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1970-04-10 第63回国会 衆議院 内閣委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 熊谷 義雄君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       伊藤宗一郎君    菊池 義郎君       鯨岡 兵輔君    葉梨 信行君       堀田 政孝君    山口 敏夫君       石橋 政嗣君    木原  実君       佐藤 観樹君    高田 富之君       横路 孝弘君    鬼木 勝利君       東中 光雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君  出席政府委員         農林大臣官房長 亀長 友義君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         農林水産技術会         議事務局長   横尾 正之君         食糧庁長官   森本  修君         水産庁次長   藤村 弘毅君         通商産業大臣官         房長      高橋 淑郎君         通商産業省企業         局立地公害部長 柴崎 芳三君         通商産業省化学         工業局長    山下 英明君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         通商産業省公益         事業局長    馬場 一也君  委員外出席者         農林省農林経済         局統計調査部長 岩本 道夫君         内閣委員会調査         室長      茨木 純一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二号)  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。  日航機乗っ取りに関する問題に関し、運輸委員会連合審査会開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 天野公義

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、開会日時等につきましては、運輸委員長協議の上公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  4. 天野公義

    天野委員長 通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  5. 木原実

    木原委員 通産大臣、お疲れのところでございますけれども大阪ガス事故のことを少し伺いたいと思います。  今度の事故は、いずれにしましても、日本の第二番目の大都市の中で、しかも繁華街で、時間的に見ますと、五時半という人の出盛る最中に突如として工事現場からまことに衝撃的なガス爆発、こういうような事故が発生をいたしたわけであります。これはどう考えてみましても、死傷者の数の多さ、あるいはまたそういう大都市まん中での事故、こういうことを考えますと、まことに看過することのできない、許すべからざる事故である、こういうふうに私ども考えるわけであります。大臣政府対策本部長として現地にもおいでになったわけでございますけれども、この際、ひとづかいつまんで事故状況あるいはまた原因の追及の段階、ないしは当面の対策等につきましてお示しをいただきたい、このように思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大きな事故を起こしましてまことに申しわけないことでございます。八日の午後五時過ぎに事故が起こったわけでございまして、私は夜半に現地に参りましてお見舞いをいたし、また必要な指示助言もいたしたわけでございます。事故原因につきましては、ただいま当局検証等をいたしておりまして、今朝現在、国家公安委員長のお話によりますと、詳細には結論を出すに至っていないということで、引き続き検証、取り調べが進んでおります。  その事故場所大阪市の市営地下鉄が掘さく工事によって、オープンカットにより工事を進めておったところでありまして、したがいまして、ガス管が二本、五百ミリの低圧のものと、三百ミリ中圧のものとが懸垂された形で、いわゆるつり防護の形で露出をしておるわけでございます。つり方につきましては、上部のいわゆるおおいの板、覆工板からさらに別にはりを設けて、震動を遮断する意味でそこからつっておったようでございます。何かの理由でこの二本の管のうち、いずれか一本からガスが漏れまして、その後、ほかの関係者の話を総合いたしますと、小さな引火をいたしまして、間もなくガス会社から修理車が到着いたしましたが、その後五時四十九分ごろと推定される時間に大爆発になったわけでございます。警察当局調査によりますと、今日午前七時現在で死者七十四名、重傷者百三十七名、消防庁の調査によりますと家屋の焼失は二十二むねでございます。  私といたしましては、到着後、市役所に市当局、中央の出先機関の長、関係各省から参りました者等を集めまして、とりあえず指示助言をいたしてまいりました。原因につきましては、したがって究明を待たねばなりませんが、一般に私ども立場から考えますと、ガス管の埋設、移設等につきましては、従来のガス事業法でかなりの監督をいたしてまいりましたわけですが、今回のような、いわゆる他の工事によってガス管つり防護をする、あるいは受け防護をするという場合の工作物基準あるいは保安規程につきまして、所管大臣届け出を受け、それに対して改善命令を出すというような体制が、他工事につきましては、どうも従来十分でなかったように思われます。従来の世の中でございましたら、あるいは十分であったのかもしれませんが、世の中の進展にどうも十分な体制の即応ができないように反省をいたしております。したがいまして、これからの問題といたしまして、先般御可決いただきました新しいガス事業法によりまして、これらにつきましても届け出をさせ改善命令もできるというような省令あるいは保安規程を設けたいと考えております。  なお、政府は昨日事故対策本部を設けて、昨晩第一回の会合をいたしました。すでにその時点までに関係各省、通産省を含めまして、おのおの出先おのおの立場から、このような工事の現状についての総点検指示してございますが、総点検の結果をばらばらに措置をいたしませんで、それを一カ所に持ち寄って、各省共同で所見を統一し、また改善策を講ずるのが適当であると考えましたので、道路管理者である地方団体を中心に連絡調整協議会というものがすでにございますから、この場に各省の総点検の結果を持ち寄って共同結論を出し、また改善策を講ずるということにつきまして、昨晩対策本部各省間の合意を見ましたわけでございます。これは行政の足並みをそろえる意味でございます。  なお、昨晩対策本部会議におきましては、工法あるいはガス探知方法等につきましても、今後この本部において検討を続けていくことを申し合わせましたような次第でございます。
  7. 木原実

    木原委員 具体的な原因究明その他については、なお時間もかかると思いますけれども、いずれにしましても原因究明を徹底させまして、大臣が後段でおっしゃいましたように、やはり今度の事故遠因の中に監督上責めを負うべき行政機関ばらばら体制もあったのではないか、こういうことも指摘をされておりますので、この際に集中的にあるいは総合的に結果を持ち寄って改善の道をはかるという、これは私も賛成でございますので、ぜひそのような方向で進んでもらいたいと思います。  ただ今度の事故を通じまして私どももあらためて都市の中におけるこの種の事故の持つ社会的な衝撃といいますか不安といいますか、一つ社会不安を呼び起こしております。たまたま大阪の北区であのような事故が起こったわけですけれども、あの種の工事は、これは東京におきましても大阪におきましても、大都市では都市の再開発に伴いまして、いわばありふれた日常仕事として各所で工事が行なわれている、しかも、いつ果てるとも知れないような形で延々として工事が続いているわけです。そうなりますと、これは都市居住者にとりましては、この問題は人ごとではない、そういう意味でこれは新たな社会不安を起こしておる。そういうことになりますと、これは当然政治責任がやはり問われてしかるべきであろう。政治責任の中身の問題については、いろいろな対処のしようがあろうかと思いますけれども、いずれにしましても、何といいますか、従来も小規模の事故が、ある種の事故はあったわけだし、いろいろなことを考え合わせましても、このような事故を引き起こした、そういうことの政治責任はやはり大きいと思う。新しい社会不安の問題があることが顕在化した、こういう意味でこの事故を、いわば行政的にはもちろんですけれども政治的にも重視しなければならぬ、このように考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 同感でございます。  私どもといたしましては、従来こういう問題について十分気をつけておったつもりではございますけれども、しかし変わっていく世の中に対応して関係者の十分な自覚、注意等々が払われておりましたならば防ぎ得た事故であったかもしれないと考えられますので、政治といたしまして、それらのことを今後十分徹底いたしますように、ひとつ率先して改善策を講じていかなければならないと思っております。
  9. 木原実

    木原委員 いま一つの問題は、これは新聞報道等で、こんなことになるんなら地下鉄なんか通ってもらわなくてもいい、こういうような被害者ことばども報道されておりました。これはいろいろな大きな意味を含んでいると思うのです。こういう被害者ことばについてどんなふうにお考えですか。ということは、都市開発は、これをやらなければならないという要因があると思うのです。しかしながら都市開発に伴って、しかもそれが幸福を追求すべき、その対象になる住民の不測の犠牲といいますか、そういうものの上に都南開発が進められる、そういうことになりますと、これは一体何だという疑問が当然出てくるわけである。したがいまして、私は数々の被災者人たち現場からの声を聞いて、感を新たにするところがあるわけですけれども、いかがでしょう。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 利便と安全という問題のからみ合いと思うのでありまして、現場人たちがそう思われることは無理もないことでありますし、また、考えますと、わが国の場合、非常な社会の変化、高度成長ということが、どちらかといいますと、あるいは福祉と申しますか、安全ということを多少軽視した形で進んできたことは私は否定できないように思います。したがいまして、社会開発あるいは公害というようなことが昨今強くすべての人々の意識にのぼってきたわけでございますから、やはり基盤を固めながら成長していくということが必要である。そうでないと、成長というものは必ずしも人間の幸福につながらないということを、このたびの事件は示唆しているように受け取っております。
  11. 木原実

    木原委員 これは、お互いに人命尊重あるいは人間尊重というようなことをいわば政策の基調にして、政治基調にしてやっておる体制の中で起こった事故であります。しかも、大臣おっしゃいましたように、確かに都市開発を進めなければならないという命題が一方にあるわけでございます。ところが、その命題を遂行する中で、いま申し上げましたように、人命を含めた犠牲が出る。今度の事故遠因と申しますか、背景の中には、その開発の衝に当たる政治行政もあるいは企業も、一方では都市開発を進めるんだという大きな命題使命感、その政治的な命題使命感に引きずられて、そのたてまえに引きずられて工事が進められる、そういうシステムですね、言ってみれば。開発は必要なんだけれども工事を進めるにあたっては、技術的な安全なら安全というシステムが一方にあるわけですから、人間尊重ということならば、安全という技術的なシステムということが土台にあって、そのシステムに従って工事が進められるということでないと、これは安全を最終的に確保することはむずかしいと思うのです。ところが、この、開発を進めなくちゃならぬのだ、いいことをやっているんだということが前提に立って、それが引きずっていく。そのために工事工程も全部それにあわせ引きずられていくから、開発第一、安全第二、こういうことがもうごくあたりまえのこととして、事故でも起こらなければ指摘をされないような形で、あたりまえのシステムとしていままでやられてきていた。こういうことが、今度のような事故を引き起こす遠因になっているのではないか、あるいは根本的な原因になっているのではないか、こういうふうに考えるわけですが、その辺はいかがでしょう。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 関係者に言わせますれば、おそらくそれはそれなりの安全のシステムの上に乗ってきたつもりであるという説明になろうと思いますけれども、現実にはこういう事故が起こったわけでございますから、そこで、従来安全だと思われておったシステムに問題がないか。それから、安全度というものはやはりおのずからあるかと存じますが、その場合に、何十%程度安全というようなことが考えられますわけで、安全度が高ければ高いほどこういう事故は起こりにくい。したがって、同じ安全といいながらも、その安全度考え方にもやはり問題があったであろうというふうに思います。
  13. 木原実

    木原委員 どうも、私もしろうとですから技術的なことはよくわかりませんけれども、しかし、人里離れた山の中でやる工事も、それから、あれだけ人間や車の往来の激しい大都市まん中でやる工事も、工程システムとしてはほぼ同じようなことがやられているんではないのか。対策その他についてはそれなりのあれをやるでしょうけれども工程としてはもうほとんど同じようなことをやられているんではないか、実はこういうような感じもするわけです。それと申しますのが、繰り返しますけれども工事を請け負った人たちも、まず工期というものに追われる。工期は事業主なりあるいは行政の必要なり、そういうものがきめていく。したがって、工期がなければ仕事はだらだらするわけですけれども現場仕事というものは、工期がまずありまして、そうして安全がたてまえになってしまって、かなり無理をする。いずれにしましても、まず行政的な、政治的な目標が定められて、それが引っぱっていくものですから、どうしてもこれは事実問題として安全が第二になってしまう。そういうことになると、われわれが言っておるあるいは政府も言っておる人間尊重政治というのは、開発人間尊重のためでしょうけれども、しかし開発のためにこれほどの人柱が立つということなら、これは中世の工事と変わりません。それならば、開発のための工事の過程も、安全の度合いを踏みに踏み固めてやっていくということがないと——大都市まん中で、しかもこの種の事故が起こる可能性というのはその辺至るところにあるという状況の中で工事を進めるわけですから、そういう点でいわば抜本的な開発システム、あるいは工事システム、あるいは技術的なネックの解消、こういうものを含めての対策というものが立てられないと、今度はミステークであったというだけでは、これはもう対策にならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 工期の短縮でありますとか、あるいは場合によって突貫工事というようなことは、非常に勇ましく、かつ効率的に聞こえますけれども、ことに突貫工事というような場合には、何がしかの安全が危険にさらされておるということは認めなければならないと思うのであります。そこで、今回の事件、ことに昨年の痛ましい事件に重ねてこういうことが起こりましたにつきまして、いわゆるオープンカットによる工事というものが、ことに繁華な場所においていいのであろうかどうかという問題がございましょうと思います。どうしてもそれしかやむを得ないというときにでも、こういう導管のようなものを従来のような程度の工作物基準なり保安規程で露出させておくことが適当であるかどうかということがございます。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、これから改めてまいるつもりでございますけれども、もっと基本的に、オープンカット工事ではなくて、シールド工法というようなものでありますとこのような危険が防げる。また交通安全からいいましても、シールド工法のほうが交通安全に寄与する率は高いと考えられます。土質にもよると思いますけれども、幾らか財政負担がよけい伴うということは確かだと思います。また経費もよけいかかるということも確かですが、それらは結局安全保障料に払われている、そういう考え方というものをだんだんわれわれもしていかなければならないし、またそれができるような経済わが国はなってきたというふうに考えていくべきだと思うのであります。
  15. 木原実

    木原委員 私も幾つかの国の都市を回った経験があるわけです。そしてまた、国によって違いますけれども、それらのいろいろな都市の中での工事現場のようなところを歩いた経験がございます。工事の具体的なこと、技術的なことはさっぱりわかりませんけれども、しかしながら、おしなべてこの種のような事故が起こる——土台が違うといえばそれまででしょうけれども、ほとんど事故についての話というものは聞く機会がなかったのです。おっしゃるように、いままでの経費節約といいますか、技術的にはおそらくより安全度の高い工法があったに違いない。それがいままで置き去られてきていた、こういう側面があるわけです。大臣は、新しい工法を適用する、そういう経済力も出てきているんだということで、これは私は、安全度の高い技術的な可能性があれば——やはり費用の問題はありますけれども、しかしながら、わが国伝統予算節約というのをこういうところには適用しないで、おっしゃるように安全のための支払いという観点でやってもらいたいと思います。  ただ、そこで、今度の場合に、工事主体大阪市であり、実際に仕事をしていたのは鉄建建設で、これが下請であった。そしてそこに、ガス管の保守の関係大阪瓦斯が参与していた、こういう関係であろうと思うのですが、そういう場合に、一体安全の最終的な責任主体はどこにあったのですか。これは大阪市ですか、それとも請け負った鉄建なのか、あるいは大阪瓦斯なのか。それぞれ相互に分担をしていたのですか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 施主であります大阪市とそれから大阪瓦斯との間には協定書がございまして、安全の点検についてはかくかく行なう、懸垂方法はかくかくであるというような両者の協定がございます。また、大阪市が施主として施工者施工を契約いたしますときには、やはりそれらについての当然、条件を示しておるわけでございます。したがって、それらの総合の結果は、三者がおのおの立場において安全について責任を負うということになっておりまして、そういうことで工法も定められ、また懸垂方法もきめられている。また保安につきましては、三者がおのおの立場保安任ずるということでありまして、ガス会社は毎日ガス漏れチェックしておった。チェック方法に問題があったのではないかということは残っておりますが、そういうふうになっております。
  17. 木原実

    木原委員 そうしますと、これは施主工事請負会社、それとガス会社、それぞれ機能も違いますから分担をしていたということになるのですが、そういう場合の保安上の最終的な責任というのは一本ではなかったわけですね。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最終的に一本の形にはなっておらないということだと思います。
  19. 木原実

    木原委員 大臣がちょっとおっしゃいましたけれども、たとえばガス会社検査方法等にも問題が残っていたんじゃないかということをおっしゃいましたけれども、これは私もまだ現場を見ておりませんので、なおこれから究明さるべき一つの点だろうと思いますが、大臣現地おいでになりまして、たとえばガス会社ガス漏れについての日常のパトロールを十分にやっていたのかどうか、その点はいかがですか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ガス漏れが発見されましてからガス会社修理車が参りますまでに、十数分で参っております。したがってその点はかなり迅速であったと判断されますことと、それから現にこの事故のありました地点で、ほぼ一時間前に当日のガス漏れチェックガス会社によって行なわれております。したがって形から申しますと、ガス会社はきめられたことをそのとおりやっておったということになるかと思います。ただガス漏れ検査と申しましても、パイプがかなり高いところを通っておるわけでございますから、どのようなことをやっておったか、いわばおざなりでなかったかどうかということにつきましては、これは取り調べ当局調査によって明らかになると考えております。
  21. 木原実

    木原委員 新聞によりますと、ガス検知器ども現場にはなかったというような報道もございますし、それから数時間前に小さなガス漏れがあったというような話も聞いております。また現場で働いておる人たちの答えとしましては、退避の方法その他についてはあまり指示を受けていなかったというような報道も見えているわけです。そうしますと、突っ込んだ調査をしなければならぬと思いますけれども、はたしてガス会社が十分な保安上の対策を講じていたかどうかについても疑問が残るわけです。  それと、もう一つの問題は、この種の工事を行なうにあたって指導、監督の任に当たる行政機関が、それぞれ官庁ルートが錯綜している、こういうこともありますね。ですから、一つ工事についてさまざまな官庁のそれぞれの権限の中でのいろんなことが行なわれておるわけなんですが、これまた一本になっていない。そうしますと、現場工事そのものの中も、少なくとも三本立てになっておる。その工事全体を安全の問題を含めて監督すべき官庁のほうも、ばらばらとは申しませんけれども、しかしいずれにしましてもいろいろなルートが錯綜をしていて、最終的に安全という問題を踏み固めてやっていくという主体が少なくともなかった。工事主体はそういうものが、ない合わされて存在をしたわけですけれども、しかしながら事安全という観点から見ますと、安全のことをやはり主軸に置いて工事全体を統括をしていくという主体がなかった。そういう形で工事が進められていた。こういうことになりますと、これは裏返していいますと、全部無責任体制工事がほとんど、管理がなかったとは申しませんけれども、少なくとも責任度合いが弱い関係で、安全の問題が第二義、第三義的に考えられて工事が進められていた。これは繰り返すようですけれども、今度の大阪の問題だけではなくて、この辺にある至るところの工事がそういうシステムで行なわれているということに相なる。その辺に私は一番問題があろうかと思うのですが、その辺の問題はいかがでしょう。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今回の事故に際して関係者の多くが、いままでこういうことでやっておりまして何も事故が起こったことはございませんでした、したがってこれでよいと思っていたという、そういう気持ちがあるようでございます。私は、いままで過去何年かというその辺の考え方に問題があったのではないか。板橋の事故のときにもそういう説明が聞かれたわけでございますが、そういう、マンネリズムとは申しませんけれども世の中の動きに即応をしていないものの考え方一つ問題が一般的にいってあったと思います。これは関係業者、関係者ばかりでなく、行政をやっております者もやはり反省をしなければならないことと思います。  今回の場合、直接の関係者といいますと、いわば道路管理者としての大阪市、それから施主としての大阪市、それからガス会社施工業者、幾つかございますが、そしてそれをまたおのおの監督しておる官庁があるわけで、確かに、ともしますと安全確保はみなの責任でありますがゆえにだれの責任でもないということに、きわめてなりやすいと思うのであります。先ほど申し上げましたように、今回関係各省が総点検おのおの立場指示したわけでございますが、その総点検の結果はひとつどこかへまとめて一元的にあとの処置を考えよう、これは全国的な問題でございます、というふうに昨晩対策本部できめましたのも、ただいま御指摘になったようなことに対して今後対処するための体制を、この際先例としてつくりたいという、私どもの考えでございます。どこへまとめるかには問題がございますけれども、やはり関係の都道府県、市町村というところが一番一元的に問題を見やすいと思いますので、道路管理者としてのそれらのところで、たまたま連絡調整会議がございますから、そこへ持ち寄ろう。従来この連絡会議はいわばやや長期的な、道路を掘さくいたしますときになるべく同じ時期にしようとかいったようなことを中心に動いておったようでございますけれども、今後はおそらく、安全確保ということもやはりそういうところの大きな仕事一つになるように、そういう仕組みに持っていきたいというので、さしずめそういう措置を昨晩決定したわけでございます。
  23. 木原実

    木原委員 当委員会の議論として申し上げますと、その辺が私はいろいろな点で問題が多いと思うのです。これはこの種の工事関係だけではなくて、通産省が主管をなさっていらっしゃる従来の鉱山保安の問題等にしましてもそうなんですが、その総合されるという問題についてはあとでもう少し意見を申し上げたいと思うのですが、従来保安上の監督の任に当たるこういう官庁にいたしましても、たとえば早い話、人員の問題があるわけです。たとえば労働基準監督署というようなものがありますけれども、全国で二千八百人の職員、これではなかなか具体的に任務の遂行ができないという問題もあるでしょうし、このことはおそらく安全の度合いを高めようとすれば、従来の通産省の行政の中でも、やはり保安上の問題に対処する場合には当然そういう壁にもぶつかる。隘路をさがしていけば、それぞれの官庁の一種のセクショナリズムのほかに、そういう問題もそれぞれ内部に持っていると思うのです。そういう問題を踏まえながら総合的な対処のしかたをしていきたい、こういうことであろうと思うのです。  そこで、大臣おっしゃるように保安上の一本の処置のしかたを市町村に置かれる、これは私は当面の問題としてはそれが便宜かと思います。便宜かと思いますが、この種の工事が普遍的に行なわれておるわけですから、この種の工事にかりに限定をしてでも少し恒久的に集中的な監督機関、要すれば各省の権限の委譲でも——まあ委譲の問題は別にしまして、それぞれ協力をし合って一本の保安の責めに任ずる、そういう場というものをつくっていく。そういうところで常時安全の問題を、それこそ第一義の問題として指導し指示し、場合によれば規制をしていく、こういうような機関に集約をすべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。市町村に一元化していくというのは、今度の事故対策を含めて、これからのこの種の工事はすべて最終的には市町村に一元化していって責めをそこに求めていく、こういうことでございますか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど市町村と申し上げましたことは、少しことばが不適当でありまして、むしろ都道府県あるいは大阪のような大きな市、道路管理者という意味で申し上げました。そこで今回の事件が起こりましたときも、報道機関などから、保安行政を一元化しておけばこういうことは起こらなかったというような意見がずいぶん出ておりますし、また多くの人がそうお考えかと思いますが、実際問題としてそのようなことが、各省からその部分を抜きまして一つの機関をつくってそれで行政がうまく動くかということになりますと、私は実際問題としてそれはなかなかうまくは動くまいというふうに考えます。要は、それでうまく動くかどうかということなんでございますから、どうも事実問題としてはうまく動くとは考えられない。そこで次に考えられる手段としては、各省が自分の行政の分野を持っていながら、安全という共通な部分についてはお互いに協議、連絡をして一体になって動くように、そういう仕組みを連絡協議会のような形で考える。連絡協議会のかなめはどこに持っていったらいいかということになれば、この場合は現実の問題として道路管理者のところへみんなが集まる。そうして連絡協議をする。これが一番現実的に能率のあがりそうな方法ではないか、そういうふうに私どもは判断をいたしております。
  25. 木原実

    木原委員 まことに当面はそういうことではないかと思いますけれども、この種の連絡協議会につきましては、たまたま山中総務長官の発言等も何か新聞で私は見たわけです。従来どうもこの種の各省庁の連絡協議機関というようなものが、ともかくおざなりにすぎたという山中さんらしい反省の発言なども見ました。そういうことになるのですが、そうしますと、たとえば何か都市開発工事法といったような新しい立法措置については考える余地はございませんか。たとえば比較的対象を限定をして、これだけの大事故を起こしたわけですし、従来もこの種の事故は散発をしておるわけです。しかも、これからなお比較的長期にわたって都市の再開発ということで、この種の工事は多様な形で続けられていくと思うのです。それらのものをやはりくるめて都市開発工事のあり方を、安全ということを土台に置いて集約をしていく、必要な立法措置をそのために講じていく。その法律の上にそういう集中的な安全の指導、監督の機関を乗せていく、こういうことは考えられないものでしょうか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は昨日以来建設大臣とお話をし合っていることでございますが、先ほどお話もございましたシールド工法を現実に行なわせようということであれば、道路管理者としての建設大臣が、この事業はシールド工法でなければ許可しない、オープンカットではいかぬということを言えば、それはそうなりますし、またそういうことはおそらく許可条件として現行法のもとでも可能であると思うのでございます。でございますから、現行法の適用でかなり改善できる面もあろうかと思います。しかし、これは私全部を所管しておりませんのではっきりわかりませんが、もしただいまのような一本の法律を都市開発について出すということがどうしても必要である、現行法では動きようがない、またそれが有効であるということでありましたら、それはもう考えるのにやぶさかではございませんが、それはやはり主として建設大臣等の立場からも御意見を承ってみなければならないと思います。
  27. 木原実

    木原委員 ばらして言えば、たとえばガス事業法については改正案が今度成立をした。この法律に従って対処していけば、従来にも増して安全上の前進が確保される、こういうことになると思うのです。それから建設関係、道路関係につきましても、それぞれやはり安全を含みに置いた法律がある。これはもう現存しておるわけです。それでなおかつ総合をしてやっていくことに欠けていた、こういうところに問題が出てきていると思うのです。ですから、従来の法律がそのまま無用というのではなくて、従来の法律の上に乗ってさまざまな行政ルート一つ工事にうまく集中していればいいんですけれども、必ずしもそれが集中していなかった。そうなりますと、これは国民の側から見ますと、原因を追及したらどこにもあれはない、ちゃんとやっているんだ。このとおりやっていれば間違いなかったはずなんだ。それが具体的な現場工事になると、この種の事故を引き起こした。しかも、可能性としてはなおかつやはり将来にわたって問題が残されている危険性がある。そういうような状態なんですね。ですから、その壁を破れるか破れないかということが、実は今度の事故を将来に向かって生かしていく最大なかなめではないのだろうか。こういうふうに考えました場合に、新法をつくるということは思いつきで、なかなかそれはよろしゅうございますというわけにはまいりませんね、しかし、少なくともその辺にめどを置いて、必要ならば新しい立法措置を講じていく、やはりこういう姿勢というものは考えられないものかどうかというのが私の質問の趣意なんですけれども、いかがでしょうか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねの御趣旨はよくわかっておるつもりでございます。従来縦割りの行政というものがとかく批判を受けるわけで、また実際現実の問題として批判されるのが当然だと思うところもございますが、それならば今度は横割りの行政というものが考えられるかということになりますと、これはこれでまたおそらくそれ以上の問題を起こすかと思います。そこで縦割り行政の中でそれを横にも切れる方法ということになりますと、事柄が非常に大きいと申しますか、新しいあるいは大きな事柄でございますと、縦割りの中へずっと横断するような法律なり何なりを考えることができるわけでございますけれども、そのときには今度縦のほうの権限調整という非常にむずかしい問題にぶつかりまして、あまり現実のことばかり申し上げるようで恐縮でございますけれども、それはかりに法律ができてもその運用は縦割りでもっておのおの分担をして——御承知のように法律ができるまでがたいへんなことでございます。というようなことがございますから、一応縦割りのたてまえは置きながら、それが横に動けるような連絡調整ということに落ちついていく、それが従来の例でございます。しかし今度の事件にかんがみまして、もし新しい法律をつくることによって安全というものが非常に確保されるということであれば、決してそれを検討するにはやぶさかではございません。
  29. 木原実

