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1970-04-10 第63回国会 衆議院 大蔵委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十日(金曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 上村千一郎君 理事 藤井 勝志君    理事 村上信二郎君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君 理事 竹本 孫一君       木部 佳昭君    木村武千代君       坂元 親男君    高橋清一郎君       地崎宇三郎君    登坂重次郎君       中島源太郎君    丹羽 久章君       原田  憲君    福田 繁芳君       坊  秀男君    松本 十郎君       森  美秀君    吉田 重延君       吉田  実君    阿部 助哉君       平林  剛君    堀  昌雄君       美濃 政市君    貝沼 次郎君       伏木 和雄君    二見 伸明君       春日 一幸君    小林 政子君  出席政府委員         総理府統計局長 岡部 秀一君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主税局長 細見  卓君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局参事官 小川としやす君         参  考  人         (税制調査会会         長)      東畑 精一君         参  考  人         (全国銀行協         会         連合会会長)  横田  郁君         参  考  人         (日本証券業協         会連合会会長) 瀬川美能留君         参  考  人         (国学院大学経         済学部教授)  正木 千冬君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二一号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三四号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五七号)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  本日は、まず東畑税制調査会長参考人として御出席になっております。  東畑参考人には、御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございました。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 東畑先生も非常にお忙しい中を御出席いただきましてほんとうにありがとうございます。非常に時間が限られておりますので、率直に一、二点御質問を申し上げますので、率直な御所見をお聞かせいただきたいと思うわけであります。  最初に、地方税、特に住民税の問題でございますが、所得税においては課税最低限も平年度百三万というところまでいきました。初年度、四十五年度で百万一千六百五十円ということなんですが、その間、所得税課税最低限地方税住民税課税最低限というものの間に約三十万の開き乖離がある。この問題がどうしても私ども理解ができないわけでございます。もちろん住民税というものが、応益負担という思想がずっとかなり強く支配する税であるということも承知をいたしておりますが、それにいたしましても、たとえば昭和四十四年を通じての全国勤労者世帯平均消費支出を見ましても、四十四年でもう八十七万円をこえているという数字がきちっと出ているわけですね。こういうようなことから見ましても、今日この課税最低限が、改正案によりましても平年度で七十二万九千円ということでは、いかにもこれは少な過ぎるのじゃないか。いわゆる税の基本原則である最低生活費には課税せず——もちろん最低生活費がこの平均家計で示されているものではないと思いますけれども全国勤労者世帯平均でありますから、それほどの大きな開きは今日の経済社会の中ではあり得ない。ほぼこの八十七万に近いものがやはり最低生活費であるだろうと私ども考えるわけです。それから見ましても、やはり最低生活費にまで住民税が食い込む、地方税課税最低限の水準が最低生活を侵しているというところにあるのではないか、そういう気がしてならぬわけでありますが、この点についての先生の御所見をまずお伺いを申し上げたいと思います。
  4. 東畑精一

    東畑参考人 お話しの点はもっともな点が非常に多いと思っております。やはり、課税最低限と申しますか、標準生活程度と申しますか、それになるべく合わしていくというのが本来のたてまえかと思っております。  所得税減税も、大体連年最低額を十万円ほどずつ上げてきたわけです。それと並行いたしまして地方税最低減を、住民税でありますが、やはり上げてきておるわけでありますが、なかなか追っつかない。ただ、住民税たてまえと所得税たてまえとが私はだいぶ違っておると思うのです。これを同一に論ずることはできないとは思いますけれども、おっしゃるような点は十分考慮しなければならない。これは、他方地方財政状況ともにらみ合わせなければならぬ点がございます。しかし、お話しになりました論点は、一つの大きな標準になることは確かだと思います。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 先生地方財政は、今日財政的な面を見れば、国にむしろ金を貸すという、財源を国にむしろ一時的に貸しをつくるという状況にあるわけでございますね。やはり地方税といえども、なるほどこれは応益、利益を受けるものは、そう所得の多寡によって違うわけのものでもないだろうというような思想も根底にあるということで、国の所得税よりはそういう面で若干の特殊性というものがあっていいということは私ども承知の上なんでございますが、先ほど申し上げたような平均世帯、これは全国勤労者世帯平均でございますから、最低生活というものを大きく上回ったものが平均値として八十七万円という形で、しかもこれは四人家族でございます。それが現実に八十七万円だということから見ましても、夫婦子供三人という、今日あまりない標準世帯、これでなおかつ地方住民税課税最低限は七十二万九千円である。これはあまりにも乖離がはなはだしいではないか。これはもう最低生活費に食い込んだ課税であるということをいわざるを得ないわけなんです。  ところで、きのう総理に対して答申のありました経済社会発展計画の中で、この税の部分をちょっと見てみますと、特に地方税について何行か触れられておるんですが、「当面、固定資産税等負担適正化に努力するとともに、さらには国、地方を通ずる行財政全般の再検討の一環として見直しを行なう。」こういうようなことなんであります。当面、固定資産税も当然でございますが、住民税のいわゆる課税最低限所得税との間に三十万という、これほどの乖離というものは不当ではないかという問題点については、経済社会発展計画は、新しいものには一言も触れられていないというようなこともありまして、この辺についての将来の展望というものを、先生のお考えを含めて、私はこう考える、地方税住民税課税最低限所得税課税最低限との差をもう少し、少なくとも詰めるというお考えがございますかどうか、このことを、率直にひとつ御意見をお述べいただきたいと思うわけであります。
  6. 東畑精一

    東畑参考人 税制調査会としては、住民税最低限の引き上げということは今後もやる、実はこういう答申……(広瀬(秀)委員「出し得る問題ですよ。」と呼ぶ)それが片一方のほうも——片一方のほうと申しますのは所得税のほうも、まあ他方に走るといいますか、差はもとのままであっても、両方とも最低限を上げていくということは御趣旨にも合っているかと思います。必ずしも差を縮めなければならないというわけのものでもないと思いまするけれども、われわれとしましては、住民税最低限を今後も引き上げるように努力する、こういうことになっております。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間がありませんので、私の質問はこれで終わります。  どうぞひとつ御健闘をお願いいたします。
  8. 毛利松平

    毛利委員長 堀君。
  9. 堀昌雄

    堀委員 今度の税制改正にあたりまして、税制調査会皆さんのいろいろなお骨折りなり、大蔵省事務当局法人税なり利子・配当所得についてたいへん前向きの作業をしてまいりましたことに、最初に敬意を表したいと思うのであります。残念ながら、事務当局なり調査会皆さんのいろいろなお考えが自由民主党によってねじ曲げられて、今日の提案になりましたことはまことに遺憾でございます。しかし、今後も、国民の願う、あるべき税制に向かって、ひとつ東畑会長を先頭に、ますます御研さんをお願いいたしたい、かようにお願いをいたしたいと思うのであります。  今日、日本がたいへんな成長段階にまいっておりますときに、これから一九七〇年ということでございますし、さらに税制調査会におかれましても、長期税制答申が出されましたうち、所得税その他についてはかなり実現を見てまいりまして、新しい段階税制の問題も入ってまいると私は思うのでございます。そこで、最初に少し私の所見を申し上げて、今後のあるべき税制の姿について、東畑先生から承りたいと思うのであります。  私は、いま、日本の現状を見ておりますと、政治的には民主主義は徹底をいたしておりますから、最近ちょっと問題は起きておりますけれども、一応言論、文書の問題あるいは集会の自由等についても、部分的に不十分なものがありながらも、まずまあまあのところにきているのではないかと思います。ところが、経済的に民主主義が行なわれておるかと申しますと、この世界はもうちっとも民主化されていないと思うのであります。私どもは立場上、社会党でありますから、将来の姿について社会主義というものを志向しておりますけれども、これは単なる手段でありまして、われわれは、国民生活が自由で、豊かで、公平で、平等な社会、それは政治的にも経済的にもそのような社会をつくるための一つ手段として考えておるわけでありますが、特に私は、税制の中における民主主義の問題、これを一九七〇年代の税制一つの基本的な土台に据えていただきたいということをお願いしたいわけであります。  経済的な税制上の民主主義ということを申し上げておりますのは、要するに、だんだんとこういう経済成長に伴って、所得格差というものは一面狭まっておるように見えますが、また異常な開きをもたらしておるわけであります。勤労所得だけによるところのその開きというものはそんなに差があるものではありませんけれども、やはり資産的な所得からくるものが相当加速的に増加をいたしますから、これらの問題については十分配慮をしながら、公平の原則を守っていかなければならない問題があると思うのであります。  もう一つの問題は、今日、富める者の家族なり子供は、きわめて恵まれた条件で伸びていけるわけでありますけれども、依然として貧しい人の子弟は、あらゆる困難に耐えながら、あるいは中学卒業と同時に、いま高校、大学への進学があたかも国民の当然の権利のようになっておるときに、就職をしておるという人たちもあるわけであります。ここらの問題を含めて、税制上民主的に、これらの一人一人の者が少なくとも基本線でスタートには一列に並べるような条件をつくるということは、きわめて重要な問題ではないかと考えております。  そこで、税制上の問題としては、私は少なくとも水平移動の問題についてはあまり重要に問題を考える必要はないけれども垂直的な移動にはこれはかなりきびしい考え方で臨んでいいのではないか。特に垂直移動の場合には、そういう勤労から得られた資産を引き継ぐというよりも、資産所得を引き継ぐということが私は特に大きな問題になろうかと思うのでありますので、これは今回予算委員会でも総理との間に申し上げてきたわけでありますが、水平移動と申しますのは、夫が妻に贈与をしたり、相続をする分については、これはやがてはまた妻はその子供相続をするときが来るわけでありますから、この垂直のときには、それが夫からであれ妻からであれ、これはひとつきびしい課税によって、少なくとも経済民主主義というものの基盤をひとつ確立をするような方向でお考えをいただきたい。そのかわりできるだけ、夫から妻へのものは、同じ世帯のものは協力をしてその段階に来たということで、また夫が死亡した後、妻の残存する時間というものはそれほど長期にわたるものではありませんから、一般的には妻と夫の差は十年以内ぐらいでありますので、その残された余生についてのその妻の問題は、これは十分配慮すべきであるということで、実は予算委員会でも論議をしてまいりました。  そこで、いまの基本的な考えでございますね、こういう問題について、会長は今後の七〇年代の税制についてのあるべき姿ということで、特に重要な問題点についてお触れをいただきたいと思うのであります。
  10. 東畑精一

    東畑参考人 堀さんのお話に、抽象的にいいまして、特に反論するという考えはございません。むしろ同調できると思っておるのであります。かりに一つ加える点があるとすれば、つまり税源培養とでも申しますか、この問題ということと一緒に考慮する必要があるのではないか。ただ平面的に今日だけについての税の負担感負担の公平ということは私は非常に大事なことだと思いますが、そのことと同時にもう一つ生かしていきたいのは、やはり経済発展の原動力になる資本の蓄積と申しますか、これは将来のさらに税源になるものでございます。この培養ということとこれをひとつ十分うまく組み合わせていくというのが、国民の納得を得る所得税関係根本じゃないか、こう思っております。
  11. 堀昌雄

    堀委員 いまの先生の御指摘の、税源と申しますより、私は政府財政に対する税源というかっこうで問題を考えますときには、この間私、福田大蔵大臣とも少し論議をいたしましたけれども日本は御承知のように民間資本は非常に充実をしてまいりましたけれども社会資本の立ちおくれが非常に顕著でございます。どうしてもこの社会資本充実をしなければならない、これが財政上、財源上非常に大きな問題でございます。現在の福田大蔵大臣考え方は、これを少なくとも税収によってまかなっていこうという考えのようでありますが、私はちょっとその点は福田さんと意見が違うわけであります。私は、特に公共投資の中で長期的に有効に使えるもの、道路でございますとか、あるいは地下鉄であるとか、港湾その他長期的に国民がその恵沢に浴するものは、これは私は、一世代税収によって全部これを処理しなければならぬ問題ではないのではないか。当然二世代なり三世代が均分してこの恩恵を受けるわけでありますから、その何世代かにわたってこれについて考えていけばいいのではないか。そうすれば国債の問題、というのは国民ほんとうに買ってくれる国債になっておれば、国民から金を借りる形でこの公共投資をやることは、長期的に考えた場合に、短期的に税源だけに問題を求めるということよりも望ましい姿ではないかという問題を、実は大蔵大臣との間に論議をいたしておるわけであります。その点、当代の者がやはり負担しなければならないものもございますが、要するに五十年、百年で償却すればいいものを、十五年、二十年で償却をしてしまおうといういまの発想の中には、私は過重な税負担当代のものにかけ過ぎる問題もあろうかと思いますので、この点はより長期的な観点に立って、財政における財源というもののあり方を、やはり国債発行というものの積極的な側面——これが発行されたときはそういう積極的な側面のほうが強調されておったのでありますが、今日ではどうも逆になってきておりまして、ここは私は非常に問題があると思っておるわけであります。  そこはそこまでにいたしまして、次に法人税の問題でございますけれども、これはまだ検討段階ということで残されておると思うのでありますが、今日以後、その資本経営分離というものは、大企業の場合にはますます前に進みつつあるというのがこの七〇年代の傾向ではないかと思うのであります。もちろんしかし反面、中小企業がかなり広く広がってまいりますから、分離をしていないものも確かにございます。税制調査会の御論議の中にありますように、この問題については私はやはり二つに考える必要があるのではないか。要するに経営資本分離をされるものと、ごく小さい、経営分離が困難なものについては、画一的な法人税制処理というようなことはやはり実情に沿わない点があろうかと思うのであります。私は諸外国の法人税の姿を見ながら感じるのでありますが、日本の、特に民間のこれからの資本蓄積なり、あらゆるいろいろな問題を考えてみますときには、どうしてもやはり現在の法人税制が基本的な改正を必要としておるのではないか。こまかいいろいろな小手先の手段によって処理をしていくのではなくて、法人税制の抜本的な改正をすることなくしては、私は日本企業財務比率なりその他を正常な状態に置くことはむずかしいのではないか、こういう感じがいたしておりますが、この法人税制についてはどのようにお考えになりますか、伺いたいと思います。
  12. 東畑精一

    東畑参考人 非常に個人的な話になって恐縮なんですが、私が税制調査会に関係いたしましてから十年近くになるかと思います。何も知らずに、実はいまもあまり知りませんが、税調委員になったのであります。この十年間を通じて、法人税議論というものはほとんど毎回の税制調査会で盛んに行なわれたのであります。私もそれでだいぶ勉強にもなったわけでありますが、その議論はどうも、初めの一年間は新しかったのです。あとのほうは同じような議論の繰り返しなんでありまして、結局決着しないということなんであります。そのために、事法人税に関しますと自信のあることはなかなか、これは個人的な意味においても私は恥ずかしい話なんですが、言えないというわけなんでして、法人税性質というもので一番やっかいなものは、たとえば法人税というものは転嫁するかどうか、これがおそらく一番やっかいな問題だと思いますが、これにつきましてどうも世界的にもあまりはっきりした実態調査ということもない、人を納得させるような結果は出ていない、こういうことになっております。非常に宙に迷っておるわけなんであります。日本の場合におきましても、たとえばシャウプ考え方というものは、日本の過去の法人税とは違った考え方になっておりますけれども、このシャウプ考え方もずいぶんひん曲げられておるところがたくさんありまして、少なくとも原形というものは残っておる、こういうことになっておる。どうこれを持っていくかということが、単に税制調査会のみならず、日本の政界、官界、学界において、私はもっと根本的に法人というものの研究をしていただきたい、特に株式会社について、という希望を非常に持っておる。私自身の小さい考え方によりますと、多少いま堀さんがおっしゃったようなことと近いんじゃないかと思っております。つまり法人というのは一本であるというこの考え方ですね。新日本製鉄法人であれば、われわれのところのある八百屋さんの法人というものも同じ法人という考え方では、どうも問題をタックすることはできないのであります。どこでその境を切るかは知りませんが、非常に性質の違うものを二つ分けて税の問題を考えていくのが、一つの突破口でないかと実は私は個人的に思っております。  ついでに申しますが、これは先ほどの地方税お話をちょっと聞いたときにも申し上げたいと思ったのでありますが、地方税につきましても、国税、地方税という考え方で、地方税あるいは市町村税となりますと、大阪も市なら私の郷里の人口三千か四千の町も同じ市町村となっております。これにも非常な問題がある。したがって、住民税ということは共通の問題になってくるのですね。それを全く経済上の性格の違うような市町村なり府県というものを一本に考えるということにも問題がある。それはちょうど法人につきましても、株式会社になって株が市場に上場されているというのと、そうでないといいますか、これも一緒に扱うということには非常な問題がある。これは単に法人税の税率を変えるということだけでは私は解けないんじゃないか、私は個人的にはいまこういうように思っております。  なお、今後法人税問題につきましては、何らかの結着を得たいというのが私の念願であります。
  13. 堀昌雄

    堀委員 おっしゃりますように私どもも拝見しておるわけでありますが、もう私は論議を続ければ切りがないのでありまして、どっかで、第一段階区切りでも区切りをつけることがいま法人税では求められているのではないか、私はこう考えますので、経済実態に応じた税制、これがいま先生のおっしゃったことだと思います。私ども実態を無視して、単に理論だけの上で画一的な処理ができるような段階にもうないと思っておりますので、その点は特に法人税については勇気を持って処理していただきたいと思います。  最後に、これらの問題の中で、特に私、この間の予算委員会総理との間で確認をさしていただきましたけれども、現在の日本一つの非常な大きなゆがみの中に、法人交際費の問題がございます。総理も、この交際費については根っこから一ペん洗い直そうということを約束をしていただきました。どうかひとつ、これからの税制調査会の中で、一体いまの二百万円がいいのか、千分の二・五というのがいいのか、四百万円がいいかということについて、ひとつ根本から交際費のあるべき姿というものを求めていただきたいと思います。一九六五年には、御承知のように、アメリカケネディ教書に基づく大幅な交際費課税改正を行なって、きびしく処置をしておりますし、イギリスもやはり一九六五年の四月にたいへんきびしい処置をいたしておりますのは、もう先生も御承知のとおりであろうと思いますので、アメリカイギリスのような先進諸国がこうなっております今日でもありますから、私は、日本交際費あり方は、ひとつ土台から白紙に戻して、国民の全体の負担の公平との上でお考えを願いたいということを特にひとつ申し上げておきたいと思うのであります。  それからもう一つ、これからの所得税減税その他のものの考え方でございますけれども、私はこれまでのように、ただ単に課税最低限だけを上げていくということでは、ものの考え方の上で少しも進歩がないのではないか。やはり私はこの際、いつからそれを実施するかということは順次いろいろな調整を行ないながらやらなければならない問題でありますけれども、やはりアメリカ、フランス、西ドイツが現在とっております所得税についての二分二乗方式の問題、これは私はやはり夫婦共有財産制という一つ思想の上の確立が必要な点もあると思いますけれども、これが私は今後の所得税減税についての一つの重要な基盤として取り上げていただく段階に来ているのではないのか。それは一年、二年のうちにできる問題ではないかもわかりません。いろいろな税制上の整備も整えながら、全体として処理をしなければならない問題だとは思いますけれども、しかし所得税減税についての重要な基盤として、この二分二乗の問題をお考えいただく段階に来たというふうに私は判断をいたしておるのでありますが、以上、交際費課税の抜本的な改正の問題と、所得税法における二分二乗について、ひとつこれから準備を進めながら、それを日本所得税法の中に取り入れていくというかまえ方の問題について、先生のお考えを承りたいと思います。
  14. 東畑精一

    東畑参考人 第一点の交際費の問題でありますが、これはわれわれのところでも相当検討しておりまして、特別措置というか逆特別措置といいますか、重くする特別措置になっておりますが、常に出てくる議論であります。今後もうんと検討したいと思っております。ただこれは必ずしも、実情、実態がどうなっているかということは多少わからぬこともあると思いますが、飲み食いが好きなんですね。しかし必ずしも飲み食いだけじゃなしに、あれはたしか四百万円でございましたかプラス、あれは中小企業なんかにとっては非常にありがたい交際費経費論ということになっております。この場合も、やはり大企業中小企業との間には相当区別してしかるべき問題じゃないかと思っております。  それから第二点につきましては、おっしゃるとおりこれは日本家族制度といいますか、一体世帯でものを考えていくのか個人で考えていくのかという問題と関連いたしまして、考え方によりましては非常に重要な問題じゃないかと思います。十分検討をいたしたいと思います。
  15. 堀昌雄

    堀委員 御承知のように、かつて私ども家族制度ということで、世帯構成が五人以上でございましたものが、これも予算委員会総理との間に論議をいたしまして確認をしていただきましたけれども、現在大蔵省がとっております五人標準世帯というのは、日本の各種政府統計の中を見ましてありませんで、全部が三人台になっておりますので、このことが一つの問題でありますが、その三人台になってきたということは、これは核家族現象と申しますか、いま先生のおっしゃったように大きな世帯から小さな世帯へという移動が非常に明らかになってきておる一つの証拠でありますし、同時に妻の座の問題、水平移動の問題をかかえておりますのも、親と子の関係というものがかつての状態とは著しく変わってきておりまして、日本にもようやく個人主義的思想というものが、戦後の民主主義の導入とともに大幅にいま変わりつつある段階に来ておりますので、やはりそういう個人の生活の実態に合わせた税制というものになってまいらなければならないところに来ているのではないか。ですから、そういう意味では七〇年代のあるべき税制という問題、これはやはりもとへまた戻るのでありますけれども税制の上に民主主義がどれだけ確立をされるかどうかというところに帰着するのではないか。それは公平の原則であり、平等の原則であり、個人の尊重であり、不当な法人における恩典、不当な資産所得者に対する恩典を排除することによって、できるだけ税制の上でも民主主義確立していくということが私は特に重要だと思いますので、この点については特にひとつ税制調査会で今後の審議の中で取り入れていただくということをお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  16. 原田憲

    ○原田委員 関連して。いま堀さんの議論を私聞いたのですが、いまの現実の家族の数字ですね。税制上の論議をするときに、夫婦子供二人、こういう数字をもってしなければならないのではないか、こういうことを税制調査会検討しろということを意見として申し述べられておるのですが、私は以前やはり同じ問題をこの場で、これは松隈さんに問うべきことではないけれども意見として申し上げておきたいと言ったのは、標準家族というのは何をもっていうのか。ただ税の場合に、現在の家族数が夫婦子供二人というのが多いから、これをもって標準家族というのであるか。もっと大きくものを見て、日本の未来学者の中にはいろいろな、人工で子供をつくるというようなことを言い出す人もおりますけれども、現実のここ五十年、百年ということを見たら夫婦子供三人というものをもっていかなければ民族というものは滅びてしまう。だから標準家族という場合には、夫婦子供三人というのが標準家族じゃないか。そういうことを標準家族というと、まあだれでもわかりやすく五人なんだ、こういうふうにいうのがいいんじゃないか。税の場合でも標準家族といっているが、その標準家族というものは夫婦子供三人なんだ、こういうことがわかりやすいのではないか、こういうことを考えていくべきじゃないかということを申し上げておいたのですが、これらのことも勘案して税制調査会でよく御審議を願いたいということを、ひとつ申し上げておきます。
  17. 毛利松平

    毛利委員長 二見伸明君。
  18. 二見伸明

    ○二見委員 二、三東畑先生にお尋ねしたいと思います。  第一点は、法人税に景気調整としての機能があるかどうか、あるいは持たせるかどうかということでございますけれども、三十年代と四十年代との日本経済というものは大きく変わったと思います。三十年代の景気調整策は金融政策が大きなウエートを占めておりましたけれども、四十一年に公債が導入され、日本経済が国際化するにつれて、世界の景気の影響を非常に受けるようになった。外資の動きも活発になった。しかも国際収支は黒字基調である。こういうように日本経済が質的な変化を遂げた現在、いままでのように金融一本の景気調整策ではだめなんだ。つまり、ポリシーミックスということがいわれておりますけれども、そういう点で、租税も景気に対して何らかの役割りを持つべきではないか。特に法人税が景気調整に対して一つの役割りを持つべきではないかという意見も聞いております。それに対して、すでに現在の法人税国民総生産に対する弾性値が、好況のときには非常に高くなり、不況のときには一応下回るというので、現在でもすでに法人税は景気調整としての役目を果たしているのだから、これ以上景気調整としての役目を負わせる必要はないんではないか、こういう意見もあるようでございますけれども先生としてはどのような御意見をお持ちでしょうか。
  19. 東畑精一

