○後藤田
政府委員 道路交通法の一部を
改正する
法律案につきまして、補足して御説明いたします。
第一は、悪質事犯の排除の徹底をはかるための規定の
整備についてであります。
その一は、酒気帯び運転に関する規制及び罰則の強化についてであります。酒気帯び運転の危険性は、いまさら申すまでもありませんが、これの排除のため、この
法律案におきましては、次のような規定の
整備を行なおうとしております。
まず、第六十五条第一項の
改正規定は、現行の酒気帯び運転の禁止が、身体に一定
程度以上のアルコールを保有する状態で運転することの禁止となっておりますのを、アルコールの
程度のいかんにかかわらず酒気を帯びた状態で運転することの禁止に改めようとするものであります。なお、新たに禁止される部分につきましては、罰則を付さないこととしておりますが、これによって、飲酒運転の習慣をなくしようとするものであります。
次に、第百十七条の二第一号等の
改正規定は、酒気帯び運転のうちでも、最も危険性の高い酒酔い運転の罰則の懲役刑の長期を一年から二年に引き上げようとするものであります。
次に、第百十九条第一項第七号の二の規定及び第百二十二条等の
改正規定は、現行の酒気帯び加重の制度にかえて、身体に政令で定める
程度以上のアルコールを保有する状態で自転車、荷車等の軽車両以外の車両等を運転した場合を直接処罰しようとするものであります。すなわち、現行法におきましては、このような状態での運転は、それだけでは処罰されず、スピード違反、信号無視等一定の違反が伴った場合に、その違反の罰則が倍加されるという酒気帯び加重の規定が適用されるにすぎませんが、酒気帯び運転の防止の徹底をはかるため、このような
改正をしようとするものであります。なお、この
改正に伴い、免許の効力の仮停止の要件を定める第百三条の二第一項第三号及び反則者の範囲を定める第百二十五条第二項第三号について必要な規定の
整備をすることとしております。
次に、第六十七条第二項及び第百二十条第一項第十一号の三の規定等は、酒気帯び運転を防止するための現場措置を強化するため、警察官が酒気帯び運転をするおそれがある者について呼気検査をすることができることとしようとするものであります。
次に、第六十五条第二項の規定は、酒気帯び運転をするおそれがある者に飲酒をすすめることや
酒類を
提供することを禁止しようとするものであります。なお、この禁止については、まず、社会生活の中で規範として確立していくことが必要であることなどの
理由から、罰則を付しておりません。
悪質事犯の排除の徹底のための規定の
整備のその二は、第八十八条、第百三条等の
改正規定であります。現行法においては、運転免許の取り消しを受けた後に新たに運転免許を受けることができるまでの期間が一年となっておりますが、これを公安
委員会が一年以上三年をこえない範囲内で政令で定める基準に従い定めるように改めようとするものであります。なお、第九十条、第百七条の五等の
改正規定は、運転免許の拒否、国際運転免許証にかかる自動車等の運転禁止についても、同様に三年まで運転免許の欠格期間を延長することができることとしようとするものであります。
その三は、第七十五条の
改正規定、第百十七条の二第二号の規定、第百十八条第一項第三号の二の規定、第百十九条第一項第十二号の
改正規定等でありますが、これは、安全運転管理者その他車両等の運行を直接管理する地位にある者が無免許運転、酒酔い運転、過労運転、積載制限違反運転等の下命または容認をした場合の罰則を引き上げて、これらの違反運転をした運転者に対する罰則と同一のものにしようとするものであります。なお、この
改正に関連して、第七十五条の規定について条文を整理するとともに、酒気帯び運転に関する規制及び罰則の強化をはかることに伴い、酒気帯び運転の下命、容認についても第七十五条第一項の
改正規定及び第百十九条第一項第十一号の二の規定により、必要な
整備をすることとしております。
第二は、交通反則通告制度の適用対象者の範囲の拡大についてであります。
その一は、少年に交通反則通告制度を適用することについてであります。
第百二十六条第一項の
改正規定は、告知の対象となる反則者から二十歳に満たない者を除いている規定を改め、少年である反則者に対しても告知及び反則金の納付の通告をしようとするものであります。
