○青柳
委員 私は、
日本共産党を代表して、若干の
問題点について
質問いたしたいと思います。
時間が非常に制約されておりますので、ほんの重要と思われる
部分だけを述べるにとどめざるを得ないのでありますが、最初に、
自動車にからむ
交通問題の解決、これは
交通事故の防止ということと、それから
交通公害の防止、
さらに
交通渋滞を食いとめるという、この三つの
方向で解決をしなければならないわけでありますが、ここで問題になっております
道路交通法の一部改正というのは、主として
事故防止を目的としているわけであります。規制を強化することによってその目的を達成しようというのがそのねらいであります。それは必然的に刑罰を重くする、強くするという結果になります。そして結局は刑罰万能主義の思想におちいらざるを得ないわけであります。それは人権を侵害するという結果に当然なるわけであります。今度の
改正案もその傾向を一そう強めるものでありまして、共産党といたしましては賛成ができないわけであります。
最初に、飲酒
運転をなくすという問題でありますが、これは非常に重要でありまして、わが党も決して飲酒
運転は放置してよろしいというようなことは考えておりません。しかし、この強めるというやり方が直ちに人権侵害になるとは限りませんけれ
ども、今度の
改正案では呼気検査を強制できることになりました。従来はこれは任意でありましたけれ
ども、これに従わざるを得ない間接強制を受けるということになっております。そうなりますと、
警察官の認定いかんで、全く飲酒をしていない
運転者が呼気検査を強制されるというような事態が
発生してこないという保証は
一つもないのであります。たとえば、
自動車の中に飲酒をしたお客さんが乗っておった、
自動車をのぞいてみると酒のにおいが非常に強い、てっきり
運転者が飲酒しているに違いないというような誤解を持って、そして呼気検査を強制するというような、そういう事例が起こらないということはないのであります。現に私自身が多少酒を飲んで乗客として乗っておったわけでありますけれ
ども、これは私の自家用車でありますが、
運転者はもちろん一滴も酒は飲んでおりません。ところが、一斉検査でストップを命ぜられまして、そうしてそこに来た巡査が無理やりにその
運転者を車外に引き出して、検査を強制しようとしたのであります。当時現行法でありますから、強制することはできない。結局ただ巡査の鼻の前で呼気を吐いて、何もないということがわかったから、やむを得ずという形でしょうが、強制はできなかったのでありますけれ
ども、ほとんどその寸前までいった。私がそばに行って、この
運転者は全然飲んでいない、飲んでいるのは私自身であるということを説明して、ようやく強制もされないし、呼気検査もしなかったのでありますけれ
ども、そういう事例すらありまして、飲酒
運転を全面的に禁止するという目的を達成しようとするあまり、人を見たらどろぼうと思えというような結果におちいる点があって、警戒を要するわけであります。しかもこの
改正案では単純に、
警察官がおそれがあると認めたときには呼気検査を強制できるという
規定になっておりまして、刑事訴訟法などであげられておりますように、疑うに足りる相当な理由があるときというような制約すらないのであります。もちろん疑うに足りる相当な理由があるというのであれば、人権が守られるというほど単純ではございませんけれ
ども、もし
警察官に行き過ぎがあった場合には、こういう
規定があれば、相当な理由がないにもかかわらず呼気検査を強制したのではないかということで、その人権じゅうりんを摘発することもできるわけでありますけれ
ども、そういう保証すらない。最近とは限らないのですけれ
ども、
警察取り締まりや犯罪検挙に際しての職権乱用、人権じゅうりんという事例があとを断たない現状のもとで、このような
規定を設けることには絶対に反対をしなければならないと思います。
次に、反則金
制度でありますけれ
ども、これは前回の改正で新しく設けられたものであって、そのときもいろいろと論議がかわされたわけでありますが、
日本共産党といたしましては、このような反則金
制度というものは戦前の違警罪即決例の復活に通ずるものだ、
警察権力を強化し、科刑の簡素化を行なおう、裁判によらないで
警察だけの判断で刑罰を加えるということになるので、反対をしたのであります。反則金は行政罰と類似したようなものであり、告知