    東畑参考人 これも非常に実はやっかいな——やっかいといいますか、むずかしい問題で、法人性質に関連するかと思いますが、四十、四十一年に法人税二分と一分、一%ですか、下げたときは、やはり景気の低調になったのに対して調整するという意味が非常にあったと思います。今度はなかなか景気がいいんじゃないか、その意味では上げてもいいじゃないかという議論も非常に盛んになりましたが、ただ本年税調として出しました答申、たまたま今国会にもそれが法律として出ているようでありますが、これにつきましては、必ずしも景気調整というふうに考えぬ方もあったかもしれませんが、また最も大きいのは、財源獲得というにおいが非常に強うございます。所得税減税ということと関連さしたという点が多いと思います。しかし、一般抽象的な意味においては、私は税そのもの全体が、一体それだけの力があるかどうか知りませんが、直接、法人税というようなものにつきましては、多少景気というものに、景気調整することができるかできぬかわかりませんが、それに応じた考え方というものは必要ではないか。ただ、どうしても法律改正でありますから一年とかおくれてくるのです。そこに策として、はたして効果があるかどうかというのは、これは別問題です。
  20. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点お尋ねしますけれども、実は今度の新経済社会発展計画の中にも法人税について、法人税は「国際水準と比較して相対的に決して高い水準にあるとはいえず、」と、こういうふうに答申に出ております。ただ日本の国税に占める法人税所得税の割合を見てみますと、大体三〇%でもってほぼ均衡しているわけです。ところが諸外国、欧米を見てみますと、法人税のほうがかなり低くて所得税のほうが圧倒的に多い。こういう点から両方勘案してみた場合に、現在の日本法人税率、法人税というものが適正な水準にあるのかどうか。それはいろいろな経済情勢もありますし、一がいには言い切れないとは思いますけれども、そういう欧米との比較から考えてみて、現在の法人税というものは適正なのかどうか、あるいはもっと上げてもいいものかどうか。上げるといっても、これは中小企業にダイレクトに響くような上げ方ではまた大きな問題になってくることは当然ではございますけれども、そういう点では先生いかがでしょうか。
  21. 東畑精一

    東畑参考人 私は、外国法人税の比率が少ないとか——これはどの国も税制そのものが違っておりますので、単に比率でどうのということは言いにくいかと思います。ただ法人税でとれば、日本法人税は非常に割り安になっている、これは確かだと思います。これは日本の貿易問題などと関連してくるかと思いますが、固定して法人税をいまのほうがいいとか、あるいは下げたほうがいいとか、上げたほうがいいとかということは、抽象的には非常に言いにくい問題じゃないかと思います。やはり法人所得の情勢を考えて、上げるべきときはうんと上げる、下げるときは下げるというのが現実的な政策ではないか、こう思っております。
  22. 二見伸明

    ○二見委員 おことばを返すようでありますけれども法人税を上げるべきときは上げる、下げるべきときは下げるというのは、一番最初に私が質問申し上げた景気調整という、そういう機能をも考え合わせてということでございましょうか。
  23. 東畑精一

    東畑参考人 ええ、それを顧慮する、対応していくということでございます。
  24. 二見伸明

    ○二見委員 それから一点、現在の法人税資本上一億円以下で年収三百万円以下のところには軽減税率が適用されているわけであります。いわば二段階になっているわけです。欧米のほうは、イギリスあたりはたしか四五%の均一の税率だと思いましたけれども法人の見方にも関係してくるわけでありますけれども、大法人、あるいは大きな年収をあげられる法人ほど担税力があるのだ、こういう見方に立った場合には、ある程度の累進税率的な体制をつくることも可能なのかどうか。たとえば年収三百万円以下は何%、三百万円以上一千万円は何%、一千万円以上二千万円は何%、四段階あるいは五段階というような累進税率というものは、法人税の場合には考えられるのかどうか、その点はいかがでございましょうか。
  25. 東畑精一

    東畑参考人 現在累進税ということは言いにくいかもしれませんが、二段階になっておりますが、これを何段階かに分かてという議論もなかなか税制調査会ではございました。それが先ほど申したように、法人性質論に触れてこないという非常に形式的な議論なんでございます。そこに私は弱みがあるのじゃないかと思うのでございます。ですから、法人性質というものを、かりに先ほど申し上げましたように、二つに分かって考えたときに、あらためて考える問題ではないか、こう思っております。
  26. 二見伸明

    ○二見委員 最後にもう一点お尋ねいたしますけれども、新経済社会発展計画によりますと、租税負担率は五十年度水準二二・九、こういうふうに一応計画ではなっているわけです。一方租税政策としては住民税所得税は今後ともその軽減に努力する、こうなっておりますけれども、そうなりますと、租税政策としては、二二・九%というものをもし達成するためには、新たなる財源税源を求めなければならないだろうと思います。ここで提言されているのは、定率の負担を求める一般売り上げ税ないし付加価値税創設の適否について検討する、こういうことがうたわれているわけでありますけれども、そういう点あわせて考えて、二二・九%という租税負担率を達成するためにはどういう方向であるべきか。または間接税とのからみ合いから考えて、付加価値税あるいは一般売り上げ税というものの適否について検討するというこの計画について、先生のお考えはどうなのか、その点だけお尋ねして終わりたいと思うのです。
  27. 東畑精一

    東畑参考人 私、実はまだ社会発展計画ですか、読んでおりませんので何とも申し上げにくいのでありますが、一般的な私の考えから申しますと、やはり特に社会資本充実ということを考えると、租税負担率というのが現在は一八、九というようなところになっております。これは全体としては、だんだん所得もふえ国民生産もふえてくるとなれば、それこそ累進税的に考えて、それが二〇%なり二一%なり二二%になるということはやっていいことじゃないかと思います。どういう形でその負担率をふやしていくか、これはわれわれの持っている一番大きな問題じゃないかと思うのです。むしろこれは皆さんのほうからいいビジョンをひとつ出していただきたい、こう思っております。  実は率直に申しますが、これはよけいなことだとおしかりをこうむるかもしれませんが、私ども小さい頭で、なかなかいい考えも出てこない、少なくとも私はそうなんでありますが、国会におきましても、つまり国会が日本のビジョンをつくるところなんですから、と私は思っておるのです。皆さんからひとつそういうビジョンを出していただいて——どもは実は国会の論議というものを非常に綿密にいつもいつも研究しておりまして、なかなかいい議論もあるが、つまらぬものもあるな(笑声)こう考えておるのです。どうかそういう意味で、いいものをつくるためには皆さんからいいビジョンを出していただく、それをいかに具体化するかというのがわれわれの任務じゃないか、こういう一面が非常にあるのですね。特に皆さんにお願いしておきます。
  28. 二見伸明

    ○二見委員 どうもありがとうございました。
  29. 毛利松平

    毛利委員長 春日君。   〔「いいビジョンをやれよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  30. 春日一幸

    ○春日委員 それでは御期待にこたえて、すばらしいビジョンについて卓抜した意見を申し述べたいと思います。  問題は、この一点に集約をいたしたいと思うのでありますが、それは事業所得のうちの勤労部分に対する課税あり方についてということであります。(堀委員「古いな」と呼ぶ)この問題は、ただいま古いなという不規則発言がありますることほどさように、本委員会で論及されてまいりました。会長はつぶさに委員会の議事録を精査されておるとのことでございますから、すでに基礎的な意見については御承知をいただいておると思うのでございますが、そのような理論、かつはこれは単なるわれわれの頭ででっち上げた理屈ではなくして、関係業者の、そしてまた一部学者も強く提唱、強調されておるところでございます。このような筋の通った理論が本日に至るまでなお実現されていないということは、むしろこれは税制調査会の怠慢ではないかとすら私は痛感せざるを得ないのでございます。  このような認識の上に立って、以下私の所見を述べるのでありますが、ここに個人所得は結局は勤労所得資産所得、そうして実在するもう一つの分類は勤労所得資産所得の合算所得と称すべきか共同所得と称すべきか、第三のものがあると思うのでございます。ところが、それぞれについてはそれぞれの控除措置がとられております。勤労所得に対しましては現在は給与所得控除という名称が冠せられてはおりまするけれども、その実態勤労所得控除である。すなわちその所得を得るに必要なる経費として概算控除その他二、三の要件があるようではございまするけれども、その大筋のものは、その所得を得るに必要なる経費を概算しての基礎控除と見るべきであろう。  ここで問題となりまするのは、事業所得の中で、特に中小企業とか農水産業というようなものは、結局その個人の資産から発生する所得と、個人が勤労する対価として発生する所得との合算所得である。この実態については、これはもう事実関係として否定することができないと思う。だといたしますれば、その勤労所得から発生する部分について、その所得を得るに必要なる経費が実在するのであるから、したがって、その部分に対して経費の控除というものが設定されることは、税負担の公平の原則から判断をいたしますれば当然不可欠の条件であると思う。にもかかわらず、本日に至るまでそのことがいまだなされていない理由はまことに遺憾なことでございますが、このことは、いずれ税制調査会においてもしかじかの御検討が進められておると思いますが、このことが全国の関係当時者たちの強い要望であることにかんがみまして、いまどういう段階にあるのか、または税制調査会としての御意見はどのようなものであるのか、この際お聞かせをいただきたいと思います。
  31. 東畑精一

    東畑参考人 いま非常に興味あるといいますか、問題としてなかなかやかましい問題を御指摘になったのでありますが、税制調査会としても、つまり個人事業者のいわば勤労所得についての問題は非常に論議いたしておりまして、それで事業税につきましては控除の額をこの間、ことしの法律に出ていると思いますが引き上げる、こういうことになっております。所得税につきましては、その問題は一般経費という形の範疇に入って顧慮しておる、こういうことであります。
  32. 春日一幸

    ○春日委員 まあ先生は十年間この道に御精進願ってまいったのでありますが、ただいま御述懐がありましたように、もとはといえばずぶのしろうとであった、こういうことでございました。しかし十年間、わが国徴税行政のあり方について一意総合的な研究、御精進を賜わったのでございまするから、私は肝心なところはおおむね把握されていると御信頼を申し上げておるわけでございます。ところがこの問題については、ただいまの御答弁に徴するに、必ずしも精密なる御検討がなされてはいないというふうに承らざるを得ないのでございます。  私は、いま繰り返して申し上げまするが、大体現在の給与所得控除なる名称が新しく設定されましたのは、昭和二十八年でございます。私どもは、大ぼらを吹くわけではございませんが、ここにざっと二十年間、この問題と取り組んでおるのでございまするが、昭和二十八年に税制改正がされまするまでは、これはこの給与所得控除という名前ではございませんでした。勤労控除という名前であったと思うのでございます。ところが勤労控除という名前でこのような概算額の設定をいたしますると、勤労性の所得でありまするところの中小企業所得、あるいは農水産漁業所得に対しても勤労控除というものを何らかの方法で措置せなければならないという理論を誘発してくる。だからそのような理論の誘発を押えるというわけではないかもしれませんけれども、いずれにしても一線を画するという意味で、勤労控除という名称を給与所得控除という名称にことさらに変更せざるを得なかったのである。しかしその実態勤労控除であることに何ら変わりはないのである。だといたしますれば、そのような沿革に徴するに、これは勤労控除であるとするならば、勤労性の所得に対しては、租税公平の原則の原点に立てば、当然そういうような所得を得るに必要なる経費というものが実在する限り、それに向かって控除の設定を行なうことは当然であろうと思うわけでございます。  したがいまして、この問題についてはさて具体的にどうするかということになりますと、幾つかの手段、方法が構想されるわけでありますが、一つは、いま全国の事業者が強く要望しております、事業主の給与を経費として算入することを認めろという意見がある。あるいは中小企業所得のうち一定の限度以下のものは、その中のおよそ勤労の対価として発生したとおぼしき額を政策的に設定して、その分に対しては給与控除、これに見合う勤労控除を行なって、そうしてそのことは、それが勤労所得である限り、事業税にそのまま反映するのでございますね。中小企業者に事業税を全廃しろという声の高いことは御承知のとおりです。ところがある一定のものが勤労所得であるという法的な措置がとられれば、その額はそのまま事業税の非課税対象になってまいるわけでございまして、政策的な効果やあるいは民主税制において国民世論の要求というものは大きくここに解決、実現を見るわけである。私は、いろいろ旗方法があるが、いま申し上げましたような事業主の給与を損金算入するということを認めるか、あるいはそこにいきなりいけないとするならば、その所得の中の一定額を、勤労の対価として発生する勤労所得としてこれを政治的に政策的に設定するか、何らかの必要があると思う。それは単なる政策論ばかりでなしに、徴税理論、公平の原則からいっても、いまこそこの問題の解決をはからなければならないぎりぎりの段階であると思うが、この点についての御所見はいかがでありますか。
  33. 東畑精一

    東畑参考人 春日さんのお話は、税調としても相当議論をいたしました。私、これは多少個人的になりますけれども意見として、一体事業をやっている人がどういう性格のものであるか、この問題になってくると思う。私はやはり、農民にしろ、普通の個人的事業主は産業家というものに考えたい、またそういうふうに培養していく必要があるんじゃないか、こういう考えを持っております。その人が自分自身に対して、おまえの勤労分には払うというのでは、どうも産業主としての資格がだいぶ狂ってくるんじゃないか、こういう難点が多少あると思うのですね。それでお話しの点、もっともの点があると私も思っておりますし、ことに控除の名前を変えたといういきさつは実は不敏にして存じませんでした。十分顧慮いたしたいと思いますけれども、一体日本の農民その他事業をやっている連中をどう見るか、この問題にかかってくるのじゃないかと思っております。これは単にサラリーマンではない、こう実は考えたいのですね。そこにひっかかりが多少ございますが、お話しの点は十分……。
  34. 春日一幸

    ○春日委員 ただいまお述べになりました問題点についてでありますけれども、この法人所得は集団所得という別個な範疇に属するとは言いながら、またその意味でいろいろと税率も変わってはおりますけれども、帰着するところは、私は個人の資産所得ではないかと思うわけでございます。そういう意味で、ここに事業所得法人所得はともに企業所得であるというこの一点においては全く同一のものである。企業所得に対するその経営主の、あるいはその責任者の給与というものがどういうふうに処理されておるかということ、この断面から判断をしてみましても、すなわち法人においてはその重役の報酬は損金算入できますね。ところが同じ企業所得でありながら、その経営者の給与というものが損金算入認められない。こういうようなことは、やはりそのような企業所得に対する税の捕捉のあり方自体から判断をいたしましても、これは均衡を失すると思う。そういう意味で、この問題はすみやかに何らかの解決をおはかりいただきたいと思う。  実は今度の税法の改正が行なわれるにあたりまして、われわれ野党側としてはこれが積年の主張でありましただけに、本年度においては何らかの解決がなされるものと期待をしておりましたが、本年度においてこの問題が依然としてペンディングのまま過ごされようとしておりますことにかんがみまして、これはまさにわれわれが国政についてビジョンを設定し、それの実現を推し進めていくという立場において適当ではないというふうに判断をいたしまして、ここ二、三日のうちにわれわれ野党連合で意見をまとめて、そうして政府自民党と対決をいたそうと考えておる。ここへ踏み切るか。踏み切ればよし。踏み切らざればこの法案は通らぬぞ、こういう断固たる意思決定をここに行なっておりますが、その時点において、当然細見局長から東畑先生の御見解を求めてまいろうと思う。りっぱな意見であるから、差しつかえないから踏み切れとあなたが明鑑を賜わらんことを強く要請をいたしまして、私の質問を終わります。
  35. 毛利松平

    毛利委員長 これにて東畑参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人には御多用中のところ、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞお引き取りになってけっこうであります。      ————◇—————
  36. 毛利松平

    毛利委員長 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について、お手元に配付いたしました名簿のとおり参考人の方々が御出席になっております。  参考人各位には御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございました。それぞれの立場から何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  まず、横田参考人からお願いいたします。
  37. 横田郁

    ○横田参考人 全国銀行協会連合会の横田でございます。本日は、租税特別措置について意見を述べるようにとの御指示がございましたので参上いたしました。以下、金融界にとりまして最も関心の深い利子課税の問題に焦点をしぼりまして意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  ただこの問題に入ります前に、租税特別措置一般について簡単に私の考え方を申し上げておきたいと存じます。  税制あり方考える場合、先ほど来お話に出ておりましたが、当然に租税負担の公平ということが問題になりますが、もちろんこれは重要な原則であると存じます。しかし一方、税制経済政策の一環であり、国全体の政策目的に沿ったものでなければならないということも当然の要請でございまして、一がいに公平論のみではすべてを割り切りにくいものがあろうかと存じます。  現在税法上、貯蓄の奨励、技術の振興、企業体質の強化、社会開発の促進など、いろいろな租税特別措置がとられておりますが、こうした特別措置は、租税負担公平の原則を尊重しながらも、特定の政策目的達成を税制面から支援するために設けられているものと存じます。こうした観点から、貯蓄奨励を目的とする利子課税特別措置の問題を考えてみますと、このところ貯蓄増強の必要性は、私から申し上げるまでもなく一段と高まっており、国の施策として貯蓄を奨励することの意義は非常に大きいと申さなければならないと存じます。  まずその理由の第一は、貯蓄の奨励は物価安定の基礎をなすものであるからでございます。このところ、消費者物価の騰勢が著しいのに加え、昨年以来卸売り物価も上昇に転じておりまして、物価を安定させることが刻下の急務となっております。そのためには、財政金融政策の適時適切な運営により総需要の行き過ぎの是正をはかる一方、中小企業やサービス業などの設備近代化あるいは省力化など、構造対策を積極的に推し進め、もって賃金コストの上昇が価格にはね返らないようにすることがぜひとも必要であると信じている次第でございます。こうした設備近代化、省力化のための資金は民間金融機関の貸し出しに依存するところがきわめて大きく、この意味でも貯蓄を増強し、金融機関の貸し出しを円滑にすることは、物価安定への基盤を整備するものと存じます。また最近は御承知のとおり消費意欲が旺盛で、貯蓄率は若干低下ぎみのようでありますが、貯蓄を奨励することは、消費の行き過ぎを是正するという意味合いにおきましても物価安定に役立つものと存じます。  第二に、貯蓄の増強は国民生活の安定のためにも不可欠であるということでございます。わが国におきましては、確かに年々の貯蓄率は諸外国より高いということが申せますが、一人当たりの貯蓄保有残高では米国の十五分の一程度にすぎません。まだまだ蓄積は不十分でございます。貯蓄増強中央委員会の世論調査を見ますと、一世帯当たり平均の貯蓄目標額は四百五十一万円となっておりますが、四十四年六月から七月の調査時点で見ますと、現に持っている貯蓄残高は百九万円にすぎず、目標額との間にはなおかなりの懸隔がございます。また、これら貯蓄の目的を見ましても、病気や不時の災害の備えとしてとか、子供の教育費や結婚資金に充てるためとかいうもの、あるいはまた老後の生活のためとか住宅建築のためというような理由が多く、国民生活の安定のためにも貯蓄の増強が必要なことを物語っているわけでございます。  第三は、資本自由化の進展や労働力不足の深刻化に対処するため、産業設備の近代化、合理化が急務になっており、国際競争力の強化という意味合いからも、貯蓄を増強し、産業資金の円滑な供給をはかることの意義はきわめて大きいわけでございます。  このように貯蓄増強の必要性が一段と高まっております。しかも預貯金は、各種の貯蓄手段の中で最も基礎的かつ普遍的なものであると存じます。したがいまして、私ども金融界といたしましては、利子課税特別措置の存続を強く要望してまいったわけでございます。しかし一方、租税負担公平の原則を重視する見地から、この際ぜひとも総合課税に移行すべきであるという御意見も非常に強く、今回源泉選択課税の採用を中心とする新しい利子課税制度が提案されるに至ったものと存じます。現行の利子源泉分離税制度は長年にわたり実施され、預金者心理に定着した税制として貯蓄増強に効果をあげてきたものでございますし、先ほども申し上げましたように、貯蓄増強の必要性は従来にも増して高まっているときでございますので、率直に申し上げて、現在が税制を変更する時期として適当であったかどうかにつきましては、われわれ金融界としては若干の疑問が残っておる次第でございます。  もっとも今回の税制改正は、預金者心理や貯蓄の動向に急激な変化を生じないよう、かなりの配慮が加えられているように存じます。したがいまして私ども金融界といたしましては、新しい税制が円滑に運用され、わが国の貯蓄環境にできるだけ早くとけ込めるよう努力していかなければならないと存じております。先生方をはじめ御当局におかれましても、これまでになかった変革でございますだけに、万が一にも思わぬ摩擦や混乱が生じたりすることのないよう、御配慮がいただければ非常にしあわせと存ずる次第でございます。もちろん今回の利子課税制度が変改されることになりましても、国の施策として貯蓄を奨励する必要がもうなくなったということではないと存じます。  一たび目を外国に転じますと、税制や預金金利などの面で貯蓄の奨励に政策的な配慮を加えている国が少なくないようでございます。私ども金融界といたしましても、国の政策と並行して、十三年ぶりに定期預金金利を引き上げ、貯蓄増強に自主的な努力を払っておりますし、今後もこれを続けてまいる所存でございますが、税制や金融制度の問題を含め、総合的な貯蓄優遇政策の確立に、今後とも十分御配慮と御支援をいただきたいと存ずる次第でございます。  以上、はなはだ簡単でございますが、これをもちまして私の冒頭陳述を終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。
  38. 毛利松平

    毛利委員長 次に、瀬川参考人からお願いいたします。瀬川参考人
  39. 瀬川美能留

    ○瀬川参考人 日本証券連合会の瀬川でございます。本日は、当大蔵委員会から租税特別措置法改正案について申し述べろということでございますので、証券業に携わる者といたしまして、企業課税並びに配当課税の問題を中心といたしまして所見を申し述べたいと存じ、まかり出た次第でございます。  御承知のように、近年わが国の経済が世界に類例のない高度成長を遂げながら、国際収支の黒字が定着化するということはまことに御同慶の至りでございます。いまやわが国の経済は自由主義国家の第二位の総生産を達成いたしまして、先進諸国の有力なメンバーといたしまして国際経済に対処する大きな責任をになっておるわけでございますが、今後は貿易並びに資本の自由化が急テンポで進展していくということは御承知のとおりでございますが、こういう日本経済の置かれた特異な立場、国際化の進展という立場にあたりまして最も必要なことは、わが国企業の国際競争力を強化するということでございます。  しかしながら、皆さんすでに御承知のように、日本企業の自己資本比率は年を追いまして低下の一路をたどっております。いまや一七%を割るという状態。株式資本はわずかに八・七%という、まことに憂慮すべき状態でございます。これまでの高度成長の過程におきまして、日本企業の借り入れ資本に依存せざるを得なかったということ、その事情につきましてはわれわれも十分に承知をいたしております。また借り入れ資本の果たした役割りにつきましては、私どもも十分に評価いたしておるのでございますが、今後国際化に伴いまして、このままの状態でいいか、これは私は深く憂慮すべき問題であろうと思うのでございます。ことにこれからの日本経済は、自主技術の開発あるいは原料の確保あるいは未来産業への挑戦、いろいろの重大な問題をかかえております。そのためには巨額の資本と、そうして大きなリスクをみずから負担するところのベンチャーキャピタルの必要性というものはますます強まってまいりますし、ますます大きくなってくると思うのでございます。  これをささえるものは最終的に何であるかといいますと、これは国民の貯蓄であります。委員の皆さま方におかせられましても、物価上昇の抑制に最善の施策を講ぜられますとともに、いやしくも国民の貯蓄意欲を阻害することのないように、税制その他各施策にわたりまして十分な御配慮を切にお願いするものでございます。同時に国民資産、特に金融資産資産選好にあたりまして、税制が中立性を保つべきものであるということにつきましては、私どもかねがね主張し、またお願いしたのでございますが、今回の税制改正にあたりましてはその配慮のあとがうかがえることは、われわれは率直に評価するものでございます。  さて、今回の税制改正案につきまして、配当税制原則的に五カ年間延長されましたことは、まことに妥当な措置であると存じます。  次に、二、三の点につきまして若干の意見を申し述べたいと思います。  まず配当控除率の引き下げについてでございますが、法人税あり方につきましては、実在説あるいは擬制説などいろいろといわれておりますが、世界各国を通じまして、いまだこれに割り切った何ら定説はございません。各国は、それぞれのそのときの経済情勢に応じて変遷を見ておることは御承知のとおりでございます。わが国の税制は、御承知のように、昭和二十五年のシャウプ税制以来二十年間にわたって、会社は株主の集合体であるという擬制説が基本的な構造のもとに定着してまいったのでございまして、現行税制の基本的仕組みに従いますと、法人税率を引き上げる、あるいは所得税の軽減が行なわれましたなれば、配当控除率は引き上げられなければならない筋合いのものでございます。したがいまして、配当控除に手をつけることは、少なくとも法人税の基本的なあり方について、企業、株主に与える影響など各般の角度から慎重に検討を加えまして、その結論を得た上行なわれるべきものでなかったかと痛感いたしておる次第でございます。二重課税の調整割合が低所得者ほど低いという事実につきましても、十分御認識を賜わりたいと存ずるのでございます。  次に、分離課税を選択いたしました配当所得に対しますところの源泉徴収率の引き上げにつきましては、個人の税負担の現状にかんがみましてやむを得ざる措置であったかと存じます。しかしながら、配当所得につきましては、分離課税を選択いたしましたなれば配当控除を放棄することになりますので、実質的な所得税負担率は源泉徴収率にこの配当控除率を加算いたしました税率、昭和四十六年から四十七年分につきましては三二・五%となるということも皆さん承知のとおりでございまして、十分にお含みおきいただきたいと思うのでございます。  また、現在、源泉分離課税を選択しました配当所得につきましても地方税は総合課税されるたてまえになっておりますが、かねてから私どもが要望してまいりましたように、国、地方を通じまして筋を通した一貫した、源泉選択課税を選択しました配当所得には地方税にも同様な扱いをするという、一貫した方針がとられるように、引き続いて御検討をお願いいたしますことを切に要望をするのでございます。  次に公社債の率でございますが、預貯金の率と同様に総合課税たてまえが採用されまして、源泉選択課税が導入されることになるのでございますが、公社債は本来無記名証券といたしましてその流通性が確保されておるものでございますので、この特性を減殺しあるいは公社債に対する産業資金調達を阻害することがあってはならないと思いますので、税制上も今後何らかのくふうが必要でないかと痛感いたしております次第でございます。  また、少額国債利子の非課税制度が延長されました。しかも、発行後二年間という適用期限の制限が撤廃されましたことは、国債の個人消化促進の見地からまことに適切な措置であると存ずる次第でございます。  なお、最後に法人税率の引き上げにつきまして申し上げたいと思いますが、今回の法人税率の引き上げは、社会資本充実あるいは公害の防止などの要請から、暫定措置としてはやむを得なかったものと存じますが、わが国企業の体質は遺憾ながら先進諸国企業体質に比べまして非常に見劣りしていることはいなめない事実でございます。  したがいまして、この点につきまして企業の体質強化という見地から、今後特に法人税につきましては御研究、御配慮を賜わりたいと存ずる次第でございます。  以上、租税特別措置改正案につきまして所見の一端を申し述べたのでございますが、いますぐに迫るこの国際化時代に対処いたしまして、わが国経済の安定成長を確保するためには、産業資金調達の場として、また国際資本市場の重要な一環といたしまして、証券市場の責任は重かつ大となってまいるのでございます。私どもはそのにない手といたしまして、その責務を深く自覚し、一そうの精進を重ねるつもりでございますが、何とぞ、委員の各位におかせられましては、私どもの意のあるところを御賢察いただきまして、今後とも証券市場の拡大発展に格別の御配慮を賜わりますようにお願い申し上げます。  以上、はなはだ簡単でございますが、私の陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  40. 毛利松平

