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1970-09-04 第63回国会 衆議院 大蔵委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年九月四日(金曜日)     午後二時開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 上村千一郎君 理事 藤井 勝志君    理事 村上信二郎君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君 理事 松尾 正吉君    理事 永末 英一君       奥田 敬和君    坂元 親男君       高橋清一郎君    地崎宇三郎君       中村 寅太君    丹羽 久章君       福田 繁芳君    松本 十郎君       森  美秀君    吉田  実君       阿部 助哉君    平林  剛君       堀  昌雄君    貝沼 次郎君       伏木 和雄君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      城戸 謙次君         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         警察庁刑事局捜         査第二課長   小林  朴君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       橋口  收君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省証券局長 志場喜徳郎君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         国税庁間税部長 塚本石五郎君         食糧庁次長   内村 良英君         通商産業省重工         業局長     赤澤 璋一君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 八月十日  辞任         補欠選任   二見 伸明君     丸山  勇君 同日  辞任         補欠選任   丸山  勇君     二見 伸明君 九月四日  辞任         補欠選任   木村武千代君     中村 寅太君 同日  辞任         補欠選任   中村 寅太君     木村武千代君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  関税に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制関税金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 この間から新聞紙上をにぎわしておりますところの金融機関不祥事件については、すでに私が本年の六月十二日の委員会で、最近の情勢について問題点を少し明らかにするとともに、大蔵省に善処を要望いたしまして、それを受けて七月十六日には銀行局長から各銀行に対して通達が発せられておるというふうにわれわれも承知をいたしておりましたが、この通達が出された直後に、大臣も御承知のような、富士銀行におけるたいへん多額な、私ども金融を担当いたしておりますけれども、かつて例のないような大口不正事件発生をしたということであります。  最初に、事務当局から簡単にひとつ経過報告をしていただきたいと思います。
  4. 近藤道生

    近藤説明員 お答え申し上げます。  富士銀行雷門支店不正事件経過を簡単に申し上げます。  まず、不正事件の手口でありますが、一口に申し上げますと、輸出関係資金前貸し、または輸出貿易手形買い取りという事実が全くございませんのに、それがあったかのごとく仮装して、菅沼副長独断によるトムソンへの大口融資が行なわれたものでございます。  不正融資は、輸出関係資金前貸し、通称は外為手貸しで、融資形式一般手形貸し付けと同じ分、それが一億八千六百万円、それから輸出貿易手形買い取り、これは買い入れ外国為替として経理されておる分でございますが、これが十七億一千八百万円、合計十九億四百万円でございます。  時間的な経過を追って簡単に申し上げますと、四十二年の八月末現在でトムソンに対しまして千八百五十万円の手形貸し付けがございましたが、この段階ではまだ正常取引でございました。ところが九月末に残高が二千二百二十万円とふくらみまして、月中三百七十万円ふくらんだわけでございますが、これは菅沼支店長の決裁なしに行ないました独断融資でございまして、このころからまず手形貸し付けによる不正融資が始まったわけでございます。四十四年の二月からは、この手形貸し付けのほかに、買い入れ外国為替を仮装しての不正融資が行なわれるようになりまして、残高は毎月増大いたしてまいっております。正式の買い入れ外国為替の場合は、御案内のように、買い入れ手形のほかに、船荷証券輸出認証信用状、その他の関係書類が必要でございますが、本件の場合には手形その他関係書類が一切なしに、全く架空に伝票を起票いたしまして、その資金トムソン当座勘定に受け入れて使用させていたものでございます。伝票菅沼自身が書いたり、あるいは係員に命じて書かせて、検印のほうは菅沼限りであった。特にそれで怪しまれなかったということでございますが、当座勘定の動きからトムソン取引に疑いを持ちまして、預金係が係長に申し出た事実もあるのでございますが、菅沼は、トムソンとの外為取引については自分支店長から一切まかされておるのだということでごまかしの説明をしておった。  それから、買い入れ外国為替伝票の操作でございますが、買い入れ外国為替支払い伝票明細表、それから取引先当座勘定への収入伝票、それから受け入れ手数料収入伝票、この三つが複写記入されて、買い入れ外国為替勘定については、当日分を一括して別に支払い伝票がつくられるというのがたてまえでございますが、そしてこのうち明細表本部電子計算課に送られるというのが筋でございますが、菅沼はこの明細表電子計算課に送らずに、支店でこれを伝票として使用させて、別に作成すべき支払い伝票を作成していない。計算係に対しましても、外為関係は一切自分がまかされているということで信用をさせておったのでございます。このため本部電子計算課では、トムソンに対する買い入れ外国為替勘定が全く記帳されておらないということで、それがあとで発覚をしたということでございます。  発覚端緒は、支店外国関係の損益が非常な損になっておるにもかかわらず取り扱い高が多額であるということから、それが端緒になって発覚をいたしたわけでございます。  なお、その他ございますが、簡単には、一番おもな点は、支店におきまして買い入れ外国為替残高の異常な膨張に気づくということが当然であるにもかかわらず、この点が見過ごされた。外国為替部門が従来からとかく特殊な専門の分野と見られる傾向がございますが、今度の場合、支店長が積極的にこの部門をチェックするという、いわば役席としての基本動作に欠けていたというようなところに基本的な問題があろうかと存じます。店内検査も毎月一回行なわれるわけでありますが、菅沼自身がそれをやっておるというようなことで、その点も大いに抜けておったというふうに考えるわけでございます。  簡単に事件経過を申し上げた次第でございます。
  5. 堀昌雄

    堀委員 大臣、いまお聞きのとおりでありますけれども、実は私はこの雷門支店という支店——時間がありませんから少し調査をした範囲で申し上げますけれども預金量が大体百二十億くらい、貸し出し量六十億円という支店において、ごく数カ月のうちに十九億円の貸し出しがされておることについて、支店長が実はこれを知らなかったというふうに、いわば報告があるわけでありますけれども、私はどうも常識として、その程度の金融機関でそのような多額の貸し出しが、幾ら外国為替買い取りであろうとも、行なわれておることに不審を抱かないというのはまことに常識的でないような感じがしておるわけであります。これらについては、目下警察のほうで調査を進めておるのだろうと思うのでありますけれども大臣はこのいまの問題について、一体どこに問題点があるのか。済んだことはこれはいまさら幾ら言い立ててもしかたがありませんけれども、引き続いて新聞の伝えるところでは、三菱銀行の神戸におけるやはり外国為替についての不正事件というのが、昨日の新聞にすでに報道されておるわけでありますし、これから国際化時代を控えて、外国為替の問題というのはだんだん各銀行とも業務がふえてくるという段階で、このような不祥事件が起きておるというのはまことに遺憾だと思うのでありますが、これらについての大臣のお考えをちょっと承りたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も、本件は非常に異例なことだと思います。あなたと同じような関心を持ってこの事件を見ますが、さて一体こういう不祥事件が起きた根源はどこにあるのだろうか、こういうことを考えてみますと、やはりこの事件がどういう経過をたどって行なわれたかという正確な把握ができませんと正しい判断はできないと思いますが、抽象的にいいますれば、やはり銀行内部綱紀規律、こういうことが大事な問題であるなという感じがいたします。御指摘のように、富士銀行ばかりでなく、ほうぼうに、スケールは別といたしましてもこの種の問題が起こっておる。通じまして見るときに、やはり金融業、これは公の業務であるという意識に徹した厳重な執務態度というか、行内の規律といいますか、そういう方面が強調されなければならない、かように考えておるわけであります。
  7. 堀昌雄

    堀委員 今度の事件を見ておりましても、どうも銀行承知をいたしましてから警察通報される間に相当時間がかかっておるように思います。その経過の中では、別会社がつくられてその債権がそこに移されて——要するにずっと見ておりますと、まず金融機関は、事故が起きたときには金をいかにして回収するかということが先になって、事案そのもの調査その他根源的な問題に対する対策よりも、債権対策というのがどうも先行しておる。そのことが結局事件のいろいろな真相を明らかにすることを困難にする事態に立ち至っておるのではないか、私はこういう感じがいたしてなりません。数日来の新聞には、先般の三井銀行における紛失事件、及び日本銀行における——これなどは金融機関の元締めである日本銀行の金庫の中から百万円の札がなくなる、こういうことがついに時効になって犯人が出ないなどということは、全く私は重大な問題だと思うのであります。これらを含めてどうも私は、先般申し上げましたような、事故発生警察への通報との関係が、債権確保のほうに片寄り過ぎて、警察通報は二の次だというような姿勢がうかがわれてならないのでありますけれども大臣はこれについてはどうお考えでございましょうか。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま御指摘の点につきましても、同じ感じを持っております。つまり、債権確保、これをないがしろにするわけにはまいらぬと思いますけれども、それに片寄り過ぎちゃいかぬ。やはり事件真相を正確につかむ、そして将来への戒めとする、これが非常に大事である、かように存じまして、大蔵省金融機関に対する指導といたしましてもその方向でやっていきたい。特に今回の事件に顧みましてそういう注意を喚起したい、かように存じております。
  9. 堀昌雄

    堀委員 私はいま、抽象的には確かに綱紀がゆるんでおるということだと思いますが、綱紀がゆるむための背景というものが私はあるんじゃないかと思っておるのであります。それの最大理由は何かといえば、過当な預金競争を行なっておるというところに私は最大理由があると考えております。預金競争を過当に行ない、主たる支店はその主要な職員が全部外に出て預金勧誘に歩いて、金融機関内部にはほとんど女の子と、女性の職員と一部職員が残っておるというのが今日の一般的な金融機関実情ではないかと思うのであります。ましてや過去のいろいろな事故を見ておりますと、支店長不在中に事故が起きたとか、あるいは支店長次長二名ともいないときに事故が起きたというようなことが、数年来私はこの事故の問題を調査している中でしばしば見受けられる点でもあります。このことはどういうことかといえば、支店長を筆頭に預金集めに狂奔しておるあまり、内部管理ダブルチェックをはじめ内部管理がおろそかになっていることは、私はきわめて明白な事実ではないかと思います。ですから、ただ単にここで綱紀を粛正しろというような通達をいたしましてもこの問題の解決にはならないのではないか。ですから、まず第一に、預金競争という問題はこれはやはりいろいろな関係で押えることはむずかしいと思いますけれども、少なくとも支店男子職員のうち、外務員として預金獲得等に出られるものについてはまず、店舗の状況、あるいは都市銀行、地方銀行相互銀行信用金庫と、いろいろ金融機関性格等もありますから一律にはまいりませんけれども、何らかのひとつ方策を考えて、現在の過当な預金競争を少し鎮静させるといいますか、正常な方向に持っていくことなくしては、私はどうも内部管理機構強化あるいはダブルチェックの確立ということは、幾ら訓示してもこれはどうもできないのではないかという感じがいたしてならないのでありますけれども大臣、この点はいかがでございましょうか。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 預金を収集し獲得するということは、これはもう金融機関として非常に大事な仕事であります。これをディスカレッジするというわけにはまいりませんが、ただ最近の傾向として、預金量幾らになったと、いわゆる業容拡大ですね、これを誇りとするというような風潮がありまして、大蔵省といたしましてはそういう風潮につきましては、そうあってはならないのだ、いたずらに業容の拡張のみに目がくらんではならない、内容効率化内容健全化、これこそが真に金融機関のねらいとするところでなければならぬという、こういう指導をいたしておるわけでございますが、これをまたこまかい具体的手段によってどういたしますか、これはいろいろむずかしい問題もあります。お気持ちは、私も同じような気持ちでおりますので、よく検討をいたしたい、かように考えます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 先般の通達はこういうことが書かれておるわけです。  「この際、経営者においては、経営の重点がともすれば業容拡大にのみおかれ、内部体制整備点検が安易に流れる弊があることを反省し、不備不適当と認められる事項の改善をはかることによって、事件未然防止につとめられたい。  なお、これまで一部の金融機関には信用失墜をおそれて事件内部限りで処理する向きがみうけられるが、事件未然防止の見地からも、万一事件発生した場合には、警察当局通報のうえ、その協力をえて事件真相を究明するとともに、監督責任者に対する責任を厳正に追求するはもちろん、事件内容によっては経営者みずからが進んで責任を披瀝するなど、厳しい態度をもって事件処理に当ることとせられたい。」  こういう通達銀行局長は出しておるわけであります。通達が出ておりましても、これはすでに事件は起きておったわけでありますから通達とやや乖離をしておるわけでありますけれども、今後の処理については、ここに示されておるような通達の意思が国民の前に明らかにされるということになるべきだろうと私は思います。この点についての大臣のお考えを承りたいと思います。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 当然そうあるべきだと思います。
  13. 堀昌雄

    堀委員 先回、六月の十二日に取り上げ、また九月の当初に再びこの問題を取り上げなければならぬということは、私はまことに遺憾なことだと思うのでありますが、どうかひとつ銀行局においては、当面いろいろな指導もさることながら、全力をあげてこの銀行不祥事件防止にまず最大の努力をひとつ傾けていただきたいと思います。これはやはり監督官庁責任もあるということを私はここではっきり申し上げておきたいと思います。  続いて、ある報道によりますと、六大銀行の中で公金預金が数億円にわたってその店の幹部によって横領をせられて、そのうち被害額は一億円に達するであろうが、これは氷山の一角としてまだ届け出がされていないなどというような報道がございます。これはまだその範囲でありましょうけれども、「六大銀行の」などと名前がついておる以上は、かなりこのことを報道した人たちもそれなりの根拠を持ってのことだろうと思いますから、そういうことが世間に報道されていて、しかし銀行局はおそらくまだ関知をしていないだろうと思いますが、ひとつそういうことのないように、一般報道がされたものであるならば銀行局は直ちにそれが掌握できるような体制をつくっておいていただかなければ、事故に対する防止責任は果たせないと考えますので、この点については六大銀行とワクがかけられておるわけでありますから、直ちに調査を進めてひとつ当委員会報告をしていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  14. 近藤道生

    近藤説明員 ただいま御指摘の点はまだ聞いておりませんが、直ちに調査をいたしまして御報告申し上げます。
  15. 堀昌雄

    堀委員 不祥事件はまだあと引き続き同僚阿部委員が質問をされますので、私、問題をかえまして、この間の委員会平林委員が問題を提起いたしました共同証券処理問題でありますけれども、今月の二日の朝日新聞によりますと、「都銀共同証券処理案」ということで、「解散利益金利用」「二八〇億円預金保険などへ」ということで、実はかなり詳細な中身についての報道がされておるわけであります。時間がありませんから簡単に私のほうから申し上げますと、報道中身としては、一部を証券金融方向に充てたい、一部は予想せられるところの預金保険基金に充てたいということが、何ですかごく最近の都銀懇話会できめられるというような報道になっておるわけであります。  そこで私は、この問題はきょうは時間がありませんからまたゆっくり論議をさせていただきますけれども解散を十一月の株主総会にかけたいということで、何だかこの案が急がれておるようでありますが、十一月というのはまだ通常国会も開かれていない時期でありますから、預金保険の問題というのは一体どのようになるのかはまだ国会提案もされていない問題であります。国会提案もされていなければ、どういう案が出されるかについてもつまびらかでない、そういう預金保険基金に、民間の、特に共同証券利益金処分が先にそこの株主総会できまるなどということは前代未聞の問題ではないか、こういう感じがいたしておるわけであります。私は、大臣がこの前解散ということをお話しになったので、その点については同感なのでありますが、事後処理についてこのようなことが、それもただ内輪の話というのではなくて、都銀懇話会でありますか、そういうところでかなり正式な話として処理をされておるということはやや行き過ぎの点があるような感じがするのでありますが、大臣はそれについてどういうふうにお考えになっておるか、先に大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのとおり、預金保険大蔵省におきましてもその法案を次の国会に出すか出さないか目下検討中である、こういう段階でありますので、その基金に充てるために共同証券残余資金考える、これは少し気が早過ぎるような考えがいたします。共同証券につきましては先般申し上げたとおりの方向でその処置が進むであろう、こういうふうに考えますが、その処置内容につきましては慎重に考えて誤りなきを期していきたい、かように考えております。
  17. 堀昌雄

    堀委員 きょうはその以後の利益金処分方法国民の納得する処分方法について議論する時間がありませんけれども、どうか大臣もいまお答えになりましたように、そうして抽象的なことばでありますけれども、本来の経緯から見ましても、やはり私は、この利益金は一部のそういう株主の恣意的な処理ということではなくて、国民全体が納得をするような処理のしかたを行なうということにしていただきたいと思います。  ちょっとここで、新聞で伝えるところによると、共同証券及び証券局意向によれば、公社債調整機関にしたいというような意向もあるというような報道も実はあるわけであります。これについてはちょっと一言申し上げておきますけれども公社債のいろいろな問題は、御承知のようにこの前発行条件の改定もありましたけれども、これは発行のところに実は問題があるのであって、発行のしかた、量の問題、発行条件、そういうところに問題があるので、それを少し出し過ぎて値段が下がったから調整をして買いささえるなどという発想は本末転倒でございますので、もし公社債の問題を考えるとするならば、正常な公社債市場をいかにしてつくるかというオーソドックスな順序に基づいて考えていただきたい。私は証券局が万そんなことを考えておるとは思いませんけれども、この際直ちに、そういう正常でない公社債取り扱い方のためにこれらの資金が使われることについては反対でございますので、その点もあわせて申し上げて、ひとつ十分御検討をいただくようにお願いをいたしたいと思いますが、大臣よろしいでございましょうか。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 とにかく、先般申し上げましたように、この資金は普通の私の資金じゃありませんから、国家国民のために、また証券市場近代化合理化、またその育成強化のために役立つように使っていきたい、かように考えます。
  19. 堀昌雄

