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1970-03-27 第63回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月二十七日(金曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 上村千一郎君 理事 金子 一平君    理事 藤井 勝志君 理事 村上信二郎君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       江藤 隆美君    奥田 敬和君       木部 佳昭君    高橋清一郎君       地崎宇三郎君    登坂重次郎君       丹羽 久章君    原田  憲君       坊  秀男君    松本 十郎君       森  美秀君    吉田 重延君       阿部 助哉君    平林  剛君       堀  昌雄君    美濃 政市君       貝沼 次郎君    二見 伸明君       春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         大蔵省理財局長 岩尾  一君         大蔵省証券局長 志場喜徳郎君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      奥村 輝之君         自治省行政局選         挙部長     皆川 迪夫君  委員外出席者         経済企画庁総合         開発局参事官  加藤 庄市君         運輸大臣官房観         光部長     渋谷 正敏君         運輸省海運局次         長       野村 一彦君         日本開発銀行総         裁       石原 周夫君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   美濃 政市君     中澤 茂一君 同日  辞任         補欠選任   中澤 茂一君     美濃 政市君 同月二十七日  辞任         補欠選任   坂元 親男君     江藤 隆美君 同日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     坂元 親男君     ————————————— 三月二十六日  昭和四十二年度、昭和四十三年度及び昭和四十  四年度における公共企業体職員等共済組合法に  規定する共済組合が支給する年金の額の改定に  関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の  一部を改正する法律案内閣提出第一〇四号) 同月二十五日  支那事変賜金国債償還に関する請願(斉藤滋与  史君紹介)(第一七四〇号) 同月二十六日  貴石、貴金属製品等第一種物品税撤廃に関する  請願堀田政孝紹介)(第一九二八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第四一号)  造幣局特別会計法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四二号)  利率等表示年利建て移行に関する法律案(  内閣提出第二二号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  日本開発銀行法の一部を改正する法律案造幣局特別会計法の一部を改正する法律案利率等表示年利建て移行に関する法律案の各案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。阿部哉君
  3. 阿部助哉

    阿部(助)委員 開発銀行総裁にお伺いしますが、開発銀行設立趣旨といいますか、目的というものはどういうことですか。
  4. 石原周夫

    石原説明員 銀行局からお答えをいただいておると思いますが、開発銀行法の第一条に、設備資金に対する一般金融の奨励、補完ということばがうたってございまして、日本産業再建経済の振興ということのために設備資金融資民間資金補完をする、あるいはこれを奨励するというような立場から貸し付けをいたすということが業務のように承知をいたしております。
  5. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さんのこの業務報告書によりますと、「経済再建及び産業開発を促進する」とありますが、経済再建というのはいつまでかかるのですか。
  6. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま御指摘のように、「経済再建」ということばは、いまの情勢に照らしますとたいへんしっくりしないことばになっておりますので、最近におきましては「経済再建」というのを、広い意味での経済成長発展というようなことばとして読みかえて考えておるようでございます。
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 日本国民総生産が資本主義国では第二位になったというようなときに、なおかつ「経済再建及び」云々ということで、これだけ大きな金を大資本のほうへ融資しておる。一体、この開発銀行目的はもうすでに達して終わっておるのじゃないか。なおかつ、これをこうやっていつまでも大資本のほうに奉仕するような形で続けなければいかぬという理由は一体どこにあるのだという感じがするわけですが、その辺はどうなんですか、もう一ぺん。
  8. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま御指摘のございましたとおりに、開発銀行の本来、初めのころに目的といたしておりましたような融資対象、それらが時世の変遷とともに、もはや開発銀行融資対象としてふさわしくないということになってまいったものもたくさんございます。しかし、それと同時に、また新しく社会生活変化、ことに最近における生活環境変化社会環境変化、そういうものに即応いたしまして、民間金融に乗りにくいような長期安定資金を供給する必要性というものも、一方においてたいへんに増加してまいっております。したがいまして、この前も申し上げましたように、片方において卒業生を送り出し、片方において新入生を迎え入れるというような形で、法の許す範囲内におきまして、融資対象についても変化を持たせながら開発銀行本来の使命を遂行してまいるということが必要ではないかというふうに考えております。お示しのように、ものによりましてはどんどん卒業生として送り出していくということが必要であろうかと存じます。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 経済は日々これ発展をするだろうし、するのが当然であります。そうすると、開発銀行使命といいますか、そのためにはますます必要になってくる、こういうことになるわけですね。しかし、それならば、この目的に書いてあるように「経済再建」、これを「成長」と読みかえろといったって、当局のほうでは読みかえるのは自由かもしれぬけれども、この文字からいって、「再建」というところにウエートが置かれているとすれば、これははっきりと書きかえをしなければいかぬのじゃないか。この問題はまたあとでお伺いしますけれども、どうもその点で、当初の設立趣旨からいってだいぶ違ってきたのではないか、なおかつこれをやらなければいかぬというあたりに問題があろうと思う。それはあとでお伺いしますが、金融補完ということは、総裁、どういうことなんですか。
  10. 石原周夫

    石原説明員 ただいま銀行局長からお話がございましたように、民間資金ばかりではまかないのつかない部分もございます。これには、ごく俗な言い方でございますが、量的補完質的補完と申しまして、量的に足りない部分補完をしていく、質的に、企業の持っておりますプロジェクト危険性と申しますか、新規性と申しますか、あるいは先進性と申しますか、そういうようなものもございますので、量的に足りないというばかりじゃなくて、そういう企業にはある限界までしか民間金融機関では金がつかない、その両者を通じまして補完ということを申しております。  開発銀行設立当初の場合におきましては、御承知のように、民間資金の蓄積が足りなかったわけでありますから、これは財政資金をもって量的に補完をいたしたという時代がございました。この量的、質的補完というのは非常に俗な言い方でございまして、両者併存している場合がきわめて多いのでございますが、傾向といたしましては量的補完段階から質的補完段階に入りつつある。その質的補完段階はどういうものかというと、先ほど銀行局長が申されたような新しい分野が出てきておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 総裁のおっしゃることからいきますと、結局何でもできるということですね。量的というのと質的というものが明快に区別ができないということになれば、何でもできるということになるのじゃないですか。  それならお伺いしますが、いまの開発銀行というものは、これは政府機関なんですか、民間機関なんですか。
  12. 石原周夫

    石原説明員 政府全額出資をいたしております。運営基本につきましては、御承知のように運営基本方針というものを毎年閣議で決定をされてお示しをいただいておるわけであります。  それから、これも一昨日銀行局長からお話がございましたが、各個の融資につきましても、一部そうでないものもございますが、原則といたしまして、必ず各省で当該プロジェクト政策的意義をごらんいただきまして推薦をいただいておるわけでありますから、したがってその意味におきましては完全なる政府金融機関というふうにお考えいただきたいと思います。
  13. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そういうことになればなおさら、民間会社でも定款というのがあって、定款からはみ出すことは禁止をされておる。同じようにここで補完あるいは再建というふうなことを使っておった場合、やはりその趣旨に沿っていくのが当然のことであり、その限度で守らねばいかぬ節度があろうと私は思うのですが、補完ということになったら、金融機関がある程度金融をする、それでは足りないからそこで開発銀行がある程度これに補完をするということが私は常識だろうと思うのです。その常識どおりやっておられるわけですか。
  14. 石原周夫

    石原説明員 私が先ほど量的補完とか質的補完ということを申し上げましたのも、まさにそういう意味でございます。
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その問題は、問題がありますのであとでお伺いすることにして、それだけお伺いして次に移ります。  開銀融資を見ますと、一番伸び率の大きなものは電子計算機関係、昨年に比べてたしか一六六%ですね。それで、金額の大きい点では海運ということになっております。これが九百六十七億、こういうことで、電算機関係については先日わが党の堀委員からも詳細質問が行なわれましたので、私はきょうは海運関係を中心にしてお伺いしたいと思うのであります。  いま海運関係ではいわゆる中核六社といわれておる。これは全外航船舶保有量で、どのくらいこの六社が持っておる比率になりますか。
  16. 野村一彦

    野村説明員 お答えいたします。  ただいま正確な数字資料が手元にございませんが、約七割強と存じております。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 七割強とおっしゃるけれども、あなたのところの運輸省から出した「日本海運現状」というのを拝見をいたしますと、六ページに、「六グループに集約されたが、その保有外航船腹量は当時のわが国外航船腹量全体の約九〇%を占めるものとなった。」こういっておるのです。これはあなたの答弁と違うようですが、どうなんですか。
  18. 野村一彦

    野村説明員 先ほどの答弁、正確でございませんでしたが、先生いまの御指摘の、これはグループ全体でございまして、六中核体の傘下にある系列、専属を含めると九〇%ということになっております。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで、これによりますと、六社のうち四社が世界海運企業の一位から四位を占めておる。日本企業世界企業の中の一位から四位を占めておるんですね。そうして残りの二社も十位以内に数えられるに至ったというから、この六社はベストテンの中に全部入っておる。しかもそのうちの四社は、世界企業の中で一番目から四番目までを占めておる。これくらい大きくなった。これになおかつ開銀という特別な援助をしなければならないというのは、一体どういうことなんですか。その辺を開銀総裁からお伺いしたいと思います。
  20. 石原周夫

    石原説明員 ただいま阿部委員のお示しのとおり、最近におきまする造船量が大きいものでございまするから、したがいまして、保有船腹量から申しまするとただいまお示しのような数字に相なっておるわけでございます。ただしかしながら、現状から見ますると、非常に急速な船舶増強を行なったものでありまするから、自己資本比率で申しますると、これは四十三年ですか、日本の場合の全産業平均が二割一分という数字が出ておりますが、海運業は二二%に相なっておるわけでございます。したがいまして、自己資本を充実し、会社の非常に強い基盤をつくりつつ再建をいたすという趣旨であって、業務内容改善を入れていることは確かでありまするが、業容はいまおっしゃったようなことであります。それでは国際競争力というような観点から見ますると、外国の大きな船会社のように相当有効な自己資本内部保留を持っている会社とは違いまして、そういうものの比較におきましてはまだ遠く及ばないと申しまするか、及ばないところがたくさんあるという状態でございます。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 自己資本比率が低い、国際競争力が弱い、だからなおかつこれからも手厚い保護政策をやる、こういう趣旨答弁だと思いますが、今日までこの船会社に対しましてはさんざん援助をしてきたわけですね。また、いろいろ問題も起きてきた。造船汚職であるとか、これは佐藤さんによく聞いたほうがいいのかもわかりませんが、その援助のおかげで、いま申し上げたようにベストテンの中に六社が全部入っておる。そうして一位から四位まで日本企業が占めるようになった。ただ自己資本比率が低い、これを何とかせにゃいかぬ、体質改善せにゃいかぬというが、これは総裁どうなんですか。あまり過保護なものだから肥満児になってしまって、自己資本比率をふやす努力をするよりも、安直に開銀から低利の金を借りたほうがいい、利子補給をしてもらったほうがいいということで、自己資本比率を直そうなんという考えは、過保護の中では初めからないのではないか。努力あとというものは一つも見えないじゃないか。それをあなたのほうで、自己資本比率が低いなんということを理由にされるとすれば、これはおかしいのじゃないか。日本会社は大体においてみんな自己資本比率が低い。もう数年前からそのことは言われつつ、なおかつ自己資本比率は、最近ますます設備投資の旺盛、それによる金融、そういうものから日本企業自己資本比率は、最近皆さん努力政府当局はいつでも言っておるその努力にかかわらず、ますます低下しているというのが現状じゃないですか。その中で船会社については特にその面が強いのであって、あなたがいま自己資本比率が低いなどと言うことは、みずからそれを助成しておってそれを云々してみたところでしようがないのじゃないかという感じがするのですが、いかがですか。
  22. 石原周夫

    石原説明員 お話しのように、日本産業全体として自己資本比率が低いという点は、日本産業一つの弱点と申しまするか問題点であろうかと思うのであります。ただ私が先ほど申し上げましたのは、その低い自己資本比率をもってしても一般産業におきましては二一%である、それに対して二二%であるということを申し上げたわけでありまして、その全体として低い、非常に問題のありまする日本産業の中でも、非常に自己資本比率の低いところである。したがいまして、もし海運業内容が非常によくなるということだけを考えますれば、船はあまりつくらないほうがいいということに相なるかと思うのであります。しかし、船をつくるということが一つ国策としてきまっておるわけであります。その点は、あるいは運輸省側からお答えをいただいたほうがいいかと思うのでありまするが、その前提で考えますると、やはりある程度助成をいたしながら、しかも船は相当の量をつくってまいる。  なお、これも運輸省からお答えをいただいたほうがいいと思うのでありますが、利子補給あるいは財政資金融資するということをいたしておりまするのは、外国との競争関係もございまして、御承知のように海運業というものは最も国際競争にさらされているものでございまするから、たとえばイギリスが二割船価補助をしておる、フランス、イタリアあたりも一割から一割二分の船価補助をいたしておる、こういうことがあるのでございまして、そこら辺の各国におきまする助成関係、それらをにらみ合わせてまいらなければならぬという点があるかと思います。
  23. 阿部助哉

    阿部(助)委員 各国助成援助の点については後ほどお伺いいたしますけれども日本ほど手厚い保護助成をしておる国が一体どこにあるかと私は言いたいのでありますが、それは後ほど資料でもってお伺いをいたします。  自己資本比率は、三十九年の三月、これは一六%でしたね。それが四十四年三月には一三%に低下しておる。全体に日本企業自己資本比率が低いといわれてきた。だけれども政府政策はそれと逆行しておるかのように、全体の企業もまた自己資本比率が低下しておるということは、これは政府当局は一体どういう——どこかが狂っておるのですか、それとも政府やり方が、私に言わせれば、これは金融の大企業に対する過保護だ、それで肥満児になってしまっておるんだ、特に船の関係はその代表であるというふうに考えるのですが、どうですか。
  24. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま御指摘の点、たいへん重大な問題でございまして、自己資本比率改善につとめるにもかかわらず、自己資本比率が次第に低下をしてまいるということは、全体として非常に大きな問題であることは御指摘のとおりでございます。  そしてその大きな原因の一つは、やはり成長の角度が非常に高いという場合におきましては、どうしても他人資本に対する依存度が高くなる。大蔵大臣がしばしば申し上げておりますように、全体としての成長スピードをある程度落としてまいるということが、大きな意味では自己資本改善にも役立ち、健全な成長に資する。そういう意味におきまして、長期における成長スピードというものを考えながら、財政金融の処理をしてまいるということが第一点として申し上げられるかと思います。  それから第二点の、大企業に偏重しておるのではなかろうかという問題でございます。これは前回の引き締め時までにおきましては、あるいは前々回と申し上げたほうが正確かと思いまするが、そういったような傾向もあるいは若干はあったのではなかろうかというふうに観察いたすわけでございますが、現在におきましては、今度の引き締め一つの特色は、大企業における資金繰りのほうが、中小中堅企業に比べてかなりきついと申します点は、やはり資金の流れにつきましてもそういう方向における研究、くふうというものができ、金融の体制もそれに向くような方向に向かっておる。したがいまして、今回の場合、大企業に対応する資金、大企業資金需要伸びが非常に著しいということに対するブレーキのほうが、中小企業に対する場合よりも相対的にはるかに強くかかっておるという形におきまして、いまお示しになりましたような方向に、たいへん御満足のいくような速さではないかと思いますが、徐々に向かいつつあるというふうに私は判断をいたしております。
  25. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま近藤さんの御説明は、高度成長の速度が速過ぎる、こうおっしゃっておるのですが、速過ぎると言いながら、なおかつまた開銀資金ワクをふやして、そうして、御承知のように開銀は、大体こういう政府政策というけれども、それは大企業のほうに融資をされている。これは、片っ方では速過ぎるとおっしゃり、あるいは金融引き締めと片っ方で言いながら、なおかつこういう資金ワクを増大する。船は、もう少しあとでお伺いいたしますけれども、船の場合等は、ますますここへ大きな金をつぎ込んでいこうということは、どう考えてもこれは少し矛盾をするのではないか。まあ私だけが頭が悪くてわからぬのか、いまのお話を聞いておれば、国民は、いまの政府やり方、御答弁には矛盾を感ずるのが当然だ、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  26. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまの海運の例を引きますと、先ほど総裁からるるお話のございましたように、海運体質の国際的な脆弱性という問題もございますが、同時にまた、それは、先生からお話のございましたように、やはり保護程度は次第に薄くすべきであるという考え方もございまして、また海運業自体が、昔に比べますとかなりに体力がついてまいったというような点をも考慮いたしまして、たとえば四十四年度におきましては利子補給率を引き下げまして、これは、開銀の分が二・五%から一%、あるいは市中銀行の分が二・七六%から二・二%に引き下げられるというようなこと、あるいは融資比率がきびしくなる、あるいは貸し付け期間がきびしくなるといったような方向で、全体としての海運の立ち直りに応じたようなやり方がとられてきております。その結果、開銀全体に占めます海運のシェアも、数年前まで、この五年間ぐらいは大体四割台くらいでございましたので、いまや三割に近づいてきておるというような状況にあるのは、そのあらわれかと存じております。
  27. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そこで、私が冒頭お伺いしたように、またの白書で書いてありますように、日本企業は一番目から四番目までの船腹をランクされておる、あとの一社もベストテンの中に入っておるというぐらいに、いままでこれは政府の過保護——私は、はっきりとこれは過保護だと思う。それでここまで来ておるわけです。それは世界じゅうで一番強くなりたいという企業希望もあるし、皆さん希望もあろうけれども、もう一番目から四番目まで占めておるのに、なおかつ一体どこまで海運援助の手を伸べなきゃいかぬのか。国民はちょっと納得しないのじゃないか。もう一番目から四番目になっておるというのに、この体質が弱いとか強いとか——それはもっととにかく大きくなりたいとかいう希望はあるでしょう。あるけれども、これだけになっておるものを、なお過保護を続けなければならぬという理由は、いまの御答弁では、総裁の御答弁から聞いても、近藤さんの御答弁からお伺いしても、これは一つも私は納得するような御答弁ではないわけです。もう少しここをきちんとしてくれませんか。
  28. 野村一彦

    野村説明員 ただいま先生の御指摘のように、わが国海運業の量的な面から申し上げますと、確かに世界の首位十位の中に中核六社みな入っております。そういう面におきましては、非常に企業は量的に大きくなったということでございます。しかしながら、今後、世界貿易伸び、またその中におきまするわが国貿易伸びということを見通してまいりますと、私どもが過去に計画いたしました建造量は常に実績を下回っておりまして、今後の予想を見ましても、たとえばわが国の船で積む積み取り比率でございますが、全貿易量の中で、わが国の船で運んでおります比率を申し上げますと、大体輸出が全体の三七%程度輸入は四七、八%でございまして、つまりわが国輸出入物資の半分以上は外国船によって運ばれている、こういう状況でございます。したがいまして、輸入の面から申し上げますと、鉄鉱石とかあるいは石油という、わが国の重要な原材料を低価格で安定的に輸送をするというためには、今後ともわが国として海運外航船舶を数多く建造するということは、国民経済的な観点からも必要と思いますので、私どもはその方向で今後ともやっていきたいと思います。
  29. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、貿易はふえる、輸入物資は非常に多い、それはわかるのです。そして、それをできるだけ自分の国の船で運びたい、さらに外国の貨物も運んでもうけたい、外貨をかせぎたい、そんなことは子供でもわかる理屈でありまして、だからといって、日本経済全体のバランスというようなものも考えてこれは行なうべきであって、特に船だけ、これだけ今日まで過保護を続けてきた、それをなおかつこれから続けなければいかぬという理屈には、一つもならないじゃないですか。それは北欧の国のように船でかせいである程度外貨をかせぐ国はあるだろうし、あるいは物を生産して外貨をかせぐ国もあるだろうし、それを全部自分の国の船でやらなければいかぬという理屈もなかろうと私も思うし、また全体として見て、今日までの過保護で、何べんか繰り返して言うようでありますけれども、これだけ、世界の一位から四位まで占めるというようなところまで来て、それをなおかつこうやって開銀融資の最大の部面を占めなければいかぬ、利子補給はせなければいかぬというあり方は、問題があるのではないか。  日本企業の中にはまだまだやらねばいかぬ問題がいっぱいあるじゃないか。農業なんというものは、ちょっと米が余るといえば作付減反だ、いや物価の中で据え置きだというならば、もう少し農業基盤の整備に金をつぎ込むのがむしろ当然じゃないがという、私は幾つかの問題を感ずるわけでありますが、なぜ船にこれだけせねばいかぬのか。というのは、あなたの、貿易伸びた、日本の貨物を運ぶ量がこれだけだからけしからぬというのは、何も理屈にはそれはならぬ、と言えば語弊がありますが、なおかつこれだけの援助をせねばいかぬという理由には薄弱過ぎると思うのですが、いかがですか。
  30. 野村一彦

    野村説明員 私どもといたしましては、先ほども石原総裁が答えられましたように、一つは、外航船舶といいますのは、裸のまま諸外国との国際競争にさらされております。したがいまして、一応量的には非常に大きいフリートを持っておりますが、外国船と競争するための国際競争力ということが問題になってまいります。それにつきまして、具体的には外国船と競争して対等以下の運賃で荷物をとれるということが国際競争力でございますが、そのためには諸外国におきましても非常に手厚い援助をいたしております。たとえば英国におきましては投資奨励法ということで、二〇%を、キャッシュ、現金で船を建造しようとする適格船主には補助金を出しております。また西独等におきましても、非常に金利の低い融資政府保証等の措置を行ないまして、低金利で船をつくらしております。そういう状況でございますし、また一方先生も御承知のように、わが国では非常に造船業が発達しておりまして、諸外国からの受注を受けて多量の外国船を毎年外国に輸出しております。そういう船との競争というようなこともございますと、わが国の現在の海運業国際競争力というものは、裸ではこういう諸外国にとても太刀打ちできないという状況でございますので、私どもとしましては、海運業のためよりも、むしろ国内の重要産業の物資の安定輸送をするための手段といたしまして、国際競争力のあるフリートをそろえるということが必要である、こういう観点から今後ともそういう助成が必要であろうと考えております。
  31. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまのお話には、私は幾つか合点のいかぬ問題があるんですがね。イギリスが援助をしておる、二〇%奨励金を出しておる、こうおっしゃっておるのだけれども、これは全部の外航船に出しておるわけですか。
  32. 野村一彦

    野村説明員 いや全部の外航船ではございませんが、外航船舶を建造する場合に、ちょうど日本開発銀行で適格船を審査しておられると同じように、ある一定の基準のもとにやっておることと存じております。
  33. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたのところのこの白書では、コンテナ船については二〇%の奨励金を交付しておる、こういっておる。その次のページで、外国海運業に対する助成制度を並べておりますが、これには日本援助のものを載せてない。比較できないようになっておる。日本ほど援助をしておる国はないのじゃないですか。イギリスの場合二〇%援助をしておるとあなたはおっしゃるけれども、これはコンテナ船に限ってのことであって、必ずしもそれほど手厚い援助をしてないのじゃないか。だから何か一部分をとって外国がこうやっておるなんということをおっしゃることは、もう少し全体を見ながら国民のための答弁をしていただかないと困るんですが、私はそういう点で、一部分だけのあれをとって全体のような形で答弁をされるのは非常に不満であります。
  34. 野村一彦

    野村説明員 ただいま先生指摘の点は、海運白書の二十二ページのことについておっしゃっておられると思いますが、これにおきましては、船そのものの建造につきましてはもちろん一定の審査をし、合格した船につきましては、コンテナ船であろうとなかろうと投資奨励金を交付しております。ここにございますのは、コンテナ船そのものに対する投資奨励金のほかに、コンテナバン、箱でございますね、その箱につきましても一隻につきまして三セット分、そのコンテナ船についても二〇%の投資奨励金を出しておる、こういう意味でございます。一定の基準に合格した船は、コンテナ船であるとないとにかかわらず投資奨励金を出しております。コンテナバンについても三セット分の投資奨励金を出しておる、こういうことでございます。
  35. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ここで各国助成策をずっと並べて比較しておる、こういうときにはやはり日本のものを並べたら、日本がいかに過保護であるかということも明瞭になると思うんだが、わざわざ日本のものだけは比較できないように抜いてあるのじゃないですか、この白書では。これは少しおかしいと思うんだが、日本が一番過保護だった、私はこう思っておるのに、日本のものを比較できないように、イギリス、アメリカ、ノルウェー、ギリシャ、イタリア、西ドイツ、フランスとこう並べてあるのだが、ここへ日本の欄を一つ設ければ、一番これが明瞭にわかるわけですが、これが抜けておる。いまおっしゃったように、イギリスはコンテナ船はなるほど援助をしておるけれども、そのほかの部面をずっと比較してみますると、必ずしもあなたがおっしゃるように日本保護が足らないなんということには、比較して低いなどということにはならないのじゃないか。それが証拠に、あれだけ戦争でいたんだ日本船会社が、先ほど言っておるように、世界のトップクラスにずらりと名前を並べるというようになったのは、そのためじゃないですか。船会社努力もさることながら、一番大きな力は政府の財政援助というものがあずかって大きかったと私は思うのですが、そうではないのですか。
  36. 野村一彦

