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1970-03-18 第63回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月十八日(水曜日)     正午開議  出席委員    委員長 毛利 松平君    理事 上村千一郎君 理事 金子 一平君    理事 藤井 勝志君 理事 山下 元利君    理事 広瀬 秀吉君       奧田 敬和君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    木村武千代君       佐伯 宗義君    坂元 親男君       田村  元君    高橋清一郎君       中村 寅太君    丹羽 久章君       原田  憲君    坊  秀男君       松本 十郎君    森  美秀君       吉田 重延君    阿部 助哉君       平林  剛君    堀  昌雄君       美濃 政市君    貝沼 次郎君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵省主計局次         長       竹内 道雄君         大蔵省主税局長 細見  卓君         大蔵省関税局長 上林 英男君         大蔵省理財局長 岩尾  一君         大蔵省証券局長 志場喜徳郎君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      奥村 輝之君         国税庁長官   吉國 二郎君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 三月十七日  現物給与中食事に関する免税点引上げに関する  請願(丹羽喬四郎君紹介)(第一四四七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十五年度の税制改正に関する暫定措置法  案(内閣提出第一二号)  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長 これより会議を開きます。  昭和四十五年度の税制改正に関する暫定措置法案議題といたします。  本法案は、去る十日質疑を終了いたしております。  これより討論に入ります。  討論通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十五年度の税制改正に関する暫定措置法案に対し、反対討論を行なうものであります。  この法律案は、四十五年度の各税法改正案国会上程が遅延したため、一つには所得税減税効果を四月から及ぼしたいこと、及び本年三月三十一日にその適用期限の到来する租税特別措置法物品税法の一部を改正する法律関税暫定措置法に定める課税特例について、その適用期限を暫定的に延長する措置を講じようとするものでありまして、政府みずからのあまりにも安易左法案提出権乱用といっても過言ではないと思うのであります。  本法案第一条は、その趣旨として、昭和四十五年度の税制改正に備えるため云々といっておるのでありますが、右四法それぞれについても、二月下旬には国会にこれを提出してその審議に付すべきでありまして、しかも所得税法物品税法の一部を改正する法律租税特別措置法関税暫定措置法などはいずれもきわめて重要な内容を持っておることは、委員各位のひとしく承知せられるところであります。  特に、本年三月三十一日に期限の到来する各法の特例措置は、それが特例であり、時限立法であっただけに、政策効果などについて、経済社会情勢変化に対応して、税法における公平の原則をおかしてまで存続の価値があるかどうかきびしく見直しを行ない、慎重な検討を必要とすることは言うをまたないところであります。にもかかわらず、政府が一方的にかつ無原則的に圧力団体の強圧に屈し、四十五年度においてもこれらを安易に存続させる立場法改正を準備し、本法提案を故意におくらせ、暫定措置法形式で、たとえ一カ月間の延期であっても、このことによってすでに動かぬ既成事実をつくり上げようとする意図に対しては、断じて容認できないのであります。  かくのごとき態度は、国会の特に重要なる税法審議権を軽視する大蔵官僚政府国会軽視、行政権優位の思想を示すものであり、議会制民主主義の正しい発展をそこなうものであるといわなければ在りません。  本来、国民基本的権利義務に至大なる影響を持つ税法は、かかる安易な国会軽視立場で、暫定措置法などでお茶を濁すべきではなく、それぞれ本法提案し、審議を尽くすべきものであります。今国会提出が遅延したことは政府の責任であります。しかも、今回の場合においても、法案提出順序などを慎重に考えれば、本法について審議は十分行なえるはずであって、これこそが税法審議のたてまえ、本筋であります。かりにどうしても審議が遅延し、期限切れの混乱が予想される見通しが確実になった段階においてのみ、かかる暫定措置法提出は是認せられるのであります。  今回のごとく、国会開会早々にまず暫定措置法形式提案をし、その内容においては各本法改正を予定したものをそのまま通過成立をさせるということは、何といっても国会審議権を拘束するとのそしりは免れないのであります。このことは、行政府、立法府の権限についての基本問題にかかわる重要左問題点でありまして、暫定措置法提出乱用はまさに議会制民主政治に対する重大なる挑戦でもあります。  政府はこのことに思いをいたし、きびしく自戒し、今後はこのようなことを繰り返さないよう厳に反省を求め、反対討論を終わります。(拍手)
  4. 毛利松平

  5. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十五年度の税制改正に関する暫定措置法案に対して、反対討論を行なうものであります。  第一に、この法律案は、四十五年度税制改正による所得税負担軽減を、四十五年四月一日から同月三十日までの間に支払われる給与所得及び退職所得に及ぼそうということ、また、四十五年三月三十一日に期限の到来する租税特別措置につき、その適用期限を同年四月三十日まで延長しようとする内容のものでありますが、これはあとで審議することとなっている所得税法等国会審議を拘束するきらいがあるということは明らかであります。  さらに、従来は、このような措置を講ずる場合、所得税関係とその他のものとを分けて、少なくとも二本の法律案にして国会提出してきたものを、今回は一本にまとめて提出してきていることで、慎重審議をはかるべきであるはずのこの法案をおざなりにしている感を深くするものであります。これは、ともに政府国会を軽視していると見られるものであり、まず、その政府の姿勢の誤りを指摘するものであります。  第二には、利子配当課税のような、現在、税の公平を著しく阻害しているといわれているようなものまでを、この暫定措置で手当てをし、一部金持ち、不労所得者を優遇しようとしていることであります。かかる国民の批判を買っている利子配当分離課税については、この際断固廃止すべきであります。  第三には、今度の減税中心をなす所得税についてでありますが、改正によって課税最低限が百二万八千六百七十四円となり、現行法より約十万円近く引き上げられております。しかし、わが公明党案課税最低限百三十万円に比べれば、大きな差があるものであります。また、給与所得控除定額控除後の金額についてみれば、給与収入九十万円については二十六万円で、現行法改正後と変わりなく、給与収入二百十万円、三百十万円、四百十万円と上がるに従って、現行法で三十四万円が改正後四十万円、また三十六万五千円が四十五万円、同じく三十六万五千円が五十万円と、高額に在るほど優遇されているのであります。このよう左高額所得者に有利になっている内容を持った暫定措置法案には反対するものであります。  以上、反対理由を述べまして討論を終わります。
  6. 毛利松平

  7. 竹本孫一

    竹本委員 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十五年度の税制改正に関する暫定措置法案について、反対の意向を表明するものであります。  まず第一に、この法律案のうち、所得税に関する部分は、近く審議を行なう所得税法の一部改正案内容を、四月分について全く同様なものを出したということでございまして、所得税法改正について国会の意思がここで決定をすれば、後に来たるべき本法審議権がそれだけ制約されるという疑いが生ずるのであります。特にわれわれが考えなければならぬことは、税法というものは国民負担に関する重大な問題であり、およそまた議会政治というものがこの租税の問題を中心に発展してきた歴史的経過等にかんがみましても、税法暫定措置でやるべき問題ではないと思うのでございます。今回の法案内容は、給与所得に対する源泉徴収について減税恩典をすみやかに及ぼそうというものでありまして、その趣旨は一応理解できるわけでありますけれども、法案提出手続のみならず、物価騰貴の今日の情勢の中で、生活費に食い込まない税制ということでは、課税最低限の百万円への引き上げということについてもわれわれはなお不十分であると思うのであります。  第二に、本予算暫定予算関係にも見られるように、このような暫定措置法案は、まず本法のほうを審議して、どうしても期限に間に合わないというときに、それがはっきりした段階において初めて提出さるべきものであって、本法提出する前に暫定措置法提出することは、先ほど来御議論がありましたように、時間的制約があるにもせよ、全くこれは順序が逆であるということであります。  最後に、生活費課税最低限の問題のみならず、利子配当の問題についても、わが党は政府見解を異にしておるのであります。また、物品税関税暫定措置法等につきましても、大衆消費高度化国際分業方式の確立という見地から、遺憾ながら政府見解を異にするものがあり  ます。  以上の理由をもって、われわれはこの法案反対をいたすものであります。
  8. 毛利松平

    毛利委員長 これにて討論は終局いたしまし  た。  これより採決いたします。  昭和四十五年度の税制改正に関する暫定措置法案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  9. 毛利松平

    毛利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 毛利松平

    毛利委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  11. 毛利松平

    毛利委員長 次に、国の会計税制金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。平林剛君。
  12. 平林剛

    平林委員 きょうは大臣に、一般質問を少し、久しぶりにやらしてもらいます。  最初に私が取り上げたいと思いますのは、昨年この委員会で問題を提起いたしました新都市計画法、この新都市計画法に便乗して、大手不動産業をはじめ私鉄関係企業観光企業資本などが土地買い占めに狂奔している実態について問題を提起いたしました。  そのとき私が申し上げた問題点は、一つは、新都市計画法市街化地域と指定される地域では、需要と供給との関係から、本来土地価格が低下すべきものであるのに、実際にはここは農地転換などめんどうな手続が要らないから住宅は自由に建てられるということで、かえって土地の値上がりが始まっている。したがって、土地がほしい、家を建てたいと考える人はとても手が届かない。高嶺の花ということばがあるけれども、高値の土地である。そこで、比較的安い土地、多少不便ではあるけれども、退職金や貯金などしたもので農地を買ってマイホームの夢を見ようと思っても、市街化調整地域は、今度は法律によって個人は家を建てちゃいけぬということになる。これではサラリーマンあるいは一般の市民は一体どこの土地を買って家を建てたらいいかという問題が現実の事象としてあらわれている。  第二の問題は、神奈川県でいえば、大手企業土地買い占めが、四十四年十月の調査で三千七百四十五万平方メートル、坪に直して約千百三十数万坪、しかもそれは市街化調整地域の山林、畑地に集中をしておる。農業は、土地商品としてもうければいいという企業私欲追求によって虫食い状態になる。一体新都市計画法とは何で秩序ある町づくりと言えるか。  これは、いまちょっと建設関係予算分科会でも建設大臣を相手に一席ぶってきたんです。  第三には、この大手企業土地購入資金は——ここから大臣にちょっと関係が出てくる。この土地購入資金は、おおよそ都市銀行をはじめ市中金融機関貸し付け金によっているものではないか。そうすれば、坪単価二万円と計算して、神奈川県の場合には一千二百万坪でありますから二千四百億円、これが投機的左傾向に流れている。全国的に見ればおそらく一兆円をこえるのじゃ左いか金融引き締めの時期にこれを放置しておいて景気調整もヘチマもない。  私は、この間の委員会でおおよそこういう趣旨のことを指摘をしたわけであります。大臣も、これは重大な問題であるから、政府としても慎重に検討したいと述べられまして、私も、大臣がどういうことをやっていただけるかしばらく見守ることにいたしまして、選挙があってきょう初めてお目にかかった、こういうわけであります。  そこで大蔵大臣は、その所管と権限におきまして、この問題につきましてどういう措置をおとりになっていただけたでしょうか。これが第一の質問であります。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 都市計画法施行地価に及ぼす影響、またそれの金融との関係につきまして、昨年の秋、平林さんから御所見があって、私も同感するところが多かったのです。  そこで、まず都市計画法の問題でありますが、これは非常にデリケートな問題を含んでおるわけです。ことに土地を主として持っておる農民に及ぼす影響、そういうことがありまして、これの具体化、つまり線引き、これはまだ着手しておらない。慎重に線引き作業について考えよう、そういう配意であります。     〔委員長退席山下(元)委員長代理着席〕 いずれはこれはやらなければならぬ問題でありますが、とにかく慎重にしようというのでまだ実行に至らぬ、こういう状況であります。したがって、都市計画法施行による直接的な影響というものはまだ出てきておらない、見越しというような関係が起きてきておるのじゃあるまいか、そういうふうに感ぜられるのであります。私ども調べてもみましたが、また聞いてもみましたが、そう急激な変化がこの土地需要について起こっておるという状況ではないようです。  しかし、御指摘のような傾向があって地価のつり上げを行なうということは、これは十分考えておかなければならぬ問題であるというふうに考えまして、あなたからお話があった直後、金融機関に対しましては、土地需要に対する資金融通、これについては慎重に扱われたい、こういう旨の指導をいたしておるわけであります。これは、銀行については銀行協会中心になってやる、こういうようなことで自粛体制をとっておるのであります。なお今後の推移を見まして、その辺につきましては十分心得てまいりたい、かように考えております。
  14. 平林剛

    平林委員 ややその動きは見られますから、私も大体大臣のおとりになったことを了承します。  ただ、この機会に銀行局長に伺っておきたいのですけれども、全国銀行不動産業に対する貸し出し状況はどのくらいの状況になっておるのですか。
  15. 近藤道生

    近藤政府委員 ただいま御質問数字は、十二月末で、ちょっと古くて恐縮でございますが、全国銀行勘定におきまして、お示しのように一兆一千四百億円と、一兆円をやや上回る数字になっております。それから信託勘定におきまして四千億円、以上でございます。
  16. 平林剛

    平林委員 いまお話しになったのは昨年の十二月現在、私が手元に入手しておるのは昨年の三月現在、全国銀行不動産業に対する貸し出し状況は一兆二千六百七十二億円。いまのお話は十二月の段階において一兆一千四百億円。下がったのですか。
  17. 近藤道生

    近藤政府委員 お示し数字信託勘定と合わせたものではないかと存じます。したがいまして下がってはおりませんで、増加いたしております。
  18. 平林剛

    平林委員 そうなりますと、大臣、実際の姿は膨張しておるということになりますね。やられたことについては、私大体地域で確かめておりますからわかるのですけれども、実際にはふえている、実効があがっていないということになるんじゃないでしょうか。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 なお、私は報告は聞いておりませんけれども、土地需要には実際の需要と仮需要というものがあると思うのです。実際の需要につきましてはこれを充足さしていく必要がある分野に属しますが、しかし仮需要ですね、投機需要といいますか、そういうものにつきましては戒めていかなければならぬ、そういうふうに考えるわけでありますが、いまとにかく設備投資がたいへんな勢いで行なわれておる、こういうことで、銀行等金融機関貸し出しもどんどん昨年はふえているというような形勢にありましたから、したがって、その中に実際の土地需要、実需ですね、これがかなりあったものと想像されます。したがって金額もふえておると思いますが、問題としているのは仮需要、これにつきましては今後とも十分配意してまいりたい、かように考えております。
  20. 平林剛

