調整しなければならぬのでありまして、そういう配慮は十分してまいりたいと思っております。  そこで、いま加藤委員の御指摘になりました、国防会議においてまず基準をきめて、それから作業に入れという御指示は、非常に検討に値するお考えであると思いますので、よく考えて実行していきたいと思います。
  34. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまの長官の御答弁のとおり、国防会議の議員懇談会でも、各大臣の最高レベルの方々の御意見を御調整なさって原案をお立てになるほうが、もちろん防衛庁にも優秀な方々、視野の広い方もいらっしゃいますけれども、国家、国民の利益になるのではないかと私は思うのでございます。まあ、四次防の関係はそれくらいにいたしまして、次に少し具体的な問題に移っていきたいと思います。  長官が隊員の処遇改善の問題につきまして非常に御苦心を払っていらっしゃることは、私も敬意を表するものでございますが、何と申しましても、自衛隊のような部隊におきましては、隊員の士気の高揚といいますか、紀律の維持ということが非常に重要だと思うのでございます。この観点から若干お尋ねをしていきたいと思います。  一つは、先般衆議院で船員法の改正が通過いたしました。いま参議院で審議中でございまして、近く成立するのではないかと思うのであります。その船員法の改正は、船長が最後に船を退く、船長の最後の退船義務というものを削除しておるのであります。私は、もちろん一般の商船等につきましては、人命尊重の見地からこういうふうな規定の改正をされることに異存はございません。自衛隊の自衛艦というものについて、これが自衛隊法で準用されることになっておりますが、そういうことでいいのだろうかと思うのであります。その御答弁をいただく前に、国際的な軍艦の定義をひとつ教えていただきたいと思います。
  35. 島田豊

    島田(豊)政府委員 軍艦の定義につきましては、一応国際法学上定められた一つの定義があろうと思いますし、また具体的には、おそらく公海に関する条約でありましたか、条約の名前は確かでございませんけれども、条約上のそういう規定がございまして、一つの国籍を表示する旗を掲げ、あるいはその国の成規の手続によりまして任命された者がその艦長となり、そしてこれこれの艦艇であるということを証明する艦籍証明書を保有するものが一般には軍艦、こういうふうにいわれておるように思います。
  36. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 大体そのとおりでありますが、もう一つ、艦長の紀律についての定めがあったように私は記憶しておるのであります。いまおわかりにならなければそれでよろしいのでありますが、自衛艦につきましては、一般の商船などと異なりまして、自衛艦の艦長は私は機密の文書を持っておると思うのですね。暗号書等も持っておりましょう。そういうことを考えました場合に、自衛隊法でいまのまま船員法の改正の規定を準用してよろしいかどうかということなのでございます。これはひとつ長官にお伺いしたいと思います。
  37. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 機密の防護とか、あるいはそのほか自衛艦として、商船と違う部面で、必要な部面は責任を持って処理する必要はあると思いますけれども、生命、最後の安全という面については準用していいのではないか、そういうふうに私個人は考えております。
  38. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ちょっとよく聞こえませんでしたが、私も艦長が昔のように艦と運命をともにしなければならないというふうなことを申し上げるつもりはないのでありますが、準用して差しつかえないということでございますか。
  39. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま部内で検討させておりますけれども、艦長の生命、最後の安全という部面については準用して差しつかえないだろう、そういうふうに考えます。
  40. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 これは検討中のことであればそれで私は引き下がりますが、ただやはり、そういうふうな自衛艦の特殊性というものを考えて、どうしたらよいかということについて結論を出していただきたいと思うのであります。いままで船員法を準用しておりましたが、それでも、いま長官のおっしゃったとおり、艦長の生命、財産を無視しておったというふうなことはないように私は思うのでありまして、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。これはこれでよろしいです。  次に、これは事務当局から、准尉制度を設けた理由につきまして、もう少し詳しく御説明いただけませんか。
  41. 内海倫

    ○内海政府委員 准尉制度を設けました理由は、いろいろな角度から申し上げられると思うのですが、一つは現在、いわゆる曹の階層が非常に停滞しておるというとことばは適当でないかもしれませんが、現実から停滞しておる。これに対して、やはりほんとうの自衛隊の曹としての士気を高め、喜んで仕事に従事する、さらに積極的な活動をしてもらう、そのためにはやはり曹というものの待遇を何らかの形で改善する必要がある、こういう観点に立ちまして検討をいたしました結果、一曹の中で特に技能が経験上非常にすぐれる、あるいは長い間の自衛隊の体験からある程度曹をまとめていく、こういうふうな人たちは曹の中でも特に尉に準ずる地位を与えるようにすることがいいのではないか、こういうふうに考えまして、准尉制度というものを設けたわけであります。したがいまして、これは一方からいえば待遇の改善であるとともに、他方からいえば現実の技術を非常に重視しておる、あるいは将来ともに技能を重視しなければならない自衛隊において、そういうふうな有能な、経験に基づく技能を有する者を十分に活躍せしめたい、こういうふうなこと、その両方から考えまして准尉制度を設けようとしておるわけでございます。
  42. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いま御答弁を聞いておりましてちょっと考えたのでありますが、そうしますと、いまのような御趣旨であるとすれば、准尉でなくて三尉をふやせばいいじゃないかという気が私はしたのですが、この点は、やはり准尉として必要な配置といいますか、陸、海、空ごとに配置があるんじゃないでしょうか。ひとつその点をお伺いいたします。
  43. 内海倫

    ○内海政府委員 確かに検討の段階におきましても、三尉にしたならばどうかということも十分検討いたしました。しかし本質的に、自衛隊の構成から考えますと、幹部となる者はやはりそのおのずからつくべき配置というものが、幹部にふさわしいあるいは幹部を必要とするものになっていくわけであります。したがって、准尉というものにつきましては、現状から考えましてもあるいは将来を考えましても、准尉という立場において果たさなければならないような職務配置というものがかなり多くあるわけであります。現在私どもは、たとえば陸上自衛隊あるいは航空自衛隊におきましては先任陸曹というふうな形でこれを保障し、その職務を与えておりますが、たとえば中隊の中の先任の陸曹として、中隊における人事、庶務あるいはその他諸般の人事管理というふうなものに当たっている。これは同じ一等陸曹あるいは一等空曹の階級にありながら、この人たちよりも一歩上に立って調整していかなければならない、こういうふうな任務がございまして、これに充てるためには、いわば准尉というものが非常に都合のいい、そしてまた有効なものである。あるいは海上自衛隊におきましては、これは御存じのように非常に高度な技術を持っておるわけでございますが、こういうふうな技術を駆使していろいろ仕事に当たる。この場合にも長年の経験を有してみずから模範的にその技術に当たるとともに、そういうふうな技術に当たっておる曹及び士をある程度監督していく。昔の海軍の例を言うことはいいことか悪いことか必ずしも言えないと思いますが、掌長というふうなものがあったわけでございますが、やはりこれは必要にして生まれたものであったと思います。現在においてもそういうふうな地位に当たるものが必要である、こういうふうに考えております。また、航空自衛隊におきましても、同様な高度な技術、整備というふうなものがございますので、こういうふうなものに充てていく。いわゆる准尉をもって充てることが最もふさわしいと思われるような職務、こういうものが現在ある、こういうふうに考えております。
  44. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 陸上自衛隊海上自衛隊につきましてはわかりましたが、航空自衛隊をもう少し具体的にお教えいただけませんか。
  45. 内海倫

    ○内海政府委員 御存じのように、航空自衛隊におきましては非常に高度な武器、装備、あるいは航空機自体が昔と違いましてたいへん高度な装備をいたしておるわけであります。また燃料におきましても非常に高度な燃料を使います。これに対する補給、整備というものは、航空自衛隊の場合きわめて重要な任務を持っており、かつまた、そういうふうな整備、補給というふうな面につきましては、高度な技術と経験というものが必要でございます。また、これに従事する者も、在来といいますか、昔保有しておった日本の航空勢力とは違いまして、非常に多数の者がこれに従事しておるわけでございます。そういうふうな意味におきまして、こういう多くの者を、しかも高度な経験的技術を必要とする部面に当たる者が必要である、こういうふうに航空自衛隊においては考えなければならない、かように思います。  さらにまた、御承知のようにレーダーサイトその他防空の観点からする高度な技術を内包する部隊、施設があるわけでございます。これらも准尉が当たらなければならない大事なポストであろうかと考えております。
  46. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 大体わかりました。  次に、これは長官にお伺いしたいのでありますが、現在自衛隊の中で隊員の扱いが、幹部と曹、士と二つになっておるわけであります。曹と士との区別はどこにあるかと申しますと、これは長官も御承知のとおり階級章が違うということですね。それと営外居住などの条件も異なっておる。しかし勤務の体系から考えまして、私はやはり幹部と曹と士と三つの取り扱い区分にいたしまして——曹というものは、これは申し上げるまでもなく部隊の縦横の中核であると私は思う。非常に大事な存在であると思うのでありまして、曹の士気を高めるということが自衛隊の士気を高める上において相当大きな影響力を持っておると思うのでありますが、曹につきまして、士と違った誇りを持つような待遇を考えてやるということはお考えになっておりませんですか。たとえば、つまらないことのようでありますが、帽子の記章を変えてやるとか、海上自衛隊は服装が変わっておりますが、あれでも非常に違うんですね。海上自衛隊は水兵服でなしにダブルの服を着ておりますが、陸や空は服装も全然同じです。服装から見ますと、階級章が違うわけで、陸と空では帽章が幹部になると違います。曹は士と同じであります。こういう点の配慮をいただくほうが私はいいんじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  47. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は同感でございますので、できるだけそういう方向に改善してまいりたいと思います。
  48. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ありがとうございます。ぜひそういう方向で御検討願いたいと思うのであります。  もう一つ次にお伺いしたいのは、これもこまかい話でありまするが、大事な問題だと思うのであります。営内食の関係であります。外に勤務をしております幹部や曹が、いま営内でお金を出せば隊員と一緒にめしが食えますか。
  49. 内海倫

    ○内海政府委員 現在営内における食事の準備あるいは諸材料の購入というものは、営内において食べる必要人員を対象として購入し、調理をいたしております。したがいまして、営外居住者が特別な演習とかそういうふうな事由なくして、金を出したならば営内でめしが食えるという便宜は供与いたしておりません。
  50. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 それはどういうことでそうなっておるのか。いろいろ事情はもちろんあるんだろうと思いますけれども、部隊の団結とか相互の意思の疎通という点から考えてみますと、分隊長が分隊員と一緒に昼めしを食うということは、つまらぬことのようでありますが、私は非常に大事なことじゃないかと思うのです。長官いかがですか。
  51. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本人的特質から見ますと、やはり現場管理責任者が一緒にその人たちと寝食をともにするということが、精鋭をつくっていく、またコミュニケーションをよくしていくという意味において非常に大事な要素、日本的特性があると思います。そういう意味において御趣旨は同感であります。
  52. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ありがとうございました。ぜひ実現をいたしますように御考慮をいただきたいと思うのでございます。  その次に、私、部隊を回りましてよく聞くのでありますが、中隊長とかあるいは教育隊の幹部、教官の方々が非常に嘆いておられますのは、日曜や祭日に若い隊員が、家を離れてさびしい気分もあるのでしょう、中隊長とか教官のうちによく遊びに来るというのですね。そのたびにやはり酒食を出してごちそうしてやりたい気持ちになるし、またそうしておるのだけれども、この経費が毎月ばかにならないというのです。いまこれは手当がついておるのですか、どうでしょう。これは事務当局に。
  53. 内海倫

    ○内海政府委員 その負担でございますが、そういうものに対する手当あるいは現物支給、こういうものはございません。
  54. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 中隊長の諸君にしましても、それから教育隊の教官の諸君にしましても、下級の幹部も多いわけです。俸給は決して恵まれておりません。これはやはり一般の官庁とは違うところじゃないかと思うのです。自衛隊の特質だと考えるべきじゃないかと思うのでありますが、こういう点はひとつ長官御努力願えないものでしょうか。
  55. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その必要は私も同感であります。ただ、たとえば国鉄とかあるいはそのほかのそういう現場職員等の間におきましても、区長さんとかそういう責任者のところへは、その部下の者が行ってめしを食うとか同じようなケースがあるだろうと思いますが、そういう人たちのところへそういうものがついているかどうか。これは一般の会社でもそういうことはよくあるだろうと思いまして、課長や係長が自腹切ってずいぶん部下をごちそうしているという日本的特質がございます。ですから自衛隊だけを特に考えるということは若干考慮を要する面もございますけれども、しかしまた自衛隊なるがゆえに必要だという部面もまたそこにあるように思います。その辺をよく検討いたしまして、私としては御趣旨に沿うように改善してまいりたいと思います。
  56. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ぜひそうお願いしたいと思います。  次に、今度の法律の改正で、改正案を見ますと予備自衛官増員していらっしゃいます。これはけっこうだと思うのでありますが、新しく海上自衛隊予備自衛官を設けることにしておられますが、この理由はどういうことでしょうか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  57. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 これは三次防でもともと計画いたしておりました一環でございますが、実質的な理由としましては、有事の際における後方部隊の——平時は後方部隊を相当節約しておりますので、有事の拡充の面、さらに有事における人員損耗を手当てするというふうなところから、海上自衛隊にも必要であろう。陸上自衛隊にもともとそういう趣旨で置いておりますが、その考え方海上自衛隊にも準用していった、こういうことでございます。
  58. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そうしますと、ことしは出ておりませんけれども、将来は航空自衛隊にも予備自衛官制度を設けていくというお考えでしょうか。
  59. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 現在作業中の次期防衛力整備計画等において、そういう考え方をいわば積極的に検討してまいりたい、こう思っております。
  60. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 次に、この間新聞で見て私非常に残念に思ったわけでありますが、自衛官の募集につきましてインチキをやったということですね。これは長官も他の委員会答弁なさっていらっしゃいますからこれ以上詳しいことは質問しませんが、非常に残念だと思います。一体いまの陸上自衛隊の定員を維持していくのに、今後ともだいじょうぶだとはいえないかもわかりませんが、そういうふうな無理をしなければならない状態だというふうにお考えになりますか、どうですか、その辺をお答え願いたい。
  61. 内海倫

    ○内海政府委員 端的に申しまして、今後を見通しましたら、今後自衛隊が募集をして補充しなければならない人員を確保するためには、手をこまねいたままではたいへんむずかしい。やはりきわめて積極的な努力をしていかなければこの募集を達成するということはたいへんむずかしいと思います。しかしながら、それでは全然むずかしいままで不可能なのかということになると、私は決してそうではないと考えます。現状におきましても、自衛隊に応募する数は、大体採用いたしておりますものの約倍に近いものは来ておることは間違いがございません。それは地方連絡部に勤務しておる諸君が非常に努力をいたしておることの結果でございますが、将来内部におきましては、自衛官の待遇を改善する、あるいは魅力のある自衛隊にするというふうな措置をとるとともに、実際の募集手段におきましても無理のない、しかしながら有効な効果の出る募集手段というものを今後展開いたしまして努力を継続するならば、現在私どもが募集し、あるいは採用し得ておる程度人員を今後ともに採用していくことは可能である、こういうふうな考えを持っております。
  62. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまも承っておりますと、採用者の二倍ぐらいの応募者があるということですね。そうしますと、どうしてこの間のような医者の判定書を偽造したりするようなことが起こるのでしょうか、ちょっとお答え願いたい。
  63. 内海倫

    ○内海政府委員 兵庫県に起きました事件につきましては、私どももはなはだ遺憾に思っておりますが、だんだん事情を調べてみますと、そのこと自体はとんでもないことでございますが、要するに早く入りたい、何とか入れたいというふうなことで、ほんとはゆっくりあと一カ月後に入れればいいというものでございますが、日を過ごしておると、またよそのほうに就職するおそれもあるというふうなことで、何とかあと二日に迫った入隊日に入隊させたいというふうなことで、医者の身体検査なんかが欠落しているのを、ほしいままに形式を整える、こういうふうなことで出てまいったわけでございます。また他方、非常に身体に欠陥のある者を一部合格させるというふうなことになりましたのは、幾ぶん採用に当たっておる者のやはりあせりというものが私はあったのではなかろうかと思います。部分的には、そういうあせりを持っておる人もあろうかと思いますが、ただいま申しましたように、大局的に見るならば、そういうふうなあせりを持たないで、腰を据えてしっかりと募集に当たっていけば、ああいうふうなことをする必要はもとよりございませんし、今後とも募集の継続ということは正しい方法でやっていけるもの、こういうふうに思っております。
  64. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 今度の法律案では、海と空が増員になっておるわけでありますが、海と空のいままでの採用人員と応募人員をお示し願いたいと思います。
  65. 内海倫

    ○内海政府委員 採用人員といいますか、採用の状況から申し上げてみますと、四十五年の二月二十八日、二月末現在で、海上自衛隊におきましては、定員三万七千八百十三名に対しまして、三万五千四百五十六人が現員でございまして、充足は九四%になっております。それから航空自衛隊のほうは、定員が四万一千百八十三名に対しまして三万九千四百六人で、九六%の充足を示しており、昭和四十五年度の充足率の目標といたしまして、海上自衛隊が九六・五%、航空自衛隊が九七%というふうなものを考えておりますし、実際問題としまして、応募の状況も、海、空におきましては、陸に比べますとさらに多いという現状でございます。いま応募の人員につきましては、ちょっと手元に数字を持っておりませんが、大体全部で年間約六万名余の応募がございます。その中で三万余名を採用いたしておるわけでございますが、海上自衛隊及び航空自衛隊を希望するものは相当多うございまして、二倍以上に及んであるわけでございます。
  66. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 大体海上自衛隊航空自衛隊は、今度増員をしても、いままでの充足率を割るようなことはないというふうに了解をしていいわけですね。  隊員の募集充足の問題につきましても、ひとつお伺いしたいのでありますが、現在、陸、海、空の自衛隊の中で、自衛隊の行なう教育、訓練、いろいろ専門教育をやっておると思うのですが、その専門教育が済めば、そのまま国家資格が認められる、たとえば機械の一級整備士とか、一級通信士とか二級通信士、そういうふうなものになっておる制度がございますか。
  67. 内海倫

    ○内海政府委員 いわば自衛隊訓練を受けたならば、その訓練の結果得た技術が、そのまま公資格として認められるというふうになることが最も望しいことでございます。加藤先生も御存じのように、昭和三十八年以降、防衛庁におきまして、そういうふうな公資格の付与に関する検討を続けております。その結果の概要を御説明を申し上げたいと思いますが、自衛隊の課程を履修することによりまして、そのことがそのまま資格の付与につながるもの、これは潜水士、特殊無線技師、これは国内無線電信ですが、こういうものは、自衛隊で得たものがそのまま公資格として認められる。それからもう一つのカテゴリーは、課程を履修することによりまして技能試験あるいは実技試験というものの一部が免除される。典型的な例は自動車の運転免許資格でございます。あるいは航空管制職員あるいは自動車整備士等、ざっと数え上げまして、大小取りまぜまして百くらいのものがこれに該当いたしております。それから三番目のものは、この課程を履修いたしますと、国家試験を受験する資格が出てくる、こういうものが看護婦、エックス線技師あるいは調理師、こういうものがございます。  以上が、大体いわば公資格と自衛隊における訓練とのつながるものでございますが、このほかに部外委託あるいは部外講師等を招聘いたしまして隊員に資格を取得させるような援助をいたしているものとしまして、無線通信士あるいは海技士等がございます。
  68. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 若干役に立っているようでございますが、私、この前ヨーロッパで、十年ほど前でありますが、オーストリアの軍隊を見てきたわけでありますが、職業教育というものを非常に重視している。そして軍隊生活が終われば、何らかの職業を身につけて出ることができるようにしたいのだというふうなことを向こうで申しておりました。自衛隊としても、いろいろ専門の教育をするわけでありますから、それは世間の必要な資格試験を受ける資格になる場合もあるし、そのまま認めてもいいようなものも相当あろうと思うのです。長官、これはぜひひとつお考えいただきまして、何とか自衛隊の教育を充実させなければいけないものもありましょうし、いまのままでは時間数が足りないというものも実はあろうかと思いますが、そういうものは、部内で検討して、時間数を充実させることができるのかどうか御検討いただきたい。そうして自衛隊の生活、訓練というものが、除隊をして外へ出ました場合に、そのまま役に立つようにというような考慮をぜひしていただきたいと思います。こういうようなことがはっきりいたしますと、自衛隊に応募しようという者も、いまよりは相当ふえてくるのではないかと思う。ただ最近の新聞で見まして非常に残念に思ったのでありますが、自衛隊に入れば自動車の運転免許の資格を取らしてやるとか、そういうふうなことを、募集の際に約束しているんですね。これは事実かどうか知りません。しかし、もしそれが事実だとしますと、私は行き過ぎだと思うわけでございます。そういう約束まですることはいかがかと思うけれども、実質的に自衛隊の教育が、社会に出てもむだでなかったというような考慮からの検討を、隊内のカリキュラムその他を決定される際に、ぜひお願いしたいと思うわけでございます。  次にお伺いしたいのは、自衛隊法の百三条、これは長官御存じかどうか知りませんが、防衛出動時における物資の収用等の規定でありまして、必要な事項は政令をもってきめるということになっているわけです。ところが、この政令がまだ出ていないわけでありますが、これは防衛庁としてどういうふうにお考えなのかお聞かせ願いたいと思います。
  69. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この政令は、法できめられているとおり必要であるとは思います。思いますが、客観情勢との関係を見合いながら、この政令というものも考えなければなりませんし、それから議会関係その他の動向等も見守りながらやるべき政治的な要素がかなり含まれている問題であると思います。うっかりこういうものに手をつけて急いでやりますと、情勢が緊迫しているんじゃないかとかなんとか、無用な誤解を与えるおそれがありますので、しばらく情勢をよく見守りながら検討していきたいと思います。
  70. 佐藤文生

