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1970-04-28 第63回国会 衆議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月二十八日(火曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 上村千一郎君 理事 藤井 勝志君    理事 村上信二郎君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君 理事 松尾 正吉君       奥田 敬和君    木部 佳昭君       木村武千代君    佐伯 宗義君       高橋清一郎君    登坂重次郎君       中島源太郎君    丹羽 久章君       原田  憲君    坊  秀男君       松本 十郎君    森  美秀君       吉田  実君    阿部 助哉君       堀  昌雄君    美濃 政市君       貝沼 次郎君    二見 伸明君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     谷村  裕君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      高木 文雄君         大蔵省主計局次         長       竹内 道雄君         国税庁長官   吉國 二郎君         水産庁長官   大和田啓気君  委員外出席者         議     員 広瀬 秀吉君         大蔵省主税局税         制第二課長   田邊  昇君         国税庁間税部長 中橋敬次郎君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 四月二十七日  国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律  案(広瀬秀吉君外六名提出衆法第三〇号)  公共企業体職員等共済組合法等の一部を改正す  る法律案広瀬秀吉君外六名提出衆法第三一  号) 同日  塩専売制度存続に関する請願青木正久君紹  介)(第三九二一号)  同外一件(金子一平紹介)(第三九二二号)  同(鴨田宗一紹介)(第三九二三号)  同(渡部恒三紹介)(第三九二四号)  同(池田正之輔君紹介)(第四〇五〇号)  同(小澤太郎紹介)(第四〇五一号)  同(梶山静六紹介)(第四〇五二号)  同(亀山孝一紹介)(第四〇五三号)  同(齋藤邦吉紹介)(第四〇五四号)  同外一件(千葉三郎紹介)(第四〇五五号)  同(福井勇紹介)(第四〇五六号)  同(福永一臣紹介)(第四〇五七号)  同(別川悠紀夫君紹介)(第四〇五八号)  同外二件(前尾繁三郎紹介)(第四〇五九  号)  退職公務員医療制度等に関する請願木部佳  昭君紹介)(第三九二五号)  同(塩谷一夫紹介)(第三九二六号)  同(足立篤郎紹介)(第四〇四六号)  同(辻寛一紹介)(第四〇四七号)  同(西村直己紹介)(第四〇四八号)  同外一件(向山一人紹介)(第四〇四九号)  貴石、貴金属製品等第一種物品税課税方式改  正に関する請願三木武夫紹介)(第三九二  七号)  同(内海清紹介)(第四〇三八号)  同(田中伊三次君紹介)(第四〇三九号)  同(谷川和穗紹介)(第四〇四〇号)  同(永末英一紹介)(第四〇四一号)  同(中井徳次郎紹介)(第四〇四二号)  同(中川俊思君紹介)(第四〇四三号)  同(古川丈吉紹介)(第四〇四四号)  同(山本弥之助紹介)(第四〇四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁船保険及漁業共済保険特別会計歳入不足  をうめるための一般会計からの繰入金に関する  法律案内閣提出第四三号)  国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律  案(広瀬秀吉君外六名提出衆法第三〇号)  公共企業体職員等共済組合法等の一部を改正す  る法律案広瀬秀吉君外六名提出衆法第三一  号)  清酒製造業の安定に関する特別措置法案内閣  提出第六五号)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を聞きます。  漁船保険及漁業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案議題といたします。  本案につきましては、すでに質疑は終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、本案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  漁船保険及漁業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  3. 毛利松平

    毛利委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  5. 毛利松平

  6. 毛利松平

    毛利委員長 提出者より提案理由説明を求めます。広瀬秀吉
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)議員 ただいま議題となりました国家公務賃共済組合法等の一部を改正する法律案及び公共企業体職員等共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案趣旨及び内容概要を一括して御説明申し上げます。  最近の急速な経済成長の陰で、わが国の社会保障水準は、西欧先進諸国に比べ、依然として低水準に置かれております。しかも最近における医療費の急激な増高は、各種共済組合短期給付財政の収支を悪化させ、そのため組合員に過重な負担をしいる掛け金引き上げを余儀なくいたしております。また一方、長期給付におきましても、ここ数年来の異常なまでの消費者物価上昇のもとで、年金受給者生活は極度に逼迫しているのが実情であります。  このときにあたりまして、主として組合員掛け金と、それに見合う使用主負担の財源で運営され、国庫負担が貧弱な共済組合におきましては、従来の保険主義の原則を廃し、大幅な国庫負担の導入により、その社会保障的性格を強める必要があります。かようにして短期給付長期給付とも、組合員負担がこれ以上過重にならないよう措置いたしますとともに、退職公務員の老後の生活を少しでも安んじさせるよう、前向きの措置を行なうことは、社会保障の観点からはもとより、共済組合趣旨に照らしましても、当然、国の責任ともいうべきものであります。  以上の立場から、共済組合短期給付及び長期給付充実改善をはかるため、両法律案提出いたした次第であります。  次に、両法律案内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず第一は、短期給付に要する費用につき、新たに国庫は二割相当分負担することといたしたのであります。これにより国家公務員共済組合につきましては、国庫としての国二割、使用主としての国五割、組合員三割の負担公共企業体職員等共済組合につきましては、同じく国二割、公共企業体五割、組合員三割の負担とすることにいたしております。  第二は、長期給付に要する費用負担割合につき、国庫負担を一割五分から二割に引き上げることにいたしたのであります。これにより国家公務員共済組合につきましては、国庫としての国二割、使用主としての国四割二分五厘、組合員三割七分五厘の負担公共企業体職員等共済組合につきましては国二割、公共企業体四割二分五厘、組合員三割七分四厘の負担とすることにいたしております。  第三は、年金給付算定基礎についてであります。国家公務員共済組合長期給付につきましては、従来その算定基礎退職前三カ年間の俸給平均額とされておりましたが、消費者物価上昇の中で、年々べースアップが行なわれている現状等を考慮し、公共企業体職員等共済組合と同様にこれを退職時の俸給といたしたのであります。  第四は、共済給付を受けるべき遺族要件の緩和についてであります。すなわち、現行法では、組合員収入によって生計維持していたものであることが要件とされている遺族については、その生計維持が主として組合員収入によるものでなければならないことになっておりますが、この要件を緩和し、組合員収入により生計の一部を維持している場合も生計維持要件とする遺族に該当するものとすることといたしたのであります。  第五は、遺族一時金及び死亡一時金の支給範囲の拡大と年金者遺族一時金の創設についてであります。現行法では遺族範囲が、主として死亡した組合員収入により生計維持していた範囲に限られており、たとえ配偶者や親がいても、組合員収入によって生計維持していなかった場合には、給付の対象とされておりません。この際、遺族一時金及び死亡一時金は、組合員収入によって生計維持していない遺族であっても、その支給を受けることができることといたしますとともに、遺族年金支給要件を満たしている場合において遺族年金を受けるべき遺族がないときは、組合員収入によって生計維持していなかった者に対して、遺族年金の額の十二カ年分に相当する金額を年金者遺族一時金として支給することにいたしたのであります。  第六は、退職一時金の引き上げについてであります。現在、国家公務員及び地方公務員共済組合においては、退職一時金の支給額は、組合員期間によりそれぞれ二十日から五百十五日分となっているのに対し、公共企業体職員等共済組合では二十日から四百八十日分となっており、著しく不均衡であるばかりか、国家公務員及び地方公務員共済組合支給額でさえ低きに失しております。したがいまして、この不均衡を是正し、かつ、退職一時金の底上げを行なうため、国家公務員共済組合及び公共企業体職員等共済組合退職一時金の支給額を三十日から六百十五日分といたしたのであります。  第七は、退職者についての短期給付の特例の新設についてであります。現行法では、退職の際に療養給付等を受けている場合には療養給付等支給開始後五年間は継続して療養給付等を受けることができることになっておりますが、退職後の新たな疾病や事故に対しましては、共済組合員の資格がないため、給付水準の低い国民健康保険によらざるを得ないのであります。しかしながら、永年勤続して退職した者は、退職後二、三年の間に発病する場合が多いという実情等を考慮いたしますと、退職後も一定期間医療給付等が行なえるよう改善をはかることが必要であると考えられますので、組合員期間二十年以上の者が退職した場合には退職後五年間はなお短期給付を受けることができることといたしたのであります。  第八は、国家公務員共済組合審議会委員並びに国家公務員共済組合及び公共企業体職員等共済組合運営審議会委員共済組合員でなければならないものとされておりますが、共済組合運営実態及びその特殊性から、現在は非組合員であっても、たとえば労働組合の役員として専従業務に携わっている者など、かつて組合員であったものについては、労働組合の推薦により、委員に任命できるようにしたのであります。  第九は、退職一時金からの通算退職年金の原資の控除を受けないことを選択することができる期限の延長についてであります。すなわち、この選択期限は、女子については、昭和四十六年五月三十一日までとされていますが、男子については、その期限昭和四十四年十月三十一日に満了しておりますので、その期限をとりあえず昭和四十六年五月三十一日まで延長することといたしたのであります。  以上、この法律案提案理由及び内容の概略を申し述べました。  何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。(拍手)
  8. 毛利松平

    毛利委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  9. 毛利松平

    毛利委員長 次に、清酒製造業の安定に関する特別措置法案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  10. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 清酒製造業の安定に関する特別措置法案に関連して若干の質問をいたしたいと思うわけであります。  まず、この質問に入ります前に、けさの新聞中央各紙に、酒の流通機構の問題と非常に密接に関係のある、前にすでに例の福島県の東駒酒造がやりました形のものが、今度はさらに八社ですか、メーカー段階から消費者段階に直結をする供給サービスを行なうというような組織が発足をしたということで、メーカーから直接に生活協同組合連合会を通じて、そのあっせんによって、消費者からはがきで申し込みをしてもらって、そこにメーカーから直接供給をしていく、しかも二割ないし三割程度は安くなる、こういうことが新聞に大きく報道をされておるわけであります。  この問題について、消費者の側からいえば、とにかく安い酒が飲めるということについては、これはだれも異論がないところだし、望んでおるところであります。そういうメリットが、とにかくこういう方式でやっていけばあるということははっきりいたしておるわけであります。物価問題が非常にやかましい今日において、何か一つでもそういうことで、いままで五百八十円なら五百八十円という二級酒が五百円以下で買えるというようなことになりますれば、これはやはり当然消費者としては、そういうことで買えるならそういうことで買いたいということになるのはあたりまえの話でありますが、そういうメリット一つあると同時に、酒類流通機構流通秩序、こういうものが、今日メーカー、卸、小売りというような段階で、一つ秩序ができ上がっておる。かつて私も経験したことがあるわけでありますが、そういう形で現在ある小売り業者のところに——たとえば集団的な特定企業宿舎地帯があるというようなことで、そこのところにかなり販売をしておった小売り商がある。こういうようなところにその方式が一気に入ってまいりますと、もうその周辺の酒屋が成り立たぬというようなことで、実は陳情を受けたこともあるわけであります。そういうようなことで、非常にそういう面とのかね合い、調和、調整というようなものをどういう形でつけるのかということが一つの問題として当然出てくるわけでありますが、この問題について、これは国税庁長官に伺ったほうがいいと思うのですが、こういうものに対して、国税庁としてはどんな問題を考えて、どう対処されようとしておるのか、まずこの点を伺っておきたいと思います。
  11. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま御指摘のございました件は、御承知のように最近中小酒造八社が協同組合をつくりまして、直売を実行しようとするものでありますが、御承知のように、酒造免許の中には自社の製造する酒をみずから直接販売する免許を含んでいるわけでございます。そういう意味で、消費者直売をすること自体は、免許そのものに含まれておるということは言えるわけでございますが、今度やりました形態がどういう形であるか、その点はさらに検討して結論を得たいと思っておりますけれども、先般問題になりましたいわゆる東駒問題におきましては、東駒自身がみずから製造した酒類を直接販売をしたわけでございます。その点では製造免許の上では違法ではないものでございます。ただ、御承知のとおり、販売系統を全く飛ばしまして、流通機構の助けを借りずに直接販売をするということは、いわば一種の異例な形であります。したがいまして、普通非常に辺陬の地において小さなつくり酒屋が直接地場販売をしている以外には、そういう形態は従来はなかったわけであります。それがああいう形で出てまいる。しかし、私どもとしては、正規のルートというものを通っていることによって消費者の安全が保障されるという面は非常に大きいと思います。また小売り、卸というものがあるがゆえに消費者選択銘柄等に自由に行なえるわけであります。直売方式というのはその意味では消費者選択の自由を奪う。またその酒に欠陥のあった場合に、直接消費者自身がその問題を解決しなくてはならない。かような点で、いわば流通機構の持つ特色というものを、あるいは流通機構があるがゆえの消費者利益というものが一部失われるという面は、反面覚悟しなければならぬ面だろうと思います。その結果としてあらわれたのが、御承知東駒の場合には、一級酒と称して二級酒を売ったというような事態が生じたわけです。こういうことは流通機構を経ている場合にはおよそ考えられないことでございます。そういう意味で、こういう販売方式というものがはたして一般化するかどうかというと、私は非常に問題があると思います。いわば例外的な存在であろうと思いますし、今回の八社にいたしましても、かなり小さな業者でございます。その影響がどうなるかというのは、私は必ずしも非常に大きなものにはならないというようにも考えますが、さらに御承知の八社のうちには現在取り調べ中のものも含まれておりまして、現在それが結成されますまでにかなりの紆余曲折があったように思うのでございます。実態をさらに取り調べた上で私のほうとしても結論を出したいと思いますが、いま申し上げましたように、やはり全体としての酒類消費というものを安定し、また消費者の自由な選択を生かしていくという面においては、やはり適当な流通機構を経て、しかもそれを通じて、価格消費者利益に応じて適正に引き下げていくという方向が私どもは一番正しい筋に乗っているものだ、かように考えているわけであります。  もう一つ問題になりますのは、このようなことをいたしました場合に、はたしてこの販売方式が全く酒税法上の免許問題に触れないかという点も一つ疑問がなきにしもあらず。酒類業免許におきましては、単に販売免許だけではなく、あっせん、媒介の業務もこれは免許業務でございます。したがいまして、実際にあっせん等免許を得ずやっておれば、そこに問題が出てくるわけであります。また、しょせん、もしそれが行なわれておるとすれば、それは一つ流通機構を新しくつくり出していく。直売と称しながら実は新しく流通機構をつくり出していくとすれば、そこに免許という問題も出てくる。それらを十分慎重に検討いたしまして、結論を得たいと思っております。何ぶんにもこのこと自体が実行される前に発表されております。いかなる形で実行されるのか、それらについては十分慎重に検討いたしたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、私どもは、いまの免許によってつくり上げられました生販三層の流通機構というのは、他の品目に比べてはるかに簡素化された流通機構であり、この流通機構消費者価格に対して非常に圧迫を加えるような流通機構ではないという確信は持っております。したがいまして、正当なる流通機構を経て、しかもその流通機構合理化によって価格の低減が行なわれることが一番期待したいところであるというのが私ども考え方でございます。
  12. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いまいろいろ答弁があったのですが、前には東駒酒造一社だけが非常に飛び抜けた形でこういうものをやられた。今度は、新聞の報ずるところによりますと、岩手、福島、埼玉、新潟、茨城、広島、愛媛、佐賀というように、そぞれの酒造メーカー一つ組織をつくって、東駒一社だけでパイロット的にこういうものをやったのを、今度同じような手法をもって酒類販売流通機構の中に一つ組織をひっさげて登場した。しかもこれは二、三割安くなるというのですから、消費者の側からいえば、いまの物価高に悩んでいる消費者としては、これは飛びつくのがあたりまえの方式だ、当然こういうことになるわけであります。  そういう中で、国税庁はこれを育成する方向へいくのか、抑制する方向へいくのか、こういう点について一体どっちに考えているのか。ポイントはやはり酒税保全という基本的な国税庁のかかえる問題点もあるけれども、そういうものと、物価を安定させていく、引き下げ得るものは引き下げていく、こういう積極的な姿勢というものを物価対策閣僚協ども強く打ち出されて、現実に一つ一つ具体化できるものを具体化していくんだという非常に強い態度もとられておるようであります。そういう問題点と、酒税保全流通機構、こういうようなものとのからみにおいて、これは安い酒を飲みたいという消費者大衆に少なくともアピールする。こういう方式で、しかも今度は組織的にも全国にまたがった形で北は青森から北海道まで——今回は北海道はないようでありますが、そういうものが出てきた。このことについて、そういう関連において、どういう方向でこれに対処していくのか、この点について国税庁考え方をお聞きいたしたいと思います。
  13. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま申し上げましたように、この形がはたして一般流通機構に代替し得るものであるかという点を考えますと、まず第一に、これは新聞報道でございますので正確を期し得ませんが、はがき等注文を受けて、一定量に達したらそこに運搬をするというようなものでございます。また銘柄も一種類でございます。そういう意味で申しますと、消費者の側から見れば、きわめて制限された販売形態——いわば小売りというものが一つ業務として成立するということは、消費者が一々出かけていってみずから購買に努力するという手数を省く、あらゆる商品を消費者の即時の選択に置き得ることに特色があると思うのでございます。そういう意味では、そういう特色を振り捨ててしまって、ただ特定の酒を、しかも相手の都合のいいときに運ばれるものを買うところにおいては、すでに消費者としては、購入としては非常に制限を受けるわけです。  そういう意味で、こういうものが、現在各品目にございますいわゆる卸売りとか小売りというものに代替し得る性質のものであるかどうかと申しますと、これはなかなかむずかしいのではないかと私は思います。そういう意味で、こういう形態酒類についてだけ将来の販売形態として成立するということは考えられないと私は思います。本来の流通機構というものを整備し、合理化し、それによって適正な価格が生み出されるという方向を誘導するのが本筋ではないかと思います。
  14. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 こういうものが出てくるということについて、いまデメリットの面も言われたわけです。確かに、散在している消費者、そういうようなところからはがき注文をもらって、一体ほんとうに末端に二級酒一本ずつあるいは二本ずつを届けて歩けるのか。そういうような面で、はたしてこの方式でやれるのだろうかということも私は若干の疑問はあるのです。しかし団地等に、会社社宅というような形で団地が構成されているようなところから注文をとるということになれば、一つ会社生協があって、その会社社宅全体をカバーするというような点では非常にすぐれたものになってくる。非常に安い酒が飲める。散在した、点々とあるところで一本ずつ届けて歩くということになったら、たいへん費用もかかるし、販売のコストは逆にかなり上昇するというようなことで、どこまで進出していけるかというようなことについては非常な疑問もある。そういうようなものもあるし、また小売り業自身立場からいえば、やはりこれは今日の流通秩序機構というものに対する一つのかなり顕著な撹乱要素として小売り業界は受け取るでありましょう。しかし今日、消費者大衆の要望にこたえる形でこういうものが出てきたというのは、なぜそれは出てきたのか、ここのところをどういうように分析をされているか。これはやはり価格の問題あるいは流通機構における消費者サービスの問題など、いろいろあろうと思うのですが、国税庁は大体その点をどういうようにとらえておられるか、この点をお伺いいたしたい。
  15. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように、酒につきましても原料米の価格上昇等によりまして、最近価格上昇が引き続いたという点がございます。それが消費者に対しては酒をもっと安く買いたいという欲望を起こさした、これは当然だと思います。ただ問題は、この形態というのが特殊な状態から発してかなりの波紋を呼んだ。それと提携をしておったある業者が中心になって、さらにおけ売りをしている業者を糾合して、もう少し大規模にやろうかという形でこの形が出てきたという面も私はあろうと思います。そういう面ではこれは一般的な大衆の酒を安く買いたいという希望、それに沿った面があるということは事実だと思いますけれども、それが直ちにこのような形を要望しているかというと必ずしもそうではないと思います。むしろ私は、いまの小売り業なり卸売り業を通じて、もっと企業努力をして消費者の要望にこたえるという一つの刺激要素といいますか、一般大衆の持っておるそういう欲望に対する反省というものを呼び起こすという点は大いにあると思いますけれども、これ自身がいまの販売形態に取ってかわるという性質のものではないというふうに判断をしているわけでございます。
  16. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 長官、物価対策の立場消費者が安いいい酒を飲みたいという、そういう気持ちを持つ当然の欲求というものがあるわけですね。特に清酒の問題ですけれども、この清酒について、自主流通米というような段階になってきて、コストの中で六割近くを占める原料米の値上がりという状態はあるわけです。しかし一方においては、灘の最も大きいメーカーなどはかなり近代化もされ合理化もされ、コストはかなりダウンしているはずだし、また全国からのおけ売り、おけ買いの過程を通じて、ラベルというか、レッテルというか、そういうものを張りかえるだけのことで、かなり高い酒を市場に出すこともできる、こういうような規定などもある。しかもそういうところの酒は上がりっぱなしで下がることはない、こういうような問題を踏まえながら、一体酒類に対して幾らかでも下げていく方向に考えられるのか。やはり原料米の値上がりということで上がる方向に考えておるのか、そこらのところはどういうお考えですか。
  17. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 もとより、コストが上昇するものに対しまして、極力それを生産性でカバーをするという努力を払って、価格上昇を押えるということは、私ども常に業界にも要望いたし、また慫慂もしておるわけでございます。今度の構造改善計画でございますと、現在価格で考えてはおりますけれども、五カ年計画の最終年度においては、製造販売価格を一一%引き下げるという一つの目標をもって構造改善をやっておるわけでございます。もちろんその間労働賃金その他が上がりますから、最終的には相殺されるかもしれませんが、生産性向上を一一%見込むということで構造改善計画をやっておるような次第でございます。それは今後ともこの努力を続けていくべきではないか、かように考えておるわけでございます。  なお、いまの御指摘になりました点でございますけれども、私は、将来の流通機構のあり方というものにつきましても、いわゆる合理化の余地が相当あり得る。たとえばいま卸売り部門につきましては、やはり構造改善計画をつくりまして、   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕 卸売り部門で生産性向上をはかろうとしております。同時に、消費者のほうにも、その一部に出ておりますように、みずから努力をして買おうという態勢が出てまいりました。いま小売り業者段階で非常に経費がかかるというのは、何と申しましても人件費——酒を運ぶという慣習を持っている限り、人件費の上昇はどうしても小売り価格に反映せざるを得ない。消費者がやはり欧米のようにみずから買いに行って、そうしてこれを何日分か蓄積をするというような消費形態になってまいりますと、そこに流通機構消費者との間で合理化も行なわれるのだと思いますが、いまのような形で依然として配達を行なっておれば、流通経費がどうしても多くなって、そういう意味では消費者の中に努力をして購入しようとする動きが出てくる、ということは同時に小売り業者もその段階合理化をはかり得る余地がある。たとえば買いに来たものと運搬したものとは価格差をつけるということがだんだん起こってまいりますと、合理化小売り段階にまで及んでくる。こういうことを通じてとにかく妥当な価格の実現というものをはかっていくのが、今後の酒造業界、酒販業界としての大きな課題である。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕 同時に私どもといたしましては、小売りについては、免許についてしばしば指摘されますように、免許が間接的に政府介入を呼んでおるという批判がございますけれども、最近は御承知のように毎年二千軒程度ずつ必要に応じて小売り業者をふやしております。小売り業がいわば寡少のために消費者に迷惑をかけるということがないように、今後も努力をしていくつもりでございます。これらを通じまして、機構から来る価格引き上げ要求というものを払拭するということが、私どもとして大事な配慮すべき点ではないか、かように考えております。
  18. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いま免許の問題が出たわけでありますが、かつて、七、八年前になると思いますが、田中大蔵大臣当時でしたか、酒類販売免許制というようなものは近いうちにこれは廃止をする方向で検討しますというようなことを、この委員会で答えられたことがあるのですね。これはその後どういうような方向——かつて大蔵大臣がそこまではっきりとここで言ったんですね。それについては、いまどういうように考えられておりますか。
  19. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 酒類販売業、特に小売り免許につきましては、行政管理庁の監査結果からも、将来は廃止の方向で考えるべきだということの指摘も受けております。ただ、御承知のように、他の物資と違いまして、酒の場合小売り価格について三〇%前後の税が含まれている。したがいまして、小売り価格を操作する余地というのはきわめて限られている。そういう点から申しますと、酒税確保の見地から申しますと、もう少し酒類供給の正常化、酒類全体の消費の状況が安定をいたしますまで、やはり小売り免許は据え置くべきであるというのが私ども考え方でございますが、同時に、小売り免許を極端に制限をいたしまして、新規免許を押え過ぎて消費者に迷惑をかけるというのは本来の趣旨ではございません。適正な能力があり、適正な地域にあるというものについては、積極的に小売り免許を与えていく。免許の運用が消費者利益を奪うことのないように努力するということで当面は対処していくべきではないか、かように考えております。
  20. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 現実的に免許というものが消費者に対するサービスをそこなわないように、弾力的な運用をしていくということであります。  さきの問題に返りますが、これは次官、製造メーカーが八社も共同をして今度の直売方式をやる、こういう方式というものがかなりこれからふえる見通しというものが、少なくともわれわれしろうとが見ても、これはそういう方向に進むのではないかということが考えられるわけです。こういうものができて、直売をやりますということを天下に宣言をされる。しかも、それは消費者の願いにも合致する面が非常に強い。特に物価の関連においてそういう面がクローズアップされている。これに対してどういうように大蔵省として、国税庁として、この問題について将来の問題として考えていかれるのか、その考えを聞かしてもらって——特に物価問題との関連において、原料コストの中で一番大きい比重を占めている原料米が上がるという中で、長官は近代化、合理化等を通じて、あるいは販売機構などについても、人手のかかる面を消費者の協力を得ながら、酒は上げない方向でいくという程度のものであっても、下げていくということについてはこういうことをやれば下げてもだいじょうぶなんだということなんですけれども酒税保全という面もこれあり、そういうようなものがきちんとこういう方式でやれるのかどうかという判断も含めて、どういうようにこれからこういう問題について対処していかれるのか、この基本的な政府の考えを聞いてあと、この法案の審議に入りたいと思います。
  21. 中川一郎