    平林委員 そこで私は、この問題は単に問題を提起し、とりあえずの措置政府に要求するだけではなくて、積極的にこういう事態を解決するにはどうすべきかということで、大臣にもちょっと御見解を承りたいと思うのであります。  これは実はいま建設大臣ともやってきたのですが、国庫大臣大蔵大臣十分頭に入れてもらわなければ困ると思うのです。私は神奈川県の例をあげましたけれども、これは神奈川県だけではありません。昭和三十五年度を一〇〇としてその後の人口伸び率というものを各府県ごとに調べてみますと、全国平均で一〇六です。東京都の場合には一一四の指数を示しています。これに対しわが神奈川県は一四一、日本最高人口増加率であります。神奈川県だけに限らず、埼玉県が一三六、それから千葉県が一二四、ここらが大どころで、首都圏中心にして人口集中しておるということがわかると思うのです。結局こういう現象が起きるというのは、人口が移動して、そこにどうしても住宅需要が強くなる。したがって、大手不動産業その他はやはり欲がありますから、商売から考えればそういうところに土地を買って、宅地造成をしたほうがメリットがあるわけですから集中するわけですね。  私はいま大臣には、銀行の筋を通じてこうした動きを押えることも必要であるという問題提起をしたわけでありますけれども、同時に考えなければならぬことは、こうした人口集中している府県に対して、住宅建設をかなり政府みずからの手でやるということが必要なんじゃないでしょうか。これは私は建設大臣にもお話しをしましたら、大いに賛成でございました。そういう気持ちで努力をすると言われたのでありますが、問題はそうした資金その他について裏づけがなければ意味がない。積極的にこうした問題に国庫大臣としての福田さんも取り組んでもらいたい、こう思いまして、ひとつそれについてのお考えをお聞かせいただきたい。
  21. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話はまことにごもっともでございまして、人口集中する地帯に対しまして住宅対策を厚くしなければならぬ、これは当然のことと思います。政府では、四十五年度に住宅五カ年計画が終わるわけであります。そこで四十六年度からは新五カ年計画を策定いたしますが、その際には人口集中、移動、こういう面をとらえてこの問題の実施に当たらなければならぬ、かように考えております。
  22. 平林剛

    平林委員 ついでですから私の構想、これは委員会とかそういうワクを離れてちょっと話をしたいと思うのですけれども、もう一つ方法は、私はこういう方法があると思うのです。それは、私のかねがね描いている構想ですが、農住都市構想都市近郊の農村に、ただいま指摘いたしましたような虫食い状態が起きてくる。それを防ぐためには、土地を持っている人たちが共同で土地を提供して、それによって住宅建設していくという考え方ですね。つまり、土地商品にする人に対しては農地を手放すな、私利私欲を追求する、そのために財産である土地は手放すなという考え方に基づいて、みずから積極的に農住構想というものを立てようという動きなんです。私はこの動きはある意味では歓迎すべき傾向だと見ておるわけであります。なぜかといえば、二万円で土地大手不動産業に手放せば、宅地造成の結果四万円なり五万円で分譲される。農家の人は、おれは二万円しかふところに入れないのに、あいつは五万円ももうけやがる、おもしろくない、だから今度は土地をだまされて手放すことをしない。私は、土地買い占めの中には、中には公共的な用地もあるわけで、むしろ進んで提供したほうがいいという場合ももちろんあると思いますから、土地買い占め全部が悪いことだというふうに思っているわけではありません。ある企業が積極的に乗り出して、そうして住宅建設をして、政府施策に協力するということもある意味では必要であろう、こう理解はしていますが、いまのよう左気持ちはぬぐうことができない。  そこで、同じことならば、二万円のものを、農協がまず土地担保として保管をして造成をして、そうしてこれは営利事業でありませんから、宅地造成必要左経費だけをかけて消費者に買ってもらう。そうすれば、二万円の土地が二万六、七千円になるかもしれないけれども、四万円や五万円の土地を買うよりはよい。一番よいことは政府が積極的に住宅政策をやることだが、それが十分でないときにはこういう措置もできる。これによって勤労者に対して安い土地を提供できる。もちろん税制の面で検討しなければならぬ点もございますけれども、第二の手段としてはこれは実行可能じゃないだろうか。こういうことから土地所有者が共同して、そうしてこれを担保として勤労者住宅を建てる。つまり住宅不足の解消と同時に、安い土地消費者に与える。農家自体も秩序ある町づくりができる。こういうような一石二鳥、三鳥の構想がいま各地域に起きているわけなんです。  私は、大蔵大臣としてもこうした動きに対しては積極的に助成をする。どういう助成方法があるかといえば、たとえば住宅金融公庫に特別のワクを設けるとか、あるいは大蔵省建設省と相談をして、そうしたものについてある程度資金を与えるとか、そうした行為に対して税の恩典を与えるとかいうようなやり方があるじゃないだろうか。これは私の持論なんですけれども、大蔵大臣に、これはともどもこういう気風を助成し、そうして実現可能なものについてはやっていこうというお気持ちがあるかどうか、ひとつ聞かしていただきたい。
  23. 福田赳夫

    福田国務大臣 いわゆる農住構想につきましては、私も前から農業団体の人から話を聞いております。たいへんけっこうなことだと思います。農家個人がそういう住宅を建てるという場合もありましょうし、あるいは共同してという場合もありましょうし、あるいは農業協同組合がやるというような場合もありましょうが、私はそう格別の、たとえば税法上の、あるいは特別の金利補給だとか、そういう必要はないんじゃないかというふうに思いますが、この構想推進状況がどうなるか。またこれは例の農地転用施策とも関連のある問題なんです。そういうようなことを考えるときに、住宅金融公庫の金をどういうふうに当てはめられるかというようなことにつきましては、私は検討してみる必要のある問題だろう、こういうふうに考えております。
  24. 平林剛

    平林委員 そこで、私はある経済雑誌を読みましたら、大蔵大臣は、農協の所有する七兆円の預金を今度の水田買い上げのほうに利用したらいいじゃないかというようなことを言われているから、その頭をちょっと方向転換してもらいたいと思っているのです。つまり私は、そういう政策を実行する場合に、たとえば住宅金融公庫貸し出し金利、大体五・五%ですか、それを上回る資金を使わなければならぬときに、やはりある程度の利子補給ということをやってもこの施策を実行されるという気がまえになってもらいたい。つまりこれにはかなりばく大な資金が必要ですし、そしてその資金を寝かしておかなければならないし、農業団体がやるというのは本来の仕事ではないのです。これは都市近郊農業団体でないとこの話は理解できないのです。農協というのはそんな仕事をやるものじゃないというふうにすぐ教科書になってしまうわけです。しかし特殊な事情があるわけでありますから、新しい時代に即応した農協の運営のしかたもあり得る。ただ水田買い上げをやったらいいじゃないかと大蔵大臣おっしゃったそうでありますけれども、そういう考え方を大転換していただいて、この資金を活用する。そして実際の住宅金融公庫の貸し付け資金の利に合わない点は利子補給をするというような考え方もあっていいんじゃないだろうか、こう思うのです。いまちょっと私の意に沿わないような御返事があったものですから、そういうことも含めてひとつ検討していただくような気持ちでお答えいただきたい。そうしたら次の問題に移ります。
  25. 福田赳夫

    福田国務大臣 一般の人も一般の金を使って建物を建てるわけですね。農家土地は自分で持っておる。その場合は一般の、土地まで買って建物を建てる場合に比べますと非常に有利な立場にあるわけですね。ですから特別にそう多くの国家的援助を与えるべき問題であるかどうか、私はこれは相当疑問に思うのです。しかしいま突然の話なんで、そう固まった意見じゃございませんけれども、住宅金融公庫の金を使うというようなことは、これは検討の価値のある問題だ、こういうふうな感じがしておるのです。なおいろいろ考えてみます。
  26. 平林剛

    平林委員 いまの方法をやってもいいわけですが、問題は資金ワクの点でありますから、いずれ検討していただくことにしまして、いよいよ本題のほうに入ることにいたします。  次に私お尋ねしたい点は、昨年の九月にいわゆる引き締め政策が発動されましてから約六カ月、この景気調整策は現状におきましてどういう効果をあげたとお考えになっておられるでしょうか。
  27. 福田赳夫

    福田国務大臣 昨年の上半期にはたいへん左貸し出しが行衣われたわけでありますが、九月に金融調整政策に乗り出したわけであります。それ以降におきましては、この貸し出しの増勢が非常な勢いで鈍化しております。したがって、いま金詰まり金詰まりという声を聞くような状態になってきておるのでありますが、これが実体の経済面にどういう影響があるかということになりますと、いまなお設備投資の勢いは旺盛であり、まだ鎮静化の具体的な傾向というものは認められません。しかし今後を展望するときに、これは実体経済面においても鎮静化の方向が出てくるのではないかというふうに思われるような段階まで来ておる、こういうふうに見ておるわけであります。経済活動の諸指標は活発でありますが、先行指標といわれる機械の受注、これは最近鈍化を示しております。しかし、この鈍化で、すぐこれは実体経済が変わってきたのかというふうに判断すべきかというとそうではない。金詰まりなものだから、勢い、こう金が詰まったのでは、設備計画、機械の受注計画をひとつ先へ延ばしておこうというくらいな程度のところ、こういうふうに半断しておるわけでありまして、ここ三、四カ月の推移、これが非常に大事な段階に来ておる、これを十分注視しなければならぬ、そういうふうに見ておるのであります。
  28. 平林剛

    平林委員 おっしゃるとおり、機械の受注の状況などやや低落をしておる傾向があらわれてきておるようでありますし、一応金詰まりというのもところどころ出てきておりまして、そういう点ではお話しのような傾向が見られないでもありませんけれども、そういうことの動きに非常に敏感過ぎて、早くも金融機関の一部には、四月ないし六月ごろになれば政策の手直しが行なわれる可能性が強いというような観測も出始めておると伝えられておるのでありますけれども、大臣はこうした観測に対してどういう御見解でありますか、あるいはどういう態度をおとりになるつもりでありますか。
  29. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように、産業界、それからまた金融界において金詰まりだ、これを緩和せられたいという空気が出てきております。私もよく承知しております。しかし、いまが非常に大事な段階でありまして、そういう声があるからといって直ちに金融緩知をするわけにはいくまい。やはり金融調整措置のねらいとする総需要の抑制、この効果が現実のものとして出てくるということを見定めない限り、いまの金融政策基調というものを変えることはできません。そういうふうに考えておるわけです。ですから、申し上げておりまするように、この三、四カ月の推移、これがどういうふうになるか、その辺をよく見た上で誤りなきようにひとつ善処してまいりたい、かように考えております。
  30. 平林剛

    平林委員 私はけさの新聞で、都市銀行の何か首脳部の人か、六、七月に金融政策の手直しは必要としないというようなことを言明されたという記事をよんだのでありますけれども、いま大臣がおっしゃられた点が問題なのじゃないですか。というのは、いま大事な時期だから、総需要の抑制が現実の問題として見定めることがない限り、そういう声があっても政府としては変えない、ここ三、四カ月が大事だ、こういうことを言われるものだから、なるほど三、四カ月たつというと、場合によってはこれは政策の手直しがあるかもしれない。そこで六、七月には、四−六月が少しずれて、あるいは六、七月には政策の手直しの可能性が強いというようなまた観測になってくる、こういうことになるのじゃないかと思うのであります。この点ははっきりと見通しの上に立って、こうした手直しは必要ないという認識を明確にされることが、待っているというような状態よりも、いまの経済のこの景気調整にかえって役立つものになるのじゃないかと思うのですけれども、どうも三、四月の様子を見てということが私はひっかかるわけです。そこのところをもっと明確にしてもらいたい。
  31. 福田赳夫

    福田国務大臣 この三、四カ月が大事だというのは、いま申し上げましたとおり、どうも機械受注の指数が鈍化してきておる、こういうようなこと、しかし、いまこの時点で直ちに、この受注をもって企業設備投資計画が変更されたとは認められない、こういうふうに申し上げたわけですけれども、そういうような微妙な動きがあるわけなんです。いまちょうど金融政策が実体経済面にどういうふうに波及していくのかどうか、きわめて流動的な段階、これがこの時点だ、こういうふうに見ておるわけです。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことから、この三、四カ月の動きというものは特に注目を要する、こういうふうに申し上げておるわけでありますが、三、四カ月たったならば金融政策の調整は行ないますとは一言も言っておりません。三、四カ月の動きを見た上慎重に判断する、こういうふうに申しておるわけであります。どうも片言だけがとられて、六、七月になって金融緩和をするのだというふうに理解されますることは、きわめて私としては不本意であります。
  32. 平林剛

    平林委員 これはあまりはっきり言うことが適当かどうかという判断もあろうと思うし、それを言ったために自縄自縛になっても困るという御判断があると思うのですけれども、いま考えられる情勢から見て、九月以降とってこられたいわゆる引き締め政策を手直しする必要の情勢が予想されますか。私はされないと思うのです。そうだとすれば、三、四カ月待って手直しをするとは絶対言ったことはない、こう言われるけれども、手直ししないとも言わないのだから、そこいら辺は一体どうなんですか。
  33. 福田赳夫

    福田国務大臣 手直しはいたしません、未来永久に手直しはしません、こういうような態度はとれるものではありません。これはもう実体経済界の動きに従って金融政策は流動的、弾力的にやらなければならぬ、それは私は当然だと思います。そういうことを言っておるわけなんです。しかし、いまいろいろ声があるけれども、この三、四カ月というものは非常に大事な時期なんだ、その推移を見て、皆さんが政府考え方に御協力くださって、経済全体が鎮静化の方向に向かえば、これは緩和というようなこともあるいは考えられるかもしれない。しかし、依然としてその経済活動が活発過ぎて総需要が旺盛である、こういうような情勢であれば、これはいま幾ら要望されても、とても金融政策の転換というわけにはいくまい、かように考えておるわけであります。
  34. 平林剛