    ○佐藤(文)委員 防衛庁長官に七項目について関連質問いたします。  第一が、服装の問題であります。自衛官が夏、冬同じ帽子をかぶっておる。私は、これは御承知であると思いますけれども、夏と冬とやはりこの機会に変えて、すかっとした服装にするのが第一歩だと思います。  それからくつが、もう第一にあんなくつじゃどうにもなりませんので、円谷選手が自殺をしたその原因も、現在の自衛隊のくつを勤務中はいておるということでアキレス腱を切ったという、そういうことが原因の一つである。これは別府の自衛隊で円谷選手が療養中に本人から私は聞きましたので、これがいまなお改正されてない。先ほど加藤委員が言われた曹と士の服装を変えるということもこの中に入ると思います。かっこいい服装に早急に変えてもらいたいと思います。これはもう、いなかに行きますと、郵便屋さんが来たのか、自衛官がふるさとに帰ってきたのかさっぱりわからぬ。こんなことでは私はいかぬと思いますので、長官の思い切った考え方で、ひとつかっこいい服装に変えていただきたい。  それから第二点。演習に行きまして、一番最初にばてるのは曹であります。向こうの山を攻撃して突撃して占領したときに、青空を向いてふうふういってひっくり返っているのは大体一曹クラスであります。そして士クラスの者が一番元気がよくて、次の山に行こうじゃないかというときに、もうここで休憩、こういうところを見ると、大体曹の年齢が三十歳から四十歳までじゃないでしょうか。これは昔のことを言うと悪いですけれども、士官学校を出た者、それからその当時の兵隊、それから下士官というものは二十歳から二十五歳であります。私は、自衛隊の精強な部隊をつくるのなら、年齢のそういったものを集約する政策を早急にとっていただきたい。准尉制度というのは、そういうところにあるのかどうか知りませんが、そういう准尉制度と同時に、もう思い切って退職金をたくさん出して、三十五歳前後になって、やめたい、民間に行きたいけれども、もう少しがんばるともう少し退職金が出るだろうというような人が多いんだろうと思うのです。そういう人を、どういう制度をとっていいかわかりませんけれども、そういったような人が相当いるので、退職金制度というものに抜本的な改革を加えて、年齢を集約していく、そういう制度というものをやっていただきたい。  そこで、曹と士が演習に行った場合に、長官はどういった昼食を食べておるかどうか、検討しておるか知りませんが、曹は営外食、ワイフのつくった食事を小積みのそばでこそこそと食べておる。ところが一般の士は営内食のものを共通して食べている、こういうようなことが演習場で行なわれているのです。こんなことじゃ、実際において私は精強な部隊訓練になっておらないと思うのです。これは営外者であるから営外食、営内者は営内食ということが演習の場合でも行なわれておるということは、私は改めるべきだと思う。こういうぐあいに思います。  それから三番目、自衛隊員が出張する場合に、駅に行きまして切符を買います。そのときに、長官は現金を出して、いまから東京から福岡に行きたいといって買われるだろうと思うのですが、そういう現金を出して、出張旅費をもらっていく場合と、あと払い制度があるやに聞いております。自衛隊が何か証明書を出して、駅員からいやな顔をされて、そうしてそれはあと払い、こんなときくらいいやな気持ちはないということを若い自衛隊員はだれも言います。したがって演習で出張する場合、その他の公務で出張するというようなときには、あと払いの制度というものは全廃をすべきである、自衛隊員の誇りを持たせる意味においても全廃すべきであると思いますので、第三点にそれを質問します。  それから第四点、これは先ほど加藤委員が言われたのにも関連しますが、防衛大学生が日曜のときに東京に出ていくが、行くところがないのです。せめて防衛庁の中の集会所くらいに行って、防衛庁の幹部と、私はコーヒーを飲みながらでもやはり交流するという機会を与えるべきだと思います。そういうことが全然なくして、新橋の屋台に行って、そこで若い防衛大学の学生が飲むのもいいのです。飲むのもいいのですが、やはり防衛庁内部において一つの集会所の中で、防衛庁長官と一緒にコーヒーを飲むような機会も、施設もあってもいいのじゃないか。そういう配慮が全国的に行なわれておりません。こういうことは防衛大学の学生であろうが、自衛隊員であろうが、共通した気持ちだろうと思いますので、そういったような施設を私はつくっていくべきだ、こういうぐあいに考えます。  その次、エルパソにホークの実弾訓練演習に毎年一回行っていると思います。予算が非常に少ない。どのくらい予算があるか知りませんが、百人分くらいしか予算がないのに、自衛隊の要求によって二百人以上行っているのであります。それで困苦欠乏の中によい実績をあげているということを私は聞いてきました。私はそういったような予算の配慮というものがどうなっておるか、お聞きしたい。  それから、その次、先ほどの加藤委員のこれは関連ですが、艦長と艦が運命をともに私はすべきだと思うのです。私は一般の商船とここら付近が自衛隊の自衛艦と違うべきじゃないかと思うので、先ほどの長官答弁がどうも私にとってはふに落ちません。ですから、したがって自衛艦の艦長たるものは自衛艦とともに運命をともにするという指導態勢を持っておるのか持たないのか、この付近を防衛庁長官にはっきり聞きたいと思う。  それと同時に、現在の潜水艦の建造計画、その能力、これもお聞きしたい。というのは、潜水艦に乗り組んでおる若い士官から私は一晩ゆっくり聞いた。潜水艦に乗ってずっと日本の近海を回っておるというと、どこともなしにその艦の下を相当なスピードでもって国籍不明の艦が日本の国内に現実にどんどん入っておる、これはおかしいと思って追跡したって、スピードが間に合わないし、どうにもならないというようなことで、現在潜水艦防衛庁がつくっているのは、私はもう国際的に見ても、日本防衛力から見ても、無用のものをつくっているのじゃないか、そういう能力の面から考え潜水艦の建造について抜本的な改革をすべきである、こう私は考えます。非核三原則というのがあります。けれども、私は、もう原子力商船をつくる時代ですから、その付近もそろそろ考えてもいい時期がきたのじゃないかと考えますので、そういう計画があるのかないのか、この付近をお聞きします。原子力潜水艦の将来の建造計画はあるのかないのか、それをお聞きいたします。  以上、関連質問いたします。
  71. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいま七項目の御質問の中で、私の知っている範囲のことを御答弁申し上げまして、それ以外は政府委員から答弁させます。  まず艦長は艦と運命をともにするという問題でございますが、これは非常に大事なポイントであると思います。自衛官日本防衛のために命をささげるという使命を持っておると私は思います。であるがゆえに自衛官は尊敬さるべきである。これがほかの職種と違う職種であると思います。そういう趣旨のことを、私は防衛大学の卒業式に行って防大生にも訓辞をしてまいりました。したがって、国のために一朝有事の際は命を捧げるというその真義を自衛官が体して行動されることを私は期待しておりますけれども、自衛艦が沈没するとか、有事の際に退艦しなければならぬという、そういう非常事態が起きた場合に、艦長が自衛艦と運命をともにするということとはまた別のことである。艦長は国の防衛のためにも非常に必要な人材でありまして、それを消耗するということは国の防衛力の点から見ても考えなければならぬ。のみならず艦と運命をともにすること自体が職責を全うしたことになるかどうか、その点もこれは検討の余地があります。艦と運命をともにしなくとも職責を全うするということは十分あり得るとも思われます。したがいまして、最後の瞬間に自分の安全をはかって脱出するということは、自衛官として、艦長としてとっていい行動である、むしろその際はとるべきであるとすら私は考えます。そのほうが大きい意味において国の役に立ち、自衛官としての本分を全うするゆえんであるとも思います。なるほど艦と運命をともにするということは、ネルソン以来これは美しいことでありまして、そのこと自体はまたりっぱなことではあると思います。思いますけれども、防衛庁方針としてそういうことを他人に強制すべきものではない、そういうように私は思います。  それから原子力潜水艦につきましては建造計画はございません。私は、昨日答弁申し上げましたのは、私が原子力基本法の説明者としてその問題について答弁した内容を申し上げたのでございまして、将来これが推進力としてポピュラーになってきたときに原子力潜水艦をつくることまで否定したものではない、そういう意味のことを申し上げたのであります。
  72. 内海倫

    ○内海政府委員 人事教育に関係します部分についてお答えを申し上げます。  服装の改正の問題でございますが、全く先生の御意見のとおりでございます。りっぱな服装を与えて士気を高揚するということはきわめて必要なことだと思いまして、このほど二年にわたりました服装改正審議を終えまして、新しい改正服装の制度もできまして、逐次実現をしていく、こういう方向に踏み切っておりますので、数年の間には全員が魅力のある服装に変わっていくようになるものと考えますが、予算等の関係もありまして、一挙に同時にこの服装を改めさせるということができないのがはなはだ遺憾でございます。しかし、なるたけ早く全員が魅力のある新しい服装に変わるように努力をいたしたいと思います。  それから曹の年齢の問題でございますが、これも仰せのところは全く私どもも同感に感じますが、現状を申しますと、先刻御存じのように、昭和三十八年でございますか、曹の停年を延長いたしまして、一曹につきましては五十歳までの停年といたしましたので、曹の年齢層が非常に高くなったことは事実でございます。おそらく平均年齢をとりましても、一曹から三曹に至ります全員の平均ということになりますと、四十歳に近い数字が出てくるものと思っております。特に一曹につきましては四十三歳以上というふうなことになっております。この曹の年齢層を引き下げるということはたいへん大事でございますが、同時に、先ほども申しましたように非常に自衛隊も技術化しておりますので、そういう点を考慮いたしまして、必ずしも若いだけというわけにもまいりませんので、今後さらに検討をいたしていきたい、かように存じます。  それから曹が演習等に行った場合に食事を弁当持ちで来る、これもまことに妙なかっこうだと私も思いますが、一応現在の現物支給のたてまえからは、営内居住をいたしております曹士につきましては食事を官給いたしますが、営外者につきましては、災害派遣及び宿営を要する演習の場合には現物支給いたしますが、それ以外にはいたしておりません。こういう問題につきましても今後さらに検討をしなければならないかと考えます。  防大生の、あるいは自衛隊員の隊外における慰安休養の問題ですが、これまた仰せのとおりでございますが、私ども厚生施設といたしまして隊外の施設を逐次充実しつつありまして、何とかそういうふうな外出する若い隊員あるいは防大生がゆっくり休養できるような施設をこの後も強化充実していきたいと考えております。  大体私に関係します点は以上の点をお答えいたします。
  73. 田代一正

    ○田代政府委員 経理局関係の問題について申し上げます。  一つはホークの年次派遣の問題について、予算が百人しかついていないのに二百人も行っているのじゃないか、したがって非常に金が窮屈じゃないかというような御質問だったと思うのであります。ホークの年次派遣につきましては、一個大隊において毎年何人というわけで人数はきちっといたしております。したがって人の問題といたしまして人員が非常に違うという問題はないと思います。ただ、年次派遣をやる場合に、あくまでも一種の訓練演習訓練でございますので、交通費とか滞在費と申しましても、これは米軍の宿舎を借り受けた場合は非常に安くあがるということで、そういったものが全部官給になります。で、本人に現金として渡る分が非常に少ないというようなことじゃなかろうかと私は思います。最初にあちらへ行くという場合には最高二万円くらいの現金は持たしているようでございますが、そういうことに一つの御不満があるのじゃないかと思います。しかし事柄はあくまで一種の演習で行くわけでございます。物見遊山で行くわけでは決してございませんので、やはりその辺についての節度というものがおのずからあるのじゃないかというふうに考えます。なお御指摘でございますので、私ももう少し実情を調べてみたいと思っております。  それからもう一つ、出張旅費の場合に旅費を渡さないであと払いにするという御指摘があったと思います。これも、いまちょっと手元に資料がございませんですが、こういうことを私も聞かないわけでもない、今後ともそういうことのないように逐次改善していきたい、こういうように考えております。
  74. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 原子力潜水艦のことにつきましては、先ほど大臣からのお答えのとおりでございますが、その前提として、在来型潜水艦の建造件数等についてお尋ねがございましたが、三次防におきましては大体毎年潜水艦一隻のぺ−スで建造してまいりまして、現在わずか十隻しか存しておりません。次期防においてさらに増強はいたしたいという方向で検討中でございます。現在一番新しい潜水艦としましては「おおしお」というのがございますが、千六百トンで、性能は水上で十四ノット、水中で十八ノット程度の速力を持っております。もちろん原子力潜水艦と比べますと在来型潜水艦は一般的な性能ははるかに劣るわけでございます。特にスピードあるいは航続距離においてずいぶん劣るわけですけれども、それでは全然むだなものをつくっているのではないかということにつきましては、必ずしもそうではございません。音が低いという点で非常に特色がございます。見つけられにくいという特徴もございます。さらに、強力な海軍を持っております国におきましても、現在、すべて原子力潜水艦かといいますと、必ずしもそうでもございません。具体的に申し上げれば、たとえば極東ソ連におきましても、百隻ばかりの潜水艦を持っておりますが、原子力化しているのは三割程度、つまり七割程度は在来型のものでございます。もちろん、現在の方向は、だんだんふえていくと見込まれますけれども、われわれの持っております在来型、今後とも在来型でつくることに当分の間はなろうと思いますけれども、それはそれなりの運用のしかたがございまして、わが海上防備力としては相当な力を発揮するものだというふうにわれわれは考えております。
  75. 佐藤文生

    ○佐藤(文)委員 長官に質問します。  防衛大学の入学制度について、私は、次のように一つの私案を持っておりますが、お答えを聞きたいと思います。  防衛大学の学生を全国的、普遍的に入学せしめるという一つの目的、それと、優秀な学生に防衛大学に入学していただく、こういう二つの目的から、私は、衆参両院議員にそれぞれ三名ないし五名推薦権を持たすべきだ、そして試験を受けさして、実力で入ることができないボーダーライン以下の結果の学生が出た場合、それは当然入学できない、そのかわり、推薦したその国会議員は、その翌年は推薦権ゼロになる、こういったような思い切った制度をとるべきではなかろうかと私は思うのです。いろいろ見てきた中で、こういった制度をとっておるウエストポイントのやり方なり、あるいはアナポリスのやり方が、そういうやり方をしているのを見てきて、これはいい制度だ、したがって、そういう制度も私は防衛大学に限ってとる時代がきたんじゃなかろうか、こう思いますので、この考え方についてお聞きしたい。  アメリカでは、大統領は二百名の推薦権、一般の上下両院議員が五名ずつの推薦権、そして能力のない者を推薦した者は翌年は推薦権ゼロになる、こういったきびしい考え方で優秀な学生を入れておる。こういうようなことも一つの参考にしていただきたい。  それから、二番目の問題は、エルパソの先ほど言ったホークの演習の隊員の実態ですが、予算が非常に少ないことは事実だと思う。向こうで聞きましたのは、百名の予算しかないのに、非常に希望者があって二百名行った。世界各国から行って、あそこで演習している他の国の隊員の実情は、せめて日曜ぐらいは外出を許可しているわけです。ところが、かん詰めであります。二カ月間ぐらいは全然かん詰めでやっている。それは訓練だからいいと思いますけれども、やはりこういう機会に見聞を広める意味において、日曜ぐらいは外出させるぐらいの余裕をもって訓練をさしていただきたい。相当な訓練をしているから、日本自衛隊員は、ホークの実弾演習で、成績は平均点九十八点、アメリカが九十点ぐらい、西ドイツが九十四、五点、フランス、イギリスが八十四、五点ぐらい、こういったような成績が出ておるわけであります。したがって、非常に優秀な成績を得ている自衛隊員に対して、やはりこの機会に、訓練一点ばりでなくして、日曜ぐらいは外出さして、そうして見聞を広めるということは、私は当然ではなかろうかと思いますので、その予算について十分考慮していただきたい、この二点についてお尋ねいたします。
  76. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ホークの演習の問題は、よく実情を調査してみます。  それから、防衛大学の学生の国会議員による推薦の問題は、アメリカでやっていることも私承知しておりますが、アメリカの場合は、二大政党対立でも、防衛問題については意見の相違がほとんどないという基本的基礎ができております。しかし、日本のような場合に、社会党や共産党さんの国会議員さんが、はたして推薦してくれるかどうか。そうなると、自民党の防衛大学みたいな形にもなりかねないということで、日本の特殊の事情も考えて、それは考えを要すると思っております。
  77. 塩谷一夫

    ○塩谷委員 関連して長官にお尋ねいたします。  先ほどの艦長が艦と運命をともにするというあのことでもう一言伺いたいと思っておりますが、私は、確かに近代社会の中における自衛隊なりとは思います。しかし、近代社会の一番欠陥というものはやはり管理社会ということである。管理面というもの、マネージというものは非常に合法的で合理的なことに考えられておるけれども、責任ということになりますと、一番の欠陥はその責任体制にあると思う。そういう場合に、これは非常にむずかしい問題でありますが、先ほど長官のお話があったように、人命を第一にして、そうして必ずしも責任というものはそういう考え方でなくて、もっと原因その他を究明して、有為な人材を残すと同時に、その事態のために対処するあり方として、必ずしも艦と運命をもとにしないほうがいいというお考えだったと思う。私は、そういう考え方については、非常に機微なむずかしい問題でありますが、士気という問題があると思う。やはり軍隊というものはさむらい精神でありますから、こういうことがあってはならないことが前提でありますが、やはりそこに艦と運命をともにするという問題で、積極的な管理に対する責任体制が出てくる。したがって、積極的な管理あるいはマネージという意味からいっても、この艦と運命をともにするというさむらい精神というものがなければ、これはマネージとか、あるいは原因究明とか、あるいは人材とか、そういった意味から簡単に指揮者が出ちゃって、そうしてその原因をみんなで究明しようということで、あってはならないような場面が今後出てくるような気がいたします。そういう点からいっても、武士道というものをもう一回考え直す時期だと思う。非常に古い話のようですが、武士道というのは、ほこをおさめて初めてさむらいというものがあるのであって、戦うだけがさむらいではない。たまたま私、佐藤君と同じようにアメリカへ行って、アメリカにいる武官、こちらの海自の一佐でありましたが、非常にいい話を聞いてまいりました。というのは、勲章の問題で、アメリカは御承知のように、非常に勲章をきら星のごとく略章をつけている。日本の駐在武官は全然つけていない。まことに肩身が狭いではないかという話が出たときに、アメリカの、あれはどこでしたかね、非常にきら星をつけた軍人の前で、私がほんとうの武士だ、全然勲章をつけていないのがほんとうの軍人ですと言って胸を張っておったわが海自の一佐がおった。これはあなたの勲章は、ベトナムの勲章かもしれない、あるいは朝鮮戦争の勲章かもしれない、そんな勲章は何の誇りになるかということを言って胸を張ったという、これは非常にりっぱなことばであって、相手も、恐縮もし感銘もしたわけですが、要すれば、武士道というものがやはり一番必要であって、そういう結論からいって、一応筋金だけは通してくれ。あってはならないことでありますが、積極的な管理のためには艦と運命をともにするという歴史、武士道、そうしたものに立脚した責任体制を持たせたほうがいい。そうしてこの問題については、たまたま私も選挙区のほうで海軍の連中の話を聞いてまいりました。古い帝国海軍という意識ではなくて、現在の責任体制という話からも、座談会のような形で話し合ったのですが、これがなくして何の艦長かということを言っておった。そういう意味では、非常にむずかしい問題でありますが、私は、やはり佐藤君の質問と同じように、艦と運命をともにすべきだということを主張いたします。
  78. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 塩谷委員のお考えはまことにりっぱなお考えであると思います。しかし私は、防衛庁長官といたしまして、そういうことを防衛庁方針として強制するということはいけないと思います。民社党に永末君という議員がおりますが、彼は海軍で予備学生から主計中尉になり大東亜戦争に出まして四回くらい泳いでおります。それで、彼がもし艦長に殉じて死んでおったら国家のためにいま働くことはできないし、民社党も、永末君という人がいるためにどれくらい日本防衛政策が前進しているかわからないと私は思っております。友人として非常に敬意を表しております。彼が革新陣営におりながら正論を堂々と言っているということは、どれくらい国家のためになっているかわからないと私は思うのであります。そういう点からいたしましても命を捨てることはその一瞬で簡単でありますけれども、生きるということのほうがむずかしいという場合があるかもしれません。そして何回も何回も、七生報国ということばがありますけれども、死んで生きなくても、生きていて、生きてやり抜いたらなおいいんじゃないか、それが七生報国になるのではないかとすら私は思う。徳川時代の、あの葉隠れのような、武士道とは死ぬことと見つけたりという倫理が現代においてそのまま通用するかどうか、そういうお考えもりっぱであるけれども、現在の国民全般が理解して、そうして共鳴して一緒にやろうというような方向は、命を粗末にする、粗末ということばは悪いのでありますけれども、そういうような短い瞬間にものをきめるというやり方よりも、もっと息の長い、ず太い、その精神を堅持しながら自分のからだの続く限りやり尽くすというほうが、ほんとうは国のためになるんじゃないか、そう私は思うのです。大東亜戦争が終わりましたときに自決された方々がおられました。非常に痛ましいことであり、その行為はまたりっぱであって、われわれ自体も何かそういうようなことをしないとうしろめたいような気持ちが、実際当時しておりましたけれども、しかしその後の日本の発展や民族の悠久の姿というものを見ますと、幾らでもそういう国家社会のために尽くす方法はあり得るんだ、本人の心がけであり得るんだ、そういう気持ちが実はしておるのであります。そういう意味において、自衛官の心がまえも、息の長いやり方を誠心誠意尽くしてやるということもりっぱなやり方であって、私はそういうやり方を防衛庁としてはとるべきである、そういうように考えておるのであります。
  79. 塩谷一夫