    中川政府委員 この問題は非常に私は興味のある問題だと思って見ておるわけでございます。と申しますのは、いま御指摘のとおり、日本の経済において物価を何とか押えなければいかぬというのが最大の課題であります。その場合、農産物をはじめとして、流通過程のコストが高いということが非常な問題になっておるわけであります。農産物などにおいてもどうして流通過程ではあんなに高いんだろうか、できるならば生産者と消費者が直結をするということをくふうせなければならぬのじゃないかという議論が一方にはあるわけですが、それがなかなか進まない。  そういう中で酒においてこういった形が出てきたその背景は何であろうかというと、一つは酒の業界が現在非常な激動期にある。ということは、自主流通米という制度も出てまいりました。従来は割り当て制度でありましたから、その割り当て制度の中に温存されておったんじゃないか。ところがそういうことで解放されて競争過程に入ってきた。そこで構造改善ということも一方でやっておりますが、何とか酒をうまく売る方法はないものかといった考えから出てきた苦肉の策ではないかという気もするわけです。そこで、いまそういった過渡的なことで出てきたことではありますが、これがどういうような方向に向かうのか、しばらく見るべきではないか。われわれとしては酒を製造する人のことも考えなければいけませんし、また酒税保全ということも考えなければいかぬ。あるいはまた卸、小売りの流通過程の方方のことも考えなければいかぬ。一方には消費者価格を引き下げるという、それら多くのことを見ていかなければならない立場にございます。そういった中に突如としてこういった生産者と消費者が結びつくという過程のものも出てきたことは、流通過程での刺激にもなるんじゃないか。法律上制度上からいっても違反とも言いがたいところもあるわけですし、こういったことのほうが消費者もいい、製造業者もいいということであるとかりにするならば、流通過程に一つの問題があるのではないか。流通過程は流通過程での意義があって、その分の費用というものが取られてもそれだけの意義がなければならないわけですが、まっすぐ進んでやったほうがいいということであれば、この流通過程、卸売りあるいは小売りにも問題があろうかと存じますので、これらを先々見て、流通過程において合理化できるものは合理化するようにしていく。もちろん今回御審議をいただきます法案等において、措置によって製造業者合理化、構造改善にも力をいたしていく。かたがたいま言った消費者保護の立場からこういった制度がどうあるべきかということを慎重に調査もし、見守って、態度を決定していくべきじゃないか。重大な御指摘だと思っております。
  22. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この問題、議論すればなかなか、これは酒全体の流通機構の問題の根本的なあり方、流通機構を全面的に変えていく方向一つの橋頭堡であるのか、あるいはこれはあだ花のごとく、東駒のごとくまた消え去るものなのか。そういうようなものはいまにわかに判断できないにしても、消費者の欲求というものに対してかなり魅力のあることには間違いないですね。  そこで吉國長官にひとつ。二級酒五百八十円で売っておる。これを二割安いとしても百十六円安くなる。そうすれば四百五十円に近くなってくるわけですね。これが三割安くなったとすれば、これはもうほんとうに四百二、三十円ぐらいにもなってくるわけです。これはもう消費者としては非常に好ましい、望ましいことなんですね。特に左党はもう非常に潤うわけです。そういうことからこういうようなことが、現に直売をやればやれるんだということに踏み切られるというんですね。酒税をきちんと払って、そしてコストをちゃんと消化をして、人件費を払って、原料米をちゃんと払って、こういうようなことで直売方式をやるならばこれだけのことができるのだ。そういうことについてはなるほどやろうと思えばやれるのだというお考えなのか、これは少々無理があるなというお考えなのか、コストの計算やそれから酒税、それから販売のいろいろな経費、そういうような原価計算の面から見て、これは非常に無理のある、永続する可能性のない方式と考えられておるかどうかという、事務的な数字的な立場であなたの所見をひとつ聞いておきたい。
  23. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のとおり酒類販売マージンというものがある程度、公定価格制度以来、基準価格を通じて自然にでき上がってきております。それらから判断をいたしますと、二級酒の製造販売価格は大体四百四、五十円見当になるかと考えます。それ以後卸売り、小売りのマージンが加わるという結果になるのではないかと思います。そういう意味では、全くマージンもなしで、卸売り、小売りのマージンもなしで販売すれば、御指摘のように四百七、八十円という酒が売れないわけではないというようには考えます。ただ先ほど来申し上げておりますように、みずから運搬するというものが、意外に地域が離れてまいりまして、また少数、少量の配達をするということになると、専門業者によらない場合にはかなり大きな負担がかかるのじゃないか。その辺は実はやってみないとわからない。東駒があれで非常に成功をしたとすれば、そこは可能であったという結果が出たと思うのです。結果から見ると、御承知のように現在会社更生法の適用を受けようかという段階にあるわけでございます。その過程等を分析をしてみないと、実際に個別の販売経費というものがどれくらいになるのか、その見当がちょっとつきかねております。したがいまして、いわば直売方式が非常に有利であれば、私はかなりそういうことがひんぱんに起こっていたのではないかという感じがするわけであります。現にいなかでは直売というのは、消費者が直接酒を買いに来るという形でずいぶん行なわれております。消費者直売すら行なわれておるわけであります。それはそれらの条件があるところに生まれてくる。今回の場合は、いわば従来あった消費者直売と違う条件のもとで新しいものをつくり出そうとしておりますから、ちょっと先例がないので、私ども自身も正直なところ、はたしてそれが引き合うものであるかどうか。さらに問題としては、それをあっせんをしているかしていないかちょっとわかりませんけれども、そのあっせん者の注文を取りまとめる者が、そのまま業としてではなくやっていけるのか。それがまた将来も無報酬でそのまま行なわれるのか。そこにまた新しい一種の流通形態としての仲介者があらわれるかどうか。そういった面も将来の問題としてあり得るのじゃないか。そういうことで実態をもう少し検討してまいりませんと的確なお答えを申し上げかねるのであります。製造酒販売価格としては四百四、五十円というところが一応の平均的な数字であろう、かように考えます。
  24. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 平均的な製造原価が四百四、五十円になるという。そうすると卸、小売りマージンなんというものは全然入らぬ製造原価そのもので売るということにはかなり無理もあるような気もするわけですが、それ以上に業界の近代化、合理化が進んでいる。したがって、国税庁のそういう数字のとらえ方が古いのかどうか、ここらにも問題があるわけでして、その辺のところも十分勘案しながら、この問題について国民の求めるところを十分踏まえながら、さらに酒の販売機構流通機構というものについての、国民大衆の幾らかでも安い、いい酒を飲みたいという声にこたえられるようなものを真剣にひとつ考えていただきたいということ、それから酒税そのものについても、私どもは高過ぎるということを常々言っているわけでありますが、こういう問題についても十分ひとつ考えていただかなければならぬと思うわけであります。  そこで、時間の制約もありますので、法案の問題に移りたいと思いますが、今回安定法をお出しになる目的は、第一条に書かれているとおり、「経済的諸条件の著しい変化に対処して、清酒製造資金の融通の円滑化及び清酒製造業の整備合理化を図る」こういう二つの目的をもって、酒造組合中央会の業務範囲を拡大してそういう二つの仕事をやらせよう。いわゆる米の基準指数が担保力を持っておった、財産価値を持っておった、こういうものが急速に減価をして、かつて一石当たり十八万というような取引がされたものが、いまやこの法律を前提にして、やっとこ四万円程度だということのようであります。したがって、自主流通米を買わなければならないが、そういうことで銀行からも基準指数を担保にして金を借りることもできないというので、この法律をつくって、国もことし四十五年度に七億円出そう、業界も七億円出そう、来年さらに国は追加して七億円出そう、こういう予定になっているわけでありますが、清酒製造業の経済的諸条件が著しく変わった、このことを個条書き的に、こういう点がこう変わりました、こういう点がこう変わりました、これはどうしてもこういうことをやらざるを得ない段階ですということを、まず説明をしていただきたいと思うわけであります。
  25. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 経済的諸条件の変化の中で、何と申しましても一番基本的なものは、米の割り当て制度が変わったということでございます。御存じのように、約三十年間米の統制が続けられてまいりましたので、原料米につきましても、食糧管理制度のもとで割り当てを受けておったわけでございますが、昨年の五月に自主流通米制度がとられるようになりましてから、酒の原料米についてはいわゆる食糧管理からはずれて、この自主流通米制度に乗るということになったわけでございます。そこでそれに伴いまして、第一に、ただいま広瀬委員から御指摘がありましたように、酒の生産の特色として、米のとれ時、酒の仕入れ時に一時に多量の資金が要る。そしてそれを一年間に売っていくということで、他の製造業の場合と資金手当ての形が違いますので、そこに一つ問題があるわけであります。その場合の金を調達するにあたりまして、基準指数といいますか、昔からのことばでいいますと基準石数といいますが、それが財産的価値があるということで融通を受けやすかったのが受けにくくなったというのが何といっても、先生のおっしゃる個条書き的という点からいいますと、第一の点であろうかと思います。  第二の問題といたしまして、その食管制度のもとにおいて米の割り当てがあったということから、酒につきましては製造の段階から小売り段階まで、全体的に非常にいわゆる統制下にあったわけでございますけれども、原料米の自由化ということに伴いまして、酒造業界といいますか、酒の経済と言ったほうがいいかもしれませんが、全体の方向としては自由化の方向に向かうようになっているわけでございます。そこで、自由化への方向にスムーズにいくための一つの手段といたしまして、昨年から生産数量規制を行なっております。これは酒団法といいますか、酒類業組合法によりましてやっておるわけでありますけれども、この規定は一種の独禁法の特例規定でございますので、そう無限に続けるわけにいかないので、大体三年ないし五年というくらいを目安にして現在やっております。反面、自由化に備えまして構造改善をしなければならぬということで、これまた昨年から五カ年計画で構造改善計画をやっておりまして、この生産数量規制と構造改善計画をやらざるを得ない状態というのが第二の問題であろうかと思います。  さらに第三の問題といたしましては、いま申しましたこの二つの関係でございますが、生産数量規制と構造改善計画をやりながら、今後五年以降にはより一そうの自由化体制がとられるわけでありまして、米の制度が変わりましたことを契機といたしまして、順次だんだんと自由化の方向に向かっていくという大きな流れがございます。これらのことを考えまして、何らかの形でその切りかえがうまくいくようにお手伝いをしなければならぬというのが今回の特別措置法案でございます。  この法案の目的にあげております「経済的諸条件の著しい変化」ということをあげますれば以上の三つかと思います。
  26. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 手元にあります資料によりますと、石数で言ったほうがわかりいいと思いますが、製成数量の規模が五百五十四石以下が二百四十一業者、五百五十四石から千百九石までが千六百四十四業者、あと千百九から千六百六十三石までが七百三十七業者、千六百六十三から二千七百七十二石までが五百十八業者、二千七百七十二から五千五百四十四石までが二百六十一業者、五千五百四十四から一万一千八十七石までが百十九業者、一万一千八十七石以上が六十二業者ということで、三千五百八十二業者が現在ある、こういう数字があるわけであります。しかもこの約千八百八十業者の製成数量の集中度はせいぜい二割だ。企業数でいえば約半分の五二・五%のところが二〇%くらいの製成数量しかつくっていない、こういうことなんですが、今度の法律は端的にいいまして、こういう小規模事業者というものを整理したい、非近代的なつくり酒屋をやっている者を整理したい、これがいまおっしゃられた構造改善の目標としてやっていかなければならぬ、そういうことが一つの大きいねらいである。もちろん基準石数、基準指数というものが担保価値がなくなって、自主流通米が値上がりをして、しかもその自主流通米を買わなければならない。銀行も一度に集中するその金は貸してくれないということをめんどうを見ようということであれば、一体そのほんとうのねらい、この法案を出すほんとうのねらいというのはどこにあるのか。やはり小規模の非近代的な業者を逐次整理したい、こういうところにウエートがきわめて高いのだ、こういうことでございますか、この点伺いたい。
  27. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 酒の製造の場合に、他の業種と比べてやや特色がございますのは、必ずしも企業の集中によってコストが下がるという関係が、いわば近代産業といいますか、機械装置産業のようにはあらわれてまいりません。ただいま御指摘のように、非常に小さい企業が多いわけではございますが、小さい企業はそれではコストが非常に高いか、あるいは経営がなべてうまくいってないかというと、必ずしもそうではないわけでございます。いわゆる地場の酒で、非常に小規模にやっておって、そして御主人が自分で直売をしておるというような企業は、かえって、原価の点からいいましても経営の状態からいいましても悪くはないということが言えるのでございます。したがいまして、全体として三千六百の酒屋さんの数があるということは、これは多いか少ないかといわれれば、決して適正な企業数であるということは言えないのでありますけれども、さりとてそれでは小さい企業がぐあいが悪いのだ、大きな企業のほうが能率的なのだということは他の企業ほどには明確には言えないわけでございます。  そこで、現在実行に入りかけております構造改善事業等におきましても、必ずしも規模の小さい企業がやめることが望ましいということでは考えておりませんので、ただ、非常に小さい企業が集中してあります場合には、たとえば合同したほうが望ましい、あるいは集約製造をしたほうが望ましい、あるいは業務提携をしたほうが望ましいというようなことは構造改善計画でも考えておりますけれども、ただいまお話しのように、小さいがゆえに直ちにそれがいわばやめたほうがいいということにはつながらないというのが酒の業界の特色でございます。その点につきましては、私どもといたしましては、必ずしも大きいから小さいからということではなしに、しかしいずれにしても企業の数が多過ぎるから若干少なくなったほうがいいだろうということで、企業間で話し合いができまして、しかるべき合理的な計画ができましたならば、これは望ましいことだという考え方に立っているわけでありまして、政府といいますか、役所側といたしまして、積極的に企業合同をしてこういう規模のものにすべきだというような、しばしば他の業種に見られますような指導はいたしておらない、また、いたすべきではないというふうに考えているわけでございます。
  28. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この三千五百八十二者、約三千六百あるわけですが、最近の一、二年のところで赤字企業というのはこの中でどのくらいありますか。
  29. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 ごく最近の数字は持ってございませんけれども、一番直近の調査によりますと、現実に会社の出しました経理でもって赤字を計上いたしておりますのは百七十二者ございました。
  30. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そこで、構造改善ということば、構造改革ということばが出るわけですが、構造改善の中身というのはどういうところを構造改善するのか。小規模のものを合併させるというようなことだけが中身なのか。あなた方が構造改善ということで指導はしてないというのですけれども、自主的にやるものについて、ただほったらかしつぱなしのようなことなんですけれども、酒の行政は大体国税庁がやられている。しかし国税庁というのは税金を取るところで、大体積極的に一つの産業政策的な立場における構造改善というようなものを指導する能力というものは、もう国税庁のイメージからは出てこないわけだし、おそらく不得意であろうと思うんだね。そういうものに対して何か積極的な構想というようなもの、酒の業者をどうするんだという基本的な立場というものをお持ちにならなければそういう指導もできないだろうし、その辺のところは一体どうなっているんだろうか。構造改善ということばがときどき飛び出してくるけれども、これはことばだけであって中身は何もないのだとわれわれ理解せざるを得ないのだけれども、その辺のところはどうなっているんですか。
  31. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま高木審議官から申し上げましたように、清酒の製造業について規模の利益というものがさほど大きくないという実情から申しまして、構造改善をいたします場合にも、今後予想されます自由競争、いわゆる基準指数の廃止によりまして割り当てが行なわれないという事態を想定いたしまして、その場合に競争に耐えていく能力のある企業を育成する、そこに基本の条件を置かなければならないと思うわけでございます。したがいまして、構造改善におきましても単に規模の集約ということを考えるだけではございませんで、もちろん企業合同とかあるいは提携あるいは協業化というようなことも条件によって実現をいたしますし、さらに具体的に考えますと、おけ売りという制度も昔からある制度でございまして、酒質を向上するためにいわゆるブレンドをするということが昔から行なわれております。さらにその他いろいろの理由でおけ売りということは昔からあったわけでございます。このおけ売りを安定化する。たとえば一種の下請工場のような形でおけ売り自体が提携して安定化し、その形で企業として存続していけ得るものも十分あるわけでございます。そういう意味で系列のおけ売りという形の企業化も考えられる、あるいは系列まで入らないでも、提携をして永続的なおけ売りを実行するということも考えられるわけでございます。さらに先ほど高木審議官が申しましたように、いわゆる直売型と申しますか、小売り業に対して直接販売をする形で現在まで十分採算のとれてきたものであり、さらに地域の過疎過密を考えますと、将来ともそれが十分可能であるものにつきましては、それなりの構造改善というものが考えられる。こういう形で、いわばその具体的な事業の置かれております環境に応じて、新しい自由化競争の段階で耐えていけるような形の幾つかの目標を想定をいたしまして、それに沿った改善をはからなければならない。これが今回の清酒業に関する構造改善の基本的な考え方でございます。  したがいまして、形といたしましては、従来ありますものが新しい自由競争のもとで存続していける形に、いわば合理化をはかっていくということであって、そういう意味では、もちろんそれが実行できない、提携おけ売りもできないという、いわゆる非提携おけ売り業者の中には転廃を余儀なくされるものが客観的にも生じてくることが予想されてくるわけでございます。そういうものが業者の計画におきましても七百近く予想されるということになっておりますので、総数としてはかなり業者数は減ってまいると思いますけれども、その減ってくることは構造改善の目標ではなくして、むしろそれぞれ新しい条件のもとで伸びていかれる業態に整理をしていく、またその業態の中での合理化をはかっていくということに本質を求めておるわけでございます。
  32. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いま長官から七百ぐらい整理、合理化をはかるという一応の目安の数字が示されたわけですけれども、三千六百のうち二千八、九百くらいの業者、基本的に新しい自由競争に耐えられる企業として生き残れるものはそのくらいではないのか。これを判定する場合に、いま赤字企業の数を聞きましたが、百七十二者だ。赤字の会社、赤字の企業というようなものはそのくらい、これが最近ふえているかもわからないけれども、赤字は永続するわけがないんですけれども、そういうようなものは転廃業というようなことに踏み切っていくだろう。しかし、それ以外で、まだ赤字が出ない、黒字であるというようなところは——酒の場合には銘柄、それからのれんというようなものへの執着というものは非常に強い業種だと思うのです。自分の代に、親代々、百年も百五十年も続いてきたのを廃止したくはないんだというような気持ちも非常に強い特殊なケースだと思うのです。そういう伝統というようなものを背負っておる業界であるだけに、現実に百七十何者くらいしかまだ赤字企業はないということになりますと、どういうぐあいに具体的に、あなたは競争に耐えられないんだというようなことで、構造改善するなり転廃業してはどうかということをすすめていくなり、そういう方向に誘導するなりというようなことは、どういうところでそのポイントを押えてこの七百者というものを——これは何年か先ということもあるでしょうけれども、いまの赤字企業と、それから七百者くらいは整理されていくだろうという目安というものとが、かなり開きがあるわけですね。これを今度の制度で、いわゆる転廃業資金を年次別にキロリットル当たり四十五年度四万円、あと一万円ずつ減らしていく。そういうことをやって毎年どういう年次的な転廃業の推移をたどりながら、七百者くらいまで何年先にいけるんだという、こういう目安というものはお持ちですか。
  33. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま間税部長から申しました百七十二という赤字者は四十二年でございますけれども、その後若干ふえているんじゃないかと思います。しかしこの転廃業というものは、御指摘のように非常に長年にわたってやってきた生業でございますから、軽々には踏み切れないという面もございますし、またこれを無理やりにやらせることもできない性質のものだと思います。  ただ問題は、一挙に自由化が行なわれたといたしますと、おそらく現在非提携のおけ売り業者が七、八百ございますけれども、これらが一挙に販路を失うということも考えられる。現在大手業者自身でも製造能力は現在の製造数よりは多いと思います。したがいまして、米が自由化され、自由に原料が入手されるとすれば、従来非提携のおけ売り業者から需要に応じて購入していた量というものは、急激に減ることは当然考えられてくるところでございます。そういうところで、これらの業者が急激な影響を受けて、むしろ倒産を招く、あるいは倒産に至らないまでも、非常な安売り競争を行なって酒類業界を混乱におとしいれるというおそれがございますので、五年間にわたって協定を実行しようということにいたしたわけでございます。ただ、この場合五年間の協定をいたしましても、毎年自由化率というものを高くしていく。最初、予想需要量の六%を四十四酒造年度においては追加をいたしまして、さらに毎年二%ずつ上げまして、最終年度には見込まれる総需要数量の一四%増、相当大きな自由化が行なわれます。そうなってまいりますと、この一四%に相当する数というのは、先ほど申し上げましたように、七、八百の非提携業者の総製成数量よりも多くなるという結果になります。  そうなりますと、その過程において、やはり毎年経営が無理になってくるものは段階的に出てくると思います。それに応じて、それに対しては転廃業資金というものを業界として拠出をして、これに一部にはその報償的な意味もあり、一部には誘導的な意味もあって、これを救済しつつ実現をはかっていくという形をとっておりますので、具体的にいつの年度に幾つ出るかということまでは予想をいたしておりませんが、最終年度に近くなるにつれてこれらの業者が困難の度を増すということは、もう業界としては当然予想いたしております。そういうことからいたしますと、二年目、三年目あたりには相当数そこで決断をせざるを得ない業者が出てまいる、かように見ております。なかなか一年目は決断に踏み切れないということで、一年目に出てまいります数はそう大きくないのではないか。二年目、三年目からかなりふえてまいりまして、最終的にはやはり七百に近いものが転廃業を余儀なくされるという結果になるんではないか、そういうことから今回の法律をつくりまして、それに対する手当てだけはしておかなければならぬということでいたしたわけでございます。
  34. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この仕事をやるのは、酒造組合中央会がやられるわけだけれども、これだけの仕事をやるということで、最初は特殊法人をつくろうかというようなお話もあったということを聞いているわけですが、いろいろこれは、公社、公団などの新設はできるだけ抑制するという政府の方針もあって、まあ現在ある法律に基づく法人としての中央会にやってもらうということに落ちついたようでありまして、中央会が転廃業資金の給付をやる、給付の事務をやるわけですけれども、そこで、この中央会にこれだけの仕事がはたしてやれるのかどうか、こういう点についての検討、こういうものはどうなっておるのか。この点がまず心配なんですね。  それと、政府が出した七億の補助金、四十五年度七億、四十六年度も七億出すということですね。これはまあ補助金というような形で出す。出資金という形じゃない。この補助金の使い道というのは、あくまでいわゆる信用保証事業、これに使う、こういうたてまえですね。それで、この給付金のほうを年次別に差は設けてあるけれども、四十五年度以降四万円から四十八年度一万円に至る、四、三、二、一万円という形でやっていく。こういうものは、大体その財源の主力は業者から拠出をさせるというたてまえをとっておられる。これがほんとうにそういうものを支出し得るだけ集まるのかどうか、そういう点についての——あとから出てきますが、若干の強制力もあるわけですけれども、しかし納得しない人たち、やめる人たち、こういう人たちなんかがどういうそれに対して反応を示して、今日業界全体も反対なしにぴしっと一つ方向でまとまっているのかどうか、こういう点も問題点になってくるだろうと思うのですね。そこらのところの皆さんのお考えをこの際明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
  35. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 酒造組合中央会は、御承知のとおり、従来基準指数による割り当ての実際の事務も行なっておったわけでございます。そういう意味では全体の業界に対する把握力というものは相当高い程度になっているというふうに思います。実際問題といたしましても、営業行為はやらずに調整行為をやるという性質の組合でございますので、それにいわば製造関係においては相当な事務能力を持っております。そういう意味では、信用保証の業務、あるいは構造改善の実行に伴う転廃給付金の給付業務、あるいはそれの給付金のもとになる原資の受け入れ事務、こういうものには十分支障なく対処できるものだと私ども思っておるわけでございます。  それから、構造改善のために給付金を支給するという問題につきましては、清酒業界が全体といたしまして五カ年間の長期にわたる協定を確保いたしまして、それをいわばきめました際に、これらの問題もあわせてきめているわけでございます。もちろん、政府が実行するかどうかわからない段階ではございましたけれども、一方において信用保証というもの、一方において構造改善給付金というもの、これを残存する業者、転廃する業者等に手当てをするという前提でこの協定ができ上がっておるわけでございますから、いわば業界としては、この給付金を出すということについても全体としての意思決定をしているということでございます。個々の業者の中において、あるいは具体的段階において、給付金の拠出を渋るという者も出てくるかもしれませんが、それについてはやはり業界全体のこれが酒税保全その他につながる公的な仕事であるという面で、政府が法律として援助してやれば十分摩擦なくやっていけるだろうという見通しで、この法律的基礎を与えたということができると思うのでございます。  それから、政府の支出いたします七億円は、業界の具体的に信用保証を受けますための出資金と合わせて運用されまして、それによって初年度四百二十億円の信用保証を行なうということにいたしておるわけでございます。それ以外には使用しないというたてまえでございます。ただ、この際、一般の信用保証よりやや低い程度ではございますけれども、信用保証料というものを徴さなければならないということがございます。さらに、基金そのものは運用が可能でございます。そういう意味では、普通の特殊法人でございますと、信用保証料とか、あるいは運用益はこの事務費に充てる、あるいは人件費に充てるわけでございますが、中央会の場合は、従来の人員あるいは事務組織をそのまま転用いたしまして実行いたしてまいります関係で、これらのものがいわば給付金の一つの原資になり得ることは事実でございます。いわばそこで中央会としての努力を発揮いたしますれば、業界からの納付金と合わせて、その運用益、あるいは保証料による収入が転廃業者のために使用し得る。これは、一般の特殊法人では運用益等をそのまま使っていいということから申せば、いわば酒造組合としては当然のことで、むしろそれを公益的な面に使うものでございますから、これは差しつかえないのでございます。それらを実際上考えてまいりますと、転廃給付金についても円滑な処理が十分望み得る、かように見まして今回の制度をつくったわけでございます。
  36. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この予算が通っておるわけですから、七億出ることは間違いない。そこで業界から七億円金を集める。これは出えん金とか納付金とかいっていますけれども、七億円を拠出する。まあことしは十四億の財源がある。四十五年度で転廃業資金もキロリットル当たり四万円もらえるのだ、こういうことですから、それじゃというので、先行きもうこの際という見きわめをつけた者がかなり大量に出るということを想定してみる。そうしますと十四億くらいの金では——信用保証の四百二十億、大体三十倍ですか、までは金融機関と協定をして、信用保証限度をそこにする。それを取りくずしてしまってというわけにはいかないでしょう。転廃業給付金のたてまえは運用益——政府からもらった補助金そのものを取りくずすというたてまえではないわけでしょう。したがって、これはいわゆる信用保証の基金として温存されなければならぬ。しかもその転廃業資金として現実に現金を支出していかなければならぬ事態になった場合には、当然初年度では運用益もそうは多く見込めないはずですね。しかも業者から拠出をされてくるものはかなり時期的にもずれてくる、そういうものもあるわけですね。そしてキロリットルあたり四万円出していくということになれば、かなりこの転廃業者が出る。したがって、保証料もそうは急速に蓄積されてくるわけじゃないんだから、そうすれば当然かなり大きな額の、何十億とまでいかないにしても十億をこえるような借り入れ金というようなことも想定されてくるわけです。こういうようなことになって、なおかつ中央会の経営というものは、これは新しく二つの仕事をつけ加えてうまく回っていくのかどうか、そういう面についての見解をこの際明らかにしてほしい。どういうようにやっていくのか。いま借り入れ金のことを長官は一つも触れなかったんだけれども、この中央会あたりでは、かなり膨大な借り入れ金をしなければ、ことし、来年はとてもしのいでいけません、ということになっているわけですが、それをすぐ返済する力というものもいまのところないはずだと思うんですね。その辺のところを計数的にどういうようになっているか、想定がどうなっているのか、その辺を明らかにしてもらいたい。
  37. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私のさっきの説明、ちょっと若干抜けていたところがあります。業界が拠出する金額は、一つは政府の七億に対応する信用保証基金の基金となるべき拠出金の七億円、そのほかに転廃給付金として給付さるべき、初年度で申しますと四万円でございますが、その二分の一を別途拠出をする、その残りの二分の一を中央会が運用益等でまかなっていく、こういうたてまえでございます。初年度予想されるところでは、かりに二百前後の業者が転廃をするということになりますと、実際問題として全体として十三億程度の給付金が要るわけでございます。その分は、半分はやはり業界が拠出をし、残りを中央会が借り入れ金で処理するということにならざるを得ないのです。中央会としては資産等が相当ございまして、借り入れ限度は相当高いものでございます。私どもの計算では、大体支出が初年度、二年度、三年度と高まりまして、あとは収入がふえるという状況であります。そういう点から、ピークは確かに十億円前後の借り入れ金に達する。しかしその後の運用益、あるいは保証料の収入で借り入れ金の元利返済等を考えて、ならしてまいりますと大体九年程度で完済をし得る計算になります。一年目等はおそらく先生御指摘のように収入は非常に少ないわけでございますが、二年目以降フルになってまいりますと、運用益と信用保証収入が相当な額になる。これで元利を返済いたしてまいりまして、十年目からは返済がなくなるという形が予想されるわけでございます。これらはかなりかたく見積もった数字でやっておりますので、そういう意味ではかなり安全性がある数字だと考えております。
  38. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そういう計算の基礎になったものをひとつ本委員会提出をしていただきたいと思います。これは大蔵省が厳密にはじいたのでありましょうけれども、私どもそういうものがないと、確信をもってこういう法律をつくってこの目的が達成できるのかどうかということについて、なかなかその判断に苦しむわけです。  そこで、四十五年度、四十六年度、この二カ年間で二十一億というものがこの信用保証事業の基金として積み立てられる。その基金全体が運用益を生むことになるのかどうか。そのうちどのくらいが運用できるのか。運用の額というのは二十一億に対してどのくらいの運用が可能なのか。これは一〇〇%可能なのかどうか。その辺のところ、どういうことになっておりますか。
  39. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように信用保証業務でございますので、流動性の資産を保有しておれば基金としての性格は十分果たせる。そういう意味では、極端にいえば初年度は十四億全部を運用することができる。さらに二年度目からは二十一億全部を運用することができるという見込みでございます。
  40. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その運用の方法はどういうものですか。有価証券投資だとか、いろいろある財政投融資の中に入れて六分五厘でやるのか。その辺については中央会に一任でございますか。それとも国税庁からどういう原則で運用しなければならぬということを押えるのですか。その方針を聞いておきたいと思います。
  41. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 余裕金の運用については、これは考え方からすれば安全有利であればいいわけでございますが、一般のいろいろな公益的な基金の運用としては、ある程度の制限を加えているのが普通でございます。大体現在考えておりますのは、省令である程度の運用に制限を加えるということを考えておりますが、農林中金、商工中金、銀行への預金、これは当然でございますが一番低い運用でございます。国債、地方債、金融機関の発行する証券、いわゆる長期信用銀行の金融債といったようなもの、これに対する運用ということにいたしますと、かなり高利回りの運用ができるということになると思いますので、大体現在の見通しでは、具体的な運用の利回りとしては七・四%程度を見込んで計算をいたしております。
  42. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 七・四%で二十億まるまるやってもこれは一億数千万円、一億五千万円足らずということでしょう。これもいわゆる転廃業の給付金の一部にしてよろしい。保証料が年率七分三厘ですね。この保証料を四百二十億限度一ぱい借りたとした場合に、七分三厘でいきますと一体幾ら保証料の収入が入りますか。
  43. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは中央会でいろいろ試算をいたしました結果を見ますと、平年度では大体二億程度、つまり二十一億になりましてからは二億程度の収入が見込めると思います。
  44. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この保証料の問題ですね。四百二十億、業者全体で借りるわけですね、自主流通米を購入するために。それの信用保証をした場合に、その借りた額がどのくらいになるか。四百二十億全部借りるか、あるいはもっと少ないのか。また三十倍ないし六十倍というような説なんかもあるということもあるので、金融機関との間にそういうものでかなり異動があるだろうと思うのですが、それと、ほんとうに転廃業する者に対する予測もなかなか見きわめがたいものがあるでしょう。非常に多くなったような場合というようなことで、金融機関との間にその二十一億を基金にして三十倍まで保証できるというようなことになりますれば、かなり多額の保証——二十一億が基準になるわけですか、その保証料というのは。これは借りた額がやっぱりあれになるんじゃないですか。その辺のところをぼくもよく知らないのですが、どういうことになりますか。
  45. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは保証を受けた額でございますから、四百二十億なら四百二十億がもとになるわけでございます。大体予想しておりますのは日歩二厘程度の保証料でございます。四百二十億に対しまして、大体一年じゅう借りっぱなしになりませんで、途中で返済をしてまいりますから、大体年間で考えますと六五%ぐらいと考えられます。四百二十億の六五%に対して日歩二厘という計算をいたしますと、大体二億前後の収入ということになります。
  46. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そこでこの保証料が入る、あるいは業者から転廃業給付金の半分に相当する額ですか、こういうものを積み立てさせる、こういうようなことでこの給付金の財源ができてくるわけですけれども、問題は、やっぱり一番大きいものとしては、業者が拠出する納付金というようなものがあるわけですけれども、この納付金は転廃業を希望している者もやっぱり納付をするわけですか。これはもう転廃業によってあとの残った業者メリットを受ける面が非酌に大きいわけだから、そういう人たちなのか、その辺のところはどうなっておりますか。
  47. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは前年度まで残っておりますと、その年度まではまだ確定いたしませんから出ませんが、廃業をきめた年にはみずからは出さないで済むということになっております。
  48. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そこで若干逐条的にお聞きいたしますが、第三条の第一項で、「清酒の製造に係る資金で政令で定めるものを銀行その他の金融機関から借り入れることによりこれらの金融機関に対して負担する債務の保証」をするのだ。「政令で定める」ということになっているわけです。「清酒の製造に係る資金」、この「製造に係る資金」というものの中身はどの程度の範囲を政令で予想しているか。もちろんこれは自主流通米を購入する資金というものが大部分であろうけれども、そのほかに政令で定めるというのはどういうものが予想されておりますか。
  49. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 この第三条の「清酒の製造に係る資金で政令で定めるもの」といいますと、これは具体的にいま考えておりますのは、第一が原料米の米でございます。それからアルコールその他清酒の原料の購入に必要な資金ということでございまして、それが第一のグループでございます。第二が、仕込みのときにいわゆる杜氏さんが来て仕込みをするわけですが、仕込みのときに支払われるいわば労働賃金、そういう直接酒の製造に従事する人に対する労働賃金、この二つがおもなものというふうに考えております。政令は大体そういう骨子でやらしていただきたいと思っております。
  50. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この施設関係、設備関係、こういうようなものはないわけですか。
  51. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 これはあくまで酒造資金の調達ということが前提になっておりますので、設備資金のことは考えておりません。
  52. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 第七条のところで、第二項「前項の納付金は、各清酒製造業者が均等に負担すべき納付金及び清酒の製成数量に応じて負担すべき納付金とし、その額は、政令で定める金額をこえることができない。」こういうことになっておるわけです。均等に負担すべき納付金の額及び清酒の製成数量に応じて負担すべき納付金、これは政令で定めるといっているのですが、この中身はいまどういうようにお考えになっているか、具体的にひとつ聞いておきたいと思います。
  53. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 現在この法案を成立さしていただきますことを前提として中央会でもいろいろと論議をいたしております。この仕事はいずれにいたしましても中央会が中心になってやりますのを、政府側では側面から援助するということでございますので、中央会の関係者の間で議論が詰まることを期待しておりますが、現在のところでは、大体均等に負担すべき納付金が全体の五%、それから清酒の製成数量に応じて負担すべきものが九五%ぐらいの割合にしたらいいのではないか。これは毎年、どういう企業者がやめる、そうするとその企業者の製成数量が幾らである、それに、先ほどお話がございましたように、年によりまして四万円、三万円という額がありますから、やめる数量に四万円、三万円をかけますと転換給付金の総額がまず出ます。その総額を今度は残るほうの清酒製造業者が負担するわけでございますから、その総額をまず出しまして、それをいま申しましたように五%と九五%に分けて計算していく、こういう考え方でございます。  ただ、それじゃ非常に多くの人がやめることになったという場合にあまりの高額になりますと、残るほうの企業者負担が重くなりまして、たとえば極端な場合には価格にまではね返るということになっては非常に困るということから、政令で最高額をまずきめることになっておるわけでございますが、現在考えておりますのは、先ほどの初年度に相当多数の方がやめられるということも含めましても、均等割りのほうは一清酒製造業者について一万円ぐらいのものになろうか。それから製成数量割りのほうは一キロリットルにつきまして五百五十円というぐらいのことになろうか。これがいまの中央会でいろいろ関係業者の間で相談をいたしております大筋でございますので、ほぼこのような線で、政令でそれを受けてきめることになろうかというふうに思っております。
  54. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この「前項の納付金は、」「政令で定める金額をこえることができない。」こういうことなんですが、いま人頭割り、数量割りのほうはわかったのですが、この政令で定める金額をこえてはならないというのは、これはまあ大小、規模がいろいろあるわけですね、非常に開きがある。幾ら大きい者に対する数量割りでも一キロリットル当たり五百五十円ぐらいのところでそれにかけ合わせていくということで、さらに上限を、上の足切りじゃないけれども、上限というものを設けて、何百万円以上はこえさせないんだという、これはそういう上限を設けるという趣旨ではないのですか。そうじゃなくて、基準の人頭割り幾ら、数量割り幾らというものの合算したものを別に切り飛ばすという、そういう趣旨であるわけですか。
  55. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 均等割りは一万円、それから製成数量割りは一キロリットルについて五百五十円ということにした場合に、非常に大きな企業者の場合にどのぐらいの負担になるかということは、各企業所ごとに御自身で計算できるわけでありますので、そういうことを含んでの上で、ほぼそういうことで合意ができておりますものですから、そういうふうに拠出する。残るほうの清酒製造業者の単位当たりの数量で最高限をきめれば、それでうまく運営できるのではないかというふうに考えております。
  56. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それでは、いまのように計算をして何百万円になった、しかしその一定限度以上は負担をさせないんだということじゃなくて、そういう計算の基礎を積み上げていった額をこえないのだ、こういう趣旨ですね。——わかりました。  それから、「中央会は、第一項の認可を申請しようとするときは、あらかじめ、広く清酒製造業者の意見を聞くように努めなければならない。」これも現実の運用としては非常に大事な問題点だと思うのですね。これはどういうようにして広く清酒製造業者の意見を聞くようにするのか。大会とか何かを開いて、いわゆるいつもやっているような総会なら総会というようなことで決議をしたとか、あるいはそこで討論をして多数決できめた、こういうようなことでこの条文の趣旨というものはカバーされるのかどうなのか。この方法を一体どういうように考え、また直接担当される中央会との間にこの点でのどういう意思統一というものがなされておるのか、この点を伺っておきたい。
  57. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 先ほど国税庁長官からも御説明いたしましたように、中央会の組織は、従来は米の割り当て等を通じまして、また最近は構造改善の事業なりあるいは数量規制なりということを通じまして、総会なり評議員会での議論が末端の各清酒製造業者のほうにもきわめてよく通ずるようになっております。したがいまして、法律の形式といたしましては、法律の文書の技術上はこのように、広く意見を聞くというふうに表現されておりますが、現在考えておりますところでは、中央会自体としては総会なり評議員会という形をとれば、それで全員の意見を十分に聴取できるであろう。そのほかに個別に何か会合を、評議員会等よりもさらに広く行なわなければならないというふうな実情ではないというふうに思っております。  なお現実には、現在三千六百の清酒製造業者がございますが、そのうち中央会に加盟をしている人と加盟をしていない人を見ますと、加盟割合がほとんど一〇〇%ということになっております。そこで中央会のメンバーについてはそういうことで十分意思が通ずると思いますが、アウトサイダーについてはそこはどう考えるかという問題がございますけれども、たまたまアウトサイダーの数が非常に少ないので、それらについては個別に聞くということも可能であろうかというふうに思っております。
  58. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 次の四項で「認可に係る納付金の額を公告」するわけですが、公告は官報か何かでやる、これだけのことで足りるわけですか。
  59. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 官報に登載することはもちろんでございますが、何かもう少し官報以外にも考えるべきだと思っております。その具体的な方法につきましては、中央会の定款に定める公告の方法によることがいいのではないかというふうに思っております。
  60. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 次の第八条で、納付金の督促をやり、督促をしてもなお延滞をする、こういうものに対して年率一四・五%の割合で延滞金の徴収ができるということになっておるわけです。これは税の延滞税と平仄を合わしたということでございましょうが、こういう全体の意見を聞くのだということ、そういうようなことにもなっておれば、こういう事例も実際はあまり出ないはずなんですね。この一四・五%というのも、税の延滞と同じようなことでやるまでのことがあるのかどうか。この辺のところの感触はいかがですか。
  61. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、税の場合の延滞金に見習ったということもございますが、むしろそれよりは、実は特定繊維工業構造改善臨時措置法というのがございまして、繊維工業構造改善事業協会というところで織機等の買いつぶしをやることが行なわれております。その場合に残られるほうの業界の方はその経費を負担するという制度がございまして、この制度の先例を見ますと、やはり酒の場合と同じように年一四・五%ということになっております。また石炭鉱業合理化臨時措置法というのがございまして、この場合には石炭鉱業合理化事業団が同様に納付金を集めるという制度がございますが、この場合の延滞金も同じく一四・五%になっております。本法で一四・五%という案を出さしていただきましたのは、税のほうというよりもむしろそういう、同様に業界が出し合っていろいろ構造改善をはかっていくという場合の納付金の例にならったものでございます。
  62. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 少し高くはないかという感じを申し上げたまでで、その点、どうこうは申しません。  そこで第九条の一項関係ですが、大蔵大臣は、中央会の申請によって納付金の納入について、「期限を指定して、当該納付金及び延滞金を納付すべきことを命ずることができる。」こういうことがあり、また二項の後段において、「酒税法第十二条の規定の適用については、酒税に係る滞納処分を受けた者とみなす。」ということになっておるわけでありますが、この法律を通す現在の状況の中で、こういう事例というものはかなり出ると予想されているのかどうか。国税庁なり大蔵省なりはこの点をどういうように考えておられますか。
  63. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 もともとこの制度がこういう形で組み立てられましたのは、一方において数量規制をやり、一方において構造改善をやっております酒造業界の強い要請があったことが一つの背景になっておりますことから考えますと、ただいま広瀬委員の御指摘がございましたように、納付金を納めないというような人が出るということはほとんど予想されない現状でございます。ただしかし、仕組みとしましては、もし万が一でありましてもそういう人がいた場合には、それが一〇〇%確保されるのでなければ困るという趣旨で九条が組み立てられておるわけでございまして、私どもは現在の段階では納付金を納めない人がたくさん出るということは全然予想していないわけでございます。
  64. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間の関係でもうそろそろやめにしたいと思いますが、この法律をつくる前提になった、国が清酒製造業界に対して、二カ年にわたって十四億円の補助金を特定の業種に支出するというのは、どうも業界の圧力に屈服したというような問題点も、当時の予算編成段階における新聞をにぎわした問題でございます。この保証事業をやっていく、あるいは転廃業のいわゆる給付支給の仕事をやっていく、こういうような二つの仕事をやっていくわけでありますが、だんだんこの政策の目的が達成されて、かなり業界自体が力がついて、もう自主流通米でも何でも、原料米を獲得するために銀行から金を借りるのに、信用保証を一々中央会でやらなければ金を借りられないというような事態がだんだん解消をしていく、こういう事態も想像されないではないわけです。そして四十五年から四十八年までの四カ年間に給付金の交付の問題は大体片がついてしまう、こういうことになるわけですね。これはその点どこまでこれを続けるのか、この点についても事実の問題としてひとつ伺いたいんだけれども。いずれにしてもこういうことで、転廃業するというような事例はだんだん少なくなって、まああっても年に一者か二者だというような状態になってくる。こういう場合に、この国から出した十四億というようなものが中央会の財産として残って、さらにそれが運用益や保証料などの収入で非常に大きなものになってくる可能性もあるわけですね。この十五条で、「特別の会計に係る残余財産の帰属その他の措置については、別に法律で定める。」こういうことになっているわけですね。このことはやはりそういう事態も想定をしてこういうものがつくられていると思うわけでありますが、この点についていつこういうものを——「別に法律で定める。」ということなんだが、この法律はいつごろどういう考えで、いま私が申し上げた点についてどういう方針をとるんだ。国に何ほどか——まあ補助金のことですから、補助金としての性格で出されるわけですから、補助金はくれっぱなしで、本日上がった漁業共済の再保険のように、一般会計から繰り入れたやつをまた特別会計から吸い上げてくるというようなことではないかもしれぬけれども、やはり財産がそういう形で大きくふくらんでいった。それは補助金でそういうことになったということに結果的にはなるわけなんですが、それをどうするつもりなんでしょうか、その帰属について。やはり法律上そういう補助金を出して、こういう法律もつくってやったわけなんですね。それを火種にして大きくなって、しかも目的とした二つの仕事はもうあまりやる必要もなくなったという事態がくる、その場合に、一体この財産の帰属というものはどういうお考えで、いつごろこういう法律は出されるおつもりなのか、この点をはっきりさせてもらいたい。
  65. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 この法律で保証基金が設けられます理由は、先ほどから御説明いたしておりますように、米の割り当てがなくなりまして、造石権的なものがいわば無価値になったということが法律ができた経緯ではございますが、さて今後業界が非常に構造改善計画なり何なりがうまくいきまして健全にいきました場合に、どういう方法で造石資金の手当てができるかということを予想してみますと、やはり全然こういう制度が何もなしではなかなかむずかしいのではないかというふうに考えられますので、いつごろになれば保証基金がなくても十分資金手当てができるかという見通しは、実はあまり明確には持っていないわけでございます。  それからもう一つ、先ほどからのお尋ねに対してお答えいたしましたように、転換給付金のほうが最初はかなりの額の借り入れでやっていくことになっておるものですから、もし現在の中央会が計画し、計算しておりますような形で転換が行なわれますと、その借り入れを返済するのに十年かかるということになっております。それは先ほど国税庁長官が御説明いたしましたとおりでございます。そこで、その計画のとおりいきました場合には、一応その十年というのが、もしその借り入れ金の返済が全部スムーズに終わりますと、それが一つのどうするかということを考えるべき時期であろうかというようなことが現在の段階では予想されるわけでございますけれども、しかしさきに申しました事情から見まして、その十年たちましたときに、一体これなしでも、うまくいけるかどうかという問題がいまからちょっと予測がつきませんので、少なくとも十年は続けていかなければならないということだけは申し上げられますが、その後、十年でやめていいのかどうかということまではちょっと現段階では申し上げかねるわけでございます。  その場合に、残余財産の帰属をどうするかということでございますが、その点は、そのとき自体の残余財産の姿なり、残余財産が形成されてきた過程なり、つまり国からの補助金が残余財産ができますのに貢献した度合いなりというものがおそらくいろいろ計算されまして、その段階で、国庫の補助に伴うものは国庫へ戻すとか、その他のものはその中央会自体に残すとかいう形でおそらくきめられるのだろうと思いますが、それもいまから予想することはたいへん困難でございますので、その時点で御審議いただきたいというのが十五条の規定を置きます理由でございます。
  66. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そうしますと、大体十年くらいを見なければ、「別に法律で定める。」という法律はまあ出てこない、国会に出されることもない、こういうように了解していいわけですね。その方針も……。これは、国が出したものが基金となって信用保証事業をやっていくわけですから、残っていくのですね。それで運用益を生むし、そういうものでふくらむということもあるししますから、そういうものでこの酒造組合中央会が膨大な財産を十何年かたった後にため込む、こういう事態も予想されないではないんだけれども、そのときにこれをどうするかということについての方針というものは、国に若干でも補助金相当額なりあるいはその何分の一かなり戻すというような方針は、まだ立ってないということですね。
  67. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 そのとおりでございます。
  68. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これはまた大臣が来たときにその方針を伺いたいと思います。  それでは、きょうはこれで私の質問を終わります。
  69. 毛利松平

