○靱
参考人 本日、逓信
委員会の
参考人として
出席を求められました
国際電信電話株式会社社長の靱でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、まことに貴重な時間をいただきまして、会社
事業の概要につき御
説明申し上げる機会を得ましたことをありがたく存じますとともに、平素格別の御指導を賜わっておりますことに対し厚く御礼申し上げます。
当
国際電信電話株式会社は、昭和二十八年創立以来十八年目を迎えたわけでありますが、この間当社は、短波通信から広帯域通信へと歴史的な転換を遂げつつ、社業の充実発展をはかってまいりました。
すなわち、新型海底同軸ケーブルの開発と衛星通信技術の進歩により、国際通信回線の広帯域化が世界的趨勢となるや、当社はいち早くこの
時代の流れをくみ取り、昭和三十九年には太平洋横断ケーブルを布設し、初の広帯域幹線を実現いたしました。また、インテルサット、国際商業通信衛星組織でございますが、インテルサット発足と同時にこれに加盟した茨城、山口両地球局を建設いたし、太平洋・インド洋地域衛星通信網を完成する一方、日本海ケーブルによる日欧間通信幹線を開設するなど、わが国国際通信史上画期的な建設
事業に取り組んでまいったのであります。
当社は今後、この安定かつ良質な通信幹線を活用いたし、先進国は申すに及ばず、発展途上の各国とも回線を設定して、世界をおおう通信網の形成につとめますとともに、国際化、情報化の
時代にありまして一そう会社の使命を自覚いたし、たゆまざる研究と真剣な
企業努力を重ね、
国民の皆さまに御満足いただけるような
サービスを提供いたしたいと存じております。何とぞ今後ともよろしく御指導をお願いいたす次第でございます。
つきましては、ここにまず最近一年間の
事業の概況について御報告申し上げます。
昭和四十四年度における設備の拡張改良計画のうちおもなものといたしましては、衛星通信の関係をはじめ日本海ケーブルの完成による日欧間通信幹線の開設、国際加入電信交換の全自動化等がございます。
まず第一に衛星通信の関係でございますが、昨年度の特記すべき事項といたしましては、かねてより山口市郊外に建設を進めてまいりました地球局が六月に完成いたし、同年八月からインド洋上のインテルサット3号衛星を経由しまして、欧州、中近東及びアジアとの衛星通信を開始したことがあげられます。山口衛星通信所では、現在、英国、西独、インドネシア、クウェートおよびマレーシアとの間に衛星回線を運用いたしており、これらの地域との通信
事情は一段と改善を見ておりますが、さらに本年度は、インド、シンガポールをはじめイタリア、
フランス等欧州主要国との回線開設を計画いたしております。
一方、茨城衛星通信所におきましては、タイ、香港及び台湾との回線を追加し、太平洋地域の衛星通信網を一そう充実いたしました。
以上申し上げましたとおり、茨城、山口両地球局により東西二つの衛星幹線が完成を見ましたことは、ひとりわが国の通信
サービスが拡張されたことにとどまらず、通信路の多様化によりましてわが国が世界を結ぶ通信センターとしての
役割りを一そう高めたのでございまして、現に昨年七月アポロ11号打ち上げの直前、大西洋上の通信衛星が故障となりました際に、欧米各国からの緊急要請に基づき会社の機動性を遺憾なく発揮して、太平洋、インド洋にまたがるテレビ伝送回線を成功裏に設定し、人類初の月面着陸の模様を中継して、世界各国の人々から感謝されたのであります。
第二は、日本海ケーブルの完成でございます。このケーブルの計画につきましては、すでに御承知のことと存じますので、詳しいことは省略させていただきますが、わが国の直江津とソ連のナホトカとの間約九百キロメートルを結ぶ海底ケーブルは、KDD丸によりまして無事布設を終え、予期以上のすぐれた性能をもって昨年七月正式に開通を見ました。本ケーブルは、シベリア大陸を横断してモスクワへ、さらにスイスをはじめ欧州主要国へと接続され、衛星回線とともに日欧間の一大通信幹線を形成することとなりました。現在、このケーブル回線によりまして、スイス、英国、西独、イタリア、オーストリア及びソ連との間に直通線が設定されており、これらの回線は欧州のほとんどすべての国々によって利用されておりますが、今後さらに直通回線対地を拡張してまいる予定であります。
第三は、国際加入電信、いわゆるテレックスの全自動交換の開始でございます。テレックスの通信量は、おかげをもちまして毎年著しい伸びを示しておりますが、この交換作業を機械によって自動化いたし、交換接続の即時化をはかるため、当社は数年前から準備を進めてまいりました結果、昨年八月四日、米国及びカナダとの間に全自動運用を開始いたしました。その後さらに香港、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、西独及び英国を加え、全通信量の七割強を自動化いたしまして、ここにいつでも、すぐに通信できるテレックスの理想の姿が実現したのでございます。なお、全自動化に伴いまして、一分一分制