    ○塩谷委員 確かに長官のお説はよくわかります。私どものお願いは、息が長くて、ず太くて、ずるくならないようにということであります。結果的には決してわれわれも短い命とか、あるいはきれいごとで、あるいは昔の腹切り論争をしていたいとは思いません。しかし士気というものは一体何だということになりますと、具体的に考えた場合にやはりかなりきびしいものだと思うのです。それが効率的とか、あるいは合理的とかということの名において常に大事な一点だけが欠けるおそれを私は憂えるわけであります。そういう意味からいって、必ずしも私自身は切腹論を、あるいは古い大東亜戦争当時のああいうことだけを考えているわけではありません。軍というものがある限りはやはり歴史の上に立っておりますし、それから一応軍隊でありますと責任者というものは一人であります。みな死ねというわけじゃない、あってはならないことでありますが、そういう防止のためにはやはり士気中心、そうした精神というものがどこかに拠点がないと言うべくしてこれまたルーズな責任回避、場合によっては一将功成りて万骨枯るというような事態を起こさないとも限らない。そういう意味からいっても、やはり精神的な士気という点に重点を置かれることを希望いたします。
  80. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 それでは次に防衛施設庁関係で少しお尋ねをしてみたいと思います。  今度の法案改正の中で、不動産審議会と被害者給付金審査会を一本にするという提案でありますが、何かえらい性格の違うものを一緒にされるような感じがするのですが、これでうまくいくのでしょうか。いままでどういうふうに両委員会とも運営されておったか、今後どういうふうに運営していくかということをお答え願いたいと思います。
  81. 山上信重

    ○山上政府委員 お答えいたします。  今回の法案におきまして防衛施設中央審議会を設置し、従来存しました不動産審議会並びに被害者給付金審査会、これを統合するという提案をいたしましたのは、御承知のように審議会等の整理に関する行政機構簡素化という趣旨に一面のっとりますとともに、この二つの審議会、特に被害者給付金審査会は相当活発に御活躍をいただいておったのでございまするが、不動産関係のものにつきましては、御承知のように終戦直後におきますところの不動産価格の評価というようなことが主としたる業務の内容でございましたために、最近におきましては比較的開催回数も少なくなっておるというのが実情でございます。これを統合いたしますのは、いま申した行政機構の簡素化ということと同時に、これを統合するとともに、あわせまして防衛施設から生ずる障害の問題、いわゆる基地の障害防止等の関連の問題をもあわせてこの審議会において審議できるようにしていただきたい。それによって、今日のいろいろ基地を囲むところの問題について民間の意思を十分反映するような行政をしてまいりたいというようなことで、この二つを合すると同時に、そういった新たな趣旨も加えて審議会をつくってまいりたいということでございます。  それではこの運営がうまくいくかどうかということでございますが、いまの仰せのように、従来ございましたこの二つの審議会並びに審査会は多少性格が違います。したがって、これを運用していく場合には、部会または分科会といったような分かれた運用を現実にはいたしてまいる必要があるのではないか、そういう形で、審議会としては統合いたしますが、内容的には従来に劣らないように運用してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  82. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 よくわかりました。  次にお伺いしたいのは、いま防衛施設庁で、米軍自衛隊の飛行場の周辺の土地を、安全のためにも、あるいは騒音等の関係からも、希望者があればずいぶん買い取っておられるように聞いておりますが、どれくらいいま買い取っておられますか。将来またどのくらい買い取ろうという御計画ですか。
  83. 山上信重

    ○山上政府委員 防衛施設周辺におります住民の方々が、いわゆる安全措置として住民をどこかへ移転したりあるいはそれに伴って農地も他に移転したりというようなことで、いわゆる集団安全措置といっておりますが、そういった安全措置によりまして収得いたしました国有地といいますか、そういう希望の方々から買い上げました土地は、千歳飛行場外十六施設につきまして現在までに約百八十万平方メートルに及んでおるのでございます。これが今後どういうふうにふえてまいるかと申しますと、これは毎年現地の方々の希望に応じて予算措置によってやってまいりまするので、本年度におきましても、約二十億円の予算額を持っておりまするので、それに応じて可能な限り安全措置に努力してまいりたい。非常に希望が多うございまするが、直ちに全部は応じ切れない実情ではございますが、努力してまいりたい、かように考えております。
  84. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 現在までに相当な面積を買い取っておられるわけですが、これは現在どういうふうに管理をなさっておられますか。ちょっとお伺いいたします。
  85. 山上信重

    ○山上政府委員 集団安全措置によりまして取得いたしました土地は、国有財産でございまするので、これの管理につきましては、従来とかく人がいなくなってしまったような土地であり、かつ特にこれを行政目的と申しましても、特定の目的に使うというわけではございません。ほったらかしにされるというような弊害がございましたので、これらに対しましては、周囲にさくをつくるとか、あるいは内部の土地からいろいろ雑草などがはえる、そのためにあちこちに御迷惑をかけたり、いろいろ犯罪のもとになったりするというようなことのないように、雑草の刈り取りとかあるいはさくをつくるとか、役所の手によってでき得る限りの措置を講じてまいり、そのための予算措置もしてまいったのでございまするが、これだけでは相当点在しております土地の管理として十分でございませんので、一昨年から民間あるいは地方公共団体あるいは地方の法人等に対しまして、われわれが安全措置としての土地を取得した目的に反しない限度におきまして、これの使用を許す。希望があればこれらに対してお貸しする。それによって、たとえば苗圃をつくるとか、あるいは桑園に使うとか、あるいは特定の簡単な物置き場にするとかいったような利用方法を認めておるのでございます。ただ一昨年は試験的に始め、昨年からやや本格的にそういうことを認めてまいったのでございまするが、現在までに使用許可したものは、入間、厚木、板付等の周辺十一件、約三十三万五千平方メートル、五分の一ぐらいの程度のものにしかなっておりません。今後これらについては、できるだけ広くそういった方面の活用によって管理の適正を期してまいりたい、かように考えております。
  86. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 まだ時間がそうだっていないからかもしれませんが、五分の一しか利用していらっしゃらない。あとの土地はほうりっぱなしになっておるんですか、予算をかけて管理をしていらっしゃるのですか、どうなんですか。
  87. 山上信重

    ○山上政府委員 予算の詳細については後ほど施設部長から答弁させますが、ただいま申しましたように、民間あるいは地方公共団体等にお貸しする、利用するという方法以外は、これは今後もなるべく広げてまいりたいと思いますが、それに至っていないものにつきましては、ただいま申し上げたように外さくをつくるとかあるいは雑草を刈り取るとかいうことについては、予算は昨年度、四十四年度で約九百万といったように相当の経費をかけて管理をいたしてまいっておるのでございます。ただ非常に点在しておりまするし、個所数も面積に比べてばらばらになっておるというようなことから、必ずしも十分にいかないので、民間活用ということも考えておるような状況でございますが、いずれにせよ国としては、それに至らないものについては管理についてはできるだけの努力をいたしたい、かように考えております。
  88. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 防衛施設庁で買収しまして、行政財産として管理しております土地の実際上の管理形態でございますが、先ほど長官からお話がございましたように、周辺にさくをつくるあるいは境界標を建設するというようなことで、無用の者が中に立ち入ったりあるいは境界を侵されるというようなことのないように、毎年予算を計上しまして、そういう必要な工事をしておるわけです。さらにまた具体的に使用していないというようなことから、雑草がはえてきまして、周辺の農地に種が飛んで、農地に被害を与えるというようなこともございますので、毎年除草を実施しております。こういった経費がなかなか毎年かさみますので、ただいま長官から御説明がありましたように、なるべく民間に利用させることによって、経費の節減とそれから土地の有効利用をはかっておるわけですが、現在許可しておる以外のものにつきましても、それぞれ希望があるものがございますので、こういうものは早急に協議をしまして、なるべく積極的に民間の利用をはかるというふうにしておるわけです。  さらにこの予算関係でございますが、ただいまの管理の経費としましては、四十二年度が、これは集団移転のあと地ばかりではありませんけれども、一般的な国有地の管理費も若干入っておりますが、九百七十万ばかり予算をかけております。それから四十三年度が約七百万、四十四年度が約九百万、こういうふうに毎年かなりの経費を投下しておる、こういう実情でございます。
  89. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 大体わかりましたが、私思いますのに、なぜ利用者が少ないかということなんです。飛行場周辺の土地なら幾らでも利用の方法はあると思うのですね。それがなかなか御許可にならないというのは、どの辺に理由があるのかわかりませんけれども、いまも御答弁がありましたとおり、これはもう積極的に民間に利用させて、国の経費も省き、民間の役にも立つというふうな方向で、ぜひ今後お考えいただきたいと思うのであります。  その次にお伺いしたいのは、駐留軍の労務者がだんだん解雇されていく。私はおそらくこの両三年のうちに相当数の解雇者が出るだろうと思うのです。駐留軍の健康保険組合が相当赤字をかかえておるということでありますが、この傾向はますます大きくなると思うのですね。現在駐留軍の労働者の健康保険組合の経理の状況はどういうふうになっておりますか。
  90. 山上信重

    ○山上政府委員 駐留軍従業員健康保険組合の経理の問題ですが、これはただいま先生の御指摘のように、従業員がやめてまいりますと、そのやめた後にいわゆる継続給付というのがございまするために、多量の人員が整理になる、しかももとの従業員組合が昨年末で四万六千人、それに対して本年の一月から六月までに五千人余の整理がございます。そういったような多量の整理が、継続給付があるということで、赤字といいますか、健康保険組合の医療負担とかその他の負担が非常に増額されます。そのための経費の赤字というものは相当額になる次第でございます。  ただいまちょっと手元に数字の持ち合わせがございませんので、正確な数字は、もし必要ならば、後ほど資料として差し上げますが、このままで推移していきますと、四億ぐらいの赤字になるのではないかということがおそれられておるのでございます。  これらに対しましては、むだな経費を省くとかいろいろな方法で、健康保険組合の内容の改善と申しますか、いろいろな点をはかっておるのでございます。それによっても相当の経費の節約を見通しておりますが、同時に、これだけでは足りませんので、すでに今国会に予算を計上してお願いしましたように、国の補助金、これを昨年七千万円でありましたものを、本年は一億円というように大幅に増額していただいて、これらの赤字対策にも処したいというふうに考えておりますとともに、一番大きな問題は、今後保険料率の改正をするということが必要ではないかと思っておるのでございます。ただこの保険料率改正というものは、従業員だけが負担するのではなくして、軍のほうにも負担をしてもらわなければならないという問題がございまするので、対米折衝という点において今後相当の努力をいたさなければならないというような実情にあります。目下これにつきましては、防衛施設庁が米側と保険料率の改定についてせっかく努力中でございます。いろいろあれこれ施策を講じまして、健康保険組合の正常な運営に今後努力してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  91. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまも申し上げましたとおり、だんだんと解雇者はふえるだろうと思うのです。私はまた日本のためにはそのほうがいいと思うのです。ただ解雇される人はたいへん気の毒なことでありますので、解雇者の救済と申しますか、その対策については、防衛庁当局としても今後御努力を願いたいと思うのであります。  いろいろ御質問申し上げまして、大体私の疑問は解けたのでございますが、中曽根長官は、最初申し上げましたように、防衛問題の論議を国民の広場に移し、熊さん八さんが将棋を打ちながらでも、潜水艦が足りぬの飛行機が足りぬのというところまでしたいということを、かつておっしゃったように記憶しております。私もぜひそういうふうに防衛問題というものを国民の間に浸透させたいと実は思うのでございます。  これはお答えは要りませんけれども、現在防衛庁の外郭団体に郷友連盟とか、自衛隊の父兄会とかあるいは隊友会とか、いろいろございます。これらの活動に対しまして、経済的にも、また行政面でも、もう少し防衛庁当局としては援助をしていただけないものであろうかということを、私はかねて思っておるものでございます。御考慮をお願いいたします。  これをもって私の質問を終わります。
  92. 天野公義

    天野委員長 午後一時十五分より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ————◇—————    午後一時二十六分開議
  93. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。大出俊君。
  94. 大出俊

    ○大出委員 きょうは時間が多少あるようですから、長官と少し今国会ペースに従って対話をしようというふうに思っているのです。  そこで、まずもって承っておきたいのですが、与党の皆さんの機会あるごとのお話の中に、中曽根さん在野のときにいろいろ話が防衛に及ぶ、ところがなかなかタカ派であって、安保条約というのは五年もたったらやめたらどうだというお話も自派の会合でおやりになったということから、自前防衛なり自主防衛なりというものを考えていくと、これは核保有ということにつながっていく。中曽根さんが核保有論者であるという話を何べんか聞いたことがあるのですけれどもね。ところが、最近どうも防衛庁長官におなりになったとたんにだいぶ旋回をされたんじゃないか、こういう実は世評、または国会での議員の皆さんの話が出てくるのですけれどもね。  そこで、長官だいぶりっぱなまゆをされておるから、まゆつばというつばをつければ、たいへん骨が折れるのですけれども、まゆつばものを質問するというのは意味がないので、まず核保有ということについては、この間五原則ということをおっしゃっておられましたけれども、そういうもののお考え方は過去も今日もなかったのならなかったんだということあたりを、これは実は安保堅持という問題ともからみますから、したがってその辺をまずひとつ明らかにしていただきたいと思うのでございます。
  95. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大出さん、すわったままでお互いどうですか。そのほうが気が楽で……。
  96. 大出俊

    ○大出委員 写真写すのに困るでしょう。
  97. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 写すときだけ立ったらいいでしょう。参議院はそういうわけで非常にリラックスに話せますから。
  98. 大出俊

    ○大出委員 この世のしきたりですから。
  99. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そうですか。——前にもあとにも核を原爆として保有するという考えは持っておりません。それは一切誤解でございます。
  100. 大出俊

    ○大出委員 これは大森実さんとの対談の中で、この雑誌に、将来記録に残りますよ、中曽根さんが総理大臣におなりになっても、こういう言い方を大森さんがしておりましたがね。あの人も人が悪いので、長官に詰められたら、私も核保有論者だと言ったんですけれども、いまはっきりお答えになりましたから、それはそれでよろしいです。  もう一つ、中曽根さんが防衛庁長官に御就任になって早々、幾つかのことを言っておられるのですけれども、一つはシビリアンコントロールというものに触れて、シビリアンコントロールというのはせびろを着ている諸君が制服の皆さんをコントロールするという筋合いのものではなくて、政治なんだ、こっちがコントロールするんだということを言われて、これは何か庁内放送のようなことでおっしゃったように聞いておりますが、たいへん制服の皆さんがお喜びになったというお話なんですけれども、このシビリアンコントロールの問題についてはそういう意味で承りたいわけです。  もう一つ、中曽根康弘なる人には三つの顔があるんだ。その一つの顔は派閥の師団長なんだというわけですね。もう一つの顔は防衛庁長官で、もう一つが大学の総長をおやりになっているという話が実は耳に入るわけでございますが、そこらを評してある人が書いている書物の中に、政治家としての長官の戦略手段だ、こういう書き方をしているのがあるのです。また放送の中で、総理をやるような人は、文部大臣や外務大臣だけをやっておったのではだめなんだ、国を守るというたいへん重要な仕事なんだから、まず防衛庁長官をやらなければ総理の適格者じゃないというような意味のお話もあわせてされた、こういうわけなんですけれども、どうもそこらのところにだいぶ——おまけに最後の落ちは、防衛庁長官になったということだから、名前のとおり中曽根でございますから、中庸を歩むんだということも言われたというふうに書いてあるのですけれども、そこらのところの真偽のほどを、いままで何べんかお話しになったことが新聞にいろいろ書かれましたが、つまり中庸という意味でおっしゃったんだとすると、中庸でないものがどこかになければならないことになるわけでございますから、そこらのところをもう一度念のために承っておきたいと思います。
  101. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は官僚じゃありませんし、民衆代表の政治家でありますから、タクシーの運転手さんにも、お手伝いさんにもわかるように、やわらかく自然に耳に入ってくるように話をすることを心がけておる一人でございます。そういう意味において、防衛庁の中におきましても、長官というようないかめしいような立場を離れて、政治家中曽根康弘として人間的な対話をやって、お互いに血の通う庁員と責任者という関係にしたいと日ごろから念願しております。でありますから、運輸大臣をしておりましたときも、大体月に一回くらいは庁内放送をやりまして漫談をしたわけであります。それと同じように防衛庁におきましても漫談をして、自分の仕事も年じゅうしかめつらして考えていると神経衰弱になるから、たまには川柳でもよんで、手のひらにこう見せてあげて、自分で客観的に見るようにすることもいいじゃないかというような話もしておるわけです。  それからもう一つは、着任早々幹部職員に対する訓辞の中で、文民統制ということばについて、私は、部内のせびろの者が制服の者にいばるということではない、それは政治理念が軍事理念に優越するということである。具体的に言えば、国民代表である政治家が軍事を掌握するということである。そういう意味におきまして、国権の最高機関である国会に防衛に関する委員会がないということは、文民の統制からも非常な欠陥である、それを是正したいと実は思っているわけです。そういうことで庁内における仕事も、制服がせびろにあまりおどおどしたりするということは適当ではない。みんな防衛庁設置法あるいは庁令その他政令等のきめるところに従ってつかさつかさの職分がきまっているんだから、その法規典礼に従って忠実に仕事をやればいいんだ。しかし、私は内局による統制というのは必要だと思っているんです。それは防衛庁設置法をつくったときに——つくった一人は私でもあります。あれは三党の政策協定でつくったのでありまして、私は改進党を代表して、それから自由党からは西村直己君が、当時の日本自由党から中村梅吉先生が出てきて、そのほかの諸君と一緒につくった。そのつくった趣旨も、陸海軍がけんかをいたしまして、そして軍政と軍令が分離したり、軍事と政治がばらばらになったのが大東亜戦争の悲劇でもあります。そういう面から見て、陸海空三軍ができてきますと、またばらばらになってけんかをする、そういう意味において、それは内局において統一したほうがよろしい。それから統合幕僚会議をつくったのもその意味がありますし、防衛大学は、学生は陸海空一緒に育てるというのも、こういう一貫した考え方のもとにつくったのであります。その中でも大事なことは、三軍がばらばらにならないように、そういう意味で内局においてこれを統合するということは非常に大事な要素でもあるのです。そういう意味におけるシビリアンコントロールというのはある程度あるでしょう。なぜならば、内局というのは長官を補佐する。いろいろ部隊、各幕に対して指示を与えるときも内局が審査して、そして報告にくるのも、また上から下へ下達するのも、内局を通してやるというシステムになっておるのであります。これは非常に大事な要素であると思うのです。それはそのとおり職責に応じてやればいいので、それ以上のことを内局の人間がやるということは、人間的に見てこれは越権のさたでしょう。これはよくいわれるようだが、うそだと思いますけれども、内局の若い一人のせびろの人間が、将補とかあるいは一佐くらいの年寄りの先輩に、ごう然とかまえて書類をほうったとかなんとかいう伝説めいた話があります。私はそれはうその話だと思いますが、しかしある一時期においてはそういう空気も必ずしもなかったとはいえない。それは人間としてのエチケットに反することであります。そういうものは人間としての欠陥を示しておることなので、やはり人間としてのエチケットを守り、そしておのおのが法規典礼に従ったことをやればうまくいくはずである、こう私は思って、そういう意味のことを申し上げたのであります。その部分がシビリアンシュープレマシーの部分でございます。  それからこれは今後も、やはり防衛庁みたいなところはかた苦しいところで、上官の前に来ると、ややともすると、気をつけして言いたいことも言えなかったり、あるいは長官のところには巧言令色ばかり集まって、実態が入ってこないという危険性が非常にあるわけであります。そういう意味からも、すべての人を迎え、すべての人から話を聞く、そういう意味で、手紙をどんどん出しなさい、電話でもいいし、また言いにくいことがあったら匿名でもいいでしょう、そういう意味の話をしまして、それが「朝雲」という新聞に載って全部の隊員に伝わりましたら、非常によく手紙が来ます。第一線の自衛官から、住宅問題とか、上官の悪いこととか、いろいろ来ます。これは非常にいいことだと思っております。そして差しさわりがないようにそれらを処理しておりますし、必要な部分は私は自分で全部返事を書いております。そういうふうにしてコミュニケーションをうまくやっていきながら、みんなが一生懸命お国のために働ける防衛庁にしたい、そういうふうに考えておるわけであります。
  102. 大出俊