    野村説明員 ただいまの先生の御質問でございますが、過去におきまして海運業が非常に悪かった時代に、再建整備をはかりますために再建整備二法をつくりましたし、またそれに基づいて予算措置等をやっていただきましたおかげで海運が非常に立ち直ったことは事実でございます。しかし、私どもが五カ年の再建整備期間の立ち直りのおもな理由を分析、検討いたしてみますと、たとえば過去にありました償却不足の解消あるいは延滞の解消に寄与しました要因を分析してみますと、たまたま再建整備期間中におきまする世界経済全体が好況であった、また日本経済も非常に成長したということで、やはり船がかせぎました償却前の利益と申しますか、これが非常に大きなパーセンテージを占めておりまして、国家の直接、間接助成もこれにあずかっておるということであろうと思いますが、全体といたしましては世界経済あるいは日本経済の好況を背景にした一つの上向きの波に乗ったということも大きな原因であったと考えております。
  37. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたは質問の焦点をぼかされるのだけれども世界経済が好況だったのは、何も日本だけに好影響をもたらしたというわけではないでしょう。日本企業がぐんぐん伸びていって、相対的にトップクラスに踊り出たのはどうしてかと私は聞いておる。その問題はあまり追及しなくともいいですが、あまり焦点をはずした答弁をされたのでは先へ進まぬのですよ。私は、世界経済が好況だったなんというのは、日本船会社にも好影響を与えただろうけれども外国船会社にもこれは好影響を与えたのだと思うのですが、それは与えなかったのですか。日本船会社だけが世界の好況の影響を受けたというような答弁をされるのですけれども、そうではないでしょう。
  38. 野村一彦

    野村説明員 もちろん諸外国海運会社もそれによって世界経済発展のために相当収益をあげておるということは、先生指摘のとおりでございます。ただ日本海運の場合は、そういう背景がございましたところに国の助成というものがありまして、これが有効に働いたというふうに私ども考えております。もしこの助成がなかったならばということを考えますと、とても現在のような海運の姿は見られなかった、かように考えております。
  39. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは個々のじゃなしに、全般として日本よりもより保護をしているという国の名前と、どういうものであれかというものを——イギリスのコンテナ船だけとっては困りますが、全体としてあげてみてください。
  40. 野村一彦

    野村説明員 先生お手元にお持ちのことと思いますが、この海運白書の二十四ページ及び二十五ページに各国海運助成制度につきまして、直接助成と間接助成とございます。まずそのイギリス、アメリカというところをごらんいただきますと、イギリスは新造船関係におきまして投資奨励金二〇%、アメリカは建造差額補助金を定期船につきましては五五%出しておりますし、西ドイツは同じく建造補助を一〇%、フランスは一二%出しております。  それから融資の金利でございますが、イタリアでは船主負担金利が利補後五・一%、西ドイツにおきましては政府融資の場合二・五%、復金融資の場合五・五%、フランスの場合は復金融資の場合で四・五%、日本は、現在の船主負担金利は利子補給後平均いたしまして五・六五%ということになっております。こういう例を見ましても外国とほぼ同等、あるいは国によっては外国のほうが手厚いという状況であると思います。
  41. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はそうは思わぬのでありますが、この議論をしておると先に進めませんので、先に進みますが、造船汚職の時代から今日まで引き続いてこれだけの保護をしてきておるわけです。しかも、それでこれだけになっておる。そうすると、この融資というものでここまでになったと思うのですが、皆さんのこれを見ると、大体年間五億五千万ドル程度外貨をかせいで日本の国際収支に寄与してきた、こう述べておられるわけであります。これは推定といっておりますが、どういう根拠で推定をされておるわけですか。
  42. 野村一彦

    野村説明員 これは、海運国際収支は全体といたしましては赤字になっております。いまの先生の推定は、これはIMF方式で計算をいたしますと、わが国貿易構造上からも、またIMFの計算の方法からもどうしても赤字になるということはやむを得ないことでございまして、いまの先生の御指摘は、海運活動の結果外貨を獲得した、日本の外貨の蓄積に寄与したというものを私どもで実質的に試算をしてみたわけでございます。その数字でございます。
  43. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは私が言ったんじゃないのです、ここに書いてあるのですよ。この「外貨の取得額および節約額は、毎年五億五千万ドルに達するものと推定され、わが国国際収支の改善にも大きく寄与している。」国際収支に大いに寄与した、これは私全面的に否定はしません。だけれども、国際収支も最近は非常に黒字基調である。あまりたまるとよその国からどうのこうの言われるので、むしろ散らすのに少し骨を折らなければいかぬというような段階のようでありますが、そうすれば、国際収支の面で運輸省船会社のほうで寄与というような問題は、日本の国際収支の上からいえば、船をこれだけ援助してふやさなければいかぬということにはならないんじゃないかと思いますが、大蔵当局はどうですか。
  44. 近藤道生

    近藤政府委員 先ほど来先生指摘になりましたように、海運業につきましては、確かに従来の制度がその役割りを終わったという面もございます。そこで、さっきから申し上げております新入生として大いにこれから伸ばしていくというような部類に属するものとは、私ども考えておりません。
  45. 阿部助哉

    阿部(助)委員 外貨のほうでこれだけ寄与したとおっしゃるんだが、貿易依存度の高い日本で、これが国民生活、物価等にどういうふうに寄与したか、私はむしろそのほうが重大だと思うのでありますが、そのほうの計算はおやりにならなかったのですか。
  46. 野村一彦

    野村説明員 あとで正確な数字お答え申し上げますが、私どもの検討いたしましたところでは、三十五年から四十二年度までの七年間に、わが国の主要な原材料であります鉄鉱石及び石油の運賃がトン海里当たり、つまり運んだ距離と物量をかけた数字でございますが、トン海里当たりで見ますと、鉄鉱石におきましては約四〇%、それから石油におきましては約五〇%下がっておるということでございまして、それだけの寄与をしておる、こういうふうに考えております。
  47. 阿部助哉

    阿部(助)委員 開銀総裁にお伺いいたします。  これは私のお願いしました資料と少し違うのでありまして、電力は百億以上融資をしておる会社の数を聞いたのでありますが、これは件数で三十八件となっておるわけであります。電力会社は九社ですね。そうするとこれは一社当たり相当な金額になる。また海運関係も件数で、一件当たり百億以上の融資ということになると、これはおそらく大手六社だろうと思うのですが、その点は間違いありませんか。
  48. 石原周夫

    石原説明員 いま阿部委員がごらんいただいておりますのは、「日本開発銀行資本金別貸付残高 四十四年三月末現在」という数字だと思います。これでごらんいただきますと、電力が五十二件で三千三百八十七億、五十二件と申しますのは、おっしゃるように社数ではございません。貸し付け件数であります。したがいまして九電力以外に、たとえば原子力発電株式会社であるとか、あるいは常磐石炭であるとか、そういう会社がございますから、九電力のみではございません。ございませんが、主力は九電力でございまして、これはおっしゃるとおりでございます。海運のほうも百六十件、これは件数でございまして、四千六百十二億という数字になっておりますけれども、これも中核六社が、先ほど七割ということを言われたのですが、その割合になりますかどうか。これは中核六社だけではもちろんございません。それ以外の系列会社あるいは専属会社も入っておりますから、その社数は必ずしも大手六社のみだというわけではございません。  ただ、ちょっと申し上げておきますのは、これは阿部委員の御注文ではこういうことであるかどうか存じませんが、ごらんのとおり四十四年三月末の残高でございます。これは一昨日も私申し上げたのでございますが、開発銀行のできました当初の間におきましては、電力、海運、鉄鋼、石炭、肥料というようなものに、年によりますと八割九割という額を融資したという時期がございます。電力会社におきましても、現在のように原子力でありますとか石炭火力というように限定せられたものじゃなくて、全体の火力の増強、水力の増強に融資した時代がございます。しかもこれは融資期限が非常に長うございますから、したがってその当時出しました残高がこの中に入っております。しかし、御承知のように、最近は電力だけについて申しますと、年々二百億程度融資をいたしておるわけでありまして、これは非常に限られた計画だけに対してやっておるわけであります。大体年々の償還がほとんど同額ございますから、電力会社に対する貸し付け残高はほとんど動いておりません。したがってこの残高べースで、大体大会社に出しているとおっしゃるならば、そのとおりでございます。残高べースではまさにそのとおりでございますが、最近におきましては、昨日来銀行局長からお話がございますように、貸し付け金の重点を切りかえておりますから、したがいまして、ここにあります額は貸し付け計画が毎年毎年どういうような資本金のウエートになっているかという、このこととは必ずしも合いませんし、なかんずく御指摘の電力会社あたりが大きな数字になっておりますのは、過去の蓄積分がそういうことになっておりまして、最近におきましてはそういうウエートは減ってきているというふうに御承知いただきたい。
  49. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私がお伺いしているのは、ウエートは、海運の五十億以上百億未満というところが十三件あるわけですね、これは大手六社ではないですかと、私は件数じゃなしに会社の数を出してくれ、こう言ったのです。また次の、一つの件数で百億円以上ということで二十四件、これはやはり大手六社ではないですか、こういうお伺いをしておるわけです。
  50. 石原周夫

    石原説明員 ちょっと私は手元に海運会社資本金のリストを持っておりませんので正確なお答えをいたしかねるのでありますが、百億以上ということでありますると、これは中核体であろうかと思います。ただ、五十億円以上百億円未満というところは、これはむしろ中核体よりは、各グループに属しまする系列会社、その中の大きいほうの部分に当たるかと思います。
  51. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、その論議は二年前、澄田さんのときにさんざんやったのでありますが、私の満足するような資料を出していただけないわけですよ。だから、開銀がお貸しになっておる金額の上のほう二十社ぐらいのものは、どの会社がどれくらい借りておるのだというぐらいのものは資料として出してもらいたい、それでないと十分な審議が尽くせない、こういうことで要求をしました。ところが総裁も当時の澄田さんも、金融機関だからこれが出しにくいんで、個々にお伺いしてくれればいつでも個々のケースでは出します、こうおっしゃっておるが、出してない。大体開発銀行から金を借りたというのは会社にとって不名誉なことであるのか。業務上差しつかえる、商売上差しつかえるという問題ではなかろうと私は思う。だから海運なら海運の六社の、個別にどれぐらい出ておるのかという資料が私はほしかったわけです。そうすれば私ももう少し焦点を合わせた質問ができるのでありますが、そういう資料はひとつ出していただけませんか。これは主として国民の金を使っておるわけですね。しかもこれは、町の高利貸しから借りておるということならあるいは不名誉かもわからぬけれども開発銀行から企業が借りるということは、私は決して不名誉なことじゃないと思う。全部の融資を出せなんということは言わない。国民の機関である開発銀行が貸しておる金で大手のほうの何社ぐらいのことは、私は国会審議の上では当然のことだと思う。なぜそれが出せないのか。私はその理由がわからない。金融機関だとおっしゃるけれども、これは政府の機関でしょう。政府の金を使っておる。その会社が一体どういう形でもうけ、どういう形で将来の皆さんの願う企業体質改善努力しておるのか。努力してないならば、それに対して今後どうするかというようなチェックの問題も出てくる。そういう点でこれは当然出すべきだ、私はこう思うのでありますが、いかがですか。
  52. 石原周夫

    石原説明員 阿部委員も御承知でございますように、たしか前回、一昨年でございますか、その機会にも同様のお話がございまして同様のお答えをいたしたわけでございますが、金融機関のことでございますので、取引の相手方に対してどれだけの融資をいたしておるかということにつきましては、この際、提出するのを差し控えたいということで、前回の御審議のときにもお願い申し上げたように記憶いたしております。
  53. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その、金融機関だからとおっしゃるが、おたくの金融機関は特殊な政府の機関である。だから、出せないという——ただ金融機関だからだけでは国民は納得しないでしょう。私は納得できない。だから、もう一つ突っ込んだ、出せないなら出せないという理由を述べてもらいたいのです。
  54. 石原周夫

    石原説明員 金融機関といたしましては、相手方との間に一種の相互の信頼関係のようなものがございまして、取引の関係に属しまするお互いの関係があるのでありますから、その点からいたしまして、政府金融機関ではございますけれども、そういうような、どの会社にどういうような貸し付けがあるというようなことは、お出しをすることを差し控えたいということで、一昨年以来申し上げているわけでございます。
  55. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで迷惑だというならば、そういう機関は開銀の金を使わなければいいのであって、国民の金を使う場合にはそれくらいのものは当然出すべきだと私は思う。その点では、あなたと私とはこの前から意見が違うわけでありまして、私はその点ではこの問題、もう少し聞きたいのでありますが、この資料ではどうも私は困るわけです。  それで、ごく最近の大手六社の償却前の利益というものが新聞では報道されておるのですが、これはどなたからか、一応数字をあげてもらいたいと思います。
  56. 野村一彦

    野村説明員 四十四年九月期につきまして申し上げますと、中核六社でございますが、六社の当期未処分利益が合計四十一億七千万円ということになっております。
  57. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の手元に、これは日経ですが、「海運六社の今三月期業績予想」というので、これははっきりしておるから私聞いたんですが、四十一億とだいぶ違うのですね。私、償却前利益と、こう言ったんですよ。四十一億なんというものじゃないですよ。これによりますと、郵船が百十二億、商船三井が九十二億五千万円、川崎汽船が六十三億、ジラインが六十五億、新日本汽船が四十七億五千万円、昭和海運が四十億となっておる。これはもちろん、償却前と償却後とはだいぶ違うことはわかりますが、私がお伺いしているのは償却前の利益を聞いておるわけです。この数字はまだ三月期の予想ですから、そこで私、聞いたわけです。
  58. 野村一彦

    野村説明員 ただいま先生のおっしゃいましたのは、三月期の予想につきまして各新聞社で取材されたことだと思いますが、私ども、まだ、その決算が終わりませんと正確な数字がつかめませんので……。
  59. 阿部助哉

    阿部(助)委員 九月末のがあるでしょう。
  60. 野村一彦

    野村説明員 ただいま私が申し上げましたのは、四十四年九月期、ちょっと手元の数字の立て方が先生の御指摘と違いますけれども、経常利益について申し上げます。  経常利益について申し上げますと、四十四年九月期におきまして、六社合算百九億、こういうことになっております。
  61. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これだけ大きな利益をあげておられるわけでありますし、こういう形の中になおかつ希望とすれば外国に負けないようにと言うけれども、それはそう一気にアメリカの資本を追い越すなんということはなかなか容易じゃないでしょう。それを無理してこの海運にだけこうやってつぎ込むということがだんだん発展していって、私は何かとんでもないところへいってしまうのじゃないかという感じもするわけです。  たとえば桜田日清紡会長が、マラッカ海峡は日本の生命線だなんということを言い出しておるというところに、だんだんだんだんこういう問題を通じて接近していくのではないかという感じがするわけです。いま日本政府でも何かマラッカ海峡の整備計画を立てて調査に入ったかに聞くのでありますが、その点はどうですか。
  62. 野村一彦

    野村説明員 私直接の担当でございませんので、最近の正確なお答えはできないかと思いますが、マラッカ海峡につきましては、日本のタンカーのほとんど全部がマラッカ海峡を通っております。しかも現時点におきましては、喫水十九メートル以上のタンカーが通るのは危険だといわれておりますので、目下関係——インドネシア、マレーシア、シンガポール、この関係国と日本が相談をいたしまして、この水路の状況を調査し、そしてその結果さらに掘さくをするということでありますと、それに相当の金がかかりますので、目下特別の機関をつくりましてそれの調査をいたしておる、こういう段階でございます。
  63. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、これの掘さくをする金というか経費はやはり日本でも負担をするということですか。
  64. 野村一彦

    野村説明員 これはほとんど日本が負担をする。これは関係業界の協力も含めまして日本が負担するというふうに承知いたしております。
  65. 阿部助哉

    阿部(助)委員 たとえば石油を中東から運ぶ場合に、大型船でマラッカ海峡を通過するのと、ずっと遠回りをするのでは、経費がうんと違うのですか。大体どれくらい違うのですか。
  66. 野村一彦

    野村説明員 経費の点につきましてはちょっといま私存じておりませんが、日数にいたしますと、ずっとインドネシアの東のほうのロンボク海峡というところを通らなければなりませんので、そういたしますと三日弱ぐらい中東から日本まで違う、こういうふうに考えております。
  67. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうするとだんだんこのマラッカ海峡は、ちょうどイギリスがスエズ運河に大きく依存しておったと同じような地位に日本にとってはなるわけですか。
  68. 野村一彦

    野村説明員 非常にむずかしい御質問で、私どもお答えできるかどうかわかりませんが一船舶の安全航行、大型タンカーの安全航行という点から考えますと、マラッカ海峡に大型タンカーが十分安全な航行ができるような措置は、これはもう商業ベースとして考えましてもぜひ必要だと考えております。
  69. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあだんだんそういう形の中で、マラッカ海峡が、スエズ運河がイギリスにとって大事だと同じような形になるのじゃないか。確かにそうだと思うのですが、まあイギリスが今度は七一年にはアジアの地域から、スエズ以東から撤兵をする。アメリカや何かの言う空白地帯になってくるということで、日本の自衛隊の今度の予算も海上自衛隊に最大のウエートを置いておるというようなことが、みんなこれへ重なって関連を持ってくるのじゃないかという不安を私は持つ。そういうときに海運というものだけに重点を置いてこうやるということに、どうもこの辺で私は割り切れないものを感ずるわけであります。まあこの問題はなかなか議論してもかわかない問題でありますので、次へ移ります。  自治省にお伺いしますが、お調べを願っておるのでありますが、船会社の政治献金というのはごく最近どれくらいやっておるのか、ちょっとお知らせを願いたいのであります。
  70. 皆川迫夫

    ○皆川政府委員 御承知のように政治資金規正法では、政治団体がどういうところから寄付を受けておるかという角度からまとめておりまして、個々の会社がどういう団体、全国で何千という団体があるわけでございますが、そこにどれだけずつ出したということを会社別にまとめることになっておりません。いまの御質問、実は非常にむずかしいのでございますが、昨晩お話をいただきましたので、これは官報によりまして計算をいたしたのでございますが、船会社のトータルでございましょうか。
  71. 阿部助哉

    阿部(助)委員 会社は六つくらいなんだから、造船を入れても十くらいなんだから、一つ一つやってもらいたい。
  72. 皆川迫夫

    ○皆川政府委員 ちょっとトータルを出しておりませんので……。
  73. 阿部助哉

    阿部(助)委員 じゃあ、まとめてもしようがないです。まとめたのでもいいですよ。あなたのところの手持ちにあるのを……。
  74. 皆川迫夫

    ○皆川政府委員 こういう事情でございますので、正確な数字であるかどうかちょっと保証しかねる点もございますけれども、概数で申し上げますと、造船関係会社で、四十二年の下期で約四千万弱ではないかと思います。それから四十三年でも大体似た程度、こういう数字が出ておるようでございます。
  75. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほど来私が申し上げておるように、日本では非常な過保護で太ってきた。そうして運輸省で誇示するように、ベストテンの中に全部入ってしまった。一位から四位までは日本船会社だというところまできた。そうして総裁は、金融機関だから、どれだけ貸してあるか会社ごとに発表はできないと、こう言っておる。そして片方では、不明朗な政治献金はいまお聞きのような形でやっておる。会社は船をつくるときには、困ったときには、国策だからお国のほうでもっとめんどうを見ろ、財政資金をもっとよこせ、こう言っており、もうけたのはおれのもんだということで政治献金をやる。そうして先ほど私が読んだように、この三月期でも多いのは百十二億ももうけようと、こういうことになる。これは実際汗水流して、そうして生活費にまで課税をされておるような国民が、一体こういう姿を納得するとお考えになりますか。私はこれは、計画を立てておる運輸省の側と、もう一つは大蔵省、また銀行当局である総裁、それぞれから御見解を承りたい。
  76. 近藤道生

    近藤政府委員 私、政治献金のほうはつまびらかにいたしませんが、銀行局の考え方といたしましては、先ほども最初にお答え申し上げましたように、徐々に海運に対する融資条件その他はきびしくしてまいっておりますし、先ほど来のお話の御趣旨をも踏まえまして、今後大いに伸ばすべきものに入るものとは考えておらないということを申し上げたわけでございますが、そういう考え方をいたしております。
  77. 野村一彦

    野村説明員 政治献金の問題につきまして、私どもお答えするのはどうかと思いますが、ただいま先生の御指摘のように、さっきは造船ということで、おそらく造船会社を含めた数字であったと思いますが、国の利子補給を受けております海運会社として、極力経営の合理化、経費の節減をしなければならないことは当然だと思います。しかし、やはり営業活動をいたしております関係上、いろいろ世間的なつき合いと申しますか、交際というようなことも、ある程度はやむを得ないかと考えられまして、また、政治資金規正法に基づきます正式の手続を踏んで行なわれておりますものにつきましては、私ども、それが世間の良識から見て妥当なと申しますか、良識にもとらない程度のものであれば、これはある程度やむを得ないものではなかろうかとも考えておりますが、なお今後とも、そういうものについては辞退するように指導したいと思います。
  78. 石原周夫

    石原説明員 政府当局からお答えになったことで尽きておると思いまするが、先ほど来、銀行局長からお話がございましたように、四十四年度から融資条件を変えまして、利子補給も下げましたし、また、私ども融資の割合も、定期船はそれまでは七割でございましたものを六割六分・鉱石船及びタンカーにつきましては、いままで八割でございましたのを六割三分というふうに、自己資金をもってまかないます分と一般融資をもってまかないます分のほうをふやしておるわけでございます。期限も、二年ないし三年、短縮をいたしておりまして、そういうような融資条件を厳格化いたしますことは、四十四年度から実行いたしておるわけでございます。  それから、これも銀行局長お答えになった点でございますが、お配りいたしました資料でわかっていただきますように、すでにこの四、五年間は、大体九百億という金額で上下いたしておるような状況でございます。私ども融資全体に対します割合は、三割七分から三割二分と申しますか、ほんとうに三割そこそこまで下がってきたような状態でございまして、だんだん、そういうような状態が今後も進展をしてまいるだろうというふうに考えておるのであります。
  79. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の質問の趣旨を全然取り違えておられるんじゃないですか、総裁。私は、このように政府の手厚い保護を受けている会社、こういうものが、先ほど言ったように、大きなもうけをしておるところに、何もこんなあれをする必要はないじゃないかということも一つありますが、それよりも、こういう会社が政治献金などという不明朗なものをすることはおかしいんじゃないか、そんな会社には、もう融資をしないというぐらいの態度を私は期待をしてお伺いをしておるわけでして、焦点が全くはずれた御答弁をなさっておるようですが、もう一度……。
  80. 石原周夫

    石原説明員 開発銀行といたしましては、いまおっしゃいましたような政治献金の額というようなことは、実は承知をいたしていないわけでありまするが、先ほど運輸省からも申し上げましたように、世間的に見て比較的、合理的に考えられる範囲内ということでありますれば、ある程度、やむを得ない限界があるかと存じます。ただ、おっしゃいまするように、財政資金を非常に大規模に使っておる会社でございまするから、資金の効率的な運用につきましては今後も一そう努力をしてもらいたい、こういう気持ちでおるわけであります。
  81. 阿部助哉

    阿部(助)委員 政治献金の法的なワクもあることは承知しておりますけれども、しかし、国民の金を使っておるけれども融資内容も発表ができないというぐらい、皆さん道義的におやりになるとすれば、相手のほうにもやはりそういう規制は加えるべきが当然だという感じが私はするわけでして、ある意味国民は、むしろ、手厚い保護を受けるために政治献金が必要だという逆な見方も、反対の見方もこれは成り立つんじゃないか。そういう点をもう少し、これだけ国の手厚い保護を受けるものは、それなりにやはりみずからの身を正す必要は私はあるということを申し上げておるわけでありまして、いまの御答弁は私は全く不満であります。  次に、先般、一昨日でありますか、質問がありました役員の問題でありますが、これもまた、一人一人私はあまり知りませんので、ぼやっとは見当はつくのではありますが、お伺いをしたいのでありますが、参与というのは、石坂泰三さんから以下、大体これはまあ主として開銀から金をよけい借りるような人たちが参与になっておるようですね。まあ一人一人の御経歴を簡単にお伺いすれば一番いいのでありますが、時間の関係上省略をいたしますけれども、どうもそういう感じがするんですが、この点はどうなんですか。やはりこういう財界の人たちでないとこれはいかぬのですか。
  82. 石原周夫

    石原説明員 ごらんになっておられますように、経済界の指導的地位にあられる方でございまするから、このお一人お一人について申しますれば、当行の融資に全く関係のないと申してもいい方もあると思います。あるいは若干関係がおありでありましても、当該会社の首脳者という意味でお願いをいたしておるわけではございませんので、経済界の非常に広い立場からものを考えていらっしゃる方々に、私ども業務の進行の状況について逐次お聞きを願って御批評を承りたい、こういうことでございまするから、各個の関係企業の方々の御意見を伺うというつもりではございません。広い経済全体の立場から御判断なり御意見なりを伺っていきたいということでやっておる次第であります。
  83. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私も、船会社といえば、船会社の重役だけが関連があるんじゃなしに、やはり船をつくるとなれば、鉄にも関係するだろう、あるいはいろいろ機械にも関係するだろうということでありまして、何も船をつくっておる会社、金を借りておる船会社以外ならばどうだという意味で私は申し上げているわけではないのであります。いま国家独占資本主義の時代だと、こういうことばすら言われておる時代、私は、日本一の融資銀行、この開発銀行というのはまさに、何か国家財政と財界との癒着の標本みたいな感じがするのでありますが、その点の誤解を解くためにも、こういう人事はいかがかと、こう思いますが、総裁、どうです。
  84. 石原周夫