    堀委員 次は、いまたいへん国民関心事になっておりまして、やはりこれも前回の委員会同僚平林委員が取り上げた問題でありますけれども、最近御承知のように清酒の一斉な値上げが次第に具体化をしつつあるようでございます。私が新聞で拝見をしたところでは、八月二十九日に二十六府県、百四十五者がすでに値上げ届け出た。その中身特級酒が九十円、一級、二級が六十円、すべて同一の価格届け出が行なわれておるという実情のように承知をしておるわけであります。この清酒値上げの問題については、この前大臣が、値上げをしないようにお願いをしておるところだ、こういうふうにおっしゃった背景で、大体は自由価格ということになっておるわけでありますけれども、現実には行政指導もいろいろ行なわれておるんだろうと想像しております。  そこで、この問題について私は問題が二つあると思います。一つは、いまの世の中は何と申しましても資本主義世の中でありますから、会社企業が法人として欠損が引き続きどんどん出てきて赤字である。赤字の結果、会社経営状態が非常に悪いということになれば、その会社の製品を値上げしたいというのは、これは私は当然だろうと思います。しかし、一般的に、もし生産調整のためのカルテルがなければ当然値上げが認められるべきものだと思うのでありますけれども、御承知のように現在清酒については生産調整カルテル公正取引委員会大蔵省の間で合意に達してつくられておる、こうなっておるわけでありますから、そのカルテル下において値上げが、それも一律の価格で行なわれておるということは、私は非常に問題がある事案だ、こう考えておるわけであります。  そこでまず、この問題については一番関係の深い公正取引委員長にお伺いをいたしたいのでありますが、一体特級酒九十円、一級、二級六十円という値段で百四十五者もの企業値上げをするということは、これは私ども感じではやや不公正な取引が行なわれておるのではないかという感じ、要するに価格協定その他があるのか、何らかのそれに類するものがなければこういうことにならないのではないかと思うのでありますが、公正取引委員会としてはどういうふうにこの値上げのいまの実情をお考えになっておるか、伺いたいのであります。
  20. 谷村裕

    ○谷村説明員 御指摘のように百四十五者でありますか、あるいは九月に入りましてからだと三百者をちょっとこえるくらいのところがそれぞれ値上げ届け出ており、その内容がいまおっしゃったような値段になっておるということでございますが、ただいままでのところ全体の一割に達するか達しないかという状況で、今後もはたして同じような一斉な斉一された値段届け出があるのかどうか、これはまだわかりませんけれども、ただいままでのところは大体において中小のところ、地方的な市場で流しておるようなところのものが多いようにも思いますし、そういうところが自分のところの判断で前にやったのを見習っておるかとも思われますが、しかしひょっとすると、みんな大体この辺でいけばうまくいくのじゃないかというふうなことがあるかもしれませんけれども、その辺は私どもとしては、御説のようにかりにもそういうような一種の暗黙のうちに協定のようなことがあればよろしくないことでありますから、注目して見ておるところでございます。
  21. 堀昌雄

    堀委員 いまの委員長のお話で、もうすでに三百になって一割近いということでありますが、大蔵省はこれをどう見ておりますか。どうも何かコストアップはある程度やむを得ないという考え方があるようで、そうすると、コストアップとしての実質のコストというのは大体このくらいだというふうに大蔵省考えている、それがどうも業者の中に伝わって、ここらまでなら行政当局は了解をするのではないかというのが実は九十円、六十円になっておるのではないか。  ただ、私はちょっとここで、コストアップの場合、一級、二級の六十円というものはなるほどコストアップに関係があると思いますけれども、特級の九十円になると五割増しですね。六十円のものに対して五割増し。清酒は、確かに特級酒はいい米を使い、それも十分よくついて、確かに米の量は少し減るでありましょう。しかし、同じメーカーが生産をしておるものがそんなに五割も値段がコストで違うなどということは私は考えられない。ですから、特級酒というのはこの場合コストにも見合っておるのかどうか。六十円というのはコストとの関係では一体どういうふうに考えておるのか。ちょっと国税庁のほうで答弁をいただきたいと思います。
  22. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、一級酒、二級酒につきましては一応の試算を当局としていたしました。この試算の内容は非常にきびしいもので、限界企業が温存されるようなものではない。非常にきびしい試算でございますが、最近の人件費の値上がりあるいは四十三年米の原料米の値上がり、その他運賃等いろいろのコストアップの要因がございますが、一応そういうものを試算いたして、きびしい計算によりますと六十円程度のものが出る。これはもちろん外部には言っておりませんですが、内々にはその程度のものが出てくるということは一応の試算はいたしました。  特級酒につきましては、これは先生御承知のようにいわばぜいたく品でございます。現在全く価格指導はいたしておりませんので、試算もいたしておらないわけでございます。
  23. 堀昌雄

    堀委員 そこでちょっと国税庁に伺っておきたいことが一つあるのですが、実は清酒の業界ではリベートというものがかなり公然と行なわれているわけです。現在平均的なリベートは幾らでしょうか。
  24. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 お答えいたします。  最近の数字は四十四年の十二月にとった数字がございます。これが二級酒で見まして約二十四円何がしでございます。それから一級酒について見ますと十六円何がしというような数字が平均的に出ております。これは時期といたしまして十二月の年末の特殊な時期だと思いますけれども、十二月現在でそのような数字でございます。
  25. 堀昌雄

    堀委員 この二級酒二十四円、一級酒十六円というのは平均値ですから、そうすると上下にある程度幅があって、それの平均がそのくらいになるのでしょう。上限は一体どのくらいリベートを出しているのですか。
  26. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 全部の実態調査のあれではございませんが、いまの平均値のもとになりました数字を見ますと、最高が五十五円ないし五十六円というものがございます。それから下のほうは、もちろんもう全く出しておらないという数字もございますし、二円なり三円というものもございます。
  27. 堀昌雄

    堀委員 今度の値上げがかりに六十円といたしますと、これまでの業界の慣例からいえば六、三、一という配分が行なわれる。そうすると、製造業者に対しては六十円の六割、三十六円実は値上げになるわけですね。一体五十円のリベートを出しているところが三十六円値上げになるというのはどういうことになるでしょうか。
  28. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 先生おっしゃいますように、リベートを出しながら値上げをするのはどういうことだろう、確かに疑問は残るわけでございます。したがいまして、私どもも、過当競争の結果リベートの幅がだんだんふえていく、これはまことに好ましくないということで自粛を要請しておるわけでございます。ただ商取引の慣習といたしまして、酒の業界に限りませんが、リベートあるいは値引きという慣習は現実に行なわれておる。ですから、それを全く酒の業界についてなくするということは非常に困難なことではなかろうかと思っております。
  29. 堀昌雄

    堀委員 困難はいいですが、いま五十円値引きしているのでしょう。三十六円上げたって実際にはまだ十四円上がらないじゃないですか。それは五十円引いたところでの根っこでは少し上がるでしょうけれども、リベートが改善されなければ値上げをしたって製造業者に金が実は入らないわけです。  それが一つと、もう一つは、欠損会社の場合にはこれは私はやむを得ないと思うのですけれども値上げがこのままでいくと、大手の黒字の会社もおそらく値上げになるでしょう。大体いまのコストは限界企業のコストになっているので、大手の黒字の企業のコストで計算をしているわけじゃないと思うのです。いまのあなたのほうの六十円の問題についても、どこかにバルクラインを引いているのだと思いますけれども、特にこのリベートの問題では、料飲店まではリベートが行くのですね。要するに一般の消費者にはリベートが行かない。だから結局このことは、値上げをすることによって一体だれが一番損をするかといえば、一般国民消費者が損をするだけで、そのリベートの中身なり値上げとの関係がどうなるかは別としても、料飲店なりその他は比較的影響を受けないという形が残ってくるというのは、私は国民に対してはまことに不適正な価格の問題がある、こう考えておるわけであります。  そこで公正取引委員長にお伺いをいたしたいのでありますが、いま欠損の会社もだいぶあるようでありますが、大手の相当収益のあがっておる黒字の会社がこの際おそらく一斉の値上げになるだろうと私は見ております。過去の昭和三十八年、四十年、四十二年、四十三年の価格値上げはいずれもさみだれ方式で上げてきて、最後にはだあっと全部上がって、一カ月から一カ月半以内くらいをもって清酒価格値上げが行なわれたということは、これは何回かの値上げで実績済みであります。今日、中小の問題のなさそうなものを先行させておいて、最終的には大手がばっと上げることになると思うのですが、いまの大手メーカーが——大手メーカーの中にも黒字でないところもあるかもしれません、一、二のようでありますが……。また黒字の幅の小さいところもあるかもしれません。しかし、少なくとも生産調整をやっているさなかに黒字の大手会社が一斉に値上げをするということになれば、私は生産調整というものは再考を必要とするのではないかと思いますが、公正取引委員長、いかがでございましょうか。
  30. 谷村裕

    ○谷村説明員 先ほど堀委員は、結局生産制限をやっておる、生産調整をやっているというところで、しかし現実にコストが上がってきているという実態があれば、これは企業としては値を上げたいと思うのも無理はない、こういうお話でございましたが、その企業値上げを必要としているということと値上げが可能であるという問題とは、私は別であろうと思います。本来ならば値段を上げないとやっていけない企業が、競争がございますと、値を上げたのではほかの競争者に負けてしまいますからそこを忍んでやっていく、あるいはどうしてもだめならば競争場裏からはずれていくというのがほんとうなのに、生産調整ということがあるからそういう値上げが可能になってきているというのがどうも実態であるように思います。その場合に、かようなカルテル生産調整が酒類業界、清酒業界の構造改善のためにやむを得ない必要な措置であるということで実は私どもも認めたわけでございますから、初めからこういうことがないほうがいいと言えるならばそれにこしたことはないのでございますけれども、それを認めたわけです。認めたときには、これはやはり業界が一体となって考えていただいていると思います。したがって、値を上げたいのはそれは企業としてはみんなそうですけれども、この際もし大手の企業というものがそこに余裕があるならば、何も中小が上げたからといって、しめしめといって自分たちも上げるということでなしに、自分らはこの程度とかあるいは上げないとか、それぞれの企業としての判断があってしかるべきだ。ほんとうならば、自由競争ならばそれが当然出てくるのに、自由競争でないからそれができないのですが、そこはできれば国税庁のほうにも指導していただければ私はありがたい、かように思います。
  31. 堀昌雄

    堀委員 時間がありませんから一問だけにいたしますが、実はカルテルの状態をちょっと調べてみますと、昭和四十五規制年度のカルテルの伸びぐあいでありますが、規制ワクは昭和四十四年から四十五年に対して一三・二%実は伸びることになっているわけであります。ところが、昭和三十九年から四十四年までの製成石数の伸び率は、最近は各酒類とも生産、消費がやや停滞ぎみでありまして、この五年間に一三・一%しか実は製成石数は伸びていない。課税石数で一九・五%しか伸びていないという実情であります。ですから、いまもしかりに昭和四十六年度の規制がなくなったとしても、これ二〇%の伸びになっているわけであります。二年間で二〇%の伸び、これだけ、規制ワクの上限がこれだけ伸びておれば、実はカルテルがあってもなくてもあまり意味がない。問題は、どれだけ生産余剰能力を大手が持っておるかということだと思うのであります。時間がありませんから、あとで私は大臣の時間以外のところでちょっとそのことだけは詰めておきたいと思いますけれども、要するに、大手に生産余力がないのならば、もし大手が値上げをした場合には、公正取引委員長としては、この際生産調整カルテルはやめるということを明らかにしてもらいたい、私はこう思うのでありますが、公取委員長、いかがでございましょうか。
  32. 谷村裕

    ○谷村説明員 私は先ほど、酒造業界は一体となって、この際いかに構造改善をすべきかという、そういう事態にあるのだというふうに考えておるのだと申しました。さような意味で、実際の利害はおそらく中小と大手とはある意味では内部的には対立していることになっているだろうと思います。そこを何とかうまくやっていこうとしているところがいまの業界であり、また所管官庁であろうかと思います。私は一般論としては、できるだけ値上げはないほうがいいと思いますけれども、しかしそういう事態のもとにおいてなおかつある程度のことはやむを得ないということもわかります。そこで、一体今後、いまおっしゃった意味は、大手のほうがどのくらいの自由な体制というものを持てるかというところにあると思いますから、調整のやり方その他についても国税庁のほうとしてさらに検討をしていただきたいと思いますし、また、いま堀委員は即時ということばを、あるいは直ちにというふうにおっしゃいましたけれども、(堀委員「四十六年度からです」と呼ぶ)四十六年度からというふうにおっしゃったのでありますか、私どもも、できればすみやかにいまのカルテルをやめていただいて、そうして体制を立て直していただきたいということは希望いたします。それをいつどういうふうにしていただくかは、私は所管官庁のほうの御責任において判断をしていただきたいと思いますが、私どもとしても十分その辺についての御意見は申し上げるつもりでおります。
  33. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  34. 毛利松平

    毛利委員長 藤井君。
  35. 藤井勝志

    ○藤井委員 時間がきわめて制限されておりますので、たまたまいま堀委員が質問されました清酒の問題にしぼって一、二質問をいたしますが、まず、いま答弁がありました公取委員長にひとつお尋ねをいたしたいことは、私は清酒業のカルテルの性格というもの、これは申し上げるまでもなく、価格カルテルではなくして、いわゆる構造改善のための生産カルテルであり、しかもただ単に不況カルテルという狭義の意味ではなくして、やはり構造改善をして企業の生産性を向上していく、こういったところに清酒業のカルテルの特質があり、特徴がある、こういうふうに理解しておりますが、公取委員長としてはどのようなお考えでしょう。
  36. 谷村裕

    ○谷村説明員 藤井委員のおっしゃったとおりに、まさに生産調整カルテルではございます。しかし、先ほど私が申し上げましたように、生産調整ということがある、いわば自由競争が制限されているということが、ある程度価格問題に対して影響を持っておる。通常の市場価格、自由競争価格ではないというところに問題があるというふうに理解いたします。
  37. 藤井勝志

    ○藤井委員 私の申し上げたいのは、この生産カルテルはいわゆる自由化の部分のワク、幅が非常にあるということなんで、初年度において総需要に対して六%、それから毎年二%ずつ広げて、最終年度である昭和四十八年は一四%の余剰を与えている、そういうことでありますから、やはり普通の生産カルテル、いわゆる不況カルテルとは違って、決してこれが限界生産の企業を残していくという心配はない。しかも供給が制約されるということもない。総需要に対してそういう幅を持たしているから、そういった点において私は、この際清酒値上げとからんで、いきなり、値上げをしたらもうすぐこのカルテルはやめてしまう——私は、この値上げについては、消費者保護という見地はもちろん重視しなければなりませんけれども、大多数の清酒企業というものは中小企業である。これが生産調整がなくなってしまえば、大企業はシェアをぐっと伸ばされる。地方の中小酒屋さんはたちどころにやられてしまう。こういう面から考えますと、ただ一方の筋論だけで問題を解決すべきでない。総合的にこれが判断を誤ってはいけない、このように思うわけでございまして、重ねて公取委員長の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  38. 谷村裕

    ○谷村説明員 供給能力に多少の余裕等はございます。その点は御指摘のとおりであると思いますが、本来生産費が低い、あるいは能率のいい企業がその企業の思う存分に行動できるという形になっていないという点が、通常の市場で自由な競争が行なわれている場合とは違うという点がまずやはりあると思います。しかし、第二に御指摘にありましたように、かような不況カルテルによって構造改善をはかっていこうとしている、そのこと自体は私は必要なことであると思っておりますので、これを大蔵省の御要請に応じて公取当局といたしましても承認いたしているわけでございまして、願わくは、そういう体制のもとにおいて消費者の利益を害しないような形で、今回のやむを得ないと考えられているような値上げの問題も、御指導によってうまくやっていただきたいというのが私ども考え方でございます。
  39. 藤井勝志

    ○藤井委員 昭和三十九年の六月初めからでございましたか、清酒価格というのがいわゆる自由価格に制度が移行した。それから後、いわゆる基準価格廃止後の価格指導について、大蔵省としてはその価格指導の基本的なかまえとして、原則としては業界の自主性にゆだねて、当局は介入をしない。ただし、建て値が消費者保護のための上限をこえ、または酒税保全のための下限を下回るような極端なものについては行政指導をする、こういった通達を出されておることを聞いておりますが、消費者保護の上限あるいは酒税保全のための下限という、ここら辺はどういうところで判断をするんですか。判断の基準ですね、これをちょっと、できるだけ具体的にお教え願いたい、こう思います。
  40. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 お答えいたします。  いまの御質問にございました上限でございます。これは実は内部的に、外に公表しておるわけではございませんが、内部的な基準といたしまして、値上げの場合に、もちろん先生おっしゃるように自由価格でございますので押える権限はございませんけれども届け出を税務署に出す場合、上限値というものを一応内部的に腹に持っておりまして、それをこえるものは極力押えたいということで上限値を実際は定めてございます。これは実は級別課税制度と申しまして、現在特級、一級、二級の級別がございますので、その二級酒、要するに税率が違うものですから、税額の低い二級酒が極端な値上げをする、したがいまして生産者の手取りが非常にふえる、そういうことにならないように権衡、バランスをとる、そういう意味で上限をきめておるわけでございます。  それから下限で、どの辺までいったらいまの先生のおっしゃる酒税保全上非常に重大な支障があると見るのかというお話でございますが、これは私どもといたしましては、適正な競争によりまして消費者サービスをいたす、これはまことに願わしいことだと思っておりますが、たとえば販売でございましたら仕入れ値段がございます。それに販売の経費もかかるわけでございます。やはりそのほかに原価外の要素というものもございます。そういうものを含めまして、それを極端に割るような低価格で販売する、そういうことになりますると、これはそれがそう長続きするものとは思いませんけれども、それがほかに波及いたしましてほかの小売り業者にも影響を及ぼす。全体として市場が乱れてくる。そういうことになりますると酒税保全上も問題が出てくる。そういうわけで、問題としては大体その辺をめどとして下限といいますか、極端な下の値段をめどに置きまして行政指導しておるわけでございます。
  41. 藤井勝志

