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1970-07-06 第63回国会 衆議院 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年七月六日(月曜日)     午前十時四十二分開議  出席小委員    小委員長 藤井 勝志君       上村千一郎君    奥田 敬和君       木部 佳昭君    高橋清一郎君       登坂重次郎君    松本 十郎君       平林  剛君    堀  昌雄君       二見 伸明君  小委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  神川誠太郎君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省証券局長 志場喜徳郎君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省銀行局中         小金融課長   結城  茂君         大蔵省銀行局保         険部長     渡部  信君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融及び証券に関する件      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  金融及び証券に関する件について調査を進めます。  まず、金融制度調査会答申について政府より説明を求めます。近藤銀行局長
  3. 近藤道生

    近藤説明員 金融制度調査会答申につきまして、まず簡単に経緯を御報告申し上げ、次に答申特徴とでもいうべきものを三点ほど申し上げ、最後答申主要内容を六項目ほどに分けまして御報告申し上げたいと存じます。  初めに調査会の今日までの経過でございますが、金融制度調査会がかねてから取り上げておりました「一般民間金融機関あり方等について」の答申は、去る七月二日に開催されました調査会総会において了承され、大蔵大臣に正式に答申されました。制度調査会が四十一年六月に、いわゆる金融効率化を旗じるしに金融制度の全面的な再検討を開始いたしまして以来実に四年を経過いたしており、また今回の一般民間金融機関の問題が取り上げられましてからでもすでに二年半を経過いたしております。  金融制度調査会が今回打ち出しました方針は、わが国金融制度あり方の長期的な展望を示したものでございまして、その中には直ちに実行できますものと将来にわたってさらに検討すべきものとがございますが、行政当局といたしましては、これらの点を見きわめながら諸般の施策を進めるという方向で参りたいと考えておるわけでございます。  次に、答申特徴点三つほど申し上げますと、第一は、今回の調査会金融にとって基本的な問題をかなり大胆に取り上げ、非常に広範に深く掘り下げて検討いたしておるということでございます。したがって、調査会で取り上げられた問題は、単に調査会の場だけではなくて、広く金融界、学界でも取り上げられ論議されたのでございます。このことはおそらく、わが国金融史上初めてという言い方をしてもいいかと存じます。また、調査会論議が進行するにつれまして、金融機関経営者自体金融機関経営あり方につきまして真剣な反省と研究を行なうようになってきた、いわば一種の意識革命というようなことがよくいわれておりますが、そういう事態がもたらされましたのは金融制度調査会論議にまつところが大きかったと存じております。これが第一の特色かと存じます。  特色の第二は、経済国際化という環境変化に対応いたしまして、国民経済的見地から金融効率化という基本路線、その路線の上に立って金融機関あり方を集大成したということでございます。金融効率化とは、簡単に申し上げれば、わが国経済の適正な成長発展目途とする経済全体の効率化金融面から推進していくために、金融に期待されております各般機能をより一そう高め、またより効果的に発揮させていくということでございます。  これをさらに具体的に申し上げれば、景気変動に対して適時適切な調整効果を発揮するとともに、産業その他国民経済需要に対して良質な資金が適正に供給されるように、金融政策金融に関する諸制度及び金融機関経営改善をはかることでございます。そしてそのための基本的手段としては、特に適正な競争原理導入ということと金利機能活用すべきだという立場に立っております。  なお、金融機関効率化は本来金融機関公共性という基盤の上で行なわれるべきものでございまして、またこのような見地から効率化が推進されることによって初めて金融機関国民経済的機能が全きを得るとされておるわけでございます。  特色の第三点は、金融制度論議はともすれば金融機関利害関係の問題として取り扱われまして、金融機関のための制度論議に終わりがちでございますが、今回の調査会論議金融機関サイドからだけではなく、広く国民経済的な視点、特に資金需要者である企業資金供給者である預金者金融についてどのような要請を持っているのかという観点に立って議論が進められたことでございます。  次に答申主要内容を六項目ほどに分けて申し上げます。  第一は、基本的な考え方でございますが、一九七〇年代においては経済国際化の一そうの進展、経済社会高密度化等、新しい情勢展開が予想され、特に金融面におきましては個人金融資産蓄積増大企業自己金融力の上昇というような趨勢がうかがわれます。答申では、民間金融機関あり方検討するにあたりまして、こういうわが国経済の構造的な変化に対処するとともに、新しく展開する社会的要請に即応し得るように国民経済的観点に立って、また時点といたしましては、一九七〇年代全部を通ずる長期的な視野というものからその方向を示すことを目途といたしております。要するに、一九七〇年代全部を通ずるという角度から問題に迫っておるということが基本的な考え方の第一点でございます。  それから、基本的な考え方のもう一つは、直接金融間接金融との関係でございますが、ここでは一般民間金融機関あり方に焦点をしぼって審議が行なわれたわけでございますが、わが国金融が全体として健全な発展を遂げていきますためには、直接金融間接金融とが適正なバランスの上に立って、それぞれの機能を十全に発揮していくことが望ましいと考えられますので、間接金融効率化に並行いたしまして資本市場育成につきましては今後とも各般施策が一そう積極的に行なわれるべきであり、その着実な成長が望まれるということを特に申しまして、直接・間接市場の間の調和が配慮されているわけでございます。  それから、基本的な考え方の第三は、金融効率化ということで進められたわけでございますが、この点についてはすでに申し上げましたので省略いたします。  主要内容二つ目金利機能活用でございます。金利の問題につきましては、金利景気調整機能活用強化するために三つばかり提案がなされております。一つは、公定歩合変動幅拡大年利建て採用でございます。二つ目は、公定歩合預金金利との連動でございます。三つ目は、長期金利弾力化でございます。  そこで、この第一の年利建て採用は、御高承のとおりすでに昨年から実施に移されているわけでございます。  第二点につきましては、答申では、金融機関経理面を通じまして、公定歩合変動に対する金融機関貸し出し金利の反応を促進するために、公定歩合変動に対して、預金、特に要求払い預金金利にある程度の連動性を持たせることが適当であるといわれております。そしてこのことは、金融引き締め期におきまして、金融機関収益が増加し過ぎるという問題点にもこたえることになろうと述べられております。  それから長期金利弾力化でございますが、特にこれまで長期貸し出し金利が硬直的であったということはいなめないところで、基本的には今後とも長期金利を低くしていくということが望ましいといたしましても、他面、経済情勢に即応いたしまして、必要な場合には長期金利弾力化をはかるということによって、その景気調整機能活用をも期するということが必要であると指摘されております。  以上が金利でございますが、主要内容の第三は、規模利益ということについてでございます。金融機関はそれぞれ経営基盤などを異にするものが多いので、経営の諸指標を単純に比較することは問題があろうかと存ぜられますが、大勢といたしましては、金融機関の間、特に同種の金融機関の間におきましては、経費率につきまして規模が大きくなるほど有利であるという、いわゆる規模利益が認められるということが指摘されております。答申では、金融機関合併につきまして、国民経済的観点から見て規模利益を生かすような合併は推進されることが望ましいといっております。なお、具体的な実行は金融機関自主的判断に基づくべきものであろうと述べられております。しかし他面、合併による弊害ということも配慮いたしておりまして、合併の結果、寡占化が進んで有効競争が阻害されるような場合は合併は困る、それからあるいは系列金融が強化されるという弊害が生ずる場合にも困る、その辺は行政当局で十分な配慮を行なうべきであると述べられております。これらの点につきましては、個々の具体的なケースに即して十分慎重に検討されることになろうと思われます。  このほか、業務の提携につきましても、経営効率化観点からは高く評価されるとされております。  おもな内容の第四点は、普通銀行及び長期金融機関についてでございます。  まず、業務分野の問題でございますが、今後の金融機関業務あり方としては、答申では、産業構造高度化等に伴う資金需要多様化国民所得の向上に伴う資産選好拡大等に即応するための業務多様化は今後の方向であると考えられるので、現行の民間金融機関業務分野について、国民経済的な見地からある程度の弾力性を認めていくべきである。しかし、各種金融機関専門的機能については今後ともその役割りに期待するところが大きいので、専門金融機関の根幹に触れ、あるいはその存立を脅かすということは避けるべきであり、各種金融機関周辺分野について適正な競争原理導入されるべきである。いわゆる周辺分野についての相互乗り入れということが述べられておるわけでございます。  次に中期金融でございます。企業長期安定資金に対する需要が満たされていないという問題が明らかにされ、またいわゆる高利貸しや長期貸し出し金利実情などについて、金融機関長期資金供給状況が分析、検討されました。その結果、期間一年から五年程度の貸し出しにつきまして中期金融という考え方を取り入れて、これにふさわしい位置づけを与えることが検討されるべきであると提案されております。このことは、経済構造変化に即応して、いわゆる商業銀行主義からの脱皮をはかるという点で意味を持つと考えます。  次に中期預金でございます。中期預金の問題につきましては、今後の方向として、個人金融資産蓄積増大消費者物価動向等からする貯蓄者側需要及び企業側安定資金に対する要望という見地から、中期預金導入検討に値するとされております。ただ、なおその場合においても、経済動向公社債市場育成各種金融機関経営などに十分配意し、実施方法につきましても、金利期間等の面での考慮が必要であるという条件がつけられております。  次に長期信用銀行についてでございます。長期信用銀行につきましては、融資専門性中立性の徹底、社会資本充実のための融資の拡充、中小企業向け貸し出し促進金融債のコストの低減といったような問題が取り上げられております。  次に信託銀行についてでございます。信託銀行につきましては、財務管理信託を強化すること、中小企業貸し出し促進をはかることが問題にされておりますほかに、貸付信託制度改善が指摘されております。  その内容三つに分かれておりますが、第一は貸付信託融資先制限の再検討でございます。貸付信託融資先につきましては、貸付信託法で「資源の開発その他緊要な産業」に限るとされておりますが、産業構造変化資金需要多様化に即応し得るように、この制限内容を改めるということにされております。特に最近における消費者物価動向に関連いたしまして、たとえば流通部門整備改善は大きな問題であり、流通部門融資できる道を開く必要があるというようなことが考えられております。  貸付信託制度改正の第二点は、信託財産運用制限改正でございます。信託財産運用方法につきましては、現在の貸付信託法によれば余裕金等を除いてあとはすべて貸し付け及び手形割引に限定されておりますが、支払い準備景気調整政策などの見地から、その運用方法有価証券を加える必要があろうとされております。  貸付信託制度改正の第三点は、収益分配あり方についてであります。貸付信託収益分配方法は、現在各行一律に行なわれておりますが、今後の方向といたしましては、信託制度の本質を生かし、また適正な競争導入と、その結果の受益者への還元をはかるために、収益分配につきまして各信託銀行運用実績が反映されるようになることが検討されるべきであるとされております。いわゆる実績配当のやり方でございます。  答申主要内容の大きな五番目といたしましては、貿易金融が取り上げられております。  貿易金融その他の国際金融体制につきましては、経済国際化に対応して外国為替専門銀行機能強化をはかるということがいわれております。反面、一般外国為替公認銀行につきましても、その実力に応じて充実をさせるということが必要であるとされております。そうしてこれら両者の相互補完的な発展が大切であるといわれております。  また、外国為替公認銀行のいわゆる甲種乙種名称区分につきましては、その名称が対外的に格づけをされるという印象を与えて好ましくないこと、それからまた、この区分が設定された当時と現在とでは環境相当異なってきているという理由から、甲種乙種区分は廃止すべきであるとされております。  答申主要内容最後の第六点は、預金保険制度でございます。  最近は、個人金融資産蓄積がふえるに従って金融機関のいわゆる大衆化が急速に進んでおります。また各種料金自動振りかえなどで一般消費者支払い手段としての預金の位置が大きくなってきておる。さらに今後は給料の銀行振り込みなどの普及も予想されております。したがって、国民大衆預金の保障は従来にも増して重要になってきております。しかし、いままでの体制では、預金者保護するためには金融機関自体の保全をはからなければならないということになっておりますために、このままで預金者保護を進めることは金融機関に対してますます過保護ともいうべき傾向を持たせることにもなりかねないわけであります。そこで、この際預金者保護金融機関保護との分離をはかりまして、金融機関に対する過保護体制から脱却するとともに、国民大衆預金保護に万全を期そうというのが預金保険制度導入のねらいでございます。また、このような預金保険制度の維持は、国の免許制度のもとに保護されております金融機関として当然の社会的な義務であると考えられておるわけでございます。なお、預金者保護は、本来金融機関にとりまして、公共性見地からもみずからの最大の責務であることは言うまでもございませんので、預金保険制度と並行いたしまして、各金融機関が自主的に支払い準備充実など、預金者保護体制確立に努力すべきであり、また金融政策当局も極力これを促進すべきであるとされております。  預金保険制度の具体的な仕組みとしてあげられておりますことは、第一に、預金保険機関の機構はできるだけ簡素なものにするということ。第二は、預金保険機関の形態は加入金融機関全体を一本とした総合方式とするということ。第三は、加入金融機関の範囲は、銀行相互銀行、信用金庫及び信用組合とするということ。ただし、信用組合につきましては他の金融機関行政上の監督方式を異にするという面もあり、その経営あり方についてさらに健全化をはかる等、所要の改善が行なわれることが必要であるとされております。  次に保険限度額でございますが、当面各金融機関ごと預金者一人当たり百万円が適当とされる。それから預金保険機関業務は、金融機関からの保険料の徴収と預金者に対する保険金支払いに限ることとされております。  以上で答申主要内容を御説明申し上げたわけでございます。御報告を終わります。     —————————————
  4. 藤井勝志