    ○大出委員 こういう話し合いになると、どうも私も立って話をするのがかた苦しい感じがいたしますが、これはここのしきたりだし、先輩委員諸君から、何だ防衛庁法の審議だというのにすわってしゃべっていたということになってもぐあいが悪いですから立ってしゃべりますが、実はそういうふうな御答弁長官のことだから出てくるだろうと思っていたのです。  そこでひとつ承りたいのですが、防衛大学の卒業生が卒業してなぜこんなにやめていってしまうのかということ、これは私前に質問をしたことがあるのですが、自衛隊内部でもいま数々の隠れている問題がある。私も実は何べんか投書をもらったことがある。選挙の前にも一通来たのがある。広島ですか、炊事のことで——私はいまの一曹、二曹、三曹なんというのは、舌をかみそうで言いにくいほうですから、昔流で言えば、下士官の上のほうの炊事の方が、自分のうちに大きな犬を飼っていて、こんなに大きな肉切れをえさに持って帰るというのはけしからぬとか、それからまた、自衛隊にはお医者さんが少ないというので、その末端のお医者さん、これが酔っぱらって帰って、二階から落っこってたいへんなけがをした、それを公傷で処理をした、こういうふうなことだとか、まあ昔でいう内務班の中のいろいろな体罰に類する問題だとかいうふうなものがたくさん書いてありました。しかも本人御自身で名前を書いておった。それで、実はいま議席をお持ちになっておりませんが、浜田光人君というこの委員会理事をやっておった方に、彼がたまたま呉ですから、一ぺん調べてくれぬかと渡して、実はそのままになっておるわけでございますけれども、そういうふうなものが来たりする。  かつまた、歴代長官が、何代目か忘れましたが、前々回のおかわりになった防衛庁長官でございますが、だれか歴代長官の中で——御年配も御年配だから無理もないかもしれぬけれども、ひとつ防衛庁の幹部になろうというので防衛大学あたりを受ける人でもあったのかと聞いてみたら、御親戚を含めてそういう方はないと言う。しからば自衛隊の存在に賛成しておられる有力な議員の皆さん等の関係の方の応募者というものは相当あるか。これまた聞いたことがないとおっしゃる。ただし制服の方々の中には、これは相当応募者がおありになるようでございますが、そうなると、政治の分野から国防という問題についてあるいは防衛庁という問題について、あるいは自衛隊についていろいろおっしゃるけれども、なかなかどうもそこらあたりは、この自衛隊の隊務をやっておられる方からすると、何かやはり少し遠い存在になっているのじゃないかという気がひょっとするのですけれどもね。  ところがこれを見ると、これはどのくらいのパーセンテージになるかわかりませんが、だいぶけっこうな数字になるのじゃないかと思うのですが、ことし卒業されたのが四百九十一人なんですね。ところがこの約一割ちょっとに当たる五十人ぐらいの方が、自衛官、あるいは軍人ということになるのですか、そちらの方向にお進みにならなくて、卒業してやめてしまっている。つまり他に転出をしてしまっている。これは相当考えなければならぬ問題だと私は思うのですね。防衛大学においでになって、さてせっかく四年間やってこられて卒業、と同時にほかに行ってしまう。これは一体どういうことだということですね、問題は。ここらあたりを長官は、短い就任期間だと存じますけれども、どういうふうに考えておられるのか、まず承りたいわけです。
  103. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防衛大学が設立されました目的ははっきりしておるわけでございます。そこで国家の費用で育てられた防大生は、道義的にも卒業後は自衛官になって一生懸命働いてもらうことがいいと私は思っております。それを自衛官になれないというのは特別の理由があることでありましょうが、身体的理由とかあるいは家で次男が死んであとを継がなくちゃならぬというので自家営業をやるとか、そういういろいろな事情がある場合にはやむを得ないと思います。身体的理由の場合にはせびろのほうにかわってもいいことですし、でき得べくんばそういう意味で国の税金を出しているわけでありますから、自衛官ないしは防衛庁関係する方向に就職させるということが道義的に望ましい、そう私は思います。
  104. 大出俊

    ○大出委員 長官のおっしゃるように道義的に望ましい人たちが、つまりその道義を捨ててほかに行ってしまう。それが四百九十一名の卒業生の中に五十人ある。こうなると一割以上の人が道義的責任を捨てたことになる。そこに何かがなければならぬと思うのですね、今日的自衛隊の性格というものを考えた場合に。  そこでこれはいろいろな理由があるのでしょうが、ここにこうあるのを読んでみますと、記者の方がほかに行った方に何人かインタビューを求めて話しているのです。ところが中に体罰ががまんできぬというのがあるのですね。これを見ますと腕立て伏せだとか懸垂だとか正座だとか繰り返し繰り返し何十回かやらされた。それから部屋の整理が悪いとか、ズボンがきちんとプレスしてないとか、ハンカチがよごれているとか、ちり紙の枚数が少ないとかいうのがその理由である。クラブ活動があるようでございますが、クラブ活動のほうに入っていってみたら、そこでもまた百回も腕立て伏せをやれなんということをたいした理由もないところでやられて、何ともどうも体質的にがまんがならぬというのですね。そういう感じを強烈に受けたというようなことが、本人がしゃべっている中にある。ここらあたりは一体防衛庁としてはどういうふうにやっておられますか。私も昔の軍隊経験者でございますから……。
  105. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 五十人が自衛官に進まなかったのでありますが、二年前やはり五十人進まなかったという例があります。去年が四十三人でありましたか。その前の年が約五十人。それでその中身を見てみますと、自家営業というのもかなりあります。それからからだが、四年やっているうちに自衛官に向かない弱いからだになったというのもございます。ほんとうに思想的に自衛隊がいやで自衛官にならなかったという人は非常に少ないように思います。それで出た方々でも、防衛は必要である、自衛隊は必要であるということはみんな一致して認識しておるようで、世の中のぐうたらな青年とは違っておるようであります。それはせめてものわれわれの救いでもあります。がしかし、やはり自衛官日本自衛隊の中堅幹部になっていく人間は、精神力も指導力も旺盛で、そして身体も強健で、見識もりっぱで、人間性も豊かであるというのが理想像としての自衛官なので、特に中堅青年士官という条件というものは指導力というのが非常に大事であります。そういう面から見ますと、腕立て伏せをやるとか、そういう鍛練をやるということは必要なのであって、それをやらないというのは変な話であります。鍛練にもこれは度がありましょうけれども、私は自衛隊で、防衛大学において行なわれているものは度を過ごしているとは思いません。そういうことを言うのは弱音を吐いているのだろうと私は思いますね。そんなことを新聞に言う者はかえって軽べつされるべきである。自衛官本来の立場、たてまえ、防衛大学のたてまえからすれば、軽べつさるべき人間である、私は個人的にそう思います。防衛庁長官として正式に言う発言じゃありませんが、私も軍隊に行った人間といたしまして個人的にそう感じます。しかしその新聞に出たことばが本人のそういう考え方をそっくりそのまま正直に出しているかどうかも疑問です。よく新聞というのは部分的なことを載せられるという危険性もあります。私は概して言えば、やはり精神的にも肉体的にもりっぱなたくましい青年として育ってもらいたい、そのように思います。
  106. 大出俊

    ○大出委員 私は、四百万の国費をかけてやっていくわけですから、せめてもの救いと言われた自衛隊は必要であるぐらいのことにはなっていなければ、目的を持っている学校ですからこれはおかしなことになる。これはまあそれでいいと私は思うのですね。  ただこの問題は、いまの教育のあり方というのが、長官は海軍の経理か何かのようでありますが、私は長官と同じ群馬の高崎の、馬占山討伐の山岳部隊の中心であった部隊ですから、三八の蚊なんといったら、廊下のはずれの端から端までたたかれる。ひっぱたかれっぱなしで向こうへ行っちゃうのですから、そういうところの育ちですから、そんなことは私も知らないわけではない。三八式歩兵銃きまなんと言って三時間も四時間も捧げ銃したことがあるのだから。しかしこれを見てみると全くうそを言っているように見えないですよ。鍛練じゃない、ずいぶんけちな理由でこれは正座させられて腰が麻痺して立てなかったとか、ここに一ぱい書いてありますがね。もう少し納得し得る理由であればこの人も納得したのかもしれぬと私は思うのだけれども。  そこでもう一つここに、私のところへ参りました陳情書を持っているのですけれども、これは自衛隊の募集で隊員の方にすすめられて入った人なんですが、横浜の金沢区というところの人なんですけれども、山下というのですが、この人の入隊のいきさつというのは、自衛隊員の中山さんという人から勧誘をされて陸上自衛隊武山に入った。受験即日合格。そして隊員の方が三人おかあさんのところへ来て承諾を求めたといういきさつがあって、旧軍隊のような暴力制裁はないだろうとおかあさんは思ったというのですが、そこで昨年の十一月十日に入って、除隊のいきさつというのがここにあるのですけれども、帰ってきて追浜駅付近でどろまみれの姿を目撃した人があるなんて書いてありますが、おふくろさんが福島へ帰って不在のところへ帰ってきて喧騒をきわめる。つまり本人が何か様子がおかしいというので、近所の人がすぐ保護をして共済病院へ入院さしたというのです。部屋のすみへ逃げて頭をかかえて許してくれ、助けてくれとわめいて、非常に強度の恐怖観念にかられているというのが医者の見方のようですが、次第に平静になり、平常の状態を取り戻したというので退院をしてやめたいというのですけれどもという陳情をしてきた。これは私がそこにいたわけではありませんからわかりませんが、自衛隊内で受けた暴行に起因する精神障害じゃないかという疑いがあるということがここに書いてあります。中山さんという人に母親が会ったら、シンナーでも吸ったんじゃないかということを言われたというので、非常に腹を立てて手紙をよこした、こういういきさつなんですね。演習中、不動の姿勢で両足が離れるというようなことでヘルメットの上から銃等でだいぶなぐられたとか、幾つか書いてありますけれども、こういうふうなものがあるわけでございまして、もちろんこれは国を守るとはいいながらも、やはり一朝間違えば殺し合いをするのでありますから、その意味では相当なことがあるだろうということも一面言えるのでありますけれども、それもやはりいま長官の言う鍛練ということならばこれはわかる。しかし鍛練が体罰になっていくとなると自衛隊だって問題があるのじゃないかと私は思うのです。  この点は、さっき広島から来た手紙の話をしましたが、そこにも二、三書いてありました。したがって、私も幾つか手に入れておりますが、どうもそこのところは別な世界なんだということに割り切ってしまおうとすれば、やはりそこに問題があるように思う。だからそこらのところを、先ほど長官がお答えになった趣旨からすれば、これはもう少し考えてみる必要があるのじゃないか、こう思うのですが、そこのところはいかがです。
  107. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自衛隊に昔の軍隊にあったような因襲がいささかでも残っておってはいけないと思います。そういう意味において、自衛隊は昔の軍隊とは違ったものでなければなりません。いま御指摘のような事件がもしあったとすればはなはだ遺憾でございますが、その真相を調べてみたいと思いますので、資料をお渡し願えればありがたいと思います。
  108. 大出俊

    ○大出委員 これは差し上げますけれども、私も実は時間との戦争でございまして、なかなか個人の時間がありませんから調べ尽くしていない、事情を聞いているというわけでありまして、そこで前に申し上げましたのも浜田君の手元にあれば差し上げてもいいのでありますけれども、実はそういうのが幾つか出てまいりました。私は実はいままであまりこういうことを言ったことはない。ないのだけれども、新長官の所々方々での話を間接的に読んだり聞いたりしておりますと、この辺でこのことを持ち出しておく必要があるように思ったものですからものを申し上げた、実はこういうことなんです。  それにしても、これは国会ですでに取り上げられている問題ではありますけれども、旧軍隊の形が残っているということであればというお話がいまありましたが、「新しい軍人像必要」、こういう新聞の見出しの、例の大森さんの卒業式にあたっての訓辞になりますか式辞になりますか、ここで終始一貫——この新聞が真偽のほどをとおっしゃられればまた違うのかもしれませんけれども、「国民のための自衛官になってほしい」と長官があいさつをされている。大森さんのほうは「旧軍隊の事柄を軽々に判断することはできぬが、忠節など軍人勅諭に書かれた徳目はいまなお軍人の考え方の基礎になるものだ」というところから始まって、軍人像という形でこの式辞は終始一貫している、非常に奇妙な取り合わせであったという書き方をしているのですね。長官はこれを国会では、何か速記録を読みますと、語彙の少ない、ボキャブラリーの少ない明治の方だからというお話をされたという。答弁としてはなかなか気をつけて答弁されたと思うのです。中曽根さんのほうはボキャブラリーが多過ぎるのじゃないかと私は思うのですけれども、多過ぎる人が少な過ぎる人についてそういう答え方をする、これはなかなか長官らしいと思うのです。ところがどうも、少な過ぎる人のボキャブラリーというものはそれなりに真実を語っている。やはり昔の軍の出の方々がおるのですから、私も実は士官学校時代の同期が三人自衛隊におって、最近一人やめましたが、そういうことですからたまに話も聞くのですけれども、どうもここらあたりで少し考え方をお変えいただかぬといけないのじゃないかという気がするのです。そこらのところをこれから——まだ何カ月というところでしょうから御無理かもしれぬけれども、やはり大森さん流の考え方がずっと流れていたのだと思うのです。そうなるとそこにやはり引っかかるものがある。それは卒業されてこうこうこういう理由だといって理由をつけることは個人でできることです。しかし、やはりそこに何かがなければ、こんなに五十人もやめていくというようなことになったのでは、四百九十一名の中ですから穏やかでない、一人四百万もかけて、こう思うのですね。そこのところを、本質に触れる問題になりますから、砂上に楼閣をつくったって意味がない、本体の自衛隊の中がどうもしっくりいってなければ意味がない、そういう意味でもう一ぺん重ねて承りたいのです。
  109. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政治家というのはやはりボキャブラリーが多いほうがいいと思うのです、民衆を相手にするものでありますから、官僚とは違って。私も大出さんぐらいにボキャブラリーをふやしたいと思っているわけであります。  そこで防衛大学の校長先生のお話でございますが、私はあの話を全部聞いておりましたが、全般として間違っている話ではありません。わりあいによく、愛情を込めてさとした話であります。そこで軍人勅諭に言及いたしましたけれども、あの徳目はと言っているわけです。軍人勅諭はと言っているのじゃないのです。「一軍人は忠節を尽すを本分とすへし」とか、つまり忠節とか礼儀を尽くすとか、信義を重んずるとか、そういう徳目を言っているわけなんです。私は、その徳目はやはり現代社会に生くべきものだ、何でもあれは東洋道徳の非常に大事な要素を示しておる、そういう意味において、あの軍人勅諭の内容を言っているのじゃないのですから、したがってその徳目に関しては、バーチューという意味でぜひお考え願いたいと思います。  それから人間的軍人像ということばを使いました。あれの意味するところは、要するに全人的人間になれ、トータルマンということばがありますが、そういう意味の全人的人間になれ、そういう意味のことを強調して言ったので、全人的自衛官像というのが正確だったのでしょう。しかしそれが明治の人のはかなさで軍人ということばが出ちゃったのじゃないか、私はそう思うのです。まあ年ですからその辺はかんべんしていただきたいと思います。
  110. 大出俊

    ○大出委員 大臣、誤解しては困るのですが、私はかんべんするしないで申し上げているのではないのです。私もどうも語彙が少ないですが、私の申し上げているのは、とかくそういうふうに昔の影が残っていたのでは困るという気持ちが私にある、そこで申し上げているのです。  そこでまたもう一つ、これまた最近、決算委員会か何かで出たようでありますが、これはどういう方なんですか、若い女性に麻酔薬なんという例の妙な件は、この人はどういう学校を出た方ですか。
  111. 内海倫

    ○内海政府委員 中央大学卒業であります。
  112. 大出俊

    ○大出委員 自衛隊に入られてどのくらいになるのですか。
  113. 内海倫

    ○内海政府委員 私正確な履歴を持っておりませんが、昭和三十年ごろだったと思います。
  114. 大出俊

    ○大出委員 そうですね。確かに三佐の方なんですかな、青木さんという方は。三佐になるとなるとそうなるのかもしれませんね、三十年。実はこういうのが出てくると、私どもにしてもどうもいい気持ちでない。私の社会党の下の事務局の女性たちが私にこれを知らせてくれたのですが、国会の便所を男女一緒に使っているのでどうもおもしろくないのだということで、一ぺん提案してくださいと、この問題に端を発して私に陳情に及んだ事務局の人までいるわけです。つまり、若い女性の方々がそこまで気を使っているのだとすると、こういうのがどうも表に出てくるというと、自衛隊像を著しく傷つけることになる、こう思うんですけれども、結果的にこういうことに対してはどうされるおつもりですか。
  115. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 たいへん残念な事件でございまして、よく実情を調べまして適当な処分をいたします。
  116. 大出俊

    ○大出委員 やっぱり砂上に楼閣をつくっても意味がないわけでありますから、このあたりで一ぺん自衛隊というものの基礎になる今日的、つまり現状がどうなっているのかという点を、これは私ども一ぺん見たり聞いたり調べたりをさらにしなければならぬと思うんですがね。とにかく先ほどのようなことがあっては困るという点については御同意を得ておるようでありますから、なおその辺はひとつ調べていただき、御検討いただきたい、こう思うわけであります。特にことしの予算を見ましても、人間尊重のような形の予算の項目をおつくりになっておられて、中身は処遇の改善ということで、たいしたことはないだろうと思うんですが、そこらのところをひとつお願いしておきたいと思うわけです。  それから避けて通るわけにはまいらないシビリアンコントロールの問題が、先ほど長官のお話に出たわけでありますが、防衛委員会をということ、これについても少し承りたいのでありますが、この防衛委員会をつくろうというのは、その後どういうふうに進んでおるわけでございますか。
  117. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国対のほうへお願いしておるところでございまして、なるたけ社会党も御賛成のほうへ回ればありがたいと思います。
  118. 大出俊

    ○大出委員 そこでこのシビリアンコントロールという問題について、これは前に三矢図上研究のときに表に出て、松野さんの小委員会をつくってだいぶ論議した経過がございます。私どもの党の立場からして、自衛隊というものの現状は一体どうなっているんだ、一体どの程度の戦力があるか、いろいろ調べなければならぬという立場から調査小委員会をつくれという主張を私ども党としてはしているわけでございます、石橋政嗣さんだと思いますが。ここの中でひとつ伺っておきたいのは、先ほど制服、せびろの関係等に触れてお話しになりましたが、これも実はアメリカなどの先例に見ますと、そこらが非常にむずかしいのですね。必ずしもせびろ優位であって悪いということでもない。この中身はいろいろありますけれども、そこらのところを、もう一ぺんシビリアンコントロールというものをどうお考えかという点を概括的にお語いただきたいのと、国防会議をつくった理由があるわけでありますが、その国防会議というふうなものをどういうふうに今日考えておられるのかという点、二点を簡単にお答えいただきたいと思います。
  119. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 シビリアンコントロールと申しますのは、前にも申し上げましたように、国民代表である政治家が軍事を掌握するということであると思います。したがいまして、シビリアンコントロールの大黒柱は、国民代表の最高機関である国会であると思います。そしてこの国会の意思のままに自衛隊管理運営が統制されるということが最も望ましい姿であります。国会の監督のもとに行政機関があるわけでございますから、内閣もその一つでありまして、国防会議もその一つであります。国防会議というのも次の次元において非常に重要な役目を果たすべきであります。しかし何といっても根元の国会に防衛問題を専管する常任委員会がないということは、シビリアンコントロールの上から見ていささかどうかと私は思うんです。したがいまして、これは防衛庁のほうから申し上げるべき筋ではないので、政党間の交渉で政治家がお話しになるべきことでありますから、私らは直接は申しておりませんが、党に対してそのようにお願い申し上げ、また御質問があります場合には、この委員会でも私たちの考え方を申し上げているわけであります。調査委員会という御方針も承りましたけれども、願わくば普通の常任委員会と同じ権限を持っているものをおつくりいただくのが、最も望ましい姿であろうと思います。
  120. 大出俊