    ○藤井委員 実際下限というのが、さじかげんというか、なかなかむずかしい実際の運営になると思うのですが、この通達を出されたとき、当局は業者から要請があった場合には会合等に出席して相談に大いに乗ってやれ、こういうようなことになっております。したがって私は、一斉値上げという問題について、他の品物とはおのずから取り扱いが違い、結果的には二級、一級六十円、特級九十円、いかにも独禁法の精神に違反するような結果をもたらすということに感じられますけれども、実際の運営、価格形成の実態から見ると、基準価格制度はなくなったけれども、やはり自由価格でもない。そこら辺のあわいをねらいながらきめていく。そうなれば、業界は長年酒造組合というものがありますから、やはり常識的に適当なところで相場をきめざるを得ない。あなたがきめるならおれもきめる、別にそう意識的になにしたわけじゃないが、以心伝心そういう結果に相なってくる。これはまさに生産カルテル調整中の酒造業界としてはけしからぬことだというように一律にきめつけていくべき性質のものではない。実態から見て判断すべきである。同時にまた、これが一律に問題を追及して生産カルテルをはずさんか、先ほどお話ししたように大多数の中小企業である酒屋さんが大企業にのまれてしまう、シェアを奪われてしまう。このことを考えた場合は、私は中小企業対策として、また別の角度から慎重な配慮をしてもらいたい。これは公取並びに大蔵省のほうにお願いをしておきます。  最後に、私は別の角度からお尋ねをいたしたいのですが、最近農工一体論あるいはまた工場の地方分散、こういったことを盛んにいっておりますが、これは時代の要請として大いにそういう方向にいかなければならぬ。考えてみると、清酒業というものは昔から米どころの農村には大体あるわけですね。それがだんだん自由競争という線、能率のいいところへどんどん吸収されてくる。これも一つはやむを得ない大勢でございましょうけれども、願わくは、やはり清酒業の実態から見れば、原料米と水と労働力、こういったものが技術的に結びついてりっぱな地酒ができるわけでございますから、そういう地場産業を育成し——かつて歴史を持ったいわゆる農村工業である酒屋さんというものが銘柄を追い、大企業へ集中するということは、これはやはりただ一方的にそれをのみ追求すべきではない。総合的に施策を進めていくべきである、こういうふうに思うわけでございまして、こういう面において大蔵省としては構造改善をひとつ大いに積極的に進めていただいて、地場産業としての清酒製造業が各地方にも健全な姿で残っていく、こういったことを私は積極的に考えるべきである、このように思いますが、担当の局としてはいかがお考えでございましょうか。
  42. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 先生御指摘のように、地方の酒屋にはその地域の需要に密着した地場酒屋といいますか、地方酒屋といいますか、そういうものがございます。そういうものはそれぞれ存立の基盤があるわけでございまして、したがって構造改善事業の対策といたしましても、私どもといたしましてもそういうものを積極的に育成していく、そういう方向で体質を改善していく、そういう方向で対処してまいりたいと思っております。
  43. 藤井勝志

    ○藤井委員 これは最後にお願いをしておきます。  一つは、いまの問題に関連いたしまして、これは私の郷里岡山県でございますが、立地条件そのほかからも由来しておりますけれども、おけ売りというものが非常に盛んなわけでございます。かっておけ売りは不正常取引というか、そういった取り扱いをするような考えも間々見受けられたわけでございますけれども、これはだいぶ認識が改まりまして、おけ売りというものもいわゆるプロダクションチームという、こういった線でおのおの持ち味を生かしてこれが企業が成り立っておる、成り立つべきだ、こういう考え方に変わっていっておりますが、私は、おけ売りの場合も、みずてんでいくようなものでなくて、ほんとうに契約して取引するという、こういったおけ売りの取引については、これが公正な取引、正常な取引が行なわれるように積極的に指導すべきである、このように思います。  それともう一つ、これも私意見を述べて、時間がないので終わらしていただきます。いまの清酒業の値上げ問題ですね、もう具体的な数字は省略いたしますけれども、ここ数年来、清酒製造業に従事している労働賃、働き手の賃金あるいはまた原料米の価格の値上がりですね、こういったものを考えると、現在私の承知している地方の中小企業の酒屋さんが値上げを要求している程度のものは、これはコストカバーにも満たないようなものである、こういった認識を持っておりますので、ひとつよくその点は配慮されまして、ただ法律を形式的にのみ解釈をしないで、産業の実態をよく把握し、総合的な判断において、大いに中小企業対策の観点、農村のいわゆる地方工業分散という、こういう高次の次元で判断を願いたい、このように思います。最後に大蔵大臣、この考えに対してどういうようにお考えでしょうか。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 まことに現実的な御意見だと思います。いま値上げの動きがあることはお話しのとおりでありますが、これに対しましては、なるべく値上げはしていただきたくない、こういう態度では臨みますが、ぎりぎりのところの値上げのようなところが多いのでやむを得ない面も多々ある、かように見ておるんです。公取法との関係をいろいろ御論議になりましたが、いまカルテルは構造改善対策、これとうらはらをなして進行中であります。いまのうちはカルテルでやっていきなさい、しかし四十八年末には構造改善は終わりますよ、終わりますればカルテルは撤廃いたしますよ、そういうことが刺激になりましていま構造改善そのものが進行中である、こういうような事態でありますので、その関係も十分念頭に置きながら構造改善が適正にいくように、また同時に物価問題への影響がなるべく穏やかに進み得るように、両々相立ち得るようなことが大事である、かように考えまして、具体的に現実的に措置してまいりたい、かように考えます。
  45. 毛利松平

  46. 貝沼次郎

    貝沼委員 最近非常に問題になっております一般会計の予備費につきまして質問いたします。  初めに、この予備費が一千百億から現在どれぐらい残が残っているか。これについて主計局からお願いいたします。
  47. 橋口收

    ○橋口説明員 ただいま手元に計数を持っておりませんので、後ほど正確にはお答え申し上げたいと思いますが、昭和四十五年度当初予算におきまして千百億円の予備費を計上いたしておるわけでございます。現在は千億を割りまして九百億円台というふうに記憶いたしておりますが、後ほど正確にお答えを申し上げたいと思います。
  48. 貝沼次郎

    貝沼委員 この九百億円の残の中でいろいろ予想されるものが支払われていかなければならないわけでありますけれども、ざっと私が計算したところでは非常にこれが問題あるのではないかと思うわけであります。そこで項目だけを見ましても、たとえば人事院勧告によるベースアップの問題、それからあとは農林省関係の良質米奨励金等の問題、それから品種改良に対する奨励金の問題とかあるいは米産調整奨励金であるとか、そのほか食管関係のもの、また古々米の問題、台風シーズンにおける被害、災害、そしてまた現在最も大きな問題となっている公害に対する問題、こういうようなことがあるわけであります。その他いろいろありますが、大きな項目として大体そういうのがあるのではないか。  そこで、ここでもう一回主計局に対しまして、今年度人事院勧告におけるベースアップ分としてどれぐらい必要なのか、その額を言っていただきたいと思います。
  49. 橋口收

    ○橋口説明員 本年度の人事院勧告を実施いたしますために、一般会計の負担になります追加財政需要額といたしましては約千八百億円でございます。一般会計当初予算におきまして約六百四十億円の経費を計上いたしてございますので、現実的には今後必要な財政需要となります金額は約千二百億円台でございます。
  50. 貝沼次郎

    貝沼委員 ベースアップ分が大体千二百億円、実際これだけ見ても九百億円相当の予備費ではとうていまかない切れないわけでありますけれども、そのほか良質米奨励金とかあるいは品種改良奨励金とかあるいは米産調整奨励金であるとか、こういう農林省関係の金額につきまして食糧庁からお願いいたします。
  51. 内村良英

    ○内村説明員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問は、八月十五日現在の作柄概況が発表になって、食管の買い入れがふえるのじゃないかということに基づく御質問かと思いますが、この点につきましては、八月十五日の作柄概況はまだ数量、収穫高までいっておりませんので、はっきりしたことを申し上げることはできないのでございますが、作況指数は一〇四ということになっております。そこで、これで一体どれぐらい米がとれるのかというものを概算いたしますと、千二百九十万トンということに相なります。食糧管理特別会計の本年度の予算は、千二百四十万トンの生産量があるということを前提にいたしまして予算が編成になっておりまして、政府の買い入れ見込み量は六百五十万トンとなっております。そこで作がふえましても、農家の保有がふえますので、六百八十万トンくらいに買い入れ見込みがなるのではないかという計算が出てまいります。これはまだ確たることを申し上げるところまで固まっておりません。と申しますのは、八月十五日現在でございますから、その後、作がさらによくなったか悪くなったかという点は、九月になって第一回の収穫予想見込みが出なければはっきりした数字を申し上げることはできないわけでございます。  そこで、どういう予算がいま組まれているかと申しますと、良質米奨励金については百二十九億、それから米品質改良奨励金については百九億、合計二百三十八億の予算が組んでございます。これがどうふえるかということにつきましては、ちょっとまだはっきりした数字を申し上げられる段階ではございません。いずれにいたしましても六百五十万トン政府買い入れというものを前提にいたしまして二百三十八億という金が必要になるということになっております。
  52. 貝沼次郎

    貝沼委員 さらに、現在各省庁から公害あるいは災害について、こういうふうにすれば公害は防げる、こういうふうな意味からいろいろ要求が出ていると思うのでありますが、主計局としてその実情をお聞かせ願いたいと思います。
  53. 橋口收

    ○橋口説明員 先ほどお尋ねがございました昭和四十五年度の予備費の残でございますが、正確な計数を申し上げますと、現在の残額といたしましては、九百八十九億八千八百万円でございます。  公害関係の予算につきましては、当初予算におきまして相当程度の経費を計上いたしておるわけでございますが、その後公害関係の情勢の変化に応じまして、関係省庁から大蔵省に対しまして経費の支出の実行過程における調整について御相談を受けている段階でございます。現在のところ関係各省と折衝いたしておりますが、公害対策関係経費のうち、下水道事業、公園事業等も含めましてかなりの金額の要求があるわけでございます。具体的には関係省庁と折衝いたしておりますが、近日中に結論を得る段階まで事務的な検討が進んでおる状況でございます。
  54. 貝沼次郎

    貝沼委員 かなりの額では実際全然わからないわけでございますけれども、現在その数字を出す段階でなければこれはしかたがないと思いますが、いずれにいたしましても九百八十九億——大体九百九十億ですね。この予備費九百九十億の中からいま言ったようなものだけを考えてみましても、これはとうていまかない切れるものではないと思うわけであります。そういうようなところから、今後台風が来たりなんかすればさらにふえるのではないかと思いますし、政府もさらに公害については積極的な姿勢を見せておるし、総理大臣が中心になって公害をやっておるわけでありますから、現在国民にその姿勢を見せるためにはやはりこの際ここで補正予算を組んで、そうしてがっちりとした体制をつくらなければならないのではないかと思いますが、大蔵大臣はこの点についてどのような見解を持っておりますか。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 本年度の予算の執行に対しましては、財源としていまお答え申し上げましたように九百九十億円ばかりあるわけです。それに対しまして財政需要、これが何といっても大口が人事院勧告、千二百億ちょっとこえる状態じゃあるまいか。第二が米の品質格差向上改善ですね、品質改善奨励金、これが二百三十八億円でしたか。その上さらに米の生産調整、これはまだはっきり金額はわかりませんけれども、かなりの額が必要になってくる。その上さらに災害等が今後どういうふうになってくるか、そういう点、この辺がおも立った需要項目じゃないか。それにいたしましてもかなりの額になるわけであります。  そういう事態をどういうふうに処置してまいるかということにつきましては、とにかくまず予備費を充当する。これは足りないのですから、その足らないところはどうするかというと、本年度の既定経費の整理、節約、これをできる限りやってみたい、かように考えております。できる限りやってみまして、それでどうしても追っつかぬというような事態がありました際に、さらに節約を強化するのか、あるいは補正というところにいくのか、それはその時点において考えてみたい、かように考えておりますが、当面とにかく予備費がありますので、これに合わして整理、節約をいたしますれば当面はとにかく間に合う状態にあるわけであります。御指摘の公害、この問題につきましては、いま橋口次長から申し上げましたように各省から要求が出ておりまして、まあ今週中か、あるいは来週早々にでも決定いたしたい、こういうふうに存じますが、重要な公害対策でございますので、これに事欠かせるようなことは考えておりません。
  56. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいま大臣の答弁があったわけでありますが、新聞によりますと、大臣は閣議で八百億円の節約を求めたとあります。この八百億円の節約でも、はたしてそれができるかどうかということは、私はとうていこれはできないのではないかと思います。しかも政府は、今年は内政の年とうたい、そうして各省庁の話を聞いてみますと、予算が少なくてできないという答弁がどこでも見えておるようであります。そういうようなところをさらに節約をし、そしてあくまでもこの予算の中でやるという姿勢がはたして妥当なのかどうかということはちょっと問題があるかと思います。さらに、八月の十九日の四党政調、政審会長会談で四党で一致したものがあります。それはすでに政府にも申し出てあるそうでありますけれども、たとえばその中の、公害実態調査をし、その結果を国民に公表するとともに、汚染危険区域の住民の健康診断を公費で実施する、こういったことがあります。まだそのほかありますが、これ一つ見ましても、やはり金は相当かかるわけであります。こういった点を考慮に入れて、そうしてはたしていま大臣がおっしゃったように、できるところまでということでありますけれども、私は初めからこれはできないのではないかと思いますので、もう一度大臣にお伺いしたいと思いますが、あくまでも総合予算主義の考えでいこうとするのかどうか、このところを聞いておきたいと思います。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 総合予算主義は、これはあくまでも堅持してまいりたい、こういうふうに考えております。しかし、総合予算主義につきましては、私はかねがね申し上げておるところでございますが、異常な事態、また非常な事態がありました場合に、追加補正、これを排斥する、そういう趣旨じゃないんです。総合予算主義というのはあくまでも年度の初頭におきまして国の需要を総合的に勘案する、それに対して総合的財源対策を講ずる、こういうことなんであります。この旗はあくまでも貫いていきたい、今後といえども変わることはいたしたくない、かように考えております。  節約八百億円というような新聞記事というのですが、なかなか八百億円というのはお話しのとおりむずかしゅうございます。しかしとにかくできるところまで整理、節約をやってみたい。不要不急は押えたい。押えるゆえんのものは、公害等必要な方面に資金を充当したい、こういう趣旨でありまして、必要なる諸施策につきまして財政上それが支障があるというようなことには絶対にいたしたくない、かように考えております。
  58. 貝沼次郎

    貝沼委員 公害は非常に重大な問題でありますので、大臣に特にその面を重要視していただいて積極的にやっていただきたいと思います。  さらに次には、八月の十日、参議院の公害対策特別委員会におきまして、山中総務長官の答弁の中に、公害に関する地方に対する権限委譲と、これに関連してこういうところがあります。「国のやるべきこと、並びに地方のやるべきこと、それぞれに予算措置もきちんと整ったもので措置していかなければならぬだろうというふうに考えております。」こういうところがあるわけでありますけれども、これは権限委譲をしたということに対して、たとえば交付税を増額するとか、あるいは特別交付税を考えるとか、また補助金等の措置を講ずるとか、こういうふうな意味なのかどうか。これを内閣審議官の方にお願いいたします。
  59. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまの権限委譲の関係でございますが、この点に関しましては八月二十五日の公害対策関係閣僚会議で原則的な考え方が整理されたわけでございます。環境基準につきましては原則として国でやっていく。ただ当てはめを地方の都道府県知事にゆだねる。それから規制基準につきましては、原則的に国はミニマムなものをきめまして、上積みを認める。地方公共団体あるいはその機関の長がやる。こういうようなことでございまして、取り締まり権限で国に保留されておりましたものも全部地方に委任するということできまったわけでございます。  これに関連いたしまして、このような地方の事務の増高に対応して財政的な裏づけをどうするかという点でございますが、この点は、実は同じ地方に権限を委任します場合でも、それが自治体自身の団体委任なのか、あるいは機関委任なのかということでも違ってまいるわけでございますし、これは今後それぞれの既成法規の改正の検討が進みますにつれまして検討をしていくべきものだと思っておるのでありまして、ただいまのような地方交付税の基準財政需要額の算定の中に入れるのか、あるいは財政的な補助制度を考えるのか、こういった点もその辺とにらみ合わせて検討さるべき問題であろう、かように考えておるわけでございます。
  60. 貝沼次郎

    貝沼委員 肝心かなめのところがはっきりしなかったのでありますけれども、要するに交付税の増額であるとか、あるいは特別交付税を考えるとか、そういったことは前向きに考えておるわけですか。その点をもう一度お願いします。
  61. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまの点、当然私どもとしましては、地方にこれだけの事務が委譲されるわけでございますから、公害行政が今後うまく進むかどうかということも、一にかかって地方自治体がうまくやっていけるかどうかということでございまして、その裏づけとなります財政的な問題に関しましても、できるだけ十分な裏づけがなされるということを当然念願しておるものでございます。
  62. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで大臣にお伺いしたいわけでございます。  公害対策基本法の二十三条には、「国は、地方公共団体が公害の防止に関する施策を講ずるために要する費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めなければならない。」こういうふうにあります。そこで、ただいまの答弁でもわかったわけでありますが、積極的な姿勢がうかがえるわけであります。これにつきまして、大臣は国の財政措置という立場からどのような見解を持っていらっしゃるのか。それをお聞かせ願いたいと思います。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 公害対策基本法第二十三条でしたか、その精神でやってまいります。具体的にいま交付税のお話がありましたが、交付税率を引き上げるということにつきましては、地方財政の現状から見ましてこれは考えておりません。しかし、権限が国から地方に委譲されるというようなことに伴いまして、地方でもいろいろ負担がふえてまいるであろう、それはそのふえる事項の性格によりまして、国におきましても適宜な援助をしていく、かような考えであります。
  64. 貝沼次郎