    毛利委員長 美濃君。
  70. 美濃政市

    ○美濃委員 最初にお尋ねしたいことは、いま酒造米の関係は、自主流通と政府払い下げとの関係はどういうふうになっておるのか。
  71. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 たてまえといたしましては、酒造米はすべて自主流通米でまかなうということにいたしております。自主流通米でどうしても足りない場合に、例外的に政府払い下げを認めるというたてまえでございまして、本酒造年度におきましても九五%以上は自主流通米でまかなえると思います。
  72. 美濃政市

    ○美濃委員 これは例外としてですか。原則として酒造米は自主流通でおやりなさいということですか。どうしても自主流通で足らぬときには例外として政府売り渡しをやる、こう解釈して間違いないですか。
  73. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そのとおりでございます。もう自主流通米だけでやるというたてまえでございますので、もしものことがあるといけないというので、移り変わりの際に条件をつけて、もしもの際には政府の払い下げ米で充足をするという保障をつけたという程度だと御理解願いたいと思います。
  74. 美濃政市

    ○美濃委員 現在のところ、米の自由化によって、この法律酒類製造者の生産規制、構造改善をやるというふうに先ほどから言っておるわけですが、そうすると、自主流通で何ぼ買ったかということは的確に把握できるのですか。ことしも一部に政府払い下げをしておるという、そういう関係はどういうふうにしておりますか。現在すでにもう自主流通は捕捉しがたい、足らぬというから売り渡してやるのだというのですか。自主流通ができる前は、払い下げ米はどういうふうになっておりましたか。どういう払い下げ方法で、あるいは大蔵省から出ておったのか、税務署から出ておったのか、主税局から出ておったのか、何かの行政関連において、実績酒造米というのに払い下げ量というものは従来は規制されてきたわけですね。それは今回の場合、自主流通ですから、的確に言えば、何か帳簿検査をやるとか、相当きびしい調査もしなければ、実際に自主流通米を何ぼ買ったかということはわからぬでしょう、政府払い下げ米ではないのだから。その関係はどういうふうになっておりますか。
  75. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 従来は御承知のように、食管法の諸法令によりまして国税庁長官がその委任を受けて割り当てをいたしております。したがいまして数字は明確になっておったわけです。今回の自主流通米につきましては、酒造組合中央会と全販連との間で購入契約をいたす。したがいまして、数量についてはやはり的確に把握ができる体制になっております。
  76. 美濃政市

    ○美濃委員 次に生産規制の問題ですが、これは大蔵省にお尋ねいたします。  これは時代の変遷によって、今日生産調整なりそういうことを必要とする条件のものはかなり日本の国内にあると思うのです。しかしどうして酒だけをこういうふうにするのですか。これを一つの行政の実績として、他の産業においてもこういう措置を必要とする、あるいはそれらの企業グループから要請をされてきた場合、酒以外のものにもこういう措置をとっていく方針を今回新たに立てたのかどうか。酒だけだからやるのか。これはどういう関係になっておるのか。
  77. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいまのお尋ねは生産の数量規制のことであろうかと思いますが、数量規制につきましては、御承知のように酒類業組合法の四十二条、「酒類業組合は、次に掲げる事業を行うことができる。」という規定の五号にいろいろこまかく規定がございまして、「組合員の製造、移出又は販売する酒類販売の競争が正常の程度をこえて行なわれていることにより、酒類の取引の円滑な運行が阻害され、」「酒税の納付が困難となり、又はなるおそれがあると認められる場合」に限って不況カルテルを結ぶことが法律の上で許されているわけでございます。本来、今回のような自主流通米への移行ということが起こります前から、生産規制のほうは、そういうことがあっては困るということで、酒類業組合法のほうに規定があるわけでございます。他の業種のことにつきましては、私から申し上げるのはあまり適当でないかもしれませんが、中小企業団体法なり独禁法の分野に属することでございますので、それぞれの法律のたてまえに従ってその事態において御判断があることと思われます。酒のほうにつきましてのこの規定も、ある意味では独占禁止法の例外規定であり、また中小企業団体法の特例法であるというふうに理解をいたしております。
  78. 美濃政市

