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志場政府委員 時価発行の
価格決定はなかなかむずかしい問題でございますが、やはり基準になりますのは
時価発行の
価格を決定します前の株価の状態でございまして、その株価は
流通市場におきまして実現されましたいわば客観的
価格であるわけでございます。ですから問題は、この客観的
価格が何らかの作為とでも申しますか、なかんずく
幹事証券会社が一種の努力相場的に、たとえば市場占有率を高めまして自己買いをしますとかということでもって操作され、つり上げられた
価格でありますと、これは
お話しのようなそのあとの危険性がございます。私
どものほうは、いろいろと
幹事証券会社を通じて下相談を受けております
段階で、その
時価発行の
価格決定に至る前における当該
幹事証券会社の市場占有率、自己売買の状況等につきましては、あらかじめそういったことは十分に見るからということを申しまして牽制いたしております。したがいまして、最近の例につきましては、さような
証券会社の一種の努力相場的な、計算的な
価格が直前の時価
価格に反映しておったということはないと信じております。
それからもう
一つは、ディスカウントレートの問題でありますが、従来の
時価発行の場合は、いわゆるそういった時価に対しまして、平均すれば一五%前後下回る
価格で
価格をきめるということでございます。国際的に見ますと、西独方式は別でありますけれ
ども、いわゆるアメリカの完全
時価発行の場合は、そのディスカウントレートは一割までのようなことでありまして、ほぼダイレクトに時価そのものといえるような状態であります。今後ともかくADRと国内の
時価発行とを
関連いたしますと、私はこのディスカウントレートは一割以内というような国際的な水準に持っていくべきだろうということで
指導いたしていくつもりでございます。
そういうふうになってまいりますと、いよいよ客観的に実現されました
価格というものの水準をどう見るかという見方の問題でございます。これはひいては
時価発行のタイミングにもかかわる問題でございますが、発表いたします
時価発行を、
価格それ自体が
市況の変化によりましてかなり変動があったために、にわかにその増資をストップするということは、なかなか
発行企業体としてはできにくい状態にあるようでございます。したがいまして、私
どもとしては、直前の時価と申します場合には、
市況の動向等によりまして、あるいはその直前の一週間程度をとりますとか、あるいは一カ月ばかりさかのぼった平均
価格をとりますとか
——しかしあまり恣意的に過去にまで長くさかのぼることはいわゆる
時価発行とはまた縁遠くなりますので、
そこら辺は
市況も、あるいはその株の持っている実勢とでも申しますか、さような点の勘どころも、いろいろな客観的な
価格と見られるものをなるべく慎重にさがし出すということで、その間において操作もなく、またディスカウントレートもかなり下回る、一割を下回るような小幅でいけるならば、
価格決定としましてはもうそれ以上のことはできないという性質のものではなかろうかと思います。
今回、松下電器さんの
お話だと思いますが、六百三十円にきめられましたということは、従来の
価格が六百七十円から七百円くらいでずっと推移してきたという、比較的安定しておったところから見ますと、六百三十円の
価格決定自体は私は妥当であったかと思います。ただ先月来のさような
市況がありますので、非常に
価格がなにしておるという事態がいわば突発的な事態で、これに対処いたしまして、
幹事証券会社が
価格安定的にある程度の自己買いを入れるということ、あるいはまた株主にすすめて買い足してもらうということは、それについては私は一がいに責められないのではないか。むしろいけないことは、
価格決定する前の
段階でそういう努力相場的な操作があっては絶対にいけない、さようなつもりでおります。