    藤井委員長 質疑の通告がありますので、これを許します高橋清一郎君。
  5. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 今日まで行なわれました大蔵委員会等におきまして各委員のほうからときおり出ます声は、現在経済界趨勢等から徴しまして、いわゆる零細業者あるいは低所得者等に対しまする政府のおもんぱかり、親心、こういうようなことにつきまして質疑応答の場が繰り返されてきたのでございます。私は本日もこうしたことを中心にいたしまして、特に最近におきまする金融引き締め等原因となりまして中小商工業者は極端な資金難におちいっておる。あなたのほうからもかつてデータが出たと思うのでございますけれども、倒産ということにつきましては、先月、六月まででありますが、一千万以上の負債で一千件をこえておる。これより少額のものについてはおおよそ二千五百件であるというようなことの推定でございます。なるほど政府におきましても年ごとにある程度こうしたものに対しまして、いわゆる中小企業向け金融ということは率において伸びつつあるのでございますけれども、これは全体から見ますときわめて微々たるものであります。したがって、それからはみ出された連中は、そうした階層はとなりますと、どうしても町の金融ということになるわけであります。町の金融にたよらざるを得ないということでございますけれども、この町の金融ということをきょうは題材といたしましていろいろなことを御質疑を展開していきたいと思うのでございます。  御存じのとおり、町の金融と申しましても、現在、県に対しまして営業開始届け出を出しさえしますれば商売ができる。自由に営業ができる。主務官庁といたしましてもこれは名目だけの監督にすぎない。したがって、実質におきましては国が管理できない状態になっておるということでございます。この世界におきましては、いうところの野放し状態金融があるということであります。日常のマスコミ等におきましてもよく悪質の金貸しというものが事例として出ていました。特にことばを大きくしてお訴えしたいことは暴力金融であります。最近、暴力団資金源をこの世界に取り始めておるということを風聞として聞いておるのであります。なればこそ、きょう警察庁からも御出席をいただいたのでありますが、これにつきましても被害を受けるのはすべてこれは中小弱小業者でありまするし、低所得者であるということなんであります。相当の熱心さで政府におきましても中小企業対策をやっておりまするけれども、これは名目だけにすぎないという感じがしてなりません。ひっきょうするに、監督が徹底しておらぬという面が相当大きな原因一つとなっておるということは申し上げてよかろうと思うのであります。そういう金融業はなくしたほうがいいじゃないかといわれましても、これはしようがございません。借り手はずいぶんあるのでございます。これが実態でございます。借り手がある以上はその存在を許しておるということに尽きるわけでございます。しかも、聞くところによりますると、これらの人たちが回しておりまする金額は約一兆円と聞いております。それを上回るものがあるだろう。利用者は三千五百万人であります。驚くべき数字に達しておる。三千五百万と申しまするならば総人口の三分の一に相当するわけであります。その利用者にいたしましても、いま申しましたように中小企業者あるいはサラリーマンなどを主体といたしまする低所得者が大半を占めておるという実情でございます。  そこで警察庁にお尋ねしたいのでありますが、私はいま暴力金融と申しました。やみ金融を掲げました。相当の修正なり、年月がたっておりまする日本の経済界におきまして、こうした裏街道を行きまする連中金融に関する悪質なやみブローカー、特に私が一番憎いのは、暴力団金融関係に一歩、歩を進めてこの世界にはびころうとする実情であります。これをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  6. 神川誠太郎

    神川説明員 お答えいたします。  ただいまのお尋ねの点につきまして、まず、やみ金融あるいはもぐり金融業者というものの実態につきましてお答えを申し上げたいと思います。  ただいま町の金融業者というおことばがございましたが、この町の金融業者といわれております貸し金業者がいろいろ行ないます中で違法行為としてとらえられますものは、出資の受入、預り金及び金利等取締等に関する法律の違反としてとらえられるわけでございますけれども、その検挙状況を申し上げますと、昨年、昭和四十四年中におきましては、出資等取締法違反といたしまして四百三十八件、四百十九名を検挙いたしております。これは四十三年に比べまして三十三件、約八%の増加になっております。さらにこれを四十二年に比べますと約一・七倍の増という状況であります。  これを態様的に見ますと、最も多いのが高金利でございまして、これは二百四十一件、二百四十五人の検挙を見ております。その次に多いのが無届け営業でございます。これは百五十八件、百二十六名を検挙いたしたわけであります。この昨年検挙いたしました高金利は、出資等取締法違反全体から見ますと約五五%に当たります。また無届け営業につきましては全体の約三六%を占めております。  これらの事犯の最近の特徴を見てまいりますと、高金利事犯につきましては、やはり町の金融という名の示しますとおり、中小企業者あるいはサラリーマンまたは主婦という方々を対象にいたしまして貸し付けをいたしているわけでありますが、特に支払いがおそいというような状況が出てまいりますと、この債務者経済的な弱みにつけ込みまして、過酷な条件や、いわゆる脅迫的な手段によって取り立てをするというような傾向がいまなおあとを断たない状況が見られるわけであります。  その次の傾向といたしましては、ここ三年来この金利の利率の分布状況を見ますと逐年高利に移行しつつあります。高いほうへだんだんと上がっていく傾向が見られます。  それから、貸し金業の中で無届けが依然として多いわけでありますが、これらの無届け事犯を見ますと、資金さえあれば比較的容易に開業できますので、資金の有利な運用という考え方でこれを貸し付けていく。それで利息でもうける。こういった事案あとを断ちません。  これらのようなものをまず事例的に申し上げますと、これは被害者あるいは家族の名誉等もございますので、件名等につきましては抽象的にお答えさせていただきたいと思いますけれども、一般的な事件として出てまいりますのは、たとえば高金利で利殖を得ようということを計画いたしまして、弟の名義になっております貸し金業、これを利用いたしまして弟と兄が共謀して、兄が実権を握って客をたらい回しにする。そして、この場合におきましては年間約八十名くらいの人に対して九百数十回にわたりまして、総額五千五百七十万円を貸し付け超過利息二百二十四万円を得る。これは無届けあるいは高金利という形で事件を送っております。  そのほか特異な事例といたしましては、あるものは数十回にわたりまして、月九分のたてまえをとっておりながら、主として五日から三十日くらいの短期貸し付けによりまして、これが十五日未満でありましても一カ月分、そして月をまたぐと二カ月分で利息を要求する。そしてもし支払いができなくなってまいりますと、主婦の場合におきましてはいかがわしい申し入れをいたしまして困惑をさせる。この事案につきましては無届けまたは高金利、さらに売春防止法の周旋ということで事件を立てております。  このようにいろいろと事案内容も悪質、かつ巧妙化しつつあるのでありますけれども、特に先ほど御指摘の暴力団資金源としてこのやみ金融というものを具体的にどの程度手広くやっておるかということにつきましては、全貌はまだつかめませんけれども、検挙いたしました事件の中におきましては、それぞれの子分等を使いまして事案を敢行するというケースもございます。しかしこの場合につきましても、私どものほうといたしましては、この出資等取締法違反事件を立てることはもちろんでございますが、刑法各成条に規定されておりますそれぞれの違法行為につきましてこれを証明をし、そして送致をいたしているわけでありますが、ただ一つ私どもが国民の方々、特に被害者の方々に御協力をお願いいたしておりますのは、いろいろと金を借りるという立場の事情もございますけれども、警察がこれを解明いたします場合に、十分それを証明し得る事実関係をお話ししていただくということが大事なんでありますけれども、この点につきましてはいろいろ名誉等のこともございまして、なかなかお話をお聞かせ願えない面もあるわけであります。最近いろいろそういった面についての御協力もいただきまして、泣き寝入りをするというようなことのないよう、またいろいろ暴力的な不良行為によって善良な方々に御迷惑をかける、これを排除するということについて、私どもは厳重に取り締まりをいたしているわけであります。特に暴力的な行為を行なう者につきましては、これらの事案の最重点事項として取り締まりを推進いたしているという次第であります。
  7. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 いろいろ御努力をいただいているという姿はわかるのでありますけれども、しかし、たとえて申しますると、東京都は警視庁があります。警視庁の第何課がこうしたものを取り扱っているのでございましょう。はたしてみんなの苦情というものを一々聞いて取り上げて、すぐ捜査の手を伸ばしているか。私自身も体験している事柄なんでありますけれども、主として警察は故意に——こういう言い方はどうかと思うのでありますが、これは民事でございませんか、刑事とはね、ということで逃げよう逃げようとする。言うならば、結局取り扱う職員の数がうんと足らぬのだというせつなさと申しますか、そういうものからくる、こうしたものは、めんどうそうなものはということで、故意に忌避しようというような態度が見受けられぬとも限らぬというようなニュアンスを得たこともございます。そういうようなことについて、いろいろと勉強しているのでありましょうけれども、今後こうしたものに対しましては一そう熱意をもって対処していただきたいというのが私の念願なのでありまして、もし参考になりますものがありますならばお聞かせいただきたいと思います。
  8. 神川誠太郎

    神川説明員 お答えいたします。  警察がこの種の事案につきまして、民事ということで逃げるという誤解がもしございましたならば、これは私どもの努力の至らない点であろうかとも思いますが、警察の立場といたしましては、金銭貸借の問題につきまして、純粋な民事問題については民事不介入の原則がございます。しかし、いろいろとトラブルが出てくる場合におきまして警察がこれをキャッチし得る立場にある窓口を申し上げます。警視庁の例で申し上げますと、一般的にはまず家事相談所というのがございます。これはいろいろ困ることにつきまして幅広い問題を持ってこられる。それからまた暴力団等の粗暴なあるいは凶悪な手段という形、この種の事案を担当する場合には捜査四課がございます。また特別法犯そのものだけで取り締まってまいります場合、いわゆる出資等の取締法違反で、これらの違法状態を解消していくという場合におきましては防犯課がございます。  はっきりと刑事事件としてこれを問擬し得る場合におきましては、もちろん警察としてこれに積極的に取り組んでおるわけでございますが、民事と刑事の限界の問題でいろいろむずかしい問題もございます。これにつきましても、警察の姿勢としては逃げるという姿勢は持っておりません。あくまでも私どもは、この金融事犯等を含めまして、市民生活を侵害する事犯につきましては、現在これを警察の業務目標の中の一つの最大重点にいたしておるわけでありまして、この金融事犯の取り締まりにつきましても、その中でまた大きく一つの柱として掲げているわけでございます。  本年の取り締まりの指針といたしましては、特に高金利事犯について、取り立て等に暴力的手段をとるなどの暴力団の介在する事犯、あるいは広域にわたって組織的に違法行為を行なう事犯、あるいは借り主の事情を御存じなしに、いろいろの名目を立てて利息を分離しようという企てでやるケースが多いわけです。そういった無知に乗じた悪質な手口、また、いささか小口と見られましても、当然小口金融につきましても私どもは重点的に取り締まりをしていくということで、特にここ三年間の事件の分析をいたしますと、被害が大きく波及する前に検挙し得るという体制が逐次整備されてきておりまして、検挙結果から見ましてもその点がうかがえます。あくまでも、市民生活を脅かすこの種の事犯につきましては、関係機関当局とも十分連絡を密にいたしまして、市民生活保護観点から十分これを取り締まってまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  9. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 保安課長みずから非常な御熱意を持った御答弁を賜わりました。どうか今後におきましても、きわめて複雑な問題を包含しております問題でありますだけに、あとう限りの御熱意を御披瀝賜わりたいと思います。  次に、大蔵省に対してでございますが、顧客と業者の間のトラブル、これはいろいろあると思うのであります。現在大蔵省で把握しておりまする実態、件数、それから届け出業者とやみ業者との区別等々につきまして、資料がございましたならば御説明いただきたいと思います。
  10. 結城茂