    ○美濃委員 しかし、法律というものは自然条件ではないのですね。これは人間がつくるものでしょう。行政やあるいはそういう方法手段をもってどうすることもできない自然条件とは違うわけで、いま法律法律と言うけれども、それは人間がつくるわけです。そういたしますと、これは、その法律を読んでおりましたら、酒税の確保が困難になるからそういう法律をつくったのではないかと私は思うのです。しかしすべての社会現象の中で、これから、現在もうすでにかなり大きく、あらゆる面で、従来の姿から見ると変遷をしていくわけですから、その中でこういう措置が必要なものが私はあると思うのです。それが、中小企業法や何かの中では、今回出してきたこういう措置はないでしょう。ただ奨励的なあるいは振興的な、いささか二階から目薬にもならぬくらいのものが出されておるだけであります。こうした必要が、ある企業全体に生じた場合には、これを一つの実績としてやる、こういう考えかどうかということです。従来の法律の講釈は要らないわけです、これは人間がつくったものですから。ただしかし、これはやはり大蔵省側としては、酒税徴収に深い関係があるから、他のものはやらぬのだけれども、酒だけやるのならやるのだ、こういうふうに原因をはっきり答弁してもらいたい。どういうわけで酒だけやるのか。酒だって一つの企業ですから、他の国民がいろいろやっておる中小企業と同じですよ。ただここに大きなウエートをもって酒税というものを賦課して徴収しておるかおらぬかの差であります。酒をつくって、もうけて、企業として継続する、しないということは、他の企業と私は変わりないと思うのです。それに税金がかかっているか、いないかの差であります。これは廃止したらどうですか。たとえば酒にこういう税金をかけていなかったらこういうことをやるのかやらぬのか、その辺はどういうふうにお考えになっておりますか。
  79. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま酒類業組合法に基づいて生産規制が行なわれているというふうに御説明をしたわけでございますが、何ゆえに中小企業団体法とはまた別にこういう規定があるかといえば、そこはやはり酒税の確保ということからこういう規定が法律上特に認められたものと理解をいたしております。ただ、ただいまお話しの中に、酒だけはやるのだ、もし酒というものに重い税金がかかっていなければやらないのかという御趣旨の御質問をいただきましたが、その点につきましては、私ども担当でございませんので、詳しく申し上げられませんけれども、酒だけではございませんので、中小企業団体法のほうで、いろいろの要件が備わっておればやはり不況カルテルを結べることになっておりますし、現実にもおそらくそういう事例は皆無ではないというふうに承知をいたしております。
  80. 美濃政市

    ○美濃委員 この関係は今度政策を進める重要な問題であります。いずれこの法案の最終には大臣が出席されると思いますから、この問題は大臣に聞いておきたいと思いますので、この点は大臣質問に保留をしておきます。  次に、先ほどのお話を聞いておりましても、酒類の製造という体系はオートメーション化する製造業と違って、大企業必ずしも有利とはいえない、私もそうだと思うのです。そこで、大企業必ずしも有利とはいえないというこの体系に対して、こういう生産規制を持っていきますと予測しない現象が起きる場合があるわけです。それに対する対応策をお考えになっておるかどうか。皆さん方が常識で考えておる常識を越えた現象が起きる場合があるわけですね。それに対してはどういうふうにお考えになっておるか。  その現象をちょっと申し上げます。ただ現象といってもおわかりにならぬと思いますが、たとえば米の生産調整に対して、実際に私どもが予測しない現象が、予期しなかった現象が一部の地域に起きてきておる。これは私どもは予期しなかったんです。八%というから、まあ文句言いながら農民はしぶしぶと、応ずる者は八%を限度にした減反に、行政指導なり行政措置に、やむを得ない、応じようかという動きが出ても、それには渋って、かなりの意識的な反撃が起きてくるだろうと思ったら、予測しない現象が起きてきましたですね。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕 これはどういうふうに見ておりますか。皆さん方が計画を立てたときと現在起きておる現象をどういうふうに判断されておりますか。米の生産調整です。
  81. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 今回の生産規制と申しますのは、従来、基準指数によって米の割り当てができておりました体制が一挙にくずれる、これを漸進的に行なおうという趣旨のものでございますので、いわば従来行なっておりました基準指数の割り当てとほぼ同じ方向で、ただその中に自由化率をだんだん加えていくという形で行なわれるわけであります。そういう面から申しますと、昭和三十二、三年ころから、基準指数の割り当てに関しましても、希望加配とかあるいは実績加算とかいう形で、基準指数と違う形の、自由化と申しますと少し言い過ぎでございますが、やや自由化的な部分を漸次拡大してまいっております。そういう方向をさらに伸ばしていくという形でございますので、大体——確かに予想されない事態が起こるというのは事実でございます。たとえば希望加配というものをつくってみましても、結局全員が希望してしまうというのが当初の例でございまして、結果においては基準指数割りで全部きめたのと同じような、最後の姿はそうなるということが最初のころ見受けられました。しかしそのうち、次第に生産数量がふえてくるに伴って希望加配を辞退するというような形が出てまいりました。これが次第に割り当ての中におきましても自由化の方向に向いてきた理由でございます。それらを勘案いたしますと、今後自由化率を高めていく場合の傾向というものも大体推測されますので、これは毎年二%ずつ漸進的にふやしてまいりますから、数量規制の協定は毎年更新いたします。その際に十分検討いたしまして、思わざる事態というものを十分に洗い出して対処していくことができる、かように考えております。   〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 美濃政市

    ○美濃委員 大蔵省はどうですか。
  83. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 いまのとおりでございまして、特に私ども、米の場合に起きましたような、ああいう予測と違った事態というものは起こらないのではないかと思いますが、事柄の性質上、どういうことがどういうふうに変わってまいりますか……。問題は、やはり自由化に対処する各企業者考え方がどういうふうに時間的の推移とともに変わっていくかというところにあろうと思っておりますが、現在の段階ではこの程度の措置でやっていけるものと思っております。
  84. 美濃政市

    ○美濃委員 国税庁長官の答弁は、何か私の質問の意図が掌握されないで答弁されたと思うのです。米の生産調整で、私さっき申し上げたように八%の平均減反を渋るだろう、こう見ておったところが、そうではなくて、一部の地帯では大規模の農家が全反別休耕して補償金をもらうという問題が出てきておりますね。十ヘクタール休耕すれば三百五十万円もらえるわけです。そこで一年田を休んで遊ぶという傾向が起きてきております。  私はこの問題で、知り合いの酒造業者に電話をかけて、どういうお考えか聞いてみました。この方はかなりの量の実績を持っております。大体初年度においてやめればキロリットル四万円で三千万円ちょっともらう。というと八百キロリットル、九百キロリットルぐらいですか、そうすると三千万円ぐらい補償金をもらえる。それは町の中で、かなり古い昔からの酒屋で、町の形成からも郊外に出てくれと文句を言われて、これから補償金を払いながら設備投資をして自由化競争をするよりは、いっそやめようかと思っているのだ。  そういう意見があるとすれば、あるいは半分はやめるかもしれませんよ。初年度において半分の人がやめるということになったら二百億要りますね、大体百五十万キロリットルで。それは販売百五十万キロリットルでなくて——私は酒屋でないからよくわかりませんが、倉出しをすると百万キロリットルが対象だと聞いているわけです。百万キロリットルで計算して半分やめれば二百億要るわけですね、キロリットル四万円ですから。二百億円に対して、五百五十円と、一企業一万円という最高基準を設けようというのだが、そうすると納付金として集まってくるのは五億六千五百万円ぐらいでしょう。半分やめますといえば二百億要る。この法律をつくって、いやしくも大蔵大臣が監督してこの法律が発効した以上は、やめますと言ったらやっぱり四万円出さなければならぬでしょう。それは一応中央会が借り入れるとしても、このうしろに、業務方法書から全部大蔵大臣が監督してやることなのですから、大蔵省はそのしりは知りませんとは言えないでしょう、いやしくもこの法律をつくる以上は。初年度において半分がやめれば二百億要るのですからね。それで納付金が五億六千万円ないし多くても六億ということになりますれば、金利が足らないのではないですか。どこから借りてやるにしても、中央会が一時的にそれを出すとしても。  そういう現象が起きないという保障はない。私は起きるとは言いませんよ、起きる要素がある。要素があるというのはちょっと言い過ぎかもしれないが、起きる場合が想定されると思う。電話をかけた先はそういうことを言っておりました。やめるとは言っておりません。そうすると、そういうことで大企業必ずしも有利でないという体系の中で、どうですか。米の生産調整の中で、先ほど申し上げているように五ヘクタール、六ヘクタール、十ヘクタールという大規模作付農家が全部ことし休耕するのですから。一部の地域では全反別休耕して補償金をもらって一年休むのですから。そういう現象が起きないとはいえないと思うのですがね。これを考えると起きる要素がある。起きた場合に、それは断固としてやはりやり抜く決意があるかどうかということを聞いておるのです。起きなければいいのですけれども、あなた方の想定にはそれが入っていないと思う。そういう現象が起きた場合に、一ぺんに二百億初年度で払わなければならぬ。起きた場合でもそれをやり抜くという決意に基づいてこの法律提案したものであるかどうか、これをお尋ねいたします。
  85. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま御指摘の、数量が半分になってしまうというような事態が起こるかどうかということでございますけれども、これは可能性は常にあると思います。ただ蓋然性はないというのが私どもの考えであります。同時に、それぞれの給付金にいたしましても、業界全体が構造改善を考え、それに合わせて算出をしてきているものでございますから、業務方法書も当然可能な範囲で考えてくる。それに対してまた大蔵省としても、残存業者に非常な無理を与えてしまえば、半分がつぶれた上にさらに残りの半分がつぶされるという状況が出てまいりますので、それに対しては政令で限度を押えるということで、そういう事態においてはこれはまたそのまま四万円を出すということにはならないと思います。実際問題として、この法律をつくるのはやめるのを奨励したということではない。業界の構造改善を実行するにあたってその法律的基礎を与えてやろうという趣旨でございますから、これをつくったら全部やめてしまうという事態が起こるということは、私どもとしてはまず蓋然性としてはあり得ないというつもりで進んでおります。
  86. 美濃政市

    ○美濃委員 しかし可能性はありますね。そこは何かチェックするのですか。可能性はないという断言はできないと私は思うのです。私は可能性があるという断言をしておるわけじゃない。そういう可能性を含んでおるということですね。
  87. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 可能性としては考えられますが、さような事態が起こった場合には、当然業界としてはその給付金その他の支払い可能な範囲にこれを押えざるを得ないということによって、総会その他によって業務方法書の作成をいたします場合に、総額としての給付金の範囲というものは当然自己防衛上もきめざるを得ない。そうなってまいりますと、それがチェックになって、やめようかと四万円もらうつもりでいたところが、四千円しかもらえないとなれば、当然その可能性も減少してまいるわけでございます。これはやはり業界全体が話し合って構造改善を進めておりますので、その段階で思わざる事態が起これば、構造改善計画自体の変更ということも考えられるわけでございます。すべて総体としての業界の構造改善そのものの動き方ということと関連してまいりますので、それだけが単独で独立して起こるということはあり得ない、かように考えておるわけでございます。
  88. 美濃政市

    ○美濃委員 法律関係については先ほど来かなり質疑がかわされておりますから、次に酒類販売についてお尋ねしたいと思います。  これは非常に率直に申し上げますが、この法律と同じように酒税確保という見地で、生活協同組合とか農協とか、こういう法人形態のものが会員に供給するために酒類販売を申請しても、何か主税局長通達などというものがあって、ほとんどそういうものは必要があっても顧みられない、こういう状態でありますが、この関係はどういうふうにお考えになるか、今後改正する考えであるかどうか。
  89. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 消費生協等の場合でございますと、その販売範囲が会員に限られておるということから、一般販売免許という形から見ると適当ではないということで、従来消費生協には免許は原則としておろしておりません。しかし地域的な生協であって、員外利用が相当行なわれるというものについては若干おろした例もございます。やはり一般性のある、一般消費者のために販売を行なうというものに対して免許を持たすというたてまえは変えられないかと思います。
  90. 美濃政市

    ○美濃委員 どうもそういう考え方は私たちはちょっと理解ができないわけです。これは時間の関係もありまして、長く問答しようとは思いません。ここの質疑で決着がつくとも思えませんけれども、どうも少し硬直しておるのではないか。いま、はなやかな経済成長ムードをうたって、すべて自由だ自由だという時代において、なぜ酒だけは硬直しているのか。酒税確保というのはこれほど——さっきも中小企業の法律や何かてカルテルや何かもできるのだ、こう答弁しておるからそのままにしてありますけれども、これは大臣への質問のときにきちっとしようと思います。しかし今回出してきたようなこの法律とは内容が違うということ。これだけのことを全部やろうという意思はないのですよ。これは明らかに酒税確保という魂胆に基づいてやっておる。財政に関係のあるものは必要以上に需要者の立場や何かが無視されて——この法律について需要者の立場が無視されたとは言いませんよ。だけれども、他の企業にはやらない生産調整なりこういうものを出しておる。それは五千億なり六千億なりの政府の財源確保、いわゆる酒税確保を容易にしようという魂胆から出てくるし、その魂胆がこの販売においては、他の商品と比較して、需要者の立場や何かを無視して押えつけていこうとする。どうも少し私は不自然だと思うのです。どうですか、そうお考えになりませんか。他の商品と比べてどうして酒だけをそうしなければならぬか。何もそうしなくたって酒税の確保が困難に陥ってしまうことはない。また、無制限に自由販売体系にせよとは私は言っていない。ただそういう関係をもっと緩和する必要があるのではないか。需要者の要請に対応して緩和する必要があるのではないか。そんなに頭から拘束してしまわなくてもいいのではないか、こう考えるのです。
  91. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 酒の販売業の免許が行なわれましたのは、御承知のとおり昭和十三年でございます。いわば配給統制が行なわれる前提であったかと思います。そういう意味から申しますと、おそらく本来的に小売り免許が要るものだということにならないかもしれないと思いますが、御承知のとおり、戦後酒の製造が非常に制限をされまして、そのために密造酒その他も起こってくるという状態におきましては、販売免許というものがその点で国民に正規の酒を売る、これは衛生的な見地からも非常に必要であったということは事実だと思います。またそれがだんだん、正規の酒の量も種類もふえてまいりまして、だんだん正常化してくるという段階になってまいりますと、小売り免許そのものも必然性というものがかなり変わってきていることは事実だと思います。その点で従来から小売り免許基準といったようなものもだんだん緩和をしてまいりました。具体的には、小売り免許というものの付与についての自由化をするという考え方方向をとりつつあることも事実であります。ただ現在酒類業界というものが大きな転機に直面をしておる時期でもございますし、しばらくこの免許の体制は残さざるを得ない、免許そのものの具体的運用についてはより弾力性を考え、消費者利益を考える方向を強めていくということが必要であろう、かように考えております。
  92. 美濃政市

    ○美濃委員 もう一時でございますから、あと大臣がお見えになったときにさっきの体系の問題については質問することにして、これで終わります。
  93. 毛利松平

    毛利委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後四時八分開議
  94. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。二見君。
  95. 二見伸明

    ○二見委員 確認いたしますけれども、午前中に赤字会社の数が百七十二者というふうに聞いておりますが、これはこのとおりでよろしいですか。
  96. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 四十一年度はその数字のとおりでございます。
  97. 二見伸明

    ○二見委員 ついでに赤字会社百七十二者の赤字総額がわかりましたら教えていただきたいと思います。清酒製造業界の負債総額がどのくらいになっているか、それをあわせてお願いします。
  98. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 欠損を計上いたしております企業の経理内容についての詳細はわかっておりません。ただ昭和四十二年十月一日に一番近い終了事業年度末におきますところの清酒製造者の借り入れ金総額は千三百億円ということはわかっております。
  99. 二見伸明

    ○二見委員 それから、清酒製造業者はおそらく法人と個人と両方あると思うのですけれども、その割合、数、三千五百幾つかのうち法人がどのくらいで、個人がどのくらいかということはわかりますか。
  100. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 三千五百八十二のうち法人が三千百五十一、個人が四百三十一となっております。
  101. 二見伸明

    ○二見委員 転廃給付金の問題でございますけれども、四十五年度の見込みは、午前中のお話ですと大体十三億円ぐらい、対象になる製造業者はおよそ二百というお話でございました。そうしますと、一者平均大体六百五十万円ぐらいの転廃給付金が支給されるわけでございますけれども、この点で国税庁にお尋ねしたいのです。この転廃給付金というのは、国税庁としては課税の対象にされるわけですか。それともこれはそういう客観情勢の変化に応じて万やむを得ないということでもって、この場合は特例の措置を設ける意思があるのかどうか、その点はいかがでしょう。
  102. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 特別の租税措置がございませんので、現行法のもとにおける課税が行なわれると思います。したがいまして、法人が受けました場合には益金に入りまして、それに対応いたしまして損金がございますれば課税所得は出ないということになります。個人であればおそらく一時所得として計算されると思いますので、三十万円控除されまして、その二分の一が所得となるというふうに思われます。
  103. 二見伸明

    ○二見委員 法人の場合ですと、たとえば赤字会社の場合には赤字分というのは損金として落とされるわけですね。それから従業員に退職金を払えばそれも給付金の中から全部落とされてしまう。残った分について大蔵省のほうとしては税金をかけるということになると思います。個人の場合には、たとえば去年の赤字、おととしの赤字というのは全然認められないわけですね。六百万円なら六百万円、六百五十万円なら六百五十万円の給付金があれば、たしか三十万円を控除して、残り半分に累進税率をかける、この割合でもって税金を取るわけですね。
  104. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 冒頭私が、一時所得の取り扱いが行なわれるでありましょうということを申し上げましたが、その点はまだ確定いたしておりませんで、譲渡所得として取り扱われるかもしれません。ただ取り扱いとしますれば、いずれにしましても三十万円控除の二分の一が所得になるということでございます。  それで御質問の点につきましては、かりにその清酒製造業者の個人が青色申告でございますれば、繰り越し欠損控除ということで、前年あるいは前々年の赤字がそれに反映してくるという取り扱いになります。
  105. 二見伸明

    ○二見委員 私もこれは何とかならないものだろうかと思っていろいろ調べたのですけれども、現行の法律ではどうもだめらしいので、国税庁としてはおそらく法律のたてまえどおりにやってきますから、給付金六百万円なりあるいは七百万円あるいは一千万円に対しては、課税対象とみなしてくることは、現在の法律がそうなっている以上やむを得ないと思いますけれども、政務次官、その法律を離れて、法律のたてまえがそうなっているのだからというのではこれは話になりませんので、今後の政治的な判断としてこの点はどうでしょうか。今後とも何か考慮していただける余地があるのかどうか、その点いかがでしょうか。
  106. 中川一郎

    中川政府委員 ただいま部長のほうから御答弁申し上げましたように、個人の場合でも青色申告の場合には負債は負債として赤字の部分を控除できるという点、もう一つは、これに類似した課税を見てみましても、大体そういう措置でやっておるという点からいきまして、この際はやむを得ないのではないか、かように考えておる次第であります。
  107. 二見伸明

    ○二見委員 それから納付金の納付ですけれども、午前中、今度は納付金を納めるほうは均等割りが一万円で、一キロリットル当たり五百五十円が最高限度であるというふうなお話でございましたけれども、それはそのとおりでよろしゅうございますか。
  108. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 その点は、現在の段階では政令できめるつもりでございますが、その場合に、そもそも製成数量割りと均等割りといいますか、その関係を先ほど御説明いたしましたように、均等割りを大体五%にして製成数量割りを九五%にするという前提で、片方が一万円ぐらい、片方が五百五十円ぐらいという計算が出ておるわけでございますが、最終的には、やはり法律が成立しました上におきまして、中央会等においていろいろ最終的な御議論が必要かと思います。現在の段階では、ただいまお話しございましたような一万円、五百五十円というようなところがいいのではないかということが中央会のメンバーの間で議論されておりまして、私どもも大体そういう方向ではなかろうかというふうに考えております。
  109. 二見伸明

    ○二見委員 けさ午前中に、四十五年度にキロリットル四万円もらえるならばやめてしまおうという業者が続出して、二百億円ぐらいになった場合にどうするかというお話がありました。可能性はあるけれども蓋然性はない、たしかこういう答弁がありました。ただ問題は、たとえば納付基準を均等割り一万円、そしてキロリットル当たり五百五十円とします。それで転廃しない業者からその割合で納付金を集めるわけです。集めたけれども、それでもなおかつ給付金の額に満たないという場合も当然起こり得るわけですね。たとえばそれが二百億とか三百億とかいうばく大な数ではなくて、一億円少ない、あるいは三億円少ないというようなこともこれは可能性としてはあり得る。この程度のことだったらば蓋然性もあり得るわけですね。そういう場合に、たとえばキロリットル四万円という基準を下げて給付するのか、それともその分の一億円なりあるいは二億円あるいは五億円という差額は政府のほうで補って、一キロリットル四万円という線だけは守っていくのか。その点はいかがでしょう。
  110. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 もともと転廃給付金の制度は、政府がプランを立てましてそれに基づいて転廃業を促進するというようなことではございませんので、昨年来やっております構造改善計画の中で、一部の業界の方が最近の情勢にかんがみて転業もしくは廃業をするという計画を持っている方があるわけであります。その計画に従って、転業されるあるいは廃業されるという場合に、残られる業者が、どうも長い間一緒にやってきた仲間であるし、これを放置することはできまいから、そこで自分たちがその分を出し合って助けましょうということで、連帯の制度が仕組まれておるわけでございます。そこでこの制度が、法律上国が側面的にいろいろな形で援助するということが明確になりました場合に、いずれ中央会を中心にして、どのような転業なり廃業なりの計画が進むであろうか、どういう希望者があるであろうかということが先に見当がつけられまして、そこで大体の計算額が出てまいります。その上で最終的に細目がきまることになりますので、午前中のお話しのように、全く予想しないような事態が発生いたしますればまた別でございますが、多少のそういうことでありますならば、そのやめる方の数、それから、要するに基準指数というものからどれだけの額が必要であるかという額が先に算定をされまして、それを残られるほうの方の人数なり基準指数で割りましてこの納付額が出てまいるわけであります。非常に大きな差異でありますとまた別になりますけれども、些少のことでありますれば、毎年の給付額のほうが先に計算されたあとで、納付額が逆に結果として算定されるというたてまえになっておりますので、通常の場合には著しい差異は出ないと思っております。  なお、午前中のお話のように、著しく差異があるかどうか、蓋然性というようなお話でございましたけれども、その点につきましては、米の生産調整の場合は一年間作付を休むという話でございますけれども、こちらのほうの計画というのは、やめるということは将来永久にやめるということを前提にいたしますので、そう急激に変化があるということは予想されません。今日までも、数は少のうございますけれども年々おやめになっている方もあるわけでありまして、大体の見当はついておるので、二百億というような全く予想もしないような数字ということは、私どもとしては万々起こらないというふうに確信をいたしております。
  111. 二見伸明

    ○二見委員 私も二百億というような数を言っているのではなくて、たとえば四十五年の場合には二百者ぐらいやめて、予定は十三億ないし十三億二千万円くらい、こう中央会のほうで見ていますね。おそらくそれでもって、現在のように均等割り一万円、それから五百五十円という割合でいけば、大体それでおさまるんじゃないかと思いますけれども、やめる二百の業者、大手がその中に入ったような場合も考えられますね。十三億二千万円でおさまらなくて十五億円くらいかかるということも考えられるわけです。そうすると、政令のほうで均等割りは最高限度一万円、それからキロリットル五百五十円と最高限度を押えますと、十五億円の納付金が集まらない。十三億ないし十四億円くらいしか集まらない場合が当然考えられるわけですね。そうすると、一億円なり一億五千万円というものはどうするのか。これは国のほうで見るのか、それとも四万円という基準を下げて三万五千円とか三万六千円にして張じりを合わせるのか、その点はどうですか。
  112. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 先ほどからお話がありますように、かりにやめられる業者の数が二百ということを前提にして、そして十三億二千万円という計算上の金額が中央会の現在の段階での計算で出ておりますが、そのうちちょうど半分の六億六千万円を残るほうの企業者が支出をする、そして足りない六億六千万円は借り入れ金をもってまかなうという計画になっております。したがいまして、もしそのやめる方が大きな企業がやめたということで、十三億二千万円がかりに一億なり二億なりふえたという場合にどうするかということになりますと、一億ふえれば借り入れ金のほうをとりあえず一億ふやしていく。したがって四万円という単位当たりの給付額は変更しない。また、一万円なり五百五十円なりの最高限度の頭打ちも変更しない。ただ変更するのは借り入れ金が若干ふえる。そこで借り入れ金がふえますと、利息その他の関係で後年度への影響というものは出てまいりますけれども、その程度の差異でございましたならば、この四万円の給付額もあるいは支払うほうの納付額も大体いまの予定のままで変更せずにやっていけるものと思っております。
  113. 二見伸明