    貝沼委員 どうも抽象的で、はっきりわからなかったのでありますが、要するに、権限委譲をしても実際金がなければ、これは地方は非常に困ってしまうわけであります。たとえば規制一つするにしても、あるいはそのすんでいる魚介類であるとか、そういったことを一つ検査するにしても、やはり相当の金がかかるわけであります。現在各地方でやっていることの中にも、実際金がなくてできないという声が圧倒的に多い。その上さらに国から権限委譲はされたものの、実際金が思うようにないというふうになると、これは目も当てられないような状態になると思うのであります。そういう観点から、大蔵大臣はこの財政措置に対しては積極的に進めるようお願いをしたいと思います。ことに、交付税を受けているところはまだそれはまあまあといたしましても——まあまあまではいかないわけですが、不交付団体の、たとえば大都市なんかにおけるところの公害が実は非常に大きいわけであります。こういうところに対して特別交付税というふうなかっこうのものでも考えていくほうがいいのではないかと思うわけでありますが、大臣はこの点についてはどのような見解をお持ちでしょう。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 公害と申しますが、これは金が非常にかかります。しかし一番かかるのは、これは企業がかかるのです。国や地方公共団体、これはその企業でかかる額に比べますとまあ非常に軽微なものである、こういうふうに考えますが、それにしてもかなりの額が中央、地方の財政にのしかかってくる、こういうふうに思います。  ただ、その場合におきまして、地方団体に対し交付税率を引き上げするかということは、これはいま地方財政の現状から見て適当ではない、こういうふうに考えます。そういう際に、交付団体につきましては、あるいは交付税の算定上、財政需要に公害対策費をどういうふうに織り込むかという問題もありましょう。また、特別交付税を充当するということもあるいは考えられるかもしれない、あるいは、まあ補助金というようなことが考えられるかもしれません。  それから、不交付団体ですね、これにつきましては交付税がないわけでありまするから、その自体の財政力をもってやっていくということになりますが、そういう際に国がどういう援助をするか。これは、そのやっていく公害対策事業の内容等に応じまして、補助金でありますとか、そういうようなことが考えられるんじゃないか、そういうふうに考えます。  いずれにいたしましても、これは公害対策、非常に重要であり、その負担は地方財政にもかなりありますので、さような援助、協力の措置を考えなければならぬ、かように考えております。
  66. 貝沼次郎

    貝沼委員 以上で終わります。
  67. 毛利松平

    毛利委員長 春日君。
  68. 春日一幸

    ○春日委員 私は、当面する税制上の重要課題について、第一番は間接税への重点移行の問題、第二番目には自動車新税創設の問題、第三番目には付加価値税を創設するかしないかという問題、第四番目は土地税制の問題と、この四点について政府の見解とその方針をただしたいと存じます。  第一番に、間接税の重点移行の問題でございまするが、この問題は本年度に入ってから論議が非常にたくましく展開されてまいりまして、間接税の重点移行はもはや避けがたい状況にあるかのごとくに受けとめられておるのでございます。私はこの際、徴税行政の原点に立って、こういうような方針が是か非か、これを根本的に検討してみる必要があると思うのでございます。  言うまでもないことでありますが、直接税は何といっても負担応能の原則から考えましてまあ理想的な税制の柱であろう、なおまた、所得再配分の機能をも発揮するという点において、これはきわめてメリットの多い制度であるとされておるのでございます。これに対して間接税の評価でありまするが、これは所得が大きくてもあるいは小さくても、そのものに対して負担を求めていくという、こういうことでありまするから、したがって、税制そのものとしては逆進性を持つものであり、よってもって大衆負担の傾向を強めていく、こういうことにあろうと思うのでございます。したがいまして、ここにこの税の重点を間接税に移行せしめるというこの考え方は、言うならば、税負担の公平をそこなうことにはならないか、あるいは大衆課税的性格というものを強めることにならないか。いろいろこういう点において根本的な問題があると思うのでありますが、大臣はこの点についての見解はいかがでありますか。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 非常に基本的な問題にお触れになっておりますが、この間接税、直接税に対する財政学的に見ましての評価、それにつきまして、私は春日さんと同じ見解を持ちます。ただ、私が申し上げておりますのは、春日さんがおっしゃるように間接税重点主義じゃないんです。いま直接税に偏重しておる。これを何分か是正をする必要がある。その是正の方法としては、直接税を減らし間接税を増徴する、こういう方法をとりたい、こういうことなんでありまして、今後の日本の税制を間接税中心主義へ持っていくんだ、こういうように受け取られると、これは私の考えるところではありませんから、その点はひとつ御承知おき願いたいと思います。  そこで、直接税の問題でありますが、これはどうも学問的には、負担の公平、負担能力に応ずる税制だという性格を持っております。おりますが、これがかさみまするとどうしても負担感というものがまつわってくる。今日、わが国の国民の租税負担は先進諸国に比べて必ずしも高いというほどじゃないと思いますが、しかしそれにもかかわらず、国税だとかいろいろ税に対する訴えがある。これは何かというと、やはり直接税、特に所得税が高い、こういうことのように思いますので、所得税減税をいたしたい。そういう財源を一体どこに求めるかということですね。そういうことから間接税。これもいろいろ考えまして、なるべく物価政策上その他の見地から弊害を伴わない、そういう形の間接税を模索してみたい、こういう考えでございます。
  70. 春日一幸

    ○春日委員 その重点移行の問題でありますが、この問題についてはいろいろとその国々に特色があり、それに基づいて制度が組まれておると思うのでございます。わが国の四十五年度の直接税、間接税の対比率は、直接税が六五・七%、これに対する間接税が三四・三%と、こういうふうになっておりますから、大臣はおそらくこの開きをできるだけならしていこう、必ずしも間接税に中心的に集約していこうというお考えでないことは、私もよく了承いたしております。けれども、このような対比のアンバランスというものは、アメリカの現状から判断をいたしますと、アメリカは所得税中心主義の税体系で、直接税のウエートが全体の八七・九%ということになっておるのでございまして、したがいまして、シャウプ勧告というものを基準として組み立てられたわが国の税制と、それからアメリカそのものの現行税制というものを対比してみますと、これは必ずしも直接税が重過ぎて、はなはだしく均衡を害しておるというものでもないと思うのでございます。  ただいま大臣が負担感ということを言われておりますけれども、この負担感というようなものは主観的な要素であって、私はすべからく、税制というものを判断をするときにはこのような主観的な要素を前面に押し立てるのではなくして、むしろこれはその負担という客観的なものさし、これによって負担応能の原則と申しますか、担税力強き者にはたくさんの税金を払ってもらう、担税力弱き者には税金を軽くしていく、こういうふうにあるべきであって、負担感自体が大きいからといって、実際問題としてその客観的な負担そのものの評価を誤るようなことがあっては相ならぬと思うが、この点の感覚はいかがでありますか。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 さように考えます。それだからこそ直接税中心主義、これは変えていかない。しかし、直接税があなたのおっしゃるように妥当な税制であるというふうにいたしましても、これがあまり行き過ぎますとどうしても負担感という、国民に主観的な問題が出てくる。これもまた重視をしなければならぬ問題である、こういうふうに考えるのです。  いまアメリカの話が出ましたが、アメリカはわが国に比べまして一人当たりの国民所得が三倍もある、こういうような国でありますので、わが国とちょっと事情が違うのじゃないか。わが国と大体並べ得る西欧の先進諸国、こういう国々をごらん願いたい、こういうふうに思いますが、これらの国々におきましてはかなり大幅に間接税を取り上げておる、こういう状況であることを御承知願いたいのであります。
  72. 春日一幸

    ○春日委員 私は、こういう問題についてはそういうようなムードがかもし出されてきた国内事情というものがいろいろあると思うのでございます。たとえば、所得税を納めております諸君が、全く負担感が大き過ぎるという、そのような立場から軽減を強く求めてまいっておる、これに民主的にこたえていこう、そういう反応もあるわけであろうと思いますし、もう一つは、一方財政需要というものがあるであろう。その二つの点を考えてみましても、そういうような感情論、といって言い切るわけではございませんけれども、現実の問題といたしまして、現在法人税あるいは租税特別措置法その他においてなお大いに考慮する余地のある現段階において、いきなり財源調達の手段をこういう大衆負担に求めていくというようなあり方は、何かしら税制そのものの根源をそこねていくような感じがするわけでございます。  問題は、負担応能の原則、それから所得再配分の機能、この二つの大きな柱というものを原点にしていろいろと政策を判断していくということになりますと、いま大臣も、所得税中心主義である、その方針は堅持するとは言われておりますけれども、それならばそれなりに、こういうような間接税移行のムードについては、やはりそういうものが徴税行政の本旨に逆行するものである、こういう理論というものも厳然として歯どめとして示されてよいのではないかと思うが、この点の見解については、なおきょうは幾らか時間がございますから、十分徴税理論の基本的な問題として御検討を願いたいと思うのでございます。  第二番目は、自動車新税の問題でございますが、これは申し上げるまでもなく、去年の秋ごろ本委員会で私が質問をいたしましたときには、大臣はむしろ反対の意向を示されました。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕 しかるところ、昨今自民党の政調関係部会では、これを容認せざるを得ないかもしれないというような方向に意見が固められつつあると新聞承知をいたしました。  申し上げるまでもなく、自動車については製造段階で物品税がございます。流通段階で自動車取得税がございます。保有段階で自動車税がある。なおその利用段階ではガソリン税その他の税金がいろいろとかけられておるわけでございまして、自動車には全くたいへんな税金がかかっておるわけでございます。伝えられるところによりますと、道路を整備する、拡充する、そういう社会資本を充実するためには、新財源をこの自動車新税に求めようというのでございますが、私どもがざっと積算しております段階では、現在この自動車に対してかけられております税金、自動車関係税金と、それから道路投資額というようなものは、むしろ税金のほうが上回っておるのではないかと思われるのでありますが、ここに、こういうような現状を踏まえてさらに新税というものが大きくかぶされるということになりますと、これは何かしらどうも便宜主義的であり、あるいは政策の公正を欠くのそしりはないかと考えるのでありますが、この点、大蔵大臣としての見識はいかがでありますか。どんなふうにお考えになっておりますか。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 昨年もお尋ねをいただいたことを思い出しますが、あのとき別に反対というふうに申し上げてはおりません。またこれに賛成だとも申し上げていないのです。そういう意見もあるが、これは非常に重大な問題だから慎重に検討するのだ、こういうふうにお答えを申し上げておるわけなんです。今日もまたそういうお答えをせざるを得ないような状態であります。  現実の問題は、いま道路五カ年計画というものがスタートをした。これが五カ年間でありますが、財源において三千億ばかり足らないことに見通されるわけであります。その財源をどういうふうに調達するか、こういう問題があるわけであります。その他、総合交通体系と申しますか、国鉄の問題を一体どうするかというむずかしい問題にも当面をいたしております。そういうような交通関係の費用、財源をどういうふうに調達するか。これにつきましては、当委員会の御論議、また税制調査会にも検討方をお願いしておりますが、その御意向、各方面の意向を聞き、また大蔵省におきましても独自の検討をいたしまして、慎重、妥当な線でこれを決定したい、こういうように考えております。まだ具体的な構想は固めておらない、きょうに御了承願います。
  74. 春日一幸

    ○春日委員 自民党の関係部会でこれについての意思決定か意思表示がなされておりまして、かつは来年度予算の大綱がもうぼつぼつ形づけられております段階で、大臣の方針がなお固まっていないということでございますが、問題は大きいのでございますから、慎重を期せられることはわかるのでございますけれども関係業界では御承知のようにこの問題をひっさげてあちらこちらで大会が行なわれておるわけであります。断固阻止、断固反対でございます。したがって、大臣が慎重を期せられておることは多とするのではございますけれども、しかし本委員会の論議は、こういうものを創設せよというような論議は片言隻句もございません。こういう意味で、よく慎重を期せられるということは、こういうものは断固ひとつ阻止をしてもらいたいと思う。  いまその道路財源だとか、あるいは社会資本というものを充実する財源いかんという問題がございまするが、道路だとか社会資本というものは、言うまでもなく国民の、国家の財産でございます。しかも現代の国民だけがそれを利用するものではなくして、後世の国民があわせてこれを利用するものである。したがって、そういうような新財源は現世代に生きる日本国民だけの負担で弁ずるということはいかがなものであろうか。そういうような長期的展望に立ちまするならば、そういうような財源はすべからく長期的な公債あるいは地方債、そういうようなもので国民的、国家的資産を造成する、そして子々孫々までそれを活用、利用することによってフェーバーを受ける。フェーバーの反対給付としてその公債、地方債を払っていく、これは当然論理にかなった財政の組み方ではないかと思うのでありまするが、この点について大臣の見解はいかがでありますか。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 公債をそういう社会資本のための財源になすべしという御議論、その御議論の根拠、それにつきましては春日さんのおっしゃるような考え方が一応あるわけです。しかし、いま当面国が当面しておる、特に大蔵省が当面しておる最大の問題は、何といってもインフレ化させてはならない、こういう問題であります。そういうことで、どうしても公債につきましてはこれを抑制的な考え方をいたしたい、こういうふうに考えておる。春日さんのいまのお話、これは、日本経済が不況時であって、これを刺激する必要があるというような際にはまさにそういう考え方が妥当である、私はこういうふうに考えますが、妥当なそういう御議論もいまのこの時世におきましては妥当でない、かように考えております。
  76. 春日一幸

    ○春日委員 そういう財政のメカニズムについては十分検討あってしかるべきだと思うのではございますけれども、しかし、日本経済というものの現状は、ボリュームというものはうんと大きくなっておるのでございますから、したがって、そういうような全体を十分達観されまして、いま自動車関係がああいう大きな税負担の中にあえいでおるにもかかわらず、さらにこれに大きな荷物をくくりつけるというような苛斂誅求は十分良心的にチェックされてしかるべき問題であると考えます。自動車関係業界、特にトラック業界なんか、こんなものをかけられれば運賃にはね返る、はね返れば物価が高くなる、当然の事柄であります。どうかひとつ大蔵大臣の英知をもってこれを未然に阻止されて、全国の関係業者が非常に不安におののいておりまするので、この問題についてすみやかにその不安をなくされまするように御努力を願いたい。  それから第三点は、付加価値税の問題でございまするが、この付加価値税を創設するかしないかという問題は、この間接税の重点移行の切り札だというように扱われがちなんでございます。一体大蔵大臣は、この付加価値税を間接税の重点移行のテーマと並んで近く実施するような意図がおありであるのか。あるいは少なくとも来年度においては、あるいは再来年度においては——こういうような大衆負担を強め、あるいは中小企業を脅かすこういう制度については、かつて全国的な猛反対があった経過にかんがみて、本年度においても来年度においても、ここしばらくはそういうようなことは考えていないんだ、こういうことなのか、この点ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 付加価値税につきましては、昭和四十六年とかあるいは昭和四十七年、そういう時点においてこれを実施するというようなことは毛頭考えておりません。ただ、長期展望といたしましてこの税制は非常に魅力のある税制だ、そういうふうに考えますので、これがわが国においても採用し得るかどうかという点につきましては積極的にひとつ調査検討してみたい、こういうふうに考えております。そうして、大体これは、付加価値税推進論者におきましても、準備期間として三年、五年要る、こういうふうに言っているので、当面の問題ではないのです。長期展望としての税制、こういうように御了承を願います。
  78. 春日一幸

    ○春日委員 やや安心をいたしました。  ただ問題は、こういう重大問題がわずか二十五分間というようなことはけしからぬと思うのだ。実際問題として一つの問題だって一時間、二時間かかる問題。あと土地税制に関する問題をやらなければいけないのだが、月に一回しか開かれない本委員会で、とにかく大蔵大臣が二時間しか出られないということは、次の国政万般、大任をになおうとする福田総理候補として、政治家的にも神経を疑わざるを得ないのだ。それにしても、あと何分か知らぬけれども、土地税制に関する問題についてお伺いをいたしたい。  先回、私どもの党大会のさなか、岡沢君がこの土地関係税制について、わが党の案を提示しつつ政府に善処方を求めました。その一つは未利用地税の問題、それから土地高価譲渡税の問題、第三は市街地開発税の問題、この三税制を新しく創設するの意思はないか、こういう質問を岡沢君がやりまして、当時総理は、趣旨としては大いにけっこう、それから大蔵大臣は、賛成であると答弁をされております。  その後この問題は、六月五日、本年度第一回目の税制調査会の総会で大臣から諮問が発せられておりますが、その検討項目の一つとして、土地税制の洗い直し、それから公示価格を越す土地譲渡に対する高率の超過譲渡税の創設、これをあげられて諮問を発せられております。一体、来年度の税制改革の中でどういうふうにこれを取り扱われる御所存か、御方針を承りたいと思います。
  79. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま御指摘の諸問題は、できれば四十六年度においてこれを取り上げてみたい、こういうふうに考えておるのです。ただ、第一の未利用地税、これにつきましては、何が未利用地であるかという点につきまして非常に技術的に判定がむずかしいというようなことで、いまの私の頭の中では固定資産税をそういうアイデアに活用できぬか、こういうふうに考えておるのです。なおしかし、さらに未利用地税というような思想、これを伸ばし得るかどうか検討してみたい、かような考えであります。それから第二の土地の高価譲渡ですが、この問題につきましてはすでにお答え申しておりますが、これを、ある基準を越えた譲渡価格、その差額を全部徴収するというふうにするがいいか、あるいは大部分を徴収するというふうにしたらいいか、その辺は問題があると思いますが、とにかくそういう方向でひとつ考えてみたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  80. 春日一幸