    石原説明員 国家財政と申しまするか、財政資金の運用をいたしておるわけでございますから、したがいまして、その運用の上に非常に経済全体の立場からの御判断が必要だというふうに考えております。私どももできる限りいろいろな手段を尽くしまして、単に一企業関係だけではなくて、やや広い見地からの考え方を盛り込みたいと思うのでありますが、これはやはり多年の経験なり、その人の持っておられます地位なりから見て、やはりもっと広い立場、高い立場からの御判断も必要だと思いまして、こういう方々に参与をお願いしているような状況でございます。
  85. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の質問はこれで終わりますけれども、商いとか低いとか、こうおっしゃるけれども、やはりその人の考え方というものは、その人の置かれておる立場から大体考えが出てくるだろうと私は思うのです。そうすると、まさにこの開発銀行というこの巨大な資金をお使いになる、それがまた大手のほうにこの資金が非常に有利に流れていく、しかもそれの役員だ、参与だというものに、これまた日本の財界の大手筋の人たちが関与しておるとすれば、国民としては何か割り切れないものを感ずるのは当然のことじゃないでしょうか。  いま私はるる御質問いたしました。また皆さんのいろいろな角度からの御答弁もお伺いしましたけれども、これだけ過保護を続けてき、なおかつここに大きな財政資金を投入する、しかも物価は上がってくる、設備投資はむしろ抑制をしなければならないというような段階に、なおかつこれに大きな資金を投下していくということ、そこにも問題があるだろう。もう一つ、より問題は、資本自己資本率を強化するとか、あるいは国際競争力を強めなければいかぬという大義名分らしいものを掲げながら、もうけたものは政治資金だ、あるいはおれのものだという形でやられたのでは、国民はたまったものではない。そういう点と、実際に今度は運営の面から見れば、これは高いとか低いとかあなたはおっしゃるけれども、何が高いんだと私は言いたくなる。どこが高いんだ。長い経験は私尊重します。だけれどもそれだけで、国民の金を左右する場合に高いとか低いとかいう判断というものが一体どこから出てくるんだ。まさにここが国家財政と財界との一番代表的な癒着の標本のような感じが私はするのでありまして、この開発銀行運営その他にはさらに一段のくふうをしていただきたいという要望を述べて、私の質問を終わります。
  86. 毛利松平

    毛利委員長 広瀬君。
  87. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まず最初に銀行局長にお伺いいたしますが、開銀自己資本比率、現在自己資本は二千三百四十億、こういうことになっておるわけでありますが、これが運用総額に対して占める比率といたしまして、四十年度からの推移を見ましても三四・一%から二九・八%、二九%、二七%、二四・一%。四十四年度は二四・一%まで落ちている。これはずっと資本金に異動がないということで、たいへん低下をいたしておるわけでありますが、このことについて何らの不便も——やはり国内開発産業開発補完、奨励というようなところに、ある程度の限界はあるにしても、その課題というものも多様化し、大型化する傾向もあるというような中で、こういうものをこのままの姿でいいのかどうか、こういう点について銀行局、大蔵省当局としてどうお考えになっているか。これをさらに増加をし、充実をさせていくというような方向にあるのか、開銀というものはずっとこのままでいいんだという基本的なお考えなのか、その辺のことをまずお聞きしたいと思います。
  88. 近藤道生

    近藤政府委員 開銀につきましての基本的な問題でございますが、私どもといたしましては、たびたび申し上げましたように、開発銀行使命が年とともにだんだんと変遷してまいりまして、当初の、たとえば四大基幹産業に対する融資というようなことを主とした時代から非常に変わってまいっております。ことにここ二、三年間、大都市を中心といたしましての生活環境の激変、それに伴います社会資本充実の必要性、そのような大きな変わり方に対処いたしますために、やはり開発銀行の、民間金融の手に負えないような長期安定的な資金を供給してまいって、民間金融を奨励し、補完する役割りというものはウエートが増加する方向にあるのではないか。そこで、ただいま御指摘がございましたように、ただいまの資金量をもちましてはなかなか手が回りかねる部分が出てまいろうかと存じます。そこで、今回特に一倍ずつの借り入れ金並びに運用面における増加ということをお願い申し上げておるゆえんはそこにあるわけでございますが、また、これにつきまして昨日来いろいろ御論議がございましたように、もう少し大幅に、一挙にやったらいかがか、その日暮らしの状態はあまりよろしくないではないかという御指摘もございましたので、その辺、本委員会の御意見なども十分に尊重いたしました上で、今後のことにつきましては研究いたしてみたい。ただ、今回はとりあえず一倍ずつということで増加をお願い申し上げておるわけであります。
  89. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この二千三百四十億という自己資本、これが運用額総体からいって、ただいま申し上げたようにどんどん低下をしている。これはもちろん貸し付け期間がかなり長期化しているということもあるだろうし、貸し出し金利も特利の占めるシェアというものがだいぶ大きくなってくるという問題もあろうと思うし、さらに運用総額が非常に膨大になっていくというようなことからこういうことになっているわけでありますが、そういうことで今回も貸し付け限度額を七倍にするということになるわけであります。一体純経済的あるいは金融べースといいますか、そういうもので、これだけの資本金があるということに対してどの点までこの貸し出し限度額というものがあって、なおかつ健全な経営、特に政策金融課題に対処して、金利の問題等につきましても比較的長期で、しかも低利でやっていく、こういうようなことも考え合わせながら、金融的な理論といいますか、そういうもので考えたら、この自己資本に対して何倍ぐらいまでならば経営問題等についても磐石なんだ、さらに資金需要の増大というものに見合う、当分カバーできるというような面はどのくらいの目安で考えたらいいのか、この点を、法案の七倍というものの妥当性いかんということではなしに、純理論的な立場、経済理論的な立場、金融理論的な立場で、どのくらいならばだいじょうぶなんだという、そういう考えというものはいかがでございますか。
  90. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまの点、非常にむずかしい問題でございまして、政府機関の場合と民間金融機関の場合とでおのずから考え方も変わってこようかと存じます。ただ、民間金融機関といたしましては、通常は、大体わが国におきましても、また諸外国におきましても、債券発行限度は自己資本の二十倍というような線を一応の目安にいたしております。しかし、もちろんこの二十倍という数字に特別の根拠があるわけではございませんので、大体その辺ならばまず健全性が保てるというところで、債券発行、借り入れ限度を自己資本の二十倍という線に引きまして、その範囲内での貸し出しをするということが大体民間の場合の例になっております。政府機関の場合におきましては、政策目的、そのときにおける民間金融機関成長の度合い、そのような点を総合勘案してきめておりますために、各国いずれも事例が区々でございますので、どの辺までがいいかということはなかなかむずかしい問題でございますが、本法案の審議を離れまして私見にわたることでも述べよというお話でございますので、あえて申し上げさしていただきますと、たとえば自己資金の十倍とか二十倍という線は純金融的に経済理論的にも許され得る健全妥当な範囲ではなかろうかというふうに愚考いたしております。
  91. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この問題でどうこうではないのでありますが、特利が非常に多いわけであります。貸し付け残高の中で基準金利でやっている、八・二%というものでカバーしている融資分と、それから特利の占めるシニア、これはどのくらいになっておりますか、参考までに。
  92. 近藤道生

    近藤政府委員 基準金利の占めます分が、最近の数字で二二・二%、したがいまして、いわゆる特利によります分がその他八〇%弱という形に相なっております。
  93. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 民間べースにおいて長期金利も最近改定をされましたけれども、それから見ますと、特利との間にかなりの幅も出てきておるわけですね。いま、これは私見だということですから、その点をどうこうではないのでありますが、そういう約七八%というものが六%台あるいは七・五%ぐらいということで特利になっておる。そういうものを前提にして、民間べースの一般金融機関だと自己資本の大体二十倍くらいまではだいじょうぶだろうという、これは今度酒造業界の例の構造改善や信用保証の限度なども二十倍とかあるいは約三十倍にしようというようなことですから、おおよその見当は私どもつくわけでありますが、そういう特利というものを前提にして考えたら、そしてそれがこのまま続くと仮定をしたならば、開発銀行としての収支は大体どのくらい、何倍くらいが健全であるということになるのか。いまのお答えは、そういうことを前提にした形で二十倍くらいまではだいじょうぶであろう、こういう解釈でございますか。
  94. 近藤道生

    近藤政府委員 仰せのとおりでございます。
  95. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこで、これは大臣が来てからその方針を伺ったほうがいいかと思うのでありますが、開銀の金利は、標準金利を含めまして、また特利を含めまして当分据え置きである、いま引き上げの傾向の中で、これだけは厳として引き上げをしない、こういうような立場でおられるわけでありますか。
  96. 近藤道生

    近藤政府委員 それほど厳としてという態度ではございません。やはり政府機関の金利といえども民間の金利と無縁ではないと存じますので、当面は開銀の金利について、これを変更する気持ちは全くないわけでございますが、将来民間長期金利の落ちつきぐあいその他を勘案いたしまして検討すべきこともあろうかと存じております。
  97. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 総裁に伺いますが、長期金利体系が全般的に最近改定をされて、長期金利が引き上がっております。債等券についてもそうでありますが、そういうことになりますと、特利を目当てに、かなり健全な審査をするたてまえにはなっておるけれども、いわゆるかけ込み融資要請というようなものが、これから金利が幾らかずつでも乖離の幅を広げていくということになれば、開発銀行に対してどんどん殺到する。いろんな名目をつけたり、文章だけうまくつくったり、あるいはまた政治的な勢力などを背景にしてそういうものが非常にふえるというような予想はありませんか。
  98. 石原周夫

    石原説明員 特利の問題につきましては、一昨日来申し上げておりますように、社会開発とか技術開発とかいうような系統のもののウエートが最近相当ふえてきております。こういうものは、ごく大ざっぱに申しますと、収益力においてそう良好だとは申しがたいようなものもございます。したがってそういうような系統につきましては特利をつけてくれという要求は実は毎年予算のときに各省からもお話があり、各省、大蔵省と御相談をされ、私どもも御相談にあずかりまして、本年度も一、二特利適用を認めたものがございます。ただ、全体として申しますと、先ほど銀行局長からお答えいただきましたように、基準金利分が二割二分ございますが、この割合は大体安定をいたしております。と申しますのは、先ほど来申し上げておりますように、電力、海運という、これは特利の一番大きな口であったわけでございますが、電力が回収額と新規貸し出し額がほとんど同じ程度に相なっておる。海運のウエートは、五年間に七%下がってきておる、こういうような状況でございますので、社会開発的な融資のために特利を適用してもらいたいという要請がございますけれども、毎年、いま申し上げましたように、基準金利分が増減はしないというような状況にきておりますので、かりのお話でありますが、将来検討せられました上で基準金利に若干変更があるという場合におきましても、その点はあまり違いがないだろう。むしろ私どもがやっております社会開発的な項目自身が、その事業自身の収益力の上から特利を適用してもらいたいという話は今後も引き続きあるだろう。その点、基準金利が動いたからどうだということではなかろうという感じを受けております。
  99. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵省当局としては、絶対に開銀の金利を上げないということは約束できないし、言明もできない。これはかなり模様を見てということだろうと思いますが、基準金利が改定される時期は別として、かりに基準金利が改定されたとして、そういう場合に特利がどうなるか。特利もやはりそれに従って改定をする、こういう方針でありますか。
  100. 近藤道生

    近藤政府委員 基準金利がかりに将来変更がございましたような場合におきましても、特利というのはおおむね特定の政策目的のために定められておる金利でございますので、基準金利と同じような動きをスライドしていたすということは考えられないことであろうかと思います。したがって、個々の政策目的に応じて特利自体の動きというものはあろうかと思います。
  101. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣の時間が非常に少ないので、ざっくばらんに、かつ要点をとらえたお答えをお願いしたいと思うのです。  まず大臣にお伺いしたいことは、一つは、この開銀法ができたのは二十六年、もう約二十年近くなるわけですね。こういう時期に来て、開銀法ができた趣旨は、第一条に書いてあるとおり、日本経済再建なんだ、産業開発だ、それに必要な長期資金民間金融機関に対して補完的にあるいはまた奨励的な金融を行なうんだ、こういうことでございますが、この間において、もうすでに再建は達成したではないか。これは大臣の演説等においてもしばしば言われているところだ。政務次官もそのように、再建という段階はもう過ぎた、こういうことになっております。そうすると、それじゃ残りの産業開発という政策課題も、経済発展状況に応じて政策課題の重点の置き方というようなものもどんどん変わってきている、こういうように私ども思うわけです。これは、経済再建産業開発ということを最大の政策課題としてできた機関でありますから、これを、この二十年の、しかも世界に類を見ない急テンポの経済発展というものから見て、当然開銀法そのものがもう一ぺん見直されて、この政策金融の中でどういう地位を占めているかということについては、新しい時代に即応した開発銀行としての任務というものを明確にするというような立場において、当然これは抜本的な改正をする、そういう意味で、逐次なしくずし的にいろんな政策目標なんかを閣議決定の運用方針を踏まえながらやっていくのじゃなしに、しっかりした、新しい時代に即応した開銀のあり方というようなものに直していくために、第一条の目的から改正するような法改正の段階にきているんではないかというように私どもは考えるわけであります。そういう点について大臣はどのようにお考えでございますか。
  102. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 開銀自体につきまして、いろいろ話を伺うことがあります。しかし、いま広瀬さんも御指摘のように、開銀の運用につきましては、時代の流れとともに非常に弾力的に対処をしておるわけです。これは、数年前のことを考えますれば、電力がある、あるいは鉄がある、石炭もありますし、造船もありますというような状態でありましたが、今日では鉄がもうそういう必要はほとんどなくなっております。石炭も全然開銀対象とする必要はないようになってきております。いま、主として造船並びに電力、これに集中しておる。そこへ、在来のそういう基幹産業のほかに、新しい地域開発という問題が起きてきておるわけでございまして、これは数年前だとほとんどなかったわけでありますが、だんだんと地域開発融資、これが加わってまいりまして、電力、造船、地域開発、この三つが今日では総融資の七五%ぐらいを占めるような状態になってきておる。非常に弾力的に時勢の変化に対応しておる、こういうふうに考えておるわけでありますが、いま、今後を考えましても、やはり自由化の問題があるとか、近代化なり合理化という問題がある。そういう際に、これを根本的に改組するということは今日の課題ではないんじゃないか、そういうふうに考えます。今後、しかしこういう特殊な銀行のあり方、そういうことにつきましては、金融制度調査会というような場もありますので、いろいろ論議を尽くして、そうして考えていくということにいたしたいと存じます。
  103. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私はここで論争している時間はございませんが、少なくとも一つの、経済再建産業開発という大きな政策課題をもって出発したものが、二十年たって、再建は終わっているということで、産業開発だけが残るような形になっている。そういう段階で、二十年の経過を踏まえて、もうそろそろ、少なくとも金融制度調査会、こういうようなところに今後のあり方について諮問をしてみるというような段階に来ているんじゃないか。いまそのこともちらっと言われたわけでありますが、そういう形で問題の提起をし、もう一ぺんこれを見直すということについては、十分ひとつお考えをいただくべき時期ではないかということを申し上げまして、次の質問に移ります。  ところで、これは発足当初から二千三百四十億という資本金が変わらないわけでありますが、政策課題の多様化、大型化にふさわしいように自己資本を充実させていくという立場において、毎年百億程度、多いときには百三、四十億になっているけれども、最近では、四十四年度で百十七億ということでありますが、こういうような納付金を開銀はやっておるわけですね。毎年、利益金の中から内部留保、法定準備金を除いた残りは国庫納付をする、こういうことになっているわけでありますが、こういうものを、ある一定の年限でもいいから、これは方法は事務当局がやることでございましょうけれども自己資本充実に充てるというような考えはあるのですか。これは、その資本金はずっと固定したままでいいのかどうか。これはまだまだ、いわゆる金融べースでは、貸し付け限度の余力といいますか、そういうものはあるということではあるけれども、それだけ新しい時代に即応した正しい運用をするならば、非常にいい面がこの開銀融資にはあるわけでありますから、そういうものについてどういうお考えであるか、伺いたいと思います。
  104. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 開銀制度の根本的な、抜本的な見直しをするということになりますと、そういう点も一つの話題になるかと思います。しかし、今日は別に何の支障も感じておらないわけであります。資金が不足しますれば政府のほうからこれを補足するということで、納付金がありましても開銀自体は何らの痛痒も感じない、そういう状態でありますので、特にこれだけ取り立てて改正するという考え方は持っておりません。
  105. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これもこれからの問題点として残しておきたいと思います。  もう一つは、沖繩の産業経済開発の問題について。復帰を目前にして、あるいはまた復帰後の沖繩の産業経済開発、こういう問題に対して、これをどういうように活用していくお考えか。開銀はこの沖繩の産業開発という問題についてどういう立場で働いていくかといいますか、影響を及ぼしていくか、こういう点についての大臣のお考えは、特段のものがありますか。
  106. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは沖繩返還前の二年間の問題と返還後の問題とがあろうかと思いますが、返還前の約二年間といいましょうか、この間におきましては、財政投融資を通じまして産業開発の支援をしておるという状況でございますが、この体制でいこう、かように考えております。  それから返還になりましたあとでどういうふうにしますとか、開発銀行がどういう役割りをしますとか、これはまだ検討もしておりません、もちろん結論も出ておりません。開銀がどういう役割りをするかということも含めて、これから検討したいと思っております。
  107. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それでは事務当局に対する質問に切りかえます。  そこで若干個別の問題をお伺いしたいわけなんですが、まず国際観光という問題、これは大体日本の国際収支の改善ということを中心にしまして、特に貿易外収支の、外国人旅客等を大いに誘致をして金を落とさせよう、そのためには特にホテルを中心にした国際観光施設というものの充実強化をはかるのだ、こういうことであります。まあ国際収支が、この観光だけの面をとってみれば赤字のようでありますが、このように国際収支の改善が大体定着したと見られておる、いわば政策課題が総体的にはもうある程度解決済みだということなんでありますが、総合的に国際収支の改善が実現をしているという立場において、こういう問題について、開銀としてこれからの運用を進めるにあたってどういう基本的な考えを持っておられますか、まず総裁にこの点お伺いしたいと思います。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  108. 石原周夫

    石原説明員 開発銀行の従来観光融資をいたしておりました政策要請の一番大きいものは、広瀬委員指摘のように国際収支の問題であるかと思います。ただそれに若干付随をして最近においてだんだん明らかになってまいりました問題は、経済の国際化ということに伴いまして外国人が非常に多くやってまいる。のみならず、かつてはオリンピック、今回は万博というように、非常に大きな外客の来訪する機会、それともう一つはジャンボジェットというような大量急速輸送手段が発達しつつあるものですから、非常に大量の人が一ぺんに来るという事態が出てまいりました。したがいまして、これは一昨日も申し上げたのでありますが、過去において六十億をこした融資をしたことがございますが、再び四十四年度あたり、また六十億という状態になっておるわけであります。これは全体として伸びておりますから、ウエートは減っておりますが、金額的にはそういうような数字に相なっております。最近におきまする状態は、非常に簡単に申しますと万博対策ということでございまして、京阪神の地域に外客受け入れのためのホテル施設をいろいろつくる。これに関連が全然ないわけではございませんが、京浜地区においても同じように外客が非常に多い。そしてこれとオーバーラップしまして、いま申し上げましたように大規模な旅客機が出てまいる、ことに国際化に伴います外客が多いということでございますので、少なくとも来年あたりまではこの万博関係の、まあ施設はすでにできたわけでありますが、当行は支払いべースで融資をいたしておりまするので、引き続き来年度に万博対策の流れ込みがございます。それと、いま申しますように一つの急激な国際化の時期に当たっておりますから、そういう意味でそれに対処する要請というものはそう急速には減らないのではないかという見方をしております。ただ、先ほど申しましたように、ウエートから申しますと、かつて三十八、九年のオリンピック対策のころには私ども融資の五%を占めていたわけでありますが、現在四十四年度は、六十億出しまして二%ぐらいになっておりますから、ウエートはこの数年間に相当減少しておる、こういう状況でございます。
  109. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこで、政策金融として国際収支の改善、特に貿易外収支ですね、国際観光客の到来を通じて国際収支改善に寄与するということが大目的である。ところが、この国際観光だけの分野をとってみれば、まあこれはいろいろ原因はあるでしょうけれども経済の国際化に対処して日本から外国に行く観光客あるいはビジネスで行く者がまた非常に多いということになっておるようであります。もうそういう状態になって、大目的が達成されている段階において、特にこの面でホテル業者にそれだけのメリットをつけて、特利をつけてやっていく積極的な理由があるのかどうかということについては、やはり先ほど阿部君が海運の問題に対していろいろ申し上げたように、この面でも若干の疑問があるではないか。ホテル業者だけがほとんどこのメリットを受けているということになりかねないわけでありまして、これもやはり一つの過保護の問題になるのではないか。これは確かにニードはある、必要性はある。確かに外人観光客やビジネスで来る者が年々相当ふえておるという状況はあるわけでありますけれども、そういう問題については、もう政策目的を達した業種ではないのかということができる。どんどん外人向けのホテルが建つということは、それを受け入れる必要がある限りにおいてはけっこうですよ。しかし、開銀がそれに長期、低利の融資をして保護してやるというだけの国民的な立場からの理由というものはやや薄弱になってきているのではないかということを考えるわけなんですが、その点、お答えをいただきたいわけです。  そこで若干数字をお聞きしたいのですが、今日まで運輸省に登録された国際観光ホテルの数は幾つあるのか、そしてその観光ホテルに対してどの程度の比重をもって開銀融資を行なっているか、その辺のところをひとつ明らかにしていただきたいわけであります。
  110. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 ホテル業は元来厚生省の許可事業でございますけれども先生指摘のとおり、運輸省において政府登録を行ないまして国際観光面からの助成を行なっておりまして、昭和四十四年の累計を申し上げますと、登録ホテルで百八十三軒でございまして、部屋数におきまして二万三千五百となっております。これに対しまして運輸省日本開発銀行にお願いをいたしまして融資のあっせんをしておりますが、昭和二十六年以来、件数におきまして百三十八件、金額におきまして四百十六億円、それによって整備された部屋数は約二万五千と相なっております。
  111. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それと、もう一つ数字をお聞きしますが、現在観光関係あるいはビジネスも含めましてどれだけの外貨をこの面で稼いで、また日本人が今度は外国へ行く場合にどうなっておるかということを突き合わせて、その両者の差し引きがどういう状況になっておるか、これをひとつ……。
  112. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 暦年でございますが、昭和四十四年の日本銀行国際収支表のIMF方式の統計によりますと、受け取りが一億四千七百万ドル、支払いが二億四千百万ドルでございまして、差し引き九千四百万ドルの赤と相なっております。
  113. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 運輸省としましては、たとえば十年を展望して、こういう支払いべース、受け取りべース、両方を大体とんとんにできる、あるいはそういう計画というものをどういうように持っておられるのか、どこまでこの面の改善をはかっていくという目標がありますか、この点お伺いします。
  114. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 昭和四十四年で、わが国に来訪しております外人客は約六十万人でございますが、昭和五十年に相なりますとこれが百万人になるであろうというふうな推定をわれわれは立てております。一方わが国民が外国へ行く数は、昭和四十四年で約七十万人でございますので、これが昭和五十年にどうなるかということについては、簡単に予測はできませんけれども、今後の伸び率からしまして、来訪外客数の百万人よりはるかにオーバーするのではないかというふうに思っております。したがって、現在これを全部解消するというような方針はとうてい立てがたいと考えます。
  115. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 なかなかその予測を立てがたい、むずかしい問題のようでありますが、国際観光ホテル、こういうものはかなりゴージャスなホテルとしてどんどん出現をするわけでありますが、そういうものの施設なんかについては、国際観光ホテルとしての一定の整備基準がありますけれども、その利用のぐあい、外国人がほんとうにどの程度まで——国際観光ホテルというからには五〇%以上は外人によって占められる、国民が利用するのは少なくとも半分以下だ、こういうことでなければ国際観光ホテルという名目も、本来ならば国民常識的に立ち得ないんだと思うのですが、そういう融資を受けた数だけでも百三十八あるわけであります。これは二万五千人分あるんだけれども、こういう利用状況における問題はどういうことになっておりますか。外人客がどの程度のシェアを利用の中で占めておるか、これらの点について調べたものがあったらはっきり示してほしい。
  116. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 外人の利用に関しましては、その地によって格差がございますけれども、京浜地区を見ますと、たとえば帝国ホテル等の伝統的なホテルは相当数のパーセンテージを占めておりますが、京浜地区の平均は五二・九%に相なっております。それで、全国平均では三〇%と相なっております。
  117. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 帝国ホテルといえば昔のライトの古いユニークな建物というようなことで、国際社会においても人口に膾炙するというあまりにも有名なものであったということで、それが五二%ですね。
  118. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 帝国ホテルは八〇%でございまして、京浜地区全体で五二・九%でございます。
  119. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 われわれは、国際観光ホテルというからには、インペリアルホテルぐらいのものが国際観光ホテルだという考えなんですね。京浜地区で五二%、半分をこえているというような状況、全国的な平均でいきますと三〇%ぐらいしか外人の利用というものはない、あと七〇%は日本人が利用しているというように、日本人の必要性も当然そういうことで高まってはいるに違いないけれども、国内の国民が利用しているというようなところに対して、国際収支の改善ということを政策目標として、最大の問題点としてあげられて、開銀が特利まで利用してやる必要性はどんどん減ってきているのではないか。もちろん国際観光ホテルは、そういう外人客の来訪が、観光目的、あるいは経済の国際化というようなことでビジネスもどんどんふえていくということですから、ある程度ふえることは当然だし、それに見合うホテルの建つことも必要だけれども開銀が乗り出す必要はもうそろそろないのではないか。これを奨励したり補完をする必要性開銀金融の面であるかどうか、こういう面について政策当局としてどうお考えになりますか。
  120. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま仰せになりましたように、観光ホテル関係についての融資につきましては、たとえば特利ではなしに基準金利によるとか、また新規の貸し付けにいたしましても、四十五年現在の百八十八の政府登録国際観光ホテルのうちで、計画といたしましては八件だけを新規の融資対象といたしておる等、かなり押え目に考えておるわけでございますが、ただ、この国際観光ホテルというものの果たす役割りが、単なるホテル業者だけのためにはとどまりませんで、外客を誘致いたしまして、それによって日本人のうちの相当の数の人々が潤う面があるわけでございます。この外客誘致の拠点を整備するというような意味合いでやっているものでございますので、その意味で、観光ホテルに対しての現在の開発銀行の方針がそれほど間違ったものであるという考えは持っておりません。
  121. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いまの銀行局長の御答弁は、特利というような問題は締めていくということでございますね。これはいままでも特利は全然やっておりませんか。
  122. 近藤道生