    ○二見委員 それから今度の法案の九条二項によると、大蔵大臣が指定した期限までに納付金あるいは延滞金を納めなかった場合には、「酒税に係る滞納処分を受けた者とみなす。」こうありますね。これは製造免許を取り消すという、そこまでの意味を含んでいるのでしょうか。この点はどうですか。
  114. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 九条二項の規定の意味は、まさしくただいまおっしゃいましたように免許を取り消すことがあるということを意味しておるわけでございますが、そもそも九条の仕組みにつきましては非常に問題のあるところでございまして、納付金が納まらなかった場合にどういう方法でそれを徴収するかという仕組みとして、立法論的には二つの方法がございまして、中央会に強制徴収権といいますか、たとえば国税滞納処分の例によって徴収するような権能を付与するという方法もあり得るということで、いろいろ検討いたしましたのですが、法律専門家の間におきまして、そもそも中央会は本来が任意組合であることからいたしまして、そのような法律上の仕組みをとることよりは、ここに御審議願います形をとったほうがよりなじみやすいということでこういう形式になったものでございます。しかしながら、九条の一項も二項も、本来私どもといたしましては、納付金を納付しない、あるいは延滞金を納付しないという企業者の数がたくさんあるということには、現在の段階で考えられませんので、現実に免許を取り消すということをいたすのだというような気持ちではなくて、この納付金の性格を非常に公的なものとして色づけるためにむしろこういう規定を置いたものというふうに御理解いただきたいと思います。
  115. 二見伸明

    ○二見委員 その点で、三つの角度からお尋ねします。  一つは、免許取り消しをされた者ですね。数は少ないというお話でございますけれども、全然ないということも考えられません。あるいはそういうこともあり得ると思いますけれども免許を取り済された者は、これは強制的に廃業させられるわけです。その者に対しては給付金は支給するのかしないのか。このことが一点です。  それから、ことしはやめないけれども来年はやめるのだということで、来年やめることをすでに予定している人がいるとします。おれは来年やめるのだから納付金を納めない。経営が赤字で当然納付金を納められないのだ。ことしはやむを得ないから事業を続ける、来年はやめるのだ、そういう人も現実にはいると思うのです。そういう人に対しては特別の措置を、たとえばやめたときに転廃給付金の中から払えばいいというような制度を考えられているのかどうか。  それからもう一つ、毛頭やめる意思はないけれども、火災だとかいろいろな事情でもってどうしても納められない人もいるだろう、そういう人に対してはどうするのか。  この三点についてお聞きをいたします。
  116. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 現に免許を取り消されておる方というのは翌年以降酒をつくることができませんので、その方から納付金を納めてもらうということは本来おかしいわけであります。今後とも残って清酒製造を続けていく方が出すというたてまえでございますから、第一の点については、そういう免許を取り消された業者からは納付金は徴収しないということでございます。——失礼しました。取り消された場合に納付金を出すかという御質問を取り違えましたが、そういう方には納付金は出しません。  それから二番目に、来年度やめるかもしれないがという場合に、そういう方について納付金を出してもらうかどうかという点は、やはり明確にやめた、あるいはもうつくりませんということで免許取り消しを申請するという時点がくるまでは納付金は納めていただくという考え方でございます。要するに、毎年十月なり十一月なりの状態で、お酒をつくるかつくらないか、お酒をつくる方は納付金のほうは納めていただきますし、その段階でお酒をつくらないということがはっきりすれば、その方のほうは今度は給付金をもらうということになりますので、近い将来を含めて、将来やめるかもしれないという場合があっても、やはり納付金は納めてもらうというたてまえになると思います。  それから災害の問題でございますが、これは災害にいろいろな状態があると思いますし、それからどういう時期に災害が起こったかということもありまして、なかなか一律に申し上げにくいのでございますけれども、納付金を納めるべき額が確定してから災害が起こったという場合には、あとから軽減するとか免除するということが考えられなければなりませんでしょうし、その辺のこまかいことにつきましては、中央会のほうで業務方法書を定めることが法律の第四条に規定されてございます。この第四条の中で、災害の場合の取り扱いを規定するということになろうかと思っておりますが、どの程度のどういう事態についてどうするというこまかい点までは、いまの段階では中央会のほうでもまだ煮詰まっていないということでございます。方向としては何らかの手当てが業務方法書の中で規定されるだろうというふうに御理解いただきたいと思います。
  117. 二見伸明

    ○二見委員 いまの点、一点だけはっきりしないのですが、たとえばことし、四十五年度は非常に経営状況が悪いけれどもお酒はつくる、だけれども、私は来年はやめるんだ、いまの経営状況ではとうてい納付金は納めるだけの力がない、そういう人もやはり納付金を納めなければならない。ところが納められなければ免許取り消しになる、そうすれば給付金ももらえない、先ほどの御答弁はそういう答弁ですね。納付金を納めないために免許が取り消されれば給付金は出ない。だけれども現実問題としては、ことしは納められないけれども事業をやらざるを得ない、来年は必ずやめてしまうという人に対しては、何らかの処置がとれないものかどうかというわけです。納付金を納めないでいいというのではなくて、納付金を給付金から差っ引くとか何とか、そういう手段は講じられないものかどうかという、そういう点をお尋ねしておるわけです。
  118. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま考えておりますやり方では、来年はつくらない、転業する、あるいは廃業する、したがって、従来持っておった免許を取り消してほしいということを十月の末くらいまでに意思表示をしてもらいまして、そしてそれに基づいて税務署のほう等で所要の手続をとりまして、十二月の初めくらいにだれが来年つくるか——十二月というのは、つまりそれが仕込み時期でありますから、その年からつくるかということがはっきりいたしますので、そこで先ほどのお話しのように、もう来年はつくらぬ、十月くらいの段階でもう来年はつくらぬということになりますれば、その企業者については納付金を納めてもらうことは起こりませんし、むしろ給付金をもらうほうのグループのほうに入っていくということになると思います。
  119. 二見伸明

    ○二見委員 私の質問とちょっと食い違っているような気がするのですけれども、時間がありませんから先に進みます。  今度のこの制度に対して、政府としては補助金を四十五年度に七億円、はっきりはしてないけれども四十六年度にも七億円出すような意向がけさございましたけれども、塩の交付金がありますね、塩業整備交付金というのが、これは四十五年度の場合にはたしか五十億円予算に計上されているはずです。この内容、もし間違っていたならば訂正していただきたいと思いますけれども、二年間で九十二億円予算計上して、そのうち五十億円をことしの予算で計上しているのだ、こういうふうに聞いております。塩の場合には塩業整備交付金五十億円、お酒の場合には七億円。それは塩業整備のほうは政府が主体となってやるんだからというあるいはお考えかもしれませんし、お酒のほうは中央会がやるんだから政府としてはいわば側面から援助するという形なんだ、だから違うんだと言われればそれまでですけれども、塩業にしろ清酒にしろ、企業そのものを見た場合には同じような状況に置かれているのじゃないですか。その点では私は、塩業のほうが少し多いというわけではありませんけれども、酒に対する考え方と塩に対する考え方に若干の食い違いがあるような感じがするわけですが、この点はいかがですか。
  120. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 塩業のほうの整備計画につきましては、まことに申しわけございませんが私実は詳しく存じておりません。ただ考え方としましては、塩業は御存じのように輸入塩が非常に安いということと関連いたしまして、国内塩のほうをある程度整理していこうという考え方に出ております。そこでこの場合には相当積極的に廃業を進めることもやむを得ないということで、むしろ全面的な営業補償的性格の金の支出になるのではないかというふうに、やや不正確でございますが思っております。こちらの七億円のほうは保証金でございまして、したがって信用保証の基金でございますから、それをもとにして四百億からの資金の融通がスムーズにいくようにということでございますので、その意味で金の性質が営業補償的なものとだいぶ違うという点で、この金額の比較がむずかしいのではないかと思います点が第一点でございます。  それから第二点は、塩は長らく専売でございましたし、いわば専売公社のまるがかえのようなことになっておる性格のものでございますし、したがって専売公社の一定の計画のもとに転業なり廃業なりをしていただくという前提に立っているわけであります。酒のほうにつきましては、構造改善計画を立てて、そこで各企業者が転換をしていくのを側面からお手伝いするということでございますので、金額を比較していただきますと若干開きがあるように思われますけれども、私どもは、かなり性格が違いますので、そこは基本的に相当な相違があってもやむを得ないと申しますか、むしろ当然ではないのかというふうに思います。ただ、冒頭に申しましたように正確に存じませんので、もし間違っておりましたらあとで直さしていただきます。
  121. 二見伸明

    ○二見委員 清酒のほうではこれから六百ないし七百の清酒製造業者が転廃業を余儀なくされるわけです。それには当然従業員もおります。全国でおそらく五、六千人ないし一万人くらいの従業員がいるのじゃないかと思います。当然退職金の問題が起こってくるわけです。ところが、清酒製造業界では退職金制度というのはまだできて二、三年です。だから、いままで十五年、二十年、三十年つとめている従業員がやめても、たしかこの退職金は、共済組合のほうでは三万円か四万円の退職金きり出ないような仕組みになっているはずです。ところが塩の場合、退職金が三十二億円計上されているのです。塩業に従事した者に対しては退職金が三十二億円用意されている。酒のほうに対しては何らそういう退職上の手当てというものは用意されていないわけです。片方の専売公社のほうがむしろ積極的に転廃業を推し進めていくからこういうことになるんだというお話ですけれども、従業員の立場から見ればそれは同じじゃありませんか。その点は……。
  122. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 おっしゃいますように、塩業に従事しておる職員と清酒製造業に従事しておる職員の立場から申せば、その事業が廃止されるということについては同様でございます。ただその場合に、国とし、あるいは中央会というような国に準じた施設がどのようなことをやるのがいいかという問題でございまして、塩の場合には、私ども承知しておりますところでは、先ほど高木審議官からも申し上げましたように、従来専売事業であって、いわばまるがかえでやっておったものの退職職員についての給付をどういうふうにすればいいかということでございますし、今回私どもが考えておりますのは、清酒製造業者が今後自由に生産を続けるということにあたりまして、将来の環境その他から転廃するということを決心しました企業の従業員がやめる場合にどうするかという問題かと思います。それで私どもがいま考えておりますのは、清酒製造業者で転換をしましたものにつきまして給付金が出ますけれども、その使途につきましては別に何に使えということは規定いたしておりません。ただ、転廃業者に雇用されておりました従業員の退職金につきまして優先的に支払うようにという措置は私どもも考えております。退職金のほか、あるいはその清酒製造業者が新しく別の事業を行なうという転業資金にこれを振り向けまして、従来の従業員を使うということもあるかもしれませんけれども、その使途につきましては、先ほど申しましたように、かりに退職者が出るというような場合にはそれについての給付について優先的に取り扱うようにという措置を考えております。
  123. 二見伸明

    ○二見委員 予定の時間が過ぎましたので、まとめて二つだけお尋ねします。  一つは、清酒製造業の中小企業近代化基本計画、こういう計画があるそうでございますけれども、それによると、昭和四十八年度末には原価は実質一一%以上引き下げることを目標にしております、こうあります。私も左党でございますので、一一%下がるということは非常にありがたい話でございますけれども、これは小売り価格にまで一一%以上引き下げが行なわれるのかどうかということと、またそれが実際に可能であるかどうかということ。  それからもう一点は、今度中央会が信用保証事業をやりますね。その場合に、現在の場合ですと十四億円を基金として三十倍まで、四百二十億円まで保証するということでございますけれども、中小企業の場合には保証協会のほかに再保険しなければならない機関がございます。清酒製造業の場合にはそういう再保険の団体というものは全然考えられておりませんけれども清酒製造業界の客観情勢が著しく変化したということを考えてくれば、これはある程度は再保険というものは考えてもいいんじゃないだろうか。一応現在の試算ではだいじょうぶだろうという予定でこういうことになっているんでしょうけれども、この点については将来の方向としては考えていってもいいのじゃないだろうか、考えなければあぶないんじゃないだろうかという感じがするわけです。その点についてどういうふうにお考えになっているか。  もう一つは、個別融資の場合は、製造業者は保証がありますから担保を金融機関に出さなくてもいいわけですね。その場合に、はたして金融機関がどこまで応じてくれるかということ、それについての金融機関からの了解がすでに取りつけられているのかどうか、以上の点についてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  124. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 現在清酒製造業界におきましては、四十八年度までの期間を構造改善事業に充てるということにいたしております。その構造改善事業の目的といたしますところは、先ほどおっしゃいましたように原価を引き下げるということでございまして、四十三年度に対しまして実質価格で一一%引き下げるということを目途にいたしております。そのためにはけさ来説明がありましたように、たとえば適正経営規模というのをいろいろな販売の型に応じて設けましたり、協業をやりましたり、合同をやりましたり、提携をやりましたり、あるいはまた近代化の資金を導入いたしまして、労務にかえての機械を購入するということで果たしたいということを考えておるわけでございます。したがいまして、機械を導入いたしまして労務にかえるということで、かなり所期の原価の引き下げということはできると思いますけれども、何しろこれは実質価格で申しておりますので、最近のように非常に労賃が高く伸びていく。代替をいたしましてもどうしても労務に依存しなければならない部面がかなりございますので、そういうものの労賃の上昇ということ、あるいは原料代が今後どういうふうに推移していくかということ等におきまして、一体お酒の価格が今後どういうふうになっていくかということになるだろうと思います。そのときはもちろん、先ほど来申しましたように、いろいろな施策を講じ、省力投資をやりまして、実質価格を引き下げるということに今後もなおわれわれとして努力してまいりたいと思っております。その際お酒が小売り価格として一体どうなるかということも、先ほど申しましたように労賃の問題、原材料の問題、それから流通界におきますところの流通経費の問題というのが相関連してまいりますので、いまからその価格がどうなるということは申し上げられませんけれども、おっしゃいますようにできるだけこれを押えまして、消費者にとってのいいお酒の価格というものを招来いたしたいと思っております。  それから第二のお尋ねの点で、今度中央会が行なう保証事業につきまして再保険をする必要がないかということでございます。確かに、おっしゃいますように、保証事業をやりますれば事故が起こるわけでございまして、その事故に対応する施策というのも必要になります。もちろん中央会におきましての計算でも、実は引き当て金的なものを年々用意をいたして計算をいたしております。それからまた、お酒屋さんのことでございますので、役所も業界もともどもに、融資を受けました資金がこげつかないようにという努力を今後とも果たしてまいりたいと思っておりますので、まずまず中央会一本でやりました信用保証事業というのは円滑に運行されていくんだろうと思います。それからまた全国プール一本でやるものでございまして、県別にやっております信用保証協会が再保険をやっておるということとはかなり事情も違っておりますので、おそらくは再保険ということの心配なしにこの事業は運行されてまいると思っております。  それから第三番は、この信用保証制度のもとにおきまして、個別の企業が金融を受けるについてどの程度の話が進んでおるかということでございますが、実はこの制度が立案せられまして予算措置が講じられ、法案が準備せられておりますその段階におきまして、中央会といたしましては、一番融資を受けます金融機関としての地方銀行の中央の機関に対しまして、この制度の内容についてるる説明をいたしております。それからまた保証料率、それから保証の倍率限度等につきましても説明をいたしておりまして、従来にもまして十分の融資が得られるようにというお願いをいたしております。かなり地方銀行の協会のほうにおきましても新しい制度についての理解をしていただいております。もっとも現実に個々の企業が融資を受けます場合につきましては、それはもちろん個個の取り引でございますから、どういう金利になるか、どういう条件になるかということは、この秋の、つくる以後の問題でございますけれども、この制度がない場合と比べましたら格段と有利になると私ども信じております。
  125. 二見伸明

    ○二見委員 いまのところをもう一ぺん確認しますけれども、個別融資の場合には金融機関に担保は要らないわけですね。
  126. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 この信用保証基金を使いまして融資を受けます限りにおきます金額については、特別に担保は要らないと思います。
  127. 二見伸明

    ○二見委員 あと公取の関係にも二、三お尋ねしたかったのですが、時間がございませんので、きょうはこれで終わります。
  128. 毛利松平

    毛利委員長 春日君。
  129. 春日一幸

    ○春日委員 この法律案を通読してみますと、どうも随所に公私混清と申しますか、中央会に与えるその権能など、どうも公私混淆のきらいがあると思う。あるいは中央会が自主的に決定した構造改善計画に対して、大臣が、国が服従命令を発する、こういうようなことについても、これまた職権乱用の疑いがある。私は、政策の効果や機能というものについては期待すべき点が相当ありますけれども、現行憲法と独占禁止法のたてまえ、さらにはまた酒団法その他同じような団体法等を照らし合わせてみますと、どうも試行錯誤とも断ずべき誤りがあちらこちらにあるように見受けられます。これからその主たる諸点について疑義をただしてまいりたいと存じます。  その前に伺いたいと思いますことは、これはなぜ主税局が提案責任をとられておるか。私は、これは酒の製造業者の基盤安定と同時に、酒税の徴収の完ぺきを期する、こういうことにあると思うのですね。だとすれば、すべからく国税庁の主管ではないかと思うわけでございます。なぜ主税局がこの法案を取り扱われておるのであるか、その点をちょっと御説明を願いたいと思う。
  130. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ちょっとここに手持ちがございませんので申しわけないのですが、私どもも実体的には国税庁のほうの仕事だと思うのでございますけれども、大蔵省の分掌規程によりまして、現在、法案を用意して提出する仕事につきましては国税庁長官に権限がございません、大蔵大臣ということになっておりますので、主税局のほうでいたすことになっておるわけでございます。他の法律等につきましても、立法につきましては国税庁のほうでは扱わないということになっておる次第でございます。
  131. 春日一幸

    ○春日委員 税理士法はそうだったかな。
  132. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 税理士法も主税局のほうでございます。
  133. 春日一幸

    ○春日委員 そうすると、国税庁というのは大蔵省の機構の中の外様扱いをされておるということで、本ルートではないというふうに理解して、今後われわれもそのように扱ってまいります。  そこで、まず質問の第一点でございますが、自主流通米の制度が発足されたことによって造石制限が消滅をした。このことは、従来自主と自由を原則とする企業を束縛しておったところの一個の鎖が解除された。したがって、これは醸造家にとっては今後事業活動の機能が伸長されるものとして、むしろ本質的にはプラス要因として受け取るべきものではないかと私は理解するのでございます。しかるに政府の説明によりますと、自主流通米制度が発足したことによっていままでの造石割り当ての価値が減耗したということで、本来的には自由経済のもとでその機能が伸長したのだ、伸長したのだから、伸びやかに、さらに旺盛に企業活動が自主的になし得る状態になったにもかかわらず、その事態を目して酒の製造業者が何か一つの被害を受けつつある、ゆえに、それを救済するための何らかの保護措置をとらなければならぬ、こういうふうに受け取れる説明がなされておるが、この点の認識はどうなっておるのでございますか。
  134. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 確かに、自由化にしますことは清酒の製造業者にとりまして本来の姿に向かうものと思います。ただ問題は、清酒の資金というのは米の仕入れのときにかなり巨額の金が要ることになるわけでございます。酒屋さんもだんだん必ずしも資産家には限らないということで、従来はどういう形でその酒造米の、原料米の仕入れ資金の融資が行なわれておったかと申しますと、現実問題として、一種の基準指数に伴うところの経済的価値というものが現実的に担保となりまして、それを担保として金融機関側が考えることによって円滑に造石資金が手当てできたわけであります。最近の状態になりまして、現実にはその基準指数なるものが取引対象にだんだんならなくなってくる、そのことから担保価値がなくなってしまった、それでは金融機関として心配で融資ができない、こういう情勢に昨年の秋ぐらいからだんだんなってきたわけでございまして、そこで何らかの方法で金融をつける保証が必要になるわけであります。そのためにはこのような保証基金の制度があるということが一番近道ではないかということで、このような措置を立案して審議をお願いすることになったわけであります。金融の道をつけることが主体であり、それ以外には特に保護をするということは考えていないわけでございます。
  135. 春日一幸

    ○春日委員 私は、手段の便宜をはかるために道筋を混淆せしめるということは、行政においても、特に立法の過程においても、十分留意しなければならぬ肝心な問題点であると思うのでございます。第一番に、あの造石割り当てというものがいかなる目的でなされたのか、これはいろいろ理由がありましょうけれども、経営基盤を安定せしめるとかあるいは酒税の徴収を確保するとかいうような目的で国家が無償で割り当てておるわけなんでございます。そのようなものに財産権を存在せしめたということ自体についても私は問題があると思う。少なくとも国民は納得できないと思うのですよ。一石について何百万円とか何十万円とかいうような財産権がそれに付与されたということは、すなわち経営基盤を確保するため、あるいは酒税の徴収の完ぺきをはかるために造石割り当てをした。したものについて、そこに何百万円か何千万円かの財産権が無償で付与されたことについては、付与されざる国民としてはなかなか納得のできない面があるであろうと思う。そのような、必ずしも国民が納得できないところの、自然に発生したとはいいながら、その財産権が減耗したからといって、それに対して直ちに直接的に国家が信用補完措置を買って出るということはいかがなものであろうか。私はこの問題について、特に公取委員長なんかの見解を伺ってみたいと思うんだけれども。必ずしも谷村君にはこういう問題を回答する立場にあられるかどうかは別問題としまして、現実問題として、国民は法律の前に平等でなければならぬと思うのですよ。ところが、現に間接税を納付しております企業体は酒の醸造家ばかりじゃございません。たとえば企業体でいうならば物品税六十八業種でございますか、これは現に三千億になんなんとする物品税を納付いたしておるのでございます。こういうものについては何も割り当てがございませんけれども、しかし間接税を納入することのためにみずから努力して経営基盤を確保し、納税を行なっておる。六十八業種がそのようにやっておるのに、酒の業種だけここに国民の税金を賦与し、さらにはまた国の権限が大幅に介入、助成することによってその企業体の安定が特別にはかられようとしておることは、憲法にいう法の前に平等の原則に照らしていかがなものであろうかと思うのでございます。たとえば、国税庁長官、あなたは間接税を徴収する責任にあられると思うのです。物品税三千億円徴収されておる。それに対しては何らの保護も助成もなされておりません。酒税がかりに五千億徴収されるとしても、そのものに対しては特別に免許を与えるとかさらに今度信用補完をする、資金上の特別措置をとる。業者にしてその自主規制に従わざるものについては大臣命令を発しようとする。このことははなはだしく政策がアンバランスになっておるとはお考えにならないか。この点。谷村公取委員長の所見並びに所管長官として吉國国税庁長官の御見解を承りたい。
  136. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、造石権が権利として売買されること自体の問題は確かにあると思います。ただ、これは経済的な利益が付属するところに必ず価格が生ずるという、いわば社会的な実在であるという意味で、善悪を問わず一つの存在であったと思うのであります。  なお、この造石割り当てというのは、先生もよく御承知のとおり、準戦時体制に入りまして米が不足してくる、その関係で最初自主統制を行ない、さらに十五年以来米穀管理規則ということによって統制をしてきたわけでございます。戦後も食管法に切りかわって以来、食管法の立場から米を使用制限するという意味から行なわれてきたものでざいます。そういう意味では、いわば業者に対して自由な活動を制限していく、石数を押えたという効果があったわけでございます。それが、次第に米が自由になってまいりました昨今においては、あたかも造石権の割り当てによって権利を保有しておるがごとく見られたという点がございますけれども、本質的にはこれは保護的な意味で行なわれたものではない。その点はいわば食管法の推移とやや似たような結果を持っているのではないか、かように思っています。  それから、ほかの物品税の業界等において信用保証基金などの制度がないという点は、これは確かに御指摘のとおりだと思いますけれども、ここで一つ申し上げたいと思いますのは、この酒類業界のように、ある時期に流動資金を一時に投入をして、それを一年間で回収するというような業種、しかもそのたなおろし資産がいわば醸造された酒であって、その酒屋販売するのでなければ著しく価値が落ちる、ことに担保としてそれを売買することにおいては、価値が落ちるというような性質の特殊な産業でございますと、本来ならばこれに対する特殊な金融の道がつけられていたのが普通ではないかと思うのでございます。たとえば捕鯨であるとかあるいは農業自体が、金融公庫を持ち、また信用基金を持つということで、いわば金融の道をつけてまいったわけでございます。造船業においては、輸銀、開銀の資金がつくというようなことがあったわけでございます。したがいまして、酒につきましても、酒の業界では早くから実は酒造基金というものをつくってという要望があったことは御承知のとおりでございます。ただ偶然と申しますか、造石権があるために、それが価値として、倒産すれば売れるという事実があったために、それが担保としての効力を持った。それによって酒造資金の約五〇%の融資を受けていたという事実がございます。それが一時になくなったがために、いわば、これがなくなったからその代償として与えるというのではなくて、本来こういうものがなかりせばこれだけの膨大な流動資金を酒屋だけで獲得させるということには相当無理がある、そういう意味では金融制度として何か特殊なものが要ったのではないか、その必要性がいま浮かび上がってきたとお考え願うのが筋道ではなかろうか、かように考えるわけでございます。  いろいろお考え方はあろうかと思いますけれども、本来酒造資金については、そういう制度がないと実際問題として無理があるのではないか。現実問題として酒造資金の五〇%がここでとだえてしまったといたしますと、今度は酒税そのものが五〇%清酒については減るということになるわけでございます。いわば、そういう面から見れば徴税費の一部とも考えられるわけでございますが、これは本来、仰せのとおり、さように考えるのは公私混淆でありまして、私企業としても特殊な金融を要する分野であったという点に御注目いただけば、あるいはこの点について御了解を得られるのではないか、かように考える次第でございます。
  137. 谷村裕

    ○谷村政府委員 春日委員仰せのとおり、公正取引委員長立場としましては、特に私からお答えすることはないと思います。一批評家とか、あるいはかって大蔵省に職を奉じておった者ということでの見解は、ここではちょっと述べるわけにはまいりません。
  138. 春日一幸