    ○結城説明員 お答えいたします。  一般的な金融問題につきましてのトラブル等についてのデータはございませんし、また貸し金業の問題についての具体的な貸し金業者と顧客とのトラブルについても、実態的な計数ということで把握したものは実は手元に持っておりません。  ただ、貸し金業者実態でございますが、これは県当局を通じまして毎年一回把握しております。届け出業者は個人が五万八千百三十四件、法人が二万八百十一件、合わせまして七万八千九百四十五件というのが昨年、四十四年三月の時点における貸し金業者届け出数でございます。なお、無届け業者でございますが、これはもちろん無届けでございますので把握が非常にむずかしいわけでございます。私どものほうのデータというよりも、各都道府県の推計等を参考にしますと、大体一万六千件ぐらいの無届け業者があるのじゃないかというような推計をいたしております。
  11. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 次に、少し飛躍しますけれども外国の例でございます。金貸しと申しますならば必ずしも日本ばかりではございません。もちろん金利の基準が違うと思います。アメリカの例についてでございますが、これは免許制でございましょう。それから業法というところまですでにかなり前から前向きで制定せられておるということを聞かされておるのであります。まあこういった関係者の自己吹聴であるかどうかわかりませんけれども、考え方によりますと、わかりやすく申しますれば銀行が卸売り業者で、金融業者が小売り業者でございますよというところまで根をおろしておるということを聞いておるのでございます。アメリカの金貸しということについての実態等おわかりでしたらお尋ねしたい。
  12. 結城茂

    ○結城説明員 私どもまだアメリカの貸し金業実態がどういうふうになっておるか調べておりませんものですから、後ほどまた調べまして御説明させていただきたいと思います。
  13. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 機会がございましたならばなるべく早い機会にアメリカの実態を、できましたら資料でもってお知らせください。  わが国貸し金業者に関連する問題についてこれからお尋ねしたいと思います。  御存じのように、貸し金業者を規制いたしまする法律は、昭和二十四年に貸金業等の取締に関する法律が制定されたのでありますが、その後、昭和二十九年になりましてこの法律が廃止されまして、これにかわりまして出資の受入、預り金及び金利等取締等に関する法律が制定されたのでございます。今日貸し金業はこの法律が根拠法となっておりますが、貸し金業者に対する規制は二十四年の法律よりもむしろ後退しておるということが一般にいわれております。したがいまして、このような立法のいきさつ、経過につきまして御説明を得たいと思います。
  14. 近藤道生

    近藤説明員 ただいまお示しがございましたように、昭和二十四年に貸金業等の取締に関する法律がつくられまして、その後、昭和二十九年に廃止されたわけでございますが、そのいきさつを申し上げますと、まず二十四年の貸金業の取締に関する法律が制定されました経緯は、終戦後の経済秩序の混乱と貸し金業者実情とにかんがみまして、これを取り締まるために貸金業等の取締に関する法律ということで制定されたわけでございます。  そのおもな規定は、御高承のとおり、貸し金業につきまして大蔵大臣への届け出の制度を設けまして、その受理書の交付を受けたあとでなければ貸し金業を行なうことができないということが一つ。それから貸し金業者について監督の規定、すなわち業務報告書の提出、報告の徴求、検査及び業務停止命令等の規定を設けられましたこと、これが第二点。それから第三には、金利及び媒介手数料率につきまして最高限度を定め得ることにされたこと。それから第四に、特に預かり金の禁止について厳格な規定を置かれたということでございまして、先ほど来お話がございましたような監督ということまでをも含めた規定があったわけでございます。  ところがそれが廃止されまして、昭和二十九年に出資の受入の法律に切りかえられましたいきさつは、第一に、貸し金業者は自己の資金を自己の責任において運用するたてまえのものであり、不特定多数の者から預貯金を受け入れてこれを運用する一般金融機関に対する監督取り締まりとは基本的に異なってしかるべきものであり、また現実の問題といたしましても、貸し金業者に対する監督は、その数があまりにも多いことから事実上実行不可能な実情にあるという点が一つでございます。第二点は、貸し金業者を大蔵省の監督下に置くということは、かえって貸し金業が大蔵省公認ということになり、その表示を行なわれるということから大衆に誤解を与えたという弊害があったという事実、これらのことにかんがみまして、昭和二十九年の七月に貸金業等の取締に関する法律が改正されまして、現行の出資の受入、預り金及び金利等取締等に関する法律が制定されたわけでございます。  この内容も、すでに御高承のように、第一は、貸し金業者に対する規制を簡易な事後届け出制に改めますとともに、実態調査のため必要がある場合に報告を徴し、また調査を行ない得るということにとどめ、第二に、届け出の受理、報告の徴求及び調査にかかわる大蔵大臣の権限を都道府県知事に委任します一方、第三に、貸し金業者預金類似の出資金の受け入れ、預かり金、高金利による貸し出しなどを行なう場合にはきびしく取り締まりを行なうこととされたわけでございます。  以上が経緯でございます。
  15. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 いまも申し上げましたが、二十四年の法律では、貸し金業を行なおうとする者はあらかじめ大蔵大臣届け出書を提出いたしまして、その受理書の交付を受けたあとでなければ貸し金業を行なうことができないとされておったのでありますけれども、二十九年の法律では、単に貸し金業実態を把握するための届け出制に改められまして、貸し金業は純然たる自由営業とされるに至ったわけでございます。これは、いまもお話がございましたけれども、おそらく、厳密な届け出制を実施いたしましても実効を期待できるような行政的な取り締まりは事実上不可能に近いということが原因だと思います。しかしながら、そうだからと申しましても、いまも警察方面にるるお尋ねしたのでありますが、やみの業者を野放しの状態に放置しておくということは、これは無責任のそしりを受けてもしようがないということになろうと思うのであります。御案内のとおり、質屋には質屋営業法がございます、古物商には古物営業法がございますように、それぞれ単独法をもちまして取り締まりを行なっておるのでありますから、貸し金業者につきましても単独の根拠法規があってもいいのじゃなかろうか、しかるべきであるというような考え方も成り立つ面もあるのでございます。重複するかもしれませんが、大蔵省の御見解を承りたい。
  16. 近藤道生

    近藤説明員 先ほどの御説明とあるいは若干重複するかとは存じますが、貸し金業者は自己の資金を自己の責任において運用するということをたてまえといたしておりまして、不特定多数の者から預貯金を受け入れてこれを運用いたします一般金融機関に対する監督、取り締まりとは基本的な態様を異にいたしております。ただ、貸し金業者に対しましては、出資の受け入れや預かり金などの預金受け入れ類似業務を行なうことを禁止するとか、高金利について規制するという必要はあるわけでありますが、現行の出資の受入、預り金及び金利等取締等に関する法律はこのような観点から制定されたものでございます。金融行政の立場からまいりますと、従来から、資金吸収面に重点を置いた、不特定多数者から資金を吸収してこれを運用する、その不特定多数者を保護するという立場からの監督法規、そういうものが金融行政の立場からの法規のたてまえでございます。したがって、特別の単独法規を制定するという考え方はとっておらないわけでございます。
  17. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 次に、貸し金業者の数でございますが、最近十年間におきます推移はどの程度でございましょうということであります。それから届け貸し金業者数と、届け出をいたしましたあと休業してしまいます休業者数はどのくらいでしょうということであります。いわゆるやみの業者数はどれくらいと推定しておるかということもお尋ねします。  貸し金業届け出数は、私の承知いたしておる限り約八万名と思うのであります。しかし、このほか届け出をしていない、いま申しましたやみ業者の数は、もうこの何倍に及ぶであろうといわれております。このばく大な数に達する業者を監督、取り締まるということは、大蔵省の限られた人員ではとうてい不可能でありましょう。したがって、大蔵大臣の権限を委任しておりますところの都道府県知事のもとにおきまして、各地域の事情に精通いたしました職員をこれに当たらせるか、あるいは質屋と同様に警察の取り締まりにまかすべきであるというような意見もございますが、これにつきましての大蔵省の御見解は……と言いたいのでありますが、いろいろいままでお述べになりましたことで答弁はもうきまってきてしまいます。したがいまして次に進みます。  貸し金業実態金融業であるために、これを警察の取り締まりにゆだねるということは、筋論といたしましても実態論といたしましても適切でないという意見がございます。そこで今回提出と申しましょうか、過般いろいろ趣意の説明等御発言ございました。いろいろの過程でここまで参りましたこの問題は、どうしても関係者が数多いものであり、経済界実態からいたしましても、金融という問題からいたしましても、一つのまとまりを示さなければならないということで、再度この小委員会におきましてこうした場面を持っているわけであります。  御高承であろうと思うのでありますけれども、いわゆる貸金業者の自主規制の助長に関する法律案でございます。これによりますると、貸し金業者の団体の設立についての根拠規定を設け、団体の自主的な活動によって貸し金業者の自粛を促すとともに、団体に行政指導の補助的な役割り——補助的な役割りであります——を果たさせることとしておるのでございます。これによって、資金需要者たる顧客の保護をはかるとともに、貸し金業の適正な運営を確保し、不正金融を未然に防止することができるならばきわめて合理的であると思うのであります。大蔵省の見解はどうでございましょう。
  18. 近藤道生

    近藤説明員 貸金業者の自主規制の助長に関する法律案は、ただいまお示しのとおり、庶民金融業協会がその会員である貸し金業者に対しまして、貸し金業の適正な運営に資するため指導、勧告等の自主規制措置を講ずることといたしておるのでございまして、その趣旨とされるところはよく理解できるわけでございます。ただその場合に、考えておきますべき問題点が二つくらいあろうかと存じますが、一つは、貸し金業者の協会への加入が任意でございますために、悪質な営業を行なうおそれのある貸し金業者がアウトサイダーとして自主規制の対象とならないという場合もあるいはあろうかということが一つでございます。それからまた、協会に加入いたしました貸し金業者が庶民金融業者という名称を使用することによりまして、一般にはあたかも主務官庁公認の貸し金業者であるというような解釈を与えがちではないかという、その点の考慮も必要であろうかという、その二点については配慮が必要であろうかというふうに考えております。
  19. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 いまお述べになりました加入ということでございます。これに関連いたしましてお尋ねいたします。  貸し金業者の団体は任意加入の方式をとりまして、入会、退会は自由とし、ただ団体に入会していない業者は庶民金融業者名称を用いまして貸し金業を行なうことができないこととしておるのであります。現行法制上から申しまするならば、団体への加入を強制していますもののうちで、いわゆる直接強制加入方式、すなわち登録したものは当然入会しなければならない方式を採用しているのは、弁護士、弁理士、公認会計士がございます。間接強制加入方式、すなわち登録は入会しなくてもできるが、業務を行なうについては入会しなければならないという方式を採用しているものには、税理士、司法書士、土地家屋調査士、行政書士がございます。また、個々の事業について特別の法律をもって業者の団体について規定しているものに、建築士、宅地建物取引業者、技術士、理容師、調理士がございます。今回の法律案は、この最後の任意加入方式を採用しているのでありますが、業界の現状から見ましてこの程度の規制をすることは、資金需要者と業者の双方にとって必要ではないかと思うのでありますがどうでしょうということであります。
  20. 近藤道生

    近藤説明員 貸金業者の自主規制の助長に関する法律案におきましては、庶民金融業協会に対する貸し金業者の加入について任意加入方式を採用していると承っておりますが、自由営業でございます貸し金業者につきまして強制加入方式をとるということは非常にむずかしいことではないかという感じを私どもも持っております。ただ一方、自主規制を徹底させるという立場から申しますと、任意加入方式では限界があるということも、ただいまいろいろお述べになりましたような点から見て非常に限界があるのではないかという感じも持っておるわけでございます。
  21. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 時間もございませんのでごく簡単にお尋ねします。答弁は、次の機会もございますので、簡略でけっこうであります。  私がいまこうして御質問申し上げておりますことは、要はいうところの借り手につきまして保護してもらいたい。そのために、御高承の法案の提出について、あなたのほうから直接原案という形において国会に提出するのは容易でございません。そのようなことはよく承知をいたしておりますから、われわれ議員側におきまして、中には他党の皆さま方の中にも個人的な御賛意を賜わる動きもございますけれども、まあそれぞれ党は党なりの立場がございますから、一ぺんに承認、よしきたという御同調はとれぬわけでございますけれども、一応わが自由民主党の立場におきましては、先般来のようなああした過程をたどってここまで来たということでございます。要はやはり借り手保護してもらいたい、暴利をむさぼるこうした悪質な不正な業者から、これらの善良な第三者でございましょう、特にサラリーマンを含めました低所得者中小企業者、こういう者を絶対に保護してもらう必要があるということで、事情をよくお訴えをしておるわけでございます。  わが国に金貸しが自由職業といたしまして現に実在し、高利の取引が、いまも警察庁からお話がございますように、現在の事実としてこれは行なわれておるわけでございます。これをいまなくしますについてはいろいろな事情がございましょうけれども、やはりせんじ詰めるところ、一つの組織を与えましてみずからを規制させる必要があるのではなかろうかという気がしてなりません。そのかわりこの組織を厳重に管理、監督し、悪質金融暴力金融を追放すればいいじゃないかという勘定になるわけであります。なるほど出資の受入という法律百九十五号という法律がございまして、これで取り締まることができるのは事実であり、この法律によってある程度実効をあげることはできるでありましょうが、しかしいま何べんも申し上げましたように、成規の届け出をしている者が八万人もある、その何倍というものはもぐり業者であるということを勘案いたしますると、これはもう取り締まれるものでは絶対ございません。  また、利息制限法や出資の受入という法律ができましたときに、政府の提案者が言っておりますことを例としてあげたい。それは、これら金貸しをただ一方的になくせといってもなくなるものではなく、むしろ弾圧すれば中小弱小業者が借りられなくなり、角をためて牛を殺すようなものだと言うておるのであります。これはまあ必要悪でございましょうけれども、しかし何といたしましても、くさいものにふたをするということだけでは事態は好転しないということは厳たる事実でございますし、第一、何といたしましても中小企業者が困るのであります。この自主規制法案というものは、ちょうどたとえて言いますると、野にありますところのトラをおりの中に入れまして、食いつかないのを選んで社会に出してやる。食いついたりしたらすぐこの組織をやめさせることによって商売ができないか、少なくともやりづらいようにする。こんなふうなたとえを持ちますこれが法律だということを言っておる者がございますが、これはほんとうに間違いないと思うのであります。  要は、何べんも繰り返しますけれども、この法律案というものは金貸しのためではなくして、わが国中小企業やその他の低所得者を救うために必要なものであるということで結語としたいのであります。  こういう席上、こういうことをお尋ねしてどうかと思うのでありますけれども、親愛なる藤井委員長にお尋ねします。  あなたもこの問題については非常な御努力をいただきまして、ここまで持ってまいりました功績者でございます。こういう、か弱い者を救ってやるにはどうすればよいかという、とうといおぼしめしから出たものであろうと思うのであります。しかし、いろいろなタイミング上うまくまいりませんでした。われわれの要望どおりには事態は好転しなかったということでございますが、今後また日取りもございますから、一そう御熱意をもって御対処賜わりたいということについて、小委員長個人の御感懐をお示しいただきたいと思います。
  22. 藤井勝志