    木原委員 行政機関というのはなかなかむずかしいものなんですけれども、われわれも骨身にしみているわけなんです。これまたこの設置法に盛られております公害の分野につきましても同じようなことが言えると思うのです。ただ私どもの希望としましては、あるいは要求としましては、たとえば、そのために横割りに切っていくことがなかなかむずかしいという、そういう姿のために、たとえば安全のための技術開発、そういうものが、これまたばらばらになっていたり、あるいはたてまえとしての安全の措置というものは、絶えずうたわれていても、実際に力として機能しない、そういう弊害のいわば集約みたいなものが、今度の事故である、私はどうもそう考えざるを得ないのです。そうしますというと、やはりどういう新法をつくるかということは、これは別にいたしまして、何らかの形で、ここで従来のそういう、少なくとも壁になったと思われる面を積極的に、やはり破っていく、そういう意味での各省庁間のそれこそ前向きの協力というものがなければ、かりに一つ工法を変えてみた、一つの分野でより安全度の高い方法を取り入れたというだけでは、なおかつ、何といいますか安全の密度がやや高くなったというにとどまって、その間にやはり粗漏が出てくるのではないか、あるいはまた最終的な責任の所在というものも、結局はぼかされてしまうということは、次の改善に向かって進む主体がそれだけばらばらになって弱いということですから、そうしますというと、いわば抜本的な改革の道をはかっていく、少なくとも、主体というものが見えなくなってしまうのではないか、こういう、これは政治論ですけれども、感じがするわけです。ですから、言ってみれば、ことばはあれですけれども官庁のセクショナリズムということが今度の事故の問題の背景にあった、こういう問題の指摘からすれば、何かそれを一歩踏み出して、より集中をした、少なくともこの工事は、こういうふうな協力をした形でやっておるから、監督上から見ても、指導上から見ても、またその監督指導のもとに行なわれておる工法から見ても安全でございますよと、周囲の住民の皆さんや国民に向かって胸を張ってだいじょうぶだといえるものができないのではないかと考えるわけです。そこで、くどいようですけれども、たいへんな壁があることは重々われわれもわかっておりますけれども、しかし何とか前向きに協力をし合うという体制をつくってもらいたい、こういうふうに考えるわけですけれども、ひとつ重ねて御意見を承ります。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今度の事件がわれわれにそのような教訓を与えておりますことは、もう言われるとおりでございます。そこで、昨晩対策本部を、会合を開きましたときに、この対策本部は、今回の事件の善後処置をすることだけではなく、同様な事件が起こらないためにはどうしたらいいかということまでもあわせて検討することにいたしまして、さしずめ先ほど申し上げましたようなことをきめたわけでございますけれども、今後とも、ただいま言われましたようなことを有効に行なうためにはどうすればよいかというような点についても、検討を続けていきたいと考えております。
  31. 木原実

    木原委員 これは国会のほうとしましても、おそらく原因究明、ないしは責任の所在の追及、そういうことを含めて、より安全な方策を探求をする動きが始まろうかと思うのです。これはまあどういう形になるか、まだ不明でありますけれども、しかしながら、今度の事故というのは、冒頭申し上げましたように、非常に大きな社会的な広がりを持った一つの衝撃的な事件として起こった。しかもそれが都市開発と並行して存在をしておる事故であるというようなことで、軽々に見過ごすことができないのだということになりますと、当面の対策のほかに、いま申し上げましたような将来を展望したやや抜本的な対策を講じなければならない、こういう立場にわれわれ自身も立たされていると思うのです。それが、早い話が、行政の機関の中の壁で多少とも行き惑うということに、これはもう政治の場にある者としましては、何としてもやはりその壁を破るためには努力をしなければならぬというふうにも考えるわけですけれども、そういう意味を持っていることだと思います。したがいまして、議会のこれからの動きを十分に考慮に入れられまして、政府のほうでもできるだけ前向きの方策を立てていただきたい、このように考えるわけでございます。  それから、あわせてもう少しお尋ねをいたしておきたいわけでありますけれども、これは大臣の所管ではございません。しかし共同溝をつくる、こういう話が実は見えておるわけであります。共同溝というものが、これはたいへん費用のかかる問題ですし、はたしてその場合にガス管を入れるのがいいのか悪いのかという議論もあろうかと思います。しかし、何といいますか、道路を掘り返す手間を一つにしようというところから出たというふうに考えられておりますけれども共同溝をつくって、その中にガス管を入れていくということの可能性はどうでしょうかね。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは多少技術的な問題にわたると思いますので、その点は政府委員から申し上げることにいたしますが、基本的には、共同溝でいくことがいいということは、ずっと言われてきておりますわけでございます。ただあの中に電気が入る、その場合ガスが入っていることがいいかどうかということについて、これはおのおののパイプの被覆のしかたにもよるかと思うのでございます。が、念には念を入れれば——技術的には心配がないということであれば、これはもう共同溝というものを推し進めていくことが私は一番よろしいと思いますが、多少その点について関係者の間に疑問もあるように存じます。それを解明することが必要であろうと思っております。基本的には、そういうことさえ解決できれば、もう共同溝ということにするべきだと思っております。  なお、政府委員からお答えをいたします。
  33. 馬場一也

    ○馬場政府委員 補足して御説明申し上げます。  共同溝にガス管を収容いたします場合、収容するということについて保安上あるいは技術上の重要な問題というのが幾つかございまして、この点は昨年通産省に設けましたガス導管防護対策会議において、一つ共同溝にガス管を入れることについての分科会をつくりまして、諸外国にまで先生方に行っていただいて御調査を願った結果、そのレポートに指摘された問題が三点ばかりございます。  一つは、共同溝にガス管を入れますが、まず共同溝の中に本管が入りますので、結局支管は共同溝から抜けて外へ出る部分があるわけであります。その共同溝を貫通して外へ出ます部分にもし地盤沈下等がございまして、つまりその部分が不同沈下いたしますと、その部分からガス管が弱くなって破損するおそれがございますので、その貫通部におけるガス管の破損防止について、技術的な検討を加えなければならぬということが第一点でございます。  もう一つは、共同溝の中でいろいろ温度変化がありましたときに、ガス管が膨張いたしましたり、あるいは収縮いたしましたりすることによりまして、破損するおそれがある。その問題を技術的にどう解明するかという点が第二点でございます。第三点は、万が一その共同溝内のガス管からガスが漏洩をいたしました場合に、今度は溝内にいろいろなほかの管が収容されておりますから、それらが爆発限界に達しないように、その場合におきましては急いで緊急遮断をするというような、たとえば共同溝の中で、ガス管だけはまた特別の別な囲いに入れておいて緊急遮断をするというようなこと、あるいはガス漏れをしましたときのガスの検知の問題、あるいは強制換気というような点をどう考えるかというような技術的な問題がある。これらの技術的な点を十分解明をして、共同溝それ自身の問題につきましては、前向きで検討をすべきだというのが、このレポートの趣旨でございますけれども、それで収容するときには、いまのような技術的な問題を十分詰めてやらなければならぬ。はかにもむろん経済的な問題がございますけれども、技術的な点として、このレポートでいわれます点は主として以上の三点でございます。
  34. 木原実

    木原委員 私も絶対的なものがあるとは思いませんけれども、また私ども技術的なことがよくわからないのですが、いまおあげになりました三点の技術的な問題について、これらの問題については、検討の結果少なくとも現在よりはベターだという結論に達しつつあるのですか、それともなお疑問の余地があってにわかに共同溝にガス管を入れるということについては踏み切れない要素があるというのか、どういうふうに解釈したらいいのですか。
  35. 馬場一也

    ○馬場政府委員 この報告書でただいまのような技術的な諸点が指摘をされております。しかしそういう問題点があるから共同溝に対して非常に消極的に考えるということではないわけでございますので、前向きに考えるけれども、やる場合には経済的問題のはかに以上のような技術的な問題を詰めなければならぬ、こういうことでございますので、通産省といたしましては、ここに指摘されましたいろいろな技術的な問題をどう解決するかということにつきまして今後とも、これは瓦斯協会の中にもそういう技術委員会等がございます、それらを中心にいたしまして、ここに指摘されました技術的な問題点というものがどうやったら解決できるかという検討をレポート以後真剣に続けておりますし、今後も続けるつもりでおりますし、適当な解決方法が見つかればそれだけ共同溝の問題に具体的に取り組める、こういうように考えております。
  36. 木原実

    木原委員 そうしますと、技術的な難点があるけれども、方向としては現状よりも共同溝のほうが相対的にはベターである、こういうふうに理解をしてよろしいのですか。
  37. 馬場一也

    ○馬場政府委員 わが国において共同溝にガス管が入っておることは、先生も御承知のように比較的少ないのでございます。それで現在のこの技術的な問題を詰めないままで、ただ共同溝にガス管をどんどん入れていけばよろしいということではないわけでございますから、これらの問題をただいま申しましたように、十分詰めまして問題点を解決しました上で、共同溝に逐次入れていくというようなことであろうかと思っております。しかし共同溝が、次々に新しくできる道路につきましては推進をしていかなければいけませんので、これらの問題が十分完全に詰まらなければ、それでは共同溝に全然入らないということでもないと思いますけれども、前向きに考えながら、一方これらの問題を並行して詰めていく、こういうように考えてまいりたいと存じます。
  38. 木原実

    木原委員 そのこととうらはらの関係になるわけですが、これはちょっと伺っておきたいのですけれども、たとえば東京とか大阪とかそういうところでガス管が非常に老朽をしていて、安全上の問題その他から、たとえば取りかえなければならない状態に来ておるのがおそらくあると思うのです。これはたとえば東京でざっと見てどれくらいの分量といいますか、長さになるのか、事例でよろしいですからひとつ……。
  39. 馬場一也

    ○馬場政府委員 非常に老朽したガス管と申しますのは、明治とか大正の年代に埋設されましたガス管がそれに当たるかと思いますけれども、戦後、いろいろな記録が焼失をいたしましたので、一部推定が入っておりますけれども、どこにそれらの非常に古い年代の導管があるかというのは各ガス会社において十分把握をしておりまして、計画的にこれの更新をはかっていくということが進んでおります。  それで、ちょっと数字を申し上げますと、東京瓦斯、大阪瓦斯、東邦瓦斯の大手三社について申し上げますと、四十一年末におきましてこれらの三社合計でただいま申しました明治、大正年間に埋設されましたいわゆる古いガス管が、大体合計で千四十四キロメートルの延べ延長数がございまして、これを四十二年以降計画的に取りかえる計画を立てまして、四十二年、四十三年、四十四年と現在までの三カ年間で合計千四十四キロメートルのうち約その半数に当たります四百七十三キロメートル分は計画的に取りかえを完了いたしております。今後も引き続きまして残り半分につきまして年次計画をもって取りかえをしてまいる、かような状況にございます。
  40. 木原実

    木原委員 そうしますと約半分が四十二年から取りかえられているということでございますね。私は技術的なことはしろうとですから、これ以上あれですけれども、そういう場合に、共同溝の問題がかりに技術的にベターだ、こういうことになりましても、費用の問題も含めまして、ガス管が必要とするほどなかなか一気には延びないという問題もおそらくあると思います。やるのだといって踏み切りましても、なかなか費用のかかる問題ですから、そうもいかない。そうしますと、新しい管に取りかえていくその過程というのは、これは大部分が現状のままで取りかえられていくということになるわけですね。その場合に、これもしろうとでよくわからないのですけれども、従来埋設をする場合一メートル何十センチというような規定があるように聞いております。それが交通量が激しくなり、それからさまざまな掘り返し等が続いて、軟弱な上にもう一つ軟弱な状態等があらわれている場合もありますし、それから交通量に伴って重量の重い車等がおそらく十年前に比べても多量に走っておる。こういうような、かりに十年以前に比べましてもかなりな変化がある。それは上からの震動その他による破損の度合いというものはおそらく非常にふえているのではないかと思うのです。その点についての基準は、これは共同溝とは別の問題ですが、改めていくという必要はないのですか。
  41. 馬場一也

    ○馬場政府委員 ただいま先生がおっしゃるようにいろいろな道路状況、道路の使用状況等も昔に比べまして非常に変わってきておるわけでございます。現行のガス事業法におきましては、ガス事業者の維持すべきガス工作物保安上の基準というのが施行規則で定められておりまして、これに基づいてただいまガス導管の埋設は大体一メートル五十センチくらいということになっていると思いますが、その中に埋めることによって上からの土圧なり耐圧に耐えるように行なわれております。こういう基準が定めてございます。ガス事業者はそれを維持しなければならない、こういうことになっているわけでございます。しかしながら、道路の使用状況等も年々非常に変わってまいりますので、この点につきましても、昨年のガス導管防護対策会議におきまして、いろいろ学識経験者も交えまして高圧試験その他の貴重なデータを得ておりますので、今回の事業法の改正に伴う技術基準の見直しあるいはそれの制度化という場合に、ガス導管防護対策会議結論を十分尊重いたしまして、必要がございますれば新しい状況に適応するようなしっかりした技術上の基準にいたしたい、それを省令に織り込みたい、かように考えているわけでございます。
  42. 木原実

    木原委員 もう一つ、今度の事故のことにも関連をするわけですが、例の宙づり工法、これは比較的普遍的に行なわれているというふうに聞いているわけですけれども、それがたまたま、おそらく原因は震動か何かで事故原因になった、こういうふうに聞いているわけですが、宙づり工法というものについての公益事業局としての見解は、何かおありでございますか。
  43. 馬場一也

    ○馬場政府委員 ガス管が埋設されている地点で他の工事、たとえば地下鉄工事等が行なわれます場合に、ただいまシールド工法等のお話もございましたが、現行おもに行なわれておりますオープンカット方式で堀り割りにしていくということになりますと、どうしても工事期間中ガス管を露出しなければならないわけでございます。ただいまのガス導管防護対策会議における結論は、そういう他工事が行なわれる場合には、一番理想的なのは工事期間中そこに埋められているガス導管を別の道路に移設するというのが一番よろしい、これは非常に安全度が高いわけでございますけれども、できればそういうことをすべきであるということが述べられております。しかし、これはいろいろとその都市の道路状況等によりまして、そういうふうに移設ができないという場合におきましては、やむを得ず導管を維持したままで工事をやらなければいけませんので、このときの工法といたしましては、現行のつり防護といいますか、つり防護工法方法というのは、現在の技術の状況からいたしますれば、この工法自身には特に問題とすべき点はない、つまり適当な方法であるというふうに思いまして、そのつり防護をいたしますときのつり防護のしかたその他についていろいろの検討をいたしておるわけでございます。工法自身に問題はないというふうにいわれております。
  44. 木原実

    木原委員 そうしますと、共同溝の問題は可能性として一つ問題がある。その間、管の取り扱いないしは工法としての宙づりの問題、これらについてはそれほどの問題はない、こういうことでございますね。まあ、ガス事業法の改正法によりまして新しい権限を持った措置がとられるというようなことになりますから、そうしますと、さしあたっては、大阪事故にもかかわらず、ガス管の取り扱い上の問題としてはそれほどの問題はないんだ、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  45. 馬場一也

    ○馬場政府委員 新法になりましたならばもちろん、あるいは新法になります以前でも、技術上の基準の必要な見直しはできるだけ早く進めたいと思っております。それをやりますと同時に、先ほど大臣からも申し上げましたように、今回の事故にかんがみまして、これは、実は昨年板橋の事故がございました直後におきましても、全国全部ではございませんが、東京、大阪、東邦瓦斯という大都市ガス会社の、同じような状況にある他工事に関連をした導管のもう一ぺん見直しということを当時やったわけでございますが、今般さらに、これは昨日、三社のみならず全国の都市ガス業者に対しまして、現在工事中の導管工事あるいは他工事に関連するものに重点を置いて総点検を行なうようにという指示もいたしまして、その結果を各通産局長ごとに報告をいたさせまして、さらに各通産局は、ただ報告を受けておるのみではなくて、できるだけ実地に、その状況に誤りがないかどうかということを点検するように事業者並びに各通産局長大臣名で指示をいたしたわけでございます。この結果をできるだけ早く取りまとめたい。その結果、もし改善を要する事項がございましたならば、事業者においてすみやかに改善させるように強力に指導してまいりたいと思っております。
  46. 木原実

    木原委員 そうしますと、ガス漏れが現にしょっちゅうある。ですから、これは現在の制度のもとでも、たとえば探知の方法なり保守の方法なりというものに万全を期しておればそういうものはないんで、何というか、事故に至らないまでも、ガス漏れがほとんど連日のようにある。その中で、たとえば板橋の事故、あるいは荒川の事故、あるいは今度の事故というふうに惨事になってきておるわけですね。そういうあれからしますと、現行法でも、要するに、完全にそういう探知の機能を働かせたり、完全に保守をしておれば間違いはないんだ。したがって、ガス漏れがあったり、事故があったりするというのは、たまたまそれが何らかの偶然的なことであるとか、あるいはやるべきことをやらなかったことの手落ちだ、そういうことによる事故だ、こういうふうに解釈をしてよろしいのですか。
  47. 馬場一也

    ○馬場政府委員 現行法におきましても、先ほど申しました維持すべき技術上の基準というのが法律できまっており、その具体的な内容は施行規則に書いてございまして、導管としてのただいま必要な耐圧度その他の規定があるわけでございますが、同時に、それらのガス管が埋設されました場合に、ただそれだけのものを当初につくっておけばよろしいということではなくて、少なくとも三年に一度は見回りをいたしまして、ガス漏れがないかどうかということを点検をしなさいということも、あわせて施行規則に書いております。  それから、特にそういう平常時の、埋没されたガス管ではなくて、今回のように他工事に関連をして暴露されおる、あるいは工事が終わりまして埋め戻されたというような場合におきましては、先ほど大臣から申しましたように、工事期間中はガス事業者は毎日つり防護をしておる導管の状況点検をするようになっておるわけでございます。したがいまして、この点検が完全に行なわれますれば、かりにガス漏れがございましても、それを発見いたしまして未然の措置をとれば大きな事故には至らないというたてまえになっておるわけでございます。そういうことにもかかわらず、今回のような事故が起こりましたことは——ただいま原因を警察でも究明しておりますし、実は技術的にどういう欠陥があったんだろうかということは、警察の調査と並行いたしまして、われわれとしてもできるだけの調査をいたしたいと思っておりますが、たてまえはただいま申しましたようなことに現行法でも相なっておるわけでございます。もし改正法が成立いたしますと、ただいまのような省令がございますほかに、その省令を受けて、今度はガス事業者が社内で実際に、自分のところの会社として具体的にどういう保安のしかたをするかという社内の保安規程をつくるわけでございますが、この社内でつくります保安規程をも改正法におきましては届け出させまして、もし非常に不十分な点があるという場合には、これに対して通産大臣改善命令をすることができるということが改正法によってつけ加えられる点でございます。現行法におきましては、維持すべき基準を定めまして、それを守らせることにつきましては、いわばガス事業者の自主保安ということにゆだねておるというたてまえでございますが、改正法におきましては、さらに社内規程についても届け出をさせ、チェックをするというふうに、もう一段踏み込んだ規制をいたすことになるというのが強化される点でございます。
  48. 木原実

    木原委員 これは、もう時間がきましたので最後になりますけれども、そうしますと、今度の事故は、言ってみれば、まあいろいろな点で原因究明しておるというお話でございますが、局長さんのおっしゃったいろいろな論理を詰めていきますと、ちゃんとやっておれば、もちろんあんな事故は起こらなかったんだ。しかし、現に、いろいろな要素があったには違いないけれどもガス漏れがあって、それがたまたま何かのことでショートをした、こういう形ですね。そうしますと、今度の事故の一番直接の原因は、ともかくガス漏れがあった。このガス漏れ責任ということになると、これは企業でいえば大阪瓦斯責任ということになるわけですけれども、そういうふうに考えてよろしいのですか。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いや、その辺が非常に問題のあるところだと思います。いままでやってきたことで事故がなかったから、それでいいはずだという考え方がどこまで通るかということは、私はあると思うのでございます。ですから、たとえば建設の方法にしましても、これは表面の工板から遮断した意味での別のはりを出して、そこからさげておる。これは直接に表面上の交通の動きを受けないためだというのでございましょうけれども、その別のはりだって、これは結局へりにくっついているはずですから、振動を受けないとはいえない、完全遮断しているとはいえないはずですし、つり方にしても、いままでの工作物基準で十分なのかということもありましょうし、点検方法もそうでございますから、これは役所は改善命令を出す立場にないので、いままで自主保安ということでやらしておったわけですが、そういうことの基準ですらいいかどうかという問題があると思いますので、なかなかそう簡単には私は言えない。やはり行政のほうも一緒にもう一ぺん考え直す問題じゃないかと思います。
  50. 木原実

    木原委員 これは詰めた話になりますと幾つかの問題があると思うのです。私も、大臣のおっしゃったように、この原因究明の問題とからむわけですけれども、やはり現在の工法で完全にやっておれば間違いなかったんだ、これはたてまえとして確かにそのとおりだと思うのです。しかしながら、それにもかかわらず、いろいろな社会的な条件が変わってきている。以前よりも重い車がしょっちゅう上を走る。あるいは振動の度合いも日に日に大きくなっていっているに違いない。そういうような外の条件というものが現在の制度にすでに挑戦をしてきているわけですね。そういうところに欠陥が一つあったのじゃないか、こういう感じもするわけであります。したがって、改善の余地があるというふうに私は考えるわけです。  ところが、それにもかかわらず、今度の事故の最終的な一番の責任は何だということになりますと、現に、とりあえずということで大阪市と、工事主体である鉄建と、それからもう一つ大阪瓦斯の三社が見舞い金のようなものを犠牲者たちに差し上げた、こういう報道を聞いておるわけですが、だんだん詰めていきますと、これはそれぞれ仕事をしていたのは鉄建だ、それからこの工事を計画をして監督をしていたのは大阪市だ、そしてガス管についての保安ガス会社がやっていたんだ、こういうことになって、三者が共同責任をとるということにあるいはなるのかもしれませんけれども、しかしその中の一番のガスが出たという事実、なぜガスが出たかということがいろいろ問題があろうかと思うのです。われわれの立場から見ますと、国民の立場から言うと、これだけの事故を起こしておきながら、たとえば直接の工事関係者の中では一体だれが何によってそういうことを引き起こしたのだ。いろいろな偶発的な要因が重なっておるわけですけれども、それが明らかにされないと、やはり何となく事故の問題もうやむやになっていってしまうのじゃないかという危惧を持つわけなんです。したがって、もっと詰めて言えば、今度の直接の事故大阪瓦斯保安上のミスなのか、それとも施主である大阪市の監督不行き届きがあるのか、あるいは大阪の鉄建の工事現場で働いている人たちのミステークなのか、あるいは不可抗力として何かの衝撃があったのか、こういうふうに問題がしぼられると思うのですが、その辺は原因追及の中で詰められる問題ですか、詰められない問題ですか。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私は必ずしもいずれとも申せないと思います。そこで、いま木原委員の御質問は私はこういうことだと思います。かりに現在の規則、法制を全部関係者が守っておった、それも誠実に守っておったといたします。それでもなおこういう事故が起こったという結果になりましたら、これはもう明らかにそれぞれの機関を監督する行政の側に問題が移ってくると思います。つまりもっと申せば、現行の法制を十分なりとして監督をしていたという監督立場が十分であったか、あるいはもっとさかのぼれば現行の法制そのものでよかったのかというようなところまでこれはまいらざるを得ないと私は思います。
  52. 木原実

    木原委員 私もやはりそうだと思うのです。そうだと思いますし、したがって冒頭申し上げたように、社会的に与えた衝撃の度合いからいっても政治責任は免れないし、それから行政の面からそういう形でやはり思い切った改善の方途を講ずるということでこの事故を受けとめないと、これはゆゆしい問題だ、こういう前提で申し上げているわけなんで、したがって当然そういうことになると思います。ただ、そうでありましても、事故究明の過程の中で、ややもすれば複数の犯人ができてしまう、あるいは多数の犯人ができてしまう。こういうことになって、ややもすれば今度の問題についても、最終的な責任の所在が、問題が一般化された中で行くえ不明になってしまう。こういうことだと、これは国民のほうとしてはなかなか納得をしがたい。従来の事例からいってもしばしばそういうことになって、そして事故が起こると申しわけないことだ、ひとつ前向きな改善をするんだ、こういうきまり文句で受けとめて、いつのまにかまた現行の体制の中に埋没していってしまう、そしてまた不測の事故を繰り返す、こういうことが過去の事例としてあるわけです。それだけにこの責任の所在は、明らかにやはり責任の所在として徹底的に追及をしていく、それからまた行政として当然責任を負うべき点は、やはり責任の負い方を明らかにしていく。こういうふうに一つ一つけじめをつけて、ガス会社についてはこの点についての問題があったんだ、大阪市についてはこれだけの問題があったんだ、あるいはその工事をやっておった鉄建ないし請負との関係の中に何か遺漏があったのではないか、こういうふうに一つ一つ工事の衝に当たったものについての責任は明らかにしていく、この姿勢というものがやはり必要ではないかと思うのです。そのきびしさがないと、この責任行政の面にはね返ってきた場合の改善の意気込みといいますか、それもやはりまたあいまいになってしまう、こういうふうに考えるわけなんです。その点についていかがでしょう。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりであると思います。国家公安委員長もすでにそういう立場から徹底的に原因究明をやる。実は昨日現地に参りました根本建設大臣も、私も、今回は工事の多少のおくれはやむを得ない。はっきり原因究明まで一つ現状を変更しないようにしようということを現地にも申してまいりました。
  54. 木原実

    木原委員 これは最後になりますけれども、そのことは同時に犠牲になられた方たちに対する補償の問題にもからんでくると思います。これはさしあたってということで、現地の三者がとりあえずお見舞い金を出した、こういうふうに聞いております。この補償の問題は、これからいろいろ出てくると思うのですけれども、補償に対する国の責任、態度、政府の態度というものはまだおきまりになっておりませんか。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それも昨晩対策本部会議でいろいろ議論になりましたが、最終的にきまっておりません。
  56. 木原実

    木原委員 きまらないということはこういうことでございますか。つまり今度の事故原因究明問題と相まって責任度合いがきまらない、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さしあたりましては実地検証等によって、取り調べ当局にまず事実の究明をしてもらおう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  58. 木原実

    木原委員 そうしますと、この事実の究明がもう少し進行しましていろいろな問題が明らかになってくる、そういうことになりますと、国としても事故を引き起こした現地の三者に協力をするという形で補償の責めに任ずる、こういう可能性はあるわけでございますか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国に、行政当局に、いわば管理上の過怠があったあるいは過失があったということでありますと、これは国が刑事責任を負うということになりますから、この場合は別でございます。そうでなくて、そういう意味での責任が国にはないというような事実になりましたときに、国としてどういうことをなし得るかというのが問題でございます。これは仮定のことでございますけれども、たとえば大阪市、これは道路管理者としてあるいは施主としてでございますけれども、そういうところに一半の責任があるというようなことにかりになったといたします。それからまた、それはそれとして今後あの工事を進めていくときには、大阪市としては相当の財政支出になるわけでありますが、大阪市は国との関係で財政的な関係はあるわけでございます。ですから、そういう立場で何がしかの助けをしていくというようなことも可能性としては考えられる、そういうことではなかろうか。私自身はまだ事態がそこまでまいりませんのではっきり申し上げられませんけれども、そういうことも考え得ることではないかと思います。
  60. 木原実

    木原委員 それではこの問題につきましては、いずれにいたしましても、ひとつ原因究明を急いでもらうと同時に、いろいろな制度上のことも含めて改善の方途をぜひ一つ立てていただきたいと思います。  もう一つお伺いしておきたいわけですが、今度設置法によって公害の新しい局の設置、こういうことが出ているわけであります。一つの問題は、公害の問題がこれだけ社会的な問題になってきておると、先ほどの問題にも関連をするわけでありますけれども、これまた公害の問題について各省庁にわたってそれぞれ公害対策が講じられておる。行政機構の改革、これは各省庁間にわたる問題が非常に大きいわけですけれども、そしてまた通産省としては、せっかく新しいかまえで発足をしようという段階でたいへん行き過ぎた質問かと思いますけれども、何かやはり公害の問題にウエートを置いて横割りの機関を創設する。つまり公害問題に対する行政の一本化をはかっていくという考え方は成り立ちませんでしょうか。これは従来もいろいろ指摘をされてきたとおりなんですけれども、厚生省は厚生省、あるいは通産省は通産省、しばしばその中で、公害問題について政府部内において意見の対立をする、こんなようなこともあったかと思います。したがいまして、将来の問題として、公害問題に取り組んでいく政府の姿勢をあらわす方向としても、公害問題に対しての行政の一元化、こういう問題は考えられないものですか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは先ほどの問題と似たような問題の御提起であるわけですが、過去において公害という観念が今日ほど浸透いたしません段階で、政府部内で確かに内部的にはそういう対立があったことは、私は事実であると思うのでございます。しかし、いまや公害というものがここまではっきり認識されるに至りまして、私、着任して間もないことでございますけれども、通産省は公害には協力しないというような行政の姿勢というものは、もう今日ございません。非常に変わってまいりまして、むしろ産業に対して直接監督権があるのであるから、その立場から公害についての発言をすることが公害防止のために有効である、こういう考え方に姿勢が変わってまいりました。これは先ほどの話と同じでございますが、縦割りの行政というものをしばらく前提といたしまして、その中で、行政の姿勢によってはむしろ縦割りであるがゆえに強い発言ができるという場合もございますから、いま程度の姿勢になり、これはもっと望まなければならぬところもございますけれども、こういう傾向になってまいりましたら、いまの姿で公害防止に十分協力できるのではないか、かなりそういう考え方が定着しつつあることを申し上げることができると思います。
  62. 木原実