    ○春日委員 あなたも久しぶりにホームグラウンドにいらしたのだから、何か一声ウグイスの初音をあげさせてと思っているぼくの友清の配慮だから、そうしかつめらしく考えないで、端的に、思われることは所見を述べられたらよろしからんと思うのです。  ただいま吉國長官がお述べになった造石権の売買ですけれども、私は、そのような売買を大蔵省あるいは国税庁が認めてきたこと自体が、行政上はたして公正な措置であったかどうか、検討してみる必要があると思うのです。現実の問題として実績があったのだ。しかしその実績のあった者が製造制限を受けたのは酒ばかりではなくて、その当時の企業整備もありましたし、あるいは材料の使用制限も、戦争中は鉄鋼から非鉄金属からいろいろございましたよ。憲法には公共の福祉のために財産権の制約があるとされておりますが、実際的に必ずしも正当な補償が当時現実になされたわけじゃございません。したがいまして、その造石権というものは、とにかく酒税を確保したい、それから全体としてその企業の事業の基盤を安定をしたい、こういうことでその者に与えられた醸造権なんでございましょう。その者に与えられた醸造権がかってに売買されて、そこに流通価値を発生せしめたということ自体が、言うならば行政権力によって特定の者に財産を交付したことと何ら変わらないと思うのです。この点の御批判はいかがですか。
  139. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この酒造を行なう権利というものにつきましては、もちろん免許が要るわけでございますけれども、その免許業者がどれだけの酒をつくるかという問題につきましては、実際問題として総体の量がきまっているわけでございます。その場合に、一つ業者が自分の営業の一部を譲渡するということをいたしました場合に、その製造事業の一部を譲渡いたしました場合にまで、これを拒否するわけにはいかないと思うのです。これはいわば製造という事業の一部譲渡である。それの反射として造石権が移る。造石権の対価というよりは、実質的には営業権の一部の譲渡あるいは全部の譲渡という観点から扱われてまいったと思うのであります。それが、営業譲渡の主要な部分が実は造石であるというところから、あたかも造石権が価値があるがごとく考えられたと思うのです。そういう意味では、その事業そのものの譲渡というふうに考えるのが正当ではなかろうか、さように考えております。
  140. 春日一幸

    ○春日委員 しかし生販三層の中で、たとえば小売りであるとか卸であるとか、そういうものの営業権の譲渡は認めておるのではないのですか。
  141. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 小売りの営業権の譲渡というのは実際行なわれておりますが、あまり価値が大きくないということで価格が発生するほどにはなっていない。若干の価値はあるようでありますけれども、それほど大きな、いわゆる造石権のような大きな価値はないと思います。
  142. 春日一幸

    ○春日委員 いま長官が、従来の行政の実態にかんがみて、それを正当づけることのためにそのような解説を行なわれておると思うのですけれども、実際は営業権を譲渡しているのではなくて、あるいは営業上のその部分を譲渡しておるのではなくて、あたかもダニのごとくに、その許可証そのものを譲渡することによって譲渡を受けた者が新しく自分に見合ったところの醸造設備を新設するとかなんとかということではないのでございますか。実態的にはどうなのですか、この点は。
  143. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 従来のやり方でございますので私からお答えいたしますが、従来、おっしゃるように、昭和十二年からの自主規制なり、その後の原料米の政府割り当てということにつきましては、確かに、業者から業者への譲渡が行なわれますれば、それに対応しまして、原料米の割り当てというのをそれに沿って認めてきておったわけでございます。その間、いわゆる企業整備でそこに変動を生じたこと、あるいは転廃業者の復活につきまして若干の手直しを行なったということ以外は、昭和三十四年くらいまでは、確かに業者間におきますところの譲渡に沿って米を割り当ててまいったということは事実でございます。そこに権利が生じたというのは、春日委員の御指摘のとおりでございます。さすれば、それ以外の方法でもって米のいい割り当て方法があったかということをいま考えてみますけれども、やはり業者間の移動に沿って割り当てる以外には、全部根元からやり直していかなければならないというむずかしさがあったと思っております。確かに、その後、三十四年くらいには、もう少し、過去の実績だけで割り当てないで、最近の実勢に応じた割り当てを取り入れてはどうかという批判がございまして、そういう移出割りという制度も導入してきたことは御承知のとおりでございます。そういうことを入れながら今日に至り、なお過去の実績を基本にいたしましたところの自主的な生産規制が行なわれているわけでございますけれども、やがてこの四十八年度を目途といたしました自主的な生産規制が終われば、これは完全自由化するということでございますので、過去を振り返ってみますれば、それに対応しての、かわりのいい案がなかったということも御了解をいただきたいと思います。
  144. 春日一幸

    ○春日委員 ただ私が問題を指摘したいのは、たとえば自動車にいたしましても、そういうような免許を受けた者が一台について何百万円というような権利が発生しておるとか、特に造石の問題にいたしましても、その割り当てを受けた者に、そこに財産権が発生しておるということは、自由経済の常識あるいは国民感情からいたしますと、なかなか納得できないものである、こういうことなんです。したがって、いま経済が自由経済としての本ルートに立ち戻ろうとする段階において、そのような財産権、財産価値というものが若干減耗した、やがては消滅する、それに対して、ことさらに政府が他の国民の税金によってその補完措置をとるという、この行為は、国民感情として必ずしも納得し得ない面があるということを御留意願っておきたい、こういうことなのでございます。  この問題は若干過去の物語りにもなりましょうし、また長い間慣習的に容認されてきたことでございますから、批判をしてもせんないことといたしまして、そこで法案の中に入りますが、この第七条の関係で、中央会は、清酒製造業者に対して納付金の賦課権限が与えられておるわけでございます。ところが、中央会は、法律に基づく団体ではございますけれども、しょせんは民間の団体でございまして、行政機関ではございません。したがって、中央会は、その直接間接の構成員に対しては義務を課することはできるでございましょう。これは団結自治の原則に照らして当然容認されていいことだとは思います。けれども、これが本法では員外者にも及ぶという構成に相なっておる。これは一体どうしたことであろうか。すなわち、酒造組合の組合員でない清酒の製造業者に対しても、納付金の賦課を認めることのできるようなたてまえになっておる。これは他の法令に類例を見ないと思うし、また団体自治の原則に照らしてこれはいかがなものであろうかと、疑義を抱かざるを得ないのでございます。この点はどう説明されるのでございますか。
  145. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 中央会は、酒団法に基づきます任意組合であることはただいま御指摘のとおりであります。そこで、その任意組合である中央会がアウトサイダーの酒造業者に対しても納付金を賦課することができるというのは、この法律の七条によってそういう特別な任務と権限とが付与されるということになるわけであります。そこで、その種の任意組合に対してそのような権限を与えることが適当かどうかということになりますと、この転廃業給付事業というものがどのような性格のものかということを考えてみました場合、このような激変に対処しながら業界の整備合理化をはかっていく、よってもって酒税保全に資するということから考えますと、この給付金の給付事業というものが公共性を持ってきたということが言えると思います。その意味で、全清酒製造業者を対象として行なわれる事業として適当なものであろうと思われるわけであります。  一方、中央会は、現状におきまして、他の、生産数量制限とか、あるいは構造改善計画ということもあります関係上、ほとんど九九%の清酒製造業者が会員になっておるわけであります。法律的には任意団体でございますが、性格的にはきわめて公益性の高い団体になっているわけでございます。それらのことを考えますと、中央会にこの種の権限を付与してもこれはおかしくはないであろうという考え方でこのような制度を仕組んだわけでございます。  そこで、このように任意団体に対して強制徴収権が付与される事例があるかどうかということ、納付金の賦課権限を任意団体に与えるという事例があるかという点でございますが、必ずしもそうたくさんの事例があるわけではございませんが、私どもの手元で調べました事例としましては、一つは商工会議所法の場合がございます。商工会議所法ではいろいろ法定台帳を備えることになっておるわけでございますが、その法定台帳の管理をするという仕事をするにはやはりいろいろ金がかかるということで、一種の手数料的な意味でアウトサイダーに対しましても負担金を賦課することになっておるわけであります。その点、商工会議所法の規定はだいぶ色彩は違いますけれども、任意組合に対して賦課権を与えておるという一つの事例であろうかと思います。  もう一つの事例としましては森林組合の場合があげられます。森林組合はしばしば林道開設等を行なうわけでありますが、林道開設を行ないました場合には、林道の受益は必ずしも組合員だけではなくて、組合員以外の者に及ぶという場合がございます。この場合に組合員以外の受益者から負担金、賦課金を徴収するという制度がございます。  いずれの場合も、必ずしも今回の場合とぴったり同じような事例というわけにはいかないかもしれませんけれども、しかし任意団体に、公益性のゆえに、公共性のゆえに、その賦課される金額が公共、公益性の強い目的に使われるということと、その団体自体が公益性の性格が非常に強いものであるという点においては、商工会議所法の場合も森林組合の場合も同様であろうかと思います。そのような先例に徴しまして、今回七条の規定を置きましても法律的に支障はないのではないかという法律家の御見解にも従いまして、このような規定を置いた次第でございます。
  146. 春日一幸

    ○春日委員 私はいまの立法例を伺いましたけれども、それはしょせんは現実的に処す上での異例の措置であろうと思います。森林などは地域連帯性があるので、そういうようなフェーバーを受けることについて当然負担を受けるのが客観的に見て妥当であり、合理性を持つというような点もありましょうし、また商工会議所法の場合においては、これまた少数異例の何らかの理由がそこにあり得ると思うのでございます。団体法は御承知のようにこの酒団法と酷似したものであり、これは中小企業安定法の機能を受け継いだものでありまするが、その団体法制定のときにこの問題は非常に神経質に論じられた経緯があるわけでございます。それで私は、業界内自治として、業界の安定をはかるために何がしの負担を課するということであれば、それはそれなりの意義もあるしまた効果もあると思う。しかしそのことは、国が法律に基づいて権力的な作用をするということとは本質的に異なると思うのですよ。今度の中央会が行なわんとするその賦課金の問題にいたしましても、これは「大蔵大臣の認可を受けて、」とあるわけでございますから、その事業を行なう主体は、これは国ではなくして中央会でございますね。その中央会がプランを立ててきて、大蔵大臣がそれを認可するということは、まあまあこの程度のことならばよろしかろう、国民の基本的人権や財産権はそれによって侵害することはないであろうという理解のもとに認可が与えられる。認可とはそのことの意味であろうと思うわけであります。したがって、この法律の納付金というものは、これは税金であるとかあるいはその他の例もありまするけれども、健康保険の負担率であるとかなんとかいうようなものとは質的に異なっておる。そういうことですから、第七条の大蔵大臣の認可ということがここにある以上は、そこまで国家権力が介入をなし得るかどうかということです。認可してやるということは、まあまあその程度はよろしかろうという程度のことなんですよ。しかるに、その認可を受けた者が、組合員外の者に向かって普遍的国家権力を行使することができるというような法の体制というものは、根本的に疑義があると私は思う。この点はいかがですか。
  147. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 確かにこの七条の規定は、従来の立法例に徴しましてそう多数の例があるわけではございません。ただ今回の場合には、清酒製造業者の中で転換あるいはやめる方がある。それに対して同業の今後も続けていくほうの方が、やめるほうの方のためにみんなで金を出し合おうということがまずあります。ただ問題は、その場合に一部、自分はいやだという人があったり、あるいはごく少数にしてもアウトサイダーがあったりする場合に、全体の制度が維持できないので、そこで何らかの形で強制徴収制度を設ける必要がある、そういう発想からスタートしたわけでございます。その場合に考えられますことは、特別法人のようなものを別途つくりまして、特別法人でこの種の仕事をやっていくということも一つ法律技術としては考えられるわけではございますけれども、先ほども申しましたように、現在のところ九九%以上のメンバーが現に中央会のメンバーになっておるということでもありますし、また片や、特殊法人は現在の情勢のもとにおいてはなるべくつくらないほうが望ましいというようなことから、ごく異例のものではあるかもしれませんけれども、森林組合なり商工会議所法なりの事例に徴して、先例もあることであり、現行の法制下において許されるものであるという認識のもとに、このような形態をとったわけでございます。
  148. 春日一幸

    ○春日委員 現在は員外者はごく僅少であると述べられております。けれども、憲法のたてまえは、加入、脱退自由の原則でございまするから、したがってこれは何ぴとといえども、ここから今後脱退することが自由自在にできるわけでございます。わけてもこの転廃給付金というものをどのように給付するかという率は、今後省令によって定められ、それに基づいてその中央会が申請をして許可を得なければならぬ、こういう規定でございますから、したがって賦課金が高ければやめたというて脱退する者が将来続出しないとも限らない。それから、かりにこの間の構造改善近代化計画については、全員が賛成したと言っておるけれども、これは情勢の変化に基づいてまた方針の変わる者が出てこないとも限らない。したがいまして憲法では、その身分を変更せしめるというようなことについては、国家権力は介入してはならぬということが厳然たる規定になっておるわけでございますね。それは団結の自由、行動の自由、加入、脱退の自由の原則というものが厳然として保護されなければならぬ。だといたしますると、現在圧倒的多数者という認識の上に立って法の構成がなされておるけれども、それは多数者であろうと少数者であろうと、法律のたてまえというものは、そのような任意団体は、その団体自治の原則に基づいて組合員内のみにそれぞれの機能を認められるものであって、組合員外の者に対してはそういうような拘束権というようなものは認められてはならないものである、この点はきわめて重要な問題であると思うのです。  私は昭和三十四年にあの団体法提案者の一人としてともに努力し合ったのです。これは自民党、社会党共同提案で、いろいろ論じましたけれども、あのとき一番大きな問題点になって、審議未了になって、岸内閣によって秋に臨時国会、特別に団体法国会まで開いて論じられた、その中心課題は何であるかというと、この加入、脱退自由の原則、この問題なんでございますね。あのときの問題点は服従命令と加入命令でございました。それで、組合の調整計画を承認しないところの員外者に向かって大臣命令を発して、その大臣命令に服従しない者には加入命令を発することができるとされていた。そうしてその組合の調整計画に服従するよう、その調整計画の機能の緩和がはかられたわけでございます。ところが、いろいろ論議してみると、結局それは憲法違反に通ずる、こういうことでもって、加入命令を受けた者が、加入することがいやだと思えば、そのときにはその旨地方長官に届け出て認証を受ければよい、こういうことになって、基本的人権というものは最高度に保障された。そのために一面、特に団体法の機能がざる法になったというそしりがなくもないですけれども、そのかわり基本的人権は法律によって最高度に保障されて、憲法精神はここに確保されているのである。このような立法例等から判断を加えますると、そのような民間の任意団体が国家権力を行使して、そうして員外者に向かって賦課金を課するの行為を直接行使できるということは、私は憲法のたてまえ上非常に奇異な感じを抱かざるを得ない。この点はいかがでしょうか。
  149. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 あるいは同じお答えをいたすことになるかもしれませんが、一つは、この事業についてそもそも加入あるいは脱退の自由ということについては、必ずしも七条では直接的には拘束しておることにはならないのではないかと思います。
  150. 春日一幸

    ○春日委員 そこでちょっと区切りましょう。  加入、脱退自由の原則を拘束することにはならないと言われますけれども、七条だけの関係ではそういうこともいえるかもしれませんけれども、九条の関係で、たとえば本人がその賦課金を納めない。そうして命令、督促をしても本人が納めない。大臣命令を要請して、大臣命令があっても払わない。こういうことになった場合は、酒税法の十二条によって営業免許の取り消しに通ずる、こういうことになってくるわけでございますね。営業免許の取り消しということはどういうことかというと、もう結局醸造はしないのですから、したがって、むろん組合員でなくなるのみならず、結局いま申し上げましたように、その基本的な資格というものが剥奪されてしまいます。だから加入、脱退自由の原則はおろか、基本的営業権の抹殺になってくるのでございますね。そういう意味ですから、中央会に付与される権限が員外にわたって直接行使できるということ、しかもその直接行使のうしろだてに国家権力の担保があるということ、このことは重大な憲法上の疑義を発生せざるを得ないと私は思う。かつてこの問題は公取の皆さんが強く横やりを入れられた点でございますが、そして結局、加入命令を受けた者がいやだと思えば、基本的人権が優先して大臣命令にも従わぬでよろしい、こういう団体法の法条になっております。いまお読みいただけばよくおわかりいただけると思う。そのような立法例から見ると、あれはそもそも中小企業安定法というものを受けているのですから、少なくとも経済行為については、独禁法の精神をそのまま直線的に受け継いでいる法律でございます。そこで許されていないことがこの法で許されることは異様なことだと思うのですが、いかがでしょうか、公取委員長
  151. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 一言だけ申し上げさせていただきますが、やはりそのことは清酒製造業者の事業というものが免許事業であるということから、ちょっと一般の場合と違うのではないかという気がいたすのでございます。現行の酒団法の八十四条でございましたか、そこでも一種のアウトサイダー規制の規定が規定されておりますが、このような規定にいたしましても——七条につきまして明快な御説明ができませんのは申しわけありませんが、法律専門家の意見を聞きまして、これでよかろうということをいわれておりますのは、やはり一般の場合と違いまして、免許事業であるという性格からこの制度の合理性が許されるのではあるまいか。  もう一点は、この賦課金でございますけれども、この賦課金は、結局中央会のメンバーでありましても、あるいはアウトサイダーでありましても、とにかくどなたかがやめられるということであれば、やめられたことの有形無形の利益が残存業者に及ぶということから、納付金そのものについての公益性ということが認められたかと思うのでありまして、その点を総合的に御判断いただきたいと思うのでございます。なおその納付金の性格をかなり明確にいたします趣旨もありまして、七条の三項で「あらかじめ、広く清酒製造業者の意見を聞く」という制度を置いておりますし、また第五項におきましては、納付金の算定について不服がある場合には、賦課権者である中央会に対してでなしに、大蔵大臣に審査請求をするというような規定が置かれてございますが、これらのことはこの納付金の性格を裏から説明しているものではないかと思うのでございます。
  152. 谷村裕

    ○谷村政府委員 私を指名しての御質問でございますので……。  私どもも、この法律をつくりますときにいわば内々の協議を受けたわけで、それに対して、こういうのを同意と申しますか、いたした立場もございますので申し上げますが、本来これは国税庁なり、先ほどのお話によれば、主税局のほうで御説明になっているところによって私ども承知いたしたわけでございますけれども、いま政府委員から御説明ありましたように、この問題は、団体法的な考え方というものは、清酒製造業の安定ということのために一つのこういう措置をとる、そのとき、いまお話しのような意味での特別の法人をつくってそれにやらせるのがいいか、たまたま現にある中央会というものを使うのがいいかという選択の問題になって、私の理解するところによれば、特別の法人をつくったとしても、たとえばその事務といいますか、仕事は中央会をしてこれを行なわしめるというふうなやり方もあるいはあったのかもしれないと思うのですが、本質的には団体法上の団体というよりは、特別にこういう目的の仕事のために一つの任務を持ったものである、さように理解をいたしまして、ただいま中央会という一つ組織のものをお使いになっていらっしゃいますけれども、本来団体法において云々されておるような意味での法人と申しますか、ものではない。この法律のためにそういう仕事を受け持つ一つのもの、さように私どもは理解したというふうに申し上げたいと思います。
  153. 春日一幸

    ○春日委員 公取委員長の見解必ずしも正しいとは私は受け取れませんね。それは酒の製造業界全体としての安定をはかる、そうしてよってもって酒税の確保措置、こういうことがサブタイトルになっておると思うのです。だから安定法にしろ団体法にしろ、その機能は、それぞれの業種、業界全体の安定をはからんとするところにあるわけですから、したがって、この法律のメカニズムはそれらのものと同じようなポリシーの上に立っておるものと受け取るべきである、私はこう理解すべきだと思うのですし、それは全然違うのだというようなことは私はあり得ないと思う。この点どうなんですか。
  154. 谷村裕

    ○谷村政府委員 組織法学者の前でいろいろなことを申し上げるのは私、はなはだじくじたるものがあるのでございますけれども、私が理解したところを申し上げたのでありまして、私の理解のどういう点が——私はもちろん酒の問題に関連しておることはよくわかりますし、それから本来の酒類業団体法が考えておった中央会の仕事とか、あるいは本来の酒類業団体が団体として動く場合のそういう問題、それとは本件はまた別の立場から、別の法律でもって考えてこういう提案をしておるということであろうと理解したわけでございます。
  155. 春日一幸

    ○春日委員 これは政府がこの法律を立法せんとする理由の中に書いてあるのですよ。「その経営基盤の安定及び酒税の確保に資するため、」と書いてある。だからこれの目的としておるものは、酒の製造業者全体としての安定をはかるというところにあるのでございますから、したがいまして、団体法にしろその前の安定法にしろ、その企業の基盤を確保する、そして過当競争だとかあるいはいろいろな阻害要件があらばそういうものを排除していく、こういうことを取りきめておるのがそれらの組織法なんでございますね。そういうのだから、その法律の機能と同じような機能を目途としておるのだから、形も同じにせなければならぬと私は言っておるのです。  だから、いまあなたのおっしゃったことをさらに分解して私の意見を立てるならば、今度はこの流通米によって醸造が自由にできる、そこに過当競争が発生するおそれあり、ゆえに昨年の八月自主規制がなされたのである。したがって、酒団法の機能を十分に行使していけば、すなわち造石の自主規制もできるのだし、さらに進んで価格協定もできるのでございましょう。だから価格協定もできるし生産制限もできる。しかしこういう季節的な産業については特にその資金確保について特別の措置が必要であるとするならば、それは別個の問題です。別個の問題だから、あたかも医療金融公庫の制度があるように、特殊法人を設けて、そうしてそのような資金確保措置をとらしめていく、こういうことなら私はわかると思う。ところがこういうような任意団体にそういういわゆる自主規制をなさしめる、それはそれでよい。自主規制をなさしめるならば、それは団体法のコンストラクションと同じように、やはりその権限というものは組合員の内部にとどまるべきものである。外部に及ぼそうとするならば、それは国の機関を一つクッションに置いてなさしめなければならない。それを任意団体が国の機関の権限を行使するということは、まさに公私混淆であるということを言っておるのですよ。そこに試行錯誤があるということを指摘しておるのですよ。あなたはぼくを組織法の学者だとおっしゃったけれども、全くわが意を得たような感じがいたします。実際こういう問題は相当神経質にやってもらわぬと、国家権力が何にでも介入していくという立法例を開くと、これはファシズムに通じますぞ。われわれがほんとうに苦労して各種委員会においてその論争を行なっておるということは、自由と民主主義の体制を守っていくという、ここにある。国家権力を不当に行使せしめてはならぬ。それを抑制するのがわれわれ議会側の使命である。いままでそういうような民間の任意団体に国家権力を直接行使せしめることを容認したということは組織法ではないと思う。この点どうですか。
  156. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 酒造組合中央会が酒団法に基づきます任意組合でありますことは、一向その性格はこの法律によりましても変わってまいるわけではないと思います。ただこの法律によりまして、その任意組合である酒造組合が、この法律に定められました仕事をいたします分野につきましては、いわば特殊法人的性格が与えられたものと思うのでございます。確かに、御指摘のように、ある意味では公私混淆だということが言えるかもしれませんが、その部分については全部この法律の規定によって動くわけでありまして、この法律によって与えられた権限が、本来の姿であるところの任意組合であるところまで侵入しているわけではなくて、任意組合にこの仕事を託されて、その範囲内の仕事においてこの権限が動くわけでございますので、そういう意味では必ずしも公私混淆ということではなくて、そこに特殊法人的な権限と責任とが預けられたというように御理解いただきたいと思うわけでございます。  率直に申しまして、実は立法の過程においては、私どもとしては、まさに御指摘のような問題がございますので、本来であれば、先ほど医療金融公庫とおっしゃいましたが、つまり何か別人格の法人をつくる。ごく一般的には特殊法人といわれておりますような別人格の法人をつくることが、いわばすっきりした形であると考えたのでありまして、それがいろいろな事情で、新しく法人をつくることに批判がありますところから、いわばおもやを借りたといいますか、ひさしを借りたといいますか、一部を借りたということであります。間仕切りをして借りたというふうに御了解を願います。
  157. 春日一幸

    ○春日委員 あなた方は自民党三百名を背景にして、あぐらをかいてずぼらな法案を出されてまいってきておるけれども、昔ならこんな法案は通りませんぞ。あの昭和三十四年の団体法のときは、審議未了になって、そして秋に臨時国会を開いて、その臨時国会で、そのような国家権力が基本的人権を侵害することはもとより許されないが、いわんやそれにもまして、民間の任意団体が直接の基本的人権を侵害するようなことになることは許されないということで、あの一条が特に設けられてかろうじてあの法案が成立をした経過にかんがみまして、いまいろいろと野党が質問しておるけれども、いざとなれば多数で、六日か三十日かには押し切ってしまおうと、与党の多数の横暴なやからはただその時の来るのを待っておる、私ども野党にはただしゃべらしておるだけのことだということは、私もよく腹は読んでおる。実際問題として私は慨嘆にたえないと思う。  この法律は、ただ酒の製造業者の安定をはかるというだけのことなんですよ。こんなものは、この法律がなかったら国家存立の基礎を危うくするとか、あるいは国民福祉の根底がくつがえるとかいうような問題じゃございません。ほかに手段がなければあるいはさらにこういうような政策を煮詰めていろいろと研究する必要もあろうと思うが、ほかの手段は幾らもある。すべての業種、業界が、みんな自主的な努力によって物品税も納めておるのだし、季節的な商売だってありますよ。ぜんざい屋さんだってあるし、氷屋さんだってあるのだけれども、それらの商売と酒の商売とは、税の問題とは無関係という別個な性格があるのだけれども、酒の商売が営利事業である限り、その事業遂行に必要な資金をみずから調弁、調達することは、事業主の当然の責務である。そんなことは季節の商売をやっている者はみんなやっておるのですよ。酒だけやっておるということはない。彼らは担保物件もあるのだし、自分の担保がなければ親類縁者の担保を借りてもやるというのが、資本主義経済人として当然の責務である。そんなことができなかったらやめたらよろしい。  私はそういうような立場から判断をいたしますとき、公共の福祉のためにある程度基本的人権が制約されてもやむを得ないというが、その公共の福祉の限界というものは客観的に見て相当高度のものでなければならぬと私は思う。そのことでなければ国民福祉の根底がくつがえるとか、国家存立の基礎が危うくなるとか、経営の秩序の根底が紊乱するとかあるいはパニックが来るとかいうようなことなら、これは別なんですよ。醸造元がいまほとんど中小企業が多くて困っておるといわれておる。必要ならばそれはそれなりの措置をとるべきである。私は、この八兆円の財政規模の中において、あるいはいま高度成長を遂げておりまする日本経済のメカニズムの中において、他の手段というものはあり得ると思う。にもかかわらず、あまりに便宜的にその目的を達することのために、とにかく憲法上、独禁法上多くの疑義を介在せしめたままこういうものを通していくということは、私は後日に悪例を開くのおそれありと思う。政務次官、あなたも実際は正義派の人なんだけれども、この点だけは、このごろどうもミイラ取りがミイラになった感じだな。あなた、どう思いますかね。
  158. 中川一郎