    藤井委員長 私のほうにお尋ねがございましたので、一言、お答えという意味でなく所見を述べたいと思いますが、きょうの質疑応答によって貸し金業問題点がはっきり浮き彫りにされたと思います。貴重な御意見を賜わりまして、たいへんありがたく思うわけでございまして、先般来自民党のほうで貸金業者の自主規制の助長に関する法律案が準備されたわけでありますけれども、このような、小委員会といえども正式の場においてはっきり審議が進められたのは、私の知る範囲において初めてだと思うのであります。これを機会に小委員会でも与野党をあげて、御趣旨のように金融業公共性利用者保護という観点から、現在のような野放し状態ではいかないということはだれしも御異議はないと思うのでありまして、十分慎重に審議をいたしまして、よき結論を得るように努力をいたしたい、このように思っております。
  23. 高橋清一郎

    高橋(清)小委員 ありがとうございました。     —————————————
  24. 藤井勝志

    藤井委員長 次に、拘束預金及び信用取引の現状について、それぞれ政府より説明を求めます。近藤銀行局長
  25. 近藤道生

    近藤説明員 先月十一日の当金融証券委員会におきまして、堀委員より歩積み・両建て預金に関して御要求のございました件につきまして、簡単に御報告申し上げます。  堀委員の御要求は、都銀、地銀、相銀、信金につきまして、地域的特色資金量あるいは経営力をあらわす何らかの基準による分析をするということ。第二点は、公正取引委員調査にいう広義の拘束預金について、その実情、パターンとそれに対する処理方針を述べよということでございます。  まず、四十四年十一月におきます拘束比率につきまして分析いたしました結果を申し上げます。お手元に資料をお配り申し上げてございます第一図の地域別の図でございますが、これは各金融機関別に本店所在地を東京都、大阪府及び十財務局——これは東京、大阪を除いてございます、その地区に区分いたしまして拘束比率別に行数を幅で示しております。そしてその算術平均値を求めて北から地域順に結んでみたものでございます。中には一地区一行という場合もございます。また、各地区ごとにかなりのばらつきがございまして、この表から規則性を見出す、ルールを見つけるということがなかなかむずかしいのでございます。特に、横に結びました線は、それだけからルールを引き出すということがなかなかむずかしいのでございまして、個々の縦の柱の分析のほうがあるいは実態に近いということもございますが、しいて全体を通じての特色らしいものを申し上げてみますと、都会地ほど預金の拘束比率が高いということがあるいはいえるのではないか。ただし、都会地の一口当たりの貸し出しが地方に比べてはるかに大口であるというような場合、この表で申しますとたとえば相互銀行のような場合でございます、そういう場合にはこの原則が通用しないということがいえようかと存じます。  それから第二図の資金量別の表でございます。四十四年十一月末における一般預金で五十億、百億、二百億、五百億、千億、十段階に分類いたしまして、地域別と同様の方法によって分析をいたしております。ここでルールのごときものというのが、金融機関資金量別の変化というのがほとんどないということ、資金量による違いよりは、むしろこの縦の柱で分析をいたしてみました結果は、一口当たりの貸し出し金額の大小がかなり響いてくるのではなかろうか、そして小口の場合ほど拘束比率が高いといえるのではなかろうかというような大まかな感じを持っております。それから都市銀行につきましては、その表では一兆円以下の銀行の拘束比率が低くなっておりますが、これは規模の差というよりも、これらの銀行では地方支店が多い。そこで先ほど申し上げました都会地と地方との差、つまり地方のほうが拘束比率が低いということからきておるのではないかと存ずるわけでございます。  それから第三図にまいりまして、経営内容をあらわすものといたしまして、一応経常収支率、四十四年下期の分をとりまして、これを十段階に分類し、地域別と同様の方法によって分析をいたしております。傾向としてわかりますことは、都市銀行は拘束比率は低いが経常収支率は総対的によくないということ、それから地方銀行は拘束比率は低いが経常収支率は良好であるということ、それから相互銀行は拘束比率が高いが経常収支率はよくないということ、それから信用金庫は拘束比率も高いが経常収支率も良好であるということでございます。  次に、公正取引委員会の拘束預金実態調査でいわれております広義の拘束預金について、その実情とこれに対する考え方を申し上げます。  広義の拘束預金とは、公正取引委員会の狭義の拘束預金、すなわち借り入れまたは手形割引に関連して質権の設定、預金証書の差し入れ、念書、口約束などによって拘束されている預金、これは大蔵省調査の拘束性預金と同じでございますが、この狭義の拘束預金に、中小業者が事実上引き出せない預金としているものを加えたものでございます。  その実態につきましては、公正取引委員会が最近の新しい傾向の中で具体的に幾つかのパターンを示しておりますが、まとめてみますと、基本的には二つに分類されようかと考えております。一つは、債務者ごとに預金歩どまりの一般的な向上を金融機関が強力に勧奨するというやり方、それからもう一つは、債務者預金を払い戻す段階で金融機関がその払い戻し額をできるだけ少なくするように勧奨するというやり方、基本的にはその二つがあろうかと存じます。  この慣行は、金融機関の側から申しますと、業務上行なっている通常の経営努力に基因する場合もございましょうし、また一面、債務者経営内容の向上を目的とする場合もあろうかとは存じますが、それ以外のものにつきましては是正方を強力に指導していく必要があるものと思われます。もっとも、この事実上引き出せない預金の中には、債務者が取引上の不安感から一方的に引き出せないと思い込んでいるものもあるいはあろうかと思われ、これを金融機関が実質的に拘束しているものときめつけるわけにもいかない場合があろうかと考えられます。  いずれにいたしましても、これらの慣行を正常な形に戻しますためには幾つかの方策が考えられるわけでございますが、基本的には、第一に金融機関の過当な業容拡大意欲を抑制するための施策、先般来の効率化行政の推進というようなことも、基本的には量の競争から質の競争へという面でこの方向を推進しようというものでございますが、そういうようなことを考えること。それから第二に、債務者が泣き寝入りをしないで済むような環境を次第に整備してまいるということ。それから第三に、公正取引委員会との連絡を密にして、あるいはまた銀行局内におきましての検査と行政との連携を密にいたしまして、強力な指導を行なってまいるということ。それから第四に、拘束の有無の通知を金融機関に一そう励行させるということ。こういったような対策が必要であろうかと存じます。  わが国資金需給の態勢が、なお相当期間にわたって資金需要のほうが強いという傾向が続くかと思われますので、歩積み・両建て問題の抜本的解決はなおきわめて困難な情勢が続くかと思いますが、以上の諸対策の実行を軸といたしまして、今後とも格段の努力を続けてまいりたいと考えております。
  26. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 それでは証券取引におきます信用取引制度の概要について申し上げます。  信用取引と申しますのは、証券会社が顧客から委託保証金の預託を受けまして、株を買い付けようとする顧客についてはその買い付け代金を貸し付ける。また株式を売ろうとする顧客に対しましてはその売り付けの株式を貸し付けるということを通じまして行なう取引をいうのでございまして、証券取引法第四十九条にその根拠規定と申しますか、それに関する規定がございます。そのほか、大蔵省令、あるいは取引所及び証券金融会社の諸規則というものに基礎を置いております。この制度は、昭和二十六年六月以降、アメリカのいわゆる証拠金取引制度というものに範をとりまして採用された制度でございます。  それで、信用取引の機能でございますが、売り付ける株式あるいは買い付け代金を現実に所有しないで、信用関係を利用して行なう株式の売り付けまたは買い付けというものはいわゆる仮需給といわれております。これに対しまして、現実に手持ちをしております株式を売り付け、あるいは手持ちの資金で株式を買い付けるというのがいわゆる実需給でございます。流通市場におきましては、実需給の投合というものがその中心をなすべきものでございますけれども、それだけではその供給量がおのずから限られまして、金融情勢の変化等に伴い、売りまたは買いのいずれかに偏しやすいということで、流通の円滑が期せられない点がございます。このために、仮需給の入らない市場では、価格の継続性と安定性という面におきましてこれを維持することは困難でございますので、この円滑な流通と公正な株価形成を期するためには、ある程度の量の仮需給を導入しまして実需給の不均衡を調整し、市場に適度の深度を与えまして、市場機能を高めることが必要となってまいります。信用取引制度は、証券市場に仮需給を導入するために設けられた制度でございます。  そこで、その内容でございますが、まず信用取引と取引所における取引との関係について申しますと、顧客から信用取引の委託を受けました証券会社は、取引所市場におきましては普通取引として執行することになりますので、売買約定日から起算して四日目に受け渡し決済を行なわなければならないのであります。戦前の清算取引は、市場で売買を行ないました会員の相互がお互いに信用を供与し合いまして取引所における受け渡し決済そのものを延期するという取引でありましたために、証券会社と顧客との間には信用供与という関係は生じなかったのでありますが、信用取引は、証券会社の顧客に対する受け渡し決済は貸借関係として繰り延べられますけれども、取引所における実際の受け渡し決済につきましては、実物取引として現金、現物の授受が行なわれるという点が基本的に戦前の清算取引と異なる点でございます。したがいまして、証券会社としましては、決済の代金、受け渡し株券を自己の所有分でまかなえない分につきましては、金融機関から借り受けあるいは証券金融会社から調達するという必要が生じてまいります。この面におきまして、信用取引は第三者による金融コントロールのきく制度である、こういうふうにいわれているのでございます。  そこで、その信用取引制度の仕組みでございますが、まず、顧客が信用取引制度を利用するためには、まず証券会社に信用・取引口座設定約諾書というものを差し入れまして、信用取引による旨を明示して委託しなければなりません。買い付けまたは売り付けが成立しますと、顧客は売買約定日から三日以内に所定の委託保証金を証券会社に差し入れなければなりません。この委託保証金は、法令によりまして、現在約定価格の三割に当たる金額、最低十五万円となっております。ただし、有価証券をもって代用することができるのであります。そうして、この場合の有価証券にはいわゆる担保掛け目というものがございますので、たとえば百円の株式を売買するについて株券で代用しますときは四十三円の時価の株券が必要となる、こういうわけでございます。この保証金制度は、顧客に対する信用供与に伴って生ずる証券会社の危険負担を担保いたしますと同時に、大蔵大臣が、証券市場動向等に即応しまして、保証金の率あるいは担保掛け目を操作することによりまして、信用取引の抑制あるいは緩和を可能にするという機能も持っておるのでございます。  そこで、信用取引の委託を受けました証券会社は、その売買を取引所市場で執行しまして、約定日から四日目の決済日に、顧客の買い付け委託の場合は顧客に対して買い付け代金を貸し付けます。そうして取引所から受け入れた買い付けの株式を貸し付けの担保として手元に留置いたします。また売り付けの委託の場合には、顧客に売り付けの株式を貸し付けまして、取引所から受け入れた売却代金は貸し付けの担保として手元に留置するということになるのであります。このように、証券会社と顧客との間に貸借関係が発生いたしますけれども、顧客は約定日から六カ月目以内にこの返済を行なわなければならないのであります。  次に、信用取引による買い付けの場合には、顧客は買い付け代金の借り入れにつきまして、取引所のきめる率の金利を支払わなければなりません。現在年利九・五%の利率となっております。これに対しまして、信用取引による売り付けの場合には、顧客は売り付け株式を借りておりますけれども、他方、証券会社は売り付け代金を担保として徴求いたしまして、それを信用取引により買い付けを行なう顧客に貸し付けますので、証券会社は売り付け顧客に対しまして取引所のきめる金利、現在年利五%でございますが、これを支払う、いわゆる売り方日歩というようなものを払うことになっております。  信用取引は、通常の場合、売りよりも買いのほうが多いので、資金が不足するためにこのようになるのでございますけれども、逆に売りが買いよりも多くなった場合には株不足が生じまして、証券会社または証券金融会社はほかから株式を調達してこなければならない、こういうことになるのであります。  次に、信用取引の決済でございますが、決済方法としまして顧客が保有しておりますかあるいは他から調達しました資金あるいは株式をもって融資または借り株を返済するという方法、いわゆる現引きとか現渡しという方法、あるいはいわゆる反対売買によりまして決済する方法、つまり信用取引による買い付けにつきましては、証券会社に担保として預託しております株式をもって他に売り付けまして、いわゆる転売でございますが、その売り付け代金と借り入れ金とを相殺いたしまして決済する、また信用取引による売り付けにつきましては、担保として預託してあります代金をもって同銘柄の株式を他から買い付ける、買い戻しまして、それを証券会社に返済するという二つの方法がございますけれども、実際は前者の現引き、現渡しよりも、反対売買によりまして決済する場合がはるかに多いということでございます。  次に、信用取引の規制でございますが、信用取引は投機取引として利用されることがございますので、とかく過当投機におちいりがちでございますが、これを抑制する手段としましては次のようなものがあるのであります。  第一は、取引所の自主規制でありまして、一部の銘柄について委託保証金を増す、ないしはその一部を現金をもって徴求するという、いわゆる銘柄別の規制。次に信用取引並びに会員の自己計算に基づく信用売り及び信用買いを制限し、または禁止するということ。次には、すべての銘柄につきまして委託保証金を引き上げる、いわゆる全面規制ということでございます。  なお、大蔵省令による規制といたしましては、委託保証金率を引き上げる、あるいは担保掛け目を引き下げるというような規制もございます。なお、証券金融会社におきましては、会員別に融資ワクを設けておりまして、これを超過した部分につきましては増し担保をとっておりますが、残高が異常に膨張しました場合にはこの徴求率を強化する、あるいは金利を引き上げるという等の措置もとり得ることとしております。  次に、以上のようなわが国の信用取引制度とアメリカの証拠金取引制度との相違でございますが、若干の相違がございます。  まず証拠金率の相違でございまして、アメリカにおきましては連邦準備制度理事会が、証券業者が顧客に供与し得る信用の率を定めるのでありまして、この率は現在三五%でございます。証拠金率はしたがいまして信用供与率の逆数、つまり六五%となっておるのに対しまして、わが国におきましては信用供与の率ではなくて委託保証金の率ということで、これを三割ときめております。また保証金代用の有価証券の担保の掛け目も、株式の場合は通常七〇%となっているということでございまして、アメリカにおきましては大恐慌の経験などにかんがみまして、証拠金の率及び担保掛け目は日本の場合に比しましてかなりきびしくいたしております。  次に弁済期限の相違でございまして、アメリカの証拠金取引におきましては特に弁済期限は設けられておりません。いわゆる万年取引といわれるものでございますが、もっとも実際におきましては売買約定日から六カ月以内に約三分の二程度、六五%程度が弁済されておるようでございます。わが国の信用取引は昭和四十二年の八月以降、従来の弁済期限三カ月というものが六カ月に延長されて今日に至っておりまして、実際を見ますと、売買約定日から一カ月以内に約七〇%が弁済されておるというふうに、非常に短期に回転しておるという状態でございます。  次に信用供与額の相違でございまして、アメリカの証拠金取引におきましては、買い付けに際しまして現金証拠金が差し入れられましたときには、買い付けの総費用からその証拠金を差し引いた残高が顧客への信用供与額になるのでございます。したがいまして、金利もその残高たる信用供与額につけられます。これに対しまして、わが国におきましては、たとえ現金の証拠金が差し入れられましても、これは担保として扱われておりますために、買い付け代金の全額が信用供与額となりまして、金利もその額につけられるという点が違っているのであります。  次に資金の供与機関の相違でございまして、アメリカでは、証券会社が証拠金取引のために必要な資金を外部から調達する場合には、それぞれが自己の資力と信用とに基づきまして、普通の株券担保金融として、主として市中銀行から市中金利による借り入れ、いわゆるブローカーズ・ローンということでございますが、わが国におきましては専門の機関として証券金融会社が設立されまして、資金相当部分をこれからまかなっておるという状態でございます。  次に規制権限者というものの相違でありますが、アメリカの信用規制につきましては、金融市場全体との関連におきまして証券市場における過度の信用利用の防止を主たる目的としておりますので、連邦準備制度理事会が規則、TUGというものを制定して規制に当たっております。これに対しましてわが国におきましては、必ずしもアメリカにおけるように証券市場金融市場との結びつきが密接ではございませんで、信用供与率の引き上げ、引き下げによって短期資金証券市場への流入を調節するような環境にはございませんで、むしろ証券金融会社を設けて、いわゆる制度金融に依存せざるを得ないといったような金融状況でございます。このために、委託保証金の預託の趣旨も、過当投機の抑制と損害の担保という面にございますので、大蔵大臣が規制の権限者となっておるというような状態でございます。  以上、簡単でございますが、証券取引の信用取引制度の概要を申し述べました。     —————————————
  27. 藤井勝志