    木原委員 これは、なかなか当面の論議としては私どもいろいろ申し上げたいことがありますけれども、現実の日程にのぼる問題ではないと思いますが、ともかく方向としては、これだけ公害の問題が社会的な問題としてのウエートを占めてきた段階ですから、一般論ですけれども行政もやはりそれに対応する姿勢をとっていただきたい、こういうように考えるわけです。  そこで、たまたま姿勢の問題が出ました。これも一般論で、通産省はだいぶ変わったんだ、こういうお話を聞きましたけれども、変わったというのは中身の問題として、たとえば企業に対する一種の行政指導というような側面の中で、あるいは方向の問題として、たとえば公害に対する企業責任のとり方はいろいろありますけれども、問題を起こしたときの責任のとり方ないしは企業が操業をする場合あるいは設備投資をする場合に、公害を引き起こす部分に対する投資なら投資ということをきちんと織り込んでいく、そういうような形で指導をしていく、こういうようなことだというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事後ばかりでなく予防的な意味での責任ということでございます。
  64. 木原実

    木原委員 もう一つ、これは通産省の仕事の中にも入ると思いますけれども公害に対する技術的な開発の問題、これらの問題について何か構想はお持ちでございますか。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうこともやり始めておりまして、産業構造審議会の中に公害部会というものを設けまして、その見地からの検討をしておりますのと、工業技術院に産業廃棄物の処理というようなことについて新たに——これは非常にむずかしい問題でございます。ことにプラスチックになりますとむずかしい問題でありますが、そういうことの研究を始めたところでございます。それから脱硫につきましては、すでに工業技術院で一つのプロジェクトは完成し——これは排煙のほうでございます。直接脱硫の研究を今回から始めたわけでございます。
  66. 木原実

    木原委員 私は、特にそういう可能性のある技術的な開発、これは進めてもらいたいと思うのです。  ただ、脱硫装置の話が出ましたけれども、脱硫装置等を個別企業が設置する場合に、しばしば補助金等が出るわけです。これについては、たとえば国民の中からかなり抵抗があるわけです。ものの考え方として、公害というたいへん便利なことばなんですけれども、これは実は私企業のもたらす、何か私企業の不備に基づく害じゃないのか、それに対して一々あるいは自治体なりあるいは国なりが補助金を出していくのはおかしいじゃないか、当然企業はその責めを負うのならば、その部分に対する支払い分というものをきらんと内部でやるべきではないのか、こういう議論があるわけです。これらの点についてはいかがでしょうか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少し極端な例を申し上げますが、これは実際にあったことでございます。  隅田川の上流のほうに皮のなめしをやっておる工場がございまして、水質を汚濁するということで数年前に注意をいたしたことがございます。まだ公害ということが今日ほど言われないときであります。そのときに企業が申しましたことは、自分たちがここに立地したのは川があったから立地したんである、だれが来るよりも先に実はここに先住民族としておったのである、この川を自分たちは利用する権利があるというようなことを当時申しました。いまになるとそういうことはもう申さないと思いますが、そういう時代がまだここ数年前にあったわけでございます。したがって、公害というものは、今日企業世の中に迷惑をかけてはいけないという気持ちはわかってまいりましたけれども、しかし、実際に従来そういう態度で経営が行なわれてきたわけではない。そうしなければならぬというこれからの問題としてはわかってまいりました。そういう事実があると思います。  で、時の経過、技術の進歩とともに公害というものは企業の側にきつくなっていく。私は、これはそうなければならないし、当然だと思いますが、当面、それならば全部いままでの計画を改めて、みんなの負担でやれということは少し酷なところがございます。  それからもう一つの問題は、たとえば重油の脱硫につきまして関税の軽減をするというようなことでございますけれども、ちょっとこれは理屈のようになりますが、石油精製業者が公害を与えておるわけではない、石油精製業者がつくりましたものが第三者に使われるときに公害を起こす、こういう関係になっておる点がございますから、そこで一々のそういう公害防除策をおのおのの重油の使用者が講ずるよりは、むしろもとのところで脱硫をしたほうがよかろう、そういう意味で、これは受益者は国民であるという考えから税金を使っても不当ではなかろう、こういう判断をいたしたわけでございます。それによって何人も企業上の利益を得るわけではない、国民の利益に還元されると、こう考えたわけであります。
  68. 木原実

    木原委員 なかなかそこまでまいりますと話がむずかしくなってくると思います。ただ、ごく素朴なといいますか、一般的な納税者の考え方としまして、あの企業はあの仕事をやってもうけておるのじゃないか、そのために煙を出しておるのだ、当然それは自分のところのコストにはね返ってきてもいいじゃないか、確かにこういう理屈も成り立つと思うのです。これは納税者の議論としては、そういうわれわれは被害を受けた上になおあの会社に対して税金で措置をする、これは踏んだりけったりではないか、こういう議論は私は一つの議論として当然成り立つと思うのですね。その辺、過渡期のかね合いという問題もありますけれども、しかし方向としては、当然その企業が操業するにあたっては、その企業が排出するたとえばばい煙ならばい煙については、やはり自分の資本の中であるいは利潤部分の中で措置をしていくことが、原則としてあるいはたてまえとしてはそのとおりだ、こういうふうに解釈をしてよろしいでしょうか。そこまでまだいきませんか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 なかなかそこまでいききらない段階だと思います。もし、いまの木原委員のような立場をとりますと、そうすると企業が、法律に触れない限りはやりたいことはやるというところへ逆戻りをしてしまうおそれがございます。悪いことだと考えながらやっておるのであるとすれば——悪いというのは法律的にという意味じゃございませんが、なるべくならばしたくないということであるならば、何かの形で防止施設をつくることを国として助成してやる、あるいはむしろ奨励してやるということは、私は有効な施策だと思います。
  70. 木原実

    木原委員 確かに奨励をしてやることはいいことなんですが、実はその辺がおそらくこれからの公害のトラブルが起こる場合の何か一番の問題点のような感じがするわけです。その点でしばしば通産省の態度が、たとえば公害の被害を受ける側から見て割り切れない、こういうことにも実はつながっていくと思うのです。  そこでその限度の問題、いろいろな問題がありますけれども、そうしますと、まあ通産省としましては、企業責任ということはもちろんたてまえの問題としては当然追及をしていくし、法的な措置も講ずる。しかし公害企業の中で排除をするというような方向については、いろいろな、たとえば脱硫装置を設置するために融資をしてやる、あるいは何がしかの奨励の意味のことも含めてやらせる、こういうことでやっていこうというお考え方でございますね。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようでございます。
  72. 木原実

    木原委員 これはおそらくほかの委員会でもよく問題になったと思いますし、私もここで詰めた話をしたいとは思いませんけれども、確かに奨励も必要でございますし、それからいろんな設備を法的に備えるべき基準を設けてやらせるというようなことも必要だと思うのです。しかし企業は、これは一つのどう言ったらいいんですか、金で回っているわけですから、やはり企業責任を自覚させるということは、これは道徳的な説教ではどうにもならぬと思うのですね。だから一方では国の奨励も、これは私も全部悪いとは申しません。しかしながらやはり金の面で、あなたのところが仕事をしておる以上は、これだけの分はちゃんと社会的な責任として設備に入れなくちゃいけないんですよと、これだけはもう当然企業としては金を設備なり何なりに入れなくちゃならぬわけですから、そういうことでやはり規制をしていく。企業責任を自覚させる。少なくともこの方向はかちっとおとりになる、こういうことでございますか。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことでございます。ことに基準が設定されました場合にはそういうことでございます。  ただそのときに、これはお好みにならぬことになるのかもしれませんが、その基準を守るためにこういう施設をしなければならない、わかりました、その施設についてひとつ特別の償却をさせてはもらえませんか、というようなことを申す場合がございます。それについてはその程度のことはよかろう、これは奨励策としてとるというようなことはやはり考えなければならないのではないか、考えてもいいと思います。
  74. 木原実

    木原委員 まあなかなかむずかしい問題で、これは議論は別の機会に譲ります。  ただもう一つは、これもまたあちこちであるわけでありますけれども一つ企業がたとえば煙を出す。これだけでは、これは基準にも沿っておるし、直接その企業責任ではない。しかしながら最近のようにコンビナートというようなシステムになって同じような企業が数社集まって数本の煙突からばい煙が出る。それが集合しますとしばしば被害を及ぼす。こういう場合に、この被害を受ける住民の側からすれば、当然あの煙のためにぜんそくになったんだ、こう思っていても、争いになりましても、企業責任といいますかそういうものが明らかにならない、こういうことがあるわけですね。そういう問題につきましては、たとえばコンビナートというようなかっこうで多数の工場が集合をする、これには一定の限界を持つ、こういうような指導の方向というものが当然必要になってくると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは環境基準をまず設定いたします。それはところによって異なると思いますが、環境基準を設定いたしまして、その環境基準が守られるためには、仰せのように個々の排出源について排出基準をきめなければならないことになります。それはまたいたしております。それも地方によって違いますが、環境基準が守られる程度の排出基準を個々に設定していく。今度はその個々の問題でございますけれども、たとえば東京都のように個々というのが一工場単位であるのか、一煙突単位であるのかという議論にも当然発展いたしますけれども、当然環境基準を守るためには個々の排出基準を設定しなければならない、またそのようにやってまいっております。
  76. 木原実

    木原委員 これもまた議論をしますとあちこちで係争になっている問題ですからこれ以上申しませんけれども、それと関連いたしまして、最近千葉県の知事のほうから、実は千葉県の富津という地区、いまの新日本製鉄が進出してきているところなんです。ところが新日本製鉄のほうから関連企業誘置をしたい、こういうことで新たに埋め立て地をふやしたい、こういうことで通産省の助言を求めている、こういうふうに聞いておるわけです。もともと同じ海岸地域に、隣接の海岸地域には市原という地区が、コンビナート地区としてたいへん発展をいたしておりまして、その反面公害という側面から見るとたいへん好ましからざる姿を日一日と濃くしておるわけです。ところが隣接の海岸地帯に今度またあらためて千八百ヘクタールほどの大埋め立て地を造成をしまして、そこにまたあるいは三井グループであるとか三菱グループであるとか、こういう企業が進出をしてくる。この中には火力発電もあるわけでありますけれども、その上にさらに新日本製鉄がそういう土地を要求してきた。こういうことで、どうも伊能先生もおられますけれども、千葉県というところはまだいまでも開発好きで、もうそろそろいいじゃないか、こう言っておるのですけれども、何か工場が来ると発展するというような、そういう根性がありまして、どうもやりたいような意向なんです。それで私もできたものをいまさらぶちこわすわけにはいきませんからやや静観をしておるわけですけれども、どうも市原のコンビナートに続いて、新日本製鉄を主体にした大コンビナート地区というようなものがあの辺にまたできますというと、まずこれはえらいことになると思うのです。東京湾の汚染の問題もあるでしょうし、花の房州というのは再び皇太子殿下には来てもらえないような地域になるというようなこともありまして、はなはだおもしろくないわけなんです。しかしそういう意見を求めておるという話を聞きましたので、もしそれに対する意見がまとまっておりましたら御見解をひとつ承りたいと思います。
  77. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 お尋ねの件につきましては、昭和四十五年二月二十三日に千葉県知事から企業局長あてに依頼がございまして、その問題といたしますところは、先生御指摘のとおり八幡製鉄の拡充に伴う土地の増加、それから公害問題、その二点についていろいろ問題がありますが、通産省としての考え方を参考までに聞かせてくださいという依頼でございます。  通産省といたしましては、従来五井、市原地区につきましては石油精製、石油化学の非常に大きなコンビナートでございますので、大気汚染の問題に特に問題がございまして、現地の千葉県当局あるいは進出企業、あわせまして協議会をつくりまして、将来の昭和四十七年ないし四十八年を目標にいたしまして環境基準を確実に守るべくいろいろ総合的な事前調査をやっております。これはほぼ成功いたしまして、大体将来とも五井、市原地区につきましてはこれ以上大気汚染が進行しないための対策というものを、各企業も入りまして具体的に講じておる次第でございます。  その次の段階で君津あるいは富津地区にまた石油精製、石油化学を中心にした大コンビナートができます場合には、重合汚染の問題が出てまいりまして両地区とも問題になるという問題意識をわれわれのほうも実は持つわけであります。したがいまして、これは大型の風洞実験その他克明な科学的な手法を使いまして結論を出しませんと、一がいに通産省としての見解も表明できない段階でございますので、現在そういう方向で準備を整え、できるだけ早い時期に御返答申し上げたいというぐあいに考えておる段階でございます。
  78. 木原実

    木原委員 これは具体的なことですから、県とそれから通産省との関係ですからあまり立ち入りませんけれども一つの問題は、市原地区もおっしゃったようにいろいろと環境基準その他を定めましてやっておるんですが、これはたいへんふくれ上がっておりまして、要するに工場が多数集合したものですから、おそらく当初の計画以上に集合しておる、ですから個々の企業の措置はできましても、集合したものが競って煙を出しますと、もうこれは、——御案内のようにあすこを造成をする場合にも、すでに四日市等の経験等もありましたから、埋め立て地と住宅地を隔てるとか、いろいろな措置を講じたと思うんです。しかし、それにもかかわらず、第二の四日市として新しい公害地域、汚染地域になる、こういう状態があるわけです。それでもっていきますと、もう君津は海岸沿いでございますからね、そこに第二コンビナートみたいなシステムができますと、これはたいへんではないかと考えるわけです。  そこでお伺いしたいのは、環境基準のこともそうですけれども、しかしながらコンビナートという形で工場化する場合は、やはり立地の問題その他があります。立地的に一定の限界というものを国のほうで示してもらう。一般的なことでいってもそうですけれども、環境基準と同時に、工場等は一定の限界というものを何か線を引いてもらう、こういうことにしませんというと、やはり地元の利害あるいは企業の利害、そういうようなことで、これは少々の規制がありましても、いいと思ったら出てくるわけでありますから、そして結果においては個別の対策はできても、全体としてはやはり空気は汚染をする、こういう結果になる。こういうことで、私どもとしては通産省の態度なり方針なりをひとつ定めてもらいたいという気持ちがあるわけです。いかがでしょうか。
  79. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 工場の進出を具体的にチェックする、抑制する手段は不幸にして現在通産省も持っていないわけでございますが、現実の行政指導といたしましては、各地区ごとに産業公害総合事前調査という調査を実行いたしまして、五年先、十年先のあるべき工場の立地状況を前提といたしまして、その地区の環境を保全するための対策を考えるわけでございますので、御指摘の五井、市原地区を例にとりますと、五井、市原地区の環境基準を将来とも完全に守らせるためには、SO2の総排出量として一日二万ノルマル立米以上になると非常に危険であるという目標を立てまして、今後いかに工場がふえようとも、その工場から排出されるすべてのSO2が二万ノルマル立米以下におさまるための具体的な対策いかんということで、各工場の建設計画あるいはそのボイラーの計画、個々の施設の計画、そういったものを具体的に指導しておる段階でございまして、この手法は五井、市原地区だけではなくて、全国各地の新しいコンビナートにつきまして、それぞれの立地条件に応じまして絶対的な数値目標、そういうものを掲げて指導し、したがって、ある新しい工場があとから出てきて、それがある絶対数値をSO2がこえるような見込みになりますと、その工場の進出を認めるか、あるいはいままでできておって稼働しておる工場の設備を改善さしてSO2の排出量を減らさせるか、そのいずれかの方法について強力な行政指導をしていくというような方法を講じておるわけでございます。
  80. 木原実

    木原委員 そうしますと、一口に言いまして、個別の企業に対してきちんとした基準を守らせる、そのことによって、汚染の限界を確保していく、こういうことで行政指導をやっていく、こういうことでございますね。
  81. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 そのとおりでございます。その場合の基準は、法律できめられました基準よりも、むしろきびしい基準を適用しております。
  82. 木原実

    木原委員 対策としてはそうだと思います。ところが、私は先般四日市へ参りました。御案内のようにあそこは第三コンビナートになるわけですが、新しいコンビナートを建設されているわけですね。地元の人たちは非常に不安に思っておるわけです。ですから、局長おっしゃるように、個別の企業に対して設備もさせる、あるいは限界を設ける、したがってそれが全部集合しても汚染には線が引かれるのだ、こういうことで、確かにそのとおりだと思うのですけれども、しかし、感じとしましては、現にたとえば全体の排煙量が確かに基準以下でありましても、しかし風向きによりましては、四日市なんか確かにそうなんですが、例の磯津というようなところは風向きによって集中するわけです。あるいは季節によりましてはね。そのために部分的に基準をはるかに越えるような現象が生まれる、そこに被害が出る、こういうような形があると思うのですね。ですから、これはあるいは法律の上で、あるいはそういう個別企業に対する個別の指導の上で限界は設けられても、煙が上に上がったときには、気流の状態その他によってしばしば左右される不測のことが起こるわけです。したがってそこまでは押えられないわけですね。そうしますと、やはり帰するところはもうこれ以上工場はふやしてもらいたくないという素朴な住民の声というもののほうが実は正論ではないのか、こういう感じもするわけです。市原、五井地区においてもそういう状況が出ているわけですね。ですから、たてまえの上や計算の上では被害が出ないところに風向きによっては被害が起こる。これはあの地区全体の問題ではなくて、部分的にここにと思うようなところに被害が生じておる。四日市の場合には、磯津地区というのは、御案内のとおり典型的にそういう被害を受けているところですね。そういう問題が実はあると思うのです。ですから、コンビナートというのは、企業にとっては立地条件がいい場所には違いないと思いますけれども、しかし公害を防止していくというたてまえから見ればどうしても、コンビナートではあっても工場が多数集合するというところについては限界を設けてもらわなくちゃならぬ、こういうふうに考えるわけですが、その辺はいかがでしょうか。
  83. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、これは法律的に強制する手段は現在ないわけでございます。先生御指摘の、いろいろの特殊条件に伴う特殊の地域の汚染という問題を一〇〇%取り入れることは、現在の科学的な手法をもっても不可能でございまして、できるだけそれに近い形で完全な予測を行ないながら、煙突の高さだとか、あるいは工場の配置計画なり、そういうものを事前に指導いたしまして、そういった目的を達成したいという方向で努力しておるわけでございまして、現に五井、市原地区につきましても、一時河岸の火の見というところに非常に強い汚染状態がしばしばあらわれた。最近の指導の結果、この局地的な汚染状況は非常に改善されました。徐々に力をあらわしておるというところでございます。
  84. 木原実

    木原委員 私どもの希望としましては、おことばにもかかわらず、やはり被害をもたらす工場の集合については、どこかで再検討していただきたい、こういう気持ちを持つわけであります。  それから煙突の問題が出ました。この煙突も、やはり高く上げるとか、あるいは集合煙突にするとか、いろいろな措置が講じられてまいりました。これはやはりたての半面があるようですね。高くなったがために拡散をしまして、本来ならば被害が及ばないところにも被害が及んでいく。ですからこれはきめ手にはならない、そういう感じがするわけですが、それよりも、先ほど大臣もちょっとおっしゃいましたけれども、やはり硫黄分の少ない重油を使用させる、それについての関税上の措置、これは、石油関係はなかなか入り組んでおりますから、全部というわけにはまいらないでしょうけれども、少なくとも重油をおもな燃料にするところに対しては、できるだけ硫黄分の少ない油を入れさせる、こういう指導の方向というのは、これはおとりになれるわけですが、やっておられるわけですか。
  85. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 この問題につきましては、先般総合エネルギー調査会の低硫黄化部会で昭和五十二年までを目標にいたしました一つの線を出しまして、目標値が四十八年におきまして平均の硫黄分一・二五、五十二年におきましては〇.八%というような一応の目標値が出されまして、それに対して、低硫黄の原油の輸入、低硫黄の重油の輸入、それから国内におきます重油の脱硫設備、排煙の脱硫設備、そういった総合的な方策を講じてこの目標を達成しようということで、これは石油業界も、それから消費者であります電力業界あるいはその他の業界も一致したコンセンサスを得られました上での結論でございまして、現在その線に沿いまして総合的な対策が講ぜられております。たとえば脱硫重油に対するキロリットル当たり三百円の関税軽減という措置が四十五年の七月から講ぜられることになりました。これも燃料を低硫黄化するための非常に大きな対策としてわれわれは評価しておるわけでございます。
  86. 木原実

    木原委員 これはひとつ、何といいますか、これまたきめ手になるかどうかは別といたしまして、やはりあるものは公害防止という見地からぜひ推進をしていただきたい、こういうふうに考えます。  それから話がちょっと違いますけれども、コンビナート地区の災害の問題ですね。川崎地区なんかでも、隣接地域で爆発事故その他が頻発しております。幸いにして大事に至っておりません。しかし御案内のとおりコンビナート地区で何か不測の事故が起これば、これはたいへんなことになる、こういう可能性を絶えず含んでおるわけです。そこで私どもはやはりしろうと目で見まして、先ほどの事故の問題ではありませんけれども、いろいろな油のパイプが土の中を、あるいは四日市のごときは市街地の道路の上を渡っているわけですね。おそらく工場を建設した当時はそれでも安全の度合いは高かったと思うのですが、その後の状況の変化というものも確かにあるわけです。その上を走る車の重量そのものもかなり違ってきておる。あるいは四日市の場合なんかは文字どおり市街地ですから、これは状況が変わってきている。ですから周囲の住民も当然不安を覚えますし、それからまた技術的に見ても、ほんとうにだいじょうぶだろうか、こういう感じがするわけですが、その辺についての何か、公害といいますよりかむしろ災害の予防という観点からの指導の方向というものはないものでしょうか。
  87. 山下英明

    ○山下政府委員 化学コンビナートの災害は私どももたいへん重視しておりまして、幸い高圧ガス取締法を施行しておりますので、それによって規制しますとともに、四十三年の四月からコンビナートの災害に関する予防の基準をつくりまして、現在関係コンビナート十幾つございますが、周知徹底につとめております。要点は、一つ一つの工場ではいけませんので、協議機関をつくり、その予防施設を相互に利用し合う等、コンビナートとして災害を防止していく、これが趣旨でございます。
  88. 木原実

    木原委員 これは具体的なこととしては、特に私はあの四日市の、御案内かと思いますけれども、道路を渡って、しかもかなり底いわけです、これは非常に危険なような感じがいたします。あれは比較的古いコンビナートですから、建設の当時はあれで通用したと思うのですが、何か措置をしないと不測の事態が起こるのではないかという感じがいたします。これは意見として申し上げておきます。  それで、いまおっしゃいました、各社が共同して災害防止のそういう施設なり何なりを利用してやっていこう、こういうことなんですが、なかなか各企業とも何か企業秘密みたいなものを持っておりましてね。私どもの知っておる中でも事例がありました。両三年ほど前に三井ポリケミカルという化学工場が、これは幸いにして大きな事故ではありませんでしたけれども、しかしかなりの事故を起こしましたときに、隣接の消防車が来たときには入れないわけですね。これはまことに、企業のセクトもそこまでいったかと思われるくらいで、自分のうちが燃えているのに消防車を入れない。何だと聞いたら、これは企業秘密があるからだというのですね。これもまた愚かなことなんですが、災害を防止するためにこの企業秘密なんというものが一体どこまで通用するかですね。たとえば予防措置として県なりあるいは国なりが検査をする。この場合は、もちろん企業秘密というものがあるにもかかわらず立ち入っていつでも検査ができるわけですね。その辺はどうでしょうか。
  89. 山下英明

    ○山下政府委員 現在では、災害防止に関しましては、私どもの見るところ、企業秘密ということから連絡がないというか、そういうことはほとんどないと思っております。たとえればコンビナート間には災害防止機関の直通電話も全部引いておりますし、共同で予防訓練もいたしております。御指摘の消防車が、出したほうの企業では助けるつもりで出したけれども、災害が起きたほうの企業のほうはその薬品の性質をよく知っておって、水をかけてはいけないということで争いごとが起きた報告は受けておりますが、現状では、一致してやろうという気概には遜色ないものと私ども思っております。
  90. 木原実

    木原委員 これは企業間のセクトもあるでしょうし、いろいろなこともありますけれども、しかしやはり災害という観点では、いまおっしゃいましたような方向で、個々の企業を守るという意味からも、しかもああいう高圧ガスを多量に使用しておるわけですから、これは近隣に及ぼす影響が大きいと思うのです。それだけにきびしくやっていただきたい、こういうふうに思います。  それに関連をいたしまして、いま申し上げた企業秘密ですね。これが災害の場合——つまりこういう言い分なんです。私どものほうでも高いパテント料を払って技術を入れた、たまたま通産省にいろいろな報告をしたら、それがよその企業に漏れてわれわれは迷惑をしたのだ、通産省といえどもあまり信用ができませんといって責任者の人がうそぶくような実は始末であるわけです。そこまでくれば何をかいわんやです。そういう厚い壁がありますから、少なくとも災害ということについてはそういうワクを越えて協力をし合う、こういう態勢をひとつとってもらいたい、こういうふうに思うわけです。  それでは、どうもありがとうございました。      ————◇—————
  91. 天野公義

    天野委員長 農林省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  92. 木原実

    木原委員 設置法の改正に関連をいたしまして二、三お伺いをいたしたいと思いますが、その前に大臣一つお伺いをいたしておきたい問題があります。  最近、蔬菜、野菜の値上がりがことしもございました。ジャガイモがことしはたいへん高いというようなこと、あるいはまた、二月ごろには毒ジャガイモが出回ったりなんかしまして、たいへん消費者のほうから憤激があった。調べてみますと、この毒ジャガイモは、産地でたいへんに値上がりをしたものですから、業者が来てブルドーザーで無理やりに買っていった、こんなようなこともあったというふうに聞いております。ところがジャガイモにつきましても、大臣御承知のように、一昨年の暮れあたりは、これはもうえさにもならないというくらいに非常に過剰になった。ところが、ことしはたいへんにジャガイモが不作で、したがって値上がりをした。しかもばか値が続いているわけですね。そのようなことで、他の蔬菜もそうですけれども、いずれにしましても価格が乱高下する、こういう問題が出てきていると思うのです。特にこの二月、三月、四月にかけまして、野菜の問題が物価値上がりの元凶というふうに指定をされたわけなんですが、消費者価格の安定という観点から、大臣のほうでこれらの問題に対処する方針がございましたら、お示しを願いたいと思います。
  93. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 野菜につきまして、いまジャガイモの例がございましたが、いま一番問題になっておりますのは、この間、予算委員会等でも——春野菜、冬野菜についてたいへん新聞種にもなりましたし、御存じのようにこの間たいへん長期のひでりもありましたし、それから寒波の襲来等で冬野菜がああいうことでありまして、こういうことのために私どもはできるだけ早く春野菜について出荷のできるように地方の農政局を通じていろいろやっているわけでありますが、私ども、価格の点につきましてはいろいろな問題があるんじゃないかと思うのであります。伝えられるところによりますと、万博その他で野菜がみんな西へ行ってしまったとか、いろいろいわれますけれども、とにかく最近だんだん需要が堅調であり、それにちょっとしたそういう変動がありますとすぐ上がる。同時にまた、生産者から消費者に渡る中間の流通過程においていろいろな問題があるようでございます。しかし、まあ流通過程と申しましても、この流通の過程にある人々というものは、決してどうもたいへん暴利をむさぼっておるようではないようであります。中間経費というものがそういう意味では少しずつかかっても、やはり消費者に渡るときにはそういう影響を持ってまいる。そういうことについても、これから私どもはそういう理由を根本から追跡して、消費者の合意を得られるような安定的価格で供給できるように最善の努力をしていきたいと思っております。そういう意味で野菜その他のことについて措置をいたしておるわけでございます。
  94. 木原実