料金を採用いたし、利用の一そうの便宜をはかっております。
続いて、昭和四十四年度の営業概況について申し上げます。まず取り扱い
業務量の実績でございますが、これは回線の新増設による
サービスの向上、貿易の伸長等による需要増の結果、各
業務ともおおむね順調な伸びを示しております。すなわち、主要
業務別に見ますと、概数で国際電報六百一万通、国際加入電信二百八十九万度、国際電話は百五十八万度となり、それぞれ前年度に比較して四%、四七%、二七%増加いたしております。
次に、経理の概況を申し上げますと、まず昭和四十四年度上期の収支
状況は、営業収益百三十八億円、営業費用は百億円となり、これらに営業外収益、営業外費用及び特別損益を加減したこの期の利益は二十三億円となっております。四十四年度の下期につきましては、いまだ確定的なことを申し上げる段階にないのでございますが、おおむね順調な決算ができるものと
考えております。資産の
状況につきましても、四十四年九月末について申し上げるわけでございますが、資産の総額は四百四十九億円でありまして、そのうち流動資産は百三十九億円、固定資産は三百十億円となっております。一方、負債総額は百九十二億円で、そのうち流動負債は九十七億円、固定負債は五十二億円、引き当て金は四十三億円となっております。したがいまして、差し引き純資産額は二百五十七億円となっております。
以上で昭和四十四年度の概況の報告を終わり、続いて昭和四十五年度の
事業計画の関係について御
説明申し上げます。
本年度は、先ほど申し上げましたように、完成を見ました一連の広帯域通信幹線網の利用の充実をはかり、これをもととし
サービスの一そうの向上を目ざして、諸般の施策を進めてまいる所存でございます。
すなわち、当社の今年度の設備計画といたしましては、茨城第三地球局の建設をはじめ広帯域幹線関係諸施設の整備に引き続き努力いたすことのほか、通信回線の新増設や通信設備の近代化、新総合社屋の建設、非常障害対策、新技術の研究開発等を推進することとし、これらに要する経費といたしまして百四億円を予定しております。このうち対外通信回線の新増設につきましては、広帯域幹線の完成により、高品質の回線を多数設定することが可能となりましたので、加入電信七十六回線、国際電話七十四回線をはじめとして、専用回線、電報回線等、総計二百九回線を新増設する計画であります。これが実現いたしますと当社の対外回線は全体で千三百回線に迫り、国際通信
サービスの一そうの改善向上を見ることとなります。
また、現在使用中のインテルサット3号系衛星は、数年を経ずして需要に応じ切れなくなることが予想されますので、インテルサットでは新しく電話五千回線以上の容量を有する4号系衛星の打ち上げを計画いたしておりまして、太平洋地域にはこれが昭和四十六年度後半に打ち上げられる予定でございます。当社はこれに対応しまして、茨城衛星通信所に第三地球局を建設いたすこととし、明年八月の完成を目途として工事を進める予定であります。
次に、通信設備の近代化計画としましては、現在人手によって行なわれている電報の中継作業及びこれに関する
処理作業を、大型電子計算機システムにより
機械化しようとする電報中継
機械化計画を、明年二月末から
実施に移してまいる予定であります。
次に、新国際通信センターの設備でございます。国際通信の質量両面における爆発的発展増大に対処いたし、
時代の要請に応じた十分な
サービスの提供をはかるため、当社が昨年、長期的な見通しのもとに新宿副都心
地区に約一万平方メートルの土地を購入いたしましたことは、昨年のこの席上で御
説明申し上げましたところでございますが、本年度は、昭和四十九年完成を目途としてここに建設いたします新しい国際通信センターの具体的な設計を進めるとともに、地質
調査にも着手いたすこととしております。
なお、以上の設備計画のほか、お客さまの利便をはかるため新たに新
東京国際空港ビル局を開設いたし、あるいはまた大阪南局の開設準備を進める等、営業所施設の拡充整備をはかるとともに、ここ数年来対策を講じてまいりました非常災害時の通信確保につきましても、
考えられる種々の事態を想定して、さらに対策を強化充実してまいる所存でございます。また、従来多くの成果をあげてまいりました新技術の研究開発につきましては、本年も広帯域通信方式や通信機器の自動化、電子化のための研究を重点として、これを充実いたすこととし、あわせて新技術に対応する訓練施設も整備してまいる
方針でございます。
最後に、本年度の収支につきましては、主要
業務の需要量を国際電報六百二十一万通、国際加入電信三百八十二万度、国際電話二百八万度と見込みまして、この予測のもとに、収入については約三百三十七億円、支出については一そう経費の効率的使用につとめることとし、約二百九十五億円を予定いたしました。
以上、簡単でございますが、
事業概況の御報告といたします。何とぞ今後とも一そうの御指導、御鞭撻のほどをお願いいたします。
なお、歯の治療をいたしておりまして、お聞き苦しい点が多かったことをおわび申し上げます。
ありがとうございました。