    毛利委員長 次に、正木参考人からお願いいたします。
  41. 正木千冬

    ○正木参考人 国学院大学の正木でございます。  私は、前お二方の陳述とやや違った立場、したがいまして結論も違ってくるかと思いますが、そういう見地に立ちまして、簡単に租税特別措置についての私の意見を申し述べさしていただきたいと思います。  まず、本件は、本質的に違う三つの部分からなっておることは御承知のとおりであります。第一は、法人税率を戻す部分であります。第二は、利子・配当課税特例の改善措置であります。第三が、狭義の、あるいは本来の特別措置の創設、拡大、延長あるいは廃止についての提案でございます。  最初法人税でありますが、私は、このような改正法人税の本則によらないでこの特別措置でなされるということについて、まあそうならざるを得なかったという点について、若干ふに落ちないという感じがするのであります。御承知のとおり、法人税率は対外競争力を強化する必要があるとかあるいは不況を克服するという名目のもとに、四十年、四十一年の二回にわたりまして合計三%引き下げを行なったのであります。ところが、今日御承知のとおり、景気がむしろよくなり過ぎたといいますか、過熱防止のための金融措置が発動されておる、こういう状態でございまするから、税率をもとへ戻すということは、これは当然自然の措置だと私は思います。そうなりますと、三%を直すかということになりますが、一度にできないとすれば二%でいい、こういうように法人税率を弾力化するという習慣を確立するということが実は非常に重要なことではないか。今後わが国で安定的な経済成長を遂げようということになりますと、どうしてもそこに備えるべき景気調整手段が必要なのであります。しかも非常に国際化し、またいままでのように、日本の対外注視の関係から、常に景気調整をやれるというのではなくて、いろいろ複雑な関係になっておりますので、むしろ景気調整手段としての財政活動の手段が非常に重要になってき、その中でも、歳出面と並んでこの租税措置を使うということが必要になってくるのであります。そうなりますと、どうしても、不景気のときに下げたならば、景気が直ったときにはすんなりと税率がもとへ戻る、こういう習慣が財界並びにすべての面において浸透しておるということが、租税政策を景気調整に使う一つの基本的な基盤になってくる。それに対して、何ということなしに二%は高いから一・七五%にしてくれというような値切り方というところに私は若干の不満があるといいますか、こういう状態では先は思いやられると思うのであります。  それから配当分の税率は今度据え置きになっておりますが、これは留保所得減税のない前の年に二%下げておる、こういう状態を考えますると、今回これを全然放置しておったという特別な理由があるかどうかということが考えられるわけであります。経済界は五年連続の好況を満喫して、昨年来かなりの企業が増配に進んでおる。したがって、証券界の株式市況も記録的な高値という状態であるのでありまして、どこに配当分の法人税率引き上げを遠慮しなければならない、差し控えなければならない積極的な理由があったかどうかということになると私は若干疑問を持っております。  今回の措置が成立しますと、留保分と配当分の税率の格差は従来の九%から一〇・七五%というふうになってくる。こういうふうに特にこれを上げる必要があるかという点も私は納得がいかないのであります。従来配当軽課という措置は、いろいろないきさつはございましょうが、結局は資本蓄積を促進するという手段として取り入れられたものであります。かなりの年月を経ておりますが、その実績がはたしてあがっているのかどうかということになります。この場合に、資本蓄積というものには二つの考え方といいますか、二面があると思います。一つは株式資本を増強するという面と、それから内部蓄積を増強するという面、この二つでありますが、実際六〇年代の日本経済成長を見てまいりますと、後者のほうは大いに進んで、かなりの設備投資が自己資金で手当てできるような状態に蓄積が進んでおります。ところが税金を軽減されたほうの増資のほうがあまりに進んでいない、これは御承知のとおりであります。私はどうも、税金によって、税金を軽課すれば増資がずんずん進行するのだというような考え方はいささかやぶにらみであったのではないかというような感じがしておりますし、今回廃止されることになりました、特別措置の中で資本構成を改善した場合に法人税額の特別控除制度、こういったものが廃止になるのですが、これは実効はなかったということなんです。そういうことも考えられるわけであります。したがってこの配当と留保の法人税率の格差というものは拡大すべきではなくて、むしろこれは漸次解消に向かうべきが本筋じゃないか、これは私の意見でございます。  それから、今回の措置が二年の限時法になっておりますが、その理由もあまりはっきりしない。かりに政府の案が成立しまして、昭和四十七年になりますが、法人特別税を廃止しようといたしますと、おそらく千五百億くらいの減税財源がその場合には必要になってくると思われます。そのときはたまたま例の赤字公債の償還期が来るというわけでありまして、なかなか財政上のやりくりは困難、苦しいといわれますから、私はこの二年後に五%の特別付加税が撤廃されるだろうということはとうてい考えられないだろうと思います。今日この法人税についていろいろ問題があることは御承知のとおりでありまして、これを何とかしなければならぬのでありますが、それゆえにこそこの法人税率を今度のようにすんなり戻すというようなことにあたりましては、特別措置のような形によらないで、本則でやれるようなすっきりした形でやってほしかった、こういう感じを持つのであります。  次は、利子・配当課税でございます。提案理由の説明を見ますると、利子・配当課税の特例について漸進的な改善合理化措置を講じたとされておりますが、その改善とか合理化ということは、おそらく利子課税分離課税になっておりますこの原則から総合課税原則に戻したということをさすのだと私は思います。利子の取り扱いがこういうふうに変わったのは昭和二十八年の税制改正以来であります。源泉税率はその後幾たびかひどく変化いたしながら今日に至りましたが、その間、税制調査会では、利子の分離課税というのは資産所得、大所得偏重で公平原則に大いに反すること、それから名目としていわれる利子の軽課ということが現実の貨幣貯蓄の蓄積強化にどれだけ貢献しているかということについての確たる証拠がないではないか、こういうような議論がたびたび繰り返され、そうして早く一貫して総合課税への復帰を主張してこられたのであります。しかし現実の壁は厚く、その主張は常に拒まれ続けてまいりましたが、今回原則として総合課税をとるということになったのでありまして、それ自体としては私は大いに評価すべきだと思う。しかし内容を拝見しますと、まさにこれは羊頭狗肉に近いというか、はなはだ漸進的過ぎるといいますか、そういったような感じがするのであります。  すなわち現行の一五%の源泉徴収税率の特例をさらに五カ年延長、それから定期性預金や貸付信託等について新たな源泉選択制度を認めるということにしまして、その税率が御承知のように二〇%、二五%で行なわれるということになります。それから普通預金等の利子については申告不要制度にする、それから支払い側でのこの報告義務を免ずるというような措置がとられているのであります。つまりそうなりますと、高額所得の方は、この場合は二〇%の税率でありますと大体二百七十万円以上は源泉をとったほうが有利になるというような勘定になりまして、源泉選択をするでしょうし、その場合の税負担は、現在と比べまするとこの二年間は五%、その後一五%増すほかは何ら変わらないのであります。他方、少額貯蓄優遇制度もこれをそのままでありますから、結局郵便貯金、銀行預金、国債等を利用しますと、二百五十万円までのものは無税扱いになります。実際取り扱いがルーズなところもありますので、私はもっと多額の貯蓄者が無税扱いを受けているのだろうと思います。  そこで今回の改正で利子所得原則として個人に総合課税されるということになるのでありますが、これは上のほうが源泉選択、下のほうは少額貯蓄優遇というものに守られた利子所得者が、ここに総合課税を適用するという余地がほとんどないのであります。そういうような形でこの原則的な総合課税が成立したというのであります。もしほんとうに利子所得を公正に課税するつもりならば、私は選択の源泉税率は四〇%か五〇%かまで、もっと上げる必要があると思う。現にこの二十八年でありますか、分離課税になる前の、シャウプ税制以降でありますが、一時源泉選択が復活したことがありますが、そのときの税率は五〇%であります。また六〇%というときも戦後にあったわけでございます。そういう意味で、二〇%とかいうような税率は非常に低過ぎるのであります。同時に少額貯蓄のほうも大幅に整理する必要があるんではないか。これはやや極端論かもしれませんが、マイホーム建設というような目的で長期に積み立てをしなきゃならぬ、そういったものについては、百万といわず、三百万でも四百万でも免税措置を講じたらいいと私は思う。しかし、一般目的の貯蓄というものについて、はたして免税扱いにする必要があるのかどうか。かように一部免税扱いにするとしても、もっと低くていいんじゃないか。この百万円免税貯蓄というものがかなり乱用されて、少額貯蓄者だけじゃない受益者がいるんじゃないか、こう考えますと、私はここにむだな財源が使われているというふうに考えざるを得ない。もちろん急激に直しますと、いろいろ預金の移動ということがございましょうが、ねらいはそういうところに置くべきじゃなかろうか。少額貯蓄はすべて優遇すべきだという議論について、もっと目的をはっきりさせろと言いたいところでございます。この二十八年以来のわが国の利子税制は、ひたすらに金融機関が預金をかき集める上に便利なような組み立てになっており、今回の改正も何らその性格を変えるものではないと私は考えております。  ただ、配当所得につきまして注目されるのは、利子と同じ税率で今後五年間源泉選択制が延長されるということでございます。この制度が採用されましたのは四十年度税制改正が初めでありまして、これは税制調査会答申にも全くなくて、日本で初めての乱暴な措置だ。これは田中大蔵大臣のときに強引に実現をはかったのであります。利子所得配当所得について同じような源泉選択制が並んだ。何かこれは非常に誇張があったように思いますが、実はここに問題があると私は思う。前者は、すなわち利子所得の場合に、源泉選択分離というものを取り上げましたのは、久しい分離課税から総合課税へ戻ろうという過程、ワンステップとしてこれが行なわれているのだ、こういうふうに考えます。ところが後者のほうは五年前に強引に、日本の明治以来の配当所得の総合課税原則を踏みにじってこういう制度をつくられた。これをさらに五年間さらに引き延ばそうというのでありますから、税の原則論からいいますと、向かおうとする方向がまさに相反するのであります。一つ政府がこのような提案を同時にされるということはおかしいのじゃないか。そういう意味において、配当の源泉分離は税の公平上も直ちにやめるべきじゃないか、こういうふうに結論したいと思います。  それから、ついでに株式配当控除でありますが、今回若干これを引き下げられております。これはやかましくいえば、法人税の帰着がどういうものであるかというようなことと関連するんでありますが、先ほどの参考人の方のお話にもありますように、この法人税の内容と申しますか、法人税の実質というものについていろいろな解釈があり、必ずしも理論どおりにいかない。したがいまして、この問題も二重課税を完全に消去するというのではなくて、各所得者、納税者の間の公平感というものと経済政策との間の調和をはかるというようなことになると思います。  そこで、しばしば問題にされております配当所得者、配当所得ばかりであれば二百八十万円までが無税である。これは何といっても一般の働く人たちにとってみればあまりにもむちゃくちゃな税制ではないか、こういう非常に素朴な感じがあるのです。これは非常に重要なので、今後ますます所得税中心に発達させていこうというならば、税に対する公平感にひびが入るような措置は許されない。そういう点で今回若干の配当控除が下げられたのはよろしいのですが、これも少し遠慮をし過ぎておられて、一〇%ににすべきところを五%というような、まん中の二年間の経過期間を置かれておる。そういうことをされた結果として、今度の四十六、七年においては、依然としてこの配当所得だけの人たちの免税点が現在より上がるとなると、ますます勤労所得者にとっては浮かばれないような感じを与える。この点は、私は理論の問題より国民の租税に対する感覚という点から十分御考慮なさるべきであって、こんなに遠慮をして経過規定を置く必要はないのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。  それから、同じように、個人に対する控除を引き下げるならば、同時に法人の受け取り配当の処置も若干手直しをしていくという公平論が起こってくるのでありますが、そういうようなことで、要するにこの配当課税について、いまのようなほとんどブームと申すべき時代における証券界の反応にあまりに気を使い過ぎて、税の公平感というものが忘れられているのじゃないかという点を私は申したいと思います。  最後のグループであります特別措置の存廃でありますが、今回新しい制度を創設したとか、従来の適用対象を拡張したというものが、小項目で数えますと十四項目ございます。そのまま延長したのが十五項目ございまして、廃止が九項目ございます。その方向は決して租税特別措置を整理する方向にいっているのではなくて、かえって繁雑な、微細な租税特恵が積み重ねられていくという感じがいたします。ただ、その場合に、新設する場合には廃止の財源の範囲というような形でルールが守られておるようですが、そういうことがかえってこの特別措置を定着させておるということ、それから内容的に一般向きのものよりも特定業種あるいは特定企業向けのフェーバーを与えるようなものが目立っておるということで、もう少しこれについては行政措置でいくべきものは行政措置、金融措置でいくべきものは金融措置というような割り切り方をするべきであって、こうやたらにふえていきますと、全く迷路のごとくになってしまって、そこに業界と官庁あるいは役人との間の過度の関係が生じて、不祥事件が起こりはしないかというようなことも憂えられるという点で、もう少し思い切った整理の時期に来ているのではないか、かように考えます。  以上、はなはだ粗雑なことを申し上げて失礼をいたしました。これをもって陳述を終わります。     —————————————
  42. 毛利松平

    毛利委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。松本十郎君。
  43. 松本十郎

    ○松本(十)委員 本日はお忙しいところを参考人のお三方御苦労さまでございました。時間の制約がありますので、問題を利子・配当課税にしぼりましてまず質問したいと思います。  先ほどから参考人のお三方とも今度の租税特別措置の利子配当課税につきましては、公平の原則ということをいろいろおっしゃったわけでございますが、私、長年税の仕事もいたしました経験から申しまして、確かに理想としては租税原則の第一の柱は公平の原則だろうと思います。しかしながら、同時に税というものは本来現実的なものでございまして、やはり現実に即したものでなければならない、こう確信するものでございまして、利子・配当の課税につきましては、戦後、特にシャウプ税制以来幾多の変遷を遂げてきておるわけであります。そして、先ほどからまた別の角度から強調されました貯蓄の増強と申しますか、奨励策の一助として、租税制度が一翼をになってきた、これからもになうべきである、しかも現下の経済情勢から見るならば、貯蓄の増強は格段と重要性を帯びておる、こういうことも言われたわけでございまして、そういう意味におきまして、やはり現段階においては、今度の改正というものがはたして妥当であるかいなか。その辺につきまして、正木教授はいろいろ公平の原則を主に言われましたが、全銀協の会長であられます横田会長から、過去の利子課税の変遷というもの、いろいろありましたが、それがはたして貯蓄の増強に役立つことができたかどうか、そして今回の改正というものが、いろいろ陳述されましたが、この段階でいいかどうか。そういう点について特に私の感じますことは、日本経済、戦後の復興発展をここまで遂げてまいりまして、GNPでは自由世界の第二位といわれておりますが、分配国民所得ではまだまだ十何番目、極端な数字では十九位、十八位と出ております。さらに資産の保有水準から見ますならば、日本の実情というものは先進諸国の中でももっと低いのではなかろうか。特に金融資産の保有水準というものは、先ほど横田参考人が言われましたように、預金でアメリカの十五分の一、こういうことでございまして、はるかに低い、こういうふうに感ずるわけでありまして、やはり恒産なければ恒心なしということばがありますように、金融資産をもっと持つ方向で努力をする。貯蓄増強の必要性を三つあげられましたが、その増強と兼ね合せまして、やはり個人が金融資産をもっと保有すべきである、こういう角度から、横田会長から一言お答え願いたいと思います。  さらにまた、その過程におきまして郵便貯金はああいう形で無税になっておりますが、それとの関連についてどう考えておられるか。あるいは預金と配当との課税のバランスにつきましてどういうお考えを持っておられるか、こういうことについてまずお伺いしたいと思います。
  44. 横田郁

    ○横田参考人 ただいま松本先生から非常に広範な御質問があったわけでございますけれども、まず最初に、利子課税というか、特別措置という問題について私の個人的な見解を申し上げてみたいと思うのですが、先ほども正木先生がおっしゃったように、税制というものは広く考えれば経済政策の一環として考えられるべきである。むしろ景気調整手段として税制が必要なんだというような、多少ニュアンスは違うかもしれませんけれども、そういう意味のことをおっしゃったのですが、まさにそのとおりでございまして、現在ほど国際化、自由化という問題がハイペースで進んでいるときはない時点でございまして、そういうときに、現在までの日本経済は何といっても温室の中で保護された中で高度成長を遂げてきた。これからは裸で世界に立ち向かう時代になってきたとぎに、はたして現在の貯蓄水準あるいは資本の蓄積の水準でもって国際競争にたえ得るかどうかという点について問題があるわけなんで、そういう意味合いにおいて、ここで貯蓄マインドというか、国民の貯蓄マインドを阻害するような税制をとるということは、私はあまり賛成ではなかったわけでございます。しかし、租税負担公平の原則というものを貫いていきまするならば、いずれ日本が、政府のおっしゃるように豊かな家計、蓄積のある企業という時代が出現したおりには、これは総合課税に持っていってしかるべきだろうと思いますが、まだそのプロセスにあるわけでありますから、その理想が実現するまでの間は少なくとも特別措置を講ずるべきであるというふうに私は考えておるわけでございます。特別措置というものはあくまでも特別措置であって、恒久な税制ではないわけでございますから、そういう意味合いにおいて、現在の時点でこの特別措置が最も必要なときだとわれわれ金融界は考えておったわけでございます。  先ほど正木先生から、これは銀行が預貯金をかき集めるのに都合のいい手段だというようなお話がございましたが、これははなはだわれわれにとっては心外でございまして、われわれは日本経済発展のために貯蓄が必要だ、いまの貯蓄をいかに長期性のものに転化していくかということがわれわれに課せられた責務だ、こういうふうに考えておるわけでございます。ただ、今回の税制改正については、一方で税負担公平の原則を貫きつつも、預金者心理あるいは預金者の貯蓄マインドに水をかけないというような十分な配慮が主税当局によって行なわれている。ですから、何と申しますか、源泉選択課税税率が二〇%というのが低過ぎるというような御意見もございましたけれども、現在の段階ではこれは当然の措置だろうと私は考えているわけでございます。最初の御質問に対してはそういうふうに私は考えているわけでございます。  郵便貯金の問題は、もちろん百万円までが限度になっておりますが、これがよく比較されるのは、普通一般金融機関の少額貯蓄非課税制度との関連でございます。少額貯蓄非課税制度については非常に煩瑣な手続がございますし、それからまた納税の問題につきましても、金融機関に追跡義務が負わされておるというような問題がございまして、実際の問題としては、金融機関が、脱税者であるかどうか、あるいは架空名義であるかどうかというようなことについて、これを調査する権限がなかなかございませんし、またそれを、たとえば非常に卑近な例を申し上げますと、本人を確認するために、あるいは戸籍抄本を持ってこいとか印鑑証明を持ってこいとか、そういうようなことになってまいりますと、むしろ貯蓄増強の阻害を来たすというようなことにもなりますし、金融機関としても一つの商売でございますので、そういうことをなかなか預金者に強制することはできない次第でございます。  一方郵便局は、実情はいろいろ郵便局によって取り扱い方も違うと思いますけれども、どういう名義であろうとどういう人であろうと、無条件で百万円までは預かるというような状況になっております。これは同じ土俵で競争をしておるという立場ではなくて、非常に条件が違う立場で、ハンディキャップをしょわされて金融機関は貯蓄増強につとめておるわけでございます。  さらにふえんして申し上げますれば、郵便貯金の資金は財政投融資の原資となるのである、したがって、財政投融資の原資が拡大することはまことに国民経済的に見てもけっこうではないかという御説もございますけれども、それでは財政投融資で日本経済成長の全部がまかなえるかというと、そういうことではないのでございまして、国際競争を控えて民間産業の合理化、省力化、そういったものの投資の四〇%は民間金融機関によってまかなわれているという状況でございますので、この辺のいわゆる官業と民業とのバランスの問題、これをどうお考えになるかということが一つの論点だろうかと思います。  もともと郵便貯金は、私から申し上げるまでもないことでございますけれども、明治初年に制定されまして、これは民間の金融機関の補完業務を行なうためにということがはっきりと明示されております。むしろ民間の金融機関が商業ベースで採算のとれない過疎地帯において郵便局が貯金を集めるというような、補完手段として設けるのだということが明治初年の、たしかあれは何か条文でございますが、はっきりとその設置の理由が規定されておるわけでございます。そういう点で、もちろん郵便局が熱心に貯金をお集めになることは私はけっこうだと思いますけれども、ただ、まあ主税局にもいろいろお届けはしてございますけれども民間金融機関と非常に競争するような、あるいは郵便貯金のほうが非常に有利であるというような宣伝はあまりしていただきたくないというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  45. 松本十郎

    ○松本(十)委員 まだまだお聞きしたいことがありますが、時間がございませんので……。  立案当局も、今度の改正については貯蓄の動向あるいは預金者心理を十分配慮した、こういうことになっておりますが、昔から旧税は良税なりというようなことばもあるわけでございまして、制度の改変ということはともすれば混乱を生じがちである。銀行の窓口あるいは税務署の窓口で、今度の改正がともすれば納税者の側に不利な事態を生じかねないと考えられますので、この点はもちろん徴税当局十分配慮してくれるとは思いますが、銀行側におかれましても、法案が通った上のことでございますが、円滑な実施ができますように御配慮も願いたいと思います。  時間の関係で瀬川さんにお伺いいたします。  これまた正木教授から、公平の原則たてにして、現在の改正案の中の配当課税について、配当控除率が高くなってもまだ高過ぎるとか、あるいは配当に対する法人税の差が大き過ぎるのではないか、こういう議論もあったようでありますが、瀬川さんが陳述の初めの段階で、法人擬制説あるいは実在説、まだいずれとも議論はきまっておらないわけで、調整措置については世界的に一定の定説はない、こう言っておられたわけでありますが、やはり日本では日本の実情に応じて、先ほど申しましたような金融資産の増加という角度で何らかこういう税制が役立つのではないか。あるいはまた、自己資本の比率が低いわけでありますが、国際競争力を上げる意味においても自己資本比率を向上させる必要があるだろうということもありまして、そういう角度から今度の配当税制を一応是とされまして、三つほど何か論点をあげて論じておられましたが、さらにふえんして簡単に一言お答え願いたいと存じます。
  46. 瀬川美能留