    木原委員 これは天候に左右されるという要因が確かにあるわけであります。しかしながら、お天気まかせというのは、そうなりますと、政治行政も要らないということになるわけであります。したがって、私どもとしては問題の本質が一体どこにあるのか。総合農政ということがいわれ、いまは農林省があげて米の問題に追われておるようでありますけれども、しかし蔬菜についても、果樹につきましても、あるいは畜産につきましても、海外からの輸入がふえておるというようなことも含めまして、一時的な現象の問題はともかくといたしまして、米と同じように、野菜もくだものも、あるいは畜産、牛乳等を含めまして、農林省が取り組む姿勢として、物が過剰なのか、それとも足りないのか。たとえば野菜については絶対量がだんだん不足をしてきたから相場が上がるのか、あるいは一昨年はたとえばジャガイモができ過ぎて困った、こういうような現象があるわけですが、これをならしてみまして、実際に過剰な問題として対処しようとするのか、それとも不足をしておるとして対処をしようとするのか。総合農政というのは私はよくわからないのですけれども、総合農政という観点から見て、野菜、果樹、畜産等を含めて、農産物は過剰と受け取っていいのか、不足をしていると受け取っていいのか。この辺はどうですか。
  95. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ものによっていろいろ違うだろうと思います。それで、木原さん御存じのように、米はなるほどだれが見ても非常に過剰でありますけれども、その他のものにつきまして、それぞれの品物によってはずいぶん違うようでありますが、米がああいうふうになりましたのも、技術が進歩して、それから非常に土地改良その他の実効があがってきたとかいろいろ理由もありましょうが、そういうことで生産があがったと同時に、今度は一般の日本の国民の食糧に対する嗜好の傾向に非常な変化が生じてまいりました。そういうようなことで、たとえば米が余っておるから、できるだけその消費を拡大しようというので、文部省も大いに協力してくれまして、学校給食なども骨を折っていま一生懸命やっておるところですけれども、しばらくの間仕込まれてきました子供たちが、場所によってはあまり歓迎しないといったようなこと、そういうところでどうやって消費を拡大していくかという骨が折れる問題もある。ところが一方におきまして、統計をごらんになってもわかりますように、一人当たりの野菜、くだもの、肉類等に対する消費量が逓増しているわけでございます。そこで、私どもはそういうことの大体の将来を見通しまして、野菜、くだもの等の嗜好などの傾向も考えまして、たとえば野菜で申せば四十五年度予算まで入れまして、八百十何カ所の指定地をつくりまして、そういうところでその地域地域に適した野菜について生産を増強してもらうようにしている。けれども、その野菜の中でも、御存じのように、わりあいに冷凍しても保管のきくものもありますし、あるいはキャベツみたいに非常に寿命の短いものもありますので、なかなかこれがむずかしいのでありますけれども、大体の傾向を勘案いたしまして、増産させていくつもりであります。同時にまた、いま私どもが野菜その他に考えておりますのは、需要の動向を考えながら価格の安定ということをどうしてもしなければなりませんので、そういうことに力を入れながら、大体の国民の需要をまかなえるような努力をしていかなければならない、こう思ってやっておるわけであります。
  96. 木原実

    木原委員 私がお伺いをしておりますのは、やや政治論になりますけれども、農政の根本のところを実はお伺いをしておるわけなんです。おっしゃるように、米は、過剰という問題で、農政が一つの大転換をいま遂げようとしておるわけですね。そして、それを踏まえて、総合農政ということが少なくともことばとして打ち出された。総合農政のことばの中身の問題として、やはり確かに米は過剰であって、過剰の対策に早い話が農林省は追われておる。しかしながら、蔬菜あるいは果樹等についても、すでに過剰の問題が出てきております。畜産についてはどうなのか、蔬菜についてはどうなのか、こういう問題が私はあると思うのですね。従来のように絶対量は足りないし、あるいはこういうものを、国民の食生活が変わったから、それに応じてやはり行政指導の方向としてつくらせたい、あるいは畜産をもっと振興したい、こういうものであれば、これは、また一つの食糧嗜好、消費の変化に対応する農政のあり方だと思います。しかしながら、あとでまた触れますけれども、海外から、輸入の自由化の進展等に伴って、ますますやはり過剰になっていくということになれば、この辺でまた農政の中身も、蔬菜対策にしましても、果樹対策にしましても、当然変わってこなければならぬ。それがどうも、米については比較的何か態度がはっきりしつつあるように思いますけれども、蔬菜やあるいは果樹やあるいは畜産等については、何かまだまだ農林省の腰が定まってないような感じがするわけであります。一体これからの蔬菜や畜産や果樹の指導の方向というものは、ますますふやしていくというのか、それとも一定の限度にとどめて、海外からの輸入等にまつ、こういうことでいくのか、その辺はいかがでしょうか。
  97. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 よくわかりました。私ども今度米の生産調整をやるにつきましても、米をつくらせないかわりに、作付転換を原則としてやってくれということを農家にお願いをいたしておることは、御存じのとおりであります。転換作物につきましては、その地域、その地域の実情に応じて、地方の自治体、それから農業団体、わが方の農政局等が緊密に提携をいたしまして、その地域に即した転換作物をどのように、どういう状況で増産していくかということをやっておるわけであります。その中でも、私どもさっき申し上げました国民の食糧に対する嗜好の傾向を考えまして、畜産のようなもの、これはぜひやりたい。しかし畜産は、御存じのように、まず草が必要でございます。濃厚飼料の原料につきましては、これは、わが国でああいうものを、いまの需要を満たすだけまかなうことは、なかなかむずかしいのですけれども、畜産を奨励し、飼料作物を増産してまいりたい。その他果実、野菜、これは時期によって果実などはやや波がありますけれども、まだ日本の農業といたしましては、そういうものを基礎にして、世界的な傾向であります果樹、かん詰め等の方向にも、十分進出の可能性があると思いますから、そういうものを育成してまいりたい、こういう考えでありますので、米にだけ、いまは渋滞いたしたことに対する処置をいたしておるわけでありますが、その他については、できるだけそれにかわるべき嗜好の強いものを強化してまいりたい、こういう考えであります。
  98. 木原実

    木原委員 作付転換という問題が出ましたけれども、先行きは、それぞれの地域の状況に応じてと、こういうことがございました。それは、そういうことになると思いますけれども、これは生産者の側から見ますと、腰が定まらないと思うんですね。たとえば蔬菜をやっている近郊の農家にしましても、ことしはタマネギか何かがたいへんな高値を呼んで当たった。しかし来年、それがまたどうかというと、これは毎年価格の乱高下に左右されまして、春先にはいつもばくちをやるようなものだ、ことし、これを、キュウリをやって当たるかどうか、こういう問題を持っているわけです。そこへ持ってきて、米からの転換、かりにこれからどのくらい蔬菜に回るかしれませんが、蔬菜なら蔬菜に回るということになりますと、これまた、たちまちにして野菜の生産過剰という問題に結びつくでしょう。その辺の指導の方向というものはどうでしょうか。
  99. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のとおりだと思います。野菜なんていうものは、かりに無計画に増産されてまいりましたら、非常にむずかしいことになる。したがって、そういうことにつきまして、いまさっき申し上げましたように、大体将来の需要の動向というものをおよそ計算いたしまして、そういうことについての指導も、いま農林省も、それから地方農政局が、地方自治体や農業団体等と話し合いをいたしながら、そういう需要に見合うような計画を進めてまいるように指導している、こういうことであります。
  100. 木原実

    木原委員 これは生産者のほうも消費者のほうも、価格という面から見ましたら、望ましいのは安定していることだと思うのです。つまり、ことし高い安いというのは、裏表の関係ですから、作物が過剰であるということと、それから足りないということとは、やはり裏表の関係になっていくと思うのです。そういう野放しの状態ではなくて、つくるほうも買うほうも、大体長期に横ばいの状態で提供をする、提供をされる、こういう関係が望ましいと思うのです。ですから、これは、やはり行政の方向としても、価格というところに焦点を置いて、いわば、そういう方向を目ざして、たとえば作物を指導するとかあるいは流通機構の整備をするとか、こういうことになってくると思います。それが、ことしは、もう御案内のとおり、べらぼうな野菜高であった、ところが一昨年は、たとえばジャガイモに例をとりますと、牛も食わないほどでき過ぎた、こういうことをやっているところに、価格問題の裏側にある不安定的な要素というものが非常に問題になってくるのではないか、こういうふうに考えるわけです。ですから、価格を横ばいにしていくという方向で作物の指導をする、あるいはまた流通機構の整備をする、こういう方向でやっていくというふうに理解してよろしゅうございますか。
  101. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そういう方向に努力をいたしたいと思っております。
  102. 木原実

    木原委員 もう一つお伺いしたいわけですけれども、畜産の問題です。今度設置法の中で草地の機関ができるわけでありますけれども、たとえば畜産につきまして、一体畜産の国内での自給率というものは、どの程度のところに定めたいとお思いですか。ということは、御案内のとおりに、これに関連いたしまして、海外からの、いわゆる自由化に伴う輸入の畜産物もたいへんふえてくる状況にあります。あるいは乳業関係につきましては、外資が入ってきて、提携をして、外からの原乳その他を入れるということも急ピッチで進んでいる、こういう姿があるわけです。そういう中で国内での畜産行政の指標になる自給率というものは一体どの程度に押えていくというか、目標を定めていくお考えなんでしょうか。
  103. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもは、いわゆる総合農政という立場で国民の需要の比較的堅調なものを選んで、それに方向を向けていくと申し上げました。農林省が発表いたしております農産物の自給率の見通し、五十二年を目途にいたしまして一まだまだでございますけれども、それによりますと、ただいまのお話の牛乳乳製品は八七%から九六%、肉類は、これは鯨を抜きますけれども、約八三%から九四、それから鶏卵これは大体一〇〇%あるいはちょっとその上にいくでございましょう。この程度のことはわれわれとしてもできることであるし、これをひとつ目標にしてまいりたい、こういう計画であります。
  104. 木原実

    木原委員 そうしますと、現にたとえば牛乳についていいますと、御案内のように、すでに過剰という傾向が顕著に出ておるわけですね。そういう問題を踏まえながら、いま大臣がお示しになりましたような自給率を目途にして生産体制をつくっていく。その場合に、これから外から入ってくるものについては、これはいわゆる自由化の残存の問題と関連をするわけでありますけれども、この辺の兼ね合いの問題はいかがですか。どうも、私どもはやはり不安な感じがするわけですけれども……。
  105. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 一般的に申しまして、わが国は貿易資本の自由化、やはりOECDに参加をし、わが国が国際的に経済活動をしていくためには、そういう方向をとることが賢明なことだと思います。けれども、これはほかのたとえば自動車にいたしましても、あるいは特に農産物などにいたしましては、野放しの自由化ということは競争力がないものがたくさんありますから、そういうものまで自由化することは私どもは非常に困難でありますので、いたしませんことは御承知のとおりでありますけれども、しかし、いまのお話の中心であります酪農乳製品それから肉類、これはもう御承知のようなシステムで、わが国の乳製品につきましては、乳価に対する不足払い制を実行いたしまして、畜産振興事業団がああいうやり方をして、わが国の酪農製品が海外のものと一応競争のできるような段階の取り扱いをいたしておることは御承知のとおりでありますが、私はやはり昭和四十五年度予算で学校給食に対する牛乳の量をふやしました。しかし、それだけではなくて、わが国の国民の牛乳の使用量というのは国際的に比べましてたいへん少ないわけでありますが、そういうようなことも考えなければいかぬと思います。国民の健康のためにももっと消費量をふやすべきでありますけれども、そういうことにつきまして、私ども現在そういう製品の国際的な競争のことを考えてみますと、いわゆる野放しの自由化、そういうことは少しも考えておらない。ですから、御存じのような適切な手段を講じながら、わが国のそういう生産者の立場を保護し、同時にまた消費者の立場を考えて、不足払い制のようなことをして価額を安定させるということにつとめていることは御承知のとおりでございます。
  106. 木原実

    木原委員 そうしますと、これはまた大臣のおっしゃる一般的な話としてたいへん外貨の蓄積が高くなった、当然のこととして自由化を迫る声が強い。その中で農産物関係の分野に残存関係が非常に多い、こういう状態になっておるのは御案内のとおりです。しかし、それにもかかわらず、たとえばいま大臣がお示しになりました乳製品関係八七%から九六%くらいまでの自給率に高めていきたいという方針をお持ちになっている。この分野はすでに自由化が行なわれている分野です。他の分野も含めまして、それぞれの自給率に沿ってそこにいくまでの間は、自由化に対しては、やはりきちんとしたけじめをつけて国内の体制を強めていく、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。  そうしますと、畜産の問題に限定をしていきたいと思いますけれども、自由化が行なわれている乳製品関係その他の中でもうすでに外資がどんどん入ってきている国内市場は、国内産の牛乳等がすでに過剰の状態があらわれてきている。こんなような反面の問題が出てきております。これらの問題に対する対処のしかた、どうでしょうか。つまり広い意味の畜産行政の中での酪農部分についての対処のしかたというものはどうですか。
  107. 太田康二

    ○太田政府委員 ただいま大臣の御答弁にもございましたように、畜産物、特に酪農製品につきましては、将来わが日本の基幹的農業を育成するということで、おもなものにつきましては自由化を実はいたしておらないわけでございまして、特にバター、脱粉等につきましては、御承知のとおり、畜産振興事業団の一元輸入ということにいたしておるわけでございます。現に国内の生産が非常に過剰でございますので、四十三、四十四年は全然入れていないというような実情でございます。先生御指摘のものは、おそらくカゼイン、乳糖、ナチュラルチーズだろうと思いますが、実はこういったものにつきましては、かなり古くからAA品目にいたしておりまして、カゼインにいたしましても、乳糖にいたしましても、それぞれ工業用の用途あるいは医薬用の用途があるわけでございます。ナチュラルチーズにつきましては、昭和二十六年にこれも自由化をいたしたわけでございます。これはかなりプロセスチーズの需要が旺盛でございまして、年々一〇%以上ずつ伸びるというようなこともございますので、われわれはその国産化をはかるべきであるということで、現在国産化率が大体二一%くらいでございますが、もっとこれを高めたいということで、実は今回関税暫定措置法の一部を改正いたしまして、関税割り当て制度を採用いたしまして、国産化の育成をはかるというようなことも実は考えておるのでございまして、まあカゼイン、特に乳糖等につきましては四十三年八月から用途確認のためのAIQの制度にいたしまして、用途確認を実は関係各省でいたしておるようなことで、四十四年の輸入は四十三年より減ったというようなこともあるわけでございまして、できる限り国内で自給をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  108. 木原実

    木原委員 ここは専門の委員会でないので、あまりあれはやりませんけれども、この設置法の中に草地試験場をつくる、そのたてまえとして草地畜産の振興をはかっていくんだ、こういう総合農政のたてまえに基づく方針があるわけですね。ただ、ことばはわかるんですけれども、しかしながら、現実にたとえば飼料の問題にしましても濃厚飼料、ほとんどこれは何といいますか規制なしといっていいくらい、大部分が外国からの輸入だ。しかもそれが粗飼料にまで及ぼうとしておる。そういう状況が一方であるわけですね。それでまた国内では一ぺん草を起こして草地畜産をひとつ振興しよう、この辺の調整の問題はどうですか。それでも将来は輸入を減らして自給の体制をやはり強化していく、こういうことなんですか、いかがですか。
  109. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 酪農関係には非常に草が必要であることは、御存じのとおりであります。私ども先ほど来お話し合いのありましたような方向でこれを進めてまいるためには、もっともっとわが国で草地を造成しなければならないわけでございまして、そのためには草地の研究を、木原さんも御存じのように、日本の各地域は亜寒帯から亜熱帯まであるわけでありますので、そういう地域地域でこういう業を進めてまいりますために草地の研究ということが絶対に必要ではないか、そういう趣旨であります。
  110. 太田康二

    ○太田政府委員 先ほど大臣が御説明申し上げました昭和五十二年の農産物の需要と生産の長期見通し、おととしの十一月に公表いたしたものでございますが、これによりまして私どもといたしましては昭和四十一年に飼料作物が五十二万五千ヘクタールでございますが、これを八十九万六千ヘクタールまで持ってまいりたい。それから草地でございますが、草地の造成は四十一年が十五万五千ヘクタールでございますが、これを六十一万一千ヘクタールまで持ってまいりたいということで、毎年計画的に草地の造成と既耕地におきますところの飼料作物の導入事業というのを実施いたしておるわけでございまして、これが達成されますれば、乳牛なり肉用牛に対しまする粗飼料給与、特に良質な粗飼料による理想的な給与になるということで、ここまでの事業はぜひ達成いたしたい、かように考えております。  先生の御指摘の、粗飼料の輸入まであるじゃないかというお話、実はアメリカからヘイキューブというものが一部入っております。これは御承知のとおり都市近郊におきます酪農家の場合にはやはり土地条件の制約がございまして、どうしても一部粗飼料をそういうものにたよらざるを得ないというようなこともございまして、実態としてそういうことがあるわけでございます。それとわが国における粗飼料の流通ということがどうもまだごく競馬馬の飼料くらいに限られておりまして、非常にまだ実態的にそういう流通の形態がないわけでございます。これらにつきましても、私どもは、昭和四十五年度におきまして、新しい予算を組みまして、粗飼料の流通実験事業も手がけるというようなことで将来に備えたい、かように考えておる次第でございます。
  111. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 ちょっと関連して。大臣に関連質問をさせていただきます。野菜の点について四点だけお聞きしたいと思います。  野菜の価格について次のような考え方をわれわれは持っておるのですが、大臣としてはどういうお考えですか、お聞きしたいと思います。キャベツが二十円で生産者から出された場合は、小売り店で売られる価格はその三倍以内の六十円以内でおさめるべきだ、これは世界の野菜の価格の大体常識だろうと思いますが、そういう考え方で生産者の価格それから消費者の購入価格、市場の取引の歩合い、そういうものを考えて私は指導してもらいたいと思うのですが、大臣としてはどういうお考えでしょうか、野菜の価格であります。  それから時間がございませんので続いて申し述べます。第二点、農林省としては全国的に野菜の情報網の完成ができたと思うのですが、九州ではどういう野菜がいまダブっているか、関東ではどういう野菜が足らないか、こういう報告を大臣は受けられて、それに対してどういう対処をされておるか。その過程において業界でいわれておるベトコン部隊というのがあって、あの地域においては野菜が足らないというので個人でトラックでもって生産者から運んで暴利をむさぼっている。そして自分は利益を得る。流通過程の不備のためにそういうベトコン部隊ができておるというのが常識なんですが、そういうようなものに対する対策は農林省はどうしているのか、これが第二点、情報網によって全国的な野菜の作柄をキャッチしているかどうか。  第三点、生産者が野菜をつくる、ダブる、そのダブった場合に毎日市場に出していったのでは、野菜の価格が暴落するのです。だから出荷調整をしなければならぬ。その出荷調整について適宜適切に農林省はやっているかどうか、これが第三点。  第四点が、どういう未来を見通しても野菜だけは私はなかなか価格は国内だけでは安定しないと思います。したがって、日本と中国と韓国との間に新鮮なる野菜の三角貿易関係の計画があるかないか、この四点についてお尋ねします。
  112. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 初めのお話しの生産者の三倍くらいで消費者のところに渡るという、これが大体理想だと思います。いまおしなべて申しますと、日本では四〇%が生産者で、あとの六〇%がその中間及び問屋、小売り、そういう状態だと思っております。これは私どもといたしましては、いろいろその問屋から小売りへ野菜、それから魚、それぞれ違います、違うわけでありますが、そういうことをもう少し追跡して調査してみたいと思っておるわけであります。その中間にあります小売りといったような業態が、ヨーロッパ、外国と日本の事情は非常に違っておることは御存じのとおりであります。東京でも何千軒というそういう商売をやっている方がございます。そういうような問題もこれは全部農林省プロパーの所管だとは申しませんけれどもわが国のそういう慣習的な取引関係というもの、社会問題というものについて掘り下げて検討すべきではないか、なかなか大問題であり、むずかしい問題でありますが、こういう点はそういう面からも十分研究しなければなりませんが、私どもといたしましては、いま申しましたように、お説のように生産者から大体三倍くらいのところが普通は常識でありますので、中間の経路について掘り下げて検討してみたいと思っておるわけであります。  それから第二点は、昭和四十何年でありましたか、三年くらい前になると思いますが、いろいろな情報網を、地方から出てくる情報が中央に集まって、それを地方の市場に流す、そこまでいきましたが、いまではその市場からそれぞれ生産地域にまでずっとテレタイプで流していくようになっておりますので、かなり生産者も消費者のほうでも実際の情報についてはキャッチできるぐあいになっておるわけでありますけれども、そのほか大きな指定消費地の近郊にはいま申し上げましたようにそういう情報網が十分できておりますが、ただいま御指摘のような問題があるかもしれませんので、したがって、私どもとしては、先ほど最初に申し上げましたように、その中間の経路を追跡して調査していくときに、そういう状況も十分把握しなければならぬと思っております。  それから第三点の生産業者の出荷調整の指導、これはやっております。ずいぶんやっておるつもりでありますけれども、これはなかなか政府が強権を持ってやるわけにいきません。この間実はこれは非常におもしろい例だと思うのですが、総理大臣から指摘されまして、私自身がいろいろ調査してみたのです。菅平にあります高原野菜が高崎に寄らないで東京の神田の市場に来て、それから菅平の一番根っこにある高崎の市場に持っていく。なぜこういうことをするのかという御指摘が総理大臣からありまして、いろいろ私個人がそれぞれの手づるを経由して、役所主義でなくて自分でいろいろやってみました。ところがなかなか事情がありまして、これはこういうところで公式に申し上げるのははばかるわけでありますが、いろいろなそんなようなこともあるでしょう。払いが悪いとかいろいろなことがあったようであります。そこで、そういうことにつきましては、私どもといたしましてはさらに十分検討して、要するに生産者から消費者に渡るのに、さっきお話のありましたような程度で維持されることが望ましいのでありますから、そういうことをひとつやってまいりたいと思っております。  最後に、近隣諸国とのタイアップでありますが、御存じのように野菜は自由化されておるわけであります。ことに最近タマネギが非常に高騰してまいりましたので、台湾からいままでも輸入しておるワクはありますけれども、このワクを大幅に広げまして、もう第一船はとうに到着しておると思うのでありますが、韓国とも、今度始まったわけではありませんので、いろいろいま佐藤さんの御指摘になりましたような方向で台湾、韓国とは話し合っておったわけでありますけれども、今回はなかなかいろんなことで充足することはできませんでしたが、今後とも、こういう近いところでありますので、十分緊密に提携して、わが国のそういう施策に寄与、貢献できるようにいたしたいと思っております。
  113. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 もうこれで終わりますが、以上四点、私、野菜だけに限っての需要供給のバランスを保たせる行政措置としては重要なポイントだと思います。  そこで、その中で特に生産者の出荷調整は強権を発揮できないと言いますけれども、私は、生産者を守る立場にある農林省としては、関係の団体と連携をとって、毎日市場にハクサイを出す——非常にたくさんできた、こういう見通しがついたならば、火曜と金曜と土曜日だけ出荷をするというような指導体制を緊急にとるべきだと思います。そういうことを現実にやっている県もあるわけであります。福岡県あたりは非常によくやっております。それから、情報網をキャッチして、どこでもって——神戸付近でジャガイモが余っている、兵庫県では余って捨てるほどあるんだ、こっちは足らぬというようなときに、その輸送体制を確立して早急にそれを移動させる。一般の個人のベトコン部隊が自由にやっているというのは見のがさないで、何か政府の機関で、民間の団体と連携をとって、輸送体制を確立して移動させるとか、こういうような、やはり公のベトコン部隊といいますか、そういったようなことは私はやるべきじゃないかと思います。  それから、地方の市場が非常に金融的に困っておるので、それに手当てをしようという政策をとっていることは知っておりますが、そういうことは早急に中央市場でなくしてローカルの市場の資金力の強化、そういうものをやって、経営の内容をしっかりさせるといったような措置、そういうようなことを十分早急に確立して実施していただきたい、私はこういうように思っております。  これで終わります。
  114. 高田富之

    ○高田委員 関連して。先般、行政管理庁に対する大出君の質問のときにも関連でお伺いしようかなと思ったのですが、問題は農村関係でありますということもありまして、ただいま、たまたま木原君から総合農政に関するいろいろなお話がありましたので、時間もありませんから、一つだけにしぼりましてお伺いをしたいと思います。  端的に申し上げまして、蚕糸事業団のことでございますが、行政監理委員会からも指摘されておりますし、私どももかねがねあの事業団をあのままほうっておいたのでは、おそらくあのようなことが言われるだろうということを心配しておりました。まあ、あの事業団の生まれるときのいきさつからいたしましても、偶然の機会に偶然のようなかっこうで生まれまして、何をしていいかわからぬような団体だったわけです。その後だんだんに繭、生糸の価格調整機関としての役目がはっきりしてまいりましたので、その点では意味のある団体ということになってはいますが、しかし、これも、あのままほうっておいたのでは、依然として、いつも問題にされるだろうと私は思うのです。  そこで、これはもう単に事業団の問題だけではございませんが、私は、いまの木原さんのお話を聞いていても感ずるのですけれども、あれもこれもむずかしい中で、この蚕糸業——これはたまたま大臣も長野県の御出身であられるのですが、蚕糸業というものをどうしたらいいかということについて、ここらで私は本格的にやってもらいたいと思うのです。戦後、いままでも、振興すると言ってみたり、斜陽産業だから手を抜くと言ってみたり、そういう非常な動揺の中でこの蚕糸業というものは過ごしてまいりまして、政府もずいぶん手を焼いたというような経験もあるわけですが、概して、ややもしますと、いま局部的な産業になっちゃっております関係で、軽視されがちでございます。しかし、私は、これは非常にもったいないと思うのでありまして、需要は年々、御承知のとおり国内でもふえておりますし、国際的にもふえております。ほとんど宣伝一つしないで需要は自動的にふえていくのでありますから、これに力を入れて宣伝して需要を開発したら、合成繊維や人絹には劣らず、むしろ世界的に生活水準が上がるに従いましてますます需給が逼迫する、幾らつくっても間に合わぬという性格のものだと思うのであります。その点では非常に残念なんですね。関係業者がばらばらで小さいということ、原料生産者が農民であるということ、いろいろな面から、統一的な宣伝力においては、大企業の人絹、合繊にはとうてい太刀打ちでき得べくもないのですが、こういうことであるだけに、半官半民の、しかも業界関係全部が力を入れられる力のある団体をつくって、これに原料から中間の生糸から最終の織物加工に至るまで研究し、指導し、助成し、そうして、その機関を中心に輸入の調整、輸出の振興、価格の調整までやるようなものを本格的に考えたらいいんじゃないかなと思うのです。たまたま、米も余る何も余るというときですが、足らないのは生糸が大いに足らないわけで、幾らふやせといっても、いまの状態ではふえないのが頭痛の種なんです。これはちょっとくふうして、力を入れればふえる可能性は大いにあると私は思うのですよ。ですから、長い間に蓄積されました伝統的な技術もあるわけなので、この事業にひとつ大いに本格的に取り組んでもらいたい。  その際、せっかくできました蚕糸事業団というものをいまのままでおいたのでは、これはもうやめちまえという議論が出るくらいなんですから、もったいないと思うのでありまして、この際、この問題だけでけっこうですから御答弁いただきたいのですが、あれをあのままにおかないで——せっかく価格調整機能を与えておりますが、その与え方も非常に中途はんぱで、自主性があまり与えられておりませんから、適時適切に発動して価格の調整をする機能が十分果たせないままであるわけであります。これはもう一つくふうをいただいて、もっと自由自在に、奔放に、価格調整が適時適切に打てるだけのゆとりのある、幅のある権能をお与えいただいたらいかがかなと思うのです。  それに、繭糸価格安定法というものをあそこへ移管されておるわけですが、移管はされておりましても、飾りものみたいな法律になっちゃっておって、これももったいない話だと思うのですが、あれをひとつこの際抜本的に御検討願って、中間安定と中間でない安定と、二重安定制度をこの際考え直したらいいじゃないか。繭糸価格安定法というものも、いっそのこと中間安定と、一本化した価格安定制度にして、相当の資金量を与えて、自由自在にあそこで動けるようにしたらどうかというふうにも思いますし、また、せっかく価格安定をしているときに、輸入が野方図であっても困るわけですから、輸入の一手買い取りか何か、輸入調整の機能もあそこに与えたらどうか。それから輸出も、いま足りませんから輸出どころじゃないのですが、しかしお得意を維持するために、一定量のものは何とかあそこで確保してお得意とつないでいく、あるいは宣伝用にも使うというような意味で、輸出振興の方策もあそこにやらしたらどうかということもありますし、そういうことと合わせて、養蚕の場面から製糸、織物加工に至るまで、総括的にあそこを、研究、調査、新しい技術の普及、指導奨励、助成というようなことで実力ある機関として育成していけば、相当おもしろい役割りが果たせるんじゃないか思うのであります。あのままほうっておけば、やめろ、やめろという議論が出てしょうがないと思うのです。この際、もう少し思い切った拡充を、全体としての蚕糸業の方向をお定めになって、その中での重要なポイントとしてあの事業団に、何らかの大改革といいますか、拡充強化の措置を講じる、そういうような点に関連しては、蚕糸業振興審議会あたりでもきっといろいろ献策があったのじゃなかろうかと思うのです。私はその後関係しておりませんけれども、おそらくあったと思うのですが、それらの点についての政府のお考えを、根本的な点では大臣、こまかい点では局長さんからひとつ御説明をいただきたい、こう思うわけです。
  115. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 総合農政を推進してまいる過程におきまして、私どもいま米の他作物への転換の中で、地域的には一番指導して安心だと思われるのは桑畑であります。つまり養蚕でございます。これは、御存じのように、わが国の養蚕及び製糸業というものはその技術水準においては世界第一であります。しかも古い歴史を持っておるものでありますので、これは全くお説のように力を入れるべきものだとわれわれも考えておるわけであります。  いまお話のございました蚕糸事業団につきまして、行管のいわゆる六人委員会というものが意見を出しておいでになりますけれども、もう少しああいう人たちが掘り下げて検討してみられたらどうか、私どもそう思いますし、私どももまた彼らとよく話してみたいと思いますが、ただいまるるお話のございましたように、蚕糸事業団は、とにかく最近の状況では相場が非常に堅調でありましたので、活発に事業団が活躍するというほどの必要がなくて済んでおりましたけれども、これがいまお話しのようにさらに輸出もいたしたい、それからまたいろいろ調整機能等についても考えるというふうなことになりますれば、蚕糸事業団というものの活動に期待する余地がかなり出てくるはずでございます。したがって、私どもといたしましては、ただいまいろいろお話もございましたけれども、蚕糸事業団に期待することをさらに活発に行なえるには、なるべくいろいろ改組してまいりたいと思っております。要は蚕糸及び製糸業については総合農政の立場でさらに一そう力を入れてまいりたいと思っておる業種の一つでありますので、そういう面でさらに検討してやってまいりたいと思っております。
  116. 荒勝巖