    近藤政府委員 現在、先ほど申し上げましたように特利ではございませんで、全部基準金利でやっております。
  123. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 万博あるいはオリンピック、こういうような場合にどっと来るということで、今日までそういうものを整備しなければならぬということになってきておったわけだけれども、もう恒常的にこれからは国際往来が盛んになるというようなものに対して、八分二厘という基準金利にいたしましてもかなり長期なものになっておるし、市中金融から見れば非常に業者そのものに対して有利になるものでありますから、そういうものについては民間べースで——民間べースにおいても、需要に応じて企業が進出するということは当然あるわけでありますから、そういうものにまかしても何ら差しつかえない。開銀でそれだけめんどうを見ながらも、なお今日国際観光ホテルは、設備では外人がほんとうに喜んでもらえるような世界水準に大体なったようでありますけれども、料金などの問題につきましては、日本のホテル代は高いというようなことも国際的にいわれる面もあることを考えると、もうそろそろ考え直してもいい時期ではないか、こういう問題提起をして、次の問題に移りたいと思います。  そこで、海運関係を、待たしておりますので、若干御質問をしておきたいのですが、阿部委員が午前中みっちりやったわけですから何なんですが、海運状況を見てみますと、日本の保有船舶総トン数は、リベリア、これは特別な事情もあるようでありますが、これを除けば二千三百九十九万トンということになっております。これは現在整備五カ年計画というようなものもありますが、一体とこまでいったら——開銀がこういう形でめんどうを見ながら、どの辺まで船腹量をふやすのか。そうしておそらくこれは世界第一位の海運国だという、大国主義的な目標を掲げておるようでありますが、どういう目標を持っておられるか。リベリアは、これは外国船籍のものを持っておる、借りているというような形で、そういうようなものが含まれているのですから、実質的には世界第一位の船腹を持つ海運国になっている。先ほど輸出の扱い比率、これが三七%、それから輸入の場合に四七%ということを言われたわけですけれども、こういう積み取り比率というものをどの辺まで伸ばしていくのかというような問題点、それから保有総トン数というものをどの辺まで伸ばしていくのか、どういう目標が達成されるまで開銀の特利融資を適用していくのか、この点どう考えておられるのか、その現在の計画目標というものを運輸省海運局からお聞きいたしたい。
  124. 野村一彦

    野村説明員 お答えいたします。  ただいま運輸省におきましては、昭和四十四年度を初年度といたしまして昭和四十九年度まで新海運政策というものを策定いたしております。この新海運政策運輸省の、運輸大臣の諮問機関であります海運造船合理化審議会にはかりまして、その御答申を尊重して定められたものでありますが、その概要を申し上げますと、新海運政策の目標は、これから世界貿易量が非常に伸びる、それに応じて日本を中心とします輸出入の貿易量も相当のパーセンテージで伸びるということが予想されますが、私どもは一応この計画におきましては、日本のGNPの伸びが八・五%で伸びていくということを予想いたしております。その場合に、昭和四十九年度末までを考えますと、つまり昭和五十年度の初頭において見ますと、一つの推計でございますが、わが国貿易量、輸出が大体五千四百万トン程度であろう、輸入が五億五千七百万トン程度であろうという想定をいたしております。こういう物資を日本船で運ぶ場合にどういうふうに運ぶかということを考えますと、この計画を策定いたしました昭和四十三年度におきまする保有船舶及び建造中の船舶合わせまして、当時約千九百三十万トンの船を持っておりました。したがいまして、先ほど申し上げました貿易量を運びますためには、一応輸出の積み取り比率を六〇と考えまして、また輸入の積み取り比率を七〇に考えますと、昭和五十年度初頭におきまして約三千七百万トン程度船腹が要るということになります。したがいまして、差し引き二千五十万トンの船腹——このうちには約二百九十万トンほどの代替建造分を含んでおりますが、それを含めまして二千五十万トンの船腹を四十四年度から四十九年度までの間につくる必要がある、こういう計算に相なっております。  なお、この数字は、これも試算でございますが、そういう船を建造いたしまして、先ほど申し上げました物量を運ぶ。その積み取り比率を輸出六〇、輸入七〇ということで運びますと、昭和五十年度の海運国際収支じりは約三億四千二百万ドルの赤字であろう、こういう推定をいたしまして、この計画に基づきまして開発銀行と御相談をしながら建造を進めておるわけでございます。
  125. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 輸出の積み取り比率を六〇%まで高め、輸入の積み取り比率を七〇%まで高めるということで、五十年には三千七百万トンくらいのものを持ちたい、こういうことであります。しかも、そういう段階になっても、この船賃における貿易収支面での赤は二億四千万ドル、こういう説明があったわけでありますが、もうすでに海運会社は集約企業六社ということで体質も非常に改善をされて、償却不足というような段階から脱却し、無配当から八分なり六分というように、集約六社のうち、五社は八分、一社だけが六分という状態にまで改善されてきている。こういう段階で、いまの目標が達成されるまで、あるいはさらにそれを延長した線に対して、やはりどこまで毛開銀融資というものが特利でつけられていくのかどうか、ここらのところに対しての政策判断、また、これは総裁にも、そういうものに対して疑問を持たないかどうか、お考えを聞かせていただきたいと思うのです。
  126. 野村一彦

    野村説明員 ただいま申し上げましたように、新海運政策は六カ年計画でございます。したがいまして、船舶を建造いたします条件といたしましては、船主負担金利で利子補給が平均五分六厘五毛になります。そういう融資をお願いするということは、六カ年計画として確定いたしたものと私どもは考えております。
  127. 石原周夫

    石原説明員 先ほど海運局のほうから御答弁がございましたように、一応二千六十五万トンでございましたか、六カ年の計画があるわけであります。いま二年目に差しかかっているわけでございますが、実は三年目に検討してみようということに相なっておるわけでございます。六年間のまん中で、現在の状況は先ほど来申し上げましたように、四十四年度にスタートいたしまして、利子補給なり、あるいは私どもの金の出し方なり、期限なり、きつくいたしたわけでありますが、その状況がはたして三年先にどういう状況に相なっておるかということであります。これは先ほど来海運局からも詳細御説明がございましたように、外国の情勢がどうなるかという問題がございます。国際競争のまっただ中にいる仕事でございますので、やはり外国の情勢というものと、ある程度バランスをとることを考えなければならぬという点が一点と、また日本の特殊な事情はございますが、非常に多くの輸出船をつくっております。したがいまして、輸出入銀行に対しまする融資金利の問題がございます。そういうような点とにらみ合わせまして、また再検討いたす時期があると思うのでありますが、当面のところはいまのような状況で、先ほど海運局のほうで申されました六割とか七割とかいう積み取り比率では、とうてい現在の状況では、そこまで行きかねる状況でございます。貿易量の増大ということから見ますと、先ほどお話がありましたように、三七とか四七とかいう低い積み取り比率に現在なっております。貿易量の増加に応じまして、かりにその積み取り比率を維持するにいたしましても、相当の建造量であります。そういうことを考えまして、おそらくは三年先にまたもう一ぺん検討するときにいろいろ議論することになるかと思います。
  128. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 午前中阿部委員からも、過保護ではないかという問題も出されておりますし、特定のものに対してのべつまくなしに二十年、三十年というように、それが国際収支改善に非常な貢献をし、また、たとえば経済の国際化という場合に、日本の船舶保有量、しかもきわめて急テンポで増大する日本経済の輸出、輸入の積み取り比率というものを無制限に上げていくというようなことは、私は、もう一つ問題になるのは、やはり経済の国際化の中で、アメリカによるドル防衛からするいわゆるバイアメリカン政策というようなもの、さらに現在北欧の諸国あたりでかなり、国力不相応にといっては失礼になるけれども、非常に船腹量を持っている国もあるわけでありますが、そういうところが、日本が無制限にそういうようにぐんぐんシェアを伸ばしていくということに対する、海運については圧倒的に日本が優位を示しているというようなものに対するナショナリズム的な抵抗、どこかでぶつかる可能性というようなものなど、世界的な、グローバルなシェアの中での調和というようなことなどもあると思うのですね。こういうようなものなどがこういう計画にはきちんと織り込まれているものなのかどうかという問題点についても、やはり疑問がある。それを政策金融としてメリットをつけながら、利子補給などを通じ、そしてまた特利などを通じ過保護を続ける形というものが、そういう面での障害というようなものも考えられるのではないか、その辺のところはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。これは海運局に。
  129. 野村一彦

    野村説明員 私ども現在海運の情勢を判断いたします場合に、今後とも世界貿易は非常に伸びるであろうということでございますが、前提といたしまして、これは国際的に、日本もOECDに加入いたしておりますから、海運自由の原則ということで、政府はできるだけそういう海運活動というものに規制を加えない、業界の自主性を尊重してやっていくというたてまえをとっておるわけでございますが、他方発展途上国等におきましては、UNCTADというような面におきまして非常に自国海運の育成ということをやっております。そしてある場合は、自国貨自国船主義ということを強く押し出しております。またアメリカも、これは先進国でございますけれども、非常に自国貨自国船主義というものを出しまして、攻勢をかけております。特に最近問題になりますコンテナ船等について言いますと、現在日本は、日本とアメリカのサンフランシスコ、ロサンゼルス間にコンテナ船を運営いたしております。アメリカもこれをやっております。それから日本と豪州間のコンテナ船を日本運営いたしておりますし、オーストラリアもやっております。ところが、私どもの試算によりますと、ここ二、三年のうちに、日米間についていいますと、輸送力からいいましてアメリカが日本の倍になるであろうということが想像されます。また、アメリカはその財力にまかせまして、速力三十三ノット、千八百トン積みというようなコンテナ船を現にヨーロッパ諸国に発注しております。それがどこに就航するかまだわかりません。太平洋に就航するかあるいはパナマ運河を通るか、いろいろ予測はしておりますが、そういうようなものが就航いたしますと、わが国海運にとっても非常な打撃をこうむる。ヨーロッパ諸国間、日本とヨーロッパの間のコンテナ運航計画、これは日本はいまのところ五隻を計画中でございます。まだ着手はしておりませんが……。ヨーロッパ諸国は、二十隻のコンテナ船を日本とヨーロッパの間に運航する計画であります。これは日本とヨーロッパの間、全部でございます。そういう計画もございまして、海運の将来を考えますと、単に日本海運だけでなくて、輸出貿易外国船により支配されるという状況も、このまま推移しますと、非常に懸念されるわけでございます。そういうこともあわせ考えまして、いままでは政府のそういう財政資金その他による援助もありまして、また世界の景気の伸びもありまして、かなりの再建整備の目的は達しましたが、将来を考えますと、日本海運の地位というものは非常に懸念されるわけでありますので、そういう点も考慮しながら私どもとしては海運計画を進めていきたいと考えております。
  130. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これからの海運は、海陸一貫輸送というようなことでコンテナ船化の方向にある、しかもこれは海運の効率を高めるというようなことで、そういう方向に向かっていることは承知しております。したがってそういう面については、特段な政策課題としてこれにメリットをつけることは、そういう世界的な傾向が新しくばっと出てきているというようなもので、しかもそれが海運にとって一つの革命的な輸送形態になってくるというようなものについては、ある程度個別的に、たとえば先ほどの論議にもありましたように、イギリスなどでもそういうものを重点にしてやっているというようなことで、そういう重点の置き方ということについてはわれわれもある程度了解できるわけですが、海運一般という形で何でもかんでもこういうメリットをやっているということは、やはり過保護だというそしりを免れないわけで、もうすでに企業自身もかなり力をつけてきたということになれば、企業の主体的な立場においてこれをかなりこなせる、そういうふうにしないと、いつまででも過保護になれて、正しい海運発展というものは期せられないのではないか、そういう心配があるので、特に言っているわけです。  そこで、時間がなくて散漫になってあれなんですが、地域開発の問題で、経済企画庁からも来ていただいておりますので、地方開発が最近非常に開銀融資の中でもクローズアップされて、かなりの融資のシェアも占めるようになっているわけであります。これは国土総合開発審議会の地域部会の報告、都市計画法であるとか、都市再開発法であるとか、あるいは工業立地適正化法、大都市の過疎問題についても近く法律ができようとする等いろいろな背景があり、過疎と過密の問題に対処するものであると思うわけでありますが、この地域開発構想というもの、これは経済企画庁の所管だと思うのですが、こういうものと、いま進められている開銀の地方開発に対する融資のあり方、こういう問題について、経済企画庁が考えられる地域開発の正しい方向、構想における正しいものと、これがどういう形でかみ合っているのか、この辺のところを企画庁の立場でお話をいただきたいと思います。
  131. 加藤庄市

    ○加藤説明員 御承知のように、地域開発につきましては、昨年新全国総合開発計画が閣議決定されまして、現在におきましてはこれの中身となっておりますいわゆる大型プロジェクトにつきまして、それをいかに実現するかについて研究会を設けまして、それによって今後その実現方につき種々研究を重ねてまいる、こういう段階になって、すでにスタートしております。現在の開発銀行その他北東公庫等の地域開発金融につきましては、それぞれすでに当時の新産都市とか、あるいは低工業開発地域とか、あるいは工業整備特別地域というような種々の地域開発という目的に照らしまして、それぞれその目的に合うような制度として現在運営をされているわけであります。新全国総合開発計画が発足いたしまして、さらに大型の地域開発というものが今後進められていくわけでございます。これにつきまして今後、現行の金融制度につきましてもそれに即応するように対処してまいらなくてはならないわけでございますが、少なくとも現在におきましてはこのような既存の諸制度を有効に活用するという方向で考えておりまして、新全国総合開発計画の第三部にも書いてございますが、現行の金融、税制その他諸制度につきまして、この新しい地域開発という目的に照らしましてなお不十分であるというようなことがありますれば、もちろん今後検討してまいるということもございますけれども、現在の段階におきましては、最初に申し上げましたように新全国総合開発計画の目的の実現のために、中でうたっております大型プロジェクト研究会を開催しまして、その実現のための種々の研究を重ねてまいっている段階でございます。これらの研究会の推移を見まして、その辺のところは、あるいは場合によっては新しい制度として手直しすることも考えなくてはならないかと思います。
  132. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 問題が問題だけに、非常に大きい問題でありまして、地域開発、それぞれいろんな法律どもありまして、なかなかその全貌をつかみにくいし、それに立ち向かって開銀が最近になってこの地方開発というものに、おそらく四十五年度は五百億をこえることになるだろうと思うのですが、五百二十億くらいですか、四十四年度は四百五十億ということでございますが、開銀総裁として、地方開発というものに対して最重点を置いていま審査をし、融資をそれにつけてやろうというような対象は、どういうところに置いておりますか。
  133. 石原周夫

    石原説明員 地方開発資金融資の方針がきまっておるわけでありまして、四つほどの点がただいまおっしゃいます融資の重点に相なっております。  一つは拠点性ということを申しますが、これは先ほど来お話もありますように新産業都市でありますとか、工業整備特別地域でありますとか、低開発工業地域でありますとか、あるいは産炭地域というもの、これはいずれも基本法がございまして、それに伴って政府として金融のめんどうを見るようにという趣旨の条文があるわけでございます。それに基づいて融資をいたしておるわけであります。大体いま申し上げました産炭地域までを入れますると、金額的に言うと七割五分という金額がその地域に当たっております。一番大きいのは新産都市で、これが二三%いっておるわけであります。それが一点でございます。  第二番目は、工事の性格ということを言うわけであります。これを申しまするのは、地域開発ということはやはり波及効果と申しますか、当該計画が進むことによりまして、いろいろな、それに随発してまいりまする効果があるわけであります。そういう意味から申しますと、新規の立地をいたしまするほうが開発効果が大きいということがございますので、新規工事をできるだけ先に考えよう。  第三点は地域性ということでございまして、これは私どもが受け持っておりまする四地域と申しますか、北陸、九州、四国、中国、この地域におきましてもまたニュアンスの違いがございまして、たとえて申しますれば山陰であるとか、あるいは裏四国であるとか、あるいは南九州であるとかいうようなこともございますので、同じ九州の中でも、同じ中国の中でも、同じ四国の中でも、そういうような後進性の著しい地域の計画にはできるだけ優先的に配意いたす、こういうことであります。  第四点は、資本の性格ということを申します。これは中央資本が進出いたします場合、中央資本と地元資本が一緒にやります場合、地元資本だけでやります場合、私どもとしてはできます限り地元資本あるいは地元提携資本というほうにウェートを注いでまいりたい。融資比率とかそういう点におきましても、できるだけそういう点であんばいをしてまいりたいというようなことを中心にいたしまして、いま融資をいたしております。
  134. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いま総裁からきわめて的確な答弁があったわけでありますが、特に地場資本といいますか、そういうものと、中央との協調で事業をやっていこうという、こういうものを両方重点を置いてやっていくわけでありますが、どちらかといえばそこでの地場資本による産業開発、こういうものに融資の重点を置くと理解してよろしゅうございますか。
  135. 石原周夫

    石原説明員 優先順位といたしましては、私どもできるだけ地元資本のお手伝いをいたしたいと考えております。ただ御承知のように、最近のように、先ほど全国総合開発計画のお話がございましたけれども、非常に密集地域から投資の地域が分散をいたしておるわけであります。したがって中央資本に属しまする系統のものが相当地方へ出ております。これは新産都市において非常に著しいのでありますが、そういう場合におきまして、これもまた、波及効果と申しますか、一つの山ができますと、すそ野にいろいろな随伴した産業、部品だとか下請とかができるものでありまするから、そういう点からいたしますと、中央資本のものは見ないのかと申しますと、そうはまいりかねる問題でありますし、なかなか金額的には大きいものが中央資本にはある。じゃ金額的に地元資本のものが多いのかと申しますれば、遺憾ながらそれほど地元資本の参画しておられる企業というものはなかなか少ないのであります。金額的にはそう大きなウエートを占めておるということを申しあげるわけではありませんが、同じような金の配分のなかでは、たとえば融資比率を大きくするとかあるいは優先的に見るというような意味の扱いを申し上げたわけであります。
  136. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 次にお聞きしたいのは、この問題ではいろいろな地方開発法律がたくさん——先ほど一部申し上げたわけですが、あるわけであります。それに従って各省にその所管もばらばらに分かれているというような問題もある。そして地方自治体それぞれが開発主体というような形で——開発主体というよりも計画主体といいますか、そういうようなものになっているわけでありますが、そうしてそういう地域の産業開発目的にするわけですけれども、そういう場合にそれぞれの計画主体あるいは各省との連絡、融資に対する要請、こういうようなものの関係というものはどういうぐあいになっておるわけですか。それを審査する形、こういうもののポイントの置き方を御説明いただきたい。
  137. 石原周夫

    石原説明員 これは前にも申し上げたと思いますけれども、私どもこれは政策融資をいたしておるものでありまするから、政策当局でありまする各省とは非常にひんぱんに会合を持ちまして連絡をいたしておるわけであります。ことに、先ほど推薦制度ということを申し上げましたが、各省におきまして個々のプロジェクトを御検討いただきまして、これは自分のほうの省の政策でたとえば体制整備というような、あるいは技術開発というような政策に非常に貢献をするというようなことで推薦をいただいておるわけでありますが、地域開発の場合におきましては、ただいま広瀬先生の御指摘もありましたが、当該府県でありますとか公共団体のウエートが非常に強い、中央各省は必ずしも十分に了承いたしてないというものがございます。したがいまして地域開発の場合には、私どもは全部各省の推薦を待ってやるということにいたしておりません。県では大体近ごろ企画部というようなものをつくっておられまして、そこで県としての取りまとめをしていただいておる。大きな市などにおいてもそういう場合がありますが、これは私どもの支店が各開発地ごとに一つ一つみなございまするから、その支店と各県の企画部なりあるいは市のそういうような関係部局なり、そういったところと連絡をいたしまして、各省の推薦はないが、しかしそういうような地方自治体として非常に重要に考えておられるというような分につきましては、それを地元で取り上げて審査をし、また本店と打ち合わせをしてやる、こういうようなことをやっておりますので、御指摘のように各省にも分かれておりますし、各県自治体の数も多いものでございますから、連絡の相手方は非常に多いのでありますが、そこら辺は、常時、本店、支店を通じまして十分連絡をいたして、そこら辺の御意向は十分反映し得るように努力をいたしておるわけでございます。
  138. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 やはり、この地方開発は、地域地域におけるそれぞれ計画も、その各県の企画部を中心にしてそれぞれ計画があるわけでありまして、そういうものときわめて緊密な連絡、そういう地元の要請というものをやはり重点的に取り上げていくということが、非常に重要な問題点になろうと思います。  そこで、最後に経済企画庁に。この問題をやりだしますと、まだまだかなりたくさんあるわけなんですが、時間の関係でこの程度にとどめるんですが、経済企画庁として、やはりこの地方開発の主たるねらいというものは、地方の都市化ということと工業化ということである、こういうような問題意識から見まして、この地方開発の業種などについても、これは製造業もあるし、運輸業もあるし、電気、ガス、水道、その他それぞれたくさんあるわけなんですが、経済企画庁の立場で、全体的な地方開発の一番基盤になる目標というものが都市化と工業化である、こういうような立場において、開銀融資のあり方というものと、それから地方においてそれぞれの計画をしている計画主体、こういうようなものを代表するような立場で、開銀にこうしてもらえばもっとそういう基本目標が達成せられるんだというような、そういう要請、要求があれば、この際言っておいていただきたいと思います。
  139. 加藤庄市

    ○加藤説明員 現行の開発銀行の地方融資につきましては、御承知のように業種をしぼっておりません。いかなる業種であろうと、その地域の開発に寄与するものであればけっこうである、こういうことでございます。私どもも、地域の開発につきましては、ひとり産業の立地のみならず、その他のサービス業等含めて、その他の業種の立地も、先ほど先生のおっしゃったような都市化に寄与するという考え方でありまして、現在のように、特に業種をしぼるというようなことをしなくてもいいんじゃないかというふうに考えております。
  140. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これで終わります。
  141. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 午後二時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十三分休憩      ————◇—————    午後二時四十六分開議
  142. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  143. 堀昌雄

    堀委員 利率等表示年利建て移行に関する法律案について質問をいたします。  最初に、この利率等表示が年利建てになりました経緯がありますけれども、私も実は、日本銀行の総裁が山際さんでありましたころから、公定歩合が一厘の操作によることは実態的にもどうも影響が小さ過ぎる、その他諸外国との関連から見ても、当然年利建てに移行すべきではないかという提案をしてまいったこともありますが、ようやく今回すべての点で利率が年利建てになったことは、私は、国民の側からすればたいへん喜ばしいことだと思うのであります。本来、日歩建ての金利というのは、金融機関側が金利計算をやるための便益上にはよろしいわけでありますけれども国民一般の……。   〔私語する者あり〕
  144. 毛利松平

    毛利委員長 静粛に願います。
  145. 堀昌雄

    堀委員 国民の側からすれば、やはり年利建ての金利ということがいろいろなものを判断いたします場合には適当でありまして、このことは、私は、少なくとも日本のたとえば尺貫法がメートル法になったと同じように、国際的にもあるいは使用者の便利の面からいっても、きわめて適切なものであると考えるものであります。  そこで、この利率の年利建てに関して、今回銀行局から新しい通達等も出されて、これらについてのいろいろな整備が行なわれることになっておるようでありますが、最初に、近藤銀行局長就任をされましてから今日まで、まだ金融行政についての銀行局長としてのお考えを聞く機会もありませんでしたから、きょうは幸い、この機会に、銀行局長としての金融行政に対する心がまえと申しますか考えをひとつ最初に伺って、それからあとでこれらの問題について逐次触れていきたいと思います。ひとつ銀行局長から答弁を願います。
  146. 近藤道生