    ○大出委員 考え方を少しやりとりしておきたいと思って質疑しているのですけれども、アメリカの独立戦亀が終わったあとの、アメリカのシビリアンコントロールの歴史的なものを少し前から調べておるのですけれども、文民優位という形の一つの伝統ができておるわけです。これはジョージ・ワシントン、当時の独立戦争の司令官が、いわゆるフィラデルフィアに代表を集めて、連邦政府というものを今後どういうふうにつくっていくかということでだいぶ論議をしているわけであります。ところがふしぎなことに、ここに集まった各州の代表その他たくさんいるわけでありますけれども、実はこのうちの相当な部分が、ワシントン自身が、これは司令官ですからあれですけれども、これを見ますと、アレキサンダー・ハミルトンという大佐、ジョナサン・ディトン大佐、それからウィリアム・ピアース少佐というところから始まりまして、大佐や将軍、将軍も何人かおいでになりますが、ヘンリー・リー将軍の副官ダニエル・セント・トーマスなどというふうに、いろいろ当時の政治の分野に入ってやっている方々に軍出身の方が非常に多いのですね。つまりああいう戦争を経過したわけですから、当然そうなるのでございましょうけれども、そういう諸君が、逆に将来の軍のあり方というもの、中央政府と軍ということに非常な心配をし、また国民一般が非常にかような成り行きをかたずをのんで見るというような歴史があったようになっております。つまりそこで一番問題になるのは、軍というものをよく知っている方々が、国民全体というものを前にして、国の政治と軍というものをどう一体コントロールするかということを論じているのですね。その上で、いろいろな曲折がありますけれども、文民優位の伝統が一つつくられてきているのです。だからやはり自衛隊というものを、ここまでくるとよく知らせる、知るという必要が私はあると思う。私どもの党のように非武装中立を唱える、国民警察隊でいいという考え方を持っている党がある、ですから、やはりそういう意味では、まず調査小委員会のような形で出発をして、そこでひとつ忌憚のない論議をかわしていく、これが私はまず必要ではないかと思っているのです。  そこで国防会議アメリカ流にいえば国家安全保障会議ですが、これなんかを見ても、途中で何べんか変えているのですね。これを見ますと、第一次大戦、第二次大戦等の経験があるわけでありますけれども、陸海空三軍の長官が七人の委員の中に入っている。そこに国防長官が入っているわけでありますから、七人のうち四人、それはまずいというので、これは法律改正をしたのですね。ですから、そこらを考えてみると、当時私はここに議席があったわけではありませんから、国防会議というものをつくったときに、それがどういう発想であったかということは、聞いている範囲しかございませんけれども、そうなると、やはりそういう伝統をつくるという必要と、それからもう一つ制度的にそこらのところをどういうふうにするかということがあると思うのでありますが、そういう意味国防会議というものを活用する、このことがまず必要なのではないかというふうに、私は正面からいって思うのです。そこで先ほど申し上げましたように、繰り返しますけれども、まず調査をする、そういう面でよく知る、この意味での委員会をつくるべきだろう。  そこでもう一つの理由があるのでありますけれども、これはアメリカ方式の議会制度、つまり大統領、政府に法律の提案権がない、あるいはイギリス流の制度、いろいろありますが、これも内閣委におりますから幾つか調べてみましたけれども、やはりそこで一つの問題になりますのは、日本の議会の場合に、各省があって、常任委員会が置かれている。ですから、いま言われるように常任委員会としての防衛委員会をおつくりになるということになりますと、総理府の外局ですから今日内閣委員会が所管しているというたてまえなんですから、そうすると、これは制度的に国防省昇格を前提にされてお考えになっているのかということにもなる。そこらのところにも一つの大きな疑問がある、こういうわけでございますから、そのことも含めてやはり特別委員会的な、小委員会的なものをつくって、小委員会のような形にしていく。  もう一つ、前から内閣委員会というものは法案が山ほどあって、多いときには三十七、八本あった。そんなところに防衛二法を持っていったって、一番最後になって通らない、だから委員会を設けて法案を早く通さねばならぬというような発想があった。それは私は邪道であったと思う。私のほうは、ここでこういうふうに意見が分かれているという中に、防衛委員会ということでなしに、制度的にもいま国防省じゃないのでございますから、そういう意味でやはり内閣委員会でやっていく。そして自衛隊に対するいろいろな意見があるのでありますから、実情に即して意見を戦わしていく場所をつくるとするならば、それは調査という名前をつけるつけないは別でありますけれども、そういった意味の小委員会がいいのじゃないかという考え方であります。何かこれには賛成の党も幾つかおありになるようでございますから、はっきりものを申し上げておいたほうがいいと思いまして申し上げたわけであります。長官のほうの考えておられる考え方で、国防省という昇格問題はいままで何べんか新聞をにぎわした時代があるわけでありますから、そこらを含めてお考えを聞いておきたいわけであります。
  121. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は着任以来、ものごとの本末をよく考えなければいけない、そう思いまして、いままで国防省というものにわりあい防衛庁や一部の国会議員の皆さま方御熱心でありましたが、私はそれはいけないといって押えまして、いまそんなものは表に出てきてない。いまのところはお蔵に入れられたままであります。というのは、国権の最高機関である国会にまず防衛に関する委員会をつくって、そしてシビリアンシュープレマシー、シビリアンコントロールの基本をまずつくって、それがうまく機能してから国防省という段階に順序としてはいくべきだ、そういう考えに立っておりますから、いまのような処置をしたわけでありまして、このことは変わりません。しかし、といって防衛委員会ができたらすぐ国防省をつくるのかといえば、それはそういう意味で言っているのではない。ものごとの順序、けじめをはっきりつけるということが必要であるからであります。  それでいままでの例を見ますと、たとえば自治庁というのがありましたときに、地方行政委員会というものがたしかあったと思います。科学技術庁という総理府の庁もございますが、あれは科学技術特別委員会ができております。そういう意味において、必ずしも省にならなくても、事の重要性によってそれはできると私は思うわけでございます。しかし、これは国会の皆さんがおきめくださることでありますから、私らはそうことばを差しはさむものではございません。しかしわれわれ議員として考えてみますと、調査というような中途はんぱなことにしないで、なぜ審議決定までしないかと私は思う。調査という程度では力がないです。やはり審議決定するという力を背後に持っていて初めて調査というものも力が生まれてくる、そう思うのであって、心不全みたいなやり方はやらないで、やるなら強健な心臓を持ったものでやったほうがいいのじゃないか、私はそういうふうに思います。
  122. 大出俊

    ○大出委員 これは考え方をはっきりさしておきたいと思ったわけでございますが、沖繩特別委員会がございますが、ここに沖繩・北方対策庁というものを、これは設置法でこれをどうするかというので、この委員会理事会等を通じましてだいぶ論議もいたしましたり調べたりいたしましたが、筋論からいいますと、特別委員会に法案をかけるということでは筋が通らないという一致した結論が各党間に出ておるわけであります。国家行政組織法もございます、したがって特別委員会で法案を審議するというのは、これは筋ではない。だからものの順序とおっしゃられるなら、調査小委員会と申しましても調査特別委員会と申しましても、性格は特別委員会でございます。そういうものをこしらえて、そこで、一体国民がどれだけ知っているかという問題もあるのでありますから、当然論議の場を求めていく、そういうのが筋ではないか。これだけ意見が分かれておる段階でございますから、そういう考え方だということを申し上げているわけでございます。  そこで次の問題でございますけれども、ここに一つの昔流にいえば状況現示というものがございまして、一つの図上作戦めいたものがございます。これは皆さんのほうがうちのものでないとおっしゃられればそれでもいいのでありますが、「北海道を守る・陸戦想定」というのがあるのであります。これはちょうど四十年から四十一年にかけての資料でございますが、これによりますと、「午前零時四十分」という時間に「北海道・稚内、網走のレーダー基地は樺太からクナシリ島方面に移動する機数不明の大編隊があるのを発見しました。」と始まる。「午前一時半、標津沿岸監視隊は上陸用舟艇百隻以上の接近を報告し、まもなく連絡を断った。」というところからこの状況が始まりまして、そして北海道にいる——ここでは四万二千人になっておりますが、七師団を中心にして陸上の主力が展開し始め、機械化機動師団が出ていく、こういうふうに進んでいくわけであります。そこで「戦況次第に悪化」ということになりまして「約十万人(空艇団をふくめ八個ソ連師団)」——「赤国」といっておりますが、明らかにソビエトでございます。それがこの機械化兵力を投入してきたというかっこうになるのですね。北海道の東部と北部に機械化装備の第七師団をやや上回るものが侵入してくる、こういう想定がここにあるのですね。この中には、「核の脅威もある。しかし『緑国』が」、つまりアメリカでしょうが、「それを使わない限り『赤国』も使う意図はない模様である。」こういう分析をしているわけですね。そして「ふつう前線一に対して後方三」これが陸戦の条件だ。「そのために予備自衛官制度があるが、とうてい必要人員に満たない。兵員ばかりではない。弾薬の備蓄が少ない。一カ月戦うための弾薬量は十四万トンいるが、実際は半月分しかない。また、中堅幹部がふともらすのを聞いた。」これは記者がつけ加えたのでしょうけれども、「実戦になって、果して若い隊員がオレについて来るだろうか」北部方面隊では築城計画も立てた。今の部隊駐とん状況はハダカも同然だ。防衛の要所に城塞を築いて、足りない戦力を高めようというのだ。北海道庁と話し合ってもみた。しかし、とても具体化できる空気ではなかった。もうひとつ、つまりこれは本土決戦でありますから、「陸上自衛隊考えている戦争は、想定で見る通り日本本土で始る。」という点で、市民と自衛隊関係、ここのところはもう一つ問題になるということがここにあるのです。  ここに実は幾つか問題が出てくるわけでございますが、私がなぜこれを言ったかというと、あまり抽象的にものを言ってみてもいたし方ないわけでございますから、一つの想定をもとにしてものを申し上げたいと思ってこれを引き合いに出したのですが、長官、いまの自衛隊法このワクの中で防衛出動するという場合に戦いになるかどうかということ、つまり本土を守るという意味の戦いになるかどうかということ、率直にこのところをまずどうお考えになるか聞きたい。
  123. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは来襲する敵兵力の規模とか意図とか、そういうものにもすべてよるのでありまして、一がいにどうという断定はできませんけれども、現在の自衛隊の力をもってすれば、相当程度の撃攘力を持っておると私は思います。
  124. 大出俊

    ○大出委員 ここでいう、平たく言えば野っ原にほうり出されておるような陸上自衛隊、築城もできない、あるいはまたその他の官庁との間の連絡あるいは取りきめもない、こういう状態の中で戦えるとお考えでございますか。
  125. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この間「よど号」の事件で、日本人百同名の生命があぶないというときには、社会党の阿部さんがソウルまで急遽飛んでくだすったような事態でありまして、そのときには日本人はみんな一生懸命になるだろうと思います。
  126. 大出俊

    ○大出委員 長官、そういう答弁はよくないですよ。もう少し実態をどういうふうに把握するかということ、ここについてやはり述べていただかぬと、そのときになれば何とかなるだろうということに通ずるわけですから、それではやはりうまくない。これは自衛隊法の百三条もあるわけでございまして、いままで一体どういうふうにこういうところをあなた方のほうは——実はきょう海原さんお見えになっておりますが、私は国防会議はどうもたいへん手持ちぶさたでおひまなんじゃないかと思って、たまにはお出かけをいただこうという気もあっておいでをいただいたのですけれども、そこで一番基礎になる、長官いろいろ五原則を言い、四次防を言い、最近また戦略見積もりみたいなことをいろいろお話しになっておりますが、現状をながめてみたときに、陸上なら陸上というものを一つつかまえて、はたしていつ何があるかわからないから、想定だからスクランブルもおかけになるわけですから、あくまでも仮定の論争にならざるを得ません。そうすると、いろいろ高いところでおっしゃるけれども、足元をながめてみて一体現状でやっていけるか、法律上任務を果たせるかという問題が残っているわけですね。ここのところ、何か長官指示されているとか、ほんとうを言うと、作業はだいぶ進んでいるはずですけれども、こういう点をどうするかということについてひとつ承りたい。
  127. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在の防衛計画にはまだ非常に欠陥が多いということは御指摘のとおりです。特に民間、官庁との連携協力の部面についてはまだまだ空白部面が非常に多くなっておるのはまことに残念であります。しかし、これは民心の動向とか世論とか国会における御意見とか、そういうすべてのものを考えながら政治が判断をしていくべき条件なのでありまして、そういう意味において慎重を期しておるわけであります。しかし、これで満足しているわけではございません。
  128. 大出俊

    ○大出委員 満足しているわけじゃないということでございますから、そこで承りたいのですけれども、これは何べんか表に出かかったりしておりまして、行動上の支障がたくさんあるわけでありますから、長官は満足していないわけでございます。そうすると、防衛出動、治安出動とも関係がありますが、ここのところについて、これは百三条に基づく政令の問題がある。これは三矢研究などによりますと八十件くらいあるのであります。そこらのところは何も手を触れずに、現状何かあったときに、それなりの任務遂行ができるというふうにお考えではないはずだと私は思うのであります。そこらのところは検討が相当進んでいなければならぬ。増田さんのときにも国防会議事務局にあてて指示をしているのですね。これは指示をお受けになったことがおありになると思うのであります。そこらのところはどういうふうになっておりますか。
  129. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 増田長官国防会議事務局指示できる権限はないのじゃないかと私は思います。あれは内閣の直属の機構でありますから、防衛庁とは系統を異にしていると思います。  いまのような空白部面をどうするかということは政治の判断の大事なポイントでありまして、その点は慎重を期してやっていくつもりであります。
  130. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、今日百三条をめぐる問題については検討の段階ではない、こう言い切ってよろしいわけですか。
  131. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 少なくとも私は作業を命じておりません。私が命じておらないのでありますから、やっておらぬと思います。
  132. 大出俊

    ○大出委員 そこで、この想定の前段で申し上げましたように、先ほど長官もお認めになっておりますが幾つも十分でないものがある。たとえば最後のほうにまいりますと、自衛隊の輸送能力その他からして、現地の住民を大量に後方に輸送するだけの能力がない。したがって「原則として住民は生業を守ること。大量遠距離の避難民輸送は行わない。戦場に近い住民も近くの山間に退避し、戦火が止んだら現住地に帰ること。自衛隊はまず上着陸した侵攻軍を防ぐのに精一杯だ。大量の避難民が無秩序に後方で移動されては、作戦上大きな支障をきたす。」というようなことから、特定の老人あるいは幼い人たちの疎開計画を立てるというだけで、公選の市町村長等は現地に残ってくれという想定になっている。そして占領軍との折衝に当たれ。自衛隊の後退に際しては敵が利用できるものでも軍事施設以外は破壊をしない、こういう想定が立てられまして、そして最後のほうに、被占領地の治安の状況というのが比較的よくて、いわゆる残酷物語などは起こっていない。これは四十年から四十一年の想定でありますけれども、今日陸上の状態をながめてみてもそう大きな変化はない。そうすると、いまの陸上自衛隊が幾つか立てておられる作戦想定その他からいたしまして、これで守れるかという点、これは一番基礎になるものだと私は思うのですが、そこのところを、こういう非常事態立法みたいなものを検討されておらないとすると、将来に向かってこの想定に出てくるこの種の動けない、つまりほうり出されたままであるという現状、ここのところをどういうふうにお考えになりますか。
  133. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在の国家は、一〇〇%完全に守れるという自信を持っている国はないと思うのです。大きくなればなるほど大きな心配が出てきて、アメリカにしてもソ連にしても、ICBMの第一撃能力を防ぐ力もないし、第二撃能力を防ぐ力もないでしょう。そのときどうするか。それはみんなアンノーンファクターとして防衛をやっておるわけです。われわれ中級国家においても同じことであって、完全に一〇〇%の防衛計画なんというものは現代社会に成り立つはずはないと思います。したがって、その国の環境の許す範囲内において、そして民心の動向を見ながら、ほかの政策、憲法と調和させつつベストを尽くすということが防衛の誠実なやり方である。与えられた環境のもとにベストを尽くしていきたいというのが私の考え方です。
  134. 大出俊

    ○大出委員 一〇〇%の防衛はいずれにしてもできない、たとえば今日の日本自衛隊にしても、先ほどのお話のように、相手の出方によってはたして責任を果たせるかどうかわからない、いまこういう答弁なんですけれども、そういう考え方の上に立って、これはあとから申し上げますけれども、さて、いま国防の基本方針なりあるいはまた四次防についてのものの考え方なり、あるいは四次防の中身なり、こういうものが出てきているわけであります。それを一つずつここで少し聞かせていただきたいのでありますけれども、長官、これは最近新聞に発表されたのですか、それともただ載せたのですか、この長期戦略見積もりなるものは。
  135. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あれは三月十九日に、自民党の安保調査会で私が私の考えとして申し上げましたことを文書に書いて、そうして参考までに私が部内に読ませておいたわけです。それを新聞記者の皆さんに御参考までに配付したもので、これは安保調査会における私の講演であります。そういう意味で、まだあれは防衛庁審議にもかかったわけでもなく、防衛庁の正式な考えというものでもない。着任早々の自民党員である中曽根康弘がこういう考えでやりたいと党の同志に申し上げた考え方であります。
  136. 大出俊

    ○大出委員 なかなかどうもうまく答弁をされるわけですけれども、中曽根康弘個人の脅え方がいままでに幾つか出ているのです。たとえば五原則から始まりまして、いまの戦略見積もりあるいは制空権、制海権、じゃこういうものはどこまでが正式なものですか。
  137. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いずれ庁議にかけまして、次第に成熟して、そして判こを押されたら、それは正式の考えになります。
  138. 大出俊

    ○大出委員 私は対話と申しましたが、防衛となるといつも力み返ってやり合うので、きょうは少し形を変えようと思っているから、えらくリラックスなことになるのだけれども、いまいずれ庁議にかけてというのだが、しかしあなたはずっと国会で話をされている。そうでしょう。そうすると、その限り庁議にかけなければ話せないというのじゃなくて、話した限りは長官個人であろうと長官であろうと、長官としての個人ということばもあるかもしれませんけれども、あなた責任を負ってくれなければ困るのですが、その点はいかがですか。
  139. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国会で正式に発言しましたことは、その発言の内容の限度において責任を負います。
  140. 大出俊

    ○大出委員 それでは話をされたことについて承ってまいりたいのでありますが、国防の基本方針というものをお変えになる、これはいいですね。
  141. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いずれ変えたいと思っています。
  142. 大出俊

    ○大出委員 そこでこの間五原則のお話が出ましたが、五原則は国防の基本方針にうたう云々という筋合いのものではない、それもよろしゅうございますね。
  143. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国防の基本方針というものはいずれ変えようと思いますけれども、将来変える場合に一つの基礎資料としてあれは取り扱われるべきものであると考えます。
  144. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、今日どう変えるという中曽根構想はお持ちですか。
  145. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自主防衛というものをやはりある程度重要視した考え方が必要であると思いますし、それからあそこの前の四項に、国力、国情に応じて均斉ある効率的な防衛力を漸増するとか書いてありましたけれども、あの辺は、国力、国情、特に国力というものに応ずるということになると、日本の経済成長、GNPに正比例するというふうにも悪くとられるおそれがあります。それは無用な誤解を与えますから、その辺も検討しなければならぬと思っております。
  146. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、専守防衛という立場をとってきたわけでございますね。そこで、最近の長官の言っておられますものの中からいきますと、従来は領海、領空内の防衛、こういうスタイルになっているわけでございますが、今回は海上防衛という点を相当強調されておりまして、公海へ出ていく、こういうふうに変わってきておるように思いますけれども、まずそこのところをお答えいただきたい。
  147. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 従来の領海、領空だけの防衛という考えは誤解じゃないかと思います。従来もいまも、私の言っていることは変わらないと私は思います。防衛ということで自衛権を発動するということは、本土防衛に必要な限度において、そして国際法的にも自衛権発動として認められる要件が整えば発動できるのであって、それは公海においても発動できるし、あるいは領空以外の空においても発動でまる、従来もそういうものであったと思います。現にそのためにスクランブルもしておりますし、それから船団護衛や対潜掃討等のための訓練もしておったわけであります。
  148. 大出俊

    ○大出委員 ここでもとに戻りまして、一つずつ御確認をいただいていきたいと思うのでありますが、四次防に関しまして有田長官の時代に、この委員会でもお答えになっておりますが、一つのものの考え方が示されているわけでございます。それは昨年六月十二日に——これは外務省と防衛庁とで打ち合わせをしたあとに出されているのでありますが、今回は「今後における沖繩を含めての全般的な防衛力整備方向について防衛庁考え方説明し、意見の交換を行なった」という前書きがついておりまして、五月十七日付になっておりますが、ここで言っている中に「防衛努力を一そう積極的に推進し、間接侵略ないし直接侵略の事態に対し」、ここで旧来の基本方針にございました直接侵略ないし間接侵略を入れかえたわけですね。それでこの方針というのはいま生きておりますか。
  149. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 お示しの会議は確かにございまして、当時有田長官がいまお話しのようなことをおっしゃったように私も記憶しております。その中で、直接と間接とのことばが従来よりは逆になっているというふうなお話でございましたけれども、あるいは文章はそうなっておったかもしれません。しかし、そのことについて特に大きな意味があったと私は解釈しているわけではございませんで、いわばことばのあやといいますか、述べたにすぎないのではないかと思います。
  150. 大出俊

    ○大出委員 これはことばのあやじゃないですよ。正式にあなたのほうが発表された資料なんですよ。発表された文書なんですよ。ことばのあやというふうに片づけられてはこれはたいへんなことだ。最近の長官の、つまり長期戦略見積もりと言っている中でも、間接侵略を重視すると言っているのですよ。これがことばのあやじゃ困るんですよ。これはあなた方、正式な文書があるのです。ここのところはすでに明確に変えたでしょう。もう一ぺん答えてください。
  151. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 文書そのものを私いま持っておりませんのでそう正確に覚えておりませんけれども、お話しのような趣旨のことを有田長官がおっしゃったように思います。あるいはその要旨を文書にしてお配りしたかもしれませんが、一年ほど前になりますので正確に覚えておりません。  それで、いま申し上げましたのは、直接侵略に対処する、間接侵略に対処する、どちらも従来から自衛隊の任務として定められておったことであります。そのときの有田長官の言い方が、あるいは間接侵略を先におっしゃって直接侵略のほうをあとにおっしゃっていたかもしれませんが、全体の防衛庁の任務が、直接及び間接侵略に対処するという自衛隊法に書いてある任務そのものを特に逆にしようという意味でおっしゃったようには、私は記憶してないということを申し上げたわけであります。
  152. 大出俊