    ○瀬川参考人 お答えいたします。  少し回りくどい説明になるかもしれませんが、私は決して一企業とか一業界とかという立場でなしに、国益という立場から見て、いままで虐待され続けてきた株式資本というものが、この段階でこのままでいいのかということに対して、非常に疑問を持つのであります。株式資本が虐待されてきたと言うと少し大げさなことかもしれませんが、くどくど説明するまでもなく、今日株式資本ほど虐待された資本は私はないと思います。十年前の一割配当をやっておれば、少なくとも三割配当ぐらいにして今日当然のことなんです。企業の分配を見ましても、配当金にどれだけ支払われているか、どれだけ税金を払っているか、どれだけ従業員の給与に払っているか、どれだけ金利に払っているかという数字を見ましても、これは私は経営者としてりつ然たるものをいつも感ずるのであります。いままでこういう政策をとってきたことは、日本の急激な高度成長において、間接資本中心の経営をやらなくちゃいかぬとか、あるいはいろいろ事情があったに違いないのであります。しかし、ここへ来てひとつ考え直さなければいかぬのじゃないかというふうに私は深刻に考えるのです。  非常に具体的な例をあげて恐縮でありますけれども、今日株が高いとか安いとかいうことを申し上げるのじゃありませんが、日本企業に対する株価を通じての評価というものが今日の日本経済力を率直に反映しているかどうか、ことに三百六十円で割った日本企業の評価がこれでいいのか悪いのかということについて私は非常に疑問を持っておるのであります。たとえば一番わかりやすい例が、いまの日本企業は総じて、従業員はしんぼうし、株主は極度の虐待に耐え、そして粒々と資本を内部蓄積してきたのが日本企業であります。ところが株価はこれに対して正当な反映をしているかどうか。これは税制もあるし、あるいは金融もあるし、いろいろ事情はあろうと思いますが、かりに日本の銀行株一つごらんになっていただいてもよくわかる。もし銀行株が配当の部分的な自由化に踏み切らないという状態でこのままでおったとすれば、あれだけ蓄積をした、あれだけりっぱな銀行株が今日あの値段がつかなかったろう。ところが、銀行株がとにかく一割五分最高として配当を自由化するということになりましたら、外国の投資家はちょうど日本のふところの中をねらうような感覚でどかっどかっと集中的に買ってくる。そして株式として生きてきたために三百円とか二百円とかいう相場ができていくということでありまして、株価を政策的に低位に置いておくということが、日本の国富をこの段階においてかきむしられるような感じがして見ておるのであります。ちょうど明治の初年に、日本人が知識の不足から金を銀にかえられてどんどん金が流出したというようなことと同じくするのじゃないかと考えておるのであります。そういう意味で、私は過小資本のこの段階、自由化を控えたこの段階においてはあまりつべこべとこまかいことを言うよりも、うんと株式資本を優遇して、充実して、国民の各層にこれを持たせなければこれはたいへんな国富の喪失になるぞ、もし完全に自由化したときにはどういうことになるかということを私は常々憂えておる一人であります。  それから、御返事にならぬかもしれない、実はほかのことになるかもしれませんが、株式の税制について、株式はいつも金持ちが持っておるものだ、金持ち優遇だという思想が一般にあるのであります。そこで、最近は株式がどういうふうに大衆化しつつあるか、どういうふうに国民の財産づくりになっておるかということをちょっと申し上げて、御参考に供したいと思います。  株式はもはや今日では一部金持ちのものになっておりません。全国民の貯蓄対象になっております。それはいろいろの統計に出ておりますが、たとえば証券取引所の調査によりますと、昭和四十四年三月現在で千株未満の株主数が三〇%を占めております。そして五千株未満までを含めますと九〇%に達しておるのでございます。つまり個人一人の持ち株が平均いたしまして二千四百株にすぎないのでございます。総理府の貯蓄動向調査によりますと、所得階級別にいきますと、株式保有状況昭和四十三年は、年間百万円から百四十万円の世帯が二六%であります。百四十万円から二百万円までの世帯が二九%になっておる。いかにこの中額の所得者の間に株式の分布が浸透しておるかということがわかるのであります。  さらに、これは最近新しい一つの商品の開発でありますが、昨年から企業の従業員持ち株制度というものが証券会社並びに信託銀行でスタートいたしました。昭和四十四年には、概算でありますが、大体二百五十社から三百社近い会社が従業員持ち株制度を実施いたしております。昭和四十五年になりますとおそらく五百社に達するだろうという予想であります。人数でいきまして何十万という従業員が株式投資に参加しておるわけであります。ホワイトカラー、ブルーカラー、通じて参加しておるのでございまして、この傾向は一つの新しい、日本の風土に——アメリカあたりでもやっておりますが、アメリカあたりでは企業に対するロイアルティーが違いますし、また雇用条件が違いますから、従業員の一〇%ぐらいの者がこの従業員持ち株制度に入っておりますが、日本の場合にはいまのところ三九%ぐらいの従業員がこの従業員持ち株制度に参加いたしております。そうしてこれは年々歳々、所得の増強に応じてこのパーセンテージがふえていくという状態であります。十年たちましたら、従業員持ち株制度による持ち株数が筆頭株主になるということ、各社においてそういう状態が起こってくるだろうと思うのでございます。  それから証券投資信託でございますが、これは五年間で延べ四百三十五万人を占めておりまして、このうち十万円未満の申し込みが五五%を占めておるというような状態でございまして、こういう面からいきますと、傾向としては非常にいい方向にいききつつある。さらにマンスリー・インベストメントと申しまして、毎月貯金をして株を買い、国債を買い、社債を買い、あるいは投資信託を買っている数が、大体百五十万口座ぐらいの人が参加しているというふうな状態ができてきておるのでございます。こういう見地からいたしますと、家づくりもけっこうだが、勤労者の財産づくりという見地から、やはり小額所得者に対してはうんと優遇をすべきであると私は考えるのであります。  それから、株式は御承知のように、大株主はもう文句なしに総合課税で取られて、松下幸之助さんなんかは何億という税金を払っておる。先ほどお話がありましたが、中間所得者に対しては選択課税が行なわれておる。小額所得者に対しては、今回の措置では据え置きでありまして、決して上げておらない、現状維持であります。今後所得税減税され、所得が上がる段階において、一体どの辺を中堅所得者というのか、どの辺を金持ちというのか存じませんが、昭和四十年にあの措置がとられましたのは、やはり株式の中堅投資家層、つまり国民の株式投資、国の企業をささえる、国民の投資をささえるという意味であれがとられたわけであります。  それから、お答えになるかどうかわかりませんが、先ほど、五年ぐらいで一体きき目があるのか、そういうものはやめたらどうかという御意見が、配当軽課とかあるいは減税その他について確かあったように思うのでありますが、たとえば配当軽課一つとりましても、あれが実施されましたのが昭和三十六年であります。不況期に突入する直前であります。それから四、五年間というのは、御承知のような不況期を通ったのであります。あのときにあの税制が何のメリットがあったかといいますと、あの税制はもちろん資本充実あるいは内部蓄積による案充実のためにとられた措置でありますが、大体あの時期に資本充実するというふうな経済情勢であったかどうかということを、ひとつ振り返ってみていただきたいと思うのであります。そうしてその後、あの税制がどういう役割りを果たしたかといいますと、やはり数千億に達する内部保留ができて、あの不況期に株価が異常な惨落をしたときに、やはり大企業を中心として、あの措置があったために異常な減配を免れて、株価水準を保ち得たという、そういう消極的な意味での大きなメリットがあったわけであります。  それで、今日までの意識調査によりますと、残念ながら、その配当軽課があった場合には、内部保留にばかり向けて、増配をなるべくあと回しにしようという意識が、一般の企業者の中に多いようであります。しかし今日、御承知のように、時価発行が行なわれ、時価転換社債が行なわれ、いよいよ企業が国際社会の仲間入りをする、そうしてその水準からアメリカ企業あたりの考え方とものさしが同じだということになりますと、やはり配当意識、配当政策に対する革命というものが、これから経営者の中に生まれてくる。これからききめのある税制である。そうして先ほどの配当の措置にいたしましても、これからむしろきいてくるような情勢がきたのではないか。今日の景気は異常な景気だという御表現もございましたけれども、これから国際社会でわれわれが競争していく日本の産業としては、これで十分準備なれり、これで十分だというふうな感覚は私は持たないのであります。そういう意味で、配当に対する、あるいは企業に対する税制にいたしましても、私どもの申し上げましたことが非常に説明が不十分で恐縮でございますけれども、そういう大局的な見地からもひとつ御賢察を願いたい、こう思う次第であります。
  47. 松本十郎

    ○松本(十)委員 時間が超過しましたので、もう最後の一点にしぼりたいと思いますが、証券の民主化あるいはピープルズ・キャピタリズム、こういうことばが言われましてからすでに久しいわけでありまして、株式の大衆化のためにいろいろ努力しておられるようでありますが、さらにこういった税制を活用し、将来の税制についての御意見を述べられながら、できるだけ国民の各層に資産としての株式保有が浸透していくように、これは私からもお願いしたいと思います。  最後の一点としまして、住宅貯蓄控除制度についてごく簡単に申し上げて、ごく簡単なお答えを願いたいと思いますが、横田会長ですが、住宅貯蓄控除制度は昨年の手直し以来若干その利用度がふえてはおりますが、これがまだまだ伸びておりません、こう言えると思うのであります。現在第二次住宅五カ年計画というものを策定中でありまして、九百五十万戸の住宅をつくる、戦後のベビーブームの連中が世帯をつくるとか、あるいは核家族化でどんどんと世帯がふえていく、あるいは五十年には六七%の人間が太平洋ベルト地帯に移り住む、あるいは昭和六十年には八割近い日本の人口がベルト地帯に住むというわけでありますが、住宅需要は今後ますますふえるわけでありまして、そういった持ち家を促進させますためにも、この控除制度というものをもう少し活用させる方策はないものか。また、これと並行いたしまして、アメリカその他でプリベールしております住宅抵当金融制度というものを導入することができないものかどうか。それらについて、時間が過ぎておりますのでごく簡単に横田会長からお願いしたいと思います。
  48. 横田郁

    ○横田参考人 住宅貯蓄制度に限って、焦点をしぼってお答え申し上げますと、問題点としましては、貯蓄者の立場から見た場合に、貯蓄条件が非常にきびし過ぎるという問題がございます。それから減税金額が少額である。これは年の積み立て額の四%、最高一万円という税額控除でございますが、これから逆算した控除対象積み立て額が年間二十五万円ということでございまして、三年間の積み立て額が七十五万円にしかならないわけであります。したがって物件取得のための預金としては、現在の状況ではちょっと少な過ぎるという感じが多いわけです。それから金融機関の立場から見た場合は、条件を欠いた場合に税金の追徴義務がわれわれに課せられるということがございます。それから積み立て金の二・五倍の融資義務が生ずるという点が問題でございます。  そこで、この解決策はどうしたらいいかと申しますと、住宅融資保険制度の改善整備が必要なのではないか。いま住宅金融は十年ないし十五年という長期の融資でございますけれども、持ち家を望み、かつ住宅金融を利用しようとする者の中には、比較的資力の乏しい者が多いわけでございます。したがって金融機関が積極的に住宅金融を利用するとすれば、融資した金額に対して保証してくださる機関が必要なのではないかと思うわけであります。現在、住宅金融公庫に一般の金融機関が住宅融資を行なった場合に、それを保険する住宅金融保険制度がございますけれども、これは保険料率がきわめて高いということ、それから保険金額が保険価額の九割であるということ、全額保証になっておりません。それから、めんどうな担保回収事務は金融機関が行なわなければならないというような問題があるわけでございます。  それで、こういう制度をできるだけ改善整備していただきたい。保険金額は原則として融資額の一〇〇%とするとか、あるいは保険料の逓減をはかるとか、担保回収事務は保険会社で処理を行なう、あるいは国は保険会社に対して再保険をする、それから利子補給制度を——これは財政支出が伴うことではございますけれども、今後のおっしゃったような膨大な住宅需要をまかなうためには、財政資金をもって公的な住宅を供給することもさることながら、多額の民間資金を住宅部門に投入することが必要だということになりますと、民間資金にたよった場合、利用者側から見ると、金利が九分五厘前後というかなり高い状況にある。したがって、民間住宅融資制度を促進させるためには、政府民間金融機関に対して利子補給を行なっていただければ、利用者の負担を軽くすることが可能である、こういうことでございます。  現在の住宅貯蓄控除制度、積み立て期間三年以上、年間積み立て四%に対する金額、最高一万円の税額控除についての控除率あるいは控除額の引き上げ、条件の緩和、手続の簡素化が一番必要なんじゃないかと思います。現在全銀協としましては、正式ではなかったと思いますけれども、二万円ぐらいの税額控除ということをお願いしているわけでございます。われわれも、できるだけこの住宅政策の拡充ということについては、全銀協としてもいろいろ研究を重ねまして、また御当局にお願いするようなことになろうかと思いますけれども、その節はどうか先生方においてもよろしく御高配をくださるようお願いを申し上げます。  どうもありがとうございました。
  49. 松本十郎

    ○松本(十)委員 では終わります。
  50. 毛利松平

    毛利委員長 堀昌雄君。
  51. 堀昌雄

    堀委員 時間がございませんから簡単に御質問をいたしますので、簡潔に願いたいと思うのであります。  先ほどお話しのように、今度の税制の中で、確かに一面貯蓄の問題は必要でございますけれども、いま消費がふえておりますもとには、過去でございますと、大体国民が、いろいろなものがほしいと自然に思ってから物を買う、あるいは自然に旅行をしたいという気持ちになってから旅行をするというのが過去の例でございますけれども、今日は異常なマスコミによって、その欲望が本人にないのに欲望を企業側からかり立てて、欲望を吸い出して消費を拡大させておるというのが、私はいまの日本の実情だと思うのでございます。そこで、貯蓄は確かに日本が将来に発展するために必要でございますが、このような片方の企業側の問題を野放しにして、税制だけでこれを補完しようなどということは、私はとても問題があると思う。  そこで私の一つの提案でございますけれども、私どもはこの際、そういう国民の消費をかり立てるような欲望に対する広告、これにはかなり大幅な課税をしたらどうか。そうすることによってノーマルな国民の欲望にとどまるように——それは課税したからといって行なわれるでありましょうけれども、そのことによって、その課税分がその他に回れば、まあ私は税制上の問題としても理解ができる問題がございます。一体いまのそういう行き過ぎた国民の消費欲望をかり立てるような広告については、かなり大幅な広告課税を行なうべきではないか。そのことがはね返って国民の貯蓄を安定させる方向になるのではないか、こう思うのでありますが、これについて横田参考人、瀬川参考人、正木参考人から、お考えをひとつ承りたいと思います。
  52. 横田郁

    ○横田参考人 どうも広告課税の問題については、私はちょっとはっきりしたことは申し上げられませんが、消費性向が高いということは、やはりいろいろな問題がからみ合ってきて消費を促進するような——広告のみからばかりでは、私ないんではないかと思います。やはり貯蓄についての施策というものが今回の税制改正によって、われわれから見ますと若干後退をしたということが言えるかと思うのでございますが、そのようなこともありまして、非常に消費性向が高くなる。まあ広告類で消費を奨励するというようなことはあまりないのではないかというふうに私は思われるわけでございますけれども……。まあどういう広告をさしておっしゃるか私もよくわからないのですが、たとえば新しい製品ができたとか、そういうようなものについての新製品の開発を大衆に周知徹底せしめる、生活の便宜に供する、そういった意味で広告をするということは当然考えられるわけでございますし、その広告が一がいに消費をそう奨励しておるということも断言できない、そういう面もあろうかと思いますけれども、しかし根本は、やはり国民の消費性向が漸次高まりつつあるということになるのではないか。それは何も広告は最近になってきわめて著しく拡大されたということではなくて、テレビが大体始まりましたのが昭和二十八、九年でございましょうけれども、そのころから漸次広告が発展してまいりました。それによって大衆が生活の便益を得るいろいろな商品が実在しておることを知ることができた。したがって、生活改善ができるということで、そういうものを購入するということが多くなったのではなかろうかと思います。広告に対する税制については、私も勉強いたしておりませんのでちょっとお答えいたしかねる次第でございますが、まあ大体そういったところではないかと考えておるわけなんです。まあ一つの方法かとも存じますけれども、そういうことであります。
  53. 瀬川美能留

    ○瀬川参考人 私もその広告税をどうするかこうするかということは勉強をいたしておりませんが、いまの貯蓄奨励もさることながら、消費動向を押えて貯蓄をさしたらどうかという御意見、まことにごりっぱな御意見だと思います。全体として見まして、私どもがよく貯蓄奨励、貯蓄奨励と言うと頭が古いような感覚が一般にはあるが、またこれは一つ政府の国策としても私はやはり大きく取り上げるべき問題じゃないかと思うのであります。消費につきましては、どうも急に日本人全体がにわかに成金になったので金の使い方を知らぬ、金持ちの理学というものを知らぬというところに大きな問題がある。エコノミックアニマルといわれるのもそこだと思うのでありますが、しかしこれもだんだんわかっていくと思うのであります。ときどき海外旅行をしますと、農協の人とかいろいろな人がたくさん団体で来ておりますが、私はあれを見てよかったと思うのです。長年にわたってイモを掘り掘りためた金で、そうして初めて世界を見るということは、これは日本国民として当然許されていいことじゃないか。まあほんとうによかったという気持ちで私は見るのであります。また諸外国におきましても、日本人が来て金を使うてくれれば、決して悪い気持らがしませんから、世界の日本に対する感情をやわらげることになる。いまの日本の消費というものも、そういう段階あるいは遺脱しておるかもしれませんけれども、まあまあそのうちに鎮静してくるのじゃないか、冷静に考え出すのじゃないか。私、周囲におります、自分の会社の生活を見ましても、やはりだんだんボーナスが多くなり、給与が多くなってきますと、まず住宅の金を返そう、余ったらひとつ従業員持ち株制度をよけいふやしていこうという、そういう意欲が全般に出てきておりますので、まあまあ、あまりドラスティックなことをして悪いなんと言う必要はないのじゃないか。要は教育の問題であり、自覚の問題であるのじゃないかというふうに、私見としては考えております。
  54. 正木千冬

    ○正木参考人 私も詳しく存じませんけれども、たしか広告税というのは戦争中に一度ぐらいちょっとあったかと思います。しかしその当時は、大体消費財の生産が減ってくるわけでありますから、税収としてはほとんどたいしたことはなかったし、それからやめてしまったと思います。  いまお話しの点、御趣旨はわかりますけれども、しかし広告でもいろいろな広告がありますから、どういうものを課税対象とされるか。いまこちらの瀬川さんの御関係のような、会社の決算報告なんかに税をかけるとだれが負担するかというような問題もございます。その他いろいろありまして、広告税というものはなかなかむずかしいだろう。いま堀さんのお話のねらっていらっしゃることはよくわかります。その中で私は、消費そのものが過度にせき立てられているのが悪いのじゃなくて、実際はもっと賢明に消費すべきである。特にわれわれの周囲で使いますものが、耐久消費財になってきますと相当金出もふえてくる。それをわずか三年くらいでどんどんモデルチェンジをして買わざるを得ないような形にするとか、極端な例になりますと三年でこわれるような設計を初めからしておるというのがクォリティコントロールだといわれておるような次第で、このマスセールというところに問題があるし、もっと生産者が消費者の立場に立って、より実質的な生活を豊かにするような配慮をしてもらいたい。政府はそれに対して、国民生活研究所ですか、そういうところでもっともっとそういった面についてのある意味のアドバイスとか指導をするというような道徳的な配慮が必要なんで、直接に広告税をかけたらすぐそういう弊害がためられるとは私もちょっと考えられないのであります。
  55. 堀昌雄

    堀委員 私が広告税を申し上げたのは、行き過ぎた消費の意欲をかり立てるようなことはまずいと思いますし、しかしいまやまさにそうなっておるわけですから、それを抑制させるためにも効果があるし、財源的にも負担能力があるのではないか、こう思うのでちょっと伺ったのです。  もう一点だけ伺って交代をいたしますが、実は私は先ほど東畑会長とも御論議をさせていただいたのですが、ややこれは個人的な見解になりますけれども社会資本充実をしなければならぬというのがいま非常に日本では重大な課題でございます。この社会資本充実をするために現在は主として税制でいこうという考えでございますから、福田大蔵大臣あたりは間接税の増徴をしようとか、いろいろお考えのようですが、社会資本いうのはかなり長期性の問題でありますから、これは要するに建設公債のような、ほんとう国民の買う国債になるならば、私はこれによって後代の者がその負担を均てんして差しつかえないのじゃないか、こういうのが私の考えでございます。  そこで、実は証取法六十五条は、証券業務と金融業とを画然と区別をいたしておりますが、その第二項に、国債あるいは地方債その他国が担保をする政府保証債については、これは除外をするとはっきり実は証取法六十五条に書いてあるわけです。そこで私は、この際国債をひとつ国民が広く購入するためにも、金融機関、場合によっては郵便局を含めて、そういうあらゆる金融機関の窓口で、法律は認めておるわけですから、国債をひとつ国民が直接買えるような道を開いたらどうか。あわせてそのためのメリットとしては、これは先ほどの非課税問題について正木さんが目的税的に考えることが非常に重要だとおっしゃった点、私も大賛成なんですが、国債についてはそういう国民にはね返る社会資本充実側面もあり、自分たちの租税負担をある程度軽減をし得る道にもつながるというのであるならば、私はいまの五十万の非課税限度を百万円に引き上げてもいいのではないか。そうしてこれを郵便局、金融機関の窓口で売り出すということで、国民国債を買うときにはじめて国債政策がまともな政策になってくる、こう考えますので、これについてひとつ横田さん、瀬川さん、正木さんの御意見を承って私の質問を終わります。
  56. 横田郁

    ○横田参考人 ただいま堀先生お話まことに同感でございまして、国債を広く国民に持たせるという意味合いからいきまして、金融機関の窓口で売れることにすでになっております。まあいまのところやっておりませんが、事情さえ許せば売らせていただいて私のほうはけっこうだと思いますし、それがまた御趣旨に沿うことだろうと思っておるわけでございます。
  57. 瀬川美能留

    ○瀬川参考人 はなはだお答えしにくい問題ですが……。  いま証券業者の国債消化というものはかなり順調に進んでおる、おっしゃるように五十万円を百万円にしていただきますと、証券会社の窓口を通じても十分に消化できる状態になっております。今日では数字の上でいきますと二十世帯に一軒の割合の国債消化になってきておるわけです。国債についての考え方はあなたと全く同感でございます。それから金融機関の窓口でおやりになれるようになっておるのかどうかということなんですが、これはいろいろこの前から問題がありますが、まあ私ども率直に考えると、これからの国債価格とかあるいは社債の価格というものはやはり自由化されていく、価格の変動がある、そして価格の変動があるものを価格の変動のない窓口でお売りになるのが預金者にどういう影響を与えるかということを、よそのことですが心配をします。(笑声)よそさんのことで非常に失礼ですが、それを心配しますことと、それから預金業務に対していい影響があるか悪い影響があるかということを御心配申し上げます。やはりもちはもち屋でやったほうが国民の層に広く行き渡るのじゃないか、そういうふうに考えております。
  58. 正木千冬

    ○正木参考人 簡単に申し上げますと、私は、郵便局その他で一般国民にたくさん国債を持たせようというドライブをかけることは、何か大東亜戦争時代を思い出すような感じが若干いたします。それは小額のそういったものを持っている人たちが絶えず株式価格の変動にさらされるということがあってはまずいのだろう、すると政府がそれを買いささえなければならぬ、そうすると公債の価格が公定価格みたいになってしまう、というようなことが金融政策全体の点においてプラスになるかどうかということになりますと、私はいまお話ししたような点で、国債を特に持たせるためにデメリットのほうが多くならないようにしたい、こういう考えでございます。
  59. 毛利松平