    荒勝政府委員 大臣の御答弁に対しまして補足説明をさせていただきます。  蚕糸事業団は、最近は非常に生糸の値段がよくて、本日あたりキログラム当たり八千四百円ぐらいしていると思いますが、ところが昨年のいま時分は相当糸価が一時的に下落いたしまして、事業団として直ちに買い入れ発動をいたしまして、約一万七千俵程度の生糸の中間買い入れをいたしまして糸価の安定をはかりましたところ、それによって非常に効果が出まして、その後糸価が回復し、今日のような非常な価格の上昇を見たというようなかっこうになっております。それでもなおかつ現在国内の需要がますます強いものですから、外国の、韓国生糸なり中共生糸等が昨年一年間で、主として後半でございますが、四万俵ほど入ってまいりまして、われわれといたしましても、この動向につきましては今後慎重に対処してまいりたい、こういうように思っております。  それから、事業団につきましては、ただいま御指摘のように、特別会計を去年の法律改正によりまして蚕糸局から移しまして、価格安定機能を全部事業団でやってもらうことにいたしております。それとともに海外に、ニューヨークあるいはリヨン等に駐在員等も置きまして、生糸の需要の動向等につきまして十分に調査している次第でございます。
  117. 木原実

    木原委員 それでは質問を続けます。  設置法の中で新しく加わりました草地の試験場の問題ですが、どうも私はやはり多少不安がないわけではないのです。総合農政というたてまえで草地、畜産を大いに振興していくのだ、こういうお考えなんですけれども、どうもこの総合農政の中身が、聞けば聞くほどだんだんわからないという側面があります。  それからまた先ほど畜産局長、粗飼料の供給地としての草地の面積を大いに広げていくのだ、これはたいへんけっこうだと思うのです。しかしながら、そうおっしゃいますけれども、従来も畜産局としては例の大型牧野ということで実験展示というようなこともやられましたけれども、どうも私どもから見ますと、あれも何か立ち消えたといいますか、失敗をした。そうじゃないですか、そういう印象があるわけです。技術的ないしは生体の面で、あるいは害虫の発生その他を見て、行き詰まっている面があるのではないか、こういう印象も実は持っているわけです。したがいまして、せっかく新しい機関をつくろうということですから、その背景にやはりきちんとしたものはお持ちだろうと思いますけれども、若干の不安を残すわけです。  そこで試験場の問題についてそれらの点をお伺いしたわけですけれども、新しく草地試験場をつくる経過過程の中で、これは調べますと、以前に三十八年ですか九年ですか、そういうものをつくれという一つの勧告がございました。それがその当時は一時立ち消えになっていて、そうしてここのところへきて、私どもの印象では突如として出てきた、こういう印象を持つわけなんです。その辺の経過——これは設立、これからの将来構想等にも影響を及ぼしていくというのであらためてお伺いをするわけですけれども、当初これは北海道の与党の議員さん等の運動がありまして、畜産大学の付属施設としてつくる、こういうような話も聞いておりましたけれども、それが回り回って去年の予算の段階から草地試験場をつくるのだ、こういう形に実はなってきたわけなんです。しかし大事なことは、これだけの試験場をつくるわけですから、その裏づけにきちんとした技術的な体系なりあるいはまた従来それぞれの試験場その他で研究に従事をしておった場長さんをはじめ、そういう人たちのきちんとした意見を入れてこれだ、こういうことでおつくりになったのか、それとも総合農政だ、畜産も大いにやるのだ、こういう一つのかけ声のもとに生まれてきたのではないか。その辺の点に不安を残すわけですが、その辺の問題はいかがでしょうか。
  118. 横尾正之

    ○横尾政府委員 ただいま先生から御質問のございました経緯をも含めての草地試験場を設立する理由につきまして、お答え申し上げたいと存じます。  まず最初に先生から御指摘のございました試験研究推進方策研究委員会で草地試験場をつくるということについての検討がなされたかという点に関してでございますが、御指摘のように、三十八年から三十九年にかけまして、いま申しました試験研究推進方策研究委員会の一つの課題といたしまして、草地及び飼料作物の研究体制の充実整備ということを取り上げまして検討いたしました結果、その最も重要なポイントといたしまして、中央に草地試験場をつくるべきであるという考え方をまとめられております。その考え方は私どもいま考えましても、権威ある方々の意見をまとめた結果であり、権威ある内容を持っておると思いますが、当時の諸情勢、特にそれを予算化してまいるといったことにつきましては相当の困難もあるという判断のもとに、直ちには着手はできないというような状況で推移してまいったのでございます。しかしながら、部分的に充実ができることにつきましては充実をしてまいるということで、今日まで推移をいたしてまいったのでございます。  それから、先ほどの御指摘の中に、北海道の草地研究体制云々ということを触れられましたが、いま申しました経緯の中で、御承知のような農業におきます内外の諸情勢を踏まえまして、試験研究につきましても、特に草地及び飼料作物に関する試験研究につきましては、畜産を農業の基幹部門として確立するための基礎としてどうしても必要であるということで、昨年来総合農政の検討の一環として取り上げられました。そして、いま御提案しておるような考え方を徐々に固めてまいる、その時期に、たまたま北海道におきまして、北海道自体の草地研究の充実が必要ではないかという御意見が出てまいったのでございます。そこで私どもは、先ほど来申し上げておりますように、三十九年にまとめました試験研究推進方策研究委員会の考え方を踏襲いたしまして、中央に全国的な立場からの中核機関としての草地試験場が必要であるということで検討いたしてまいったのでございますが、同時に北海道からの御意見もございましたので——北海道からの御意見は、北海道地域にかかる問題であり、これは北海道農業試験場の関係部門を強化することが筋であり、適切であるという観点に立ちまして、それにつきましては、草地の関係部門を拡充強化することといたしました。それとは別に、やはり従来の考え方といたしまして、中央に草地試験場をつくることは必要であるので、その検討を続けまして、その結果が、御提案をしてまいりましたようなそういう内容の草地試験場になってまいったわけでございます。  それから、その検討の過程で、もちろん関係の試験研究機関とは十分に連絡をいたしまして、いまのところ、その間の意見のそごはないということで御提案をしておるということでございます。
  119. 木原実

    木原委員 時間がなくなりましたから、これからの質問は本会議のあとに回りますので、ひとつ御了解願いたいと思います。
  120. 天野公義

    天野委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十三分休憩      ————◇—————    午後四時五十四分開議
  121. 天野公義

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。木原実君。
  122. 木原実

    木原委員 それでは休憩の前に引き続きまして、もう少し質問を申し上げたいと思います。  この草地の試験場の新設につきまして、先ほども技術会議の事務局長さんからお話がありました。私はこの種の研究試験機関というのは、農林省の中でもどちらかというと、たいへんじみな存在で、しかも仕事の内容からいきまして、かなり長期の展望を持った息の長い仕事だろうと思うのです。したがいまして、設立にあたりましても、やはりそれだけの息の長いがまえをもってやっていく、こういう姿勢が当然望まれる。先ほど事務局長さんのお話では、これがこういう形で出てくるについては、話もまとまっておるし、討議も尽くした、こういうことなんですが、それはそうかもわかりません。しかしこの経過を少し見てみますと、三十八年だかに、例の委員会からの答申というような構想がうたわれて、その後どういう理由か、しばらくの間はたな上げみたいなかっこうになっていて、そうしてつい一昨年の秋ごろまでは現在の体制で試験研究をやっていくんだ、こういうようなことで、草地の関係等につきましても、那須でやっておる仕事、それから千葉に試験場があるわけでございますけれども、ここでやる仕事分担等についても、昨年の二月ごろまではいろいろ論議があったというふうに聞いておるわけであります。ところが昨年の六月ごろの段階になって、ある意味では突如として草地試験場をつくる、ついては那須を中央にしてやっていくんだ、こういうふうに話が出てきたように聞いておるわけであります。そうなりますと、それぞれの経過はあるだろうと思いますけれども、六月といいますと、おそらく省内の話からしますと、予算の要求をする最終の段階だろうと思うのですけれども、何かやはりかけ込み訴えででき上がってきたんではないのか、こういうきらいがあるわけなんですが、その間の経過はどういうことでございますか。
  123. 横尾正之

    ○横尾政府委員 ただいまも御指摘がございましたが、いままでは従来の組織体制を原則として維持しつつ、その内容を充実するというようなことで進めてまいりましたが、昨年に入りまして、御承知のように、農業をめぐる内外の情勢がますますきびしさを増しまして、農林省におきましても、各般の施策の検討を始めるということになり、御承知のごとく農政審議会も五月には開催をされるというような運びになってまいりました。その一環として、この際基本的に草地研究を充実してまいるための施策を考えなければならぬということになりまして、五、六月ごろから本格的な検討を始めまして、そして予算に間に合わせるという段取りで運んだ次第でございます。
  124. 木原実

    木原委員 おそらく行政上のそういう必要度が急速に増してきた、こういうことであろうと思うのです。それが、私が冒頭に若干質問を申し上げましたけれども、総合農政というような新しい方式が示され、行政的な立場からそういう必要度が出てきた、これはわかるわけです。しかしながらそれにしては、仕事の内容からいけば、たてまえはそうでありましても、それに即応していくためには、やはり相当な準備体制をそろえていくのがしかるべきことじゃないのか。実は私がこう申し上げるのは若干裏づけがございまして、私は実は千葉なものですから、かねて千葉の場長さんからも多少の話を聞いたことがあるわけです。この対象になる千葉の畜試関係の中では、御案内かどうか知りませんけれども、別な主張を持っていらしたわけですね。たとえば酪農試験場のような構想を持ってもおられましたし、必ずしも千葉の一部がこういう形で草地の中に統合されていくということは得策ではない。その対象になる試験場の場長さんがそういう意見を、どの程度強かったかどうか私わかりませんけれども、持っていらしたことは事実なんです。そういう経過があるものですから、それについては予算要求のまぎわに行政上の必要からということでかけ込み訴えをしてつくり上げていく、こういうことになるとやはり技術関係やあるいは研究関係や息の長い仕事の中に携わっている人たちは、何か間に合わせで編成がえをされていくのではないのか、こういうような立場に追い込まれるのではないか。だから顧みて拙速のきらいはなかったか。つまり将来のことについて言えばほんとうにこれでだいじょうぶなのか、こう念を押したいわけなんです。いかがでしょう。
  125. 横尾正之

    ○横尾政府委員 検討の過程で当初先生の御指摘になりましたようなある種の別の見解があったことは事実でございます。しかし、その後十分に協議をいたしまして、その辺の意見の相違は解消されたということをこの際はっきり申し上げたいと思います。  また唐突ということについての御指摘がございましたが、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、三十九年の研究委員会におきまして基本的にさかのぼって検討いたしました。したがいまして、技術会議としての考え方は当時すでに考え方としては固まっておった、諸般の情勢がございましてそれが実現し得なかったという状況はございましたけれども、そういうふうに考えるわけでございます。しかも現時点でその内容を検討いたしてまいりましても、なおかつ当時の構想というものは十分に生かし得るものであるという判断を事務局内部でもいたしまして、その上で試験研究機関と連絡をいたしまして、いま申し上げたような結論に達したということでございます。
  126. 木原実

    木原委員 私ども、部内のことですからいろいろなことはわかりませんけれども、また立ち入る気持ちもありません。要は、せっかくこういうような形のものをつくり上げる、それについては仕事の性質が性質であるから、ただ右から左に持っていって、さあこれで行政の方向がきまったからこれでやれということになれば——おそらくどの場も、あるいはどの技術関係者もそれぞれのシステムを持って仕事をしていたと思うのですね、そういうものがただ行政上の何がしかの目標が変わったからということで二転三転をしてやっていくということがあるようでは、直ちに即応できるような部門ならば、これはいいほうに変えていくということならばそういうことでいいわけですけれども、しかし仕事の性質から相当息の長い仕事をやってきたはずだと思う、これからもまたそうだと思うのですね。それだけに拙速のきらいはなかったかということを詰めているのですけれども、しかし、そういうことがなかったのだとすればわれわれとしてもそうですかということで引き下がらざるを得ません。しかし、そういう議論があったということがたまたま私どもの耳にも入っておりましたから、何か行政上の目標が変わったから少し草地の問題を急ぎ過ぎているのじゃないか、実はこういう印象を持っているわけです。繰り返すようですけれども、やはりせっかくおつくりになるならば息の長い仕事に耐えられるようなひとつ万全の体制をつくっていただきたいと思うのです。  あわせて伺いますけれども、予算の関係その他については、初年度分については従来の流れがあると思いますけれども、この見通し等については、これはだいじょうぶでございますか。
  127. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先生御承知のように四十五年度の予算では牧草の育種栽培でございますとかあるいは放牧の管理でございますとか、さしあたって最小限度の当面実現すべきものを実現いたしておりますけれども、さらに今後拡充すべき部面が相当残されております。これにつきましては四十七年度までにきちっとした計画を立てて関係方面とも協議をしてそれの実現に努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  128. 木原実

    木原委員 私も若干その点についても不安が残るのですが、これはあとでもう少しお聞きしたいと思いますが、その前に長野にある山地支場の問題ですね。これも以前はやはり独立の試験場として設立をしていく、こういうような構想ではなかったのですか。
  129. 横尾正之

    ○横尾政府委員 現在山地支場という形になっておりますものにつきまして、かつて独立の試験場にしたほうがいいという意見があったということは聞いております。しかし近年におきます技術会議考え方は、山地支場として生かしていくということでございまして、しかも内容が草地研究でございますので、組織的一体的に進める必要があるということで、草地試験場の組織に組織変更等で統合するということにいたしたわけでございます。
  130. 木原実

    木原委員 ここ数年来は、われわれが見ておりましても農政上のいろいろな新しい問題が出てまいりまして行政上の目標なりあり方なりについても変化が激しかった時期だと思います。したがって、ある時期に一つの構想があり、それがまた新しい構想に変わっていく、これは事情がわかるような感じがいたします。しかし、それもまたやはり仕事の性質からいきまして何か一貫性に欠けるといいますか、私ども多少不安を実は覚えるところがあるのです。  それはともかくといたしまして、その次に、そういうことであるならば、これからの草地試験場の構想といいますか、あり方といいますか、こういうことについて若干お伺いをいたしたいと思いますけれども、これは大体三年計画で整備、充実をしていく、こういうことなんですが、人事ないしはこれの構想、予算等を含めまして、三カ年計画の中身というものはほぼ固まっているわけでございますか。
  131. 横尾正之

    ○横尾政府委員 今後拡充すべき研究分野として、たとえば環境部門に関する試験研究でございますとか、あるいは作業技術に関する試験研究でございますとか、そういう研究方向の重点事項は考えておりますが、それを具体的に組織機構にどのように取り入れていくか、またそのための予算がどうであるかということにつきましては、現在準備委員会をつくりまして検討中でございまして、それが固まった上で関係方面とも協議をしてはっきりしたものにしていきたい、こういうふうに考えております。
  132. 木原実

    木原委員 そうしますと、三カ年で計画的に編成ないし充実をしていくのだというわけですけれども、人員や予算の面についても最終的な規模その他についての目標はおありなんでございますか。
  133. 横尾正之

    ○横尾政府委員 従来の検討の過程で、ごく試案的なものを持ち合わせておらないわけではございませんけれども、なおかつその内容につきましては検討を要しますので、先ほど申し上げたような準備委員会における検討を経、各事柄の性格上、関係方面とも協議をしてはっきりしてまいりたい、こういうことでございます。
  134. 木原実

    木原委員 これはあなた、この委員会にこういう案をお出しになりまして、三カ年の計画ですけれども、しかもことしから設立するという三カ年の計画の裏づけもなくして、こういうものをつくりますからのんでくれ——少しずさんじゃないですか。
  135. 横尾正之

    ○横尾政府委員 本年度、四十五年の予算としてこれを大蔵省等に折衝いたします過程で、おおむねの試案としてこういうことを考えておるということは参考として協議の際に示しておりますけれども、その内容は今後さらに検討して、さらにきちっとしたものにしてまいりたいということで、先ほど申し上げたような検討を経た上でさらに関係方面と協議をして内容の確定をはかりたい、こういうことで申し上げたわけであります。
  136. 木原実

    木原委員 私はおかしいと思うのですが、三カ年かかって充実をしていくというのはいいのです。しかし、これだけの新しいものをつくるといって設置法にのぼせてきて、その裏づけを聞きましたら、いやこれからやっていくのだ、これじゃわれわれは一体何を対象にして審議したらいいのですか。仕事の中身はわからないで機構だけでこういうふうにする、これをのんでくれということじゃないですか。われわれの立場で何を対象にして審議したらいいですか。機構だけをのめ、仕事はおれのほうでやるのだ、これじゃ、この内閣委員会としても私はたいへん異論があると思う。もう少し具体的に中身を出してください。
  137. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先生御承知のように来年度予算編成に際しまして、その予算編成の時期で具体的にどの程度の事業、どの程度の組織、どの程度の予算というものをきめてまいりますが、そのためには試案として私どもこういう考え方でこういうような目標のもとに研究を進めてまいりたいということは当然必要でありまして、そういう意味での大蔵省との協議の過程で先ほど来申し上げておるような案を示して、その一環として四十五年度におきましてはこういうことが必要であるということが確定して、草地試験場の御提案をしておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、今後の内容につきましては、さらに詰めて、よりりっぱなものにする必要があるということ、及びその上で関係方面とも協議をする必要があるというような実情にございますので、その点を率直に申し上げた次第であります。
  138. 木原実

    木原委員 大蔵省との話というのは、おたくのほうと大蔵省の話ですから、それを私はとやかく言おうとは思いません。それからまた三年の間にできるだけ充実をしていこう、こういうこともわかります。しかし、その土台になる三カ年の計画ですから、初年度の間はおそらく引っ越しやら人員の編成やら、研究体制の整備やら、あらごなしで終わると思うのです。これもほぼ仕事の見当がつくわけですね。しかしながら、それを出発点にしてわずか三カ年のおおむねの仕事の目標なり中身なりというものが示されないで、それは大蔵省と話をしながら中身を充実していくのだ、機構だけのんでくれというのでは、これは議会をなめておりますよ。とても承服できません。
  139. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先ほども申し上げましたけれども、草地試験場として総合的、組織的研究を進めていく必要がある、そのためにどうした分野を充実していく必要があるかというようなことについての構想は持っておりますけれども、具体的な組織内容及びそのために必要な予算というようなことにつきましては、先ほど申し上げましたように、さらに検討を加える必要もあるし、関係方面とも協議することが必要になっておりますので、先ほど来そのことを申し上げた次第であります。
  140. 木原実

    木原委員 私どもここでは各省設置法をいろいろ扱いました。扱いましたけれども、こういう出され方というのは初めてですよ。おおむねの仕事の中身というものはやはりつけてもらわないと、仕事のほうはおれのほうでやるのだ、機構改編だけは議会でのめというのでは、一体何の審議をしていいかわからないという立場になるわけです。ですから、大蔵省との折衝はあなたのほうの仕事ですからおやりになったらいいです、最終的にはこれは議会で判断をいたしますけれども。そのことを責めているのではないのです。しかし、せめておおむねの仕事の中身と目標ぐらいは、われわれとしてはこれだけのことはやりたい、この目標でやりたいのだということを示してもらいませんと、審議のしようがないです。
  141. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先ほど来申し上げたような腹案という程度のことでございますが、おおむねの陣容規模としましては、三カ年で三百名程度の陣容にいたしたい。それから四十五年度の組織規模は一室、四部、一支場という機構でございますけれども、研究部門について三部門、さらに業務系統を一部ということで、四部程度の組織機構の充実をさらにはかってまいりたいということをめどにして検討を重ねておるところでございます。
  142. 木原実

    木原委員 三百名くらいでという編成の話は聞きました。それはそうでしょう。ですが、仕事の中身、別な意味で言えば——農林水産委員会じゃないわけですから、あまりその仕事の中身に立ち入って聞きたいとは私も思いません。しかしながら、おおむねの事業計画くらいは、参考資料ででも何ででも出してもらいませんと……。いま確かに人員はお出しになりました。それから部局の編成のおおむねのことも聞きました。しかし、私は、しからば一体それだけのものができるのかという問い方もしてみたい。それが何をやるのだ、こういうことについてももう少し、せめて参考資料でも何でもいいから出してくださいませんと、われわれがああそうかと言うわけにまいらない側面があるわけです。それは三カ年計画の中でも、計画を立ててもできることもあるし、できないこともあるでしょう。そのことを責めるわけではない。ただ裏づけになる、あなたのほうでこれだけの仕事をやりたいのだ、ここまでやれば、たとえば草地についてはこれだけの仕事ができるのだという、これくらいの事業量なり事業の目標なり、そういうものはやはり出してくれませんと困ると思うのです。
  143. 横尾正之

    ○横尾政府委員 ただいま先生からいろいろ御質問がございましたうち、四十五年度の内容につきましては、組織機構としては一室、四部、一支場でございますが、研究部門は牧草部、これは牧草の育種、栽培関係仕事をいたすわけでございます。草地計画部、これは草地の造成計画にかかる研究をいたすということでございます。さらに家畜部で、草地におきます放牧管理に関する研究を行なうということで、研究部門を三部門設けまして、総体の人員といたしましては百九十八名で発足いたすわけでございます。  四十七年度までの整備におきましては、土壌肥料でございますとか病害虫でございますとか、あるいは家畜の衛生管理でございますとか、いわゆる環境部門に関する研究部門を設けますことが一つ。それから、草地におきます作業技術に関する研究部門を設けますことが一つ。それから、わが国では総体的におくれておる部門で充実を要するわけでございますが、土、草、家畜を結びつけてのいわゆる生態的な研究が必要でありますので、生態部というようなものを設けたいということを一つ考えております。それからもう一つは、研究補助の面で業務部門の充実をはからなければなりませんので、業務部を設けたいというようなことで、四部の拡充を四十七年度までにいたしたいというのが、先ほど申し上げました事柄の具体的内容でございます。
  144. 木原実

    木原委員 百九十八名で発足する、最終的には三百名ぐらい。まずこういう人員の面のあれがありましたけれども、この人員の編成は大丈夫ですか。
  145. 横尾正之

    ○横尾政府委員 百九十八名の四十五年度の定員につきましては、そのうち百三十一名は畜産試験場の関係部門からの振りかえによります。それから四十二名は、農事試験場の山地支場を組織変更することに伴いまして人員を振りかえることに相なるわけでございます。それで百七十三名になるかと思いますが、残りの二十五名につきましては、関係試験研究機関等、農林省全体の振りかえによって対処して陣容の確保をはかる、こういうふうに考えておる次第であります。
  146. 木原実

    木原委員 その定員については見通しはおありでございますね。
  147. 横尾正之

    ○横尾政府委員 ただいま申し上げましたものは、四十五年度に確定をいたしました定員でございますので、これにつきましては間違いなく充足できることと相なっております。
  148. 木原実

    木原委員 あわせてお伺いをしておきますけれども、定員が制限をされておりますので、これはこの委員会でも他の分野でたびたび問題になることですけれども、一種の研究補助職といいますか、そういう人たちの雇用がおそらくかなりあるのじゃないかと思うのです。これはどうでございますか。研究補助職の使い方といいますか確保のしかた、ないしは処遇の問題。
  149. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先生の御指摘になりました研究補助職も、先ほど来申し上げておりますような組織機構の充実の一環として必要でございますので、それにつきましては農林省全体の定員の配置の一環として、他の試験研究部門におきます研究事業の繁閑等をも織り込みまして、その確保に十分努力をいたしたい。先ほど申し上げました将来の機構の一つとして業務部を設けるということもその一つのあらわれでございます。
  150. 木原実

    木原委員 これはあなたにお伺いしていいのか、あれですが、全般的に農林省の中の試験場関係あるいは研究関係の中で、やはりたくさんの研究補助職の方を使っていらっしゃると思うのです。これの人数その他についてはおわかりでございますか。
  151. 横尾正之

    ○横尾政府委員 農業関係国立試験研究機関の全体の定員は約五千でございます。そのうち、いわゆる行。職員といわれております補助職が、ラウンドで恐縮でございますが、約一千でございます。また行(一)職員ということで、総務系統、庶務系統、あるいは研究室によりまして研究補助の仕事をしている人もございますが、そういった関係の職員でございます。
  152. 木原実

    木原委員 私はこれは大きな問題を持っていると思うのです。私の狭い見聞の中で何ともいえない部分があると思うのですけれども、行(二)とおっしゃいましたけれども、行(二)職員の人たちの数が非常に少なくなってきている。これは帰するところは処遇の問題だと思うのです。いろいろな分野の、しかも重要な仕事をなさっているわけですが、この辺、研究者の人たちと一緒になってやる仕事を見ておりますと、かなりな責任のある仕事をやっているのですけれども、給与は、これは御案内のとおり今日のいろいろな雇用条件からいきますと、とても一人前の給与とはいえない程度の給与が多いと思うのです。これらの点についての配慮、これは事務局長さんに聞くのは酷ですけれども、官房長でもお答えいただいてけっこうだと思うのですが、この処遇の問題はいろいろほかの分野があると思うのですが、問題は、そういう給与条件の中ですから、研究補助職のようなことが必要なほど集まるのかどうか、こういう心配があるわけであります。いかがでしょうか。
  153. 横尾正之

    ○横尾政府委員 行(二)関係の職員につきましては、実際問題としては新しい人を得ることはなかなか困難な実情にございます。私どもといたしましては、先ほど申し上げておりますような定員を確保しておりますので、その定員の充足をいたして、そして一方、機械化等によりまして補助作業等の労働の過重をできるだけ軽減し合理化するというようなことと相まちまして、行(二)職員にそのところを得て働いてもらうという形で配慮してまいっております。今後もそのように対処してまいりたいと思います。
  154. 木原実