    平林委員 私はその点はちょっとまだ議論があるのです。というのは、相当政府がき然とした態度をとらないと、大体三、四カ月待って様子を見て、それでまた乗り出すというようなことになりますと、長い目で見ればやはりこの昭和四十五年度というのも膨張に膨張し続けていく。一時的に低迷はあったとしても、やはり経済の過熱的傾向というのは失せない、こう考えるわけでありまして、その点はもっとき然とした態度をとらないと、あなたの言われたニュアンスでそのことを判断する人がたくさん出てくる。それは、結局ただしばらく待つだけだ、こういうことになりはしないかということをおそれるわけであります。  繰り返しませんけれども、ちょっと愚にもつかない質問ですが、いまはインフレですか。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はインフレとは思いません。
  36. 平林剛

    平林委員 私の質問も、インフレですか。あなたは、インフレであるとは思いませんと言っている。インフレとは一体どういうふうなものであるとお考えになりまして、インフレでない、こうおっしゃったのですか。
  37. 福田赳夫

    福田国務大臣 貨幣価値が著しく低落する、こういう状態ですね、これがインフレだと思います。
  38. 平林剛

    平林委員 経済企画庁長官が経済に関する演説をやった文章の中に「インフレとの戦い」をやるとありますね。政府はおやりになるわけですね。経済閣僚としてインフレとの戦いをやる。戦うのですよ。少なくとも佐藤内閣の経済閣僚はインフレとの戦いをやることになった。そうすると、インフレじゃなければ何で戦いをやるのです。いまの傾向は、それはインフレという概念をどう見るかということによってずいぶん違ってくると思いますけれども、私はそういうおそれがあるとみなしておる。閣僚、しかも政府を代表しての演説の文章中に「インフレとの戦い」とあるとなりますと、そのおそれはあると見なければならぬのじゃないですか。いまおっしゃられた、貨幣の価値が下落をするということがない限りインフレじゃないというだけで済まされない幾つもの観がある、こう思うのですけれども、この企画庁長官の「インフレとの戦い」とあなたのお説とどういうふうに結びつくでしょうか。
  39. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も経済企画庁長官の演説の原稿を原稿の段階で見ました。インフレということばが使ってあるものですから、これはちょっと穏やかでないぞ、こういうふうに思いまして企画庁長官に聞いたのです。一体今日の経済をインフレと見ておるのか。あなたと同じような質問を発したわけです。そうすると経済企画庁長官は、今日、日本の経済はインフレではありません、しかしほうっておくとそういうふうになるかもしれない、これと戦わなければならぬのだ、あり得べきインフレということなんだ、こういう話なのであります。ああそれじゃわかった、せっかく印刷までしてあるんだからそのままにしておこうじゃないかということになったのです。企画庁長官も、現在の事態をいわゆるインフレだというふうには見ておりません。
  40. 平林剛

    平林委員 大蔵大臣は簡単にわかったようだけれども、私はちっともわからない。渦中にある者は往々にしてその所在を失う、こんな格言あったかどうか知りませんけれども、とにかく自分がその衝に当たっておりますと、やはり進行しつつある実態を見失うことがある。私ら、経済学の問題はしろうとですけれども、碁にいうおか目八目ということがありまして、わきから見てみると、どうも今日の状態はすでにインフレ的傾向があると言ったほうが適切ではないか。だから、そういう意味からいえば、企画庁長官の「インフレとの戦い」というのはまさしく自己認識をしておる。大蔵大臣のほうがまだ幾らかそういう点について自分の政策を飾り立てておるというような感じがしてならぬのであります。  そこで、インフレをどう見るかということは、いま単純に貨幣価値ということだけで見るべきかどうか、私はどうも疑問なんでありますけれども、こんな論争はしてもあまり意味がない。  問題は、一般国民立場から見ると一向に物価が下がらない、こういうところに一番大きな不安があるわけですね。どういう意味で、お金の値打ちは下がらないからインフレでないとおっしゃったかわかりませんけれども、お金の値打ちはまさしく下がっているのじゃないですか。たとえば年金をもらっている人が、十年前あるいは五年前にきめられた金額ではとても同じ需要をこなしていけない、あるいは同じ月給であればとても食ってはいけない、こういう状態になったのは、一面物価が上がったということではありますけれども、たくさんのお金を費やさなければ同じ品物が買えないということは、お金の値打ちがなくなっておるということにもなりはしませんか。そうだとすれば、現にお金の値打ちがなくなっておるわけでありますからいまはインフレである、こういう言い方もできるのじゃないでしょうか。いかがですか。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 インフレの定義によるのです。少しことばが足りなかったから補足しておきますが、私は、インフレとは貨幣価値が低下し、貨幣に対する信頼感を国民が失う、こういう状態をインフレだというふうに理解してインフレを論議するわけです。いま物価は上がりますよ。それだけ貨幣の購買力は減るわけでございますが、しかしこれが一面において高度の成長というものがある。われわれの生活もよくなる、国の施設も生活の環境もよくなる。そういうもののうらはらとしての物価の上昇ということで、国民は、かなり多数の人がこの物価上昇についてはある程度の理解を持っておると思うのです。高度の成長をする、ふところもよくなる、そのふところのよくなる割合よりはかなり少ない割合ではあるが、物価が上昇しているということに対してかなりの理解を持っておる、こういうふうに思うのです。したがって、通貨に対する信頼感については微動だもしておらない、今日のこの段階において。円の持つ力、それの国民生活に及ぼす効用というものについてはゆるぎない態勢である、こういうふうに私は見ておるわけです。じゃ、客観的にはどうだというと、国際的には円というものは非常に強く評価をされておる状態でありまして、まあ多少の物価の上昇がある、これは世界的にもあるわけでありますから、その中において、わが国が各国に比べてそうひどい状態でない状態下において、円に対する信頼が薄らいでおるというふうにはいささかも考えておりません。
  42. 平林剛

    平林委員 私は、福田さんはものを一面的にとらえていると思う。いまの物価に対する国民考え方についてもそうです。私は、年金や恩給をもらっている人たちわ生活の状態、あるいは一年に一度くらい少しずつベースアップはしておるけれども、月給取りが物価を追いかけて賃上げを要求していく姿、また同じお金で買うにしても量が少なくなるとか、いろいろな現象を見てみますと、貨幣に対してはむしろ信頼度が薄くなる。だから土地の投機がふえる。きょう私が最初に持ち出した土地問題でも同じことなんです。土地に対する投機現象が起きるということは、すなわちお金に対する信頼を欠いているからなんです。そういう意味から考えれば、大臣がおっしゃったのは一面だけであって、国民生活の側から見れば今日はまさしくインフレの状態である、こういうことがいえるのじゃないかと思うのです。  現に大蔵大臣は二月十四日、本会議における財政演説の際に、「物価の安定は、調和のとれた国民生活の向上を実現するために不可欠のものであります。」こう述べられました。ところが最近日銀総裁の佐々木さんが、いまのような完全雇用のもとでは物価安定はきわめて困難であるということを記者会見のときに発言して、たいへんなショックを与えている。いわば物価の問題についてはお手上げだ、こう言っておるわけですね。現に最近は卸売り物価も異常な伸びを示しておる。かつて、なくなられた池田さんは、消費者物価が多少上がっても卸売り物価が安定していればだいじょうぶだと言ったのが、だいじょうぶでなくなってきておる。この日銀総裁の発言等から考えまして、私はまさに今日はどうもインフレ的傾向である、これは何とか処理するのにもつと深刻な考え方をしてもらわねばならぬ、こう思ったのでありますけれども、それでは大臣としては、物価抑制について具体的にこういう措置を財政、金融の面でとるというようなお考えは、どんなものがあるでしょうか。初めから認識が違っておると困るのですよ。私はインフレの傾向がもう非常に強くなっておるという認識、大臣はインフレとは思わない、こういうことなんで、この認識の度合いにもよりますけれども、手はどういう手があるか、ひとつ……。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 認識はそう違わないんだろうと思うのですが、あなた、表現がインフレというようなことばを使うものですから……。インフレとは、世間一般に用いられている用語としては、貨幣価値が下落し、ために通貨に対する信頼感が失われる、こういう状態だというふうに私は理解しておるんですが、ただその物価に対する認識は、これはいまも申し上げたとおり、私はあなたとちっとも変わらない。物価はもう安定させなければいかぬ。しかし、安定の程度ということが問題だろうと思うんです。いまこれだけ経済が発展していく、その間、摩擦的な現象として物価がある程度上がる、こういうことはもう避け得られない。しかし、これが預金の金利の利率をこえて上がるというような状態はもう憂うべき状態だ、私はこういうふうに思うんです。何とかして、ことし四十五年は四・八%というふうに企画庁ではいっておりますが、その辺にぜひしてほしい、来年はもう〇・一%でもいいからまた下げていきたい、そういうふうに思うんです。  そういうためには何といっても総需要の抑制ということが最も大事である、こういうふうに考えます。これが大柱、大黒柱です。そうして中柱、小柱としていろんな施策をしなければなりませんけれども、一つの重要な中柱は、生産性の低い農業だとか中小企業だとか、そういうものの近代化、これは非常に大事な問題だろうと思います。それから流通機構の問題、それから取引の公正化、こういうこともまことに大事な柱になってまいるだろうと思います。さらに政府関係するところの料金でありますとかサービス料でありますとか、そういうもののかじのとり方、こういうものも大事になってくるだろう。あるいは消費者行政というか、そういう面の充実、そういうことも大事になってくるだろうと思います。いろいろ各般の多岐にわたる対策が必要であると思いますが、それらを総合して、また政府ばかりじゃこれはで直ない、国民もこれに深い理解を持ってくださって協力してくださるという体制において、この問題はわれわれが、国民全体が願っている方向へ初めて進むのではあるまいか、そういうふうに見ておるわけです。
  44. 平林剛

    平林委員 物価問題はまた時間をかけてあらためて議論をしたいと思いますけれども、今回預金金利を引き上げる、これはどういう御認識のもとに引き上げ措置をとられましたか。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、金融調整政策を始めたんです。金融が逼迫してくるわけです。資金もまた需給の関係で金利が上がったり下がったりする。逼迫状態でありまするから、その金利水準というものは上がるわけです。そこで貸し出しの金利が上がるわけです。それと同時に、社債市場等においても同じような角度で問題が起こってくる、そういうようなことで、今度長期金利の体系を全面的に改定することにいたしたわけであります。すでに大部分を実行しておる。それに見合いをするその一環として、長期貸し出し金利の引き上げということも行なわれることになるわけであります。そういうものと並行しながら一般貸し出し金利も上がってくる。そうすると、その資金をどこに求めるか、一般大衆から求めなければならぬ、そういうようなことで、預金金利につきましても若干の引き上げを要するという判断をいたし、これに基づいて近日それを実行しようという段階まで来ております。
  46. 平林剛

    平林委員 そろそろ大体時間がきましたから、私もちょっと聞いておきたいのですが、昭和四十五年度の暫定予算はいつごろ国会提出する予定ですか。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま暫定というより、理屈を申し上げますと、本予算が衆議院段階で御審議の最中であります。いつこれが衆議院で議決されますか、参議院で一週間くらいでこれを議決してくださるということになれば暫定予算の必要は実はないのです。ないのですが、実際の見通しとしますと、なかなかそういうわけにもいくまい、こういうふうに見ております。したがって、暫定予算は必至の傾向だというふうに見ております。そういうことで、おそくも二十六日ころにはこれを提出し、御審議を願わなければならぬだろう、かよう左見通しでございます。
  48. 平林剛

    平林委員 この暫定予算に対する大蔵大臣の基本的な考え方といいますか、それを明らかにしていただきたい。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 暫定予算でありますから暫定で、その暫定期間を何日にするかということですが、これは衆議院を本予算が通過するその日がいつになるか、かりに二十日——かりに二十日ですよ、もうほんとうに頭の中だけの話ですが、かりに二十日ということになりますれば、参議院に回付されまして四月の十八日で三十日目に在るわけです。十九日に自然成立ということになります。ですから、おそくも自然成立までには参議院でも御審議願えるんじゃないかというふうに考えますと、十八日間の暫定予算ということになるわけであります。  それからその内容の問題でありまするが、これは新規政策費は一切盛り込みません。いずれにしても短期間の暫定予算でありますので、その必要はなかろう、こういうふうに見ておるのです。  いまの暫定予算の期間の問題は、あれはあくまでも仮定の上の話でございますので、誤解のないようにくれぐれもお願い申し上げます。
  50. 平林剛

    平林委員 きょうは私はこれで終わりたいと思います。
  51. 毛利松平

    毛利委員長 午後三時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時九分休憩      ————◇—————     午後四時二十六分開議
  52. 毛利松平

    毛利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 私、実はことしの補正予算の総括質問で、福田大蔵大臣といろいろと論議をかわしたいと思っておりましたら、残念ながら大蔵大臣御病気でありまして、佐藤代理によって処理をいたしました。そこで、その際少し大臣に伺っておきたいと思った予算上の問題がございますので、最初に少しその予算上の問題に触れておきたいと思います。  ただいまから私がいろいろ申しますことは、党の中で調整をしたことではありませんで、私がそういう意見を持っておることは、党内の皆さんも承知をしておられるわけでありますが、個人的発言でありますので、その点はひとつ前提を置いておきたいわけであります。  大蔵省事務当局に伺いますが、ことしの公共事業の中の災害を除きました一般公共事業費、一兆三千三百億円でありますか、これの中に占めておる用地取得費というのは一体幾らですか。
  54. 竹内道雄