    近藤政府委員 金融行政に対しましての考え方を申し述べよということでございますので、私の考え方を申し上げさせていただきたいと思います。  たいへんとっぴな例で恐縮でございますが、金融行政というのは、二つの焦点を持った楕円のようなものではないかというふうに私は考えております。その一つの焦点は、経営効率の向上と経済合理性の追求という点であり、もう一つの焦点は社会性、公共性の重視ということであろうかと存じております。  まず第一点のほうの経営効率の向上と経済合理性の追求という点でございますが、これはちょうどいまから四、五年前に本委員会におきまして、特に堀先生が温室行政の脱皮ということをしきりにお唱えになっておったことを記憶いたしておりますが、温室行政の脱皮という方向のことでございまして、特に七〇年代の国際化の時代を迎えまして、金融機関体質の強化につとめ、従来の単なる量の競争というものから質の競争へ次第に移ってまいる、そういう方向努力がなさるべきであるということが第一の目標であろうかと存じます。  第二点の焦点と申し上げました点は、このように競争がしきりに行なわれるということのあまり、社会性、公共性という面が見失われますと、とかく弱肉強食に終わってしまって、そのことが社会経済全体のためにかえってマイナスになるということも起こりかねないという側面がございます。そこで、それぞれの質的な強化ということを通じまして、またそれを背景といたしまして社会経済全般に裨益するという態度、方向、それが打ち出されてまいる必要があろうかと思います。競争原理の導入ということにつきましても、初めから適正な競争原理——適正なという形容詞はつけられておったわけでございますが、競争原理の導入をさらに推進するにあたりましては、もう一度この適正なという形容詞を思い起こしまして、社会性、公共性という点を重要視してまいるということが必要ではなかろうか。  以上が、私の銀行行政に対しましての考え方のあらましでございます。
  147. 堀昌雄

    堀委員 実は、ちょうどこの競争の問題を強く取り上げるようになりましたのは、かつて高橋さんが銀行局長であったころ、山高きがゆえにたっとからず、預金の量をもって競争するだけでは本質的な競争ではないのではないか、さらに各種の面において銀行行政が過保護に過ぎておるのではないかという問題提起をいたしました。当時、近藤さんは総務課長としておられたので、当時のことはよく御存じであったと思うのであります。その後澄田さんが局長になられた段階においてこの問題は一段と推進されまして、競争原理の導入ということが非常にはっきりしてまいりました。ただ、澄田さんが局長になられた当時の日本経済の諸条件は今日と非常に違いまして、昭和四十年の不況期がかなり深刻であったために、われわれは、昭和四十年代の日本経済というものはもう少しスローダウンするのではないかという判断を持っておりました。同時にそのことは私自身の判断だけにとどまらず、当時の経済界あるいは大蔵省その他の官庁においても、おおむね四十年代の後半というのは、景気の成長というものはそれまでよりはスローダウンするであろうという予測が大勢を占めておりましたけれども、実はこの予測は大きく狂ってまいりまして、今日再び昭和三十年代の中期以降におけると同じに近い異常な高度成長が起こるという経済環境に変わってきたのであります。  そこで、こういう経済環境に変わってきたときに、一つは、いまお触れになった経済合理性の追求なり経営効率の向上ということが確かに必要ではありますが、そのために二次的に起きてきたところの過疎過密の問題、都市集中化と地方というような問題は、当時よりは急激に傾向を強めてきておるという関係もありますので、私は当初に競争原理を唱えてきたわけでありますけれども、ややもするとその競争原理ということのほうに比重がかかり過ぎて、いまお触れになった社会性、公共性がおろそかにされるおそれもあるやの感じがしてきましたので、最近は逆に社会性、公共性についての認識を少し強調しなければ、いまお触れになったようなバランスをとる上からもむずかしくなってきておるという感じを今日持つに至っておるわけであります。  そこできょうは、議題になっております金利の問題でありますけれども、実はこれまで金融制度調査会でいろいろと論議をされてきておりますけれども、その中の非常に中心的な課題の一つに中期預金問題というのがあります。これは昨年の予算委員会の分科会でも、福田大蔵大臣との間の論議で、その取り扱いについては十分慎重な配慮が必要である、こういうふうに申し上げているわけでありますが、その背景といたしまして、特に都市銀行の場合には、現在店舗の問題を含めて経済効率中心主義、経済合理性追求に非常に加速度がかかっております。しかし、そのことは都市銀行の性格として、私どもとしてはある程度やむを得ないことだと考えて、それはそれなりに認めているわけでありますけれども、他方、経済合理性の追求なりあるいは経営効率の向上について、地域的な条件のために制約を受けておる各種金融機関があるわけであります。この地域的な条件によって拘束を受けてその効率が悪いから、効率のいいところに店舗の配転を行ないたくても行ない得ない、公共性、社会性にくくられている金融機関の立場をも考えてすべての問題の処置をしてまいりませんと、これは非常に異質なものの中に同一競争を展開させるという不合理性につながってくるのではないかという判断をしてきたわけであります。  そこで最初にお伺いしたいのは、現在の都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫における預金の中に占める定期性預金の比率というのは一体どうなっているのか、これを最初にお答えをいただきたいと思います。
  148. 近藤道生

    近藤政府委員 一年定期の占めます比率は、全国銀行で五一・八%、四十四年度上期の平均残高でございます。それから相互銀行の場合には五二・四%、信用金庫が五〇・一%でございます。
  149. 堀昌雄

    堀委員 それは全預金の中に占める定期預金の比率でしょうか。
  150. 近藤道生

    近藤政府委員 一年もの定期預金でございます。御質問は全部の定期預金でございますか。
  151. 堀昌雄

    堀委員 私が伺ったのは全預金の中に占める定期性預金の比率ということでありますので、一年もので比較していただいてもけっこうでありますが、私が計算したものと比べると、都銀はそうですけれども、相銀、信金はもう少し高いはずではないか。
  152. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま申し上げましたのは一年もの定期預金でございまして、たいへん失礼をいたしました。相互銀行の場合には七二・八%が総預金中に占めます定期預金全部の比率でございます。
  153. 堀昌雄

    堀委員 信金は。
  154. 近藤道生

    近藤政府委員 信用金庫もほぼ七〇%になっております。
  155. 堀昌雄

    堀委員 実はいま私がこれを伺いましたのは、この間大蔵大臣が、定期預金の金利の問題についてはすでに諮問をお出しになっているようでありますから、早晩現在の一年もの定期預金は五・七五%の金利に改定される、こういうふうに考えておるわけであります。その際に、こういうような定期金利の上昇というものは、いまもちろん一年もの、あとはその他の半年、三カ月とあるわけでありましょうけれども、いずれにしても定期預金の比率の高いところがそれだけ負担が大きくなることは常識的に見て間違いありません。そこで、この定期預金の〇・二五%の金利の上昇、これは一般的には、都市銀行についていえば最近公定歩合が上がりましたことに伴って貸し出し金利が相当急速に上がってきました。過去の公定歩合引き上げの中で今度ほど目ざましく貸し出し金利が上がってきたのは例のないことだと思っているわけですが、これは貸し出し金利との関係では当面十分相殺ができる問題だと思いますけれども、しかし、各都銀、地銀、相銀、信金別に、今度の定期預金の金利の引き上げがどのように影響するかということについては、すでにこの金利の引き上げが議題となりました以上、銀行局としてはそれなりの予測を持っておられることだと思いますが、これについての予測を少し伺っておきたいと思います。
  156. 近藤道生

    近藤政府委員 一年定期につきまして、ただいままだ金利調整審議会に諮問を申し上げておる段階でございますのでどのくらいということはわかりませんが、かりに世上伝えられておりますように〇・二五%上昇いたしたと仮定をいたしまして、ただいまの一年定期の比率で計算をいたしますと、全国銀行の場合におきましては、預金債券利回りが〇・一一%上昇をいたしまして現在の預金債券利回りの四・四五%が四・五六%に相なります。したがいまして、預金債券コストも六・五三%から六・六四%に上昇をいたしまして、預金債券貸し出し金の利ざやが〇・八七%ということに相なります。全体といたしまして公表利益の約七%程度が影響を受けて減る。これは法人税、住民税等調整いたした結果でございます。相互銀行の場合は、ただいまの公表利益の全国銀行の七%に相当いたします分が約一一%、それから信用金庫の場合が七%、全国銀行とほぼ同様という公表利益の減少が見込まれるわけでございます。
  157. 堀昌雄

    堀委員 いま承って、確かに各指標を見ておりましてもいろいろな点で全国銀行と信用金庫というものはやや似通ったパターンになっていると思いますけれども、ちょっと相互銀行が、いまお話しのように公表利益に対してその他と四%くらい違った損が立つといいますか、そういうことになるようでありますが、この問題の主たる背景は一体どういうところにあると考えておられるでしょうか。
  158. 近藤道生

    近藤政府委員 相互銀行の場合には、資金コスト、資金吸収のためのコストが、信用金庫の場合に比べましてはるかに高いというのが通例の状況になっております。
  159. 堀昌雄

    堀委員 経営諸表を見まして、実は私は今度のこのような金利の引き上げについて、確かにやはり一番影響を受けるだろうと思うのは相互銀行だろうということは、いま伺うまでもなく、実は現在の経営諸表から見てもかなりはっきりしておる点があるわけであります。いま都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫というものについて人件費率のほうを見ますと、時間がありませんから少し私のほうから申し上げますが、都銀が一・一六、地銀が一・三〇、相銀は一・八二で、信用金庫は一・五八、相互銀行は人件費率においてもその他のものに比べて非常に高いわけでありまして、その結果、預金債券経費率が都銀が二・〇九、地銀が二・〇六に対して、相互銀行は二・八〇と、信用金庫の二・六四をはるかに上回ってきている。このことは多分にいまの人件費率が大きいということに原因があるようであります。預金債券コストそのものもその関係から当然高くなってきておるわけでありまして、いまの定期金利の引き上げがそういう意味では一番大きく経営効率の上に影響するという姿がはっきりしておるわけであります。  そこで、今後いろいろな金利を自由化をするという問題が金融行政の一本の柱としてはあるわけです。私は金利の自由化ということをかねて主張しておるのでありますけれども、この預金金利の問題はその点ではかなり慎重を要する問題ではないのか。今度も各種の改定にあたって、日本銀行のガイドラインというものを示して、当分の間は実質的には自由化をされない形になっておるようでありますが、私はやはり金利の自由化をするためには、その自由化に耐えられる各種金融機関体質改善といいますか、体質の強化を行なうことと相まって行なうのでなければ、まさに角をためて牛を殺すことになるんではないかという気がするのであります。  そこで、いまの金利の自由化問題の最初のスタートとして、今度の金利に関する通達が日本銀行のガイドラインとの併用ということを含めて出されたと思うのでありますが、この問題に対する今後の考え方、金利自由化に対する今後の考え方は、大体どういう方向で処理をされていくつもりか、さらにガイドラインの取り扱い等は今後はどういうふうになっていくのか、そこらについて少し伺っておきたいと思います。
  160. 近藤道生

    近藤政府委員 その点についての基本的考え方は、ただいまお述べになりましたとおりの考え方で臨んでおりまして、基本的には金利は弾力化、自由化という方向で扱うわけでございますが、ただそれによりまして非常な摩擦、激変を生ずる、そうして先ほど申し上げましたような弱肉強食というような事態があまり激しく出てくるというようなことは、何としてでも避けなければならない。その辺の観点を踏まえまして、ガイドラインにおきましては激変緩和という方向を打ち出していくということに相なろうかと存じます。
  161. 堀昌雄

    堀委員 そこで、これに関連をして出てくるものがやはり店舗の関係の問題と私は思うのであります。いま店舗の姿を各都銀、地銀、相銀、信金についてながめてみますと、いまや都市銀行は七大都市にその店舗の六〇%余りが集中をしていて、さらに大体人口四十万ぐらいから以上の都市を含めて見ますならば、都市銀行の店舗というのは九〇%がこれらの大都市に集中している、こういうことに実はなっているわけですね。この店舗の問題については、最近毎年店舗に関する通達が出されておるわけですが、いま特に都市銀行がリプレースという形で求めているのは、首都圏であるとか——特に首都圏が一番多いように思いますが、こういうところには非常に集中殺到をしているようであります。そこで、ある新しい町にそういうリプレースによって店舗が集まってくるときには、通達によると、その地域における地域金融機関を優先するというふうに書かれていますが、あとの都市銀行が出てくる場合には、その都市の人口増等の関係もありましょうけれども、新しい町ができる、そうするとその駅前、目抜きの部分はいきなりほとんどが金融機関だなどということになることは、これは今後私どもは避けるべきものではないのか。金融機関がそういう部分に集中することによってその地域の地価を異常に高めるということは、もう過去の例においてしばしばわれわれが経験をしてきておるわけでありますので、特にこの銀行の店舗行政は、そういう意味でその地域の発展に必要なものではありますけれども、必要以上なそういう刺激をその地域に与えることは、これまた非常にマイナスをもたらすことになるのでありますから、ある新しい住宅都市とか、住宅都市でなくてもこれから首都圏においてさらに伸びてくるであろうという都市にいま集中して申し出ているような店舗の取り扱いについては、一体どういう基本的な考え方で処理をされるのか、それをちょっと承りたい。
  162. 近藤道生

    近藤政府委員 店舗につきましては、従来は毎年新しい通達が出されまして、その年度の店舗設置方針を述べておったわけでございますが、昨年十二月十五日に、いわゆる多年度通達と申しますか、その年だけではない、今後しばらくの間はこの方針でまいるという多年度通達の形で初めて通達が出されまして、それに幾つかの事項が盛り込まれております。  大まかに分けまして五つぐらいになろうかと存じますが、第一点は、ちょうどだだいまお示しもございましたように、店舗の新設というものは、これは銀行全体の店の数からまいりまして十分である。したがって、新設につきましては抑制的な方針を堅持するということがうたってございます。ただ配置転換というほうにつきましては、経済情勢の変化に即応する店舗配置の適正化という観点から、特に金融サービスの向上、顧客のためになるようなサービスの向上あるいは貯蓄の増強、そういう観点での配置転換はこれを弾力的に扱うことにいたしましょうというのが第一点でございます。  それから第二点は、同じ地区に店舗新設の希望が競合するときは、ただいまお触れになりましたように、地元の金融機関を優先してまいるということが触れてございます。  それから第三点は、配置転換等で廃止をいたします場合にあまり摩擦が起こらないように、地元住民が廃止によって著しく不便をこうむるということは困るので、その点に気をつけてほしいということ。  それから最後の点は、特に店舗新設に伴う土地取得につきまして、これもただいまお触れになりましたように、これが地価上昇を主導することのないように十分留意させる。そして取得価格が不当に高額であるという場合には、たとえ内示のあとでありましてもその店舗の設置を認可しないというたてまえをとるという、以上の点を昨年の十二月に基本方針として並べまして、今後数年間はこの方針でまいる。したがって、年度ごとできめますと、いわゆるかけ込み増設的なものが出てまいるおそれもありますので、今後しばらくはこれでずっと続けてまいりますということを通達として出したわけでございます。
  163. 堀昌雄

    堀委員 そこで、いま私は、その店舗のリプレースということが認められますから、都市銀行はだんだんとその周辺地域から撤収をして、最も経営効率のいいところへ集中をしていく。ただ問題になりますのは、あとの都市にある地方銀行、相互銀行、信用金庫は、これは問題はございません。問題が残ってくるのは、実は過疎地帯における金融機関の問題です。  この過疎地帯における金融機関というものは、一面的に、だんだん人口は減る。問題によっては、産業のあり方としても必ずしも発展性がない。いろいろな面で、さっきもお話のあった経済効率の追求なり経済合理性ということを考えようにも考えられない問題というものが具体的にあると思うのです。そこで、これらの地域における金融機関というものに対しては、大蔵省は、いまの店舗行政の問題での処理はしようがないわけですから、何らか片方経済合理性の追求なりあるいは経営効率の追求が店舗のリプレースということでできるものと、そうでなく、社会性、公共性ということによってある程度ハンディキャップがあるといいますか、そういうものに対する指導のあり方といいますか、これは一体どういうふうに考えていかれるのか。これもやはり地域金融機関としてその地域に、たとえ十分でないにしても、それなりの産業もありましょうし、金融機関の存在は当然必要であるわけでありますから、この面については銀行局としてはそれではどういう考え方でやっていかれるのか、それをちょっと承りたいと思います。
  164. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま御指摘の点は、まさに過疎問題全体に連なる非常に大きな問題でございまして、金融行政の観点、特に店舗行政の観点におきまして、従来ともいわば盲点のような部分であったかと存じます。この点につきまして、今後特にいろいろな角度から検討を進めてまいりたいと考えております。
  165. 堀昌雄

    堀委員 私は、結局、その競争原理というものは、ある面では、実はいまの都市銀行というような部分においては、これはより競争原理が導入されることによって、預金者には高い金利、貸し出しはできるだけ安い金利ということによって経営が合理化され、効率化されることによって、金融機関がその使命を達成することが望ましい、こう思います。しかし、いまのような過疎地帯における金融機関というものは、これはそういうものとの競争にならないような仕組みになっていますから、私はかつて保護の行政の問題をかなり触れてきたわけでありますが、もちろん過保護になることは適切でありませんけれども、やはりその地域産業の育成等を含めて考えていきますと、その過疎地域における金融機関対策というものは、その他の過疎地域における産業対策と同じように、何らかの助成策というようなものをやはり含めて考えませんと、その地域における産業そのものの発展に対してもプラスにならないという問題が一つは出てくるのではないか。またもう一面的には、そういう場所においてもなおかつ人件費等はだんだんと高くなるということは、これはもう争えない事実だと思うのであります。  そうした場合には、やはり私は全体的な、たとえば信用金庫については——私はよく信用金庫の皆さんに申し上げるのでありますが、信用金庫はもう個々の信用金庫の段階ではないのではないだろうか、全国五百に余る信用金庫が一つの大きなサークルとして連携がとれるようにして、これが一つの形でオンラインの上に乗るような経営の合理化が進められるならば、そういう地域性の問題を含めてかなり問題は改善をされ、同時にその全国的なネットというものは、都市銀行では果たし得ない大きな効率を果たす可能性をもたらすのではないかというような問題提起を、信用金庫の幹部の皆さんに申し上げておるわけであります。これは信用金庫の場合ならあるいは可能かと思いますけれども、相互銀行とか地方銀行というのは必ずしもそこまでいけるかどうかわからない。ただしかし、現在問題になっておりますのは東北地方とかあるいは四国地方、あるいは北陸、山陰あるいは九州の南部というように、地域的に実は過疎地帯というものがあるわけですが、そういう地域的過疎地帯における金融機関が、何らかのかっこうで適切な広域的連携の上に、できるだけ経営の合理化がはかれるような新しい道を切り開くための一つの指導方針といいますか、あるいはそれに対する何らかの助成策というようなことが考えられてしかるべきではないかという気持ちがするわけであります。資料で見ますと、ともかくもこの東北、北陸あるいは山陰、四国、九州南部というようなところには、都市銀行の店舗はほんとうに数えるほどしがなくて、これらのすべてはいまの地方銀行、相互銀行、信用金庫によって運営をされておるわけであります。  これらについては、ぜひひとつ新しい展望を持って、今後の過疎対策の、産業に対する問題と同様に、またそれ以上に金融政策上の問題を配慮していくということも、日本経済全体をバランスのとれるものにするために重要な一つの課題ではないか。初めは大ざっぱな競争原理の導入に始まったわけでありますが、やはり経済成長に伴ってだんだんと問題をきめこまかく考えていかなければならないところにこれらの問題はきておるように強く感じるわけでありますが、それについてはどういうふうにお考えになるか、また今後の検討課題としてはどういうふうに持っていかれるかを、ちょっと伺っておきたいと思います。
  166. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま過疎地帯に対する金融機関の店舗配置につきまして、傾聴すべき御意見を承らしていただきましたので、それらの点、十分事務的にも検討いたしまして、過疎地帯における金融機関のあり方について、今後何らかの方途を研究してまいりたいと考えております。
  167. 堀昌雄

    堀委員 その次に、さっきちょっと触れました中期預金の問題でありますけれども、実はこの中期貯金というのは、上位都市銀行が非常に熱心に推進をして、金融制度調査会の一つの議題にもなってきておると思うのでありますが、いまのような全体から見てある一部の上位銀行だけが特に望んでおるような預金形態というものは、その都市銀行内部だけの競争問題ならばとにかく、こういう制度はそういう狭い範囲だけになかなか認めるわけにはまいりませんから、だんだんと引き連れて全国的に、制度としては当然広げていかなければならないという問題になってきますが、これはなかなかそう簡単に手をつけるというわけには、さっきから私が触れてきた現在の諸条件から見て問題があろうか、こういう気がしておるわけです。  そこで、私がさっき触れました今回の一年もの定期預金の金利が改定されましたあと、いまお話しになった公表利益に対する減収の問題というのは、その金融機関別の全体の収支でありますから、これは、やはり個別にはかなりいろいろ違った影響を与えてくることは間違いがありません。現在、都市銀行では公表利益が二百億円をこえるものから二、三十億円程度のところまで格差があるわけでありますから、都市銀行内部においてもかなり問題があろうと思います。同時に、これはその他の金融機関においてはたいへん大きな影響をもたらすおそれがある、こう考えるわけです。そこでこの問題は、いまの定期金利の引き上げが各金融機関別、各行別にどういう影響を与え、どういう結果になるかということをある程度見定めて、その見定めた後に、もし必要があるとすれば検討するということでないと、これは、いたずらにこれらの制度を新設することによって、さっきお話しのあった社会性、公共性の面に問題を投げかけることになりかねないという気がするわけであります。そういう意味で慎重な検討を必要とするのではないかと考えておりますが、その点はいかがでしょうか。
  168. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま仰せになりましたとおりでございまして、金利調整審議会の事務当局といたしましても、各行別にこまかな試算を積み上げまして、一番限界にある金融機関があまりはなはだしい、急激な打撃を受けませんような配慮のもとに答申を作成するということで考えておられるようでございますし、またガイドラインを作成いたします日本銀行の関係間におきましても同様な配慮で、激変緩和のための施策をいろいろと考慮いたしている、こう承っております。私どももまたそのようなつもりで進めてまいりたいと思っております。
  169. 堀昌雄

    堀委員 そこで、これは皆さんも御勉強になりますから、ひとつ資料をお願いしたいと思います。これは委員会に配付をしていただきたいわけでありますが、都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫、この四つのグループに分けて、貸し出し金の利回り、預金債券のコスト、それから貸し出し金利回りから預金債券のコストを引いたもの、それから預金債券経費率、人件費率、物件費率、それからあと税金比率がそこに入りましょうが、こういうような資料を、まずそれは全体のものだけではなくて、最高のものと最低のものはどうなっているか。これはその各ジャンルにおける格差がわかると思いますから、最高、最低。それからもう一つは、多数の銀行があるわけですから、これを分布曲線で一ぺん出してもらえないだろうか。そうすると、大体いまの各経営の状態は全体としては一体どうなっているのかということがよくわかります。私どもがこれから金融のいろいろな問題を検討するためには、委員各位とともに、現在における各銀行というものがどういう経営実態にあり、そういう実態の中では、いま私がここまで申し上げてきたいろいろな競争の問題についても、どういう形の競争が最も適正なのかということの参考になるかと思いますので、この点の資料をまずお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  170. 近藤道生

    近藤政府委員 承知いたしました。分布曲線等は多少時間がかかるかと思いますが、御提出申し上げます。
  171. 堀昌雄

    堀委員 委員長からの御要望もありますので、もう一つのほかの問題に触れたいと思いましたけれども、本日はこれをもって終わることにいたします。
  172. 毛利松平

    毛利委員長 二見君。
  173. 二見伸明

    ○二見委員 私も利率の表示を年利建てに移行することに関しては特別問題がないと思いますので、やはり堀先生に関連いたしまして、金利の問題について二、三お尋ねしたいと思います。  確認いたしますけれども、さきの三月三日、大蔵省告示第二十六号によって、期間の定めがある預金の利率を年五・五%にした。これはいままでの三カ月もの、六カ月もの、一年ものという区別がなくて、全部同じように、三カ月以上のものは年五・五%にした、こういう告示が出ております。これはそのとおりでよろしいでしょうか。
  174. 近藤道生

    近藤政府委員 そのとおりでございます。
  175. 二見伸明

    ○二見委員 それからもう一点ですけれども、一年ものの定期預金の金利の問題でありますが、三月三十一日ごろ大蔵大臣が臨金法の改正の告示を出し、これに合わせて、日銀がガイドライン公表と同時に、大蔵省銀行局長が通達を出す予定である、こういうふうに聞いておりますが、これもこのとおりでよろしいのでしょうか。
  176. 近藤道生

    近藤政府委員 おそらくはそのとおりになろうかと思います。
  177. 二見伸明

    ○二見委員 その場合はあくまでも一年ものだけに限るのか、あるいは三カ月もの、六カ月ものというのはいまの五・五%に置いたままで、一年ものだけということになるのか、それからまた、実施が四月二十日ごろの予定だと聞いておりますけれども、その点いかがでしょう。
  178. 近藤道生