  60. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 横田さん、さらに瀬川さんにまず簡単に、きわめて時間の制約がございますので、御質問をいたします。  貯蓄の増強という立場で税制におけるたいへんなメリットをつけて、これが税制の基本である公平を害するということはしばしば論ぜられてきておるところでありますが、日本の場合にこの貯蓄性向はきわめて高いわけでありまして、個人所得の貯蓄率は一九・七である。外国、アメリカでも六・五%、英国も六・九%、西独ですら一二・二%くらい——非常に堅実な国民といわれる、日本に似ているところがあるわけですが、それでも一二・二%、これから見ると異常に貯蓄性向も高い、そういうようなことを一つ考え、また、かつて三十五年に税制調査会が申しましたように、この税制における優遇措置を実所得等について切ったときがあります。しかしその翌年、何の落ちくぼみというようなことも、影響を受けたと見られるようなことは何ら出なかった。その当時はかなり苦しい時代であります。それでもそういう状態であった。しかもここ数年この貯蓄性向は高まってきているというようなこともあるわけでありますが、これは可処分所得の増大ということとは九八ポイントくらいの高い相関関係にあるということで、むしろそのことに原因があるのであって、私ども日銀から出している貯蓄に関する報告書などを見ましても、どういう動機で貯蓄をするかという中でも、こういうメリットが税制においてあるから貯蓄するんですというようなことは全然一つも出てないんですね。全く国民はそのことについてはむしろ無関心である。しかしながら、老人になったらたいへんだからとか、あるいは病気になったらたいへんだからとか、子供の教育のためにというようなことでどんどん貯蓄をするわけですね。そういうものであるということを考えるならば、これほどの税制における公平の原則を害してまでやる政策効果というものはもう全くないのではないかということを強く感じるわけなんであります。そういう立場からいえば、経済の伸展と同時に可処分所得もふえていくということにまかしても、もう税制のメリットをかりに全部切ったとしても貯蓄が減っていくというようなことはまず考えられないのではないか、かように思うわけなんですね。その辺のところ、どうもいままでそういうことで体制ができ上がっているから、これを一気にやるということは激変があるんじゃないかということで、過保護になれてきたということがあるんじゃないかと思うわけです。そういう点で御両所からお答えをいただきたい。  もう一つは瀬川さんにお伺いしたいことは、自己資本充実ということで配当軽課措置あるいは配当控除制度ということが設けられてきたけれども、その点では自己資本充実というようなことはどんどん悪化するばかりで、これだけメリットをつけておきながら、先ほど証券の問題について瀬川さんも大いに論ぜられたんだけれども、これはたいへんな減りようでありまして、自己資金調達状況の中で、自己資金は三十五年当時にはまだ三〇・六%、これが四十二年の下期になりますともう二六%。そして自己資本比率を見ますと、三十五年当時の二八%からいまや二一・三%に落ちている。これはさらに四十三、四十四年と落ち続けている。こういう状況にもあるわけです。この税制措置というものがそういう面では、自己資本充実だという政策目標を掲げてやったんだけれども、こういう逆の面しか出ていない。これは経済全体の運営の問題に問題があるのであって、税制がどうカバーしようとその政策目的は達せられないという考えを持つわけなんです。そういうような点でどうお考えになられるか。この問題はもう廃止していいのではないかと私ども考えるわけなんですが、その点についてひとつ明瞭に簡潔にお答えをいただきたい。
  61. 横田郁

    ○横田参考人 ただいまお話しのございましたように、可処分所得の増大と貯蓄の増大というものは非常に深い相関関係があることは、私は確かだと思います。ただ、最近の動向を見ますと、御承知のように、先ほど堀先生も御指摘になりましたように、消費性向が非常に高くなっておる。デパートの売り上げの伸び率を見ましても非常に高い。日銀券の発行の増加ペースを見ましても非常に高い。こういう情勢が続いております。したがって、日本人が過去において貯蓄率が非常に高かったということは、これは敗戦によってストックがゼロから出発しました。その関係からどうしてもフローでは高くなってくる。これは当然の結果だと思います。しかし、現在の段階で、先ほど冒頭に申し上げましたように、ストックではアメリカの十五分の一というような状況でございますし、最近の消費性向の高まりを見ますと、どうしても貯蓄はこの国際化時代を迎えて奨励をしていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。それと、最近の貯蓄率、可処分所得で貯蓄の純増額を割ったものでございますけれども勤労世帯の分は、四十三年は一二・六%でございましたが、四十四年は一二・一%と、〇・五%低下をしているようなわけでございますので、どうしてもこの際貯蓄増強の方策が必要であろうというふうに私は考えているわけでございます。来年の可処分所得がどのくらい増大するかということは問題でございますけれども、可処分所得が増大した場合に、はたして過去と同じようにその比率が貯蓄に向かい、同じ比率で消費に向かうかというと、最近の傾向を見ますと、消費に向かう傾向が非常に強うございますから、私は、どうしても貯蓄増強策が必要なんじゃないかと考えております。  それから、税制がはたして貯蓄増強にどの程度の影響があるかというのは、経済情勢とかベースアップとかその他いろいろな問題がからみまして、正確な数字は把握しがたいわけでございますけれども、われわれのほうで調べましたところでは、税率が緩和されたときには個人貯蓄は伸び、税率が上がったときには個人貯蓄の伸び方が減っているという数字もあるわけでございますから、決して税制と貯蓄との関係が全く無関係であるということは言えない、断定はできない。これは非常に議論の分かれるところでございまして、ほかの要素がからみ合っておりますからむずかしい問題でございますけれども、決して断定するわけにはいかないと考えておるわけでございます。  はなはだ簡単でございますが……。
  62. 瀬川美能留

    ○瀬川参考人 お答えいたします。  税制が自己資本充実に何もきいてないじゃないか、もうやめてもいいじゃないかというようなお話と、ここまで国民の蓄積ができたらもはや税制で優遇する必要はないじゃないか、ほうっておいても貯蓄がふえていくじゃないかというお話だったように承りますが、第一の点につきましては、これはやはり日本の国の個人並びに企業の蓄積が先進国に比べて極端に少ない、現状においてはなお少ないということで、このくらいのところで満足しちゃいけない、むしろ自由化を控えて非常に危険にさらされておるということを私はさっき申し上げたつもりでおります。  それから、第二の点でございますが、自己資本充実、いままではそれでよかった。そういう情勢に立たざるを得なかった。もし自己資本充実税制がなかりせばもっと自己資本が低下しておったろう。消極的にささえるという役割りは果たした。こんな大事なときだから、もうひとつ思い切ってやっていただきたい。もっともっと抜本的な自己資本充実の対策を考えていただきたいというのが私の考えでございまして、税制の効果というものは、やはり五年、十年、長期にわたって見ていかなくてはならないし、一九七〇年からここ数年のうちに日本経済の立場が非常に変わるときでありますから、そこでひとつ、ここでむしろ思い切ったことをやっていただくのがほんとうではないか。ことに株式選好というものは、ある一定の水準まで国民の金融資産がたまりますと、さしあたり郵便貯金、銀行預金、保険というようなところから、次にやはり有価証券に回ってくるという順序でありまして、いまそのきざしが見えている。  それから、自己資本充実が一向行なわれていないじゃないかということでありますが、最近一、二年の間に、非常に証券市場の模様が変わってきた、そして配当に対する経営者の考え方も変わってきた。資本調達に対する方法も変わってきた。時価発行、時価転換社債というようなものがぼつぼつ出てきたことは、これは自己資本充実が緒についてきたということでありまして、いままでやっていただいた措置は、低下を一そう低下するのを食いとめたというメリットは大いにあったが、これからうんとひとつやっていただかなくてはいかぬ、もっと抜本的な対策を考えていただかなくてはいかぬということを私はひとつ御認識をいただきたい、そう思うのであります。
  63. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 議論をする場ではございませんので、御意見として承っておくわけですけれども……。  正木先生にひとつお伺いしたいのですが、税制調査会でも、今日の法人税の問題につきましては、いわゆる法人擬制説の上に立って、株主の法人税はいわゆる株主に帰属すべきものの先取りなんだというようなことは、国民的な感情からいっても、そういうことではない、これはもうすでに法人そのものの独自の負担として課税をすべきところにきている、そういうようなことを指摘をされておるわけであります。そういうようになってくるのが当然であろう、このように私ども考えるわけです。  そうなりますと、今日、今度の改正で若干変わるわけですけれども、現在の所得金額三百万円を中心にして比例税率を三五、二八というようにとっておる。こういうようなものから、やはりこれは所得の高いものにはかなり超過累進的なものを、たとえば最低を二〇%なり二五%ぐらいにして、五〇%ぐらいまでの間にこの累進税率構造というものを持ち込むのが、税の公平の立場においても必要なのではないか、こういうふうな感じをいたすわけなんでありますが、専門家として正木先生どのようにこの問題をお考えになっておられますか。
  64. 正木千冬

    ○正木参考人 お答えいたします。  たいへんむずかしい問題なんでございますが、法人税を、シャウプ税制のときに、従来の実在説的な取り扱いから擬制説的な取り扱いに変えられたわけでございますが、以来二十年近くなっております。その後日本経済がどんどん大きくなっていくに従って、企業実態法人税制のいわゆる個人の集合だという実態との乖離といいますか、ますます離れていくので、どうしてもこれは理念的には支持できない、むしろごく小さな個人企業的な法人成りしたようなものは別問題としまして、市場に上場されているような企業を中心にして考えますときの法人税あり方というものは、やはり実在説的な考え方にならなければならないと思います。そんな意味で、法人利潤税の構想が調査会からも出ました。それが私ども財政学をやっております連中から言いますと、大体その方向に傾いていると思いますが、その中で御指摘のありました、もし法人税が実在説的な考え方考えたときに、累進課税にするかしないかということになりますと、私の意見はかなり分かれてくると思います。累進課税というのは、これは人税的な、人間のいろいろな経済的事情とか担税能力とかいうようなことと関連して立てられているシステムで、企業というようなもののただ収益の大きさ、大小によって比例負担を、特に累進負担にしなければならないかということについてのふん切りがつきにくいし、実際問題としましても、企業の場合に、かなり所得の純益の操作ができますし、いろいろとかえって不公平なことがあります。むしろこれは実在説的な考え方をとりましても、比例税、若干の軽減税率を伴っておる、そういったものが一般的な考え方じゃないかと思います。
  65. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 終わります。
  66. 毛利松平

    毛利委員長 二見君。
  67. 二見伸明

    ○二見委員 最初に、配当控除について御意見を伺いたいと思いますけれども国民感情といたしまして、率直に不満に思うのは、給与所得者の場合は、夫婦子三人で百二万円以上になると税金を取られる。ところが配当所得の場合には三百四万円までは税金がかからない。これは新聞でもかなり大きく報道はしておりましたけれども、ここに国民としては大きな不満感があるわけです。税の公平という面からいってこれはおかしいじゃないか。先ほど瀬川参考人からは株式の大衆化ということで、これに対する弁護論があったようにちょっと聞いておりますけれども、こういう点については横田参考人あるいは正木参考人はどういうふうにお考えになっておるか、まずお願いしたいと思います。
  68. 横田郁

    ○横田参考人 配当控除の問題につきましては、私のほうはちょっと畑違いでございまして、肝心な瀬川さんが退席されましたので、ちょっとお答えしにくいわけでありますけれども、配当控除の額が先ほど、標準世帯で二百八十二万円から三百四万円になった。むしろ上がったということは、非常に何か国民感覚的には妙な感じがすることは私はごもっともだと思うわけでございます。これはむしろ控除額は引き下げられまして、それで所得税減税が一方で行なわれた結果上がったわけなんで、結果としてそういう数字が出てきたということになるわけなんで、まことにどうも形としてはちょっとおかしかったように思うのでございますが、一方の所得税減税というものが非常にこれに大きなウエートをもって作用したというふうにお考えいただければいいのじゃないかと思うわけでございます。勤労者との比較において云々という問題がございました。もちろん勤労所得税につきましては長期税制は今回全部実現をしたわけでございます。今後もさらに税制調査会減税の方向に向かって研究を進められると思いますので、大体おっしゃった点については御期待に沿えるような方向で進むんじゃなかろうかと思います。ただ所得税減税されますとまた免税点が上がりますので、だんだん上がってくるかもしれませんですけれども、その辺はどうも私にはよくわかりませんので、主税局長さんおられますので、ひとつ……。   〔委員長退席、上村委員長代理着席〕
  69. 正木千冬

    ○正木参考人 私、先ほど問題として提起したような次第で、特にそれにつけ加えて申し上げることもないわけです。  この配当控除というものが結局法人税の帰着の問題に関連しているわけで、それは完全に個人段階で二重課税を償却するのだという考え方で、あるいはほんとうにいまの税率がそのとおりになっているかどうかということはわかりませんし、実際問題として、先ほどもちょっと申しましたように、どうも法人の払う税と個人の受け取る配当とは実際上つながりはない。そこにいまある配当控除なりあるいは場合によっては税額控除なりの制度がございますが、それは結局今度は違った立場で、むしろ証券市場を育成するような刺激としてとらえてみて、実際はいまは税制上の基本観念から二重課税云々ということよりも、いまでは証券市場奨励のための一つのささえ棒としてあれが是認されておる。ただ、あまりにそれが勤労所得の場合の課税最低限と開いてきますと、今度は逆にそちらのほうからの突き上げが来るという点で、そこを見合いながらやっているので、あれが何%であるべきかということは、まことに理屈を離れた一つの見合いでやっているのじゃなかろうか、そういう感じで、漸次それはやめていく。それをやめていくためには、やはり基本的には法人税そのものの構造を変えていくというところにいかなければ徹底しないと思うのですが、いまのところは決して理論的に正しいという根拠があるのじゃなくて、むしろ証券市場の奨励のささえ棒としてある程度やっているのだというように私は解釈しております。
  70. 二見伸明

    ○二見委員 正木先生にお尋ねしたいのですけれども、四十三年の資料ですけれども、一世帯平均当たりの貯蓄保有高の推移で、株式が一世帯十四万六千円というデータがあるわけです。これはサンプル調査ですから、実際そのとおり正確であるかどうかちょっとわかりかねますけれども、   〔上村委員長代理退席、委員長着席〕 先ほど、これはほんとうは瀬川参考人に聞くのが筋なんですけれども、株式が大衆化したのだから配当についても優遇すべきだということで、その立論に、一世帯当たりの株式貯蓄が低いという現実から見た場合、株式が大衆化したのだから優遇するということはそれほどの恩恵があるのかどうか。私はその点ではあまり恩恵がないのじゃないかと思うわけです。むしろ高額の株を持っている人に対する恩典であって、一般には多少の恩典はあるかもしれないけれども、それほど大きなものではないのじゃないだろうかという感じがするわけですけれども、その点はどうでしょうか。
  71. 正木千冬

    ○正木参考人 いまお話しのサンプル調査の例、一世帯十四万円でございますか、それの当否は私何とも申し上げかねます。株式の持ち方にもよると思うので、先ほどお話しのように、会社の持ち株制度に参加しているものは、そのサンプル調査の回答のときにどういうように答えたのだろうかというようなこともございましょうし、それから投資信託を持ち株に入れたか入れないかというような、いろいろな聞き方、答え方があると思いますので、私もそこまで調べませんとわからないと思います。  私はどちらかといいますと、株式を大衆化するということはこれはあり得ると思いますけれども、そのために特に公平課税原則を破ってまで、いまのようなゆがんだ税制を維持しなければならないということはないのじゃないか。むしろわれわれは今後ますます、われわれといいますか、働く人たちの働く意欲というものが大事なんで、これがやはり国民所得なり国民経済の発展の原動力なんで、何も貯蓄、貯蓄と、そういうものが原動力じゃない、働く人が働く意欲を持つということが必要だ。それをいまのような極端な資本保護的な政策を続けていって、それが素朴な勤労意欲を阻害しないのかどうか、そこが一番おそるべき問題ではないか、こう考えます。
  72. 二見伸明

    ○二見委員 横田参考人にお尋ねしますけれども、利子課税ですが、貯蓄増強に非常にメリットがあるというお話でございますけれども、私はどうもそうは思わないのですね。それで実は意見が反対になってまことに申しわけないと思いますけれども昭和三十四年の上期から三十七年の下期まで、この間の個人の定期増加率というのが六・五%なのです。このときには一〇%分離だったのです。五%分離になった三十八年から三十九年にかけては個人定期増加率は八%に上がっているわけです。それから四十年上期から四十一年下期には一〇%分離になりまして今度は八・七%、こう見ますと、利子課税を優遇したからといってそれがそのままダイレクトに貯蓄に振り向くとは言い切れないのじゃないだろうか、あまり相関関係はないのじゃないだろうかという感じがするわけです。私、この貯蓄というものは決して否定するものじゃありませんし、貯蓄は当然必要なことだとは思いますけれども、利子を優遇したからしないからということでもって貯蓄増強をはかるのじゃなくて、先ほどもお話がありましたように、個人の可処分所得の増大のほうにこそむしろ貯蓄の増強のウエートが大きいのじゃないだろうか、こう考えるわけですけれども、その点、そういう観点から利子課税に対する優遇措置というのは、私たちとしてはあまり賛成はできないわけなんです。その点についてはいかがでしょうか。
  73. 横田郁

    ○横田参考人 いまの御質問につきましては、先ほどちょっと私概括的に触れてはおいたわけでございます。  おっしゃるように、税制の変動によって貯蓄の動向がどう動くかという問題は、単にそれだけを抽出していろいろ論証するわけにまいりません。いろいろの経済情勢の変転等によって影響されるところが多いわけでございますから、この統計の数字がはたして税制と貯蓄との関連を的確に立証しているかどうかという点については非常に問題がございます。ただ、御指摘になりました点について若干御説明を申し上げますと、おっしゃるように、五%分離の三十八年四月から四十年三月まで、これが個人の定期性預金は八%増加した、ところが四十年の四月から四十二年の六月まで一〇%分離というときには八・七%に上がったじゃないか、分離課税率が上がっても個人の定期預金は上がったのだというお話がございましたが、これは全国銀行の個人預金の数字でございまして、むしろ全般的な金融機関、たとえば相互銀行とか郵貯、農協、信用金庫、貸付信託その他を含めますと、五%から一〇%になりましたときには、五%のときは一〇%の増加率、一〇%に上がりましたときは八・八%と、かえって貯蓄全体は下がっております。銀行としては上がっておりますけれども、貯蓄全体としては下がっておるという数字が出ております。それから、この間に、たしか私の記憶では、少額貯蓄非課税制度が拡充されましたので、そういう意味で、一〇%分離がありましても少額貯蓄非課税制度の利用者がふえるというようなことで、貯蓄率が上がっているということが抽象的には言えるわけでございます。  これははたして正確なお答えになるかどうか、どうも統計というものはいろいろの要素がからみ合ってきますのでわかりませんのですが、少なくともやはり貯蓄を税制面で優遇するということは、世界各国やっている国が多いわけでございますし、また、ことに財政支出を伴ったプレミアムをつけるような西ドイツのような国もございますししますので、貯蓄奨励策を行なうということは常識ではなかろうか。いわゆる新しい理論でいきますと、可処分所得の増大に比例するから、何も貯蓄は増強策を講じなくても自然にふえるのだという考え方はもちろん学者の中にはございますけれども、現実の世の中はそうではない。むしろ消費性向が非常にいま高くなっている。先ほど申しましたように、四十四年は四十三年に比べて〇・五%貯蓄率が下がっておる。そういう状態でございますから、やはりこういう時期には何か優遇措置を講じていただきたい、こういうことでございます。
  74. 二見伸明

    ○二見委員 最後に、正木参考人にお尋ねいたしますけれども、先ほど一番最初に正木参考人、たしか法人税は景気調整としての役割りを果たすべきだという御意見をお述べになられたと思います。私もその意見は賛成なんでありますけれども、ただ瀬川参考人のほうはむしろ景気に中立であるべきだ、こういうお立場での陳述があったように思いますけれども、その瀬川参考人の中立であるべきだという意見を踏まえた上であらためて正木参考人の御見解をお伺いして終わりたいと思います。
  75. 正木千冬

    ○正木参考人 お答えいたします。  非常にむずかしい問題でございますけれども、税をいろいろ景気調整に使うというやり方が各国によって違っておりまして、たとえばイギリスのように、国内消費税的なものをレギュレーターとして初めから考えておる、あるいは所得税等を使うということもございます。それは結局何を使うかは、それぞれの国における景気変動、所得変動を小幅にする力があるということによるのだと思います。日本のように、主として景気変動の起こるのは消費の変動よりも企業の設備投資の変動あるいは在庫投資の変動、こういうことになります。そうしますと、それをアンチサイクリカルに作用をさせるというのは法人税が一番きき目が早い、それと金融、この両面を働かしていけば、かなりブレーキとしてはきくのではないか。これが税制をやっておるほうの人たちの大体の意見であると思います。そういう意味において、私は今後日本において、金融だけによって景気調整が果たされないこの時代において、ますます必要になってくる。その場合に従来よりも思い切った、たとえばそういった制度を何とか考えなければならない時期に来ているだろうということを申し上げたわけであります。そのためにはやはり、前に不景気のときに下げたならば、それは好景気になったときすんなりとそのまま戻してくれるような財界その他の空気になっていなければ、とうていそれは幾ら法律をつくってもできないのであります。日本はすでに数年前に景気調整の意味で、特別償却でありましたか、それを政府がつくりまして、それをやめることができるというようなことがきまっておるのでありますが、それが実際上この前の前でありましたか、日銀でやりましたときに発動できなかったというようなことがありまして、要するに幾ら制度をつくりましても財界がそれを受け入れてやるという気込みがないと私はできないと思う。そういう意味において今度の法人税の二%戻しというのが二%にならなかった。そうしてしかも二年間の限時法だというようなことについて非常に残念であった、すんなりいかなかったことが非常にまずいのではないか、こういう感じがいたします。
  76. 二見伸明

    ○二見委員 ありがとうございました。
  77. 毛利松平

    毛利委員長 竹本君。
  78. 竹本孫一

    ○竹本委員 大体論じ尽くされましたので、きわめて簡単に横田参考人に二つほど伺いたいと思います。  特別措置の問題ではありませんけれども、例の貸し倒れ引き当て金の問題ですけれども、これが四十四年九月末で大体六千五百三十億円くらいあるようであります。そのうちに法人税法の第五十二条による引き当て率千分の十五、これが大体五千億円、あとは統一経理基準による行政指導で千分の三というのがある。問題は、これが六千五百三十億円いまあるというんだけれども、非常な勢いでふえている。あっという間に大体倍になったということでありますが、そこで伺いたい点の一つは、これがほんとうに制度の本来の目的のように活用されておるのであろうか、中小企業等のために、貸し倒れの引き当て金としてこれだけのものがあるんだから、相当思い切って積極的に貸し出しをしておられるということであるんであろうか、そのわりにばかに引き当て金がふえ過ぎておるではないか、こういう点について、数字は別といたしまして、全体としてのお考えを承りたいと思います。
  79. 横田郁

    ○横田参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  銀行の貸し倒れ引き当て金の繰り入れ率そのものは、ほかの業種と比べましてそれほど高いものではございません。一例を申し上げますと、大体ほかの業種とほぼ似通った数字でございまして、卸売り及び小売り業が千分の二十、割賦販売を主とする小売り業が千分の二十五、製造業が十五、金融及び保険業が十五、その他が十二、こういうふうになっておりまして、大体バランスのとれた数字でございます。ただ、それじゃ実際に貸し倒れが少ないんじゃないかということをおっしゃられるわけでございますけれども、金融機関といたしましては、今度の国際化時代を迎えまして、いろいろと国際競争力強化、あるいは中小企業の設備の近代化というものに積極的に融資をしていかなければならない状態でございますし、それから過去の数字と比べますと、一つの貸し出し金のロットというものが非常に大きくなっておりますので、どうしてもこの程度の貸し倒れ引き当て金はわれわれとしてはほしい。それから、おっしゃったような点で金融機関としては貸し倒れ引き当て金を充当するということがそれほど目的というわけではなくて、できれば左前に傾きつつある企業をできるだけ援助していって、これを更生にもっていくということが一つの目的でございますので、現実の利用率が非常に少ないという御指摘があろうかと思います。  そういったようなことが一つと、それから貸し倒れ引き当て金を引き当てるにつきましては、主務官庁の認定が要るわけでございますけれども、この認定の基準が非常にきついものでございますから、われわれが貸し倒れ引き当て金の充当をしたいと思いましても、なかなか充当できないというような状態もございますので、これももう少し緩和していただければ非常にありがたいというふうに考えております。そうなればもっと多くの貸し倒れ引き当て金というものが実際に充当されることになろうかと思います。  それから、中小企業融資の問題につきましては、率直に申し上げて数年前の引き締め時期と異なりまして、中小企業日本の国際競争力について大きなウエートを占めているということをわれわれはよく認識しておりますので、このごろの資金配分につきましては、中小企業に相当のウエートを持って資金配分をしているわけでございます。したがいまして、世上伝わりますように、いまの引き締めはむしろ大企業にきいているというようなことが新聞にも報道されておりまして、中小企業の資金繰りなんというものは大企業ほどではないんだ。これは率直に申し上げまして、私のほうの毎月の融資配分も、十年ほど前の引き締めのときは、大企業にほとんどワクの配分が取られまして、中小企業に回るものがほとんどなかったといっていい状態、あるいはマイナスであったというような状態もあったわけでございますけれども、このごろは中小企業のほうにウエートを置きまして、ワクの配分も半々ぐらいに上がってきております。そういう状態で、中小企業にはわれわれとしては非常に積極的に取り組んでおるつもりでございます。
  80. 竹本孫一