    ○竹内(道)政府委員 必ずしも用地取得費が幾らであるという積算はこまかくはできておりませんけれども、大体従来の実績を申しますと、二割見当が用地費に当てられているのがいままでの実績でございます。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、ことしは御承知のように公共事業費というのはわりに大きく計上され、大蔵省の公開調整費六百五十億の中の約六五%もそこへ持っていった。ですから、ことしの予算としては非常に公共事業費はふやしたというおつもりであると思うのです、大臣としては。しかし、それじゃ、この程度の公共事業費で現在の日本の非常におくれておる社会ストックが正常なところまでくるかというと、これは私はなかなか、非常にストックが貧弱でありますから、少々振りを大きくしても正常なところへこないというのがいまの日本の経済の実情じゃないか、こう思いますが、大臣、その点は、ことしの公共投資とのにらみ合いでどんなふうにお考えになっておりますか。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国では公共投資が非常な立ちおくれだと思います。これは先進諸国に比べると、何十年という程度の立ちおくれになっている。つまり、明治、大正、昭和初期と、これはまあ、国が、隣に帝政ロシヤあり、また清国ありというようなことで、軍事のほうに力を入れたわけで、そこで自然、公共投資、社会資本、そういうものに手が回らなかった、その積み重ねが今日にきておる、こういうふうに見る。ところが今日のわが国は非常な勢いで取り戻しをやっておるわけです。いずれは先進諸国の水準に追っつかなければならぬという目標でやっておるわけでございますが、そういう考えを反映しまして、公共投資、この予算額は、予算の中におけるシェアから見れば世界で飛び抜けて、第一位であります。額におきましてもアメリカに次いで第二位である、こういうことです。それでもまだこれが先進国の水準までいくことはなかなか容易なことじゃあるまい、時間はずいぶんかかるだろう、こういうふうに思いますが、とにかくこの点は非常に重要な問題でありますので、財政的にも今後ずっと引き続いて努力をしていかなければならぬ、かように考えております。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、大臣もこの間お出かけになったと思いますけれども、私はいま万国博の開かれておる周辺に住んでおるわけですが、東京においてもオリンピックをやるということで実は道路整備が非常に進捗いたしました。関西でも実は万国博が一つのめどになってあの周辺の道路整備は非常に進捗をいたしました。そのことはいいことでありますけれども、何かオリンピックがなければ、万国博がなければ道路整備がそれだけ進まないというところに、私はいまの公共投資関係の問題がまだ不十分であるということの一つのあらわれがあるのではないかという感じがしておるわけであります。皆さんのほうの四十五年度からの新しい道路計画においても、八千億余りの財源が、まだ確定していないが、四十五年度中にはきめなければならぬのだという話だというふうに聞いておるわけであります。  そこで問題は、まだまだ実は伸ばさなければならない。しかし一体財源をどうするのか。これがやはり一つの大きな問題だろう。いま大臣おっしゃったように、世界で二番目、アメリカに次いで大き左公共投資の額ですね。それを持っておるといいながら、なおかつストックが小さいからふやしていかなければならぬということならば、財源問題は一体どうなるのか。この点を一つお聞きしたい。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 伸ばしていかなければならぬとは思いますけれども、これを無制限に伸ばすわけにいかないのです。やはりその年々の経済運営、その中において許容し得る範囲内でなければならない。財政的な見地から見ましても、財政をそうふくらますわけにもまいりません。それにもかかわらず公共投資には配意をしなければなりませんが、まあ第一番の財源というものは、安定的に日本の経済が発展いたしまして、国民がこれが財源をささえるような立場、つまり自然増収というものがよけいに出てくる、こういうことかと思います。道路は、一般会計から見ますとほぼ三千億円不足する、こう見ておるのですが、これをそういう経済力の伸展によって吸収し得るかどうか。し得なければ、とにかく計画を立てるのですから、何か財源を模索しなければならないかなと、こういうふうに考えておるわけであります。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実は最近の予算上の国債の処置を見ておりますと、大体当初に計画をした国債の発行と実績との間にはかなり乖離がございますね。これはできるだけ財政硬直化を避けるという意味で公債依存度を下げたいという発想に基づくものだ、こう思いますけれども、実は四十一年で六百五十億、四十二年で九百億、四十三年で千七百三十億、ことしもすでに四百億、この間の補正で減額して、おそらく年度末にはもう少し減らすことになるのじゃないだろうかという見通しを立てているわけでありますが、この際、ただ国債の減額だけではなくて、もう少し有効に使い得る道もあるんじゃないだろうかという気持ち一つはするわけであります。  そこで、国債の問題に入りましたから、ちょっと大臣に伺いたいのですが、実はこの国債を最初に発行した昭和四十年は確かに赤字公債でございました。しかし当時大蔵大臣であった福田さんは、その次の四十一年度においては、これは建設公債であって赤字公債ではないということを強調されましたね。私も当時大蔵委員でありましたし、予算委員会でもそのことを伺ったわけであります。私はこれを見ておりますと、何か建設公債という名の赤字公債といいますか——たまたま佐藤経企庁長官が「財経詳報」の記者との対談の中で、いまの国債は日銀引き受け的だ、こう言われたので、この間私は予算委員会で問題にしたわけであります。そういうことばを引用するならば赤字的建設公債というような感じがしてしかたがないのです。赤字的ということは、いわゆる純粋の赤字ではありません。国債を出すことはどうも望ましくないと、私どもも当初思いました。いまもそう思っておりますが、それは国債の出し方によるのであって、国債というものは、今日の公共投資を必要とする段階では、もしほんとうに国民がこれを消化をするなら——いまのような、佐藤経企庁長官の発言による日銀引き受け的国債は困るのです。これは間違いなく困るのですが、ほんとうに国民が貯蓄の、要するに個人保有金融資産の一部として国債を買うのなら、国債はそこで初めて赤字的が抜け、日銀引き受け的が抜けて、建設公債と在り、本来の国債になるのじゃないだろうか、こう思うのです。もし、そういう赤字的が抜け、日銀引き受け的が抜ければ、私は国債というものは、なるほどそれは財政硬直化の公債費の一因となりますけれども、しかし同時に積極的な側面というものはもう少し評価していいのじゃないかという気持ちが実はしているのです。ここは最初に断わった個人的なものの考え方でありますけれども……。  大臣、前に火種論というので、だんだん減らしていっても最後には火種は残したいというふうにおっしゃっておりますね。私はどうも火種を残すということよりも、要するにあるべき国債を発行するならば、その量にそうこだわらないでいいんじゃないだろうかという気持ちがするのですが、大臣はそこはいかがでしょうか。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま、日本の公債が赤字公債だというふうに私は思いません。公債を発行しないで均衡予算を組むということを考えますれば、これはそうそうむずかしくなくできます。四、五千億円の公債を他の通常財源に振りかえる。それは少しもむずかしいことはないと私は思うのです。しかし私が考えますのは、この際在るべく国民負担を減らしておきたい。そして社会的に、また個人的に蓄積をふやすようにしたい。こういう考え方で公債政策に乗り出したわけでございますが、この考え方は私は決して消したくないと思っているのです。火種といわれますが、この考え方は消したくない。しかしそのときの経済運営、そういうところから見て、そのときどきにおける公債の額もきめていかなければならぬと思うのです。ですから、どうも多少景気が沈滞しておる、こういう際に私は、公債を大いに使って、国民に当面そう負担をかけないで、そして社会資本の充実というようなことも大いにやるということをすべきと思いますが、しかしどうも今日この時点なんかのように過熱のおそれのあるというような際におきましては、公債を使って財政を拡大して、そして過熱に拍車をかけるというようなことは慎まなければならぬ、そういうふうに考えております。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 私はあとでずっと触れていくわけですけれども、総需要の拡大を押えさえすればいまの物価が安定するかというと、いまの日本のような惰性のついたところでは必ずしもそう簡単にいかないのじゃないだろうか。このことはアメリカがいま必死になってやっていますけれども、なかなかうまくいかないのと私は非常に似ておると思うのであります。  そこで私が申し上げておることは、結局国民負担のあり方をどうするかということになってくるわけですが、最近新聞で拝見しておることで、私直接大臣からの話を伺っておりませんからよくわかりませんが、直接税と間接税のあり方について、間接税の比重を上げることによって税収の拡大を期待したいというように大臣が発言をしていらっしゃるように新聞で見受けておるわけですが、これは国債に関係があるものですから、そこのところをちょっと承りたいと思います。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 将来の日本の財政ということを展望しますと、どうも財政需要というものがふえていく傾向を持つであろう。あなたも御指摘に相なったように、社会資本あるいは社会保障というようなことで財政需要がふえる。それに対して備えるところがなければならぬわけです。経済の成長を越えての財政需要ということもあり得るわけです。それが一つ。  それからもう一つは、いまわが国の租税負担というものは国際水準から見ると非常に低位です。一八%という低位にあるわけです。そんな低位にあるにかかわらず、国民の間には租税負担感というものがある、非常に強い、こう見ておるのです。それは一体何だというと、これは低い負担率ではありますけれども、その中における直接税のシェアがだんだんと拡大されてきておる。経済発展を考えますと、所得税あるいは法人税、この占めるシェアというのはさらにさらに拡大していくと私は思うのです。  そういうことを考えまするときに、一面において増加する財政需要に備えなければならぬ。同時にその負担感を軽減する方法、これを考えなければならぬ。そうなると所得税減税ということにまずなってくると思うのです。それじゃその減税によってあく財源を一体どこに求めるか、こういう問題になる。この二つのことを考えながら、私は所得税租税収入における地位をもう少し軽いものにしたい。しかし直接税中心主義から間接税中心主義へ移行するんだ、私は決してそんなことを言っているのじゃないのです。依然として直接税中心主義です。しかし中心とは申しながらその比重を少し軽くしていきたい、こういうことを考えておるのです。それが私の申し上げておる間接税問題の考え方である、かように御了承願います。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、直間の比率は、昭和三十五年に直税が五四・三%、間税四五・七%で、四十四年度の当初の予算で見ると六二・七の三七・三でありますから、いまから十年前に比べると確かに直税の比率が上がって間税の比率が下がってきておりますね。しかしいまおっしゃるように、直接税が税の中心だということは動かさない。しかし間接税で補完的にふやしていくということになると、それは一体どういう間接税でそれをやっていくのかということになってくると思うのですね。ですから、いまあります税項目、いろいろあります。物品税、酒税、関税——関税というのが適切かどうかわかりませんが、それから専売益金、こういうようなものがいまの間接税の主要な大きな柱になっているわけですが、そういうものをふやすといっても、酒の税金なぞは最近減収減収で、租税見積もりが決算ベースでまで減収になったりするくらいですから、たいへん見通しが悪いということです。  そういうのを考えてみると、やはり新しい税目をつくる以外には、いま大臣のおっしゃったようなことにはなかなかなり得ない。しかし新しい税目というと、これは全般的な売り上げ税とか付加価値税とか取引高税というような非常に普遍的なものと、あとは個別的に、この間から論議されておるようなトラック税だとか自動車新税だとか、そういうようなものか、もう間接税というものでそんなにいろいろな取り方はないと私は思うのですね。そうすると、いまおっしゃる直接税が軸であるけれども、間接税補完ということならば、私は付加価値税、取引高税、売り上げ税というような制度のものでは、あり得ないというふうに考えざるを得ないのでありますが、その点は大臣はどうお考えになっておるか。間接税の中における今後の税目というのは、そういう普遍的税目と部分的税目を新設するということしかないと思うのです。そのどれということを伺う前に、要するに普遍的なものか部分的なものを頭に置いてそういうお話をしているのかどうかをちょっとお答えいただきたい。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 むずかしい問題がありますのは物価との関連なんです。間接税をやりそこないますと、これは物価にかなりの波及がくるだろう、こういうふうに思うわけでありまして、その辺は注意深く、また考え方を持っておってもその発動の時期、そういうものにつきましては弾力的左考え方をしていかなければならぬというふうに考えますが、二つの問題があるんです。  一つは、当面道路計画というものを進めなければならぬ。その財源が不足しておる。いま一応見られておるが、これを一般の税収でカバーできるかできないか。できなければそのための財源ということを考えなければならぬ。  それからもう一つ問題がありますのは、先ほどから申し上げている一般的な問題なんです。直接税の負担、また所得税減税——とにかく長期答申完全実施というんですが、これで所得税減税を捨てておるわけじゃないのです。今後もそういう直撃的な国民への負担感というものにつきましては、これを軽減するという考え方を持っておるわけです。そのための間接税、こういう二つの種類があるんです。  その二つの種類の中で具体的に一体何をやるんだ、こういうことになりますと、いま私がここでこういうことを考えておりますということを申し上げますと、これはかなり世間にも影響がありまするし、同時に、税制調査会というものがありまして御承知のような立場にあります。税制調査会の立場も尊重しなければならぬというので、それ以上の具体的な問題になるとここで私の意見を申し上げかねるのでありますが、考え方の基本はそういうことであるというふうに御了承願います。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 私も何税ということを伺っているわけじゃないのですよ。ただ、いまのお話を聞いておりますと、いまの一般的な流通税の問題は明らかに価格に転嫁される可能性があるわけですから、こういう物価上昇のときは望ましくない。そうすると、何であるかは別としても、大体個別的間接税ということを頭に描いていらっしゃるんじゃ左いかという感じがするのですが、そういうことでしょうね。ちょっと答えてください。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあさしあたり考えられるのは個別的左問題か、かように考えます。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで私は、税の負担のあり方の問題に今度はくると思うのですが、国債というのは、なるほどその利子は確かに国が払います。しかし国債というのは国民から国が借金をするわけですね。そうして、なるほど財政の面だけから見ると、そこで利子を払うことは何か国民に対して損をさせているように見えますけれども、受け取るのが国民ならば、私は国債というものを出したことによって国民が損をするというのは、実は物価上昇によるところの通貨価値の減額の問題以外にはあまりないと思うのです。  ところが税のほうは何しろ取りっぱなしになるわけですから、何らかの形でともかく国民から取り上げるというときには、私はその取り上げられる世代とそれからそれを負担する世代が常に同一でなければならぬかというと、そういうものでもないんじゃないか。建設公債問題というのはそういう意味では、ある程度長期の国債が発行されることになるならば、それは当代のものが少なくとも一部負担するけれども、その一部は後代のものの負担にシフトをさせるということが、私は建設公債というものの一つの意義ではないのか、こう考えるわけです。たとえば端的な例を水道一つとってみますと、最近水道の起債もだんだん長くなってきましたけれども、いまのままでいくと、水道というのは大体二十年で償却をしてしまうわけですね。そうすると、二十年後の国民は償却済みのただの水が飲めることになるわけです。だからそういうことでなくて、私は水道のようなものの起債というのは、やはりかなり長期でいいんじゃないか。相当世代にわたったものがその水を飲むことに相違なければ、それを平均的に分担をしてもちっとも差しつかえないんじゃないか、こういう感じがします。そのことも、長期的に見れば私は財政の効率的運用の一つ方法だろうと思うのです。ですから私は、要するに財源を得るのが間接税で得るほうがいいか、それはその時点の問題によりましょうけれども、私は間接税によって得ることと国債によって得ることとは、その条件はその時期の判断によるとしてももう少し私は、そういう意味での国債の活用という問題があっていいのではないんだろうか、こういう気がしてならないわけですね。  ですから、いまこの国債問題というのはいろん左角度がありましょうが、前段にそれを私が申しておるのは、なぜここで特に私がこれを取り上げておるかというと、御承知のように、今度長期金利の改定がずっと一斉に行なわれました。御承知のように、いま国債と政保債とが実はまだ残されておるわけですね。これの利率の改定といいますか、それは利率を改定するのか、発売価格を下げるのか、そこはどうなるか私もわかりませんが、そのときに——私は今度の長期金利の改定必ずしも十分だとは思いませんけれども、ともかく国民がその気で買える国債、政保債にするかどうかが、私はいまの問題につながるかどうかの境目だと思うのです。いまのように、金融機関に無理に買わせて、一年たったらそれが日銀へ行くという、佐藤経企長官のことばによる日銀引き受け的国債は、私はどうしてもこれは反対なんですよ。これはやはりマネーサプライをふやす一つ方法になっているわけで、いまのいろんな問題の中では、確かにマネーサプライが二〇%も続いているなんということは異常でありますから、そういうことを防ぐためにもいまのよう左ことはやめてもらいたい。やめるためには適正な価格になるということ、要するにプライスメカニズムが働いて、売れる国債を出すということ、その売れるだけを国が出すということですね。いまは恣意的にきめて無理に押しつけていますからね。ここに公債問題の盲点があるわけですから、何とか今度ひとつこの国債発行価格を、これから五月に向かっておやりになるのなら、少なくとも国民が、横にその他のいろん左金利をにらんで、これならひとつ国債を買おうという気になるような国債なり政府保証債の価格を考えてもらいたい。そうして、あるべき国債の方向に一歩近づいていくならば、そんなに消極的でなく、ほんとうに国民が買った分についてだけはもっと積極的な公債の活用というものを考えていいんじゃないだろうか。これが私の考え方なんですが、大臣はその点についてはいかがでございましょうか。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 日銀引き受け的国債は反対だ、これは条件つきではありますが、国債政策に深い御理解を示していただきまして、ほんとうに感銘の至りでございます。その他の議論につきましては、私は全く同感であります。何とかして国民に自発的にこれを持っていただくという体制に持っていきたい、いけば公債政策というものは偉大主力を発揮する、かように考えております。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 ひとつ理財局長大臣いま非常にいい答弁をしましたから、現場はあなたのほうですから、いまの大臣の答弁が十分に生かされるように、現場の担当者である理財局長は、今度の国債、政保債の改定にあたっては勇気をもってひとつやってもらいたいと思うわけです。  この間予算委員会でいろいろなことを言いましたからあれですけれども、いまの国債問題の中で、盛んに民間の設備投資の問題が問題になっておるわけですが、民間設備投資というものも、これは私、物価との関係から見ると一がいに押えられては困ると実は思うのです。けさも私は宮澤通産大臣と鉄鋼の設備投資問題をちょっと分科会でやってきたのですけれども、鉄などというものは依然として需給関係がタイトでありまして、ことし四十四年の中で、卸売り物価のシェアの中では寄与率として三四%も鉄鋼の価格の上昇が響いておるわけです。昨年の九月に通産省の産構審鉄鋼部会が出した四十五年度の需要見通しと最近改定をした需要見通しの間が、わずか三カ月の間に七百四十万トン実は違うというような全くラフなことが行なわれておる。そのためにいま鉄鋼は非常に需給がタイトになっているわけです。  もう一つは、御承知の電力も、これから一律な設備投資の調整などをやられたら、これはたいへんな問題が起こるということは非常に明らかになっておるわけですね。ですから、こういう鉄鋼だとか電力だとか、当面長期的に見てもいま設備投資をやらせなければならぬものも、いまの一律の金融引き締めによって非常に問題を受けておるわけです。しかしまた逆に、もうちょっと押えていいものも実はたくさんあるわけですね。ですから、そこらのところを考えますと、金融引き締めもさることながら、私は国債政策というもののもっと適当な運営のしかたによっては、国債なりそういう事業債なんかの発行の問題もありますが、もう少し効率のいい経済政策というのはとれるのじゃないだろうかという感じがします。というのは、国債を出すことは、結局、国民がもし買うならば、銀行へ預金する分がそれだけ国へ来るわけでございますから、それだけ民間資金は縮小してくるわけです。だから、まずそこからひとつ問題を片づけていくというような努力をぜひやってもらいたい、こう考えておるわけです。  そこで、いま申し上げてきたことの中から次の問題は、いまの電力債とかその他の事業債の問題にここでちょっと入っておきたいのです。これは大蔵省としては、電力債の最近の状況を見てそう思うのですが、今度の社債条件の自由化の問題もありますけれども、どういう考え方で対処しようとしておられるのですか。これは事務当局のほうからひとつ最初に答弁してください。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう基本的な産業の金融金融引き締め下においてどういうふうにするかという問題なんですが、これはそういう産業の需給という問題です。需給はいかにあるべきか、こういう問題、これを掘り下げなければならぬというふうに考えておるのです。その掘り下げた結果、需給状態、三年先の電力はどうなる、鉄鋼がどうなる、需要はこれに対してどうだ、こういう際て、電力が不足します、ところが、不足しますという状態でも困る、そういう需給の状態を掘り下げ、それでこの辺かというような見通しを立てまして、その状況に応じて金融も弾力的にやっていかなければならぬ、こういう基本的な考え方でございます。ところが、電力、鉄の話がありましたが、それに限りません。いろいろの金融引き締め政策といってもこれは一律というわけにもまいらない、弾力的な考え方はしなければならないと思います。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣のおっしゃったとおり、そういう適切左運営がされるといいのですが、実際はなかなかむずかしいのですね、これが。全体の中の部分というものの処理が非常にむずかしい。  そこで最初に事務当局から、電力債の問題は大蔵省としては一体どう考えておるのか、ちょっとお答えいただきたい。
  72. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 私ども証券事務当局といたしましては、まず公社債市場の正常化、育成という問題が基本的な政策ともいいますか、関心事でございます。そういう見地から、先ごろ行なわれました債券の条件改定も、実勢と発行条件の乖離を今日の事態においてできる限り改善するという意図で行なったわけでございます。したがいまして、その中で個別の銘柄につきましてどういうことにするかということは左か左かデリケートな問題でございますが、ただ、先ほどあげられました電力債につきましては若干と申しましょうか、かなりほかの一般の事業債と違った性質と申しましょうか、地位と申しましょうか、これを占めておることも否定できないと思います。  まず、その他の事業債を含めました総体の事業債の中での電力債のウエートでございますが、逐年数%ずつ上がってきておりまして、四十四年度の見込みでございますが、四二%程度のウエートを電力債が全事業債の中で占めておる、こういうことでございます。最近の三月債におきましては、四百二十億円の発行額のうち百九十億円、四五%が電力債ということでございます。非常に大きなウエートを電力債が持っておるという面を重視しなければ左らぬと思いますし、かたがた、先ほどから堀委員の仰せになっておりますような、最も望ましい個人消化という面でございますが、これも電力債はほかの事業債と非常に違った姿でございまして、これは投資信託も含めてでございますけれども、個人消化の割合は四五%程度になっているのではないかと思うわけでございます。ですから、現在のすべての事業債の中で電力債は、当該発行企業にとっての資金需要のウエートもさること左がら、公社債市場、個人消化も含めました環境の中で非常に大きなウエートを占めておるということでございます。私どものほうといたしましては、公社債市場の正常化、育成の柱といたしまして、電力債の正常化と申しますか育成と申しますか、そういうことをはかっていくべきが妥当ではあるまいか。一般的にはまずこのように考えております。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、こういう問題に入りましたからあわせてちょっと伺いたいのですけれども、日本共同証券がかつて、昭和四十年でありましたか三十九年の暮れですか、設立をされて今日に至ったわけで、大体株の問題というのはすべてが峠を越したのですが、どうもまだ当時買い入れた株券の処理が終わっていないと思うのです。これだけ株式市場が好況で、一体なぜそういうものが残っておるのか。もう売れないのなら何らかの処置をしなければしかたがないものなのかどうか。この点について、日本共同証券の最近の情勢を先にちょっと教えてください。
  74. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 最近の日本共同証券の手持ち株式は、簿価で二百六、七億でしたか、手持ちの資料では、三月十四日現在では二百十一億円になっておりますけれども、きのうあたりの状態では二百六、七億円になっておるわけでございますが、毎月四十億から五十億円の簿価ベースでの放出と申しますか、売却が進んできております。このところちょっとテンポが十億ばかり、月間にいたしまして鈍っていると思いますが、これはただいまもおあげになりましたが、市場性が乏しいといいましょうか、その意味でなかなかまとめては売りにくいという銘柄がいわばデッドストックのような形で残り残ってまいりまして、その影響だと思っております。しかしながら今後もやはり月間四、五十億ないしそれ近くの売却も期待できると思いますので、もうそれほど長く処分のためにかかることはあるまい、かように存じております。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 二百億ならばことしじゅうには何とか目鼻がつくでしょうが……。  そこで、何か新聞の伝えるところによると——大体この共同証券の問題というのは、ここでだいぶ中山さんなりいろいろな皆さんと論議をいたしまして、本来の目的が終わったら清算をするということがたてまえになってきておったわけですが、最近何かこの機関を利用して、公社債のための機関としたいというようなふうに新聞が伝えておるわけです。この問題は一体すでに何か始まっておるのか、どういうことなのか、ちょっと先に答えてください。
  76. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 新聞でいろいろと記事が出ることもございますが、当該会社自体並びに出資者でございます銀行並びに証券会社及び私ども事務当局におきまして、いまだ正式にその存廃問題について討議をするという段階ではございません。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、何かこの資金をもって公社債の——事業債でしょうけれども、買いささえなんかするというような報道が伝えられておることは、まだ報道の範囲であって、実際問題としてそういうことが具体的に検討されたわけではない、こういうことでありますか。
  78. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、現在日本共同証券の事業目的は株式の売却ということでございまして、その条件のもとに証券業務の免許をもらっております。ただいまお尋ねの点は、売却した代金のいわゆる余裕資金と申しますか、余資の運用の問題でございまして、今日余資が三百数十億円あると思いますが、今日までの状態はあげてコールローンに放出しておる状態でございます。これにつきまして、いろいろと先ほど来お述べになってきておりますような社債の事情、なかんずくその正常化のために一番根幹となります電力債の問題がクローズアップしてきたことに伴いまして、また一つ金融機関として、余裕資金をあげて一〇〇%コールローンに、コール市場に回すということは少し異常でもあるまいかということもございまして、余裕資金の運用、これは定款上は社長権限でございますけれども、何か電力債の消化ないしは社債市場の正常化の一翼をになうことができるのじゃないかという議論が起こってまいりまして、会社のほうの自発的な考え方といたしまして、まだ具体的な中身はこれからの問題もございますけれども、既発債に運用する、これも金融機関として余資運用の一つの形態ではあるまいかということで、前向きに検討されているところでございます。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 考え方は私は必ずしも反対をしないのですけれども、その程度の資金をもって、年間少なくとも五千億以上にわたる事業債の発行が予想せられるときに、とてもそんなものでいろいろさわってみたところで、要するに本筋の問題にならないのじゃないか。やはり本筋の問題は、発行価格と市場価格が乖離をしないような状態にできるだけ自由化をしていくということが本筋の問題ではないかと思うのですね。いまの状態で、この間もちょっと触れましたけれども、ものによっては四円も違うということになりますと、私はこの間も証券会社の人に言ったのですけれども、考えようによってはあなた方は投資家を裏切っているんじゃないか。要するに、新規債を売りつけたら、二十五日たつとどんと既発債の値段に下がってしまうわけですね。既発債を買った人と新発債を買った者が四円の値段の差があるということになったら、これは新発債を売る証券会社は顧客に対してたいへんよくないことをしている、そういう良心的なとがめはありませんかと聞いてみたら、いやおっしゃるとおりです、おっしゃるとおりですけれども、それがいまの現状ではどうにもならないというのが証券会社ですね。私はやはり、こういう制度の中でそういう経済行為がややうしろめたい気持ちをもって行なわれなければならぬということは、今日ここまで発展してきた日本の現状から見て適切でないと思うのですね。まあ徐々にしかいけないんでありましょうけれども、私は今度の改定を契機にして、さらにまた一歩、二歩と進めていかなければならない問題がこの中にはあるのであって、そういう問題を共同証券の買いささえなどということにすりかえないようにだけははっきりしてもらいたいと思うのですが、その点についての大臣のお考えをお聞きします。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは全く同感であります。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、証券問題に少し入ってきましたから、長く私は、二年間大蔵委員会におりませんでしたので、少し証券問題をここで取り上げておきたいのですが、実は私は昭和三十八年に当時の田中大蔵大臣との間で、免許制の問題を取り上げて、それが御承知のように免許制となって発足をしてまいりました。今日、この免許制の証券会社というのをなぜ私どもが考えたかということは、証券会社がもしそう簡単につぶれるようなことがあれば、投資家に対して非常に不測の損失を与えることになるし、いろいろな問題もありましたから、その免許制を推進をしてきたわけでありますが、それではいま免許をされておる証券会社は今後とも心配はないかどうかという点について、きょうはちょっと問題提起をしておきたいと思います。  それは何かといいますと、なるほど現在証券は非常に好況でありまして、利益はたいへん出ておりますけれども、しかしこれは四社の中においても、あるいは七社、五社の中においてもその他の中においても、いま著しく格差が生じておるという問題がある。資本主義の世の中でありますから、格差が生じてくると、その格差というのは縮むのではなくて、おおむね開く方向に働くのが私はいまの日本の資本主義の状態ではないのか、こういうふうに思います。そうなると、どこに問題が出てくるかというと、証券会社というのは機械で物を生産するわけではありませんから、人間がやる仕事でありますから、そこに能力のある人間が集まるか集まらないかでおのずから格差がまた広がっていく。ところが、収益のあるところは高い賃金も払えるし将来の見通しもあるからいい人が集まってくる。格差の下がっておる低いほうは、収益も少ないし見通しもよくないというので人がこない。これが私は将来、いま年率一五%内外の人件費の増加しておるという中で、証券会社の将来にとっては非常に重要なファクターの一つになる。  二番目は機械化の問題だと思うのです。だんだん機械化が進歩してデータ通信のようなものが広がってまいりますと、自分たちの企業サークルの内部に対しては情報が適確に相当流されるけれども、小さなものは、これは何らかのかっこうで集約されたものができるではありましょうけれども、そういう意味では立ちおくれの段階にこざるを得ないということもまた情報的な問題から明らかです。  いろいろな面から総合しますと、これから五年ぐらい先を見通してみると、私は現在の証券会社がこのままの姿で、全部が免許のままでいけるとは思わないというたいへん悲観的な見通しを実は持っております。これはしかし、やはり競争原理というものが働いておる以上やむを得ない。しかしそれをそのままほっておいていいかどうかというとまた問題があるわけです。今度は免許制でありますから、それが手をあげましたということになったのでは、これは困るわけです。そこで、そういう長期的な見通しに立って、いまの免許制度における証券業のビジョンというものをここらで一ぺん描いてみなければならぬ問題があるのじゃないだろうかということが、きょうの証券問題の一つの重要な問題点なんでありますが、これは専門的なことでありません。きわめて常識的な話でありますから、大臣はこの証券業の将来——特に大から小まで格差があり、これがまた同じ商品を同じように扱っておるわけですね。アメリカなんかは多少違うようですが、日本の場合にはもう大も小も同じパターンで同じ商品を扱っておるということで、はたしてこのままでいけるかという点には私は非常に大きな疑問があるものですから、大臣としては今日これらについては何らかの対策といいますか、ビジョンを描きながら対策を進めるお考えがあるか。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 たいへん傾聴すべき御意見と存じますが、今日この時点では免許制発足間もないときであります。免許制下においてできる限りの全力競争をしてもらって、おのおのの会社をよくしていくということに全力を尽くすほかはあるまい、さように考えます。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 証券局はいまの証券業の中身をよく承知しておるでしょう。いま大臣のおっしゃることは前提としてそれでいいのですが、私は率直にいってちょっと不安がある。それは免許にしたときからもう不安があるのだけれども、幸いにして免許にしたとき以後調子がいいですから、一応私は条件は整備されておると思うけれども、いまのような証券の好況がいつまでも続くかというと、証券というのはフラクチュエーションの大きくなるものですから、これはやはり悪くなるときも考えておかなければならない。そのときは人件費は下げられるかというと、これは下げられない。どうしても収支率は悪くなるということを予想しなければならぬと思いますので、何も私はいまの証券業がすぐ悪くなると言っておるのではないんですけれども、悪くなることを考えて問題を処理しなければならない業態であることは間違いない。とすれば、何らかここらでビジョンを考えておく必要があるのではないかということについては、事務当局としてはどう考えておるか。
  84. 志場喜徳郎