    近藤政府委員 これは現在、金利調整審議会に政策委員会を通じましておはかり申し上げておる段階でございますので、私どものほうからその予測につきまして申し上げるのはいささか穏当でないと思いますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  179. 二見伸明

    ○二見委員 預金金利、定期ものの預金金利の引き上げの件ですけれども近藤局長がお出しになった通達によると、一つは、物価政策一つの柱としてこういう引き上げを行なった——厳密には、そういうことばじゃなくて、「最近、物価政策一つの柱として金利機能の活用が強く主張されている」云々、こうありますけれども、今回の引き上げも物価政策の一環として引き上げたというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  180. 近藤道生

    近藤政府委員 そのように御理解いただければよろしいと存じます。
  181. 二見伸明

    ○二見委員 物価との関係でお尋ねしますけれども、確かに定期ものが五・五%であって、消費者物価がそれ以上に上昇しているということを考えると、当然預金率も下がってくるだろうと思います。あるいは現実に下がっているんじゃないかと思います。だから、それに合わせるために、物価の上昇に合わせて預金、定期預金金利を引き上げたということになると、これは物価政策としての立場じゃなくて、そういう物価上昇に合わせたというほうにむしろウエートがあるんじゃないだろうか。政策というよりも、実際は消費者物価が上がっているからそれに合わせなければならないんだ、むしろそのほうに、物価政策じゃなくて、そういう実勢に合わせなければもう預金が集まらなくなるんだ、そういう実情から引き上げたというふうに理解したほうが何となく実際的な感じがするのですけれども、どうでしょうか。
  182. 近藤道生

    近藤政府委員 物価と金利との関係でございますが、その金利の弾力化というときに物価問題をうたっております趣旨は、実は金融機関の金利を弾力化することによりまして、そのときどきの総需要政策に影響を及ぼす。総需要政策に対する影響を通じまして、現在の物価高というものはやはり需給のアンバランス、需要超過ということが原因になっておると考えられますので、その需要を押える方法といたしましては、やはり金利を円滑に敏速に動かさなければならない。そのための金利の弾力、これが物価と金利との関連でございまして、直接、一年間の消費者物価が幾ら上がったから、それに対しまして金利を幾ら上げてそれによって償うというような趣旨は、実はあまりございません。
  183. 二見伸明

    ○二見委員 預金の利率を上げれば総需要を押えるということですが、預金の利率を上げた、その場合、大蔵省として考えているのは、貸し出し金利よりも上がるというふうに、そういう前提のもとにこれは考えているわけですね。貸し出し金利が据え置かれているならば、しかも現在のように経済がかなり高度の勢いでもって成長してくる、資金需要が旺盛であるというときには、貸し出し金利が押えられていれば、あるいは競争原理が導入されてあまり貸し出し金利が上がらないということになれば、総需要を抑制するという方向には必ずしもいかないのではないか。貸し出し金利を大幅に上げる、預金金利が上がれば貸し出し金利も上がるというふうに連動していればそうも言えるけれども、そうでない場合には必ずしも総需要の抑制には響かないのではないか。響く場合もあり得るかもしれないが、響かない場合もあるんじゃないか、こう考えられますが、いかがでしょう。
  184. 近藤道生

    近藤政府委員 お示しの点は、金融制度調査会におきましても一つの論議の焦点となった点でございます。長期的な観点と短期的な観点とを分けて考えなければならないポイントであろうかと存じますが、長期的な観点におきましては、ただいまお示しになりましたように極力貸し出し金利には響かないようにしてまいらなければならないということでございますが、短期的な観点に立ちます場合には、貸し出し金利もある程度はそのときどきの需要供給の状態に応じて敏活にと申しますか、円滑に動くという体制が望ましいわけでございます。それらの金利の基本になります預金金利につきましてまず弾力的な体制を整えるということが、先般の措置の趣旨であろうかと思います。
  185. 二見伸明

    ○二見委員 戦後の日本の金利政策をずっと見てまいりまして、やはり一つの特徴は低金利政策だったと思います。そしてこの低金利政策も、現状では国際環境など考えてもうそういう段階ではなくなった、いつまでもそれを続けているわけにはいかない、こういうように大蔵省のほうでも判断しておるのではないかと思いますし、もういままでのような低金利政策からはそろそろ脱却していこうという、そういう姿勢もあるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  186. 近藤道生

    近藤政府委員 長い目で見ますと、金融機関の金利というものは、ことに貸し出し金利は低下していくことが最も望ましいわけでございます。それによって企業の金利負担を低減してまいるということが非常に必要であるということはもちろんのことでございます。その意味での、非常に長い意味での低金利政策、これは相変わらず、推進され、堅持さるべきであろうかと思います。ただ、最近の情勢のように、たとえば公社債市場における新発債、既発債の条件の乖離というような問題が出てきておりますゆえんのものは、やはりたとえば長期金利につきまして現在の水準がやや低きに過ぎたということがそこに端的にあらわれてまいったわけでございます。これは長期金利の改定を、上げるという方向でやらざるを得ない。しかしさらに長い目で見ればいま申しましたように、低金利政策と申しますか、金利は低いほうがいいということであろうかと思います。
  187. 二見伸明

    ○二見委員 それからいわゆる普通預金ですね。定期預金の一年ものは今回爼上にのぼっておりますけれども、普通預金の金利というものについては、上げるということについて賛成論者もおりますし、むしろ当座預金的なものだから上げる必要はない、むしろ下げるべきだ、こういう二つの意見が私はあるように思いますけれども、大蔵省としては普通預金の金利については今後どういうふうに考えていくのか。やはりある程度引き上げる方向でいくのか、当座預金的な性格だから下げよう、あるいは金利ゼロにしよう、そういう方向でこれからは進めていくのか、その点はいかがでしょう。
  188. 近藤道生

    近藤政府委員 将来の問題といたしましては、金融制度調査会の論議にも出ておりますように、たとえば公定歩合の連動というようなことを研究しなければならないということに相なっておりますが、当面の問題といたしましては、これは長期金利のアンバランスということが問題となった一連の動きでございますので、要求払い預金につきましては、あまりこれを動かすという考え方はございません。
  189. 二見伸明

    ○二見委員 それから、日本の金利が低く押えられていたという一つ理由として、いろいろ手続がめんどうくさいですね。大蔵大臣が日銀政策委員会に対して改正命令を出して、それからいろいろ複雑な手続を経なければ金利の改定はできないようになっておりますね。このシステムはこのままこれからも続けていくわけですか、それとももっと簡単に、金利の自由化という方向に向かって、こういうめんどくさい手続はなるたけやらないで、簡略に上げ下げできるような方向でこれからはこういう問題は改正していくのかどうか、その点はどうでしょう。
  190. 近藤道生

    近藤政府委員 三月三日付の通達によりまして預金の告示の種類が四種類にしぼられましたのも、ただいまの御指摘のございましたような複雑なものを簡略化しようというねらいが一つでございます。ただ、ガイドラインその他の手続につきましては、これは公正取引委員会等とも協議の上やはり国民の利益に関することでございますので、日本銀行がガイドラインという形でこれを定めて、その範囲内で動かすということにいたしております。
  191. 二見伸明

    ○二見委員 それから、先ほど貸し出し金利について、長期的には貸し出し金利に響かないようにしよう、こういうお話でありましたけれども、そうすると、そこに当然起こってくるのは金融の再編成じゃないか。経営の内容のよくないところ、よいところ、これはもうかなり差が出てくることは明らかだと思います。しかも、資金需要が現在旺盛ですので、預金金利はガイドラインを設ければそれ一ぱいまでくるわけですね。やはり預金が集まらないとか、また、銀行としても預金獲得競争がこれからますます激しくなってくるだろうと思います。そういう点を考えて、貸し出し金利を押えよう、あるいは響かないようにしようということになると、銀行そのものが今度は優良銀行と不良銀行、この選別がされてまいりますね。そうすると、金融の再編成というか、あるいは悪いところは、倒産まではいかないと思いますけれども、かなりな不測の事態もあるいは起こってくることも考えられるんじゃないだろうか。そういう点での見通しはどういうふうにお考えになっておりますか。
  192. 近藤道生

    近藤政府委員 先ほど、堀先生の御質問にお答え申し上げました趣旨どおりでございまして、やはり金融行政を進めます場合には、たとえば、楕円の二つの焦点のようなものを同時に踏まえてまいらねばならない。一方におきまして適正な競争原理の導入によって、それぞれが経営効率を高めていくということが必要でありますと同時に、他面におきましてはやはり社会的、公共的立場から、あまり弱肉強食な状態におちいり、一部に急激な変化を起こして、経営の破綻、倒産といったような事態を招くということは、これは極力避けてまいらねばならない。その二つの焦点のかね合いがなかなかむずかしいところでございますが、いずれにいたしましてもあまり激しい急激な変化は起こさないように考慮してまいりたいと存じます。
  193. 二見伸明

    ○二見委員 預金者の立場にいたしますと金利が上がることは大賛成なわけです。銀行にしてみればこれはえらい迷惑だろうと思います。そういう不測の事態も考えられないわけではない。そういう場合、大蔵省のほうでは預金保険制度というのを検討しているという話を聞きましたけれども、これはどういう内容のもので、また、こういう制度をもし設けるとするなら、設けるまでのスケジュールといいますか、大体いつごろからやりたい、そういうような目安といいますか、そういう方針はいかがでしょう。
  194. 近藤道生

    近藤政府委員 預金保険制度につきましては、ちょうど金融制度調査会でいろいろ御論議を願いまして、おそらくは六月ごろには大蔵大臣に御答申をいただけるのではないかと思っております。その御答申にも、預金保険制度についての内容その他が述べられると思いますので、それをいただきました上で大蔵大臣としての態度を固めてまいりたい、かように考えております。
  195. 二見伸明

    ○二見委員 それから先ほどの金融再編成の問題にからみますけれども、これは中小企業の立場から考えても、地場産業の育成という点から考えて、金利が将来自由化になったという段階で、これではっきりと利益を受けるのは都市の大銀行である。地方銀行でも力のあるものはいいけれども、力のないものはかなり苦しい立場に追い込まれるし、信用金庫ですか、そういう関係もかなり苦しい立場に追い込まれるのじゃないかと思います。中小企業者が融資を受ける場合にどこへ行くかといえば、結局は信用組合、信用金庫ですか、そういうところ、あるいは自分のところにある地方銀行にかけ込む以外には金融の道はないわけですね。金利の自由化という問題がそういう面から考えてやはり中小企業に対しても大きな圧迫を与えてくるんじゃないだろうか。一面はプラスの面もあるけれども、一面はそういうマイナスの面も出てくるのじゃないだろうか。先ほど堀先生の御質問にも同じような趣旨の御質問があったように思いますけれども、そういう点については、特にそういう弱小の中小企業向けの金融機関に対しても育成しなければならないと思いますけれども、そういう点に対しては今後どういうふうに対策を進めていかれるのか、その点はいかがでしょう。
  196. 近藤道生

    近藤政府委員 御指摘のとおりでございまして、中小金融機関並びにその借り入れ先、そういう人々に対するきめこまかな配慮というものはたいへんに必要なことかと思います。ただ同時に、数年前のような高いコストで中小金融機関運営をされるということになりますと、勢いその貸し出し金利も高くなるということで、ここ数年の間にかなり改善を見てきましたゆえんのものは、やはり適正な競争原理の導入ということによりまして、中小金融機関もいままでよりははるかに経営についての認識を改め、きびしい環境に対処していこうという意気込みを持ったということが、今日、相当コストが低下してきております一つの大きな原因かと存じますので、その辺のところも加味しながら、両々あわせて配慮してまいりたいというふうに考えております。
  197. 二見伸明

    ○二見委員 最後にお尋ねいたしますけれども、金利の自由化、おたくのほうとしてもしこれのスケジュールをお持ちならば——今後こういう段階でもって金利の自由化を進めていこう、こういうスケジュールがもしおありならばそれを教えていただきたいと思いますし、それと同時に、先ほども公定歩合との連動の問題は現存検討中である、こういうお話がありましたけれども方向としてはやはり公定歩合との連動という方向に進めていくのか、あるいは公定歩合とはまるっきり切り離した立場でもってこれからも大蔵省としては進めていきたいのか、その点についてだけお尋ねして終わりたいと思います。
  198. 近藤道生

    近藤政府委員 自由化につきまして、特にいまから日程を定め、スケジュールをきめてやっていこうということではございませんで、そのときそのときの情勢に応じまして、このほうも弾力的に取り運んでまいりたいというのが私どもの考え方でございます。また公定歩合との連動関係ということも金融制度調査会で議論されました点で、最後の取りまとめが近日中、来月もしくは再来月に行なわれまして、私どものほうに御提出いただけると思いますので、それを拝見いたしました上でまた検討いたしてまいりたい、かように思っております。
  199. 二見伸明

    ○二見委員 終わります。
  200. 毛利松平

    毛利委員長 春日君。
  201. 春日一幸

    ○春日委員 まず冒頭に資料提出を求めておきたいと思いますが、これは後日われわれの金融政策検討のための参考資料にいたしたいと思います。  いま都市銀行の授権資本と株主勘定の自己資本の総額、それから貸し出し総残高、預金総残高、それから日銀からの借り入れ額並びにコールの導入額、これをひとつ全国の都市銀行についてそれぞれリストアップして資料の御提出を願いたいと思いますが、いかがでありますか。
  202. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまお示しの項目、都銀全体につきましての資料提出させていただきます。
  203. 春日一幸

    ○春日委員 なお別途資料として御提出を願いたいのでありますが、全金融機関の現在の貸し出し総残高、預金の総額。それからもう一つは、これは明確に把握できないかもわかりませんけれども、匿名預金なるものの大体の推定総額、それを都市銀行、相互銀行、信用金庫、信用組合別に、そういうようなものの推定額でもけっこうですけれども、把握でさましたらひとつ資料の御提出を願いたいと思います。  それから、歩積み両建ての問題について本委員会でしばしば論議を固めまして、その後自粛通達、自主規制などのごとき処置がとられて本日に至っております。しかるところ、先般参議院においての予算委員会の論議に徴しますと、なおこれは、そのような通達がなされ、国会において重大なる関心をもって規制の論議が行なわれたのにもかかわらず、最近はさらにこれが逆に悪化の傾向をたどっておると論じられております。したがってこの問題も、この際、三月危機が論じられております関係において、本委員会において十分その実態をつまびらかにし、適切なる対策を立てなければならぬと考えますが、いまどういう状態になっておりますか、おわかりでありましたらこの際明らかにしていただきたい。
  204. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまの最初の資料お話でございますが、匿名預金だけはちょっと実態が、推定もなかなかむずかしゅうございますので……。それ以外の分につきましては別に御提出申し上げたいと存じます。  それから拘束性預金に関する調査は、昨年の十一月までの数字でちょっと古いので恐縮でございますが、たとえば都市銀行におきましては五月のときに五・四%でございましたのが十一月に四・八%ということに相なっております。地銀について申し上げますと、拘束性預金の比率が、五月が八・七、十一月が八・〇、相互銀行につきましては五月が一九・九、十一月が一八・一、信用金庫につきましては五月が二五・六、十一月が二四・七ということに相なっております。
  205. 春日一幸

    ○春日委員 そのパーセンテージは何を示しておるものなんですか、ちょっと御説明願いたい。
  206. 近藤道生

    近藤政府委員 いわゆる債務者預金比率と違いまして、特に拘束をいたしております預金の比率示しておるものでございます。ただこの拘束預金比率自体はこのようにやや低下の傾向にあるようでございますが、全体といたしまして債務者預金のうちで真に拘束を受けておるものがどのくらいであるかというようなことにつきましては、なお私どもといたしましてもいろいろな角度から調査をいたしまして、実質的な拘束預金比率が再び上昇することがないように今後とも指導してまいりたいと思っております。
  207. 春日一幸

    ○春日委員 この問題については、当大蔵委員会金融委員会で自粛通達案というものについて検討をいたしまして、かつはそれぞれ金融機関と、さらに公取の意見をも徴しまして、ある一個の基準が設定されたわけでございました。したがって、その基準に照らしてどういう状態になっておるのであるか。なお、あの基準は当分の間ということでございまして、将来に向かってはこれを一そうなくしていく方向努力を進めるのだが、当分ということになっておりました。したがって、あの基準が定められたのはたしかもうすでに五、六年前であろうかと考えますから、その基準は必ずしも本時点において基準になり得るものではないと考えますけれども、しかし最も新しい基準に照らしてどういうような性向をたどっておるかということ、これもひとつ次回までにそれぞれ審査を加えられて報告を願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  208. 近藤道生

    近藤政府委員 承知いたしました。
  209. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、本日は金利の表示方法に関しまする法律案について質問をいたしたいと思います。  これは何と申しましても、日歩建てを年利建てに行なうということは、いままで二本立てのものを一本立てに統合することであり、国際慣行に照らしましても、国民経済効率を高めるためにも、一歩前進とも見るべきものと考えたのでありまするが、それにしても、この際わが国の金利政策というものがいかにあるべきものであろうか、この本質についていろいろとわれわれの見解を述べ、政府の方針をただしてみたいと思います。  そこで第一番の質問の要点は、金利の硬直性についてでございます。わが国の金利構造は、金利が硬直的でございまして、各種の金利が相互に有機的な関連を結び合っていないという、このような大きな欠陥があるのではないか。そのために、金利が資金需要の実勢に応じて本来は自由は変動すべきメカニズムを持たさなければならないけれども、そのような機能に欠けておる。したがって、金利の資金需給調整機能というものが十分に働く環境が整うていない。ことに長期金利が硬直的である。短期金利と長期金利の有機的な変動関係というものを全然期待することができぬ状態になっておる。このことについて政府は、このような調整機能が十分に働く環境を整備せなければならぬとは考えないか。また整備せなければならぬとすれば、どのような問題を対象として整備すべきものと考えておるか、御方針、所見を伺いたいと思います。
  210. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまお示しいただきましたように、わが国の金利の硬直性というものはかなりはなはだしい状態にあったということがいえようかと思います。たとえば銀行預金の金利につきましても、一年定期、普通預金、いずれも九年間そのままの水準で過ごしたというようなこと、郵便貯金につきましても同様でございますが、そういうふうな硬直的な状態に長いことあったということはやはりぐあいの悪いことでございまして、金利はそのときどきの資金需給情勢に応じて弾力的に動いてまいるということが必要でございますので、去る三月三日の預金金利の規制緩和の告示、あるいはこのたび一連の長期金利の改定の動き、このようなことを通じまして、金利全体を弾力的に運用してまいるという方向で考えられておるわけでございます。さらに長期的視野に立って申し上げますならば、やはり成長の速度と資金の量との関係がきわめて密接な関係を持っているわけでございまして、その資金の量にある程度の限度がございますと、どうしても量的な調整ということが片方に出てまいりまして、金利というものが硬直的になりがちであるし、またその一般的な硬直的な金利のしわが短期の、たとえばコールというようなところに集中的に寄ってまいるという現象が、急角度の成長を行なっております経済においてある程度必然的な現象として出てまいるわけでございますが、これらにつきましては、ただいま申し上げましたような幾つかの糸口をつかまえまして、徐々にこれを直してまいるということが必要であろうかと存じております。
  211. 春日一幸

    ○春日委員 いま局長の御答弁によっても、当面の対策と長期的展望に立つ基本的対策等についてお述べになりましたけれども、しかしこの金利の硬直性を将来是正してまいりまするためには、立体的に総合的に政策を強力に推進願わなければならぬであろうと思うし、また商売は元手次第といわれる、事ほどさように金利が金融に、そして金融経済に及ぼす影響は圧倒的な力を持つものと申さなければ相なりません。金利というものは、資金需要が強まれば金利が上がるべきであろうし、また需要が下がれば金利も当然下がるというような、需要供給の原則というものが、自由経済の中においてこの金利の面にも十分反映せなければならぬことは当然の事柄である。しかるにこのことが臨時金利調整法でございますか、こういうような法律の制約があって、人為的にそのような自由流動性というものを阻害しておる。今日の段階においてこの臨時金利調整法というものがむしろ有害なものになっておるとは考えないか。いま大筋としては、流動性を高めなければならぬ、そうして長短金利の転換とか変動とかいうものの道を開いていかなければならぬ。とするならば、そのような政策によって変動を阻止しておるというこの体制は、近藤さんが指向されておりまする方向にまさに立ちふさがる大きな障害物件と断ずべきであろうと思うが、いかがでございますか。
  212. 近藤道生

    近藤政府委員 臨時金利調整法につきましての考え方は、ただいま御指摘になりましたような点が確かにございまして、そのために、たとえば三月三日におきまして十種類の預金を四種類に簡略化し、あるいは最高限度だけを定めまして期間を自由にするというようなことを行なったわけでございますが、同時に激変を避けますためにガイドラインを設けましたということは、やはり金利につきましてもあまり急激な変化がございますと、これは国民生活全般にとりましてかなり大きな障害になるという面をも考慮いたしまして、徐々に漸進的にいろいろ改善を加えてまいるということで、ただいま御指摘の御趣旨はその漸進的な改善方向をお示しいただいたものとして傾聴いたした次第でございます。
  213. 春日一幸

    ○春日委員 すなわち、金利変動のメカニズムを確保いたし、あるいは醸成するためには、そのような人為的な規制の障壁を取り除かなければならないことは論をまたざるところであり、漸進的に実態に即してそれを改善すると述べられておりますが、この点については適切な措置を講ぜられんことを期待するものであります。  同時に他の大きな要素は、銀行のオーバーローン、これにも大きな障害要件があろうと思うのでございます。それでお伺いをいたしたいのでありますが、いま都市銀行の貸し出し総残高はどのぐらいでございますか。都市銀行について検討を加えてみたいと思うので、まず都市銀行全体として総貸し出し残高はどのくらいでございますか。
  214. 近藤道生

    近藤政府委員 平均残高で申し上げますと、全国銀行が三十兆七千億、それから都市銀行が十七兆三千七百億というのが最近の決算期における平均残高の数字でございます。
  215. 春日一幸

    ○春日委員 オーバーローンの傾向はどうなっていますか。
  216. 近藤道生

    近藤政府委員 全国銀行の預貸率を申し上げますと、ただいまと同じ期で九一・六一%、都市銀行でまいりますと九六・六九%でございまして、かつて本委員会等でオーバーローンが非常に問題になりました時期に比べますと、いわゆる新金融調節方式以後におきましては都市銀行のオーバーローンの現象は著しい改善を見たと申しても差しつかえないものと存じます。
  217. 春日一幸

    ○春日委員 相互銀行だとか信金等においては預貸率というものに一定の法的規制があると思うのでございます。業務方法書でございましたか、いずれにしても規制があると思う。ところが都市銀行と全国銀行には預貸率については法的規制がなされてはいないが、しかし望ましい一定の基準というものはあるであろうと思います。当委員会で指弾をし指摘をいたしました当時から改善あとが見られるとはいいながら、なおかつこの程度で満足すべき状態であるのか、あるいはさらにどの程度まで改善を要すると銀行局長は考えておるか、この点をひとつお示し願いたい。
  218. 近藤道生

    近藤政府委員 その点につきましては、全国銀行協会でも自主的に今後の目標を定めておりまして、預貸率九〇%というところを一応ただいまの目標として進んでおりますが、将来また、その目標を達成いたしました暁におきましては、さらに漸進的に次の目標を定めてまいるということに相なろうかと存じます。
  219. 春日一幸

    ○春日委員 それは全国銀行ですか。
  220. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいまのは都市銀行の数字でございます。全国銀行につきましては、当局といたしましては八〇%を一応目標といたしまして、内面的な指導を行なっております。
  221. 春日一幸

    ○春日委員 相互銀行は八〇%でしたね。
  222. 近藤道生

    近藤政府委員 相互銀行の場合におきましてはただいまのような形での預貸率の規制はございませんで、逆に支払い準備率のほうについて一定の数字を設けております。その数字は定期性預金につきましては一〇%、要求払い預金につきましては三〇%となっております。
  223. 春日一幸

    ○春日委員 全国銀行あるいは都市銀行の信用度の高さから考えまして、預貸率が相互銀行以下のものに比べて相当ゆるやかに設定されておるということについては理解できますけれども、そのような預金者に対しますところの安全措置というような立場を離れまして、このことが金利政策という別の観点に立ちますと、やはりその預貸率というものがオーバーローン的な性向を持つことのないように行政指導を厳格に行なっていく必要があるのではないかと考えますが、この点について局長はどう考えておられますか。
  224. 近藤道生

    近藤政府委員 御指摘のとおりであろうと思います。
  225. 春日一幸

    ○春日委員 私はこの際、このオーバーローンという問題に関連をして、ちょっと話がサイドウェーに入りますけれども、との都市銀行なるものの集中融資、偏向融資、情実融資、こういう問題は大いに改善、改革を必要とするのではないかと思うのでございます。ただいまも堀君の質疑にも答えられておりましたけれども金融というものの使命は、何としても公共性というものを最重点にして、その運営につつがなきを期していかなければならぬと思う。なぜかならば、銀行が持っておりまする資金というものは大衆の預金である。足らざるところは日本銀行から借り入れたところの国家の金である。したがって、銀行の自己資本というようなものはほんのわずかのものでしかないと思う。大衆の預金を預かり、足らざるは国家の金を運用いたしまするところの金融機関が、その金を配分するにあたって、情実的であっていいはずはない。集中的、偏向的であっていいはずは断じてないと思う。したがって、そういう傾向は極力排除していかなければならぬと思いますが、この点について行政指導はいかに行なわれておるか、お伺いをいたしたい。
  226. 近藤道生