    ○春日委員 これは税制に対しますいろいろな国民の不満がございます。たとえば、その負担をする者とその益を受ける者との断絶、これを是正していく、あるいは地価の高騰を抑制していく、二つの政策目的を持っておると思うのでございます。この負担と受益の断絶ということは、一般現行土地税制においてその顕著なものがある。これを解消してまいりますためには、いま申し述べましたような三つの新しい課税というものを考えていくのでなければ、この懸案というものはいつまでたっても解決することができないのではないか、このことが強く案ぜられるわけでございます。  先回の岡沢質問に対する大臣答弁も詳細に読み返してみたのでありまするが、この土地公示制度というものも部分的でしかない、あるいはまたこれが必ずしも権威が一〇〇%客観的に認められる状態にはない、こういうことで、その高価譲渡に対する課税ということについては、まず公示制度というものを洗い直す、あるいはもっと思い切って拡充強化していかなければその機能を高めることはできない、こういうような御答弁がなされておりました。  それで、ただいまの御答弁でありまするが、これはある一定の基準を設けるというのでありまするが、私どもの主張は、公示価格を越えて売買された部分についてはこれを一〇〇%国へ徴収する、税金でこれを収納する。そういう形になりますれば、公示価格以上で売るということは経済効果がなくなるわけでございますね。よってもって土地の値上がりを、公示価格がストップ令的な機能を果たすことにはならないか。ですから、この公示価格を創設したことの意図は値上がりをそこでとめるということにあるのだから、初心に返って、それが政策のねらいであるならば、そのねらいが現実のものになり得るように、いま申し上げたようなそれを越えての譲渡については一〇〇%課税ということは当然あってしかるべきであり、あらねば公示制度を設けたことは単なる目安価格になって意味をなさぬと思うが、この点いかがですか。  なお、来年度これを税制改正の中に織り込むとすれば、いま大臣の腹中にはどの程度の高価所得で課税をしようと考えておられるのか、この点ちょっとお示しを願いたい。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 具体的にどういう基準を越えたものが徴収さるべき価格であるかということにつきましては、まだアイデアを固めておりません。これは皆さん大蔵委員会やあるいは税制調査会、そういうところの御議論を経てきめなければならぬ、こういうふうに考えておりまするが、思想的に、考え方としては春日さんに近い考え方を私は持っております。それを具体化してみよう、そういう考えであります。
  82. 春日一幸

    ○春日委員 大いにがんばっていただくことを強く期待いたしまして、私の質問を終わります。
  83. 毛利松平

  84. 阿部助哉

    阿部(助)委員 本日は、金融機関の相次ぐ不正不祥事件についてお伺いしたいのでありますが、与えられた時間がたいへん短い。私はまず、順序からいけば事務当局に一応お伺いをし、そうして大臣に、最高責任者から総括的な御意見を賜わりたい、こう思ったのでありますが、もう大臣がお帰りになる時間が迫っておるということでありますので、たいへん私もやりにくいし不本意でありますが、大臣にまずお伺いをして、あとでまた事務当局にお伺いをする、こういうことにいたしたいと思います。  端的にお伺いをいたしますが、先ほど堀委員のほうから質問があり、私の質問の通告もございます。これについて当然大臣としては事務当局調査を聞いて検討をされたと思うのでありますが、どのような検討をされたのか、まずお伺いしたい。
  85. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の富士銀行不祥事件についてのお尋ねである、こういうふうに承知しておりますが、これは非常に異例なことなんです。この異例なことがどういう経過を経て起こってきたのか、この辺をよほど追及というか究明してみる必要がある、こういうふうに考えております。そういう究明というか検討を経た上、今後金融行政あるいは金融機関の職務執行、こういう面において改むべきところがありますれば、これはもう勇断をもって改めていかなければならぬ、さように考えておるのであります。
  86. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それにしても、異例であるとおっしゃるけれども、どこに一体一番急所があるというふうに大臣はお考えになりますか。全然まだ見当がつかない、異例であるというだけで、どこに急所があるのかということがまだ全然見当がつかないということですか。
  87. 福田赳夫

    福田国務大臣 金融機関の事務執行の仕組み、また事務執行をやっていく精神、この二つの点に問題があるのじゃあるまいか、さように考えております。
  88. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私も大蔵省の役人さんからいろいろお伺いをいたしました。だけれども、これは事務執行の技術面というような問題よりももっと大事なもの、この事件をめぐって銀行幹部の首脳の行動自体に不可解なものを幾つか感ずるわけであります。この事件を解決しようというよりも、むしろ銀行の首脳部はこれを内部的に何とか隠そうということに重点が置かれておったのじゃないか。そこに一番私はふしぎな点があるし、一番の問題点はこの辺にあるんじゃないかという感じがするのですが、大臣はどうです。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま阿部さんのお話しの点は、これは善後措置というか事後措置の範疇の問題なんです。あなたが、どういう点に問題があって起こったか、こう言うから、私は、事務執行の仕組み、それから金融マンとしての心がまえ、こういう二点に問題がある、こういうふうに申し上げたのですが、今度は善後措置ということになりますと、先ほども申し上げたわけでありますが、警察等との協力ということですね。金融業務の執行、これに熱心のあまり、正すべき綱紀を正す機会を失った、こういうような点ですね。これは善後措置の一つとしてまた反省を要する点である、かように考えます。
  90. 阿部助哉

    阿部(助)委員 善後処置もそうでありますが、首脳部の考え方、姿勢そのものにやっぱり一番大きな原因があり、また解決の場合にもやはりそこに問題があるんじゃないかと思う。大蔵省の役人さんからきのうもいろいろとお伺いをしたのでありますが、これが犯罪になるのかどうかわからないというような見解を漏らしておるわけですね。ところが本日の新聞を見ますると、もう警視庁もこれを犯罪として捜査を開始しておる。これはもうあの事件が起きた時点で、警察がやろうとやるまいと、これは詐欺行為であるというふうに私は判断をせざるを得ないのでありますが、大蔵省当局がきのうの時点でまだ、これが犯罪であるかどうか、犯罪を構成するかどうかわからないというような感覚で銀行に対する指導をやっておるとすれば、これはおかしいのではないか。まさか大臣はそんなふうにはお考えになっておらなかったと思うのですが、どうです。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 役所のほうは非常に事を法律的に考えますから、法律的に考えますると、検察、警察調査が終わり、裁判が済まなければほんとうの意味の犯罪というふうにはなりません。しかし、社会的、客観的にはこれは犯罪事件でありますから、もちろんそういう感覚をもちましてこの問題は対処しておる。ただ法的にいいますとそういう、事務当局がおっしゃるようなことになるんじゃないか、さように存じます。
  92. 阿部助哉

    阿部(助)委員 しかし、法律的裁判をやって判決が出てみなければわからないということで、そういう態度銀行の監査をやったり御指導をしておるとすれば、私はちょっとおかしいと思うのでして、これはもう当然その時点で、詐欺であるとか、横領であるとか、背任であるとかという形での段階に踏み切って監査をし、指導をすべきであったと私は思うのでありますが、これはあとで事務当局から詳しくお伺いをいたしますが、大蔵省が実際に書類を見たり——私がいまいただいておるようないろいろな書類の提示を求めたのが八月の二十八日の時点、ついこの前なんです。その間、承知をいたした時点から八月二十八日まで、一体何を指導し、監督をし、監査をしてきたのか、私にはわからない。大臣のような頭のよいベテランがこのことの指導を怠ったとも思えないのだが……。銀行局長から通達を出しておる。だけれども、出した御本人自体が同じようなことをやっておるじゃないですか。先ほど堀委員からも読み上げられたわけですけれども、あの通達には、内部だけでごちょごちょとやらないで、うみを出すものは早く出して処理しろというようなことをおっしゃっておるけれども、大蔵当局自体もこれと一緒になって、何か内部でこれを何とかしょうという考えでおったのではないかという感を深くせざるを得ないのでありますが、その点はどうなんです。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 銀行から書類をもちまして大蔵省報告がありましたのはたいへんおくれておるのですが、その前といえども、重役から口頭をもってしばしば報告は受けておるのです。   〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 しかしこの口頭の報告もたいへんおくれてからの話でありまして、事件は大体それ自体としては済んだというころの報告になっておるわけでありまして、その辺につきましても反省を要する点がある、かように考えております。
  94. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この事件は非常に異例であると大臣は先ほどおっしゃったけれども、どう考えてみても私は、一行員、そうして一外部の不良外人というような者一人や二人でこれだけのものがやれるはずがないと思うのであります。それがこういう大金が動かされたということ、しかもその事件は三月の時点、すでにこれはそういう容疑として追及されなければならない時点——それを銀行は、香港まで行員を派遣して、しかも、私に言わせれば詐欺の共犯者である不良外人と香港で会っておる。なぜこれを警察に依頼して一応逮捕をしないのか。そうすればあるいは十九億の行き場所もわかったのではないか。またこの辺で菅沼の居所を突きとめることができたのではないか。一体なぜ香港あたりで、銀行の行員を派遣してその辺でもちゃもちゃやりながらこれをやってきたのか。そうすると銀行の首脳部まで一緒になってこの十九億の隠匿をやっておるというふうにこれは思わざるを得ないのじゃないか。その辺に私は、この銀行首脳部のあり方にも非常な疑惑を持たざるを得ないし、またこれは大蔵当局の指導にも欠陥があり過ぎるのではないかという感じを持つわけですが、大臣はどうですか。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題が支店と本店との間に連絡があって行なわれたとすれば、非常な不詳事件でありまするけれども、異例じゃない。できる問題です。ところが、いままで私ども説明を聞き、そう思っておりますのは、支店だけの範囲内でこれは行なわれた。これが非常に異例であり、その支店の事務執行、そのやり方について問題がある、こういうふうに見られる点なんです。そこで、とにかく大蔵省といたしましても報告は受けておるわけでありまするが、その際には銀行局長から、すぐこれは警察と連絡をとるべき問題であるという意見を申し述べておるわけなんです。しかし、それはすべての犯罪というか、そういう行為が済んだあとの祭ということでありまして、処置はなかった、かように御了承願います。
  96. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この詳しいところは事務当局からあとでお伺いをいたしますけれども、皆さんがそう指導しても、きのうの時点ではまだ銀行からは警察に対して告訴、告発という形でのものがなされていないと、こう聞いておるのですね。そうすると、私はいろいろ調べて得た結果から見ますると、一支店で起きたというけれども、どうもその辺が不可解だ。   〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 というのは、手形も何もなしに、ただ伝票一枚であれだけのものが——外国為替だとかあるいは船荷証券だとか、そういうものは何もない、ただ菅沼という副長の伝票一枚切っただけであれだけの大きな金が次から次へとトムソンの口座に振り向けられるなんということが、一体銀行支店といえどもあり得るだろうか。しかも、雷門支店預金残高からいくと一〇%も多くの金がここに動いておるなんということに気がつかない、そんなことはどこの銀行を調べてみたってあり得ないことだと、こう言っておる。そういうあり得ないことが起きておるのでありまして、これは一行員だけでこんなものが行なえるとは私にはどうしても考えられないわけであります。ただ、残念ながら大臣のお帰りになる時間でありますのでこの問題を大臣と話し合う時間がありませんが、こういう問題が次から次へとある。先ほど堀委員からも別な問題が指摘された。私の耳にも某銀行の横浜支店での問題であるとか、いろいろなことが入っておるわけであります。そういう問題をこの際ひとつ思い切って全部うみを出して、そして金融機関に重大な反省を与え、あらためて出直すという覚悟でやらなければ、この種の問題はやはり次から次へと起きてくるのじゃないかという点で、大蔵大臣の決断を促したいと思うのですが、いかがですか。
  97. 福田赳夫

    福田国務大臣 本件につきましては、ただいま警察当局が事実の究明に当たっております。その究明を待ってこれに対する適正な処置をする。いまお話がありました、こういう機会に思いを新たにして、ひとつ銀行業務の厳格なる執行に踏み切るべしというお話、これはまことにごもっとも、そのとおりに考えます。鋭意綱紀を正していきたい、かように考えます。
  98. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで、もうすでにいろいろなところで報道されております西京都信用金庫の問題、不良貸し付け等で吸収合併をされたということになっておりますが、この問題もまたいろいろのうわさものぼっておるわけであります。それでこの際、大臣、この西京都信用金庫の不良貸し付けといわれるが、貸し付け先、その金額、そうして担保の有無、それを全部とは申し上げませんが、上位から、金額の多いほうから二十件、ひとつ資料として出させていただきたいのであります。さらにその場合、債務保証についてもそれを記載して提出をしていただきたいのでありますが、事務当局に出させることを命じてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりにいたします。
  100. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは終わります。      ————◇—————
  101. 毛利松平

  102. 福田赳夫

    福田国務大臣 ちょうどいい機会でございますので申し上げさせていただきますが、私、来たる十五日に出発いたしまして、そして十八日にブリュッセルで開かれる十カ国蔵相会議、また二十日からコペンハーゲンで開かれまするところのIMF年次総会、この両会議に出席いたし、二十四日に帰ってまいるつもりでございますが、どうか留守中はよろしくお願いいたします。      ————◇—————
  103. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  104. 堀昌雄

    堀委員 先般から話題になっておりますテレビ問題でありますが、私は実はこのテレビの価格問題については、昭和四十一年以来国会でずいぶんだびたびとこの論議をいたしてまいりました。特に四十三年の八月には本会議において佐藤総理大臣にこの問題についてお尋ねをいたしましたし、また、五月、十月の商工委員会では、当時の椎名通産大臣、当時の宮澤企画庁長官にもこの問題についてお尋ねをいたしました。当時私は、これらの問題の国内価格というものがあまりにも不当な価格であるという感じがいたしましたので、これらについて少なくとも価格内容的な、今日公表されました価格モデル的なものの提示を当時の通産省の企業局長に要求をいたしましたこともございます。残念ながら、これらの国内問題が実は影響をしているのでありましょうか、アメリカが今回関税評価差しとめをいたしましたことは、日本としてはたいへん遺憾なことでありますけれども、私は、本日は関税評価差しとめそのものの問題に触れるのではなくて、そのような背景となっておるところの国内のテレビの価格問題というものをやはりひとつ論議をしておかなければならない、こういう感じがいたすのであります。  実は、先ほど私は、当委員会清酒価格の問題について触れました。日本は諸外国と著しく商習慣が違うということで問題になっておりますところの一つに、この清酒の問題においてもリベートという問題があります。今回価格モデルが発表されました中にも、どうもさだかでない点が明らかになっておるように私ども感じるわけであります。そこでこれらの問題について、まず問題の性格から、当面国内の問題にしぼってお伺いをいたしたいのでありますが、通産大臣はこの時点で、テレビの価格問題については国内消費者のために一体何をまずなすべきとお考えになっておるか、最初にこれをお伺いいたしたいと思うのでございます。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 テレビの国内価格問題について、堀委員が何年にもわたって関心をお持ちになり、また御質問を過去においても受けましたことは御指摘のとおりでございます。私もよく記憶をいたしております。  そこで、やや長期に見ますと、テレビの価格というのは国内価格も下がってまいりましたし、品質的にもいろいろな意味で向上しておりましょうから、価格及び質の面で量産効果というものは相当あらわれておるというところまでは事実であろうと思いますが、率直に申しまして価格が非常に自由に、自由競争の中で完全に自由に構成されているものかどうかということはなかなかむずかしい問題でありまして、必ずしもはっきりそうだということが言えるのであろうか。もちろん法律違反の行為があるという意味ではございませんが、その辺のことがどうなっておるのであろうか。また、流通機構が非常に正常な姿で動いておるのであろうかどうかといったようなことについては、なおいろいろ検討しなければならない問題がある。それをもう少し検討をいたしまして、そうして、もしそこらに問題があるのならば、その問題を正すことによって国内の消費者が大きな利益を得るようにしなければならない。ただいまそういうふうに考えておるわけでございます。
  106. 堀昌雄

    堀委員 あわせて、経済企画庁長官は、国民のための物価という観点から今度の問題についてどうお考えになっておるかをお答えいただきたいと思います。
  107. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 通産大臣からお話がありましたが、やはり実態をよくつかむ、これが大事だろうと思います。高いのか安いのか、この判断はいろいろな角度からなされるわけでありますから、そうしてまた、単に高いとか安いとかいうことだけでもって、われわれが今日どうする、個々の価格について云々するというところにはわれわれとしてはいっておりません。そういう意味におきましては、今日われわれのなし得ることは、いま話が出ましたように、いわゆる自由なる競争条件のもとにおいて価格の形成が行なわれておるかどうか。それについて疑いがあれば、これは当然公正取引委員会等の調査を待たなければなりませんし、そうした見地からこの問題の成り行きを実は十分見守っておる、こういうのが現状でございます。
  108. 堀昌雄