    ○志場政府委員 証券業務につきましては、一つの取引所というものを形成しておるわけでございます。取引所において公正な価格と円滑な有価証券の流通をはかるということがその使命でございます。その前提といたしましては、私どもは基本的には、まずできるだけ多くの需給が統合する。その場合、多くの需給が統合して適正な価格を形成されるためには、何と申しましても株式というものが多くの株主によって分散していることが基本的に望ましいという方向と、それから投資売買につきましての判断が、特定の少数の判断に片寄ることなく、できるだけ発行企業体の状況の見方、その他の見方につきましても多くのそれぞれ——無理に異なる必要もございませんでしょうけれども、判断が存在するということが適当であり必要じゃないかというふうに基本的に考えるわけでございます。したがいまして、証券業務を扱います証券会社のあり方といたしましては、やはり投資層の拡大と、単一あるいは少数の判断なり意見によってユニホームにならないように、それぞれ独立性を持ちながらも多くの判断がそれぞれの立場で適切に自主的になされるというような、そういう基本的なあり方というものが必要じゃないか、かように考えるわけでございます。さような見地からいたしまして、先生の御心配になっておりますような極端な寡占化状態というものが証券界に行なわれることは、基本的にはその望ましい方向に逆行することでございまして、大なること決してよしとしないという考え方を基本的に持っております。しかしそれにいたしましても、免許後間もないわけでございまして、いままでの段階は、とにもかくにも各社あげて正常な、あるべき財務体質ないしは経常収支の状態あるいは金融収支の状態ということに、改善して持っていくということがまず前提でございまして、ようやく昨年の九月決算期におおむね金融収支も全国的に黒字になってまいりましたし、全体的に体質はまずまずの状態になりつつあるということでございます。しかし、これをこのままほうっておきますと、金持ちはますます金持ちになるというようなことで、金は金を生むといったようなことで格差が広がることになるので、ここらで基本的な方向に向かいまして、大中小それぞれの証券業者の業務分野の適切な調整とでも申しますか、それにつきましてビジョンを描き、しかるべく指導をすべき段階にある、かように考えます。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんから簡単に二つだけ問題提起をしておきたいのですけれども、最近個人金融に占める株式なり投資信託がふえてきております。その中で、投資信託はことしようやく純増、四十四年度はごくわずかですが純増になりましたが、株式面で見ると実はまだ売り越しである。これが、ずっと見ておりますと、外人投資で入ってきた資金と大体見合っておるような感じがします。ですから、これで実は投資信託の売り越しがささえられてきた。四十四年につきましては三倍くらい外人投資のほうが多いと思いますが、そういうものにささえられてきた。どうも、のどもと過ぎれば熱さを忘れるで、投資信託法の改正をやってきましたけれども、あまり投資信託法の改正の実があがっていないという感じがしております。ここいらは、せっかく国会できめた投資信託法を適切に、より積極的に運用されるように業界の指導をしてもらいたい、これが一点です。  二番目は、アメリカではアナリストという制度がございまして、企業分析をやって投資家にいろいろな資料を提供する。アナリストというのはオフィシャルの資格を持っているわけですけれども、日本ではまだそういうことにはなってないわけです。私は将来の一つの展望として、アナリストのオフィシャルな資格といいますか、公認会計士制度のように、ある高い地位——いまの外務員の講習のような形でなくて、特定の技能を持った専門家でありますから、このアナリストというものの法制的な位置づけといいますか、一つの権威のあるものにし、その者によって公正な投資が進められるようにするということも、私は正常な証券投資の一つの道ではないかと考えます。  最後は、実はこれからの問題は、過疎過密がだんだんやってきますと、要するに過疎地帯というか、そういう式のところには証券会社がほとんどなくなってしまうのではないか。どうしてもこれはペイしませんね。その場合に、金融機関におけるところの簡易店舗のような中に営業所という段階がいま認められておりますけれども、これはもう同じぐらいの人間が必要なんですが、簡易店舗というようなもので、ともかくそういう過疎地帯であろうとも——過疎地帯といっても農村ではないのですが、都市内で市部であっても証券会社が成り立たぬというのがだんだんできつつあるわけですが、しかし国民ひとしく証券投資も可能だということになるべきだと思いますので、何らか銀行における簡易店舗のような問題が考えられると、多少合併その他がスムーズにいくのではないか。そういうことによって、さっき申し上げたような問題がある程度条件が整備できる問題もあるのではないか。ですから、銀行局のほうでいろいろ合併転換法なり、その他競争原理の導入に伴っていろいろなことが考えられてきているわけですが、私は証券局も、やはりその競争原理は初めからあるわけですから、その中での競争に対して適切な補完的な処置をとり、何らかの計画をすみやかに樹立することがこの際必要ではないか。気がついたときはおそい。私が大体当委員会問題提起をして何年かあとには必ず問題が出ているわけです。粉飾決算問題を取り上げたら、その一年後には山陽特殊鋼の決算が粉飾決算で大きくクローズアップされたし、あるいは公認会計士の問題を過去に取り上げてきましたが、そのあとで大きな事態を招いているということを考えると、この際、ぜひいま申し上げた問題を政府側としては検討してもらって、事前に十分策を講じて、投資家が不測の災難にあわないように、また企業そのものとしても、何らか条件の悪いときには合併その他によって切り抜けられる道を考えておくことも必要ではないかと考えますので、以上提案を申し上げて、私の本日の質問を終わります。
  86. 毛利松平