    中川政府委員 春日委員の御指摘が二つあろうかと存じますが、一つは造石権というものに異議があり、それがなくなったからといって国がこれに援助を与えるということについての疑問でありますし、また内容において、員外、アウトサイダー、酒造組合中央会に入っていない者から料金をとるということについて憲法違反の疑いあり、国家権力が行き過ぎではないかという二点にしぼられるのではないかと存じます。実はこの点については大蔵省内においてもずいぶん議論のあったところであります。  第一点の造石権を認めるか認めないか、あるいは酒税確保という点からいって、それでは税金を納めておるのは酒造組合かというと、そうではない。一番飲んでいる中川一郎あたりなんかが税金を納めているのであるからそういった恩典を与えるべきではないかという議論もまじめにいたしたのでありますが、何といっても三十年間にわたって実態論として造石権が価値として続き、また利用されておった現実——食管法も実は当初は消費者保護ということで始まったけれども、三十年たちますと生産者保護というふうに、経済の情勢によって変わってくるわけであります。それと類似するかどうかわかりませんが、造石権についても、当初は酒屋を規制する措置であったものが、三十年間のうちにこれは保護されているかっこうになっておった実態実態として認めなければならぬのではないか。五千億ほど税金を取っているうちで七億ないし十四億という程度で酒造業界が安定するならばこれはけっこうなことで、がまんできることではなかろうかということで踏み切り、しかも業界も相当これにみんなが協力し合ってやっていくということであるならば、政府もひとつ援助しようということに踏み切ったわけであります。  また、二番目の憲法違反の疑いの問題も、先ほど来の議論を聞いておりまして、せっかくかちとった平和憲法の中に規定されているようなことを侵すようなことがあってはならない。これは十分気をつけなければならぬところでありますが、これはひとつ保険と考えていただいてはどうか。弱い人が事故を起こしてやめていくときに、みんなでひとつ協力していこう、残ったものがやめていく人をめんどう見よう。保険も任意であるべきであるのでありますが、例の自動車損害賠償保険においては、事故を起こさない人でも強制的に保険に入らなければならぬ、そして事故を起こした人が保険金を払えるようにする。これは例外なしに、そうでないと免許を与えないという、国民全体がよくなることであるならばみんなで協力しようということでああいった制度を設けられていること等も勘案いたしまして、若干この点については配慮はいたさなければならぬとは思いますけれども、残った人がみんなで協力して、やめていく人の保護といいますか——先ほどの、十四億では足りないではないかという議論、転廃業者の従業者に支払いができるかという心配があるだろう、やめていく人の退職金が払えるかということも考えますならば、注意はいたさなければならぬとしても、憲法違反、そういった強制的なものだときめつけることもいかがか、この程度なら許されるのではないかということで踏み切ったのでございまして、決して自民党三百名の圧力でやろうとしたことではないので、御了承いただきたいと思います。
  159. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、仮定の問題では適当でないと思いますが、理解しやすいと思いますから私が説明しますが、あなたのいまおっしゃった保険とか共済とかいうような観念ではなくて、その裏の立場から判断をしていただきたいと思うのです。  たとえば、この賦課金ですね。グルーピングとかなんとかの賦課金を組合からかけられた。それはいやだといって組合を脱退した。あるいは脱退しなくても、組合員外のものに向かってこの賦課金を賦課した。本人は払わない。私は組合なんか関係ない、私は組合員外だから払わないと言う。しかし法律では、払わなければ大臣に向かって支払い命令を要請することができる。それでも払わない。大臣命令にも服従しない。そうすると今度は酒税法第十二条かなんかで醸造免許の取り消しを受けるのですね。そうするとその本人は、私は酒税法に基づいて酒をつくっておるんだ。酒税も確実に納めておる。ただその企業整備みたいな問題について、そのやり方について私は納得できないから払わないんだ。払わなかったら今度わしの営業免許を取り消してしまった。これはまさに職業選択自由の原則に反する、憲法違反だといって行政裁判を起こすのです。そうしたときに憲法裁判で、この法律は憲法に違反するという判決がおりたらこの法律は全部無効になるか。そういう場合が私は絶無ではないと思う、この場合は。現在たとえ一名の者でもこの酒造組合に入っていない。将来も脱退する者があるかもしれぬ。考え方が変わって、いろいろと服従命令にも服しない者が出てくるかもしれぬ。そうするとこの法律はどんどんとエスカレートしていく。組合が直接に払えといっても払わぬ。勧告しても払わぬ。大臣に支払い命令を求める。大臣の支払い命令にノーと言う。そうすると今度は酒造免許の取り消しを受ける。これはもう大いなる既得権、財産権の侵害になる。その賦課金を払わぬぐらいのことで、根底的な職業選択自由の原則であるその営業権、しかも先祖代々やっておる営業権が、今度のグルーピングの賦課金を払わぬというだけで免許取り消しになるというばかなことがあるか。ほんの枝葉の問題でその根元をひっこ抜くというばかなことがあるかといって違憲訴訟がなされて、かりにその憲法裁判でこの法律は違憲だというようなことになると、国会全体として責任は重いと思うのですな。それで私は、少なくともこの処罰規定、行政罰規定はこの際考慮してみてはどうかと思う。  ということは、先国会であの理美容師法について、われわれがみずから省みてずさんな審議であったと思うのだけれども、あの管理者の制度を置く、置かなければ営業を認めないという法律ができたのですよね。全国でえらいセンセーション、大もんちゃくです。われわれは法律に基づいて国家試験を受けていま営業をやっておる。ところが新しい法律をつくって、四十何時間の講習を受けた管理者を置かなければその事業の営業を認めないというような法律は違憲立法であるといって、いまみんな違法訴訟を起こしていますが、そのようなことをここに誘発しては相ならぬと思う。いま自民党さんも、社会党さんも、われわれも、公明党さんも、みんな一緒になって、いかにこの調整をはかるべきか苦慮いたしておるのであります。私は酒の醸造業者で、先祖代々酒の製造をやってきた。きちっと酒団法に基づいて酒の醸造をやってきておる。ところが今度のグルーピングの問題だけどうも自分として納得できないから、賦課金払いませんのじゃ。それじゃ免許取り消しする。本人が違憲立法としての裁判を起こすということは容易に想定できることだと思う。そのことをおもんぱかりみれば、私はこのような免許取り消しをすることもできるというような条文はこの際修正をしたほうがよいのではないかと思う。少なくとも基本的人権は最高度に保障されなければならぬと思うが、この点はいかがですか。
  160. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいまの免許取り消しに関連いたしまして、具体的にたとえば訴訟が起こるかもしれないということは、私どもも十分心配といいますか、予想いたしました。政府部内におきます訴訟の専担のセクションにも相談をいたしたわけでございます。いまここでその内容をちょっと私自身詳しく御説明できないのでございますけれども、その点も十分心配をいたしまして、そういうことになっては申しわけないということで十分心配をいたしまして相談をいたしましたが、その結論といたしましては、まず問題なかろうということで御回答をいただいておるわけでございます。
  161. 春日一幸

    ○春日委員 ちょっと、それはだれが回答したのですか。裁判というものを予見して回答するとは何ごとか。裁判というものは、司法、立法、行政、三権分立であって、被害者が権利の救済を求めて裁判する。その結論というものは一審、二審、三審、いろいろと裁判をやってみなければ判決というものは出てこないじゃないか。その判決をどうして予見したんですか。
  162. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 いや、ことばが足りなかったかもしれませんが、判決はもちろん予見することはできませんし、裁判所がどういう判断をとられるか、これはわからないわけでございます。ただ政府関係の訴訟につきましては法務省のほうで訴訟を担当されますので、訴訟の経験を持っておられるセクションがありますので、そこへ相談をして、初めから、たとえば訴訟の上で非常に問題のあるようなことになってはいけません、その意味で経験者に御相談もしたという意味でございます。その結果、訴訟が起こりまして裁判の段階でどうなるかはもちろんわかりませんけれども、まあ訴訟の見地から見て著しく不当なる規定ではなかろうということについての御了解を得たという意味でございます。
  163. 春日一幸

    ○春日委員 私どもはこの法律賛成するかもしれません。反対するかもしれません。審議してみなければ——疑義が解明されれば賛成するにやぶさかでない。賛成すれば、結局はこの法律によって権利の侵害を受け、その者が救済を求めて、そのとおりという判決が下ったときには、われわれは政治モラルとしての責任をやはり感ぜざるを得ない。だから、いま法務省がこれはだいじょうぶだからよろしいと言うたと言うんだけれども、なぜだいじょうぶだと言うたか、その内容をわれわれにもお知らせ願いたい。
  164. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 その点は先ほど申しましたように、私自身ちょっといまここに持っておりませんので、申しわけありませんがお答えいたしかねます。
  165. 中川一郎

    中川政府委員 私がその当時聞いておったところでは、これは許可事業でございますので、許可ということになると一つの権利を持つわけでございます。権利の裏には義務が必要である。その義務の一つとして、賦課金を徴収するということは憲法違反の疑いはないという法務省出局の考え方のようであります。
  166. 春日一幸

    ○春日委員 私は忙しいからあまり緻密な研究はしておりませんが、ラフな研究をしただけでも、そんなことにはならない。だとすればこれははなはだしき論理の飛躍だと思う。というのは、酒税法十二条を読んで見たのです。それは酒類製造免許の取り消しはどういう場合だといったら、それは「偽りその他不正の行為により酒類製造免許を受けた場合」、うそをついて免許を受けた場合、これは取り消されるのは当然だろうと思う。それから酒税を納めない、滞納処分を受けた場合、これも取り消されるのは当然だろうと思う。それから三年以上休んでおってつくらない、これも取り消されるのは客観的に妥当性があると思う。こういうようなでたらめをやったのと、酒税を納めないやつと、三年間も全然つくらぬやつと、今度ここに賦課金が高過ぎる、不当だというて文句があって納めない者とが同一の取り扱いを受けるということは、これはもうはなはだしき論理の飛躍だと思う。そんなことを言う法務省のばかがおったらここへ呼んでちょうだい。何というばか者であるか。納めない者は十二条の適用を受ける。これはなんでございますよ、時限立法でございますよ。わずか四年間の時限立法であり、それもただ酒の製造業者の安定をはかるというだけのことなんだ。言うならば彼らに利益を与える利権立法だと言っても過言ではない。そういうものに対して同調できないという者について、でたらめ、うそ偽りを言って免許を受けたやつや、酒税をインチキして納めないやつや、三年間も引き続いて製造してない者と同一の取り扱いをなさしめるというところに私は不当性があると思う。その不当性に何ら疑義を感じないというならばそれこそへ理屈であり、論理の飛躍だと私は言っておる。  だからこの際、法律の機能、効果を確保するためには、いろいろとその抜け穴とかあるいはざるの目をふさいだほうがいいことはわかる。法律をつくる以上は、その機能を完ぺきを期したいと思うことは立法者の当然の考え方であろうと思うが、だからといって、そのこと一つだけが国の行政ではないのである。行政というものはずっと総合的に行なわれていって、国民福祉のために行政というものはある。酒屋さんのために行政があるのじゃございませんよ。だから、酒屋さんの安定が国民福祉に直ちにそのものずばりで短絡せしめる、これが私は無理だと言っているんですよ。なるほど酒屋さんの専業の安定も、国民福祉、国民経済には相当の寄与面があるであろうが、そのような拡大解釈をもっていけば、どんな業種でもみんな国民経済に貢献をしており、公共の福祉に貢献をしておる。拡大解釈すれば何でもやれると思うんだ。  そういう意味で、いま正当に酒の製造を法律に基づいてやっておる者が、このようなグルーピング、しかも言うならば時限立法であるそれに同調できないからといって、醸造権の免許取り消しをするというようなことは私は酷に過ぎると思うし、憲法の条章に照らして違憲立法の疑いなしとはしがたいと思う。この点について、いま質疑応答の中でにわかに結論を得るということは困難であろうかと思いますが、藤井理事並びに坊財政部長もおられますから、(「財政部長じゃない」と呼ぶ声あり)……前官礼遇の実力者として、ぜひともこの点については御検討願いたいと思うんですね。私は非常に冒険だと思うので、これはひとつ広瀬理事にも強く要請して、この点については理事会において御協議を願いたいと思う。  そこで、高木君の答弁は何ですか。
  167. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ちょっといまの御説明をさせていただきたいと思います。  免許の取り消しが非常に異例であるということでいまいろいろお話がございましたのですが、その点は、この法案を法制局で、政府内部で審議をいたします際にも最も慎重に検討された次第でございます。納付金の賦課についてどういう方法で担保するかということについては、いろいろな法律技術があるわけでございます。その一つとして免許取り消しの形態をとったわけでございますが、それにつきまして検討いたしました段階で出ましたのは、結局公共の福祉に適合するものであればよろしいのではないかということで、事例をいろいろ検討したわけであります。いま私の手元に持っておりますのでは、鉱業法それから石炭鉱害賠償等臨時措置法、弁護士法、税理士法、土地家屋調査士法、学校教育法、証券取引法等々、まだ他にいろいろ例はございますが、もろもろの法律におきまして——弁護士なり税理士なりについて申しますと、弁護士会なり税理士会なりに会費を払わないという場合には、最終的にはやはり取り消しまでいくことになっておるわけであります。そういう意味におきまして、普通の場合と違いまして、各種の免許事業につきましては、一定の要件がありました場合には免許を取り消すということはあるわけでありまして、必ずしも、その免許取り消しの点につきましてはこの法律がきわめて異例、特例であるということにはならないという確信を持っておる次第でございます。
  168. 春日一幸

    ○春日委員 そういう立法例とは、この経済法は全然立場が違うし、機能も違うのでございますから、この点はさらに内部を掘り下げて、経済行為の実態と、そして他の立法例、広き前例をとられて、少数異例の立法例に片寄ることなく、常識的に普遍的な立法例、これに準拠されてあやまちなきを期せられたい。この質問はいま留保しておいて、理事会その他で、大臣の見解等を聞いて善処したいということでございますから、留保いたしておきます。  そこでお伺いいたしたいことは、こういうような企業策約をなさるのでございますから、したがって将来新免許の関係は、国税庁長官どうなりますか。要するに転廃業資金まで出して営業者の数を減らそうとされておるわけでございますね。そうすると、この法律が施行された後において酒製造の新規免許の申請があったときどうなさいますか。
  169. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように、現在清酒業につきまして新しい免許は原則としておろしておりません。今回の措置におきましても、自主流通米の採用によって、いわゆる造石規制というものがなくなった場合に、既住の免許業者の中において新事態に対応し得ずに、客観的に転廃業を余儀なくされる者が生ずるであろう。それに対応して、さらにその中でどうしても転廃をしなければならない者と、そうでなくて、企業体質の強化によって新事態に対応し得る者と、両者を、構造改善の事業によって将来に適応し得る体制に直すというのが目的であると思うのであります。そういう意味では、私どもは、この期間内はもちろんでございますけれども、体質強化が行なわれ、免許業者自身が競争に耐え得る状況に立ち至った場合において、あらためて清酒製造業免許について判断をいたすべきではないか。その五カ年後において免許に対していかなる態度をとるべきだということは、現在はまだあらかじめきめていないというのが実際でございます。
  170. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、いま製造業者は六千軒くらいあるんでございますか。
  171. 中川一郎

    中川政府委員 三千六百。
  172. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、酒の製造業というものは、この制度によって、いままでは行政慣例といいますか、いずれにしても造石割り当ての制度もあったことによりまして、新規免許を行なう場合においては、需要の増大だとかなんとかいうような趨勢があらわれてきたときには新規免許もいままではあり得たわけでございますな。需要の増大が見込まれたり、特にそのような有資格者に対しては、新規免許がいままでといえども、実際的に出されなかったけれども、たてまえとしては新規免許は交付し得る体制にあったと思いますね。いかがですか。
  173. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在までにおきましては、御承知の、ようにここ一、二年は例外と申しましょうか、それまでは、相当の能力をすべてが保有しながら、実際上原料の不足という状態によって、既往の業者自体が生産制限を余儀なくされていた実情でございます。そういう面から申しますと、需要増大が生じても、原料の割り当て自体がふえれば十分それに対応して需要を満たし得るという体制にあったわけでございます。それからこの段階にまいりまして、その製造体系というものが、造石権の廃止によって内部相互間の競争ということによってくずれようとしたわけでございます。そこに構造改善という問題が起こってきた、こう御理解をいただきたいと思うのであります。したがいまして、既往において免許が行なわれなかったにつきましてはそういうような背景があり、従来の免許業者すらなおかつ全生産量能力を発揮し得ない客観的な情勢に押えられておる、そういうことが免許を複雑な形にした大きな理由だ、かようにお考えいただきたいと思います。
  174. 春日一幸

    ○春日委員 この制度がしかれたのは昭和十五年ですか、それから本日まで免許がされたことは相当あるのでございましょう。
  175. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは御承知のように、企業整備によって整理をされた業者が、戦後のいわゆる生産拡大に伴いまして、従来戦争による原料の規制ということで犠牲になったという点から、従来の権利を復活することを主張いたしまして、その関係で復活のために免許をおろしたのがいわば例外でございます。
  176. 春日一幸

    ○春日委員 では局限いたしましてもけっこうですが、そのように、復活を求めておりまする業者はいま一〇〇%救済されてはいないので、かりにそのような連中が醸造免許を申請した場合には、やはりこれが免許の対象になった、こういうことでございましょう、いままでされてまいりましたから。たてまえとしては、需要が増大してきて、そして戦前には醸造しておったのですけれども企業整備でその権利が収奪された、その復元を求めてきた者は免許が与えられてきた。だから従来のたてまえによるならば、需要の増大が見込まれて、そういう者が復権を求めてきたときは免許を与え得るというのがいままでのたてまえであったであろう。ところが、今度こういうふうに企業集約がなされて、転廃業者に対して国の費用も出し、業者負担で交付金も出すということになれば、いままでは免許が与え得る体制にあったけれども、今後はこのような制度にかんがみて、これがてこになって、新しい免許を与えることは、かつて権利を持っておった者といえども、そういうものに対しては醸造免許を交付することはできないことになると思いますが、いかがですか。
  177. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この構造改善そのものは、いわば業界の自主的な協定によって行なわれているわけでございます。転廃業につきましても、これはあくまでも個人の個々の企業の決定によってやるわけでございます。それに対して、いわば誘導的な意味で業界から調整金を集めてこれに給付しようという体制でございますので、いわゆる戦前における企業整備的な、強力な政府の力によって整理してしまうというものではございません。そういう意味では、むしろ現在の酒類業界既存の業者同士の間で将来の客観的な競争に耐え得ないものが自発的に引退をする、それに対して残存していく者が見舞い金を出すというのが本質であろうと思います。そういう意味では、ここでこの構造改善が行なわれたがゆえに、今後新しい事態に十分対応し、業者が需要増大に応じて免許を申請した場合に、それを道義的に排除すべき桎梏を与えたものとは考えられないと思います。ただ、それをいまから、将来もう免許を与えますということをきめているわけでは決してない、さような意味で申し上げたわけでございます。
  178. 春日一幸

    ○春日委員 私の質問趣旨が不明確であったかもしれませんが、いままでは、言うなれば資格条件を備えれば、たてまえとしては免許が交付できる、こういうたてまえであったと思う。いかがですか。
  179. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 全体の需給その他の状態を勘案して、条件が備わっておれば免許をおろし得ることは言うまでもないわけであります。
  180. 春日一幸

    ○春日委員 そうすると、今回この法律の制定によって、現在あるものでもこれは多過ぎる。だからこれをグルーピングなり——必ずしも造石高の減少をはかろうとするものではないといたしましても、やはり営業軒数を少なくする方向に向かって、一つの国家の法律とか意思決定がなされようとしておるわけですよね。だとすれば、それをふやすような免許というものは今後できなくなるのが法のたてまえとして当然の帰結ではないか。いままでは資格条件のある者が申請をしてくれば、これは免許が交付できた。ところが今度のこの法律によって実質的にそういうことはできなくなる。減らすように法律ができたのにふやすような行政行為は許されない、こういうことになると思うがどうかという質問なんです。
  181. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この法律自体は、業界が減少することを予測している面はもちろんございます。しかしその減少と申しますのは、既存の業者の中の、条件変化によって既存の事業のやり方では残存し得ないという業態にあるものを残存し得る形に直していく、グルーピングは本来そういう意味を持っております。ですから事業数そのものを減らすというのが目的じゃなくて、存立に耐えないような業者をいかにしてグルーピング等によって存続可能な体質に改善をするか、そこがねらいでございますので、企業数を減らすことが目的ではないという意味から申しまして、新規免許をこの法律が排除する性格を持つものではないと私は思います。ただこの五カ年間に、こういう構造改善を行ないつつあるときでもございますので、その間に免許をどしどしおろしていくということは、この構造改善自体を撹乱するものであるということが客観的に認められると思いますので、この構造改善事業遂行中には原則として、この構造改善を撹乱するような免許をおろす考え方は当面とらないのが正当であろうかと思っております。
  182. 春日一幸

    ○春日委員 私はその点についても憲法上の疑義があると思うんですよね。たとえ五カ年間の時限期間中といえども、三千六百軒の既存業者によって、日本国民として、酒の醸造を行なう営業権というものが、いかに資格条件を具備しておった者に対しても、その権利というものがここに閉鎖される、あるいは剥奪されるということは、やはり違憲立法のそしりなしとはしないと思うのですね。いままでは、たてまえ上はとにかく免許が下付できた。けれども実質的にはされなかった。けれども向こう五カ年間はこういうような企業集約がなされておるんだから、全体としての企業膨張を来たすような新免許というものについては、この際この法律というものが制定されたことが一個のてことなって、そういう三千六百軒以外の国民はその権利というものをここに凍結されたと見るべきではないか、そういう理解をしてよろしいか。
  183. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この法律が制定されたからということではないと思うのであります。構造改善計画というものが実行されておる段階で、清酒の製造というものに対する需要供給の関係その他を考えて、従来の基準で免許を考えた場合には、新規免許をおろす条件というものがきわめて制限されてしまうであろう。したがってその間はおそらく免許可能という判断が出ないであろうということを申し上げておるわけでありまして、この法律があるがゆえに免許をおろしてはならぬという客観的な制限は出てこない、かように考えております。
  184. 春日一幸

    ○春日委員 この問題は、この酒の醸造業ということが免許事業であるということなんです。このことは、国家から特別の保護がすでに与えられておるということを認識しなければならぬと思うんです。すなわち他の事業は自由でございますから……。したがって、酒の製造業については免許を受けていない者は製造することができないわけです。そういう大きな特権を持っておる。そうして今度はさらに、もう競争相手はわれわれ以外には、この計画がなされておる間はできないという、さらにダブってのフェーバーがこの法案によってもたらされる、実質的にはこういうことであるわけですよ。だからこういう点についても、実質的にはそういうことになる、あるいはたてまえ的にはそういうことになる。そういうことで、国民の営業の自由の原則で、申請すれば免許を与えられべかりしものが、資格条件具備するといえども、企業集約の方向にあるときに企業膨張という逆行することについては、行政運営上許可が与えられなくなるということの、法律の機能がそういうような作用をもたらすものであるということを念頭に置いてもらいたい。
  185. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その点はもう一回申し上げておきますが、この法律自体によってそのような事態が起きるということではない。構造改善ということは別に中小企業近代化促進法のラインに沿って行なわれているわけでございます。そしてその構造改善の遂行の過程におきましては、いわゆる免許下付の場合の需給間の調整という判断が、新しくは出てこないであろう、そういう意味で申し上げておるんですけれども……。
  186. 春日一幸

    ○春日委員 違うんですよ、この問題は。たとえば印刷業が構造改善の事業計画を立てて、いずれこれは認可を得ますね。ところが印刷業というものは免許事業じゃないから、そういうような構造改善や近代化計画がなされておっても、その組合員はその計画に拘束を受けるけれども、他の国民は自由かってに印刷業を開業することができるんでございますよ。ところが酒の製造については、この構造改善計画があって、あるいは近代化計画があって、大蔵大臣の許可を受けた。ところが、酒の製造業をやろうと思ったって、醸造免許を受けなければ酒の製造を開始することができない。同じ法律のたてまえでも、印刷業がかりにその構造改善によって近代化計画を立てて、通産大臣の免許を得ても、その連中はその計画に拘束を受けるけれども、他の、組合員以外の国民は自由自在に開業することができるんですよ。だから、この法律によって企業集約がなされておるから、企業膨張という逆行するような行政は行政運営上やられないであろう。だとすれば、五カ年間は国民が酒の製造業を開始せんと欲しても、その基本的人権は凍結されるものであると見るべきであるという私の意見だがどうだということを言っているんです。
  187. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その点は一つの御見識だと思いますけれども、この安定法によって構造改善が行なわれているわけではない。これは中小企業近代化促進法によって行なわれているわけです。それと免許とが結びついたために、いまおっしゃったような効果があるいは生じるかもしれぬ。その意味においては、これは酒税法と近代化促進法との間に起きた問題でございまして、この法律自体は関係がないものでございます。
  188. 春日一幸