    堀委員 実は私が今度の価格の発表について非常に疑問を感じておりますことは、私どもが昭和四十一年の十二月にこの問題を取り上げましたときには、これは生産台数がまだ五十万台程度の生産台数であったときであります。その当時取り上げました価格が、輸出価格はやはり六万五千円、国内価格十九万八千円ということで、実は当委員会で最初に取り上げた問題であります。ところが今度の価格モデルというのを拝見いたしてみましても、これがやはり、今度は売り値のほうは国内で十四万八千円の商品だというふうにいわれておりますけれども、輸出価格がFOBで六万四千八百円ということに実はなっておるわけであります。昭和四十四年の生産高は四百八十三万四千台でありますから、昭和四十一年の五十二万台に比べて実に八倍以上のたいへんな生産の拡大が行なわれておる。私どもは、大体商品というものは大量生産をすれば安くなるというのは常識だ、こう考えております。確かに四十一年から四十四年までの間に各種の原材料も上がったでありましょう。人件費も上がったでありましょう。しかし、これらの日本の大手電機メーカーが非常な収益をあげておることは皆さん御承知のとおりであります。それが、当時六万五千円であったものが今日も六万五千円であるという点は、私はこれはどうも、いろいろな発表の方法があろうかと思いますけれども、テレビのメーカーというのはやはり少しもうけ過ぎているのではないだろうかという感じがいたすのでありますが、これに関しては通産大臣、どうでございましょうか。量産効果というものは全然関係がないものでございましょうか。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは量産効果が関係はないはずはないと思うのでございます。もちろんその間いろいろ新しいくふう、新しい部品というようなものが入ってまいりましょうし、それらのものが完全に償却された段階で次の新しいものに進むのかどうか、その辺にも問題があろうと思いますし、また俗にいうモデルチェンジと称するものもございましょうし、それから、聞くところによりますと19型カラーテレビだけでも銘柄は七十幾つあるそうでございますから、十三社が七十幾つの銘柄を同じ19型で持っているということは、平均いたしますと一社で六台持っていることになるのでございますから、それは銘柄をもう少し統一いたしますれば量産効果がもっとあらわれるはずのものでありますが、ただいま申し上げましたような非常にたくさんの銘柄が同じサイズにもあるということ、それからいろいろ新しいくふう、技術というようなものが十分償却されないまま次のモデルへ移っていくといったような問題、それらの問題があるいは量産効果を十分に発揮できない、それを妨げているような要因になっておるかもしれない。これは確信を持っては申し上げられませんけれども、外から観察いたしておりますと考えられる理由ではないかと思います。
  110. 堀昌雄

    堀委員 まあ中身のことはこまかいデータがない限りは正確にはわからないと思いますが、私ども国民感情として、五十万台つくっておったときの値段と、四百八十万台——ですからほぼ十倍ですね。八倍じゃない、十倍ぐらいになっているわけですが、四百八十万台つくっておるときと、メーカーの出し値が同じだなんということは、これはどう考えても考えられないし、同時に、それならばこれらの電機メーカーがあまり黒字を出していないというならば話もわかりますが、今日、日本の電機メーカーは御承知のように多額の収益をあげておることは皆さん御承知のとおりでありますから、国民の側としては全く納得ができないということが第一点であります。  二点目は、今度の価格モデルの発表の中で小売り店に対するメーカーからの出し値というのが七万九千七百九十円と発表されておるわけであります。同一のものの船積み価格が六万四千八百円でありますから、この間一万五千円という価格差が実はあらわれているわけであります。どうもこれがメーカー販売経費ということになっておるようでありますが、メーカー販売経費というものが、この中には宣伝広告費とか金利とか販売及び管理費等、アフターサービス技術教育費、いろいろありますけれども一般的にいってこういうものがメーカーの出し値の中に含まれておるというのは一体正常なことでございましょうか。その点をちょっと伺いたいと思います。
  111. 赤澤璋一

    赤澤説明員 先般発表されました19型の卓上型カラーテレビの価格モデルでございますが、いま御指摘のように、物品税抜きのメーカー価格が七万九千七百九十円、こういうふうに発表されまして、その内訳の中にはいわゆる物自体の経費、コストのほかにメーカーとしての販売経費が含まれておる、こういう説明がついております。いま堀先生御指摘のように、かりにこれを同じタイプのもののアメリカへ売っております船積み価格、これもモデルでございますが、六万四千八百円と比較いたしますと、御指摘のように約一万五千円程度のメーカーの販売経費がある、こういうことになるわけであります。  そこで、一体メーカーの販売経費というものはいかなる性質のものかということになってまいると思いますが、御承知のように、メーカー自身として、これは私どもしょっちゅう見ておりますが、テレビなり新聞なり雑誌なり、あらゆるところで自己の商品の宣伝をいたしております。これは小売り店がやるほかにメーカー自身がやっております。そういったこと。それからアフターサービス関係で申しますと、そういったものを私ども消費者が小売り店に持ってまいりますと、当然その経費はあとでメーカーのほうに還元をいたされます。メーカーがそれを持つという仕組みになっております。そういったこと等ございますので、大体普通の場合には、こういった大量の商品についてメーカー自身が宣伝をし、アフターサービスをする。末端の小売り商もそれぞれの場合でやるということでありますから、メーカーのコストの中に販売経費が入るということはおかしいことではない、こういうふうに私は考えます。
  112. 堀昌雄

    堀委員 おかしくはないのですが、私が言っているのは、要するにコストとの関係でおかしいのではないかということなんです。もちろん宣伝していないというのではない。宣伝しているのですけれども、ここでこういう形で出されますと、要するに国内向けのコストはわからないようになっているわけです。それは国内向けのコストがわからないのではなくて、販売経費のほうをぼかすためにこうなっているんだろう。ここでアフターサービス技術教育費とか宣伝広告費、金利まではわかります。最後の販売及び管理費等の中に実は問題のリベートというものが入ってきているのではないのか。  実は私は昭和四十三年のときに秋葉原の電機商店街を約六百軒調査いたしましたけれども、当時カラーテレビ19型についてどの程度の値引きが秋葉原で行なわれているかと思いましたら、現金正価からの割引率というのは、低いところが二三%、高いところで四一・八%、平均して大体二六、七%というのが四十三年当時の秋葉原における現金正価からの値引きでありました。低いほうがそうで、もっと値引きしておるところは三〇%から四五%になっておるのであります。店によって少し幅がありますから、同じ商品についても差がありました。今度経済企画庁のほうで地婦連に委託をされて、やはりこの値引きの調査をされたようでありますけれども、この値引きの調査でも平均して大体二八%ぐらいの値引きが行なわれておる。多いところでは四〇%以上だというふうに書かれているわけであります。今度の小売りの値段のところでは、小売り店のマージンというのは大体二二%ということになっているようですが、私が四十三年に調査したところでも三〇%以上、高いところは四五%もすでに値引きをしていたということになると、実はこの問題というのは二二%の小売りマージンだけでなくて、肝心なところがどうもいまのメーカーの販売経費の中にリベートとして隠されておるということに実は非常に問題があるのではないか。  私がこの前商工委員会でこの問題を取り上げましたときにも、自動車が御承知の豪州で問題になりまして、FOBを日本は一〇%引き上げることになりました。そのときに私はこの問題を取り上げたわけでありますけれども、商習慣という日本の特異的なものは外国では認識されにくい条件であるから、日本は国際化をして、これから国際競争力をふやし、同時に輸出をすることによって日本の繁栄を考えなければならぬということであるならば、できるだけすみやかに日本のこのような前近代的な商習慣は改めるべきであるという問題提起をいたしました。通産省としては価格指導をいろいろやるとおっしゃっておりましたけれども、実は今日それが十分に行なわれていない結果がこのような事態を招来して、私は非常に残念だと思うのであります。日本がこれから国際競争力を持った近代国家となるためには、このような外国からわからないような販売のやり方というものをすみやかに正すことが、これらの外国の疑惑を取り除く最大の道ではないのか。これは幾らどこへ提訴し、なにしましても、たとえばガットに提訴しても、ガットで話を聞く人もそのような商習慣については理解が非常に困難だろうと思うのであります。そうすれば、まずわれわれは、価格にそういう点で不当なダンピングがないということであるならば、そのダンピングがないということを立証するためにも、私は国内の流通体系をより整備をして、マージンはマージンとして渡すものをはっきりすることが私は何よりも必要なんではないのか、こう考えるわけです。そうする中から私は当然これらの、テレビだけに限りません、各種のそういう製品の価格国民の納得できる価格として購入される道が開けてくるのではないか。このような二〇%、三〇%、四〇%の値引きなどということが、今日近代国家である日本で行なわれているなどということは常識で考えられないことだと私は思うのでありますけれども、それについて通産大臣、企画庁長官からひとつお答えいただきたいと思います。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆるリベートという問題でございますけれども、この点、おことばではありますけれども、おのおのの国に、それを何と呼ぶかは別といをしまして、メーカーと流通機構の間にはいろいろ異なった習慣があることは事実だと思います。わが国ではリベートと呼んでおりますけれども、ボーナスと呼ぶ国もありますし、キックバックと呼ぶ国もあり、いろいろ習慣があるのだろう。そこで、そういう意味での習慣を国際化するというようなことがはたしてあるのかないのか。おことばではございますけれども、どうも私ははっきりそれにお答え申し上げるだけの知識がございません。ただ、わが国だけのことというふうには私は感じておらないわけでございます。しかし、それにもかかわらず、問題は、要するに現金正価と称するものが実は正価でないということは、これはどうしても問題があるわけでありまして、ここらのところは消費者のためにも改めていくことが望ましい。私ども、これはもう少し厳重に調査をいたしてみたいと思います。  実はかつて、現金正価というものをやめて、ほんとうのところの値段で売ろうと現実に試みたメーカーもあったわけでございますけれども、何ぶんにも長いことの流通機構及び消費者の習慣がございましたので、ほんとうのところを申したつもりが、さらにそれから何割か引くのがあたりまえだというような反撃が消費者からありまして、流通機構のほうがむしろろうばいをして、従来どおりの習慣に戻ってしまったという事実があるようでございます。でありますので、みんながほんとうに現金正価というものをやめて、ほんとうのところを、正札を貼るということでありましたらこういう習慣は改まっていくことだろうと思いますけれども、みんなが一様にそういうふうにやるということになりますと、これはこれなりでまた独禁法の問題がないとはいえない、そういうことがあろうかと思います。それでございますから、とりあえず私どもとしてその辺の、いわゆる現金正価といったようなもののあり方、それがどういう原因から生じておるものであるかというようなことについては調査をいたさなければならないと実は考えておるところでございます。
  114. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 テレビについていまのようなやり方というものが行なわれるようになった、その経緯というものを実は私は詳しくは知りません。なぜ現金正価というものがあり、そうして相当の割引が行なわれるという、こういう販売体制——いろいろなことがあると思います。一つは、やはり相当大きな企業同士が相当激しい競争を行なっておる。言い方によっては過当競争、これが販売、生産を通じて行なわれておる。そうしてまたそれに伴って、先ほど通産大臣からも話がありましたが、非常に多くのブランドに細分化されております。この問題についてはいろいろな問題があるように思うのですが、そういうことが徐々にどうして今日まで行なわれてきましたのか。それだけに、単に外部からこれを見ますと非常に複雑に考えられますし、直ちに簡単に事態を把握することが困難になっておる、そういう感じが強いのであります。いま通産省で事態を究明するというお話がありましたが、やはりまずそういう点が大事なんじゃないか、こういうふうに考えられます。
  115. 堀昌雄

    堀委員 公正取引委員会にちょっと伺いますが、こういうのは不当価格表示じゃないですか。その点、公正取引委員会はどうなりますか。四〇%も値段が引けるような価格をつけてあるということは、一体それは何かということですね。あなた方のほうでは、たとえばある価格について不当な価格だと思えば、要するにこれは不当な価格表示だということになるのでしょう。そうすると、幾らでもかってな値段がつけられるのだ、しかし実際に行なわれておる売価が、一回もそれで売られたことがないということであるならば、これは私は不当表示だと思いますが、公正取引委員会はどう思いますか。
  116. 吉田文剛

    吉田説明員 お答え申し上げます。  公正取引委員会では、そういう場合、つまりいわゆるメーカーの希望小売り価格というのが、日本じゅうどこを探しても一回も売られていないということになれば、これは不当な二重価格表示のおそれはある。ただそれは具体的な事例がいろいろございますし、現在、はたしてそういうふうに断定できるかどうか検討中でございますが、少なくともおそれはあるというふうに考えております。
  117. 堀昌雄

    堀委員 公正取引委員会にちょっと要望しておきたいのですけれども、実は私どもがこのカラーテレビの問題を取り上げて勧告をしてもらいたいということで、四十一年の暮れに普通のテレビ及びカラーテレビについて勧告をして、いままだ係争中ですね。御承知の富士・八幡の鉄鋼問題は、それからおくれること二年ぐらいして問題が出てきて、もう片がついちゃった。一体これはどういうことでしょうかね。国民に重要な関心のあることはいつまでたっても片がつかない。ましてや長年にわたってこうやって国会で取り上げておる問題が、全国に定価で売られておるところがあるかないかよくわからないなどということがいまごろ申されておるようなことで、勧告の問題がどうなっておるかということは私は重大な責任があると思いますよ。公正取引委員会は直ちにこれは調査をしてもらいたい。直ちに全国調査をして、現在定価で売られている事実があれば出してもらいたい。なければ、はなはだ不当な二重表示価格だということでそれに対する処置をとるのが公正取引委員会の当然の責務ではないですか。お答えをいただきたい。
  118. 吉田文剛

    吉田説明員 カラーテレビの違反事件でございますが、これは勧告をしましたのがおっしゃるとおり四十一年の十二月でございます。それから審判開始が四十一年の十二月の二十七日、三十九回審判を開きまして、参考人も八十四名ほど審尋をいたしておるわけであります。かなりおくれております。それで最近になりまして審決案を出し、いま異議の申し立てが出てきておって、審決につきましては現在異議申し立てを検討中でございます。そう遠からずして審決は出ると思います。ただ、こういうふうに審決がおくれました理由、これは非常に事件が複雑である。それから争点が非常に細部に、多岐にわたっている。それから公取の審決は東京高裁につながりまして、もし不服の訴訟が出ましたときに実質的な証拠を要求されるものでございますから、慎重な判断が必要である、こういう理由から審決がおくれているわけでございますが、この点につきましては、この事件に限らず、この審判、審決を早くやるということを心がけておるわけでございます。  それから先ほど申されました二重価格表示、これは早速実情調査いたしたい、こういうふうに思っております。
  119. 堀昌雄

    堀委員 お約束の時間が参りますから終わりますけれども、どうかひとつこの問題は国益の問題として、対外的には正すべきものを正して、われわれの主張を述べてもらいたいと思います。しかし同時に、長年にわたって私ども国会でこれだけ取り上げてきておる問題が一向に解明をされないで今日に至った結果——私はかつて四寸三年の五月でございますかの委員会で、ダンピングでやられるおそれがあるということをすでに申し上げておったわけであります。にもかかわらず、その後何ら適切なる措置が講じられないでここに至ったということは、私は行政当局にも責任があると思います。どうかひとつそういう意味では、これらの価格問題について消費者が納得のいく価格体系をすみやかに確立をしていただいて、この点については通産大臣経済企画庁長官も公正取引委員会も、おのおのの立っておる立場からほんとうにこれは真剣な処置をしていただきたいというふうに思いますが、これに対する今後の対策だけを承って、私のこの件に関する質問を終わります。あとちょっと両大臣に対する質問は残りますけれども……。
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ごもっともな御指摘だと思います。そこで、価格が自由に形成されるようにということ、それから流通機構に問題がないかといったような点、先ほど申し上げましたような点につきましては私ども全面的に実態の調査をいたさなければならない、いたそうと思っております。
  121. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 まさしく調査をまずやりまして、実態をきわめなければいかぬと思います。またその結果によってどういうことになりますか、それをよく見たいと思います。
  122. 堀昌雄

    堀委員 いま、調査をしていただくそうですが、いつまでに大体調査を終わるというめどで調査をしていただけるのでしょうか。   〔春日委員「昭和五十年まで」と呼ぶ〕
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 メーカー別に流通の形態が違いますしいたしますから、ちょっと、いつまでということを申し上げかねますけれども、私ども持っております能力を総動員いたしまして、できるだけ早くいたさなければならないと思います。
  124. 堀昌雄

    堀委員 わかります。私いつも大蔵委員会では、そういうお話が出たら、一体調査はいつまでかかるのかと、十何年間必ず伺うことにしております。それは皆さん、できるだけ早くといつもおっしゃるのですが、できるだけ早くというくらい不明確なことはないのでございます。ですから、私は三カ月とか一年とか申しませんから、二年かかるなら二年かかるとおっしゃっていただきたいわけです。そうすれば国民は、二年待てばこの問題が明らかになるということで安心して待っていられるのですから、二年かかるのか三年かかるのか。いま春日さんが五年かかるとおっしゃったけれども、五年では国民は納得しませんから……。やはり国民が納得できる時間というのがあろうと思いますので、私は何も無理に短くしてくださいとは申しませんが、大体のめどをお答えいただきたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは調査すべき事項、調査の方法等をまず立てなければなりませんから、その上で追ってどのくらいということを申し上げたいと思います。
  126. 堀昌雄

    堀委員 四十三年の五月に実はすでに私がこの問題を取り上げて今日まで、通産省は何にもやっていなかったわけですね。それでは、その調査方法等についてきまるめどはいつなのでしょうか。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは一カ月あるいは二カ月のうちにはきめることができると思います。
  128. 堀昌雄

    堀委員 委員長お願いをいたします。  二カ月後に通産大臣に当委員会に御出席をいただいて、いまの調査に対するプランの御報告をちょうだいしたいと思いますが、委員長よろしゅうございますか。——どうですか、答えてください、速記に残らないから……。
  129. 毛利松平