    毛利委員長 春日一幸君。
  87. 春日一幸

    ○春日委員 本日は、金融機関の預貯金の金利を、この際政府はいつごろ引き上げる方針であるか、この問題を中心としてお伺いをいたしたいと思います。  先般大臣は、本委員会において物価政策が論じられましたとき、消費者物価の値上がりが四・八%、これに対する現行金融機関の金利が一年もので五分五厘、税金を引くと実質四分六厘何がしになって、結局は物価の値上がりを下回るという形になってくる、だとすれば、この問題は一般国民の預貯金の意欲を減耗させることにはならないか、だから、物価政策と金融政策などの関連において、かつは経済情勢一般を照らし合わせて、この際預貯金の金利を引き上げる必要があるであろうとの言明をされました。この際、その言明に基づいて、政府はこの金融機関の預貯金をどのように引き上げる方針であるのか、その具体策について政府の方針をお示しを願いたいと思います。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま政府では預貯金の金利の引き上げを考えております。おりますが、いまお話しのような物価の関係で考えておるのではないのです。これは、最近金融調整制度をとっておる、資金の需給が逼迫をする、そういうことで一連の長期金利の手直しをしておる、それとの関連において考えておるのですが、考えておることは考えておる。今月中には結論を得たい、こういう考え方でございます。
  89. 春日一幸

    ○春日委員 考えておられるということは、引き上げるの必要があろうと考えられておりますか。
  90. 福田赳夫

    福田国務大臣 さようであります。
  91. 春日一幸

    ○春日委員 だといたしますと、念のためにお伺いをいたすのでありますが、この臨時金利調整法によりますと、大蔵大臣はその金利の最高限度額の変更を必要とすると認めた場合には、日銀政策委員会に対してそのことについての検討を命じなければならぬことになっておると思うのでございます。したがって、いまここでお伺いをいたしたいことは、大臣は、この臨時金利調整法第二条第二項に基づいて、日銀政策委員会にその検討をすでに命じられたか、まだそのような命令を発せられてはいないか、この点を具体的にお示し願いたいと思います。
  92. 福田赳夫

    福田国務大臣 多分あしたになるかと思うのですが、日本銀行のほうに金利引き上げについて大蔵大臣としての正式の発議をいたしたい、かように考えております。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 大蔵大臣が日銀政策委員会に対して、現行金利の最高限度額の変更をする方向でその検討を命じられる、こういうことで理解してよろしゅうございますか。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりであります。
  95. 春日一幸

    ○春日委員 大臣はただいま、物価政策というよりも、純粋に金融政策の立場からこういう問題を考え、一応の結論に達してそのよう左命令を発せられる、こういうことでございます。しかし、先般この論議で大臣みずからお述べになりましたように、物価の上昇率が四・八%、しかもこれは押えなければならないけれども、実質的に押えるということはなかなか困難が予想される、かたがたもって国民の預貯金意欲を減殺することになるであろう、いずれにしても預貯金の金利と物価の値上がり率は、物価の値上がりが絶えず金利の最高限度額を下回っていることが望ましい、こういうことを述べられましたが、そのような関係についてはいまのお考えも変わりはないと思いますが、いかがですか。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 その考えはいささかも変わっておりません。しかし、物価が上がってきたから金利のほうもそれに追随してどんどん上げたらいい、そういう考えじゃないのです。ですから私が物価の見地からこの引き上げをするのではないということを申しておるのは、その趣旨なんです。そうではなくて、まさにわれわれが努力しなければならぬ問題は、物価の引き下げについて努力をしなければならぬわけなんです。しかし物価自体が金利を上回って上がるというような物価の上がり方については、これはもう極力避けていくというかたい方針をとらなければならぬ、かように考えております。
  97. 春日一幸

    ○春日委員 問題点を明確にいたしたいが、ならば、この際一般経済情勢に照らして金利を引き上げなければならないと大臣が腹を固められた積極的理由は何か。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま非常に資金需要が逼迫しておる、資金の供給もふやさなければならぬ。それには長期金利のほうの動きもある。そういう際に一年定期五分五厘という現状に据え置くことは妥当でない、こういうふうに考えたわけであります。
  99. 春日一幸

    ○春日委員 くどいことを申し上げるわけではないが、資金需要が増大をいたしておる、ゆえに資金総量を拡大せなければならぬ。拡大の阻害要因となっておるのは、物価が一年で大体四分八厘高くなっておる。物価の上昇率を押えなければならないことは、これは当面する政策の最大課題ではあるけれども、しかし現に上がっておる実態にかんがみ、そのことが一般国民の預貯金意欲を減殺しておるというこのような実態を重視して、したがって、そのような物価の上昇率よりも金利の限度額をその上に置いておかなければ、すなわち資金需要の総量を確保することができない、こういうメカニズムを念頭に置いてこういう政策をとられたものと考えざるを得ないが、いかがでありますか。
  100. 福田赳夫

    福田国務大臣 物価自体を下げることに努力をしなければならぬわけであります。金利を上回って物価が上がるという事態はどうしても避けなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。物価のほうに努力しなければならない。     〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕 物価が上がったから金利も上げますという、そういう考え方はとるべきじゃないというふうに考えますが、今回の金利改定は金融政策上の立場からとっておるわけであります。
  101. 春日一幸