    木原委員 人手不足はかなり一般的なことなんで、この分野だけではないという議論が成り立つかもわかりませんし、おっしゃったようなことでやっていかれるという方針はわかるわけであります。しかし、実際問題といたしまして、これは研究職の定員が確保されましても、実際に現場の中で研究職の人たち仕事をしていくには、どうしてもやはり行(二)の人たちとタイアップしないと、一人では仕事ができないという側面があるわけです。このことは、たとえば乳牛を管理するということが絶えずあるし、しかもそこからデータを引き上げてくるという仕事がおそらくあるに違いない。ですから、定員の確保ということとあわせて、いわゆる行(二)職の人たちの一定数の確保ということと表裏の問題があると思うのです。これは草地試験場ができたからどうこうというわけではありませんけれども、一般的な問題としてもその問題があると思います。やはりそういう方たちがだんだん減っていく傾向にある。そうなると、ひいては、せっかく研究機関、試験機関をつくりましても、入れものはできたし建物もできたけれども、なかなかこの仕事の中身が充実していかない、こういうことが気になるわけです。特に新設の場合はその弊害が著しくあらわれるのではないか、こういうふうに思いますから、その辺の見通しなり見解なりをひとつお示し願いたい。
  155. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先生御指摘のようなことがございますので、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように業務部門の充実も重要な一環だと考えておりますので、その実現につきまして、いろいろな点につきまして十分配慮をし、関係方面の協力を得て対処してまいりたい、こういうふうに思います。
  156. 木原実

    木原委員 これはいろいろ問題が残るでしょうけれども、これは部内でぜひその辺の充実はひとつ遺漏のないようにしてもらいたいと思います。  それから、いろいろなことを申し上げますけれども、もう一つの問題として、草地試験場ができるにあたりまして、那須を中央試験場ということで、それから千葉の畜産から一部行く、こういうかっこうになるわけですが、那須というところが中央試験場として、一つには御案内のように日本列島は南から北まであるわけですから、はたして典型的な日本的なものを、気候的な条件その他を含めまして、ほんとうに代表できるところなのかどうなのかという心配があるわけですが、その辺の配慮はどうですか。
  157. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先生御指摘のように、中央試験場を設けるにつきましては、幾つかの条件が必要でございます。たとえば南方型牧草と北方型牧草とあわせて研究対照できるような立地条件でございますとか、あるいはまた他の中央試験研究機関と連携のとりやすいような場所でございますとか、あるいはまた相当規模の圃場等を用意し得る場所でございますとか、そういう要件がございます。それらの要件を総合的に勘案いたしますと、現在畜産試験場の草地関係仕事をやっております那須は適地であるというふうに判断いたします。したがいまして、そこに今回草地試験場を設置するということにいたしたいと考える次第でございます。
  158. 木原実

    木原委員 おそらく最適の技術的な条件を勘案しておきめになったと思いますけれども、私も一年前にあの周辺を通ったことがあります。久しぶりであったわけですけれども、たいへんりっぱな道路ができたり、それから、何といいますか、たいへんにぎやかになっているわけですね。おそらく車の振動その他の影響というものも相当影響する、こういうふうに考えるわけですが、その点についての心配はございませんか。
  159. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先生の御指摘になりましたようなことにつきましても、十分調査をし総合勘案した結果、それらの点については、個別に起こる問題について適切な対処をしてまいれば、十分に今後も長期間だいじょうぶであるというようなことで、調査検討の結果、先ほど来申し上げておりますように、那須に置くということにいたした次第でございます。
  160. 木原実

    木原委員 これはそういう検討をする調査機関をあなたのほうが十分にお持ちでございましょうから、私のほうからいい悪いということはとても言えませんけれども、しかし私は多少そういう懸念がありますので、決定をなさったわけでありますけれども、いろいろな配慮をこれからもしてもらいたいと思います。  それからもう一つお伺いしますけれども、草地試験場ができた場合に、畜産試験場の関係で、たとえばいろいろな家畜の飼育をやっておるその畜産試験場との関係というのはどういうことになりますか。
  161. 横尾正之

    ○横尾政府委員 草地試験場は、申し上げるまでもなく、草地及び飼料作物に関する専門部門を担当する試験研究機関でございますが、一方畜産試験場は、家畜自体及び畜産物にかかる専門部門、その部面を担当する試験研究機関ということで、それぞれ専門分野によって分けて、必要なことについては連携し合う、その連携につきましては、技術会議も十分に配慮してまいるということで、両々相まって畜産研究の実をあげるということができるというふうに考えまして、進めてまいった次第でございます。
  162. 木原実

    木原委員 私しろうとですから何とも言えませんけれども、畜産のほうも、動物を飼っておりますと、草との関係というものは当然に考慮に入れてやっている分野が確かにあるわけですね。それと草地のほうもやっていく、こういうことですから、ある意味では競合する面もあるし、ある意味ではむだな面もあるし、それらの関係というものをどういう——技術的な観点で草地試験場をつくったという、そういうことはわかるわけですけれども、何かダブったりいろいろ、どう言ったらいいのですか、整備をしていかなければならぬ側面があると思うのですけれども、その辺についてはどうでしょうか。
  163. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先ほど申し上げましたように、専門分野によって分けておるという限りにおきまして、両機関の研究分野は明確であると考えますが、現実に運用していく上におきましては、両者の関係について配慮すべき事柄があると思います。その点につきましては技術会議といたしまして総合調整をするということが、技術会議の役割りにもなっておりますので、技術会議がその点につきましては十分に両機関の連携関係、運営関係を見まして、両機関の意見も聞きつつ遺憾のないように対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  164. 木原実

    木原委員 草地試験場をこれから運営をしていく上にあたりましての構想を若干お伺いしたいわけですけれども、運営にあたりまして一番大事なことは、先ほど私が申し上げましたように、試験研究の機関ですから、やはり研究の体制が生きて動かなくてはならぬと思います。したがって、こういう形で千葉と那須を一緒にして中央試験場をつくるというような場合には、それぞれ従来の行きがかりもあるでしょう。そういうことになりますと、生かした研究をやっていくためには、息の長い形で、そしてやはり研究職の人たちがきちんとテーマを持って、それぞれ自主的に研究の仕事ができる、こういう体制をつくっていくというか、保障をしていくということが私は一番だろうと思うのです。それが仕事ですから——行政のほうはしばしば、ことしはジャガイモが高いけれども、一昨年はジャガイモが安かった、さあたいへんだということで動く分野が多いわけです。しかし試験研究というものはそうはいかぬと思うのです。多少ジャガイモが安かろうが高かろうが、やはりいいジャガイモをつくるための試験研究を積み上げていくというのがこの分野の仕事だろうと思いますので、その面についてのいわば研究を進めていく上での体制をきちっとしていく、あるいは研究職の人たちが自主的に仕事ができていくというような体制をつくっていくということについては、何かお考えございますか。
  165. 横尾正之

    ○横尾政府委員 御指摘のように、試験研究は息の長い仕事でございますし、また事柄の性格上、研究者の創意が生かされるような条件なり環境ができる、このような運用がされなければならないと思います。したがいましてそういった点にも十分留意をして、具体的にどういうふうに持っていくことが最も効果的であるかということも含めまして、設立準備のための具体的な内容の検討を重ねておりますので、先生のお話のような点にも十分配慮してまいりたい、こういうふうに存じております。
  166. 木原実

    木原委員 運営委員会に何がしか予算がついているというのを見ましたけれども、これはたとえばどういう構成、権限なんでございますか。
  167. 横尾正之

    ○横尾政府委員 予算上は五名の委員の委員手当、旅費等が計上されておりますが、そのねらいは、草地試験場の試験研究をより効率的にするために、外部の学識経験者等に入ってもらって、場長がその意見を聞いて合理的に進めるための一つの参考にするための組織として活用したい、こういうことでございます。
  168. 木原実

    木原委員 そうしますと、場長さんの諮問機関というとおかしいのですけれども、場長が運営にあたっての参考にするための提言を求める、こういう性格のものですか。  それともう一つ、その中で運営委員会がたとえば研究のテーマをきめたり、あるいはその裏づけになるような予算の問題等についても審議をするというか権限を行なうというか、そういうところまでいくわけですか。
  169. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先生のおっしゃるように諮問機関的な性格でございまして、予算をきめたり研究内容を決定したりするのは場長が場のしかるべき関係者にはかってきめるべきことでございますが、それについて意見を聞くというような意味で設置するものでございます。
  170. 木原実

    木原委員 これはおそらくこれからの新しくできる試験場のいわば性格をかなりつくっていく機関になるような感じがいたします。それだけに公正なる運営その他については、ひとつ冒頭に私が申し上げたような方向でやってもらいたい。これは希望意見を申し述べておきたいと思います。  そのことと関連をいたしまして、もう一つ研究職の人たちが試験場なり何なりで仕事をする場合に、草地試験場の場合、たとえば先ほど申し上げました研究職の人たちがきちんとした形で仕事ができていくということと関連をするわけですけれども、どういう研究評価のしかたをやるかというようなことについては何かお考えでございますか。
  171. 横尾正之

    ○横尾政府委員 これは草地試験場の場合だけではございませんが、試験研究の管理、運営を合理的にする、ある目的を追求するために試験研究が効果的に行なわれているかどうか、行なうためにはどうしたらいいかということの一環として、評価をどうするかということが一般的に一つの問題であるわけでございます。しかしながら、この評価を具体的にどういうふうに取り入れるかという点につきましては、先ほど先生の御質問にもございましたが、研究者の創意を阻害するというようなことであってはいけませんので、その辺については十分に配意し、かつ一方、試験研究の運営を目的に沿うて合理化するということの観点から、具体的な問題としては諸外国の例等を見つつ今後研究をしてまいりたいという段階でございます。
  172. 木原実

    木原委員 私が多少心配いたしますのは、何しろ農政の転換期ですから、おそらく行政的な課題や、いろいろな農政上の目標は、時代の動きの中でしばしば動くことがあると思うのです。その動きにつれて、息の長い仕事である研究職の研究体制というものがしょっちゅう動いておるということでは、ほんとうの仕事にはならないのじゃないのか。ですから、私は草地試験場をつくることに必ずしも反対ではございません。新しくおつくりになることはけっこうかと思いますけれども、しかし設立の経過その他を見ましても、何かやはり当面のことにせき立てられてそういう方向に行く——たてまえは私はりっぱだと思うのです。けっこうだと思うのです。しかしながらどうも仕事の中身がたいへんじみな、長期の、しかも計画を踏んだ仕事というような分野ですから、なかなかおいそれとは転換ができない。それが試験研究機関のいいところでもあると思うのです。そういう面が生かされていく、つまりそう言っちゃなんですが、行政のそのときどきの思いつき、というと語弊がありますけれども、変化だけで何かかけ回っていきますと、せっかく積み上げてきた研究の成果というものが、これは国民の財産だと思うのですけれども、一向生かされない、こういうことになってはたいへんだという実は心配があるわけです。ですから要は、こういう試験場ができて新しい仕事をお始めになるが、看板は変わりましても、実際そこでやっておる研究職の諸君が、きちんとした形で仕事ができていくような、そういう条件が満たされないということにもなろうかと思うのです。ですからひとつその点についてのきちんとした体制なりお考え方なり、そういうものがあれば、私はせめて救われるのではないかという感じがするのですけれども、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  173. 横尾正之

    ○横尾政府委員 先生御指摘になりますように、息の長い仕事でございますし、始終外部の情勢で目まぐるしく変わるということでは、安定した、落ちついた研究はできないということは十分私ども心得ておるわけでございます。ただ先ほど来申し上げておりますように、重要な農政の転換期でもございますし、従来の懸案でもございましたので、今回設立するという運びに来ておるわけでございますので、その運営につきましては先ほど来の御意見のあるところも十分考え、安定的、長期的視点から十分に効果的な試験研究が追求し得るよう、運営体制について特段の配慮をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  174. 木原実

    木原委員 それでは最後ですけれども、そういうことでこの法案が成立いたしましたらそれぞれ場が開かれることになりまして、私の選挙区の千葉からもおそらく移転の問題が出ると思うのですが、職員の人たちの移転だとかということについては、何かお考えになっていらっしゃいますか。
  175. 横尾正之

    ○横尾政府委員 職員の労働条件にかかわることでもございますので、十分に実情を調査いたしまして、その実情に対応して慎重に対処してまいりたい。その場合の基本方針といたしましては、農林省で考えておる基本的な考え方がございます。その考え方に即しつつ、具体的にはいま申し上げましたような態度で対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  176. 木原実

    木原委員 こういう際はよくトラブルにもなるわけですから、当局のほうでお持ちになっているスケジュール、これは当然おありだと思うのですが、これを、そういうことだからというようなことで押しつけないで、できるだけひとつ話し合いをして、移転や編成がえ等について遺漏のないようにしていただきたいと思います。それから移転の困難な職員の人たちというようなものがやっぱり出てくると思います。だからそういう職員の人たちに対しても、当然これはひとつできるだけの配慮をしていただきたいと思います。昨年三里塚の御料牧場の移転のときも、宮内庁はずいぶん職員の移転の問題について気を使いまして、努力をしたというような事例が、ここでも報告をされました。そういうことですから、新しく圃場開設をなさる、職場をかわっていく職員の人たちに対してはできるだけ合意の上で、話し合いの上でひとつ作業を進めるように、これは要望をしておきたいと思います。そういうことで、草地の関係につきましてはもうこれで質問を終わります。繰り返しますけれども、ひとつ草地試験場、多少まだ私は不安なものが残っておりますけれども、せっかくつくるわけですから、ひとつりっぱな研究の成果があがるような方式を打ち立ててもらいたい、こういうふうに要望いたしておきたいと思います。  これで私の質問を終わるわけですが、最後にもう五分ほど時間をいただきまして、これは大臣にちょっとお伺いをしておきたいと思います。別の話でございますが、農林省の所管の中に例の商品取引所というのがございます。これはことし御案内のとおり相場の問題をめぐりまして不良のといいますか、仲買い人の問題その他が出まして、新聞その他にも騒がれましたのは御案内のとおりです。その後いろいろ問題が出たと思いますけれども、商品取引所の指導の方向について、これは確かに私どもあの話を聞いてがく然といたしました。昨年も実は私は相場の問題についてこの委員会で触れたことがあるわけですけれども、何か取引所の運営ないしは指導について、農林省として新しくお考えになっている問題がございますか。新しくというとおかしいのですが、ああいう問題が起こりましたから指導、監督を強化をするという話をわれわれは承っているわけですけれども……。
  177. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 商品取引所につきましてはその生産、流通の面でその実情を十分把握している官庁がその品物の監督をするというようなことになっておりますから、御指摘のように通産とわれわれのほうと両方が監督しておるわけであります。また、そのほうがうまくいくと思いますけれども、そこで先般来世間に伝えられておりますような問題、実はああいうふうに表にたくさん苦情が出てまいります前から、私ども部内においてこの商品取引所のあり方につき、また最近とかく過当投機も世間一般よくわかっている、しかもその一般の方々の射幸心といいましょうか、そういうことを非常に故意にあおったりして非常な社会的弊害を出していることは事実であります。これは困ったことでありますので、事前に私どものほうでも、監督の担当の局長からそれぞれ警告を発したりなどしておるわけでありますが、最近は御承知のようにアズキの相場もあのような状態になっておりますけれども、なお私どものほうと通産省と協議をいたしまして、この商品取引所の、いま申しました過当投機等を含めて、それからまた何と申しますか、非常にオーバーな外交、外務員の活動、そういうようなことについて規制をいたすように種々話し合って、適当な措置を講じてまいりたいと思っておるわけであります。
  178. 木原実

    木原委員 これは時間がありませんので申し上げませんけれども、中に入って少し実情を調べますと、これはかなりひどいんです。これは品物によりましては取引所なんというものでなくて、もうまるで相場の投機師の集団という側面があるわけですね。ですから一つは、私は指導、監督を強化するというのならば、これは思い切って、通産省のお話が出ましたけれども、やはり行政上からいっても、行政上の何か指導機関の一本化みたいなことをはかられませんか。
  179. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは行政監督を一本化、それは一つ考え方だと思いますけれども、先ほど申しましたように、そこへ上場されるものが証券のようなものと違いまして、やはり流通、生産の過程をよく知っておる官庁監督する。監督しておるものがやはり現物でありますので、そういうことのほうがいい。現実長い間やってまいりました経過でそういうふうに思うわけでありますが、そういう監督につきましては、われわれ両省一致して同じ方向で監督をいたそうといたしておるわけでありますが、なお御指摘のことは事実もうわれわれも心配して、全く御同感でございますので、一般大衆にも不安を持たせないように、また取引所の本来の使命をはずさないように、なお私どもといたしましては相当な決意をもって臨もうといたしておるわけであります。
  180. 木原実

    木原委員 もうこれで終わりますけれども、そこまで大臣おっしゃるならあれなんですが、私は大手亡とか雑穀類、これがああいう取引所を経由をして取引の対象になる、こういうもう段階じゃないんじゃないかと思うんです。まあそれぞれ言い分はあると思いますけれども、アズキにしましても、豆にしましても、取引所というこの取引方法からはずしちゃったらどうかと思うのです。これは決して産地の農民の保護にもなっておりません。実際の需要家の利益にもなってないわけですそしてしばしば取引所に集まる、オーバーな外交員とおっしゃいましたけれども、大衆に迷惑をかけるというような側面の問題が出てくる。そういうことになると、取引所をかまえてアズキだ豆だというものをやっておるそういう時代ではもうなくなったんじゃないのか。それからまた、課長さん見えておりますけれども、市場法の改正等も行なわれて流通機構もそれなりに整備の方向に進んでおる。いっそそういう市場のほうに出させるというような方向で検討はできないでしょうか。投機の問題にしましても、たとえば大手亡のことを調べてみますと、御案内のように中国からアズキが入ってくる。なかなかああいう現在のような状態ですから、ことしどれくらいアズキがくるか、実際に船に積まれてきてみないとわからぬというような要素もあるわけです。そんなようなことも対象にして投機がやられておりますというと、これは少々指導、監督をしましても、投機師たちのいい投機の対象になって望ましくない方向に走っていく可能性というものは絶えずはらんでいると思うんです。しかも生産農民にもそれから実際の需要家の利益にも必ずしもなっていない、こういうような側面がもう出てきておりますし、弊害のほうが私は目につくと思うんです。ですからそれならば、全部とは申しません、取引所はいますぐつぶしてしまえとは言いませんけれども、そういうある種のものについてはこの際思い切ってはずす、そういうことで取引所のやはり体質改善をはかっていく大きな手術をする段階にきているのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  181. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま申しましたように、この問題が表ざたにあまりならないころから農林省では非常に注目をいたしまして調査研究いたしておったわけでありますが、そういたしますと、やはりそういう業界でも、それから一般大衆投資家たちがいろいろな意見を出してまいりまして、私ども率直に申し上げまして、いま木原さんおっしゃったような御意見がかなりあることを承知いたしております。現に、この間のアズキは、中共から本年あまり参りませんでしたので、そういうこともあって騰貴しておった。そういうことに対する思惑が非常に加わったと思いますが、それに拍車をかけて、先般通産省が発表いたしました事故件数及びその商店名等も出てまいりました。ああいう一般的状況を見まして、私は、商品取引所審議会というのがございますから、その意見を聞きまして、それから一般の方々の御意見も承りまして、本来の目的を達成できるようにするにはどうしたらいいかということを研究させようと思っているわけでありますが、その研究も続けております。その研究の中には、世間でたいへん大きな声になっております、ただいまあなたの御指摘になりましたような問題ももちろん含めて、ひとつ十分研究してもらおうと思っておるわけであります。
  182. 木原実

    木原委員 それではもうこれで終わります。ただ一言、農林省も、次第に流通とか消費サイドの仕事行政需要というものが大きなウエートを占めるようになってまいりました。ですから、いまの取引所の問題も含めまして、やはり整理すべき点は思い切って整理をする、そして文字どおり近代的な形で流通なら流通の問題に対処をしていく必要があるのではないか。これは私の意見ですけれども、そういうことを申し添えまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  183. 天野公義

    天野委員長 鬼木勝利君。
  184. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大臣もたいへんお疲れと思いますけれども、引き続きひとつお願いを申し上げたいと思います。  いろいろお尋ねいたしたいのでございますが、私がまず最初にお尋ねいたしたいのは、日中民間漁業協定についてお尋ねをしたいと思います。  これは、従来は一年間で更新しておったように聞いておりますが、今回は昨年末にかろうじて半年間だけ協定が結ばれた。こういうことになりますと、また二カ月いたしますとその期限が来るわけで、更新しなければならない。これに対してどういうふうにお考えであるか。関係漁業者は非常に不安がっております。従来は一年間で更新しておったのに、半年間の協定ということになった。だんだん追い込まれて、じゃ今度はもう協定ができぬのじゃないかと非常に不安がっておるのですが、もう更新が目前に迫っておるのですから、おさおさ怠りはないと思いますが、どういう対策を講じておられるか、その点をまずお尋ねいたしたい。
  185. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 国会中でございましたり、当面ロシアのほうばかり一生懸命でやっていまして、正直に申して中共側のほうはこれからのことでございますので、いままでの経過を事務当局から御報告申し上げます。
  186. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 昨年の十二月に半年延期になりました大きな理由の一つには、昨年一年間に民間協定の違反が非常に多かったということをあげておりまして、そういう違反の、協定の守られないようなものは、一年間の延期ができないということを言っておりますので、特に違反のないように厳重な指導をいたしまして、現在のところは違反は皆無になっておるものと信じております。それで、そういう実態を踏まえまして延長を交渉いたす考えでおります。
  187. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これは、日中国交がないために、いわゆる民間協定であって政府協定ではない、非常に皆さんも御苦労である、御苦心のあることはわかりますけれども、日本の民間の漁業にとってはこれは大きな漁場で、生活権の問題でございますし、また大きく日本の漁業に対して、これはぜひもっと推進して、双方とも互恵をこうむるようにこれは推進しなければならぬものだと思うのです。  もう皆さん、これは御承知だと思うのですが、日中漁業協議会で協定されて、その付属書に一号、二号、三号と詳しく載っております。漁船の数に関する規定は、付属書の第一号に載っておるのですね。第二号が幼魚の保護に関する規定、小さいのまでとり上げるようなことをやらないようにという。それから漁船の操業秩序維持に関する規定。その次には、漁船が緊急事故により寄港する際及び海難救助後の処理方法に関する規定——台風だとか、海難の事故だとか、あるいは船員が突然ぐあいが悪くなるとか、いろいろな場合に寄港する、その場合には互いに助け合っていくというような、こまかい操業上のことから、きめのこまかい取りきめができておるように一応私はこれを拝見しておるのでございますが、どうしてそのように違反を起こすか。あまりに違反が多いので、それで半年間に限られて、いままでは一年間であったのに半年間になった。今度はもう向こうは協定をしないというようなことになるのじゃないか。ところが、違反といいましても、日本の漁民が全部違反をしたとは私は解釈したくない。その協定を皆さんよくお守りになっておると思いますけれども、たまたまそういう違反があったということになると、それを大きく向こうは考えられると思うのです。そういう点に対して、何しろもう二カ月後ですからね。それに、大臣はたいへん温厚な、ごりっぱな方で、まだ何も考えておらぬとおっしゃるが、大臣が考えていらっしゃらないならば、事務当局の皆さんが当然やらなければならぬ。大臣が何もかも一から十まで全部やるというわけにはいかない。そのためにもろもろの係がある。皆さんがこれに対して、いや大臣御心配要りません、かようかくかくこのように私は計画いたしております、いつ何どきでも協定し、協約を継続するところの自信がございます、このように万全の策を講じておりますというお答えができる方は、だれでもいいから御答弁を願いたい。
  188. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 中国側が申します違反のおもなものは漁区違反でございまして、禁止区域を侵犯しているという点でございます。底びき網についても若干はそういう事実もございましたけれども、中共側が言っております数百隻というのは底びきではなくて、まき網の操業を同じく底びき網というふうに主張しているようにも受け取られますので、現在底びき網については全くそういう事実もないようにしておりますし、まき網につきましてもそういう誤解のないように指導しておりますので、現在のところ、中共からそういう異論は全然出ておりません。したがいまして、今度の六月に延期をするときには、そういう点で非難を受けることはまずないという自信を持っております。
  189. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 底びき網も網の目を小さくしたから違反にひっかかったという事例もあります。それは私は調査いたしておる。ところが漁区は六カ所ですか、六カ所にきめてあるようですね。それからその漁区のラインを乗り越えていく、これもりっぱな違反ですからね。それからとってならない魚をとるとか、あるいはいま言ったように幼魚をとる。網の目を小さくすれば幼魚はどんどんとれますからね。だからそういう違反もむろんあると思いますし、そういうことを一つの因として先方は断わって、いままで一年間の契約を半年にしよう、そういうことになったのだと思います。だから、どなたをどうだということは申しませんけれども、いずれの社会においても絶対違反が皆無ということはないわけなんだ。これはないことがほんとうでございますけれども、少なくともそこに何らかの違反が、故意であろうが故意でなかろうが、あるいはあやまちということもございますし、それは全然皆無ということはできないでしょうが、少なくともそういう違反は絶対やらないという理想の上に立って協定は長く結ぶべきだ。むしろいままで一年で更新されておったものを二年、三年と長くしていかなければならぬ。それだけのことをやはり努力しなければならぬ。けれども、あなた方のいまの御答弁では、大臣はたいへん率直におっしゃったから、私は大臣をどうこう申し上げるのじゃないけれども、あなた方、いまにわかに違反のないように一生懸命やりますとかやりませんとか言っているけれども、現在までこれに対してどういう対策を立てられたか、漁業界と話し合いをなされたか、そういう打ち合わせをなさったか、またどういうことで進もうという話し合いができておるのか、何かそういう実績をひとつ、こうなってこういうふうにしましたからだいじょうぶでございます……。そうせぬと、善良なる漁民の皆さんは非常に心配しておられる、どうなるんだろうと。でございますから、その点をお伺いしておるのです。
  190. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど私何も考えておりませんと申し上げたようにお聞きになったかしれませんが、そうじゃございませんで、魚のことで、実は片一方のほう、いままでそればかり取りかかっておったので、最近の状況をよくわきまえておりませんのでということでございます。そこで、実は先ほども指摘になりましたように、わが国と中共とはまだ国交を回復しておりませんので、政府協定ができないことはもう御存じのとおり。そこで日中漁業協会というのがございまして、いままでそこがいろいろやっておってくれたわけであります。私どもといたしましては、いまのような事情でございますので、われわれが表に立つわけにはまいりませんが、いろいろそういう団体との交渉もしながら、この人たちに従来どおりの協定が延長されることを希望いたしまして、この方々に御努力を願っておる。われわれのほうとしてはできるだけ側面的にお手伝いをしたい、こう思っております。
  191. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いま違反が多いから中国側が断わった、非常にきびしく言っているというようなお話がありましたが、それは理由の一つで、先方さんはそういうことをおっしゃるかもしれないが、違反が多いからこういうことになったのだというようなことでは、私は善良なる漁民の皆さんに対して申しわけないと思う。そんなことはあるわけはないと思うのです。でございますので、かりにそういう違反があっても、私が先ほど言ったように、互いにそういうことは戒め合って、そして漁業の協定期間が長く結ばれるように、更新されるように、そこにあなた方の指導があり、助言があるのじゃないかと私は思うのです。大臣のおっしゃったように、それはそのとおりですよ、これは政府協定も何もないのだから非常に御苦労だとは思いますけれども、やはり日本漁業界のためにあなた方が指導的立場に立って指導助言をすべきである、こう私は思うのですよ。もしかりに操業中に負傷者が出たとかあるいは突然病人が出たとかいうような場合、あるいは台風に出っくわしたとかいうような場合には、これはしかたがないじゃないですか。当然中国の港に寄港しなければならない。それにもし協定がなかったとしたならば、緊急避難をどうすればいいか。安心して操業することができないということになるのですよ。しかも黄海やあるいは東支那海の漁場において中国の船と日本の船が入り乱れて操業をするということになったならば、これはたいへんなことになると私は思うのですが、まことに危険きわまりない。これでは絶対安心して操業はできません。これはもう何よりもかによりもたいへんなことだと私は思うのですよ。それじゃいままでどういう違反で拿捕されたとか、どういうことがありましたか。その点ずっとお調べになっておりますか。私はちょこちょこ聞いておりますから資料を持ってきておりますが、その点……。
  192. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 ただいま資料を持ってきておりませんので、こまかい事例は申し上げかねますが、いままでに拿捕されましたのは主として区域違反、いわゆる華東ラインを侵犯したというものが大部分でございます。中共側が申しております数百隻というような数字はございませんで、私どもが想像しますのには、数百隻というのはまき網船を誤解してそう言っているのではないかというふうにも考えられます。底びき網の華東ラインの侵犯も何隻かございました。それから網目違反につきましては中共側が言っておりますが、私どもでこまかい網目を使ったというのは確認されておりません。それでその後以西底引網協会といたしまして総会を開きまして、協定を絶対に順守するということを誓約いたしまして、私のほうにも誓約書を念のために申し送ってきております。  それから私のほうといたしましても、下関、福岡、長崎にそれぞれ協会の支部がございますので、この支部に出向きまして違反のないように、あるいは船におもむきまして、網目の違反があるかないかということを確認をいたしておりまして、今年になりましてからそういう違反は皆無だというふうに考えております。
  193. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは数百隻あるわけはないでしょう。日本の漁船は、第一漁区が四十六隻、第二漁区が六十隻、第三漁区が八十隻、第四漁区が五十隻、第五漁区が七十、第六漁区が七十、備忘録の区域もありますけれども、こういうことになっておるのですから、これは数百隻あるわけはないでしょう。だからもしこれが数百隻もあるということになれば、いわゆる協定違反でよけい出漁しておるということになるわけですね。そういう点は的確におつかみになっておりますか。協定どおりに日本は出漁しておるかどうか。中国側が言われるように、いわゆるもぐりでよけい出動しておるのか。そういう点を、ただ数百隻あるわけはないというようなことではなしに、日本が操業しております出漁船数を的確に把握していらっしゃいますか。
  194. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 以西底びき網漁船につきましては正午位置を毎日報告させることになっておりますので、位置につきましては確認いたしております。特に本年になりましてからそういう問題がございますので、福岡調整事務所におります監視船を重点的に華東ラインのほうに向けまして、違反のないように指導をいたしております。ただいま申し上げました数百隻というのは、こちらの言い分ではなくて中共の言い分で、数百隻の違反があったから、こういうことを言っておりますが、そういう事実は私どもないというふうに考えております。ただ数百隻というのは、まき網船が行動いたしますと、まき網船は一カ統で七隻の船団でございますので、何十隻かかたまって移動いたしますと、非常に多くの船が操業しているというふうに考えがちでございますから、その点は誤解のないように中共側にもよく申しておりますし、これからもまき網は誤解のないようにやるように、まき網の組合のほうにも指導をしております。そういう趣旨でございます。
  195. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 協定をまじめに順守しておるかどうかというような点に対して、漁民の方と、いわゆる連合会か何かあると思いますが、そういう方々と常に緊密な連絡をとり、あるいはそういう月例報告でもとって、総合的に日本の出漁船に対する連絡をとっておられますですか。
  196. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 いま申し上げましたように、各漁船とは毎日正午位置の報告をとっております。  それから底びきの協会といたしましては東京に支部を設けておりまして、そこに協会の専務がおりまして、そことも私どもは常時連絡をとっております。  それから福岡に私のほうの福岡漁業調整事務所というものがございまして、九州の沿岸並びに東海、黄海につきまして取り締まりをやっております。そこも協会と常に密接な連絡をとって指導いたしております。
  197. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 福岡の漁業調整事務所は、これは私も行ったことがありますから知っておりますが、そういうのが毎日の連絡が緊密にとれておるということになりますれば、かりにこういう違反があるといっても、それに対してははっきりした反証があるわけですよね。毎日の日報もいまおっしゃるようにあっておるのだから、いま日本の船が東シナ海に何ぼ出漁しておる、これは何日に出発していつまでおるのだ、途中どういうことがあったとかあるいはどこへ寄港したとか、手に取るようにわかるはずだと思うのですよ。またわからなければならぬはずでしょう。それが、中国側からそういうことを申し出られるということは、ちょっと私は了解に苦しむのですよね。もしそういう事実があるならば、あるいはそういうのは出漁停止でもやるとか、そういう点をもう少しはっきりしてもらえぬと、向こうからそういうことを言われてこれに反論する確証が何もないということでは——いままで一年間の協定を結んでおったのを、きびしく半年だ、そうしてまた今度、あと二カ月で協定するかしないかわからないというような状態なんですよね。でございますから、私は何も皆さん方に文句を言っているのではないが、これがますますりっぱに協定されて、漁民の皆さんに、絶対御心配ない、御安心なさいということをはっきり言ってもらえば、これはみな全国にわかりますからね。そうしないと、漁民の方はこれに対して非常に不安を感じておるのですよね。どうでございますか。いいでしょうか。もう一度その点を……。
  198. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ごもっともでございますが、私どもは仰せのような線で従来どおり継続ができますように、それぞれの関係者と十分協力をいたしまして努力をいたしてまいります。
  199. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それでかりに違反があるとするならば——私は違反があるとは思いたくありません。ありませんが、かりにそういう違反でもあるというならば、これは水揚げ制度によって左右される、つまり歩合制度である、こういうことになりますので、船員の、つまり漁民の皆さんの賃金が歩合制度によって上下する。いわゆる水揚げのいかんによって賃金が上がったり下がったりする。あるいはまたそれによって、あれは船長さんですか、漁労長というのですか、そういう人々の入れかえをやるとか更迭になるとか、いわゆる身分に変化がくるとか、そういうきびしい規制が漁業界にあるのではないか。これは単に漁業界ばかりではないですよ。私は、運輸省の問題が出たら運輸省に自動車の話もひとつやろうと思っているのですが、全部水揚げ制度になっておるのですからね。水揚げが多ければ月給が多くなるとか、これはたいへん成績がいいからというので漁労長としてまた行くとか、漁労長が水揚げが悪いと、ちょいとおまえこっちのほうに行けというようなことをやる、そういう制度があるのではないか。(「そうじゃないよ」と呼ぶ者あり)いや私はあると言っているんじゃありませんよ。あるのではないか、かりにそういうことがあるとするならば、そういう点から無理をなさるのじゃないか。私は全部想定の上に立ったんですから。ようございますか。だから善良な漁民の方に違反はないと思うが、かりに違反があるとするならば、こういう仕組みになっているのじゃないか、こういうふうに申し上げている。その点あなた方はベテランだからよくおわかりだろう、それをちょっとお尋ねしている。
  200. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 現在の漁業につきましては、全額月給制というものはほとんどございません。以西底びきにつきましても、全額月給制ではございませんが、固定給が、船によって違うと思いますが、四万ないし五万程度の固定給がありまして、その上に歩合というふうにきめられているのが多いようでございます。それで特にその歩合のために違反をしなければやっていけないというような現在の状況ではないというふうに私どもは考えております。
  201. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 では私が想定の上に立って申し上げたことがやはり当たったということになるんですな。さよういたしますると、すぐおそばに大家がおられますから、うっかりすると失言を取り消さなければならない。  そこで、これもかりにでございますが、そういうことはない、そういうことに縛られておるわけじゃない、いまあなたはこうおっしゃったが、そういう点も大いに左右されているんじゃないか。でございますから、それは水揚げ制度もけっこうでございましょうが、やはり大海の怒濤をけって、妻子を忘れて働いている皆さん方を、後顧の憂いなく安心して操業できるような漁業界の仕組みに体質の改善ということが、私は全面的にということは申しませんが、少なくともやはり体質の改善というようなことは大事ではないか。そういう点においてあなた方が指導助言をなさったことがあるか、そんなことは一切ないというて放置——放置ということばはいけませんが、関係されなかったか、そういう点についてちょっとお尋ねしたいですね。
  202. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 漁業におきます固定給なり最低保障といいますのは、以前はほとんどございませんでした。あっても非常に少ない額でございましたのが、私ども運輸省とも協議いたしまして、固定給なり最低保障というものを定めるように漁業界各界にわたって指導いたしまして、全額歩合というようなものは最近まずなくなったものと私どもは考えております。
  203. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 とにかく私は違反のないようにする、そうして長くますます日中漁業協定が継続されるように、大臣にもさっき御答弁をいただきましたので、これで漁民の皆さんも安心されると思いますので、いかなる難関があっても、ひとつ皆さま方の御努力によってこの協定を長く継続していただきたい、最も漁民の方に不利益をこうむらないようにお願いをしたい、かように思います。  そこで、日中漁業協定の問題はその程度にいたしておきまして、次にお尋ねしたいのでございますが、米の問題についてはほとんど皆さんが議論を出し尽くされておる、かように存じますので、米のことは私ちょっと差しおきまして、麦の作付に対して四十五年度どのようなお考え、方針を立てていらっしゃるのか、その点をまずお尋ねいたしまして質問を少し進めたいと思うのです。
  204. 池田俊也