    毛利委員長 さようにいたします。
  130. 堀昌雄

    堀委員 では次に、さっき時間がございませんで残っておりました酒の問題をちょっと申し上げておきたいのです。  大蔵省のさっきのお話だけでは私はよくわからない点が少しありますから伺っておきますが、実際に大蔵省はどういう努力をするつもりでおるのか。すでに私どもは、国税庁長官が値上げをしないようにという注意を酒造組合中央会に与えておるというふうに新聞では承知をしておるのですが、いま国税庁当局がとっておる公式な処置はどうなっておるのかをちょっとお答えをいただきたいのです。
  131. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、八月十七日と記憶しておりますけれども、その前に地方の中小の銘柄が値上げをした、それがどうも波及しそうな情勢である、そういう状況をとらえまして、それで個別な値上げはともかくといたしまして、それに追随して一斉値上げのような状態になることを極力避けたいということで、中央会長を呼びまして、極力業界をそのように指導してもらいたい、万一その指導にもかかわらず一斉値上げといいますか、そういう状態になった場合には、国税庁としても生産カルテルのあり方につきましては再検討せざるを得ないと考えておるから、そのことをやはり含んでよく指導してもらいたいということを中央会長に申し渡しいたしました。現在でもそういうふうな基本的な姿勢で対処しておるわけでございます。
  132. 堀昌雄

    堀委員 そのあなたの言う一斉値上げというのは、内容はどういうことなんですか。要するに私は、これから予想される値上げは大体いまの九十円、六十円、六十円で、まあ新聞を見ると、話を聞くたびにふえているわけですね。私は二日の新聞を見て百四十五者だと思ったら、きょうは三百者、あしたになれば六百者になるかもしれないのですが、その一斉値上げという時間の幅はどういう幅を考えているのですか。
  133. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 従来の値上げの状況を見ますると、一、二カ月の間に過半数の業者が値上げをしておる、そういうふうな状況を、私どもとしてもやはりこれは一斉値上げと見るのが妥当じゃなかろうか、そのように考えております。
  134. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、長いほうをとって二カ月以内に過半数のメーカーが値上げをした場合には、あなたのほうで申し入れを行なったように、生産調整カルテルについては再検討するということで間違いがないわけですね。ちょっと答えてください。
  135. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 そういう事態になりました場合には再検討せざるを得ない。まあする、したいといいますか、せざるを得ないと思っております。
  136. 堀昌雄

    堀委員 たいへん何かひっかかる——せざるを得ないということはたいへんひっかかるのですがね。一斉値上げをしたら再検討しなければならなくなりますよ、こう言ってあるわけでしょう。一斉値上げが起きたら再検討しますということになるのでしょう。ちょっとここではっきり答弁しておいてもらいたいのだ。そうでしょう。一斉値上げはいま行なわれていないのだが、あなた方が一斉値上げをしたら再検討しなければならなくなりますよと、こう言ってあるのでしょう。だから一斉値上げが起きた時点で再検討しますと、こういうことになるわけでしょう。ちょっとそこを答えてください。
  137. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 先生のおっしゃるとおりであります。そうなりましたらそういたします。
  138. 堀昌雄

    堀委員 いまあなたの御答弁の中には、二カ月以内、過半数と、こうあるわけですから、それでよろしいですね。——答弁してください、あとにはっきり残しておかなければいけませんから…。
  139. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 そのように了解しております。
  140. 堀昌雄

    堀委員 再検討ということは規制ワクを——いまの規制ワクはこれはもう大体進行中ですからこれを動かすことはできませんが、四十六年度以降における規制ワクを広げるということですね。高くするということですね。答弁してください。
  141. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 お答えいたします。  私ども考えております再検討内容といたしましては、いま先生が御指摘のような規制ワクを広げる、いわゆる自由化部分を広げるということもございましょうし、あるいは期間を、当初四十八規制年度末ですから、四十九年六月までを予定をしておりますけれども、それを短縮するということもあり得ると思います。その辺につきましては、これからその事態になりました上で、事態の推移を十分見きわめまして、その影響等を見まして検討したいと思っております。
  142. 堀昌雄

    堀委員 いまの問題でありますけれども公正取引委員会のほうは、全体の値上げが行なわれたということになった場合——今度全体ですよ、いまのは過半数ですからね。おそらく過半数が起きるときは全体が起きると思うのですが、なったときには大体公式にはどういう発動をすることになりますか。
  143. 吉田文剛

    吉田説明員 お答えをいたします。  全部が値上げをいたした場合でございますが、その場合には不況カルテルについて再考してもらいたいということを国税庁に対して申し出ざるを得ないのじゃないか、こういうふうに考えております。そのほかにカルテルの問題がございますが、これはあるかないかという何か手がかりがつかめませんと、うわさの事件としてやることはなかなかむずかしい。ただいま厳重に監視はいたしております。
  144. 堀昌雄

    堀委員 どちらにいたしましても、いまの両方の答弁からして、私はいまの情勢で値上げは望ましくないと思いますけれども、おそらくある時間のうちに値上げが行なわれることは間違いないと思う。その値上げの期間の幅は、いま国税庁の答弁のように二カ月以内に過半数が行なわれるようになるのか、どちらにしても十二月の年末の酒を売るまでには値上げが完了することは間違いないわけですから、そういうような状態で値上げがされたとするならば、当然四十六年度以降の生産調整の問題は再検討されるということだけはこれで明らかになったと思いますので、まあ私ども値上げを望みませんけれども、こういう事態になれば、まず、さっきのテレビにおいても酒においても、自由な競争が行なわれて、消費者がよりよきものをより安く選択する機会が与えられるようにすることが、私はいまの日本の最も重大な問題だと思うのであります。そのためには、どうかひとつ国税庁も公正取引委員会国民の側の立場に立って、自由競争のもとに適正な競争が行なわれるために全力を尽くすということをここで答弁していただいて私の質問を終わります。両者から答弁してください。
  145. 塚本石五郎

    ○塚本説明員 御趣旨のような方向で努力いたしたいと思います。ただ、先ほど来先生から、また藤井先生からも御指摘ございましたように、やはり酒の大部分が中小企業である、しかも経営が非常に苦しい実態にある、そういう点も十分勘案いたしまして、しかも消費者の利益ということも十分勘案いたしまして、適正な指導をいたしたいと考えております。
  146. 吉田文剛

    吉田説明員 御趣旨のような方向で全力をあげて努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  147. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  148. 毛利松平

  149. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほどの問題を引き続いてお伺いしますが、局長、これは菅沼が、買い入れ外国為替支払い伝票明細書というのを切りまして、そしてトムソンの口座に金が入ったということでありまして、これには外国為替関係書類はもちろんのこと、またあとで見つかったという約束手形があるわけですが、これとも関係なしに金がトムソンの口座に振り込まれ、そこから金が出ていった、こういうことでございますね、この事件は。
  150. 近藤道生

    近藤説明員 そのとおりでございます。
  151. 阿部助哉

    阿部(助)委員 警察の方、おいでになっておりますか。  けさの朝日新聞によりますと、この問題について警視庁が積極的な捜査に乗り出した、こういう記事が載っておりますが、これはほんとうでございますか。
  152. 小林朴

    ○小林説明員 警察といたしましては、その八月より以前から捜査に乗り出しております。
  153. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それはどういう容疑で捜査に入っておるわけですか。
  154. 小林朴

    ○小林説明員 容疑は、いまのところはっきりした状況まではわかりませんけれども、詐欺になるのか、あるいは背任になるのかというようなことで、事実関係をいま調べております。
  155. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そこで、これは皆さんは告訴を受けて捜査に踏み切ったわけでありますか。それとも、そういうことじゃなしに、いろいろなうわさの中からこれに踏み切ったわけですか。どうなんです。
  156. 小林朴

    ○小林説明員 告訴は受けておりませんので、私どものほうへ、ちょうど六月三十日当時に被害の連絡がございました。それによりまして捜査が開始された、こういうふうに御了解願えればいいと思います。ただし、その以前にも若干うわさがございまして、捜査は、内偵といいますか、そういうようなことで若干はやっておったというような状況でございます。
  157. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、この問題は告訴があろうとなかろうと、三月以前の時点ですでにこういう容疑の事件があった、こういうことになりますね。
  158. 小林朴

    ○小林説明員 おそらくそういう犯罪行為が三月の時点においては行なわれたということだと思います。ただし、捜査機関がそれを知るか知らぬかは別でございます。
  159. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大蔵省のほうでこの問題を知ったのはいつですか。
  160. 近藤道生

    近藤説明員 六月三十日でございます。
  161. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それから、それを知って、この問題の監査といいますか、調査を始められたのはいつですか。
  162. 近藤道生

    近藤説明員 事、刑事事件に関連いたしますので、直ちに警察に連絡の上、司直の捜査を受けるように申しまして、同時に、もう少し早く連絡をしてきてしかるべきではないかということを申しております。
  163. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま私の手元に大蔵省からいただいたいろいろな書類があるわけであります。トムソンの台帳であるとか、あとで見つかったという約束手形等がいろいろあるわけでありますけれども、こういう書類を取り寄せて検討されたのは、きのうお伺いしたところによると八月二十八日である、こう聞いておるわけですが、そうですか。
  164. 近藤道生

    近藤説明員 実はその六月三十日に、たいへんおそいという趣旨のことを申しましたので、その後重役がしばしば私及び審議官等のもとに参りまして説明をいたしております。銀行課において検討いたしましたのは八月の末であったかもしれません。
  165. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この間に近藤さんも参議院の決算委員会か何かで、銀行から香港に人を派遣して、そうしてその有馬という、金という外人と会ったということを言明しておられるわけですが、それはそのとおりですね。
  166. 近藤道生

    近藤説明員 そのとおりであるという報告を受けております。
  167. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、この問題は明らかに詐欺——大臣の言をかりれば裁判をやってみないことにはわからぬけれども、一応十分な容疑があるわけであります。それであるにかかわらず、本人が香港におる、そこへ銀行の行員をわざわざ二人も派遣して、そこで面会をしておるなんということは一体どういうことなんだろう。銀行の首脳部と話し合いの中でなぜそんなことをやったのか。まあ担保保全といいますか、債権の保全のためだなんということを言っておるけれども、ここあたりが私は一番不可解なんです。これは詐欺であり、共犯であって、それで銀行としてはだまし取られておる。銀行はだまし取られておるところにわざわざ出かけていって、そこで何を相談したのかわからぬけれども、話し合いをしておるならば、なぜ一体それを警察に依頼をし、国際的なICPOという犯人引き渡しの約束ごともある、そういうものでこれを取り押える、そして菅沼の居所も突きとめることができれば、問題の解決はこれはしたかもわからぬけれども、一体そこで話をしたというのは何を話をしたのか、銀行局長はお聞きになりませんでしたか。
  168. 近藤道生

    近藤説明員 その辺につきましては、私もたいへん不可解な感じを持ったことは事実でございます。話し合いの中身は担保固めであるということでございます。
  169. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そんなことで話をして、担保がよりよけい固まったのですか。
  170. 近藤道生

    近藤説明員 担保を固める上においては、話し合いの効果がある程度あったというふうな報告を受けております。
  171. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは金額であなたが示してみたところで、実際、新聞やいろいろなものの報告を私が聞いておるところではたかが知れておるわけでして、なぜそこでそれを取り押えないか。あるいはそうすればあの十九億の行くえというのもある程度つかめたのではないか。わざわざ銀行はあの二人を逃がすために適当に話し合ったというふうに解釈することも、あながち牽強付会ではないのではないかという感じを私は持つわけですが、この点はどうなんです。
  172. 近藤道生

    近藤説明員 その辺は目下司直の手で調べが進められておりますので、その結果によりまして判明してまいると思っております。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
  173. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは手形の写しですが、これはたいへん変わった手形でして、三年先に払うなんという単名手形というのはあまり私見たことがないのでございますが、一年もの、三年ものなどというものがある。それで、あるものは八億数千万円に及ぶ単名手形なんというのがあるわけですが、これは先ほどの局長の答弁にもありますように、金を出し入れする段階では無縁のものだ、こうおっしゃつたけれども、私もそう思うのですが、それをもう一ぺん確認しておきたいのです。
  174. 近藤道生

    近藤説明員 輸出前貸し買い入れ外国為替で、これのほうは完全に無縁であったということは事実でございますが、手形との関係につきましては目下司直の手で取り調べが進められております。ただいままでの段階では手形による貸し付けであるということになっております。
  175. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうではないでしょう。この手形菅沼のテーブルの中にあったというだけであって、金が口座に入り、そうして金が引き出される段階では、この手形というものは何も縁がなかったわけですね。あの金が動くのには縁がなかったということだけは間違いないのじゃないですか。そこはどうなんです。
  176. 近藤道生

    近藤説明員 おっしゃるとおりで、当座預金に金が入金をされるという段階において、手形貸し付けという形をあとでとったということになろうかと思います。
  177. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あとでとったというのは、いつとったのですか。こんなものは彼らが逃げてしまったあとで、これはたまたま菅沼のテーブルを全部調べてみたところがその中に入っておった、こういうことなんでして、この手形は、金が移動し引き出されるという段階では、これは何も縁がなかったのですよ。それでも約束手形と引きかえに金が出た、こうおっしゃるのですか。
  178. 近藤道生

    近藤説明員 手形貸し付けの代り金を当座入金をいたしたという形でございます。
  179. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、局長おっしゃるのは、この約束手形に見合って金が出た、こうおっしゃるのですか。そうじゃないでしょう。これは全然だれも見ていないのですよ。あとから出てきたのですよ。彼が金を移動させたのは、先ほど示しました、私これをお願いしておるわけですが、この小さな伝票、これは外国為替伝票ですよ。この伝票を彼が書いて係に渡して、そこから金が動いているのであって、この手形関係がないのですよ。
  180. 近藤道生

    近藤説明員 その辺が、そのつどどういう操作をしたかは本人がおりませんからわかりませんので、その意味ではおっしゃるとおりでございますが、ただ、あとから見ますと、その手形による当座入金であることは間違いない、ただいままでの調査ではそうなっております。
  181. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、この手形の金額と伝票と台帳とはぴしゃり合っておる、こういうことですか。
  182. 近藤道生

    近藤説明員 その間は、御指摘のとおり食い違いがございますので、その辺を目下司直の手で取り調べが進められておるわけでございます。
  183. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、初めから近藤さんはいろいろとこれと結びつけようとするけれども、これは縁がないのですよ、金が動いた段階では。あとでこのテーブルの中にあった。いつの段階でこれができたかはわからないし、大体この手形というものが、中身を見ても三年ものであるとか一年ものであるとかいうような不可解な手形で、でたらめなんですよ。そうしますと、この手形というのは一体だれのものなんです。あとで菅沼のテーブルの中にあったというだけであって、これは一体だれのものなんですか。
  184. 近藤道生

    近藤説明員 富士銀行あてのものでございますので、富士銀行のものでございます。
  185. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは彼のテーブルの中にあって、たまたま富士銀行あてに記載をされておるということだけであって、金の移動したのとは無縁であるということからすそと、富士銀行が何かわけのわからぬゼネラル・ベンディングという株式会社にこの手形のうち五億円だけ移動するなんということも、これも私は不可解千万だと思うのですが、その点は銀行局のほうでは疑問を持たないのですか。
  186. 近藤道生

    近藤説明員 その点につきましては、近い将来に司直の手によりまして手形の性格がはっきりいたしました段階で判断いたすべき問題であろうかと思います。
  187. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは本人たちが外国へ逃亡しておることでありますから、おそらく時効になるまでは帰ってくるはずがなかろうと思うのです。まず常識からいえば時効になるまでは帰ってこないでしょう。そうして見ると、何か私たち国民にはよくわからない問題です。しかも銀行の首脳は、香港に金という男がおるということを承知しておって、わざわざ行員二人を派遣して、そこで話し合いをする。理屈はいろいろつきますけれども、とにかくその時点でこれを取り押え、十九億の行くえを調べようという努力を怠って、それで担保保全だなどというでたらめを言っておる。そうしながら、無縁の手形が出てきたというようなことをやっておるけれども、私が初めから申し上げておるように、何かこれは二人だけの仕事ではとうていできないのではないか。皆さん、銀行にわずかな金でも借りに行ったら、手形を書かされて担保を出させられて、いろいろワクがある、何があるという、実際にやってみればこれはたいへんな書類が要る。それが伝票一枚でこれだけのものが動いておる。しかもこの金額は雷門支店預金残高の一〇%にも及ぶものが非常に急激に短期間で動いておるとすれば、これはかりに幾ら巧妙にやろうとしても、こんなものがやれるはずがないと私は思うのです。大体どこでもやれるような仕組みになっておるのですか。
  188. 近藤道生