    ○大出委員 そうなるとこれは問題でして、間接侵略、直接侵略が前に出る、あとになる——これは前とはっきりと変えてあるのですからね。この点はここで問題になった。  そこで中曽根長官が新聞に、先ほど申し上げましたように戦略見積もりみたいなものを発表されている。この中で間接侵略というものが重視されておる。つまり情勢の諸分析の中からいって当面それが中心だというふうに分析をしておられる。それでこれは一々からんでくるわけです。なぜからむかといえば、これから先、四次防を五年間なら五年間やっていく、さらに五次防があるだろうと思うけれども、そういうことから十年なら十年先を想定をして、こういうふうに四次防はきめるのですということの基礎になるもの、その情勢分析の中に、当面間接侵略が中心なんだということになるのとならないのとでは、これは基本的に違う。その基本をあなたのほうでいいかげんなことを言っていたのでは、長官が変わるたびごとにみんな一切方法が変わってしまう。そうではないはずです。長官は一年ぐらいしかいないのですから、それはだめですよ。そうだとすれば、これはもう一ぺん戦略見積もりそのものを全部引き直さなければならぬことになる。何べんも何べんも質問してきていることだから、有田さんもここで答えて議事録にも残っていることだから、それを私はきょうは対話のつもりで話し始めたからものを簡単に言っているつもりだけれども、もう一ぺんそこを答えていただけますか。
  153. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 前のいきさつはどうか、私は存じませんが、私の方針としましては、直接侵略ももちろん対処しなければなりませんけれども、間接侵略に対するかまえが薄かったと私は自分で考えます。そういう意味において間接侵略もかなり重要視して対処する方向に行くべきであると考えております。そういう方針で進みたいと思っております。
  154. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、いまの言い方は非常に用心深い言い方というか、習い性になっている言い方だろうと思うけれども、直接侵略が必要だが、間接侵略が幾らかどうも重視の度合いが薄かったから努力していきたい、こういう言い方なんだろうと思うのです。しかし、個人的な意見にせよ、戦略見積もり的な情勢分析をしておられるわけですから、その基礎になるものを聞きたいのであります。日本の置かれている国際的な事情から見て情勢はどうなっているのか、そして軍事力というものは、事防衛ですから、これをどういうふうに見るのか、あるいは自主防衛というものが出ればアメリカとの分担が変わってこなければならないと思います、極東戦略の変更というものも出てくるはずでございますから。そこらのところが基礎にならなければいまの御発言は出てこない筋合いだと思っているわけでありまして、そういう意味で、この長期戦略見積もり的なものを新聞が書いておりますけれども、長官の個人意見かもしれませんが、個人意見でけっこうでありますから、その基礎になるもの、そこを一つずつ承りたいと思うのでございます。  ソビエトの最近の、公海ではございますけれども日本近海における演習が行なわれる、これをめぐっていろいろ問題になる。あるいは東京パトロールあるいは日本一周というようなことが最近行なわれたなどということが報道されておりますけれども、そこらの一連のソビエトの動きというものをどういうふうに分析をされておられますか。
  155. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれは非常に深甚な注意をもつて見守っており、さまざまな複雑な要素があると思っておりますけれども、軍事を政治がたくみに使った政治的マヌーバーの要素、これはかなりあり、こう判断しております。
  156. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、軍事を政治が使うという形で、つまり一つの示威、あるいは日本近海で演習するというような形での一つの牽制、そうおとりになっておられるわけですか。
  157. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 さまざまなファクターがあると思います。たとえば、太平洋演習するという場合には、ソ連はわりあいに冷たい海でいままでやっておるわけですから、あたたかい海でやる場合の気象、海象になれるとか、これを調査するという要素もありましょう。そういう軍事的なさまざまな要素もありますけれども、この時期にああいうことが行なわれるとするならば、かなり軍事というものを政治的に使った、政治的マヌーバーの性格があると私は見ているわけであります。
  158. 大出俊

    ○大出委員 長官の言っておられるところからすると、ソ連の極東における配備は政治的、防御的である、こう言っておるわけでございますけれども、この政治的、防御的、特に防御的というのはどういう意味ですか。
  159. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が勉強した範囲におきましては、他に対して積極的に、侵略的に、攻撃的に出てくるという要素はいまのところはそう強くない、そう見ておるわけです。
  160. 大出俊

    ○大出委員 長官の言っていることの中に、何かとんでもないところにICBMあたりが着弾しそうなことを言っておられるのですけれども、このICBMの着弾というようなことは何を想定をし、何をお考えになっていますか。
  161. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは一つの想定の比喩として例示で申し上げたので、そういうことがあるということを言っておるのではありません。たとえばこういうようなやり方というものが考えられるという方法の例示であります。はたせるかな、それが当たったかどうかは知りませんが、土佐沖でソ連演習区域を設定して爆撃演習をやるというような報道が流れましたけれども、もしそれをほんとうにやったとすれば、そういう要素がないとも言えないかもしれません。そういう意味で非常に流動的に動いておるので、われわれは非常に多元的要素で動きを見つめていく必要があろう、こう思います。
  162. 大出俊

    ○大出委員 この日本を取り巻く諸情勢の中で、軍事的にながめてみて、極東における状況を特に日本を取り巻くという意味考えた場合に、中国あるいはソビエトという二つの国があるわけでありますが、いまから四次防、五次防という想定をしていく中で、空あるいは海陸とございますけれども、どの程度に分析をするか。つまり軍事的に見て空ということになってまいりますと、中国の空というのはそうたいした勢力ではない。そうなると、当然ソビエトの空というのは相当大きな勢力を持っておることは間違いない。また海上輸送能力等から見ましても、当然相当な輸送能力がある。だからどうも北方重視の陸上の想定がいろいろ出てくるわけでありますが、そこらのものの見方をどうお考えになっておりますか。
  163. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本は、憲法の命ずるところに従い本土防衛に徹する、そういう考え方に立っておりまして、仮想敵国というようなものは考えておりません。われわれは、日本の本土を防衛するに必要で、かつほかの諸政策と調和のとれた考え方でやっていきたいと思っておるのであります。
  164. 大出俊

    ○大出委員 はっきりしない、つまり国民が理解しがたい、あるいはなかなか防衛問題を論議しにくいということの一つに、常にいまの答弁があるのですね。これはいままでの歴代長官が、きわどい、そこまで言っていて、片方何回か予算委員会等に緑国、赤国というような問題が出てきたりしますが、その都度日本専守防衛で守るだけなんだ、たての役割、そしてやりのほうは米軍なんだ、あるいは五空なりあるいは第七艦隊なりということになる。そこでいつの場合でもこっちは守るだけだ、向こうがやりを持っているんだからというかっこうで、そこのところいつもちぐはぐなままに置いておかれる。実をいうと、一番そのことがはっきりしない。いつになってもそこのところが論議しにくくなってしまう。国民に理解いかないという形の盲点になっていってしまう。したがって私は、あまり大上段に振りかぶるよりも、少しやわらかい話をしながら、そこらあたりのお考えをお聞きしたいと思っておるのですが、そこらあたりはどういうふうにお考えになりますか。
  165. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防衛力というものは相対的なものでございますから、国際的な諸関係考えてみて相対的に整備されていくべきものであると思います。日本は憲法によって攻撃兵力は禁止されておりますから、そういう状態が続く限り、日本防衛を全うするためには攻撃的要素は他のものに負担してもらわなければなりません。したがって、いまのようなコンビネーションが当然想定されるということになると思います。
  166. 大出俊

    ○大出委員 それならば形を変えて聞きましょう。中国の核開発というのはどの辺まで進んだという御認識でございますか。
  167. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれは直接情報を得ておらないのでわかりませんが、アメリカの国防長官の議会に対する報告等を見ておりますと、一九七〇年代の半ばごろICBMないしはIRBMが二十基前後セットされるであろう、そういう情報が最近の情報であります。
  168. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ、中国の海上兵力防衛庁長官としてはどの程度に分析をしておられますか。
  169. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中国の海上兵力というのは、それほど大きいものはないようです。ただ空軍は二千機くらい持っておるという情報を得ております。
  170. 大出俊

    ○大出委員 もう一つあわせて聞かせてください。これはアメリカの海軍のザブロツキー報告なんかでも多少ありますけれども、潜水艦等を含めてソ連海上兵力、極東に配置されている中心、ここらあたりを今日どういうふうに分析をされておりますか。四次防の基礎になるはずですから。
  171. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ソ連の極東における海軍兵力は、かなりのものが来ておるようでございまして、原子力潜水艦は、合わせれば百隻のうち三割くらいはおるだろうといわれております。相当な高速、高性能なものであります。そのほか巡洋艦——この間対馬沖を通りまして新聞に写真が出ておりましたが、巡洋艦、それからいわゆる駆逐艦、それらがかなりの数あるようです。そのほか、それに必要な母船、あるいは掃海艇その他のものもワンセットちゃんとそろってあるようであります。
  172. 大出俊

    ○大出委員 こまかい数字は、私特に申し上げませんけれども、いまお話しになりましたソビエトの海上、相当これは伸びてきているという見方が国際的にもできる。片方、中国の核開発というものも、相当程度進んできているということになる。こういう中で四次防というものを想定する場合に、ここらのところがやはり一つ入ってくるというのは当然だと私は思うのでありますが、あなた先ほど憲法のワクの中でということでお答えになりましたが、当然これは入らなければならぬ筋合いでございますが、そこらのところ、これは当然なことでございますが、それがどうも、わがほうは関係ない、専守防衛だからという言い方に聞こえるのですが、そこらはいかがですか。
  173. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もちろん客観情勢というものもよく注意しながら、参考にはすべきものであると思いますけれども、周辺諸国と軍備拡張の悪循環のようなことは起こさないほうが賢明である、そういう基本的考えに立っていきたいと思います。
  174. 大出俊

    ○大出委員 そうなると、そこに一つ問題が出てくるのでありますが、防衛力の限界というもの、これについてはどういうふうにお考えになりますか。
  175. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは原則的には、私個人は自主防衛原則ということを申し上げまして、あれを一つの重要な資料として考えていきたい。数量、性能については、これは技術的な問題でございますから、いずれ今度の新しい防衛計画策定とともに検討してまいりたいと思います。
  176. 大出俊

    ○大出委員 それじゃ、長官の個人発言といわれるものの中で、もう少し承りたいのでありますが、いま数量その他については技術的な面がございます、確かにそうでございましょう。そこらはあらためてひとつ技術的な方々のほうから承りますが、そこで長官の言っておられる中に、どうもゲリラ戦、ゲリラ対策、ゲリラ的戦争、国内破壊をねらうという意味のゲリラ的な紛争あるいは戦争というふうなもの、これに対する訓練が必要だ、こういうお話があるのでありますが、これはどういうことを想定をしてこうおっしゃっておられるのでありますか。
  177. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国内が不幸にして非常に乱れて、騒乱状態でも出てくるということになれば、それは外からのいろいろな、そういう挑発的な行為も起こるということも一応考えておかなければならない。今日のような事態でも、きのうの新聞に出ておりましたとおり、国籍不明の船が日本の福井県の沖一マイルまで接近している。これを海上保安庁の船が追跡したら、逃走して銃撃した。あの船は、ことし七回も来ておると新聞にも出ておりましたが、そういうようなあれも一種のゲリラ的行動でしょう。ああいうようなものが、国内が乱れてくるともっとどんどん出てくることも一応は考えなければならぬことと思います。
  178. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、具体的にゲリラ的な国内紛争をねらうものに対する訓練というのは、今日やっている訓練とは違ったものになる、こういうことですか。
  179. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり間接侵略に対応するという意味は、いわゆる間接戦略というものを基調にして諸種のことを考えなければならないので、一番大きな問題は、国民との密着、あるいは官庁その他との連携協力、そういうものがまず根本に出てくる問題だろうと思います。しかし、そういう場合でも、警察とか、そういう正面に出ている役所が、まず第一にやるべきものであって、自衛隊というものは支援後拠という立場で初めは対処していく、警察でどうしても手に負えないで、向こうから救援を頼むというような段階になったら自衛隊が出ていくというようなことになるでしょう。それから沿岸防備及び領海の侵犯等に対しましては、これは海上保安庁と協力してやらなければならぬと思いますし、領空については航空自衛隊が所管しなければならぬ、そういうように、すべて総合的にこれは考えなければならぬと思っております。
  180. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ承っておきたいのでありますが、三角形、五角形という言い方を長官はされておるようでありますが、米ソ中と肩を並べて五角形をなすことがあるというのは、先ほど申し上げました防衛力の限界等ともからんでまいりますので、これはどういうお考えを基礎にこう言っておられるわけですか。
  181. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 それは私が考えました政治力学のバランスをそういう表現で申したので、三角形という場合は、核保有国の問題を提示しておるし、五角形という場合は、核保有国及び非核国が混在した形のバランスというものもまた別の次元で考えられるということを申し上げたわけであります。
  182. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ、五角形と言っている中に、いま政治力学とおっしゃるのですけれども、そうなると、その背景にやはり相当な日本防衛力というもの、まあ私は軍事力なりと思っている一員でございますけれども、それをやはり想定されなければならぬことになると思うのでありますが、そこらはどうですか。
  183. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私がいま最後に総合的にと申し上げましたのは、必ずしも軍事力だけではありません。これは経済力もございますし、文化力もありますし、世論を指導する力もございます。あるいは外交能力もあります。そういう総合的に考えた力のバランスというものを申し上げたのであります。
  184. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ承っておいて、あと具体的な中身に入りますが、長官のいままでの発言の中で、本会議で私ちょっと質問いたしましたが、制海権、制空権というものの考え方について御発言でございますが、この制海権、制空権、まあ航空優勢なんという意味なんでございましょうけれども、これと実は識別圏と関係がないというお話、別な問題であるというお答えのようでございましたが、これは昨年八月の四日に旧来のものを変えて、防衛庁は正式に新聞に発表されたわけですね。で、この識別圏と全く関係なしに制空権を、これは航空優勢でもけっこうでございますが、どのように確保なさるかということ。御存じのとおり、今日機械の箱の中に入っているような形で飛行機に乗っているわけでありますから、地上のレーダーに映る映像に基づいて指示がいくわけでありますから、相手の見えない戦闘をやるわけでありますから、そうだとすると、この間本会議でこのくらいかかるだろうという時間、時分まで触れて質問申し上げましたが、そういった中で制空権あるいはそういう——つまり制空権ということばにひっかかるわけでありますけれども、それは一体どういうことを具体的にさすのか、もう少し詳しくこれは明らかにしていただきたい。
  185. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 制空権と申しましたのは、昔なつかしい第二次大戦ころのことばでございますが、私は、正確には航空優勢圏ということばが適当だろう、そういうおことばが質問にございましたから、そういう意味でお答えしたいということを申し上げたのでございます。  どの程度がじゃあ航空優勢圏で必要かという御質問に対しましては、それは脅威の大小によって、そのときケース・バイ・ケースできまるものであって、常時固定的にどうときまるものではない。防衛というものの必要性から見て、どの範囲まで日本が航空優勢を保っておらなければならないかということは、出てくる相手の兵器の性能、意図、そういうものによって伸縮さるべきものであろうと思うのです。識別線は、単に敵か味方かを識別するという、要するに警戒態勢に入るか入らないかという意味の識別線であって、自衛権を発動したり、あるいはそのための準備をするという緊迫性の高まったものとは若干違う、そういうように私は思います。
  186. 大出俊

    ○大出委員 ただしかし、今日のこのマッハ二をこえるような飛行機の時代でございますから、そうなると、日本がそういう不時の相手の侵攻に対する対処のしかた、ここが一つのポイントにならなければ一あとからこれは申し上げますけれども、いまの日本自衛隊航空機性能、機数等々勘案をいたしまして、それほどどうも極東におけるちゃちなものではない。そうだとすると、将来に向かって制空権あるいは航空優勢、こういうことになるとすれば、当然そこらの関係がなければ制空権を維持したことにならない、こう考えなければならぬと思うので、何となくとおっしゃったのじゃ困るわけですから、そこのところをもう少し……。
  187. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういうものは抽象的にはなかなか表現できないもので、そのときのケース、ケースによって、相手の航空機の性能とか意図とか、そういうものに応じてこちらの体制というものが出てくるものであります。それが専守防御という考え方であります。したがいまして、そのケース、ケースによって伸縮はきまってくるものだ、そういうように思います。
  188. 大出俊

    ○大出委員 国防会議の事務局長さん、お呼びいたしましたが、質問がこうなってまいりましたから、たいへんどうも御足労かけました。  そこで宍戸さんに承ったほうがいいと思うのですが、内閣委員会で、有田防衛庁長官が四次防に触れての考え方をお述べになっております。ちょっと申し上げますと、「日本周辺の領海、海峡、港湾などの警備を中心に海上交通の安全を確保するが、海上自衛隊現状は対潜水艦作戦の面でも、船団護衛でもきわめて不十分だ。防衛庁としては外航船舶護衛のため二つの護衛群(一護衛群は護衛艦八、九隻で編成)を持ちたい、これで五〇隻の船舶を約二三〇〇キロ海上護衛するとして年間二十数回が可能となり、約五千万トンの原材料輸入を確保できる。しかしこれは現在年間三億数千万トンの七分の一程度能力にしかすぎない。」こういうふうにここでお述べになったのを覚えておられますか。
  189. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 前長官なり私が、いまお話しのような、ほぼそういう趣旨のお答えをしたように覚えております。  ただキロ数は千三百海里とおっしゃったように思います。
  190. 大出俊

    ○大出委員 もう一つマラッカ海峡の問題につきましては、「日本経済にとって重要な航路だが、海上自衛隊がマラッカ海峡まで護衛することは無理だ。この航路が閉鎖されるような事態に備え、航路変更、石油輸入地域の分散、国内での石油備蓄やさらに原子力とくに高速増殖炉」が必要であろうということをここであわせて述べておられますが、あなたもおいでになったから、二、三答弁されておりますから御存じだろうと思うのですが、私は、防衛庁長官がおかわりになってそうそう中身が変わっても困ると思うのですが、この考え方というのは中曽根さんになりましてからも踏襲をする、そう考えてよろしゅうございますか。
  191. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まだしさいに点検しておりませんが、周辺海域の船団護衛は必要であろう、そういうことを申し上げております。
  192. 大出俊

    ○大出委員 長官そう変わったことを言ってないですね。いまもいろいろ航空優勢、制空権とおっしゃってえらい大きな新聞記事になるから、いまいろいろ確かめてみたが、そう変わったことではない。別に現状変更をたいへん求めているようにも見えない。五原則の話が出ましたが、これまたどうも、確かめてみたところたいした変わったことではない、こういうことになりそうなんであります。  それから長官がここで言っていることをひとつ承りたいのですが、外人記者の方々にお会いになって、小艦艇群をつくって、海上はそういう意味での輸送経路が長いということを含めてやっていくんだということをおっしゃっている。これは前長官お答えになっていることとそう変わったことを言っているわけじゃないわけでしょう。
  193. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 前長官の発言をつまびらかにしておりませんから正確に申し上げられるかどうかはわかりませんが、私は、いままでの考えにさらに沿岸海域の防備ということを少し強化する必要があるのじゃないか、たとえばどこかからの快速船が来て、そして海上保安庁が追いかけていったけれども逃げられてしまった、こっちがスピードがおそい、そういうことが書いてありましたけれども、所要の海域には高速ロケット艇とか高速艇を配備しておいて、すぐ追いかけて追いつくような形にしておくことが本土防衛にも役立つやり方だ、そういう考え方を持っておりますので、そういう小型の高速艇というものを考える必要はある、そう考えております。
  194. 大出俊

    ○大出委員 いまお話を承ってきますと、その程度のことならば、旧来四次防をめぐって幾つも前長官答えておりますが、どうもそう変わったことではない、ただ何となく変わったことに受け取れるというところに、新聞記者の皆さんがつい変わったことに書いてしまう、書かせるのがおじょうずで記者の諸君が書かされているのかしらぬという気がするのでありますが、いままであまりかたくなにものを言わずに聞いてみようと思って承ってきたのでありますが、そう旧来言っていることと変わった中身ではない。したがってそういうことで中身について少し承っておきたいのです。  今回の四次防想定の中で、陸海空、こうあるのですけれども、当初何か海上というものに相当ウエートがかかったような感じのものの言い方になっておったのでありますが、重点をどういうところにお置きになるおつもりでございますか。
  195. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり空海に置く必要があると思います。
  196. 大出俊

    ○大出委員 そうすると空海、それともう一つ要素がここであるのでありますが、沖繩という問題がございます。沖繩返還というものをめぐりまして、もし七二年ということになるとすると、これからおつくりになる中身としてはそれが想定に入らなければならぬことになる、当然だと思うのでありますが、まあ宍戸さんが調べに行ってみて、やれ適当な港がないとか、いろいろなことも耳に入りますが、当時この席で言っておられましたのは、宍戸さんの答弁だったと思いますけれども、おおむね陸上において一個師団ぐらい、それから地方隊を海上において幾つかつくらなければいかぬだろう、港湾警備という意味で。それから航空において一飛行隊ぐらい、おおむねそんなところのお話まである。陰の話のほうでは、あまりその気もないのだけれども、四次防というものを想定をしてみた場合に、沖繩防衛と言うたほうが少し予算その他を含めて前に出られるからというふうなささやきを二、三聞いたことがあるのですけれども、そこらの沖繩防衛という問題に関しては、まず概括的にどうお考えになっておられますか。
  197. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩日本へ復帰すれば、日本人が防衛するのは当然のことでございまして、その責任を果たすべく配置したいと思いますけれども、どの程度兵力量を配置するかということは、沖繩というものに対して米軍がどういうふうに評価しているか、また米軍がどの程度機能防衛力を置いておくか、またわれわれのほうがそれをどういうふうに評価しているか、そういう話し合いをよくしてみて、その上でわれわれが自主的に判断をしていこうと思いますので、いまどの程度兵力量を置くかということはきめておりません。いずれ議会でも終わったら米軍当局とそういう話し合いに入ることになるだろうと思います。
  198. 大出俊

    ○大出委員 議会が終わってから米軍当局と話し合いに入る、いまこういうお話でございましたが、陸海空に分けまして少しこまかく承りたいのであります。  いまF86Fというのが何機ぐらい、かつまた飛行隊、スコードロンにしてどのくらいございますか。
  199. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 F86Fは二百七、八十機で、隊数としましては八隊だったと思います。
  200. 大出俊

    ○大出委員 七隊だと思っておりましたが、その八隊のうち、任務が分担されておりますね。着あるいは上陸等に対する地上戦闘の支援、そういう任務を持っておりますね、懸吊装置等があって、爆弾をぶら下げて目視照準で落とすわけですから。そうすると、先ほど長官が話しておられた中に、沿岸防衛みたいなことを非常に強調されている、つけ加えたいということで話しておられましたから。そうすると、航空のほうからいうと、このF86Fにかわるものが当然必要になってくる、こう考えなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  201. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 支援戦闘機の代替機は、次期防において検討しなければならぬものだと思っております。
  202. 大出俊