第百二十八条第二項及び第百三十条本文の
改正規定は、少年が反則金を納付した場合の効果として、家庭裁判所の審判に付されないこととしようとするものであります。
第百三十条の二の規定は、反則金を納付しないため、家庭裁判所において審判を開始された少年について、家庭裁判所が反則金の納付を指示することができることとしようとするものであります。この場合には、警察本部長が反則金の納付を通告する場合と異なり、家庭裁判所が納付の期限を定めることとし、また、反則金の額も、法の別表に定める反則金の限度額の範囲内で家庭裁判所が定めることとしております。なお、同条第三項は、この反則金の納付の方法及びその効果を警察本部長の通告による反則金の納付の場合と同様に取り扱うための準用規定であります。
その二は、第百二十五条第二項第二号の
改正規定についてであります。現行法においては、過去一年以内に免許の効力の停止等の処分を受けたことがある者は、反則者とされず交通反則通告制度の適用を受けないこととされておりますが、このような者であっても、第百二十条または第百二十一条の罪に当たる反則行為をした場合には成人、少年ともに反則者としてこめ制度を適用しようとするものであります。
第三は、
都市交通規制等のための規定の
整備についてであります。
その一は、第三十四条の
改正規定についてでありますが、これは、車両が左折しまたは右折する場合に交差点内で進行すべき部分を公安
委員会が道路または交通の状況により指定することができることとしようとするものであります。
その二は、第三十四条の二の規定等についてでありますが、これは、公安
委員会が、車両の交差点で進行する方向すなわち直進、左折及び右折により車両通行帯の進行区分を指定することができることとしようとするものであります。
その三は、第二十六条の二の規定等についてでありますが、これは、車両の進路の変更による交通の安全と円滑の阻害を防止するため、公安
委員会が、車両がその進行している車両通行帯以外の車両通行帯を通行することを禁止し、または制限することができることとしようとするものであります。
このほか、幅員の広い道路における一方通行の規制に対処するため、第二十条第一項及び第四十条について規定を
整備することとしております。
第四は、交通巡視員制度の新設についてであります。
第百十四条の三第一項は、都道府県警察に交通巡視員を置くこととしようとするものでありますが、その職務は、歩行者の通行の安全の確保、駐停車の規制の励行及び交通の安全と円滑にかかるその他の指導の事務とすることとしております。
第二項は、交通巡視員は警察官以外の警察職員とすること、及び政令で定める要件を備えていなければならないことを規定し、第三項は、交通巡視員に対する被服の支給及び装備品の貸与について規定しようとするものであります。
第五条、第十五条及び第五十一条第一項から第四項までの
改正規定並びに第百二十六条第四項の規定等は、それぞれ交通巡視員に、手信号による交通整理、違法に通行している歩行者に対する指示、違法駐車に対する是正措置及び駐停車違反に対する告知の権限を与えることとしようとするものであります。
第五は、歩行者及び自転車の保護のための通行方法に関する規定の
整備についてであります。
その一は、第七十一条第二号の二の規定等についてでありますが、これは、通学通園中の児童、幼児等の保護をはかるため、児童、幼児等の乗降のため政令で定めるところにより停車中の通学通園バスの側方を通過しようとする車両等は、徐行して安全確認をしなければならないこととしようとするものであります。
その二は、自転車道及び自転車の歩道通行に関する規定の
整備についてであります。
自転車道につきましては、第二条第三号の二の規定で定義を設け、縁石線等の工作物で一般の車道と区画された車道の部分をいうこととし、第十一条の
改正規定及び第十七条の二の規定によって、自転車道が設けられている道路の通行区分に関する規定を
整備することとしております。すなわち、第十一条の
改正規定は、行列が自転車道を通行することを禁止しようとするものであり、第十七条の二第一項の規定は、自転車以外の車両の自転車道の通行禁止を、第二項の規定は、自転車の自転車道の通行義務を定めようとするものであります。また、第十六条第四項の規定は、自転車道が設けられている道路における交通方法の規定の適用について通則規定を設けようとするものであります。