    藤井委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  28. 堀昌雄

    ○堀小委員 いま銀行局長の御説明がありましたきょう御提出をいただいた資料でありますけれども、実はこの資料を拝見しておりますと、この三つの資料はいずれもいろいろと問題を含んでおるという感じが第一にいたします。  そこで、最初の資料で見てまいりますと、信用金庫の場合に大きな山がありますのは三つであります。東京と大阪と、少し下がって北九州というのが信用金庫の場合の地域的なピークになっております。次に相互銀行と地方銀行につきましては、ピークが東北地方と近畿と、そして北九州、こういうふうになっておるわけでありまして、この関係をずっとそれなりに考えてみますと、東京、大阪あるいは北九州で信用金庫のピークが高いのは、どうもやはりこの地域における資金需要が非常に高いということだろうと思いますし、北九州もやはりそういう条件に合致しているのではないだろうか。相互銀行と地方銀行の場合には、信用金庫は東北地方は全体の中では非常に低いほうでありますけれども、どういうわけか東北地方で一つの山ができておる。近畿地方でまた一つの山がある。こういうふうになっておりまして、この二つはやはり信用金庫とは全然パターンが違う形を示していますけれども、相互銀行と地方銀行はややこの点では共通な形が出ておるようであります。ただ、地方銀行相互銀行の違いは、相互銀行の場合には実は北九州が低くて南九州のほうが高い。地方銀行のほうは北九州が高くて南九州が低い。ここらはどういうことか、ちょっと私も判断がよくできないわけでありますけれども、総体的に見て感じられることは、資金需要の高いところにどうも拘束率が高いということが地域別の問題としては実は考えられるように思います。  実は、いまの地域性の問題に関連をするわけでありますけれども、この金融機関の中で、一体地域的なところで、さっきお話のありましたように貸し出しの形はどうだろうか。一件当たりの貸し出し量がこういう資金需要の高いところで非常に小さくなるというために、大きい貸し出しならば担保をとるということが適切でありましょうけれども、比較的少額の借り入れとなると、担保をとるよりは両建てのような形で処理をしたほうが双方便宜であるという問題もあるいはあるのかもわからない、こういう感じがするわけであります。そこで、まず地域別の問題の中でひとつ考えていただきたいことは、そういう特に高い地域での問題点というのは、ただこの地域の問題を今度ははずして、高い地域における信用金庫なり相互銀行というものの中身の分析を少ししてみたらどうだろうか、こういう感じがするわけであります。分析方法あとでまとめて少し申し上げたいと思います。  その次に、今度は資金量の問題でありますけれども、資料によりますと、信用金庫は資金量が増加するに伴って拘束率が高くなるという一つ傾向があります。そして相互銀行の場合は資金量がふえるにつれて顕著に下がってくるということになっておるようです。地方銀行はほぼ横ばいであります。都市銀行についてはさっきお触れになりましたが、確かに一兆円以上の都市銀行のほうが高くて一兆円以下が低いのは、これらの低位の銀行がどちらかというとやや地方的な店舗配分があるということが、さっき触れた資金需要との関係でおそらくそういう姿になっているのだろうという説明がありましたが、私もその点はさようであろうと思いますけれども、相互銀行のほうは資金量がふえるにつれて一直線に下がってきておるのに、信用金庫のほうは逆に、どちらかというと資金量がふえるにつれてだんだんと上がっていく。この資金量がふえるということがやはりさっきの地域性にも関係があるのですが、資金量の多い信用金庫というのはおそらくやや都市部といいますか、そういうところの信用金庫が多いので、その結果こういう形になっておるのだろうという感じもするわけであります。  特によくわからないのは、相互銀行資金量が多いのは当然都市部であります。都市部であるのに、相互銀行の場合は資金量の増大とともに拘束率が減ってきておるというのは一体何が原因であるかという点はもう少し分析を進めていただく必要のあることではないだろうか。地方銀行はその点は資金量においても非常に横ばい的である。要するに、地方銀行というものの性格が、資金量であるとかあるいは地域性であるとか、あるいはあとで出てまいりますところの経常収支率、あらゆる面で見て非常に安定的であるというか、いろいろな外的要因にあまり影響されない、非常にステディな条件にあるという感じがするわけであります。その点で特に相互銀行は非常に特異なカーブが出ております。これについて少し分析してもらったら何らかのものが出てくるのではないか、こういう感じがします。  最後の経常収支率と拘束との関係は、全体として見ますとあまり特別な関係がないような感じがいたします。しかし、このことは拘束預金の問題としては非常に意味があるのではないか。要するに、経常収支率がよくないところは本来ならば実は利益をあげたい。利益をたくさんあげたいということになれば、両建てをすることはそれだけ当然利益がふえることでありますから、そういう意味ではどちらかというと経常収支率の悪いところに拘束率が高くて、経常収支率のいいところは拘束率が低くていいと思うのでありますけれども、この点についてはカーブがそういう傾向をやや示しておりますけれどもそれほど顕著でないということは、収益性という問題が拘束預金の問題にあまりストレートに結びついていないのではないだろうかという感じを私はこの資料から実は受け取っているわけであります。  そこで、きょうは時間がありませんから、私のほうからこれらについて問題点を少し申し上げて、さらに分析をしていただいて、次の委員会でそれらの御報告をいただきながらさらに論議を進めてまいりたい、こんなふうに思うのであります。  それは、現在考えられる拘束預金の動機、なぜこういうふうに拘束預金金融機関がやるのかという動機を少し列挙してもらいたいと思います。私なりの感じでは、まず各支店単位で預金増大したい、これはいまの金融機関の至上命令であります。預金増大したいという上からの要望、たとえば何十周年記念だと、幾ら幾らまでを目標に預金をひとつふやそうというようなことがよく行なわれておるようでありますが、そういう一つのノルマのようなことを課して預金をふやしていくということになると、これは当然両建てをふやすことが最も安易な預金量の増大につながる、こういう感じがいたしますが、しかしそのことは実質的には実は預金拡大にはなっていないわけであります。結局両建てになった部分というものはゼロでありますから、それをふやしてみたところでこれはドレスをしているのにすぎないということになるのではないだろうかと、実は私は感じておるわけであります。  その次に、担保の問題でありますけれども、ちょっとこれを調べていただきたいのは、この信用後の問題としては確かに両建てにしないと不安があるという問題のあるものもありましょう。ところが担保がとれるもの、そしてとれないものがあると思いますが、同時に現在信用保証の制度があるわけでありますから、拘束預金をしておるものについての担保の状態——これはどこかの特定の金融機関というものをひとつ調べていただかないと一般論ではなかなかむずかしいですから、たとえば現在拘束率の高い金融機関というものを一つ設定をしてもらって、それは適当にアット・ランダム・サンプルで少し抜いてもらえばいい、その中で拘束預金をしておる場合は担保は一体どういう形になっておるか。というのは、金額によって担保が違ってくるでしょうから、貸し出し金のランクを設けている中で、ここからここまでは担保が出てくる、ここからここまでは両建てが出てくるということになってくるのではないかと思います。その際に、信用保証協会の信用保証をつけておる問題というのは、この拘束預金との関係は一体どういう関係になっておるか。実は両建てにして担保をとるよりも、信用保証協会の保証をとったほうが私は実質的だという感じがするわけでありますから、そういう点で、信用後の問題としての担保、それから両建て、信用保証という形が、貸し出し金額等を含めての関連では一体どういうことになっておるかということを少し分析していただくと、これは担保を動機としておるのだという場合の一つの解明として出てくるのではないだろうか。  それから、さっき申し上げた収益性についてはあまり問題がないようでありますが、もしここで必要があるならば、両建てにしないで、貸し出し金利を上げるように指導をすればいいのではないか。これは何も両建てにすることによって、複雑な手数をかけて収益をあげる必要はないということ、当然実質金利を上げてそれをカバーしてもいいのではないか、こんなふうに考えるわけであります。  これ以外にもあると思いますが、現在考えられる拘束預金の動機について、少しこの問題を列挙していただいて、現在のこういうものの中の分析を少し考えていただきたい、このように思います。  そこでもう一つの問題として申し上げておきたいのは、今度はある一つ金融機関、拘束比率がたとえば三〇%ある金融機関、ところが三〇%ある金融機関といえども、その支店における拘束率というのは当然ばらつきがある。そこで今度はその支店におけるばらつきを分布の形で一ぺんつかんでいただいて、そこでそういうばらつきがその一つ金融機関の中で起きる理由は一体何だろうか。それは支店長のビヘービアに基づいて起きるのであるか、いまのような地域的な条件がそれに非常に加味しておるのか。ある金融機関とすれば当然、私どもが当委員会でこういうふうに拘束預金の問題を取り上げておりますから、金融機関幹部はある一つ方向を考えておるかもしれませんけれども、しかし、下のほう、支店間にはかなりの幅があるんじゃないか、こういう感じがいたしますので、ひとつその点について、拘束預金率の高い信用金庫なり相互銀行なり——地方銀行はあまり高くないが、そういうところで特に高いところの分析をそういう形でしていただければ、多少何らか私どもの感じる点があるのではないかと思います。  さらに、さっきの問題の中で、融資期間の問題が一つやはり関係があるんではないだろうか。ですから、長期の融資ならば担保をとるけれども、やや短期の融資の場合には金額にかかわらず両建てで処理をするという問題もあるのではないだろうかというような感じもいたしますので、その点の、融資期間といまの拘束担保の関係というものは一体どんなふうになるか。これもある特定の金融機関で見る以外には見ようがないと思いますけれども、こういうような分析を重ねていただいて、結論的に何を求めているかといえば、一体こういうことをする一番大きなモメントは何だろうかということをかなり承知をすれば、今度はそれに対する対策ということを考えることによって、言うなれば歩積み・両建ての第三ラウンドというものをより合理的に進めることができるのではないだろうか。もうここまで来ますと、単に機械的に比率を下げろというだけでは、私はやはりなかなかむずかしい問題を含んでおるのではないかという感じがいたしますので、これらについて、ちょっと時間がかかるかもわかりませんが、ひとつ分析を進めていただきたい。その分析がそろいましたところで一ぺん、私どもは小委員長にお願いをして、関係金融業界の代表にここへお越しをいただいて、われわれが当委員会で論議をし、大蔵省の分析の結果は、大体こういうことがどうも歩積み・両建てのモメントになっておるのじゃないだろうか、それについてはひとつ業界の側としてはどういうふうにこれを理解され、どういう対策を立てられるかというような問題を、十分今度は現場の皆さんから話を聞けば、それなりにまた実際に適した方策を考えていくことができるんではないか、かように思いますので、ちょっときょうは時間がありませんから、質問の形態でなく、私のほうから主として要望の形で問題を申し上げて、ひとつ検討を進めていただきたい。それについてひとつ……。
  29. 近藤道生