自体には強制力がないなどという弁解もありましたけれ
ども、反則行為そのものが犯罪類型と同一のものであるから、反則金を払わなければ直ちに検察庁に送致され、刑事事件にかけられるという背景があります。したがって、被告知者がこのような形で裁判にまでかけられるわずらわしさというものを避けようとすれば、納付せざるを得ないという強制力が裏にあるわけであります。
自分は反則していないと思っても、裁判まで行ってわずらわしいということで、泣き寝入りになるというような結果にならざるを得ない。こういう裁判によらずして事実上刑罰を科せられるということは、憲法が保障している、何人も裁判を受ける権利があるというこの
規定に抵触して正しくない、こういう態度をわれわれは現在も持ち続けているわけであります。ところが、今度はこの反則金
制度を少年にまで拡張しよう、こういう改正が提案されているわけであります。これは前回改正の際にも、ある参考人はおかしい、あるいは一部の議員の方からも、少年だけ除外するというのは不公平ではないかというような意見が出されまして、結局この附帯決議というものができてしまった。これが今度の改正については、最高裁判所側あたりも、前回は反対しておったのに、この附帯決議があるのだからという
警察側からの強い要求もあったかもしれませんけれ
ども、妥協して、結局これに反対をするという態度をやめてしまったという
いきさつがあるわけです。しかし、反則金
制度そのものが違憲であり不当であるとわれわれは考えるのでありますが、それを
さらに少年にまで拡張するというようなことは、これは少年法の精神を根本から裏切るものであると思うのであります。これは少年には刑罰を科さないというのが原則なんです。刑罰によって少年の反社会性を矯正するということは好ましくない。やむを得ない場合以外は検察庁には逆送しないというのがたてまえになっているわけです。大体刑罰だけで犯罪をなくしようという考え方そのものが転倒しているとわれわれは考えるのであります。したがって、成年についても刑罰万能の思想は改められなければならないと思いますけれ
ども、ましてこれを少年にまで拡張するということになりますと、少年の反社会性を矯正するという適切な措置を奪う結果になるわけであります。
少年について犯則金を科した場合には、これは必ず裁判所のほうにも通知をする、したがって、裁判所のほうでこれを参考にすることができるからというような議論が行なわれております。しかし、先日の連合審査の際にも、裁判所当局のほうからの答弁によれば、そういう通告を受けたからといって、すぐ事件として何か処置するというのではなくて、次に何か事件があり、そして送られてきたときに参考にするだけであるというのであります。従来子供の
交通違反につきましては、すべてこれは家裁に回されて、そして家裁では乏しい財源の中から非常に科学的にいろいろの措置をとっているということも報告されております。そしてまた、それが非常に大きな効果を発揮しておるということもいわれているのであります。これが家裁のほうではそういうものを回してもらっては困るのだ、反則金でおしまいにしてくれれば手がすいて助かるのだというような態度をとっているのでない限り、これはどんどん家裁に回して、家裁では適切な措置をとって、決して反則金とか罰金とかいうような形で問題を処理しようとしないという、そういうことが望ましいとわれわれは考えるのであります。それもいままで実際上行なわれてきたことなんです。それで、もし家裁のほうが財政的にも十分な人員が確保できないとかあるいは
施設を設けることもできないというようなことであるならば、それはそのほうに手当てをすることによって解決すればよろしいのであって、何か家裁のほうに行くべきものを反則金を適用することによってストップさしてしまう。それで、家裁ではもっと適切な措置がとれるであろうのに、そこでストップされてしまって手が出ないということでは、本来
交通事故を阻止するという面からいっても、また少年の至らない点を直すという点からいっても、これは何らのプラスになるものではないと思います。
そういう
意味で、この反則金
制度を少年にまで拡張するということには私
どもは絶対に反対をしなければならない。ほかの考え方は十分あるわけです。いままでどおりで決して支障はないばかりでなく、それでよろしいのだ、そのほうに積極的に
意味があるというふうに考えるものであります。この点について
政府のお考えを承りたいと思います。