    近藤説明員 ただいまおっしゃいましたように、そのチェックシステムがうまく動かなかったというところに基本的な問題があるわけでございまして、本件の場合、たとえば支店長あるいは次長が、買い入れ外国為替の十九億という残高に対しまして、毎日その動きを見ておって、その中身を調べるということをやりさえいたしますれば非常に早く未然に防止ができた。全体の組織がその支店における支店長なり次長なりのチェックということを前提として動いておりますために、その第一歩が見過ごされたために非常に大きな問題になったという感じがいたしております。
  189. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは外国為替とかなんとかいうよりも、このトムソンという会社は前に融資を申し込んで断わられておるわけですよね。しかもそれが急速にこれだけの金が動くとすれば、外国為替の知識があったとかなかったということよりも、銀行支店長次長あるいはまた係の人にしても、これに疑問を持たないなんという銀行マンはいないのじゃないだろうか。そうすれば、むしろこの菅沼のうしろに、チェックするんじゃなしに、それを助ける、それを故意に見のがしておる者がおらなければこういう仕事はできるはずがない。これが常識なんじゃないですか。もっと常識的にものをお考えになったほうが私はいいと思うのであります。そうしてこの手形なるものをテーブルの中に置いた。だから何らかの形でこの詐欺行為を帳消しにしよう。しかも首脳部は香港あたりにわざわざ人をやって話し合いをしておる。これを取り押え、そしてその金の行くえを追及しようとはしない。そしてなおかついまもって警察当局に告訴もしないということを考えてみると、非常に常識的にこの推理を働かしていくならば、これは菅沼一人でやれることでもなし、うしろに何かある。何人かの者が一緒になってやらなければこの問題はできるはずがないというのがむしろ常識的な考え方じゃないでしょうか。そこで銀行局長も、先ほどの通達を何か役人さんの責任のがれでお出しになったとすれば意味はわからぬことはないのですよ。しかしほんとうにこの問題を六月の時点で承知しておって、そうして七月十六日にこのような通達をお出しになるということは、少しインチキだといわれてもやむを得ないのじゃなかろうか。もう少し常識的に考えられるべきではないだろうか。しかも、監査や、書類を取り寄せる時点にしても、これはあまりにもおそ過ぎる。銀行内部における犯罪に対してまで皆さんは過保護であるといわれてもしかたがないのじゃないかという判断を私はせざるを得ないのですが、いかがですか。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 近藤道生

    近藤説明員 銀行に対する過保護という世評にも顧みまして、いわゆる効率化の行政あるいは公共性の認識ということにつきまして、ここ数年来いろいろと指導、監督が続けられてまいったわけでございますが、それにもかかわらず今回のような、金額において未曽有な額に上る不祥事件、そしてまた役席がみずから不祥事件を引き起こすというようなことが起きましたことはまことに遺憾でございまして、私ども指導、監督の責任を痛感いたし、反省もいたしておる次第でございます。
  191. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで、先ほど申し上げましたこのトムソンという会社はもう倒産をしておる。全く紙くず同様の手形を、富士銀行はまたゼネラル・ベンディングという会社にこれを譲渡しておる。そして片っ方には譲渡通告書を出しておるということは——私は、この手形はたまたま富士銀行あてにはなっておるけれども富士銀行のものではないと思う。それをあえてまたわけのわからない会社にこれを譲渡するなんということは、富士銀行はもうごまかしの連続だ、こう私はいわざるを得ないと思うのですが、この点にもまた疑問はないのですかね。
  192. 近藤道生

    近藤説明員 その点は先ほども申し上げましたとおり、手形関係の真正なものであるかどうかということは、やはり司直の判断に待つ以外にしかたがないものと思っております。
  193. 阿部助哉

    阿部(助)委員 司直の判断を待っておっても、先ほど申し上げたように、本人たちは外国へ逃亡してしまっておる中でなかなかむずかしいが、私はそれよりも、この手形の所有権はどうなのか、この手形のあと、また富士銀行がゼネラル・ベンディングに売り渡すなどという行為が一体正当な行為なのかどうかというあたりは、大蔵省でもそれなりの判断をすべきだと思うのです。  この事件については国民もわからない。こんなことをやり、方々で銀行不正事件等が起きてくれば、ほんとうに国民は取りつけ騒ぎを起こさないという保証もないわけでして、もう一ぺんこの銀行当局に対して厳重な監査と指導をしないと私は困ると思う。まあいずれにせよ、この問題は銀行当局が次から次へと何かごまかしておるのじゃないか。もう一つは、先ほど来申し上げたように、むしろあの二人を外国に逃がすことによって十九億はますますわからないところにいってしまう。しかもあの重役の、——新聞、雑誌の報道でありますから私は真偽のほどはわかりませんけれども、この金がなくなっても預金者には、利益もあることだしあまり迷惑を、配当にも迷惑をかけないなんという談話がほんとうだとすれば、私はこの銀行マンの姿勢というものが乱れに乱れ過ぎておるという、一連の経緯からそう判断をせざるを得ないのでありまして、もう一度、おざなりの通達だけではなしに本腰を入れた、銀行当局も大蔵当局も、姿勢を正すためのもっと具体的な指示をすべきだと思いますが、いかがですか。
  194. 近藤道生

    近藤説明員 ただいま御指摘のとおり、続発する不祥事件、まことに痛心にたえないところでございまして、特に基本的な問題は、先ほど大臣からも申し上げましたとおり、いたずらに業容拡大をあせるという経営態度、あるいはまた外国為替というものが特殊の、特別扱いをされまして、それ以外の分野の人が外国為替については全く口出しをしないといったような風潮、まあそれらの点をも含めまして、今後具体的に不備を改善する方向をいろいろと研究をいたしまして、指導、監督に遺憾なきを期してまいりたいというふうに考えております。
  195. 阿部助哉

    阿部(助)委員 終わります。
  196. 毛利松平

    毛利委員長 春日君。
  197. 春日一幸

    ○春日委員 私は別の問題で五分ばかりと思ったんでありますが、いま質疑応答を伺っておりますると、私は非常に大きなショックを受けたわけなんでございます。というのは、銀行局では何ら真相がつまびらかになってはいないのではないか。ことごとく、司直の手で調査中だから、調査結果を待って云々という答弁に終始されておりまするが、これは銀行法に基づいて政府には指導、監督権がある。強制検査権もあるわけなんでございますね。だから、こういうような事故の続発を防ぐことのための通達が出されたと言ったんだけれども通達を出すにあたってはその真相というものが銀行局当局によって十分掌握されておるのでなければ、肝心かなめの点について注意を喚起することができないではございませんか。どういう手口によってどういうような背任あるいは詐欺、横領がなされたのであるのか、こういうことを他山の石として全国の銀行に向かって大いに注意を喚起する、警告を発する。これはやはりその問題のかなめのポイントが明示されて、かるがゆえにということでなければならぬと思うのですよ。あなたのほうにはその指導、監督、強制検査権というものがある。司法、立法、行政三権分立である。本来的には行政庁としてあなたのほうが全部調べて、調べるまで警察のほうちょっと待っておってくれ、その結果事実関係が明らかになったら君のほうで手を染めてくれとか、あるいは一緒に調べようとか、私はそれだけの権威と責任があっていいと思うのですよ。何にもわからない、警察お願いしておるからその結果を待って判断したい、こんなことでは——千万や二千万の問題ならいいけれども、十九億というような大きな問題でございましょう。かつて三菱銀行事件には某官房長官の十億事件がございました。何もかもミステリーじゃございませんか。私はこういうようなことでは、少なくとも六十兆円になんなんとするその金融について国民の疑惑、不安感というようなものは将来ますます増大するのではないか。あるいは、のみならず相次いでこの種の事故があちらこちらの金融機関に続発をいたしておる。そういうような続発の原因は、端的にいうならば、銀行局自体が何もかもあいまいに事を過ごしておるからではないか、こう思うのだが、何で調べないのでございますか。私はあなたの答弁を伺っておりますると、何にもわかっていらっしゃらないんじゃないの。これじゃ銀行に向かってどういう監督ができるのですか。どういう注意ができるのですか。続発する事故を今後食いとめるといったって、何ともきめ手がないじゃございませんか。ただ何となく、こういう事件があった、警察で調べておるけれどもまあ注意しろやというようなことであなたの職責は尽くせますか。あなたが真剣になって誠実に答弁されておる、私はその努力は多とするのだけれども銀行局長のこの責務というもの、国家的職責というものはそんなものじゃないと思うが、どうなんですか。徹底的にこれを調べて、いまの貿手の問題かあるいは輸出手形の先貸しの問題か、どういうことでどうなったんだ、だからこういう手口を戒めろよと、そんなことがなされていいと思う。月に一回の委員会でございますから、国民は本日の大蔵委員会の質疑応答を重大な関心を持って見詰めておると思う。両君が相当の資料をもって質問されましても、何にもわからぬじゃありませんか。警察の調べ——とにかく銀行局銀行局の本来の使命がある。警察警察本来の使命がある。優先する使命はあなたの使命ですよ。何にもやってないんじゃないのかね。どうなんですか。私は大きなショックを受けたものだから、ちょっとこの点について注意を喚起しつつ、実態はどうなんだと伺いたいのです。
  198. 近藤道生

    近藤説明員 実態につきましては、先ほど申し上げましたように、外国為替関係の実体がないにもかかわりませず貸し出しを仮装したというところにございます。そしてそれをチェックすべき最大のポイントは、支店長及び次長が、買い入れ外国為替残高が非常に累増しておるという事態にもかかわりませず、その内容についてのチェックを怠ったというところに一番大きな問題があるわけでございます。
  199. 春日一幸

    ○春日委員 しかし、いま阿部君の質問については、ことごとく、肝心なポイント、具体的な事実関係、こういうものが司直の調査を待たずんばと、こういう御答弁なんだけれども、そういうような答弁は適当ではないと思うんだが……。こういう手形はこういうものである、あるいはそういうような外国為替の問題についてチェックを必要とするのだが、そんな大きな金額について次長独自でやったというようなことが実際銀行業務慣習において認められておるのか。支店長というものは全然知らぬというけれどもですよ、実際そういうような貿手の先貸しが行なわれれば、積み出しがあってそれが決済されていかなければならないのだが、そんなものがなされてもいないのにどんどん累積していって、それを支店長が知らぬなんというような、そんなことは許されない。貿易のABCをやった者ならすぐわかるんですよ。そして支店長は何にも知らない、次長独断でやったと思われるというようなことでは、本委員会の国政調査の任務が果たされないじゃないですか。やはりそういう問題についてはもっと事実関係をあなたのほうで突きとめて、そして具体的にこれを掌握して答弁に立たれることが必要じゃないですか。この貿手なんかだれだってやっているんだけれども、大体期限がある。期限内に積み出しができればこれによってこいつが決済されていく。決済されないで累積して十九億円にもなっちまって、その間銀行局はほかっておる、支店長はノーコメントだ、そんなことは常識で考えられない。だから、そこはふしぎだなとあなたが思われて、その事実関係を突き詰めて、われわれ一般国民の抱くような疑惑について、犯罪なら犯罪、あるいは共犯なら共犯があってこういう大じかけなことになったとか、あるいは支店長がずぼらで、ずさんでこういうような結果になったんだとか、第三者が納得できるような答弁をなさいませんと、何もかも警察警察ということになっちまって、これでは銀行局というものの責任も権威も使命も、何もはっきりしないということになるんですね。そうして、みんなミステリーで終わっていってしまう。例の吹原弘宣のあの問題もミステリーで終わったみたいな形でございますよ。だからこういう事件が起きる。次またどんな事件が続発するかわかったものではない。十分御留意願って、次の委員会までにわれわれがよくわかるようにしてもらいたいと思う。悪人が悪だくみをすればどんなことだってできるんだから、そのことを調べ上げて、そうして、こういう手口があるから注意しろよ、また、こういう被害を受けたんだということを、銀行局国民に向かってはっきりと説明できるようにしてもらわないと困る。何でもいいからあいまいな答弁でものごとが糊塗されちまうと、これは重大なことだと思うのですよ。財政と金融、これはもう国の経済の根幹でございますね。だから、この点についてあなたも——ここしばらく青山君といい近藤君といい、銀行局長はちょっと鬼門みたいなことになっているが、とにかくこの問題について真剣に取り組まれて、次の委員会までにわれわれがわかるようにやってもらいたい。警察警察でどんどんやってもらいたいけれども、あなたは、司法、立法、行政、その行政の最高責任者として当然その責務を果たされる必要があると思う。やってください。
  200. 近藤道生

    近藤説明員 まずポイントでございますが、非常に不可解、常識的にはわかりにくいと仰せられましたのはまさにそのとおりでございまして、支店長が十九億を上回るような買い入れ外国為替について全然たださなかったということ、これはきわめて非常識なことが現実に起こったというのが今回の事件の最も大きな特色であろうかと存じます。  それからなお、司直の調査とたびたび申し上げました意味は、銀行検査は犯罪捜査のためにするものではないということになっておりますので、その間に分界がございます。しかしながら、仰せにございましたように、なお今後の状況を十分調査いたしまして……。
  201. 春日一幸

    ○春日委員 いやいや、私が申し上げておるのは、犯罪捜査をやれというんじゃございませんよ。警視庁だって犯罪容疑ということで、犯罪の名前もはっきりわかっていない。事実を調査すると言っておられる。詐欺であるとか、背任であるとか、横領であるとか、調べてその結果罪名がはっきりする、こういうことじゃございませんか。だから、あなたのほうの任務は犯罪調査でも何でもない。事実調査なんだ。どうして事実がこんなふうに起きてきたのかということを国民に知らしめて、このようなおかしな事件が今後起きないようにするのが当然の責務じゃございませんか。そのことを申し上げておるのであって、どうか意のあるところを十分御理解願って御善処を願いたい。  そこで、私は中川政務次官を通じて、ぜひともひとつ経済閣僚会議で、来年度予算に関係をして十分反映してもらいたいと思いまするので特にお願いをするのでありますが、問題は、チクロかん詰めの販売が九月で終わるのでございます、まあ、この間延期されましたけれども。   〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 全国で今日百六十何億円というデッドストックができ上がってしまって、かん詰め関係業者は困っちゃっておるのでございますね。御承知のように、お菓子であるとかつけものだとかいうものは、腐敗とかなんとかいうようなタイムリミットがあるものですから、いろいろと困難をしながら商品はおおむね消化されたようですが、かん詰めというやつは長期保存がきくものですから相当のストックがあった。かるがゆえに、どうしたことか延期をされて、しかしその延期された期限がこの九月末日で終了するわけですよ。終了する時点で百六十何億円というデッドストックがあるのでございますね。  中川政務次官に特に強調願いたいと思いますことは、チクロの製造並びにその使用ですね、これは昭和三十一年に鳩山内閣で、わが国の政府、厚生省がこの製造と使用を許可しておるのですよ。政府が許可したものだから、その政府の権威、権能を信頼して業者はこの使用に踏み切ったわけですよ。ところが、その中には発ガン的な毒性のものも含有しておるということで、今度は政府が突然としてその使用を禁止したわけです。政府が許可したから、政府を信頼してつくって、突然とこれが禁止されたのだから、業者には何にも責任はないわけですね。これはことごとく政府の責任だと思う。私はいま国家賠償法を読んでみたら、国家権力を行使する者が、故意にまたは過失によって損害を与えたというような場合は、国家がその賠償の責任に任ぜなければならぬということになっておるのだが、これはまさしく、政府が、そのような発ガンの毒性を含有するということについて、全然そういうことを知らずして、あやまって、すなわち過誤によって製造の許可を与えた、だから政府の責任です。国家賠償法第一条そのものずばりのケースでございますね。菓子だとかつけものだとかいうような諸君は困りながらも、本時点においてはだんだんと解決を見つつあるようだが、かん詰め屋さんは全国的にもうはたと行き詰まっておる。しかも大部分のものが中小企業者である。みんな、破産、倒産するものが六十何件というようなことで、政府に救済を求めてきておる。だから国家賠償をするか、しからずんばそれに匹敵するような救済的な措置をとるべし。これは税法上二、三の通達があるようだけれども、税法上の特別措置ぐらいでは解決できるものではございませんですね。だから、長期低利の金融を行なうか、あるいは相当部分について国家賠償を行なうか、何事かをなさなければこれは筋道が立たぬと思う。これはだれが許可したということは、お調べ願えばよくわかります。昭和三十一年、鳩山内閣で厚生大臣が許可しておるのでございますから、これについてはぜひともひとつ経済閣僚会議がこの予算編成の段階において何らかの措置をとられなければならぬと思う。とってしかるべき問題であると思うが、とりあえず中川政務次官としての御見解を承り、本員のこの要請に対して、経済閣僚会議等においてそれら困っておる業者たちの救済の道を十分講じていただくよう善処を願いたいと思うが、この点いかがでございますか。
  202. 中川一郎

    ○中川説明員 この問題は、厚生省あるいは通産省、さらには農林省というようなところが直接の責任のある官庁ではなかろうか、大蔵省はこれを受けてどうするかという受け身の立場にあるのじゃないかというふうに思います。したがって、ここでどうするこうするという責任ある回答ができないことをまことに遺憾といたしますが、政治家の端くれとして考えますときに、いま春日委員から御指摘のあった点は、あるいはという気がいたします。しかしながら、これは前例その他、法規あるいは今後のこういった類似行為の問題等々を検討というか、そういう点をよく調査してみなければならぬのではなかろうかとも存じますので、せっかくの御指摘でありますから、大蔵省の政務次官としてでもありますが、政治家としてもこの点について十分研究をして、おこたえできる点があればおこたえするようにいたしたい、このように思う次第であります。
  203. 春日一幸

    ○春日委員 この問題は、当然所管大臣に向かって関係業界から十分なる陳情がもうくどいくらいなされております。本日私がここにこの所見を述べておりますのは、何も端くれの政治家中川君に申し上げておるのではない。大蔵副大臣たるあなたに、大臣がおらないものだから、大蔵大臣としてここに申し上げておるわけなんでございます。  すなわち、農林大臣、厚生大臣等から経済閣僚会議において、こういうチクロ禍の問題、政府が許可し、それを使用し、毒性が発見されて禁止した、それで業者が政府責任によって百何十億のデッドストックを持った、これを救済せなければならぬという意見がそのような諸官庁から出されてまいりましたら、そのときはやはり国のさいふを握る大蔵大臣として、十分これをしんしゃくされて善処されたい、こういうことを大蔵副大臣中川君に申し上げておるのでありまして、決して政治家のきれ端に申し上げておるのではございませんから、間違いないように、ぜひ大臣に取り次いでいただきたい。——よろしゅうございますか。
  204. 中川一郎

    ○中川説明員 承知いたしました。そのように取り進めたいと存じます。
  205. 春日一幸

    ○春日委員 終わります。
  206. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十二分散会