    ○池田政府委員 麦の作付をどうするかということでございますが、これはもちろん農家が判断をすることでございまして、私どもがどうこうというふうにまいらないわけでございますが、最近私どもが得ております情報で見ますと、かなりの作付面積の減少になるというふうに承知をいたしておるわけでございます。四十五年産の麦全体で見ますと、前年に比べまして作付面積で約一九%の減少に相なるようでございます。
  205. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 麦の作付については農家がすることで、われわれが関知することではない、これはちょっとおかしいじゃないですか。そんなばかな話はないでしょう。それじゃ米だって同じでしょう。
  206. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 事務当局でございますものですから、率直に現在の状況を御報告申し上げたのであります。それでわれわれの考え方を聞いていただきたいと思いますが、御承知のように最近は麦生産の減少傾向は、麦作の農業経営に占める地位の従属性と申しますか、作付規模の零細性などによるものでございまして、麦の増産は事実上容易でないことは御存じのとおりであります。そこで私どもは、麦の主産地域を中心として麦作団地の育成——何しろ私どものほうの麦それ自体がまだかなり需要もございますし、したがって麦作団地の育成、それから表、裏作を通じた機械化等一貫作業体系の確立、促進等の諸施策の推進を通じまして、麦作の生産性の向上をはかることによりまして作付面積の確保につとめておる次第であります。  なお麦類の自給率につきましては、さきに農産物の需要と生産の長期見通しを農林省が発表いたしておりますが、昭和五十二年における数値を見込んでおりますけれども、ただいま申しましたような施策の推進によりましてでき得る限りの確保につとめてまいりたい、こういう考えで対処いたしておるわけであります。
  207. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いまの大臣のお話ならばよくわかりますけれどもわが国の麦の作付に対し、麦の生産に対して、それは農家がすることであるからわれわれは関係ないなんてとんでもないです。あまりふざけたことを言うんじゃありませんよ。「昭和四十五年度において講じようとする農業施策」というふうに大きく出ているじゃないですか。いま大臣のおっしゃることはここに出ております。「麦生産対策事業をつぎのとおり実施する。」そしてこれこれのことをやると出ている。それにそういうふざけた答弁をされてははなはだ困る、困るじゃないか。  そこで麦がだんだん年次を追うて非常に減反になっておる。四十一年度八十一万ヘクタール、四十二年度七十一万ヘクタール、四十三年度六十三万ヘクタール、昨年度は五十六万九千ヘクタールあったが、ことし、四十五年度は四十六万ヘクタールに減り、だんだんじり貧になっている。じゃ日本に麦は要らないかというと、麦は日本は輸入しておる。  そこで、おたくから出ている四十五年度の農業施策、これです。生産地の育成につとめるための水田における麦作団地の育成対策事業を百カ所計画されておる。そしていまお仰せになった畑麦作の大規模な団地の育成対策、いわゆるパイロット事業を計画しておられるというようなことが、ここにこうはっきり載っておる。そして麦種子の生産供給安定策として十カ所施設を引き続き実施すると載っておる。すると、引き続き実施しておりながら引き続き減産しておる。これはちょっとおかしい。いままでじり貧でだんだん減ってきた、だからこういうふうにやるのだというのだったらいいのです。まあややわかる。あなた方の出していらっしゃるこれに、そういう施策を引き続き導入して大規模のものを育成し云々、こう載っておる。そうすると、引き続き皆さんがいままでずっとやってこられて、実際の実績は引き続き毎年毎年衰亡の一途をたどっていく、これは一体どういうことか、こういうことをお尋ねしているのです。
  208. 池田俊也

    ○池田政府委員 先ほど先生の御質問、ちょっと意味をとり違えましてたいへん失礼いたしました。  ただいまの御質問でございますが、従来から生産対策といたしましては、私どもとしてはかなり力を入れてまいっておるわけでございますが、御指摘のようにかなりの減少を逐年いたしておるのでございます。これの主要な理由といたしましては、麦作というのは現在の状況を見ますと、農家数はかなり多いわけでございますが、一戸当たりに見ますと生産規模が非常に小さいわけでございます。平均的に見ますと、十数アールというような非常に零細規模でございます。まあ率直なところを申し上げますと、農家として麦作に非常に力を入れてやっていくというような農家は比較的少ないわけでございます。そういうような事態が一方にございますし、それからまた収益性がどうも他の作物に比べまして十分でない。これもいろいろ経営規模によりまして違うわけでございますが、ごく平均的に申し上げますと、たとえば一日当たりの労働報酬が千円以下で、米に比べましても三分の一とか四分の一とかいう数字でございます。そういうことで、なかなか妙味がないということが一つございます。  それから一方、労働事情も若干影響しているように思うわけでございます。最近におきましては、都市の周辺でございますとか、農業が主婦によって占められているところがかなりございますので、そういうところではあまりもうからないものであるならばこの際は作付をしないというような傾向もあるわけでございます。そういうようないろいろな事情が合わさりまして、御指摘のありましたような現象になっているわけでございます。  ただ、私ども先ほど御指摘になりました麦の生産対策を従来からやっておりまして、内容としても非常に力を入れておるつもりでございますが、そういうような地帯におきましてはむしろふえている傾向が見られる。これは明るい面でございますけれども、全体といたしましては先ほどのようなことだと理解いたしておる次第でございます。
  209. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたが私の言うことを意味を取り違えたとおっしゃるなら、それで私も了承します。  ところが、麦の生産に対しては「高能率作業機械、収穫用機械および乾燥調整施設を導入し、徹底した機械化集団栽培を実施する団地を育成する」、そういうことで先ほど百カ所を計画しておるというお話でございますが、これに対してどういうふうな成果があがりつつあるか、またどういうふうな補助、育成をなさっておるか。ただ機械化せよといって、それには融資もなければ補助金もない、機械はどんどん上がっている、そうすると農家は機械を買うことに追われて月賦月賦で全部借銭になってしまう。これに対して皆さんがどういう手厚い対策をなさったか、どのようにいまその百カ所の実績があがっておるか、そういう点について少し御説明願いたいと思うのです。
  210. 池田俊也

    ○池田政府委員 ただいまお話のございましたようないろいろな機械の導入を中心にいたしまして麦の生産対策を進めているわけでございますが、これのねらいは、いまさら申し上げるまでもございませんが、結局労働生産性を極力上げようというのが主たるねらいでございます。  それで、その成果の点でございますが、一例をあげて申し上げますと、たとえばこれは必ずしもお話のございました麦作団地だけではございません、全体の数字でございますけれども、たとえば昭和三十九年の数字をとりますと、十アール当たりの労働時間が約九十八時間ぐらい使っていたのでございます。それに対しまして四十三年度におきます数字では六十三時間ぐらいで、かなり大幅な減少になっているわけでございます。これは全体の数字でございまして、裏作の場合でございますが、そういうこともございますわけで、私どもはやはり機械を導入しました成果というものはかなりあがってきているというふうに理解をいたしておるのでございます。  なお、一戸当たりの規模でございますが、これも全体といたしましては若干ずつは増加をいたしております。麦作団地等におきましてはさらに増加をいたしておるわけでございますが、要するに経営規模を広げるということと機械の導入によりまして労働生産性を上げていく、そして一日当たりの労働報酬を上げる、こういうことでやっておるわけでございます。
  211. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 御説明はわかるのですが、しかしそういうことは常識で考えてわかることで、たとえば先ほどおっしゃったような麦の低収益性、麦が非常に安いあるいは労働力不足だ。農村地帯はいわゆる過疎地帯であって、都市集中で労働力が不足だということは、これはもうわかり過ぎたことで、いまごろそんなことを言うのはおそきに失している。農村は老齢化しておる。世間で三ちゃん農業だなんていわれるのはそこからきているのですからね。そこで、いま機械化をしよう。でございますから、他の有利な作目に転換していく、これは当然わかり過ぎたことなんですね。ところが、いま御説明では、麦ばかりじゃなくて農業生産全般にわたっての考え方であり施策である、あなたはそうおっしゃったのですね。そんなことはおっしゃらぬでも、ここに「昭和四十五年度において講じようとする農業施策」と書いてあるんだから、それは麦の施策じゃないんだから、そんなことを、あなたは私のことばじりをとっておっしゃるけれども、いま私は麦の話をしているんだ。それはわかっておりますけれども、事実においては、先ほどおっしゃったように、昨年度よりも一九%も低下している。昨年四十四年度は五十六万九千ヘクタールあったのが、今年四十五年度は四十六万ヘクタールに減る。ああも手を打っておる、こうも手を打っておるとおっしゃるけれども、実績はあがらないじゃないか。その点に対して皆さんの考え方が実情に即した考え方じゃないじゃないか。いま大臣は、麦の生産を大いにはからなければならぬとおっしゃっておるのですから、あなた方のお考えと現実とが一致しないから……。  そこで、「主産地育成の指針を得るため、経営、技術問題について実地に調査、検討を行なうことを目的として四十三年度に麦作総合改善調査事業を実施し、」とあるが、どういうことをされましたか。これはなかなか名文句で、ほんとうにいい文句ですよ。実質的にどういうことをされて、どういう効果がありましたか。また、どういう効果をあげつつありますか、その点をお尋ねしたい。
  212. 池田俊也

    ○池田政府委員 麦の場合には、いまさら申し上げるまでもございませんけれども、実はいろいろな経営の形があるわけでございます。一つは田の裏作として栽培をするという形がございますし、それから、そうではなしに畑作として栽培をするという形がございます。特に私どもは、やはり田作の裏作として栽培をいたします場合には、水田との一体性というようなものに留意をする必要がある。先ほどおあげになりました調査は、要するに麦作の実態を調べまして今後どういうような方向でその生産改善を行なうか、こういうようなことにつきまして種々調査をしたわけでございまして、現在やっております麦作団地の育成事業もそういうものの成果を基礎にいたしまして、表、裏作を通ずる機械化体系、その機械化の場合にはどういうような機械の導入が最も適しているか、そういうようなことをいろいろ検討したわけでございまして、現在そういうものを基礎にいたしまして麦作団地の、先ほど御指摘のございましたような事業をやっていく、こういうことでございます。
  213. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこで、あなた方の御計画、お考えはわかるのですけれども、これは緊急に手を打たなければ、先ほどから私が申し上げておるように——ここに「農産物の需要と生産の長期見通し」というのを皆さんのほうからお出しになっておる。これを拝見しますと、昭和五十二年に——これはおたくから出されておるものでございますよ。昭和五十二年に五十五万ヘクタールになると見通しをお立てになっておる。ようございますか。しっかりしてくださいよ。昭和五十二年に五十五万ヘクタールになる見通しだ。これは生産の長期見通しですからね。ところが現実には七年も早く、もう四十五年度に、五十二年じゃありませんよ、四十五年度に四十六万ヘクタールになる。あなた方の見通しは昭和五十二年に五十五万ヘクタールになる。ところがとんでもない。七年も前に、ことしすでに四十六万ヘクタールになっておる。こういうきびしい現実に対してあなた方の農業政策、お考えがあまりに安易で甘過ぎやしないか、現実の実態をほんとうに把握しておられるかどうか。こんなにお粗末な「農産物の需要と生産の長期見通し」なんというものを、実際の話、出してもらいたくないですね。その点どのようにお考えになりますか。
  214. 池田俊也

    ○池田政府委員 確かにいまお話のございましたような見通しに相なっているわけでございます。それの一つ——これは当然御存じのことを私が申し上げることになるかと思いますが、先ほども申し上げましたように、現状におきましては何といいましても麦は非常に低収益でございます。低収益である原因というのはその価格が安いということでございますけれども、価格は外国産の麦との関係がございますので、なかなかこれを上げるということは実際問題としては非常に期待をしにくいわけでございます。そういうような事情がありまして、不採算の圃場につきましては作付をやめる、こういうような傾向があるわけでございます。  そういうような従来の傾向を基礎にいたしまして五十二年におきます見通しができているわけでございまして、確かに現状に比べますとさらに減少をする、こういうことになっているわけでございますけれども、私どもは、先ほど申し上げましたようないろいろな生産対策を基礎にいたしまして、主産地を中心にいたしまして、そうして麦の生産性を上げまして、それによりまして主産地を中心にした麦の生産量の確保をしたい、こういうふうに努力をいたしているつもりでございますけれども、何ぶん先ほど申し上げましたような事情がございますので、ある程度の減少はやむを得ないものではなかろうか。しかし、少なくともその程度のものはぜひとも確保をしたい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  215. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなた方の御苦心は大いに多といたしますが、これはよほど抜本的に——いや、もう麦は要らないということであればこれは話は別ですけれども、ますます需給は拡大されるばかりですから……。  「農業の動向に関する年次報告」というのがここへ出ております。昭和四十四年度のが今度の六十三国会に提出になっておる。これを拝見しますと、麦の主産地の関東地域においても最近非常に出かせぎ農家が多くなっておる。これは当然のことです。この原因は麦の低収益性と労働不足の反映と考えられる。こういうわかり切った原因ですがね。三歳の童児でもわかるような理由があげてある。そうしますと、最近非常に出かせぎ農家が多い。その推移はおわかりになっていますか。それを説明してください。一昨年からここ三、四年どのくらいどういうふうに移動しているか。
  216. 池田俊也

    ○池田政府委員 この出かせぎのとらえ方が一つ問題でございますけれども、私どもがとらえております出かせぎ者というのは、一カ月以上住んでいるところを離れまして、六カ月未満他の仕事に従事をする、こういう定義で調べておるわけでございますが、その数は大体二十三、四万程度、ここ数年大体同じくらいの数字でございます。たしか四十年ごろでございましたか、やや多くなりまして、二十八、九万ほどの出かせぎがあったことがございますが、その後若干減少をいたしまして、最近は二十三、四万に推移をしている。大体出かせぎをいたします地域といたしましては、東北が圧倒的に多いわけでございまして、あと北陸地方等でございます。その他は比較的少数になっているわけでございます。傾向といたしましては、全体の数はそうでございますが、中身に入ってみますと、その範囲が広がりつつある、従来は非常に零細規模でございましたものが、やや上の階層まで広がる、そういうような傾向がございます。
  217. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、出かせぎが多くなった。これは過密、過疎でわかりますが、米の一日当たりの報酬ですか、二千七百九十四円とこれに載っております。大麦は八百三十三円、小麦は九百八十一円、これは間違いございませんか。
  218. 池田俊也

    ○池田政府委員 私が持っております数字と、麦につきまして若干違うのでございますが、米はそのとおりでございます。数字は若干違いはございますが、おそらく大体その程度のものでございます。
  219. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこで、こういう点をあなた方がひとつこまかく研究していただいて、これは麦は低生産性に基づき収益が少ない。これを克服するということは容易でないと思いますが、今後裏作の適地に対しての土地基盤の整備、あるいは栽培方法改善、こういうような点は裏作のみならず米にもいわれると思いますが、徹底的に近代化をはかっていただいて、育成をはかっていただく。そういうことを私は具体的にこういうものに報告していただきたいと思うのです。ただ単なる観念的な問題でなくして、ことしはこういうことをやる、これだけの金をかけてこういうことをする、そうするとこれだけの収益がある、これだけ上がってくる、というところの具体性を持った農業政策を樹立していただきたい、このように思いますが、大臣、いかがでございますか。
  220. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のとおりだと思います。したがって、一応私どもが考えております麦対策につきましても、いまの窮屈なときではありますけれども、四十五年度予算にそれぞれ計上いたしておるのも、そういう趣旨からであります。
  221. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 麦に対しては、これは非常に日本に輸入をしておりますが、特にパンやめん類の原料になる小麦などは非常に少なくなって二〇%も減少しておる。最も需要の多い小麦が二〇%も減少している。しかも、それと逆にパンやめん類の消費は年々増大しておる、拡大しておる。そうしますと、小麦粉の需要はふえるばかりで、生産はだんだん低下していく。小麦というものがますます海外へ依存しなければならぬ、こういうことになりまして、食糧庁の発表によりますと、四十三年度の輸入が三百九十四万七千トン、四十四年度の輸入が四百二十九万三千トンと毎年毎年、年を追うて輸入が多くなっている。こういう点に大きくひとつお考えをいただきたい、かように私は思いますが、これが対策に対してはもう少し的確におやりになる御自信があるかどうかお伺いしたいのです。事実上、これは現実の問題として需要はますます拡大する、生産はますます低下していく。これはたいへんな問題になると思うのですが、いかがでしょう。
  222. 池田俊也

    ○池田政府委員 先ほど来申し上げましたように、非常にむずかしい事情にあるわけでございますけれども、私どもはやはり基本的には、需要が非常に増大をいたしておるわけでございますから、その中におきまして自給率が逐次低下をするということは好ましいことではございませんので、何とか生産の増強をやりたい、こういう基本的な考えを持っているわけでございます。そのためには先ほども申し上げましたわけでございますが、相当大幅な生産改善をやりませんと、なかなか外国の麦類に対抗ができないわけでございますので、とにかくいまの零細規模というものをもっと集約いたしまして、集団栽培というような形に持っていく。それでその集団栽培におきまして、大規模機械の導入をいたす、ここに最大の力を入れたい、こういうふうにいま考えて、これは従来もやっておりますが、さらにまたその努力を増加をさせたい、こういうふうに考えているわけでございます。  なお、それだけでは十分ではございませんので、特に麦の品種、優良品種の育成という面につきましては、これは試験研究機関の担当でございますけれども、日本というのは麦の生産にはいろいろな気象上の条件なんかあまりよろしくないわけでございますけれども、日本の風土に合った優良品種の育成をする。それによりまして、収量なりあるいは機械化がやりやすいような麦をつくっていく。そういうことと相まちまして生産対策を総合的に進めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  223. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これは国際収支の面からいきましても、国際収支を悪化させることであり、輸入をふやしていくということは食糧自給率の低下をさらに促進することになると私は思う。将来は自給率をぐんぐん上げていただく、そして輸入をなるべく減らしていただくというようにとっていただくということが麦の対策としては最も先決な、焦眉の急ではないか、私はかように思いますので、それに対するあらゆる観点からの裏作に対する政策をひとつ抜本的に樹立していただきたい、そして効果をあげていただきたい、こういうことを大臣にお願いをいたします。
  224. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そのような方向で努力いたしておるわけでございます。
  225. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 時間があればもっとお尋ねしたいのでありますが、時間がありませんものですから、麦のことは一応これで……。  それでは本題に入りまして、今度おたくのほうから設置法がかかっております。統計調査事務所の統合についてでございます。これは行政監理委員会のいわゆる民間六人委員会から出された意見書でございますが、その縮小整理の対象には四つの行政機構、御承知のとおり食糧事務所、統計調査事務所それから生糸検査所、アルコール事業部、こういうようにいろいろあるようです。それから六つの特殊法人。現在の社会状況から見ましたときに、いずれも時代に離れた存在であるから行政監理委員会からこういうことを申し入れたのだと私は思う。食糧難の米供出時代、そのときの業務や人員がそのまま時代に取り残された形の行政組織であると私は思う。そこで時代に呼応して人員や機構の面での改善をはかるのが当然のことだと思うのです。ところが統計調査事務所のみならず、食糧事務所もその六人委員会の対象になっておりますが、今回は食糧事務所の統合については触れておられない。その理由はどういうところにあるのか、ひとつ承りたい。
  226. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のようにこのたび行政監理委員会、いわゆる六人委員会の意見書なるものが出まして、それを拝見いたしたわけでございますが、まだ農林省に関するいろいろな問題について先方の意見を十分承っておりませんので、何を考えておるのかはっきりいたさないというのが現状でございます。
  227. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これはもう御承知のとおり食糧事務所には二万七千人の人員がおられるようですね。それから統計調査事務所には一万千五百人。しかもこれだけの人員を擁しながら一年間に短時日しか働かない。これは全く不合理だ。これは食糧事務所も統計調査事務所もともに六人委員会から出ておるのでございます。ところがそれを今回は統計調査事務所だけを統合する。だからその点を私はお尋ねしておるわけです。どういうわけで食糧事務所はそのままにして統計調査事務所だけにお手をおつけにおなりになったか。御承知のとおり当時の時代においてこれは必要欠くべからざる役所であったと思うのですけれども、今日過剰米が問題になって総合農政の推進が大きく叫ばれておるときに、それに呼応して当然食糧事務所も改善されてしかるべきであると私は思う。そういうことを六人委員会は答申しておる。だから廃止の理由は両者とも共通して言えると私は思う。いずれも米の強制供出時代の落とし子だと思うのです。でございますから、三十九年には、あのときは佐藤さんでしたか、臨調が答申しております。そういう点をちょっとお尋ねしておるわけです。
  228. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林省は、従来政府の方針に一番従順と申しますか、尊重いたしまして、政府の申し合わせの中で、ただいまお話しになりました臨調の意見にのっとりまして、あの当時おそらく実行は困難であろうといわれておったあの愛知用水公団を思い切って水資源公団に合併いたしました。これは当時各方面で非常な反響を呼んだのでありますが、思い切ってやりました。それから魚価安定基金も廃止をいたしました。それからまた、先ほどたいへん重要性を高田富之委員から強調されました日本蚕糸事業団等についても廃止論があったのでございますが、これはほとんどの国会議員さんが、あげてそういうことは不当であるということをわれわれに御要望もあり、しかしながら、なるべく調整して間に合うものは間に合わせたいというので、片方にありました特別会計と一本にいたしまして能率をあげるというふうなことで全力をあげて協力いたしてまいっておりますので、われわれに納得のできるような勧告でありますならば、これは謙虚に耳を傾けるつもりでございますが、なるほど統計調査事務所、それから食糧事務所等について、外観で見ますと——こういう六人委員会の内容の詳しい説明を聞いておりませんから、私がここで批判するわけにいきません。いずれ正式にものを言うようになりましたら、私どもの主張を十分に申し上げたいと思いますが、食糧事務所もそうでありますが。食管制度というものは現存しておって、いままでのような検査方法をそのままとってまいりまして、そういう中で食糧事務所がまさか要らないとは、幾ら非常識でもそういう意見は出せまいと思っております。しかしながら時代に即応して、やはりこの人事管理等をなるべく調整してうまくやりなさいということならば、そういうおことばに対しては、私どもは総定員法などにきめられた方針を尊重して、いま私は数字を覚えておりませんからあとで事務当局から申し上げますが、それぞれ職員の任務を新たに置きかえたりいたしまして、そして合理的な運営をいたしておるわけであります。しかもこの前総定員法の国会審議の最中に、内閣総理大臣から、こういう総定員法をつくりましても首切りはいたしません、強制配転はいたしませんというのが政府の方針でございますというのが内閣総理大臣の国会における御答弁でございますので、農林大臣もその方針を尊重せざるを得ないのであります。その中でも、ただいま御指摘のように、やはり人事管理は合理的にいたさなければなりませんので、もちろんこの六人委員会なるものの言っておることをよく聞いてみまして、そして国民のためにロスをしないように努力をいたしたい、このように思いまして、これらの方々の意見も十分に聞いてみました上で、私どもとして反省すべきものは反省して御趣旨を尊重いたしたいと思っております。
  229. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 たいへんよくわかりました。大臣は農政の責任ある方でございますので、合理的に大臣のお考えどおりに、万人が納得するような方法をどうぞとっていただきたい。いまの御説明でよくわかりました。  そこで、いま統計事務所が一万千五百人でございますか——その人数は間違いございませんか。
  230. 岩本道夫