    ○大出委員 四次防の中で当然——二百数十機に減っているわけでありますから、そうするとこれは、先ほどの任務からいきましてF86Fにかわるものを考えなければならぬ、これは当然の理屈でしょう、違いますか。
  203. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 そのように思っております。
  204. 大出俊

    ○大出委員 それからナイキ、地対空ミサイル部隊ですね、これの配置は終わりましたか。
  205. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 三次防で四個隊編成の予定でございますけれども、まだ完成しておりません。
  206. 大出俊

    ○大出委員 そこで、自主防衛強化、こういうたてまえで進むことになるのでありますが、ここにも問題がありますが、これは締めくくりに最後に申し上げます。  沖繩を中心とする航空区域というふうなものは、新設の必要はございますか。
  207. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 航空区域というお話は、あるいは先ほどお話の出た防空識別圏という意味でございましたら、沖繩施政権返還後本土と性質を同じうする識別圏を沖繩周辺にわが国がつくるべきだ、こういうことになろうかと思います。
  208. 大出俊

    ○大出委員 F4EJファントム、これが三次防で百四機ということで、これは生産がきまっているわけでありますが、四十八年に第一飛行隊、四十九年に第二飛行隊、五十年に第三、第四飛行隊の編成ということになっていると思うのでありますが、この前からのいきさつ、やりとりからいたしますと、沖繩返還というものが一つ入ってきておりますから——長官は政治的答弁をされておりますけれども、沖繩地域というものがふえるわけでありますから、この追加発注という問題が当然出てくる筋合いだろうと思いますが、そういう構想はございますか。
  209. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 いまお示しの百四機、四隊は、沖繩考えない、沖繩を除いた従来の本土だけで考えましたときの防空力整備のためにきめられた数でございます。理論上からいいまして、沖繩施政権が返ってまいりまして沖繩の防空をわが国が引き受けるというふうなことになりましたら、その数字は再検討さるべきものということになろうと思っております。
  210. 大出俊

    ○大出委員 偵察機という分野がございますね。いまRF86がありますね。これはRF4E、日本でつくればJですね、これに改編したいという考え方はおありでございますか。
  211. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 RF86Fが確かにございますが、これもだんだん古くなりますので、次の代替機を考えなければいかぬ。次の四次防で代替機を考えようと思っております。いまおあげになりました機種も候補の中の一つでございます。
  212. 大出俊

    ○大出委員 事務的に聞いていきますが、ジェット練習機のT2、これは三次防末で五十機ほどの量産発注が予定されておりますね。四次防でこれをさらに追加するということにならなければならぬと思うのでありますが、そういうお考えがございますか。
  213. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 練習機の機数につきましては、まだはっきりきまったものはございません。四次防の中で戦闘機全体の機数、それに必要なパイロット数、それに必要な教育、そこから練習機の機数も定まってくる、こういう順序になろうかと思います。
  214. 大出俊

    ○大出委員 さっきちょっと一言落としましたが、F86F、あれもだいぶ古いですね。これはいまの長官答弁で、水際作戦なんということが表に浮かび上がっておりますから、そうすると、これを全部交代させるということになりますと、飛行機の性格上、SFXになりますね。SFXの機数、これは当然二百機をこえるということになると思いますが、F86Fは何とかしなければならぬという御答弁がさっきあったのでありますが、そこをちょっと、あとのことがありますから聞いておきたいのです。
  215. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 86Fのうち、支援戦闘の任務を与えておりますのは四個隊でございます。その四個隊にかわるべきものが将来のSFXでございますので、いまおあげになりましたような機数は、少し多いかもしれません。その数字をまだきめておるわけではございません。いまあります86F三百機足らずのものを全部それにかえようというわけではございません。
  216. 大出俊

    ○大出委員 先ほどの沖繩を含むという考え方とからみまして、警戒管制のレーダー施設、いまある那覇を中心とする沖繩地域の四カ所のレーダーサイトですね、これは当然日本の二十四カ所のサイトとの関係が出てくるわけでございますね。そうすると、これは先ほどの制空権、航空優勢という問題ともからんでまいりますけれども、ここらのところを何とか考えなければならぬ。そうなると、当然そこでバッジシステムとの関係がもう一つ出てくるわけでございまして、二十四カ所のレーダー網が国内にあるわけでありますから、これとどこかでリンクしなければならぬことになる。そういう方向に、当然航空の場合伸びていくと解釈していいのでしょう。いかがですか。
  217. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 沖繩には確かにサイトが四つあるようでございます。これを、本土がバッジ化されておりますので、それとの連携の意味で将来の方向としてはバッジ化する、理論的にはそういうことになろうと思います。ただ、全体にずいぶん金がかかりますし、速度の問題もありまして、次期防でそれが実現するかどうか、これからの検討問題だと思っております。
  218. 大出俊

    ○大出委員 政治的に話をやりとりしておりましても、これは長官、まだこれから確かに物理的に検討するという段階があるわけであります。かといって、旧来から引き続いてこれはやってきたことでありますから、技術的な面でなるべく詰めておいてからでないと話がしにくいので、こういうことを聞いているのでありますから、御了解いただきたいと思います。  そこで、AEW、これは長官がすでにこの国会で口にされました空中早期警戒機、これはどのくらい必要だとお考えでございますか。
  219. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 AEW機は必要な機種だと思っております。次期防において積極的に検討する機種の一つだと思っております。ただ、お尋ねはどのくらいの数かということに聞こえましたけれども、その数は、まだ全体の四次防のワクといいますか、全体の作業が進んでおりませんので、まだ未確定でございます。しかし機種は必要な方向考えております。
  220. 大出俊

    ○大出委員 機種が必要だということになるとすると、長官のこの間の楢崎質問に対する答弁からすると、どうしてもやはり八機前後くらいは置かなければ、いまの日本沿岸防衛、つまりこれは動くレーダーなんですから、当然そうなるわけでございまして、実はこれは四次防予算ともからんでまいりますから、ある意味では規模も知りたい、こういう意味で聞いているのであります。  それからもう一つ、なるべく簡単に質問していきますが、三次防内で、東京、北九州、北海道中部ナイキ部隊三個高射群、これがあるわけですね。ナイキJ、これは日本つくりますから——これは前からいろいろな論議が出てまいりますけれども、四次防期間中にさらにこれをふやす、そういう方向で検討されておるでしょう。どのくらいおやりになるのですか。
  221. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 わが国全体の防空力をいろいろ勘案いたしますと、三次防で用意をした程度のナイキではまだ防空力としては不足である。そういうことから次期防でも増強をいたすという方向であろうと考えておりますが、どれくらいかということはまだ作業中でございます。
  222. 大出俊

    ○大出委員 これは地域的に置いてある場所、置こうとする場所からいたしまして、当然置かなければならぬ場所があるわけでありますから、当然そういうことになるだろうと思って質問しているわけであります。  それから輸送航空団というのがございますね。この輸送航空団で増強施策が行なわれる新型ジェット輸送機C1、これは四次防の初期に四十機くらいという話が少し前からあるのでありますが、現用のC46、これもだいぶいかれているわけでございますから、当然交代をしなければならぬ筋合いだと思うのでありますが、そこのところはいかがですか。
  223. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 お話しのとおり、C46は間もなく交代させなければならない。そのためにCXの開発に早目に着手いたしたわけで、その具体的な機数等は、先ほどから申し上げておりますとおり、次期防の主要な検討対象、数字はまだきまっておりません。
  224. 大出俊

    ○大出委員 このほかあと空で残るのはC1の輸送機あるいはAEWの機体を原型とする気象偵察だとか、あるいは電子偵察、ECM、電子妨害などに使うものがあるとか、あとは気象関係とかいうものになっていくのだろうと思うのでありますが、概括すると、大体空というのはそういうことになりますね。
  225. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 ごく概括的に申し上げればいまおあげになりましたようなことが主要な検討対象かと思っております。
  226. 大出俊

    ○大出委員 ヘリコプターのHXとか救難用のものだとかいろいろまだ出てきますか。
  227. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 部内の話題として出てきている程度でございます。
  228. 大出俊

    ○大出委員 空で最後に一つ聞いておきたいのですが、FXということで、F4EファントムJをきめるときにいろいろ問題になったのでありますが、この四次防の間にこれまた五次防のFXを考えなければならぬということにいまの情勢からなりそうに思うのであります。時間もありませんし、だいぶおそくなってまいりましたから多くを申しませんが、その辺のところはどうお考えでありますか。
  229. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 そういう議論も一部にはございますけれども、これも主要戦闘機ですから、詳しく検討する必要があろうかと思っております。四次防中に決定しなければならないかあるいは五次防にかかってでいいか、この点はまだこれからの検討になります。
  230. 大出俊

    ○大出委員 大体いま私がこまかく端から聞いていきましたが、空海に重点を置くという空は、長官お聞きのとおり、おおむねその程度のものであるという中身ははっきりしているんじゃないかと思うわけであります。  あわせて海ですけれども、一々聞かなければなりませんか。あなたのほうで少し一括説明をする気はありませんか。
  231. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 何しろまだ技術的に事務的に検討している段階で、大筋の項目もまだきまっていない段階でございます。ただ先ほどからのお話しのように、空の特性からくるようないろいろな機種等があるわけではございません。一般的に申し上げまして、海峡防備力を増強する、港湾防備力を増強する、周辺海域の全体の海上警備力を増強するあるいはわが国における直接侵略の一番の上限と考えられる着上陸に対処する場合の海上防衛力を強力にするというふうな任務を頭に描きまして、現在の十三、四万トンではとても十分な運用がはかれませんので、そういった任務が相当向上するように持っていきたい。結局従来の護衛艦を増強するあるいはヘリ搭載の護衛艦を三次防ではある程度考えましたけれども、若干増強する必要があろうかとか、あるいは対潜哨戒機等を増強する必要があろう、潜水艦もある程度増強する必要があろうというふうなことを考えながら作業を進めておる、こういう状況であります。
  232. 大出俊

    ○大出委員 実は自主防衛自主防衛と言うのですけれども、自主防衛というのはことばで言うと非常に抽象的なんですね、いつ聞いてみても。中曽根さんのことですからまさにことばが多いので、いろいろお話しになると、ことばの上ではこういうことなんだときわめて抽象的に入ってくるけれども、自主防衛というのは一体何なんだということ。四次防で自主防衛というのはやろうというわけですか。私はやはり結論を先に言っておきますと、四次防というものを進めていくと、そういう専守防衛、憲法のワク内でのものの考え方皆さん考え方を中心に考えても、ぎりぎりにくるのじゃないかという気がする。そういう意味で、少しこの際、自主防衛を論ずるにあたって、そこらは聞いておかないとまた抽象的になってしまうという気がするので承っておるのです。そういう意味で、海洋重視という有田さん以来の長い話があるのでありますが、海上自衛隊で五千トン級のヘリコプター搭載護衛艦、DDHですね、これをまた数隻おつくりになる、これが一つ中心になりますか。
  233. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 DDHにつきましては、増強する方向で検討してまいりたいと思っております。
  234. 大出俊

    ○大出委員 これはやはり四隻か五隻くらいはつくらなければ、一月に皆さんのほうから発表されている構想からして——これは中曽根さんになってからでありますけれども、いま十二、三万トンしかないから、正確には私はわかりませんけれども、これを二十五万トンにという中身が書いてある。そうすると、DDHも四隻や五隻はつくらなければそういうことにならぬでしょう。そこのところを技術的に聞いているわけですよ。五千トン四隻つくれば二万トンですよ。
  235. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 ヘリ搭載の護衛艦も、オペレーションリサーチ等で技術的に検討してみますと、対潜作戦としましては非常に効率のいいものとわれわれは考えております。そういう意味で、次期防においてさらに増強をいたす方向で検討を進めてまいりたいと思っておりますが、いまおあげになりました二十五万トンというような数字がまだきまっているわけでもございませんし、ヘリ搭載の護衛艦につきましても、そういう方向での心づもりで検討はいたしておりますが、その数字等につきましてはまだ未確定の段階でございます。
  236. 大出俊

    ○大出委員 というのは、一方では国会で四次防の大体の予算のワク、金のワクというものについてもいろいろ論議されているわけですね。楢崎君の質問等でおおむねの見当を長官はお話しになっている。そうすると、おおむねの見当の基礎になるもの、アウトラインがなければ、やはり何でああいう答弁をされ、何でああいう議論をしたかということになるわけでありますから、そこのところを長官に一ぺん承っておきたいのです。四次防の大体の総ワクをいろいろお話しになっておりますが、これはやはり各幕がやっておられる空海陸の四次防構想というものを、大体アウトラインをつかんで言っておられるのだろうと私は思ったわけでありますが、そうではないのでありますか。長官いかがですか、そこのところは。
  237. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ほかの諸政策とのバランスというものを非常に重要視いたしまして、それで楢崎さんが数字を上限下限でおあげになりましたから、まあ大体その辺の見当でしょうということを申し上げたので、具体的積み上げの上に立った数字ではございません。
  238. 大出俊

    ○大出委員 そこが明確になれば、それなりに話はわからぬわけではないのですが、具体的に積み上げてみなければわからないということですね。しかし諸政策とのバランスの面からいけばその辺であろう、当面そう言ったということですね。  そこで、かりに二十五万トンということになるとすれば、十二万トンふえる勘定ですね。これは十二万トンになれば、おおむね費用の見当はつくわけですが、そこで、対潜攻撃、船団護衛ということで積極的にやろうという、四隻か五隻かわかりませんが、その見当のDDH、これはその方向だというお話なんでありますが、そのほかに大型対潜哨戒機P2J——日本でつくればP2Jですけれども、これを大体百機ぐらいつくるというお考えがあるように聞いておりますけれども、そこのところはいかがですか。
  239. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 機数につきましてはまだ未確定の段階でございます。ただ、現在のP2Vが改良されましてP2Jになりました。先生お話しのことはそのP2Jのことかあるいはさらに次に開発調査に入りましたPXLのことかよくわからなかったわけでございますが、四次防におきましては、現在の改良型のP2Jをある程度ふやす必要があるだろう。それからさらに次の大型の対潜哨戒機というものの開発を進める必要があるであろうというふうに考えます。
  240. 大出俊

    ○大出委員 これはP2Jですけれども、あとのほうの、あなたのおっしゃったPXは飛行艇でしょう。PXもつくるのでしょう。
  241. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 飛行艇も、これは開発が成功いたしましたので、ある程度第一線部隊に使うために増強したいと考えております。P2Jに続く次期の対潜哨戒機の開発を四次防でやるべきではないかということを申し上げたわけでございます。
  242. 大出俊

    ○大出委員 もう一つ、LQ03、水中固定聴音機というのですか、これは前にいろいろ問題になったことがあるのですが、これは今度の四次防では相当お考えになっている、こう考えておいていいわけですか。
  243. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 ある程度増強したいと考えております。さらにそれを性能をよくしたものを開発したいというふうにも考えております。
  244. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、海上防衛の中心というのは、中曽根さんが外人記者クラブ等でよく小艦艇の云々と言うのは、五千トン級のDDH、それから先ほどお話しの大型対潜哨戒機P2Jあるいはそのあとの飛行艇のPX、こういうふうなものが中心になる。一つは対潜水艦海峡防衛である、つまりLQ03、水中固定聴音機等の増強を含めて先ほどの五千トン級の護衛艦を四、五隻つくるということ、まあ小艦艇群、こう言っておられますけれども、実はこれを一つ考えるというのが海上防衛の実体である、そういうことですか。
  245. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いろいろいままでの積み上げで研究しておるようですが、総括的には私が全部目を通しまして、私は自分の判断を加えて合理的なものをつくりたいと思っているので、制服や役人が言うとおりになるかどうかわかりません。私はやはり大所高所に立って最も合理的な判断を下そうと思っているので、そういうようないままでのものがそのとおりなるかどうか、まだきまっているとは言いかねると思います。
  246. 大出俊

    ○大出委員 きまっているとは言いかねると、こういうお話でございますが、これは別に五千トンを一万五千トンのものにしようとかいうのではなくて、小艦艇長官おっしゃっているのですが、これはいまあげたもの以外のものがあれば別ですけれども、何か特別なお考えがあるのですか。
  247. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 別にきわ立った考えがあるわけではございませんが、やはり日本防衛戦略というものを政治の面からも考えてみて、そして、いままでのいわゆる専門家の意見というものは、中におぼれて大局を見ないという要素もあるのでございまして、そういう点については、私らはしろうとであっても、国全体を見ていると思いますから、そういう観点から見て、容赦なく修正を加えるべきものは加えるつもりでおります。
  248. 大出俊

    ○大出委員 いまから時間があるのだから、ある意味ではそういうことは言えるとは思います。思いますが、やはり四次防というものを私どもは私どもなりに考えなければならぬ、あなた方のほうでやる過程でもいろいろ出てくると思いますから、そういう意味で承っておるわけでございまして、この陸上の分について簡単に事務的な点だけ確かめておきまして、あと長官に質問を移したいと思うのでありますが、大体いま積算をされている四次防の全貌というものをほぼ明らかにしないと、長官がいままでいろいろ述べていること、その実態が一体どうなっておるのかということがついていかないわけでありまして、そういう意味でものを申し上げているわけでございますから、あわせて二、三点承っておきたいと思うのであります。  この重点が海空にある、先ほど長官はそう答えておりますが、陸のほうはどの程度要るという構想がおありなんですか。
  249. 宍戸基男

    宍戸(基)政府委員 陸につきましては、一番端的にあらわれるのが陸の人員でございます。これにつきましては従来からの目標にいたしておりました十八万体制、これはこの前後でとまるのではなかろうかというふうに推測をいたしております。  陸の増強の重点は、やはり増強する必要があるわけですけれども、質的な面になろうかと思います。戦場機動力、たとえばヘリコプター部隊を増強するとか、あるいは戦車なり装甲車を増強するとか、そういった面に力を注いでいく。兵力増強の面ではそういうことであります。もちろん隊員の処遇改善とか、後方支援部隊も増強するとか、そういう面もありますけれども、増強の面では先ほど言いましたような質的な増強に力が注がれるであろう、こういう感じを持っております。
  250. 大出俊

    ○大出委員 陸上の十八万の話が出ましたから、長官、確かめておきたいのでありますが、いまの陸上の人員等からいきまして、自衛隊員募集の今日的段階等を考えてみまして、これははっきり申し上げて、陸上をこれ以上数をふやしてみても、これは募集といってもちょっと集まる可能性が少ない、こう見なければならぬと思うのでありますが、そこのところをどういうふうにお考えになりますか。
  251. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 努力すればもっと集まると思いますけれども、私らは日本のいろいろな情勢から判断いたしまして、陸上の定員については当分この限度でいいと思っております。
  252. 大出俊

    ○大出委員 これは御指摘いただきましたから総理府の方にちょっと承りたいのですが、昭和四十四年九月の内閣総理大臣官房広報室の発行しております「自衛隊に関する世論調査」というのがございますね。この中身というのは、まず防衛庁と、いま十八万の話が出ましたからこの際ちょっと横道にそれておきたいのでありますが、打ち合わせておやりになっておられますか。
  253. 松本芳晴

    ○松本(芳)政府委員 お答えしますが、国で行なう世論調査は、現在総理府の広報室が全部一元的に行なっております。これは費用、時間、それから熟練度、その他統計データの統一的使用、そういったような観点からそのほうが適当であるということで予算が集中的についているわけでございます。年度初めに各省から要望をとりまして、そうしてその要望に基づいて項目をきめて実施するわけでございますが、さらに個々の設問については、防衛庁関係者それから中央調査社、この場合は委託機関が中央調査社ですから、そこの関係者、それから広報室の関係者、これによってきめております。
  254. 大出俊

    ○大出委員 いまのこの世論調査の中で、長官、これは二十代の人に対する世論調査でございますが、九八%が、ほとんどの人たちが自衛隊の募集というふうなことについて見たり聞いたり読んだりしているわけですね、この世論を見ると。九八%、ほとんどの人たちが見たり聞いたりしている。大体ポスターが八〇%である、こう書いてありますけれども、そうすると、これはほとんどの方々が自衛隊募集という現実を、あるいは文書にしたものを——相当金をかけています。昨年で広報費その他入れますと四億四千万ですね。たいへんな金です。私、一カ所調べてみたのですけれども、若い方々を集めてものを言って募集するのでありますが、戦車が出てくる、あるいは装甲車が出てくるとか、軍楽隊が出るとか、いろんなことをやっておられるわけですね。しかも歌手伊東ゆかり君などを連れてきて歌を歌わせて、どうも私はふしぎだと思うのですよ、これは。四億四千万もの金を使って一体何をやっているんだろうか、観点が違うような気がするのですけれども、それにしても、そういう努力までやって、あとは日産、トヨタその他の会社のいろんな広告の中に入れてやって、月に小づかいをこれこれもらえますとか、四年で百万貯金が残ります、いいベターハーフを何とかすることができます、というようなことまで言って、しかも信用があるから大会社が優先採用するからとまで言って、みなさんやっておられてこの状態ということになると、これは好むと好まざるとにかかわらず、これ以上陸上自衛隊のほうに金を使うことが——努力すればふえるとおっしゃるけれども、これは無理な話だ。物理的にこの辺が限度である、こういうことになると私は思うのであります、徴兵とでも言わぬ限りは。この辺のところいかがでございますか。
  255. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 若年労働者層の人口増が低減していくという情勢を見たり、それから大学進学率がもっとこれ以上伸びていくという情勢を見ますと、確かに困難は増してくるとは思いますけれども、しかしわれわれのほうでもできるだけ待遇を改善するとか、あるいは国家を守るということの重要な使命感を青年諸君に知ってもらうとか、あらゆる努力を尽くしまして、募集に遺憾なきを期していきたいと思っておるわけです。
  256. 大出俊

