○堀委員 実はいま東南
アジアの人たちがどんなふうに感じているか。私自身まだ参ったことはないのでありますけれ
ども、われわれは東南
アジアの諸君と皮膚の色においても、その他人種的にもきわめて近い姿にあります。かつてこれらの諸国は白人支配の国であったわけでありますけれ
ども、やはり白に対する現地人の人たちの感じ方とわれわれに対する感じ方は非常に違うと思う。おそらくは東南
アジアの人たちは、われわれ
日本人に対しては非常に親近感というか、やはり
アジアの民族の
一つとしてそういう親しみを持ちたいというベースがあるだろうと私は思う。かつてわれわれがそれほど
経済的に優位でなかったときには、おそらく出かけておる人たちも、それほどに自分たちの
経済的背景を意識しなかったであろうと思うのでありますが、最近の
日本の目ざましい
経済発展というものによって、
海外に出ておる人たち、それは商社であれ、あるいは合弁会社で行っておる人であれ、その
日本人の人たちに、
日本人の自分たちのほうが優位に立っているのだという意識が相当強くあるのじゃないだろうか。同時に、その人たちに支払われておる報酬と現地の人たちが受け取る報酬との間にも大きな
格差が出てきておるだろうし、そのことがおそらく、白人であればそこまで反発がなかったであろうことが、かえって同じ
アジア人であるというために、そういういろいろな
格差に対する反発というものが相当強いのじゃないだろうかという感じが
一つはするわけであります。
そこで、この問題の
一つの側面として、もう少しわれわれが、
国内を含めて、いまの
日本の
経済の問題を基本的に
考えてみなければならぬ問題が
たくさんあるのじゃないだろうか。それは私は、いまの
日本経済の発展は、ある側面としてはけっこうでありますが、
日本の文化とか、あるいは
日本の自然であるとか、われわれ人間の生活という側面に対して、はたしていまの
日本の
経済発展というものがプラスかマイナスかという点を見ますと、私はどうも最近はマイナスのほうが非常に多くなっておるという判断であります。
これは、大臣もこの間万博へお出かけでありましたから、新幹線で京都の駅に入られるとすぐ目につくと思うのでありますけれ
ども、かつて京都の駅から見えたのは本願寺やその他のお寺の屋根であり、静かな京都の町並みであったわけですけれ
ども、今日京都へ入りますと、非常に問題になりました例の駅前のホテルか何かの上に立っておるあのへんちきりんな塔、あれがまず一番
最初に目に入るのですね。ということは、最近の奈良だとか京都だとかいう、せっかくわれわれが過去の伝統の中から持ってきておるそういうよきものに対して、
経済的な利益があるならばそんなことはどうでもいいのだということで、奈良の近くにドリームランドとかいうものをつくってみたり、せっかくわれわれが先祖から持ってきた
日本の文化の非常にいいものを、
経済の前には無力なものなのだといういまの
日本人の
経済的な発想、これは私は
国内的にも非常に問題があると思うんです。同時に、それは自然に対してもたいへんな問題を提起しておる、私はこう感じているのですが、こういうように
国内においてすら利益優先といいますか利潤優先で、すべて力で
経済がどんどん進んでいく姿は、おそらく東南
アジア諸国においてもそんなに差がないのじゃないだろうか。それは、具体的な現象を見ておるわけではありませんけれ
ども、
国内でこれだけのことをやっておる
日本経済というものは、おそらく国外ではもっとひどいのではないだろうかという感じがしてしかたがないわけですね。
そうすると、いま
日本が
経済大国になったことは、ある側面としては確かにいい点が
たくさんにありますけれ
ども、それは
国内に対しても、国外に対しても、
経済大国になったがゆえのロスが非常に大きくあらわれてきておるんじゃないか。ですから、そのことはどこでコントロールするかといえば、それはやはり政治以外にこれをコントロールする力はないのではないか。特に
国内の問題は、われわれを含めて、政治家の
責任でありますけれ
ども、国外の問題となると、われわれも見たり聞いたりすることが十分でありません。これはどうしても、特に
外務省がそういう
経済的な進出その他について、現地の国民の立場に立って適当な助言指導を行なうことなくしては、この問題をコントロールする道はないんじゃないか、私はこう
考えるわけでありますが、大臣は、いまの私の問題提起ですね、
経済発展という問題と、文化なり自然なり、われわれ人間の生活という問題とのかかわりにおいてお
考えいただかなければならぬ問題が非常に
たくさんあるんじゃないか、こう思いますので、それについて承りたいと思います。