    近藤政府委員 全くただいま抑せになりましたことに同感でございます。たとえば都市銀行の融資につきましておっしゃいましたような事例があるとすれば、それはたいへんに国家、社会全体のために好ましくないことであろうかと思います。先ほど堀委員の御質問にお答え申し上げましたように、効率的経営ということ、質の競争ということ、体質を強くするということ、そういう方向と同時に、やはり社会性、公共性、そういう観点が非常に重視されなければならないというのはまさにその点だろうと存じますので、今後とも、ただ単に体質が強くなるということ以外に、融資のビヘービアその他が社会性、公共性にマッチしたものになりますように、おりに触れていろいろと検討し、指導してまいりたいというふうに考えております。
  227. 春日一幸

    ○春日委員 まいりたいという、その意欲を示されておることは多といたしますけれども、現実にそのような成果があがっておるか、あるいは貸し出しの実態はどうなっておるか。問題はきわめて重大であろうと思います。巷間伝うるところによりますると、銀行系列産業というものが、戦後二十年間のうちに、金融天皇といって、金融産業を支配する実態の中でそのようなものが形成されてしまったと伝えられております。すなわち三菱系産業は、三菱銀行の本支店の窓口を通じて大衆の預金を結集して、そしてその三菱系産業企業へこれが直流的に流し込まれておる、優先的に流し込まれておる。かくして、銀行を定年になったところの役職員がその会社の重役に天下りしていくということのその実態、枚挙にいとまないほどでございます。そういうようなことは金融の公共性をじゅうりんする。阻害するというよりも全く冒涜、じゅうりんするものである。われわれはここに刮目せなければなりませんことは、いま銀行は、現在の日本の銀行法では、どこへどういうぐあいに金を貸そうと、それについては単なる預金者の安全を確保するということが大体の制約条件であって、回収が確実なものであれば、どこへどういうぐあいにどのように貸し込んだところで何らの規制を受けないという形になっておる。かねがね本委員会でも指摘をいたしてまいりましたように、わが国の銀行法は、言うならばこれは単なる組織法である。どこへどういうぐあいにという、その事業運営上の制限、制約というものはほとんどないといっても過言ではない。だから金融政府日本というてもこれは過言ではないような実態にあるとわれわれは論じてきて、そしてこのような実態を改善、改革することをまさに鼓を鳴らす思いでここで強調してきたのだが、なおそのような成果はあらわれていないと見なければならぬが、単なるそういう方向に向かって行政指導がしたいというだけではわれわれは満足できない。どのように注意し、どのように改善の実をあげたか、具体的に御説明あるいは御報告を願いたい。
  228. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま御指摘の点、まさに最近における金融行政の非常に大きな問題であろうかと存じます。ただ銀行は、免許企業ではございますが、したがってたいへんな公共性、社会性という観点からのビヘービアを持たなければならない機関ではございますが、同時にまたこれは私的な存在、私的な面をも持っておりますので、その融資先その他につきまして一々政府あるいは日本銀行当局がこれに干渉するということは、これは現在のたてまえではいたさないことに相なっております。ただ、たとえば日本銀行におきましてただいまポジション指導、あるいは大蔵省におきまして銀行検査というようなことをいたしておりますが、その際にそれぞれの都市銀行の融資の実態その他につきましていろいろと調査をいたしまして、いろいろの注意すべき点があればこれは注意をするということに相なりますが、その際やはり基本的には預金者の保護あるいは大きな意味での公共性、そういうことが中心になってまいろうかと存じます。
  229. 春日一幸

    ○春日委員 近藤君は長い間銀行局の総務課長をされておったんですが、その間にこういう論議を十分耳にされておると思うが、かえって悪ずれしてしまったのか、質問に対してその答弁が誠意を欠いておると思う。もう少しまともなことを、具体的なことを答弁してもらわなければいかぬ。たとえば堀君の質問に答えて、まるで金融の施政方針、大蔵大臣か総理大臣の述べるような施政方針演説をやっておった。私は苦々しくこれを聞いておった。われわれが局長に質問をすることは、そのような高邁な識見を貴殿などのごとき者に質問するはずはないんだ。どういうことをやってきた、実態はどうで、これに対してどういう改善措置をとってきた、こういうことを尋ねておるのであって(「そうだよ、そのとおり」と呼ぶ者あり)そうだろう。ほんとうにもう少しやらないと、そのような事実に基づいた答弁をしないと、何だか知らぬけれどもあなたが大蔵大臣のような錯覚におちいらざるを得ない。もう一ぺん答弁し直してください。  というのは、参考に申し述べるが、かつてわれわれ大蔵委員会はこの問題を重視いたしまして、アメリカの金融、それからイギリス、特にロンドンの銀行協会等へ行っていろいろ調査をしてまいりました。そのときロンドンの銀行協会で言いましたことは、ロンドンはあのような伝統を尊重する慣習法の国である。だから憲法だって成文がないほどである。だからそのような集中融資、偏向融資、情実融資の法的規制はないといえども、しかし金融の公共性の立場から判断をするならば、銀行家が一ところに情実的に集中的に偏向的に貸し出しをすれば資金量の絶対量がそれだけ減ってくる。さすれば借りたい他の人に融資することができない。一人が得して大ぜいの者が不便を来たす。ゆえに、そのような銀行家があらば、支店長がやればそれは首にする。重役がやればそれは免職にする。そうしてそのような常識並びに公共性の立場からセルフコントロールがきびしく行なわれて、そのような情実融資、偏向融資はほとんど行なわれていないという。アメリカの連邦準備法は——まああなた方はわが国金融行政の御本尊だから十分調査されておると思うが、連邦準備法においては、金融機関自己資本の一割をこえて同一企業に対して集中融資を行なってはならないと規制があると思う。  いまあなたは、自由経済において政府があれこれやらない、やることを慎んでおると言っておるけれども、アメリカも自由経済である、イギリスも同然である。そのような国においても、すなわち公共の福祉の名においてそのような調整や計画性がとられておる、この実態にかんがみて、日本において、すなわち財閥系の金融機関が財閥系の企業に対してその資金を優先的に集中的に融資しており、人事の交流すら行なっておるというこの実態、許すべきではないのである。改善、改革をせなければならぬのである。だからわれわれはこのことを強く強調してきたんですよ。歴代の局長がかわってきて、特にあなたはこのような論議をしばしば御承知に相なっておると思うが、その後どういう改善が具体的になされたかということを知りたい。御答弁……。
  230. 近藤道生

    近藤政府委員 情実的な融資が行なわれました場合に一番具体的にあらわれますのは、それが貸し倒れということになって具体的にはあらわれてまいるというケースが多かろうと存じます。
  231. 春日一幸

    ○春日委員 貸し倒れにならないでも情実になる。貸し倒れになるだけが情実じゃない。私の質問を十分お聞きになっていないようだが、私は某銀行の責任者、トップレベルの銀行の責任者に聞きますと、われわれは二兆何千億の資金量を持っておるが、そこの中の九割まではもうほとんど貸し付けて固定しちゃっておるのだ、流動性を持つ資金量は上積み一割くらいのものでしかないのだ、こういうことを問わず語りで語られたことも耳にしたことがある。すなわちそのことは全くの情実融資であり、偏向融資であり、集中融資以外の何ものでもないのであるが、われわれは銀行あるいは預金というものの秘匿性からその実態をつまびらかにすることができないことは残念である。けれども、忘れもしませんが昭和の三十一年に公取で、われわれが資料要求して、不用意でありましたけれども、その時点においてこれこれの銀行はこれこれの企業に何百億というふうに、貸し付け残高のリストを提出したことがある。その後しばしば要求したけれども金融というものの秘匿性、秘密性等からその資料を得ることはできなくなって本日に至っておりますが、われわれは政策論議を行なうにあたって、たとえば金利の硬直性というものを是正、打開していくことのためには、五十何兆円の貸し出し残があっても流動性のある資金というものがほんの限られたものであるという実態を把握することなくして金利政策を論じても、これは問題の核心をうがつことには相ならぬと思う。だからこの点について実態はどうなのか、差しつかえのない限りひとつ所管責任者としてわれわれにその実態をお知らせを願いたい。
  232. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま問題点としてお示しになりました点につきましては、私、やや私見にわたるかと存じますが、数年前と比べまして、各都市銀行の貸し出しの内容というのはかなり変化をしてまいりまして、いわゆる財閥系企業の都市銀行に対する力関係というようなものも、一ころに比べますとむしろ企業側のウエートがかなり強いという形も随所に出てまいっておると思います。しかし、先ほど来お示しになっておられますように、それぞれの系列融資というものが将来日本経済に対してどういう影響を持つか、その辺につきましては、まだ着任早々でもございますので、もう少し研究の時間を与えていただきまして勉強をいたしたいと存じております。
  233. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、私がいま質問をいたしておりますのは、金利の硬直性というものを是正するためには、金融そのものの流動性——動脈硬化におちいっている現状は、ある銀行責任者が私に問わず語りに述べられたように、わが銀行が二兆数千億の資金量を持っておるといえども、ほとんどが固定してしまっておる。固定しておるということは焦げついておるということではないんですね。優先的にそこへ融資せなければならない、経続的に資金を供給しておく体制にしておかなければならないという状態が、その金融機関の持つ総資金量の八割ないし八割五分、多いときには九割を占める。流動性が一割しかない。そういうような実態の中に立って、さて金利を上げる下げるというたところで、これは皆目だめなのである。だから、いまの臨時金利調整法というようなものも金利の硬直性、阻害要因の一つではあるけれども、同時に、金融機関の偏向融資、集中融資というものも大きな阻害要因であるということをわれわれは注視刮目せなければならぬ。  それから第三には、何といってもいまそのような企業が、特に大企業産業資金調達の手段を安易な金融に依存をいたしておる。そうして、みずから直接資金調達の方法をとろうとはいたしていない。とろうとしても、公社債市場というものが十分に整備されてないから、彼らに言わしむればとりょうもないのだという、こういう実態もそこにあると思う。したがって、この際やはり、そのようなオーバーローンの解消あるいは偏向融資の是正、そういうものとともに、公社債市場というものを同時並行的に整備するにあらざれば、金融のアンバランスの是正、あるいは金利の硬直性とか産業のひずみとかいうものを是正することは非常に困難だと思う。  いま、貸し出し総残高は幾らですか。ちょっとお伺いします。
  234. 近藤道生

    近藤政府委員 全国銀行で三十兆七千……
  235. 春日一幸

    ○春日委員 いや、全部の金融機関貸し出し総残高、最も新しいやつで。——そのくらいのことは覚えておってくれよ。
  236. 近藤道生

    近藤政府委員 たいへんおそくなりまして失札いたしましたが、全金融機関で五十兆八千七百十二億という数字に相なっております。
  237. 春日一幸

    ○春日委員 正確にはおわかりにならぬと思うけれども、おそらくその半額以上あるいは五五%程度のものが中小企業以外のもの、すなわち大企業がその金を使っておると思うのです。そこで、他の統計によりますると、わが国経済は、雇用において、生産において、流通において、貿易において、相当のシェアを中小企業が占めておると思う。経済学者たちはさまざまなデータによって総合的な計数を立てておるが、かりに最低五五%の経済寄与率が中小企業にありとすれば、それだけ働くものが四五%の金融を受けて、四五%の働きをするものが五五%の金融を受けるというのが大体日本金融の実態であると論評されております。この傾向を是正していくのでなければ中小企業の安定と振興ははかれない。すなわち、商売は元手次第というが、中小企業金融梗塞というものはもう伝統的に、戦後ずっと論じられてきておるのですね。だから、これを是正するためには資金の絶対量というものを確保せなければならぬが、そのような産業資金の絶対量をどのように確保するかということになれば、やはり大企業金融に依存するというのではなくして、増資をするあるいは社債を発行する、そうして直接に資金調達、調弁の方途が講じ得るような体制を確保するのでなければ、われわれが部分的に、断片的に論じたところで総合的な成果をおさめることはできないと思う。だから、公社債市場の整備も急いでやらなければならぬと思うが、これまた本委員会において伝統的に強調されておる問題点なんですけれども、岩尾さん、この問題はどうなっておるのか。
  238. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 公社債市場育成の問題でございますが、先ほど来議論のありました金利についてのいろいろな弾力化の問題、そういう問題がいま起きておりますし、金融機関について競争原理を導入していこうということをやっておるわけですが、これはやはりいま申しましたような、総体としての日本産業資金あるいは資金需給というものを適正な姿に持っていくための一つの手がかりとして、金融機関についてそういう手を打っておるわけです。そこで、最近三月から事業債について条件の改定を行ないました。発行価格と流通価格が非常に乖離しでおりました社債市場における条件を改定することによって、公社債市場をもう少し適正な姿にしようということを考えておるわけでございます。なお、これは社債だけでございますから、国債あるいは政保債等についてもいろいろと考えながら、公社債市場というものを適正な規模に持っていくように努力を続けたいというふうに考えております。
  239. 春日一幸

    ○春日委員 この直接資金調達方式については、われわれは本委員会で十数年論じてまいりました。たとえば投信分離の問題、免許制あるいは第二市場創設の問題、その他幾多の改善、改革策をここで提唱しながら、漸を追って政府がそれを実現してきた、こういうコースが現実でございます。ところが、その公社債市場育成の理論は、それと並行的に同じようなアクセントでわれわれ論じてきた、取り扱ってきたのだけれども、証券市場の整備、問題点の解決のそれに比べますると、はなはだしくおくれを来たしておると思うが、これは一体どういうことでございますか。
  240. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 御指摘の点、まことに証券会社に対する政策に比べまして公社債市場、なかんずく事業債市場の育成、正常化はなおはるかに道が遠いという現段階にあるわけでございます。この理由、経緯をお尋ねでございますが、これはいろいろと沿革してまいるところが大きいのじゃないかというふうに感じておるわけでございます。  終戦後、資本蓄積が比較的少ない段階経済の急速な復興ないしは成長再建をしなければならなかった。かたがた資源の点におきましても比較的ゆとりがあったというようなことをもちまして、先ほど来お話しのようなオーバーローンとかオーバーボローイングとか、そういう形態を通じながら、つまり日銀の信用創造と通じながら、卸売り物価の比較的安定裏のうちに昭和三十年代の経済成長を遂げまして、その基調といたしましては、人為的とは思いますけれども、低金利政策ということがその柱になっておりましたし、それをまた支持できた基盤もあったかと思います。  そのことが四十年代になりましてやや完全成長、完全雇用の時代となり、あるいは高度行き過ぎの成長を押えなければならぬといったような今日になりましても、なお社債の発行企業体、つまりその事業会社側にとりましてはやはり低金利を望むといったような風潮もございますし、かたがた一般の社債を購入するような資金的な蓄積、資金というものも、個人その他機関投資家の段階で総体的に不足しているというようなこともございまして、どちらかと申しますと社債市場は需給からする適正なレート、価格を中心に発行条件その他が考えられていくというよりも、発行者側のコスト意識といったようなもの、これが先ほど来お述べの金融機関の貸し出しビヘービアというものとも関連いたしまして、それにやや引きずられるような形で発行条件なりレートというものが、今日の時代におきましても相対的に低いと思われます水準に固定されがちであり、そのことが一般の投資家なり機関投資家の投資物件として魅力を相対的に減少しているというような一種の悪循環がございまして、さようなことの累積が今日の公社債市場の中途はんぱ性と申しましょうか、正常な姿からはなお比較的遠いという段階に立ち至ってきておるのじゃないか、かように考えます。  したがって、これからはさような認識の是正、今後の金融環境なり市場金融金融資産のあり方、こういったものの認識を広めていくというような過程を通じまして、私どものほうといたしましてはあるべき公社債市場の正常化ということのために極力努力してまいりたいと思っております。ただ、何ぶんにも発行条件の改定ないしは決定ということは、政府が法令その他の行政的な権能をもってきめるべきものではないのでありまして、あくまでも環境整備なり行政上の指導とでも申しますか、かようなことにかかっているわけでございますが、私どもは、今回の条件改定にもそうでございましたが、今後ともますますそういうふうな認識を一般に広めていくというような行政上の指導と申しますか、行動を通じまして、あるべき姿に実現されるように努力してまいりたい、かように考えております。
  241. 春日一幸

    ○春日委員 何かわかったようなわからぬような、言いたいことを言われたような気がしちゃって、どうも二の句の継げぬようなありさまだが……。ただ志場さんによく御理解を願いたいことは、私が金利の硬直性、これを是正していくためには究極的には長短両資金の相互転換の道を開いていく必要が、これが不可欠の要件であるというこの一点ですね。たとえばその公社債を買った。長期資金として公社債を買ったけれども、金利の関係で、ではこれを売ろうというようなことになって、それを現金にかえて、そうしてすぐそれを預金に回していくとか、結局そういうふうに長期と短期の資金というものが容易に交流し得るような道を確保するためには、現在の金融という制度は非常に融通無碍にできておるから、そこまでいかないにしても、公社債市場というものが整備されて、そうしてその公社債の流通価格は短期金利の水準に影響されて、そうしてこれが長期金利としての発行価格に反映されて、そうしてこの発行価格が定められることになれば長期資金と短期資金との交流が円滑に行なわれるようになるのではないか。そうすれば、公社債に長期投資をした者も、急に資金が必要になった場合には、それを売却して、そうして現金を取得する道が開けてくる、そういうことが容易に何人もなし得るようにしていくためには、現在の公社債の市場というものはその機能を持っていない。そういう体制を持っていない。だから、金融の正常化あるいは金利政策ばかりではなく、わが国経済のひずみを直すためにはとにもかくにも、かねて論じられておるように、公社債市場の整備強化といいますか、いずれにしてもその体制を整えることがもうまさに緊急焦眉の必要な事柄であると思うが、非常におくれておる証券市場のそれを見ると、非常におくれておるが、何か大きな欠陥があるのかということを伺っておるのですが……。
  242. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 短期金融市場における金利情勢と債券市場のような長期金融市場における金利との連動性の点の御指摘だろうと思いますけれども、私どもが考えまするのに、やはり短期的な金利の変動というものは、いろいろと景気変動等の関係で比較的たびたび起こり得るであろうというふうに思うわけであります。それがにわかに長期金利に連動的に影響を及ぼして発行条件の改定までいくべきかどうかにつきましては、いろいろ問題はあろうかと思います。それよりも現在の社債市場が非常に非正常であるということの中には、実は短期的な金融情勢の変動というものが債券市場の債券の価格、したがって利率でありますが、利回りにあまりにもそのまま響き過ぎるという点がむしろ指摘されておる面でございます。これは発行されます形としましては、公募されます社債でありながら、実はその消化先の大半が金融機関である。つまり一般の大衆ないしは機関投資家らしい機関投資家にはまり込んでいる部面が非常に少ない。したがいまして、金融機関が短期的な資金の運用という形において、流動性の保持の点から社債を購入するというような面にあまりにも多く依存し過ぎておるのではあるまいか。したがいまして、短期の金融市場が詰まりました場合に、流動性の回復等からしてまず債券を手放してくる、これが価格を引き下げる、つまり利回りを上げるというようなことになりまして、しからばその際に、すぐそれに連動しまして発行条件その他の長期金利体系を調整し連動さしていくべきかということにつきましては、大きな問題がなおあろうかと思います。したがいまして、これは迂遠なようでございまするけれども、やはり本筋は、一般の投資家ないしは機関投資家というものに、長期投資、長期貯蓄というような観点での消化というものを推進していく。しかし、そのためにはやはり長期貯蓄手段として、長期投資家手段としての利回り採算ということが問題でございまするので、その長期的な金融の情勢というものが、総体的には現在の実勢であらわれておりまするように九%までとは申しませんが、かなりの金利水準にならなければ投資物件としては考えられないということでありますならば、機会あるたびに、実勢に合わせまして、発行条件をそういった長期貯蓄の対象としてふさわしいものに持っていく。そのことと相まちまして、個人投資家なり機関投資家の消化の割合を多くしていくということが本筋ではなかろうか、かように考えておるのでございます。
  243. 春日一幸

    ○春日委員 私の考え方が間違っておるかもしれませんけれども、機関投資家、たとえば金融機関が国債や公社債を主として引き受けていく、志場さんの御意見だと、そういうところへ重点的に消化目標を置くと言われるのだが、そうすれば金融機関資金をそれだけ食ってしまいますね。借り入れとどこが違いますか。
  244. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 ですから、私はさような現在が好ましくないと申し上げておるのでございまして、私が機関投資家と申しますのは、市中のいわゆる商業銀行、都市銀行なり地方銀行なりをさしておるのではございません。長期資金を集めておりますところの、たとえば生命保険でございますとか、年金、基金でございますとか、そういう長期資金を集める機関投資家に本来は消化してもらいたい。それが現在は商業銀行とは申しませんが、いわゆる市中銀行にあまりにも多く消化先を依存し過ぎている。これがいろいろな面におきまして、公社債市場の正常な環境というものをもたらすのに、現状では無理な面もございましたけれども、障害となり得る、かようなことを申し上げたのでございます。
  245. 春日一幸

    ○春日委員 機関投資家として損保や生保等がそういう公社債の消化当事者になるということは大いに考えられてもよろしいのですが、われわれとして考えるのは、やはりこれが大衆に開放されて、国民大衆が、五十兆円になんなんとするところの預金残高があるとすれば、そういうものを駆使することによって、ある者は金融を選ぶ、ある者は公社債を選ぶ、そうして売り買いができていくという体制をつくることが望ましい。いつまでも、市中金融機関だとか、市中金融機関補完機関として損保、生保等の資金プールを公社債の消化グラウンドに見るというこのあり方は、間違っておるということを言っておるのですが、どうなんですか。
  246. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 その点は全く同様に考えます。
  247. 春日一幸

    ○春日委員 同様ならば、そういう方向に向かって大衆参加ができるような公社債市場を整備しなければならぬが、なぜやっておらぬのだ。十何年間も強調されて懸案になっておるのに、一方においてはピープルズキャピタリズムになってきているのだが、片っ方の、そういう証券はできたが公社債ができておらぬのは、片肺飛行みたいなものだ。片肺飛行の結果、エンジンがとまりそうになっているんだ。こういうことを言っているのですよ。いかぬならいかぬ、これならば平気だとか、その辺を言ってくださいよ。
  248. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 最初に申し上げたつもりであったわけでございますが、これはやはり発行企業体、公社債を発行する事業会社の態度、つまり三十年代の低金利政策というものに対する、企業の側から申せばコストが安いほどいいということもございまして、社債市場における発行条件というものが、発行する事業会社の考え方、低コスト意識というものにウエートを置いてきめられがちであった、そういう環境がありました。したがいまして、しかし、それでは正常化というものはなかなか進捗いたしませんので、今後の金融環境、金融情勢を、国民経済的見地から、あるいは世界的見地から見ました場合に、そういう考え方を、事業会社のほうにも認識を改めていただきまして、そういうものは行政指導いたしまして、そうして、あるべき正常な発行条件というものを発行会社のほうも進んで了承される、決定していかれる、そういうことにいってもらいたい。そのための——どもは法制上の権限はございませんけれども、行政指導その他を通じまして理解を求めるように努力してまいりたい、かようなふうに先ほど答弁したわけであります。
  249. 春日一幸

    ○春日委員 これは、現実の問題としてもういままで論じて、なおかつ懸案になっておることにもかんがみまして、ちっとやそっとの行政指導じゃできるものじゃないんですね。大蔵省が本腰を入れて、たとえば証券市場の再建整備のためには、森永君が乗り込んでいって、おれの言うことを何でも聞くかというぐらいのことを言うて、ギャラを取りつけて、そうしていろいろ問題点の解消をはかってきたことにかんがみて、同じような公社債市場の整備の問題も、そのくらいのボリュームのある取り組み方をするにあらざれば、いつまでたっても百年河清を待つにひとしい問題であると指摘いたしておる。この問題について中川政務次官、あなたの所感はいかがでありますか。
  250. 中川一郎

    ○中川政府委員 先ほど来春日委員お話を聞いておりまして、まことにごもっともな意見であると思います。そこで、この点政府も考えておるようでありまして、今回、公社債の一部について、事業債について金利の引き上げの改定を行なったというような点も、そういったことを配慮したからではないかと存じますし、今後とも最善の努力を尽くしたいと思います。
  251. 春日一幸

    ○春日委員 これは重要な問題でございますから、ぜひともひとつ御検討の上強力なる御推進をはかられたいと思います。  そこで、質問を進めますが、政府は最近長期金利の引き上げを認めた。これに伴う国債金利や預金の金利の引き上げはどういう方針であるか。本日の日経新聞でありますか、その記事によりますると、五月には郵便貯金の利子も引き上げるような方向にあるといわれておる。それから、五月から国債、政府保証債の利回りの引き上げを行なおうといたしておる、こういう報道がございますが、この間の方針についてお示しを願いたいと思います。
  252. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 郵便貯金等につきましては、別途銀行局長から御答弁がありますが、国債、政保債につきましては、けさ新聞に載っておりましたようなことは少しもございません。大蔵省では、先般大蔵大臣からここで御発言があったかと思いますが、事業債の金利の改定によりまして、現在の公社債市場が、先ほど先生のおっしゃったように、いい方向に向かっていくのかどうかということを見きわめた上で改定を行ないたいという考えでございますので、当分情勢の推移を見ていこう、こういう考えでございます。
  253. 春日一幸