    ○大出委員 なかなか現状が無理だという、無理ということはお認めになっておるようでありますけれども、だから努力すれば伸びる余地があるだろう、あるいはあるかもしれない、こういうことになるんだろうと思うのであります。  そこで、そうなりますと、四次防では陸上の人員はふやさない。十八万でいくということ。これはそういうふうに理解していいわけですな。
  257. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 四次防ではと、特に限定しては申し上げないで、当分の間現状でいいと思う、そういうふうに申し上げておるわけです。
  258. 大出俊

    ○大出委員 陸海空と大体いま積算している限り明らかになるのでありますが、長官がそれをどういうふうに結論を下すかというのがこれから先残る、こういう筋道になるだろうと思うのです。  そこで、自主防衛という問題についてですが、自主防衛という問題が出てきたのは、佐藤・ジョンソン会談のとき、あのときに、国を守る気概から始まりまして、総理が自主防衛という意味のことを言われている。このあたりから自主防衛というものが表に出てまいりました。それはさかのぼっていえば、戦後陸海空の中心になった方たちが三・三・三方式と言った時代もあるのでありますから、これはもっと前からあったといえばあったかもしれませんが、政治的に表にぽんと出てきたのはこの時点です。それから以後ずっと防衛庁長官の、特に有田さんになってからその点が非常にはっきりしてきたのでありますが、自主防衛構想というものが表に出てまいりました。そこでその裏側に、そうなると私の考え方からすれば、アメリカとの関係というものが当然なければならない。先ほどちょっと抽象的に簡単に触れましたように、つまりアメリカの側の要請あるいは強い要求、こうなければならぬと私は思っているのでありますが、長官、別なところで、自主防衛というものは昔からあったのだ、こう言い切っておりますけれども、そこのところをどうお考えになりますか。
  259. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 アメリカの要請などというものは私はあったとは思いません。それ以前に、日本国民として防衛現状でいいかということは、自民党員が全部考えておったことでありまして、自分の国は自分で守るという方向に進めようということは、自民党員が選挙のたびごとに言うてきております。  それで特に近年は、安全保障条約がことしの六月から自動継続になります。自動継続になりますと、一年の予告で一方的にやめられるという体制にもなるわけでありますから、ますます日本日本で自分を守らなければならぬ、さもなければ発言権がない、そういうことを外交的にも自民党員は心配をして、全党の空気がそういうふうに動いてきて、たまたま沖繩返還という問題が出てきて、それがますます促進されてきた、そういうことなので、時の潮の流れだろう、そうして日本人の意識の変換だろう、私はそう思います。
  260. 大出俊

    ○大出委員 アメリカ側の要請と私が申し上げましたが、アメリカ側が言っておりますことをここであらためて取り上げてもしかたがありませんが、これは再三再四向こう側は日本に、つまりグアムドクトリンもそうでありますけれども、そういう立場でのものの言い方をしているわけでありますが、沖繩返還交渉の中でも再三これは出てきている問題でございまして、そこは見方が違うと思いますが、違うことは違うといたしまして、さてそこで昨年の五月の沖繩返還前後に二つの問題が出てまいりました。愛知・ロジャーズ会談の前後でございますが、自主防衛整備の長期構想、そうしてもう一つ自前の防衛整備の長期構想、こういうものが出てきているわけです。いわゆる自前防衛。これまた長官の時代でないからという答弁が出てくるかもしれませんが、中身としてはたいへん重要な問題があると思うのであります。その後昨年の八月の四日に船田中さんの私案と称する郷土防衛隊百万人、こういう問題も実は出てきている。これもいま長官の言う筋からすると、どうもあとになると、大体わがほうとしては前からそういうふうに考えておったということになりそうでありますが、この百万郷土防衛隊という中に一つ問題があるのは、これ以上人の頭数をふやそうとしてもふえない、こういうものの言い方、これは安全保障調査会の当時会長さんでございます。だから郷土防衛隊を百万人ふやさなければならぬ、こういう言い方ですね。そうすると、いま十八万でとまるのだとすれば、そこに何か別なことを考えなければ、これは将来ふやしようがそう簡単にない。そうすると、そこに予備自衛官という問題が当然出てきたりする、自主防衛とからみまして。長官、この間ここで将官クラスにも予備自衛官制度をつくる、こういうわけなんでありますが、この予備自衛官あるいは郷土防衛隊なり何なりにからむ、つまり自主防衛にからむ問題として、将来これは何とかふやさなければ、自主防衛というものは、長官の言う主張からすると十八万でいいということにならぬと思うのでありますが、そこらはどうお考えですか。
  261. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 郷土防衛隊というお考えは、船田先生が去年つくった個人的なお考えで、自民党の考えでも何でもございません。それが新聞に報道されただけであります。それは、当時私の安保条約を一九七五年に廃棄しろとか、少し間違って伝えられたのと同じように個人的な発言でございます。しかし私は、日本防衛体系を考えてみた場合に、自衛官自衛隊を離れて社会に入っていきますけれども、自衛隊に在任中あれだけまじめに一生懸命やって精神のこもっている人が、民間に、自衛隊との連係もなく、ただ隊友会という程度でおることは非常にもったいないと思いますし、本人たちも自衛隊と何らかの関係で連絡を持っておりたい、そういう希望もあると思うんです。そういう意味において予備自衛官というものができたことは非常にいい制度であると思いますし、これは陸だけにしないで空海にも及ぼすべきだと思いますし、またそれより上のクラスについても将来は考えてもいいんじゃないか、そういうふうに考えているわけであります。
  262. 大出俊

    ○大出委員 これをふやすということになるとすると、今度は三百ですか、海が出てきましたね、将来に向かって四次防というものをながめてどのくらい——先ほどの想定なんかにも出てきておりますが、なかなか人の補充というものはつきがたいという見方が出ておるようでありますが、予備自衛官は規模的にどのくらいお考えでございますか。
  263. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点も的確に数字を見きわめて言ったことではございません。一つの思想として申し上げたのでございまして、これから検討すべき問題であると思います。
  264. 大出俊

    ○大出委員 空海にもふやす、海も三百出てきたわけでありますけれども、これを空にもふやす、将官クラスにもふやす。そうするといまの自衛隊の戦力の縦深性と申しますか、そういうものを四次防段階では特に重視していくという考え方である、こういうわけですか。
  265. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう要素も考慮の一部にございます。
  266. 大出俊

    ○大出委員 長官がいままで幾つか国会で新しい問題提起をされておられますけれども、ほぼ個人的な考え方であったということでございまして、これからそれの実態をながめて、どう肉づけをして正規の機関を通じて政府方針にしていくか、これから残されている分野が大多数である、こういうことでございますから、個人的な意見であるという点で承っておきます。  そこで地位協定の関係をちょっと承りたいのですが、地位協定の変更が必要である、ない、この問題。自衛隊の基地管理という問題とからみまして、この中で外国の基地と日本の基地とを比べてみまして、いまの日本の地位協定というものは特に非常に違いがあるわけでありまして、私は、外務大臣との立場がおありになりましょうとも、この地位協定はこのままほっておくということでいいのかどうかという点で非常に疑問視するわけでございます。また基地の性格という面からいたしまして、極東戦略の変更とのからみ合いで、当然これから将来一年くらいの間に検討すべき問題ではないかと思うのであります。  まず、非常に概括的に申し上げましたが、この地位協定に基づく各種の国民に対する問題がございますので、防衛庁長官という立場で聞いておきたいわけでございます。
  267. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 当分は現状でやっていけると思います。将来は適当なときに改善する場所があれば改善する必要があると思います。
  268. 大出俊

    ○大出委員 二条四項の(a)あるいは(b)というような問題で自衛隊の基地管理の問題がありましたが、そのときに実はつけ加えて承りたいと思っておりましたが、時間の関係で省略いたしましたが、今日、各地域においていろいろな問題が起こっておりますけれども、そのほとんどが地位協定にからむ問題ばかりでございまして、たとえばジェット燃料の輸送にいたしましても、あるいはまた通信施設の問題にいたしましても、通信施設は地位協定の三条でございますが、電波障害の問題、十二カ所さらにふやそうというのが中ぶらりんになっているそうでありますが、こういう個個の問題について、私は、もうこの辺までくると、いわゆる戦後ではないのでありますから、諸外国の基地の態様、現状とあわせ考えまして、もう少し積極的にこれは改善に取り組むべきである、こういうふうに考えるわけでございますけれども、そこらのところはどういうふうにお考えになっていますか。
  269. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、当分は現状でいけると思います。しかし将来は必要が起これば改善すべきものと考えます。
  270. 大出俊

    ○大出委員 山上さん、例の電波障害の規制地域の拡大問題がかつて問題になりましたが、その後の経過はどうなっておりますか。
  271. 山上信重

    ○山上政府委員 通信施設の周辺における電波障害制限地域を設置してほしいという要求がすでに米側から十二カ所について出ていることは、たびたび本委員会でもお取り上げになったので、これは省略させていただきます。この問題につきましては、通信施設の電波障害に関する特別委員会を日米間で設置いたしまして、その委員会でいろいろ共同の調査をしようということで検討をいたしておるのでございますが、今日までまだ結論に達しておりません。したがいまして、これはまだ提供すべきものとも、すべからざるものとも決定しておらぬというのが現段階でございます。
  272. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、あの時点で凍結したような形になって、そのままだということですね。
  273. 山上信重

    ○山上政府委員 相互に検討はいたしておりますけれども、前進はしておらないというのが現状でございます。
  274. 大出俊

    ○大出委員 最後に、いまの基地の問題をめぐりまして、各地域で駐留軍労働者の方々の首切り問題が起こっているわけでありますが、本会議で少し私申し上げましたが、昨年末お出しになった給付金の一カ月分、長官の本会議における答弁からいたしますと、この一カ月分については、年末怱々の間であったから考えたのであるけれども、これを全体に及ぼすことは政府としてはきわめて困難である、しかし実情がそうであるから、したがって、できる限り努力するというお話がございましたが、この点について私は、やはりほかに外郭団体があったり何かして行く諸君ではないのでありますからして、そういう意味では政府考えるべきものは考えていかなければならぬものだというふうに思っているのでありますが、そこらのところは、長官、離職者対策を含めましてその後どういうふうに進展をし、お考えになっておりますか。
  275. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 予告期間の短い人たちは、まず第一に、非常にお気の毒でもありますから、それらの人々に対する緊急の措置を何とかできないものか、そう思いまして、大蔵省といま一生懸命折衝をさせており、私も話しておりますけれども、なかなか大蔵の壁はかたいようであります。今後も大いに努力してまいりたいと思っております。
  276. 大出俊

    ○大出委員 室長さん、お待たせしましたが、中身はいろいろあるのですが、時間の関係もありますので、事情だけわかりましたから、ありがとうございます。  ところで、この離職者の皆さんでございますけれども、実情を聞いてみますと、ずいぶん長年月にわたって働いてきた方々が多いわけでありますけれども、私は、やはり何とかこの際、三カ月というふうな、つまり事前調整の期間その他も提起しておりますが、それが守られないで出てきた者もありますし、したがって、これは何とか制度化をすべく努力をすべきではないかというふうに思うのでございますけれども、技術的な問題でありますから山上さんのほうから御答弁いただいたほうがいいと思うのでありますが、どうお考えになっておりますか。
  277. 山上信重

    ○山上政府委員 駐留軍離職者の離職対策につきましては、御承知のように、駐留軍の従業員の離職対策のための臨時措置法、これによりまして各般の対策を講じてきたわけでございますが、それの線に沿いまして、再就職のあっせんであるとか、あるいは再就職までのいろいろな諸手当の支給であるとか、あるいは住宅の問題であるとか、いろいろくふうをこらしてまいったわけでございます。最近に至りまして、御承知のような米軍施設の整理ということが予想されましたので、これらに対処するために、特に一昨年は退職手当というもの、米軍がこれは支給するものですが、これの増額につきまして特に米側と折衝いたしまして、これを、長年かかった問題でございますが、増額の措置をいたしました。それからまた昨年の四月からは、日本政府が支給するところの特別給付金、これは御承知のようなものでございますが、従来の特別給付金を、平均しますと約三倍程度に引き上げたわけでございます。さようなことで、離職される方々に対しましては、きわめて長い期間政府に働いていただいたわけでございますから、これらの方々の今後の処理について、手厚い措置をしようということでやってはまいったものでございます。  そこで、昨年の暮れには、非常に短い期間に大量の人員が整理された。ただいま大臣からお答えになりましたように、この問題については、特にそういった短い期間であったということから、特別に一カ月分相当の特別給付金の特別措置という、特別の中の特別ということをやったわけでございますが、これは昨年限りということで御了承もいただいて実施したわけでございます。  そこで、今後五千人以上の大量の人員が整理になるわけでございますので、大量の整理に当たってこれらをどうするかということでございますが、そういったような大量の整理も、施設の整理、縮小ということから予想されるということで、今日までいろいろな施策を講じてきたわけでございますので、直ちにこれを、さらに別途の制度をつくるということは今日ちょっとむずかしいのではないか。昨年はそういったようなことで特別の措置を講じた。今回はそういった問題は、調整期間というものを比較的長期にするということで米側と折衝してまいりました。原則としては三カ月以上ということで米側と詰めてまいりました。かつまた、個々の具体的な問題についても、それらについて折衝いたしております。そういったことで、これらを契約化していくということを米側と今後努力いたしたいというふうには考えております。が、これらの特別給付金等については、非常に短いものについて、お気の毒だということで何らか考えなければいかぬのじゃないかという検討はいたしておりますが、これも、ただいま大臣がおっしゃいましたように、きわめて困難な実情でございまして、全体にということはなかなかむずかしいのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  278. 大出俊

    ○大出委員 最後に、離職者センターみたいな形のところに何がしかいま予算を組んでおられますけれども、私は、これは一つの戦後処理のような感じがするのですよ、ここまでくると。相手の方針が変わる、変更がある、そうすると旧来の職場がなくなる、こういうケースですからね。だから、そうなるとやはりそこのところは、今度の予算額を見ましても非常にわずかでございますから、よほどのことを考えてあげなければならぬ国の責任があるように私は思うのですよ。再三再四言ってきたことばかりですから、きょうはあまり大きなことを言っていないのです。わかればいいのですから、したがって、整理をしておきたいと思ってきょうものを言っておりますけれども、何とかこのあたりで結着をつけてあげたいものだというように考えるのです。そういう意味で何かやはりここで一カ月分を全体に広げるとか、あるいは何カ月分かは保障するという形の予告期間を設けるとか、離職者センターというところに相当の金を持ち込むとか、何かをしてあげなければ、私はやはりあまりにも酷ではないかという気がするのですが、その最後の離職者対策というもの、ここらあたりのところを、これは、こういう場面で詰まるものではないのですけれども、やはり表に出してそのつど申し上げておかなければいかぬと思って申し上げておるのですが、その辺どういうようにいまお考えになっておるか承りたいと思います。
  279. 山上信重

    ○山上政府委員 離職者対策についてできるだけのことを考えろとおっしゃる御趣旨、まことにごもっともでございまして、われわれといたしましても行政ベースでできるだけのことはいたしたいというふうに考えております。ただいまお話のありました離職対策センターに対する補助金、本年度は七百万円という金額、これは初めてでございますので、こういう金額をお願いしておるわけでございますが、今後これらのものにつきましても中央にまたできてくるということも伺っておりますし、また地方のこういったセンターに対する補助等も拡充強化してまいりたいというふうには考えております。  そのほか、先ほど申し上げませんでしたが、現在、離職対策といたしましては、官公庁に対する採用等をかねてからお願いしておりますが、同時に従業員の方の再就職ということが安全に行なわれるということが大事でございますので、防衛産業方面にも私ども関連がございますので、特に再就職について協力を呼びかけましたところ、快くこれに応ずるというような回答も得られておりますし、われわれとしては再就職ということについては今後最大の努力を払ってまいりたい、その他につきましても総合的にいろいろ検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  280. 大出俊

    ○大出委員 全駐労の諸君にストライキ云々という行動が出てきますが、これはほかと違って、ベースアップ云々ということよりも、むしろやはりそういうところに中心がある。そういう非常に気の毒な性格の中身を持っておりますから、そこのところをやはり受けて立っていただいて、せっかく御努力をいただきたいと思うわけであります。  最後でございますが、長官、私もだいぶこまかく長官がやりとりしておられます国会の予算委員会の議事録その他を読ましていただきましたが、なかなか用心深くおっしゃっておられますし、たいてい言ったあとのほうのことは、これから先やっていきたいというお話でございまして——これは昨年でございますから、期間が期間でございますから無理もないと思うのでありますが、先に残される問題が大多数でございまして、きょうはそういう意味であんまり四の五のものを言ってみたところで、すでに予算委員会でほとんど先で検討いたします、そういうことになっておるわけでありますから、あんまりそうではなくものを言ってみようと思ったわけですが、ただ一つ最後に、共同声明というものが中心になっておるからではありますけれども、中国周恩来総理の北朝鮮訪問等の中から出てくるものの言い方なり、あるいは欧州各国を含めまして伝えられる今回の共同声明以後における日本の立場に対するものの言い方なり、やはりそういう意味で極東の平和、緊張の度合いというもの等とからみまして、古井さんたちがいま中国へ行っておるわけでありますけれども、たいへん苦労の度合いの強い映り方をしておるのだろうと思いますが、経済的にはこれまた共同声明との関係もございますけれども、ピアソン報告なんというものもありまして、どうも買わなければならぬという調子の、相手の国を経済的に発展させようというところに中心がある形での経済行動というものが強く主張されておるわけでもございまして、そういう意味で、あんまりどうも防衛共同声明以後新聞その他に大きく喧伝され過ぎた感じが実はしておったのであります。これは長官の言っておることからすれば、そう旧来と変わったことではない、こういうことになるわけでございますけれども、これは長官の体質的なものかもしれぬと思うわけでありますけれども、その意味では自然体とおっしゃるのだけれども、どうもあまり自然体でない、きらびやかに映り過ぎるということになるんだろうと思います。私はそういう意味では、どうも中身をいろいろ伺ってみますと、それほどでもないものがあまりどうも大きく取り上げられ過ぎるということは、事防衛という性格でございますから、いささかどうも心配になる点があります。ひとつこれから先々のところで残る問題をゆっくりやっていきたいのでありますけれども、極東の情勢等からいたしまして、あまり緊張の度合いを高めるような形での進め方というものはいかがなものであろうかと考えておりますが、最後に一言御答弁いただいて終わりたいと思います。
  281. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は憲法に従って日本防衛を完遂していこうと思っておるのでありまして、日本軍国主義復活云々というような海外情報もございますが、これは非常に大きな誤解であると思っております。日本共産党の書記長までもが、軍国主義が全面的に復活していない、それと見解は異にする、そして復活防止に努力する、そういって復活しているとは言っていない。これは完全な認識ではないけれども、ある程度認識は正しいと思う。軍国主義というようなことはわれわれは毛頭考えていないし、この書記長が言っているように、日本は海外派兵はしないし、徴兵はやらぬ、そういうことも言っておるのでありますし、その上政府は非核三原則を保持して専守防衛に徹するということを言っておるのでありまして、世界じゅう日本くらい平和国家はない、こんなお人よしの国はないとすらほかの国は思うだろうと私は思うのです。そういう国を軍国主義が復活しているとお考えになるとすれば、これは非常に大きな誤解であると私はあえて申し上げたいと思います。  それで、やはり一番大事なことは国民的コンセンサス、国民の結束ということなのでありまして、その点に政治は真剣に努力を傾倒すべきものであると思います。ただ、少し違った点があるとすれば、私は自分の国は自分で守るべきものである、足りないところは自分の与国と協力し合うということである、そういう原則をはっきり議会で言って、それに向かって邁進するということを宣言したことは違うだろうと思います。それからそのために必要あらばいままでの国防の基本方針を変えるということも考えておる、このことを言ったこともまた非常に変わっているだろうと思います。それからもう一つは、対米関係において、いままでのような無原則的依存とかばく然たる期待というものはいけない、やはり責任分担区域というものを明確にし合って、そうして相互信頼を確立し合う、その接合点を分明にする、そういうことが非常に大事であるということを言いましたが、それも基地の管理問題その他について自分はこれからやっていこうとしておることでもありますし、そういう点でも多少変わってきているだろうと思います。  そういういままで申し上げました基本線をこれから着々実行いたしまして、国民に信頼される防衛に育てていきたい、このように考えておる次第であります。
  282. 大出俊

    ○大出委員 いま言われたその変わり方というのは、ほとんどが今後の問題なんですね。長官がそういう発想をお持ちであるということが明らかにされたのですが、そのほとんどがまだこれは固まったものでないということになっているわけでありますから、だから先ほど来、どうせそういうことになるだろうと思って対話と申し上げたわけであります。その違いのほとんどが今後の問題になる、こういうわけでありますから、そういう意味で今後に残される問題ですが、やはり憲法のワク内の専守防衛というワクからはみ出すということになるとすれば、これはたいへんなことになる。そういう意味で今後の問題として、そこのところを私どもは私どもなりの立場で十分見さしていただいて、何よりもやはり国民的なコンセンサス——シビリアンコントロールと申しましてもやはり国民だと思うのでありますから、そういう意味で、意見の違い、立場の相違はありますけれども、私なりにやっていきたいと思っております。  長時間ありがとうございました。
  283. 天野公義

    天野委員長 次回は、来たる二十一日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時十四分散会