    ○春日委員 ならば別の角度から伺いますが、一般国民の預貯金意欲を減殺していると思われる要因は何か。
  102. 福田赳夫

    福田国務大臣 そう減殺しておるとも思いません。国民の貯蓄の状況は、国際的に見ましてもわが国においてはかなり活発な状態であります。一応貯蓄は好成績をあげつつある。あるのですが、それは物価の上昇、これが金利を上回るというような状態にずっと定着すると、これはたいへんなことになりやしないかということを心配しておるわけです。物価のほうを下げることに努力をいたしますが、金利を引き上げるというのは別の見地であります。
  103. 春日一幸

    ○春日委員 金利を引き上げると一般国民が預貯金に魅力をさらに増大してくる、こういうことがねらいであろうと思う。引き上げないで現状のままだと、預貯金意欲があるいは減ってくるおそれがあるから引き上げるのでございましょう。引き上げないでおけば預貯金意欲に対して悪影響を及ぼすであろうということがいろいろと想定されて、この際現状より引き上げなければならぬと腹を固められたのであろうと思う。     〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、現状のままだとこれは適当ではない、経済情勢一般に照らして引き上げなければならぬとお考えになることは、先般本委員会大臣みずから述べられたように、消費者物価の値上がりの実態にかんがみて、現実には、五分五厘の一年ものが税金を引くと四分六厘になって下回る、これでは減殺するのおそれありとして、したがって物価の値上がりよりも金利の収入のほうが上回るよう左態勢を確保するの必要あり、こういうことで今度金利引き上げの腹を固められたものとわれわれは理解しておるし、ただいまの御答弁によりましても、そういう御答弁を得るのでなければ特に今回引き上げなければならぬという理由がわからないですね。現状のままでもいいということであるならば、引き上げることによってどういうメリットがあって、そして預貯金意欲を阻害しておる要因が解消されるのか、そのことに対する説明がつかないと思うのです。この点いかがでございますか。
  104. 福田赳夫

    福田国務大臣 郷承知のように、今度社債その勉長期金利の改定を行なうわけです。そういう際に預金金利のほうをほっておくわけにいかぬ。その背景には金融の逼迫ということがあるわけでありますから、そういう角度からこれは考えておるのです。しかし横に、四・八%上昇、こう見通しておる物価との関連いかんということもちらりと見ながらやっておるということも、これは実際問題として政策的に当然なければならぬことだと思いますが、根本は資金の需給、そういうことからきておるわけです。
  105. 春日一幸

    ○春日委員 ぼくは、大胆でかつ正直左大臣らしくない答弁だと思うんですね。ちらりとばかりというような表現をされておるのだけれども、先般の速記録をみずからお読みになればはっきりしておる。私がいま質問をしておる内容に基づいて、そのよう左実態を解消するためには預金金利を引き上げなければならぬと明確に述べられておる。  それから、ただいま公社債の金利の問題を述べられましたけれども、公社債の金利が引き上げられるということが主なんでございますか。私は、この際一般金融のざっと五十兆円をこえるところの預金ですか、これの金利が引き上がる。そうなれば、公社債の金利も何らかの調整を加えなければならぬとして随伴的に引き上げられるのであって、これは主客転倒をしておると思う。公社債の金利や利回りを引き上げるために預金金利を引き上げるのではなくして、この膨大なる預金の資金量を確保するために金利を引き上げる。とすれば、随伴的に公社債の金利についても何らかの調整を不可欠のこととしている。こういうふうにわれわれは受け取っておるが、この点いかがですか。公社債を引き上げなければならぬからそれに見合って金利を引き上げるんだ、これは資金総量からいって私は論理が合わないと思うが、いかがですか。
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 くどく申し上げるまでもありませんが、金融調整政策をとっている。その結果資金の需給が非常に緊迫状態でございます。ですから、金の需要がふえるのですから、それに対して預金もする、貯金もするという場合の金利が高くなる、これは当然です。それからまた同時に、貸し出す金が少ないのです。金の供給が少ない状態でありまするから貸し出しの金利が上がる、これも当然なんです。現在上がってきている。そういうことで長短金利を通じて調整をとらなければならぬ段階に来ておる、こういう全体の金融政策の一環としての考え方に基づいておるわけでございます。あなたくどく預貯金の金利とそれから物価の関係ということを言われますが、これはいままでも何回か申し上げましたとおり、私は預貯金の金利を上回るような物価の上昇は断じて相ならぬ。このことをこの前の委員会でもはっきり申し上げておるのです。物価を引き下げるほうに努力すべきである。物価が上がったから安易に金利を上げてそれでいいのです。こういう考え方じゃないということを申し上げておきます。
  107. 春日一幸

    ○春日委員 まるで筋違いの論理なんで、あなた方は二十二年七カ月わが国の政権を担当されておる。一体、だれがこのような物価上昇を来たすよう左政策を行なってきたかということについて、また四・八%の値上がりをけしからぬと言ってしかられておるけれども、われわれが値上げしたわけじゃない。あなた方の政策の結果としてこのような物価の値上がりを来たしたのであって、あなたはわれわれに向かって、四・八%の物価の上昇を押えなければならぬ、これを何よりも言うておられるけれども、そんなことわれわれは聞く耳を持たないのである。みずから自分の顔を鏡に映して自分の顔に向かって言わなければならないことであり、しかも、そのことは先般の委員会で痛切に反省の中で述べられておる。だから、われわれが心配をいたしますのはここにあるのです。たとえば、この預金金利が引き上げられますと、金融機関資金コストが高くなる。さすれば、貸し出し金利もおのずから高くなってくるのがこれは経済の自然の動向だと思うが、この点の見通しはいかがですか。
  108. 福田赳夫

    福田国務大臣 資金の需給が窮迫している状態でありますから、自然貸し出し金利も上昇傾向にちりまず。これは御承知のとおりと思いますが、金融機関においては預貯金の金利が多少上がりましてもこれにたえ得る状態になっております。
  109. 春日一幸

    ○春日委員 大臣金融機関の経理を重点に置いて心配されておるようだが、われわれの心配はそこにはない。問題は、貸し出し金利が高くなれば企業の金利負担をそれだけ加える形になってくるであろう。さすれば金利負担が上昇した分だけ、そのままコスト高の要因となってまいるであろうと思う。だから、預金金利を引き上げれば貸し出し金利が高くなる。貸し出し金利が高くなれば企業負担を加えてくる。さすればこれまたコスト高の要因となってくるであろう、このことを心配しますが、いかがでありますか。
  110. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国においては、金利水準からいいますと、二年前はアメリカあたりに比べますと二ポイントくらい、二分くらい高水準にあったのです。だんだんと下がってまいりまして、またアメリカあたりでは金利が逆に上昇してくる。アメリカのほうの金利水準が逆に二ポイントも高い、こういう状態に上がってきておるわけです。金融調整をする政策をとる、金融の需給が逼迫するのですから、これではどうしたって貸し出しの金利が上がる。これはもう当然の勢いになるわけです。またそれがお話しのように企業負担にもなります。なりますが、その企業負担になるということ自体がまた、一つ設備投資なりそういうものに対する抑制、圧力にもなってくる。こういうことになるので、金融調整政策をとっておる——総需要を減らすためでありますが、とっておるそのもとにおいて、金利水準というものが全体として上がる、これはやむを得ないことなんですが、そのやむを得ないことをいまのまま放置するということは適当でない、こういう考え方であります。
  111. 春日一幸

    ○春日委員 まあその点の判断ですけれども、大臣は、金利負担が重くなれば企業の新しい設備意欲を抑制する形になるであろうと期待されておりますが、しかし実態的にはどういうことであるかといいますと、昨年度の計画でも一二、三%の計画をされておったものが、民間企業設備投資伸び率は二六%でしたか、そういうような結果をあらわしてきておる。だから、政策意図がいかがあれ、民間設備投資というものが自由経済のもとにおいては容易に抑制し得ないものであることは、過去の経済の実態がよくこれを示しておるところですね。このような実績の上に立って判断をするならば、金利が高くなれば設備意欲を抑止するであろうという政策効果よりも、またそんなねらいよりも、金利負担が高くなればやはり製品コストというものにそれがはね返って、そうして物価高の要因になってくるであろう。さらに物価高が刺激されてくれば、勢いもう一ぺん金利をその上に乗せなければならぬというようなシーソーゲームから、ときにあやまってインフレに突進するような危険なしとは断じがたいんですね。だからこの際、大臣が言われておりますような、預金金利が高くなれば貸し出し金利を高くしてもいいというような手放し的な楽観論では、大臣が期待されるような結果はあらわれない。時すなわち金利コストが高くなってきておりますから製品コストも高くしていかなければならない。結局物価が高くなってくる。物価が高くなってくれば金利をもう一ぺん上げるというようなエスカレートが次々と行なわれてまいりますと、これははなはだ危険な結果を招来するおそれなしとはしない。この点について厳に御留意を願いたいと思うが、御所見はいかがですか。
  112. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も金利が設備投資に大きな影響を及ぼすとは思いません。設備投資に対して大きな影響を及ぼすのは何だ、こういえばこれは量的調整のほうですね。金利調整のほうじゃないと思う。しかし、金利調整といえども何がしかの効果はある、そう見ておるわけですが、あなたが御指摘のように、非常に大幅な金利の引き上げをやりましたというようなことになると、御心配のような懸念なしとはしないと思います。その辺は心してやります。
  113. 春日一幸

    ○春日委員 ただ、預金金利には政府権限がありますけれども、貸し出し金利については政府権限は及ばないんですね。青天井で、高くともこれは自由契約でどうでもとれる。ただ日歩二十七銭まではいかぬというあの制限があるだけですね。そのことにかんがみて、いまこそそのような貸し出し金利の抑制策について大蔵大臣の行政指導というもので、法律がなければこの際強力にこれを推し進めてもらうのでなければ、私は、はからざる危険な状態を招来する心配なしとはしないと思う。預金金利には最高限度額の制限がある。貸し出しは自由であるという形になりますと、しかも大臣がいまおっしゃったように、コストが高くなるのだからセールスのほうも高くなるのだ、これはやむを得ないじゃないかと手放しでほっておいてはいかぬと思うが、この際そのような引き上げをされると同時に、貸し出し金利についても、法律上の盲点があるならばこの際立法措置を講ずるもやぶさかではないと思うし、それに至る前駆的処理として適切な行政指導が必要であると思うが、この点はいかがですか。
  114. 福田赳夫

    福田国務大臣 預貯金の金利が上がるから貸し出しのほうも上げると、こういうんじゃないんです。逆です。貸し出しのほうが上がるから、したがって預貯金の金利を上げましても、金融機関はこれにたえ得る、こういうふうに考えておるわけなんですが、それはそれといたしまして、いま御指摘のような非常に急激な貸し出し金利の引き上げが行なわれるというような状態は好ましく左ないと思います。しかし資金の需給が窮迫しておりますから、どうしたって貸し出しの金利は上がる。上がるわけでございますが、そこに自由競争という原理がまた働くと思うんです。私どもは、預貯金の金利につきましても貸し出しの金利につきましても、自由競争原理、これが妙味を発揮するという状態が好ましいのじゃないかというふうに思っておるわけであります。逐次そういう方向に預貯金のほうも持っていきたいというぐらい左考えなんでありますが、非常にデリケートな経済情勢の中で、貸し出しのほうの金利が急激な変化を来たすということは好ましくありません。ありませんので、行政官庁といたしましてできる限り指導もいたしていきたい、かように考えます。
  115. 春日一幸

    ○春日委員 こうすればどういう結果になるかという見通しは、政策的な観点を異にいたしますから心配と安心と分かれてくるわけでございますが、問題は、いずれにしてもお考えを願いたいことは、かつて国民金融公庫の金利がたしか八分五厘でしたか、九分でしたか、これを現行八分三厘に下げるためには、この国会においてずいぶん論議が行なわれて、企業の金利負担軽減のために強力な論戦が交えられた経過にかんがみまして、金利負担が若干高くなったところで、それが企業に対する負担にはならないとか、あるいは物価高の要因にならないとか、これをあまり軽視されないように十分なる御検討を願いたいと思う。  そこでなおあわせて具体的に伺っておきたいと思いまするのは、こういうぐあいで資金コストが高くついているから貸し出し金利も高くならざるを得ない、こういうことであろうと思うのです。資金需要供給のメカニズムから結局は貸し出し金利が高くなるから、預金金利を引き上げても金融機関には消化能力があるという見方をされておりますが、われわれはその裏から逆に、コストが高くなるからセールスのほうも高くならざるを得ない、こういう判断の上に立ちますると、まず政府関係金融機関貸し出し金利、これはあるものは法律によって定められていると思いますが、そういうものは市中金融機関貸し出し金利との均衡上、これを引き上げられるような方針であるのか、現行のままこれを据え置く方針であるのか、この点をお伺いいたしたい。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 当然御指摘のような問題が理論上起こってくるのです。理論上は起こってきますが、実際問題としては、政府関係金融機関貸し出し金利は据え置き、そういう方針をとりたいと思っています。
  117. 春日一幸

    ○春日委員 政府関係金融機関貸し出し金利は、市中金利がそのように預金、貸し出しともに引き上げられたとしても据え置いていくという大方針である、こういうぐあいに承知しておいてよろしゅうございますね。
  118. 福田赳夫

    福田国務大臣 よろしゅうございます。
  119. 春日一幸

    ○春日委員 もう一つ具体的に伺っておきたいと思いまするが、明日大臣が日銀政策委員会に対してそのような指示を発せられる。そういたしますると、日銀政策委員会は、金利調整審議会ですか、これに諮問を発して、そうしてその答申を得て、日銀政策委員会大臣に向かって答申をしてくると思います。したがって、指示をされる以上、その結論についてある時限を指定されておるであろうと思いまするが、そのようなことはどうなっておりますか、あわせて伺っておきたいと思います。
  120. 近藤道生

    近藤政府委員 技術的なことでございますので私から御答弁申し上げます。  特に日時を限っていついつまでということではございませんで、できるだけすみやかに検討の上答申を出していただきたいというふうにお願いしております。
  121. 春日一幸

    ○春日委員 必要がありと腹を固められた以上は、やはり当然タイムリミットの問題についても念頭におありであろうと思います。その答申の日限というものは、いつごろ答申を得たいものと期待されておりますか。この点も大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  122. 近藤道生