    近藤説明員 この段階にまいりますと、一律に数字を下げるということよりも、モメントの分析ということで問題の核心に迫ることが必要であるというお示しでございますが、私も全く同様だと痛感いたしております。したがいまして、ただいま一々問題点を御指摘いただいたわけでございますが、その方向に沿いまして鋭意分析に努力いたし、いずれ御報告申し上げたい、このように存じます。
  30. 堀昌雄

    ○堀小委員 証券関係について少し申し上げておきたいと思います。  これはおそらくいま伺ってもすぐいまお答えがいただけるかどうかちょっとわかりませんけれども、アメリカと日本の場合の、どこか時点を限っていただいて、最近の時点で、全体の取引に占める実需給と仮需給のウエートというものは一体どのくらいになっておるだろうか。いまお答えがいただければお答えいただいてけっこうですが、どうでしょう。
  31. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 正確にはまた別の機会に申し上げますが、大体の感じを申し上げますと、日本の場合は三〇%前後と申し上げたいのですが、まあこれを上回る場合が多うございまして、三五%前後と申したほうがいいかもわかりません。場合によりましては四割をこす、激しいときには五割近くということもございますが、大体ノーマルな形をとりますと三割前後から、むしろ三割五分前後といったところだと思います。アメリカの場合はそれほどはいっておりません。二割前後と申し上げたほうがいいのではないかと思っております。
  32. 堀昌雄

    ○堀小委員 全体をながめて感じられますことは、大体アメリカは本来現物取引が主体になっておるところに証拠金取引というものが加えられておるわけですから、全体として見て証拠金取引そのものも非常に長期にわたっておる。言うなればアメリカ市場というものは回転率が日本に比べてかなり低いのじゃなかろうか、こう思います。私も最近ちょっと証券問題に直接触れる機会が少なかったものですから、最近のデータを承知していないのですが、そこで、アメリカと日本の回転率は最近は大体どんなところにありますでしょうか。
  33. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 アメリカの場合は回転率一五%から二〇%、日本の場合は四〇%から四五%ということでございます。
  34. 堀昌雄

    ○堀小委員 大体いまのお話で、かなり日本のほうが回転率が高い。そこで結局こういう状態はどこに原因があるかといいますと、私はやはり日本ではかつて清算取引という制度が土台をなしていた。アメリカは現物取引。その清算取引というものに対する郷愁といいますか、全体の雰囲気が依然として、どうもそこに問題が残っているのではないだろうか。ですから実際には信用取引のサイトの問題になりますと、アメリカの場合は大体期限が無期限のようでありまして、六カ月ぐらいの処理で六五%だということに対して、日本の場合は、六カ月期限でありますけれども一カ月で大体七〇%ぐらいが手じまいになる。ということは、ここらにも、一カ月ということは、それは差金決済ではありませんけれども、どうも非常に短いということのほうに比重がかかっておるような感じで、七〇%の中身も私伺っていませんけれども、おそらく短いほうに比重があって、一カ月目にくるに従って少しずつこれはダウンしているのではないかと思うのですが、そこらはどうでしょうか。
  35. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 お説のようにわが国の場合は非常に短期の取引になっておりまして、これは御指摘のように昔の清算取引の、一カ月以内の当限というのですか、それの影響的なものも尾を引いているような気もいたします。あるいは信用取引に参加している人たちの資力その他から見まして短期取引に走るというような傾向もあるかもしれません。また、考えてみますと、わが国市場全体が、株式資本が企業の資本構成として非常に少ないわけでございまして、しかもいわゆる浮動株の割合も低いわけでして、そういうようなところから株価が比較的動きやすい、変動しやすいというようなことがございます。そこに短期的な取引を試みようというような契機もあるかとも思いますが、さようなことで短くなっております。一カ月以内に七〇%ということでございますが、その状態市場の価格動向によっていろいろ動くわけでございまして、短いときには十日から二週間といったような期日といいますか、期限といいますか、それで決済されることもありますし、少し市場が落ちつくといいますか、沈滞するといいますか、そういう状態のときでも二十四、五日前後、二十七、八日くらいといったようなことの動きを示しておりまして、むしろ一般論といたしましては二週間程度から三週間程度までというようないわゆる回転日数になっているという実例のほうが多いんじゃないかと思います。
  36. 堀昌雄

    ○堀小委員 そこで、確かに私はベースの違いがあると思うのですが、いま証券局長が最初にお話しになった中で非常に重要な問題が一つあるのは、最初の保証金のあり方と担保掛け目のあり方が、アメリカと日本では沿革が違いますからこれを直ちに機械的に比較することはいかがかと思いますけれども、実はたいへんな差があるような気がいたします。さっきちょっとおっしゃったと思うのですが、株式をもって証拠金にかえる場合には、百円の信用を受けるために四十三円の評価の株を提供すればよい。これがアメリカだったら、いまのこの率からいったら、百円の株を買うために株で証拠金を入れたら一体幾らくらいになりますでしょうか。
  37. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 百八十五円の時価の株券を要すると思います。
  38. 堀昌雄

    ○堀小委員 その最初のところが、さっきのお話で日本は現金の場合三〇%、向こうなら六五%と、これも倍以上の差があるわけですが、いまの問題、株をもって処理をするとなると四倍くらいの差があるわけですね。これはやはり日本の信用取引の制度が少し安易に過ぎるのではないだろうか。これが高くなるにつれてだんだんアメリカ型の方向にならざるを得ない要素が出てくるのではないだろうか、私はやはりこういう感じがします。もちろん、それをいますぐ高くしろということを求めるわけではありませんけれども、結局、回転率がほんとうに高いほうがいいのか低いほうがいいのかということになると、回転率が高いということはフラクチュエーションが大きいということにつながる。回転率が低いということはやはりこのカーブがなだらかになる。カーブがなだらかになればなるほどほんとうの意味の投資が行ないやすくなってきて、フラクチュエーションが大きいということはやはりスペキュレーションにはたいへん好都合だということになってくるのではないだろうか。ですから、基本的な問題の考え方として、私は信用取引の制度があることは必要だと思いますヘッジをする点でも必要だと思いますが、それがやはりヘッジのために行なわれるという本来の目的、あるいはたてまえとしての株価の連続性なり、そういういろいろな本来のたてまえと実際の動機とが、ややどうも少し乖離しているのではないか、こういうような感じがいたすのです。ですからここらの問題について、信用取引問題というのは単に信用取引の問題ではなくて、日本における流通市場のあるべき姿を今後考えていく際に、少し信用取引の制度を含めて考えていかないといけないのじゃないだろうか、私はこういう感じがいたします。ですからそこらについて、きょうは時間がありませんから御答弁はけっこうですが、ひとついまの日本とアメリカの制度というものをにらみ合わせながら、あるべき流通市場、それは一般の投資家が安心して投資に参加できる市場——なだらかに問題が動いておれば比較的一般の投資家も判断がしやすいわけですが、こうしょっちゅうフラクチュエーションがあったのではこれはあぶなくて手が出せない。要するにくろうとまかせで、くろうと、半くろうとの市場になる。本来の流通市場というのはそういうものではないはずであります。流通市場が全体として拡大されて、より多くの投資家が証券を保有するということのほうが本来の目的であるとすれば、やはりアメリカのようなゆるやかなカーブのほうが、どうも本来のあるべき流通市場としては望ましいのではないか、私はこんなふうに感じますので、そこらを含めて少し検討してみていただきたいというふうに思います。  私、この資料を見ながらちょっと気がついた点でありますが、日本では三〇%の現金を証拠金として入れる。これは担保になっているからこれについては実は金利はつかない。そうして総額に対して金利を払うということは、実はこの部分ちょっと両建てになっている感じがするのですね。それではその入った三〇%は証券会社はどういうふうに考えているかというと、これは担保だというけれども実質的にはこれを使っているわけですからね。要するに証券会社は、言うなればそれだけ眠り口銭が取れるということになっているのではないかと思うのですがね。この部分は証券局どうでしょうか。アメリカはその点きわめて合理的に、現金で入った場合にはその部分を除いた分だけで金利を取りますよ。当然だと思うのです。ところが日本の場合はこれは担保だから金利はつけません。そうして全体としての信用供与部分で金利を取ります。ちょっと話がうま過ぎるような気がいたしますが、その点はどうでしょうか。
  39. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 私もそのように感じます。
  40. 堀昌雄

    ○堀小委員 ここらも少し検討の余地があるような気がいたします。  大体以上でありますが、私、銀行局に一つだけ申し落とした点がありますからちょっと申しておきますが、この間、私はある金融機関の方とお話をしておりましたときに、実は今度定期預金金利が上がったために、定期預金担保の金利処置の場合に、これが無ざやになりましたということのようですね。私はそのこと自身は、本来のたてまえからいたしますと、定期預金があったものを担保にしておるのですから、そこで利子を取らなくてもよいのではないか、こういうふうに理論的には感じております。ところがそこで聞きました話では、たいへん金融機関の側に問題があると私は思うのですけれども、たとえば一千万円の定期預金をします。一年物の定期預金です。こういって預けて、三カ月たったら、今度はひとつ定期預金担保で金を貸せ、こういう形で無ざやで金を持っていくということになると、金利はなるほど一年後に五・七五払うのですが、実際はその三カ月の分が五・七五になってしまって、あとは要するにもう定期預金を解消したのと同じことになるのですね。なるほどいろいろなことが起こるものだなと私は思っているのですが、それではちょっと定期預金という性格と定期預金担保の貸し出しという関係とで、何だか確かにこれまたロジカルでない問題が生じておるなという気が私もいたしたのです。定期預金があるのだから解約はしないけれども、それを担保に金を貸せといわれれば、金融機関側として断われないということではあると思うのですが、これらについてきょうは御返事をいただく必要はありません。一ぺん少し考えてみていただきたい。理論的には、私は前段申し上げたように無ざやであってちっともおかしくないと思うのですが、運用のしかたで、定期預金金利というものが一年、六カ月、三カ月ときめておることがあまり意味がないなということになってくるのでは、これまたちょっと問題もあるかなという気もいたしますので、今度はそういう別の角度を含めて一ぺんちょっと検討してみていただいて、次回の委員会でひとつお答えをいただきたい、かように思います。  以上、きょうは私の質問、これで終わります。証券局のほうではひとついま私が申しましたいろいろな問題点について少し御検討を願って、こまかい処置のことは要りませんけれども、今後のあるべき流通市場に対してどういう形でアプローチをすべきかという点についての見解を、信用取引の制度、あるいはきょう資料として出していただいておりますところの売買手数料の関係もあると思いますし、いろいろな問題が関係があると思いますが、そこらを含めて一ぺん御検討いただいて、ひとつ考え方を次回にでも示していただきたい、かように思います。  私の質問は終わります。
  41. 近藤道生