    ○竹本委員 引き当て金の充当の条件がむずかしいといったような問題もありましょう。しかし、私どもが心配いたしますのは、やはり中小企業に対して、これはあぶないといったようなときに、貸し倒れ引き当て金もあるのだからということで、積極的に行なわれる分野というのが比較的少ないのじゃないか、金融引き締めの今日の段階の問題もありますし、一番大きな問題はシェアを、資金配分のシェアの問題として、やはりもう少し高めていかなければならぬじゃないかという考えもあります。まあ時間もありませんので結論として申し上げますと、この引き当て金が単に益金の社内留保という役割りをしておるということの誤解を生じないように、全体として中小企業等にも、特に今日の引き締めの段階においては積極的に貸し出しをやっていただきたいという要望を申し上げておきたいと思うのであります。  それから、時間の関係で、もう一つ申し上げたいのですけれども、それは、資本の自由化とか経済の国際化とかいうことが盛んにいわれておりますし、金融の効率化とかプライスメカニズムとかいうことばも非常に出てまいっておるわけでございますけれども会長さんという立場でお伺いしたいのですが、金融界のそうした新しい経済の動きに対する対応の姿勢を整え直すというテンポが、客観情勢に対して少しおくれてはいないかという心配を私はしておるのでございますけれども、その点についての参考人の御意見を伺いたいと思います。
  81. 横田郁

    ○横田参考人 先ほど結論としておっしゃいました中小企業の問題につきましては、数年前の金融界に対する御認識といまだいぶ変わってまいりまして、銀行の経営者としましては、できるだけ中小企業に重点的に資金を配分しようという姿勢になっておることは、これは私のほうの銀行だけではなく、おそらくどこの銀行もそうだろうと思いますので、今後とも先生の御期待に沿えるようにわれわれも努力いたしたいと思っております。  それから、国際化とか自由化の問題に対しまして、金融界の対処のしかたが少し手ぬるいのじゃないかというようなお話がございますけれども、御承知のように金融制度調査会で、金融の効率化あるいは自由化とプライスメカニズムの活用というような問題が現在論議されている段階でございまして、仄聞するところによりますと、本年の六月ごろにはその答申が出てくるのではないかと思われます。したがいまして、その答申の出方によってこれが促進されることになるのではないか、一応われわれとしては金融制度調査会答申待ちというようなかっこうでおるわけでございますけれども、これもあと二、三カ月の間に出ると思いますので、それからの動きになろうかと思います。ただ、問題は大蔵当局の御援助もございまして、金利規制の弾力化とかあるいは配当の自由化とか店舗行政の自由化とかいうものが逐次打ち出されてきております。その方向に歩み続けてきておるわけでございます。  それから金融業の資本の自由化の問題でございますけれども、これがいつ日程に乗ってまいりますか、われわれちょっとつまびらかにいたしておりませんが、第三次資本の自由化に乗りますか、第四次資本の自由化に乗りますか、これはわかりませんが、いずれにしましても銀行が資本自由化のワク外になるということは、三次か四次かわかりませんが、考えられないわけでございまして、進んで銀行も資本の自由化に立ち向かっていかなければならないというふうに考えております。ただ、これにはいろいろデリケートな問題がございまして、外国銀行とのいろいろな関係もございます。まあ外国銀行には外国銀行のいろいろな風習、習慣がございまして、単にいま全銀協でやっております自主規制とか、そういうようなことにはなかなか従わないような習慣があるようでございます。法律できめてないとなかなか米国系銀行は承諾をしないというような問題もありますので、まず、銀行業の資本自由化の前提としては、国内法の整備あるいは行政指導ということで外銀が納得するかどうか、これも問題だと思いますが、そういうようなことを整備しませんと、銀行業の自由化は国民大衆に非常に、直接影響があるところでございますので、まずそれをやっていただいてできるだけ早い機会に自由化をしていきたいというふうにわれわれ考えているわけでございます。  はなはだ的を射ないお答えかもしれませんけれども……。
  82. 竹本孫一

    ○竹本委員 前向きの御努力を要望いたしまして、きょうは質問を終わります。ありがとうございました。
  83. 毛利松平

    毛利委員長 小林君。
  84. 小林政子

    ○小林(政)委員 短い時間でございますので、簡単に二点ばかり正木先生にお伺いをいたしたいと思います。  私お伺いしたいのは、租税特別措置の整備合理化ということの中で、新たに租税特別措置を新設したりあるいはまたその延長を行なったりあるいは範囲の拡大を行なったというようなことがございますけれども、特にこの中で、企業体質の強化ということで今回の改正案の条文等を見てみますと、特定合併がその中身のおもなものであるように思われます。しかもこの特定合併というのは政令で定めるということになっておりますので、私も実はその内容について、政令がまだ出されていないという中ではっきりいたしておりませんけれども、主として大企業の合併を予定しているようでございますが、現在の日本の大企業経済力の実態というようなものから見まして、このような特別な優遇措置をはたしてとる必要というものがあるものかどうか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  85. 正木千冬

    ○正木参考人 はなはだ申しわけないのですが、私、きょうの陳述に出るようにお話ありましてからあわててこのあれを見たのですが、なかなか、こまかいことでわかりかねることが多いのであります。特にいまお話しの特定合併の場合の特定とはどういうことを考えているのかということは、私がちょうだいしました資料には何一つ、読んでみましてもわかりかねるので、実はこれ以上のお答えについては、ここに政府委員もおられましょうから、お聞き願いたいと思います。  私は元来、合併その他のことについて、これは行政措置あるいは指導するということは当然といいますか、そういうことも考えられると思いますが、特にその合併のためにどういう増加負担があって——これは特別な、たとえば資産の場合の圧縮記帳だとかいろいろなことがありましょうが、そういうような具体的な事情がはっきりいたしませんと、それは何でやるべきかということはわかりかねるので、私はこういった特別措置はなるべくやめるべきだというので、むしろ積極的なこういうフェーバーを与えなければならない理由というものをもっと、法案と同時に明らかな資料として政府提出すべきだと思うのであります。
  86. 小林政子

    ○小林(政)委員 それでは次にお伺いいたしたいと思いますけれども、特に中小企業の置かれている現状の問題ということにつきまして、先ほど法人税率の引き上げについては、正木先生のほうから、四十年不況の段階で三%一応下げたものを直ちに本則に戻すべきだというお話でございましたけれども、それとの関連で、実は現在法人資本金の割合が、一億円以下の中小法人が九九%を占めております。もちろん、今回の税率の引き上げの問題については、三百万円以下ということで措置がとられておりますけれども、一億円以上というのはわずか一%にも満たない数でございますけれども、実際にこの一億円以上の大企業が納める法人税というものが、大蔵省の資料によって推計をいたしますと、大体六割ということになります。推計でございますけれども、この割合から見ますと、法人税率の引き上げによる平年度の増税が九百六十八億のうち、推計しますと約四百億ぐらいの程度、中小法人負担になるのではないかというふうに考えられます。特にその中でも中小企業に対する特別措置というものを見てみますと、中小法人に対しては一応中小企業対策の拡充費というようなもので八億円とか、あるいはまた同族会社に対する役員賞与の損金算入というような形で三十三億、あるいはまた中小企業の同族会社の留保所得課税軽減ということで百八億、合計百五十一億という軽減が行なわれておりますけれども、差し引きやはり相当の増税ということが出てくるわけでございます。したがって、現在の日本における経済機構の中で、大企業はともかく、中小企業の置かれている現状から見まして、今度のこの改正につきましてはどのようにお考えになられていらっしゃいますか。私は、中小企業については特別の何らかの措置がされるべきではないかというふうに考えておりますけれども、これらの点について先生の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  87. 正木千冬

    ○正木参考人 私も御同様に、中小企業の特に零細な部分の企業についての法人税負担について、考慮する必要があると思うのです。それはいまの体制で保護をしたらいいのか、それとももう少し違った形で、法人であるけれども個人的な取り扱いを考えて、その形でもって保護すればいいのか、いろいろあると思うのです。いまのままでいけば、やはりやるとすれば軽減税率のほうを片方据え置いたままで大きいほうを上げるということになりましょうし、それから同じ軽減の場合でも、やはりいまのようなままでいきますと、軽減税率の大半を大会社が使っておる、その一部が中小企業のあれに回っておるということなので、その関係も何とかならないだろうかというようなことも考えられるわけであります。ただいまの景気情勢下において、中小企業が一がいに非常に困っているともいえませんし、ある場合においては非常に利益率等がいい会社もあると思うのです。そういう点で一がいにはいえませんので、さっきもお話しいたしましたように、非常に零細なものについての処置は、いまの法人税の取り扱うのにふさわしくないのじゃないかというのがある、それは別個に考えなければならない、こういうふうに考えます。
  88. 小林政子

    ○小林(政)委員 どうもありがとうございました。これで終わります。
  89. 毛利松平

    毛利委員長 これにて、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十九分休憩      ————◇—————    午後四時三十五分開議
  90. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を続行いたします。阿部助哉君。
  91. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まず第一に、一昨日でありますか、わが党の堀委員からの質問で、所得税課税最低限等を来年以降もまた検討し、引き上げるような話があったように私聞いておるのでありますが、その点はどうでしょうか。
  92. 細見卓

    ○細見政府委員 大臣が堀先生にお答えいたしましたのは、所得税減税は今後も重要な税制改正の項目であり、所得税税制改正減税の大きな柱の一つ課税最低限の引き上げを考えておる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  93. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 何か前には、当局のほうでは、所得税課税最低限はヨーロッパ並みになった、まあ大体ヨーロッパの所得水準を抜いたので、来年以降あまり引き上げないような話があったように、私新聞等で拝見した記憶があるのですが、そうじゃなかったでしょうか。
  94. 細見卓

    ○細見政府委員 今回の税制改正の基礎にいたしました四十三年七月の長期税制答申におきまして、課税最低限が百万円程度になれば、それはいわば貯蓄のためのゆとりのある水準でもあり、また諸外国の水準に比べてそこそこの水準であるわけであるから、一定額を目標として掲げて、それを実現するというような形での税制改正考えなくてもいいので、物価なり所得水準なりの推移を見て考えていけばいい、スローガン的にものを掲げなくてもいい、そういう言い方をしたわけでありまして、その辺がいろいろに伝えられたんだろうと思います。
  95. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そういたしますと、来年度以降は所得水準であるとかあるいは物価の動向といったような観点から、これはまた考慮する、検討する、こういうことでございますか。
  96. 細見卓

    ○細見政府委員 所得がふえてまいり、物価がある程度上がるということであれば、そのときの状態におきまして財源事情その他総合的に勘案して、やはり所得税は、所得がふえます結果累進的に税負担が重くなる、それと物価との関係あるいは全体の財政需要の関係等を見ながら、所得税改正が大きな税制改正の柱になることは今後も同じであると思います。
  97. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 よく大蔵当局では、外国との比較をしてどうだこうだと言いますけれども、この比較もなかなか私はむずかしいことではないかと思うんですね。ただ平面的に、百万まで課税最低限が引き上げられたというけれども資本蓄積の状況であるとか、あるいはまたいろいろな児童手当等の給付の問題であるとかというようなものを考えも総合的に比較をしないと、ただ平面的というか、単純にこれだけ比べてみて安い高いということにはどうもならないと思うのでありまして、そういう点で、課税最低限考えるその基礎というのは一体どこなんだろう、何が一番基礎なのだろう、それが少しはっきりしませんと、皆さんと私のほうで論議をしてもなかなかかわかない問題であり、かみ合わない問題だと思うのですが、その一番の、課税最低限をやるという原則というか、基礎というものはどこにあるというふうにお考えになっておりますか。
  98. 細見卓

    ○細見政府委員 理屈っぽく申し上げれば、課税最低限は税率と組み合わすことによりまして、どの程度の階層からどの程度の累進度をもって所得税制を組み立てるかということになるわけであります。しかし、そういう学者の理屈っぽい話を離れて、現実的に判断するにあたりましては、やはり所得税が基幹的な租税といいますか、いわば租税の基本であるという期待にもこたえ、一方では国民の担税力にも即応しながら、また一方、所得税に期待されまする所得再配分機能を発揮する、そういう意味におきまして、課税最低限をどの辺に置くかというのは、そのときそのときの国民所得水準なり、あるいは所得の階層分布というようなことを考えながら適正に定めるべきでありまして、したがいまして、そのような意味におきましては、いわゆる最低生活費というようなものは、当然にと申しますか、課税最低限がその最低生活費を上回っておるものであることが望ましいことは当然でございます。
  99. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま担税能力であるとか再配分機能であるとかいう形でいろいろおっしゃった。そのおっしゃるのは、いろいろな面から配慮せねばいかぬことはわかるが、その一番もとになるのは、生活費非課税という原則がやはりそこにあるというふうに私は考えるのでありますが、その点は間違いですか。
  100. 細見卓

    ○細見政府委員 最低生活費に食い込まないような課税最低限であることが望ましいことは、もちろんおっしゃるとおりであります。
  101. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、どうもそこに一番の大きな基礎というか、それがないと、あとの問題はいろいろ議論しましてもなかなかこれはわからぬ問題でして、あなたのほうと私のほうとこれは意見がかみ合わない。外国との比較をしてみたって、生活の様式も違えば給付内容も違うというようなことになるとかみ合わないのでありまして、私は、いま局長がおっしゃったように、生活費非課税原則というものは、やはり課税最低限論議する場合の一番の土台だ、こう考えるのでありますが、まあ大体それらしいお答えでありますので次へ移ります。  そうしますと、当局では、日本経済の現状の中で、国民の生活費というものは一体いまどの程度が適当なんだ、標準世帯でどの程度なんだというふうにお考えになっておるわけですか。
  102. 細見卓

    ○細見政府委員 先般来たびたび出てまいります四十四年の家計調査の結果の速報によりますと、全国の平均勤労世帯の実収入は百十七万円になっておりまして、これから租税公課等を差し引きました可処分所得が百八万円。百八万円のうち二十万円程度が貯蓄に回りまして、消費支出が八十七万円、これを世帯人数等で計算を補正いたしてみますと、大体四人世帯——これは三・八九人でありますので、課税最低限のほうの四人世帯のほうで見てみますと、昭和四十四年ですが、七十八万円余りであり、改正案によりますと八十六万円、平年度分であれば八十八万円というようなことになるわけであります。この消費支出は、御承知のように最低生活費というような基準によって支出されたものではなくて、現実に任意な形で、若干のレジャーも入り、若干の耐久消費財あるいは若干の生活向上のいろいろな家具等も入ったような支出でありまして、そういう意味で、この支出がサラリーマンの生活費として特別ぜいたくなものだとは私どもとしては決して申し上げるわけではありませんが、これがいわゆる最低生活費かどうかということは議論のあるところで、私どもがかつてマーケットバスケット方式で御承知の栄養研究所などにお願いしてやったものなどによりますれば、これは、私どもの現在の課税最低限はすでにかなりそれを上回っておりますので、私どもはそういう意味でこれは最低生活費を上回っておると思います。ただしかし、何が最低生活費であるかということにつきましては、いろいろな評価ができ、論議にわたるものでありますが、私どもは、いわゆる標準的な支出と大体並んでおるのだから、課税最低限最低生活費を上回っておるのじゃないかというふうに、大づかみに考えておるわけであります。
  103. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまあなたは三・八何ぼということで四人世帯で言われたのですが、これは五人世帯で言ったらこの七十八万円というのは何ぼになるのですか。
  104. 細見卓

    ○細見政府委員 これは実は非常にむずかしいことでございまして、平均的にこれだけの支出があって、それが平均幾らということになっておるものですから、五分の一足したら、あるいは四分の一足したら生活費というふうにならないことは阿部先生承知のとおりで、三人が四人になったらこれは四分の一減るのではなくて、やはり共通の経費のようなものもありますので、そこはむずかしいので、やはり与えられたデータとしては、この八十七万円、これが三・八九人であるということしか言えないのじゃないかと思います。
  105. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そこで私はお伺いしたいのでありますが、それなら、銀行金利や何かも年利建てで合理化したのだから、この辺でやはり五人世帯という現実に合わない家族標準世帯の取り方はやめて、いまあなたがおっしゃるように、やはりほかの統計はみんな大体四人になっているわけです。現実は三・八ぐらいになっているようですが、それならやはり税金の場合も、これは大蔵省のほうも標準世帯といったら四人だということで、現実はそれでいかれるほうがいいのじゃないですか。なぜこの五人にこだわられるのですか。私は、こんなのは私の質問の本筋からはずれるのだけれども、あなた方は、こういうときには四人でいけ、こういうときには五人でいけというような——やはり税金というものは国民からふんだくるのだから、もう少し国民にわかりやすく明快にすることが、いつでも言われるとおり必要だと思うのですが、どうなんですか。これは四人世帯に直す御意思はないのですか。
  106. 細見卓

    ○細見政府委員 四人世帯でやってはいかぬとか、あるいは四人世帯のものを隠しておるとかいうことではなくて、ずっとこのところ、過去との比較で、あるいは課税最低限百万というような話にいたしましても五人世帯でいままでいろいろ論議してまいりましたので、便宜五人世帯でいろいろな表示をいたしておりますが、四人世帯が幾らであるかと言われれば、四人世帯の計数はいつでも公開いたしますし、今後むしろ四人世帯の計数に重点を置いていろいろな話をしろとおっしゃるのであれば、それでいたしても差しつかえないと思います。ただ、私どもはそういうつもりでおりましたが、けさの参考人に対する御意見のところで原田先生から、もっとビジョンの多いものを掲げるべきだという政治家としての御発言もございましたので、いかがしたものかと考えておるわけでございます。
  107. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 税金取るのは現実問題ですから、やはり現実に合うようにやってくれないと——税金でビジョンを出せというならば別に皆さんもお考えになるところでしょう。税金はビジョンで取っておるわけではない。現実に取っておるわけだから、これはやはりそうすべきではないか。むしろ私たちから見ますと、課税最低限を引き上げる、百万円まで非課税だということのために、五人にこだわったのではないかとすら思われるような固執のしかただ、こう思っておったわけです。現在のいろいろな統計が四人になっておるとすれば、やはりそれに合わせられるほうがいいと思います。  それはそれにしまして、本論に入りますが、人間は食べて生きていくというだけが生活ではないので、何がしかのレジャーが入ろう。世の中が進めばテレビも必要になろうし、書籍も必要になろう。それは当然のことであって、これで憲法で述べておるところの健康で文化的な生活だというふうにお考えになるわけですか。
  108. 細見卓

    ○細見政府委員 いろいろな世論調査などによりますと、御承知のように国民の大部分の人たちあるいは非常に多くの人たちが、自分たちは中産階級に属しておる、いわゆる中間階層意識というのがだんだん多くなってきておるというのは御案内のとおりであります。そういう意味で、もちろんけさもお話がありましたように、マスコミその他によりまして無限に欲望をかき立てられるような一面もございますから、みんなが満足しておるということではないと思いますが、現在の八十七万の支出というのはえらく抑制された支出でなくて、二十万程度の貯蓄の余裕を持ちながらの支出でありますので、私は一応それなりの満足すべき生活が行なわれておる状態ではないかと考えております。
  109. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、百十七万というのはまあまあ課税をしてもいいという最低限だとおっしゃるわけですね。私は、よく見てもこれが、すれすれだと思うのでありますが、いまのお話からまいりますとどうなんですかね。給与所得者はなるほど百二万まで課税されない。ところが事業所得者になると七十一万八千九百三十二円、ここで課税されるとなると、事業所得者というのは生活に食い込む課税をされておることになるのじゃないですか。これはどうなんですか。
  110. 細見卓

    ○細見政府委員 いまの百十七万と申しますのも、いわば勤労世帯でありまして、事業を営んでおる世帯というものとの間にはおのずから生活の違いもございましょうし、また多くの事業世帯におきましては、御承知のように農業も営業もひっくるめまして、白色でありましても白色専従があるとか、あるいは青色でありますれば青色申告専従者の控除が行なわれた所得が、世帯としてはそこに帰属しておるとかいうような面もございます。しかし、それじゃ独身の事業者の場合はどうかというような御議論もありましょうから、あまりこの点は申し上げませんが、しかし事業所得者というのは多く生活上あるいは事業上の根拠を持っての生活でございますので、若干サラリーマンとは違うのではないか、かように考えます。
  111. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はちょっと理解できないのですが、サラリーマンの場合には最低必要生活費はこれだけ要るんだ、事業所得者の場合にはそれよりも低くていいという理由がいまの程度だと、逆にいえば、事業所得者のほうは何がしか脱税しているから何とかやっていけるんだ、そういうことなんですか。
  112. 細見卓

    ○細見政府委員 最低生活費は、先ほど申し上げましたように八十七万というのは勤労者の支出でありまして、最低生活費につきましては、昔大蔵省がやっておったような方式によりますれば、事業所得者の最低限といえども、すでにマーケットバスケット方式によるいわゆる最低生活費というのは上回っておるわけでありまして、そういう意味で、これは勤労者の世帯であり、事業所得者の世帯は別の生活様式が行なわれておって、その間の支出金額などについてもおのずから違いがあろうというふうに考えておるわけであります。
  113. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どういう違いがあるのですか。五人世帯で生きていくとすれば、タマネギは同じタマネギを食うんだろうし、事業者のほうは特別割り安のキャベツを食ったり大根を食ったりするわけではなかろうと思うのですが、どこが一体違うのですか。同じ人間で違うというのは、もう少し具体的に言ってみてくれませんか。
  114. 細見卓

    ○細見政府委員 給与所得者の場合でありますと、たとえば新しくいろんな世帯道具その他を買っていかなければならないとか、あるいはいろいろの生活手段の蓄積というものも入ったのが八十七万になっておるわけであります。いわゆる食べるためだけのマーケットバスケット方式によるものはこの八十七万よりもかなり下の金額になっておりますので、その下の金額は事業所得者においてもカバーされております。生活費の違いからくるこういう統計はございませんが、この私ども課税最低限はマーケットバスケット方式によりましてもすでに上回っておりますし、しかも課税最低限は年々一〇%ずつ引き上げられてきております。消費者物価のほうは多くても五%ないし六%でありますから、その間の格差は開いてきておって、いわゆる最低生活費はカバーしておると私ども考えております。
  115. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それで私一番最初に、いまの生活費に食い込むような税金を取るべきではない。生活費非課税原則というのを確認したわけでありますが、それでいくと、勤労者の場合百二万というのは必要だ、こう見られたわけでしょう。そうすれば、いまのお話しのように世帯道具を買わなくていいとか、おやじの代からの店には何がしか資産の蓄積があるとかいうことをおっしゃるんだろうけれども、それはまた課税をする場合に別なんじゃないですか。課税最低限をきめる場合は、事業所得者であろうと給与所得者であろうと、やはり生活費非課税という原則で貫くとすれば、最低限の線は少なくとも並ぶのが公平の原則からいっても当然のことなんじゃないですか。その辺どうも局長の御説明ではだれも納得できないんじゃないですか。同じ人間なんですよ。
  116. 細見卓

    ○細見政府委員 私がいま申し上げております課税最低限での比較は、収入金額の百十七万円と百万円という形で申し上げておるのでなくて、勤労世帯におきましては、消費支出として充てられた八十七万円との間で課税最低限考えまして、それはカバーいたしておると申しておるわけであります。したがいまして、その八十七万円前後の勤労者の消費支出は、確かに勤労所得者の課税最低限は若干下回ってはおりますが、これは、この勤労者の消費支出はいわゆる最低生活費というものでなくて、選択の余地のあるものについては若干の選択が行なわれる。それはもちろん非常に高い生活水準だというわけではないかと思いますが、少なくとも自分は社会平均的なところにおり、中間層にだんだん移りつつあるという意識を持った人たちの生活費でありますので、いわゆる最低生活費はこの八十七万円よりもかなり低いものであるのではないか、かように申し上げておるわけであります。
  117. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はどうも納得できないのですが、それならどうです、たいへん評判が悪いからやめたとおっしゃるんだけれども、一ぺんマーケットバスケット方式でどれくらい生活費が必要なんだという問題を、課税当局で国民に納得するように示してみる必要があるんじゃないですか。課税最低限というものは、文化が進み、世の中が進むに従ってやはり引き上げられるのは当然だろう。その辺で、いまの時点ではこれだけあればこれだけの生活ができるんだ。それは人間はいろいろな生活様式をとりますから、衣服に金をかける人もあれば食事に金をかける人もありますけれども、そのサンプルを一通りでも二通りでも出してくださるくらいの親切さがあってもいいんじゃないですか、ただこの前のメニューが評判が悪かったからやめるんだというのでなしに。評判の悪いのをつくっておいて、それで税金だけは取り上げようというのは少しあつかましいんじゃないですか。やはりそれは国民に納得してもらってそれで税金を取るというたてまえからいけば——自分たちの評判が悪かったからあとはほおかむりで、ふんだくれるだけふんだくるというのなら別ですけれど七、納得した民主税制たてまえからいけば、私はやはり国民の納得するようなメニューはつくるべきだ、こう思うのですが、 いかがですか。
  118. 細見卓