    ○春日委員 それでは五月分から国債、政府保証債の利回りの引き上げを行なうという新聞報道は誤報か。
  254. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 新聞がかってに書いたことです。
  255. 春日一幸

    ○春日委員 わかりました。  郵便貯金の金利はどうなるか。
  256. 近藤道生

    近藤政府委員 郵便貯金並びに預金金利につきましてのお尋ねでございますが、預金金利につきましては、去る十九日に大蔵大臣から日本銀行政策委員会に変更発議がなされまして、それに基づきまして近々政策委員会が金利調整審議会に付議いたしまして、金利調整審議会の答申を待ちまして預金等の引き上げを行なうということに相なると存じます。  郵便貯金につきましては、目下関係事務当局間で検討中でございます。
  257. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、いわゆる長期金利、これは今度一年ものも、六カ月ものも、三月ものも、全部五分五厘になった。けれども、再度諮問を発したということは、これをもう一ぺん直せというのでございますか。
  258. 近藤道生

    近藤政府委員 そのとおりでございます。ただ、一年ものも六カ月ものもという前段の点は、三月三日のときに、同時に日本銀行がガイドラインが出ておりますので、全部五・五%になったわけではございませんで、六カ月もの三カ月ものにつきましては、ガイドラインによりまして従前どおりということになります。  それから、今度の発議は、その全体につきまして変更をさらに考えるということに相なります。
  259. 春日一幸

    ○春日委員 新聞報道によりますと、いままで六カ月もの、三カ月もの、一年ものは、三段階で分かれておったのを、今度の答申は、五分五厘一本の答申、それによって施行する、こういうふうに報道されておるが、違うのですか。
  260. 近藤道生

    近藤政府委員 告示に関しまする限りそのとおりでございます。ただ、ガイドラインによりまして、それを六カ月もの、三カ月ものにつきましては、従前どおりという形にいたしております。
  261. 春日一幸

    ○春日委員 大蔵大臣が諮問を発し、答申によって大蔵大臣が告示したものを、日本銀行がガイドラインと称するものによって制約することができる法的根拠は何ですか。
  262. 近藤道生

    近藤政府委員 ガイドラインには法的根拠はございません。自主的に定めております。
  263. 春日一幸

    ○春日委員 日本銀行がみずからのことについて自主的に定めることはよろしゅうございますが、日本銀行にあらざる他の金融機関が、大蔵大臣が告示をしたところの金利を支払うことについて、日本銀行がそれを制約することができるとすれば、これは何らかの法的根拠がなければそのようなことは許されるべき筋合いのものではないと思うが、その関係はどうなるのですか。
  264. 近藤道生

    近藤政府委員 日本銀行が、政策委員会の権能といたしまして、通貨信用の調節につきましての、たとえばガイドラインを発するというような権能を持つわけでございます。
  265. 春日一幸

    ○春日委員 そうすると、大蔵大臣は、実行しないところの金利を告示するのでございますか。
  266. 近藤道生

    近藤政府委員 告示は大ワクを示すにとどまりまして、ガイドラインで細目を定めるというたてまえになっております。
  267. 春日一幸

    ○春日委員 日銀政策委員会がそのような金利について制約をすることのできる法条、これをちょっとお示しを願いたい。
  268. 近藤道生

    近藤政府委員 日本銀行法の十三条の二でございます。
  269. 春日一幸

    ○春日委員 読んでください。
  270. 近藤道生

    近藤政府委員 「日本銀行二政策委員会ヲ置ク政策委員会ハ第十三条ノ三第一号二規定スル日本銀行ノ業務運営、中央銀行トシテノ日本銀行ノ機能及他ノ金融機関トノ契約関係二関スル基本的ナル通貨信用ノ調節其ノ他ノ金融政策国民経済ノ要請二適合スル如ク作成シ指示シ又ハ監督スルコトヲ任務トス」、以上です。
  271. 春日一幸

    ○春日委員 私は、その文言が、はたしていま言われたようなガイドラインの内容を持つものかどうか疑義があると思いますが、いままで、前例、行政例はどうなっていますか。いままで、そういうような告示がされてもガイドラインでそれを制約したような前例があるかどうか。
  272. 近藤道生

    近藤政府委員 ガイドラインは特に強制力を持つものではございませんで、この問題につきましては、本来公正取引委員会との協議によりまして、たとえば、預金金利というようなものにつきまして最高限度を設けるということが、国民の利益から見ましていささか問題になる点があるかもしれないというような観点から、ガイドラインという、特に日本銀行が政策委員会のただいま申し述べました規定に基づきまして−i強制力はございませんが、その間に介入をするということによりまして、預金金利の天井を設けることについて違法性を阻却する手段として考えられたというふうに承っております。
  273. 春日一幸

    ○春日委員 すべての経済法は自由競争の原則を制約しておるのでございますね。だからこれは、公共の福祉の名において、そういう基本的人権であるとか基本的な原則というものが制約を見ておる。そのためにこそ立法というものがあるわけでございますね。だから、国権の最高の機関である国会がそれを法律で定め、あるいは政令に委託する、その範囲で行なわれることならば、独禁法違反も何もあったものではないと思う、それが成立しておる限りにおいては。法律が成立しておるにもかかわらず、何らのそのような委任事項も委託事項もないときに、日本銀行がガイドラインを自分かってにつくって、国会に関係なくして法律の機能を制約するというがごときことは、わが国会として承認することができない問題であると思う。この問題の関係をつまびらかにいたしますために、委員長において、次の機会でもけっこうですから、日銀総裁をここへ呼んでもらって、この関係を明らかにいたしたいと思います。よろしいですね。  それから、この五月の郵便貯金の金利の問題は、どなたからか、上げると報道されておりますが、どうなるのか御答弁を願いたい。
  274. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 郵便貯金の金利は、郵便貯金法によりまして、市中の金融機関の金利等も勘案してきめるというふうになっております。そこで、もし先ほど銀行局長お話しになりましたようなことで預金金利が上がっていくということになりますと、郵便貯金のほうも上げざるを得ないということになるかと思います。そこで、郵政省のほうでは、そういった情勢を勘案いたしまして、目下検討されておるというふうに聞いております。
  275. 春日一幸

    ○春日委員 この問題について伺いますが、郵便貯金の資金は、これは資金運用部資金に運用がまかされており、その運用については郵政省とある合議がなされる、こういうふうに了承しておりますが、そうすると、もし預金金利が上がれば、資金運用部資金資金コストは高くなるわけですね。いかがでございますか。
  276. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 そのとおりでございます。
  277. 春日一幸

    ○春日委員 そうすると、資金運用部資金の財投関係、商工中金だとか中小企業金融公庫、国民金融公庫の資金コストもおのずから上がるということで、これらの政府関係三公庫の貸し出し金利も引き上げられていくようなことになるのではないかと考えられますが、この点についての見通しはどうでありますか。
  278. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 資金運用部は郵便貯金の金を預託されまして、それを政府関係機関に貸し出すということをやっておるのでございますが、現在の郵便貯金の定額の利率は五分五厘でございます。それから、資金運用部のほうで貸し出します場合の利率は大体七年で六分五里ということになっております。したがって、この間に大体一分の開きがあるわけです。そこで、これはやってみなければわかりませんけれども、その一分の中で、ほんとうに赤字になってしまうというような上がり方をするのか、あるいはそう響かないという上がり方をするのか、そういう結果によって判断をしていくことになろうかと思います。
  279. 春日一幸

    ○春日委員 私は、この際、大蔵省の幹部諸君に申し上げておきたいと思いますけれども、先般この問題について、福田大蔵大臣と不肖との間に質疑応答が取りかわされました。そのとき、預金金利が引き上げられれば、当然の趨勢として郵便貯金金利も引き上げることにならざるを得ないだろう。さすれば、これを原資とする資金運用部資金資金コストが高くなってくるであろう。さすれば、これを資金源としておる政府関係三公庫の貸し出し金利についても、勢い押し上げられなければならないという物理的必然が考えられるんだが、これについて、なおかつ中小企業団体の中におけるこれら三公庫の金利を引き下げろ、こういう強い要求のあることにかんがみて、逆行するかのごとき三公庫の貸し出し金利は引き上げるべきではないと思うが、どうであるか、こういう質問を大蔵大臣にいたしましたが、そのとき大蔵大臣は、ここで厳然として、三公庫における貸し出し金利は絶対引き上げません、こう答弁をいたされておりましす。したがって、いま理財局長の楓川答弁では、はたして一分の中で澄化できるか、あるいは赤字になるかどうなるか、その時点であらためて合理的な判断をしたいと言われておるが、綸言汗のごとしということを御承知でしょうね。一たび口をついて出た大臣のことばは取り返しがつかない。一たび出た汗は、もはや皮膚の中には引つ込まないのである。わかりますね。
  280. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 中小三機関の金利がどうなるかという話は、二つの面から検討していただきたいと思います。第一は、先ほど先生の御指摘になりましたように、資金運用部自体のコストというものが悪くなるから、そこで中小三機関に貸す金を高くする、そうすれば中小金融機関が貸す金をまた高くしなくてはならぬのじゃないかという観点からの判断、それから、全般的に、先ほど申しましたように、市中の長期金利が上がってまいります。市中の金利がし上がっていくときに、中小三機関だけがそれよりも低い金利でいいのかというような判断、そういう両面で考えていかなくちゃならないと思います。  私が先ほどお話しをいたしましたのは、その片方の面についての御質問でございましたから、そういう面からいいますと、運用部自身がコスト割れになるかならないかというのは、預金金利の上がり方次第であるということを申し上げたのでございます。全体の中小金融について、大臣がこれは上げないとおっしゃったそうでございますが、私は実は聞いておりませんので、綸言は汗のごとしと思いますが、直接そういう御指示がございましたら、私どももそういうふうにいたしたいと思っております。
  281. 春日一幸

    ○春日委員 局長の言は水のごとく、そんなものは何も天下の大勢に影響はございません。また、われわれもさほど重視はいたしておらぬ。けれども、大臣が政策論議として、こういういま局長指摘されたような要因、大臣においてはその他の多くの要因を……。(「出た小便は帰らないよ」と呼ぶ者あり)あんなもの出たって出なくたって同じだ。水みたいなものは、かわいたらまたかぶればいい。あんなものは粗末なものだ。  そこで、——何の話だったかな。実際こういうふうにデリケートな政策論議をやっているときに、君たちも酔ったような茶々を入れるなよ。忘れちゃうよ。  そういうような二つの柱をいろいろと総合判断されて、さらに多くの関係する事項を総合判断されて、大臣が上げないと言われたら、どのような結果があろうとも上げるべきではない。私の言うたことがうそかほんとうか、私は問題が非常に重要であるということを考えて、特にあらためて念を押して質疑応答がなされておりますから、どうか速記録を十分ごらんをいただきたい。そのことを強く要望いたしておきます。  近藤局長に重ねてお伺いいたしますが、伺いますと、この間諮問を発して、そうして答申がなされ、一年ものも、六カ月ものも、三カ月ものも全部五分五厘になった。ところが、一年ものについてはハンディをつけるにあらざれば、みんな同じであれば一年定期をする者がばかを見るし、し手がなくなってしまう。かくては原資確保のために銀行もあるいは困難、障害を来たすかもしれないというので、一年ものには二厘五毛のハンディを付すべく、そのような意を含蓄せしめて諮問があらためてなされておると聞いております。われわれの常識から判断すれば、一年ものはいかに、六カ月ものはいかに、三カ月ものはいかにと、いままで断層があったのだから、断層を付して諮問してしかるべきであるのに、一括かくあるべしと諮問をし、あらためて一年ものについては二厘五毛の格差を付すべきものと思われるがいかにという第二ラウンドの諮問をことさらに行なわれたということについては、われわれの政治常識というよりも、社会常識から考えて何かぴんとこない。何でこんな二段階の手間を用いられるのであろうか、こういう疑義があるわけでございます。何か悪い魂胆が秘められておるのではないかと思うが、ことさらに二段の諮問を必要とした積極的理由は何か、御答弁願いたい。
  282. 近藤道生

    近藤政府委員 初めのほうにつきましては、あるいは先ほどの私の御説明が不十分で誤解があったかと存じますが、告示の大ワクにおきましては五・五%が天井ということで、六カ月もの、三カ月ものすべて同様でございますが、実際上は激変を避けるという意味で従来どおりとして、ただ年利建て移行に伴います技術的な小さな変更をするための処置でございます。  今回日本銀行政策委員会に対しまして大蔵大臣が変更発議をいたしましたものは、あらためて金利水準を全体として検討していただきたいという趣旨のものでございます。
  283. 春日一幸

    ○春日委員 それならばさらに伺っておきますが、一年ものは二厘五毛付加する、そうすると三月ものと六カ月ものとは同じになりますか。ガイドラインとかなんとかいう怪しげなものは別にいたしまして、それがないとすれば、告示の面においては同一の扱いになりますか。
  284. 近藤道生

    近藤政府委員 これは、これから金利調整審議会に諮問をされる事項でございますので、私どものほうから申し上げるのもいかがかと思いますが、おそらくは一年ものにつきましての変更ということで、いわば天井をきめる形で御答申があるものというふうにひそかに承っております。
  285. 春日一幸

    ○春日委員 端的に申しますと、今度諮問が発せられたのは一年ものについてでございましょう。そうすると、ガイドラインというものは念頭に置かないで、告示の面からだけ国民が判断をすれば、三月も半年も同じでしょう。今度諮問があらためて発せられないとすれば、三月ものと半年ものとには差異がなくなる。さすれば、一年ものかもしくは三カ月ものか、六カ月ものをやるばかはなくなると思うが、この点はどうですか。
  286. 近藤道生

    近藤政府委員 今度諮問の行なわれましたのは、金利体系全部につきまして、特に一年ものに限定をいたした諮問のしかたではございませんで、全体について諮問がなされております。ただ、いまおっしゃいましたように、おそらくは答申といたしましては、一年ものというところに重点を置いて答申が行なわれるであろうということになりますが、その場合に、またガイドラインによりまして、急激な変化が起こらないように、六カ月もの、三カ月ものについての一般的な基準を示すということを日本銀行としてはやられることになろうかと思います。
  287. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、だいぶ時間も参っておるようであります。なお多くの質問が残っておりますけれども、もう一点だけに集約をいたしまして承っておきたいと思うが、金利体系のアンバランスの是正という問題について、将来の理想像をここでお互いに意見交換をいたしておきたいと思うわけでございます。  そもそもコールレートは、その本来の性格からすれば、原則として公定歩合を上限とするものであるべきであろうと思うが、この点についていかがでございましょう。
  288. 近藤道生

    近藤政府委員 おっしゃるとおりであると考えております。
  289. 春日一幸

    ○春日委員 現在公定歩合をはるかに上回っておる現状を何と判断し、これを是正するためにいかなる措置をとらんといたしておるか。
  290. 近藤道生

    近藤政府委員 これは資金量の絶対的不足と申しますか、資金量全体の不足分のしわが、まさにコールレートというところに集中的に表現されておるというふうに考えておるのでございますが、ただ過去からの趨勢を見ますると、たとえば、過去におきましては、当時日歩だけで六銭近いコールレートでございましたが、現在は高い場合にも二銭何厘かといったような状況にだんだんと落ち着いてきております。また、結局この問題は、短期と長期との金利のアンバランスの問題ということになりますので、長期金利につきまして今回一連の改定の動きがございまして、これによって少しずつでもおっしゃるような金利体系のアンバランスを直してまいるという方向をとっておるわけでございます。
  291. 春日一幸

    ○春日委員 そこで、岩尾さんにも所見を伺っておきたいと思うんだが、金利体系のバランスをはかるためには、コールレートは公定歩合より低く、当然のことながら、貸し出し金利は預金金利よりも高く、そこで問題は、公社債の金利というものはその貸し出しと預金との中間ぐらいに設定されるということが、いわゆる金利体系のバランスのとれた状態であり、そのように行政指導なりあるいは政策の推進なりをはかるべきであると思うが、これについてどうお考えでございますか。
  292. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 公社債市場の育成の条件については、先ほど証券局長からるる御説明したようなことでございますが、いま御指摘になりましたような、社債その他の債券の条件というものをどこへ持っていったらいいかという問題は、これは単純に計算だけでいかない問題でございまして、非常に悪いことばですけれども、貸し出し性向といいますか、そういったものにやはり非常に問題があると私は思います。そこで、現在は、先ほど先生も御指摘になりましたように、非常に全般的に貸し出しをやりたい、何か人に貸したいという意向が全金融機関に強いわけです。むしろ債券を保有することによって長期の貯蓄をやろう、あるいは運用をやろう、利用しようという空気よりも、そういう貸し出し性向が非常に強い。そういう状況の中では、単に条件だけをある程度改定をいたしましても、いま言いましたような公社債市場と金融市場というものとがうまくつながっていくということが達成されないというふうに私は考えます。これは日本全体の貯蓄資金というものが全体として多いか少ないか、いわゆる個人金融資産というものが多いか少ないかという問題もありますし、いま言いましたような金融機関側のそういった貸し出し性向もありますし、それから、かつ発行機関側がそういった条件に耐え得るかということもございまして、そういったすべての問題がからんでくる話だと思います。
  293. 春日一幸

    ○春日委員 そこで、最後は、金利の景気調整機能についてお伺いをしておきたい。また現状も把握いたしたいと思うのでありますが、公定歩合というものの操作で、大体景気調整政策というものがそれを中核として推し進められてまいりました。ところが、いま実態はどうなっておるかということになりますと、金利引き締め政策あるいは高金利政策というような形になってくると、自由経済のもとでは、結局外資というもの、あるいは外貨というものが、何となくより多く流入してくる刺激要因にならないか。それからまた、内需よりも輸出を刺激する結果になってくる。そういうようなことで金融引き締め政策そのものが輸出増加になる。そうして外貨というものの累積傾向を強めていく。こういう形になって、これは、必ずしもねらわれておる引き締め政策の効果が、そのままずばりであらわれてこないのみならず、逆の現象をも生みつつあるのではないかと思われるが、この点は実態はどうなっておりますか。
  294. 奥村輝之

    ○奥村政府委員 確かに仰せのとおり、国内の金融の流動性いかんによりましては、外資の導入に対する需要は強くなるわけであります。したがって、私どもとしましては、こういう際には、特にインパクトローンとか外債の発行とかその他の形を通ずる外資需要に適切な制限を加え、過度の量にのぼらないように運営してまいってきておるのでございます。
  295. 春日一幸

    ○春日委員 いま御指摘のような累積傾向を刺激する要因になる面がある、だからそれにあらためて対策を立てなければならぬような現実である、こういうことでございますね。だといたしますると、いままでは自由経済でございませんでしたし、国際経済のかっぷくも違っておりましたし、わが国の外貨保有量も、あのような非常に危機ラインを上がり下がりをしておりましたが、いまや、間もなく四十億ドルになんなんとする状態である。そうして、金融引き締めをこれからやっていけば、いよいよこれは国内よりも輸出を刺激していくという形になってくれば、景気調整政策中核というものは、従来は安易な金融政策というものにもつばら依存するというきらいがなくもなかった。だから今後は、私は、金融政策よりもむしろ重点は財政政策に移行すべきものではないかと考えますが、この点について岩尾君の御所見はいかがですか。
  296. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 現在金融引き締めをやっておりますが、この引き締めはむしろ先生のおっしゃいました公定歩合等による操作ということよりも、ポジション指導による量的な規制が強いかと思うのです。しかし現状は、そういった量的規制のきく面というのは全資金量の三割ぐらいでございますから、金融引き締めはやっておりますけれども、ほんとうにその金融引き締めは及んでおるかということになりますと、多少問題なしとしない。われわれがいま政策目的として持っておりますのは、全体としての総需要というものを抑制していきたい、その手段として金融というものを考えておるわけでございますので、そういう意味では、今後におきましても金融現状引き締めは堅持していきたい。  なお、財政につきましては、おっしゃるように、これも大臣が申しますように、現在の経済の行き過ぎというものに対しては、財政全体が抑制ぎみに推移することが私はよろしいかと思います。むしろ財政を締めて金融はゆるめるということでなくて、金融も財政も締めるのがいまの大勢ではないか、かように思います。
  297. 春日一幸

    ○春日委員 非常に専門的なかつデリケートな議論になりましたから、いずれまた後日ゆったりした時間をいただいて、この点の機微をつまびらかにしたいと思うのですけれども、総需要を押えるといったところで、輸出需要が増大すればそれも総需要の中に加わっていくものである。金融引き締めが現実に輸出刺激要因になっておれば、すなわち総需要を押えるという政策のねらいに矛盾を来たしておるのではなかろうか。だから、そのことを新しく判断に入れ、それから外資の導入の刺激要因にもなっておる、そういうようなことを総合的に判断をすると、景気調整政策の柱は必ずしも金融だけでやっておられるとはいわない。金融、財政、税制と三本立てでおやりになっておる。これはよくわかる。わかるけれども、その最重点を金融に置かれがちであったことにかんがみて、現在はもうファンデーションが変わってきておるのだから、したがって、必ずしも金融だけに重点を置いたり、また、金利政策だけに重点を置いて判断をしないで、その重点を移しかえて、新しい国際経済のメカニズムに即応した体制をとるべきであるということを、ひとつ中川君から福田君によく言うて、万全を期してもらいたい。  いろいろ質問したいところもございますけれども、広瀬君からチェックがありましたから、残余の質問は後日に譲りまして、私の質問はこれで終わります。
  298. 毛利松平

    毛利委員長 関連質問を許します。広瀬秀吉君。
  299. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間もあれですから、一問だけ伺っておきたいんですが、今度の改正法で出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、これの第五条の金利がいままで日歩三十銭というのが一〇九・五%になる、この問題でございますが、ほかを全部見ましても、延滞金だとか制裁金だとか過怠金だとか、こういうようなものを全部当たってみましても、最高で一四・六%くらい。今回の法改正の中で一〇九・五%、こういう問題が一つ出てくる。これはもちろん特別な暴利に対する取り締まりということで、これ以上とったらこれは処罰に値するんだぞ、刑事罰に値するんだぞというその限界を示したわけでございますが、それ以内ならばいいんだ、そういうことを反面解釈としては示しているわけですね。この法律ができたのは二十九年当時でありますが、その後における日本経済発展、また社会生活の変遷というものも、この法律がつくられた当時とかなり様相も変わっている、さま変わりしていることは容易に想像されることだしするわけであります。こういう利率表示というようなところにこの一〇〇%を年利でこえるものが顔を出しているということは、国際化時代において何か日本の恥辱のような感じもするわけだし、こういう金利でなおかつ金融を求めるというようなことは、やはり国全体の金融政策なりあるいはその他万般の施策においてあってはならないことなんですね。年間で倍以上になるという、そういう金利の金融を求めるというような事態がまだ存在しているんだ、それでこういう取り締まり法もあるんだ、こういうことでは、何か恥辱のような感じもするわけです。全国貸し金業というような実態を見ましても、三十銭というような、こんなことではやっていないという実例もあるわけです。したがって、そういうことでありますから、この際思い切って、少なくとも日歩二十銭相当の七三%くらいのところまで一気に落としていっていい段階に来ているんではないかと思うのです。こういうことも、大蔵省としてもう当然考えていいことだと思うのです。単にいままでの三十銭を年利に直せばこうだということだけじゃなしに、そういう実態面について、特にこの点は飛び離れた問題だけに、やはり法をそのまま直していくという考え方を直していく、そういう段階に来ていると思います。これは私どもは当然そういうようにして差しつかえないところまで来ているんだ、これを残しておけば、そこまではいいんだということで、もういつまででも取り下げないのですね。やはり政府の考え方というものを法律によって示して、国民にそういう暴利というようなものはあってはならないんだ、不当な金利はかせいではならないんだというものを示す意味においても、この点の改善は非常に必要なことだと思うのです。これは銀行局長、それから次官も、ひとつこの点についての考えを聞かしておいていただきたい。
  300. 近藤道生

    近藤政府委員 実は、この点につきましては、第五条の高金利処罰の関係は法務省の所管になっておりますので、私どものほうから申し上げるのもいかがかと思いますが、ただ今回のこの年利建て移行法のたてまえといたしましては、いずれも、ただ単純に日歩を年利に改めるというたてまえですべてをやっておりますので、この点につきましても、ただいまいろいろお示しがございましたけれども、機械的に右から左に、日歩から年利に改めるということにいたしたわけでございます。
  301. 中川一郎

    ○中川政府委員 広瀬委員の御指摘、私どもも政治家として、こういう高金利がいまだに日本経済の中にあっていいのかという疑問は持つわけでございます。しかしながら、銀行局長がいま御答弁申し上げましたように、今回は単純に移行するだけのことでありまして、法務省との関係もあり、またあらためてひとつ検討し、引き下げの方向なりあるいは何らかの措置については、また別途検討さしていただくということで御了承いただきたいと存じます。
  302. 毛利松平

    毛利委員長 ただいま議題となっております各案中、利率等表示年利建て移行に関する法律案につきましては、これにて質疑は終了いたしました。     —————————————
  303. 毛利松平

    毛利委員長 これより討論に入るのでありますが、本案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  利率等表示年利建て移行に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  304. 毛利松平

    毛利委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  305. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  306. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、来たる三十一日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十九分散会