    近藤説明員 ただいまの無ざやにすべきかどうかという問題につきましては、ただいま御指摘のような問題点もございますので、ちょうどおっしゃるような方向で目下検討中でございます。たぶんそのような結論になろうかと思います。
  42. 藤井勝志

    藤井委員長 平林剛君。
  43. 平林剛

    ○平林小委員 きょうは金融証券の小委員会でありますから、時間もありませんので、きょうお尋ねをできなかった点はあとで資料や、直接御説明を承ることにいたしまして、少しく保険行政の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。保険行政の問題もいろいろ幅が広いのでありまして、私もこれはほんとうはもう少し時間をとりまして、全般についての検討を必要としておる段階が来ておると思うのでありますから、いずれ小委員長とも相談をして、じっくり時間をかげてこの問題につきましての検討をさせてもらいたいと思っておるわけでありますけれども、きょうは少し焦点をしぼりまして、最近の保険行政のうち自動車に関する問題、これを取り上げてみたいと思っておるわけであります。  御承知のように交通事故が激増いたしまして、いまや交通戦争と呼ばれるような時代に入っておるわけであります。そのはね返りといいますか、これを反映いたしまして、最近損害保険会社の保険収支がきわめて悪化をいたしておる、こういうことで、保険料率の引き上げが実施をされたことは御承知のとおりであります。もっとも、保険といいましてもいろいろ対象がございまして、対人賠償は全国で八九%の引き上げ、ハイヤー、タクシーなどが、これは専門的になるかもしれませんけれども、A、B、C地域、都会などにおきましては実に一五〇%引き上げられたわけであります。対物賠償のほうにおきましても、全国平均でおおよそ五九%、かなり大幅の引き上げが行なわれました。そこで私はきょうは、このように保険料率の引き上げをせざるを得ない背景にある交通事故の激増によって、損害保険会社の保険収支はどういうふうに悪化をしておるか。冒頭申し上げましたように、その保険収支はきわめて悪化しておるという実情は大体わかるのでありますけれども、その保険収支がどういう実情であるか、こういう問題を概括的にまず御説明をいただきたい。
  44. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  ただいま自動車保険の収支はどのようになっておるか、こういうことでございますが、これを私どもが昭和四十四年度の契約ベ−ス、すなわち四十四年度中に契約をしたものについて事故が起こった場合にどれくらいの保険金を支払わなければならぬかという考え方に立って申し上げます。  御承知のように、自動車の対人賠償保険というものはその保険金支払いが単年度に終わるのではなくして、事故の態様によりますけれども、これまでの実績によりますと、その完結には大体五、六年かかっております。そこで、四十四年度から五、六年間に支払うべき保険金額というようなものを推定いたしますと、対人賠償につきましては収入純保険料に対して約二・一五倍の保険金を支払わなければならぬ。約二倍の支払いとなっております。  それからまた対物賠償、これは御承知のように他人の車とか他人の財産を損壊せしめた場合に支払う保険でございますが、これには免責つきと免責なしという二つの種類がございます。一定金額以下の事故の場合には、保険会社は保険金を払わないで加害者みずからポケットマネーから払っていただきたいというのが免責つき、免責なしというのは、事故が起こった場合に全部を保険会社が支払う、こういうものでございます。その免責つきのほうは収入純保険料に対して約三割増の保険金額を支払わなければならぬ、このようなことになっております。それからまた免責なしのほうは収入純保険料に対して八割増の保険金を支払わなければならぬようになっております。  それから第三番目には、車両保険と申しまして、自分の車を自分がこわした場合の保険金をもらう仕組み、この損害率は一・三倍、すなわち収入純保険料に対して約三割増の保険金を払わなければならぬ。  この三つを合計平均いたしますと、収入純保険料に対して支払い保険金の割合、すなわち損害率は一七六・六%、すなわち約七割六分増の保険金を払わなければならぬ、このような状況になっておりましたので、先般私どもは自動車保険料の引き上げを行なったような次第でございます。
  45. 平林剛

    ○平林小委員 きょうは時間もありませんからこまかいところまでお尋ねするわけにまいらないかと思いますが、後ほど資料でなお御説明をいただきたいと思っております。また、私は各社ごとのいろいろな資料も必要になると思うのでありますけれども、これも後ほど御説明をいただきたいと思っております。  そこで、自動車保険という問題をこれからどういうふうに取り扱うかという問題は、私は世界各国いずれの国におきましても深刻に考えなければならぬと思っておりますし、おそらくこれから損害保険界として共通の大きな課題になってくるだろうと思うのです。わが国でもそのボリュームはうんとふくらんでおるという話を聞いております。特に火災保険を含めた全保険種目の半分を占めているというような話まで聞いておるのでありますけれども、このボリューム、割合といいますか、そういう実情はどうなっておるのですか。
  46. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  たとえば四十四年度の例をもって御説明申し上げますと、全体の収入保険料が五千六百九十億円でございます。そのうちいわゆる任意の自動車保険というものが千六百八十億円、これに対して火災保険はどれぐらいになっておりますかというと千八百七十億円。ただ、自動車保険については、任意の自動車保険だけを申し上げたわけでございますが、このほかにも強制加入のいわゆる自賠責保険というのがございまして、その収入保険料は保険会社の取り扱い分だけで約七百八十億円にのぼっております。以上のような状況になっております。
  47. 平林剛

    ○平林小委員 今回の改定によりまして、料率だけでなくて自動車保険の引き受け制度そのものも変わったといわれておるわけでありますけれども、これは簡単に言えばどういう事柄が変わったか、御説明をいただきたい。
  48. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  引き受け制度は特に変わったというような点はございません。と申しますのは、自賠責保険は、車を持っておる者はこの保険に入らないと車を運行の用に供してはならないという強制保険になっております。ところが一方のいわゆる任意保険というものは、これは任意でございまして、その保険に加入しようとしなかろうと、いわゆる車の保有者の自由意思、このような事情になっておるわけでございます。
  49. 平林剛

    ○平林小委員 私はいま総括的に言ったのでありまして、今度の保険料改率の場合に、人身事故の場合、たとえていうと契約者が保険会社に通知をする義務が含まれてきておる。そういう点では少し制度としては変わったのではないかということ。それから若年者に非常に事故が発生をいたしておるわけでありまして、対人賠償保険料については年齢別の要素が入ったというような点が変わってきたのではないかという点をお聞きしたかったわけであります。このほか、事故多発者の場合には、一般の契約と切り離して別個に管理をして、プール制度で保険会社が共同で引き受ける体制を確立したといわれておるわけですが、その点は間違いありませんか。
  50. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  ただいまの先生のお話しのとおりでございます。
  51. 平林剛

    ○平林小委員 そこで私は、実はこれは「日本の自動車産業」という資料によって承知をいたしたわけなんでありますけれども、特にトラックですね、この場合に、資料によりますと、昭和四十四年十月つまり六九年十月現在で八百十一万九千百九十八台のトラックが各都道府県別に保有をされて、つまり八百十二万台のトラックがいまやわが国のあらゆるところにおいて活動しておるということになるわけでありますけれども、このうちいわゆる任意保険ですね、これに加入しておるというのがどれくらいあるのでしょうか。
  52. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  トラックはいわゆる自家用と営業用に分かれますけれども、その普及率を車両保険について申し上げますと、四十四年の九月末現在で契約台数は、自家用の普通トラックが十万台、それから小型トラックが七十一万台となっており、これはラウンドナンバーでございます。また営業用の貨物で普通トラックが十一万、それから小型トラックが一万七千台、このような状況になっております。
  53. 平林剛

    ○平林小委員 そうすると、このトラックの八百十一万九千百九十八に対して、今日任意保険に加入をしておるのがきわめてその割合が少ないということになると思うのでありますが、こういう実情に対してはどうお考えになっておりますか。
  54. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  御承知のように、そのトラックが事故を起こした場合には、先ほどもちょっと触れましたように、保険の種類といたしまして対人賠償保険、対物賠償保険、それから自分の車をこわした場合の車両保険と、三つの種類がございますが、特に問題となりますのは対人賠償、すなわち人の生命または身体を害した場合に補償しなければならないものです。ところがその保険に入っていないというとその補償にこと欠くというような場合が起こり、社会的に大きな問題になるというようなことで、私どももいわゆる損害保険業界を通じて、できる限りこの制度をPRし、その普及というものをはかるように指導してまいっておる次第でございます。
  55. 平林剛

    ○平林小委員 すなわち八百十二万台の自動車が動いておる。しかし実際は任意保険に加入しておるのは、自家用営業用を含めましても大体百万を割っておる。こういう実情は、社会的には、もしかりに事故を起こした場合に、対人にせよ対物にせよ、実際に交通戦争の中で被害を受ける国民の側からいきますと、なかなかそれに対する補償を取れないという現象があり、かつ、これから少しお尋ねしていきますけれども、営業用、自家用のトラックというような場合になりますと、かりに事故を起こされた場合でもその補償を取れない、泣き寝入りというような事態も起きてくるわけでありますから、いまおっしゃるとおりこうした保険の拡大といいますか、できるだけそうした保険に加入をするというようなことは勧奨せねばならぬ、すすめねばならぬ、こういう御方針を私は承って、方向としてはまさしく間違いがないと考えておるわけであります。  ただ、これを行なう場合にいろいろな問題点があると思うのであります。たとえば保険料の算定をする場合、大体どういうような基礎でこれらの保険料率をきめておるか、この点を私は将来のためにも少しこまかく検討しなければならぬ必要を実は感じておるわけでございまして、保険料率をきめる場合にどういうことを基礎にして定めるように行政的な指導が行なわれておりますか。
  56. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  保険料は、すでに先生御承知のことと思いますが、いわゆる事故が起こった場合に、保険金支払いに充てる純保険料と、保険会社及び代理店のいわゆる事務費に充当するところの付加保険料という二つの要素からなっております。この二つを合わせまして私どもはいわゆる営業保険料と称しておるわけでございますが、そのうち純保険料は、いわゆるこれまでに生じたところの過去の事故率と支払い保険金の実績というようなものをもとにして、いわゆる保険数理を用いてはじき出しております。それからまた付加保険料というものは、過去に支出したところの事業費というようなものを基礎に置いてはじき出しておる次第であります。
  57. 平林剛

    ○平林小委員 非常に抽象的なのであれですけれども、過去の事故率と実績という場合には、損害保険会社そのものによって、あるいは契約者そのものによってみんな違うのじゃないだろうか。こういう場合には各社それぞれ違った保険料率を課するものなのか。それとも、きょうは私はお尋ねの分野に入っておりませんけれども、生命保険とかというようなぐあいに平均的なものでいくのか、そういう点はどうなっておるのでしょうか。
  58. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  先生これまた御承知のことと思いますが、保険というものはいわゆる零細な保険料を集めまして、多数の契約者が一つの集団となってお互いに助け合うというような仕組みでございます。その根底には、御承知のように数学でいうところの大数の法則を基礎にいたしております。したがって、個々の契約者の場合においては、いわゆる事故の発生度合い、また事故の大きさというものも違うわけでございますが、先ほど申し上げましたような保険の仕組みから考えまして、現在の日本におきましては、いわゆる保険契約者は、その所有している車両が新しい車とか古い車というような場合もございますが、対人賠償、対物賠償の場合には保険料は同じでございます。ただ、自分の車をこわした場合にてん補してもらうという車両保険の場合には、いわゆるおのおのの契約者が持っておる車両のそのときにおける市場価格によって保険金額も違うし、また保険料もその価格に応じてスライドする、このような仕組みになっておるわけでございます。
  59. 平林剛