    ○細見政府委員 そういうメニューのようなものをつくることも一つ考えであろうかと思いますが、たとえばこの家計調査によりましても、例の階層を五分位に分けまして、階層ごとの消費支出をとっておるようなものがあるわけでありますが、これと最低限を比べてみますと、大体五四%カバーしておる。つまり平均以上をカバーしておるというようなことにもなっております。いま申し上げましたように、メニューのようなものになりますと、おそらく幾ら苦労してつくってみましても、それぞれ嗜好なり価値判断なりが入るわけでありまして、その価値判断のコンセンサスを入れ、国民的にいい料理だ、それをつくればだいじょうぶだというようなことは言うべくしてできないことで、カロリーその他からして十分なものだということで発表いたしたわけでありますが、おかずがどうであるとか、あるいは何がどうであるとかいうような判断がございまして、何かそれ以外のものは認められないかのような判断なり誤解なりを招くわけであります。ただ、あれは一例として、こういうことはできますという一例であるわけでありますが、それが一例でなくて、大蔵省のメニューはこれしか食えないのだ、品目はこれとこれだというような式の理解もされまして、全体としてのカロリーをカバーする限り、品目を変えあるいは品物を変えての調理であってもいいわけでありますが、そういうことについての応用がなかなかうまく説明がつかない。したがって、大蔵省のメニューというのは味もそっけもない非常にまずいものだという批判を受けるだけでありますので、私どもはむしそろういうメニューよりも、せっかく総理府で家計調査が行なわれており、その階層も五分位に分けまして、それぞれ高額所得層から低額所得層まで分かれており、その五分位階層で見てどの辺までが課税最低限をカバーしておるか。少なくとも社会平均的支出はカバーしておる。したがって平均的なものは最低限より上であろうというような判断をいたしておるわけでございます。
  119. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんのほうではそうお考えなんだけれども、味もそっけもないものをつくるのじゃない。味もそっけもあるものを幾通りかつくってごらんになったらどうです。それでさらに、皆さんのところの説明においでになった方のお話じゃないが、食料に金をかける人もあるし衣服に金をかける人もあるそうだから、そういうのを幾通りかつくってごらんになれば国民も納得するだろうと思うのです。そういうものはやはり評判が悪かったということで腰折れにならないで、やはりあくまで国民に納得してもらうというたてまえをとらないと、一体どこで生活費非課税原則を貫くかというのがわからなのではないですか。  もう一つ、今度は住民税でありますが、これは応能であるとか応益であるとか、これは私に言わせればへ理屈をつけてやっておるわけですが、これはどうなんです、五人世帯でいったら、給与者の場合と事業者の場合の最低限は幾らになっておりますか。
  120. 細見卓

    ○細見政府委員 給与所得者の場合でありますと、今回の改正によりまして七十三万円になるわけであります。事業所得者につきましては四十九万四千円ということになっております。
  121. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そういたしますと住民税の場合には、もうこれは完全に生活費に食い込む税金を取っておる、こういうことになるわけですね。
  122. 細見卓

    ○細見政府委員 最低生活費をどう考えるかということでありますが、市町村の場合はいわば市町村の部落共同体の会員として会費的な要素もある。その共同体での生活というのはいわば生活費の一部ともいえるかもしれないという一面もあるわけでありまして、そういう意味で昔から住民税所得税との間にはそういう差があるということで説明がなされてきておるわけでございます。
  123. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 会費のようなものだとか、そういう問題は別にしまして、私がお伺いしておるのは、これでは生活費に食い込んでおるんだということなんですが、どうですか。
  124. 細見卓

    ○細見政府委員 そのところが最低生活費をどう観念するかのむずかしいところでございまして、住民税最低生活費に食い込んでおるという言い方もできようかと思いますし、住民税はそういう最低生活費の一部をカバーするものを、つまり自分でその最低生活費をまかなうべきものを市町村民税として払って、市町村のサービスとして受けて、それによって最低生活を営んでおるという一面もございますので、その辺が非常にむずかしいところだと思います。
  125. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私の申し上げるのは、生活費を削っても市町村民税を納めようとする意思があるかどうかは別にしまして、先ほどの所得税の場合に、これだけくらいは最低生活で必要だということでいくと、いまの住民税の場合には、これはあとで恩恵を受ける受けないは別の話にしますと、生活費に食い込む課税をしておるということだけは認めざるを得ないのじゃないですか。
  126. 細見卓

    ○細見政府委員 先ほど来申し上げておりますように、家計調査によります勤労世帯の支出金額は八十七万でありまして、これはいわゆる最低生活費をかなり上回った、自分は中間階層に属する人間だという意識をお持ちの人たちの生活費でありますので、これよりかなり下のところに最低生活費はあるのだと思います。しかし、その最低生活費にいたしましても、ただ単にカロリーとかあるいはただ単に衣食のための必需品ということを申しましても、いろいろ人によりあるいは住む場所によりというようなこともありまして——住民税課税最低限が高い水準にあるというようなことは申し上げるわけではございませんが、これの引き上げはもちろん検討いたしてまいらなければならぬと思いますが、住民と市町村のいろいろなサービスとの関係などを考えれば、最低生活費という概念をどうとるか、所得税のようにいわば所得の再配分という機能をあわせ持たす税とは若干その辺は違うのではないか、かように思うわけであります。
  127. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、どうもあなたのお話を聞いておりますと、一番最初に私が質問したときの話とちょっと違ってきておるように思えるのですがね。私の聞き違いでしょうか。所得税の場合、あなたは、担税力だ、再配分だ、いろいろあげたけれども、基本は、あなたと私との間では生活費非課税ということで、それが一番大きな土台であるということで、最低限を引き上げてきた。それで、これでまあまあだとおっしゃった。ところが今度は住民税の場合には、これはいろいろなほかの要素は別にしますよ、地域の会費みたいなものだとか、地域からまた恩恵を受けるとかということは、またあとで論議はしてもよろしいと思いますけれども、それを別にすれば、事業所得者が四十九万四千円をこえれば地方税が取られるというのは、そうしますと、いいとか悪いとかいうことは別にして、この四十九万からは地方税を納めるという、その地方税の部面は生活費に食い込んでおるのですね、端的にいえば。私、こういう質問なんです。
  128. 細見卓

    ○細見政府委員 最低生活費との関係では食い込んでおらないと思います。
  129. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 では、その最低生活費というものは大体どれくらいなんです。
  130. 細見卓

    ○細見政府委員 それが先ほど来申し上げておりますように、最低生活費というものを計数的に導き出すというのは非常にむずかしいということを申し上げて、したがって平均的なものが出ておる。それは所得税に関していえば、少なくともかなり最低限を上回ったもので、何が最低限かということになれば、この八十七万というものをかなり下回った数字であるということはいえようかと思いますが、それが幾らであるかということになりますと、いろいろ議論のある問題であろうかと思うわけです。
  131. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 その最低生活費というものをある程度どこに置くか。世の中が進めば、人間がほんとうにぎりぎり生きていくということだけではどうしようもないでしょう。やはりその時世、その時代に応じての多少文化的な面も加味してくるだろうし、その点でそれをまずある程度見当をつけなければ、私はほんとう課税最低限論議をしてもしょうがないじゃないかという気がするわけでして、そこが一番問題と思う。大体地方税の場合には、まあ皆さん応益原則で会費のようなものだ、こうおっしゃるだろうけれども、取られるほうにとってみればやはり税金なんです。そうすれば、やはりもっと大きな面から税の再配分をするとか、これからいろんな面での配慮をしていかなければならぬ問題がそこに出てくるけれども、それを抜きにしてこれでいいんだということになれば、いまのような不合理をそのままで押していく以外にない。その辺で私は、いま一ペんにそれをすぐ直すという御返答があろうとは思わぬけれども、やはり方向としては、生活費非課税という原則所得税であろうと住民税であろうと貫かなければならない、こう思うのでお伺いしておるのでございまして、そこで私はこの問題を少ししつこく質問をしますけれども、そこをもう少しはっきりしてもらわぬと、何か税金の論議というものは私は意味をなさないような気がするのです。あるところから取ればいいのであって、納めないとは言わないのです。だけれども、生活費に食い込む税金というものは取るべきでないということだけをきちんとしておきたい。そこで私は繰り返しお伺いしておるのです。それならば、それがわからないというならば、私たちにわかるように、国民にわかるような何らかの手段でそれをお示し願いたい、こういうことなんです。
  132. 細見卓

    ○細見政府委員 おっしゃるように、最低生活費というものに課税最低限が食い込まないようにするのが望ましい課税最低限であることは当然であります。その意味におきまして、住民税課税最低限は決して、特に事業所得者などの場合には高い水準にあるといえるものではないと思います。その意味で、今後住民税課税最低限の引き上げには、財政事情の許す限りできるだけの努力をしなければならない。少なくとも所得税課税最低限との開きがこれだけあっていいかどうかというようなことについては、真剣に検討しなければならない問題であろうと思います。ただ、いま阿部先生の言われます何が最低生活費かということにつきましては、これは判断にわたる面が非常に多いものですから、客観的に幾ら幾らの金額だということはなかなかむずかしい。しかもこれが全国的な最低生活費でありまして、新潟県の最低生活費と東京都の最低生活費との間にはやはり何らかの差もあろうと思いますし、その辺をひっくるめまして最低生活費が幾らかということをきめることは、確かにそういう検討は別途いたさなければならないと思いますが、非常にむずかしい。そして住民税課税最低限がそれらのものを大きく上回っておるというような水準でないことは御指摘のとおりで、今後とも引き上げに努力しなければならないと思います。
  133. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この問題、検討してもらいたいのでありますが、大体国税と地方税課税最低限がこんなに違っておる国というのは、ほかにあるのですか。
  134. 細見卓

    ○細見政府委員 同じ課税標準を対象にした税は、国民所得を対象にする住民税以外ほとんどございませんので——あと事業税がございますが、これは国にそれに見合う税がないというようなことで、一番問題が多い所得についてこういうふうに課税標準が違っておることについては、大きな検討の問題だと思います。
  135. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この外国との比較も、いろいろとやり方が違いますので一ぺんに比較はできないが、日本のようにはっきりと地方税と国税とがこんなに明快に分かれ、しかも差があるというのは、私はあまりないように思いますので、地方税課税最低限の引き上げは真剣に努力するとおっしゃることばでありますが、そのようにほんとうに努力をしていただきたいと思います。  次に、当局は減税だ、減税だと宣伝しておるのですが、所得税減税のうち物価調整分というのはどれくらいを見ておられるわけですか。
  136. 細見卓

    ○細見政府委員 経済見通しの消費者物価の上昇が四・八%といたしまして、約五百三十億がいわゆる物価調整減税に当たる数字でございます。
  137. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 物価のほうは四・八%で見込んでおったのですが、ところが本年の二月の全国消費者物価指数はもう前年に比べて八・五%だと、こういっておる現状でありまして、そうするとこれはもう少しよけい減税しないと理屈が合わないんじゃないですか。それはどうなんですか。
  138. 細見卓

    ○細見政府委員 別の機会に広瀬委員の御質問に、これが六%上がったときには幾ら物価調整減税が要るかということで、七百二、三十億じゃなかろうかということをお答え申し上げたわけですが、ことしの減税二千四百六十億余りでありますので、まあ物価調整減税で消えてしまうというようなことはないので、ただ減税の規模が、そういうものを差し引けばかなり小さくなるということは御指摘のとおりだと思います。
  139. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 物価はこうやって上がっていくのでありますし、ほんとうに生活をしておる主婦の人たちは、物価問題では頭へきておると思うのです。物価対策についてちょっとお伺いしたいのですが、これは大蔵当局としては大体どんなふうに考えておるのです。これは皆さんだけが担当じゃないとは思いますけれども
  140. 細見卓

    ○細見政府委員 これは大臣が別の席で答えておったところでありますが、物価の問題は七〇年代の日本経済の最大の問題で、物価騰貴ということが、国民の貯蓄なり勤労意欲なりに害を及ぼすというようなことがあってはゆゆしいことで、物価の抑制のためにはあらゆる努力を傾注しなければならないと申しており、私ども税制改正の分野を預かる者といたしまして、どういう税制改正が物価抑制に役立つかということは考えていかなければならないと思います。ただそこで申し上げておきたいことは、たとえば物品税なり砂糖消費税なりをまければ、それは物価は一回は下がりますが、しかしそれは構造的に物価の引き下げが行なわれたわけではありませんので、間接税と物価との間はいろいろむずかしい議論がございますが、そこは今後詳細な検討が要る問題であって、間接税を下げれば物価が下がったというのでは、少し施策としては簡単過ぎるのではないかと考えておるわけであります。   〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
  141. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは大臣か次官にお伺いする以外にないのでしょうが、物価問題は、いままで佐藤総理も、もうたびたび最大の政治課題だというようなことをおっしゃっておるのですが、むしろ佐藤総理がおっしゃるたびに物価は上がっておる気がするのです。これは一体どういうふうに下げるという——これだけ何年間か、施政演説では物価問題を云々してきたけれども、物価を下げる手段というものはまだ聞いたことがないので、これはもう資格がないならおやめになればいいし、能がないならばもう内閣交代すればいい。これだけ問題になっているのだから、方策は具体的に何かおありになるのだと思うのですが、どういう手を打ってきて、そしてこれからどういう手を打つというのは、具体的に案をお持ちなんですか。
  142. 中川一郎

    ○中川政府委員 物価問題は、ここ数年来政治課題の最上位のランクにあるわけでありまして、どこにいっても物価、物価、国会の論議も物価でどれくらい論議しておるかわからないくらい重要な課題であります。また政府にとっても、物価といわれるたびにひやひやし、理屈抜きに何とか批判に応じなければならぬという課題でありますので、わが佐藤内閣においても、この点については力一ぱい入れておることは事実だろうと思います。  そこで、物価の高くなる最大の原因は、私ども承知しておるところでは、経済の過熱、異常な伸展がそもそもの原因ではなかろうかというところから、ことしの予算編成においても、景気を刺激しないように、どちらかというと押えていくというようなところに配慮を加えておるのが第一点ではないかというふうに思いますし、また昨年来金融引き締めを行なっておりますのも、あるいは今般法人税の引き上げを行なったのも、そういうことも若干なりとも配慮しておるのではないかというふうに思っております。  これは大きな網での物価対策であり、こまかいところでは、公共料金については、まずまず自粛しておるといってもいいんではないかと思いますし、特にまた消費者物価の値上がりに大きな原因となっております食料品、これは天候その他の問題もありますが、やはり流通過程にメスを加えなければならないということに、ここ二、三年気づいておりまして、農林省においてもこの流通過程に対する助成というものに、満点ではありませんけれども、かなりの施策を加えておる。  そういうようなことで、非常に大きな課題であり、国民的な心配事であります。そういったことで景気があまり大きくならないように、そのことが物価にはね上がらないという大きな網と、公共料金その他農林物資等にきめのこまかい物価政策をやっておるところであって、にもかかわらず若干上がっておるというのは非常に頭の痛いところでありますが、われわれも率直にこの点は反省をして、ささやかなる政治家でありますが、全力を尽くしてみたい、このように思うわけであります。
  143. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 物価が上がるから賃金を上げる。そうすると税金のほうは何がしかの減税をしないと、これは実際の手取りはふえていかないということの悪循環をしておるので、物価問題はもう佐藤内閣は能力がないのだということで、この辺であきらめるのがほんとうだと思うのですがね。これだけ問題になり、これだけ公約をし、施政演説で重大だ重大だといっても、一つも実効をあげられない。とすれば、もう内閣は物価安定の能力なしということに国民は見ておるので、もうこの辺で選手交代をしたほうがほんとうだと私は思うのですけれども、実際いうて物価問題、物価が上がっていく、こういう問題は、実際もう政府に期待できないではないか。一%、二%はやむを得ないにしても、今日のように八・何%、しかも生活費の実際一年間で百回以上買うものは一〇・何%だ、一一%なんていう数字が出るようなことになっては、これはもうインフレといって間違いのないところだと思うのでして、ほんとう政府当局はもう少し総力をあげて物価問題に取り組んでもらわぬと困る。これは政務次官に幾ら聞いても出ないでしょうから、次に移ります。  これは公取のほうですか、ちょっとひとつ確認をしておきたいのです。私も本を見たので、一ぺん読んでみますが、大門さんという人の著書で、「原価の秘密」、これによりますと原価と小売り価格とが非常に開いておるわけですね。これをちょっと読みますが、間適っておるところがあったら御訂正願いたいのですが、公取来ていますね。——カラーテレビが原価四万円、小売り価格が十八万円、トヨタの二〇〇〇GT、国内価格が二百三十八万円、輸出価格が百三十二万二千円、アリナミン二千五百錠入り原価百二十五円が小売り価格一万円なんですね。薬九層倍というけれども、これはまさにそのとおり、ハイシーというのが一錠原価一円のが小売り価格十五円、リポビタンDが原価三円から四円というのが百円、コールドクリーム五十円が千円、ウイスキー三十八円が小売り価格千円、こう本に書いておるわけですが、間違っておるところがあったら、御指摘を願いたいのですが、大体こんなものですか。
  144. 吉田文剛

    吉田(文)政府委員 私、そういう本の書名については耳にしたことはございますが、はたしてこの原価がこれで、小売り価格がこうであるということは確認しておりません。まだ調べておりませんので、事実かどうか、ちょっといまの段階ではお答えいたしかねます。
  145. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは調べていないのですか。調べる手がないのですか。どっちなんです。
  146. 吉田文剛

    吉田(文)政府委員 直接何か違反の疑いがあれば調べますけれども、そうでなければ原価あるいは小売り価格を調べる方法はございません。  それで申し上げますけれども、公取、つまり独占禁止法としましては、一般的に申し上げますと、製造原価に比して小売り価格が非常に高いということだけで、それを独禁法で規制するという根拠はございません。ただしかし、かりに小売り価格が製造原価に比較して著しく高く設定されており、それがカルテル、つまり価格協定その他の競争阻害的な行為によって維持されているということでございますれば、これは独占禁止法上問題があるので、その行為が行なわれるということであれば違反としてとらえていきたい、こういうふうに思っております。
  147. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 カルテルがあるかないかというのはどういうときにわかるのか。皆さんでその判定をするのですか。あと、私がいま読み上げた大門さんの著書にありますこれは、皆さんとしては調べていないか。大体こんなものだという見当すらもつきませんか。
  148. 吉田文剛

    吉田(文)政府委員 カルテルがあるかないかということは、大体私どもで普通違反事件として取り上げる場合は、申告がまずございます。それからあるいは新聞記事その他業界の情報等を手に入れまして職権で調べるという場合がございます。その二つがございますが、本件の場合は、はたしてこれがカルテルによって引き上げられた価格であるかどうかということまではまだ検討いたしておりません。  それからあとの御質問の、たとえばコールドクリーム五十円が千円というのが一体どういう事情で——原価が五十円、これは製造原価のことだと思いますが、これが最終の末端の小売り価格が千円にもなっている。中間にいろいろ販売業者が入っていると思いますが、それが一体どういうふうな事情でどういうふうな利益をもってもうけて最終がこうなっているかということは、まだ調べておりませんので、確信をもって御答弁はいたしかねます。
  149. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 こういうのはある程度調べていかなければ、カルテルがあるかないかというのは実際いってわからないのじゃないですか。何か新聞で問題になったから手を入れるというのじゃたよりない話ですね。そういうことなんですか。あなたの話だと、新聞に出たり何かよそから摘発ですか、何かあったときに調べるみたいな話なんですが、そういうことなんですか。
  150. 吉田文剛

    吉田(文)政府委員 職権で調べることはできます。それは何かのきっかけがございませんと情報がわかりません。たとえばこういう記事が出ているということでカルテルがあるかないかということを調べることはできると思います。
  151. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは、ここであなたわからないと言うのだが、これくらいのものは調べておくのはあたりまえな話だと思うのですが、これは調べていただけますか。
  152. 吉田文剛

    吉田(文)政府委員 これについて私もあまりにもひど過ぎるというふうに考えますので、カルテルその他独禁法違反の行為がこの背後に隠れているのじゃないかということは調べます。調査をいたします。
  153. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 先ほど申し上げたように、これはたしか第一銀行の出した資料ですが、一年間に百回以上購入する消費物資については一一%も上がっておるというようなことを第一銀行の調査部で出しておるわけであります。そういう点で、政府の統計もやはり一番生活に関係あるこういう問題をひとつ統計を出したらいかがなんですかね。あの統計資料はよく見れば、専門的に見れば、なるほど食料品や何かの部面はある程度われわれにはわからぬことはないのです。だけれども国民に四・五%だとかいや五%と言ってみたところで、なかなか生活実感に合わないし、国民は何か政府のやる統計というものに信をおかなくなるのじゃないか。あの統計品目のとり方にも私は問題があるとは思いますけれども、その点はいまここで論議をしませんけれども、少なくとも最もよけい使う物資についてはやはり国民に真実を知らせるという義務があると私は思うのです。そういう点で統計のとり方自体も検討する必要があると思うのですが、いかがですか。
  154. 岡部秀一

    ○岡部(秀)政府委員 政府でいまやっております消費者物価指数というのは、特別な商品だけを選ぶ、特別な家庭を選ぶというのじゃなくて、ごく全般を代表し得るように消費商品も選ぶ、家庭もそういうふうに選ぶ、こういうことになって、それの平均という形で消費者物価指数を出しているわけであります。そういう意味におきましては、平均ですから、それより多い支出のところもあるし、それより少ないところもある。また、それぞれの家庭で学校へ出している学生の多いところと少ないところ、あるいはおふろをうちで持っているところと持っていないところ、そういうふうにいろいろ違うわけでありますが、それらを全部ひっくるめて、そして国民全般を総体的にながめていくというところで物価指数を現在つくっておるというところです。その面で、なるほどおっしゃるとおりに一般と違うじゃないかということについては、私たちもそれは違います。平均という数字でございますから、ちょうど平均というところへ合った家庭や消費者ならばそのところにぴたっといきますけれども、そうでないところの人が多いということですからぴたっといかない、こういう点があると思います。その点で、現在の消費者物価指数というふうなものは、平均的な物価動向を正しくとらえるという観点でつくられておるということでございます。ただし、いまおっしゃったような生活実感に合ったというふうな面をとらえながらつくっていくというやり方はございます。それは最も頻度を多く買う品物だけ、毎日毎日たくさん買う品物だけを集めた物価をつくる、こういうやり方をいたしますると、そうするとその点では、上がったもの、下がったものを平均したというものにはぱっとくるものが出る。   〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 そしてまた所得階層別に見てみますと、平均じゃなくて、たとえば五つの階級に分ければ、第一階級に属する人はその指数が相当ぴったりくる、あるいはたくさん収入を得ている上層階級のところの指数を見ればわりあいぴったりくる、そういう点があるわけでございます。そういう点で、私のところでも所得階層別のものをつくっております。それから購入頻度別というふうなものも試算をしたりしておる、こういう状況でございますので、この点さらにわれわれといたしましてもこの指数をさらに研究をし、あるいは発表をするかどうかというふうなことについても検討をして、そういう点でのサービスをしていきたいというふうな気持ちでございます。
  155. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 消費者物価指数をたいへんな手数をかけておやりになっておるようだけれども、これは何のためにやっておるのですか。
  156. 岡部秀一

    ○岡部(秀)政府委員 消費者物価指数は、物価指数、物価の上がり下がりを見るというためでございます。
  157. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 何のためにですか。
  158. 岡部秀一

    ○岡部(秀)政府委員 それはいろいろな経済政策をやる場合に必要なものでありますから、つくっております。
  159. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 経済政策ということになれば政府のほうの必要なのかもわかりませんが、やはり物価のあれは、国民もまた自分の生活を設計していく、そういうためにまた必要なんでして、皆さんに何のためかというようなたいへん失礼な言い方をしたけれども、これはやはり生活をしている国民のことも考えてもらわぬと、そこがおかしいのです。国民はやはり自分の生活設計をしていくときに、めちゃくちゃに物価が上がったりあれしたんじゃ、生活設計が成り立たぬじゃないですか。うちをつくろうと思って貯金をしても金の価値がどんどん落ちていったら、何年たったらうちができるかわからぬ。生活設計というものの足しにならないようなら、もう少し人数を減らしてもらってもいいし、もう少し簡単にしてもらってもいい。皆さんもっとその点を配慮してもらう。そういう点からいくと、よけい扱うようなものはこうなっておるくらいの親切さがあってもいいのであって、初めから何か生活実感と合わないのがあたりまえだみたいな感覚でおられるのは、少し国民の公僕としての責務を忘れておるのじゃないかという感じがするので、私指摘したわけです。
  160. 岡部秀一