    近藤政府委員 大体におきまして、今月末までに金利調整審議会から政策委員会への答申がございまして、その結果今月中には大臣が告示を出されるという運びになることを期待いたしております。
  123. 春日一幸

    ○春日委員 それだけの答弁ができるのだったら、初めぼくが聞いたときにまとめて答弁してもらいたいと思う。二へんも立って、二へんに分けて聞かなければ答弁できない筋合いのものではないだろう。注意します。  そこで次は、いまや金融市場というものは資金梗塞を来たしておる。資金の総需要が総供給を上回っておるような状態になってきておることにかんがみまして、この間日銀佐々木総裁が、大企業の諸君を集めての金融懇談会の席上、資金梗塞というのは、都市銀行あたりにおいてはそういう傾向が顕著であるけれども、中小企業関係金融機関、相互銀行、信金あたりにおいてはなお資金の余裕があるようである、ゆえに大企業の諸君もこれら相互銀行や信金の金を使うべきである、こういう示唆を与えられたと聞いておりまするが、この点について大臣はどのように承知されておりますか。
  124. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう話は聞いておりません。
  125. 春日一幸

    ○春日委員 新聞に大きく報道されておりましたが、この点お読みにもなりませんか。あるいは銀行局長、そういうような話し合いがされたかどうか、当然その会議には銀行局長は出ておったものと思うが、いかがでありますか。
  126. 近藤道生

    近藤政府委員 そのような話は全く聞いておりません。ただ今度の引き締めの時期におきまして、前回、前々回とたいへん様相が異なります特徴は、ただいま御指摘がございましたように、中小金融機関における資金が、大銀行、大金融機関のそれに比しまして相対的に潤沢であるということが一つの、特徴であろうかと存じます。
  127. 春日一幸

    ○春日委員 それで、その潤沢だと言うたその時点ですね。その後いろいろな変化があらわれてきておると思うのです。たとえば企業間信用の供与のボリュームが非常に拡大されてきておると思うのですよ。たとえば大企業相互間、それから親企業と下請企業との関係、すなわち横の関係と縦の関係でいわゆる延べ払いというような関係が非常に拡大されてまいっておると思うが、この関係はどういうぐあいに動いておりますか。
  128. 福田赳夫

    福田国務大臣 数字で出てくるのはおそい関係もありましょうか、数字的に見まするとそういうような顧慮が非常に微弱なんです。今度の金融調整下の経済情勢の特色とも申すべきことだと思います。しかし、実際いろいろな人に会って聞いてみますると、いま春日さんのおっしゃるような話を聞く。これは調査の日付のズレでもあるのかなという感じをいま持っておるのですがね。まあしかし、様相が前回の引き締めのときとかなり違っている様相であるということは、傾向的、数字的にかなりはっきり出てきております。
  129. 春日一幸

    ○春日委員 大企業資金梗塞である、さすれば、当然の帰結として下請代金支払いが延びていくことは当然の事柄であろうと思うのでございます。しわは結局そういう方向へ集中的に寄ってまいるであろう。そういうことで、いまや中小企業に対する資金難という問題がだんだんと拡大されまして、かくて三月危機説などが巷間伝えられておるようになりました。この問題は非常に重視すべき事柄であろうと思います。三月といっても当月でございますが、中には六月危機説というような専門家筋の観測もあわせて行なわれておるわけでございます。このことは本来的に、相互銀行とか信金とかというものは中小企業に対する専門金融機関と銘打ってこれが制度化されてわるものである、本来的にその様相というものは中小企業に対してその資金を流すところにありと考えるのでありまするが、もしそれ、かりに佐々木日銀総裁が示唆したごとく、大企業がそのような中小企業のえさを食べてしまうという形になれば、中小企業者はみずからその飢えをしのぐことができないことは物理的必然である。この点どう考えられますか。三月危機というものには何ら懸念なきや、この点について銀行当局、大蔵大臣がいろいろと調査あるいは観測されておるところをこの際お述べ願いたい。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 この時点においてはそう心配は私どもはしておりません。問題は今後だ、こういうふうに考えております。そういうようなことで、大蔵省といたしましては各地の財務局に指令を出しまして、特に中小企業金融状況の推移について注目し、かっこれを報告するようにというふうにいたしております。まあ中小企業は何といっても、金融引き締めが浸透してくるということになりますと特に苦しい立場に立とうと思います。この点については十分配意をいたしておる次第でございます。
  131. 春日一幸

    ○春日委員 この際銀行局長から、破産、倒産の件数、それから不渡り手形の件数、こういうものについてどういうような足取りか、御報告願います。
  132. 近藤道生

    近藤政府委員 まず企業倒産についてでございますが、東京商工興信所の調べましたところの計数でまいりますと、二月が五百九十二件でございまして、この水準は大体七、八月で六百件、七百件、それから九月も六百件台、それから十一月にちょっと八百件台にふえたのでございますが、それらに比べますとやや減少ぎみというような感じでございます。負債金額につきましても同様の足取りでやや減少ぎみ、それから同じく全国銀行協会で取引停止処分の状況を調べていますが、このほうも全く同じような足取りでございまして、大体一−六月が千件台、七−十二月が千二百件というようなところでございましたが、一月は七百四十七件ということで、取引停止処分の発生件数もやや減少ぎみでございます。  それから、ただいま御質問のございました取引条件の関係でございます。これはたとえば月給の支払い比率とか現金比率、手形期間、検収期間、いずれも大体において横ばいということでございます。
  133. 春日一幸

    ○春日委員 この点は特に大臣に、事実に基づいてあやまたざる判断を立てていただいて適切左措置を講じていただかなければならぬと思うが、ただいま銀行局長が、一月の倒産の件数が少ないと述べられておりますけれども、それにはそれなりの理由があると思う。それは御承知のとおりあの十二月の年末金融、これに対して大臣が立てられた当初計画はたしか一兆二千億でございました。ところが一兆二千億では持ちこたえられないであろうというので、実におおばんぶるまい、一兆八千億の資金供与が、この中小企業のために特段の措置がなされたのでございました。これは選挙さなかでございますから、自民党の党利党略という性格もあるでございましょうが、党利党略でございましても、実質的にそれによって中小企業の困難が救済されたといたしますれば、これは多としなければならぬと思う。ただ問題は、一月の件数が七百何十件で少なかったということは、十二月に実に一兆八千億という越年資金が政策的に投入されておることの成果であるということを考えなければならぬと思う。だから、この三月が一体何件倒産するであろうかという事実関係は四月になればわかることです。あなたはいま三月は予測を何件と言われたかな。
  134. 近藤道生

    近藤政府委員 三月は予測はいたしておりません。
  135. 春日一幸

    ○春日委員 大体どのくらいと予測しておるか。ひどく楽観論を立てられておるが、楽観論に基づいて大体去年のデータから推測するところの倒産件数はどのくらいと見ておるか。
  136. 近藤道生

    近藤政府委員 企業の倒産件数につきましては、先ほど申し上げましたように、現在までの状況におきましてはやや減少ぎみということでございますが、これが今後どういうことになってまいりますか、その辺は非常に予測のむずかしいところでございまして、私どもといたしましても、先ほど大臣が言われましたように、今後中小企業金融がどういう状況になるか、細心の注意をもって見守ってまいりたいと思っております。
  137. 春日一幸

    ○春日委員 中小企業の経営の実態から見ますと、結局は月末勘定ということが多いであろう、したがってお手あげをするという、こういう事態に立ち至るのは、そのような決済が集約されてくる月末にあると思われる。現時点において、まあたいしたことにはならないのではないかという楽観論があるが、もしもそのよう左楽観政策を推進した結果として、月末において恐慌事態が起きますと、これは取り返しのつかないことになるわけでございます。専門家筋のいろいろな研究と推測によりますと、三月は千五百件くらいの倒産を発生するのでは左いかと、まさにこれが三月危機として強く警戒されておるところでございます。だからそのような楽観論の結果、そのような被害が中小企業に及ばざるようあらゆる条件を十分調査をしていただいて、ときには政策金融あるいは予算の繰り越しの行使でありまするとか、いろんなことを行なっていただいて完ぺきを期していただきたいと思います。この点を強く要請をいたしておきます。この点いかがでございますか。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのように心得ております。
  139. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、大蔵大臣は十五分でお帰りということでございますから、行きたいときに行ってください。  私は国税庁長官に、税法上の問題でどうしても左お時間を少しちょうだいいたしたいのでございまするが、同僚諸君の御意見によりますると、まあ刻限もまさに移っておる、長官のごとき者ならばいつでもできるではないか、こういうようなお話でございますので、きょうは問題を提起するにとどめておきたいと思いますので、ひとつお願いをいたしたい。  実はこういう問題なんです。昭和三十年二月二十二日に、平田敬一郎氏が国税庁長官で、村山達雄君が直税部長のときに、大工、とび、左官等に対する所得税の取り扱いについてという通達がなされておるわけでございます。すなわち勤労性の事業所得に対しては、その事業所得のうち勤労の対価として発生したとおぼしき所得に対しては、その所得を得るに必要なる経費としてそれぞれの控除はなされておりませんけれども、事業税を念頭に置いて所得区分を行なう、こういう通達がなされておるわけでございます。この通達はその後何回か賃金の引き上げによって改正通達がなされて本日に至っておりまするけれども、しかしその一、二、三の項目はそのままいままで引き継がれておるわけでございます。何回かの改正がなされたのは、この通達の第二項の割合とそれから年収額の関係だけの改正がなされたにとどまっておるわけでございます。で、さらに私は先般来何回か、国税庁長官が主税局長のときにも、一昨々年でございますか、ここで論じたのでございますが、現在の徴税制度がすなわち給与所得と資産所得と事業所得とあっていいであろう、その事業所得の中では、勤労性の性格の強い所得があるんだから、大工、とび、左官、板金と同じように、散髪屋さんだとかあるいはパーマネント屋さんだとか、ほんとうに働いて得る所得というものがあるんで、こういうものに対しては税法上特別の措置を講ずべきであるという主張をずっと繰り返してやってまいりました。これは泉前長官も、それからシャウプ勧告にも、さらにはまた渡邊喜久造氏の著書の中にも、その問題のあり個所は指摘されておるところでございます。ただ単にわれわれが政策論としてここで述べておるだけではなくして、徴税理論の均衡の上からもこれは何らかの措置が必要であるということは、泉氏の著書にもシャウプ勧告にも渡邊さんの著妻にもみなあるところでございます。したがってこの問題は、ぜひとも本委員会において、今次国会において解決をせなければならぬ問題であると考えております。昨年青色申告については専従者控除、これは青天井の控除が実現を見まして、一部その問題の解決はついたのでありまするが、しかし事業主の所得、給与、これも何とかしろ、こういう主張はいまや国民的世論となって高まっております。だから問題は半分解決しただけで半分は残っておるのでございます。だから、この問題はぜひとも与野党を通じて、本委員会の努力によって、この長年の歴史的な懸案の解決をはかりたいと思うのでありますが、きょうはそういうようなわけで時間がございませんから、問題を提起いたしまして、次の機会に細見由税局長吉國長官と、願わくはひとつこの問題については中川次官もしんみりと深く取り組んでいただいて、大臣をしてこれを踏み切らしめる、こういう方向に御努力が願いたい。次の機会にこの点を十分論議を尽くしたい。問題を提起いたしまして、本日の私の質問を終わりたいと思います。  なお、吉國さん、そういう方向に向かって協力ができる答弁ならよろしいが、そうでなければ、問題を提起したことに対して発言の必要はございませんから。
  140. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 たいへん時間がたっておりまして恐縮でございますが、ただいま春日委員の仰せられましたことは、勤労性所得に対する控除の問題として、これは事実渡邊元主税局長並びに泉元国税庁長官、またシャウプ勧告にも触れている問題でございます。ただし、先ほど御引用になりました所得税通達はこれとは趣旨が違うことは、先生よく御承知だと思います。(春日委員「関連において」と呼ぶ)山下当時の一課長もおります。  参考までに申し上げておきますが、この通達は勤労性の所得に対する特別扱いではなくして、給与所得と事業所得とが判然としない場合に、大工、左官、とびのごとく、その事業の形態から申しまして、雇用による所得が含まれ、あるいは事業所得が含まれる、このようなものについては、本来は事業所得に該当するものは事業所得とする、給与所得に該当すべきものは給与所得に該当すべきものであるけれども、その判定が困難な場合には、それを推定する方法として一種の仮定を設けたものでございまして、この通達そのものは仰せになった趣旨から出たものではないということだけ、ひとつ念のために申し上げておくわけでありまして、また今後の問題として……
  141. 春日一幸

    ○春日委員 私は問題を提起したにとどめてはおりまするけれども、当時長官は間接税の関係で、主税局の第二課長であった。したがってこの問題と取り組んだのは平田敬一郎君と村山達雄君とそれから山下君の三人であって、吉國長官はその機微に触れて知るよしもない事柄である。この問題については、とび、左官、板金、植木職と言っておりますが、一口に言いこなし得るほど長い時間をかけて、そうしてそのような勤労的性格の濃縮されたところの事業所得について、これが勤労の対価として発生したものをこういうやり方はいかぬというので、新しく村山直税部長が通達を発し、その後長官の通達になって本日になってきておる。わからないんですよ実際、いまだって。これは大工、とび、左官、板金、植木職だと書いてあるけれども、実際それと同じような散髪屋さん、それと同じようなパーマネント屋さん、それと同じような自転車の修繕工、こういうものに対して、すなわちそのような区分の明確でないところの所得区分をどういうぐあいにやっていくか、さらには、不明確というばかりではなくて、泉さんや渡邊さんの指摘、またシャウプ勧告というものは、事業所得というものを、ほんとうに働いて所得を得る者も事業によって所得を得る者も、一律の観念で徴税を行なうということは不適当だと指摘したのですよ。それはあなたの先任者である泉君や、いまはなき渡邊氏が、そんな荒唐無稽なことをいっておるはずはないのであるから、だからそういう先任者の述べられたところを、よくこの著書を読んでもらって、この次まであらためてこれまた研さん、こういうことにして、きょうはこれで私の質問を留保いたします。
  142. 毛利松平

    毛利委員長 次回は、来たる二十日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十一分散会