    ○平林小委員 そこで、私はある一つ事例にぶつかったわけであります。それは、いま普通のダンプ用のトラック、これは一台当たり、その車種によって違うのだろうと思うのでありますけれども、二百五十万円とかあるいはものによっては三百万円、四百万円というふうに、保険料の掛け金が違うと承知しておりますが、いまのお話ですと、同一の場合、すなわち新車の場合には一定の率、またその契約者の持っておる車の使用年度によってなお漸減する、こういうものもすべてある程度の統一的基準があるのですか、ないのですか。
  60. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  統一基準と申しますか、たとえば税法によりますと、車を取得してから経過年数によって償却する。これによっていわゆる車の価値が減価していくというような考え方もございます。それからまた、特に車両の場合には、御承知のことと思いますけれども、事故が発生したときのその時における損害部分の時価によって保険金額というものが支払われる、こういうたてまえになっております。そこで自動車の場合は、いわゆるオートガイド自動車月報というものがありまして、中古車の市場評価額というものが二カ月ごとに発表されておるような仕組みになっております。したがって、新車の場合、たとえばダンプカーに例をとってみますと、一九六九年型は新車の場合は三百万円、ところがこのオートガイド月報によりますと、一年経過した場合のその価額は百四十二万円、二年経過した場合には百二十万円、このようになっております。したがってこういうものを基準として具体的な車の保険価額というものをきめるわけでございますが、さらに問題は、その車が一年あるいは二年経過しても、たとえば走行キロだとかあるいは破損の状態、保管、管理の状況はどのようになっておったかというようなことで、必ずしも一律に先ほどの基準どおりの保険価額にはならぬわけです。それは所有しておる車両のそのときの現状によって保険価額をきめていく、このようになっておるわけでございます。
  61. 平林剛

    ○平林小委員 法定残存率というものについては一定をしておるというふうに理解をしてよろしいですか。
  62. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  法定残存価格というのは、これは税法の問題でありまして、私からお答えするのは不適当ではないかと思いますが、たとえばそのものがスクラップになった場合に、スクラップの価格は一体幾らと見積もるかということで、普通はこれはその取得価格の一割とされておるように記憶いたしております。
  63. 平林剛

    ○平林小委員 これはあとで私は各社の実情を資料としていただきたいと思いますが、できますか。
  64. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  できるだけ集めまして先生のお手元にお届けするようにいたしたいと思います。
  65. 平林剛

    ○平林小委員 そこで、いま損害を起こした場合はその時価によって、一つの例として、新車が三百万円であったものが一年経過すれば百四十二万円、二年経過すれば百二十万円と減額をされて、そして故障を起こしたときの時価、二カ月ごとに発表される一つの表を用いてやるというお話がございましたが、保険料はこの場合一年ごとの掛け金になっておると思うのでありますけれど、保険料はやはりそのときの時価に相応する。かりに事故がなければそのまま掛け捨てになりますが、事故を起こした場合は、その保険料とそれから実際の支払い額との間に食い違いが出てくることになりまして、そういうような保険収支という面ではどういうような関係になっておりますか。
  66. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問の意味を取り違えておったらお許し願いたいと思いますが、先ほどもちょっと触れましたように、いわゆる車両保険に例をとって申し上げますと、車両保険の保険価額というものは、そのときにおける時価、すなわち市場評価額ということになっております。したがって、これに対するところの保険料というものは、その時価に、すなわち車の保険価額にスライドしてきめられる、このように申し上げたように記憶いたしております。  たとえば、先ほどの新車のダンプカーの場合でございますが、三百万円の価額のものにつきましては一年間の保険料が十八万八千九百八十円でございます。ところが一年経過したときにはいわゆる保険価額が百四十二万円、これに対する保険料は十万六千八百二十円、二年経過した場合の価額は百二十万円、これに対する保険料は九万五千三百八十円、このようになっております。これらの保険料の算出は、先ほども申し上げましたように、過去におけるいわゆる事故率、支払い保険金額というようなものを基礎にして、いわゆる保険数理的に算出される、このような仕組みになっておるわけでございます。
  67. 平林剛

    ○平林小委員 かりに事故が起きた場合、たとえば保険会社によっては——いま加入をしておるおおよそ百万台ですが、事故を起こす場合がある。これに用意をしてこの保険をかけるということがあるわけであります。先ほど、今回の保険料改定のときに、事故多発者の契約は一般の契約と切り離して別個に管理し、プール制度で保険会社が共同引き受け体制を確立する、こういうことになっておるのでありますが、保険会社によっては、事故が起きたらもうそれは加入させないというような方法をとるところが出てきておるように聞いておるわけであります。これは保険料をかなり高額に引き上げて、そのかわり反面的には事故多発者の契約については別個に管理をすることは行なうわけでありますが、プール制度で保険会社が共同引き受け体制を確立した、こういうふうになっておるわけでありますが、事実はこれと反対の傾向に動いているのではないか。  すなわち、あなた方の行政指導によりますと、漸次こうしたものをできるだけ加入をさせるような指導をしたいということと、事故が起きた場合にはもう再契約をしないということとは非常に矛盾をしてくる。私は特に生命保険やその他の保険業務でも言っておるわけでありますが、入るときはばかにいろいろなよいことを並べる。しかし一たん事故を起こすと、それについてはできるだけ減額をしていく。同時にそれだけではなくて、事故を起こした場合にはもう再契約をしないというような方針をとられる。いい会社と悪い保険会社とがあるわけでありますけれども、もしそういうようなことになったならば、八百十何万台の未契約の保険対象が一向に入らぬ。行政指導の中で、また社会的に見ても、こうした事故によって泣き寝入りや損害を受ける人たちの問題を考えますと、奨励すべきものが相反する方向にいくという傾向、これをどうしていくかという問題があると思うのですが、いかがでしょうか。
  68. 渡部信

    ○渡部説明員 お答え申し上げます。  ただいまのお話の点でございますが、私どももこれまで耳にいたしております。しかしながら、その実情を聞いてみますと、いわゆる契約拒否の問題でございますが、中にはいわゆるいままでの事故回数が非常に多い、幾ら注意をしても改めないというようなことでやむを得ず契約を辞退しておるような事例もございます。また一方におきましては、御承知のように、事故を重ねるとその度合いによりまして次回からの保険料が引き上げられるという仕組みになっております。したがってある契約者が事故を起こして、保険会社に契約の更改に来たときに、あなたは過去においてこれだけの事故を起こしております、したがって今度はこれだけの高い保険料を納めてもらわなければならないというようなお話をすると、契約者のほうから辞退をしていくというような事例もあるように聞いております。  しかしながら、その辺はいずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、この保険の持つ公共性、特に被害者が泣き寝入りをするようなことになっては困るというようなことで、私どもは、先ほどのような問題はいわゆる過去の契約者の事故回数とか、他の善良な契約者との負担の公平というような観点から問題はあるけれども、一律に契約を拒否してはならぬ、そのようなことのないようによく個別的に検討をして、できるだけこの保険制度の普及徹底をはかるように指導してきている次第でございます。ところがこれにつきましては、この間の保険料の改定を機会に、一律に過去の事故率によりまして二倍をこえるような保険料をいただかなければならぬような方々につきましては、保険会社が一社、一社でその危険を負担するというようなことが非常に困難であるということが考えられましたので、そのような方々につきましては、それらによって生ずる損害というものを全社が一丸となってこれを負担する、いわゆるプール制度これは外国ではアサインド・リスク・プールといわれておりますが、そのような制度の発足を見るに至った次第でありまして、私どもは今後この制度活用によっては、いままでのいわゆる契約拒否の問題というものはだんだん減っていくのじゃなかろうか。その減っていくことを期待しておる次第でございます。
  69. 平林剛

    ○平林小委員 私がこの問題を提起したのは、いまあなたがお話しのように、自動車保険というものの公共性ですね、そしてこれに反するような行為が保険会社によって行なわれたならば、今日社会問題になっておる交通戦争に対処する一般的社会人の不安というものはたとえようがない。そういうことから考えますと、悪い保険会社については、やはりそれに対して強い行政指導をはかる必要がある、こういう問題の提起なんであります。事故を起こした場合のために保険をかける、しかし事故を起こすと、それに対して再契約をしない、こういうことになったならば、私はそれは営利を目的にするだけであって——もちろん営利を全面的に否定するつもりではございませんけれども、一面においての公共性という点において欠くることになってくる。私はそういう点からは、事故を起こした場合の再契約の割合とか、その他今回の、保険料をこれだけ上げるという前提をこういうものについて克服するという意味で、ただいまのような合理的な一つ制度が生まれたのでありますけれども、実際にはこれの割合がどうなっておるか。保険料を上げたというのは、事故を起こした場合のその保険金、それからもう一つは、こうした時代の要請にこたえての対応策ということであると思いますけれども、一面それに欠けたようなことが行なわれていくという場合には問題が出てくるのではないかと思うのでありまして、これも後ほど資料として私、いただきたいと思っておるわけであります。  そこで、私はこの問題をいろいろ検討いたしまして感じたことなんであります。政務次官ちょっとこの問題だけ一つ……。実は町を歩いていて、トラック、ダンプというものに——私、これは大体大蔵省関係として門外漢でありますからあまり気がつかなかった。この問題を私検討していって、町を歩いて気がついたことがある。いま自家用とか営業用とか、こう言われましたけれども、ダンプに白ナンバーの車が非常に多く走っておる。営業用であれば青いナンバーがつけてある。白い車が非常にたくさん走っておる。そのダンプは、言うまでもなく砂利トラといわれるやつに多い。そこで、これがもしも事故を起こした場合に、個人営業の車ですから、賠償その他を要求した場合においてもそれだけの能力がないという場面にぶつかるのであります八百十二万台のうちに保険に入っておるのが百万台、それからもう一つは白ナンバーが多い、ということは個人のトラック。私のほうにいろいろな法律相談や身の上相談に来る場合には、どうも保険金が取れなくて困る、逃げてしまう、こういったような泣き寝入りが非常に多いわけであります。こういうことを考えますと、これからの社会問題として、私は、こうした自動車保険のあり方についてもう少しわれわれが手を加えていかなければならぬということを感じたのであります。  そこで政務次官、なぜ白ナンバーが多いかということなんであります。なぜ白ナンバーが多いかというと、営業をやっておるところの経営者は、いま保険の問題で話しましたけれども、保険料は高い、事故を起こすとこれを減額されていく、また事故を出したらもう契約をしない、こういうことになってくる。したがって、大蔵省の指導では漸次こういうものは公共性、社会性を考えて拡大したいという意図に反して、縮小していく、こういう傾向がある。そこで経営者は、しかたがないからそのダンプを自分の持ちものにしないで従業員に貸してしまう。いわゆる、むずかしいことばでいえば代車契約方式、そうすれば、給料は払うけれども、その何百万円で買った自動車の購入代金というものは本人負担としてかせぎ出していかなければならぬ。したがってそこに走行キロについても無理が起きてくるし、積載量に無理が出てくる、スピードも出てくる、そして交通事故を多発させる、こういう悪循環になっておるわけであります。私はそのことを考えますと、自動車保険の行政あり方、保険会社のこれに対する態度というものは、これから、人命尊重という面から考えてみましても、交通戦争をなくすという意味でも、大きな意味で一つの焦点として解決していかなければならぬ、こういうことを考えるわけなんであります。  そこで、こういうような事態になる一つ原因は、損害保険会社の態度というものに、こうした問題に対する認識が欠けておるところがある。保険料相当大幅に上げたけれども、そうした問題について、もし反省と社会的、公共的立場についての認識が欠けたならばこれは問題ですよ。具体的事例は幾つもあるわけであります。もちろんいい損害保険会社と悪い損害保険会社がありますから、それぞれ選択の余地はあるでしょうけれども、二十社の損害保険会社の中にそういう、たとえ一、二であっても悪い保険会社を残しておくことは問題じゃないか、こういうことを考えるわけであります。こうした問題につきましても、政務次官にも検討をわずらわしたいと思っておるのでありますが、御見解を承りたい。
  70. 中川一郎

    ○中川説明員 白トラの問題が大都市のみならず地方においても非常な問題を起こしておることは事実であります。これは運賃の問題、あるいは賃金の問題、いろいろな問題がありますが、保険行政からも検討しなければならぬ必要があるのじゃないか。運輸省当局とそういったことを総合的に検討いたしまして、この問題と真剣に取り組むべきである、このように考えます。
  71. 平林剛

    ○平林小委員 これで私の質問は終わりますが、この問題は次回の大蔵委員会におきまして、今度は税の問題として——これはまあ皆さんにはちょっと直接には関係がありませんが、税の角度からも取り上げてまいりたいと思っておるわけであります。同時に、きょうの質問の中で要求いたしました資料が整ったならば、再びこの問題について今度は具体的に少しやりたいと思います。これは大臣ともやりたいと思っておりますけれども、政府のほうでは資料を整えて、できるだけ早い機会に私のところに届けてほしいと思うのであります。  委員長、どうもありがとうございました。この次には金融制度調査会答申についていろいろお尋ねしたいと思いますから、きょうはこれで終わります。
  72. 藤井勝志

    藤井委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十分散会