    ○岡部(秀)政府委員 政府経済政策だけに使っているわけじゃございませんで、おっしゃられるとおりに、国民自身が現在の経済状況、物価の上がり下がりはどうなっているかというのに使っておる。まさに国民のためにつくってあるということがいえると思います。  それから、おっしゃるように一部の商品だけの物価をつくるというのは、それだけの、その面に通用するだけなんですね。そうじゃなくて、一つ一つじゃなくて、全般の物価というものがどう上がっているのかと見るならば、それは全部の家計というものを正しく見て、そこでそれぞれの購入するものがどういうウエートを持っておるのかという正しいところを出していかなければならぬので、あるグループだけをつくったのではそのグループだけのものなんです。それはその人たちの実感に合いましょうけれども、それこそまさに国民全般の実感に合わないという結果になるという点をひとつ御了承いただきたいと思います。
  161. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あまり時間を取りたくないのであれですが、初めからそうおっしゃればいいのであって、政策目的でとおっしゃったから、それならばやはり大事なことは、国民の実感に初めから合わないのがあたりまえみたいな感覚じゃなしに、先ほど来私が何べんか繰り返しますように、国民に一番関連のある部面の統計も必要なのじゃないか。私は話を聞いてみると、非常に科学的におやりになっておる、そう色をつけようと思っておられないという点は私も認めます。それで、それだけ努力しておるならばそういう親切さがあっていいのじゃないか。いまの政府の四・五%であるとか、あるいは皆さんの出された数字を見ても国民はなかなか納得しない。また今度いつかの機会でお伺いしようと思いますが、品目のとり方にしてもずいぶんわれわれは納得できない。書籍一つとってみたって、あんなのをとっておられるようではおかしいじゃないか。いろいろな問題はあります。だから、きょうは触れる時間がありませんので、お願いとして、なるたけ国民の生活設計にプラスするようなものもひとつ御考慮願いたいということであります。  次に、配当所得課税最低限が三百四万余円、そうしますと、現在の所有株価でいったら大体どれくらいの株が要るのですか、原価で。
  162. 細見卓

    ○細見政府委員 平均利回りがどれくらいになっておるかによりますので一がいに言えませんが、もし五%であれば御承知のように二十倍になるということでありましょうし、非常に資産株的なものに投資しておられて七分とか六分とかであれば十数倍というようなことになろうかと思います。
  163. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いずれにせよ、不労所得人たちが三百四万円何がし、勤労者の所得課税最低限の三倍だというようなことは、これはけさから大銀行の方や証券会社の方がいろいろとお述べになっておるけれども、これは私たちも納得できないし、国民も納得のできないところだと思うのです。こういうのはもっと思い切ってやはり整理する必要があろうかと思うのです。皆さん努力しておる、こうおっしゃるのでしょうけれども、一段とこれはピッチを上げて努力をしていくべきだと思いますが、いかがですか。
  164. 細見卓

    ○細見政府委員 配当控除の問題を抜本的に改正いたしますのには、どうしても法人税所得税との両方の仕組みと申しますか、端的には法人税の仕組みというものを考えてまいらなければ抜本的なことができないことは、御案内のとおりであります。  そこで、けさほどもお話が出ましたように、資本金一億円未満の法人が実に九九%を占めておる状況でありまして、これらの法人について申せば、シャウプが当初申しておりましたように、事業を法人の形態で営もうと個人の形態で営もうと、税負担があまり違ってはいかぬじゃないかというのがあるのだろうと思います。たとえば、親族あるいは同族で資本金三、四百万円の会社を経営しておられた場合に、それを個人の場合と法人の場合とでは税負担が、法人の場合は二回税金がかかる。法人段階でかかって、配当したらまたかかる。あるいは、そんな小さな段階では配当は要らないかもしれませんが、やはり使用人もだんだんふえてまいれば、そこに給与体系というようなものも設けざるを得ない。給与体系を設ければ、社長だけ無際限に給料を取るというわけにもいかない、あるいは専務に非常な多額の給料を出すわけにはいかぬということになれば、ある程度のものはやはり配当として配分することも考えなければならない。そういう場合に、個人からいわゆる非同族の大法人になる過程でいろいろな法人があり、しかもそれが現実に日本経済としては大部分を占めておる。それについて、けさほど東畑会長お話しになっておりましたように、抜本的な認識を立てて、抜本的な整理統合あるいは分割の基本方針を立てた上でないと、配当控除を徹底した制度としてどう考えるかということにはなかなか問題があるわけでございます。そういうところもありまして、これをさらに一歩進めてまいりますのには、その検討とあわせ行なわなければなかなか納得を得にくいのではないか。この意味で、私どもとしてはできるだけのところまできて、所得税負担におきまする不均衡をできるだけ直して、確かに一年、二年は多くなりますが、四十七年以降は二百四十万程度になりまして、現在よりも、配当所得のみによっていかれる方のいわゆる非課税限度というものは薄くなるわけでございます。その辺の努力を認めていただきたいと思うわけであります。
  165. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなた、いま一億円未満の会社が九九%あるというのは、会社の数でございますか。——そうすると、一億円未満と一億円以上の会社の法人税の税額はどうですか。
  166. 細見卓

    ○細見政府委員 所得で申しますと、一億以下が四割、一億以上が六割が稼得所得であります。
  167. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 九九%で四〇%の税金を納めておる。そういう点からいけば、大きいところと小さいところとの処理のしかたもおのずから出てくるんじゃないかと思うのです。だから、それをいままでどおり温存するためにそういう理屈をお述べになっても、国民は納得しないんじゃないか。それならば、法人税三百万で二つに分けられるものならば、四つに分けるということもできるわけでして、分ければいいじゃないかという理屈も私は立つだろうと思うのです。皆さんは立てにくいだけの話であって、二つに分けられるものが四つに分けられないはずがない。一年間で七百万も利益をあげる会社があるのですから、それと一緒くたにするなんということは、いまの税のあり方からして納得はできないんじゃないか。実在説だ、擬制説だというような論議の先に、もう少しこれを累進的な分け方をされるのがほんとうじゃないかと思うのですが、そういう意図は全然ないんでありますか。
  168. 細見卓

    ○細見政府委員 法人税に累進税率をさらにこまかく刻んだらどうかというような御提案であるといたしますと、これは御承知のように、法人というのは自由に分割も併合もできるわけでありまして、所得金額に応じて大きな税率といいますか、累進税率で課税するというような制度を導入いたしますと、その法人は分割をするとか、いろんな意味で、税制によって法人あり方というのがゆがめられてくるという一面がございます。また逆に、そういう所得の大きさじゃなくて、資本金との対比で収益率の大きな企業に重い税を課したらどうか。つまり、資本金対収益率の大小によって累進税率を設けるという考え方もございますが、これによりますと、結局、結果的には小資本のほうが、中小企業のほうが重課になるというような問題もございます。  さらに、基本的には、やはり法人と申しますのは、個人のように税を払うことが即犠牲であるとか、あるいは負担能力とか、そういう観念にそもそもなじまない存在であろうと思いますので、法人段階でそういう累進税率を設けることは、いわば中間的なたまりの所得に対しての累進税率になりますが、そこはある程度フラットな税にして、それが個人に最終的に帰属する段階で総合して累進課税を行なうというのが税としては一番すなおで、応能的で、あるいはまた税制としてもすっきりした税制ではないかと私ども考えておるわけであります。
  169. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そういう筋を通されるならば、やはり配当なんというものは三百何万まで非課税なんということではなしに、これも全部個人の所得は総合して累進にされるならば、私も局長の御意見に賛成をするのだが、そっちのほうは別にしておいて、こっちのほうは別な理屈を立てられても、これは納得ができないところなんです。これはまたどなたか、あとでおやりになると思いますから、私深入りしませんけれども、あなたのいまのお話を聞いておりましても、何かそこらあたりが矛盾しておるわけですよ。個人に入ったら個人ですぱっと累進にする、こうおっしゃるならばそれで筋をお通しになればいい。それならばわかる。どうもその辺がすっきりしないままで進むのは残念ですが、時間があまりありませんので……。  それで、私、主として所得税のほうをお伺いしたいと思うのですが、税率は最初一〇%から出発をしますね。それから小刻みに上がっていくわけでありますが、この一〇%を初めから二%、四%という形で、——一〇%から一二、一四というふうにいくくらいならば、一〇%という最初のすべり出しではなしに、二%からすべり出していくということはどうなんですか。ただ、多少煩瑣だなんということになるかもわからぬけれども、煩瑣なんということでは私は済まされないと思うのですが、どうですか。
  170. 細見卓

    ○細見政府委員 課税最低限のときにも申し上げましたが、課税最低限と税率とを組み合わせてお考え願いますと、たとえば百二十万の人で、課税最低限が百万あって、一〇%だと二万かかる、そういう方には実は二%の税率を適用しているわけであります。そういう意味で、課税最低限との関連でごらん願えば非常にこまかい、百十万の方には一%の税率で課税いたしておるということになるわけであります。課税最低限と組み合わしていただければ、実は一%、二%、三%という形に税率はなっておるわけでありまして、先ほど来申し上げております組み合わせでごらん願いたい。その課税最低限はある程度上げなければならないという御意見については、先ほど来阿部委員と同じ御意見を申し上げておるわけでございます。
  171. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんのほうでは、間接税のことで、見通しについてはたびたびお話があるようでありますが、目下検討中だということでありますね。そうすると、この検討というのは、実施するかしないかの検討なのか、実施を前提として検討しておられるのか、どちらでございますか。
  172. 細見卓

    ○細見政府委員 実施するかしないか、実施した場合にはどういうものかということで、いまの二つに分けられたような意味では、両方を含めた検討でございます。
  173. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんのほうでは、所得税減税なんということで、財源の確保を考えられておると思うのでありますが、私の見るところ、やはり七二年というのはたいへんな年だろうと思うのです。一つは、政治的には沖繩の施政権、返還するかどうかわからぬですが、一応返還の年であってみたり、あるいは第四次防が発足する年であるとか、新全総の年であるとか、あるいはまた国債償還、これは皆さん借いかえをされるかどうかわかりませんが、一応国債償還という問題をかかえた七二年というのは、まさに大蔵省の主税関係にとってみれば、これはもうたいへんむずかしい年にかかってくるわけであります。そういうことを考えてみると、間接税の検討というものは七二年に向けて皆さん検討し、実施するのではないだろうか。また一面、別な面から、これは私の推測でありますけれども、それをかかえておるからこそ、お医者さんの特別措置も二年間の暫定ですか、みたいでありますし——まあ、これは無期限にしたが、どうせ検討するだろうと思うのです。もう一つは、法人税の場合も大体それに近い、二年間の暫定のような形でいっておるとすると、この七二年に向けて、皆さんのほうとしても、ある意味ではたいへんに頭の痛い年を迎えようとしておると私は感ずるのでありますが、それだけに、財源確保のために間接税というものが大きく浮かばざるを得ないのではないかという感じがするのですが、その辺を考慮して検討をしておられるわけですか。
  174. 細見卓

    ○細見政府委員 政治的なサイドについては政務次官からお答え願うといたしまして、私ども考えておりますことは、先般も申し上げましたように、現在のように経済成長が続いてまいりますと、直接税のほうは、御承知のように、所得に対して非常に弾性値が大きいわけであります。したがいまして、経済成長以上に税収が上がってくるわけです。それに対しまして間接税のほうは、少なくとも現在の日本の間接税は消費物資に、あるいは嗜好品等にかかっておるものが多いわけでありまして、これは国民総生産の伸びに応じては伸びてまいらない。したがって、相対的に直接税に非常に寄りかかった税制になっていくわけであります。そこで、新しい財源としての問題ももちろんございますし、所得税減税というようなものを続けていくための財源というような問題ももちろんございますが、やはり直接税というのは、金額にいたしまして今日この二千億あるいは三千億の減税をいたしましても負担感というものがなかなかとれない。まして、税の執行に一〇〇%完ぺきを期すというのは、言うべくしてなかなかむずかしいわけでありまして、そういう意味で、税制というのはいろいろな税を総合的に組み合わせるというのが、執行に一〇〇%を期せられない現状においてはやはり考えてみなければならない一つの面ではないか。そういう財源論あるいはまた負担感、あるいはまた執行の難易というような点も総合的に事務的に考えておるわけでありまして、七二年、現実になりましたときに、どのような税制改正を行なうかと申しますのは、そのときにおきます国民所得あるいは国民総生産の大きさと所要の財政支出との間でバランスをとってやっていけば何とかなるのではないか。七〇年の税制改正も非常にむずかしいといわれておりましたが、何とか一応の案ができたわけであります。七二年のことは七二年のときに考えるといたしまして、そのためにいま間接税のことを考えておるというようなことではございません。
  175. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いずれにせよ、間接税は逆進的な大衆課税になり、逆進的な課税であるから、私は、これはやるべきでないという考え方を持っておるわけでありまして、皆さん検討は、御検討なさるのはけっこうでありますけれども、全面的な間接税に重点を置く税金の取り方というものには、私はどうも納得いかないわけであります。  それで、時間が来たようでありますから、最後にお伺いしたいのは、私が本会議質問いたしましたときに、佐藤総理も、銀行の貸し倒れ引き当て金については検討をすると答弁をされたわけでありますけれども、この点の検討は始めておるわけですか。税調に諮問するということでありましょうけれども皆さんのところではもう検討段階に入っていると思うのですが、どんなふうな段階か、お知らせを願いたい。
  176. 細見卓

    ○細見政府委員 総理がお答え申し上げましたように、銀行の貸し倒れ引き当て金が過剰引き当てになっておるのではないかという御指摘であろうと思います。それについての検討をいたさなければならないということは、私どももそういう認識を持っておるわけであります。したがいまして、ことしの改正には間に合いませず、目下のところはいま御提案しておる法案のいろいろな準備なり資料の整備で忙殺されておりますが、これらが一段落いたしました段階税制調査会にもはかり、検討してまいりたいと思います。ただ、この問題は、金融機関の貸し倒れの認定にあたりまして、銀行局あるいは検査当局の認定の基準がきびし過ぎるとか、あるいはまた、銀行行政のあり方というようなものともかなり密接につながっておりますので、それらの点も含めまして総合的に検討して、適正な基準になるように検討を続けなければならないと思っております。ただ、いまやっておるかと言われれば、本年度のこの法案が成立いたしまして、一段落いたしたところから検討させていただきたいと思っております。
  177. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ほんとうは私たちがこれを指摘しなくとも、皆さんからいただいた資料によって都市銀行の場合を見ましても、貸し出し金額と貸し倒れ額との対比は大体〇・二%程度なんですね。そうすれば、いままでもうこんなものは皆さんのほうで検討しておくのがほんとうであって、いまごろやるということには少し手ぬる過ぎたんじゃないか、こういう感じがするわけですが、その辺で、方向くらいは主税局長ともあろう者は大体見当をつけておられると思うのですが、どうですか。
  178. 細見卓

    ○細見政府委員 これからまさに検討いたしてまいりたい。先ほど申し上げましたように、銀行行政とも微妙につながっておる問題でありますので、大蔵省の方針が二途に分かれるというようなことがないように、しかし、いたずらに寛大に、過保護にならない適正な方法を見出していかなければならない、かように考えております。
  179. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私、ほんとう特別措置の問題で、今度新しくできる土建会社の工事の完工の問題であるとか、いろいろお伺いしたいことがあったのでありますけれども、時間がありませんし、あとわが党の委員の方にお願いすることにして終わります。
  180. 毛利松平

    毛利委員長 二見君。
  181. 二見伸明

    ○二見委員 夜のとばりがおりてまいりましたので、簡単に終わりたいと思います。  主税局長にお尋ねいたしますけれども、租税特別措置制度の中で探鉱準備金制度及び新鉱床探鉱費の特別控除制度、これは適用期限を一年間延長しておりますけれども、これはどういう制度になっておりましょうか。
  182. 細見卓

    ○細見政府委員 探鉱準備金と申しますのは、鉱物の販売金額の一五%またはその販売によって得た所得金額の五〇%のうち、いずれか少ないほうの金額を限度といたしまして準備金として積み立てた場合に、それを経費として認めるというものであります。ただその準備金は、後に述べますような特別控除を受けるとき及び積み立て後三年を経ていまだ使っておらない残額があるというときには、取りくずして利益に算入することにいたしております。  その特別控除を受けるときと申しますのは、これが新鉱床探鉱費の特別控除というものでありまして、新鉱床探鉱費を支出いたしましたときには、炭鉱準備金の取りくずしによる益金に算入した金額を限度といたしまして、その支出した金額相当額をもう一度経費、つまり二回経費に認めるというわけであります。  この特別控除がありますので、いま申しました探鉱準備金と結びつけますと、課税繰り延べをしました準備金が非課税所得控除に振りかえられるというわけでありまして、その新鉱床の探鉱費は一方で経費として認められるわけでありますから、二重に控除を受けるというような形になるわけであります。
  183. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、たとえば探鉱準備金を一千万と仮定いたします。一千万を探鉱準備金として、最初は、たとえばことしといたしますと、ことしは損金に繰り入れるわけですね。そうして一年間でその一千万円を新鉱床探鉱のために使ったという場合には、その一千万は一応益金ということになるわけですか。
  184. 細見卓

    ○細見政府委員 その一千万円が益金にならないで、新鉱床探鉱費として支出したときには、その金額が同額特別控除されるわけでありまして、益金にならない。しかもその上に実質に支出した金額は別途経費になるという形になるわけです。
  185. 二見伸明

    ○二見委員 といたしますと、簡単にいえば一千万円は翌年にはまるっきり特別控除されてしまう。損金の中に入ってしまう。要するに税金の全然かからない金になる、とこういうわけでございますか。
  186. 細見卓

    ○細見政府委員 そういうわけであります。
  187. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、これは普通の特別償却の場合ですと、課税の繰り延べということになるわけですけれども、この場合はそういうふうにはならないわけですね。
  188. 細見卓

    ○細見政府委員 これは税額が控除されて、その税はかからない、こういうことです。
  189. 二見伸明

    ○二見委員 お尋ねいたしますけれども、この制度によって恩恵を受ける会社、企業あるいは産業というのはどういうものが現在あるわけでしょうか。
  190. 細見卓

    ○細見政府委員 金属鉱山の系統が多いわけでありまして、非鉄金属あるいは石灰石のような鉱山、あるいは天然ガス、石炭というようないわゆる鉱物を採掘する企業であるわけでありますが、その中でも非鉄金属が、大体収入金額で見ますと、あるいはこの繰り入れ額で見ますと、ほとんど九割を占めておるというわけであります。
  191. 二見伸明

    ○二見委員 この制度を適用いたしますと、たとえば非鉄金属のある会社は、大体こういう制度の恩恵を受けていない企業と比較して法人税はどのくらい安くなりますか。
  192. 細見卓

    ○細見政府委員 一がいにも言えませんが、おおむね半分くらいになるという感じであります。
  193. 二見伸明

    ○二見委員 実は私は四十二年の上期から四十三年下期までの二年間のこの制度による減税額が私の手元にあるわけです。このデータが正しいかどうか、私申し上げますので御確認願いたいのです。  非鉄金属大手七社で八五%の減税を受けている。そしてその実態はどうかというと、この制度を受けたことによって十八億円以上も減税を受けている会社が一社、十億円以上の減税を受けている会社が一社、七億円以上の減税を受けている会社が一社、四億円以上の減税を受けているのが三社、一億円以上が一社、こういうデータが私のところにあるわけですけれども大蔵省でもこれと同じようなデータがございましたならばお示しいただきたいと思うのです。
  194. 細見卓

    ○細見政府委員 大体そんなことになるのではないかと思います。
  195. 二見伸明

    ○二見委員 私、これほど不都合な制度はないと思うのですね。どうしてこの制度を現在存続させておかなければならないのか。たくさんのメーカーなり企業が恩恵を受けるのならばそれはうなずける面もありますけれども、わずか大手七社の非鉄金属会社だけが、言うならばこのようにばく大なる利益を受けている。税制上の恩典を受けている。こういう制度をなぜ存続させなければならないのか、この点はいかがでしょう。
  196. 細見卓

    ○細見政府委員 この減耗控除と両方合わせて申しておるわけでありますが、この減耗控除の制度は、ヨーロッパあるいはアメリカの諸国におきまして、若干の差はございましても、おおむねこの種の特別措置が講ぜられておるわけであります。  御承知のように、日本におきまする非鉄金属の資源というのはだんだん枯渇いたしてまいり、あるいは低能率の鉱山になってまいるわけでありまして、日本経済の発展のためにはどうしても非鉄金属あるいは石油、石炭といったような資源を海外に求めていかなければならない。そのときには海外の特にかなり独占的になっておる巨大な企業と競争いたさなければならない。そういうことを考えれば、諸外国で与えられておる程度の税制上の特典というものを日本企業だけに認めないということは、結局日本が、そうした日本経済の死活にもつながる重要な海外資源の獲得競争に敗れるというような結果も招来するのではないかという業界の強い意向がございます、あるいは通産省の強い意向がございます。  一方で、いま申しましたようにいろいろな準備金を設けて、それが期間の経費案分と申しますか、あるときに巨大な経費が支出するのに備えて一定の準備金を積み立てて、それによって事業活動を円滑に行なわせておるようないろいろな準備金制度がありますが、このように究極的にその所得が非課税になるというような制度はないわけでありますので、その辺を考えれば、税制としてこういう制度を置いておくのはいかがなものかというようなことをいろいろと議論いたしました。その結果、これらの制度がはたして有効な制度であり、あるいは諸外国の競争において必要不可欠な制度であるかどうかという点について、いま一年慎重に検討をいたしてみた上で結論を出してはどうかということで、一年間延長をお願いいたしておるわけであります。
  197. 二見伸明

    ○二見委員 アメリカ日本法人税の実効税率はどういうふうになっておりますか。
  198. 細見卓

    ○細見政府委員 付加税のついたところで、アメリカの表面税率は四八%、日本が三五%、事業税その他の問題がございますが、大体四八%と四〇%程度の負担割合になろうかと思います。
  199. 二見伸明

    ○二見委員 アメリカなど外国と競争するために、アメリカもこういう制度をやっている、外国もこういう制度をやっている、そして外国と競争するために、日本でも税制上こういう恩典を設けなければならないのだということですけれども、逆にいえば、法人税のほうはアメリカのほうが高いわけですね。日本のほうが安いわけです。外国がこうやっているのだから日本もこうやらなければならないのだというならば、では法人税も外国並みに引き上げましょう、条件を同じにいたしましょう、そうした上でならば認めましょう、こういう理屈になりませんか。
  200. 細見卓

    ○細見政府委員 そういうふうにいう言い方もあろうかと思いますが、総合的に税制と申しますのは、その国その国で沿革的なゆえんもあってできておるわけでありますので、そっちがだめならこっちでいこうというのも、なかなかいかがなものかと考えております。
  201. 二見伸明

    ○二見委員 新鉱床をさがすためだというのが一つの理由になっているようでありますけれども、これは私は非鉄金属ばかりではないと思うのです。企業にしても、海外にどんどん進出しなければならないだろうし、新しい市場というものを開拓していかなければならない。ほかの企業だって同じことです。それぞれの企業は全部自分の収益の中でもってそういう、海外にしろあるいは国内にしろ、 マーケットの開拓はやっていくわけです。鉱山だけが、非鉄金属だけがそういう恩典を受けるというのは、やはり私は税の公平という点から見ても疑問があるのじゃないだろうか。そういう点ではいかがですか。
  202. 細見卓

    ○細見政府委員 そういう点がありますので、この制度の効果、それからこの制度が税制の公平という点をおかしておる度合い、それらを総合的に勘案して、一年間の検討期間を置いて結論を得たい、かように考えております。
  203. 二見伸明

    ○二見委員 政務次官にお尋ねいたします。  答申によりますと、これについては「とりあえず、その適用期限を一年間延長し、その間、制度の合理化について検討する。」こうなっているわけです。主税局長も、この制度がいかに不合理なものであるかということは十二分に認識された上で、これから一年間検討されるというわけです。税調の答申は、合理化について検討するということになりますと、合理化ということは不合理な部分をなくすということですね。いまの制度は不合理だということです。それを合理化するということは、この制度をなくす方向で検討するのだ。また大蔵省としても、通産省だとかあるいは大手七社のほうからの突き上げもかなりきびしくなるだろうとは思いますけれども、そこまできちんと腹をきめてこの問題に対処していただけるのかどうか。その点、時間もおそいので私これで終わりたいと思いますけれども、政務次官の御答弁をお願いして終わりたいと思います。
  204. 中川一郎

    ○中川政府委員 税の公平からいけば疑問を持たれるという点については了解できるわけでありますが、何といっても国の資源を開発するということは、会社の必要性もあろうが、やはり国家的要請もあるということからこういう制度が設けられてあったわけでありますが、いま言ったような御意見もあり、あるいはまた新しい会社との関係等で、もっと拡充したらどうかという意見もないわけではありませんが、いずれにいたしましてもこれは二年間とか長いことではありませんで、一年間でそういうことを前向きで検討しよう、国民の納得のいく姿がどこにあるかということをやるということになっておりますので、いま御意見のありました点も十分勘案して、よりよきものに改めたい、このように思います。
  205. 二見伸明

    ○二見委員 国民の納得していける方向、よりよいものにしていきたいという政務次官の御答弁、そっくり私すなおに信じたいと思います。来年またこの制度が残って出てきたら、あれはうそだったのかと、議事録を持っておたくへ釈明を要求に参りますので、よろしくお願いいたします。  そのほかまだ聞きたいこともございますけれども、時間も六時半になりますので、これで終わりたいと思います。
  206. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、来たる四月十四日火曜日、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十六分散会