第十七条の三の規定は、公安
委員会が指定した歩道については、自転車が通行することができることとしようとするものであります。この場合には、自転車は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならないこととしております。
第六は、自動車の運転者の資質の向上のための規定の
整備についてであります。
その一は、第九十八条等の
改正規定についてであります。
第九十八条第一項の
改正規定は、指定自動車教習所の指定の目的を明らかにするとともに、教習事項について規定を
整備しようとするものであります。
同条第三項の改定規定は、指定の基準に適合しなくなった指定自動車教習所に対する処分として、指定の解除のほか、卒業証明書を発行することを禁止する処分を創設しようとするものでありますが、この処分は、公安
委員会が六月をこえない範囲内で期間を定め、その期間内における教習に基づいて卒業証明書を発行することを禁止するものであります。
同条第四項の規定は、この処分をした場合には、指定の基準に適合させるための措置命令をすることができることとしようとするものであり、同条第五項の規定は、禁止に違反して卒業証明書を発行した場合及び措置命令に違反した場合の指定の解除等について規定しようとするものであります。
その二は、第百十四条の四の新設規定についてでありますが、これは、
道路交通法に基づく政令、総理府令、
国家公安委員会規則または都道府県公安
委員会規則の
制定または改廃の場合に、それぞれの法令で合理的な範囲内の経過措置を定めることができることとしようとするものであります。これによって、当面、総理府令の
改正によりマイクロバスを大型自動車とした場合の大型免許の受験資格等の特例を総理府令で定めることとしようとするものであります。
第七は、故障車両による交通の妨害の排除のための現定の
整備についてであります。
その一は、第五十一条第二項の現定等についてでありますが、これは、故障等により違法に駐車している車両については、運転者等がいる場合であっても、警察官等が移動等の措置をとることができることとし、この措置に要した
費用は、その車両の運転者等に負担させようとするものであります。なお、この
改正と関連して、保管を伴わない移動等の措置についても、車両の所有者等に
費用を負担させることとしております。また、第七十五条の八第一項第二号の
改正現定は、故障車両に対する措置を円滑に行なうため、高速自動車国道等における駐車禁止から除外される故障駐車は、幅員の広い路肩に駐車する場合に限られることを明らかにしようとするものであります。
その二は、第七十五条の十一第二項の現定についてでありますが、これは、高速道路における故障駐車による交通の妨害の現状にかんがみ、燃料不足等第六十二条の
整備不良車両に該当しない自動車で故障等により停止するおそれがあるものを高速自動車国道または自動車専用道路で運転することを禁止しようとするものであります。なお、この規定には、罰則を付しておりません。
最後に、附則の規定についてであります。
第一項の規定は、この
法律の施行期日について規定しようとするものであります。
第二項から第七項までの規定は、違法駐車に対する措置の
費用負担に関する規定の
改正、運転免許の欠格期間の延長、免許の効力の仮停止の事由の
改正、交通反則通告制度の適用対象者の範囲の拡大等に伴い必要な経過措置を設けようとするものであります。
第八項の規定は、家庭裁判所の反則金の納付の指示に関する規定の新設に伴い、反則金収入を交通安全対策特別交付金とすることとしている昭和四十二年の
道路交通法の一部を
改正する
法律附則第七項を
改正しようとするものであります。
第九項の規定は、交通巡視員制度の新設に伴い、自動車の保管場所の確保等に関する
法律の規定のうち、
道路交通法の駐車に関する規定と同一に取り扱われているものについて所要の
改正をしようとするものであります。
以上が
道路交通法の一部を
改正する
法律案のおもな内容であります。何とぞよろしく御審議を
お願いいたします。