    ○春日委員 そこが違うのだ。それは、あなたも非常に頭がデリケートだけれども組織法的にデリケートじゃない。(笑声)それはそういうこととは違うのですよ。——みな笑い飛ばしてしまったからぼくのデリケートな頭のあれがまた狂ったけれども、それは、この法律によってそういう結果になったのじゃないというふうにあなたは言いますけれども、期せずしてそういう結果になってきた。しかもその自主的な近代化計画、そして今度のグルーピング、これに対して国家権力が介入しているのです。大臣が直接にいろいろな命令を発するというのではなしに、その酒の組合が第三者に向かって直接の国家権限を行使する機能をこの法律が認めるのですよ。そういうような関連において、この醸造免許とグルーピングの機能とがからんでくると、他の構造改善とかあるいは近代化促進法によって制定されたところの調整事業と、この免許を受けて営業しておる業界における調整事業とで、国民の営業の自由の基本的人権に影響するところががらっと変わってくるということをぼくは指摘しているのですから、それが実態であるならばそういう実態になるんだ、こういうことをお互いが留意すればよろしいのです。
  189. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 非常に微妙なところでございますが、春日先生のおっしゃるのも一つの論理かと思いますけれども、そういう条件が起こるのは、構造改善計画を認可し、かつそれが免許と結びつけばそれで必要十分な条件になってしまう。この法律があることはそれに付加されているだけだ。この法律でそうなるとおっしゃると、ちょっと私もついていけないという感じでございます。
  190. 春日一幸

    ○春日委員 この法律さえなければ、グルーピングの方向というものは自主的な規制なんですから、したがって員外者はこれに拘束を受けないのですよ。受けなければ、製造していない者は新しい資格条件に基づいて申請もでき、許可を期待することもできるが、今後もうまるっきり期待できない。現にあなたがおっしゃったように、集約の方向にあるものを膨張の方向に向かっての許可は与えられないと解すべきであるとあなたは言われておる。だとすれば、これは何か押し問答になってしまいますけれども、結局は国民の新しい免許申請というものはだめになってしまう。絶望状態になって、そういう権利というものがここに凍結される形になるが、これは憲法上疑義なきかということを指摘しておる。時間もございませんから次の質問に移ります。この点は御検討願いたい。  次は、この際酒税の確保確保ということが強調されておりますけれども、実際の酒税を確保する現場の役割りを果たしておるものは、これは酒の製造家であるのか、あるいは小売り業者であるのか。この点は、一体実務の関係はどうなるかということでございますね。なるほど納税者は醸造元であるけれども、現実にはこれは消費税でありますから、消費者が払うのですから、消費者に配分してその代金を収受して、そして卸の段階を通じ、あるいは醸造元に納入する、かくして醸造元は酒税というものの原資を収得する形になるのですな。したがいまして、酒税というものを確保する第一線の責任者である任務を背負う者は酒の小売り業者ではないかと思うが、この点の理解はどうですか。
  191. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは二つ考え方があると思います。間接税というものがいわゆる価格現象として転嫁される。したがって間接税のほうは、価格に含まれる要素を考える場合には、それを積極的に納税する形式的な納税義務者は酒造業者であるといわざるを得ないと思います。同時に、その原資を運んでくるという面では、もちろん負担者は消費者でございますけれども、その経路において酒税を集めているという現実を見れば、そういう意味では酒販業者がその一環をになっていると言えよう。これはいろいろ考え方があるだろうと思います。
  192. 春日一幸

    ○春日委員 いろいろ考え方があると言うたところで、これが消費税であり、消費者から税金の分を含めて代金を収得する、そういう任務を背負う者は小売り業者、酒販業者であるとするならば、やはりその小売り業者の安定、それから酒税の確保という面についても、この酒販業者に対しても何らかの安定措置あるいは近代化措置というものが講ぜられてしかるべきではないかと思う。たとえばこれを協業化するとか、あるいはボランタリーチェーンの方法をとるとか、あるいは店舗の改造その他について、今回その酒の製造家に期待されておるような、計画されておるようなことを酒販業界も計画し得るように政府は何らかの措置をとってしかるべきではないかと私は思うのですよ。少なくとも近代化促進法の適用業種に酒販業界をもこの際指定すべきであろうと私は思う。いまこのような特別措置が酒の製造家になされておることと相照合して、この際、酒業界の安定、酒税の確保をはかるために、少なくとも酒販業者、業界を近代化促進法の指定業種に指定すべきであると思うが、この見解はいかがでありますか。
  193. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 現在、酒税関係で近代化の指定を受けておりますものとしましては、清酒の製造業と卸販売でございますけれども、いわゆる近代化という、広い意味における近代化につきましては、確かに小売り業についても喫緊であることはおっしゃるとおりでございます。しかしながら、中小企業の近代化促進法のねらいとしております近代化は一体何であるかということを考えてみますと、第一のねらいとするのは、やはり企業合同でございます。スケールメリットを得るということが第一のねらいと私どもは考えております。そういたしますと、けさほど来申し上げましたように、清酒製造業というところにおいてすらスケールメリットというものは他の産業とはかなり違った要素を持っておりますけれども、それが一番違うのは、私は酒類小売り販売業者であろうと思っております。これが合同いたしまして店舗を集約するというようなことであれば、小売り業の本来の機能というものはかなり失われてしまうと思うのでありまして、むしろ近代化促進法の指定業種になるよりは、ボランタリーチェーンでありますとか、共同仕入れでありますとか、そういうほんとうの意味の近代化、形式的な意味におきますところの近代化でなしに、そういう意味での近代化というものを促進すべきではないかと思っております。
  194. 春日一幸

    ○春日委員 私が指摘しておりますのも、企業合同していいが、一酒類業者に集約することを目途としておるわけではございません。たとえば事業場が分散しておって協業化の方法もありますし、共同仕入れ、あるいはボランタリーチェーンという新しい制度もできましたから、そういうような方向を目ざして近代化促進法の指定業種に指定されれば、税法上、金融上の特別措置が受けられるわけでございますね。そうして、そのことはやはり酒販業者の企業の安定に資するところが大きくありましょうし、よってもって酒税保全のためにも大きな貢献が期待できると私は思う。だからそういうような面、方向を目ざして、少なくともこの際、酒の小売り業者に対しても近代化促進法の指定をなすべきである、踏み切るべきである。そうして生販三層というものに対して、国は機会均等のバランスのとれた政策の実現をはかっていくべきであると思うが、この点いかがでございますか。
  195. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 おっしゃいますように、単に経理とかいうものを一つにまとめるということで近代化促進法の指定業種に合うかどうかはかなり疑問であろうと思います。近代化業種に指定されれば、資金面あるいは税法の面で優遇されることは当然でございますけれども、それをもらうためにはかなりの実質を備えなければ、簡単に指定業種を得るというわけにはまいらぬと思います。現在の店舗をそのままにしながら、業務実態をそのまま存続しながらということになりますれば、法人格をとる、あるいは企業組合の形をとるということが一つの道だろうと思いますけれども、それだけでは新しい近代化業種に指定されるということは非常にむずかしいと思っております。
  196. 春日一幸

    ○春日委員 あなたはいま断定的にそういうことを言っておりますけれども、とにもかくにもいま経済政策の根幹は流通過程に重点が置かれておる。しこうしてこれが財政物資であるという特殊性があるのである。だから、商業関係において近代化業種に指定されたものは皆無であることはよく承知しておるけれども、さればこそこのとき、酒の業界全体においていろいろと問題がある、きょうの朝刊において、広瀬委員から指摘されたように、小売り業界を脅かさんとするいろいろな要件が続出いたしておる、このとき、酒販業界がその企業基盤を安定せしめ、そうしてよってもって、酒税確保の第一線の任務を遂行しておるものがその使命を完全に遂行できる体制をつくっていくということは、あなたが前に言われたように、それこそ緊急不可欠の要件であると私は思う。だから、この問題についてはひとつ前向きの形で御検討願いたい。端的にそんなものを一ところにやるといえば、一ところに事業場を集約すれば他の地域の諸君が不便を感ずるから、諸般の実態にそぐわないということは私はもとより心得ておるけれども、しかし企業組合の形態もあるであろうし、あるいはまたボランタリーチェーンあるいは共同仕入れあるいは店舗それ自体の近代化というようなことも、小売り屋それ自体にその近代化計画を立てせしめて、そのことが国家の立場から判断をして有益なものである、こういうことであるならばこれを推進することをためらっては相ならぬと思う。そういうことで、この問題については前向きの形で御検討願いたいと思うが、長官いかがでございますか。
  197. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま間税部長が申しましたように、現在のいわゆる近代化促進法の考えております方向と、いわゆる販売業の近代化とがずれておるというのは事実だと思います。したがいまして、これをやるためには近代化促進法自体考え方に、商業部門に相当する考え方を取り入れてこなければならないのではないかと思います。そういう意味では、春日先生御指摘のとおり、商業部門は指定業種にしないというたてまえがとられてしまっておるわけです。ただ、御承知のように酒類の卸売り業だけは例外として入れてもらった例がございます。そういう意味から申しますと、近代化促進法自体を換骨奪胎をするというのが一つ要件だと思うのです。いまのままではちょっと指定業種になりかねるものがあると思います。そういう意味では、商業についていかなる近代化促進法をつくるかということは確かに問題でありますが、将来さようなものについての検討を惜しむものではないということを申し上げておきたいと思います。
  198. 春日一幸

    ○春日委員 この問題は、法上では商業部門には適用しないということは規定されていないと思う。ただ、そういうことがいままで実行されていないというだけのことである。けれども、経済の実態の推移をながめますときには、いまこそ流通過程というものが経済政策の重点的な部門になりつつある。このような実態に顧みるときは、流通部門を除外するという理由は乏しいと断ずべきである。だとすればこのとき、大蔵省をはじめ各省庁が、この近代化促進法というものはいずれにしても経済活動の近代化であって、ただ生産部門だけに局限するということは、いまやそれよりもむしろ流通といわれておるときに、ならばその事由に即して流通部面に重点を置き変えていく、あるいはその対象を拡大していくということは当然の事柄であろうと思う。だから、そういう意味においてこの問題についての御検討を願いたい。  あとは二つですが、一つは、やはり小売り業の分野を確保してやらなければたいへんなことにならないかと思うのです。いま酒団三法によりますると、醸造、卸、小売り免許をみんな受けておる、あるいは二つ兼ねて受けておるというのが実態のようですし、そしてその大多分のものが中小企業である、そしてその大多分のものが今度直売りに踏み切ろうといたしておる。今度の近代化計画を見てみますると、一、二、三、四のグループに分けられて、一は広域卸売り、それから狭域卸売り、置き売り型、それから今度は直売型企業ということになっておる。だとすれば、今後は国税庁としては製造直売ということを大幅に認めようとしておるのか、この点はどうなんでございますか。
  199. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 直売型と申しますのは、いわゆる卸形態を通じずに小売り業者直売をするという型でございます。したがいまして、消費者直売を考えているわけではないのです。
  200. 春日一幸

    ○春日委員 わかりました。けさの朝日新聞その他の新聞にも報道されておりましたように、今度は、いまおっしゃったような製造者から小売りへの直売ではなくして、製造者から消費者への直売があんなような全国的規模で行なわれようといたしておる。こういうような傾向は将来さらに増大するのおそれなしとはしない。したがいまして、この際、生販三層の流通秩序を確保するためには、小売り業者立場が行政措置として当然保護されてしかるべきだと私は思う。そういう大きな任務をにのうておるのでございますから。したがって、製造から消費者に対する小売り直売、これは私はすべからく禁止すべきだと思う。そうせなければ生販三層の秩序を保つことは次第に困難になってくるのではないか。この点いかがでございますか。
  201. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 現在、直売型というのは、先ほど長官申しましたように、大部分はメーカーから小売り直売をしておるものでございます。昨年あたりから消費者直売をするという型がやや出てはきておりますけれども、それはかなり流通機能というのをみずから、あるいは消費者の人たちが行なわなければ、現実に物が消費者の手に渡らないというところがございます。商品の移動に際しまして、この流通機能をなくして円滑に商品が移るということはないわけでございますので、その点におきまして、流通を担当しますところの専門の業者の存在というのは非常に高く評価すべきものと思っております。私どもとしましては、消費者への直売が起こりましたからといって、特にこれを禁止するつもりはございませんけれども、それはまたそんなに大きなウエートにもならないというふうに見ております。また若干地方におきましても、現在の消費者直売と違った形における直売という型もございますので、これを禁止すれば直ちにそういう零細な地場に売っておるという人たちの販売先も失うということでございますので、これを直ちに禁止するというつもりはございません。
  202. 春日一幸

    ○春日委員 私は、産業分野の確保ということは経済秩序を確保する上において、わけても流通秩序を確保する上において、これは一個の要件であると考えております。いま部長が言われたように、画一的に禁止してしまえというわけじゃございません。全国十数万の小売り業者がその法律に基づいて、秩序に即してその事業をやろうとすればやっていける体制の確保、やろうとしてもやれなくなるそのような妨害条件の排除、こういうことは行政措置として当然講ぜられてしかるべき事柄であろうと思うのです。だから、後段に言われたような、地方の醸造家が実質的に小売りをする、またそれを禁止したらその醸造それ自体が成り立たなくなるというケースも実態としてありましょう。そういうような場合は、販売地域を限定するとか小売りを行なう石数を制限するとか、そのような既存の事業そのものを脅かさない限界において調整をはかり得ると思うのです。  昨年度のあの東駒を、これは酒団法上問題はないというようなことで——たまたまそれがああいうような刑事事件を誘発してまいりましたので、東駒自体はその行為を停止せざるを得なくなったけれども、あれをやって差しつかえないというならばというので、今度は全国規模でああいうような直売形態一つの流通ルートとして、あるいは流通組織として新しく踏み出そうといたしておる。去年一件見のがしただけでことし六件誘発した。ことし六件誘発をして来年これが三百件になったらどうなる。さすれば、全国十二万人の小売り業者というものは、そこに二割、三割、四割という中間手数料がなくなる。したがって、そういうような組織でやっていけば、製造直売ということは差しつかえないとあなたは断じておるけれども、その理論の根拠となるものはたいしたことはあるまいということなんだが、もしそれがたいしたことになったらどうするかということですよ。去年一件でしかなかったものがことし六件になる。しかもそれが地域的なものでしかなかったものが全国的な規模に拡大される。グレシャムの法則というものがある。悪貨は良貨を駆逐する。そういうようなえげつないやり方でもうかるものならば、みんながもうけざるを得なくなる。これはコマーシャリストの習性なんですよ。これは人情の機微だけれども……。ここまで説かなければ諸君はわからぬとは慨嘆にたえないな。だから、私が指摘するのは、去年一件のものが六件になった。去年のときには長官も、これは一件だからたいしたことはないと言っておられたけれども、はたせるかな六件になった。六件が六百件になったらどうするかということなんだ。だから、そういうことにならないように、行政というものは先見の明あって、そういうようなことに至らざるよう、事前措置、予防措置というものをとることが、現実の問題として私は必要だと思うのです。  私は、小売り業者を過保護しようというのではございません。製造の免許を受けた者は製造で一生懸命に事業に精進しろ。そして小売り業者小売り業者としてやればやっていける体制を確立してやろう。やろうとしてもやれなくなるような場面があるとしたら、そういう部分は法律によって排除してやろう。これが行政の極意じゃありませんか。その点についても、いまここであなた方が、やる意思はありませんなんと言うことは僭越しごくだ。あなたは間税部長だけれども、あなたのごときは、きょう間税部長で、あしたはどこに行くかわかったものではない。そんな者が国家の政策について断定的な見解を述べることは僭越しごくである。と言うたところで何ともしかたがない。長官、この問題はやはり深刻な問題としてお考えになるべきであると思うが、いかがですか。
  203. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この問題、けさの新聞で見まして、私ども、はたして協同組合ができたものかどうか、まだ実際を把握しておりません。新聞で見ますと、この中には東駒事件に関連して検挙されている業者まで入っておりまして——実はそういう動きがあることはだいぶ前からわかっておりました。その後検挙が行なわれているということもございますので、あの発表がいかなる意味を持つか、若干疑問があるとは思いますけれども、確かにふえてきたことも事実であります。これが小売り業、いわゆる生坂三層に悪影響を及ぼすということも御指摘のとおりだと思います。したがいまして、私どもも実は東駒以来、いかなる方法によってこれを是正するかという点はいろいろと検討もいたしましたが、御指摘のように、法律の改正というものを待たないとなかなか問題が解決しない。現在免許につきましては地域の制限ができないことになっております。それらを考えましてこれについての検討を実はいたしておりますけれども、同時に、御承知のように現在小売り業につきましては、ある方面からは逆に免許自体について疑問を呈する向きもございます。それらを勘案いたしますと、相当慎重に事を運ばないと問題が大きくなるということも考えまして、きわめて慎重裏にこれについては検討を加えたいと思います。また御専門の御意見も十分に承りながら検討いたしたいと思います。
  204. 春日一幸

    ○春日委員 この問題は法律の改正を必要とすることはわかりますけれども、大蔵省もたまにはいい法律もつくっていただきたいと思う、われわれが合点できるような法律を。いまあなたがおっしゃいました問題についても、ただ画一的に、角をためて牛を殺すというようなことをやれというのじゃない。たとえば川口の醸造元については川口かいわいに小売り直売消費直売ができるように、あるいはその分量はこれこれというふうに法律で限定していけば、他の小売り業者について被害は及ばないし、またその醸造元もやっていける。そのような法律の改正については、客観的に見て合理性、妥当性があれば、国会は満場一致で承認を得ることができると思うのです。何も法律なんというものは私はそうむずかしいことはないと思う。ただ、そのときには醸造元のいろいろな抵抗があると思うのです。そういうような抵抗をどう排除して、公正なる行政執行、多数者の利益のためにどう措置をとっていくかという、ここがポイントになると思うのです。この点前向きの形で御検討願いたいと思います。  それから第三点は、彼ら小売り業者がかねがね要求しておりまする例の団体交渉権といいますか、基準価格が廃止されますときに、酒販業界から、醸造元に対しての団体交渉権を法上付与させるようにという陳情が、この国会にも、どうせ役所のほうにもなされたと思うのだけれども、私は、このような民主経済のもとにおいては、そのような団体交渉が円滑に行なわれることによって、合理的な近代的な取引が促進できるように、そういうような場面は設けてやることが適切だと思うが、この点についてどのような検討がなされておりますか。
  205. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 現在の酒団法という考え方は、よく御承知のように、小売り、製造、卸の三者がお互いに協調してやっていくという形をとっておりますし、いま御指摘がございました団体交渉権が付与されておりますところの中小企業団体法のほうは、中小企業が団結して大企業との間でうまく調整していく道を開いておるわけでございまして、若干酒団法の組み立て方と中小企業団体法の組み立て方にニュアンスの相違があるように思います。現在まではとにかくそういうことでうまくいっていたわけでございますが、自由化の方向が進んでまいりました場合に、はたして現在の酒団法だけの行き方でうまくいくかどうかということは、まさに御指摘のような問題があるわけでございます。私どもといたしましては、自由化に伴いまして、製造のみならず卸、小売り段階にどのような変化がくるかということをもう少し見ました上で、御指摘のようなことも一つの案として、いずれの時期かには考えなければならぬのではないかという気持ちも持っておりますけれども、現段階ではどうも、中小企業団体法と酒団法との組み立てが変わっておりますことと、その後まだいろいろ切りかえ中でございますことを考えますと、いま直ちにここでそういうふうな方向にいくというふうに申し上げるのは早いのではないかと思います。
  206. 春日一幸

    ○春日委員 どうもあなた方は頭がかたいですね。私が申し上げるのは、すべての団体には団体交渉権がございますよ。労働組合にもあるしあるいは団体法にもあるし、その他にもみんな団体交渉権が法上権利として認められておるのです。認められていないのはこれだけです。おかしいということなんですよ。しかもその必要がなければ私はこのような意見を出さない。ところがその製造免許を受けておる者が小売りの分野を荒らすというか、進出するというか、そういうことによっていろいろと相剋摩擦を生じておる。そのような相剋摩擦は法律によって規制することも一つの手段ではあるけれども、同時にまた団体交渉で、私たちはあなた方のつくった品物を売っているんだから、私たちが売れなくなるようなことについては差し控えてほしいなというようなことを、業者間同士自主的に話し合うということも、問題解決をはかる一つのよすがにもなってまいるであろう。その他の問題もあろう。いま審議官御答弁のように、いま画期的な変化が業界にもたらされようといたしておる。自主流通米ということですね。そういうことになれば、いよいよもって団体交渉権というものは、当然の権利として、生販三者の円満なる提携をはかっていくという意味において、付与しても何も弊害はないと私は思う。ただ問題は、そういう団体交渉権が設定されれば、それに付随して、交渉ととのわざる場合における調停だとかなんとかいうことで、すなわち第三者の介入あるいは国家の介入、こういうことによって公正をはかっていくという新しい道も開けてくると思う。私は百利あって一害ないと思う。この点について長官いかがでございますか。
  207. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま高木審議官の申しましたように、酒類業団体法予てのものの形が、御承知のように中小企業団体法とは違いまして、同種の酒類業を営む者はすべて同一の組合に入るという形で組まれておりますので、中小企業、大企業とも差別なく、すべて一つの組合に入るという体制になっております。そういう体制のものに一般的な組合と同様な団体交渉権を与えるということが、それで取引条件等が決定されるといった場合に、はたして独禁法のたてまえから妥当なのかどうかといったような疑問があったために、御承知のとおり酒団法と中小企業団体法の調整をいたしました際にこの条文が抜けたわけなんです。その点、もう少しふっ切って考えなければならぬ点があるかと思いますけれども、いまの、事業を行なわない調整組合としての性格だけ持っております、しかも同一種類については大中小を問わず参加するというこの酒類業組合法の組合の性格から申しまして、直ちにこれを導入するということが可能かどうか、さらに検討を要する問題ではなかろうかと実は考えておるわけでございます。さらにひとつ検討をさしていただきたい、かように考えております。
  208. 春日一幸

    ○春日委員 公取委員長、何か御意見ございませんか。
  209. 谷村裕

    ○谷村政府委員 別に私の行動を目して御質問になったんじゃないと思います。  ただいま吉國長官から答えましたような線で——私も実は組織法学についてうといのでありますけれども、少なくとも酒団法が考えている一つの団体というものは、中小企業団体法でございますか、こういうものが考えている団体とは、似たところもございますが、いま説明があったように違う点もあるのではないかと思います。しかしこの点は別といたしまして、先ほど来いろいろ伺っておりまして——私が聞いておって何も申しませんと、公取委員長は春日委員の言われたことをそのまま了承しておるのかというふうに思われるとなにでございますが、程度の問題はございましょうけれども、いろいろな意味小売り業が過保護に流れることのないようにいくのでないと、ある程度競争条件というものが持っていかれるように考えるのでないといけない。この辺のかね合いがどの辺がよろしいかという問題はございましょうけれども、春日委員の言われるような意味において、たとえば直売は何とか制限しなければならないとか、あるいは小売り業の分野を何らかの形で確保してやらなければならぬというような話が、あまりにまた行き過ぎた形でいわれますと、これはまた有効な競争条件にならないという意味において、私どもとしてはやはり問題ではないか、かように大演説を承っておりました。
  210. 春日一幸

    ○春日委員 私は別に過保護を与えて値段を高くせよというようなことを言っておるわけではございません。何といってもわが国は立憲法治国である。だから、既存の法律というものは尊重されなければならぬ、順守されなければならぬ。中小企業基本法というものは現存しておるのでございます。中小企業の安定と振興をはかるということが一個の国家目的になっておるのですよ。だから私は、彼らがやればやっていける体制を確保するために必要なる行政措置、ときには立法措置をとれと言っておるにとどまっておるのでございますから、その点誤解のないように。だから、この団体交渉権といえども、なぜ私がそのような権限を酒販組合に与えるべきであるというかといえば、あなたのほうのこの清酒製造業の安定に関する立法理由を読んでみますと、全業者が三千五百八十二軒の中で、零細業者が実に全体の七三・一%である。製造業者それ自体も中小企業であり、いわんやその小売り業者は全的に中小企業である。だからそういうものがやればやっていける体制を確保するためには、団体法はどうしたら中小企業の安定と振興をはかり得るかというこの立場に立ってつぶさに検討した結果、そのためには国が交渉権を付与するということが必要である、こういうことであのような条文の設定が行なわれておるのである。これに比べて、酒団法はずっと昔に制定されたのでしょう。言うなればこんなものは太政官官制みたいなもんじゃないのかな。比較にならぬほどこれはオールドミスです、実際。今日的立法では、団体交渉権が付与されないような組織法はどこにもございません。しかも団体法では、中小企業の安定と振興のために云々と、あんなにもたくさん条章が設定されておる。だからそういうものを付与してくださいということを業者が要請しておる。にもかかわらずあなた方はそれをあえて拒否しておる。不当な態度であるということを私は指摘しておるのですよ。たまたま長官が、前向きの形でこれについて検討したいと言われた以上は、公取委員長は何も言うことないじゃないか、実際の話。  いずれにしても、論ずれば果てしもないことでございますが、実際この法律は、以上申し上げましたように、一つは独禁法の立場から、一つは憲法の基本的人権あるいは営業自由の原則というような立場から、多くの疑義が随所にある。だからこういう問題については、採決される段階において、法条の修正なり附帯決議なり、適切な措置をとって、後日に問題を残すことのありませぬよう、たとえば昨年ずさんな審議によって通しましたあの理美容師法が、あのような管理美容師の設置をめぐって、いま違憲訴訟があちらこちらで何百件と続発している事態にかんがみて、われわれはそのような失敗を今回ここに繰り返すことのないよう、万全の措置を払われることを強く要望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  211. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、来たる五月六日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時十四分散会