    ○岩本説明員 一万一千五百人という先生の人数は大まかにいってそのとおりでございます。
  231. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そういうたくさんの職員がおられると聞いておりますが、ただいま大臣のお話もありましたように、出血人事はやらない、これは私も希望しておるわけであります。行政改革ということは人員整理ということを意味するのじゃない、これを私は主張したいのです。総理も言われましたように、向こう三カ年の間に自然に五%の減、そこで出血はやらない、まことに私はけっこうなことだと思うのです。でございますが、整理統合をされる上について機構も多少は変わるかもしれませんし、あるいは人員の配置も変わるかもしれない。私は相当異動があるものだと理解をするわけでございますが、地方農政局に統合されても、建物も変わらない何も変わらない、ただ名前だけが変わるのだ、だったらそれは看板書き直すだけだ。私はそうじゃないと思うのです。やはり人員の配置転換もありましょうし、あるいは職種が変わることもありましょうし、相当広範囲に異動があると思うのです。それを一万千五百人の方が納得されるような万全の対策を立ててスムーズに行政改革をやっていただきたい、こういうことを申し上げたいのでございますが、いかがでございましょうか。
  232. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説のような趣旨で準備を進めております。
  233. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、仕事の内容が変わったりあるいは配置転換をやったり、職種が変わり、通勤のぐあいも変わってくるかもしれないし、いろいろあると私は思いますが、その場合に、六人委員会のほうでは、配置転換やそういうものに対して再訓練をやるのだというようなことがあるようでございます。これはけっこうなことだと思いますが、何か再訓練をなさる制度がいまございますか。
  234. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府委員のほうから考え方を申し上げさせます。
  235. 岩本道夫

    ○岩本説明員 先生の御趣旨のように、今回の機構改革に伴いまして人の動き、組織の変更があることは当然でございます。したがいまして、その詳細は大臣から御答弁がありましたように、いわゆる出血を伴う首切りは絶対にしないということと、定員の振りかえ、つまり人の動きにつきましても、極力本人とよく話し合いをしまして、本人の意向を尊重しつつ、勤務条件が低下しないように配慮して実行してまいりたいと思っております。  ただ、先生がただいま御質問の中で触れられました職員の訓練の問題は、おそらく今回の行政監理委員会の六人委員の意見に関係する問題であると思いますが、それに対する基本的なお考えは、農林大臣から御答弁いただいたとおりでございまして、私どもも詳しいことをまだ聞いておりませんので、この席上でどうということが言えないわけでございますけれども、おの中に、統計調査事務所の職員を税務署とか登記所とか、他官庁の職員として配置転換をしたらどうかということが言われておりまして、それに伴って訓練をしようというような御趣旨であろうかと考えられますが、そういうことは、職員の平均年齢が高いといったようなこともありまして簡単にはまいらない、非常に困難であろうと私は考えております。またそういう意味で、職員を訓練する制度とか組織についても、これは農林省の所管ではございませんので、とやかく私が申し上げるのはどうかと思いますが、そういうものが完備しておるとはいえないのじゃなかろうかというふうに考えております。
  236. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そのように、これが処理についてはいろいろ複雑した問題があると私は思うから、その点を万遺漏のないようにひとつお願いをしたいということをいま申し上げておるわけなんです。  いまお話のありましたように、統計調査事務所なんかは——統計調査事務所なんかということばはちょっといかぬが、統計調査事務所は発足当時は大量に採用されたから、相当高年齢者の方もあるようです。しかもまた半官半農といいますか、家庭で農業をやっておってつとめていらっしゃる——半官半農ということが適切なことばであるやいなやわかりませんけれども、そういうような方もないではないのです。そうすると、生活の基本、生活の主体となるものは、家から通勤するということが大きな条件になるわけです。そういうような場合に、いやいやながらでも転勤をしなければならぬとか、あるいはいやいやながらでも職種を変わらなければならぬとか、通勤の問題とか家庭の事情とか、いろいろな場合があり得ると私は思うのですよ。それも五人か十人ならなんですけれども、一万一千人もあるのでございますから、出血人事はやってもらっちゃ困る、しかしながら、そういうことになりますと、自然にやめろと言わんばかりの状態に追い込まれるのじゃないかというようなことを私は憂えているのですよ。これは先ほども申しましたように、三カ年に五%の人員の自然減、三年間じっと待っておるんだ、不補充だ、それで出血はやらない、こういうことが既定事実としてはっきりしているのです。でございますから、本人の意思に沿わないようなこと、納得しないことでもいやいやながら従わなわなければならぬというような事態が起こり得ることがありはせぬか。そういうような場合には特に御考慮なさって、本人の意思に反するようなことのないようにお願い申し上げたい。そうしないと、結局気に入らないならばやめろというようなことになるならば、これはたいへんなことだと思うのですよ。そういう点について農林大臣は、先ほどからおっしゃるように、六人委員会がどう意見を出そうが——六人委員会の方としては、税務とか登記行政なんかに充てるというようなお話も出ておるようでございますけれども所管大臣として自分は自分の考えておることがある、そのままをうのみにするんじゃないというような意味のおことばがありましたが、行政改革があって配置転換になってよかったと皆さんが喜んでつとめられるように、大臣責任を持って十分その点に意を用いていただきたい。いかがでございましょう。
  237. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いわゆる六人委員会の話もまたよく聞いてみたいと思っておりますが、統計調査という仕事について認識の足りない人が一般にはあるようであります。昔の時代の作報だけ連想しておいでになったのではいまの統計は理解できないのでありまして、農林省の統計は官庁の中でも一番基礎がしっかりして信頼に足りるものだということをいわれておるのでありまして、しかも農林省ではこういう長年の経験を持っておる人たちの才能を十分に発揮するように今度地方農政局に一緒にいたしまして、そして農政全般、それからその地方の経済状況、生産の状況等をも集約して、施策に資するために働いてもらうのでありますから、決してむだな人間を置くということを言っておるわけではございません。私ども行政の合理化、簡素化また能率化、そういうことを十分考慮いたしました上で、今日の統計というものを一般の方々の御期待に沿うようなりっぱな活動をしてもらうようにいたしたいという念願で、今度の地方農政局への合併を考えておるわけでありますから、たいへん前向きで考えておるわけであります。
  238. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まことにごもっともで、私もそのように考えておるから念には念を入れて老婆心ながら申し上げておるのでありまして、それは当然そうですよ。食糧不足の時代には重宝がって使っておきながら、事が足りたからといって自分の意に染まないところにでも行け、行かなければ自然にやめなければならぬぞというふうに追い込む。でございますから、もしそういうようなことがあった場合にはこれはたいへんな——いま前向きとおっしゃるけれども、前向きどころかたいへんな悪政だと思うのですよ。でございますから、私が申し上げたいことは、人員整理と行政整理というのは意味が違うんだ。その点の認識は、これはもう申し上げるまでもないことで、釈迦に説法で、大臣はよく御理解いただいておると思いますけれども、これは六人委員会の意見書の中にもその意味がうたってあります。人員整理と行政整理は違うんだ、したがって人員の配置と定員の配置は同じでなければならぬ。定員配置ということになれば、これは机上の観念で、人員配置というのは実際の問題でございますから、これが相一致しなければいけない。行政整理ということは決して人員整理ではないのだということを強調して、かつて国家の機関に尽瘁された方々に対して、安心してお仕事ができるように温情ある大臣のお取り計らいを願いたい、こういうことを私はお願いをいたしておるわけでございます。ようございましょうか。
  239. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 よくわかっております。
  240. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 時間がないものですから、要点だけ超スピードで言っておりますので……。  次に、設置法の本論に入って、農業者大学校の件でございますが、現に農業に従事している青年を対象として、将来自立経営のにない手として地域農業の振興に寄与し得るように高度の教育を実施するため、農業者大学校を設置する。なるほどこれはよい着想で、その趣旨には私は大いに賛成でありますが、県からわずか一名程度でどうして地域農業の振興をはかることができるのでしょうか。これは一体どういうことをなさるのですか。趣旨には賛成ですよ。たいへんいいことだと思いますが、どういうことをねらっておられますか。
  241. 池田俊也

    ○池田政府委員 ただいま先生がお述べになりましたような趣旨でやるわけでございますが、確かに非常に数が少ないのではないかという御指摘は私もよくわかるのでございます。数を多くいたしますと、どうしても教育の濃度が薄くならざるを得ない、こういう事情が一方にございます。それで私どもは、これは従来県等におきましてもいろいろそういう研修施設がございますし、同時に明年度からは高等程度の農業の研修施設を整備するということをあわせてやっておりますので、中央におきます施設といたしましては最高の教育をやりたい。そういうことになりますと、どうしても数がおのずから限定をされますので、そういうものをよりどころにいたしまして、今後逐次県の施設等の充実をいたしまして、地方の農業の中心になるような人を養成してまいりたい。いわばモデル的というと語弊がございますけれども、まず最高のところを中央でやりたい、こういうことでございます。
  242. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私も農業者大学校を新設される趣意は、いま読み上げた、そのとおりだと思うのです。しかし農業者大学校に県からわずか一名出して一体だれを教育するんだと言うのです。先日ですか、きょうですか、過疎地域対策緊急措置法案が衆議院を通ったようです。佐藤さんのお考えで驚異的な経済高度成長を遂げておるのでございますが、同時に人口が集中して、過密化して、農村の人口はもう年々流出していく。ますます過疎化しておるのですよ。農家の次男、三男どころか長男でも、中高卒の年齢の農家経営の中心者までが全部都市都市へと吸収されておる現状である。農山村にはほとんど将来性がないんだ。現代農業に魅力はない。全く農業は老齢化しております。先ほどからお話もあったように労働者もいない。労働力もない。県から一名農業者大学校に出て、そして農村の振興をはかるんだといったって、一体だれを指導していくのか、指導する者はいないでしょう。そういうところをひとつ私はお尋ねしたいのです。
  243. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 過疎地帯の法律でも申しておりますように、もうなってしまった、それからどうするかというふうなことの立案者の趣旨ではございませんで、御存じのように、ならないようにするための考え方が非常にたくさん、伏在いたしておりますことは、あの法律が示しておるとおりであります。なるほど放置いたしておきますれば、みんなが心配している、ただいまあなたのおっしゃったような傾向もあるかもしれませんが、それは国家全体として好ましい傾向ではないと私どもは思うわけであります。  そこで、やはり人口の七割近いものが、大部分の人たちが太平洋ベルト地帯みたいなところへ集中してしまうであろうといわれている傾向を放置しておくことは好ましいことではない。これは農業だけの問題ではありませんが、そういうことを考えます。したがって、いま都市調査会とか、いろいろな諸君も言っております考え方の中にもありますように、なるべく地方に産業を分散してしまって、そうして地方の労働力を一カ所に集めない。なるべく地方に事業、産業を分散し、人口も分散して、地方に五十万ないし百万都市というふうなものが逐次形成されていく傾向が好ましいのだといわれております。私ども総合農政の考え方で申しておりますように、日本の農業を維持し拡大していくためには、自立経営の農家を育成していく、これがたてまえでありますけれども、何と申しましても、かなり長期間わが国においては兼業農家が非常に多い。そういうところで新しい社会が出てくる。その社会に対処して、一般的社会常識を備えると同時に、農業者大学校で農業政策について十分なる経験を得ました君たちがくにに帰りまして——いまは農業後継者グループであるとか、生産集団等がかなり組織されております。私は決して悲観しておりません。先般も農林省で、そういう若い人たちでほんとうに農業の後継者として活動していこうとする意欲のある、将来性のある、まじめな青年たちの会合に私は出てみまして、目がしらのあつくなるのを感じたのであります。そういう人たちと協力をいたしまして、またそういう団体がいろいろ出てまいりますが、そういう人たちに対して農業及び農村、そういうものについての指導的立場をとっていただく、こういうようなリーダーを育成したいというのが私どもの目的でございます。
  244. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だからですね、私はその趣旨には反対はしない、けっこうだ。でございますけれども、いまお話のありますように、過密過疎地帯を片手落ちのないように、過密地帯の開発に力を注ぐと同時に、過疎地の開発になぜ力を注がないのか、これは過疎地に対する緊急措置法案も通りましたようですが、ことに総理も七〇年は内政の年だとおっしゃっていられる、そうしますならば、過疎地帯の農業の育成ということにまず根本を置かなければ——いま大臣のおっしゃるように、農業者大学校の教育を受けて、そして地方に出て農業の振興をはかる、自立農業をやらせる、自営をやらせる、その趣旨には私は賛成でございます。しかしながら、根本的に過疎地の解決をやらないことには何もならぬ。それが私は政治的にも根本であり、農業者を教育する指導者をつくっても、もともと農業というものが疲弊していくばかりであったならば、これは人が去っていくのはあたりまえでございます。でございますから、その対象者、農業を指導する指導の対象になる、いわゆるいまおっしゃった後継者ですね。ところが、その後継者はほとんど農村にいないのですからね。全国の農業就業人員も四十一年、四十二年、四十三年と著しく減ってきております。四〇%ですね。中高新卒の就職状況なんかも四十一年度、四十二年度、四十三年度とずっと減っております。四十一年度中学校、高等学校の卒業者の就職しているのが農業にどれだけ就労したかといいますと、わずかに四・六%、四十二年度は四・五%、四十三年度は四・四%、農村には後継者の若い者はもうほとんどいないということになっておる。中学なんかを卒業しても、先を争って都市都市へとなだれのように流動しておる。だから、そういう若い青年を引きとめる魅力のある農業政策が樹立されてこそ、初めて農業者大学校出のような指導者が要るのであります。何もないところに何ぼ農業者の指導者がおっても、相手がおらぬのじゃ仕事ができない。でございますから、何回も繰り返すようでございますけれども、この農業者大学校は、私は趣旨はけっこうだと思います。しかし、根本策をつくらない限り、これは本末転倒である。源がなければ流れは遠く流れるわけがないのです。そこで根本策、農業の推進という国家の国策がなければ、何ぼそういう指導者をつくっても——簡単に申しますと、学校の先生を何ぼつくっても、生徒が一人もおらぬのでは話にならぬ。こういうことを私は大臣に申し上げているのですが、少し私の言っていることがおわかりいただけましたでしょうか。
  245. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 まことにそのとおりでございます。ただしかし、統計が示しておりますように、いわゆる農家人口というのは八万くらい減っておりますけれども、就業者としては一%減り方が減ってきております。たぶん去年が一%ぐらいじゃないか。ただいまあなたがおっしゃっていらっしゃいますような傾向になることを避けるために、政府は、御存じのように地方道、農道など、ことに昭和四十五年度予算におきましては、農林省所管といたしましても各県に一本ずついわゆる大型農道というようなもの、あるいは本来ならば、昔ならば建設省がやりたがる仕事でありましょうが、今日いまあなたが御指摘になりましたようなことを考えながら、農林省としてああいう大型農道をつくるようになりました。四十五年度予算には地方の農道を全部舗装するというような予算まで計上いたしておりますのは、なるべく地方に産業を分散してまいりまして、そうして山地及び地方の農村の人たちの余っておる労働力にそこで就労の機会を与え、そして農家としての所得をふやすようにしたい。いま学卒のお話がございました。最近の労働省の統計を見ますと、高校卒等で中央に、工場地帯に就職をいたしました子供たちの中で非常にたくさんの数がUターンしている傾向があります。これをわれわれは見のがすことはできないと思うのであります。このことについて、その理由についてはいろいろなことをみんな学者たちもわれわれと話しておりますけれども、やはり結局農村を守ろうという若者たちの気概がかなり出てきております。私どもはそういういい傾向をとりながら、さっき申しましたように、農業後継者のグループや生産集団、そういうところで勉強した者を指導したい。したがってあなたが先ほど来指摘していたような農村地帯が過疎地帯にならないような方策を講じなければならないと仰せられました。全く同感でありまして、そういうことにももちろん政府は一生懸命で努力をいたしておるのは御存じのとおりであります。したがって、そういう地帯においてやはり近代的農業を指導をしていく者を養成していく、そのリーダーとして活動してもらうために濃密な教育をいたしたい、こういうのでありますから、もう御趣旨等は全く一致しているんじゃないかと思うのであります。
  246. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大臣はなかなか私が喜ぶようなことをおっしゃるから、もうますます超スピードでやって早くやめなければならないようになりました。さすがに大臣はなかなか老練で機微をうがったことをおっしゃる。かつて農業後継者づくり懇談会というようなものが設けてあるというようなことを私聞いたことがありますが、これは一体どういうことをしておられたのか。あることは名前をちらっと聞いたことはありますが、一体どういうことをやったのか。いま大臣のおっしゃることはよくわかるのですよね。たいへんけっこうなんですが、しかしその後継者はだんだん減っている、毎年毎年減っているのですからね。そして農業後継者づくり懇談会をつくったが、何の懇談会をやったのか。その成果はどういうふうにあがったのか。まだ今日続いておるのかないのか。竜頭蛇尾ではさっぱりわかりませんが、どういうふうになっておるのでしょうか。どういう成果があがっているか。
  247. 池田俊也

    ○池田政府委員 昭和三十六年に農業基本法ができたわけでありますが、新しい近代農業を育成するという場合に後継者の問題が非常に重要でございますので、ちょうど昭和三十八年だったと思いますが、当時の農林大臣赤城先生であったと思いますが、専門家、いろんなそういうことに関連する各界の有力な方に、後継者づくりについての御意見を伺う、こういうことで二回ほどそういう会合が持たれたわけでございます。それでその後別段そういう同じようなものはやっておりませんが、その当時いろいろ議論がされました線に沿いまして、その後農業後継者に対しますいろんな施策を進めている、こういうことでございます。
  248. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 三十六年に農業後継者づくり懇談会なんというのができてすでに十年近くもたっている。それなのに二回しかやっておらぬ。これじゃ話にならぬですよ。農政担当の大臣である倉石大臣は非常に御熱心になさっておるけれども、ほかの者は何にもわれ関せずえんというようなことでは、佐藤内閣は何の内閣か、これじゃさっぱりわからぬですよ。そういう点を私は突いているのですよ。ほんとうに笑いごとじゃありませんよ。農林大臣は一生懸命になって農業者大学校の制度を出して後継者をつくろう。けれども、周囲の者はわれ関せずえん。われわれは八時までも九時までもやあやあ言っても何にもなりゃしない。  農林省の予算で、農業後継者育成資金として前年度は五十億円、四十五年度は七十億円組んである。これは間違いありませんか。
  249. 池田俊也

    ○池田政府委員 そのとおりでございます。
  250. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それじゃ私が尋ねなくても、農業後継者育成資金として本年は七十億円組んでおります、こういうふうにやろうと思っておりますというような、そのぐらいのことは言うてしかるべきじゃないですか。これもわれ関せずえんで知らぬ顔をしておる。話がおかしいですね。だからぼくは超スピードでやろうとしておるのに自然に長くなるのです。あなた方が言われることと実際はいつも相そごしておる。だから私がこう無理やりに聞かなければならぬ。それで後継者育成資金が昨年は五十億円、本年、四十五年度は七十億円組んである。これは一体どういうことをするのですか。昨年の五十億円でどういう成果があがったのか、また四十五年度はどういうことをやってどういうふうにするか。
  251. 池田俊也

    ○池田政府委員 これは後継者が新しい農業経営を始めたいというような場合に、その資金の貸し出しをいたしまして、そういうものを援助しよう、こういうことでございます。従来五十億円でございましたものを四十五年度に増額をするわけでございますが、その内容といたしましては、新年度におきましては一人当たり七十五万円、従来は五十万円でございましたが七十五万円まで貸し出しをいたしまして、たとえばおやじさんは従来稲作をやっていた。そこでたとえば新しい畜産をやりたいというような場合に資金も要るわけでございますから、そういう資金の貸し付けをいたそう、こういうことでございます。
  252. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 その貸し出しをするということは、御指摘の農村の子弟に七十五万貸し付けする。どういう基準があるのですか。ただ農業をやるから七十五万貸すというわけですか。
  253. 池田俊也

    ○池田政府委員 これはそういう農家に対しまして、御存じのような改良普及員というものがございましていろいろな指導をやっているわけでございますが、そういう人たちは、そういう新しい農業経営をやりたいというような後継者の御相談を受けまして、それを十分に審査をいたしまして、これならばうまくいくであろう、こういう指導をいたしました上で貸し付けをする、こういうようなことをやっておるわけでございます。
  254. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこで私は、農業者大学校で三年間訓練して、そして地方に送り込む、これもたいへんけっこうだと思いますが、今日農業教育が——これは文部省のほうの問題になると思いますけれども、非常に意欲的な、御熱心な農林大臣でございますので、文部省あたりとも十分連絡をとっていただいて、一般農村の子弟が農業を目的として農業の専門課程の学校へ入っておる、農業学校あるいは農業の大学でもいいですが、そういう既設の農業関係の学校に学んで将来の指導者となるべき者を農村に引きとめる方策、それを引きとめる方法というようなことをお考えになったことがあるか。あるいはまた、文部省あたりと十分合議されたことがあるか。県から一名選んで出すこともけっこうです。でございますが、すでに既設の農業教育の学校があるのですからね。ところが、その現在ありますところの、農業の課程を終えたところの、今日でいえば農業高等学校あたりのはほとんどみな他産業に行ってしまっておる。全部他産業に行っておるのです。それも統計を持っております。ですから、一般農村の子弟が農業を職業として選ばない、農業を職業としない、そういう今日の時点において、あえて農業を職業として生きなんとするならば、彼らの前途に大きな希望を与えなければいけない。そういう農業政策を樹立しなければいけないのですね。そこで、現にいま農学校において学んでおる若い将来の農業の指導者をなぜ農村に引きとめる方法をとらないか。それは文部省の問題だとおっしゃるかもしれないが、そういう点も十分ひとつ横の連絡によって、文部省あたりと十分協議をさるべきものだと私は思う。近ごろは農村に踏みとどまる若い農業教育、農業課程を終えた、いわゆる農業高校学校を出た卒業生が多少歩どまりがよくなってきました。少しよくなってきました。これは、従来と違った点は、農学校自体の教育が実生活に即した、あるいは酪農の加工あるいは造園科というようなものをつくって、なるべく郷土に踏みとどまるようにという農業教育にだんだん移行しつつある。昔はそうじゃなかったですね。農学校を希望して入ってきた子供は、家は全然農家じゃないんですね。非農家だ。月給を取る、あるいは商売人だ。それが農学校に、高等学校を出たという資格をとるために入ってきておる。それで農学校を出て他のほうにサラリーマンとして出ていく、あるいはまた上の学校に行く、大学に行く一つの踏み台にする。全然自営をやろうとするために来るのじゃないんですね。高等学校を卒業したという、一つの免状、資格をとるために農学校に来たというのが大半だったんですよ。それは私も知っている。私はかつて教育を三十年やりましたんですがね、全部旧制の中学校です。男の学校にも女の学校にも、農学校にもいた。農学校に私は四年間奉職した。全然農業をしているのはおりはしない。全部月給取りになってしまう。全部今度は上の学校に行く。(「教え方が悪かったのだ」と呼ぶ者あり)だからいけないんだと私は言い続けてきた。だからだんだん今日よくなっておることは、先ほど前もって申し上げたでしょう、冒頭に。せっかく既設の学校があるんだから、わずかに県から一名でも出して——それもけっこうですよ、けっこうですがね、なぜ既設の農業に関する学校を……。そういうお考えを大臣はお持ちではありませんか。
  255. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先日参議院の予算委員会で同じような御質問がございまして、文部大臣と私は、その後もいろいろと相談をいたしておるのでございます。全く御指摘のような傾向でございまして、やはり農業及び農村に、若者たちに魅力を持っていただくような環境をつくり上げていくのでなければ足をとめることは非常に困難だと思っております。したがって、教育の面においても十分そういうことを注意していただきたいのでありますけれども、私どもといたしましては、やはり農業というものはとにかく人の支配を受けないで、そうしておてんとうさまを相手に自分の創意くふうによって、いい空気のところで十分におのれの手腕を発揮することができるのは農業でございますから、そういうところに一つのりっぱな産業として若者たちに魅力を持っていただくような農業及び農村環境をつくっていかなければならない、こう思っておるわけでございます。
  256. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まさにそのとおり、大臣が先ほどおっしゃったように、私とあなたのお気持ちは全く一致している。先ほどから私はたびたび申しておるように、魅力のある農業になさなければ、今日のような場当たり的な一貫性のない出たところ勝負の農業政策では、若い青年の足を引きとめることはできない。くどいようですけれども、大学なんかもそうですよ。農業関係の大学あるいは短大卒業生なんかを見ましても、農業に従事する者はほとんど皆無ですよ。これは統計が示しております。まさに農業関係の大学はサラリーマン養成所になっている。自営農業者養成所じゃない。そういう点に関しまして、農業に従事する者の勉学の場として活用できる大学を考えるべきである。これは私が農林大臣にやかましく申し上げてもしかたのない問題ですけれども、先ほど申しました農業者大学校で養成した若者を農村地帯に送り込むということ、これは私は賛成で、けっこうでございます。  ではこれで、一応皆さんの要望がございますので……。でございますが、私が申し上げておりますことは、農業者大学校を出た者を地方に送り込むこと、これはたいへんけっこうなことで、いい思いつきで、時宜に適したことだと思いますが、先ほど大臣もおっしゃったように、農業政策をもっと抜本的にお考えいただいて、現代の農業に魅力を感ずるようにしていただかなければ根本の解決策にはならないですね。その点を大臣によくお願いを申し上げたいということであらゆる観点から申し上げたのでありまして、たいへんくどいことを申し上げましたけれども、よろしくその点はお願いを申し上げます。
  257. 天野公義

    天野委員長 次回は、来たる十四日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後八時二分散会